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特表2023-529082p95HER2に特異的なキメラ抗原受容体及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】p95HER2に特異的なキメラ抗原受容体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230630BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230630BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230630BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230630BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230630BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230630BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230630BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230630BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230630BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230630BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K16/30
C07K19/00
A61P35/00
A61K35/17
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K31/7088
A61K48/00
A61P37/04
G01N33/574 D
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/0783
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573273
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021064383
(87)【国際公開番号】W WO2021239965
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20382457.8
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522461631
【氏名又は名称】フンダシオ プリヴァーダ インスティトゥト ディンヴェスティガシオ オンコロジカ デ ヴァイ エブロン
(71)【出願人】
【識別番号】514256243
【氏名又は名称】インスティトゥーシオ カタラーナ デ レセルカ イ エストゥディス アバンサッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アリバス ロペス, ホアキン
(72)【発明者】
【氏名】リウス ルイス, イレーネ
(72)【発明者】
【氏名】ロマン アロンソ, マカレナ
(72)【発明者】
【氏名】グロス ビダル, アレニャ
(72)【発明者】
【氏名】ファハルド カルデロン, カルロス アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】メスナー, エッケハルト
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZB09
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、p95HER2発現細胞を標的化することができるキメラ抗原受容体(CAR)に関する。本発明はまた、一本鎖可変断片(ScFv)、抗原結合ドメイン、及びp95HER2抗原に結合することができる抗体又はその抗体断片に関する。本発明はまた、がん診断の方法、並びに本発明のCAR及び/又は抗原結合ドメイン又は抗体を含むがんを予防又は治療する方法で使用するための医薬組成物に関する。本発明の著者は、p95HER2発現細胞を標的化し、かつp95HER2陽性腫瘍に対して強力な抗腫瘍活性を誘導することができるが、正常レベルのHER2を発現する細胞に対して明白な活性を有さない、キメラ抗原受容体(CAR)を得た。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、
(i)p95HER2に特異的な抗原結合ドメインと、
(ii)膜貫通ドメインと、
(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン及び/又は共刺激ドメインと、を含み、
前記抗原結合ドメインが、
(i)ScFv(ScFv1)であって、
-VL領域及びVH領域のフレームワーク領域がヒト化されていることと、
-前記VH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号1、2、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号1、174、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、
-前記VL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号175、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、ScFv(ScFv1)、
(ii)抗原結合ドメイン(抗原結合ドメイン1)であって、
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-前記少なくとも1つのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号7、8、及び9の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-前記少なくとも1つのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号10、11、及び12の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗原結合ドメイン(抗原結合ドメイン1)、
(iii)抗原結合ドメイン(抗原結合ドメイン2)であって、
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-前記少なくとも1つのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号13、14、及び15の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-前記少なくとも1つのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号16、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号179、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗原結合ドメイン(抗原結合ドメイン2)、からなる群から選択される、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記ScFv1の前記VL領域が、前記VH領域に対してN末端に位置する、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記ScFv1の前記VH領域のFR1、FR2、FR2、及びFR4が、それぞれ、配列番号19、20、21、及び22の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記ScFv1の前記VL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号23、24、25、及び26の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項4】
前記ScFv1のVLが、配列番号27若しくは180の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記VHが、配列番号28若しくは181の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項3に記載のCAR。
【請求項5】
前記ScFv1の前記VH及びVL領域が、配列番号29の配列を含むリンカー領域によって接続される、請求項1~3のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項6】
前記ScFv1が、配列番号30若しくは182の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項5に記載のCAR。
【請求項7】
前記抗原結合ドメイン1の前記少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号31、32、33、及び34、配列番号65、66、67、及び68、若しくは配列番号73、74、75の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記抗原結合ドメイン1の前記少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号35、36、37、及び38、配列番号69、70、71、及び72、若しくは配列番号77、78、79、及び80の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項8】
前記抗原結合ドメイン1の前記少なくとも1つのVL領域が、配列番号39、54、若しくは56の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記抗原結合ドメイン1の前記少なくとも1つのVH領域が、配列番号40、53、若しくは55の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項7に記載のCAR。
【請求項9】
前記抗原結合ドメイン1が、ScFvであり、前記ScFvの前記VH及びVL領域が、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される、請求項7又は8に記載のCAR。
【請求項10】
ScFvが、配列番号41、187、188、若しくは189の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項9に記載のCAR。
【請求項11】
前記抗原結合ドメイン2の前記少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号42、43、44、及び45、配列番号89、90、91、及び92、若しくは配列番号97、98、99、及び100の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記抗原の前記少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号46、47、48、及び49若しくは配列番号93、94、95、及び96の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項12】
前記少なくとも1つのVL領域が、配列番号50、184、60、若しくは62の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記少なくとも1つのVHが、配列番号51、59、及び61の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項11に記載のCAR。
【請求項13】
前記抗原結合ドメイン2が、ScFvであり、前記ScFvの前記VH及びVL領域が、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される、請求項11又は12に記載のCAR。
【請求項14】
前記ScFvが、配列番号52、186、190、若しくは191の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項13に記載のCAR。
【請求項15】
前記抗原結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間にヒンジドメインを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項16】
前記ヒンジドメインが、CD8ヒンジドメインである、請求項15に記載のCAR。
【請求項17】
前記膜貫通ドメインが、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、4-1BB膜貫通ドメイン、CTLA4膜貫通ドメイン、CD27膜貫通ドメイン、及びCD3ゼータ膜貫通ドメインからなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項18】
前記少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激ドメイン、一次シグナル伝達ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項19】
前記少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインが、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、DAP12、及び4-1BB(CD137)、又はそれらの任意の組み合わせから選択される共刺激分子の細胞内ドメインを含む、請求項18に記載のCAR。
【請求項20】
前記少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ細胞内ドメインを更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項21】
前記少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインが、前記CD3ゼータ細胞内ドメインに対してN末端側に配置される、請求項20に記載のCAR。
【請求項22】
前記ヒンジ領域が、CD8ヒンジドメインであり、前記膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメインであり、前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD28共刺激ドメインである、請求項21に記載のCAR。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸。
【請求項24】
コードされた前記CARが、リーダー配列を更に含む、請求項23に記載の核酸。
【請求項25】
前記リーダー配列が、CD8リーダー配列である、請求項24に記載の核酸。
【請求項26】
請求項23~25のいずれか一項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項27】
請求項1~22のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、請求項23~25のいずれか一項に記載の核酸、又は請求項26に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
前記細胞が、免疫細胞である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、又はNKT細胞である、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記T細胞が、CD8+T細胞である、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
ScFvであって、
-VH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号1、2、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号1、174、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、
-VL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号175、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、ScFv。
【請求項32】
前記VH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号152、153、154、及び155、配列番号19、20、21、及び22、若しくは配列番号163、164、165、及び166の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記VL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号156、157、158、及び159、配列番号23、24、25、及び26、若しくは配列番号167、168、169、若しくは170の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項31に記載のScFv。
【請求項33】
前記VLが、配列番号160、193、27、171、若しくは180の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記VHが、配列番号161、194、28、172、若しくは181の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項32に記載のScFv。
【請求項34】
前記ScFv1の前記VH及びVL領域が、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される、請求項33に記載のScFv。
【請求項35】
前記ScFvが、配列番号162、195、30、173、若しくは182の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項334に記載のScFv。
【請求項36】
抗原結合ドメインであって、
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-前記少なくとも1つのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号7、8、及び9の配列又は又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-前記少なくとも1つのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号10、11、及び12の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗原結合ドメイン。
【請求項37】
前記少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号31、32、33、及び34、配列番号65、66、67、及び68、若しくは配列番号73、74、75、及び76の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号35、36、37、及び38、配列番号69、70、71、72若しくは配列番号77、78、79、及び80の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項36に記載の抗原結合ドメイン。
【請求項38】
前記少なくとも1つのVL領域が、配列番号39、54、及び56の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記少なくとも1つのVH領域が、配列番号40、53、及び55の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項37に記載の抗原結合ドメイン。
【請求項39】
前記抗原結合ドメイン1が、ScFvであり、前記抗原結合ドメインの前記VH及びVL領域が、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される、請求項38に記載の抗原結合ドメイン。
【請求項40】
前記ScFvが、配列番号41、187、188、若しくは189の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項39に記載の抗原結合ドメイン。
【請求項41】
抗体又はその抗体断片であって、
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域と、
-前記少なくとも1つのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号13、14、及び15の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-前記少なくとも1つのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号16、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号179、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗体又はその抗体断片。
【請求項42】
前記少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号42、43、44、及び45、配列番号89、90、91、及び92、若しくは配列番号97、98、99、及び100の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4が、それぞれ、配列番号46、47、48、及び49、配列番号93、94、95、及び96、若しくは配列番号101、102、103、及び104又はその機能的等価バリアントを含む、請求項41に記載の抗体又はその抗体断片。
【請求項43】
前記少なくとも1つのVL領域が、配列番号50、184、60、若しくは62の配列又はその機能的等価バリアントを含み、前記少なくとも1つのVH領域が、配列番号51、59、若しくは61の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項42に記載の抗体又はその抗体断片。
【請求項44】
前記抗体断片が、ScFvであり、前記VH及びVL領域が、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される、請求項43に記載の抗体又はその抗体断片。
【請求項45】
前記ScFvが、配列番号52、186、190、若しくは191の配列又はその機能的等価バリアントを含む、請求項44に記載の抗体又はその抗体断片。
【請求項46】
請求項31~45のいずれか一項に記載のScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体をコードする核酸。
【請求項47】
請求項46に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項48】
請求項46に記載の核酸又は請求項47に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項49】
患者のがん診断の方法であって、
(i)腫瘍細胞を含む前記患者の試料を、請求項31~45のいずれか一項に記載のScFv、及び抗原結合ドメイン又は抗体と接触させることと、
(ii)前記試料中の前記ScFv、抗原結合ドメイン又は抗体の細胞への結合を検出することと、を含み、
前記結合の存在が、前記患者ががんに罹患していることを示す、方法。
【請求項50】
前記ScFv1、抗原結合ドメイン、又は抗体が、固体支持体上に配置される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
請求項27~30のいずれか一項に記載の宿主細胞、請求項31~45のいずれか一項に記載の抗体又は抗体断片、並びに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又はビヒクルを含む、医薬組成物。
【請求項52】
医薬で使用するための、請求項27~30のいずれか一項に記載の宿主細胞、又は請求項31~45のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗体断片。
【請求項53】
がんを予防又は治療する方法で使用するための、請求項27~30のいずれか一項に記載の宿主細胞、又は請求項31~45のいずれか一項に記載の抗体断片。
【請求項54】
前記がんが、p95HER2陽性である、請求項53に記載の使用のための宿主細胞又は抗体断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー及び生物医学の分野内に含まれる。これは、具体的には、HER2のp95断片に対して特異的な抗体、並びに当該抗体を含むキメラ抗原受容体、及びがんの治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界中の罹患率及び死亡率の主要な原因のうちの1つである。現在、全世界で6人に1人近くが死亡しており、新規症例数は今後20年間で約70%増加すると予期されている。
【0003】
現在、多くの薬物ががんの治療における使用に利用可能である。しかしながら、多くの場合、がんは、抗がん療法に応答しないか、又はその成長及び/若しくは転移が減速されるに過ぎない。腫瘍が、大きさが減少するか又は寛解することによって抗がん療法に最初に応答する場合でも、腫瘍はしばしば薬物に対する抵抗性を生じる。これらの理由から、利用可能な治療がまだないがんを治療するために使用され得る新しい抗がん剤及び薬物、並びに多剤耐性がんに対する必要性が存在する。
【0004】
HER2は、乳がん及び胃がんの約25%で過剰発現される受容体チロシンキナーゼである。モノクローナル抗体トラスツズマブ又は阻害剤ラパチニブなどの抗HER2療法が成功したにもかかわらず、高い割合(40%)の進行した乳がんの症例がいずれは進展する。更に、心筋細胞におけるHER2の発現による心毒性は、治療された患者において頻繁に観察されている。したがって、HER2駆動腫瘍に対するより効果的かつ安全な治療を開発する臨床的必要性が存在する。HER2を標的とするCARも開発されている。しかしながら、HER2に対する養子細胞療法は、健康な組織におけるHER2の発現によって制限されており、これは深刻な副作用につながる。
【0005】
p95HER2は、一部のHER2陽性腫瘍でのみ発現されるHER2の断片である。T細胞は、T細胞二重特異性抗体を介してp95HER2に対して安全に配向され得ることが示されている。しかしながら、p95HER2に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)に基づく養子細胞療法は開発されていない。実際、p95HER2 CARを生成する以前の試みでは、T細胞表面で発現することができず、p95HER2を発現する細胞を殺すことができなかった(研究開示、データベース番号667070)。したがって、p95HER2発現細胞を特異的に標的とする抗腫瘍療法が当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の著者は、p95HER2発現細胞を標的化し、かつp95HER2陽性腫瘍に対して強力な抗腫瘍活性を誘導することができるが、正常レベルのHER2を発現する細胞に対して明白な活性を有さない、キメラ抗原受容体(CAR)を得た。CARは、機能性CARを以前に提供しておらず、かつScFvのヒト化と、ScFv内のVH及びVL領域の順序の特定の配置への修飾を必要とした抗p95HER2 ScFvからScFvを使用して得られた。これは、本発明のCARが、p95HER2を発現する細胞に特異的な細胞傷害効果を誘発し、対照的に、p95HER2を発現しない細胞にいかなる効果も有さないことが示されている、本文書の実施例1に示される。
【0007】
加えて、本発明の著者は、異なる抗p95HER2 ScFvからCARを生成し、CARがp95HER2発現細胞に強力な細胞傷害効果を誘発することができることを示した。これは、本文書の実施例2及び3に示される。更に、ヒト化ScFvバージョンの使用により、図6及び8に示されるように、非ヒト化バージョンと比較して、正常なレベルのHER2を発現する細胞の殺傷の減少に起因して、p95HER2に対してより特異的なCAR Tを生成する。したがって、第1の態様では、本発明は、
(i)p95HER2に特異的な抗原結合ドメインと、
(ii)膜貫通ドメインと、
(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン及び/又は共刺激ドメインと、を含む、キメラ抗原受容体(CAR)に関し、
抗原結合ドメインは、
(i)
-VL領域及びVH領域のフレームワーク領域がヒト化されていることと、
-VH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号1、2、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号1、174、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、
-VL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号175、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、ScFv(ScFv1)、
(ii)
-少なくとも1つのVH及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくともVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号7、8、及び9の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくともVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号10、11、及び12の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗原結合ドメイン(抗原結合ドメイン1)、並びに
(iii)
-少なくとも1つのVH及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくともVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号13、14、及び15の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくともVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号16、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号179、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗原結合ドメイン(抗原結合ドメイン2)、からなる群から選択される。
【0008】
第2の態様では、本発明は、本発明のCARをコードする核酸に関する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様の核酸を含む発現ベクターに関する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様の核酸又は本発明の第3の態様のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0011】
第5の態様では、本発明は、
-VH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号1、2、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号1、174、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、
-VL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号175、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、ScFvに関する。
【0012】
第6の態様では、本発明は、
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくともVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号7、8、及び9の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくともVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号10、11、及び12の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗原結合ドメインに関する。
【0013】
第7の態様では、本発明は、
