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▶ ユニバーシティ・オブ・ヘルシンキの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】バイオインフォマティクス
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20230630BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230630BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230630BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230630BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20230630BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230630BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230630BHJP
   C40B 40/10 20060101ALN20230630BHJP
   C07K 14/74 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
G01N33/574 A
C07K14/005
A61P35/00
A61K35/17
A61K39/00 H
G01N33/543 521
G01N35/08 A
G01N37/00 101
C07K16/28 ZNA
C40B40/10
C07K14/74
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022567053
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021061981
(87)【国際公開番号】W WO2021224383
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】2006760.9
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522427383
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ヘルシンキ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チェルッロ,ビンセンツォ
(72)【発明者】
【氏名】カパッソ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シカネン,ティーナ
(72)【発明者】
【氏名】フェオラ,サラ
(72)【発明者】
【氏名】タハカ,サリ
(72)【発明者】
【氏名】キアロ,ヤコポ
【テーマコード(参考)】
2G058
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058DA07
4C085AA03
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045EA51
4H045EA52
4H045EA53
(57)【要約】
本発明は、腫瘍抗原同定のためのデバイスおよび腫瘍抗原同定のための方法;前記デバイスおよび/または方法の使用後に同定された腫瘍抗原;前記腫瘍抗原を含む薬学的組成物;前記デバイスおよび/または前記方法を使用して癌を処置する方法;前記デバイスおよび/または前記方法を使用して癌処置のために患者を層別化する方法;前記デバイスおよび/または方法を使用して癌処置のために患者を層別化し、次いで癌治療薬を投与することを含む処置レジメン;ならびに癌ワクチンまたは免疫原性剤または癌治療として使用するための、前記デバイスおよび/または前記方法を使用して同定された腫瘍抗原に関する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍抗原同定のための方法であって、
i)流体中に腫瘍の試料を溶解または懸濁させることと;
ii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iii)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
iv)必要に応じて、パートiii)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
v)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドを病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つの病原体由来抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vi)前記ペプチドを、癌治療において使用するための腫瘍抗原として同定することと;
を含む、方法。
【請求項2】
前記病原体由来抗原のライブラリが、公知の病原体由来抗原の精選されたライブラリまたは前記病原体由来抗原を含む公知の病原体由来タンパク質の精選されたライブラリを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記病原体由来抗原が、ヒトにおいて有効な病原体由来抗原である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記病原体由来抗原がウイルス抗原である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記病原体由来抗原が、以下のものの任意の組み合わせを含む、アビソウイルス科(Abyssoviridae);アッカーマンウイルス科(Ackermannviridae);アクタンタウイルス亜科(Actantavirinae);アデノウイルス科(Adenoviridae);アガンタウイルス亜科(Agantavirinae);アグリムウイルス亜科(Aglimvirinae);アロヘルペスウイルス科(Alloherpesviridae);アルファフレキシウイルス科(Alphaflexiviridae);アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae);アルファイリドウイルス亜科(Alphairidovirinae);アルファサテライト科(Alphasatellitidae);アルファテトラウイルス科(Alphatetraviridae);アルバーナウイルス科(Alvernaviridae);アマルガウイルス科(Amalgaviridae);アムヌーンウイルス科(Amnoonviridae);アムプラウイルス科(Ampullaviridae);アネロウイルス科(Anelloviridae);アレナウイルス科(Arenaviridae);アルクアトロウイルス亜科(Arquatrovirinae);アルテリウイルス科(Arteriviridae);アルトウイルス科(Artoviridae);アスコウイルス科(Ascoviridae);アスファウイルス科(Asfarviridae);アスピウイルス科(Aspiviridae);アストロウイルス科(Astroviridae);オートグラフィウイルス亜科(Autographivirinae);アブサンウイロイド科(Avsunviroidae);アブラウイルス亜科(Avulavirinae);バシラドナウイルス科(Bacilladnaviridae);バキュロウイルス科(Baculoviridae);バルナウイルス科(Barnaviridae);バスティーユウイルス亜科(Bastillevirinae);ビークラスウイルス亜科(Bclasvirinae);ベルパオウイルス科(Belpaoviridae);ベニウイルス科(Benyviridae);ベータフレキシウイルス科(Betaflexiviridae);ベータヘルペスウイルス亜科(Betaherpesvirinae);ベータイリドウイルス亜科(Betairidovirinae);ビカウダウイルス科(Bicaudaviridae);ビドナウイルス科(Bidnaviridae);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ボルナウイルス科(Bornaviridae);ボトウルミアウイルス科(Botourmiaviridae);ブロク亜科(Brockvirinae);ブロモウイルス科(Bromoviridae);ブラウイルス亜科(Bullavirinae);カリシウイルス科(Caliciviridae);カルブスウイルス亜科(Calvusvirinae);カルモテトラウイルス科(Carmotetraviridae);カウリモウイルス科(Caulimoviridae);セロニウイルス亜科(Ceronivirinae);チェブルウイルス亜科(Chebruvirinae);コルドポックスウイルス亜科(Chordopoxvirinae);クリソウイルス科(Chrysoviridae);チュウイルス科(Chuviridae);サーコウイルス科(Circoviridae);クラバウイルス科(Clavaviridae);クロステロウイルス科(Closteroviridae);コモウイルス亜科(Comovirinae);コロナウイルス科(Coronaviridae);コルチコウイルス科(Corticoviridae);クロカルテリウイルス亜科(Crocarterivirinae);クルリウイルス科(Cruliviridae);クラストニウイルス亜科(Crustonivirinae);クビウイルス亜科(Cvivirinae);シストウイルス科(Cystoviridae);ディークラスウイルス亜科(Dclasvirinae);デルタフレキシウイルス科(Deltaflexiviridae);デンソウイルス亜科(Densovirinae);ジシストロウイルス科(Dicistroviridae);エンドルナウイルス科(Endornaviridae);エントモポックスウイルス亜科(Entomopoxvirinae);エカルテリウイルス亜科(Equarterivirinae);ユーカンピウイルス亜科(Eucampyvirinae);ユーロニウイルス科(Euroniviridae);フィロウイルス科(Filoviridae);フィモウイルス科(Fimoviridae);ファーストパピローマウイルス亜科(Firstpapillomavirinae);フラビウイルス科(Flaviviridae);フセロウイルス科(Fuselloviridae);ガンマフレキシウイルス科(Gammaflexiviridae);ガンマヘルペスウイルス亜科(Gammaherpesvirinae);ジェミニアルファサテライト亜科(Geminialphasatellitinae);ジェミニウイルス科(Geminiviridae);ジェノモウイルス科(Genomoviridae);グロブロウイルス科(Globuloviridae);ゴクショウイルス亜科(Gokushovirinae);ガーンジーウイルス亜科(Guernseyvirinae);グッタウイルス科(Guttaviridae);ハンタウイルス科(Hantaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae);ヘペウイルス科(Hepeviridae);ヘレルウイルス科(Herelleviridae);ヘロアルテリウイルス亜科(Heroarterivirinae);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae);ヘクスポニウイルス亜科(Hexponivirinae);ヒポウイルス科(Hypoviridae);ヒトロサウイルス科(Hytrosaviridae);イフラウイルス科(Iflaviridae);イノウイルス科(Inoviridae);イリドウイルス科(Iridoviridae);ジャシンカウイルス亜科(Jasinkavirinae);キタウイルス科(Kitaviridae);ラビダウイルス科(Lavidaviridae);レイシュブウイルス科(Leishbuviridae);レトウイルス亜科(Letovirinae);レビウイルス科(Leviviridae);リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae);リスピウイルス科(Lispiviridae);ルテオウイルス科(Luteoviridae);マラコヘルペスウイルス科(Malacoherpesviridae);マンマンタウイルス亜科(Mammantavirinae);マルナウイルス科(Marnaviridae);マルセイユウイルス科(Marseilleviridae);マトナウイルス科(Matonaviridae);マッククレスキーウイルス亜科(Mccleskeyvirinae);エムクラスウイルス亜科(Mclasvirinae);メディオニウイルス科(Medioniviridae);メディオニウイルス亜科(Medionivirinae);メガビルナウイルス科(Megabirnaviridae);メソニウイルス科(Mesoniviridae);メタパラミクソウイルス亜科(Metaparamyxovirinae);メタウイルス科(Metaviridae);ミクロウイルス科(Microviridae);ミミウイルス科(Mimiviridae);モノニウイルス科(Mononiviridae);モノニウイルス亜科(Mononivirinae);マイモナウイルス科(Mymonaviridae);ミオウイルス科(Myoviridae);ミポウイルス科(Mypoviridae);ナイロウイルス科(Nairoviridae);ナノアルファサテライト亜科(Nanoalphasatellitinae);ナノウイルス科(Nanoviridae);ナルナウイルス科(Narnaviridae);エヌクラスウイルス亜科(Nclasvirinae);ニマウイルス科(Nimaviridae);ノダウイルス科(Nodaviridae);ヌディウイルス科(Nudiviridae);ニアミウイルス科(Nyamiviridae);ニンバクスターウイルス亜科(Nymbaxtervirinae);オカニウイルス亜科(Okanivirinae);オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae);オルトパラミクソウイルス亜科(Orthoparamyxovirinae);オルトレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae);オウナウイルス亜科(Ounavirinae);オバリウイルス科(Ovaliviridae);パピローマウイルス科(Papillomaviridae);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae);パルチチウイルス科(Partitiviridae);パルボウイルス科(Parvoviridae);パルボウイルス亜科(Parvovirinae);ピークラスウイルス亜科(Pclasvirinae);ペデュオウイルス亜科(Peduovirinae);ペリブニヤウイルス科(Peribunyaviridae);ペルムトテトラウイルス科(Permutotetraviridae);ファスマウイルス科(Phasmaviridae);フェヌイウイルス科(Phenuiviridae);フィコドナウイルス科(Phycodnaviridae);ピコビルナウイルス科(Picobirnaviridae);ピコルナウイルス科(Picornaviridae);ピコウイルス亜科(Picovirinae);ピスカニウイルス亜科(Piscanivirinae);プラズマウイルス科(Plasmaviridae);プレオリポウイルス科(Pleolipoviridae);ニューモウイルス科(Pneumoviridae);ポドウイルス科(Podoviridae);ポリシピウイルス科(Polycipiviridae);ポリドナウイルス科(Polydnaviridae);ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae);ポルトグロボウイルス科(Portogloboviridae);ポスピウイロイド科(Pospiviroidae);ポティウイルス科(Potyviridae);ポックスウイルス科(Poxviridae);プロセドウイルス亜科(Procedovirinae);シュードウイルス科(Pseudoviridae);チンウイルス科(Qinviridae);クァードリウイルス科(Quadriviridae);クインウイルス亜科(Quinvirinae);レグレッソウイルス亜科(Regressovirinae);レモトウイルス亜科(Remotovirinae);レオウイルス科(Reoviridae);レパンタウイルス亜科(Repantavirinae);レトロウイルス科(Retroviridae);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);ロニウイルス科(Roniviridae);ルブラウイルス亜科(Rubulavirinae);ルディウイルス科(Rudiviridae);サルスロウイルス科(Sarthroviridae);セカンドパピローマウイルス亜科(Secondpapillomavirinae);セコウイルス科(Secoviridae);セドレオウイルス亜科(Sedoreovirinae);セプウイルス亜科(Sepvirinae);セルペントウイルス亜科(Serpentovirinae);シマルテリウイルス亜科(Simarterivirina
e);シホウイルス科(Siphoviridae);スマコウイルス科(Smacoviridae);ソレモウイルス科(Solemoviridae);ソリンビウイルス科(Solinviviridae);スファエロリポウイルス科(Sphaerolipoviridae);スピナレオウイルス亜科(Spinareovirinae);スピラウイルス科(Spiraviridae);スポウナウイルス亜科(Spounavirinae);スプマレトロウイルス亜科(Spumaretrovirinae);サンウイルス科(Sunviridae);テクティウイルス科(Tectiviridae);テベンウイルス亜科(Tevenvirinae);ティアマトウイルス亜科(Tiamatvirinae);トバニウイルス科(Tobaniviridae);トガウイルス科(Togaviridae);トレクサテライト科(Tolecusatellitidae);トンブスウイルス科(Tombusviridae);トロウイルス亜科(Torovirinae);トスポウイルス科(Tospoviridae);トティウイルス科(Totiviridae);トリストロマウイルス科(Tristromaviridae);トリウイルス亜科(Trivirinae);ツナウイルス亜科(Tunavirinae);ツニカニウイルス亜科(Tunicanivirinae);タリウイルス科(Turriviridae);トウォートウイルス亜科(Twortvirinae);ティモウイルス科(Tymoviridae);バリアルテリウイルス亜科(Variarterivirinae);ベキンタウイルス亜科(Vequintavirinae);ビルガウイルス科(Virgaviridae);ウペデウイルス科(Wupedeviridae);ジンモウイルス科(Xinmoviridae);ユエウイルス科(Yueviridae);およびジールアルテリウイルス亜科(Zealarterivirinae)を含む群から選択される少なくとも1つのウイルスに由来する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記病原体由来抗原が、サイトメガロウイルス(CMV)抗原またはエプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原またはヘルペスウイルス抗原またはポックスウイルス抗原またはヘパドナウイルス抗原またはインフルエンザウイルス抗原またはコロナウイルス抗原または肝炎ウイルス抗原またはHIV抗原またはブニヤウイルス抗原である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドを病原体由来抗原のライブラリと比較することが、前記相同性/親和性を決定するためのペプチドまたはアミノ酸スコアリングおよび/またはアラインメントスコアリングを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドを病原体由来抗原のライブラリと比較することが、
a)前記ペプチドおよび前記病原体由来抗原の配列構造全体の類似性もしくは同一性;ならびに/または
b)前記ペプチドおよび前記病原体由来抗原の重要な結合部位における重要なアミノ酸の類似性もしくは同一性;ならびに/または
c)前記ペプチドおよび前記病原体由来抗原の重要な結合部位における類似もしくは同一の重要なアミノ酸の最多の数;
を決定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍抗原同定のためのデバイスであって、
少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える、デバイス。
【請求項10】
