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特表2023-528963放射線療法システム及びその治療計画の生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】放射線療法システム及びその治療計画の生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575934
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2021097627
(87)【国際公開番号】W WO2021249241
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010528551.0
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼江
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲韋▼霖
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC07
4C082AE01
4C082AN02
4C082AN04
(57)【要約】
放射線療法システム及びその治療計画の生成方法であり、放射線療法システムは、ビーム照射装置、治療計画モジュール、及び制御モジュールを含む。ビーム照射装置は、治療用ビームを生成し、被照射体に照射して被照射部位を形成し、治療計画モジュールは、治療用ビームのパラメータと被照射部位の医用画像データに基づいて、治療計画を生成し、制御モジュールは、被照射体に対応する治療計画を治療計画モジュールから呼び出し、治療計画の生成方法により決定された少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間に応じて被照射体を順に照射するようにビーム照射装置を制御する。本発明に係る放射線療法システム及びその治療計画の生成方法は、正常な組織の最大線量を低減し病変組織の最小線量を向上させるように、被照射部位の浅部の放射線量を分散し病変組織の深部の放射線量を増加させ、同時に、病変組織内の線量の均一な分布を保証することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ビームを生成し、被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記ビーム照射装置が生成した前記治療用ビームのパラメータと前記被照射部位の医用画像データに基づいて、前記治療用ビームの照射点から前記被照射部位の病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義される少なくとも2つの照射角度、及び各照射角度に対応する照射時間を決定する治療計画を生成する治療計画モジュールと、
前記被照射体に対応する前記治療計画を前記治療計画モジュールから呼び出し、前記治療計画により決定された少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間に応じて前記被照射体を順に照射するように前記ビーム照射装置を制御する制御モジュールとを含むことを特徴とする、放射線療法システム。
【請求項2】
前記治療計画モジュールは、モンテカルロシミュレーションプログラムにより、前記被照射部位が前記治療用ビームに照射される場合の放射線量分布をシミュレーションし、数学的なアルゴリズムと組み合わせて前記治療計画を生成することを特徴とする、請求項1に記載の放射線療法システム。
【請求項3】
前記治療計画モジュールは、シミュレーションした放射線量分布に基づいて、関心領域の目的関数を設定し、目的関数を最適化求解し、前記少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算することを特徴とする、請求項2に記載の放射線療法システム。
【請求項4】
前記治療計画モジュールは、前記被照射部位の医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定し、前記治療用ビームのパラメータと前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを前記モンテカルロシミュレーションプログラムに入力して、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算することを特徴とする、請求項3に記載の放射線療法システム。
【請求項5】
前記放射線療法システムは、ホウ素中性子捕捉療法システムであり、前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、組織種類、組織密度、組織ホウ素濃度の情報を有することを特徴とする、請求項4に記載の放射線療法システム。
【請求項6】
前記治療計画モジュールは、異なる照射角度をサンプリングする場合、又はサンプリングして計算した後、前記サンプリングされたビーム角を選別することを特徴とする、請求項4に記載の放射線療法システム。
【請求項7】
前記目的関数は、式1を用いて、
【数1】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数2】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算することができ、
【数3】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数4】
は、式3を用いて計算することができ、
【数5】
式中、
【数6】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数であることを特徴とする、請求項4に記載の放射線療法システム。
【請求項8】
前記治療計画モジュールは、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を最適化求解し、
【数7】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数8】
設計変数Xの最適解に基づいて、前記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定することを特徴とする、請求項7に記載の放射線療法システム。
【請求項9】
前記治療計画モジュールは、前記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定し、前記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことであることを特徴とする、請求項8に記載の放射線療法システム。
【数9】
【請求項10】
前記治療計画モジュールは、線量検査により、前記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別することを特徴とする、請求項3に記載の放射線療法システム。
【請求項11】
医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップと、
モンテカルロシミュレーションプログラムにおいてビームのパラメータを定義し、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算するステップと、
関心領域の目的関数を設定し、前記目的関数を最適化求解し、少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算するステップであって、前記照射角度は、ビームの照射点から前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルの病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義されるステップとを含むことを特徴とする、治療計画の生成方法。
【請求項12】
前記目的関数は、式1を用いて、
【数10】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数11】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算することができ、
【数12】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数13】
は、式3を用いて計算することができ、
【数14】
式中、
【数15】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数であることを特徴とする、請求項11に記載の治療計画の生成方法。
【請求項13】
最適化アルゴリズムを用いて式4により前記目的関数を最適化求解し、
【数16】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数17】
設計変数Xの最適解に基づいて、前記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定することを特徴とする、請求項12に記載の治療計画の生成方法。
【請求項14】
前記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定するステップをさらに含み、前記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことであることを特徴とする、請求項13に記載の治療計画の生成方法。
【数18】
【請求項15】
線量検査により、前記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する線量検査のステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の治療計画の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、放射線療法システムに関し、本発明の別の態様は、治療計画の生成方法に関し、特に放射線療法システムの治療計画の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、例えば、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、既にがん治療の主な手段の1つとなった。しかし、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で、腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与える。また、腫瘍細胞の放射線に対する感受性の度合いが異なるため、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果がよくない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を軽減するすために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の概念が放射線療法に用いられている。また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている(例えば、陽子線療法、重粒子療法、中性子捕捉療法など)。このうち、中性子捕捉療法は、上記の2つの構想を結びつけたものである。例えば、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度なビームの制御と合わせることで、従来の放射線と比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きい捕捉断面積を持つ特性を利用し、10B(n,α)Li中性子捕捉と核分裂反応により、HeとLiという2種の重荷電粒子を生成する。2種の粒子の合計射程が細胞のサイズに近いので、生体への放射線損傷を細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物を腫瘍細胞に選択的に集めると、適切な中性子放射源と合わせることで、正常組織に大きな損傷を与えないで腫瘍細胞を部分的に殺せる目的を達成することができる。