少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくともVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号13、14、及び15の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくともVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号16、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号179、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗体又はその断片に関する。
【0014】
一態様では、本発明は、本発明の第5、第6、及び第7の態様によるScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体をコードする核酸に関する。
【0015】
第9の態様では、本発明は、本発明の第8の態様の核酸を含む発現ベクターに関する。
【0016】
第10の態様では、本発明は、本発明の第8の態様の核酸又は本発明の第9の態様の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0017】
第11の態様では、本発明は、
(i)腫瘍細胞を含む患者の試料を、本発明の第5、第6、又は第7の態様によるScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体と接触させることと、
(ii)試料中のScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体の細胞への結合を検出することと、を含む、患者のがん診断の方法に関し、
結合の存在は、患者ががんに罹患していることを示す。
【0018】
第12の態様では、本発明は、本発明の第4の態様の宿主細胞及び/又は本発明の第5、第6、若しくは第7の態様によるScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体、並びに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又はビヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0019】
第13の態様では、本発明は、医薬で使用するための、本発明の第4の態様の宿主細胞並びに/又は本発明の第5、第6、及び第7の態様によるScFv、抗原結合ドメイン、若しくは抗体に関する。
【0020】
最後の態様では、本発明は、がんを予防又は治療する方法で使用するための、本発明の第4の態様の宿主細胞並びに/又は本発明の第5、第6、及び第7の態様によるScFv、抗原結合ドメイン、若しくは抗体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本文書に開示される3つのp95HER2 CARの概略図。(A)ヒト化32H2 p95HER2 CAR。(B)214D8 p95HER2 CAR。(C)215C2 p95HER2 CAR。
図2】32H2 p95HER2 CAR Tの設計、発現、及び細胞傷害性。(A)完全長HER2又はp95HER2に結合するScFvを含むキメラ受容体の概略図。(B)遺伝子導入後5日目のT細胞上のAにおける示されたCARの表面発現;総T細胞からの陽性CAR Tの割合が示される。(C)MCF10A p95HER2細胞を、示された比率でCAR T細胞と共培養した。48時間で、生存標的細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。UTD:非形質導入T細胞;Trast:トラスツズマブベースのCAR。
図3】ヒト化32H2 p95HER2 CAR Tの設計及び発現。(A)完全長HER2又はp95HER2に結合するScFvを含むキメラ受容体の概略図。(B)遺伝子導入後5日目のT細胞上のAにおける示されたCARの表面発現;総T細胞からの陽性CAR Tの割合が示される。UTD:非形質導入T細胞;Trast:トラスツズマブベースのCAR。
図4】h32H2 p95HER2 CAR Tの設計、発現、及び細胞傷害性。(A)完全長HER2又はp95HER2に結合するScFvを含むキメラ受容体の概略図。(B)遺伝子導入後5日目のT細胞上のAにおける示されたCARの表面発現;総T細胞からの陽性CAR Tの割合が示される。(C)MCF10A p95HER2細胞を、示された比率でCAR T細胞と共培養した。48時間で、生存標的細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。(D)MCF10A細胞を、示された比率でCAR T細胞と共培養した。48時間で、生存標的細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。UTD:非形質導入T細胞;Trast:トラスツズマブベースのCAR。
図5】214D8 p95HER2 CAR Tの設計、発現、及び細胞傷害性。(A)完全長HER2又はp95HER2に結合するscFvを含むキメラ受容体の概略図。(B)遺伝子導入後5日目のT細胞上のAにおける示されたCARの表面発現;総T細胞からの陽性CAR Tの割合が示される。(C)MCF10A p95HER2細胞を、示された比率でCAR T細胞と共培養した。48時間で、生存標的細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。UTD:非形質導入T細胞;Trast:トラスツズマブベースのCAR。
図6】ヒト化214D8 p95HER2 CAR Tの設計、発現、及び細胞傷害性。(A)p95HER2に結合するscFvを含むキメラ受容体の概略図。(B)遺伝子導入後5日目のT細胞上のAにおける示されたCARの表面発現;総T細胞からの陽性CAR Tの割合が示される。(C)MCF10A p95HER2細胞又はMCF10A野生型を、示された比率でCAR T細胞と共培養した。48時間で、生存標的細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。UTD:非形質導入T細胞。
図7】215C2 p95HER2 CAR Tの設計、発現、及び細胞傷害性。(A)完全長HER2又はp95HER2に結合するscFvを含むキメラ受容体の概略図。(B)遺伝子導入後5日目のT細胞上のAにおける示されたCARの表面発現;総T細胞からの陽性CAR Tの割合が示される。(C)MCF10A p95HER2細胞を、示された比率でCAR T細胞と共培養した。48時間で、生存標的細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。UTD:非形質導入T細胞;Trast:トラスツズマブベースのCAR。
図8】ヒト化215C2 p95HER2 CAR Tの設計、発現、及び細胞傷害性。(A)p95HER2に結合するscFvを含むキメラ受容体の概略図。(B)遺伝子導入後5日目のT細胞上のAにおける示されたCARの表面発現;総T細胞からの陽性CAR Tの割合が示される。(C)MCF10A p95HER2細胞又はMCF10A野生型を、示された比率でCAR T細胞と共培養した。48時間で、生存標的細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。UTD:非形質導入T細胞。
図9】インビボでのp95HER2陽性腫瘍の増殖に対するm215由来p95HER2 CAR Tの効果。(A)マウスに、MCF7p95HER2細胞を同所移植した。腫瘍がおよそ300mmに達したとき、それらを3×10CAR+T細胞で処置した。(B)144日目の総白血球に対する、血液1μl当たりの循環ヒトCD3+T細胞の割合。
図10-1】インビボでのp95HER2陽性(MCF7p95HER2)及びp95HER2陰性(MCF7)腫瘍の増殖に対するh1_214由来p95HER2 CAR Tの特異的抗腫瘍効果。マウスに、MCF7p95HER2細胞(A)又はMCF7細胞(D)を同所移植した。腫瘍がおよそ300mm3に達したとき、マウスを、3×106CAR+T細胞又はUTD T細胞で尾静脈注射により処置し、10日後、それらは同じ数のT細胞で第2の用量を受けた。血液1μl当たりの循環ヒトCD3+T細胞の数(B、E)を、第2の用量の投与の10日後に決定した。腫瘍1ミリグラム当たりの腫瘍浸潤CD3細胞の数を、示された時点で評価した(C、F)。
図10-2】インビボでのp95HER2陽性(MCF7p95HER2)及びp95HER2陰性(MCF7)腫瘍の増殖に対するh1_214由来p95HER2 CAR Tの特異的抗腫瘍効果。マウスに、MCF7p95HER2細胞(A)又はMCF7細胞(D)を同所移植した。腫瘍がおよそ300mm3に達したとき、マウスを、3×106CAR+T細胞又はUTD T細胞で尾静脈注射により処置し、10日後、それらは同じ数のT細胞で第2の用量を受けた。血液1μl当たりの循環ヒトCD3+T細胞の数(B、E)を、第2の用量の投与の10日後に決定した。腫瘍1ミリグラム当たりの腫瘍浸潤CD3細胞の数を、示された時点で評価した(C、F)。
図11-1】本文書に開示されるp95HER2-CARの完全なアミノ酸配列。
図11-2】本文書に開示されるp95HER2-CARの完全なアミノ酸配列。
図12】scFvアミノ酸配列の概要。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、がんの治療のための新しい化合物の提供に関する。
【0023】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0024】
本発明の一態様との関連で開示される全ての実施形態及び定義は、本発明の他の態様にも適用可能である。
【0025】
キメラ抗原受容体(CAR)
第1の態様では、本発明は、
(i)p95HER2に特異的な抗原結合ドメインと、
(ii)膜貫通ドメインと、
(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン及び/又は共刺激ドメインと、を含む、キメラ抗原受容体(CAR)を関し、
抗原結合ドメインは、
(i)
-VL領域及びVH領域のフレームワーク領域がヒト化されていることと、
-VH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号1、2、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号1、174、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、
-VL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号175、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、ScFv、
(ii)
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくともVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号7、8、及び9の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくともVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号10、11、及び12の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗原結合ドメイン(抗原結合ドメイン1)、並びに
(iii)
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくとも1つのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号13、14、及び15の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくとも1つのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号16、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号179、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする、抗体又はその抗体断片、からなる群から選択される。
【0026】
本明細書で使用される場合、キメラT細胞受容体としても知られる「キメラ抗原受容体(CAR)」、T体、人工T細胞受容体、及びキメラ免疫受容体(CIR)は、操作された受容体であり、これは免疫エフェクター細胞上に任意の特異性を移植する。古典的なCARでは、モノクローナル抗体の特異性がT細胞上に移植される。したがって、CARは、少なくとも、抗原に結合することができる細胞外ドメイン又は抗原結合ドメインと、細胞外ドメインが誘導されるポリペプチドとは異なるポリペプチドに由来する膜貫通ドメインと、少なくとも1つの細胞内共刺激ドメインとを含む融合タンパク質である。
【0027】
本発明によると、「細胞外ドメイン」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合断片」、又は「抗体断片」という表現は、互換的に使用され、ある特定の抗原に結合することができる任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを指す。それは、インタクトな抗体の少なくとも1つの部分、又はその組換えバリアント、例えば、抗体断片の標的への認識及び特異的結合を可能にするのに十分なインタクトな抗体の抗原可変領域を指す、抗体断片を含み得る。本発明の抗原結合ドメインは、少なくともVH及びVL領域を含む。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’-、F(ab’)、及びFv断片、ScFv抗体断片、及び線形抗体が挙げられる。本発明の文脈において、抗原結合ドメイン又は抗体断片は、少なくとも1つのVH領域及び1つのVL領域を含むが、2つのVL領域及び2つのVH領域を含み得る。したがって、例えば、一実施形態では、抗原結合ドメインは、ScFvであり、したがって、1つのVL領域及び1つのVH領域のみを含む。別の実施形態では、抗原結合ドメインは、Fab断片であり、その場合、1つのVL及びVH(Fab又はFab’)、又は2つのVH及び2つのVL領域(Fab又はF(ab’))を含む。
【0028】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、ヒト化される。
【0029】
本明細書で使用される場合、非ヒト(例えば、マウス)抗体又は抗原結合ドメインの「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列含むか、又は配列を含まないキメラ抗体又は抗原結合ドメインである。ほとんどの場合、ヒト化抗体又は抗原結合ドメインは、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、そこで、レシピエントの超可変領域由来の残基は、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置き換えられる。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体又は抗原結合ドメインは、レシピエント抗体又はドナー抗体に見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、概して、抗体又は抗原結合ドメインの性能を更に改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体又は抗原結合ドメインは、実質的に、少なくとも1つ、及び典型的には2つの可変ドメインの全てを含み、その場合、超可変ループの全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、FR残基の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含み得る。
【0030】
本発明のCARの抗原結合ドメインは、HER2、p95HER2のカルボキシ末端断片を特異的に認識する。
【0031】
「HER2」及び「HER2受容体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ErbB2タンパク質(文献ではHER2/neuとも称される)を指す。本明細書で使用される場合、用語は、HER2のバリアント(例えば、スプライスバリアント)、アイソフォーム、及びホモログ(オルソログ及びパラログの両方)を含むことが意図される。いくつかの態様では、本明細書に開示される抗HER2結合分子のHER2への結合は、HER2と他のErbBファミリーメンバーとの間のヘテロマー複合体の形成を阻害することによって、例えば、EGFR又はHER3とのヘテロ二量体化を阻害することによって、HER2を発現する細胞(すなわち、典型的には腫瘍細胞、及び特に低レベルのHER2を発現するがん細胞)の増殖を阻害する。
【0032】
HER2は、受容体チロシンキナーゼであり、(i)リガンド結合に関与する2つのロイシンリッチドメイン(ドメインI/L1及びドメインIII/L2)、及び(ii)受容体二量体化に関与する2つのシステインリッチドメイン(ドメインII/CR1及びドメインIV/CR2)からなる細胞外ドメイン(ECD);膜貫通ドメイン;並びに細胞内チロシンキナーゼドメインからなる。HER2の代替的なスプライスバリアントが存在し、本発明の一部であり得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「p95HER2」という用語は、HER2受容体タンパク質のカルボキシ末端断片(CTF)を指し、これは、「611-CTF」又は「100~115kDa p95HER2」としても知られる。p95HER2断片は、完全長HER2分子のコドン位置611でのHER2 mRNAの翻訳の開始を通して細胞において生成される(Anido et al,EMBO J 25;3234-44(2006))。分子量は100~115kDaであり、細胞膜で発現され、ここで分子間ジスルフィド結合によって維持されるホモ二量体を形成し得る。
【0034】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体を抗原に結合するのに関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれ、VH及びVL)の可変ドメインは、概して、類似の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)又は相補性決定領域(CDR)を含む。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、配列で超可変であり、かつ/又は構造的に定義されたループ(超可変ループ)を形成する抗体可変ドメインの領域の各々を指す。概して、天然の4本鎖抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)とVLに3つ(L1、L2、L3)である6つのCDRを含む。したがって、CDRは、特定の抗原に対するタンパク質の親和性(主に結合強度)及び特異性を決定する。各対の2つの鎖のCDRは、フレームワーク領域によって整列され、特定のエピトープを結合する機能を獲得する。結果として、重鎖及び軽鎖の両方が、3つのCDR、それぞれ、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3及びVL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3によって特徴付けられる。
【0036】
CDR配列は、従来の基準に従って、例えば、IgBLAST:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/(Ye et al.,2013,Nucleic Acids Res 41(Web Server issue:W34-40)の基準の手段によって、Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)によって提供される番号付けに従って、又はChothia et al.(1989,Nature 342:877-83)によって提供される番号付けに従って、決定することができる。この特定の領域は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)によって、及びChothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)によって記載されており、ここで、定義は、互いに比較した場合に、アミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列及びサイズに応じて変化する。当業者であれば、どの残基が、抗体の可変領域アミノ酸配列を与えられた特定のCDRを含むかを日常的に決定することができる。本明細書に与えられるCDR配列は、概して、Kabat定義に従う。
【0037】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、概して、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は、概して、VH(又はVL)において以下の順序で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0038】
特定の実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメインは、ScFvである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「一本鎖可変断片(ScFv)」は、抗原に結合する能力を保持する抗体に由来する一本鎖ポリペプチドを意味する。ScFvの例は、組換えDNA技術によって形成され、かつ免疫グロブリン重鎖(VH鎖)及び軽鎖(VL鎖)断片の可変(Fv)領域がスペーサー配列を介して連結される、抗体ポリペプチドを含む。ScFvを調製するための様々な方法が知られており、米国特許第4694778号、Nature,vol.334,p.54454(1989)、及びScience,vol.242,pp.1038-1041(1988)に記載される方法を含む。
【0040】
本発明によるCARの第2の要素は、CARの細胞外ドメインに結合される膜貫通ドメインである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「膜貫通ドメイン」(TMD)は、細胞膜を横断するCARの領域を指す。本発明のCARの膜貫通ドメインは、膜貫通タンパク質(例えば、I型膜貫通タンパク質)、人工疎水性配列、又はそれらの組み合わせの膜貫通ドメインである。膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接した1つ以上の追加のアミノ酸、例えば、膜貫通が誘導されたタンパク質の細胞外領域に関連する1つ以上のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10~最大15個のアミノ酸)、及び/又は膜貫通タンパク質が誘導されるタンパク質の細胞内領域に関連する1つ以上の追加のアミノ酸(例えば、細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10~最大15個のアミノ酸)を含み得る。一態様では、膜貫通ドメインは、使用されるCARの他のドメインのうちの1つと関連付けられているものである。いくつかの例では、膜貫通ドメインは、アミノ酸置換によって選択又は修飾されて、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化するために、かかるドメインの同一又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの結合を回避することができる。一態様では、膜貫通ドメインは、CART細胞表面上の別のCARとのホモ二量体化が可能である。異なる態様では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、同じCART中に存在する天然結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小化するように、修飾又は置換されてもよい。
【0042】
膜貫通ドメインは、天然又は組換え供給源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。一態様では、膜貫通ドメインは、CARが標的に結合したときにいつでも細胞内ドメインにシグナル伝達することができる。本発明における特定の使用の非限定的な実施例又は膜貫通ドメインは、例えば、T細胞受容体のアルファ、ベータ、又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD3ゼータ、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD1 la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、CTLA4、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4 CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDGA、CDGA、CD103、ITGAL、CDLa、LFA-1、ITGAM、CDllb、ITGAX、CDlc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、LGA ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A)、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、Kp30、NKp46(NKG2Dを含む)、及び/又はNKG2Cの膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメインの膜貫通領域を含み得る。
【0043】
特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、4-1BB膜貫通ドメイン、CTLA4膜貫通ドメイン、CD27膜貫通ドメイン、及びCD3ゼータ膜貫通ドメインからなる群から選択される。
【0044】
特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。特定の実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号113)を含む。
【0045】
本発明によるCARは、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン及び/又は共刺激ドメインを含む。
【0046】
用語が本明細書で使用される場合、「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、分子の細胞内部分を指し、より具体的には、細胞内の生物学的プロセスの活性化又は阻害を引き起こすシグナルを伝達するドメインとして機能することが知られている任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、CAR含有細胞、例えば、CAR-T細胞の免疫エフェクター機能を刺激するシグナルを生成する。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解機能又はヘルパー活性であってもよい。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを形質導入し、かつ細胞(例えば、T細胞)に特殊化された機能を実施するよう指示するタンパク質の一部であってもよい。
【0047】
概して、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が使用され得るが、しかしながら、使用されるシグナル伝達ドメインの任意の部分が、依然としてエフェクター機能シグナルを形質導入することができることを条件として、ドメイン全体を使用する必要はないことが理解される。実質的に同じ又はより大きな機能的能力を有するかかる細胞内シグナル伝達ドメインのバリアントも使用され得ることも理解されるであろう。これは、バリアントがエフェクター機能シグナルの実質的に同じ又はより大きな形質導入を有するべきであるという意味を含む。典型的には、実質的に同じ又はより大きなシグナル伝達は、非修飾細胞内シグナル伝達ドメインのシグナル伝達の少なくとも80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、若しくは120%、又はそれ以上を含み、非修飾細胞内シグナル伝達ドメインのシグナル伝達は、100%に相当する。エフェクター機能シグナルの形質導入を評価するための方法は、当業者に周知であり、例えば、形質導入されたシグナルを示す分子(例えば、サイトカインなどのタンパク質)の量及び/又は活性を評価することを含む。したがって、シグナルがT細胞の細胞溶解機能である場合、方法は、T細胞によって分泌される1つ以上のサイトカインの測定を伴い得るが、このサイトカインは、細胞溶解活性(例えば、I FNガンマ)を有することが知られている。細胞溶解機能を評価する別の手段は、当該技術分野で周知であるように、CFSE染色及びフローサイトメトリー又はクロム放出アッセイによる陽性細胞の計数によるものである。
【0048】
本発明のCARで使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、T細胞受容体(TCR)、及び抗原受容体の係合後に共同で作用してシグナル伝達を開始する共受容体の細胞質配列、並びにこれらの配列及び同じ機能的能力を有する任意の組換え配列の任意の誘導体又はバリアントが挙げられる。
【0049】
TCRのみを介して生成されたシグナルは、T細胞の完全な活性化には概して不十分であり、二次シグナル及び/又は共刺激シグナルも必要とされ得ることが知られている。したがって、T細胞活性化は、TCR(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)を介して抗原依存性一次活性化を開始するものと、二次又は共刺激シグナル(共刺激ドメインなどの二次細胞内シグナル伝達ドメイン)を提供するために抗原非依存的様式で作用するものの、2つの別個のクラスの細胞内シグナル伝達配列によって媒介されると言える。共刺激ドメインは、エフェクター機能の活性化を促進し、エフェクター機能の持続性及び/又は細胞の生存も促進し得る。
【0050】
一次細胞内シグナル伝達ドメインは、刺激的方法又は阻害的方法のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を調節する。刺激的様式で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAM(例えば、2、3、4、5つ、又はそれ以上のITAM)として知られているシグナル伝達モチーフを含み得る。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインは、1つ以上のITAMを含み得る。本発明で特に使用される一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むITAMの例としては、CD3ゼータ、Fc受容体ガンマ、Fc受容体ベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3エプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dのものが挙げられる。
【0051】
一実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータであり、より具体的には、本発明のCARは、配列RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号114)を含む。
【0052】
「ゼータ」又は代替的に「ゼータ鎖」、「CD3ゼータ」又は「TCRゼータ」という用語は、GenBankのエントリー番号BAG36664.1によって表されるタンパク質、又はマウス、齧歯類、サル、霊長類などの非ヒト種由来の同等の残基として定義され、「ゼータ刺激ドメイン」又は代替的に「CD3ゼータ刺激ドメイン」又は「TCRゼータ刺激ドメイン」は、T細胞などを活性化するために必要とされる一次シグナルの機能的伝達に十分であるゼータ鎖の細胞質ドメインのアミノ酸残基として定義される。一態様では、ゼータ細胞質ドメインは、BAG36664.1のGenBankエントリータンパク質を含む残基52~164、又は非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、霊長類などに由来する同等の残基を含み、それらはそれらの機能的オルソロジスト(orthologists)である。
【0053】
細胞内シグナル伝達ドメインの1つ以上のITAMは、例えば、突然変異によって修飾され得ることが理解されよう。修飾は、天然ITAMドメインと比較して、ITAMのシグナル伝達機能を増加又は減少させるために使用され得る。
【0054】
