(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】生体材料組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/22 20060101AFI20230630BHJP
A61K 38/14 20060101ALI20230630BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230630BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20230630BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20230630BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20230630BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230630BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20230630BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230630BHJP
C08B 37/00 20060101ALN20230630BHJP
C07H 15/12 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
A61L27/22
A61K38/14
A61P43/00 107
A61L27/54
A61L27/02
A61L27/58
A61K9/10
A61P19/00
A61K31/7036
A61P31/04
C08B37/00 Q
C07H15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573740
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 US2021034408
(87)【国際公開番号】W WO2021247348
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316011499
【氏名又は名称】ボーン ソリューションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランキー・エル・モーリス
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン・ローラー
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C081
4C084
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057BB05
4C057CC04
4C057DD01
4C057JJ40
4C076AA17
4C076BB32
4C076CC29
4C076CC50
4C076DD26
4C076DD29
4C076FF11
4C076FF68
4C076GG41
4C081AB02
4C081AB04
4C081BA12
4C081BA16
4C081CD112
4C081CE01
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4C081DC12
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4C084AA02
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4C084MA01
4C084MA22
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZA96
4C084ZB22
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA67
4C086NA10
4C086ZB35
4C090AA09
4C090BA79
4C090DA22
(57)【要約】
本開示は、MgO、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロテオグリカン、リンケイ酸ナトリウムカルシウム、及び抗生物質を含む乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を含む、生体材料組成物であって、リン酸二水素カリウムのMgOに対する質量百分率比が、約3:1~1:1であり、乾燥したリン酸カリウムベースの混合物が、水溶液と混合され、それによって再吸収性生体材料スラリーを形成するように構成されており、プロテオグリカンが、乾燥組成物の約1~10質量%であり、プロテオグリカンが、コラーゲン線維形成の活性調節因子として作用し、それによって骨細胞外マトリックスを組織化することで患者の組織を構築する、生体材料組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgO、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロテオグリカン、リンケイ酸ナトリウムカルシウム、及び抗生物質を含む乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を含む、生体材料組成物であって、リン酸二水素カリウムのMgOに対する質量百分率比が、約3:1~1:1であり、前記乾燥したリン酸カリウムベースの混合物が、水溶液と混合され、それによって再吸収性生体材料スラリーを形成するように構成されており、前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1~10質量%であり、前記プロテオグリカンが、コラーゲン線維形成の活性調節因子として作用し、それによって骨細胞外マトリックスを組織化することで患者の組織を構築する、生体材料組成物。