前記抗汎HLA抗体が、MHCクラスIA、BおよびCを含む群から選択される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記抗汎HLA抗体が、MHCクラスIIDP、DM、DO、DQおよびDRを含む群から選択される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記抗体が抗ヒトである、請求項9~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記分子または複合体がチオールおよびアルキル(「エン」)官能基の複合体である、請求項9~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記分子または複合体がビオチンおよびストレプトアビジンを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記分子または複合体が、ストレプトアビジンに結合された1つより多くの抗体を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記分子または複合体が、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質でのコーティングによって整えられる、請求項9~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記支持体が複数のマイクロピラーを備える、請求項9~16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記マイクロピラーが前記デバイス内にアレイ状に配置されている、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスが、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合されている、請求項9~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法および/または請求項9~19のいずれか一項に記載のデバイスのいずれかを使用して同定された腫瘍抗原を含む癌治療薬または免疫原性剤または癌ワクチン。
【請求項21】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法および/または請求項9~19のいずれか一項に記載のデバイスのいずれかを使用して同定された、癌治療において使用するための腫瘍抗原。
【請求項22】
癌を処置するための医薬の製造において使用するための腫瘍抗原であって、前記抗原が、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法および/または請求項9~19のいずれか一項に記載のデバイスのいずれかを使用して同定される、腫瘍抗原。
【請求項23】
SYHPALNAI(SEQ ID NO:1);
AFHSSRTSL(SEQ ID NO:2);
SYSDMKRAL(SEQ ID NO:3);
NYNSVNTRM(SEQ ID NO:4);
SYLTSASSL(SEQ ID NO:5);
SYLPPGTSL(SEQ ID NO:6);
FYEKNKTLV(SEQ ID NO:7);
FYKNGRLAV(SEQ ID NO:8);
KGPNRGVII(SEQ ID NO:9);
LYKESLSRL(SEQ ID NO:10);
RYLPAPTAL(SEQ ID NO:11);
KYIPAARHL(SEQ ID NO:12);
YYVRILSTI(SEQ ID NO:13);
SYRDVIQEL(SEQ ID NO:14);
KFYDSKETV(SEQ ID NO:15);
KYLNVREAV(SEQ ID NO:16);
HYLPDLHHM(SEQ ID NO:17);
SGPNRFILI(SEQ ID NO:18);
SYIIGTSSV(SEQ ID NO:19);
RGPYVYREF(SEQ ID NO:20);
FYATIIHDL(SEQ ID NO:21);
GYMTPGLTV(SEQ ID NO:22);
SYLIGRQKI(SEQ ID NO:23);
AGASRIIGI(SEQ ID NO:24);
QGPEYIERL(SEQ ID NO:25);
SYIHQRYIL(SEQ ID NO:26);
SPSYAYHQF(SEQ ID NO:27);
KKKKKKSYLPPGTSL(SEQ ID NO:28);
KKKKKKRYLPAPTAL(SEQ ID NO:29);
KKKKKKYIPAARHL(SEQ ID NO:30);
KKKKKKLYKESLSRL(SEQ ID NO:31);
KKKKKKYLNVREAV(SEQ ID NO:32);
KKKKKKFYATIIHDL(SEQ ID NO:33);および
KKKKKKSPSYAYHQF(SEQ ID NO:34);
を含む群から選択される、請求項20に記載の癌治療薬もしくは免疫原性剤もしくは癌ワクチンまたは請求項21もしくは22に記載の腫瘍抗原。
【請求項24】
癌患者を処置するための方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法および/もしくは請求項9~19のいずれか一項に記載のデバイスのいずれかを使用して腫瘍抗原を同定し、次いで前記腫瘍抗原を前記患者に投与すること;または前記腫瘍抗原を使用して、前記腫瘍抗原に対して活性なT細胞の集団を拡大増殖させ、次いで前記T細胞を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項25】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法および/または請求項9~19のいずれか一項に記載のデバイスのいずれかを使用して同定された腫瘍抗原と、薬学的に許容され得る、担体、アジュバント、希釈剤または賦形剤とを含む薬学的組成物または免疫原性剤またはワクチン。
【請求項26】
癌の処置のための併用治療薬であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法および/または請求項9~19のいずれか一項に記載のデバイスのいずれかを使用して同定された腫瘍抗原と、少なくとも1つのさらなる癌治療薬とを含む、併用治療薬。
【請求項27】
前記さらなる癌治療薬がチェックポイント阻害剤(ICI)を含む、請求項26に記載の併用治療薬。
【請求項28】
前記チェックポイント阻害剤(ICI)が、抗CTLA-4、抗PD1または抗PD-L1分子である、請求項27に記載の併用治療薬。
【請求項29】
チェックポイント阻害剤癌処置のために患者を層別化する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)必要に応じて、パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドをヒト病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原体由来抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍抗原として同定することと;
viii)前記ペプチドが見出された場合に、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤(ICI)を前記患者に投与することと;
を含む、方法。
【請求項30】
パートviii)が、有効量の前記ペプチドを前記患者に投与して、前記腫瘍抗原に対して、したがって前記試料が採取された前記癌に対してT細胞を刺激もしくは活性化すること、または前記腫瘍抗原を使用して前記腫瘍抗原に対して活性なT細胞の集団を拡大増殖させ、次いで前記T細胞を前記患者に投与することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アデノウイルス癌処置のために患者を層別化する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)必要に応じて、パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドをヒト病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原体由来抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍抗原として同定することと;
viii)前記ペプチドをアデノウイルスベクターのキャプシドに付着させ、有効量の前記アデノウイルスベクターを前記患者に投与することと;
を含む、方法。
【請求項32】
癌を処置する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)必要に応じて、パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドをヒト病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原体由来抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍抗原として同定することと;
viii)有効量の前記ペプチドを前記患者に投与して、前記腫瘍抗原に対して、したがって前記試料が採取された前記癌に対してT細胞を刺激もしくは活性化すること;または前記腫瘍抗原を使用して前記腫瘍抗原に対して活性なT細胞の集団を拡大増殖させ、次いで前記T細胞を前記患者に投与することと;
を含む、方法。
【請求項33】
前記癌が、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリン産生腫瘍、褐色細胞腫、プロラクチン産生腫瘍、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル-リンダウ病、ゾリンジャー-エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド、消化管のカルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポシ肉腫、前立腺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴン産生腫瘍、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、絨毛性癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌および扁桃癌を含む群から選択される、請求項20に記載の癌治療薬または免疫原性剤または癌ワクチン、請求項21~23に記載の腫瘍抗原、請求項24に記載の方法、請求項25に記載の薬学的組成物または免疫原性剤またはワクチン、請求項26~28のいずれか一項に記載の併用治療薬、および請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍抗原同定のためのデバイスおよび腫瘍抗原同定のための方法;前記デバイスおよび/または方法の使用後に同定された腫瘍抗原;前記腫瘍抗原を含む薬学的組成物;前記デバイスおよび/または前記方法を使用して癌を処置する方法;前記デバイスおよび/または前記方法を使用して癌処置のために患者を層別化する方法;前記デバイスおよび/または方法を使用して癌処置のために患者を層別化し、次いで癌治療薬を投与することを含む処置レジメン;ならびに癌ワクチンまたは免疫原性剤または癌治療として使用するための、前記デバイスおよび/または前記方法を使用して同定された腫瘍抗原に関する。
【背景技術】
【0002】
CD8T細胞は、ウイルス感染などの病原性感染または悪性形質転換の結果としてその表面に異常なペプチドを提示する細胞の検出および排除において重要な役割を有する。T細胞受容体(TCR)の交差反応性は、T細胞が非常に多様な異なる標的ペプチドを認識できることを意味する。この現象は、比較的少数のT細胞が、異常な細胞を表し、そのため健康または生命を脅かす可能性がある複数のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)分子を認識することを可能にする。
【0003】
しかしながら、この機構の望ましくない副作用は、病原体に対して向けられる免疫応答が高度に相同な自己抗原に対する寛容閾値を超えて、T細胞の交差反応性によって媒介される有害なオフターゲット効果を引き起こし得ることであり、これは分子模倣として知られる過程である。自己免疫の分野では、自己および病原性ペプチドの間でのそのような相同性の潜在的に有害な帰結は周知であるが、癌では検討されていない。
【0004】
実際、癌免疫療法処置における成功した転帰に対する最良の予後マーカーは、高い腫瘍抗原変異率および豊富なT細胞浸潤であると考えられてきた。この考えは、多数の突然変異を有する腫瘍は、浸潤するT細胞によって認識され排除されるより高い可能性を有するという事実に基づいている。
【0005】
それにもかかわらず、いくつかの研究は、腫瘍抗原の定性的特性が腫瘍抗原の量よりさらに重要であり得ることを示している。さらに、抗ウイルスT細胞が腫瘍微小環境に集合することが観察されている[28]が、抗ウイルスT細胞の役割が活動的であるのか、または単なる傍観者であるのかは依然として不明である。
【0006】
特に、傑出した臨床結果が観察されているが、残念なことに少数の患者においてのみ観察されたチェックポイント阻害剤(ICI)を使用する場合、腫瘍免疫学および免疫療法は、過去10年間にわたって癌を処置する方法を完全に変化させた。ICIを用いた免疫療法は、特定の腫瘍抗原を標的とする場合にのみ十分に機能することが明らかになりつつある。しかしながら、現時点では、これらの腫瘍抗原を同定するための容易かつ迅速な方法は存在しない。
【0007】
本明細書において、本発明者らは、腫瘍は、病原体由来ペプチド、特にウイルスペプチドと高度の相同性または親和性スコアリングを共有するペプチドを提示する可能性があり、これにより、病原的に生成された交差反応性T細胞が腫瘍細胞を認識し死滅させることを可能にし得ると仮定した。
【0008】
この目的のために、本発明者らは、ウイルスペプチドに高度に類似する腫瘍抗原を自動的かつ極めて簡単に同定するためのHEX(Homology Evaluation of Xenopeptides(異種ペプチドの相同性評価))と呼ばれるバイオインフォマティクスデバイスを開発した。このデバイスを使用して、本発明者らは、癌抗原との高い相同性または親和性スコアリングを有するペプチドによって媒介される抗ウイルスT細胞免疫が、予防的および治療的状況の両方において腫瘍増殖も能動的に制御することができることを観察した。この観察は、相同なウイルス由来ペプチドおよび腫瘍由来ペプチドの両方に対する活性化T細胞の交差反応性を実証する。
【0009】
その後、本発明者らはまた、サイトメガロウイルス(CMV)に対する体液性応答が、チェックポイント阻害剤療法(抗PD1)に対する黒色腫患者の応答を層別化することができることを見出した。実際、前記デバイスHEXの使用を通じて同定されたCMVおよび黒色腫と相同なペプチドは、CMV血清陽性黒色腫患者由来の末梢血単核球(PBMC)においてInf-g放出を促進することが見出された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の局面によれば、腫瘍抗原同定のためのデバイスであって、
少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える、デバイスが提供される。
【0011】
本明細書における抗汎HLA抗体への言及は、哺乳動物、特にヒトに存在する異なるHLAのいずれかを認識するかまたはこれに対する特異性を有する抗体に対するものである。
【0012】
さらにより理想的には、前記抗体は、MHC-Iなどの、以下の群:MHCクラスIA、BおよびCの少なくとも1つから選択される特定のHLA型を認識するかまたはこれに対する特異性を有する。
【0013】
これに加えてまたはこれに代えて、前記抗体は、以下の群:MHCクラスIIDP、DM、DO、DQおよびDRの少なくとも1つから選択されるMHC-IIなどの特定のHLA型を認識するかまたはこれに対する特異性を有する。
【0014】
さらにより好ましくは、前記抗体は抗ヒトである。
【0015】
本発明の好ましい態様において、前記分子または複合体は、チオールおよびアルキル(「エン」)官能基の複合体であり、理想的には、0.15:0.1~1500:1000(テトラチオール:トリアリル)の範囲内の1.5~1.0の化学量論比を含む。
【0016】
さらにより理想的には、デバイスの製造は、チオールとアルキル(「エン」)官能基の間でのUVで開始される光反応に基づく。本発明のさらに好ましい態様では、デバイスは、ビオチン-PEG4-アルキン(Sigma、764213)を用いたUV光重合によって作製される。これに、アビジン:ストレプトアビジンとの反応が続く。但し、生物剤をピラーに付着させる前にアビジンを生物剤に付着させることおよびその逆は本発明の範囲内である。
【0017】
なおさらなる好ましい態様において、前記デバイスは、前記抗体を前記ストレプトアビジンと反応させることによって官能化される。理想的には、1つより多くの抗体を前記ストレプトアビジンと反応させ、ストレプトアビジンで官能化された各複合体は複数、例えば2つまたは3つの前記抗体、例えば複数の抗汎HLA抗体を保有する。
【0018】
本発明のさらなる好ましい態様において、マイクロピラーアレイは、ストレプトアビジン官能化後および抗体結合前に、ウシ血清アルブミン(BSA)(理想的には、15mMPBS中100μg/mL、10分間のインキュベーション)などのタンパク質で予め整えられた。
【0019】
本発明のより好ましい局面において、前記支持体は、マイクロ流体デバイス内に存在するマイクロピラーなどの複数のマイクロピラーを含み、好ましくは、前記ピラーは前記デバイス内にアレイ状に配置される。理想的には、前記マイクロピラーは、例えば固定化された酵素反応を実施するために従来のマイクロ流体デバイスにおいて使用されている組成物と同じまたは類似の組成物で作られる。
【0020】
本発明のさらなる局面によれば、腫瘍抗原同定のための方法であって、
i)流体中に腫瘍の試料を溶解または懸濁させることと;
ii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iii)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
iv)必要に応じて、パートiii)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
v)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドを病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つの病原体由来抗原またはその一部との相同性または親和性(分子模倣)を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vi)前記ペプチドを、癌治療において使用するための腫瘍抗原として同定することと;
を含む、方法が提供される。
【0021】
本発明の任意の局面の好ましい態様において、前記相同性/親和性は、以下の百分率:61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100%の任意の1つであり得る。
【0022】
本明細書における相同性/親和性への言及は、本明細書で定義される相同性/親和性;または所与のアラインメント中の所定の長さにわたる同一の残基の数によって決定される同一性;または所与の整列中の所定の長さにわたる類似の物理化学的特性を有する同一の残基または保存的置換の数によって決定される類似性のうちの1つを使用した、上記パートv)における配列構造の比較への言及を含む。
【0023】
本発明の好ましい方法において、前記ライブラリはヒト病原体由来抗原のものであり、前記ライブラリは、理想的には、病原性ウイルスに、またはより適切にはそのプロテオームに由来する公知の病原体由来抗原の精選されたライブラリを含み、前記ウイルスは、以下のウイルスの任意の1つもしくは複数または任意の組み合わせなど、哺乳動物、理想的にはヒトに感染する。
【0024】
アビソウイルス科(Abyssoviridae);アッカーマンウイルス科(Ackermannviridae);アクタンタウイルス亜科(Actantavirinae);アデノウイルス科(Adenoviridae);アガンタウイルス亜科(Agantavirinae);アグリムウイルス亜科(Aglimvirinae);アロヘルペスウイルス科(Alloherpesviridae);アルファフレキシウイルス科(Alphaflexiviridae);アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae);アルファイリドウイルス亜科(Alphairidovirinae);アルファサテライト科(Alphasatellitidae);アルファテトラウイルス科(Alphatetraviridae);アルバーナウイルス科(Alvernaviridae);アマルガウイルス科(Amalgaviridae);アムヌーンウイルス科(Amnoonviridae);アムプラウイルス科(Ampullaviridae);アネロウイルス科(Anelloviridae);アレナウイルス科(Arenaviridae);アルクアトロウイルス亜科(Arquatrovirinae);アルテリウイルス科(Arteriviridae);アルトウイルス科(Artoviridae);アスコウイルス科(Ascoviridae);アスファウイルス科(Asfarviridae);アスピウイルス科(Aspiviridae);アストロウイルス科(Astroviridae);オートグラフィウイルス亜科(Autographivirinae);アブサンウイロイド科(Avsunviroidae);アブラウイルス亜科(Avulavirinae);バシラドナウイルス科(Bacilladnaviridae);バキュロウイルス科(Baculoviridae);バルナウイルス科(Barnaviridae);バスティーユウイルス亜科(Bastillevirinae);ビークラスウイルス亜科(Bclasvirinae);ベルパオウイルス科(Belpaoviridae);ベニウイルス科(Benyviridae);ベータフレキシウイルス科(Betaflexiviridae);ベータヘルペスウイルス亜科(Betaherpesvirinae);ベータイリドウイルス亜科(Betairidovirinae);ビカウダウイルス科(Bicaudaviridae);ビドナウイルス科(Bidnaviridae);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ボルナウイルス科(Bornaviridae);ボトウルミアウイルス科(Botourmiaviridae);ブロク亜科(Brockvirinae);ブロモウイルス科(Bromoviridae);ブラウイルス亜科(Bullavirinae);カリシウイルス科(Caliciviridae);カルブスウイルス亜科(Calvusvirinae);カルモテトラウイルス科(Carmotetraviridae);カウリモウイルス科(Caulimoviridae);セロニウイルス亜科(Ceronivirinae);チェブルウイルス亜科(Chebruvirinae);コルドポックスウイルス亜科(Chordopoxvirinae);クリソウイルス科(Chrysoviridae);チュウイルス科(Chuviridae);サーコウイルス科(Circoviridae);クラバウイルス科(Clavaviridae);クロステロウイルス科(Closteroviridae);コモウイルス亜科(Comovirinae);コロナウイルス科(Coronaviridae);コルチコウイルス科(Corticoviridae);クロカルテリウイルス亜科(Crocarterivirinae);クルリウイルス科(Cruliviridae);クラストニウイルス亜科(Crustonivirinae);クビウイルス亜科(Cvivirinae);シストウイルス科(Cystoviridae);ディークラスウイルス亜科(Dclasvirinae);デルタフレキシウイルス科(Deltaflexiviridae);デンソウイルス亜科(Densovirinae);ジシストロウイルス科(Dicistroviridae);エンドルナウイルス科(Endornaviridae);エントモポックスウイルス亜科(Entomopoxvirinae);エカルテリウイルス亜科(Equarterivirinae);ユーカンピウイルス亜科(Eucampyvirinae);ユーロニウイルス科(Euroniviridae);