上述のように、細胞内シグナル伝達ドメインは、それ自体が一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み得るか、又はそれは1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインなどの1つ以上の二次細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせた一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。したがって、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、それ自体が、又は1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインなどの1つ以上の他の細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせて、CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0055】
共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。
【0056】
「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドに特異的に結合することによって、これらに限定されないが、増殖などのT細胞によって発揮される共刺激応答を媒介する、認識可能なT細胞結合パートナーを指す。共刺激分子は、抗原特異的受容体又はそれらのリガンド以外の細胞表面分子であり、それらは効果的な免疫応答に必要である。共刺激分子は、抗原に対する免疫細胞(例えば、リンパ球)の効率的な応答に必要とされる抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子であり得る。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリーで表され得る:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、リンパ球活性化シグナル伝達分子(SLAMタンパク質)、及びNK細胞活性化受容体。かかる分子の例としては、これらに限定されないが、4-1 BB(CD137)、OX40、ICOS、DAP10、CD27、CD28、CDS、CD30、CD137(4-1BB)、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、GITR、NKG2C、SLAMF7、NKp80、BAFFR、HVEM、BTLA、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、B7-H3、及びCD83と特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。例えば、CD27共刺激は、インビトロでヒトCART細胞の増殖、エフェクター機能、及び生存を増強することが示されており、インビボでヒトT細胞の持続性及び抗腫瘍活性を増大させる(Song et al.Blood.2012;1 19(3):696-706)。
【0057】
特定の実施形態では、本発明のCARは、共刺激分子CD28の細胞内ドメイン、及びより具体的には、配列RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号115)を含む。
【0058】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメイン、一次シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0059】
別の実施形態では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、DAP12、及び4-1BB(CD137)、又はそれらの任意の組み合わせから選択される共刺激分子の細胞内ドメインを含む。
【0060】
特定の実施形態では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内ドメインを更に含む。
【0061】
別の実施形態では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内ドメインに対してN末端側に配置される。別の実施形態では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子CD28の細胞内ドメインであり、CD3ゼータ細胞内ドメインに対してN末端側に配置される。
【0062】
本発明のCARの細胞内部分内の細胞内シグナル伝達配列は、ランダム又は特定の順序で互いに連結され得る。任意選択で、例えば、2~10アミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸)長の短いオリゴリンカー又はポリペプチドリンカーは、細胞内シグナル伝達配列間の連結を形成し得る。一実施形態では、グリシン-セリンダブレットは、好適なリンカーとして使用され得る。別の実施形態では、アラニン又はグリシンなどの単一アミノ酸は、好適なリンカーとして使用され得る。
【0063】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上、例えば、3、4、5つ、又はそれ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含むように設計される。一実施形態では、2つ以上、例えば、2、3、4、5つ、又はそれ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載されるものなどのリンカー分子によって分離される。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、リンカー分子は、グリシン残基である。いくつかの実施形態では、リンカーは、アラニン残基である。
【0064】
好ましい実施形態では、CARの細胞内部分は、
-CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン及びCD28のシグナル伝達ドメイン、
-CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン及び4-1 BBのシグナル伝達ドメイン、
-CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン及びOX40のシグナル伝達ドメイン、
-CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン及びICOSのシグナル伝達ドメイン、
-CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン及びDAP10のシグナル伝達ドメイン、
-CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン、4-1 BBのシグナル伝達ドメイン、及びOX40のシグナル伝達ドメインを含む。
-4-1 BBゼータのシグナル伝達ドメイン及びCD28のシグナル伝達ドメイン。
【0065】
別の実施形態では、CARの細胞内部分は、CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン、4-1 BBのシグナル伝達ドメイン、及びCD28のシグナル伝達ドメインを含む。
【0066】
細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内部分全体、又は天然細胞内シグナル伝達ドメイン全体、それが起源である分子、又はその機能的断片を含み得る。
【0067】
本発明のCARの抗原結合ドメインは、ScFv1及び2つの抗原結合ドメイン、抗原結合ドメイン1、並びに抗原結合ドメイン2から選択される。
【0068】
ScFv1は、
-V及びV領域がヒト化されていることと、
-V領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号1、2、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号1、174、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、
-V領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号175、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする。
【0069】
特定の実施形態では、ScFv1のV領域は、V領域に対してN末端又はC末端に位置する。より好ましい実施形態では、ScFv1のV領域は、V領域に対してN末端に位置する。
【0070】
少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有する抗原結合ドメイン1は、
-少なくとも1つのV領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号7、8、及び9の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくともV領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号10、11、及び12の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする。
【0071】
少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有する抗原結合ドメイン2は、
-V領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号13、14、及び15の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-V領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号16、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号179、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする。
【0072】
本明細書で使用される場合、「CDR配列の機能的等価バリアント」という用語は、特定のCDR配列と実質的に類似した配列同一性を有し、かつ本明細書に記載されるScFvとして抗体、抗体断片、又は抗原結合ドメインの一部である場合に、その同族抗原に結合する能力を実質的に維持する、特定のCDR配列の配列バリアントを指す。例えば、CDR配列の機能的等価バリアントは、1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を含む当該配列のポリペプチド配列誘導体であり得る。一実施形態では、機能的等価バリアントにおける他方による一方のアミノ酸の置換は、保存的置換である。
【0073】
本明細書で使用される場合、「保存的置換」という用語は、類似の化学特性を有する別のアミノ酸によるアミノ酸の置き換えを指す。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野で周知である。以下の6つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0074】
本発明によるCDR配列の機能的等価バリアントは、上記参照配列のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列を含む。CDR配列の機能的等価バリアントは、上記参照配列のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列のN末端で、又はC末端で、又はN末端及びC末端の両方で、少なくとも1個のアミノ酸、又は少なくとも2個のアミノ酸、又は少なくとも3個のアミノ酸、又は少なくとも4個のアミノ酸、又は少なくとも5個のアミノ酸、又は少なくとも6個のアミノ酸、又は少なくとも7個のアミノ酸、又は少なくとも8個のアミノ酸、又は少なくとも9個のアミノ酸、又は少なくとも10個のアミノ酸、又はそれ以上のアミノ酸からなる付加を含むことも企図される。同様に、バリアントは、上記配列のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列のN末端で、又はC末端で、又はN末端及びC末端の両方で、少なくとも1個のアミノ酸、又は少なくとも2個のアミノ酸、又は少なくとも3個のアミノ酸、又は少なくとも4個のアミノ酸、又は少なくとも5個のアミノ酸、又は少なくとも6個のアミノ酸、又は少なくとも7個のアミノ酸、又は少なくとも8個のアミノ酸、又は少なくとも9個のアミノ酸、又は少なくとも10個のアミノ酸、又はそれ以上のアミノ酸からなる欠失を含むことも企図される。
【0075】
本発明によるCDR配列の機能的等価バリアントは、好ましくは、本発明のCARのScFvなどの抗体断片又は抗原結合ドメインの一部である場合に、その同族抗原に結合する配列番号1~18及び174~179のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列の能力の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも200%、又はそれ以上を維持する。その同族抗原に結合するこの能力は、その同族抗原に対する抗体又は抗体断片の親和性、親和力、特異性、及び/又は選択性の値として決定され得る。
【0076】
特定の実施形態では、ScFv1のVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号19、20、21、及び22の配列又はその機能的等価バリアントを含み、ScFv1のVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号23、24、25、及び26の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0077】
別の特定の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号31、32、33、及び34の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号35、36、37、及び38の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0078】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号31、32、33、及び34、配列番号65、66、67、及び68、若しくは配列番号73、74、75、及び76の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号35、36、37、及び38、配列番号69、70、71、及び72、若しくは配列番号77、78、79、及び80又はその機能的等価バリアントを含む。
【0079】
別の特定の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号42、43、44、及び45の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン2の少なくともVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号46、47、48、及び49の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0080】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号42、43、44、及び45、配列番号89、90、91、及び92、若しくは配列番号97、98、99、及び100の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原の少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号46、47、48、及び49、若しくは配列番号93、94、95、及び96の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0081】
本明細書で使用される場合、「FR配列の機能的等価バリアント」という用語は、特定のFR配列と実質的に類似した配列同一性を有し、かつ本明細書に記載される抗体又は抗体結合ドメインの一部である場合に、その同族抗原に結合する能力を実質的に維持する、特定のFR配列の配列バリアントを指す。例えば、FR配列の機能的等価バリアントは、1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を含む当該配列のポリペプチド配列誘導体であり得る。
【0082】
本発明によるFR配列の機能的等価バリアントは、上記参照配列のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列と、少なくともおよそ70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するFR配列を含む。FR配列の機能的等価バリアントは、上記参照配列のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列のN末端で、又はC末端で、又はN末端及びC末端の両方で、少なくとも1個のアミノ酸、又は少なくとも2個のアミノ酸、又は少なくとも3個のアミノ酸、又は少なくとも4個のアミノ酸、又は少なくとも5個のアミノ酸、又は少なくとも6個のアミノ酸、又は少なくとも7個のアミノ酸、又は少なくとも8個のアミノ酸、又は少なくとも9個のアミノ酸、又は少なくとも10個のアミノ酸、又はそれ以上のアミノ酸からなる付加を含むことも企図される。同様に、バリアントは、上記配列のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列のN末端で、又はC末端で、又はN末端及びC末端の両方で、少なくとも1個のアミノ酸、又は少なくとも2個のアミノ酸、又は少なくとも3個のアミノ酸、又は少なくとも4個のアミノ酸、又は少なくとも5個のアミノ酸、又は少なくとも6個のアミノ酸、又は少なくとも7個のアミノ酸、又は少なくとも8個のアミノ酸、又は少なくとも9個のアミノ酸、又は少なくとも10個のアミノ酸、又はそれ以上のアミノ酸からなる欠失を含むことも企図される。
【0083】
本発明によるFR配列の機能的等価バリアントは、好ましくは、本発明の抗原結合ドメインの一部である場合に、その同族抗原に結合する配列番号19~26、31~38、及び42~49のうちの1つに示される対応するアミノ酸配列の能力の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも200%、又はそれ以上を維持する。その同族抗原に結合するこの能力は、その同族抗原に対する抗体又は抗体断片の親和性、親和力、特異性、及び/又は選択性の値として決定され得る。
【0084】
一実施形態では、ScFv1のVLは、配列番号27若しくは180の配列又はその機能的等価バリアントを含み、ScFc1のVHは、その機能的等価バリアントの配列番号28又は181の配列を含む。
【0085】
一実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVLは、配列番号39の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン1のVHは、配列番号40の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0086】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVL領域は、配列番号39、54、若しくは56の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH領域は、配列番号40、53、若しくは55の配列又はその機能的等価バリアントを含み、
【0087】
一実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVLは、配列番号50若しくは184の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVHは、配列番号51の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0088】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVL領域は、配列番号50、184、60、若しくは62の配列を含み、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVH領域は、配列番号51、59、若しくは61から選択される配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0089】
ScFv1のVL及びVH領域の好ましい実施形態は、以下に定義されるとおりである。
【0090】
1.一実施形態では、本発明によるScFv1のVLは、以下であることを特徴とする。
1.1.CDR1領域が、配列KASQNVGTAVA(配列番号10又は16)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)又は配列RASQSVGTAVA(配列番号175)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.2.CDR1領域が、5位にAsn残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)又は配列RASQSVGTAVA(配列番号175)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.3.CDR1領域が、KASQSVGTAVA(配列番号4)の配列又は配列RASQSVGTAVA(配列番号175)に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)又は配列RASQSVGTAVA(配列番号175)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.4.CDR1領域が、配列KASQNVGTAVA(配列番号10又は16)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のアミノ酸又は全てのアミノ酸が、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)における、又は配列RASQSVGTAVA(配列番号175)と対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
1.5.CDR1領域が、配列KASQNVGTAVA(配列番号10又は16)を含まないこと、及びそれが、KASQSVGTAVA(配列番号4)の配列又は配列RASQSVGTAVA(配列番号175)と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸を含むこと。
【0091】
2.一実施形態では、本発明によるScFv1のVLは、以下であることを特徴とする。
2.1.CDR2領域が、配列SASNRYT(配列番号11又は17)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列SASNRFT(配列番号5)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.2.CDR2領域が、6位にTyr残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列SASNRFT(配列番号5)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.3.CDR2領域が、SASNRFT(配列番号5)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列SASNRFT(配列番号5)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.4.CDR2領域が、配列SASNRYT(配列番号11又は17)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、又は全てのアミノ酸が、配列SASNRFT(配列番号5)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
2.5.CDR2領域が、配列SASNRYT(配列番号11又は17)を含まないこと、及びそれが、SASNRFT(配列番号5)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸を含むこと。
【0092】
3.一実施形態では、本発明によるScFv1のVLは、以下であることを特徴とする。
3.1.CDR3領域が、配列QQYSTYPLT(配列番号12)又は配列QQYSSYPLT(配列番号18)を含む配列を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列QQYSTYPLA(配列番号6)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.2.CDR3領域が、9位にThr残基及び/又は5位にSer残基を含まないこと、並びに任意選択で、それが、配列QQYSTYPLA(配列番号6)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.3.CDR3領域が、QQYSTYPLA(配列番号6)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は少なくとも8個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列QQYSTYPLA(配列番号6)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.4.CDR3領域が、配列QQYSTYPLT(配列番号12)又は配列QQYSSYPLT(配列番号18)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、又は全てのアミノ酸が、配列QQYSTYPLA(配列番号6)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
3.5.CDR3領域が、配列QQYSTYPLT(配列番号12)又は配列QQYSSYPLT(配列番号18)を含まないこと、及びそれが、QQYSTYPLA(配列番号6)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個のアミノ酸を含むこと。
【0093】
4.一実施形態では、本発明によるScFv1のVHは、以下であることを特徴とする。
4.1.CDR1領域が、配列TYGMA(配列番号7)又は配列DYGMS(配列番号13)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列DFGMS(配列番号1)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.2.CDR1領域が、1位にThr残基、2位にTyr残基、及び/又は5位にAla残基を含まないこと、並びに任意選択で、それが、配列DFGMS(配列番号1)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.3.CDR1領域が、DFGMS(配列番号1)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列DFGMS(配列番号1)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.4.CDR1領域が、配列TYGMA(配列番号7)又は配列DYGMS(配列番号13)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が、配列DFGMS(配列番号1)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
4.5.CDR1領域が、配列TYGMA(配列番号7)又は配列DYGMS(配列番号13)を含まないこと、及びそれが、DFGMS(配列番号1)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも4個のアミノ酸を含むこと。
【0094】
5.一実施形態では、本発明によるScFv1のVHは、以下であることを特徴とする。
5.1.CDR2領域が、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)又は配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)又は配列TINTNGGTTHYPDSVKG(配列番号174)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.2.CDR2領域が、4位にSer又はGly残基、7位にVal残基、8位にLys残基、9位にIle残基、10位にTyr残基、11位にHis残基、12位にVal残基を含まないこと、及び及び任意選択で、それが、配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)又は配列TINTNGGTTHYPDSVKG(配列番号174)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.3.CDR2領域が、TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号8)の配列又は配列TINTNGGTTHYPDSVKG(配列番号14)に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、又は少なくとも16個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)又は配列TINTNGGTTHYPDSVKG(配列番号174)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.4.CDR2領域が、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)又は配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個のアミノ酸、又は全てのアミノ酸が、配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)又は配列TINTNGGTTHYPDSVKG(配列番号174)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
5.5.CDR2領域が、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)又は配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)を含まないこと、及びそれが、TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)の配列又は配列TINTNGGTTHYPDSVKG(配列番号174)と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、又は少なくとも16個のアミノ酸を含み、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は少なくとも8個のアミノ酸を含むこと。
【0095】
6.一実施形態では、本発明によるScFv1のVHは、以下であることを特徴とする。
6.1.CDR3領域が、配列EGFDY(配列番号9又は15)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列EGLDY(配列番号3)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.2.CDR3領域が、3位にPhe残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列EGLDY(配列番号3)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.3.CDR3領域が、EGLDY(配列番号3)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列EGLDY(配列番号3)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.4.CDR3領域が、配列EGFDY(配列番号9又は15)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が、配列EGLDY(配列番号3)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
6.5.CDR3領域が、配列EGFDY(配列番号9又は15)を含まないこと、及びそれが、EGLDY(配列番号3)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも4個のアミノ酸を含むこと。
【0096】
抗原結合ドメイン1のVL及びVH領域の好ましい実施形態は、以下に定義されるとおりである。
【0097】
1.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン1のVLは、以下であることを特徴とする。
