(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】不妊症及び再発性妊娠喪失の治療のためのプロバイオティクス
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20230629BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230629BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20230629BHJP
A61P 15/06 20060101ALI20230629BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20230629BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20230629BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K35/747 ZNA
A61P31/04
A61K35/74 A
A61P15/06
A61P15/08
C12N1/20 E
G01N33/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575904
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 ES2020070382
(87)【国際公開番号】W WO2021250289
(87)【国際公開日】2021-12-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522266438
【氏名又は名称】バイオサーチ,エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス アルヴァレス,レオニデス
(72)【発明者】
【氏名】カストロ ナバロ,イルマ
(72)【発明者】
【氏名】アロイヨ ロドリゲス,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】アルバ ルビオ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ゴメス,ファン ミゲル
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB15
2G045DA36
4B065AA30X
4B065AC20
4B065BA22
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB35
4C087ZC51
(57)【要約】
本発明は、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療及び/又は予防に使用される、Spanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体に関する。また、本発明は、CECTに寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体を用いる、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療の効果をモニタリングするin vitroモニタリング方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療及び/又は予防に使用される、Spanish Type Culture Collection(Coleccion Espanola de Cultivos Tipos - CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体。
【請求項2】
前記不妊症が、原因不明の不妊症である、請求項1に記載の使用のための株。
【請求項3】
前記再発性妊娠喪失が、原因不明の再発性妊娠喪失である、請求項1に記載の使用のための株。
【請求項4】
前記株が、生殖補助治療と組み合わせて、不妊症又は再発性妊娠喪失の女性に投与される、請求項1~3のいずれかに記載の使用のための株。
【請求項5】
前記株が、経口投与される、請求項1~4のいずれかに記載の使用のための株。
【請求項6】
前記株が、少なくとも3ヶ月、又は妊娠の診断までの期間投与される、請求項1~5のいずれかに記載の使用のための株。
【請求項7】
前記株が、少なくとも6ヶ月の期間投与される、請求項6に記載の使用のための株。
【請求項8】
妊娠が診断された場合、前記株の前記投与が、少なくとも妊娠の15週まで維持される、請求項1~7のいずれかに記載の使用のための株。
【請求項9】
前記株が、8.5 log
10 cfu~9.5 log
10 cfuの1日用量で投与される、請求項1~8のいずれかに記載の使用のための株。
【請求項10】
前記株が、約9 log
10 cfuの1日用量で投与される、請求項9に記載の使用のための株。
【請求項11】
CECTに寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体を用いる、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療の効果をモニタリングするin vitroモニタリング方法であって、
(i)前記女性対象の膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGF、TGF-β1、及びTGF-β2からなる群から選択される増殖因子のレベルを決定することと、
(ii)前記レベルを、治療前に同一対象から得られた基準値と比較することと、
を含み、
前記基準値に対する前記レベルの上昇が、前記治療が有効であることを示し、
前記基準値に対する前記レベルの低下又は変化の欠如が、前記治療が無効であることを示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不妊症及び再発性妊娠喪失の治療方法の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
現在、カップルの15%が不妊問題に直面していると推定されている。33%のケースでは女性が原因であり、25%が男性、33%が男性及び女性の両方であるが、残りの11%のケースでは原因不明である。
【0003】
ヒトの生殖における女性の生殖器微生物叢の関連性を示す証拠が増えている。生理的条件下では、腸内微生物叢とは対照的に、ヒトの膣内微生物叢は一般に、細菌の多様性が低く、ラクトバチルス(Lactobacillus)属の細菌が豊富で優勢であることを特徴とする。
【0004】
生殖年齢のほとんどの健常な女性の膣内微生物叢は、主に全細菌の90%~95%を占める1種又は複数種のラクトバチルス種で構成されている。
【0005】
膣内微生物叢の個人間及び個人内の変化にはいくつかの要因が関与しており、種々の膣型(vaginotypes)間で変化が生じる可能性があるが、多様性及び偏性嫌気性菌の増加、並びに乳酸菌の減少又は枯渇は、細菌性膣炎(BV)の危険因子と考えられている。
【0006】
膣内微生物叢の組成(特にラクトバチルスが優占する多様性の低い膣内マイクロバイオームのあらゆる逸脱)は、生殖能力及び生殖補助治療(ART)の結果において重要な役割を果たす可能性がある。しかしながら、女性の生殖器にラクトバチルス株を再増殖させるために経験的に処方された市販のプロバイオティクスはあるものの、実際の有用性について適切な科学的評価は実施されていない(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Moreno and Simon, Reprod Med Biol. 2019; 18: 40-50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、有効性が証明されたプロバイオティクスの投与に基づいて、不妊症及び再発性妊娠喪失に対する新しい治療法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の著者らは、驚くべきことに、原因不明の不妊症又は再発性妊娠喪失の女性へのラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)株CECT 5713を含有するプロバイオティクスの経口投与が、66%の有効性での妊娠の達成(表4)及び56%の生殖成功(表4)を可能にすることを見出した。さらに、本発明の著者らはまた、不妊症の女性及び再発性妊娠喪失の女性の両方において、プロバイオティクスによる治療が、最終的に妊娠を達成した女性において膣pHの低下(表7)及び膣TGFβ1、TGFβ2、及びVEGFサイトカインレベルの上昇(表8)をもたらすが、妊娠を達成しなかった女性ではそうではなかったことを見出した。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療及び/又は予防に使用される、Spanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、CECTに寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体を用いる、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療の効果をモニタリングするin vitroモニタリング方法であって、
(i)上記女性対象の膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGF、TGF-β1、及びTGF-β2からなる群から選択される増殖因子のレベルを決定することと、
(ii)上記レベルを、治療前に同一対象から得られた基準値と比較することと、
を含み、
基準値に対する上記レベルの上昇が、治療が有効であることを示し、
基準値に対する上記レベルの低下又は変化の欠如が、治療が無効であることを示す、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】妊娠可能な女性(C)、反復性流産の女性(RM)、及び原因不明の不妊症の女性(INF)の子宮膣部洗浄試料における優占乳酸菌種(分離可能であった場合)を示す図である。
【
図2】シャノン指数(A)又はシンプソン指数(B)を使用することによって評価した、対照群、RM群、及びINF群間の細菌多様性の比較を示す図である。ボンフェローニ補正を用いたウィルコクソン順位和検定を使用して、群間の一対比較を行った。
【
図3A】子宮膣部洗浄試料のブレイ・カーチス類似度分析(相対存在量)(A)及びバイナリーデータ(存在/非存在)についてのジャッカード係数(B)に基づく細菌プロファイル(属レベル)のPCoA(主座標分析)グラフを示す図である。対照、円;RM、十字;INF、三角形。下の図の箱ひげ図は、各群の重心までの試料の距離を示す。各軸に与えられた値は、その軸によって説明される全分散のパーセンテージを表す。p値は、多変量分散の均一性に対する並べ替え検定を用いて計算した。
【
図4】子宮膣部洗浄試料における相対存在量に応じた属レベルでの細菌プロファイルのPCA(主成分分析)グラフを示す図である(対照、円;INF、三角形;RM、正方形)。
【
図5】募集時のRM群(再発性自然流産の既往歴のある女性)とINF群(不妊症の既往歴のある女性)との間の種々の特徴の比較を示す図である:(A)年齢、体重、及び身長;(B)pH、ニュージェントスコア、及びTGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度、並びに(C)乳酸菌数。
【
図6】プロバイオティクス治療後の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたRM群(再発性自然流産の既往歴のある女性)の特徴の変化を示す図である:(A)pH及びニュージェントスコアの変化;(B)TGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度の変化;並びに(C)乳酸菌数の変化。
【
図7】プロバイオティクス治療の前(I)及び後(F)の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたRM群(再発性自然流産の既往歴のある女性)の特徴を示す図である。(A)pH及びニュージェントスコア;(B)TGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度。
【
図8】プロバイオティクス治療の前(I)及び後(F)の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたRM群(再発性自然流産の既往歴のある女性)におけるラクトバチルス属の優占種のプロファイルの変化を示す図である。
【
図9】プロバイオティクス治療の前(I)及び後(F)の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたINF群(不妊症の既往歴のある女性)の特徴を示す図である。
【
図10】プロバイオティクス治療後の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたINF群(不妊症の既往歴のある女性)の特徴の変化を示す図である:(A)pH及びニュージェントスコアの変化;(B)TGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度の変化;並びに(C)乳酸菌数の変化。
【
図11】プロバイオティクス治療の前(I)及び後(F)の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたINF群(不妊症の既往歴のある女性)におけるラクトバチルス属の優占種のプロファイルの変化を示す図である。
【
図12】RM群及びINF群(全体として見なす)の妊娠を達成した女性及び達成しなかった女性の間の膣パラメータの比較を示す図である:(A)pH及びニュージェントスコアの変化;(B)TGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度の変化;並びに(C)乳酸菌数の変化。