フィロウイルス科(Filoviridae);フィモウイルス科(Fimoviridae);ファーストパピローマウイルス亜科(Firstpapillomavirinae);フラビウイルス科(Flaviviridae);フセロウイルス科(Fuselloviridae);ガンマフレキシウイルス科(Gammaflexiviridae);ガンマヘルペスウイルス亜科(Gammaherpesvirinae);ジェミニアルファサテライト亜科(Geminialphasatellitinae);ジェミニウイルス科(Geminiviridae);ジェノモウイルス科(Genomoviridae);グロブロウイルス科(Globuloviridae);ゴクショウイルス亜科(Gokushovirinae);ガーンジーウイルス亜科(Guernseyvirinae);グッタウイルス科(Guttaviridae);ハンタウイルス科(Hantaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae);ヘペウイルス科(Hepeviridae);ヘレルウイルス科(Herelleviridae);ヘロアルテリウイルス亜科(Heroarterivirinae);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae);ヘクスポニウイルス亜科(Hexponivirinae);ヒポウイルス科(Hypoviridae);ヒトロサウイルス科(Hytrosaviridae);イフラウイルス科(Iflaviridae);イノウイルス科(Inoviridae);イリドウイルス科(Iridoviridae);ジャシンカウイルス亜科(Jasinkavirinae);キタウイルス科(Kitaviridae);ラビダウイルス科(Lavidaviridae);レイシュブウイルス科(Leishbuviridae);レトウイルス亜科(Letovirinae);レビウイルス科(Leviviridae);リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae);リスピウイルス科(Lispiviridae);ルテオウイルス科(Luteoviridae);マラコヘルペスウイルス科(Malacoherpesviridae);マンマンタウイルス亜科(Mammantavirinae);マルナウイルス科(Marnaviridae);マルセイユウイルス科(Marseilleviridae);マトナウイルス科(Matonaviridae);マッククレスキーウイルス亜科(Mccleskeyvirinae);
エムクラスウイルス亜科(Mclasvirinae);メディオニウイルス科(Medioniviridae);メディオニウイルス亜科(Medionivirinae);メガビルナウイルス科(Megabirnaviridae);メソニウイルス科(Mesoniviridae);メタパラミクソウイルス亜科(Metaparamyxovirinae);メタウイルス科(Metaviridae);ミクロウイルス科(Microviridae);ミミウイルス科(Mimiviridae);モノニウイルス科(Mononiviridae);モノニウイルス亜科(Mononivirinae);マイモナウイルス科(Mymonaviridae);ミオウイルス科(Myoviridae);ミポウイルス科(Mypoviridae);ナイロウイルス科(Nairoviridae);ナノアルファサテライト亜科(Nanoalphasatellitinae);ナノウイルス科(Nanoviridae);ナルナウイルス科(Narnaviridae);エヌクラスウイルス亜科(Nclasvirinae);ニマウイルス科(Nimaviridae);ノダウイルス科(Nodaviridae);ヌディウイルス科(Nudiviridae);ニアミウイルス科(Nyamiviridae);ニンバクスターウイルス亜科(Nymbaxtervirinae);オカニウイルス亜科(Okanivirinae);オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae);オルトパラミクソウイルス亜科(Orthoparamyxovirinae);オルトレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae);
オウナウイルス亜科(Ounavirinae);オバリウイルス科(Ovaliviridae);パピローマウイルス科(Papillomaviridae);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae);パルチチウイルス科(Partitiviridae);パルボウイルス科(Parvoviridae);パルボウイルス亜科(Parvovirinae);ピークラスウイルス亜科(Pclasvirinae);ペデュオウイルス亜科(Peduovirinae);ペリブニヤウイルス科(Peribunyaviridae);ペルムトテトラウイルス科(Permutotetraviridae);ファスマウイルス科(Phasmaviridae);フェヌイウイルス科(Phenuiviridae);フィコドナウイルス科(Phycodnaviridae);ピコビルナウイルス科(Picobirnaviridae);ピコルナウイルス科(Picornaviridae);ピコウイルス亜科(Picovirinae);ピスカニウイルス亜科(Piscanivirinae);プラズマウイルス科(Plasmaviridae);プレオリポウイルス科(Pleolipoviridae);ニューモウイルス科(Pneumoviridae);ポドウイルス科(Podoviridae);ポリシピウイルス科(Polycipiviridae);ポリドナウイルス科(Polydnaviridae);ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae);ポルトグロボウイルス科(Portogloboviridae);ポスピウイロイド科(Pospiviroidae);ポティウイルス科(Potyviridae);ポックスウイルス科(Poxviridae);プロセドウイルス亜科(Procedovirinae);シュードウイルス科(Pseudoviridae);チンウイルス科(Qinviridae);クァードリウイルス科(Quadriviridae);クインウイルス亜科(Quinvirinae);レグレッソウイルス亜科(Regressovirinae);レモトウイルス亜科(Remotovirinae);レオウイルス科(Reoviridae);レパンタウイルス亜科(Repantavirinae);レトロウイルス科(Retroviridae);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);ロニウイルス科(Roniviridae);ルブラウイルス亜科(Rubulavirinae);ルディウイルス科(Rudiviridae);サルスロウイルス科(Sarthroviridae);セカンドパピローマウイルス亜科(Secondpapillomavirinae);セコウイルス科(Secoviridae);セドレオウイルス亜科(Sedoreovirinae);セプウイルス亜科(Sepvirinae);セルペントウイルス亜科(Serpentovirinae);シマルテリウイルス亜科(Simarterivirinae);シホウイルス科(Siphoviridae);スマコウイルス科(Smacoviridae);ソレモウイルス科(Solemoviridae);ソリンビウイルス科(Solinviviridae);スファエロリポウイルス科(Sphaerolipoviridae);スピナレオウイルス亜科(Spinareovirinae);スピラウイルス科(Spiraviridae);スポウナウイルス亜科(Spounavirinae);スプマレトロウイルス亜科(Spumaretrovirinae);サンウイルス科(Sunviridae);テクティウイルス科(Tectiviridae);テベンウイルス亜科(Tevenvirinae);ティアマトウイルス亜科(Tiamatvirinae);トバニウイルス科(Tobaniviridae);トガウイルス科(Togaviridae);トレクサテライト科(Tolecusatellitidae);トンブスウイルス科(Tombusviridae);トロウイルス亜科(Torovirinae);トスポウイルス科(Tospoviridae);トティウイルス科(Totiviridae);トリストロマウイルス科(Tristromaviridae);トリウイルス亜科(Trivirinae);ツナウイルス亜科(Tunavirinae);ツニカニウイルス亜科(Tunicanivirinae);タリウイルス科(Turriviridae);トウォートウイルス亜科(Twortvirinae);ティモウイルス科(Tymoviridae);バリアルテリウイルス亜科(Variarterivirinae);ベキンタウイルス亜科(Vequintavirinae);ビルガウイルス科(Virgaviridae);ウペデウイルス科(Wupedeviridae);ジンモウイルス科(Xinmoviridae);ユエウイルス科(Yueviridae);およびジールアルテリウイルス亜科(Zealarterivirinae)。
【0025】
より好ましくは、病原性ウイルスは、サイトメガロウイルス(CMV)もしくはエプスタイン・バーウイルス(EBV)または、好ましくは、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、肝炎ウイルス、HIVもしくはブニヤウイルスである。
【0026】
最も好ましくは、前記ウイルスは非腫瘍溶解性である、すなわち、その複製は特に癌細胞に限定されない。
【0027】
代替の態様において、前記ウイルスは腫瘍溶解性である、すなわち、正常細胞と比較した腫瘍細胞中での選択的複製によって癌細胞に感染し、死滅させることができる。
【0028】
好ましい方法では、前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドの、病原体由来抗原のライブラリとの前記比較は、前記相同性/親和性または同一性または類似性を決定するための複数のスコアリング(ペプチド親和性スコアリングおよびアラインメントスコアリングおよび類似性スコアリングおよびMHC結合親和性スコアリング)を含む。最も好ましくは、前記スコアリングは、以下に記載されている相同性/親和性スコアリングである。
【0029】
一態様では、腫瘍ペプチド中でのアミノ酸位置を表す行(または列)および20の標準アミノ酸のそれぞれを表す列(または行)の行列が生成され、腫瘍ペプチドのアミノ酸位置には同じ高いスコアが割り当てられ、他の位置には病原体由来抗原/ペプチドと同じ低いスコアが割り当てられる。(優先される順に):
a)配列構造全体(明らかに、病原体由来ペプチドと100%の同一性を有する腫瘍ペプチドに最も高いスコアが与えられる);
b)ホットスポットまたは重要な結合部位中の重要なアミノ酸の同一性;および
c)ホットスポットまたは重要な結合部位中の重要なアミノ酸の最多の数;
の観点で、病原体由来抗原/ペプチドとの相同性/親和性の程度が最も高い腫瘍ペプチドに、最も高いスコアが与えられる。
【0030】
アラインメントは、腫瘍セットに対するクエリ(病原体由来)セットまたはその逆において、ペプチド間で対で計算される。ペプチドの所与の対について、それらのアラインメントは、同じ位置のアミノ酸の対間での距離スコアを合計することによって計算される。スコアリングは、ペプチド中のより中心に位置するアミノ酸間の類似性を優先するように重み付けされる。
【0031】
さらに、MHCクラスI結合親和性予測が行われる。これを達成するための方法は、IEDBのアプリケーションプログラミングインターフェース(http://tools.iedb.org/main/tools-api/)を介してNetMHC(NetMHC4.0またはNetMHCpan4.1.)を使用するなど、当技術分野で公知であり、次いでツール内で解析および照合される。
【0032】
本発明の代替の態様において、前記比較は、8~12アミノ酸長の腫瘍ペプチドのリストをソフトウェアに入力することを含む。まず、ツールBLASTを使用して、病原体由来抗原のライブラリ中でヒット(類似配列)を発見する。この作業のためには、PAM30ツールが一般に使用されるが、いくつかの進化距離にわたるBLOSUMおよびPAM置換行列の両方がサポートされている。次に、位置で重み付けしてアラインメントを精緻化するために、少なくともBLOSUM62、理想的にはKimらによって開発された置換行列(BMC Bioinformatics.2009;10:394.Published 2009 Nov 30.doi:10.1186/1471-2105-10-394 Derivation of an amino acid similarity matrix for peptide:MHC binding and its application as a Bayesian prior.Kim Y,Sidney J,Pinilla C,Sette A,Peters B.に記載されている)を使用するペアワイズ精緻化アラインメントが実行される。TCR相互作用領域(ペプチドの中央部分)において高い類似性を有するペプチドの対には、より高い類似性スコアが与えられる。最後に、独立型のコマンドラインツールとしてNetMHC4.0またはNetMHCpan4.1を使用して、腫瘍およびウイルスの同族ペプチドの両方に対してMHC結合親和性予測が生成される。結果は最終的にツール内で自動的に解析および照合され、上述の分析を要約する最終スコアが作成される。
【0033】
本発明のなおさらなる局面によれば、前述のデバイスおよび/または方法の一方または両方を使用して同定された腫瘍抗原を含む癌治療薬または免疫原性剤または癌ワクチンが提供される。
【0034】
本発明のなおさらなる局面によれば、前述のデバイスおよび/または方法の一方または両方を使用して同定された癌治療において使用するための腫瘍抗原が提供される。
【0035】
本発明のなおさらなる局面によれば、癌を処置するための医薬の製造において使用するための腫瘍抗原であって、前記抗原は、前述のデバイスおよび/または方法の一方または両方を使用して同定される、腫瘍抗原が提供される。
【0036】
最も好ましくは、前記癌治療薬または免疫原性剤または癌ワクチンまたは腫瘍抗原は、表1~6に列挙されたものの任意の1つまたは複数である。
【0037】
本発明のなおさらなる局面によれば、癌患者を処置するための方法であって、
本発明の前記デバイスおよび/もしくは方法を使用して腫瘍抗原を同定し、次いで前記腫瘍抗原を個体に投与すること、または前記腫瘍抗原を使用して前記腫瘍抗原に対して活性なT細胞の集団を拡大増殖させ、次いで前記T細胞を患者に投与すること、
を含む、方法が提供される。
【0038】
好ましい態様において、前記T細胞は、同種異系または自己T細胞のいずれかである、エクスビボT細胞および/または培養されたT細胞である。
【0039】
本発明のなおさらなる局面によれば、本発明の腫瘍抗原と薬学的に許容され得る、担体、アジュバント、希釈剤または賦形剤とを含む薬学的組成物または免疫原性剤またはワクチンが提供される。
【0040】
適切な薬学的賦形剤は、当業者に周知である。薬学的組成物は、任意の適切な経路、例えば、腫瘍内、筋肉内、動脈内、静脈内、胸膜内、小胞内、腔内または腹腔内注射、頬側、鼻または気管支(吸入)、経皮または非経口によって投与するために製剤化され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。
【0041】
組成物は、上記腫瘍抗原を担体と混ぜることによって調製され得る。一般に、製剤は、腫瘍抗原を液体担体または細かく分割された固体担体またはその両方と均一かつ緊密に混ぜ、次いで、必要であれば生成物を成形することによって調製される。本発明は、本明細書で定義される腫瘍抗原を、薬学的または獣医学的に許容され得る、担体またはビヒクルと併せるまたは混ぜることを含む、薬学的組成物を調製するための方法に及ぶ。
【0042】
本発明のさらなる局面によれば、本発明の前記デバイスおよび/または方法を使用して同定された腫瘍抗原と、少なくとも1つのさらなる癌治療薬とを含む、癌の処置のための併用治療薬が提供される。
【0043】
好ましくは、さらなる癌治療薬は、T制御性細胞を下方制御するので、最も適切にはシクロホスファミドを含む。しかしながら、当業者によって理解されるように、前記さらなる治療薬は、当技術分野において公知の任意の抗癌剤であり得る。
【0044】
好ましくは、さらなる癌治療薬はチェックポイント阻害剤(ICI)を含む。
【0045】
チェックポイント阻害のための最も特性が決定された経路は、細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4(CTLA-4)経路およびプログラムされた細胞死タンパク質1経路(PD-1/PD-L1)である。したがって、本発明は、免疫抑制性腫瘍環境を打ち消し、強力な抗免疫応答を引き起こすために、抗CTLA-4、抗PD1または抗PD-L1分子などの少なくとも1つのチェックポイント調節物質と組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明のなおさらなる局面によれば、チェックポイント阻害剤癌処置のために患者を層別化する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)必要に応じて、パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドをヒト病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原体由来抗原またはその一部との配列相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍抗原として同定することと;
viii)前記ペプチドが見出された場合に、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤(ICI)を前記患者に投与することと;
を含む、方法が提供される。
【0047】
本発明のなおさらなる局面または態様によれば、チェックポイント阻害剤癌処置のために患者を層別化する方法であって、
患者がCMV血清陽性であるかどうかを決定すること、および、CMV血清陽性である場合には、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤(ICI)を使用する処置のために前記患者を選択すること、
を含む方法が提供される。
【0048】
本発明のなおさらなる局面によれば、癌を処置する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)必要に応じて、パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドをヒト病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原体由来抗原またはその一部との配列相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍抗原として同定すること;および有効量の前記ペプチドを前記患者に投与して、前記腫瘍抗原に対して、したがって前記試料が採取された前記癌に対してT細胞を刺激もしくは活性化すること;または前記腫瘍抗原を使用して前記腫瘍抗原に対して活性なT細胞の集団を拡大増殖させ、次いで前記T細胞を患者に投与することと;
を含む、方法が提供される。
【0049】
本発明のなおさらなる局面または態様によれば、癌を処置する方法であって、
患者がCMV血清陽性であるかどうかを決定すること、および、CMV血清陽性である場合には、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤(ICI)を前記患者に投与すること、
