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特表2023-528996インスリンアスパルト誘導体およびその製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】インスリンアスパルト誘導体およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/17 20060101AFI20230629BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230629BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230629BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20230629BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20230629BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230629BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230629BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230629BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230629BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230629BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C12N15/17 ZNA
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07K14/62
C07K14/435
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576134
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2021099244
(87)【国際公開番号】W WO2021249444
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010526819.7
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437770
【氏名又は名称】ニンポー クンペン バイオテック カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NINGBO KUNPENG BIOTECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】28 Xingbin Road,ZhongyiNingbo Ecological Park,Yuyao,Ningbo,Zhejiang 315400,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フイリン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,リ
(72)【発明者】
【氏名】タン,ヤリァン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG16
4B064CA02
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064CE11
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065BD45
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA21
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA37
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA25
(57)【要約】
インスリンアスパルト誘導体およびその製造方法で、前記誘導体は緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位およびインスリンアスパルト前駆体またはその活性断片を含む。前記融合タンパク質は、発現量が顕著に向上し、融合タンパク質におけるインスリンアスパルト前駆体のタンパク質のフォールディングが正確で、生物活性を有する。そして、融合タンパク質における緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位はプロテアーゼによって小さい断片に消化され、分子量が標的のタンパク質と大きく異なり、分離しやすい。また、当該融合タンパク質を利用してインスリンアスパルトを製造する方法および中間体を製造する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリンアスパルトの融合タンパク質であって、式Iで表される構造を有することを特徴とする融合タンパク質。
A-FP-TEV-R-G (I)
(式中において、
「-」はペプチド結合を表す。
Aはなしか、リーダーペプチドである。
FPは緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位である。
TEVは酵素切断部位で、好ましくはTEV酵素の酵素切断部位である。
Rは酵素切断のためのアルギニンまたはリシンである。
Gはインスリンアスパルト前駆体またはその活性断片である。
ここで、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位は2-6個の以下の群から選ばれるβシート単位を含む。)
【表1】
【請求項2】
前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位はu8-u9、u9-u10-u11、またはu10-u11であることを特徴とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記のGはBoc(t-ブトキシカルボニル基)修飾されたインスリンアスパルト前駆体で、式IIで表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
GB-X-GA (II)
(式中において、
GBは29番目がBoc修飾されたインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示される。
Xは連結ペプチドである。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。)
【請求項4】
前記のインスリンアスパルトの融合タンパク質の配列は配列番号1、22、23に記載の通りであることを特徴とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
2本鎖インスリンアスパルトの融合タンパク質であって、式IIIで表される構造を有することを特徴とする融合タンパク質。
A-FP-TEV-R-D (III)
(式中において、
「-」はペプチド結合を表す。
Aはなしか、リーダーペプチドである。
FPは緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位である。
TEVは酵素切断部位で、好ましくはTEV酵素の酵素切断部位である。
Rは酵素切断のためのアルギニンまたはリシンである。
DはBoc修飾された2本鎖インスリンアスパルトで、式IVで表される構造を有する。
【化1】
(式中において、
【化2】
