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特表2023-5288762019年重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)(COVID-19)をスクリーニングするシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】2019年重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)(COVID-19)をスクリーニングするシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20230629BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230629BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G01N33/569 L
G01N33/53 D
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574330
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021035457
(87)【国際公開番号】W WO2021247712
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/041,551
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/033,276
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591072086
【氏名又は名称】バテル メモリアル インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】メリシア アール ゲイニー
(72)【発明者】
【氏名】ダリア ナトゥール
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ10
4B063QR48
4B063QS33
4B063QX01
(57)【要約】
SARS-CoV-2をスクリーニングするための代替抗体が開示されている。代替抗体の1つは、EastCoast Bio社、私書箱489、ノース・バーウィック、メイン州〒03906、米国(「EastCoast Bio社」)のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1056(「E3-抗体」又は「E3」)である。別の代替抗体は、E3-抗体と、EastCoast Bio社のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1057(「E1-抗体」又は「E1」)との組み合わせである(E1-抗体とE3-抗体との組み合わせを、「E1/E3-抗体」又は単に「E1/E3」と称する)。さらに別の代替抗体は、Creative Diagnostics社、45-1ラムジーロード、シャーリー、ニューヨーク州〒11967、米国(「Creative Diagnostics社」)のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン4B21、カタログ番号CABT-CS027(「C4-抗体」又は「C4」)と、同じくCreative Diagnostics社のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン7G21、カタログ番号CABT-CS026(「C5-抗体」又は「C5」)との組み合わせである(C4-抗体とC5-抗体との組み合わせを、「C4/C5-抗体」又は単に「C4/C5」と称する)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートをVero E6細胞の単層でコーティングするステップと、
コーティングプレートに、所定量の50%組織培養感染用量アッセイ/ミリリットル(TCID50/mL)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)を接種するステップと、
接種プレートを培養するステップと、
Vero E6細胞プレートを固定するステップと、
固定プレートに抗体を加えるステップであって、前記抗体が、
EastCoast Bio社、私書箱489、ノース・バーウィック、メイン州〒03906、米国(「EastCoast Bio社」)のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1056(「E3」)、
E3-抗体と、EastCoast Bio社のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1057(「E1」)との組み合わせ、
Creative Diagnostics社、45-1ラムジーロード、シャーリー、ニューヨーク州〒11967、米国(「Creative Diagnostics社」)のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン4B21、カタログ番号CABT-CS027(「C4」と)、同じくCreative Diagnostics社のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン4B21、カタログ番号CABT-CS026(「C5」)との組み合わせ(「C4/C5」)、
