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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】電圧管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/24 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
G05F3/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543053
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 US2021013427
(87)【国際公開番号】W WO2021146416
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】202041001565
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】17/148,196
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナ アンカムレディ
(72)【発明者】
【氏名】ロヒット ポガット
(72)【発明者】
【氏名】シッドハント ロヘラ
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA12
5H420NA16
5H420NA35
5H420NB03
5H420NB12
5H420NB22
5H420NB25
5H420NC02
5H420NC14
(57)【要約】
電圧管理装置(100)は、第1の供給電圧(112)と第2の供給電圧(124)の間に結合される第1のトランジスタ(116)を含む。電圧管理装置は、第1の供給電圧(112)と第2の供給電圧(124)の間に結合される第2のトランジスタ(120)を含む。電圧管理装置(100)は、第1のトランジスタ(116)及び第2のトランジスタ(120)のゲート‐ソース間電圧の差に比例する第1の電流(126)を提供するよう構成される。電圧管理装置(100)はまた、第1の供給電圧(112)の差と、第1のトランジスタ(116)及び第2のトランジスタ(120)のゲート‐ソース間電圧の差とに比例する第2の電流(146)を提供するよう構成される。電圧管理装置(100)は、第1の電流(126)を第2の電流(146)と比較し、第1の供給電圧(112)が閾値を交差することに応答して状態を変更させる電圧値を判定するよう構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧管理装置(voltage supervisor)であって、
第1の供給電圧と第2の供給電圧との間に結合される第1のトランジスタと、
前記第1の供給電圧と前記第2の供給電圧との間に結合される第2のトランジスタと、
を含み、前記電圧管理装置が、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧の差に比例する第1の電流を提供し、
前記第1の供給電圧の差と、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧の前記差とに比例する第2の電流を提供し、
前記第1の電流を前記第2の電流と比較して、前記第1の供給電圧が閾値を交差することに応答して状態を変化させる電圧値を判定する、
ように構成される、
電圧管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記第2の電流が、前記閾値を交差する前記第1の供給電圧に応答する前記第1の電流よりも大きい、電圧管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記電圧管理装置が、前記第1の供給電圧が前記閾値を交差することに応答して前記第2の電流をクランプするように構成される、電圧管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタが、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧の前記差の温度係数を低減するようなサイズとされる、電圧管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記第1のトランジスタのゲートが、前記第2のトランジスタのゲートに結合される、電圧管理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記第2のトランジスタのドレインが電流ミラーに結合され、前記第2のトランジスタのソースが抵抗器に結合される、電圧管理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記電圧管理装置が、前記第1の供給電圧及び抵抗器に結合される第3のトランジスタを含み、前記第3のトランジスタが、前記第2の電流を提供するように構成される、電圧管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電圧管理装置であって、前記第3のトランジスタが、前記第1の供給電圧が前記閾値を交差することに応答して前記第2の電流をクランプするように構成される、電圧管理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記電圧管理装置が、電流ミラーを用いて前記第1の電流を提供するように構成される、電圧管理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電圧管理装置であって、前記電圧管理装置が第1及び第2の抵抗器を含み、前記第1の抵抗器が前記第2のトランジスタに結合され、前記第1及び第2の抵抗器が前記閾値を判定するようなサイズとされる、電圧管理装置。
【請求項11】
システムであって、
電流ミラーと、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第1の抵抗とを含む基準電流生成器であって、前記第1のトランジスタの制御端子が前記第2のトランジスタの制御端子に結合され、前記第2のトランジスタの第1の電流端子が前記第1の抵抗に結合される、前記基準電流生成器と、
前記電流ミラーに結合される制御端子と、電力供給に結合されるように適合される第1の電流端子と、第2の抵抗器に結合される第2の電流端子とを有する第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタの前記制御端子に結合される制御端子と、前記電力供給に結合されるように適合される第1の電流端子とを有する第4のトランジスタと、
