(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】VEGF二量体分子およびVEGF二量体分子を含むカラム、並びにそれらに関連する使用、調製方法、および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 17/04 20060101AFI20230630BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20230630BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230630BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230630BHJP
C12N 1/11 20060101ALI20230630BHJP
C12N 1/13 20060101ALI20230630BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230630BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230630BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230630BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230630BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20230630BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230630BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C07K17/04
C07K14/71 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N1/11
C12N1/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K1/16
C12M1/00 A
C12P21/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556549
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2021057019
(87)【国際公開番号】W WO2021185996
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510086316
【氏名又は名称】ケルン大学
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZU KOELN
【住所又は居所原語表記】Albertus-Magnus-Platz 50923 Koeln Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハグマン、ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ベンツィング、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シルマー、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、マーサ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB15
4B029CC01
4B029FA15
4B064AG20
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA03
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA60
4H045AA10
4H045BA09
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)二量体分子を含むカラム、そのようなカラムの調製方法、VEGF二量体分子、VEGF二量体をコードする発現ベクターおよび組換え宿主細胞、並びにそれらに関連する使用および方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一血管内皮増殖因子(VEGF)分子と第二VEGF分子を含むVEGF二量体分子を含むカラム。
【請求項2】
第一および第二VEGF分子を含むVEGF二量体分子であって、前記第一および/または前記第二VEGF分子が122~250のアミノ酸長を有するVEGF二量体分子。
【請求項3】
前記VEGF二量体分子が真核細胞によって発現されることを特徴とする、請求項1に記載のカラムまたは請求項2に記載のVEGF二量体分子。
【請求項4】
前記第一および前記第二VEGF分子が同一であることを特徴とする、請求項1または3のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~3に記載のVEGF二量体分子。
【請求項5】
前記第一および/または前記第二VEGF分子がN末端シグナルペプチドを欠くことを特徴とする、請求項1または3~4のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~4のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子。
【請求項6】
前記第一および/または前記第二VEGF分子が122~250アミノ酸、好ましくは125~225アミノ酸、より好ましくは140~200アミノ酸、さらに好ましくは150~180アミノ酸、特により好ましくは160~170アミノ酸、最も好ましくは165アミノ酸長を有することを特徴とする、請求項1または3~5のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~5のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子。
【請求項7】
前記第一VEGF分子が配列番号:3と比較して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、好ましくは配列番号:3と比較して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは配列番号:3と比較して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、最も好ましくは配列番号:3と比較して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するか、および/または、前記第二VEGF分子が配列番号:4と比較して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、好ましくは配列番号:4と比較して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは配列番号:4と比較して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、最も好ましくは配列番号:4と比較して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有することを特徴とする、請求項1または3~6のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~6のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子。
【請求項8】
前記第一および前記第二VEGF分子がリンカーによって連結されることを特徴とする、請求項1または3~7のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~7のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子。
【請求項9】
前記リンカーが、10~30アミノ酸長、好ましくは11~25アミノ酸長、より好ましくは12~20アミノ酸長、特により好ましくは13~17アミノ酸長、最も好ましくは14アミノ酸長を有する、請求項8に記載のカラムまたは請求項8に記載のVEGF二量体分子。
【請求項10】
前記VEGF二量体分子が共有結合によってマトリックスに固定化されることを特徴とする、請求項1または3~9のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~9のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子。
【請求項11】
請求項1または3~10のいずれか一項に記載のカラムの調製方法であって、
a)第一血管内皮増殖因子(VEGF)分子と第二VEGF分子を含むVEGF二量体分子を真核生物発現によって調製する工程と、
b)工程a)の前記二量体をマトリックスに固定化する工程を含む方法。
【請求項12】
工程b)において、前記VEGF二量体分子が共有結合によって前記マトリックスに固定化されることを特徴とする、請求項11に記載のカラム調製方法。
【請求項13】
前記VEGF二量体分子がアフェレーシス用カラムに結合されることを特徴とする子癇前症の治療に用いるための請求項2~10のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子。
【請求項14】
請求項2~10のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子をコードする核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項2~10のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子を含み、請求項15に記載の発現ベクターを含み、および/または、請求項2~10のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子をコードする核酸配列を含む組換え宿主細胞株。
【請求項16】
血液からsFlt-1を分離するかおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための方法であって、請求項1または3~9のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~9のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子を血液とインキュベートし、前記血液からsFlt-1を分離することおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを前記血液中に放出させることを含む、方法。
【請求項17】
血液からsFlt-1を分離するため、および/または、sFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための、請求項1または3~9のいずれか一項に記載のカラムまたは請求項2~9のいずれか一項に記載のVEGF二量体分子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)二量体分子を含むカラム、そのようなカラムの調製方法、VEGF二量体分子、VEGF二量体コード化発現ベクターおよび組換え宿主細胞、並びにそれらに関連する使用および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーは、血小板由来増殖因子ファミリーのシスチンノット増殖因子と呼ばれる増殖因子サブファミリーである。VEGFファミリーのメンバーには、VEGF-A(しばしばVEGFと呼ばれる)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、および胎盤増殖因子(PlGF)がある。VEGFファミリーメンバーは通常、細胞のVEGF受容体チロシンキナーゼVEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3のうち少なくとも1つと相互作用するリガンドとして機能する。これにより、VEGFファミリーメンバーは血管系形成(胚の循環器系がde novoで形成されることによる胚での血管の形成)や血管新生(既存の血管から血管が形成されること)などの血管の形成に関わる重要なシグナル伝達タンパク質として働いている可能性がある。VEGFファミリーメンバーとそのVEGFレセプターの相互作用レベルの欠陥は、妊婦の子癇前症などの重篤な疾病を引き起こす場合がある。
【0003】
子癇前症は、妊娠20週目以降の妊婦の4~8%が罹患する、生命を脅かす可能性のある多臓器疾患である(Sibai、1998年;Redman、2005年;Walker、2000年)(非特許文献1~3)。詳しくは、子癇前症は通常、新たに発症した高血圧と、尿中のタンパク質の減少(タンパク尿)で示される別の臓器系(最も一般的なのは腎臓)の障害と定義される。この状態は、生命を脅かす全身性内皮機能不全や発作、脳卒中、多臓器不全を伴う血栓性微小血管症(子癇やHELLP症候群(Hemolysis Elevated Liver enzymes Low Platelets)とも呼ばれる)に進行する。
【0004】
子癇前症の病態生理の機構は、母体循環系における血管新生因子と抗血管新生因子のアンバランスであるとされている。現在の知見によると、胎盤虚血では、VEGF受容体1(VEGFR-1)の可溶性スプライス変異体であるsFlt-1の発現と(おそらく絨毛細胞から放出される(Maynardら、2003年)(非特許文献4))全身への放出が増加する。sFlt-1が強力なVEGFと胎盤増殖因子(PlGF)拮抗薬として作用するのは、これらの分子を除去・中和することによる。その結果、内皮の栄養シグナルが絶え間なく失われ、高血圧やタンパク尿を伴う全身性の内皮機能不全を引き起こす。これらは疾患の第一の特徴的な症状であって、母体やその結果としてその胎児にも深刻な影響を与える。
【0005】
子癇前症患者では、sFlt-1の上昇と循環PlGF血漿濃度の低下が、差し迫った疾患の強力な予測マーカーとしてますます進展し、症状発現の最大5週間前に検出可能である(Levineら、2004年)(非特許文献5)。
【0006】
今のところ、体外式アフェレーシス(デキストラン硫酸、H.E.L.P.)や、血漿分離に関する臨床試験第二相の小規模フィージビリティ・パイロットスタディがあるだけである。重篤な子癇前症に対する有効な治療・予防法は、妊娠の早期終了を除き、現在までのところ無い(ACOG、2019年)(非特許文献6)。この点が特に問題であるのは、推定妊娠(EGA)34週以前の早期子癇前症の患者である。この時期では、妊娠の延長が胎児には有益であるが、同時に母体には有害であり、解決できない治療上のジレンマが生じる可能性がある。
【0007】
治療法としては、例えば、VEGF121やPlGFなどの組換えタンパク質の全身投与が挙げられる。その結果、動物モデルでは子癇前症の症状を抑制することができた(Makrisら、2016年;Liら、2007年)(非特許文献7~8)。しかし、VEGFとPlGFの投与には、VEGFの場合は母体に重大な用量依存性の副作用があり、PlGFの場合は半減期が短いため投与経路が制限される(Eddyら、2018年)(非特許文献9)。また、安定化siRNAの投与は、マウスおよびヒヒの子癇前症モデルにおいて、Flt-1 mRNAに影響を与えることなく、sFlt-1の胎盤過剰発現を抑制した(Turanovら、2018年)(非特許文献10)。
【0008】
治療法のさらなる開発には、子癇前症の複雑な病態生理を理解することが不可欠である。マウス実験やヒト胎盤のin situハイブリダイゼーション実験によると、トロフォブラスト由来のsFlt-1は胎盤の血流低下や虚血に応答して放出される母体のVEGFから胎児を保護する(Fanら、2014年)(非特許文献11)。このモデルによれば、胎盤のsFlt-1が母体循環に過剰に流れ込むことは、主として生理的な反応の意図しない過剰を意味する。したがって、sFlt-1の発現を標的とした治療法は、胎盤におけるsFlt-1の生理的機能を損ない、胎児を母体のVEGFレベルの上昇にさらす可能性があるため、注意が必要である(Turanovら、2018年)(非特許文献10)。母体の血流に循環するsFlt-1は、sFlt-1全体の負荷にはほとんど寄与せず、その高い正電荷のために主に細胞外マトリックスに蓄積される。しかし、循環に少ない割合で存在するsFlt-1だけが、内皮機能不全や多臓器疾患を引き起こすようである。胎盤におけるsFlt-1の保護的役割と、循環しているsFlt-1の有害な機能を考慮すると、sFlt-1の体外除去の原理は魅力的である。
【0009】
したがって、組換えタンパク質の全身投与以外に、ヒトの妊娠中にsFlt-1を除去し、子癇前症妊娠の血管新生バランスを回復させる体外戦略が検討されている。sFlt-1の体外アフェレーシスは、主に循環しているsFlt-1を対象とし、再分配後のsFlt-1の組織や胎盤でのレベルには二次的にしか影響を与えない。
【0010】
その一つの方法は、重症初期子癇前症の妊婦でのアフェレーシスにおいて、デキストラン硫酸を用いたイオン交換クロマトグラフィーによる循環sFlt-1の体外吸着である(Thadhaniら、2011年;Thadhaniら、2016年)(非特許文献12~13)。この方法では、正電荷を持つsFlt-1が負電荷を持つデキストラン硫酸マトリックスに非特異的に保持される。しかし、デキストラン硫酸のような電荷依存性のリガンドは非常に非特異的であるため、他のタンパク質を不要に除去してしまう可能性もある。
【0011】
さらに、循環するsFlt-1を体外吸着する方法として、sFlt-1を低減する抗体ベースのアプローチがある(例えば、米国特許出願公開第2010/0247650号明細書(特許文献1))。しかし、複合体化したVEGFとPlGFも同時に除去され、血管新生バランスの回復に関しては介入の効力が低下する。さらにまた、sFlt-1特異的抗体の免疫原性ならびにカラムからの抗体の漏出による副作用も不明である。
【0012】
別の方法では、PlGFなどのリガンドをマトリックスに固定化し、子癇前症に罹患する妊婦でのアフェレーシスに適用する(例えば、米国特許出願公開第2010/0247650号明細書(特許文献1))。これにより、PlGFカラムは受容部位に結合して、sFlt-1を除去する。しかし、PlGFの親和性は低いため、捕獲に利用するPlGF分子は複合体化したVEGFと競合することができない。したがって、PlGFカラムは、遊離sFlt-1または循環するPlGF-sFlt-1複合体からsFlt-1を除去するだけである。PlGFカラムはVEGFと複合体化したsFlt-1を除去せず、VEGFを遊離させない。したがって、この方法はsFlt-1を部分的に除去するだけで、潜在的に競合的なアフェレーシスシステムと比較して、血管新生バランスを回復させることはできない。
【0013】
さらに、単量体切断型VEGFを用いて機能付与した磁気ビーズをアフェレーシスに適用して、sFlt-1を捕獲するアプローチもある(Trapiella-Alfonsoら、2019年)(非特許文献14)。この方法では、細菌で発現させたVEGFの切断体(VEGF95)とビオチン化ビーズを使用した。しかし、この方法はヒトでの適用には実施可能性がない。というのも、リガンドとマトリックスは非共有結合されており、アビジン-ビオチンベースの相互作用による免疫原性が許容できないからである(Jain and Cheng、2017年)(非特許文献15)。また、バクテリアで発現させたVEGF95の適用には、別の制限がある。VEGFの糖鎖修飾はVEGFの結合親和性や活性に影響を与えないことが報告されているが(Claffeyら、1995年;Peretzら、1992年)(非特許文献16~17)、細菌に特異的な翻訳後修飾は免疫原性を悪化させる可能性がある(Kuriakoseら、2016年)(非特許文献18)。さらに、切断型VEGFアイソフォームVEGF95は、受容体結合界面の残基を欠くため、sFlt-1との相互作用が低下している。また、この方法では、VEGF165と複合体化したsFlt-1の除去には至らず、VEGF165の遊離も生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0247650号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Sibai BM. Prevention of preeclampsia: a big disappointment. Am J Obstet Gynecol. 1998;179:1275-1278.
