(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】真空コーティング設備に物品を収容するための装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20230629BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C23C14/50
C23C14/24 J
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023501824
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2021068190
(87)【国際公開番号】W WO2022012955
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020118367.4
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507062222
【氏名又は名称】カール ツァイス ヴィジョン インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】フランク マションチク
(72)【発明者】
【氏名】アルウィン グリーン
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029JA02
4K029JA08
(57)【要約】
本発明は、真空コーティング設備(5)内に物品(14)を収容するための装置(10)であって、コーティング開口(18)を備えるキャリア(12)を有し、コーティング開口(18)内に物品(14)を保持するための保持装置(20)を有し、且つ保持装置(20)のための旋回軸受(32)を有し、旋回軸受は、キャリア(12)に固定され、旋回軸(34)であって、その周囲において、保持装置(20)を、それによって保持される物品(14)をコーティング開口(18)内で回転させるために旋回させることが可能である、旋回軸(34)を有し、且つ旋回軸(34)の方向に広がる、円筒体(36)のための円周方向に閉じたマウント(46)を備える軸受本体(51、5T)を有し、軸受本体(51、51’)は、円筒体(36)のための円周方向に閉じたマウント(46)及び円周方向に開いたマウント(48)を有し、及びしたがって、保持装置(20)がキャリア(12)上に配置されているとき、円筒体(36)は、円周方向に開いたマウント(48)を通して、円周方向に閉じたマウント(46)に導入され得る、装置(10)に関する。本発明は、保持装置(20)が、その中に固定された物品(14)と共に装置(10)のキャリア(12)上に配置される方法、この目的のためのハンドリング装置及びまたコンピュータプログラム製品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空コーティング設備内に物体(14)を受けるための装置(10)であって、
コーティング開口(18)を有するキャリア(12)を含み、
前記コーティング開口(18)内に前記物体(14)を保持するための保持装置(20)を含み、及び
前記保持装置(20)のための旋回軸受(32)であって、前記キャリア(12)に固定され、旋回軸(34)であって、その周囲において、前記保持装置(20)が、それが保持する前記物体(14)を前記コーティング開口(18)内で回転させるために旋回され得る旋回軸(34)を有し、且つ前記旋回軸(34)の方向に範囲を有する、円筒体(36)のための円周方向に閉じた受容部(46)を備える軸受本体(51、51’)を有する旋回軸受(32)を含む装置(10)において、
前記軸受本体(51、51’)は、前記円筒体(36)のための円周方向に開いた受容部(48)を追加的に有し、前記円筒体(36)は、前記保持装置(20)が前記キャリア(12)上に配置されているとき、前記円周方向に開いた受容部(48)を通して、前記円周方向に閉じた受容部(46)に挿入され得ることを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に閉じた受容部(46)は、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)と一体化することを特徴とする、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記軸受本体(51、51’)は、前記キャリア(12)に固定されること、及び/又は
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)は、前記キャリア(12)の前記コーティング開口(18)と、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に閉じた受容部(46)との間に配置され、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)の、前記旋回軸(34)の方向における前記範囲は、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に閉じた受容部(46)と、前記コーティング開口(18)との間の距離(D)の少なくとも50%及び最大で100%に及ぶこと、及び/又は
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)は、前記軸受本体(51、51’)の、前記キャリア(12)から離れる方に面する側に配置された開口(47)を有すること、及び/又は
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)は、U字形状を有すること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記円筒体(36)は、前記保持装置(20)に取り付けられた取付ピンであることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記円周方向に閉じた受容部(46)は、前記円筒体(36)に対して過大寸法を有することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記保持装置(20)を、旋回軸(34)の周囲で旋回することができるように前記キャリア(12)上に取り付けるためのさらなる旋回軸受(38)であって、前記保持装置(20)によって保持された前記物体(14)を前記コーティング開口(18)内で回転させる役割を果たし、且つ前記旋回軸(34)の方向に範囲を有する、さらなる円筒体(40)のための円周方向に閉じた受容部(46)を備えるさらなる軸受本体(53)を有するさらなる旋回軸受(38)によって特徴付けられる、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記さらなる軸受本体(53)は、前記さらなる円筒体(40)のための円周方向に閉じた受容部(46)及び円周方向に開いた受容部(48)を有し、その結果、前記さらなる円筒体(40)は、前記保持装置(20)が前記キャリア(12)上に配置されているとき、前記円周方向に開いた受容部(48)を通して、前記円周方向に閉じた受容部(46)に挿入され得ること、及び/又は