前記第4のトランジスタの前記第2の電流端子に結合される第2の電流端子と、前記第2のトランジスタの前記制御端子に結合される制御端子と、第6のトランジスタに結合される第1の電流端子とを有する第5のトランジスタと、
を含む、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記電流ミラーが第1の電流ミラーであり、前記システムが、前記第5のトランジスタの前記第1の電流端子に結合される第2の電流ミラーをさらに含む、システム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムであって、前記第1のトランジスタの閾値電圧が前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも大きい、システム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムであって、前記第1のトランジスタが、約500ミリボルト未満の閾値電圧を有するnチャネルトランジスタである、システム。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムであって、前記第2のトランジスタが、nチャネルネイティブトランジスタである、システム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムであって、前記第1のトランジスタの第2の電流端子が前記電流ミラーに結合され、前記第2のトランジスタの第2の電流端子が前記電流ミラーに結合される、システム。
【請求項17】
電圧管理装置であって、
電流ミラーを有する基準電流生成器であって、前記電流ミラーが、第1のトランジスタと第2のトランジスタとのゲート‐ソース間電圧の差に比例する第1の電流を提供するように構成される、前記基準電流ミラーと、
前記電流ミラーに接続されたゲートと、電力供給に結合されるように適合されるソースと、抵抗器に結合されるドレインとを有する第3トランジスタであって、供給電圧の差と、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのゲート‐ソース電圧の前記差とに比例する第2の電流を提供するように構成される前記第3トランジスタと、
前記第3のトランジスタの前記ゲートに結合されるゲートと、前記電力供給に結合されるように適合されるソースと、閾値を上回る前記供給電圧を示すドレイン電圧を有するドレインとを有する第4のトランジスタと、
を含む、電圧管理装置。
【請求項18】
請求項17に記載の電圧管理装置であって、前記第3のトランジスタが、前記供給電圧が前記閾値を交差することに応答して前記第2の電流をクランプするように構成される、電圧管理装置。
【請求項19】
請求項17に記載の電圧管理装置であって、前記抵抗器が第1の抵抗器であり、前記閾値が、前記第1の抵抗器の値と、前記第2のトランジスタのソースに結合される第2の抵抗器の値とに少なくとも部分的に基づく、電圧管理装置。
【請求項20】
請求項17に記載の電圧管理装置であって、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタが、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧の前記差の温度係数を低減するようなサイズとされる、電圧管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電圧管理装置(voltage supervisor)は、供給電圧を監視し、供給電圧に関する特定の問題を検出するために、多くの応用例において有用である。幾つかの応用例では、電圧管理装置が、電力供給電圧が閾値を下回るか又は閾値を上回るか否かを検出することができる。電圧が閾値を交差することに応答して、電圧管理装置は信号をアサートする。この信号は、適切な電力供給動作を保証するためのアクションを取るのに有用である。
【発明の概要】
【0002】
本記載の少なくとも1つの例に従って、電圧管理装置が、第1の供給電圧と第2の供給電圧との間に結合される第1のトランジスタを含む。電圧管理装置は、第1の供給電圧と第2の供給電圧との間に結合される第2のトランジスタを含む。電圧管理装置は、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧の差に比例する第1の電流を提供するように構成される。電圧管理装置はまた、第1の供給電圧の差と、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタのゲート‐ソース電圧の差とに比例する第2の電流を提供するように構成される。電圧管理装置は、第1の電流を第2の電流と比較して、第1の供給電圧が閾値を交差することに応答して状態を変更させる電圧値を判定するように構成される。
【0003】
本記載の少なくとも1つの例に従って、或るシステムが、電流ミラーと、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第1の抵抗器とを含む基準電流生成器を含み、第1のトランジスタの制御端子が第2のトランジスタの制御端子に結合され、第2のトランジスタの第1の電流端子が第1の抵抗器に結合される。このシステムは、電流ミラーに結合される制御端子と、電力供給に結合されるように適合される第1の電流端子と、第2の抵抗器に結合される第2の電流端子とを有する第3のトランジスタを含む。このシステムは、第3のトランジスタの制御端子に結合される制御端子と、電力供給に結合されるように適合される第1の電流端子とを有する第4のトランジスタを含む。このシステムは、第4のトランジスタの第2の電流端子に結合される第2の電流端子と、第2のトランジスタの制御端子に結合される制御端子と、第6のトランジスタに結合される第1の電流端子とを有する第5のトランジスタを含む。
【0004】
本記載の少なくとも1つの例に従って、電圧管理装置が、電流ミラーを有する基準電流生成器を含み、電流ミラーは、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧の差に比例する第1の電流を提供するように構成される。電圧管理装置は、電流ミラーに結合されるゲートと、電力供給に結合されるように適合されるソースと、抵抗器に結合されるドレインとを有する第3のトランジスタを含み、第3のトランジスタは、供給電圧の差と、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧の差とに比例する第2の電流を提供するように構成される。電圧管理装置は、第3のトランジスタのゲートに結合されるゲートと、電力供給に結合されるように適合されるソースと、供給電圧が閾値を上回ることを示すドレイン電圧を有するドレインとを有する第4のトランジスタを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】様々な例に従った電圧管理装置である。
