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特表2023-529130アテローム性動脈硬化を治療するための2-HOBAの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】アテローム性動脈硬化を治療するための2-HOBAの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20230630BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P3/06
A61P9/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573773
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 US2021035314
(87)【国際公開番号】W WO2021247620
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/033,127
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511183973
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】305 Kirkland Hall,2201 West End Avenue,Nashville, Tennessee 37240, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】リントン,マクレー エフ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィーズ,ショーン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブトー,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA45
4C206ZC33
(57)【要約】
有効量のジカルボニルスカベンジャーを投与することを含む、処置を必要とする対象における家族性高コレステロール血症加速性アテローム性動脈硬化症を処置する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
【化1】

(式中、
RはC-R2であり;
各R2は独立し、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;
R4は、H、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシル;
及びそれらの薬学的に許容される塩
から選択される化合物の有効量を投与することを含む、必要とする対象における家族性高コレステロール血症加速性アテローム性動脈硬化症を治療する方法。
【請求項2】
前記対象が家族性高コレステロール血症を有すると診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が下式:
【化2】

又はその薬学的に許容される塩
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミン又はメチル-2-ヒドロキシベンジルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が2-ヒドロキシベンジルアミンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が下式:
【化3】

又はその薬学的に許容される塩
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が下記:
【化4】

(式中、R5は、H、-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)-CH3である)
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
必要とする対象におけるアテローム性動脈硬化性大動脈におけるMDA-及びIsoLG-リシル含量を低減する方法であって、下式:
【化5】

(式中、
RはC-R2であり;
各R2は独立し、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;
R4は、H、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びそれらの薬学的に許容される塩
から選択される化合物のジカルボニルのスカベンジに有効な量を投与することを含む方法。
【請求項9】
前記対象が家族性高コレステロール血症を有すると診断されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
必要とする対象におけるアテローム性動脈硬化症の治療方法であって、下式:
【化6】

(式中、
RはC-R2であり;
各R2は独立し、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;
R4は、H、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
の化合物又はその薬学的に許容される塩のジカルボニル捕捉に有効な量を投与すること;及び
アテローム性動脈硬化治療の既知の副作用を有する薬剤を併用投与する薬剤を併用すること
を含む方法。
【請求項11】
前記対象が家族性高コレステロール血症を有すると診断されている、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
[0001] 本発明は、NIHから授与されたHL116263及びDK59637の政府支援を受けてなされた。米国政府は本発明に関する一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 心臓発作及び卒中の基礎となる原因であるアテローム性動脈硬化は、当業界において最も一般的な死亡及び身体障害の原因である。亢進したレベルのアポリポタンパク質B(LDL及びVLDL)含有リポタンパク質及び低レベルのHDLは、アテローム性動脈硬化症のリスクを増大させる1。HMG-CoA還元酵素阻害剤によるLDLの低下は、大規模臨床転帰試験において心臓発作及び卒中のリスクを低減させることが示されているが、心血管事象のリスクは相当残されたままである2。アテローム性動脈硬化症は、酸化ストレスが重要な役割を演じる慢性炎症疾患である3, 4。アポB含有リポタンパク質の酸化的修飾は、泡沫細胞形成に至る内在化を増強する1, 5。さらに、酸化LDLは、炎症、免疫細胞活性化及び細胞毒性を誘導する1, 5。HDLは、コレステロール排出の促進、LDL酸化の防止、内皮バリア機能の維持、細胞酸化ストレス及び炎症の最小化を含む複数の役割を介してアテローム性動脈硬化症を予防する1, 4, 6。HDL-C濃度は、心血管疾患(CVD)と逆相関しているが6、最近の研究は、HDL機能のアッセイがCVDリスクの新たな独立マーカーをもたらし得ることを示唆する7, 8。HDLの酸化的修飾はその機能を低下させることが証明されており、酸化HDLは実際にアテローム生成促進性であることが研究により示唆されている1, 6, 9
【0003】
[0003] 脂質過酸化の間、4-オキソ-ノネナール(4-ONE)マロンジアルデヒド(MDA)及びイソレブグランジン(IsoLG)を含む高反応性ジカルボニルが形成される。これら反応性脂質ジカルボニルは、DNA、タンパク質及びリン脂質と共有結合して、リポタンパク質及び細胞機能に変化を引き起こす1, 10, 11。特に、反応性脂質ジカルボニルによる修飾は、アテローム性動脈硬化に関連し得る炎症反応及び毒性を促進する12, 13, 14, 15。インビボ疾患プロセスへの反応性脂質ジカルボニルの寄与を評価する効果的なストラテジを特定することは、困難であった。ジカルボニルを含む活性脂質種の生成は、理論的には、食事性抗酸化剤を用いて活性酸素種(ROS)レベルを単純に低下させることによって抑制させ得るが、アテローム性動脈硬化性心血管事象を予防するための抗酸化物質の使用は、ほとんどの臨床転帰試験が有益性を示せていないという点で問題であることが証明されている1, 16。ビタミンC及びビタミンEのような食事性抗酸化剤は、酸化傷害及び脂質過酸化比較的効果のないサプレッサーである。実際、高コレステロール血症患者を慎重に研究することにより、脂質過酸化を有意に低減させるために必要なビタミンEの用量は、ほとんどの臨床試験において通常使用される用量より実質的に多いことが判明した17。さらに、脂質過酸化を抑制するために必要な高用量の抗酸化剤は、重大な有害作用と関連づけられている。なぜならば、おそらく、ROSが、通常の生理学(細菌感染に対する防御を含む)において及び幾つかの細胞シグナル伝達経路において重要な役割を演じているからである。最後に、発見目的には、抗酸化剤の使用は、反応性脂質ジカルボニルの役割についての情報をほとんどもたらさない。なぜならば、ROSの抑制は、反応性脂質ジカルボニル種に加えて、広範な酸化的に修飾された高分子の形成を阻害するからである。
【0004】
[0004] 抗酸化剤を利用したROSの広範な抑制に対する代替的アプローチは、ROSレベルを変えることなく脂質ジカルボニル種と選択的に反応する低分子スカベンジャーを用いることによって、正常なROSシグナル伝達及び機能を破壊することなく反応性脂質ジカルボニルが細胞高分子を修飾することを防止することである。2-ヒドロキシベンジルアミン(2-HOBA)は、IsoLG、ONE及びMDAなどの脂質ジカルボニルと迅速に反応するが、4-ヒドロキシノネナールなどの脂質モノカルボニルとは反応しない15, 18, 19, 20。2-HOBAの異性体である4-ヒドロキシベンジルアミン(4-HOBA)は、ジカルボニルスカベンジャーとして効果がない21。これら化合物は共に経口でバイオアベイラビリティを有するため、これらを用いて、インビボでの脂質ジカルボニルスカベンジングの効果を調べることができる13, 22。2-HOBAは、酸化ストレス関連高血圧13、酸化剤誘導細胞毒性15、神経変性14、及び急速ペーシング誘導アミロイドオリゴマー形成23から保護する。反応性脂質ジカルボニルがアテローム発生に或る役割を演じているという証拠はあるが6, 7、今日まで、脂質ジカルボニルのスカベンジングがアテローム性動脈硬化症の発症に及ぼす影響は調べられていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 本発明者らは、本発明の化合物での処置が、アテローム性動脈硬化症の発症を有意に低減させることを見出した。本発明者らは、本発明の化合物が病変部における細胞死及び壊死コア形成を抑制し、病変部のコラーゲン含量及び線維性被膜の厚さの増加によって証明されるように、より安定なプラークの特徴の形成に至ることを見出した。2-HOBA処置によるアテローム性動脈硬化症の減少が反応性ジカルボニルのスカベンジングに起因することと一致して、アテローム性動脈硬化病変部のMDA及びIsoLG付加体含量は、コントロールマウスと比較して、2-HOBA処置マウスにおいて顕著に減少した。本発明者らは、さらに、本発明の化合物による処置が、MDA-LDL及びMDA-HDLの減少をもたらすことを示す。さらに、MDA-apoAI付加物形成が減少し、重要なことに、2-HOBA処置が、マクロファージのコレステロール貯蔵量の減少における、より効率的なHDL機能を引き起こした。よって、本発明の化合物での反応性カルボニルのスカベンジング(捕捉)は、アテローム性動脈硬化症の発症を低減させる能力に寄与する可能性が高い複数の抗アテローム治療効果を奏する。
【0006】
[0006] 本発明者らはまた、重度の家族性高コレステロール血症(FH)を有するヒトのHDLが、コントロール被験者に比して、MDA付加物を増加させること、及びFH-HDLがマクロファージのコレステロール貯蔵の減少を極めて損っていることを見出している。したがって、本発明の1つの実施形態は、ヒトアテローム性動脈硬化症を予防及び治療するための新規治療アプローチとして、必要とする対象における反応性ジカルボニルをスカベンジ(捕捉)することである。
【0007】
発明の概要
[0007] 本発明者らは、アテローム性動脈硬化の病態が、脂質過酸化を生じる酸化ストレスによって加速され得ることを示した。脂質過酸化の産物には、タンパク質を共有結合的に修飾する、イソレブグランジン(IsoLG)及びマロンジアルデヒド(MDA)を含む高反応性ジカルボニルが含まれる。本発明の実施形態には、家族性高コレステロール血症(FH)のモデルである高脂血症Ldlr-/-マウスにおけるHDL機能及びアテローム性動脈硬化に対する本発明の化合物(ジカルボニルスカベンジャー(捕捉剤)である2-ヒドロキシベンジルアミン(2-HOBA、サリチルアミン)を含む)での処置が含まれる。
【0008】
[0008] ビヒクルで処置したマウスと比較して、2-HOBAは、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおいて、血中脂質レベルを変化させることなく、アテローム性動脈硬化を顕著に減少させ、近位大動脈で31%、面状大動脈(en face aorta)で60%減少させた。2-HOBAはHDL及びLDL中のMDA含量を減少させた。欧米型食餌の摂取により、Ldlr-/-マウスにおける血漿MDA-apoAI付加物レベルが増加した。2-HOBAは、MDA-apoAI形成を阻害し、マクロファージコレステロール貯蔵を減少させるマウスHDLの能力を増大させた。
【0009】
[0009] 本発明者らはまた、2-HOBAがLdlr-/-マウスにおいてアテローム性動脈硬化性大動脈中のMDA含量及びIsoLG-リシル含量を減少させたことを示す。さらに、2-HOBAは、マクロファージにおける酸化ストレス誘導炎症反応を減少させ、アテローム性動脈硬化病変におけるTUNEL陽性細胞数を72%減少させ、血清中の炎症性サイトカインを減少させた。さらに、2-HOBAは、壊死性コア(necrotic core)の69%減少(p<0.01)並びにコラーゲン含量及び線維性被膜厚の増加(それぞれ2.7倍及び2.1倍)によって証明されるように、マウスにおいて、エフェロサイトーシスを亢進させ、安定プラーク形成の特性を促進させた。FH患者のHDLはMDA含量が増加しており、マクロファージコレステロール含量を減少させるFH-HDLの能力が対照群に比して低下していた。本発明は、2-HOBAによるジカルボニル捕捉(スカベンジング)が、FHのマウスモデルにおいて、リポタンパク質に対する複数のアテローム形成抑制効果(atheroprotective effect)をもたらし、アテローム性動脈硬化を減少させることを示す。このことは、ヒトのアテローム動脈硬化性心疾患の予防及び治療のための新規な治療アプローチとしての可能性を支持する。
【0010】
[0010] 本発明の1つの観点は、MDAをスカベンジ(捕捉)するために本発明の化合物を用いる方法である。
[0011] 本発明の別の1つの観点は、HDL及びLDLを反応性ジカルボニルから保護する方法である。
[0012] 本発明の別の1つの観点は、有効量のジカルボニルスカベンジャー(捕捉剤)を投与することを含む、必要とする対象におけるアテローム性動脈硬化を処置する方法である。
[0013] いくつかの実施形態において、対象は、家族性高コレステロール血症と診断される。
[0014] いくつかの実施形態において、反応性ジカルボニルは、イソレブグランジン(IsoLGs)及びマロンジアルデヒド(MDA)である。
【0011】
[0015] いくつかの実施形態において、本化合物は、下式:
【化1】

(式中、RはC-R2であり;各R2は独立であり、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;R4はH、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びその医薬的に許容できる塩から選択される。
【0012】
[0016] いくつかの実施形態において、本化合物は、下式:
【化2】

又は薬学的に許容されるその塩から選択される。
[0017] いくつかの実施形態において、化合物は、2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミン又はメチル-2-ヒドロキシベンジルアミンである。
【0013】
[0018] いくつかの実施形態において、化合物は、下式:
【化3】

又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0014】
[0019] 他の実施形態において、化合物は、
【化4】

(式中、R5は、H、-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)-CH3である)から選択される。
【0015】
[0020] 本発明の別の実施形態は、それを必要とする対象におけるアテローム性動脈硬化症大動脈のMDA-及びIsoLG-リシル含有量を低減する方法であって、ジカルボニルを捕捉(スカベンジ)するに有効な量の、下式:
【化5】

(式中、RはC-R2であり;各R2は独立であり、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;R4はH、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
から選択される化合物又はその医薬的に許容できる塩を投与することを含む、方法である。
【0016】
[0021] 本発明の別の実施形態は、必要とする対象におけるアテローム性動脈硬化症の治療方法であって、下式:
【化6】