【
図13】プロバイオティクス治療の前(I)及び後(F)の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたRM群及びINF群(全体として見なす)の妊娠を達成した女性及び達成しなかった女性の間の膣パラメータの比較を示す図である:(A)pH及びニュージェントスコア;(B)TGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度。
【
図14】プロバイオティクス治療の前(I)及び後(F)の、結果(妊娠した対妊娠していない)に応じたRM群及びINF群(全体として見なす)の妊娠を達成した女性及び達成しなかった女性の子宮膣部洗浄試料における乳酸菌数(log
10 cfu/ml)の変化(A)及びL.サリバリウス特異的DNAコピーの数(コピー/ml)の変化(B)を示す図である。
【
図15】対照群の種々の特徴と、プロバイオティクス治療後にRM群及びINF群で妊娠を達成した女性の特徴(P)及び達成しなかった女性の特徴(NP)との比較を示す図である:(A)pH及びニュージェントスコア;(B)TGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度;並びに(C)乳酸菌数。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の医学的使用
一態様において、本発明は、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療及び/又は予防に使用される、Spanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体に関する。
【0014】
代替的には、本発明は、Spanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体の、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療及び/又は予防のための医薬品を製造するための使用に関する。
【0015】
代替的には、本発明は、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失を治療及び/又は予防する方法であって、治療的有効量のSpanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体を、上記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「株」という用語は、微生物の種、好ましくは細菌種の遺伝的変異体又はサブタイプを指す。
【0017】
「ラクトバチルス・サリバリウス」及び「リジラクトバチルス・サリバリウス(Lagilactobacillus salivarius)」という用語は、本発明の文脈において同義語として使用される。
【0018】
一実施形態において、本発明は、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失を治療及び/又は予防する、Spanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体に関する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療及び/又は予防する、Spanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株の突然変異体に関する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「Spanish Type Culture Collection(CECT)に寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株の突然変異体」という用語は、主に突然変異によって参考株から自然に得られた、又は特異的に発生した任意の株であり、参考株の特性を保持するものを指す。L.サリバリウス株5713は、以下の特性の存在により特徴付けられる。
【0021】
(a)膣及び/又は子宮頸部の病原体に対する抗菌活性
「膣及び/又は子宮頸部の病原体」という用語は、膣及び/又は子宮頸部の粘膜に定着することができ、例えば、膣炎、膣疾患、トリコモナス症、カンジダ症、又は下部尿路感染症等の疾患を引き起こす可能性のある微生物、主に真菌又は細菌を指す。「膣病原体」という用語には、外部由来の微生物と、健常な膣粘膜に存在し得るが、有益又は保護効果を有する或る特定の微生物の減少及び/又は潜在的な病原微生物の増加を含む、膣の細菌叢の不均衡が発生した場合に疾患を引き起こす可能性のある微生物との両方が含まれる。膣病原体の非限定的な例示的な実例としては、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ガードネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、トリコモナス・バジナリス(Trichomonas vaginalis)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、プレボテラ(Prevotella)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、及びウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)が挙げられる。特定の実施形態において、膣病原体は、ガードネレラ・バジナリス(G.バジナリスMP14、G.バジナリスMP17、G.バジナリスMP20、G.バジナリスMP24、G.バジナリスMP29)、ストレプトコッカス・アガラクチア(S.アガラクチアMP07、S.アガラクチアMP12、S.アガラクチアMP46)、カンジダ・アルビカンス(C.アルビカンスMP09、C.アルビカンスMP18、C.アルビカンスMP31)、カンジダ・グラブラータ(C.グラブラータMP33、C.グラブラータMP37)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)(C.パラプシローシスMP36、C.パラプシローシスMP48)、及びウレアプラズマ・ウレアリチカム(U.ウレアリチカムMP39、U.ウレアリチカムMP57)からなる群から選択される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「抗菌活性」という用語は、微生物、この場合は病原性膣微生物を死滅させるか、又はその増殖を阻害する能力を指す。抗菌活性には、殺細菌作用(細菌を死滅させる能力)、静細菌作用(細菌の増殖を阻害する能力)、殺真菌作用(真菌を死滅させる能力)、及び静真菌作用(真菌の増殖を阻害する能力)が含まれる。
【0023】
(b)膣及び子宮頸部の病原体と共凝集する能力
「膣及び/又は子宮頸部の病原体」という用語は、上記で定義されている。特定の実施形態において、膣病原体は、ガードネレラ・バジナリス(G.バジナリスMP14、G.バジナリスMP17、G.バジナリスMP20、G.バジナリスMP24、G.バジナリスMP29)、ストレプトコッカス・アガラクチア(S.アガラクチアMP07、S.アガラクチアMP12、S.アガラクチアMP46)、カンジダ・アルビカンス(C.アルビカンスMP09、C.アルビカンスMP18、C.アルビカンスMP31)、カンジダ・グラブラータ(C.グラブラータMP33、C.グラブラータMP37)、カンジダ・パラプシローシス(C.パラプシローシスMP36、C.パラプシローシスMP48)、及びウレアプラズマ・ウレアリチカム(U.ウレアリチカムMP39、U.ウレアリチカムMP57)からなる群から選択される。より具体的な実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713は、G.バジナリス、S.アガラクチア、及びC.アルビカンスと共凝集する能力を有する。
【0024】
「共凝集する能力」という用語は、L.サリバリウス株CECT 5713が異なる種の他の微生物に付着する能力を指す。
【0025】
(c)膣上皮細胞への高い接着性
「接着性」という用語は、L.サリバリウス株CECT 5713が宿主組織、この場合は膣上皮細胞に結合する能力を指す。膣細胞への接着性は、同一の実験条件下で測定したときに、L.サリバリウスCECT株9145の接着性の少なくとも90%、より具体的には少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、100%、又はそれ以上である場合に高いと考えられる。
【0026】
(d)高いα-アミラーゼ活性
本明細書で使用される場合、「α-アミラーゼ活性」という用語は、糖鎖の任意の点に沿ってグリコシド結合を加水分解し、この結合を分解して、アミラーゼからマルトトリオース及びマルトースを、並びにアミロペクチンからマルトース、グルコース及びデキストリンを生成することができる番号EC 3.2.1.1により識別される酵素活性を指す。細菌のα-アミラーゼ活性は、Narita et al. (2006), Appl. Environ. Microbiol. 72: 269-275により開示された方法を用いて測定したときに、0.50 U/mLを超える場合に高いと考えられる。
【0027】
(e)高い乳酸産生
本明細書で使用される場合、「乳酸産生」という用語は、2つのL異性体又はD異性体のいずれかにおいて、2-ヒドロキシプロパン酸又はα-ヒドロキシ-プロパン酸がその正式名称である乳酸を生成する株の能力を指す。細菌の乳酸産生は、最適な増殖条件でインキュベーション後の培養上清中で8 mg/mlを超える場合に高いと考えられる。
【0028】
したがって、特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、上記の特性のうちの1つ以上を保持する。本明細書で使用される場合、「保持する」という用語は、突然変異体が、上記特性を適切な定量分析を用いて測定したときに、その由来となったL.サリバリウス株CECT 5713の活性の100%以上の活性、又は少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、若しくは少なくとも50%の活性を示すことを指す。
【0029】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の膣病原体に対する抗菌活性を保持する。より具体的な実施形態において、突然変異体は、ガードネレラ・バジナリス(G.バジナリスMP14、G.バジナリスMP17、G.バジナリスMP20、G.バジナリスMP24、G.バジナリスMP29)、ストレプトコッカス・アガラクチア(S.アガラクチアMP07、S.アガラクチアMP12、S.アガラクチアMP46)、カンジダ・アルビカンス(C.アルビカンスMP09、C.アルビカンスMP18、C.アルビカンスMP31)、カンジダ・グラブラータ(C.グラブラータMP33、C.グラブラータMP37)、カンジダ・パラプシローシス(C.パラプシローシスMP36、C.パラプシローシスMP48)、及びウレアプラズマ・ウレアリチカム(U.ウレアリチカムMP39、U.ウレアリチカムMP57)からなる群から選択される膣病原体に対する抗菌活性を保持する。より具体的な実施形態において、突然変異体は、ガードネレラ・バジナリス、ストレプトコッカス・アガラクチア、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータ、及びウレアプラズマ・ウレアリチカムからなる群から選択される膣病原体に対する抗菌活性を保持する。抗菌活性は、突然変異体が病原微生物の細胞を死滅させる能力、又はその増殖を阻害する能力を決定することを可能にする任意の定量アッセイ、例えば、寒天希釈又は拡散法、及び、例えば、Balouri et al., Journal of Pharmaceutical Analysis, 6 (2016), 71-79に記載されている他の方法を用いて決定することができる。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の抗菌活性を保持し、このとき、上記活性は、実施例で使用されるMagnusson and Schnuerer, Appl. Environ. Microbiol. 2001, 67, 1-5によって記載された重層法を用いて決定される。特定の実施形態において、突然変異体は、膣病原体、好ましくはガードネレラ・バジナリス、ストレプトコッカス・アガラクチア、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラータ、及びウレアプラズマ・ウレアリチカムからなる群から選択される病原体に対するL.サリバリウス株CECT 5713の活性の100%以上、又は少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、若しくは少なくとも50%を保持し、このとき、上記活性は、本明細書で述べた重層アッセイを用いて決定される。
【0030】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の膣及び/又は子宮頸部の病原体と共凝集する能力を保持する。より具体的な実施形態において、突然変異体は、G.バジナリス、S.アガラクチア、及びC.アルビカンスからなる群から選択される膣及び/又は子宮頸部の病原体と共凝集する能力を保持する。膣及び/又は子宮頸部の病原体と共凝集する能力は、任意の既知の共凝集アッセイ、例えば、本明細書において実施例で使用されているYounes et al. (PLoS One 2012, 7, e36917)によって記載されたアッセイを用いて決定することができる。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の膣及び/又は子宮頸部の病原体と共凝集する能力を保持し、このとき、上記活性は、Younes et al.(上記を参照)によって記載された共凝集アッセイを用いて決定される。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の膣及び/又は子宮頸部の病原体、好ましくはG.バジナリス、S.アガラクチア、及びC.アルビカンスからなる群から選択される病原体と共凝集する能力の100%以上、又は少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、若しくは少なくとも50%を保持し、このとき、上記活性は、上述の共凝集アッセイを用いて決定される。
