(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】特定のアミノ酸を高濃度で使用してケラチン繊維を染色又は脱色するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20230629BHJP
A61Q 5/08 20060101ALI20230629BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q5/08
A61Q5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574260
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021068032
(87)【国際公開番号】W WO2022003038
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・アガシュ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ドンク
(72)【発明者】
【氏名】アンブル・ソヴィロー
(72)【発明者】
【氏名】レイラ・エルクエ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB032
4C083AB082
4C083AB172
4C083AB282
4C083AB322
4C083AB351
4C083AB352
4C083AB411
4C083AB412
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC061
4C083AC062
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC352
4C083AC432
4C083AC461
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC792
4C083AC892
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD202
4C083AD282
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB21
4C083BB24
4C083CC35
4C083CC36
4C083DD27
4C083EE03
4C083EE26
4C083EE27
(57)【要約】
本発明は、ケラチン繊維を染色又は脱色するための方法であって、ケラチン繊維に、高含有量の1種又は複数の特定のアミノ酸を含む組成物を適用し、次いで染色又は脱色組成物を適用することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を染色又は脱色するための方法であって、以下の連続したステップ:
i)前記ケラチン繊維に、式(I
1):
【化1】
(式(I
1)中、
□pは、1又は2に等しい整数であり;
□p=1である場合、Rは、窒素原子と一緒に、5~8員、好ましくは5員の飽和複素環を形成し、前記環は、場合により、ヒドロキシル又は(C
1~C
4)アルキルから選択される少なくとも1つの基で任意選択的に置換されており;
□p=2である場合、Rは、
- 水素原子、又は
- 少なくとも1つのヘテロ原子又は-S-、-NH-若しくは-C(NH)-から選択される基が介在しており、且つ/又はヒドロキシル、アミノ又は-NH-C(NH)-NH
2から選択される少なくとも1つの基で置換されている(C
1~C
12)アルキル基、好ましくは(C
1~C
4)アルキル基
を表す)
の化合物、その塩及びその混合物から選択される1種又は複数のアミノ酸を含む組成物(A)を適用するステップであって、前記アミノ酸は、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して少なくとも5質量%の総含有量で存在する、ステップ;
ii)前記ケラチン繊維に染色又は脱色組成物を適用するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記アミノ酸は、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、アルギニン、リジン、その塩及びその混合物、好ましくはグリシン、プロリン、メチオニン、セリン、その塩及びその混合物、より優先的にはグリシン、その塩及びその混合物から選択され;更により優先的には、前記アミノ酸は、グリシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ酸は、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して5質量%~20質量%の範囲、好ましくは5質量%~15質量%の範囲、より優先的には8質量%~12質量%の範囲の総含有量で存在する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
組成物(A)のpHは、2~11、好ましくは4~10、より優先的には8~10である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して0.1質量%未満、好ましくは0.01質量%未満、より優先的には0.001質量%未満の総含有量の着色剤及び/又は還元剤を含み;更により優先的には、組成物(A)は、着色剤及び/又は還元剤を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して5質量%未満、好ましくは2質量%未満、より優先的には1質量%未満の界面活性剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組成物(A)は、好ましくは、モノアルコール、ポリオール、ポリオールエーテル及びその混合物から選択される少なくとも1種の有機溶媒を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して1質量%~40質量%の範囲、好ましくは5質量%~30質量%の範囲、より優先的には8質量%~15質量%の範囲の総含有量の有機溶媒を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記染色又は脱色組成物は、好ましくは、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属ブロメート、過酸化塩、過酸及びその前駆体並びにその混合物、より優先的には過酸化水素、過酸化塩及びその混合物、更により優先的には過酸化水素、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はアンモニウムのペルスルフェート、ペルボレート又はペルカーボネート及びその混合物、最も優先的には過酸化水素から選択される少なくとも1種の化学的酸化剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップii)中に適用される前記組成物は、酸化染料、直接染料及びその混合物、好ましくは酸化染料から選択される少なくとも1種の着色剤を含む染料組成物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップi)及びii)間において、組成物(A)を前記ケラチン繊維上に1分間~60分間の範囲、好ましくは3分間~40分間の範囲、より優先的には3分間~20分間の範囲の時間にわたって放置することを含むステップi’)も含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップi)又はi’)後且つステップii)前に、前記ケラチン繊維を濯ぎ且つ/又は乾燥させるステップ、好ましくは前記ケラチン繊維を乾燥させるステップも含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップi)又はi’)とステップii)との間に濯ぎステップを含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(A)。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(A)の、染色又は脱色方法のための前処理組成物としての使用。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(A)の、ケラチン繊維を保護するため、好ましくは染色又は脱色処理中にそれらを破断から保護するための使用。
【請求項17】
多区画デバイスであって、
□請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(A)を収容する第1の区画と;
□少なくとも1種の化学的酸化剤を含む組成物を収容する第2の区画と;
□任意選択的に、酸化染料、直接染料及びその混合物から選択される少なくとも1種の着色剤を含む組成物を収容する第3の区画と
を含む多区画デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維を染色又は脱色するための方法であって、ケラチン繊維に、高含有量の1種又は複数の特定のアミノ酸を含む組成物を適用し、次いで染色又は脱色組成物を適用することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の髪色を修正するために毛髪の染色又は脱色方法を実施することは、公知の手法である。この方法は、一般に、化学的酸化剤と、任意選択的に直接染料及び/又は酸化染料とを含む毛髪用組成物をケラチン繊維に適用することを含む。
【0003】
広く知られているように、これらの毛髪用染色又は脱色組成物は、確かに染色又は脱色する力を有するが、場合により繊維の質を低下させる原因にもなり得、毛髪の構成タンパク質を変性させ、それにより不安定なタンパク質が生成する可能性もある。不安定なタンパク質の含有量が高いほど、毛髪がよりダメージを受ける。この繊維の質の低下は、特に過敏化している毛髪にこの組成物を適用した場合、毛髪に櫛通しする際のかなりの破断をもたらす可能性がある。したがって、毛髪の美容特性の低下を制限するか又はそれを向上させるために、コンディショニング剤を含むケア組成物に依存する手法が慣用されている。しかしながら、場合により、このケア組成物は、こうして処理されたケラチン繊維の染色又は脱色の妨げになることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ケラチン繊維の質を維持するか又は更に向上させ、特にその破断を減らすことを可能にする一方、同時に、こうして処理されたケラチン繊維の染色又は脱色の妨げになることがない、ケラチン繊維を染色又は脱色するための方法を開発することが実際に求められている。このような方法は、使いやすく、とりわけ適用が容易であり、安定であり、こうして処理されたケラチン繊維の美容特性、例えば輝き、柔らかい感触、しなやかさ、外観又はもつれの解けやすさに関連する美容特性を維持するか又は更に向上させることが可能な組成物を伴う必要もある。更に、このような方法は、理想的には、市販のあらゆるタイプの染色又は脱色組成物と適合することが必要となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本出願人は、これらの目的が全て本発明による組成物を用いることによって達成されることを見出した。
【0006】
第1の態様によれば、本発明の主題は、ケラチン繊維を染色又は脱色するための方法であって、以下の連続したステップ:
i)ケラチン繊維に、式(I
1):
【化1】
(式(I
1)中、
□pは、1又は2に等しい整数であり;
□p=1である場合、Rは、窒素原子と一緒に、5~8員、好ましくは5員の飽和複素環を形成し、この環は、場合により、ヒドロキシル又は(C
1~C
4)アルキルから選択される少なくとも1つの基で任意選択的に置換されており;
□p=2である場合、Rは、
- 水素原子、又は
- 少なくとも1つのヘテロ原子又は-S-、-NH-若しくは-C(NH)-から選択される基が介在しており、且つ/又はヒドロキシル、アミノ又は-NH-C(NH)-NH
2から選択される少なくとも1つの基で置換されている(C
1~C
12)アルキル基、好ましくは(C
1~C
4)アルキル基
を表す)
の化合物、その塩及びそれらの混合物から選択される1種又は複数のアミノ酸を含む組成物(A)を適用するステップであって、アミノ酸は、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して少なくとも5質量%の総含有量で存在する、ステップ;
ii)ケラチン繊維に染色又は脱色組成物を適用するステップ
を含む方法である。
【0007】
第2の態様によれば、本発明の主題は、上に定義した組成物(A)である。
【0008】
第3の態様によれば、本発明の主題は、上に定義した組成物(A)の、染色又は脱色方法の前処理組成物としての使用である。
【0009】
第4の態様によれば、本発明の主題は、上に定義した組成物(A)の、ケラチン繊維を保護するため、好ましくは染色又は脱色処理中にそれらを破断から保護するための使用である。
【0010】
第5の態様によれば、本発明の主題は、多区画デバイスであって、
- 上に定義した組成物(A)を収容する第1の区画と;
- 少なくとも1種の化学的酸化剤を含む組成物を収容する第2の区画と;
- 任意選択的に、酸化染料、直接染料及びその混合物から選択される少なくとも1種の着色剤を含む組成物を収容する第3の区画と
を含む多区画デバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的に関して、別段の指定がない限り、以下の通りである:
- 「ケラチン繊維」という用語は、頭髪、体毛、睫毛、眉毛、羊毛、アンゴラヤギの毛、カシミヤ又は毛皮などのヒト又は動物由来の繊維を意味する。本発明によれば、ケラチン繊維は、好ましくは、ヒトのケラチン繊維、より優先的には毛髪である。
- 「連続したステップ」という用語は、指示された順序でステップを実施することを意味する。
- 「染料組成物」という用語は、少なくとも1種の着色剤を含む組成物を意味する。
- 「脱色組成物」という用語は、少なくとも1種の化学的酸化剤を含む組成物を意味する。
- 「アルキル基」という用語は、直鎖又は分岐の飽和炭化水素系基を意味する。
- 「(Cx~Cy)アルキル基」という用語は、x~y個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。
- 「着色剤」という用語は、酸化染料、直接染料又は顔料を意味する。
- 「酸化染料」という用語は、酸化性塩基及びカプラーから選択される酸化染料前駆体を意味する。酸化性塩基及びカプラーは、無色又は色の薄い化合物であり、酸化剤の存在下における縮合反応を介して有色の化学種を与えるものである。
- 「直接染料」という用語は、酸化染料以外の、抽出物の形態を含む天然及び/又は合成染料を意味する。これらは、繊維の表面上に広がることになる有色の化合物である。これらは、イオン性又は非イオン性、即ちアニオン性、カチオン性、中性又は非イオン性であり得る。
- 「還元剤」という用語は、チオール、アルカリ性サルファイト、水素化物、ホスフィンから選択される化合物など、毛髪のジスルフィド結合を還元することができる薬剤を意味する。
- 「化学的酸化剤」という用語は、大気酸素以外の酸化剤を意味する。
【0012】
別段の指定がない限り、本出願において化合物に言及する場合、これは、単独での又は混合物としてのその光学異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その塩又はその溶媒和物も含む。
【0013】
「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数の」は、同義であり、互換的に使用することができる。
【0014】
ケラチン繊維を染色又は脱色するための方法
第1の態様によれば、本発明の主題は、上に定義したケラチン繊維を染色又は脱色するための方法である。
【0015】
驚くべきことに、本出願人は、本発明による方法が、染色又は脱色の妨げになることなく、ケラチン繊維の質を維持するか又は更に向上させ、その破断を減らすことを可能にすることを見出した。更に、本発明による方法は、染色又は脱色組成物と異なる組成物であり、したがって市販のあらゆるタイプの染色又は脱色組成物と適合する組成物を用いる前処理ステップを含む。
【0016】
本発明による方法において、ステップi)及びii)を連続させること、即ちステップii)をステップi)後に実施することが必須である。
【0017】
本方法は、ステップi)及びii)間に1つ又は複数の追加のステップを含むことができるが、そのような実施形態でも、ステップii)は、常にステップi)後に実施される。
【0018】
組成物(A)
アミノ酸
本方法のステップi)においてケラチン繊維に適用される組成物(A)は、上に定義した式(I1)の化合物、その塩及びその混合物、好ましくは式(I1)の化合物から選択される1種又は複数のアミノ酸を含む。
【0019】
式(I1)の化合物の塩は、有機又は無機塩基との塩、例えばアルカリ金属の塩、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム塩;アルカリ土類金属の塩、例えばマグネシウム又はカルシウム塩及び亜鉛塩を含む。
【0020】
式(I1)の化合物は、L、D又はDL配置、好ましくはL配置の光学異性体形態であり得る。
【0021】
L配置の光学異性体形態の式(I1)の化合物の本発明による例として、L-プロリン、L-メチオニン、L-セリン、L-アルギニン及びL-リジンを挙げることができる。
【0022】
好ましくは、組成物(A)に含まれるアミノ酸は、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、アルギニン、リジン、その塩及びその混合物から選択される。
【0023】
より優先的には、組成物(A)に含まれるアミノ酸は、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、その塩及びその混合物から選択される。
【0024】
更により優先的には、組成物(A)に含まれるアミノ酸は、グリシン、その塩及びその混合物から選択される。
【0025】
本発明において使用することができるグリシン塩の例としては、グリシンナトリウム、グリシン亜鉛、グリシンカルシウム、グリシンマグネシウム、グリシンマンガン及びグリシンカリウムを挙げることができ、グリシンナトリウム又はグリシンカリウムが好ましい。
【0026】
特に好ましくは、組成物(A)に含まれるアミノ酸は、グリシンである。
【0027】
式(I1)の化合物、その塩及びその混合物から選択されるアミノ酸は、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも8質量%の総含有量で存在する。
【0028】
式(I1)の化合物、その塩及びその混合物から選択されるアミノ酸は、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して5質量%~20質量%の範囲、好ましくは5質量%~15質量%の範囲、より優先的には8質量%~12質量%の範囲の総含有量で存在することができる。
【0029】
組成物(A)は、好ましくは、組成物(A)の総質量に対して少なくとも5質量%、より優先的には少なくとも8質量%のグリシン、その塩及びその混合物を含むことができる。
【0030】
好ましくは、組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して5質量%~20質量%、好ましくは5質量%~15質量%、より優先的には8質量%~12質量%のグリシン、その塩及びその混合物を含む。
【0031】
好ましい一実施形態によれば、本方法のステップi)においてケラチン繊維に適用される組成物(A)は、上に定義した式(I1)の化合物から選択される1種又は複数のアミノ酸を含む。
【0032】
この好ましい実施形態によれば、組成物(A)に含まれるアミノ酸は、好ましくは、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、アルギニン、リジン及びその混合物、より優先的にはグリシン、プロリン、メチオニン、セリン及びその混合物から選択され、更により優先的には、組成物(A)に含まれるアミノ酸は、グリシンである。
【0033】
この好ましい実施形態によれば、式(I1)の化合物から選択されるアミノ酸は、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも8質量%の総含有量で存在する。
【0034】
この好ましい実施形態によれば、式(I1)の化合物から選択されるアミノ酸は、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して好ましくは5質量%~20質量%の範囲、より優先的には5質量%~15質量%の範囲、更により優先的には8質量%~12質量%の範囲の総含有量で存在する。
【0035】
この好ましい実施形態によれば、組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して好ましくは少なくとも5質量%、より優先的には少なくとも8質量%のグリシンを含むことができる。
【0036】
この好ましい実施形態によれば、組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して好ましくは5質量%~20質量%、より優先的には5質量%~15質量%、更により優先的には8質量%~12質量%のグリシンを含む。
【0037】
pH
組成物(A)のpHは、2~11の範囲であり得る。好ましくは、組成物(A)のpHは、4~10の範囲である。より優先的には、組成物(A)のpHは、8~10の範囲である。一例として、組成物(A)のpHは、9であり得る。
【0038】
組成物(A)のpHは、少なくとも1種の有機又は無機酸或いは無機若しくは有機又はハイブリッド型アルカリ剤及びその混合物から選択される少なくとも1種のアルカリ剤で調整することができる。
【0039】
「有機酸」という用語は、酸、即ち水性媒体中で陽イオン又はプロトンH+又はH3O+を放出することができる、任意選択的に不飽和である直鎖若しくは分岐C1~C20炭化水素系鎖、(ヘテロ)シクロアルキル基又は(ヘテロ)アリール基の少なくとも1つと、特にカルボキシルC(O)OH、スルホンSO3H、スルフィンSO2H、ホスホンPO3H及びホスフィンPO2H2から選択される少なくとも1つの酸性化学的官能基とを含む化合物を意味する。
【0040】
より詳細には、使用される有機又は無機酸は、塩酸HCl、臭素酸HBr、硫酸H
2SO
4、アルキルスルホン酸:(C
1~C
6)Alk-S(O)
2OH、例えばメチルスルホン酸及びエチルスルホン酸;アリールスルホン酸:Ar-S(O)
2OH、例えばベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸;(C
1~C
6)アルコキシスルフィン酸:Alk-O-S(O)OH、例えばメトキシスルフィン酸及びエトキシスルフィン酸;アリールオキシスルフィン酸、例えばトルエンオキシスルフィン酸及びフェノキシスルフィン酸;リン酸H
3PO
4;トリフルオロメタンスルホン酸CF
3SO
3H及びテトラフルオロホウ酸HBF
4;並びに以下の式(II):
【化2】
(式(II)中、
Aは、1~50個の炭素原子を含み、1つ又は複数のヘテロ原子が任意選択的に介在し、且つ/又は特に1つ又は複数のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている、一価(tが0である場合)又は多価(tが1以上である場合)の飽和又は不飽和の環状又は非環状の芳香族又は非芳香族炭化水素系基を表し;好ましくは、Aは、1つ又は複数のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている一価(C
1~C
6)アルキル基又は多価(C
1~C
6)アルキレン基を表す)
のカルボン酸並びにその塩から選択される。
【0041】
特に、使用される酸は、上に定義した式(II)のカルボン酸から選択される。好ましくは、使用される酸は、乳酸、グリコール酸、酒石酸又はクエン酸などのα-ヒドロキシ酸である。
【0042】
無機アルカリ剤は、好ましくは、アンモニア水、炭酸ナトリウム若しくはカリウム及び炭酸水素ナトリウム若しくはカリウムなどのアルカリカートネート若しくはバイカーボネート、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム又はその混合物から選択される。
【0043】
有機アルカリ剤は、好ましくは、有機アミンから選択され、即ち、それらは、少なくとも1つの置換又は無置換アミノ基を含む。
【0044】
有機アルカリ剤は、より優先的には、25℃におけるpKbが12未満、好ましくは10未満、更に有利には6未満である有機アミンから選択される。これは、塩基性が最も高い官能基に対応するpKbであることに留意すべきである。
【0045】
有機アルカリ剤は、例えば、アルカノールアミン、オキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化エチレンジアミン並びに以下の式(III):
【化3】
(式(III)中、
〇Wは、ヒドロキシル基又は(C
1~C
6)アルキル基で任意選択的に置換されており、且つ/又は1つ又は複数の酸素などのヘテロ原子又はNR
uが任意選択的に介在する、二価のC
1~C
6アルキレン基であり;
〇R
x、R
y、R
z、R
t及びR
uは、同一であるか又は異なり得、水素原子又は(C
1~C
6)アルキル、C
1~C
6ヒドロキシアルキル若しくはC
1~C
6アミノアルキルから選択される基を表す)
の化合物から選択される。
【0046】
好ましくは、アルカノールアミンは、エタノールアミン(又はモノエタノールアミン)である。
【0047】
本発明の一変形形態において、組成物(A)は、アルカリ剤として、1種又は複数のアルカノールアミン(好ましくはエタノールアミン)及びアンモニア水を含む。この変形形態において、アルカノールアミンは、アンモニア水に対して優位な量で存在する。
【0048】
ハイブリッド型アルカリ剤としては、上に述べたアミンと、炭酸又は塩酸などの酸との塩を挙げることができる。
【0049】
カチオン性ポリマー
組成物(A)は、1種又は複数のカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0050】
「カチオン性ポリマー」という用語は、カチオン性基及び/又はカチオン性基にイオン化することが可能な基を含み、アニオン性基及び/又はアニオン性基にイオン化することが可能な基を含まない任意のポリマーを意味する。好ましくは、カチオン性ポリマーは、親水性又は両親媒性である。
【0051】
好ましいカチオン性ポリマーは、第1級、第2級、第3級及び/又は第4級アミン基を含む単位を含むものから選択され、この単位は、高分子主鎖の一部を形成し得るか、又はそれに直接結合している側鎖置換基が有するものであり得るかのいずれかである。
【0052】
好ましくは、使用することができるカチオン性ポリマーの質量平均モル質量(Mw)は、500~5×106g/molの範囲、好ましくは103~3×106g/molの範囲である。
【0053】
好ましくは、組成物(A)は、その構造内において、式(I)又は(II):