(式中、RはC-R2であり;各R2は独立であり、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;R4はH、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
の化合物又はその医薬的に許容できる塩のジカルボニルを捕捉(スカベンジ)するに有効な量を投与すること、及び、
アテローム性動脈硬化症治療の既知の副作用を有する薬剤を共投与すること、を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】[0022] 図1A~1Eは、2-HOBAが高コレステロール血症の雌性Ldlr-/-マウスにおいてアテローム性動脈硬化症を減弱させることを示す。具体的には、8週齢のLdlr-/-マウスに、1g/Lの2-HOBA若しくは1g/Lの4-HOBA(非反応性アナログ)又はビヒクル(水)を2週間前処置した後、処置を16週間継続する間、マウスにウェスタンダイエットを給餌した。図A及びCは、近位大動脈基部切片(図A)及び切開してピン止めした(open-pinned)大動脈(図C)におけるオイルレッドO染色を示す代表画像である。図B及びDは、大動脈基部切片(図B)及びen face大動脈(図D)における平均オイルレッドO染色可能病変面積を定量化を示す。図Eは、血漿総コレステロールレベル及びトリグリセリドレベルを示す。(図B、D及びE) N = 9又は10/群。** p<0.01, *** p<0.001, 一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。
図2】[0023] 図2A~2Eは、2-HOBAがLdlr-/-マウスにおいて近位大動脈アテローム性動脈硬化病変のMDA付加物含量を減少させることを示す。MDAは、抗MDA一次抗体及び蛍光標識二次抗体を用いる免疫蛍光法により検出した。核はHoechst(青)で対比染色した。図2Aは、近位大動脈基部切片におけるMDA染色(赤)を示す代表画像を示す。図2Bは、ImageJソフトウェアを用いる、大動脈基部切片における平均MDA陽性病変面積の定量化を示す。データは平均±SEMとして表す。N=6/群、**p,0.001。一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。図C及びDは、Ldlr-/-マウスから単離した大動脈組織を示し、ジリシル-MDA架橋(図C)又はIsoLG-リシル(図D)はLC/MS/MSにより測定した。データは平均値±SEMで表わす。(図C及びD)N=8又は9/群、* p<0.05, マン-ホイットニー検定。
図3】[0024] 図3A~3Dは、2-HOBAがLdlr-/-マウスにおいて安定なアテローム性プラークの特徴を促進することを示す。マッソントリクローム染色を行って、Ldlr-/-マウスの近位大動脈切片におけるアテローム性動脈硬化病変の安定性に関連する特性を分析した。図3Aは、大動脈基部切片におけるマッソントリクローム染色を示す代表画像を示す。コラーゲン含量(図3A)、線維性被膜(figrous cap)厚(図3C)及び壊死面積(図D)を、ImageJソフトウェアを用いて定量化した。N = 8/群。* p<0.05、一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。スケールバー=100μm。青はコラーゲン、赤は細胞質、黒は核を示す。
図4】[0025] 図4A~4Dは、2-HOBAがLd1r-/-マウスのアテローム性動脈硬化症病変における細胞死を防止し、エフェロサイトーシスを増加させることを示す。(4A)代表画像は、近位大動脈切片のTUNEL染色(赤)により検出された死細胞を示す。マクロファージは、抗マクロファージ一次抗体(緑)により検出し、核はHoechst(青)で対比染色した。(4B)マクロファージに関連したTUNEL染色(黄色矢印)を示すために高倍率で撮影した代表画像。及であり、白色矢印は、マクロファージに関連づけられなかった遊離の死細胞を示す。(4C)近位大動脈切片におけるTUNEL陽性核の数の定量化。(4D)エフェロサイトーシスを、近位大動脈切片における、遊離細胞 対 マクロファージ関連TUNEL陽性細胞の定量化によって調べた。データは平均±SEMとして表す(N = 8/群)。スケールバー= 50μm, ** p<0.01, 一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。
図5】[0026] 図5A~5Dは、2-HOBAが高コレステロール血症Ldlr'マウスにおいて血漿炎症性サイトカインを減少させることを示す。炎症性サイトカイン(IL-1β(5A)、IL-6(5B)、TNF-α(5C)及びSAA(5D)を含む)を、16週間ウェスタンダイエットを摂取させ、2-HOBA、4-HOBA又はビヒクルで処置したマウスの血漿におけるELISAによって測定した。N = 8/群。* p<0.05, ** p<0.01。*** p<0.001。一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。
図6】[0027] 図6A~Hは、2-HOBAでのインビトロ処置が、酸化ストレス誘導細胞アポトーシス及び炎症を抑制することを示す。(6A及び6B)マウス大動脈内皮細胞(6A)又は初代マクロファージ(6B)を、250μM H2O2単独と、又は250μM H2O2と4-HOBA若しくは2-HOBA(500μM)と共に24時間インキュベートした。その後、アポトーシス細胞を、アネキシンV染色及びフローサイトメトリーにより検出した。(6C~6H)IL-1β、IL-6及びTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(6C~6E)若しくは250μM H2O2(6F~6H)の単独と又はそれらと4-HOBA若しくは2-HOBA(500μM)と共に24時間インキュベートした腹腔マクロファージにおいて、リアルタイムPCRによって分析した。(6A~6H)データは3つの独立実験からの平均±SEMで示される。*** p<0.001, 一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。
図7】[0028] 図7A~7Gは、MDA-HDL付加体及びHDL機能に対する2-HOBAの効果を示す。(7A)MDA付加物のレベルを、図1に記載したように処置したLdlrマウスから分離したHDLにおいてELISAにより測定した。データは平均±SEMで示した(N = 8/群), *** p<0.001, 一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定.(7B)一次抗apoAl抗体を用いる免疫沈降により血漿から分離したHDL中のapoAl及びMDA-apoAlのウェスタンブロット。Ldlfマウスを図1のように処置し、チャウダイエットを摂取させたLdlrマウスのapoAl及びMDA-apoAlを比較にために含めている。(7C)ウェスタンブロッティング(7B)により検出されたMDA-apoA対apoAlの平均密度比(任意単位)のlmageJソフトウェアを用いる定量化。(7D)HDLを、16週間ウェスタンダイエットを摂取させ2-HOBA若しくは4-HOBA又はビヒクルで処置したLdlr-マウスの血漿から分離した。コレステロールで富化されたマクロファージ、HDL(25μgタンパク質/ml)を24時間インキュベートし、細胞内のコレステロール量の減少率を測定した。データは平均±SEMとして表示している。N = 7/群, * p<0.05, ** p<0.01, 一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定(7E)MDA付加体を、LDLアフェレシスの前後にコントロール被験体又はFH被験体から分離したHDLにおいてELISAにより測定した。N = 7又は8, *** p<0.001, 一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。(7F)コントロール被験体又はFH被験体(n=6/群)のHDLにおけるMDA-リシル架橋含量、p=0.02、マン-ホイットニー検定。(7G)LDLアフェレシスの前後のコントロール被験体又はFH被験体(n=7/群)のHDLがapoEマクロファージのコレステロール含量を低減する能力。
図8】[0029] 図8A~8Dは、2-HOBAが高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおいて体重にも、水分摂取量にも、摂餌量にも、リポタンパク質プロファイルにも影響しないことを示す。体重(図8A)、水分摂取量(図8B)及び摂餌量(図8C)を、ウェスタンダイエットを16週間摂取させ1g/Lの2-HOBA若しくは4-HOBA又はビヒクルで処置したLdlr-/-マウスにおいて測定した。(図8D)血漿を、6時間絶食させた高コレステロール血症Ldlr-/-マウス(4匹/群)からプールした。高速液体クロマトグラフィー(FPLC)を、Superose 6カラムを用いて行った。総コレステロールを酵素アッセイにより測定し、平均を、マウス群あたり2つのプールした血漿サンプルについて示す。
図9】[0030] 図9A~9Eは、2-HOBAが高コレステロール血症雄性Ldlr-/-マウスにおいてアテローム性動脈硬化症病変を減少させることを示す。12週齢雄性Ldlr-/-マウスを、1g/Lの2-HOBA又はビヒクル(水)で2週間前処置した後、処置を16週間継続する間、マウスにウェスタンダイエットを給餌した。(図9A)近位大動脈基部切片におけるオイルレッドO染色を示す代表画像。(図9B)大動脈基部切片における平均のオイルレッドO染色可能病変面積の定量化。(図9C)切開してピン止めした大動脈のオイルレッドO染色を示す代表画像及び(図9D)en face病変面積の定量化。(図9E)2-HOBAは雄性Ldlr-/-マウスのコレステロールレベルに影響しない。(B、D及びE) N =9又は10/群, ** p<0.05。*** p<0.001、スチューデントのt検定。
図10】[0031] 図10A及び10Bは、2-HOBAが抗MDA抗体とMDA-BSAとの相互作用に影響しないことを示す。一連の用量のMDA-BSA又はMDA単独を1×又は5×2-HOBAとインキュベートした。次に、2μlの各サンプルをHyBond-Cメンブレンにロードし、ブロッキングバッファーと、一次抗MDA抗体と、そして十分な洗浄後に蛍光二次抗体とインキュベートした。画像をOdysseyシステムにより獲得し(図10A)、ImageJソフトウェアで定量化した(図10B)。
図11】[0032] 図11A~11Cは、Ldlr-/-マウスの血漿及び組織において測定した2-HOBA又は4-HOBAの濃度を示す。A.8週齢雄性Ldlr-/-マウスにWDを16週間給餌し、マウスを、2-HOBA(n=9)又は4-HOBA(n=6)を含む水で連続的に処置した。血漿を、マウスに2-HOBA又は4-HOBA(各マウス5mg)を強制経口投与した30分後に採取した。(各々についてMean±SEMを示す、p=0.388 マン-ホイットニー検定)。B~C.HOBAレベルを、チャウダイエットを摂取させた雄性Ldlr-/-マウス(2-HOBA又は4-HOBA(各マウス5mg)を強制経口投与した30分後)の大動脈及び心臓において測定した。(各々について平均±SEMを示す、N.S. スチューデントのt検定)。2-HOBA又は4-HOBAのレベルを、血漿及び組織において、LC/MSを用いて方法に記載したように測定した。
図12】[0033] 図12A~12Dは、C57BL/6Jマウスの血漿及び組織中の2-HOBA又は4-HOBAのレベルを示す。A.血漿サンプルを、チャウダイエットで飼育した雌性C57BL/6Jマウスから、1mgの2-HOBA(n=3)又は1mgの4-HOBA(n=3)の腹腔内注射後に採集した。* p < 0.01, スチューデントのt検定。B~D.腹腔内注射30分後のWTマウスの肝臓(B)、脾臓(C)及び腎臓(D)における2-HOBA及び4-HOBAのレベル。(各々について平均±SEMを示す、N.S. スチューデントのt検定)。2-HOBA又は4-HOBAのレベルを、血漿及び組織において、LC/MSを用いて方法に記載したよう測定した。
図13】[0034] 図13は、2-HOBA処置Ldlr-/-マウスの肝臓におけるイソレブグランジン修飾2-HOBA(IsoLG-2-HOBA)の代謝産物の検出を示す。推定代謝物は、追補の「方法」に記載されているように同定した。2-HOBA(左)及び4-HOBA(右)で処置したマウスの肝臓に関して、最も豊富な3種類のIsoLG-HOBA代謝物(3つの上パネル)及び内部標準(下パネル)についての代表クロマトグラフが示されている。各代謝物の1つの可能性のある構造をクロマトグラフの左に示す。
図14】[0035] 図14A~14Dは、MDA-2-HOBA付加物 対 MDA-2-4-HOBA付加物が、インビボで、より容易に形成されたことを示す。尿サンプルを、WDで飼育した雄性Ldlr-/-マウスに2-HOBA又は4-HOBAを強制経口投与した16時間後に採取した。16時間後、Ldlr-/-マウスを犠牲にし、尿(14A)、肝臓(14B)、腎臓(14C)及び脾臓(14D)中のHOBA-プロペナール付加物を、LC-MS/MSを用いて、方法に記載したように測定した(14A-D)(マン・ホイットニー検定、**はp<0.01、**はp<0.001を示す)。
図15】[0036] 図15は、2-HOBAが高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおいて尿F2-IsoPに影響しないことを示す。尿F2-IsoPレベルを、ウェスタンダイエットを16週間摂取させ、1g/Lの2-HOBA若しくは4-HOBA又はビヒクルで処置したLdlr-/-マウスからLC/MS/MSにより測定した。N = 5又は6/群, p = 0.43, クラスカル-ワリス検定。尿クレアチニンレベルを、規格化のために測定した。
図16】[0037] 図16は、チャウダイエットを6週間給餌し、水単独又は1g/Lの2-HOBA若しくは4-HOBAを含む水で継続的に処置したLdlr-/-の血清中のサイトカインレベルを示す。血清IL-1β、IL-6及びTNF-αレベルをELISA(R&D System)により測定した。N=7又は8マウス/群、N.S.一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。
図17】[0038] 図17は、WTマクロファージを、漸増濃度の2-HOBAを含む又は含まない100μM H2O2で24時間処置し又は処置しなかっことを示す。トータルRNAを分離、精製し、cDNAを合成し、IL-1β、IL-6及びTNF-αのmRNAレベルをリアルタイムPCRにより測定した。データは3つの独立実験からのものである。* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001, 一元配置ANOVA (ボンフェローニの事後検定)。
図18】[0039] 図18A~18Dは、マクロファージの2-HOBAでの処置が、2-HOBA-MDA付加物の形成を生じることを示す。腹腔マクロファージを、C57BL/6Jマウスから分離し、50μg/mLのox-LDLと共にインキュベートし、250μMの2-HOBA若しくは4-HOBA(18A)又は5μMの2-HOBA若しくは4-HOBA(18B、18C、18D)で24時間処置した。細胞サンプルを採取し、HOBA-MDA付加体を、LC-MS/MSを用いて、追補の「方法」に記載されているように測定した。* p<0.05、一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定。
図19】[0040] 図19A~19Bは、2-HOBAがマクロファージにおいてAktシグナル伝達に影響しないことを示す。WTマクロファージを、示したように、ビヒクル(水)又は250μMの4-HOBA若しくは2-HOBAで1時間処置し又は処置せず、その後、100nMインスリンと共に又は無しで15分間インキュベートした。ホスホノ-Akt(S473)及びGAPDHをウェスタンブロッティングにより検出した(19A)。バンド密度はImageJソフトウェアにより定量化した(19B)。2つの独立実験を行った。
図20】[0041] 図20は、プロスタグランジン代謝物に対する2-HOBAの効果を示す。尿サンプルを、ケージ当たり2匹のマウスを有する代謝ケージにおいて、2-HOBA又は水で12週間処置した後に採取した。PGE-M(20A)、テトラノルPGD-M(20B), 2,3-ジノル-6-ケト-PGF1(20C)及び11-デヒドロTxB2(20D)の含量をLC/MS/MSによって分析した。(20A~20D)各々平均±SEMを示す。N.S.、マン-ホイットニー検定。
図21】[0042] 図21A~Dは、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおける血漿及びLDL MDA付加物に対する2-HOBAの効果を示す。(20A)16週間ウェスタンダイエットを摂取させ、2-HOBA若しくは4-HOBA又はビヒクルで処置したLdlr-/-マウスの血漿中のMDA含量を、TBARS Assayにより測定した(*p<0.05、**p<0.01)。(20B)MDA付加物のレベルを、Ldlr-/-マウスから単離したLDLから、ELISAにより測定した。N = 10/群、*** p<0.001。(20C)LDLを、コントロール被験体及びFH被験体(n=6)から、LDLアフェレシスの前後に単離し、MDA付加体含量をELISAにより測定した。(20D)LDLを、2-HOBA、4-HOBA又はビヒクルで処置した高コレステロール血症Ldlr-/-マウスから単離した。WT腹腔マクロファージをLDLと共に24時間インキュベートし、細胞コレステロール含量を方法に記載されているように測定した。(20A~D)一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定)。
図22】[0043] 図22A~Bは、漸増濃度のMDAでのHDLの修飾が、用量依存的様式でコレステロール排出を損なったことを示す。(22A)HDLをMDAで修飾し、MDA付加物をELISAにより測定した。(22B)Apoe-/-腹腔マクロファージをac-LDLと40時間インキュベートし、その後、50ug/mLのHDL又はMDA-HDLと24時間インキュベートした。正味コレステロール排出能を、方法に記載したように測定した(一元配置ANOVA及びボンフェローニの事後検定, *はp<0.05を示す)。
図23】[0044] 図23A~Bは、2-HOBAアルデヒド付加体を検出する同じ多重反応モニタリング(MRM)パラメータが、4-HOBAアルデヒド付加体も検出することを示す。パネルA:PITC誘導体化2-HOBA(左)及びPITC誘導体化4-HOBA(右)についてのMRM m/z 259 -> m/z 107クロマトグラフ。パネルB:IsoLG(ヒドロキシラクタム)-2-HOBA(左)及びIsoLG(ヒドロキシラクタム)-4-HOBA(右)についてのMRM m/z 259 -> m/z 107クロマトグラフ。MDA(プロペナール)-2-HOBA付加体及びMDA(プロペナール)-4-HOBA付加体についてのMRMクロマトグラフは以前に公表されている。
図24】[0045] 図24は、4-HOBAのPITC誘導体についての濃度応答曲線が、[2H4]2-HOBAを内部標準として用いた場合、2-HOBAのものと異なり、したがって補正係数の使用が必要となることを示す。種々の濃度(20~400nmol)の2-HOBA又は4-HOBAを、1nmolの[2H4]2-HOBAと混合し、当該化合物をPITCで誘導体化した後、2-HOBA及び4-HOBAについてはMRMトランジションm/z 259->m/z 107又はm/z 259 -> 153を用いて、[2H4]2-HOBAについてはm/z 263 --> m/z 111又はm/z 263 -->153を用いてLC/MSで分析し、ピーク面積比を用いてnmol測定値を算出した。各々についての濃度応答勾配をGraphPad Prismを用いて算出し、4-HOBAの補正係数を、2つの勾配の比として算出した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の説明