【請求項2】
前記プロテオグリカンが、ミネラル-コラーゲン複合マトリックス、繊維、顆粒、細片化繊維、ナノ粒子、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項3】
前記リンケイ酸ナトリウムカルシウムが、45S5生体活性ガラス繊維、シリカ生体活性ガラス、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、五酸化リン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項4】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1~5質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項5】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1.5~2.5質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項6】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1.5~3質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項7】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1.5~3.5質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項8】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1.5~4質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項9】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1.5~4.5質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項10】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約2質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項11】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1.5~2質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項12】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1.5~2.5質量%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項13】
前記生体材料組成物が、骨伝導性及び骨誘導性であり、それによって、骨-インプラント界面に沿って、並びに骨-インプラント界面内で患者の新骨成長を可能とする、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項14】
前記抗生物質が、前記乾燥組成物の約1~5%である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項15】
前記抗生物質が、アミノグリコシド抗生物質である、請求項1に記載の生体材料組成物。
【請求項16】
孔隙率及び再吸収特性が増加した生体材料を製造する方法であって、
請求項1に規定の乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を供給する工程と、
前記乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を請求項1に規定の水溶液と混合して、請求項1に規定の再吸収性生体材料スラリーを形成する工程とを含む、方法。
【請求項17】
前記プロテオグリカンが、前記乾燥組成物の約1~10質量%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
孔隙率及び再吸収特性が増加した生体材料を使用して骨欠陥空隙を埋め戻す方法であって、
骨から骨欠陥部を除去して、空隙を作製する工程と、
請求項1に規定の乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を請求項1に規定の水溶液と混合して、請求項1に規定の再吸収性生体材料スラリーを形成する工程と、
前記空隙を前記再吸収性生体材料スラリーで埋め戻す工程とを含み、前記再吸収性生体材料スラリーが、骨伝導性及び骨誘導性であり、それによって、骨-インプラント界面に沿って、並びに骨-インプラント界面内で患者の新骨成長を可能とする、方法。