はジスルフィド結合を表す。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。
Xは連結ペプチドである。
GBは29番目がBoc修飾されたインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示される。)
ここで、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位は2-6個の以下の群から選ばれるβシート単位を含む。)
【表2】
【請求項6】
Boc修飾されたインスリンアスパルト前駆体であって、式IIで表される構造を有することを特徴とするインスリンデグルデク前駆体。
GB-X-GA (II)
(式中において、
GBは29番目がBoc修飾されたインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示される。
Xは連結ペプチドで、かつXのアミノ酸配列がR、RR、RRR、あるいは配列番号6-9で示される。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。)
【請求項7】
Boc修飾された2本鎖インスリンアスパルトであって、式IVで表される構造を有することを特徴とするインスリンアスパルト。
【化3】
(式中において、
【化4】
はジスルフィド結合を表す。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。
GBはインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示され、かつ前記B鎖の29番目のリシンがN-ε-(t-ブトキシカルボニル)-リシンである。)
【請求項8】
単離されたポリヌクレオチドであって、請求項1に記載のインスリンアスパルトの融合タンパク質、請求項5に記載の2本鎖インスリンアスパルトの融合タンパク質、請求項6に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルト前駆体、あるいは請求項7に記載のBoc修飾された2本鎖インスリンアスパルトをコードすることを特徴とする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターを含有するか、あるいは染色体に外来の請求項8に記載のポリヌクレオチドが組み込まれたか、あるいは請求項1に記載のインスリンアスパルトの融合タンパク質、請求項5に記載の2本鎖インスリンアスパルトの融合タンパク質、請求項6に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルト前駆体、または請求項7に記載のBoc修飾された2本鎖インスリンアスパルトを発現することを特徴とする、宿主細胞。
【請求項11】
インスリンアスパルトを製造する方法であって、
(i) 組み換え菌を利用して発酵を行い、請求項1に記載のインスリンアスパルトの融合タンパク質(第一のタンパク質)を含む発酵液を製造する工程、
(ii) 前記インスリンアスパルトの融合タンパク質(第一のタンパク質)に対して酵素切断を行うことにより、Boc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)を含む混合液Iを得る工程、
(iii) 前記のBoc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)に対して脱保護処理を行うことにより、脱保護されたインスリンアスパルト(第三のタンパク質)を含む混合液IIを得る工程、
(iv) 混合液IIに対して精製処理を行うことにより、インスリンアスパルトを得る工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
工程(ii)と工程(iii)の間に、さらに、
(I)前記の混合液Iに対して1回目の陰イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより、Boc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)を含む乾燥粉末を得る工程
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(iv)の精製処理は、
(II) グリシンを移動相とし、前記の混合液IIに対して2回目の陰イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより、脱保護されたインスリンアスパルト(第三のタンパク質)を含む溶離液IIを得る工程、
(III) 前記の溶離液IIに対して逆相クロマトグラフィーを行うことにより、インスリンアスパルトを得る工程
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程(i)では、前記組み換え菌の発酵菌から分離してインスリンアスパルトの融合タンパク質の封入体を得た後、前記封入体に対して変性および再生を行うことにより、タンパク質のフォールディングが正確なインスリンアスパルト融合タンパク質(第一のタンパク質)を得ることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
工程(ii)では、トリプターゼおよびカルボキシペプチダーBを利用して酵素切断を行うことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に関し、より具体的に、インスリンアスパルト誘導体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、全世界の範囲内で人類の健康を脅かす疾患の一つである。中国では、人々の生活スタイルの変化および老齢化の加速とともに、糖尿病の罹患率は急速に上昇する傾向にある。糖尿病の急・慢性合併症、特に慢性合併症は複数の臓器に及び、障害につながり、致死率が高く、患者の心身の健康に大きく影響し、そして個人、家庭および社会に重い負担を背負わせる。
【0003】
インスリンアスパルトは速効型インスリンアナログとして、第三世代のインスリンに属し、A、Bの2本鎖から2つのシステインのジスルフィド結合によって橋架けしてなり、遺伝子工学のDNA組み換え技術を利用してヒトインスリンのB鎖の28番目のプロリン(Pro)を負電荷のアスパラギン酸(Asp)に置き換え(突然変異)させ、電荷の反発作用を利用してインスリンの単量体または二量体(一つのインスリン分子のB28ともう一つのインスリン分子のB23からなるもの)の自己重合を阻止し、分子間の重合を減少させる。ヒトインスリンの分泌パターンを好適にシミュレーションすることができ、薬物動態学の特性は通常のヒトインスリンの半分程度で、作用開始時間が10~20分で、ピーク到達時間が40分で、作用持続時間が3~5時間に短縮し、患者が良い血糖の制御を得ると同時に食事前または夜間のインスリンの作用と重なりにくく、夜間の低血糖の発生率を顕著に低下させる。
【0004】
インスリンアスパルトの製造は、一般的に、遺伝子工学技術によって前駆体を製造し、先発医薬品メーカーであるノボノルディスクが出芽酵母を発現宿主とし、組み換えDNA技術を利用してインスリンアスパルト前駆体を生産し、さらにペプチド転移などの一連の複雑なプロセスによってインスリンアスパルトを製造する。当該方法は、宿主菌の改造などの面において技術的難易度が高く、プロセスが複雑である。出芽酵母自身の発現能力が弱いため、インスリンアスパルトの収量が高くなく、エンジニアリング菌のシェーカー培養では多くとも21.5 mg/Lで、ある程度で医薬品の生産コストを向上させる。
そのため、本分野では、プロセスが簡単で、環境に優しく、収率が高く、収量が高いインスリンアスパルトの製造および精製方法の開発が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インスリンアスパルト誘導体およびその使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面では、インスリンアスパルトの融合タンパク質で、式Iで表される構造を有するものを提供する。
