IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨハン ウォルフガング ゲーテ−ウニベルジテート フランクフルト アム マインの特許一覧

特表2023-529170シリル化オリゴゲルマンおよび多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法、ならびにSiおよびGe含有固体の製造のためのその使用
<>
  • 特表-シリル化オリゴゲルマンおよび多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法、ならびにSiおよびGe含有固体の製造のためのその使用 図1
  • 特表-シリル化オリゴゲルマンおよび多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法、ならびにSiおよびGe含有固体の製造のためのその使用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】シリル化オリゴゲルマンおよび多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法、ならびにSiおよびGe含有固体の製造のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/30 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
C07F7/30 A CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574797
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 DE2021100470
(87)【国際公開番号】W WO2021244705
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】102020114994.8
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020131425.6
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507038825
【氏名又は名称】ヨハン ウォルフガング ゲーテ-ウニベルジテート フランクフルト アム マイン
【氏名又は名称原語表記】Johann Wolfgang Goethe-Universitaet Frankfurt am Main
【住所又は居所原語表記】Theodor-W.-Adorno-Platz 1, 60323 Frankfurt am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト ケストラー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヴォルフラム レアナー
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN02
4H049VP01
4H049VP02
4H049VP04
4H049VP05
4H049VQ02
4H049VQ07
4H049VR22
4H049VS02
4H049VS07
4H049VV03
(57)【要約】
本発明は、式(Ia)または(Ib)の化合物、その製造方法、ならびにSiおよびGe含有固体の製造のための該化合物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または(Ib)
【化1】
[式(Ia)中、
- nは、1~10の整数であり;
- RおよびRは、互いに独立して、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキルおよびC~C20アルキルアリールからなる群から選択され;
- Xは、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Y[ここで、Y=ハロゲンである]からなる群から選択される]、
【化2】
[式(Ib)中、
- E~Eは、互いに独立して、SiまたはGeであり;
- X11~X14は、互いに独立して、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Yからなる群から選択され;
- Yは、独立して、C~C20アルキルおよびハロゲンから選択され;
- R~R14は、互いに独立して、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキル、C~C20アルキルアリールおよびZからなる群から選択され;
- Zは、独立して、H、ハロゲンおよびC~C20アルキルからなる群から選択される]の化合物。
【請求項2】
nが1~4の整数である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、互いに独立して、C~C20アルキルおよびC~C20アリールからなる群から選択される、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
およびRが、互いに独立して、フェニルまたはメチルである、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
およびRが同じである、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
が、H、SiH、ClおよびSiClからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
~Eのうち少なくとも3つがGeであり、E~Eのうち残りがSiである、請求項1から6までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
~R14が、互いに独立して、C~C20アルキルおよびハロゲンからなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
~R14が、互いに独立して、メチルおよびClからなる群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
11~X14が、独立して、H、SiH、Si(C~Cアルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
11~X14が、独立して、SiClおよびSi(CHからなる群から選択される、請求項1から10までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の式(Ia)の化合物の製造方法であって、
- 式(IIa)
【化3】
の化合物と、式(IIIa)
【化4】
[式中、
- X~X10は、互いに独立してハロゲンであり、