【化4】
(式中、
□k及びtは、0又は1であり、k+tの合計は、1であり;
□R
12は、水素原子又はメチル基を表し;
□R
10及びR
11は、互いに独立して、(C
1~C
6)アルキル基、C
1~C
5ヒドロキシアルキル基、C
1~C
4アミドアルキル基を表すか;又は代わりに、R
10及びR
11は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジル又はモルホリニルを表し;好ましくは、R
10及びR
11は、互いに独立して、C
1~C
4アルキル基を表し;
□Y
-は、ブロミド、クロリド、アセテート、ボレート、サイトレート、タータレート、ビスルフェート、ビサルファイト、スルフェート又はホスフェートから好ましくは選択されるアニオンである)
に対応する1種又は複数の単位を含むホモポリマー又はコポリマーから選択される1種又は複数のカチオン性ポリマーを含む。
【0054】
より優先的には、組成物(A)は、その構造内において、上に定義した式(I)に対応する1種又は複数の単位を含むホモポリマー又はコポリマーから選択される1種又は複数のカチオン性ポリマーを含む。
【0055】
更により優先的には、組成物(A)は、ジアリルジメチルアンモニウム塩のホモポリマー及びジアリルジメチルアンモニウム塩とアクリルアミドとのコポリマーから選択される1種又は複数のカチオン性ポリマーを含む。
【0056】
特に好ましくは、組成物(A)は、ジアリルジメチルアンモニウム塩とアクリルアミドとのコポリマーから選択される1種又は複数のカチオン性ポリマーを含む。
【0057】
より具体的には、例えば、Nalco社からMerquat 100の名称で販売されているジメチルジアリルアンモニウム塩(例えば、クロリド)のホモポリマー及び特にMerquat 550又はMerquat 7SPRの名称で販売されている、ジアリルジメチルアンモニウム塩(例えば、クロリド)とアクリルアミドとのコポリマーを挙げることができる。
【0058】
カチオン性ポリマーは、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して0.00001質量%~5質量%の範囲、好ましくは0.00005質量%~1質量%の範囲、より優先的には0.00007質量%~0.5質量%の範囲の総含有量で存在することができる。
【0059】
アミノシリコーン
組成物(A)は、好ましくは、アミノシリコーンから選択される1種又は複数のシリコーンを含むことができる。
【0060】
「アミノシリコーン」という用語は、少なくとも1つの第1級、第2級又は第3級アミン基を含む任意のシリコーンを意味する。
【0061】
これらのアミノシリコーンの質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、室温(25℃)下においてポリスチレン換算で測定することができる。カラムは、μ styragelカラムを使用する。溶出液は、THFであり、流速は、1ml/分である。THF中に0.5質量%のシリコーンを含む溶液200μlを注入する。検出は、屈折率測定及びUV測定により行う。
【0062】
好ましくは、アミノシリコーンは、以下の式(B):
R’aG3-a-Si(OSiG2)n-(OSiGbR’2-b)m-O-SiG3-a-R’a (B)
(式中、
- Gは、同一であるか又は異なり得、水素原子又はフェニル、OH、C1~C8アルキル、例えばメチル若しくはC1~C8アルコキシ、例えばメトキシからの基を表し、
- aは、同一であるか又は異なり得、0又は1~3の整数、特に0を表し、
- bは、0又は1、特に1を示し、
- m及びnは、総和(n+m)が1~2000、特に50~150の範囲になる数であり、nは、0~1999、特に49~149の数を表すことができ、mは、1~2000、特に1~10の数を表すことができ;
- R’は、同一であるか又は異なり得、式:
-CqH2qL
(式中、qは、2~8の範囲の数であり、Lは、以下の基:
-N(R’’)2;-N+(R’’)3A-;-NR’’-Q-N(R’’)2;及び-NR’’-Q-N+(R’’)3A-
(式中、R’’は、同一であるか又は異なり得、水素、フェニル、ベンジル又は一価の飽和炭化水素系基、例えばC1~C20アルキル基を表し;Qは、式CrH2rの直鎖又は分岐の基を表し、rは、2~6、好ましくは2~4の範囲の整数であり;A-は、化粧的に許容されるアニオン、とりわけハライド、例えばフルオリド、クロリド、ブロミド又はヨージドを表す)
から選択される任意選択的に4級化されたアミン基である)
の一価の基を表す)
のアミノシリコーンから選択される。
【0063】
より優先的には、アミノシリコーンは、以下の式(F):
【化5】
(式中、
- p及びqは、総和(p+q)が1~1000の範囲、特に50~350の範囲、より詳細には150~250の範囲となる数であり;pは、0~999、特に49~349、より詳細には159~239の数を表すことができ、qは、1~1000、特に1~10、より詳細には1~5の数を表すことができ;
- R
1及びR
2は、異なり、ヒドロキシル又はC
1~C
4アルコキシ基を表し、R
1基又はR
2基の少なくとも1つは、アルコキシ基を表す)
のアミノシリコーンから選択される。
【0064】
好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ基である。
【0065】
ヒドロキシ/アルコキシのモル比は、概して、1:0.8~1:1.1の範囲、好ましくは1:0.9~1:1の範囲であり、より詳細には1:0.95である。
【0066】
シリコーンの質量平均分子量(Mw)は、好ましくは、2000~200000、より詳細には5000~100000、より詳細には10000~50000の範囲である。
【0067】
構造(F)のシリコーンを含む市販品は、その組成物中において、式(F)と異なる構造を有する1種又は複数の他のアミノシリコーンを含み得る。
【0068】
構造(F)のアミノシリコーンを含む製品は、WackerからFluid WR 1300(登録商標)の名称で販売されている。
【0069】
式(F)のアミノシリコーンの中では、Wackerからの製品であるBelsil ADM Log 1も挙げることができる。
【0070】
これらのアミノシリコーンが使用される場合、特に有利な一実施形態は、これらを水中油型エマルション形態で使用することを含む。水中油型エマルションは、1種又は複数の界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、任意の性質のものであり得るが、好ましくはカチオン性及び/又は非イオン性である。エマルション中のシリコーン粒子の数平均粒子径は、概して、3nm~500ナノメートルの範囲である。
【0071】
シリコーンは、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して0.001質量%~10質量%の範囲、好ましくは0.01質量%~5質量%の範囲、より優先的には0.02質量%~1質量%の範囲、更により優先的には0.05質量%~0.5質量%の範囲の総含有量で存在することができる。
【0072】
アミノシリコーンは、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して0.001質量%~10質量%の範囲、好ましくは0.01質量%~5質量%の範囲、より優先的には0.02質量%~1質量%の範囲、更により優先的には0.05質量%~0.5質量%の範囲の総含有量で存在することができる。
【0073】
組成物(A)は、好ましくは、組成物(A)の総質量に対して0.1質量%未満、より優先的には0.01質量%未満、より優先的には0.001質量%未満の総含有量の着色剤及び/又は還元剤を含む。
【0074】
特に好ましい一実施形態によれば、組成物(A)は、着色剤及び/又は還元剤を含まない。
【0075】
組成物(A)は、好ましくは、組成物(A)の総質量に対して0.1質量%未満、より優先的には0.01質量%未満、更により優先的には、0.001質量%未満の総含有量の化学的酸化剤を含む。
【0076】
界面活性剤
組成物(A)は、好ましくは、組成物(A)の総質量に対して5質量%未満、より優先的には2質量%未満、更により優先的には1質量%未満の界面活性剤を含む。
【0077】
特に、組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して0.1質量%未満、好ましくは0.01質量%未満、より優先的には0.001質量%未満の総含有量のアニオン性界面活性剤を含むことができる。
【0078】
特に好ましい実施形態によれば、組成物(A)は、アニオン性界面活性剤を含まない。
【0079】
組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して0.5質量%未満の総含有量の非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0080】
水
組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して1質量%~95質量%の範囲、好ましくは20質量%~95質量%の範囲、より優先的には40質量%~90質量%の範囲、更により優先的には60質量%~85質量%の範囲の総含有量の水を含むことができる。
【0081】
有機溶媒
組成物(A)は、好ましくは、モノアルコール、ポリオール、ポリオールエーテル及びその混合物から選択される少なくとも1種の有機溶媒を含むことができる。
【0082】
組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも8質量%の1種又は複数のモノアルコールを含むことができる。モノアルコールは、直鎖又は分岐であり得る。
【0083】
モノアルコールは、好ましくは、C2~C6モノアルコール、より優先的にはC2~C4モノアルコール、更により優先的にはエタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール及びその混合物から選択される。
【0084】
特に好ましい一実施形態によれば、モノアルコールは、エタノールである。
【0085】
モノアルコールは、組成物(A)中において、組成物(A)の総質量に対して5質量%~20質量%の範囲、好ましくは5質量%~15質量%の範囲、より優先的には8質量%~12質量%の範囲の総含有量で存在することができる。
【0086】
ポリオールは、好ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール及びその混合物から選択される。
【0087】
ポリオールエーテルは、好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びモノエチルエーテル並びにその混合物から選択される。
【0088】
組成物(A)は、組成物の総質量に対して1質量%~40質量%の範囲、好ましくは5質量%~30質量%の範囲、より優先的には8質量%~15質量%の範囲の総含有量の有機溶媒を含むことができる。
【0089】
染色又は脱色組成物
化学的酸化剤
本方法のステップii)においてケラチン繊維に適用される染色又は脱色組成物は、少なくとも1種の化学的酸化剤を含むことができる。
【0090】
好ましくは、化学的酸化剤は、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属ブロメート、過酸化塩、過酸及びその前駆体並びにその混合物から選択される。
【0091】
最も優先的には、化学的酸化剤は、過酸化水素、過酸化塩及びその混合物から選択される。
【0092】
更により優先的には、化学的酸化剤は、過酸化水素、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はアンモニウムのペルスルフェート、ペルボレート又はペルカーボネート及びその混合物から選択される。
【0093】
最も優先的には、化学的酸化剤は、過酸化水素である。
【0094】
挙げられ得る過酸化塩の例としては、過硫酸ナトリウム、カリウム又はアンモニウム及びその混合物がある。
【0095】
組成物が脱色組成物である場合、これは、好ましくは、過酸化水素及び過酸化塩を含むことができる。
【0096】
染色又は脱色組成物は、染色又は脱色組成物の総質量に対して0.5~60質量%の範囲、好ましくは0.5~40質量%、より優先的には1~30質量%の範囲の総含有量の化学的酸化剤を含むことができる。
【0097】
液体脂肪性物質
染色又は脱色組成物は、塩形態の脂肪酸以外の、室温(25℃)の大気圧(1.013×105Pa)下で液体である1種又は複数の脂肪性物質も含み得る。
【0098】
「脂肪性物質」という用語は、室温(25℃)の大気圧(1.013×105Pa)下で水に不溶(溶解度が5質量%未満、好ましくは1質量%未満、更により優先的には0.1質量%未満)である有機化合物を意味する。これらは、その構造内において、少なくとも6つの炭素原子及び/又は少なくとも2つの連続したシロキサン基を含む、少なくとも1つの炭化水素系の鎖を有する。更に、脂肪性物質は、一般に、同温度及び圧力条件下において、有機溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、エタノール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、流動ワセリン又はデカメチルシクロペンタシロキサンに可溶である。
【0099】
「油」という用語は、室温(25℃)の大気圧(1.013×105Pa)下で液体である「脂肪性物質」を意味する。
【0100】
「非シリコーン脂肪性物質」という用語は、Si-O結合を含まない脂肪性物質を指し、「シリコーン脂肪性物質」という用語は、少なくとも1つのSi-O結合を含む脂肪性物質を指す。
