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特表2023-529004金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/34 20060101AFI20230629BHJP
   C23F 1/40 20060101ALI20230629BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C23F1/34
C23F1/40
H05K3/38 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576342
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2021065663
(87)【国際公開番号】W WO2021250182
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20179696.8
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテック ドイチュラント ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D-10553 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラース コールマン
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ブルナー
【テーマコード(参考)】
4K057
5E343
【Fターム(参考)】
4K057WA05
4K057WA20
4K057WB01
4K057WB03
4K057WB04
4K057WE21
4K057WE25
4K057WF06
4K057WN01
5E343AA02
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB34
5E343BB44
5E343BB45
5E343BB48
5E343BB53
5E343CC46
5E343EE53
5E343ER32
5E343GG01
(57)【要約】
本発明は、金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物であって、該組成物は、(a)式IおよびII[式中、XおよびYは、独立して、酸素、NRR’およびNRを含む群から選択され、R、R’およびRは、独立して、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物およびC~Cアルキルを含む群から選択され、芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、RおよびRは、独立して、水素、アルキル化合物、アミンおよび含窒素複素芳香族化合物を含む群から選択され、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよいが、ただし、Rは、水素であってはならず、式(I)を有する化合物において、Xが酸素である場合、Rは、水素またはアルキル化合物であってはならず、mは、1~4の整数、好ましくは3であり、nは、0~8、好ましくは2~4の整数であり、mおよびnは、同一であっても異なっていてもよい]を有する化合物および/またはその塩を含む群から選択される、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩と、(b)被処理金属表面の金属を酸化させるための酸化剤とを含み、該塩基性水系エッチング組成物は、7.1~14のpHを有する、塩基性水系エッチング組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物であって、前記組成物は、
(a)式IおよびII
【化1】
[式中、
XおよびYは、独立して、酸素、NRR’およびNRを含む群から選択され、
R、R’およびRは、独立して、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物およびC~Cアルキルを含む群から選択され、前記芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、
は、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、
およびRは、独立して、水素、アルキル化合物、アミンおよび含窒素複素芳香族化合物を含む群から選択され、
およびRは、同一であっても異なっていてもよいが、ただし、Rは、水素であってはならず、
さらに、式Iを有する化合物において、Xが酸素である場合、Rは、アルキル化合物であってはならず、
mは、1~4の整数、好ましくは3であり、
nは、0~8、好ましくは2~4の整数であり、
mおよびnは、同一であっても異なっていてもよい]を有する化合物および/またはその塩を含む群から選択される、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩と、
(b)被処理金属表面の金属を酸化させるための酸化剤と
を含み、
前記塩基性水系エッチング組成物は、7.1~14のpHを有する、塩基性水系エッチング組成物。
【請求項2】
Xは、酸素およびNRを含む群から選択され、
は、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物、およびC~Cアルキルを含む群から選択され、前記芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
好ましくは、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
より好ましくは、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、Rは、水素およびCまたはCアルキルを含む群から選択され、
最も好ましくは、Rは、水素およびメチルを含む群から選択される、請求項1記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項3】
前記官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩は、式IIを有する化合物および/またはその塩として選択され、Yは、酸素およびNRR’’を含む群から選択され、
RおよびR’’は、独立して、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物、およびC~Cアルキルを含む群から選択され、前記芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
より好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびCまたはCアルキルを含む群から選択され、
最も好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびメチルを含む群から選択される、請求項1または2記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項4】
は、水素として選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項5】
およびRの少なくとも1つは、分岐状であっても非分岐状であってもよいアルキル化合物として、好ましくはC~Cアルキルとして、より好ましくはC~Cアルキルとして、さらにより好ましくはCまたはCアルキルとして、最も好ましくはイソプロピルまたはイソペンチルとして選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項6】
およびRの少なくとも1つは、NH、NHRおよびNRを含む群から選択され、
およびRは、独立して、C~C16アルキル、5~16員アリールおよび5~16員ヘテロアリールであって、任意にOR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含むものを含む群から選択され、
好ましくは、RおよびRは、独立して、C~C10アルキル、5~10員アリールおよび5~10員ヘテロアリールであって、任意にOR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含むものを含む群から選択され、
より好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、5~6員アリールおよび5~6員ヘテロアリールであって、任意にOR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含むものを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、フェニル、イミダゾールおよびピリジンであって、任意にOR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含むものを含む群から選択され、
最も好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキルとして選択され、
さらに最も好ましくは、RおよびRは、独立して、メチルとして選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項7】
およびRの少なくとも1つは、含窒素複素芳香族化合物として選択され、