【非特許文献2】Redman CW. Latest Advances in Understanding Preeclampsia. Science. 2005;308:1592-1594.
【非特許文献3】Walker JJ. Pre-eclampsia. Lancet. 2000;356:1260-1265.
【非特許文献4】Maynard SE, Min J-Y, Merchan J, Lim K-H, Li J, Mondal S, Libermann TA, Mor-gan JP, Sellke FW, Stillman IE, Epstein FH, Sukhatme VP, Karumanchi SA. Ex-cess placental soluble fms-like tyrosine kinase 1 (sFlt1) may contribute to endo-thelial dysfunction, hypertension, and proteinuria in preeclampsia. J Clin Invest. 2003;111:649-658.
【非特許文献5】Levine RJ, Maynard SE, Qian C, Lim K-H, England LJ, Yu KF, Schisterman EF, Thadhani R, Sachs BP, Epstein FH, Sibai BM, Sukhatme VP, Karumanchi SA. Circulating angiogenic factors and the risk of preeclampsia. N Engl J Med. 2004;350:672-683.
【非特許文献6】ACOG Practice Bulletin No. 202: Gestational Hypertension and Preeclampsia. Obstetrics & Gynecology. 2019;133:e1-e25.
【非特許文献7】Makris A, Yeung KR, Lim SM, Sunderland N, Heffernan S, Thompson JF, Ili-opoulos J, Killingsworth MC, Yong J, Xu B, Ogle RF, Thadhani R, Karumanchi SA, Hennessy A. Placental Growth Factor Reduces Blood Pressure in a Utero-placental Ischemia Model of Preeclampsia in Nonhuman Primates. Hyperten-sion. 2016;67:1263-1272.
【非特許文献8】Li Z, Zhang Y, Ying Ma J, Kapoun AM, Shao Q, Kerr I, Lam A, O’Young G, Sannajust F, Stathis P, Schreiner G, Karumanchi SA, Protter AA, Pollitt NS. Re-combinant vascular endothelial growth factor 121 attenuates hypertension and improves kidney damage in a rat model of preeclampsia. Hypertension. 2007;50:686-692.
【非特許文献9】Eddy AC, Bidwell III GL, George EM. Pro-angiogenic therapeutics for preeclampsia. Biol Sex Differ. 2018; 9: 36.
【非特許文献10】Turanov AA, Lo A, Hassler MR, Makris A, Ashar-Patel A, Alterman JF, Coles AH, Haraszti RA, Roux L, Godinho BMDC, Echeverria D, Pears S, Iliopoulos J, Shanmugalingam R, Ogle R, Zsengeller ZK, Hennessy A, Karumanchi SA, Moore MJ, Khvorova A. RNAi modulation of placental sFLT1 for the treatment of preeclampsia. Nature Biotechnology. 2018;36:1164-1173.
【非特許文献11】Fan X, Rai A, Kambham N, Sung JF, Singh N, Petitt M, Dhal S, Agrawal R, Sut-ton RE, Druzin ML, Gambhir SS, Ambati BK, Cross JC, Nayak NR. Endometrial VEGF induces placental sFLT1 and leads to pregnancy complications. Journal of Clinical Investigation. 2014;124:4941-4952.
【非特許文献12】Thadhani R, Kisner T, Hagmann H, Bossung V, Noack S, Schaarschmidt W, Jank A, Kribs A, Cornely OA, Kreyssig C, Hemphill L, Rigby AC, Khedkar S, Lindner TH, Mallmann P, Stepan H, Karumanchi SA, Benzing T. Pilot Study of Extracorporeal Removal of Soluble Fms-Like Tyrosine Kinase 1 in Preeclampsia. Circulation. 2011;124:940-950.
【非特許文献13】Thadhani R, Hagmann H, Schaarschmidt W, Roth B, Cingoez T, Karumanchi SA, Wenger J, Lucchesi KJ, Tamez H, Lindner T, Fridman A, Thome U, Kribs A, Danner M, Hamacher S, Mallmann P, Stepan H, Benzing T. Removal of Soluble Fms-Like Tyrosine Kinase-1 by Dextran Sulfate Apheresis in Preeclampsia. J Am Soc Nephrol. 2016;27:903-913.
【非特許文献14】Trapiella-Alfonso L, Alexandre L, Fraichard C, Pons K, Dumas S, Huart L, Gaucher JF, Hebert-Schuster M, Guibourdenche J, Fournier T, Vidal M, Broutin I, Lecomte-Raclet L, Malaquin L, Descroix S, Tsatsaris V, Gagey-Eilstein N, Lecarpentier E. VEGF (Vascular Endothelial Growth Factor) Functionalized Magnetic Beads in a Microfluidic Device to Improve the Angiogenic Balance in Preeclampsia. Hypertension. 2019 Jul;74(1):145-153. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.118.12380. Epub 2019 May 13.
【非特許文献15】Jain A, Cheng K. The principles and applications of avidin-based nanoparticles in drug delivery and diagnosis. Journal of Controlled Release. 2017;245:27-40.
【非特許文献16】Claffey KP, Senger DR, Spiegelman BM. Structural requirements for dimeriza-tion, glycosylation, secretion, and biological function of VPF/VEGF. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Protein Structure and Molecular Enzymology. 1995;1246:1-9.
【非特許文献17】Peretz D, Gitay-Goren H, Safran M, Kimmel N, Gospodarowicz D, Neufeld G. Glycosylation of vascular endothelial growth factor is not required for its mito-genic activity. Biochemical and Biophysical Research Communications. 1992;182:1340-1347.
【非特許文献18】Kuriakose A, Chirmule N, Nair P. Immunogenicity of Biotherapeutics: Causes and Association with Posttranslational Modifications. Journal of Immunology Research. 2016;2016:1-18.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
子癇前症の治療手段を提供する必要がある。特に、ヒトにおいて子癇前症を効率的に治療できるように、患者の血液からsFlt-1を効率的に除去可能とする手段を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
第一血管内皮増殖因子(VEGF)分子と第二VEGF分子を含むVEGF二量体分子を含むカラムが提供される。
【0018】
本発明はさらに、第一および第二VEGF分子を含むVEGF二量体分子に関するものであり、前記第一および/または前記第二VEGF分子は122~250のアミノ酸長を有する。
【0019】
さらにまた、本発明は、本発明のカラムの調製方法であって、
a)第一血管内皮増殖因子(VEGF)分子と第二VEGF分子を含むVEGF二量体分子を真核生物発現によって調製する工程と、
b)工程a)の前記二量体をマトリックスに固定化する工程を含む方法に関する。
【0020】
さらに提供されるのは、VEGF二量体分子がアフェレーシス用カラムに結合されることを特徴とする子癇前症の治療に用いるための本発明のVEGF二量体分子である。
【0021】
本発明はさらに、本発明のVEGF二量体分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0022】
さらにまた、本発明は、本発明のVEGF二量体分子を含むか、本発明の発現ベクターを含むか、および/または本発明のVEGF二量体分子をコードする核酸配列を含む、組換え宿主細胞株に関する。
【0023】
また提供されるのは、血液からsFlt-1を分離するかおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための方法であって、本発明のカラムまたはVEGF二量体分子を血液とインキュベートし、前記血液からsFlt-1を分離することおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを前記血液中に放出させることを含む、方法である。
【0024】
さらに、本発明は、血液からsFlt-1を分離するためおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための、本発明のカラムまたはVEGF二量体分子の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図の説明
【
図1】
図1は、scVEGF
165の分子モデリングとネガティブ染色電子顕微鏡観察を示す。A)scVEGF
165発現プラスミドと分子間ジスルフィド結合で架橋された多量体への潜在的な集合様式を模式的に表したものである。B)2本の単鎖VEGF
165-二量体が四量体VEGFとして集合している様子をバンドとリボンで表現したものである。14アミノ酸のリンカーが赤い球で表されている。C)精製した組換えmoVEGF
165とscVEGF
165の分子構造をネガティブ染色電子顕微鏡観察で可視化した。moVEGF
165分子はダンベル状の二量体構造として現れ、少数の単量体の点がある。scVEGF
165は四量体構造と少数のダンベル状の単一のscVEGF
165分子として出現した。拡大画像では、それぞれの分子の輪郭が自動画像処理によって描かれた。
【
図2】
図2は、sFlt-1捕獲分子の結合特性を示す。A)VEGF-trapを用いた定量的ELISA。吸光度450nmとVEGF-trap濃度の関係を[VEGF-trap]を対数にして半対数スケールでプロットしたもの。この曲線は平衡解離定数(Kd)を定義する。最も低いKdはscVEGF
165のもので、最も強い相互作用があることを示している。各値は、3回実験を繰り返して計算した平均値(n=3)を示す。B)異なるVEGF/PlGF変異体間の結合親和性を比較するために、3つの独立した反復実験から計算されたKd値をまとめた。scVEGF
165は、最も低いKd値、すなわち最も高い結合親和性を再現性よく得ることができる。3つの独立した実験からの平均値とSD(*p<0.02)をプロットした。
【
図3】
図3は、sFlt-1捕獲アフェレーシスカラムの作製と基質マトリックスの評価を示す。A)理想的なアフェレーシスセットアップの同定。等量の組換えmoPlGF、moVEGF
165、またはscVEGF