【請求項19】
前記再吸収性生体材料スラリーが、骨に変化して、骨中に骨構造を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記骨欠陥部が、骨嚢胞、骨髄病変、及び骨粗鬆症の骨からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記空隙にアンカーを配置した後、前記空隙を前記再吸収性生体材料スラリーで埋め戻す工程を更に含み、前記アンカーが、骨に更なる構造的支持を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記アンカーが、ポリマー又は金属を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月1日に出願された名称「Bio-Material Composition and Methods of Use」の米国仮特許出願第63/032,847号の優先権を主張し、その内容を参照により本明細書にその全体を援用する。
【0002】
本開示は、生体材料組成物及びその使用方法に関する。形成した生体材料の実施形態は、骨伝導性及び骨誘導性であり、それによって、骨-インプラント界面に沿って、並びに骨-インプラント界面内で患者の新骨成長を可能とする。
【背景技術】
【0003】
本明細書において別段の指示がない限り、本節で述べる材料は、本出願の特許請求の範囲に対する従来技術であるとは認められない。
【0004】
骨折、関節の摩耗、及び靭帯の断裂のような、スポーツ、年齢、及び外傷に関連する損傷の増加により、整形外科的損傷を治療できる生体材料の需要が高まっている。これに応じて、企業は、様々な物体を骨に付着させる骨セメント、並びに骨折及びその他の骨欠陥部を治療できる骨充填材を開発している。また、骨の形成及び成長を促進できる生体材料も必要とされている。ほとんどの既存の生体材料は、著しい新骨形成を促進するリン酸カルシウム、又は生体適合性の低いポリメタクリル酸メチル(「PMMA」)のような比較的不活性な硬化ポリマーからできている。
【0005】
Rampらに発行された米国特許第5,968,999号は、整形外科的処置に有用なPMMAベースの骨セメント組成物を記載している。残念なことに、PMMAベースの生体材料は、硬化過程中に周囲の骨にかなりの量の熱を放出して、細胞死を引き起こす。得られた材料は硬化中に収縮し、耐破壊性が低い。PMMA生体材料はまた、生体吸収速度が遅く、有毒なモノマーが血流に放出されるため生体適合性が低い。PMMAベースの材料が有意に新骨形成を促進するという証拠はほとんどない。
【0006】
近年、生体材料としていくつかのリン酸カルシウムベースの組成物が開発されている。例えば、Leeらに発行された米国特許第6,331,312号は、骨充填材及びセメントとして有用な注射可能なリン酸カルシウムベースの複合体を開示している。開示された材料は、生体吸収性であり、骨組織の修復及び成長促進、並びにネジ、プレート、及び他の固定デバイスの取り付けに使用するために設計されている。Leeの組成物は、硬化中に膨張せず、有意には新骨形成を促進しない。多くの既存のリン酸カルシウムベースの充填材及びセメントは、CaのPに対するモル比が高く、再吸収性が低くなる。更に、最近のFDAの発表では、脊椎の骨折の治療に既存のリン酸カルシウムベースの骨充填材を使用することによる深刻な合併症を警告している(FDA Public Health Web Notification、「Complications Related to the Use of Cement and Bone Void Fillers in Treating Compression Fractures of the Spine」、2002年10月31日初版発行、2004年5月27日更新)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,968,999号
【特許文献2】米国特許第6,331,312号
【特許文献3】米国特許第6,485,754号
【特許文献4】米国特許第6,719,992号
【特許文献5】米国特許第6,719,993号
【特許文献6】米国特許第6,585,992号
【特許文献7】米国特許第6,544,290号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】FDA Public Health Web Notification、「Complications Related to the Use of Cement and Bone Void Fillers in Treating Compression Fractures of the Spine」、2002年10月31日初版発行、2004年5月27日更新
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、形成された1種又は複数種の実施形態が骨伝導性及び骨誘導性であり、それによって、骨-インプラント界面に沿って、並びに骨-インプラント界面内で患者の新骨成長を可能とする、生体材料組成物及びその製造方法を含む。
【0010】