好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、1~4個の窒素原子を含む4~10員複素芳香族化合物として選択され、前記4~10員複素芳香族化合物は任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
より好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、1~3個の窒素原子を含む4~8員複素芳香族化合物として選択され、前記4~8員複素芳香族化合物は任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびCまたはCアルキルを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、1~2個の窒素原子を含む5~6員複素芳香族化合物として選択され、前記5~6員複素芳香族化合物は任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
最も好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、イミダゾールおよびピリジンを含む群から選択され、前記イミダゾールおよびピリジンは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、
さらに最も好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、イミダゾールおよびピリジンを含む群から選択され、前記イミダゾールおよびピリジンは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項8】
nは、0~4の整数であり、好ましくは0、1または3である、請求項1から7までのいずれか1項記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項9】
前記官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩は、式Iを有する化合物および/またはその塩として選択され、Xは、酸素およびNHを含む群から選択され、mは、3であり、nは、0または3であり、
は、以下:
(a)NH、NHRおよびNRであり、ここで、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチルであって、任意にNR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される1つの置換基を含むものとして選択され、
(b)4~10員複素芳香族化合物、好ましくは5~6員複素芳香族化合物、より好ましくはイミダゾールまたはピリジンであって、任意にC~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含むもの、および
(c)C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはCまたはCアルキル、最も好ましくはイソプロピル
を含む群から選択され、Rは、以下:
(a)水素、
(b)NH、NHRおよびNRであって、ここで、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチルであって、任意にNR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される1つの置換基を含むものとして選択され、
(c)4~10員複素芳香族化合物、好ましくは5~6員複素芳香族化合物、より好ましくはイミダゾールまたはピリジンであって、任意にC~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含むもの、および
(d)C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはCまたはCアルキル、最も好ましくはイソプロピル
を含む群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項10】
前記式IおよびIIを有する化合物および/またはその塩は、前記組成物の総重量に対して1重量%~15重量%の総濃度で、好ましくは2重量%~14重量%、より好ましくは3重量%~13重量%、さらにより好ましくは4重量%~13重量%、最も好ましくは5重量%~12.5重量%の総濃度で、前記組成物中に存在する、請求項1から9までのいずれか1項記載の塩基性水系エッチング組成物。
【請求項11】
金属基材表面の処理方法であって、
(A)前記金属基材を提供するステップと、
(B)請求項1から10までのいずれか1項記載の金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物を提供するステップと、
(C)前記金属基材を前記塩基性水系エッチング組成物と接触させて、前記金属基材表面をエッチングするステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記方法は、以下のさらなるステップ:
(D)方法ステップ(C)の後に、前記塩基性水系エッチング組成物を再循環させるステップであって、ステップ(D)は、
(D1)前記塩基性水系エッチング組成物の温度を上昇させて、温度が上昇した塩基性水系エッチング組成物を得るステップと、
(D2)前記温度が上昇した塩基性水系エッチング組成物を濾過して、濾過済み塩基性水系エッチング組成物を得るステップと、
(D3)前記濾過済み塩基性水系エッチング組成物を方法ステップ(C)に再度適用するステップと
を含むものとする、ステップ
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
エッチング済み表面を有する金属基材であって、前記金属基材の前記エッチング済み表面は、請求項11または12記載の金属基材表面の処理方法によって得られたものである、金属基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様による本発明は、金属基材表面処理用の、特に銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルト表面処理用の塩基性水系エッチング組成物に関する。
【0002】
第2の態様によれば、本発明はさらに、第1の態様による塩基性水系エッチング組成物を用いた、金属基材表面、特に銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルト表面の処理方法に関する。
【0003】
第3の態様によれば、本発明はさらに、エッチング済み表面、特に銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルト表面を有する金属基材であって、金属基材のエッチング済み表面は、第2の態様による金属基材表面の処理方法によって得られたものである、金属基材に関する。
【0004】
発明の背景
プリント基板の製造では、銅表面をエッチングフォトレジストやソルダーレジスト等のドライフィルムで被覆する前に、銅表面とレジストとの密着性を促進させるために、銅の表面処理が行われる。研磨方法には、バフ研磨等の機械研磨工程と化学研磨工程が含まれ得る。微細な配線パターンを有する基材の処理では、通常、化学研磨が用いられる。多層プリント基板の製造では、例えば銅表面に酸化膜を形成し、酸化膜の幾何学的形状を維持したまま還元剤により酸化膜を金属銅に還元することで、銅導電性パターン層と樹脂層との密着性を促進することが試みられてきた。
【0005】
銅表面は、酸化処理を施すと変色するのが一般的である。エッチング銅表面の望ましい色は、わずかに赤色ないし褐色であり、光沢を示さない。このような色は一般的に、ラミネートの良好な密着性をもたらすある種の粗さに関連している。しかし、望ましい色の変化は、用途によっても異なる。ラミネートの外面に存在する銅層には赤みがかった色が望まれるが(例えば、ドライフィルムやソルダーレジスト用途)、処理済みの銅表面が有機マトリックス内に保持される多層用途では、より濃い色が許容されることがある。このような色の変化については、表面上の酸化銅の膜や有機銅錯体の形成によっても説明がつく。多くのインライン分析装置では銅表面の色に着目されるため、その他の変色は望ましくないものであり、製造中にスクラップが発生する原因となる。
【0006】
当該技術分野で説明される多くの方法のさらなる制限は、既にソルダーマスクやフォトレジストを有しているエッチング銅表面に無電解スズやENIG(electroless nickel immersion gold、無電解ニッケル/置換金メッキ)などの最終仕上げを堆積させる際の望ましくないアンダーカットの発生であり、アンダーカットは、銅表面と有機マトリックスとの密着が不十分であることの結果であり得る。
【0007】
通常、エッチング銅表面上に堆積させた有機マトリックスは、矩形の縁部を有することが望ましい。有機マトリックス自体の堆積または金属メッキプロセスのいずれかによって、そのような縁部が、有機マトリックスの例えば断面において視認可能なくさび状の形態を形成する半端な角度で残る場合、これはアンダーカットと呼ばれる。
【0008】
米国特許出願公開第2018/0312978号明細書には、銅および銅合金表面用の表面処理溶液および銅または銅合金表面の処理方法が開示されている。この表面処理溶液は、酸と、過酸化水素、金属過酸化物、金属超酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択される酸化剤と、少なくとも1つの塩化物イオン源と、少なくとも1つの臭化物イオン源とを含む。