【0005】
放射線療法は、正常な組織、器官の放射線照射の許容耐量又は回復可能なわずかな副作用で、高エネルギー放射線を用いて腫瘍細胞を破壊し、その成長と分裂を防止することにより、腫瘍を制御するか又は治癒することを達成するものである。したがって、腫瘍が受けた線量は、正常な組織、器官の許容放射線量に制限される。同時に、ホウ素中性子捕捉療法は、効果が腫瘍内のホウ素含有薬物の分布と累積及び中性子の集積量に依存する。ホウ素含有薬物の分布と累積は、腫瘍特性及び患者の代謝吸収能力の影響を受け、現在、陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography、PET)により、ホウ素中性子捕捉療法に適する患者を走査して選別する。中性子束が患者体内を通過する深さの増加に伴って減少し、また薬物中のホウ素元素と作用して抑制されるため、中性子の入射方向奥にある腫瘍内の中性子の集積量が少なくなってしまう。
【0006】
3次元モデルは、科学実験分析、科学実験シミュレーションの分野に広く適用される。例えば、核放射線及び保護の分野で、特定の放射線条件下での人体の吸収線量をシミュレーションして医師が治療計画を策定することを助けるために、常に、コンピュータ技術を用いて医用画像データに対して様々な処理を行って、モンテカルロソフトウェアに必要な正確な格子モデルを設定し、モンテカルロソフトウェアと組み合わせてシミュレーション計算を行う必要がある。現在の中性子捕捉療法計画システムでは、照射角度に対する評価により中性子ビームの最適な照射角度を選択する。腫瘍深部の中性子の集積量が少ないため、放射線量を増加させる必要がある一方では、正常な組織、器官の許容放射線量の制限を受けるため、放射線量を制御する必要があり、治療効果が大幅に低下してしまう。
【0007】
したがって、放射線療法システム及びその治療計画の生成方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
従来技術の欠陥を解消するために、本発明の一態様では、ビーム照射装置、治療計画モジュール、及び制御モジュールを含む放射線療法システムが提供される。ビーム照射装置は、治療用ビームを生成し、被照射体に照射して被照射部位を形成する。治療計画モジュールは、上記ビーム照射装置が生成した上記治療用ビームのパラメータと上記被照射部位の医用画像データに基づいて、上記治療用ビームの照射点から上記被照射部位の病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義される少なくとも2つの照射角度、及び各照射角度に対応する照射時間を決定する治療計画を生成する。制御モジュールは、上記被照射体に対応する上記治療計画を上記治療計画モジュールから呼び出し、上記治療計画により決定された少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間に応じて上記被照射体を順に照射するように上記ビーム照射装置を制御する。病変組織の分布に基づいて、複数の照射角度で放射線療法を行い、被照射部位の浅部の放射線量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減する。同時に、病変組織の線量、特に、病変組織の深部の放射線量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、病変組織の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに病変組織内の線量をより均一にすることができる。
【0009】
さらに、上記治療計画モジュールは、モンテカルロシミュレーションプログラムにより、上記被照射部位が上記治療用ビームに照射される場合の放射線量分布をシミュレーションし、数学的なアルゴリズムと組み合わせて上記治療計画を生成する。またさらに、上記治療計画モジュールは、シミュレーションした放射線量分布に基づいて、関心領域の目的関数を設定し、目的関数を最適化求解し、上記少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算する。
【0010】
好ましくは、上記治療計画モジュールは、上記被照射部位の医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定し、上記治療用ビームのパラメータと上記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを上記モンテカルロシミュレーションプログラムに入力して、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算する。
【0011】
好ましくは、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、組織種類、組織密度の情報を有し、組織種類、元素組成及び密度をより正確に提供し、設定された幾何学的モデルは、医用画像データによって反映された実際の状況とより密接にマッチングする。さらに、上記放射線療法システムは、ホウ素中性子捕捉療法システムであり、上記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、さらに組織ホウ素濃度の情報を有し、各組織内のホウ素含有薬物の濃度を明らかに了解することができ、ホウ素中性子捕捉療法の照射シミュレーションを行う場合、実際の状況をより現実的に反映することができる。
【0012】
好ましくは、異なる照射角度をサンプリングする場合、又はサンプリングして計算した後、上記サンプリングされたビーム角をさらに選別してもよい。
【0013】
さらに、上記目的関数は、式1を用い、
【数1】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数2】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算してもよく、
【数3】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数4】
は、式3を用いて計算することができ、
【数5】
式中、
【数6】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数である。
【0014】
さらに、上記治療計画モジュールは、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を最適化求解し、
【数7】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数8】
設計変数Xの最適解に基づいて、上記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定する。好ましくは、最適化アルゴリズムは、サポートベクターマシン、応答曲面法、又は最小二乗ベクトル回帰である。
【0015】
さらに、上記治療計画モジュールは、上記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定する。またさらに、上記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことである。
【数9】
【0016】
好ましくは、上記式1~式6の中の線量、合計線量、処方線量の単位は、eq-Gyであり、照射時間の単位は、sである。
【0017】
さらに好ましくは、上記治療計画モジュールは、線量検査により、上記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する。
【0018】
本発明の別の態様では、ビーム照射装置、治療計画モジュール、及び制御モジュールを含む放射線療法システムが提供される。ビーム照射装置は、治療用ビームを生成し、被照射体に照射して被照射部位を形成する。治療計画モジュールは、上記ビーム照射装置が生成した上記治療用ビームのパラメータと上記被照射部位の医用画像データに基づいて、上記治療用ビームの照射点から上記被照射部位の病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義される複数の照射角度及び、各上記照射角度に対応する計画照射線量を決定する治療計画を生成する。制御モジュールは、上記被照射体に対応する上記治療計画を上記治療計画モジュールから呼び出し、上記治療計画に応じて上記被照射体に対して照射療法を1回行う過程で、上記複数の照射角度及び各上記照射角度に対応する計画照射線量に応じて順に照射するように上記ビーム照射装置を制御する。病変組織の分布に基づいて、複数の照射角度で放射線療法を行い、被照射部位の浅部の放射線量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減する。同時に、病変組織の線量、特に、病変組織の深部の放射線量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、病変組織の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに病変組織内の線量をより均一にすることができる。
【0019】
本発明のさらなる別の態様では、治療計画の生成方法が提供され、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップと、モンテカルロシミュレーションプログラムにおいてビームのパラメータを定義し、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算するステップと、関心領域の目的関数を設定し、上記目的関数を最適化求解し、少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算するステップであって、上記照射角度は、ビームの照射点から前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルの病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義されるステップとを含む。複数の照射角度で放射線療法を行い、被照射部位の浅部の放射線量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減し、同時に、病変組織の線量、特に、病変組織の深部の放射線量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、病変組織の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに病変組織内の線量をより均一にすることができる。