【0031】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の膣上皮細胞への高い接着性を保持する。膣上皮細胞への接着性は、任意の既知の接着性アッセイ、例えば、本明細書において実施例で使用されているBoris et al., Infect. Immun. 1998, 66, 1985-1989よって記載されたアッセイを用いて決定することができ、閉経前の女性から採取された膣上皮細胞が使用される。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の上皮細胞への高い接着性を保持し、このとき、上記活性は、Younes et al.(上記を参照)によって記載された共凝集アッセイを用いて決定される。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の膣上皮細胞への接着性の100%以上、又は少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、若しくは少なくとも50%を保持し、このとき、上記活性は、上述の接着性アッセイを用いて決定される。本明細書において実施例で記載されているように、L.サリバリウス株CECT 5713は、接着性がYounes et al.によって記載されたアッセイを用いて決定されるとき、20のランダムな顕微鏡視野において329±46の接着乳酸菌の、閉経前の女性から得られた膣上皮細胞への平均接着性を有することを考えると、特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、同一のアッセイを用いて測定されたとき、20のランダムな顕微鏡視野において同様の接着性、すなわち、約329±46以上の接着乳酸菌を有する。
【0032】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の高いα-アミラーゼ活性を保持する。α-アミラーゼ活性は、任意の既知のアッセイ、例えば、実施例で使用されるNarita et al. (Narita et al. Appl Environ Microbiol. 2006; 72(1): 269-275)によって記載された方法を用いて決定することができ、これは、基質である2-クロロ-4-ニトロフェニル65-アジド-65-デオキシ-β-マルトペンタオシドに対する活性を決定することに基づいている。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の高いα-アミラーゼ活性を保持し、このとき、上記活性は、Narita et al.(上記を参照)によって記載されたアッセイを用いて決定される。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713のα-アミラーゼ活性の100%以上、又は少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、若しくは少なくとも50%を保持し、このとき、上記活性は、上述のアッセイを用いて決定される。本明細書において実施例で記載されているように、L.サリバリウス株CECT 5713は、上記活性がNarita et al.によって記載されたアッセイを用いて決定されるとき、16時間後に0.83 U/mLのα-アミラーゼ活性を有することを考えると、特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、同一のアッセイを用いて測定されたとき、16時間後に同様のα-アミラーゼ活性、すなわち、約0.83 U/mL以上を有する。
【0033】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の高い乳酸産生を保持する。特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、好気条件及び/又は嫌気条件下でL.サリバリウス株CECT 5713の高い乳酸産生、特にL-乳酸産生を保持する。乳酸産生は、任意の既知のアッセイ、例えば、実施例で使用されるMartin et al. (Martin et al. 2006. Int. J. Food Microbiol. 112: 35-43)によって記載された方法を用いて決定することができ、これは、MRSでの培養上清において酵素キットを用いて乳酸の両方のエナンチオマーを定量化することに基づいている。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の高い乳酸産生を保持し、このとき、上記活性は、Martin et al., 2006(上記を参照)によって記載されたアッセイを用いて決定される。特定の実施形態において、突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の乳酸産生の100%以上、又は少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、若しくは少なくとも50%を保持し、このとき、上記産生は、上述のアッセイを用いて決定される。本明細書において実施例で記載されているように、L.サリバリウス株CECT 5713は、上記産生がMartin et al., 2006によって記載されたアッセイを用いて決定されるとき、好気条件及び嫌気条件下でそれぞれ11.07±0.42 mg/ml及び11.69±0.58 mg/mlのL-乳酸を生成することが可能であることを考えると、特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、同一のアッセイを用いて測定されたとき、好気及び嫌気の両条件下で同様のL-乳酸の量、すなわち、約11 mg/ml以上を生成することが可能である。
【0034】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、同質遺伝子突然変異体、すなわち、突然変異の存在によってのみL.サリバリウス株CECT 5713とは異なるゲノムを有する株である。
【0035】
別の特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713のゲノムと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を共有するゲノムを有する。
【0036】
別の特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713の突然変異体は、L.サリバリウス株CECT 5713の16S rRNA遺伝子と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子の存在によって特徴付けられる。
【0037】
別の特定の実施形態において、突然変異体と親株との間の同一性の程度は、コアゲノムDNA保存を検出する平均ヌクレオチド同一性(ANI)(Konstantinidis K and Tiedje JM, 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 2567-2592)として決定される。いくつかの実施形態において、変異体と原株との間のANIは、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、約99.99%、約99.999%、約99.9999%、約99.99999%、約99.999999%以上であるが、100%未満である。
【0038】
別の実施形態において、突然変異体と原株との間の関連性の程度は、オリゴヌクレオチド頻度に基づいたテトラヌクレオチドシグネチャー頻度相関係数(Bohlin J. et al. 2008, BMC Genomics, 9: 104)として決定される。いくつかの実施形態において、突然変異体とL.サリバリウス株CECT 5713との間のテトラヌクレオチドシグネチャー頻度相関係数は、約0.99、0.999、0.9999、0.99999、0.999999、0.999999以上であるが、1未満である。
【0039】
別の実施形態において、突然変異体と親株との間の関連性の程度は、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼを使用したパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を用いて親株及び変異株のゲノムを分析するときに得られた類似性の程度として決定される。PFGEを用いて得られた類似性の程度は、ダイス類似係数を用いて測定することができる。いくつかの実施形態において、突然変異体とL.サリバリウス株CECT 5713との間のダイス類似係数は、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、約99.99%、約99.999%、約99.9999%、約99.99999%、約99.999999%以上であるが、100%未満である。
【0040】
別の実施形態において、或る株が所与の親株の突然変異体と考えられるのは、両株が、当該技術分野において既知の方法のいずれか、例えば、Bouchet et al. (Clin. Microbiol. Rev., 2008, 21: 262-273)によって記載された方法を使用して得られるような同じリボタイプを有する場合である。
【0041】
別の実施形態において、突然変異体と原株との間の関連性の程度は、反復性遺伝子外パリンドロームエレメントベースのPCR(repetitive extragenic palindromic element-based PCR)(REP-PCR)(例えば、Chou and Wang, Int J Food Microbiol. 2006, 110: 135-48を参照のこと)によって得られた両株の遺伝子プロファイルの比較を用いて得られたピアソン相関係数である。いくつかの実施形態において、突然変異体及びL.サリバリウス株CECT 5713のREP-PCRプロファイルを比較したときに得られるピアソン相関係数は、約0.99、0.999、0.9999、0.99999、0.999999、0.999999以上であるが、1未満である。
【0042】
別の実施形態において、突然変異体と親株との間の関連性の程度は、多座位配列タイピング(MLST)(例えば、Maiden, MC, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 3140-3145を参照のこと)を用いて得られた両株の遺伝子プロファイルを比較することによって得られた連鎖距離である。いくつかの実施形態において、突然変異体及びL.サリバリウス株CECT 5713のMLSTを用いて得られた連鎖距離は、約0.99、0.999、0.9999、0.99999、0.999999、0.999999以上であるが、1未満である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、本明細書に記載の臨床状態を被る感受性を終息、改善、又は軽減させる目的を有する任意のタイプの治療を指す。したがって、「治療」、「治療する」、及びそれらの同義語は、薬理的又は生理的に所望の効果を得ることを指し、ヒトを含む哺乳動物における病的状態又は障害の任意の治療を包含する。効果は、障害及び/又はそれに起因し得る有害作用の完全又は部分的な予防を提供するという点で予防的であり得る。換言すれば、「治療」には、(1)疾患を抑制すること、例えば、その進行を止めること、(2)障害若しくは少なくともそれに関連する症状を中断若しくは終息させることにより、患者が疾患若しくはその症状にかからないようにすること、例えば、失われた、欠如した、若しくは欠陥のある機能を回復させること、若しくは修復することによって、若しくは非効率的なプロセスを刺激することによって、疾患若しくはその症状の退行を引き起こすこと、又は、(3)疾患若しくはそれに関連する症状を減速、緩和、若しくは改善することが含まれ、減速とは、炎症、疼痛、又は免疫不全等のパラメータの大きさの少なくとも減少を指すために広義で使用される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「予防」、「予防すること」、又は「予防する」という用語は、女性対象にL.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体を投与することを指し、この女性対象は、投与時に不妊症又は再発性妊娠喪失と診断されていないが、通常、上記疾患の発症又は上記疾患のリスクがあると予想される。予防は、上記疾患の発症を妨げることを目指す。予防は、完全なものである場合がある(例えば、完全に疾患がないこと)。予防はまた、部分的なものである場合があり、例えば、対象における疾患の発症が、本発明の組み合わせ又は組成物の投与なしで生じたであろうものよりも低い程度になる。予防とはまた、臨床状態に対する感受性の低下を指す。予防には、疾患にかかるリスクを軽減させることも含まれる。
【0045】
本明細書でいう「女性対象」という用語は、哺乳動物種の雌性の構成員に適用され、家畜、霊長類、及びヒトを含むが、これらに限定されない。この対象は、任意の年齢又は人種のヒトであることが好ましい。
【0046】
本発明による予防及び/又は治療に使用されるL.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、治療的有効量で投与される。
【0047】
薬物又は薬理活性剤の「有効」量又は「治療的有効量」という用語は、その薬物又は薬剤の毒性を示さないが、所望の効果をもたらすのに十分な量であると理解される。本発明の治療において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体の「有効量」は、所望の効果をもたらすのに有効な上記微生物の量である。