[0046] 本開示の主題の1又は2以上の実施形態の詳細を本明細書に記載する。本明細書に記載された実施形態の変更及び他の実施形態は、本明細書に提供される情報を検討した後、当業者に明らかになる。本明細書で提供される情報、特に説明された例示的な実施形態の具体的な詳細は、主に理解の明確性のために提供されるのであって、当該記載から不必要な制限を理解すべきではない。矛盾が生じた場合は、定義を含む本願の明細書が優先する。
【0019】
[0047] 本明細書で用いる用語は、当業者に十分に理解されると考えられるが、特定の定義を、本開示の主題の説明を容易にするために示す。
[0048] 他に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
[0049] 本発明の化合物、組成物、物品、システム、装置及び/又は方法を開示し説明する前に、これら合成方法又は薬剤は、当然に変化し得るので、そうでないと示されない限り、特定のものに制限されないことを理解すべきである。また、本明細書において使用される用語法が特定の観点のみを記述する目的であり、制限的であることを意図されていないことも理解すべきである。本明細書に記載のものに類似するか等価である任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に用いることができるが、ここでは例示の方法及び材料を説明する。
【0021】
[0050] 本明細書において言及される全ての刊行物は、当該刊行物が引用されている事項に関連する方法及び/又は材料を開示し説明するために、参照により本明細書中に組み込まれる。本明細書において言及される刊行物は、本願出願日前の開示に関してのみ提供されるにすぎない。本明細書において、本発明が先行発明のために当該刊行物に先行しているとする資格がないことを自認したように解釈されるものではない。更に、本明細書において提供される刊行物の刊行日は、実際の刊行日と異なることがあり、独立して確認する必要がある。
【0022】
[0051] 本明細書及び添付の請求の範囲において用いる場合、単数形は、その内容がそうでないことを明確に示していない限り、言及対象が複数であることも含む。よって、例えば、「官能基」、「アルキル」又は「残基」への言及は、2又は3以上の当該官能基、アルキル又は残基の組合せも含む、といった具合である。
【0023】
[0052] 範囲は、本明細書においては、「約」が付された或る特定の値からとして及び/又は「約」が付された他の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現されているとき、更なる観点は当該或る特定の値から及び/又は当該他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表現されるとき、当該特定の値が更なる観点を構成するものと理解される。更に、範囲の各端点は、その他の端点に対しても、その他の端点から独立しても、有意であると理解される。また、本明細書に開示される幾つかの値が存在すること、及び各値は、本明細書においては、当該値自体に加えて、「約」が付された当該特定の値としても開示されているものと理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。2つの特定の単位の間の各単位もまた開示されているものと理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13及び14もまた開示されている。
【0024】
[0053] 本明細書で用いる場合、用語「任意に有していてもよい~」又は「任意に~していてもよい」は、その後に記載する事象又は状況が生じても生じなくてもよいこと、並びに当該記載が前記事象又は状況が生じる場合の例及び生じない場合の例の両方を含むことを意味する。
【0025】
[0054] 本明細書で用いる場合、用語「対象者」とは投与の標的をいう。本明細書に開示される方法の対象者は、脊椎動物(例えば、哺乳動物)、魚類、鳥類、爬虫類又は両生類であり得る。よって、本明細書に開示される方法の対象者は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット又はげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢も特定の性別も意味しない。よって、成体の及び新生の対象者並びに胎児/胎仔が、雄性又は雌性にかかわらず、包含されると意図されている。患者とは疾患又は障害に罹患した対象者をいう。用語「患者」はヒト及び獣医学的対象者を含む。
【0026】
[0055] 本明細書で用いる場合、用語「治療」とは、疾患、病的状態又は障害を治癒、寛解、安定化又は予防する意図での患者の医学的管理をいう。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病的状態又は障害の改善に対して特異的に向けられた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の原因の除去に向けられた治療も含む。加えて、この用語は、待期療法、すなわち、疾患、病的状態又は障害の治癒より症状の軽減のために計画された治療;予防療法、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の最小化又はそれらの発症の部分的もしくは完全な阻止に向けられた治療;及び支持治療、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の改善に向けられた他の特異的療法を補うために用いられる治療を含む。
【0027】
[0056] 本明細書で用いる場合、用語「予防する」又は「予防すること」とは、特に事前の作用により、何かの発生を防止すること、回避すること、取り除くこと、事前に措置すること、停止させること又は妨げることをいう。低減する、阻害する又は予防するが本明細書において使用される場合、具体的にそうでないと示されていない限り、他の2つの語の使用もまた、明確に開示されているものと理解される。本明細書において理解し得るように、治療及び予防の定義は重複部分が存在する。
【0028】
[0057] 本明細書で用いる場合、用語「診断される」は、当業者(例えば、医師)による健康診断を受け、本明細書において開示される化合物、組成物又は方法により診断又は治療することができる病的状態を有することが判明したことを意味する。本明細書で用いる場合、句「障害についての治療を必要としていると同定される」などとは、当該障害の治療の必要性に基づく対象者の選択をいう。例えば、対象者は、当業者による早期の診断に基づいて、障害(例えば、炎症に関連する障害)の治療の必要性を有していると同定され得、その後、当該障害について治療を受けることができる。同定は、1つの観点において、診断する人とは異なる人が行い得ることも企図されている。また、更なる観点において、施術は、その後に施術を行う者が行い得ることも企図されている。
【0029】
[0058] 本明細書で用いる場合、用語「投与すること」及び「投与」とは医薬調製物を対象者に提供する任意の方法をいう。このような方法は当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与及び非経口投与(注射可能な、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与を含む)を含むが、これらに限定されない。投与は連続的又は間欠的であり得る。種々の観点において、調製物は、治療的に投与し得る;すなわち、既存の疾患又は病的状態を治療するために投与され得る。更なる種々の観点において、調製物は予防的に投与し得る;すなわち、疾患又は病的状態の予防のために投与され得る。
【0030】
[0059] 本明細書で用いる場合、用語「有効量」とは、望ましくない状態に対して、所望の結果を達成するため、又は或る効果を発揮するために十分である量をいう。例えば、「治療有効量」とは、望ましくない症状に対して、所望の治療結果を達成するため又は或る効果を発揮するために十分であるが、有害な副作用を引き起こすには一般的に不十分である量をいう。任意の特定の患者についての具体的な治療有効用量レベルは、種々の因子(治療すべき障害及び該障害の重篤度;用いる具体的組成物;患者の年齢、体重、健康一般、性別及び食事;投与の回数;投与の経路;用いる具体的化合物の排泄速度;治療の継続期間;用いる具体的化合物と意図的に組み合わせて用いられるか又は偶然に同時に投与される薬物などを含む、医療分野において周知の因子)に依存する。例えば、所望の治療効果の達成に必要なレベルより低いレベルの用量の化合物から始めて、所望の効果が達成するまで徐々に投薬量を増加させることは、当業者に周知である。所望であれば、効果的な日用量は投与目的で複数の用量に分割し得る。結果として、単回用量組成物は、そのような量又は日用量となるようなその約数分量を含み得る。投薬量は、任意の配合禁忌の場合、個々の医師により調整され得る。投薬量は変化し得、1日に1回又は2回以上の投薬で1日間又は数日間投与され得る。ガイダンスは、所与の医薬品クラスの適切な投薬についての文献に見出すことができる。更なる種々の観点において、調製物は「予防有効量」;すなわち、疾患又は病的状態の予防に効果的な量で投与され得る。
【0031】
[0060] 本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容し得る担体」とは、滅菌の水性又は非水性の溶液、分散物、懸濁物又はエマルジョン、及び使用直前での滅菌の注射可能な溶液又は分散物への再構成のための滅菌の粉体をいう。適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例として、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)及び注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーディング剤(例えば、レシチン)の使用により、分散物の場合には必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用により維持され得る。これら組成物はまた、補助剤(adjuvant)、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有し得る。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌及び抗菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含ませることにより保証し得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含ませることが望ましいこともある。注射可能な剤形の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含ませることにより生じ得る。注射可能なデポー剤形は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)中に薬物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより製造される。薬物 対 ポリマーの比及び用いる特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度は制御し得る。デポー型の注射可能な製剤はまた、体組織と適合性であるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を含ませることにより製造することもできる。この注射可能な製剤は、例えば、細菌保定フィルターでの濾過により、又は滅菌水又は他の滅菌の注射可能な媒体に使用直前に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌し得る。適切な不活性な担体として、糖、例えばラクトースを挙げることができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10マイクロメーターの範囲の有効粒子サイズを有する。
【0032】
[0061] 本明細書で用いる場合、用語「スカベンジャー」又は「スカベンジング」とは、不純物又は望まない反応生成物を除去又は不活化するために投与され得る化学物質をいう。例えば、イソレブグランジンは、タンパク質のリシル残基に対して特異的に、不可逆的に付加する。本発明のイソレブグランジンスカベンジャーは、イソレブグランジンがリシル残基に付加する前にイソケタールと反応する。したがって、本発明の化合物はイソレブグランジンを「スカベンジング」することにより、イソレブグランジンがタンパク質に付加することを予防する。
【0033】
[0062] 本明細書で用いる場合、用語「置換(された)」は、有機化合物の許される置換基を全て含むものとする。1つの幅広い観点において、許される置換基として、有機化合物の非環式及び環式の、分岐及び非分岐の、炭素環式及びヘテロ環式並びに芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基として、例えば下記のものが挙げられる。許される置換基は、適切な有機化合物について1又は2以上の同じ又は異なるものであり得る。本開示の目的には、ヘテロ原子(例えば、窒素)は、水素置換基及び/又は本明細書に記載の有機化合物の任意の許される置換基(ヘテロ原子の価数を満足するもの)を有し得る。本開示は、有機化合物の許される置換基によって、如何なる様式でも制限されることを意図されていない。また、用語「置換」又は「~で置換(された)」は、当該置換が置き換えられた原子及び置換基の許される価数に従うこと、及び置換が安定な化合物、例えば、(例えば、再配置、環化、除去などによる)変換を自発的に受けない化合物をもたらすことという暗黙の条件を含む。
【0034】
[0063] 用語「アルキル」は、本明細書で用いる場合、1~24の炭素原子の分岐又は非分岐の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。アルキル基は環式又は非環式であり得る。アルキル基は分岐又は非分岐であり得る。アルキル基はまた置換又は非置換であり得る。例えば、アルキル基は、1又は2以上の本明細書に記載の基(任意に置換していてもよいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含むが、これらに限定されない)で置換され得る。「低級アルキル」基は、1~6(例えば、1~4)の炭素原子を含むアルキル基である。
【0035】
[0064] 本明細書を通じて「アルキル」は、一般に、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指称するために用いられる;しかしながら、置換アルキル基はまた、アルキル基の具体的置換基を特定することにより、本明細書において具体的に言及される。例えば、用語「ハロゲン化アルキル」は、1又は2以上のハライド(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)で置換されたアルキル基を具体的に指す。用語「アルコキシアルキル」は、1又は2以上の下記のようなアルコキシ基で置換されたアルキル基を具体的に指す。用語「アルキルアミノ」は、1又は2以上の下記のアミノ基で置換されたアルキル基を具体的に指す。といった具合である。「アルキル」が或る1つの例で用いられ、具体的用語、例えば「アルキルアルコール」が別の或る1つの例で用いられる場合、用語「アルキル」も具体的用語、例えば「アルキルアルコール」を指すことを示唆すると意味していない。といった具合である。
【0036】
[0065] このルールは本明細書に記載の他の基にも適用される。すなわち、用語、例えば「シクロアルキル」は非置換及び置換のシクロアルキル部分を指す一方、置換部分は、加えて、本明細書において具体的に特定され得る;例えば、特定の置換シクロアルキルは、例えば「アルキルシクロアルキル」を指し得る。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」と具体的に指し得、特定の置換アルケニルは、例えば「アルケニルアルコール」を指し得る。といった具合である。またしても、一般的用語、例えば「シクロアルキル」及び具体的用語、例えば「アルキルシクロアルキル」の使用は、当該一般的用語が当該具体的用語を含まないことを示唆すると意味していない。
【0037】
[0066] 用語「シクロアルキル」は、本明細書で用いる場合、少なくとも3つの炭素原子から構成される非芳香族炭素ベースの環である。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボニルなど挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル」は、上記のシクロアルキル基の1つタイプであり、その環の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ケイ素又はリンであるが、これらに限定されない)で置換されているときの用語「シクロアルキル」の意味に含まれる。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は置換又は非置換であり得る。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、1又は2以上の本明細書に記載の基(任意に置換していてもよいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含むが、これらに限定されない)で置換され得る。
【0038】
[0067] 用語「ポリアルキレン基」は、本明細書で用いる場合、互いに連結した2又は3以上のCH2基を有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-(式中、「a」は2~500の整数である)で表し得る。
【0039】
[0068] 用語「アルコキシ」及び「アルコキシル」は、本明細書で用いる場合、エーテル結合により結合したアルキル又はシクロアルキル基を指す;すなわち、「アルコキシ」基は-OA1(式中、A1は上記のアルキル又はシクロアルキルである)として定義し得る。「アルコキシ」はまたこのようなアルコキシ基のポリマーを含む;すなわち、アルコキシは、ポリエーテル、例えば、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3(式中、「a」は1~200の整数であり、A1、A2及びA3はアルキル及び/又はシクロアルキル基である)であり得る。
【0040】
[0069] 用語「アミン」又は「アミノ」は、本明細書で用いる場合、式NA1A2A3(式中、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は任意に置換していてもよい本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリールもしくはヘテロアリール基であり得る)により表される。
【0041】
[0070] 用語「ヒドロキシル」は、本明細書で用いる場合、式-OHにより表される。
[0071] 用語「ニトロ」は、本明細書で用いる場合、式-NO2により表される。
[0072] 用語「薬学的に許容され得る」は、生物学的に又はその他の意味で望ましくないものでない材料、すなわち、望ましくない生物学的効果の許容し得ないレベルを引き起こさず、有害な様式で相互作用しない材料を記述する。
【0042】
[0073] 本明細書で用いられる略語には、以下のものが含まれる:2-HOBA、2-ヒドロキシベンジルアミン;4-HOBA、4-ヒドロキシベンジルアミン;MDA、マロンジアルデヒド;4-HNE、4-ヒドロキシノネナール;IsoLGs、イソレブグランジン;HDL、高密度リポタンパク質;LDL、低密度リポタンパク質:LDLR、低密度リポタンパク質受容体;ApoAI、アポリポタンパク質AI;ApoB、アポリポタンパク質B;ROS、活性酸素種;IL、インターロイキン。
【0043】
[0074] 本発明の実施形態において、化合物は、以下の式:
【化7】

