(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ベンダムスチン組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20230630BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230630BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230630BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230630BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20230630BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230630BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230630BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230630BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230630BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230630BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/08
A61K47/40
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/34
A61K47/20
A61K47/26
A61K9/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501141
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2020084038
(87)【国際公開番号】W WO2021203377
(87)【国際公開日】2021-10-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522009994
【氏名又は名称】ビカ・バイオテック(グアンジョウ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ユェ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】チン・イェン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD23Q
4C076DD50Q
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4C076DD67
4C076EE16Q
4C076EE39Q
4C076FF36
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4C076GG45
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、a)ベンダムスチン又はその塩、b)シクロデキストリン、及びc)任意の安定剤を含み、前記安定剤が、塩素含有無機物又は有機物、リポ酸、チオグリセロール、ポリビニルピロリドン及びそれらの任意の組み合わせから選択され、かつ前記ベンダムスチン又はその塩と前記シクロデキストリンとの質量比が1:5~1:100である組成物を提供する。本発明は、前記組成物を使用して癌を予防又は治療する方法と、癌を治療する医薬品の製造における前記組成物の用途とをさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ベンダムスチン又はその塩、
b)シクロデキストリン、及び
c)任意の安定剤を含み、
前記安定剤が、塩素含有無機物又は有機物、リポ酸、チオグリセロール、ポリビニルピロリドン及びそれらの任意の組み合わせから選択され、かつ
前記ベンダムスチン又はその塩と前記シクロデキストリンとの質量比が1:5~1:100である組成物。
【請求項2】
前記シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリン及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シクロデキストリンは、塩素含有シクロデキストリンであり、かつ前記シクロデキストリン中の塩素含有量は、0~5重量%であり、好ましくは0~3重量%であり、より好ましくは0~1重量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
塩素含有無機物は、塩化ナトリウムから選択され、塩素含有有機物は、塩化コリンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ベンダムスチンと前記安定剤との質量比は1:0~5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ベンダムスチンの塩は、ベンダムスチンの塩酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
