(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20230629BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20230629BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20230629BHJP
B60T 8/96 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T17/22 C
B60T13/74 H
B60T8/96
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575386
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2021075499
(87)【国際公開番号】W WO2021248927
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010514047.5
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521128915
【氏名又は名称】▲蕪▼湖伯特利汽▲車▼安全系▲統▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BETHEL AUTOMOTIVE SAFETY SYSTEMS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】袁 永彬
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 升
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 高超
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼ ▲啓▼▲飛▼
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB02
3D048BB07
3D048CC49
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3D048HH15
3D048HH18
3D048QQ07
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3D049CC02
3D049CC07
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3D049QQ04
3D246BA02
3D246BA08
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3D246MA07
3D246MA19
(57)【要約】
電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムであって、ホイール端ブレーキモジュール(1)と、油圧制御モジュール(2)と、第一電子制御モジュール(3)と、第二電子制御モジュール(4)とを含み、ホイール端ブレーキモジュール(1)は、油圧ピストン(10)と、モータ(8)と、モータ(8)からの回転運動を油圧ピストン(10)又はブレーキ摩擦部材(12)を駆動して前進させる直線運動に変換するための減速伝動機構(9)とを含む。ホイール端ブレーキモジュール(1)は4つ設けられ、油圧ピストン(10)は移動可能に設けられ、かつ、制動油圧によって前進することができ、ホイール端ブレーキモジュール(1)のモータ(8)は第一電子制御モジュール(3)及び/又は第二電子制御モジュール(4)によって制御される。当該電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムはスマート運転における車両ブレーキシステムに応用される。モータ(8)及び油圧制御を有するホイール端ブレーキモジュール(1)を4つ設けることによって、油圧制御システム又はモータ制御システムが故障して自発的に制動力を発生させることができなくなったとき、もう1つのシステムが自発的に制動力を発生させて、車両を減速させることができ、運転の安全性を高め、スマート運転における制動要求を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール端ブレーキモジュールと、油圧制御モジュールと、第一電子制御モジュールと、第二電子制御モジュールとを含む、電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムであって、
前記ホイール端ブレーキモジュールは、油圧ピストンと、モータと、モータからの回転運動を油圧ピストン又はブレーキ摩擦部材を駆動して前進させる直線運動に変換するための減速伝動機構とを含み、ホイール端ブレーキモジュールは4つ設けられ、前記油圧ピストンは移動可能に設けられ、かつ、制動油圧によって前進することができ、前記ホイール端ブレーキモジュールのモータは前記第一電子制御モジュール及び/又は第二電子制御モジュールによって制御されることを特徴とする電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項2】