165をstrepTactin XT、臭化シアノ活性化セファロース、またはアミノ連結アガロース樹脂に結合させた。ヒト血清中濃度1600pg/mlのsFlt-1に対する結合親和性を測定した。フロースルー中のsFlt-1濃度を定量的sFlt-1 ELISAで決定した。3つの結合化タンパク質すべてに関する測定では、アミノ連結アガロース系を用いた場合に最も顕著なsFlt-1除去が見られた。B)scVEGF
165アガロースカラムの長期安定性を評価した。ヒト血清試料からの吸着試験を1、15、30、60、90日で実施した。90日経つと、結合するsFlt-1の減少がわずかに認められただけであった。
【
図4】
図4は、ヒト血清試料を用いたsFlt-1捕獲分子の特徴解析を示す。A)すべての固定化VEGFおよびPlGF変異体とFlt-1特異的抗体(x軸)に関して、アフェレーシス後のサンプル中のsFlt-1濃度(pg/ml)(y軸)を示す。B)すべての固定化VEGFおよびPlGF変異体とFlt-1特異的抗体(x軸)に関して、アフェレーシス後のサンプル中のPlGF濃度(pg/ml)(y軸)を示す。C)すべての固定化VEGFおよびPlGF変異体とFlt-1特異的抗体(x軸)に関して、アフェレーシス後のサンプル中のVEGF濃度(pg/ml)(y軸)を示す。
【
図5】
図5は、scVEGF
165カラムのsFlt-1クリアランスとVEGF/PlGF放出を検証したものである。子癇前症患者10名の血清サンプル(x軸)をscVEGF
165アフェレーシスで処理した。sFlt-1(A)、遊離PlGF(B)、遊離VEGF(C)レベル(y軸)を吸着前後で測定した。
【
図6】
図6は、各種VEGFとPlGF依存性sFlt-1アフェレーシス戦略の特徴を抗体ベースのセットアップと比較したものを示す。Flt-1特異的抗体を用いたアフェレーシスシステムでは、sFlt-1レベルは低下するが、内因性PlGFやVEGFは遊離しない(左端パネル)。PlGF含有吸着カラムはsFlt-1を保持し、低量の内因性PlGFを遊離するが、内因性VEGFは遊離しない。単量体VEGF
165カラムはsFlt-1を捕獲し、PlGFとVEGFも放出する。sFlt-1に対するscVEGF
165の結合特性が向上した結果、sFlt-1を最も効率的に吸着し、PlGFとVEGFを競合的に放出する(右端パネル)。
【
図7】
図7は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)をクーマシー染色して示される組換えタンパク質の精製を示す。ドキシサイクリン処理により発現が誘導された標記タンパク質を発現する安定トランスフェクト細胞の上清のクーマシー染色である。タンパク質を含む最初の培地をインプットと呼ぶことにした。洗浄液だけでなくフロースルーでも組換えタンパク質は検出されなかったが、溶出画分では各タンパク質の明確な精製プロファイルが検出できた。
【
図8】
図8は、アガロースアフェレーシスカラムに固定化されたVEGF/PlGF変異体の安定性を示す。Strepタグ特異的抗体を用いて、血清処理したscVEGF
165カラムのフロースルーから組換えstrepタグ付きタンパク質を沈殿させた。沈殿物はSDS-PAGEとstrep特異的抗体を用いたイムノブロットに供した。血清フロースルーにはstrepタグ付きタンパク質は検出されず、アフェレーシス条件下で組換えタンパク質がカラムから外れることはないことが示された。
【
図9】
図9は、SDS-PAGEに引き続きウェスタンブロットすることによって、組換えsFlt-1、VEGF、PlGF変異体の機能性の評価を示す。上から下への順に、リン酸化されたERK1/2に対する特異的抗体、ERK1/2に対する特異的抗体、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対する特異的抗体の結果を示す。MAP活性化は、リン酸化ERK1/2に対する特異的抗体を用いたイムノブロット分析によって検出した。等量のローディングと細胞コンフルエント度合は、総ERK1/2とGAPDHに対するイムノブロットによって確認した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の第一観点は、第一および第二の血管内皮増殖因子(VEGF)分子を含むVEGF二量体分子を含むカラムに関する。
【0027】
驚くべきことに、実施例の結果、試験したすべての樹脂に結合させた場合、単量体PlGF(moPlGF)または単量体(moVEGF
165)と比較して、scVEGF
165という本発明の切断型(truncated)VEGFの二量体を含むカラムではヒト血清からのsFlt-1の吸着量が有意に高いことが示された。特に、実施例によれば、本発明の二量体(scVEGF
165)をアガロースマトリックスに固定化したカラムを用いて、1回のランで最大86.16%のsFlt-1の減少が達成された(
図3A)。scVEGF
165アガロースカラムの長期安定性を調べると、sFlt-1との結合がわずかに減少したのみであることがさらに分かった(
図3B)。PlGFの放出、したがって血中PlGF濃度の上昇は、本発明の二量体で最も顕著である一方、moVEGF
165を用いたアフェレーシスは、scVEGF
165の場合の半分のPlGFの放出しかもたらさなかった。注目すべきは、sFlt-1と結合していたVEGFの放出は、scVEGF
165で最も顕著であった(
図4)。これは、結合親和性がより高いためsFlt-1に対してscVEGF
165が競合的に結合していることを示唆している。したがって、特に、moPlGFと比較してscPlGFの結合親和性がほぼ等しいという事実を考慮すると、scVEGF
165のVEGF-trapへの結合親和性は、moVEGF
165の結合親和性と比べて予想外に11%高いことが示された(
図2)。
【0028】
一般に、以下に示す実施例の結果から、抗体を介したアフェレーシスや単量体のVEGFまたはPlGFを用いたアプローチと比較して、本発明のVEGF二量体分子を用いたアフェレーシスのユニークな特性は、sFlt-1に対する親和性が向上し、したがってVEGFおよびPlGFを効率的に放出できることだと結論づけることができる(
図6)。
【0029】
要約すると、本発明は、子癇前症を治療するための特異的VEGFベースsFlt-1アフェレーシスシステムであって、生体内で適用可能なものを初めて記述する。VEGF分子のユニークな分子特性を利用することで、sFlt-1を固定化すると同時に、複合体化したVEGFとPlGFを競合的に放出して、子癇前症の患者における血管新生バランスを回復させるための特異性の高いアフェレーシスカラムを作製することが可能になった。VEGF二量体は複雑な高次構造を持ち、受容体結合部位が露出しているため、短いペプチド配列よりも全長のVEGF二量体を使用した方がより親和性が高くなる。
【0030】
アフェレーシスを行うためのカラムは当該技術分野で知られている(Thadhaniら、2011年;Thadhaniら、2016年)。本発明に係る用語「カラム」は、2つの開放端を有する内腔を含む任意のデバイスを表す。例えば、アフェレーシス用カラムの場合、患者からの血液を第一開放端からカラムの内腔に導き、内腔を通過した後、第二開放端から内腔外に導くことを意味する。
【0031】
本発明のカラムは、通常、クロマトグラフィー分離法のためのマトリックスを担持することができる。好ましくは、本発明のカラムは、血液または血漿のような混合物の成分を分離するのに適している。例えば、カラムは、アフィニティークロマトグラフィーに使用されるようなクロマトグラフィー用カラムであってもよい。
【0032】
カラムはさらに、当業者によってクロマトグラフィーカラムに適していることが知られている任意の素材、例えば、金属、ガラスおよび/またはプラスチック(例えば、ポリカーボネート)で作られていてもよい。一般的には、その素材はアフェレーシスなどの医療用途に適している。さらに、カラムの大きさや容積は問わない。好ましくは、カラムは、アフェレーシスで適用するのに適した容量(例えば、20~300ml)を有する。さらに、本発明のカラムは、当業者にクロマトグラフィー法に適することが知られている任意の形状、例えば、円筒形や管状を有していてもよい。通常、本発明に係るカラムの空洞部には、マトリックスが充填されている。
【0033】
このカラムは、体外療法、例えばアフェレーシスなどの医療方法に適用するのに適しており、人の血液または血漿をカラムに通すことにより、1つまたは複数の特定の成分を分離し、残りの1つまたは複数の成分を循環に戻すことができる。さらに、カラムは、例えば、ガンマ線照射、電子線照射、X線照射などの照射によって滅菌されてもよい。
【0034】
本発明のカラムは、第一および第二の血管内皮増殖因子(VEGF)分子を含むVEGF二量体分子を含む。
【0035】
VEGF分子は当該技術分野で既知である。VEGF二量体分子において本発明に従って構成されるVEGF分子は、その切断型を含む当業者に公知の任意の血管内皮増殖因子タンパク質分子であってもよく、任意の種に由来するものであってもよい。例えば、VEGF分子は、マウス、ラットまたはヒトVEGFのような哺乳類VEGFであってもよい。好ましくは、VEGF分子は、ヒトVEGFである。好ましくは、VEGF分子はVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-DまたはPlGFであり、より好ましくは、VEGF分子はVEGF-A、VEGF-BまたはPlGFであり、さらに好ましくは、VEGF分子はVEGF-AまたはVEGF-Bであり、最も好ましくは、VEGF分子はVEGF-Aである。
【0036】
好ましくは、VEGF分子はヒトVEGF-A、ヒトVEGF-B、ヒトVEGF-C、ヒトVEGF-DまたはヒトPlGFであり、より好ましくは、VEGF分子はヒトVEGF-A、ヒトVEGF-BまたはヒトPlGFであり、さらにより好ましくは、VEGF分子はヒトVEGF-AまたはヒトVEGF-Bであり、最も好ましくは、VEGF分子はヒトVEGF-Aである。
【0037】
本発明の第一の観点のカラムのVEGF二量体に含まれるVEGF分子は、任意の長さであってよい。本発明の第一の観点のカラムのVEGF二量体に含まれるVEGF分子は、全長VEGFであってもよく、好ましくは全長VEGF-Aである。例えば、VEGF分子は、ヒト完全長VEGF-Aの配列(配列番号:1)を含むか、またはその配列からなる場合がある。
【0038】
さらに、VEGF分子は、VEGFの切断型、例えば、VEGF-Aの切断型であってもよい。好ましくは、本発明の第一の観点のカラムのVEGF分子は、ヒトVEGFの切断型、より好ましくはヒトVEGF-Aの切断型、例えば、ヒトVEGF-A121、ヒトVEGF-A138、ヒトVEGF-A145、ヒトVEGF-A162、ヒトVEGF-A165、ヒトVEGF-A165b、ヒトVEGF-A189またはヒトVEGF-A206(ここでは、番号は、天然型ヒトVEGF-Aの配列に基づいてそれぞれのタンパク質におけるタンパク質番号に相当する)であってもよい。
【0039】
特に好ましい実施形態では、VEGF分子は、ヒトVEGF-A165である。
【0040】
切断型VEGF分子は、切断された天然型VEGF分子配列または以下に述べるような付加的な拡張部分のみを含んでもよい。例えば、第一および/または第二のVEGF分子は、122アミノ酸、好ましくは165アミノ酸の長さまでで切断されていてもよい。
【0041】
好ましくは、本発明の第一の観点のカラムのVEGF二量体に含まれる第一のVEGF分子は、N末端ヘリックス(24~35)、β3とβ4をつなぐループ(69~74)およびストランドβ7(111~114)を含み、第二のVEGF分子は連結ターン(79~91)と共にストランドβ2(54~56)およびストランドβ5とβ6由来の残基を含む。その場合、第一および第二のVEGF分子は逆平行方向に二量体化し、それによってVEGF二量体分子を形成する際にsFlt-1結合を担う領域を一緒に含む、すなわちsFlt-1結合部位は両単量体からのそれぞれの残基で構成されていてもよい。
【0042】
また、本発明の第一の観点のカラムで用いられるようなVEGF二量体分子の場合、切断型第一VEGF分子がアミノ酸1~114からなること、すなわちN末端ヘリックス(24-35)、β3とβ4をつなぐループ(69-74)およびストランドβ7(111-114)を含むsFlt-1結合部位を含み、切断型第二VEGF単量体が連結ターン(79-91)と共にストランドβ2(54-56)およびストランドβ5とβ6由来の残基を含むアミノ酸1~91を含む。
【0043】
また、好ましくは、第一および/または第二のVEGF分子は、VEGFアミノ酸残基Asp63、Glu64およびGlu67(番号は天然型ヒトVEGF-Aアミノ酸配列のものに相当)を含む。
【0044】
さらにまた、VEGF分子のアミノ酸配列は、天然型配列であってもよいし、変異していてもよい。VEGF分子は、0、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の変異を含んでいてもよい。変異はVEGF分子のどのアミノ酸にも影響を及ぼす可能性がある。例えば、アミノ酸を変異させて、VEGF分子のsFlt-1への結合親和性を高めることができる。また、変異は、1つまたは複数のアミノ酸を、同じまたは類似の電荷および/またはサイズを有するアミノ酸と置換することからなる場合もある。
【0045】
VEGF分子は、リン酸化、グリコシル化および/またはアセチル化など、当業者に知られている任意の形態の翻訳後修飾を含んでいてもよい。さらにまた、VEGF分子は、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の分子内ジスルフィド結合を含んでいてもよい。
【0046】
さらに、本発明のカラムにおいて、第一および第二のVEGF分子は、血管内皮増殖因子(VEGF)二量体分子の一部である。
【0047】
本発明に係る用語「VEGF二量体分子」は、少なくとも2つのVEGF分子、好ましくは2つのVEGF分子を含む任意の分子を表す。VEGF二量体分子の一部である少なくとも2つのVEGF分子は、イオン結合、共有結合、ファンデルワース力、水素架橋結合、疎水性相互作用および/または静電相互作用によって1、2、3、または4以上のアミノ酸を介して相互作用可能である。
