IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アセンシア ディアベテス ケア ホールディングス エージーの特許一覧

特表2023-529040持続分析物モニタリングシステムの信号の時変フィルタリングのための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】持続分析物モニタリングシステムの信号の時変フィルタリングのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20230630BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A61B5/1473
A61B5/1486
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537061
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021064783
(87)【国際公開番号】W WO2021245131
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,971
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/112,138
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522093823
【氏名又は名称】アセンシア ディアベテス ケア ホールディングス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,アンソニー ピー.
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KM01
4C038KX02
4C038KY08
4C038KY11
(57)【要約】
持続分析物モニタリング(CAM)システムの信号をフィルタリングする方法は、時変フィルタを使用して、時変フィルタリングを信号に適用して、分析物モニタリング期間中に、フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号を生成することを含む。他の方法、装置、持続分析物モニタリング装置、および持続グルコースモニタリング装置も開示されている。
【選択図】図5A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物モニタリング期間中に持続分析物モニタリングシステムにおいて信号をフィルタリングする方法であって:
時変フィルタを使用して、時変フィルタリングを前記信号に適用して、前記分析物モニタリング期間中に、フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号を生成することを含む、方法。
【請求項2】
前記時変フィルタリングを適用することは、時変フィルタの減衰を時間の関数として増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時変フィルタリングを適用することは、前記時変フィルタの減衰を時間の関数として減少させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
バイオセンサーを使用して前記信号を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
バイオセンサーを少なくとも部分的に間質液に埋め込むこと、および
前記バイオセンサーから測定された電流信号を生成することをさらに含み、
前記時変フィルタリングを適用することが、前記測定された電流信号に前記時変フィルタリングを適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオセンサーが、作用電極を含み、前記測定された電流信号が、前記作用電極を流れる電流である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
分析物濃度を示す持続分析物モニタリング信号を生成することをさらに含み、前記時変フィルタリングを適用することは、前記持続分析物モニタリング信号に前記時変フィルタリングを適用して、前記フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号の少なくとも一部分をディスプレイに表示することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号を分析して、前記分析物モニタリング期間中の分析物濃度における傾向を生成することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記分析物濃度における前記傾向をディスプレイ上に表示することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記時変フィルタリングを前記信号に適用することが、前記信号をローパスフィルタに通過させることを含み、前記時変フィルタリングを増加させることが、前記分析物モニタリング期間中の時間の関数として、前記ローパスフィルタのストップバンドにおける減衰を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記時変フィルタリングを前記信号に適用することは、前記信号に無限インパルス応答フィルタリングを適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記時変フィルタリングを前記信号に適用することは、前記信号に有限インパルス応答フィルタリングを適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記時変フィルタリングを前記信号に適用することは、フィルタリングをS’(n)=アルファ(t)*S(n)+(1-アルファ(t))*S’(n-1)の形態で適用することを含み、式中、S’(n)は前記フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号であり、S(n)は前記信号であり、アルファ(t)は1.0以下の値であり、tは時間であり、nは試料番号である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アルファ(t)を時間の関数として減少させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アルファ(t)=baseAlpha-t/Cであって、式中、baseAlphaは所定の値であり、Cはアルファ(t)の変化率を決定する定数である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記baseAlphaが、0.3~0.5の範囲内である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Cが、tが七日より大きい場合、アルファ(t)がbaseAlpha/2以下になるように選択された値である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記時変フィルタリングを前記信号に適用することは、前記信号に指数移動平均を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記分析物が、グルコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
分析物モニタリング期間にわたる持続分析物モニタリング(CAM)の方法であって、
CAM信号を生成すること、および
時変フィルタを使用して、時変フィルタリングを前記CAM信号に適用して、前記分析物モニタリング期間中に、時変フィルタリングされたCAM信号を生成することを含む、方法。
【請求項22】
