(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】呼吸器系傷害改善用医薬組成物及び呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20230629BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230629BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230629BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230629BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230629BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230629BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P11/00
A61K45/00
A61K9/10
A61P43/00 121
A61K9/12
A61K9/72
A61P11/06
A61K47/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022574415
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 CN2021097633
(87)【国際公開番号】W WO2021244515
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522469291
【氏名又は名称】洪銘謙
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】洪銘謙
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB21
4C076CC15
4C076DD23
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA23
4C084MA56
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA61
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA06
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA23
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA60
4C086ZA61
4C086ZC75
(57)【要約】
呼吸器系傷害改善用医薬組成物であって、この医薬組成物は、吸着性薬物と、含水担体と、を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含む。呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器系傷害改善用医薬組成物であって、この医薬組成物は、吸着性薬物と、含水担体と、を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含むことを特徴とする呼吸器系傷害改善用医薬組成物。
【請求項2】
この吸着性薬物は、この含水担体を、懸濁液の濃度が0.001~1wt%となるように混合することを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
この炭素材料は、活性炭、活性炭素繊維、炭素繊維、炭素球、活性炭素球、柱状活性炭、活性炭素粉、炭素粉、フラーレン(C60)、セルロース系炭素、竹炭、すす、カーボンエアロゲル、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンナノチューブ、ナノカーボンボール、コークス球又はカーボンブラックのうちの1種又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
この炭素材料の比表面積(BET)は、300~3000m
2/gであることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
この炭素材料の平均粒径は、0.1~500ミクロン(μm)であることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
この炭素材料の細孔容積は、0.1~3.0ml/gであることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
この炭素材料の細孔直径は、1~500ナノメートル(nm)の間にあることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
この医薬組成物は、噴霧剤、吸入剤又は液体懸濁剤であることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
この医薬組成物は、助剤、賦形剤又は推進剤を更に含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗菌薬、抗ウイルス薬、ベンゼン環薬、抗凝固薬、血栓溶性薬物、α型遮断薬、5α還元酵素阻害剤、鼻腔うっ血除去薬(nasal decongestants)、鎮咳剤(Antitussive)、去痰剤(Expectorants)、痰溶解薬剤(Mucolytics)、気管又は気管支拡張剤(Bronchodilators)、抗生物質、抗カビ薬、抗喘息薬(Antiasthmatic drugs)、抗炎症薬、抗酸化剤、漢方薬エキス、抗体又はワクチンを更に含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
この炭素材料上に酸素官能基、水酸官能基、水酸基、カルボン酸、アルデヒド基、炭酸を更に含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
金属イオン、磁気物質、カチオン化合物、アニオン化合物又はハロゲンイオンのうちの1種又はそれらの組み合わせを更に含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途であって、この医薬組成物は、吸着性薬物と、含水担体と、を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含むことを特徴とする呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途。
【請求項14】
この吸着性薬物は、この含水担体を、懸濁液の濃度が0.001~1wt%となるように混合することを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項15】
この炭素材料は、活性炭、活性炭素繊維、炭素繊維、炭素球、活性炭素球、柱状活性炭、活性炭素粉、炭素粉、フラーレン(C60)、セルロース系炭素、竹炭、すす、カーボンエアロゲル、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンナノチューブ、ナノカーボンボール、コークス球又はカーボンブラックのうちの1種又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項16】
この炭素材料の比表面積(BET)は、300~3000m
2/gであることを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項17】
この炭素材料の平均粒径は、0.1~500ミクロン(μm)であることを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項18】
この炭素材料の細孔容積は、0.1~3.0ml/gであることを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項19】
この炭素材料の細孔直径は、1~500ナノメートル(nm)の間にあることを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項20】
この医薬組成物は、噴霧剤、吸入剤又は液体懸濁剤であることを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項21】
この医薬組成物は、助剤、賦形剤又は推進剤を更に含むことを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項22】
抗菌薬、抗ウイルス薬、ベンゼン環薬、抗凝固薬、血栓溶性薬物、α型遮断薬、5α還元酵素阻害剤、鼻腔うっ血除去薬(nasal decongestants)、鎮咳剤(Antitussive)、去痰剤(Expectorants)、痰溶解薬剤(Mucolytics)、気管又は気管支拡張剤(Bronchodilators)、抗生物質、抗カビ薬、抗喘息薬(Antiasthmatic drugs)、抗炎症薬、抗酸化剤、漢方薬エキス、抗体又はワクチンを更に含むことを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項23】
この炭素材料上に酸素官能基、水酸官能基、水酸基、カルボン酸、アルデヒド基、炭酸を更に含むことを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項24】
金属イオン、磁気物質、カチオン化合物、アニオン化合物又はハロゲンイオンのうちの1種又はそれらの組み合わせを更に含むことを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【請求項25】
この医薬組成物の投与タイミングは、(1)無酸素装置支援(room air)での血中酸素飽和度≦94%であること、(2)放射線学的証拠が肺浸潤を示すことであることを特徴とする
請求項13に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物に関し、特に、吸着性薬物を含む呼吸器系傷害改善用医薬組成物及び呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
肺は病原体、細菌、毒化物、火災の煙又は外来物質に侵されると、炎症反応を起こし、白血球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞などの免疫細胞を活性化する。適度な炎症反応は、体の免疫細胞による病原体除去に有利であるが、炎症反応を悪化させやすい物質もある。例えば、ウイルス(例えば、COVID-19、SARS-CoV-2、MERS-CoV、インフルエンザウイルス(インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型及びD型を含み、A型インフルエンザは、例えば、H1N1、H5N1、H7N9などであり、上記インフルエンザウイルスは、ヒトに感染する他、種をまたいで家禽、犬、豚、牛等の種に伝播することもある)、エイズウイルス、トリインフルエンザウイルス、エボラウイルス、ハンターンウイルス、炭疽ウイルス、ラッサウイルス、西ナイルウイルス、ツボカウイルス、呼吸器融合ウイルス(RSV)、デング熱ウイルスなど又はウイルス性出血熱を引き起こす他のウイルス、細菌(一般的なものは、例えば、肺炎連鎖球菌、ヘモフィルス・プランミス及び結核菌などである)、カビ(一般的なものは、例えば黒カビと白カビであり、一般的には、糖尿病患者、移植を受ける患者、血液における悪性腫瘍患者、慢性ステロイド治療を受ける患者において多く発生する)、ホスゲン、塩素ガスなどのような毒化物であり、例えば、高濃度のホスゲンへの曝露は、肺の腫脹を引き起こし、ヒトに呼吸困難をもたらし、そして濃度のより高いホスゲンへの曝露は、重度の肺傷害を引き起こし、死亡の原因となり得る。胸部X線検査等の放射線検査は、肺が薬物傷害を受けているか否かを最も早く確認できる方法であり得る。
【0003】