【0048】
好ましくは、VEGF二量体分子の一部である少なくとも2つのVEGF分子は、少なくとも1つの共有結合によって連結されていてもよい。より好ましくは、VEGF二量体分子の一部である少なくとも2つのVEGF分子は、一つの共有結合によって連結されていてもよく、例えば、単鎖分子を形成している場合がある。例えば、第一のVEGF分子と第二のVEGF分子の場合、両方のVEGF分子をコードする核酸配列が1つの核酸配列分子に連結され、両方のVEGF分子を含む1つのアミノ酸分子が発現するようにしてもよい。
【0049】
VEGF二量体分子における第一および第二のVEGF分子は、さらに1、2、3、4またはそれ以上の分子間および/または分子内ジスルフィド結合によって連結されていてもよい。例えば、VEGF二量体分子は、一または複数の分子内ジスルフィド結合によって連結された2つのVEGF分子(例、scVEGF165分子)の開放構造を形成してもよい。
【0050】
あるいは、VEGF分子二量体における第一および第二のVEGF分子は、任意の分子内ジスルフィド結合によって連結されている必要はない。
【0051】
上記の分子内または分子間のジスルフィド架橋のいずれかに関与する任意のアミノ酸、あるいは、直接または立体的に隣接している任意のアミノ酸は、変異していてもよい。
【0052】
VEGF二量体分子を形成するための第一および第二のVEGF分子の二量化は、単一モノマー間の分子間ジスルフィド結合を利用して、逆平行のサイドバイサイド方式で起こり、受容体タンパク質(Flt-1/sFlt-1)との相互作用のための平面を形成する。Flt-1結合部位は、一方のモノマーでは3つのβシート(β3;β4;β7)とN末端ヘリックスの残基を含み、他方のモノマーでは3つの相補的なβシート(β2;β5;β6)の残基を含む場合がある。sFlt-1に対するVEGFの親和性を高めるための変異戦略では、これらの残基のいずれか一つに影響を与える可能性もあるし、それらのいずれにもまったく影響を与えない可能性もある。
【0053】
さらにまた、立体的な効果もVEGFとPlGFの多量体におけるsFlt-1の親和性に影響を与える可能性があり、したがって、1つ以上の変異によって変化する可能性もある。
【0054】
さらにまた、VEGF二量体分子は、VEGF多量体分子(例、VEGF三量体、VEGF四量体、または任意の数のVEGF分子を含むVEGF多量体の任意の形態)の一部であってもよい。したがって、カラムは、VEGF三量体、VEGF四量体または任意の形態のVEGF多量体を含む場合もある。さらに、カラムは、一種類の多量体型のみ(例、VEGF二量体のみ、VEGF三量体のみ、またはVEGF四量体のみ)のVEGF分子を含んでいてもよく、またはカラムは、任意の数のVEGF分子を含む多量体の任意の混合物(例、VEGF二量体、VEGF三量体、VEGF四量体および/またはVEGF多量体の混合物)を含む場合もある。
【0055】
さらにまた、VEGF二量体分子は、VEGF多量体構造の一部であってもよい。例えば、第一のVEGF二量体分子は第二のVEGF二量体分子と(例えば、分子間ジスルフィド結合を介して)相互作用し、VEGF分子の四量体、または多量体鎖を形成することができる。
【0056】
特に好ましい実施形態では、本発明のカラムのVEGF二量体分子は、後述する本発明の第二の観点に係るVEGF二量体分子である。
【0057】
本発明の第二の観点は、第一および第二VEGF分子を含むVEGF二量体分子に関するものであり、前記第一および/または前記第二VEGF分子は122~250のアミノ酸長を有する。
【0058】
本発明の第一の観点によるVEGF分子には制限がない一方で、第一および/または第二のVEGF分子の長さは、本発明の第二の観点では122~250アミノ酸に制限されていることを除いては、本発明の第一の観点に係るカラムの第一および第二のVEGF分子に関して上述した全ての実施形態および特徴は、この第二の観点にも適用される。例えば、第一および/または第二のVEGF分子が切断型である場合、本発明の第二の観点のVEGF分子は、好ましくは122~250アミノ酸長を有するヒトVEGFの切断型、より好ましくは122~250アミノ酸長を有するヒトVEGF-Aの切断型であってよい。例えば、ヒトVEGF-A138、ヒトVEGF-A145、ヒトVEGF-A162、ヒトVEGF-A165、ヒトVEGF-A165b、ヒトVEGF-A189またはヒトVEGF-A206(ここでは、番号は、天然型ヒトVEGF-Aの配列に基づいてそれぞれのタンパク質におけるタンパク質番号に相当する)であってもよい。
【0059】
さらに、第一および/または第二VEGF分子の長さに関する制限を除いては、本発明の第一の観点に係るカラムのVEGF二量体分子に関して上述した全ての実施形態および特徴が、第二の観点にも適用される。
【0060】
以下の実施形態では、第一または第二の観点のみに関するものであることを示さない場合には、さらに、本発明の第一観点のカラムと本発明の第二観点のVEGF二量体分子の両方について記載するものである。
【0061】
本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、常法により化学的に合成可能である。本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子を化学的に合成する方法は、当業者に周知である。
【0062】
さらにまた、VEGF二量体分子は、組換えタンパク質発現によって製造可能であり、例えば、真核細胞(例、ヒト細胞株(例、HEK293T Epstein-Barr virus nuclear antigen(EBNA)細胞株)、マウス細胞株、ラット細胞株、ハムスター細胞株、酵母細胞または昆虫細胞)で発現されてもよい。VEGF二量体分子の組換えタンパク質発現のための適切な方法は、当業者に周知である。例えば、VEGF二量体を表すヌクレオチド配列を含むクローニングされていない二本鎖直線DNA断片を、例えばコドン最適化によってカスタマイズし、製造することができる。通常、DNA断片は、プライマーを用いて増幅され、N末端strepタグなどのタンパク質タグを持つ発現ベクター(例、sleeping beautyトランスポゾン発現ベクター)にクローン化される。一般に、安定細胞株は、トランスフェクション試薬やエレクトロポレーションを適用する等のトランスフェクション法を用いて、ベクターを細胞に導入することにより作製される。その後、上清または培養物全体を回収することにより、細胞からタンパク質を単離することができる(細胞からタンパク質が分泌されない場合)。
【0063】
引き続き、生成されたVEGF二量体分子を通常、単離・精製する。本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子を分離・精製する方法は、当業者に周知である。例えば、VEGF二量体分子は、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過などのフィルター技術またはクロマトグラフィー技術、または他の既知の方法を用いて精製可能である。例えば、VEGF二量体分子は、タンパク質タグ(例、StrepタグまたはグルタチオンS-トランスフェラーゼタグ(GST-タグ)、ヒスチジンタグ(HIS-タグ))に連結して発現可能である。それにより、StrepTactin(例、Strep-Tactin(登録商標)XT(IBA Lifesci-ence、Gottingen、ドイツ))またはグルタチオンまたはニッケルアフィニティークロマトグラフィーなどのアフィニティークロマトグラフィーカラムを介して精製できる。アフィニティークロマトグラフィー中、あるいはその後、通常、プロテアーゼによってVEGF二量体分子からタンパク質タグが切り離される。例えば、トロンビンプロテアーゼを用いてVEGF二量体分子からStrepタグを切り離すことができる。
【0064】
本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、一つの分子として合成または発現可能である。あるいは、本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、少なくとも二つの部分で合成または発現されて、その後連結されてもよい。例えば、本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体の第一および第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体の第一および第二VEGF分子は、別々に合成または発現され、その後、連結されてもよい。
【0065】
さらにまた、VEGF二量体分子あるいは第一および/または第二VEGF分子は、例えば、化学基を付加(例、翻訳後修飾)して化学的に修飾可能である。適切な化学修飾および化学修飾方法は当業者に周知であり、例えばリン酸化、グリコシル化および/またはアセチル化が挙げられる。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、真核細胞によって発現される。
【0067】
本発明の第一観点に係るカラムの第一および第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および第二VEGF分子は、互いに異なっていてもよい。例えば、長さ、アミノ酸配列、翻訳後修飾が異なる場合がある。あるいは、本発明の第一観点に係るカラムの第一および第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および第二VEGF分子は、同一であってもよい。
【0068】
さらに好ましい実施形態では、本発明の第一観点に係るカラムの第一および第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および第二VEGF分子は、同一である。
【0069】
本発明の第一観点に係るカラムの第一および/または第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および/または第二VEGF分子は、VEGFのN末端シグナル配列MNFLLSWVHWSLALLLYLHHAKWSQA(配列番号:2)の一部または全部を欠いている場合がある。
【0070】
VEGFのN末端シグナル配列の一部または全部は、発現ベクターに導入する前にVEGF二量体配列あるいは第一および/または第二VEGF分子配列から切断してもよいし、組換え発現のために細胞に導入する前に発現ベクター中で切断してもよい。さらにまた、VEGFのN末端シグナルペプチドの一部または全部は、合成または発現した第一および/または第二VEGF分子から切断した後にそれらを二量体として連結してもよいし、合成または発現した第二VEGF分子を第一VEGF分子に連結して二量体を形成させた後に第二VEGF分子から切断してもよい。VEGF核酸またはアミノ酸配列からN末端シグナル配列を切断する方法は、適切なヌクレアーゼまたはプロテアーゼと同様に、当業者に周知である。
【0071】
別の好ましい実施形態では、本発明の第一観点に係るカラムの第一および/または第二VEGF分子あるいは本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および/または第二VEGF分子は、N末端シグナルペプチドを欠く。
【0072】
さらにまた、本発明の第一観点に係るカラムの第一および/または第二VEGF分子あるいは本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および/または第二VEGF分子は、全長または切断型VEGF分子であって、追加的アミノ酸で伸長されている場合がある。詳細には、第一および/または第二VEGF分子は、そのN末端および/またはC末端が250アミノ酸の長さまで伸長されていてもよい。好ましくは、第一VEGF分子はそのN末端が伸長され、および/または、第二VEGFモノマーはそのC末端が伸長されている。これにより、第一VEGF分子と第二VEGF分子のミスフォールディングを防ぐことができるという利点がある。例えば、第一および/または第二VEGF分子は、タンパク質タグ(例、GST-タグ、HIS-タグ、Strep-タグ)によって、または任意のアミノ酸残基の配列の付加によって伸長可能である。さらにまた、第一および/または第二VEGF分子は、制限酵素部位など、その生成に元々必要であった残骸をまだ含んでいる場合がある。
【0073】
本発明の第一の観点に係るカラムの第一および/または第二のVEGF分子、あるいは、本発明の第二の観点によるVEGF二量体分子の第一および/または第二のVEGF分子は、122~250アミノ酸、好ましくは125~225アミノ酸、より好ましくは140~200アミノ酸、さらに好ましくは150~180アミノ酸、特により好ましくは160~170アミノ酸、最も好ましくは165アミノ酸長を有する場合がある。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明の第一観点に係るカラムの第一および/または第二VEGF分子あるいは本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および/または第二VEGF分子は、122~250アミノ酸、好ましくは125~225アミノ酸、より好ましくは140~200アミノ酸、さらに好ましくは150~180アミノ酸、特により好ましくは160~170アミノ酸、最も好ましくは165アミノ酸長を有している。
【0075】
さらにまた、本発明の第一観点に係るカラムの第一VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一VEGF分子は、配列番号:3に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%(例、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)のアミノ酸配列同一性があり、および/または、本発明の第一観点に係るカラムの第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第二VEGF分子は、配列番号:4に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%(例、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)のアミノ酸配列同一性がある。
