(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】メソゲン化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 69/92 20060101AFI20230630BHJP
C08F 20/30 20060101ALI20230630BHJP
C07C 69/75 20060101ALI20230630BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20230630BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20230630BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20230630BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20230630BHJP
G02B 5/23 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C07C69/92
C08F20/30
C07C69/75 Z
C07F7/08 X
C09K9/02 B
A61L27/18
A61L27/40
G02B5/23
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558102
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2020058782
(87)【国際公開番号】W WO2021190765
(87)【国際公開日】2021-09-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316008983
【氏名又は名称】トランジションズ オプティカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Transitions Optical Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヤンニアン
(72)【発明者】
【氏名】レディ, ラマイアガリ
(72)【発明者】
【氏名】グラブ, アラン エム.
(72)【発明者】
【氏名】クマール, アニル
【テーマコード(参考)】
2H148
4C081
4H006
4H049
4J100
【Fターム(参考)】
2H148DA04
2H148DA22
2H148DA24
4C081AB22
4C081AB23
4C081BB03
4C081CA162
4C081DC03
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB64
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BP30
4H006KC20
4H006KC30
4H049VN01
4H049VP02
4H049VP03
4H049VP06
4H049VP08
4H049VR21
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR41
4H049VR42
4H049VR43
4J100AL08P
4J100BA02P
4J100BA15P
4J100BC04P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA55
4J100DA66
(57)【要約】
本発明は、3つ又は4つの別個の延長部が結合されている多価非メソゲンコアXを含む、任意選択的に重合可能なメソゲン化合物であって、各延長部は、独立して、連結基-L-とメソゲン基-[メソゲン]とを順に含む、任意選択的に重合可能なメソゲン化合物に関する。メソゲン化合物は、以下の式(1)
によって表される。式(I)に関して、vは、3又は4であり;tは、0又は1であり;少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも4つの環状基を含み;各-L-は、独立して、少なくとも15個の結合の平均鎖長を有し;及び少なくとも1つの-L-は、少なくとも25個の結合の平均鎖長を有する。そのようなメソゲン化合物を含む液晶組成物及びそのようなメソゲン化合物を含む光学素子も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)
【化46】
(式中、
vは、3又は4であり、
tは、0又は1であり、
(A)各メソゲンは、各vについて独立して、以下の式(II)
【化47】
によって表され、式(II)について、
Pは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択され;
S
1、S
2、S
3及びS
4は、各存在について独立して、-CH
2-;-O-;-C(O)-;-N=N-;-CH=CH-;-C≡C-;-CH=N-;-CF
2-;又は-NH-から選択されるスペーサー単位から選択され、ただし、ヘテロ原子を含む2つのスペーサー単位が一緒に結合されている場合、前記スペーサー単位は、ヘテロ原子が互いに直接結合されないように結合されていることを条件とし;
dは、0~20であり;
e、f及びgは、各存在について独立して、0~3であり;
Q
1、Q
2及びQ
3は、各存在について独立して、無置換又は置換環状脂肪族基;無置換又は置換ヘテロ環状脂肪族基;無置換又は置換アリール;及び無置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択される二価の基であり;それぞれの環状脂肪族基の置換基、それぞれのヘテロ環状脂肪族基の置換基、それぞれのアリールの置換基及びそれぞれのヘテロアリールの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
e’及びf’は、各存在について独立して、0~6であり、ただし、e’とf’との合計は、少なくとも2であることを条件とし;
(B)各-L-は、各vについて独立して、以下の式(III)
【化48】
によって表され、式中、
(i)yは、0~30であり;
(ii)各Aは、各yについて独立して、単結合、脂肪族基及びハロ脂肪族基からなる群から選択される二価の基であり;
(iii)各Bは、各yについて独立して、-O-;-C(O)O-;-OC(O)O-;-C(O)N(R
1)-(ここで、R
1は、H又はアルキルである);-NH-C(O)O-;-N(R
2)C(O)N(R
2)-(ここで、各R
2は、独立して、H又はアルキルから選択される);
【化49】
(ここで、nは、1~4であり、各R
aは、独立して、メチル、エチル又はフェニルであり、及び各R
3は、各nについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択される);
【化50】
(ここで、t’は、1~4であり、u’は、各t’について独立して、1~5であり、各R
16は、各t’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され、及び各R
17は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される);及び-Si(R
5)(R
5)-(ここで、各
5は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)からなる群から選択される二価の基であり;及び
(iv)Eは、脂肪族基及びハロ脂肪族基からなる群から選択される二価の基であり;
(C)Xは、Si;N;Ge;P;2~6個のSi原子を有するシロキサン;2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有するカルボシラン;1~10個の炭素原子を有する無置換又は置換脂肪族基;無置換又は置換環状脂肪族基;無置換又は置換ヘテロ環状脂肪族基;無置換又は置換アリール基;及び無置換又は置換ヘテロアリール基からなる群から選択される多価の基であり;それぞれの脂肪族基の置換基、それぞれの環状脂肪族基の置換基、それぞれのヘテロ環状脂肪族基の置換基、それぞれのアリールの置換基及びそれぞれのヘテロアリールの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
(D)R
4は、-(S
1)
d-P(ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである);=O;及び無置換又は置換フェニル基(ここで、それぞれのフェニルの置換基は、独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである)からなる群から選択され、
ただし、少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも4つの環状基を含むこと、及び
各-L-は、独立して、少なくとも15個の結合の平均鎖長を含むことと、更に、少なくとも1つの-L-は、少なくとも25個の結合の平均鎖長を含むこととを条件とする)
によって表されるメソゲン含有化合物。
【請求項2】
各メソゲンについて独立して且つ各式(II)について独立して、
Q
1、Q
2及びQ
3は、各存在について独立して、無置換又は置換シクロアルキル;無置換又は置換フェニル;無置換又は置換ナフチル;及び無置換又は置換トリプチセニルからなる群から選択される二価の基であり、それぞれのシクロアルキルの置換基、それぞれのフェニルの置換基、それぞれのナフチルの置換基及びそれぞれのトリプチセニルの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
Xは、Si;2~6個のSi原子を有するシロキサン;2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有するカルボシラン;及び1~10個の炭素原子を有する無置換又は置換脂肪族基からなる群から選択される多価の基であり、それぞれの脂肪族基の置換基は、独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである、請求項1に記載のメソゲン含有化合物。
【請求項3】
各メソゲンについて独立して且つ各式(II)について独立して、
Q
1、Q
2及びQ
3は、各存在について独立して、無置換又は置換1,4-シクロヘキシル;無置換又は置換1,4-フェニル;無置換又は置換1,5-ナフチル;無置換又は置換2,6-ナフチル;及び無置換又は置換1,8-ナフチルからなる群から選択される二価の基であり、それぞれの1,4-シクロアルキルの置換基、それぞれの1,4-フェニルの置換基、それぞれの1,5-ナフチルの置換基、それぞれの2,6-ナフチルの置換基及びそれぞれの1,8-ナフチルの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
Xは、Si;無置換又は置換C
1~C
10アルキル(ここで、それぞれのC
1~C
10アルキルの置換基は、独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである);以下の式(1)
【化51】
によって表されるシロキサン(ここで、式(1)について、各R
6は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される);及び以下の式(2)
【化52】
によって表されるカルボシラン(ここで、式(2)について、R
7は、1~5個の炭素原子を有する二価の脂肪族基であり、及び各R
8は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)からなる群から選択される多価の基である、請求項2に記載のメソゲン含有化合物。
【請求項4】
各メソゲンについて独立して且つ各式(II)について独立して、
Pは、水素、アルキル、アルコキシ、アクリレート又はメタクリレートから選択され;
式(III)について、
(i)yは、1~30であり;
(ii)各Aは、各yについて独立して、アルキル及びハロアルキルからなる群から選択される二価の基であり;
(iii)各Bは、各yについて独立して、-O-;-C(O)O-;-OC(O)O-;-C(O)N(R
1)-(ここで、R
1は、H又はアルキルである);-NH-C(O)O-;-N(R
2)C(O)N(R
2)-(ここで、各R
2は、独立して、H又はアルキルから選択される);
【化53】
(ここで、nは、1~4であり、各R
aは、独立して、メチル、エチル又はフェニルであり、及び各R
3は、各nについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択される);及び-Si(R
5)(R
5)-(ここで、各R
5は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)からなる群から選択される二価の基であり;及び
(iv)Eは、アルキル基及びハロアルキル基からなる群から選択される二価の基である、請求項3に記載のメソゲン含有化合物。
【請求項5】
少なくとも1つのメソゲンについて、式(II)のPは、それぞれの場合に独立して、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択される、請求項1に記載のメソゲン含有化合物。
【請求項6】
少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも1つのvについて、それぞれの場合に独立して、以下の式(IV)
【化54】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はハロアルコキシから選択され;及び
S
2、S
3、S
4、Q
2、Q
3、e’、f’、e、f及びgは、それぞれ独立して、式(II)に関して定義された通りである)
によって表される、請求項1に記載のメソゲン含有化合物。
【請求項7】
各vについて、各メソゲンは、同じである、請求項1に記載のメソゲン含有化合物。
【請求項8】
各-L-は、各vについて独立して、少なくとも25個の結合の平均鎖長を含む、請求項1に記載のメソゲン含有化合物。
【請求項9】
請求項1に記載のメソゲン含有化合物を含む液晶組成物。
【請求項10】
フォトクロミック化合物、二色性化合物又はフォトクロミック-二色性化合物の少なくとも1つを更に含む、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項11】
前記フォトクロミック-二色性化合物は、少なくとも1つのフォトクロミック部位を含み、及び前記フォトクロミック化合物及び前記フォトクロミック-二色性化合物の各フォトクロミック部位は、それぞれの場合に独立して、インデノ縮合ナフトピラン、ナフト[1,2-b]ピラン、ナフト[2,1-b]ピラン、スピロフルオロエノ[1,2-b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン、フルオロアンテノピラン、スピロピラン、ベンゾオキサジン、ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノキサジン、スピロ(インドリン)キノキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ジアリールアルキルエテン、ジアリールアルケニルエテン又はこれらの混合物から選択される、請求項10に記載の液晶組成物。
【請求項12】
基材と;
基前記材の表面の少なくとも一部上の層であって、請求項1に記載のメソゲン含有化合物を含む層と
を含む光学素子。
【請求項13】
前記基材と前記層との間に介在する配向層を更に含み、前記配向層は、磁場、電場、直線偏光放射、せん断力又はこれらの2つ以上の組み合わせの少なくとも1つへの曝露により、少なくとも部分的に配向可能である、請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
ディスプレイ要素、窓、鏡、液晶セル要素又は眼科用要素から選択される、請求項13に記載の光学素子。
【請求項15】
前記眼科用要素は、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ又はバイザーから選択される、請求項14に記載の光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つ又は4つの別個の延長部が結合されている多価非メソゲンコアを含む、任意選択的に重合可能なメソゲン化合物であって、各延長部は、独立して、連結基とメソゲン基とを順に含む、任意選択的に重合可能なメソゲン化合物、そのようなメソゲン化合物を含む液晶組成物及びそのようなメソゲン化合物を含む光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶の分子は、典型的には、実質的に一方向に互いに整列することができ、その結果、光学的、電磁気的及び/又は機械的な特性などに関して異方特性を有する流体材料が得られる。メソゲンは、典型的には、液晶(存在する他の液晶材料など)において構造秩序を誘導し、且つ/又はその中に誘導される液晶材料の主要な又は基本の単位(又はセグメント若しくは基)として説明される。
【0003】