- RおよびRは、請求項1から11までのいずれか1項で定義されたとおりである]の化合物とを反応させるステップと、
- 前記式(IIa)の化合物を前記式(IIIa)の化合物と反応させて得られる生成物を水素化させるステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記式(IIa)の化合物と前記式(IIIa)の化合物とを反応させるステップを、触媒の存在下で行う、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項記載の式(Ib)の化合物の製造方法であって、
- 式(IIb)
【化5】
の化合物と、式(IIIb)
【化6】
[式中、
- Hal~Halは、互いに独立してハロゲンであり、
- RおよびRは、請求項1から11までのいずれか1項で定義されたとおりである]の化合物とを反応させるステップと、
- 前記化合物(IIb)と前記化合物(IIIb)との反応の生成物を結晶化させるステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記式(IIb)の化合物と前記式(IIIb)の化合物とを反応させるステップを、触媒の存在下で行う、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記結晶化させるステップの後に得られた生成物をグリニャール試薬と反応させるステップをさらに含む、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
SiおよびGe含有固体を製造するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の式(Ia)の化合物または式(Ib)の化合物の使用。
【請求項18】
前記製造が、前記化合物を300℃以上の温度に加熱するステップを含む、請求項17記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化オリゴゲルマンおよび多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物、その製造方法、ならびにSiおよびGe含有固体の製造のためのその使用に関する。
【0002】
発明の背景
ハロシラン、ポリハロシラン、ハロゲルマン、ポリハロゲルマン、シラン、ポリシラン、ゲルマン、ポリゲルマンおよび対応する混成物は古くから知られており、無機化学の標準的な教本に加え、国際公開第2004/036631号またはC. J. Ritter et al., J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 9855-9864を参照されたい。
【0003】
トリフェニルゲルミルシランおよびその製造は、欧州特許出願公開第3409645号明細書に記載されている。
【0004】
クロロシリルアリールゲルマンおよびその製造は、欧州特許出願公開第3410466号明細書に開示されている。
【0005】
Ritter et al. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 9855には、シリコン上の半導体ナノ構造体の製造のための(HGe)SiH4-xの使用について記載されている。
【0006】
先行技術から出発して、改良されたケイ素-ゲルマニウム化合物、特に貯蔵可能なケイ素-ゲルマニウム化合物を製造すること、また多数のそのような化合物を容易に製造するための柔軟性のある方法を提供することが望まれる。また、Si/Ge固体の製造に使用可能な化合物を提供することも望まれる。
【0007】
本発明の課題は、先行技術の欠点を克服すること、特に、Si/Ge固体の製造に適した、貯蔵可能でかつ要求に適合したケイ素-ゲルマニウム化合物を製造することである。
【0008】
発明の概要
この課題は、式(Ia)または(Ib)
【化1】
[式(Ia)中、
- nは、1~10の整数であり;
- RおよびRは、互いに独立して、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキルおよびC~C20アルキルアリールからなる群から選択され;
- Xは、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Y[ここで、Y=ハロゲンである]からなる群から選択される]、
【化2】
[式(Ib)中、
- E~Eは、互いに独立して、SiまたはGeであり;
- X11~X14は、互いに独立して、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Yからなる群から選択され;
- Yは、独立して、C~C20アルキルおよびハロゲンから選択され;
- R~R14は、互いに独立して、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキル、C~C20アルキルアリールおよびZからなる群から選択され;
- Zは、独立して、H、ハロゲンおよびC~C20アルキルからなる群から選択される]の化合物によって解決される。
【0009】
式(Ia)の化合物
nが1~8の整数であることを規定することができる。nが1~6の整数であることをさらに規定することができる。nが1~4の整数であることをさらに規定することができる。また、nが2~10の整数であることを規定することができる。また、nが2~8の整数であることを規定することができる。また、nが2~6の整数であることを規定することができる。また、nが2~5の整数であることを規定することができる。最後に、nが2~4の整数であることを規定することができる。
【0010】
およびRが、互いに独立して、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C12シクロアルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキルおよびC~C13アルキルアリールからなる群から選択されることを規定することができる。
【0011】
およびRが、互いに独立して、C~C12アルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキルおよびC~C13アルキルアリールからなる群から選択されることを規定することができる。
【0012】
およびRが、互いに独立して、C~C20アルキルおよびC~C20アリールからなる群から選択されることを規定することができる。
【0013】
およびRが、互いに独立して、C~C12アルキルおよびC~C12アリールからなる群から選択されることを規定することができる。
【0014】
およびRが、互いに独立して、フェニルまたはメチルであることを規定することができる。
【0015】
およびRが同じであることを規定することができる。これに関連して、式(Ia)の化合物に含まれるすべてのRおよびRが同じであり、かつ上記の基のうちの1つから選択されることを規定することができる。
