(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】遺伝子治療を使用して心不全を回復するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20230630BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230630BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230630BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P9/04
A61K31/7088
A61K35/76
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022561512
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021026131
(87)【国際公開番号】W WO2021207327
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】399047002
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】ショー,ロビン・マーク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZC01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZC01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZC01
(57)【要約】
本明細書では、ウイルスベクターを含む組成物について記載する。ウイルスベクターは、cardiac isoform of bridging integrator1(cBIN1)等のt管組織化タンパク質又はペプチドをコードし得る。また、本明細書では、それを必要とする対象における心不全の治療又は予防のための方法が開示される。治療又は予防の方法は、心不全を経験したか又は慢性的な心筋ストレスを有する対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるために、cBIN1を含むベクターを対象に投与することを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全を経験したか又は慢性ストレス下の対象において心臓組織を回復するか又は心不全の症状を改善するための方法であって、対象において心不全又は心筋ストレスを診断すること、及び心不全を経験した対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記心不全又は心筋ストレスの診断が、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
心不全を経験した対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるための方法であって、対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子が心臓組織に送達され発現した後に、心臓の収縮機能が回復又は増大する、方法。
【請求項4】
前記導入遺伝子が、前記対象が心不全と診断された後に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記心不全の診断が、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
心筋に前記導入遺伝子を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記導入遺伝子が注入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記導入遺伝子が、cBIN1をコードする導入遺伝子を含むベクターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記導入遺伝子が、約1×10
10~約5×10
10のベクターゲノムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
cBIN1の発現が、損傷した心筋を再構築する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
cBIN1の発現が、心筋におけるカルシウム処理機構の細胞内分布を安定化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
cBIN1の発現が、心筋における求心性肥大を低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
cBIN1の発現が、心筋におけるt管マイクロフォールド又はマイクロドメインを回復又は増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
cBIN1の発現が、心筋におけるリアノジン受容体2(RyR2)の過リン酸化を回復又は減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
cBIN1の発現が、心収縮性及びルシトロピーを回復又は改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
cBIN1の発現が、心臓弛緩及び拡張期機能を回復又は改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
cBIN1の発現が、心筋に対するさらなる損傷に対して予防的である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記導入遺伝子が少なくとも1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記対象がマウス又はイヌである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、駆出率の低下(HFrEF)を経験する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象において心筋組織を回復するか又は心筋損傷を修復するための医薬におけるcBIN1の使用。
【請求項24】
心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるための医薬におけるcBIN1の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月8日に出願された米国仮特許出願第63/007,229号及び2020年10月6日に出願された第63/088,123号の優先権を主張し、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府出資研究
本発明は、国立衛生研究所の助成金番号HL133286、HL094414、及びHL138577の下、米国政府の支援を受けて行われたものである。米国政府は、本発明について一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書に記載されるのは、ウイルスベクターを含む組成物である。ウイルスベクターは、cardiac isoform of bridging integrator1(cBIN1)等のt管組織化タンパク質又はペプチドをコードしていてもよい。また、本明細書では、それを必要とする対象における心不全の治療又は予防のための方法が開示されている。治療又は予防の方法は、心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるために、cBIN1を含むベクターを対象に投与することを含み得る。
【背景技術】
【0004】
心不全(HF)は、世界で2000万人以上、米国では620万人が罹患している、最も急速に増加している心血管系疾患である[1-2]。HFに関連する死亡率の大部分は、心筋の強心及び弛緩機能障害による心臓ポンプ不全、並びに不全心による不整脈負荷の増加による心臓突然死と関連している。さらに、駆出率が保たれているHF(HFpEF)患者の50%近くでは[2]、不整脈のリスクがさらに高い重度の拡張期不全が起こり、これは臨床結果がさらに悪くなる上、有効な薬物療法が存在しない。したがって、心不全の進行を制限し、逆転させることができる新しい治療戦略の開発が急務となっている。
【0005】
HF発症中の、不全心室筋細胞の病態生理学的細胞特徴は、細胞内カルシウム恒常性が損なわれたカルシウムトランジェントの異常であり[3]、これは興奮-収縮(EC)カップリングを妨害し[4]、電気的安定性を損ない[5]、ミトコンドリア代謝を妨害する[6]。正常な心拍間隔のカルシウムトランジェントは、カルシウム誘導カルシウム放出(CICR)として知られる一連の細胞内事象に依存しており[7]、ここで、t管L型カルシウムチャネル(LTCC)を介した最初のカルシウム流入は、その後、筋小胞体(SR)貯蔵部からリアノジン受容体(RyR)を介して大量のカルシウム放出を誘導する。弛緩時には、次いで、蓄積されたカルシウムは、主にSR Ca2+-ATPase(SERCA)を介したSRへの再吸収、及び細胞外空間へのカルシウム排出によって細胞質から除去される[7]。HFでは、t管の異常なリモデリング[8-10]により、LTCC-RyRのカップリング及び同調的なCICR[3、11]が損なわれ、これによって収縮期放出が減少し、ECのアンカップリング、及びそれによる収縮低下がもたらされる。一方、HF関連漏出性RyR[12]及びSERCA2aの機能異常[13]は、SR枯渇及び拡張期カルシウムの上昇[14]をもたらし、これは、重度の拡張期不全及び電気的不安定性をもたらす[15]。さらに、カルシウム恒常性異常は、ミトコンドリア膜電位の損失[16]及び透過性の増加[17]を引き起こし、これは、ミトコンドリア主導の細胞死[18-19]及びHF進行[18、20]の危険性を促進する。まとめると、カルシウム恒常性異常は、正常な心臓ポンプ機能、電気的安定性及び代謝を制御する上で重要であり、これが妨害されると、ポンプ不全、致死的不整脈及び重度の代謝障害につながることになる。
【0006】
心筋横管(t管)は、カルシウムトランジェントの開始及び効率的な興奮-収縮(EC)カップリングの維持に重要である。病理学的なt管リモデリングは、HFにおけるβ-アドレナリン刺激の結果である[21-23]。さらに、t管のマイクロドメインの障害は、HF進行に関与している[24-27]。実際、t管のリモデリングは、肥大から不全への転換点となり得る[10]。正常なカルシウムトランジェント[28]は、L型カルシウムチャネル(LTCC)がt管マイクロドメインに存在することを必要とし、これは心収縮及び弛緩に極めて重要である。t管膜足場タンパク質cardiac bridging integrator 1(cBIN1)[29]は、LTCCのトラフィッキング[30]及び二分子組織化のためのクラスタリングを促進し、また、β-アドレナリン受容体(β-AR)シグナル伝達の制御下にある[31]。さらに、HFではcBIN1が減少し[31-33]、その結果、cBIN1-マイクロドメインの破壊は正常なストレス応答を損ない、収縮力を制限し、不整脈を促進する。cBIN1-マイクロドメインを保存する治療的アプローチは、カルシウム処理機構を保護することによってストレス下の心臓に利点をもたらし、HFの進行を遅延化させ得る。
【0007】
したがって、個々の心室筋細胞内のリモデリングを防止して、全体的な心臓リモデリングを改善し、不全心臓の治療的利点を有することは必要とされたままである。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載される一実施形態は、心不全を経験したか又は慢性ストレス下の対象において心臓組織を回復するか又は心不全の症状を改善するための方法であって、対象において心不全又は心筋ストレスを診断すること、及び心不全を経験した対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含む、方法である。一態様では、心不全又は心筋ストレスの診断は、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む。
【0009】
本明細書に記載される他の実施形態は、心不全を経験した対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるための方法であって、対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子が心臓組織に送達され発現した後に、心臓の収縮機能が回復又は増大する、方法である。一態様では、導入遺伝子は、対象が心不全と診断された後に投与される。他の態様では、心不全の診断は、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む。他の態様では、方法は、心筋に導入遺伝子を投与することを含む。他の態様では、導入遺伝子は、注入によって投与される。他の態様では、導入遺伝子は、cBIN1をコードする導入遺伝子を含むベクターを含む。他の態様では、導入遺伝子は、約1×1010~約5×1010のベクターゲノムを含む。他の態様では、cBIN1の発現は、損傷した心筋を再構築する。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋におけるカルシウム処理機構の細胞内分布を安定化させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋における求心性肥大を低減させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋におけるt管マイクロフォールド又はマイクロドメインを回復又は増大させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋におけるリアノジン受容体2(RyR2)の過リン酸化を回復又は減少させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心収縮性及びルシトロピーを回復又は改善する。他の態様では、cBIN1の発現は、心臓弛緩及び拡張期機能を回復又は改善する。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋に対するさらなる損傷に対して予防的である。他の態様では、導入遺伝子は少なくとも1回投与される。他の態様では、対象は哺乳動物である。他の態様では、対象は、マウス又はイヌである。他の態様では、対象は、ヒトである。他の態様では、対象は、駆出率の低下(HFrEF)を経験する。
【0010】
本明細書に記載される他の実施形態は、心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象において心筋組織を回復するか又は心筋損傷を修復するための医薬におけるcBIN1の使用である。
【0011】
本明細書に記載される他の実施形態は、心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるための医薬におけるcBIN1の使用である。
【0012】
特許又は出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含む特許又は特許出願公開のコピーは、要求及び必要な料金の支払いに応じて、特許庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1A~Bは、大動脈収縮(TAC)を受けたマウスにおけるcardiac bridging integrator 1(cBIN1)後処理に関する実験プロトコルを示す。
図1Aは、模式的なプロトコルを示す;47匹のマウスを3群に無作為化した:sham(N=12)又はTAC5週後にAAV9-GFP(N=17)及びAAV9-cBIN1(N=18)を投与された後処理TACマウス。
図1Bは、3群における経大動脈圧力勾配(TAP)の心エコー分析である。
【
図2】
図2A~Bは、外因性cBIN1による後処理が、TAC後マウスの生存率を改善することを示す。
図2Aは、マウスの3群全て:sham対照(N=12)、GFP(N=17)又はcBIN1(N=18)を導入したAAV9-CMVウイルスで処理したTAC後のマウスについてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。3群間の比較のために、ログランク検定を使用した。
図2Bは、AAV9-GFP(N=16)又はAAV9-cBIN1(N=15)の後処理後、AAV9注入前の疾患の末期(TAC後5週のTAC EF≧30%)ではないTAC後マウスのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。AAV9-GFP群とAAV9-cBIN1群との間の生存率の比較のためにログランク検定を使用した。
【
図3】
図3A~Cは、外因性cBIN1がTAC誘導性肥大及び肺浮腫を減少させることを示す。
図3Aは、H&E染色による縦断的な心臓切片を示す(スケールバー、1mm)。
図3Bは、TAC後20週における、脛骨長に対する心臓重量の比(HW/TL)を示し、
図3Cは、脛骨長に対する肺重量(LW/TL)を示す。データは平均±SEMで示され、統計解析にはフィッシャーのLSD検定による二元配置ANOVAが用いられた。
*、
***は、shamに対するp<0.05、0.001;
†は、GFP群とcBIN1群の間を比較したp<0.05。
【
図4-1】
図4Aは、cBin1遺伝子導入が、圧力過負荷心臓において心筋の収縮期及び拡張期機能を維持することを示す。(A)TAC後5週(AAV9注入前)及びTAC後20週(AAV9注入後15週)における各群(sham、AAV9-GFP、AAV9-cBIN1)の代表的な左心室(LV)短軸Mモード画像。
図4B~Dは、TAC後5週(AAV9前)及び20週(AAV9後)における、心エコー測定した(
図4B)左心室駆出率(EF)、(
図4C)拡張末期容積、及び(
図4D)左心室質量を示す。
図4Eは、TAC後20週(AAV9注入後15週)における代表的な僧帽弁流入パルス波ドップラー画像(上)及び中隔僧帽弁輪(e’)の組織ドップラー画像(下)を示す。
図4Fは、TAC後5週(AAV9前)及び20週(AAV9後)における各群からのE/e’の定量化を示す。
