IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌティエヌーエスエヌアール・ルルマンの特許一覧

特表2023-529042回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ
<>
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図1
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図2
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図3
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図4
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図5
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図6
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図7
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図8
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図9
  • 特表-回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20230630BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20230630BHJP
   B60B 35/14 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/18
B60B35/14 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545006
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021051628
(87)【国際公開番号】W WO2021148676
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】2000720
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2007750
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508275098
【氏名又は名称】エヌティエヌーエスエヌアール・ルルマン
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】バウドゥ・アレクサンドレ
(72)【発明者】
【氏名】プロイ-ソラリ・バンサン
(72)【発明者】
【氏名】ルランド・ジークフリード
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA73
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA55
3J701BA69
3J701FA15
3J701FA53
3J701GA03
3J701XB03
3J701XB12
3J701XB13
(57)【要約】
【課題】軸方向にコンパクト化した回転アセンブリ、特にモータ付き車両の車輪を案内するための回転アセンブリを提供する。
【解決手段】モータ付き車両の駆動輪アセンブリ(10)は、2つの外輪軌道面(22、24)を含む固定サブアセンブリ(12)と、2つのピッチ面PP1およびPP2に配置された第1の内輪部(30、34)と、第2の内輪部(36)および2列のボール(16、18)とを含む回転サブアセンブリ(14)から構成されている。第2の内輪部(36)は、回転軸(100)に垂直な断面平面(PC)において、第1のピッチ面(PP1)と第2のピッチ面(PP2)との間に位置し、第1のピッチ面(PP1)と測定距離DMだけ離れて測定される外径(Φ)が、所定の閾値VSよりも大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転アセンブリ(10)であって、
共通の回転軸(100)を中心とする第1の環状外輪軌道面(22)および第2の環状外輪軌道面(24)を含む外方サブアセンブリ(12)と、
第1の内輪部(30、34)と第2の内輪部(36)とを含む内方サブアセンブリ(14)であって、第1の内輪軌道面(56)が形成される前記第1の内輪部(30、34)が軌道面底部径DI1を有し、第2の内輪軌道面(62)が形成される前記第2の内輪部(36)が前記第1の内輪軌道面(56)の軌道面底部径DI1よりも大きい軌道面底部径DI2を有し、前記第2の内輪部(36)と前記第1の内輪部(30、34)は互いに相対的に固定されている内方サブアセンブリ(14)と、
ボール(16、18)であって、前記回転軸(100)を中心に回転する前記外方サブアセンブリ(12)および前記内方サブアセンブリ(14)を相対的に案内するために、前記第1の外輪軌道面(22)および前記第1の内輪軌道面(56)上を転動可能な第1列のボール(16)と、前記第2の外輪軌道面(24)および前記第2の内輪軌道面(62)上を転動可能な第2列のボール(18)とを形成し、前記第1列のボール(16)は直径DC1を有し、前記第1列のボール(16)の中心を含む第1のピッチ面(PP1)は、前記第2列のボール(18)の中心を含む第2のピッチ面(PP2)からゼロでない距離Lを空けて配置されている、ボール(16、18)とを備え、
前記第2の内輪部(36)は、前記回転軸(100)に垂直な断面平面(PC)において、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間に位置し、前記第1のピッチ面(PP1)からの測定距離DMだけ離れて測定した外径(Φ)が、所定の閾値VSよりも大きく、以下の式が成り立つことを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【数1】
【請求項2】