【0020】
好ましくは、上記目的関数は、式1を用いて、
【数10】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数11】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算してもよく、
【数12】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数13】
は、式3を用いて計算してもよく、
【数14】
式中、
【数15】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数である。
【0021】
さらに、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を最適化求解し、
【数16】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数17】
設計変数Xの最適解に基づいて、上記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定する。またさらに、最適化アルゴリズムは、サポートベクターマシン、応答曲面法、又は最小二乗ベクトル回帰である。
【0022】
さらに、上記治療計画の生成方法は、上記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定するステップをさらに含む。またさらに、上記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことである。
【数18】
【0023】
好ましくは、上記式1~式6の中の線量、合計線量、処方線量の単位は、eq-Gyであり、照射時間の単位は、sである。
【0024】
好ましくは、上記治療計画の生成方法は、線量検査により、上記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する線量検査のステップをさらに含む。
【0025】
好ましくは、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップは、医用画像データを読み取るステップと、3次元医用画像ボクセルモデルを設定するステップと、関心領域の境界を定義するか又は読み取るステップと、各ボクセルユニットの組織種類(元素組成)及び組織密度を定義するステップと、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップとをさらに含む。3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、医用画像データと組織種類、組織密度との間の変換関係に基づいて設定されるものであり、組織種類(元素組成)及び組織密度をより正確に提供し、設定された幾何学的モデルは、医用画像データによって反映された実際の状況とより密接にマッチングする。さらに、上記治療計画の生成方法は、ホウ素中性子捕捉療法に適用され、医用画像データに基づいて3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップは、各ボクセルユニットの組織ホウ素濃度を定義するステップをさらに含み、各組織内のホウ素含有薬物の濃度を明らかに了解することができ、ホウ素中性子捕捉療法の照射シミュレーションを行う場合、実際の状況をより現実的に反映することができる。
【0026】
好ましくは、異なる照射角度をサンプリングする場合、又はサンプリングして計算した後、上記サンプリングされたビーム角をさらに選別してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る放射線療法システム及びその治療計画の生成方法は、正常な組織の最大線量を低減し病変組織の最小線量を向上させるように、被照射部位の浅部の放射線量を分散し病変組織の深部の放射線量を増加させ、同時に、病変組織内の線量の均一な分布を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ホウ素中性子捕捉反応の概略図である。
図210B(n,α)Li中性子捕捉核反応式である。
図3】本発明の実施例における中性子捕捉療法システムのブロック図である。
図4】本発明の実施例における治療計画モジュールが治療計画を生成する方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施例における3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定する方法のフローチャートである。
図6】本発明の実施例における関心領域の目的関数を設定し、最適化求解により計算する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例をさらに詳細に説明することにより、当業者であれば、明細書の文字を参照して実施することができる。
【0030】
好ましくは、中性子捕捉療法システム及びその治療計画の生成方法を本発明の実施例とする。以下、中性子捕捉療法、特に、ホウ素中性子捕捉療法を簡単に説明する。
【0031】
中性子捕捉療法は効果的ながん治療の手段として、近年ではその適用が増加しており、そのうち、ホウ素中性子捕捉療法が最も一般的なものとなった。ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子は原子炉又は加速器で供給することができる。本発明の実施例は、加速器ホウ素中性子捕捉療法を例とする。加速器ホウ素中性子捕捉療法の基本モジュールは、一般的には、荷電粒子(例えば、陽子、デューテリウム原子核など)の加速に用いられる加速器、ターゲット、熱除去システム及びビーム整形アセンブリを含む。加速後の荷電粒子と金属ターゲットとの作用により中性子が生成され、必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速荷電粒子のエネルギー及び電流の大きさ、金属ターゲットの物理的・化学的特性などにより、適切な原子核反応が選定される。よく検討されている原子核反応は、Li(p,n)Be及びBe(p,n)Bであり、これらの2種類の反応は、いずれも吸熱反応である。これらの2種類の核反応は、エネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVである。ホウ素中性子捕捉療法の理想的な中性子源は、keVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には、エネルギーが閾値よりやや高い陽子による金属リチウムターゲットへの衝撃で、比較的低いエネルギーの中性子が生成され、あまり多くの減速処理を要しないで臨床適用が可能になる。しかしながら、リチウム金属(Li)及びベリリウム金属(Be)の2種類のターゲットは、閾値エネルギーの陽子と作用する断面が大きくないので、十分な中性子束を生成するために、一般的には比較的高いエネルギーを持つ陽子で原子核反応を引き起こされる。
【0032】
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きい捕捉断面積を持つ特性を利用し、10B(n,α)Li中性子捕捉と核分裂反応により、HeとLiという2種類の重荷電粒子を生成する。図1図2は、それぞれホウ素中性子捕捉反応の概略図と10B(n,α)Li中性子捕捉の原子核反応式を示す。2種の荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い射程という特徴を持つ。α粒子の線エネルギー付与と射程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、Li重荷電粒子の場合、それぞれ175keV/μm、5μmである。2種の粒子の合計射程は、細胞のサイズに近いので、生体への放射線損傷を細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物を腫瘍細胞に選択的に集めると、適切な中性子放射源と合わせることで、正常な組織に大きな損傷を与えないで、腫瘍細胞を部分的に殺せる目的を達成することができる。
【0033】
図3を参照し、本実施例における放射線療法システムは、好ましくは中性子捕捉療法システム100であり、中性子ビーム照射装置10、治療計画モジュール20、及び制御モジュール30を含む。中性子ビーム照射装置10は、中性子生成装置11及び治療台12を含む。中性子生成装置12は、治療用中性子ビームを生成し、治療台12上の患者に照射して被照射部位を形成する。中性子捕捉療法において、特定の放射線条件下での生体の吸収線量をシミュレーショントして医師が治療計画を策定することを助けるために、常に、コンピュータ技術を用いて医用画像に対して様々な処理を行って、モンテカルロソフトウェアに必要な正確な格子モデルを設定し、モンテカルロソフトウェアと組み合わせてシミュレーション計算を行う必要がある。治療計画モジュール20は、中性子生成装置11が生成した中性子ビームのパラメータと患者の被照射部位の医用画像データに基づいて、モンテカルロシミュレーションプログラムにより、患者が照射療法を受ける場合の放射線量分布をシミュレーションし、数学的なアルゴリズムと組み合わせて治療計画を生成する。一実施例において、治療計画モジュール20は、シミュレーションした放射線量分布に基づいて、関心領域の目的関数を設定し、目的関数を最適化求解し、少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算する。理解できるように、さらに、他の方法によって少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算してもよい。制御モジュール30は、現在の患者に対応する治療計画を治療計画モジュール20から呼び出し、治療計画に基づいて、中性子ビーム照射装置10の照射を制御し、例えば、中性子ビームを生成し、治療計画により決定された少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間に応じて治療台12上の患者を順に照射するように中性子生成装置11を制御する。理解できるように、各照射角度に対応する照射時間は、各照射角度に対応する計画照射線量であってもよく、シミュレーション計算により変換して取得してもよい。
【0034】
図4を参照し、本実施例に係る治療計画モジュール20が治療計画を生成する方法は、具体的に、ステップS410~S440を含む。
【0035】
S410では、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定し