第1の態様において、本開示は、MgO、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロテオグリカン、リンケイ酸ナトリウムカルシウム、及び抗生物質を含む乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を含む、生体材料組成物であって、リン酸二水素カリウムのMgOに対する質量百分率比が、約3:1~1:1であり、乾燥したリン酸カリウムベースの混合物が、水溶液と混合され、それによって再吸収性生体材料スラリーを形成するように構成されており、プロテオグリカンが、乾燥組成物の約1~10質量%であり、プロテオグリカンが、コラーゲン線維形成の活性調節因子として作用し、それによって骨細胞外マトリックスを組織化することで患者の組織を構築する、生体材料組成物を提供する。
【0011】
ある特定の例では、生体材料組成物は、全組成物の約44~61%のリン酸一カリウムを含む。リン酸一カリウムは、組成物のより速い吸収をもたらす。生体材料組成物はまた、全組成物の約4~9%のリンケイ酸ナトリウムカルシウムを含む。リンケイ酸ナトリウムカルシウムは、骨成長のための更なる強度及びプラットフォームを提供し、取扱い特性の向上に役立つ。生体材料組成物はまた、全組成物の約4~9%のリン酸一ナトリウムを含み、これはイオン放出の制御に役立つ。生体材料組成物はまた、全組成物の約30~45%の酸化マグネシウムを含み、これは反応性を制御するために硬焼されていてもよい。MgOは、既存のカルシウム骨空隙充填材と比較して、組成物がより速く再吸収されることを可能とする。骨芽細胞はマグネシウムを骨形成過程の燃料として使用するため、MgOは骨芽細胞の活性を刺激する。生体材料組成物はまた、全組成物の約0~5%のプロテオグリカンを含む。プロテオグリカンは、骨-インプラント界面に沿った、並びに骨-インプラント界面内での新骨成長を可能にするため、骨伝導性及び骨誘導性を有する。生体材料組成物はまた、全組成物の約0~5%のリン酸を含み、これはMgOを分解して、より多くのリン酸塩を生成するのに役立つ。上記の成分及び百分率の様々な組合せも可能である。
【0012】
生体材料組成物は、骨の上又は隣接する部位;軟骨の上、中、又は隣接する部位;骨又は軟骨の中、上、又は近接する部位、及びインプラントデバイスの骨又は軟骨接触面を含むがこれらだけに限らない様々な部位に施用することができる。生体材料組成物は、骨充填材、骨セメント、送達デバイス、骨移植片、及び/又は一般的な結合マトリックスとして機能して、骨欠陥部に直接施用することができる。或いは、生体材料組成物は、ネジ及びプレートなどの様々な固定デバイスと共に使用することができる。
【0013】
第2の態様において、本開示は、孔隙率及び再吸収特性が増加した生体材料を製造する方法であって、(a)第1の態様の乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を供給する工程と、(b)乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を第1の態様の水溶液と混合して、第1の態様の再吸収性生体材料スラリーを形成する工程とを含む、方法を含む。
【0014】
第3の態様において、本開示は、孔隙率及び再吸収特性が増加した生体材料を使用して骨欠陥空隙を埋め戻す方法であって、(a)骨から骨欠陥部を除去して、空隙を作製する工程と、(b)乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を第1の態様の水溶液と混合して、第1の態様の再吸収性生体材料スラリーを形成する工程と、(c)空隙を再吸収性生体材料スラリーで埋め戻す工程とを含み、再吸収性生体材料スラリーが、骨伝導性及び骨誘導性であり、それによって、骨-インプラント界面に沿って、並びに骨-インプラント界面内で患者の新骨成長を可能とする、方法を含む。
【0015】
これら並びに他の態様、利点、及び代替案は、添付の図面を適宜参照して、以下の詳細な説明を読むことによって当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、例示的なデバイス及び系を説明する。「例示的」という言葉は、本明細書では「例、実例、又は図解としての機能を果たす」という意味で使用されていることを理解されたい。本明細書で「例示的」として説明される任意の実施形態又は特徴は、必ずしも他の実施形態又は特徴よりも好ましい又は有利であると解釈されるものではない。本明細書に記載の例示的な実施形態は、限定することを意味していない。
【0017】
本明細書で使用する場合、測定値に関して、「約」は±5%を意味する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「骨伝導性」は、生存可能な骨の成長及び治癒のための足場として機能する材料の能力である。
【0019】
本明細書で使用する場合、「骨誘導性」は、骨の成長を刺激又は誘導する能力を指す。
【0020】
本明細書で使用する場合、「生体適合性」は、受容者において著しく望ましくない反応を誘発しない材料を指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「生体吸収性」は、身体過程を通じてin vivoで吸収される材料の能力として定義される。吸収された材料は、受容者の身体内で使用されても、又は排泄されてもよい。
【0022】
I.乾燥混合物の調製/供給
本開示の乾燥混合物は、一般に、MgO、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロテオグリカン、リンケイ酸ナトリウムカルシウム、及び抗生物質を含み、リン酸二水素カリウムのMgOに対する質量百分率比は、約3:1~1:1である。乾燥混合物を事前に生成しておくことが好ましい場合がある。調製後は、無菌環境、より好ましくは無菌で密閉された容器又は包装で保存すべきである。