を含む方法が提供される。
【0050】
本発明のなおさらなる局面によれば、アデノウイルス癌処置のために患者を層別化する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されている複数の支持体を含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍抗原同定のためのデバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)必要に応じて、パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)の前記ペプチドをヒト病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原体由来抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍抗原として同定することと;
viii)前記ペプチドが見出された場合には、前記ペプチドをアデノウイルスベクターのキャプシドに付着させ、有効量の前記アデノウイルスベクターを前記患者に投与することと;
を含む、方法が提供される。
【0051】
好ましい態様において、前記ペプチドは、国際公開第2015/177098号に記載されているものおよび/または本明細書に含まれるものなどの公知の技術を使用して前記アデノウイルスベクターに付着される、PeptiCRAd調製を参照。
【0052】
本明細書における「有効量」への言及は、癌細胞死などの所望の生物学的効果を達成するのに十分な量である。
【0053】
有効な投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康および体重、存在する場合、同時の処置の種類、処置の頻度、および所望される効果の性質に依存することが理解される。典型的には、有効量は処置を施している者によって決定される。
【0054】
最も好ましくは、本明細書において言及される癌には、以下の癌:鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリン産生腫瘍、褐色細胞腫、プロラクチン産生腫瘍、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル-リンダウ病、ゾリンジャー-エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド、消化管のカルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポシ肉腫、前立腺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴン産生腫瘍、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、絨毛性癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌および扁桃癌の任意の1つまたは複数が含まれる。
【0055】
本発明の特定の好ましい態様において、前記試料は黒色腫から採取され、前記腫瘍抗原はCMV抗原またはペプチドと相同である。
【0056】
以下の特許請求の範囲および本発明の前述の説明では、明示的な文言または必要な含意のために文脈が別段の要求をする場合を除いて、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、包括的な意味で使用される、すなわち、記載された特徴の存在を規定するが、本発明の様々な態様におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
【0057】
本明細書で引用されている任意の特許または特許出願を含むすべての参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる。いかなる参考文献も先行技術を構成することを認めるものではない。さらに、先行技術のいずれかが当技術分野における通常の一般的知識の一部を構成することを認めるものではない。
【0058】
本発明の各局面の好ましい特徴は、他の局面のいずれかに関連して説明されているとおりであり得る。
【0059】
本発明の他の特徴は、以下の実施例から明らかになるであろう。一般的に言えば、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規の1つまたは任意の新規の組み合わせに及ぶ。したがって、本発明の特定の局面、態様または実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物または化学部分は、これらと整合しない場合を除き、本明細書に記載される任意の他の局面、態様または実施例に適用可能であると理解されるべきである。
【0060】
さらに、特に明記しない限り、本明細書に開示される任意の特徴は、同一のまたは同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。
【0061】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の必要がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈上別段の必要がない限り、本明細書は単数だけでなく複数も想定していると理解されるべきである。
【0062】
ここで、以下を参照しながら、単に例として、本発明の態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1A】[A]PeptiCHIPの内部。PeptiCHIPの内部は、ビオチンが付着されているリンカーで被覆された数千のピラーからなる。次いで、ビオチンをストレプトアビジンと反応させ、その後、ストレプトアビジンを3分子のHLA特異的捕捉抗体と反応させることができる。[B].迅速な抗原発見のための新規免疫精製プラットフォームとしてのマイクロチップ技術。 開発された新しいマイクロチップ方法論を説明する概略図。遊離の表面チオールを取り込んだチオール-エンマイクロチップをビオチン-PEG4-アルキンチオレンで誘導体化し(工程1)、ストレプトアビジンの層で官能化し(工程2)、その後、ビオチン化された汎HLA抗体をマイクロピラー表面上に固定化し(工程3)、細胞可溶化液をマイクロチップ中に搭載する(工程4)。十分なインキュベーション時間および洗浄工程の後、7%酢酸を添加することによってHLA分子を溶出する(工程5)。
図1B】[A]PeptiCHIPの内部。PeptiCHIPの内部は、ビオチンが付着されているリンカーで被覆された数千のピラーからなる。次いで、ビオチンをストレプトアビジンと反応させ、その後、ストレプトアビジンを3分子のHLA特異的捕捉抗体と反応させることができる。[B].迅速な抗原発見のための新規免疫精製プラットフォームとしてのマイクロチップ技術。 開発された新しいマイクロチップ方法論を説明する概略図。遊離の表面チオールを取り込んだチオール-エンマイクロチップをビオチン-PEG4-アルキンチオレンで誘導体化し(工程1)、ストレプトアビジンの層で官能化し(工程2)、その後、ビオチン化された汎HLA抗体をマイクロピラー表面上に固定化し(工程3)、細胞可溶化液をマイクロチップ中に搭載する(工程4)。十分なインキュベーション時間および洗浄工程の後、7%酢酸を添加することによってHLA分子を溶出する(工程5)。
図2】ビオチン化された汎HLA抗体によるマイクロチップ官能化の選択性の特徴決定。 A)2つの異なるストレプトアビジンインキュベーション時間(15分および1時間)での、ビオチン-PEG4-アルキンで予め被覆されたチオール-エンマイクロピラー上でのAlexa Fluor 488-ストレプトアビジンの結合効率。B)AlexaFluor 488標識された二次抗体を介して定量された固定されたビオチン化汎HLA抗体の量に対するストレプトアビジン(非蛍光)濃度の効果。C)AlexaFluor 488標識された二次抗体を介して定量された固定されたビオチン化汎HLA抗体の量に対するBSAインキュベーションの効果。ビオチン化汎HLA抗体の固定化前(BSA-汎HLA)または固定化後(汎HLA-BSA)のいずれかで、マイクロピラーアレイをBSAで予め整えることによって、非特異的結合部位をブロッキングする上でのBSAの効率を評価した。D)搭載サイクルの関数としての、単一のチップ上に結合したビオチン化汎HLA抗体の総量。各サイクルについて、同じ(一定の)汎HLA抗体濃度の新しいバッチを使用した。有意性は、両側の対応のないスチューデントのt検定によって評価した、*p<0.05。
図3A-B】JY細胞株から得られたHLA-Iペプチドームデータセットの特性。A)50×10、10×10および1×10のJY細胞から溶出された多数の特有のペプチド。B)JY細胞株に由来する3つのデータセットにおけるHLAペプチドの全体的なペプチド長分布 C~E)50×10(C)、10×10(D)および1×10(E)に対して、HLAペプチドの長さ分布が、特有のペプチドの数(左y軸)および出現の百分率(右y軸)として図示されている。
図3C-E】JY細胞株から得られたHLA-Iペプチドームデータセットの特性。A)50×10、10×10および1×10のJY細胞から溶出された多数の特有のペプチド。B)JY細胞株に由来する3つのデータセットにおけるHLAペプチドの全体的なペプチド長分布 C~E)50×10(C)、10×10(D)および1×10(E)に対して、HLAペプチドの長さ分布が、特有のペプチドの数(左y軸)および出現の百分率(右y軸)として図示されている。
図4A】JY細胞株から単離されたHLAリガンドの正確な分析。A)HLA-A*02:01およびHLA-B*07:02に対するそれらの結合親和性に関して、溶出された9マーを分析した。結合剤(緑色のドット)および非結合剤(黒色のドット)は、NetMHCpan4.0Server(適用されたランク2%)において定められた。B)HLA-Iコンセンサス結合モチーフ。溶出された9マーペプチドの間でコンセンサス結合モチーフを画定するために、Gibbsクラスタリング分析を行った。参照モチーフは、右上隅に図示されている。最適な適合性(より高いKLD値、オレンジ色の星)を有するクラスターが示されており、各クラスターについて、配列ロゴがHLA-Iの数とともに表されている。
図4B-1】JY細胞株から単離されたHLAリガンドの正確な分析。A)HLA-A*02:01およびHLA-B*07:02に対するそれらの結合親和性に関して、溶出された9マーを分析した。結合剤(緑色のドット)および非結合剤(黒色のドット)は、NetMHCpan4.0Server(適用されたランク2%)において定められた。B)HLA-Iコンセンサス結合モチーフ。溶出された9マーペプチドの間でコンセンサス結合モチーフを画定するために、Gibbsクラスタリング分析を行った。参照モチーフは、右上隅に図示されている。最適な適合性(より高いKLD値、オレンジ色の星)を有するクラスターが示されており、各クラスターについて、配列ロゴがHLA-Iの数とともに表されている。
図4B-2】JY細胞株から単離されたHLAリガンドの正確な分析。A)HLA-A*02:01およびHLA-B*07:02に対するそれらの結合親和性に関して、溶出された9マーを分析した。結合剤(緑色のドット)および非結合剤(黒色のドット)は、NetMHCpan4.0Server(適用されたランク2%)において定められた。B)HLA-Iコンセンサス結合モチーフ。溶出された9マーペプチドの間でコンセンサス結合モチーフを画定するために、Gibbsクラスタリング分析を行った。参照モチーフは、右上隅に図示されている。最適な適合性(より高いKLD値、オレンジ色の星)を有するクラスターが示されており、各クラスターについて、配列ロゴがHLA-Iの数とともに表されている。
図5A】HEXアルゴリズムのフローチャート。腫瘍ペプチド(参照ペプチド)のアミノ酸組成に基づいて、マトリックスが生成される。次いで、このマトリックスを使用してウイルスのデータベースをスキャンし、得られたウイルスペプチドを認識の対数尤度の順にランク付けする。各ウイルスペプチドに、アラインメントスコアおよびMHC-I結合予測のためのスコアを割り当てる。以下の基準:MHC-I結合予測スコア>アラインメントスコア>Bスコアに基づいて、候補ウイルスペプチドはランク付けされ、最高スコアのペプチドが実験的に分析される。
図5B】既存のソフトウェアの使用のフローカート。8~12アミノ酸長の腫瘍ペプチドのリストをソフトウェアの入力として使用することができる。まず、ツールBLASTを使用して、病原体由来抗原のライブラリ中でヒット(類似配列)を発見する。この作業のためには、PAM30が一般に使用されるが、いくつかの進化距離にわたるBLOSUMおよびPAM置換行列の両方がサポートされている。次に、位置で重み付けしてアライメントを精緻化するために、少なくともBLOSUM62、理想的にはKimらによって開発された置換行列(BMC Bioinformatics.2009;10:394.Published 2009 Nov 30.doi:10.1186/1471-2105-10-394 Derivation of an amino acid similarity matrix for peptide:MHC binding and its application as a Bayesian prior.Kim Y,Sidney J,Pinilla C,Sette A,Peters B.に記載されている)を使用するペアワイズ精緻化アラインメントが実行される。TCR相互作用領域(ペプチドの中央部分)において高い類似性を有するペプチドの対には、より高い類似性スコアが与えられる。最後に、独立型のコマンドラインツールとしてNetMHC4.0またはNetMHCpan4.1を使用して、腫瘍およびウイルスの同族ペプチドの両方に対してMHC結合親和性予測が生成される。結果は最終的にツール内で自動的に解析および照合され、上述の分析を要約する最終スコアが作成される。
図6】腫瘍抗原に相同なウイルスペプチドによる免疫化は腫瘍増殖を遅らせる。 A:動物実験のスキーム:腫瘍ペプチドに類似するウイルスペプチドが腫瘍増殖に影響を及ぼすことができるかどうかを評価するために、4つの群のC57BL6マウスを形成した。無感作のマウスの群をモックとして使用し、他の3つの群をウイルスペプチドの異なるプールでそれぞれ免疫した。腫瘍の生着前の2つの時点、14日および7日でマウスを免疫した。 B:最初の免疫から2週間後に、3×10のマウス黒色腫B16-OVA細胞をマウスに皮下注射した。生着後、デジタルキャリパーを用いて、19日間、2日ごとに腫瘍増殖を測定した。P値は、テューキーの補正を用いた二元配置ANOVA多重比較を使用して計算した。 C:終点に達した時点で、マウスを安楽死させた。各群のマウスの脾細胞を収集し、ELISpotアッセイのためにプールした。次いで、処置に対する応答を評価するために、それぞれのウイルスペプチド(TYR1に相同なウイルスペプチド、TRP2に相同なウイルスペプチド、GP100に相同なウイルスペプチド)を各プールに瞬間適用した。点線は、陰性対照によって生成されたバックグラウンドを示す。
図7】MHCに対してより高い親和性を有するウイルスペプチドは、より免疫原性であり、より強い交差反応性応答を誘発することができる。 A:それぞれの元の腫瘍エピトープに対する応答を評価するために、免疫化の各群からの脾細胞を一緒にプールし、対応する腫瘍ペプチドを瞬間適用した。 B:プールされたウイルスペプチドおよび対応する元の腫瘍ペプチドを脾細胞に瞬間適用することによって誘発された応答間の比較。 C:マウスMHCクラスIに対する、元の腫瘍およびそれぞれの類似のペプチドのウイルスプールの予測される親和性。IEDBガイドラインに従って、50nMを「高」および「中/低親和性」を有するペプチドを定義するための閾値と考えた。 D:IFN-γ応答からのデータと予測される親和性の間の相関。 E:ペプチドの親和性およびIFN-γ産生を刺激する能力に基づくペプチドの層別化。高親和性ペプチド(IC50<50nM)は、中/低親和性ペプチド(IC50>50nM)と比較して有意に高いINF-γの産生を促進する。P値は、マン・ホイットニー補正を用いるt検定を使用して計算した。p値の範囲は、以下の基準に従ってアスタリスクで標識した:>0.05(有意差なし)、≦0.05(*)、≦0.01(**)、≦0.001(***)、≦0.0001(****)。
図8A-B】腫瘍抗原に相同なウイルスペプチドは、既に確立された腫瘍における腫瘍増殖を低下させることができる。 A:動物実験のスキーム:試験すべき各腫瘍細胞株に対して4つの群のC57BLマウスを形成した。0日目に、マウスにB16-OVAまたはB16F10細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍が触知可能になったら、生理食塩水溶液(モック群)、被覆されていないアデノウイルス(非被覆ウイルス群)、TRP2と相同なウイルスペプチドのプールで被覆されたアデノウイルス(Viral PeptiCRAd、VPC)またはTRP2ペプチドで被覆されたアデノウイルス(TRP2 PeptiCRAd、TPC)でマウスを処置した。 B:B16 OVA腫瘍の個別の増殖。治療の成功を規定する閾値は、最終日のすべての腫瘍体積の中央値によって特定される。 C:終点でのB16 OVA腫瘍体積。点線として示される腫瘍体積の中央値は、治療の成功閾値を規定する。 D:B16 OVA分割プロットは、処置の各群あたりの応答個体の数を示す。 E:B16 F10腫瘍の個別の増殖。治療の成功を規定する閾値は、最終日のすべての腫瘍体積の中央値によって特定される。 F:終点でのB16 F10腫瘍体積。点線として示される腫瘍体積の中央値は、治療の成功閾値を規定する。 G:B16 OVA分割プロットは、処置の各群あたりの応答個体の数を示す。 (C~F)テューキー補正を用いた一元配置ANOVAを使用してP値を計算した。p値の範囲は、以下の基準に従ってアスタリスクで標識した:>0.05(有意差なし)、≦0.05(*)、≦0.01(**)、≦0.001(***)、≦0.0001(****)。 (D~G)オッズ比のカイ二乗(およびフィッシャー直接)検定を使用してP値を計算した。p値の範囲は、以下の基準に従ってアスタリスクで標識した:>0.05(有意差なし)、≦0.05(*)、≦0.01(**)、≦0.001(***)、≦0.0001(****)。
図8C-G】腫瘍抗原に相同なウイルスペプチドは、既に確立された腫瘍における腫瘍増殖を低下させることができる。 A:動物実験のスキーム:試験すべき各腫瘍細胞株に対して4つの群のC57BLマウスを形成した。0日目に、マウスにB16-OVAまたはB16F10細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍が触知可能になったら、生理食塩水溶液(モック群)、被覆されていないアデノウイルス(非被覆ウイルス群)、TRP2と相同なウイルスペプチドのプールで被覆されたアデノウイルス(Viral PeptiCRAd、VPC)またはTRP2ペプチドで被覆されたアデノウイルス(TRP2 PeptiCRAd、TPC)でマウスを処置した。 B:B16 OVA腫瘍の個別の増殖。治療の成功を規定する閾値は、最終日のすべての腫瘍体積の中央値によって特定される。 C:終点でのB16 OVA腫瘍体積。点線として示される腫瘍体積の中央値は、治療の成功閾値を規定する。 D:B16 OVA分割プロットは、処置の各群あたりの応答個体の数を示す。 E:B16 F10腫瘍の個別の増殖。治療の成功を規定する閾値は、最終日のすべての腫瘍体積の中央値によって特定される。 F:終点でのB16 F10腫瘍体積。点線として示される腫瘍体積の中央値は、治療の成功閾値を規定する。 G:B16 OVA分割プロットは、処置の各群あたりの応答個体の数を示す。 (C~F)テューキー補正を用いた一元配置ANOVAを使用してP値を計算した。p値の範囲は、以下の基準に従ってアスタリスクで標識した:>0.05(有意差なし)、≦0.05(*)、≦0.01(**)、≦0.001(***)、≦0.0001(****)。 (D~G)オッズ比のカイ二乗(およびフィッシャー直接)検定を使用してP値を計算した。p値の範囲は、以下の基準に従ってアスタリスクで標識した:>0.05(有意差なし)、≦0.05(*)、≦0.01(**)、≦0.001(***)、≦0.0001(****)。
図9】高度の相同性/親和性を共有するウイルス抗原と腫瘍抗原の間でのT細胞交差反応性。HLA-A*02:01および高い血清レベルの抗CMV Abを有する患者由来のPBMCに、表2のペプチドを瞬間適用した。CD8+T細胞によって活性化されることによって分泌されるIFN-γのレベルをELISpotアッセイによって検出した。点線は、陰性対照(DMSO)におけるCTLの非特異的活性化に由来するノイズレベルを示す(A)。HLA-A*02:01および高い血清レベルの抗CMV Abを有する患者ならびにCMV応答について陽性であることが明らかとなった健康なドナー(HS)に由来するPBMCを、CMV特異的なHLA-A*02:01拘束性ペプチドNLVPMVATVを使用するELISpotアッセイによって、抗CMV応答について試験した。P値は、マン・ホイットニー補正を用いるt検定を使用して計算した(B)。
図10A】マイクロチップをベースとするプラットフォームは、乏しい腫瘍生検におけるイムノペプチドミクスのプロファイルを明らかにする。A)ここには、処理前の試料の重量、総数および特有のペプチドおよび7~13マー標本の濃縮が要約されている。B)ペプチドの絶対数および百分率についてのペプチドの長さ分布が棒グラフとして示されている。
図10B】マイクロチップをベースとするプラットフォームは、乏しい腫瘍生検におけるイムノペプチドミクスのプロファイルを明らかにする。A)ここには、処理前の試料の重量、総数および特有のペプチドおよび7~13マー標本の濃縮が要約されている。B)ペプチドの絶対数および百分率についてのペプチドの長さ分布が棒グラフとして示されている。
