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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ゴム配合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230629BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230629BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230629BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230629BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230629BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/013
C08K3/36
C08L7/00
C08L9/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574243
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 FR2021051005
(87)【国際公開番号】W WO2021245357
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】2005862
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アラウホ ダ シルヴァ ホセ-カルロス
(72)【発明者】
【氏名】プラ マクシム
(72)【発明者】
【氏名】セレド ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ペリオ アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デュリエ シモン
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB05
3D131BB06
3D131BB07
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3D131BC02
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3D131BC19
4J002AC01W
4J002AC01X
4J002AC02W
4J002AC02X
4J002AC03W
4J002AC03X
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4J002AC08W
4J002AC08X
4J002DA037
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD020
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、Tg1及びTg2と表わされる少なくとも2つのガラス転移温度Tgを有し、C1及びC2と表わされる少なくとも2種のゴム組成物をベースとするゴム配合物であって、ゴム組成物C1は少なくとも1種のエラストマーE1を含み、ガラス転移温度Tg1を有し、組成物C2は少なくとも1種のエラストマーE2、及び強化充填剤を含み、エラストマーE2は、エラストマーE1とは異なり、かつガラス転移温度Tg2を有し、
組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-50℃以上であり、
ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧23℃を満たし、
ゴム配合物は、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルは、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃以下の半価幅を有するものであり、及び
エラストマーE1は、ゴム配合物中で最も多い、前記ゴム配合物に関する。
本発明はまた、少なくとも上記配合物を含むトレッド、及び少なくとも1種の上記配合物又は上述のトレッドを含むタイヤに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tg1及びTg2と表わされる少なくとも2つのガラス転移温度Tgを有し、かつC1及びC2と表わされる少なくとも2種のゴム組成物をベースとするゴム配合物であって、前記ゴム組成物C1は少なくとも1種のエラストマーE1を含み、かつ前記ガラス転移温度Tg1を有し、前記組成物C2は少なくとも1種のエラストマーE2及び強化充填剤を含み、前記エラストマーE2は、前記エラストマーE1とは異なり、かつ前記ガラス転移温度Tg2を有し、
・前記組成物C1の前記ガラス転移温度Tg1は、-50℃以上であり、
・前記ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧23℃を満たし、
・前記ゴム配合物は、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、前記損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルは、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃以下の半価幅を有するものであり、及び
・前記エラストマーE1は、前記ゴム配合物中で最も多い
ことを特徴とする、前記ゴム配合物。
【請求項2】
前記ゴム配合物が、数学的関係Tg1-Tg2≧25℃を満たし、好ましくはTg1-Tg2≧28℃、より更に有利には、Tg1-Tg2≧30℃を満たす、請求項1に記載のゴム配合物。
【請求項3】
前記ゴム配合物が、数学的関係25℃≦Tg1-Tg2≦40℃、好ましくは、28℃≦Tg1-Tg2≦35℃、より有利には、28℃≦Tg1-Tg2≦34℃を満たす、請求項2に記載のゴム配合物。
【請求項4】
前記ゴム組成物C1の前記ガラス転移温度Tg1が、-48℃以上、好ましくは-40℃以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項5】
前記ゴム組成物C1の前記ガラス転移温度Tg1が、-48℃~-15℃の範囲内、より有利には、-40℃~-15℃の範囲内である、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項6】
前記組成物C2の前記ガラス転移温度Tg2が、-43℃以下、好ましくは-50℃以下、より更に有利には、-57℃以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項7】
前記組成物C2の前記ガラス転移温度Tg2が、-90℃~-43℃の範囲内、好ましくは、-85℃~-50℃の範囲内である、請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項8】
前記ゴム組成物C1の前記エラストマーが、ジエンエラストマーである、請求項1~7のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項9】
前記ゴム組成物C1の前記エラストマーE1が、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択されるジエンエラストマーである、請求項1~8のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項10】
前記組成物C1が、強化充填剤を更に含み得る、請求項1~9のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項11】
前記ゴム組成物C2の前記エラストマーE2が、ジエンエラストマー、好ましくは、官能基化エラストマーである、請求項1~10のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項12】
前記ゴム組成物C2の前記エラストマーE2が、ジエンエラストマー、好ましくは、官能基化されているジエンエラストマーであり、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項13】
組成物C2の前記強化充填剤は、主に少なくとも1種の無機強化充填剤を含み、より有利には、少なくとも1種のシリカを主に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のゴム配合物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の少なくとも1種の配合物を含むトレッド。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の少なくとも1種の配合物又は請求項14に記載のトレッドを含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、特に車両用タイヤの作製に使用する、更に限定すれば、トレッドの製造に使用する強化ゴム配合物の分野である。
【背景技術】
【0002】
タイヤに必要な要件の1つは、道路、特に濡れた地面に対する最適グリップを提供することである。タイヤに濡れた地面に対する増大したグリップを与える1つの方法は、そのトレッド中に、高いヒステリシスを有する可能性のあるゴム組成物を使用することである。しかし、同時にタイヤトレッドは、タイヤの転がり抵抗に対する寄与を最小化する、即ち可能な限り最も低いヒステリシスを有する必要がある。
従って、トレッドのゴム組成物は、2つの相反する要件を満たさなければならない。即ち、グリップの要件を満たすために可能な最大ヒステリシスを有し、更に転がり抵抗の要件を満たすために可能な限り低いヒステリシスを有する必要がある。
転がり抵抗の改善は、無機充填剤、特に高分散タイプの特殊なシリカで強化された新規ゴム組成物の使用により可能にされており、これは強化の観点から、従来のタイヤグレードカーボンブラックの競争相手であるが、同時にこれらの組成物により低いヒステリシスを提供し、より低い転がり抵抗の代表的存在となっている。
しかし、ゴム組成物中の高含量の無機強化充填剤の使用は、それらを組み込んだゴム組成物のウエットグリップ特性に悪影響を与えるという欠点を有する。
このように、特に濡れた地面に対するグリップ及び転がり抵抗の要件の両方を満たすことは、タイヤ製造業者の懸念材料のまま残されている。
性能の観点から、最良の妥協点の探索を目指して、タイヤ製造業者は、次第に複合的なゴム組成物を開発し、しばしば、いくつかの異なる化学的性質のエラストマーを組み込んで、それによりゴム配合物を形成している。複合組成物の一例は、特許文献EP3372638、特に実施例4に記載され、この場合、複合組成物は、ガラス転移温度の差異が20℃を超えない、2種の異なるエラストマーを含み、この組成物は、転がり抵抗/摩耗の妥協点に関する改善を示す。