【0023】
混合物の乾燥成分は、用手混合又は機械混合を含む様々な方法を使用して混合され得る。様々な粉末を混合、サイジング、及び均質化するための1つの方法は、振動式粉砕によるものである。別の均質化方法は、粒子を細かいサイズに粉砕するリボン式混合機を利用する。活性化水溶液を添加する前に、その場で乾燥成分を再度混合することが好ましい場合がある。
【0024】
組成物のMgOは、任意選択で焼成及び熱分解過程を施される。MgOの焼成は、熱分解をもたらすために鉱石及び他の固体材料に加えられる空気又は酸素がない又は供給が制限されている状態での処理過程である。熱分解、又は加熱分解は、熱によって引き起こされる化学分解である。物質の分解温度は、その物質が化学的に分解する温度である。分解を受ける化合物の化学結合を切断するには熱が必要であるため、この反応は通常吸熱である。言い換えると、この過程により、MgOが分解され、水和物に変わり、身体に再吸収されるようになる。
【0025】
焼成期間及び温度は、所望の最終特性及び硬化時間に応じて、経験的に決定される。いくつかの実施形態では、数時間までの最高で約1300℃の焼成温度が使用されるが、焼成は変更することができる。類似の骨組成物を製造する当業者なら、所望の性質を実現するために適切な焼成条件を慣例的に決定することができるであろう。
【0026】
水性形態に加えて、本開示の組成物は、乾燥混合物を含むゲルでもよい。
【0027】
一般に、入手可能な場合、医薬品グレード化合物を利用する。スラリーの作製及び施用に用いられる成分、器具、溶液などの滅菌は、エチレンオキシドによるガス処理などの化学的滅菌技術、及び高エネルギー放射線、通常はγ放射線又はβ放射線による滅菌を含むがこれらだけに限らない当技術分野で公知の適切な滅菌技術を使用する必要があり得る。
【0028】
本明細書に記載の配合は好ましい割合であるが、ある範囲の乾燥した構成成分も使用することができる。例えば、リン酸一カリウムの適切な範囲は、一般に約20~70質量%、好ましくは約40~65質量%である。いくつかの状況及び/又は実施形態では、リン酸カリウムを約40~50質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0029】
マグネシア(即ち、MgO)の適切な範囲は、一般に約10~60質量%、好ましくは10~50質量%、更により好ましくは30~50質量%である。いくつかの状況及び/又は実施形態では、約35~50質量%を使用することができる。
【0030】
リンケイ酸ナトリウムカルシウムは、好ましくは約1~15質量%、より好ましくは約1~10質量%で添加される。ある特定の例では、リンケイ酸ナトリウムカルシウムは、全組成物の約4~9%で添加される。ある状況では、より高いパーセンテージを採用することができる。例として、リンケイ酸ナトリウムカルシウムは、45S5生体活性ガラス繊維、シリカ生体活性ガラス、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、五酸化リン、及びこれらの組合せを含むことができる。
【0031】
リン酸一ナトリウムは、好ましくは約1~15質量%、より好ましくは約1~10質量%で添加される。ある特定の例では、リン酸一ナトリウムは、全組成物の約4~9%で添加される。ある状況では、より高いパーセンテージを採用することができる。
【0032】
プロテオグリカンは、一般に、乾燥組成物の0.5~20質量%、好ましくは約0.5~10質量%で存在する。例として、プロテオグリカンは、乾燥組成物の約1~5質量%、乾燥組成物の約1.5~2.5質量%、乾燥組成物の約1.5~3質量%、乾燥組成物の約1.5~3.5質量%、乾燥組成物の約1.5~4質量%、乾燥組成物の約1.5~4.5質量%、乾燥組成物の約2質量%、乾燥組成物の約1.5~2質量%、又は乾燥組成物の約1.5~2.5質量%を占める。適切なプロテオグリカンには、ミネラル-コラーゲン複合マトリックス、繊維、顆粒、細片化(morcellized)繊維、ナノ粒子、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0033】
典型的には、抗生物質、抗菌剤、又は抗ウイルス剤は、乾燥組成物の約20質量%未満、好ましくは約0.5~10質量%、より好ましくは約1~5質量%の質量百分率で添加される。関節置換及び修復の手術で典型的に使用される任意の抗生物質を使用することができる。
【0034】
別の一実施形態では、本開示の乾燥混合物は、一般に、リン酸一カリウム(KH2PO4)(約44質量%)、MgO(約41質量%)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(Ca5(PO4)3OH2)(約8質量%)、リン酸一ナトリウム(NaH2PO4)(約3質量%)、及びスクロース(C12H22O11)(約4質量%)を含む。
【0035】
II.溶液配合
水(又は別の水溶液)は、一般に約15~40質量%、好ましくは約20~35質量%、更により好ましくは約28~32質量%の広範囲の質量百分率で添加され得る。食塩水を使用してもよいことが分かった。例示的な食塩水は、0.9%食塩水である。別の例として、水溶液は、血液(例えば、患者の血液又は患者以外の血液)を含む。更に別の例では、水溶液は、塩化ナトリウム(約0.75質量%)、リン酸一ナトリウム(NaH2PO4)(約16.60質量%)、及び水(約82.65質量%)を含む。他の水溶液も可能である。