請求項1に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記第2の内輪部(36)は、前記第1のピッチ面(PP1)に向かって軸方向に対向し、前記第1の内輪部(30、34)の軸受面(59)に対して軸方向に支持する軸方向端面(57)を含み、前記軸方向端面(57)は、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間に位置する横断面(PB)において、前記第1のピッチ面(PP1)から距離D、好ましくは前記第1列のボール(16)の直径DC1の半分より小さい距離の地点に配置されることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転アセンブリ(10)であって、第1の一体型軸受保持器(70)をさらに備え、前記第1の一体型軸受保持器(70)は、前記第1の軸受保持器(70)の基準軸(300)を規定する円筒部(72)と、前記第1列のボール(16)を収容するためのポケット(76)を区切るために前記円筒部(72)の外周に分布する爪(74)とを備えることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項4】
請求項3に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記円筒部(72)は、前記第2のピッチ面(PP2)に対向する前記第1のピッチ面(PP1)の片側に配置され、前記爪(74)は、前記第1のピッチ面(PP1)を横断して前記第2のピッチ面(PP2)の方向へ前記円筒部(72)から突出しており、前記爪(74)は自由遠位端(78)を有し、前記ポケット(76)はそれぞれ、前記第1の一体型保持器(70)の前記爪(74)のうち隣接する2つの爪(74)と、前記隣接する2つの爪(74)を結ぶ円筒部(721)の一部によって区切られることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項5】
請求項4に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記各ポケット(76)について、前記隣接する2つの爪(74)はそれぞれ、前記ポケット(76)に収容されたボール(16)に面する凹状のガイド面(80)を有し、前記ガイド面(80)は、好ましくは、前記第1列のボール(16)のボールの中心を通り、前記回転軸(100)を中心とする第1のピッチ円を底面とする第1のピッチ円柱(CP1)の内部に少なくとも部分的に位置し、好ましくは、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)の間に少なくとも部分的に存在することを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項6】
請求項5に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記各ポケット(76)について、前記隣接する2つの爪(74)を接続する前記円筒部(721)が、前記ポケット(76)に収容されたボール(16)に面する端部ガイド面(82)を備え、端部ガイド面(82)が、好ましくは、少なくとも部分的に前記第1のピッチ円柱(CP1)の半径方向外側に位置することを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記第1の軸受保持器(70)は、前記円筒部(72)の外周に配置された追加の爪(84)をさらに備え、前記追加の爪(84)の各々は、1つの爪(74)に関連し、前記関連する爪(74)の半径方向外側かつ反対側に位置する自由遠位端(86)を有することを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項8】
請求項7に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記各ポケット(76)について、前記隣接する2つの爪(74)に関連する2つの追加の爪(84)はそれぞれ、前記ポケット(76)に収容された前記ボール(16)に面する追加の凹状のガイド面(88)を含み、前記追加のガイド面(88)は、少なくとも部分的に前記第1のピッチ円柱(CP1)の外側で、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2ピッチ面(PP2)との間に位置していることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項9】
請求項5に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記各ポケット(76)について、前記隣接する2つの爪(74)はそれぞれ、前記ポケット(76)に収容された前記ボール(16)に面する追加の凹状のガイド面(88)を含み、前記追加のガイド面(88)は、少なくとも部分的に前記第1のピッチ円柱(CP1)の外側で、少なくとも部分的に前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間に配置されていることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項10】
請求項3から8のいずれか一項に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記第1の軸受保持器(70)の前記円筒部(72)が、前記爪(74)から離れて軸方向に面する平面環状積層面(722)と、前記第1の軸受保持器(70)の基準軸(300)に関して回転対称のセンタリング軸受(724)とをさらに有し、前記第1の軸受保持器(70)は、前記環状積層面(722)から軸方向に離れて面する平面(86)であって、前記平面環状積層面(722)を含む積層面において直交投影で見た平面環状積層面と重なる平面(86)を含み、前記積層面において直交投影で見て前記センタリング軸受(724)と向き合うように半径方向に反転したセンタリング面(742)をさらに備え、前記センタリング面(742)および前記センタリング軸受(724)が前記環状積層面(722)に面していることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の回転アセンブリ(10)であって、第2の軸受保持器(90)の基準軸を規定する前記円筒部(92)と、前記第2の軸受保持器(90)の円筒部(92)の外周に配置され、前記第2列のボール(18)を収容するためのポケットを区切る爪(94)とを有する前記第