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特表2023-529188車両ブレーキパッドおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】車両ブレーキパッドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/30 20230101AFI20230630BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20230630BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20230630BHJP
   H10N 30/088 20230101ALI20230630BHJP
   H10N 30/053 20230101ALI20230630BHJP
   H10N 30/084 20230101ALI20230630BHJP
   H10N 30/093 20230101ALI20230630BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20230630BHJP
   F16D 66/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H10N30/30
H10N30/853
H10N30/87
H10N30/088
H10N30/053
H10N30/084
H10N30/093
F16D65/092 D
F16D65/092 Z
F16D66/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575171
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021063614
(87)【国際公開番号】W WO2021244874
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】102020000013408
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514060514
【氏名又は名称】アイティーティー・イタリア・エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】セラ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョーロ,ウンベルト
(72)【発明者】
【氏名】テラノバ,マルコ
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA41
3J058BA60
3J058BA61
3J058CA44
3J058CA47
3J058DB04
3J058DB21
3J058DB25
3J058DB27
3J058EA40
3J058FA01
(57)【要約】
車両ブレーキパッド(100)は、支持プレート(21)と、摩擦パッド(20)と、少なくともせん断力感知装置と、信号をせん断力感知装置(1)から回収するように構成された電気回路と、を備えて、せん断力感知装置(1)は、せん断応力方向(S)を識別する互いに平行な第一および第二の主面(3、4)を有する圧電材料のシート(2)と、第一の主面(3)上に位置する少なくとも第一の嵌合読出電極(5)と、第二の主面(4)上に位置する少なくとも第二の嵌合読出電極(6)であって、応力せん断方向(S)に直交する読出方向(R)に沿って整列した指部(5a、6a)を有する、第一および第二の読出電極(5、6)と、第一の主面(3)上に位置し、第一の嵌合読出電極(5)と相互嵌合された少なくとも第一の嵌合分極電極(7)と、第二の主面(4)上に位置し、第二の嵌合読出電極(6)と相互嵌合された少なくとも第二の嵌合分極電極(8)と、を備えて、圧電材料は、読出方向(R)に横方向に配向されたベクトル場(E)を有するバルク電気分極を有し、圧電材料の各々の領域(2a)を封入する第一および第二の読出電極(5、6)の各対の整列した指部(5a、6a)は、せん断応力方向(S)に最も接線方向に配向されたベクトル場(E)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ブレーキパッド(100)であって、
支持プレート(21)と、
摩擦パッド(20)と、
少なくともせん断力感知装置と、