【0101】
染色又は脱色組成物中に使用することができる液体脂肪性物質は、塩形態の脂肪酸と異なり、即ち、これらは、組成物中に遊離脂肪酸の形態で存在し得る。即ち、これらの脂肪性物質は、塩形態のカルボン酸基(-C(O)O-)を全く含まない。特に、これらの脂肪性物質は、ポリオキシアルキレン化もポリグリセロール化もされていない。
【0102】
好ましくは、脂肪性物質は、塩形態でない脂肪酸と異なる。
【0103】
より詳細には、本発明による液体脂肪性物質は、C6~C16液体炭化水素、16個を超える炭素原子を含む液体炭化水素、動物由来の非シリコーン油、植物又は合成由来のトリグリセリド型の油、フッ素油、液体脂肪アルコール、トリグリセリド以外の液体脂肪酸及び/又は脂肪アルコールエステル並びにシリコーン油、並びにその混合物から選択される。
【0104】
脂肪アルコール及びエステルは、より詳細には、特に1つ又は複数のヒドロキシル基(特に1~4つ)で任意選択的に置換されている、6~30個、より良好には8~30個の炭素原子を含む、少なくとも1つの飽和又は不飽和の直鎖又は分枝の炭化水素系基を含むことを想起されたい。これらが不飽和である場合、これらの化合物は、1~3つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を含み得る。
【0105】
C6~C16液体炭化水素に関して、これらは、直鎖、分枝又は任意選択的に環状であり、好ましくはアルカンである。その例として、ヘキサン、シクロヘキサン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン又はイソヘキサデカン若しくはイソデカンなどのイソパラフィン及びその混合物を挙げることができる。
【0106】
16個を超える炭素原子を含む液体炭化水素は、直鎖又は分枝であり得、鉱物又は合成由来であり得、好ましくは流動パラフィン又は流動ワセリン、ポリデセン、Parleam(登録商標)などの水添ポリイソブテン及びその混合物から選択される。
【0107】
動物由来の炭化水素系油として、パーヒドロスクアレンを挙げることができる。
【0108】
植物又は合成由来のトリグリセリド油は、好ましくは、6~30個の炭素原子を含む液体脂肪酸トリグリセリド、例えばヘプタン酸若しくはオクタン酸トリグリセリド又は例えばヒマワリ油、コーン油、大豆油、カボチャ油、ブドウ種子油、ゴマ種子油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカデミア油、アララ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearinerie Dubois社により販売されているもの又はDynamit Nobel社によりMiglyol(登録商標)810、812及び818の名称で販売されているもの、ホホバ油及びシア脂油並びにその混合物から選択される。
【0109】
フッ素油に関して、BNFL Fluorochemicals社によりFlutec(登録商標)PC1及びFlutec(登録商標)PC3の名称で販売されているパーフルオロメチルシクロペンタン及びパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン;パーフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン;パーフルオロアルカン、例えば3M社によりPF 5050(登録商標)及びPF 5060(登録商標)の名称で販売されているドデカフルオロペンタン及びテトラデカフルオロヘキサン又はAtochem社からForalkyl(登録商標)の名称で販売されているブロモパーフルオロオクチル;ノナフルオロメトキシブタン及びノナフルオロエトキシイソブタン;パーフルオロモルホリン誘導体、例えば3M社によりPF 5052(登録商標)の名称で販売されている4-トリフルオロメチルパーフルオロモルホリンから選択することができる。
【0110】
液体脂肪アルコールは、より詳細には、6~30個の炭素原子、好ましくは8~30個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の飽和又は不飽和アルコール、好ましくは不飽和又は分岐アルコールから選択することができる。その例として、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ウンデシレニルアルコール及びリノレイルアルコール並びにその混合物を挙げることができる。
【0111】
上述のトリグリセリド以外の脂肪酸及び/又は脂肪アルコールの液体エステルに関して、とりわけ、飽和又は不飽和の直鎖C1~C26又は分枝C3~C26脂肪族一価酸又は多価酸と、飽和又は不飽和の直鎖C1~C26又は分枝C3~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとのエステルを挙げることができ、このエステルの総炭素数は、6以上であり、より有利には10以上である。
【0112】
モノアルコールのエステルに関して、好ましくは、本発明のエステルを誘導するアルコール及び酸の少なくとも1種は、分枝である。
【0113】
モノエステルの中では、ベヘン酸ジヒドロアビエチル、ベヘン酸オクチルドデシル、ベヘン酸イソセチル、乳酸イソステアリル、乳酸ラウリル、乳酸リノレイル、乳酸オレイル、オクタン酸イソステアリル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸オクチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸イソセチル、ステアリン酸イソセチル、オクタン酸イソデシル、オレイン酸イソデシル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸イソステアリル、アセチルリシノール酸メチル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、エルカ酸オクチルドデシル、エルカ酸オレイル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸アルキル、例えばイソプロピル2-オクチルドデシルミリステート、ステアリン酸イソブチル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル及びその混合物を挙げることができる。
【0114】
好ましくは、一価酸及び一価アルコールのモノエステルの中では、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリル並びにその混合物が使用されるであろう。
【0115】
更にこの変形形態に関連する範囲内において、C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル及びモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC2~C26ジヒドロキシアルコール、トリヒドロキシアルコール、テトラヒドロキシアルコール又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルも使用することができる。
【0116】
とりわけ、セバシン酸ジエチル;セバシン酸ジイソプロピル;アジピン酸ジイソプロピル;アジピン酸ジ-n-プロピル;アジピン酸ジオクチル;アジピン酸ジイソステアリル;マレイン酸ジオクチル;ウンデシレン酸グリセリル;ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル;モノリシノール酸ペンタエリスリチル;テトライソノナン酸ペンタエリスリチル;テトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル;テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル;テトラオクタン酸ペンタエリスリチル;ジカプリル酸プロピレングリコール;ジカプリン酸プロピレングリコール;エルカ酸トリデシル;クエン酸トリイソプロピル;クエン酸トリイソステアリル;トリ乳酸グリセリル;トリオクタン酸グリセリル;クエン酸トリオクチルドデシル;クエン酸トリオレイル;ジオクタン酸プロピレングリコール;ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール;ジイソノナン酸ジエチレングリコール;及びジステアリン酸ポリエチレングリコール;並びにその混合物を挙げることができる。
【0117】
染色又は脱色組成物は、脂肪エステルとして、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルも含み得る。「糖」という用語は、幾つかのアルコール官能基を有し、アルデヒド又はケトン官能基を含むか又は含まず、且つ少なくとも4つの炭素原子を含む、酸素を有する炭化水素系の化合物を指すことを想起されたい。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖であり得る。
【0118】
好適な糖の例として、スクロース、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース並びにその誘導体、とりわけメチル誘導体などのアルキル誘導体、例えばメチルグルコースを挙げることができる。
【0119】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、上述の糖と、直鎖又は分枝の飽和又は不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステル混合物を含む群から選択することができる。これらが不飽和である場合、これらの化合物は、1~3つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を含み得る。
【0120】
この変形形態によるエステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステル、ポリエステル並びにその混合物からも選択され得る。
【0121】
これらのエステルは、例えば、オレエート、ラウレート、パルミテート、ミリステート、ベヘネート、ココエート、ステアレート、リノレエート、リノレネート、カプレート、アラキドネート又はその混合物、特に混合オレオパルミテート、オレオステアレート及びパルミトステアレートなどである。
【0122】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、特にスクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノ又はジオレエート、ステアレート、ベヘネート、オレオパルミテート、リノレエート、リノレネート及びオレオステアレート並びにその混合物が使用される。
【0123】
その例として、メチルグルコースジオレエートである、Amerchol社からGlucate(登録商標)DOの名称で販売されている製品を挙げることができる。
【0124】
好ましくは、一価酸と一価アルコールとの液体エステルが使用されるであろう。
【0125】
染色又は脱色組成物に使用することができるシリコーン油は、揮発性又は不揮発性の環状、直鎖又は分枝シリコーン油であり得、これらは、未変性であるか又は有機基で変性されており、好ましくは25℃における粘度が5×10-6~2.5m2/s、好ましくは1×10-5~1m2/sである。
【0126】
好ましくは、シリコーン油は、ポリジアルキルシロキサン、特にポリジメチルシロキサン(PDMS)及び少なくとも1つのアリール基を含む液体ポリオルガノシロキサンから選択される。
【0127】
これらのシリコーン油はまた、有機変性され得る。染色又は脱色組成物に使用することができる有機変性シリコーン油は、好ましくは、例えばアミン基及びアルコキシ基から選択される炭化水素系基を介して結合している1つ又は複数の有機官能基をその構造内に含む、上に定義した液体シリコーンである。
【0128】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll’s Chemistry and Technology of Silicones(1968),Academic Pressにおいてより詳細に定義されている。これらは、揮発性又は不揮発性であり得る。
【0129】
これらが揮発性である場合、シリコーン油は、より詳細には、60℃~260℃の沸点を有するものから選択され、更に詳細には以下のものから選択される。
【0130】
(i)3~7つ、好ましくは4~5つのケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion CarbideによりVolatile Silicone(登録商標)7207の名称又はRhodiaによりSilbione(登録商標)70045 V2の名称で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union CarbideによりVolatile Silicone(登録商標)7158の名称及びRhodiaによりSilbione(登録商標)70045 V5の名称で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン並びにその混合物である。
【0131】
Union Carbide社により販売されているVolatile Silicone(登録商標)FZ 3109などのジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン型の環状コポリマーも挙げることができる。