からなる群から選択される、ステップと、
ABTS溶液を塗布するステップと、
洗浄した前記プレートに停止溶液を塗布するステップと、
前記プレートの光学濃度を読み取るステップと、
前記光学濃度が事前に定義した閾値より大きいか否かを判断するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記接種プレートを培養するステップが、24時間培養するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接種プレートを培養するステップが、16時間を超えて培養するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレートを固定してから一次抗体を適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
培養プレートに前記抗体を加える前に、前記抗体を希釈するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体を希釈するステップが、前記抗体を初期濃度から1:400の濃度に希釈するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体を希釈するステップが、前記抗体を初期濃度から1:800の濃度に希釈するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体を希釈するステップが、前記抗体を初期濃度から1:1600の濃度に希釈するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記接種プレートを洗浄してから前記Vero E6細胞を固定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記事前に定義した閾値が、細胞培養制御ウェル又はウイルス制御ウェルの光学濃度に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記所定量のTCID50/mL SARS-CoV-2が、2,000(又は2e)TCID50/mL SARS-CoV-2以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
プレートをVero E6細胞の単層でコーティングするステップと、
コーティングプレートに所定量の血清含有接種材料を接種するステップであって、前記血清含有接種材料が、
患者からの希釈血清と、
所定量の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)と、を含む、ステップと、
接種プレートを約1時間初期培養するステップと、
前記初期培養期間後に前記血清含有接種材料を除去するステップと、
前記血清含有接種材料を新しい接種培地に交換するステップと、
前記接種プレートをさらに全培養期間培養するステップと、
前記全培養期間後に前記接種培地を除去するステップと、
前記接種培地除去後に前記プレートをハンクス緩衝塩溶液(HBSS)で洗浄するステップと、
Vero E6細胞プレートをアセトンで固定するステップと、
固定プレートに抗体を加えるステップと、
ABTS溶液を塗布するステップと、
洗浄した前記プレートに停止溶液を塗布するステップと、
前記プレートの光学濃度を読み取るステップと、
前記光学濃度が事前に定義した閾値より大きいか否かを判断するステップと、を含む、方法。
【請求項13】
前記全培養期間が約48時間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
培養プレートに前記抗体を加える前に、前記抗体を希釈するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体を希釈するステップが、前記抗体を初期濃度から1:400の濃度に希釈するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プレートをHBSSで洗浄するステップが、前記プレートをHBSSで約150マイクロリットル/ウェル(約150μL/ウェル)で洗浄するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記Vero E6細胞プレートを固定するステップが、前記Vero E6細胞プレートを80%アセトンで固定するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記接種プレートを初期培養するステップが、
温度約37±2℃及び二酸化炭素(CO)含有量約5±2%COで培養するステップを含み、
前記接種プレートをさらに培養するステップが、
温度約37±2℃及び二酸化炭素(CO)含有量約5±2%COで培養するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記固定プレートに抗体を加えるステップが、前記固定プレートに一次抗体及び二次抗体を加えるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
プレートをVero E6細胞の単層でコーティングするステップと、
コーティングプレートに所定量の血清含有接種材料を接種するステップであって、前記血清含有接種材料が、
患者からの希釈血清と、
所定量の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)と、を含む、ステップと、