S420では、モンテカルロシミュレーションプログラム(例えば、Monte Carlo N Particle Transport Code、MCNP)においてビームのパラメータを定義し、異なる照射角度kでのサンプリングをシミュレーションすることにより、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルにおけるボクセルiの単位時間において異なる照射角度kでの線量分布Dkiを計算し、
S430では、関心領域の目的関数を設定し、最適化求解により少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算する。いわゆる関心領域は、眼、肝臓などの重要な器官であってもよく、骨組織、脳組織などの重要な組織であってもよく、腫瘍細胞であってもよく、
S440では、線量検査を行い、目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する。
【0036】
図5を参照し、一実施例において、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップS410は、ステップS510~S550をさらに含む。
【0037】
S510では、医用画像データを読み取り、
S520では、3次元医用画像ボクセルモデルを設定し、
S530では、関心領域の境界を定義するか又は読み取り、
S540では、各ボクセルユニットの組織種類(元素組成)、組織密度を定義し、CT画像データと組織種類、組織密度との間の変換関係に基づいて自動的に定義してもよく、ユーザが手動で定義し、例えば、各関心領域の境界内のボクセルユニットに特定の組織種類及び組織密度を与えてもよく、
S550では、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定する。
【0038】
3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、医用画像データと組織種類、組織密度との間の変換関係に基づいて設定されるものであり、組織種類(元素組成)及び組織密度をより正確に提供し、設定された幾何学的モデルは、医用画像データによって反映された実際の状況とより密接にマッチングする。放射線療法システムがホウ素中性子捕捉療法システムである場合、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップS410は、S540の後に、各ボクセルユニットの組織ホウ素濃度を定義するS560をさらに含んでもよい。理解できるように、S560がS540の前に行われてもよい。組織ホウ素濃度の情報で標識される幾何学的モデルにより、各組織内のホウ素含有薬物の濃度を明らかに了解することができ、次に中性子の照射シミュレーションを行う場合、実際の状況をより現実的に反映する。
【0039】
医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定する詳細な過程について、2017年3月8日に開示され、公開番号がCN106474634A、発明の名称が「医用画像データに基づく幾何学的モデルの設定方法」である特許出願を参照することができ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
モンテカルロ法は、現在で放射照射目標内部の3次元空間核粒子の衝突軌道及びエネルギー分布を正確にシミュレーションできるツールであり、人体モデルとモンテカルロシミュレーションプログラムとの組み合わせは、放射線環境下での人体の吸収線量を正確に計算し評価することができる。ステップS420では、モンテカルロシミュレーションプログラムにおいてビームのパラメータ(例えば、ビームのエネルギー、強度、半径など)を定義し、異なる照射角度でサンプリングすることにより、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルの異なる照射角度での線量分布をシミュレーションし計算し、すなわち、それぞれサンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが定義されたビーム照射で単位時間に受けた放射線量Dkiをシミュレーションし計算する。
【0041】
サンプリングする場合、ビームの開始位置及びビーム角を決定して計算する必要があり、計算における開始位置及び角度の決定は、順方向アルゴリズム又は逆方向アルゴリズムであってもよく、順方向アルゴリズムでは、開始位置を体外位置に決定し、固定角度又は距離間隔により順にサンプリングして計算することができ、またランダムサンプリングの方式で行うこともでき、ビーム角の部分については、照射点から腫瘍重心又は腫瘍の最も深い位置へのベクトル方向として設定することができ、具体的な腫瘍端点位置は、ユーザのニーズに応じて調整することができ、逆方向アルゴリズムでは、開始位置を腫瘍範囲内に決定し、その開始位置は、腫瘍重心、最も深い位置又は腫瘍範囲内のランダムなポイントであってもよく、ビーム角は、ランダムサンプリング又は指定間隔によるサンプリングの方式で決定されてもよい。
【0042】
サンプリングする場合、ビーム角を選別し、例えば、ビーム角を評価し、評価結果に基づいて、後続の計算に用いられるビーム角を選択してもよく、あるいは、サンプリングして計算した後にビーム角をさらに選別し、例えば、放射線量分布の結果又はビーム角の評価結果に基づいて、選別してもよい。ビーム角の評価方法について、本明細書では詳細に説明せず、2017年6月16日に開示され、公開番号がCN106853272A、発明の名称が「ビーム照射角度の評価方法」である特許出願を参照することができ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
図6を参照し、以下、関心領域の目的関数を設定し、最適化求解により少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算するステップS430を詳細に説明し、一実施例において、ステップS430は、さらにステップS610~S630を含む。
【0044】
S610では、ある関心領域N(本実施例において腫瘍細胞である)に対して、該関心領域Nの目的関数を設定する。一実施例において、該関心領域Nにおける全てのボクセルが受けた線量を均一に分布させるために、目的関数は、所望の線量(処方線量)と計算線量との差の二乗であり、理解できるように、さらに他の目的関数を用いてもよい。本実施例における目的関数は、式1を用いて、
【数19】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数20】
は、ボクセルiの処方線量である。
【0045】
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算してもよく、
【数21】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量である。
【0046】
ボクセルiの処方線量
【数22】
は、式3を用いて計算してもよく、
【数23】
式中、
【数24】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数である。関心領域Nの処方線量
【数25】
は、一般的に医師が患者の状況に応じて総合的に判断した後に与えられる。
【0047】
S620では、所望の線量と計算線量との間の分布差をできるだけ減少させるように、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を求解して計算し、
【数26】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示される。
【数27】
【0048】
サポートベクターマシン、応答曲面法、最小二乗ベクトル回帰などの適切な最適化アルゴリズムを用いれば、設計変数Xの最適解を取得することができ、取得された最適解に基づいて、複数の照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定することができる。理解できるように、目的関数の最適化求解は、他の方式で行われてもよい。
【0049】
S630では、目的関数の最適化求解が治療ニーズをより満たすように、制約条件を設定する。本実施例において、正常な器官又は組織の線量制限値を制約条件とし、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たす。
【数28】
【0050】
理解できるように、制約条件を設定しなくてもよく、異なる最適解を求めて、異なる治療計画手段を生成して医師などの操作者が選択するように、異なる制約条件を設定してもよい。
【0051】
目的関数を最適化求解した後、線量検査のステップS440により、目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する。例えば、線量体積ヒストグラム(DVH)を用いて、設計変数Xの最適解により決定された複数の照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wが3次元ボクセルプロステーシス組織モデルにおいてシミュレーションして得られた重畳線量分布を評価し、上述した照射角度の評価を行って評価してもよい。医師などの操作者がニーズをより満たす治療計画手段を選択するように、異なる制約条件下で求められた異なる最適解を同時に評価してもよい。理解できるように、線量検査を行わなくてもよい。
【0052】
腫瘍の分布に応じて、複数の照射角度で放射線療法を行い、患者の被照射部位の浅部の中性子量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減し、同時に、腫瘍の線量、特に、腫瘍の深部の中性子量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、腫瘍の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに腫瘍内の線量をより均一にすることができる。
【0053】
上記式1~式6の中の線量、合計線量、処方線量の単位は、eq-Gyであり、照射時間の単位は、sであり、理解できるように、上記式1~式6の中のいくつかの簡単な変換、線量、時間単位の簡単な変換は、依然として本発明の特許請求の範囲内にあり、照射角度kの総数量は少なくとも2つであり、具体的な数を手動で設定するか又はアルゴリズムにより自動的に取得するか又は円弧状で連続的に調整することができ、照射角度kのサンプリングは、患者の同じ側又は反対側であってもよい。
【0054】
治療計画モジュール20は、計算及び操作者の手動選択により治療計画手段を決定した後、制御モジュール30は、命令に基づいて、該治療計画を呼び出し、治療計画により決定された複数の照射角度及び対応する照射時間に応じて患者を順に照射するように中性子ビーム照射装置10を制御する。理解されるように、患者を照射する最初の第1の照射角度及び対応する照射時間は、腫瘍に最大線量を与えることができる照射であってもよく、その後に他の補足線量照射角度の照射を行い、現在の照射角度の照射が完了した後、次の照射角度に応じて調整する。照射角度の調整は、制御モジュール30により中性子ビーム生成装置11のビーム出口の方向を制御することにより実現されてもよく(例えば、回転可能なフレームを用いる)、患者に対するセットアップを制御することにより実現されてもよく、患者に対するセットアップは、制御モジュール30が治療計画に基づいて、治療台12の移動を直接的に制御することであってもよく、又は、医師などの操作者が治療計画に基づいて、シミュレーション位置決め室(図示せず)で患者をセットアップし、さらに照射室(図示せず)でシミュレーション位置決めにより決定された患者のセットアップに基づいて治療台12及び患者の位置を手動又は自動に調整してもよい。