このように、改善された転がり抵抗を有し、同時に良好なウエットグリップを維持し、あるいは、同時にこの性質を改善するゴム配合物に対する必要性がまだ存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の1つの目的は、特にトレッド用の、特に上述の欠点を解決して、改善されたヒステリシス特性を示し、同時にそれらのウエットグリップ性能を維持、あるいは改善する新規ゴム配合物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、出願者が、驚くべきことに、特定の損失係数プロファイルを有するゴム配合物が、より良好な転がり抵抗を示し、同時に良好なウエットグリップ特性を維持し、あるいは改善された特性を示すことを発見したことにより達成される。この損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃から60℃の温度範囲にわたり測定され、異なるガラス転移温度を有し、これらのガラス転移温度の差異が23℃以上である少なくとも2種のゴム組成物C1及びC2の特定の組み合わせをベースにし、組成物C1のエラストマーが混合物中で最も多いというものである。
【0005】
本発明の第1の主題は、少なくとも2つのTg、Tg1及びTg2を有し、少なくとも2種のゴム組成物C1及びC2をベースにし、ゴム組成物C1は少なくとも1種のエラストマーE1を含み、及びガラス転移温度Tg1を有し、組成物C2は少なくとも1種のエラストマーE2及び強化充填剤を含み、エラストマーE2は、エラストマーE1とは異なり、ガラス転移温度Tg2を有し、
・組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-50℃以上であり、
・ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧23℃を満たし、
・ゴム配合物は、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、この損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルは、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃以下の半価幅を有するようなものであり、及び
・エラストマーE1は、ゴム配合物中で最も多い
ことを特徴とするゴム配合物に関する。
【0006】
有利には、ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧25℃を満たし、好ましくはTg1-Tg2≧28℃、より有利には、更にTg1-Tg2≧30℃を満たす。
好適には、ゴム配合物は、数学的関係25℃≦Tg1-Tg2≦40℃、好ましくは、28℃≦Tg1-Tg2≦35℃、より有利には、28℃≦Tg1-Tg2≦34℃を満たし得る。
好適には、組成物C2のガラス転移温度Tg2は、-43℃以下、好ましくは-50℃以下、より有利には、-57℃以下であり得る。
好適には、組成物C2のガラス転移温度Tg2は、-90℃~-43℃の範囲内であり、好ましくは、-85℃~-50℃の範囲内である。
好適には、ゴム組成物C2のエラストマーE2は、ジエンエラストマーである。より好適には、組成物C2のエラストマーE2は、官能基化ジエンエラストマーである。
好適には、エラストマーE2のガラス転移温度TgE2は、-110℃~-23℃の範囲内、好ましくは、-100℃~-28℃、より有利には、-95℃~-30℃の範囲内である。
【0007】
好適には、ゴム組成物C2のエラストマーE2は、ジエンエラストマーであり、好ましくは、これは、官能基化され、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソブテン/イソプレンコポリマー、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択される。有利には、エラストマーE2は、好ましくは官能基化され、ポリブタジエン及びスチレン/ブタジエンコポリマーから選択される。更により有利には、エラストマーE2は、好ましくは官能基化され、スチレン/ブタジエンコポリマーである。
有利には、ゴム組成物C2の官能基化ジエンエラストマーE2は、強化充填剤と相互作用できる少なくとも1種の化学的官能基を含み、化学的官能基は、窒素、硫黄、酸素、リン、スズ及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含む。
有利には、組成物C2の強化充填剤は、主に少なくとも1種の無機強化充填剤、より有利には、少なくとも1種のシリカを主に含む。
好適には、組成物C2の強化充填剤は、主に強化無機充填剤、有利には、シリカを主に含み、エラストマーE2は、強化無機充填剤と相互作用できる少なくとも1種の化学的官能基を含む官能基化ジエンエラストマーであり得、化学的官能基は、窒素、硫黄、酸素及びリンからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含む。好適には、強化充填剤と相互作用できる化学的官能基は、少なくとも1つの酸素原子を含む極性官能基であり得る。
【0008】
好適には、ゴム組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-48℃~-15℃の範囲内、より有利には、-48℃~-15℃の範囲内であり得る。
好適には、ゴム組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-48℃以上、好ましくは-40℃以上であり得る。
好適には、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、ジエンエラストマーであり得る。好ましくは、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、非官能基化ジエンエラストマーである。
【0009】
好適には、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、ジエンエラストマーであり、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択される。有利には、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、ジエンエラストマーであり、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択される。より有利には、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、ジエンエラストマーであり、ポリブタジエン、及びブタジエン/スチレンコポリマーからなる群より選択される。更により有利には、組成物C1のエラストマーE1は、スチレン/ブタジエンコポリマーである。
【0010】
好適には、エラストマーE1のガラス転移温度TgE1は、-50℃~0℃、より有利には、-40℃~0℃、より有利には、-30℃~0℃の範囲内であり得る。
好適には、配合物中のエラストマーE1の含量は、50phr~70phr、好ましくは、55phr~70phr、より有利には、55phr~65phrの範囲内であり得る。
好適には、組成物C1は、強化充填剤を更に含み得る。
好適には、ゴム配合物は、少なくとも1種の可塑剤を含み得る。
【0011】
好適には、上記で定義の配合物及びその好ましい実施形態は、下記のステップを含む製造工程により得ることができる:
・インターナルミキサー中に、ゴム組成物C1のエラストマーE1及び、適切な場合には、可塑剤などの他の成分を導入し、ゴム組成物C1を得るために、200℃の最大温度で熱機械的処理を実施することにより、ゴム組成物C1を調製するステップ、
・インターナルミキサー中に、ゴム組成物C2のエラストマーE2、強化充填剤、適切な場合には、可塑剤又は強化充填剤のためのカップリング剤などの他の成分を導入し、ゴム組成物C2を得るために、200℃の最大温度で熱機械的処理を実施することにより、ゴム組成物C2を調製するステップ、
・インターナルミキサー中に、前述のステップで得られたゴム組成物C1及びC2を導入し、組成物の組み合わせを得るために、180℃の最大温度で熱機械的処理を実施するステップ、
・前述のステップから組成物の組み合わせを回収し、それを110℃以下の温度まで冷却するステップ、及び
・冷却した組成物の組み合わせ中に架橋系を含ませ、全てのものを110℃未満、有利には、80℃未満の最大温度で混練し、ゴム配合物を回収するステップ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の別の主題は、上記で定義の少なくとも1種の配合物を含むトレッドに関する。
本発明の別の主題は、上記で定義の少なくとも1種の配合物を含むタイヤ、又は上記で定義の少なくとも1つのトレッドを含むタイヤに関する。
【0013】
本発明の第1の主題は、Tg1及びTg2と表わされる、少なくとも2つのガラス転移温度Tgを有し、少なくとも2種のゴム組成物C1及びC2をベースにし、ゴム組成物C1は少なくとも1種のエラストマーE1を含み、及びガラス転移温度Tg1を有し、組成物C2は少なくとも1種のエラストマーE2、及び強化充填剤を含み、エラストマーE2は、エラストマーE1とは異なり、ガラス転移温度Tg2を有し、
・組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-50℃以上であり、
・ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧23℃を満たし、
・ゴム配合物は、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、この損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルは、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃以下の半価幅を有するようなものであり、及び
・エラストマーE1は、ゴム配合物中で最も多い
ことを特徴とするゴム配合物に関する。
【0014】
表現「少なくとも~をベースとするゴム配合物」は、少なくとも2種のゴム組成物の組み合わせを意味すると理解されるべきである。従ってゴム配合物は、完全に又は部分的に架橋された状態であるか、又は非架橋状態である。
表現「~をベースとするゴム組成物」は、使用した種々の成分の混合物及び/又はin situ反応の生成物を含む組成物を意味すると理解されるべきであり、これらの成分のいくつかは、組成物の製造の種々の段階の間に、相互に少なくとも部分的に反応できる及び/又は反応させることが意図され、従ってそれは、組成物が完全に又は部分的に架橋された状態であるか、又は非架橋状態であることを可能にする。
本発明においては、表現「100質量部のエラストマー当たりの質量部」(又はphr)は、ゴム配合物中の100質量部のエラストマー当たりの質量部を意味すると理解されるべきである。
本明細書では、明示的に別義が示されない限り、示される全てのパーセンテージ(%)は、質量パーセンテージ(%)である。
更に、表現「aとbとの間」により表わされる値の任意の間隔は、aより多い値から、bより少ない値の範囲を表し(即ち、境界値a及びbを除外する)、一方、表現「aからbまで)」により表わされる値の任意の間隔は、aからbまでの値の範囲を意味する(即ち、厳格な境界値a及びbを含む)。