2の一体型軸受保持器(90)をさらに備え、前記第2の軸受保持器(90)の円筒部(92)は、好ましくは前記第1のピッチ面(PP1)とは反対側の前記第2のピッチ面(PP2)側に配置され、前記第2の軸受保持器(90)の爪(94)は、前記第2の軸受保持器(90)の円筒部(92)から前記第2のピッチ面(PP2)を横断する前記第1のピッチ面(PP1)に向かって突出し、前記第2の軸受保持器(90)の爪(94)は、自由遠位端(98)を有し、前記各ポケットは、前記第2の軸受保持器(90)の爪(94)のうちの隣接する2つの爪と、前記隣接する2つの爪(94)を接続する前記円筒部(92)の一部とによって区切られることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記第1列のボール(16)を構成するボールの直径DC1が、前記第2列のボール(18)を構成するボールのボール直径DC2以下であることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記第2の内輪部(36)は、前記第1の内輪部(30、34)の焼き嵌め軸受(52)に焼き嵌められていることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記外方サブアセンブリ(12)が前記モータ付き車両の駆動輪ガイド(10)の固定サブアセンブリ(12)を構成し、内方サブアセンブリ(14)が前記モータ付き車両の駆動輪ガイド(10)の回転サブアセンブリ(14)を構成し、前記回転軸(100)を中心に前記固定サブアセンブリ(12)に対して回転可能であり、前記回転サブアセンブリは、ホイールリム(40)またはブレーキディスク(41)を取り付けるためのインターフェースを有するフランジ(38)を含むホイールハブ(30)を備え、前記取付けフランジ(38)は、前記ホイールリム(40)または前記ブレーキディスク(41)の分解方向(200)に軸方向に対向する前記ホイールリム(40)または前記ブレーキディスク(41)の取付け面(42)を形成し、前記分解方向(200)は前記回転軸(100)と平行であり、前記第1の内輪部(30、34)は、前記ホイールハブ(30)によって構成されるか、または前記ホイールハブ(30)に焼き嵌められ、前記第2の内輪部(36)は、前記ホイールハブ(30)の焼き嵌め軸受(52)に焼き嵌められていることを特徴とする、回転アセンブリ。
【請求項15】
請求項14に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記回転サブアセンブリは、さらに、トランスミッションボウル(32)を備え、前記内輪部(36)は、前記回転軸(100)に対して少なくとも半径方向に延びる環状接触面(58、60)において前記トランスミッションボウル(32)を支持することを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項16】
請求項15に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間に配置されることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか一項に記載の回転アセンブリ(10)であって、前記ホイールハブ(30)が中実の一体型金属部品であることを特徴とする、回転アセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転アセンブリに関し、特に、モータ付き車両の車輪、特に駆動輪を案内するのに適した回転アセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリは、一旦車両に取り付けられると、一般に、車両の懸架要素に固定されることが意図され、回転軸を規定する第1の外輪軌道面および第2の外輪軌道面を含む固定サブアセンブリと、回転軸を中心に固定部材に対して回転可能であり、ホイールハブ、トランスミッションボウル、第1の外輪軌道面の反対側に位置する第1の内輪軌道面、第2の外輪軌道面の反対側に位置する第2の内輪軌道面、ならびにボールからなり、第1の外輪軌道面と第1の内輪軌道面の間に第1のボール列、第2の外輪軌道面と第2の内輪軌道面の間に第2のボール列が形成されている回転アセンブリとから構成される。ホイールハブは、ホイールリムおよびブレーキディスクのための取付け面を有する。したがって、このアセンブリは、典型的には、トルクの伝達、車両の懸架装置への取付け、回転における案内、ブレーキおよび転がりという、車両の内側から外側へ回転軸に沿って配置される技術的機能の積み重ねからなり、これは、軸方向、すなわち、車両の座標系における横方向に大きな寸法を要する。
【0003】
特許文献1では、第2の軌道面の内輪部をトランスミッションボウルに焼き嵌めることが提案されており、これにより、2列のボール間の所定の距離に対して軸方向のサイズを小さくすることができる一方で、車両の内側に位置するボール列のピッチ径を大きくすることが可能である。負荷容量とキャンバー剛性が2列のボール間の距離とボール列のピッチ径との増加関数である限り、この構造は、軸方向寸法の減少および負荷容量とキャンバー剛性における良好な性能を両立させるための解決策を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願公開第3,052,104号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動車両やハイブリッド車両のパワートレインは、内燃機関のパワートレインに比べて駆動輪の車幅方向が大きくなることが多く、これにより横方向の駆動軸が短くなる場合がある。駆動軸が短くなると、シャーシに対して車輪が動く際に、トランスミッションジョイントのたわみ角度の増大を招くため、好ましくない。このため、トランスミッションシャフトを配置するスペースを僅かにでも増やすことができれば、好ましいとされている。そのため、駆動ホイールアセンブリでは、特に負荷容量や剛性といった性能を犠牲にすることなく、軸方向にコンパクトにする必要性が高まっている。
【0006】
本発明は、例えば、モータ付き車両の駆動輪を案内するための回転アセンブリであって、軸方向のコンパクト性、高い負荷容量、および良好なキャンバー剛性を兼ね備えた回転アセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明の第1の態様によると、