A-FP-TEV-R-G (I)
(式中において、
「-」はペプチド結合を表す。
Aはなしか、リーダーペプチドである。
FPは緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位である。
TEVは酵素切断部位で、好ましくはTEV酵素の酵素切断部位である。
Rは酵素切断のためのアルギニンまたはリシンである。
Gはインスリンアスパルト前駆体またはその活性断片である。
ここで、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位は2-6個、好ましくは2-3個の以下の群から選ばれるβシート単位を含む。)
【表1】
【0007】
もう一つの好適な例において、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位はu8-u9、u9-u10-u11、またはu10-u11であることを特徴とする。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記のGはBoc修飾されたインスリンアスパルト前駆体で、式IIで表される構造を有することを特徴とする。
GB-X-GA (II)
(式中において、
GBはBoc修飾されたインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示される。
Xは連結ペプチドで、好ましくは、Xのアミノ酸配列がR、RR、RRR、あるいは配列番号6-9で示される(RRGSKR、RRAAKR、RRYPGDVKRまたはRREAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKR)。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。)
【0009】
もう一つの好適な例において、前記のRはトリプターゼおよびカルボキシペプチダーゼによる酵素切断のためのものである。
もう一つの好適な例において、Gは配列が配列番号5で示されるBoc修飾されたインスリンアスパルトである。
もう一つの好適な例において、GB-X-GAの間に鎖内ジスルフィド結合が存在する。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記のインスリンアスパルトの融合タンパク質の配列が配列番号1、22、23に記載の通りである。
もう一つの好適な例において、前記インスリンアスパルトのB鎖の7番目とA鎖の7番目(A7-B7)、B鎖の19番目とA鎖の20番目(A20-B19)の間に鎖間ジスルフィド結合が形成している。
もう一つの好適な例において、前記インスリンアスパルトのA鎖の6番目とA鎖の11番目(A6-A11)の間に鎖内ジスルフィド結合が形成している。
【0011】
本発明の第二の側面では、2本鎖インスリンアスパルトの融合タンパク質で、式IIIで表される構造を有するものを提供する。
A-FP-TEV-R-D (III)
(式中において、
「-」はペプチド結合を表す。
Aはなしか、リーダーペプチドで、好ましくは配列が配列番号2で示されるリーダーペプチドである。
FPは緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位である。
TEVは酵素切断部位で、好ましくはTEV酵素の酵素切断部位(配列はENLYFQGで、配列番号4である)である。
Rは酵素切断のためのアルギニンまたはリシンである。
DはBoc修飾された2本鎖インスリンアスパルトで、前記主鎖が式IVで表される構造を有する。
【化1】
(式中において、
【化2】
はジスルフィド結合を表す。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。
Xは連結ペプチドである。
GBは29番目がBoc修飾されたインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示される。)
ここで、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位は2-6個、好ましくは2-3個の以下の群から選ばれるβシート単位を含む。)
【表2】
【0012】
もう一つの好適な例において、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位はu8-u9、u9-u10-u11、またはu10-u11である。
もう一つの好適な例において、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位のアミノ配列が配列番号3、24、25で示される。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記インスリンアスパルトのB鎖のC末端は連結ペプチドを介してインスリンアスパルトのA鎖のN末端と連結している。
もう一つの好適な例において、前記のXは連結ペプチドで、好ましくは、Xのアミノ酸配列がR、RR、RRR、あるいは配列番号6-9で示される(RRGSKR、RRAAKR、RRYPGDVKRまたはRREAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKR)。
【0014】
本発明の第三の側面では、Boc修飾されたインスリンアスパルト前駆体であって、式IIで表される構造を有するものを提供する。
GB-X-GA (II)
(式中において、
GBは29番目がBoc修飾されたインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示される。
Xは連結ペプチドで、好ましくは、Xのアミノ酸配列がR、RR、RRR、あるいは配列番号6-9で示される(RRGSKR、RRAAKR、RRYPGDVKRまたはRREAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKR)。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。)
もう一つの好適な例において、前記の保護リシンがN-ε-(t-ブトキシカルボニル)-リシンである。
【0015】
本発明の第四の側面では、Boc修飾されたインスリンアスパルトであって、式IVで表される構造を有するものを提供する。
【化3】
(式中において、
【化4】
はジスルフィド結合を表す。
GAはインスリンアスパルトのA鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の32-52番目で示される。
GBはインスリンアスパルトのB鎖で、アミノ酸配列が配列番号5の1-30番目で示され、かつ前記B鎖の29番目のリシンがN-ε-(t-ブトキシカルボニル)-リシンである。)
【0016】
本発明の第五の側面では、インスリンアスパルトを製造する方法であって、
(i) 組み換え菌を利用して発酵を行い、インスリンアスパルトの融合タンパク質(第一のタンパク質)の発酵液を製造する工程、
(ii) 前記インスリンアスパルトの融合タンパク質(第一のタンパク質)に対して酵素切断を行うことにより、Boc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)を含む混合液Iを得る工程、
(iii) 前記のBoc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)に対して脱保護処理を行うことにより、脱保護されたインスリンアスパルト(第三のタンパク質)を含む混合液IIを得る工程、
(iv) 混合液IIに対して精製処理を行うことにより、インスリンアスパルトを得る工程を含む方法を提供する。
【0017】
もう一つの好適な例において、工程(ii)と工程(iii)の間に、さらに、