「最も多い」化合物に言及する場合、本発明においては、化合物がゴム配合物中の同じタイプの化合物中で最も多いこと、即ちそれは、同じタイプの化合物中の最大質量である化合物であることを意味すると理解される。従って、例えば、最も多いエラストマーは、配合物のエラストマーの総質量に対して、最大質量を示すエラストマーである。同様に、「最も多い」充填剤は、配合物の充填剤中で最大質量を示すものである。例えば、唯一のエラストマーを含む系では本発明の意味で後者が最も多く、2種のエラストマーを含む系では、最も多いエラストマーは、全エラストマーの質量の半分を超えるものである。対照的に、「より少ない」化合物は、同じタイプの化合物中で最大の質量割合を示さない化合物である。好ましくは用語「最も多い」は、50%超、好ましくは60%、70%、80%、90%超で存在する、より有利には、「最も多い」化合物は、100%で存在することを意味すると理解される。
【0015】
詳細な説明に記載した、炭素を含む化合物は、化石起源であっても、又はバイオベースであってもよい。後者の場合、それらは、部分的に又は完全にバイオマス由来であっても、又はバイオマスから生じた再生可能出発材料から得てもよい。ポリマー、可塑剤、充填剤などは、特に該当する。
【0016】
本発明の配合物のTg1及びTg2で表わされるガラス転移温度は、ゴム配合物に対する標準NF EN ISO 11357-2:05-2014により測定される。
TgE1及びTgE2で表わされるエラストマーのガラス転移温度は、標準ASTM D3418:2008により測定される。
tanδとも呼ばれる損失係数は、空気入りタイヤの製造業者に周知の物理量である。損失係数は、周期的応力の間に消散したエネルギーの割合である。
損失係数プロファイルは、一定応力が所与の周波数で加えられた場合の、損失係数tanδの、温度の関数としての変化を表す。本発明の文脈では、損失係数プロファイルは、標準ASTM D 5992-96に準拠して、10Hzの周波数と、0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定される。
【0017】
ゴム組成物C1及びC2の成分
本発明によるゴム配合物を形成するゴム組成物C1及びC2はそれぞれ、少なくとも1種のエラストマーとして、それぞれにエラストマーE1及びエラストマーE2を含み、エラストマーE1は、エラストマーE2とは異なる。
「エラストマー」は、柔軟であり、変形可能で、IUPACのエラストマーの定義によるゴム様弾性を示すポリマーを意味する。
有利には、ゴム組成物C1のE1及び/又はゴム組成物C2のエラストマーE2は、ジエンエラストマーである。
「ジエン」エラストマー(又は、区別せずに、ゴム)は、天然又は合成に関係なく、通常、少なくとも部分的に(即ちホモポリマー又はコポリマー)ジエンモノマー単位(2つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合をもつモノマー)から構成されるエラストマーとして、知られているように理解されるべきである。
「エラストマーマトリックス」は、本発明のゴム配合物を形成するエラストマーの全てを意味すると理解される。
ジエンエラストマーは、2つの範疇:「実質的に不飽和」又は「実質的に飽和」に分類される。用語「実質的に不飽和」は通常、15%(モル%)より多いジエン起源(共役ジエン)単位の含有物を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られたジエンエラストマーを意味すると理解され、従ってそれは、ブチルゴム又はジエン及びEPDMタイプのα-オレフィンのコポリマーが前述の定義の範囲に入らないこと、及び特に「実質的に飽和な」ジエンエラストマー(ジエン起源単位の少ない又は極めて少ない含量、常に15モル%未満)として記述できるということである。
本発明によるゴム配合物に使用できるジエンエラストマーは、更に特に下記を意味することを意図する:
・4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー;
・4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンモノマー及び少なくとも1種の他のモノマーの任意のコポリマー。
【0018】
他のモノマーは、オレフィン又は共役又は非共役ジエンであり得る。
好適な共役ジエンとしては、4~12個の炭素原子を含む、特に1,3-ジエン、とりわけ1,3-ブタジエン及びイソプレンを含む共役ジエンが挙げられる。
好適な非共役ジエンとしては、6~12個の炭素原子を含む、特に1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジシクロペンタジエンを含む非共役ジエンが挙げられる。
【0019】
好適なオレフィンとしては、8~20個の炭素原子を含むビニル芳香族化合物及び3~12個の炭素原子を含む脂肪族α-モノオレフィンが挙げられる。
好適なビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、オルト-、メタ-又はパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物又はパラ-(tert-ブチル)スチレンが挙げられる。
【0020】
更に具体的には、ジエンエラストマーは下記である:
・共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、特に4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合により得られる任意のホモポリマー;
・1種又は複数の共役ジエン相互の共重合、又はこれと、8~20個の炭素原子を有する1種又は複数のビニル芳香族化合物との共重合により得られる任意のコポリマー;
・イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)及びまた、このタイプのコポリマーの、ハロゲン化バージョン、特に塩素化又は臭素化バージョン。
【0021】
強化充填剤
ゴム組成物C2は、1種又は複数の強化充填剤を含む。
本発明の一実施形態では、ゴム組成物C1はまた、任意選択で、1種又は複数の強化充填剤を含み得る。
空気入りタイヤの製造で特に使用できるゴム組成物を強化する能力で知られる任意のタイプの「強化」充填剤、例えばカーボンブラックなどの有機充填剤、シリカなどの無機充填剤、あるいは、これらの2種のタイプの充填剤の混合物を使用し得る。
あらゆるカーボンブラック、特に空気入りタイヤ又は非空気入りタイヤ又はそれらのトレッドで従来から使われているカーボンブラックが、カーボンブラックとして好適である。更に具体的には、後者の内で、強化カーボンブラック200シリーズ、例えばN234ブラックなどを挙げることができる。これらのカーボンブラックは、市販されている単独の状態で、又は任意の他の形態で、例えば使用されるいくつかのゴム添加物の担体として、使用できる。カーボンブラックは、例えばジエンエラストマー中に既に含まれている可能性もある(例えば、国際公開WO97/36724-A2及び同WO99/16600-A1を参照)。
【0022】
カーボンブラック以外の有機充填剤として、国際公開WO2006/069792-A1明細書、同WO2006/069793-A1明細書、同WO2008/003434-A1明細書及び同WO2008/003435-A1明細書に記載の官能基化ポリビニル有機充填剤の例を挙げることができる。
用語「強化無機充填剤」は、本明細書では、その色及びその起源(天然又は合成)に関わらず、任意の無機又は鉱物充填剤を意味すると理解されるべきであり、「白色・ホワイト」充填剤、「透明・クリア」充填剤、あるいは「非ブラック・ノンブラック」充填剤とも呼ばれ、空気入り又は空気入り又は非空気入りタイヤの製造を目的とする中間体カップリング剤やゴム組成物以外の手段なしに、それ単独で強化できるカーボンブラックとは対照的である。既知の方法では、一部の強化無機充填剤は、特にそれらの表面にヒドロキシル(-OH)基の存在を特徴とし得る。
ケイ質タイプ、有利には、シリカ(SiO2)、又はミョウバンタイプ、特にアルミナ(Al23)の鉱物充填剤は、特に強化無機充填剤として適している。
【0023】
使われるシリカは、当業者に既知の任意の強化シリカ、特に450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、特に60~300m2/gの範囲内のBET比表面積及びCTAB比表面積の両方を示す任意の沈降シリカ又はヒュームドシリカであり得る。任意のタイプの沈降シリカ、特に高分散沈降シリカ(「高分散」又は「高分散シリカ」の意味で「HDS」と呼ばれる)を使用できる。これらの沈降シリカは、高分散であっても、そうでなくてもよく、当業者に周知である。例えば、国際公開WO03/016215-A1及び同WO03/016387-A1に記載のシリカを挙げることができる。市販のHDSシリカの中で、EvonikのUltrasil(登録商標)5000GR及びUltrasil(登録商標)7000GRシリカ、又はSolvayのZeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)Premium 200MP及びZeosil(登録商標)HRS 1200 MPシリカを特に使用できる。非HDSシリカとして、次の市販シリカ:EvonikのUltrasil(登録商標)VN2GR及びUltrasil(登録商標)VN3GRシリカ、SolvayのZeosil(登録商標)175GRシリカ又はPPGのHi-Sil EZ120G(-D)、Hi-Sil EZ160G(-D)、Hi-Sil EZ200G(-D)、Hi-Sil 243LD、Hi-Sil 210及びHi-Sil HDP 320Gシリカを使用できる。
【0024】
強化無機充填剤が提供される物理的状態は、それが、粉末、ミクロパール、顆粒であるか、あるいは、ビーズ又は任意の他の適切な緻密化形態であるかに関係なく、重要ではない。無論、強化無機充填剤はまた、異なる強化無機充填剤、特に上述のシリカの混合物を意味するとも理解される。
当業者は、上記無機充填剤の代わりに、別の天然の強化充填剤を使用し得るが、但し、この別の天然の強化充填剤がシリカなどの無機層で覆われている、あるいは、この強化充填剤とエラストマーマトリックスとの間の結合を形成するために、カップリング剤の使用を必要とするその表面に機能部位、特にヒドロキシル部位を含むことが前提であることを理解するであろう。
当業者は、本発明の配合物の当該用途に応じて、特に当該空気入りタイヤのタイプ、例えば乗用車あるいは、バン又は大型車などの多用途車のためのタイヤに応じて、強化充填剤の総含量を調節する方法がわかるであろう。
【0025】
本明細書では、BET比表面積は、「The Journal of the American Chemical Society(vol.60,page 309,February 1938)」に記載のBrunauer-Emmett-Teller法を用いて、及び更に具体的には、2010年6月の標準NF ISO 5794-1、補足資料E[マルチポイント(5点)容積法-ガス:窒素-真空下で脱気:160℃で1時間-相対圧力p/po範囲:0.05~0.17]由来の方法に従って、ガス吸着により測定される。例えば、シリカなどの無機充填剤の場合、CTAB比表面積値は、2010年6月の標準NF ISO 5794-1、補足資料Gに従って測定した。この方法は、強化充填剤の「外部」表面上のCTAB(N-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミド)の吸着に基づいている。カーボンブラックの場合、STSA比表面積が標準ASTM D6556-2016に従って決定される。
【0026】
強化充填剤のためのカップリング剤:
