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特表2023-528890ジオールの混合物を精製するための方法
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  • 特表-ジオールの混合物を精製するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ジオールの混合物を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/80 20060101AFI20230629BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20230629BHJP
   C08G 63/12 20060101ALI20230629BHJP
   C12P 7/18 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C07C29/80
C07C31/20 B
C08G63/12
C12P7/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022574598
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2021064993
(87)【国際公開番号】W WO2021245228
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】102020000013243
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592081988
【氏名又は名称】ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】コッティ コメッティーニ,マルコ
【テーマコード(参考)】
4B064
4H006
4J029
【Fターム(参考)】
4B064AC05
4B064BA01
4B064BJ01
4B064CA01
4B064CE01
4B064DA16
4H006AA02
4H006AB46
4H006AD11
4H006FE11
4H006FG28
4J029AA03
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029BA05
4J029BA09
4J029CA06
4J029CB06
4J029FC03
4J029JB131
4J029JF321
4J029JF331
4J029KC02
4J029KD01
(57)【要約】
本発明は、1,3-及び1,4-ブタンジオールをそれらの混合物から分離するための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3-ブタンジオール及び1,4-ブタンジオールをそれらの混合物から分離するための方法であって、1,3-ブタンジオールを含有する合成生成物を1,4-ブタンジオールを含有する合成生成物と混合する予備工程と、
(a)1回又は複数回以上の蒸留操作によって、前記混合物から
i.溶媒
ii.重質画分
iii.軽質画分
iv.1,4-ブタンジオールを含む画分
を除去するさらなる工程と、
ここで、前記画分(iii)及び(iv)の少なくとも1つは、1,3-ブタンジオールを含み;
(b)1,3-ブタンジオールを含む前記画分(iii)及び(iv)の少なくとも1つをさらなる蒸留に供するさらなる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記合成生成物が、発酵による1,3-ブタンジオール及び1,4-ブタンジオールの生成から生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の前及び混合する予備工程の後に、1,3-ブタンジオール及び1,4-ブタンジオールの発酵生産から得られるブロスから、溶媒、副生成物及び/又は不純物を含む1つ又は複数の画分を分離する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)の前に、1,3-ブタンジオールを含む画分(iii)又は(iv)の加水分解反応を少なくとも含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
99重量%超の純度を有する1,3-ブタンジオールが、工程b)から得られる、請求項1~3のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項6】
98重量%超の純度を有する1,4-ブタンジオールが得られる、請求項1~5のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒(i)が水である、請求項1~6の一項又は複数項に記載の方法。
【請求項8】
前記軽質画分(iii)が、1,3-ブタンジオールよりも沸点が低い化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項9】
1,3-ブタンジオールよりも沸点が低い前記化合物が、3-ヒドロキシ-ブタナール、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、3-ヒドロキシブトキシ-2-ブタノン、1,2-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール及び/又はガンマ-ブチロラクトンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記重質画分(ii)が、1,4-ブタンジオールよりも沸点が高い化合物を含む、請求項1~9のいずれか一項又は複数項に記載の方法。
【請求項11】
1,4-ブタンジオールよりも沸点が高い前記化合物が、分解プロセスを受けた有機化合物、2-ピロリドン及び/又は1,6-ヘキサンジオールを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程a)が
(a.1)第1の蒸留によって前記溶媒(i)を除去する操作と、
(a.2)前記重質画分(ii)を第2の蒸留によって除去する操作と、
(a.3)前記軽質画分(iii)を第3の蒸留によって除去して、1,4-ブタンジオール(iv)を含む画分を得る操作と
を含み、
画分(iii)が1,3-ブタンジオールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1,4-ブタンジオールの濃度が98.0重量%を超え、1,3-ブタンジオールを20ppm~20000ppm含む1,4-ブタンジオール組成物。
【請求項14】
(a)
(a1)全ジカルボキシル成分に対して0~80モル%の、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸に由来する単位と、
(a2)全ジカルボキシル成分に対して20~100モル%の、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸に由来する単位と
を含むジカルボキシル成分、及び
(b)1,4-ブタンジオールを含むジオール成分
を含む二酸-ジオール型のポリエステルを生成するための方法におけるジオール源としての、請求項13に記載の1,4-ブタンジオール組成物の使用。
【請求項15】
(a)
(a1)全ジカルボキシル成分に対して0~80モル%の、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸に由来する単位と、
(a2)全ジカルボキシル成分に対して20~100モル%の、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸に由来する単位と
を含むジカルボキシル成分、及び
(b)1,4-ブタンジオールを含むジオール成分
を含み、10ppm~10000ppmの1,3-BGを含む、二酸-ジオール型のポリエステル。
【請求項16】
-請求項15に記載の二酸/ジオール型の少なくとも1つのポリエステル、及び
-二酸/ジオール型の前記ポリエステル以外の1つ又は複数のポリマー
を含む混合物。
【請求項17】
請求項16に記載の混合物を含むフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3-ブタンジオールと1,4-ブタンジオールとを、それらの混合物から同時に精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3-ブタンジオール(一般にBG、1,3-BG、1,3-BDO又は1,3-ブチレングリコールとして知られている)は、R-1,3-BDO及びS-1,3-BDOの2つの立体異性体を有する4炭素ジオールである。ラセミ混合物は、多くの工業プロセスにおいて、例えば食品香味料のための有機溶媒として、又はポリウレタン樹脂及びポリエステルの生成のための試薬として一般に使用されている。その低い毒性及び高い忍容性のために、それはまた、パーソナルケア製品において、例えば、毛髪及び入浴製品、目及び顔のメイクアップ、香水、パーソナルクレンジング、シェービング及びスキンケア製品の製剤において、化粧品産業においてますます使用されている。光学活性1,3-BDOはまた、抗生物質、フェロモン、芳香剤及び殺虫剤の成分としても広く使用されている。
【0003】
1,4-ブタンジオール(一般に1,4-BDO、1,4-BD又は1,4-ブチレングリコールとして知られている)は、様々なタイプの生成物、例えば二酸-ジオール型のポリエステルの生成のためのモノマーとしてか、又は化合物、例えば、ガンマ-ブチロラクトン及びテトラヒドロフランの合成のための中間体として広く使用されている。ジカルボン酸及びジオールに由来する繰り返し単位を含むポリエステルは、その機械的特性及び加工特性のために、現在、熱可塑性ポリマー材料、例えば、フィルム、成形物品及びブロー成形物品並びに繊維の用途の全ての分野で広く使用されている。さらに、このようにして得られたポリエステルは、特にEN 13432に従って生分解性であることが好ましい。
【0004】
化石資源からのC~C短鎖ジオールの化学的生成は、数十年にわたって開発され、最適化されてきた。1,3-BGは伝統的に、アセチレンを水和してアセトアルデヒドを形成し、次いでこれを3-ヒドロキシブチルアルデヒドに変換し、還元して1,3-BGを形成することを含む化学プロセスによって生成される。これは、通常、ラセミ型になる。
【0005】
1,4-BDOは、石油化学原料から様々な化学プロセスによって合成することができる:ホルムアルデヒドによるエチニル化を介したアセチレン;アセチル化又はハロゲン化を介したブタジエン;エポキシ化又はオキシアセチル化を介したプロピレン;無水マレイン酸の形成及び様々な経路によるその後の水素化を介したn-ブタン。
【0006】
化石資源の減少、石油価格の変動、及び環境問題の増加のために、生物学的プロセスによる再生可能資源からのC~Cジオールの生成は、かなりの関心を集めている。