肺は、上記物質に侵されると、過剰な炎症反応を起こしやすく、また、細胞による大量のホルモンの分泌を誘発し、ここで、炎症促進ホルモン及び走化性ホルモンはサイトカインストーム(cytokine storm)の主因であり、さらに、より多くの免疫細胞の感染された肺上皮細胞への凝集を促し、そして更なる大量の炎症促進ホルモン及び走化性ホルモン(chemokine)を持続的に産生し、肺浮腫、傷害、浸潤、線維症、不全を引き起こし、ひいてはショック及び高い致死率をもたらす可能性もある。
【0004】
現行の治療法は、サイトカインストームを引き起こしていない病原体複製期では、主に抗生物質、抗ウイルス、ステロイドなどの薬物による治療であり、例えば、抗ウイルス薬物を用いてウイルス複製を抑制する。しかしながら、サイトカインストーム期に入ると、現在、治療の点では、サイトカインストームに対する特殊効果薬がなく、支持療法を用いて危険期を過ぎることしかできない。例えば、SARSによるサイトカインストームの治療は、従来、ステロイドを用いて免疫反応を抑制することで炎症反応を低減してきたが、身体の免疫反応を抑制することは、病状が急速に悪化して制御不能になりがちであり、死亡率がむしろ増加する。なお、一部の新型ウイルス(例えば、COVID-19)の臨床的指導は、ステロイド治療を示唆するものではなく、患者の身体免疫を低下させるだけでなく、自己免疫系の発熱反応をマスクすることによって治療の機会を逸する可能性が高く、それと同時に、より多くの人々に伝染して感染性感染症を引き起こす可能性もある。現在のCOVID-19の治療におけるサイトカインストーム期間では、支持療法のみを主に使用し、患者に十分な酸素を与え、痰の排出を助け、血圧を監視するなどの方法により、患者に二週間の急性期を経過させるほか、患者は自己免疫メカニズムにより抗体を産生し健康を回復させることができるだけである。
【0005】
しかしながら、上記薬物療法又は支持療法はいずれも肺炎症部位に対して制御、緩和、治療を行うことができない。一般的には、上記段階で肺の有害物質を除去するためには、気管支鏡又は鼻胃鏡で肺を観察し、生理食塩水で肺を洗浄してこれらの有害物質を洗い流して除去することにより、肺の正常なガス交換能力に戻す技術が知られているが、肺に付着した毒性物質(例えば、エンドトキシン)、細菌、ウイルス、炎症促進ホルモン、走化性ホルモン又はサイトカイン(cytokine)等については、生理食塩水で容易に洗い流すことができないため、白血球数、炎症反応、出血量又は白血球指数などを正常な値に低減又は回復させることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するための呼吸器系傷害改善用医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの目的によれば、本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、吸着性薬物と、含水担体と、を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含む。本発明の別の目的によれば、本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途を提供する。ここで、この医薬組成物は、吸着性薬物と、含水担体と、を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含む。
【0008】
本発明による医薬組成物により、どのような病態の肺炎に対しても一定の効果があり、呼吸器系の傷害改善効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の異なる濃度のリポ多糖を用いた、COVID-19の異なる進行を模倣する概略図である。
【
図2】処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)の総タンパク質量のヒストグラムである。
【
図3】それぞれ処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)のIL-6(
図3)のヒストグラムである。
【
図4】それぞれ処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)のIL-8(
図4)のヒストグラムである。
【
図5】それぞれ処理後の各群の肺胞H&E染色図である。
【
図6】
図5の染色図に応じて測定された中性多形核白血球浸潤の定量図である。
【
図7】
図5の染色図に応じて測定された肺浮腫定量図である。
【
図8】それぞれ処理後の各群の肺水重量定量図である。
【
図9】本発明の医薬組成物の好ましい投与タイミングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明をより理解するために、以下の説明において本発明の好ましい実施例を示し、図面と合わせて本発明の内容及び実現しようとする効果を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、呼吸器系改善用医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、吸着性薬物と、含水担体と、を含む。本発明の一実施例において、医薬組成物は、助剤、賦形剤又は推進剤を更に含んでもよい。本発明の呼吸器系は、呼吸器(鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支を含む)と肺を指す。本発明による医薬組成物は、一般的な呼吸器疾患による傷害に用いることができる。その原理は、吸着性薬物を含有することで、呼吸器系の炎症促進ホルモン、走化性ホルモン(chemokine)、サイトカイン(cytokine)、細菌、ウイルス、カビ又は火災、核、生物、化学などの毒性物質を吸着し、上気道の炎症又は感染症、例えば中咽頭部の炎症など、肺及び耳鼻咽喉系に関連する炎症又は感染症の治療又は緩和に用い、そして、下気道の炎症又は感染症、例えば、肺炎、気道感染症、補助肺拡張装置による感染症又は炎症、呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia:VAP)、気管支の炎症、肋膜の炎症、肺水腫、肺傷害、急性呼吸促進症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)の治療又は緩和、上記疾患による呼吸困難、肺水腫、肺炎症、肺出血、肺浸潤又は肺サイトカインストームの症状の改善に用い、更に、呼吸器系傷害の改善に用いることである。本発明の呼吸器系傷害改善用医薬組成物は、肺浮腫、炎症、出血、浸潤又はサイトカインストームの度合いを緩和させ、免疫反応を致死的でない度合いに制御し、そして免疫系による病原体又は外来物質の排除影響を与えず、さらに患者の抵抗力を維持して死亡率を効果的に低下させる。
【0012】
一実施例において、患者は、本明細書に記載の活性薬剤の組合せが治療効果を有する動物を指す。一実施例において、患者はヒトである。
【0013】
一実施例において、吸着性薬物は、炭素材料、分子篩、正負帯電化合物であってもよく、これらの1種又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0014】
一実施例において、炭素材料は、活性炭、活性炭素繊維、炭素繊維、炭素球、活性炭素球、柱状活性炭、活性炭素粉、炭素粉、フラーレン(C60)、セルロース系炭素、竹炭、すす、カーボンエアロゲル、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンナノチューブ、ナノカーボンボール、コークス球又はカーボンブラックから選ばれる1種又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限らない。一実施例において、炭素材料の比表面積(specific surface area:SSA)(BET法により測定される)は、300~3000m2/gであり、好ましくは、600~2000m2/gであり、より好ましくは、900~1850m2/gである。一実施例において、この炭素材料の平均粒径は、0.1~500ミクロン(μm)であり、好ましくは、0.5~50ミクロン(μm)である。一実施例において、この炭素材料の細孔容積は、0.1~3.0ml/gであり、好ましくは、0.1~1.0ml/gである。一実施例において、炭素材料の細孔直径は、1~500ナノメートル(nm)の間にあり、好ましくは、2~200ナノメートル(nm)である。1つの好ましい実施例において、含水担体中の炭素材料の濃度は0.001~1wt%である。
【0015】
一実施例において、分子篩は、単一の微細な空孔構造を有する種々の材料であってもよく、その構造は、A型分子篩(3A分子篩、4A分子篩、5A分子篩を含む)、X型分子篩(13X分子篩、10X分子篩)であってもよく、その状況に応じて材料を調整し、例えば、アルミノケイ酸又は石炭又は他の生体適合性材料であるが、これらに限らない。
【0016】
一実施例において、正負帯電化合物は、例えば、分子重合体(高分子電解質)、イオン交換樹脂又はイオン性界面活性剤であり、上記正負帯電化合物は、酸性又は塩基性官能基を含有することで、液体中で水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を解離することにより、化合物が負の荷電基(例えば、SO3
-、R-COO-など)を有して溶液中の他のカチオンを吸着して結合したり、正の荷電基(例えば、R-NR3
+など)を有して溶液中の他のアニオンを吸着して結合したりする。病原体又は細菌などは、負の電気を帯びているウイルス外殻アミノ酸のように、正あるいは負の電気を帯びているので、正負帯電化合物を有する吸着性薬物を添加することによりウイルスを吸着して拡散を防止する。
【0017】
一実施例において、この医薬組成物は、含水担体を含有することで、この吸着性薬物が気道に入るために固体懸濁状態で作用することを可能にするものとして働き、そのため、この医薬組成物は、スプレー、吸入剤、又は液体懸濁剤であってもよいが、これらに限らない。一実施例において、含水担体は、呼吸器系に生理学的に適合する任意の緩衝溶液、例えば、生理食塩水又は緩衝液であってもよく、そのうちの1種又はそれらの組み合わせであってもよい。一実施例において、この医薬組成物は、含水担体の吸着性薬物を含み、含水担体は、生理食塩水である。
【0018】
一実施例において、この医薬組成物の助剤は、(a)炭水化合物、例えば、単糖、例えば、果糖、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース及び類似体など、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース及び類似体などのような二糖、シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、及びラフィノース、マルトデキストリン、ポリデキストロース、デンプン、キチン、ポリデキストロース、イヌリンなどのような多糖類、(b)アラニン、グリシン、スペルミン、アスパラギン、グルタミン、システアミン、カオミン、アルブミン、イソアルブミン、バリン及び類似体などのアミノ酸、(c)金属と有機酸及び塩基から製造される有機塩、例えば、チタン、亜鉛、銅、銀、白金又は金、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、トロメタミン塩酸塩及び類似体、(d)ペプチド及びタンパク質、例えばVEGFポリペプチド、PDGFポリペプチド、アスパルテーム、トリアルブミン、ヒト血清アルブミン、グリスチン、ゼラチン及び類似体、(e)マンニトール、キシリトールなどのアルジトール及び類似体、(f)ポリ乳酸、ポリ乳酸-グリコール酸、シクロデキストリン、ポリアクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、ポリラクタム、ポリビニルピロリジノン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコールなどの合成もしくは天然ポリマー又はそれらの組み合わせ、及び(g)飽和と不飽和脂質、非イオン性洗浄剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、及びそれらの組み合わせなどの、フッ素化及び非フッ素化化合物を含む界面活性剤、及び(h)水溶性ビタミン又は脂溶性ビタミンを含む栄養素、及び(i)アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、リポ酸、コエンザイムQ10、ユビキノン(コエンザイムQ)、α-トコフェロール(ビタミンE)、カロテンの1つまたはそれらの組み合わせである抗酸化物質、及び(j)デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルヒドロコルチゾール、モメタゾン、プレドニゾン及びトリアムシノロンを含み、それらの任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、異性体、または溶媒和物を含むコルチコステロイドを含む(これらに限らない)。組成物がコルチコステロイド活性剤を含む場合、好ましい実施例において、デキサメタゾンを選択してもよい。