(式中、
RはC-R2であり;
各R2は独立し、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;
R4は、H、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
及びそれらの薬学的に許容される塩
から選択され得る。
【0044】
[0075] 別の実施形態では、化合物は、以下の式:
【化8】

又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0045】
[0076] 他の実施形態では、化合物は、2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミン、又はメチル-2-ヒドロキシベンジルアミンである。
[0077] 別の実施形態では、化合物は、2-ヒドロキシベンジルアミンである。
【0046】
[0078] 別の実施形態では、化合物は、以下の式:
【化9】

又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0047】
[0079] 別の実施形態では、化合物は、以下のものから選択される:
【化10】

(式中、R5は、H、-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)-CH3である)から選択される。
【0048】
[0080] 別の実施形態では、上記化合物のいずれかが、当該化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物中に存在する。
[0081] 特定の観点において、開示された医薬組成物は、有効成分として開示された化合物(その薬学的に許容される塩を含む)、薬学的に許容される担体、及び任意に他の治療成分又は補助剤を含む。本組成物は、経口、直腸、局所、及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与に適したものを含むが、いずれの場合においても最も適した経路は特定の宿主、ならびに有効成分が投与されているその症状の性質及び重症度に依存する。その医薬組成物は、単位剤形で都合よく提示され、そして薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0049】
[0082] 本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される無毒性の塩基又は酸から調製された塩をいう。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基及び有機塩基を含む薬学的に許容される無毒の塩基から従来通り調製することができる。このような無機塩基由来の塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二及び第一)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二及び第一)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を含む。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。薬学的に許容される有機非毒性塩基由来の塩には、一級、二級、及び三級アミンの塩、ならびに環状アミンならびに置換アミン、例えば天然及び合成置換アミンの塩が含まれる。塩を形成することができる他の薬学的に許容される有機非毒性塩基には、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどのイオン交換樹脂が含まれる。
【0050】
[0083] 本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される非毒性酸」は、無機酸、有機酸、及びそれらから調製される塩、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファ-スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などが含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、及び酒石酸が好ましい。
【0051】
[0084] 実際には、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩は、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と緊密に混合して活性成分として組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい製剤の形態、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)に応じて、多種多様な形態をとることができる。したがって、本発明の医薬組成物は、それぞれ所定の量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤又は錠剤などの経口投与に適した個別の単位として提供することができる。さらに、組成物は、粉末として、顆粒として、溶液として、水性液体中の懸濁液として、非水性液体として、水中油型エマルジョンとして、又は油中水型液体エマルジョンとして提示することができる。上記の一般的な剤形に加えて、本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩はまた、制御された放出手段及び/又は送達装置によって投与することができる。組成物は、任意の薬学的方法によって調製することができる。一般に、そのような方法は、活性成分を1つ以上の必要な成分を構成する担体と一緒にする工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体又は微粉固体担体又はその両方と均一かつ密接に混合することによって調製される。次いで製品を所望の外観に都合よく成形することができる。
【0052】
[0085] したがって、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体、及び本発明の化合物、又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩を含むことができる。本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩はまた、1つ以上の他の治療上活性な化合物と組み合わせて医薬組成物中に含めることができる。使用される医薬担体は、例えば、固体、液体、又は気体であり得る。固体担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸が含まれる。液体担体の例は、糖シロップ、落花生油、オリーブ油、及び水である。気体担体の例には、二酸化炭素及び窒素が含まれる。
【0053】
[0086] 経口剤形用の組成物を調製する際には、任意の都合のよい医薬媒体を使用することができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などを使用して、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの経口液体製剤を形成することができる;一方デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような担体を使用して、粉末、カプセル及び錠剤などの経口固形製剤を形成することができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセル剤が好ましい経口投与単位であり、それにより固体の薬学的担体が使用される。場合により、錠剤は標準的な水性又は非水性技術により被覆することができる。
【0054】
[0087] 本発明の組成物を含有する錠剤は、場合により1種以上の補助成分又は補助剤と共に圧縮又は成形することにより製造することができる。圧縮錠剤は、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と混合した、粉末又は顆粒などの易流動性形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって製造することができる。
【0055】
[0088] 本発明の医薬組成物は、有効成分としての本発明の化合物(又はその薬学的に許容される塩)、薬学的に許容される担体、及び任意に1つ以上の追加の治療薬又は補助剤を含み得る。本組成物は、経口、直腸、局所、及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与に適した組成物を含むが、いずれの場合においても最も適した経路は特定の宿主、ならびに有効成分が投与されている症状の性質及び重症度に依存する。その医薬組成物は、単位剤形で都合よく提示され、そして薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0056】
[0089] 非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、水中の活性化合物の溶液又は懸濁液として調製することができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含めることができる。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの油中混合物中で調製することができる。さらに、微生物の有害な増殖を防ぐために防腐剤を含めることができる。
【0057】
[0090] 注射用途に適した本発明の医薬組成物は、無菌水溶液又は分散液を含む。さらに、その組成物は、無菌注射用溶液又は分散液のような即時調製用の無菌粉末の形態であり得る。全ての場合において、最終の注射形態は無菌でなければならず、容易な注射器使用可能性のために実際上流動性でなければならない。医薬組成物は製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない;従って、好ましくは細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体であり得る。
【0058】
[0091] 本発明の医薬組成物は、例えばエアロゾル剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、散粉剤、洗口剤、うがい薬などの局所使用に適した形態であり得る。さらに、その組成物は、経皮装置での使用に適した形態であり得る。これらの製剤は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を利用して、従来の加工方法によって調製することができる。一例として、親水性材料及び水を約5重量%から約10重量%の化合物と共に混合することによって、所望の粘稠度を有するクリーム又は軟膏が調製される。
【0059】
[0092] 本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸投与に適した形態であり得る。混合物が単位用量坐剤を形成することが好ましい。適切な担体は、カカオバター及び当該分野で一般的に使用されている他の材料を含む。坐剤は、最初に組成物を軟化又は溶融した担体と混合し、続いて金型中で冷却及び成形することによって都合よく形成することができる。
【0060】
[0093] 前記の担体成分に加えて、上記の医薬製剤は必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などの1つ以上の追加の担体成分を含み得る。さらに、意図するレシピエントの血液と等張にするために、他の補助剤を製剤化するのに含めることができる。本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する組成物はまた、粉末又は液体濃縮物の形態で調製することができる。
【0061】
[0094] 本発明の化合物は、単独の活性薬剤として投与することができ、又は例えば炎症及び他の炎症関連疾患などの様々な合併症を治療又は予防するのに有用な1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。組み合わせとして投与される場合、治療薬は、同時に又は異なる時間に投与される別個の組成物として製剤化することができ、又は治療薬は単一の組成物として投与することができる。
【0062】
[0095] 本明細書に示されるように、本発明の化合物は、固体形態(顆粒、粉末又は坐剤を含む)又は液体形態(例えば、溶液、懸濁液、又はエマルション)で構成され得る。それらは様々な溶液に適用でき、滅菌などの従来の製薬操作に供することができ、及び/又は防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などの従来の補助剤を含むことができる。
【0063】
[0096] したがって、投与のために、本発明の化合物は、通常、示された投与経路に適した1つ以上の補助剤と組み合わされる。例えば、それらはラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム及びカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、及び/又はポリビニルアルコールと混合してもよく、従来の投与のために錠剤化又はカプセル化されている。あるいは、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴム、及び/又は様々な緩衝液に溶解してもよい。他の補助剤及び投与様式は、製薬分野で周知である。担体又は希釈剤は、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独で又はワックスとともに、又は当技術分野で周知の他の材料を含んでもよい。
【0064】
[0097] 治療用途において、本発明の化合物は、所望の徴候(indication)を低減又は抑制するのに十分な量で哺乳動物患者に投与され得る。この使用に効果的な量は、投与経路、徴候の段階と重症度、哺乳動物の一般的な健康状態、及び処方医の判断を含むがこれらに限定されない要因に依存する。本発明の化合物は、広い用量範囲にわたって安全かつ有効である。しかしながら、実際に投与されるピリドキサミンの量は、上記の関連する状況を考慮して、医師によって決定されることが理解される。
【0065】
[0098] 本発明の方法で使用するのに適した化合物の薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸から誘導される塩が含まれるのと同様、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸から誘導される塩も含まれる。したがって、このような塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、安息香酸メチル、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが含まれる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸及びグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩、n-メチルグルタミンなどの塩も考えられる(例えば、Bergeら、J. Pharmaceutical Science、66:1-19(1977)を参照)。
【0066】
[0099] 塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させて、従来の方法で塩を生成することにより調製される。遊離塩基型は、塩基と接触させ、通常の方法で遊離塩基を単離することにより再生することができる。遊離塩基形態は、極性溶媒への溶解性などの特定の物理的特性においてそれぞれの塩形態とは多少異なるが、そうでなければその塩は本発明の目的のためのそれぞれの遊離塩基と同等である。
【0067】
[00100] 少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩を血小板活性化の阻害に有効な量で、哺乳動物に、アテローム性動脈硬化症を治療又は阻害する既知の副作用を有する薬剤と共に投与するステップを含む、対象におけるアテローム性動脈硬化症を治療又は阻害する方法であって、前記化合物は、以下の式:
【化11】