周知のように、強化充填剤を結合させるために、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間で、化学的及び/又は物理的性質の満足できる連結をもたらすことを目的とする、少なくとも二官能性のカップリング剤(又は結合剤)が使用され得る。特に、少なくとも二官能性であるオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンが使用される。用語「二官能性」は、無機充填剤と相互作用できる第1の官能基と、エラストマー、好ましくはジエンエラストマーと相互作用できる第2の官能基を有する化合物を意味すると理解される。例えば、このような二官能性化合物は、ケイ素原子を含む第1の官能基を含むことができ、前記第1の官能基は、無機強化充填剤のヒドロキシル基と相互作用でき、第2の官能基は硫黄原子を含み、前記第2の官能基は、エラストマー、好ましくはジエンエラストマーと相互作用できる。
有利には、オルガノシランは、EvonikによりSi69の名称で販売されているTESPTの略称のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、又はEvonikによりSi75の名称で販売されているTESPDの略称のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、NXT Silaneの名称でMomentiveより販売されているS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエートなどのポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、保護化メルカプトシランなどの(対称又は非対称)オルガノシラン多硫化物からなる群より選択される。より有利には、オルガノシランは、オルガノシラン多硫化物である。
無論、上記カップリング剤の混合物も使用し得る。
【0027】
被覆剤
本発明の配合物を形成するゴム組成物はまた、強化無機充填剤が本発明の組成物中で使用される場合、未硬化状態で、それらの処理性を改善することを可能にする、無機充填剤を被覆するための薬剤も含み得る。これらの被覆剤は良く知られており(例えば、国際公開WO 2006/125533-A1明細書、同WO 2007/017060-A1明細書及び同WO 2007/003408-A1明細書参照)、例えばヒドロキシシラン(例えば、国際公開WO 2009/062733-A2明細書)、アルキルアルコキシシラン、ポリオール(例えば、ジオール又はトリオール)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、一級、二級、又は三級アミン、ヒドロキシル化又は加水分解性ポリオルガノシロキサン(例えば、α,ω-ジヒドロキシポリオルガノシラン(例えば、特許文献EP 0784072-A1明細書参照))などの加水分解性シランを挙げることができる。
【0028】
可塑剤
本発明の配合物を形成するゴム組成物は、少なくとも1種の可塑剤を含み得る。
空気入り又は非空気入りタイヤ用ゴム組成物の当業者に既知のように、この可塑剤は、好ましくは、高いガラス転移温度(Tg)を有する炭化水素樹脂、低Tg炭化水素樹脂、可塑化油及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、可塑剤は高Tg炭化水素樹脂、可塑化油及びこれらの混合物から選択される。
知られているように、ゴム組成物中の可塑剤は、ゴム組成物の粘度を調節すること、その最適使用に関してゴム組成物のガラス転移温度を調節することを可能にする。
高Tg炭化水素樹脂は、定義上常温及び常圧(20℃、1気圧)で固体であり、一方可塑化油は、常温及び常圧で液体であり、及び低Tg炭化水素樹脂は、常温及び常圧で粘性がある。
【0029】
炭化水素樹脂はまた、炭化水素可塑化樹脂としても知られ、実質的に炭素及び水素ベースであるが、他のタイプの原子、例えば酸素を含むことができる、当業者によく知られたポリマーであり、特に可塑剤として使用できる。それらは、真の希釈剤として機能するように意図されているゴム組成物と共に使用される含量で、元々少なくとも部分的に混和性である(即ち相溶性がある)。それらは例えば、「炭化水素樹脂」(R.Mildenberg,M.Zander and G.Collin(New York,VCH,1997,ISBN 3-527-28617-9))という名称の書籍に記載されている。この書籍の5章は、それらの適用、特に空気入りタイヤゴムの分野に充てられている(5.5「Rubber Tires and Mechanical Goods」)。知られているように、これらの炭化水素樹脂はまた、それらは加熱時に軟化し、従って型成形できるという意味で熱可塑性樹脂と呼ぶことができる。炭化水素樹脂の軟化点は、ISO 4625(「環球」法)に従って測定される。Tgは、標準ASTM D3418(2008)に従って測定される。炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、Mn及びPI)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC);溶媒テトラヒドロフラン;温度35℃;濃度1g/l;流速1ml/分;注入の前に0.45μmの気孔率のフィルター通して溶液を濾過;ポリスチレン標準物質を用いてムーア較正;直列に配置された一連の3つのWatersカラム(Styragel HR4E、HR1及びHR0.5);示差屈折計による検出(Waters 2410)及びその関連操作ソフトウェア(Waters Empower)により測定される。炭化水素樹脂は、脂肪族タイプ又は芳香族タイプ又は脂肪族/芳香族タイプ、即ち脂肪族及び/又は芳香族モノマーをベースにしてもよい。それらは、天然又は合成であり、石油系であっても又はそうでなくてもよい(石油系の場合には、それらは、石油樹脂の名称でも知られる)。知られているように、高Tg炭化水素樹脂は、熱可塑性炭化水素樹脂であり、それらのTgは、20℃超である。
【0030】
好ましくは、可塑剤は任意選択で炭化水素樹脂を含むことができ、この樹脂は、常温及び常圧で固体であり、高Tg樹脂と呼ばれる。好ましくは、高Tg炭化水素可塑化樹脂は、次の少なくともいずれか1つの特性を示す:
・30℃超のTg;
・300~2000g/モル、より有利には、400~1500g/モルの数平均分子量(Mn);
・3未満、より有利には、2未満の多分散指数(PI)(注:PI=Mw/Mn、Mwは質量平均分子量)。
より有利には、この高Tg炭化水素可塑化樹脂は、上記有利な特性の全てを示す。
【0031】
可塑剤は、任意選択で、20℃で粘性を示す「低Tg」樹脂と呼ばれる、即ち、定義上-40℃~20℃の範囲内のTgを有する、炭化水素樹脂を含み得る。
好ましくは、低Tg炭化水素可塑化樹脂は、次の少なくともいずれか1つの特性を示す:
・-40℃~0℃、より有利には、-30℃~0℃、更により有利には、-20℃~0℃のTg;
・800g/モル未満、好ましくは600g/モル未満、及びより有利には、400g/モル未満の数平均分子量(Mn);
・0℃~50℃、有利には、0℃~40℃、より有利には、10℃~40℃、好ましくは、10℃~30℃の範囲内の軟化点;
・3未満、より有利には、2未満の多分散指数(PI)(注:PI=Mw/Mn、Mwは質量平均分子量)。
より有利には、この低Tg炭化水素樹脂は、上記有利な特性の全てを示す。
【0032】
可塑剤はまた、エキステンダー油(又は可塑化油)を含むことができ、これは20℃で液体であり、「低Tg」可塑剤と呼ばれ、即ちこれは、定義上-20℃未満、好ましくは-40℃未満のTgを有する。任意のエキステンダー油は、それが芳香族又は非芳香族の性質に関係なく、エラストマーに関するその可塑化特性で知られ、使用可能である。常温(20℃)で、これらの油は、特に常温で元々固体である高Tg炭化水素樹脂と異なり、多少粘性があり、液体である(注:即ち、最終的にそれらの容器形状をとる能力を有する物質である)。ナフテン油(低又は高粘度、特に水素添加又は非水素添加)、パラフィン油、MES(軽度抽出溶媒和物)油、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)油、RAE(残留芳香族抽出物)油、TRAE(処理残留芳香族抽出物)油及びSRAE(安全性残留芳香族抽出物)油、鉱物油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤及びこれら化合物の混合物からなる群より選択される可塑化油が特に適している。
高Tg炭化水素樹脂、低Tg炭化水素樹脂、及び上記の有利な可塑化油は、当業者に周知であり、商業的に入手できる。
【0033】
他の添加剤
本発明によるゴム配合物を形成するゴム組成物はまた、当業者に既知で、空気入り又は非空気入りタイヤ、特にトレッドのゴム組成物に一般的に使われている有用な添加物及び処理助剤の全て又は一部、例えば充填剤(強化又は非強化/前述のもの以外)、色素、耐オゾンワックスなどの保護剤、化学的オゾン劣化防止剤又は抗酸化剤、抗疲労剤又は強化樹脂(例えば、国際公開WO 02/10269に記載のものなど)も含めることができる。
【0034】
架橋系
本発明による配合物を形成するゴム組成物は、少なくとも1種の架橋系を含み得る。架橋系は、空気入り又は非空気入りタイヤのためのゴム組成物の分野の当業者に既知の任意のタイプの系であり得る。それは、特に硫黄、及び/又は過酸化物及び/又はビスマレイミドベースであり得る。
有利には、架橋系は硫黄ベースであり、従ってそれは、加硫系と呼ばれる。硫黄は、任意の形態、特に分子硫黄の形態、又は硫黄供与剤の形態で供給され得る。また有利には、少なくとも1種の加硫促進剤が存在し、任意選択で、同様に有利には、酸化亜鉛、ステアリン酸又はステアリン酸塩などの同等の化合物、及び遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)などの既知の加硫活性剤、あるいは、既知の加硫遅延剤を使用できる。
硫黄は、0.5phr~12phrの範囲、より有利には、0.7phr~10phrの範囲の有利な含量で使用される。加硫促進剤は、0.5phr~10phrの範囲、より有利には、0.5phr~5.0phrの範囲の有利な含量で使用される。
促進剤として、硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用できる任意の化合物、特にチアゾールタイプの促進剤及びまたそれらの誘導体、又はスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオウレア及びザンテートタイプの促進剤を使用できる。
【0035】
ゴム組成物C1
本発明によるゴム配合物は、C1と表わされる少なくとも1種のゴム組成物を含み、これは、Tg1と表わされる所定のガラス転移温度を有する。
このゴム組成物C1は、上記で定義の少なくとも1種のエラストマーE1を含む。好ましくは、エラストマーE1はジエンエラストマーであり、更により有利には、非官能基化ジエンエラストマーである。
更により好ましくは、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択される。有利には、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択される。より有利には、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、ポリブタジエン、及びブタジエン/スチレンコポリマーからなる群より選択される。より有利には、ゴム組成物C1のエラストマーE1は、スチレン/ブタジエンコポリマーである。