1.1.CDR1領域が、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列KASQNVGTAVA(配列番号10)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.2.CDR1領域が、5位にSer残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列KASQNVGTAVA(配列番号10)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.3.CDR1領域が、KASQNVGTAVA(配列番号10)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列KASQNVGTAVA(配列番号10)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.4.CDR1領域が、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のアミノ酸又は全てのアミノ酸が、配列KASQNVGTAVA(配列番号10)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
1.5.CDR1領域が、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)を含まないこと、及びそれが、KASQNVGTAVA(配列番号10)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸を含むこと。
【0098】
2.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン1のVLは、以下であることを特徴とする。
2.1.CDR2領域が、配列SASNRFT(配列番号5)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列SASNRYT(配列番号11)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.2.CDR2領域が、6位にPhe残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列SASNRYT(配列番号11)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.3.CDR2領域が、SASNRYT(配列番号11)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列SASNRYT(配列番号11)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.4.CDR2領域が、配列SASNRFT(配列番号5)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、又は全てのアミノ酸が、配列SASNRYT(配列番号11)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
2.5.CDR2領域が、配列SASNRFT(配列番号5)を含まないこと、及びそれが、SASNRYT(配列番号11)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸を含むこと。
【0099】
3.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン1のVLは、以下であることを特徴とする。
3.1.CDR3領域が、配列QQYSTYPLA(配列番号6)又は配列QQYSSYPLT(配列番号18)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列QQYSTYPLT(配列番号12)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.2.CDR3領域が、9位にAla残基及び/又は5位にセリン残基を含まないこと、並びに任意選択で、それが、配列QQYSTYPLT(配列番号12)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.3.CDR3領域が、QQYSTYPLT(配列番号12)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は少なくとも8個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列QQYSTYPLT(配列番号12)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.4.CDR3領域が、配列QQYSTYPLA(配列番号6)又は配列QQYSSYPLT(配列番号18)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、又は全てのアミノ酸が、配列QQYSTYPLT(配列番号12)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
3.5.CDR3領域が、配列QQYSTYPLA(配列番号6)又は配列QQYSSYPLT(配列番号18)を含まないこと、及びそれが、QQYSTYPLT(配列番号12)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個のアミノ酸を含むこと。
【0100】
4.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン1のVHは、以下であることを特徴とする。
4.1.CDR1領域が、配列DFGMS(配列番号1)又は配列DYGMS(配列番号13)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列TYGMA(配列番号7)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.2.CDR1領域が、1位にAsp残基、2位にPhe残基、及び/又は5位にSer残基を含まないこと、並びに任意選択で、それが、配列TYGMA(配列番号7)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.3.CDR1領域が、TYGMA(配列番号7)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列TYGMA(配列番号7)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.4.CDR1領域が、配列DFGMS(配列番号1)又は配列DYGMS(配列番号13)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が、配列TYGMA(配列番号7)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
4.5.CDR1領域が、配列DFGMS又は配列DYGMSを含まないこと、及びそれが、TYGMA(配列番号7)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも4個のアミノ酸を含むこと。
【0101】
5.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン1のVHは、以下であることを特徴とする。
5.1.CDR2領域が、配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)又は配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.2.CDR2領域が、4位にThr若しくはGly残基、7位にVal残基、8位にThr、9位にIle残基、10位にHis残基、12位にVal残基、及び/又は14位にAsn残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.3.CDR2領域が、TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、又は少なくとも16個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.4.CDR2領域が、配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)又は配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個のアミノ酸、又は全てのアミノ酸が、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
5.5.CDR2領域が、配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)又は配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)を含まないこと、及びそれが、TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、又は少なくとも16個のアミノ酸を含み、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は少なくとも8個のアミノ酸を含むこと。
【0102】
6.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン1のVHは、以下であることを特徴とする。
6.1.CDR3領域が、配列EGLDY(配列番号3)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列EGFDY(配列番号9)又は配列DYと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.2.CDR3領域が、3位にLeu残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列EGFDY(配列番号9)又は配列DYと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.3.CDR3領域が、EGFDY(配列番号9)の配列又は配列DYに対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列EGFDY(配列番号9)又は配列DYと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.4.CDR3領域が、配列EGLDY(配列番号3)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が、配列EGFDY(配列番号9)における又は配列DYと対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
6.5.CDR3領域が、配列EGLDY(配列番号3)を含まないこと、及びそれが、EGFDY(配列番号9)の配列又は配列DYと共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも4個のアミノ酸を含むこと。
【0103】
抗原結合ドメイン2のVL及びVH領域の好ましい実施形態は、以下に定義されるとおりである。
【0104】
1.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン2のVLは、以下であることを特徴とする。
1.1.CDR1領域が、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列KASQNVGTAVA(配列番号16)又は配列RASQNVGTAVA(配列番号179)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.2.CDR1領域が、5位にSer残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列KASQNVGTAVA(配列番号16)又は配列RASQNVGTAVA(配列番号179)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.3.CDR1領域が、KASQNVGTAVA(配列番号16)の配列又は配列RASQNVGTAVA(配列番号179)に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列KASQNVGTAVA(配列番号16)又は配列RASQNVGTAVA(配列番号179)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
1.4.CDR1領域が、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のアミノ酸又は全てのアミノ酸が、配列KASQNVGTAVA(配列番号16)又は配列RASQNVGTAVA(配列番号179)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
1.5.CDR1領域が、配列KASQSVGTAVA(配列番号4)を含まないこと、及びそれが、KASQNVGTAVA(配列番号16)の配列又は配列RASQNVGTAVA(配列番号179)と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、又は少なくとも10個のアミノ酸を含むこと。
【0105】
2.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン2のVLは、以下であることを特徴とする。
2.1.CDR2領域が、配列SASNRFT(配列番号5)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列SASNRYT(配列番号17)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.2.CDR2領域が、6位にPhe残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列SASNRYT(配列番号17)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.3.CDR2領域が、SASNRYT(配列番号17)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列SASNRYT(配列番号17)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
2.4.CDR2領域が、配列SASNRFT(配列番号5)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、又は全てのアミノ酸が、配列SASNRYT(配列番号17)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
2.5.CDR2領域が、配列SASNRFT(配列番号5)を含まないこと、及びそれが、SASNRYT(配列番号17)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸を含むこと。
【0106】
3.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン2のVLは、以下であることを特徴とする。
3.1.CDR3領域が、配列QQYSTYPLA(配列番号6)又は配列QQYSTYPLT(配列番号12)を含む配列を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列QQYSSYPLT(配列番号18)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.2.CDR3領域が、9位にAla残基及び/又は5位にThr残基を含まないこと、並びに任意選択で、それが、配列QQYSSYPLT(配列番号18)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.3.CDR3領域が、QQYSSYPLT(配列番号18)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は少なくとも8個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列QQYSSYPLT(配列番号18)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
3.4.CDR3領域が、配列QQYSTYPLA(配列番号6)又は配列QQYSTYPLT(配列番号12)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、又は全てのアミノ酸が、配列QQYSSYPLT(配列番号18)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
3.5.CDR3領域が、配列QQYSTYPLA(配列番号6)又は配列QQYSTYPLT(配列番号12を含まないこと、及びそれが、QQYSSYPLT(配列番号18)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個のアミノ酸を含むこと。
【0107】
4.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン2のVHは、以下であることを特徴とする。
4.1.CDR1領域が、配列TYGMA(配列番号7)又は配列DFGMS(配列番号1)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列DYGMS(配列番号13)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.2.CDR1領域が、1位にThr残基、2位にPhe残基、及び/又は5位にAla残基を含まないこと、並びに任意選択で、それが、配列DYGMS(配列番号13)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.3.CDR1領域が、DYGMS(配列番号13)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列DYGMS(配列番号13)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
4.4.CDR1領域が、配列TYGMA(配列番号7)又は配列DFGMS(配列番号1)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が、配列DYGMS(配列番号13)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
4.5.CDR1領域が、配列TYGMA(配列番号7)又は配列DFGMS(配列番号1)を含まないこと、及びそれが、DYGMS(配列番号13)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも4個のアミノ酸を含むこと。
【0108】
5.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン2のVHは、以下であることを特徴とする。
5.1.CDR2領域が、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)又は配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.2.CDR2領域が、4位にSer若しくはThr残基、7位にGly残基、8位にThr、9位にThr残基、10位にHis残基、11位にHis残基、12位にPro残基、及び/又は14位にAsn残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.3.CDR2領域が、TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、又は少なくとも16個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
5.4.CDR2領域が、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)又は配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個のアミノ酸、又は全てのアミノ酸が、配列TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
5.5.CDR2領域が、配列TINSNGGKTYHPDSVKG(配列番号8)又は配列TINTNGGTTHYPDNVKG(配列番号2)を含まないこと、及びそれが、TINGNGVKIYYVDSVKG(配列番号14)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、又は少なくとも16個のアミノ酸を含み、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は少なくとも8個のアミノ酸を含むこと。
【0109】
6.一実施形態では、本発明による抗原結合ドメイン2のVHは、以下であることを特徴とする。
6.1.CDR3領域が、配列EGLDY(配列番号3)を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列EGFDY(配列番号15)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.2.CDR3領域が、3位にLeu残基を含まないこと、及び任意選択で、それが、配列EGFDY(配列番号15)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.3.CDR3領域が、EGFDY(配列番号15)の配列に対して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が異なること、及び任意選択で、それが、配列EGFDY(配列番号15)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも99%の配列同一性を示すこと。
6.4.CDR3領域が、配列EGLDY(配列番号3)を含まないこと、及び少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個のアミノ酸が、配列EGFDY(配列番号15)における対応する位置で見出されるアミノ酸の保存的置換であること。
6.5.CDR3領域が、配列EGLDY(配列番号3)を含まないこと、及びそれが、EGFDY(配列番号15)の配列と共通して、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも4個のアミノ酸を含むこと。
【0110】
別の実施形態では、ScFv1は、配列番号30若しくは182の配列又はその機能的等価物を含む。
【0111】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン1は、配列番号41の配列又はその機能的等価物を含む。
【0112】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン1は、配列番号41、187、188、若しくは189の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0113】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン2は、配列番号52若しくは186の配列又はその機能的等価物を含む。
【0114】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン2は、配列番号52、186、190、若しくは191の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0115】
特定の実施形態では、ScFv1のVLは、配列番号27又は180と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、ScFv1のVLは、配列番号27若しくは180の配列、又は配列番号27若しくは180と少なくとも85%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0116】
特定の実施形態では、ScFv1のVHは、配列番号28又は181と少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、ScFv1のVHは、配列番号28若しくは181の配列、又は配列番号28若しくは181と少なくとも67%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0117】
特定の実施形態では、ScFv1は、配列番号28の配列、又はその機能的等価バリアントを含む。特定の実施形態では、ScFv1は、配列番号30又は182と少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、ScFv1は、配列番号30若しくは182の配列、又は配列番号30若しくは182と少なくとも76%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0118】
別の特定の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVLは、配列番号39の配列を含み、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVHは、配列番号40の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0119】
特定の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVLは、配列番号39と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVLは、配列番号39の配列、又は配列番号39と少なくとも39%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0120】
特定の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVHは、配列番号40と少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVHは、配列番号40の配列、又は配列番号40と少なくとも74%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0121】
特定の実施形態では、抗原結合ドメイン1は、配列番号41の配列又はその機能的等価バリアントを含む。別の実施形態では、抗原結合ドメイン1は、配列番号41と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、抗原結合ドメイン1は、配列番号41の配列、又は配列番号41と少なくとも85%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0122】
別の特定の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVLは、配列番号50若しくは184の配列又はその機能的等価物を含み、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVHは、配列番号51の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0123】
特定の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVLは、配列番号50又は184と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、抗原結合ドメインの少なくとも1つのVLは、配列番号50若しくは184の配列、又は配列番号50若しくは184と少なくとも89%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0124】
特定の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVHは、配列番号51と少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVHは、配列番号51の配列、又は配列番号51と少なくとも67%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0125】
特定の実施形態では、抗原結合2は、配列番号52若しくは186の配列又はその機能的等価バリアントを含む。別の実施形態では、抗原結合ドメイン2は、配列番号52又は186と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号52若しくは186の配列、又は配列番号52若しくは186と少なくとも78%の配列同一性を有する機能的等価バリアントを含む。
【0126】
特定の実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメイン1及び2のVH及び/又はVL領域は、ヒト化される。
【0127】
したがって、特定の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH領域は、配列番号53及び55から選択されるヒト化配列、又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVL領域は、配列番号54及び56から選択されるヒト化配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0128】
特定の実施形態では、抗原結合ドメイン1は、配列番号187、188、及び189から選択されるヒト化配列を含む。
【0129】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH及びVL領域は、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域を含み、少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号65、66、67、及び68の配列、又はその機能的等価バリアントを含み、少なくともVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号69、70、71、及び72の配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0130】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH及びVL領域は、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域を含み、少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号73、74、75、及び76の配列、又はその機能的等価バリアントを含み、少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号77、78、79、及び80の配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0131】
別の実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH領域は、少なくとも1つのヒト化FR領域、少なくとも2つのヒト化FR領域、少なくとも3つのヒト化FR領域、又は少なくとも4つのヒト化FR領域を含み、当該FR領域は、
FR1:配列番号65及び73;
FR2:配列番号66及び74;
FR3:配列番号67及び75;並びに
FR4:配列番号68及び76;
又はその機能的等価バリアントから選択される。
【0132】
別の実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVL領域は、少なくとも1つのヒト化FR領域、少なくとも2つのヒト化FR領域、少なくとも3つのヒト化FR領域、又は少なくとも4つのヒト化FR領域を含み、当該FR領域は、
FR1:配列番号69及び77;
FR2:配列番号70及び78;
FR3:配列番号71及び79i;並びに
FR4:配列番号72及び80;
又はその機能的等価バリアントから選択される。
【0133】
同様に、特定の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVH領域は、配列番号59及び61から選択されるヒト化配列、又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVH領域は、配列番号60及び62から選択されるヒト化配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0134】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン2は、配列番号190及び191から選択されるヒト化配列を含む。
【0135】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVH及びVL領域は、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域を含み、少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号89、90、91、及び92の配列、又はその機能的等価バリアントを含み、少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号93、94、95、及び96の配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0136】