【0055】
理解できるように、本発明は、さらに、陽子、重イオン、X線又はガンマ線療法などの当業者によく知られているモンテカルロソフトウェアでシミュレーションできる他の放射線療法の分野に適用することができ、この場合、中性子ビーム照射装置は、他の放射ビーム照射装置である。本発明は、アルツハイマー病、関節リウマチなどの放射線照射で治療できる他の疾患に適用することもでき、この場合、腫瘍細胞は、他の病変組織である。患者は、他の被照射体であってもよい。
【0056】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明することにより、当業者が本発明を理解しやすくなるが、明らかに、本発明は、具体的な実施形態の範囲に限定されるものではなく、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定及び決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、放射線療法システムに関し、本発明の別の態様は、治療計画の生成方法に関し、特に放射線療法システムの治療計画の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、例えば、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、既にがん治療の主な手段の1つとなった。しかし、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で、腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与える。また、腫瘍細胞の放射線に対する感受性の度合いが異なるため、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果がよくない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を軽減するすために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の概念が放射線療法に用いられている。また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている(例えば、陽子線療法、重粒子療法、中性子捕捉療法など)。このうち、中性子捕捉療法は、上記の2つの構想を結びつけたものである。例えば、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度なビームの制御と合わせることで、従来の放射線と比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きい捕捉断面積を持つ特性を利用し、10B(n,α)Li中性子捕捉と核分裂反応により、HeとLiという2種の重荷電粒子を生成する。2種の粒子の合計射程が細胞のサイズに近いので、生体への放射線損傷を細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物を腫瘍細胞に選択的に集めると、適切な中性子放射源と合わせることで、正常組織に大きな損傷を与えないで腫瘍細胞を部分的に殺せる目的を達成することができる。
【0005】
放射線療法は、正常な組織、器官の放射線照射の許容耐量又は回復可能なわずかな副作用で、高エネルギー放射線を用いて腫瘍細胞を破壊し、その成長と分裂を防止することにより、腫瘍を制御するか又は治癒することを達成するものである。したがって、腫瘍が受けた線量は、正常な組織、器官の許容放射線量に制限される。同時に、ホウ素中性子捕捉療法は、効果が腫瘍内のホウ素含有薬物の分布と累積及び中性子の集積量に依存する。ホウ素含有薬物の分布と累積は、腫瘍特性及び患者の代謝吸収能力の影響を受け、現在、陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography、PET)により、ホウ素中性子捕捉療法に適する患者を走査して選別する。中性子束が患者体内を通過する深さの増加に伴って減少し、また薬物中のホウ素元素と作用して抑制されるため、中性子の入射方向奥にある腫瘍内の中性子の集積量が少なくなってしまう。
【0006】
3次元モデルは、科学実験分析、科学実験シミュレーションの分野に広く適用される。例えば、核放射線及び保護の分野で、特定の放射線条件下での人体の吸収線量をシミュレーションして医師が治療計画を策定することを助けるために、常に、コンピュータ技術を用いて医用画像データに対して様々な処理を行って、モンテカルロソフトウェアに必要な正確な格子モデルを設定し、モンテカルロソフトウェアと組み合わせてシミュレーション計算を行う必要がある。現在の中性子捕捉療法計画システムでは、照射角度に対する評価により中性子ビームの最適な照射角度を選択する。腫瘍深部の中性子の集積量が少ないため、放射線量を増加させる必要がある一方では、正常な組織、器官の許容放射線量の制限を受けるため、放射線量を制御する必要があり、治療効果が大幅に低下してしまう。
【0007】
したがって、放射線療法システム及びその治療計画の生成方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
従来技術の欠陥を解消するために、本発明の一態様では、ビーム照射装置、治療計画モジュール、及び制御モジュールを含む放射線療法システムが提供される。ビーム照射装置は、治療用ビームを生成し、被照射体に照射して被照射部位を形成する。治療計画モジュールは、上記ビーム照射装置が生成した上記治療用ビームのパラメータと上記被照射部位の医用画像データに基づいて、上記治療用ビームの照射点から上記被照射部位の病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義される少なくとも2つの照射角度、及び各照射角度に対応する照射時間を決定する治療計画を生成する。制御モジュールは、上記被照射体に対応する上記治療計画を上記治療計画モジュールから呼び出し、上記治療計画により決定された少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間に応じて上記被照射体を順に照射するように上記ビーム照射装置を制御する。病変組織の分布に基づいて、複数の照射角度で放射線療法を行い、被照射部位の浅部の放射線量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減する。同時に、病変組織の線量、特に、病変組織の深部の放射線量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、病変組織の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに病変組織内の線量をより均一にすることができる。
【0009】
さらに、上記治療計画モジュールは、モンテカルロシミュレーションプログラムにより、上記被照射部位が上記治療用ビームに照射される場合の放射線量分布をシミュレーションし、数学的なアルゴリズムと組み合わせて上記治療計画を生成する。またさらに、上記治療計画モジュールは、シミュレーションした放射線量分布に基づいて、関心領域の目的関数を設定し、目的関数を最適化求解し、上記少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算する。
【0010】
好ましくは、上記治療計画モジュールは、上記被照射部位の医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定し、上記治療用ビームのパラメータと上記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを上記モンテカルロシミュレーションプログラムに入力して、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算する。
【0011】
好ましくは、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、組織種類、組織密度の情報を有し、組織種類、元素組成及び密度をより正確に提供し、設定された幾何学的モデルは、医用画像データによって反映された実際の状況とより密接にマッチングする。さらに、上記放射線療法システムは、ホウ素中性子捕捉療法システムであり、上記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、さらに組織ホウ素濃度の情報を有し、各組織内のホウ素含有薬物の濃度を明らかに了解することができ、ホウ素中性子捕捉療法の照射シミュレーションを行う場合、実際の状況をより現実的に反映することができる。
【0012】
好ましくは、異なる照射角度をサンプリングする場合、又はサンプリングして計算した後、上記サンプリングされた照射角度をさらに選別してもよい。
【0013】
さらに、上記目的関数は、式1を用い、
【数1】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数2】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算してもよく、
【数3】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数4】
は、式3を用いて計算することができ、
【数5】
式中、
【数6】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数である。
【0014】
さらに、上記治療計画モジュールは、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を最適化求解し、
【数7】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数8】
設計変数Xの最適解に基づいて、上記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定する。好ましくは、最適化アルゴリズムは、サポートベクターマシン、応答曲面法、又は最小二乗ベクトル回帰である。
【0015】
さらに、上記治療計画モジュールは、上記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定する。またさらに、上記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことである。
【数9】
【0016】
好ましくは、上記式1~式6の中の線量、合計線量、処方線量の単位は、eq-Gyであり、照射時間の単位は、sである。
【0017】