【0016】
が、H、SiH、ClおよびSiClからなる群から選択されることを規定することができる。
【0017】
式(Ib)の化合物
~Eのうち少なくとも3つがGeであり、E~Eのうち残りがSiであることを規定することができる。E~Eのうち4つ、5つまたは6つがGeであり、E~Eのうち残りがSiであることを規定することができる。E~Eのうち4つまたは5つがGeであり、E~Eのうち残りがSiであることを規定することができる。
【0018】
~R14が、互いに独立して、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C12アルキニル、C~C12シクロアルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキル、C~C13アルキルアリールおよびハロゲンからなる群から選択されることを規定することができる。
【0019】
~R14が、互いに独立して、C~C12アルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキル、C~C13アルキルアリールおよびハロゲンからなる群から選択されることを規定することができる。
【0020】
~R14が、互いに独立して、C~C20アルキル、C~C20アリールおよびハロゲンからなる群から選択されることを規定することができる。
【0021】
~R14が、互いに独立して、C~C12アルキルおよびハロゲンからなる群から選択されることを規定することができる。
【0022】
~R14が、互いに独立して、Clまたはメチルであることを規定することができる。
【0023】
同一のEに直接結合している2つのR(すなわち、RとR、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、およびR13とR14の組における2つのR)は同一であることを規定することができる。
【0024】
(すなわち、E~Eのうちのいずれか)がGeである場合、Eに直接結合している2つのRがC~C20アルキルであることを規定することができる。E(すなわち、E~Eのうちのいずれか)がGeである場合、Eに直接結合している2つのRが、C~C12アルキルであることを規定することができる。E(すなわち、E~Eのうちのいずれか)がGeである場合、Eに直接結合している2つのRが、C~Cアルキルであることを規定することができる。E(すなわち、E~Eのうちのいずれか)がGeである場合、Eに直接結合している2つのRが、C~Cアルキルであることを規定することができる。E(すなわち、E~Eのうちのいずれか)がGeである場合、Eに直接結合している2つのRがメチルであることを規定することができる。
【0025】
(すなわち、E~Eのうちのいずれか)がSiである場合、Eに直接結合している2つのRがハロゲンであることを規定することができる。E(すなわち、E~Eのうちのいずれか)がSiである場合、Eに直接結合している2つのRがClであることを規定することができる。
【0026】
11~X14が、独立して、H、SiH、Si(C~C20アルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることを規定することができる。X11~X14が、独立して、H、SiH、Si(C~C12アルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることを規定することができる。X11~X14が、独立して、H、SiH、Si(C~Cアルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることを規定することができる。X11~X14が、独立して、H、SiH、Si(C~Cアルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択されることを規定することができる。X11~X14が、独立して、Si(C~Cアルキル)およびSiClからなる群から選択されることを規定することができる。
【0027】
式(Ib)の化合物が、以下の化合物C1~C4のいずれかから選択されることを規定することができる。
【0028】
【化3】
【0029】
式(Ia)の化合物の製造方法
課題はさらに、先の請求項のいずれか1項記載の式(Ia)の化合物の製造方法であって、式(IIa)
【化4】
の化合物と、式(IIIa)
【化5】
[式中、X~X10は、互いに独立してハロゲンであり;RおよびRは、上記で定義されたとおりである]の化合物とを反応させるステップと、式(IIa)の化合物を式(IIIa)の化合物と反応させて得られる生成物を水素化させるステップとを含む、方法によって解決される。
【0030】
化合物(IIa)と化合物(IIIa)との比は、10:1~1:20;5:1~1:1;2:1~1:10;1.5:1~1:8;1.2:1~1:5;1:1~1:4とすることができる。
【0031】
式(IIa)の化合物と式(IIIa)の化合物とを反応させるステップが、触媒の存在下で行われることを規定することができる。触媒を0.001~1当量、好ましくは0.01~0.1当量の量で使用することを規定することができる。触媒が塩基であることを規定することができる。触媒が、リンまたは窒素を含む塩基であることを規定することができる。触媒が、窒素を含む塩基であることを規定することができる。触媒が、ホスホニウム塩またはアンモニウム塩であることを規定することができる。触媒が[(R’)P]Clまたは[(R’)N]Clから選択され、ここで、基R’は、互いに独立して、C~C12アルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキルおよびC~C13アルキルアリールから選択されることを規定することができる。触媒が[(R’)N]Clであり、ここで、R’は、メチル、エチル、イソプロピル、n-ブチルおよびフェニルから選択されることを規定することができる。触媒が[(R’)N]Clであり、ここで、R’としてn-ブチルを選択することを規定することができる。
【0032】
式(IIa)の化合物と式(IIIa)の化合物とを反応させるステップが、溶媒中で行われることを規定することができる。本方法において、化合物(IIIa)1molあたり少なくとも5molの溶媒を使用することができ、また化合物(IIIa)1molあたり10mol~100molの溶媒を使用することもできる。溶媒が有機溶媒であることを規定することができる。(反応ステップおよび水素化ステップの双方における)溶媒が非極性有機溶媒であることを規定することができる。溶媒が、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、tert-ブチルメチルエーテル、アセトンおよびテトラヒドロフランから選択されることを規定することができる。溶媒がジクロロメタンであることを規定することができる。