【0007】
1,3-BG及び1,4-BDOは、実際には、再生可能資源、例えば、炭水化物、例えば、糖及びリグノセルロース系バイオマスから、又は合成ガス(CO、CO及び/又はH)から、直接(WO2015/158716)又はバイオコハク酸の形成(WO2011/063055)及びその後の水素化を介してか、又はポリヒドロキシアルカノエートの形成(WO2011/100601)を介して、発酵プロセスによって生成することができる。
【0008】
特許出願WO2015/158716は、1,4-BDOの合成のための少なくとも1つの代謝経路を有する微生物による培地中での発酵を含む、1,4-BDOの生成のための方法を記載しており、前記培地は、グルコースとスクロースとの混合物を含む。同様に、WO2010/127319は、再生可能資源から1,3-BGを生成するための発酵プロセスを記載している。
【0009】
しかしながら、再生可能資源から生成された1,3-BG及び1,4-BDOは、一般に、発酵プロセス及び分解プロセスに直接由来する副生成物を含む不純物を含有する。1,3-BG及び1,4-BDOの使用が確保されるべき場合、例えば化粧品分野及び二酸-ジオール型のポリエステルの合成において、1,3-BGについて99%より高い純度及び1,4-BDOについて98%より高い純度、好ましくはまた99%より高い純度がそれぞれ要求される場合、そのような不純物は除去される必要がある。実際、これらの分野では、それらの純度レベルが高いほど、より多くの1,3-BG及び1,4-BDOといったモノマーが求められている。
【0010】
加えて、上述の発酵プロセスは、一般に、異なる微生物を採用し、品質及び量の両方に関して異なる不純物含有量を有する1,3-BG及び1,4-BDOの生成をもたらす。
【0011】
例えば、発酵により生成された1,4-BDOは、1,4-BDOモノアセテート、2-(4-ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン、2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、1,3-プロパンジオール、ガンマ-ブチロラクトン、1,6-ヘキサンジオールを含む不純物を含有し得る。発酵により生成された1,4-BDOを精製するための方法は、例えば、特許出願WO2019/102030及びWO2014/152665に記載されている。
【0012】
発酵により生成された1,3-BDOは、通常、単一のエナンチオマー形態、典型的にはR形態で得られ、代わりに、3-ヒドロキシ-ブタナール、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、3-ヒドロキシブトキシ-2-ブタノン、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオールを含む不純物を含有し得る。発酵により生成された1,3-BGを精製するための方法は、例えば、特許出願WO2018/183628に記載されている。
【0013】
これは、当該2つのジオールの各々の要件を満たし、発酵生成物の各々の特徴に適合した精製プロセスを特定し、実施する必要があることを意味する。2つのジオール、1,3-BG及び1,4-BDOは、実際には、異なる物性も有し、したがって、異なる分離単位操作の使用を必要とするか、又は少なくとも各々の操作条件の複雑な制御を必要とする。
【0014】
このため、当該2つのジオールを生成するための発酵プロセスは類似しており、本質的に同じ設備を必要とするが、1,3-BGの精製のために最適化されたプロセスは、一般に、1,4-BDOの精製に適しておらず、逆もまた同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の問題を克服するために、驚くべきことに、単一の方法によって混合物から2つのジオールを同時に精製することが可能であることが見出された。
【0016】
実際に、2つの化合物をそれらの混合物から分離することを可能にする方法が特定されており、各々について>98%もの純度レベルが得られる。加えて、このプロセスは、1,3-BG及び1,4-BDOを精製し、水の沸点よりも高い沸点(>100℃)、水への溶解度、又はその両方を含む、1,3-BG及び1,4-BDOと同様の物性を有し得る混合物中の他の化合物から分離することを可能にする。
【0017】
2つの化合物をそれらの混合物から精製することが可能であることにより、それらを同じ生産プラントで同時に、混合物としてか又は別々に生成することもできる。一方から他方への移行において著しいプラントシャットダウンを必要とする、同じプラントにおける1,3-BG及び1,4-BDOのための別個の生成及び精製キャンペーンと比較して、これは、生成物が長期貯蔵の場合に劣化し得るので、タイミング、コスト及び生成物の収率に関して著しい利点を表す。
【0018】
さらなる利点は、プラントの柔軟性であり、これは、市場の要求に適応可能な可変比での1,3-BG及び1,4-BDOの精製を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による方法は、特に、1,3-BG及び1,4-BDOを含む混合物を蒸留する工程と、1,3-BGを含む画分を蒸留するその後の工程とを含み、前記1,3-BGの濃度が99重量%を超える、好ましくは99.5重量%を超える1,3-BG組成物を得ることを可能にする。有利には、前記方法は、同時に、前記1,4-BDOの濃度が98重量%を超える、より好ましくは99重量%を超える、さらにより好ましくは99.5重量%を超える1,4-BDO組成物を得ることも可能にする。
【0020】
したがって、第1の態様では、本発明は、1,3-BG及び1,4-BDOをそれらの混合物から分離するための方法であって、1,3-ブタンジオールの合成生成物と1,4-ブタンジオールの合成生成物とを混合する予備工程と、
(a)1回又は複数回以上の蒸留操作によって、その混合物から
i.溶媒
ii.重質画分
iii.軽質画分
iv.1,4-BDOを含む画分
を除去するさらなる工程と、
ここで、前記画分(iii)及び(iv)の少なくとも1つは、1,3-BGを含み;
(b)1,3-BGを含む前記画分(iii)及び(iv)の少なくとも1つをさらなる蒸留に供するさらなる工程と
を含む方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
前記方法は、工程b)の終わりに、前記1,3-BGの濃度が99重量%を超える1,3-BG組成物を得ることを可能にする。一態様によれば、得られた1,3-BGはラセミ体である。代替的な態様によれば、得られた1,3-BGは、Sエナンチオマーよりも高い含有量のRエナンチオマーを有する。
【0022】
前記方法によって、前記1,4-BDOの濃度が98重量%を超える、より好ましくは99重量%を超える、さらにより好ましくは99.5重量%を超える1,4-BDO組成物を、工程a)のサブ工程ivにおいて、又は工程b)の終わりに得ることができる。
【0023】
2つのジオールの混合物から出発して、実際に驚くべきことに、本質的に蒸留操作からなる単純な精製プロセスによって、1,3-BG及び1,4-BDOの両方を高レベルの純度で得ることが可能である。
【0024】
これらの結果は、1,4-BDOの一部の不純物が1,3-BGと共沸混合物を形成するという事実を考慮すると、さらにより驚くべきことである。本発明による方法の各工程における蒸留操作数及び各操作のための塔数は、特に限定されない。
【0025】
本発明による方法を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本方法の好ましい実施形態に関連する想定されるプラント構成の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
蒸留システムを適切に寸法決定することによって工程a)を実施して1,3-BG及び1,4-BDOの比が異なる混合物を効果的に分離し得る。有利には、本発明による方法の工程a)に供給される混合物は、1,3-BG及び1,4-BDOを、1/99を超え、好ましくは1/33を超え、より好ましくは1/24を超え、より好ましくは1/15を超え、さらにより好ましくは1/10を超え、99/1未満、好ましくは3/1未満、より好ましくは1/1未満、さらにより好ましくは1/2未満、さらにより好ましくは1/5未満の1,3-BG/1,4-BDO重量比で含む。
【0028】
当該方法は、工程a)の前に、1,3-BGの合成生成物及び1,4-BDOの合成生成物を混合する予備工程を含み、1,3-BGの合成生成物及び1,4-BDOの合成生成物の両者は、前記1,3-BG及び1,4-BDOに加えて、反応副生成物及び/又は不純物、並びに任意に溶媒を含む。有利には、前記副生成物及び/又は不純物及び/又は溶媒の一部は、方法工程a)の前に、1,3-BGと1,4-BDOとの混合物から分離される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による方法の工程a)を受けた1,3-BGと1,4-BDOとを含む混合物は、発酵による1,3-BG及び1,4-BDOの生成から生じる。そのような発酵生産は、別個の発酵槽で、同時に又は異なる時間に行われてもよく、粗発酵混合物の形成をもたらす;好ましくは、2つのジオールの生成は、別個の発酵槽で同時に行われる。
【0030】
したがって、好ましい態様によれば、当該方法は、工程a)の前に、1,3-BG及び1,4-BDOの発酵生産から得られたブロス(いわゆる粗混合物)を混合して、1,3-BGと1,4-BDOとを含む粗混合物を得る工程を含む。
【0031】
この場合、本方法は、好ましくは、工程a)の前に、有利には予備混合工程の後に、1,3-BG及び1,4-BDOを含む粗混合物から副生成物及び不純物を含有する1つ又は複数の画分を分離して、1,3-BGと1,4-BDOとを含む混合物を得る工程をさらに任意に含む。
【0032】
好ましい実施形態によれば、1,3-BG及び1,4-BDOをそれらの混合物から分離するための方法は、したがって
1)1,3-BG及び1,4-BDOの発酵生産からのブロスを混合して、1,3-BGと1,4-BDOとを含む粗混合物を得る工程と
2)溶媒、副生成物及び/又は不純物を含む1つ又は複数の画分を前記粗混合物から分離して、1,3-BG及び1,4-BDOを含む混合物を得る工程とが先行する。
【0033】
2つのジオールの均一混合物を本発明の方法の上述の工程2)に供給することが特に有利である。
【0034】
発酵による再生可能資源からの1,4-BDOの生成は、例えば、WO2015/158716に記載されている方法に従って行われる。
【0035】
WO2015/158716では、再生可能資源からの1,4-BDO及び水を含む発酵ブロスは、一般に、1,4-BDOの合成のための少なくとも1つの代謝経路を有する1つ又は複数の微生物の存在下で、少なくとも1つの糖、好ましくはグルコース、及び任意にグルコース以外の1つ又は複数の糖を含有する培地からの発酵プロセスによって得られる。