【0036】
III.再吸収性生体材料スラリーの形成
乾燥混合物は、好ましくは、その場で活性化される。活性化は、乾燥組成物を水溶液と混合することを含む(例えば、滅菌混合容器中で再吸収性生体材料スラリーを形成する)。水(例えば、滅菌水(又は他の滅菌水溶液、例えば、即ち、希薄食塩水))は、一般に、乾燥質量の約40%まで添加されるが、水の量は、様々な粘度の生体材料を形成するために調整され得る。一実施形態では、混合容器及び任意の器具は、使用前に滅菌される。滅菌薬用カップ、ボウル、皿、洗面器、又は他の滅菌容器を含むがこれらだけに限らない様々な混合容器を使用することができる。別の例では、水溶液は、血液(例えば、患者の血液又は患者以外の血液)を含む。
【0037】
混合は、用手及び電気/自動混合を含む、当技術分野で使用される様々な技術によって実現され得る。好ましい一方法は、滅菌スパチュラ又は他の混合器具を用いて用手混合することである。再吸収性生体材料スラリーは、典型的に、約1~10分間用手混合されるが、混合時間は、条件及び混合手段に応じて調整され得る。
【0038】
Stryker社(カラマズー、ミシガン州)のMixevac IIIのような手動ハンドミキサー又はExactech社(ゲインズビル、フロリダ州)のCemex Automatic Mixerのような電動骨ミキサーを使用して、スラリーを混合することが可能である。
【0039】
再吸収性生体材料スラリーは、注射剤、ペースト、プディ(puddy)、及び他の形態で作製することができる。スラリーは使用者側で生成されるため、乾燥混合物に添加される水の量を変えることによって、材料の粘稠度を操作することができる。含水量を増加させると一般に流動性が増加し、含水量を減少させるとスラリーが濃くなる傾向がある。
【0040】
生体材料成分の温度を変化させることによって、作業時間を増大又は低減させることができる。温度が高い成分は、温度が低い成分よりも速く反応し、硬化する傾向がある。したがって、水(又は他の反応物)の温度を調節することは、作業時間を調節する効果的な方法となる可能性がある。
【0041】
本特許申請者は、水の代わりにリン酸溶液を使用すると、材料の接合強度が増加することを見出した。スラリーの最終的なpHが患者に危険でない又は治癒に禁忌でない限り、リン酸のモル濃度を変更することができる。
【0042】
IV.再吸収性生体材料スラリーの部位への施用
再吸収性生体材料スラリーを形成したら、それを所望の軟骨成長部位に(任意選択で、その周囲にも)施用する。スラリーは、滅菌スパチュラ、舌圧子、ナイフ、又はペースト若しくはプディ様材料を広げるのに有用な他の滅菌用具を使用して、ある量の材料を部位に広げることを含むがこれらだけに限らない多くの方法で部位に施用することができる。いくつかの状況では、活性化スラリーを施用する際にペースト又はプディのような比較的高い粘稠度を使用することが好ましい場合があるが、それは、このような粘稠度が、より低い粘稠度のものよりも骨及び他の表面に容易に付着する傾向があるためである。注射可能な形態が望まれる場合、シリンジ又は他の同様のデバイスを使用して施され得る。
【0043】
V.プロテオグリカン
プロテオグリカンは、コラーゲン繊維の集合及びミネラル結晶とのそれらの連結を促進することによって骨組織形成における役割を提供することから、本開示の組成物において使用することができる。
【0044】
VI.リンケイ酸ナトリウムカルシウム
リンケイ酸ナトリウムカルシウムは、水性口腔環境で分解してカルシウム及びリン酸イオンを放出し、骨形成をもたらす生体活性ガラス材料を提供することから、本開示の組成物において使用することができる。
【0045】
驚くべきことに且つ思いがけずに、本開示の組成物及び方法が、再吸収の向上、孔隙率の向上、及び凝集力の向上をもたらすことが発見された。この結果は、リン酸カルシウムセメントが再吸収されないことを示す最近の研究を考慮すると、特に驚くべきことであった。組成物のリン酸塩成分は、孔隙率の増加を可能にする。孔隙率の増加により、細胞又は成長因子を組み込んで損傷組織及び骨の内部成長を再生するのに適した微小環境を提供する足場が可能になる。足場は、一般に、高多孔性であり、栄養素及び酸素の拡散並びに廃棄物の除去を促進する相互連結された細孔ネットワークを有する。この足場は、吸収性にも役立つことになる。組成物の糖成分は、接着性を与える。本製品はある程度の大きさの骨空隙に配置されるため、接着性が望まれる。接着性により、製品が両側に接着し、細胞が骨を再生できるように足場を作製することが可能になるであろう。
【0046】
VII.抗生物質
様々な抗生物質又は他の抗菌及び抗ウイルス組成物及び薬剤を、組成物に添加することができる。本発明の生体材料は送達デバイスとして機能することができ、又は手術中に細菌感染から保護するために抗生物質を添加することができる。
【0047】