【0009】
国際公開第02/04706号には、銅表面を処理するための酸性処理液および方法が開示されている。この酸性処理液は、過酸化水素と、少なくとも1つの5員複素環化合物と、チオール、ジスルフィド、スルフィドおよびチオアミドを含む群から選択される少なくとも1つの微細構造改質剤とを含む。
【0010】
欧州特許第2248402号明細書には、非エッチングノンレジスト接着剤組成物およびワークピースの製造方法が開示されている。この非エッチングノンレジスト接着剤組成物は、少なくとも1つのチオール部分を含む複素環式化合物と、アクリル化合物と、第四級アンモニウムポリマーとを含む群から選択される少なくとも1つの接着剤を含む。
【0011】
米国特許第3,809,588号明細書には、ペルオキシ含有化合物と、銅の錯化剤と、エッチング液安定剤とを含む、銅のエッチングに有用なエッチング液が開示されている。
【0012】
しかし、従来の方法や処理液の中には、例えば銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルト表面のような多種多様な金属表面を、十分に効率的なエッチング速度で効率的にエッチングすることができないものがある。
【0013】
さらに、従来の方法や処理液では、処理表面の十分に有利な粗さを達成することができない場合があり、その後に行われるこうしたエッチング表面への追加の金属または樹脂構造体の堆積が十分に機能しないことがある。
【0014】
本発明の目的
したがって、本発明の第1の目的は、処理金属表面の効率的なエッチング、特に効果的な、特に一定のエッチング速度でのエッチングを可能にする、金属基材表面処理用のエッチング組成物、および金属基材表面の処理方法を提供することであった。
【0015】
したがって、本発明の第2の目的は、複数の異なる金属または金属合金表面、例えば銀、パラジウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、亜鉛、鉛、アンチモン、スズ、希土類金属、例えばネオジム、銅-亜鉛合金、銅-スズ合金、銅-ニッケル合金および/またはアルミニウム-マグネシウム合金表面、特に銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルト表面の処理に使用することができる、金属基材表面処理用のエッチング組成物、および金属基材表面の処理方法を提供することであった。
【0016】
したがって、本発明の第3の目的は、処理金属表面の効果的な粗さが得られ、その後の追加の層の効率的な堆積、特に不透明な表面の生成を可能にする、金属表面処理用のエッチング組成物、および金属表面の処理方法を提供することであった。
【0017】
したがって、本発明の第4の目的は、複数の異なる金属基材の処理に使用することができ、例えば、一方では一般製造業の技術分野における大面積の金属表面の処理に、また他方では電子工学の技術分野におけるプリント基板上の微細構造の処理に使用することができる、金属基材表面処理用のエッチング組成物、および金属基材表面の処理方法を提供することであった。
【0018】
したがって、本発明の第5の目的は、エッチング組成物を再生することができ、環境に優しく費用対効果の高いプロセスが可能となる、金属基材表面処理用のエッチング組成物、および金属基材表面の処理方法であった。
【0019】
したがって、本発明の第6の目的は、エッチングにより各金属表面から除去された金属イオンを、エッチング組成物において効果的に安定化させて析出を防止する、金属基材表面処理用のエッチング組成物、および金属基材表面の処理方法を提供することであった。
【0020】
したがって、本発明の第7の目的は、処理金属表面上に続いて堆積される追加の層が、優れた機能的および/または装飾的品質を有する、金属表面処理用のエッチング組成物、および金属表面の処理方法を提供することであった。
【0021】
したがって、本発明の第8の目的は、毒性が低減された化合物を含む、金属表面処理用のエッチング組成物、および金属表面の処理方法を提供することであった。
【0022】
発明の概要
上記の第1~第8の目的は、第1の態様によれば、金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物であって、該組成物は、
(a)式IおよびII
【化1】
[式中、
XおよびYは、独立して、酸素、NRR’およびNRを含む群から選択され、
R、R’およびRは、独立して、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物およびC~Cアルキルを含む群から選択され、芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、
は、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、
およびRは、独立して、水素、アルキル化合物、アミンおよび含窒素複素芳香族化合物を含む群から選択され、
およびRは、同一であっても異なっていてもよいが、ただし、Rは、水素であってはならず、
式Iを有する化合物において、Xが酸素である場合、Rは、水素またはアルキル化合物であってはならず、
mは、1~4の整数、好ましくは3であり、
nは、0~8、好ましくは2~4の整数であり、
mおよびnは、同一であっても異なっていてもよいが、nおよびmは、同時に0であってはならない]を有する化合物および/またはその塩を含む群から選択される、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩と、
(b)被処理金属表面の金属を酸化させるための酸化剤と
を含み、
該塩基性水系エッチング組成物は、7.1~14、好ましくは8~12のpHを有する、塩基性水系エッチング組成物により達成される。
【0023】
金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物は、最適化されたエッチング速度を有する多種多様な金属表面の効率的なエッチングを可能にする。
【0024】
特に、塩基性水系エッチング組成物は、銀、パラジウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、亜鉛、鉛、アンチモン、スズ、希土類金属、例えばネオジム、銅-亜鉛合金、銅-スズ合金、銅-ニッケル合金、および/またはアルミニウム-マグネシウム合金表面、特に銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルト表面の効率的なエッチングを可能にするものである。
【0025】
さらに、塩基性水系エッチング組成物は、効率的な、特に一定のエッチング速度がエッチングプロセス中に維持されることを保証するものである。効率的なエッチング速度により、エッチングプロセス中に金属表面から金属を効率的に除去することができ、その結果、材料消費を最小限に抑えることができる。効率的なエッチングプロセスは特に、エッチング速度が一定であることを特徴とし、これにより、エッチングプロセス中に金属表面から金属を均一に除去することができ、その結果、エッチングプロセス後に得られる金属表面が一様になる。
【0026】
さらに、塩基性水系エッチング組成物は、処理金属表面の効果的な粗さを可能にするものであり、その結果、処理金属表面上に続いて堆積される追加の層の密着性が向上する。処理金属表面のそのような効果的な粗さを追加の堆積層に伝えることができ、結果的に、この追加の堆積層も高い粗さを有することとなり、それにより、追加の堆積層の望ましい不透明色が得られる。
【0027】
さらに、塩基性水系エッチング組成物は、一般製造業の技術分野における広い表面領域や、例えば電子工学の技術分野におけるプリント基板のような微細表面領域といった様々な異なる金属基材の処理に適用することが可能である。
【0028】
さらに、塩基性水系エッチング組成物の式IおよびIIを有する化合物を含む群から選択される官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩は、処理金属表面から除去された金属イオンを、該組成物内で特にキレート化により効率的に安定化させることができるため、前記金属イオンの析出傾向を最小限に抑えることができる。
【0029】
特に、塩基性水系エッチング組成物はさらなる錯化剤や安定剤の添加を必要とせず、また塩基性水系エッチング組成物は好ましくは、得られた金属イオンを安定化させるための追加の錯化剤や安定剤を明示的に含まない。なぜならば、本発明による官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体は、金属のエッチングと、得られた金属イオンのキレート形成とを同時に行うことができるためである。
【0030】
さらに、式IおよびIIの化合物は、先行技術において以前に使用された他のエッチング化合物よりも毒性が低い。
【0031】
第1の態様による塩基性水系エッチング組成物の追加の特別な利点は、該組成物の化合物を再生することができ、環境に優しく費用対効果の高いプロセスが可能となることである。
【0032】
上記の第1~第8の目的は、第2の態様によれば、金属基材表面の処理方法であって、
(A)前記金属基材を提供するステップと、
(B)第1の態様による金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物を提供するステップと、
(C)金属基材を前記塩基性水系エッチング組成物と接触させて、金属基材表面をエッチングするステップと