接種プレートを約1時間、温度約37±2℃及び二酸化炭素(CO)含有量約5±2%COで初期培養するステップと、
前記初期培養期間後に前記血清含有接種材料を除去するステップと、
前記血清含有接種材料を新しい接種培地に交換するステップと、
前記プレートを前記新しい接種培地で合計48時間、温度約37±2℃及び二酸化炭素(CO)含有量約5±2%COでさらに培養するステップと、
前記全培養期間後に前記接種培地を除去するステップと、
前記接種培地除去後に前記プレートをハンクス緩衝塩溶液(HBSS)で約150マイクロリットル/ウェル(約150μL/ウェル)で洗浄するステップと、
Vero E6細胞プレートを80%アセトンで固定するステップと、
固定プレートに抗体を加えるステップと、
ABTS溶液を塗布するステップと、
洗浄した前記プレートに停止溶液を塗布するステップと、
前記プレートの光学濃度を読み取るステップと、
前記光学濃度が事前に定義した閾値より大きいか否かを判断するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス2(CoV-2)、及びより詳細には、SARS-CoV-2をスクリーニングするシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)(COVID-19)等のウイルスのスクリーニングは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて行うことができる。ELISAでは、特定の抗原に対する特異性を持つ抗体が少なくとも1つ必要である。そのため、パンデミック(COVID-19パンデミック等)の際には、ELISAに必要な供給量が不足することがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、SARS-CoV-2をスクリーニングするシステム及び方法を提供する。簡単に説明すると、一実施形態は、ELISAのための代替抗体を使用する方法を含む。いくつかの実施形態では、代替抗体は、EastCoast Bio社、私書箱489、ノース・バーウィック、メイン州〒03906、米国(「East Coast Bio社」)のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1056(「E3-抗体」又は「E3」)である。他の実施形態については、代替抗体は、E3-抗体と、EastCoast Bio社のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1057(「E1-抗体」又は「E1」)との組み合わせである(E1-抗体とE3-抗体との組み合わせを、「E1/E3-抗体」又は単に「E1/E3」と称する)。さらに別の実施形態では、代替抗体は、Creative Diagnostics社、45-1ラムジーロード、シャーリー、ニューヨーク州〒11967、米国(「Creative Diagnostics社」)のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン4B21(Mouse Species Anti-SARS-CoV-2 NP mAb, clone 4B21)、カタログ番号CABT-CS027(「C4-抗体」又は「C4」)と、同じくCreative Diagnostics社のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン7G21(Mouse Species Anti-SARS-CoV-2 NP mAb, clone 7G21)、カタログ番号CABT-CS026(「C5-抗体」又は「C5」)との組み合わせである(C4-抗体とC5-抗体との組み合わせを、「C4/C5-抗体」又は単に「C4/C5」と称する)。
【0004】
他のシステム、装置、方法、構成及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討することにより当業者に明らかになるであろう。このような追加のシステム、方法、構成及び利点は全て、本明細書に含まれ、本開示の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】試験した異なる抗体パネルを示すチャートである。
図2】酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のための固定前に、Vero E6細胞単層内で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)を14時間培養した後の結果を示すチャートである。
図3】ELISAのための固定前に、Vero E6細胞単層内でSARS-CoV-2を24時間培養した後の結果を示すチャートである。
図4図3の結果について、信号対雑音比(SNR)の尺度としての結合比を示すチャートである。
図5】SARS-CoV-2の陽性反応が出た入院患者から得られた非特定化血清について、24時間培養した後に光学濃度を測定した結果を示すチャートである。
図6】SARS-CoV-2の陽性反応が出た入院患者から得られた非特定化血清について、48時間培養した後に光学濃度を測定した結果を示すチャートである。