【0036】
培地は、発酵段階における微生物の増殖及び維持に必要な他の物質、例えば、C、H、O、N、K、S、P、Fe、Ca、Co、Mn、Mgといった元素を含んでいてもよい。典型的には、培地は、グルコース以外の糖、タンパク質加水分解物、タンパク質、アミノ酸、有機酸、ビタミン、無機塩、酵母抽出物、並びに微量元素、例えば、コバルト、カルシウム及び銅からなる群より選択される1つ又は複数の成分を含んでいてもよい。コバルト、カルシウム及び銅は、培地に、例えば、塩化コバルト、塩化カルシウム及び塩化銅といった塩として投与することができる。一般に、培地は、少なくとも1つの糖、通常はグルコース、及び任意にグルコース以外の1つ又は複数の糖を、10~100g/Lの濃度で含む。微生物は、本発明の方法における発酵段階の間に1つ又は複数の糖を消費するので、一般に、より多くのこれらの糖を発酵反応器に添加することが必要である。この添加は、当業者に知られているように、連続的又は不連続的に行ってもよい。糖、タンパク質加水分解物、タンパク質、アミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル、酵母抽出物及び微量元素を含む培地の成分は、典型的には、微生物の実際の必要量を超えて添加され、したがって、完全には利用されず、発酵の終了時に不純物の形態でブロス中に残存する。
【0037】
未使用の糖の含有量を制限し、したがってプロセスの経済性を最適化するために、1つ又は複数の糖の供給は、有利には、発酵の終了前に中断するか、又は徐々に減少させる。培地の他の成分に関して、培地は一般に、塩、必須ミネラル、及び消泡剤を含有する。培地は、当業者に公知の任意の様式で、例えば、全ての成分を一緒に混合することによって、又はグルコースを除く全ての成分を予め混合し、それらを後で、個々に又は既に予め混合されてのいずれかで添加することによって、調製してもよい。商業的に入手可能な培地を出発点として使用し、後の段階で、例えば、培地を、再生可能資源からの1,4-BDOの合成のための少なくとも1つの代謝経路を有する微生物と接触させるときにその組成を改変してもよい。発酵中、微生物と1つ又は複数の糖を含む培地とを含む組合せは、再生可能資源からの1,4-BDOの合成のための代謝経路を利用するのに適した条件下で維持される。さらに、当業者であれば、例えば、1つ又は複数のパラメータをモニタリングし、場合によってはそれらに作用して、プロセスを1,4-BDOの生成に好適な条件に戻すことによって、発酵中のプロセスの進行をチェックすることができる。
【0038】
発酵による再生可能資源からの1,3-BGの生成は、例えば、WO2010/127319に記載されている方法に従って行われる。
【0039】
再生可能資源からの1,3-BGを含む発酵ブロスは、一般に、嫌気性又は微好気性条件下で1,3-BGの合成のための少なくとも1つの代謝経路を有する1つ又は複数の微生物の増殖を支持することが当技術分野で公知の培地からの発酵プロセスによって得られる。発酵は、バッチ、フェドバッチ又は連続モードで行われる。嫌気性条件は、最初に培地に窒素を噴霧することによって維持されるが、微好気性条件は、小さな穴で限定的に通気することで達成することもできる。培地のpHは、典型的には、塩基、例えば、NaOH若しくは他の塩基、又は酸の添加によって最適なpHに維持される。
【0040】
1,3-BG及び1,4-BDOの合成のための代謝経路に関して、これらは、微生物中に天然に存在してもよく、又は人工的に、例えば、微生物中に既に存在する代謝経路を変化させる、改変する、増幅する、排除する、若しくは制限することによってか、1つ又は複数の他の生物からの遺伝物質を微生物中に挿入することによってか、自然発生的な遺伝子変異を誘導することによってか、プロセス中に前記代謝経路を阻害若しくは刺激する化合物を添加することによってか、又はさもなければ任意の遺伝子操作技術を利用することによって作製してもよい。1,4-BDOの合成のための代謝経路を有する微生物は、当業者に公知であり、例えば、Yim. H. et al., Nature Chemical Biology, Vol. 7, July 2011, pp. 445-452(以下、「Yim et al.2011」)及び特許出願WO2008/115840、WO2009/023493、WO2010/030711、WO2010/071697、WO2010/141780、WO2010/141920、WO2011/031897、WO2011/047101、WO2011/066076、WO2012/177943、WO2013/3204409、WO2013/3204038、WO2013/202623、WO2013/203176、WO2013/203177、WO2013/203342、WO2013/203440、WO2013/203480、WO2013/203163に記載されている。
【0041】
1,3-BGの合成のための代謝経路を有する微生物は、当業者に公知であり、例えば、Kataoka, N. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 2014, Vol 78, pp. 695-700及び特許出願WO2010/127319に記載されている。
【0042】
1,3-BG及び1,4-BDOを生成するために微生物によって使用される代謝経路における中間体(副生成物)もまた、言及された2つのジオールに加えて生成されるので、糖の1,3-BG及び1,4-BDOへの変換は、典型的には100%未満である。
【0043】
発酵の終了時に、発酵ブロス中に存在する細胞バイオマスを含む生物又は細胞を不活性化又は死滅させてもよい。バイオマスは、熱的手段によって不活性化されてもよく、又は細胞が死滅されてもよく、この場合、これは、典型的には、約50℃~80℃、好ましくは約60℃~70℃、少なくとも約60℃、又は少なくとも約70℃の温度で、約1分~10分、好ましくは2分~5分、2分~3分、少なくとも2分又は少なくとも2.5分の時間にわたって行われる。細胞バイオマスのこのような不活性化又は死滅は、細胞残渣及び代謝産物を発酵ブロス中に放出させる。
【0044】
別々に得られた1,3-BG及び1,4-BDOの発酵生産からのブロスを混合し(工程1)、1,3-BGと1,4-BDOとを含む粗混合物を得る。
【0045】
本発明の意味における「粗混合物」との用語は、1,3-BG及び/又は1,4-BDO発酵プロセスから得られるブロスを意味する。
【0046】
例えば、1,3-BG及び1,4-BDOを含む粗混合物は、前記混合物の総重量に対して約1重量%~20重量%の1,3-BG及び1,4-BDOの合計と、80重量%~99重量%の水及び発酵プロセスに由来する1つ又は複数の不純物(例えば、上記のものの中でも細胞、塩、タンパク質、未変換の糖)の合計とを含む。
【0047】
好ましい態様によれば、粗混合物は、前記混合物の総重量に対して、約5重量%~18重量%の1,3-BG及び1,4-BDOの合計と、82重量%~95重量%の水及び発酵プロセスに由来する1つ又は複数の不純物の合計とを含む。
【0048】
より好ましい態様によれば、粗混合物は、前記混合物の総重量に対して、約10重量%~15重量%の1,3-BG及び1,4-BDOの合計と、85重量%~90重量%の水及び発酵プロセスに由来する1つ又は複数の不純物の合計とを含む。
【0049】
原料混合物内で、1,3-BG及び1,4-BDOの比は、有利には、それぞれの発酵プロセスによって生成される量の比に従って設定される。
【0050】
原料混合物中に存在する不純物としては、例えば、以下のうちの1つ又は複数が挙げられる:1つ又は複数の微生物、細胞残渣、任意の未反応の糖、副生成物、無機塩、代謝産物、及びこれらの微生物によって同化又は代謝されていない培地の成分。
【0051】
上記の本発明の好ましい実施形態による方法の任意の分離工程(工程2)において上記の不純物の1つ又は複数を除去するために、原料混合物は、デカンテーション、遠心分離、濾過、微細濾過、ナノ濾過、限外濾過、イオン交換、浸透、他の好適な固体/液体分離技術及びそれらの組合せから選択される1つ又は複数の処理を受ける。
【0052】
例えば、この原料混合物を最初に遠心分離し、次いで濾過し、微細濾過し、ナノ濾過し、イオン交換樹脂で処理し、最後にオスモティサイズ(osmoticised)してもよい。
【0053】
本発明の一態様によれば、任意の分離工程2)は、1つ又は複数のイオン交換樹脂に対する1つ又は複数の工程操作を含む。
【0054】
前記任意の分離工程2)は、好ましくは、特許出願WO2019/102030に記載されているように、4~2の間のpHがアウトプットで得られるまでのカチオン交換樹脂に対する1つ又は複数の工程操作、及び8~11の間のpHがアウトプットで得られるまでのアニオン交換樹脂に対する1つ又は複数の工程操作を含む。
【0055】
前記カチオン交換樹脂は、一般に、強酸(例えば、スルホネート基)又は弱酸(例えば、カルボキシレート基)から誘導される樹脂からなる群より選択される。カチオン交換樹脂は、好ましくは、スルホネート基から選択される官能基を含有する。本発明による方法において有用なカチオン性イオン交換樹脂の非限定的な例としては、例えば、商品名DOWEX(登録商標)88又はDOWEX(登録商標)88MBで市販されている樹脂が挙げられる。
【0056】
前記アニオン交換樹脂は、一般に、強塩基(例えば、第四級アミン基)又は弱塩基(例えば、第三級アミン基)から誘導される樹脂からなる群より選択される。アニオン交換樹脂は、好ましくは、第四級アミン基から選択される官能基を含有する。本発明による方法において有用なアニオン交換樹脂の非限定的な例としては、例えば、商品名DOWEX(登録商標)22で市販されている樹脂が挙げられる。
【0057】
カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂上での工程の順序は特に限定されない。カチオン交換樹脂上での1回又は複数回の通過は、アニオン交換樹脂上での1つ又は複数の通過に先行してもよく、又はそれに続いてもよい。好ましくは、カチオン交換樹脂上での1つ又は複数の通過は、アニオン交換樹脂上での1つ又は複数の通過に先行する。
【0058】
任意の工程2)における操作の中で、1,3-BG及び1,4-BDOを含む粗混合物又は中間体画分の溶媒含有量(例えば、水)を変化させるための操作を実施してもよい。そのような操作は、例えば、蒸発及び逆浸透から選択される。
【0059】