を含む方法により達成される。
【0033】
前記処理方法により、被処理金属基材表面のより優れたエッチングが可能となる。
【0034】
上記の第1~第8の目的は、第3の態様によれば、エッチング表面を有する金属基材であって、金属基材のエッチング表面は、第2の態様による金属基材表面の処理方法により得られたものである、金属基材により達成される。
【0035】
前記金属基材は、効果的なエッチング表面を提供する。
【0036】
表の簡単な説明
表1および表2に、各塩基性水系エッチング組成物を用いて銅基材表面をエッチングした後に得られるエッチング効率として表されるエッチング性能に関して、様々な塩基性水系エッチング組成物によりpH値を変化させた官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン化合物間の概略的な相関関係を示す。なお、(C1)、(C2)および(E1)~(E7)、ならびに(C3)、(C4)および(E8)~(E18)の各欄は、異なる塩基性水系エッチング組成物を表す。
【0037】
表3に、表1の各塩基性水系エッチング組成物を用いて銅基材表面をエッチングした後に得られる、各銅基材の各種エッチング面と、表面粗さSで表される各エッチング面の粗さとの概略的な相関関係を示す。
【0038】
さらなる詳細は、本明細書中の後述の「実施例」の項に記載する。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明の文脈において、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という用語は、「1つ、2つ、または3つ以上」を表す(かつこれと互換的である)。
【0040】
本発明によるC~Cという用語は、X個の炭素原子からY個の炭素原子までの総数を含む物質を意味する。例えば、C~Cアルキルという用語は、炭素原子1個から炭素原子6個までの総数を含むアルキル化合物を意味する。
【0041】
第1の態様によれば、本発明は、金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物であって、該組成物は、
(a)式IおよびII
【化2】
[式中、
XおよびYは、独立して、酸素、NRR’およびNRを含む群から選択され、
R、R’およびRは、独立して、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物およびC~Cアルキルを含む群から選択され、芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、
は、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、
およびRは、独立して、水素、アルキル化合物、アミンおよび含窒素複素芳香族化合物を含む群から選択され、
およびRは、同一であっても異なっていてもよいが、ただし、Rは、水素であってはならず、
さらに、式Iを有する化合物において、Xが酸素である場合、Rは、アルキル化合物であってはならず、
mは、1~4の整数、好ましくは3であり、
nは、0~8、好ましくは2~4の整数であり、
mおよびnは、同一であっても異なっていてもよいが、nおよびmは、同時に0であってはならない]を有する化合物および/またはその塩を含む群から選択される、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩と、
(b)被処理金属表面の金属を酸化させるための酸化剤と
を含み、
該塩基性水系エッチング組成物は、7.1~14、好ましくは8~12のpHを有する、塩基性水系エッチング組成物を提供する。
【0042】
本発明の一実施形態では、塩基性水系エッチング組成物は、式IおよびIIを有する化合物および/またはその塩を含む群から選択される官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩と、被処理金属表面の金属を酸化させるための酸化剤とからなり、塩基性水系エッチング組成物は、上記のように7.1~14、好ましくは8~12のpHを有する。好ましくは、酸化剤は、大気中酸素が塩基性水系エッチング組成物中に溶け込んだものからなる。
【0043】
第1の態様によれば、置換基RおよびRは、独立して、特に水素を含む群から選択され、式IまたはIIの化合物の置換基は、同一であっても異なっていてもよいが、ただし、Rは、水素であってはならない。これは、置換基Rを水素として選択することはできるが、置換基Rを水素として選択することはできないことを意味し、それにより、例えばメチル尿素、HN-CO-NH-CHが式Iの化合物に包含されることが排除される。
【0044】
第1の態様によれば、置換基RおよびRは、独立して、特にアルキル化合物を含む群から選択され、前記アルキル化合物は、分岐状であっても非分岐状であってもよく、前記アルキル化合物は、好ましくは、非置換であるかまたは置換基、特にエーテル置換基を含むが、ただしさらに、式Iを有する化合物において、Xが酸素である場合、Rは、アルキル化合物であってはならない。これは、置換基Rを水素またはアルキル化合物として選択することはできるが、置換基Rをメチル、エチル等として選択することはできず、それにより、例えばエチル尿素、N,N’-ジメチル尿素またはN,N’-ジエチル尿素が式Iの化合物に包含されることもまた排除される。
【0045】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、官能化ビウレット誘導体および/またはその塩が、式IIを有する化合物および/またはその塩として選択されているが、ただし、XおよびYが酸素である場合、Rは、アルキル化合物であってはならず、それにより、例えばエチルビウレットが式IIの化合物に包含されることが排除されることが好ましい。
【0046】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、官能化尿素およびビウレット誘導体および/またはその塩が、式IまたはIIを有する化合物および/またはその塩として選択されているが、ただし、XおよびYが酸素である場合、RおよびRは、水素またはアルキル化合物であってはならず、それにより、例えばN,N’-ジメチル尿素またはN,N’-ジメチルビウレットが式IまたはIIの化合物に包含されることが排除されることが好ましい。
【0047】
第1の態様によれば、置換基RおよびRは、独立して、特にアミンを含む群から選択され、前記アミンは、好ましくは、第1級、第2級および/または第3級アミンを含み、前記アミンは、より好ましくは、アルキル置換アミン、またはアミノアルキル置換アミン、またはアルキル置換アミンを含み、アルキル基はさらに、追加の官能化尿素置換基を含む。
【0048】
第1の態様によれば、置換基RおよびRは、独立して、特に含窒素複素芳香族化合物を含む群から選択され、前記含窒素複素芳香族化合物は、好ましくは、1~4個の窒素原子を含む4~10員複素芳香族化合物である。
【0049】
本発明の第1の態様による塩基性水系エッチング組成物によって達成される利点の1つによって、複数の金属表面、特に銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルト表面が、特に[μm/h]単位の一定のエッチング速度で効率的にエッチングされる。一定のエッチング効率、すなわち一定のエッチング速度によって、均一にエッチングされた金属表面が得られる。
【0050】
基材の金属の種類および厚さに応じて、式Iおよび/またはIIの所望の化合物の選択によって、エッチング速度[μm/h]と相関関係にあるエッチング効率を調整して、エッチング効率を高くまたは低くすることができる。
【0051】
本発明の第1の態様による前記塩基性水系エッチング組成物を適用することによって、処理金属表面の効果的な粗さを達成することができ、これにより、エッチング金属基材の処理表面上に堆積した任意の追加の層を効率的に密着させることができるため、追加の層の所望の不透明色を保証することができる。
【0052】
特に、塩基性水系エッチング組成物は再生が可能であるため、材料消費が制限され、費用対効果が高く環境に優しいプロセスを保証することができる。
【0053】
さらに、式IおよびIIを有する官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体中に存在する窒素官能性ゆえに、組成物中の金属イオンのキレート化により前記金属イオンの高効率の安定化を達成することができ、その結果、前記金属イオンの析出傾向が低下する。
【0054】
好ましくは、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩は、式Iを有する化合物および/またはその塩として選択される。
【0055】
エッチング組成物は、塩基性水系エッチング組成物であって、好ましくは、該塩基性水系エッチング組成物の総体積に対して50体積%超の水、より好ましくは75体積%以上の水、さらにより好ましくは85体積%以上の水、さらにより好ましくは90体積%以上の水、さらにより好ましくは95体積%以上の水、最も好ましくは99体積%以上の水を含む組成物である。好ましくは、水は、塩基性水系エッチング組成物中の唯一の溶媒である。
【0056】
好ましくは、被処理金属表面の金属を酸化させるための酸化剤は、塩基性水系エッチング組成物中の溶存酸素を含む。
【0057】
好ましくは、塩基性水系エッチング組成物中の溶存酸素は、周囲空気から塩基性水系エッチング組成物中に拡散する大気中酸素に由来するものである。
【0058】