液晶ポリマーは、液相中にある間、高度に秩序化された構造の領域を形成することができるポリマーである。液晶ポリマーは、エンジニアリングプラスチック及び液晶ディスプレイ(LCD)用ゲルなど、幅広い用途を有する。液晶ポリマーの構造は、ほぼポリマーの融点まで自己強化する、密に充填された細長いポリマー鎖から構成されると説明され得る。
【0004】
分子構造の光学的異方性、又は不純物の存在、又は二色性染料及び/若しくはフォトクロミック-二色性材料の存在に起因して、メソゲン化合物を含む液晶中で二色性が生じる場合がある。本明細書で使用される「二色性」という用語及び「二色性の」などの同様の用語は、放射(透過及び/又は反射した放射を含む)の2つの直交平面偏光成分の1つを他の直交平面偏光成分よりも強く吸収する能力を意味する。フォトクロミック-二色性材料は、フォトクロミック特性及び二色性の特性の両方を有する。フォトクロミック-二色性材料は、いくつかの例では、フォトクロミック分子(又はコア若しくは部位)を含むものとして説明され得、これに少なくとも1つの延長基が共有結合され、その少なくとも一部は、メソゲン材料と(又はメソゲン材料によって)整列することができる。
【0005】
メソゲン化合物などの液晶材料と組み合わせて使用すると、偏光効率及び吸収比などのフォトクロミック-二色性化合物の二色性の特性を高めることができる。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、手元にある証拠に基づくと、フォトクロミック-二色性化合物を、整列したメソゲン化合物と整列させると、吸収比(AR)の値の改善など、フォトクロミック-二色性化合物の二色性の特性が高まると考えられる。
【0006】
フォトクロミック-二色性化合物のフォトクロミック特性は、そのフォトクロミック部分が吸収(又は着色状態)と非吸収(又は非着色状態)との間で可逆的なコンフォメーション変化を効率的に生じることができる化学環境によって強化することができる。定量化可能なフォトクロミック特性の例としては、限定するものではないが、退色度(退色半減期、T1/2と呼ばれる場合もある);光学濃度の変化(ΔODと呼ばれる場合もある);飽和時の光学濃度の変化(ΔOD);感度(ΔOD/分と呼ばれる場合もある);フォトクロミック化合物がフォトクロミック化合物を活性化するのに必要な放射を吸収する効率(色度と呼ばれる場合もある)が挙げられる。整列したメソゲン化合物によって提供される化学環境は、フォトクロミック-二色性化合物の二色性部分の二色性の特性を高める一方、場合によりフォトクロミック-二色性化合物のフォトクロミック部分の効率的な可逆的コンフォメーション変化を逆に制限又は抑制する化学環境を提供することができる。
【0007】
フォトクロミック-二色性化合物などの二色性材料の二色性の特性を更に高めることができる新規なメソゲン化合物を開発することが望ましいであろう。更に、そのような新たに開発されたメソゲン化合物は、それと一緒に使用されるフォトクロミック-二色性材料のフォトクロミック特性を維持又は増強することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の式(I)
【化1】
(式中、
vは、3又は4であり、
tは、0又は1であり、
(A)各メソゲンは、各vについて独立して、以下の式(II)
【化2】
によって表され、式(II)について、
Pは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択され;
S
1、S
2、S
3及びS
4は、各存在について独立して、-CH
2-;-O-;-C(O)-;-N=N-;-CH=CH-;-C≡C-;-CH=N-;-CF
2-;又は-NH-から選択されるスペーサー単位から選択され、ただし、ヘテロ原子を含む2つのスペーサー単位が一緒に結合されている場合、ヘテロ原子が互いに直接結合されないようにスペーサー単位が結合されていることを条件とし;
dは、0~20であり;
e、f及びgは、各存在について独立して、0~3であり;
Q
1、Q
2及びQ
3は、各存在について独立して、無置換又は置換環状脂肪族基;無置換又は置換ヘテロ環状脂肪族基;無置換又は置換アリール;及び無置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択される二価の基であり;それぞれの環状脂肪族基の置換基、それぞれのヘテロ環状脂肪族基の置換基、それぞれのアリール基の置換基及びそれぞれのヘテロアリール基の置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
e’及びf’は、各存在について独立して、0~6であり、ただし、e’とf’との合計は、少なくとも2であることを条件とし;
(B)各-L-は、各vについて独立して、以下の式(III)
【化3】
によって表され、式中、
(i)yは、0~30であり;
(ii)各Aは、各yについて独立して、単結合、脂肪族基及びハロ脂肪族基からなる群から選択される二価の基であり;
(iii)各Bは、各yについて独立して、-O-;-C(O)O-;-OC(O)O-;-C(O)N(R
1)-(ここで、R
1は、H又はアルキルである);-NH-C(O)O-;-N(R
2)C(O)N(R
2)-(ここで、各R
2は、独立して、H又はアルキルから選択される);
【化4】
(ここで、nは、1~4であり、各R
aは、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択され、及び各R
3は、各nについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択される);
【化5】
ここで、t’は、1~4であり、u’は、各t’について独立して、1~5であり、各R
16は、各t’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され、及び各R
17は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される);及び-Si(R
5)(R
5)-(ここで、各R
5は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)からなる群から選択される二価の基であり;及び
(iv)Eは、脂肪族基及びハロ脂肪族基からなる群から選択される二価の基であり;
(C)Xは、Si;N;Ge;P(すなわちリン);2~6個のSi原子を有するシロキサン;2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有するカルボシラン;1~10個の炭素原子を有する無置換又は置換脂肪族基;無置換又は置換環状脂肪族基;無置換又は置換ヘテロ環状脂肪族基;無置換又は置換アリール基;及び無置換又は置換ヘテロアリール基からなる群から選択される多価の基であり;それぞれの脂肪族基の置換基、それぞれの環状脂肪族基の置換基、それぞれのヘテロ環状脂肪族基の置換基、それぞれのアリールの置換基及びそれぞれのヘテロアリールの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;
(D)R
4は、-(S
1)
d-P(ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである);=O;及び無置換又は置換フェニル基(ここで、それぞれのフェニルの置換基は、独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである)
からなる群から選択され、
ただし、少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも4つの環状基を含むこと、及び
各-L-は、独立して、少なくとも15個の結合の平均鎖長を含むことと、更に、少なくとも1つの-L-は、少なくとも25個の結合の平均鎖長を含むこととを条件とする)
によって表されるメソゲン含有化合物が提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、式(I)に関して説明したような本発明のメソゲン含有化合物を含む液晶組成物が提供される。
【0010】
更に、本発明によれば、基材と、基材の表面の少なくとも一部上の層であって、式(I)に関して説明したような本発明のメソゲン含有化合物を含む層とを含む光学素子が提供される。
【0011】
本発明を特徴付ける特徴は、特許請求の範囲で詳細に指摘され、それらは、本開示の一部に付加され、本開示の一部を形成する。本発明のこれら及び他の特徴、その動作の利点及びその使用によって得られる特定の目的は、本発明の非限定的な実施形態が例示及び説明される以下の詳細な説明からより詳細に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
式(I)によって表されるものなどの本発明のメソゲン化合物は、本明細書において、「メソゲン(mesogen)化合物」、「メソゲン(mesogenic)化合物」、「メソゲン含有化合物」、「星型メソゲン化合物」及び「星型メソゲン含有化合物」と呼ばれる。
【0013】
本明細書で用いられる、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、明示的且つ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数形の指示対象を含む。
【0014】
別段の指示がない限り、本明細書で開示される全ての範囲又は比率は、それに含まれるあらゆる部分範囲又は部分比率を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」の指定された範囲又は比率は、最小値1~最大値10(両端値を含む)の任意の及びあらゆる部分範囲、すなわち、限定するものではないが、1~6.1、3.5~7.8及び5.5~10など、最小値が1以上で始まり、最大値が10以下で終わる全ての部分範囲又は部分比率を含むとみなすべきである。
【0015】
本明細書において、別段の指示がない限り、二価連結基などの連結基の左から右への表現は、右から左への方向など(ただし、これに限定されない)の他の適切な方向を含む。非限定的な説明の目的のため、二価の連結基の左から右への表現
【化6】
又は均等な-C(O)O-は、その右から左への表現
【化7】
又は均等な-O(O)C-若しくは-OC(O)-を包含する。
【0016】
実施例において又は別途指示がある場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合に「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。
【0017】
本明細書で用いる場合、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)などのポリマーの分子量の値は、ポリスチレン標準などの適切な標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0018】
本明細書で用いる場合、多分散指数(PDI)の値は、ポリマー重量平均分子量(Mw)の、数平均分子量(Mn)に対する比(すなわちMw/Mn)を表す。
【0019】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、ホモポリマー(例えば、単一のモノマー種から調製される)、コポリマー(例えば、少なくとも2つのモノマー種から調製される)及びグラフトポリマーを意味する。
【0020】
本明細書で用いられる「~の少なくとも1つ」は、要素が結合的に列挙されているか又は選言的に列挙されているかにかかわらず、「~の1つ又は複数」と同義である。例えば、「A、B及びCの少なくとも1つ」及び「A、B又はCの少なくとも1つ」という語句は、それぞれA、B若しくはCのいずれか1つ又はA、B若しくはCの任意の2つ以上の任意の組み合わせを意味する。例えば、Aのみ、又はBのみ、又はCのみ、又はA及びB、又はA及びC、又はB及びC、又はA、B及びCの全てである。
【0021】
本明細書で用いる場合、「~から選択される」は、要素が結合的に列挙されているか又は選言的に列挙されているかにかかわらず、「~から選ばれる」と同義である。更に、「A、B及びCから選択される」及び「A、B又はCから選択される」という語句は、それぞれA、B若しくはCのいずれか1つ又はA、B若しくはCの任意の2つ以上の任意の組み合わせを意味する。例えば、Aのみ、又はBのみ、又はCのみ、又はA及びB、又はA及びC、又はB及びC、又はA、B及びCの全てである。
【0022】
本明細書における本発明の説明は、特定の特徴を、特定の限定内において「特に」又は「好ましくは」(例えば、特定の限定内において「好ましくは」、「より好ましくは」又は「更により好ましくは」)として記載される場合がある。本発明は、これらの特定の又は好ましい限定に又はそれによって限定されるものではなく、本開示の範囲全体を包含することが理解されるべきである。
【0023】
本明細書で用いられる「フォトクロミック」という用語及び「フォトクロミック化合物」などの類似の用語は、少なくとも化学線の吸収に応答して変化する少なくとも可視光線のための吸収スペクトルを有することを意味する。更に、本明細書で用いられる「フォトクロミック材料」という用語は、フォトクロミック特性を示すように適合され(少なくとも化学線の吸収に応答して変化する少なくとも可視放射線のための吸収スペクトルを有するように適合されるなど)、且つ少なくとも1つのフォトクロミック化合物を含む任意の物質を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる「化学線」という用語は、本明細書で更に詳細に説明されるように、限定するものではないが、フォトクロミック材料を1つの形態又は状態から別の形態又は状態へ変形することなど、材料において応答を生じることが可能な電磁放射を意味する。
【0025】
本明細書において、「フォトクロミック材料」という用語には、熱可逆性フォトクロミック材料及び化合物並びに非熱可逆性フォトクロミック材料及び化合物が含まれる。本明細書で用いられる「熱可逆性フォトクロミック化合物/材料」という用語は、化学線に応答して第1の状態(「透明状態」など)から第2の状態(「着色状態」など)に転換すること及び熱エネルギーに応答して第1の状態に戻ることが可能な化合物/材料を意味する。「非熱可逆性フォトクロミック化合物/材料」という用語は、本明細書で用いる場合、化学線に応答して第1の状態(「透明状態」など)から第2の状態(「着色状態」など)に転換することができ、且つ着色状態の吸収と実質的に同じ波長の化学線に応答して第1の状態に戻ることができる化合物/材料を意味する。
【0026】
本明細書で用いられる「状態」という用語を修飾するための「第1の」及び「第2の」という用語は、任意の特定の順序又は時系列を指すことを意図するものではなく、2つの異なる状態又は特性を指すことを意図するものである。非限定的な例示の目的のため、フォトクロミック化合物の第1の状態及び第2の状態は、可視光線及び/又はUV照射の吸収などであるが、これらに限定されない、少なくとも1つの光学特性に関して異なり得る。したがって、本明細書で開示される様々な非限定的な実施形態によれば、本発明に関連して使用されるフォトクロミック化合物は、第1の状態及び第2の状態のそれぞれにおいて異なる吸収スペクトルを有することができる。例えば、本明細書において限定するものではないが、本発明に関連して使用されるフォトクロミック化合物は、第1の状態で透明であり、第2の状態で着色され得る。代替的に、本発明に関連して使用されるフォトクロミック化合物は、第1の状態で第1の色を有し、第2の状態で第2の色を有し得る。更に、本発明に関連して使用されるフォトクロミック-二色性化合物は、第1の状態で第1の配向を有し、第2の状態で第2の配向を有することができ、第1の配向及び第2の配向の1つは、実質的に非配向である。
【0027】
本明細書で用いられる「光学」という用語は、光及び/又は視覚に関するか又は関連付けられることを意味する。例えば、本明細書で開示される様々な非限定的な実施形態によれば、光学物品又は要素又はデバイスは、眼科用物品、要素及びデバイス、ディスプレイ物品、要素及びデバイス、窓、鏡並びにアクティブ及びパッシブ液晶セル物品、要素及びデバイスから選択することができる。
【0028】
本明細書で用いられる「眼科用」という用語は、目及び視覚に関するか又は関連付けられることを意味する。眼科用物品又は要素の非限定的な例としては、シングルビジョン又はセグメント化若しくは非セグメント化マルチビジョンレンズであり得るマルチビジョンレンズ(バイフォーカルレンズ、トライフォーカルレンズ及びプログレッシブレンズなどであるが、これらに限定されない)を含む矯正レンズ及び非矯正レンズ並びにコンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ及び保護レンズ又はバイザーなど(ただし、これらに限定されない)、視覚を矯正、保護又は強化する(美容的又は他に)ために使用される他の要素が挙げられる。
【0029】
本明細書で用いられる「ディスプレイ」という用語は、単語、数字、記号、デザイン又は図における情報の可視表現又は機械読取可能表現を意味する。ディスプレイ要素の非限定的な例としては、スクリーン、モニタ及びセキュリティマークなどのセキュリティ要素が挙げられる。
【0030】