前記時変フィルタリングを適用することは、前記時変フィルタリングの減衰を時間の関数として増加させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生成することは、バイオセンサーによって生成された信号に基づいて前記CAM信号を計算することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記時変フィルタリングされたCAM信号の少なくとも一部分をディスプレイに表示することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記時変フィルタリングを前記CAM信号に適用することは、前記CAM信号に無限インパルス応答フィルタリングを適用することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記時変フィルタリングを前記CAM信号に適用することは、フィルタリングをS’(n)=アルファ(t)*S(n)+(1-アルファ(t))*S’(n-1)の形態で適用することを含み、式中、S’(n)は前記フィルタリングされたCAM信号であり、S(n)は前記CAM信号であり、アルファ(t)は1.0以下の値であり、tは時間であり、nは試料番号である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
アルファ(t)を時間の関数として減少させることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記CAM信号に対する前記時変フィルタリングを時間の関数として増加させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記時変フィルタリングを前記CAM信号に適用することは、前記CAM信号に指数移動平均を適用することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
持続分析物モニタリング(CAM)システムであって、
信号を生成するように構成された少なくとも一つの装置、および
分析物モニタリング期間中に前記信号に時変フィルタリングを適用するように構成された時変フィルタを備える、システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
これは、2020年6月4日に出願された米国仮特許出願第63/034,971号および2020年11月10日に出願された第63/112,138号の優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体がすべての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、持続分析物モニタリングのための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
持続グルコースモニタリング(CGM)などの持続分析物モニタリング(CAM)は、特に糖尿病を有する個人にとって日常的なモニタリング操作となっている。CAMは、個人のリアルタイムな分析物分析(例えば、分析物濃度)を提供することができる。CGMの場合、個人のリアルタイムグルコース濃度を提供することができる。リアルタイムグルコース濃度を提供することによって、治療および/または臨床行為をモニタリングする個人にタイムリーに適用し得、血糖状態をより良好に制御し得る。
【0004】
改善されたCAMおよびCGMの方法および装置が、したがって望まれる。
【発明の概要】
【0005】
一部の実施形態では、持続分析物モニタリングシステムで信号をフィルタリングする方法が提供される。本方法は、時変フィルタを使用して、時変フィルタリングを信号に適用して、分析物モニタリング期間中に、フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号を生成することを含む。
【0006】
他の実施形態では、持続グルコースモニタリング(CGM)信号をフィルタリングする方法が提供される。本方法は、CGM信号を生成すること、および時変フィルタを使用して、時変フィルタリングをCGM信号に適用して、分析物モニタリング期間中に、フィルタリングされた持続分析物モニタリング信号を生成することを含む。
【0007】
他の実施形態では、持続分析物モニタリング(CAM)システムが提供される。本システムは、信号を生成するように構成された少なくとも一つの装置、および分析物モニタリング期間中に、信号に時変フィルタリングを適用するように構成された時変フィルタを含む。
【0008】
本開示による実施形態のその他の特徴、態様、および利点は、多くの例示的な実施形態および実装を説明することによって、発明の概要、特許請求の範囲、および添付図面からより完全に明らかになるであろう。本開示による様々な実施形態はまた、他の異なる用途を取ることができ、そのいくつかの詳細は、特許請求の範囲およびそれらの同等物から逸脱することなく、様々な点で修正され得る。したがって、図面および説明は、本質的に例示として見なされ、制限するものとして見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下に説明される図面は、例示のみを目的としたものであり、必ずしも正確な縮尺で描かれるとは限らない。図面は、本開示の範囲をいかなる方法でも制限することを意図するものではない。同一または類似の要素を示すために、全体的に同じ数字が使用される。
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態による、持続分析物モニタリング(CAM)システムのウェアラブル装置および外部装置の、部分断面側面図および正面立面図をそれぞれ示す。
【0011】
図2A図2Aは、本開示の実施形態による、皮膚表面に取り付けられたCAMシステムのウェアラブル装置の断面側面図を示す。
【0012】
図2B図2Bは、本開示の実施形態による、CAMシステムのバイオセンサーの一部の部分断面側面立面図を示す。
【0013】
図3A図3Aは、本開示の実施形態による、CAMシステム内の信号、ノイズのある信号(ノイズの多い信号)、標準フィルタリングが適用されたノイズの多い信号、および時変フィルタリングが適用されたノイズの多い信号を示すグラフである。
【0014】
図3B図3Bは、本開示の実施形態による、個人の血糖濃度、フィルタリングされていないCGM信号、および時変フィルタリングされたCGM信号の例を示すグラフである。
【0015】
図4A図4Aは、本開示の実施形態による、CGMシステムのウェアラブル装置内の電気回路構成要素の一例を示す概略図である。
【0016】
図4B図4Bは、本開示の実施形態による、CGMシステムの外部装置と通信可能なウェアラブル装置内の電気回路構成要素の一例を示す概略図である。
【0017】
図4C図4Cは、本開示の実施形態による、CGMシステムのウェアラブル装置および外部装置内の電気回路の別の例を示す概略図である。
【0018】
図5A図5Aは、本開示の実施形態による、CGMシステムのウェアラブル装置の一実施形態における時変フィルタリングの一例を示すブロック図である。
【0019】
図5B図5Bは、本開示の実施形態による、直列に結合された複数のローパスフィルタとして実装された時変フィルタの概略図である。
【0020】
図5C図5Cは、本開示の実施形態による、CGMシステムのウェアラブル装置の一実施形態における時変フィルタリングを含む信号処理の一例を示すブロック図である。
【0021】
図5D図5Dは、少なくとも一部の時変フィルタリングが、本開示の実施形態による外部装置で実施される、CGMシステムの一実施形態における信号処理の一例を示すブロック図である。
【0022】
図5E図5Eは、少なくとも一部の時変フィルタリングが、本開示の実施形態による外部装置で実施される、CGMシステムの一実施形態における信号処理の別の例を示すブロック図である。
【0023】
図6図6は、本明細書に記載の実施形態による、異なる時間(T1~T4)にわたる周波数に対する時変フィルタ応答の例を示すグラフである。
【0024】
図7図7は、本開示の実施形態による無限インパルス応答フィルタの一例のブロック図を示す。
【0025】