【0048】
個々のニーズは異なるが、本発明の微生物の有効量の最適範囲の決定は、当業者の共通の経験に関係する。一般に、有効量の上記微生物を供給するのに必要な用量は、当業者によって調整可能であり、これは、年齢、健康状態、体調、性別、食事、体重、治療頻度、並びに薬物送達システム(system drug delivery)が使用される場合、及び化合物が薬物の組み合わせの一部として投与される場合、悪化又は疾患の性質及び程度、患者の病状、投与経路、使用される特定の化合物の活性、有効性、薬物動態学的及び毒物学的プロファイル等の薬理的検討事項によって異なる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「不妊症」という用語は、女性が自然な方法で生殖することができないことを指す。特に、不妊症は、母乳育児又は授乳性無月経等の別の理由がなく、12ヶ月以上の定期的な避妊具を使わない性交後に臨床的妊娠を達成できないことによって定義される生殖器系の疾患である。女性の不妊症は、以下のものを含む種々の原因による可能性がある。
無排卵、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群、黄体期欠損、早発卵巣不全を含む月経周期の変化
卵管閉塞、小骨盤の炎症(又は上部性器感染症)、先天性の子宮及び膣奇形を含む卵管及び子宮の疾患
子宮頸管粘液の変化
子宮内膜症
未治療の淋病及びクラミジア等の感染症、子宮頸部の慢性感染症、並びにヒトパピローマウイルス(HPV)感染に関連する子宮頸部損傷の外科的治療
癌等の重篤な疾患
極端な痩せ又は肥満
甲状腺疾患、視床下部機能不全、及び高プロラクチン血症等の内分泌障害
狼瘡、橋本病、及び他の種類の甲状腺炎、並びに関節リウマチ等の自己免疫障害
【0050】
特定の実施形態において、不妊症は、原因不明の不妊症である。本明細書で使用される場合、「原因不明の不妊症」又は「特発性不妊症」という用語は、女性及びその男性パートナーの両方に対して一連の診断検査を行った後に原因が特定できない不妊症を指す。特定の実施形態において、女性の不妊症は、以下の場合に原因不明の不妊症と見なされる。
身体検査が、子宮、卵管、又は卵巣に異常の兆候を示さない。
全ての卵巣予備能検査が、正常な排卵供給レベルを示す。
子宮卵管造影(HSG)が、正常な子宮腔管及び卵管を示す。
男性から採取された精液の分析が、適切な量の健常な精子を示す。
女性の排卵活動が正常であるか、又はあらゆる排卵障害(例えば多嚢胞性卵巣症候群)の治療が成功している。
男女ともに全ての血液検査が、正常な結果を示す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「再発性妊娠喪失」又は「再発性自然流産」という用語は、女性対象が臨床的妊娠を達成するが、上記妊娠がその期間に達しない状況を指す。特に、以下のような場合において、再発性妊娠喪失であることが考えられる。
非視覚化妊娠喪失を含む3回連続の妊娠喪失(ヨーロッパ人類生殖胎児協会、英国王立産科婦人科学会)
超音波検査又は組織病理学検査を用いて妊娠が証明されている、必ずしも連続しているとは限らない2回以上の妊娠喪失
【0052】
再発性妊娠喪失は、以下のものを含む種々の原因による可能性がある。
解剖学的原因:子宮奇形、子宮筋腫
生活習慣又は環境に関連する原因:喫煙、薬物乱用、アルコール又はカフェインの過剰摂取、肥満
甲状腺疾患又は糖尿病等の未治療の疾患、免疫系又は血液凝固系の異常
【0053】
特定の実施形態において、再発性妊娠喪失は、原因不明の再発性妊娠喪失である。本明細書で使用される場合、「原因不明の再発性妊娠喪失」という用語は、女性及びその男性パートナーの両方に対して一連の診断検査を行った後に原因が特定されない再発性妊娠喪失を指す。特定の実施形態において、再発性妊娠喪失は、以下の検査が正常である場合、原因不明であると考えられる。
子宮の異常を検出することを目的とした子宮腔の検査。これらの検査としては、経膣超音波検査、子宮卵管造影、生理食塩水注入による超音波検査、又は磁気共鳴を挙げることができる。
流産した胎児及びカップルの組織の染色体検査を含む、女性及び男性の遺伝子検査。
特に、甲状腺検査並びにプロラクチン、卵胞刺激ホルモン、空腹時血糖、及びインスリン分析を含むホルモン検査。
血液学的検査及び免疫学的検査。
【0054】
生殖補助治療の対象となる不妊症又は再発性妊娠喪失の女性対象は、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体で治療することができ、それによって生殖補助治療の成功の可能性が高まる。したがって、特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、生殖補助治療と組み合わせて、不妊症又は再発性妊娠喪失の女性に投与される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「生殖補助治療」又は「医学的生殖補助治療」という用語は、不妊症の問題の場合において、男性、女性、又は男性及び女性の両方の不妊症の問題に関係なく、並びにドナーからの精液で妊娠することを希望する、パートナーのいない、又は女性パートナーがいる女性の場合において、妊娠を有利にすることを目的とする医学的治療を指す。生殖補助は、排卵刺激又は排卵誘発により特徴付けられ、配偶子(卵母細胞及び/又は精子)に直接作用して、受精及び胚の移動又は子宮腔への着床を有利にすることを含み得る。生殖補助治療の例としては、排卵誘発、制御された卵巣刺激、定期的な性交、パートナー又はドナーからの精液を用いるかどうかに関わらない人工子宮内、子宮頸管内、及び膣内授精、体外受精(IVF)、精子マイクロインジェクション(ICSI)、精子回収、卵母細胞提供、妊孕性温存が挙げられる。
【0056】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体を生殖補助治療と組み合わせて投与することは、生殖補助治療を受けた、受けている、又は受ける予定の女性対象に上記株を投与することを意味する。特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、治療前に一定期間、例えば、生殖補助治療を受ける前に、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年の間投与される。特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、女性対象が生殖補助治療を受ける全期間を通して投与される。特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、対象が生殖補助治療を受けた後、例えば、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間投与され、妊娠が達成された場合、妊娠の少なくとも4週まで、少なくとも5週まで、少なくとも6週まで、少なくとも7週まで、少なくとも8週まで、少なくとも9週まで、少なくとも10週まで、少なくとも11週まで、少なくとも12週まで、少なくとも13週まで、少なくとも14週まで、少なくとも15週まで、又は妊娠全体を通して投与される。より具体的な実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、妊娠の少なくとも15週まで投与される。
【0057】
「妊娠週」という用語は、月経周期が28日間続き、上記周期の14日目に受精が起こったと仮定して、最終月経日から経過した時間を指す。
【0058】
L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、経膣又は経口、好ましくは経口で投与することができる。
【0059】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、凍結乾燥物の形態で投与される。
【0060】
投与されるL.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体の量は、対象及び特定の投与様式に応じて変化する。当業者は、用量が、Goodman and Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th edition (1996), Appendix II, pages 1707-1711及びGoodman and Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th edition (2001), Appendix II, pages 475-493のガイドラインによっても決定できることを理解するだろう。特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、5.0 log10 cfu(コロニー形成単位(colony forming units))~13.0 log10 cfu、例えば、5.5 log10 cfu~12.5 log10 cfu、6.0 log10 cfu~12.0 log10 cfu、6.5 log10 cfu~11.5 log10 cfu、7.0 log10 cfu~11.0 log10 cfu、7.5 log10 cfu~10.5 log10 cfu、8.0 log10 cfu~10.0 log10 cfu、8.5 log10 cfu~9.5 log10 cfu、約 9.0 log10 cfuの1日用量で投与される。好ましくは、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、8.5 log10 cfu~9.5 log10 cfuの1日用量で、より好ましくは約9 log10 cfuの1日用量で投与される。
【0061】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年、好ましくは少なくとも3ヶ月、又は妊娠の診断まで、より好ましくは少なくとも6ヶ月又は妊娠の診断までの期間投与される。妊娠が診断された場合、好ましくはL.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体は、妊娠の少なくとも4週まで、少なくとも5週まで、少なくとも6週まで、少なくとも7週まで、少なくとも8週まで、少なくとも9週まで、少なくとも10週まで、少なくとも11週まで、少なくとも12週まで、少なくとも13週まで、少なくとも14週まで、少なくとも15週まで、又は妊娠全体を通して、より好ましくは妊娠の少なくとも15週まで投与される。
【0062】
本発明のモニタリング方法
本発明の著者らは、最終的に妊娠を達成した女性において、達成しなかった女性と比較して、L.サリバリウス株CECT 5713による治療によって誘発される増殖因子VEGF、TGF-β1、及びTGF-β2の膣内濃度の上昇を検出した(表8)ため、これらの増殖因子の濃度は治療有効性のバイオマーカーとなり得る。
【0063】
したがって、別の態様において、本発明は、CECTに寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株又はその突然変異体を用いて、女性対象における不妊症又は再発性妊娠喪失の治療の効果をモニタリングするin vitroモニタリング方法であって、
(i)上記女性対象の膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGF、TGF-β1、及びTGF-β2からなる群から選択される増殖因子のレベルを決定することと、
(ii)上記レベルを、治療前に同一対象から得られた基準値と比較することと、
を含み、基準値に対する上記レベルの上昇が、治療が有効であることを示し、
基準値に対する上記レベルの低下又は変化の欠如が、治療が無効であることを示す、方法に関する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「in vitro」という用語は、ヒト又は動物の対象の身体に対してではなく、上記対象から単離された試料に対して実施される方法を指す。
【0065】
「治療の効果のモニタリング」という用語は、或る疾患に罹患している患者の、該疾患を治療するための治療に対する応答を指す。
【0066】
「不妊症」、「再発性妊娠喪失」、「女性対象」、「CECTに寄託番号5713で寄託されたラクトバチルス・サリバリウス種の株」、「その突然変異体」という用語は、最初の本発明の態様に関連して上記で定義されている。上記用語に関連する最初の態様の全ての特定の及び好ましい実施形態は、本発明の治療をモニタリングするモニタリング方法にも適用される。
【0067】