図11A】ccRCCおよび膀胱腫瘍患者由来オルガノイド(PDO)のイムノペプチドミクス分析。A)ccRCCおよび膀胱PDOにおいて検出された特有のペプチドの数。B)各PDOごとに、特有のペプチドの総数(左y軸)および発生の百分率(右y軸)として、ペプチド長分布が示されている(ccRCC上パネル、膀胱下パネル)。
図11B】ccRCCおよび膀胱腫瘍患者由来オルガノイド(PDO)のイムノペプチドミクス分析。A)ccRCCおよび膀胱PDOにおいて検出された特有のペプチドの数。B)各PDOごとに、特有のペプチドの総数(左y軸)および発生の百分率(右y軸)として、ペプチド長分布が示されている(ccRCC上パネル、膀胱下パネル)。
図12A】ペプチドの試験。Balb/cマウスの左側腹部および右側腹部に同系腫瘍モデルCT26を皮下注射した。(0日目、図12A)。腫瘍が確立されたら(7日目、図12A)、本発明者らのリスト中の各ポリリジン修飾ペプチドの対(PeptiCRAd1、PeptiCRAd2、PeptiCRAd3、表)でValo-mD901を被覆し、右の腫瘍にのみ腫瘍内注射した。PeptiCRAd4は、ゲノム内でコードされる自己抗原に由来するCT26の公知の免疫優性抗原であるgp70423-431(AH1-5)で被覆されたValo-mD901からなった。モックおよびValo-mD901群も対照として使用した。PeptiCRAd1およびPeptiCRAd2は、各処置群ごと、各マウスごとに単一の腫瘍増殖においても示されたように、注射された病変部において腫瘍増殖対照のみならず、Valo-mD901も改善した(図12B、グラフパネルの右側)。厳密には、PeptiCRAd1のみが非処置腫瘍において抗腫瘍活性を有意に改善したのに対して、Valo-mD901は効果を誘発しなかった(図12B、グラフパネルの左側)。 PeptiCRAd1中のペプチドは、HEX分析から得られた。PeptiCRAd4は、gp70 423-431(AH1-5)で被覆されたValo-mD901からなった。
図12B】ペプチドの試験。Balb/cマウスの左側腹部および右側腹部に同系腫瘍モデルCT26を皮下注射した。(0日目、図12A)。腫瘍が確立されたら(7日目、図12A)、本発明者らのリスト中の各ポリリジン修飾ペプチドの対(PeptiCRAd1、PeptiCRAd2、PeptiCRAd3、表)でValo-mD901を被覆し、右の腫瘍にのみ腫瘍内注射した。PeptiCRAd4は、ゲノム内でコードされる自己抗原に由来するCT26の公知の免疫優性抗原であるgp70423-431(AH1-5)で被覆されたValo-mD901からなった。モックおよびValo-mD901群も対照として使用した。PeptiCRAd1およびPeptiCRAd2は、各処置群ごと、各マウスごとに単一の腫瘍増殖においても示されたように、注射された病変部において腫瘍増殖対照のみならず、Valo-mD901も改善した(図12B、グラフパネルの右側)。厳密には、PeptiCRAd1のみが非処置腫瘍において抗腫瘍活性を有意に改善したのに対して、Valo-mD901は効果を誘発しなかった(図12B、グラフパネルの左側)。 PeptiCRAd1中のペプチドは、HEX分析から得られた。PeptiCRAd4は、gp70 423-431(AH1-5)で被覆されたValo-mD901からなった。
図13-1】本発明の概略図が示されている。本発明のデバイスが、図形式で示されており、pMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を捕捉することができる複数の抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体で予め官能化されている。腫瘍可溶化液をデバイスに通過させ、抗体がpMHCを抽出する。pMHCが溶出され、pMHC複合体からのペプチドが、例えば質量分析を伴う液体クロマトグラフィ(LC-MS/MS)によって分析され、その結果、腫瘍ペプチドのリストが生成される。各腫瘍ペプチドを病原体由来タンパク質(抗原を含む)のライブラリと比較して、デバイスを使用して同定された各腫瘍ペプチドとライブラリ中の病原体由来タンパク質(病原性抗原/病原性ペプチドを含む)との間の相同性/親和性のレベルを決定する。これにより、癌治療において使用するための、相同性/親和性に関して理想的に優先順位が付けられた候補のリストが生成される。
図13-2】本発明の概略図が示されている。本発明のデバイスが、図形式で示されており、pMHC(ペプチド:主要組織適合抗原複合体)を捕捉することができる複数の抗MHC(主要組織適合抗原複合体)抗体または抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体で予め官能化されている。腫瘍可溶化液をデバイスに通過させ、抗体がpMHCを抽出する。pMHCが溶出され、pMHC複合体からのペプチドが、例えば質量分析を伴う液体クロマトグラフィ(LC-MS/MS)によって分析され、その結果、腫瘍ペプチドのリストが生成される。各腫瘍ペプチドを病原体由来タンパク質(抗原を含む)のライブラリと比較して、デバイスを使用して同定された各腫瘍ペプチドとライブラリ中の病原体由来タンパク質(病原性抗原/病原性ペプチドを含む)との間の相同性/親和性のレベルを決定する。これにより、癌治療において使用するための、相同性/親和性に関して理想的に優先順位が付けられた候補のリストが生成される。
【発明を実施するための形態】
【0064】
表1.動物実験に使用したペプチド。公知の黒色腫腫瘍ペプチド(TRP2180-188、hGP10025-33およびTYR208-216)をHEXにより分析した。ソフトウェアによって提案された最良のウイルス候補ペプチドを選択し、それぞれの元の腫瘍エピトープあたり最良の4つの異種ペプチドによって構成されるプールをインビボで試験した。
【0065】
表2.患者のPBMCに対するELISpotに使用したペプチド。公知の黒色腫関連抗原をHEXで分析した。各抗原ごとに最良のヒトCMV由来候補ペプチドを選択して、インビトロで試験した。
【0066】
表3.マイクロチップをベースとする免疫沈降技術と標準的な手順の間での比較分析。表は、マイクロチップをベースとするIP技術および標準的な手順中に被覆された抗体の総量を報告する。
【0067】
表4.HEX出力によって同定された13の腫瘍MHC拘束性ペプチドを、それらの対応する病原体由来ペプチドとともに示す。
【0068】
表5.ELISPOTアッセイで試験したペプチドの表。
【0069】
表6.図12に示されるインビボPeptiCRAdアッセイのための選択されたペプチドの表。
【0070】
方法および材料
デバイス製造
本発明のデバイス(PeptiCHIPとして知られる)は、ビオチンが付着されているリンカーで被覆された数千のピラーを含有するフロースルー構造である。次いで、ビオチンは、HLA特異的捕捉抗体、具体的には3分子のHLA特異的捕捉抗体と結合したストレプトアビジンに接続される。
【0071】
従来のマイクロ流体製造技術を使用して、PeptiCHIPの製造は、以下の150:100(テトラチオール:トリアリル)非化学量論比に従うチオールとアリル(「エン」)官能基間での、UVによって開始される光反応に基づいている。
【0072】
上記作製の直後に、UV光重合によってPeptiCHIPをビオチン-PEG4-アルキン(Sigma、764213)で誘導体化した後、アビジンと反応させる。これは以下のように行われる。
【0073】
工程1:本発明者らは、1mMビオチン-PEG4-アルキン溶液(エチレングリコール中10mMでのビオチン-PEG4-アルキンの原液)を調製した。本発明者らは、少量の一定分量を取り、メタノール中の10%光開始剤原液を使用して、1%(m/v)光開始剤(Igracure(登録商標)TPO-L、BASF)を添加し、したがって最終溶液は、EG-MeOH9:1中の、1mMビオチン+1%Lucirinである*。
【0074】
本発明者らは、1体積のビオチン-PEG4-アルキンおよび1%LucirinのEG:MeOH9:1(v/v)中溶液でチップを満たし、UVに1分間曝露した(LED UVランプ λ=365nm、l=15mW/cmを使用)。
【0075】
本発明者らは、まずメタノールで、次いでミリQ水で十分にすすぎ、チャネルを通して1~2mLの各溶媒を流し、乾燥させて保存した(必要な場合)。
【0076】
工程2:ビオチンでの誘導化後、チップをストレプトアビジンで官能化する。本発明者らは、PBS中0.01mg/mlのストレプトアビジンの原液を調製し、これを室温で暗所にて15分間、CHIPに添加した。本発明者らは、200ulのPBSで3回洗浄した。
【0077】
本発明者らは、PBS中15mMのBSA100ug/mlを室温で10分間添加した。
【0078】
工程3:抗汎HLA抗体との反応。本発明者らは、25ulのビオチン抗ヒトHLA-A、B、C1.6ug/ul(Biolegendカタログ番号311434)を室温で15分間添加した。本発明者らは、次いで、200ulのPBSで3回洗浄し、この時点で、CHIPはMHC複合体の免疫沈降の準備が整っている。
【0079】
腫瘍試料調製:EDTA4mMで細胞を剥離し、PBSで1回洗浄した。PBS+プロテアーゼ阻害剤中の25ulのIgepal1%を添加する。500xg10分+4℃で遠心する。20000xg10分+4℃で遠心する。
【0080】
最適化されたマイクロ流体ピラーアレイ
ストレプトアビジンで予め官能化された固体支持体構造(すなわち、マイクロピラーアレイ)にビオチン化汎HLA抗体を添加し、次いで汎HLA抗体で被覆された固体表面上にHLAを固定化することによって、単一のマイクロ流体チップ内で免疫精製工程を実施した。
【0081】
要約すると、UV-レプリカモモールド技術を用いて、非化学量論のチオール-エン(OSTE)ポリマーベースのマイクロピラーアレイを作製し、ビオチン化した。次に、ビオチン化マイクロピラーをストレプトアビジンで官能化し、ビオチン化汎HLA抗体を添加し、その後、細胞可溶化液をマイクロ流体チップ中に直接搭載してHLA-I複合体を選択的に捕捉した。十分に洗浄した後、7%酢酸を適用することによって、捕捉されたHLA-I複合体を室温で溶出した(図1B)。その後、アセトニトリル中でのSepPak(登録商標)-C18による溶出されたHLAペプチドの精製、真空遠心分離を使用することによってそれらを蒸発乾固させることを含む、標準的なイムノペプチドミクスワークフローに従ってプロトコルを進めた。
【0082】
蛍光性AlexaFluor488-ストレプトアビジンを用いて、2つの異なるインキュベーション時間(15分および1時間)に関して、マイクロピラーアレイ上でのストレプトアビジン官能化の効率を調べた。より短いインキュベーション時間が、第1のストレプトアビジン層を構築するのに十分に長いことが分かった(図2A)。さらに、固定化されたビオチン化汎HLA抗体の最終量に対するストレプトアビジン濃度の影響を決定するために、固定量のビオチン化汎HLA抗体の存在下で、いくつかの濃度の非蛍光性ストレプトアビジンを試験した。本事例では、ビオチン化汎HLA抗体を15分間インキュベートした後、PBSによる3回の洗浄工程(各工程について200μl)を行った。各ストレプトアビジン濃度での固定化されたビオチン化汎HLA抗体の量を定量するために、蛍光標識されたAlexaFluor488二次抗体を使用して、固定化されたビオチン化汎HLA抗体を滴定した。興味深いことに、ストレプトアビジン濃度の10倍の増加でさえ、固定されたビオチン化汎HLA抗体の量にあまり影響を及ぼさず(図2B)、これはおそらく利用可能なストレプトアビジン結合部位の数を制限する立体障害に起因する。この知見に基づいて、ストレプトアビジンのさらなる濃度を調査しなかったが、ビオチン化汎HLA抗体の最大結合を確実にするために、試験した最高のストレプトアビジン濃度(0.1mg/mL)をその後のすべての実験で使用した。しかしながら、ストレプトアビジンで官能化されたマイクロピラー表面上への抗体結合の選択性をさらに調べるために、非特異的相互作用を排除する目的で、固定化されたビオチン化汎HLA抗体の量に対するウシ血清アルブミン(BSA)による追加のコーティング工程の影響を調べた。この目的のために、ストレプトアビジン官能化後にマイクロピラーアレイをBSA(15mMPBS中100μg/mL、10分間のインキュベーション)で予め整え、蛍光標識された二次抗体を用いて、ビオチン化汎HLA抗体のその後の結合の効率を再度決定した。この手順は、予め整えられていない表面と比較して(図2C)、固定化された汎HLA抗体の量を大幅に低下させ、単純なBSAプレインキュベーション工程で非特異的結合部位をブロックすることができることを示唆した。したがって、BSAインキュベーション工程をすべてのさらなる実験に対して適合させた。
【0083】
最後に、本発明者らは、最適化されたプロトコルを使用することによって単一のチップ上に結合され得る固定化されたビオチン化汎HLA抗体の最大量を特性評価することを試みた。これは、単一のマイクロ流体チップあたり同じ濃度(0.5mg/mL)の新しい抗体バッチの複数の搭載サイクルを使用することによって評価した。本事例では、供給溶液中の汎HLA抗体量とELISAアッセイを通した出力溶液中の汎HLA抗体量とを比較することによって、固定化された汎HLA抗体の量を決定した。固定化された抗体の量は、搭載サイクルの数とともにほぼ直線的に増加し(図2D)、搭載サイクルの数に基づいて固定化されたビオチン化汎HLA抗体の総量の正確な調整が可能になることが観察された。7サイクル後、固定化された抗体の量は、およそ45μgの量に達し、10個の細胞の調査のために先行技術の方法によって10mgの汎HLA(3.88×1016分子の抗体)が必要とされるので、これは、少なくとも理論的には、乏しい生物学的材料のイムノペプチドーム調査に十分である[22A](表3)。
【0084】
マイクロチップ装置により、1.74×1014分子の抗体を固定化することができ、技術的には4.5×10の細胞を調査することができた。
【0085】
イムノペプチドミクスワークフローにおいて実施されるマイクロチップをベースとする抗原濃縮は、天然に提示されるHLA-Iペプチドの同定を可能にする
開発されたチオール-エンマイクロチップが抗原発見のためのプラットフォームとして利用され得るかどうかを評価するために、本発明者らは、ヒトB細胞リンパ芽球様細胞株JYからHLAペプチドを免疫精製した。JY株は、クラスIHLAの高発現を有し、ヒト集団において一般的な3つの対立遺伝子(HLA-A*02:01、HLA-B*07:02およびHLA-C*07:02)についてホモ接合性であり、リガンドーム解析のために広く採用されている。その結果、JY細胞株は、マイクロチップをベースとする抗原濃縮免疫沈降技術をベンチマークによって評価するための適切なモデルであると考えられた。
【0086】
したがって、上記のように汎HLA抗体の量で官能化されたチオール-エンマイクロチップを使用して、HLA-I複合体を免疫親和性精製した。さらに、本発明者らのアプローチの感度を決定するために、50×10、10×10および1×10という少ない総細胞数を使用することによってプロトコルを検証した。可溶化液をマイクロチップ中に搭載し、PBSで十分に洗浄した後、ペプチドを7%酢酸で溶出し、タンデム質量分析によって分析した。全体のワークフローは、ストレプトアビジン官能化から腫瘍ペプチドの溶出まで、平均で24時間未満を要した。高い信頼性を有するデータを生成するために、ペプチドおよびタンパク質同定に対して1%の厳格な偽発見率閾値を適用した。本発明者らは、50×10、10×10および1×10細胞からそれぞれ5589、2100および1804の特有のペプチドを同定することができた(図3A)。
【0087】
本発明者らは、天然のHLA-I結合剤を濃縮し、潜在的な共溶出夾雑物を回避するマイクロチップ技術の能力を慎重に分析するように努めたので、本発明者らは、溶出されたペプチドを広範囲に特性決定した。第1に、JY細胞株からの溶出されたペプチドは、リガンドームデータセットの典型的な長さ分布を表し、9マーが最も濃縮されたペプチド種であった(図3B~E)。次に、JY細胞において発現された2つのHLA-I対立遺伝子(HLA-A*0201およびHLA-B*0702)に対する予測結合親和性を決定した。JY細胞はまた、低いレベルの対立遺伝子HLA-C*0702を有するが、この結合モチーフはHLA-A*0201およびHLA-B*0702のモチーフと重複するので、その後の分析ではこれらの対立遺伝子のみを考慮した。
【0088】
特有の9マーのうち、78%、83%および67%が、それぞれ50×10、10×10および1×10の細胞について、HLA-A*0201またはHLA-B*0702対立遺伝子のいずれかへの結合剤(NetMHCpan4.0において結合剤として記載された、ランク2%を適用[24A-26A])であると予測された(図4A)。さらに、溶出された9マーペプチドからそれぞれのHLA-I対立遺伝子のコンセンサス結合モチーフを明らかにするために、Gibbs分析を実施した。これらは2つの異なる群にクラスターとなり、位置P2およびΩの残基については低下したアミノ酸の複雑性が選好され、HLA-A*0201およびHLA-B*0702について公知のものと極めてよく一致した(図4B)。
【0089】
次に、同定されたペプチドの役割を決定するために、9マー結合剤を供給したタンパク質の本発明者らのリストに対してジーンオントロジー(GO)タームエンリッチメント解析を行った。本発明者らは、核タンパク質および細胞内タンパク質、主にDNA、RNAと相互作用するかまたは異化活性に関与するタンパク質の濃縮を観察した。最後に、本発明者らは、HLA-Iとの複合体中のペプチドを単離する際のマイクロチップ技術の能力をさらに実証するためにインビトロ殺傷アッセイを設定した。この目的のために、HLA適合PBMCを刺激するために、本発明者らのJYデータセットから3つのペプチドの組を選択し、PBMCからCD8+T細胞を精製し、JY細胞との共培養におけるエフェクター細胞として採用した。エフェクター細胞自体による非特異的細胞傷害性を考慮するために、刺激されないPBMCを対照として使用した。次いで、リアルタイムの細胞溶解をモニターした。興味深いことに、ペプチドQLVDIIEKV(SEQ ID NO:75;遺伝子名PSME3)およびKVLEYVIKV(SEQ ID NO:76;遺伝子名MAGEA1)を瞬間適用されたCD8+T細胞は約10%の特異的細胞溶解を示したのに対して、ペプチドILDKKVEKV(SEQ ID NO:77;遺伝子名HSP90AB3P)を瞬間適用されたCD8+T細胞は15%の特異的細胞溶解を誘導し、規定のペプチドの存在下での特異的溶解を示した。
【0090】
マイクロチップ技術によって同定された本発明者らのHLA-Iペプチドリストの妥当性を評価するために、本発明者らは、質量分析によって生成されたイムノペチドミクスデータセットのリポジトリであるSysteMHCを調べた。本発明者らのデータにおいて同定された特有の9マー結合剤のうち、69%、77%および81%は、それぞれ50×10、10×10および1×10細胞について、JY細胞株(pride ID PXD000394)[3A]に由来する以前に公開されたリガンドームデータセットにおいても見出された(図6A)。さらに、供給源タンパク質の存在量とHLA提示の間には正の相関が確認され、最も豊富なタンパク質がHLAペプチドの主な供給源であった。
【0091】
したがって、これらの結果は、チップをベースとするプロトコルがイムノペプチドミクスワークフロー内で信頼できる免疫沈降プラットフォームとして利用され得ることを実証した。
【0092】
デバイスの使用
チップへの試料の適用およびその後の分析のための画分の溶出
本発明者らは、試料を複数サイクルにわたって適用し、5分間インキュベートした(4℃で作業)。本発明者らは、200ulのPBSで3回洗浄し、最後の洗浄を吸引してチップを空にした。本発明者らは、50%MeOHおよび50%MilliQの溶液を調製した。前記溶液を用いて、本発明者らは酢酸の7%溶液を調製した。本発明者らは、この溶液をCHIPに適用し、画分を集めた。溶出時間は5分であった。同じ日に、本発明者らは、収集した画分を精製した。本発明者らは、各組織試料に対して-HLA-Iペプチド試料に対してSepPakカートリッジを調製し、それらにラベルを付けた。シリンジおよび専用アダプタを使用して、本発明者らは、まず1mlの0.1%TFA中80%ACNでカートリッジを1回、次に1mlの0.1%TFAで2回洗浄した。本発明者らは、SepPakカートリッジに生物学的試料のそれぞれを充填する。本発明者らは、生物学的試料をゆっくりと通過させた(20秒で約1mlの速度)。本発明者らは、カートリッジを1mlの0.1%TFAで2回洗浄した。本発明者らは、300ulの0.1%TFA中30%ACNを加えた収集管中にHLA結合ペプチドを溶出した。
【0093】
HEX(異種ペプチドの相同性評価)
異種ペプチドの相同性(/親和性)評価(HEX)は、腫瘍ペプチド(参照ペプチド)とウイルスのペプチドなどの病原体由来ペプチド(クエリペプチド)との間で類似性を比較する新規インシリコプラットフォームである。HEXは、候補ペプチド選択をはかどらせるためにいくつかのメトリクスを利用する。これは、新規方法(ペプチドスコアリングおよびアラインメントスコアリングアルゴリズム)および統合された既存の方法(MHC-I結合予測)の両方を組み入れることによって行われる。HEXは、ウイルス病原体およびヒトプロテオームに由来するタンパク質などの公知のタンパク質の多数の予め編纂されたデータベースを備える(33)。
【0094】
関連するスコアリング行列は、実験的ではなく、参照ペプチドのアミノ酸組成に基づいてアドホックに生成される。特に、ペプチド中でのアミノ酸位置を表す行列の行および20個の標準アミノ酸のそれぞれを表す列では、参照ペプチドのアミノ酸位置に同じ高いスコアが割り当てられ、他の位置には同じ低いスコアが割り当てられた。
【0095】
アラインメントは、参照セットに対して、クエリセット中のペプチド間で対にして計算される。ペプチドの所与の対について、それらのアラインメントは、同じ位置のアミノ酸の対間での距離スコアを合計することによって計算される。スコアリングは、ペプチド中のより中心に位置するアミノ酸間の類似性を優先するように重み付けされる。HEXは、いくつかの進化的距離にわたってBLOSUMおよびPAM置換行列の両方をサポートする。具体的には、BLOSUM62が、本研究のために選択された行列であった。