回転アセンブリであって、
共通の回転軸を中心とする第1の環状外輪軌道面および第2の環状外輪軌道面を含む外方サブアセンブリと、
第1の内輪部と第2の内輪部とを含む内方サブアセンブリであって、第1の内輪軌道面が形成される前記第1の内輪部が軌道面底部径DI1を有し、第2の内輪軌道面が形成される前記第2の内輪部が前記第1の内輪軌道面の軌道面底部径DI1よりも大きい軌道面底部径DI2を有し、前記第2の内輪部と前記第1の内輪部は互いに相対的に固定されている内方サブアセンブリと、
ボールであって、前記回転軸を中心に回転する前記外方サブアセンブリおよび前記内方サブアセンブリを相対的に案内するために、前記第1の外輪軌道面および前記第1の内輪軌道面上を転動可能な第1列のボールと、前記第2の外輪軌道面および前記第2の内輪軌道面上を転動可能な第2列のボールとを形成し、前記第1列のボールは直径DC1を有し、前記第1列のボールの中心を含む第1のピッチ面は、前記第2列のボールの中心を含む第2のピッチ面からゼロでない距離Lを空けて配置されている、ボールとを備えた回転アセンブリが提案される。
【0008】
本発明によれば、第2の内輪部は、回転軸に垂直な断面平面において、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に位置し、第1のピッチ面から測定距離DMだけ離れて測定したときに、所定の閾値VSよりも大きい外径(Φ)を有する。ここで、以下の式が成り立つ。
【数1】
【0009】
これらの寸法特性は、第2の内輪軌道面を支持する第2の内輪部が第1の軌道面の近くにあり、第1の軌道面の近くでかなりの厚さを有することを反映しており、内方サブアセンブリに高い剛性を与え、回転アセンブリに軸方向における十分なコンパクト性を与えている。
【0010】
好ましくは、第2の内輪部は、第1のピッチ面に向かって軸方向に対向し、第1の内輪部の軸受面に対して軸方向に支持する軸方向端面を備える。軸方向端面は、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に位置する横断面において、第1のピッチ面から距離D、好ましくは第1列のボールの直径DC1の半分より小さい距離の地点に配置される。好ましくは、軸方向端面は平面状である。軸方向端面は、好ましくは、軸受面の直径と等しいか実質的に等しい外径を有する。軸方向端面の外径は、好ましくは、軌道面底部径DI1以上である。実際には、軸方向端面の外径は、閾値VS以下である。回転軸を含む平面での断面において、軸方向端面と断面平面PCとの間に位置する部分における第2の内輪部の外周面は凹状であり、この第2の内輪部の外周面の流動点(current point)から回転軸までの距離は、流動点が軸方向端面から離れて断面平面PCに近づくと連続的に増加する。
【0011】
アセンブリの取付け中または使用中の第1列のボールの位置決めを良好に行うために、第1の一体型軸受保持器が設けられることが好ましく、第1の一体型軸受保持器は、第1の軸受保持器の基準軸を規定する円筒部と、第1列のボールのハウジング用ポケット(cell)を区切るためにポケットの外周部に配置された爪(retaining claws)とを備える。
【0012】
第2の内輪部は、第1の軌道面近傍における空間を占めており、保持器の円筒部が第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に位置する保持器を収容するためのスペースがほとんどない。したがって、好ましくは、円筒部は、第2のピッチ面と対向する第1のピッチ面の片側に配置され、爪は、第1のピッチ面を横断して第2のピッチ面の方向へ円筒部から突出しており、爪は自由遠位端を有し、ポケットはそれぞれ、第1の一体型保持器の爪のうち隣接する2つの爪と、隣接する2つの爪を結ぶ円筒部の一部によって区切られる。そして、第1の保持器は、第2の内輪部に近い第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に位置する円筒部を有しない。第2の内輪部のために、より多くのスペースを割り当てて、軸方向端面と断面平面PCとの間の領域においてその外径を大きくすることができる。
【0013】
好ましくは、ポケットは包囲型であり、爪は、組み立て中にボールが逃げるのを防ぐためにボールを包囲する。一実施形態によれば、各ポケットについて、隣接する2つの爪はそれぞれ、ポケットに収容されたボールに面する凹状のガイド面を有し、ガイド面は、好ましくは、第1列のボールの中心を通り、回転軸を中心とする第1のピッチ円を底面とする第1のピッチ円柱の内部に少なくとも部分的に位置し、好ましくは、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に少なくとも部分的に存在する。好ましくは、隣接する2つの爪を接続する円筒部は、ポケット内に収容されたボールに面するガイド端面を含み、ガイド端面は、好ましくは、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱の半径方向外側に位置する。
【0014】
第1の変形例によれば、第1の軸受保持器は、円筒部の外周に配置された追加の爪をさらに備え、各追加の爪は、1つの爪に関連し、関連する爪74の半径方向外側かつ反対側に位置する自由遠位端86を有する。好ましくは、各ポケットについて、隣接する2つの爪に関連する2つの追加の爪は、それぞれ、ポケット内に収容されたボールに面する追加の凹状のガイド面を含み、追加のガイド面は、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱の外側で、少なくとも部分的に第1のピッチ面と第2のピッチ面の間に配置されている。
【0015】
第2の変形例によれば、ポケットのそれぞれについて、隣接する2つの爪はそれぞれ、ポケット内に収容されたボールに面する追加の凹状のガイド面を含み、追加のガイド面は、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱の外側で、少なくとも部分的に第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に配置されている。
【0016】