前記ホイール端ブレーキモジュールのモータは前記第二電子制御モジュールに電気的に接続され、第二電子制御モジュールは4つのモータ制御回路を有し、第二電子制御モジュールの各モータ制御回路は、1つのホイール端ブレーキモジュールのモータを動作するように独立して制御することができることを特徴とする請求項1に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項3】
4つの前記ホイール端ブレーキモジュールのうち、少なくとも2つのホイール端ブレーキモジュールの減速伝動機構がセルフロック機能を有し、残りのホイール端ブレーキモジュールの減速伝動機構はセルフロックされないものであり、セルフロック機能を有する前記減速伝動機構は車両の前軸又は後軸の左右両端に配置され、相応するホイール端ブレーキモジュールのモータの駆動電圧がオフとなった後に、ブレーキ摩擦部材は弾性変形を保ち、制動力が維持され、セルフロックされない減速伝動機構が位置するホイール端ブレーキモジュールのモータの駆動電圧がオフとなった後に、ブレーキ摩擦部材は弾性変形が戻り、制動力が低下することを特徴とする請求項1に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項4】
セルフロック機能を有する減速伝動機構が位置するホイール端ブレーキモジュールのモータは、前記第一電子制御モジュール及び第二電子制御モジュールによって制御され、第一電子制御モジュール及び第二電子制御モジュールはいずれもモータ制御回路を有するか、又は、モータ制御回路を共用し、通常の場合には、第一電子制御モジュールによってホイール端ブレーキモジュールのモータが制御され、第一電子制御モジュールに故障が生じた場合には、第二電子制御モジュールによってホイール端ブレーキモジュールのモータが制御されることを特徴とする請求項3に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項5】
前記第二電子制御モジュールは少なくとも2つの異なる通信方式で前記第一電子制御モジュールの状態を監視し、且つ2つの通信方式のいずれにおいても第一電子制御モジュールが前記ホイール端ブレーキモジュールのモータを制御できていないことが確認された場合には、第二電子制御モジュールによってホイール端ブレーキモジュールのモータが制御されるように切り替わることを特徴とする請求項4に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項6】
前記油圧制御モジュールは前記油圧ピストンに制動油圧を提供するために用いられるものであり、油圧制御モジュールは油圧回路制御弁と油圧ポンプとを含み、油圧ポンプは電動ポンプであり、油圧回路制御弁及び油圧ポンプは第一電子制御モジュールに電気的に接続され、第一電子制御モジュールは、ホイール端ブレーキモジュールが必要とする圧力に応じて、油圧回路制御弁及び油圧ポンプを介してホイール端ブレーキモジュールの制動力を制御することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項7】
前記油圧制御モジュールが前記油圧ピストンに制動油圧を提供できない場合には、前記ホイール端ブレーキモジュールのモータが動作し、ホイール端ブレーキモジュールが制動力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項8】
前記油圧制御モジュールと前記ホイール端ブレーキモジュールのモータは同時に動作することができ、油圧制御モジュールが前記油圧ピストンに制動油圧を提供し、前記減速伝動機構がモータからの回転運動を油圧ピストン又はブレーキ摩擦部材を駆動して前進させる直線運動に変換することにより、共同で制動力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項9】
求められる制動力が第一設定範囲内である場合には、前記油圧制御モジュールによって前記油圧ピストンに制動油圧が提供され、油圧ピストンが前進し、求められる制動力が第二設定範囲内である場合には、第二設定範囲は第一設定範囲よりも大きく、ホイール端ブレーキモジュールのモータが動作を開始して、減速伝動機構がモータからの回転運動を油圧ピストン又はブレーキ摩擦部材を駆動して前進させる直線運動に変換し、ブレーキ摩擦部材が駆動されて前進することにより、制動力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【請求項10】
前記第一電子制御モジュール及び/又は第二電子制御モジュールは、車両制御要求に応じて、車両の左右両側又は単独の車輪において異なる制動力を発生させるように前記ホイール端ブレーキモジュールを制御し、車両の左右両側の車輪を車輪速差が生じるように制御することができることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両ブレーキシステムの技術分野に属し、具体的には、本発明は電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマート運転及びアクティブセーフティブレーキの技術が発達するにつれて、無人運転技術は現在の開発傾向の主流となっている。無人運転はいかなる状況下においてもシステムによって実現されなければならず、自動運転制御装置からの命令で、減速、停車が行われる。現在の車両のブレーキシステムはブースタによって油圧を発生させてキャリパ内に伝達し、制動力を発生させて制動する。自動運転等のアクティブドライビング機能を実現するとき、油圧ブレーキシステムが故障した場合においては(例えば、動力源の故障、油圧管路の漏洩等)、車両は速やかに制動減速度を発生させて自動運転制御装置からの制動命令に応答するということができなくなり、制動できなくなるという課題が生じる。