図4G~Hは、各マウスの(
図4G)一回拍出量(SV)及び(
図4H)心拍出量(CO)における5週から20週へのΔ変化(ΔSV=SV
20w-SV
5w;ΔCO=CO
20w-CO
5w)を示す。データは平均±SEMで示し、統計解析にはフィッシャーのLSD検定による二元配置ANOVAを用いた。
*、
**、
***は、shamに対するp<0.05、0.01、0.001;
†、
††、
†††は、各時点でAAV9-GFP群と-cBIN1群を比較した、p<0.05、0.01、0.001。
‡‡は、各群のAAV9処理前と処理後を比較したp<0.01である。
【
図4-2】
図4Aは、cBin1遺伝子導入が、圧力過負荷心臓において心筋の収縮期及び拡張期機能を維持することを示す。(A)TAC後5週(AAV9注入前)及びTAC後20週(AAV9注入後15週)における各群(sham、AAV9-GFP、AAV9-cBIN1)の代表的な左心室(LV)短軸Mモード画像。
図4B~Dは、TAC後5週(AAV9前)及び20週(AAV9後)における、心エコー測定した(
図4B)左心室駆出率(EF)、(
図4C)拡張末期容積、及び(
図4D)左心室質量を示す。
図4Eは、TAC後20週(AAV9注入後15週)における代表的な僧帽弁流入パルス波ドップラー画像(上)及び中隔僧帽弁輪(e’)の組織ドップラー画像(下)を示す。
図4Fは、TAC後5週(AAV9前)及び20週(AAV9後)における各群からのE/e’の定量化を示す。
図4G~Hは、各マウスの(
図4G)一回拍出量(SV)及び(
図4H)心拍出量(CO)における5週から20週へのΔ変化(ΔSV=SV
20w-SV
5w;ΔCO=CO
20w-CO
5w)を示す。データは平均±SEMで示し、統計解析にはフィッシャーのLSD検定による二元配置ANOVAを用いた。
*、
**、
***は、shamに対するp<0.05、0.01、0.001;
†、
††、
†††は、各時点でAAV9-GFP群と-cBIN1群を比較した、p<0.05、0.01、0.001。
‡‡は、各群のAAV9処理前と処理後を比較したp<0.01である。
【
図4-3】
図4Aは、cBin1遺伝子導入が、圧力過負荷心臓において心筋の収縮期及び拡張期機能を維持することを示す。(A)TAC後5週(AAV9注入前)及びTAC後20週(AAV9注入後15週)における各群(sham、AAV9-GFP、AAV9-cBIN1)の代表的な左心室(LV)短軸Mモード画像。
図4B~Dは、TAC後5週(AAV9前)及び20週(AAV9後)における、心エコー測定した(
図4B)左心室駆出率(EF)、(
図4C)拡張末期容積、及び(
図4D)左心室質量を示す。
図4Eは、TAC後20週(AAV9注入後15週)における代表的な僧帽弁流入パルス波ドップラー画像(上)及び中隔僧帽弁輪(e’)の組織ドップラー画像(下)を示す。
図4Fは、TAC後5週(AAV9前)及び20週(AAV9後)における各群からのE/e’の定量化を示す。
図4G~Hは、各マウスの(
図4G)一回拍出量(SV)及び(
図4H)心拍出量(CO)における5週から20週へのΔ変化(ΔSV=SV
20w-SV
5w;ΔCO=CO
20w-CO
5w)を示す。データは平均±SEMで示し、統計解析にはフィッシャーのLSD検定による二元配置ANOVAを用いた。
*、
**、
***は、shamに対するp<0.05、0.01、0.001;
†、
††、
†††は、各時点でAAV9-GFP群と-cBIN1群を比較した、p<0.05、0.01、0.001。
‡‡は、各群のAAV9処理前と処理後を比較したp<0.01である。
【
図5-1】
図5A~Cは、AAV9-cBIN1後処理が、TAC後のマウス心臓におけるEFをレスキューすることを示す。
図5Aは、AAV9-CMV-GFP及び-cBIN1処理群におけるAAV前からAAV9注入後3、6、8、10、及び15週(対応すると、TAC後8、11、13、15、及び20週)までの心エコーモニターによるΔEF変化(ΔEF)を示す。
図5B~Cは、ガウス分布フィット曲線を有するAAV9処理後6週(
図5B)及び8週(
図5C)におけるΔEFのヒストグラム分布を示す。データは、平均±SEMとして示される。
【
図5-2】
図5A~Cは、AAV9-cBIN1後処理が、TAC後のマウス心臓におけるEFをレスキューすることを示す。
図5Aは、AAV9-CMV-GFP及び-cBIN1処理群におけるAAV前からAAV9注入後3、6、8、10、及び15週(対応すると、TAC後8、11、13、15、及び20週)までの心エコーモニターによるΔEF変化(ΔEF)を示す。
図5B~Cは、ガウス分布フィット曲線を有するAAV9処理後6週(
図5B)及び8週(
図5C)におけるΔEFのヒストグラム分布を示す。データは、平均±SEMとして示される。
【
図6-1】
図6A~Fは、外因性cBIN1前処理が心筋の圧力-容積(PV)ループを改善することを示す図である。
図6Aは、模式的なプロトコルを示す:TACの3週間前に投与されたAAV9-GFP(N=10)又はcBIN1(N=10)の前処理を伴うsham(N=5)又はTAC。
図6B~Fは、TAC外科手術後8週におけるsham、AAV9-GFP及び-cBIN1心臓の代表的なPVループ(
図6B)、EF(
図6C)、dp/dt最大値(
図6D)、dp/dt最小値(
図6E)及びTau(
図6F)を示す。データは平均±SEMとして示され、フィッシャーのLSD検定による一元配置ANOVAが統計解析に使用された。
**、
***は、shamに対するp<0.01、0.001;
†、
††はAAV9-GFP群とAAV9-cBIN1群の間で比較した、p<0.05、0.01。
【
図6-2】
図6A~Fは、外因性cBIN1前処理が心筋の圧力-容積(PV)ループを改善することを示す図である。
図6Aは、模式的なプロトコルを示す:TACの3週間前に投与されたAAV9-GFP(N=10)又はcBIN1(N=10)の前処理を伴うsham(N=5)又はTAC。
図6B~Fは、TAC外科手術後8週におけるsham、AAV9-GFP及び-cBIN1心臓の代表的なPVループ(
図6B)、EF(
図6C)、dp/dt最大値(
図6D)、dp/dt最小値(
図6E)及びTau(
図6F)を示す。データは平均±SEMとして示され、フィッシャーのLSD検定による一元配置ANOVAが統計解析に使用された。
**、
***は、shamに対するp<0.01、0.001;
†、
††はAAV9-GFP群とAAV9-cBIN1群の間で比較した、p<0.05、0.01。
【
図7-1】
図7A~Cは、TAC後の心臓におけるcBIN1-マイクロドメインの減少が、AAV9-cBIN1前処理により正規化され得ることを示す。
図7A~Bは、sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1前処理したTAC後の心臓ライセートからの(
図7A)cBIN1、(
図7B)リアノジン受容体(RyR)、及びCav1.2のウェスタンブロットを示す。定量化は、下部の棒グラフに含まれる(cBIN1については、n=1群当たり8心臓、cBIN1については、n=1群当たり6心臓)。
図7Cは、sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1前処理したTAC後の心臓からのBIN1標識(抗BARドメイン;上パネル)、RyR(中パネル)、及びCav1.2(下パネル)の代表的な心筋免疫蛍光回転ディスク共焦点画像を示す。挿入図は、対応するボックス領域の拡大画像を含む。下段(左から右):TAC外科手術後8週のsham、AAV9-GFP及びcBIN1前処理した心臓におけるBIN1、RyR及びCav1.2分布のピークパワー密度(n=1群当たり5心臓から15~20画像)。データは平均±SEMで示し、統計解析にはフィッシャーのLSD検定による一元配置ANOVAを使用した。
*、
**、
***は、shamに対するp<0.05、0.01、0.001;
†、
††は、AAV9-GFP群と-cBIN1群の間で比較した、p<0.05、0.01。
【
図7-2】
図7A~Cは、TAC後の心臓におけるcBIN1-マイクロドメインの減少が、AAV9-cBIN1前処理により正規化され得ることを示す。
図7A~Bは、sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1前処理したTAC後の心臓ライセートからの(
図7A)cBIN1、(
図7B)リアノジン受容体(RyR)、及びCav1.2のウェスタンブロットを示す。定量化は、下部の棒グラフに含まれる(cBIN1については、n=1群当たり8心臓、cBIN1については、n=1群当たり6心臓)。
図7Cは、sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1前処理したTAC後の心臓からのBIN1標識(抗BARドメイン;上パネル)、RyR(中パネル)、及びCav1.2(下パネル)の代表的な心筋免疫蛍光回転ディスク共焦点画像を示す。挿入図は、対応するボックス領域の拡大画像を含む。下段(左から右):TAC外科手術後8週のsham、AAV9-GFP及びcBIN1前処理した心臓におけるBIN1、RyR及びCav1.2分布のピークパワー密度(n=1群当たり5心臓から15~20画像)。データは平均±SEMで示し、統計解析にはフィッシャーのLSD検定による一元配置ANOVAを使用した。
*、
**、
***は、shamに対するp<0.05、0.01、0.001;
†、
††は、AAV9-GFP群と-cBIN1群の間で比較した、p<0.05、0.01。
【
図8-1】
図8A~Hは、外因性cBIN1がイソプロテレノール(ISO)後マウス心臓の求心性肥大を減少させることを示す。
図8Aは、実験プロトコルを示す:56匹のマウスを4つの実験群に無作為化した:AAV9-GFP+PBS、AAV9-GFP+ISO、AAV9-cBIN1+PBS、AAV9-cBIN1+ISO(n=14/群)。
図8Bは、4群におけるマウス心臓重量/体重比(HW/BW)を示す。
図8Cは、PBS又はISO輸注後4週における拡張末期及び収縮末期の両方における左心室の縦軸図の代表的な画像を示す。
図8D~Gは、拡張末期容積、LV質量、及び相対的壁厚(
図8D)、駆出率(
図8E)、E/e’(
図8F)、一回拍出量(
図8G)の心エコー分析を示し、及び心拍出量(
図8H)も含まれる。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**、
***は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.05、0.01、0.001を示し;
##、
###は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.01、0.001を示す。
【
図8-2】
図8A~Hは、外因性cBIN1がイソプロテレノール(ISO)後マウス心臓の求心性肥大を減少させることを示す。
図8Aは、実験プロトコルを示す:56匹のマウスを4つの実験群に無作為化した:AAV9-GFP+PBS、AAV9-GFP+ISO、AAV9-cBIN1+PBS、AAV9-cBIN1+ISO(n=14/群)。
図8Bは、4群におけるマウス心臓重量/体重比(HW/BW)を示す。
図8Cは、PBS又はISO輸注後4週における拡張末期及び収縮末期の両方における左心室の縦軸図の代表的な画像を示す。
図8D~Gは、拡張末期容積、LV質量、及び相対的壁厚(
図8D)、駆出率(
図8E)、E/e’(
図8F)、一回拍出量(
図8G)の心エコー分析を示し、及び心拍出量(
図8H)も含まれる。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**、
***は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.05、0.01、0.001を示し;
##、
###は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.01、0.001を示す。
【
図9-1】
図9A~Cは、イソプロテレノールがcBIN1を減少させ、cBIN1-マイクロフォールドを崩壊させ、これがAAV9-cBIN1によって正規化されることを示す。
図9Aは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からの心臓ライセート及び免疫沈降した心臓ライセートからのcBIN1及びGAPDHのウェスタンブロットを示す。右側の棒グラフに定量化を示す(N=6~7心臓/群)。
図9Bは、Di-8-ANNEPs標識(上パネル)(スケールバー、10μm)及び上記の対応する目的のボックス領域のパワースペクトル(下パネル)の代表的な心筋細胞画像を示す。ピークパワー密度の定量化は、左側の棒グラフに含まれている。(N=1群当たり3-4心臓から26~31細胞)。データは平均±SEMで示した。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてp<0.05、0.01を示し;及び
#、
##は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてp<0.05、0.01を示す。
図9Cは、4群全てからの心筋組織からのt管マイクロフォールドの透過型電子顕微鏡画像化を示す(スケールバー、1μm)。各群からのt管(TT)の輪郭の程度の定量化は、左側の棒グラフに含まれる(N=各群からの5~6の心筋切片及び2~3の心臓の60~100画像から232~305TT)。群間のTT輪郭の比較にカイ二乗検定を用い、GFP+PBS対GFP+ISO、GFP+ISO対cBIN1+ISO、及びcBIN1+PBS対他群の比較についてのp<0.001である。
【
図9-2】
図9A~Cは、イソプロテレノールがcBIN1を減少させ、cBIN1-マイクロフォールドを崩壊させ、これがAAV9-cBIN1によって正規化されることを示す。
図9Aは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からの心臓ライセート及び免疫沈降した心臓ライセートからのcBIN1及びGAPDHのウェスタンブロットを示す。右側の棒グラフに定量化を示す(N=6~7心臓/群)。
図9Bは、Di-8-ANNEPs標識(上パネル)(スケールバー、10μm)及び上記の対応する目的のボックス領域のパワースペクトル(下パネル)の代表的な心筋細胞画像を示す。ピークパワー密度の定量化は、左側の棒グラフに含まれている。(N=1群当たり3-4心臓から26~31細胞)。データは平均±SEMで示した。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてp<0.05、0.01を示し;及び
#、
##は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてp<0.05、0.01を示す。
図9Cは、4群全てからの心筋組織からのt管マイクロフォールドの透過型電子顕微鏡画像化を示す(スケールバー、1μm)。各群からのt管(TT)の輪郭の程度の定量化は、左側の棒グラフに含まれる(N=各群からの5~6の心筋切片及び2~3の心臓の60~100画像から232~305TT)。群間のTT輪郭の比較にカイ二乗検定を用い、GFP+PBS対GFP+ISO、GFP+ISO対cBIN1+ISO、及びcBIN1+PBS対他群の比較についてのp<0.001である。
【
図10-1】
図10A~Dは、cBIN1が、t管へのCav1.2局在化を増加させることを示す。
図10Aは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からの心臓ライセートにおけるCav1.2のウェスタンブロットを示す。定量化(Cav1.2/GAPDH及びCav1.2/トロポニン)は、右側の棒グラフに含まれる(n=1群当たり5~7心臓)。
図10Bは、各群からのマウス心筋における抗Cav1.2標識の代表的な共焦点画像(100×)を示す(上、2パネル)(スケールバー、10μm)。第3のパネルは、パワースペクトルを含み、第4のパネルは、心筋細胞長手軸に沿ったボックス領域内の蛍光強度プロファイルを含む。
図10Cは、各群におけるt管におけるCav1.2ピークパワー密度及び免疫蛍光強度の定量化を示す(n=1群当たり3~4心臓から15~32細胞画像)。スケールバー:10μm。
図10Dは、各群からの代表的なカルシウムトランジェントトレース及びピーク振幅(△F/F
0)の定量化を示す(n=1群当たり6心臓から61~88細胞)。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続き、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
***は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.001を示し;
###は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.001を示す。
【
図10-2】
図10A~Dは、cBIN1が、t管へのCav1.2局在化を増加させることを示す。
図10Aは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からの心臓ライセートにおけるCav1.2のウェスタンブロットを示す。定量化(Cav1.2/GAPDH及びCav1.2/トロポニン)は、右側の棒グラフに含まれる(n=1群当たり5~7心臓)。
図10Bは、各群からのマウス心筋における抗Cav1.2標識の代表的な共焦点画像(100×)を示す(上、2パネル)(スケールバー、10μm)。第3のパネルは、パワースペクトルを含み、第4のパネルは、心筋細胞長手軸に沿ったボックス領域内の蛍光強度プロファイルを含む。
図10Cは、各群におけるt管におけるCav1.2ピークパワー密度及び免疫蛍光強度の定量化を示す(n=1群当たり3~4心臓から15~32細胞画像)。スケールバー:10μm。
図10Dは、各群からの代表的なカルシウムトランジェントトレース及びピーク振幅(△F/F
0)の定量化を示す(n=1群当たり6心臓から61~88細胞)。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続き、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