図8図8は、本開示の実施形態によるCAMシステムにおいて信号をフィルタリングする方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
持続分析物モニタリング(CAM)システムは、個人の分析物濃度を経時的に測定し、それらの分析物濃度を報告することができる。一部のCAMシステムは、体液中に存在する分析物を直接的または間接的に感知(例えば、測定)し、感知に応答して一つまたは複数の信号(例えば、センサー信号またはバイオセンサー信号)を生成する、一つまたは複数の埋め込まれたバイオセンサーを含む。次いで、一つまたは複数のセンサー信号が処理されて、経時的な分析物濃度を示す持続分析物信号を生成および/または計算する。持続分析物信号は、時には、「CAM信号」と呼ばれ、表示、ダウンロード、または他の通信タイプによって、ユーザまたは医療プロバイダに報告される。
【0027】
一部の実施形態では、一つまたは複数のバイオセンサーは、例えば、ユーザの皮膚を穿刺し、皮下で間質液内に位置付けられるか、または埋め込まれる、一つまたは複数のプローブなどを含み得る。他の実施形態では、一つまたは複数のバイオセンサーは、例えば、皮下反射率を測定することができる光学装置であり得る。CAMシステムは、他のタイプのバイオセンサーを使用し得る。
【0028】
皮下バイオセンサーを含むCAMシステムは、バイオセンサーが間質液中に位置するとき、バイオセンサー上の二つ以上の電極間の電流をモニタリングし得る。この電流は、間質液中の分析物濃度(例えば、グルコース濃度)を決定するのに使用され得る。一部の実施形態では、バイオセンサーは、ユーザの間質液に接触するように、バイオセンサーの皮下配置のためにユーザの皮膚内に延在するよう構成されたトロカール(例えば、針)内に含有され、それによって挿入されてもよい。挿入時に、埋め込まれたバイオセンサーを残してトロカールを除去することができる。バイオセンサーは、例えば、ユーザの間質液に接触する作用電極、対電極、および/または参照電極などの電極を含み得る。
【0029】
持続分析物モニタリング中、作用電極と対電極との間などの電極間に電圧が適用され、一つまたは複数の電極を通る電流が測定される。電流は、間質液中に存在する分析物(例えば、グルコース)濃度に比例する。電極および間質液を通る電流は、数ナノアンペアなど、非常に小さくてもよく、それによって、CAMシステムのノイズに対する感度は非常に高くなる。CAMシステム内の電流を示す信号または他の信号がノイズにさらされる場合、たとえ弱いノイズレベルであっても、結果として生じる信号対ノイズ比は非常に低くなり得、これは処理および/または解釈が困難な信号をもたらす。一部の実施形態では、ノイズは、結果として生じるCAM信号にジッタが生じ、結果として生じるCAM信号を正確に解釈することを困難にし得る。
【0030】
CAMシステムの一つのノイズソースは、分析物モニタリング期間にわたるなど、CAMシステム内の構成要素の劣化によって引き起こされる。分析物モニタリング期間は、CAMシステムのバイオセンサーが分析物を感知する期間である。皮下に配置されるように構成されたバイオセンサーの例では、分析物モニタリング期間は、バイオセンサーが皮下に配置され、活発に感知している時間である。分析物モニタリング期間は、例えば、14日以上、すなわち、バイオセンサーが埋め込まれ、感知し、および通信する間の経過した長さであってもよい。一例では、バイオセンサー特性は、時間の関数として劣化する場合があり、これは、バイオセンサーによって生成された信号を、分析物モニタリング期間にわたってますますノイズの多いものにし得る。例えば、バイオセンサーが間質液中に位置される実施形態では、間質液と反応するバイオセンサー上に堆積した化学物質(例えば、酵素)は、分析物モニタリング期間中に分解および/または枯渇し得る。一部の状況では、バイオフィルムはまた、分析物モニタリング期間中、バイオセンサー上に蓄積し得る。
【0031】
化学物質の分解および/または枯渇は、分析物モニタリング期間中、増加または別の方法で変化する場合があり、これにより、分析物モニタリングが進むにつれて、センサー信号はますますノイズおよび/またはジッタが多くなる。バイオフィルムの蓄積の増加により、同じことが起こり得る。ノイズは、センサー信号で処理される場合があり、これは解釈が困難なノイズおよび/またはジッタの多いCAM結果を生成するか、またはCAMシステムが正しく動作していないとユーザに思わせる可能性がある。
【0032】
本明細書に開示される装置および方法は、CAMシステム内の一つまたは複数の信号に時変フィルタリングを適用して、少なくとも一つの時変フィルタリングされた持続分析物信号を生成することによって、こうしたCAMシステムのノイズの影響を低減する。ノイズ低減は、例えば、時変フィルタリングを使用して、CAMシステムで生成された一つまたは複数の信号を平滑化することによって達成され得る。分析物モニタリング期間にわたる上述したバイオセンサーの劣化および/または他の構成要素の劣化は、公知または推定され得、これにより、変化する(例えば、増加する)ノイズレベルをフィルタリングするために、分析物モニタリング期間にわたって時変フィルタによって適用されるフィルタリングの量を変化(例えば、増加)させることが可能になる。
【0033】
本明細書に記載される時変フィルタリングは、例えば、作用電極電流信号、バックグラウンド電流信号、CAM信号、推定装置感度信号、および推定分析物(例えば、グルコース)濃度信号を含む、CAMシステム内の異なる信号に適用され得る。時変フィルタリングは、信号を平滑化し、および/またはノイズおよび/またはアルゴリズムのアーチファクトの影響を低減し、それにより、分析物濃度を解釈するユーザの能力が向上する。時変フィルタリングは、CAMシステムが動作していた時間の関数として適用され得る。例えば、フィルタリングは、経時的な変化(例えば、センサーの劣化)に応答するように、平滑化パラメータを適宜調整することによって、変更することができる。
【0034】
これらおよび他の装置および方法は、図1~8を参照して詳細に記載される。時変フィルタリング装置および方法の実施形態は、持続グルコースモニタリング(CGM)システムを参照して本明細書に記載される。しかしながら、本明細書に記載される時変フィルタリング装置および方法は、例えば、コレステロール、乳酸、尿酸、およびアルコールなどの分析物を測定する他の持続分析物モニタリング(CAM)システムに適用され得る。
【0035】
ここで、ウェアラブル装置102および外部装置104を含む持続グルコースモニタリング(CGM)システム100の一例を図示する、図1を参照する。本明細書に記載されるように、ウェアラブル装置102はグルコース濃度を測定し、外部装置104はグルコース濃度を表示する。一部の実施形態では、ウェアラブル装置102はまた、グルコース濃度を表示してもよい。ウェアラブル装置102は、例えば、接着剤付き層110によってなど、ユーザの皮膚108に付着(例えば、接着)されてもよい。
【0036】
ウェアラブル装置102は、ユーザの間質液114内の皮下に位置してもよく、グルコース濃度を直接的または間接的に測定することができるバイオセンサー112を含んでもよい。ウェアラブル装置102は、グルコース濃度を外部装置104に送信することができ、グルコース濃度は外部ディスプレイ116上に表示することができる。外部ディスプレイ116は、個々の番号、グラフ、および/または表など、異なるフォーマットのグルコース濃度を表示することができる。図1の例示的な実施形態では、外部ディスプレイ116は、過去および現在のグルコース濃度を示すグラフ118と、最新のグルコース計算からのグルコース濃度を示す数値とを表示している。外部ディスプレイ116はまた、外部ディスプレイ116上に示される下向き矢印131によって示されるように、グルコース傾向も表示することができ、ユーザの血糖値が現在低下していることを示す。外部ディスプレイ116は、異なるまたは追加のデータを他のフォーマットで表示し得る。一部の実施形態では、外部装置104は、ユーザが外部ディスプレイ116上に表示されるデータおよび/またはデータフォーマットを選択することを可能にする、複数のボタン120または他の入力装置を含み得る。