【0003】
以上の課題に対して、現行のブレーキシステムに対する改良手段は、2つの油圧ブレーキシステムによって完成される(一般的に、eBoosterとESPの2つが互いにバックアップする)。一方、2つのシステムがいずれも油圧システムであるため、同時に故障するという他の課題が存在することになるが、現在の車両のEPB(電動駐車ブレーキシステム)キャリパによって、補助制動を行うことにより対応している。しかし、EPBキャリパは前輪のみ又は後輪のみに作用するため、車両減速度を最大値に到達させることができない。同時に、EPBキャリパにはアイドルストロークが長く、動作速度が遅いという課題が存在しており、車両減速度の応答が遅くなってしまう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来技術に存在する技術的課題の少なくとも一つを解決することを目的とする。そのために、本発明は電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムを提供するものであり、本発明の目的は、車両運転の安全性を高めることである。
【0005】
上述の目的を実現するために、本発明は以下の技術的手段を採用する。電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムであって、ホイール端ブレーキモジュールと、油圧制御モジュールと、第一電子制御モジュールと、第二電子制御モジュールとを含み、ホイール端ブレーキモジュールは、油圧ピストンと、モータと、モータからの回転運動を油圧ピストン又はブレーキ摩擦部材を駆動して前進させる直線運動に変換するための減速伝動機構とを含んでいる。前記ホイール端ブレーキモジュールは4つ設けられ、前記油圧ピストンは移動可能に設けられ、かつ、制動油圧によって前進することができ、前記ホイール端ブレーキモジュールのモータは前記第一電子制御モジュール及び/又は第二電子制御モジュールによって制御される。
【0006】
前記ホイール端ブレーキモジュールのモータは前記第二電子制御モジュールに電気的に接続され、第二電子制御モジュールは4つのモータ制御回路を有し、第二電子制御モジュールの各モータ制御回路は、1つのホイール端ブレーキモジュールのモータを動作するように独立して制御することができる。
【0007】
4つの前記ホイール端ブレーキモジュールのうち、少なくとも2つのホイール端ブレーキモジュールの減速伝動機構はセルフロック機能を有する。残りのホイール端ブレーキモジュールの減速伝動機構はセルフロックされることはない。セルフロック機能を有する前記減速伝動機構は車両の前軸又は後軸の左右両端に配置され、相応するホイール端ブレーキモジュールのモータの駆動電圧がオフとなった後に、ブレーキ摩擦部材は弾性変形を保ち、制動力が維持される。セルフロックされない減速伝動機構が位置するホイール端ブレーキモジュールのモータの駆動電圧がオフとなった後に、ブレーキ摩擦部材は弾性変形が戻り、制動力が低下することになる。
【0008】
セルフロック機能を有する減速伝動機構が位置するホイール端ブレーキモジュールのモータは前記第一電子制御モジュール及び第二電子制御モジュールによって制御され、第一電子制御モジュール及び第二電子制御モジュールはいずれもモータ制御回路を有するか、又は、モータ制御回路を共用する。通常の場合には、第一電子制御モジュールによってホイール端ブレーキモジュールのモータが制御され、第一電子制御モジュールに故障が生じた場合には、第二電子制御モジュールによってホイール端ブレーキモジュールのモータが制御されることになる。
【0009】
前記第二電子制御モジュールは少なくとも2つの異なる通信方式で前記第一電子制御モジュールの状態を監視し、且つ2つの通信方式のいずれにおいても第一電子制御モジュールが前記ホイール端ブレーキモジュールのモータを制御できていないことが確認された場合には、第二電子制御モジュールによってホイール端ブレーキモジュールのモータが制御されるように切り替わることになる。
【0010】
前記油圧制御モジュールは前記油圧ピストンに制動油圧を提供するために用いられ、油圧制御モジュールは油圧回路制御弁と油圧ポンプとを含んでいる。油圧ポンプは電動ポンプであり、油圧回路制御弁及び油圧ポンプは前記第一電子制御モジュールに電気的に接続され、第一電子制御モジュールは、前記ホイール端ブレーキモジュールが必要とする圧力に応じて、油圧回路制御弁及び油圧ポンプを介してホイール端ブレーキモジュールの制動力を制御することになる。
【0011】
前記油圧制御モジュールが前記油圧ピストンに制動油圧を提供できない場合には、前記ホイール端ブレーキモジュールのモータが動作し、ホイール端ブレーキモジュールが制動力を発生させることになる。
【0012】
前記油圧制御モジュールと前記ホイール端ブレーキモジュールのモータは同時に動作することができる。油圧制御モジュールが前記油圧ピストンに制動油圧を提供し、前記減速伝動機構がモータからの回転運動を油圧ピストン又はブレーキ摩擦部材を駆動して前進させる直線運動に変換することにより、共同で制動力を発生させることになる。