前記さらなる軸受本体(53)は、前記キャリア(12)に固定されること
を特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記さらなる円筒体(40)は、前記保持装置(20)に取り付けられた取付ピンであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記取付ピンのための端面ストッパ(44)は、前記旋回軸受(32)の前記軸受本体(51、51’)に形成されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記保持装置(20)を、旋回軸(34)の周囲で旋回することができるように前記キャリア上に取り付けるための前記旋回軸受(32)及び前記さらなる旋回軸受(38)は、球状キャップ(13)の子午線(42)上にあること、及び/又は前記保持装置(20)は、前記旋回軸(34)の方向に変位可能であるように前記旋回軸受(32)及び前記さらなる旋回軸受(38)内に配置されることを特徴とする、請求項6~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記旋回軸受(32)の前記軸受本体(51、51’)は、中実材料から製作されること、又は前記旋回軸受(32)の前記軸受本体(51、51’)は、中実材料から製作される第一の軸受本体部分体(50)であって、その中に前記円周方向に閉じた受容部(46)が形成される、第一の軸受本体部分体(50)と、中実材料から製作されるさらなる軸受本体部分体(52)であって、その中に前記円周方向に開いた受容部(48)が形成される、さらなる軸受本体部分体(52)とを有し、前記さらなる軸受本体部分体(52)は、前記第一の軸受本体部分体(50)の接合面(54)に取り付けられるか、又は前記第一の軸受本体部分体(50)から離間されることを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
保持装置(20)であって、真空コーティング設備(5)内でコーティングされることを目的としてその中に固定された物体(14)を含む保持装置(20)をキャリア(12)上に配置する方法であって、前記キャリア(12)は、コーティング開口(18)を有し、且つ前記キャリア(12)又は前記保持装置(20)に固定される軸受本体(51、51’)を有し、前記軸受本体(51、51’)は、旋回軸(34)の方向に範囲を有する、円筒体(36)のための円周方向に閉じた受容部(46)を有し、且つ前記保持装置(20)又は前記キャリア(12)に固定される、方法において、
前記軸受本体(51、51’)は、前記円筒体(36)のための円周方向に開いた受容部(48)を追加的に有し、及び
前記方法において、前記保持装置(20)を前記キャリア(12)に対して相対的に変位させることにより、前記円筒体(36)は、前記円周方向に開いた受容部(48)に挿入され、且つその後、前記円周方向に閉じた受容部(46)内に移動されることを特徴とする方法。
【請求項13】
真空コーティング設備内での物体(14)の仕上げを改善する方法であって、
前記物体(14)を保持装置(20)に固定するステップと、
前記保持装置(20)であって、前記真空コーティング設備(5)内でコーティングされることを目的としてその中に固定された前記物体(14)を含む前記保持装置(20)をキャリア(12)上に配置するステップであって、前記キャリア(12)は、コーティング開口(18)を有し、且つ前記キャリア(12)又は前記保持装置(20)に固定される軸受本体(51、51’)を有し、前記軸受本体(51、51’)は、旋回軸(34)の方向に範囲を有する、円筒体(36)のための円周方向に閉じた受容部(46)を有し、且つ前記保持装置(20)又は前記キャリア(12)に固定される、ステップと、
前記物体(14)を前記真空コーティング設備内でコーティングするステップと
を有する方法において、
前記軸受本体(51、51’)は、前記円筒体(36)のための円周方向に開いた受容部(48)を追加的に有し、
前記保持装置(20)は、請求項12に記載の方法によって前記キャリア(12)上に配置されることを特徴とする方法。
【請求項14】
制御ユニット(84)を有し、且つコンピュータユニット(82)を有するハンドリング装置(62)であって、保持装置(20)であって、真空コーティング設備(5)内でコーティングされることを目的としてその中に固定された物体(14)を含む保持装置(20)をキャリア(12)上に配置するために、請求項12に記載の方法を実行する役割を果たすハンドリング装置(62)。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、請求項14に記載のハンドリング装置(62)の前記コンピュータユニット(82)にロードされ、且つ/又は前記コンピュータユニット(82)上で実行されると、請求項13に記載の全ての方法ステップを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空コーティング設備内に物体を受けるための装置であって、コーティング開口を有するキャリアを含み、物体をコーティング開口内に保持するための保持装置を含み、且つ保持装置のための旋回軸受を含み、この旋回軸受は、キャリアに固定され、旋回軸であって、その周囲において、保持装置が、それが保持する物体をコーティング開口内で回転させるために旋回され得る旋回軸を有し、且つ旋回軸の方向に範囲を有する、円筒体のための円周方向に閉じた受容部を備える軸受本体を有する、装置に関する。本発明は、保持装置であって、その中に固定された物体を含む保持装置を装置のキャリア上に配置する方法、そのためのハンドリング装置及びコンピュータプログラム製品にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止コーティングを備える眼鏡レンズを提供するために、薄い光学層がレンズ要素の表面に成膜される。反射防止コーティングは、真空コーティング設備内で生成される。真空コーティング設備内では、高真空下で光学的に活性な材料を蒸着装置のソースから蒸発させるか又はスパッタリングソースから飛散させて、眼鏡レンズ上に堆積させることができる。
【0003】
独国特許第10 2006 041 137 B4号明細書は、導入部で述べた種類の装置を開示している。この装置は、真空コーティング設備の真空室内において縦回転軸の周囲で移動され得るキャリアを有する。キャリアは、球形キャップを備える本体を含み、その上において、複数の保持装置は、その中に固定されたコーティング対象の物体と共に旋回軸受内に受けられ、それを磁力によってコーティング開口内で回転させることができる。