組立ラインにおいて、駆動輪アセンブリを取り付ける前に、保持器を積み重ねて保管するための手段を提供することが有益である。この目的のために、第1の軸受保持器の円筒部が、爪から離れて軸方向に面する平面環状積層面と、第1の軸受保持器の基準軸に関して回転対称のセンタリング軸受とを有し、第1の軸受保持器が、環状積層面から軸方向に離れて面する平面(planar facet)であって、平面環状積層面を含む積層面において直交投影で見た平面環状積層面と重なる平面を含み、積層面において直交投影で見てセンタリング軸受と向き合うように半径方向に反転したセンタリング面をさらに備え、センタリング面およびセンタリング軸受が環状積層面に面しているように規定することが可能である。このため、保持器が互いに接着してしまうおそれがなく、中心を維持したまま積み重ねることができる。
【0017】
アセンブリの取付け時または使用時に第2列のボールの位置決めを良好に行うために、第2の一体型軸受保持器は、第2の軸受保持器の基準軸を規定する円筒部と、第2列のボールを収容するためのポケットを区切るために第2の軸受保持器の円筒部の外周に分布する爪とを備えることが好ましい。
【0018】
第2の内輪部と外輪部は、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間および第2の軌道面近傍の空間を占めており、保持器の円筒部が第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に位置する保持器を収容するためのスペースがほとんどない。したがって、好ましくは、第2の軸受保持器の円筒部が、第1のピッチ面とは反対側の第2のピッチ面側に配置され、第2の軸受保持器の爪が、第2のピッチ面を横断して第1のピッチ面に向かって第2の軸受保持器の円筒部から突出し、第2の軸受保持器の爪が自由遠位端を有し、各ポケットが第2の軸受保持器の爪のうち隣接する2つの爪と隣接する2つの爪を結ぶ円筒部の一部によって区切られるように規定することができる。そして、第2の保持器は、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に位置する円筒部を有さない。このため、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間において、第2の内輪部の外径を大きくするとともに、外輪部の内径を小さくするためのスペースを確保することができる。
【0019】
特に有利な実施形態によれば、第1のボール列を構成するボールのボール径DC1は、第2のボール列を構成するボールのボール径DC2以下である。第2列のボールの直径が大きくなることにより、2列のボールの間の距離を小さくすることが可能となり、第2の内輪部における屈曲が制限され、したがって、内方サブアセンブリの部品が分離する危険性が抑えられる。外輪軌道面は、軌道面の軸方向両端部の間の軸方向中間位置に位置する軌道面底部を各々有するという意味で、軸方向において包囲されていることが好ましい。
【0020】
一実施形態によれば、第2の内輪部は、第1の内輪部の焼き嵌め軸受に焼き嵌められる。あるいは、第1の内輪部と第2の内輪部を、共通の中実または中空部品に焼き嵌めることができる。
【0021】
第2の内輪部は、好ましくは、例えば鋼から作られた中実金属部品である。同様に、第1の内輪部は、好ましくは、例えば鋼から作られた中実金属部品である。
【0022】
上述したような回転アセンブリは、車両の車輪、特に駆動輪を案内するために特に適している。一実施形態によれば、外方サブアセンブリは、モータ付き車両の駆動輪を案内する固定サブアセンブリを構成し、内方サブアセンブリは、固定サブアセンブリに対して回転軸を中心に回転可能な、モータ付き車両の駆動輪を案内する回転サブアセンブリを構成し、回転サブアセンブリは、ホイールリムまたはブレーキディスクを取り付けるための取付け面を有するフランジからなるホイールハブを備える。前記取付けフランジは、前記ホイールリムまたは前記ブレーキディスクの分解方向における軸方向に面する前記ホイールリムまたは前記ブレーキディスクの取付け面を形成し、前記分解方向は前記回転軸に平行であり、前記第1の内輪部は、前記ホイールハブによって構成されるか、または前記ホイールハブに焼き嵌められ、前記第2の内輪部は前記ホイールハブの焼き嵌め軸受に焼き嵌められる。
【0023】
第1の軌道面および第1のボール列は、アセンブリが車両に組み込まれたときに、第2の軌道面および第2のボール列よりも車両の長手方向中央の垂直面から離れるように意図されている。
【0024】
一実施形態によれば、回転サブアセンブリは、トランスミッションボウルをさらに備え、内輪部は、少なくとも回転軸に対して半径方向に延びる環状接触面でトランスミッションボウルを支持する。好ましくは、環状接触面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に配置され、これは、回転アセンブリのコンパクト性に大きく寄与する。
【0025】
第2の内輪部は特定の形状を有しており、これにより、第2の内輪軌道面を第1の内輪軌道面の半径方向外側に配置することが可能となり、内輪部によって形成される凹部に環状軸受面を含むトランスミッションボウルの一部を収容することが可能となる。
【0026】
好ましくは、ホイールハブは金属製の中実一体型部品であり、アセンブリの剛性を高めることに寄与する。あるいは、ハブは、例えば、鋼/アルミニウムまたは鋼/複合材料の組み合わせのような、中実一体型の複数材料からなる部品とすることもできる。
【0027】
適切な場合、回転サブアセンブリは、取付け面上のブレーキディスク軸受、ブレーキディスク上のホイールリム軸受、およびホイールリムとブレーキディスクを取付けフランジに取り付けるための構成要素をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図を参照しながら、以下の開示内容を読むことで明らかになるであろう。
図1】本発明の第1の実施形態に係るモータ付き車両の駆動輪を案内するための回転アセンブリを示す縦断面図である。
図2図1の回転アセンブリの軸受保持器のアイソメ図である。
図3図2の保持器と同様の2つの軸受保持器を、一方が図1のアセンブリに取り付けられる前に互いに積み重ねた状態を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るモータ付き車両の駆動輪を案内するための回転アセンブリを示す縦断面図である。
図5図1または図4による回転アセンブリのための、図2の軸受保持器の変形例のアイソメ図である。
図6図5の保持器と同様の2つの軸受保持器を、一方が図1または図4のアセンブリに取り付けられる前に互いに積み重ねた状態を示す図である。