注射用水、0.9%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム/2.5%のグルコース、2.5%のグルコース及び5%のグルコースからなる群から選択される希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記希釈剤は、5%のグルコースである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ベンダムスチン又はその塩の濃度が0.2~100mg/mLの注射液を被験者に投与するステップを含み、前記注射液は、ベンダムスチン又はその塩、シクロデキストリン、任意の安定剤及び希釈剤を含み、前記ベンダムスチン又はその塩と前記シクロデキストリンとの質量比が1:5~1:100であり、かつ前記安定剤が、塩素含有無機物又は有機物、リポ酸、チオグリセロール、ポリビニルピロリドン及びそれらの任意の組み合わせから選択される、癌を予防又は治療する方法。
【請求項10】
前記癌は、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫及び乳癌からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン、スルホブチル-β-シクロデキストリン及びそれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記シクロデキストリンは、塩素含有シクロデキストリンであり、かつ前記シクロデキストリン中の塩素含有量は、0~5重量%であり、好ましくは0~3重量%であり、より好ましくは0~1重量%である、請求項9又は11に記載の方法。
【請求項13】
塩素含有無機物は、塩化ナトリウムから選択され、かつ塩素含有有機物は、塩化コリンから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ベンダムスチンと前記安定剤との質量比が1:0~5である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記ベンダムスチンの塩は、ベンダムスチンの塩酸塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記希釈剤は、注射用水、0.9%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム/2.5%のグルコース、2.5%のグルコース及び5%のグルコースからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記ベンダムスチン又はその塩の濃度は0.2~16mg/mLである、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記希釈剤は、5%グルコース注射液である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物の癌を治療するための医薬品の製造における用途。
【請求項20】
前記癌は、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫及び乳癌からなる群から選択される、請求項19に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンダムスチン及びその塩、シクロデキストリン及び任意の安定剤を含む組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンダムスチンは、白血病、ホジキン病及び多発性骨髄腫を含む様々な癌を治療する。現在、商品名がTreandaTMの製品説明書には、再構成された製品(30分間以内)を500ミリリットルの希釈剤(生理食塩水、2.5%のグルコース/0.45%の塩水)に希釈して輸液に供し、100mg/m2で30分間輸液するか又は120mg/m2で60分間輸液することが求められる。商品名がBalrapzoとTreandaの製品の希釈された混合物は、2~8℃で24時間貯蔵し、室温(15~30℃)で3時間貯蔵することができ、ベンダムスチンが水中に高い不安定性を持つため、生理食塩水及び2.5%のグルコース/0.45%の塩水と配合した後に3時間内に輸液を完了しなければならない。
【0003】
現在承認されているベンダムスチンの凍結乾燥粉末(例えばTreanda)は、15~30分間の再構成時間を必要とし、再構成過程中に分解が発生するため、再構成後にタイムリーに希釈した後に3時間内に患者への輸液を完了する必要がある。
【0004】
準備済みのベンダムスチン(例えばBendeka)は、再構成する必要がないが、使用されているプロピレングリコールがPEGエステルの形成を低減する。不純物の種類は、Treandaよりはるかに多く、かつプロピレングリコールは、一定の潜在的なリスクを有し、腎不全及び不整脈を引き起こす。
【0005】
また、ベンダムスチンを使用して治療する必要がある患者にとって、重篤な心臓疾患、急性左心不全、うっ血性心不全、腎不全、肝硬変、腹水、脳浮腫、特発性浮腫、高血圧、低カリウム血症などの疾患に罹患すれば、生理食塩水の使用をできるだけ回避すべきである。しかしながら、既存の市販製品を5%のグルコースで1時間希釈した後に含有量が95%より低く、臨床的に使用することができない。0.9%の生理食塩水で調製しても、調製から輸液の完了まで3時間を超えてはならない。また、2.5%のグルコース/0.45%の塩水は、一般的な輸液剤ではないが、病院に在庫がない場合に常に一本の250mLの5%のグルコースと一本の250mLの0.9%の生理食塩水を混合して1つの500mLの輸液バッグに注入し、感染のリスク及び調製時間を増加させる。かつ、2.5%のグルコース/0.45%の塩水も患者の塩化ナトリウム負荷を半分だけ低下させる。
【0006】