(I)前記の混合液Iに対して1回目の陰イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより、Boc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)を含む乾燥粉末を得る工程を含む。
もう一つの好適な例において、工程(iv)の精製処理は、
(II) グリシンを移動相とし、前記の混合液IIに対して2回目の陰イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより、脱保護されたインスリンアスパルト(第三のタンパク質)を含む溶離液IIを得る工程、
(III) 前記の溶離液IIに対して逆相クロマトグラフィーを行うことにより、インスリンアスパルトを得る工程を含む。
【0018】
もう一つの好適な例において、製造されるインスリンアスパルトの純度が99%超である。
もう一つの好適な例において、製造されるインスリンアスパルトはインスリンアスパルト活性を有する。
もう一つの好適な例において、Boc-インスリンアスパルトはB29(インスリンのB鎖の29番目)が保護リシンであるインスリンアスパルトである。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記の保護リシンは保護基を持つリシンである。
もう一つの好適な例において、前記の保護リシンがN-ε-(t-ブトキシカルボニル)-リシンである。
もう一つの好適な例において、工程(i)では、組み換え菌を利用してインスリンアスパルトの融合タンパク質の発酵生産を行う。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記の組み換え菌にインスリンアスパルトの融合タンパク質を発現する発現カセットが含まれているか、組み込まれている。
もう一つの好適な例において、工程(i)では、前記組み換え菌の発酵液から分離してインスリンアスパルトの融合タンパク質封入体を得る。
もう一つの好適な例において、工程(i)では、さらに、前記封入体に対して変性および再生を行うことにより、タンパク質のフォールディングが正確なインスリンアスパルトの融合タンパク質(第一のタンパク質)を得る工程を含む。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記のタンパク質のフォールディングが正確なインスリンアスパルトの融合タンパク質におけるA鎖とB鎖の間に鎖内ジスルフィド結合を含む。
もう一つの好適な例において、前記のインスリンアスパルトの融合タンパク質は本発明の第一の側面に記載の通りである。
もう一つの好適な例において、工程(ii)では、トリプターゼおよびカルボキシペプチダーBを利用して酵素切断を行う。
【0022】
もう一つの好適な例において、工程(ii)では、前記カルボキシペプチダーBとインスリンアスパルトの融合タンパク質の質量比が1:(20000-30000)である。
もう一つの好適な例において、工程(ii)では、前記のトリプターゼは組み換えブタトリプターゼである。
もう一つの好適な例において、工程(ii)では、前記トリプターゼとインスリンアスパルトの融合タンパク質の質量比が1:1000-10000で、好ましくは1:1000-3000である。
【0023】
もう一つの好適な例において、工程(ii)では、前記酵素切断の温度が32~42℃、好ましくは36~38℃である。
もう一つの好適な例において、工程(ii)では、前記酵素切断の時間が10~30 h、好ましくは14~20 hである。
もう一つの好適な例において、工程(ii)では、インスリンアスパルトの融合タンパク質の酵素切断系のpHが7.0-9.5、好ましくは8.0-9.5である。
【0024】
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、反応系にTFA(トリフルオロ酢酸)を入れ、前記脱保護処理を行う。
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記Boc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)とTFAの比が1 g:(4-10 mL)である。
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記脱保護反応の温度が4~37℃、好ましくは18~25℃である。
【0025】
もう一つの好適な例において、工程(iii)では、前記脱保護反応の時間が0.5~8 h、好ましくは0.5~3 hである。
もう一つの好適な例において、前記のBoc-インスリンアスパルトはN-ε-(t-ブトキシカルボニル)-リシンインスリンアスパルトである。
もう一つの好適な例において、工程(I)では、前記Boc修飾されたインスリンアスパルト(第二のタンパク質)の仕込み量≦45 mg/mlである。
【0026】
もう一つの好適な例において、工程(I)では、100-500 mmol/Lの塩化ナトリウムを利用して線形勾配溶離を行う。
もう一つの好適な例において、工程(II)では、100-500 mmol/Lの塩化ナトリウムを利用して定組成/勾配溶離を行う。
もう一つの好適な例において、工程(II)では、前記の溶離液Iにおけるインスリンアスパルトの仕込み量≦15 mg/mlで、好ましくは、前記の仕込み量≦10 mg/mlである。
【0027】
もう一つの好適な例において、工程(III)では、150-250 mmol/L、好ましくは180-220 mmol/Lの酢酸ナトリウムのアセトニトリル溶液を移動相として定組成溶離を行う。
もう一つの好適な例において、工程(III)では、前記の溶離液IIにおけるインスリンアスパルトの仕込み量≦6 mg/mlで、好ましくは、前記の仕込み量≦5 mg/mlである。
もう一つの好適な例において、工程(III)の後に、さらに、製造されたインスリンアスパルトに対して結晶化および凍結乾燥を行うことにより、凍結乾燥製品を製造する工程を含む。
【0028】
本発明の第六の側面では、本発明の第五の側面に記載の方法によって製造されるインスリンアスパルト製剤を提供する。
もう一つの好適な例において、前記のインスリンアスパルト製剤に含まれるインスリンアスパルトの純度が99%超である。
もう一つの好適な例において、前記のインスリンアスパルト製剤に含まれるインスリンアスパルトは生物活性を有する。
【0029】
本発明の第七の側面では、単離されたポリヌクレオチドであって、本発明の第一の側面に記載のインスリンアスパルトの融合タンパク質、本発明の第二の側面に記載のインスリンアスパルトの主鎖の融合タンパク質、本発明の第三の側面に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルト前駆体、あるいは本発明の第四の側面に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルトの主鎖をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0030】
本発明の第八の側面では、本発明の第七の側面に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
もう一つの好適な例において、前記のベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0031】
本発明の第九の側面では、本発明の第八の側面に記載のベクターを含有するか、あるいは染色体に外来の本発明の第七の側面に記載のポリヌクレオチドが組み込まれたか、あるいは本発明の第一の側面に記載のインスリンアスパルトの融合タンパク質、本発明の第二の側面に記載のインスリンアスパルトの主鎖の融合タンパク質、本発明の第三の側面に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルト前駆体、または本発明の第四の側面に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルトの主鎖を発現する宿主細胞を提供する。