有利には、このエラストマーE1は、非官能基化ジエンエラストマーである。本発明の目的においては、「非官能基化ジエンエラストマー」は、天然又は合成に関係なく、強化充填剤と相互作用できる化学的官能基を有さないジエンエラストマーを意味すると理解される。有利には、非官能基化ジエンエラストマーは、炭素及び水素原子から実質的に構成されていてよい。それはヘテロ原子を含まない、あるいは、不純物量の合成方法に起因するヘテロ原子を含み得る。
有利には、ジエンエラストマーE1、好ましくはスチレン/ブタジエンコポリマーは、非官能基化され、-50℃以上のガラス転移温度TgE1を有する。より有利には、ガラス転移温度TgE1は、-50℃~0℃、より有利には、-40℃~0℃、より有利には、-30℃~0℃の範囲内である。
有利には、ゴム組成物C1は、少なくとも1種の強化充填剤を更に含み得る。強化充填剤は、上述のいずれのタイプの強化充填剤であってもよい。有利には、強化充填剤は、カーボンブラック、無機強化充填剤及びこれらの混合物からなる群より選択される。有利には、強化充填剤は、カーボンブラック、シリカ及びこれらの混合物からなる群より選択される。
ゴム組成物C1はまた、上述の少なくとも1種の可塑剤又は上記の任意のその他の添加剤も含み得る。
【0036】
ゴム組成物C2
本発明によるゴム配合物は、C2と表わされる少なくとも1種のゴム組成物を含み、これは、Tg2と表わされる所定のガラス転移温度を有する。
このゴム組成物C2は、上記で定義の少なくとも1種のエラストマーE2を含む。好ましくは、エラストマーE2はジエンエラストマーであり、更により有利には、官能基化ジエンエラストマーである。
【0037】
本発明の目的においては、「官能基化ジエンエラストマー」は、天然又は合成に関係なく、強化充填剤と相互作用できる化学的官能基を有するジエンエラストマーを意味すると理解される。強化充填剤と相互作用できる化学官能基はヘテロ原子、又は窒素、硫黄、酸素、リン、スズ及びケイ素から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含む原子群であり得る。
【0038】
有利には、エラストマーE2は、ジエンエラストマーであり、好ましくは、これは、官能基化され、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選択される。有利には、エラストマーE2は、ジエンエラストマーであり、好ましくは、これは、官能基化され、ポリブタジエン及びスチレン/ブタジエンコポリマーからなる群より選択される。更により有利には、エラストマーE2は、スチレン/ブタジエンコポリマーであり、これは、好ましくは官能基化されている。
【0039】
好適には、エラストマーE2、好ましくは特に官能基化されているジエンエラストマーのガラス転移温度TgE2は、-110℃~-23℃の範囲内、好ましくは、-100℃~-28℃、より有利には、-95℃~-30℃の範囲内である。
【0040】
ジエンエラストマーE2の官能基化は既知である。それは、ジエンエラストマーの合成中に、あるいは、その合成後に、ジエンエラストマーのモノマーへの化学的官能基のグラフト化により実施できる。
官能基化ジエンエラストマーE2は、強化充填剤と相互作用できる少なくとも1種の化学的官能基を含み、化学的官能基は、窒素、硫黄、酸素、リン、スズ及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含む。例として、これらの官能基の内で、環状又は非環状の一級、二級、又は三級アミン、イソシアネート、イミン、シアノ、チオール、カルボキシレート、エポキシド又は一級、二級、又は三級ホスフィンを挙げることができる。強化充填剤と官能基化ジエンエラストマーE2のこの相互作用は、例えばジエンエラストマーの官能基(複数可)と強化充填剤の表面上に存在する化学的官能基との間の共有結合、水素結合、イオン性及び/又は静電気的結合により実現できる。
有利には、ジエンエラストマーE2の強化充填剤と相互作用できる化学的官能基は、少なくとも1つの酸素原子を含む極性官能基である。
有利には、極性官能基は、シラノール、アルコキシシラン、アミン基含有アルコキシシラン、エポキシド、エーテル、エステル、カルボン酸及びヒドロキシルからなる群から選択され得る。このような官能基化エラストマーは、それ自体既知であり、特に次の特許文献に記載されている:FR2740778明細書、米国特許第6013718号明細書、国際公開WO2008/141702明細書、FR2765882明細書、国際公開WO01/92402明細書、同WO2004/09686明細書、特許文献EP1127909明細書、米国特許第6503973号明細書、国際公開WO2009/000750明細書及び同WO2009/000752明細書。
官能基化ジエンエラストマーは、好ましくは、シラノールである極性官能基を含むジエンエラストマーである。
有利には、シラノールは、官能基化ジエンエラストマーの主鎖の鎖末端又は鎖中央に位置している。
有利には、官能基化ジエンエラストマーは、シラノール官能基が鎖末端に位置しているジエンエラストマー(特にSBR)であり得る。この官能基化ジエンエラストマーは、その主鎖の1つの末端にシラノール官能基又は式-(SiR12-O-)mHのシラノール末端を有するポリシロキサン基を含む(mは3~8の範囲の整数、好ましくは3であり、同じ又は異なってよいR1及びR2は炭素数1~10のアルキルラジカル、好ましくは炭素数1~4のアルキルラジカル)。
【0041】
このタイプのエラストマーは、特許文献EP0778311明細書に記載の方法に従って、更に詳細には、アニオン重合のステップ後に、リビングエラストマーを環状ポリシロキサンタイプの官能基化剤により官能基化することに本質が存在する方法に従って得られる。環状ポリシロキサンとして、式(V)に対応するものを挙げることができる:
【化1】
式中、mは3~8の範囲の整数、好ましくは3であり、同じ又は異なってよいR1及びR2は炭素数1~10のアルキルラジカル、好ましくは炭素数1~4のアルキルラジカルである。これらの化合物の中では、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを挙げることができる。
【0042】
官能基化ジエンエラストマーE2は別の官能基、特にアミン官能基を任意に含有するアルコキシシランである極性官能基を含むジエンエラストマー(特にSBR)であり得る。有利には、別の官能基を任意に含有する(好ましくはアミン基を含有)アルコキシシランは、官能基化ジエンエラストマーの主鎖の鎖末端又は鎖中央に位置し、より有利には、アミン基を任意に含有するアルコキシシラン基は、官能基化ジエンエラストマーの主鎖の鎖中央に位置する。
従って官能基化ジエンエラストマーE2は、その構造中に少なくとも1つのアルコキシシラン基及び少なくとも1つの他の官能基を含み、アルコキシシラン基のケイ素原子が、エラストマー鎖(複数可)に結合され、アルコキシシラン基は、任意選択で、部分的に又は完全にシラノールに加水分解されている。
【0043】
特定の変種では、アルコキシシラン基は、主にエラストマーの主鎖の1つの末端に位置する。
他の変種では、アルコキシシラン基は、主に主エラストマー鎖中に位置し、そのために、ジエンエラストマーは、「鎖末端」位置とは対照的に、その基は正確にエラストマー鎖の中央に位置していないが、鎖の中央で結合されているあるいは、官能基化されていると言われる。この官能基のケイ素原子は、ジエンエラストマーの主鎖の2つの分岐部に結合する。
【0044】
アルコキシシラン基は、C1-C10アルコキシラジカルを含み、任意選択で、部分的に又は完全にヒドロキシルに加水分解され、あるいはC1-C8、好ましくはC1-C4アルコキシラジカルを含み、より有利には、メトキシ及びエトキシである。
【0045】
他の官能基は好ましくは、直接に、又は原子又は原子の一群として定義されるスペーサー基を介して、アルコキシシラン基のケイ素によりもたらされる。有利には、スペーサー基は、飽和又は不飽和の、環状又は非環状の、直鎖又は分岐鎖の、二価のC1-C18脂肪族炭化水素系ラジカル又は二価のC6-C18芳香族炭化水素系ラジカルである。
【0046】
他の官能基は、好ましくは、N、S、O又はPから選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含む官能基である。例として、これらの官能基の内で、環状又は非環状の一級、二級、又は三級アミン、イソシアネート、イミン、シアノ、チオール、カルボキシレート、エポキシド又は一級、二級、又は三級ホスフィンを挙げることができる。
【0047】
従って二級又は三級アミン官能基として、C1-C10アルキル、好ましくはC1-C4アルキル、ラジカル、より有利には、メチル又はエチルラジカルにより置換されたアミン、あるいは、窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を含むヘテロ環を形成する環状アミンを挙げることができる。例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、ジプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジブチルアミノ、ペンチルアミノ、ジペンチルアモノ、ヘキシルアミノ、ジヘキシルアミノ、又はヘキサメチレンアミノ基、好ましくはジエチルアミノ及びジメチルアミノ基が適している。イミン官能基として、ケチミンを挙げることができる。例えば(1,3-ジメチルブチリデン)アミノ、(エチリデン)アミノ、(1-メチルプロピリデン)アミノ、(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)アミノ、(シクロヘキシリデン)アミノ、ジヒドロイミダゾール及びイミダゾール基が適している。従って、アクリレート又はメタクリレートのカルボキシレート官能基を挙げることができる。このような官能基は、好ましくは、メタクリレートである。エポキシド官能基として、エポキシ又はグリシジルオキシ基を挙げることができる。二級又は三級ホスフィン官能基として、C1-C10アルキル、好ましくはC1-C4アルキル、ラジカル、より有利には、メチル又はエチルラジカルにより置換されたホスフィン、あるいは、ジフェニルホスフィンを挙げることができる。例えばメチルホスフィノ、ジメチルホスフィノ、エチルホスフィノ、ジエチルホスフィノ、エチルメチルホスフィノ及びジフェニルホスフィノ基が適している。
【0048】
他の官能基は、好ましくは三級アミン、より有利には、ジエチルアミノ又はジメチルアミノ基である。
アルコキシシラン基は、次式で表すことができ:
*-)aSi(OR’)bc
式中、
*-は、エラストマー鎖への結合であり;
・ラジカルRは、置換もしくは非置換C1-C10、あるいはC1-C8、アルキルラジカル、好ましくはC1-C4アルキルラジカル、より有利には、メチル及びエチルであり;
・式-OR’のアルコキシルラジカル(複数可)では、任意選択で、これは部分的に又は完全にヒドロキシルに任意に加水分解されてもよく、R’は、置換もしくは非置換C1-C10、あるいはC1-C8、アルキルラジカル、好ましくはC1-C4アルキルラジカル、より有利には、メチル及びエチルであり;
・Xは、他の官能基を含む基であり;
・aは1又は2であり、bは1又は2であり、cは0又は1であるが、但し、a+b+c=3である。