本明細書で用いられる「窓」という用語は、放射の透過を可能にするように適合された開口を意味する。窓の非限定的な例は、自動車及び航空機のトランスペアレンシー、ウィンドシールド、フィルター、シャッター及び光学スイッチを含む。
【0031】
本明細書で用いられる「鏡」という用語は、入射光の大部分を鏡面反射する面を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる「液晶セル」という用語は、整列されることが可能な液晶材料を含む構造を指す。液晶セル要素の非限定的な例は、液晶ディスプレイである。
【0033】
本明細書において使用される、「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上」、「下」などの空間的又は方向的な用語は、本発明の様々な実施形態を説明するために使用することができる。しかしながら、本発明は、様々な代替の向きをとることができると理解されるべきであり、したがって、このような用語は、限定的であるとみなされるべきではない。
【0034】
本明細書で使用される「上に形成された」、「上に堆積された」、「上に設けられた」、「上に塗布された」、「上に存在する」又は「上に配置された」という用語は、上に形成されるか、堆積されるか、設けられるか、塗布されるか、存在するか又は配置されるが、必ずしも下にある要素又は下にある要素の表面に直接(又は隣接して)接触していないことを意味する。例えば、基材の「上に配置された」層は、配置又は形成された層と基材との間に位置する、同じ又は異なる組成の1つ以上の他の層、コーティング又はフィルムの存在を排除しない。
【0035】
本明細書で言及される発行特許及び特許出願などの、ただし、これらに限定されない全ての文献は、別段の指示がない限り、その全体が「参照により組み込まれる」とみなされるべきである。
【0036】
本明細書で用いる場合、用語「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸エステル」などの同様の用語は、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。本明細書において且ついくつかの実施形態によれば、本発明のメソゲン化合物の基及び様々な基の置換基に関するものなどの「(メタ)アクリレート」という用語並びに「(メタ)アクリレート基」及び「(メタ)アクリレート置換基」などの関連する用語は、-O-C(O)-C(R’)=CH2によって表される物質を含み、R’は、水素又はメチルである。本明細書で使用される「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味する。本明細書において、用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド(-N(H)-C(O)-C(H)=CH2)及びメタクリルアミド(-N(H)-C(O)-C(CH3)=CH2)を意味する。
【0037】
本明細書において且ついくつかの実施形態によれば、本発明のメソゲン含有化合物の基及び様々な基の置換基に関するものなどの用語「カルボン酸」という用語並びに「カルボン酸基」及び「カルボン酸置換基」などの関連する用語は、-C(O)OHによって表される物質を含む。
【0038】
本明細書において且ついくつかの実施形態によれば、本発明のメソゲン含有化合物の基及び様々な基の置換基に関するものなどの「カルボン酸エステル」という用語並びに「カルボン酸エステル基」及び「カルボン酸エステル置換基」などの関連する用語は、-C(O)ORによって表される物質を意味し、Rは、例えば、脂肪族基、環状脂肪族基、ヘテロ環状脂肪族基、アリール基及びヘテロアリール基から選択される。
【0039】
本明細書において使用される用語「脂肪族」及び「脂肪族基」などの関連する用語は、C1~C20脂肪族基、又はC1~C10脂肪族基、又はC1~C6脂肪族基など、少なくとも1個の炭素原子、例えば1~20個の炭素原子を含む非環状且つ非芳香族の炭化水素基を意味し、直鎖又は分岐であり得;任意選択的に1つ以上の内部及び/又は末端アルケン(又はアルケニル)基を含み;任意選択的に1つ以上の内部及び/又は末端アルキン(又はアルキニル)基を含む。2つ以上のアルケン基を含む場合、脂肪族基のアルケン基は、共役及び/又は非共役であり得る。2つ以上のアルキン基を含む場合、脂肪族基のアルキン基は、共役及び/又は非共役であり得る。少なくとも1つのアルケン基と少なくとも1つのアルキン基とを含む場合、脂肪族基のアルケン基及びアルキン基は、互いに対して共役及び/又は非共役であり得る。
【0040】
脂肪族基の例としては、限定するものではないが、アルキル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「アルキル」及び「アルキル基」などの関連する用語は、C1~C20アルキル基、又はC1~C10アルキル基、又はC1~C6アルキル基など、少なくとも1個の炭素原子、例えば1~20個の炭素原子を含む基を意味し、直鎖又は分岐であり;飽和している(したがってアルケン基及びアルキン基を含まない)。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、直鎖又は分岐ペンチル、直鎖又は分岐ヘキシル、直鎖又は分岐ヘプチル、直鎖又は分岐オクチル、直鎖又は分岐ノニル、直鎖又は分岐デシル、直鎖又は分岐ウンデンシル、直鎖又は分岐ドデシル、直鎖又は分岐トリデシル、直鎖又は分岐テトラデシル、直鎖又は分岐ペンタデシル、直鎖又は分岐ヘキサデシル、直鎖又は分岐ヘプタデシル、直鎖又は分岐オクタデシル、直鎖又は分岐ノナデシル及び直鎖又は分岐エイコサニルが挙げられる。
【0041】
本明細書で用いる場合、直鎖又は分岐アルキルなどの(ただし、これに限定されない)「直鎖又は分岐」基の記載は、本明細書において、非限定的な例示を目的として、メチレン基又はメチル基;直鎖C2~C20アルキル基などの直鎖の基;及び分岐C3~C20アルキル基などの(ただし、これに限定されない)適切に分岐している基を含むと理解される。
【0042】
脂肪族基の例としては、限定するものではないが、アルケニル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「アルケニル」及び「アルケニル基」などの関連する用語は、C2~C20アルケニル基、又はC2~C10アルケニル基、又はC2~C6アルケニル基など、少なくとも2個の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子を含む基を意味し、直鎖又は分岐であり;1つ以上の内部及び/又は末端アルケン(又はアルケニル)基を含む。アルケニル基の例としては、限定するものではないが、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1個のアルケン(又はアルケニル)基とを有する、本明細書において上記で記載した直鎖又は分岐アルキル基の例が挙げられ、例えば、限定するものではないが、エテニル、直鎖又は分岐プロペニル、直鎖又は分岐ブテニル、直鎖又は分岐ペンテニル、直鎖又は分岐ヘキセニルなどである。
【0043】
脂肪族基の例としては、限定するものではないが、アルキニル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「アルキニル」及び「アルキニル基」などの関連する用語は、C2~C20アルキニル基、又はC2~C10アルキニル基、又はC2~C6アルキニル基など、少なくとも2個の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子を含む基を意味し、直鎖又は分岐であり;1つ以上の内部及び/又は末端アルキン(又はアルキニル)基を含む。アルキニル基の例としては、限定するものではないが、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1個のアルキン(又はアルキニル)基とを有する、本明細書において上記で記載した直鎖又は分岐アルキル基の例が挙げられ、例えば、限定するものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、直鎖又は分岐ペンチニル、直鎖又は分岐ヘキシニルなどである。
【0044】
本明細書において使用される用語「ハロ脂肪族」及び「ハロ脂肪族基」などの関連する用語は、C1~C20ハロ脂肪族基、又はC1~C10ハロ脂肪族基、又はC1~C6ハロ脂肪族基など、少なくとも1個の炭素原子、例えば1~20個の炭素原子を含む非環状且つ非芳香族の炭化水素基を意味し;フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)から選択される少なくとも1つのハロ基を含み;直鎖又は分岐であり;任意選択的に1つ以上の内部及び/又は末端アルケン基を含み;任意選択的に1つ以上の内部及び/又は末端アルキン基を含む。2つ以上のアルケン基を含む場合、ハロ脂肪族基のアルケン基は、共役及び/又は非共役であり得る。2つ以上のアルキン基を含む場合、ハロ脂肪族基のアルキン基は、共役及び/又は非共役であり得る。少なくとも1つのアルケン基と少なくとも1つのアルキン基とを含む場合、ハロ脂肪族基のアルケン基及びアルキン基は、互いに対して共役及び/又は非共役であり得る。ハロ脂肪族基の少なくとも1つの利用可能な水素及び最大で全ての利用可能な水素は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)から選択されるものなどのハロ基で置き換えることができる。結果として、本明細書で使用される「ハロ脂肪族」という用語は、限定するものではないが、「パーハロ脂肪族」及び「パーハロ脂肪族基」などの関連する用語を含む。
【0045】
ハロ脂肪族基の例としては、限定するものではないが、ハロアルキル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「ハロアルキル」及び「ハロアルキル基」などの関連する用語は、C1~C20ハロアルキル、又はC1~C10ハロアルキル、又はC1~C6ハロアルキルなど、少なくとも1個の炭素原子、例えば1~20個の炭素原子を含む基を意味し、直鎖又は分岐であり;フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)から選択されるものなどの少なくとも1つのハロ基を含み;飽和している(したがってアルケン基及びアルキン基を含まない)。ハロアルキル基の少なくとも1つの利用可能な水素及び最大で全ての利用可能な水素は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)から選択されるものなどのハロ基で置き換えることができる。結果として、本明細書で使用される「ハロアルキル」という用語は、限定するものではないが、「パーハロアルキル」及び「パーハロアルキル基」などの関連する用語を含む。ハロアルキル基の例としては、限定するものではないが、少なくとも1つのハロ基を含む、上記で記載した直鎖又は分岐アルキル基の例が挙げられ、例えば、限定するものではないが、ハロメチル、ハロエチル、直鎖又は分岐ハロプロピル、直鎖又は分岐ハロブチル、直鎖又は分岐ハロペンチル、直鎖又は分岐ハロヘキシルなどであり、それぞれ独立して少なくとも1つのハロ基を含む。
【0046】
ハロ脂肪族基の例としては、限定するものではないが、ハロアルケニル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「ハロアルケニル」及び「ハロアルケニル基」などの関連する用語は、C2~C20ハロアルケニル、又はC2~C10ハロアルケニル、又はC2~C6ハロアルケニルなど、少なくとも2個の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子を含む基を意味し、直鎖又は分岐であり;フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)から選択されるものなどの少なくとも1つのハロ基を含み;1つ以上の内部及び/又は末端アルケン(又はアルケニル)基を含む。ハロアルケニル基の例としては、限定するものではないが、少なくとも2つの炭素原子と、少なくとも1つのアルケン(又はアルケニル)基と、少なくとも1つのハロ基とを有する、上記で記載した直鎖又は分岐アルキル基の例が挙げられ、例えば、限定するものではないが、ハロエテニル、直鎖又は分岐ハロプロペニル、直鎖又は分岐ハロブテニル、直鎖又は分岐ハロペンテニル、直鎖又は分岐ハロヘキセニルなどであり、それぞれ独立して少なくとも1つのハロ基を含む。
【0047】
ハロ脂肪族基の例としては、限定するものではないが、ハロアルキニル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「ハロアルキニル」及び「ハロアルキニル基」などの関連する用語は、C2~C20ハロアルキニル、又はC2~C10ハロアルキニル、又はC2~C6ハロアルキニルなど、少なくとも2個の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子を含む基を意味し、直鎖又は分岐であり;フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)から選択されるものなどの少なくとも1つのハロ基(又はハロゲン基)を含み;1つ以上の内部及び/又は末端アルキン(又はアルキニル)基を含む。ハロアルキニル基の例としては、限定するものではないが、少なくとも2つの炭素原子と、少なくとも1つのアルキン(又はアルキニル)基と、少なくとも1つのハロ基とを有する、上記で記載した直鎖又は分岐アルキル基の例が挙げられ、例えば、限定するものではないが、ハロエチニル、ハロプロピニル、ハロブチニル、直鎖又は分岐ハロペンチニル、直鎖又は分岐ハロヘキシニルなどなどであり、それぞれ独立して少なくとも1つのハロ基を含む。
【0048】
本明細書において使用される用語「環状脂肪族」及び「環状脂肪族基」などの関連する用語は、C3~C20環状脂肪族基、又はC3~C10環状脂肪族基、又はC3~C8環状脂肪族基など、少なくとも3個の炭素原子、例えば3~20個の炭素原子を含む環状且つ非芳香族の炭化水素基を意味し;任意選択的にアルケン及び/又はアルキンから選択される少なくとも1つの不飽和基を含み;任意選択的に2つ以上の縮合環状脂肪族環を含む。
【0049】
環状脂肪族基の例としては、限定するものではないが、シクロアルキル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「シクロアルキル」及び「シクロアルキル基」などの関連する用語は、C3~C20シクロアルキル基、又はC3~C10シクロアルキル基、又はC3~C8シクロアルキル基など、少なくとも3個の炭素原子、例えば3~20個の炭素原子を含む基を意味し;任意選択的にアルケン及び/又はアルキンから選択される少なくとも1つの不飽和基を含み;任意選択的に2つ以上の縮合環状脂肪族環を含む。シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;シクロノニル;シクロデシル;シクロウンデシル;シクロドデシル;ノルボルニル;デカヒドロナフタレニル;テトラデカヒドロアントラセニル;テトラデカヒドロフェナントレニル;及びドデカヒドロ-1H-フェナレニルが挙げられる。
【0050】
本明細書において使用される用語「ヘテロ環状脂肪族」及び「ヘテロ環状脂肪族基」などの関連する用語は、C2~C20ヘテロ環状脂肪族基、又はC2~C10ヘテロ環状脂肪族基、又はC2~C8ヘテロ環状脂肪族基など、少なくとも2個の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子を含む環状且つ非芳香族の基を意味し;O、S、N、P及びそれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない少なくとも1個のヘテロ原子を環内に有し;任意選択的にアルケン及び/又はアルキンから選択される少なくとも1つの不飽和基を含み;任意選択的に2つ以上の縮合非芳香族環を含み、その少なくとも1つは、縮合ヘテロ環状脂肪族環である。
【0051】
ヘテロ環状脂肪族基の例としては、限定するものではないが、ヘテロシクロアルキル基が挙げられる。本明細書において使用される用語「ヘテロシクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル基」などの関連する用語は、C2~C20ヘテロシクロアルキル基、又はC2~C10ヘテロシクロアルキル基、又はC2~C8ヘテロシクロアルキル基など、少なくとも2個の炭素原子、例えば2~20個の炭素原子を含む基を意味し;O、S、N、P及びそれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない少なくとも1個のヘテロ原子を環内に有し;任意選択的にアルケン及び/又はアルキンから選択される少なくとも1つの不飽和基を含み;任意選択的に2つ以上の縮合非芳香族環を含み、その少なくとも1つは、縮合ヘテロシクロアルキル環である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、イミダゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、オクタヒドロシクロペンタ[b]ピラニル及びオクタヒドロ-1H-イソクロメニルが挙げられる。