本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGF、TGF-β1、及びTGF-β2からなる群から選択される増殖因子のレベルを決定することを含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料」という用語は、膣及び子宮頸管粘膜の表面からの試料を指し、小分子、細胞外ポリマー、タンパク質、及びペプチド、微生物細胞、並びに宿主細胞、この場合は女性対象の細胞を含む。上記試料は、任意の既知の技術を用いて、例えば、拭き取りを用いて、又は流体、例えば、「子宮膣部」洗浄液又は「CVL」として知られている生理食塩水での洗浄を用いて得ることができる。特定の実施形態において、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料は、子宮膣部洗浄液である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「VEGF、TGF-β1又はTGF-β2のレベル」という用語は、試料中に存在する対応するタンパク質の量を指す。タンパク質のレベルは、試料中のタンパク質を決定及び定量化するのに適した、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて決定することができる。非限定的な実例として、タンパク質のレベルは、分析されたタンパク質(又は抗原決定基を含有するその断片)に特異的に結合する能力を有する抗体を使用し、次いで、得られた抗原-抗体複合体を定量することを含む技術を用いて、又は代替的に、抗体の使用を含まない技術を用いて、例えば、質量分析に基づく技術等を用いて決定することができる。抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、又はそれらの断片、Fv、Fab、Fab'、及びF(ab')2、scFv、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、並びにヒト化抗体であり得る。同様に、抗体を標識することもできる。使用できるマーカーの非限定的な例示的な実例としては、放射性同位体、酵素、フルオロフォア、化学発光試薬、補助因子、又は酵素基質、酵素阻害剤、粒子、若しくは染料が挙げられる。本発明によれば、非標識抗体(一次抗体)と標識抗体(二次抗体)との併用適用、ウェスタンブロット又は免疫ブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合EIA(酵素イムノアッセイ)、DAS-ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、二次元ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、免疫細胞化学的及び免疫組織化学的手法、免疫比濁法、免疫蛍光、特定の抗体を含むバイオチップ又はタンパク質マイクロアレイの使用に基づく技術又は反応性ストリップ等の形式でのコロイド沈殿に基づくアッセイ及び抗体コンジュゲート量子ドットに基づくアッセイ等、使用できる既知の検査は多岐にわたる。タンパク質を検出及び定量化する他の方法としては、例えば、アフィニティークロマトグラフィー技術又はリガンド結合アッセイが挙げられる。
【0070】
特定の実施形態において、VEGFのレベルは、マルチプレックスイムノアッセイを用いて決定される。特定の実施形態において、TGF-β1又はTGF-β2のレベルは、ELISAを用いて決定される。
【0071】
「VEGF」、又は「VEGF-A」、又は「血管内皮増殖因子」という用語は、PDGF/VEGF増殖因子のファミリーのメンバーを指す。それは、ジスルフィド結合ホモダイマーとして存在するヘパリン結合タンパク質である。この増殖因子は、血管内皮細胞の増殖及び移動を誘導し、生理学的及び病理学的な血管新生に不可欠である。ヒトにおいて、VEGFは、UniProtKB/Swiss-Protデータベースに寄託番号P15692で定義されているタンパク質(エントリーのバージョン248、2020年4月22日;配列のバージョン2、2001年11月16日)に対応する。
【0072】
「TGF-β1」又は「トランスフォーミング増殖因子ベータ1」という用語は、サイトカインのトランスフォーミング増殖因子ベータスーパーファミリーに属するタンパク質を指す。それは、細胞成長、細胞増殖、分化プロセス、及びアポトーシスの制御等の機能に関与する分泌タンパク質である。ヒトにおいて、TGF-β1は、UniProtKB/Swiss-Protデータベースに寄託番号P01137で定義されているタンパク質(エントリーのバージョン253、2020年4月22日;配列のバージョン2、1991年2月1日)に対応する。
【0073】
「TGF-β2」又は「トランスフォーミング増殖因子ベータ2」という用語は、サイトカインのトランスフォーミング増殖因子ベータスーパーファミリーに属するタンパク質を指す。それは、血管新生及び心臓の発達等の機能に関与するタンパク質である。ヒトにおいて、TGF-β2は、UniProtKB/Swiss-Protデータベースに寄託番号P61812で定義されているタンパク質(エントリーのバージョン181、2020年4月22日;配列のバージョン1、1988年8月1日)に対応する。
【0074】
一実施形態において、本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGFのレベルを決定することを含む。一実施形態において、本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のTGF-β1のレベルを決定することを含む。一実施形態において、本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のTGF-β2のレベルを決定することを含む。
【0075】
一実施形態において、本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGF及びTGF-β1のレベルを決定することを含む。一実施形態において、本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGF及びTGF-β2のレベルを決定することを含む。一実施形態において、本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のTGF-β1及びTGF-β2のレベルを決定することを含む。
【0076】
一実施形態において、本発明のモニタリング方法は、膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中のVEGF、TGF-β1、及びTGF-β2のレベルを決定することを含む。
【0077】
本発明のモニタリング方法は、VEGF、TGF-β1、及び/又はTGF-β2のレベルを基準値と比較することを含む。
【0078】
VEGF、TGF-β1及び/又はTGF-β2のレベルは、治療を受けた後、具体的には、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体の投与を少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年、好ましくは少なくとも3ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月の期間受けた後に採取された女性対象の膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料において決定される。
【0079】
本明細書で使用される場合、「基準値」という用語は、対象から採取した試料から得られた値又はデータを評価するための基準として使用される、所定の基準を指す。基準値は、絶対値、相対値、上限又は下限を有する値、値の範囲、平均値(mean value)、中央値、平均値(average value)、又は特定の対照値若しくはベースライン値と比較した値であり得る。基準値は、分析する対象の試料から得られた値等の、個々の試料の値に基づいている場合があるが、例えば、より早い時点での値に基づいている。特定の実施形態において、基準値は、女性対象がL.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体による治療を開始する前、例えば、4週間前、3週間前、2週間前、1週間前、6日前、5日前、4日前、3日前、2日前、1日前、又は実際に上記治療が開始される日の膣粘液試料及び/又は子宮頸管粘液試料中の上記増殖因子のレベルである。
【0080】
本発明のモニタリング方法によれば、VEGF、TGF-β1、及びTGF-β2のいずれかの、その基準値に対するレベルの上昇は治療が有効であることを示すが、基準値に対する上記レベルの低下又は変化の欠如は治療が無効であることを示す。
【0081】
「基準値に対するレベルの上昇」という用語は、増殖因子のレベルがその基準値よりも高いことを示す。増殖因子のレベルは、基準値に対して少なくとも1.5%、少なくとも 2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも200%以上高い場合に、その基準値より高いと見なされる。
【0082】
「基準値に対するレベルの低下又は変化の欠如」という用語は、増殖因子のレベルがその基準値以下であることを示す。増殖因子のレベルは、基準値に対して、1.5%未満、1.0%未満、0.5%未満、又は基準値と等しい場合に、少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%低い場合に、その基準値以下であると見なされる。
【0083】
特定の実施形態において、不妊症は、原因不明の不妊症である。
【0084】
特定の実施形態において、再発性妊娠喪失は、原因不明の再発性妊娠喪失である。
【0085】
特定の実施形態において、L.サリバリウス株CECT 5713又はその突然変異体による治療は、生殖補助治療と組み合わせて投与される。
【0086】
特定の実施形態において、株は経口投与される。
【0087】
特定の実施形態において、株は、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は妊娠の診断までの期間投与される。
【0088】
特定の実施形態において、妊娠が診断された場合、株の投与は、少なくとも妊娠の15週まで維持される。
【0089】
特定の実施形態において、株は、8.5 log10 cfu~9.5 log10 cfuの1日用量で投与される。より具体的な実施形態において、株は、約9 log10 cfuの1日用量で投与される。
【0090】
本発明は、本発明の範囲を限定しない以下の単なる例示的な実例を用いて以下に説明される。
【実施例】
【0091】
材料及び方法
研究の参加者、試料、及び計画
28歳から45歳の女性計58人が本研究に参加した。被験者を3つの群に分けた。RM群の全ての被験者(n=21)は、妊娠の最初の12週の間に3回以上の妊娠喪失を伴う再発性自然流産の既往歴があった。INF群の全ての女性(n=23)は、少なくとも1回の体外受精(IVF)サイクルを含むARTを少なくとも3回受けていたにもかかわらず、不妊症(妊娠不能)の既往歴があった。最後に、対照群(n=14)には、合併症のない満期妊娠後に少なくとも2人の子供を持つ対照女性が含まれていた。RM群及びINF群の女性はいずれも本研究の全期間にわたってARTを受けなかった。RM群の女性はいずれも抗リン脂質症候群と診断されなかったため、本研究中にヘパリン及び/又はサリチル酸の投与を受けなかった。女性参加者はいずれも試料採取の4週間前にホルモン療法、抗生物質、又はプロバイオティクスを受けていないか、又は投与されていなかった。膣試料は、膣のpH、マイクロバイオーム、及び免疫学的プロファイル(最後の場合において、特にTGF-β1及びTGF-β2の濃度に関して)に対するパートナーの精液の影響を防ぐ又は最小限に抑えるために、性交の少なくとも7日後に採取した。乳糖不耐症又は牛乳タンパク質アレルギーの女性は、その後のパイロット試験で株の投与に使用される賦形剤のために除外した(下記参照)。
【0092】
募集中(0日目)に、3群の女性から排卵後最初の3日以内に2つの試料を採取した。2つの試料は、ニュージェントスコアを再度決定するための膣の拭き取り検体試料並びに他の全ての分析のための10 mlの滅菌生理食塩水による子宮頸部開口部及び膣壁の子宮膣部洗浄液(CVL)(Nakra et al., J Infect Dis. 2016, 213(5): 840-7)である。CVL試料のアリコート部分を培養ベースの分析に使用した。次に、CVL試料を、4℃で10分間、800×gでの低速遠心分離によって清澄化した。CVL上清アリコート及び細胞ペレットは、免疫学的及びメタ分類学的分析が実施されるまで-80℃で保存された。
【0093】
0日目の後、RM群及びINF群の女性には、約50 mgの凍結乾燥プロバイオティクス(約9 log10 cfuのL.サリバリウスCECT 5713)を毎日1包、6ヶ月間又は妊娠の診断まで(いずれか早い方)(経口で)投与した。この時点で、各女性から同じ2つの試料を採取した。妊娠の診断後、株の経口投与を妊娠の15週まで維持した。本研究において、0日目から最初の1年以内に発生した全ての自然妊娠を記録した。
【0094】
プロバイオティクスを含有する小袋は、研究全体を通して4℃に保った。全ての被験者にアンケートを実施して、本研究の製品の摂取に関するアドヒアランスを記録した。アドヒアランスの最低率(全治療用量の%)は86%と確定された。全ての被験者は、保健家族部(the Health and Family Department)(スペイン、グラナダ、アンダルシア地域政府)の生物医学研究倫理委員会によって承認されたプロトコルについて、書面によるインフォームド・コンセントを提出した(P050/19、法律11/19)。
【0095】
膣のpH及びニュージェントスコアの測定
膣側壁のpH(Whatman pH試験紙、pH 3.8~5.5及びpH 6.0~8.1)を、2回の研究来診のそれぞれで測定した。ニュージェントスコアを上述の通り計算した(Nugent et al., J Clin Microbiol. 1991, 29(2): 297-301)。要約すると、拭き取り検体の物質をスライドガラスに移し、熱固定し、グラム染色した。グラム陽性、グラム陰性、及びグラム不定細菌の形態型を定量化した。ニュージェントスコアの0~3は正常、4~6は中間、7~10は細菌性膣炎に適合すると見なした(Nugent et al.、上記を参照)。
【0096】
培養依存分析
アッセイ中に採取したCVL試料を段階的に希釈し、コロンビアナリジクス酸(CNA)寒天、ガードネレラ(GAR)寒天、CHROMagarStrepB(CHR)寒天、マッコンキー(MCK)寒天、マイコプラズマ(MYC)寒天、及びサブローデキストロースクロラムフェニコール(SDC)寒天(BioMerieux、フランス、マルシー・レトワール)を含むプレート上に置いて、膣感染症に最も頻繁に関与する病原体を含む、膣内で見られる主要な培養可能な非ラクトバチルス細菌及び酵母の選択的単離及び定量化を行った。試料はまた、L-システイン(2.5 g/l)(MRS-C)又はウマ血液(5%)(MRS-B)を追加したMRS寒天(Oxoid、英国、ベージングストーク)を含むプレートに広げて、L.イナース(MRS-B)を含む乳酸菌の単離を行った。全てのプレートは、嫌気ワークステーション(DW Scientific、英国、シプリー)で嫌気的(窒素85%、水素10%、二酸化炭素5%)にインキュベートしたMRS-C及びMRS-Bを除いて、好気条件下、37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、各増殖培地における計数を記録し、次に、寒天プレートからコロニーの各形態の代表的なものを少なくとも1つ選択した。単離株を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析(Bruker、ドイツ)を用いて同定した。MALDI-TOFを用いた同定が種レベルで不可能な場合(特に乳酸菌の単離株の場合)、Mediano et al. (J Hum Lact. 2017, 33(2): 309-318)によって記載されているように、16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子の配列決定を用いて同定を行った。