さらに好ましくは、上記治療計画モジュールは、線量検査により、上記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する。
【0018】
本発明の別の態様では、ビーム照射装置、治療計画モジュール、及び制御モジュールを含む放射線療法システムが提供される。ビーム照射装置は、治療用ビームを生成し、被照射体に照射して被照射部位を形成する。治療計画モジュールは、上記ビーム照射装置が生成した上記治療用ビームのパラメータと上記被照射部位の医用画像データに基づいて、上記治療用ビームの照射点から上記被照射部位の病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義される複数の照射角度及び、各上記照射角度に対応する計画照射線量を決定する治療計画を生成する。制御モジュールは、上記被照射体に対応する上記治療計画を上記治療計画モジュールから呼び出し、上記治療計画に応じて上記被照射体に対して照射療法を1回行う過程で、上記複数の照射角度及び各上記照射角度に対応する計画照射線量に応じて順に照射するように上記ビーム照射装置を制御する。病変組織の分布に基づいて、複数の照射角度で放射線療法を行い、被照射部位の浅部の放射線量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減する。同時に、病変組織の線量、特に、病変組織の深部の放射線量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、病変組織の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに病変組織内の線量をより均一にすることができる。
【0019】
本発明のさらなる別の態様では、治療計画の生成方法が提供され、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップと、モンテカルロシミュレーションプログラムにおいてビームのパラメータを定義し、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算するステップと、関心領域の目的関数を設定し、上記目的関数を最適化求解し、少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算するステップであって、上記照射角度は、ビームの照射点から前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルの病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義されるステップとを含む。複数の照射角度で放射線療法を行い、被照射部位の浅部の放射線量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減し、同時に、病変組織の線量、特に、病変組織の深部の放射線量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、病変組織の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに病変組織内の線量をより均一にすることができる。
【0020】
好ましくは、上記目的関数は、式1を用いて、
【数10】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数11】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算してもよく、
【数12】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数13】
は、式3を用いて計算してもよく、
【数14】
式中、
【数15】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数である。
【0021】
さらに、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を最適化求解し、
【数16】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数17】
設計変数Xの最適解に基づいて、上記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定する。またさらに、最適化アルゴリズムは、サポートベクターマシン、応答曲面法、又は最小二乗ベクトル回帰である。
【0022】
さらに、上記治療計画の生成方法は、上記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定するステップをさらに含む。またさらに、上記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことである。
【数18】
【0023】
好ましくは、上記式1~式6の中の線量、合計線量、処方線量の単位は、eq-Gyであり、照射時間の単位は、sである。
【0024】
好ましくは、上記治療計画の生成方法は、線量検査により、上記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する線量検査のステップをさらに含む。
【0025】
好ましくは、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップは、医用画像データを読み取るステップと、3次元医用画像ボクセルモデルを設定するステップと、関心領域の境界を定義するか又は読み取るステップと、各ボクセルユニットの組織種類(元素組成)及び組織密度を定義するステップと、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップとをさらに含む。3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、医用画像データと組織種類、組織密度との間の変換関係に基づいて設定されるものであり、組織種類(元素組成)及び組織密度をより正確に提供し、設定された幾何学的モデルは、医用画像データによって反映された実際の状況とより密接にマッチングする。さらに、上記治療計画の生成方法は、ホウ素中性子捕捉療法に適用され、医用画像データに基づいて3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップは、各ボクセルユニットの組織ホウ素濃度を定義するステップをさらに含み、各組織内のホウ素含有薬物の濃度を明らかに了解することができ、ホウ素中性子捕捉療法の照射シミュレーションを行う場合、実際の状況をより現実的に反映することができる。
【0026】
好ましくは、異なる照射角度をサンプリングする場合、又はサンプリングして計算した後、上記サンプリングされた照射角度をさらに選別してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る放射線療法システム及びその治療計画の生成方法は、正常な組織の最大線量を低減し病変組織の最小線量を向上させるように、被照射部位の浅部の放射線量を分散し病変組織の深部の放射線量を増加させ、同時に、病変組織内の線量の均一な分布を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ホウ素中性子捕捉反応の概略図である。
図210B(n,α)Li中性子捕捉核反応式である。
図3】本発明の実施例における中性子捕捉療法システムのブロック図である。
図4】本発明の実施例における治療計画モジュールが治療計画を生成する方法のフローチャートである。
図5】本発明の実施例における3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定する方法のフローチャートである。
図6】本発明の実施例における関心領域の目的関数を設定し、最適化求解により計算する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例をさらに詳細に説明することにより、当業者であれば、明細書の文字を参照して実施することができる。
【0030】
好ましくは、中性子捕捉療法システム及びその治療計画の生成方法を本発明の実施例とする。以下、中性子捕捉療法、特に、ホウ素中性子捕捉療法を簡単に説明する。
【0031】
中性子捕捉療法は効果的ながん治療の手段として、近年ではその適用が増加しており、そのうち、ホウ素中性子捕捉療法が最も一般的なものとなった。ホウ素中性子捕捉療法に用いられる中性子は原子炉又は加速器で供給することができる。本発明の実施例は、加速器ホウ素中性子捕捉療法を例とする。加速器ホウ素中性子捕捉療法の基本モジュールは、一般的には、荷電粒子(例えば、陽子、デューテリウム原子核など)の加速に用いられる加速器、ターゲット、熱除去システム及びビーム整形アセンブリを含む。加速後の荷電粒子と金属ターゲットとの作用により中性子が生成され、必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速荷電粒子のエネルギー及び電流の大きさ、金属ターゲットの物理的・化学的特性などにより、適切な原子核反応が選定される。よく検討されている原子核反応は、Li(p,n)Be及びBe(p,n)Bであり、これらの2種類の反応は、いずれも吸熱反応である。これらの2種類の核反応は、エネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVである。ホウ素中性子捕捉療法の理想的な中性子源は、keVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には、エネルギーが閾値よりやや高い陽子による金属リチウムターゲットへの衝撃で、比較的低いエネルギーの中性子が生成され、あまり多くの減速処理を要しないで臨床適用が可能になる。しかしながら、リチウム金属(Li)及びベリリウム金属(Be)の2種類のターゲットは、閾値エネルギーの陽子と作用する断面が大きくないので、十分な中性子束を生成するために、一般的には比較的高いエネルギーを持つ陽子で原子核反応を引き起こされる。
【0032】
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きい捕捉断面積を持つ特性を利用し、10B(n,α)Li中性子捕捉と核分裂反応により、HeとLiという2種類の重荷電粒子を生成する。図1図2は、それぞれホウ素中性子捕捉反応の概略図と10B(n,α)Li中性子捕捉の原子核反応式を示す。2種の荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い射程という特徴を持つ。α粒子の線エネルギー付与と射程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、Li重荷電粒子の場合、それぞれ175keV/μm、5μmである。2種の粒子の合計射程は、細胞のサイズに近いので、生体への放射線損傷を細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物を腫瘍細胞に選択的に集めると、適切な中性子放射源と合わせることで、正常な組織に大きな損傷を与えないで、腫瘍細胞を部分的に殺せる目的を達成することができる。