【0052】
本明細書において使用される用語「アリール」及び「アリール基」などの関連する用語は、C6~C20アリール基又はC6~C14アリール基など、少なくとも6個の炭素原子を含む環状芳香族基を意味し;任意選択的に少なくとも2つの縮合環を含み、その少なくとも1つは、縮合芳香環である。アリール基の例としては、限定するものではないが、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントレニル、トリフェニレニル、9,10-ジヒドロアントラセニル、9,10-ジヒドロフェナントレニル及びトリプチセニルが挙げられる。
【0053】
本明細書において使用される用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロアリール基」などの関連する用語は、C3~C20ヘテロアリール基又はC5~C14ヘテロアリール基など、少なくとも3個の炭素原子と、芳香族環内の-O-、-N-及び/又は-S-などの少なくとも1つのヘテロ原子とを含む環状芳香族基を意味し;任意選択的に少なくとも2つの縮合環を含み、その少なくとも1つは、縮合ヘテロ芳香環である。ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアジニル、フラニル、チオフェニル、ピラニル、ピリジニル、イソキノリニル及びピリミジニルが挙げられる。
【0054】
本明細書において使用される用語「アルコキシ」及び「アルコキシ基」などの関連する用語は、-ORによって表される基を意味し、式中、Rは、1~20個の炭素原子などの少なくとも1つの炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基、例えばC1~C20アルキル、又はC1~C10アルキル、又はC1~C6アルキルであり、対応して、アルコキシ基は、例えば、C1~C20アルコキシ、又はC1~C10アルコキシ、又はC1~C6アルコキシである。アルコキシ基の例としては、限定するものではないが、末端二価酸素結合又は基(又は末端エーテル結合若しくは基)を含む、本明細書において上記で記載したアルキル基の例が挙げられ、例えば、限定するものではないが、メトキシ(CH3-O-)、エトキシ(CH3CH2-O-)、n-プロポキシ(CH3CH2CH2-O-)、イソプロポキシ、直鎖又は分岐ブトキシ、直鎖又は分岐ペントキシ、直鎖又は分岐ヘキソキシなどである。
【0055】
本明細書において使用される用語「アミノ」及び「アミノ基」などの関連する用語は、-N(R11)(R12)によって表される基を含み、式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、例えば水素、脂肪族基、環状脂肪族基、ヘテロ環状脂肪族基、アリール基及びヘテロアリール基から選択される。本明細書において使用される用語「一級アミノ」及び「一級アミノ基」などの関連する用語は、-NH2によって表される基を意味する。
【0056】
本明細書において使用される用語「ハロゲン」、「ハロゲン基」及び/又は「ハロ基」などの関連する用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)及び/又はヨード(I)から選択されるものなど、単結合のハロゲン原子を意味する。
【0057】
本明細書において且つ特に明記のない限り、用語「水素」及び「水素基」などの関連する用語は、単結合の水素(-H)を意味する。
【0058】
式(II)に関して且ついくつかの実施形態によれば、Pは、アクリレート(CH
2=CHC(O)O-)、メタクリレート(CH
2=C(CH
3)C(O)O-);トリハロメタクリレート(CH
2=C(CX’
3)C(O)O-(各X’は、独立して、ハロゲン又はハロ基である);シアノアクリレート(CH
2=C(CN)C(O)O-);オキシラン
【化8】
;ヒドロキシル(-OH);一級アミノ(-NH
2);カルボン酸(-C(O)OH);カルボン酸エステル(-C(O)OR、本明細書で前述した通り);シロキサン;カルボシラン;シアノ(-CN);及びニトロ(-NO
2)から選択される。Pとして選択できるトリハロメタクリレートの例としては、限定するものではないが、トリフルオロメタクリレート及びトリクロロメタクリレートが挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、式(II)のPは、シロキサン基から選択される。いくつかの更なる実施形態では、式(II)のPは、2~6個のSi原子を有するシロキサンから選択される。いくつかの追加の実施形態によれば、式(II)のPは、以下の式(A)によって表されるシロキサン基から選択される。
【化9】
式(A)に関して、n’は、1~5であり;各R
13は、各n’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され;及び各R
14は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、式(II)のPは、カルボシラン基から選択される。いくつかの更なる実施形態によれば、式(II)のPは、2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有するカルボシラン基から選択される。
【0061】
いくつかの追加の実施形態によれば、式(II)のPは、以下の式(B)によって表されるカルボシラン基から選択される。
【化10】
式(B)に関して、t’は、1~4であり;uは、各t’について独立して、1~5であり;各R
16は、各t’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され;及び各R
17は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、式(II)に関して且つ各vについて独立して、下付き文字dは、各存在について独立して、0~20、又は0~15、又は0~12、又は0~10、又は0~8、又は0~5である。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、式(II)に関して且つ各vについて独立して、下付き文字e、f及びgは、各存在について独立して、0~3(0、1、2又は3など)である。
【0064】
いくつかの実施形態では、式(II)の各存在について、e’及びf’は、独立して、0~6(0、1、2、3、4、5又は6及びそれらの組み合わせなど)であり、ただし、e’とf’との合計は、少なくとも2、例えば2~10(2、3、4、5、6、7、8、9又は10など)、又は2~5(2、3、4又は5など)、又は2~4(2、3又は4など)であることを条件とする。
【0065】
更に、式(II)に関して、S1、S2、S3及びS4は、各存在について独立して、-CH2-;-O-;-C(O)-;-N=N-;-CH=CH-;-C≡C-;-CH=N-;-CF2-;又は-NH-から選択されるスペーサー単位から選択され、ただし、ヘテロ原子を含む2つのスペーサー単位が一緒に結合されている場合、スペーサー単位は、ヘテロ原子が互いに直接結合されないように結合されていることを条件とする。隣接するスペーサー単位は、一緒に、限定するものではないが、アルキル結合;エーテル結合;カルボン酸エステル結合、-O-C(O)-及び/又はC(O)-O-;カーボネート結合、-O-C(O)-O-;アミド結合、-NH-C(O)-及び/又は-C(O)-NH-;尿素結合、-NH-C(O)-NH-;カルバメート結合、-O-C(O)-NH-及び/又は-NH-C(O)-O-;ジオン結合、-C(O)-C(O)-;並びにこれらの組み合わせなど、様々な二価結合を形成することができ、ただし、スペーサー単位は、ヘテロ原子が互いに直接結合されないように結合されていることを条件とする。非限定的な例示を目的として且ついくつかの実施形態では、ヘテロ原子が互いに直接結合されないように結合されているスペーサー単位とは、限定するものではないが、-O-が-O-に直接結合されていないこと;-NH-が-NH-に直接結合されていないこと;-O-と-NH-とが互いに直接結合されていないこと;-N=N-が-N=N-に直接結合されていないこと;-N=N-が-O-に直接結合されていないこと;-N=N-が-NH-に直接結合されていないこと;-CH=N-の窒素が-CH=N-のNに直接結合されていないこと;及び-CH=N-のNが-O-、-NH-又は-N=N-に直接結合されていないことを意味する。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、且つ式(II)に関して、S1、S2、S3及びS4は、各存在について独立して、-(CH2)-、-O-、-C(O)-又は-NH-から選択されるスペーサー単位から選択され;下付き文字e、f及びgは、各存在について独立して、0~3(0、1、2又は3など)であり、ただし、ヘテロ原子を含む2つのスペーサー単位が一緒に結合されている場合、スペーサー単位は、ヘテロ原子が互いに直接結合されないように結合されていることを条件とする。
【0067】
式(II)に関して且つ本発明のいくつかの実施形態によれば、Q1、Q2及びQ3は、各存在について独立して、無置換若しくは置換シクロアルキル;無置換若しくは置換フェニル;無置換若しくは置換ナフチル;又は無置換若しくは置換トリプチセニルから選択される二価の基であり;それぞれのシクロアルキルの置換基、それぞれのフェニルの置換基、それぞれのナフチルの置換基及びそれぞれのトリプチセニルの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S1)d-Pから選択され、ここで、S1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである。
【0068】
いくつかの実施形態において且つ式(II)に関して、Q1、Q2及びQ3は、各存在について独立して、無置換又は置換1,4-シクロヘキシル;無置換又は置換1,4-フェニル;無置換又は置換1,5-ナフチル;無置換又は置換2,6-ナフチル;無置換又は置換1,8-ナフチル;及び無置換又は置換1,4-トリプチセニルからなる群から選択される二価の基であり;それぞれの1,4-シクロアルキルの置換基、それぞれの1,4-フェニルの置換基、それぞれの1,5-ナフチルの置換基、それぞれの2,6-ナフチルの置換基、それぞれの1,8-ナフチルの置換基及びそれぞれの1,4-トリプチセニルの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S1)d-Pから選択され、ここで、S1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、式(II)について、Pは、水素、アルキル、アルコキシ、アクリレート又はメタクリレートから選択され;及び式(III)は、以下の通りに更に説明される。式(III)について、(i)yは、1~30であり;(ii)各Aは、各yについて独立して、アルキル及びハロアルキルからなる群から選択される二価の基であり;(iii)各Bは、各yについて独立して、-O-;-C(O)O-;-OC(O)O-;-C(O)N(R
1)-(ここで、R
1は、H又はアルキルである);-NH-C(O)O-;-N(R
2)C(O)N(R
2)-(ここで、各R
2は、独立して、H又はアルキルから選択される);
【化11】
(ここで、nは、1~4であり、各R
aは、独立して、メチル、エチル又はフェニルであり、及び各R
3は、各nについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される);及び-Si(R
5)(R
5)-(ここで、各R
5は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)からなる群から選択される二価の基であり;及び(iv)は、アルキル基及びハロアルキル基からなる群から選択される二価の基である。
【0070】
式(I)の多価連結基Xは、いくつかの実施形態では、Si;2~6個のSi原子を有するシロキサン;2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有するカルボシラン;又は1~10個の炭素原子を有する無置換若しくは置換脂肪族基から選択され、それぞれの脂肪族基の置換基は、独立して、-(S1)d-Pから選択され、ここで、S1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである。
【0071】
いくつかの実施形態では、式(I)の多価連結基Xは、2~6個のSi原子又は2~5個のSi原子を有する多価シロキサンから選択される。いくつかの更なる実施形態では、式(I)のXとして選択することができる多価シロキサンは、2~6個のSi原子又は2~5個のSi原子を有する直鎖、分岐又は環状のシロキサンから選択される。いくつかの追加の実施形態では、Xとして選択することができる環状シロキサンには、シクロトリシロキサン及びシクロテトラシロキサンが含まれる。
【0072】
式(I)のXとして選択することができるシクロトリシロキサンとしては、限定するものではないが、以下の式(C)によって表されるものが挙げられる。
【化12】
【0073】
式(C)に関して、各R9は、独立して、メチル、エチル又はフェニルであり;式(I)のtは、0であり;及び式(I)のvは、3である。
【0074】
式(I)のXとして選択することができるシクロテトラシロキサンとしては、限定するものではないが、以下の式(D)によって表されるものが挙げられる。
【化13】
【0075】
式(D)に関して、各R10は、独立して、メチル、エチル又はフェニルであり;式(I)のtは、0であり;及び式(I)のvは、4である。
【0076】
いくつかの実施形態では、式(I)の多価連結基Xは、2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有する多価カルボシランから選択される。
【0077】
いくつかの更なる実施形態によれば、式(I)の多価連結基Xは、Si;無置換若しくは置換C1~C10アルキル(それぞれのC1~C10アルキルの置換基は、独立して-(S1)d-Pから選択され、ここで、S1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである);以下の式(1)によって表されるシロキサン;又は以下の式(2)によって表されるカルボシランから選択される。
【0078】
以下の式(1)に関して、各R
6は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される。
【化14】
【0079】
いくつかの実施形態では、式(1)は、式(I)のXとして選択することができる分岐多価シロキサンの非限定的な例である。
【0080】
式(I)の多価連結基Xは、いくつかの実施形態では、式(1)によって表され、式中、各R6は、独立して、メチル又はフェニルから選択される。
【0081】
以下の式(2)に関して、R
7は、1~5個の炭素原子を有する二価の脂肪族基であり、及び各R
8は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される。
【化15】
【0082】
式(I)の多価連結基Xは、いくつかの実施形態では、式(2)によって表され、式中、R7は、二価のC1~C5アルキル基であり;及び各R8は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される。いくつかの実施形態では、式(2)のR7は、-CH2CH2-である。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態において且つ及び式(I)に関して、下付き文字tは、0であり;下付き文字vは、4であり;及びXは、以下の式(1a)によって表されるシロキサンである。
【化16】
【0084】
式(1a)に関して、d’は、0~3であり;各R18は、各d’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され;及び各R19は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される。更に、式(1a)に関して、4つの単結合のそれぞれは、2つのSi原子から延びている満たされていない原子価を有し、独立して、式(I)の-L-[メソゲン]基(又は部分)への単結合を表す。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態において且つ式(I)に関して、下付き文字tは、0であり;下付き文字vは、4であり;及びXは、以下の式(2a)によって表されるカルボシランである。
【化17】
式(2a)に関して、qは、0~3(1~3など)であり;wは、各qについて独立して、1~3であり;各R
20は、各qについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され;yは、1~3であり;及び各R
21は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される。更に、式(2a)に関して、4つの単結合のそれぞれは、2つのSi原子から延びている満たされていない原子価を有し、独立して、式(I)の-L-[メソゲン]基(又は部分)への単結合を表す。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態において且つ式(I)に関して、下付き文字tは、0であり;下付き文字vは、4であり;及びXは、以下の式(3)によって表される。