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は、大腸菌、枯草菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞またはこれらの組み合わせである。
【0032】
本発明の第十の側面では、本発明の第一の側面に記載のインスリンアスパルトの融合タンパク質、本発明の第二の側面に記載のインスリンアスパルトの主鎖の融合タンパク質、本発明の第三の側面に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルト前駆体、あるいは本発明の第四の側面に記載のBoc修飾されたインスリンアスパルトの主鎖と、薬学的に許容される担体とを含む製剤または薬物組成物を提供する。
【0033】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、プラスミドpBAD-FP-TEV-R-Gのマップを示す。
図2図2は、プラスミドpEvol-pylRs-pylTのマップを示す。
図3図3は、封入体の変性・再生後のインスリンアスパルトの融合タンパク質のSDS-PAGE電気泳動パターンを示す。
図4図4は、1回目のクロマトグラフィー後のBoc-インスリンアスパルトのSDS-PAGE電気泳動パターンを示す。
図5図5は、脱保護後のインスリンアスパルトのHPLC検出スペクトルを示す。
図6図6は、2回目のクロマトグラフィー後のインスリンアスパルトのHPLC検出スペクトルを示す。
図7図7は、3回目のクロマトグラフィー後のインスリンアスパルトのHPLC検出スペクトルを示す。
図8図8は、インスリンアスパルト結晶の結晶図を示す。
図9図9は、Boc-インスリンアスパルトの質量分析グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者は、幅広く深く研究したところ、インスリンアスパルト誘導体およびその製造方法を見出した。具体的に、本発明は、緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位およびインスリンアスパルト前駆体またはその活性断片を含む融合タンパク質を提供する。本発明の融合タンパク質は、発現量が顕著に向上し、融合タンパク質におけるインスリンアスパルトのタンパク質のフォールディングが正確で、生物活性を有する。そして、本発明の融合タンパク質における緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位はプロテアーゼによって小さい断片に消化され、分子量が標的のタンパク質と大きく異なり、分離しやすい。また、本発明は、当該融合タンパク質を利用してインスリンアスパルトを製造する方法および中間体を製造する方法を提供する。
【0036】
用語
本開示が理解しやすくなるように、まず、一部の用語を定義する。本願に用いられるように、本明細書で別途に明確に規定しない限り、以下の用語はいずれも下記の意味を有する。出願全体において、ほかの定義が記述されている。
用語「約」とは当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内にある値または組成で、それによって部分的にどのように値または組成を計量または測定するかというのが決まる。
【0037】
インスリンアスパルト
インスリン系製品は糖尿病市場における最大の医薬品種で、市場シェアの53%程度を占め、そのうち、主に第三世代の組み換えインスリンである。インスリンアスパルトは第三世代の組み換えインスリンに属し、速効型インスリンで(または食事時インスリンと呼ばれる)、皮下注射から10~15分で作用が開始し、1~2時間でピーク値に達し、作用持続時間が4~6時間である。
【0038】
インスリンアスパルト発現プラスミドの構築
FP-TEV-R-Gの標的遺伝子を合成し、当該遺伝子の両末端に制限酵素NcoIおよびXhoIの認識部位があり、インスリンアスパルトのコード遺伝子Aが含まれている。当該配列はコドン最適化が行われ、機能タンパク質の大腸菌における高レベルの発現が実現できる。発現後、制限酵素NcoIおよびXhoIで発現ベクター「pBAD/His A(Kana)」および「FP-TEV-R-G」標的遺伝子を含有するプラスミドを酵素切断し、酵素切断産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、さらにアガロースゲルDNA回収キットによって抽出し、最後にT4 DNAリガーゼによって2つのDNA断片を連結した。前記連結産物を化学法によって大腸菌Top10細胞に形質転換させ、前記形質転換された細胞を50μg/mLカナマイシン含有LB寒天培地(10g/L酵母トリプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L NaCl、1.5%寒天)において一晩培養した。3つの生存集落を取り、5 mLの50μg/mLカナマイシン含有液体LB培地(10g/L酵母トリプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L NaCl)において一晩培養し、プラスミドミニプレップキットによってプラスミドを抽出した。その後、前記抽出されたプラスミドをシーケンシングすることにより、正確に挿入したか、確認した。最終的に得られたプラスミドを「pBAD-FP-TEV-R-G」と名付けた。
【0039】
融合タンパク質
緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位を利用し、2種類の融合タンパク質、すなわち、本発明の第一の側面に記載の1本鎖インスリンアスパルト前駆体を含むインスリンアスパルトの融合タンパク質および本発明の第二の側面に記載の2本鎖インスリンアスパルトを含む2本鎖インスリンアスパルトの融合タンパク質を構築した。実は、本発明の2種類の融合タンパク質の保護範囲は一部が重なることがあり、たとえば、融合タンパク質に含まれる2本鎖の様態のインスリンアスパルトは、B鎖のC末端が連結ペプチドを介してA鎖のN末端と連結してもよく、鎖内ジスルフィド結合を含む1本鎖とされてもよい。
【0040】
本発明の融合タンパク質に含まれる緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位FPは2-6個、好ましくは2-3個の以下の群から選ばれるβシート単位を含む。
【表3】
【0041】
もう一つの好適な例において、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位FPは、u8、u9、u2-u3、u4-u5、u8-u9、u1-u2-u3、u2-u3-u4、u3-u4-u5、u5-u6-u7、u8-u9-u10、u9-u10-u11、u3-u5-u7、u3-u4-u6、u4-u7-u10、u6-u8-u10、u1-u2-u3-u4、u2-u3-u4-u5、u3-u4-u3-u4、u3-u5-u7-u9、u5-u6-u7-u8、u1-u3-u7-u9、u2-u2-u7-u8、u7-u2-u5-u11、u3-u4-u7-u10、u1-I-u2、u1-I-u5、u2-I-u4、u3-I-u8、u5-I-u6、またはu10-I-u11から選ばれてもよい。
もう一つの好適な例において、前記の緑色蛍光タンパク質のフォールディング単位はu8-u9、u9-u10-u11、またはu10-u11である。
【0042】