【0033】
式(IIa)の化合物と式(IIIa)の化合物とを反応させるステップが、0℃~50℃、10℃~40℃、15℃~30℃、20℃~25℃の範囲、または22℃(=室温)の温度で実施されることを規定することができる。
【0034】
式(IIa)の化合物と式(IIIa)の化合物とを反応させるステップが、5分~24時間、30分~12時間、または1時間~4時間実施されることを規定することができる。
【0035】
式(IIa)の化合物を式(IIIa)の化合物と反応させて得られる生成物を水素化させるステップが、水素化剤の添加により行われることを規定することができる。水素化剤が水素化アルミニウムリチウムであることを規定することができる。
【0036】
式(Ib)の化合物の製造方法
課題はさらに、先の請求項のいずれか1項記載の式(Ib)の化合物の製造方法であって、式(IIb)
【化6】
の化合物と、式(IIIb)
【化7】
[式中、Hal~Halは、互いに独立してハロゲンであり;RおよびRは、上記で定義されたとおりである]の化合物とを反応させるステップと、
- 化合物(IIb)と化合物(IIIb)との反応の生成物を結晶化させるステップと
を含む、方法によって解決される。
【0037】
本方法において、E=Geであり、EおよびEがそれぞれSiであることを規定することができる。
【0038】
化合物(IIb)と化合物(IIIb)とのモル比は、10:1~1:40;5:1~1:2;2:1~1:20;1.5:1~1:10;1.2:1~1:8;1:3~1:5、1:4程度であってよい。
【0039】
式(IIb)の化合物と式(IIIb)の化合物とを反応させるステップが、触媒の存在下で行われることを規定することができる。触媒を0.001~1当量、好ましくは0.01~0.1当量の量で使用することを規定することができる。触媒が塩基であることを規定することができる。触媒が、リンまたは窒素を含む塩基であることを規定することができる。触媒が、窒素を含む塩基であることを規定することができる。触媒が、ホスホニウム塩またはアンモニウム塩であることを規定することができる。触媒が、[(RP]Clまたは[(RN]Clから選択され、ここで、基Rは、互いに独立して、C~C12アルキル、C~C12アリール、C~C13アリールアルキルおよびC~C13アルキルアリールから選択されることを規定することができる。触媒が[(RN]Clであり、ここで、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、n-ブチルおよびフェニルから選択されることを規定することができる。触媒が[(RN]Clであり、ここで、Rとしてn-ブチルを選択することを規定することができる。
【0040】
式(IIb)の化合物と式(IIIb)の化合物とを反応させるステップが、溶媒中で行われることを規定することができる。本方法において、化合物(IIIb)1molあたり少なくとも5molの溶媒を使用することができ、また化合物(IIIb)1molあたり10mol~100molの溶媒を使用することもできる。溶媒が有機溶媒であることを規定することができる。(反応ステップおよび水素化ステップの双方における)溶媒が非極性有機溶媒であることを規定することができる。溶媒が、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、tert-ブチルメチルエーテル、アセトンおよびテトラヒドロフランから選択されることを規定することができる。溶媒がジクロロメタンであることを規定することができる。
【0041】
式(IIb)の化合物と式(IIIb)の化合物とを反応させるステップが、0℃~50℃、10℃~40℃、15℃~30℃、20℃~25℃の範囲、または22℃(=室温)の温度で実施されることを規定することができる。
【0042】
式(IIb)の化合物と式(IIIb)の化合物とを反応させるステップが、5分~24時間、30分~12時間、または1時間~4時間実施されることを規定することができる。
【0043】
本方法が、結晶化させるステップの後に得られた生成物をグリニャール試薬と反応させるステップをさらに含むことを規定することができる。グリニャール試薬は、一般式R-Mg-Hal[式中、R=アシル(例えばアリールまたはアルキル)およびHal=ハロゲン(例えばClまたはBr)]の化合物である。このような化合物は、ハロゲン化アシルを適切な有機溶媒中でマグネシウムと反応させることにより製造することができる。適切な有機溶媒は、自由電子対によってR-Mg-HalのMgに配位結合を形成することができるものである。有機溶媒としては、エーテル(好ましくは、ジエチルエーテル等のジアルキルエーテル、またはテトラヒドロフラン(THF)等の環状エーテル)が好ましく使用される。グリニャール試薬ならびにその製造および使用は、先行技術、特に有機化学の関連する教本からよく知られている。
【0044】
式(Ib)[式中、X11~X14=SiHal]の化合物を、THFまたはジエチルエーテル中で式R-Mg-Hal[式中、R=アシル]のグリニャール試薬と反応させることによって、式(Ib)[式中、X11~X14=Siアシル]の化合物が得られることを規定することができる。式(Ib)[式中、X11~X14=SiHal]の化合物を、THFまたはジエチルエーテル中で式R-Mg-Hal[式中、R=アルキル]のグリニャール試薬と反応させることによって、式(Ib)[式中、X11~X14=Siアルキル]の化合物が得られることを規定することができる。式(Ib)[式中、X11~X14=SiCl]の化合物を、ジエチルエーテル中で式R-Mg-Hal[式中、R=C~Cアルキル]のグリニャール試薬と反応させることによって、式(Ib)[式中、X11~X14=Si(C~Cアルキル)]の化合物が得られることを規定することができる。式(Ib)[式中、X11~X14=SiCl]の化合物を、ジエチルエーテル中で式R-Mg-Hal[式中、R=メチル]のグリニャール試薬と反応させることによって、式(Ib)[式中、X11~X14=SiMe]の化合物が得られることを規定することができる。
【0045】
SiおよびGe含有固体の製造
課題は、SiおよびGe含有固体を製造するための、上述の式(Ia)または式(Ib)の化合物の使用によっても解決される。
【0046】
SiおよびGe含有固体が金属間相であることを規定することができ、ここで、2つの半金属SiおよびGeは、この文脈では金属とみなされる。金属間相(金属間化合物ともいう)とは、2種以上の金属から構成される化合物である。合金とは異なり、金属間相は、構成金属とは異なる格子構造を有する。異なる原子のタイプの格子結合は、主に金属結合とより少ない割合の他のタイプの結合(共有結合、イオン結合)との混合形態であり、それによって、これらの相は、特定の物理的および機械的特性を有する。
【0047】
SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を300℃以上の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を400℃以上の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を450℃以上の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を500℃以上の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を550℃以上の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を600℃以上の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を400℃~1000℃の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を400℃~800℃の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を450℃~750℃の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を500℃~700℃の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を550℃~650℃の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、化合物を約600℃の温度に加熱するステップを含むことを規定することができる。
【0048】
SiおよびGe含有固体の製造が、SiGeを析出させるステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体の製造が、SiおよびGeを同時に析出させるステップを含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体中のSiとGeとの化学量論比が、式(Ia)または式(Ib)の化合物中のSiとGeとの化学量論比に相当することを規定することができる。SiおよびGe含有固体中のSiとGeとの化学量論比が、式(Ia)または式(Ib)の化合物中のSiとGeとの化学量論比に±10%の差を加えたものに相当することを規定することができる。
【0049】
SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して10重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して5重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して3重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して2重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して1重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して0.5重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して0.1重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して0.01重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。SiおよびGe含有固体が、SiおよびGe含有固体の総重量に対して0.001重量%以下の量でさらなる元素を含むことを規定することができる。
【0050】
SiおよびGe含有固体に含まれるさらなる元素が、炭素、酸素、アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを規定することができる。
【0051】
SiおよびGe含有固体の製造時の式(Ia)または式(Ib)
【化8】
の化合物を加熱するステップが、R-HおよびR-H、またはR-HおよびR-Hの生成を伴うことを規定することができる。
【0052】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、鎖状または分枝状の飽和炭化水素の1価の基を指す。好ましくは、アルキル基は、1~12(約1~10)個の炭素原子、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、あるいは1~6または1~4個の炭素原子を含む。例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルまたはn-ドデシルである。
【0053】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する鎖状または分枝状の飽和炭化水素の1価の基を指す。
【0054】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を有する鎖状または分枝状の飽和炭化水素の1価の基を指す。
【0055】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、芳香族環状炭化水素の1価の基を指す。好ましくは、アリール基は、5~14(例えば、5、6、7、8、9、10)個の炭素原子を含み、これらは、1つの環(例えば、「フェニル」=「Ph」)または2つ以上の縮合環(例えば、「ナフチル」)に配置されていてよい。例示的なアリール基は、例えば、シクロペンタジエニル、フェニル、インデニル、ナフチル、アズレニル、フルオレニル、アントリル、およびフェナントリルである。
【0056】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、アルキルの非芳香族の環状の形態を指す。
【0057】
本明細書で使用される「アリールアルキル」という用語は、少なくとも1つのアルキルで置換されたアリール基を指し、例えばトルエニルを挙げることができる。
【0058】
本明細書で使用される「アルキルアリール」という用語は、少なくとも1つのアリールで置換されたアルキル基を指し、例えば2-フェニルエチルを挙げることができる。
【0059】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0060】
発明の詳細な説明
以下、本発明を、特に好ましい実施形態および実施例を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの特に好ましい実施形態および実施例に限定されるものではなく、特に好ましい実施形態および実施例の個々の特徴は、他の特徴または本発明の前述の全般的な開示の特徴とともに、本発明の実施に寄与し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】化合物A7の結晶構造を示す図である。