【0132】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラ(トリメチルシリル)ペンタエリスリトールとの混合物(50/50)及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1’-ビス(2,2,2’,2’,3,3’-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物も挙げることができる。
【0133】
(ii)2~9つのケイ素原子を含み、25℃における粘度が5×10-6m2/s以下である直鎖揮発性ポリジアルキルシロキサン。その例として、特にToray Silicone社によりSH 200の名称で販売されているデカメチルテトラシロキサンが挙げられる。ここに分類されるシリコーンは、Cosmetics and Toiletries,Vol.91,Jan.76,pages 27-32,Todd&Byers Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公開されている記事にも記載されている。
【0134】
好ましくは、不揮発性ポリジアルキルシロキサンが使用される。
【0135】
これらのシリコーン油は、より詳細には、ポリジアルキルシロキサンから選択され、その中でも、主として、トリメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサンを挙げることができる。シリコーンの粘度は、ASTM規格445付録Cに準拠して25℃で測定される。
【0136】
これらのポリジアルキルシロキサンの中でも、これらに限定されるものでないが、以下に示す市販の製品を挙げることができる:
- Rhodiaにより販売されている47及び70047シリーズのSilbione(登録商標)油又はMirasil(登録商標)油、例えば70047 V 500000油;
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油;
- Dow Corning社からの200シリーズの油、例えば60000mm2/sの粘度を有するDC200;
- General ElectricからのViscasil(登録商標)油及びGeneral ElectricからのSFシリーズの特定の油(SF 96、SF 18)。
【0137】
ジメチコノール(CTFA)の名称で知られている、ジメチルシラノール末端基を有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社からの48シリーズの油も挙げることができる。
【0138】
染色又は脱色組成物中に使用することができる有機変性シリコーンは、その構造内において、炭化水素系基を介して結合している1つ又は複数の有機官能基を含む、上に定義したシリコーンである。
【0139】
少なくとも1つのアリール基を含む液体ポリオルガノシロキサンに関して言えば、これらは、特に、上述の有機官能基で官能基化されたポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサンであり得る。
【0140】
ポリアルキルアリールシロキサンは、特に、25℃における粘度が1×10-5~5×10-2m2/sの範囲である、直鎖及び/又は分枝のポリジメチル/メチルフェニルシロキサン及びポリジメチル/ジフェニルシロキサンから選択される。
【0141】
これらのポリアルキルアリールシロキサンの中でも、例えば、以下の名称で販売されている製品を挙げることができる:
- Rhodiaからの70641シリーズのSilbione(登録商標)油;
- RhodiaからのRhodorsil(登録商標)70633及び763シリーズの油;
- Dow Corningからの油であるDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid;
- BayerからのPKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20;
- BayerからのPN及びPHシリーズのシリコーン、例えば製品PN1000及びPH1000;
- General ElectricからのSFシリーズの特定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0142】
有機変性シリコーンの中でも、
- 置換又は無置換のアミン基(例えば、Genesee社によりGP 4 Silicone Fluid及びGP 7100の名称で販売されている製品又はDow Corning社によりQ28220及びDow Corning 929若しくは939の名称で販売されている製品。置換アミン基は、特にC1~C4アミノアルキル基である);
- アルコキシ基;
- ヒドロキシル基
を含むポリオルガノシロキサンを挙げることができる。
【0143】
液体脂肪性物質は、優先的には、16個を超える炭素原子を含む液体炭化水素、植物油、液体脂肪アルコール及び液体脂肪エステル、シリコーン油並びにその混合物から選択される。
【0144】
優先的には、液体脂肪性物質は、16個を超える炭素原子を含む液体炭化水素、特に流動ワセリンから選択される。
【0145】
特定の実施形態において、染色又は脱色組成物に含まれる液体脂肪性物質の総含有量は、染色又は脱色組成物の総質量に対して20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より優先的には35質量%以上である。
【0146】
より優先的には、染色又は脱色組成物に含まれる液体脂肪性物質の総含有量は、染色又は脱色組成物の総質量に対して20質量%~80質量%の範囲、好ましくは30質量%~70質量%の範囲である。
【0147】
アルカリ剤
染色又は脱色組成物は、任意選択的に、1種又は複数のアルカリ剤も含むことができる。
【0148】
好ましくは、染色又は脱色組成物は、1種又は複数の有機又は無機アルカリ剤を含む。
【0149】
無機アルカリ剤は、好ましくは、アンモニア水、アルカリ金属カーボネート若しくはバイカーボネート、例えば炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、アルカリ金属シリケート若しくはメタシリケート、例えばケイ酸ナトリウム若しくはカリウム若しくはメタケイ酸ナトリウム若しくはカリウム又はその混合物から選択される。
【0150】
有機アルカリ剤は、好ましくは、25℃におけるpKbが12未満、好ましくは10未満、更に有利には6未満である有機アミンから選択される。これは、最も高い塩基性度を有する官能基に対応するpKbであることに留意すべきである。加えて、有機アミンは、10個を超える炭素原子を含むアルキル又はアルケニル脂肪鎖を含まない。
【0151】
有機アルカリ剤は、例えば、アルカノールアミン、オキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化エチレンジアミン、アミノ酸並びに以下の式(III):
【化6】
(式(III)中、
〇Wは、ヒドロキシル基又は(C
1~C
6)アルキル基で任意選択的に置換されており、且つ/又は1つ又は複数の酸素などのヘテロ原子又はNR
uが任意選択的に介在する、二価のC
1~C
6アルキレン基であり;
〇R
x、R
y、R
z、R
t及びR
uは、同一であるか又は異なり得、水素原子又は(C
1~C
6)アルキル、C
1~C
6ヒドロキシアルキル若しくはC
1~C
6アミノアルキルから選択される基を表す)
の化合物から選択される。
【0152】
式(III)のアミンの例として、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、スペルミン及びスペルミジンを挙げることができる。
【0153】
「アルカノールアミン」という用語は、第1級、第2級又は第3級アミン官能基と、1つ又は複数のヒドロキシル基を有する1つ又は複数の直鎖又は分枝C1~C8アルキル基とを含む有機アミンを意味する。
【0154】
同一の又は異なる1~3つのC1~C4ヒドロキシアルキル基を含むモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンなどのアルカノールアミンから選択される有機アミンは、本発明を実施するのに特に好適である。
【0155】
この種の化合物の中でも、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール及びトリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタンを挙げることができる。
【0156】
より詳細には、使用することができるアミノ酸は、L体、D体又はラセミ体の形態の天然又は合成由来のものであり、より詳細にはカルボン酸官能基、スルホン酸官能基、ホスホン酸官能基及びリン酸官能基から選択される少なくとも1つの酸官能基を含む。このアミノ酸は、中性形態又はイオン形態であり得る。
【0157】
染色又は脱色組成物に使用することができるアミノ酸としては、特に、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、オルニチン、シトルリン、アスパラギン、カルニチン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、N-フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンを挙げることができる。
【0158】
有利には、アミノ酸は、追加のアミン官能基を任意選択的に環内又はウレイド基内に含む塩基性アミノ酸である。
【0159】
このような塩基性アミノ酸は、好ましくは、以下の式(IV):
R-CH2-CH(NH2)-C(O)-OH (IV)
(式中、Rは、イミダゾリル、好ましくはイミダゾリル-4-イル;アミノプロピル;アミノエチル;-(CH2)2N(H)-C(O)-NH2;及び-(CH2)2-N(H)-C(NH)-NH2から選択される基を表す)
に対応するもの及びまたその塩から選択される。
【0160】
式(IV)に対応する化合物は、ヒスチジン、リジン、アルギニン、オルニチン及びシトルリンである。
【0161】
有機アミンは、複素環型の有機アミンからも選択することができる。アミノ酸に関して既に挙げたヒスチジンに加えて、特にピリジン、ピペリジン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール及びベンゾイミダゾールも挙げることができる。
【0162】
有機アミンは、アミノ酸ジペプチドからも選択することができる。本発明において使用することができるアミノ酸ジペプチドとしては、特にカルノシン、アンセリン及びバレニンを挙げることができる。
【0163】
有機アミンは、グアニジン官能基を含む化合物からも選択することができる。本発明で使用され得るこの種のアミンとして、アミノ酸として既に挙げたアルギニンに加えて、特にクレアチン、クレアチニン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン、グリコシアミン、メトホルミン、アグマチン、n-アミジノアラニン、3-グアニジノプロピオン酸、4-グアニジノ酪酸及び2-([アミノ(イミノ)メチル]アミノ)エタン-1-スルホン酸を挙げることができる。
【0164】
ハイブリッド型化合物としては、上に述べたアミンと炭酸又は塩酸などの酸との塩を挙げることができる。
【0165】
特に、炭酸グアニジン又はモノエタノールアミンヒドロクロリドを使用することができる。
【0166】
好ましくは、染色又は脱色組成物中に存在するアルカリ剤は、アンモニア水、アルカノールアミン、アルカリ金属シリケート、アルカリ金属メタシリケート及びその混合物から選択される。
【0167】
より優先的には、染色組成物中に存在するアルカリ剤は、モノエタノールアミンである。
【0168】
より優先的には、脱色組成物中に存在するアルカリ剤は、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及びその混合物から選択される。
【0169】
染色又は脱色組成物中に含まれるアルカリ剤の総含有量は、染色又は脱色組成物の総質量に対して0.01質量%~30質量%の範囲、好ましくは0.1質量%~20質量%の範囲であり得る。
【0170】
溶媒
染色又は脱色組成物は、任意選択的に、1種又は複数の有機溶媒も含むことができる。
【0171】
有機溶媒の例としては、直鎖又は分枝のC2~C4アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール;グリセロール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びモノエチルエーテルに加えて、芳香族アルコール又はエーテル、例えばベンジルアルコール又はフェノキシエタノール並びにその混合物を挙げることができる。
【0172】
有機溶媒は、染色又は脱色組成物中において、染色又は脱色組成物の総質量に対して0.01質量%~30質量%の範囲、好ましくは2質量%~25質量%の範囲の含有量で存在することができる。
【0173】
染料組成物
本発明の特定の実施形態によれば、本方法のステップii)においてケラチン繊維に適用される組成物は、染料組成物である。
【0174】
染料組成物は、酸化染料、直接染料及びその混合物、好ましくは酸化染料から選択される少なくとも1種の着色剤を含むことができる。
【0175】
酸化染料
酸化染料は、一般に、1種又は複数のカップリング剤(カプラーとしても知られる)を任意選択的に組み合わせた1種又は複数の酸化性塩基から選択される。
【0176】
酸化性塩基
染料組成物は、任意選択的に、有利にはケラチン繊維の染色に従来使用されているものから選択される1種又は複数の酸化性塩基を含むことができる。
【0177】