しかしながら、糖尿病患者のような糖類の摂取を制御する必要があるか、又は三高症候群患者のような塩分及び糖類の摂取を同時に制御する必要がある患者にとって、0.45%の塩水、2.5%のグルコース/0.45%の塩水、2.5%のグルコース、さらに注射用水で調製されたベンダムスチン注射液は、患者のリスク及び懸念をよりよく除去することができる。上記問題に鑑み、本発明は、0.2~100mg/mLに希釈できるベンダムスチン製剤を提供することを目的とし、同時に、低塩、低糖、無塩、無糖を求める患者の需要を満たし、かつ希釈した後に長時間に亘って安定して存在することができ、急速に増加する不純物によるリスクを低下させ、臨床投薬の利便性を向上させ、医薬品の廃棄量を低下させることは、重大な意義を有し、これも本発明に係る製剤の開発の目標である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、ベンダムスチン又はその塩(API)は、5%のグルコースと配合できず、患者が塩化ナトリウムの摂取を減少させる必要があれば、2.5%のグルコース/0.45%の塩化ナトリウム溶液しか輸液できないことが知られている。本発明者らは、研究により、5%のグルコースで希釈した後に3時間以上安定して存在することができるベンダムスチン又はその塩を含む組成物を予想外に見出し、過剰な塩化ナトリウムを摂取できない患者にベンダムスチン又はその塩を使用して治療を行う希望を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主に、5%のグルコース溶液でAPIの濃度が0.2mg/mLになるまで希釈する時、室温(15~30℃)及び自然光照射で少なくとも3時間の安定性(API分解が5wt%以下である)を有するベンダムスチン又はその塩を含む組成物を提供することである。本明細書に記載の「安定性」は、ベンダムスチン又はその塩を含む組成物を再構成又は希釈した後、ベンダムスチン又はその塩が5wt%分解することに必要な時間を指す。理解されるように、ベンダムスチン又はその塩が5wt%分解することに必要な時間が長いほど、又はベンダムスチン又はその塩の所定の時間での分解が少ないほど、ベンダムスチン又はその塩の再構成溶液又は希釈溶液が安定するようになる。本明細書における安定性は、2~8℃での安定性である冷蔵安定性と、15~30℃での安定性である室温安定性とを含む。
【0009】
本発明に係るベンダムスチン又はその塩を含む組成物は、0.9%の塩化ナトリウム溶液でAPIの濃度が0.2mg/mLになるまで希釈する時、室温(15~30℃)及び自然光照射で少なくとも6時間の安定性(API分解が5wt%以下である)を有する。
【0010】
本発明に係るベンダムスチン又はその塩を含む組成物は、注射用水、0.9%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム、2.5%のグルコース/0.45%の塩化ナトリウム、2.5%のグルコース、5%のグルコースで再構成し希釈することができる。
【0011】
本発明に係るベンダムスチン又はその塩を含む組成物は、注射用水、0.9%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム、2.5%のグルコース/0.45%の塩化ナトリウム、2.5%のグルコース、5%のグルコースで再構成し、APIの濃度が0.2mg/mLより大きくなるまで、例えば0.6、1.0、2.5、5、10、16、25、100mg/mLに希釈する時、室温(15~30℃)及び自然光照射で少なくとも3時間の安定性(API分解が5wt%以下である)を有し、かつ希釈濃度の上昇に伴い、安定性もより高くなる。0.2mg/mLなどの数値は一定ではなく、本組成物は、APIの濃度が0.2~100mg/mLの範囲内の任意の濃度に希釈することができ、いずれも溶解度制限によって析出せず、いずれも室温(15~30℃)及び自然光照射で少なくとも3時間の安定性(API分解が5wt%以下である)を有する。
【0012】
研究において、本発明者らは、さらに、塩化ナトリウムの存在がベンダムスチンの溶解度を低下させるため、より小さい輸液体積が得られず、本発明の組成物を用いるとベンダムスチンが0.2~100mg/mLの濃度で溶解度の不十分によって析出しないため、患者がより小さい体積の輸液を必要とすることを満たし、本発明における組成物を1~500mLに希釈して患者の使用に供することができることを見出した。例えば、100mg/m2の用量に応じて、BSAが1の患者は、100mgのベンダムスチンを必要とし、本発明の組成物は、希釈剤で1mLに希釈して100mg/mLの薬液、4mLに希釈して25mg/mLの薬液、10mLに希釈して10mg/mLの薬液、20mLに希釈して5mg/mLの薬液、50mLに希釈して2mg/mLの薬液、100mLに希釈して1mg/mLの薬液、250mLに希釈して0.4mg/mLの薬液、500mLに希釈して0.2mg/mLの薬液を得ることができる。これらの希釈剤は、注射用水、生理食塩水、5%のグルコース、2.5%のグルコース、0.45%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム/2.5%のグルコースなどであってよい。希釈した後に薬液は、結晶が析出せず、かつ3時間以上の輸液時間を提供する。
【0013】
本発明に係るベンダムスチン又はその塩を含む組成物は、注射用水、生理食塩水で再構成された後、2~8℃の遮光環境で、少なくとも28日間貯蔵し(API分解が5wt%以下である)、即ち、治療周期の一日目に再構成された薬液を治療周期の28日目に保存することができ、患者の経済的な損失を減少させる。市販している凍結乾燥粉末は、再構成した後に2~8℃で28日間安定して存在することができない(API分解が5wt%未満である)。
【0014】
本発明のいくつかの実施例に含まれるベンダムスチンは、ベンダムスチン、又はベンダムスチン塩酸塩、又は他のベンダムスチン塩である。
【0015】