【0004】
これは、物体の両方の側面を真空の装置内でコーティングすることができ、第一のコーティング動作後に物体を回転させるために真空室に通気する必要がなく、その結果、全体的な加工時間を大幅に削減できるという効果を有する。
【0005】
独国特許第10 2006 041 137 B4号明細書から知られている保持装置は、取付ピンをそれぞれ有し、保持装置をキャリア上に配置する際、それを旋回軸受の軸受本体の受容部に挿入しなければならない。取付ピンを軸受本体の受容部に容易に挿入できるようにするために、受容部は、取付ピンに対して過大寸法を有する。保持装置をキャリア上に配置する際に不注意に作業すると、保持装置が旋回軸受内で2つの取付ピンの一方によってのみ保持される結果となる可能性がある。その場合、その中に物体が固定されたこのような保持装置は、真空コーティング設備内でそれ以上回転させることができなくなる。さらに、この場合、保持装置が旋回軸受内の受容部から単独で外れ、コーティング動作のためにキャリア上に配置される他の物体に損傷を与えるリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、真空コーティング設備内に物体を受けるための装置であって、物体がコーティング動作中に強固に保持されることを確実にし、コーティング対象の物体を単純な移動でキャリア上に配置することを可能にし、それにより、物体が真空コーティング設備内で回転することができる、装置を規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に明記された装置、請求項12及び13に明記された方法、請求項14に明記されたハンドリング装置及び請求項15に明記されたコンピュータプログラム製品によって達成される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に明記される。
【0008】
真空コーティング設備内に物体を受けるための本発明による装置は、コーティング開口を有するキャリアを含み、コーティング開口内に物体を保持するための保持装置を含み、及び保持装置のための旋回軸受であって、キャリアに固定され、旋回軸であって、その周囲において、保持装置が、それが保持する物体をコーティング開口内で回転させるために旋回され得る旋回軸を有し、且つ旋回軸の方向に範囲を有する、円筒体のための円周方向に閉じた受容部を備える軸受本体を有し、軸受本体は、円筒体のための円周方向に開いた受容部を追加的に有し、その結果、円筒体は、保持装置がキャリア上に配置されているとき、円周方向に開いた受容部を通して、円周方向に閉じた受容部に挿入され得る。
【0009】
この場合、真空コーティング設備は、それによって物体を真空条件下、特に高真空条件下でコーティングすることができる設備を意味すると理解されたい。真空コーティング設備は、例えば、陰極線アトマイゼーション設備であり、これは、スパッタリング設備、蒸着設備又は化学蒸着設備とも呼ばれる。
【0010】
本発明による装置内に受けられる物体は、特に光学要素である。これに関して、光学要素は、電磁放射、例えば可視光、UV又はIR放射を吸収、透過、反射、回折又は散乱させる機能を有する日常的な物体を意味すると理解されたい。この場合、光学要素は、例えば、レンズ要素、例えば眼鏡レンズ要素又はコンタクトレンズ要素だけでなく、平板及び湾曲光学ユニット、プリズム、ミラー、球面若しくは非球面レンズ、玉形加工済み眼鏡レンズ又は楕円レンズ等を意味すると理解されたい。しかしながら、本発明による装置に受けられる物体は、ドリル又はフライスヘッド等のツールでもあり得る。
【0011】
この場合、円周方向に閉じた受容部は、物体、例えば取付ピンのための受容部を指し、これは、物体が受容部に挿入されると、挿入方向に直交する断面に対して物体を完全に取り囲む。
【0012】
この場合、円周方向に開いた受容部は、物体、例えば取付ピンのための受容部を指し、これは、物体が受容部に挿入されると、挿入方向に直交する断面に対して物体を部分的にのみ取り囲む。好ましくは、部分的とは、円周方向に開いた受容部が物体の少なくとも半分、さらに好ましくは少なくとも4分の3を取り囲むことを意味する。
【0013】
軸受本体の円周方向に閉じた受容部は、軸受本体の円周方向に開いた受容部と一体化するか又はそれから離間され得る。
【0014】
軸受本体の円周方向に開いた受容部がキャリアのコーティング開口に面する場合及び軸受本体の円周方向に開いた受容部の、旋回軸の方向における範囲が、軸受本体の円周方向に閉じた受容部と、コーティング開口との間の距離の少なくとも50%及び最大で100%に及ぶ場合に有利である。この手段により、物体を含む保持装置をコーティング開口内に設置し、そこで回転させることができ、軸受本体の円周方向に開いた受容部は、円筒体が軸受本体から外れることを防止するのに十分な大きさとなる。
【0015】
好ましい実施形態では、軸受本体の円周方向に開いた受容部は、軸受本体の、キャリアから離れる方に面する側に配置された開口を有するようになされる。この場合、開口は、それが、円筒体の2つの空間方向、特に旋回軸の方向及びキャリアの表面にほぼ直交する方向における変位を可能にするように、円周方向に開いた受容部に配置されることが特に好ましい。これは、円筒体が旋回軸受から外れる可能性が低下するという利点を有する。
【0016】
軸受本体の円周方向に開いた受容部は、この場合、特に好ましくはU字形状を有する。有利には、U字型の半円部分は、軸受本体の円周方向に開いた受容部と同じ半径を有する。軸受本体の円周方向に開いた受容部の、そこに受けられる物体に面する側は、さらに有利には、円周方向に閉じた受容部の、そこに受けられる物体に面する側の接線方向平面内にある。これらの手段は、円周方向に開いた受容部から円周方向に開いた受容部に円筒体が落ちた場合、円筒体が、円周方向に開いた受容部の開口に向かってさらに移動しないように制限されるという利点を有する。加えて、円周方向に開いた受容部の、円筒体を取り囲む壁により、円筒体は、円周方向に閉じた受容部内に再び戻されることが確実となる。特に、このために、軸受本体の円周方向に閉じた受容部が軸受本体の円周方向に開いた受容部の下に位置することが有益である。なぜなら、この場合、コーティング動作中、円筒体又は保持装置の固有の重量及び/又はキャリアの移動、例えばキャリアの回転により、円筒体が軸受本体の円周方向に閉じた受容部内に戻るからである。このようにして、保持装置は、軸受本体内に特に確実に取り付けられる。
【0017】
円筒体は、保持装置に取り付けられた取付ピンであり得る。この場合、物体を含む保持装置をキャリア上に保持するために、取付ピンが軸受本体の受容部に挿入される。
【0018】