***は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.001を示し;
###は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.001を示す。
【
図11-1】
図11A~Dは、cBIN1が、イソプロテレノール後の心臓におけるSERCA2aの細胞内分布を組織化することを示す。
図11Aは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からの心臓ライセートにおけるSERCA2aのウェスタンブロットを示す。
図11Bは、定量化(SERCA2a/アクチン)が棒グラフに含まれることを示す(n=1群当たり6~8心臓)。
図11Cは、各群からのマウス心筋における抗SERCA2a標識の代表的な共焦点画像を示す(上、2パネル)。スケールバー:10μm。第3のパネルは、上記のボックス領域のSERCA2aのパワースペクトルを含む。
図11Dは、SERCA2aのピークパワー密度の定量化を示す(n=1群当たり3~4心臓から11~15細胞画像)。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続き、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
**、
***は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.01、0.001を示し;
###は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.001を示す。
【
図11-2】
図11A~Dは、cBIN1が、イソプロテレノール後の心臓におけるSERCA2aの細胞内分布を組織化することを示す。
図11Aは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からの心臓ライセートにおけるSERCA2aのウェスタンブロットを示す。
図11Bは、定量化(SERCA2a/アクチン)が棒グラフに含まれることを示す(n=1群当たり6~8心臓)。
図11Cは、各群からのマウス心筋における抗SERCA2a標識の代表的な共焦点画像を示す(上、2パネル)。スケールバー:10μm。第3のパネルは、上記のボックス領域のSERCA2aのパワースペクトルを含む。
図11Dは、SERCA2aのピークパワー密度の定量化を示す(n=1群当たり3~4心臓から11~15細胞画像)。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続き、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
**、
***は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.01、0.001を示し;
###は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.001を示す。
【
図12】
図12A~Bは、心筋ミクロソームのスクロース勾配分画を示す。
図12Aは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、cBIN1+ISO心臓からの心臓ミクロソームのF4(TT)画分におけるCav1.2及びcBIN1の代表的なウェスタンブロット(1レーン当たり2.5μgタンパク質ローディング)を示す。定量化は、棒グラフに含まれる(n=1群当たり3心臓)。
図12Bは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からの心臓ミクロソームのF2(縦SR濃縮)及びF3(jSR濃縮)画分におけるRyR、ホスホランバン(PLN)、及びSERCA2aの代表的なウェスタンブロットを示す(1レーン当たり25μgのタンパク質ローディング)。F2及びF3におけるSERCA2aの定量化は、右側の棒グラフに含まれている(n=1群当たり3心臓)。データは平均±SDで示される。二元配置ANOVAに続き、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
*、
**、
***は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.05、0.01、0.001を示し;
#、
##は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.05、0.01を示す。
【
図13-1】
図13A~Dは、外因性cBIN1が、心筋細胞においてCav1.2-RyR及びSERCA2a-cBIN1分子を一緒にすることを示す。GFP+PBS、cBIN1+PBS、GFP+ISO、及びcBIN1+ISO心臓から単離した心筋細胞におけるCav1.2-RyR(
図13A~B)及びSERCA2a-cBIN1(
図13C~D)分子の超解像STORM画像化及び最隣接部解析。
図13A、Cは、上から下へ、代表的な2D-STORM細胞画像;カップロンの代表的な3D-STORM画像;及びフルセル3D-STORM画像から得られた最隣接部距離分布のヒストグラムを示す。
図13B、Dは、フルセル画像解析を用いた最隣接部距離分布ヒストグラムの第1ピークの定量化を示す(N=1群当たり2~3匹の動物から7~17細胞)。データは、平均±SDとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*は、各AAV9処理群内のPBSとISOの比較についてのp<0.05を示し;
#、
###は、各薬物輸注群内のGFPとcBIN1の比較についてのp<0.05、0.001を示す。
【
図13-2】
図13A~Dは、外因性cBIN1が、心筋細胞においてCav1.2-RyR及びSERCA2a-cBIN1分子を一緒にすることを示す。GFP+PBS、cBIN1+PBS、GFP+ISO、及びcBIN1+ISO心臓から単離した心筋細胞におけるCav1.2-RyR(
図13A~B)及びSERCA2a-cBIN1(
図13C~D)分子の超解像STORM画像化及び最隣接部解析。
図13A、Cは、上から下へ、代表的な2D-STORM細胞画像;カップロンの代表的な3D-STORM画像;及びフルセル3D-STORM画像から得られた最隣接部距離分布のヒストグラムを示す。
図13B、Dは、フルセル画像解析を用いた最隣接部距離分布ヒストグラムの第1ピークの定量化を示す(N=1群当たり2~3匹の動物から7~17細胞)。データは、平均±SDとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*は、各AAV9処理群内のPBSとISOの比較についてのp<0.05を示し;
#、
###は、各薬物輸注群内のGFPとcBIN1の比較についてのp<0.05、0.001を示す。
【
図14-1】
図14A~Hは、AAV9-GFP、cBIN1、BIN1、BIN1+17、及びBIN1+13を受けたイソプロテレノール後の心臓の心エコーを示す。
図14Aは、ベースライン(上)及びイソプロテレノール処理後4週(下)における各群からの代表的LV短軸M-モード画像を示す。全ての4週後ISO画像において、乳頭筋は矢印で示されている。
図14B~Dは、各群(N=1群当たり10匹のマウス)からのLV質量(
図14B)、相対的壁厚(
図14C)、及び駆出率(
図14D)の定量的分析を示す。
図14Eは、代表的な僧帽弁流入パルス波ドップラー画像(上)及びイソプロテレノール処置後4週の中隔僧帽弁輪の組織ドップラー画像(下)を示す。
図14F~Hは、各群(N=1群当たり10匹のマウス)からのE/e’(
図14F)、一回拍出量(
図14G)、及び心拍出量(
図14H)の定量的分析を示す。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**、
***はベースラインに対するp<0.05、0.01、0.001を示し;
#、
##、
###はISO後4週におけるGFP群に対するp<0.05、0.01、0.001を示す。
【
図14-2】
図14A~Hは、AAV9-GFP、cBIN1、BIN1、BIN1+17、及びBIN1+13を受けたイソプロテレノール後の心臓の心エコーを示す。
図14Aは、ベースライン(上)及びイソプロテレノール処理後4週(下)における各群からの代表的LV短軸M-モード画像を示す。全ての4週後ISO画像において、乳頭筋は矢印で示されている。
図14B~Dは、各群(N=1群当たり10匹のマウス)からのLV質量(
図14B)、相対的壁厚(
図14C)、及び駆出率(
図14D)の定量的分析を示す。
図14Eは、代表的な僧帽弁流入パルス波ドップラー画像(上)及びイソプロテレノール処置後4週の中隔僧帽弁輪の組織ドップラー画像(下)を示す。
図14F~Hは、各群(N=1群当たり10匹のマウス)からのE/e’(
図14F)、一回拍出量(
図14G)、及び心拍出量(
図14H)の定量的分析を示す。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**、
***はベースラインに対するp<0.05、0.01、0.001を示し;
#、
##、
###はISO後4週におけるGFP群に対するp<0.05、0.01、0.001を示す。
【
図14-3】
図14A~Hは、AAV9-GFP、cBIN1、BIN1、BIN1+17、及びBIN1+13を受けたイソプロテレノール後の心臓の心エコーを示す。
図14Aは、ベースライン(上)及びイソプロテレノール処理後4週(下)における各群からの代表的LV短軸M-モード画像を示す。全ての4週後ISO画像において、乳頭筋は矢印で示されている。
図14B~Dは、各群(N=1群当たり10匹のマウス)からのLV質量(
図14B)、相対的壁厚(
図14C)、及び駆出率(
図14D)の定量的分析を示す。
図14Eは、代表的な僧帽弁流入パルス波ドップラー画像(上)及びイソプロテレノール処置後4週の中隔僧帽弁輪の組織ドップラー画像(下)を示す。
図14F~Hは、各群(N=1群当たり10匹のマウス)からのE/e’(
図14F)、一回拍出量(
図14G)、及び心拍出量(
図14H)の定量的分析を示す。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**、
***はベースラインに対するp<0.05、0.01、0.001を示し;
#、
##、
###はISO後4週におけるGFP群に対するp<0.05、0.01、0.001を示す。
【
図15-1】
図15A~Jは、cBIN1遺伝子導入が、TAC後マウスにおける無心不全生存を改善することを示す。
図15Aは、TAC試験のための模式的プロトコルを示す。
図15Bは、外科手術後5日の全マウスにおける経大動脈圧力勾配測定を示す。
図15Cは、WT対Bin1 HTマウス(左)、及びAAV9-GFP又はcBIN1前処理マウス(右)における無心生存(非生存は死亡又はEF<35%)についてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。生存率の比較にはログランク検定を用いた。TAC後8週における全マウスのHW/BW(
図15D)及びLW/BW(
図15E)。(
図15F)外科手術後8週の全マウスの代表的なMモード心エコー画像。TAC後8週の全マウスについて、心エコー測定した左心室駆出率(
図15G)、拡張末期容積(
図15H)、LV質量(
図15I)、及びE/e’(
図15J)。データは、平均±SEMとして示される。AAV9処理群における代表的なE及びe’の画像は、(
図15J)の右パネルに含まれる。WTとBin1 HTとの間の比較に使用される対応のないT-検定(又はノンパラメトリックマンホイットニー検定)。Sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1間の比較に、一元配置ANOVA又はクラスカル-ワリス検定に続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
*、
**、
***は、WT又はShamとの比較についてのp<0.05、0.01、0.001を示し、
#、
##は、AAV9-GFPとAAV9-cBIN1の比較についてのp<0.05、0.01を示す。
【
図15-2】
図15A~Jは、cBIN1遺伝子導入が、TAC後マウスにおける無心不全生存を改善することを示す。
図15Aは、TAC試験のための模式的プロトコルを示す。
図15Bは、外科手術後5日の全マウスにおける経大動脈圧力勾配測定を示す。
図15Cは、WT対Bin1 HTマウス(左)、及びAAV9-GFP又はcBIN1前処理マウス(右)における無心生存(非生存は死亡又はEF<35%)についてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。生存率の比較にはログランク検定を用いた。TAC後8週における全マウスのHW/BW(
図15D)及びLW/BW(
図15E)。(
図15F)外科手術後8週の全マウスの代表的なMモード心エコー画像。TAC後8週の全マウスについて、心エコー測定した左心室駆出率(
図15G)、拡張末期容積(
図15H)、LV質量(
図15I)、及びE/e’(
図15J)。データは、平均±SEMとして示される。AAV9処理群における代表的なE及びe’の画像は、(
図15J)の右パネルに含まれる。WTとBin1 HTとの間の比較に使用される対応のないT-検定(又はノンパラメトリックマンホイットニー検定)。Sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1間の比較に、一元配置ANOVA又はクラスカル-ワリス検定に続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
*、
**、
***は、WT又はShamとの比較についてのp<0.05、0.01、0.001を示し、
#、
##は、AAV9-GFPとAAV9-cBIN1の比較についてのp<0.05、0.01を示す。
【
図15-3】
図15A~Jは、cBIN1遺伝子導入が、TAC後マウスにおける無心不全生存を改善することを示す。
図15Aは、TAC試験のための模式的プロトコルを示す。
図15Bは、外科手術後5日の全マウスにおける経大動脈圧力勾配測定を示す。
図15Cは、WT対Bin1 HTマウス(左)、及びAAV9-GFP又はcBIN1前処理マウス(右)における無心生存(非生存は死亡又はEF<35%)についてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。生存率の比較にはログランク検定を用いた。TAC後8週における全マウスのHW/BW(
図15D)及びLW/BW(
図15E)。(
図15F)外科手術後8週の全マウスの代表的なMモード心エコー画像。TAC後8週の全マウスについて、心エコー測定した左心室駆出率(
図15G)、拡張末期容積(
図15H)、LV質量(
図15I)、及びE/e’(
図15J)。データは、平均±SEMとして示される。AAV9処理群における代表的なE及びe’の画像は、(
図15J)の右パネルに含まれる。WTとBin1 HTとの間の比較に使用される対応のないT-検定(又はノンパラメトリックマンホイットニー検定)。Sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1間の比較に、一元配置ANOVA又はクラスカル-ワリス検定に続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
*、
**、
***は、WT又はShamとの比較についてのp<0.05、0.01、0.001を示し、
#、
##は、AAV9-GFPとAAV9-cBIN1の比較についてのp<0.05、0.01を示す。
【
図15-4】
図15A~Jは、cBIN1遺伝子導入が、TAC後マウスにおける無心不全生存を改善することを示す。
図15Aは、TAC試験のための模式的プロトコルを示す。
図15Bは、外科手術後5日の全マウスにおける経大動脈圧力勾配測定を示す。
図15Cは、WT対Bin1 HTマウス(左)、及びAAV9-GFP又はcBIN1前処理マウス(右)における無心生存(非生存は死亡又はEF<35%)についてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。生存率の比較にはログランク検定を用いた。TAC後8週における全マウスのHW/BW(
図15D)及びLW/BW(
図15E)。(
図15F)外科手術後8週の全マウスの代表的なMモード心エコー画像。TAC後8週の全マウスについて、心エコー測定した左心室駆出率(
図15G)、拡張末期容積(
図15H)、LV質量(
図15I)、及びE/e’(
図15J)。データは、平均±SEMとして示される。AAV9処理群における代表的なE及びe’の画像は、(
図15J)の右パネルに含まれる。WTとBin1 HTとの間の比較に使用される対応のないT-検定(又はノンパラメトリックマンホイットニー検定)。Sham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1間の比較に、一元配置ANOVA又はクラスカル-ワリス検定に続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が使用された。
*、
**、
***は、WT又はShamとの比較についてのp<0.05、0.01、0.001を示し、
#、
##は、AAV9-GFPとAAV9-cBIN1の比較についてのp<0.05、0.01を示す。
【
図16】
図16は、マウス心筋細胞におけるAAV9導入外因性GFP-V5及びcBIN1-V5タンパク質発現を示す。対照(左)、AAV9-GFP-V5(中)、又はAAV9-cBIN1-V5(右)処理マウスからの透過光(上)又は広視野蛍光灯(ウサギ抗V5標識、下)下の代表的な成体マウス心室心筋細胞の画像。
【
図17】
図17は、AAV9導入された外因性cBIN1が、TAC後の心臓において心筋細胞のt管マイクロフォールドを正規化させることを示す。sham、AAv9-GFP、及びAAV9-cBIN1処理したTAC後の心臓から新たに単離した心筋細胞の代表的なライブセル膜標識(Di-8-ANNEPs)画像。t管のDi-8-ANNEPs強度の定量化は、右側の棒グラフに含まれている(n=1群当たり5心臓から10画像)。全てのデータは、平均±SEMとして示される。統計解析には、LSD後検定と共にクラスカル-ウォリスを使用した。
***は、Sham群と比較したp<0.001;
†は、AAV9-GFP群とAAV9-cBIN1群との間で比較したp<0.05。
【
図18】
