(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】膨張物とそのバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 15/14 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
F16K15/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574682
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 US2021035801
(87)【国際公開番号】W WO2021247938
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522470943
【氏名又は名称】スピン マスター, インク.
【氏名又は名称原語表記】SPIN MASTER, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ゲインズ,シー.レイサム
(72)【発明者】
【氏名】グラネール,スティーブン
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA14
3H058BB37
3H058CA22
3H058CB14
3H058CC05
3H058CD25
3H058EE04
(57)【要約】
一態様において、膨張物は、空気を収容する室を包囲する膨張物本体と、室と周囲環境との間に通路を画定するバルブ本体を含み膨張物本体に装着されるバルブとを含む。バルブ本体は肩部を有する。バルブ本体は、周囲環境に開口する外側端部と、室に開口する内側端部とを画定する。バルブは、通路を経由した室と周囲環境との間での流体連通を可能にする開口位置と、閉止位置との間で移動可能である一方向フラップを含む。約48m/秒より低い速度を有して1気圧より小さい圧力である気流により一方向フラップを開口位置へ移動させる為に克服可能であるように選択された閉止力により、一方向フラップが閉止位置へ付勢される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張物であって、
膨張物本体を加圧する為に空気を収容する室を包囲する膨張物本体と、
前記膨張物本体に装着されるバルブであって、
前記室と周囲環境との間に通路を画定するバルブ本体であって、肩部を有するバルブ本体であり、前記周囲環境に開口する前記通路の外側端部と、前記室に開口する前記通路の内側端部とを画定するバルブ本体と、
前記通路を経由した前記室と前記周囲環境との間での流体連通を一方向フラップが可能にする開口位置と、前記肩部に密閉されて前記通路を経由した前記室と前記周囲環境との間での流体連通を阻止する閉止位置との間で移動可能である一方向フラップであって、閉止力で前記閉止位置へ付勢される一方向フラップであり、約48m/秒より低い速度を有すると共に1気圧より小さい圧力である気流により一方向フラップを前記開口位置へ移動させる為に克服可能であるように前記閉止力が選択される、一方向フラップと、
前記外側端部に着脱式に装着可能であって、前記室と前記周囲環境との間での流体連通に対するカバーシールを形成するカバーと、
を含むバルブと、
を具備する膨張物。
【請求項2】
前記外側端部が第1断面積と、前記外側端部の内部に在って前記第1断面積より小さい第2断面積を有する中央領域とを有する、請求項1に記載の膨張物。
【請求項3】
前記通路の中心にある接続構造で前記一方向フラップが前記バルブ本体に接続される、請求項1に記載の膨張物。
【請求項4】
前記通路の径方向縁部の外部に在る接続構造で前記一方向フラップが前記バルブ本体に接続される、請求項1に記載の膨張物。
【請求項5】
前記通路に延出して前記外側端部に向かう撓曲に対して前記一方向フラップを支持する複数の支持リブを前記バルブ本体が含み、前記一方向フラップが、前記一方向フラップでの圧力差により前記外側端部に向かう及び前記外側端部から離れる撓曲に充分な程の可撓性であるが、前記複数の支持リブにより前記肩部に対するシールを維持する為に前記外側端部に向かう撓曲が防止される、請求項1に記載の膨張物。
【請求項6】
前記複数の支持リブの各々が、前記通路の前記外側端部に面する第1側と、前記通路の前記外側端部と反対向きの第2側とを有し、前記複数の支持リブの各々が前記第2側から前記第1側に向かってテーパ状である、請求項5に記載の膨張物。
【請求項7】