【0013】
求められる制動力が第一設定範囲内である場合には、前記油圧制御モジュールによって前記油圧ピストンに制動油圧が提供され、油圧ピストンが前進する。求められる制動力が第二設定範囲内である場合には、第二設定範囲は第一設定範囲よりも大きく、ホイール端ブレーキモジュールのモータが動作を開始して、減速伝動機構がモータからの回転運動を油圧ピストン又はブレーキ摩擦部材を駆動して前進させる直線運動に変換し、ブレーキ摩擦部材が駆動されて前進することにより、制動力が発生することになる。
【0014】
前記第一電子制御モジュール及び/又は第二電子制御モジュールは、車両制御要求に応じて、車両の左右両側又は単独の車輪において異なる制動力を発生させるように前記ホイール端ブレーキモジュールを制御し、車両の左右両側の車輪を車輪速差が生じるように制御することになる。
【0015】
本発明はスマート運転における車両ブレーキシステムに応用される。モータ及び油圧制御を有するホイール端制御モジュールを4つ設けることによって、油圧制御システム又はモータ制御システムが故障して自発的に制動力を発生させることができなくなった場合に、もう1つのシステムが自発的に制動力を発生させて、車両を減速させることができ、運転の安全性を高め、スマート運転における制動要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書は以下の図面を含み、示す内容はそれぞれ以下の通りである。
本明細書は以下の図面を含み、示す内容はそれぞれ以下の通りである。
【
図1】
図1は本発明における電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムの構成図である。
【
図2】
図2は本発明における電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムの他の構成図である。
【
図3】
図3はホイール端ブレーキモジュールの構造模式図である。
【
図4】
図4は別のホイール端ブレーキモジュールの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
当業者が本発明の構想、技術的手段をより完全に、正確に、深く理解でき、実施する際の一助となるように、以下、図面を参照して実施例を示すことによって、本発明の具体的実施形態を更に詳細に説明する。
【0018】
図1から
図4に示すように、本発明は電気式と油圧式とのハイブリッドの車両ブレーキシステムを提供し、ホイール端ブレーキモジュール1と、油圧制御モジュール2と、第一電子制御モジュール3と、第二電子制御モジュール4とを含み、ホイール端ブレーキモジュール1は、油圧ピストン10と、モータ8と、モータ8からの回転運動を油圧ピストン10又はブレーキ摩擦部材12を駆動して前進させる直線運動に変換するための減速伝動機構9とを含んでいる。前記ホイール端ブレーキモジュール1は4つ設けられ、前記油圧ピストン10は移動可能に設けられ、かつ、制動油圧によって前進することができ、前記ホイール端ブレーキモジュール1のモータ8は前記第一電子制御モジュール3及び/又は第二電子制御モジュール4によって制御されている。
【0019】
具体的には、
図1及び
図2に示すように、ホイール端ブレーキモジュール1のモータ8は第二電子制御モジュール4に電気的に接続され、4つのホイール端ブレーキモジュール1のモータ8は導線によって第一電子制御モジュール3と第二電子制御モジュール4とにそれぞれ接続される。第二電子制御モジュール4はモータ8制御回路を4つ有し、第二電子制御モジュール4の各モータ制御回路は、1つのホイール端ブレーキモジュール1のモータ8を独立に制御して動作させることができるようになっている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、4つのホイール端ブレーキモジュール1におけるモータ8はいずれも第二電子制御モジュール4に接続され、第二電子制御モジュール4は、要求に応じて、各ホイール端ブレーキモジュール1のモータ8を独立に制御して回転させて制動力を発生させることができるようになっている。
【0021】
図1及び
図2に示すように、4つの前記ホイール端ブレーキモジュール1のうち、少なくとも2つのホイール端ブレーキモジュール1の減速伝動機構9がセルフロック機能を有している。残りのホイール端ブレーキモジュール1の減速伝動機構9はセルフロックされないものであり、セルフロック機能を有していない。セルフロック機能を有する減速伝動機構9は車両の前軸又は後軸の左右両端に配置されており、相応するホイール端ブレーキモジュール1のモータ8の駆動電圧がオフとなった後に、ブレーキ摩擦部材12は弾性変形を保ち、制動力が維持されるようになっている。また、セルフロック機能を有する減速伝動機構9が位置するホイール端ブレーキモジュール1は、車両における同一車軸上に配置されており、例えば、車両の前軸又は後軸に配置されている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、セルフロックされない減速伝動機構9が位置するホイール端ブレーキモジュール1のモータ8の駆動電圧がオフとなった後に、ブレーキ摩擦部材12は弾性変形が戻り、制動力が低下するようになっている。
【0023】