【0097】
試料からのDNAの抽出
約1 mlの各CVL試料を、上述の方法(Lackey et al., Front Nutr. 2019, 17; 6:45)に従ってDNA抽出に使用した。抽出したDNAを22 μlのヌクレアーゼフリーの水で溶出し、その後の分析まで-20℃で保存した。抽出した各DNAの純度及び濃度を、NanoDrop 1000分光光度計(NanoDrop Technologies, Inc.、米国、ロックランド)を使用して推定した。抽出中に陰性対照(試料なし)を追加した。
【0098】
qPCR(リアルタイム定量PCR)を用いたラクトバチルス・サリバリウスDNAの検出及び定量化
L.サリバリウス種に特異的に属するDNAを定量化するためのプライマー及び条件は以前に記載されている(Harrow et al., Appl Environ Microbiol. 2007, 73(22): 7123-7)。全試料のDNA濃度を5 ng/μL-1に調整した。市販のリアルタイムPCRサーモサイクラー(CFX96(商標)、Biorad Laboratories、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)を全ての実験に使用した。L.サリバリウスCECT 5713 DNAの1:10希釈液(2 ng~0.2 pgで変動)を使用した標準曲線を使用して、未知の細菌ゲノム標的を計算した。15.29~20.07の閾値サイクル(Ct)値が、この範囲のL.サリバリウスDNAについて得られた(R2=0.9915)。非標的種(L.ロイテリMP07及びL.プランタルムMP02;出願人が所有する収集物)から抽出したDNAについて測定したCt値は39.27±0.64以上であった。これらの2つの対照株は、それらがL.サリバリウスに分類学的に最も近い種に属する(Salvetti et al., 2018)ために選択された。全ての試料及び標準を3回繰り返して処理した。
【0099】
メタ分類学的分析
16S rDNAの超可変領域V3~V4を、ユニバーサルプライマーSD-Bact-0341-bS-17(CCTACGGGNGGCWGCAG、配列番号1)及びSD-Bact-129 0785-aA-21(GACTACHVGGGTATCTAATCC、配列番号2)を使用したPCRを用いて増幅し、マドリードサイエンスパーク施設(the Madrid Science Park facilities)(スペイン、トレス・カントス)のIllumina MiSeqシステムで配列決定した(Klindworth et al., Nucleic Acids Res. 2013, 41, e1)。2回目のPCR反応でPCRアンプリコンの3'及び5'末端に付加されたバーコードは、フォワード及びリバース配列の分離を可能にした。PCR産物中のDNA濃度を、2100 Bioanalyzer system(Agilent、米国カリフォルニア州サンタクララ)によって定量化した。PCR産物をほぼ同じモル比でグループ分けした後、アガロースゲルで泳動した後に正確なサイズを有する取り出したバンドに対してQIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen)を使用してDNAアンプリコンを精製した。次に、DNA濃度をPicoGreen(BMG Labtech、ドイツ、イェーナ)で定量化した。バーコード付きのグループ化したDNAアンプリコン及び精製したDNAアンプリコンを、製造業者のプロトコルに従ってIllumina MiSeqペアエンドプロトコル(Illumina Inc.、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して配列決定した。
【0100】
免疫学的パラメータの分析
血管内皮増殖因子(VEGF)を、premixed multiplex panel(Bio-Rad、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して分析した。TGF-β1及びTGF-β2のレベルを、それぞれRayBio(商標)ヒトTGF-β1及びヒトTGF-β2 ELISAキット(RayBiotech、米国ジョージア州ノークロス)を使用したELISAを用いて並行して測定した。全ての測定を製造業者のプロトコルに従って実施し、各被分析物について標準曲線をプロットした。
【0101】
L.サリバリウスCECT 5713の膣病原体に対する抗菌活性
L.サリバリウスCECT 5713の各種細菌及び酵母種の増殖を阻害する能力を決定するために、重層法(Magnusson and Schnuerer, Appl. Environ. Microbiol. 2001, 67, 1-5)を使用した。この方法は、Martin et al. (2006)によって記載されているように実施された。指標生物として使用した全ての株(出願人が所有する培養収集物)は、以前に膣又は子宮頸部感染症の臨床症例から単離されたものであり、5株のガードネレラ・バジナリス、3株のストレプトコッカス・アガラクチア、3株のカンジダ・アルビカンス、2株のカンジダ・グラブラータ、2株のカンジダ・パラプシローシス、及び2株のウレアプラズマ・ウレアリチカムが含まれていた。阻害活性は、全ての実験で3回繰り返して試験した。
【0102】
L.サリバリウスCECT 5713による抗菌化合物の産生
ラクトバチルス株による過酸化水素の産生を、Martin et al. (Int. J. Food Microbiol. 2006, 112: 35-43)によって改変されたYap and Gilliland, 2000, J. Dairy Sci. 83, 628-632の定量法を使用して測定した。L.サリバリウスCECT 5713による乳酸(L異性体及びD異性体)及び酢酸の産生を、Martin et al. (2006)によって記載されているように酵素キット(Roche Diagnostics、ドイツ、マンハイム)を使用して決定した。培養上清のpH値も測定した。これらのアッセイを、厳重な好気及び嫌気条件下で3回繰り返して実施し、値を平均±SDとして表した。バクテリオシン活性を分析しなかったのは、以前の表現型分析及びL.サリバリウスCECT 5713ゲノムの分析が、この株がそのような抗菌化合物を産生できないことを示している(Martin et al.、上記を参照;Langa et al., Appl Microbiol Biotechnol. 2012, 94(5):1279-87)ためである。
【0103】
共凝集及び膣上皮細胞系接着性アッセイ
上述の指標株の細胞と凝集体を形成する株の能力を、Younes et al. (PLoS One 2012, 7, e36917)の方法に従って調べた。懸濁液を、グラム染色後に位相差顕微鏡下で観察した。健常な閉経前の女性から採取した膣上皮細胞への接着を実施し、以前に記載されている(Boris et al., Infect. Immun. 1998, 66, 1985-1989)ように解釈した。接着性は、20のランダムな顕微鏡視野において膣細胞に接着した乳酸菌の数として測定した。L.サリバリウスCECT 9145を、膣細胞へのその高い接着性により対照株として使用した(Martin et al., Nutrients. 2019, 11(4). pii: E810)。アッセイは3回繰り返して実施した。
【0104】
L.サリバリウスCECT 5713のα-アミラーゼ活性
一方、L.サリバリウスCECT 5713のα-アミラーゼ活性を、Padmavathi et al. (J Genet Eng Biotechnol. 2018; 16(2):357-362)によって記載された方法を使用して定性的に評価した。要約すると、株を、0.25%のデンプンを追加した改変MRS培地(0.5%のペプトン、0.7%の酵母抽出物、0.2%のNaCl、2%のデンプン、及び1.5%の寒天)に播種した。プレートを嫌気状態にて48時間37℃でインキュベートし、次に、検出剤としてグラムヨウ素を添加することによってクリアランスゾーンを観察した。次に、L.サリバリウスCECT 5713の表面上のα-アミラーゼ活性も、以前に記載されているプロトコル及び条件を使用して、2-クロロ-4-ニトロフェニル65-アジド-65-デオキシ-β-マルトペンタオシド基質を使用してα-アミラーゼ測定キット(キッコーマン株式会社、日本、東京)で測定した(Narita et al., 2006)。1つの活性単位を、37℃で1分当たり2-クロロ-4-ニトロフェニル65-アジド-65-デオキシ-β-マルトペンタオシドから1 μmolの2-クロロ-4-ニトロフェノールを放出するのに必要とされる酵素の量として定義した。
【0105】
バイオインフォマティクス分析
未処理の生データを、Illumina MiSeq Reporter分析ソフトウェアを使用して逆多重化し、品質フィルタリングした。マイクロバイオームのバイオインフォマティクス分析を、QIIME 2 2019.1を用いて実施した(Bolyen et al., Nature Biotechnology, 2019, 37: 852-857)。ノイズ除去(Disinfection)はDADA2(Callahan et al., Nat Methods. 2016; 13: 581-583)を用いて行った。分類は、SILVA 132 OTU参照配列に対してSklearn naive Bayes taxonomy classifierを分類するq2 feature classifier(Bokulich et al. Microbiome. 2018, a; 6:90)を使用してASVに割り当てた(Quast, Nucl. Acids Res. 2013, 41 (D1): D590-D596)。その後、バイオインフォマティクス分析を、バージョンR 3.5.1(R Core Team, 2013; https://www.R-project.org)を使用して実施した。試料当たりのOTU数の表を作成し、各試料における配列の総数で細菌分類群の存在量を正規化した。アルファ多様性を、R Veganパッケージ(バージョン:2.5.6)を用いて、シャノン及びシンプソンの多様性指数で調査した(Oksanen et al., Community Ecology package, 2007, 10; 631-637)。ベータ多様性研究は、主座標分析(PCoA)を使用して、各対応のある試料比較の非類似値を含有する距離行列を介して細菌群集の多様性パターンをプロットすることによって実施した。定量的(相対存在量)及び定性的(存在/非存在)分析は、それぞれブレイ・カーチス指数及びジャッカードバイナリー指数を用いて実施した。距離行列の分散分析は、R Veganパッケージによる統計的有意性を明らかにするために、999の順列によるAdonisの「ノンパラメトリックMANOVA検定」を用いて実施した。
【0106】
統計分析
微生物学的データをCFU/mlとして記録し、統計分析の前に対数値に変換した。定量的データを、中央値及び四分位範囲(IQR)として表した。群間の差は、群間の比較を計算するために、クラスカル・ワリス検定及び対応のあるウィルコクソン順位和検定を用いて評価した。ボンフェローニ補正検定を実施した。20の比較的豊富な属間の相関関係を、R "qgraph"パッケージを使用して調査した(Epskamp 2012)。統計分析及びプロットは、ggplot2ライブラリを用いてR環境で実施した(Wickham, 2016)。p値が0.05未満の差を統計的に有意と見なした。変数の寄与は(パーセンテージ形式で):(cos2変数×100)/(コンポーネントの総cos2)である。Cos2=表現の品質又はPCA表現の変数のウエイト。
【0107】
結果
参加者の人口統計的データ及び臨床的特徴
本研究に参加した58人の女性の特徴を表1に示す。対照群の女性の平均年齢(CI 95%)は34.6歳(33.4歳~35.8歳)であったのに対し、反復性流産の女性(RM)及び原因不明の不妊症の女性(INF)の平均年齢は、39.4(38.5~40.4)歳及び38.0(37.1~38.9)歳であった(表1)。対照群の女性は他の参加者よりも約4歳~5歳若かった(p<0.001;一方向ANOVA)が、体重及び身長の平均値において3群の女性間で差はなかった(表1)。
【0108】
【表1】
表1. 3群:対照群(合併症のない満期妊娠後に少なくとも2人の子供を持つ女性)、RM群(再発性流産の既往歴のある女性)、及びINF群(不妊症の既往歴のある女性)に分けられた参加者(n=58)の特徴
SD:標準偏差;CI:信頼区間。
#一方向ANOVA検定を使用して、群間の平均年齢、平均体重、平均身長、及び平均月経周期期間の差を評価した。
*2×3分割表に対するフィッシャー正確確率検定のフリーマン・ハルトン拡張。
【0109】
対照群の女性の約71%が規則的な月経周期を有したのに対して、他の2群(RM及びINF)ではこのパーセンテージは48%であったが、この差は統計的に有意ではなかった(p=0.337;2×3分割表に対するフィッシャー正確確率検定のフリーマン・ハルトン拡張)。対照群、RM群、及びINF群の女性の平均月経周期期間は、それぞれ28日、27.4日、及び27.5日であり、差は認められなかった(表1)。
【0110】
ベースラインの膣の健康状態パラメータ