収縮突部が前記一方向フラップを前記開口位置へ動かして膨張物の収縮を可能にする収縮位置まで前記カバーを前記通路へ挿入するのに充分な程前記カバーの他部分から突出する収縮突部を前記カバーが含む、請求項1に記載の膨張物。
【請求項8】
前記膨張物本体と前記バルブ本体との間に延在して、前記通路の前記外側端部が前記膨張物本体から外向きに突出するようにカラーが前記バルブ本体を保持する延出位置と、カラーが前記延出位置にある時よりも前記膨張物本体の近くに前記通路の前記外側端部が配置されるようにカラーが前記バルブ本体を保持する格納位置との間で移動可能であるカラーを更に具備し、
前記カラーが弾性であって、前記延出位置と前記格納位置の両方において安定しており、前記カラーが前記延出位置と前記格納位置との間に配置された時に前記延出位置と前記格納位置の一方に向かって付勢される、
請求項1に記載の膨張物。
【請求項9】
第1硬度を有する第1材料で製作されたバルブ本体主要部分を前記バルブ本体が含み、前記バルブ本体主要部分が前記カラーに隣接しており、前記第1硬度より高い第2硬度を有する第2材料から製作された補強部材を前記バルブ本体が更に含み、前記バルブ本体主要部分を補強するように前記補強部材が前記バルブ本体主要部分に接続される、請求項8に記載の膨張物。
【請求項10】
前記一方向フラップが、前記バルブ本体主要部分の第1把持面と前記補強部材の第2把持面との間に把持される、請求項9に記載の膨張物。
【請求項11】
前記一方向フラップを越えて前記室に延出すると共に、前記通路の前記内側端部が前記室の内側の前記膨張物本体の壁部と嵌合した際に前記開口位置への前記一方向フラップの移動を可能にして前記室へ空気を流入させるように複数の空気孔を画定する複数の突部及び谷部を有する延出部分を前記バルブ本体が有する、請求項1に記載の膨張物。
【請求項12】
前記一方向フラップにわたって等しい圧力で前記一方向フラップが前記外側端部から離れるように撓曲するのに充分な程、前記一方向フラップが可撓性である、請求項1に記載の膨張物。
【請求項13】
前記延出部分が、前記突部及び谷部を含む軸方向延出部分を含むと共に、前記一方向フラップと少なくとも部分的に径方向に重複する径方向延出部分を更に含む、請求項12に記載の膨張物。
【請求項14】
前記肩部の径方向内縁部が前記肩部の径方向外縁部よりも前記通路の前記外側端部に近くなるように前記肩部が凹部の形態である、請求項1に記載の膨張物。
【請求項15】
膨張物であって、
前記膨張物本体を加圧する為に空気を収容する室を包囲する膨張物本体と、
前記膨張物本体に装着されるバルブであって、
前記室と周囲環境との間に通路を画定するバルブ本体であって、肩部を有するバルブ本体と、
前記通路を経由した前記室と前記周囲環境との間の流体連通を前記一方向フラップが可能にする開口位置と、前記一方向フラップが前記肩部を密閉して前記通路を経由した前記室と前記周囲環境との間の流体連通を阻止する閉止位置との間で移動可能である一方向フラップであって、閉止力により前記閉止位置に付勢される一方向フラップと、
前記外側端部に着脱式に装着可能であって前記室と前記周囲環境との間の流体連通に対するカバーシールを形成するカバーであって、収縮突部が前記一方向フラップを前記開口位置へ動かして前記膨張物の収縮を可能にする収縮位置まで前記カバーが前記通路へ挿入されるのに充分な程に前記カバーの他部分から離れるように突出する収縮突部を含むカバーと、
を含むバルブと、
を具備する膨張物。
【請求項16】
前記通路に延出して前記外側端部に向かう撓曲に対して前記一方向フラップを支持する複数の支持リブを前記バルブ本体が含み、前記一方向フラップが、前記一方向フラップでの圧力差により前記外側端部に向かう及び前記外側端部から離れる撓曲に充分な程の可撓性であるが、前記複数の支持リブにより、前記肩部へのシールを維持する為に前記外側端部に向かう撓曲が防止される、請求項15に記載の膨張物。
【請求項17】
前記収縮突部が、間にある前記支持リブの一つの回避を可能にするように配置された複数の収縮突部のうちの第1突部であって、前記複数の収縮突部が前記支持リブの一つのいずれの側の前記一方向フラップとも嵌合可能である、請求項16に記載の膨張物。
【請求項18】
前記複数の支持リブの各々が、前記通路の前記外側端部に面する第1側と、前記通路の前記外側端部とは反対向きの第2側とを有し、前記複数の支持リブの各々が前記第2側から前記第1側に向かってテーパ状である、請求項17に記載の膨張物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年6月4日出願の米国特許出願第63/034,855号の優先権を主張し、その内容全てが参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