一例として、酸化性塩基は、パラ-フェニレンジアミン、ビス(フェニル)アルキレンジアミン、パラ-アミノフェノール、オルト-アミノフェノール及び複素環式塩基並びに対応する付加塩から選択される。
【0178】
パラフェニレンジアミンの中でも、例えば、パラ-フェニレンジアミン、パラ-トルエンジアミン、2-クロロ-パラ-フェニレンジアミン、2,3-ジメチル-パラ-フェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラ-フェニレンジアミン、2,6-ジエチル-パラ-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-パラ-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-パラ-フェニレンジアミン、N,N-ジエチル-パラ-フェニレンジアミン、N,N-ジプロピル-パラ-フェニレンジアミン、4-アミノ-N,N-ジエチル-3-メチルアニリン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-パラ-フェニレンジアミン、4-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-メチルアニリン、4-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-クロロアニリン、2-β-ヒドロキシエチル-パラ-フェニレンジアミン、2-メトキシメチル-パラ-フェニレンジアミン、2-フルオロ-パラ-フェニレンジアミン、2-イソプロピル-パラ-フェニレンジアミン、N-(β-ヒドロキシプロピル)-パラ-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシメチル-パラ-フェニレンジアミン、N,N-ジメチル-3-メチル-パラ-フェニレンジアミン、N-エチル-N-(β-ヒドロキシエチル)-パラ-フェニレンジアミン、N-(β、γ-ジヒドロキシプロピル)-パラ-フェニレンジアミン、N-(4’-アミノフェニル)-パラ-フェニレンジアミン、N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチルオキシ-パラ-フェニレンジアミン、2-β-アセチルアミノエチルオキシ-パラ-フェニレンジアミン、N-(β-メトキシエチル)-パラ-フェニレンジアミン、4-アミノフェニルピロリジン、2-チエニル-パラ-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチルアミノ-5-アミノトルエン及び3-ヒドロキシ-1-(4’-アミノフェニル)ピロリジン並びに酸との対応する付加塩を挙げることができる。
【0179】
上に述べたパラ-フェニレンジアミンの中でも、パラ-フェニレンジアミン、パラ-トルエンジアミン、2-イソプロピル-パラ-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチル-パラ-フェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチルオキシ-パラ-フェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラ-フェニレンジアミン、2,6-ジエチル-パラ-フェニレンジアミン、2,3-ジメチル-パラ-フェニレンジアミン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-パラ-フェニレンジアミン、2-クロロ-パラ-フェニレンジアミン及び2-β-アセチルアミノエチルオキシ-パラ-フェニレンジアミン並びに酸との対応する付加塩が特に好ましい。
【0180】
ビス(フェニル)アルキレンジアミンの中でも、例えば、N,N’-ビス(β-ヒドロキシエチル)-N,N’-ビス(4’-アミノフェニル)-1,3-ジアミノプロパノール、N,N’-ビス(β-ヒドロキシエチル)-N,N’-ビス(4’-アミノフェニル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テトラメチレンジアミン、N,N’-ビス(β-ヒドロキシエチル)-N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テトラメチレンジアミン、N,N’-ビス(4-メチルアミノフェニル)テトラメチレンジアミン、N,N’-ビス(エチル)-N,N’-ビス(4’-アミノ-3’-メチルフェニル)エチレンジアミン及び1,8-ビス(2,5-ジアミノフェノキシ)-3,6-ジオキサオクタン並びに対応する付加塩を挙げることができる。
【0181】
パラ-アミノフェノールの中でも、例えば、パラ-アミノフェノール、4-アミノ-3-メチルフェノール、4-アミノ-3-フルオロフェノール、4-アミノ-3-クロロフェノール、4-アミノ-3-ヒドロキシメチルフェノール、4-アミノ-2-メチルフェノール、4-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェノール、4-アミノ-2-メトキシメチルフェノール、4-アミノ-2-アミノメチルフェノール、4-アミノ-2-(β-ヒドロキシエチルアミノメチル)フェノール及び4-アミノ-2-フルオロフェノール並びに酸との対応する付加塩を挙げることができる。
【0182】
オルト-アミノフェノールの中でも、例えば、2-アミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール及び5-アセトアミド-2-アミノフェノール並びに酸との対応する付加塩を挙げることができる。
【0183】
複素環式塩基の中でも、例えば、ピリジン、ピリミジン及びピラゾール誘導体を挙げることができる。
【0184】
ピリジン誘導体の中でも、例えば、特許である英国特許出願公開第1026978号明細書及び英国特許出願公開第1153196号明細書に記載されている化合物、例えば2,5-ジアミノピリジン、2-(4-メトキシフェニル)アミノ-3-アミノピリジン及び3,4-ジアミノピリジン並びに対応する付加塩を挙げることができる。
【0185】
本発明に有用な他のピリジン酸化性塩基は、例えば、仏国特許出願公開第2801308号に記載されている酸化性塩基である3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン又は対応する付加塩である。その例として、ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、2-アセチルアミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、2-(モルホリン-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-2-カルボン酸、2-メトキシピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-7-イル)メタノール、2-(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-5-イル)エタノール、2-(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-7-イル)エタノール、(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-2-イル)メタノール、3,6-ジアミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン、3,4-ジアミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3,7-ジアミン、7-(モルホリン-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3,5-ジアミン、5-(モルホリン-4-イル)ピラゾロ[1,5-a]ピリド-3-イルアミン、2-[(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-5-イル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール、2-[(3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリド-7-イル)(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタノール、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-オール、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-4-オール、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-オール、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-オール、2-β-ヒドロキシエトキシ-3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン及び2-(4-ジメチルピペラジニウム-1-イル)-3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジン並びに対応する付加塩を挙げることができる。
【0186】
より詳細には、本発明に有用な酸化性塩基は、3-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリジンから選択され、2位の炭素原子において、
a)(ジ)(C1~C6)(アルキル)アミノ基(前記アルキル基は、場合により、少なくとも1つのヒドロキシル、アミノ又はイミダゾリウム基で置換されている);
b)1つ又は複数の(C1~C6)アルキル基で任意選択的に置換されている、1~3つのヘテロ原子を含む、任意選択的にカチオン性の5~7員のヘテロシクロアルキル基、例えばジ(C1~C4)アルキルピペラジニウム基;又は
c)1つ又は複数のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている(C1~C6)アルコキシ基、例えばβ-ヒドロキシアルコキシ基
で置換されているもの及び対応する付加塩が好ましい。
【0187】
ピリミジン誘導体の中でも、例えば、特許である独国特許第2359399号明細書;特開平02-169571号公報;特開平05-63124号公報;欧州特許第0770375号明細書又は特許出願である国際公開第96/15765号パンフレットに記載されている化合物、例えば2,4,5,6-テトラアミノピリジミン、4-ヒドロキシ-2,5,6-トリアミノピリジミン、2-ヒドロキシ-4,5,6-トリアミノピリジミン、2,4-ジヒドロキシ-5,6-ジアミノピリジミン、2,5,6-トリアミノピリミジン及びその付加塩並びに互変異性平衡が存在する場合にはその互変異性体を挙げることができる。
【0188】
ピラゾール誘導体の中でも、特許である独国特許第3843892号明細書及び独国特許第4133957号明細書並びに特許出願である国際公開第94/08969号パンフレット、国際公開第94/08970号パンフレット、仏国特許出願公開第A2733749号明細書、独国特許第19543988号明細書に記載されている化合物、例えば4,5-ジアミノ-1-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)ピラゾール、3,4-ジアミノピラゾール、4,5-ジアミノ-1-(4’-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1,3-ジメチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-メチル-1-フェニルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-メチル-3-フェニルピラゾール、4-アミノ-1,3-ジメチル-5-ヒドラジノピラゾール、1-ベンジル-4,5-ジアミノ-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-tert-ブチル-1-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-tert-ブチル-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-エチル-3-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-1-エチル-3-(4’-メトキシフェニル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-エチル-3-ヒドロキシメチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-ヒドロキシメチル-1-メチルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-ヒドロキシメチル-1-イソプロピルピラゾール、4,5-ジアミノ-3-メチル-1-イソプロピルピラゾール、4-アミノ-5-(2’-アミノエチル)アミノ-1,3-ジメチルピラゾール、3,4,5-トリアミノピラゾール、1-メチル-3,4,5-トリアミノピラゾール、3,5-ジアミノ-1-メチル-4-メチルアミノピラゾール及び3,5-ジアミノ-4-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-1-メチルピラゾール並びに対応する付加塩を挙げることができる。4,5-ジアミノ-1-(β-メトキシエチル)ピラゾールも使用することができる。