本明細書で用いられるように、用語「融合タンパク質」は、さらに、上記活性を有する変異様態を含む。これらの変異様態は、1~3個(通常は1~2個、より好ましくは1個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端における1個または複数個(通常は3個以内、好ましくは2個以内、より好ましくは1個以内)のアミノ酸の付加または欠失を含むが、これらに限定されない。たとえば、本分野において、機能が近い、または類似のアミノ酸で置換する場合、通常、蛋白質の機能を変えることがない。また、C末端および/またはN末端における1個または複数個のアミノ酸の付加または欠失により、通常、蛋白質の構造および機能が変わることもない。また、前記用語は、単量体と多量体の様態の本発明のポリペプチドを含む。当該用語は、さらに、線形および非線形のポリペプチド(たとえば、環状ペプチド)を含む。
【0043】
本発明は、さらに、上記融合タンパク質の活性断片、誘導体および類似体を含む。本明細書で用いられるように、用語「断片」、「誘導体」および「類似体」とは、基本的に本発明の融合タンパク質の機能または活性を維持するポリペプチドをいう。本発明のポリペプチドの断片、誘導体および類似体は、(i)1個または複数個の保存的または非保存的なアミノ酸残基(好ましくは保存的なアミノ酸残基)が置換されたポリペプチドでもよく、あるいは(ii)1個または複数個のアミノ酸残基に置換基があるポリペプチドでもよく、あるいは(iii)ポリペプチドと別の化合物(たとえば、ポリエチレングリコールのようなポリペプチドの半減期を延ばす化合物)が融合してなるポリペプチドでもよく、あるいは(iv)付加のアミノ酸配列がこのポリペプチドに融合してなるポリペプチド(リーダー配列、分泌配列または6Hisなどのタグ配列と融合してなる融合タンパク質)でもよい。本明細書の開示に基づき、これらの断片、誘導体および類似体は当業者に公知の範囲に入っている。
【0044】
一部の好適な活性誘導体は、本発明のアミノ酸配列と比較すると、3個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下のアミノ酸が類似または近い性質を持つアミノ酸で置換されてなるポリペプチドをいう。これらの保存的突然変異のポリペプチドは、表Aのようにアミノ酸の置換を行って生成することが好ましい。
【表4】
【0045】
また、本発明は、本発明の融合タンパク質の類似体を提供する。これらの類似体と本発明のポリペプチドの違いは、アミノ酸配列の違いでもよく、配列に影響を与えない修飾形態の違いでもよく、あるいは両者でもよい。類似体は、さらに、天然L-アミノ酸と異なる残基(たとえばD-アミノ酸)を有する類似体、および非天然または合成のアミノ酸(たとえばβ、γ-アミノ酸)を有する類似体を含む。もちろん、本発明のポリペプチドは、上記で挙げられた代表的なポリペプチドに限定されない。
【0046】
また、本発明の融合タンパク質を修飾してもよい。修飾(通常は一次構造が変わらない)形態は、体内または体外のポリペプチドの化学的に誘導された形態、例えばアセチル化またはカルボキシ化を含む。修飾は、さらにグリコシル化、たとえばポリペプチドの合成および加工でまたはさらなる加工の工程でグリコシル化修飾を行ったポリペプチドも含む。このような修飾は、ポリペプチドをグルコシル化する酵素(たとえば哺乳動物のグリコシル化酵素または脱グリコシル化酵素)に露出させることによって完成する。修飾形態は、さらにリン酸化アミノ酸残基(たとえばリン酸チロシン、リン酸セリン、リン酸トレオニン)を有する配列を含む。さらに、修飾によって抗タンパク質加水分解性を向上させたポリペプチドまたは溶解性を改善したポリペプチドを含む。
【0047】
用語「本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド」は、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドでもよく、さらに付加のコードおよび/または非コード配列を含むポリヌクレオチドでもよい。
本発明は、さらに、本発明と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは融合タンパク質の断片、類似体および誘導体をコードする上記ポリヌクレオチドの変異体に関する。これらのヌクレオチド変異体は、置換変異体、欠失変異体および挿入変異体を含む。本分野で知られているように、対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチドの代替形態で、1つまたは2つ以上のヌクレオチドの置換、欠失または挿入でもよいが、実質的にそれによってコードされる融合タンパク質の機能が変わることはない。
【0048】
本発明は、さらに、上記の配列とハイブリダイズし、かつ2つの配列の間に少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の相同性を有するポリヌクレオチドに関する。本発明は、特に、厳格な条件で本発明に係るポリヌクレオチドとハイブリダイズできるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「厳格な条件」とは、(1)低いイオン強度および高い温度、たとえば0.2×SSC、0.1%SDS、60℃でのハイブリダイズおよび溶離、あるいは(2)ハイブリダイズ時変性剤、たとえば42℃で50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ胎児血清/0.1% Ficollなどを入れること、あるいは(3)2つの配列の間の相同性が少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の時だけハイブリダイズすることである。
【0049】
本発明の融合タンパク質およびポリヌクレオチドは、好ましくは分離された形態で提供し、より好ましくは均質に精製される。
本発明のポリヌクレオチドの全長配列は、通常、PCR増幅法、組み換え法または人工合成の方法で得られる。PCR増幅法について、本発明で公開された関連のヌクレオチド配列、特に読み枠によってプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリーまたは当業者に既知の通常の方法によって調製されるcDNAライブラリーを鋳型とし、増幅して関連配列を得る。配列が長い場合、通常、2回または2回以上のPCR増幅を行った後、各回の増幅で得られた断片を正確な順でつなげる必要がある。
【0050】
関連の配列を獲得すれば、組み換え法で大量に関連配列を獲得することができる。この場合、通常、その配列をベクターにクローンした後、細胞に導入し、さらに通常の方法で増殖させた宿主細胞から関連配列を単離して得る。
また、特に断片の長さが短い場合、人工合成の方法で関連配列を合成してもよい。通常、まず多数の小さい断片を合成し、そして連接させることにより、配列の長い断片を得ることができる。
【0051】
現在、本発明のタンパク質(またはその断片、あるいはその誘導体)をコードするDNA配列は全部化学合成で獲得することがすでに可能である。さらに、このDNA配列を本分野で周知の各種の既知のDNA分子(あるいはベクターなど)や細胞に導入してもよい。
【0052】
本発明のポリヌクレオチドを得るには、PCR技術でDNA/RNAを増幅する方法が好適に使用される。特にライブラリーから全長のcDNAを得ることが困難な場合、好適にRACE法(RACE-cDNA末端快速増幅法)を使用し、PCRに使用されるプライマーはここで公開された本発明の配列情報によって適切に選択し、かつ通常の方法で合成することができる。通常の方法、たとえばゲル電気泳動によって増幅されたDNA/RNA断片を単離、精製することができる。
【0053】
発現ベクター
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、および本発明のベクターまたは本発明の融合タンパク質コード配列で遺伝子工学によって生成する宿主細胞、ならびに組み換え技術によって本発明に係るポリペプチドを生成する方法にも関する。
【0054】
通常の組み換えDNA技術によって、本発明のポリヌクレオチド配列で組み換えの融合タンパク質を発現または生産することができる。一般的に、以下の工程を含む:
(1)本発明の本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(または変異体)を使用し、あるいはこのポリヌクレオチドを含む組み換え発現ベクターを使用し、適切な宿主細胞を形質転換または形質導入する;
(2)適切な培地において宿主細胞を培養する;
(3)培地または細胞からタンパク質を分離し、精製する。
【0055】
本発明において、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は組み換え発現ベクターに挿入してもよい。用語「組み換え発現ベクター」とは、本分野でよく知られている細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳動物ウイルス、たとえばアデノウイルス、レトロウイルスまたはほかのベクターである。宿主体内で安定して複製することができれば、どんなプラスミドおよびベクターでも使用できる。発現ベクターの重要な特徴の一つは、通常、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子および翻訳制御エレメントを含むことである。
【0056】
本発明の融合タンパク質のコードDNA配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターの構築に当業者によく知られている方法を使用することができる。これらの方法は、体外組み換えDNA技術、DNA合成技術、体内組み換え技術などを含む。前記のDNA配列は、有効に発現ベクターにおける適切なプロモーターに連結し、mRNA合成を指導することができる。これらのプロモーターの代表的な例として、大腸菌のlacまたはtrpプロモーター、λファージのPLプロモーター、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーターを含む真核プロモーター、レトロウイルスのLTRsやほかの既知の制御可能な遺伝子の原核または真核細胞あるいはそのウイルスにおける発現されるプロモーターが挙げられる。発現ベクターは、さらに、翻訳開始用リボゾーム結合部位および転写ターミネーターを含む。
【0057】
また、発現ベクターは、好ましくは1つまたは2つ以上の選択性マーカー遺伝子を含み、形質転換された宿主細胞を選択するための形質、たとえば真核細胞培養用のジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性および緑色蛍光タンパク質(GFP)、あるいは大腸菌用のテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性を提供する。
上記の適切なDNA配列及び適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターは、適切な宿主細胞を形質転換し、タンパク質を発現するようにすることができる。
【0058】
宿主細胞は、原核細胞、たとえば細菌細胞、あるいは、低等真核細胞、たとえば酵母細胞、あるいは、高等真核細胞、たとえば哺乳動物細胞でもよい。代表例として、大腸菌、ストレプトマイセス属、ネズミチフス菌のような細菌細胞、酵母のような真菌細胞、植物細胞(たとえばオタネニンジン細胞)がある。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドが高等真核細胞において発現される場合、ベクターにエンハンサー配列を挿入すると転写が強化される。エンハンサーは、DNAのシスエレメントで、通常、約10~300bpで、プロモーターに作用して遺伝子の転写を強化する。例を挙げると、複製起点の後期側にある100~270bpのSV40エンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーなどを含む。
当業者は、どうやって適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび宿主細胞を選択するか、よくわかる。
【0060】
DNA組み換えによる宿主細胞の形質転換は当業者に熟知の通常の技術で行ってもよい。宿主が原核細胞、たとえば大腸菌である場合、DNAを吸収できるコンピテントセルは指数成長期後収集でき、CaCl法で処理し、用いられる工程は本分野では周知のものである。もう一つの方法は、MgClを使用する。必要により、形質転換はエレクトロポレーションの方法でもよい。宿主が真核生物の場合、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションのような通常の機械方法、リポフェクションなどのDNAトランスフェクションの方法が用いられる。
【0061】
得られる形質転換体は通常の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現することができる。用いられる宿主細胞によって、培養に用いられる培地は通常の培地を選んでもよい。宿主細胞の成長に適する条件で培養する。宿主細胞が適当の細胞密度に成長したら、適切な方法(たとえば温度転換もしくは化学誘導)で選んだプロモーターを誘導し、さらに細胞を培養する。
【0062】
上記の方法における組み換えポリペプチドは細胞内または細胞膜で発現し、あるいは細胞外に分泌することができる。必要であれば、その物理・化学的特性およびほかの特性を利用して各種の単離方法で組み換えタンパク質を単離・精製することができる。これらの方法は、本分野の技術者に熟知である。これらの方法の例として、通用の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心、浸透圧ショック、超音波処理、超遠心、分子篩クロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびほかの各種の液体クロマトグラフィー技術、ならびにこれらの方法の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0063】
本発明の主な利点は以下の通りである。
(1) 本発明の方法は、発酵液の上清における過剰な無機塩を希釈、限外ろ過・液置換などの方法によって除去する必要がなく、得られる封入体の純度が高く、そして色素が少なく、後の精製の分離物質を減少させ、精製コストを低下させる。そして、本方法における陽イオンクロマトグラフィーによるインスリンアスパルトの分離では、ワンステップの収率が80%以上である。
(2) B29位のBocリシンの保護により、トリプターゼの酵素切断時、B29位のリシンを認識せず、des(B30)の副産物が発生せず、酵素切断の収率を向上させることができ、そしてインスリンアスパルトアナログの不純物を減少させ、後の精製・分離を便利にさせる。
【0064】
(3) 酵素切断の過程において、酵素の添加比率を最適化し、酵素切断の温度を制御することにより、酵素切断の収率を向上させる。
(4) 脱保護工程においてBoc-インスリンアスパルトがインスリンアスパルトに転換し、有機系において行う必要がなく、プロセス工程が減少し、環境汚染が少なく、コストがより低い。
【0065】
(5) 本発明では、通常の4工程のクロマトグラフィーの代わりに、ツーステップイオン交換クロマトグラフィーおよびワンステップ逆相クロマトグラフィーによって分離・精製し、生産周期を短縮させ、そして有機溶媒の使用を減少させ、コストを節約する。
(6) 本発明の融合タンパク質に含まれるインスリンアスパルトの比率が高く(融合比が増加し)、融合タンパク質におけるFPまたはA-FPにアルギニンおよびリシンが含まれ、プロテアーゼによって小さい断片に消化され、分子量が標的のタンパク質と大きく異なり、分離しやすい。
【0066】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0067】
実施例1 インスリンアスパルト発現菌株の構築および発現