【0019】
一実施例において、この医薬組成物の賦形剤は、トリセリン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、アスコルビン酸、イヌリン、シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、マンニトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、プロリン酸、水、エタノール、プロパノール、コーンスターチ、モノシロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、セラック、リン酸カリウム、メチルセルロース(Methyl Cellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Sodium Carboxymethyl Cellulose)、エチルセルロース(Ethyl Cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl Cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methylcellulose)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(Low-substituted Hydroxypropyl)、微結晶セルロース(Microcrystalline cellulose:MCC)、アルデヒドセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(Hydroxypropyl Methylcellulose Phthalate)、コラーゲン、ヒアルロン酸、ゼラチン又はゲル、四級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、界面活性剤のうちの1種又は複数種を含む(これらに限らない)。
【0020】
一実施例において、この医薬組成物の推進剤は、室温の圧力下で液化可能であり、且つ吸入又は局所使用において安全であり、毒物学的に無毒であるのに適したガスを指す。なお、選択された推進剤は、吸着性薬物との相対的反応性がない。推進剤は、これらに限定されないが、過フッ素化化合物(PFC)、ヒドロフルオロアルカン(HFA)、フルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、及びフルオロトリエチルアミンを含む(これらに限らない)。
本発明の一実施例において、この医薬組成物は、治療薬物を更に含む。この治療薬物は、例えば、抗菌薬、抗ウイルス薬(ウイルスの種類によって異なり、レボセビル(Remdesivir)、カルバムスタンメネート(Camostat mesylate)、ロピナビル(Lopinavir)、リトンビル(Ritonavir)、ファビラビル(Favipiravir)、アルビレン(Umifenovir)、アデノヌクレオチド類似体(adenosine nucleotide analogues)、プロテアーゼインヒビター(protease inhibitor)、RNAポリメラーゼ阻害剤(RNA polymerase inhibitor)、融合阻害剤(fusion inhibitor)、サイトカイン、エンテカビル、イミペネム、インターフェロンであってもよく、それらに限らない)、ベンゼン環薬、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ヴァルファリン(warfarin)、クロピドグレル、エチレンサリチル酸、ワルファン、リバロキサバン(Rivaroxaban)、アピキサバン(Apixaban)、Edoxaban、エノパリンナトリウムなど)、血栓溶性薬物(例えば、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tissue-type plasogen activator:tPA)、プロトプラスト活性化因子(recombinant tissue activator:rt-PA)、トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)、血栓溶解酵素、フォンダパリヌクスなど)、α型遮断薬(例えば、α型交感神経遮断薬(α-adrenoceptor blockers)、Terazosin(Hytrinハイトリン)、Doxazosin(Doxabenドキサゾシン)、Tamsulosin(Harnalidgeタムスロシン)又はSilodosin(Uriefカプセルなど)、5α還元酵素阻害剤(5α-Reductase inhibitor、例えば、Finasteride (Proscarプロスカー)又はDutasteride (Avodartデュタステリドカプセル)など)、鼻腔うっ血除去薬(nasal decongestants)、鎮咳剤(Antitussive)、去痰剤(Expectorants)、痰溶解薬剤(Mucolytics)、気管又は気管支拡張剤(Bronchodilators、例えば、β二型交感神経刺激剤、抗コリン薬等)、抗生物質(例えば、アミノペニシリン(aminopenicillins)系抗生物質、カルボキシペニシリン(carboxypenicillins) 系抗生物質、スルホンアミド系及びトリメトキシフェニルピリミジン-スルファメトキサミド(Sulfonamides and trimethoprim-sulfamethoxazole)系抗生物質(例えば、TMP-SMXなど)、β-ラクタム(β-lactam)系抗生物質、ユニークなβ-ラクタム(unique β-lactam)系抗生物質(例えば、Monobactams又はcarbapenems)、非β-lactam系抗生物質(例えば、マクロライド(macrolide)又はテトラサイクリン(tetracycline))、セファランチン(Cephalosporins)系抗生物質、macrolide系抗生物質、フルオロキノロン系抗生物質(Fluoroquinolones:FQ)系抗生物質、バンコマイシン(vancomycin)、リファペンチン(Rifapentine)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)、チゲサイクリン(tigecycline)等)、抗カビ薬(例えば、amphotericin B系抗カビ剤、imidazoles系抗カビ剤、Triazoles系抗カビ剤、Griseofulvin系抗カビ剤、Nucleoside analogues系抗カビ剤、Polyenes系抗カビ剤、triazole系抗カビ剤(例えば、voriconazole、itraconazole、posaconazoleなど)、echinocandin系抗カビ剤、voriconazole系抗カビ剤、Azole系抗カビ剤、isavuconazole、flucytosine、fluconazoleなど)、抗喘息薬(Antiasthmatic drugs)、抗炎症薬(例えば、抗ロイコトリエン製剤、ステロイド、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)など)、抗酸化剤(抗炎症及び抗遊離基のためのもの、例えば、メラトニン、アントシアニンなど)、漢方薬エキス(例えば、マコット石の煮汁エキス(炙マオウ、ケイシ、柴胡、生姜、カッコウ、ブクリョウ、チョレイ、沢瀉、ハンゲ、サイシン、陳皮、ビャクジュツ、紫苔、カントウカ、ヤカン、オウゴン、生石膏、みかん、杏仁、山薬、炙カンゾウ)、イソフラボン系誘導体、フラボン系化合物、ドクダミベンジン、ケルセチン、ケルセチン-3-ラムノシド、ドクダミ(デカノイルアルデヒド)(decanoyl acetaldehyde)、ラウリルアルデヒド(lauric aldehyde)、l-ピネン(l-pinene)、リナロール(linlool)、カンフェン(camphene)、ミルセン(myrcene)、リモネン(limonene)、ボルネオールアセテート(bornyl acetate)、カリオフィレン(caryophellene)、アフォリン(afzelin)、ヒペリシン(hyperin)、ルチン(rutin)、ケルセチン(quercitrin)を含有する葉、イソケルセチン(isoquercitrin)を含有する花および果実、キンギンカ、トリテルペノイドサポニン、モチクリン、ニントウカン、キンガラニン、ホコウエイ、迷香酸、オレアノール酸、アルブチン、ルチン、夏枯草、擬タンポステロールパルミチン酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、コーヒー酸、アルカロイド、ベシン、ゴマシド、フェニルプロパノシド、シクロオレフィンエーテルテルペン、バンランコン注射液(4(Hキノジメドン、3カルボニルフェニル)-1(H)キノジメドン、安息香酸、シリンガ酸、アントラニル酸、サリチル酸)など)、抗体(例えば、タシマブ(Tocilizumab)、サルモシルトマブ(Sarilumab)、イカリズマブ(Eculizumab)、ケブザラ(Kevzara)、オクラ(Actemra))、ワクチン(本発明における吸着性薬物と結合可能なワクチン、例えば、mRNAワクチン、タンパク質ワクチン、アデノウイルスワクチン、弱毒化ワクチン、分子ワクチン、又はナノワクチン)であり、ひいては治癒者の血漿であるが、上記に限らず、そのうちの1種又はそれらの組み合わせであるが、それらに限らない。
【0021】
本発明の一実施例において、吸着性薬物上に、炎症物質/有害物質を吸着するか又は他の助剤、賦形剤、推進剤及び含水担体との連結を増加するためのコーティング層が形成されてもよい。一実施例では、酸素プラズマ(oxygen plasma)、泡酸、メッキ又は被覆などの方式により吸着性薬物の表面で改質/修飾を行い、この表面を改質又は表面修飾させて表面にコーティング層を形成してもよい。別の実施例では、このコーディング層は、酸素官能基(プラズマ処理で該炭素材料の表面に付着させ、ウイルス又は分子鎖構造のエンドトキシンを吸着させる)、水酸官能基(泡酸処理で該炭素材料の表面に付着させ、ウイルスを吸着させる)、水酸基、カルボン酸、アルデヒド基、炭酸、金属イオン(高温又はメッキ処理で該炭素材料の表面に付着させ、ウイルス外膜を不活化し、ウイルス活性を抑制し、又はウイルスを死滅させ、銀、白金、パラジウム、金、亜鉛又は銅であってもよく、好ましくは、銀イオンである)、磁気物質(該炭素材料の吸着能力を補強し、有害物質の残留を低減させるためのものであり、好ましくは、鉄イオンである)、カチオン化合物(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムを含有する化合物、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、アニオン化合物(例えば、三ヨウ化ナトリウムなど)又はハロゲンイオン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのイオン)のうちの1種又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0022】