カチオン性抗生物質、特にアミノグリコシド及びある種のペプチド抗生物質は、薬物を生体材料に組み込む場合に最も望ましい可能性がある。適切なアミノグリコシド類としては、アミカシン、ブチロシン、ジデオキシカナマイシン、フォルチマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リビドマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、リボスタマイシン、サガマイシン、セルドマイシン及びそのエピマー、シソマイシン、ソルビスチン、スペクチノマイシン、並びにトブラマイシンが挙げられるが、これらだけに限らない。硫酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩のような無機塩を使用することが好ましく、硫酸塩が最も好ましい。生体材料における抗生物質及び成長因子の使用に関する更なる情報は、Wenzに発行された米国特許第6,485,754号に見られ得、これを参照により本明細書にその全体を援用する。成長因子として、トランスフォーミング成長因子TGF-βのような成長因子が挙げられるが、これらだけに限らない。バンコマイシン及び同様の抗生物質も使用され得る。
【0048】
VIII.ポロキサミン
様々なポロキサミン(即ち、エチレンジアミンコアを有するX形ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)ブロックコポリマー(Tetronic(登録商標)など)を、組成物に添加することができる。非限定的な例として、Tetronic(登録商標)304、904、90R4、908、1107、1301、及び1307を組成物に添加することができる。
【0049】
ポロキサミン(Tetronic(登録商標)など)が存在すると、組成物の加水分解、硬化反応、微細構造、及び機械的性質を向上させることができる。特に、組成物にポロキサミンが存在すると、再吸収性生体材料スラリーの硬化時間を延長することができる。加えて又は或いは、組成物にポロキサミンが存在すると、硬化組成物の圧縮強度を増加させることができる。
【0050】
IX.骨移植材料
一実施形態では、本開示の組成物は、骨代用物、及び骨形成のためのプラットフォームを提供する。この物質の利点は、接触した構造物への拒絶又は反応なしに、身体によって緩やかに吸収されることである。本発明の組成物の更なる利点は、その著しい骨増殖性である。実際、特許申請者等は、本開示の組成物が、組成物が骨誘導性でもあることを表す驚くほどの度合いで、本開示の組成物が骨形成を促進することを実証する研究を行ったが、これは、成長因子を使用しない多目的生体材料としては全く予想外で前例のないものである。生体材料はまた、ミクロ及びマクロの孔を有すると考えられる。思いがけないことに、最初の試験では、本発明の組成物が骨における運動機能維持(motion preservation)を促進できることが示された。
【0051】
特許申請者等はまた、本開示の組成物が、様々な医療用人工器官の固定に適した特有の接合特性を有することを観察した。
【0052】
X.更なる実施形態
本明細書に開示する配合物は、追加の充填材、添加物、及び補助材料を組み込むことができる。補助材料は、予想される用途に応じて、様々な量及び様々な物理的形態で生体材料に添加され得る。補助材料は、様々な方法で生体材料を変化させるために使用することができる。
【0053】
補助材料、添加物、及び充填材は、好ましくは、生体適合性及び/又は生体吸収性である。場合によっては、材料が骨伝導性及び/又は骨誘導性であることも望ましい場合がある。適切な生体適合性補助材料としては、生体活性ガラス組成物、硫酸カルシウム、サンゴ状物、ポリアティック(polyatic)ポリマー、ペプチド、脂肪酸、コラーゲン、グリコーゲン、キチン、セルロース、デンプン、ケラチン、核酸、グルコサミン、コンドロイチン、並びに変性及び/又は脱灰骨マトリックス、並びに他の材料、薬剤、及びグラフト(自家移植片、同種移植片、異種移植片)が挙げられるが、これらだけに限らない。他の適切な補助材料は、Leeに公表された米国特許第6,331,312号及びConstanzに公表された米国特許第6,719,992号に開示されており、これらを参照により本明細書にその全体を援用する。
【0054】
本開示の別の一実施形態では、生体材料は、in vivoでの材料の画像化を可能にするX線写真材料を含有する。適切なX線写真材料としては、酸化バリウム及びチタンが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0055】
更に別の一実施形態では、本発明の生体材料は、組成物の硬化時間を調節するための硬化遅延剤又は促進剤を含有する。硬化調節剤は、好ましくは生体適合性である。適切な遅延剤としては、塩化ナトリウム、フッ化ケイ酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ホウ酸塩、ホウ酸、ホウ酸エステル、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0056】
開示の生体材料はまた、様々な度合いの孔隙率を有するように調製することができる。孔隙率の制御は、乾燥反応物の粒径の制御、並びに化学的及び物理的なエッチング及び浸出を含む様々な手段によって実施され得る。生体材料は、生物学的活性化合物(即ち、抗生物質、成長因子、細胞など)を生体材料に組み込むことによって送達系として使用され得る。多孔性の生体接着剤は、このような送達系の有効性を向上させる。
【0057】
開示の生体材料組成物はまた、様々な生細胞又は細胞株で播種されてもよい。細胞を採取し、維持し、調製するための任意の公知の方法を使用することができる。Constanzに公表された米国特許第6,719,993号、Pughに公表された米国特許第6,585,992号、及びLeeに公表された米国特許第6,544,290号を参照されたい。
【0058】