図18Aは、GFP-V5又はcBIN1-V5を導入するAAV9を注入後7週のマウス、又はAAV9を注入しない対照心臓(陰性対照)から得られた心筋凍結切片におけるV5及びWGA標識の代表的な蛍光共焦点画像(20×)である。陽性V5シグナルは、AAV9-GFP-V5又はAAV9-cBIN1-V5(3×10
10vg)の眼窩後注入後7週の心臓からのそれぞれ63%及び57%の細胞で検出される。スケールバー、100μm。
図18Bは、検出可能なV5シグナルを有する心筋面積のパーセントの定量化を示す。N=各群からの2~3匹の動物からの4~6の心筋切片。データは、平均±SEMとして示される。クラスカル-ウォリス検定に続いて、多重比較のためにダンズ検定が用いられた。
*は、AAV9なし陰性対照に対するp<0.05を示す。
【
図19】
図19Aは、GFP+PBS、cBIN1+PBS、GFP+ISO、及びcBIN1+ISOの心臓におけるLVリモデリングの心エコーに基づく分類を示す。
図19Bは、各群からの心臓におけるα-平滑筋アクチンの代表的なウェスタンブロット及び定量化を示す。データは、平均±SEMとして示される。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.05を示し;
##は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.01を示す。
【
図20】
図20Aは、マウスにおける総RyR2タンパク質発現の代表的なウェスタンブロットを、定量化と共に示す。
図20Bは、各群からのマウス心筋細胞におけるRyR2の代表的な共焦点画像(100×)、続いてパワースペクトル解析(n=1群当たり3~4心臓から33~36細胞)を示す。スケールバー:10μm。
【
図21-1】
図21は、RyR2(総量及びリン酸化pS2814、pS2808)、Cav1.2、CAMKIIδ(総量及びリン酸化pT287)、及びホスホランバン(PLN、総量及びリン酸化pS16、pT17)の代表的ウェスタンブロットを示す。定量化は右側の棒グラフに含まれている。データは平均±SEMで示される。N=1群当たり4~7心臓。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.05を示し;
#は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.05を示す。
【
図21-2】
図21は、RyR2(総量及びリン酸化pS2814、pS2808)、Cav1.2、CAMKIIδ(総量及びリン酸化pT287)、及びホスホランバン(PLN、総量及びリン酸化pS16、pT17)の代表的ウェスタンブロットを示す。定量化は右側の棒グラフに含まれている。データは平均±SEMで示される。N=1群当たり4~7心臓。二元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*は、各AAV9処理群内のPBS対ISOの比較についてのp<0.05を示し;
#は、各薬物輸注群内のGFP対cBIN1の比較についてのp<0.05を示す。
【
図22】
図22Aは、心臓ミクロソーム(心臓当たり3~6mg)のショ糖勾配分画の模式的プロトコルを示す。各画分F1、F2、F3、F4から回収された総量タンパク質の収量は、それぞれ心臓プレップ当たり0.001~0.02、0.4~0.8、0.04~0.06、及び<0.008mgの間である。
図22Bは、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、及びcBIN1+ISO心臓からのF1、F2、F3、F4、及びペレットからのミクロソームインプット(M)及び回収画分からのCav1.2、Na
+/K
+-ATPase、SERCA2a、cBIN1、及びカベオリン3の代表的ウェスタンブロットを示す。
【
図23-1】
図23A~Eは、cBIN1が、イソプロテレノール後マウス心臓においてLTCC及びSERCA2aを組織化することを示す。
図23Aは、AAV9-GFP、cBIN1、BIN1、BIN1+17、及びBIN1+13によって処理したイソプロテレノール後のマウス心臓におけるCav1.2及びSERCA2aの代表的なウェスタンブロットを示す。定量化は、右側の棒グラフに含まれる(n=1群当たり3心臓)。
図23B~Cは、各群からのマウス心筋における抗Cav1.2(
図23B)及び抗SERCA2a(
図23C)標識の代表的な共焦点画像(100×)を示す。スケールバー:5μm。
図23Dは、各群からのt管Cav1.2蛍光強度の定量化を示す。N=各群からの3心臓から16~22細胞。
図23Eは、各群からのSERCA2aピークパワー密度の定量化を示す。N=各群からの2~3心臓から20細胞画像。データは、平均±SEMとして示される。一元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**、
***は、対照GFP群と比較した、p<0.05、0.01、0.001を示す。
【
図23-2】
図23A~Eは、cBIN1が、イソプロテレノール後マウス心臓においてLTCC及びSERCA2aを組織化することを示す。
図23Aは、AAV9-GFP、cBIN1、BIN1、BIN1+17、及びBIN1+13によって処理したイソプロテレノール後のマウス心臓におけるCav1.2及びSERCA2aの代表的なウェスタンブロットを示す。定量化は、右側の棒グラフに含まれる(n=1群当たり3心臓)。
図23B~Cは、各群からのマウス心筋における抗Cav1.2(
図23B)及び抗SERCA2a(
図23C)標識の代表的な共焦点画像(100×)を示す。スケールバー:5μm。
図23Dは、各群からのt管Cav1.2蛍光強度の定量化を示す。N=各群からの3心臓から16~22細胞。
図23Eは、各群からのSERCA2aピークパワー密度の定量化を示す。N=各群からの2~3心臓から20細胞画像。データは、平均±SEMとして示される。一元配置ANOVAに続いて、多重比較のためにフィッシャーのLSD検定が用いられた。
*、
**、
***は、対照GFP群と比較した、p<0.05、0.01、0.001を示す。
【
図24】
図24A~Dは、AAV9-cBIN1がdb/dbマウスにおける糖尿病性HFpEFをレスキューすることを示す。心エコーによってE/A(
図24A)、E/e’(
図24B)、及びSV(
図24C);並びに(
図24D)対照db/mマウス(db/m+GFP)及びAAV9-GFP又はcBIN1(db/db+GFP又はdb/db+cBIN1)で処理した糖尿病db/dbマウスのマウストレッドミル上での最大走行距離を測定した。N=1群当たり10動物。一元配置ANOVAに続いて、LSDフィッシャーの正確性検定を使用して、群間の差を比較した。
*、
***は、db/m+GFP群と比較した、それぞれp<0.05又は0.001を示す。
†、
†††は、db/db+GFP群対db/db+cBIN1群の比較についての、p<0.05又は0.001を示す。
【
図25】
図25は、AAV9-cBIN1がイヌの虚血性HFrEFをレスキューすることを示す。心エコーによって、2匹の試験されたイヌ(イヌ#1及び#2)において、左心室駆出率(LVEF)対試験週数を測定した。時点0はLAD結紮時に相当する。矢印はcBIN1療法の時点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
細胞内カルシウム処理機構の再組織化は、そのcardiac isoform of bridging integrator 1(cBIN1)により組織化されたt管膜マイクロドメインを標的とすることにより達成することができる[34]。cBIN1-マイクロドメインは、細胞内トラフィッキング[13]及びLTCCの表面クラスター化を促進し[14,35]、t管内腔に細胞外イオンに対する保護低速拡散領域を形成することによってLTCC間の電気化学勾配に影響を与え[12]、LTCCと結合するためにjSRにRyRをリクルートする[14]ことによってLTCC-RyR二分子を組織化する[12,14]ことが以前に明らかにされた。さらに最近、cBIN1-マイクロドメインは、拡張期カルシウム調節のためにSERCA2aの細胞内分布を組織化するのにも重要であることが明らかにされた[34]。HFでは、cBIN1-マイクロドメインは、cBIN1の転写減少により破壊され[16,36,37]、二分子形成、カルシウムトランジェント制御、及び心収縮性が損なわれる。心筋のcBIN1の減少は、cBIN1膜のターンオーバー及び微粒子放出の結果として、ヒトの血液中に検出されることがある[38]。ヒトでは、血漿CS(cBIN1スコア)は心筋細胞cBIN1レベルの指標であり、これは心筋構造リモデリングを同定し、HF診断及び予後を容易にする[39]。慢性ストレスにさらされたマウス心臓において、外因性cBIN1による前処理は、Cav1.2とSERCA2aのマイクロドメイン-組織化分布を維持し、正常なイノトロピー及びルシトロピーを維持する。これらのデータは、cBIN1の補充が既存のHFを持つ心臓の心筋機能を回復させる可能性を持つ有効なHF治療となり得ることを示す。
【0015】
後負荷の増大はHFの重要な一次及び二次原因であるため[40]、本研究では大動脈収縮(TAC)により誘導される後負荷上昇のマウスモデルを使用する。TACマウスでは、cBIN1前処置がHF発症を予防することが報告されている。さらに、AAV9介在性遺伝子導入を、既存のHFを有するTAC後マウス心臓に外因性cBIN1を導入するために使用した。cBIN1後処理は、TAC誘導性病理学的リモデリングを低減させ、並びにHFの発症と死亡を低減させる。既存のTAC誘導性HFを有するマウス心臓において、cBIN1は機能回復を誘導する。また、本開示では、in vivoの外因性cBIN1を過剰発現させることにより、心筋のリモデリング及び機能障害を制限できるかどうかを検討した。イソプロテレノールの持続輸注は、心筋のcBIN1発現低下及びカルシウム処理タンパク質の細胞内分布の乱れを引き起こし、拡張期機能障害を伴う病理学的求心性肥大も誘発する。本発明者らは、アデノ随伴ウイルス9(AAV9)介在性遺伝子導入によるcBIN1の正規化が、イノトロピーの増加及びルシトロピーの維持を両立し、病理学的肥大が抑制されることを見出した。心筋細胞内では、外因性cBIN1が、t管におけるLTCCの細胞内分布、及び筋小胞体(SR)カルシウムATPase2a(SERCA2a)の局在を保持することを見出した。cBIN1の保護作用はアイソフォーム特異的であり、また、大動脈収縮(TAC)誘導性の心肥大及びHFの第2のモデルで有効であることが確認され、このことは、外因性cBIN1介在性t管マイクロドメインの保持が慢性ストレス下の心臓の心筋機能を改善する治療アプローチとなる可能性があることを示している。
【0016】
心筋内のAAV9ウイルス導入外因性cBIN1は、駆出率が低下した後に投与すると、慢性圧力過負荷ストレスを受けたマウスの心臓の収縮機能をレスキューし、さらに心室拡張及びHF発症を制限し得る。
【0017】
継続的な圧力過負荷下では、心筋リモデリングは適応的な肥大化応答から始まり、その後、不適応な心臓拡張に移行し、HFの悪化につながる[41~43]。これまでの研究で、TAC外科手術前にAAV9-cBIN1を投与すると、心筋の収縮期及び拡張期機能が維持されることが証明され、これは、HF予防におけるcBin1遺伝子療法の有効性を示している。本開示では、外因性cBIN1投与は、TACストレスを受けた心臓のさらなるHFの発症を制限するだけでなくレスキューし、マウスにおける心肥大が減弱し、肺浮腫が軽減し、全生存期間が改善することを見出した。さらに、遺伝子導入により導入した外因性cBIN1は、心エコーで測定した心筋リモデリング及び心機能を改善する。最も驚くべきことに、cBin1遺伝子療法後には、既存の重度のHFを有するマウスがEFの回復を示しており、このことは、外因性cBIN1の保護効果が、既存の構造的リモデリング及びHFの診断を受けている患者に対する形質転換性の治療法として役立つ可能性を示している。
【0018】
最近、AAV介在性遺伝子療法がHFの治療として有望な様式であることが示された[44-45]。現在、β-アドレナリン系、Ca2+循環タンパク質、及び細胞死経路、並びに幹細胞のホーミング等の様々な経路を標的としたHF遺伝子療法の臨床試験がいくつか完了又は進行中である[46]。本発明者らは最近、t管のカルシウム制御マイクロドメインを標的とすることは、必須マイクロドメイン組織化タンパク質であるcBIN1を導入することで効果的に達成できることを見出した[34]。t管マイクロドメインを安定化することにより、cBIN1は潜在的に細胞質カルシウムの恒常性を回復し、収縮期カルシウム放出の増加、拡張期再吸収の改善、電気的安定性維持のためのSR漏出の制限、並びにミトコンドリア関連細胞死を制限するためのミトコンドリア機能保持に寄与する。この結果は、このマイクロドメイン標的化アプローチが、機能保持の効率を改善し、全HF生存率を改善する新たな治療戦略として機能し得ることを示している。さらに、観察されたcBIN1介在性の全生存の改善は、ポンプ機能の改善及び不整脈の減少による複合効果であると考えられ、これらはいずれもcBIN1-マイクロドメインによって制御されている[7、12、36]。cBIN1療法が不全心における不整脈負荷にどのように影響するかについては、今後の研究においてin vivo遠隔測定モニタリングを用いたさらなる解析が必要である。さらに、TAC誘導性HFはミトコンドリア障害に関連した筋細胞死を伴うため[47]、cBIN1補充療法がミトコンドリア機能を維持し、不全心におけるミトコンドリア関連細胞死を制限できるかどうかを調べることは、今後の研究において未だ興味深いものである。
【0019】
機能回復に関して、AAV9-cBIN1治療の最初からモニタリングされたEF変化は、AAV9後6週に回復の高いピークを示し、その後治療効率が下降するが、レスキュー効果はAAV9注入後15週において維持されている。これらのデータは、比較的低用量のAAV9-cBIN1の単回投与(3×1010vg)でも、心機能を保持するのに十分であることを示している。治療効果を最大にするためには、投与量を増やして外因性cBIN1の複数回の投与が必要であるかどうかは、未だ検証されていない。しかしながら、現在のレスキューデータは、既存のHFを有する患者に対して、cBin1遺伝子療法が潜在的にHF進行の悪化サイクルを断ち切り、不全心機能の回復をもたらす可能性があることを示している。
【0020】
本研究は、圧力過負荷を与えた後の既存のHFを有するマウス心臓における外因性cBIN1が保護的役割を果たすことを明らかにするものである。この最初の概念実証研究では、一貫した導入効率及び確立された心臓向性により、遺伝子送達にCMVプロモーターで駆動するAAV9ベクターを使用した。より効率的な心臓特異的プロモーターを有するAAV9にパッケージされたcBin1を用いたマウス及び大型哺乳動物でのさらなる試験が、HF患者におけるcBin1遺伝子療法の有効性及び効率を検証する臨床試験の前に必要とされるであろう。また、cBIN1がt管、SR、及びミトコンドリア近傍の細胞質マイクロドメイン間でカルシウム恒常性の均衡化する細胞内機構についても、今後の研究が必要である。また、cBIN1遺伝子療法及びHF病態生理の相互作用の理解を深めるために、cBIN1の下流標的分子及びシグナル伝達経路のさらなる理解が必要とされるであろう。
【0021】
本開示は、ストレス下の心臓におけるLV肥大及び心機能不全の予防における外因性cBIN1の有益な効果も示している。イソプロテレノールの継続的な輸注を受けたマウスにおいて、外因性cBIN1は、心臓のイノトロピー及びルシトロピーのアイソフォーム特異的な改善をもたらし、LV肥大の発症を制限する。外因性cBIN1の心臓保護効果は、圧力過負荷誘導性HFにさらしたマウス心臓でさらに確認された。
【0022】
慢性的に上昇したカテコールアミンレベルと心臓のβ-アドレナリン受容体(β-AR)の活性化は、HFの病態形成に重要な役割を有している。交感神経を持続的に活性化させた動物では、心筋の構造及び機能が損なわれていることが観察されている[48~49]。合成カテコールアミンであり、非選択的β-ARアゴニストであるイソプロテレノールは、LV肥大及び機能不全のモデルを誘発する研究において使用されてきた[50]。ここでは、高用量のイソプロテレノールを用いて、収縮機能は保持したままLV求心性肥大を誘導した。慢性的な過剰な心臓の作業負荷によるLV肥大は、心血管事象の高いリスクと関連しており[51]、心臓の拡張期機能を保持したまま心室肥大を防止又は逆転させることは、ストレス下の心臓から不全心臓への進行を防止するために極めて重要である。ここで、本発明者らは、cBIN1が慢性的なイソプロテレノール誘導性肥大を減弱すると同時に、収縮期機能が保持された肥大心臓において、アイソフォーム特異的な一回拍出量及び心拍出量の改善をもたらすことを見出した。cBIN1心臓におけるLV容積の増大はポンプ不全及び拡張型心筋症に起因するものではなく、むしろ内在性心筋収縮性(イノトロピー)の増大と並行して心筋ルシトロピー(E/e’)の改善を反映するものである。cBIN1心臓のこの表現型は、チャンバー拡大及びLV容積、一回拍出量及び心拍出量の増加によって特徴付けられる、適応耐久トレーニングにおける運動選手の心臓の典型である[52~54]。有酸素運動トレーニングは、動物モデル[55~56]並びに高血圧[57]及び拡張期不全[58]の患者の両方において、心筋機能並びにイノトロピー及びルシトロピー応答を改善することが報告されている。したがって、外因性cBIN1は、心不全患者にさらなる運動様の利点をもたらし、運動能力及びQOLを改善する可能性がある。
【0023】
これらのイソプロテレノール後の心臓は、収縮機能が保持されたまま肥大段階にあり、外因性cBIN1は、心臓に対する要求の増加を機能的効果に効果的に変換することができる。その結果、これらの機能的及び効率的なcBIN1心臓は肥大の発症が制限され、臨床条件で起こるような次の工程の疾患進行及びHF発症を防ぎ得ると考えられる。次に、既に減圧した心臓における外因性cBIN1の機能的保護効果は、TAC誘導性の肥大及びHFのマウスモデルにおいても観察される。圧力過負荷下では、代償性肥大は適応的な応答である。適応応答は時間と共に心臓拡張に移行し、それに伴うリモデリングは不適応となり、HFの悪化につながる。本発明者らは、圧力過負荷ストレス下の心臓における拡張型心筋症発症の運命は、心筋のcBIN1タンパク質の量によって必然的に決定されることを見出した。圧力過負荷後の、遺伝学的に欠失したBin1HT-TAC心臓における心臓BIN1の低下は、より重度の拡張型心筋症に関連しており、一方、遺伝子導入によるcBIN1の増加は、心臓収縮及び拡張期機能を改善し、HFを制限し、無HF生存が改善する。外因性cBIN1がTAC後の心臓におけるLV拡張の一因でもある心筋細胞死を減少させるかどうかは未だ不明である。今後、ストレス下の心臓における心筋細胞の生存に対するcBIN1の効果を調査する研究が必要であろう。しかしながら、本発明者のデータは、外因性cBIN1がストレス下の心臓における肥大の発症を制限するだけでなく、TACマウスにおける肥大から拡張型心筋症及びHFへの心筋の移行を防止することを示す。