別の実施例では、該吸着性薬物は、表面で金属イオンと更に結合してもよく、該金属イオンは、銀、白金、パラジウム、金、亜鉛又は銅であってもよく、好ましくは、銀イオン含有活性炭素繊維粉末であり、二番目に好ましくは、銀イオン含有炭素繊維粉末である。なお、該銀イオン含有炭素材料もウイルスの吸着、ウイルスの外膜の不活性化及びサイトカインストーム障害の緩和などの効果を有し、死亡リスクを低下させることができる。別の好ましい実施例では、亜鉛イオン含有活性炭素繊維粉末又は亜鉛イオン含有炭素繊維粉末である。本発明の別の実施例では、該吸着性薬物は、種々のナノデリバリーシステム又は担体、例えば、リポソーム(liposome)、ナノ病原体、ナノ細菌又は分子ロボット(molecular robot)などを混合してもよく、該ナノデリバリーシステムは、上記コーティング層の種々の態様、例えば、ナノスフェア、金属イオン、カチオン薬物、アニオン薬物、磁気物質などと結合して、全体の安定性を増加させたり、その有用性を増加させたりすることもできる。
【0023】
本発明の組成物が吸着しうる有害物質としては、有害物質(例えば、エンドトキシン(endotoxin))、細菌、ウイルス、炎症促進ホルモン、走化性ホルモン(chemokine)又はサイトカイン(cytokine)などであってもよい。本発明は、噴霧剤又は吸入剤又は液体懸濁剤として製剤化され得る呼吸器系傷害改善用医薬組成物の使用方法をさらに含み、使用時に、ネブライザー噴霧器又は乾燥粉末を通して、または、デバイス(例えば、胸腔鏡、内視鏡、気管支鏡、輸液チューブ、輸液バッグ、輸液ポンプ、又はシリンジ)を通して、患者の鼻腔、喉頭、肺の特定又は不特定の腔(例えば、肺気管支又はサブ微気管支)に該医薬組成物を注入し、さらに、一肺葉洗浄、経肺洗浄、又は気管支肺胞洗浄を組み合わせた治療を行い、生理食塩水を用いて、該医薬組成物及び吸着された有害物質を除去する。
【0024】
本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物の使用方法を提供し、該使用方法の一実施態様は、噴霧剤又は吸入剤形の医薬組成物を、ネブライザー噴霧又は乾燥粉末吸入などの気質投与方式により、該医薬組成物を肺気管支又はサブ微気管支に送達することである。さらに、患者の痰形成を通して、治療コースを完了するために、該医薬組成物を肺から排出する。医師が患者を評価して痰を毛で取り除くことができない場合、該医薬組成物はさらに、経肺洗浄又は気管支肺胞洗浄と組み合わせて治療し、生理食塩水を利用して該医薬組成物とその吸着された有害物質を除去して、後続の残留リスクを低減することができる
【0025】
以下、本発明の製造方法及び関連実験を説明することで、本発明の有する効果を説明する。
【0026】
本発明の医薬組成物の製造方式
8mgの本発明の炭素材料を秤り、50 ml 0.9%生理食塩水を加えて均一に混合した。炭素材料系は、活性炭素粉末であり、表面には何ら修飾がなく、比表面積は、1248.8 m2/gであり、平均粒径は、12.08ミクロン(μm)であり、粒径分布中央値(d50、Median)は、9.453ミクロン(μm)であり、細孔容積は、0.4285 ml/gである。
【0027】
実験モジュール
図1を参照すると、
図1は、本発明の異なる濃度のリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)を用いた、COVID-19の異なる進行を模倣する概略図である。COVID-19患者の肺におけるARDSの予防のための化合物又は治療方法を試験するために、本発明は、リポ多糖を使用してARDSの病理モデルを誘導する。リポ多糖は、グラム陰性菌の細胞壁から精製された糖であり、これがエアロゾルによって齧歯類動物の肺に送達されると、Th1免疫応答を誘発し、気道への炎症細胞(主に好中球)の突入を引き起こし、そして肺のサイトカイン(cytoline)の実質的な増加を引き起こし、したがって、さまざまな度合いのARDSを引き起こす。本発明は、異なる濃度のリポ多糖を用いることで、COVID-19の異なる進行を模倣することができる。
図1に示すように、疾患の時間が進行するにつれて、その横軸で示される時間は、初期感染(phase I)、肺傷害段階(phase II)、サイトカインストーム段階(phase III)及び回復期(phase IV)を含み、ここで肺傷害段階(phase II)の進行の半分で、肺の炎症反応が発見され、炎症反応はサイトカインストーム段階(phase III)でピークに達する。
【0028】
血中酸素濃度は一般的にヒト血中酸素飽和度の正常値が95%以上であるが、COVID-19患者ではしばしば「暗黒症」(silent hypoxia)が観察され、既に低血中酸素症の場合があるが、患者は呼吸困難と感じることがなく、そのため医師が遅れて病状を遅らせ、突然死に至る可能性が高い。主に、肺傷害段階(phase II)に進行すると、患者には重度の肺炎を発症し、WHOによるSARS-CoV-2感染症の関連症状の分類によれば、重度の肺炎臨床症状は、発熱又は気道感染、ならびに、>30回/分の呼吸速度、重度の呼吸窮迫(severe respiratory distress)、≦94%の無酸素装置支援(room air)における血中酸素飽和のうちのいずれかを組み合わせることである。サイトカインストーム段階(phase III)で、患者は急性呼吸窮迫症(ARDS)を起こす。WHOによるSARS-CoV-2感染の関連臨床表現の分類によれば、急性呼吸窮迫症(ARDS)患者は、臨床的に以下の状況を観察した:(1)胸部画像(X線、コンピュータ断層、肺超音波等)は、両側性プラーク(opacities)を発見し、肋膜水腫、肺葉崩壊、又は結節だけでは説明できない。(2)肺浮腫原因(origin of edema):心不全又はフルード過負荷(fluid overload)で完全には説明できない呼吸不全、及び静水性肺浮腫(hydrostatic)を除くための客観的な証拠評価が必要である。(3)酸素合度(成人):「軽度ARDS」:200 mmHg<PaO2/FiO2≦300 mmHg ( PEEP又はCPAP≧5 cm H2Oを組み合わせるか、又は機械的呼吸支援を受けていない)、「中度ARDS」:100 mmHg<PaO2/FiO2≦200 mmHg (PEEP≧5 cm H2Oを組み合わせるか、又は機械的呼吸支援を受けていない)、「重度ARDS」:PaO2/FiO2≦100 mmHg ( PEEP≧5 cm H2Oを組み合わせるか、又は機械的呼吸支援を受けていない)。PaO2の値がない場合、SpO2/FiO2≦315 mmHgは、(患者が機械的呼吸支援を受けていない場合であっても)ARDSがあると考えられ得る。
【0029】
縦軸の重症度は、軽度の気道疾患(stage1)、肺炎(stage2)、重度の肺炎(stage3)及び呼吸窮迫症(stage4)の4つの等級に分類でき、ここで、軽度用量のLPS(2mg/kg)は、肺炎のような病的状態を誘発することができ、中等用量のLPS(4mg/kg)は、重度の肺炎のような病的状態を誘発することができ、高用量のLPS(8mg/kg )は、呼吸窮迫症のような病的状態を模倣することができる。したがって、本発明者らは、低用量LPSを、COVID-19を模倣する肺傷害段階(phase II)の前段として、中等用量LPSを、COVID-19を模倣する肺傷害段階(phase II)の後段として、高用量LPSを、COVID-19を模倣するサイトカインストーム段階(phase III)として使用し、これにより、COVID-19の様々な進行/重症度を模倣することができる。
【0030】
実験方法
リポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)を用いて、気管投与により7~9週間のSDラットを急性肺傷害動物モードに誘発した後、傷害前又は傷害後に上記処方の処置を施し、ラットの死亡又は瀕死現象及び炎症反応の発生が低減されるか否かを評価し、肺組織病理学的に本発明の医薬組成物が肺の傷害及び炎症反応を緩和するか否かを検討した。本実験の実験群の設計は表1に示すとおりである。
【0031】
【0032】
実験結果
1.死亡率
処理後の死亡率は表2に示す通りであり、高濃度のLPSでは急性肺傷害を誘導するのに一定の死亡率を示したが(処理群A)、中等、低濃度のLPSでは急性肺損傷を誘導し(処理群Bと処理群C)、処理後には死亡率の低下に成功した。
【0033】
【0034】
2.肺傷害の関連試験
A.肺タンパク質蓄積の改善の試験
滅菌後PBSで左肺葉を洗浄して気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid:BALF)を回収し、酵素結合免疫吸着アッセイ(Enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA )で総タンパク質量を測定した。実験結果は、
図2を参照する。
図2は、処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)の総タンパク質量のヒストグラムである。
図2に示すように、処理群A(高用量)、処理群B(中等用量)及び処理群C(低用量)では、本発明の医薬組成物を用いることにより、BALF中の総タンパク質量を著しく低減でき、それぞれ52%、51%及び28%低減できることを見出し、本発明の医薬組成物が各段階の肺傷害に対して、肺タンパク質蓄積を改善する効能を有することが明らかになった。
【0035】
B.肺炎症改善試験
滅菌後PBSで左肺葉を洗浄してBALFを採取し、ELISAによりIL-6及びIL-8等の炎症因子の濃度を定量した。
図3と
図4を参照すると、
図3と
図4はそれぞれ処理後の各群の気管支肺胞洗浄液群(BALF)のIL-6(
図3)とIL-8(
図4)のヒストグラムである。
図3に示すように、処理群A(高用量)と処理群B(中等用量)では、本発明の医薬組成物を用いることにより、炎症因子IL-6の濃度を著しく低減することができる。
図4に示すように、処理群A(高用量)では、IL-8の濃度を低減することができ、本発明の医薬組成物は、肺炎症反応を低減する効果を有することが明らかになった。
【0036】
C.肺浸潤及び肺水腫の改善試験
残りの肺葉(右頭蓋、右尾葉及び副葉を含む)を計量し、0.8~1.0mLの10%中性緩衝ホルマリン(neutral buffered formalin:NBF)で灌流し、次いで10倍体積の10% NBFで72~96時間、室温で保存する。定着後、肺葉を剪断し、ワックスで包埋し、ミクロトームで厚さ4~6ミクロンの切片に切断し、切片を均一にhematoxylin and eosin (H&E)染色した。
肺葉主要断面積(area of interest:AOI)の400X拡大写真を取って、中性多形核白血球浸潤(polymorphonuclear cell infiltration:PMNL infiltration )及び肺水腫(Intra alveolar edema)の等級判定を行った。各視野は≧95%の肺胞を含有しなければならず、肺浸潤及び肺水腫の観察および定量化は、10回のランダム評価によって行われ、表3は、スコアリングシステムを示す。
【0037】
【0038】
図5を参照すると、
図5は、それぞれ処理後の各群の肺胞H&E染色図であり、
図6は、
図5の染色図に応じて測定された中性多形核白血球浸潤の定量図である。
図7は、
図5の染色図に応じて測定された肺浮腫定量図である。
図5、
図6及び
図7に示すように、処理群A(高用量)、処理群B(中等用量)及び処理群C(低用量)では、本発明の医薬組成物が中性多形核白血球polymorphonuclear cell (PMNL)浸潤及び肺泡浮腫を著しく低下できることを発見し、本発明の医薬組成物は、肺浸潤及び肺浮腫を改善する効果を有することが明らかになった。
【0039】
D.肺水重量定量図
右正中肺葉を肺から切り出し、調整された体重で湿量基準まで秤量する。その後、試料を60℃のオーブンに24時間放置し、同じ較正用秤から乾燥重量を得た。
図8を参照すると、
図8は、それぞれ処理後の各群の肺水重量定量図である。
図8に示すように、処理群A(高用量)、処理群B(中等用量)、及び処理群C(低用量)では、本発明の医薬組成物の使用により肺水重量を著しく低下できることを発見し、本発明の医薬組成物は肺組織の含水量を著しく低下させ、肺水腫改善効果を有することが明らかとなった。
【0040】