【化18】
【0087】
本発明のいくつかの実施形態において且つ式(I)に関して、下付き文字tは、0であり;下付き文字vは、3であり;及びXは、以下の式(4)によって表される。
【化19】
【0088】
本発明のいくつかの実施形態において且つ式(I)に関して、下付き文字tは、0であり;下付き文字vは、4であり;及びXは、以下の式(5)によって表される。
【化20】
【0089】
式(I)に関して且ついくつかの実施形態によれば、多価連結基Xは、Siであり;tは、1であり;R
4は、-(S
1)
d-P(ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである)であり;及び下付き文字vは、3である。更に、式(I)に関して且ついくつかの実施形態によれば、多価連結基Xは、Siであり;tは、1であり;R
4は、-(S
1)
d-P(ここで、下付き文字dは、0であり、Pは、C
1~C
4アルキルなどのアルキルである)であり;及び下付き文字vは、3である。本発明のいくつかの実施形態において且つ式(I)に関して、下付き文字tは、1であり;R
4は、C
3H
7-であり;下付き文字vは、3であり;Xは、Siであり;及びR
4-Xは、以下の式(6)によって表される。
【化21】
【0090】
式(I)に関して且ついくつかの実施形態によれば、多価連結基Xは、P(すなわちリン)であり;下付き文字tは、1であり;R
4=Oであり;及び下付き文字vは、3である。本発明の更にいくつかの実施形態において且つ式(I)に関して、下付き文字tは、1であり;R
4=Oであり;下付き文字vは、3であり;Xは、P(すなわちリン)であり;及びR
4-Xは、以下の式(7)によって表される。
【化22】
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、式(I)のtは、0、1又は2である。いくつかの更なる実施形態では、tは、2であり、及び2つのR4基が一緒になって二重結合酸素基(すなわち=O)を規定する。
【0092】
式(I)に関して、XとR4との間の結合は、単結合として描かれているが、いくつかの実施形態では、選択されるR4に応じて、二重結合であり得る。説明の目的のため、R4が=Oから選択される場合、XとR4との間の結合は、二重結合(=)である。更なる説明の目的のため、R4が-(S1)d-Pから選択される場合、XとR4との間の結合は、単結合(-)である。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのメソゲンについて、式(II)のPは、それぞれの場合に独立して、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択される。
【0094】
本発明のいくつかの更なる実施形態では、式(I)の各メソゲンは、各vについて独立して、以下の式(IV)によって表される。
【化23】
【0095】
式(IV)に関して且ついくつかの更なる実施形態によれば、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はハロアルコキシから選択され;S2、S3、S4、Q2、Q3、e’、f’、e、f及びgは、それぞれ独立して、式(II)に関して本明細書において上記で定義及び記載された通りである。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式(I)の少なくとも1つのメソゲンは、各vについて独立して、式(IV)によって表される。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、式(I)の少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも1つの下付き文字vについて及び全てより少ない下付き文字v’について、それぞれの場合に独立して、式(II)によって表され、式(II)のPは、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択される。更なるそのような実施形態によれば、少なくとも1つの下付き文字vについて及び全てより少ない下付き文字v’について、少なくとも1つの式(I)のメソゲンは、それぞれの場合に独立して、上記の式(IV)によって表され、式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はハロアルコキシから選択され;S2、S3、S4、Q2、Q3、e’、f’、e及びfは、それぞれ独立して、式(II)に関して本明細書において上記で定義及び記載された通りである。
【0098】
非限定的な説明のために、式(IV)の末端R置換二価1,4-シクロヘキシル部分
【化24】
は、式(II)の-Q
1-(S
1)
d-P末端部分から誘導され、式中、Q
1は、二価の1,4-シクロヘキシル基であり;下付き文字dは、0であり;及びPは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はハロアルコキシ(Rとして示される)から選択される。
【0099】
本発明のメソゲン含有化合物のいくつかの追加の実施形態において且つ式(I)に関して、各下付き文字vについて、各メソゲンは、同じである。
【0100】
式(I)に関して且ついくつかの実施形態によれば、各メソゲンは、各下付き文字vについて、少なくとも4つの環状基を含む。
【0101】
式(I)に関して且ついくつかの実施形態によれば、各連結基-L-は、各下付き文字vについて、独立して、少なくとも25個の結合、又は少なくとも30個の結合、例えば25~200個の結合(又は30~200個の結合、又は35~200個の結合);又は25~150個の結合(又は30~150個の結合、又は35~150個の結合);又は25~100個の結合(又は30~100個の結合、又は35~100個の結合);又は25~80個の結合(又は30~80個の結合、又は35~80個の結合);又は25~75個の結合(又は30~75個の結合、又は35~75個の結合);又は25~70個の結合(又は30~70個の結合、又は35~70個の結合);又は25~60個の結合(又は30~60個の結合、又は35~60個の結合);又は25~45個の結合(又は30~45個の結合、又は35~45個の結合)の平均鎖長を含み、各結合は、独立して、単結合、二重結合又は三重結合から選択される。
【0102】
更に、式(I)に関して且ついくつかの実施形態によれば、各連結基-L-は、各下付き文字vについて、それぞれの場合にメソゲン特性を含まない。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、且つ式(I)に関して、各連結基-L-は、各下付き文字vについて、それぞれの場合に独立して、以下の式L(1)~L(10)から選択され、これらの2つ以上の組み合わせを含む。
【化25】
【化26】
【化27】
【0104】
式L(1)~L(10)に関して、各tは、各存在について独立して、1~20である。
【0105】
本発明は、式(I)に関して記載したものなど、本発明のメソゲン含有化合物を含む液晶組成物に関する。本発明による液晶組成物は、いくつかの実施形態において、式Iによって表される少なくとも1つの化合物に加えて、フォトクロミック化合物、二色性化合物及び/又はフォトクロミック-二色性化合物の少なくとも1つを更に含むことができる。
【0106】
本発明の液晶組成物中に存在することができるフォトクロミック化合物の分類としては、限定するものではないが、インデノ縮合ナフトピラン、ナフト[1,2-b]ピラン、ナフト[2,1-b]ピラン、スピロフルオロエノ[1,2-b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン、フルオロアンテノピラン、スピロピラン、ベンゾキサジン、ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノキサジン、スピロ(インドリン)キノキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ジアリールアルキルエテン、ジアリールアルケニルエテン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0107】
本発明の液晶組成物中に存在することができるフォトクロミック-二色性化合物は、典型的には、少なくとも1つのフォトクロミック部分と、少なくとも1つの共有結合した延長基とを含み、この延長基は、少なくとも1つのメソゲンセグメントを含む。いくつかの実施形態では、フォトクロミック-二色性化合物の各フォトクロミック部位は、インデノ縮合ナフトピラン、ナフト[1,2-b]ピラン、ナフト[2,1-b]ピラン、スピロフルオロエノ[1,2-b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン、フルオロアンテノピラン、スピロピラン、ベンゾオキサジン、ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノキサジン、スピロ(インドリン)キノキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ジアリールアルキルエテン、ジアリールアルケニルエテン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0108】
本発明の液晶組成物に含めることができるフォトクロミック-二色性化合物の延長基の分類及び例としては、限定するものではないが、米国特許第9,334,439B2号明細書の第37~51欄に記載されているものが挙げられ、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
本発明による液晶組成物は、任意選択的に、少なくとも1つの添加剤を更に含むことができる。このような任意選択的な添加剤の例としては、限定するものではないが、液晶材料、液晶特性制御添加剤、非線形光学材料、染料(例えば、静的染料)、二色性染料、青色光遮断(又はフィルタリング)剤、配向促進剤、速度向上剤、光開始剤、熱開始剤、界面活性剤、重合禁止剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー調整剤、ゲル化剤、レベリング剤、フリーラジカル捕捉剤、カップリング剤、傾斜制御剤、ブロック又は非ブロックポリマー系材料及び/又は接着促進剤が挙げられる。青色光遮断(又はフィルタリング)剤の分類及び例としては、限定するものではないが、米国特許第9,683,102B2号明細書及び米国特許出願公開第2015/0234208A1号明細書に記載されているものが挙げられ、これらの関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
本発明の液晶組成物に含まれ得る二色性色素の例としては、限定するものではないが、アゾメチン、インジゴイド、チオインジゴイド、メロシアニン、インダン、キノフタロン色素、ペリレン、フタロペリン、トリフェノジオキサジン、インドロキノキサリン、イミダゾ-トリアジン、テトラジン、アゾ及び(ポリ)アゾ染料、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントロキノン及び(ポリ)アントロキノン、アントロピリミジノン、ヨウ素、ヨウ素酸塩又はこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0111】
本発明によれば、基材と;基材の表面の少なくとも一部上(又はその上方)の層であって、本発明による少なくとも1つのメソゲン含有化合物を含む層とを含む光学素子が更に提供される。
【0112】
光学素子の基材は、いくつかの実施形態では光学基材であり、これには、有機材料(有機ポリマーなど)、無機材料又はそれらの組み合わせ(例えば、複合材料)が含まれ得る。本発明の光学素子に含めることができる基材の例としては、限定するものではないが、米国特許第8,628,685B2号明細書の第35欄5行目~第36欄57行目に記載されているものが挙げられ、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
本発明の光学素子の基材の上に設けられる層としては、いくつかの実施形態では、有機ポリマーマトリックスなどの有機マトリックスが挙げられ、これは、硬化(又は架橋)した有機マトリックスであり得るか、又は熱可塑性有機マトリックスであり得る。したがって、本発明の光学素子の各層は、硬化(又は架橋)した層及び熱可塑性層から選択することができる。本発明の光学素子の各層の有機マトリックスは、限定するものではないが、エーテル結合;カルボン酸エステル結合;ウレタン結合;アミド結合;尿素結合;カーボネート結合;ビニル基、アリル基及び/又は(メタ)アクリレート基など(これらに限定されない)のラジカル重合性エチレン性不飽和基のラジカル重合から形成される結合;並びにこれらの2つ以上の組み合わせなどの結合を含むことができる。
【0114】
本発明の光学素子の各層は、ラミネーション法及びコーティング法などの(ただし、これらに限定されない)、当技術分野で認められている方法によって形成することができる。コーティング法としては、限定するものではないが、スプレーコーティング法;スピンコーティング法;カーテンコーティング方法;ディップコーティング法;マイクロジェットコーティング法(インクジェットコーティング法など);インモールドコーティング法;及びこれらの組み合わせが挙げられる。ラミネーション法としては、限定するものではないが、押し出しラミネーション方法(基材上へ直接など);インモールドラミネーション法(ラミネートをモールド内に配置し、それに対して基材をモールド内で形成する方法);熱ラミネーション法(ラミネートが基材上に熱融着される方法);接着剤積層法(介在する接着剤層によって基材上にラミネートが接着される方法);及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態では、光学素子は、基材と層(本発明のメソゲン含有化合物を含む)との間に介在する配向層を更に含み、配向層は、磁場、電場、直線偏光放射、せん断力又はこれらの2つ以上の組み合わせの少なくとも1つへの曝露により、少なくとも部分的に配向可能である。配向層として又は配向層を形成するために使用できる材料の分類及び例としては、限定するものではないが、米国特許第8,926,091B2号明細書の第5欄5行目~第6欄4行目;第7欄56行目~第24欄36行目;及び実施例に記載されている配向機構、配向材料、整列媒体及び整列機構が含まれ、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
本発明の光学素子は、いくつかの実施形態では、限定するものではないが、プライマー層、反射防止層、保護層、ハードコート層及び偏光層などの1つ以上の追加の層を含むことができる。そのような追加の任意選択的な層の分類及び例は、米国特許第8,828,284B2号明細書の第20欄30行目~第21欄38行目に記載されており、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
いくつかの実施形態では、本発明の光学素子は、眼科用要素、ディスプレイ要素、窓、鏡及び液晶セル要素から選択される。
【0118】
いくつかの更なる実施形態では、本発明の眼科用要素は、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ及びバイザーから選択される。
【0119】
本発明は、以下の非限定的な条項の1つ以上によって更に特徴付けられ得る。
【0120】
条項1:以下の式(I)
【化28】
(式中、
vは、3又は4であり、
tは、0又は1であり、
(A)各メソゲンは、各vについて独立して、以下の式(II)
【化29】
によって表され、式(II)について、
Pは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択され;
S
1、S
2、S
3及びS
4は、各存在について独立して、-CH
2-;-O-;-C(O)-;-N=N-;-CH=CH-;-C≡C-;-CH=N-;-CF
2-;又は-NH-から選択されるスペーサー単位から選択され、ただし、ヘテロ原子を含む2つのスペーサー単位が一緒に結合されている場合、スペーサー単位は、ヘテロ原子が互いに直接結合されないように結合されていることを条件とし;
dは、0~20であり;
e、f及びgは、各存在について独立して、0~3であり;
Q
1、Q
2及びQ
3は、各存在について独立して、無置換又は置換環状脂肪族基;無置換又は置換ヘテロ環状脂肪族基;無置換又は置換アリール;及び無置換又は置換ヘテロアリールからなる群から選択される二価の基であり;それぞれの環状脂肪族基の置換基、それぞれのヘテロ環状脂肪族基の置換基、それぞれのアリールの置換基及びそれぞれのヘテロアリールの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
e’及びf’は、各存在について独立して、0~6であり、ただし、e’とf’との合計は、少なくとも2であることを条件とし;