別の実施形態では、抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVH及びVL領域は、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域を含み、少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号97、98、99、及び100の配列、又はその機能的等価バリアントを含み、少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号101、102、103、及び104の配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0137】
別の実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVH領域は、少なくとも1つのヒト化FR領域、少なくとも2つのヒト化FR領域、少なくとも3つのヒト化FR領域、又は少なくとも4つのヒト化FR領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化FR領域は、FR1については配列番号89及び97、FR2については配列番号90及び98、FR3については配列番号91及び99、並びにFR4については配列番号92及び100、又はその機能的等価バリアントからなる群から選択される。
【0138】
別の実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメイン2の少なくとも1つのVL領域は、少なくとも1つのヒト化FR領域、少なくとも2つのヒト化FR領域、少なくとも3つのヒト化FR領域、又は少なくとも4つのヒト化FR領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化FR領域は、FR1については配列番号93及び101、FR2については配列番号94及び102、FR3については配列番号95及び103、並びにFR4については配列番号96及び104、又はその機能的等価バリアントからなる群から選択される。
【0139】
いくつかの例では、CARは、任意の2つの隣接するドメイン間にリンカーを含む。例えば、リンカーは、抗原結合ドメインの膜貫通ドメインと共刺激ドメインとの間に配置され得る。別の例として、リンカーは、抗原結合ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に配置され得る。
【0140】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインがScFvである場合、抗原結合ドメインのVH及びVL領域は、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される。
【0141】
一実施形態では、抗原結合ドメイン1は、ScFvであり、ScFvのVH及びVL領域は、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される。別の実施形態では、抗原結合ドメイン2は、ScFvであり、ScFvのVH及びVL領域は、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される。
【0142】
特定の実施形態では、リンカーは、ScFvのVH領域とVL領域との間に位置する。更に特定の実施形態では、VHとVLとの間のリンカーは、配列番号29の配列を含む。一実施形態では、本発明のCARのScFvがScFv1である場合、ScFvは、構造VL-リンカー-VH又はVH-リンカー-VLを含む。特定の実施形態では、本発明のCARのScFvがScFv1である場合、ScFvは、構造VL-リンカー-VHを含む。別の実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメイン1又は2がScFvである場合、ScFvは、構造VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHを有し得る。特定の実施形態では、リンカーは、VL領域に対してC末端に、及びVH領域に対してN末端に位置し、すなわち、VL-リンカー-VHである。
【0143】
「可撓性ポリペプチドリンカー」又は「リンカー」という用語は、可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を一緒に連結するか、又は本発明のCARの任意の領域又は領域を連結するための、単独で又は組み合わせて使用されるグリシン及び/又はセリン残基などのアミノ酸からなるペプチドリンカーを指す。
【0144】
リンカーペプチドは、様々なアミノ酸配列のうちのいずれかを有し得る。タンパク質は、スペーサーペプチドによって結合され得、概して可撓性の性質を有するが、他の化学連結は除外されない。リンカーは、約6~約40アミノ酸長、又は約6~約25アミノ酸長のペプチドであり得る。これらのリンカーは、合成のリンカーコードオリゴヌクレオチドを使用してタンパク質を結合させることによって作製することができる。ある程度の可撓性を有するペプチドリンカーを使用することができる。連結ペプチドは、好適なリンカーが、概して可撓性のペプチドをもたらす配列を有することを踏まえて、実質的に任意のアミノ酸配列を有してもよい。グリシン及びアラニンなどの小さなアミノ酸の使用は、可撓性ペプチドの作製に有用である。かかる配列の作製は、当業者にとって日常的なものである。
【0145】
好適なリンカーは、容易に選択することができ、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、又は7アミノ酸~8アミノ酸を含む、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸などの異なる長さの好適なもののうちのいずれかであり得、1、2、3、4、5、6、又は7アミノ酸であり得る。
【0146】
例示的な可撓性リンカーには、配列TGSTSGSGKPGSGEGS(配列番号29)を有するリンカーが含まれる。好適なリンカーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、GSGGS n(配列番号117)及びGGGS n(配列番号118)を含み、nは少なくとも1つの整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当該技術分野で既知の他の可撓性リンカーが挙げられる。特定の実施形態では、リンカーは、式(GS)のグリシンポリマーを含む。グリシン及びグリシン-セリンポリマーは、これらのアミノ酸の両方が比較的非構造化であり、したがって、構成要素間の中性テザーとして作用し得るため、興味深い。グリシンはアラニンよりも有意に多くのphi-psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ないため、グリシンポリマーは特に興味深い。例示的な可撓性リンカーとしては、これらに限定されないが、GGSG(配列番号119)、GGSGG(配列番号120)、GSGSG(配列番号121)、GSGGG(配列番号122)、GGGSG(配列番号123)、GSSSG(配列番号124)などが挙げられる。当業者であれば、上に記載される任意の要素にコンジュゲート化されたペプチドの設計が、全て又は部分的に可撓性であるリンカーを含むことができ、それによりリンカーは、可撓性リンカー、並びに可撓性の低い構造を付与する1つ以上の部分を含むことができることを認識するであろう。
【0147】
別の実施形態では、本発明のCARは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にヒンジドメインを更に含む。
【0148】
本明細書で使用される場合、「ヒンジドメイン」、「ヒンジ領域」、又は「スペーサー」は、結合部分及びT細胞膜の分離及び柔軟性を可能にするアミノ酸領域を指す。可撓性ヒンジの長さはまた、比較的アクセス不可能なエピトープへのより良好な結合を可能にし、例えば、より長いヒンジドメインは、最適な結合を可能にする。当業者は、所与のCAR標的に対して適切なヒンジを決定することができであろう。
【0149】
いくつかの例では、本発明によるCARの第1のポリペプチドは、ヒンジドメインを含み、ヒンジドメインは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に挟まれる。いくつかの例では、ヒンジドメインは、免疫グロブリン重鎖ヒンジドメインである。いくつかの例では、ヒンジドメインは、受容体(例えば、CD8由来ヒンジドメイン)に由来するドメイン領域ポリペプチドである。
【0150】
ヒンジドメインは、約10アミノ酸~約200アミノ酸、好ましくは50~150アミノ酸、より好ましくは75~125アミノ酸の長さを有し得る。
【0151】
例示的なスペーサーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号125)及び(GGGS)n(配列番号126)を含み、nは少なくとも1つの整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当該技術分野で既知の他の可撓性リンカーが挙げられる。グリシン及びグリシン-セリンポリマーが使用をすることができ、Gly及びSerの両方が比較的非構造化であり、したがって、構成要素間の中性テザーとして作用し得る。グリシンポリマーを使用することができ、グリシンはアラニンよりも有意に多くのphi-psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ない。例示的なスペーサーは、これらに限定されないが、GGSG(配列番号127)、GGSGG(配列番号128)、GSGSG(配列番号129)、GSGGG(配列番号130)、GGGSG(配列番号131)、GSSSG(配列番号132)などを含む、アミノ酸配列を含み得る。
【0152】
特定の実施形態では、スペーサーは、アミノ酸配列GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号116)を含む。
【0153】
いくつかの例では、本発明によるCARの第1のポリペプチド中のヒンジドメインは、少なくとも1つのシステインを含む。例えば、いくつかの例では、ヒンジドメインは、配列Cys-Pro-Pro-Cys(配列番号133)を含み得る。存在する場合、第1のCARのヒンジドメイン中のシステインは、第2のCARのヒンジドメインとのジスルフィド結合を形成するために利用可能であり得る。
【0154】
免疫グロブリンヒンジドメインアミノ酸配列は、当該技術分野で既知であり、例えば、Tan et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:162、及びHuck et al.(1986)Nucl.Acids Res.14:1779を参照されたい。非限定的な例として、免疫グロブリンヒンジドメインは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含み得る:DKTHT(配列番号134);CPPC(配列番号133);CPEPKSCDTPPPCPR(配列番号136)(例えば、Glaser et al.(2005)J.Biol.Chem.280:41494を参照されたい);ELKTPLGDTTHT(配列番号137);KSCDKTHTCP(配列番号138);KCCVDCP(配列番号139);KYGPPCP(配列番号140);EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号141)(ヒトIgG1ヒンジ);ERKCCVECPPCP(配列番号142(ヒトIgG2ヒンジ);ELKTPLGDTTHTCPRCP(配列番号143)(ヒトIgG3ヒンジ);SPNMVPHAHHAQ(配列番号144)(ヒトIgG4ヒンジ)など。
【0155】
ヒンジドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4、ヒンジドメインのアミノ酸配列を含み得る。ヒンジドメインは、野生型(天然発生型)ヒンジドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸置換及び/又は挿入及び/又は欠失を含み得る。例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、Tyrで置換することができ、それによってヒンジドメインは、配列EPKSCDKTYTCPPCP(配列番号145)を含み、例えば、Yan et al.(2012)J.Biol.Chem.287:5891を参照されたい。
【0156】
ヒンジドメインは、ヒトCD8に由来するアミノ酸配列を含み得、例えば、ヒンジドメインは、以下のアミノ酸配列を含み得る:TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号146)、又はそのバリアント。
【0157】
特定の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインである。
【0158】
別の実施形態では、本発明のCARは、N末端からC末端に、抗p95HER2軽鎖可変ドメイン、リンカードメイン、抗p95HER2重鎖可変ドメイン、CD8、ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、続いてCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0159】
特定の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインであり、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインであり、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28共刺激ドメインである。
【0160】
特定の実施形態では、本発明のCARは、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメイン、及びCD28共刺激ドメインを含む。
【0161】
本発明のCARに関連する核酸及び宿主細胞
第2の態様では、本発明は、本発明のCARをコードする核酸に関する。
【0162】
本開示は、本発明のCARのうちのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0163】
「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、及び単鎖又は二本鎖形態のいずれかのそれらのポリマーを指す。具体的に限定されない限り、用語は、参照核酸のものと類似した結合能力を有し、かつ天然発生型ヌクレオチドと同様に代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。別段の示唆が無い限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたバリアント(例えば、縮重コドンでの置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補性配列、並びに直接的な形態で示される配列も暗示する。特に、縮重コドンによる置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が、混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基を有する残基によって置き換えられる配列を作製することによって得ることができる。
【0164】
いくつかの例では、主題の核酸は、例えば、哺乳動物細胞における、本開示のCARの産生を提供する。他の場合では、主題の核酸は、CARコード核酸の増幅を提供する。
【0165】
本発明のCARのうちのいずれかをコードするヌクレオチド配列は、転写制御エレメント、例えば、プロモーター、及びエンハンサーなどに作動可能に連結され得る。
【0166】
好適なプロモーター及びエンハンサーエレメントは、当該技術分野で既知である。細菌細胞における発現については、好適なプロモーターとしては、これらに限定されないが、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダP、及びtrcが挙げられる。真核細胞における発現について、好適なプロモーターとしては、これらに限定されないが、軽鎖及び/又は重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーター及びエンハンサーエレメント、サイトメガロウイルス即時早期プロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター、早期及び後期SV40プロモーター、レトロウイルス由来の長末端反復に存在するプロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、並びに様々な当該技術分野で既知の組織特異的プロモーターが挙げられる。
【0167】
可逆的誘導性プロモーターを含む好適な可逆的プロモーターは、当該技術分野で既知である。かかる可逆的なプロモーターは、例えば、真核生物及び原核生物など、多くの生物から単離され、誘導され得る。第2の生物体、例えば、第1の原核生物及び第2の真核生物、第1の真核生物及び第2の原核生物などにおける使用のための第1の生物に由来する可逆的プロモーターの修飾は、当該技術分野で周知である。かかる可逆的プロモーター、及びかかる可逆的なプロモーターに基づくが、追加の制御タンパク質も含む系には、これらに限定されないが、アルコール制御プロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランス活性化因子タンパク質(AlcR)に応答するプロモーターなど)、テトラサイクリン制御プロモーター(例えば、TetActivators、TetON、TetOFFなどを含むプロモーター系)、ステロイド制御プロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体プロモーター系、ヒトエストロゲン受容体プロモーター系、レチノイドプロモーター系、甲状腺プロモーター系、エクジソンプロモーター系、ミフェプリストンプロモーター系など)、金属制御プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター系など)、病因関連制御プロモーター(例えば、サリチル酸制御プロモーター、エチレン制御プロモーター、ベンゾチアジアゾール制御プロモーターなど)、温度制御プロモーター(例えば、熱ショック誘導性プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、ダイズ熱ショックプロモーターなど)、光制御プロモーター、合成誘導性プロモーターなどが含まれる。
【0168】
いくつかの例では、好適なプロモーターを含む遺伝子座又は構築物又は導入遺伝子は、誘導性系の誘導により不可逆的に切り替わる。不可逆的スイッチの誘導に好適な系は、当該技術分野で周知であり、例えば、不可逆的スイッチの誘導は、Cre-lox媒介性組換えを利用してもよい。当該技術分野に既知のリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組換え部位などの任意の好適な組み合わせは、不可逆的に切替可能なプロモーターを生成するのに使用され得る。本明細書で他の箇所に記載される部位特異的組換えを行うための方法、機構、及び要件は、不可逆的に切り替えられたプロモーターの生成における使用を見出し、当該技術分野で周知である。
【0169】
いくつかの例では、プロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、好中球特異的プロモーター、又はNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターを使用することができる。例えば、CD8遺伝子プロモーターを使用することができる。NK細胞特異的発現は、Ncr1(p46)プロモーターの使用によって達成され得、例えば、Eckelhart et al.(2011)Blood117:1565を参照されたい。
【0170】
いくつかの実施形態では、例えば、酵母細胞での発現について、好適なプロモーターは、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーターなどの構成的プロモーター;又はGAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PHO5プロモーター、CUP1プロモーター、GAL7プロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター、及びAOX1(例えば、Pichiaで使用するため)などの制御可能プロモーターである。好適なベクター及びプロモーターの選択は、当業者のレベルに十分範囲内である。
【0171】
原核宿主細胞における使用に好適なプロモーターには、これらに限定されないが、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター;trcプロモーター;tacプロモーターなど;araBADプロモーター;インビボ制御プロモーター、例えば、ssaGプロモーター又は関連するプロモーターなど、pagCプロモーター、nirBプロモーターなど;シグマ70プロモーター、例えば、コンセンサスシグマ70プロモーター;定常相プロモーター、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど;病原性島SPI-2に由来するプロモーター;actAプロモーター;rpsMプロモーター;tetプロモーター;SP6プロモーターなどが含まれる。Escherichia coliなどの原核生物における使用に好適な強力なプロモーターには、これらに限定されないが、Trc、Tac、T5、T7、及びP Lambdaが含まれる。細菌宿主細胞における使用のためのオペレーターの非限定的な例としては、ラクトースプロモーターオペレーター(ラクトースと接触した場合、LacIリプレッサータンパク質が立体構造を変化させ、それによって、LacIリプレッサータンパク質がオペレーターに結合するのを防ぐ)、トリプトファンプロモーターオペレーター(トリプトファンとコンジュゲート化された場合、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターに結合する立体構造を有し、トリプトファンの不在下で、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターに結合しない立体構造を有する)、及びtacプロモーターオペレーターが挙げられる。
【0172】
特定の実施形態では、本発明のCARをコードする核酸は、核酸の発現後に、CARに対してN末端に位置するシグナル配列をもたらす、リーダー配列をコードする配列を更に含む。
【0173】
本明細書で言及される場合、「リーダーペプチド」という用語は、当該技術分野でのその通常の意味に従って使用され、約5~30アミノ酸の長さを有するペプチドを指す。リーダーペプチドは、分泌経路の一部を形成する新たに合成されたタンパク質のN末端に存在する。分泌経路のタンパク質には、これらに限定されないが、ある特定の細胞小器官(小胞体、ゴルジ体、又はエンドソーム)のいずれかの内部に存在するタンパク質が含まれるか、細胞から分泌されるか、又は細胞膜に挿入される。いくつかの実施形態では、リーダーペプチドは、タンパク質の膜貫通ドメインの一部を形成する。
【0174】
いくつかの実施形態では、単離された核酸は、N末端からC末端までタンパク質をコードし、リーダーペプチドは、分泌経路の一部を形成する新たに合成されたタンパク質のN末端に存在する。分泌経路のタンパク質には、これらに限定されないが、ある特定の細胞小器官(小胞体、ゴルジ体、又はエンドソーム)のいずれかの内部に存在するタンパク質が含まれるか、細胞から分泌されるか、又は細胞膜に挿入される。いくつかの実施形態では、リーダーペプチドは、タンパク質の膜貫通ドメインの一部を形成する。
【0175】
いくつかの実施形態では、単離された核酸は、N末端からC末端まで、タンパク質:リーダーペプチド、抗p95HER2軽鎖可変ドメイン、リンカードメイン、抗p95HER2重鎖可変ドメイン、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、続いてCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインをコードする。
【0176】
別の実施形態では、リーダー配列は、CD8リーダー配列である。特定の実施形態では、リーダーペプチドは、配列番号147(MALPVTALLLPLALLLHAARP)の配列を含む。
【0177】
第3の態様では、本発明は、本発明の核酸を含む発現ベクターに関する。
【0178】
本明細書で使用される場合、「ベクター」、「クローニングベクター」、及び「発現ベクター」は、宿主が形質転換されるビヒクルであり、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)は、ポリヌクレオチド配列(例えば、外来遺伝子)が宿主細胞に導入され、ベクターがプラスミド、ファージ、ウイルスなどを含むことを促進するビヒクルを意味する。
【0179】
本発明のCARのうちのいずれかをコードするヌクレオチド配列は、発現ベクター及び/又はクローニングベクター中に存在し得る。発現ベクターは、選択可能マーカー、複製の起源、並びにベクターの複製及び/又は維持を提供する他の特徴を含み得る。好適な発現ベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが含まれる。
【0180】
多数の好適なベクター及びプロモーターが当業者に既知であり、多くが主題の組換え構築物を生成するために市販されている。以下のベクターは、例として提供される。細菌:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene、La Jolla,Calif.,USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、及びpRIT5(Pharmacia、Uppsala,Sweden)。真核生物:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVL(Pharmacia)。
【0181】
発現ベクターは、概して、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに位置する好都合な制限部位を有する。発現宿主内で作動可能な選択可能マーカーが存在し得る。好適な発現ベクターには、これらに限定されないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルスに基づくウイルスベクター、レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、並びにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、鳥類白血球症ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳腺腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)などが含まれる。
【0182】
上述のように、いくつかの実施形態では、本発明のCARのうちのいずれかを含む核酸は、いくつかの実施形態では、RNA、例えば、インビトロで合成されたRNAである。RNAのインビトロ合成のための方法は、当該技術分野で既知であり、任意の既知の方法を使用して、本開示のヘテロ二量体の条件付活性CARの第1及び/又は第2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを合成することができる。宿主細胞にRNAを導入する方法は、当該技術分野で既知である。本開示のヘテロ二量体の条件付活性CARの第1及び/又は第2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞に導入することは、インビトロ又はエクスビボ又はインビボで実施することができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)は、本開示のヘテロ二量体の条件付活性CARの第1及び/又は第2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを用いて、インビトロ又はエクスビボで電気穿孔され得る。
【0183】
CARポリペプチド又はその部分の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターはまた、トランスフェクトされるか、又はウイルスベクターを介して感染されることを求められる細胞集団からの発現細胞の特定及び選択を容易にするために、選択可能マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか、又は両方を含むことができ、他の態様では、選択可能マーカーは、別個のDNA片上に担持され、同時トランスフェクション手順で使用され得る。選択可能マーカー及びレポーター遺伝子の両方が、宿主細胞における発現を可能にする適切な制御配列に隣接してもよい。有用な選択可能マーカーには、例えば、ネオなどの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞の特定及び制御配列の機能性の評価に使用される。概して、レポーター遺伝子は、レシピエント生物又は組織内に存在しないか、又はレシピエント生物又は組織によって発現され、かつその発現が、例えば、酵素活性など、何らかの容易に検出可能な特性によって現れるポリペプチドをコードする、遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が含まれ得る。好適な発現系は周知であり、既知の技術を使用して調製されるか、又は商業的に取得され得る。概して、レポーター遺伝子の発現の最高レベルを示す最小の5’隣接領域を有する構築物は、プロモーターとして特定される。かかるプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用され得る。
【0184】
第4の態様では、本発明は、本発明の核酸又は本発明の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0185】
「宿主細胞」又は「操作された細胞」という用語は、遺伝子、DNA若しくはRNA配列、又はタンパク質若しくはポリペプチドの付加又は修飾によって修飾、形質転換、又は操作される任意の生物の任意の細胞を意味する。また、かかる細胞の子孫を指す。本発明の宿主細胞又は遺伝子操作された細胞は、キメラ抗原受容体又はキメラ抗原受容体複合体をコードするDNA又はRNA配列を含み、かつ細胞表面上にキメラ受容体を発現する、T細胞、NK細胞、又はNKT細胞などの単離された免疫細胞を含む。単離された宿主細胞及び操作された細胞は、例えば、NK若しくはNKT細胞活性又はTリンパ球活性の増強、がんの治療、及び感染性疾患の治療に使用され得る。
【0186】
一実施形態では、本明細書に記載されるCARポリペプチドのうちのいずれかを含む細胞、又は本明細書に記載されるCARポリペプチドのうちのいずれかをコードする核酸は、哺乳動物細胞である。
【0187】
好適な哺乳動物細胞には、初代細胞及び不死化細胞株が含まれる。好適な哺乳動物細胞株には、ヒト細胞株、非ヒト霊長類細胞株、齧歯類(例えば、マウス、ラット)細胞株などが含まれる。好適な哺乳動物細胞株には、これらに限定されないが、HeLa細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL-1573)、Vero細胞、NIH 3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、RAT1細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HLHepG2細胞、Hut-78、Jurkat、HL-60、NK細胞株(例えば、NKL、NK92、及びYTS)などが含まれる。
【0188】
一実施形態では、哺乳動物細胞は、本明細書に記載されるCARポリペプチドのうちのいずれかを含む。哺乳動物細胞又は組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、齧歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、又はネコ起源であり得るが、任意の他の哺乳動物細胞を使用してもよい。任意の態様の好ましい実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒトである。
【0189】
いくつかの例では、細胞は、不死化細胞株ではないが、代わりに個体から得られた細胞(例えば、初代細胞)である。例えば、いくつかの場合、細胞は、個体から得られた免疫細胞である。
【0190】
操作された細胞は、末梢血液、脊髄血液、骨髄、腫瘍浸潤性リンパ球、リンパ節組織、又は胸腺組織から取得され得る。宿主細胞は、胎盤細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、又は造血幹細胞を含み得る。細胞は、ヒト、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びそれらのトランスジェニック種から得ることができる。細胞は、確立された細胞株から得ることができる。
【0191】
上記の細胞は、任意の既知の手段によって得ることができる。細胞は、操作された細胞のレシピエントに対して自己、同系、同種、又は異種であり得る。「自己」という用語は、後で個体に再導入されるのと同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0192】