図2】化合物A8の結晶構造を示す図である。
【0062】
本発明は、式(Ia)
【化9】
の新規なシリル化オリゴゲルマンに関する。
【0063】
また本発明は、式(Ib)
【化10】
の新規な多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物に関する。
【0064】
式(Ia)の化合物は、例えばジオルガニルジクロロゲルマンおよびヘキサクロロジシランから出発する新規な合成によって得ることができる。目的化合物(Ia)は、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリドを添加し、その後、水素化アルミニウムリチウムで水素化させることにより製造することができる。これらのオリゴゲルマンは、例えば、純粋なSiおよびGeの析出における熱分解挙動を特徴とし、ここで得られる残留物は、化学量論比の純粋なSiおよびGeからなる。
【0065】
式(Ib)の化合物は、例えばジオルガニルジクロロゲルマンおよびヘキサクロロジシランから出発する新規な合成によって得ることができる。目的化合物(Ib)は、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリドを添加し、任意にその後グリニャール試薬と反応させることにより製造することができる。これらの多環式ケイ素-ゲルマニウム化合物は、例えば、純粋なSiおよびGeの析出における熱分解挙動を特徴とし、ここで得られる残留物は、化学量論比の純粋なSiおよびGeからなる。
【0066】
式(Ia)の化合物の一般的な合成経路
テトラブチルアンモニウムクロリドの添加下にジオルガノジクロロゲルマンをヘキサクロロジシランと反応させ、次いでLiAlHで水素化させると、シリル化オリゴゲルマンHSi-(GeR-X(ここで、n=1~4;R=アルキル、アリール;X=H、Cl、SiH、SiCl)が選択的に形成される。
【0067】
【化11】
【0068】
このようにして製造することができる特に好ましい化合物は、以下の化合物A1~A8である。
【0069】
【化12】
【0070】
本発明による化合物は、以下のスキーム1に従って製造することができる。
【0071】
【化13】
【0072】
スキーム1は、テトラブチルアンモニウムクロリドの添加下にジオルガノジクロロゲルマンをヘキサクロロジシランと反応させることによる、トリクロロシリル化オリゴゲルマンClSi-(GeR-Y(B、n=1~4;R=アルキル、アリール;Y=Cl、SiCl)の形成を示す。その後、LiAlHで水素化させると、シリル化オリゴゲルマンHSi-(GeR-Y(A、n=1~4;R=アルキル、アリール;Y=H、Cl、SiH、SiCl)が選択的に形成される。
【0073】
【化14】
【0074】
式(Ia)の化合物の合成例
ClSi-PhGe-SiCl(B1)の合成
[nBuN]Cl(90mg、0.34mmol、0.2当量)、PhGeCl(500mg、1.70mmol、1当量)、CHCl 5mlおよびSiCl(1800mg、6.80mmol、4当量)の溶液を室温で一晩撹拌し、次いで減圧下で全揮発成分を放出させた。橙色の粘稠な残留物をn-ヘキサン6mlで抽出し、濾液から減圧下で全揮発成分を除去した。このようにして、ClSi-PhGe-SiCl(79%、659mg、1.34mmol)を無色粘稠な液体として得た。
【0075】
【化15】
【0076】
ClSi-MeGe-SiCl(B2)の合成
[nBuN]Cl(200mg、0.73mmol、0.2当量)、MeGeCl(500mg、3.63mmol、1当量)、CHCl 10mlおよびSiCl(1950mg、7.26mmol、2当量)を室温で3時間撹拌し、次いで減圧下で全揮発成分を除去した。粗生成物をn-ヘキサン各5mlで2回抽出し、濾液から減圧下で全揮発成分を除去した。このようにして、370mgの無色液体を得た。NMR分光法およびGC/MSにより、ClSi-MeGe-SiClとClSi-MeGe-MeGe-SiClとの混合物が存在することを確認した。
【0077】
ClSi-MeGe-SiClを、以下のシグナルにより同定した:
【化16】
【0078】
ClSi-PhGe-PhGe-SiCl(B3)の合成
[nBuN]Cl(180mg、0.65mmol、0.2当量)、PhGeCl(900mg、3.02mmol、1当量)、CHCl 10mlおよびSiCl(1600mg、5.95mmol、2当量)を室温で3時間撹拌し、次いで減圧下で全揮発成分を除去した。粗生成物を合計2.5mlのCHClで滴下洗浄し、ClSi-PhGe-PhGe-SiClを無色固体として収率88%で得た(956mg、1.32mmol)。
【0079】
【化17】
【0080】
ClSi-MeGe-MeGe-SiCl(B4)の合成
[nBuN]Cl(800mg、2.91mmol、0.4当量)、MeGeCl(1000mg、7.27mmol、1当量)、CHCl 20mlおよびSiCl(3900mg、14.54mmol、2当量)を室温で24時間撹拌し、次いで減圧下で全揮発成分を除去した。粗生成物をn-ヘキサン各5mlで4回抽出し、濾液から減圧下で全揮発成分を除去した。このようにして、ClSi-MeGe-MeGe-SiCl(34%、589mg、1.24mmol)を無色液体として得た。
【0081】
【化18】
【0082】
ClSi-PhGe-PhGe-Cl(B5)の合成
[nBuN]Cl(10mg、0.03mmol、0.1当量)、PhGeCl(100mg、0.34mmol、1当量)、CDCl 1mlおよびSiCl(90mg、0.34mmol、1当量)をガラス容器内で混合し、次いでこのバッチの半量をNMR管に加えた。真空オイルポンプ中で融解させた後、反応溶液においてCl-PhGe-PhGe-Cl、ClSi-PhGe-PhGe-ClおよびClSi-PhGe-PhGe-SiClをNMR分光法で検出した。
【0083】
ClSi-PhGe-PhGe-Clを、以下のシグナルにより同定した:
【化19】
【0084】
Si-PhGe-H(A1)の合成
Si-PhGe-SiHの合成で得られた生成物を、室温で6ヶ月間貯蔵した。その後、NMR分光法およびGC/MSを用いた試験により、HSi-PhGe-Hが形成されていることを確認した。
【0085】
Si-PhGe-Hを、以下のシグナルにより同定した:
【化20】
【0086】
Si-PhGe-SiH(A2)の合成
ClSi-PhGe-SiCl(400mg、0.807mmol、1当量)をEtO 10mlに溶解させ、LiAlH(93mg、2.42mmol、3当量)を少量ずつ添加した。この溶液は無色透明のままであり、灰色の固体が析出した。30分間撹拌した後、減圧下で全揮発成分を除去し、残留物にn-ヘキサン8mlを加えて16時間撹拌した。n-ヘキサン溶液を濾過し、減圧下で抽出物から全揮発成分を除去したところ、HSi-PhGe-SiH(55%、128mg、0.443mmol)が無色の粘性液体として得られた。この生成物を、NMR分光法およびGC/MSにより同定した。