特許申請者等は、本開示の組成物が、硬組織の成長及びおそらく同様に軟組織の成長のための足場として非常に有用であることを示した。更に、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、軟骨産生細胞、及び幹細胞を含むがこれらだけに限らない組織産生細胞及び組織分解細胞を、組成物に添加することができる。このような細胞を単離し、培養する方法は、当技術分野で周知である。
【0059】
本開示の組成物は、乾燥形態の材料(即ち、リン酸二水素カリウム、金属酸化物、カルシウム含有化合物など)、賦活溶液(水又は他の水溶液)、及び任意の医療用デバイス(即ち、シリンジ、ナイフ、混合材料、スパチュラなど)、インプラント、又は本発明の組成物を使用する手術中に必要とされる他の薬剤を含む、整形外科用キットに組み込まれ得る。材料及び賦活溶液は、好ましくは、所定の最適化された比で存在する。このような整形外科用キットの他の実施形態も想定され得る。生体材料及び他のキット構成要素は、好ましくは、当技術分野で周知の技術によって滅菌される。
【0060】
XI.方法例
孔隙率及び再吸収特性が増加した生体材料を使用して骨欠陥空隙を埋め戻す方法を本明細書に記載する。この方法は、(a)骨から骨欠陥部を除去して、空隙を作製する工程と、(b)乾燥したリン酸カリウムベースの混合物を水溶液と混合して、再吸収性生体材料スラリーを形成する工程であって、乾燥したリン酸カリウムベースの混合物が、MgO、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロテオグリカン、リンケイ酸ナトリウムカルシウム、及び抗生物質を含み、リン酸二水素カリウムのMgOに対する質量百分率比が、約3:1~1:1であり、乾燥したリン酸カリウムベースの混合物が、水溶液と混合され、それによって再吸収性生体材料スラリーを形成するように構成されており、プロテオグリカンが、乾燥組成物の約1~10質量%である、工程と、(c)空隙を再吸収性生体材料スラリーで埋め戻す工程であって、再吸収性生体材料スラリーが、骨中の骨芽細胞の活性を高めて、骨の構造を維持するのを助ける、工程とを含む。
【0061】
このような方法において、再吸収性生体材料スラリーは、骨に変化して、骨中に改善された骨構造を提供する。対照的に、従来のカルシウムベースの骨充填材は、骨が成長できる足場を提供するが、上述の組成物のように骨には変化しない。したがって、従来のカルシウムベースの骨充填材の骨細胞はなくなり、骨充填材は劣化し、身体内に再吸収される。本明細書に記載の再吸収性生体材料スラリーの利点は、それが実際に骨に変化し、それによって、改善された骨構造が提供されることである。更に、本明細書に記載の再吸収性生体材料スラリーは、再吸収性生体材料スラリー中に存在するマグネシウムにより、骨中の骨芽細胞活性を増加させる。骨芽細胞は、骨の主要な細胞成分である。骨芽細胞は、間葉系幹細胞の特殊な最終分化産物である。それらは、骨の有機マトリックスを構成する、高密度で架橋されたコラーゲン、並びにオステオカルシン及びオステオポンチンを含めたはるかに少量の特殊なタンパク質を合成する。したがって、上記の方法は、再吸収性生体材料スラリー中に存在するマグネシウムにより骨芽細胞を刺激して、骨構造の維持を助けることを含む、骨を保護する方法である。
【0062】
上述のように、方法は、骨から骨欠陥部を除去して、空隙を作製する工程を含む。骨欠陥部は、様々な形態を取り得る。特に、骨欠陥部は、骨嚢胞、骨髄病変、及び骨粗鬆症の骨からなる群から選択され得る。骨嚢胞は、骨の内部に発生する液体で満たされた穴である。骨嚢胞は、主に小児及び若年成人に起こる。骨嚢胞は、通常何の症状も引き起こさず、がんではなく、通常健康に深刻な脅威をもたらすものではない。骨髄病変(BML)、又は古い用語を使用すると「骨髄浮腫」は、磁気共鳴画像法又は超音波で見られる骨髄腔内の過剰な水分シグナルを特徴とする。BMLは、筋骨格系に影響を及ぼす多種多様な炎症性及び非炎症性リウマチ病態の中心的要素を構成している。BMLは、疼痛の重大な原因と考えられるだけでなく、多くの筋骨格病態(例えば、変形性関節症、リウマチ性関節炎)における疾患活性の増加とも関連する。上記方法の骨欠陥部は、具体例として、四肢及び/又は骨盤の骨の欠陥であり得る。
【0063】
一例では、方法は更に、空隙にアンカーを配置した後、空隙を再吸収性生体材料スラリーで埋め戻す工程を含む。このようなアンカーは、骨に更なる構造的支持を提供することができる。アンカーは、再吸収性ポリマー材料でも金属材料でもよい。ポリマー材料の一例は、ポリ-ld-ラクチド(PLDLA)である。
【0064】
XII.結論
本開示の基本概念を説明してきたが、前述の詳細な開示は、例示としてのみ提示することを意図されており、限定されるものではないことが当業者には明らかであろう。様々な変更、改良、及び修正が示唆されることを意図しており、それらは本開示の範囲及び趣旨内にある。更に、要素若しくは配列の列挙された順序、又は数字、文字、若しくはその他の呼称の使用は、特許請求の範囲で規定している場合を除き、特許請求した方法を任意の順序に限定することを意図するものではない。したがって、本開示は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定される。
【0065】
本出願で引用したすべての刊行物及び特許文書は、個々の刊行物又は特許文書それぞれが個別に参照により示されている場合と同じ程度に、及びそれらが本明細書での明示的教示と矛盾しない程度に、すべての目的でそれら全体が参照により援用される。
【国際調査報告】