「同種」という用語は、材料が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の材料を指す。1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、2つ以上の個体が互いに同種であると言われる。いくつかの態様では、同じ種の個体に由来する同種材料は、抗原的に相互作用させるのに遺伝的に十分に異なり得る。
【0193】
「異種」という用語は、異なる種の動物に由来する移植片を指す。
【0194】
「同系」という用語は、特に抗原又は免疫反応に対して、極めて緊密な遺伝的類似性又は同一性を指す。同種系には、例えば、器官及び細胞(例えば、癌細胞及びその非癌性カウンターパート)が、同じ個体に由来するモデル、及び/又は器官及び細胞が、同じ近交系である異なる個体動物に由来するモデルが含まれる。
【0195】
一実施形態では、宿主細胞は、免疫細胞である。
【0196】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、免疫応答において役割を果たす細胞を指す。免疫細胞は、造血起源のものであり、B細胞及びT細胞などのリンパ球;ナチュラルキラー細胞;単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球などの骨髄細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞;NK細胞;NKT細胞;B細胞及びT細胞などのリンパ球;並びに単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球などの骨髄細胞である。
【0197】
免疫細胞は、がん、形質細胞障害、又は自己免疫性疾患若しくは障害を有するか、又は有すると診断された対象から得ることができる。例えば、免疫細胞は、がん、例えば、多発性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫、又はワルデンシュトレームマクログロブリン血症を有する対象から得ることができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、抗BCMA療法に抵抗性である対象から得られる。免疫細胞はまた、同種ドナーから得ることができ、同種ドナーは、細胞の意図されたレシピエントと同じ種の非遺伝的に同一の個体である。
【0198】
本発明で使用され得る免疫細胞(例えば、ヒト免疫細胞)には、エクスビボ修飾及び拡大後に、細胞が後で投与される対象から得られた自己細胞が含まれる。例えば、免疫細胞は、がん、形質細胞障害、又は自己免疫性疾患若しくは障害を有するか、又は有すると診断された個体から得ることができる。免疫細胞はまた、同種ドナーから得ることができ、同種ドナーは、細胞の意図されたレシピエントと同じ種の非遺伝的に同一の個体である。本発明に有用な免疫細胞には、T細胞及びNK細胞が含まれる。
【0199】
別の実施形態では、宿主細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はNKT細胞である。
【0200】
「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は互換性があり、本明細書では互換的に使用される。例としては、これらに限定されないが、ナイーブT細胞、中心メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0201】
ナチュラルキラー細胞又は「NK細胞」は、当該技術分野で周知である。一実施形態では、ナチュラルキラー細胞は、NK-92細胞などの細胞株を含む。NK細胞株の更なる例としては、NKG、YT、NK-YS、HANK-1、YTS細胞、及びNKL細胞が挙げられる。NK細胞は、ヒトにおけるCD16、CD56、及びCD8などの特定の表面マーカーによって検出され得る。NK細胞は、T細胞抗原受容体、パンTマーカーCD3、又は表面免疫グロブリンB細胞受容体を発現しない。
【0202】
NK細胞は、GvHD(移植片対宿主病)のリスクなしに抗腫瘍効果を媒介し、T細胞と比較して短寿命である。したがって、NK細胞は、がん細胞を破壊した後すぐに消耗し、修飾細胞を切除するCAR構築物上の誘導性自殺遺伝子の必要性を減少される。
【0203】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、T細胞及びナチュラルキラー細胞の両方の特性を共有する、T細胞の異種の群である。したがって、NKT細胞は、αβ T細胞受容体を共発現するが、NK1などの典型的にはNK細胞と関連する様々な分子マーカーも発現する、T細胞のサブセットである。これらの細胞の多くは、自己及び外来脂質及び糖脂質と結合する抗原提示分子である非多型CD1d分子を認識する。これらは、全ての末梢血T細胞のおよそ0.1%を構成するに過ぎない。ナチュラルキラーT細胞は、ナチュラルキラー細胞と混同されるべきではない。
【0204】
ある特定の実施形態では、T、NK、及びNKT細胞は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、白血球アフェレーシス産物(PBSC)、ヒト胚性幹細胞(hESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄、又は臍帯に由来する。
【0205】
一実施形態では、本発明で使用され得る免疫細胞(例えば、ヒト免疫細胞)には、エクスビボ修飾及び拡大後に、細胞が後で投与される対象から得られた自己細胞が含まれる。例えば、免疫細胞は、がんを有するか、又は有すると診断された個体から得ることができる。免疫細胞はまた、同種ドナーから得ることができ、同種ドナーは、細胞の意図されたレシピエントと同じ種の非遺伝的に同一の個体である。本発明に有用な免疫細胞には、T、NK、及びNKT細胞が含まれる。
【0206】
T、NK、及びNKT細胞を得るための方法は、当該技術分野で既知であり、本明細書に記載される操作された免疫細胞に有用であり得る。T、NK、及びNKT細胞は、典型的には、例えば、移植されたポート又はカテーテルを介して静脈穿刺又は抜去によって対象から採取される末梢血から得られる。任意選択で、白血球アフェレーシスを含むプロセスによって血液を得ることができ、白血球は対象の血液から得られるが、一方で他の血液成分は対象に返される。血液又は白血球アフェレーシス産物(新鮮又は凍結保存)は、当該技術分野で既知の方法を使用して、T、NK、又はNKT細胞を濃縮するように処理される。例えば、密度勾配遠心分離(例えば、Ficollを使用する)及び/又は対向流遠心溶出を実施して、単核細胞(T、NK、又はNKT細胞を含む)を濃縮することができる。一例では、T細胞について、例えば、細胞表面結合抗CD3及び抗CD28抗体断片(以下を参照されたい)を発現する、例えば、磁気ビーズ又は人工抗原提示細胞(aAPC)上にコーティングされたCD3/CD28抗体を用いるT細胞刺激ステップを、T細胞を刺激し、他の細胞、例えば、B細胞を枯渇させるために、更に実施することができる。次いで、濃縮T細胞調製物のT細胞は、遺伝子修飾を受けることができる。
【0207】
末梢血の代替として、骨髄、リンパ節、脾臓、及び腫瘍を含む組織を、T細胞及びNK細胞の供給源として使用することができる。T細胞及びNK細胞は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、齧歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、又はネコ起源でありうるが、任意の他の哺乳動物細胞を使用してもよい。任意の態様のある特定の実施形態では、T又はNK細胞は、ヒトである。
【0208】
T、NK、又はNKT細胞などの免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脊髄血液、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出液、脾臓組織、及び腫瘍のいくつかの供給源から得ることができる。当該技術分野で利用可能な任意の数の細胞株(例えば、T細胞株などの免疫細胞株)も使用され得る。
【0209】
一実施形態では、免疫細胞(例えば、T、NK、又はNKT細胞)は、Ficoll(商標)分離などの当該技術分野で既知の任意の好適な技術を使用して、対象から採取された血液の単位から得られる。別の実施形態では、対象の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T、NK、又はNKT細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含むリンパ球を含む。アフェレーシスによって採取された細胞は、血漿画分を除去し、その後の処理ステップのために細胞を適切な緩衝液又は培地に置くために洗浄され得ることが理解されよう。例えば、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄してもよい。あるいは、洗浄溶液はカルシウムを欠き、マグネシウムを欠くか、又は全ての二価カチオンではない場合に多くを欠く場合がある。カルシウムの不在下での初期の活性化ステップは、拡大された活性化をもたらし得る。洗浄ステップは、製造業者の指示に従って半自動の「フロースルー」遠心分離器(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサ、Baxter CytoMate、又はHaemonetics Cell Saver 5)を使用することによってなど、当業者に既知の方法によって達成され得る。洗浄後、細胞は、例えば、Caを含まず、Mgを含まないPBS、PlasmaLyte A、又は緩衝液を含む若しくは含まない他の生理食塩水など、様々な生体適合性緩衝液中に再懸濁されてもよい。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去して、細胞を培養培地に直接再懸濁してもよい。
【0210】
一実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLLTM勾配による遠心分離によって、又は対向流遠心溶出によって、末梢血リンパ球から単離される。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及びCD45RO+T細胞などのT細胞の特定の亜集団は、当該技術分野で既知のポジティブ又はネガティブ選択技術によって更に単離され得る。例えば、T細胞は、所望のT細胞のポジティブ選択に十分な期間、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tなどの抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)コンジュゲート化ビーズとのインキュベーションによって単離され得る。追加的又は代替的に、T細胞集団は、ネガティブ選択によって、例えば、ネガティブ選択された細胞に固有の表面マーカーに配向された抗体の組み合わせによって、濃縮されてもよい。ネガティブ磁気免疫アドヒアランス又はフローサイトメトリーを介した細胞選別及び/又は選択が使用され得る。
【0211】
本発明のCARを発現するように修飾される対象から誘導される細胞は、その使用前の期間にわたって保存され得ることが理解されよう(例えば、以下の治療方法を参照されたい)。例えば、細胞は、任意選択で洗浄された後、凍結されてもよく、又は必要とされるまで(例えば、2~10℃又は室温でのローテーター上で)それらが生存し続けるために好適な条件下でインキュベートされてもよい。このようにして、細胞は、必要とされ得るようなときまで保存することができる。それらは、非修飾状態(すなわち、本発明のCARを発現しない)又は修飾状態(すなわち、本発明のCARを発現するように修飾されている)で保存されてもよい。以下に更に記載される治療用途での使用前に、細胞は、概して当該技術分野で既知の方法を使用して、活性化及び拡大されてもよい。例えば、T細胞は、それに結合した表面、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤、及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとの接触によって拡大されてもよい。特に、T細胞集団は、抗CD3抗体、若しくはその抗原結合断片、若しくは表面上に固定された抗CD2抗体との接触によって、又はカルシウムイオノフォアと併せてプロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)との接触によってなど、本明細書に記載されるように刺激され得る。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激には、アクセサリー分子と結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触することができる。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon,France)が挙げられ、当該技術分野で一般的に既知の他の方法として使用することができる。
【0212】
様々な刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特徴を呈し得る。例えば、典型的な血液又はアフェライズされた(apherised)末梢血単核細胞産物は、ヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有し、これは細胞傷害性又は抑制性T細胞集団(TC、CD8+)よりも大きい。CD3及びCD28受容体を刺激することによるT細胞のエクスビボ拡大は、T細胞集団を産生し、その集団は、約8~9日目より前にTH細胞が優勢となるが、一方で約8~9日後に、T細胞集団は、ますます増大するTC細胞集団を含む。したがって、治療の目的に応じて、優勢にTH細胞を含むT細胞集団を対象に注入することが有利であり得る。同様に、TC細胞の抗原特異的サブセットが単離された場合、このサブセットをより大きな程度に拡大することが有益であり得る。
【0213】
特定の実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞である。
【0214】
特に、本発明の宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターによる形質導入の前に拡大され得る。
【0215】
本発明の更なる態様では、T細胞は、対象に機能的T細胞を残す治療直後の患者から得られる。これに関して、いくつかのがん治療、特に免疫系を損傷する薬物を用いた治療の後、患者が通常治療から回復するべき期間の間の治療後まもなく、得られたT細胞の質は、エクスビボで繁殖する能力に関連して最適であり得るか又は改善され得ることに留意された。また、本明細書に記載される方法を使用するエクスビボ操作の後、これらの細胞は、生着強化及びインビボ増殖のための好ましい状態であってもよい。したがって、本発明に関連して、回復のこの段階の間に、T細胞、樹状細胞、又は造血系の他の細胞を含む血球の産生を提供する。加えて、いくつかの態様では、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生成、及び/又は生殖が有利である対象において、特に療法後のある特定の時間ウィンドウの時間において、状態を作り出すために、動員モード(例えば、GM-CSFを使用する動員)及び特定の状態の確立が使用され得る。例示的な細胞型には、T細胞、B細胞、樹状細胞、及び免疫系の他の細胞が含まれる。
【0216】
本開示の操作された細胞はまた、自殺系を含み得る。自殺系は、上に記載されるように、操作された細胞が無効化又は破壊され得る機構を提供する。かかる特徴は、操作された細胞が使用される任意の治療の正確な治療制御を可能にする。本明細書で使用される場合、自殺系は、自殺系を有する細胞が無効化又は破壊され得る機構を提供する。自殺系は、当該技術分野で周知である。
【0217】
一実施形態では、自殺系は、必要な場合、含有細胞を除去するために薬理学的に活性化され得る遺伝子を含む。特定の態様では、自殺遺伝子は、ポリヌクレオチド又は細胞を保有する宿主に対して免疫原性ではない。一例では、自殺系は、CD20を操作された細胞の細胞表面上に発現させる遺伝子を含む。したがって、リツキシマブの投与を使用して、遺伝子を含む操作された細胞を破壊してもよい。
【0218】
いくつかの実施形態では、自殺系は、エピトープタグを含む。エピトープタグの例としては、c-mycタグ、CD52ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)、及び切断EGFR遺伝子(EGFRt)が挙げられる。この実施形態では、エピトープタグは、操作された細胞で発現される。したがって、エピトープタグに対する抗体の投与を使用して、遺伝子を含む操作された細胞を破壊してもよい。
【0219】
別の実施形態では、自殺系は、切断上皮成長因子受容体を操作された細胞の表面上に発現させる遺伝子を含む。したがって、セツキシマブの投与を使用して、遺伝子を含む操作された細胞を破壊してもよい。
【0220】
別の実施形態では、自殺系は、操作された細胞の表面上に発現されるCD52を含む。したがって、抗52モノクローナル抗体(CAMPATH、アレムツズマブ)の投与を使用して、遺伝子を含む操作された細胞を破壊してもよい。
【0221】
別の実施形態では、自殺系は、CAMPATH(アレムツズマブ)を含む。したがって、抗52モノクローナル抗体(CAMPATH)の投与を使用して、タグ又は遺伝子を、CD52を高発現するCAR T細胞又はT細胞として発現することなく、操作された細胞を破壊してもよい。
【0222】
別の実施形態では、自殺遺伝子は、カスパーゼ8遺伝子、カスパーゼ9遺伝子、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ(CD)、又はチトクロームP450を含んでもよい。
【0223】
遺伝子を細胞内に導入及び発現する方法は、当該技術分野で既知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、当該技術分野の任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞へと移され得る。
【0224】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、電気穿孔などを含む。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当該技術分野で周知である。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入に好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0225】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、及び特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。
【0226】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段は、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系など、コロイド分散系を含む。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。非ウイルス送達システムを利用する場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞(インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)への核酸の導入のために企図される。別の態様では、核酸は、脂質と関連付けられてもよい。脂質と関連付けられた核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と会合する連結分子を介してリポソームに結合され、リポソームに封入され、リポソームと複合体化され、脂質を含む溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中に懸濁液として含まれ、ミセルを含むか若しくはミセルと複合体化され、又はその他の方法で脂質と関連し得る。脂質、脂質/DNA、又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらは、ミセルとして、二重層構造で、又は「崩壊した」構造で存在し得る。また、溶液中に単に散在してもよく、サイズ又は形状が均一ではない凝集体を形成する可能性がある。脂質は、天然発生型脂質又は合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質は、細胞質に天然発生する脂肪液滴、並びに長鎖脂肪族炭化水素と、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドなどのそれらの誘導体とを含む化合物のクラスを含む。
【0227】
使用に好適な脂質は、市販の供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma(St.Louis,MO)から得ることができ、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,NY)から得ることができ、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから得ることができ、ジミリスチホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から得られてもよい。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液を、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールよりも蒸発しやすいため、唯一の溶媒として使用される。
【0228】
「リポソーム」は、囲まれた脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される、様々な単一及び多重層脂質ビヒクルを包含する一般用語である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内側水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けられ得る。多重層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。過剰な水溶液中にリン脂質が懸濁されると、それらは自然発生的に形成される。脂質成分は、閉鎖構造の形成前に自己再構成され、水と脂質二重層間で溶解した溶質とを封じ込める。しかしながら、溶液中に通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物もまた包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を仮定するか、又は脂質分子の不均一な凝集体として単に存在し得る。また、リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0229】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された細胞のうちのいずれかは、2つのベクターによって導入されてもよく、各ベクターは異なるCARを有する。
【0230】
外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するか、又はそうでなければ細胞を本開示のポリヌクレオチドに曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞中の組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを行ってもよい。かかるアッセイには、例えば、例えば、本開示の範囲内に含まれる薬剤を特定するために、例えば、免疫学的手段(ELlSA及びウェスタンブロット)によって、又は本明細書に記載されるアッセイによって、サザンブロッティング及びノーザンブロッティング、RT-PCR及びPCRなどの当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;特定のペプチドの存在又は不在を検出するなどの「生化学的」アッセイが含まれる。
【0231】
本発明のScFv、抗原結合ドメイン、及び抗体
第5の態様では、本発明は、
-VH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号1、2、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号1、174、及び3の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、
-VL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号4、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号175、5、及び6の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とするScFvに関する。
【0232】
特定の実施形態では、本発明のScFvのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号152、153、154、及び155の配列又はその機能的等価バリアントを含み、本発明のScFv又は抗原結合ドメインのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号156、157、158、及び159の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0233】
別の実施形態では、本発明のScFvのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号152、153、154、及び155、配列番号19、20、21、及び22、若しくは配列番号163、164、165、及び166の配列又はその機能的等価バリアントを含み、VL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号156、157、158、及び159、配列番号23、24、25、及び26、若しくは配列番号167、168、169、若しくは170の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0234】
別の実施形態では、本発明のScFvのVLは、配列番号160若しくは193の配列又はその機能的等価バリアントを含み、本発明のScFcのVHは、その機能的等価バリアントの配列番号161又は194の配列を含む。
【0235】
別の実施形態では、本発明のScFvのVLは、配列番号160、193、27、171、若しくは180の配列又はその機能的等価バリアントを含み、VHは、配列番号161、194、28、172、若しくは181の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0236】
特定の実施形態では、本発明のScFvのVH及びVL領域は、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される。
【0237】
特定の実施形態では、リンカーは、抗原結合ドメインのVH領域とVL領域との間に位置する。一実施形態では、ScFvは、構造VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHを有し得る。特定の実施形態では、リンカーは、VL領域に対してC末端に、及びVH領域に対してN末端に位置し、すなわち、VL-リンカー-VHである。
【0238】
更なる実施形態では、本発明のScFvは、配列番号162若しくは195の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0239】
別の実施形態では、本発明のScFvは、配列番号162、195、30、173、若しくは182の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0240】
本発明のCARの文脈内で与えられる定義は、本発明のScFvに等しく適用される。同様の方法で、本明細書で提供されている本発明のScFvの一部を形成するCDRの可能な機能的等価バリアントは、以前に定義されており、本事例に等しく適用可能である。
【0241】
第6の態様では、本発明は、
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくとも1つのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号7、8、及び9の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくとも1つのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号10、11、及び12の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする抗原結合ドメインに関する。
【0242】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインの少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号31、32、33、及び34の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗原結合ドメイン1の少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号35、36、37、及び38の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0243】
別の実施形態では、本発明の抗原結合ドメインの少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号31、32、33、及び34、配列番号65、66、67、及び68、若しくは配列番号73、74、75、及び76の配列又はその機能的等価バリアントを含み、本発明の抗原結合ドメインの少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号35、36、37、及び38、配列番号69、70、71、72若しくは配列番号77、78、79、及び80又はその機能的等価バリアントを含む。
【0244】
別の実施形態では、本発明の抗原結合ドメインの少なくとも1つのVLは、配列番号39の配列又はその機能的等価バリアントを含み、本発明のScFvの少なくとも1つのVHは、配列番号40の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0245】
別の実施形態では、本発明の抗原結合ドメインの少なくとも1つのVLは、配列番号39、54、及び56の配列又はその機能的等価バリアントを含み、少なくとも1つのVH領域は、配列番号40、53、及び55の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0246】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインがScFvである場合、VH及びVL領域は、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される。
【0247】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインがScFvである場合、リンカーは、VH領域とVL領域との間に位置する。一実施形態では、抗原結合ドメイン1がScFvである場合、ScFvは、構造VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHを有し得る。特定の実施形態では、抗原結合ドメインがScFvである場合、リンカーは、VL領域に対してC末端に、及びVH領域に対してN末端に位置し、すなわち、VL-リンカー-VHである。
【0248】
更なる実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号41の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0249】
別の実施形態では、本発明の抗原結合ドメインは、配列番号41、187、188、若しくは189の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0250】
本発明のCARの文脈内で与えられる定義は、本発明の抗原結合ドメインに等しく適用される。同様の方法で、本明細書で提供されている本発明の抗原結合ドメインの一部を形成するCDRの可能な機能的等価バリアントは、以前に定義されており、本事例に等しく適用可能である。
【0251】
第7の態様では、本発明は、
-少なくとも1つのVH領域及び少なくとも1つのVL領域を有することと、
-少なくとも1つのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号13、14、及び15の配列又はその機能的等価バリアントを含むことと、
-少なくとも1つのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ、配列番号16、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアント、又は配列番号179、17、及び18の配列若しくはその機能的等価バリアントを含むことと、を特徴とする抗体又はその抗体断片に関する。
【0252】