円周方向に閉じた受容部が円筒体に対して過大寸法を有するとさらに有利である。この過大寸法により、円筒体は、軸受本体内において、例えば回転又は変位によって移動することができる。軸受本体の円周方向に閉じた受容部の直径は、好ましくは、円筒体の直径の101%~150%、特に好ましくは110%~140%、非常に特に好ましくは120%~130%に対応する。この過大寸法は、円筒体が軸受本体内で移動できるが、同時に保持装置の回転時に旋回軸の角度がわずかにのみ変化し得るという利点を有する。
【0019】
好ましい実施形態は、保持装置を、旋回軸の周囲で旋回することができるようにキャリア上に取り付けるためのさらなる旋回軸受を提供し、このさらなる旋回軸受は、保持装置によって保持された物体をコーティング開口内で回転させる役割を果たし、且つ旋回軸の方向に範囲を有する、さらなる円筒体のための円周方向に閉じた受容部を備えるさらなる軸受本体を有する。さらなる円筒体は、さらなる旋回軸受に挿入され得、円筒体は、旋回軸受に挿入され得、それにより、保持装置は、コーティング開口内で回転することができる。
【0020】
有利には、これに関して、旋回軸受は、さらなる旋回軸受の下に位置付けられ、これは、それにより円筒体を旋回軸受内に挿入し、さらなる円筒体をさらなる旋回軸受内に挿入することが容易になるからである。具体的には、まず、さらなる円筒体をさらなる旋回軸受のさらなる軸受本体の円周方向に閉じた受容部に挿入でき、その後、円筒体を、旋回軸受の軸受本体の円周方向に開いた受容部を通して、旋回軸受の軸受本体の円周方向に閉じた受容部にスライドさせることができる。
【0021】
ここで、さらなる軸受本体は、同様に、さらなる円筒体のための円周方向に開いた受容部を有することができ、これは、円周方向に閉じた受容部と一体化し、それを通して、保持装置がキャリア上に配置されているとき、さらなる円筒体は、円周方向に閉じた受容部に挿入され得る。この手段により、さらなる円筒体をさらなる旋回軸受のさらなる軸受本体に挿入することが容易となる。
【0022】
キャリア上に円筒体の円周方向に開いた受容部を配置することは、ここで、円筒体が軸受本体の円周方向に閉じた受容部から出るとき、円筒体が、軸受本体の円周方向に開いた受容部により、例えばその自重若しくは保持装置の固有の重量の結果又はコーティング動作中のキャリアの移動の結果として、それが円周方向に閉じた受容部に再び戻るように案内されるという技術的効果を有する。
【0023】
加えて、円周方向に開いた受容部により、円筒体を軸受本体の円周方向に閉じた受容部に挿入することが容易となる。具体的には、円筒体を軸受本体の円周方向に閉じた受容部に挿入するために、3つの全空間方向に正しく案内する必要はない。代わりに、円筒体は、円周方向に開いた受容部に挿入し、そこから円周方向に閉じた受容部に挿入することができる。保持装置が水平面と十分に大きい角度を成すように保持装置がキャリア上に取り付けられた場合、円筒体は、軸受本体の円周方向に開いた受容部に挿入された後、円周方向に閉じた受容部内にも独立して移動することができる。
【0024】
本発明の1つの概念は、円筒体を軸受本体の円周方向に閉じた受容部に挿入するこの容易化された方法により、制御ユニットがコンピュータユニット及びコンピュータプログラムと共に実行する、円筒体の軸受本体の円周方向に閉じた受容部への自動挿入が可能になるというものである。これにより、特にコーティング動作中の時間が節約される。
【0025】
さらなる軸受本体がキャリアに固定されると有利であり、これは、それによりコーティング作業中に保持装置をキャリア上に確実に保持できるからである。
【0026】
さらなる円筒体は、同様に、保持装置に取り付けられた取付ピンの形態であり得る。
【0027】
物体を真空コーティング設備内に受けるための上述の装置により、物体に対する損傷、例えばレンズへの損傷による損失を回避することができる。さらに、保持装置を旋回軸受に挿入する動作が容易にされ、したがってそのために必要な時間が短縮される。加えて、本発明による旋回軸受は、自動挿入方式にも使用することができ、これは、物体を手作業で扱う時間及び労力の削減につながる。
【0028】
軸受本体がキャリアに固定されると有利である。これにより、保持装置をキャリアに安定に取り付けることができる。
【0029】
好ましくは、取付ピンのための端面ストッパが軸受本体に形成される。これにより、取付ピンが軸受本体から円周方向に閉じた受容部に出ることが防止される。そのために、端面ストップは、少なくとも、軸受本体の円周方向に閉じた受容部の、円周方向に開いた受容部と反対側の部分を閉じる。有利には、端面ストッパは、円周方向に閉じた受容部の一部、特に上部のみを閉じ、これは、それにより円周方向に閉じた受容部の底部から塵埃が出ることが可能になるためである。
【0030】
保持装置を、旋回軸の周囲で旋回することができるようにキャリア上に取り付けるための旋回軸受及びさらなる旋回軸受は、球形キャップの子午線上にある。これは、保持装置が旋回軸受内にその自重によって保持され、その結果、円筒体が旋回軸受から外れることが回避されるという利点を有する。
【0031】
保持装置が、旋回軸の方向に変位可能であるように旋回軸受及びさらなる旋回軸受内に配置されると有利である。これにより、保持装置を旋回軸受及びさらなる旋回軸受に挿入することが容易になる。
【0032】
有利には、旋回軸受の軸受本体は、中実材料から製作され、すなわち、軸受本体は、1つの材料片から製作される。これは、軸受本体が特に安定であるという利点を有する。代替として、旋回軸受の軸受本体は、中実材料から製作される第一の軸受本体部分体であって、その中に円周方向に閉じた受容部が形成される、第一の軸受本体部分体と、中実材料から製作されるさらなる軸受本体部分体であって、その中に円周方向に開いた受容部が形成される、さらなる軸受本体部分体とを有する。これに関して、さらなる軸受本体部分体は、第一の軸受本体部分体の接合表面に取り付けられるか、又は第一の軸受本体部分体から離間される。これは、すでに存在している、円周方向に閉じた開口を有する第一の軸受本体部分体をさらなる軸受本体部分体によってより広くすることができるという利点を有する。
【0033】
第一の軸受本体部分体の、そこに受けられる円筒体に面する表面は、ここで、さらなる軸受部分の円周方向に閉じた受容部及び円周方向に開いた受容部と共に、できる限り連続的に微分可能な表面を画定する。この手段により、円筒体がスライドして、円周方向に閉じた受容部から円周方向に開いた受容部に移動すると、それは、独立して、円周方向に閉じた受容部内に再び戻り得ることが確実となる。他方で、2つの表面のずれにより、対応する円筒体が傾き、それにより円周方向に閉じた受容部に再びスライドして戻ることができなくなる。
【0034】