酸素、特に周囲空気から塩基性水系エッチング組成物中に自然に拡散する大気中酸素を用いることにより、組成物中に十分な濃度の酸化剤を長時間保持することができ、これにより、組成物に手動で追加の酸化剤を添加する必要なしに、被処理金属表面の金属を効率的に酸化させることができる。特に本発明の塩基性水系エッチング組成物は、(大気中酸素が溶け込んだもの以外に)追加の酸化剤なしでエッチング組成物によるエッチングが可能であることが好ましい。追加の酸化剤は、必要に応じてエッチング速度を向上させるためにのみ添加されるが、本発明のエッチングプロセスを開始または維持するためには必要ない。
【0059】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、Xが、酸素およびNRを含む群から選択されることが好ましく、
は、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物、およびC~Cアルキルを含む群から選択され、芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
好ましくは、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
より好ましくは、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、Rは、水素およびCまたはCアルキルを含む群から選択され、
最も好ましくは、Rは、水素およびメチルを含む群から選択される。
【0060】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、Xが、酸素およびNHを含む群から選択されることが好ましく、Xは、好ましくは酸素である。
【0061】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩が、式IIを有する化合物および/またはその塩として選択され、Yが、酸素およびNRR’’を含む群から選択されることが好ましく、
RおよびR’’は、独立して、R、水素、ポリエチレングリコール、芳香族化合物、およびC~Cアルキルを含む群から選択され、芳香族化合物およびC~Cアルキルは、任意に、ORとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
より好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびCまたはCアルキルを含む群から選択され、
最も好ましくは、RおよびR’’は、独立して、水素およびメチルを含む群から選択される。
【0062】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩が、式IIを有する化合物および/またはその塩として選択され、Yが、酸素およびNHを含む群から選択されることが好ましく、Yは、好ましくは酸素である。
【0063】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、Rが水素として選択されることが好ましい。
【0064】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、RおよびRの少なくとも1つが、分岐状であっても非分岐状であってもよいアルキル化合物として、好ましくはC~Cアルキルとして、より好ましくはC~Cアルキルとして、さらにより好ましくはCまたはCアルキルとして、最も好ましくはイソプロピルまたはイソペンチルとして選択されることが好ましい。
【0065】
好ましくは、パラメータnが0として選択される場合、置換基Rは、-O-(C~Cアルキル)-NH-CO-NH-(C~Cアルキル)-NRとして選択される1つの置換基を含むC~Cアルキルとして選択され、RおよびRは、独立して、水素およびC~Cアルキルから選択される。
【0066】
より好ましくは、パラメータnが0として選択される場合、置換基Rは、-O-(C~Cアルキル)-NH-CO-NH-(C~Cアルキル)-NRとして選択される1つの置換基を含むC~Cアルキルとして選択され、RおよびRは、独立して、C~Cアルキルから選択される。
【0067】
さらにより好ましくは、パラメータnが0として選択される場合、置換基Rは、-O-(Cアルキル)-NH-CO-NH-(Cアルキル)-NRとして選択される1つの置換基を含むイソプロピルとして選択され、RおよびRは、双方ともC~Cアルキルから選択される。
【0068】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、RおよびRの双方が、分岐状であっても非分岐状であってもよいアルキル化合物として、好ましくはC~Cアルキルとして、より好ましくはC~Cアルキルとして、さらにより好ましくはCまたはCアルキルとして、最も好ましくはイソプロピルまたはイソペンチルとして選択されることが好ましい。
【0069】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、RおよびRの少なくとも1つが、NH、NHRおよびNRを含む群から選択されることが好ましく、
およびRは、独立して、C~C16アルキル、5~16員アリールおよび5~16員ヘテロアリールを含む群から選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
好ましくは、RおよびRは、独立して、C~C10アルキル、5~10員アリールおよび5~10員ヘテロアリールから選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
より好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、5~6員アリールおよび5~6員ヘテロアリールを含む群から選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
さらにより好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、フェニル、イミダゾールおよびピリジンを含む群から選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
最も好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキルとして選択され、
さらに最も好ましくは、RおよびRは、独立して、メチルとして選択される。
【0070】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、RおよびRの双方が、NH、NHRおよびNRを含む群から選択されることが好ましく、
およびRは、独立して、C~C16アルキル、5~16員アリールおよび5~16員ヘテロアリールを含む群から選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
好ましくは、RおよびRは、独立して、C~C10アルキル、5~10員アリールおよび5~10員ヘテロアリールを含む群から選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
より好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、5~6員アリールおよび5~6員ヘテロアリールを含む群から選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
さらにより好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、フェニル、イミダゾールおよびピリジンから選択され、これは任意に、OR[ここで、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択される]、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、
最も好ましくは、RおよびRは、独立して、C~Cアルキルとして選択され、
さらに最も好ましくは、RおよびRは、独立して、メチルとして選択される。
【0071】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、RおよびRの少なくとも1つが、含窒素複素芳香族化合物として選択されることが好ましく、
好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、1~4個の窒素原子を含む4~10員複素芳香族化合物として選択され、これは任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
より好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、1~3個の窒素原子を含む4~8員複素芳香族化合物として選択され、これは任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびCまたはCアルキルを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、1~2個の窒素原子を含む5~6員複素芳香族化合物として選択され、これは任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
最も好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、イミダゾールおよびピリジンを含む群から選択され、これは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、