上記実験から分かるように、本発明の医薬組成物は、確かに、様々な肺の有害な病態を効果的に改善することができ、異なる経過を有するCOVID-19に対しても改善効果があった。
図9を参照すると、
図9は、本発明の医薬組成物の好ましい投与タイミングの概略図である。
図9に示すように、上記実験と組み合わせると、本発明の医薬組成物の臨床的に好ましい投与タイミングは、(1)無酸素装置支援(room air)での血中酸素飽和度≦94%であること、(2)放射線学的証拠が肺浸潤を示すことであってもよい。
【0041】
要するに、本発明の医薬組成物によれば、どのような病態の肺炎に対しても一定の効果を有し、呼吸器系傷害を改善する効果を達成することができる。
【0042】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者にとって、本発明は、様々な変更及び変形が可能である。本発明の趣旨及び原理を逸脱しない範囲で行われる任意の修正、均等物による置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器系傷害改善用医薬組成物であって、この医薬組成物
の活性成分は、吸着性薬
物を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含むことを特徴とする呼吸器系傷害改善用医薬組成物。
【請求項2】
この医薬組成物は、含水担体を更に含み、この吸着性薬物は、この含水担体を、懸濁液の濃度が0.001~1wt%となるように混合することを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
この炭素材料は、活性炭、活性炭素繊維、炭素繊維、炭素球、活性炭素球、柱状活性炭、活性炭素粉、炭素粉、フラーレン(C60)、セルロース系炭素、竹炭、すす、カーボンエアロゲル、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンナノチューブ、ナノカーボンボール、コークス球又はカーボンブラッ
クを含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
この炭素材料の比表面積(BET)は、300~3000m
2/gであることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
この炭素材料の平均粒径は、0.1~500ミクロン(μm)であることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
この炭素材料の細孔容積は、0.1~3.0ml/gであることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
この医薬組成物は、噴霧剤、吸入剤
、液体懸濁剤
又は乾燥粉末吸入によるものであることを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
抗菌薬、抗ウイルス薬、ベンゼン環薬、抗凝固薬、血栓溶性薬物、α型遮断薬、5α還元酵素阻害剤、鼻腔うっ血除去薬(nasal decongestants)、鎮咳剤(Antitussive)、去痰剤(Expectorants)、痰溶解薬剤(Mucolytics)、気管又は気管支拡張剤(Bronchodilators)、抗生物質、抗カビ薬、抗喘息薬(Antiasthmatic drugs)、抗炎症薬、抗酸化剤、漢方薬エキス、抗体
、ワクチン
又は治癒者の血漿を更に含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
金属イオン、磁気物質、カチオン化合物、アニオン化合物又はハロゲンイオンのうちの1種又はそれらの組み合わせを更に含むことを特徴とする
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途であって、この医薬組成物
の活性成分は、吸着性薬
物を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含むことを特徴とする呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途。
【請求項11】
この医薬組成物は、含水担体を更に含み、この吸着性薬物は、この含水担体を、懸濁液の濃度が0.001~1wt%となるように混合することを特徴とする
請求項
10に記載の用途。
【請求項12】
この炭素材料は、活性炭、活性炭素繊維、炭素繊維、炭素球、活性炭素球、柱状活性炭、活性炭素粉、炭素粉、フラーレン(C60)、セルロース系炭素、竹炭、すす、カーボンエアロゲル、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンナノチューブ、ナノカーボンボール、コークス球又はカーボンブラッ
クを含むことを特徴とする
請求項
10に記載の用途。
【請求項13】
この炭素材料の比表面積(BET)は、300~3000m
2/gであることを特徴とする
請求項
10に記載の用途。
【請求項14】
この炭素材料の平均粒径は、0.1~500ミクロン(μm)であることを特徴とする
請求項
10に記載の用途。
【請求項15】
この炭素材料の細孔容積は、0.1~3.0ml/gであることを特徴とする
請求項
10に記載の用途。
【請求項16】
この医薬組成物は、噴霧剤、吸入剤
、液体懸濁剤
又は乾燥粉末吸入によるものであることを特徴とする
請求項
10に記載の用途。
【請求項17】
前記呼吸器系傷害は、軽度の気道疾患、急性扁桃炎、急性喉頭炎、気管支の炎症、肋膜の炎症、肺膿瘍(Lung abscess)、喘息(asthma)、成人ウイルス性肺炎(Viral Pneumonia)、成人細菌性肺炎(Bacterial pneumonia)、外因性アレルギー性肺胞炎(extrinsic allergic alveolitis)、アレルギー性肺炎(Hypersensitivity pneumonitis)、出血性肺炎、結核性肺炎、ファーメンタ肺(Farmer’s Lung)、ロイコファン肺炎(Legionnaire’s disease)、マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumonia)、肺気腫(Emphysema)、吸入性肺炎(Aspiration pneumonia)、肺水腫(hydrocele)、肺傷害、肺水腫(pulmonary edema)、急性肺炎、慢性肺炎、重症肺炎、急性呼吸促進症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)、肺線維症もしくは慢性肺閉塞(COPD)を含むことを特徴とする
請求項10に記載の用途。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物に関し、特に、吸着性薬物を含む呼吸器系傷害改善用医薬組成物及び呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
肺は病原体、細菌、毒化物、火災の煙又は外来物質に侵されると、炎症反応を起こし、白血球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞などの免疫細胞を活性化する。適度な炎症反応は、体の免疫細胞による病原体除去に有利であるが、炎症反応を悪化させやすい物質もある。例えば、ウイルス(例えば、COVID-19、SARS-CoV-2、MERS-CoV、インフルエンザウイルス(インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型及びD型を含み、A型インフルエンザは、例えば、H1N1、H5N1、H7N9などであり、上記インフルエンザウイルスは、ヒトに感染する他、種をまたいで家禽、犬、豚、牛等の種に伝播することもある)、エイズウイルス、トリインフルエンザウイルス、エボラウイルス、ハンターンウイルス、炭疽ウイルス、ラッサウイルス、西ナイルウイルス、ツボカウイルス、呼吸器融合ウイルス(RSV)、デング熱ウイルスなど又はウイルス性出血熱を引き起こす他のウイルス、細菌(一般的なものは、例えば、肺炎連鎖球菌、ヘモフィルス・プランミス及び結核菌などである)、カビ(一般的なものは、例えば黒カビと白カビであり、一般的には、糖尿病患者、移植を受ける患者、血液における悪性腫瘍患者、慢性ステロイド治療を受ける患者において多く発生する)、ホスゲン、塩素ガスなどのような毒化物であり、例えば、高濃度のホスゲンへの曝露は、肺の腫脹を引き起こし、ヒトに呼吸困難をもたらし、そして濃度のより高いホスゲンへの曝露は、重度の肺傷害を引き起こし、死亡の原因となり得る。胸部X線検査等の放射線検査は、肺が薬物傷害を受けているか否かを最も早く確認できる方法であり得る。
【0003】
肺は、上記物質に侵されると、過剰な炎症反応を起こしやすく、また、細胞による大量のホルモンの分泌を誘発し、ここで、炎症促進ホルモン及び走化性ホルモンはサイトカインストーム(cytokine storm)の主因であり、さらに、より多くの免疫細胞の感染された肺上皮細胞への凝集を促し、そして更なる大量の炎症促進ホルモン及び走化性ホルモン(chemokine)を持続的に産生し、肺浮腫、傷害、浸潤、線維症、不全を引き起こし、ひいてはショック及び高い致死率をもたらす可能性もある。
【0004】
現行の治療法は、サイトカインストームを引き起こしていない病原体複製期では、主に抗生物質、抗ウイルス、ステロイドなどの薬物による治療であり、例えば、抗ウイルス薬物を用いてウイルス複製を抑制する。しかしながら、サイトカインストーム期に入ると、現在、治療の点では、サイトカインストームに対する特殊効果薬がなく、支持療法を用いて危険期を過ぎることしかできない。例えば、SARSによるサイトカインストームの治療は、従来、ステロイドを用いて免疫反応を抑制することで炎症反応を低減してきたが、身体の免疫反応を抑制することは、病状が急速に悪化して制御不能になりがちであり、死亡率がむしろ増加する。なお、一部の新型ウイルス(例えば、COVID-19)の臨床的指導は、ステロイド治療を示唆するものではなく、患者の身体免疫を低下させるだけでなく、自己免疫系の発熱反応をマスクすることによって治療の機会を逸する可能性が高く、それと同時に、より多くの人々に伝染して感染性感染症を引き起こす可能性もある。現在のCOVID-19の治療におけるサイトカインストーム期間では、支持療法のみを主に使用し、患者に十分な酸素を与え、痰の排出を助け、血圧を監視するなどの方法により、患者に二週間の急性期を経過させるほか、患者は自己免疫メカニズムにより抗体を産生し健康を回復させることができるだけである。
【0005】
しかしながら、上記薬物療法又は支持療法はいずれも肺炎症部位に対して制御、緩和、治療を行うことができない。一般的には、上記段階で肺の有害物質を除去するためには、気管支鏡又は鼻胃鏡で肺を観察し、生理食塩水で肺を洗浄してこれらの有害物質を洗い流して除去することにより、肺の正常なガス交換能力に戻す技術が知られているが、肺に付着した毒性物質(例えば、エンドトキシン)、細菌、ウイルス、炎症促進ホルモン、走化性ホルモン又はサイトカイン(cytokine)等については、生理食塩水で容易に洗い流すことができないため、白血球数、炎症反応、出血量又は白血球指数などを正常な値に低減又は回復させることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するための呼吸器系傷害改善用医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの目的によれば、本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物を提供する。この医薬組成物の活性成分は、吸着性薬物を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含む。本発明の別の目的によれば、本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物の製造のための用途を提供する。ここで、この医薬組成物の活性成分は、吸着性薬物を含み、ここで、この吸着性薬物は、炭素材料と、分子篩と、正負帯電化合物と、を含む。
【0008】