図7】特定の一次抗体を使用した血清除去プロセスを用いたマイクロ中和(MN)アッセイ力価の結果を示すチャートであり、その結果は、24時間培養、48時間培養、及び約5日後の細胞変性効果(CPE)の読み出し値について示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してよりよく理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、本開示の原理を明確に示すことに重点を置いている。さらに、図面において、同様の符号は、複数の図面全体で対応する部分を示している。
【0007】
2019年の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)(COVID-19)等のウイルスのスクリーニングは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて行うことができる。ELISAは、特定の抗原に対する特異性を持つ抗体が少なくとも1つ必要である。パンデミックのような世界的な緊急事態が発生していない時には、ELISAによるウイルススクリーニングプロセスを行うための材料は十分に供給されている。しかし、パンデミック(COVID-19パンデミック等)の際には、ELISAスクリーニングプロセスのための材料の供給量をはるかに上回る需要が発生することは想像に難くない。ELISAスクリーニング中は限られた数の適切な材料しか使用できないため、抗体-抗原特異性は需給問題をさらに悪化させる。さらに、パンデミックの原因が新型ウイルス(COVID-19等)である時には、需要超過に伴う問題が増幅される。
【0008】
この問題を緩和するために、本開示は、ELISAのための代替抗体を提供し、それによって、発生し得る(そして実際にCOVID-19パンデミック中に発生した)需給問題を軽減する。いくつかの実施形態では、1つの代替抗体は、EastCoast Bio社、私書箱489、ノース・バーウィック、メイン州〒03906、米国(「East Coast Bio社」)のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1056(「E3-抗体」又は「E3」)である。他の実施形態では、別の代替抗体は、E3-抗体と、EastCoast Bio社のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1057(「E1-抗体」又は「E1」)との組み合わせである(E1-抗体とE3-抗体との組み合わせを、「E1/E3-抗体」又は単に「E1/E3」と称する)。他の実施形態では、さらに別の代替抗体は、Creative Diagnostics社、45-1ラムジーロード、シャーリー、ニューヨーク州〒11967、米国(「Creative Diagnostics社」)のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン4B21、カタログ番号CABT-CS027(「C4-抗体」又は「C4」)と、同じくCreative Diagnostics社のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン7G21、カタログ番号CABT-CS026(「C5-抗体」又は「C5」)との組み合わせである(C4-抗体とC5-抗体との組み合わせを、「C4/C5-抗体」又は単に「C4/C5」と称する)。少なくとも3つの追加的な代替抗体(すなわち、E3、E1/E3、C4/C5)を提供することにより、本開示は、ELISAベースのCOVID-19検査に使用できる材料の供給量を大幅に拡大する。
【0009】
技術的課題に対する広範な技術的解決法を提供したので、ここで、図面に示すように、実施形態の説明について詳細に言及する。具体的には、図1は、試験した異なる抗体パネルを示す。図2は、図1のパネルの各々について、プレートの固定及びELISAの実施に先立ち14~15(14~15)時間培養した後の結果を示し、一方図3は、プレートの固定及びELISAの実施に先立ち24時間培養した後の結果を示す。図3の結果をより良く表示するために、図3の結果に対する信号対雑音比(SNR)の尺度としての結合比を示すチャートを図4に示す。これらの図面に関連していくつかの実施形態が説明されているが、本明細書に開示されている実施形態のみに限定する意図はない。むしろ、全ての代替物、修正物、均等物を網羅することを意図している。
【0010】
特に、図1は試験した6つの異なる抗体パネルを示し、試験した各抗体パネルについての説明、略語、品種、供給者、カタログ番号もともに示している。抗体パネルは以下のものを含む。
(1)EastCoast Bio社のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1056(「E3」)
(2)EastCoast Bio社のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1057(「E1」)と、同じくEastCoast Bio社のマウス種コロナウイルス(COVID-19、MERS、SARS-CoV NP)抗体、カタログ番号HM1058(「E2」)との組み合わせ(E1とE2との組み合わせを「E1/E2」と称する)
(3)E1とE3との組み合わせ(「E1/E3」と称する)
(4)E2とE3との組み合わせ(「E2/E3」と称する)
(5)Creative Diagnostics社のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン4B21、カタログ番号CABT-CS027(「C4」)と、同じくCreative Diagnostics社のマウス種抗SARS-CoV-2 NP mAb、クローン4B21、カタログ番号CABT-CS026(「C5」)との組み合わせ(C4とC5との組み合わせを「C4/C5」と称する)