【0037】
ここで、ユーザの皮膚108に取り付けられたウェアラブル装置102の部分的な断面側面図を図示する、図2Aを参照する。バイオセンサー112は、ユーザの皮膚108の下方の間質液114内に位置することができる。図2Aの実施形態では、バイオセンサー112は、下記にさらに説明するように、それぞれ間質液114と接触し得る、作用電極112A、参照電極112B、および対電極112Cを含み得る。一部の実施形態では、バイオセンサー112は、より少ないまたはより多くの電極および他の電極構成を含み得る。例えば、一部の実施形態では、第二の作用電極(例えば、バックグラウンド電極)が使用され得る。電極112A、112B、および112Cは、間質液114内の特定の化学分析物と反応する一つまたは複数の酵素など、一つまたは複数の化学物質で作製され、および/または被覆されてもよい。反応は、電極112A、112B、および112Cのうちの一つまたは複数を通る電流を変化させてもよく、これはウェアラブル装置102によって検出され、本明細書に記載するようにグルコース濃度を計算するために使用される。
【0038】
図2Bは、本明細書に提供される実施形態による、バイオセンサー112の実施形態の断面側面概略拡大部分図を示す。一部の実施形態では、バイオセンサー112は、作用電極112A、対電極112C、およびバックグラウンド電極112Dを含み得る。作用電極112Aは、電荷担体の濃度およびバイオセンサー112の時間依存性インピーダンスに影響を与える、還元酸化反応においてグルコース含有溶液と反応する化学物質112Fで被覆された導電層を含み得る。一部の実施形態では、作用電極112Aは、白金または表面粗化白金から形成され得る。他の作用電極材料が使用され得る。作用電極112Aの例示の化学触媒(例えば、酵素)としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、またはこれに類するものが含まれる。酵素成分は、例えば、グルタルアルデヒドなどの架橋剤によって電極表面上に固定され得る。外膜層(図示せず)を酵素層上に添加して、電極および酵素層を含む全体的な内部成分を保護することができる。一部の実施形態では、フェリシアン化物またはフェロセンなどのメディエーターが用いられ得る。他の化学触媒および/またはメディエーターが使用され得る。
【0039】
一部の実施形態では、参照電極112Bは、Ag/AgClから形成され得る。対電極112Cおよび/またはバックグラウンド電極112Dは、白金、金、パラジウム、またはこれに類するものなどの適切な導電体から形成され得る。他の適切な導電性材料は、参照電極112B、対電極112C、および/またはバックグラウンド電極112Dに使用され得る。一部の実施形態では、バックグラウンド電極112Dは、作用電極112Aと同一であってもよいが、化学触媒およびメディエーターは含まない。対電極112Cは、分離層112E(例えば、ポリイミドまたは別の適切な材料)によって他の電極から分離され得る。
【0040】
バイオセンサー112は、図示されていない他の品目および材料を含み得る。例えば、バイオセンサー112は、電極を互いに電気的に絶縁する、他の絶縁体などを含み得る。バイオセンサー112はまた、電極をウェアラブル装置102の構成要素に電気的に結合する導電体などを含んでもよい。
【0041】
作用電極112A、参照電極112B、対電極112C、およびバックグラウンド電極112D上またはその中の上述の化学物質は、分析物(例えば、グルコース)モニタリング期間中に枯渇および/または汚染され得る。枯渇および/または汚染は、バイオセンサー112によって、またはそれに関連して生成される信号が、本明細書に記載するように、時間の関数としてノイズおよび/またはジッタを引き起こす可能性がある。さらに、バイオフィルムは、電極112A、112B、112C、および/または112D上に蓄積し、バイオセンサー112によって生成された信号がノイズ化する可能性がある。本明細書に記載される時変フィルタリングは、CGMシステム100内の一つまたは複数の信号をフィルタリングまたは平滑化して、ノイズおよび/またはジッタの多い信号の影響に対抗する。
【0042】
図2Aに戻ると、ウェアラブル装置102は、ウェアラブル装置102の構成要素126が位置し得る基材124(例えば、回路基板)を含み得る。基材124の部分は、プラスチックまたはセラミックなどの非導電性材料で作製され得る。一部の実施形態では、基材124は、積層材料を含み得る。基材124は、バイオセンサー112などの、基材124の中またはそれに取り付けられた構成要素に電流を流す、電気トレース(図示せず)を含み得る。例えば、導電体(図示せず)は、電極112A、112B、および112Cを構成要素126に電気的に結合してもよい。
【0043】
構成要素126は、間質液114内に位置する電極112A、112B、112C、112Dのうちの二つ以上にバイアス電圧を印加することができ、これにより、バイオセンサー112を流れるバイアスセンサー電流がもたらされる。構成要素126の一部は、センサー電流を測定し、測定された電流信号IMEASを生成し得る電気回路の一部であってもよい。一部の実施形態では、電極112A、112Bおよび112C上または内部の化学物質(酵素など)は、間質液114中に存在するグルコースまたは他の化学物質または分析物との接触に応答してインピーダンスを変化させる。したがって、得られた測定された電流信号IMEASは、間質液114中に存在する一つまたは複数の分析物(例えば、グルコース)に比例し得る。グルコースモニタリング期間中、電極112A、112B、および112C上の化学物質は劣化および/または枯渇し、センサー電流および測定された電流信号IMEASが上述のようにノイズ(例えば、ジッタ)が多くなる可能性がある。
【0044】
電極112A、112B、112C、および112D上の化学物質が劣化および/または枯渇する速度、および電極112A、112B、112C、および112D上にバイオフィルムが蓄積する速度は、(例えば、実験的に)公知または他の方法で推定され得る。本明細書に記載するように、時変フィルタリングは、ウェアラブル装置102および/または外部装置104の測定された電流信号IMEASおよび/または他の信号に適用されて、ノイズにおける経時的変化の影響を低減することができる。一部の実施形態では、時変フィルタリングは、結果として生じるCGM信号に適用されて、CGM信号上のノイズ(例えば、ジッタ)を低減することができる。本明細書に記載されるように、時変フィルタリングは、ストップバンドでの減衰を変更(例えば、増加)、および/または時間の関数として時変フィルタリングの次数を変更(例えば、増加)することができる。
【0045】
ここで、ノイズの多い信号に対する時変フィルタリングを含む、様々なフィルタリング効果の例を示すグラフである、図3Aを参照する。図3Aの例では、理想的な信号302(実線)は、1.00の信号値に正規化される。理想的な信号302にノイズが加えられた、ノイズの多い信号304は、その上にデータポイントを表すドットを配した細かな点線として示される。図3Aの例に示すように、ノイズの多い信号304の大きさは、時間の関数として増加する。標準(EMA)フィルタリングを受けた後のノイズの多い信号304である、標準指数移動平均(EMA)フィルタリングされた信号306は、そこに四角が配置された破線として示される。標準EMAフィルタリングは、時間依存性ではないため、標準EMAフィルタリングによって適用されるフィルタリングは、時間の関数として変化しない。図3Aに示すように、標準EMAフィルタリングされた信号306上のノイズは、時間の関数として増加し続ける。
【0046】
このような従来のフィルタリングがCGMシステムの信号に適用されると、信号上のノイズは、時間の関数として増加し続ける。したがって、これらの信号の信号対ノイズ比は時間の関数として減少し、これはCGMシステム100(図1)によって提供されるデータが不正確または解釈困難となる可能性がある。
【0047】