本発明のいくつかの実施例では、前記組成物は、シクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、親油性の内部キャビティにより難溶性医薬品の溶解度及び安定性を向上させることができるが、水溶性の医薬品の安定性及び溶解性を改善する研究は多くない。
【0016】
シクロデキストリンは、種類が多い環状多糖であり、6~7個の多員環からなる筒状超分子構造であってよく、異なる誘導化基に応じて、メチル化シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、スルホブチルシクロデキストリンなどに分けることができ、多員環の数に応じてα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンなどに分けることができ、pHに応じてアルカリ性シクロデキストリン、酸性シクロデキストリン、中性シクロデキストリンなどに分けることができる。
【0017】
本発明者らは、研究過程中に、意外にも、同じ種類で同じ質量比のシクロデキストリンとベンダムスチン組成物を溶解した後に室温で安定性が一致しない状況が発生することを見出した。これは、ベンダムスチン-シクロデキストリン包接製剤の臨床使用上の安全性に深刻な影響を与える。異なるメーカーとロットの異なる種類のシクロデキストリンを繰り返し比較することにより、本発明者らは、シクロデキストリン誘導体の製造過程において水酸化ナトリウムを使用してアルカリ性環境を生成してから、塩酸又は強酸型イオン交換樹脂などの手段を使用して水酸化ナトリウム及び塩化ナトリウムを除去する必要があることを見出した。
【0018】
ベンダムスチンの安定性に最も影響するものは、水酸化ナトリウム残留物を含有するシクロデキストリンであり、水酸化ナトリウムの存在は、シクロデキストリン製品のpHをアルカリ性にし、ベンダムスチン及びその塩の分解を加速させ、不純物の異常な増加をもたらす。
【0019】
残存する水酸化ナトリウムを陽イオン交換により除去し、水酸化ナトリウム及び/又は塩化ナトリウムが存在しないシクロデキストリンを得る。このようなシクロデキストリンとベンダムスチンとの組成物の安定性は、同じ質量比の場合には低く、特にグルコースと配合する場合には、より顕著である。
【0020】
塩素含有シクロデキストリンは、残留した水酸化ナトリウムを中和して塩化ナトリウムを形成し、脱塩されるか又は脱塩されず、最終的に塩素イオンの含有量が0.001~5wt%の範囲内である。ベンダムスチンは、同じ質量の脱塩されたシクロデキストリンと組み合わせた後の組成物より安定し、かつベンダムスチンの安定性は、塩素イオンの含有量の上昇に伴って向上する。しかし、異なるメーカー、異なるプロセス、異なるロット、異なる種類のシクロデキストリンに大きな塩素イオン残留差異があり、異なる塩化ナトリウム除去プロセスによりシクロデキストリン中の塩素イオンの含有量が0~5%(w/w%)内に変動しており、1グラムのシクロデキストリンに付随する塩化ナトリウムは約0~50mgである。シクロデキストリンとベンダムスチンの質量比が大きいほど、塩素イオンとベンダムスチンの質量比も大きくなる。ベンダムスチンの製剤において、塩素イオンは、安定剤の役割を果たすが、高すぎる塩素イオンの含有量は、低ナトリウム食を必要とする患者の生命健康を脅かすだけでなく、製品の品質が複雑であることによる品質上の潜在的なリスクにも不利である。安定剤の添加は、シクロデキストリンの使用量を低減し、腎機能障害を有する患者の使用リスクを軽減することができる。シクロデキストリン中の塩素含有量を合理的に制御すると同時に、安定剤の使用量を調整すれば、安定性がより高く質量が均一なベンダムスチン製剤を得ることができる。
【0021】
本特許は、塩素イオンの含有量が0~5%(w/w)のシクロデキストリンを使用してベンダムスチン及びその塩の安定性を改良し、好ましくは、塩素イオンの含有量が0~3%(w/w)であり、さらに好ましくは、塩素イオンの含有量が0~1%(w/w)であり、例えば0.01~1%(w/w)のシクロデキストリンを使用してベンダムスチン及びその塩の安定性を改良する。本明細書で使用されるように、塩素含有シクロデキストリンは、塩化ナトリウムを含有するシクロデキストリンを指し、シクロデキストリン中の塩素含有量は、シクロデキストリンに対する塩化ナトリウムの質量百分率を指す。
【0022】
本発明のいくつかの実施例におけるシクロデキストリンは、スルホブチル-β-シクロデキストリンである。スルホブチル-β-シクロデキストリンの置換度は、1~11であってよく、置換度6~7が最も広く応用される。
【0023】
本発明のいくつかの実施例におけるシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの置換度は、1~11であってよく、置換度4~9が最も広く応用される。
【0024】
いくつかのより好ましい実施例において、シクロデキストリンは、スルホブチル-β-シクロデキストリンである。
【0025】
本発明のいくつかの実施例における安定剤は、塩化ナトリウム、塩化コリンなどの、塩素含有無機物又は有機物を含み、安定剤は、シクロデキストリンと協同してシクロデキストリンのみを含有する組成物に劣らない組成物を提供することに役立つ。
【0026】
本発明のいくつかの実施例における安定剤は、ポリビニルピロリドン(例えば、PVPK12、PVPK17、PVPK30)、リポ酸、チオグリセロールなどを含み、安定剤は、シクロデキストリンと協同してシクロデキストリンのみを含有する組成物に劣らない組成物を提供することに役立つ。
【0027】
本発明は、シクロデキストリン中の塩素含有量及び安定剤の含有量を調整することによりベンダムスチン及びその塩の分解作用を抑制してベンダムスチン及びその塩の溶解時間を短縮することができ、ベンダムスチンが低ナトリウム環境で使用される大きな利点を実現する。