本発明による医薬組成物により、どのような病態の肺炎に対しても一定の効果があり、呼吸器系の傷害改善効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の異なる濃度のリポ多糖を用いた、COVID-19の異なる進行を模倣する概略図である。
【
図2】処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)の総タンパク質量のヒストグラムである。
【
図3】それぞれ処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)のIL-6(
図3)のヒストグラムである。
【
図4】それぞれ処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)のIL-8(
図4)のヒストグラムである。
【
図5】それぞれ処理後の各群の肺胞H&E染色図である。
【
図6】
図5の染色図に応じて測定された中性多形核白血球浸潤の定量図である。
【
図7】
図5の染色図に応じて測定された肺浮腫定量図である。
【
図8】それぞれ処理後の各群の肺水重量定量図である。
【
図9】本発明の医薬組成物の好ましい投与タイミングの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明をより理解するために、以下の説明において本発明の好ましい実施例を示し、図面と合わせて本発明の内容及び実現しようとする効果を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、呼吸器系改善用医薬組成物を提供する。この医薬組成物の活性成分は、吸着性薬物を含む。本発明の一実施例において、医薬組成物は、含水担体、助剤、賦形剤又は推進剤を更に含んでもよい。本発明の呼吸器系は、呼吸器(鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支を含む)と肺を指す。本発明による医薬組成物は、一般的な呼吸器疾患による傷害に用いることができる。その原理は、吸着性薬物を含有することで、呼吸器系の炎症促進ホルモン、走化性ホルモン(chemokine)、サイトカイン(cytokine)、細菌、ウイルス、カビ又は火災、核、生物、化学などの毒性物質を吸着し、上気道の炎症又は感染症、例えば中咽頭部の炎症など、肺及び耳鼻咽喉系に関連する炎症又は感染症の治療又は緩和に用い、そして、下気道の炎症又は感染症、例えば、肺炎、気道感染症、補助肺拡張装置による感染症又は炎症、呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia:VAP)、急性扁桃炎、急性喉頭炎、気管支の炎症、肋膜の炎症、肺膿瘍(Lung abscess)、喘息(asthma)、成人ウイルス性肺炎(Viral Pneumonia)、成人細菌性肺炎(Bacterial pneumonia)、外因性アレルギー性肺胞炎(extrinsic allergic alveolitis)、アレルギー性肺炎(Hypersensitivity pneumonitis)、出血性肺炎、結核性肺炎、ファーメンタ肺(Farmer’s Lung)、ロイコファン肺炎(Legionnaire’s disease)、マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumonia)、肺気腫(Emphysema)、吸入性肺炎(Aspiration pneumonia)肺水腫(hydrocele)、肺傷害、肺水腫(pulmonary edema)、急性肺炎、慢性肺炎、重症肺炎、急性呼吸促進症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)、肺線維症もしくは慢性肺閉塞(COPD)、又は肺の清浄による気道の改善及び治療が可能な他の適応症の治療又は緩和、上記疾患による呼吸困難、肺水腫、肺炎症、肺出血、肺浸潤又は肺サイトカインストームの症状の改善に用い、更に、呼吸器系傷害の改善に用いることである。本発明の呼吸器系傷害改善用医薬組成物は、肺浮腫、炎症、出血、浸潤又はサイトカインストームの度合いを緩和させ、免疫反応を致死的でない度合いに制御し、そして免疫系による病原体又は外来物質の排除影響を与えず、さらに患者の抵抗力を維持して死亡率を効果的に低下させる。
【0012】
一実施例において、患者は、本明細書に記載の活性薬剤の組合せが治療効果を有する動物を指す。一実施例において、患者はヒトである。
【0013】
一実施例において、吸着性薬物は、炭素材料、分子篩、正負帯電化合物であってもよく、これらの1種又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0014】
一実施例において、炭素材料は、活性炭、活性炭素繊維、炭素繊維、炭素球、活性炭素球、柱状活性炭、活性炭素粉、炭素粉、フラーレン(C60)、セルロース系炭素、竹炭、すす、カーボンエアロゲル、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンナノチューブ、ナノカーボンボール、コークス球又はカーボンブラックから選ばれる1種又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限らない。一実施例において、炭素材料の比表面積(specific surface area:SSA)(BET法により測定される)は、300~3000m2/gであり、好ましくは、600~2000m2/gであり、より好ましくは、900~1850m2/gである。一実施例において、この炭素材料の平均粒径は、0.1~500ミクロン(μm)であり、好ましくは、0.5~50ミクロン(μm)である。一実施例において、この炭素材料の細孔容積は、0.1~3.0ml/gであり、好ましくは、0.1~1.0ml/gである。一実施例において、炭素材料の細孔直径は、1~500ナノメートル(nm)の間にあり、好ましくは、2~200ナノメートル(nm)である。1つの好ましい実施例において、この医薬組成物は、含水担体を更に含み、そしてこの含水担体中の炭素材料の濃度は0.001~1wt%である。
【0015】
一実施例において、分子篩は、単一の微細な空孔構造を有する種々の材料であってもよく、その構造は、A型分子篩(3A分子篩、4A分子篩、5A分子篩を含む)、X型分子篩(13X分子篩、10X分子篩)であってもよく、その状況に応じて材料を調整し、例えば、アルミノケイ酸又は石炭又は他の生体適合性材料であるが、これらに限らない。
【0016】
一実施例において、正負帯電化合物は、例えば、分子重合体(高分子電解質)、イオン交換樹脂又はイオン性界面活性剤であり、上記正負帯電化合物は、酸性又は塩基性官能基を含有することで、液体中で水素イオン(H+)又は水酸化物イオン(OH-)を解離することにより、化合物が負の荷電基(例えば、SO3
-、R-COO-など)を有して溶液中の他のカチオンを吸着して結合したり、正の荷電基(例えば、R-NR3
+など)を有して溶液中の他のアニオンを吸着して結合したりする。病原体又は細菌などは、負の電気を帯びているウイルス外殻アミノ酸のように、正あるいは負の電気を帯びているので、正負帯電化合物を有する吸着性薬物を添加することによりウイルスを吸着して拡散を防止する。
【0017】
一実施例において、この医薬組成物は、吸着性薬物を単独で用いてもよく、又は含水担体を更に含有することで、この吸着性薬物が気道に入るために固体懸濁状態で作用することを可能にするものとして働き、そのため、この医薬組成物は、スプレー、吸入剤、又は液体懸濁剤であってもよいが、これらに限らない。一実施例において、この含水担体は、呼吸器系に生理学的に適合する任意の緩衝溶液、例えば、生理食塩水又は緩衝液であってもよく、そのうちの1種又はそれらの組み合わせであってもよい。一実施例において、この医薬組成物は、含水担体を含む吸着性薬物であり、この含水担体は、生理食塩水である。
【0018】
一実施例において、この医薬組成物の助剤は、(a)炭水化合物、例えば、単糖、例えば、果糖、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース及び類似体など、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース及び類似体などのような二糖、シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、及びラフィノース、マルトデキストリン、ポリデキストロース、デンプン、キチン、ポリデキストロース、イヌリンなどのような多糖類、(b)アラニン、グリシン、スペルミン、アスパラギン、グルタミン、システアミン、カオミン、アルブミン、イソアルブミン、バリン及び類似体などのアミノ酸、(c)金属と有機酸及び塩基から製造される有機塩、例えば、チタン、亜鉛、銅、銀、白金又は金、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、トロメタミン塩酸塩及び類似体、(d)ペプチド及びタンパク質、例えばVEGFポリペプチド、PDGFポリペプチド、アスパルテーム、トリアルブミン、ヒト血清アルブミン、グリスチン、ゼラチン及び類似体、(e)マンニトール、キシリトールなどのアルジトール及び類似体、(f)ポリ乳酸、ポリ乳酸-グリコール酸、シクロデキストリン、ポリアクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、ポリラクタム、ポリビニルピロリジノン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコールなどの合成もしくは天然ポリマー又はそれらの組み合わせ、及び(g)飽和と不飽和脂質、非イオン性洗浄剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、及びそれらの組み合わせなどの、フッ素化及び非フッ素化化合物を含む界面活性剤、及び(h)水溶性ビタミン又は脂溶性ビタミンを含む栄養素、及び(i)アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、リポ酸、コエンザイムQ10、ユビキノン(コエンザイムQ)、α-トコフェロール(ビタミンE)、カロテンの1つまたはそれらの組み合わせである抗酸化物質、及び(j)デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルヒドロコルチゾール、モメタゾン、プレドニゾン及びトリアムシノロンを含み、それらの任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、異性体、または溶媒和物を含むコルチコステロイドを含む(これらに限らない)。組成物がコルチコステロイド活性剤を含む場合、好ましい実施例において、デキサメタゾンを選択してもよい。
【0019】
一実施例において、この医薬組成物の賦形剤は、トリセリン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、アスコルビン酸、イヌリン、シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、マンニトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、プロリン酸、水、エタノール、プロパノール、コーンスターチ、モノシロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、セラック、リン酸カリウム、メチルセルロース(Methyl Cellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Sodium Carboxymethyl Cellulose)、エチルセルロース(Ethyl Cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl Cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methylcellulose)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(Low-substituted Hydroxypropyl)、微結晶セルロース(Microcrystalline cellulose:MCC)、アルデヒドセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(Hydroxypropyl Methylcellulose Phthalate)、コラーゲン、ヒアルロン酸、ゼラチン又はゲル、四級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、界面活性剤のうちの1種又は複数種を含む(これらに限らない)。