(式中、
RはC-R2であり;
各R2は独立し、H、置換又は非置換のアルキル、ハロゲン、アルキル、置換又は非置換のアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロから選択され;
R4はH、2H、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
の化合物で表される構造を有する方法も開示される
【0068】
[00101] したがって、開示された化合物は、本発明の化合物又は他の薬剤が有用性を有する上記の疾患、障害及び病的状態の処置、予防、制御、改善又はリスク低減において、、単一薬剤としても1若しくは2以上の他の薬剤との組合せでも使用し得、ここで、薬剤の組合せは、いずれかの薬剤単独より安全であるか又はより効果的である。他の薬剤は、一般的に用いられる経路及び量で、したがって、開示された化合物と同時又は逐次的に投与され得る。開示された化合物を1又は2以上の他の薬剤と同時に用いる場合、当該薬剤と本化合物とを含む単位剤形の医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法は、重複するスケジュールで施行することも可能である。1又は2以上の有効成分と開示化合物との組合せは、単一薬剤としてより有効であると想定される。
[00102] 1つの観点において、化合物は、抗アテローム性動脈硬化症剤と共に投与することができる。
【実施例
【0069】
実施例
[00103] 以下の実施例では、本発明の実施形態について説明する。
[00104] 結果
[00105] 2-HOBA処置は、Ldlr-/-マウスにおいて血漿コレステロールレベルを変えることなく、アテローム性動脈硬化症を減弱させる。
【0070】
[00106] 8週齢の雌性Ldlr-/-マウスに西洋型飼料を16週間給餌し、ビヒクル(水)単独又は2-HOBA若しくはジカルボニルスカベンジャー効果を有さない4-HOBAを含む水で継続的に処置した。2-HOBAでの処置は、ビヒクル又は4-HOBAでの処置と比較して、近位大動脈アテローム性動脈硬化症の程度をそれぞれ31.1%及び31.5%減少させた(図1A及び図1B)。さらに、大動脈のen face解析では、雌性Ldlr-/-マウスを2-HOBAで処置すると、ビヒクル及び4-HOBAの投与と比較して、アテローム性動脈硬化症の程度がそれぞれ60.3%及び59.1%減少したことが示された(図1C及び1D)。ビヒクル又は4-HOBAの投与と比較して、2-HOBA処置は体重にも、摂水量にも、摂餌量にも影響しなかった(図8A~8C)。さらに、血漿総コレステロール及びトリグリセリドのレベルは、3群のマウス間での有意差はなく(図1E)、リポタンパク質分布は3群のマウス間で同様であった(図8D)。これら結果と一致して、ウェスタンダイエットを16週間給餌する同様の条件下で、雄性Ldlr-/-マウスの1g/Lの2-HOBAでの処置は、水での処置に比べて、近位大動脈及び大動脈全体のアテローム性動脈硬化症の程度をそれぞれ37%及び45%減少させが(図9A~9D)、血漿総コレステロールレベルに影響しなかった(図9E)。雄性Ldlr-/-マウスを3g/Lの2-HOBAで処置した場合、同様のアテローム性動脈硬化症の低減が観察された。このように、本発明者らは、2-HOBA処置が、血漿コレステロール及びトリグリセリドレベルを変化させることなく、FHの実験的モデルマウスにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を有意に低下させることを初めて証明した。MDA-タンパク質付加体に対する抗体(Abcam cat# ab6463)を用いた免疫蛍光染色による近位大動脈MDA付加体含量を調べることにより、MDA付加体レベルが、2-HOBA処置マウスにおいて、ビヒクル単独又は4-HOBAで処置したマウスに比べて68.5%及び66.8%減少したことが示された(図2A及び2B)。本発明者らは、抗MDA-タンパク質抗体が遊離のMDAもMDA-2-HOBA付加体も認識しないと決定した(図10A及び図10B)。また、2-HOBAはMDA-アルブミン付加物の抗体認識を妨げない(図10A及び10B)。LC/MS/MSによる大動脈全体のMDA-リシル付加体及びIsoLG-リシル付加体の定量的測定により、4-HOBA処置と比較して、2-HOBA投与は、MDA及びIsoLG付加体含量をそれぞれ59%及び23%減少させることが示された(図2C及び図2D)。本発明者らは、LC/MS/MSにより、1gの2-HOBA/L水での16週間処置後の雄性Ldlr-/-マウスにおける血漿2-HOBAレベルは469±38ng/mLであると決定した。これは、本発明者が以前に1g/Lの2-HOBAを投与したC57BL6マウスにおいて報告したものと同様である22。また、これらレベルは、最近の安全性試験におけるヒトの血漿2-HOBAレベルと同じ範囲内である24。1gの4-HOBA/L水での16週間処置後の雄性Ldlr-/-マウスにおける血漿4-HOBAレベルは25±3ng/mLであった。しかし、5mgの強制経口投与の30分後の雄性Ldlr-/-マウスにおける2-HOBA対4-HOBAの血漿れべるには有意差はなかった(図11A)。また、2-HOBA及び4-HOBAの血漿レベルは、強制経口投与の30分後の雄性Ldlr-/-マウスの大動脈及び心臓において同程度であった(図11B及び図11C)。腹腔内注射後の血漿4-HOBAレベルは、最初は、2-HOBAのレベルより僅かに高かったが、4-HOBAは、より迅速にクリアランスに供されるようであった(図12A)。また、2-HOBA対4-HOBAの肝臓、脾臓及び腎臓レベルは、腹腔内注射の30分後に有意差はなかった(図12B~12D)。まとめると、16週間の処置後の雄性Ldlr-/-マウスにおける、2-HOBAに対する4-HOBAの低レベルは、クリアランスの差並びに犠牲にする前の摂水のタイミングの差に起因する可能性が高い。興味深いことに、IsoLG-2-HOBA付加体(ケト-ピロール、アンヒドロ-ラクタム、ケト-ラクタム、ピロール及びアンヒドロ-ヒドロキシラクタム付加体と考えられる物質と一致する質量を有する)が、ウェスタンダイエットで16週間の飼育したLdlr-/-マウスの心臓及び肝臓に存在した一方、IsoLG-4-HOBA付加体は検出できなかった(図13及び下表)。
【0071】