本明細書は、概ね膨張物に、より詳しくは膨張物のバルブに関する。
【背景技術】
【0003】
ユーザが手動で膨張物を膨張及び収縮させることを可能にするバルブを備える膨張物を製作することが知られている。一般的にバルブは、膨張物へ空気を押入する一方でユーザによる呼気と呼気の間には膨張物からの空気の漏れを抑止する或る種の一方向流動機構を採用している。これらの一方向流動機構は時には開通にかなりの労力を必要とし、これは膨張物の膨張中にユーザを疲労させ得る。更に、ユーザが膨張物に吹き込む必要のある空気の体積はかなりのもので、ユーザに疲労又はめまいを起こさせることもある。膨張物について上述したこれらの問題又は他の問題のうち一以上を少なくとも改善すれば有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、膨張物本体を加圧する為に空気を収容する室を包囲する膨張物本体と、膨張物本体に装着されるバルブとを含む膨張物が提供される。バルブは、室と周囲環境との間に通路を画定するバルブ本体を含む。バルブ本体は肩部を有する。バルブ本体は、周囲環境に開口する通路の外側端部と、室に開口する通路の内側端部とを画定する。バルブは更に、通路を経由した室と周囲環境との間の流体連通を一方向フラップが可能にする開口位置と、一方向フラップが肩部に密閉されて通路を介した室と周囲環境との間の流体連通を阻止する閉止位置との間で移動可能である一方向フラップを含む。一方向フラップは閉止力により閉止位置に付勢される。口をバルブ本体と嵌合させてこれと共にシールを形成すること無く、人が通路を経由して一方向フラップに息を吹き込むことによる気流に因って一方向フラップを開口位置へ移動させる為に克服可能であるように、閉止力が選択される。
【0006】
一態様では、膨張物本体を加圧する為に空気を収容する室を包囲する膨張物本体と、膨張物本体に装着されるバルブとを含む膨張物が提供される。バルブは、室と周囲環境との間に通路を画定するバルブ本体を含む。バルブ本体は肩部を有する。バルブ本体は、周囲環境に開口する通路の外側端部と、室に開口する通路の内側端部とを画定する。バルブは更に、通路を介した室と周囲環境との間の流体連通を一方向フラップが可能にする開口位置と、一方向フラップが肩部に密閉されて通路を介した室と周囲環境との間の流体連通を阻止する閉止位置との間で移動可能である一方向フラップを含む。一方向フラップは閉止力により閉止位置に付勢される。約48m/秒より低い速度を有して1気圧より小さい圧力である気流により一方向フラップを開口位置へ移動させる為に克服可能であるように、閉止力が選択される。バルブは更に、外側端部に着脱式に装着可能であって、室と周囲環境との間の流体連通に対するカバーシールを形成するカバーを含む。
【0007】
別の態様では、膨張物本体を加圧する為に空気を収容する室を包囲する膨張物本体と、膨張物本体に装着されるバルブとを含む膨張物が提供される。バルブは、室と周囲環境との間に通路を画定するバルブ本体を含む。バルブ本体は肩部を有する。バルブは更に、通路を介した室と周囲環境との間の流体連通を一方向フラップが可能にする開口位置と、一方向フラップが肩部に密閉されて通路を介した室と周囲環境との間の流体連通を阻止する閉止位置との間で移動可能である一方向フラップを含む。一方向フラップは、閉止力により閉止位置に付勢される。バルブは更に、外側端部に着脱式に装着可能であって室と周囲環境との間の流体連通に対するカバーシールを形成するカバーを含む。カバーは、収縮突部が一方向フラップを開口位置へ動かして膨張物の収縮を可能にする収縮位置までカバーを通路へ挿入させるのに充分な程カバーの他部分から離れるように突出する収縮突部を含む。
【0008】
他の技術的な利点は、以下の図及び記載を検討後に当業者には容易に明白となるだろう。
本明細書に記載の実施形態をより理解する為に、そして実施形態がどのように実行されるかをより明白に示す為に、これから添付図面が単なる例として参照される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による膨張物の斜視図を示す。
【
図2】
図1に示された膨張物のバルブの側方断面図である。
【
図3A】一方向フラップが開口位置に在る、
図2に示されたバルブの拡大側方断面図である。
【
図3B】一方向フラップが閉止位置に在る、
図2に示されたバルブの拡大側方断面図である。
【
図4】
図1に示された膨張物をバルブ経由で膨らませているユーザの斜視図である。
【
図5】膨張物への空気の流動を図示する、