対照群の女性の平均膣pH(CI 95%)は4.53(4.38~4.68)であった(表2)。それに対し、研究対象の2群における膣pHはより高く、RM群では5.67(5.55~5.79)、INF群では5.96(5.84~6.07)であった(p=0.000;一方向ANOVA)。対照群と比較して、RM群及びINF群の女性においてより高い有意性の平均ニュージェントスコア(CI 95%)、5.95(5.54~6.37)及び6.30(5.91~6.70)がそれぞれ記録された(p=0.000;一方向ANOVA)(表2)。CVLにおけるサイトカインTGFβ1、TFGβ2、及びVEGFのレベルにも差が認められた。対照群の女性におけるこれらの3つのサイトカインのCVL含有量は、TGFβ1、TFGβ2、及びVEGFについてそれぞれ4.83 pg/ml(4.65 pg/ml~5.01 pg/ml)、3.22 pg/ml(4.65 pg/ml~5.01 pg/ml)、及び406.0 pg/ml(322.0 pg/mL~490.0 pg/mL)であったのに対して、研究対象の両群(RM及びINF)においては約半分に減少した(表2)。
【0111】
【表2】
表2. 対照群(合併症のない満期妊娠後に少なくとも2人の子供を持つ女性)、RM群(再発性流産の既往歴のある女性)、及びINF群(不妊症の既往歴のある女性)による参加者(n=58)のベースラインの膣パラメータ(pH、ニュージェントスコア、サイトカイン、及び微生物学)の比較
SD:標準偏差;CI:信頼区間、TGFβ1、トランスフォーミング増殖因子β1;TGFβ2、トランスフォーミング増殖因子β2;VEGF、血管内皮増殖因子。
#一方向ANOVA検定を使用して、群間の平均値の差を評価した。同じ行に太字で示されている異なる文字は、群間の統計的有意差を示している。
*2×3分割表に対するフィッシャー正確確率検定のフリーマン・ハルトン拡張。
**試料から乳酸菌が分離できた女性における平均値。
【0112】
対照群の全ての女性(n=14)のCVLにおいて乳酸菌が検出され、培養依存評価を使用した乳酸菌数の平均値(CI 95%)は7.24 log cfu/ml(6.89 log
10 cfu/ml~7.60 log
10 cfu/ml)であった。CVLの乳酸菌検出頻度は、RM群及びINF群においてそれぞれ57%及び26%とより低かった(p<0.001、2×3分割表に対するフィッシャー正確確率検定のフリーマン・ハルトン拡張)。さらに、乳酸菌陽性女性のCVL試料における乳酸菌濃度も、RM群及びINF群においてそれぞれ2.20 log
10及び1.46 log
10単位低かった。これらの群間の別の違いは、乳酸菌プロファイルに関するものであった(
図1)。対照群の女性のCVL試料において、L.クリスタパス(優占種)、L.イエンセン、L.ガセリ、L.ファーメンタム、L.サリバリウス、及びL.バジナリスを含む最大6種の異なる乳酸菌種が同定された。研究対象、すなわち、RM及びINFの群における乳酸菌特異的プロファイルは対照群よりも狭く、RM群及びINF群のいずれの試料においてもL.ファーメンタム、L.サリバリウス、及びL.バジナリスは認められなかった。興味深いことに、L.イナースは対照群のいずれのCVL試料からも分離されなかったが、RM群及びINF群の試料の約3分の1(合計18の乳酸菌陽性試料のうち5つ)から分離された。膣の拭き取り検体におけるL.サリバリウスのレベルはまた、種特異的qPCRを用いて決定された。この技術を使用することによって、この細菌種は、対照群の1人の女性からの試料においてのみ検出された(7.29 log
10 コピー/拭き取り検体)。この女性は、培養技術を使用してL.サリバリウス陽性(7.3 log
10 cfu/拭き取り検体の濃度)と確認された唯一の女性であった。この群の女性から単離されたL.サリバリウス株は、L.サリバリウスCECT 5713とは遺伝的に異なっていた(結果は示されていない)。
【0113】
CVL試料(n=58)の16S rRNA遺伝子の配列解析により、試料当たり33160~139044の範囲(中央値[IQR]=73383[66587~82821])の、4363364の高品質なフィルタリングされた配列が得られた。配列は合計で23門、453属に割り当てられた。シャノン指数又はシンプソン指数のいずれかを用いて計算されたアルファ多様性分析では、対照群の妊娠可能な女性と、原因不明の不妊症の女性との膣内微生物叢間の有意差が明らかになった(p<0.001)(
図2)。OTUの相対存在量(ブレイ・カーチス距離)及びOTUの存在/非存在(ジャッカードバイナリー距離行列)に従って計算されたベータ多様性分析は、3つの群の膣内細菌がクラスター化されていることを示した(それぞれp=0.004及びp=0.002)(
図3)。さらに、妊娠可能な対照群からの試料は、RM群及びINF群からの試料よりもOTUの相対存在量(ブレイ・カーチス距離)に従ってより密接にクラスター化され(重心までの距離が短い)、これは、対照群のCVL試料における細菌プロファイルが非常に均一であることを示している(
図3)。
【0114】
PCA分析は、膣試料の細菌学的プロファイルにおける潜在的優占パターンの初期評価のために実施された(
図4)。最初の2つのPCA次元は試料に存在する全変動の84.9%を説明し、第1の次元(主成分)は全分散の74.7%を示し、第2の次元は10.2%を示す。一般に、この分析では、妊娠可能な対照群と反復性流産の既往歴のある女性とからの試料間の類似度が、妊娠可能な対照群と原因不明の不妊症の女性との間よりも高いことが明らかになった。
【0115】
3群のCVL試料における門レベルでのOTUの相対存在量(全体の%)の比較では、4つの主な門:ファーミキューテス門、放線菌門、プロテオバクテリア門、及びバクテロイデス門に関して統計的有意差が明らかになった(表3)。ファーミキューテス門は、最も豊富で一般的な(全ての試料に存在する)門であった。妊娠可能な対照群より提供された試料におけるファーミキューテス門の相対存在量[中央値(IQR)=95.01%(99.18%~99.8%)]は、RM群及びINF群の女性からの試料[それぞれ中央値(IQR)=97.29%(72.34%~99.35%)及び89.96%(52.46%~98.85%)]よりも高かった(p<0.050及びp<0.001;ウィルコクソン検定)(表3)。それに対し、放線菌門、プロテオバクテリア門、及びバクテロイデス門の相対存在量の中央値(IQR)は、RM群及びINF群の女性において、妊娠可能な対照群よりも高かった(それぞれp<0.012、p<0.003、及びp<0.006;クラスカル・ワリス順位検定)(表3)。
【0116】
【表3】
表3. 対照群(合併症のない満期妊娠後に少なくとも2人の子供を持つ女性)、RM群(再発性流産の既往歴のある女性)、及びINF群(不妊症の既往歴のある女性)の女性からの膣試料において検出された門(灰色で強調表示)及び最も豊富な細菌属の相対頻度、中央値、及び四分位範囲(IQR)。
an(%):門/属が検出された試料の数(相対検出頻度)。
bボンフェローニ補正を用いたクラスカル・ワリス順位検定。
【0117】
属レベルでは、全ての試料において検出された唯一の細菌属はラクトバチルスであったが、3群からの試料においてその相対存在量に有意差があった(表3)。RM群及びINF群の女性からの試料におけるラクトバチルスの相対存在量の中央値(IQR)[それぞれ93.49%(67.18%~97.53%)及び71.95%(0.76%~94.09%)]は、妊娠可能な対照女性からの試料[97.88%(96.92%~99.31%)]よりも低かった(p=0.001;クラスカル・ワリス順位検定)(表3)。他の属は、96%(INF群のスタフィロコッカス)~7%(対照群のエシェリキア/シゲラ)の範囲で変動する数の試料に存在したが、これらの属のいずれかの相対存在量の中央値は1%未満であった。属レベルでは、RM群及びINF群の女性からのいくつかの個々の試料における細菌プロファイルは、妊娠可能な対照群の女性からの試料における細菌プロファイルと差がなく、非常に均一であった。しかしながら、RM群及びINF群の女性からのいくつかの試料において、ラクトバチルスの含有量が減少した、又は更には完全に欠如した異常なプロファイルが記録された(データは示されていない)。
【0118】
一般に、研究開始時のRM群及びINF群の比較では、両群間の統計的有意差が明らかになった(
図6)。膣pHは、INF群の女性の方がRM群の女性よりも高かったが、TGFβ1及びVEGFではその逆が認められた。年齢、体重、身長、ニュージェントスコア、TGFβ2、及び生乳酸菌数等の他の特徴に関しては、差は認められなかった(
図5)。
【0119】
臨床研究の主要パラメータ:妊娠及び満期妊娠有効性(生殖/妊娠結果)
一般に、RM群及びINF群の女性に本株のプロバイオティクスを投与したところ、44人の女性参加者のうち29件の妊娠をもたらした。これは、51%~78%のCI 95%での66%の妊娠有効性を意味する(p=0.017)(表4)。これらの妊娠のうち、44人の女性参加者のうち25件が成功し、4件が流産に終わった。これは、42%~70%のCI 95%での56%の生殖成功有効性を意味する(p=0.183)(表4)。興味深いことに、全ての成功した妊娠は満期単胎妊娠(妊娠期間38週以上)をもたらした。妊娠期間、出生時の体重及び身長の値、並びに新生児の性別を表1に示す。
【0120】
【表4】
表4. プロバイオティクス治療後の主な結果
#ピアソンカイ二乗比。
*各群において2人の女性が流産した。
【0121】
RM群の女性は、研究期間中に21人の参加者のうち17件の妊娠(15件の満期妊娠及び2件の流産)があったため、最も高い生殖成功率を有した。INF群の割合は低かったが、それでも注目に値した:23人の参加者のうち12件の妊娠(10件の満期妊娠及び2件の流産)。RMとINFとの女性間の妊娠有効性及び妊娠成功率(CI 95%)の比較[それぞれ1.55(0.70~3.56)及び1.64(0.69~4.09)]では、両群間に統計的有意差がないことが明らかになった(表4)。しかしながら、これらの群の全ての女性が、自然流産を予防するため(RM群)か、又は妊娠するため(INF群)の以前の試みにおいてART介入を受けて失敗していたことを指摘する必要がある。
【0122】
プロバイオティクス治療に関連する二次反応パラメータ:RM群の女性における膣パラメータの変化
RM群の妊娠に成功した女性(n=15)及び成功しなかった女性(n=6)の間で、年齢、体重、又は身長に差はなかった。
【0123】
しかしながら、この女性の群(RM群)において、最終的な妊娠結果に応じて、プロバイオティクス治療後に特異な変化が観察された(表5)。妊娠成功を達成することができた女性において、達成できなかった女性と比較して、妊娠した場合の膣pHの平均値(SD)は1.13(0.38)単位低かった。同様の変化がニュージェントスコアについても観察され、妊娠成功と妊娠失敗との間に3.33(1.11)単位の差を記録した(p=0.000、一方向反復測定ANOVA)(表5、
図6)。
【0124】
【表5】
表5. 再発性自然流産の既往歴を有する女性を含むRM群(n=21)において、L.サリバリウスCECT 5713による介入後に満期妊娠を達成することができた女性(n=15)及び達成できなかった女性(n=6)の間の特徴の差及び膣パラメータの変化の比較
#乳酸菌の存在を除いて、一方向ANOVA検定を使用して、群間の平均値の差を評価した。
*2×2分割表に対するフィッシャーの正確確率検定。†一方向ANOVA検定を使用して、参加者の各群に変化があるかどうかを判断した。
【0125】
膣のサイトカインの濃度の変化も、プロバイオティクス治療後の両群で異なっていた。妊娠しなかった女性においてTGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度に変化はなかったが、妊娠した女性においてそれぞれ1.40 (0.62) pg/mL、1.25 (0.34) pg/mL、及び402 (252) pg/mLの有意な平均増加(SD)があった(表5、
図7)。さらに、治療開始前であっても、妊娠した人及び妊娠しなかった人の間で、既にこれらのサイトカインの濃度に差があったことを考慮に入れなければならない(表5、
図7)。
【0126】
さらに、プロバイオティクス治療は、最終的に妊娠した女性において3.52 (2.99) log
10 cfu/mlの乳酸菌数の平均増加(SD)をもたらしたが、妊娠しなかった女性において増加しなかった(表5、
図6)。qPCRによって、妊娠した全ての女性においてL.サリバリウスの存在[平均(SD)=6.85 (0.61) コピー/拭き取り検体]が確認されたが、妊娠に失敗した女性においては50%のみで、その上、低濃度[平均(SD)=2.63 (1.17) コピー/拭き取り検体]で確認された(表5)。プロバイオティクス治療の開始時及び6ヶ月後、又は妊娠の診断までに得られたCVL試料における乳酸菌プロファイルを
図8に示す。最も顕著な違いは、プロバイオティクス治療後のほとんどの女性(17/21)における生存可能なL.サリバリウスの存在に関するものであった。さらに、研究開始時に3人の女性において存在したL.イナースは、治療終了時に、特に妊娠に終結しなかった2人の女性のみから分離された。
【0127】
RM群の女性からのCVL試料の属レベルでのメタ分類学的プロファイルにおいて、妊娠結果に関する差はなかった(表6)。
【0128】
【表6】
表6. プロバイオティクス治療後に妊娠した、又は妊娠しなかったRM群の女性(再発性流産の既往歴のある女性)からの膣試料において検出された門(灰色で強調表示)及び最も豊富な細菌属の相対頻度、中央値、及び四分位範囲(IQR)
an(%):門/属が検出された試料の数(相対検出頻度)。
bボンフェローニ補正を用いたクラスカル・ワリス順位検定。
【0129】
プロバイオティクス治療に関連する二次反応パラメータ:INF群の女性における膣パラメータの変化
【0130】
INF群でプロバイオティクス治療後に妊娠した女性及び妊娠しなかった女性の年齢、体重、及び身長に差はなかった(結果は示されていない)。
CVLのpH及びニュージェントスコアは、プロバイオティクス治療後にINF群の全ての女性において有意に低下した(p<0.05;一方向反復測定ANOVA;
図9)が、変化の大きさは妊娠しなかった女性の方が妊娠した女性と比較して小さかった(表7、