図7図1または図4による回転アセンブリのための、図2の軸受保持器の変形例のアイソメ図である。
図8図7の保持器と同様の2つの軸受保持器を、一方が図1または図4のアセンブリに取り付けられる前に互いに積み重ねた状態を示す図である。
図9図1または図4による回転アセンブリのための、図2の軸受保持器の変形例のアイソメ図である。
図10図9の保持器と同様の2つの軸受保持器を、一方が図1または図4のアセンブリに取り付けられる前に互いに積み重ねた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
より明確にするために、すべての図において、同一または類似の要素には同一の参照符号が付されている。
【0030】
図1は、モータ付き車両の駆動輪10を案内するための回転アセンブリを示し、モータ付き車両の懸架部材(図示せず)に固定されることを意図し、回転軸100を規定する固定外方サブアセンブリ12と、固定外方サブアセンブリ12の内部で回転軸100を中心に回転可能な内方回転サブアセンブリ14と、回転サブアセンブリ14と固定サブアセンブリ12との間のボール16、18とを含む。
【0031】
ここでの固定外方サブアセンブリ12は、回転軸100を規定する同軸の第1の外輪軌道面22および第2の外輪軌道面24が形成されている一体型固体金属製外輪部20によって構成されている。外輪部は、半径方向外側に延びる少なくとも1つの取付クランプ26をさらに備え、この取付クランプ26を、取付要素(図示せず)を介して、懸架部材に取り付けるための穴(この図には示されていない)が形成される。
【0032】
内方回転サブアセンブリ14は、ホイールハブ30、トランスミッションボウル32、任意の第1の内輪部34および第2の内輪部36から構成される。
【0033】
ホイールハブ30は、ホイールリム40とブレーキディスク41とを取り付けるためのフランジ38からなる、一体型の金属部品である。フランジ38は、ブレーキディスク41を支持する面42を有し、リム40及びブレーキディスク41の取付要素143の挿入を可能にする取付穴43を備えている。
【0034】
ホイールハブ30はまた、平面軸受面42に対して軸方向に、ホイールリム40およびブレーキディスク41の分解方向200に突出するセンタリングスカート44を有し、ホイールリム40をセンタリングするための第1の円筒部分と、組立中にブレーキディスク41をセンタリングするための同径またはそれ以上の第2の円筒部分からなる半径方向外側に向くセンタリング軸受45(好ましくは段付き)を備えている。センタリング軸受45は、必ずしも組立後にリム40およびブレーキディスク41に接触したままであることを意図していない。
【0035】
トランスミッションボウル32は、中実の一体型金属部品であり、突出端部分46と、等速ジョイントの空間50を区画するフレア状の中間部48とを有している。トランスミッションボウル32の突出部46は、好ましくはスプライン加工され、ホイールハブ30のスプライン加工された管状空間47にフリーに取り付けられ、嵌合または焼き嵌められて、スプライン接触面を形成している。さらに、図1は、トランスミッションボウル32とホイールハブ30を取り付けるための手段を示し、これは例えば、突出部46のねじ端190にねじ込まれ、ホイールハブ30の肩部84を支持するナット188を実装している。
【0036】
第1の内輪部34は、ホイールハブ30の円筒状の焼き嵌め軸受52に焼き嵌められ、ホイールハブ30に形成された環状の肩部54に対して軸方向に支持している。第1の外輪軌道面22に面する第1の内輪部34には、第1の内輪軌道面56が形成されている。
【0037】
第2の内輪部36も、ホイールハブ30の円筒状の焼き嵌め軸受52に焼き嵌められており、横方向端面57が第1の内輪部34の横方向面59に対して軸方向に支持されている。第2の内輪部36は、環状の当接面58、ここでは円錐台形状であるが、平坦であってもよく、第1の内輪軌道面56から軸方向に離れて向き、トランスミッションボウル32に形成された環状の軸受面60を支持するように、ホイールハブ30に対して軸方向に突出した面を有する。第2の内輪軌道面62は、第2の外輪軌道面24に対向する第2の内輪部36に形成されている。ボール16,18は、一方では、第1の外輪軌道面22および第1の内輪軌道面56上を転動する第1のボール列16を形成し、他方では、第2の外輪軌道面24および第2の内輪軌道面62上を転動する第2のボール列18を形成している。
【0038】
残りの説明では、アセンブリにおける顕著な寸法特性に焦点を当てるが、これにはいくつかの予備的定義が必要である。したがって、以下のように定義する。
-PP1:基準寸法を有する第1列のボール16の中心の軌跡を構成するピッチ円が位置するピッチ面である。
-PP2:基準寸法を有する第2列のボール18の中心の軌跡を構成するピッチ円が位置するピッチ面である。
-DP1:第1列のボール16のピッチ円の直径である。
-DP2:第2列のボール18のピッチ円の直径である。
-CP1:回転軸100を中心とし、第1列のボール16のピッチ円を底辺とするピッチ円柱である。
-DC1:第1列のボール16の直径である。
-DC2:第2列のボール18の直径である。
-DI1:第1の内輪軌道面56の軌道面底部径であり、内輪軌道面56の最小径として定義される。
-DI2:第2の内輪軌道面62の軌道面底部径であり、内輪軌道面62の最小径として定義される。
-DE1:第1の外輪軌道面22の軌道面底部径であり、外輪軌道面22の最大径として定義される。
-PB:回転軸100に垂直で、第2の内輪部36の軸方向端面57に接する面である。
-D:平面PBと第1のピッチ面PP1との間の距離である。
【0039】
第1のピッチ面PP1は、第2のピッチ面PP2からの距離がゼロでない距離Lに位置している。注目すべきは、第2の内輪軌道面62の軌道面底部径DI2が、第1の内輪軌道面56の軌道面底部径DI1よりも大きく、好ましくは、第1の外輪軌道面22の軌道面底部径DE1よりも大きくなっていることである。そのため、第2の内輪部36は、軸方向端面57から分解方向と反対方向に広がるフレア形状を有しており、これにより、第2の内輪部36の内部にトランスミッションボウル32の一部を収容することが可能である。第2の内輪部36は、外輪部20とトランスミッションボウル32との間の、概ね円錐台形の輪郭の窮屈な空間に収容される。第2の内輪部36に高い剛性を与えるために、回転軸100に対して半径方向に測定される内輪部36の外径が、軸方向端面57から離れるに従って急速に増加するように規定されている。