さらに最も好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、イミダゾールおよびピリジンを含む群から選択され、これは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含む。
【0072】
置換基RおよびRの少なくとも1つについてのピリジンの選択には、2-ピリジル、3-ピリジルまたは4-ピリジル置換が含まれ得る。
【0073】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、RおよびRの双方が、含窒素複素芳香族化合物として選択されることが好ましく、
好ましくは、RおよびRの双方が、1~4個の窒素原子を含む4~10員複素芳香族化合物として選択され、これは任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
より好ましくは、RおよびRの双方が、1~3個の窒素原子を含む4~8員複素芳香族化合物として選択され、これは任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~CまたはCアルキルを含む群から選択され、
さらにより好ましくは、RおよびRの双方が、1~2個の窒素原子を含む5~6員複素芳香族化合物として選択され、これは任意に、ORおよびC~Cアルキルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を含み、Rは、水素およびC~Cアルキルを含む群から選択され、
最も好ましくは、RおよびRの双方が、イミダゾールおよびピリジンを含む群から選択され、これは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含み、
さらに最も好ましくは、RおよびRの双方が、イミダゾールおよびピリジンを含む群から選択され、これは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含む。
【0074】
置換基RおよびRの少なくとも1つについてのピリジンの選択には、2-ピリジル、3-ピリジルまたは4-ピリジル置換が含まれ得る。
【0075】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、nが0~4の整数であり、好ましくは0、1または3であることが好ましい。
【0076】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩が、式Iを有する化合物および/またはその塩として選択されることが好ましく、Xは、酸素およびNHを含む群から選択され、mは、3であり、nは、0または3であり、
は、以下:
(a)NH、NHRおよびNRであり、ここで、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチルとして選択され、これは任意に、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される1つの置換基を含むものとする、
(b)4~10員複素芳香族化合物、好ましくは5~6員複素芳香族化合物、より好ましくはイミダゾールまたはピリジンであって、これは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含むものとする、および
(c)分岐状であっても非分岐状であってもよいC~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはCまたはCアルキル、最も好ましくはイソプロピルまたはイソペンチル
を含む群から選択され、Rは、以下:
(a)水素、
(b)NH、NHRおよびNRであって、ここで、RおよびRは、独立して、C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチルとして選択され、これは任意に、NR[ここで、RおよびRは、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]、およびNH-CO-NH-(CH-NR10[ここで、oは、0~4の整数として選択され、RおよびR10は、双方とも独立して、水素またはC~Cアルキルとして選択される]を含む群から選択される1つの置換基を含むものとする、
(c)4~10員複素芳香族化合物、好ましくは5~6員複素芳香族化合物、より好ましくはイミダゾールまたはピリジンであって、これは任意に、C~Cアルキルとして選択される少なくとも1つの置換基を含むものとする、および
(d)分岐状であっても非分岐状であってもよいC~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはCまたはCアルキル、最も好ましくはイソプロピルまたはイソペンチル
を含む群から選択される。
【0077】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩が、式Iを有する化合物および/またはその塩として選択されることが好ましく、
(a)Xは、酸素として選択され、mおよびnは、双方とも3として選択され、RおよびRは、双方ともN(メチル)として選択され、
【化3】
(b)Xは、酸素として選択され、mおよびnは、双方とも3として選択され、RおよびRは、双方ともイミダゾールとして選択され、
【化4】
(c)Xは、酸素として選択され、mおよびnは、双方とも1として選択され、RおよびRは、双方ともピリジンとして選択され、好ましくはRおよびRは、双方とも(c-1)2-ピリジル、(c-2)3-ピリジル、または(c-3)4-ピリジルとして選択され、
【化5】
【化6】
【化7】
(d)Xは、酸素として選択され、mは、3として選択され、nは、0として選択され、Rは、N(メチル)として選択され、Rは、水素として選択され、
【化8】
(e)Xは、NHとして選択され、mおよびnは、双方とも3として選択され、RおよびRは、双方ともN(メチル)として選択され、
【化9】
(f)Xは、酸素として選択され、mおよびnは、双方とも2として選択され、RおよびRは、双方ともN(メチル)として選択され、
【化10】
(g)Xは、酸素として選択され、mは、2として選択され、nは、0として選択され、Rは、N(メチル)として選択され、Rは、水素として選択され、
【化11】
(h)Xは、酸素として選択され、mおよびnは、双方とも3として選択され、Rは、N(メチル)として選択され、Rは、-N(メチル)-(CH-NH-CO-NH-(CH-N(メチル)として選択され、
【化12】
(i)Xは、酸素として選択され、mおよびnは、双方とも3として選択され、Rは、N(メチル)として選択され、Rは、-N(メチル)-(CH-NHとして選択され、かつ/または
【化13】
(j)Xは、酸素として選択され、nは、0として選択され、mは、3として選択され、jは、7として選択され、Rは、N(メチル)として選択され、Rは、-CH(CH)-(CH)-O-(CH)-CH(CH)-NH-CO-NH-(CH-N(メチル)として選択される。
【化14】
【0078】
本発明の塩基性水系エッチング組成物は、官能化尿素、ビウレットおよびグアニジン誘導体ならびに/またはその塩が、式IIを有する化合物および/またはその塩として選択されることが好ましく、
(a)XおよびYは、酸素として選択され、mおよびnは、双方とも3として選択され、R、Rは、双方ともN(メチル)として選択される。
【化15】
【0079】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、被処理金属表面の金属を酸化させるための酸化剤が、塩基性水系エッチング組成物中の溶存酸素を含み、塩基性水系エッチング組成物中の溶存酸素は、好ましくは、周囲空気から塩基性水系エッチング組成物中に拡散する大気中酸素に由来するものである。
【0080】
金属を酸化させるための酸化剤が、酸素、特に大気中酸素で済むことにより、手動で追加の酸化剤を添加する必要なしに、高効率で自動的なエッチング反応を促進することができる。
【0081】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、該組成物が、塩基性水系エッチング組成物中の溶存酸素である1つの酸化剤以外にいかなる追加の酸化剤も含まないことが好ましく、該組成物が、いかなる過酸化物および/または過硫酸塩化合物も含まないことが好ましい。
【0082】
塩基性水系エッチング組成物から追加の酸化剤の添加を省くことにより、材料消費を低減し、金属表面を一様に微細に粗面化することができる。また、金属表面の過剰なエッチングを防ぐこともできる。
【0083】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、該組成物が、被処理金属表面の金属を酸化させるための追加の酸化剤を含むことが好ましく、追加の酸化剤は、過酸化物および/または過硫酸塩化合物として選択されることが好ましい。
【0084】
組成物中に既に存在する酸化剤に加えて追加の酸化剤を添加することにより、エッチング速度を効率的に向上させることができる。いずれにしても、エッチング組成物は、追加の酸化剤が枯渇してもエッチングを継続することができる。特に、本発明の塩基性水系エッチング組成物において、該エッチング組成物が、追加の酸化剤なしでエッチング可能であり、追加的に添加される追加の酸化剤は、必要に応じてエッチング速度を向上させるだけであることが好ましい。