信号を前記少なくともせん断力感知装置から回収するように構成された電気回路と、を備え、
前記せん断力感知装置は、
第一の面および前記第一の面に対向する第二の面を含み、前記第一および第二の面が、せん断応力方向に互いに平行に延在する、圧電材料と、
前記第一の面上に位置決めされ、第一の読出指部(5a)を含む、第一の読出電極(5)と、
前記第二の面上に位置決めされ、第二の読出指部(6a)を含む、第二の読出電極(6)であって、前記第一および第二の読出電極(5、6)が、前記応力せん断方向に直交する読出方向に沿って互いに整列する、第二の読出電極(6)と、
前記第一の主面上に位置決めされ、前記第一の読出電極(5)と相互嵌合された、第一の分極電極(7)と、
前記第二の面上に位置決めされ、前記第二の読出電極(6)と相互嵌合された、第二の分極電極(8)と、を備え、
前記せん断力感知装置の第一の領域において、前記圧電材料は、前記読出方向に対して横方向に配向される分極ベクトル場を有し、
前記せん断力感知装置の第二の領域において、前記圧電材料は、前記せん断応力方向に対して接線方向に配向される分極ベクトル場を有し、
前記第一の分極電極(7)は、第一の分極指部(7a)を備え、前記第二の分極電極(8)は、第二の分極指部(8a)を備え、前記第一および第二の読出指部(5a、6a)は、前記第一および第二の分極電極(7、8)の指部(7a、8a)よりも大きい、車両ブレーキパッド(100)。
【請求項2】
前記圧電材料のシートは、スクリーン印刷層を含む、請求項1に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項3】
前記第一および第二の読出電極(5、6)と前記第一および第二の分極電極(7、8)は、スクリーン印刷層を含む、請求項1に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項4】
前記第一の分極電極(7)は、第一の分極指部(7a)を含み、
前記第二の分極電極(8)は、第二の分極指部(8a)を含み、
前記第一および第二の分極指部(7a、8a)は、前記せん断応力方向のオフセット距離にある、請求項1に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項5】
前記第一および第二の読出電極(5、6)は、前記応力せん断方向に沿って前記第一および第二の分極電極(7、8)の間に位置決めされる、請求項1に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項6】
前記第一および第二の読出指部(5a、6a)の幅は、前記第一および第二の分極電極(7、8)の間の距離の60%~85%の範囲内にある、請求項1に記載の車両ブレーキパッド(100)。
【請求項7】
車両ブレーキパッドであって、
支持プレートと、
摩擦パッドと、
少なくともせん断力感知装置と、
信号を前記少なくともせん断力感知装置から回収するように構成された電気回路と、を備え、
前記せん断力感知装置は、
第一の面と前記第一の面に対向する第二の面を含み、前記第一および第二の面が、せん断応力軸に沿って互いに平行に延在する、圧電材料と、
前記第一の面上に位置決めされ、第一の読出指部(5a)を含む、第一の読出電極(5)と、
前記第二の面上に位置決めされ、第二の読出指部(6a)を含む、第二の読出電極(6)と、
前記第一の面上に位置決めされた第一の分極電極(7)であって、第一の分極指部(7a)を含む、第一の分極電極(7)と、
前記第二の面上に位置決めされた第二の分極電極(8)であって、第二の分極指部(8a)を含む、第二の分極電極(8)と、を備え、
前記せん断応力軸に沿って、前記第一の読出指部(5a)および前記第二の読出指部(6a)は、前記第一の分極指部(7a)と前記第二の分極指部(8a)との間に位置決めされ、
前記第一および第二の読出指部(5a、6a)は、前記第一および第二の分極電極(7、8)の指部(7a、8a)よりも大きい、車両ブレーキパッド。
【請求項8】
前記第一および第二の読出指部(5a、6a)は、前記せん断応力軸に直交する読出方向に沿って互いに整列する、請求項7に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項9】
前記第一および第二の分極指部(7a、8a)は、前記せん断応力軸に沿って互いにオフセットされる、請求項7に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項10】
前記第一の読出電極(5)は、第二の第一の読出指部をさらに含み、