図2に示されたバルブの拡大側面図である。
【
図7】
図2に示されたバルブの変形の外側端部からの斜視図である。
【
図8】
図2に示されたバルブの内側端部からの斜視図である。
【
図9】カバーが閉止位置に在る、
図2に示されたバルブの拡大側方断面図である。
【
図10】カバーが収縮位置に在る、
図2に示されたバルブの拡大側方断面図である。
【
図11A】
図3A及び3Bに示された一方向フラップによる嵌合の為の凹部をバルブの肩部が形成している、
図2に示されたバルブの変形の斜視図である。
【
図11B】凹部に在る一方向フラップを示す、
図11Aに示されたバルブの変形の断面斜視図である。
【
図12】一方向フラップをバルブ本体に保持する接続構造の変形を備える、
図2に示されたバルブの拡大側方断面図である。
【
図14】
図1に示された膨張物の膨張物本体の壁部と嵌合した延出部分を示す、
図2に示されたバルブの拡大側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
他に明記されなければ、図面に描かれている物品は必ずしも一定の縮尺では無い。
図示の簡易性及び明瞭性の為、適切と考えられる際には、対応又は類似の要素を指すのに図では参照番号が繰り返され得る。加えて、本明細書に記載される単数又は複数の実施形態の完全な理解を与える為に多数の具体的な詳細が提示される。しかしながら、本明細書に記載の実施形態がこれらの具体的な詳細を含まずに実践され得ることが当業者には理解されるだろう。他の事例では、本明細書に記載の実施形態を曖昧にしないように、周知の方法、手順、そして構成要素は詳細に記載されていない。例示的な実施形態が図に示されて以下に記載されるが、現在周知であっても周知では無くても、何らかの数の技術を使用して本開示の原理が実装され得ることが、最初に理解されるべきである。本開示は、図面に示されて以下に記載される例示的な実装例及び技術にいかなる点でも限定されるべきでは無い。
【0011】
この記載全体で使用される様々な語は、文脈から他を指すので無い限り以下のように解釈及び理解され得る。全体で使用される「又は(or)」は「及び/又は(and/or)」と記されるように包括的であり、全体で使用される単数の物品及び名詞はその複数形を含み、逆もまた然りである。同様に、性の区別の有る名詞は対応の名詞を含むので、単一の性による使用、実装、実施について本明細書に記載されるいずれかを制限するものとしてこの名詞が理解されるべきでは無い。「例示的(exemplary)」は「実例となる(illustrative)」又は「実例を示す(exemplifying)」として理解されるべきであり、他の実施形態より「好適(preferred)」であると必ずしも理解される訳では無い。語についての更なる定義が本明細書に提示され得る。この記載を読むことで理解されるように、これらの語の先行又は後続の事例にもこれらが適用され得る。
【0012】
開示の範囲を逸脱すること無く、本明細書に記載のシステム、装置、及び方法に、修正、追加、又は省略が行われてもよい。例えば、システム及び装置の構成要素は、統合又は分離され得る。又、本明細書に開示のシステム及び装置の動作は、より多い、より少ない、又は他の構成要素により実施され、記載の方法は、より多い、より少ない、又は他のステップを含み得る。付加的に、ステップは何らかの適当な順序で実施され得る。本書で使用される際に、「各(each)」は集合の各要素又は集合の部分集合の各要素を指す。
【0013】
本開示の実施形態による膨張物10を示す
図1を参照する。膨張物10は、膨張物本体12とバルブ14とを含む。膨張物本体12は、膨張物本体12を加圧する為に空気を収容する室16を包囲する。バルブ14は膨張物本体12に装着され、バルブ本体18と一方向フラップ20とカバー22とを含む。バルブ本体18(
図2)は、室16と、膨張物10の外側の環境である周囲環境26との間に通路24を画定する。通路は、
図6に示されている通路軸線Aを画定する。
【0014】
図2を参照すると、バルブ本体18は、周囲環境26に開口する通路24の外側端部28と、室16に開口する通路24の内側端部30とを画定する。バルブ本体18は更に、一方向フラップ20が密閉できる密閉面である肩部32を含む。一方向フラップ20は、通路18を介した室16と周囲環境26との間の流体連通を一方向フラップ20が可能にする開口位置(
図3A)と、一方向フラップ20が肩部32に密閉されて通路18を介した室16と周囲環境26との間の流体連通を阻止する閉止位置(
図3B)との間で移動可能である。
【0015】