(B)各-L-は、各vについて独立して、以下の式(III)
【化30】
によって表され、式中、
(i)yは、0~30であり;
(ii)各Aは、各yについて独立して、単結合、脂肪族基及びハロ脂肪族基からなる群から選択される二価の基であり;
(iii)各Bは、各yについて独立して、-O-;-C(O)O-;-OC(O)O-;-C(O)N(R
1)-(ここで、R
1は、H又はアルキルである);-NH-C(O)O-;-N(R
2)C(O)N(R
2)-(ここで、各R
2は、独立して、H又はアルキルから選択される);
【化31】
(ここで、nは、1~4であり、各R
aは、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択され、及び各R
3は、各nについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択される);
【化32】
(ここで、t’は、1~4であり、u’は、各t’について独立して、1~5であり、各R
16は、各t’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され、及び各R
17は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される);及び-Si(R
5)(R
5)-(ここで、各
5は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)からなる群から選択される二価の基であり;及び
(iv)Eは、脂肪族基及びハロ脂肪族基からなる群から選択される二価の基であり;
(C)Xは、Si;N;Ge;P;2~6個のSi原子を有するシロキサン;2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有するカルボシラン;1~10個の炭素原子を有する無置換又は置換脂肪族基;無置換又は置換環状脂肪族基;無置換又は置換ヘテロ環状脂肪族基;無置換又は置換アリール基;及び無置換又は置換ヘテロアリール基からなる群から選択される多価の基であり;それぞれの脂肪族基の置換基、それぞれの環状脂肪族基の置換基、それぞれのヘテロ環状脂肪族基の置換基、それぞれのアリールの置換基及びそれぞれのヘテロアリール基の置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
(D)R
4は、-(S
1)
d-P(ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである);=O;及び無置換又は置換フェニル基(ここで、それぞれのフェニルの置換基は、独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである)
からなる群から選択され、
ただし、少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも4つの環状基を含むこと、及び
各-L-は、独立して、少なくとも15個の結合の平均鎖長を含むことと、更に、少なくとも1つの-L-は、少なくとも25個の結合の平均鎖長を含むこととを条件とする)
によって表されるメソゲン含有化合物。
【0121】
条項2:各メソゲンについて独立して且つ各式(II)について独立して、
Q1、Q2及びQ3は、各存在について独立して、無置換又は置換シクロアルキル;無置換又は置換フェニル;無置換又は置換ナフチル;及び無置換又は置換トリプチセニルからなる群から選択される二価の基であり、それぞれのシクロアルキルの置換基、それぞれのフェニルの置換基、それぞれのナフチルの置換基及びそれぞれのトリプチセニルの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S1)d-Pから選択され、ここで、S1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
Xは、Si;2~6個のSi原子を有するシロキサン;2~5個のSi原子と、Si原子の各対間の1~5個のメチレン基とを有するカルボシラン;及び1~10個の炭素原子を有する無置換又は置換脂肪族基からなる群から選択される多価の基であり、それぞれの脂肪族基の置換基は、独立して、-(S1)d-Pから選択され、ここで、S1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである、条項1に記載のメソゲン含有化合物。
【0122】
条項3:各メソゲンについて独立して且つ各式(II)について独立して、
Q
1、Q
2及びQ
3は、各存在について独立して、無置換又は置換1,4-シクロヘキシル;無置換又は置換1,4-フェニル;無置換又は置換1,5-ナフチル;無置換又は置換2,6-ナフチル;及び無置換又は置換1,8-ナフチルからなる群から選択される二価の基であり、それぞれの1,4-シクロアルキルの置換基、それぞれの1,4-フェニルの置換基、それぞれの1,5-ナフチルの置換基、それぞれの2,6-ナフチルの置換基及びそれぞれの1,8-ナフチルの置換基は、それぞれの場合に独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りであり;及び
Xは、Si;無置換又は置換C
1~C
10アルキル(ここで、それぞれのC
1~C
10アルキルの置換基は、独立して、-(S
1)
d-Pから選択され、ここで、S
1、d及びPは、それぞれ式(II)に関して定義された通りである);以下の式(1)
【化33】
によって表されるシロキサン(ここで、式(1)について、各R
6は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)
;及び以下の式(2)
【化34】
によって表されるカルボシラン(ここで、式(2)について、R
7は、1~5個の炭素原子を有する二価の脂肪族基であり、及び各R
8は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)
からなる群から選択される多価の基である、条項1又は2に記載のメソゲン含有化合物。
【0123】
条項4:各メソゲンについて独立して且つ各式(II)について独立して、
Pは、水素、アルキル、アルコキシ、アクリレート又はメタクリレートから選択され;
式(III)について、
(i)yは、1~30であり;
(ii)各Aは、各yについて独立して、アルキル及びハロアルキルからなる群から選択される二価の基であり;
(iii)各Bは、各yについて独立して、-O-;-C(O)O-;-OC(O)O-;-C(O)N(R
1)-(ここで、R
1は、H又はアルキルである);-NH-C(O)O-;-N(R
2)C(O)N(R
2)-(ここで、各R
2は、独立して、H又はアルキルから選択される);
【化35】
(ここで、nは、1~4であり、各R
aは、独立して、メチル、エチル又はフェニルであり、及び各R
3は、各nについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択される);及び-Si(R
5)(R
5)-(ここで、各R
5は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)からなる群から選択される二価の基であり;及び
(iv)Eは、アルキル基及びハロアルキル基からなる群から選択される二価の基である、条項1~3のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0124】
条項5:少なくとも1つのメソゲンについて、式(II)のPは、それぞれの場合に独立して、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択される、条項1~3のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0125】
条項6:少なくとも1つのメソゲンは、各vについて独立して、以下の式(IV)
【化36】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はハロアルコキシから選択され;及び
S
2、S
3、S
4、Q
2、Q
3、e’、f’、e、f及びgは、それぞれ独立して、式(II)に関して定義された通りである)
によって表される、条項1~3又は5のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0126】
条項7:各メソゲンは、各vについて独立して、以下の式(IV)
【化37】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はハロアルコキシから選択され;及び
S
2、S
3、S
4、Q
2、Q
3、e’、f’、e、f及びgは、それぞれ独立して、式(II)に関して定義された通りである)
によって表される、条項1~3又は6のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0127】
条項8:少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも1つのvについて及び全てより少ないv’について、それぞれの場合に独立して、式(II)によって表され、
式(II)のPは、アクリレート、メタクリレート、トリハロメタクリレート、シアノアクリレート、オキシラン、ヒドロキシル、一級アミノ、カルボン酸、カルボン酸エステル、シロキサン、カルボシラン、シアノ又はニトロから選択され;及び
少なくとも1つのメソゲンは、少なくとも1つのvについて及び全てより少ないv’について、それぞれの場合に独立して、以下の式(IV)
【化38】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ又はハロアルコキシから選択され;及び
S
2、S
3、S
4、Q
2、Q
3、e’、f’、e、f及びgは、それぞれ独立して、式(II)に関して定義された通りである)
によって表される、条項1~3、5又は6のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0128】
条項9:式(II)のPとして選択されるシロキサンは、以下の式(A)
【化39】
(式(A)について、n’は、1~4であり;各n’について独立して、各R
13は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択され;及び各R
14は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)
によって表される、条項1~3、5又は6のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0129】
条項10:式(II)のPとして選択されるカルボシランは、以下の式(B)
【化40】
(式(B)について、t’は、1~4であり;uは、各t’について独立して、1~5であり;各R
16は、各t’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され;及び各R
17は、メチル、エチル又はフェニルから選択される)
によって表される、条項1~3、5、6、8又は9のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0130】
条項11:式(I)について、tは、0であり、vは、3であり、Xは、以下の式(C)
【化41】
(式(C)について、各R
9は、独立して、メチル、エチル又はフェニルである)
によって表される三価のシクロトリシロキサンである、条項1、2又は4~10のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0131】
条項12:式(I)について、tは、0であり、vは、4であり、及びXは、以下の式(D)
【化42】
(式(D)について、各R
10は、独立して、メチル、エチル又はフェニルである)
によって表される四価のシクロテトラシロキサンである、条項1、2又は4~10のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0132】
条項13:式(I)について、tは、0であり、vは、4であり、及びXは、以下の式(1a)
【化43】
(式(1a)について、d’は、0~3であり;各R
18は、各d’について独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され;及び各R
19は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)
によって表される四価のシロキサンである、条項1、2又は4~10のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0133】
条項14:式(I)について、tは、0であり、vは、4であり、及びXは、以下の式(2a)
【化44】
(式(2a)について、qは、0~3(1~3など)であり;wは、各qについて独立して、1~3であり;各R
20は、各qについて独立して、メチル、エチル又はフェニルから独立して選択され;yは、1~3であり;及び各R
21は、独立して、メチル、エチル又はフェニルから選択される)
によって表される四価のカルボシランである、条項1、2又は4~10のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0134】
条項15:各vについて、各メソゲンは、同じである、条項1~14のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0135】
条項16:各-L-は、各vについて独立して、少なくとも25個の結合又は少なくとも30個の結合の平均鎖長を含む、条項1~15のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0136】
条項17:各-L-は、各vについて独立して、25~200個の結合、又は30~150個の結合、又は35~100個の結合の平均鎖長を含む、条項1~16のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0137】
条項18:各-L-は、各vについて独立して、本明細書で上記に記載の式L(1)~式L(10)から選択され、これらの2つの組み合わせを含む、条項1~17のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物。
【0138】
条項19:条項1~18のいずれか一項に記載のメソゲン含有化合物を含む液晶組成物。
【0139】
条項20:フォトクロミック化合物、二色性化合物又はフォトクロミック-二色性化合物の少なくとも1つを更に含む、条項19に記載の液晶組成物。
【0140】
条項21:前記フォトクロミック-二色性化合物は、少なくとも1つのフォトクロミック部位を含み、及び前記フォトクロミック化合物及び前記フォトクロミック-二色性化合物の各フォトクロミック部位は、それぞれの場合に独立して、インデノ縮合ナフトピラン、ナフト[1,2-b]ピラン、ナフト[2,1-b]ピラン、スピロフルオロエノ[1,2-b]ピラン、フェナントロピラン、キノリノピラン、フルオロアンテノピラン、スピロピラン、ベンゾオキサジン、ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(インドリン)フルオランテノキサジン、スピロ(インドリン)キノキサジン、フルギド、フルギミド、ジアリールエテン、ジアリールアルキルエテン、ジアリールアルケニルエテン及びこれらの混合物から選択される、条項20に記載の液晶組成物。
【0141】
条項22:基材と;
前記基材の表面の少なくとも一部上の層であって、条項1~18のいずれか一項に記載の少なくとも1つのメソゲン含有化合物を含む層と
を含む光学素子。
【0142】
条項23:前記基材と前記層との間に介在する配向層を更に含み、前記配向層は、磁場、電場、直線偏光放射、せん断力又はこれらの2つ以上の組み合わせの少なくとも1つへの曝露により、少なくとも部分的に配向可能である、条項22に記載の光学素子。
【0143】
条項24:前記光学素子は、ディスプレイ要素、窓、鏡、液晶セル要素及び眼科用要素から選択される、条項23に記載の光学素子。
【0144】
条項25:前記眼科用要素は、矯正レンズ、非矯正レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、拡大レンズ、保護レンズ及びバイザーから選択される、条項24に記載の光学素子。
【0145】
本発明は、以下の実施例でより具体的に説明されるが、これらは、その中の多数の修正形態及び変形形態が当業者に明らかであるため、例示にすぎないことが意図される。
【実施例】
【0146】
以下の実施例のパート1では、中間体であるメソゲン含有セグメント
【化45】
の調製が記載される。パート2では、v個の連結基-L-及びt個のR
4基が結合した多価非メソゲンコアXをそれぞれ含む、中間体である中央セグメント又は部分の調製が記載される。パート3では、本発明によるメソゲン含有化合物及び比較のメソゲン含有化合物の調製が記載される。パート4では、液晶コーティング配合物の調製が記載される。パート5では、コーティングされた基材(試験片)の作製が記載される。パート6では、パート5のコーティングされた基材のフォトクロミック性能試験及びその試験結果が記載される。