【0087】
【化21】
【0088】
Si-MeGe-SiH(A3)およびHSi-MeGe-MeGe-SiH(A5)の合成
ClSi-MeGe-SiCl(B2)とClSi-MeGe-MeGe-SiCl(B4)との混合物50mgをNMR管内でEtO 0.8mlに溶解させ、過剰量のLiAlH(15mg、0.4mmol、約3当量)をゆっくり添加した。この溶液0.2mlをGC/MSサンプルとして採取し、さらにEtO 0.5mlで希釈した。残りの反応溶液を真空下でNMR管内にて融解させ、NMR分光法で測定した。GC/MSおよびNMR分光法により、HSi-MeGe-SiHおよびHSi-MeGe-MeGe-SiHが形成されていることを確認した。
【0089】
【化22】
【0090】
Si-PhGe-PhGe-SiH(A4)の合成
ClSi-PhGe-PhGe-SiCl(200mg、0.280mmol、1当量)をEtO 6mlに溶解させ、LiAlH(37mg、0.98mmol、3.5当量)を少量ずつ添加した。この溶液は無色透明のままであり、灰色の固体が析出した。30分間撹拌した後、減圧下で全揮発成分を除去し、残留物にn-ヘキサン8mlを加えて16時間撹拌した。n-ヘキサン溶液を濾過し、減圧下で抽出物から全揮発成分を除去したところSi-PhGe-PhGe-SiH(55%、128mg、0.44mmol)が無色の結晶性固体として得られた。この生成物を、NMR分光法により同定した。
【0091】
【化23】
【0092】
Si-PhGe-SiCl(A6)の合成
EtO 0.5ml中のClSi-PhGe-SiCl(50mg、0.10mmol、1当量)をNMR管に装入し、LiAlH(6mg、0.14mmol、1.4当量)を加えた。無色の反応溶液から灰色の固体が析出した。13Cおよび29Si NMR分光試験により、反応生成物としてClSi-PhGe-SiCl、HSi-PhGe-SiClおよびHSi-PhGe-SiHが得られた。
【0093】
Si-PhGe-SiClのNMRシグナル:
【化24】
【0094】
Si-PhGe-PhGe-SiCl(A7)の合成
EtO 2mlにClSi-PhGe-PhGe-SiCl(200mg、0.280mmol、1当量)を装入し、LiAlH(10mg、0.28mmol、1当量)をゆっくりと添加した。この溶液は無色のままであり、灰色の固体が析出した。この固体を濾過で除去し、濾液から常圧下で溶媒を除去した。残留物をn-ヘキサン4mlで抽出し、次いで抽出物の全揮発成分を常圧下で除去した。得られた固体の13Cおよび29Si NMR分光試験により、出発物質であるClSi-PhGe-PhGe-SiCl、HSi-PhGe-PhGe-SiClおよびHSi-PhGe-PhGe-SiHが存在することが確認された。また、X線回折法によりHSi-PhGe-PhGe-SiClの結晶構造を明らかにすることができた。
【0095】
Si-PhGe-PhGe-SiClのNMRシグナル:
【化25】
【0096】
Si-(PhGe)-SiH(A8)の合成
NMR管に[nBuN]Cl(10mg、0.03mmol、0.2当量)、PhGeCl(50mg、0.17mmol、1当量)、CDCl 0.5mlおよびSiCl(90mg、0.34mmol、2当量)を充填した。この無色透明な溶液の13Cおよび29Si NMR分光試験から、ClSi-PhGe-PhGe-SiCl、ClSi-PhGe-SiClおよびSiClが存在することが確認された。NMR管を開放し、常圧下で全揮発成分を除去した。残留物を新たなNMR管内でEtO 0.5mlに溶解させ、LiAlH(7mg、0.17mmol、1当量)を加えた。これにより、灰色の沈殿物を伴う無色の溶液が得られ、その上には微細な無色の固体が存在していた。この反応溶液の13Cおよび29Si NMR分光試験により、正確な特性評価ができないいくつかの未知の化学種のシグナルが得られた。NMR管を開放し、常圧下で揮発成分を除去した後に結晶が得られ、X線回折法により、この結晶をテトラゲルマンHSi-(PhGe)-SiHであると同定した。
【0097】
式(Ib)の化合物の合成例
1030Cl14GeSi(C1)の合成
【化26】
【0098】
[nBuN]Cl(161mg、0.58mmol、0.2当量)、MeGeCl(500mg、2.88mmol、1当量)、CHCl 10mlおよびSiCl(3092mg、11.5mmol、4当量)を室温で3時間撹拌し、次いで減圧下で全揮発成分を除去した。粗生成物をn-ヘキサン各5mlで2回洗浄し、残留物をCHClに溶解させた。時間の経過とともに無色固体が晶出した。CHClで洗浄すると、C1(4%、32mg、0.025mmol)が無色の結晶性固体として得られた。この生成物を、X線回折法(斜方晶系、Cmc2)およびNMR分光法で特性評価した。
【0099】
【化27】
【0100】
24Cl16GeSi10(C2)の合成
【化28】
【0101】
[nBuN]Cl(161mg、0.58mmol、0.2当量)、MeGeCl(500mg、2.88mmol、1当量)、CHCl 10mlおよびSiCl(3092mg、11.5mmol、4当量)をバルクヘッド瓶に満たした。数日後、無色の結晶が形成されており、これを濾過により単離することができた。CHClで洗浄すると、C2(18%、163mg、0.13mmol)が無色の結晶性固体として得られた。この生成物を、X線回折法(三方晶系、R-3)およびNMR分光法により特性評価した。
【0102】
【化29】
【0103】
2266ClGeSi(C3)の合成
【化30】
【0104】
C1(12mg、0.009mmol、1当量)およびEtO 0.5mlをNMR管に充填し、氷冷しながらMeMgBr(3M、0.1ml、0.30mmol、30当量)のEtO溶液を添加した。NMR管を真空下で溶融封止した。室温で約2週間後、NMR分光法によって完全な転化を認めることができた。その後、NMR管を開封し、内容物をEtO 3mlとともにシュレンクフラスコに移し、次いで氷冷しながらMeOH 0.05mlを加えた。10分間撹拌した後、全揮発成分を除去し、残留物を合計7mlのn-ヘキサンで抽出した。再度、抽出物から全揮発成分を除去するとすぐに、C3(82%、8mg、0.008mmol)が無色の結晶性固体として得られた。この生成物をX線回折法(斜方晶系、Cmcm)およびNMR分光法によって特性評価した。
【0105】
【化31】
【0106】
2060ClGeSi10(C4)の合成
【化32】
【0107】
C2(20mg、0.015mmol、1当量)およびEtO 0.5mlをNMR管に充填し、氷冷しながらMeMgBr(3M、0.2ml、0.60mmol、40当量)のEtO溶液を加えた。NMR管を真空下で溶融封止した。60℃で14時間加熱した後、完全な転化がNMR分光法によって認められた。次に、さらなる精製をC3と同様に行った。