【0024】
cBIN1による心筋イノトロピー機能の改善機構は、ニ分子組織化及び効率的なECカップリングに必要なt管マイクロドメインを組織化するcBIN1の既知の作用と関連している。cBIN1はt管マイクロフォールドを形成し、細胞外t管管腔イオンを捕捉する低速拡散領域を組織化し、t管に前方トラフィックするLTCCを引き付け[30]、既に細胞表面に送達されているLTCCをクラスター化し[35]、二分子でLTCCとカップリングするRyRsをリクルートする[31]。ここでは、他のBIN1アイソフォームではなく、外因性のcBIN1がin vivoでt管へのCav1.2局在を増加させることを確認した。これらの結果は、組織化されたLTCC分布を有するcBIN1-マイクロドメインが、交感神経過剰駆動のcBIN1心臓で観察された正のイノトロピー効果に関与していることを支持するものである。cBIN1-マイクロドメインがLTCCのリン酸化を制御し、よく確立されたβ-サブユニット調節Cav1.2チャネル応答[59~60]を含む、交感神経ストレスに対する機能的応答を制御しているかどうかは、今後の実験的探究が待たれる。さらに、RyRはイノトロピーに重要であり、高リン酸化された漏出RyRはHFの進行に関与している[14]。イソプロテレノールモデル及びヒトのHFにおける以前の報告と一致しているが[14、61]、本発明者らは、慢性的イソプロテレノールがPKA及びCAMKII誘導性のRyRの過リン酸化を活性化することを見出した。AAV9-cBIN1は、これらの経路を鈍らせ、慢性的な交感神経活性化後のRyRリン酸化を正規化し、SR漏出を防止する。
【0025】
本開示によるさらなる新規知見は、外因性cBIN1が、その細胞内分布を組織化することによってSERCA2a機能を増大させるというものである。収縮機能は保持されたまま、慢性的なイソプロテレノール誘導性の求心性肥大は、SERCA2aの細胞内分布の乱れと関連しており、全体的なタンパク質発現は増加している。SERCA2a活性は末期HFで低下することはよく知られている。本発明者らのデータは、発現低下及びPLNによる制御障害に加えて、SERCA2aの細胞内分布がHFにおけるSRカルシウム再取込活性の異常にも寄与し得ることを示している。さらに、α受容体アゴニストであるフェニレフリン誘導性肥大化を有する成体ラットの心室心筋細胞で報告されているように、拡張期カルシウム誘導性のカルシニューリン/NFAT活性化の上昇によってSERCA2aタンパク質発現の適応的増加が起こり得る[62]。したがって、ここでのSERCA2aタンパク質発現の増加は、CAMKIIのT287でのカルシウム依存性リン酸化の上昇に示されるように、拡張期カルシウム濃度の上昇によって誘導される適応応答の可能性がある。このように、SERCA2aの一過性増加は、機能を保持しながら全てのLV肥大の初期段階で起こり得る。疾患の進行中、SERCA2aタンパク質の総発現におけるこの適応的な増加は、末期のHFで起こるように、レベルが水平になり、さらには減少し、これは重度の拡張期及び収縮期不全をもたらす。cBIN1心臓では、SRに沿った組織化SERCA2aは、より良いカルシウム再吸収を示し、したがって、未だに代償期にある心臓では拡張期のカルシウム過負荷はより少ない。これらの結果は、BIN1発現の増加がSERCA2aの発現と関連していることを同定したHFのラットモデルにおける以前の研究と一致している[63]。疾患進行中のSERCA2a発現及び活性を調節する上でのその役割をさらに理解するために、拡張期カルシウム濃度及びカルシニューリン/NTAT経路のcBIN1調節を探求する今後の研究が必要であろう。SERCA2a組織化に対する効果はcBIN1特異的ではなく、他のBIN1アイソフォーム、特にBIN1+17によって部分的に誘導され得ることに留意されたい。このことは、心肥大及び拡張期機能に対するBIN1+17による部分的なin vivo保護効果と一致する。BIN1アイソフォームが正常及び疾患の心筋細胞におけるSERCA2aの分布を組織化するために協働するかどうか、またどのように協働するかについては、今後の研究においてさらなる探求が必要である。さらに、SERCA2aの分布及びRyRのリン酸化を含む、SRにおけるカルシウム処理機構の調節を通じて、cBIN1は正常なSRカルシウム負荷の維持を補助し得る。本研究の限界として、慢性ストレス下にある心臓におけるSRカルシウム負荷、カルシウム放出及び再吸収動態、及び不整脈誘発性自発的カルシウム放出に対するcBIN1の効果を定量化するための今後の実験が必要である。
【0026】
しかしながら、交感神経過剰駆動心臓における最もロバストなイノトロピー及びルシトロピー両方の保護はcBIN1群でのみ観察され、cBIN1依存性のLTCCの局在及び二分子組織化の改善からルシトロピーにさらなる有益な効果が得られる可能性を示している。ニ分子組織化におけるアイソフォーム特異的な改善により、二分子の外側に蓄積するオーファン漏出RyRが減少し[31]、SRからのカルシウム漏出が制限され、拡張期における細胞質カルシウム濃度が減少する。SERCA2a組織化に関する特定された新しい役割と合わせて、本発明者らのデータは、cBIN1-マイクロドメインに関連した制御が、イノトロピー効果に加えて、心臓ルシトロピーを保護する特有の利益を提供することを示している。一方、cBIN1過剰発現は、β-ARシグナル伝達の制御、及び二次メッセンジャー及びカルシウム処理チャネル及びポンプの区画化を増強することによって、イソプロテレノール刺激による病理学的効果も抑制し得る。このように、cBIN1は、t管マイクロドメインを安定化させ、カルシウム処理の全ての局面を制御することにより、効率的な細胞内の心拍間隔のカルシウム循環のための正のフィードフォワード機構を産生する。今後の研究では、慢性的な交感神経活性化後に、外因性cBIN1がβ-AR発現、細胞内分布、及び機能制御を変化させるかどうかを特定することは興味深い。
【0027】
結論として、本発明者らは、外因性cBIN1の過剰発現が、慢性的なβ-AR活性化誘導性求心性肥大、並びに圧力過負荷誘導性肥大及びHFにさらされるマウス心臓において保護的であることを見出した。今後、高血圧及び糖尿病等の一般的な自然心不全を併発した大型哺乳類での実験が必要である。心筋細胞におけるウイルス感染性を改善することは、さらに、全ての心筋細胞におけるイソプロテレノール誘導性の膜破壊を制限又は防止し、心臓全体に対する保護効果を高めるのに役立つ可能性がある。cBin1遺伝子療法の有効性及び効率を試験する臨床試験の前に、全心筋細胞で十分な外因性タンパク質発現を誘導するために、効率的及び心臓特異的なプロモーターを有するAAV9にパッケージされたcBin1を用いたさらなる実験が必要であろう。cBIN1が全身の血行動態及び血圧に影響を与えるかどうかを確立するためには、今後の研究が必要である。最後に、cBIN1-マイクロドメインが、細胞内カルシウム処理機構の組織、ECカップリング、SRカルシウム負荷及び放出、拡張期カルシウム濃度及びその下流のカルシウムシグナル伝達経路、病理学的及び生理学的肥大リモデリングのシグナル伝達経路間の相互作用、並びに補償型肥大から代償型心筋症への分子移行を制御する方法を探る今後の研究が必要である。
【0028】
本明細書に記載の一実施形態は、心不全を経験したか又は慢性ストレス下の対象において心臓組織を回復するか又は心不全の症状を改善するための方法であって、対象において心不全又は心筋ストレスを診断すること、及び心不全を経験した対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含む、方法である。一態様では、心不全又は心筋ストレスの診断は、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む。
【0029】
本明細書に記載される他の実施形態は、心不全を経験した対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるための方法であって、対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子が心臓組織に送達され発現した後に、心臓の収縮機能が回復又は増大する、方法である。一態様では、導入遺伝子は、対象が心不全と診断された後に投与される。他の態様では、心不全の診断は、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む。他の態様では、方法は、心筋に導入遺伝子を投与することを含む。他の態様では、導入遺伝子は、注入によって投与される。他の態様では、導入遺伝子は、cBIN1をコードする導入遺伝子を含むベクターを含む。他の態様では、導入遺伝子は、約1×1010~約5×1010のベクターゲノムを含む。他の態様では、cBIN1の発現は、損傷した心筋を再構築する。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋におけるカルシウム処理装置の細胞内分布を安定化させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋における求心性肥大を低減させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋におけるt管マイクロフォールド又はマイクロドメインを回復又は増加させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋におけるリアノジン受容体2(RyR2)の過リン酸化を回復又は減少させる。他の態様では、cBIN1の発現は、心収縮性及びルシトロピーを回復又は改善する。他の態様では、cBIN1の発現は、心臓弛緩及び拡張期機能を回復又は改善する。他の態様では、cBIN1の発現は、心筋に対するさらなる損傷に対して予防的である。他の態様では、導入遺伝子は少なくとも1回投与される。他の態様では、対象は哺乳動物である。他の態様では、対象は、マウス又はイヌである。他の態様では、対象は、ヒトである。他の態様では、対象は、駆出率の低下(HFrEF)を経験する。
【0030】
本明細書に記載される他の実施形態は、心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象において心筋組織を回復するか又は心筋損傷を修復するための医薬におけるcBIN1の使用である。
【0031】
本明細書に記載される他の実施形態は、心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるための医薬におけるcBIN1の使用である。
【0032】
本明細書に記載される組成物、製剤、方法、プロセス、器具、アセンブリ、及び用途に対する適切な変更及び適応が、その任意の実施形態又は態様の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、関連技術分野における通常の当業者には明らかであろう。提供される組成物、器具、アセンブリ、及び方法は例示的なものであり、開示された実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示された全ての様々な実施形態、態様、及び選択肢は、任意の変形又は反復で組み合わせることができる。本明細書に記載される組成物、製剤、方法、器具、アセンブリ、及びプロセスの範囲は、本明細書に記載される実施形態、態様、選択肢、例、及び嗜好の全ての実際の又は潜在的な組合せを含む。本明細書に記載される組成物、製剤、器具、アセンブリ、又は方法は、本明細書に開示される任意の成分又は工程を省略してもよく、本明細書に開示される任意の成分又は工程を代替してもよく、本明細書の他の場所に開示される任意の成分又は工程を含んでもよい。本明細書に開示された組成物又は製剤のいずれかの成分の質量と、製剤中の他の成分の質量又は製剤中の他の成分の合計質量との比は、あたかも明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。参照により組み込まれる特許又は刊行物のいずれかにおける用語の意味が、本開示において使用される用語の意味と矛盾する場合、本開示における用語又は語句の意味が優先される。本明細書で引用された全ての特許及び刊行物は、その特定の教示について本明細書に参照により組み込まれる。
【0033】
本明細書に記載される発明の様々な実施形態及び態様は、以下の項によって要約される:
項1. 心不全を経験したか又は慢性ストレス下の対象において心臓組織を回復するか又は心不全の症状を改善するための方法であって、対象において心不全又は心筋ストレスを診断すること、及び心不全を経験した対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含む、方法。
項2. 心不全又は心筋ストレスの診断が、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む、項1に記載の方法。
項3. 心不全を経験した対象の心臓において収縮機能を回復又は増大させるための方法であって、対象の心臓組織にCardiac Bridging Integrator 1(cBIN1)をコードする導入遺伝子を投与することを含み、導入遺伝子が心臓組織に送達され発現した後に、心臓の収縮機能が回復又は増大する、方法。
項4. 導入遺伝子が、対象が心不全と診断された後に投与される、項3に記載の方法。
項5. 心不全の診断が、低下したcBIN1血中レベルを測定することを含む、項4に記載の方法。
項6. 心筋に導入遺伝子を投与することを含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
項7. 導入遺伝子が注入によって投与される、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
項8. 導入遺伝子が、cBIN1をコードする導入遺伝子を含むベクターを含む、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
項9. 導入遺伝子が、約1×1010~約5×1010のベクターゲノムを含む、項1~8のいずれか一項に記載の方法。
項10. cBIN1の発現が、損傷した心筋を再構築する、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
項11. cBIN1の発現が、心筋におけるカルシウム処理機構の細胞内分布を安定化させる、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
項12. cBIN1の発現が、心筋における求心性肥大を低減させる、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
項13. cBIN1の発現が、心筋におけるt管フォールド又はマイクロドメインを回復又は増大させる、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
項14. cBIN1の発現が、心筋におけるリアノジン受容体2(RyR2)の過リン酸化を回復又は減少させる、項1~13のいずれか一項に記載の方法。
項15. cBIN1の発現が、心収縮性及びルシトロピーを回復又は改善する、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
項16. cBIN1の発現が、心臓弛緩及び拡張期機能を回復又は改善する、項1~15のいずれか一項に記載の方法。
項17. cBIN1の発現が、心筋に対するさらなる損傷に対して予防的である、項1~16のいずれか一項に記載の方法。
項18. 導入遺伝子が少なくとも1回投与される、項1~17のいずれか一項に記載の方法。
項19. 対象が哺乳動物である、項1~18のいずれか一項に記載の方法。
項20. 対象がマウス又はイヌである、項1~19のいずれか一項に記載の方法。
項21. 対象がヒトである、項1~20のいずれか一項に記載の方法。
項22. 対象が、駆出率の低下(HFrEF)を経験する、項1~21のいずれか一項に記載の方法。
項23. 心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象において心筋組織を回復するか又は心筋損傷を修復するための医薬におけるcBIN1の使用。
項24. 心不全を経験したか又は慢性心筋ストレスを有する対象の心臓において収縮(収縮期)機能又は弛緩(拡張期)機能を回復又は増大させるための医薬におけるcBIN1の使用。
【実施例】
【0034】
実施例1
材料及び方法
機能的レスキュー試験のための動物手順。成体雄のC57BL/6マウス(The Jackson Laboratory)を使用した。全てのマウスを8~10週齢で麻酔し、開胸sham又は大動脈収縮(TAC)外科手術に供した。TACは、大動脈弓の第1の枝と第2の枝の間に27ゲージの針に対して7-0の絹糸を結んで行った。sham対照として、年齢を適合させたマウスを、TACを行わずに開胸モック手術に供した。遺伝子療法では、TAC開始後5週目に、cBIN1-V5又はGFP-V5を導入したAAV9ウイルス(Welgen.Inc)の3×1010ベクターゲノム(vg)100μLをマウスに眼窩後注入した[64]。
【0035】