前記第一の分極電極(7)は、第二の第一の分極指部をさらに含み、
前記せん断応力軸に沿って、前記第一の読出指部および前記第二の第一の読出指部は、前記第一の分極指部と前記第二の第一の分極指部との間に位置決めされる、請求項7に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項11】
前記第一および第二の分極電極(7、8)は、前記せん断応力軸に略平行である電界を誘導するように構成される、請求項7に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項12】
前記第一および第二の読出指部の幅は、前記第一および第二の分極指部の間の距離の60%~85%の範囲内にある、請求項7に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項13】
前記第一および第二の読出電極(5、6)と前記第一および第二の分極電極(7、8)の各々は、スクリーン印刷層を含む、請求項7に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項14】
車両ブレーキパッドの製造方法であって、
電気回路を支持プレートに接続することと、
圧電アセンブリを前記電気回路に接続することであって、前記圧電アセンブリを取得することは、
第一の読出指部(5a)を含む第一の読出電極(5)を、圧電材料の第一の面に接続すること、
第一の分極電極(7)を、前記圧電材料の前記第一の面に接続すること、
第二の読出指部(6a)を含む第二の読出電極(6)を、前記圧電材料の第二の面に接続すること、および
第二の分極電極(8)を、前記圧電材料の前記第二の面に接続すること、を含み、
前記第一および第二の分極電極(7、8)は、前記せん断応力方向に沿ってオフセットされ、
前記第一および第二の指部(5a、6a)は、前記応力せん断方向に直交する読出方向に沿って整列する、接続することと、
摩擦パッドを、前記支持プレートに接続することと、
前記圧電アセンブリを分極することであって、
電力を、前記第一および第二の分極電極(7、8)に供給すること、および
前記第一および第二の指部(5a、6a)との間の領域で、前記せん断応力方向に略平行であるベクトル場を発生させること、を含む、分極することと、を含み、
前記圧電アセンブリを分極することは、前記第一および第二の読出電極(5、6)を浮遊電位に維持することをさらに含む、方法。
【請求項15】
前記第一の読出電極(5)および前記第一の分極電極(7)を、前記圧電材料の前記第一の面に接続することは、前記第一の読出電極(5)および前記第一の分極電極(7)を、前記圧電材料の前記第一の面にスクリーン印刷することを含む、請求項14に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、少なくともせん断力感知装置を含む車両スマートブレーキパッド、およびその製造工程に関する。
【発明の概要】
【0002】
圧電とは、外部から作用する機械的応力に応答して、特定の種類の固体材料の内部に蓄積する電荷である。
【0003】
圧電材料は、石英、トルマリン、およびロッシェル塩のナノ結晶を含むが、外部要請に対し比較的小さい圧電応答を示す。この問題を克服するために、チタン酸バリウム(BaTiO3)およびチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などのいくつかの多結晶性強誘電体セラミックを合成して、その結果、合成されたセラミックは、機械的応力の印加後に、より大きな変位を示す、またはより大きな電圧を誘導する。
【0004】
特に、PZT圧電セラミック材料は、アクチュエータまたはセンサ用途に使用され得る。PZT材料は、格子サブ構造内部のドーピングレベルについて互いに異なる二つのクラスに分けられる。材料の構造内部で電荷が余剰または欠如すると、圧電挙動およびその使用分野に影響が与えられる。PZTは、「軟質」とみなされ、機械的振動を電気信号に変換するために頻繁に使用される材料である。
【0005】
これらの合成された圧電材料を適切に使用するために、分極手順を実施する。この目的のために、数kV/mmの強い電界が印加されて、以前に未組織化のセラミック化合物に非対称が生じる。電界により、自発分極に再配向が生じるのと同時に、極性電界方向に対して好ましい配向を有するドメインが成長する一方、好ましくない配向を有するドメインは抑制される。この手順により、材料の結晶構造内部に変動が生じ、ドメイン壁が結晶格子内で移動される。ほとんどの再配向は、分極後に電界を印加しなくても、維持される。しかしながら、少数のドメイン壁は、内部機械的応力により、元の位置に戻される。