物体をコーティング開口内に保持するための保持装置は、コーティング開口内において、保持装置をキャリア上に旋回軸の周囲で旋回可能であるように取り付けるための旋回軸受によって回転される。そのために、保持装置を旋回軸の周囲で回転させることを目的として、例えば磁力を生成することができ、その回転は、保持装置に伝えられ、保持装置を回転させる。コーティング開口内で保持装置を回転させるこのような方法は、独国特許第10 2006 041 137 B4号明細書に記載されており、これを参照し、その開示の全体が本発明の本明細書に援用される。これに関して、球形キャップは、好ましくは、非磁性ステンレス鋼からなる。保持装置及び/又は物体は、さらに好ましくは、磁性ステンレス鋼からなる。
【0035】
本発明は、保持装置であって、真空コーティング設備内でコーティングされることを目的としてその中に固定された物体を含む保持装置をキャリア上に配置する方法にも関し、キャリアは、コーティング開口を有し、且つキャリア又は保持装置に固定される受本体を有し、軸受本体は、旋回軸の方向に範囲を有する、円筒体のための円周方向に閉じた受容部を有し、且つ保持装置又はキャリアに固定され、軸受本体は、円筒体のための円周方向に開いた受容部を追加的に有し、及びこの方法において、保持装置をキャリアに対して相対的に変位させることにより、円筒体は、円周方向に開いた受容部に挿入され、且つその後、円周方向に閉じた受容部内に移動される。保持装置のこのような配置は、特に容易であり、時間が節約される。円周方向に閉じた受容部と比較して、円周方向に開いた受容部は、より大きい開口を有し、そのため、保持装置を、円周方向に開いた受容部内により多くの方向、具体的には旋回軸の方向、円周方向に開いた受容部の開口の方向及びそれらの間のあらゆる方向から挿入することが可能となる。これにより、保持装置の自動挿入も可能となり、これは、軸受本体の円周方向に開いた受容部を3つの空間方向に制御する必要がなくなるからである。代わりに、保持装置に取り付けられた円筒体は、円周方向に開いた受容部の開口から軸受本体内に、それが円周方向に開いた受容部の、その中に受けられる物体に面する壁に当接するまで挿入することができ、その後、保持装置の自重により、円周方向に閉じた受容部に、それが軸受本体の端面ストッパと接触するまでスライドできる。
【0036】
保持装置を配置する方法は、真空コーティング設備内で物体の仕上げを改善する方法の一部であり得、この方法は、以下の方法ステップを有する。物体が保持装置に固定される。保持装置であって、真空コーティング設備内でコーティングされることを目的としてその中に固定された物体を含む保持装置は、保持装置を配置するための前述の方法によってキャリア上に配置され、キャリアは、コーティング開口を有し、且つキャリア又は保持装置に固定される軸受本体を有し、軸受本体は、旋回軸の方向に範囲を有する、円筒体のための円周方向に閉じた受容部を有し、且つ保持装置又はキャリアに固定される。これに関して、軸受本体は、円筒体のための円周方向に開いた受容部を追加的に有する。最後に、物体は、真空コーティング設備内でコーティングされる。
【0037】
本発明は、制御ユニットを有し、且つコンピュータユニットを有するハンドリング装置にさらに関し、これは、保持装置であって、真空コーティング設備内でコーティングされることを目的としてその中に固定された物体を含む保持装置をキャリア上に配置するために、前述の方法を実行する役割を果たす。コンピュータユニットは、制御ユニットのための制御コマンドを生成するプログラムコードを有するコンピュータプログラムを含む。制御ユニットは、ハンドリング装置の把持ツールを作動させる役割を果たし、これは、保持装置であって、その中に固定された物体を含む保持装置を、旋回軸受の円周方向に開いた受容部内に、例えば円周方向に開いた受容部の開口の方向において、保持装置に取り付けられた円筒体が、円周方向に開いた受容部の、そこに受けられる物体に面する壁に当接するまで挿入する。旋回軸受が、円周方向に閉じた受容部が円周方向に開いた受容部より深くなるような向きになると、把持ツールは、保持装置を解放し、円筒体を含む保持装置は、軸受本体の円周方向に開いた受容部から円周方向に閉じた受容部にその自重及び重力によって自動的にスライドする。円周方向に閉じた受容部が、円周方向に開いた受容部より深くない場合、円筒体を含む保持装置が挿入された後、ハンドリング装置は、円周方向に閉じた受容部に保持装置を移動させることができる。円周方向に開いた受容部により、そこへの自動挿入が単純化される。
【0038】
円周方向に閉じた受容部を有するさらなる旋回軸受もキャリアに固定された場合、ハンドリング装置は、円筒体及びさらなる円筒体を含む保持装置を旋回軸受及びさらなる旋回軸受内に、まず、さらなる円筒体がさらなる旋回軸受の円周方向に閉じた開口内に挿入され、その後、前述のように円筒体が旋回軸受に挿入されるような方法で案内する。
【0039】
本発明は、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品にさらに関し、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムが、上述のハンドリング装置のコンピュータユニットにロードされ、且つ/又はコンピュータユニット上で実行されると、保持装置を配置するための前述の方法の全ての方法ステップを実行するためのプログラムコードを有する。
【0040】
本発明の有利な例示的実施形態を図面に概略的に示し、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】物体を受けるための装置を有する真空コーティング設備を示す。
【
図3】物体を受けるための装置のキャリアの、コーティング開口を有する部分を示す。
【
図4】物体を受けるための装置の旋回軸受の軸受本体を示す。
【
図5】物体を受けるための装置のさらなる旋回軸受の軸受本体を示す。
【
図6】旋回軸受の
図4の軸受本体の代替的軸受本体を示す。
【
図7】ハンドリング装置が第一の位置にあるときの真空コーティング設備を示す。
【
図8】ハンドリング装置がさらなる位置にあるときの真空コーティング設備を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、この場合には眼鏡レンズの形態の物体14を受けるための装置10を含む真空コーティング設備5の断面図である。真空コーティング設備5は、装置10内に受けられた物体14を光学的活性層でコーティングする役割を果たす。そのために、真空コーティング設備5は、真空室16を含み、その中では、蒸発させるための材料を前記真空室内に配置された蒸発器22によって真空中で蒸発させることができる。
【0043】
装置10内に受けられた物体をコーティングするために、蒸発器22内に配置された蒸発させるための材料は、電気ヒータ(図示せず)によって加熱されることによって蒸発される。その代替として、真空コーティング設備5に特に蒸発器が収容され得、その中で蒸発させるための材料が電子ビームによって蒸発される点に留意すべきである。
【0044】