図10)。具体的には、妊娠した女性におけるCVLのpH及びニュージェントスコアの平均低下(SD)は、それぞれ1.32(0.31)及び3.90(0.74)であり、妊娠しなかった女性において、これらの低下は、それぞれ0.19(0.18)及び0.54(0.78)にすぎなかった。(表7、
図9)。
【0131】
【表7】
表7. 原因不明の不妊症の既往歴のある女性を含むINF群(n=23)において、L.サリバリウスCECT 5713による介入後に満期妊娠を達成することができた女性(n=10)及び達成できなかった女性(n=13)の間の特徴の差及び膣パラメータの変化の比較
#一方向ANOVA検定を使用して、群間の平均値の差を評価した。
*2×2分割表に対するフィッシャーの正確確率検定。
**一方向ANOVA;クラスカル・ワリス、p=0.007。
【0132】
プロバイオティクス治療後の膣のサイトカインの濃度の変化は、RM群で記載されている変化と同様であった:妊娠しなかった女性においてTGFβ1、TGFβ2、及びVEGFの膣内濃度に変化はなかったが、妊娠した女性においてそれぞれ2.29 (0.34) pg/mL、1.25 (0.24) pg/mL、及び462 (252) pg/mLの有意な平均増加(SD)があった(表7、
図9)。この群の女性において、治療開始前であっても、TGFβ2及びVEGFの濃度は、妊娠した女性及び妊娠しなかった女性の間で既に異なっていたが、TGFβ1の濃度は異なっていなかった(表7、
図9)。
【0133】
プロバイオティクス治療の結果、乳酸菌が検出されたCVL試料の数が多くなり(最終的に妊娠した全ての女性において)、平均細菌数(SD)[6.46 (0.51) log
10 cfu/ml]は、妊娠しなかった女性(乳酸菌は46%のみで検出され、平均細菌数(SD)は4.95 (1.66) log
10 cfu/mlであった)よりも多くなった(表7、
図9及び
図10)。同様に、qPCRによって、妊娠した全ての女性においてL.サリバリウスの存在[平均(SD)=6.85 (0.61) コピー/拭き取り検体]が確認されたが、妊娠に失敗した女性においては25%のみで、その上、低濃度[平均(SD)=3.55 (0.39) コピー/拭き取り検体]で確認された(表7)。
図11におけるプロバイオティクス治療の開始時及び6ヶ月後、又は妊娠の診断までに得られたCVL試料における乳酸菌プロファイルは、生存可能なL.サリバリウスが、プロバイオティクス治療後に妊娠した全ての女性において検出されたが、妊娠しなかった女性では13人のうち4人においてのみ検出されたことを示す。
【0134】
RM群の女性からのCVL試料の属レベルでのメタ分類学的プロファイルにおいて、妊娠結果に関する差はなかった(結果は示されていない)。
【0135】
RM群及びINF群の両方における全ての妊娠した女性及び妊娠しなかった女性の間の膣パラメータの比較
CVL試料における平均pH値は、妊娠した女性[5.69(0.48)単位]の方が妊娠しなかった女性[5.99(0.33)単位]よりもやや酸性であった(p=0.024;一方向ANOVA)(表7)。最終的な妊娠結果によれば、研究開始時の膣サイトカイン濃度にも差があったが、この差はRM群及びINF群について既に独立して記載されているものと同様であった(表8;
図12及び
図13)。両群間で最初に差がなかったパラメータは、ニュージェントスコア、検出頻度、及び乳酸菌数のみであった(表8)。全体的に、妊娠した全ての女性においてラクトバチルスが検出されたが、妊娠しなかった女性では半数のみであった(p<0.001;カイ二乗検定)。さらに、妊娠した女性の群において、プロバイオティクス治療後に乳酸菌数が1.6 log単位増加したが、妊娠しなかった女性の群において変化はなかった(
図14)。この差は、CVL試料におけるL.サリバリウスの検出に関しても有意であった。この種はまた、妊娠成功を達成した全ての女性において、達成しなかった女性と比較して高濃度[平均(SD)=6.70 (0.56) コピー/拭き取り検体]で検出された(
図14)。
【0136】
【表8】
表8. RM群及びINF群の全ての女性(n=44)を含む、L.サリバリウスCECT 5713による介入後に満期妊娠を達成することができた女性(n=25)及び達成できなかった女性(n=19)の間の特徴の差及び膣パラメータの変化の比較
#一方向ANOVA検定を使用して、群間の平均値の差を評価した。
*2×2分割表に対するカイ二乗(ピアソン)検定。
**2×2分割表に対するフィッシャーの正確確率検定。
**陽性試料の平均値の差。
【0137】
対照女性、RM群及びINF群における全ての妊娠した女性及び妊娠しなかった女性の間の膣パラメータの比較
膣パラメータ(pH、ニュージェントスコア、TGFβ1、TGFβ2、VEGF、乳酸菌数)の分析では、上記パラメータの全てについて、3群(対照群、RM群及びINF群で満期妊娠の達成を経験した女性、並びにRM群及びINF群で妊娠しなかったか又は流産した女性)の間の統計的有意差が明らかになった(表9;
図15)。
【0138】
【表9】
表9. 対照群の参加者(n=14)と、プロバイオティクス治療後にRM群及びINF群(両方)で妊娠を達成した参加者(n=25)又は達成しなかった参加者(n=19)との間の膣パラメータ(pH、ニュージェントスコア、サイトカイン、及び乳酸菌数)の比較
SD:標準偏差;CI:信頼区間、TGFβ1、トランスフォーミング増殖因子β1;TGFβ2、トランスフォーミング増殖因子β2;VEGF、血管内皮増殖因子。
#一方向ANOVA検定を使用して、群間の平均値の差を評価した。同じ行に太字で示されている異なる文字は、群間の統計的有意差を示している。
*2×3分割表に対するフィッシャー正確確率検定のフリーマン・ハルトン拡張。
**試料から乳酸菌が分離できた女性における平均値。
【0139】
L.サリバリウスCECT 5713の膣及び子宮頸部の病原体に対する抗菌活性
L.サリバリウスCECT 5713は、本研究で使用された全ての指標生物に対して、好気条件下及び嫌気条件下の両方で抗菌阻害活性(ラインの周囲2 mmを超える阻害ゾーン)を示した。抗菌活性の原因となる化合物(複数の場合もある)を説明するために、この非細菌性株を、過酸化水素、乳酸塩、及び/又は酢酸塩の産生について選択した。定量アッセイは、この株によって生成された過酸化水素の平均量(±SD)が好気条件下で0.729 μg/ml(±0.122)であったことを示した。この化合物は、嫌気条件下でアッセイを実施した場合には生成されなかった。株のMRS培養(初期pH=6.2)から得られた上清中のL-乳酸の平均濃度(±SD)は、好気及び嫌気条件下でそれぞれ11.07±0.42 mg/ml及び11.69±0.58 mg/mlであったのに対して、上清における平均pH値は、好気条件及び嫌気条件下でそれぞれ3.91及び3.86であった。培養上清中にD-乳酸は検出されなかった。同じ上清中の酢酸の平均濃度(±SD)は、好気及び嫌気条件下でそれぞれ0.70 mg/ml(±0.11)及び0.46 mg/ml(±0.14)であった。
【0140】
【表10】
表10. 様々な子宮膣部病原体に対するL.サリバリウスCECT 5713の抗菌活性及び凝集
a共凝集は、目に見える細菌のクラスターと定義され、Younes et al., (2012)の基準に従って、(++):大きく高密度のクラスター;(+):小さくまばらなクラスター;(-):目に見えるクラスターなしに分類される。完全な参照文献:Younes, J. A., van der Mei, H. C., van den Heuvel, E., Busscher, H. J., and Reid. G. (2012). Adhesion forces and co-aggregation between vaginal staphylococci and lactobacilli. PLoS One, 7, e36917. doi: 10.1371/journal.pone.0036917
【0141】
L.サリバリウスCECT 5713の膣病原体との共凝集及び膣細胞への接着性
本株は、選択された全ての膣及び子宮頸部の病原体と、大きく明確な共凝集体を形成することができた。共凝集は、G.バジナリス、S.アガラクチア、及びC.アルビカンスの株で特に強かった。本研究において、試験した株は膣上皮細胞に強く接着し、20のランダムな顕微鏡視野において平均329±46の接着乳酸菌があった。膣細胞への高い接着性を有する対照株であるL.サリバリウスCECT 9145の平均値(±SD)は、336±52の接着乳酸菌であった。
【0142】
L.サリバリウスCECT 5713のA-アミラーゼ活性
L.サリバリウスCECT 5713による細胞外アミラーゼ生産は、ヨウ素溶液で処理したときのコロニー周囲のクリアランスゾーン(約2.0 mm)によって観察された。その後、α-アミラーゼ活性を測定したところ、この株は16時間後に高いα-アミラーゼ活性レベル(0.83 U/ml)を示し(L.サリバリウスCECT 5713の濃度:約8.6 log10 cfu/ml)、上清中でも同様のレベルで48時間(アッセイ終了時)検出することができた。
【符号の説明】
【0143】
図面訳
図1
L. crispatus L.クリスパタス
L. jensenii L.イエンセン
L. gasseri L.ガセリ
L. fermentum L.ファーメンタム
L. salivarius L.サリバリウス
L. vaginalis L.バジナリス
L. iners L.イナース
Number of positive samples 陽性試料の数
Group 群
図2A
Shannon_Index シャノン指数
Control 対照
図2B
Simpson_Index シンプソン指数
Control 対照
図3A
Dimension 2 第2の次元
Dimension 1 第1の次元
method = "bray" 方法=「ブレイ」
Control 対照
Distance to centroid 重心までの距離
図3B
Dimension 2 第2の次元
Dimension 1 第1の次元
method = "binary jaccard" 方法=「バイナリージャッカード」
Control 対照
Distance to centroid 重心までの距離
図4
Dim2 第2の次元
Dim1 第1の次元
Groups 群
Control 対照
図5A
Age (years) 年齢(歳)
Weight (kg) 体重(kg)
Height (cm) 身長(cm)
図5B
Nugent score ニュージェントスコア
図5C
Lactobacilli 乳酸菌
図6A
Change in pH pHの変化
Yes した
No していない
PREG 妊娠
Change in Nugent score ニュージェントスコアの変化
図6B
Change in TGFβ1 TGFβ1の変化
Yes した
No していない
PREG 妊娠
Change in TGFβ2 TGFβ2の変化
Change in VEGF VEGFの変化
図6C
Change in lactobacillus count 乳酸菌数の変化
Yes した
No していない
PREG 妊娠
図7A
Nugent score ニュージェントスコア
Time 時期
Pregnancy 妊娠
図7B
Time 時期
Pregnancy 妊娠
図8
RM Group RM群
INITIAL 開始
FINAL 最終
WOMEN 女性
L. iners L.イナース
L. crispatus L.クリスパタス
L. gasseri L.ガセリ
L. jensenii L.イエンセン
L. salivarius L.サリバリウス
PREGNANCY 妊娠
図9A
Nugent score ニュージェントスコア
Time 時期
Pregnancy 妊娠
図9B
Time 時期
Pregnancy 妊娠
図10A
Change in pH pHの変化
Yes した
No していない
Pregnancy 妊娠
Change in Nugent score ニュージェントスコアの変化
図10B
Change in TGFβ1 TGFβ1の変化
Yes した
No していない
Pregnancy 妊娠
Change in TGFβ2 TGFβ2の変化
Change in VEGF VEGFの変化
図10C
Change in lactobacillus count 乳酸菌数の変化
Yes した
No していない
Pregnancy 妊娠
図11
INF Group INF群
INITIAL 開始
FINAL 最終
WOMEN 女性
L. iners L.イナース
crispatus クリスパタス
L. gasseri L.ガセリ
L. jensenii L.イエンセン
salivarius サリバリウス
PREGNANCY 妊娠
図12A
Changes in pH pHの変化
Yes した
No していない
Pregnancy 妊娠
Changes in Nugent score ニュージェントスコアの変化
図12B
Changes in TGFβ1 TGFβ1の変化
Yes した
No していない
Pregnancy 妊娠
Changes in TGFβ2 TGFβ2の変化
Changes in VEGF VEGFの変化
図12C
Changes in lactobacillus count 乳酸菌数の変化
Yes した
No していない
Pregnancy 妊娠
図13A
Nugent score ニュージェントスコア
Time 時期
Pregnancy 妊娠
図13B
Time 時期
Pregnancy 妊娠
図14A
Lactobacillus counts 乳酸菌数
INITIAL 開始
FINAL 最終
No していない
Yes した
Pregnancy 妊娠
図14B
L. salivarius L.サリバリウス
log
10 copies of 16S rDNA/sample log
10 16S rDNAのコピー/試料
No していない
Yes した
Pregnancy 妊娠
図15A
Nugent score ニュージェントスコア
図15C
Lactobacillus count 乳酸菌数
(log
10 cfu/sample) (log
10 cfu/試料)
【受託番号】
【0144】
【配列表】
【国際調査報告】