図1に示すように、セルフロック機能を有する減速伝動機構9が位置するホイール端ブレーキモジュール1のモータ8は第一電子制御モジュール3及び第二電子制御モジュール4によって制御され、第一電子制御モジュール3及び第二電子制御モジュール4はいずれもモータ制御回路を有する。通常の場合には、第一電子制御モジュール3によってホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が制御される。すなわち、第一電子制御モジュール3に故障が生じていないときは、第一電子制御モジュール3によってホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が制御されて動作し、第一電子制御モジュール3に故障が生じた場合には、第二電子制御モジュール4によってホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が制御されることになる。第一電子制御モジュール3及び第二電子制御モジュール4はいずれも2つのモータ制御回路を有し、第一電子制御モジュール3の2つのモータ制御回路は外部でそれぞれ連結された後に、2つのホイール端ブレーキモジュール1のモータ8にそれぞれ電気的に接続される。当該ホイール端ブレーキモジュール1の減速伝動機構9はセルフロック機能を有する。第二電子制御モジュール4の2つのモータ制御回路は外部でそれぞれ連結された後に、2つのホイール端ブレーキモジュール1のモータ8にそれぞれ電気的に接続される。当該ホイール端ブレーキモジュール1の減速伝動機構9はセルフロック機能を有している。
【0024】
実施手段の変形例として、
図2に示すように、セルフロック機能を有する減速伝動機構9が位置するホイール端ブレーキモジュール1のモータ8は第一電子制御モジュール3及び第二電子制御モジュール4によって制御され、第一電子制御モジュール3及び第二電子制御モジュール4はモータ制御回路7を共用している。通常の場合には、第一電子制御モジュール3によってホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が制御される。すなわち、第一電子制御モジュール3に故障が生じていないときは、第一電子制御モジュール3によってホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が制御されて動作し、第一電子制御モジュール3に故障が生じた場合には、第二電子制御モジュール4によってホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が制御される。モータ制御回路7は2つ設けられ、2つのモータ制御回路7は2つのホイール端ブレーキモジュール1のモータ8にそれぞれ電気的に接続される。当該ホイール端ブレーキモジュール1の減速伝動機構9はセルフロック機能を有している。
【0025】
図1及び
図2に示すように、第二電子制御モジュール4は少なくとも2つの異なる通信方式で第一電子制御モジュール3の状態を監視し、且つ2つの通信方式のいずれにおいても第一電子制御モジュール3が前記ホイール端ブレーキモジュール1のモータ8を制御できていないことが確認された場合には、第二電子制御モジュール4によってホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が制御されるように切り替わることになる。
【0026】
図3に示すように、ホイール端ブレーキモジュール1は、キャリパボディ14と、油圧ピストン10と、モータ8と、減速伝動機構9と、ブレーキ摩擦部材12と、ブレーキディスク13とを含み、キャリパボディ14の内部には油圧ピストン10を収容する油圧シリンダ11を有し、油圧シリンダ11モジュールはブレーキ管路を介して油圧制御モジュール2に連結され、油圧ピストン10はキャリパボディ14の内部に移動可能に設けられている。油圧ピストン10が前進する際には、ブレーキ摩擦部材12を押圧して移動させることができ、ブレーキ摩擦部材12によってブレーキディスク13がクランプされることにより、制動力を発生させて、制動が実現することになる。減速伝動機構9はモータ8からの回転運動を、油圧ピストン10を駆動して前進させる直線運動に変換するために用いられ、油圧ピストン10がブレーキ摩擦部材12を押圧して移動させることにより、ブレーキ摩擦部材12がブレーキディスク13をクランプし、制動力を発生させることになる。油圧シリンダ11内にブレーキ液を入れることで油圧ピストン10を押圧してブレーキ摩擦部材12を動かすという方法によって制動力を発生させることもできる。減速伝動機構9の動力入力端はモータ8に接続され、減速伝動機構9の動力出力端は油圧ピストン10の内部に位置することになる。制動する際には、モータ8によって発生した駆動力が減速伝動機構9を経て油圧ピストン10に伝達し、油圧ピストン10がブレーキ摩擦部材12を押圧することにより前進させ、ブレーキ摩擦部材12がブレーキディスク13に接触して、制動力が発生することになる。これと同時に、制動油圧も油圧ピストン10を駆動して前進させることができることになる。制動油圧と減速伝動機構9とが油圧ピストン10に共に作用して、油圧ピストン10がブレーキ摩擦部材12を押圧して前進することになる。
【0027】
実施手段の変形例として、