一方向フラップ20は、少なくとも幾つかの状況で閉止力Fにより閉止位置に付勢される。閉止力Fは、一方向フラップ20を閉止位置へ付勢する全ての力の合計である。これは以下の力のうち一以上を含む。1.周囲環境26の空気圧P2より高い室16の内側での空気圧P1、2.一方向フラップ20を閉止位置へ付勢する一方向フラップ20自体の弾性、3.一方向フラップ20を閉止位置へ付勢するばねのような別の付勢部材。示されている例では、一方向フラップ20は別の付勢部材によって閉止位置に付勢されていない。更に、幾つかの実施形態では、それ自体を閉止位置に付勢するのに充分な弾性が一方向フラップ20に欠如している。言い換えると、室16の空気圧P1が周囲環境26の空気圧P2と同じである際に、一方向フラップ20は閉止位置から離れるように、撓曲する(つまり、通路18の外側端部28から離れる方向に撓曲する)のに充分な程可撓性であり得る。
図3Bに示されている状態において、一方向フラップ20での圧力差により一方向フラップ20は少なくとも一部で閉止位置に保持され、内側空気圧力P1は外側空気圧力P2より高い。膨張物10の為の膨張プロセスの初期において、一方向フラップ20を閉止位置へ付勢する閉止力Fは、それ故、ゼロであり得る。
【0016】
閉止力は、膨張プロセスの少なくとも第1部分では、少なくともP1とP2の間の圧力差により閉止力Fが非ゼロになるのに充分な程に低くなるように選択されるが、48m/秒より低い速度を有すると共に1気圧より小さい圧力である気流により、一方向フラップを開口位置に移動させる為に克服可能であるのに充分な低さであろう。こうして、先行技術による膨張物の為のバルブを超える幾つかの重大な利点が得られる。一つの利点は、上述した48m/秒の速度を有する気流を人が発生させることを可能にするように速度が選択されることである。その結果、
図4に示されているように、人は、バルブ14の周りで口と共にシールを形成すること無く、距離を置いた所からバルブに息を吹き込んで、少なくとも48m/秒である速度を有する気流を発生させることができる。(ユーザとも呼ばれて34で示されている)人は、バルブ14の近位で膨張物10を保持しており、距離を置いた所から(つまりユーザ34の(36で示されている)口がバルブ本体18から離間するように)バルブ14に息を吹き込んでいる様子が示されている。ユーザ34の口36から直接的に発生される気流は矢印38で示され、初期気流38と呼ばれる。周りの空気より高い速度で移動する空気は、周りの空気より低い圧力であることに気付くだろう。故に、ユーザ34の口36から一方向フラップ20へ移動している初期気流38の圧力は、周囲環境26の空気の圧力P2より低い(それゆえ室16の内側の圧力P1より確実に低い)圧力P3である。しかしながら、ユーザ34の口36から一方向フラップ20へ移動している空気の圧力が更に低くても、空気は、一方向フラップ20での閉止力Fを克服するのに充分な速度で移動しており、それ故、一方向フラップ20を開口させる。
【0017】
やはり
図4を参照すると、上に記したように、一方向フラップ20へ移動している初期気流38の圧力P3は、周囲環境26でのその周りの空気の圧力P2よりも低い。その結果、矢印40で表されているように、周囲環境26からの空気が初期気流38に引き込まれる。その結果、ユーザ34による吹き込み動作の結果として室16(
図6)へ入る、42に示されている流入気流は、一部はユーザの肺からの空気(つまり初期気流38)から、そして一部は気流38に引き込まれた空気から成る。これは、人の肺に直接由来したのでは無い空気を一部使用して膨張物10が膨張され得ることを意味する。これは、膨張物10の為の膨張プロセスを大きく促進する。
【0018】
通路24の外側端部28は第1断面積A1を有する。外側端部28の内部に在る通路24の中央領域34は、第2断面積A2を有する。任意であるが、
図3A及び3Bに示されているように、外側端部28はフレア状であり、故に第2断面積A2は第1断面積A1より小さい。これは、人による吹き込みの度に一方向フラップ20と嵌合してこれを越えて室16へ通過する気流に引き込まれる周囲環境26からの空気の量を増加させることが分かっている。外側端部28から一方向フラップ20へ移行する際の通路28の断面積の減少は、気流の速度上昇とその結果としての気流の圧力低下を招き、こうしてフレア状の外側端部28を含まない場合に発生するよりも多くの空気を周囲環境26から引き込むことが可能であるのでこれが発生し得ると理論付けられる。
【0019】