【0096】
MHCクラスI結合親和性予測は、IEDBのアプリケーションプログラミングインターフェース(http://tools.iedb.org/main/tools-api/)を介してNetMHC[27]を使用して行われ、次いでツール内で解析および照合される。ユーザは、所望のスコアリング方法を指定することができるか、いくつかの推奨される結果を返すことができる。多数のヒトおよびマウスMHC-I対立遺伝子についての予測がサポートされる。
【0097】
ユーザは、自身の基準によってペプチドを選択することができるか、またはランダムフォレストモデルによってペプチドを選択させることができる。ランダムフォレストは、著者らによって選択されたペプチドの実験結果について訓練された。特徴の重要度は、平均二乗誤差(MSE)のアウトオブバッグ(OOB)増加によって決定され、ペプチドの未知試料に対して交差検証された。HEXは、RパッケージShinyを使用してウェブアプリケーションとして開発され、ユーザ登録なしでhttps://picpl.arcca.cf.ac.uk/hex/app/からアクセス可能である。ソースコードは、https://github.com/whalleyt/hexから入手可能である。
【0098】
本発明の代替の態様において、HEXは、いくつかの進化的距離にわたってBLOSUMおよびPAM置換行列の両方をサポートする。具体的には、BLOSUM62が、本研究において使用された行列であった。HEXは、まずPAM30を使用してBLAST検索を実行して、参照ライブラリ中でヒット(類似配列)を発見する。次に、HEXは、BLOSUM62およびKimらによって開発された置換行列の両方を使用してペペアワイズ精緻化アラインメントを実行する。
【0099】
参考文献:Kim Y,Sidney J,Pinilla C,Sette A,Peters B.Derivation of an amino acid similarity matrix for peptide:MHC binding and its application as a Bayesian prior.BMC Bioinformatics.2009;10:394.Published 2009 Nov 30.doi:10.1186/1471-2105-10-394。
【0100】
MHCクラスI結合親和性予測は、独立型のコマンドラインツールとしてNetMHC4.0(またはNetMHCpan4.1)を使用して行われ、次いでツール内で解析および照合される。ユーザは、所望のスコアリング方法を指定することができるか、いくつかの推奨される結果を返すことができる。多数のヒトおよびマウスMHC-I対立遺伝子についての予測がサポートされる。
【0101】
患者および試料
合計で16人のステージ4の転移性黒色腫患者が、Helsinki University Central Hospital(HUCH)Comprehensive Cancer Centerにおいて、抗PD1モノクローナル抗体で処置された。患者は、2週間ごとにニボルマブ(n=7)注入を受けるか、または3週間ごとにペンブロリズマブ(n=9)注入を受けるかのいずれかに無作為に選択された。本試験は、Helsinki University Central Hospital(HUCH)倫理委員会によって承認された(Dnro115/13/03/02/15)。書面によるインフォームドコンセントをすべての患者から受領し、試験はヘルシンキ宣言に従って実施した。
【0102】
末梢血試料(3mlEDTA血液、50mlヘパリン血液)を、処置の開始前、処置の1ヶ月後および3ヶ月後の3つの時点から収集した。これらから遠心分離によって血漿を分離し、次いでー70℃で保存した。VIDAS CMV IgG(BioMerieux、Marcy-l’Etoile、France)およびSiemens Enzygnost Anti-EBV/IgGキット(Siemens Healthcare Diagnostics、Marburg、Germany)を使用して、解凍したEDTA血漿試料から、CMVおよびEBV IgGレベルを測定した。解凍したヘパリン血漿からの免疫グロブリン(IgA、IgM、IgG)を、Helsinki University Central Hospitalの中央検査室(HUSLAB)において測定した。
【0103】
細胞株およびヒト試料
マウス黒色腫細胞株B16-F10を、American Type Culture Collection(ATCC;Manassas、VA、USA)から購入した。10%ウシ胎児血清(FBS)(Life Technologies)、1%Glutamax(Gibco、Thermo Fisher Scientific、US)ならびに1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco、Thermo Fisher Scientific、US)を含むRPMI(Gibco、Thermo Fisher Scientific、US)中、37℃/5%COで細胞を培養した。
【0104】
ニワトリ卵白アルブミン(OVA)を構成的に発現するように改変されたマウス黒色腫細胞株である細胞株B16-OVAは、Richard Vile教授(Mayo Clinic、Rochester、MN、USA)の厚意により提供された。10%FBS(Gibco、Thermo Fisher Scientific、US)、1%Glutamax、1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco、Thermo Fisher Scientific、US)ならびに1%Geneticin(Gibco、Thermo Fisher Scientific、US)を含むRPMI低グルコース(Gibco、Thermo Fisher Scientific、US)中、37℃/5%COでこれらの細胞を培養した。
【0105】
市販の検出キット(Lonza-Basel、Switzerland)を用いて、すべての細胞をマイコプラズマ汚染について試験した。単離されたヒトPBMCを、10%DMSOを補充したFBS中で凍結し、次いで、使用するまで液体窒素中で維持した。凍結保存されたPBMCを解凍し、10%FBS、1%Glutamax、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充した完全RPMI培地中、37℃/5%COで一晩静置した後、ELISPOTのためにPBMCを播種した。
【0106】
ペプチド
本試験において使用したすべてのペプチドは、Zhejiang Ontores Biotechnologies Co.(Zhejiang、China)から購入した5mg >90%純度。本試験において使用したすべてのペプチドの配列を表1および2に示す。
【0107】
PeptiCRAdの調製
本研究に記載されているすべてのPeptiCRAd複合体は、以下のプロトコルに従ってアデノウイルスおよびポリK尾部付きペプチドを混合することによって調製した:1×10vp(ウイルス粒子)を(水に再懸濁された)20ugのポリK尾部付きペプチドと混合した。ボルテックス撹拌後、混合物を室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、注射体積(50uL/マウス)までPBSを連続して添加し、溶液を再びボルテックス撹拌し、アッセイまたは動物注射のために使用した。TRP2-PeptiCRAdについては、1x10vpを20ugの6K-TRP2180~188ペプチドと混合し、一方、Viral-PeptiCRAdは、TRP2180~188に対して相同な5ugの各ウイルス6Kペプチドと混合した1x10vpを使用して調製した。
【0108】
新鮮な試薬を使用して各実験の前に、新しいPeptiCRAdを調製した。PeptiCRAd調製のためのインキュベーションの前に必要とされるウイルスおよびペプチドのすべての希釈は、無菌PBSまたは水中で行った。次いで、アッセイによって必要とされる緩衝液中にPeptiCRAdを希釈した。
【0109】
他の文献に記載されているように[20]、ウイルスを作製し、増殖させ、性質を決定した。
【0110】
動物実験および倫理的許可
すべての動物実験は、ヘルシンキ大学の実験動物委員会と南フィンランドの州政府によって審査され、承認された。
【0111】
すべての実験は、Scanbur(Karlslunde、Denmark)から得たC57BL/6JOlaHsdマウスを使用して行った。
【0112】
免疫実験のために、8~9週齢の免疫適格雌C57BL/6Jマウスを4つの群に分けた。N=3匹のマウスをモック群として使用し、n=7匹のマウスを使用して3つの異なる処置群のそれぞれを形成した。各処置群に異なる群の異種ペプチドをワクチン接種した。マウスには2回ワクチン接種し、尾の付け根に100ulの最終注射可能量で40ugのペプチドおよび40ugのアジュバント(VacciGradeポリ(I:C)-Invivogen)を一週間間隔(0日目および7日目)で注射した。無感作のマウス(PBSを注射)をモック群として使用した。14日目に、マウスの右側腹部に3×10個のB16-OVA細胞を注射し、終点に達するまで腫瘍増殖を追跡した。
【0113】
確立された腫瘍の処置のために、2つの異なる腫瘍細胞株:B16-OVA細胞およびより侵襲性が高いB16F10細胞を試験した。3×10個のB16-OVA細胞および1×10個のB16-F10を、8~9週齢の免疫適格雌C57BL/6Jマウスの右側腹部に皮下注射した。続いて、これらのマウスを各腫瘍細胞株について7~8匹のマウスの4つの群に無作為に分けた。モック群はPBSで処置し、第2の群は被覆されていないアデノウイルスで処置し、第3の群は、TRP2180~188(TRP2-PeptiCRAd)で被覆されたアデノウイルスで処置し、最後の群は、TRP2相同ウイルスペプチド(Viral-PeptiCRAd)で被覆されたアデノウイルスで処置した。
【0114】
マウスを腫瘍内に2回処置し、2日間隔(腫瘍生着から10日目および12日目)で注射を行い、終点に達するまで腫瘍増殖を追跡した。最終日の腫瘍体積測定値の中央値は、点線として示される治療成功閾値を特定する。終点で閾値未満の腫瘍体積を示したマウスを応答個体と考え、一方、閾値を超えるマウスを非応答個体と考えた。
【0115】
腫瘍の二次元を測定するデジタルキャリパーで、腫瘍増殖を追跡した。続いて、以下の式に従って体積を数学的に計算した:
((長辺)×(短辺))/2
すべての実験において、腫瘍サイズが許容される最大値に達するまで、2日ごとまたは3日ごとに腫瘍を測定し、次いでマウスを屠殺し、脾臓を回収した。
【0116】
ELISpotアッセイ
活性な抗原特異的T細胞の量を評価するために、マウスIFN-γについてはIMMUNOSPOT(CTL、Ohio USA)からのELISPOTアッセイによって、ヒトIFN-γについてはMABTECH(Mabtech AB、Nacka Strand、Sweden)によって、インターフェロン-γ(IFN-γ)分泌を測定した。
【0117】
実験の終了時点で収集した新鮮なマウス脾細胞を使用した。手順は、製造者の説明書に従って実施した。簡単に記載すると、マウスIFN-γについては、3×10個の脾臓細胞/ウェルを0日目に播種した。細胞を2ug/ウェルのペプチドで刺激した。37℃/5%COで3日間インキュベートした後、キットのプロトコルに従ってプレートを展開した。
【0118】
ヒトIFN-γELISPOTについては、ヒトPBMCを解凍し、完全培地中37℃/5%COで一晩静置した。翌日、3×10個PBMC/ウェルを播種し、2ug/ウェルのペプチドで刺激した。37℃/5%COで48時間インキュベートした後、製造業者のプロトコルに従ってプレートを展開した。分析のためにプレートをCTL-Europe GmbHに送った。
【0119】
細胞株および試薬
1% GlutaMAX(GIBCO、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)および10%熱不活化ウシ胎児血清(HI-FBS、GIBCO、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を補充したRPMI 1640(GIBCO、Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)中で、EBVで形質転換されたヒトリンパ芽球様B細胞株JY(ECACC HLA-type collection、Sigma Aldrich)を培養した。
【0120】
ストレプトアビジン(Streptomyces avidinii、アフィニティ精製され、10mmリン酸カリウムから凍結乾燥された、≧13U/mgタンパク質)は、Sigma-Aldrich(Saint Louis、Missouri、USA)から購入した。
【0121】
ビオチンコンジュゲート抗ヒトHLA-A、B、Cクローンw 6/32を、分析のためにBiolegend(San Diego、CA、USA)から購入した。
【0122】
以下のペプチドをOntores Biotechnologies Co.,Ltd.から購入し、本試験全体を通して使用した:KVLEYVIKV(SEQ ID NO:75;遺伝子名MAGE A1)、ILDKKVEKV(SEQ ID NO:76;遺伝子名HSP90)およびQLVDIIEKV(SEQ ID NO:77;遺伝子名PSME3)。
【0123】
さらに、以下のペプチドをChempeptide(Shangai、China)から購入した:
VIMDALKSSY(SEQ ID NO:78;遺伝子名NNMT)、FLAEGGGVR(SEQ ID NO:79;遺伝子名FGA)およびEVAQPGPSNR(SEQ ID NO:80;遺伝子名HSPG2)。
【0124】
卵巣腫瘍生検および倫理的考慮
卵巣腫瘍生検は、Northern Savo Hospital DistrictのResearch Ethics Committeeによって承認番号350/2020で承認された研究の下で、インフォームドコンセントに署名した卵巣転移性腫瘍(高悪性度漿液性)を有する患者から収集した。試料を小片に細断し、1mg/mlコラゲナーゼD型(Roche)、100μg/mlヒアルロニダーゼ(Sigma Aldrich)および1mg/ml DNアーゼI(Roche)を含有する消化緩衝液で37℃にて1時間処理した。この細胞懸濁液を500μmおよび300μmのセルストレーナー(pluriSelect)に順次通過させて、単一細胞を得た。
【0125】
腎細胞癌腫および膀胱腫瘍試料および倫理的考慮事項
Helsinki University Central HospitalでのDEDUCER研究(Development of Diagnostics and Treatment of Urological Cancers)から、承認番号HUS/71/2017、26.04.2017、倫理委員会承認番号15.03.2017 Dnro154/13/03/02/2016および患者の同意を得て、オルガノイド培養のための患者組織試料を取得した。腎試料は、淡明細胞腎細胞癌腫(ccRCC、pTNMステージpT3aG2)を有する成人男性の腎摘出術から得た。良性腎組織試料を実験に使用した。尿路上皮癌腫(膀胱癌、高悪性度、グレードIII、1×1cm)は成人女性から入手し、癌組織試料をオルガノイド培養に用いた。
【0126】
淡明細胞腎癌腫および膀胱腫瘍オルガノイドの培養
組織を小片に解離させ、コラゲナーゼ(40単位/ml)で2~4時間処理することによって、手術後直ちに元の組織から細胞を単離した。F培地[3:1(v/v)のF-12栄養素混合物(Ham)-10%Matrigel(Corning)を加えた、DMEM(Invitrogen)、5%FBS、8.4ng/mLコレラ毒素(Sigma)、0.4μg/mLヒドロコルチゾン(Sigma)、10ng/mL上皮増殖因子(Corning)、24μg/mLアデニン(Sigma)、5μg/mLインスリン(Sigma)、10μMROCK阻害剤(Y-27632、Enzo Life Sciences、Lausen、Switzerland)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン中で、淡明細胞腎細胞癌腫患者細胞の腎臓の良性および癌細胞をオルガノイドとして増殖させた。5% CSFBS(Thermo Fisher Scientific)、10μM Y-27632 RHO阻害剤(Sigma)、10ng/mL上皮増殖因子(Corning)、1%GlutaMAX(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび10%Matrigelを補充した肝細胞カルシウム培地(Corning)[15A]中で、膀胱腫瘍由来オルガノイドを増殖させた。6×10個の細胞を遠心分離によって収集し、PBS中で洗浄してMatrigelを除去し、分析前に急速凍結した。
【0127】
HLAタイピング
腫瘍試料(ccRCCおよび膀胱)の臨床HLAタイピングは、Finnish Red Cross Blood ServiceのEuropean Federation for Immunogenetics(EFI)認定HLA検査室によって行われた。3つの古典的HLA-I遺伝子HLA-A、-Bおよび-Cの対立遺伝子決定は、製造業者によって提供されるプロトコルに従い、標的化PCRをベースとした次世代配列(NGS)技術(NGSgo(登録商標)Workflow、GenDx、Utrecht、The Netherlands)によって行った。
【0128】
4区域区分レベルでの対立遺伝子の割り当ては、IPD IMGT/HLAデータベースリリース3.33.0、https://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/を使用してNGSengineバージョン:2.11.0.11444(GenDx、Utrecht、Netherlands)によって実施した。
【0129】
フローサイトメトリ分析
HLA-A2ならびにHLA-A、BおよびCの細胞表面発現を分析するために、以下の抗体を使用した:PEコンジュゲート抗ヒトHLA-A2(クローンBB7.2、BioLegend 343306、San Diego、CA、USA)、PEコンジュゲート抗ヒトHLA-A、BおよびC(クローンW6/32、BioLegend 311406、San Diego、CA、USA)、ならびにHuman TruStain FcXブロック(BioLegend B247182、San Diego、CA、USA)。
【0130】
データは、BDLSR FORTESSA Flow Cytometerを使用して取得した。BD Accuri 6 plus(BD Biosciences)を用いて、腎細胞癌腫および膀胱腫瘍由来オルガノイドのフローサイトメトリ分析を行い、FlowJoソフトウェア(Tree Star、Ashland、OR、USA)で分析した。
【0131】
結果
高い分子模倣を有するウイルス由来ペプチドと腫瘍由来ペプチドを同定するための相同評価異種ペプチド(HEX)ツールの開発
ウイルスと腫瘍の間での分子模倣が腫瘍増殖に影響を及ぼし得るかどうかを研究するために、本発明者らは、高度の相同性/親和性を共有するペプチドを同定する必要があった。しかしながら、この範囲まで、適切な標的の同定を容易にするためのツールが欠如している。したがって、本発明者らは、入力配列を病原体由来抗原/ペプチドまたはタンパク質配列のデータベースと比較し、以下の3つの基準:1)ペプチドが所与のTCRによって認識される可能性に対応するBスコア;2)TCRとの相互作用の領域中での類似性を優先するための位置重み付けアラインメントスコア;3)MHCクラスI結合親和性の予測のうちの少なくとも2つに基づいてペプチドの高度に相同な候補対を選択するデバイスであるHEX(Homology Evaluation of Xenopeptides)を開発した(図5A)。代替として、図5Bに示すように、および上記のように、従来のソフトウェアの使用が使用され得る。
【0132】
本発明者らは、多くのワクチン接種研究で首尾よく適用されてきた3つの黒色腫関連抗原:TRP 2180~188(チロシナーゼ関連タンパク質2)、GP10025~33(別名PMEL;プレメラノソームタンパク質)およびTYR1208~216(チロシナーゼ1)から開始した。TYR1208~216はマウスMHCの結合剤であると予測されず、したがって、「不適切な標的」と考えられた。HEXを用いて、本発明者らは、入力腫瘍エピトープと高度の相同性/親和性を共有するウイルスペプチドを同定した。それぞれの元の腫瘍エピトープあたり4つのウイルス由来ペプチドのプール(表1)を選択して、インビボでさらに評価した。
【0133】
抗ウイルス免疫は、腫瘍抗原との分子模倣を介して腫瘍増殖を制御する
ウイルス由来ペプチドが腫瘍増殖に影響を及ぼすかどうかを評価するために、本発明者らは、選択されたウイルスペプチドプールでC57BL6マウスを免疫することによってウイルス感染を模倣し、続いて腫瘍を生着させることを決定した(図6A)。すべての免疫されたマウスは、モックと比較して腫瘍増殖の低下を示した。さらに、処置群間での有意差が観察された。腫瘍増殖は、TRP2またはgp100に相同なペプチドのウイルスプールで免疫したマウスにおいて最も低減された(図6B)。
【0134】
腫瘍増殖の低下における選択されたウイルスペプチドの寄与をさらに調査するために、本発明者らは、終点でELISpotアッセイのためにマウスの脾細胞を収集した(図6C)。TRP2またはgp100に相同なウイルスペプチドプールで免疫したマウスからの脾細胞は、腫瘍増殖の結果と相関して、対照TYR1相同エピトープで免疫したマウスからの脾細胞と比較してより高いIFN-γ応答を促進した。
【0135】