【表1】
【0072】
[00107] 重要なことに、MDA-2-HOBA付加物 対 MDA-4-HOBA付加物(質量はプロペナールHOBA付加物と一致)は、16週間ウェスタンダイエットで飼育したLdlr-/-マウスの強制経口投与(5mg)後16時間に採取した尿中で19倍増加した(図14A)。さらに、2-HOBA処置Ldlr-/-マウスの肝臓、腎臓及び脾臓は、4-HOBA処置Ldlr-/-マウスと比較して、強制経口投与の16時間後に3倍、5倍及び11倍多いプロペナール-HOBA付加物を含有していた(図14B図14D)。尿F2-イソプロスタン(IsoP)レベルは、全身脂質過酸化の尺度であり、抗酸化剤αトコフェロールでのApoe-/-マウスの処置は、アテローム性動脈硬化症及び尿F2-IsoPレベルを低下させる25, 26。本発明者らは、尿F2-IsoPレベルが、ビヒクル、4-HOBA及び2-HOBAで処置したLdlr-/-マウスにおいて異ならないことを見出した(図15)。このことは、2-HOBAのアテローム性動脈硬化症に対する効果が、脂質過酸化の全身的阻害にも金属イオンのキレート化にも起因しないことを示している。まとめると、これら結果は、2-HOBAのアテローム性動脈硬化症への影響は、反応性脂質ジカルボニルの捕捉(スカベンジング)に起因するとの仮説を支持する。
[00108] 2-HOBA処置は、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおいて、より安定なアテローム性動脈硬化プラークの特徴形成を促進する。
【0073】
[00109] 脆弱なプラークは、ヒトにおいて、より高い急性心血管事象リスクを示す1ため、本発明者らは、アテローム性動脈硬化病変のコラーゲン含量、線維性被膜の厚さ、及び壊死性コアを定量化することにより、プラークの安定化の特徴に対する2-HOBA処置の効果を調べた(図3A~3D)。ビヒクル又は4-HOBAの投与と比較して、2-HOBA処置は近位大動脈のコラーゲン含量をそれぞれ2.7倍及び2.6倍増加させた(図3A及び3B)。さらに、2-HOBA処置マウスの病変は、ビヒクル及び4-HOBA処置マウスと比較して、線維性被膜の厚さが2.31倍及び2.29倍であった(図3A及び図3C)。重要なことには、近位大動脈の壊死領域の割合%が、2-HOBA処置マウスにおいて、ビヒクル及び4-HOBAを処置したマウスと比較して、74.8%及び73.5%減少した(図3A及び図3D)。まとめると、これらデータは、2-HOBAが高コレステロール血症Ldlr-/-マウスの脆弱性プラーク形成の特徴を抑制することを示す。
[00110] 2-HOBA処置は細胞の生存及びエフェロサイトーシスを促進し、炎症を軽減する。
【0074】
[00111] 増大した細胞死及び不十分なエフェロサイトーシスは、壊死性コア形成及びアテローム性動脈硬化プラークの不安定化を促進するので、本発明者らは次に、近位大動脈のアテローム性動脈硬化病変における細胞死及びエフェロサイトーシスに対する2-HOBA処置の効果を調べた(図4A~4D)。ビヒクル又は4-HOBAのいずれかでの処置と比較して、TUNEL陽性細胞の数は、2-HOBA処置マウスの近位大動脈病変では、72.9%及び72.4%減少した(図4A及び4C)。また、本発明者らは、アテローム性動脈硬化病変におけるエフェロサイトーシスに対する2-HOBAの影響を調べた。マクロファージに関連しないTUNEL陽性細胞の数は、ビヒクル及び4-HOBAで処置したマウスの病変において、2-HOBAで処置したマウスの病変に対して、1.9倍及び2.0倍増加した(図4B及び4D)。このことは、反応性脂質ジカルボニルのスカベンジング(捕捉)が効率的なエフェロサイトーシスを維持する能力を支持する。病変壊死が増強した炎症に関連していることと一致して、血清IL-1β、IL-6、TNF-α及びアミロイドAのレベルは、2-HOBA処置Ldlr-/-マウスにおいて、4-HOBA又はビヒクル処置Ldlr-/-マウスと比較して減少した(図5)。このことは、反応性ジカルボニルのスカベンジングが全身性炎症を減少させたことを示唆する。ウェスタンダイエットで飼育したLdlr-/-マウスにおける結果とは対照的に、チャウダイエットを摂取したLdlr-/-マウスは、IL-1β、IL-6及びTNF-αの血漿レベルがより低く、2-HOBA処置はチャウダイエット飼育マウスにおけるサイトカインレベルに影響しなかった(図16)。これら結果は、高脂肪のウェスタンダイエットがLdlr-/-マウスにおいて酸化ストレス及び炎症を誘導する能力を支持する。細胞とH2O2 15, 25, 26又は酸化LDL27, 28, 29のいずれかとのインキュベーションは、脂質過酸化、炎症及び死を誘導することが研究で示されているので、本発明者らは次に、酸化ストレスへの細胞応答に対する反応性ジカルボニル捕捉(スカベンジング)のインビトロ効果を決定した。H2O2処置への応答に対するマクロファージ及び内皮細胞のアポトーシス感受性を調べて、ビヒクル又は4-HOBAとのインキュベーションと比較して、2-HOBAは、マクロファージ及び内皮細胞の両方の培養物においてアポトーシス細胞の数を著しく減少させることが示された(図6A及び図6B)。さらに、2-HOBA処置は、IL-1β、IL-6及びTNF-αの減少したmRNAレベルによって示されるように、酸化LDLへのマクロファージの炎症反応を有意に減少させた(図6C~6E)。同様の結果が、ビヒクル又は4-HOBA処置と比較した、H2O2で処置したマクロファージの炎症性サイトカイン反応に対する2-HOBAの影響について観察された(図6F~6H)。さらに、IL-1β、IL-6、TNF-α mRNAのレベルは、H2O2存在下で5μMの2-HOBA(615ng/mL)単独で処置したマクロファージにおいて著しく減少した(図17)。細胞死及び炎症に対する2-HOBAの効果が反応性ジカルボニルのスカベンジングに起因することと一致して、MDA-2-HOBA(プロペナール-2-HOBA)付加物 対 MDA-4-HOBA付加物のレベルは、酸化LDL及び500μMまでの2-HOBAで処置した細胞においhて増加した(図18A)。僅か5μMの2-HOBAとインキュベートした細胞においてさえ、有意なレベルのプロペナール-2-HOBAが、DHP-MDA-2-HOBAと同様に形成され、架橋MDA-2-HOBA付加物が検出された(図18B~D)。さらに、2-HOBAは、酸化ストレス不在下で、生存促進性の抗炎症シグナルに直接影響しなかった30。なぜならば、インスリンの非存在下及び存在下でビヒクル、4-HOBA及び2-HOBAで処置したマクロファージにおいてpAKTレベルに差がなかったからである(図16)。インビボでの炎症性サイトカインに対する著しい影響に起因して、本発明者らはまた、尿プロスタグランジンを測定して、2-HOBAがシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し得るかどうかを評価した。尿サンプルを、2,3-ジノル-6-ケト-PGF1,11-デヒドロTxB2、PGE-M、PGD-MについてLC/MSにより分析した。本発明者らは、2-HOBAで処置したLdlr-/-マウスのこれら主要な尿プロスタグランジン代謝物のレベルに、ビヒクルコントロールと比較して有意差がないことを見出した(図17)。このことは、2-HOBAがマウスにおいてインビボでCOXを有意に阻害しないことを示している。まとめると、これらデータは、2-HOBA処置が、インビボで効率的なエフェロサイトーシスを維持し、反応性ジカルボニルのスカベンジングにより、酸化ストレスに応答したアポトーシス及び炎症を防止することを示す。
【0075】
[00112] リポタンパク質のMDA修飾及び機能に対する2-HOBAの影響並びにリポタンパク質MDA付加体含量及び機能に対する家族性高コレステロール血症の影響
[00113] 16週間ウェスタンダイエットを給餌したLdlr-/-マウスの2-HOBAでの処置は、4-HOBA又はビヒクルでの処置と比較して、血漿MDAレベルを低下させた(図18A)。ビヒクル又は4-HOBAのいずれかでの処置と比較して、ELISAにより測定した単離LDL中のMDA付加体含量は、2-HOBAで処置したLdlr-/-マウスにおいてそれぞれ57%及び54%減少した(図18B)。一方、コントロール及びFH被験体のLDLは、類似する量のMDA付加物を含んでおり、有意差はなかった(図18C)。LDLのMDA修飾は泡沫細胞形成を誘導する。2-HOBA処置Ldlr-/-マウスのLDLが、細胞をコレステロールで富化する能力を4-HOBA又はビヒクル処置Ldlr-/-マウスのLDLと比較検討したところ、差はなかった(図18D)。FHとコントロールのLDLの比較でも類似する結果が得られた。この観察は、FH被験体及び高コレステロール血症Ldlr-/-マウスからの血漿LDLが、MDAで、コレステロール負荷を誘導するには不十分にしか修飾されていないことに起因していた。なぜならば、本発明者らは、LDLのインビトロ修飾により、細胞をコレステロールで富化するにはMDA含量が2500ng/mg LDLタンパク質でなければならないと決定したからである。HDLの酸化的修飾はその機能を損なうので、本発明者らは次に、2-HOBA処置のHDLのMDA含量及び機能に対する影響を検討した。Ldlr-/-マウスの2-HOBAでの処置は、ELISAにより測定したところ、単離HDLのMDA付加体含有量を、ビヒクル又は4-HOBAでの処置と比較して57%及び56%低下させた(図7A)。次に、本発明者らは、apoAI MDA付加体形成に対する2-HOBAの影響を検討した。ApoAIを血漿から免疫沈降法により分離し、MDA-ApoAIを、MDA-タンパク質付加体に対する抗体を用いるウェスタンブロッティングにより検出した。西洋型飼料で16週間飼育した後、ビヒクル又は4-HOBAで処置したLdlr-/-マウスは、チャウダイエットを摂取したLdlr-/-マウスと比較して血漿MDA-apoAIレベルが著しく増加した(図7B及び図7C)。対照的に、ウェスタンダイエットを摂取したLdlr-/-マウスの2-HOBAでの処置は、血漿MDA-apoAI付加物を劇的に低減させた(図7B及び図7C)。apoAIのレベルは、4群のマウス間で類似していた(図7B)。重要なことに、2-HOBA処置Ldlr-/-マウスから分離したHDLは、ビヒクル及び4-HOBA処置マウスと比較して、Apoe-/-マクロファージ泡沫細胞におけるコレステロール貯蔵量を2.2倍及び1.7倍効率的に減少させた(図7D)。さらに、重症FHのヒト被験者からのLDLアフェレーシス(LA)の前後のHDLは、ELISAにより測定したところ、コントロールHDLに比べて、5.9倍及び5.6倍多いMDA付加物を有していた(図7E)。本発明者らはまた、LC/MS/MSにより測定したジリシル-MDA架橋レベルが、FH被験体からのHDLにおいて、コントロール被験体より高いことを見いだした(図7F)。重要なことに、FH被験者のHDLは、コントロール被験者のHDLと比較して、コレステロール富化Apoe-/-マクロファージのコレステロール含量を減少させる能力を欠いていた(図7G)。脂質フリーのアポAIのMDA修飾のコレステロール排出に対する効果は確立されている31が、HDLの修飾の影響に関しては研究により論争中である32, 33。したがって、本発明者らは、HDLのMDAでのインビトロ修飾が、マクロファージ泡沫細胞のコレステロール含量を低減するHDLの能力に与える影響を決定した。なぜならば、その能力がELISAにより測定したMDA付加体含量に関連するからである(図19A及び図19B)。HDLのMDA修飾は、正味のコレステロール排出能力を用量依存的様式で阻害した。重要なことに、コレステロール排出機能に影響するMDA-HDL付加物レベルが、FH被験体及び高コレステロール血症Ldlr-/-マウスのHDLにおけるMDA付加物レベルと同じ範囲内であった。まとめると、2-HOBAによるジカルボニルのスカベンジングは、HDLの正味のコレステロール排出能力を改善することにより、マクロファージ泡沫細胞形成を防止する。さらに、ホモ接合型FHを有する被験体からのHDLが増加したMDA及びIsoLGを含有し、泡沫細胞形成を増強することを考えると、本発明の実施形態は、反応性脂質ジカルボニルのスカベンジングがヒトにおける関連の治療アプローチであり得ることを示唆している。
【0076】
[00114] 検討
[00115] 酸化ストレスにより誘導された脂質過酸化は、アテローム性動脈硬化症の発症に関係している。遺伝的欠陥及び/又は環境要因は、酸化ストレスと、酸化生成物の有害な効果を相殺又は解毒する身体の能力との間に不均衡を引き起こす1, 3, 34。アテローム性動脈硬化症の病因における脂質過酸化の重要な役割を示唆する実験的証拠の大部分は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患を予防する抗酸化物質の可能性に対する大きな関心を刺激した。ヒトの食事性抗酸化物質のいくつかの試験により、アテローム性動脈硬化症と心血管事象の減少が実証されたが、抗酸化物質を用いた大規模な臨床転帰試験の大部分は心血管事象の減少という点で利点を示せていない。これらの試験が心血管事象を低減できなかった理由として考えられるのは、試験に用いられた抗酸化物質の投与量が不十分であること1、16や、抗アテローム生成の可能性がある正常なROSシグナル伝達の阻害35などである。
【0077】
[00116] 組織/細胞又は血液中の脂質の過酸化は、4-ヒドロキシノネナール、メチルグリオキサール、マロンジアルデヒド、4-オキソノネナール、イソレブグランジンを含む幾つかの反応性脂質カルボニル及びジカルボニルを生成する。これら求電子剤は、タンパク質、リン脂質及びDNAと共有結合し、リポタンパク質及び細胞機能の変化を引き起こすことがある1, 10, 11。反応性脂質カルボニル及びジカルボニル種のスカベンジャーでの処理は、ROSが媒介する通常のシグナル伝達を完全に阻害することなく、特定のクラスの生理活性脂質の有害な影響を低減させる新たな代替治療ストラテジを表す35。カルボニルをスカベンジ(捕捉)する能力を有する幾つかの化合物が同定されており、個々の化合物は、異なるクラスのカルボニルと優先的に反応するため、疾患軽減におけるスカベンジング化合物の有効性は、その標的クラスのカルボニルが疾患プロセスに寄与しているという指標となり得る35。以前の研究により、メチルグリオキサール及びグリオキサールのスカベンジャー、例えばアミノグアニジン及びピリドキサミンが、ストレプトゾトシン処置Apoe-/-マウスにおいてアテローム性動脈硬化病変を軽減することが見出された36, 37。同様に、α-β-不飽和カルボニル(例えば、HNE及びアクロレイン)のスカベンジャー、例えばカルノシンやその誘導体もまた、Apoe-/-マウス又はストレプトゾトシン処置Apoe-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化を抑制する38, 39, 40。以前に試験されたこれらスカベンジャー化合物は、IsoLG及びMDAのような脂質ジカルボニルの貧弱なインビボスカベンジャーである35。したがって、本発明者らは、IsoLG及びMDAの効果的なスカベンジャーである2-HOBAのLdlr-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を予防する可能性を調べようとした。
【0078】
[00117] 本発明者らは、最近、2-HOBAがイソレブグランジン媒介HDL修飾及び機能不全を低減し得ることを報告した41。本発明は、ジカルボニルのスカベンジングのアテローム性動脈硬化症に対する効果を調べた最初のものであり、本発明者らは、ジカルボニルスカベンジャーである2-HOBAを含む本発明の化合物が、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスモデルにおいてアテローム性動脈硬化症の発症を顕著に低減することを示した(図1)。重要なことに、本発明の実施形態は、2-HOBA処置が、壊死の減少並びに線維性被膜の厚さ及びコラーゲン含量の増加によって証明されるように、アテローム性動脈硬化性プラークの安定性の特徴を顕著に改善することを示している(図3)。反応性ジカルボニル41の炎症促進性効果及び病変壊死に対する影響と一致して、2-HOBAは、反応性ジカルボニルを中和することにより全身性炎症を低減させた(図5及び図6)。さらに、ジカルボニルのスカベンジングはインビボでHDLのMDA修飾を減少させた。このことは、HDLのジカルボニル修飾の防止が正味のコレステロール排出能を向上させるとの見解と一致している(図7)。本発明者らは先に、IsoLG修飾が家族性高コレステロール血症の対象からのHDLを増加させることを示した41が、今回の研究は、MDA修飾が同様に増加することを示す(図7)。このことは、これら修飾がFH-HDLにより引き起こされる増強した泡沫細胞形成に寄与することを示唆する(図7)。まとめると、2-HOBAを用いるジカルボニルのスカベンジングは、アテローム性動脈硬化症の発症及びアテローム性動脈硬化性プラークの形成に起因する臨床イベントのリスクの低減における治療的可能性をもたらす。
【0079】