図6を参照する。通路に延出して、外側端部28に向かう撓曲に対して一方向フラップ20を支持する複数の支持リブ43をバルブ本体18が任意で含む。より具体的に記すと、一方向フラップ20における圧力差により外側端部28に向かう及び外側端部28から離れる撓曲に充分な程、一方向フラップ20は可撓性であり得る。しかしながら、肩部32に対するシールを維持する為に、複数の支持リブ43により、外側端部28に向かう一方向フラップ20の撓曲は防止される。
【0020】
複数の支持リブ43の各々は、通路24の外側端部28に面する第1側44と、通路24の外側端部28とは反対向きの第2側46とを有する。
図6に幾分、そして
図7に示された変形にはより明確に示されているように、複数の支持リブ43の各々は第2側46から第1側44へテーパ状であり得る。こうして、支持リブ43を通過する際に流入気流42に生じる圧力降下を抑制する。
【0021】
上に記したように、一方向フラップ20は、弾性であってその弾性により閉止位置に付勢されるか、一方向フラップ20での圧力が等しいと一方向フラップ20が外側端部28から離れるように撓曲するのに充分な程可撓性である可撓性ポリマーフラップであり得る。一方向フラップ20は、例えばシリコーンのような適当な材料で製作され得る。
【0022】
一方向フラップ20は、何らかの適当な手法でバルブ本体18に接続され得る。例えば、
図3A及び3Bに示されている実施形態において、一方向フラップ20は、通路24を中心とする接続構造48(
図6が最も分かり易い)でバルブ本体18に接続されている。接続構造48は、複数の支持リブ43を互いに接続する中央環状体52を貫通する一方向フラップ支柱50を含み得る。一方向フラップ支柱50は、環状体の内面と摩擦嵌合し得るか、粘着剤又は他の適当な手段を介してより固定状態で接続され得る。
【0023】
任意であるが、カラー56が設けられて、膨張物本体12とバルブ本体18との間に延在する。カラー56は、通路24の外側端部28が膨張物本体12から外向きに突出するようにカラー56がバルブ本体18を保持する延出位置(
図3A,3B,5)と、通路24の外側端部28が、カラー56が延出位置に在る時よりも膨張物本体12の近くに配置されるようにカラー56がバルブ本体18を保持する格納位置(
図9)との間で移動可能である。例えば、カラー56が格納位置に在る時に、外側端部28は膨張物本体12と概ね同一平面上に在り得る。カラー56は弾性であって延出位置と格納位置の両方で安定しており、カラー56が延出位置と格納位置の間に配置されている時には任意で延出位置と格納位置の一方に付勢されている(が付勢される必要はない)。
【0024】
カラー56は、熱溶接又は適当な粘着剤のような何らかの適当な手法で膨張物本体12に接続され得る。
【0025】
任意であるが、バルブ本体18は、バルブ本体主要部分18aと補強部材18bとを含む。バルブ本体主要部分18aは、第1硬度を有する第1材料で製作される。例えば、バルブ本体18aは、軟質PVCなど、人により手動で容易に変形され得るポリマー材料から製作され得る。バルブ本体主要部分18aはカラー56と連続している。
【0026】
補強部材18bは、第1硬度より高い第2硬度を有する第2材料で製作される。補強部材18bは、例えば、硬質PVCのような硬質ポリマー材料で製作され得る。補強部材18bは、バルブ本体主要部分18aを補強するようにバルブ本体主要部分18aに接続される。バルブ本体主要部分18aへの接続は何らかの適当な手段による。例えば、補強部材18bが接続孔58を含み、バルブ本体18aは接続孔58に重ね成形され得るか、接続孔58と嵌合する予成形突部を含み得る。バルブ本体主要部分18aが補強部材18bに重ね成形されない実施形態では、二つの要素を互いに確実に保持するのに接着剤が使用され得る。
【0027】
図5に示されている実施形態では、複数の頂部62と谷部64とを有する内側端縁部60を通路24の内側端部30が有して、少なくとも頂部62が一方向フラップ20より更に内向きに延出していることが分かる。頂部62と谷部64とが閉止位置への一方向フラップ20の移動を促進することが判明している。より具体的に記すと、一方向フラップ20が少量のみ開口している時でも谷部64は室16への空気の流入を促進し、一方で頂部62は機械的損傷から一方向フラップ20を保護するのに役立つ。更に、内側端縁部60が補強部材18bに形成されるので、補強部材18bより軟質であるバルブ本体主要部分18aに画定された場合よりも一方向フラップ20の損傷の保護において効果的であることが分かる。室16の内側で膨張物本体12の壁部に通路24の内側端部30が当接した場合でも、頂部62と谷部64とが一方向フラップ20を開閉させて室16に対する空気の流入(又は流出)を可能にすることにも気付くだろう。
【0028】