【0189】
好ましくは、4,5-ジアミノピラゾールが使用され、更により優先的には4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)ピラゾール及び/又は対応する塩が使用されるであろう。
【0190】
更に、ピラゾール誘導体として、ジアミノ-N,N-ジヒドロピラゾロピラゾロン、特に特許出願である仏国特許出願公開第A-2886136号明細書に記載されているもの、例えば以下の化合物及び対応する付加塩:2,3-ジアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-エチルアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-イソプロピルアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-(ピロリジン-1-イル)-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、4,5-ジアミノ-1,2-ジメチル-1,2-ジヒドロピラゾール-3-オン、4,5-ジアミノ-1,2-ジエチル-1,2-ジヒドロピラゾール-3-オン、4,5-ジアミノ-1,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,2-ジヒドロピラゾール-3-オン、2-アミノ-3-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2-アミノ-3-ジメチルアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、2,3-ジアミノ-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H,6H-ピリダジノ[1,2-a]ピラゾール-1-オン、4-アミノ-1,2-ジエチル-5-(ピロリジン-1-イル)-1,2-ジヒドロピラゾール-3-オン、4-アミノ-5-(3-ジメチルアミノピロリジン-1-イル)-1,2-ジエチル-1,2-ジヒドロピラゾール-3-オン及び2,3-ジアミノ-6-ヒドロキシ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オンを挙げることができる。
【0191】
好ましくは、2,3-ジアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン及び/又は対応する塩が使用されるであろう。
【0192】
好ましく使用される複素環式塩基は、4,5-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチル)ピラゾール及び/若しくは2,3-ジアミノ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-1-オン並びに/又は対応する塩であろう。
【0193】
カップリング剤
染料組成物は、任意選択的に、有利にはケラチン繊維の染色に従来使用されているものから選択することができる1種又は複数のカップリング剤を含むことができる。
【0194】
これらのカップリング剤の中でも、特にメタ-フェニレンジアミン、メタ-アミノフェノール、メタ-ジフェノール、ナフタレンベースのカップリング剤及び複素環式カップリング剤並びにまた対応する付加塩を挙げることができる。
【0195】
例えば、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-2-メチルベンゼン、4-クロロ-1,3-ジヒドロキシベンゼン、2,4-ジアミノ-1-(β-ヒドロキシエチルオキシ)ベンゼン、2-アミノ-4-(β-ヒドロキシエチルアミノ)-1-メトキシベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、3-ウレイドアニリン、3-ウレイド-1-ジメチルアミノベンゼン、セサモール、1-β-ヒドロキシエチルアミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、α-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、6-ヒドロキシインドール、4-ヒドロキシインドール、4-ヒドロキシ-N-メチルインドール、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,5-ジアミノ-2,6-ジメトキシピリジン、1-N-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ビス(β-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、6-ヒドロキシインドリン、2,6-ジヒドロキシ-4-メチルピリジン、1-H-3-メチルピラゾール-5-オン、1-フェニル-3-メチルピラゾール-5-オン、2,6-ジメチルピラゾロ[1,5-b]-1,2,4-トリアゾール、2,6-ジメチル[3,2-c]-1,2,4-トリアゾール及び6-メチルピラゾロ[1,5-a]ベンゾイミダゾール、2-メチル-5-アミノフェノール、5-N-(β-ヒドロキシエチル)アミノ-2-メチルフェノール、3-アミノフェノール及び3-アミノ-2-クロロ-6-メチルフェノール、酸との対応する付加塩及び対応する混合物を挙げることができる。
【0196】
一般に、本発明に関連して使用することができる酸化性塩基及びカップリング剤の付加塩は、特に酸との付加塩、例えばヒドロクロリド、ヒドロブロミド、スルフェート、シトレート、スクシネート、タートレート、ラクテート、トシレート、ベンゼンスルホネート、ホスフェート及びアセテートから選択される。
【0197】
有利には、酸化性塩基は、それぞれ染料組成物の総質量に対して0.001質量%~10質量%、好ましくは染料組成物の総質量に対して0.005質量%~5質量%を占める。
【0198】
カップリング剤が存在する場合、これは、有利には、それぞれ染料組成物の総質量に対して0.001質量%~10質量%、好ましくは染料組成物の総質量に対して0.005質量%~5質量%を占める。
【0199】
直接染料
染料組成物は、任意選択的に、1種又は複数の直接染料を含むことができる。
【0200】
好適な直接染料の例としては、単独で又は混合物形態でのアゾ直接染料;(ポリ)メチン染料、例えばシアニン、ヘミシアニン及びスチリル;カルボニル染料;アジン染料;ニトロ(ヘテロ)アリール染料;トリ(ヘテロ)アリールメタン染料;ポルフィリン染料;フタロシアニン染料;及び天然の直接染料を挙げることができる。
【0201】
直接染料は、好ましくは、カチオン性直接染料である。以下の式(IIIa)及び(III’a)のヒドラゾノカチオン性染料、アゾカチオン性染料(IVa)及び(IV’a)並びにジアゾカチオン性染料(Va)を挙げることができる:
【化7】
(式(IIIa)、(III’a)、(IVa)、(IV’a)及び(Va)中、
〇Het
+は、任意選択的に、好ましくは1つ又は複数のメチルなどの(C
1~C
8)アルキル基で置換されている、好ましくは環内にカチオン性電荷を有する、イミダゾリウム、インドリウム又はピリジニウムなどのカチオン性ヘテロアリール基を表し;
〇Ar
+は、環外にカチオン性電荷、好ましくはアンモニウム、特にトリメチルアンモニウムなどのトリ(C
1~C
8)アルキルアンモニウムを有する、フェニル又はナフチルなどのアリール基を表し;
〇Arは、好ましくは、1つ若しくは複数の電子供与性基、例えばi)任意選択的に置換されている(C
1~C
8)アルキル、ii)任意選択的に置換されている(C
1~C
8)アルコキシ、iii)アルキル基がヒドロキシル基で任意選択的に置換されている(ジ)(C
1~C
8)(アルキル)アミノ、iv)アリール(C
1~C
8)アルキルアミノ、v)任意選択的に置換されているN-(C
1~C
8)アルキル-N-アリール(C
1~C
8)アルキルアミノで任意選択的に置換されているアリール基、特にフェニルを表すか、又は一変形形態として、Arは、ジュロリジン基を表し;
〇Ar’は、好ましくは、1つ又は複数の(C
1~C
8)アルキル基、ヒドロキシル基又は(C
1~C
8)アルコキシ基で任意選択的に置換されている、フェニレン、特にパラフェニレン又はナフタレンなどの任意選択的に置換されている二価の(ヘテロ)アリーレン基を表し;
〇Ar’’は、好ましくは、1つ又は複数の(C
1~C
8)アルキル、ヒドロキシル、(ジ)(C
1~C
8)(アルキル)アミノ、(C
1~C
8)アルコキシ又はフェニル基で任意選択的に置換されている、フェニル又はピラゾリルなどの任意選択的に置換されている(ヘテロ)アリール基を表し;
〇R
a及びR
bは、同一であるか又は異なり得、水素原子若しくは好ましくはヒドロキシル基で任意選択的に置換されている(C
1~C
8)アルキル基;又は変形形態として、置換基R
aがHet
+の置換基と、且つ/若しくはR
bがArの置換基と、且つ/若しくはR
aがR
bと、それらが結合している原子と一緒になって、(ヘテロ)シクロアルキルを形成し;
特に、R
a及びR
bは、水素原子又はヒドロキシル基で任意選択的に置換されている(C
1~C
4)アルキル基を表し;
〇An
-は、アニオン性対イオン、例えばメシレート又はハライドを表す)。
【0202】
特に、上に定義した式(IIIa)、(III’a)及び(IVa)の、環内にカチオン電荷を有するアゾ及びヒドラゾノカチオン染料を挙げることができる。より詳細には、特許出願である国際公開第95/15144号パンフレット、国際公開第95/01772号パンフレット及び欧州特許第714954号明細書に記載されている染料から誘導される、式(IIIa)、(III’a)及び(IVa)のものである。
【0203】
好ましくは、カチオン性部分は、以下の誘導体から誘導されたものである:
【化8】
(式(IIIa-1)及び(IVa-1)中、
- R
1は、メチルなどの(C
1~C
4)アルキル基を表し;
- R
2及びR
3は、同一であるか又は異なり得、水素原子又はメチルなどの(C
1~C
4)アルキル基を表し;
- R
4は、水素原子又は電子供与性基、例えば任意選択的に置換されている(C
1~C
8)アルキル基、任意選択的に置換されている(C
1~C
8)アルコキシ基若しくはそのアルキル基が任意選択的にヒドロキシル基で置換されている(ジ)(C
1~C
8)(アルキル)アミノ基を表し;特に、R
4は、水素原子を表し;
- Zは、CH基又は窒素原子、好ましくはCHを表し;
- An
-は、アニオン性対イオン、例えばメシレート又はハライドを表す)。
【0204】
特に、式(IIIa-1)及び(IVa-1)の染料は、ベーシックレッド51(Basic Red 51)、ベーシックイエロー87(Basic Yellow 87)及びベーシックオレンジ31(Basic Orange 31)又は対応する誘導体から選択される。
【化9】
【0205】
本発明に従って使用することができる天然直接染料の中では、ヘンノタンニン酸、ジュグロン、アリザリン、プルプリン、カルミン酸、ケルメス酸、プルプロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジン及びオルセインを挙げることができる。これらの天然染料を含有する抽出物又は煎出液、特にヘンナベースの湿布又は抽出物も使用することができる。
【0206】
直接染料が存在する場合、これは、より詳細には、染料組成物の総質量に対して0.001質量%~10質量%、好ましくは0.005質量%~5質量%を占める。
【0207】
染色又は脱色組成物は、任意選択的に、上に述べた化合物と異なる1種又は複数の添加剤も含み得、その中でも、カチオン性、アニオン性、非イオン性若しくは両性ポリマー又はその混合物、抗フケ剤、抗脂漏剤、脱毛防止剤及び/又は毛髪再生促進剤、ビタミン及びパンテノールなどのプロビタミン、日焼け止め剤、無機又は有機顔料、金属イオン封鎖剤、可塑剤、可溶化剤、酸性化剤、無機又は有機増粘剤、特に高分子増粘剤、乳白剤又は真珠光沢剤、酸化防止剤、ヒドロキシ酸、香料、防腐剤、顔料並びにセラミドを挙げることができる。
【0208】
本方法に関する更なる特徴
組成物(A)は、濡れた又は乾いたケラチン繊維に適用することができる。
【0209】
浴比
組成物(A)又は染色若しくは脱色組成物は、有利には、ケラチン繊維に、ケラチン繊維1グラム当たりで組成物(A)又は染色若しくは脱色組成物が0.1g~10gの範囲となる量で適用することができる。
【0210】
好ましくは、組成物(A)は、ケラチン繊維に、ケラチン繊維1グラム当たりで組成物(A)が0.2g~5gの範囲となる量で適用することができる。
【0211】
放置時間ステップ
本方法は、好ましくは、ステップi)及びii)間において、組成物(A)をケラチン繊維上に1分間~60分間の範囲、より優先的には3分間~40分間の範囲、更により優先的には3分間~20分間の範囲の時間にわたって放置することを含むステップi’)も含む。
【0212】
放置時間ステップは、15~45℃の範囲の温度、好ましくは室温(25℃)で行うことができる。放置時間は、密閉系で行うことができる。密閉系の非限定的な例として、アルミ箔若しくはプラスチックフィルムから作製された包み型の密閉系又は穴が開いている若しくは開いていないヘアキャップを挙げることができる。
【0213】
濯ぎ及び/又は乾燥ステップ
本方法は、ステップi)又はi’)後且つステップii)前に、ケラチン繊維を濯ぎ且つ/又は乾燥させるステップ、好ましくは乾燥ステップも含むことができる。
【0214】
「濯ぎステップ」という用語は、水で濯ぐステップを意味する。
【0215】
乾燥ステップは、吸収紙、ヘアドライヤー若しくはフード型ドライヤーを使用するか又は自然乾燥させることにより実施することができる。