【0147】
パート1
中間体であるメソゲン含有セグメントS1~S10の調製は、以下の通りに説明される。中間体であるメソゲン含有セグメントS1~S10の代表的な構造は、表1に示されている。
【0148】
セグメントS1
セグメントS1は、米国特許出願公開第2017/0275534A1号明細書の実施例1、工程8に従って調製した。
【0149】
セグメントS2
セグメントS1(400g)と無水コハク酸(74.0g)とが入っている一口丸底フラスコにトルエン(1.5L)及びトリエチルアミン(「Et3N」、15.0mL)を添加した。懸濁液を80℃まで加熱し、5時間撹拌した。撹拌しながら反応混合物を高温酢酸エチル(「EtOAc」、1.5L、65℃)中に注ぎ入れ、次いでフラスコをテトラヒドロフラン(「THF」、100mL)ですすぎ洗いした。得られた溶液を室温まで放冷し、一晩結晶化することで410gの生成物を得た(収率88%)。1H NMRから、生成物が4-オキソ-4-((8-(4-((4-((4’-ペンチル-[1,1’-ビ(シクロヘキサン))]-4-カルボニル))オキシ)フェノキシ)カルボニル)フェノキシ)オクチル)オキシ)ブタン酸と一致する構造を有することが示された。
【0150】
セグメントS3
セグメントS1(25.0g)及びε-カプロラクトン(18.5g)をジクロロメタン(「DCM」、100mL)中に懸濁させた後、リン酸ジフェニル(「DPP」、2.52g)を一度に添加した。室温で6時間撹拌した後、粗製反応溶液をHCl(1M、2×100mL)、NaOH(5%wt/vol水溶液、2×100mL)及び飽和食塩水(2×50mL)で洗浄した。次いで、有機相をMgSO4で乾燥し、次いでセライトを通して濾過した。溶離液としてDCM中の10%EtOAcを使用して、セライトを上に載せたシリカゲルプラグに濾液を通した。この物質を濃縮してオフホワイトのワックス状の固体にした後、DCMに溶解した(1mL/g)。溶液を、セライトを通して濾過し、不溶性物質を除去した。溶液を50mLまで濃縮した後、冷ヘキサン(0℃、430mL)にゆっくりと添加した。収量:37.18g。
【0151】
セグメントS4
セグメントS4は、工程1の3-クロロプロパン-1-オールを
6-クロロヘキサン-1-オールに置き換え、工程3の6-クロロヘキサン-1-オールを8-クロロオクタン-1-オールに置き換えたこと以外、米国特許第8,349,210B2号明細書の実施例2の工程1~工程6の手順に従って調製した。
【0152】
セグメントS5
セグメントS5は、セグメントS1を等モル量のセグメントS4で置き換えて、セグメントS2の手順を使用して調製した。
【0153】
セグメントS6
セグメントS6は、セグメントS1の代わりにセグメントS4を使用し、8モル当量のε-カプロラクトンを使用したことを除いて、セグメントS3の手順を使用して調製した。
【0154】
セグメントS7
セグメントS7は、米国特許出願公開第2017/0275534A1号明細書の実施例7の工程1及び2の手順を用いて調製した。
【0155】
セグメントS8
セグメントS8は、米国特許出願公開第2012/0002141A1号明細書の実施例8、工程2に従って調製した。
【0156】
セグメントS9
セグメントS2(21.6g)と、ビス(ヒドロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン(15.0g)と、2-(ジメチルアミノ)ピリジニウムp-トルエンスルホネート(「DPTS」、0.9g)とのDCM溶液にN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」、7.4g)を5時間かけて添加した。1,3-ジシクロヘキシルウレア(「DCU」)を除去し、この物質を、DCM-EtOAC(50:1~10:1)を使用してクロマトグラフィーにかけ、目的生成物を得た。収量:14.0g。
【0157】
セグメントS10
セグメントS10の合成は、以下の量を使用して、セグメントS9と同様の手順に従って行った:セグメントS2(21.6g)、1H,1H,11H,11H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオール(24.6g)、DPTS(0.9g)、DCM及びDCC(7.4g)。収量:22.0g。
【0158】
【0159】
パート2
以下の通り、中間体である中央セグメント(又は部分)C1~C4の調製が記載され、これらは、それぞれv個の連結基-L-及びt個のR4基が結合した多価非メソゲンコアXを含む。中間体である中央セグメントC1~C4の代表的な構造を表2に示す。
【0160】
セグメントC1
2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(7.42g)及びε-カプロラクトン(75.9g)を、窒素パージしたフラスコ内に入れ、均一になるまで150℃まで加熱し、次いでスズ(II)2-エチルヘキサノエート(0.83g)を添加した。得られた混合物を窒素下150℃で24時間撹拌した。冷却した反応混合物をヘキサン(300mL)と共に撹拌し、その後、デカンテーションした。このプロセスを3回繰り返して粘稠な液体を得た。これを真空乾燥した。収量:84g。
【0161】
セグメントC2
セグメントC1(43.0g)と、無水コハク酸(8.8g)と、Et3N(5mL)と、トルエン(200mL)との溶液を90℃で6時間加熱した。溶媒を減圧下で除去した。得られた固体を更に精製することなく使用した。
【0162】
セグメントC3
工程1:
工程1は、以下の量を使用して、セグメントC1と同様の手順に従って行った:ペンタエリスリトール(7.54g)、ε-カプロラクトン(50.6g)、スズ(II)2-エチルヘキサノエート(1.0mL)。収量:58.0g。
【0163】
工程2:
生成物を、上記のセグメントC1で記載した方法と同様の方法で精製したことを除いて、上記のセグメントS2について記載したものと同じ反応条件を上記工程1からの生成物に適用してセグメントC3を得た。収量:80.0g。
【0164】
セグメントC4
セグメントC4の合成は、以下の量を使用して、セグメントS2と同様の手順に従って行った:ペンタエリスリトール(5.0g)、無水コハク酸(18.3g)、Et3N(5.0mL)、トルエン(100mL)。収量:15.0g。
【0165】
【0166】
パート3
以下では、本発明によるメソゲン含有化合物(実施例1~4、6、9、10、12及び14)及び比較のメソゲン含有化合物(比較例/CE5、7、8、11、13及び15)の調製を記載する。本発明によるメソゲン含有化合物及び比較のメソゲン含有化合物の代表的な構造を表8に示す。
【0167】
実施例1
工程1:
アセトン(500mL)中の2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール(100.0g)と、2,2-ジメトキシプロパン(130g)と、4-トルエンスルホン酸(「TsOH」、4.0g)とが入っているフラスコを窒素下において室温で24時間撹拌した。Aq.NaHCO3水溶液(100mL、4.3M)を添加した。溶液を濃縮し、500mLのDCMに溶解し、水で洗浄した。有機層をショートシリカプラグに通し、濃縮することで、(2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノールを得た。
【0168】
工程2:
セグメントS5(14.64g)と、上記の工程1からの生成物(3.52g)と、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.48g)とのDCM(100mL)溶液にDCC(4.94g)を添加した。得られた混合物を室温で数時間撹拌した。DCUを濾過によって除去し、濾液をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0169】
工程3:
上記の工程2からの生成物をDCM-メタノール(MeOH)(1:1、200mL)に溶解した後、TsOH(0.8g)を添加した。一晩撹拌した後、溶液をNaHCO3と飽和食塩水で洗浄した。この物質に対してクロマトグラフィーを行った(溶離液は、DCM中17~66%のEtOAcであった)。
【0170】
工程4:
上記の工程3からの生成物(4.4g)とε-カプロラクトン(4.81g)とのDCM(100mL)溶液にDPP(0.66g)を添加した。溶液を室温で8時間撹拌した。DMAP(0.32g)、セグメントS2(8.36g)及びDCC(2.61g)を添加し、反応を一晩撹拌し続けた。濾過によりDCUを除去した。濾液をHCl(1M)で2回、NaOH(5%wt/vol.)で2回及び飽和食塩水で2回洗浄し、続いてカラムクロマトグラフィー(溶離液は、DCMからDCM-EtOAc(5:1)に勾配をつけた)を通して精製した。
【0171】
実施例2
工程1:
工程1は、3-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパン酸を2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロパン-1,3ジオールの代わりに使用し、粗生成物をNaHCO3水溶液の代わりにエタノール性アンモニアで洗浄したことを除いて、実施例1の工程1と同様の手順を使用して行った。収量:35.0g。
【0172】
工程2:
上記の工程1からの生成物(4.53g)、セグメントS6(30.9g)、DPTS(3.12g)及びDCC(5.78g)をDCM(500mL)に溶解した。一晩撹拌した後、出発セグメントS6は、依然として存在していた。上記の工程1からの生成物(3.48g)にDCC(4.12g)を更に添加した。3日後、混合物をある程度濃縮し、DCUを濾過によって除去した。濾液を水及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、シリカゲルプラグを通した(溶離液は、DCMからDCM-EtOAc(5:1)に勾配をつけた)。得られた物質を、EtOAc-MeOHから析出させることによって精製した。収量:26.5g。
【0173】
工程3:
工程3は、以下の量を使用して、実施例1の工程3と同様の手順に従って行った:上記の工程2からの生成物(26.5g)、TsOH(0.6g)、DCM-MeOH(1:1、200mL)。収量:16.0g。
【0174】
工程4:
実施例2の合成は、以下の量を使用して、上記の実施例1の工程2と同様の手順を使用して行った:上記の工程3からの生成物(3.09g)、セグメントS2(3.17g)、DMAP(0.1g)、DCC(1.0g)及びDCM(100mL)。収量:2.5g、41%。
【0175】
実施例3、4及びCE-5
実施例3、4及びCE-5のメソゲン含有化合物は、以下の基本手順に従って調製した。
【0176】
下の表3にまとめられている、1モル当量の三官能性カルボン酸(トリ-COOH)中間体である中央セグメント(C2)と、3モル当量のアルコール(OH)官能性中間体であるメソゲン含有セグメント(S9、S10又はS7)と、DPTS(0.3当量)とを、重量基準で約90%希釈するのに十分なDCM中で混合した。DCC(4.0当量)を一度に添加し、反応物を室温で撹拌した。DCUを除去し、DCM-EtOAc(10:1~3:1)を溶離液として使用して濾液をクロマトグラフィーにかけ、目的生成物を得た。1H NMRを使用して、全ての生成物の構造及び精製された生成物中のオリゴマーの長さを確認した。
【0177】
【0178】
実施例6、CE-7及びCE-8
実施例6、CE-7及びCE-8のメソゲン含有化合物は、以下の基本手順に従って調製した。
【0179】
下の表4にまとめられている、1モル当量の三官能性ヒドロキシル(トリ-OH)中間体である中央セグメント(示されている通り)と、3.5モル当量のカルボン酸(COOH)官能性中間体であるメソゲン含有セグメント(S8、S5又はS2)と、4-トルエンスルホン酸(0.5当量)と、DMAP(0.5当量)とを、重量基準で約90%希釈するのに十分なDCM中で混合した。DCC(3.25~4.0当量)を一度に添加した。窒素下で24時間撹拌した後、DCU析出物を除去し、この物質に対してクロマトグラフィーを行った(溶離液は、DCM/EtOAcであった)。この物質をEtOAcに溶解し、セライトを通して濾過し、次いでMeOHから析出させることで目的生成物を得た。1H NMRを使用して、全ての生成物の構造及び精製された生成物中のオリゴマーの長さを確認した。
【0180】
【0181】
実施例9
工程1:
工程1は、以下の量を使用して実施例14(本明細書に詳細に記載)と同様の手順に従って行った:セグメントS1(30.0g)、DPP(6.0g)、ε-カプロラクトン(27.5g)、DCM(100mL)、3-(アリルオキシ)プロピオン酸(8.0g)、DCC(15.0g)、DMAP(2.95g)。収量:50.0g
【0182】
工程2:
窒素でパージしたシュレンク管に上記の工程2の生成物(15.0g)、1,3-ジフェニルテトラキス(ジメチルシロキシ)ジシロキサン(1.6g)、Karsted触媒(5滴、キシレン中2%のPt)及びトルエン(25mL)を添加した。その後、シュレンク管をアルミニウム箔で覆い、ゴム栓で密封し、室温で6日間撹拌した。溶媒を除去し、固体をDCMに溶解した後、クロマトグラフィーを行った(溶離液は、DCM中60%のEtOAcであった)。ワックス状の固体をEtOAc(1g/5mL)に溶解し、セライトを通して濾過した。冷MeOH(1:5vol/vol%、0℃)中に注ぎ入れることにより透明な溶液を析出させた。析出した生成物を濾過し、MeOHで洗浄し、室温で真空乾燥した。収量:9g、51%。
【0183】
実施例10及びCE-11
実施例10及びCE-11のメソゲン含有化合物は、以下の基本手順に従って調製した。
【0184】
下の表5にまとめられている、1モル当量の四官能性カルボン酸(テトラ-COOH)中間体である中央セグメント(示されている通り)と、4モル当量のアルコール(OH)官能性中間体であるメソゲン含有セグメント(S9又はS1)と、DPTS(0.4~1.5当量)とを、重量基準で約90%希釈するのに十分なDCM中で混合した。DCC(4.5当量)を一度に添加し、反応を室温で撹拌した。DCUを除去し、濾液をDCM-EtOAc(3:1)を溶離液として使用するクロマトグラフィーにかけるか、又はTHF/エタノール(2/1)から再結晶することで目的生成物を得た。1HNMRを使用して、全ての生成物の構造及び精製された生成物中のオリゴマーの長さを確認した。
【0185】
【0186】
実施例12及びCE-13
実施例12及びCE-13のメソゲン含有化合物は、以下の基本手順に従って調製した。
【0187】
下の表6にまとめられている、1モル当量のクロロシラン(示されている通り)及びEt3N(3.5~5当量)をDCMに溶解し、氷の上で冷却した。DCM中のアルコール(OH)官能性中間体であるメソゲン含有セグメント(S3、3当量;又はS6、4当量)の溶液を数分間かけてゆっくりと添加した。粗反応溶液を水(2×100mL)及び飽和食塩水(2×50mL)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させた後、セライトを通して濾過した。濾液を、セライトを上に載せたシリカゲルプラグに通した(溶離液は、DCM中10~20%のEtOAcであった)。得られたオフホワイトのワックス状固体をDCMに溶解した(1mL/g)。溶液を、セライトを通して濾過して不溶性物質を除去し、濾液を冷ヘキサン(0℃、100mL)中にゆっくりと注ぎ入れ、物質を析出させた。1H NMRを使用して、全ての生成物の構造及び精製された生成物中のオリゴマーの長さを確認した。
【0188】
【0189】
実施例14及びCE-15
実施例14及びCE-15のメソゲン含有化合物は、以下の基本手順に従って調製した。
【0190】
下の表7にまとめられている、アルコール(OH)官能性中間体であるメソゲン含有セグメント(4.0~4.5モル当量)と、ε-カプロラクトン(示されているモル当量)とを混合した。これにDPP(2.0~2.25当量)を添加し、混合物を窒素下で4時間撹拌して、新しいアルコールを形成した。次に、1モル当量のテトラカルボン酸(テトラ-COOH)中間体である中央セグメント(示されている通り)、DMAP(2.0~2.26当量)及びDCC(6当量)を添加した。一晩撹拌した後、DCUを除去し、濾液をNaHCO3で2回、5%NaOHで2回、10%HClで2回、飽和食塩水で2回洗浄した。MgSO4と共に撹拌した後、シリカゲルのパッドに材料を通した(溶離液は、DCM中5~25%のEtOAcであった)。粗生成物をEtOAc(1g/4mL)に再度溶解し、セライトを通して濾過し、EtOAcとMeOHとの混合物(1:8v/v)から析出させた。1H NMRを使用して、全ての生成物の構造及び精製された生成物中のオリゴマーの長さを確認した。
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
パート4
液晶コーティング配合物の調製は、以下の通りに説明される。パート4aでは、標準の液晶コーティング配合物の調製について説明される。パート4bでは、メソゲン含有化合物を含む液晶コーティング配合物の調製について説明される。
【0197】
パート4a.