【0085】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、該塩基性水系エッチング組成物が、7.1~14、好ましくは8~12、より好ましくは9~11のpHを有することが好ましく、最も好ましくは、pHは、10である。
【0086】
pHを好ましい範囲に選択することにより、効率的なエッチングプロセスを保証することができる。
【0087】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、式IおよびIIを有する化合物および/またはその塩が、該組成物の総重量に対して1重量%~15重量%の総濃度で、好ましくは2重量%~14重量%、より好ましくは3重量%~13重量%、さらにより好ましくは4重量%~13重量%、最も好ましくは5重量%~12.5重量%の総濃度で、該組成物中に存在することが好ましい。
【0088】
式IおよびIIを有する化合物の濃度を好ましい濃度範囲に選択することにより、効率的なエッチングプロセスを保証することができる。
【0089】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、被処理金属基材が、好ましくは鉄、クロムおよびニッケル-クロム鋼合金を除く、金よりも卑なすべての金属および金属合金を含むことが好ましい。
【0090】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、被処理金属基材が、銀、パラジウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、亜鉛、鉛、アンチモン、スズ、希土類金属、例えばネオジム、銅-亜鉛合金、銅-スズ合金、銅-ニッケル合金およびアルミニウム-マグネシウム合金を含む群から選択される金属または金属合金を含むことが好ましい。
【0091】
本発明の塩基性水系エッチング組成物において、被処理金属基材が、銀、銅、ニッケルおよびコバルトを含むことが好ましい。
【0092】
その結果、塩基性水系エッチング組成物のエッチング特性が調整され、膨大な種類の金属基材を効率的にエッチングすることができる。
【0093】
第2の態様によれば、本発明はさらに、金属基材表面の処理方法であって、
(A)前記金属基材を提供するステップと、
(B)第1の態様による金属基材表面処理用の塩基性水系エッチング組成物を提供するステップと、
(C)金属基材を前記塩基性水系エッチング組成物と接触させて、金属基材表面をエッチングするステップと
を含む方法に関する。
【0094】
第2の態様による本方法は、効率的なエッチングプロセスを保証する。
【0095】
本発明の方法において、本方法を、20℃~100℃、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは40℃~60℃、最も好ましくは50℃の温度で実施することが好ましい。
【0096】
本方法を好ましい温度範囲で実施することにより、高効率のエッチング反応を保証することができる。
【0097】
本発明の方法において、被処理金属基材が、好ましくは鉄、クロムおよびニッケル-クロム鋼合金を除く、金よりも卑なすべての金属および金属合金を含むことが好ましい。
【0098】
本発明の方法は、被処理金属基材が、銀、パラジウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、亜鉛、鉛、アンチモン、スズ、希土類金属、例えばネオジム、銅-亜鉛合金、銅-スズ合金、銅-ニッケル合金およびアルミニウム-マグネシウム合金を含む群から選択される金属または金属合金を含むことが好ましい。
【0099】
本発明の方法は、被処理金属基材が、銀、銅、ニッケルおよび/またはコバルトを含むことが好ましい。
【0100】
その結果、本方法のエッチング効率が調整され、膨大な種類の金属基材を効率的にエッチングすることができる。
【0101】
本発明の方法において、方法ステップ(C)で金属基材に電圧を印加することが好ましい。
【0102】
本発明の方法において、本方法が、以下のさらなるステップ:
(D)方法ステップ(C)の後に、塩基性水系エッチング組成物を再循環させるステップであって、該ステップ(D)は、
(D1)塩基性水系エッチング組成物の温度を上昇させて、温度が上昇した塩基性水系エッチング組成物を得るステップと、
(D2)温度が上昇した塩基性水系エッチング組成物を濾過して、濾過済み塩基性水系エッチング組成物を得るステップと、
(D3)濾過済み塩基性水系エッチング組成物を方法ステップ(C)に再度適用するステップと
を含むものとする、ステップ
を含むことが好ましい。
【0103】
その結果、本方法の再循環ステップにより、塩基性水系エッチング組成物から金属を効率的に回収することができる。塩基性水系エッチング組成物を加熱することにより、特に、温度上昇によって引き起こされる式IまたはIIの化合物による金属の化学的安定化の障害に起因して、塩基性水系エッチング組成物から金属が析出される。得られた析出物を濾過により溶液から除去することができ、これを外部処理することで、金属を回収することができる。
【0104】
本発明の方法において、方法ステップ(D1)が、塩基性水系エッチング組成物の温度を50℃超の温度、好ましくは60℃超の温度、より好ましくは70℃超の温度、最も好ましくは80℃超の温度に上昇させて、温度が上昇した塩基性水系エッチング組成物を得るステップを含むことが好ましい。
【0105】
塩基性水系エッチング組成物の温度を好ましい温度を超える温度に上昇させることにより、式IまたはIIの化合物は各金属イオンをもはや安定化せず、結果として、対応する金属塩の析出が生じる。
【0106】
本発明の方法において、方法ステップ(D1)で塩基性水系エッチング組成物中に形成された析出物を、方法ステップ(D2)で塩基性水系エッチング組成物から除去し、方法ステップ(D2)の後に、析出物が低減された濾過済み塩基性水系エッチング組成物を得ることが好ましい。
【0107】
塩基性水系エッチング組成物から析出物を除去することにより、処理金属表面から除去された金属イオンを効率的に回収することができる。
【0108】
本発明の方法において、方法ステップ(C)で、金属基材表面から、好ましくは0.01μm/h~10μm/h、より好ましくは0.05μm/h~5μm/h、さらにより好ましくは0.1μm/h~2.5μm/hの一定のエッチング速度で金属を除去することが好ましい。
【0109】
一定のエッチング処理を好ましくは好ましいエッチング速度で行うことにより、処理金属表面を特に一様にすることができ、その結果、こうした処理金属表面の優れた表面品質が保証される。
【0110】
本発明の方法において、ステップ(A)で提供される金属基材が、不透明または粗い表面を含むことが好ましい。
【0111】
不透明および/または粗い表面により、特に処理金属表面上に追加の層を堆積させる際に、処理金属表面の優れた品質が保証される。
【0112】
本発明の方法において、ステップ(A)で提供される金属基材が、可撓性の金属基材として、好ましくは可撓性の銅基材として、より好ましくは可撓性の銅被覆ポリマーとして形成されていることが好ましい。
【0113】
本発明の方法において、ステップ(A)で提供される金属基材が、銅被覆積層体、または均一な銅基材として形成されていることが好ましい。
【0114】
異なる化学的および物理的特性を有する異なる種類の金属基材のエッチングにより、本方法を広範囲の用途に適用することができ、したがって汎用的に使用することができる。
【0115】
例えば、プリント基板(PCB)の場合には、銅被覆樹脂、特にポリマーを金属基材として使用することができ、また銅被覆ガラスも金属基材として使用することができる。また、一般製造品の場合には、銅被覆プラスチックや銅被覆シートメタルを金属基材として使用することができる。
【0116】
本発明の方法において、ステップ(B)および/または(C)を撹拌下で、好ましくは20rpm~1,000rpm、より好ましくは50rpm~500rpm、最も好ましくは100rpmの撹拌速度で行うことが好ましい。
【0117】
本発明の方法において、ステップ(C)を、2時間未満、好ましくは1時間未満、より好ましくは45分未満、さらにより好ましくは30分未満、最も好ましくは15分未満の期間で行うことが好ましい。
【0118】
本発明の方法において、ステップ(C)を、1分~2時間、好ましくは5分~1.5時間、より好ましくは15分~1時間、最も好ましくは30分~45分の期間で行うことが好ましい。
【0119】
本方法の好ましい撹拌および時間間隔により、使用する金属基材に応じて個別に調整可能な効率的なエッチング速度が得られる。
【0120】
本発明の方法において、本方法が、ステップ(C)の前に行われるステップ(P)を含むことが好ましく、ステップ(P)は、
(P1)好ましくは硫酸を含む酸性溶液で金属基材の予備すすぎを行って、予備すすぎ済み金属基材を得るステップと、
(P2)予備すすぎ済み金属基材を、好ましくは脱塩水を含む洗浄液で洗浄して、洗浄済み金属基材を得るステップと
を含み、
洗浄済み金属基材を、ステップ(C)で前記塩基性水系エッチング組成物と接触させる。
【0121】
酸性溶液で金属基材の予備すすぎを行い、次いで洗浄するステップにより、ステップ(C)での被処理金属表面の効率的な清浄化を保証することができ、それにより本方法の有効性が高まる。基材の予備すすぎを行うことにより、基材を塩基性水系エッチング組成物中に移す前に、基材の潜在的な腐食および/または基材の表面の汚染物を効率的に除去することができる。
【0122】
しかし、方法ステップ(P)は任意の方法ステップであり、本発明の第2の態様による方法を、方法ステップ(P)なしで実施することも可能である。