時変フィルタリングされた信号308は、ノイズの多い信号304に時変フィルタリング(例えば、時変EMAフィルタリング)を施した結果であり、図3Aにxを配置した点線で示されている。図3Aに示される時変フィルタリングされた信号308を生成した時変フィルタリングは、時間の関数として増加する。例えば、平滑化または高周波数減衰は、時間の関数として増加し得る。したがって、理想的な信号302上のノイズの大きさは、ノイズの多い信号304の大きさが経時的に増加することによって示されるように、時間の関数として増加し、結果として得られた時変フィルタリングされた信号308は、時間の経過と共により平滑化され、フィルタリングされる。したがって、時変フィルタリングが適用された、結果として得られる時変フィルタリングされた信号308は、理想的な信号302により近くなる。CGMシステムに適用されるとき、時変フィルタリングは、分析物(例えば、グルコース)モニタリング期間の間に増加するノイズを低減し、CGMシステムのユーザが、分析物(例えば、グルコース)濃度に関するより正確な情報を受信することを可能にする。
【0048】
基準血糖濃度312、フィルタリングされていないCGM信号314、および時変フィルタリングされたCGM信号316の一例を示すグラフである、図3Bをさらに参照する。図3Bのグラフの横軸は、経過時間を日数およびサンプル番号で参照する。図3Bのグラフに示す例は、12日目の終わりから13日目の約8時間までの分析物(例えば、グルコース)モニタリング期間の一部の間に記録されることに留意されたい。フィルタリングされていないCGM信号314は、ユーザの分析物(例えば、グルコース)濃度を測定および/または計算するウェアラブル装置102(図1)および/または外部装置104によって生成されるフィルタリングされていないCGM信号であってもよい。時変フィルタリングされたCGM信号316は、フィルタリングされていないCGM信号314および/またはフィルタリングされていないCGM信号314を生成するために使用される一つまたは複数の他の信号に時変フィルタリングを適用することによって生成され得る。
【0049】
一部の実施形態では、ウェアラブル装置102内のバイオセンサーによって生成される一つまたは複数の信号は、時変フィルタリングをそれに適用してもよく、これにより時変フィルタリングされたCGM信号316(フィルタリングされたCGM信号316とも呼ぶ)を得ることができる。例えば、ノイズの多い信号304(図3A)は、ウェアラブル装置102内のバイオセンサーによって生成される信号であってもよい。時変フィルタリングされたCGM信号316は、ノイズの多い信号304に時変フィルタリングを適用した結果であり得る。図3Bに示すように、結果として得られる時変フィルタリングされたCGM信号316は、概して基準血糖濃度312に従い、より有意なジッタを呈するフィルタリングされていないCGM信号314よりもはるかに滑らかである。
【0050】
ここで、ウェアラブル装置102(図2A)の例示的な電気回路の実施形態の概略図を示す、図4Aをさらに参照する。図4Aに示す実施形態では、バイオセンサー112(図2B)は、バックグラウンド電極112Dを含まない。図4Aに示すように、作用電極112Aは、迷走電流が作用電極112Aに干渉するのを低減するガードリング412によって囲まれてもよい。一部の実施形態では、ガードリング412は、作用電極112Aと同じ電位で動作し得る。作用電極112Aは、電流計432などの電流測定装置によって、作用電極源430に結合されてもよい。電流計432は、作用電極源430によって生成される作用電極電流IWEを測定し、作用電極電流IWEを示す測定された電流信号IMEASを生成する。ウェアラブル装置102の動作中、作用電極源430は、作用電極112Aに印加される電圧VWEを生成し、作用電極112Aを通過する作用電極電流IWEをもたらし得る。電流計432は、作用電極の電流IWEを測定し、測定された電流信号IMEASを生成する。
【0051】
図4Aの実施形態では、ウェアラブル装置102は、対電極電圧VCEを生成する対電極112Cに電気的に結合された対電極源436を含み得る。したがって、作用電極電流IWEは、作動電極電圧VWEと対電極電圧VCEとの間の差を、間質液114(図2)のインピーダンスおよびバイオセンサー112の電極のインピーダンスで割ったものに比例する。一部の実施形態では、対電極源436によって沈む電流は、作用電極電流IWEに等しい。
【0052】
作用電極源430および対電極源436の両方は、プロセッサ438に結合され、それによって制御されてもよい。プロセッサ438は、プロセッサ438に作用電極源430および対電極源436に命令を送信させる、その中に格納されたコンピュータ可読命令を有するメモリ440を含み得る。命令によって、作用電極源430および対電極源436に所定の電圧(例えば、VWEおよびVCE)を出力させ得る。メモリ440はまた、時変フィルタリングを適用するなど、本明細書に記載される他の機能をプロセッサに実行させる命令を含んでもよい。
【0053】
図4Aに示すウェアラブル装置102の実施形態の電気回路は、ガードリング412に結合され、ガード電圧Vをガードリング412に供給する、ガードソース444を含み得る。ガードソース444はまた、プロセッサ438に結合されてもよく、プロセッサ438から命令を受信して、特定のガード電圧Vを設定してもよい。参照電極112Bは、プロセッサ438に結合されてもよく、基準電圧Vをプロセッサ438に供給してもよい。プロセッサ438は、基準電圧Vを使用して、作動電圧VWEおよび対電圧VCEの値を設定してもよい。
【0054】
上述のように、電流計432は、作用電極電流IWEの尺度である、測定された電流信号IMEASを生成し得る。従来のCGMシステムでは、作用電極の電流IWEにノイズが存在する場合、測定された電流信号IMEASおよび結果として生じるCGM信号は、ノイズが多くなる場合がある。例えば、結果として生じるCGM信号は、図3BのフィルタリングされていないCGM信号314と同様であり得る。図4Aの実施形態では、時変フィルタ448は、プロセッサ438によって処理および/または受信される測定された電流信号IMEASの前に、測定された電流信号IMEASに時変フィルタリングを適用する。時変フィルタ448は、フィルタリングされた測定された電流信号IFILTを出力し、これは、プロセッサ438によって処理されて、時変フィルタリングされたCGM信号316をレンダリングすることができる。
【0055】
図4Aの電気回路の一部の機能を示すブロック図である、図5Aをさらに参照する。図5Aの例で示すように、時変フィルタリングは、プロセッサ438が測定された電流信号IMEASを処理する前に、時変フィルタ448によって測定された電流信号IMEASに適用される。本明細書に記載される他の実施形態では、時変フィルタリングは、プロセッサ438によって、および/または外部装置104(図1)内の他の信号に対して、実施および/または適用され得る。
【0056】
測定された電流信号IMEASは、図3Aに示すノイズの多い信号304と同様のノイズの多い信号であり得る。本明細書に記載されるように、バイオセンサー112は、経時的に劣化する場合があり、これは測定された電流信号IMEAS上のノイズレベルを時間の関数として増加させる。プロセッサ438がノイズの多い測定された電流信号IMEASを処理する場合、結果として生じるCGM信号は、図3Bに示すフィルタリングされていないCGM信号314と同様に、破損してノイズが多い(例えば、ジッタ)可能性がある。時変フィルタ448によって出力されるフィルタリングされた測定された電流信号IFILTは、測定された電流信号IMEASよりも滑らかであり(例えば、ノイズおよび/またはジッタが少ない)、従って、得られたCGM信号はより滑らかである。例えば、フィルタリングされた測定された電流信号IFILTは、図3Aの時変フィルタリングされた信号308と同様であり得、これは、図3Aの理想的な信号302など、理想的な測定された電流信号(例えば、ノイズのない)により近いものとなる。結果として得られたCGM信号は、図3Bの時変フィルタリングされたCGM信号316と同様であり、これは、概して基準血糖濃度312に従い、フィルタリングされていないCGM信号314よりもはるかに滑らかである。したがって、測定された電流信号IMEASに適用される時変フィルタリングは、ユーザの血糖値により近いCGM信号を提供し、ウェアラブル装置102(図1)のユーザが解釈し易い可能性がある。