【0028】
本発明は、さらに公知の解決手段に基づいて静菌剤、浸透圧調節剤などを増加させることができる。
【0029】
本発明は、さらに公知の解決手段に基づいて凍結乾燥保護剤又はプロパント、例えばマンニトールなどを増加させることができる。凍結乾燥保護剤又はプロパントは、凍結乾燥粉末の形態及び再溶解時間を変更する。
【0030】
本発明におけるベンダムスチン及びその塩とシクロデキストリンとの質量比は、1:5~100であり、より高いシクロデキストリン比率は、より高い安定性を提供することができるが、現実条件でのコスト、補助材料の安全性などの問題が存在する。質量比の1:5~100の全ての個別値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示される。例えば、ベンダムスチン及びその塩とシクロデキストリンとの質量比は1:5~24であってもよく、1:24~100であってもよい。
【0031】
本発明におけるベンダムスチン及びその塩と安定剤との質量比は、1:0~5である。質量比の1:0~5の全ての個別値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示される。
【0032】
本発明における組成物は、凍結乾燥、噴霧乾燥により乾燥粉末製剤を製造することができる。凍結乾燥前の溶液中のベンダムスチンの濃度は0.2~100mg/mLであってよい。0.2~100mg/mLの全ての個別値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、かつ本明細書に開示される。
【0033】
また、本発明に係る上記希釈剤を含む組成物又は注射液は、ベンダムスチン又はその塩、シクロデキストリン、任意の安定剤及び希釈剤を含み、ベンダムスチン又はその塩とシクロデキストリンとの質量比が1:5~1:100であり、かつ前記希釈剤が注射用水、0.9%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム/2.5%のグルコース、2.5%のグルコース及び5%のグルコースからなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記希釈剤は、5%のグルコースである。
【0034】
本発明に係る癌を予防又は治療する方法は、ベンダムスチン又はその塩の濃度が0.2~100mg/mLの注射液を被験者に投与するステップを含み、前記注射液は、ベンダムスチン又はその塩、シクロデキストリン、任意の安定剤及び希釈剤を含み、前記ベンダムスチン又はその塩と前記シクロデキストリンとの質量比が1:5~100である。
【0035】
本発明は、本発明に記載の組成物の癌を治療するための医薬品の製造における用途をさらに提供する。前記癌は、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫及び乳癌からなる群から選択される。
【0036】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、いずれも当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】実施例1におけるAPIの含有率の時間t(時間)に対する変化曲線を示す。
【
図2】実施例16における凍結乾燥粉末のX線粉末回折図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施例]
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであるが、任意の方式で本発明の有効範囲を限定するものではない。
【0039】
実施例におけるHPLC法で測定された含有量及び関連物質は、米国薬局方のベンダムスチン原料及び製剤に関して制定されたUSP43草案を参照する。HPLC方法は以下のとおりである:
【0040】
【0041】
実施例における室温は、特に説明しない限り、15~30℃を指す。
【0042】
実施例における冷蔵は、特に説明しない限り、2~8℃を指す。
【0043】
実施例における凍結乾燥は、噴霧乾燥などの他の乾燥手段に置き換えてもよい。
【0044】
実施例における0.9%の塩化ナトリウム注射液は、生理食塩水であってもよく、0.45%の塩化ナトリウム/2.5%のグルコース注射液も2.5%のグルコース/0.45%の塩化ナトリウム注射液又は半塩半糖注射液などと同じ説明に表現されてもよい。
【0045】
実施例において使用される用語「乾燥粉末」又は「乾燥粉末製剤」とは、噴霧乾燥又は流動床乾燥などにより、非水性溶液、又は水性溶液、又は水性溶液と非水性溶液との混合物を連続乾燥させることにより得られる任意の固体材料を意味する。以下の実施例において具体的な条件が示されていないものは、いずれも本分野の一般的な条件又はメーカーが提案した条件に応じて行われる。
【0046】
実施例に示されたAPIは、ベンダムスチン塩酸塩である。
【0047】
(実施例1)
組成物におけるAPIを0.9%の塩化ナトリウムで0.2mg/mLに希釈した後に室温で48時間放置する安定性
【表2】
【0048】
注射用水で800mgのスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して2mLに定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、0.9%の塩化ナトリウムで0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、48時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0049】
【0050】