1,3-BG、1,4-BDO及び水を主に含む、上記の工程1)及び2)に従って任意に得られた1,3-BG及び1,4-BDOを含む混合物は、本発明による方法の工程a)に供給される。その中の1,3-BG及び1,4-BDOの比は、有利には、それぞれの発酵プロセスによって生成される量の比に従って調整される。有利には、前記混合物は、その総重量に対して約50重量%~95重量%の1,3-BG及び1,4-BDOの合計と、5重量%~50重量%の水と、発酵プロセスに由来する1つ又は複数の不純物とを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、混合物は、その総重量に対して約70重量%~90重量%の1,3-BG及び1,4-BDOの合計と、10重量%~30重量%の水と、発酵プロセスに由来する1つ又は複数の不純物とを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、混合物は、その総重量に対して約75重量%~85重量%の1,3-BG及び1,4-BDOの合計と、15重量%~25重量%の水と、発酵プロセスに由来する1つ又は複数の不純物とを含む。
【0062】
これらの不純物は、例えば、1つ又は複数の微生物、細胞残渣、任意の未反応の糖、副生成物、無機塩、代謝産物、及び前記微生物によって同化又は代謝されていない培地の任意の成分からなる群に含まれる。
【0063】
本発明による方法では、1,3-BG及び1,4-BDOを含む上述の混合物は、
(a)1回又は複数回以上の蒸留操作によって、その混合物から
i.溶媒
ii.重質画分
iii.軽質画分
iv.1,4-BDOを含む画分
を除去するさらなる工程と、
ここで、前記画分(iii)及び(iv)の少なくとも1つは、1,3-BGを含み;
(b)1,3-BGを含む前記画分(iii)及び(iv)の少なくとも1つをさらなる蒸留に供する工程と
を受ける。
【0064】
したがって、本発明による方法は、少なくとも2つの連続する蒸留操作を含む。
【0065】
本発明による蒸留操作の各々は、異なるタイプ及び構成の蒸留塔を採用することによって独立して行ってもよい。例えば、プロセス中の蒸留塔は、ランダム充填、構造化充填、フラット充填、ランダム及び構造化充填、ランダム充填及びフラット充填、又は構造化充填及びフラット充填セクションを含んでもよい。構造化充填塔が好ましい。
【0066】
蒸留操作の各々は、単一の塔又は一連の塔で、又は各塔から2つを超えるストリームを得ることを可能にする、より統合された構成を通して、例えば、生成物の側部抽出によってか、又は塔及び補助設備の数を最小限にするための垂直バッフルの挿入によって実施してもよい。
【0067】
本方法による蒸留操作は、好ましくは、化合物の高温への曝露を低減又は最小化して実施される。生成物及びその中に存在する不純物の両者は、蒸留中の加熱に起因した、熱分解又は化学分解を受け得る。減圧(大気圧より低い)又は真空での蒸留塔の操作は、蒸留塔中の混合物の沸点を低下させ、蒸留塔をより低い温度で操作することを可能にするので、好ましい。通常の真空システムを蒸留塔の一部又は全部で使用して、減圧を達成してもよく、又は各塔がそれ自体の真空システムを有していてもよい。
【0068】
蒸留塔の圧力は、頂部で又はコンデンサー中で、底部で又は基部で又はその間のどこかで測定してもよい。本発明による方法における異なる蒸留塔は、異なる圧力で操作してもよい。
【0069】
プロセスの各段階における操作条件は、使用される塔のタイプに合わせて調整してもよい。
【0070】
本発明による方法の工程a)における蒸留操作は、溶媒(i)、重質化合物を含む画分(ii、いわゆる重質画分)、軽質化合物を含む画分(iii、いわゆる軽質画分)及び1,4-BDOを含む画分(iv)を除去することを可能にする。
【0071】
これらの成分(i)~(iv)は、1回又は複数回の蒸留操作によって除去してもよい。
【0072】
好ましくは、溶媒(i)は水である。
【0073】
微生物によって用いられる代謝経路からの中間体(副生成物という)もまた、1,3-BG及び1,4-BDOの生成のための発酵プロセス中に生成され、これらは、他の有機化合物、例えば、糖、タンパク質加水分解物、タンパク質、アミノ酸、有機酸及び酵母抽出物(典型的には微生物の実際の必要量を超えて添加され、したがって完全には利用されない)と一緒に発酵の終わりにブロス中に残り、分解プロセスを受け得る。これらの有機化合物は、「重質」化合物及び「軽質」化合物を含む。
【0074】
「重質」とは、1,4-BDOよりも沸点が高い化合物を意味する。重質化合物の例としては、分解プロセスを受けた可能性のある有機化合物、2-ピロリドン及び1,6-ヘキサンジオールがある。
【0075】
「軽質」とは、1,3-BGよりも沸点が低い化合物を意味する。軽質化合物の例としては、3-ヒドロキシ-ブタナール、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、3-ヒドロキシブトキシ-2-ブタノン、1,2-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール及びガンマ-ブチロラクトンがある。
【0076】
本願において、蒸留塔の操作圧力は、絶対ミリバール(mbar)で測定される。1mbarは100パスカルに相当する。
【0077】
本発明による方法の工程a)において、第1の態様によれば、溶媒(i)及び任意に微量の軽質化合物は、その全重量に対して、60~97重量%、好ましくは80~90重量%の、1,3-BG/1,4-BDO重量比が1/99より高く、好ましくは1/33より高く、好ましくは1/24より高く、より好ましくは1/15より高く、さらにより好ましくは1/10より高く、99/1未満、好ましくは3/1未満、より好ましくは1/1未満、より好ましくは1/2未満、さらにより好ましくは1/5未満である、1,3-BG及び1,4-BDOの合計と、3重量%~40重量%、好ましくは10重量%~20重量%の溶媒(i)とを含む混合物から、20~170℃の温度及び10~200mbar、好ましくは80~120mbarの塔頂圧での蒸留操作によって除去される。溶媒(i)及び任意に微量の軽質化合物(iii)をヘッドから分離する。底部から抽出された混合物は、好ましくは2000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、さらにより好ましくは200ppm未満の量の水を含む。
【0078】
別の態様によれば、工程a)において、重質画分(ii)は、1,3-BG及び1,4-BDOを、1/99より高く、好ましくは1/33より高く、より好ましくは1/24より高く、より好ましくは1/15より高く、さらにより好ましくは1/10より高く、99/1未満、好ましくは3/1未満、好ましくは1/1未満、より好ましくは1/2未満、さらにより好ましくは1/5未満である1,3-BG/1,4-BDO重量比で、2000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、さらにより好ましくは200ppm未満の量の水と共に含む混合物から、100~170℃の温度及び10~70mbar、好ましくは20~50mbarの塔頂圧での蒸留操作によって除去される。この操作により、少なくとも50重量%の重質化合物を含み、最高50重量%の1,4-BDOを含み得る重質画分(ii)を底部から除去することが可能となる。この画分をさらなる段階で処理して、それが含有する1,4-BDOを回収してもよい。塔のヘッドは、重質画分(ii)から精製された1,3-BG及び1,4-BDOを含むストリームを含有する。
【0079】
さらなる態様によれば、工程a)において、軽質画分(iii)は、1/99より高く、好ましくは1/33より高く、より好ましくは1/24より高く、より好ましくは1/15より高く、さらにより好ましくは1/10より高く、99/1未満、好ましくは3/1未満、より好ましくは1/1未満、より好ましくは1/2未満、さらにより好ましくは1/5未満である1,3-BG/1,4-BDO重量比で1,3-BG及び1,4-BDOを含む混合物から、有利には、100~170℃の温度及び10~70mbar、好ましくは20~50mbarの塔頂圧での蒸留操作によって除去される。この操作により、少なくとも1重量%の不純物を含有し、最高99重量%の1,3-BGを含み得る軽質画分(iii)を除去することが可能となる。前記軽質画分(iii)は、好ましくは、2~50重量%の軽質物質及び50~98重量%の1,3-BGを含む。塔の底部は、純度>95重量%、好ましくは>98重量%、より好ましくは>99重量%、さらにより好ましくは>99.5重量%の、精製された1,4-BDO(iv)を主に含有する。蒸留塔は、好適には、沸点が1,4-BDOの沸点と1,3-BGの沸点との間にある任意の画分のパージを可能にするように、側部抽出を備えていてもよい。
【0080】
本発明による方法の工程b)において、1,3-BGを含む想定がされる軽質画分(iii)は、有利には、20~170℃の温度、及び10~100mbar、好ましくは30~60mbarの塔頂圧で蒸留に供される。この操作により、底部から、95重量%を超える、好ましくは99重量%を超える、さらにより好ましくは99.5重量%を超える1,3-BG組成物を含むストリームを得ることが可能となる。蒸留ヘッドは、主に軽質化合物からなり、さらに処理して1,3-BGの回収を増加させることができる。
【0081】
あるいは、工程a)において、軽質画分(iii)は、1/99より高く、好ましくは1/33より高く、より好ましくは1/24より高く、より好ましくは1/15より高く、さらにより好ましくは1/10より高く、99/1未満、好ましくは3/1未満、より好ましくは1/1未満、より好ましくは1/2未満、さらにより好ましくは1/5未満である1,3-BG/1,4-BDO重量比で1,3-BG及び1,4-BDOを含む混合物から、有利には、100~170℃の温度及び10~100mbar、好ましくは20~50mbarの塔頂圧での蒸留操作によって除去される。この操作により、最高95重量%の1,3-BGを含み得る軽質画分(iii)を除去することが可能となる。塔の底部は、1,3-BG及び1,4-BDOを含む。
【0082】
本発明による方法の工程b)において、1,4-BDO及び1,3-BGを含む想定される画分(iv)は、有利には、100~170℃の温度、及び10~100mbar、好ましくは20~70mbarの塔頂圧で蒸留に供される。この操作により、底部から、98重量%を超える、好ましくは99重量%を超える、さらにより好ましくは99.5重量%を超える1,4-BDO組成物を有するストリームを得ることが可能となる。蒸留ヘッドは、純度が95重量%を超える、好ましくは98重量%を超える、さらにより好ましくは99重量%を超える1,3-BGから主になる。
【0083】
蒸留塔は、好適には、沸点が1,4-BDOの沸点と1,3-BGの沸点との間にある任意の画分のパージを可能にするように、側方抽出部を備えていてもよい。
【0084】
好ましい実施形態では、本発明による方法の工程a)は、
(a.1)第1の蒸留によって溶媒(i)を除去する操作と、
(a.2)重質画分(ii)を第2の蒸留によって除去する操作と、
(a.3)軽質画分(iii)を第3の蒸留によって除去して、1,4-BDO(iv)を含む画分を得る操作と
を含み、
ここにおいて、前記画分(iii)及び(iv)の少なくとも1つは、1,3-BGを含む。
【0085】
好ましい態様によれば、前記軽質画分(iii)は1,3-BGを含む。
【0086】