【0006】
図2】様々な例に従った強い反転動作のための温度係数のグラフである。
【0007】
図3】様々な例に従って、ゼロ温度係数がどのように達成されるかを示す一連のグラフである。
【0008】
図4】様々な例に従った電圧管理のための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電圧管理装置は、電力供給電圧を監視し、閾値に達した場合に信号をアサートするのに有用である。ノード(トリップノードと呼ばれる)は、電力供給電圧が閾値に達すると、高電圧から低電圧に又はその逆に反転する電圧を有する。トリップノードを反転させる電力供給のこの電圧は、トリップ電圧(例えば、閾値電圧又は電圧閾値)と呼ばれる。従来の電圧管理装置には多くの欠点がある。例えば、従来の電圧管理装置はしばしば、静止電流(I)とも呼ばれる高オフステージ電流を有し、応答時間が遅い。また、小さな閾値電圧(監視されている電力供給の閾値電圧)は、従来の電圧管理装置において実現することが困難なことが多い。さらに、監理されている電力供給のプログラム可能な閾値電圧を達成することは、従来の電圧管理装置では困難である。例えば、監理されている供給電圧が、異なる電圧に変更される場合、電圧管理装置は、通常、新たな供給電圧を取り扱うように再設計される。さらに、従来の電圧管理装置は、大抵、大きなシリコン面積を占める。
【0010】
本明細書における例では、電圧管理装置が、低Iを提供し、迅速な応答時間を有し、或る範囲の閾値電圧に対してスケーリングされ得、小さなシリコンエリアを有する。本明細書において記載される電圧管理装置は、4つの分岐を有する回路トポロジーを使用し、2つの異なる電流がこれらの分岐を介して流れる。第1の電流は、2つの電界効果トランジスタ(FETS)のゲート‐ソース間電圧(ΔVGS)の差に正比例する。第1の電流は、この電流が供給電圧と共に変化しないので基準電流として有用である。第2の電流は供給電圧に正比例し、従って、第2の電流の大きさは供給電圧の大きさを示す。これらの2つの電流は、トリップノードの状態を判定するために比較される。供給電圧が閾値を超えることに応答して、第2の電流が第1の電流を超えるので、トリップノードは低電圧から高電圧に反転する。トリップノード反転に応答して、回路はクランプされてIの増大を低減する。
【0011】
図1は、本明細書の様々な例に従った電圧管理装置100である。電圧管理装置100は、始動セクション102と、基準電流生成器104と、電流クランプ106とを含む。電圧管理装置100はまた、4つの垂直分岐を有するものとして説明することができ、その動作を下記で説明する。始動セクション102は、トランジスタ108と抵抗器110とを含む。トランジスタ108は一例ではn型FETである。トランジスタ108は、一例では、約-100mVの閾値電圧(VTH)を有するネイティブトランジスタである。他の例では、別の低い又はわずかに負のVTHを有するネイティブトランジスタを用いてもよい。ネイティブトランジスタは、エンハンスメントモードとデプリーションモードとの中間である様々なFETである。他の例では、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。比較的低い閾値電圧VTHを有するトランジスタを用いることによって、電圧管理装置100は、より低い供給電圧レベルを監視することができる。トランジスタの閾値電圧VTHが比較的高い場合、電圧管理装置100内のトランジスタは、より低い供給電圧を充分に監視するのに充分な低電圧レベルで動作することができないことがある。トランジスタ108のソースは、抵抗器110の第1の端子に結合され、ドレインはノード112に結合される。一例では、供給電圧VINがノード112に設けられる。トランジスタ108のゲートが、抵抗器110の第2の端子に結合される。本明細書の例では、トランジスタのゲートが制御端子と呼ばれることもある。トランジスタのソース又はドレインは電流端子と呼ばれることもある。始動セクション102は、一例では電圧管理装置100を開始するのに有用である。電圧管理装置100を開始することに応答して、始動セクション102はイナクティブになる。以下、始動セクション102の動作について説明する。
【0012】
電圧管理装置100は基準電流生成器104を含む。基準電流生成器104は、この例では2つの垂直分岐を有する。他の例において、基準電流を提供するために、異なるタイプの基準電流生成器が有用である。基準電流生成器104の第1の分岐が、トランジスタ114と、抵抗器110と、トランジスタ116とを含む。基準電流生成器104の第2の分岐が、トランジスタ118と、トランジスタ120と、抵抗器122とを含む。一例では、基準電流生成器は、供給電圧が所定の閾値を超えたか否かを判定するための基準として電圧管理装置100によって用いられる電流I(下記で説明する)を提供するように動作する。
【0013】
トランジスタ114は一例ではp型FETである。一例では、トランジスタ114は、約400~500mVの閾値電圧VTHを有する低閾値電圧トランジスタである。他の例では、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ114は、ノード112に結合されるソースと、抵抗器110の第1の端子に結合されるドレインとを有する。トランジスタ114は、トランジスタ118のゲートに結合されるゲートも有する。トランジスタ116は、一例ではn型FETである。トランジスタ116は、抵抗器110の第2の端子に結合されるドレインを有する。トランジスタ116のドレインはまた、トランジスタ116のゲートに結合される。トランジスタ116は、接地124に結合されるソースを有する。他の例において、接地124におけるレールは、ノード112に設けられた第1の供給電圧VINとは異なる電圧(第2の供給電圧)である接地124以外の電圧レールに結合され得る。
【0014】
基準電流生成器104の第2の分岐において、トランジスタ118は、ノード112に結合されるソースと、トランジスタ118のゲートに結合されるドレインとを有する。トランジスタ118のドレインはまた、トランジスタ120のドレインに結合される。トランジスタ118は、一例ではp型FETである。トランジスタ120は、トランジスタ116のゲートに結合されるゲートを有する。トランジスタ120はまた、抵抗器122の第1の端子に結合されるソースを有する。トランジスタ120は、一例ではn型FETである。抵抗器122の第2の端子が接地124に結合される。
【0015】