図4に示すように、キャリパボディ14の内部には油圧ピストン10を収容する油圧シリンダ11を有し、油圧シリンダ11モジュールはブレーキ管路を介して油圧制御モジュール2に連結され、油圧ピストン10はキャリパボディ14の内部に移動可能に設けられている。減速伝動機構9はモータ8からの回転運動を1つのブレーキ摩擦部材12を駆動して前進させる直線運動に変換させるためのものである。油圧ピストン10は別のブレーキ摩擦部材12を押圧して前進させるためのものであり、モータ8及び減速伝動機構9はキャリパボディ14に設けられている。制動する際には、モータ8によって発生した駆動力が減速伝動機構9を経てブレーキ摩擦部材12に伝達し、ブレーキ摩擦部材12を押圧して前進させ、ブレーキ摩擦部材12がブレーキディスク13に接触して、制動力が発生することになる。これと同時に、制動油圧は油圧ピストン10を駆動して前進させ、油圧ピストン10は別のブレーキ摩擦部材12を押圧して前進させるとともに、当該ブレーキ摩擦部材12もブレーキディスク13に接触して、制動力が発生することになる。
【0028】
油圧制御モジュール2は油圧ピストン10に制動油圧を提供するために用いられ、油圧制御モジュール2は油圧回路制御弁と油圧ポンプとを含んでいる。油圧回路制御弁は電磁弁であり、油圧ポンプは電動ポンプであり、油圧回路制御弁及び油圧ポンプは第一電子制御モジュール3に電気的に接続され、油圧回路制御弁及び油圧ポンプは第一電子制御モジュール3によって制御される。第一電子制御モジュール3は、ホイール端ブレーキモジュール1が必要とする圧力に応じて、油圧回路制御弁及び油圧ポンプを介してホイール端ブレーキモジュール1の制動力を制御する(ホイール端ブレーキモジュール1において制動圧力の要求がある場合には、第一電子制御モジュール3は油圧ポンプを制御してブレーキ液をポンプアウトし、油圧回路制御弁を介してホイール端ブレーキモジュール1の油圧ピストン10まで伝達し、ブレーキ摩擦部材12が押圧されてブレーキディスク13を締め付けることにより、制動力が発生することになる)。
【0029】
図1及び
図2に示すように、1つ又は複数のホイール端ブレーキモジュール1の油圧による制動において制動力を発生させることができなくなった後に、モータ制御モジュールは対応するホイール端ブレーキモジュール1のモータ8を動作するように制御して制動力を発生させ、油圧による制動力のロスを補うことになる。例えば、車両のいずれかの車輪に油圧の漏洩が生じた場合には、一般的な同一回路の2つのブレーキシステムでは油圧による制動を継続することができない。このとき、左右の制動力の分布は不均一になる。本発明のホイール端ブレーキモジュール1のモータ8は、制動力を継続して発生させて制動させることができる。そして、油圧による制動のロスを補い、制動力を継続して発生させることで、車両の両側の制動力を安定させることができる。
【0030】
図1及び
図2に示すように、ホイール端ブレーキモジュール1の油圧ピストン10とモータ8は共に動作することができ、制動力を同時に発生させて、車両の制動力を高め、システムの応答速度を減少させる。又は、第一電子制御モジュール3、第二電子制御モジュール4の制御要求に応じて、低制動力時には、油圧ピストン10によって制動力を発生させる。高制動力時には、モータ8による駆動で制動力が発生する。求められる制動力が第一設定範囲内であるときには、油圧制御モジュール2によって油圧ピストン10に制動油圧が提供され、油圧ピストン10が前進し、制動力を発生させる。求められる制動力が第二設定範囲内であるときには、第二設定範囲は第一設定範囲よりも大きく、ホイール端ブレーキモジュール1のモータ8が動作を開始して、減速伝動機構9がモータ8からの回転運動を油圧ピストン10又はブレーキ摩擦部材12を駆動して前進させる直線運動に変換し、ブレーキ摩擦部材12が駆動されて前進することにより、制動力が発生する。
【0031】
図1及び
図2に示すように、第一電子制御モジュール3及び/又は第二電子制御モジュール4は、車両制御要求に応じて、車両の左右両側又は単独の車輪において異なる制動力を発生させるようにホイール端ブレーキモジュール1を制御し、車両の左右両側の車輪において車輪速差が生じるように制御し、補助制動の効果を達成することができる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、車両ブレーキシステムの油圧制御モジュール2、第一電子制御モジュール3及び第二電子制御モジュール4は、WCBS(ワイヤ制御ブレーキシステム)のように、同一のアセンブリとして設計される。油圧制御モジュール2と第一電子制御モジュール3を一体的に統合して設計し、第二電子制御モジュール4を単一のアセンブリにしてもよい。
【0033】
以上、図面と関連付けて本発明に対する例示的説明を行った。本発明を具体的に実現する場合には、上述の方式に制限されるものではないことは明らかである。本発明の方法、構想及び技術的手段を採用して行う非実質的な各種の改良、又は、改良せずに、本発明における上述の構想及び技術的手段を他の場面に直接応用するものは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 ホイール端ブレーキモジュール
2 油圧制御モジュール
3 第一電子制御モジュール
4 第二電子制御モジュール
5 第一電子制御モジュールと第二電子制御モジュールの通信インターフェース
6 導線
7 モータ駆動回路
8 モータ
9 減速伝動機構
10 油圧ピストン
11 油圧シリンダ
12 ブレーキ摩擦部材
13 ブレーキディスク
14 キャリパボディ
【国際調査報告】