本発明者らはさらに、ウイルスで予備免疫化されたマウスから得たこれらの脾細胞の、それぞれの同族腫瘍抗原に対する反応性を調べた(図7A)。対照して比較すると、TRP2に相同なウイルスペプチドのみが、同族腫瘍ペプチドと比較してより高いIFN-γ分泌を示した(図7B)。さらに、本発明者らは、C57BL/6J MHCクラスI分子に対する各腫瘍抗原およびそれらの相同なウイルスプールの親和性を遡及的に評価し(図7C)、IFN-γ分泌を刺激するそれらのそれぞれの能力との有意な相関を観察した(図7D)。Immune Epitope Database(IEDB)のガイドラインに従って、本発明者らは、50nMの閾値を用いてペプチドを高親和性と低親和性として分け(http://tools.iedb.org/mhci/help/)、高MHC-I親和性を有するペプチドが、低MHC-I親和性を有するペプチドと比較して、より多くのINF-γの産生を促進することを観察した(図7E)。まとめると、これらの結果は、相同ペプチドを同定するためのHEXツールの予測効率を検証し、ウイルスと腫瘍間での分子模倣が交差反応性T細胞を介して抗腫瘍免疫応答において役割を果たすことを強調する。
【0136】
腫瘍エピトープと高い類似性を共有するウイルスエピトープは、確立された黒色腫の増殖をインビボで低下させる
本発明者らは、ウイルス抗原と腫瘍抗原の間での分子模倣が予備免疫化されたマウスにおける腫瘍増殖に影響を及ぼし得ることを示した。次に、本発明者らは、分子模倣によって誘導される応答が、無感作マウスにおいて既に確立された腫瘍に影響を及ぼし得るかどうかを評価したいと考えた。この目的のために、B16OVA腫瘍またはより侵襲性かつ免疫抑制性のB16F10腫瘍をマウスに移植し、続いて、ウイルス感染症を模倣するために以前に開発されたワクチンプラットフォームPeptiCRAd(20)で処置した(図8A)。簡潔には、PeptiCRAdは、正に荷電したポリ-アミノ酸性尾部を有するMHC-I拘束性ペプチドで被覆されたアデノウイルスからなるワクチン技術である。本事例では、本発明者らは、最初のインビボ実験から得られたペプチドの最も有効なプールを使用して進めた。元のTRP2180~188エピトープ(TRP2-PeptiCRAd)またはTRP2に類似するウイルス由来ペプチドの対応するプール(Viral PeptiCRAd)でアデノウイルスを被覆することによってワクチンを調製した。PeptiCRAdの腫瘍内注射は、B16OVA(図8B~C)およびB16F10腫瘍(図8E~F)の両方について、生理食塩水緩衝液または非被覆ウイルスによる処置と比較して腫瘍進行を有意に低下させた。元の腫瘍抗原またはウイルス相同物で処置したマウスは、両方の腫瘍モデルにおいて有意により高い数の応答個体を示した(図8D、8G)。両方の腫瘍モデルにおいて、本発明者らは、腫瘍ペプチドに類似するウイルスペプチドでマウスを処置した場合に腫瘍増殖の有意な低下を観察し、交差反応性T細胞を作動させる抗腫瘍免疫において分子模倣が基本的な役割を果たし得ることを再度示唆した。
【0137】
CMVと腫瘍抗原の間での分子模倣がより良好な予後を説明し得るかどうかの試験
本発明者らは、CMVと高い類似性を有する腫瘍ペプチドのリストを生成するHEXを使用してCMVプロテオームと比較された黒色腫関連タンパク質のプールを選択した[21](表2)。腫瘍ペプチドおよびそれらのCMV対応物をELISPOTアッセイで使用したところ、応答個体の患者では、PBMCは常にウイルスおよびそれらの対応する腫瘍抗原の両方に応答したことが示され、CMV感染は腫瘍細胞を攻撃および死滅させることができるウイルスT細胞クローンを拡大増殖させ、血清陽性患者はCMVに類似する黒色腫特異的エピトープに対して反応する傾向がより高くなったことが示唆された(図9A図9B)。じれったいが、この観察には、ウイルスペプチドおよび腫瘍ペプチドが同じT細胞クローンを拡大増殖させたかどうかを直接示さないという制約があった。
【0138】
新規なマイクロ流体チップをベースとするプラットフォームは、乏しい腫瘍生検組織におけるイムノペプチドームプロファイルを特定する
本発明者らは、乏しい腫瘍生検の調査のためにこのプラットフォームを検証した。このため、患者から卵巣転移性腫瘍(高悪性度漿液性)を収集し、腫瘍辺縁から4つの片を得て(S1、S2、S3およびS4)、腫瘍の中央部分も収集した(S5)。次に、試料を秤量し、図10Aに要約されているように、サイズを0.01gから0.06gまで平均化した。試料消化後、得られた単一細胞懸濁液を溶解し、マイクロチップを通して処理した。ペプチドおよびタンパク質同定のために1%の厳格な偽発見率閾値を適用して、S1、S2、S3、S4およびS5において、それぞれ916、695,172、1128および256の特有のペプチドを同定した(図10A)。典型的なリガンドームプロファイルと一致して、7~13マー標本において一般的な濃縮(70%超)が観察された(図10A)。絶対数および百分率に関して、アミノ酸長分布は、9マーの検体が最も代表的であることを示し(図10B)、本発明者らおよび他の以前のイムノペプチドーム分析を確認した。次に、本発明者らは、ジーンオントロジー(GO)エンリッチメント解析を適用して、本発明者らのデータに見出されたソースタンパク質をさらに調査した。典型的なリガンドームプロファイルと一致して、調べたすべての試料において代謝過程が濃縮されていた。さらに、この解析は、ここで解析された卵巣の漿液性腫瘍の上皮性と一致する、皮膚発達経路タンパク質の増加を明らかにした。全体として、これらの結果は、乏しい腫瘍生検を分析し、腫瘍処置のために個別化された抗原性ペプチドを得るために、開発されたマイクロ流体チッププラットフォームを活用することの実現可能性を強調した。
【0139】
マイクロチップをベースとするプロトコルは、患者由来のオルガノイドにおけるイムノペプチドームランドスケープを明らかにする
患者由来オルガノイド(PDO)からのわずか6×10個の細胞で、マイクロチップ技術を検証した。本発明者らは、泌尿器癌に対する進行中の個別化医療研究から2人の患者を選択し、淡明細胞腎細胞癌腫(ccRCC)患者からの良性組織と癌組織の両方を含有する腎摘出試料および膀胱癌患者からの1×1cm試料を3D初代オルガノイド培養物としてさらに処理した。
【0140】
開発されたマイクロチップ技術ならびにペプチドおよびタンパク質同定のための1%の厳格な偽発見率閾値を適用して、本発明者らは、ccRCCおよび膀胱PDOにおいてそれぞれ合計576および2089の特有のペプチドを同定することができた(図11A)。回収されたペプチドの数は2つの試料間で異なり、膀胱試料はccRCC試料よりも多くのペプチドをもたらした。HLA発現が単離されたHLA-Iペプチドの量に影響を及ぼすことは周知であり[22A]、これと一致して、フローサイトメトリ分析は、本発明者らのccRCC試料におけるより本発明者らの膀胱試料においてより高い表面レベルのHLA-A、HLA-BおよびHLA-Cを明らかにし、本発明者らの試料から回収されたペプチドの異なる収率を説明した。ペプチドの分析は、リガンドーム分析の典型的な長さ分布と一致して、9マー~12マーに対する選好(ccRCCで56.4%および膀胱腫瘍で47.9%)、9マー集団の濃縮を示した[33](図11B)。HLA-I結合剤と夾雑物を識別するために、GibbsクラスタリングおよびNetMHC4.0分析を行った。まず、9マーの解析は、膀胱およびccRCC PDOにおけるそれぞれ55%および67%が患者のHLA対立遺伝子の少なくとも1つと一致することを示した。次に、NetMHC4.0を本発明者らのデータセットにおいて同定されたすべての9マーに適用した。これらのうち、46%および69%が患者の特定のHLAの結合剤であると予測された。次に、本発明者らのデータセットの両方に存在するソースタンパク質を調査した。この目的のために、ジーンオントロジー(GO)エンリッチメント解析を行った。本発明者らの以前の観察および公開されたデータと一致して、両方の試料は、RNAと相互作用し、異化/代謝過程に関与する細胞内および核タンパク質の濃縮を示した。
【0141】
技術が治療用癌ワクチンの迅速な開発に利用され得ることを実証するために、本発明者らは死滅アッセイを設定した。本発明者らは、ccRCC試料に分析を集中させた。本発明者らは、参照セットとしてPBMCおよび健康な腎臓組織を使用して腫瘍抗原候補を選択するためにトランスクリプトームレベルを使用した。次に、健康なボランティアからのPBMCに選択したペプチドを瞬間適用し、これらの細胞から単離されたCD8+T細胞をアッセイに使用した。ペプチドEVAQPGPSNR(遺伝子名HSPG2)を瞬間適用されたT細胞は、約10%の特異的細胞溶解を示した。
【0142】
最後に、本発明者らは、ccRCC患者におけるリコールT細胞応答を調べようとした。この目的のために、患者由来の未分画PBMCをペプチドEVAQPGPSNRでインビトロで刺激したが、刺激されていないPBMCを対照として採用した。次いで、誘導されたCD8+T細胞をccRCC PDOに添加し、対照群と比較して殺傷活性の約7%の増加を示した。
【0143】
患者オルガノイドに由来するペプチドは、インビボ研究において治療的に有効であることが示された
ペプチドのリストをHEXで分析した。最初に、ソフトウェアは、同時の強い結合剤(NetMHC4.0に従ってカットオフIC50範囲50nM~500nM)であり、より高い重み付けアラインメントスコア(カットオフ0.8~1の正規化された重み付けアライメントスコア)を示したペプチドを優先した。この後者は、媒介される免疫応答を誘導するために、CD8+T細胞のTCRを結合する可能性が最も高い相互作用の領域中でのペプチドの類似性に焦点を当てる。次いで、得られたペプチドは、病原体由来の抗原/ペプチドに対するそれらの全体的な同一性の百分率およびIC50結合親和性スコアに基づいてさらに分類される。最終的な出力は、対応する病原性ペプチドとともに13のペプチドから構成された(表4)。
【0144】
ペプチド免疫原性を決定するために、アジュバントPoly(I:C)の存在下で各単一ペプチドの皮下注射によりマウスを予備免疫し、マウスの群に、ポリ(I:C)単独または対照としての生理食塩水のいずれかを注射した。それらのマウスからの脾細胞を採取し、ELISpotアッセイにおいて特異的刺激時のIFNγ産生について試験した(表5)。
【0145】
次いで、本発明者らは、候補ペプチドが確立された腫瘍の処置のための癌ワクチンとして利用され得るかどうかを検証しようとした。この目的のために、本発明者らは、腫瘍溶解性アデノウイルスを(ポリリジンリンカーを介して)ポリリジン修飾ペプチドに付着したキャプシドと組み合わせる、本発明者らの以前に開発された癌ワクチンプラットフォームであるPeptiCRAdを採用した。ここで使用されるアデノウイルスは、VALO-mD901、すなわち、マウスOX40LおよびCD40Lを発現するように遺伝子改変され、マウス黒色腫モデルにおいて腫瘍増殖制御および全身性抗腫瘍応答を誘発することが以前に示されたものである。したがって、Balb/cマウスの左側腹部および右側腹部に同系腫瘍モデルCT26を皮下注射した。(0日目、図12A)。腫瘍が確立されたら(7日目、図12A)、本発明者らのリスト中の各ポリリジン修飾ペプチドの対(PeptiCRAd1、PeptiCRAd2、PeptiCRAd3、表6)でValo-mD901を被覆し、右の腫瘍にのみ腫瘍内注射した。PeptiCRAd4は、gp70423-431(AH1-5)で被覆されたValo-mD901からなった。モックおよびValo-mD901群も対照として使用した。PeptiCRAd1およびPeptiCRAd2は、注射された病変部において腫瘍増殖対照のみならず、Valo-mD901も改善した(図12B、右パネル)。有利なことに、PeptiCRAd1は、効果を誘発しなかったValo-mD901とは対照的に、非処置腫瘍における抗腫瘍増殖対照を改善した。
【0146】
要約
HEXは、ペプチド配列を分析し、高い類似性を有する配列を探す病原体由来ウイルスプロテオームの精選されたデータベースと比較するバイオインフォマティクスのツールである。
【0147】
提示されたペプチドはMHCのアンカー残基との相互作用に主に関与するので[25]、本発明者らのソフトウェアは、ペプチドの中央部分、すなわちTCRとの相互作用に最も関与する位置に存在する類似性を優先するために位置的に重み付けされたアラインメントスコアを返す[26]。さらに、本発明者らの標的が提示されたエピトープである可能性を増大させるために、1つの例では、本発明者らは、IEDB NetMHC予測ツールAPI[27];または独立型ツールとしてのNetMHC4.0もしくはNetMHCpan4.1bを使用して、選択されたMHCに対する結合親和性に従って、得られたペプチドをランク付けした。
【0148】
本発明者らは、HEXを使用して、3つの広範囲に性質決定された腫瘍関連抗原に対して相同なウイルスペプチドを同定した。
【0149】
本発明者らは、本発明者らの選択したウイルスペプチドプールによる予備免疫化が、腫瘍の確立前の抗ウイルス免疫状態をシミュレートし、マウス中の皮下注射された黒色腫腫瘍細胞の増殖を効率的に減速させることを見出し、ウイルス由来ペプチドへの事前曝露が腫瘍増殖に影響を及ぼし得ることを示している。
【0150】
次に、本発明者らは、腫瘍相同なウイルス由来ペプチドが、腫瘍進行中に投与された場合に、既に確立された腫瘍に対して同様の効果を有することを観察し、腫瘍進行中に起こるウイルス感染症が腫瘍の増殖に対してなお影響を及ぼし得ることを示した。
【0151】
まとめると、本発明者らの結果は、ウイルス由来抗原と腫瘍由来抗原の間での分子模倣が、曝露前または獲得前免疫に依存せずに腫瘍増殖に対して制御を発揮することができることを示唆している。
【0152】
新規ICPIは、放射線および化学療法などの他の一般的に使用される治療と比較した場合、いくつかの固形腫瘍、特に転移性黒色腫において患者の生存を著しく改善した。しかしながら、改善された生存および効率的な奏効率にもかかわらず、一部の患者がICPI療法から恩恵を受けない理由は未だ知られている。本発明者らの結果は、CMV特異的IgGレベルの高力価を有する患者が著しくより長い無増悪生存期間を有することを示した。
【0153】
本発明者らは、高い抗CMV-IgG力価を有する患者からのPBMCが、CMVペプチドと類似する黒色腫抗原と反応することを観察した。このデータは、CMV血清陽性が黒色腫特異的T細胞免疫に寄与し、したがってICPI療法を受けているこれらの患者にとって臨床的利点を提供することを示す。
【0154】
ここで、本発明者らは、ウイルス感染症が腫瘍の増殖および排除に影響を及ぼし得ることを示す。さらに、本発明者らは、HEXを使用して選択したウイルス由来抗原および相同な腫瘍由来抗原に対する細胞傷害性T細胞の交差反応性を示す。本発明者らの結果に基づいて、本発明者らは、分子模倣現象が、新規な治療法の開発のために将来活用され得るか、または免疫療法を伴う場合、これらの療法によって達成される抗腫瘍免疫効果を潜在的に増強し得ると結論する。
【0155】
さらに、効果的な腫瘍拒絶および保護戦略を設計するには、HLA-Iに結合する腫瘍ペプチドの信頼性のある同定が必要である。HLA-I複合体からのペプチドの直接的な同定は、なお最良の方法である。それにもかかわらず、イムノペプチドミクスワークフローは比較的複雑であり、したがって、抗原発見過程における大きなボトルネックとなる。現在、少量の生物学的材料(例えば、組織針生検)からイムノペプチドームを分析することができないこと、試料の処理量、コスト、および従来のプラットフォームで採用されているアフィニティマトリックス(手間がかかり、かつ製造するのに高価である)が、対処すべき主要な技術的課題として示されている。
【0156】
本研究では、本発明者らは、リガンドーム研究を妨げるいくつかの技術的問題に対処し、分析する材料の限られた入手可能性、消耗品のコストおよび長期のプロトコルに主に焦点を当てた。
【0157】
十分に性質決定されたビオチン-ストレプトアビジン相互作用を利用してビオチン化汎HLA抗体をストレプトアビジン官能化された表面に固定化することにより、本発明者らは、マイクロチッププラットフォームを用いて架橋反応を介して調製されたアフィニティマトリックスに基づいて、従来の技術を置き換えることができた。材料の不足(例えば、針生検)によってもたらされる制約は、マイクロ流体プロトコルの実施に向けた研究を着想させた。本研究において、本発明者らは、単一のマイクロ流体チップ上でIP手順全体を実行することを可能にするさらなる生体官能化のための固体支持体として、チオール-エンポリマーをベースとするマイクロピラーアレイを含む特別にあつらえたマイクロチッププロトコルを使用した。
【0158】
JY細胞は特異的なCD8+T細胞依存的様式で殺傷されたので、インビトロ殺傷アッセイにおける同定されたペプチドの検証は、本発明を実施したときに同定されたペプチドがJY細胞表面上に実際に提示されたことを確認した。本発明者らのデータセット中に見出されたペプチドILDKKVEKV(SEQ ID NO:3)は、より高い割合の特異的な細胞溶解を惹起した。
【0159】
したがって、本発明者らのアプローチは、免疫親和性精製のための研究されていないツールを提供する。
【0160】
参考文献
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【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
図1A
図1B
図2
図3A-B】
図3C-E】
図4A
図4B-1】
図4B-2】
図5A
図5B
図6
図7
図8A-B】
図8C-G】
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13-1】
図13-2】
【配列表】
2023529061000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍特異的抗原同定のための方法であって、
i)流体中に腫瘍の試料を溶解または懸濁させることと;
ii)少なくとも1つの抗主要組織適合抗原複合体抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されているアレイ状に配置された複数のマイクロピラーを含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のペプチド:主要組織適合抗原複合体(pMHC)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍特異的抗原同定のためのマイクロ流体デバイスに前記流体を通過させることと;
iii)前記試料中の少なくとも1つのpMHCを前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
iv)パートiii)の前記少なくとも1つの結合したpMHCを前記デバイスから除去することと;
v)前記結合したpMHCの前記ペプチドを病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つの病原性抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vi)前記ペプチドを、癌治療において使用するための腫瘍特異的抗原として同定することと;
を含む、方法。
【請求項2】