上記データに基づいて、時間を横座標とし、API百分率を縦座標として作図し(
図1を参照)、API含有量が線形的に減少し、分解速度がシクロデキストリンの影響を明らかに受けず、APIとシクロデキストリンの結合作用が医薬品の放出に影響を与えないことが分かる。
【0051】
(実施例2)
撹拌温度による凍結乾燥前の溶液の不純物への影響
【表4】
【0052】
注射用水で2400mgのスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して4mLに定容した後、それぞれ温度を4、10、20℃に制御し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌して、30分間撹拌し続け、0.22μmのフィルタで濾過し、0.9%の塩化ナトリウムで0.2mg/mLに希釈し、0時間の含有量と不純物をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0053】
【0054】
注釈:HP1不純物は、ベンダムスチンの最も主な分解不純物であり、ベンダムスチンの水性溶液での安定時間が短いことは、主に加水分解によりHP1を生成するためである。HP1の構造式は以下のとおりである。
【化1】
【0055】
上記表のデータから分かるように、スルホブチル-β-シクロデキストリンにより、ベンダムスチンを高い温度で製造することを可能にし、必ずしも従来の製剤プロセスに応じて4~15℃で製造するわけではない。
【0056】
(実施例3)
組成物の異なる希釈溶剤で希釈した後の安定性
【表6】
【0057】
注射用水で2400mgのスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して4mLに定容した後、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌して、30分間撹拌し続け、0.22μmのフィルタで濾過し、対応する希釈溶剤で0.2mg/mLに希釈し、24時間の冷蔵安定性及び6時間の室温安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0058】
【0059】
上記表から分かるように、0.9%の塩化ナトリウム又は5%のグルコースで0.2mg/mLに希釈し、24時間冷蔵放置した後、API含有量がほとんど変化せず、組成物の安定性が大幅に改善される。
【0060】
【0061】
上記表から分かるように、注射用水、5%のグルコース、2.5%のグルコース、2.5%のグルコース/0.45%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム、0.9%の塩化ナトリウムで0.2mg/mLに希釈した後、少なくとも3時間以上の安定時間(API分解が5%未満である)を有する。
【0062】
(実施例4)
組成物中のAPIを異なる希釈溶剤で異なる濃度に希釈した後の4℃での晶析考察
【表9】
【0063】
注射用水で2400mgのスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して4mLに定容した後、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌して、30分間撹拌し続け、0.22μmのフィルタで濾過し、対応する希釈溶剤で100mg/mLに希釈し、2~8℃で冷蔵し、24h及び28日間の晶析状況を観察する。
【0064】
【0065】
上記表から分かるように、組成物中のベンダムスチン又はその塩は、様々な希釈溶剤において0.2~100mg/mLの溶解度を得ることができ、臨床使用時に溶解度が小さいことによって析出することはない。
【0066】
(実施例5)
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含有する組成物の5%のグルコースで希釈した後の安定性
【表11】
【0067】
注射用水で対応する処方量のシクロデキストリンを溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、5%のグルコースで0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0068】
【0069】
上記表から分かるように、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)は、3時間以上の安定時間(API分解が5%未満である)を有する組成物を提供する。
【0070】
(実施例6)
異なる質量比のAPIとスルホブチル-β-シクロデキストリンを含む組成物の5%のグルコースで希釈した後の安定性
【表13】
【0071】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0072】
【0073】
上記表から分かるように、シクロデキストリンの割合が大きくなるにつれて、組成物中のAPIを5%のグルコースで0.2mg/mLに希釈した後、APIの分解速度がますます小さくなる。
【0074】
(実施例7)
塩化ナトリウムを含有する組成物の5%のグルコースで希釈した後の安定性
【表15】
【0075】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)及び塩化ナトリウムを溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約30~120分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0076】
【0077】
塩化ナトリウムを添加する処方の溶解時間は、塩化ナトリウムを添加しない組成物より長く、塩化ナトリウムを添加しない処方の溶解時間は、約5分間であり、塩化ナトリウムを添加する処方の溶解時間は、5~120分間である。