【0020】
一実施例において、この医薬組成物の推進剤は、室温の圧力下で液化可能であり、且つ吸入又は局所使用において安全であり、毒物学的に無毒であるのに適したガスを指す。なお、選択された推進剤は、吸着性薬物との相対的反応性がない。推進剤は、これらに限定されないが、過フッ素化化合物(PFC)、ヒドロフルオロアルカン(HFA)、フルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、及びフルオロトリエチルアミンを含む(これらに限らない)。
本発明の一実施例において、この医薬組成物は、治療薬物を更に含む。この治療薬物は、例えば、抗菌薬、抗ウイルス薬(ウイルスの種類によって異なり、レボセビル(Remdesivir)、カルバムスタンメネート(Camostat mesylate)、ロピナビル(Lopinavir)、リトンビル(Ritonavir)、ファビラビル(Favipiravir)、アルビレン(Umifenovir)、アデノヌクレオチド類似体(adenosine nucleotide analogues)、プロテアーゼインヒビター(protease inhibitor)、RNAポリメラーゼ阻害剤(RNA polymerase inhibitor)、融合阻害剤(fusion inhibitor)、サイトカイン、エンテカビル、イミペネム、インターフェロンであってもよく、それらに限らない)、ベンゼン環薬、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ヴァルファリン(warfarin)、クロピドグレル、エチレンサリチル酸、ワルファン、リバロキサバン(Rivaroxaban)、アピキサバン(Apixaban)、Edoxaban、エノパリンナトリウムなど)、血栓溶性薬物(例えば、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tissue-type plasogen activator:tPA)、プロトプラスト活性化因子(recombinant tissue activator:rt-PA)、トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)、血栓溶解酵素、フォンダパリヌクスなど)、α型遮断薬(例えば、α型交感神経遮断薬(α-adrenoceptor blockers)、Terazosin(Hytrinハイトリン)、Doxazosin(Doxabenドキサゾシン)、Tamsulosin(Harnalidgeタムスロシン)又はSilodosin(Uriefカプセルなど)、5α還元酵素阻害剤(5α-Reductase inhibitor、例えば、Finasteride (Proscarプロスカー)又はDutasteride (Avodartデュタステリドカプセル)など)、鼻腔うっ血除去薬(nasal decongestants)、鎮咳剤(Antitussive)、去痰剤(Expectorants)、痰溶解薬剤(Mucolytics)、気管又は気管支拡張剤(Bronchodilators、例えば、β二型交感神経刺激剤、抗コリン薬等)、抗生物質(例えば、アミノペニシリン(aminopenicillins)系抗生物質、カルボキシペニシリン(carboxypenicillins) 系抗生物質、スルホンアミド系及びトリメトキシフェニルピリミジン-スルファメトキサミド(Sulfonamides and trimethoprim-sulfamethoxazole)系抗生物質(例えば、TMP-SMXなど)、β-ラクタム(β-lactam)系抗生物質、ユニークなβ-ラクタム(unique β-lactam)系抗生物質(例えば、Monobactams又はcarbapenems)、非β-lactam系抗生物質(例えば、マクロライド(macrolide)又はテトラサイクリン(tetracycline))、セファランチン(Cephalosporins)系抗生物質、macrolide系抗生物質、フルオロキノロン系抗生物質(Fluoroquinolones:FQ)系抗生物質、バンコマイシン(vancomycin)、リファペンチン(Rifapentine)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)、チゲサイクリン(tigecycline)等)、抗カビ薬(例えば、amphotericin B系抗カビ剤、imidazoles系抗カビ剤、Triazoles系抗カビ剤、Griseofulvin系抗カビ剤、Nucleoside analogues系抗カビ剤、Polyenes系抗カビ剤、triazole系抗カビ剤(例えば、voriconazole、itraconazole、posaconazoleなど)、echinocandin系抗カビ剤、voriconazole系抗カビ剤、Azole系抗カビ剤、isavuconazole、flucytosine、fluconazoleなど)、抗喘息薬(Antiasthmatic drugs)、抗炎症薬(例えば、抗ロイコトリエン製剤、ステロイド、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)など)、抗酸化剤(抗炎症及び抗遊離基のためのもの、例えば、メラトニン、アントシアニンなど)、漢方薬エキス(例えば、マコット石の煮汁エキス(炙マオウ、ケイシ、柴胡、生姜、カッコウ、ブクリョウ、チョレイ、沢瀉、ハンゲ、サイシン、陳皮、ビャクジュツ、紫苔、カントウカ、ヤカン、オウゴン、生石膏、みかん、杏仁、山薬、炙カンゾウ)、イソフラボン系誘導体、フラボン系化合物、ドクダミベンジン、ケルセチン、ケルセチン-3-ラムノシド、ドクダミ(デカノイルアルデヒド)(decanoyl acetaldehyde)、ラウリルアルデヒド(lauric aldehyde)、l-ピネン(l-pinene)、リナロール(linlool)、カンフェン(camphene)、ミルセン(myrcene)、リモネン(limonene)、ボルネオールアセテート(bornyl acetate)、カリオフィレン(caryophellene)、アフォリン(afzelin)、ヒペリシン(hyperin)、ルチン(rutin)、ケルセチン(quercitrin)を含有する葉、イソケルセチン(isoquercitrin)を含有する花および果実、キンギンカ、トリテルペノイドサポニン、モチクリン、ニントウカン、キンガラニン、ホコウエイ、迷香酸、オレアノール酸、アルブチン、ルチン、夏枯草、擬タンポステロールパルミチン酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、コーヒー酸、アルカロイド、ベシン、ゴマシド、フェニルプロパノシド、シクロオレフィンエーテルテルペン、バンランコン注射液(4(Hキノジメドン、3カルボニルフェニル)-1(H)キノジメドン、安息香酸、シリンガ酸、アントラニル酸、サリチル酸)など)、抗体(例えば、タシマブ(Tocilizumab)、サルモシルトマブ(Sarilumab)、イカリズマブ(Eculizumab)、ケブザラ(Kevzara)、オクラ(Actemra))、ワクチン(本発明における吸着性薬物と結合可能なワクチン、例えば、mRNAワクチン、タンパク質ワクチン、アデノウイルスワクチン、弱毒化ワクチン、分子ワクチン、又はナノワクチン)であり、ひいては治癒者の血漿であるが、上記に限らず、そのうちの1種又はそれらの組み合わせであるが、それらに限らない。
【0021】
本発明の一実施例において、吸着性薬物上に、炎症物質/有害物質を吸着するか又は他の助剤、賦形剤、推進剤及び含水担体との連結を増加するためのコーティング層が形成されてもよい。一実施例では、酸素プラズマ(oxygen plasma)、泡酸、メッキ又は被覆などの方式により吸着性薬物の表面で改質/修飾を行い、この表面を改質又は表面修飾させて表面にコーティング層を形成してもよい。別の実施例では、このコーディング層は、酸素官能基(プラズマ処理で該炭素材料の表面に付着させ、ウイルス又は分子鎖構造のエンドトキシンを吸着させる)、水酸官能基(泡酸処理で該炭素材料の表面に付着させ、ウイルスを吸着させる)、水酸基、カルボン酸、アルデヒド基、炭酸、金属イオン(高温又はメッキ処理で該炭素材料の表面に付着させ、ウイルス外膜を不活化し、ウイルス活性を抑制し、又はウイルスを死滅させ、銀、白金、パラジウム、金、亜鉛又は銅であってもよく、好ましくは、銀イオンである)、磁気物質(該炭素材料の吸着能力を補強し、有害物質の残留を低減させるためのものであり、好ましくは、鉄イオンである)、カチオン化合物(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムを含有する化合物、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、アニオン化合物(例えば、三ヨウ化ナトリウムなど)又はハロゲンイオン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのイオン)のうちの1種又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0022】
別の実施例では、該吸着性薬物は、表面で金属イオンと更に結合してもよく、該金属イオンは、銀、白金、パラジウム、金、亜鉛又は銅であってもよく、好ましくは、銀イオン含有活性炭素繊維粉末であり、二番目に好ましくは、銀イオン含有炭素繊維粉末である。なお、該銀イオン含有炭素材料もウイルスの吸着、ウイルスの外膜の不活性化及びサイトカインストーム障害の緩和などの効果を有し、死亡リスクを低下させることができる。別の好ましい実施例では、亜鉛イオン含有活性炭素繊維粉末又は亜鉛イオン含有炭素繊維粉末である。本発明の別の実施例では、該吸着性薬物は、種々のナノデリバリーシステム又は担体、例えば、リポソーム(liposome)、ナノ病原体、ナノ細菌又は分子ロボット(molecular robot)などを混合してもよく、該ナノデリバリーシステムは、上記コーティング層の種々の態様、例えば、ナノスフェア、金属イオン、カチオン薬物、アニオン薬物、磁気物質などと結合して、全体の安定性を増加させたり、その有用性を増加させたりすることもできる。
【0023】
本発明の組成物が吸着しうる有害物質としては、有害物質(例えば、エンドトキシン(endotoxin))、細菌、ウイルス、炎症促進ホルモン、走化性ホルモン(chemokine)又はサイトカイン(cytokine)などであってもよい。本発明は、噴霧剤又は吸入剤又は液体懸濁剤として製剤化され得る呼吸器系傷害改善用医薬組成物の使用方法をさらに含み、使用時に、ネブライザーによる噴霧又は乾燥粉末吸入(吸着性薬物を単独で使用し、含水担体を含まないことを指す)を通して、または、デバイス(例えば、胸腔鏡、内視鏡、気管支鏡、輸液チューブ、輸液バッグ、輸液ポンプ、又はシリンジ)を通して、患者の鼻腔、喉頭、肺の特定又は不特定の腔(例えば、肺気管支又はサブ微気管支)に該医薬組成物を注入し、さらに、一肺葉洗浄、経肺洗浄、又は気管支肺胞洗浄を組み合わせた治療を行い、生理食塩水を用いて、該医薬組成物及び吸着された有害物質を除去する。
【0024】
本発明は、呼吸器系傷害改善用医薬組成物の使用方法を提供し、該使用方法の一実施態様は、噴霧剤又は吸入剤形の医薬組成物を、ネブライザー噴霧又は乾燥粉末吸入などの気質投与方式により、該医薬組成物を肺気管支又はサブ微気管支に送達することであり、ここで、乾燥粉末吸入は、吸着性薬物を単独で使用することである。さらに、患者の痰形成を通して、治療コースを完了するために、該医薬組成物を肺から排出する。医師が患者を評価して痰を肺の毛で取り除くことができない場合、該医薬組成物はさらに、経肺洗浄又は気管支肺胞洗浄と組み合わせて治療し、生理食塩水を利用して該医薬組成物とその吸着された有害物質を除去して、後続の残留リスクを低減することができる