標準の液晶コーティング配合物の調製。
撹拌子を備えた適切な容器に、表9に記載のチャージ1の成分を入れ、均一な溶液が得られるまで室温で撹拌した。次いで、チャージ2を添加し、得られた混合物を90℃で1時間撹拌した。次いで、液晶モノマー(チャージ3)を添加し、溶液を90℃で更に1時間撹拌した。その後、溶液の温度を60℃まで下げ、チャージ4を溶液に添加し、混合物を30分間撹拌して最終溶液を得た。
【0198】
【0199】
パート4b.
メソゲン含有化合物を含む液晶コーティング配合物の調製。
メソゲン含有化合物を含有する液晶コーティング配合物は、特定のメソゲン含有化合物(表10に示す)をパート4aに記載の標準の液晶コーティング配合物に添加することによって調製した。混合物は、以下の表10にまとめられている通りに調製し、各メソゲン含有化合物は、5.4部の標準の液晶コーティング配合物に添加した。成分を合わせ、80℃で1時間撹拌して均一な溶液を得た。添加量は、液晶モノマー2.2モル%を基準として計算される。次いで、無水硫酸マグネシウムを溶液に添加し、続いて室温で30分間撹拌した。その後、遠心分離により硫酸マグネシウムを濾別し、濾液をスピンコーティングに使用した。
【0200】
【0201】
パート5
パート4bの液晶コーティング配合物(表10)を用いたコーティングされた基材(試験片)の作製について以下の通り説明される。
【0202】
コーティングされた基材(試験片)を形成するために以下の手順を使用した。パート4b(表10)に記載されている各液晶コーティング配合物を、400回転/分(rpm)の速度で6秒間、続いて1250rpmで6秒間、配向層を有するCR-39(登録商標)レンズ基材上にスピンコーティングした。各コーティングされた基材を60~75℃のオーブンに30分間入れて配向を促し、その後、これらを、0.388ワット/cm2のUVA及び0.165ワット/cm2のUVVのピーク強度;並びに7.386ジュール/cm2のUVA及び3.337ジュール/cm2のUVVのUV線量において、コンベアベルト上を2ft/分(61cm/分)で走らせながら、窒素雰囲気下、Belcan Engineeringによって設計及び製造されたUV硬化オーブン内の2つの紫外線ランプの下で硬化させた。
【0203】
パート6
以下では、パート5のコーティングされた基材(試験片)のフォトクロミック性能試験及びその試験結果(吸収比及び光学応答の測定及び結果を含む)を説明する。
【0204】
光学ベンチでの応答試験前に試験片を多段階の特注コンディショニングユニット内で調整した。最初に、フォトクロミック化合物を予め活性化するために、電磁放射源から約10cmの距離で365nmの紫外光に10分間曝露した。サンプルにおけるUVA放射照度は、1平方メートルあたり7.7ワットであると測定された。次に、試験片を70°F(21.1℃)まで加熱し、10分間保持した。最後に、加熱素子をオフにし、試験片中のフォトクロミック化合物を漂白又は不活性化するためにF17T8黄色ハロゲン光を30分間オンにした。試験片における黄色ハロゲン光からの照度は、9.0Kluxであると測定された。次いで、冷えて基底状態の退色状態に戻り続けるように、試験片を試験前に少なくとも1時間暗所に保管した。
【0205】
試験片の光学特性を測定し、吸収比及びフォトクロミック特性を導出するために光学ベンチを使用した。各試験片は、活性化光源が試験サンプルの表面に対して30°~35°の入射角に配置されている光学ベンチの上に置いた。使用した活性化光源は、Newport/Oriel Model 69911の300ワット電源で駆動するキセノンアークランプであり、これは、迷光がデータ収集プロセスの妨げにならないようにデータ収集中に一瞬閉じるUNIBLITZ(登録商標)VS-25高速コンピュータ制御シャッターと、短波長放射を除去するSCHOTT(登録商標)3mmKG-2熱吸収フィルターと、強度減衰用中性濃度フィルターと、ビームコリメーションのための集光レンズとを備えていた。アークランプは、経時的に出力の微調整を維持するために、デジタル露出コントローラーとセンサー(Newport/Orielモデル68945)とを備えていた。
【0206】
応答測定をモニタリングするための広帯域光源を試験片の表面に対して垂直に配置した。スプリットエンドの分岐ファイバー光ケーブルを用いて、100ワットのタングステンハロゲンランプ(LAMBDA(登録商標)ZUP60-14定電圧電源により制御)からの別々にフィルター処理された光を集めて合わせることにより、より短い可視波長のシグナルを増加させた。タングステンハロゲンランプの片側からの光は、SCHOTT(登録商標)KG1フィルターで熱を吸収し、HOYA(登録商標)B-440フィルターで短波長を通過させるようにフィルター処理した。他方の光は、SCHOTT(登録商標)KG1フィルターでフィルター処理するか、又はフィルター処理しなかった。光は、ランプの両側からの光をスプリットエンドの分岐光ファイバーケーブルの別々の端部に集束させることによって収集し、その後、ケーブルの単一の端部から出る1つの光源と一緒にした。4~6インチ(10.2~15.25cm)のライトパイプをケーブルの一端に取り付けて、確実に適切に混合した。広帯域光源には、データ収集中に一瞬開くUNIBLITZ(登録商標)VS-25高速コンピュータ制御シャッターを取り付けた。
【0207】
光源の偏光は、ケーブルの一端からの光を、コンピュータ駆動(アナライザー偏光子)の、電動回転ステージ(Physik InstrumenteのModel M-061.PD、M660、U651又は均等物)に保持されたMoxtek,PROFLUX(登録商標)偏光子に通すことによって行った。モニタリング光は、1つの偏光面(0°)が光学ベンチテーブルの平面に対して垂直になり、2つ目の偏光面(90°)が光学ベンチテーブルの平面に対して平行になるように設定した。試験片は、23℃±0.1℃の空気中で実行した(この温度は、温度制御された空気セルによって維持した)。
【0208】
パート4で作製した試験片を配向させるために、第2の偏光子を光路に追加した(OptoSigmaからの偏光子、SPF-50C-32などの研究グレードのフィルム偏光子)。第2の偏光子は、第1のアナライザー偏光子の90°(+/-0.1度)に設定した。サンプルは、回転ステージ(Physik InstrumenteのモデルM-061.PD、M660、U651又は均等物)に取り付けられたセルフセンタリングホルダー内の空気セルに配置した。交差した偏光子及びサンプルを通してレーザー光(Coherent-ULN635ダイオードレーザー)を向けた。分光光度計による相対計数でレーザー光のシグナル強度を測定した。レーザー光の最小透過光強度を探すために、試験片を3度刻みで120度回転させた。次いで、試験片を最小透過光強度付近に配置し、その後、試料の品質に応じて最小透過率を±0.1度に位置付けるために、試験片を0.1度刻みで12度回転させた。次に、試験片を最終的に最小透過角度に配置した。この時点で、試験片は、Moxtekアナライザーの偏光子に対して平行又は垂直に配置された。第2の偏光子とダイオードレーザー光を光路から取り除いた。このプロセスを使用して、試験片を全ての活性化前に±0.1度に配向させた。
【0209】
測定を行うために、各試験片を活性化光源からの約6.7W/m2のUVAに15分間曝露して、フォトクロミック化合物を活性化した。検出器システムを備えたInternational Light Research Radiometer(モデルILT950(FC))を使用して、毎日の初めに暴露を確認した。その後、0°偏光面に偏光したモニタリング光源からの光をサンプルに通し、1インチ(2.54cm)の積分球に集光し、単機能光ファイバーケーブルを使用してOCEAN OPTICS(登録商標) S2000分光光度計に接続した。サンプルを通過した後のスペクトル情報は、OCEAN OPTICS DriversとTransitions Optical,Ltd.の適切なソフトウェアとを組み合わせて使用して収集した。フォトクロミック材料を活性化させながら、偏光子の位置を前後に回転させ、モニタリング光源からの光を90°偏光面まで偏光させ、戻した。活性化中に5秒間隔で約600~1200秒間データを収集した。各試験について、偏光子の回転を調整し、0°、90°、90°、0°のような偏光面の順序でデータを収集した。
【0210】
吸収比(AR)は、90°偏光(アナライザー偏光子と垂直の配向、最小透過率)及び0°偏光(アナライザー偏光子と平行の配向、最大透過率)で測定された吸光度の比である。
【0211】
漂白状態(非活性化状態)から暗色化状態(活性化状態)への光学濃度の変化(ΔOD)は、初期透過率を確認し、キセノンランプからシャッターを開けて紫外線を供給し、試験片を漂白状態から活性化状態に変化させることによって決定した。選択した時間間隔でデータを収集し、活性化状態での透過率を測定し、以下の式に従って光学濃度の変化を計算した:ΔOD=log(%Tb/%Ta)(ここで、%Tbは、漂白状態におけるパーセント透過率であり、%Taは、活性化状態におけるパーセント透過率であり、対数は、10を底とする)。
【0212】
退色半減期(T1/2)は、試験片中のフォトクロミック化合物の活性化形態のΔODが、例えばシャッターを閉じることにより活性化光源を取り除いた後に室温で達成される、15分後又は飽和若しくはほぼ飽和後に測定されたΔODの半分に到達するまでの時間間隔(秒)である。
【0213】
本発明による代表的な実施例(実施例)及び比較例(CE)から得られたフォトクロミック性能試験結果(吸収比及び退色半減期)が以下の表11にまとめられている。
【0214】
【0215】
【0216】
表11にまとめられているフォトクロミック性能の結果は、メソゲン基が3つの環状基のみを含む比較のメソゲン含有化合物と比較して、本発明によるメソゲン含有化合物(メソゲン基の少なくとも1つが少なくとも4つの環状基を含む)が、改善された吸収比の値を提供することを示している。更に、本発明によるメソゲン含有化合物(各-L-連結基は、独立して、少なくとも15個の結合の平均鎖長を有し、少なくとも1つの-L-連結基は、少なくとも25個の結合の平均鎖長を有する)は、CE-25(3つの別個の-L-[メソゲン]延長部を有する比較のメソゲン含有化合物CE-8を含む)及びCE-30(4つの別個の-L-[メソゲン]延長部を有する比較のメソゲン含有化合物CE-11を含む)と比較して、望ましい溶解性を有したことが観察された。
【0217】
表11にまとめられている性能結果を更に参照すると、全ての場合において、比較のメソゲン含有化合物/配合物では、標準の液晶コーティング配合物単独(CE-16)と比較して、吸収比の改善が得られなかった。
【0218】
本発明を、その具体的な実施形態の特定の詳細を参照して説明してきた。そのような詳細は、それらが添付の特許請求の範囲に含まれる場合を除いて、本発明の範囲に対する限定とみなされることを意図するものではない。
【国際調査報告】