【0040】
この直径の増大は、回転軸100に垂直で、第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置する断面平面PCにおいて、第2の内輪部36の外径Φを、以下のような第1のピッチ面PP1からの測定距離DMだけ離れて測定することによって特徴付けることができる。
【数2】
【0041】
特徴的には、外径Φは、第1の内輪軌道面56の軌道面底部径DI1の110%と、第1の内輪軌道面56の軌道面底部径DI1と第1列のボール16の半径との和にそれぞれ対応する2つの値のうち大きい方に等しい閾値VSよりも大きくなっている。
【数3】
【0042】
軸方向端面57と環状軸受面59との間の接触面が位置する平面PBは、好ましくは、第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に、第1のピッチ面PP1から、好ましくは、第1列のボール16の直径DC1の半分よりも小さい距離Dに配置される。この位置決めは、アセンブリ10の相当な軸方向のコンパクト性と優れた剛性に寄与する。
【0043】
第1列のボール16は、第1の内輪軌道面と第1の外輪軌道面との間の空間において、図2に詳細に示される第1の一体型軸受保持器70によって案内され、第1の保持器70の基準軸300を規定する円筒部72と、円筒部72の周辺に配置されて第1列のボール16を収容するためのポケット76を区切る爪74とから構成される。第1の軸受保持器70の基準軸300は、回転アセンブリ10が基準位置にあるとき、回転軸100と一致するように意図されている。
【0044】
第1の内輪軌道面56の近傍で第2の内輪部36の外径が急速に増大することにより、第1の軸受保持器70を配置するための体積が減少する。第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置する空間において第2の内輪部36のために利用可能な体積を最大化するために、第1の軸受保持器の円筒部72が第2のピッチ面PP2と反対の第1のピッチ面PP1側に配置されるように規定することが有効に行われる。爪74は、円筒部から第1のピッチ面PP1を横断する第2のピッチ面PP2に向かって延びている。したがって、第1の保持器は、第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置する円筒部を有さないので、爪74は、自由遠位端78を有する。各ポケット76は、第1の軸受保持器70の爪のうち隣接する2つの爪74と、隣接する2つの爪74を接続する円筒部72の一部とによって区切られる。
【0045】
各ポケット76について、隣接する2つの爪74は、ポケット76に収容されたボール16に対向する凹状のガイド面80をそれぞれ構成し、隣接する2つの爪74をつなぐ円筒部721は、ポケット内に収容されたボール16に対向する端部ガイド面82を構成している。端部ガイド面82は、基部が第1列のボール16のピッチ円であり、回転軸100を中心とする第1のピッチ円柱CP1の外側に少なくとも部分的に径方向に配置されている。ガイド面80は、少なくとも一部が第1のピッチ円柱CP1の内側に位置し、少なくとも一部が第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置している。
【0046】
この実施形態では、第1の軸受保持器70は、円筒部72の外周に配置された追加の爪84をさらに備え、各追加の爪84は、1つの爪74に関連し、関連する爪74の半径方向外側かつ反対側に位置する自由遠位端86を有する。各ポケットについて、隣接する2つの爪74に関連する2つの追加の爪84は、それぞれ、ポケット76内に収容されたボール16に面する追加の凹状のガイド面88を含み、追加のガイド面88は、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱CP1の外側で、少なくとも部分的に第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2の間に配置されている。このようにして、ボール16をポケット内に挿入することができず、爪74若しくは追加の爪84、または爪74ならびに追加の爪84を同時に弾性変形させることによってのみ、保持器から取り出すことができるように、包囲保持器70が製造される。したがって、組立時にボールを紛失するおそれがない。
【0047】
第1の軸受保持器70の円筒部72は、爪74から離れて軸方向に面する平面環状積層面722と、第1の軸受保持器70の基準軸300を中心とする回転対称のセンタリング軸受724とから構成されている。追加の爪84の自由端86は、平面環状積層面722から軸方向に離れて向き、平面環状積層面722を含む積層面に直交投影して見た状態で重なる。爪74は、順に、センタリング軸受724と、半径方向に離れる方向に向いたセンタリング面742とを含んでおり、これにより、積層面に直交投影して見た状態で、センタリング面742はセンタリング軸受724に面する。したがって、図3および図6に示されるように、第1の一体型軸受保持器70と同一の2つの軸受保持器が回転アセンブリ10に取り付けられる前に互いに積み重ねられると、軸受保持器70の追加の爪84の自由端86が隣接する軸受保持器70の環状積層面722に突き当たり、他方でセンタリング面742がセンタリング軸受724と対向し、これにより2つの軸受保持器70の制御された相対位置関係が確保されてそれらが密接に絡み合うことが防止される。
【0048】
第2列のボール18は、第2の内輪軌道面62と第2の外輪軌道面24との間の空間において、第2の保持器の基準軸を規定する円筒部92と、円筒部92の外周に配置されて第2列のボール18を収容するためのポケットを区画する爪94とを備える第2の一体型軸受保持器90によって案内される。
【0049】
第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置する空間において、第2の内輪部36および外輪部20が利用できる体積を最大化するために、円筒部92は、第1のピッチ面PP1と反対側の第2のピッチ面PP2の側面に配置されることが好ましい。爪94は、第2のピッチ面PP2を横断しながら、円筒部から第1のピッチ面PP1に向かって突出している。爪94は、自由遠位端98を有し、各ポケットは、第2の軸受保持器90の爪のうち隣接する2つの爪94と、隣接する2つの爪94を接続する円筒部92の一部によって区切られる。第2の軸受保持器90はさらに、第1の軸受保持器70と本質的に同じ構成を有し、当然、ボール18の直径およびの第2列のボール18のピッチ径に適合された寸法を有している。