【0076】
本明細書で使用される用語「少なくとも50%のアミノ酸配列同一性」が意味するのは、本発明の第一観点に係るカラムの第一および/または第二VEGF分子あるいは本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および/または第二VEGF分子のアミノ酸配列が、連続する100アミノ酸内で、少なくとも50アミノ酸残基が対応する配列(例、配列番号:3および/または配列番号:4)の配列とそれぞれ同一であることを特徴とするアミノ酸配列を有していることである。
【0077】
本開示の発明による配列の同一性は、例えば、配列比較の形式での配列アライメント方法によって決定することができる。配列アライメント方法は当該技術分野で周知であり、様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが含まれる。その上、NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)が、National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)を含むいくつかのソースやインターネット上で利用可能であり、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、tblastxと併せて使用可能である。例えば、配列番号:3または配列番号:4のアミノ酸配列に対する本開示の発明による変異体の同一性の割合は、典型的には、標準設定のNCBI Blast blastpを使用して特徴解析される。配列の比較および2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントの決定は、以下のパラメータ(Matrix BLOSUM62;Open gap 11 and extension gap 1 penalties;gap x_dropoff50;expect 10.0 word size 3;Filter none)を有するプログラム「BLAST 2 SEQUENCES(blastp)」(Tatusovaら、1999年)を用いても達成可能である。
【0078】
あるいは、標準的な設定でソフトウェアGENEiousを用い、配列同一性が決定可能である。アライメント結果は、例えば、ソフトウェアGeneious(バージョンR8)から、アライメントタイプとして自由端ギャップのグローバルアライメントプロトコルを使用し、コスト行列としてBlosum62を使用して得ることができる。
【0079】
好ましくは、本発明の第一観点に係るカラムの第一VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一VEGF分子は、配列番号:3のアミノ酸配列を有し、および/または、本発明の第一観点に係るカラムの第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第二VEGF分子は、配列番号:4のアミノ酸配列を有する。
【0080】
さらに好ましい実施形態では、本発明の第一観点に係るカラムの第一VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一VEGF分子は、配列番号:3と比較して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、好ましくは配列番号:3と比較して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは配列番号:3と比較して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、最も好ましくは配列番号:3と比較して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、および/または、本発明の第一観点に係るカラムの第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第二VEGF分子は、配列番号:4と比較して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、好ましくは配列番号:4と比較して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは配列番号:4と比較して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、最も好ましくは配列番号:4と比較して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0081】
本発明の第一観点に係るカラムの第一および第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および第二VEGF分子は、さらにリンカーによって連結可能である。
【0082】
あるいは、VEGF二量体分子は、いかなるリンカーも含んでいない場合もある。例えば、本発明の第一観点に係るカラムの第一および第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および第二VEGF分子は、リンカーによって連結されていなくてもよい。
【0083】
本発明に係る用語「リンカー」は、第一VEGF分子と第二VEGF分子とを連結するのに適した任意のスペーサーを説明する。
【0084】
リンカーは、第一および/または第二VEGF二量体の互いに対するフレキシビリティーを実現するのに十分な最小の長さを有している場合がある。これにより、例えば、scVEGFの分子間多量体化をもたらしたり、例えば、二量体や四量体のようなscVEGF多量体の形成につながる。リンカーは、VEGF-配列の分子内二量体化を妨げるのに適した長さを有していてもよい。
【0085】
リンカーは、2つのタンパク質分子を連結するのに適していることが当業者に知られている任意の材料を含むことができる。例えば、リンカーは、当業者に知られている有機化合物(例、アミノ酸、核酸、多糖類、ポリエチレングリコール)の任意のポリマーおよび/またはN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等での架橋部分を含む場合がある。好ましくは、リンカーはアミノ酸を含み、より好ましくは、リンカーはアミノ酸からなる。さらに、リンカーは、可撓性であっても剛性であってもよい。
【0086】
例えば、第一および第二VEGF分子の核酸配列は、リンカーのアミノ酸配列をコードする核酸を介して前もって連結されていてもよく、コンストラクト全体が上記のように1つのVEGF二量体分子(例、配列番号:5)として一緒に発現されてもよい。
【0087】
本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、配列番号:5に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%(例、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)のアミノ酸配列同一性がある場合がある。好ましくは、本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、配列番号:5に比較して100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0088】
通常、第一および第二VEGF分子は、リンカーによって連結されていてもよく、それによって、リンカーの第一の端は、第一VEGF分子のC末端アミノ酸に連結され、リンカーの第二の端は、第二VEGF分子のN末端アミノ酸に連結される。さらに、第一および第二VEGF分子は、リンカーによって連結可能であり、その場合、リンカーの第一端および/または第二端は、N末端またはC末端ではない第一および/または第二VEGF分子配列のアミノ酸に連結される。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明の第一観点に係るカラムの第一および第二VEGF分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子の第一および第二VEGF分子は、リンカーによって連結される。
【0090】
リンカーが複数のアミノ酸を含む場合、リンカーは、好ましくは10~30アミノ酸長、好ましくは11~25アミノ酸長、より好ましくは12~20アミノ酸長、特により好ましくは13~17アミノ酸長、最も好ましくは14アミノ酸長を有する。
【0091】
さらに、リンカーは、配列番号:6の配列(GSTSGSGKSSEGKG)を含んでいてもよいし、または、配列番号:6と比較して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、好ましくは配列番号:6と比較して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは配列番号:6と比較して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性、最も好ましくは配列番号:6と比較して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有していてもよい。例えば、配列番号:6の単一各アミノ酸を、同一または類似の電荷および/またはサイズを有するアミノ酸で置換することが可能である。好ましくは、リンカーは、配列番号:6の配列を含み、より好ましくは、リンカーは、配列番号:6の配列からなる。配列番号:6と比較してリンカーの配列同一性を決定する方法は、当業者に周知であり、配列番号:3および4に対する第一および第二VEGF分子の配列同一性をそれぞれ決定するために上述した方法と同等である。
【0092】
より好ましい実施形態では、リンカーは、10~30アミノ酸長、好ましくは11~25アミノ酸長、より好ましくは12~20アミノ酸長、特により好ましくは13~17アミノ酸長、最も好ましくは14アミノ酸長を有する。
【0093】
本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、マトリックスに共有結合によって固定化可能である。
【0094】
マトリックスは、タンパク質のアフィニティークロマトグラフィーに適していることが当業者に知られている任意の分子であってよい。通常、マトリックスは化学的に不活性な分子で構成される。特に、マトリックスの分子は、アフェレーシスなどの臨床応用に適している場合がある。例えば、生体内に適用した場合、免疫原性が低い場合がある。
【0095】
その上、マトリックスの分子は、一般にリガンドであるVEGF二量体分子の共有結合を可能にする。従って、VEGF二量体分子にタンパク質タグなどのタグを連結し、このタグに共有結合させるマトリックスを用いてもよい。マトリックスの適切な分子の例は、当業者に周知であり、例えば、セファロース、アガロースおよび/またはグルタチオンなどが挙げられる。好ましくは、マトリックスはセファロースまたはアガロースであり、より好ましくはアガロースである。マトリックスは、さらに互いに異なる分子の混合物を含む場合がある。
【0096】
別の好ましい実施形態では、本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子は、マトリックスに共有結合によって固定化される。
【0097】
本発明の第三の観点は第一の観点に係るカラムを調製する方法であって、
a)血管内皮増殖因子(VEGF)二量体分子を真核生物発現によって調製する工程であって、前記VEGF二量体分子が第一および第二VEGF分子を含む工程と、
b)工程a)の前記二量体をマトリックスに固定化する工程を含む方法に関する。
【0098】
工程a)およびb)の特徴に関して、本発明の第一の観点のカラムおよび本発明の第二の観点に係るVEGF二量体分子に関して上述したすべての実施形態および特徴は、この第三の観点にも適用される。
【0099】
工程a)
真核生物発現によるVEGF二量体分子の調製方法は、当業者に周知であり、さらに上述したとおりである。特に、第一および第二VEGF分子とリンカーについても、上述したとおりである。
【0100】
工程b)
さらに、本発明の第三の観点に係るカラム調製方法の工程b)において、VEGF二量体分子は、共有結合によってマトリックスに固定化される。マトリックスに関する特徴は、本発明の第一の観点のカラムの好ましい実施形態の文脈で上述したものでもあり、本発明の第三の観点にも適用可能である。
【0101】
本発明に係る用語「工程a)の前記二量体をマトリックスに固定化する」は、VEGF二量体分子をマトリックスに固定化することを示す。二量体をマトリックスに固定化する方法は、当業者に周知である。例えば、VEGF二量体分子は、マトリックスが既にカラムにロードされているとき、またはマトリックスをカラムにロードする前にマトリックスに固定化することができる。最初の例では、まずマトリックスがカラムにロードされる。その後、VEGF二量体分子を含む溶液を提供し、カラム内のマトリックスに適用することにより、VEGF二量体分子をそのマトリックスに固定化することができる。VEGF二量体分子とマトリックスとの間の特異的な相互作用により、VEGF二量体分子は通常マトリックスに近接して留まり、あるいはマトリックスと結合することがあるが、溶液の残りの置換成分はマトリックス中を流れ通過するか、および/または、その後の洗浄工程によって除去される。あるいは、第二の例では、マトリックスをVEGF二量体分子と接触させることで、両者の間に特異的な相互作用を生じさせることも可能である。引き続き、マトリックス-VEGF二量体コンストラクトを洗浄すると、特異的に結合するVEGF二量体分子は除去されないが、非特異的に結合する成分が除去可能である。その後、VEGF二量体分子を固定化したマトリックスをカラムにロードすることもできる。