一例では、トランジスタ118は、閾値電圧VTHが約400~500mVの低閾値電圧トランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ114及び118は、それらの隣の円内に「1」とある。この「1」は、トランジスタ114及び118が同様のサイズであることを示し、トランジスタ114及び118が電流ミラーとして構成されているので、トランジスタ114を流れる電流は、トランジスタ118を流れる電流にほぼ等しくなる。トランジスタ114及び118のゲートが接続され、ソースが接続されるので、トランジスタ114及び118のゲート‐ソース間VGSは同じである。1つの例示の動作において、電流I 127はトランジスタ114を介して流れ、電流I 126はトランジスタ118を介して流れる。電流I 126及びI 127は一例ではほぼ等しい。電流I 126及び電圧管理装置100におけるその使用については、下記で説明する。
【0016】
一例において、トランジスタ116は、約400~500mVの閾値電圧VTHを有する低閾値電圧トランジスタである。一例では、トランジスタ120は、約-100mVの閾値VTHを有するネイティブトランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。
【0017】
始動セクション102は、下記のように動作する。最初に、ノード112における供給電圧VINが低く(例えば、2ボルト未満)、電圧管理装置100において電流がまだ発生していないとき、ノード128は接地(0V)にある。また、抵抗器110に電流I 127が流れていないので、抵抗器110の第1の端子は接地されている。次に、トランジスタ108のVGSは0Vであり、これは、トランジスタ108がオンにして電流を導通し始めるのに充分である。トランジスタ108によって導通される電流は、始動電流として作用し、ノード128において寄生容量を充電し、それによって、ノード128における電圧電位を増加させ、トランジスタ116をオンにする。トランジスタ116をオンにすると、他のデバイス(トランジスタ114、118、及び120)は、それぞれの電流ミラー配置で電流を導通し始め、導通された電流は、定常状態が達成されるまで増加する。電圧管理装置100の左端の2つの分岐における正のフィードバックは、定常状態に達するのを助ける。始動セクション102は、一例では、電圧管理装置100がゼロ電流を有さず、動作不能のままであることを保証する。
【0018】
電流I 127がトランジスタ114を介して流れ始めた後、抵抗器110の両端間の電圧降下が増加し、これは、トランジスタ108をオフにするように、トランジスタ108のソースにおける電圧をトランジスタ108のゲートにおける電圧よりも充分に高くする。これは、抵抗器110の両端間の電圧降下がトランジスタ108の-VGSに等しいからである。抵抗器110は、抵抗器110の両端間の電圧降下が、電圧管理装置100の通常の動作の間、トランジスタ108をオフに保つのに充分な大きさであるようなサイズとされる。
【0019】
電圧管理装置100の第1及び第2の2つの分岐は、供給電圧VINの変動に伴って変化しない基準電流I 126を提供する。トランジスタ116のVGSは、トランジスタ116のゲートに結合されるノード128と、共通電位(幾つかの例において接地)124との間の電圧であるVによって表される。トランジスタ120のVGSはVで表される。Vはノード128とノード130との間の電圧である。VとVとの間の差は、ノード130における電圧でもある、抵抗器122の両端間の電圧に等しい。従って、ノード130における電圧は、トランジスタ116及び120のゲート‐ソース間電圧VGの差であるためΔVGSと呼ばれる。
【0020】
電流I 126は、トランジスタ120及び抵抗器122(RBOT)を介して流れる。抵抗器122の両端の電圧は既知であるため、電流I 126は式(1)で計算される。
=(ΔVGS)/(RBOT) (1)
【0021】
式(1)に示すように、電流I 126は、供給電圧VINと共に変化しない。電流I 126の値は、トランジスタ116及び120の2つのゲート‐ソース間電圧VGS間の差、及び抵抗器122の値によって判定される。供給電圧VINが変化するにつれて、これらの2つのVGS間の差は同じままである。一方のΔVGS値が上昇することにつれて、他方も同様の量だけ上昇する。一方のΔVGS値が下がるにつれて、他方も同様の量だけ下がる。電流I 126はこのΔVGS値に比例し、このΔVGS値は、供給電圧VINと共に変化しない。従って、電流I 126も供給電圧VINと共に変化しない。このため、電流I 126は、供給電圧VINが閾値を超えて上昇したか否かを判定するのに役立つ基準電流として有用である。
【0022】
電圧管理装置100の第3の分岐が、トランジスタ132、134、及び136を含む。トランジスタ132は、一例ではp型FETである。一例では、トランジスタ132は、閾値電圧VTHが約400~500mVの低閾値電圧トランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ132は、一例ではトランジスタ114及び118とほぼ同一であり得る。トランジスタ132は、その隣の円内に「1」とあり、これは、トランジスタ132が、トランジスタ114及び118とほぼ同じサイズであり、トランジスタ114及び118と同様の量の電流を導通することができることを示す(トランジスタ132も、トランジスタ114及び118で形成された電流ミラーの一部であるため)。トランジスタ132は、トランジスタ118のゲートに結合されるゲートと、ノード112に結合されるソースとを有する。トランジスタ132のドレインが、ノード138とトランジスタ134のドレインとに結合される。トランジスタ132はトランジスタ114及び118を有する電流ミラーの一部を形成するので、トランジスタ132を流れる電流I 129は、トランジスタ118を流れる電流I 126にほぼ等しい。
【0023】
トランジスタ134は、一例において、約-100mVの閾値VTHを有するn型(FET)ネイティブトランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ134は、ノード138においてトランジスタ132のドレインに結合されるドレインを有する。トランジスタ134は、トランジスタ120のゲートに結合されるゲートを有する。トランジスタ134はまた、ノード140とトランジスタ136のドレインとに結合されるソースを有する。一例では、トランジスタ134はトランジスタ120と同一のトランジスタである。
【0024】
トランジスタ136は、トランジスタ134のソースに結合されるドレインと、接地124に結合されるソースとを有する。トランジスタ136はまた、ノード138に結合されるゲートを有し、これは、トランジスタ134のドレインに結合される。
【0025】