特定の実施形態では、抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号42、43、44、及び45の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号46、47、48、及び49の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0253】
別の実施形態では、本発明の抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号42、43、44、及び45、配列番号89、90、91、及び92、若しくは配列番号97、98、99、及び100の配列又はその機能的等価バリアントを含み、本発明の抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号46、47、48、及び49、配列番号93、94、95、及び96、若しくは配列番号101、102、103、及び104の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0254】
別の実施形態では、抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVLは、配列番号50若しくは184の配列又はその機能的等価バリアントを含み、抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVHは、配列番号51の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0255】
別の実施形態では、その抗体断片の抗体の少なくとも1つのVL領域は、配列番号50若しくは184、60、若しくは62の配列又は又はその機能的等価バリアントを含み、抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVH領域は、配列番号51、59、及び61の配列並びに又はその機能的等価バリアントを含む。
【0256】
特定の実施形態では、抗体又は抗体断片がScFvである場合、抗体又はその抗体断片の少なくとも1つのVH及びVL領域は、配列番号29を含むリンカー領域によって接続される。
【0257】
特定の実施形態では、抗体又は抗体断片がScFvである場合、リンカーは、VH領域とVL領域の間に位置する。一実施形態では、抗体又は抗体断片がScFvである場合、ScFvは、構造VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHを有し得る。特定の実施形態では、抗体又は抗体断片がScFvである場合、リンカーは、VL領域に対してC末端に、及びVH領域に対してN末端に位置し、すなわち、VL-リンカー-VHである。
【0258】
更なる実施形態では、抗体又はその抗体断片は、配列番号52若しくは186の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0259】
別の実施形態では、その抗体断片の抗体は、配列番号52、186、190、若しくは191の配列又はその機能的等価バリアントを含む。
【0260】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、又は本発明のいくつかの実施形態によれば、分子のエピトープ(抗原)に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子の断片を指す。天然発生型抗体は、典型的には、少なくとも2つの重(H)鎖及び少なくとも2つの軽(L)鎖からなる四量体を含む。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(本明細書ではVHと省略される)及び重鎖定常ドメインから構成され、通常、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)から構成される。重鎖は、IgG(lgG1、lgG2、lgG3、及びlgG4サブタイプ)を含む、任意のアイソタイプのものであり得る。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(本明細書ではVLと省略される)及び軽鎖定常ドメイン(CL)から構成される。軽鎖には、カッパ鎖及びラムダ鎖が含まれる。重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、典型的には、抗原認識に関与する一方で、重鎖定常ドメイン及び軽鎖定常ドメインは、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的相補体系の第1の構成要素(C1 q)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。VH及びVLドメインは、より保存された配列のドメインが散在する、「フレームワーク領域」(FR)と称される、「相補性決定領域」と称される超可変性のドメインに更に細分され得る。各VH及びVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される3つのCDRドメイン及び4つのFRドメインから構成される:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。特に関連するのは、自然界で発生し得るものとは別個の物理的環境に存在するように「単離」されているか、又はアミノ酸配列において天然発生型抗体とは異なるように修飾されている、抗体及びそのエピトープ結合断片である。
【0261】
「抗体」という用語は、1つ以上のCDR領域を保持する全モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、又はその断片を含み、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び非ヒト起源の抗体を含む。
【0262】
「モノクローナル抗体」は、単一部位又は抗原「決定基」に対して配向される均質な特異性の高い抗体集団である。「ポリクローナル抗体」は、異なる抗原決定基に対して配向された異種抗体集団を含む。
【0263】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、非ヒト起源の、好ましくはマウス起源の抗体である。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。
【0264】
抗体の基本的な構造単位が四量体を含むことは周知である。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対によって構成され、その各々は、軽鎖(25KDa)及び重鎖(50~75KDa)によって構成される。各鎖のアミノ末端領域は、抗原認識に関与する約100~110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端領域は、エフェクター機能を媒介する定常領域を含む。軽鎖及び重鎖の各対の可変領域は、抗体の結合部位を形成する。したがって、インタクトな抗体は、2つの結合部位を有する。軽鎖は、K又はλとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、及びεとして分類され、それらは、それぞれ、lgG、lgM、IgA、lgD、又はlgEとして抗体のアイソタイプを定義する。
【0265】
軽鎖及び重鎖の各対の可変領域は、抗体の結合部位を形成する。それらは、本発明のCARの細胞外ドメイン又は抗原結合ドメインの文脈内で定義されるように、相補性決定領域(CDR)と称される3つの超可変領域によって結合される、フレームワーク(FR)と称される比較的保存された領域によって構成される同じ一般構造によって特徴付けられる。
【0266】
本発明の抗体又は抗原結合ドメインの特異性を定義したCDR及びFR配列の機能的等価バリアントは、ここで企図されている。したがって、本発明の抗体のCDR及びFRを定義する配列の機能的等価バリアントの定義、並びに本発明の範囲内にある当該配列に関する同一性のパーセンテージは、本発明のCARの抗原結合ドメインの文脈内で既に定義されており、本発明の抗体に等しく適用される。
【0267】
当業者であれば、本発明の抗体又は抗体断片は、それが特定の抗原、すなわち、p95HER2ペプチドに結合するその能力に関連するため、本発明のCARの抗原結合ドメイン2の全ての特徴を共有することを理解するであろう。したがって、p95HER2ペプチドへの結合に関連する本発明のCARの抗原結合ドメイン2の全ての詳細は、(その可変領域を指すため)ここに記載される抗体又は抗体断片に適用される。
【0268】
本明細書で使用される場合、本発明の抗体は、完全長抗体(例えば、IgG)だけでなく、その抗原結合断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、非ヒト起源の抗体、組換え抗体、及び遺伝子工学技術によって産生された免疫グロブリン由来のポリペプチド、例えば、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、重鎖又はその断片、軽鎖又はその断片、VH又はその二量体、VL又はその二量体、ジスルフィド架橋(dsFv)によって安定化されたFv断片、一本鎖可変領域ドメイン(Abs)を有する分子、ミニボディ、scFv-Fc、抗体を含むVL及びVHドメインと融合タンパク質、又は所望の特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾立体配置を包含する。本発明の抗体はまた、二重特異性抗体であってもよい。抗体断片は、抗原結合断片を指し得る。
【0269】
特定の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、F(ab)、F(ab’)、Fv、ScFv、及びミニボディからなる群から選択される。
【0270】
本明細書で使用される場合、「組換え抗体」は、2つの異なる種、又は2つの異なる供給源に由来するアミノ酸配列を含む抗体であり、合成分子、例えば、非ヒトCDR及びヒトフレームワーク又は定常領域を含む抗体を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組換え抗体は、組換えDNA分子から産生されるか、又は合成される。
【0271】
本発明の抗体のアミノ酸配列は、ポリペプチドの一次配列が変更されるが、p95HER抗原に結合する抗体の能力が維持されるように、1つ以上のアミノ酸置換を含み得ることを当業者は理解するであろう。当該置換は、保存的置換であり得、あるアミノ酸と類似の特性を有する別のアミノ酸との置換(例えば、グルタミン酸(負に荷電されたアミノ酸)とアスパラギン酸との置換は保存的アミノ酸置換である)を示すために一般的に適用される。
【0272】
本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、核酸をコードする抗体に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、又はペプチド合成によって調製される。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は残基への挿入、及び/又は残基の置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物が所望の特徴を有することを条件として、最終構築物を達成するために行われる。アミノ酸変化はまた、グリコシル化部位の数又は位置を変更するなど、タンパク質の翻訳後プロセスを変更し得る。
【0273】
アミノ酸配列挿入には、1つの残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さにわたるアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有するペプチド、又は細胞傷害性ポリペプチドに融合された抗体ポリペプチド鎖が挙げられる。分子の他の挿入バリアントには、酵素、又はその血清半減期を増加させるポリペプチドのN末端若しくはC末端への融合が含まれる。
【0274】
別の種類のバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。これらのバリアントは、異なる残基によって置き換えられる分子中に少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。抗体の置換変異誘発の最大の目的の部位には、超可変が含まれる。
【0275】
特定の実施形態では、ScFv、抗原結合ドメイン、及び抗体又はその抗体断片は、ヒト化される。
【0276】
ヒト化という用語は、本発明のCARの文脈内で既に定義されており、本事例に等しく適用される。同様に、本発明の抗原結合ドメイン及び抗体又は抗体断片(その可変領域を指し、したがって、それぞれ、抗原結合ドメイン1及び抗原結合ドメイン2に相当する)の好適なヒト化配列は、本発明のCARの文脈内で以前に定義されており、抗原結合ドメイン又は抗体若しくはその抗体断片に等しく適用される。同様に、本発明のScFvは、ヒト化されてもよい。したがって、特定の実施形態では、ScFvは、ヒト化され、より具体的には、ScFvのVH及び/又はVL領域は、ヒト化される。
【0277】
特定の実施形態では、ScFvのVL領域は、配列番号27、171、及び180から選択されるヒト化配列、又はその機能的等価バリアントを含み、VH領域は、配列番号28、172、及び181から選択されるヒト化配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0278】
別の実施形態では、ScFvは、配列番号30、173、及び182から選択されるヒト化配列を含む。
【0279】
別の実施形態では、ScFvのVH及びVL領域は、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域を含み、VH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号19、20、21、及び22の配列、又はその機能的等価バリアントを含み、VL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号23、24、25、及び26の配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0280】
別の実施形態では、ScFvのVH及びVL領域は、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域を含み、VH領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号163、164、165、及び166の配列、又はその機能的等価バリアントを含み、VL領域のFR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれ、配列番号167、168、169、及び170の配列、又はその機能的等価バリアントを含む。
【0281】
別の実施形態では、ScFvのVH領域は、少なくとも1つのヒト化FR領域、少なくとも2つのヒト化FR領域、少なくとも3つのヒト化FR領域、又は少なくとも4つのヒト化FR領域を含む。他の実施形態では、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、FR1については配列番号19若しくは163、FR2については配列番号20若しくは164、FR3については配列番号21若しくは165、並びにFR4については配列番号22及び166、又は上記のうちのいずれかの機能的等価バリアントから選択される。
【0282】
別の実施形態では、ScFvのVL領域は、少なくとも1つのヒト化FR領域、少なくとも2つのヒト化FR領域、少なくとも3つのヒト化FR領域、又は少なくとも4つのヒト化FR領域を含む。他の実施形態では、ヒト化FR1、FR2、FR3、及びFR4領域は、FR1については配列番号23若しくは167、FR2については配列番号24若しくは168、FR3については配列番号25若しくは169、並びにFR4については配列番号26及び170、又は上記のうちのいずれかの機能的等価バリアントから選択される。
【0283】
本発明はまた、本明細書に開示されるScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体の誘導体も提供する。誘導体化ScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体は、標的化特性、例えば、ある特定の用途におけるScFv、抗原結合ドメインの半減期の増加を提供する任意の分子又は材料を含み得る。誘導体化ScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体は、特別な使用のための(例えば、対象、例えば、ヒト対象への投与、又は他のインビボ若しくはインビトロでの使用)、検出可能(又は標識)残基(例えば、放射性、比色、抗原性、又は酵素分子、検出可能なビーズ(例えば、磁気又は電子密度(例えば、金)ビーズ)、又は他の分子(例えば、ビオチン又はストレプトアビジン))、治療的又は診断的残基(例えば、放射性、細胞傷害性、又は薬学的に活性な残基)、又はScFv、抗原結合ドメイン、若しくは抗体の適合性を増加させる分子を含み得る。ScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体を誘導体化するために使用される分子の例としては、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)及びポリエチレングリコール(PEG)である。ScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体のアルブミン連結及びペグ化誘導体は、当該技術分野で広く知られている技術を使用することによって調製され得る。
【0284】
いくつかの実施形態では、ScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体は、標識のうちの1つ以上を含み得る。「標識」とは、任意の検出可能な物質を意味する。適切な標識群の例については、放射性同位元素又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタノイド蛍光物質)、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、b-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、又は二次レポーターによって認識されるある特定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標識基は、様々な長さの空間アームを介して抗体に結合され、潜在的な立体障害を低減する。タンパク質を標識するための様々な方法が当該技術分野で既知であり、当業者は、特定の目的に対して適切な標識及び適切な方法を選択する。
【0285】
一般的に、標識は、検出方法に従って分類され得る:a)放射性又は同位体標識、b)磁気標識(例えば、磁気粒子)、c)酸化還元活性残基、d)光学染料、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、b-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);e)ビオチニル基、及びf)二次レポーターによって認識されるある特定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)。いくつかの実施形態では、標識基は、様々な長さのスペーサーアームを介してScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体に結合され、潜在的な立体障害を低減する。タンパク質を標識するための様々な方法が当該技術分野で既知である。
【0286】
一実施形態では、標識は、発色団、蛍光体、及び蛍光物質を含むが、これに限定されない光学染料を含む。蛍光物質は、小分子蛍光物質又はタンパク質蛍光物質であり得る。
【0287】
「蛍光標識」は、物質が有する蛍光特性によって検出される任意の分子を意味する。蛍光標識の例については、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルーJ、テキサスレッド、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LCレッド640、Cy5、Cy5.5、LCレッド705、オレゴングリーン、alexa-fluor色素(alexa-fluor350、alexa-fluor430、alexa-fluor488、alexa-fluor546、alexa-fluor568、alexa-fluor594、alexa-fluor633、alexa-fluor647、alexa-fluor660、alexa-fluor680)、カスケードブルー、カスケードイエロー、及びR-フィコエリスリン(PE)、FITC)、Cy5、Cy5.5、及びCy7などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0288】
タンパク質蛍光標識物質には、GFPのRenilla、Ptilosarcus、又はAequorea種を含む緑色蛍光タンパク質、EGFP(Clontech Labs.,Inc.、Genbankアクセッション番号U55762)、青色蛍光タンパク質、強化黄色蛍光タンパク質、bガラクトシダーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0289】
第8の態様では、本発明は、本発明の第5、第6、及び第7の態様によるScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体をコードする核酸に関する。
【0290】
第9の態様では、本発明は、本発明の第8の態様の核酸を含む発現ベクターに関する。
【0291】
第10の態様では、本発明は、本発明の第8の態様の核酸又は本発明の第9の態様の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0292】
本発明のScFvに関連する核酸、発現ベクター、及び宿主細胞に関する定義及び詳細は、本発明のCARの文脈内で定義されるものと同じである。
【0293】
診断方法
第11の態様では、本発明は、
(i)腫瘍細胞を含む患者の試料を、本発明のScFv1、抗原結合1ドメイン、又は抗体と接触させることと、
(ii)試料中のScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体の細胞への結合を検出することと、を含む、患者のがん診断の方法に関し、
結合の存在は、患者ががんに罹患していることを示す。
【0294】
本明細書で使用される場合、「がん」又は「腫瘍」又は「腫瘍疾患」という用語は、非制御性細胞増殖に関与する疾患の広範な群を指し、悪性新生物とも称される。この用語は通常、非制御細胞分裂によって(又は生存又はアポトーシス抵抗性の増加によって)、及び当該細胞が他の隣接組織に侵入し(浸潤)、通常リンパ管及び血管を通して細胞が位置していない体の他の領域へ広がり(転移)、血流を通して循環し、次いで、体内の他の場所の正常な組織に侵入する能力によって特徴付けられる疾患に適用される。腫瘍は、浸潤及び転移によって広がり得るか否かに応じて、良性又は悪性のいずれかに分類され、良性腫瘍は、浸潤又は転移によって広がることができない、すなわち、局所的にのみ増殖する腫瘍であるが、一方で悪性腫瘍は、浸潤及び転移によって広がることができる腫瘍である。がんに関連することが知られている生物学的プロセスには、血管新生、免疫細胞浸潤、細胞遊走、及び転移が含まれる。がんは通常、以下の特徴:増殖性シグナル伝達の持続、成長抑制因子の回避、細胞死の抵抗、複製による不死化、血管新生の誘導、並びに浸潤の活性化及び最終的に転移のうちのいくつかを共有する。がんは、体の近くの部分に侵入し、またリンパ系又は血流を介して体のより遠くの部分に広がり得る。がんは、腫瘍細胞が似ている細胞型によって分類され、したがって、腫瘍の起源であると推定される。
【0295】
がん又は腫瘍の例としては、限定されるものではないが、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭、首、卵巣、前立腺、脳、直腸、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、肝胆道、及び肝臓の腫瘍が挙げられる。特に、腫瘍/がんは、腺腫、血管肉腫、星細胞腫、上皮がん、生殖細胞腫、膠芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽腫、肝胆道がん、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、奇形腫、末端黒子型黒色腫、日光角化症腺がん、腺様嚢胞がん、腺肉腫、腺扁平上皮がん、星細胞系腫瘍、バルトリン腺がん、基底細胞がん、気管支腺がん、がん肉腫、胆管がん、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺がん、上衣肉腫、Swing肉腫、限局性結節性過形成、胚細胞腫瘍、グルカゴノーマ、血管芽腫、血管腫、肝腺腫、肝細胞腺腫、肝細胞がん、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮内扁平上皮細胞新生物、浸潤性扁平上皮細胞がん、大細胞がん、平滑筋肉腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄上皮腫、粘表皮がん、神経上皮腺がん、結節型黒色腫、乳頭状漿液性腺がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽細胞腫、腎細胞がん、漿液性がん、小細胞がん、軟部組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮がん、扁平上皮細胞がん、未分化がん、ブドウ膜黒色腫、疣贅性がん、ビポーマ、ウィルムス腫瘍の群から選択され得る。
【0296】
特定の実施形態では、がんは、乳がんである。好ましい実施形態では、がんは、p95HER2陽性がんである。
【0297】
「p95HER2」及びHER2という用語は、本発明のCARの文脈内で既に定義されており、当該定義は、本診断方法に等しく適用される。
【0298】
「p95HER2陽性であるがん」は、免疫組織化学(IHC)、ウェスタンブロット、又はVeraTag(登録商標)アッセイ(Monogram Biosciences)によって判定されるように、がん細胞の少なくとも一部がp95HER2を含むがんを指す。いくつかの実施形態では、がんは、IHCによりp95HER2陽性であると判定される。いくつかのかかる実施形態では、がんは、Sperinde et al.,Clin.Canc.Res.,2010,16(16):4226-4235に記載される方法、例えば、VeraTagアッセイにおける抗p95抗体クローンD9を使用する方法などを使用して、p95HER2陽性であると判定される。いくつかの実施形態では、がんは、米国特許第8,389,227B2合に記載される方法、例えば、アクセッション番号DSM ACC2904又はDSM ACC2980でDeutschland Sammlung von Mikroorganisen及びZellenに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体を使用する方法などを使用して、p95HER2陽性であると判定される。いくつかの実施形態では、がんは、アッセイ製造業者又はアッセイ研究室のガイドラインに従って、p95HER2陽性であると判定される。p95HER2は、カルボキシ末端HER2断片の集まりを指し、これはいくつかの実施形態では、95~100kDa断片及び100~115kDa断片に分割され得る。例えば、Arribas et al.,Cancer Res.,2011,71:1515-1519を参照されたい。いくつかの実施形態では、p95HER2陽性であるがんは、HER2の100~115kDa断片を含む。
【0299】
「検出」、「診断すること」、「診断」という用語、又はその派生語は、本明細書では不明瞭に使用され、病理学的状態の存在又は特徴の特定を指す。これは、対象における可能性のある疾患を決定及び/又は特定する試みのプロセス、すなわち、診断手順、並びにこのプロセスによって到達される意見、すなわち、診断意見の両方を指す。そのようにして、治療及び予後に関する医学的決定を行うことを可能にする別個の異なるカテゴリーに、個体の状態を分類する試みとみなすこともできる。当業者であれば理解するであろうように、かかる診断は、好ましいが、100%の対象の診断には正しくない場合がある。しかしながら、この用語は、本発明の文脈において、対象の統計的に有意な部分が、がんに罹患しているとして特定され得ることを必要とする。当業者は、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントの検定、マン・ホイットニーなどによって、公知の異なる統計評価ツールを使用して、当事者が統計的に有意であるかどうかを決定し得る。好ましい信頼区間は、少なくとも、50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。p値は、好ましくは、0,015、0,001、0,0005、又はそれ以下である。
【0300】
概して、方法は、免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、p95HER2抗原を発現する疑いのある試料を取得することと、p95HER2抗原を選択的に結合又は検出することができるScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体と試料を接触させることとを含む。
【0301】
試料は、例えば、組織切片又は標本、均質化組織抽出物、細胞、細胞小器官、上記の抗原含有組成物のうちのいずれかの分離及び/若しくは精製された形態、又は血液、血清、及び血漿を含む任意の生体液など、p95HER2抗原を含む疑いのある任意の試料であり得る。好ましい実施形態では、試料は、腫瘍試料である。試料は、好ましくは、患者の腫瘍に由来するか、又は患者の腫瘍に由来する腫瘍細胞を含む試料である「腫瘍試料」である。本明細書の腫瘍試料の例としては、これらに限定されないが、腫瘍生検、循環腫瘍細胞、循環血漿タンパク質、腹水、腫瘍に由来するか又は腫瘍様特性を呈する初代細胞培養物又は細胞株、並びにホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍試料又は凍結腫瘍試料などの保存された腫瘍試料が挙げられる。
【0302】
好適かつ有効な条件下で、免疫複合体の形成を可能にするのに十分な期間、本発明の抗体と選択された生体試料を接触させることは、概して、本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体を試料に単に添加し、抗体が免疫複合体を形成するのに十分に長い期間、混合物をインキュベートするということである。
【0303】
有効な条件は、好ましくは、試料及び/又は本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、若しくは抗体を、BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tween(登録商標)などの溶液で希釈することを含む。これらの添加された薬剤はまた、非特異的バックグラウンドの低減を支援する傾向がある。
【0304】
また、「好適な」又は「適切な」条件は、インキュベーションが、効果的な結合を可能にするのに十分な温度又は期間であることを意味する。インキュベーションステップは、典型的には、25℃~27℃の順序の温度で、約1~2から4時間ほどであるか、又は約4℃程度で一晩であってもよい。
【0305】
形成された複合体の量の決定は、いくつかの方法で行われ得る。好ましい実施形態では、抗体は標識され、結合は直接決定される。例えば、これは、p95HER2抗原タンパク質を固体支持体に結合させること、標識されたScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体(例えば、蛍光標識)を添加すること、過剰な試薬を洗浄すること、及び標識が固体支持体上に存在するかどうかを決定することによって行われ得る。様々なブロッキング及び洗浄ステップが、当該技術分野で既知であるように利用され得る。
【0306】
一般に、免疫複合体形成の検出は、当該技術分野で周知であり、多数のアプローチの適用により達成され得る。これらの方法は、概して、標識又はマーカーの検出、例えば、それらの放射性タグ、蛍光タグ、生物学的タグ、及び酵素タグのいずれかに基づく。当然ながら、当該技術分野で既知であるように、第2の抗体などの二次結合リガンド及び/又はビオチン/アビジンリガンド結合配置の使用により、更なる利点を見出すことができる。
【0307】
特定の実施形態では、本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体は、固体支持体上に配置される。
【0308】
ScFv、又は他の抗原結合ドメイン若しくは抗体などの他のポリペプチドは、アッセイで使用するために、様々な固体支持体上に固定されてもよい。特異的結合メンバーを固定化するために使用され得る固相には、固相結合アッセイにおいて開発され、かつ/又は固相として使用されるものが含まれる。好適な固相の例としては、膜フィルター、セルロース系紙、ビーズ(ポリマー、ラテックス、及び常磁性粒子を含む)、ガラス、シリコンウエハー、マイクロ粒子、ナノ粒子、TentaGels、AgroGels、PEGAゲル、SPOCCゲル、及び多重ウェルプレートが挙げられる。アッセイストリップは、固体支持体上に並んだScFv、抗原結合ドメイン、若しくは抗体、又はそれらの複数をコーティングすることによって調製され得る。次いで、このストリップを試験試料に浸漬し、次いで、洗浄及び検出ステップを通して迅速に処理して、有色スポットなどの測定可能なシグナルを生成することができた。ScFv、又は他の抗原結合ドメイン若しくは抗体などの他のポリペプチドは、アッセイデバイス表面に直接コンジュゲートすることによって、又は間接結合によってのいずれかで、アッセイデバイスの特定のゾーンに結合されてもよい。