(6)E1とC5との組み合わせ(「E1/C5」と称する)
【0011】
現場(in situ)ELISAを使用してSARS-CoV-2の検出に使用できる抗体、又は抗体の組み合わせを決定するために、プレートをVero E6細胞の単層でコーティングした。次いで、Vero E6コーティングプレートに、2,000(2e)個の50%組織培養感染用量アッセイ/ミリリットル(TCID50/mL、組織培養感染用量中央値とも称する)SARS-CoV-2を接種した。特に、各プレートを80%アセトンの固定剤(ただし他の固定剤を使用してもよい)で固定して室温で培養した、2枚の96ウェルマイクロタイターVero E6プレートを調製した。96ウェル構成のうち一方を14~15時間培養し、96ウェル構成の他方を24時間培養してから固定剤(例えば、アセトン、メタノール、ホルマリン)で固定した。ウェル当たりの容積は約150マイクロリットル(約150μL)であった。次いで、固定剤を除去し、プレートをクラスII生物学的安全性キャビネット(BSC II)内で空気乾燥させた。
【0012】
各プレートを洗浄毎に約300μL/ウェルの洗浄バッファで少なくとも3回洗浄した。その後、一次抗体を加えた。具体的には、約297μLのブロッキングバッファと約3μLの抗体を一次抗体培養に使用した。複数の滴定を行い、各抗体パネルについて、1:100、1:200、1:400、1:800、1:1600、1:3200、1:6400、1:12800の異なる連続2倍希釈で合計8つの濃度を得た。6種類の異なる抗体パネルとそれに対応する6種類の制御群(ブランク)を、それぞれ8種類の濃度で、合計96ウェル(12×8=96)となった。一次抗体を加えた後、プレートを約37±2℃で約60±5分間培養した。
【0013】
二次抗体が存在する範囲で、各プレートを洗浄毎に約300μLの洗浄バッファで少なくとも3回洗浄した。その後、二次抗体を加え、約37±2℃で約60±5分間培養した。二次抗体については、各プレートのブロッキングバッファの容積は約11mLであり、抗マウス免疫グロブリンG複合体(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)の容積は約11μLであった。複合体(二次抗体)の最終希釈は約1:1000であった。
【0014】
次いで、各プレートを洗浄毎に約300μLの洗浄バッファで少なくとも3回洗浄した。その後、ABTS溶液(2、2′-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))を加え、約37±2℃で約30±5分間培養し、ABTS溶液での培養後直ちに停止溶液を塗布した。次いで、各プレートの光学濃度(OD)を490nmの基準フィルタを用いて405ナノメートル(nm)で読み取った。図2は、約14時間~15時間培養についての第1の96ウェルマイクロタイターVero E6プレート構成における各ウェルのODを示し、図3は、24時間培養についての96ウェルマイクロタイターVero E6プレート構成における対応するODを示す。
【0015】
図2に示すように、14~15時間後のOD値はすべて0.7以下であった。言い換えれば、感染ウェル(左6列(1-6))のODと非感染ウェル(右6列(7-12))のODは、全ての滴定(1:100から1:12800)で低ODを示した。少数の感染ウェルは、対応する非感染ウェルのODよりも大きいODを示したが、全ての感染ODは、対応する非感染ウェルと比較したとき、2倍未満のODを示した。別の言い方をすれば、COVID-19のウイルス感染は、14時間の培養では容易に判定できなかった。
【0016】
図2とは異なり、図3は複数の結果が以下の両方を示した。(a)ODが0.7より大きい。(b)対応する非感染ウェルのODと比較したとき、感染ウェルにおけるODが2倍を超えて増加している。便宜上、図3の結合比(又は信号対雑音比(SNR))を図4に示す。言い換えると、図4の各値は、感染ウェルのOD(これを信号とする)を非感染ウェルのOD(これを雑音とする)で単純に割ったものを表している。したがって、SNR=OD感染/OD非感染であり、これは図4に示すものとなる。
【0017】
図4に示すように、C4/C5組み合わせ、E1/E3組み合わせ、E3-抗体から高い結合比(及び結果として高いSNR)が観察された。これらの結果は、現在、感染から24時間後にVero E6単層においてSARS-CoV-2の検出に使用できる代替抗体パネルが存在することを示している。これらの代替抗体パネルによって、製造業者にさらなる選択肢が提供され、その結果、COVID-19スクリーニングに必要な試薬に関連する需給問題の一部が緩和されることになる。
【0018】
さらに他の実施形態では、現場ELISAプロセスにおける具体的なステップを、TCID50アッセイ及びマイクロ中和(MN)アッセイの両方で使用するために修正する。TCID50に関するプロセス(接種材料に血清を含まない場合)について上記で議論した限りにおいて、以下の説明は、MNアッセイに適用可能なプロセス(接種材料に血清とウイルスの両方を含む場合)に焦点を当てている。
【0019】