電圧管理装置100の第3の分岐は、トランジスタ142を含む電流クランプ106を有する側部分岐を含む。側部分岐は抵抗器144も含む。トランジスタ142は、トランジスタ132のゲートに結合されるゲートと、ノード112に結合されるソースとを有する。トランジスタ142のドレインが、抵抗器144の第1の端子に結合される。抵抗器144の第2の端子が、ノード140に結合される。
【0026】
一例では、トランジスタ142は、約400~500mVの閾値電圧VTHを有する低閾値電圧トランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ142はその隣の円内に「2」とあり、これは、トランジスタ142が、トランジスタ114、118、及び132のサイズの約2倍であり、従って、それらの3つのトランジスタの約2倍の電流を導通することができることを示す。トランジスタ142はまた、ノード112における電圧がトリップ点を上回る適切な量であるとき、トランジスタ114、118、及び132を備える電流ミラーとして作用するように構成される。
【0027】
電流I 146が抵抗器144を介して流れる。電流I 146は、(下記の式(2)に示されるように)ノード112における供給電圧VINと共に変化する電流であり、供給電圧VINが閾値を上回ったか否かを判定するのに有用である。一例において、VINはゆっくりと上昇して閾値に近づく。電流I 146は、トランジスタ142を介して流れる。トランジスタ134の両端のゲート‐ソース間電圧VGSがVであり、これは上述のようにノード128とノード130との間の電圧である。一例では、トランジスタ120及び134は同一のデバイスであり、それらのゲートは接続され、そのため、トランジスタ120及び134のゲートは同じ電圧にある。トランジスタ120を流れる電流が電流I 126であり、トランジスタ134を流れる電流が電流I 129であり、これはI 126と同様である(電流ミラーに因る)。トランジスタ120及び134を介する電流は同じであり、トランジスタ120及び134のゲートは同じ電圧にあるので、トランジスタ120及び134のソースも同じ電圧になる。トランジスタ120のソースにおける電圧は、ノード130における電圧である。上述したように、その電圧はΔVGSである。従って、ノード140における電圧もΔVGSとなる。
【0028】
トランジスタ136は、電圧管理装置100の第3の分岐の底部にある。トランジスタ136のドレイン(例えば、ノード140)において、電流I 129は電流I 146と組み合わされて、トランジスタ136を流れる電流I 148を生成する。抵抗器144を介する電流は電流I 146であり、抵抗器144の第2の端子における電圧はΔVGS。である。従って、抵抗器144の第1の端子における電圧は、抵抗器144の両端の電圧降下を判定し、電流I 146の値を判定するのに有用である。
【0029】
供給電圧VINが、トリップノードをトリップする閾値電圧よりも低いことに応答して、抵抗器144の第1の端子における電圧は、わずかな誤差を伴ってほぼVINである。これは、トランジスタ142がオンにされ、その両端の電圧降下が無視できるからである。トランジスタ142は、トランジスタ114、118、及び132のサイズの約2倍であり、これらのトランジスタによって形成される電流ミラーの一部である。従って、トランジスタ142は、電流I 126の約2倍を導通する能力を有する。しかしながら、トランジスタ142は、供給電圧VINと接地124との間の電圧差が、トランジスタ142を介して流れるためにそのような大量の電流を生成するのに充分に大きくないようなサイズとされる。トランジスタ142のドレインにおける電圧は、上述のようにトランジスタ142のソースにおける電圧に近く、これは、トランジスタ142はそれが導通することができる電流の全量を導通しないことを意味する。従って、トランジスタ142を介する電流I 146は、この例では電流I 126の2倍より小さい。VINがトリップノードをトリップする電圧閾値に達するまで、トランジスタ142のドレイン電圧はトランジスタ142のソース電圧に近く、そのソース電圧は供給電圧VINにある。従って、トランジスタ142のドレインにおける電圧も供給電圧VINに近い。そのため、抵抗器144(RTOP)の第1の端子における電圧は、供給電圧VINに近い。式(2)は電流I 146の値を示す。
=(VIN-ΔVGS)/(RTOP) (2)
【0030】
INがトリップノードをトリップする電圧閾値を下回る上述の動作状態の間、電流I 146は、I 126の値の2倍ではなく、供給電圧VINの値と共に直接的に変化する。
【0031】
電圧管理装置100の最初の3つの分岐の各々を介して流れる電流については上述されている。電圧管理装置100の第4の分岐は、トランジスタ150、152、154、及びTRIPノード156を含む。一例では、トランジスタ150は、約400~500mVの閾値電圧VTHを有する低閾値電圧トランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ150はその隣の円内に「k」とあり、これは、トランジスタ150が、トランジスタ114、118、及び132のサイズのほぼ「k」倍であり、従って、それらのトランジスタによって形成される電流ミラーの一部であるのでそれらのトランジスタのほぼ「k」倍の電流を導通することができることを示す。トランジスタ150のソースはノード112に結合される。トランジスタ150のゲートは、トランジスタ142のゲートに結合される。トランジスタ150のドレインは、TRIPノード156に及びトランジスタ152のドレインに結合される。
【0032】
トランジスタ152は、一例において、約-100mVの閾値VTHを有するn型(FET)ネイティブトランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ152は、トランジスタ134のゲートに結合されるゲートと、トランジスタ154のドレインに結合されるソースとを有する。一例では、トランジスタ152がトランジスタ120及び134と同一である。
【0033】
トランジスタ154は、一例において、閾値電圧VTHが約700mVの基準閾値電圧トランジスタである。他の例において、異なるタイプのトランジスタが有用であり得る。トランジスタ154は、接地124に結合されるソースと、トランジスタ136のゲートに結合されるゲートとを有する。一例では、トランジスタ136も、約700mVの閾値電圧VTHを有する基準電圧閾値トランジスタである。トランジスタ154はその隣の円内に「1」とあり、一方、トランジスタ136はその隣の円内に「2」とある。これらの数字は、トランジスタ136が、この例ではトランジスタ154のサイズの約2倍であることを示す。
【0034】