【0006】
この誘発されたドメイン再構成により、上述のように、いわゆるキュリー温度(TC)など、材料の特定の特性温度下で良好に保持される格子構造の内部に変位が生じる。PZT結晶子の格子構造は、TCを下回る温度では、歪み、非対称となり、ピエゾ技術で関心対象となる、二倍体の形成を引き起こし得る。圧電セラミック材料は、TCを超える温度では、格子内部でその非対称性を失い得、その圧電特性は、失われ得る。
【0007】
圧電セラミック化合物は、いくつかの異なる方法で生成される。製造技術は、スプレー乾燥顆粒材料の機械的油圧押圧を基にし得る。化合物は、製造後、最大約1300℃の温度で焼結される。これにより、本体容積が約30%縮小する。結果として、高密度を有する固体セラミック材料が得られる。その後、圧電材料は、上述のように分極され、その後、非常に硬い焼結セラミックを、必要に応じて、のこぎり切断・機械加工が可能になる。コンパクトは、ディスク、プレート、ロッド、およびシリンダなどとして、異なる形状で提供される。製造工程の最終段階は、電極の蒸着を含む。電極を、スクリーン印刷技術またはPVD(スパッタリング)によって圧電セラミック材料に当てて、その後、800℃を超える温度で焼成する。膜厚は、センサの最終用途に応じて、1マイクロメートル~10マイクロメートルであり得る。
【0008】
分極された圧電材料は、いくつかの係数および関係によって特徴付けられる。
【0009】
簡略化された形態では、電気特性と弾性特性との基本的な関係は、以下のように表され得る。
【0010】
【数1】

式中、Dは電束密度、Tは機械的応力、Eは電界、Sは機械的歪み、dは圧電電荷係数、εは誘電率、Sは弾性係数である。これらの関係は、小さい電気的および機械的振幅、またはいわゆる小さい信号値に当てはまる。この範囲において、機械的、弾性変形Sまたは応力T、および電界Eまたは電束密度Dとの間の関係は線形であり、係数の値は一定である。
【0011】
図1に示すように、方向は、1、2、3で示され、古典的な右直交軸セットの軸X、YおよびZに対応する。回転軸は、4、5、6で示される(図1)。分極の方向(軸3)は、二つの電極の間に印加される強い電界によって、ポーリングプロセス間に確立される。
【0012】
パラメータは、圧電電荷係数で、誘導された電荷の機械的応力に対する比、すなわち、達成可能な機械的歪みの印加された電界に対する比である。圧電材料が異方性であるため、対応する物理量は、テンソルによって表記される:
【0013】
【数2】

圧電装置は、圧力センサおよびせん断センサを含み得る。第一の種類は、通常の機械的応力に高感度であり、その挙動は、圧電電荷係数テンソルのd33成分によって制御される。第二の種類(すなわち、せん断センサ)は、センサの二つの面(上側および下側)の相対的な摺動に高感度であり、その応答は、d行列の非対角d15成分に依存する。
【0014】
したがって、印加された外力の法線成分と接線方向成分との間のクロストークを最小化するために、せん断センサが、大きいd15および小さいd33成分を有することが望ましい場合がある。
【0015】
スクリーン印刷技術は、高速かつ低コストの工程である。この技術は、プリンテッドエレクトロニクスにおいて使用され、広範囲の電子機器を製造する上で最も有望な技術の一つである。スクリーン印刷されたセンサの利点には、感度、選択性、大量生産および小型化の可能性が含まれる。
【0016】
スクリーン印刷技術は、特殊インクまたはペーストの連続層を、絶縁基板上に蒸着させることからなる。ペーストは通常、金属分散体またはグラファイトとのポリマー結合剤に基づいており、補因子、安定剤、およびメディエーターなどの機能性材料も含有することができる。
【0017】
スクリーン印刷技術の利点は、デバイス製造のすべての相を、単一ステップ、すなわち、電極から材料の蒸着までの製造可能性に見い出される。克服すべき障害物は、作製されたデバイスの原位置での分極に関連する。一方、該手順は、圧力センサの分極には非常に容易であり得るが、長手方向の大きな分極成分を要するセンサには困難な場合がある。
【0018】
この種類の技術を使用して作製されるデバイスは、典型的に、非常に薄く(h=10÷100μm)、形状または平面延伸に特定の制限はない。これらの幾何学的特性を利用することは、いくつかの電極構成を画定するために可能であって、分極方向を優先的に得る目的で、電界方向を制御する。
【0019】