【0123】
好ましくは、本発明の第1の態様による塩基性水系エッチング組成物に関する前述の、好ましくは、好ましいと記載されているものは、本発明の第2の態様による方法にも同様に適用される。
【0124】
第3の態様によれば、本発明はさらに、エッチング済み表面を有する金属基材であって、金属基材のエッチング済み表面は、第2の態様による金属基材表面の処理方法によって得られたものである、金属基材に関する。
【0125】
本発明の基材において、金属基材が、エッチング済み表面を含み、エッチング済み表面が、320~1400の粗さSを有することが好ましい。
【0126】
粗さSが320~1400の好ましい範囲にあることで、効率的にエッチングされた表面を得ることができ、これにより、エッチング済み表面への追加の層の堆積を非常に有利に行うことができる。
【0127】
特に金属基材のエッチング済み表面の粗さSは、表面粗さを決定することができるISO 25178に類似して測定されたものである。特に金属基材のエッチング済み表面の粗さSは、例えば基材サンプルの干渉顕微鏡法によって得られるエッチング済み表面の3D表示に基づいて測定されたものである。しかし、必要なフィルタは対応するエッチング済み表面の表面特性に依存するため、生データにはフィルタを適用していない。
【0128】
好ましくは、本発明の第1の態様による塩基性水系エッチング組成物および本発明の第2の態様による方法に関する前述の、好ましくは、好ましいと記載されているものは、本発明の第3の態様による基材にも同様に適用される。
【0129】
実施例
第1の実験系
第1の実験系のために、以下に概要を示すように、各官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体5重量%を含む各試験用水系エッチング組成物E1~E8を調製した(重量:約10g)。pHは、9.0~12.6の範囲であった。
【0130】
さらに、追加の酸化剤として0.32gの過酸化水素溶液(30重量%)を用いて水系エッチング組成物E1aを調製した。
【0131】
各試験において、予備すすぎおよび予備洗浄を行っていない、片側にクロム表面を有する銅箔片(1cm×4cm)を、試験管に入れた各水系エッチング組成物中に浸漬させる。試験管に大気雰囲気を供給し、温度22℃で336時間にわたってゴム栓で密閉して反応を生じさせた。試験管内では、テフロンコーティングされた小型のスターラーバーを100rpmで回転させた。
【0132】
反応後の銅箔の、クロムを含まない表面の厚みの減少量に基づいて、各水系エッチング組成物のエッチング効率(EE)を決定した。
【0133】
対照実験C1およびC2を行い、各組成物に、対照実験C1では官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体を添加せず、C1aではN,N’-ジメチル尿素を添加し、C1bではN,N’-ジメチル尿素に、追加の酸化剤として過酸化水素溶液(30重量%)0.32gを加えたものを添加し、対照実験C2では、各組成物に硫酸を添加してpHを7未満に低下させた。
【0134】
表1に示すエッチング効率の結果は、以下の名称を有する定性的評価である:
+++ 優れている
++ 良好
+ 中程度
- 劣悪
【表1-1】
【表1-2】
【0135】
官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体が添加されていない対照実験C1と、官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体が添加されている実験E1~E7とを比較すると、銅箔に関して少なくとも中程度、しかしほとんどの場合に良好あるいは優れたエッチング効率を認めるには、官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体の添加が不可欠であると認めることができる。
【0136】
さらに、組成物のpHが7未満である対照実験C2と、各組成物のpHが9.0~12.6の範囲にある実験E1~E7とを比較すると、銅箔に関して少なくとも中程度、しかしほとんどの場合に良好あるいは優れたエッチング効率を認めるには、各組成物の塩基性pHも重要であると認めることができる。
【0137】
しかし、実験E1~E7のエッチング効率を比較すると、相違が認められる。
【0138】
イミダゾール(実験E1、E1a参照)やピリジン(実験E2参照)といった末端複素芳香族置換基を有する官能化尿素誘導体を使用した場合には、銅箔に関して少なくとも良好あるいは優れたエッチング効率が認められる。さらに、実験E1aのエッチング速度は、3350%増加した。
【0139】
末端アミン置換基を有する官能化尿素誘導体は、依然として良好なエッチング効率を提供しているが(実験E3およびE4参照)、末端アミン置換基を有する対応する官能化グアニジン誘導体はこれを上回っており(実験E7参照)、銅箔に関する優れたエッチング効率が認められる。
【0140】
少なくとも1つの末端アルキル置換基を有する官能化尿素誘導体または官能化ビウレット誘導体を使用した場合には(実験E5およびE6参照)、銅箔に関して中程度のエッチング効率が認められる。
【0141】
第2の実験系
第2の実験系のために、以下に概要を示すように、各官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体2.5重量%を含む各試験用水系エッチング組成物E8~E18を調製し(重量:約20g)、水19.5g中の各官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体0.5gを得た。pHは、8~13の範囲であった。
【0142】
各試験において、10重量%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液中で40℃の温度で30秒間予備すすぎしてから予備洗浄した銅金属板片(重量:約1g)を、各水系エッチング組成物中に浸漬させる。この組成物に大気雰囲気を供給し、温度45℃で2週間にわたって100rpmで撹拌して反応を生じさせた。
【0143】
対照実験C3およびC4を行い、各組成物に、対照実験C3では官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体を添加せず、対照実験C4では、各組成物に硫酸を添加してpHを7未満に低下させた。
【0144】
反応後の銅箔の銅表面の厚みの減少量に基づいて、各水系エッチング組成物のエッチング効率(EE)を決定した。
【0145】
表2に示すエッチング効率(EE)の結果は、以下の名称を有する定性的評価である:
+++ 優れている
++ 良好
+ 中程度
- 劣悪
【表2-1】
【表2-2】
【0146】
実験E15、E16およびE17から、末端アルキル置換基を有する官能化尿素またはビウレット誘導体により、各銅板の、認めることができるが中程度のエッチング効率が得られるとの結論を導き出すことができる。
【0147】
同様の結果を、末端アミノ基を有する官能化尿素誘導体を使用した場合(実験E9およびE11参照)にも認めることができ、この場合にも、各銅箔の、認めることができるが中程度の、あるいは良好なエッチング効率を認めることができる。
【0148】
実験E12、E13およびE14では、末端複素芳香族置換基、特にピリジンを有する様々な官能化尿素誘導体が分析されており、これらは中程度の、あるいは良好なエッチング効率を示している。
【0149】
実験E18に示すように、末端複素芳香族置換基、特にイミダゾールを有する官能化尿素誘導体を分析した場合に、優れたエッチング効率を認めることができた。
【0150】
実験E8(この場合には、尿素と末端アミン部分との間のCリンカーが存在する)およびE10(この場合には、尿素と末端アミン部分との間のCリンカーが存在する)に示される末端アミン置換基を有する官能化尿素誘導体を比較すると、CリンカーおよびCリンカーは双方とも良好なエッチング効率を提供すると思われる。
【0151】
追加の実験系
エッチング済みの金属表面の表面粗さを調べるために、エッチング済みの銅箔片をトポグラフィー・イメージングで分析した。
【0152】
エッチング済みの各銅箔片は、第2の実験系(上記参照)に従って、官能化尿素、ビウレットまたはグアニジン誘導体を含む各塩基性水系エッチング組成物を塩基性pHで適用することによって得られたものである。
【0153】
各銅箔のエッチング済み表面の粗さは、表面粗さを決定することができるISO 25178に類似して測定されたものである。特に金属基材のエッチング済み表面の粗さは、例えば基材サンプルの干渉顕微鏡法によって得られるエッチング済み表面の3D表示に基づいて測定されたものである。しかし、必要なフィルタは対応するエッチング済み表面の表面特性に依存するため、生データにはフィルタを適用していない。
【0154】
特にISO 25178に類似した二乗平均平方根粗さSを、各エッチング済み銅片の249.6μm×249.6μmのサイズの5つの測定領域に関して測定し、表3に示すようにSの平均値[nm]を求めた。
【表3】
【0155】
末端アルキル置換基を有する官能化尿素誘導体を使用した場合には、中程度の表面粗さ(実験S5の367nm、実験S5の383nm参照)を認めることができる。
【0156】
実験S1、S2、S3およびS7から導かれるように、末端複素芳香族基または末端アミン基を有する官能化尿素またはグアニジン誘導体を使用した場合に、最高の表面粗さ(実験S1については1263nm、実験S2については599nm、実験S3については436nmおよび実験S7については427nm)が認められた。
【国際調査報告】