イソプロテレノール試験のための動物手順。イソプロテレノール試験のために、成体雄のC57BL/6マウスに、GFP又はBIN1アイソフォームを導入したAAV9の3×1010ベクターゲノム(vg)(Welgen,Inc.)を眼窩後注射で投与した[64]。vg投与3週間後に、PBS又はイソプロテレノール(30mg/kg/日)を放出する浸透圧ミニポンプをマウスに皮下埋込した。56匹のマウスをGFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+PBS、又はcBIN1+ISO群に無作為化した(N=14/群)。他の50匹のマウスは、イソプロテレノールの前にAAV9-GFP、cBIN1、BIN1、BIN1+17、又はBIN1+13(N=10/群)の投与に無作為化された。AAV9は、有望な遺伝子療法ビヒクルであり、最も高い心臓向性[65]を示すので、使用された。CMVプロモーターは、心臓への遺伝子導入における効率及び安全性から使用した[66]。AAV9-CMV-GFPは、心筋細胞毒性を誘発せず、心血管疾患の動物モデルを用いた多くの遺伝子療法研究において陰性対照ウイルスとしての使用が成功しているため、陰性対照ウイルスとして使用された[67]。TAC試験では、成体雄の心臓特異的Bin1ヘテロ接合体(Bin1 HT;Bin1flox/+、Myh6-cre+)とその野生型(WT; Bin1flox/+、Myh6-cre-)同腹子のいずれか[29]、又は成体雄C57BL/6マウス(Jackson Laboratory)を使用した。全てのマウスは8~10週齢で麻酔し、開胸TAC又はモック手術(Sham)に供した。遺伝子療法では、イソプロテレノール試験と同様に、TAC開始3週間前にcBIN1-V5又はGFP-V5を導入したAAV9ウイルス3×1010vgをマウスに眼窩後注射した。
【0036】
イソプロテレノールミニポンプ試験。56匹のマウスを、マウスを酸素中の1%イソフルランで麻酔した状態で、眼窩後注射によりV5タグ付きGFP又はcBIN1を導入したAAV9の3×1010ベクターゲノム(vg)の投与量を受けるように無作為化した[68]。ウイルス注入から3週間後、マウスにイソプロテレノール又はPBSを放出する浸透圧ミニポンプを埋込んだ(AAV9-GFP+PBS、AAV9-GFP+ISO、AAV9-cBIN1+PBS、AAV9-cBIN1+ISOの4つの試験群のそれぞれについて、N=1群当たり14)。AAVは最も有望な遺伝子療法ビヒクルであり[21、69]、AAV9はマウスで最も高い心臓向性(4~6)を示すため、本試験ではAAV9を使用した。AAV9-CMVは効率的及び安全に心臓への遺伝子導入を行うことができることが確立されているため、CMVプロモーターを使用した[25]。AAV9-CMVGFPは、心臓損傷及び心筋細胞毒性を誘発せず[25~26]、GFP AAV9は、肥大及び心筋症のマウスモデルを含む、心血管疾患の動物モデルを用いた多数の遺伝子療法研究において陰性対照ウイルスとしての使用が成功した[26~29]ため、陰性対照ウイルスとしてAAV9-CMV-GFPが用いられた。このプロトコルは、第2のセットの動物でも繰り返された。同様に、イソプロテレノールミニポンプ埋込の3週前に、50匹のマウスを、眼窩後注入によりV5タグ付きGFP、BIN1、BIN1+13、BIN1+17、又はcBIN1を導入するAAV9の3×1010ベクターゲノム(vg)の投与を受けるように無作為化した(n=1群当たり10)。AAV9注入の3週間後、マウスに以前に確立した手順に従いイソプロテレノールを連続的に放出する皮下ALZET浸透圧ミニポンプ(Model 1004,Durect,Cupertino,CA,USA)を埋込んだ[30]。簡潔には、イソフルラン吸入による軽い麻酔下で、30mg/kg/日のイソプロテレノールを連続的に放出する浸透圧ミニポンプをマウス背部の皮下に埋込んだ。
【0037】
大動脈収縮(TAC)試験。cBIN1欠損研究のために、8~10週齢の心臓特異的Bin1ヘテロ接合体欠失雄マウス(Bin1 HT;Bin1flox/+、Myh6-Cre+)とその野生型 (WT;Bin1flox/+、Myh6-Cre-)同腹子(WT)に対してTACが実施された。Bin1 HT及びWTマウスは、既述のように作製した。具体的には、ヘテロ接合体loxp部位隣接Bin1(Bin1遺伝子のエクソン3周辺のloxP部位)マウスをMyh6-cre+マウスと交配し、心筋細胞特異的Bin1 HT(N=10)及びWT同腹子対照(n=14)を作製した。遺伝子型は、以前に確立された方法に従って、Bin1+、Bin1flox、及びCre+アレルを区別するためにPCRによって確認された。AAV9介在性過剰発現試験では、5~7週齢の雄のC57BL/6Jマウス(Jackson Laboratory)に、cBIN1-V5(N=18)又はGFP-V5(N=18)を導入したAAV9ウイルス(3×1010vg)の眼窩後注入を行った。3週間後、8~10週齢のマウスを麻酔し、開胸TAC外科手術に供した。TACを行わずに開胸モック手術に供した年齢を適合したマウスをsham対照として使用した(N=10)。TACは、先に記載したように、圧力過負荷を誘導するために行った。簡潔には、8~12週齢の雄マウスを3%イソフルランのフェイスマスク投与により麻酔し、挿管して、補助O2及び1.5%イソフルランを用いて、0.2mLの潮量及び120呼吸/分の呼吸数で人工呼吸器(Harvard Apparatus)に配置した。胸腔は胸骨上縁の第2の肋間に小切開で入り、大動脈弓から離れた第1の枝と第2の枝の間に27ゲージの針に対して7-0ナイロン縫合結紮糸を結んで大動脈収縮を行った。鎮痛のためブプレノルフィン(0.8mg/kg)を皮下投与し、100%O2の加温チャンバーでマウスを回復した。TACの8週後、動物を安楽死させ、解析のために組織を採取した。
【0038】
アデノ随伴ウイルス9(AAV9)の作製及び投与。CMVプロモーターによって駆動されるGFP-V5、BIN1-V5、BIN1+13-V5、BIN1+17-V5、及びcBIN1-V5(BIN1+13+17-V5)を発現する5つのAAV9ベクターは全てカスタムメイドであり、Welgen,Inc.(Worcester,MA,USA)で産生された。V5タグ付きGFPとマウスBIN1アイソフォームの既報のゲートウェイ発現クローン[31]を使用し、配列決定した後、その後のAAVベクターへのクローニング及びウイルス調製のためにWelgenへ送った。次に、これらの遺伝子インサート(GFP-V5又はBIN1-V5)をpAAV-CMVベクター(Welgen,Inc., Worcester,MA,USA)にサブクローンし、制限酵素消化により陽性クローンを選択した。pAAV-CMV-(GFP/BIN1)-V5プラスミドDNAを精製し、塩基配列を決定した。全てのAAVウイルスはHEK293細胞で作製した。3つのプラスミド、pAAV-CMV-(GFP/BIN1)-V5、pAAV-rep/cap9、及びpHelperベクターをポリエチレンイミンを使用して293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクト後、上清及び細胞を採取した。AAVウイルスは、3回の凍結融解によりHEK293細胞から放出された。培地中のウイルスは、PEG8000(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を用いて沈殿させた。細胞ライセートとペレット化した上清沈殿物を合わせ、Benzonase(Merck,Kenilworth,NJ,USA)により37℃で1時間処理した。ウイルスはヨウジキサノール勾配遠心により精製し、Amicon Ultra-15遠心フィルター(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)により濃縮した。
【0039】
機能的レスキュー試験のための心エコー。in vivo収縮期及び拡張期左心室(LV)機能を、ベースライン、手術前、及びその後試験プロトコルの終了まで隔週で、Vevo 7700を用いて麻酔したマウスで心エコーによりモニタリングした。経大動脈圧力勾配は、外科手術後2週目に修正ベルヌーイ方程式(Δ圧較差(mmHg)=4×ピーク速度2(m/s)2)を用いて記録した。TAC後5週目に生存している全てのマウスを試験に含めた。
【0040】
イソプロテレノール試験のための心エコー。心エコーは、70MHzのトランスデューサを備えたVevo-3100超音波システム(Visual Sonics)を用いて記録した。タンパク質相互作用は、免疫蛍光イメージング及び生化学的共沈法により解析した。t管におけるCav1.2のピーク強度は、既報の通りImage Jで定量化した[30]。パワースペクトル解析は、MatlabでFFT変換を使用して解析した[10、30]。細胞内タンパク質の分布は、以前に確立された方法でショ糖勾配分画により解析した[70]。カルシウムトランジェント測定には、Cal-520-AM(AAT Bioquest)を既述のように使用した[31]。LTCC-RyRとSERCA2a-cBIN1分子間の最隣接部解析のために、3次元超解像確率的光学再構成顕微鏡(STORM)画像を得た[31]。
【0041】
無重度HF生存対非生存、及びHF分類の主要評価項目。全生存率は全群で解析した。さらに、無重度心不全(HF)-生存率も分析し、AAV9-GFP群とAAV9-cBIN1群の間で比較した。無重度HF生存については、主要評価項目は心エコーで測定した駆出率(EF)≧35%の生存である。非生存はTAC後20週間以内の死亡又はEF<35%である。プロトコルの最後に、生存TACマウスは、脛骨長(TL)、肺重量(LW)、及び心臓重量(HW)を測定した。
【0042】
免疫蛍光標識及び共焦点画像化。心筋細胞膜の蛍光標識のために、GFP-TAC及びcBIN1-TACマウスから新たに単離した心室心筋細胞をDi-8-ANNEPsと共に室温(RT)で20分間インキュベートした。その後、細胞をHBSSで洗浄し、残存色素を除去した後ライブセル画像化を行った。固定細胞V5画像化(10×)のために、単離心筋細胞を-20℃のメタノール中で5分間固定し、透過処理し、PBS中の0.5%トリトンX-100及び5%正常ヤギ血清(NGS)でRTで1時間ブロッキングを行った。細胞をウサギ抗V5(Sigma)と共に4℃で一晩インキュベートし、Alexa555コンジュゲートヤギ抗ウサギIgGで検出した。組織免疫蛍光画像化のために、心筋の凍結切片を氷冷アセトンで5分間固定した。使用した一次抗体は、マウス抗BIN1-BAR(2F11、Rockland)、マウス抗RyR(Abcam)、又はウサギ抗Cav1.2(Alomone)であった。一次抗体とのインキュベート及び1×PBSでの数回の洗浄後、細胞及び組織切片を、Alexa488又はAlexa555コンジュゲートヤギ抗マウス又はウサギ二次抗体(Life Technologies)とインキュベートし、ProLong金を含むDAPIでマウントした。全ての共焦点画像化は、100×1.49の開口数(NA)と60×1.1又は10×の対物レンズを備えたNikon Eclipse Ti顕微鏡で実施された。高解像度心筋細胞画像は、レーザマージモジュール5(Spectral applied research,CA)から発生するダイオード励起固体(DPSS)レーザ(486nm、561nm、647nm)を用いた回転ディスク共焦点ユニット(Yokogawa CSU10)を用いて得られた。T管膜標識蛍光強度プロファイルはImageJで生成し、T管におけるピーク強度は既報のように定量化した[29]。パワースペクトル解析は、MatlabでFFT変換を用いて解析し、t管での正規化ピークパワー密度を群間で比較した[10、30]。
【0043】
免疫蛍光標識及び回転ディスク共焦点顕微鏡による画像化。心筋組織切片は100%OCT媒体に包埋し、エタノールと共にドライアイス上で瞬間凍結し、-80℃の冷凍庫で保存した後、既報のように10μmで切片化した[32]。アセトンによる固定後、組織凍結切片をPBS中0.1%Triton X-100と5%正常ヤギ血清(NGS,Life Technology)で1時間RTで透過させた。V5、CaV1.2、及びSERCA2aの染色については、組織切片を、ウサギ抗V5(1:500,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)、ウサギ抗CaV1.2(1:250,Alomone Labs,Jerusalem,Israel)、又はマウス抗SERCA2a(1:250,Abcam,Cambridge,MA,USA)の一次抗体と共に4℃において一晩インキュベートした。1×PBSで数回洗浄した後、組織切片をそれぞれAlexa 4#88及び555にコンジュゲートしたヤギ抗マウス及び抗ウサギIgGと共にインキュベートした。組織切片は、DAPI含有Prolong(登録商標)Gold媒体でマウントした。全ての画像化は、40×1.1又は100×1.49の開口数を持つ全内部反射蛍光対物レンズとNIS Elementsソフトウェア(Nikon,Los Angeles,CA,USA)を備えたNikon Eclipse Ti顕微鏡で行われた。レーザマージモジュール5(Spectral Applied Research,Richmond Hill,Ontario,Canada)から発生するダイオード励起固体レーザ(486nm、561nm)を用いて、同じTi顕微鏡に接続した回転ディスク型共焦点ユニット(Yokogawa CSU10,Sugar Land,Taxas,USA)でZステップ積層の0.5μmの共焦点Zスタックを集め、高解像度ORCA-Flash 4.0デジタルCMOSカメラで捕捉した。t管Cav1.2蛍光強度プロファイルはImageJで作成し、t管でのピーク強度は既報のように定量化した[30]。カルシウムトランジェントは、以前に記載されたプロトコルに従って実施された[31]。簡潔には、新鮮に単離された心筋細胞は、通常のTyrode緩衝液中の0.4%Pluronic F-127中の10μmol/L Cal-520-AM(AAT Bioquest)で30分間負荷された。1mmol/Lプロベネシドを含む緩衝液で3回洗浄後、細胞を画像化チャンバーに入れ、フィールドスティミュレータ(Ionflux)で1Hzでペーシングした。画像は回転ディスク共焦点顕微鏡を用いて67fpsで収集し、Nikon Element Softwareで解析した。F0(ベースライン蛍光)とFmax(カルシウムトランジェントのピーク時の最大蛍光)の蛍光シグナルを最初にバックグラウンド補正し、次にΔF/F0=(Fmax-F0)/F0の比率計算を行って群間で比較した。
【0044】
パワースペクトル解析。心筋細胞免疫蛍光サブセクションの頻度領域パワースペクトルは、FFT変換を用いてMatlabで生成した[10、30]。最大成分に正規化したパワースペクトルを生成し、距離(1/頻度、μm)上にプロットした。正規化ピークパワー密度[71]を定量化し、群間で比較した。
【0045】
超解像確率的光学再構成顕微鏡(STORM)画像化及び最隣接部解析。STORM画像化のために、心筋細胞は以前に報告されたように準備された[31]。画像化当日、新鮮なSTORM画像化緩衝液(0.5mg/mLグルコースオキシダーゼ、40μg/mLカタラーゼ、メルカプトエチルアミン入り10%グルコース)をディッシュに添加した。STORM画像は、レーザ(音響光学チューナブルフィルタを備えた自己完結型4ラインレーザモジュールからの488nm、561nm)を備えたNikon Eclipse Ti顕微鏡で収集し、高速iXon DU897 Ultra EMCCDカメラで捕捉した。STORMモジュールを用いて画像を取得及び解析し、Cav1.2/RyRとcBIN1/SERCA2aの画像をナノスケールの分解能で3次元(3D)投影を作成した。最隣接部解析のために、Nikon Elementsソフトウェアで利用可能なガウスレンダリングアルゴリズムでネイティブ3D STORM画像を表示し、分子リストテキストファイル形式の3D STORM画像(1回の取得で2チャンネル、Cav1.2/RyR又はcBIN1/SERCA2a)をz間隔10nmで深さ500nmの範囲で3Dスタックを取得した。分子リストテキストファイルをImageJで読み込み、2つのチャンネルからの分子間の最隣接部距離(最隣接部距離)を算出した。最隣接部距離は頻度分布ヒストグラムとしてユーザー定義の範囲とビン幅で構築及び表示し、最初のピーク値を検出して15次多項式曲線でフィッティングを行った。対応する第1のピーク位置におけるCav1.2-RyRとSERCA2a-cBIN1分子間の距離を定量化し、群間で比較した。
【0046】
透過型電子顕微鏡。全ての透過型電子顕微鏡(TEM)作業は、UCLAのThe California NanoSystems InstituteのElectron Imaging Centerの中核施設によって行われた。組織の調製は、以前に報告された方法を用いて行った[72]。簡潔には、マウスの心臓を新鮮な固定溶液(1×PBS中の2%グルタルアルデヒド及び2%パラホルムアルデヒド)20mLで灌流した。左心室組織(1mm3)を1%四酸化オスミウムで後固定し、3%酢酸ウラニルでインキュベートした。エタノールで脱水後、試料を酸化プロピレンで処理、Spurr樹脂(Electron Microscopy Services)に包埋し、ウルトラミクロトーム(Leica)を用いて切片化した。切片をグリッドにマウントし、酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色した後、JEM1200-EX、JEOL顕微鏡(Gatan)を用いて画像を取得した。輪郭のあるt管の程度は、以前に確立された修正したスコアリングシステムを用いて定量化した[29]。
【0047】
機能的レスキュー試験のためのウェスタンブロッティング。液体窒素で瞬間凍結した心臓から組織ライセートを作製した。凍結組織は、以前に記載されたように、放射免疫沈降法(RIPA)溶解緩衝液中でホモジナイズした[41]。ライセートは、4℃で40分間、頭からつま先まで回転させ、超音波処理を行い、その後、遠心分離(16,000×g、4℃で25分間)して細胞残屑を除去した。次に、タンパク質ライセートを、5%β-メルカプトエタノールを含む2×サンプルバッファー(Bio-Rad,Hercules,CA)を調製し、RTで30分間インキュベートし、8~12%勾配ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミド電気泳動ゲル上で分離させた。タンパク質はポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に電気泳動した。転写後、膜をメタノールで固定し、1×Tris緩衝生理食塩水(TBS)中の5%BSAで1時間RTでブロックし、1×TBS中の5%BSAで4℃で一晩一次抗体とインキュベートし、続いてAlexa 647コンジュゲート二次抗体(Life Technology)とRTで1時間インキュベートした。一次抗体は、カスタムメイドのポリクローナルウサギ抗BIN1エクソン13(Anaspec)[29]、マウス抗RyR(Abcam)、ウサギCav1.2抗体(Alomone)、及びマウス抗GAPDH(Millipore)からなっていた。
【0048】