(一方向フラップ20が閉止位置に在る時に)一方向フラップ20を越えて室16まで軸方向に延出するバルブ本体18の部分は、延出部分66と呼ばれる。故に頂部62及び谷部64と内側端縁部60とは延出部分66に在る。
【0029】
図14は、通路24の内側端部30が膨張物本体12の、65で示された壁部に直接的に当接しているケースの一例を示す。見て分かるように、延出部分66は一方向フラップ20を開口位置へ移動させ、頂部62と谷部64とは協働して、一方向フラップ20が(
図14に示されている)開口位置に在る時に室16へ(又は室16から)空気が通過する為の複数の空気孔67を画定する。
【0030】
こうして、通路24の内側端部30が室の内側で膨張物本体18の壁部67と嵌合した際に空気を室16へ流入させるように、一方向フラップ20を越えて室16に延出すると共に、開口位置への一方向フラップ20の移動を可能にするように複数の空気孔67を画定する複数の突部62及び谷部64を有する延出部分66を、バルブ本体18が有すると言える。
【0031】
図9を参照すると、カバー22は、通路24の外側端部28に着脱式に装着可能であって、室16と周囲環境26との間の流体連通に対するカバーシールを形成する。一方向フラップ20が非常に軟質であって等しい圧力を受けた時に撓曲する実施形態では、カバー22により形成されるシールは、空気を室16に保持する唯一のシールとなる。一方向フラップ20が充分に弾性であるか、外部ばねその他により付勢されて閉止される実施形態では、カバー22により形成されるシールが、一方向フラップ20により形成されるシールと協働して空気を室16に保持する。
【0032】
ユーザ34が室16を膨らませたい時には、バルブ14が
図2に示された位置になるように、バルブ14を引き出してカバー22を開ける。ユーザ34は、空気を収容する準備状態となるように膨張物本体12を広げる。そしてユーザ34は
図4に示されているようにバルブ14に息を吹き込むことにより、ユーザの肺からの空気と周囲環境26からの空気とで室16を膨らませる。空気が室16に入って室16を少量だけ加圧すると、一方向フラップ20は、撓曲していた場合には圧力差により閉止位置へ移動する。ユーザ34が更に吹き込むと、上に記載されたように空気で室16が膨らむ。最終的には室16の圧力P2が充分に高くなるので、ユーザ34により発生された初期気流38の速度は一方向フラップ20を開口するのに充分な高さではなくなる。この時点で、室16は大量の空気を中に有し、満杯に非常に近い。そしてユーザ34は、バルブ本体18の外側端部28の周りに自身の口36でシールを形成し、空気の速度を使用する代わりに肺からの圧力を使用して室16に息を吹き込む。室16が満杯になると、ユーザ34はバルブ本体18の外側端部28にカバー22を閉止して、カラー56が格納位置に移動するようにバルブ14を内向きに押圧する。膨張物10を開口して収縮させることが望ましい時に、ユーザ34はカバー22を開け、必要であれば一方向フラップ20を機械的に押圧し、肩部32とのシールを開封する。ユーザ34は、室16が収縮している間ずっと、一方向フラップ20をこの開口位置に保持し得る。室16を収縮させる際にユーザを補助するように、カバー22は、
図10に示されている収縮位置までカバー22を通路28へ挿入させるのに充分な程カバー22の他部分から突出する収縮突部68を任意で含み、収縮突部68は一方向フラップ20を開口位置へ動かして膨張物10の収縮を可能にする。
図8に示されているように、間にある支持リブ43の一つの回避を可能にするように配置された複数の収縮突部68をバルブ14が含むので、支持リブ43の一つのいずれの側でも収縮突部68が一方向フラップ20と嵌合できる。
【0033】
バルブ14の代替実施形態を示す
図11A及び11Bを参照する。一方向フラップ20は
図11Aに示されていないが、
図11Bには示されている。
図11A及び11Bに示されている実施形態において、肩部32は任意で凹部70の形態であるので、肩部32の径方向内縁部(72と示されている)は、74と示されている肩部32の径方向外縁部よりも通路24の外側端部28に近い。凹部を形成することにより、一方向フラップ20はより容易に開口位置と閉止位置の間で移動して、開口位置でも閉止位置でも一方向フラップ20が常に或る方向での湾曲状態であるので、良好なシールを形成する傾向が高い。
図11A及び11Bに示されている実施形態において、一方向フラップ20は外側端部28から離れるように湾曲している、つまり膨張部材10への空気の移動中に湾曲する方向に湾曲している。
【0034】