【0108】
最終的に、C4(89%、16mg、0.016mmol)が無色の結晶性固体として得られた。この生成物を、X線回折法(斜方晶系、Pbca)およびNMR分光法によって特性評価した。
【0109】
【化33】
【0110】
SiおよびGe含有固体の製造
SiおよびGe含有固体は、本発明による化合物から出発して、例えば以下の反応スキームに従って製造することができる。
【0111】
【化34】
【0112】
600℃でのSiGeの析出
Si-PhGe-PhGe-SiH(13mg、0.025mmol)をルツボにはかり入れ、熱重量分析(TGA)を実施した。このために、試料をアルゴン雰囲気下で10K/minの速度にて600℃まで加熱し、この温度を5分間維持し、次いで同じ速度で室温まで冷却した。得られた帯褐色の粉末の残留物をEDXで検査した。このために、試料の一部を支持体に施与し、測定精度を上げるために金でコーティングした。その後の測定では、ケイ素およびゲルマニウムのほか、金だけでなく、少量の炭素、酸素およびアルミニウムが検出された。2つの分析領域のデータを評価した結果、ケイ素とゲルマニウムとの比は1.0:1.0または1.0:1.1となった。
【0113】
上記の説明および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、その様々な実施形態での本発明の実施のために、個々のみならず任意の組み合わせでも必須となり得る。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または(Ib)
【化1】
[式(Ia)中、
- nは、1~10の整数であり;
- RおよびRは、互いに独立して、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキルおよびC~C20アルキルアリールからなる群から選択され;
- Xは、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Y[ここで、Y=ハロゲンである]からなる群から選択される]、
【化2】
[式(Ib)中、
- E~Eは、互いに独立して、SiまたはGeであり;
- X11~X14は、互いに独立して、H、SiH、ハロゲンおよびSi(Yからなる群から選択され;
- Yは、独立して、C~C20アルキルおよびハロゲンから選択され;
- R~R14は、互いに独立して、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C20シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキル、C~C20アルキルアリールおよびZからなる群から選択され;
- Zは、独立して、H、ハロゲンおよびC~C20アルキルからなる群から選択される]の化合物。
【請求項2】
nが1~4の整数である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、互いに独立して、C~C20アルキルおよびC~C20アリールからなる群から選択される、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
およびRが、互いに独立して、フェニルまたはメチルである、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
およびRが同じである、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
が、H、SiH、ClおよびSiClからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
~Eのうち少なくとも3つがGeであり、E~Eのうち残りがSiである、請求項1から6までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
~R14が、互いに独立して、C~C20アルキルおよびハロゲンからなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
~R14が、互いに独立して、メチルおよびClからなる群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
11~X14が、独立して、H、SiH、Si(C~Cアルキル)、ClおよびSiClからなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
11~X14が、独立して、SiClおよびSi(CHからなる群から選択される、請求項1から10までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の式(Ia)の化合物の製造方法であって、
- 式(IIa)
【化3】
の化合物と、式(IIIa)
【化4】
[式中、
- X~X10は、互いに独立してハロゲンであり、
- RおよびRは、請求項1から11までのいずれか1項で定義されたとおりである]の化合物とを反応させるステップと、
- 前記式(IIa)の化合物を前記式(IIIa)の化合物と反応させて得られる生成物を水素化させるステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記式(IIa)の化合物と前記式(IIIa)の化合物とを反応させるステップを、触媒の存在下で行う、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項記載の式(Ib)の化合物の製造方法であって、
- 式(IIb)
【化5】
の化合物と、式(IIIb)
【化6】
[式中、
- Hal~Halは、互いに独立してハロゲンであり、
- RおよびRは、請求項1から11までのいずれか1項で定義されたとおりである]の化合物とを反応させるステップと、
- 前記化合物(IIb)と前記化合物(IIIb)との反応の生成物を結晶化させるステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記式(IIb)の化合物と前記式(IIIb)の化合物とを反応させるステップを、触媒の存在下で行う、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記結晶化させるステップの後に得られた生成物をグリニャール試薬と反応させるステップをさらに含む、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
SiおよびGe含有固体を製造するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の式(Ia)の化合物または式(Ib)の化合物の使用。
【請求項18】
前記製造が、前記化合物を300℃以上の温度に加熱するステップを含む、請求項17記載の使用
【国際調査報告】