スマートブレーキパッドは、ブレーキパッド温度および/またはブレーキ中に作用する法線力およびせん断力を含む静的量および動的量などの一つ以上のパラメータを測定するために(例えば、適切なソフトウェアおよびハードウェアシステムアーキテクチャーおよびいくつかのアルゴリズムを用いて)構成された、センサ化されたブレーキパッドである。
【0020】
せん断力感知装置は、二つの平行な主面の各々に、一対のスクリーン印刷された相互嵌合電極を有する、スクリーン印刷された圧電材料のシートを含み得る。
【0021】
これらの主面は互いに平行であり、せん断力感知装置のせん断応力方向を識別する。
【0022】
一つの主面上の各電極は、応力せん断方向に直交する読出方向に沿って、他の主面上の対応する電極に整列する。
【0023】
特定の実装において、すべての電極は、異なる相互接続を有するものの、初めは圧電材料のバルク分極、その後はせん断力信号のピックアップの両方に使用することが意図される。
【0024】
圧電シートのスクリーン印刷により、例えば、スマートブレーキパッドなどの、センサ化された物体の産業製造工程において、堅牢な設計およびコスト削減が可能である。
【0025】
スクリーン印刷技術は、現在市販されている圧電せん断センサの他の技術と比較して、センサが、センサ化される物体上で一旦製造されると、「原位置で」分極することも可能な事実により、製造ステップを削減する。すなわち、本開示の圧電材料は、センサの製造工程中または直後に圧電材料が分極される製造方法とは異なり、本開示の圧電材料を分極するために必要な比較的低い電圧により、センサを製造し、アプリケーション内に設置した後に、分極され得る。したがって、センサを製造し、分極し、その後、物体に設置する必要はない。あるいは、本開示の圧電材料は、センサ自体の製造工程中に分極され得る。
【0026】
さらに記載すると、本開示の圧電材料は、センサの製造工程中に圧電材料が分極される製造方法とは異なり、本開示の圧電材料を分極するために必要な比較的低い電圧により、アプリケーション(例えば、ブレーキパッド)内に設置される間に、分極または再分極され得る。
【0027】
上述の特徴において、電極が、せん断力信号を読むために使用される場合、信号の正しい解釈をある程度複雑にしうる、法線方向に生成される相当量の電荷を回収することに限界がある。
【0028】
WO2019/171289は、せん断力を読み出すための相互嵌合電極のアーキテクチャを開示する。
【0029】
本開示の様々な実施形態は、前述の懸念のうちの一つ以上、または他の懸念に対処できる。
【0030】
例えば、いくつかの実施形態は、支持と、摩擦パッドと、少なくともせん断力感知装置と、信号を該少なくともせん断力感知装置から回収するように構成された電気回路と、を備える、車両ブレーキパッドを提供することを含み、該せん断力感知装置は、せん断応力方向を識別する互いに平行な第一および第二の主面を有する圧電材料のシートと、該第一の主面上に位置する少なくとも第一の嵌合読出電極と、該第二の主面上に位置する少なくとも第二の嵌合読出電極であって、該せん断応力方向に直交する読出方向に沿って整列した指部を有する、第一および第二の嵌合読出電極と、該第一の主面上に位置し、該第一の嵌合読出電極と相互嵌合された、少なくとも第一の嵌合分極電極と、該第二の主面上に位置し、該第二の嵌合読出電極と相互嵌合された、少なくとも第二の嵌合分極電極と、を備える。該圧電材料は、該読出方向に横方向に配向されたベクトル場を有するバルク電気分極を有し、該圧電材料の各々の領域を封入する該第一および第二の読出電極の各対の整列した指部は、該せん断応力方向に対して最も接線方向に配向されたベクトル場を有する。
【0031】
圧電材料のシートの対向する主面上に当てられる電極の好適な分極計画および形状を提供することにより、非常に小さな法線成分を有する分極場を得ることが可能になる。この目的のために、圧電材料のシートは、厚さhに対して大きな平面延長部Lを備えて作製される。
【0032】
より詳細には、L表面寸法は、信号回収領域の電界の歪みを最小化するために、h直線寸法よりもはるかに大きい場合がある。
【0033】
車両ブレーキパッドの実施形態では、圧電材料の該シートは、スクリーン印刷層から作製される。
【0034】
車両ブレーキパッドの実施形態では、該第一および第二の読出電極および該第一および第二の分極電極はそれぞれ、スクリーン印刷層から作製される。
【0035】
車両ブレーキパッドの実施形態では、該第一および第二の分極電極の指部は、該せん断応力方向に沿ってオフセットを有する。
【0036】