図11A及び11Bに示されているように、支持リブ43の第2側46は肩部32と協働して凹部70を形成する。これは、一方向フラップ20が外側端部28から離れるように或る量だけ湾曲している状態に常に維持されることを保証する。
【0035】
図11A及び11Bに示されている実施形態では、バルブ14に延出部分66が欠如していることが分かる。しかしながら、
図11A及び11Bに示されているバルブ14に延出部分が設けられてもよいことに気付くだろう。
【0036】
図12を参照する。代替実施形態において、接続構造48は、通路24に配置される一方向フラップ支柱により形成されず、代わりに通路24の径方向縁部の外部に在る。その結果、
図12に示されている接続構造48は、室16への空気の流動をそれほど妨害しない。示されている実施形態において、接続構造48は、一方向フラップ20の他部分から径方向外向きに延出してバルブ本体主要部分18aの縁面78と補強部材18bの挟持面80との間に挟持(把持)されるフラップ延出部76を含む。
【0037】
図12のこの構成は、一方向フラップ20が最外縁部で片持ち梁としてのみ保持され、それ故、全直径に及ぶ長さにわたって自由に撓むという点でも有利であり得る。対照的に、例えば
図3Bに示されている一方向フラップ20は、中央で支持されているので、この長さの半分にわたって撓む。従って、
図12の一方向フラップ20は、
図3Bに示されている一方向フラップ20よりも開口位置へ容易に移動し、これにより一方向フラップ20を開口位置へ移動させるのに必要な最低空気速度を更に低下させる。
【0038】
バルブ14の別の実施形態を示す
図13A及び13Bを参照する。
図13A及び13Bに示されている実施形態では、延出部分66が軸方向のみに延出して径方向延出部分を有していない、
図3A及び3Bに示されている実施形態とは対照的に、軸方向延出部分82と径方向延出部分84とを含む延出部分66をバルブ14が含む。軸方向延出部分82は、空気孔67を画定する頂部62と谷部64とを含むと言える。径方向延出部分84は、
図13Bで詳しく見られるように、少なくとも部分的に一方向フラップ20と径方向に重複している。軸方向延出部分82は、
図3A及び3Bに示されている延出部分66により提供される上述の利点を有する。しかしながら、膨張物本体12の壁部67に存在する局所的な突部が、延出部材66に進入してバルブ14の使用中に(例えば膨張物10の膨張時に)一方向フラップ20の開口を妨害すること、或いは延出部分66へ進入して一方向フラップ20を損傷させることが起こり得る。例えば、膨張物本体12の壁部67がカーテン状に折り重ねられる場合には、このような突部をそれ自体が形成する。別の例で、膨張物本体12が壁部67の下に局所的な突部を有する地面に非膨張状態で所在している場合には、その下の地面の局所的な突部の上に位置しているだけで壁部67が局所的な突部を形成する。径方向延出部分84を設けることにより、径方向延出部分84は、室16の内側の局所的な突部が延出部分66へ進入して一方向フラップ20を妨害するか損傷させるのを防止するように、付加的な保護を提供する。
【0039】
48m/秒の速度が記載されているが、これは必ずしも厳密な限定ではない。口をバルブ本体18と嵌合させてこれとシールを形成すること無く、人が息を吹き込むことにより開口位置へ移動可能である(つまり開通可能である)ように一方向フラップ20が(少なくとも幾つかの実施形態で)製作されることが、当業者には理解されるだろう。
【0040】
具体的な利点が上に列挙されたが、様々な実施形態は、列挙された利点のうち幾つかを含むか、いずれも含まないか、全てを含み得る。
【0041】
更に多くの代替実装例及び修正が可能であることと、上の例は一以上の実装例の例示に過ぎないこととを当業者は認識するだろう。それ故、本明細書に添付の請求項とこれに対して行われる補正のみにより範囲が限定される。
【符号の説明】
【0042】
10 膨張物
12 膨張物本体
14 バルブ
16 室
18 バルブ本体
18a バルブ本体主要部分
18b 補強部材
20 一方向フラップ
22 カバー
24 通路
26 周囲環境
28 外側端部
30 内側端部
32 肩部
34 ユーザ
36 口
38 初期気流
40 空気
42 流入気流
43 支持リブ
44 第1側
46 第2側
48 接続構造
50 一方向フラップ支柱
52 中央環状体
56 カラー
58 接続孔
60 内側端縁部
62 頂部
64 谷部
65 壁部
66 延出部分
67 壁部/空気孔
68 収縮突部
70 凹部
72 径方向内縁部
74 径方向外縁部
76 フラップ延出部
78 縁面
80 挟持面
82 軸方向延出部分
84 径方向延出部分
A 通路軸線
【図】
【国際調査報告】