【0049】
このタイプのエラストマーは、特にケイ素原子に直接又はスペーサー基を介して結合された別の官能基を含む基(官能基及びスペーサー基は上記で定義されている)により置換されたトリアルコキシシラン及びジアルコキシアルキルシラン化合物から選択されるアルコキシシラン基を含む化合物とのアニオン重合から生じたリビングエラストマーを官能基化することにより主に得られる。エラストマーが官能基化剤と、アニオン重合のステップから生じたリビングエラストマーとの反応により修飾される場合、このエラストマーの修飾された物質の混合物が得られ、その組成は、修飾反応条件及び特に官能基化剤の反応部位のリビングエラストマー鎖の数に対する比率に依存することは当業者に既知であることは明記されるべきである。この混合物は、鎖末端で官能基化された物質、結合された物質、星形分岐された物質及び/又は非官能基化物質を含む。
これらの非機能性のジエンエラストマーは、Nippon Zeon、JSR、Bayerなどの供給業者から市販品として入手できるか、又は既知の方法により合成できる。
【0050】
ゴム組成物C2は、少なくとも1種の強化充填剤を更に含む。強化充填剤は、上述のいずれのタイプの強化充填剤であってもよい。有利には、組成物C2の強化充填剤は、主に少なくとも1種の無機強化充填剤、より有利には、少なくとも1種のシリカを主に含む。
有利には、強化充填剤が主に強化無機充填剤、有利には、シリカを含む場合、官能基化ジエンエラストマーE2は、強化充填剤と相互作用できる少なくとも1種の化学的官能基を含み得、化学的官能基は、窒素、硫黄、酸素、及びリンからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含む。
【0051】
ゴム組成物C2はまた、上記の少なくとも1種の可塑剤又は上記の任意のその他の添加剤も含み得る。
【0052】
本発明によるゴム配合物及びその製造工程
前出のように、本発明によるゴム配合物は、少なくとも2つのガラス転移温度Tg1及びTg2を有し、これは、下記の状態になるように選択された、少なくとも2種のゴム組成物C1及びC2の特定の組み合わせから得られる:
・組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-50℃以上であり、
・ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧23℃を満たし、
・ゴム配合物は、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、この損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルは、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃以下の半価幅を有するようなものであり、及び
・エラストマーE1は、ゴム配合物中で最も多い。
【0053】
驚くべきことに、この特定のゴム組成物の組み合わせは、良好なヒステリシス特性と濡れた地面に対する良好なグリップを同時に示すゴム配合物が得られることを可能にする。理論に束縛されるものではないが、ゴム配合物が23℃未満のガラス転移温度差異を示す場合、ヒステリシス特性が低下し、ゴム配合物は良好な転がり抵抗を示さない。ゴム配合物が、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、この損失係数プロファイルが、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルが、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃より大きい半価幅を有するようなものである場合、ゴム配合物は不十分な動摩擦係数を有し、そのために、ウエットグリップ特性を低下させる。
有利には、ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧25℃を満たし、好ましくはTg1-Tg2≧28℃、より有利には、更にTg1-Tg2≧30℃を満たす。
好適には、ゴム配合物は、数学的関係25℃≦Tg1-Tg2≦40℃、好ましくは、28℃≦Tg1-Tg2≦35℃、より有利には、28℃≦Tg1-Tg2≦34℃を満たす。
有利には、ゴム組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-48℃以上、好ましくは-40℃以上である。
有利には、ゴム組成物C1のガラス転移温度Tg1は、-48℃~-15℃の範囲内、好ましくは、-40℃~-15℃の範囲内である。
有利には、組成物C2のガラス転移温度Tg2は、-43℃以下、好ましくは-50℃以下、より有利には、-57℃以下である。
有利には、組成物C2のガラス転移温度Tg2は、-90℃~-43℃の範囲内であり、好ましくは、-85℃~-50℃の範囲内である。
【0054】
有利には、本発明によるゴム配合物は、ガラス転移温度Tg1を有し、非官能基化ジエンエラストマーE1を含み、ガラス転移温度Tg1は-48℃~-15℃の範囲内である、少なくとも1種のゴム組成物C1、ならびに、ガラス転移温度Tg2を有し、官能基化ジエンエラストマーE2を含み、ガラス転移温度Tg2は-85℃~-50℃の範囲内であるゴム組成物C2をベースにする。ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧28℃、好ましくはTg1-Tg2≧30℃を満たし、ゴム配合物は、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、この損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルは、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃以下の半価幅を有するようなものであり、及びエラストマーE1はゴム配合物中で最も多い。
【0055】
有利には、本発明によるゴム配合物は、ガラス転移温度Tg1ガラス転移温度Tg1を有し、非官能基化ジエンエラストマーE1を含み、ガラス転移温度Tg1は-40℃~-15℃の範囲内である、少なくとも1種のゴム組成物C1、ならびに、ガラス転移温度Tg2を有し、官能基化ジエンエラストマーE2を含み、ガラス転移温度Tg2は-90℃~-43℃の範囲内であるゴム組成物C2をベースにする。ゴム配合物は、数学的関係Tg1-Tg2≧28℃、好ましくはTg1-Tg2≧30℃を満たし、ゴム配合物は、温度℃の関数としてtanδの変化を示す損失係数プロファイルを有し、この損失係数プロファイルは、10Hzの周波数及び0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定され、1つ又は複数のピークを示し、このプロファイルは、ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在する全てのtanδピークが、23℃以下の半価幅を有するようなものであり、及びエラストマーE1はゴム配合物中で最も多い。
【0056】
有利には、本発明のゴム配合物中のエラストマーE1、好ましくは、特に官能基化されていないジエンエラストマーの含量は、50phr~70phr、好ましくは、55phr~70phr、より有利には、55phr~65phrの範囲内である。
有利には、本発明のゴム配合物中のエラストマーE2、好ましくは、特に官能基化されているジエンエラストマーの含量は、40phr以下、より好ましくは、30phr~50phr、好ましくは、30phr~45phr、より有利には、35phr~45phrの範囲内である。
好適には、本発明のゴム配合物中のエラストマーE1、好ましくは、特に官能基化されていないジエンエラストマーの含量は、50phr~70phrの範囲内であり、本発明のゴム配合物中のエラストマーE2、好ましくは、特に官能基化されているジエンエラストマーの含量は、30phr~50phrの範囲内である。好適には、本発明のゴム配合物中のエラストマーE1、好ましくは、特に官能基化されていないジエンエラストマーの含量は、55phr~70phrの範囲内であり、ゴム配合物中のエラストマーE2、好ましくは、特に官能基化されているジエンエラストマーの含量は、30phr~45phrの範囲内である。
【0057】
好ましくは、本発明のゴム配合物中の強化充填剤の含量は、20phr~100phr、より有利には、30phr~90phr、更により有利には、40phr~90phrの範囲内であり、最適値は、知られているように、特定の標的とする用途に応じて異なる。
強化充填剤が、例えばシリカなどの強化無機充填剤の場合、カップリング剤の使用は有利であり得る。有利には、本発明のゴム配合物中のカップリング剤の含量は、好適には、20phr以下であり、カップリング剤は可能な限り少なく使用するのが一般的に望ましいことは理解されよう。典型的には、カップリング剤の含量は、強化無機充填剤の量を基準にして、0.5質量%~15質量%である。その含量は、有利には、0.5phr~20phrの範囲内である。この含量は、本発明の組成物で使われる強化無機充填剤の含量に従って、当業者により容易に調節される。
好ましい実施形態では、強化充填剤は、主に本発明によるゴム配合物中の無機強化充填剤(好ましくはシリカ)であり、即ち強化充填剤は、ゴム配合物中の強化充填剤の総質量に対し、シリカなどの無機強化充填剤の50質量%超(>50質量%)を含む。任意選択で、この実施形態では、強化充填剤はまた、カーボンブラックも含むことができる。この任意選択では、カーボンブラックは、ゴム配合物中の20phr以下、より有利には、10phr以下の含量で使用される(例えばカーボンブラック含量は、ゴム配合物中の、0.5phr~20phr、特に1phr~10phrの範囲内であり得る)。示した範囲内で、着色特性(黒色色素沈着剤)及びカーボンブラックのUV安定化特性は有益であり、更に、強化無機充填剤によりもたらされる典型的な性能特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0058】
ゴム配合物の製造方法
本発明のゴム配合物は、種々の成分の空練りなどのゴム配合物の製造のための従来通りの方法により得ることができる。
【0059】
一実施形態では、本発明によるゴム配合物は、当業者に周知の次の2つの逐次調製段階を用いて適切な混合機中で製造される:
・熱機械的加工又は混練の第1段階(「非生産的」段階)、これは、単一の熱機械的ステップで実施でき、このステップの間に、ガラス転移温度Tg2を有するゴム組成物のエラストマーE2、強化充填剤、及び任意選択の強化充填剤用のカップリング剤が、この順番で、標準インターナルミキサー(例えば、「バンバリー」タイプ)などの適切な混合機中に導入される。熱機械的混練中で、これらの成分が140℃~200℃の範囲内の温度で1~2分間維持され、その後、ガラス転移温度Tg1を有するゴム組成物のエラストマーE1、及び架橋系を除く全ての必要な成分も、インターナルミキサー中に導入される。これらの成分は、2~10分間、110℃~200℃、好ましくは130℃~185℃の範囲内の最大温度(「落下温度」)」と呼ばれる)まで熱機械的混練を受ける。
・機械的加工の第二段階(「生産的」段階)は、非生産的第1段階中に得られた混合物をより低い温度、通常120℃未満、例えば40℃~100℃の範囲内に冷却後、開放型ロール機などの外部混合器中で実施される。その後、本発明のゴム配合物を得るために、5~15分間の混合により、架橋系が取り込まれる。