代替的な態様によれば、1,4-BDOを含む画分(iv)は、1,3-BGを含む。
【0087】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、工程b)の前に、工程a)で分離した1,3-BGを含む画分(iii)又は1,3-BGを含む画分(iv)の任意の精製処理を含む。画分(iii)の精製処理が好ましい。
【0088】
この実施形態によれば、精製処理は、少なくとも加水分解反応を含む。工程a)で分離した1,3-BGを含む前記画分の不純物の一部、例えば発酵及び分解プロセスに由来する副生成物又は工程a)の蒸留操作中に形成された副生成物(例えばアセタール及び/又はエステルの形態)は、加水分解に供されると、関連したアルデヒド及び/又はケトン並びに関連したアルコールを形成する。
【0089】
この特定の実施形態は、1,3-BG及び1,4-BDOと共沸混合物を形成する不純物を低減又は除去することさえ可能にし、回収収率をさらに増加させるのに役立つので、特に有利である。
【0090】
好ましくは、こうして得られる可能性のあるアルデヒド及び/又はケトンは、続いて、例えばイタリア特許出願第102020000031979号に記載された方法に従って、還元剤で処理することによってアルコールに還元される。
【0091】
アセタール及び/又はエステルの加水分解後に得られる、及び/又はアルデヒド及びケトンの還元後に得られる本明細書のアルコールは、主に1,3-BG及び/又は1,4-BDOからなる。例えば、4-ヒドロキシブタナール及び1,4-BDOは、2-(4-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの加水分解から形成される。
【0092】
加水分解反応は、当業者に公知の技術、例えば、水のみを用いるか、酸触媒か、塩基触媒か、又は1つ又は複数の酵素の添加による触媒に従って実施してもよい。
【0093】
水のみを用いる加水分解の場合、当該反応は、有利には高温及び/又は高圧で実施する。酸触媒加水分解及び塩基触媒加水分解は、有利には、それぞれ酸及び塩基を添加して、又は例えばイオン交換樹脂を通して実施する。
【0094】
添加される酸は好ましくは強鉱酸であり、これは例えばオルトリン酸、硫酸及び塩酸から選択することができる。
【0095】
添加される塩基は、好ましくは強塩基であり、これは、例えばNaOH、LiOH、KOH及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、添加される塩基はNaOHである。
【0096】
本実施形態の一態様によれば、少なくとも塩基触媒加水分解を行う。本実施形態の別の態様によれば、少なくとも酸触媒加水分解及び少なくとも塩基触媒加水分解を実施する。
【0097】
好ましくは、加水分解反応は、水溶液の総重量に対して50重量%を超える、例えば50~99重量%、好ましくは55~95重量%、より好ましくは75~90重量%の量の水の存在下で実施する。多量の水は加水分解反応に有利であるが、全ての水を後で除去する必要があり、関連する除去コストがかかる。
【0098】
一態様によれば、加水分解は、酸又は塩基の存在下で、好ましくは25~170℃、好ましくは50~100℃、さらにより好ましくは70~95℃の温度で、1分~240分、好ましくは5分~120分、さらにより好ましくは15分~40分の範囲の時間にわたって水溶液を撹拌下に維持することによって行われる。
【0099】
加水分解反応の終わりに得られた水溶液は、有利には、水及び加水分解副生成物を除去するように、例えば、イオン交換樹脂床の通過、活性炭、膜濾過、電気透析、フラッシュ蒸留から選択される1つ又は複数の処理によって処理される。
【0100】
例えば、イオン種を除去するために、加水分解反応後に得られた水溶液を、例えば任意の分離工程2)について上述したように、イオン交換樹脂による1つ又は複数の処理に供することができる。当業者は、採用される加水分解条件に基づいて、使用される樹脂のタイプを選択することができる。
【0101】
カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂又はそれらの組合せが有利に使用される。樹脂は、一般に、任意の分離工程2)について上に列挙した群より選択される。
【0102】
加水分解反応の終わりに得られたか、又は好ましくはイオン交換樹脂を通過した後に、若しくは前記樹脂上の別々の通過の間に得られた水溶液は、次いで、有利には、存在する水を除去するために濃縮工程に供される。
【0103】
前記任意の濃縮工程は、公知の技術に従って実施してもよい。逆浸透、パーベーパレーション、蒸発、蒸留、例えば熱圧縮蒸発又は多重効用蒸発から選択される1つ又は複数の操作を、この目的のために有利に使用してもよい。好ましい技術は、蒸発であるが、生成物を劣化させるおそれがある高すぎる温度に達する必要のない技術である。
【0104】
より好ましい実施形態によれば、工程b)の前に、本発明の方法は、工程a)で得られた1,3-BGを含む画分(iii)及び(iv)のうちの少なくとも1つを
I.工程a)で得られた1,3-BGを含む前記少なくとも1つの画分(iii)及び(iv)を塩基の存在下で加水分解して、イオン種を含む1,3-BG水溶液を得るさらなる工程と、
II.任意に、前記水溶液をイオン交換樹脂による1つ又は複数の処理に供して、1,3-BG水溶液からイオン種を除去するさらなる工程と、
III.任意に、1,3-BG水溶液を濃縮するさらなる工程と
に供することをさらに含む。
【0105】
実施例を含む本出願において、種々の成分の濃度は、重量%として表す。
【0106】
本発明による方法は、特に効率的な様式で1,3-BG及び1,4-BDOを分離することを可能にし、98重量%をさらに超える濃度で1,4-BDO組成物を得る。本方法によって得られる1,4-BDO組成物は、有利には、98~99.9重量%、好ましくは99~99.9重量%、より好ましくは99.5~99.9重量%の1,4-BDO濃度を有し、1ppmを超え、且つ20000ppm以下、好ましくは10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下、さらにより好ましくは1000ppm以下の量の微量の1,3-BGを含む。したがって、本発明の方法によって得られる1,4-BDO組成物は、二酸-ジオール型のポリエステルを生成するための方法においてジオールの供給源として有利に使用することができる。
【0107】
本発明の組成物中に1,3-BGが20000ppm以下、好ましくは10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下、さらにより好ましくは1000ppm以下の量で存在することにより、この組成物を、重合プロセスに悪影響を及ぼすことなく、二酸-ジオール型のポリエステル(以下「ポリエステル」という)を生成するための方法で使用することが可能になることが見出された。反対に、1,3-BGを20000ppmを超える量で含む1,4-BDO組成物を使用すると、通常のプロセス条件下での重合中に許容可能な分子量に達することができず、さらに、1,3-BG及びその想定される副生成物は、主にエステル化水及びデグリコレート(deglycolates)中に濃縮される。
【0108】
したがって、第2の態様では、本発明は、98.0重量%を超える、好ましくは99重量%を超える前記1,4-BDOの濃度を有し、1,3-BGを、20000ppm以下、好ましくは10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下、さらにより好ましくは1000ppm以下の量で含む1,4-BDO組成物に関する。
【0109】
本発明による組成物は、水を、典型的には500ppm以下、好ましくは350ppm以下の量でさらに含んでもよい。
【0110】
本発明の目的のために、「ppm」との用語は、百万分率、すなわち物質1キログラム(kg)当たりのミリグラム(mg)で表される物質の値を意味する。
【0111】
有利には、本発明による1,4-BDO組成物はまた、少なくとも20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、より好ましくは少なくとも200ppm、さらにより好ましくは少なくとも500ppmの1,3-BGを含む。
【0112】
そのような組成物が、二酸-ジオール型のポリエステルを生成するための方法において使用される場合、典型的には少なくとも10ppm、好ましくは少なくとも50ppm、より好ましくは少なくとも100ppm、さらにより好ましくは少なくとも250ppmの1,3-BGを含むポリエステルが得られる。
【0113】
1,3-BGの非存在下で1,4-BDOから出発して生成されたポリエステルと比較して、このポリエステルは、加工工程、例えば、押出、インフレーションフィルム形成プロセス、射出成形、熱成形に供された場合に、テトラヒドロフラン(THF)の形成の低減を予想外に示す。
【0114】
1,4-BDO組成物中の1,3-BGの量は、較正後に、好ましくは内部標準の存在下で、例えばGC-MS分析によって決定される。例えば、1,4-ブタンジオール組成物の試料を、試料との干渉が回避されるように選択された好適な内部標準を含有するアセトニトリルで希釈する。希釈した試料は、全走査/SIM混合モードを用いて、Phenomenex ZB-624Plus 30m×0.32mm×1.80mmカラムで分析する。1,4-ブタンジオール組成物中の1,3-ブタンジオールの濃度は、1,3-ブタンジオールと内部標準との面積比に対する標準濃度溶液から得られる検量線により決定される。
【0115】
ポリエステル中の1,3-BGの量は、ジカルボン酸及び遊離ジオールのメチルエステルを得るための完全なメタノリシスの後に、例えばGC-MS分析によって決定される。定量は、標準較正に基づいており、内部標準又は外部標準の存在下で、好ましくは内部標準の存在下で実施することができる。好ましい手順として、好適な量のポリマー(予想される1,3-ブタンジオール濃度に基づく)を、ステンレス鋼製反応器中で、内部標準として250ppm w/vのグルタル酸ジメチル、及びメタノリシス触媒として250ppmの酢酸亜鉛を含有する40mlのメタノールで、220℃で2時間処理する。冷却後、溶液を回収し、250ppm w/vのグルタル酸ジメチルを含有する得られたメチルエステル(例えば、4-メチル-2-ペンタノン)を完全に溶解することができる20mlの溶媒で反応器を洗浄する。得られたメタノール溶液及び洗浄溶液を混合し、適切に希釈し、GC-MSで分析する。
【0116】
分析は、全走査/SIM混合モードを用いて、ジカルボン酸及びジオールのメチルエステルの分離に好適な極性GCカラム、例えば、Phenomenex ZB-624Plus 30m×0.32mm×1.80mmで実施する。1,3-ブタンジオールの定量は、1,3-ブタンジオールと内部標準との面積比に対する標準濃度溶液から得られる検量線により行う。
【0117】