真空コーティング設備5は、壁17、床30及びカバー28を含むハウジング15を有し、そこで、装置10は、カバー28内に固定された回転軸受45内のシャフト本体23によって保持される。装置10は、キャリア12を有し、これは、シャフト本体23に取り付けられ、球形キャップ13を有する本体を含む。コーティングされることになる物体14の形態の眼鏡レンズ要素を保持装置20によって保持できるコーティング開口18は、キャリア12の本体内に形成される。真空コーティング設備5では、シャフト本体23のための駆動モジュール24がある。駆動モジュール24により、シャフト本体23は、縦回転軸26の周囲で設定可能な角速度ωで移動できる。シャフト本体23の回転軸26は、真空コーティング設備5内の球形キャップ13の球形キャップ中心25を通る。この球形キャップの中心25は、キャリア12の下の蒸発器22上において、真空室16内のキャリア12の球形キャップ13から球形キャップの半径Rに対応する垂直距離で配置される。キャリア12の本体のコーティング開口18は、球形キャップ13上に円形縁部を有する。
【0045】
コーティングされる物体14をキャリア12のコーティング開口18内に保持するために、装置10は、物体14を受けることを目的とした複数の保持装置20を有する。各保持装置20について、物体14を受けるための装置10のキャリア12上に1つ旋回軸受32及び1つのさらなる旋回軸受38がある。保持装置20は、キャリア12上で旋回軸受32内に取外し可能に、且つさらなる旋回軸受38内で回転できるようにそれぞれ取り付けられる。
【0046】
保持装置20に固定された物体14は、装置10内のキャリア12の球形キャップ13の上、すなわち真空コーティング設備5内において、その中心に蒸発器22が配置される球の表面上に位置付けられる。これは、同じ層厚のそれぞれの層が、真空コーティング設備5内でコーティングされる物体14上に成膜されるという効果を有する。
【0047】
図2は、装置10の保持装置20を示す。
図3は、コーティング開口18及び保持装置20を有するキャリアの部分を示す。保持装置20は、回転リング27を有し、そこにスプリングラメラ29が取り付けられ、これは、コーティング対象の物体14の形態の画境レンズ要素をばね力によって側方縁面31に保持する。
【0048】
円筒体軸37を有する円筒体36及びさらなる円筒体軸39を有するさらなる円筒体40は、回転リング27に取り付けられる。回転リング27の円筒体36、40の円筒体軸37及びさらなる円筒体軸39は、相互に同軸である。回転リング27に取り付けられた円筒体36、40は、ピンの形態を有する。円筒体36は、さらなる円筒体40から例えば96mmの距離に配置される。
【0049】
装置10内の保持装置20のための旋回軸受32及びさらなる旋回軸受38は、旋回軸34を画定する。これらは、球形キャップ13の子午線42上にある。旋回軸受32は、球形キャップ13の赤道21により近く、そのため、さらなる旋回軸受38より深い。保持装置20の固有の重量は、円筒体36が旋回軸受32の軸受本体から外れることに対抗する。保持装置20は、その中に保持された物体14を含み、装置10内において旋回軸34の周囲での回転によって回転され得、回転リング27は、コーティング開口18に埋め込まれる。これにより、真空コーティング設備5内で物体14の両面をコーティングすることが可能となる。旋回軸受32の円周方向に閉じた受容部46及びさらなる旋回軸受38の円周方向に閉じた受容部46は、相互から例えば90mmの距離に配置される。旋回軸受32の円周方向に開いた受容部48及びさらなる旋回軸受38の円周方向に閉じた受容部46は、相互から87.7mmの距離に配置される。
【0050】
図4は、旋回軸受32の軸受本体51を示す。さらなる旋回軸受38の軸受本体53は、
図5において見ることができる。旋回軸受32の軸受本体51は、中実材料で製作される。これは、キャリア12に固定され、円周方向に閉じた受容部46及び円周方向に開いた受容部48を有し、その深さは、両矢印56によって示され、その深さまで円筒体36又はさらなる円筒体40を挿入できる。旋回軸受32の軸受本体51の円周方向に開いた受容部48は、この場合、軸受本体51の円周方向に閉じた受容部46と一体化する。円周方向に開いた受容部48は、U字形状を有し、円筒体36及びさらなる円筒体40に対して過大寸法を有する。軸受本体51の円周方向に開いた受容部48は、軸受本体51の、キャリア12から離れる方に面する側に配置された開口47を有する。旋回軸受32内の円周方向に閉じた受容部46は、ストッパ44を有し、これは、円筒体36、40がその端面においてストッパ44と当接すると、円筒体36又はさらなる円筒体40の移動を防止する。旋回軸受32の軸受本体51は、円周方向に開いた受容部48から離れる方に面する側において、開口43を有するアパーチャを有し、これは、円周方向に閉じた受容部46と通連し、それによりクリーニングのために円周方向に開いた受容部48及び円周方向に閉じた受容部46を完全にすすぐことが可能となる。
【0051】
さらなる旋回軸受38は、キャリア12に固定された軸受本体53を有し、また円筒体36又はさらなる円筒体40のための円周方向に閉じた受容部46を有し、この円周方向に閉じた受容部は、軸受本体53の貫通穴の形態である。
【0052】
旋回軸受32及びさらなる旋回軸受38の円周方向に閉じた受容部46は、保持装置20のための旋回軸34を画定する。保持装置20は、旋回軸受32及びさらなる旋回軸受38内で旋回軸34の方向に変位可能である。
【0053】
図6は、旋回軸受32の
図4に示される軸受本体51の代替としての旋回軸受32のための軸受本体51’を示す。この軸受本体51’は、第一の軸受本体部分体50を有し、これは、中実材料から製作され、そこに円周方向に閉じた受容部46が形成される。同様に中実材料から製作されるさらなる軸受本体部分体52は、矢印49によって示されるように、第一の軸受本体部分体50に第一の軸受本体部分体50の接合面54において取り付けられる。ここで、円周方向に開いた受容部48は、さらなる軸受本体部分体52に形成される。
【0054】
この場合、さらなる軸受本体部分体52は、第一の軸受本体部分体50に接着剤によって確実に結合される。第一の軸受本体部分体50及びさらなる軸受本体部分体52は、溶接又ははんだによっても接続され得る点に留意すべきである。代替として、さらなる軸受本体部分体52は、第一の軸受本体部分体50から間隔をあけて配置された物体でもあり得る。さらなる軸受本体部分体52の両矢印56によって示される範囲は、第一の軸受本体部分体50とコーティング開口18との間の距離Dの50%~100%に及び得る。
【0055】
図7は、真空コーティング設備5を示し、これは、その中に保持された物体14を含む保持装置20を装置10のキャリア12のコーティング開口18内の旋回軸受32及びさらなる旋回軸受38内に自動的に配置する役割を果たすハンドリング装置62を含む。
【0056】