【0102】
さらに、工程b)において、VEGF二量体分子は共有結合によってマトリックスに固定化されていてもよい。VEGF二量体分子の共有結合を可能にする可能なマトリックスの詳細は、当業者に周知であり、また、本発明の第一の観点に係るカラムについては上述したとおりである。
【0103】
本発明はさらに、本発明の第三の観点に係る方法によって得ることができるカラムに関する。
【0104】
好ましい実施形態では、本発明の第三の観点に係るカラム調製方法の工程b)において、VEGF二量体分子を共有結合によってマトリックスに固定化する。
【0105】
本発明の第四の観点は、VEGF二量体分子がアフェレーシス用カラムに結合されていることを特徴とする子癇前症の治療に用いるための第二観点に係るVEGF二量体分子である。
【0106】
本発明の第一および/または第二の観点に記載されるカラムとVEGF二量体分子に関して上述した全ての実施形態および特徴は、この第四の観点にも適用される。
【0107】
さらに、本発明に係る用語「子癇前症の治療」は、すべてのタイプの子癇前症およびこの症状のすべての段階の治療を含む。例えば、妊娠中の女性も、最近出産してその後子癇前症になった女性も同様に、治療可能である。その上、子癇前症の治療は、子癇前症の症状を呈していない抗リン脂質症候群および/または高血圧症を患っている妊婦や、妊婦の血液または血清中の平均sFlt-1/PlGF比よりも高いsFlt-1/PlGF比を有する妊婦など、子癇前症の発症リスクを有する妊婦に対する予防的治療も含む。
【0108】
本発明に係る用語「アフェレーシス」は、人の血液または血漿を、少なくともsFlt-1などの一または複数の特定成分を分離し、残りを循環に戻す装置を通過させる体外医学療法を表す。これにより、sFlt-1の分離のほかに、VEGFやPlGFなどのsFlt-1と結合している成分が血液中に放出され、循環に戻る可能性がある。
【0109】
一般に、アフェレーシス法および必要なパラメータは、当業者に周知である。例えば、アフェレーシスでは、まず、血液へのアクセスを配置することを含む。そのため、患者の末梢静脈に針を刺す。例えば、内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈に、シングルまたはダブルルーメンのカテーテルが使用可能である。通常、この第一の血液へのアクセスからチューブやキャピラリーに血液を導き、その後ポンプでアフェレーシスのカラムに送り、血液からsFlt-1を分離すると同時にVEGFとPlGFを血液中に放出させる。残りの血液成分は、さらにチューブやキャピラリーを経由して第二のポンプで第二の血液アクセスに送られ、その後患者の血液循環に戻される。その上、アフェレーシスカラムに導入する前に、血液を分離し、血漿のみをアフェレーシスカラムに適用することも可能である。その後、浄化した血漿を、血漿の調製時に先に分離した血球と合わせ、両者を患者の血液循環に戻してもよい。
【0110】
処理する血漿量は、通常、患者の推定血漿量(EPV)である。EPVは通常、以下の式で算出される:
EPV=BW×1/13×(1-Ht/100)
BW:体重(kg)
Ht:ヘマトクリット値(%)
【0111】
さらに、アフェレーシスには通常、凝固を防止、中断、終了させる措置が含まれる。これらの措置は当業者に周知である。例えば、アフェレーシス中にクエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウムまたは酸性クエン酸デキストロース(例、ACD-A))またはヘパリンのような抗凝固剤を血液または血漿に添加することができる。適切な抗凝固剤および必要な投与量は当業者に周知であり、さらに患者の臨床的および身体的状態に依存する場合がある。
【0112】
1本のカラムを1回のアフェレーシス処理に使用することも、5回、10回、15回、20回、25回までのアフェレーシス処理用途に繰り返し使用することも可能である。
【0113】
本発明の第一の観点に係るカラムに関して記載したVEGF二量体分子または本発明の第二の観点に係るVEGF二量体分子に加えて、アフェレーシスカラムは、sFlt-1と相互作用し得るさらなるリガンドを含んでいてもよい。さらに、アフェレーシスカラムは、1回のアフェレーシス適用中にsFlt-1以外の血液成分を除去するためのリガンドをさらに含んでいてもよい。例えば、血漿交換(例えば、有害物質を含む血液の液体部分を除去し、血漿を置換液と置換すること)を行ってもよいし、低密度リポ蛋白(LDL)を除去してもよい。
【0114】
さらにまた、本発明は、本発明の第一観点に係るカラムのVEGF二量体分子または本発明の第二観点に係るVEGF二量体分子を含むカラムを使用して子癇前症を治療する方法に関する。
【0115】
また、本発明は、子癇前症を治療する方法であって、本発明の第一の観点に係るカラムまたは本発明の第二の観点に係るVEGF二量体分子を用いてアフェレーシスを実施することを含む、方法にも関する。上記に開示されたすべての実施形態は、本発明のこれらの方法にも適用される。
【0116】
本発明の第五の観点は、本発明のVEGF二量体分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターにさらに関する。
【0117】
適切な発現ベクターは、当業者に周知である。好ましくは、発現ベクターは、真核生物細胞におけるタンパク質の組換え発現に適している。
【0118】
例えば、発現ベクターは、哺乳類由来の発現ベクター(例、pcDNA3(Invitrogen社製)、pEGF-BOS(MizushimaとNagata、1990年)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例、「Bac-to-BACバキュロウイルス発現システム」(Gibco BRL/Life Technologies社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例、pMH1、pMH2)または酵母由来の発現ベクター(例、「Pichia発現キット」(Invitrogen社製)、pNV11、SP-Q01)が挙げられる。好ましくは、発現ベクターは、sleeping beautyトランスポゾン発現ベクターである。
【0119】
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞などの動物細胞での発現を目的として、発現ベクターは通常、細胞内発現用プロモーターを含んでいる。細胞内発現に適したプロモーターは、当業者に周知である。例えば、SV40プロモーター(Mulliganら、1979年)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(MizushimaとNagata、1990年)、またはCMVプロモーターが使用可能である。
【0120】
その上、発現ベクターは、マーカー遺伝子をさらに含んでいてもよい。適切なマーカー遺伝子は、当業者に周知である。例えば、マーカー遺伝子は、形質転換細胞に対して、ネオマイシン、G418などの薬剤で選別可能な薬剤耐性遺伝子であってもよい。このような性質を有するベクターの例としては、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、およびpOP13が挙げられる。
【0121】
本発明の第二の観点に係る本発明のVEGF二量体分子を説明する全ての特徴は、本発明の第五の観点に係る発現ベクター中の核酸配列によってコードされるVEGF二量体分子にも適用される。
【0122】
本発明の第六の観点は、本発明のVEGF二量体分子を含むか、本発明の発現ベクターを含むか、および/または本発明のVEGF二量体分子をコードする核酸配列を含む、組換え宿主細胞株に関する。
【0123】
適切な組換え宿主細胞株は、当業者に周知である。例えば、組換え宿主細胞株は、ヒト細胞株(例、HEK293T Epstein-Barr virus nuclear antigen(EBNA)細胞株)、マウス細胞株、ラット細胞株、ハムスター細胞株、酵母細胞株または昆虫細胞株等の真核細胞株であってもよい。
【0124】
本発明の第二の観点に係る本発明のVEGF二量体分子を説明する全ての特徴または本発明の第五の観点に係る発現ベクターを説明する全ての特徴は、本発明の第六の観点に係る組換え宿主細胞株のVEGF二量体分子または発現ベクターにも適用される。
【0125】
本発明は、さらに、本発明の第二の観点に係るVEGF二量体を含むマトリックスまたはビーズに関する。
【0126】
本発明の第一の観点に係るカラムのマトリックスまたは本発明の第三の観点で使用されるマトリックスについて説明したすべての特徴は、本発明に係るマトリックスにも適用される。
【0127】
ビーズは、タンパク質のアフィニティークロマトグラフィーに適していることが当業者に知られている任意のビーズであってよい。通常、ビーズは化学的に不活性な分子で構成される。特に、ビーズは、アフェレーシスなどの臨床応用に適している場合がある。例えば、生体内に適用した場合、ビーズは免疫原性が低い場合がある。
【0128】
ビーズはさらに、本発明の第一の観点に係るカラムに使用するのに適した、または、本発明で説明もしくは使用されるマトリックスに結合するのに適したことが知られている任意の分子であってもよい。通常、ビーズは多孔質表面を有し、アフェレーシスなどのアフィニティークロマトグラフィーに適した細孔径が当業者に周知である。
【0129】
ビーズは、アガロースなど、当業者に公知の任意の材料であってもよい。ビーズは、タンパク質のアフィニティークロマトグラフィーに適していることが当業者に知られている任意のサイズのもの(例、マイクロビーズ)であってよい。さらに、ビーズは、本発明の第一または第二の観点について説明したように、VEGF二量体分子と結合または相互作用可能である。その上、ビーズは、本発明の第一または第三の観点で用いられるマトリックスと結合または相互作用してもよく、このマトリックス自体が、本発明の第一または第二の観点について説明したように、VEGF二量体分子と結合または相互作用する。一般に、ビーズに付着している各結合VEGF二量体分子またはマトリックス分子は、カラムを通して送られる溶質試料と1:1の比率で結合し、その後精製または分離が必要とされると仮定することができる。
【0130】
本発明の第七の観点は、血液からsFlt-1を分離するかおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための方法であって、本発明の第一の観点に係るカラムまたは本発明の第二の観点に係るVEGF二量体分子を血液とインキュベートし、前記血液からsFlt-1を分離することおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを前記血液中に放出させることを含む、方法である。
【0131】
本発明の第七の観点に係る方法において、患者から血液を得て、その後、血液からsFlt-1を分離し、および/または、sFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出してもよい。さらに、本発明の第七の観点に係る方法において、血液からsFlt-1を分離し、および/または、sFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出させた後に、その血液を患者の血液循環に戻してもよい。好ましくは、本発明の第七の観点に係る方法は、例えば本発明の第四の観点の文脈で上述したように、アフェレーシスの文脈で適用される。アフェレーシスに関して、例えば本発明の第四の観点の文脈のように上述したすべての実施形態および特徴は、この第七の観点にも適用され得る。
【0132】
本発明の第七の観点に係る方法では、血中のsFlt-1/PlGF比が低下するまで、好ましくは、血中のsFlt-1/PlGF比が<110、より好ましくは<85、特により好ましくは<50、最も好ましくは<38となるまで、血液からsFlt-1を分離してもよく、および/または、sFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出させてもよい。
【0133】
その上、本発明の第七の観点に係る方法では、患者の血液中のsFlt-1および/またはVEGFの量が、子癇前症の症状を示さない妊婦と同程度になるまで、sFlt-1を血液から分離し、および/または、VEGFをsFlt-1との複合体から血液中に放出させてもよい。
【0134】
さらに、本発明の第一、第二、第三、および/または第四の観点に関して上述したすべての実施形態および特徴は、この第七の観点にも適用され得る。
【0135】
さらにまた、本発明は、血液からsFlt-1を分離するかおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための方法であって、本発明の第三の観点に係る方法によって得られるカラムと血液をインキュベートし、前記血液からsFlt-1を分離することおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを前記血液中に放出させることを含む、方法にさらに関する。
【0136】
本発明の第八の観点は、血液からsFlt-1を分離するためおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための、本発明の第一の観点に係るカラムまたは本発明の第二の観点に係るVEGF二量体分子の使用に関する。
【0137】
好ましくは、本発明の第八の観点に係る使用は、例えば本発明の第四の観点の文脈で上述したように、アフェレーシスの文脈のものである。本発明の第一、第二、第三、第四および/または第七の観点に関して上述したすべての実施形態および特徴は、この第八の観点にも適用され得る。
【0138】
さらに、本発明は、血液からsFlt-1を分離するためおよび/またはsFlt-1との複合体からVEGFを血液中に放出するための、本発明の第三観点に係る方法によって得ることができるカラムの使用に関する。