【0050】
外輪部20に形成された外輪軌道面22,24は、それぞれ対応する軌道面22,24の軸方向両端の間の中間位置に位置する軌道面底部64,66を有するという意味で、軸方向に包囲されている。
【0051】
本実施形態では、第1のボール列16を形成するボールの直径DC1は、好ましくは第2のボール列18を形成するボールの直径DC2以下である。第1列のボール16について比較的小さな直径を選択することにより、第1列のボール16に近いホイールハブ30の焼き嵌め領域において、第2の内輪部36の軸方向の厚さを十分に保持し、ピッチ面PP1およびPP2を一緒にすることが可能となる。第2列のボール18について大きな直径を選択することにより、2つのピッチ面PP1、PP2の間の距離を比較的小さく保ちながら、良好な耐荷重性を確保することが可能となる。
【0052】
図4の実施形態が図1のものと異なるのは、第1の内輪軌道面56がホイールハブ30に直接形成されている点、すなわち、第1の内輪部34を構成し、焼き嵌め軸受52と肩部159を有する点である。したって、第2の内輪部36は、焼き嵌め軸受52に焼き嵌められ、ホイールハブ30の肩部159に対して、またトランスミッションボウル32の環状軸受面60に対して軸方向に支持される。
【0053】
図5から図6は、図1または図4のモータ付き車両10の駆動輪を案内するための回転アセンブリを備えることを意図した、第1の軸受保持器70の変形例を示している。図5および図6の第1の軸受保持器70は、特に、軸受保持器70の円筒部72の軸方向端部に対して後方にある第1の積層面722の位置決めと、追加の爪84に形成される位置決めおよびセンタリング面742により、前述の変形例と異なる。図6は特に、回転アセンブリ10の組立ライン上で第1の軸受保持器70を互いに積み重ねることを可能にするために、センタリング面742とセンタリング軸受724との間、および追加の爪84の自由端86と環状積層面722との間の組み合わせを示している。
【0054】
図7から図8は、図1または図4のモータ付き車両の駆動輪を案内するための回転アセンブリ10を備えることを意図した、第1の軸受保持器70の他の変形例を示す。図7および図8の第1軸受保持器70は、1組の爪74のみからなり、追加の爪がない点で従来のものと異なっている。爪74は、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱CP1の内部に、かつ少なくとも部分的に第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置するように意図されたガイド面80と、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱CP1の外部に、かつ少なくとも部分的に第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置するように意図された追加のガイド面88とを有している。ボール16をポケット内に挿入できず、爪74を弾性的に変形させることによってのみポケットから取り出すことができるという意味により、包囲保持器70は製造される。図5図8の実施形態では、ボール16は、半径方向成分がゼロであるか、または基準軸300に向かう半径方向成分、のいずれかを有する動作により、第1包囲保持器70に取り付けられる。
【0055】
図9から図10は、図1または図4のモータ付き車両を案内するための回転アセンブリ10を備えることを意図した、第1の軸受保持器70の他の変形例を示す。図9および図10の第1軸受保持器70は、1組のフック形状の爪74のみからなり、追加の爪がない点で従来のものと異なっている。爪74は、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱CP1の内部に、かつ少なくとも部分的に第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置することを意図したガイド面80と、少なくとも部分的に第1のピッチ円柱CP1の外部に、かつ少なくとも部分的に第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間に位置することを意図した追加のガイド面88とを備えている。ボール16をポケット内に挿入することができず、爪74を弾性的に変形させることによってのみポケットから取り出すことができるという意味により、包囲保持器70は製造される。第1の包囲保持器70の本実施形態は、ボール16が、包囲保持器70の内側から外側に向かう半径方向成分を有する動作により包囲保持器70に取り付けられる点においても、前述の保持器と異なっている。
【0056】
すべての実施形態において、第2の軸受保持器90が第1の軸受保持器70と同様であってもよい。
【0057】
あるいは、2列のボール16,18が同じ直径を有していてもよい。
【0058】
変形例として、車両の懸架要素への取付けクランプを形成する一以上の部品のクランプ26と、このクランプ内で焼き嵌められた2つの同軸の外輪部とを備えた、複数の部品からなる固定サブアセンブリを提供することが可能である。
【0059】
本明細書、図面および添付の特許請求の範囲から当業者にとって明らかになったすべての構成は、たとえ具体的に他の決定された構成との関連においてのみ記載されていたとしても、個別にも任意に組み合わせても、ここに開示された他の構成または構成群と組み合わせることができることが強調される。ただし、そのことが明確に除外されていないか、技術事情によってその組み合わせが不可能または意味をなさないとされていないことが条件となる。
【0060】
本願の明細書の本文を通じて、「固定サブアセンブリ」は、可動サブアセンブリの回転のための固定座標系を構成するサブアセンブリを指すために使用されてきた。当業者であれば、車体と固定サブアセンブリとの間に介在する懸架装置の形状に応じて、このサブアセンブリ自体が車体に対して相対的に移動することが要求されることを理解したであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】