ハンドリング装置62は、土台部64を有し、これは、第一のロボットアーム68のための回転ジョイント66を含み、その上で第二のロボットアーム70が旋回ジョイント72内に受けられる。第二のロボットアーム70は、さらなる旋回ジョイント74内に第三のロボットアーム76を担持し、これは、回転ジョイント78を含み、そこに、その中に保持された物体14を含む保持装置20を把持するための把持ツール80が取り付けられる。ハンドリング装置62は、コンピュータユニット82と制御ユニット84とを含む。コンピュータユニット82は、コンピュータプログラムを含み、これは、送給システム86によって供給され、その中に受けられた物体14を含む保持装置20を保持装置受容位置に受けるようにするために、制御ユニット84に向けた制御コマンドを生成する。
【0057】
図8は、保持装置挿入位置内にハンドリング装置62を含む真空コーティング設備5を示す。ここで、第一のステップにおいて、その中に保持された保持装置20を含む把持ツール80は、回転リング27に取り付けられたさらなる円筒体40が、さらなる旋回軸受38の円周方向に閉じた受容部46に挿入されるように移動される。第一のステップに続くさらなるステップでは、円筒体36は、したがって、旋回軸受32の円周方向に開いた受容部48に旋回され、その後、その円周方向に閉じた受容部46に旋回軸34の方向に移動される。
【0058】
要約すると、以下の点に留意すべきである。物体14を真空コーティング設備5内に受けるための装置10は、コーティング開口18を有するキャリア12を含み、コーティング開口18内に物体14を保持するための保持装置20を有する。装置10において、保持装置20のための旋回軸受32があり、この旋回軸受は、キャリア12に固定され、その周囲で保持装置20を旋回させて、それが保持する物体14をコーティング開口18内で回転させることができる旋回軸34を有し、且つ旋回軸34の方向に範囲を有する、円筒体36のための円周方向に閉じた受容部46を備える軸受本体51、51’を有する。軸受本体51、51’は、円筒体36のための円周方向に閉じた受容部46及び円周方向に開いた受容部48を有し、その結果、円筒体36は、保持装置20がキャリア12上に配置されているとき、円周方向に開いた受容部48から円周方向に閉じた受容部46に挿入され得る。
【符号の説明】
【0059】
5 真空コーティング設備
10 装置
12 キャリア
13 球形キャップ
14 物体
15 ハウジング
16 真空室
17 壁
18 コーティング開口
20 保持装置
21 赤道
22 蒸発器
23 シャフト本体
24 駆動モジュール
25 球形キャップ中心
26 回転軸
27 回転リング
28 カバー
29 スプリングラメラ
30 底部
31 周辺面
32 ピペット軸受
34 旋回軸
36 円筒体
37 円筒体軸
38 さらなる旋回軸受
39 さらなる円筒体軸
40 さらなる円筒体
42 子午線
43 開口
44 ストッパ
45 回転軸受
46 円周方向に閉じた受容部
47 開口
48 円周方向に開いた受容部
49 矢印
50 第一の軸受本体部分体
51、51’ 軸受本体
52 さらなる軸受本体部分体
53 さらなる軸受本体
54 接合面
56 両矢印
62 ハンドリング装置
64 土台部
66 回転ジョイント
68 第一のロボットアーム
70 第二のロボットアーム
72 旋回ジョイント
74 さらなる旋回ジョイント
76 第三のロボットアーム
78 回転ジョイント
80 把持ツール
82 コンピュータユニット
84 制御ユニット
86 送給システム
R 球形キャップの半径
D 距離
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空コーティング設備内に物体(14)を受けるための装置(10)であって、
コーティング開口(18)を有するキャリア(12)を含み、
前記コーティング開口(18)内に前記物体(14)を保持するための保持装置(20)を含み、及び
前記保持装置(20)のための旋回軸受(32)であって、前記キャリア(12)に固定され、旋回軸(34)であって、その周囲において、前記保持装置(20)が、それが保持する前記物体(14)を前記コーティング開口(18)内で回転させるために旋回され得る旋回軸(34)を有し、且つ前記旋回軸(34)の方向に範囲を有する、円筒体(36)のための円周方向に閉じた受容部(46)を備える軸受本体(51、51’)を有する旋回軸受(32)を含む装置(10)において、
前記軸受本体(51、51’)は、前記円筒体(36)のための円周方向に開いた受容部(48)を追加的に有し、前記円筒体(36)は、前記保持装置(20)が前記キャリア(12)上に配置されているとき、前記円周方向に開いた受容部(48)を通して、前記円周方向に閉じた受容部(46)に挿入され得ることを特徴とする装置(10)。
【請求項2】
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に閉じた受容部(46)は、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)と一体化することを特徴とする、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記軸受本体(51、51’)は、前記キャリア(12)に固定されること、及び/又は
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)は、前記キャリア(12)の前記コーティング開口(18)と、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に閉じた受容部(46)との間に配置され、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)の、前記旋回軸(34)の方向における前記範囲は、前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に閉じた受容部(46)と、前記コーティング開口(18)との間の距離(D)の少なくとも50%及び最大で100%に及ぶこと、及び/又は
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)は、前記軸受本体(51、51’)の、前記キャリア(12)から離れる方に面する側に配置された開口(47)を有すること、及び/又は