【0139】
本発明は、本明細書中に記載される特定の方法論、手順、および試薬に限定されない。なぜなら、それらにはバリエーションがあるからである。さらにまた、本明細書中に使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであって、本発明の範囲を限定する意図は無い。本明細書と添付した特許請求の範囲に使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文章が明らかにそうでないと規定していない限り、複数形への言及も含む。同様に、単語「comprise」、「contain」、および「encompass」は排他的というよりはむしろ他のものも含めるように解釈される。
【0140】
定義がなされていない場合、本明細書中で使用する全ての技術的や科学的な用語および任意の頭字語は、本発明の分野の当業者により一般的に理解されると同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと同様または等価な任意の方法と物は本発明の実施に用いることができるが、好ましい方法や物を本明細書中に記載する。
【0141】
本発明は、以下の図および実施例によってさらに説明されるが、これらは、本発明を説明することを意図しているが、限定するものではなく、そこからさらなる特徴、実施形態および利点を得ることができるものである。このように、議論された特定の改変は、本発明の範囲に対する制限として解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な等価物、変更、および改変がなされ得ることは当業者には明らかであり、したがって、そのような等価な実施形態が本明細書に含まれることが理解される。
【実施例】
【0142】
実施例
材料および方法
クローニング、組換えタンパク質の発現と精製
scVEGF165とscPlGFのクローニングのために、各塩基配列を含むクローン化されていない二本鎖直線DNA断片をGeneArt String DNA断片(ThermoFisher scientific、ドイツ)の形でカスタマイズし、注文した。設計された配列は、単量体VEGF165と同一のアミノ酸配列を二つ有しているが、第二単量体はシグナルペプチド配列を欠いている。2つのモノマーは、アミノ酸配列GSTSGSGKSSEGKGを有するリンカー(下線文字で以下に示す)で連結されている。DNA断片はプライマー(表1参照)を用いて増幅し、N-末端のstrepタグを持つsleeping beautyトランスポゾン発現ベクターに(制限酵素NheIとBamHIを用いて)クローン化した。
【0143】
【0144】
scVEGF165とscPlGFのGeneArt String DNA断片の配列は以下の通りである(下線はリンカー配列)。
【0145】
scVEGF165のGeneArt String DNA断片配列(配列番号:7):
GCTAGCGCTCCTATGGCTGAAGGCGGAGGACAGAATCACCACGAGGTGGTCAAGTTCATGGACGTGTACCAGCGGAGCTACTGTCACCCCATCGAGACACTGGTGGACATCTTCCAAGAGTACCCCGACGAGATCGAGTACATCTTCAAGCCCAGCTGCGTGCCCCTGATGAGATGTGGCGGCTGCTGCAATGACGAAGGCCTGGAATGTGTGCCCACCGAGGAATCCAACATCACCATGCAGATCATGCGGATCAAGCCCCACCAGGGCCAGCATATCGGCGAGATGTCTTTCCTGCAGCACAACAAGTGCGAGTGCAGACCCAAGAAGGACCGGGCCAGACAAGAGAATCCTTGCGGCCCTTGCAGCGAGCGGAGAAAGCACCTGTTTGTGCAGGACCCTCAGACCTGCAAGTGCTCCTGCAAGAACACCGACAGCCGGTGCAAAGCCAGACAGCTGGAACTGAACGAGCGGACCTGCAGATGCGACAAGCCTAGAAGAGGCAGCACAAGCGGCAGCGGCAAAAGCTCTGAAGGCAAGGGAACGCGTGCCCCAATGGCAGAAGGTGGCGGCCAGAACCACCATGAGGTCGTGAAGTTTATGGATGTCTATCAGCGGTCCTACTGCCATCCTATCGAAACCCTGGTCGATATTTTTCAAGAGTATCCGGATGAGATTGAGTATATTTTCAAACCCTCCTGTGTGCCGCTCATGCGCTGCGGCGGATGCTGTAATGATGAGGGACTTGAGTGCGTGCCAACCGAAGAGTCTAATATTACGATGCAGATTATGAGAATCAAACCGCATCAAGGGCAGCATATTGGGGAAATGAGCTTCCTCCAGCATAACAAATGTGAATGCCGGCCGAAGAAGGACAGAGCCCGGCAAGAAAACCCATGCGGCCCCTGTTCCGAGAGGCGGAAACATCTGTTCGTTCAAGATCCCCAGACCTGTAAATGTAGCTGTAAAAACACCGACTCCAGGTGCAAGGCCCGGCAACTCGAGCTGAACGAGAGAACATGTCGCTGCGATAAGCCCAGACGGGGATCCACA
【0146】
scPlGFのGeneArt String DNA断片配列(配列番号:8):
acagctagcCTGCCTGCTGTTCCTCCTCAACAATGGGCCCTGTCTGCCGGCAATGGCAGCTCTGAAGTTGAGGTGGTGCCCTTCCAAGAAGTGTGGGGCAGAAGCTACTGCAGAGCCCTGGAAAGACTGGTGGACGTGGTGTCTGAGTACCCCAGCGAGGTGGAACACATGTTCAGCCCTAGCTGCGTGTCCCTGCTGAGATGCACAGGCTGTTGCGGCGACGAGAATCTGCACTGCGTGCCAGTGGAAACCGCCAACGTGACAATGCAGCTGCTGAAAATCAGAAGCGGCGACAGACCCAGCTACGTGGAACTGACCTTCAGCCAGCACGTCCGCTGCGAGTGTAGACCCCTGCGGGAAAAGATGAAGCCCGAGAGATGCGGAGATGCCGTGCCTAGAAGAGGCAGCACATCTGGCTCTGGCAAGAGCAGCGAAGGCAAGGGACTTCCTGCTGTGCCACCACAGCAGTGGGCACTGAGTGCCGGAAATGGCTCCTCTGAGGTGGAAGTCGTGCCTTTTCAAGAAGTCTGGGGACGCTCCTACTGTCGCGCTCTTGAGAGACTGGTCGATGTCGTCAGCGAGTACCCCTCCGAAGTCGAGCACATGTTTTCCCCATCCTGTGTGTCTCTGCTGCGGTGTACCGGATGCTGCGGGGATGAGAACCTGCATTGTGTGCCTGTCGAGACAGCCAATGTCACCATGCAGCTCCTCAAGATCAGATCCGGCGATCGGCCCTCCTACGTCGAGCTGACATTTTCTCAGCACGTTCGATGCGAATGCCGGCCTCTGCGCGAGAAAATGAAGCCTGAACGCTGTGGCGACGCCGTGCCTCGTAGAggatccaca
【0147】
scPlGFタンパク質配列(下線はリンカー部分)(配列番号:9):
TASLPAVPPQQWALSAGNGSSEVEVVPFQEVWGRSYCRALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSCVSLLRCTGCCGDENLHCVPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRCECRPLREKMKPERCGDAVPRRGSTSGSGKSSEGKGLPAVPPQQWALSAGNGSSEVEVVPFQEVWGRSYCRALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSCVSLLRCTGCCGDENLHCVPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRCECRPLREKMKPERCGDAVPRRGST
【0148】
組換えタンパク質の製造のために、HEK293T Epstein-Barrウイルス核抗原(EBNA)安定細胞株をsleeping beautyトランスポゾンシステムを用いて作製し、タンパク質を既報(Agarwalら、2012年)のように精製した。簡単に説明すると、FuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(Promega GmbH、Madison、米国)を用いて、牛胎児血清(FBS)フリー培地で3日間、ベクターをHEK293T EBNA細胞にトランスフェクションした。翌日に細胞の上清を回収して濾過し、Strepタグを持つタンパク質をStrep-Tactin(登録商標)XT(IBA Lifescience、Gottingen、ドイツ)樹脂を介して室温(RT)にて精製した。その後、ビオチン含有Tris緩衝液(TBS)-緩衝液(IBA Lifescience、Gottingen、ドイツ)でタンパク質を溶出し、画分を-80℃で保存した。
【0149】
ネガティブ染色電子顕微鏡観察
単量体および二量体VEGFの構造を、既報(Boberら、2010年)のように、ネガティブ染色電子顕微鏡観察によって可視化した。簡単に説明すると、サンプル(通常濃度10~20nM)をカーボンコートされたグリッド上で1分間インキュベートし、洗浄した後、0.75%ギ酸ウラニルで1分間染色を行った。グリッドは大気中の低圧グロー放電により親水化された。試料をPhilips/FEI CM 100 TWIN透過電子顕微鏡で、加速電圧60kVで検証した。画像は、側面に設置したオリンパス社製Veletaカメラ(解像度2048×2048ピクセル、2k×2K)とITEMアクイジションソフトウェアを使って記録した。
【0150】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の細胞培養とマイトジェン処理
継体数3のHUVECを、5%FBS、ヒドロコルチゾン、VEGF、hFGF-B、R3-IGF-1、アスコルビン酸、hEGF、GA-1000(Pan biotech、Bavaria、ドイツ)を含むEndopan3キット培地で80%コンフルエントになるまでコラーゲンIIコート6穴プレート上で培養した。細胞を、3%FBSを添加するがその他の成長因子サプリメントを添加せずに24時間飢餓状態にした。翌日、細胞を示される組換えタンパク質で刺激した。37℃で10分間インキュベートした後、30μlの2×Laemmli緩衝液を用いてプレート上で直接細胞を溶解し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲルにロードし、その後ウェスタンブロットに供した。
【0151】
固相酵素免疫吸着測定法(ELISA)様式アッセイ
ELISA式結合アッセイは、既報(Agarwalら、2012年)のように行った。簡単に記載すると、10μg/mlの組換えVEGF、PlGF、およびそれらの変異体をウシ血清アルブミン(BSA)とともに96穴プレート(Transparente Immuno Standardmodule、Thermo scientific、デンマーク)に個別に固定化し、一方、BSAのみをロードしたマトリックスをコントロールとした。VEGFR1/R2トラップの濃度を0.1~750nMの範囲まで増加させながら添加して結合飽和曲線を作成し、その後VEGFR1/R2トラップのマウスFcドメインに対するホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体を用いてリガンド-受容体複合体の検出を行った。発光は分光光度計(Thermo ScientificMultiskan GO、フィンランド)を用いて、吸光度(OD)450nmで定量化した。
【0152】
ELISA測定
ヒトsFlt-1、遊離型VEGF、およびPlGFレベルは、特定の市販ELISAキット(R&D Systems、Minneapolis、米国)を使用して定量化した。アッセイは製造元の指定に従って実施した。蛍光は分光光度計(Thermo ScientificMul-tiskan GO、フィンランド)を用いて定量した。データはGraphPad prism 7ソフトウェア(GraphPadソフトウェア社、La Jolla、CA、米国)を用いて解析した。
【0153】
特異的VEGF/PlGFカラムの作製
Strep-Tactin(登録商標)XTマトリックス(IBA Lifescience、Gottingen、ドイツ)への組換えタンパク質の固定化は、Polyprep(登録商標)クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad laboratories、米国)上で製造元の説明書に従って実施した。Strepタグを含む組換えタンパク質は、50mMのTris、150mMのNaCl(pH=8)中で推奨量の樹脂と一晩インキュベートした。
【0154】
Polyprep(登録商標)クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad laboratories、米国)上の臭化シアノゲン活性化樹脂(Merck、ドイツ)に組換えタンパク質を固定化するために、前記タンパク質は100mMのNaHCO3、500mMのNaCl(pH=8.3)を含むカップリングバッファーで2日間透析した。そのビーズを30mlの冷えた1mMのHClで15分間活性化した。推奨量の樹脂を、透析したタンパク質と一緒に4℃で一晩インキュベートした。ビーズの未結合面を0.1MのTris-HClで2時間、室温でブロックした。
【0155】