本発明の実施形態は、2-HOBAが血漿コレステロールレベルを低下させることなくアテローム性動脈硬化症の発症を低減させることを示すので(図1)、理論にも機序にも拘束されずに、2-HOBAの粥状化防護効果(atheroprotective effect)は、生理活性ジカルボニルのスカベンジングに起因している可能性が高い。この概念と一致して、アテローム性動脈硬化病変のMDA-及びIsoLG-リシル付加物が、2-HOBA処置Ldlr-/-マウスにおいて減少した(図2)。2-HOBAの効果がジカルボニルスカベンジャーとしての作用によって媒介されていることは、インビトロで有効なスカベンジャーではない、2-HOBAの幾何異性体である4-HOBAが、粥状化防護性ではないとの結果、及び、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおいて、MDA-及びIsoLG-4-HOBA付加体と比較して、MDA-及びIsoLG-2-HOBAが豊富に生成されとの知見(図12及び13並びに表1)によってさらに支持される。また、尿F2-イソプロスタンのレベルは、2-HOBA処置Ldlr-/-マウスと4-HOBA処置Ldlr-/-マウスの間で有意差がなく、このことは、粥状化防護効果が脂質過酸化の抑制を介するものでも金属イオンのキレート化を介するものでもないことを示唆する(図15)。この比較における可能な要因は、4-HOBAが2-HOBAに比べてインビボでより迅速に除去されることであり、4-HOBAジカルボニル付加物がインビボで検出できないほどに非常に低量であるという結果は、一部、組織内の4-HOBAのよい低い濃度に起因し得るとの可能性を提起する。経口又は腹腔内配布後の初期血漿濃度は有意に異ならない一方、血漿区画からの4-HOBAの排除は2-HOBAより迅速に生じる。これらクリアランスの差は、4-HOBAジカルボニル付加物がインビボで検出できないほどに非常に低量である非常に低いという我々の知見が、一部、組織内の4-HOBAのよい低い濃度に起因し得る可能性を提起する。しかし、肝臓、脾臓及び腎臓は、腹腔内投薬の30分後に、4-HOBAと類似するレベルの2-HOBAを含んでいたことに注目することが重要である(図12)。さらに、大動脈及び心臓の2-HOBA及び4-HOBAのレベルは、Ldlr-/-マウスに強制経口投与した30分後には類似していた(図11)。このことは、アテローム性動脈硬化病変の発症において反応性ジカルボニルのスカベンジングへのアクセスが等しいことを示唆している。以前のインビトロ研究では、4-HOBAの反応性ジカルボニルとの反応性は2-HOBAと比較して乏しいことが示された21。生物学的システムにおける4-HOBAの反応性ジカルボニルとの反応の欠如と一致して、マクロファージを2-HOBA又は4-HOBAの存在下でインビトロでox-LDLで処置したとき、2-HOBA-MDA付加物は容易に検出された一方、4-HOBA-MDA付加物は検出可能でなかった(図18)。2-HOBAが、4-HOBAより、反応性ジカルボニルの効率的なインビボスカベンジャーであるという概念は、Ldlr-/-マウスの強制経口投与後16時間に尿中に19倍多いMDA-2-HOBA付加物が蓄積したとの知見によって実証される(図14A)。Ldlr-/-マウスの強制経口投与の16時間後の肝臓、脾臓及び腎臓におけるMDA-2-HOBAレベルの上昇(対MDA-4-HOBA付加物)も、2-HOBAがインビボで効果的なジカルボニルスカベンジャーであるが4-HOBAはそうでないことを強く支持している。まとめると、本発明は、アテローム性動脈硬化が、2-HOBAを使用してジカルボニルを除去することにより予防し得ることを示し、このことは 反応性ジカルボニルが、アテローム性動脈硬化症の病態に寄与しているという仮説を強化し、アテローム性動脈硬化性心疾患におけるジカルボニルスカベンジングの治療可能性を高めるものである。この点に関して、本発明者らは、1gの2-HOBA/L水で処置したLdlr-/-マウスが、ヒトでの最近の安全性試験24において2-HOBAの経口投与を受けたヒトに類似する血漿2-HOBAレベルを有することを見出した。
【0080】
[00118] HDLは幾つかの粥状化防護機能を媒介し、コレステロール排出能の減弱などのHDL機能不全のマーカーは、HDL-CレベルよりCADリスクの良好な指標であり得るとの証拠が積み上げられている1, 7, 42, 43, 44。FH患者は、低減したHDLコレステロール排出能(機能不全のHDLの指標である)を有することが以前に示されている45, 46。本発明の実施形態は、Ldlr-/-マウスによるウェスタンダイエットの摂取が、MDA-アポAI付加体形成の増加をもたらすこと(図7)、及び、2-HOBA処置がアポAI及びHDLの両方のMDAによる修飾を劇的に減少させることを示す。同様に、FH患者は血漿MDA-HDL付加体レベルが上昇していた。また、HDLのMDAでのインビトロ修飾は、本発明者らがIsoLGで先に示したこと41と同様に、正味のコレステロール排出能の低下をもたらし、これらの効果は、FH被験体及び高コレステロール血症マウスと同じ範囲内のMDA付加体を含むHDLで観察された(図7及び図19)。結果は、HDLのMDA修飾がコレステロール富化P388D1マクロファージからのコレステロール排出に有意に影響しないことを示した他の研究と一致しない。これは、修飾条件又は細胞タイプの違いに起因し得る32。知見は、脂質フリーのアポAIのMDAでの修飾が、ABCA1媒介コレステロール排出を阻止することを示したShaoらの研究31と一致する。また、長期の喫煙がMDA-HDL付加体形成の増加を引き起こし、禁煙によりHDL機能の改善がもたらされ、コレステロール排出能力が高まることを示す研究もある47。これら結果に沿って、本発明者らは、2-HOBA処置マウスから分離したHDLは、マクロファージ泡沫細胞におけるコレステロール貯蔵量を減少させる能力が強化される(対ビヒクル及び4-HOBA処置)ことを見いだした(図7)。さらに、FHのヒト被験者のHDLは、MDA付加物が著しく増加しており、LDLアフェレシスの前後でマクロファージコレステロール貯蔵量を減少させる能力が著しく損なわれていた(図7)。よって、2-HOBAの粥状化防護機序の1つは、HDLタンパク質のジカルボニル付加物の形成を防止し、そのことによってHDLの正味のコレステロール排出機能を維持することによるものである可能性が高い。HDL酸化修飾を減少させることに加えて、本発明の実施形態は、2-HOBA処置が血漿LDLのインビボMDA修飾を減少させることを示す。LDLのMDA修飾はスカベンジャー受容体を介した取り込みを促進し、泡沫細胞の形成及び炎症反応をもたらすことが研究により示されている48, 49。2-HOBA処置マウス及び4-HOBA処置マウスの両方のLDLとのマクロファージのインキュベーションが、類似するコレステロール含量を生じたという知見は、十分な量のMDAで修飾されたLDLがスカベンジャー受容体を介して迅速に除去されることと一致している。しかし、抗体でのMDA-apoB付加体の中和が、ヒトapoB100遺伝子導入Ldlr-/-マウスにおいて、アテローム性動脈硬化症の退縮を大幅に増強することが研究50, 51により示されている。このことは、2-HOBA処置によるアテローム性動脈硬化症の減少が、一部、アテローム性動脈硬化病変内のapoBのジカルボニル修飾の減少にも起因する可能性を高くする。
【0081】
[00119] 動脈内膜細胞における酸化ストレスの増大は、アテローム形成におけるERストレス、炎症及び細胞死の誘導において極めて重要であるという証拠が積み上げられている52, 53。特に、効率的なエフェロサイトーシス及び限定的な細胞死は、脆弱なプラークに特徴的な壊死及び過剰な炎症の防止に重要である1, 52, 54。本発明の実施形態は、2-HOBAでの処置が、Ldlr-/-マウスにおいてより安定なアテローム性動脈硬化性プラークの特徴を促進することを証明する(図3)。さらなる実施形態は、2-HOBA処置がアテローム性動脈硬化病変のMDA及びIsoLG付加物含量を減少させたことを示し(図2)、このことは、動脈内膜におけるジカルボニルスカベンジングの、酸化ストレス誘導炎症、細胞死及びプラークの不安定化を制限する能力を支持するものである。本発明の実施形態は、インビトロでの2-HOBAによるジカルボニルの捕捉(スカベンジング)が、内皮細胞及びマクロファージの両方において酸化ストレス誘導アポトーシスを制限することを示している(図6)。細胞死の減少は、IL-1βを含む血清炎症性サイトカインの劇的減少により証明されるように、一部、2-HOBAでのジカルボニルスカベンジングによる酸化ストレスに対する炎症反応の大幅な低下に起因する可能性が高い(図5)。これら結果は、IL-1β中和化モノクローナル抗体であるカナキヌマブ(anakinumab)での炎症低減が、MIの既往がありhsCRP 55が上昇しているヒトにおける心血管事象発生率を低減させ得ることを示したCANTOS試験の最近の結果を考慮すれば、特に関連性が高い。重要なことに、2-HOBAでの処置が尿プロスタグランジン代謝物、プロスタサイクリン、トロンボキサン、PGE2及びPGD2のレベルに影響しなかった。このことは、2-HOBAがマウスにおいてインビボでシクロオキシゲナーゼの顕著な阻害を生じないことを示す(図17)。さらに、2-HOBA処置は、効率的なエフェロサイトーシスを維し、アテローム性動脈硬化病変における死細胞の数を減少させた(図4)。その結果、2-HOBAでのジカルボニルのスカベンジングは、安定なプラークの特徴を促進し、壊死を減少させ、コラーゲン含量及び線維性被膜の厚さを増大させた(図3)。したがって、酸化ストレスに応答しての動脈細胞における死及び炎症を制限し、動脈壁における効率的なエフェロサイトーシスを促進する2-HOBAの能力は、ジカルボニルのスカベンジングがプラーク安定化の特徴を促進し、アテローム性動脈硬化病変の形成を低減することによる新規な粥状化防護機構を提供する。結果は、酸化リン脂質に対するE06抗体の一本鎖可変フラグメントを発現するLdlr-/-マウスが、アテローム性動脈硬化の低減を示し、壊死及び全身性炎症の減少を含む安定プラークの特徴を示すことを示した最近の研究によって実証された56。この効果は、一部、エステル化した反応性ジカルボニルの中和に起因する可能性が高い。ヒトにおけるCAD臨床事象の炎症性リスクが、コレステロール低下とは独立に、顕著に残存しているという知見55, 57を前提として、これらの研究は、このリスクを低減させる標的として反応性ジカルボニルに注目している。アテローム性動脈硬化性病変の形成の予防は、明らかに、心血管事象の予防に重要な戦略である。
【0082】
[00120] 結論として、2-HOBA処置は、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を抑制する。2-HOBAの粥状化防護効果は、血漿アポタンパク質及び内膜細胞成分とのジカルボニル付加物の形成を防止することに起因する可能性が高い。2-HOBAでの処置は、MDA-apoAI付加体の形成を減少させ、そのことにより効率的なHDL機能を維持した。さらに、MDA-apoB付加物の防止は、泡沫細胞の形成及び炎症を減少させる。最後に、アテローム性動脈硬化病変内で、ジカルボニルのスカベンジングは、細胞死、炎症及び壊死を制限し、そのことにより安定なアテローム性動脈硬化プラークの特徴を効果的に促進した。2-HOBA処置の粥状化防護効果は、血清コレステロールレベルに対する作用から独立しているので、2-HOBAは、HMG-CoA還元酵素阻害剤で処置した患者において残存するCADリスクを減少させる現実の治療的可能性を提供する。
【0083】
[00121] 材料及び方法
[00122] マウス
[00123] C57BL/6バックグラウンドのLdlr-/-及びWTマウスを、Jackson Laboratoryから入手した。動物プロトコルは、Vanderbilt UniversityのInstitutional Animal Care and Usage Committeeの規定に従って実施された。マウスを、チャウダイエット又は21%乳脂肪及び0.15%コレステロールを含む西洋型飼料(Teklad)で飼育した。チャウダイエットで飼育した8週齢雌性Ldlr-/-マウスに、ビヒクル(水)のみ又は1g/Lの4-HOBA若しくは1 g/Lの2-HOBAを含む水で前処置した。4-HOBA(塩酸塩として)は既報21の通り合成した。2-HOBA(酢酸塩として;CAS 1206675 01-5)は、TSI Co.Ltd.(Missoula, MT)により製造され,Metabolic Technologies, Inc., Ames, IA24から入手した。商用生産ロット(Lot 16120312)を使用し、商用ロットの純度はHPLC及びNMR分光法により99%以上であることが検証された24。2週間後、マウスにこの処置を続けたが、16週間ウェスタンダイエットに切り替えて、高コレステロール血症及びアテローム性動脈硬化症を誘導した。同様に、12週齢の雄性Ldlr-/-マウスを、2週間、ビヒクル(水)単独又は1g/Lの2-HOBAを含む水で前処置した後、2-HOBA又は水単独での処置を継続しつつ、ウェスタンダイエットに切り替えて16週間、高コレステロール血症及びアテローム性動脈硬化症を誘発した58, 59, 60。平均体重及びマウスあたりの一日摂水量に基づいて、1g/Lの2-HOBAを用いる推定日用量は200mg/Kgである。本発明者らは、処置群間のマウスの死亡率に差を認めなかった。8週齢雄性Ldlr-/-マウスに16週間ウェスタンダイエットを給餌し、マウスを2-HOBA又は4-HOBAを含む水で継続的に処置した。尿サンプルを、2-HOBA又は4-HOBA(各マウス5mg)を強制経口投与後18時間の間、代謝ケージ(1ケージに2匹のマウス)を用して収集した。
【0084】
[00124] 細胞培養
[00125] 腹腔マクロファージを、3%チオグリコレートの注射から72時間にマウスから単離し、DMEM+10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco)で前記のように維持した30。ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)をLonzaから入手し、内皮細胞基礎培地-2+1%FBS及び必須成長因子(Lonza)で維持した。
【0085】
[00126] 血漿脂質及びリポタンパク質の分布分析
[00127] マウスを6時間絶食させ、血漿総コレステロール及びトリグリセリドを Cliniqa (San-Macros, CA)の試薬を用いる酵素法により測定した。高速液体クロマトグラフィー(FPLC)を、HPLC システムModel 600(Waters, Milford, MA)でSuperose 6 カラム(Pharmacia, Piscataway, NJ)を用いて行った。
【0086】
[00128] マウス血漿からのHDL単離、及びマクロファージコレステロールを低減挿せるHDLの能力の測定
[00129] HDLを、HDL Purification Kit (Cell BioLabs, Inc.)を用いて、製造者のプロトコルに従って、マウス血漿から単離した。簡潔には、apoB含有リポタンパク質及びHDLを、逐次に、デキストラン硫酸で沈殿させた。その後、HDLを再懸濁し、洗浄した。デキストラン硫酸を除去した後、HDLをPBSに対して透析した。HDLがマクロファージのコレステロールを減少させる能力を測定するために、Apoe-/-マクロファージを、100μgタンパク質/mlアセチル化LDLを含むDMEM中で48時間インキュベートすることによってコレステロールで富化させた。次いで、細胞を洗浄し、DMEMのみと、又は25μg HDLタンパク質/mlと24時間インキュベートした。細胞コレステロールを、記載61されているように、酵素コレステロールアッセイを用いて、HDLとのインキュベーションの前後で測定した。
【0087】
[00130] ヒト血液採取、並びにMDA-LDL、MDA-HDL及びMDA-ApoAIの測定
[00131] 本研究は、Vanderbilt University Institutional Review Board(IRB)によって承認され、すべての参加者から書面によるインフォームドコンセントを得た。LDLアフェレシスを経験した重症FH患者及び健常コントロールのヒト血液サンプルを、IRBが承認したプロトコルを用いて入手した。HDL及びLDLを、Lipoprotein Purification Kits(Cell BioLabs, Inc.)により血清から調製した。サンドウィッチELISAを用いて、製造者(Cell BioLabs, Inc.)の指示に従い、血漿MDA-LDL及びMDA-HDLレベルを測定した。簡潔には、単離したLDL又はHDLサンプル及びMDA-リポタンパク質標準物質を、抗MDA被覆プレート上に加え、ブロッキング後、サンプルを、ビオチン化抗apoB又は抗ApoAI一次抗体とインキュベートした。次に、サンプルを、ストレプトアビジン‐酵素コンジュゲートと1時間、基質溶液と15分間インキュベートした。反応停止後、450nm波長でO.D.を測定した。MDA-ApoAIを、ApoAIの免疫沈降及びウェスタンブロッティングにより、マウス血漿中で検出した。簡潔には、50μlのマウス血漿を、450μLのIP Lysis Buffer(Pierce)+0.5%プロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma)を用いて調製し、10μgのマウスApoAIに対するポリクローナル抗体(Novus)で免疫沈降させた。その後、25μLの磁気ビーズ(Invitrogen)を加え、混合物を4℃で1時間、回転させながらインキュベートした。次に、磁気ビーズを回収し、3回洗浄し、β-メルカプトエタノールを含むSDS-PAGEサンプルバッファーをビーズに加えた。70℃で5分間のインキュベーション後、磁場をMagnetic Separation Rack (New England)に印加し、上清を、マウスApoAI又はMDAの検出に用いた。ウェスタンブロッティングについては、30~60μgのタンパク質を、NuPAGE Bis-Tris電気泳動(Invitrogen)により分離し、ニトロセルロース膜(Amersham Bioscience)上に転写した。膜を、ApoAI (Novus NB600-609)又はMDA-BSA(Abcam cat# ab6463)に特異的なウサギ一次抗体及び蛍光標識IRDye 680(LI-COR)二次抗体でプローブした。タンパク質を可視化し、Odyssey 3.0 Quantification software (LI-COR)により定量化した。