前記軸受本体(51、51’)の前記円周方向に開いた受容部(48)は、U字形状を有すること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記円筒体(36)は、前記保持装置(20)に取り付けられた取付ピンであることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記円周方向に閉じた受容部(46)は、前記円筒体(36)に対して過大寸法を有することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記保持装置(20)を、旋回軸(34)の周囲で旋回することができるように前記キャリア(12)上に取り付けるためのさらなる旋回軸受(38)であって、前記保持装置(20)によって保持された前記物体(14)を前記コーティング開口(18)内で回転させる役割を果たし、且つ前記旋回軸(34)の方向に範囲を有する、さらなる円筒体(40)のための円周方向に閉じた受容部(46)を備えるさらなる軸受本体(53)を有するさらなる旋回軸受(38)によって特徴付けられる、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記さらなる軸受本体(53)は、前記さらなる円筒体(40)のための円周方向に閉じた受容部(46)及び円周方向に開いた受容部(48)を有し、その結果、前記さらなる円筒体(40)は、前記保持装置(20)が前記キャリア(12)上に配置されているとき、前記円周方向に開いた受容部(48)を通して、前記円周方向に閉じた受容部(46)に挿入され得ること、及び/又は
前記さらなる軸受本体(53)は、前記キャリア(12)に固定されること
を特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記さらなる円筒体(40)は、前記保持装置(20)に取り付けられた取付ピンであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記取付ピンのための端面ストッパ(44)は、前記旋回軸受(32)の前記軸受本体(51、51’)に形成されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記保持装置(20)を、旋回軸(34)の周囲で旋回することができるように前記キャリア上に取り付けるための前記旋回軸受(32)及び前記さらなる旋回軸受(38)は、球状キャップ(13)の子午線(42)上にあること、及び/又は前記保持装置(20)は、前記旋回軸(34)の方向に変位可能であるように前記旋回軸受(32)及び前記さらなる旋回軸受(38)内に配置されることを特徴とする、請求項6~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記旋回軸受(32)の前記軸受本体(51、51’)は、中実材料から製作されること、又は前記旋回軸受(32)の前記軸受本体(51、51’)は、中実材料から製作される第一の軸受本体部分体(50)であって、その中に前記円周方向に閉じた受容部(46)が形成される、第一の軸受本体部分体(50)と、中実材料から製作されるさらなる軸受本体部分体(52)であって、その中に前記円周方向に開いた受容部(48)が形成される、さらなる軸受本体部分体(52)とを有し、前記さらなる軸受本体部分体(52)は、前記第一の軸受本体部分体(50)の接合面(54)に取り付けられるか、又は前記第一の軸受本体部分体(50)から離間されることを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
保持装置(20)であって、真空コーティング設備(5)内でコーティングされることを目的としてその中に固定された物体(14)を含む保持装置(20)をキャリア(12)上に配置する方法であって、前記キャリア(12)は、コーティング開口(18)を有し、且つ前記キャリア(12)又は前記保持装置(20)に固定される軸受本体(51、51’)を有し、前記軸受本体(51、51’)は、旋回軸(34)の方向に範囲を有する、円筒体(36)のための円周方向に閉じた受容部(46)を有し、且つ前記保持装置(20)又は前記キャリア(12)に固定される、方法において、
前記軸受本体(51、51’)は、前記円筒体(36)のための円周方向に開いた受容部(48)を追加的に有し、及び
前記方法において、前記保持装置(20)を前記キャリア(12)に対して相対的に変位させることにより、前記円筒体(36)は、前記円周方向に開いた受容部(48)に挿入され、且つその後、前記円周方向に閉じた受容部(46)内に移動されることを特徴とする方法。
【請求項13】
真空コーティング設備内での物体(14)の仕上げを改善する方法であって、
前記物体(14)を保持装置(20)に固定するステップと、
前記保持装置(20)であって、前記真空コーティング設備(5)内でコーティングされることを目的としてその中に固定された前記物体(14)を含む前記保持装置(20)をキャリア(12)上に配置するステップであって、前記キャリア(12)は、コーティング開口(18)を有し、且つ前記キャリア(12)又は前記保持装置(20)に固定される軸受本体(51、51’)を有し、前記軸受本体(51、51’)は、旋回軸(34)の方向に範囲を有する、円筒体(36)のための円周方向に閉じた受容部(46)を有し、且つ前記保持装置(20)又は前記キャリア(12)に固定される、ステップと、
前記物体(14)を前記真空コーティング設備内でコーティングするステップと
を有する方法において、
前記軸受本体(51、51’)は、前記円筒体(36)のための円周方向に開いた受容部(48)を追加的に有し、
前記保持装置(20)は、請求項12に記載の方法によって前記キャリア(12)上に配置されることを特徴とする方法。
【請求項14】
制御ユニット(84)を有し、
把持ツール(80)を有し、且つコンピュータユニット(82)を有するハンドリング装置(62)であって、保持装置(20)であって、真空コーティング設備(5)内でコーティングされることを目的としてその中に固定された物体(14)を含む保持装置(20)をキャリア(12)上に配置するために、請求項12に記載の方法を実行する役割を果た
し、
前記コンピュータユニットは、前記制御ユニットのための制御コマンドを生成するプログラムコードを有するコンピュータプログラムを含み、
前記制御ユニット(84)は、前記ハンドリング装置(62)の前記把持ツール(80)を作動させる役割を果たし、
前記把持ツール(80)は、前記保持装置(20)であって、その中に固定された前記物体(14)を含む前記保持装置(20)を、前記保持装置(20)に取り付けられた円筒体(36)のためのピボット軸受(32)の軸受本体(51、51’)の円周方向に開いた受容部(48)内に、前記保持装置(20)に取り付けられた前記円筒体(36)が、前記円周方向に開いた受容部(48)の、受けられる物体に面する壁に当接するまで挿入して、
その後、前記円筒体(36)を含む前記保持装置(20)を、前記把持ツール(80)により、前記円筒体(36)のための円周方向に閉じた受容部(46)に挿入するように設計される、ハンドリング装置(62)。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、請求項14に記載のハンドリング装置(62)の前記コンピュータユニット(82)にロードされ、且つ/又は前記コンピュータユニット(82)上で実行されると、請求項13に記載の全ての方法ステップを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】