前記病原体由来抗原のライブラリが、公知の病原性抗原の精選されたライブラリを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記病原性抗原がヒト病原性抗原である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記病原性抗原がウイルスである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記病原性抗原が、以下のものの任意の組み合わせを含む、アビソウイルス科(Abyssoviridae);アッカーマンウイルス科(Ackermannviridae);アクタンタウイルス亜科(Actantavirinae);アデノウイルス科(Adenoviridae);アガンタウイルス亜科(Agantavirinae);アグリムウイルス亜科(Aglimvirinae);アロヘルペスウイルス科(Alloherpesviridae);アルファフレキシウイルス科(Alphaflexiviridae);アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae);アルファイリドウイルス亜科(Alphairidovirinae);アルファサテライト科(Alphasatellitidae);アルファテトラウイルス科(Alphatetraviridae);アルバーナウイルス科(Alvernaviridae);アマルガウイルス科(Amalgaviridae);アムヌーンウイルス科(Amnoonviridae);アムプラウイルス科(Ampullaviridae);アネロウイルス科(Anelloviridae);アレナウイルス科(Arenaviridae);アルクアトロウイルス亜科(Arquatrovirinae);アルテリウイルス科(Arteriviridae);アルトウイルス科(Artoviridae);アスコウイルス科(Ascoviridae);アスファウイルス科(Asfarviridae);アスピウイルス科(Aspiviridae);アストロウイルス科(Astroviridae);オートグラフィウイルス亜科(Autographivirinae);アブサンウイロイド科(Avsunviroidae);アブラウイルス亜科(Avulavirinae);バシラドナウイルス科(Bacilladnaviridae);バキュロウイルス科(Baculoviridae);バルナウイルス科(Barnaviridae);バスティーユウイルス亜科(Bastillevirinae);ビークラスウイルス亜科(Bclasvirinae);ベルパオウイルス科(Belpaoviridae);ベニウイルス科(Benyviridae);ベータフレキシウイルス科(Betaflexiviridae);ベータヘルペスウイルス亜科(Betaherpesvirinae);ベータイリドウイルス亜科(Betairidovirinae);ビカウダウイルス科(Bicaudaviridae);ビドナウイルス科(Bidnaviridae);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ボルナウイルス科(Bornaviridae);ボトウルミアウイルス科(Botourmiaviridae);ブロク亜科(Brockvirinae);ブロモウイルス科(Bromoviridae);ブラウイルス亜科(Bullavirinae);カリシウイルス科(Caliciviridae);カルブスウイルス亜科(Calvusvirinae);カルモテトラウイルス科(Carmotetraviridae);カウリモウイルス科(Caulimoviridae);セロニウイルス亜科(Ceronivirinae);チェブルウイルス亜科(Chebruvirinae);コルドポックスウイルス亜科(Chordopoxvirinae);クリソウイルス科(Chrysoviridae);チュウイルス科(Chuviridae);サーコウイルス科(Circoviridae);クラバウイルス科(Clavaviridae);クロステロウイルス科(Closteroviridae);コモウイルス亜科(Comovirinae);コロナウイルス科(Coronaviridae);コルチコウイルス科(Corticoviridae);クロカルテリウイルス亜科(Crocarterivirinae);クルリウイルス科(Cruliviridae);クラストニウイルス亜科(Crustonivirinae);クビウイルス亜科(Cvivirinae);シストウイルス科(Cystoviridae);ディークラスウイルス亜科(Dclasvirinae);デルタフレキシウイルス科(Deltaflexiviridae);デンソウイルス亜科(Densovirinae);ジシストロウイルス科(Dicistroviridae);エンドルナウイルス科(Endornaviridae);エントモポックスウイルス亜科(Entomopoxvirinae);エカルテリウイルス亜科(Equarterivirinae);ユーカンピウイルス亜科(Eucampyvirinae);ユーロニウイルス科(Euroniviridae);フィロウイルス科(Filoviridae);フィモウイルス科(Fimoviridae);ファーストパピローマウイルス亜科(Firstpapillomavirinae);フラビウイルス科(Flaviviridae);フセロウイルス科(Fuselloviridae);ガンマフレキシウイルス科(Gammaflexiviridae);ガンマヘルペスウイルス亜科(Gammaherpesvirinae);ジェミニアルファサテライト亜科(Geminialphasatellitinae);ジェミニウイルス科(Geminiviridae);ジェノモウイルス科(Genomoviridae);グロブロウイルス科(Globuloviridae);ゴクショウイルス亜科(Gokushovirinae);ガーンジーウイルス亜科(Guernseyvirinae);グッタウイルス科(Guttaviridae);ハンタウイルス科(Hantaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae);ヘペウイルス科(Hepeviridae);ヘレルウイルス科(Herelleviridae);ヘロアルテリウイルス亜科(Heroarterivirinae);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae);ヘクスポニウイルス亜科(Hexponivirinae);ヒポウイルス科(Hypoviridae);ヒトロサウイルス科(Hytrosaviridae);イフラウイルス科(Iflaviridae);イノウイルス科(Inoviridae);イリドウイルス科(Iridoviridae);ジャシンカウイルス亜科(Jasinkavirinae);キタウイルス科(Kitaviridae);ラビダウイルス科(Lavidaviridae);レイシュブウイルス科(Leishbuviridae);レトウイルス亜科(Letovirinae);レビウイルス科(Leviviridae);リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae);リスピウイルス科(Lispiviridae);ルテオウイルス科(Luteoviridae);マラコヘルペスウイルス科(Malacoherpesviridae);マンマンタウイルス亜科(Mammantavirinae);マルナウイルス科(Marnaviridae);マルセイユウイルス科(Marseilleviridae);マトナウイルス科(Matonaviridae);マッククレスキーウイルス亜科(Mccleskeyvirinae);エムクラスウイルス亜科(Mclasvirinae);メディオニウイルス科(Medioniviridae);メディオニウイルス亜科(Medionivirinae);メガビルナウイルス科(Megabirnaviridae);メソニウイルス科(Mesoniviridae);メタパラミクソウイルス亜科(Metaparamyxovirinae);メタウイルス科(Metaviridae);ミクロウイルス科(Microviridae);ミミウイルス科(Mimiviridae);モノニウイルス科(Mononiviridae);モノニウイルス亜科(Mononivirinae);マイモナウイルス科(Mymonaviridae);ミオウイルス科(Myoviridae);ミポウイルス科(Mypoviridae);ナイロウイルス科(Nairoviridae);ナノアルファサテライト亜科(Nanoalphasatellitinae);ナノウイルス科(Nanoviridae);ナルナウイルス科(Narnaviridae);エヌクラスウイルス亜科(Nclasvirinae);ニマウイルス科(Nimaviridae);ノダウイルス科(Nodaviridae);ヌディウイルス科(Nudiviridae);ニアミウイルス科(Nyamiviridae);ニンバクスターウイルス亜科(Nymbaxtervirinae);オカニウイルス亜科(Okanivirinae);オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae);オルトパラミクソウイルス亜科(Orthoparamyxovirinae);オルトレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae);オウナウイルス亜科(Ounavirinae);オバリウイルス科(Ovaliviridae);パピローマウイルス科(Papillomaviridae);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae);パルチチウイルス科(Partitiviridae);パルボウイルス科(Parvoviridae);パルボウイルス亜科(Parvovirinae);ピークラスウイルス亜科(Pclasvirinae);ペデュオウイルス亜科(Peduovirinae);ペリブニヤウイルス科(Peribunyaviridae);ペルムトテトラウイルス科(Permutotetraviridae);ファスマウイルス科(Phasmaviridae);フェヌイウイルス科(Phenuiviridae);フィコドナウイルス科(Phycodnaviridae);ピコビルナウイルス科(Picobirnaviridae);ピコルナウイルス科(Picornaviridae);ピコウイルス亜科(Picovirinae);ピスカニウイルス亜科(Piscanivirinae);プラズマウイルス科(Plasmaviridae);プレオリポウイルス科(Pleolipoviridae);ニューモウイルス科(Pneumoviridae);ポドウイルス科(Podoviridae);ポリシピウイルス科(Polycipiviridae);ポリドナウイルス科(Polydnaviridae);ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae);ポルトグロボウイルス科(Portogloboviridae);ポスピウイロイド科(Pospiviroidae);ポティウイルス科(Potyviridae);ポックスウイルス科(Poxviridae);プロセドウイルス亜科(Procedovirinae);シュードウイルス科(Pseudoviridae);チンウイルス科(Qinviridae);クァードリウイルス科(Quadriviridae);クインウイルス亜科(Quinvirinae);レグレッソウイルス亜科(Regressovirinae);レモトウイルス亜科(Remotovirinae);レオウイルス科(Reoviridae);レパンタウイルス亜科(Repantavirinae);レトロウイルス科(Retroviridae);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae);ロニウイルス科(Roniviridae);ルブラウイルス亜科(Rubulavirinae);ルディウイルス科(Rudiviridae);サルスロウイルス科(Sarthroviridae);セカンドパピローマウイルス亜科(Secondpapillomavirinae);セコウイルス科(Secoviridae);セドレオウイルス亜科(Sedoreovirinae);セプウイルス亜科(Sepvirinae);セルペントウイルス亜科(Serpentovirinae);シマルテリウイルス亜科(Simarterivirinae)
;シホウイルス科(Siphoviridae);スマコウイルス科(Smacoviridae);ソレモウイルス科(Solemoviridae);ソリンビウイルス科(Solinviviridae);スファエロリポウイルス科(Sphaerolipoviridae);スピナレオウイルス亜科(Spinareovirinae);スピラウイルス科(Spiraviridae);スポウナウイルス亜科(Spounavirinae);スプマレトロウイルス亜科(Spumaretrovirinae);サンウイルス科(Sunviridae);テクティウイルス科(Tectiviridae);テベンウイルス亜科(Tevenvirinae);ティアマトウイルス亜科(Tiamatvirinae);トバニウイルス科(Tobaniviridae);トガウイルス科(Togaviridae);トレクサテライト科(Tolecusatellitidae);トンブスウイルス科(Tombusviridae);トロウイルス亜科(Torovirinae);トスポウイルス科(Tospoviridae);トティウイルス科(Totiviridae);トリストロマウイルス科(Tristromaviridae);トリウイルス亜科(Trivirinae);ツナウイルス亜科(Tunavirinae);ツニカニウイルス亜科(Tunicanivirinae);タリウイルス科(Turriviridae);トウォートウイルス亜科(Twortvirinae);ティモウイルス科(Tymoviridae);バリアルテリウイルス亜科(Variarterivirinae);ベキンタウイルス亜科(Vequintavirinae);ビルガウイルス科(Virgaviridae);ウペデウイルス科(Wupedeviridae);ジンモウイルス科(Xinmoviridae);ユエウイルス科(Yueviridae);およびジールアルテリウイルス亜科(Zealarterivirinae)を含む群から選択される少なくとも1つのウイルスに由来する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記病原性抗原が、サイトメガロウイルス抗原またはエプスタイン・バーウイルス抗原またはヘルペスウイルス抗原またはポックスウイルス抗原またはヘパドナウイルス抗原またはインフルエンザウイルス抗原またはコロナウイルス抗原または肝炎ウイルス抗原またはHIV抗原またはブニヤウイルス抗原である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記結合したpMHCの前記ペプチドを病原性抗原のライブラリと比較することが、前記相同性/親和性を決定するためのペプチドスコアリングおよび/またはアラインメントスコアリングを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記結合したpMHCの前記ペプチドを病原性抗原のライブラリと比較することが、
a)前記ペプチドおよび前記病原性抗原の配列構造全体の類似性もしくは同一性;ならびに/または
b)前記ペプチドおよび前記病原性抗原の重要な結合部位における重要なアミノ酸の類似性もしくは同一性;ならびに/または
c)前記ペプチドおよび前記病原性抗原の重要な結合部位における類似もしくは同一の重要なアミノ酸の最多の数;
を決定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍特異的抗原同定のためのデバイスであって、
少なくとも1つの抗主要組織適合抗原複合体抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原(HLA)抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されているアレイ状に配置された複数のマイクロピラーを含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のペプチド:主要組織適合抗原複合体(pMHC)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備えるマイクロ流体デバイスと;
前記主要組織適合抗原複合体に結合された前記ペプチドを同定し、前記結合したpMHCの前記ペプチドを病原体由来ペプチド抗原のライブラリと比較して、前記主要組織適合抗原複合体に結合したまたは結合された前記ペプチドが少なくとも1つの病原性抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定し、60%を超える相同性/親和性が存在する場合に;前記主要組織適合抗原複合体に結合したまたは結合された前記ペプチドを、癌治療において使用するための腫瘍特異的抗原として示すように適合されたプロセッサと;
を備える、デバイス。
【請求項10】
前記抗汎HLA抗体が、MHCクラスIA、BおよびCを含む群から選択される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記抗汎HLA抗体が、MHCクラスIIDP、DM、DO、DQおよびDRを含む群から選択される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記抗体が抗ヒトである、請求項9~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記分子または複合体がチオールおよびアルケン官能基の複合体である、請求項9~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記分子または複合体がビオチンおよびストレプトアビジンを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記分子または複合体が、ストレプトアビジンに結合された1つより多くの抗体を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記分子または複合体が、前記抗体との結合より前に、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質でのコーティングによって整えられる、請求項9~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスが、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合されている、請求項9~16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
チェックポイント阻害剤癌処置のために患者を層別化する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗主要組織適合抗原複合体抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されているアレイ状に配置された複数のマイクロピラーを含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のペプチド:主要組織適合抗原複合体(pMHC)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍特異的抗原同定のためのマイクロ流体デバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHCを前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHCを前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHCの前記ペプチドをヒト病原体抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原性抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍特異的抗原として同定することと;
viii)前記ペプチドが見出された場合に、有効量の少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を前記患者に投与することと;
を含む、方法。
【請求項19】
アデノウイルス癌処置のために患者を層別化する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗主要組織適合抗原複合体抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されているアレイ状に配置された複数のマイクロピラーを含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のペプチド:主要組織適合抗原複合体(pMHC)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍特異的抗原同定のためのマイクロ流体デバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHCを前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHCを前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHCの前記ペプチドをヒト病原体抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原性抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍特異的抗原として同定することと;
viii)前記ペプチドが見出された場合に、前記ペプチドをアデノウイルスベクターのキャプシドに付着させ、有効量の前記アデノウイルスベクターを前記患者に投与することと;
を含む、方法。
【請求項20】
癌を処置する方法であって、
i)患者から腫瘍の試料を採取することと;
ii)流体中に前記試料を溶解または懸濁させることと;
iii)少なくとも1つの抗主要組織適合抗原複合体抗体または少なくとも1つの抗汎ヒト白血球抗原抗体が結合されている少なくとも1つの分子または少なくとも1つの複合体が付着されているアレイ状に配置された複数のマイクロピラーを含有する少なくとも1つのフロースルーチャネルであって、前記少なくとも1つの抗体を使用して、前記チャネルを通って流れる試料中のペプチド:主要組織適合抗原複合体(pMHC)を前記試料から抽出することができるフロースルーチャネルを備える腫瘍特異的抗原同定のためのマイクロ流体デバイスに前記流体を通過させることと;
iv)前記試料中の少なくとも1つのpMHCを前記少なくとも1つの抗体に結合させることと;
v)パートiv)の前記少なくとも1つの結合したpMHCを前記デバイスから除去することと;
vi)前記結合したpMHCの前記ペプチドをヒト病原体由来抗原のライブラリと比較して、前記ペプチドが少なくとも1つのヒト病原性抗原またはその一部との相同性/親和性を示すかどうかを決定することと、60%を超える相同性/親和性が存在する場合には;
vii)前記ペプチドを腫瘍特異的抗原として同定することと;
viii)有効量の前記ペプチドを前記患者に投与して、前記腫瘍特異的抗原に対して、したがって前記試料が採取された前記癌に対してT細胞を刺激もしくは活性化すること;または前記腫瘍特異的抗原を使用して前記腫瘍特異的抗原に対して活性なT細胞の集団を拡大増殖させ、次いで前記T細胞を前記患者に投与することと;
を含む、方法。
【請求項21】
前記癌が、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリン産生腫瘍、褐色細胞腫、プロラクチン産生腫瘍、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル-リンダウ病、ゾリンジャー-エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド、消化管のカルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポシ肉腫、前立腺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴン産生腫瘍、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、絨毛性癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫、菌状息肉症、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌および扁桃癌を含む群から選択される、請求項19~20のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】