【0216】
好ましい一実施形態によれば、本方法は、ステップi)又はi’)とステップii)との間に濯ぎステップを含まない。
【0217】
特に好ましい一実施形態によれば、本方法は、ステップi)又はi’)とステップii)との間に濯ぎステップを含まず、ステップi)又はi’)とステップii)との間に乾燥ステップ、好ましくは自然乾燥させるステップを含む。
【0218】
組成物(A)
第2の態様によれば、本発明の主題は、上に定義した組成物(A)である。
【0219】
使用
第3の態様によれば、本発明の主題は、上に定義した組成物(A)の、染色又は脱色方法の前処理組成物としての使用である。
【0220】
第4の態様によれば、本発明の主題は、上に定義した組成物(A)の、ケラチン繊維を保護するため、好ましくは染色又は脱色処理中にそれらを破断から保護するための使用である。
【0221】
多区画デバイス(キット)
第5の態様によれば、本発明の主題は、
- 上に定義した組成物(A)を収容する第1の区画と;
- 少なくとも1種の化学的酸化剤を含む組成物を収容する第2の区画と;
- 任意選択的に、酸化染料、直接染料及びその混合物から選択される少なくとも1種の着色剤を含む組成物を収容する第3の区画と
を含むデバイス(キット)である。
【0222】
化学的酸化剤及び着色剤に関して上に定義した任意選択的な技術的特徴は、第2及び第3の区画に含まれる組成物にも適用される。
【実施例】
【0223】
以下に示す実施例により、本発明をより明確に理解することが可能になるが、これらは、本発明の性質を限定するものではない。以下に示す実施例において、別段の指定がない限り、量は、全て組成物の総質量に対する質量百分率で表す。
【0224】
以下の文章における「アルカリ溶解度(AS)」という用語は、100mgのケラチン繊維試料に65℃で0.1規定の水酸化ナトリウム溶液を30分間作用させた場合の質量損失を意味する。
【0225】
実施例1
以下の組成物を調製した。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
適用手順:
適度に過敏化した毛髪(AS20)の2本の同一の毛束:毛束1(対照)及び毛束2(発明品)を使用した。毛束1は、脱色処理のみを施す対照用毛束であり、毛束2は、脱色処理の前に前処理組成物A1を用いて前処理を施す毛束である。
【0230】
以下の決められた手順に従い、各毛束を、繋がっていない毛髪を取り除くように、目の粗い側で10回、次いで目の細かい側で10回櫛通しした。
【0231】
各毛束を計量し、その質量(m0)を記録した。
【0232】
次いで、サーモスタットで33℃に調節したホットプレートの上に毛束を置いた。
【0233】
前処理組成物A1を、毛髪1g当たり組成物2gとなる浴比で毛束2に適用した。
【0234】
5分間の放置時間が経過した後、Kimtech 7505吸収性ペーパータオルを使用して水分を吸い取ることにより毛束2を乾かした。
【0235】
1質量部の組成物Bを1.5質量部の組成物Cと混合することにより、脱色組成物を調製した後、毛束1及び毛束2に適用した。浴比は、毛髪1g当たり組成物10gとする。
【0236】
次いで、各毛束をアルミ箔で包んでから、33℃のホットプレートの上に戻した。
【0237】
50分間の放置時間が経過した後、毛束を濯ぎ、L’Oreal Blond Studioシャンプーで洗浄した。
【0238】
毛束を、60℃に調整した乾燥器で30分間乾燥させた。
【0239】
乾燥器から取り出したら直ちに、毛束を、目の粗い側で10回、目の細かい側で10回櫛通しした。
【0240】
前処理組成物A1を毛束2に適用するステップを含むこれらのステップを全て2回繰り返した。これは、各毛束に計3回適用することに対応する。
【0241】
最後に各毛束を計量し、その質量(m1)を記録した。
【0242】
毛髪の破断の評価
各毛束の破断率を、以下の式を用いて表す。
【数1】
ここで、
m
0は、処理を一切施していない毛束の初期質量であり、
m
1は、全ての処理を終えた後に記録された質量である。
【0243】
結果
各毛束の破断率を以下の表に示す。
【0244】
【0245】
この結果は、グリシンを高濃度で含む組成物を用いる前処理ステップを含む、本発明による組成物で処理された毛束では、前処理ステップを行わない同じ方法と比較して、毛髪の破断が顕著に減少することを示している。
【0246】
実施例2
本実施例は、銅を富化された過敏化された毛髪の毛束が処理される本発明による方法によって提供される、毛髪の破断の減少という観点での利点を実証する。
【0247】
具体的には、水道水中に存在する銅などの特定の重金属は、洗髪を続けるうちに経時的に毛髪上に蓄積する可能性があり、その結果として毛髪の構成タンパク質が分解する可能性がある。この分解は、特に、過酸化水素などの化学的酸化剤を使用する染色又は脱色処理を行う際に起こる。毛髪上に銅が存在すると、毛髪の構成タンパク質を変性させる原因となり得るヒドロキシルラジカルが形成される可能性がある。
【0248】
以下の前処理組成物を調製した。
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
毛束の準備
適度に過敏化した毛髪(AS20)の同一の毛束13本を、Prolabo(登録商標)からの硫酸銅(II)五水和物CuSO4・5H2O溶液(純度99%以上)を使用して、銅10000ppmで富化した。
【0254】
適用手順
13本の毛束のうち、毛束3は、脱色処理のみを施す対照用毛束であり、毛束4~15は、脱色処理の前に前処理組成物A2~A13を使用して前処理を施す毛束である。
【0255】
以下の決められた手順に従い、各毛束を、繋がっていない毛髪を取り除くように、目の粗い側で10回、次いで目の細かい側で10回櫛通しした。
【0256】
各毛束を計量し、その質量(m0)を記録した。
【0257】
次いで、サーモスタットで33℃に調節したホットプレートの上に毛束を置いた。
【0258】
前処理組成物A2~A13を、毛髪1g当たり組成物2gとなる浴比で毛束4~15に適用した。
【0259】
5分間の放置時間が経過した後、Kimtech 7505吸収性ペーパータオルを使用して水分を吸い取ることにより毛束4~15を乾かした。
【0260】
実施例1の組成物Bを、1質量部を実施例1の組成物Cを1.5質量部と混合することにより脱色組成物を調製した後、毛束3~15に適用した。浴比は、毛髪1g当たり組成物10gとする。
【0261】
33℃で50分間の放置時間が経過した後、毛束を濯ぎ、L’Oreal Blond Studioシャンプーで洗浄した。
【0262】
毛束を60℃に調整した乾燥器で30分間乾燥させた。
【0263】
乾燥器から取り出したら直ちに、毛束を、目の粗い側で10回、目の細かい側で10回櫛通しした。
【0264】
最後に各毛束を計量し、その質量(m1)を記録した。
【0265】
毛髪の破断の評価
各毛束の破断率を、以下の式を用いて表す。
【数2】
ここで、
m
0は、処理を一切施していない毛束の初期質量であり、
m
1は、全ての処理を終えた後に記録された質量である。
【0266】
結果
各毛束の破断率を以下の表に示す。
【0267】
【0268】
【0269】
この結果は、本発明による前処理に使用される式(I1)の化合物から選択されるアミノ酸が、銅を高含有量で含む毛髪の破断を有効に防ぐことを示している。毛髪の破断は、前処理を行わずに脱色処理した毛束と比較して少なくとも50%低減されたことに注目されたい。
【0270】
実施例3
以下の組成物を調製した。
【0271】
【0272】
【0273】
毛束の準備
適度に過敏化した毛髪(AS20)の同一の毛束5本を、Prolabo(登録商標)からの硫酸銅(II)五水和物CuSO4・5H2O溶液(純度99%以上)を使用して、銅10000ppmで富化した。
【0274】
適用手順
5本の毛束のうち、毛束16は、脱色処理のみを施す対照用毛束であり、毛束17~20は、脱色処理の前に実施例2の前処理組成物A2~A5を使用して前処理を施す毛束である。
【0275】
以下の決められた手順に従い、各毛束を、繋がっていない毛髪を取り除くように、目の粗い側で10回、次いで目の細かい側で10回櫛通しした。
【0276】
各毛束を計量し、その質量(m0)を記録した。
【0277】
次いで、サーモスタットで33℃に調節したホットプレートの上に毛束を置いた。
【0278】
前処理組成物A2~A5を、毛髪1g当たり溶液2gとなる浴比で毛束17~20に適用した。
【0279】
5分間の放置時間が経過した後、Kimtech 7505吸収性ペーパータオルを使用して水分を吸い取ることにより毛束を乾かした。
【0280】
1質量部の組成物Dを2質量部の組成物Eと混合することにより脱色組成物を調製した後(混合物のpHは10±0.2)、毛束16~20に適用した。浴比は、毛髪1g当たり組成物10gとする。
【0281】
33℃で50分間の放置時間が経過した後、毛束を濯ぎ、Inoa Postシャンプーで洗浄した。
【0282】
毛束を60℃に調整した乾燥器で30分間乾燥させた。
【0283】
乾燥器から取り出したら直ちに、毛束を、目の粗い側で10回、目の細かい側で10回櫛通しした。
【0284】
最後に各毛束を計量し、その質量(m1)を記録した。
【0285】
毛髪の破断の評価
各毛束の破断率を、以下の式を用いて表す。
【数3】
ここで、
m
0は、処理を一切施していない毛束の初期質量であり、
m
1は、全ての処理を終えた後に記録された質量である。
【0286】
結果
各毛束の破断率を以下の表に示す。
【0287】
【0288】
この結果は、本発明による前処理に使用される式(I1)の化合物から選択されるアミノ酸が、銅を高含有量で含む毛髪の破断を有効に防ぐことを示している。
【0289】
実施例4
以下の組成物を調製した。
【0290】
【0291】
【0292】
前処理組成物の適用手順
5.4gの前処理組成物A14をトーンレベル4の白人の毛髪(毛束1)2.7gに適用した。
【0293】
したがって、毛束1に接触させるグリシンの量は、0.16g/g毛髪となる。
【0294】
5分間の放置時間が経過した後、Kimtech 7505吸収性ペーパータオルを使用して水分を吸い取ることにより毛束1を乾かした。
【0295】
明色化組成物の適用手順
1部の組成物C1を1部のL’Oreal Professionnel Inoa 30-Volume Developerと混合した。次いで、得られた混合物27gを毛束1に適用した。
【0296】
1部の組成物C2を1部のL’Oreal Professionnel Inoa 30-Volume Developerと混合した。次いで、得られた混合物27gをトーンレベル4の白人の毛髪(毛束2)2.7gに適用した。したがって、毛束2に接触させるグリシンの量は、同じく0.16g/g毛髪となる。
【0297】
次いで、サーモスタットで33℃に調節したホットプレートの上に2本の毛束を置いた。
【0298】
50分間の放置時間が経過した後、毛束を濯ぎ、L’Oreal Professionnel Inoa Postシャンプーで洗浄した。
【0299】
毛束を60℃に調整した乾燥器で30分間乾燥させた。
【0300】
色差測定
Minolta CM2600d分光測色計(光源D65、視野角10゜、正反射成分を含む)を使用し、CIELab系で測定を行った。
【0301】
この系において、L*は、明度を表し;L*の値が高いほど、毛束が明色化されている。
【0302】
結果
【0303】
【0304】
グリシンが前処理組成物として適用される本発明による方法により、L*の値がより高くなる。したがって、明色化組成物に直接グリシンを含有させる比較方法よりも高度に明色化される。したがって、本発明による方法は、毛髪の明色化の妨げになることを回避する。
【0305】
実施例5
以下の組成物を調製した。
【0306】
【0307】
前処理組成物の適用手順
6.4gの実施例4の前処理組成物A14をトーンレベル4の白人の毛髪(毛束3)2.7gに適用した。
【0308】
したがって、毛束3に接触させるグリシンの量は、0.2g/g毛髪となる。
【0309】
5分間の放置時間が経過した後、Kimtech 7505吸収性ペーパータオルを使用して水分を吸い取ることにより毛束3を乾かした。
【0310】
明色化組成物の適用手順
1部の組成物C3を2部のL’Oreal Professionnel 40-Volume Oxydant Creme Developerと混合した。次いで、得られた混合物10gを毛束3に適用した。
【0311】
1部の組成物C4を1部のL’Oreal Professionnel 40-Volume Oxydant Creme Developerと混合した。次いで、得られた混合物10gをトーンレベル4の白人の毛髪(毛束4)2.7gに適用した。したがって、毛束4に接触させるグリシンの量は、同じく0.2g/g毛髪となる。
【0312】
次いで、サーモスタットで33℃に調節したホットプレートの上に2本の毛束を置いた。
【0313】
50分間の放置時間が経過した後、毛束を濯ぎ、Garnier Ultra-douxシャンプーで洗浄した。
【0314】
毛束を60℃に調整した乾燥器で30分間乾燥させた。
【0315】
色差測定
Minolta CM2600d分光測色計(光源D65、視野角10゜、正反射成分を含む)を使用し、CIELab系で測定を行った。
【0316】
この系において、L*は、明度を表し;L*の値が高いほど、毛束が明色化されている。
【0317】
結果
【0318】
【0319】
グリシンが前処理組成物として適用される本発明による方法により、L*の値がより高くなる。したがって、明色化組成物に直接グリシンを含有させる比較方法よりも高度に明色化される。したがって、本発明による方法は、毛髪の明色化の妨げになることを回避する。
【国際調査報告】