したがって、第3の態様では、本発明は、二酸-ジオール型のポリエステルを生成するための方法におけるジオールの供給源としての本発明による組成物の使用に関する。
【0118】
本発明による組成物はまた、ポリウレタンの合成における中間体として使用されるポリエステル-ポリオールを生成するための方法において有利に使用され得る。
【0119】
第4の態様では、本発明は、
(a)
(a1)全ジカルボキシル成分に対して0~80モル%の、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸に由来する単位と、
(a2)全ジカルボキシル成分に対して20~100モル%の、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸に由来する単位と
を含むジカルボキシル成分及び
(b)1,4-BDOを含むジオール成分
を含み、
1,3-BGを、10ppmを超え20000ppm未満の量で含む前記ポリエステルに関する。
【0120】
本発明によるポリエステルを生成するための方法において使用される1,4-BDO組成物は、有利には、本発明による組成物である。
【0121】
本発明によるポリエステルは、有利には生分解性であり、好ましくは規格EN13432に従う。
【0122】
さらに、本発明によるポリエステルは、優れた機械的特性を有する。
【0123】
本発明によるポリエステルの生成方法は、典型的には、
(i)
(a)
(a1)全ジカルボキシル成分に対して0~80モル%の、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、塩若しくは誘導体に由来する単位と、
(a2)全ジカルボキシル成分に対して20~100モル%の、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、塩若しくは誘導体の1つに由来する単位と
を含むジカルボキシル成分及び
(b)上で定義された1,4-BDOを含むジオール成分
を含む混合物のエステル化及び/又はエステル交換反応によるオリゴマー生成物の調製と、
(ii)工程(i)から得られたオリゴマー生成物の重縮合と、
(iii)工程(ii)から得られたポリエステルの造粒と
を含む。
【0124】
ジカルボン酸は、有利には再生可能資源から得てもよい。
【0125】
ジカルボン酸は、脂肪族又は芳香族のいずれであってもよく、好ましくは、フタル酸型の芳香族ジカルボン酸、複素環式ジカルボン酸芳香族化合物、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、それらのエステル、塩及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0126】
フタル酸型の芳香族ジカルボン酸は、好ましくはテレフタル酸又はイソフタル酸、より好ましくはテレフタル酸、それらのエステル、塩及びそれらの混合物である。複素環式芳香族ジカルボン酸化合物は、好ましくは2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、より好ましくは2,5-フランジカルボン酸、それらのエステル、塩及びそれらの混合物である。
【0127】
好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸は、飽和C~C24、好ましくはC~C13、より好ましくはC~C11ジカルボン酸、それらのC~C24、好ましくはC~Cアルキルエステル、それらの塩及びそれらの混合物から選択される。好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、2-エチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸及びそれらのC~C24アルキルエステルから選択される。
【0128】
不飽和脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、イタコン酸、フマル酸、4-メチレン-ピメリン酸、3,4-ビス(メチレン)ノナン二酸、5-メチレン-ノナン二酸、それらのC~C24、好ましくはC~Cアルキルエステル、それらの塩及びそれらの混合物から選択される。
【0129】
ジオール成分はまた、1,4-ブタンジオール以外の1つ又は複数のジオールを含んでもよい。
【0130】
好ましくは、ジオール成分は、本発明による1,4-ブタンジオール組成物から本質的になる。
【0131】
存在する場合、追加のジオールは、化石又は再生可能資源から得てもよい。
【0132】
存在する場合、追加のジオールは、典型的には、飽和脂肪族ジオール及び不飽和脂肪族ジオール、芳香族ジオール並びにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0133】
より好ましくは、飽和脂肪族ジオールは、1,2エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール、分子量が100~4000であるジアルキレングリコール及びポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0134】
不飽和脂肪族ジオールは、最も好ましくは、シス2-ブテン-1,4-ジオール、トランス2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、シス2-ペンテン-1,5-ジオール、トランス2-ペンテン-1,5-ジオール、2-ペンチン-1,5-ジオール、シス2-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス2-ヘキセン-1,6-ジオール、2-ヘキシン-1,6-ジオール、シス3-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス3-ヘキセン-1,6-ジオール、3-ヘキシン-1,6-ジオール及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0135】
その代わりに、芳香族ジオールは、より好ましくは、2,5-フランジメタノール、2,4-フランジメタノール、2,3-フランジメタノール、3,4-フランジメタノール、より好ましくは2,5-フランジメタノール及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0136】
本発明の一実施形態では、ポリエステルの繰り返し単位は、本発明による1,4-ブタンジオール組成物と、2つ又は3つ以上のジカルボン酸、好ましくは上に列挙した種類のジカルボン酸を含む混合物との縮合に由来する1,4-ブチレンジカルボキシレート繰り返し単位である。
【0137】
好ましい実施形態では、前記繰り返し単位は、ジカルボン酸の総含有量に対して
-0~65モル%、好ましくは5~60モル%の1つ又は複数の芳香族ジカルボン酸又は複素環式ジカルボン酸化合物、それらのエステル又は塩と;
-35~100モル%、好ましくは40~95モル%の1つ又は複数の脂肪族ジカルボン酸、それらのエステル又は塩と
を含む、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物に由来する。
【0138】
別の好ましい実施形態では、前記繰り返し単位は、少なくとも2つの芳香族ジカルボン酸を含み、さらには、芳香族ジカルボン酸の総含有量に対して
-1~99モル%、好ましくは5~95モル%、より好ましくは10~80モル%のテレフタル酸、そのエステル又は塩と;
-99~1モル%、好ましくは95~5モル%、より好ましくは90~20モル%の2,5フランジカルボン酸、そのエステル又は塩と
を含む混合物に由来する。
【0139】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記繰り返し単位は、少なくとも2つの飽和脂肪族ジカルボン酸を含む混合物に由来し、さらには、脂肪族ジカルボン酸の総含有量に対して、少なくとも50モル%、好ましくは60モル%を超える、より好ましくは65モル%を超える、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、それらのC~C24、好ましくはC~Cエステル及びそれらの混合物からなる群より選択される1つ又は複数の飽和脂肪族ジカルボン酸を含む混合物に由来する。
【0140】
2つ以上のジオールを含むコポリエステルの場合、前記コポリエステルは、好ましくは70モル%、より好ましくは80モル%の1,4-ブチレンジカルボキシレート単位を含有する。1,4-ブチレンジカルボキシレート単位に加えて、前記コポリエステルは、好ましくは、アルキレン基が1,4-ブタンジオール以外の1つ又は複数のジオール、好ましくは飽和脂肪族ジオール及び不飽和脂肪族ジオール、芳香族ジオール及びそれらの混合物からなる群より選択されるジオールの縮合から生じるアルキレンジカルボキシレート単位を含む。
【0141】
典型的なポリエステルの例としては、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンサクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-1,4-ブチレンサクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンサクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンブラシレート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレ-ト)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンオクチル-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンサクシネート-co-1,4-ブチレン-2,5-フラン-ジカルボキシレート)がある。
【0142】
1,4-ブチレンジカルボキシレート単位及び任意の他のアルキルカルボキシレート単位に加えて、本発明によるポリエステルは、好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシ酸に由来する繰り返し単位を、ジカルボキシル成分の総モルに対して0~49モル%、好ましくは0~30モル%の量で含む。
【0143】
ヒドロキシ酸の例としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、8-ヒドロキシカプロン酸、9-ヒドロキシノナン酸、乳酸又はラクチドがある。ヒドロキシ酸は、そのまま鎖中に挿入されてもよく、又は予めジカルボン酸又はジオールと反応させてもよい。
【0144】
本発明による二酸-ジオール型ポリエステルは、1~100g/10分、好ましくは1~50g/10分、好ましくは1.5~30g/10分、より好ましくは2~20g/10分、さらにより好ましくは3~10g/10分の範囲のMFR(ISO規格1133-1に従って190℃及び2.16kgで測定)を有する。