【0060】
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明のゴム配合物は、2種のゴム組成物の形態で調製され、その後、ゴム組成物は、本発明によるゴム配合物を得るために一緒にされる。
より具体的には、この実施形態では、上記で定義の配合物及びその好ましい実施形態は、下記のステップを含む製造工程により得ることができる:
・インターナルミキサー中に、ゴム組成物C1のエラストマーE1及び、適切な場合には、可塑剤などの他の成分を導入し、ゴム組成物C1を得るために、200℃の最大温度で熱機械的処理を実施することにより、ゴム組成物C1を調製するステップ、
・インターナルミキサー中に、ゴム組成物C2のエラストマーE2、強化充填剤、適切な場合には、可塑剤又は強化充填剤のためのカップリング剤などの他の成分を導入し、ゴム組成物C2を得るために、200℃の最大温度で熱機械的処理を実施することにより、ゴム組成物C2を調製するステップ、
・インターナルミキサー中に、前述のステップで得られたゴム組成物C1及びC2を導入し、組成物の組み合わせを得るために、180℃の最大温度で熱機械的処理を実施するステップ、
・前述のステップから組成物の組み合わせを回収し、それを110℃以下の温度まで冷却するステップ、又は
・冷却した組成物の組み合わせ中に架橋系を取り込み、全てのものを110℃未満、有利には、80℃未満の最大温度で混練し、ゴム配合物を回収するステップ。
【0061】
より具体的には、組成物C1と呼ばれる第1のゴム組成物は、標準インターナルミキサー(例えば、「バンバリー」タイプ)などの好適な混合機中で、エラストマーE1及び加硫系を除く組成物C1の他の任意選択の成分、例えば可塑剤、オゾン劣化防止剤などを混合することにより調製される。熱機械的加工は、110℃~200℃、好ましくは130℃~185℃の範囲内の最大温度(「落下温度」と呼ばれる)まで2~10分間実施される。このようにして、ゴム組成物C1は回収される。
次に、組成物C2と呼ばれる第2のゴム組成物は、標準インターナルミキサー(例えば、「バンバリー」タイプ)などの好適な混合機中で、エラストマーE2、強化充填剤及び加硫系を除く他の任意選択の成分、例えば可塑剤、強化充填剤のためのカップリング剤、オゾン劣化防止剤などを混合することにより調製される。熱機械的加工は、140℃~200℃、好ましくは140℃~185℃の範囲内の最大温度(「落下温度」と呼ばれる)まで2~10分間実施される。このようにして、ゴム組成物C2は回収される。
前述のステップからの2種のゴム組成物C1及びC2は、標準インターナルミキサー(例えば、「バンバリー」タイプ)中に導入され、熱機械的加工は、110℃~180℃、好ましくは130℃~180℃の範囲内の最大温度(「落下温度」と呼ばれる)まで2~10分間実施される。
次に、前述のステップからの混合物は、開放型ロール機などの外部混合器で110℃以下の温度まで冷却される。その後、5~15分間の混合により架橋系が組み込まれ、本発明によるゴム配合物が回収される。
【0062】
ゴム配合物の調製方法に関係なく、このようにして得られた最終ゴム配合物は、引き続いて、特に実験室キャラクタリゼーションのために、例えばシート又は厚板の形態にカレンダー加工される、あるいは、ゴム半製品(又は異形部材)の形態に押出加工され、これは例えば、特に乗用車用の空気入り又は非空気入りタイヤのトレッドとして使用できる。
【0063】
ゴム配合物は、未硬化状態(架橋又は加硫前)又は硬化状態(架橋又は加硫後)であってよく、空気入り又は非空気入りタイヤで使用できる半製品であってもよい。
ゴム配合物の架橋は、当業者に既知の方式で、例えば加圧下、130℃~200℃の範囲内の温度で実施できる。
【0064】
本発明の他の主題
本発明の別の主題は、少なくとも1種の上記で定義のゴム配合物を含むトレッドである。本発明によるゴム配合物は、トレッドの全てあるいはトレッドの一部を構成できる。
【0065】
本発明の別の主題は、上記で定義の少なくとも1種のゴム配合物を含む、又は上記で定義の少なくとも1つのトレッドを含む空気入り又は非空気入りタイヤに関する。
「空気入りタイヤ」は、支持部材、例えばリムと協働することにより、空洞を形成し、この空洞が大気圧より高い圧力まで加圧できることを目的とするタイヤを意味すると理解される。対照的に、「非空気入りタイヤ」は加圧できない。従って非空気入りタイヤは、少なくとも1種のポリマー材料から構成され、タイヤの機能を果たすことを目的とするが、タイヤ空気圧に晒されない円環体である。非空気入りタイヤは、中実又は中空体であり得る。中空非空気入りタイヤは、空気を含有してよいが、大気圧であり、これは即ち、大気圧より高い圧力の膨張ガスにより与えられる空気圧剛性を有さない。
本発明による空気入りタイヤは、乗用車、二輪車、大型車、農業車両、建設プラント車両、又は航空機、又はより一般的に任意の回転装置用などの任意のタイプの車両に適合させることを目的としている。非空気入りタイヤは、特に乗用車又は二輪車に適合させることを目的としている。好ましくは、本発明による空気入りタイヤは、乗用車に適合させることを目的としている。
有利には、空気入り又は非空気入りタイヤは、上記で定義の少なくとも1種のゴム配合物を含む少なくとも1種のトレッドを含む。
【0066】
測定方法
エラストマーのガラス転移温度の決定
エラストマーのそれらの使用前のガラス転移温度(Tg)は、標準ASTM D3418:2008に準拠して走査型示差熱量計を用いて決定される。
配合物のガラス転移温度の決定
配合物のガラス転移温度は、標準NF EN ISO11357-2:05-2014に準拠して、Mettler Toledo DSC3+装置及び40μlのアルミニウムるつぼを使用して測定される。
走査測定は、ヘリウム下、40ml/分の流速で、以下のように実施される:
・試料を+50℃/分の勾配で+25℃から-150℃まで冷却;
・-150℃で5分間等温保持;
・20℃/分の勾配で-150℃から+200℃まで加熱;
・+200℃で5分間等温保持;
・20℃/分の勾配で+200℃から-150℃まで冷却;
・-150℃で5分間等温保持;
・20℃/分の勾配で-150℃から+200℃まで加熱。
【0067】
μmax係数の決定
動摩擦係数の測定を、L.Busse,A.Le Gal,and M.Kuppel(Modelling of Dry and Wet Friction of Silica Filled Elastomers on Self-Affine Road Surfaces,Elastomer Friction,2010,51,p.8)と同一の方法に従って実施した。試験片を、モールド成形後、6mmの厚さを有する正方形のゴム状支持体(50mmx50mm)の架橋により、作製した。モールドを閉じた後、後者を、1.6MPa(16バール)の圧力で、材料の架橋に必要な時間にわたり(通常は数十分)、150℃の温度に加熱したプラテンを備えたプレス中に置く。これらの測定を実施するために使用される表面は、BBTM[極めて薄い歴青コンクリート]タイプ(標準NF P98-137)の歴青コンクリートから作製された真の道路表面から取り出したコアである。地面と材料との間のディウェッティングの現象及び二次グリップ力の出現を防止するために、地面+試験片系は、5%の界面活性剤(Sinnozon-CAS番号:25155-30-0)水溶液中に浸漬される。水溶液の温度は、恒温槽を用いて制御される。試験片は、地面の平面と平行に並進する摺動運動に供される。摺動速度SVは、1.2m/sに設定される。適用される法線応力σnは、400kPa(即ち4バール)である。これらの条件は、「濡れた地面条件」により下記に示される。地面に沿った試験片の運動に相対する、接線応力σtが測定される。法線応力σnに対する接線応力σtの比率が、動摩擦係数μを与える。動摩擦係数値は、水溶液の3℃~44℃の範囲の温度掃引中に測定され、接線応力σtの値の安定化後に定常状態で得られる。
実施例では、この掃引中に測定された動摩擦係数の最大値(μmaxと表記)が示される。
特に指示がない限り、結果は、100を基準にして与えられる。計算するために、恣意的な値100を、比較配合物に割り当て、その後、種々の試験した試料の最大動摩擦係数を比較する。試験される試料に対する100を基準にした値が、式:(試験試料のμmax値/比較配合物のμmax値)×100により計算される。このように、100未満の結果は、μmax係数の減少を示し、従ってウエットグリップ性能の低下を示す。逆に、100を超える結果は、μmax係数の増大を示し、従ってウエットグリップ性能の増大を示す。
【0068】
硬化後の動的特性の測定
動的特性tan(δ)maxが標準ASTM D 5992-96に準拠して粘度分析計(Metravib A4000)で測定される。40℃の温度で、10Hzの周波数の単純な交互正弦波形状剪断応力に供される、加硫配合物の試料(2mmの厚さ及び78.5mm2の断面を備えた2つの円筒形試験片)の応答が記録される。ピークツーピーク歪み振幅掃引が1%~100%まで(順方向サイクル)実施され、その後、100%~1%まで(リターンサイクル)実施される。利用できる結果は、損失係数tan(δ)である。リターンサイクルでは、tan(δ)40℃でのmaxと表わされる、観察されたtan(δ)の最大値(tan(δ)max)が示される。
【0069】
結果は、100を基準にして性能に換算して表現される、即ち種々の試験配合物のtanδ40℃でのmaxを計算し、続けて比較するために、値100が恣意的に比較配合物に割り当てられる。100を基準にした値は、式:(比較配合物のtanδ40℃でのmax値/試料のtanδ40℃でのmax値)x100、により計算される。このように、より低い値はヒステリシス特性の低下を表し、一方、より高い値はヒステリシス特性の改善を表す。
【0070】
ASTM D 5992-96に準拠して測定した、損失係数のプロファイルの測定
それぞれ厚さ2mm、断面78.5mm2、直径1cmの2つの円筒形ペレットの試験片の応答が記録される。試験片は、0.7MPaの一定応力下、+1.5℃/分の勾配で-80℃~+100℃の温度掃引中に、10Hzの周波数の単純な交互正弦波形状剪断応力に供される。データは、所望精度を得るように適合させ得る0.12Hzの周波数で取得される。
【0071】
ガラス転移温度Tg1を超える温度で存在するtanδピークに対しては、これらのピークのそれぞれの半価幅が測定される。
この半価幅は、次のように定義される:所与の最大値が温度T0にあり、tanδの関連値Yを有するとする。次に、Y/2に等しいtanδ の値に関連付けられたすべての温度を記録する。従ってこれらの値の中で、ピークの半値幅は、最大温度T0に隣接する2つの最も近い温度間の℃で表した差に対応する。
【0072】
実施例
1-成分:
実施例で用いる成分は以下の通り:
エラストマー(1A):標準ASTM D3418:2008に準拠して測定し-28℃のTgを有する非官能基化スチレン/ブタジエンコポリマー;コポリマーの総質量に対して41質量%のスチレン含量、コポリマーの総質量に対して14質量%のビニル-1,2-ブタジエン含量、コポリマーの総質量に対して27質量%のトランス-1,4-ブタジエン含量。
エラストマー(1B):エラストマー鎖の末端にシラノール官能基を有し、標準ASTM D3418:2008に準拠して測定し-24℃のTgを有するスチレン/ブタジエンコポリマー;コポリマーの総質量に対して25質量%のスチレン含量、コポリマーの総質量に対して43質量%のビニル-1,2-ブタジエン含量、コポリマーの総質量に対して16質量%のトランス-1,4-ブタジエン含量。