【0078】
(実施例8)
異なる塩素含有量を有するシクロデキストリンを含有する組成物の5%のグルコースで希釈した後の安定性
【表17】
【0079】
スルホブチル-β-シクロデキストリンaの塩素含有量は、テストラインより低く、0と見なし、
スルホブチル-β-シクロデキストリンbの塩素含有量は、0.01%であり、
スルホブチル-β-シクロデキストリンcの塩素含有量は、1%であり、
スルホブチル-β-シクロデキストリンdの塩素含有量は、3%である。
【0080】
注射用水で対応する処方量のシクロデキストリンを溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、5%のグルコースで0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0081】
【0082】
上記表から分かるように、同じ質量比のシクロデキストリン及びベンダムスチンは、塩素含有量の上昇により、より高い安定性を示す。
【0083】
(実施例9)
異なる質量比のPVPk12を含有する組成物の5%のグルコースで希釈した後の安定性
【表19】
【0084】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)及びPVPk12を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0085】
【0086】
(実施例10)
PVPk12及び塩化ナトリウムを含有する組成物の5%のグルコースで希釈した後の安定性
【表21】
【0087】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)、PVPk12、及び塩化ナトリウムを溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約30分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0088】
【0089】
(実施例11)
異なる希釈最終濃度(0.6、1.0、2.5、5、10、16mg/mL)の安定性
【表23】
【0090】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、凍結乾燥粉末を製造する。5%のグルコース注射液で0.6、1、2.5、5、10、16mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。データを下記表に示す。
【0091】
【0092】
上記表から分かるように、希釈最終濃度の上昇に伴い、3時間及び6時間のAPI分解率も徐々に減少する。100~120mg/m2の体表面積(BSA)で投与を計算する場合、1~3m2ごとに100~360mgのベンダムスチンを必要とし、500mLに希釈する場合、ベンダムスチンの濃度は0.2~0.72mg/mLであり、250mLに希釈する場合、ベンダムスチンの濃度は0.4~1.44mg/mLであり、100mLに希釈する場合、ベンダムスチンの濃度は1~3.6mg/mLであり、50mLに希釈する場合、ベンダムスチンの濃度は2~7.2mg/mLであり、25mLに希釈する場合、ベンダムスチンの濃度は4~14.4mg/mLである。輸液体積を減少させる必要がある患者に対して、いずれも析出しない十分な溶解度及び3時間以上の安定時間(API分解が5%以下である)を取得することができる。
【0093】
(実施例12)
異なる再構成濃度の再構成時間及び5%のグルコースの希釈安定性
【表25】
【0094】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、凍結乾燥機で凍結乾燥粉末を製造する。
【0095】
凍結乾燥曲線は以下のとおりである:棚の予冷温度は5℃であり、-50℃で6時間凍結し、-20℃で48時間一次乾燥させ、30℃で6時間二次乾燥させる。予備凍結、一次乾燥、二次乾燥の温度及び時間は、必要に応じて調整することができる。
【0096】
5%のグルコース注射液で2.5、10、25mg/mLに再構成し、再構成時間を記録し、再構成した後に5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し続け、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。再構成時間を下記表に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
再構成時間及び希釈安定性データから分かるように、再構成体積が大きいほど、再構成時間が短くなり、再構成時間も15分間より遥かに小さく、異なる再構成体積のサンプルを5%のグルコースで0.2mg/mLに希釈した後、いずれも3時間より大きい安定性を有する。
【0100】
(実施例13)
異なる凍結乾燥体積の組成物の5%のグルコース注射液で希釈した後の安定性
【表28】
【0101】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、凍結乾燥機で凍結乾燥粉末を製造する。5%のグルコース注射液で25mg/mLに再構成し、再構成した後に5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し続け、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。安定性データを下記表に示す。
【0102】
【0103】
希釈安定性データから分かるように、異なる凍結乾燥体積のサンプルを5%のグルコースで0.2mg/mLに希釈した後、いずれも3時間より大きい安定性を有する。