車両ブレーキパッドの実施形態では、該第一および第二の読出電極の各対の整列した指部は、該せん断応力方向に沿って、該第一および第二の分極電極の隣接する指部の間にある。
【0037】
車両ブレーキパッドの実施形態では、第一および第二の読出電極の指部は、第一および第二の分極電極の指部よりも大きい。
【0038】
車両ブレーキパッドの実施形態では、第一および第二の読出電極の指部の幅は、第一および第二の分極電極の指部間の距離の60%~85%の範囲内にある。
【0039】
車両ブレーキパッドの実施形態では、感知装置の圧電シートの厚さは、0.15~0.25mmであり、読出電極の指部の幅は、0.1~0.2mmであり、分極電極の指部の幅は、0.025~0.1mmであり、圧電材料シートの同一面上の隣接する指部間の最小距離は、0.025~0.05mmである。
【0040】
本開示はまた、車両ブレーキパッドの製造工程に関する。一部の実装では、プロセスは、電気回路を支持プレート上にスクリーン印刷するステップと、少なくともせん断力感知装置を該電気回路上にスクリーン印刷するステップであって、該せん断力は、少なくとも第一の嵌合読出電極および少なくとも第一の嵌合分極電極を該電気回路上にスクリーン印刷すること、せん断応力方向を識別する互いに平行な第一および第二の主面を有する圧電材料のシートを、該第一の読出電極および該第一の分極電極上にスクリーン印刷することであって、該第一の主面が、該第一の読出電極および該第一の分極電極上に当てられる、スクリーン印刷すること、少なくとも第二の嵌合読出電極および少なくとも第二の嵌合分極電極を、該シートの該第二の主面上にスクリーン印刷することであって、該第一および第二の分極電極が、該せん断応力方向に沿ってオフセットを有し、該第一および第二の読出電極が、該せん断応力方向に直交する読出方向に沿って整列した指部を有する、スクリーン印刷すること、によって生成される、スクリーン印刷するステップと、摩擦パッドを該支持プレート上に当てるステップと、および該せん断応力方向に直交する読出方向に沿って整列した該第一および第二の読出電極の該指部によって封入された領域内で、該せん断応力方向に最も接線方向に配向されたベクトル場を発生させるために、該第一および第二の分極電極への電力供給によって圧電材料の該シートをバルク分極するステップと、のうちの一つ以上を(例えば、時間的順序で)含む。
【0041】
該圧電材料のバルク分極の間の実施形態では、該第一および第二の読出電極は、浮遊電位に保たれる。
【0042】
該圧電材料のバルク分極の間の実施形態では、該第一および第二の読出電極は、固定された等電位に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
様々な実施形態は、例示目的のために添付図面に図示されて、本開示の範囲を限定するものと解釈されないものとする。異なる開示された実施形態の様々な特徴を組み合わせて、本開示の一部である、追加的な実施形態を形成することができる。
図1図1は、分極された圧電材料の特性を記載するための直交座標系を概略的に示す。
図2図2は、明瞭化のために圧電材料のシートが表されない、第一の種類のせん断力感知装置を概略的に示す。
図3図3は、分極相の間の電界が表される、第一の種類のせん断力感知装置の垂直断面を概略的に示す。
図4図4は、明瞭化のために圧電材料のシートが表されない、第二の種類のせん断力感知装置を概略的に示す。
図5図5は、分極相の間の電界が表される、第二の種類のせん断力感知装置の垂直断面を概略的に示す。
図6図6は、せん断力信号を第二の種類のせん断力感知装置から受け取るための電気回路を概略的に示す。
図7図7は、「原位置で」分極された少なくとも一つのせん断力感知装置を備える、車両ブレーキパッドを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の詳細な説明において、その一部を構成する、添付図面を参照する。図面では、類似の参照番号または記号は、典型的に、別段の文脈が別途指示されない限り、類似の構成要素を特定する。詳細な説明および図面に記載された例示的な実施形態は、限定することを意味するものではない。他の実施形態も利用され得、また他の変更は、本明細書に提示される主題の趣旨または範囲から逸脱することなく行われ得る。本開示の態様は、本明細書に一般的に記載され、図示されるように、多種多様な異なる構成で配列、置換、組み合わせ、および設計することができ、その全ては、明示的に想定され、本開示の一部とすることができる。
【0045】