【0145】
第5の態様では、本発明は、
-本発明による少なくとも1つのポリエステルと、
-前記ポリエステル以外の1つ又は複数のポリマーと
を含む混合物に関する。
【0146】
本発明による混合物は、好ましくは、
-本発明による少なくとも1つのポリエステルと、
-ポリエステルの重量に対して1~70重量%の、前記ポリエステル以外の1つ又は複数のポリマーと
を含む。
【0147】
本発明による混合物は、典型的には、好ましくは押出機中で、150℃~250℃の温度で、1つ又は複数のポリマーを、典型的にはポリエステルの重量に対して1~70重量%の量で配合することによって生成される。前記ポリマーは、一般に、ヒドロキシ酸ポリエステル、ポリオレフィン、1,4-ブチレンジカルボキシレート単位を含まない芳香族ポリエステル、ポリエステル-及びポリエーテル-ウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリカーボネート並びに/又は充填剤、可塑剤、UV安定剤、潤滑剤、核形成剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、相溶化剤、ポリフェノール、補強充填剤、カップリング剤、酸化防止剤、抗カビ剤、ワックス及び加工助剤から選択される1つ又は複数の添加剤からなる群より選択される。
【0148】
ヒドロキシ酸ポリエステルの中では、以下のものが好ましい:ポリ乳酸ポリエステル、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレート。
【0149】
好ましくは、ヒドロキシ酸ポリエステルは、ヒドロキシ酸ポリエステルの全重量に対して少なくとも80重量%の1つ又は複数の乳酸ポリエステルを含む。乳酸ポリエステルは、好ましくは、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリD,L-乳酸ステレオコンプレックス、50%w/wを超える前記乳酸ポリエステルを含むコポリマー、又はそれらの混合物からなる群より選択される。特に好ましいのは、L-乳酸若しくはD-乳酸又はそれらの組合せに由来する繰り返し単位を少なくとも95重量%含有し、典型的には50,000を超える重量平均分子量(Mw)及び50~700Pas、好ましくは80~500Pasの動的粘度(ASTM D3835に従ってT190℃、速度勾配1000s-1、D1mm及びL/D 10で測定)を有する乳酸ポリエステル、例えばIngeo(商標)Biopolymerブランド製品4043D、3251D及び6202Dである。
【0150】
好ましくは、本発明による少なくとも1つのポリエステルとヒドロキシ酸からの少なくとも1つのポリエステルとを含む混合物は、本発明による方法によって得られるポリエステル及び前記ポリエステルのそれぞれの重量の合計に対して、1重量%~80重量%、より好ましくは2重量%~70重量%の、ヒドロキシ酸からの前記ポリエステルを含む。
【0151】
ポリオレフィンの中では、以下のものが好ましい:ポリエチレン、ポリプロピレン、それらのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチル酢酸ビニル及びポリエチレンビニルアルコール。
【0152】
芳香族ポリエステルの中では、以下のものが好ましい:特に再生可能含有量が30%を超えるPET、PBT、PTT、及びポリアルキレンフランジカルボキシレート。後者の中で、ポリ(1,2-エチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,3-プロピレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)及びそれらの混合物が特に好ましい。
【0153】
ポリアミドの例としては、ポリアミド6及び6.6、ポリアミド9及び9.9、ポリアミド10及び10.10、ポリアミド11及び11.11、ポリアミド12及び12.12、並びに6/9、6/10、6/11、6/12型のそれらの組合せがある。
【0154】
ポリカーボネートは、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、それらの混合物及びコポリマーからなる群より選択してもよい。
【0155】
ポリエーテルは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、それらのコポリマー及びそれらの混合物からなる群より選択してもよい。
【0156】
好ましくは、本発明による少なくとも1つのポリエステルと、ポリオレフィン、芳香族ポリエステル、ポリエステル-及びポリエーテル-ウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリカーボネート及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマーとを含む混合物は、本発明による方法によって得られるポリエステル及び前記ポリマーのそれぞれの重量の合計に対して、5重量%~80重量%、より好ましくは10重量%~60重量%の前記ポリマーを含む。
【0157】
充填剤は、好ましくは、カオリン、バライト、粘土、タルク、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム、炭酸鉄及び炭酸鉛、水酸化アルミニウム、珪藻土、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、雲母、二酸化チタン、珪灰石、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸塩、タンパク質、例えばグルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、天然ゴム、ロジン酸及びそれらの誘導体並びにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0158】
デンプンとの用語は、全ての種類のデンプン、特に以下のものを含む:小麦粉、天然デンプン、加水分解デンプン、脱構造化(destructurized)デンプン、ゼラチン化デンプン、可塑化デンプン、熱可塑性デンプン、複合デンプンを含むバイオフィラー又はそれらの混合物。本発明に特に好適なのは、ジャガイモ、トウモロコシ、タピオカ及びエンドウデンプンといったデンプンである。特に有利なのは、容易に脱構造化され得、そして初期分子量が高いデンプン、例えば、ジャガイモデンプン及びトウモロコシデンプンである。デンプン及びセルロースは、それ自体で、又は化学修飾された形態、例えば、0.2~2.5の置換度を有するデンプン又はセルロースエステル、ヒドロキシプロピル化デンプン、脂肪鎖で修飾されたデンプンで、又はセロハンとして存在し得る。
【0159】
脱構造化デンプンに関しては、欧州特許第0118240号明細書及び欧州特許第0327505号明細書に含まれる教示が本明細書で参照され、そこではデンプンは、光学顕微鏡下で偏光においていわゆる「マルタ十字」を実質的に示さず、かつ光学顕微鏡下で位相差においていわゆる「ゴースト」を実質的に示さないように加工されたデンプンであると理解される。
【0160】
有利には、デンプンは、押出プロセスによって、110℃~250℃、好ましくは130℃~180℃の温度で、好ましくは0.1MPa~7MPa、好ましくは0.3MPa~6MPaの圧力にて、好ましくは前記押出の間に0.1kWh/kgを超える比エネルギーで脱構造化される。前記脱構造化は、本発明による方法の工程(2)の間に、又は別個の工程で実施することができ、次いで、既に脱構造化された形態のデンプンを本方法の工程(2)に供給する。
【0161】
デンプンは、好ましくは、デンプンの重量に対して1~40重量%の、水及び2~22個の炭素原子を有するポリオールから選択される1つ又は複数の可塑剤の存在下で脱構造化される。水に関する限り、これはデンプン中に天然に存在する水であってもよい。ポリオールの中では、2~6個の炭素原子を含有する1~20個のヒドロキシル基を有するポリオール、それらのエーテル、チオエーテル並びに有機及び無機エステルが好ましい。ポリオールの例としては、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、エトキシル化ポリグリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ソルビトールモノアセテート、ソルビトールジアセテート、ソルビトールモノエトキシレート、ソルビトールジエトキシレート、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、デンプンは、グリセロール、又はグリセロールを含む、より好ましくは2~90重量%のグリセロールを含む可塑剤の混合物の存在下で脱構造化される。好ましくは、脱構造化されたデンプンは、デンプンの重量に対して1~40重量%の、上に列挙したものから選択される可塑剤を含む。脱構造化されたデンプンを含む組成物が特に好ましい。好ましくは、混合物中のデンプンは、粒子の主軸を考慮に入れて測定した1μm未満の相加平均直径、より好ましくは0.5μm未満の平均直径を有する、円形、楕円形又は他の楕円形様の断面を有する粒子の形態で存在する。セルロースに関しては、それは例えばセルロース繊維の形態で又は木粉として存在し得る。
【0162】
有利には、2つ以上の充填剤を本発明による混合物中で使用してもよい。特に好ましいのは、デンプンと少なくとも1つの他の充填剤とを含有する混合物である。可塑剤に関しては、好ましくはn-オクタノール及びn-デカノールからなる群より選択されるC~C20モノアルコールとのフタレート、例えば、ジイソノニルフタレート、トリメリテート、例えば、トリメリット酸エステル、及び以下の構造を有する脂肪族エステルからなる群より選択される1つ又は複数の可塑剤が、脱構造化されたデンプンの調製に好ましく使用され、上に記載された任意の可塑剤に加えて存在してもよい。
-O- C(O)-R-C(O)-[-O-R-O-C(O)-R-C(O)-]-O-R
(式中
は、H、C~C24型の直鎖状及び分枝状の飽和及び不飽和アルキル残基、C~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基から構成される基の1つ又は複数から選択され;
は、-CH2-C(CH3)2-CH2-及びアルキレンC~C基を含み、少なくとも50モル%の前記-CH2-C(CH3)2-CH2-基からなり;
は、H、C~C24型の直鎖状及び分枝状の飽和及び不飽和アルキル残基、C~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基から構成される基の1つ又は複数から選択され;
及びRは、同一であるか又は異なり、1つ又は複数のC-C22、好ましくはC-C11、より好ましくはC-Cアルケンを含み、少なくとも50モル%のCアルケンを含み;
mは、1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~7の数である)。