【0309】
当業者であれば理解するであろうように、標識されていない本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体(一次抗体)及び標識されている本発明の抗体(二次抗体)を使用する本発明で使用され得る幅広い従来的アッセイがあり、これらの技術には、ウェスタンブロット又はイムノブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合EIA(競合酵素イムノアッセイ)、DAS-ELISA(二重抗体サンドイッチ-ELISA)、免疫細胞化学的及び免疫組織化学的技術、フローサイトメトリー、又は本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、若しくは抗体を含むタンパク質ミクロスフェア、バイオチップ、若しくはマイクロアレイの使用に基づくマルチプレックス検出技術が含まれる。本発明の抗体を使用してp95HER2抗原を検出及び定量化する他の方法には、親和性クロマトグラフィー技術、リガンド結合アッセイ、又はレクチン結合アッセイが含まれる。
【0310】
また、標識されていないScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体は、例えば、標識されている二次抗体などの追加の試薬で検出される必要があり、これは標識される。これは、シグナルが増幅されることを可能にするため、検出方法の感度を高めるために特に有用である。
【0311】
加えて、抗体の検出は、抗体のその同族抗原への結合の結果として生じる、試料中の物理的特性の変化を検出することによっても実施することができる。これらのアッセイは、当該技術分野で既知である、試料中の透過関連パラメータを決定することを含む。本明細書で使用される場合、「透過関連パラメータ」という用語は、試料の透過光対入射光の比率を示すか、又はそれらと相関するパラメータ、又はそれらから導出されるパラメータに関する。
【0312】
一実施形態では、透過関連パラメータは、比濁法又は比朧法によって決定される。
【0313】
別の実施形態では、ScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体のその同族抗原への結合は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって検出され得る。
【0314】
本明細書で使用される場合、SPRは、反射光の強度が、レーザービームが金属薄膜に照射されたときに、特定の入射角(すなわち、共鳴角)で急激に減少する現象を指す。SPRは、上に記載される現象に基づく測定方法であり、センサである金属薄膜の表面上に吸着された物質を高感度で分析することができる。次いで、本発明によれば、例えば、試料中の標的物質は、本発明の1つ以上のScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体を前述の金属薄膜の表面上に固定化し、試料が金属薄膜の表面を通過することを可能にすること、並びにScFv、抗原結合ドメイン、又は抗体及び標的抗原の結合から生じる金属薄膜の表面上に吸着された物質の量の差を、試料がそこを通過する前後で検出することによって、検出され得る。
【0315】
一実施形態では、上記の関連技術又は当該技術分野で既知の任意の他のもののうちのいずれかによって測定される結合の存在は、患者ががんに罹患していることを示す。
【0316】
別の実施形態では、本発明の診断方法は、研究下で対象において得られたレベルを、基準値と比較することを含み、それによって、基準値に対するp95HER2の増加されたレベルは、患者ががんに罹患していることを示す。
【0317】
p95HER2のレベルに関連して「増加された」という用語は、基準値よりも低い試料中の本発明によるScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体を使用して検出されたp95HER2のあらゆるレベルの発現に関する。したがって、p95HER2発現レベルは、その基準値よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、又はそれ以上低い場合、減少されるか、又はその基準値よりも低いものとみなされる。
【0318】
本明細書で使用される場合、「基準値」という用語は、対象から収集された試料から得られた値又はデータを評価するための基準として使用される所定の基準に関する。基準値又は基準レベルは、絶対値、相対値、上限若しくは下限を有する値、値の範囲、平均(average)値、中央値、平均(mean)値、又は特定の対照若しくはベースライン値と比較した値であり得る。基準値は、個々の試料の値、例えば、試験されている対象からの試料から取得された値などに基づき得るが、より早い時点でである。基準値は、暦年齢一致群の対象集団からのものなど、多数の試料に基づくか、又は試験される試料を含むか、若しくは除外する試料のプールに基づき得る。一実施形態では、基準値は、健康な対象において決定されるp95HER2発現のレベルに対応し、それにより、健康な対象は、p95HER2発現のレベルが決定される瞬間に増殖性疾患を示さず、かつ好ましくはがんの既往歴を示さない対象として理解される。
【0319】
別の実施形態では、基準値は、臨床的な観点から十分に証明され、かつ疾患を呈さず、特にがんに罹患しておらず、特にp95HER2陽性がんに罹患していない患者の群から得られた試料のプールから決定される、p95HER2発現の平均(average)又は平均(mean)レベルに対応する。当該試料では、発現レベルは、例えば、基準集団の平均発現レベルの決定によって決定され得る。基準値の決定では、患者の年齢、性別、身体的状態、又は他の特徴など、試料の種類のいくつかの特徴を考慮する必要がある。例えば、基準試料は、集団が統計的に有意となるように、少なくとも2、少なくとも10、少なくとも100~1000を超える個体の群の同一量から得ることができる。
【0320】
本明細書で使用される場合、「発現」又は「発現レベル」という用語は、測定可能な量のタンパク質又は抗原を指す。当業者によって理解されるように、発現レベルは、タンパク質又は抗原を測定することによって定量化され得る。したがって、この場合では、p95HER2の発現レベルは、p95HER2抗原と本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体との間に形成された免疫複合体の量を決定することによって測定され、上記に関連する及び当業者に既知のいくつかの方法で行われ得る。
【0321】
医薬組成物
第12の態様では、本発明は、本発明の第4の態様の宿主細胞のうちのいずれか、並びに/又は本発明の第5、第6、及び第7の態様によるScFv1、抗原結合ドメイン1、若しくは抗体、並びに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0322】
「医薬組成物」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にし、かつ組成物が投与される対象に対して許容されない毒性を有する形態である。追加の成分を含まない調製物を指す。
【0323】
「薬学的に許容される担体」は、対象に対して非毒性である活性成分以外の医薬組成物の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、これらに限定されないが、緩衝液、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が挙げられる。
【0324】
特定の実施形態では、医薬組成物は、本発明の宿主細胞、より具体的には、本発明のCARのうちのいずれか、すなわち、ScFv1、抗原結合ドメイン1、抗原結合ドメイン2、又はそれらの任意の組み合わせを含むCARを発現するように遺伝子操作された免疫細胞(例えば、T、NK、又はNKT細胞)を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、宿主細胞、及び本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体の両方を含む。
【0325】
本明細書に記載される医薬組成物及び製剤は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、所望の純度を有する活性成分を、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 22nd edition,2012)と混合することによって調製され得る。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる投与量及び濃度で、レシピエントにとって非毒性であり、これらに限定されないが、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体には、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの間質性薬物分散剤が更に含まれる。
【0326】
治療方法
本発明は、治療有効量の、本発明のScFv1、抗原結合ドメイン1、抗体、又は免疫細胞を投与することを含む、免疫療法のための方法を提供する。一実施形態では、医学的疾患又は障害は、免疫応答を誘発する免疫細胞集団の移植によって治療される。
【0327】
したがって、第13の態様では、本発明は、医薬で使用するための、本発明の第4の態様の宿主並びに/又は本発明の第5、第6、及び第7の態様のScFv1、抗原結合ドメイン1、又は抗体のうちのいずれかに関する。
【0328】
最後の態様では、本発明は、本発明の第4の態様の宿主細胞並びに/又はがんを予防又は治療する方法で使用するための、本発明の第5、第6、及び第7の態様のScFv1、抗原結合断片1、若しくは抗体のいずれかに関する。
【0329】
特定の実施形態では、がんは、乳がんである。好ましい実施形態では、がんは、p95HER2陽性である。
【0330】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療(treatment)」、「治療(treatment)」、又は「改善」。この用語は、治療的処置を指し、その目的は、疾患又は障害に関連する状態の進行又は重症度を反転、低減、抑制、遅延、又は停止することである。「治療」という用語は、がん、疾患、又は障害などの状態の少なくとも1つの有害作用又は状態を低減又は緩和することを含む。治療は通常、1つ以上の症状又は臨床マーカーが低減された場合に「有効である」。あるいは、疾患の進行が遅延又は停止された場合、治療は「有効」である。すなわち、「治療」は、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療の不在下で予期される症状の進行又は悪化を示す少なくとも状態の中断も含む。有益な又は望ましい臨床転帰は、検出可能か否かにかかわらず、1つ以上の症状の低減、疾患の程度の低減、疾患の安定した(すなわち、悪化していない)状態、疾患である。これらには、これらに限定されないが、進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的)が含まれる。疾患の「治療」という用語は、疾患の症状又は副作用の軽減(対症療法を含む)を提供することも含む。いくつかの実施形態では、がんを治療することは、腫瘍体積を低減すること、がん細胞数を低減すること、がん転移を抑制すること、寿命を延長すること、がん細胞増殖を低減すること、細胞生存を低減すること、又はがん状態を低減することを含む。これは、関与する様々な生理学的症状の改善を伴う。
【0331】
本開示のある特定の実施形態では、免疫細胞は、がんを有する個体など、それを必要とする個体に送達される。次いで、細胞は、個体の免疫系を強化し、それぞれのがん細胞を攻撃する。いくつかの場合では、個体は、1つ以上の用量の免疫細胞が提供される。個体に2以上の用量の免疫細胞が提供される場合、投与間の期間は、個体における増殖のための時間を可能にするのに十分であるべきであり、特定の実施形態では、用量間の期間は、1、2、3、4、5、6、7日、又はそれ以上である。
【0332】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫細胞療法の前に、非骨髄性リンパ球枯渇化学療法を投与され得る。非骨髄性リンパ球枯渇化学療法は、任意の好適な経路によって投与され得る、任意の好適なかかる療法であり得る。非骨髄性リンパ球枯渇化学療法は、特にがんが黒色腫であり、これが転移性であり得る場合、例えば、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与を含むことができる。シクロホスファミド及びフルダラビンの投与の例示的な経路は、静脈内である。同様に、任意の好適な用量のシクロホスファミド及びフルダラビンを投与することができる。特定の態様では、約60mg/kgのシクロホスファミドが2日間投与され、その後、約25mg/m2のフルダラビンが5日間投与される。
【0333】
ある特定の実施形態では、免疫細胞の増殖及び活性化を促進する成長因子は、対象に、免疫細胞と同時に又は免疫細胞に続いてのいずれかで投与される。免疫細胞成長因子は、免疫細胞の増殖及び活性化を促進する任意の好適な成長因子であり得る。好適な免疫細胞成長因子の例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、及びIL-12が挙げられるが、これらは単独で、又はIL-2及びIL-7、IL-2及びIL-15、IL-7及びIL-15、IL-2、IL-7、及びIL-15、IL-12及びIL-7、IL-12及びIL-15、若しくはIL-12及びIL2などの様々な組み合わせで使用することができる。
【0334】
治療有効量の免疫細胞は、非経口投与を含む、いくつかの経路、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、若しくは関節内注射、又は注入によって投与され得る。
【0335】
免疫細胞集団は、疾患と一貫する治療レジメンで、例えば、疾患状態を改善するための1日~数日間にわたる単回若しくは数回用量、又は疾患の進行を阻害し、疾患の再発を予防するための長期間にわたる定期的用量を投与され得る。製剤に用いられる正確な用量はまた、投与経路、及び疾患又は障害の重篤性に依存し、開業医の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。治療有効数の免疫細胞は、治療されている対象、苦痛の重症度及び種類、並びに投与様式に依存する。いくつかの実施形態では、治療有効数の免疫細胞は、体重1kg当たり約5×l0細胞~体重1kg当たり約7.5×l0細胞、例えば、体重1kg当たり約2×l0細胞~約5×l0細胞、又は体重1kg当たり約5×l0細胞~約2×l0細胞で変化し得る。免疫細胞の正確な数は、対象の年齢、体重、性別、及び生理学的状態に基づいて、当業者によって容易に決定される。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験システムに由来する用量反応曲線から外挿することができる。
【0336】
ある特定の実施形態では、本実施形態の組成物及び方法は、少なくとも1つの追加の療法と組み合わせた免疫細胞集団又はScFvを含む。追加の療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘤摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又は前述の組み合わせであってもよい。追加の療法は、アジュバント又はネオアジュバント療法の形態であってもよい。
【0337】
いくつかの実施形態では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤又は抗転移性薬剤の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、抗悪心剤などの治療の副作用の発生及び/又は重症度を減少させることを意図する薬剤)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、手術である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の療法は、ガンマ線照射である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、PBK/AKT/mTOR経路、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学予防剤を標的とする療法である。追加の療法は、当該技術分野で既知の化学療法剤のうちの1つ以上であってもよい。
【0338】
本発明の医薬組成物又は本発明の免疫細胞療法は、免疫チェックポイント療法などの追加のがん療法に対して、その前、その間、その後、又は様々な組み合わせで投与されてもよい。投与は、同時、数分、数日、数週の範囲の間隔であってもよい。免疫細胞療法が追加の治療薬とは別個に患者に提供されるいくつかの実施形態では、2つの化合物が依然として患者に有利に組み合わされた効果を発揮することができるように、概して、かなりの期間が各送達時間の間に終了しなかったことを確実する。かかる例では、抗体療法及び抗がん療法を、互いに約12~24時間又は72時間以内に、より具体的には、互いに約6~12時間以内に患者に提供し得ることが企図される。いくつかの状況では、数日(2、3、4、5、6、又は7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7、又は8)がそれぞれの投与の間で経過する治療の期間を著しく延長することが望ましい場合がある。
【0339】
様々な組み合わせが用いられ得る。以下の例では、本発明の医薬組成物又は免疫細胞療法は、「A」であり、抗がん療法は、「B」である。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0340】
患者への本実施形態の任意の化合物又は療法の投与は、存在する場合、薬剤の毒性を考慮に入れて、かかる化合物の投与のための一般的なプロトコルに従う。したがって、いくつかの実施形態では、併用療法に起因する毒性を監視するステップがある。
【0341】
本発明の医薬組成物又は免疫細胞療法と組み合わせて、多種多様な化学療法剤が使用され得る。「化学療法」という用語は、がんを治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がんの治療で投与される化合物又は組成物を暗示するために使用される。これらの薬剤又は薬物は、例えば、細胞周期に影響を与えるかどうか、及びどの段階であるか、細胞内の活性様式によって分類される。あるいは、薬剤は、直接DNAを架橋する、DNAにインターカレートする、又は核酸合成に影響を与えることによって染色体及び有糸分裂異常を誘導するその能力に基づいて特徴付けられ得る。
【0342】
化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドパ、カルボコン、メテウレオパ、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチローロメラミンを含む、エチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロルエタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチンなどのニトロ尿素;エネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマール及びカリケアマイシンオメガール)などの抗生物質;ジネマイシンAを含む、ジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連するクロモタンパク質エネジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノミシン、アクチノマイシン、オースラルナイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝抵抗物質;デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトンなどのアンドロゲン;ミトタン及びトリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラストン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金錯体複合体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質タンスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、並びに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
***
【0343】
本発明は、単に例示として考慮され、かつ本発明の範囲を限定するものでない、以下の実施例によって説明される。
【実施例
【0344】
実施例
方法論
CARベクターの設計及び産生
p95HER2 CAR(h32H2、214D8、H1 214D8、H2 214D8、H3 214D8、215C2、H1 215C2、H2 215C2)をコードするベクタープラスミドを合成し、pMSGV-1レトロウイルスベクター(Genscript、Netherlands)にクローニングした。次いで、p95HER2 CAR、HER2 CAR、及び空(UTD)のCARレトロウイルスのストックを産生した。簡潔に述べると、0,7μgのエンベローププラスミド(RD-114)及び1.5μgのトランスファープラスミド(p95HER2、HER2、pMSGV-1中の空のCAR)をGP-293細胞(#631458、Clontech)で共トランスフェクトした。2日及び3日後、レトロウイルス粒子を含む細胞上清を収集し、将来の形質導入のために-80Cで保存した。
【0345】
CAR T細胞の形質導入及び拡大
PBMCを、形質導入前に、10ng/ulのα-CD3(OKT3)(#16-0037-85、Thermo-Fisher)及び300U/mlのIL-2(#703892-4、Novartis)で48時間刺激した。次いで、レトロウイルス粒子を含む細胞上清を解凍し、レトロネクチン(#T100A、Takara)コーティング6ウェルプレートで、2000gで2時間遠心分離した。次に、2×10の刺激されたPBMCを上部に添加し、400gで10分間遠心分離した。5日後、CAR発現及び細胞傷害性アッセイを行った。非形質導入T細胞(UTD)を、空のCARレトロウイルスで形質導入した。
【0346】
CAR発現分析
0,2×10CAR Tを1倍PBSで2回洗浄し、1倍PBS、2.5mM EDTA、1%BSA、及び5%ウマ血清中で20分間再懸濁した。次いで、細胞を1/20ビオチン抗IgG(#115-065-072、Jackson ImmunoResearch)で30分間染色し、1倍PBSで2回洗浄した。1/150及び1/300抗CD3-PE(#300408、Biolegend)でのAPC-ストレプトアビジン抗体(#405207、Biolegend)を30分間添加した。Zombie Aqua(#423101、Biolegend)を、1:1000希釈で生存率マーカーとして使用した。CAR発現をFACSCelesta(BD Bioscience)で測定し、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0347】
CAR T細胞傷害性アッセイ
CFSEで標識されたMCF10A p95HER2/空細胞を、示されたE:CAR T比率で、96ウェルの平底プレートでCAR T細胞と共培養した。48時間のインキュベーション後、細胞の混合物を1倍PBSで洗浄し、1倍PBS、2.5mM EDTA、1%BSA、及び5%ウマ血清中で20分間再懸濁した。次いで、細胞を、生存率マーカーとして1:1000希釈でzombie Aqua(#423101、Biolegend)で染色した。CFSE陽性細胞を、LSR Fortessa(BD Bioscience)でカウントし、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0348】
インビボモデル
NSGマウスに、3×10MCF7p95HER2/親細胞を同所注射した。腫瘍体積が300mmに達すると、動物を、3×10CAR+T細胞で7~10日毎に、最大4用量で静脈内(i.v.)処置した。MCF7p95HER2細胞の場合、マウスは、飲料水中のドキシサイクリン(1g/L)の存在下で維持された。
【0349】
結果
実施例1:ヒト化32H2 p95HER2 CAR
抗p95HER2抗体32H2は、WO/2010/000565として公開されたPCT出願に開示されている。初めに、抗p95HER2抗体32H2の一本鎖断片可変(scFv)を使用して、2つのバージョンの32H2由来p95HER2 CARを生成した。
【0350】
2つのバージョンの32H2 p95HER2 CARは、32H2抗体の一本鎖断片可変(scFv)の軽可変領域(VL)及び重可変領域(VH)の配置の順序が異なっていた(図2A)。両方の32H2 p95HER2 CARは、CAR配列の最初にCD8リーダー配列(MALPVTALLLPLALLLHAARP配列番号147)と、可変領域間にリンカー(TGSTSGSGKPGSGEGS配列番号29)と、CD8ヒンジドメインと、CD28膜貫通ドメイン及び共刺激ドメインと、CD3ゼータドメインとを含んでいた。完全長HER2を標的とするトラスツズマブベースのCARを陽性対照として使用した(図2A)。
【0351】
生成された32H2 p95HER2 CARのいずれも、細胞表面で検出されなかった(図2B)。したがって、両方の32H2 p95HER2 CAR Tは、機能的ではなく、p95HER2を発現するMCF10A細胞の殺傷の欠如によって示された(図2C)。
【0352】
32H2のscFvをヒト化し、ヒト化の度合いに応じて、2つのヒト化バージョンのVH及びVLを得た(表1)。
【表1】
表1:異なるヒト化32H2バージョンH1:ヒト化バージョン1;H2:ヒト化バージョン2の重可変領域及び軽可変領域のアミノ酸配列。
【0353】
軽可変領域(VL)及び重可変領域(VH)の配置の順序、並びに使用されるヒト化バージョン(H1又はH2)が異なる、4つのバージョンのヒト化32H2 p95HER2 CARが生成された。4つのヒト化32H2 p95HER2 CARは、CAR配列の最初にCD8リーダー配列と、可変領域間にリンカーと、CD8ヒンジドメインと、CD28膜貫通ドメイン及び共刺激ドメインと、CD3ゼータドメインとを含んでいた。(図3A)。VL-VH H1 32H2 p95HER2 CARは、残りのヒト化32H2 p95HER2 CARバージョン(図3B)とは対照的に、細胞表面(図3B、4B)で発現された。したがって、VL-VH H1 32H2 p95HER2 CARを更なる実験に使用し、ヒト化32H2(h32H2)p95HER2 CARと命名した。
【0354】
更なる実験では、h32H2 p95HER2は、トラスツズマブベースのCARと類似のレベルで細胞表面で発現されることができた(図4B)。更に、p95HER2を発現するMCF10A細胞と共培養されたh32H2 p95HER2 CAR Tは、特定の細胞傷害効果を誘導したが(図4C)、有効性は、高い比率の標的:CAR T細胞で明らかであった。対照的に、h32H2 p95HER2 CAR Tは、MCF10A細胞にいかなる影響も及ぼさず(図4D)、p95HER2に対するその特異性を示唆する。
【0355】
実施例2:214D8 p95HER2 CAR
214D8 p95HER2 CARは、その内容が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、US2011/0135653として公開された米国特許出願に開示されている、抗p95HER2抗体214D8のscFvから生成された。
【0356】
214D8抗体の軽可変領域(VL)及び重可変領域(VH)の配置の順序が異なる、2つのバージョンの214D8 p95HER2 CARが開発された(表2、図5A)。両方の214D8 p95HER2 CARが、CD8リーダー配列、リンカー、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通及び共刺激ドメイン、並びにCD3ゼータドメインを含んでいた。
【0357】
両方の214D8 p95HER2 CARが、細胞表面で発現され、より高いレベルで発現されたVL-VH 214D8 p95HER2 CARであった(図5B)。p95HER2を発現するMCF10A細胞と共培養されたVL-VH 214D8 p95HER2 CAR Tは、低い比率の標的:CAR T細胞で高い細胞傷害効果を誘導した(図5C)。
【表2】
表2:214D8抗p95HER2抗体の重可変領域及び軽可変領域のアミノ酸配列。
【0358】
表3に示されるように、214抗p95HER2の重可変領域及び軽可変領域のヒト化バージョンも得られている。
【表3】
表3:異なるヒト化214抗p95HER2バージョンの重可変領域及び軽可変領域のアミノ酸配列。
【0359】
ヒト化214抗p95HER2 CARバージョンは、細胞表面で発現され(図6B)、少なくともH1 214及びH2 214ヒト化CARバージョンは、低い比率の標的:CAR T細胞でも高い細胞傷害効果を誘導した(図6D)。加えて、図6Cに示されるように、ヒト化ScFvバージョンの使用により、非ヒト化バージョンと比較して、正常なレベルのHER2を発現する細胞の殺傷の減少に起因して、p95HER2に対してより特異的なCAR Tを生成する。
【0360】
実施例3:215C2 p95HER2 CAR
215C2 p95HER2 CARは、抗p95HER2抗体215C2のScFvから生成された。
【0361】
215C2抗体の軽可変領域(VL)及び重可変領域(VH)の配置の順序が異なる、2つのバージョンの215C2 p95HER2 CARが開発された(表4、図7A)。両方の215C2 p95HER2 CARが、CD8リーダー配列、リンカー、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通及び共刺激ドメイン、並びにCD3ゼータドメインを含んでいた。
【0362】
両方の215C2 p95HER2 CARが、細胞表面で発現され、より高いレベルで発現されたVL-VH 215C2 p95HER2 CARであった(図7B)。更に、p95HER2を発現するMCF10A細胞と共培養されたVL-VH 215C2 p95HER2 CAR Tは、低い比率の標的:CAR T細胞で高い細胞傷害効果を誘導した(図7C)。
【表4】
表4:215C2抗p95HER2抗体の重可変領域及び軽可変領域のアミノ酸配列
【0363】
表5に示されるように、215抗p95HER2の重可変領域及び軽可変領域のヒト化バージョンも得られている。
【表5】
表5:異なるヒト化215抗p95HER2バージョンの重可変領域及び軽可変領域のアミノ酸配列。
【0364】
ヒト化215抗p95HER2 CARバージョンH1及びH2が細胞表面で発現され(図8B)、これはまた、低い比率の標的:CAR T細胞でも高い細胞傷害効果を誘導した(図8C)。加えて、図8Dに示されるように、ヒト化ScFvバージョンの使用により、非ヒト化バージョンと比較して、正常なレベルのHER2を発現する細胞の殺傷の減少に起因して、p95HER2に対してより特異的なCAR Tを生成する。
【0365】
実施例4:インビボでのp95HER2陽性腫瘍の増殖に対するm215由来p95HER2 CAR Tの効果。
NSGマウスに、MCF7p95HER2細胞を同所移植した。腫瘍が約300mmに達したとき、動物を3×10m215由来p95HER2 CAR+T細胞又はUTD T細胞で処置した。腫瘍の完全な寛解は、3ラウンドのCAR+T細胞処置の後に達成された(図9A)。更に、35日間の処置後に循環ヒトCD3+細胞を検出し、適切なCAR T持続性を示唆した。
【0366】
実施例5:インビボでのp95HER2陽性及びp95HER2陰性腫瘍の増殖に対するH1 214由来p95HER2 CAR Tの効果。
NSGマウスに、MCF7p95HER2細胞又はMCF7細胞を同所移植した。腫瘍が約300mm3に達したとき、マウスを3×106 H1 214 p95HER2 CAR+T細胞又はUTD T細胞で処置した。腫瘍の完全な寛解は、腫瘍がp95HER2を発現したとき、2ラウンドのH1 214 CAR T細胞処置の後に達成され(図10A)、H1 214由来p95HER2 CAR Tの高い有効性を示唆する。加えて、腫瘍がp95HER2を発現しなかったが、正常なレベルのHER2を発現したとき、腫瘍の増殖に対する効果は観察されず(図10D)、p95HER2に対するH1 214由来CAR Tの非常に高い特異性を示唆する。更に、腫瘍がp95HER2を発現したとき(図10B)のみ、第2の用量の10日後の循環ヒトCD3+細胞レベルは、UTD群と比較して増加したが、MCF7腫瘍では発現せず(図10E)、同族抗原の存在下でのみ適切かつ特異的なCAR T拡大を示唆する(図10B)。この結果は、MCF7p95HER2腫瘍のみにおいて(図10C)、対照群(UTD)と比較してCD3+細胞の浸潤の増加が観察されたが、正常なHER2発現MCF7腫瘍では観察されなかったため(図10F)、腫瘍におけるヒトCD3+のレベルと相関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
【配列表】
2023529082000001.app
【国際調査報告】