イソプロテレノール試験のためのウェスタンブロッティング。凍結心臓組織をプロテアーゼ阻害剤入りRIPA溶解緩衝液を用いてホモジナイズし、ブラッドフォードアッセイを使用してタンパク質濃度を決定した。試料はNuPAGE(商標)Novex(商標)4~12%Bis-Tris Protein Gelsで分離した後、ポリビニリデンジフルオリド膜に移した。1×TNT緩衝液中、5%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロッキングした後、膜はウサギ抗GAPDH又はアクチン(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)、ウサギ抗CaV1.2(Alomone Labs,Jerusalem,Israel)、又はマウス抗SERCA2a(Abcam,Cambridge,MA,USA)を含む一次抗体と4℃で一晩インキュベートし、その後、二次抗体(ヤギ抗ウサギ又はマウスIgG-Alexa 647)と共に室温(RT)で1.5時間インキュベートした。免疫反応性バンドはMolecular Imager(登録商標)Gel Doc(商標)XR+System(Bio-Rad Laboratories,Irvine,CA,USA)で画像化し、バンド強度はImage Labソフトウェア(Bio-Rad Laboratories,Irvine,CA,USA)で定量した。
【0049】
心臓ミクロソームの調製及びスクロース勾配分画。ミクロソームのショ糖勾配分画は、修正を加えた確立されたプロトコルに従って調製した[70]。心筋膜ミクロソームは、各試験群について1個の心臓の出発物質から調製した。凍結心臓組織を2mLのホモジナイザー緩衝液(20mM Tris pH7.4、250mMスクロース、HALTプロテアーゼ阻害剤で補った1mM EDTA)中でポリトロンハンドヘルドホモジナイザーを用いてホモジナイズした。次に、ホモジネートを12,000×g(Beckman)で4℃、20分間遠心分離し、上清(S1)を予め計量した管に集め、氷上で保存した。ペレットを同緩衝液1mLに懸濁し、ホモジナイズし、12,000×g、4℃で20分間遠心した。上清(S2)を回収し、前の工程からのS1と合わせた。次に、合わせたミクロソーム上清(S1+S2)を110,000×g、4℃で2時間の超遠心分離にかけた。超遠心後、上清を捨て、ペレットを秤量し、適量の緩衝液(約1mL)を添加し、ミクロソームの最終濃度が約25mg/mLとなるようにした。再懸濁したミクロソーム中の総タンパク質濃度を、各試料についてNanodrop 2000を用いて測定し、4群間で正規化した。各試料からの全ミクロソームの同量(0.5mL中3~6mg)を不連続スクロース勾配[52、58、73]、及び45%、v/wホモジナイザー緩衝液、各2mL)の上に慎重に置き、Beckman Coulter Optima Max XP Benchtop Ultracentrifugeを用いて固定角MLA-55ローターで150,000×g、16時間超遠心した。その後、以下の画分から試料を回収した:F1、27%;F2、27/32%;F3、32/38%;及びF4、38/45%;並びに管の底部からのペレット(P)。各画分について、約1mLを採取し、ホモジナイズ緩衝液で4倍に希釈し、120,000×g、4℃で2時間超遠心した。ペレットを100μLのホモジナイズ緩衝液に再懸濁し、Nanodrop 2000でタンパク質濃度を測定した。各画分F1、F2、F3、F4から回収したタンパク質の総量の収量は、それぞれ心臓当たり0.001~0.02、0.4~0.8、0.04~0.06、<0.008mgであった。サンプルバッファーを、添加した後、試料を凍結し、その後のウェスタンブロット解析の前に-20℃で保存した。
【0050】
統計解析。全てのデータは、指定されたように平均±平均の標準誤差(SEM)又は標準偏差(SD)として表される。正規性は、シャピロ・ウィルク検定を用いて評価した。カプランマイヤー生存分析を使用して、ログランク検定を用いて2群間で比較し、ログランク傾向検定を用いて3群間で比較した。連続変数は、t検定/マン・ホイットニーのU及び一元配置分散分析(ANOVA)/クラスカル・ワリス検定を用いて比較した。二元配置ANOVAは、2つの異なる時点における2群間の差異を決定するために使用された。二元配置ANOCAは、異なる薬剤輸注を行った2つのAAV9群間の差異を決定するために使用され、その後、複数のペアワイズ比較のためにフィッシャーの最小有意差(LSD)ポストホック調整が行われた。カテゴリー変数は、フィッシャーの正確性検定又はカイ二乗検定を使用して分析した。データはGraphPad Prism(バージョン7.0;GraphPad Software,La Jolla,CA,USA)を用いて分析した。両側p値を使用し、p<0.05が統計的に有意であると考える。
【0051】
実施例2
圧力過負荷誘導性心不全を有するマウス心臓における外因性cBIN1による機能的レスキュー
cBIN1-マイクロドメインを標的とすることがHFの新しい治療法となり得るかどうかを調べるために、心臓のcBIN1が圧力過負荷ストレスを受けたマウスのHF発症にどのように影響するかを調査した。8~10週齢の成熟雄マウスにおいて大動脈収縮(TAC)又はモック外科手術(sham)を行い、その後、心エコーモニタリングによって全生存率並びに無重度収縮期HF生存率(死亡又は駆出率、EF<35%としての非生存率)を測定した。
図1Aの実験プロトコルに示されるように、マウスは、cBIN1-V5又は対照GFP-V5を導入したAAV9の眼窩後注射の前に、最初に5週間TACに供され、その後、ウイルス注入後さらに15週間(TAC後20週)心エコーモニタリングを行った。開胸モック外科手術を受けたマウス群(sham対照、N=10)に加えて、36匹のマウスをTAC外科手術に供した。1匹のマウスは0時点(TAC後5週)に達する前に死亡し、残りの35匹の生存マウスは、3×10
10vgのAAV9-GFP(N=17)又はcBIN1(N=18)の投与に無作為化した。AAV9注入の15週間後にマウスから単離した心筋細胞の抗V5標識は、正のV5シグナルを同定し、心筋細胞における外因性タンパク質の導入が成功したことを示した(
図16)。AAV9注入前のLV拡張末期容積(EDV)の増加を伴う左心室(LV)EFの減少(表1)によって証明されるように、TAC後2週間における同等の経大動脈圧力勾配(
図1B)及びTAC後5週間の心筋機能不全がこれらのマウスで観察された。
【0052】
【0053】
次に、全群の全生存率(非生存は死亡)を調査した。
図2のカプラン-マイヤー曲線に示すように、AAV9-cBIN1処理TACマウス(生存率77.8%、14/18)の全生存は、sham(生存率100%、10/10)及びAAV9-GFP処理TACマウス(生存率58.8%、10/17)(3群間で比較すると傾向についてログランク検定でp=0.0202)(
図2A)の中ほどに位置する。次に、時点0(TAC5週後、ウイルス注入前)においてEF≧35%の生存した全てのTACマウスにおいて、追跡心エコーモニタリング中の2つのウイルス群間の無収縮期HF生存(死亡又はEF<35%としての非生存)をさらに分析した。無収縮期HF生存は、AAV9-cBIN1によって有意に改善される(AAV9-GFP群と比較した場合、ログランク検定によってp=0.0225)(
図2B)。0時点においてEF≧35%の11匹のAAV9-GFPマウスのうち、9匹がTAC後20週間以内にEF<35%を発症し、2匹が早期死亡し、及び7匹が進行性EF減少を伴っていた。一方、0時点においてEF≧35%の13匹のAAV9-cBIN1マウスのうち、5匹だけがTAC後20週間以内にEF<35%を発症し、1匹が早期死亡した。さらに、カプランマイヤー曲線解析で非生存とカウントされたこれら5匹のうち、早期死亡した1匹を除く残りの非生存AAV9-cBIN1処理動物4匹のうち3匹は、TAC後20週目にEFが35%以上に回復した。その後、生存マウスを屠殺し、HW/TL及びLW/TLの比率を評価した。AAV9-cBIN1マウスは、sham対照マウスと比較した場合、AAV9-GFPマウスで生じたようなHW/TL及びLW/TLの著しい増加を有さなかった(
図3A~B)。これらのデータは、cBin1遺伝子療法が心機能を保護し、全生存及び無HF生存期間を効果的に増加させ、HF進行の悪化サイクルを阻止、延期、又は逆転さえさせることを示す。
【0054】
TAC後20週目に生存していた全てのマウスのうち、心エコーで測定した心筋機能及び生理学的パラメータを、AAV9処理の前後の両方でさらに群間で比較した(表1)。TAC語20週目に、AAV9-GFPマウスは、著しいLV収縮機能不全(EF減少)及びチャンバー拡張(EDV上昇、
図4A~C、表1)を発症し、これらはAAV9-cBIN1処理により正規化された。TAC後20週目におけるLV質量の増加は、AAV9-GFP群と比較して、AAV9-cBIN1処理マウスで有意に減少した(
図4D)。さらに、AAV9-GFP群で観察された一回拍出量及び心拍出量のΔ減少は、AAV9-cBIN1処理群でも減少した(
図4E~F)。これらの結果は、cBin1遺伝子療法が、不全心臓に投与された場合、心筋機能を維持することを示す。
【0055】
0時点(AAV9前、TAC後5週)でのウイルス注入後のTAC後の心臓における収縮機能不全の進行をさらに調べるために、AAV前からAAV9注入後3、6、8、10、15週(TAC後8、11、13、15、20週に対応)までのΔEF変化(ΔEF)を心エコーによりモニタリングした(
図5A)。外因性cBIN1誘導性のEFの回復は、AAV9注入後6~8週でピークに達し、その後の週でEFの継続的な改善が見られたが、一方AAV9-GFP群では進行性のEFの減少が認められた。観察されたEFの回復は、ガウスフィッティングによるΔEFのヒストグラム分布上で示された(
図5B~C)。AAV9-cBIN1は、AAV9-GFP群と比較して、ΔEFのヒストグラム分布が右シフトしていた。例えば、AAV9後6週目で、AAV9-GFP群では-15.0という中程度のEF(%)の減少があるのに対し、AAV9-cBIN1群ではEF(%)において+6.9という中程度の回復が観察された。これらのデータは、外因性cBIN1をTAC後5週目に投与すると、TAC誘導性HFの心臓において心筋収縮機能をレスキューできることを示す。
【0056】
本発明者らは最近、AAV9-cBIN1前処理(TAC外科手術の3週間前に3×10
10vg;
図6A)を受けたマウスにおいて、TAC誘導性HFの発生が有意に減少し、その結果としてTAC後8週目における無HF生存が向上することを報告した[34]。これらのデータは、AAV9がTAC外科手術後に投与されたときに観察された心筋保護と一致する。TACマウスにおける外因性-cBIN1の心臓保護効果をさらに確立するために、侵襲的PVループ記録を用いて、AAV9前処理したマウスにおいて心臓内血行動態を取得した。
図6Bは、TAC外科手術の8週間後のsham、AAV9-GFP、及びAAV9-cBIN1前処置心臓の代表的なPVループを含む(
図6B)。収縮期のEF及び圧力変化の最大速度(dp/dt最大値)は、AAV9-GFP群において減少し、これらは外因性cBIN1によって正規化された(
図6C~D)。弛緩動態への影響を調査すると、圧力減衰の最大速度(dp/dt分)は、AAV9-GFP群において減少したが、AAV9-cBIN1によって正規化されたことが見出された(
図6E)。AAV9-GFP群における等容弛緩の時定数(Tau)の増加も、cBin1遺伝子導入によりレスキューされ(
図6F)、これは、心弛緩が改善されたことを示す。合わせると、これらのデータは、外因性cBIN1が、圧力過負荷の心臓の心臓イノトロピー及びルシトロピーを改善することを示す。
【0057】
本発明者らは以前、cBIN1がt管マイクロドメインを形成し、LTCC-RyR二分子を組織化し、心機能及びECカップリングを効率的且つダイナミックに制御することを明らかにした[25]。より最近、本発明者らは、交感神経過剰駆動した拡張期機能障害を発症したマウス心臓では、cBIN1-マイクロドメインが破壊され、AAV9-cBIN1によってレスキューされることを見出した。ここでは、本発明者らはまた、TAC後の心臓のt管cBIN1-マイクロドメインの変化及び外因性cBIN1の効果についても検討した。ウェスタンブロッティング(
図7A)は、心筋cBIN1タンパク質がTAC後8週間のマウス心臓で著しく減少することを特定し(sham対照より27%減少、p<0.05)、これはAAV9-cBIN1前処理によって正規化される。cBIN1レスキューと共に、Di-8-ANNEPsによる膜標識(
図17)は、sham心筋細胞と比較して、TAC後8週間の心筋細胞は、著しく減少したt管cBIN1-マイクロドメイン強度を有することを特定するが、これはAAV9-cBIN1前処理を行ったマウスからの心筋細胞において正規化される。次に、免疫蛍光画像化を用いて、心筋細胞レベルでのcBIN1-マイクロドメイン及び二分子の構成を解析した。BIN1シグナルのパワースペクトル分析により、sham心筋におけるcBIN1のよく組織化されたt管分布が、TAC後の心臓において破壊されており、これはAAV9-cBIN1前処理により保持されることが同定された(
図7C)。総LTCC及びRyRタンパク質レベルは、ウェスタンブロッティングによって群間で有意に変化しないが(
図7B)、LTCC及びRyRの心筋分布(
図7C)は、TAC後の心臓で無秩序になり、これはまたAAV9-cBIN1前処理の心臓で有意に改善する(p<0.05)。これらのデータは、外因性cBIN1がTAC誘導性の心筋cBIN1の減少を正規化し、t管におけるcBIN1によって作成されたマイクロドメインの保存をもたらすことを示している。このように、cBIN1補充療法は、圧力負荷された心臓においてt管マイクロドメインを正規化することにより、心拍感覚のカルシウム循環及び効率的なECカップリングに必要な心臓のLTCC-RyRカップロンを再組織化する。
【0058】
実施例3
外因性cBIN1は、イソプロテレノール輸注後のマウス心臓における求心性肥大を低減させる
4週間のイソプロテレノール輸注を受けた動物における心筋機能に対するcBIN1の効果を調査した(
図8A)。AAV9を使用して、イソプロテレノールの開始の3週間前に、外因性のV5タグ付きGFP又はcBIN1[74]の心筋の発現を導入した。抗V5標識は、AAV9注入後7週目に検出可能なV5シグナルを有する心筋領域の同様のパーセントを同定し(GFP、62.4+10.5%;cBIN1、57.9.2+7.8%)、心筋細胞の半分以上において外因性タンパク質の導入に成功していることを示している(
図18)。陰性に染色された心筋細胞の残りの約40%は、免疫蛍光の検出閾値未満の低レベルで外因性タンパク質を発現し得る。全てのマウスにおいて、イソプロテレノールは、心臓肥大を示す、体重に対する心臓重量比(HW/BW)を有意に増加させた(
図8B)。心臓のジオメトリー及び機能は、心エコーによって評価した(
図8C~H)。AAV9-GFP前処理動物において、イソプロテレノールは、拡張末期容積(EDV)を変化させずに、LV質量及び相対的壁厚(RWT)の著しい増加を誘導し、これは、心エコーに基づく求心性肥大の分類と一致した[75]。AAV9-cBIN1前処理動物において、LV質量のイソプロテレノール増加は、正常なRWT及び増加したEDVで減衰し、これは、以前に報告された方法[75]を用いて心エコー分類された「生理学的肥大様LVリモデリング」と類似していた(
図19A)。さらに、α-平滑筋アクチンは、GFP+ISO心臓において増加したが、cBIN1+ISO心臓においては増加せず(
図19B)、これは、AAV9-cBIN1がイソプロテレノール誘導性LV肥大を制限することが示された。AAV9-GFP前処理マウスにおいて、イソプロテレノールはEFの小さな増加をもたらしたが(GFP+PBSに対するp=0.050及びcBIN1+PBS群に対するp=0.007)、LV受動充填の発症(E)対心筋緩和(e’)比(E/e’)が強く増加し、これは、拡張期機能障害の発症を示唆するものであった。AAV9-cBIN1で前処理したマウスでは、イソプロテレノールは依然として収縮機能を増加させ、重要なことに、E/e’が正常に維持し、これは、ルシトロピーを維持しながら正のイノトロピーを示す。さらに、血圧測定は行わなかったが、イソプロテレノールは全ての動物で心拍数(HR)を有意に増加させ、血行力学的ストレスを引き起こすことにおけるイソプロテレノールの有効性が示された。しかし、イソプロテレノール後のHRはGFP+ISOマウスとcBIN1+ISOマウスの間で差がなく(表2)、AAV9-cBIN1マウスにおけるイソプロテレノール後の心拍出量のさらなる改善は、筋効率によるものであり、拍数の増加によるものではないことが確認された。
【0059】
【0060】
実施例4
慢性的なイソプロテレノールによって破壊されたcBIN1-マイクロドメインはAAV9-cBIN1によって正規化し得る
心筋のイノトロピーとルシトロピーの両方が心筋細胞のカルシウム循環と関連していることはよく知られている[76]。二分子マイクロドメインの構造オーガナイザーであるcBIN1は[31]、細胞外Ca
2+拡散を制限するt管のマイクロフォールドを作製し[29]、L型カルシウムチャネル(LTCC)のマイクロチューブ依存性前方トラフィッキング[30]及び既にt管膜に送達されたLTCCのクラスタリングを促進する。そこで、慢性のイソプロテレノール輸注後の肥大化した心臓において、cBIN1-マイクロドメインがどのようにリモデリングし得るかを検討した。心臓ライセートのウェスタンブロットから、イソプロテレノールはcBIN1タンパク質の著しい減少を誘導し、これはAAV9-cBIN1によって正規化されることが示される(
図9A)。抗BIN1-エクソン17抗体による免疫沈降と、それに続く抗BIN1-エクソン13抗体によるウェスタンブロット検出により、調べたタンパク質バンドがcBIN1(BIN1+13+17)アイソフォームであることを確認することに留意されたい。膜色素Di-8-ANNEPsで標識した単離心筋細胞において、総体的なt管ネットワーク構築もまた調べた(
図9B)。ライブセル画像化とそれに続くパワースペクトル解析により、全体的なt管組織(正規化ピークパワー密度)がGFP+ISOマウスにおいて同様であり、AAV9-cBIN1により増加することが示された。透過型電子顕微鏡(TEM)画像化を使用して、総t管ネットワークが組織化されたままであっても、GFP+ISO心臓においてt管マイクロフォールドの減少があることが留意され、これはcBIN1+ISO心臓において保持された(