【0104】
(実施例14)
異なる体積の凍結乾燥粉末の40℃で15日間加速する安定性
【表30】
【0105】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、凍結乾燥機で凍結乾燥粉末を製造する。5%のグルコース注射液で25mg/mLに再構成し、再構成した後に5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し続け、室温で放置し、含有量の変化をHPLCで測定する。安定性データを下記表に示す。
【0106】
【0107】
安定性データをまとめると、組成物は、2~15℃の環境下で2年間以上の貯蔵期間を有すると予想される。
【0108】
(実施例15)
異なる処方におけるAPIを25mg/mLに再構成した後の28日間の安定性
【表32】
【0109】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)、塩化ナトリウム及びPVPk12を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、凍結乾燥機で凍結乾燥粉末を製造する。注射用水で25mg/mLに再構成し、再構成した後に5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し続け、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。0日間の安定性データを下記表に示す。
【0110】
【0111】
28日間の安定性データを下記表に示す。
【表34】
【0112】
データから分かるように、組成物の凍結乾燥粉末を再構成した後に冷蔵環境で28日間放置して高い安定性を維持することができ、3時間の安定時間を有する0.2mg/mLの5%のグルコース希釈液を提供して、臨床の使用を保証することができる。
【0113】
(実施例16)
凍結乾燥粉末のX線粉末回折
【表35】
【0114】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、凍結乾燥機で凍結乾燥粉末に調製して粉末X線回折で2θ角を測定する。結果は、鋭い結晶型特徴ピークがないことを示す(
図2を参照)。
【0115】
(実施例17)
0.9%の塩化ナトリウムで希釈する組成物の安定性
【表36】
【0116】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、凍結乾燥機で凍結乾燥粉末を製造する。生理食塩水で25mg/mLに再構成し、再構成した後に0.9%の塩化ナトリウムで0.2、0.6mg/mLに希釈し続け、室温で放置し、安定性をHPLCで測定する。安定性データを下記表に示す。
【0117】
【0118】
上記表から分かるように、ベンダムスチン組成物の0.9%塩化ナトリウムでの安定性が顕著に向上する。希釈最終濃度が高いほど、安定性も高くなる。
【0119】
(実施例18)
市販模倣品の安定性
BendekaとTreandaの説明書に応じて市販模倣製剤を調製し、それぞれ2.5%のグルコース/0.45%の塩水、5%のグルコース、0.9%の塩化ナトリウムで0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、安定性を考察する。データを下記表に示す。
【0120】
【0121】
上記表から分かるように、従来の製品は0.2mg/mL濃度で5%のグルコースと安定して配合することができない(3時間後にAPI分解が5%未満である)。
【0122】
(実施例19)
塩化ナトリウム又は/及びPVPk12のみを有する処方
【表39】
【0123】
注射用水で対応する処方量の安定剤を溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過する。5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。安定性データを下記表に示す。
【0124】
【0125】
上記表から分かるように、塩化ナトリウム及びPVPk12は安定剤として、シクロデキストリンが欠失した場合に本特許の要件を満たす安定性を提供することができない。
【0126】
(実施例20)
チオグリセロールを含む組成物の5%のグルコース注射液で希釈した後の安定性
【表41】
【0127】
注射用水で対応する処方量のスルホブチル-β-シクロデキストリン(スルホブチル-β-シクロデキストリン中の塩素含有量が0.08重量%である)及びチオグリセロールを溶解して対応する体積に定容した後、4℃に降温し、APIを添加し、完全に溶解するまで約5分間撹拌し、0.22μmのフィルタで濾過し、5%のグルコース注射液で0.2mg/mLに希釈し、室温で放置し、6時間の安定性をHPLCで測定する。安定性データを下記表に示す。
【0128】
【0129】
(実施例21)
異なる希釈剤及び輸液体積による塩化ナトリウム及び/又はグルコースの摂取量
BSAが3で、120mg/m2であることに応じて、異なる希釈剤及び輸液体積による塩化ナトリウム及び/又はグルコースの摂取量を計算し、結果を下記表に示す。
【0130】
【0131】
上記表から分かるように、塩化ナトリウム及び/又はグルコースを低減又は除去する必要がある患者に対して、異なる希釈剤及び輸液体積の調整は、この部分の患者の需要をよく満たすことができる。一次用量が360mgであることに応じて計算すると、安定剤としての塩化ナトリウムとベンダムスチンとの質量比は5:1であり、最高で1800mgの塩化ナトリウムとなり、この時に注射用水で組成物を希釈した後、依然として0.9%の塩化ナトリウム、0.45%の塩化ナトリウム、半塩半糖希釈剤による塩化ナトリウム負荷より20~60%少ない。
【国際調査報告】