【0033】
図3を参照し、本実施例における放射線療法システムは、好ましくは中性子捕捉療法システム100であり、中性子ビーム照射装置10、治療計画モジュール20、及び制御モジュール30を含む。中性子ビーム照射装置10は、中性子ビーム生成装置11及び治療台12を含む。中性子ビーム生成装置11は、治療用中性子ビームを生成し、治療台12上の患者に照射して被照射部位を形成する。中性子捕捉療法において、特定の放射線条件下での生体の吸収線量をシミュレーショントして医師が治療計画を策定することを助けるために、常に、コンピュータ技術を用いて医用画像に対して様々な処理を行って、モンテカルロソフトウェアに必要な正確な格子モデルを設定し、モンテカルロソフトウェアと組み合わせてシミュレーション計算を行う必要がある。治療計画モジュール20は、中性子ビーム生成装置11が生成した中性子ビームのパラメータと患者の被照射部位の医用画像データに基づいて、モンテカルロシミュレーションプログラムにより、患者が照射療法を受ける場合の放射線量分布をシミュレーションし、数学的なアルゴリズムと組み合わせて治療計画を生成する。一実施例において、治療計画モジュール20は、シミュレーションした放射線量分布に基づいて、関心領域の目的関数を設定し、目的関数を最適化求解し、少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算する。理解できるように、さらに、他の方法によって少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算してもよい。制御モジュール30は、現在の患者に対応する治療計画を治療計画モジュール20から呼び出し、治療計画に基づいて、中性子ビーム照射装置10の照射を制御し、例えば、中性子ビームを生成し、治療計画により決定された少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間に応じて治療台12上の患者を順に照射するように中性子ビーム生成装置11を制御する。理解できるように、各照射角度に対応する照射時間は、各照射角度に対応する計画照射線量であってもよく、シミュレーション計算により変換して取得してもよい。
【0034】
図4を参照し、本実施例に係る治療計画モジュール20が治療計画を生成する方法は、具体的に、ステップS410~S440を含む。
【0035】
S410では、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定し
S420では、モンテカルロシミュレーションプログラム(例えば、Monte Carlo N Particle Transport Code、MCNP)においてビームのパラメータを定義し、異なる照射角度kでのサンプリングをシミュレーションすることにより、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルにおけるボクセルiの単位時間において異なる照射角度kでの線量分布Dkiを計算し、
S430では、関心領域の目的関数を設定し、最適化求解により少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算する。いわゆる関心領域は、眼、肝臓などの重要な器官であってもよく、骨組織、脳組織などの重要な組織であってもよく、腫瘍細胞であってもよく、
S440では、線量検査を行い、目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する。
【0036】
図5を参照し、一実施例において、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップS410は、ステップS510~S550をさらに含む。
【0037】
S510では、医用画像データを読み取り、
S520では、3次元医用画像ボクセルモデルを設定し、
S530では、関心領域の境界を定義するか又は読み取り、
S540では、各ボクセルユニットの組織種類(元素組成)、組織密度を定義し、CT画像データと組織種類、組織密度との間の変換関係に基づいて自動的に定義してもよく、ユーザが手動で定義し、例えば、各関心領域の境界内のボクセルユニットに特定の組織種類及び組織密度を与えてもよく、
S550では、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定する。
【0038】
3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、医用画像データと組織種類、組織密度との間の変換関係に基づいて設定されるものであり、組織種類(元素組成)及び組織密度をより正確に提供し、設定された幾何学的モデルは、医用画像データによって反映された実際の状況とより密接にマッチングする。放射線療法システムがホウ素中性子捕捉療法システムである場合、医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップS410は、S540の後に、各ボクセルユニットの組織ホウ素濃度を定義するS560をさらに含んでもよい。理解できるように、S560がS540の前に行われてもよい。組織ホウ素濃度の情報で標識される幾何学的モデルにより、各組織内のホウ素含有薬物の濃度を明らかに了解することができ、次に中性子の照射シミュレーションを行う場合、実際の状況をより現実的に反映する。
【0039】
医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定する詳細な過程について、2017年3月8日に開示され、公開番号がCN106474634A、発明の名称が「医用画像データに基づく幾何学的モデルの設定方法」である特許出願を参照することができ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0040】
モンテカルロ法は、現在で放射照射目標内部の3次元空間核粒子の衝突軌道及びエネルギー分布を正確にシミュレーションできるツールであり、人体モデルとモンテカルロシミュレーションプログラムとの組み合わせは、放射線環境下での人体の吸収線量を正確に計算し評価することができる。ステップS420では、モンテカルロシミュレーションプログラムにおいてビームのパラメータ(例えば、ビームのエネルギー、強度、半径など)を定義し、異なる照射角度でサンプリングすることにより、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルの異なる照射角度での線量分布をシミュレーションし計算し、すなわち、それぞれサンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが定義されたビーム照射で単位時間に受けた放射線量Dkiをシミュレーションし計算する。
【0041】
サンプリングする場合、ビームの開始位置及び照射角度を決定して計算する必要があり、計算における開始位置及び角度の決定は、順方向アルゴリズム又は逆方向アルゴリズムであってもよく、順方向アルゴリズムでは、開始位置を体外位置に決定し、固定角度又は距離間隔により順にサンプリングして計算することができ、またランダムサンプリングの方式で行うこともでき、照射角度の部分については、照射点から腫瘍重心又は腫瘍の最も深い位置へのベクトル方向として設定することができ、具体的な腫瘍端点位置は、ユーザのニーズに応じて調整することができ、逆方向アルゴリズムでは、開始位置を腫瘍範囲内に決定し、その開始位置は、腫瘍重心、最も深い位置又は腫瘍範囲内のランダムなポイントであってもよく、照射角度は、ランダムサンプリング又は指定間隔によるサンプリングの方式で決定されてもよい。
【0042】
サンプリングする場合、照射角度を選別し、例えば、照射角度を評価し、評価結果に基づいて、後続の計算に用いられる照射角度を選択してもよく、あるいは、サンプリングして計算した後に照射角度をさらに選別し、例えば、放射線量分布の結果又は照射角度の評価結果に基づいて、選別してもよい。照射角度の評価方法について、本明細書では詳細に説明せず、2017年6月16日に開示され、公開番号がCN106853272A、発明の名称が「ビーム照射角度の評価方法」である特許出願を参照することができ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
図6を参照し、以下、関心領域の目的関数を設定し、最適化求解により少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算するステップS430を詳細に説明し、一実施例において、ステップS430は、さらにステップS610~S630を含む。
【0044】
S610では、ある関心領域N(本実施例において腫瘍細胞である)に対して、該関心領域Nの目的関数を設定する。一実施例において、該関心領域Nにおける全てのボクセルが受けた線量を均一に分布させるために、目的関数は、所望の線量(処方線量)と計算線量との差の二乗であり、理解できるように、さらに他の目的関数を用いてもよい。本実施例における目的関数は、式1を用いて、
【数19】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数20】
は、ボクセルiの処方線量である。
【0045】
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算してもよく、
【数21】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量である。
【0046】
ボクセルiの処方線量
【数22】
は、式3を用いて計算してもよく、
【数23】
式中、
【数24】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数である。関心領域Nの処方線量
【数25】
は、一般的に医師が患者の状況に応じて総合的に判断した後に与えられる。
【0047】
S620では、所望の線量と計算線量との間の分布差をできるだけ減少させるように、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を求解して計算し、
【数26】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示される。
【数27】
【0048】
サポートベクターマシン、応答曲面法、最小二乗ベクトル回帰などの適切な最適化アルゴリズムを用いれば、設計変数Xの最適解を取得することができ、取得された最適解に基づいて、複数の照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定することができる。理解できるように、目的関数の最適化求解は、他の方式で行われてもよい。
【0049】
S630では、目的関数の最適化求解が治療ニーズをより満たすように、制約条件を設定する。本実施例において、正常な器官又は組織の線量制限値を制約条件とし、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たす。
【数28】
【0050】
理解できるように、制約条件を設定しなくてもよく、異なる最適解を求めて、異なる治療計画手段を生成して医師などの操作者が選択するように、異なる制約条件を設定してもよい。