【0057】
時変フィルタ448の実施形態は、アナログおよびデジタルのフィルタを含む。一部の実施形態では、時変フィルタ448は、アナログまたはデジタルのローパスフィルタであり得る。一部の実施形態では、時変フィルタ448は、無限インパルス応答(IIR)フィルタまたは有限インパルス応答フィルタ(FIR)であってもよい。一部の実施形態では、時変フィルタ448は、指数移動平均(EMA)を測定された電流信号IMEASまたは他の信号に適用し得る。ローパスフィルタの減衰は、時間の関数として増加し得、その結果、分析物(例えば、グルコース)モニタリング期間の後半に、より大きな減衰が達成される。一部の実施形態では、時変フィルタ448は、アナログローパスフィルタであってもよく、ローパスフィルタの次数は、時間の関数として増加し得る。一部の実施形態では、カットオフ周波数または時変フィルタ448の周波数は、時間の関数として変化し得る。
【0058】
直列に結合された第一のローパスフィルタLPF1、第二のローパスフィルタLPF2、および第三のローパスフィルタLPF3として個々に参照される、フィルタバンクなど、複数のローパスフィルタとして実装される時変フィルタ448の例を示す、図5Bをさらに参照する。時変フィルタ448は、より少ないまたはより多くのローパスフィルタを含み得る。時変フィルタ448はまた、ローパスフィルタLPF1、LPF2、LPF3のそれぞれと並列に結合されたスイッチ(SW)を含んでもよい。図5Bの実施形態では、スイッチは、それぞれ第一のスイッチSW1、第二のスイッチSW2、および第三のスイッチSW3と称される。スイッチSW1、SW2、SW3の状態は、プロセッサ438によって制御され得る。時変フィルタ448によって適用される時変フィルタリングの量は、スイッチSW1、SW2、SW3を開閉することによって調整され得る。例えば、第一の期間中、すべてのスイッチSW1、SW2、およびSW3は、閉じている可能性があり、フィルタリングは適用されない。その後の期間中、スイッチは開かれ、時間の関数として徐々により多くのフィルタリングを適用することができる。
【0059】
時変フィルタ448の経時的なフィルタ応答の例を示すグラフであり、時変フィルタ448はカットオフ周波数fを有するローパスフィルタである、図6をさらに参照する。図6のグラフは、図5Bの時変フィルタ448を参照しながら以下に説明する。しかし、時変IIRなど、他の時変フィルタでも同様の結果が得られる可能性がある。
【0060】
第一の期間T1中、時変フィルタ448によってフィルタリングを適用することはできない。例えば、グルコースモニタリング期間の初期には、フィルタリングを必要としない可能性がある。したがって、フィルタリングをしない経過時間が第一の期間T1である。第二の期間T2中、時変フィルタ448は、一次ローパスフィルタとして機能し得る。第二の期間T2の経過時間は、グルコースモニタリング期間の開始後、所定の期間で開始することができる。一部の実施形態では、第二の期間T2は、グルコースモニタリング期間の開始後、例えば、グルコースモニタリング期間の開始後少なくとも24時間後に開始することができる。第二の期間T2の経過時間は、第一の期間T1の終了後に開始し、第三の期間T3の開始時に終了してもよい。図6に示すように、ストップバンドにおける減衰は、第二の期間T2中、最小である。第二の期間T2中に示されるフィルタリングは、SW-1などのスイッチの一つを開くことによって達成され得る。
【0061】
第二の期間T2に続く可能性がある第三の期間T3中、ローパスフィルタは、第一の期間T1中よりも高次フィルタであり得る。図5Bの時変フィルタ448に関して、スイッチSW-1およびSW-2などの二つのスイッチは、プロセッサ438によって開かれ得る。第三の期間の経過時間は、第二の期間の終了時に開始し、第四の期間T4の初めに終了してもよい。第四の期間T4中、時変フィルタ448は、第三の期間T3中よりも、高次のローパスフィルタであり得る。第四の期間T4中、プロセッサは、すべてのスイッチSW-1、SW-2、およびSW-3を開くことができる。第四の期間T4の経過時間は、第三の期間T3の終了時に開始し、モニタリング期間の終了時に終了してもよい。
【0062】
時変フィルタ448は、時間の関数として、ローパスフィルタリングの次数を増加させてもよい。一部の実施形態では、カットオフ周波数fは、それぞれの異なる期間で変化し得る。例えば、信号のノイズレベルが高くなると、より高いまたはより低い周波数成分を含む可能性がある。ノイズの周波数成分が変化すると、カットオフ周波数fが変化する場合がある。
【0063】
一部の実施形態では、時変フィルタ448は、例えば、FIR(有限インパルス応答)フィルタまたはIIR(無限インパルス応答)フィルタなどのデジタルフィルタであってもよい。他のタイプのデジタルフィルタを使用してもよい。時変フィルタ448で使用され得るIIRフィルタ760の例示的実施形態のブロック図である図7をさらに参照する。デジタルフィルタおよびIIRフィルタの他の構成を使用してもよい。IIRフィルタ760は、デジタル信号である、測定された電流信号IMEAS(または別の信号)を受信する。一部の実施形態では、電流計432(図4A)は、デジタル信号を生成し、他の実施形態では、図4Aの電気回路は、測定された電流信号IMEASをデジタル化することができる、アナログ-デジタル変換器(図示せず)を含む。他の実施形態では、IIRフィルタ760は、CGMシステム100(図1)において、フィルタリングされていないCGM信号などの他の信号をフィルタリングするために使用され得る。
【0064】
測定された電流信号IMEASは、一連の単位遅延762の第一の単位遅延762A、および一連の乗算器764の第一の乗算器764Aで、IIRフィルタ760のフィードフォワード側に受信される。乗算器764の出力は、第一の加算器766Aを含む複数の加算器766に出力される。第一の加算器766Aの出力は、IIRフィルタ760のフィードバック側にある一連の加算器768の第一の加算器768Aに入力される。第一の加算器768Aの出力は、IIRフィルタ760の出力である。この出力は、一連の単位遅延770に供給され、一連の乗算器772に出力される。乗算器772の出力は、加算器768に入力される。IIRフィルタ760のフィルタリングは、乗算器764の係数P~P、および乗算器772の係数-d~-dによって確立され、これは本明細書に記載の時変フィルタリングを提供するために時変であり得る。
【0065】
時変フィルタリングの他の実施形態は、CGMシステム100における汎用信号S(t)に関して、以下に説明する。これらの実施形態では、フィルタFが信号S(t)に適用され、以下のようにより滑らかな出力S’を得る。
S’(t)=F(S(t)) 方程式(1)
【0066】
図4Aの実施形態では、フィルタFは、時変フィルタ448であり得、信号S(t)は、例えば、測定された電流信号IMEAS、フィルタリングされていないCGM信号、または別の信号であり得る。時変フィルタリングでは、フィルタFは、時間tに依存する可能性があるため、方程式(1)から以下のように方程式(2)を得る。
S’(t)=F(t,S(t)) 方程式(2)
【0067】
方程式(2)の時変フィルタリングは、指数平滑化フィルタの場合、以下の方程式(3)を得ることができる。
S’(t)=アルファ*S(t)+(1-アルファ)*S’(t-1) 方程式(3)
式中、アルファは、1.0以下の値である。アルファが1.0に等しい場合、信号S(t)の平滑化(例えば、フィルタリング)はない。アルファが経時的に減少すると、フィルタは信号S(t)を平滑化する。
【0068】
時変フィルタ448が、IIRフィルタなどのデジタルフィルタであり、信号Sがデジタル信号S(n)である実施形態では、方程式(2)は、以下の方程式4に示すように、離散領域でF(n,S(n))と書くことができる。