組換えタンパク質のアガロースマトリックス(AminoLink(商標)Plus Immobilizationキット、Thermo Fisher scientific、米国)への固定化は、製造元の指示に従った。簡単に説明すると、組換えタンパク質をカップリングバッファー(pH=10)中でインキュベートし、樹脂に加え、50mMのNaCNBH3と共にカップリングバッファー(pH=7.2)中で4時間インキュベートした。樹脂の未結合表面は、クエンチングバッファー中で50mMのNaCNBH3とインキュベーションすることによりブロックした。
【0156】
いずれの場合も、カップリングの前後でタンパク質濃度を測定し、カップリング効率を決定した。約500mg/mlの等濃度の各組換えタンパク質を対応する樹脂に固定化するために使用した。
【0157】
scVEGF165アガロースカラムの長期安定性評価のため、VEGF結合アガロース樹脂1.8mlを作製し、300μlのアリコート6個に分割して4℃で保存した。1日、15日、30日、60日、90日後に吸着試験を実施した。
【0158】
フロースルーからのStrepタグ付きタンパク質の沈殿
Strep-Tactin(登録商標)XT(IBAライフサイエンス社製)ビーズを添加することによって、血清サンプルのアフェレーシス処理後のフロースルーからStrepタグ付きタンパク質を沈殿させた。ポジティブコントロールとして、組換え型Strepタグ付きVEGFを血清フロースルーに添加した。50mMのTris、150mMのNaCl(pH=8)でビーズを2回洗浄後、30μlの2×Laemmli緩衝液を直接ビーズに加え、その後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、およびStrepタグ特異抗体を用いたイムノブロットブロッティングを実施した。
【0159】
倫理承認とインフォームドコンセント
ケルン大学病院の倫理委員会が審査・承認したプロトコル10-238および09-258に従って、すべての参加者から書面によるインフォームドコンセントを得た。子癇前症は、EGA≦32週における140/90mmHgより高い高血圧、0.3g/gクレアチニンより高い蛋白尿、およびsFlt-1/PlGF>85の新規発症と定義した。
【0160】
実施例1-一本鎖VEGF
165
二量体の分子モデリングと構造解析
分子間ジスルフィド結合は、VEGFとPlGFのホモダイマーの構造を安定化させ、受容体結合部位を展開させる。これらのユニークな性質を利用して、sFlt-1との結合親和性を高めたVEGFとPlGFの高次多量体を設計することが可能となった。
【0161】
N末端配列を欠いたVEGF
165に短い不活性な14アミノ酸のリンカーが続くものと、N末端のシグナルペプチドを欠いた第二のVEGF
165(一本鎖VEGFダイマー=scVEGF
165)を含み、精製用に切断可能なStrepタグ(登録商標)を備えた発現コンストラクトを設計した(
図1A)(配列番号:7)。14アミノ酸の短いリンカーが、scVEGF
165の40kDaの二量体への組み立てを妨げていると推測された。一方、2つ以上のscVEGF
165分子が分子間のジスルフィド結合で連結された開放構造では、VEGFの四量体、つまり多量体鎖を形成することが可能になる。scVEGF
165の四量体4次集合体の分子モデリングアプローチは、14アミノ酸リンカーによる構造的制限とネガティブ染色電子顕微鏡写真に基づいて行われた(
図1B+C)。
【0162】
単量体野生型VEGF
165(moVEGF
165、N末端配列を欠いた全長VEGF
165)コンストラクトおよびscVEGF
165コンストラクトを上記のようにクローニングし(表1も参照)、ヒト胚性腎細胞(HEK293T)で発現し、Strep-Tactin(登録商標)技術を使用して生理的条件下で対応するタンパク質を精製した(
図7)。これらのコンストラクトは、培養中のHUVEC細胞におけるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAP)-キナーゼ活性化を調べる実験(
図9)で評価されたように、生物学的に機能的であった。Mapキナーゼ経路の活性化は、組換えVEGFおよびPLGF変異体で処理した後に検出可能である。VEGFとsFlt-1の共処理により、MAPの活性化は消失した(
図9)。
【0163】
moVEGF
165と比較してscVEGF
165の4次分子構造を可視化するために、ネガティブ染色電子顕微鏡観察を採用した(
図1C)。単量体発現型VEGFで予想されるように、moVEGF
165はダンベル状の二量体複合体に組み立てられ、少数の単量体分子は一点の点として表された(左パネル
図1C)。特にそれに対して、scVEGF
165は、2:2配置のscVEGF
165の複合体、すなわちVEGF
165の四量体として均一に配列したクローバーリーフ状の構造で現れた。
【0164】
moVEGF
165およびscVEGF
165に加えて、単量体PlGF(moPlGF)および単鎖PlGF二量体(scPlGF)コンストラクトを作製し、先に述べたように発現させて試験した(
図7右上および右下)。
【0165】
その後、moVEGF165、scVEGF165、moPlGF、およびscPlGFの結合特性を調査した。強い相互作用体をスクリーニングするために、VEGFとPlGFコンストラクトのVEGF-trapへの結合親和性と静的結合能を、それぞれELISAに基づく連続希釈実験と高過剰のタンパク質負荷により平衡解離定数(Kd)として定量化した。本願で使用するVEGF-Trapは、VEGFR-1受容体の第二結合ドメインとVEGFR-2受容体の第三ドメインがヒトIgG骨格のFcセグメントに融合して含まれるキメラタンパク質であり、非常に高いVEGF結合親和性(Kd≒1pM)を有している。
【0166】
以前の報告から予想されるように、moVEGF
165はmoPlGF(Christingerら、2004年)と比較して高い親和性(2.6倍)を示した。しかし注目すべきは、scVEGF
165はmoVEGF
165と比較して11%高い親和性を示したことである。興味深いことに、scPlGFの親和性はmoPlGFと比較して有意な差はなかった(
図2A+B)。
【0167】
結果:特に、scPlGFとmoPlGFの結合親和性がほぼ等しいことを考えると、scVEGF165のVEGF-trapへの結合親和性がmoVEGF165に比べて11%高いことは非常に驚くべき知見である。さらに、互いに異なるコンストラクトに見られる結合能の驚くべき大きなばらつきは特に注目に値する。
【0168】
実施例2-基質マトリックスの評価とsFlt-1捕獲アフェレーシスカラムの安定性
各種樹脂への組換えタンパク質のカップリング効率を解析するために、その樹脂へのカップリング前後の組換えタンパク質濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0169】
【0170】
アフェレーシスカラムの動的結合特性を最適化するため、リガンドの固定化にStrepTactin XT(登録商標)、臭化シアノゲン活性化セファロース、またはアルデヒド活性化アガロースを用いて固定化moPlGFとmoVEGF
165によるヒト血清からのsFlt-1吸着をテストした。moPlGFとmoVEGF
165ベースのカラムのいずれにおいても、すべての樹脂でsFlt-1の有意な吸着が認められた。しかし、sVEGF
165をアガロースマトリックスに固定化したカラムでは、1回のランで86.16%という最大のsFlt-1減少率を達成した(
図3A)。scVEGF
165ベースのアガロースカラムの安定性を、作製後1、15、30、60、90日で評価したところ、親和性の著しい損失は認められなかった(
図3B)。
【0171】
結果:アガロースマトリックスへのリガンドの結合は、StrepTactin XT(登録商標)マトリックスやセファロースマトリックスへの結合と比較して、すべてのリガンド(moPlGF、moVEGF165、scVEGF165)でヒト血清からのsFlt-1の最大の吸着をもたらした。さらに、ヒト血清からのsFlt-1吸着量は、moPlGFやmoVEGF165と比較して、scVEGF165で有意に高かった(moVEGF165はmoPlGFと比較して、ヒト血清からのsFlt-1吸着量がわずかに優れていた)。sVEGF165をアガロースマトリックスに固定化したカラムでは、1回のランで86.16%という最大のsFlt-1減少率を達成した。その上、scVEGF165アガロースカラムの長期安定性を調べると、sFlt-1との結合がわずかに減少したのみであることが分かった。
【0172】
実施例3-sFlt-1捕獲用リガンドの特徴解析
次のステップでは、アガロースアフェレーシスカラムに固定化した各種VEGF-およびPlGF-変異体について、患者血清からのsFlt-1減少の実効性を評価した。
【0173】
アルデヒド活性化アガロースを担持したミニカラムに、VEGF変異体またはPlGF変異体を等量ロードした(表2)。また、抗体ベースのアフェレーシスカラムを1本作製して、参照コントロールとした。sFlt-1、VEGF、PlGF濃度は、コントロールカラムまたはそれぞれのVEGF変異体、PlGF変異体、Flt-1特異抗体を備えたカラムでの一回のラン前後で、市販ELISAキットを用いて子癇前症の患者の血清サンプルで測定した。コントロールカラムにサンプルを掛けた後でもsFlt-1濃度、PlGF濃度、VEGF濃度に差がないのに対し、sFlt-1レベルは特定のリガンドに依存して様々な量に減少した(
図4A)。moVEGF
165をカラムに固定化した場合、患者血清を1回通すことでsFlt-1が77.15%減少し、これは抗体カラムで得られた減少率と同じであった。一方、moVEGF
165と比較してmoPlGFの結合親和性と容量が低いため、予想通り(Christingerら、2004年)、moPlGFカラムを用いた吸着では、sFlt-1が46.18%しか減少しなかった。moVEGFカラムではPlGFとVEGFの遊離が認められたが、moPlGFカラムではPlGFの遊離のみが検出されVEGFの遊離はなく、抗体カラムではVEGFもPlGFも遊離しなかった(
図4B+C)。
【0174】
注目すべきことに、患者血清を用いた吸着実験では、改変型一本鎖VEGF二量体(scVEGF
165)は一回のランでsFlt-1を89.87%減少させ(
図4A)、同時にVEGFとPlGFを大量に放出した(
図4B+C)。興味深いことに、PlGFについては、最適化された多量体化方法では、sFlt-1結合とPlGF放出に同程度にしか影響を与えなかった(
図4A)。scPlGFカラムでは、moPlGFカラムと比較して、sFlt-1結合がわずかに増強されただけで、PlGF放出に有意差は認められなかった(
図4A+B)。予想通り、moPlGFと同様に、scPlGFカラムは内因性VEGFを放出しなかった(
図4C)。
【0175】
フロースルー中のVEGFまたはPlGFレベルの増加は、カラムからの組換えタンパク質の漏出を表しているかもしれないという考えは、血清サンプルを通した後にStrepタグ付きVEGFまたはPlGFを有するカラムのフロースルーからStrepタグ付きタンパク質を精製する検証により否定された。テストしたすべてのコンストラクトについて、Strep特異的一次抗体を用いたウェスタンブロット分析では、漏出したタンパク質は検出されなかった(
図9)。
【0176】
結果:VEGFとPlGFの変異体を固定化したカラムおよびFlt-1特異的抗体を用いたカラムでは、いずれもサンプル中のsFlt-1が減少した。sFlt-1の減少はscVEGF
165カラムで最も大きく(p<0.0001)、他のすべてのVEGFとPlGFの変異体およびFlt-1特異的抗体は、sFlt-1をより低い効率で減少させた(
図4A)。VEGFとPlGFのカラムを用いたアフェレーシスの結果、scVEGF
165で最も顕著にPlGFを放出したが(p<0.0001)、moVEGF
165を用いたアフェレーシスではscVEGF
165の半分の量しかPlGFが放出されなかった。sFlt-1抗体を用いたアフェレーシスでは、有意なPlGFの放出が起きなかった(
図4B)。VEGFの放出は、VEGF変異体を含むアフェレーシスカラムでのみ起こり、やはりscVEGF
165で最も顕著であった(p<0.0001)。PlGF変異体やFlt-1特異的抗体を用いたカラムを使用して血清サンプルをアフェレーシスした結果、VEGFの遊離は起きなかった(
図4C)。
【0177】
実施例4-独立した患者サンプルにおけるscVEGF
165
ベースのアフェレーシスの検証
臨床的に子癇前症が疑われ、sFlt-1/PlGF比が高い、妊娠年齢の異なる10名の独立した患者の血清サンプルにおいて、sVEGF165カラムによるsFlt-1減少率およびVEGF/PlGF放出が立証された。
【0178】
結果:すべての患者サンプルにおいて、sFlt-1が88%(平均)(中央値92.2%;SD5.27)が減少し(
図5A)、PlGFが初期レベルの20倍(平均)(中央値14.57倍;SD5.40)放出され(
図5B)、VEGFが初期レベルの9.07倍(平均)(中央値8.74;SD4.15)放出される(
図5C)ことがscVEGF
165カラムの1回のランで達成された。
【0179】
Flt-1特異的抗体を用いたアフェレーシスシステムでは、sFlt-1レベルは低下するが、内因性PlGFやVEGFは遊離しない(
図6A)。PlGFを含む吸着カラムはsFlt-1を保持し、低量の内因性PlGFを遊離するが、内因性VEGFは遊離しない(
図6B)。単量体VEGF
165カラムはsFlt-1を捕獲し、大量のPlGFとVEGFも放出する(
図6C)。sFlt-1に対するscVEGF
165の結合特性が向上した結果、sFlt-1を最も効率的に吸着し、PlGFとVEGFを競合的に放出し、子癇前症における血管新生バランスを回復させることにつながる(
図6D)。
【0180】
一般に、抗体を介したアフェレーシスやmoVEGFまたはPlGFベースのアプローチと比較して、scVEGF
165ベースのアフェレーシスのユニークな特徴は、sFlt-1に対する親和性が高く、したがってVEGFやPlGFを効率的に放出できることだ(
図6)。
【0181】
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【国際調査報告】