上述のように、電流1 129(I 126にほぼ等しい)及びI 146は、式(3)に示されるように、組み合わさって電流I 148をつくる。
+I=I (3)
【0035】
トランジスタ136を介して流れる電流は電流I 148であり、トランジスタ136は、トランジスタ154の2倍のサイズである。トランジスタ136及び154のゲートは共に結合され、トランジスタ136及び154のソースもまた、接地124において共に結合される。従って、トランジスタ136及びトランジスタ154のゲート‐ソース間VGSは同じである。トランジスタ136はトランジスタ154のサイズの約2倍であるので、トランジスタ136はトランジスタ154の約2倍の電流を導通する。トランジスタ136を介する電流は電流I 148であり、そのため、トランジスタ154を介する電流は、電流158として図1に示されるI/2である。一例では、トランジスタ136及び154が電圧管理装置100内の第2の電流ミラーとして動作し、電流は、トランジスタ136及び154が異なるサイズであることに応答してスケーリングされる。
【0036】
第4の分岐の頂部において、トランジスタ150を介して流れる電流は、電流I 126のk倍(例えば、kI)である。式(1)に関して上述したように、電流I 126が供給電圧VINに依存しないため、電流kIは供給電圧VINに依存しない。そのため、供給電圧VINが上昇するにつれて、電流kIは、経時的にほぼ一定となる。しかしながら、電流I 148は電流I 129(I 126にほぼ等しい)とI 146との組合せであり、電流I 146はVINに依存するので、供給電圧VINが上昇するにつれて、第4の分岐の底部の電流158(例えば、I/2)も上昇する。電流158が、第4の分岐における電流kIを上回って上昇することに応答して、TRIPノード156は状態を切り替える。具体的には、供給電圧VINが、監視されている電圧閾値を下回ることに応答して、電流kIはTRIPノード156を高電圧までプルする。電流158が電流kIを上回るほど充分に供給電圧VINが増大する(これは、電流158が供給電圧VINと共に変化し、電流kIが変化しないために起こり得る)につれて、TRIPノード156は低電圧にプルされる。ノードを反転させるTRIPノード156における電圧は、トリップ電圧(例えば、閾値電圧又は電圧閾値)である。
【0037】
電流kI及び158は計算することができ、トリップ電圧も計算することができる。トランジスタ150を介する電流kIは、式(4)に示される。
【0038】
電流158は、式(5)で計算される電流I 148の半分である
【0039】
TRIPノード156は、電流158が電流kIに等しくなるにつれて反転し始める。トリップ電圧を式(6)に示す。
【0040】
式(6)は、トリップ電圧VTRIPが、定数を掛けたΔVGSに正比例することを示している。定数は、抵抗器144(RTOP)と抵抗器122(RBOT)の関数である。これら2つの抵抗器122及び144の値は、電圧管理装置100が製造されるときのプロセス変動に基づいて、それらの設計値から逸脱することがある。しかしながら、それらが同じように変化する場合、プロセス変動は式(6)に従って相殺され得る。定数kは相対的なデバイスサイズであり、これは、一定であり、プロセス又は温度と共に実質的に変化することはない。トリップ電圧VTRIPの主な変動は、ΔVGSに影響を与えるプロセス変動である。一例において、本明細書におけるトランジスタは、ΔVGSの温度係数がほぼゼロになるようなサイズにすることができる。その場合、トリップ電圧VTRIPも温度と共に著しく変化することはない。
【0041】
上述のように、電圧管理装置100は、様々な電圧閾値に対してプログラム可能である。抵抗器122及び144の値は、トリップ電圧VTRIPを変化させるように調節することができる。また、トリップ電圧VTRIPを変えるために、kの値(相対的なデバイスサイズ)を調節することもできる。従って、本明細書の例においてトリップ電圧VTRIPを微調整することができる。電圧管理装置100のトポロジーはこのプログラマビリティを提供し、これは、同じ回路が別のトリップ電圧VTRIPを提供するのに有用であることを意味する。幾つかの例において、トリップ電圧VTRIPを変化させるために可変抵抗器を用いることができる。他の例において、抵抗のスイッチ入れて又はスイッチを切って抵抗を変化させ、トリップ電圧VTRIPを調節することができる。
【0042】
様々な例における電圧管理装置100の別の特徴は、トリップ点に達した後、電流I 146が制限されることである。電流I 126は供給電圧から独立しているが、電流I 146は独立していない。電流クランプ106は、供給電圧VINが上昇するにつれて電流I 146を制限するのに有用である。電流クランプ106は、供給電圧VINが或る値に達した後に電流I 146が増加するのを防止する。供給電圧VINのこの或る値で、トランジスタ142が電流I 126の約2倍に等しい電流を提供するために、電圧供給VINと接地124との間に充分な電圧マージンがある。トランジスタ142を介して流れる電流が電流I 126の2倍に達すると、トランジスタ142は飽和する。従って、供給電圧VINが或る値を超えて上昇すると、電圧管理装置100の分岐に追加の電流が流れなくなる。
【0043】
電圧管理装置100が製造された後、トリップ電圧VTRIPは、可変抵抗が使用されない限り変更することができない。従って、温度による変化を防止するために、トランジスタ116及び120は、ΔVGSの温度係数がほぼゼロになるようなサイズとするべきである。トランジスタ116とトランジスタ120との間のΔVGSの温度係数がほぼゼロである場合、電流I 126の値にも、温度変化に対する一層の耐性が生じ、これにより、電流I 126が基準電流として有用であることが可能となる。
【0044】
本明細書においてゼロに近い温度係数を達成するための2つの方法が記載され、1つの方法は、強い反転動作においてトランジスタを用いることに関与し、別の方法は、弱い反転動作においてトランジスタを用いることに関与する。強い反転動作では、トランジスタのVGSは閾値電圧VTHを大きく上回る。オーバードライブ電圧VOVは、閾値電圧VTHを上回るゲート‐ソース間電圧VGSである。弱い反転動作(例えば、閾値以下の領域)では、トランジスタは、閾値電圧VTHを下回るゲート‐ソース間電圧VGSで動作する。
【0045】
まず、強い反転動作の例において、VGS=VTH+VOVである。また、式(7)は、これらの電圧の差を示す。
ΔVGS=ΔVTH+ΔVOV (7)
【0046】