S’(n)=アルファ*S(n)+(1-アルファ)*S’(n-1) 方程式(4)
【0069】
平滑化は、指数移動平均(EMA)によって適用され得る。フィルタリング/平滑化方法にはバリエーションがある。二つのバリエーションは、DEMAおよびTEMA(それぞれダブルおよびトリプルEMA)と呼ばれ、時変フィルタ448で使用され得る。フィルタリングを時間と共に変化させるために、アルファを時間の関数として変化させることができる。一部の実施形態では、アルファは、以下の方程式(5)で説明するように、グルコースモニタリング期間の開始からの経過時間が増加するにつれて着実に減少するようにした。
アルファ(t)=baseAlpha-t/N 方程式(5)
式中、tは時間であり、baseAlphaは所定の値であってもよく、ウェアラブル装置102(図1)の設計中に決定されてもよく、一部の実施形態では、決して変化し得ないアルファの公称(例えば、最大)値であり得る。Nは、アルファ(t)の変化率を制御するのに使用される定数である。一部の実施形態では、baseAlphaは、約0.3~約0.5の範囲であり、Nは、tが七日を超える場合、alpha(t)がbaseAlpha/2以下となるように選択されてもよい。baseAlpha、t、および/またはNの他の値、ならびにそれらの調整が使用され得る。したがって、一部の実施形態では、時間の経過と共に、より平滑化が適用される。一部の実施形態では、増加した平滑化は、安定した線形スケジュールで適用される。他の実施形態では、増加した平滑化は、段階的な方法や非線形関数など、非線形に適用される。一部の実施形態では、アルファ(n)は、アルファ(t)の代わりに使用されてもよく、式中、nは試料番号である。
【0070】
一部の実施形態では、アルファ(t)は、平滑化のし過ぎを防ぐために、最小値を超えてもよい。他の実施形態では、アルファ(t)は、時間と共に非線形に変化するか、特定の期間に制限されるなどしてもよい。一部の実施形態では、平滑化またはフィルタリングは、グルコースモニタリング期間の開始後、一定の時間に開始してもよい。一部の実施形態では、平滑化またはフィルタリングは、グルコースモニタリング期間の開始から少なくとも24時間後に開始され得る。一部の実施形態では、フィルタリングは、例えば、作用電極電流IWE、参照電極を通る電流、CGM信号、測定された電流信号IMEAS、および/または類似のもののいずれかまたはすべてに適用され得る。
【0071】
プロセッサ438は、フィルタリングされた測定された電流信号IFILTを受信し、フィルタリングされた測定された電流信号IFILTに少なくとも部分的に基づいてCGM信号を計算することができる図4Aの電気回路を再び参照する。例えば、メモリ440に格納された命令(例えば、プログラム)は、プロセッサ438に、フィルタリングされた測定された電流信号IFILTを処理させ、間質液114(図2)中のグルコース濃度を計算または推定させ、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成させることができる。フィルタリングされたCGM信号は、他の分析物を反映し、時変フィルタリングされたCAM信号と呼ばれる場合がある。フィルタリングされた測定された電流信号IFILTは平滑化されるため、結果として得られるフィルタリングされたCGM信号SFCGMも、測定された電流信号IMEASなどのフィルタリングされていない電流測定信号を用いて計算されたCGM信号に対して平滑化される。一部の実施形態では、時変フィルタ448は、測定された電流信号IMEASをフィルタリングすることができ、プロセッサ438に実装された別の時変フィルタは、CGM信号をさらにフィルタリングまたは平滑化して、最終的にフィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成することができる。
【0072】
フィルタリングされたCGM信号SFCGMは、プロセッサ438によって、トランスミッタ/レシーバ449に出力され得る。トランスミッタ/レシーバ449は、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを、外部ディスプレイ116上で処理および/または表示するための外部装置104などの外部装置に送信してもよい。一部の実施形態では、プロセッサ438は、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを、ウェアラブル装置102上に位置する任意のローカルディスプレイ450に送信してもよく、フィルタリングされたCGM信号SFCGMおよび/または他の情報を表示することができる。
【0073】
ここで、ウェアラブル装置102(図1)に構成され得る電気回路の別の実施形態を示す、図4Bを参照する。図4Bの実施形態では、時変フィルタ448は、プロセッサ438に実装される。例えば、時変フィルタ448は、時変フィルタリングのための命令がメモリ440に格納され、プロセッサ438によって実行される、デジタルフィルタであってもよい。プロセッサ438は、方程式(4)に記載される時変フィルタリングまたは平滑化を、測定された電流信号IMEASおよび/またはフィルタリングされていないCGM信号に適用し得る。フィルタリングされたCGM信号SFCGMは、トランスミッタ/レシーバ449に出力されて、外部装置104などの外部装置に送信されてもよい。フィルタリングされたCGM信号SFCGMはまた、上述のように表示するために、任意のローカルディスプレイ450に送信されてもよい。図4Bの実施形態の時変フィルタリングのブロック図を図5Cに示す。図5Cに示すように、測定された電流信号IMEASは、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを出力するプロセッサ438によって、受信および処理される。
【0074】
時変フィルタ448は、上記のようにプロセッサ438に実装され得る。したがって、時変フィルタ448は、方程式(4)で説明されるような平滑化関数を適用することができる。時変フィルタ448は、上記のようにFIRフィルタまたはIIRフィルタを実装することができる。
【0075】
ここで、ウェアラブル装置102および外部装置104を含むCGMシステム100における例示的な電気回路の別の実施形態を示す、図4Cを参照する。図4Cの実施形態では、時変フィルタリングは、本明細書に記載される外部装置104に少なくとも部分的に実装される。図4Cの実施形態では、外部装置104は、トランスミッタ/レシーバ454、外部ディスプレイ116、プロセッサ458、メモリ460、およびメモリ460に格納され、プロセッサ458によって実装(例えば、実行)され得る時変フィルタ462を含み得る。一部の実施形態では、トランスミッタ/レシーバ454は、ウェアラブル装置102内に位置するトランスミッタ/レシーバ449からフィルタリングされていないCGM信号を受信してもよい。一部の実施形態では、トランスミッタ/レシーバ449およびトランスミッタ/レシーバ454は、BLUETOOTH(登録商標)または他の適切な通信プロトコルによってなど、無線で通信することができる。トランスミッタ/レシーバ454はまた、ウェアラブル装置102に命令を送信することができる。
【0076】
時変フィルタ462は、時変フィルタリングのための命令がメモリ460に格納され、図4Bと関連して記載したのと同一または同様の方法で、プロセッサ458によって実行されるデジタルフィルタであり得る。上述のように、時変フィルタリングは、ウェアラブル装置102から送信されるフィルタリングされていないCGM信号に適用され得る。一部の実施形態では、外部装置104は、測定された電流信号IMEASを受信することができ、時変フィルタ462は、図4Aおよび図4Bに関連して記載したように、測定された電流信号IMEASを処理して、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成することができる。例えば、時変フィルタ462は、IFILTに類似した信号を生成してもよく、これは、プロセッサ458によって処理されて、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成してもよい。フィルタリングされたCGM信号SFCGMおよび/またはプロセッサ458によって計算された他のデータは、外部ディスプレイ116に出力されてもよく、および/または別の装置(例えば、コンピュータ)にダウンロードされてもよい。