例として、MNアッセイに適用可能なプロセスの1つの実施形態(本明細書では便宜上MNアッセイプロセスと称する)は、プレートをVero E6細胞の単層でコーティングし、コーティングされたプレートに所定量の接種材料を接種するステップを含む。MNアッセイに適用可能ないくつかの実施形態では、接種材料は、希釈血清(好ましくは患者からの)と、一定量のウイルス(この場合、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2))と、の両方を含む。実際の実験接種材料には、オハイオ州立大学(OSU)の病院から入手した非特定化患者血清サンプルが含まれており、それらは(患者識別情報を除外するために)数値ラベルが付されていた(例:1817、1818、1827、1899、1942、又は患者情報から切り離されたいくつかの他の数値指定)。具体的には、非特定化された患者試料は、条件を満たしたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりCOVID-19陽性であった患者から採取したものである。
【0020】
接種プレートを約1時間初期培養し、その時点で、血清含有接種材料をVERO E6細胞プレートに移した。その後、プレートをさらに合計で約48時間培養した(すなわち、初期培養期間と追加の培養期間の合計が約48時間)。実際の試験では、初期培養と追加培養の両方が、温度約37±2℃及び二酸化炭素(CO)含有量約5±2%COで行われた。
【0021】
全培養期間後、接種培地を除去し、プレートをハンクス緩衝塩溶液(HBSS)で約150マイクロリットル/ウェル(約150μL/ウェル)で洗浄する。HBSS洗浄液を除去し、プレートを固定剤(例えば約80%アセトン、メタノール、ホルマリン等)で固定する。このプロセスは、抗体(すなわち一次抗体)を固定プレートに加えるステップに続く。上記に列挙した抗体のいずれも使用することができるが、以下のデータは、E3とE1との組み合わせ(及び実質的に等しい割合)、特に1:400に希釈したE3/E1組み合わせについての結果を示している。いくつかの実施形態では、二次抗体を加えてもよく、プレートを約37±2℃で約60±5分間培養する。二次抗体については、各プレートのブロッキングバッファの容積は約11mLであり、抗マウス免疫グロブリンG複合体(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)の容積は約11μLであった。上記と同様に、複合体(二次抗体)の最終希釈は約1:1000であった。
【0022】
上記と同様に、ABTS溶液を塗布し、洗浄したプレートに停止溶液を塗布し、その後プレートの光学濃度を読み取るというプロセスを続ける。光学濃度が事前に定義した閾値(ここでは約0.7)を超えている場合、このプロセスは、試料が抗SARS-CoV-2抗体に対して陽性であることを示す。
【0023】
いくつかの例の実験結果を、図5図6図7に示す。ここで、96ウェルプレートの設定を以下のように構成した。(a)図5及び図6において1Aから1H(1A-1H)及び2A-2Hと指定されたウェルには、OSU-1817と指定された患者(個人識別情報を除外するため)からの希釈血清が含まれていた。(b)ウェル3A-3H及び4A-4Hには、OSU-1827患者からの希釈血清が含まれていた。(c)ウェル5A-5H及び6A-6Hには、OSU-1942患者からの希釈血清が含まれていた。(d)ウェル7A-7H及び8A-8Hには、OSU-1899患者からの希釈血清が含まれていた。(e)ウェル9A-9Hには、OSU-1818患者からの希釈血清が含まれていた。(f)ウェル10A-10Hには、9A-9Hと同じ接種培地が含まれていたが、ウイルスは含まれていなかった(NV(ウイルスなし、no virus)と指定された)。(g)ウェル11A-11D及び12A-12Dにはウイルス制御が含まれており、これはウイルスを含むが血清を含まない。(h)ウェル11E-11H及び12E-12Hには細胞培養(CC)が含まれており、これは接種培地のみを含む(ウイルスなし及び血清なし)。
【0024】
このプレート設定、MNアッセイプロセス(上述)、E1/E3抗体パネル(上述)を用いて、以下の両方でデータを集めた。(a)24時間(図5に示す結果)。(b)48時間(図6に示す結果)。24時間と48時間の両方の結果を、約5日後の細胞変性効果(CPE)の読み出し値と比較した(図7に示す比較)。
【0025】
図7に示すように、24時間の結果は確定的ではなく、結果は判定不能(UD)とした。比較すると、48時間(約1時間の初期培養期間後に接種材料を除去したとき)の結果は、CPEの読み出し値に対応し、それによってMNアッセイの現場ELISA読み出し値についてSARS-CoV-2の存在が確認された。これらの結果を考慮すると、10A-10Hの数値がCC制御ウェル(11E-11H及び12E-12H)と類似していることからも明らかなように、初期培養時間後に接種材料を除去し、アッセイ終了時の固定前にプレートを洗浄することで、一次抗体の非特異的結合(ここではE1/E3)が除去されたようである。このように、中和は、図5図6図7に示すように、48時間培養したヒト患者からの臨床試料で観察される。
【0026】
フローチャートにおけるいかなるプロセスの説明又はブロックも、本開示の技術分野における当業者によって理解されるように、示された又は議論されたものから順序を離れて実行可能であり、関与する機能性に応じて実質的に同時又は逆順で実行されるものも含むと理解されるべきである。
【0027】
例示的な実施形態が示され、説明されてきたが、当業者であれば、説明されているような開示に対して多くの変更、修正又は改変をし得ることは明らかであろう。したがって、このような変更、修正及び改変は全て、本開示の範囲内であると考えるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】