ΔVGSは、図1に関して上述したように、トランジスタ116とトランジスタ120との間のゲート‐ソース間電圧の差である。一例では、トランジスタ116が低電圧トランジスタ(LVT)であり、下記の式におけるトランジスタ116に関連する変数に、下付き文字LVTがつく。この例では、トランジスタ120がネイティブトランジスタ(NAT)であり、下記の式におけるトランジスタ120に関連する変数に下付きのNATがつく。式(7)の変数は、トランジスタが動作している動作領域に基づいて拡張することができる。強い反転動作の場合、ΔVOVは、トランジスタ116のVOVからトランジスタ120のVOVを引いたものに等しい。ΔVOVについえこれらの項を代入すると、式(8)が得られる。
ΔVGS=ΔVTH+[VOV(LVT)-VOV(NAT)] (8)
【0047】
図1における電流I 126は、式(9)において定義される。
ここで、k’はプロセス相互コンダクタンスパラメータであり、これは、集積回路を製造するために用いられるプロセス技術に依存する定数であり、W/Lは、チャネル長に対するチャネル幅の比である(この例ではトランジスタ120についてであるが、式(9)は、他のトランジスタを介する電流を見つけるためにも用いられる)。VOVについて式(9)を解き、VOV(LVT)及びVOV(NAT)の両方についてその解VOVを代入すると、式(10)が得られる。
【0048】
ΔVTHは、正の値であり、トランジスタ116の閾値電圧VTHからトランジスタ120の閾値電圧VTHを引いたものに等しい。一例では、トランジスタ116の閾値電圧VTHはゼロより大きく、トランジスタ120の閾値電圧VTHはほぼゼロであるか又はゼロよりわずかに小さい。従って、ΔVTHはゼロより大きい。
【0049】
式(11)は、式(10)の並び替えである。
【0050】
この例では、LVTトランジスタとNATトランジスタは同一サイズであるため、W/L変数は、各トランジスタについて同じであり、式(11)に示されるように括弧の外に移すことができる。次の工程は、式(11)においてΔVTHの温度係数とΔVTHに加算される項の温度係数を識別することである。ゼロ温度係数を達成するために、ΔVTHの温度係数は、式(11)における他の項の温度係数(これは、式(7)に示されるように、ΔVOVに等しい)によって相殺されるべきである。
【0051】
ΔVTHはプロセス依存であるので、ゼロ温度係数を達成するように調節することができない。ΔVOV項については、(W項及びL項を改変することによって)トランジスタのサイズを改変することができる。W及びL変数は、ΔVTHの温度係数を打ち消すように、適切な方向にΔVOV項の温度係数を変化させるように調節することができる。例えば、ΔVTHの温度係数がθである場合、他の項は、それらの項が打ち消されるように、-θであるべきである。また、k’は、デバイスの移動度(μ)×酸化物容量COX(k’=μCOX)に等しい。
【0052】
図2は、一例に従った強い反転動作のための温度係数のグラフ200である。グラフ200は、(k’/2)(W/L)対温度の逆数をグラフ化している。(k’/2)(W/L)の逆数がy軸上にグラフ化されている。x軸は摂氏での温度である。曲線202は、トランジスタ116などのLVTデバイスについての(k’/2)(W/L)の逆数である。曲線204は、トランジスタ120などのNATデバイスについての項(k’/2)(W/L)の逆数である。グラフ200に見られるように、LVTについてのこの項の逆数(曲線202)は、NATについてのこの項の逆数(曲線204)よりも低い勾配を有する。これらの2つの項が減算される場合(これは式(11)の最後の部分で行われる)、結果は負の温度係数である。従って、ΔVTHに付加される、式(11)
の右側の第2項(括弧内の項で乗じたラジカル)は、温度の上昇と共に低下する。これは、上記のような第2項は負の温度係数を有することを意味する。その第2項は、その絶対値がΔVTHの絶対値に等しくなるまで(同一サイズのLVT及びNATトランジスタの)W及びL値を変えることによって調節することができる。それらの絶対値が等しい場合、第2項はΔVTHを相殺し、結果として生じる温度係数はほぼゼロである。
【0053】
閾値以下(subthreshold)又は弱い反転動作の第2の場合では、ΔVGS=ΔVTH+ΔVOVである。上述のような類似の数学的置換がこのタイプの動作に対して成される。しかしながら、閾値以下の動作の場合、ΔVOV項は、強い反転動作の場合とは異なる。一例では、閾値以下の動作は、式(12)によって特徴付けられる。
【0054】
式(12)の対数項(これはΔVOVに相当する)は、ΔVTHの温度係数項を相殺するために、上記の強い反転動作と同様に調節される。対数項は、LVT及びNATトランジスタの一方又は両方についてW及びL変数を調節することによって調節することができる。
【0055】
図3は、閾値以下の動作における温度係数の相殺を示すグラフの集合である。グラフ300は、温度(摂氏)に対するΔVTH(ボルト)のグラフである。温度係数は曲線302として示される。曲線302は、グラフ300に示されるように、約0.13の正の勾配を有する。
【0056】
グラフ304は温度に関するΔVOVのグラフである。温度係数は曲線306として示される。曲線306は負の勾配を有し、曲線306の左端で約0の勾配を有し、曲線306の中央で約-0.2の勾配を有し、曲線306の右端で約-0.3の勾配を有する。
【0057】
一例では、ΔVOVの勾配が、ΔVTHの勾配が正であるときに等しく負とされる場合、グラフ308に示される曲線310のような傘形状の曲線となる。グラフ308は温度に対するΔVGSのグラフであり、曲線302及び306を組み合わせた結果である。曲線310では、最初の点(左端)及び最後の点(右端)が同様のVGSである。従って、温度の上昇に伴って、曲線310は勾配の増加又は勾配の減少を示さず、その代わりに、傘形状の曲線となる。曲線310は完全に水平ではないので、温度の変化によって引き起こされる何らかの影響があるが、水平に近いので、幾つかの例において影響は小さい。
【0058】
図4は、本明細書の様々な例に従った、電圧監理のための方法400のフローチャートである。方法400は図1図3に関連して記載されるが、任意の適切な順序でこの方法を実施するように構成された任意のシステムが、本説明の範囲内に含まれる。一例では、図1内の構成要素が方法400を実施する。
【0059】
方法400は、電圧管理装置100が第1の電流を提供する工程410で始まり、第1の電流は、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧VGSの差に比例する。一例では、トランジスタ114及び118の電流ミラーが第1の電流I 126を提供する。第1の電流I 126は、トランジスタ116及び120のVGSの差に比例する。一例では、トランジスタ116は第1のトランジスタであり、トランジスタ120は第2のトランジスタである。
【0060】