【0077】
図4Cの実施形態の時変フィルタリングのブロック図を図5Dおよび図5Eに示す。図5Dに示すように、フィルタリングされていないCGM信号がプロセッサ458によって受信され、これは時変フィルタ462を実行して、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成する。フィルタリングされていないCGM信号は、ウェアラブル装置102から受信されてもよい。図5Eでは、測定された電流信号IMEASが外部装置104内に受信され、時変フィルタ462に入力される。時変フィルタ462は、フィルタリングされた測定された電流信号IFILTを出力し、これは、プロセッサ458によって処理されて、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成する。
【0078】
実施形態の各々において、任意選択のローカルディスプレイ450および/または外部ディスプレイ116は、グルコース濃度を示すグラフおよび/または数値を表示し得る。表示される情報はまた、グルコース濃度の傾向、例えば、下降および上昇の傾向(例えば、上向きまたは下向きの矢印として表示される)を含み得る。単位など、その他の情報も表示され得る。フィルタリングされたCGM信号SFCGMは、時変フィルタによってフィルタリングされているため、グラフおよび/またはその他の情報は、ユーザに表示される従来の情報よりも正確である。フィルタリングされたCGM信号SFCGMによって提供される情報のより正確な一例が、図3Bの時変フィルタリングされたCGM信号316によって示される。
【0079】
フィルタリングおよび/または平滑化の例は、以下の例で説明する。図3Bに示されるフィルタリングされていないCGM信号314の部分314Aおよび314Bは、CGMモニタリング期間の13日目にあり、大きなノイズを含んでいる。例えば、部分314Aは、ユーザのグルコース濃度が、およそ四つの試料の期間にわたって、約125mg/dlから約180mg/dlに上昇していることを示す。部分314Bは、ユーザのグルコース濃度が、次の四つの試料の間に、180mg/dlから約120mg/dlに低下していることを示す。基準血糖濃度312は、部分314Aおよび部分314Bを合わせた八つの試料の間に、ユーザのグルコース濃度が約150mg/dlから約145mg/dlまで低下していることを示す。ユーザが部分314AのフィルタリングされていないCGM情報に依存すると、実際にはグルコース濃度がわずかに低下しているのに、グルコース濃度が急速に上昇しているとユーザに知らせることになる。ユーザが部分314Bの情報に依存すると、実際にはグルコース濃度がゆっくり低下しているのに、グルコース濃度が急速に低下しているとユーザに知らせる可能性がある。
【0080】
フィルタリングされたCGM信号SFCGM316は、部分314Aおよび部分314Bと同じサンプリング時間中のフィルタリングされたCGM信号SFCGM316のグルコース濃度をそれぞれ反映する部分316Aおよび部分316Bを含む。図3Bに示すように、フィルタリングされたCGM信号SFCGM316は、部分316A中に約125mg/dlから約155mg/dlに上昇し、部分316B中に約155mg/dlから約125mg/dlに低下する。フィルタリングされたCGM信号SFCGM316によって提供されたグルコース濃度の変化は、フィルタリングされていないCGM信号314によって提供されるものほど急勾配ではない。したがって、ユーザに提供される情報は、真のグルコース濃度をより正確に反映することができる。例えば、部分316Aに示されるグルコース濃度の上昇および部分316Bに示されるグルコース濃度のその後の低下は、フィルタリングされていないCGM信号314に示されるものほど深刻ではなく、基準血糖濃度312により近くなる。したがって、CGMシステムでの時変フィルタリングの使用は、CGMシステムによって生成されるCGM信号を含むデータの信頼性を向上させる。
【0081】
さまざまなフィルタリングオプションの結果をまとめた、以下の表1を参照する。表1で使用されるMARDは、平均絶対相対差である。静的フィルタは、フィルタの減衰が時間の関数として一定であるフィルタを含む。
【0082】
CGMグルコース測定の場合、MARDは方程式(6)により以下のように記述される。
MARD=100*Σ[Abs([GCGM-GREF]/GREF)]/n) 方程式(6)
式中、GCGMは、CGM測定グルコース濃度であり、GREFは、例えば、血糖測定(BGM)によって測定される基準グルコース濃度であり、nは、データポイントの数である。MARDの表現は、基準グルコース値に対するサンプル集団の平均および標準偏差を組み合わせて、複合MARD値を作り出し、ここで、MARD値が小さいほど、精度がよい。一部の実施形態では、10%のMARD値は、±25%以内のデータの近似精度、または近似25%の精度を有し得る。逆に、±10%の精度を有するCGMシステムは、4%のMARD値を有すると予測される。表1に示すように、時変フィルタリングを使用した本明細書に記載の実施形態は、従来のフィルタリングとほぼ同等のMARD値である。
【0083】
【表1】
【0084】
平滑度は、異なる技術を使用して計算されてもよい。例えば、平滑度は、演算平均法を使用して計算されてもよい。他の実施形態では、平滑度は、グルコース差の標準偏差をグルコース差の平均の絶対値で割ったものとして計算されてもよい。他の方法を使用して、平滑度を計算してもよい。表1に示すように、時変フィルタリングが適用された信号は、従来の信号よりも滑らかである。
【0085】
CGMは、間質液中に位置するバイオセンサーを含む装置を使用するものとして記載されている。他のCGM装置を使用してもよい。例えば、光学センサーは、連続的なグルコースまたは分析物のモニタリングにも使用され得る。光学装置は、グルコースまたは他の分析物を測定するために、蛍光、吸光度、反射率、および/または同種のものを採用し得る。例えば、蛍光または蛍光のクエンチに依存する光学的酸素センサーが、グルコース濃度と逆の関係を有する間質液中の酸素濃度を測定することによって、間接的にグルコースを測定するために採用され得る。
【0086】
ここで、持続分析物モニタリング(CAM)信号をフィルタリングする方法800を示すフローチャートを図示する、図8を参照する。持続グルコースモニタリング(CGM)信号をフィルタリングすることは、一例である。乳酸などの他の適切な分析物をモニタリングすることができる。方法800は、802において、CAM信号を生成することを含む。方法800は、804において、時変フィルタ(例えば、時変フィルタ448、462)を用いてCAM信号に時変フィルタリングを適用して、分析物モニタリング期間中に時変フィルタリングされたCGM信号(例えば、時変フィルタリングされたCGM信号SFCGM316)を生成することを含む。
【0087】
上述したように、時変フィルタリングには、1)測定された電流IMEASなどのCGMシステム100内の信号が、時変フィルタリングされ、さらに処理されて、フィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成し、これはトランスミッタ/レシーバ449によって外部装置104に転送され得る、2)IMEASが、処理されてフィルタリングされていないCGM信号を生成し、さらに処理されてフィルタリングされたCGM信号SFCGMを生成する、という二つの一般的な種類がある。
【0088】
前述の説明は、例示の実施形態のみを開示する。この開示の範囲内にある上記開示の装置および方法の変更が、当業者にとって容易に明らかであろう。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
【国際調査報告】