図9C)。以前に確立された修正されたスコアリングシステムを用いたt管の輪郭の程度の定量化[29](1、折り目のない円形又は拡張したt管管腔;2、折り目のない非円形輪郭のt管管腔;3、折り目の2~3層を有するt管;又は4、折り目の>3層を有するt管)は、GFP+ISO心臓におけるt管の輪郭における著しい減少を確認したが、これはcBIN1+ISO心臓において正規化された(p<0.001、カイ二乗検定)。cBIN1+PBS心臓では、cBIN1が生理的なレベルより多く存在する結果として、マイクロフォールドが誇張されている(3層以上の折り目、スコア4)ことに注意されたい。これらのデータは、cBIN1がt管マイクロフォールドの形成に重要であること、慢性的な交感神経過剰駆動下で折り目が下方制御されていること、cBIN1外因性療法により折り目が回復することを示す。
【0061】
続いて、心筋細胞におけるCav1.2の発現及び細胞内分布を探索した。イソプロテレノール後の心臓では、Cav1.2の正味の心筋タンパク質発現量は同程度であった(
図10A)。しかしながら、Cav1.2の心筋組織免疫蛍光標識は、t管に沿ったチャネル密度がGFP+ISO心筋細胞において著しく減少し、これはAAV9-cBIN1(
図10B~C)、パワースペクトル及び蛍光プロファイル分析)によって正規化されることを明らかにした。これらのデータは、同様の総タンパク質レベルにもかかわらず、変化したCav1.2タンパク質分布の以前の観察と一致する[32]。t管へのCav1.2局在化の減少に伴い、カルシウムトランジェントのピーク振幅(ΔF/F
0)は、対照GFP+PBS心筋細胞由来のものと比較すると、GFP+ISO心筋細胞において著しく減少し(
図10D)、これは外因性cBIN1によって正規化された。ライノジン受容体2(RyR)総タンパク質発現及び細胞内分布は、全ての群間で差がなかった(
図20)。しかしながら、RyRは、以前の報告[61]と一致して、PKA依存性のS2808及びCAMKII依存性のS2814の両方で高リン酸化されるようになった。CAMKIIδのT287でのリン酸化の増加と共に、これらのデータは、PKA及びCAMKII活性化誘導性のRyRの過リン酸化がイソプロテレノールの慢性的輸注後に起こることを示唆している。重要なことに、AAV9-cBIN1前処理が、これらの経路をうまく鈍らせ、RyR過リン酸化を減少させる(
図21)。
【0062】
実施例5
外因性cBIN1は、SRに沿ったSERCA2aの分布を改善する
心臓ルシトロピーは、SERCA2aを介したカルシウム再吸収に最も直接的に関連している。驚くべきことに、GFP+ISO心臓では拡張期機能不全が損なわれているにもかかわらず、SERCA2aの総タンパク質発現はイソプロテレノール輸注後に有意に増加した(
図11A-B)。ホスホランバン(PLN)及びそのリン酸化体(pS16及びpT17)の総タンパク質レベルは変化しなかった(
図21)。以前の研究では、急性のイソプロテレノール誘導性PLNリン酸化は、慢性的なイソプロテレノール輸注後に正規化され、セリン/スレオニンホスファターゼPP1及びPP2Aの活性化によりPLN脱リン酸化も起こり得ることが示された[73、77]。これらの報告と一致して、今回の結果は、4週間のイソプロテレノール輸注後にPLNのリン酸化が変化しないのは、キナーゼとホスファターゼの両方の均衡のとれた局所活性化の正味の結果である可能性があることを証明した。これらのデータは、SERCA2aタンパク質と活性の両方がイソプロテレノール後の心臓で減少していないことを示す。Cav1.2の局在に対するcBIN1の効果を考慮し、SERCA2aの局在を検討した。SERCA2a標識した心筋組織切片を回転ディスク共焦点顕微鏡で画像化し、群間で比較した(
図11C)。GFP+PBS心臓では、SERCA2aの亜集団はt管/jSR領域に集中し、サルコメアの全長に相当する1.8~2μmに主要なパワースペクトルのピークを有する組織的分布を生じさせている。cBIN1+PBSの心臓でcBIN1を過剰発現させると、t管/jSR付近のSERCA2aシグナルがさらに増加した。GFP+ISO心臓では、SERCA2aの細胞内分布はピークパワー密度の著しい減少と共に乱れ、これはcBIN1+ISO心臓で正規化された(
図11Dにおける定量化)。
【0063】
Cav1.2及びSERCA2aの細胞内分布を、心臓ミクロソームの生化学的スクロース勾配ベースの画分を用いてさらに探索した[70]。
図22Aに示されるように、画分F4は、他の画分と比較して、最も低い回収収率を有する。しかしながら、低い収率であっても、Cav1.2及びcBIN1は、限られたNa
+/K
+-ATPase及び枯渇したSERCA2aと共にF4において検出可能であり、F4がt管由来のミクロソームで濃縮されていることを示す(
図22B)。全ての試料(レーン当たり2.5μgのタンパク質をロードした)に渡ってF4についてt管タンパク質濃度を正規化すると、GFP+ISO心臓は、対照GFP+PBS心臓と比較して、単位t管当たりcBIN1及びCav1.2タンパク質の両方において有意な減少を有し、これはAAV9-cBIN1前処理によって正規化された(
図12A)。これらのデータは、イソプロテレノール輸注後のCav1.2チャネルのt管局在の減少、及びAAV9-cBIN1による回復を同定した免疫蛍光画像化と一致する。一方、SRタンパク質は画分F2及びF3にのみ検出された。F2及びF3についてSRタンパク質濃度を正規化すると(レーンあたり25μgのタンパク質をロードした)、F3はF2よりも相対的にRyRが多く、PLNが少なく(
図12B)、より重いF3画分に向かってjSRが濃縮されていることが示された。F2及びF3におけるSERCA2a発現の定量化は、AAV9-GFPと比較した場合、AAV9-cBIN1は、より重い、よりjSRに富むF3へのSERCA2a分布の有意な増加を引き起こしたが、縦SRに富むF2画分は引き起こさない(
図12B)。注目すべきことに、イソプロテレノール単独では、AAV9-GFPマウス心臓のF3におけるSERCA2a発現が増加したが、これはおそらくイソプロテレノール後の心臓におけるSERCA2aの総タンパク質発現の全体的な増加によるものである(
図11A)。これらのデータは、イソプロテレノール輸注後の心臓において、外因性cBIN1は、Cav1.2及びSERCA2aをその機能部位に局在させるためにt管マイクロドメインを維持できることを示す。
【0064】
t管/jSR領域でのCav1.2及びSERCA2aの減少を考慮して、STORM画像化を用いてCav1.2-RyR及びSERCA2a-cBIN1のナノスケールタンパク質-タンパク質共局在を分析した(
図13)。最隣接部解析により、個々のCav1.2分子とその最も近いRyR分子との間の距離を定量化した。全細胞画像からのCav1.2-RyR分子間の距離のヒストグラム分布により、GFP+PBS、GFP+ISO、cBIN1+ISO心筋細胞では40nm付近に最初のピークが特定され、これは、二分子カップロンに相当する。収縮機能が維持されたGFP+ISO心臓では、分布ヒストグラムは右にシフトする傾向があったが、最初のピークの位置は維持されたままであった(
図13B)。興味深いことに、cBIN1+PBS筋細胞は、左シフトしたヒストグラム分布を持ち、Cav1.2-RyRピーク距離が著しく減少し、これは、TEM画像化で観察されたように、cBIN1-マイクロフォールドの誇張によって近接したと考えられる密接なカップロンを示す。一方、t管におけるSERCA2aとその最隣接部のcBIN1との間の距離は、AAV9-GFP前処理動物においてイソプロテレノール後に増加する傾向を示し(p=0.063、GFP+PBS対GFP+ISO)、これはAAV9-cBIN1前処理動物において著しく減少した(p<0.001、GFP+ISO対cBIN1+ISO)(
図13C~D)。これらのデータは、cBIN1-マイクロフォールドが、ECカップリングとカルシウム処理タンパク質との間の共局在化及び相互作用を調節し得ることを示す。
【0065】
実施例6
cBIN1+ISO心臓の表現型は、アイソフォーム特異的であり、cBIN1に固有のものである
cBIN1+ISO心臓の観察された表現型がアイソフォーム特異的効果であるかどうかをさらに調べるために、GFP及びcBIN1、並びに小BIN1、BIN1+17、及びBIN1+13を含むBIN1アイソフォームを発現する他の3つのマウス心筋細胞を形質導入したAAV9を投与されるように無作為化した50匹以上のマウスでイソプロテレノールのプロトコルを繰り返した。同様に、ウイルス投与3週間後に、マウスにイソプロテレノールを30mg/kg/日で4週間連続的に皮下輸注を行った。GFP又はBIN1アイソフォームを形質導入したマウスの5群間で比較した場合、イソプロテレノール後の心臓におけるCav1.2及びSERCA2aのタンパク質発現は、有意差はなかった(
図23A)。Cav1.2チャネルの心筋組織免疫蛍光標識は、t管に沿ったチャネル密度がcBIN1発現心臓においてのみ有意に増加し、他のBIN1アイソフォームでは増加しないことを明らかにした(
図23B、定量化は
図23Dに示す)。免疫蛍光イメージ化により、AAV9によって導入された外因性cBIN1がSERCA2a分布を組織化することが明らかになり(
図23C、定量化は
図23Eに示す)、
図11からのデータと一致した。
【0066】
次に、異なるAAV9-BIN1アイソフォーム前処理の機能的結果を、心エコーを用いて探索した。cBIN1発現マウスは、GFP群と比較すると、LV壁厚、LV質量、及びRWTにおけるイソプロテレノール誘導性増加を減少させた(
図14A~D、表3)。全ての動物において、イソプロテレノール後の心拍出量は、ベースラインでのレベルから有意に増加し、これは、イソプロテレノール誘導性の心拍RWTにおける増加の結果であった(表3)。しかし、cBIN1心臓のみがまた、イソプロテレノール後のGFP心臓と比較した場合、収縮機能の改善、E/e’の正規化、一回拍出量の増加、及び心拍出量のさらなる増加を有する(
図14E~H)。注目すべきは、BIN1+17で前処理したマウスで部分的なcBIN1様効果が起こり、これは、LV質量、E/e’を有意に減少させ、イソプロテレノールで増加したRWTを減少させた。BIN1+17から観察された部分的な拡張期機能レスキューは、免疫蛍光画像化によるSERCA2aの細胞内分布の部分的レスキューと一致した(
図23C)。しかしながら、BIN1+17がt管でのCav1.2分布を増加させることができないため、イソプロテレノール輸注後のAAV9-BIN1+17前処理心臓において正のイノトロピー効果は見られなかった。
【0067】
【0068】
実施例7
TAC誘発性HFにおけるAAV9-cBIN1の心筋保護効果が確認される
cBIN1の心筋保護効果を、TACによって誘導された圧力過負荷の別のマウスモデルにおいてさらに調査した。cBIN1の遺伝的欠損又はAAV9-形質導入cBIN1過剰発現のいずれかを有するマウスを、この試験において試験した(
図15A)。欠損試験では、心臓特異的Bin1 HTマウス及びWT同腹子対照を含み[29]、これらを共に8週間TACに供した。過剰発現試験は、cBIN1-V5又はAAV9-GFP-V5を形質導入したAAV9を事前に注入した8週間のTACに供したマウス、及び開胸モック外科手術(sham)に供したマウスを含んでいた。マウスをモニタリングし、外科手術後8週目に終了させた。ウイルス(AAV9-GFP/cBIN1-V5)、投与量(3×10
10vg)、投与時期(外科手術の3週間前)、経路(眼窩後注射)は、イソプロテレノールの試験で用いたものと同じであった。全てのTACマウスにおける大動脈収縮は、経大動脈圧力勾配の上昇によって確認され(
図15B)、TACを受けた全てのマウスにおける血行力学的後負荷の同様の増加を確立した。無重度HF(EF≧35%)生存率を要約したカプラン-マイヤー曲線は、
図15Cに含まれた。Bin1 HTマウスの生存率は、20.0%(10匹中8匹、2匹死亡、6匹EF<35%)であり、WTマウスの71.4%(14匹中4匹非生存、1匹死亡、3匹EF<35%)から減少した(ログランク検定によるp=0.038)。予想通り、全てのshamマウスは実験プロトコル全体を通して生存した(10匹中10匹、黒の点線)。AAV9-GFPマウスでは生存率が64.3%に低下し(14匹中5匹非生存、5匹EF<35%)、これは、AAV9-cBIN1群では93.7%に有意に改善した(16匹中1匹非生存、1匹EF<35%)(ログランク検定によるp=0.020)。これらのデータは、心臓におけるより高いcBIN1タンパク質含量が、圧力過負荷後に収縮期HFを発症することのないより良い生存と関連していることを示している。
【0069】
TAC後8週目に、生存マウスを屠殺し、HW/BW及びLW/BWの比率について評価した(表4、
図15D~E)。Bin1 HTマウスはWTマウスに比べHW/BW、LW/BWが共に有意に高く、BIN1欠損によるLV肥大、肺浮腫の悪化が示唆された。遺伝子療法に関しては、AAV9-cBIN1はLW/BWを対照のGFP-TAC群からsham心臓のレベルまで著しく減少させ、これは、TAC誘導性の肺浮腫の顕著な減少を表している。AAV9-cBIN1の心臓では、より少ない程度ではあるが、依然として肥大が起こった。これらのデータは、外因性cBIN1がTAC誘導性肥大を減少させ、HFへの悪化を防止することを示した。さらに、心エコー解析(
図15F~J、表5)により、WT-TACマウスと比較すると、Bin1 HT-TAC心臓ではEFの有意な減少及びEDVの増加が認められ、BIN1欠損による拡張型心筋症の悪化が示唆された。一方、AAV9-cBIN1はTAC誘導性LV拡張(EDV)及び収縮機能不全(EF)を有意に低下させ、拡張型心筋症の発症を制限した。その結果、AAV9-cBIN1による前処理は、TAC後の心臓を拡張させることなく、一回拍出量及び心拍出量を維持した。さらに、組織ドップラーにより、AAV9-cBIN1前処理心臓では、側壁及び中隔壁の両方の拡張期パラメータE/e’値が有意に改善されたことが明らかになり、外因性cBIN1マウスにおいて拡張期機能が改善されることを示す。これらのデータは、cBin1遺伝子療法がストレス下の心臓における心筋収縮期及び拡張期機能を維持し、圧力過負荷にさらされたマウスの心臓における拡張型心筋症の発症を効果的に予防することを示す。
【0070】
【0071】
【0072】
実施例8
マウス糖尿病性心筋症(HFpEF)試験
糖尿病性心筋症を発症したdb/dbマウスにおいて、心筋機能を調べると共に、AAV9-cBIN1の治療可能性を検討した。2型糖尿病のモデルマウスとして確立されたDb/dbマウス系統(Leprdbのホモ接合体Dock7m、Jackson Laboratories)は、糖尿病性心筋症及び駆出率が保持された心不全(HFpEF)のモデルとして使用されてきた[78]。9週齢の雄及び雌のdb/dbマウス及びその同腹子の対照db/mマウスに、1用量(1×1011vg)のAAV9-cBIN1又は対照GFPを眼窩後注射により投与した[79、80]。心機能及び生理学的パラメータは、AAV注入前及び注入8週間後の両方において、動物が17週齢の時に測定された[79]。心機能は、心エコーで測定した収縮期パラメータ(駆出率及び画分短縮)、拡張期パラメータ(E/A、E/e’)、並びに一回拍出量(SV)によって評価した。また、マウストレッドミルでの最大走行距離を測定することによって、これらの動物の運動負荷試験でのパフォーマンスを評価した。運動耐性は、心機能予備能の低下とHFpEFの重要な生理学的パラメータである。
【0073】
心エコーで測定した心筋機能パラメータは、db/dbマウスでは9週齢という早い時期に拡張期不全の発症に成功していることを示す。左心室駆出率が未だ維持されている17週齢のdb/dbマウスでは、減少したE/A(
図23A)及び上昇したE/e’(
図24B)を含む拡張期パラメータに有意な変化が見られる。これら全ての異常な拡張期パラメータは、AAV9-cBIN1の処理によりレスキューされ、正規化され得る。AAV9-cBIN1の改善された拡張期機能により、db/dbマウスの減少した左心室一回拍出量は正常化される(
図24C)。改善された心エコーパラメータと共に、これらの疾患db/dbマウスにおける運動不耐性(トレッドミル上の最大走行距離の減少)もまた、AAV9-cBIN1によって有意に改善される(
図24D)。全てのdb/dbマウスの体重は、AAV9-GFP又はcBIN1処理のいずれかを有する両群に渡って類似しており、肥満及び2型糖尿病の類似のレベルを示していることに留意されたい。心エコーで測定された拡張期パラメータのレスキューと合わせて考えると、これらのデータは、運動耐性に対するAAV9-cBIN1介在性のレスキュー効果は、改善された心筋機能予備能に起因することを示すものである。
【0074】
実施例9
イヌ虚血性心筋症(HFrEF)試験のまとめ
虚血性心筋症を有する心臓において低下した心機能をレスキューするためのcBIN1遺伝子療法の効果について検討した。成犬ハウンド犬(25~30kg)を開胸し、左前下行(LAD)冠動脈の近位部を永久結紮した。犬を心エコー、血行動態パラメータ、及び生理学的パラメータで結紮後8~9週間追跡し、動物を麻酔し、左心室内膜にAAV9ウイルスでパッケージされたcBIN1を注入した。NOGA XP(Biosense Webster/Johnson and Johnson)を用いて、LV心内室の3次元電気解剖学的マッピングを実施した。同じNOGA XPシステムを用いて、27ゲージのニチノール針を持つMyostarカテーテルで心筋に注入する。各心臓の、左心室心内室全体の20の注入部位に注入された。各注入は、250μLのPBSに混合した2.5×1011vgからなり、動物の心臓当たり合計5×1012vgであった。その後、動物を心エコー、血行力学、及び生理学的パラメータによってモニタリングを続けた。
【0075】
図25に示すように、左心室駆出率(LVEF)の対試験週の測定値を報告する。2匹の動物についてのデータが含められた。0時点は、LAD結紮時に対応する。矢印は、cBIN1療法の時間を示した。LVEFはcBIN1治療前に半分に減少し、その後注射後1~2週間以内に軽度の機能不全のみに回復していることに注目されたい。1匹目の犬は回復を続けている。2匹目の犬は12週目に異物を飲み込み虚血性大腸となったため、処置を中止した。
【0076】
両方の動物において、cBIN1遺伝子療法は虚血性心筋症(HFrEF)を有する心臓の心筋機能の劇的なレスキューをもたらした。レスキューは少なくとも5週間続いた。この試験は現在進行中であり、単一エピソードのcBIN1注入後の治療期間は未だ決定されていない。
【0077】
参考文献
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【国際調査報告】