エラストマー(1C):標準ASTM D3418:2008に準拠して測定し-65℃のTgを有するスチレン/ブタジエンコポリマー;コポリマーの総質量に対して16質量%のスチレン含量、コポリマーの総質量に対して20質量%のビニル-1,2-ブタジエン含量、コポリマーの総質量に対して39質量%のトランス-1,4-ブタジエン含量。
エラストマー(1D):標準ASTM D3418:2008に準拠して測定し-65℃のTgを有し、鎖の中央にアミノアルコキシシラン官能基を有するスチレン/ブタジエンコポリマー;コポリマーの総質量に対して16質量%のスチレン含量、コポリマーの総質量に対して20質量%のビニル-1,2-ブタジエン含量、コポリマーの総質量に対して39質量%のトランス-1,4-ブタジエン含量。
エラストマー(1F):標準ASTM D3418:2008に準拠して測定し-48℃のTgを有し、鎖の中央にアミノアルコキシシラン官能基を有するスチレン/ブタジエンコポリマー;コポリマーの総質量に対して27質量%のスチレン含量、コポリマーの総質量に対して17.5質量%のビニル-1,2-ブタジエン含量、コポリマーの総質量に対して33.5質量%のトランス-1,4-ブタジエン含量。
エラストマー(1G):標準ASTM D3418:2008に準拠して測定し-48℃のTgを有する非官能基化スチレン/ブタジエンコポリマー;コポリマーの総質量に対して27質量%のスチレン含量、コポリマーの総質量に対して17.5質量%のビニル-1,2-ブタジエン含量、コポリマーの総質量に対して33.5質量%のトランス-1,4-ブタジエン含量。
カーボンブラック(2):Cabot Corporationにより販売されているASTMグレードN234カーボンブラック。
シリカ(3):Solvayにより販売されているZeosil 1165MPシリカ。
シリカ(4):Evonikにより参照番号Si69として販売されているビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT)シラン。
DPG(5):Flexsysによるジフェニルグアニジン、Perkacit DPG。
可塑剤(6):Exxon Mobilにより参照番号PR-383として販売されている、100℃の軟化点、51℃のガラス転移温度を有するDCPD樹脂。
耐オゾンワックス(7):Sasol WaxによるVarazon 4959耐オゾンワックス。
酸化防止剤(8):Flexsysにより参照番号Santoflex 6-PPDとして販売されているN-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン。
ZnO(9):Umicoreにより販売されている酸化亜鉛(産業用グレード)。
ステアリン酸(10):Uniqemaにより販売されているPristerene 4031ステアリン。
【0073】
2.試験1:ゴム配合物中の強化充填剤の位置の影響
表1で示す実施例は、本発明によるゴム配合物MI1の種々のゴム特性を、一連の比較ゴム配合物MT1及びMT2と比較することを目的としている:ゴム配合物MI1は、その他の配合物とは、エラストマーマトリックス内の強化充填剤の分布が異なっている。
【0074】
表1は、これら配合物の配合を示し、比率はphr、即ち配合物のエラストマーの100質量部当たりの質量部で表わされる。
【表1】
【0075】
比較配合物MT1は、以下の方法で得られる:
表2の全ての成分を1つ又は複数の段階で、414cm3のPolylabインターナルミキサーに導入し、70体積%まで満たし、その初期容器温度を90℃にする。熱機械的加工を165℃の最大落下温度に達するまで6分間実施する。このようにして得られた、組成物C1と呼ばれる組成物が回収される。
表3の全ての成分を1つ又は複数の段階で、別の414cm3のPolylabインターナルミキサーに導入し、70体積%まで満たし、その初期容器温度を90℃にする。熱機械的加工を165℃の最大落下温度に達するまで6分間実施する。このようにして得られた、組成物C2と呼ばれる組成物が回収される。
【0076】
次に、以前に得られた組成物C1及び前述の組成物C2を414cm3のPolylabインターナルミキサー中に導入し、70体積%まで満たし、熱機械的加工を150℃の最大落下温度に達するまで5分間実施する。
【0077】
次に、この混合物を40℃の温度に冷却するように、前のステップからの混合物を開放型ロール機などの外部混合器へ導入する。次に、架橋系(1.8phrの硫黄及び2.2phrのCBS(Flexsysから参照番号Santocure CBSとして販売されているN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド))を取り込み、20分間混合する。次に、物理的又は機械的性質の測定を実施するために、このように得られた混合物を厚板の形態にカレンダー加工する。特に指示がない限り、ゴム配合物のゴム特性は、170℃で20分間硬化後に測定される。
【表2】
【表3】
【0078】
比較配合物MT2及び本発明の配合物MI1を比較配合物MT1で記載の工程に従って調製した。これらはそれぞれ、比較配合物MT2の場合は、表4及び5の組成物C1及びC2、及び本発明のMI1の配合物の場合は、表6及び7の組成物C1及びC2を有する。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
配合物MT1、MT2及びMI1の硬化後測定したゴム特性を表8に示す。
【表8】
【0079】
比較配合物MT1は、2つのガラス転移温度Tg1及びTg2を有し、1つは高Tgガラス転移温度を有し(組成物C1)、及び1つは低Tgガラス転移温度を有する(組成物C2)、2つの異なるゴム組成物が存在することを示す。同じことは、第2の比較配合物MT2及び本発明の配合物MI1にも当てはまる。
【0080】
同じ量の強化充填剤(58.80phr)を有するにもかかわらず、本発明の配合物MI1は、ASTM D 5992-96に準拠して、10Hzの周波数と、0.7MPaの一定応力で-80℃~60℃の温度範囲にわたり測定された損失係数の異なるプロファイルにより、対照配合物MT1及びMT2とは異なる。
【0081】
本発明による配合物MI1に対する損失係数の半価幅(21.5℃)は、MT1及びMT2(それぞれ、24.5℃及び34.0℃)の損失係数の半価幅より狭い。この半価幅の狭い値は、配合物の強化充填剤が、最低Tgを有する組成物に対し選択的親和性を有し、従って最低Tgを有する組成物中に主に分布していることを示す。
比較配合物MT1に対する損失係数の半価幅は、24.4℃であり、配合物MT1の2つの組成物間での強化充填剤の均一分布を示す。
比較配合物MT2に対する損失係数の半価幅は、34.0℃であり、配合物MT2の2つの組成物間での強化充填剤の不均一分布を示し、強化充填剤は、主に最高のTgを有するゴム組成物中に分布する。
【0082】
その2つの組成物中の強化充填剤の均一分布を有する配合物MT1と比較して、配合物MT2は、同等のヒステリシス(tanδ40℃でのmax)特性の場合、係数μmaxが減少し、従ってウエットグリップ性能が低下する。従ってヒステリシス特性がMT1配合物に同等で、強化充填剤が主に最高Tgを有するゴム組成物中に位置する場合、ウエットグリップ性能の低下が観察される。
【0083】
驚くべきことに、強化充填剤が主に最低Tg(本発明による配合物MI1を参照)を有するゴム組成物中に位置する場合、ヒステリシス特性の改善、及び係数μmaxの減少、従って対照配合物MT1に比較して、ウエットグリップ性能の改善が観察される。
【0084】
3.試験2:ゴム配合物を形成する組成物のガラス転移温度の差異の影響
表9で示す実施例は、本発明によるゴム配合物MI1の種々のゴム特性を、2つの比較配合物MT3及びMT4と比較することを目的としている。
【0085】
配合物MT3及びMT4は、それらを形成するゴム組成物が23℃未満のガラス転移温度の差異を有するように作製された。
加えて、より高いTgを有し、配合物MT3を構成するゴム組成物は、より高いTgを有し、本発明の配合物ML1を構成するゴム組成物と同じ組成を有する。
更に、より低いTgを有し、配合物MT4を構成するゴム組成物は、より低いTgを有し、本発明の配合物ML1を構成するゴム組成物と同じ組成を有する。
【0086】
表9は、試験ゴム配合物の配合を示し、比率はphr、即ち配合物のエラストマーの100質量部当たりの質量部で表わされる。
【表9】
【0087】
MT3配合物及びMT4配合物は、それぞれ、配合物MT3に対する表6(組成物1-MI1)及び表10の組成物ならびに配合物MT4に対する表11及び表7の組成物(組成物2-MI1)を用いて、試験1で記載のものと同じ工程により調製される。
【表10】
【表11】
【0088】
これらの配合物の硬化後に測定したゴム特性を表12及び13に示す。
【表12】
【0089】
比較配合物MT3は、2つのガラス転移温度Tg1及びTg2を有し、配合物中に2つの異なるゴム組成物が存在することを示す。
【0090】
本発明による配合物MI1を得るために、より低いTgを有するゴム組成物(組成物C2)がより高いTgを有する組成物(組成物C1)とガラス転移温度について23℃以上の差異を有するように配合物MT3の組成が修飾される場合、配合物MT3に比べて、ゴム配合物MI1のヒステリシス特性が有意に改善されることが明らかである。
驚くべきことに、本発明による配合物MI1のヒステリシス特性のこの改善は、係数μmax、及び従って、ウエットグリップ性能を犠牲にすることでは達成されない。
【表13】
*)配合物MT4は、単一ガラス転移温度値を有する;このガラス転移温度は標準NF EN ISO 11357-2:05-2014に準拠して測定され、-51℃に等しい。しかし、理論的計算によると、ゴム配合物MT4は2つの別個のガラス転移温度を有するはずである。計算で得られた理論的ガラス転移温度は、組成物C1-MT4の場合、-40℃で、組成物C2-MT4の場合に計算により得られた理論的ガラス転移温度は-49℃であり、従ってTg1計算-Tg2計算=-9℃である。
【0091】
本発明による配合物MI1を得るために、より高いTgを有するゴム組成物がより低いTgを有する組成物とガラス転移温度について23℃以上の差異を有するように配合物MT4の組成が修飾される場合、配合物MT4に比べて、係数μmaxが有意に改善されることが、観察される。驚くべきことに、ウエットグリップ性能の改善は、ヒステリシス特性を犠牲にすることでは達成されず、ウエットグリップ性能は、比較配合物MT4と同等のままである。
【0092】
4.試験3:先行技術との比較
表14で示す実施例は、本発明によるゴム配合物MI1の種々のゴム特性を、特許文献EP3372638A1明細書の実施例4を代表する比較配合物MT5に対して比較することを目的としている。
配合物MT5の組成は、表14に示され、比率はphrで表される。
【表14】
【0093】
配合物MT5は、それぞれ、表15及び16の組成を用いて、試験1に記載のものと同じ工程に従って調製される。
【表15】
【表16】
【0094】
これらの配合物の硬化後に測定したゴム特性を表17に示す。
【表17】
【0095】
本発明による配合物MI1は、先行技術を代表する配合物MT5に比べて、有意に改善された係数μmaxを有することが観察された。驚くべきことに、この有意な改善は、ヒステリシス特性を犠牲にすることでは達成されない。理由は、2つの配合物は同じtanδ40℃でのmaxの値を有するためである。
【国際調査報告】