インスリンアスパルト発現プラスミドの構築は中国特許出願番号201910210102.9における実施例の記載を参照する。融合タンパク質FP-TEV-R-Gを含有するDNA断片を、発現ベクターであるプラスミドpBAD/His A(NTCC社から購入、カナマイシン耐性)のaraBADプロモーターの下流のNcoI-XhoI部位にクローニングし、プラスミドpBAD-FP-TEV-R-Gを得た。プラスミドのマップは図1に示す。
【0068】
さらに、pylRsのDNA配列を、発現ベクターであるプラスミドpEvol-pBpF(NTCC社から購入、クロラムフェニコール耐性)のaraBADプロモーターの下流のSpeI-SalI部位にクローニングし、同時にproKプロモーターの下流に、PCR方法によってリジル-tRNA合成酵素のtRNA(pylTcua)のDNA配列を挿入した。当該プラスミドはpEvol-pylRs-pylTと名付けられた。プラスミドのマップは図2に示す。
【0069】
構築されたプラスミドpBAD-FP-TEV-R-GおよびpEvol-pylRs-pylTを大腸菌TOP10菌株に共形質転換させ、クリーニングしてインスリンアスパルトの融合タンパク質FP-TEV-R-Gを発現する組み換え大腸菌株を得た。ここで、FPの配列がu8-u9(配列番号3)で、融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号1である。
【化5】
【0070】
同様の方法を使用し、以下の発現プラスミドを構築した。
pBAD- FP(u9-u10-u11)-TEV-R-G、融合タンパク質のアミノ酸配列
【化6】
【0071】
pBAD- FP(u10-u11)-TEV-R-G、融合タンパク質のアミノ酸配列
【化7】
【0072】
pBAD- FP(gIII)-R-G、融合タンパク質のアミノ酸配列
【化8】
ここで、FP(gIII)は緑色蛍光タンパク質のgIIIシグナルペプチドを表す。
【0073】
本分野の通常の方法を使用し、相応する発現菌株を構築し、インスリンアスパルトの融合タンパク質の発現量に対して電気泳動による検出を行った。
【表5】
【0074】
シード培地を調製し、接種し、二次培養を経て二次シード液を調製し、20 h培養し、OD600が180程度になり、発酵を終了させ、約3 Lの発酵液を得、遠心して約130 g/Lの湿潤菌体を得た。発酵液を遠心した後、破砕緩衝液を入れ、高圧ホモジナイザーで2回菌を破砕させ、遠心後、ツイン80およびEDTA-2Naなどを入れて洗浄し、そして水で1回洗浄し、遠心して沈殿を収集し、封入体を得た。発酵液1リットルあたりで最終的に湿重量が約43 gの封入体を得ることができる。
【0075】
実施例2 封入体の溶解および再生
得られた封入体に8 mol/Lの尿素溶解液を入れ、水酸化ナトリウムでpHが9.0~10.0になるように調整し、室温で1-3 h撹拌し、タンパク質濃度が10~20 mg/mLになるように制御し、最終濃度が15-20 mmol/Lになるようにβ-メルカプトエタノールを追加し、続いて0.5~1.0 h撹拌した。
封入体溶解液を再生緩衝液に滴下し、5-10倍希釈して再生させ、再生液のpHを9.0-10.0に維持し、撹拌再生時間が10~20 hであった。
20 h再生した後、HPLCによって再生のフォールディングが正確なインスリンアスパルトの融合含有量を検出したところ、再生率が75%以上に達した。図3は、封入体の変性・再生後のインスリンアスパルトの融合タンパク質のSDS-PAGE電気泳動パターンを示す。
【0076】
実施例3 融合タンパク質の酵素切断
再生液に希塩酸を入れてpHを8.0-9.5に調整し、組み換えトリプターゼと再生液の合計タンパク質の質量比が1:3000になるように組み換えトリプターゼを入れ、カルボキシペプチダーBと再生液の合計タンパク質の質量比が1:15000になるようにカルボキシペプチダーBを入れ、酵素切断の温度が36-38℃で、酵素切断の時間が14-20 hで、酵素切断後、Boc-インスリンアスパルトを得た。
16 h酵素切断した後、HPLCによって酵素切断液におけるBoc-インスリンアスパルトの含有量を検出し、連続2時間で検出されたBoc-インスリンアスパルトの濃度の差が3%未満になると、酵素切断が完成した。最終的に、酵素切断液におけるBoc-インスリンアスパルトの濃度が0.4-0.6 g/Lで、酵素切断率が80%以上であった。
【0077】
実施例4 1回目のクロマトグラフィー
タンパク質の等電点の差により、陰イオン交換フィラーを選んでBoc-インスリンアスパルトを粗抽出した。3-5倍カラム体積の5-20 mmol/L炭酸ナトリウム、pH8.0-9.0の緩衝液でクロマトグラフィーカラムを平衡化し、Boc-インスリンアスパルトが陰イオンフィラーと十分に結合し、仕込み量が45 g/L未満で、仕込み終了後、15倍カラム体積の100-500 mmol/L塩化ナトリウムで線形溶離し、溶離タンパク質溶液を収集し、SDSタンパク質ゲル電気泳動の検出結果は図4を参照する。Boc-インスリンアスパルトの収率が90%以上で、純度が70%以上であった。
【0078】
実施例5 脱保護
陰イオン交換クロマトグラフィーによって粗抽出されたBoc-インスリンアスパルトを乾燥した後、Boc-インスリンアスパルトの乾燥粉末を得た。得られたBoc-インスリンアスパルトの乾燥粉末について質量分析を行い、質量分析グラフは図9に示す。結果から、検出されたBoc-インスリンアスパルトの分子量が5921.644 Daで、その計算値が5925.6 Daであったことが示され、標的タンパク質が得られたことがわかった。
1 gのBoc-インスリンアスパルトの乾燥粉末に4-10 mLのTFAを入れ、室温18-25℃で撹拌して0.5-3.0 h反応させ、反応終了後、NaOHを入れてタンパク質溶液のpHを2.5以上に調整して脱保護反応を停止させ、最終的にインスリンアスパルトを得たが、HPLCによって測定された脱保護収率が90%以上で、純度が75%以上で、HPLC検出結果は図5を参照する。
【0079】
実施例6 2回目のクロマトグラフィー
物質が持つ電荷の差により、陰イオン交換クロマトグラフィー技術によってインスリンアスパルトを精製することにより、一部の不純物を除去した。3-5倍体積の20 mmol/Lグリシン、pH9.0の緩衝液でイオンカラムを平衡化し、インスリンアスパルトタンパク質溶液が陽イオンフィラーと結合し、インスリンアスパルトの仕込み量が10 mg/mL以下になるように制御し、最後に0.27 mol/L塩化ナトリウム溶液で定組成溶離を行い、インスリンアスパルトのサンプルを収集した。収集液におけるインスリンアスパルトの純度が97.83%で、収率が87.96%であった。HPLC検出スペクトルは図6を参照する。
【0080】
実施例7 3回目のクロマトグラフィー
物質の疎水性の差により、逆相クロマトグラフィーカラム技術によってインスリンアスパルトをファイン精製した。2回目のクロマトグラフィーによって得られたインスリンアスパルトを純水で4倍以上希釈し、C8逆相フィラーと結合させた。インスリンアスパルトの仕込み量が5 mg/mL以下になるように制御し、10CVの200 mmol/L酢酸、26%アセトニトリルなどで定組成溶離を行った。結果から、インスリンアスパルトの収率が93.8%で、純度が99.70%であったことが示された。その検出結果は図7を参照する。
【0081】
実施例8 結晶化および凍結乾燥
3回目のクロマトグラフィーの溶離収集液に蒸留水を入れてアセトニトリル溶液を含有量が15%(v/v)以下になるように希釈し、溶液に順に最終濃度で0.7 mol/Lグリシン、0.8 mol/L塩化ナトリウム、0.5%飽和フェノールを入れ、さらにモル比1:3で酢酸亜鉛を入れ、酢酸でpHを5.6-6.0に調整し、4-8 ℃で結晶を16 h以上静置し、顕微鏡において棒状結晶の形成が観察された(図8を参照する)。結晶を収集して凍結乾燥し、インスリンアスパルトの原薬を得た。
【0082】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】