【0163】
好ましくは、前記エステルにおいて、基R及び/又はRの少なくとも1つは、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのC~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を、好ましくは基R及び/又はRの総量に対して10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらにより好ましくは25モル%以上の量で含む。
【0164】
このような脂肪族エステルの例は、欧州特許第3094617号明細書及び欧州特許第3094618号明細書に記載されている。
【0165】
存在する場合、選択された可塑剤は、混合物の全重量に対して、好ましくは0.2重量%~20重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%の量で存在する。潤滑剤は、好ましくは脂肪酸のエステル及び金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸アセチルから選択される。
【0166】
好ましくは、使用される場合、前記潤滑剤は、混合物の総重量に対して1重量%までの、より好ましくは0.5重量%までの量で使用される。核形成剤の例としては、サッカリンナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、窒化ホウ素、タルク、ステアリン酸亜鉛、低分子量PLAが挙げられる。これらの添加剤は、ポリエステルの総重量に対して、好ましくは10重量%まで、より好ましくは2重量%~6重量%の量で添加される。必要であれば、顔料、例えば、粘土、フタロシアニン銅、二酸化チタン、ケイ酸塩、酸化鉄及び水酸化鉄、カーボンブラック、及び酸化マグネシウムを添加してもよい。これらの添加剤は、好ましくは10重量%まで添加される。
【0167】
ポリフェノールに関しては、これらは好ましくは、リグニン、シリビン、シリジアニン、イソシリビン及びシリクリスチン並びにそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、混合物の総重量に対して0.5重量%~7重量%の量で存在する。
【0168】
好ましい実施形態では、植物由来ポリフェノールは、シリビン、シリジアニン、イソシリビン及びシリクリスチンを含む混合物を有利に含む。前記混合物は、ミルクシスル(Silybum marianum)の種子の脱油ケークからのアルコール抽出によって有利に得ることができ、シリマリンとして商業的にも一般に知られている。本発明の方法によって得られるポリエステルは、単独で又は他のポリマーと混合して、製品、例えばフィルム、繊維、不織布、シート、成形物品、熱成形物品、ブロー成形物品、発泡成形物品及び積層物品の製造に、押出コーティング技術の使用を含む多数の実用的用途において使用するのに極めて好適である。
【0169】
第6の態様では、本発明は、本発明による少なくとも1つのポリエステルを含む製品に関する。
【0170】
本発明の一実施形態では、本発明による製品は、本発明による混合物を含む。
【0171】
本発明による製品は、食品用途を含む様々な用途での使用に特に好適である。
【0172】
以下は、本発明による少なくとも1つのポリエステルを含む製品の例である。
-フィルム;
-食品廃棄物及び刈り草の収集などの有機物収集のための袋及びライナー;
-単層及び多層の両形態の熱成形された食品包装、例えば、ミルク、ヨーグルト、肉及び飲料用の容器;
-押出コーティング技術を使用して得られるコーティング;
-紙、プラスチック、アルミニウム、金属化フィルムの層を有する多層ラミネート;
-焼結による成形部品の製造のための発泡した又は発泡可能な顆粒;
-予備発泡粒子から作製された発泡ブロックを含む発泡製品及び半発泡製品;
-発泡シート、熱成形された発泡シート、食品包装用にそれから製造された容器;
-一般に果物及び野菜用の容器;
-ゲル化、脱構造化及び/又は複合化されたデンプン、天然デンプン、小麦粉、天然、植物又は無機起源の他の充填剤を充填剤として有する複合材;及び
-繊維、マイクロファイバー、硬質ポリマー、例えば、PLA、PET、PTT等で作られたコアと本発明による材料で作られた外部シェルとを有する複合繊維、ダブレンズの複合繊維(dablens composite fibres)、円形からマルチローブ(multilobed)までの異なった断面を有する繊維、ステープルファイバー(staple fiber)、健康、衛生、農業及び衣類分野のための織布及び不織布又はスパンボンドした(spun-bonded)又は熱接着した布地。それらはまた、可塑化されたPVCを置換するための用途において使用してもよい。
【0173】
本発明による製品は、好ましくはフィルムである。
【0174】
本発明によるフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されていてもよい。
【0175】
本発明の一実施形態では、本発明によるフィルムは、他のポリマー材料を有する多層フィルムである。
【0176】
本発明によるフィルムは、農業分野においてマルチングフィルムとして使用するのに特に好適である。
【0177】
さらに、本発明によるフィルムは、食品用、農業におけるベイリング用及び廃棄物包装用のストレッチフィルムとして特に好適である。
【0178】
以下の実施例は、本発明を非限定的に説明するものである。
【実施例
【0179】
本発明による1,3-BG及び1,4-BDOを含む混合物から1,3-BGを分離する1つの方法は、図1に示されるような4つの塔を含んだ蒸留トレインを含む。蒸留は、Aspen Technology,Inc.のAspen Plus(登録商標)ソフトウェアを用いてシミュレートした。
【0180】
供給流の組成(1,3-ブタンジオールの発酵生産の生成物と1,4-ブタンジオールの発酵生産の生成物とを混合することによって得られる)を、中間流の組成及び図1の設置に関する操作条件と同様に、表1に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
システムの設定を表2に示す。
【0183】
【表2】
【0184】
工程a)
【0185】
15重量%の水を含む、蒸留予定のストリーム(供給)を第1の蒸留塔(COL1)に供給した。塔は構造化された充填物を有し、107mbarの塔頂圧で1の還流比にて運転した。
【0186】
第1の塔(B1)の底部は、第2の塔(COL2)に400ppmの量の水を供給した。第2の塔は、構造化された充填物を有し、36mbarの塔頂で1.5の還流比にて運転した。
【0187】
第2の塔の底部は、約40重量%の1,4-BDOを含有する重質画分(B2)を分離し、一方、塔のヘッド(D2)は、第3の塔(COL3)に供給した。塔は構造化された充填物を有し、45mbarの塔頂圧で15.3の還流比にて運転した。塔(B3)の底部は、1,4-BDOを>99.9%w/wの濃度で含有していた。塔ヘッド(D3)は、主に1,3-BG及び軽質画分を含有していた。
【0188】
工程b)
【0189】
第3の塔(D3)のヘッドは、第4の塔(COL4)に供給した。塔は構造化された充填物を有し、50mbarの塔頂圧で50の還流比にて運転した。約21%w/wの1,3-BG及び不純物を含有する軽質画分(D4)を塔のヘッドから分離した。1,3-BG(B4)の精製ストリームを、99.9重量%を超える純度で、塔の底部から抽出した。
【0190】
実施例2-ポリエステルの調製
【0191】
試薬テレフタル酸(2637g、15.88mol)、アジピン酸(2615g、17.91mol)、グリセロール(1.55g、0.017mol)及び10000ppmの1,3-ブタンジオール(4563g、50.19mol、MGR=1.50)を含有する1,4-ブタンジオール(純度98.8)の組成物を、油加熱、蒸留塔、留出物ノックダウンシステムを有する真空ライン及び機械的撹拌を備えた25幾何リットルのスチール製反応器に充填した。250ppmの(Tyzor TE(登録商標))をエステル化触媒として添加し、次いで、反応器を窒素中で密閉し、撹拌機のスイッチを入れ、温度を1時間かけて220℃まで徐々に上昇させ、その間に、エステル化プロセスに由来する水が留出し始めた。次いで、温度をさらに約1時間240℃に上昇させた。
【0192】
蒸留を240℃で1時間進行させ、その終了時において見かけの転化率は100%以上であった。
【0193】
エステル化段階の終わりに、重合触媒(400ppmのテトラオルトブチルチタネート(TnBt)+1000ppmのテトラオルトブチルジルコネート(NBZ))を添加し、溶融物の温度を240℃に保持し、圧を約30分かけて2mbar未満に徐々に低下させた。
【0194】
所望の固有粘度が達成されるまで、又は4時間の最大重合時間後まで、溶融物の温度を240℃に保持して反応を継続した。
【0195】
次に、材料をスピナーによってストランドとして排出し、水浴中で冷却し、ペレットに造粒した。
【0196】
全ジカルボキシル成分に対して47モル%の1,4-ブチレンテレフタレート単位及び53モル%のアジピン酸単位を有し、4200ppmの1,3-BGを含有するポリエステルポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)が得られた。
【0197】
ポリマーの試料(1g)を、ステンレス鋼製反応器中で、内部標準として250ppm w/vのグルタル酸ジメチル、及びメタノリシス触媒として250ppmの酢酸亜鉛を含有する40mlのメタノールで、220℃で2時間処理する。冷却後、溶液を回収し、250ppm w/vのグルタル酸ジメチルを含有する20mlの4-メチル-2-ペンタノンで反応器を洗浄する。得られたメタノール溶液及び洗浄溶液を混合し、適切に希釈し、GC-MSで分析する。
【0198】
分析は、全走査/SIM混合モードを用いて、極性GCカラムPhenomenex ZB-624Plus 30m×0.32mm×1.80mmで実施する。1,3-ブタンジオールの定量は、1,3-ブタンジオールと内部標準との面積比に対する標準濃度溶液から得られる検量線により行う。
【0199】
実施例3 比較例-ポリエステルの調製
【0200】
50000ppmの1,3-ブタンジオールを含有する1,4-ブタンジオール(純度94.8%)の組成物から出発した以外は実施例2に記載の手順に従って、ポリエステルポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)を調製した。
【0201】
実施例2及び比較例3によるポリエステルのMFR値を表3に報告する。
【0202】
【表3】
【0203】
メルトフローレート(MFR)値によって確認されるように、5%の1,3-BGを含む1,4-BDO組成物から調製された比較例3のポリエステルは、同じプロセス条件下で4時間の重合時間後に許容可能な分子量に達しなかった。
図1
【国際調査報告】