【0025】
以下、本発明の好ましい実施例の製造方法及び関連実験を説明することで、本発明の有する効果を説明する。
【0026】
本発明の医薬組成物の製造方式
8mgの本発明の炭素材料を秤り、50 ml 0.9%生理食塩水を加えて均一に混合した。炭素材料系は、活性炭素粉末であり、表面には何ら修飾がなく、比表面積は、1248.8 m2/gであり、平均粒径は、12.08ミクロン(μm)であり、粒径分布中央値(d50、Median)は、9.453ミクロン(μm)であり、細孔容積は、0.4285 ml/gである。
【0027】
実験モジュール
図1を参照すると、
図1は、本発明の異なる濃度のリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)を用いた、COVID-19の異なる進行を模倣する概略図である。COVID-19患者の肺におけるARDSの予防のための化合物又は治療方法を試験するために、本発明は、リポ多糖を使用してARDSの病理モデルを誘導する。リポ多糖は、グラム陰性菌の細胞壁から精製された糖であり、これがエアロゾルによって齧歯類動物の肺に送達されると、Th1免疫応答を誘発し、気道への炎症細胞(主に好中球)の突入を引き起こし、そして肺のサイトカイン(cytoline)の実質的な増加を引き起こし、したがって、さまざまな度合いのARDSを引き起こす。本発明は、異なる濃度のリポ多糖を用いることで、COVID-19の異なる進行を模倣することができる。
図1に示すように、疾患の時間が進行するにつれて、その横軸で示される時間は、初期感染(phase I)、肺傷害段階(phase II)、サイトカインストーム段階(phase III)及び回復期(phase IV)を含み、ここで肺傷害段階(phase II)の進行の半分で、肺の炎症反応が発見され、炎症反応はサイトカインストーム段階(phase III)でピークに達する。
【0028】
血中酸素濃度は一般的にヒト血中酸素飽和度の正常値が95%以上であるが、COVID-19患者ではしばしば「暗黒症」(silent hypoxia)が観察され、既に低血中酸素症の場合があるが、患者は呼吸困難と感じることがなく、そのため医師が遅れて病状を遅らせ、突然死に至る可能性が高い。主に、肺傷害段階(phase II)に進行すると、患者には重度の肺炎を発症し、WHOによるSARS-CoV-2感染症の関連症状の分類によれば、重度の肺炎臨床症状は、発熱又は気道感染、ならびに、>30回/分の呼吸速度、重度の呼吸窮迫(severe respiratory distress)、≦94%の無酸素装置支援(room air)における血中酸素飽和のうちのいずれかを組み合わせることである。サイトカインストーム段階(phase III)で、患者は急性呼吸窮迫症(ARDS)を起こす。WHOによるSARS-CoV-2感染の関連臨床表現の分類によれば、急性呼吸窮迫症(ARDS)患者は、臨床的に以下の状況を観察した:(1)胸部画像(X線、コンピュータ断層、肺超音波等)は、両側性プラーク(opacities)を発見し、肋膜水腫、肺葉崩壊、又は結節だけでは説明できない。(2)肺浮腫原因(origin of edema):心不全又はフルード過負荷(fluid overload)で完全には説明できない呼吸不全、及び静水性肺浮腫(hydrostatic)を除くための客観的な証拠評価が必要である。(3)酸素合度(成人):「軽度ARDS」:200 mmHg<PaO2/FiO2≦300 mmHg ( PEEP又はCPAP≧5 cm H2Oを組み合わせるか、又は機械的呼吸支援を受けていない)、「中度ARDS」:100 mmHg<PaO2/FiO2≦200 mmHg (PEEP≧5 cm H2Oを組み合わせるか、又は機械的呼吸支援を受けていない)、「重度ARDS」:PaO2/FiO2≦100 mmHg ( PEEP≧5 cm H2Oを組み合わせるか、又は機械的呼吸支援を受けていない)。PaO2の値がない場合、SpO2/FiO2≦315 mmHgは、(患者が機械的呼吸支援を受けていない場合であっても)ARDSがあると考えられ得る。
【0029】
縦軸の重症度は、軽度の気道疾患(stage1)、肺炎(stage2)、重度の肺炎(stage3)及び呼吸窮迫症(stage4)の4つの等級に分類でき、ここで、軽度用量のLPS(2mg/kg)は、肺炎のような病的状態を誘発することができ、中等用量のLPS(4mg/kg)は、重度の肺炎のような病的状態を誘発することができ、高用量のLPS(8mg/kg )は、呼吸窮迫症のような病的状態を模倣することができる。したがって、本発明者らは、低用量LPSを、COVID-19を模倣する肺傷害段階(phase II)の前段として、中等用量LPSを、COVID-19を模倣する肺傷害段階(phase II)の後段として、高用量LPSを、COVID-19を模倣するサイトカインストーム段階(phase III)として使用し、これにより、COVID-19の様々な進行/重症度を模倣することができる。
【0030】
実験方法
リポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)を用いて、気管投与により7~9週間のSDラットを急性肺傷害動物モードに誘発した後、上記処方の処置を傷害前に施すか又は傷害後に施し、ラットの死亡又は瀕死現象及び炎症反応の発生が低減されるか否かを評価し、肺組織病理学的に本発明の医薬組成物が肺の傷害及び炎症反応を緩和するか否かを検討した。本実験の実験群の設計は表1に示すとおりである。
【0031】
【0032】
実験結果
1.死亡率
処理後の死亡率は表2に示す通りであり、高濃度のLPSでは急性肺傷害を誘導するのに一定の死亡率を示したが(処理群A)、中等、低濃度のLPSでは急性肺損傷を誘導し(処理群Bと処理群C)、処理後には死亡率の低下に成功した。
【0033】
【0034】
2.肺傷害の関連試験
A.肺タンパク質蓄積の改善の試験
滅菌後PBSで左肺葉を洗浄して気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid:BALF)を回収し、酵素結合免疫吸着アッセイ(Enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA )で総タンパク質量を測定した。実験結果は、
図2を参照する。
図2は、処理後の各気管支肺胞洗浄液群(BALF)の総タンパク質量のヒストグラムである。
図2に示すように、処理群A(高用量)、処理群B(中等用量)及び処理群C(低用量)では、本発明の医薬組成物を用いることにより、BALF中の総タンパク質量を著しく低減でき、それぞれ52%、51%及び28%低減できることを見出し、本発明の医薬組成物が各段階の肺傷害に対して、肺タンパク質蓄積を改善する効能を有することが明らかになった。
【0035】
B.肺炎症改善試験
滅菌後PBSで左肺葉を洗浄してBALFを採取し、ELISAによりIL-6及びIL-8等の炎症因子の濃度を定量した。
図3と
図4を参照すると、
図3と
図4はそれぞれ処理後の各群の気管支肺胞洗浄液群(BALF)のIL-6(
図3)とIL-8(
図4)のヒストグラムである。
図3に示すように、処理群A(高用量)と処理群B(中等用量)では、本発明の医薬組成物を用いることにより、炎症因子IL-6の濃度を著しく低減することができる。
図4に示すように、処理群A(高用量)では、IL-8の濃度を
著しく低減することができ、本発明の医薬組成物は、肺炎症反応を低減する効果を有することが明らかになった。
【0036】
C.肺浸潤及び肺水腫の改善試験
残りの肺葉(右頭蓋、右尾葉及び副葉を含む)を計量し、0.8~1.0mLの10%中性緩衝ホルマリン(neutral buffered formalin:NBF)で灌流し、次いで10倍体積の10% NBFで72~96時間、室温で保存する。定着後、肺葉を剪断し、ワックスで包埋し、ミクロトームで厚さ4~6ミクロンの切片に切断し、切片を均一にhematoxylin and eosin (H&E)染色した。
肺葉主要断面積(area of interest:AOI)の400X拡大写真を取って、中性多形核白血球浸潤(polymorphonuclear cell infiltration:PMNL infiltration )及び肺水腫(Intra alveolar edema)の等級判定を行った。各視野は≧95%の肺胞を含有しなければならず、肺浸潤及び肺水腫の観察および定量化は、10回のランダム評価によって行われ、表3は、スコアリングシステムを示す。
【0037】
【0038】
図5を参照すると、
図5は、それぞれ処理後の各群の肺胞H&E染色図であり、
図6は、
図5の染色図に応じて測定された中性多形核白血球浸潤の定量図である。
図7は、
図5の染色図に応じて測定された肺浮腫定量図である。
図5、
図6及び
図7に示すように、処理群A(高用量)、処理群B(中等用量)及び処理群C(低用量)では、本発明の医薬組成物が中性多形核白血球polymorphonuclear cell (PMNL)浸潤及び肺泡浮腫を著しく低下できることを発見し、本発明の医薬組成物は、肺浸潤及び肺浮腫を改善する効果を有することが明らかになった。
【0039】
D.肺水重量定量図
右正中肺葉を肺から切り出し、調整された体重で湿量基準まで秤量する。その後、試料を60℃のオーブンに24時間放置し、同じ較正用秤から乾燥重量を得た。
図8を参照すると、
図8は、それぞれ処理後の各群の肺水重量定量図である。
図8に示すように、処理群A(高用量)、処理群B(中等用量)、及び処理群C(低用量)では、本発明の医薬組成物の使用により肺水重量を著しく低下できることを発見し、本発明の医薬組成物は肺組織の含水量を著しく低下させ、肺水腫改善効果を有することが明らかとなった。
【0040】
上記実験から分かるように、本発明の医薬組成物は、確かに、様々な肺の有害な病態を効果的に改善することができ、異なる経過を有するCOVID-19に対しても改善効果があった。
図9を参照すると、
図9は、本発明の医薬組成物の好ましい投与タイミングの概略図である。
図9に示すように、上記実験と組み合わせると、本発明の医薬組成物の臨床的に好ましい投与タイミングは、(1)無酸素装置支援(room air)での血中酸素飽和度≦94%であること、
又は(2)放射線学的証拠が肺浸潤を示すことであってもよい。
【0041】
要するに、本発明の医薬組成物によれば、どのような病態の肺炎に対しても一定の効果を有し、呼吸器系傷害を改善する効果を達成することができる。前記呼吸器系傷害は、軽度の気道疾患、急性扁桃炎、急性喉頭炎、気管支の炎症、肋膜の炎症、肺膿瘍(Lung abscess)、喘息(asthma)、成人ウイルス性肺炎(Viral Pneumonia)、成人細菌性肺炎(Bacterial pneumonia)、外因性アレルギー性肺胞炎(extrinsic allergic alveolitis)、アレルギー性肺炎(Hypersensitivity pneumonitis)、出血性肺炎、結核性肺炎、ファーメンタ肺(Farmer’s Lung)、ロイコファン肺炎(Legionnaire’s disease)、マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma pneumonia)、肺気腫(Emphysema)、吸入性肺炎(Aspiration pneumonia)、肺水腫(hydrocele)、肺傷害、肺水腫(pulmonary edema)、急性肺炎、慢性肺炎、重症肺炎、急性呼吸促進症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)、肺線維症もしくは慢性肺閉塞(COPD)、又は肺の清浄による気道の改善及び治療が可能な他の適応症を含む。
【0042】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者にとって、本発明は、様々な変更及び変形が可能である。本発明の趣旨及び原理を逸脱しない範囲で行われる任意の修正、均等物による置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【国際調査報告】