【0088】
[00132] MDAによるHDL及びLDLの修飾
[00133] MDAを、記載31したように、マロンカルボニルビス-(ジメチルアセタール)の迅速な酸加水分解によって、使用直前に調製した。簡潔には、20μLの1M HClを、200μLのマロンカルボニルビス(ジメチルアセタール)に加え,混合物を室温で45分間インキュベートした。MDA濃度を、係数因子(coefficient fator)13、700M-1cm-1を用いて、245nmの吸光度により決定した。HDL(10mgのタンパク質/mL)及び漸増用量のMDA(0、0.125mM、0.25mM、0.5mM、1mM)を、DTPA 100μMを含む50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)中で37℃にて24時間インキュベートした。反応を、MDAの添加により開始し、40℃にてPBSに対するサンプルの透析により停止した。LDL(5mg/mL)を、DTPA 100μMを含む50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)中で37℃にて24時間、ビヒクル単独又は2-HOBAを含むビヒクルの存在下で、MDA(10mM)でインビトロで修飾した。反応を、MDAの添加により開始し、40℃にてPBSに対するサンプルの透析により停止した。LDLサンプルを、マクロファージと24時間インキュベートし、細胞のコレステロール含量を記載61の酵素コレステロールアッセイを用いて測定した。
【0089】
[00134] アテローム性動脈硬化症の分析及び断面免疫蛍光染色
[00135] アテローム性動脈硬化症の程度を、近位大動脈のオイルレッドO染色断面及びen face分析によって調べた30。簡潔には、10ミクロン厚の凍結切片を、大動脈洞の端から始まり300μm遠位までの近位大動脈の領域から、Paigenら62の方法に従って切り出した。基部から上行大動脈領域までの連続15切片のオイルレッドO染色を用いて、マウスあたりのオイルレッドO陽性染色領域を定量化した。連続15切片からの平均を、マウスあたりの大動脈基部アテローム性動脈硬化病変サイズについて、記載63, 64, 65したようなKS300イメージングシステム(Kontron Elektronik GmbH)を用いて適用した.他の染色はすべて、大動脈洞の40~60μm遠位の切片を用いて行った。各マウスについて、4切片を染色し、定量を4切片すべての断面全体について行った。免疫蛍光染色については、近位大動脈の5μm断面を冷アセトン(Sigma)中で固定し、バックグラウンドバスター(Innovex)中でブロックした、指定の一次抗体(MDA及びCD68)と4℃にて一晩インキュベートした。蛍光標識二次抗体と37℃で1時間のインキュベーション後、核をHoechstで対比染色した。画像を、蛍光顕微鏡(Olympus IX81)及びSlideBook 6(Intelligent-Image)ソフトウェアで撮像し、ImageJソフトウェア(NIH)66を用いて定量化した。
【0090】
[00136] インビトロ細胞アポトーシス並びに病変アポトーシス及びエフェロサイトーシスの解析
[00137] 細胞アポトーシスを、示されているように誘導し、蛍光標識アネキシンV染色によって検出し、フローサイトメトリー(BD 5 LSRII)により又は蛍光顕微鏡下で撮像した画像中のアネキシンV陽性細胞の計数により定量化した。アテローム性動脈硬化病変中のアポトーシス細胞を、アテローム性動脈硬化近位大動脈の断面のTUNEL染色により、既報30のように測定した。生存マクロファージと結合していないTUNEL陽性細胞を、遊離アポトーシス細胞とみなし、マクロファージと結合したアポトーシス細胞を、貪食されたとみなし、既報30の通り、病変エフェロサイトーシスの尺度とした。
【0091】
[00138] マッソントリクローム染色
[00139] マッソントリクローム染色を、製造者の指示(Sigma)に従い、既報30の通りに、アテローム性動脈硬化病変のコラーゲン含量、線維性被膜の厚さ及び壊死性コアサイズの測定に適用した。簡潔には、アテローム性動脈硬化性近位大動脈基部の5μm断面を、Bouin溶液で固定し、核についてはヘマトキシリン(黒)で、細胞質についてはビーブリッヒスカーレット(biebrich scarlet)及びリンタングステン酸/リンモリブデン酸(赤)で、コラーゲンについてはアニリンブルー(青)で染色した。画像を撮影し、コラーゲン含量、アテローム性動脈硬化性被膜の厚さ及び壊死性コアについて、既報30のとおりにImageJソフトウェアにより分析した。壊死面積を総病変面積に対して規格化し、%壊死面積として表す。
【0092】
[00140] RNAの単離及びリアルタイムRT-PCR
[00141] トータルRNAを、Aurum Total RNAキット(Bio-Rad)を製造者のプロトコールに従って用いて、抽出し精製した。相補的DNAを、iScript reverse transcriptase (Bio-Rad) を用いて合成した。標的mRNAの相対的定量を、既報のように、特異的プライマー、SYBRプローブ(Bio-Rad)及びiTaqDNAポリメラーゼ(Bio-Rad)を用いてIQ5 Thermocylcer(Bio-Rad)で行い、18Sで規格化した。用いた18S、IL-1β及びTNF-αプライマーは前述の通りである67。
【0093】
[00142] 尿プロスタグランジン代謝物の液体クロマトグラフィー-質量分析
[00143] 尿中のPGE-M、テトラノルPGD-M、11-デヒドロ-TxB2(TxB-M)及びPGI-Mの濃度を、Vanderbilt University Medical CenterのEicosanoid Core Laboratoryにおいて測定した。尿(1mL)をHClでpH3まで酸性化した。[2H4]-2,3-ジノル-6-ケト-PGF1a(PGI-M定量用の内部標準物質)及び[2H4]-11-デヒドロ-TxB2を加え、サンプルをメチルオキシムHClで処理して分析物をO-メチルオキシム誘導体に変換した。誘導体化された分析物を、C-18 Sep-Pak (Waters Corp. Milford, MA USA)を用いて抽出し、既報のように酢酸エチルで溶出した68。その後、PGE-M及びPGD-Mの定量のために、[2H6]-O-メチルオキシムPGE-M重水素化内部標準物質を添加した。サンプルを、乾燥窒素気流下、37℃で乾燥させた後、LC/MS分析のために75μLの移動相A中で再構成した。
[00144] LCを、2.0×50mm、1.7μm particle Acquity BEH C18カラム(Waters Corporation, Milford, MA, USA)でWaters Acquity UPLCを用いて行った。移動相Aは95:4.9:0.1 (v/v/v)の5mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル:酢酸であり、移動相Bは10.0:89.9:0.1 (v/v/v)の5mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル:酢酸であった。サンプルを、流速375μl/分で14分間に渡り85-5%の移動相 Aのグラジエントによって分離した後、SCIEX 6500+ QTrap質量分析計に供給した。
[00145] 尿クレアチニンレベルを、Enzo Life Sciencesの検査キットを用いて測定する。各サンプル中の尿代謝物レベルを、当該サンプルの尿クレアチニンレベルを用いて規格化し、ng/mgクレアチニンで表わす。
【0094】
[00146] 血漿及び組織中の2-HOBA及び4-HOBAの測定
[00147] 2-HOBA及び4-HOBAの測定は、2-HOBAについて以前に記載されたように71、フェニルイソチオシアネート(PITC)での誘導体化後に、内部標準として[2H4]-2-HOBAを用いてLC/MSにより行った(図23参照)。これらアッセイについて、Waters Xevo-TQ-Smicroトリプル四重極質量分析装置を正イオン多重反応モニタリング(MRM)モードで動作させ,以下のトランジションをモニターした:PITC-2-HOBA又はPITC-4-HOBAについて、m/z 259-->107@20eV (定量イオントランジション)及びm/z 259-->153 @20eV(定性イオントランジション);PITC-[2H4]2-HOBAについて、m/z 263-->107@20eV(定量イオントランジション)、m/z 263-->111@20eV(定性イオントランジション)。PITC-2-HOBAの量を、PITC-[2H4]2-HOBAのピーク面積に対する比に基づいて算出した。PITC-4-HOBAの転移反応はPITC-2-HOBAの転移反応より効率が低いので、PITC-4-HOBA/PITC-[2H4]2-HOBAのピーク面積比に、m/z 107及びm/z 153転移を用いる場合、それぞれ補正係数3.9及び5.7を乗算した(図24を参照)。
【0095】
[00148] 大動脈におけるIsoLG-Lysの測定
[00149] 2-HOBA及び4-HOBA処置Ldlr-/-マウスの大動脈からのイソレブグランジン-リシル-ラクタム(IsoLG-Lys)付加体の単離及びLC/MS測定は、既報69のとおりに、Waters Xevo-TQ-Smicroトリプル四重極質量分析装置を用いて行った。
【0096】
[00150] 2-HOBAのIsoLG付加体の検出
[00151] 定量のための内部標準を生成するため、10モル当量の重同位体標識2-HOBA、[2H4]2-HOBAを合成IsoLG69と1mM酢酸トリエチルアンモニウムバッファー中で一晩反応させてIsoLG-2-HOBA付加体を形成させた。付加体を、固相抽出(Oasis HLB)により未反応の[2H4]2-HOBA及びIsoLGから分離した。IsoLG-2-HOBAの単離した反応生成物を、制限質量スキャンモードで稼働させた質量分析装置(Waters Xevo-TQ-Smicroトリプル四重極MS)によりスキャンし、主要な生成物を同定した。さらに、m/z 111.1に設定した生成物イオンによる前駆体スキャンを使用して、検出された生成物が[2H4]2-HOBA付加物であることを確認した。両方法とも,精製したIsoLG-[2H4]2-HOBA内部標準混合物中に存在する主要な付加体が、IsoLG-[2H4]2-HOBAヒドロキシラクタム付加体であるが,ピロール、ラクタム及びこれら付加体の各々のアンヒドロ-種などの他の付加体も存在することを示した。IsoLGを非標識2-HOBAと反応させ、生成物イオンm/z 107.1を用いる前駆体スキャニングを行った場合、類似する種が見られた。処置動物の組織における可能性のある2-HOBA付加体を同定するため、本発明者らは先ず、18種の生じ得るIsoLG-HOBA種[IsoLG及び2-HOBAのインビトロ反応に基づくピロール、ラクタム、ヒドロキシラクタム、次に、プロスタグランジン及びイソプロスタンを用いた以前の代謝研究に基づき、これら3種の付加体の各々のアンヒドロ-、ジノル-、ジノル/アンヒドロ-、テトラノル-及びケト-(ヒドロキシル基の酸化による)代謝物]のリストを作成した。次に、本発明者らは、正イオン前駆体スキャンモードで動作させ、生成物イオンをm/z 107.1に、衝突エネルギーを20eVに設定した質量分析装置を使用するLC/MSを用いて、2-HOBA処置マウスの肝臓ホモジネートを分析し、これら前駆イオンのいずれかの存在を探索した。これらデータに基づいて、本発明者らは、3つの可能性のある代謝物を同定した。M1前駆体イオンm/z 438.3(この質量はケト-ピロール付加体又はアンヒドロ-ラクタム付加体のいずれかと一致する(両者は同一質量を有する))M2 m/z 440.3(この質量はピロール付加物と一致する)、及び、M3 m/z 454.3(この質量はアンヒドロ-ヒドロキシラクタム付加物又はケト-ラクタム付加物と一致する)。その後、心臓及び肝臓のサンプルにおける推定のIsoLG-HOBA付加物の量を定量しようとした。なぜならば、他の分析で残った大動脈サンプルは、この分析に利用可能なほどに十分でなかったからである。
【0097】
[00152] これら実験のために、2-HOBA又は4-HOBAで処置したLdlr-/-マウスの肝臓又は心臓サンプルを、抗酸化剤の混合物(ピリドキサミン、インドメタシン、BHT、TCEP)を含む0.5Mトリスバッファー液pH7.5中でホモジナイズした。ホモジネート中のタンパク質の総量を、規格化のために測定した。その後、1pmolのIsoLG-[2H4]2-HOBAを各ホモジネートサンプルに内部標準として加え、HOBA付加体を酢酸エチルで抽出し、乾燥させ、溶剤1(0.1%酢酸を含む水)に溶解させ、Waters Xevo-TQ-Smicroトリプル四重極質量分析装置を正イオン多重反応モニタリング(MRM)モードで稼働させて用いてLC/MSにより分析し、以下のトランジションをモニターした:M1についてはm/z 438.3-->107.1@20eV;M2についてはm/z 440-->107.1@20eV;M3についてはm/z 454-->107.1@20eV;及びIsoLG-[2H4]2-HOBAヒドロキシラクタムについてはm/z 476.3-->111.1@20eV。脱溶媒和温度:500℃;ソース温度:150℃;キャピラリー電圧:5kV,コーン電圧:5V,コーンガス流量1 L/h;脱溶媒和ガス流量1000 L/hHPLC条件は以下の通りであった:溶媒1:0.1%酢酸を含む水;溶媒2:0.1%酢酸を含むメタノール;カラム:Phenomenex Kinetex C8 50×2.1mm 2.6u 100A、流速:0.4mL/分;グラジエント:開始条件10% B、3.5分間にわたる100% Bまでのグラジエント勾配、0.5分間の保持、0.5分間にわたる開始条件への復帰。各代謝物の存在量を、内部標準物質に対するピーク高さの比に基づいて算出した。
【0098】
[00153] LC/ESI/MS/MSによるジリシル-MDA架橋の分析
[00154] サンプル(約1mgのタンパク質)を、リシル-ラクタム付加物についての既報70の通りに、プロテアーゼで消化した。5ナノグラムの13C6-ジリシル-MDA架橋物標準を各細胞サンプルに加え、ジリシル-MDA架橋物を既報71の通りに精製した。ジリシル-MDA架橋物を、既報71の通りに、LC-ESI/MS/MSによる同位体希釈によって定量化した。
【0099】
[00155] スカベンジャー-MDA付加体のLC/MS/MS定量化。
[00156] スカベンジャー-MDA付加体を、(1)組織ホモジネート(30mg当量)から又は(2)細胞(1ml)から、500μlの酢酸エチルで3回抽出した。抽出物を乾燥させて、100μlのACN-水(1:1, v/v, 0.1%ギ酸含有)に再懸濁し、ボルテックスし、0.22μm spin Xカラムでろ過した。反応物を、Phenomenex Kinetexカラムを用い、流速0.1ml/分にてLC-ESI/MS/MSにより分析した。グラジエントは、溶媒A(0.2%ギ酸を含む水)及び溶媒B(0.2%ギ酸を含むアセトニトリル)からなった。グラジエントは以下の通りであった:0~2分間99.9% A、2~9分間99.9~0.1% A、9~12分間99.9% B。質量分析装置は、正イオンモードで動作させ、スプレー電圧は5,000Vに維持した。シースガス及び補助ガスには、窒素を、それぞれ30及び5任意単位の圧力で用いた。最適化スキマーオフセットを10に設定し、キャピラリ温度は300℃であり、チューブレンズ電圧は各化合物に特異的であった。m/z 178 → 107の前駆イオン(プロペナール-HOBA付加体)の特定トランジションイオンのSRM。
【0100】
[00157] 統計
連続データは、箱ひげ図及び棒グラフにより可視化した平均±SEMとしてまとめる。群間差は、スチューデントのt検定(2群)及び一元配置ANOVA(>2群、多重比較についてボンフェローニの補正)を用いて評価した。パラメトリック法の仮定を満たさない場合、それらのノンパラメトリック対応方法であるマン・ホイットニー検定(2群)及びノンパラメトリッククラスカル・ウォリス検定(3群以上、多重比較についてはバンの補正)を用いた。シャピロ-ウィルク検定を用いて、正規性の仮定を評価した。すべての検定を、多重比較についての補正後の両側有意水準が0.05で統計的有意性を認めた。すべての統計解析を、GraphPad PRISM version 5又は7で行った。
【0101】
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【0102】
[00158] 本開示の主題の様々な詳細は、本明細書に開示されている主題の範囲から逸脱することなく変更し得ることが理解される。さらに、前述の説明は説明のみを目的とし、限定を目的とするものではない。
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【国際調査報告】