方法400は、電圧管理装置100が第2の電流を提供する工程420で継続し、第2の電流は、供給電圧の差と、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタのゲート‐ソース間電圧VGSの差とに比例する。一例では、第2の電流は、式(2)で上述したような電流I 146である。式(2)は、電流I 146がVIN-ΔVGSに比例することを示す。一例では、トランジスタ116及び120がそれぞれ第1及び第2のトランジスタであり、一方、トランジスタ142は第2の電流を提供する第3のトランジスタである。
【0061】
方法400は、電圧管理装置100が、第1の電流を第2の電流と比較して電圧ノードの状態を判定する工程430で継続し、電圧ノードは、供給電圧が閾値を越える場合、状態を変更させる。図1に関して上述したように、供給電圧VINの上昇に起因して電流158が電流kIを超えて上昇すると、TRIPノード156が状態を変化させる。一例では、トランジスタ150は第4のトランジスタであり、トランジスタ152は、電流kIを導通させる第5のトランジスタである。トランジスタ154は、トランジスタ136を備える第2の電流ミラーの一部として、電流158を導通させる第6のトランジスタである。他の例において、第1の電流を第2の電流と比較するために任意の適切な方法が有用である。
【0062】
本明細書に記載の例は、膨大な数の応用例に用いることができる。正確な電圧監理回路要素から恩恵を受ける如何なる最終機器システムも、電圧管理装置100のスケーラブルでコンパクトな設計により、本明細書の例から恩恵を受けることができる。電圧管理装置100は、トランジスタの動作領域とは独立して機能する。すなわち、一例では、電圧管理装置100は、強い反転においてトランジスタを用いることによって、用いるエリアを低減することができる。別の例において、トランジスタが低I動作のための閾値以下の動作において有用である。
【0063】
電圧管理装置100において、トリップ点とΔVGSとの間の正比例関係を判定する定数は、スケーラブルであり、プロセス依存ではない。定数は、2つの方式(電流ミラー比及び抵抗比)でスケーリングすることができる。2つの方式でスケーリングすることにより、シリコン面積を大幅に増大させることなく、トリップポイントを細かくプログラムすることができる。
【0064】
電圧管理装置100において、説明したトポロジーのIは、トリップ点に達した後のVINの増加とは無関係である。この独立性は、VINに依存する電流I 146を搬送する電圧管理装置100の分岐において電流クランプ106を用いることによって達成される。
【0065】
幾つかの例において、電圧管理装置100は、約1.0ボルト~約5.0ボルトの範囲で動作する。また、電圧監視装置100は、始動セクション102により自己開始する。電圧管理装置100のための応答時間は、従来のシステムと比較して速い。
【0066】
「結合する」という用語は、本明細書全体を通して用いられている。この用語は、明細書の記載と一貫する機能的関係を可能にする、接続、通信、又は信号経路を網羅し得る。例えば、デバイスAが、デバイスBを制御して或る動作を実施するための信号を提供する場合、第1の例において、デバイスAがデバイスBに結合されるか、或いは、第2の例において、介在する構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能的関係を実質的に変更せず、デバイスBがデバイスAによって提供される制御信号を介してデバイスAによって制御される場合、デバイスAが介在する構成要素Cを介してデバイスBに結合される。
【0067】
或るタスク又は機能を実施するように「構成された」デバイスは、そのタスク又は機能を実施するように製造時に製造者によって構成可能であり(例えば、プログラミング及び/又はハードワイヤードされる)、或いは、それらの機能及び/又はその他の付加的な又は代替的な機能を実施するように、製造後にユーザによって構成可能(又は再構成可能)であり得る。こういった構成は、デバイスのファームウェア及び/又はソフトウェアプログラミングを介してもよく、ハードウェア構成要素の構成及び/又はレイアウトを介してもよく、デバイスの相互接続を介してもよく、又はそれらの組み合わせを介してもよい。
【0068】
特定の構成要素を含むものとして本明細書で記載される回路又はデバイスは、代わりに、それらの構成要素に結合されて、記載される回路又はデバイスを形成するように適合され得る。例えば、1つ又は複数の半導体素子(トランジスタなど)、1つ又は複数の受動素子(抵抗器、コンデンサ、及び/又はインダクタなど)、及び/又は、1つ又は複数の源(電圧源及び/又は電流源など)を含むものとして記載される構造が、代わりに、単一の物理デバイス(例えば、半導体ダイ及び/又は集積回路(IC)パッケージ)内の半導体素子のみを含み得、例えば、エンドユーザー及び/又はサードパーティによって、製造時又は製造時の後に、記載される構造を形成するために受動素子及び/又は前述のような源の少なくとも幾つかに結合されるように適合されてもよい。
【0069】
本明細書において特定のトランジスタの使用について説明しているが、他のトランジスタ(又は同等のデバイス)を代わりに使用してもよい。例えば、p型金属酸化物シリコンFET(「MOSFET」)は、回路にほとんど又は全く変更がないn型MOSFETの代わりに用いられ得る。さらに、他のタイプのトランジスタ(バイポーラ接合トランジスタ(BJT)など)が用いられてもよい。
【0070】
本明細書で記載される回路は構成要素置換前に利用可能な機能と少なくとも部分的に同様の機能を提供するために、置換された構成要素を含むように再構成可能である。抵抗器として示される構成要素は、特に明記しない限り、一般に、示される抵抗器によって表されるインピーダンスの量を提供するために、直列及び/又は並列に結合される任意の1つ又は複数の要素を表す。例えば、単一の構成要素として本明細書に示され記載される抵抗器又はコンデンサが、代わりに、それぞれ、同じノード間で並列に結合される複数の抵抗器又はコンデンサであってもよい。例えば、単一の構成要素として本明細書に示され記載される抵抗器又はコンデンサが代わりに、単一の抵抗器又はコンデンサと同じ2つのノード間に直列に結合される、それぞれ複数の抵抗器又はコンデンサであってもよい。
【0071】
前述の説明における「接地」という語句の使用は、シャーシ接地、アース接地、浮動接地、仮想接地、デジタル接地、共通接地、及び/又は、本説明の教示に適用可能であるか又は本説明の教示に適した任意の他の形態の接地接続を含む。特に明記しない限り、値に先行する「約」、「およそ」又は「実質的に」は、その値の±10%を意味する。本発明の特許請求の範囲内で説明した例示の例に改変が成され得、他の例が可能である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】