【0051】
目的関数を最適化求解した後、線量検査のステップS440により、目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する。例えば、線量体積ヒストグラム(DVH)を用いて、設計変数Xの最適解により決定された複数の照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wが3次元ボクセルプロステーシス組織モデルにおいてシミュレーションして得られた重畳線量分布を評価し、上述した照射角度の評価を行って評価してもよい。医師などの操作者がニーズをより満たす治療計画手段を選択するように、異なる制約条件下で求められた異なる最適解を同時に評価してもよい。理解できるように、線量検査を行わなくてもよい。
【0052】
腫瘍の分布に応じて、複数の照射角度で放射線療法を行い、患者の被照射部位の浅部の中性子量を分散して低減し、正常な組織が受けた放射線量及び正常な組織の最大線量を低減し、さらに放射線療法を受けた後に正常な組織に副作用が発生する確率を低減し、同時に、腫瘍の線量、特に、腫瘍の深部の中性子量を増加させるように、総放射線量を適切に増加させることができ、腫瘍の最小線量を向上させ、複数の入射方向により、さらに腫瘍内の線量をより均一にすることができる。
【0053】
上記式1~式6の中の線量、合計線量、処方線量の単位は、eq-Gyであり、照射時間の単位は、sであり、理解できるように、上記式1~式6の中のいくつかの簡単な変換、線量、時間単位の簡単な変換は、依然として本発明の特許請求の範囲内にあり、照射角度kの総数量は少なくとも2つであり、具体的な数を手動で設定するか又はアルゴリズムにより自動的に取得するか又は円弧状で連続的に調整することができ、照射角度kのサンプリングは、患者の同じ側又は反対側であってもよい。
【0054】
治療計画モジュール20は、計算及び操作者の手動選択により治療計画手段を決定した後、制御モジュール30は、命令に基づいて、該治療計画を呼び出し、治療計画により決定された複数の照射角度及び対応する照射時間に応じて患者を順に照射するように中性子ビーム照射装置10を制御する。理解されるように、患者を照射する最初の第1の照射角度及び対応する照射時間は、腫瘍に最大線量を与えることができる照射であってもよく、その後に他の補足線量照射角度の照射を行い、現在の照射角度の照射が完了した後、次の照射角度に応じて調整する。照射角度の調整は、制御モジュール30により中性子ビーム生成装置11のビーム出口の方向を制御することにより実現されてもよく(例えば、回転可能なフレームを用いる)、患者に対するセットアップを制御することにより実現されてもよく、患者に対するセットアップは、制御モジュール30が治療計画に基づいて、治療台12の移動を直接的に制御することであってもよく、又は、医師などの操作者が治療計画に基づいて、シミュレーション位置決め室(図示せず)で患者をセットアップし、さらに照射室(図示せず)でシミュレーション位置決めにより決定された患者のセットアップに基づいて治療台12及び患者の位置を手動又は自動に調整してもよい。
【0055】
理解できるように、本発明は、さらに、陽子、重イオン、X線又はガンマ線療法などの当業者によく知られているモンテカルロソフトウェアでシミュレーションできる他の放射線療法の分野に適用することができ、この場合、中性子ビーム照射装置は、他の放射ビーム照射装置である。本発明は、アルツハイマー病、関節リウマチなどの放射線照射で治療できる他の疾患に適用することもでき、この場合、腫瘍細胞は、他の病変組織である。患者は、他の被照射体であってもよい。
【0056】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明することにより、当業者が本発明を理解しやすくなるが、明らかに、本発明は、具体的な実施形態の範囲に限定されるものではなく、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定及び決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ビームを生成し、被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記ビーム照射装置が生成した前記治療用ビームのパラメータと前記被照射部位の医用画像データに基づいて、前記治療用ビームの照射点から前記被照射部位の病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義される少なくとも2つの照射角度、及び各照射角度に対応する照射時間を決定する治療計画を生成する治療計画モジュールと、
前記被照射体に対応する前記治療計画を前記治療計画モジュールから呼び出し、前記治療計画により決定された少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間に応じて前記被照射体を順に照射するように前記ビーム照射装置を制御する制御モジュールとを含むことを特徴とする、放射線療法システム。
【請求項2】
前記治療計画モジュールは、モンテカルロシミュレーションプログラムにより、前記被照射部位が前記治療用ビームに照射される場合の放射線量分布をシミュレーションし、数学的なアルゴリズムと組み合わせて前記治療計画を生成することを特徴とする、請求項1に記載の放射線療法システム。
【請求項3】
前記治療計画モジュールは、シミュレーションした放射線量分布に基づいて、関心領域の目的関数を設定し、目的関数を最適化求解し、前記少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算することを特徴とする、請求項2に記載の放射線療法システム。
【請求項4】
前記治療計画モジュールは、前記被照射部位の医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定し、前記治療用ビームのパラメータと前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを前記モンテカルロシミュレーションプログラムに入力して、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算することを特徴とする、請求項3に記載の放射線療法システム。
【請求項5】
前記放射線療法システムは、ホウ素中性子捕捉療法システムであり、前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルは、組織種類、組織密度、組織ホウ素濃度の情報を有することを特徴とする、請求項4に記載の放射線療法システム。
【請求項6】
前記治療計画モジュールは、異なる照射角度をサンプリングする場合、又はサンプリングして計算した後、前記サンプリングされた照射角度を選別することを特徴とする、請求項4に記載の放射線療法システム。
【請求項7】
前記目的関数は、式1を用いて、
【数1】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数2】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算することができ、
【数3】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数4】
は、式3を用いて計算することができ、
【数5】
式中、
【数6】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数であることを特徴とする、請求項4に記載の放射線療法システム。
【請求項8】
前記治療計画モジュールは、最適化アルゴリズムを用いて式4により目的関数を最適化求解し、
【数7】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数8】
設計変数Xの最適解に基づいて、前記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定することを特徴とする、請求項7に記載の放射線療法システム。
【請求項9】
前記治療計画モジュールは、前記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定し、前記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことであることを特徴とする、請求項8に記載の放射線療法システム。
【数9】
【請求項10】
前記治療計画モジュールは、線量検査により、前記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別することを特徴とする、請求項3に記載の放射線療法システム。
【請求項11】
医用画像データに基づいて、3次元ボクセルプロステーシス組織モデルを設定するステップと、
モンテカルロシミュレーションプログラムにおいてビームのパラメータを定義し、異なる照射角度でのサンプリングをシミュレーションし、サンプリングされた照射角度kで、各ボクセルユニットiが単位時間に受けた放射線量Dkiを計算するステップと、
関心領域の目的関数を設定し、前記目的関数を最適化求解し、少なくとも2つの照射角度及び各照射角度に対応する照射時間を計算するステップであって、前記照射角度は、ビームの照射点から前記3次元ボクセルプロステーシス組織モデルの病変組織内の所定点までのベクトル方向として定義されるステップとを含むことを特徴とする、治療計画の生成方法。
【請求項12】
前記目的関数は、式1を用いて、
【数10】
式中、dは、ボクセルiの合計線量であり、
【数11】
は、ボクセルiの処方線量であり、
あるボクセルiに対して、受けた合計線量dは、式2を用いて計算することができ、
【数12】
式中、wは、異なる照射角度での照射時間であり、Dkiは、単位時間におけるボクセルiの照射角度kでの線量であり、dは、ボクセルiの合計線量であり、
ボクセルiの処方線量
【数13】
は、式3を用いて計算することができ、
【数14】
式中、
【数15】
は、関心領域Nの処方線量であり、Cは、該関心領域のボクセルの数であることを特徴とする、請求項11に記載の治療計画の生成方法。
【請求項13】
最適化アルゴリズムを用いて式4により前記目的関数を最適化求解し、
【数16】
式4の設計変数をXに定義し、設計変数Xは、式5で示され、
【数17】
設計変数Xの最適解に基づいて、前記少なくとも2つの照射角度k及び異なる照射角度kに対応する照射時間wを決定することを特徴とする、請求項12に記載の治療計画の生成方法。
【請求項14】
前記目的関数の最適化求解に対して制約条件を設定するステップをさらに含み、前記制約条件は、1つ以上の正常な器官又は組織Mを選択し、各正常な器官又は組織M内の全てのボクセルiの合計線量dの和dが式6を満たすことであることを特徴とする、請求項13に記載の治療計画の生成方法。
【数18】
【請求項15】
線量検査により、前記目的関数を最適化求解する結果を評価するか又は選別する線量検査のステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の治療計画の生成方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】