図2~6を参照すると、せん断力感知装置1は、せん断応力方向Sを識別するための、互いに平行である第一の主面3および第二の主面4を有する、圧電材料のシート2を備える。圧電材料のシート2の第一の主面3上で、少なくとも第一の嵌合読出電極5は、指部5aを有するように配置される。圧電材料のシート2の第二の主面4上で、少なくとも第二の嵌合読出電極6は、指部6aを有するように配置される。第一および第二の読出電極5および6はそれぞれ、せん断応力方向Sに直交する読出方向Rに沿って互いに整列した、指部5aおよび6aを有する。
【0046】
圧電材料のシート2の第一の主面3上に、少なくとも第一の嵌合分極電極7は、指部7aを有するように配置される。
【0047】
第一の嵌合分極電極7は、第一の嵌合読出電極5と相互嵌合される。
【0048】
圧電材料のシート2の第二の主面4上に、少なくとも第二の嵌合分極電極8は、指部8aを有するように配置される。
【0049】
第一の嵌合分極電極7は、第一の読出電極5と相互嵌合される。
【0050】
第一の分極電極7は、せん断応力方向Sに平行な方向に、圧電材料のシート2の各々の側面上に第二の分極電極8から離れた距離で位置決めされる。いくつかの実施形態では、第一および第二の分極電極7、8間の距離は、圧電材料の厚さの少なくとも約3倍~約5倍の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、第一および第二の分極電極7、8の間の距離は、圧電材料の厚さのおよそ3倍以下であり得る。いくつかの実施形態では、第一および第二の分極電極7、8の間の距離は、圧電材料の厚さのおよそ5倍以上であり得る。
【0051】
第一および第二の読出電極5、6は、圧電材料のシート2の各々の側面上で互いに対向して位置決めされ得る。一部の実装では、第一および第二の読出電極5、6は、せん断応力方向Sに平行な方向に、第一および第二の分極電極7、8の間に略中心となる位置にある。すなわち、第一および第二の読出電極5、6の中心は、せん断応力方向Sに平行な方向に、第一および第二の分極電極7、8の間の略中点または中点に位置決めされ得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、第一および第二の読出電極5、6は、第一および第二の分極電極7、8の間を偏心する位置で互いに対向して位置決めされ得、および/または第一および第二の分極電極7、8のうちの一つにより近接して位置決めされ得る。すなわち、第一および第二の読出電極5、6の中心は、せん断応力方向Sに平行な方向に、第一および第二の分極電極7、8のうちの一つにより近接して位置決めされ得る。いくつかの実施形態では、第一および第二の読出電極5、6は、圧電材料の厚さの少なくとも二倍以上に少なくとも等しい、第一および第二の分極電極7、8から離れた距離で位置決めされる。
【0053】
シート2の圧電材料は、読出方向Rに横方向に配向された(すなわち、直交する)ベクトル場を有するバルク電気分極を有する。
【0054】
図では、ベクトル場の線をFで表し、Eは、電気を表し、Eは、せん断応力方向Sに垂直な電気ベクトルEの成分を表し、E||は、せん断応力方向Sに平行な電気ベクトルEの成分を表す。
【0055】
第一および第二の読出電極5、6の各対の整列した指部5a、6aは、有利に、せん断応力方向Sに対して最も接線方向に配向されたベクトルEを有する圧電材料のシート2の各々の領域2aを封入する。すなわち、電気ベクトルEのE||成分は、電気ベクトルEのE成分よりもはるかに大きい。一部の実施形態では、E成分の大きさは、略ゼロであり、および/またはE||成分の大きさは、E成分の大きさの少なくとも約10倍~約100倍の範囲内であり得る。一部の実施形態では、E||成分の大きさは、E成分の大きさの少なくともおよそ100倍超であり得る。一部の実施形態では、E||成分の大きさは、E成分の大きさの約10倍以下であり得る。
【0056】
圧電材料のシート2は、スクリーン印刷層から作製され得る。圧電材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)およびチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの合成多結晶性強誘電性セラミック材料を含み得る。本開示の圧電材料は、合成セラミックに限定されないが、他の種類の強誘電性材料を含んでもよい。一部の実施形態では、圧電セラミック材料のスクリーン印刷層は、約200~300μm、100~200μmまたは10~100μmの範囲内の厚さを有し得る。一部の実施形態では、圧電セラミック材料のスクリーン印刷層は、約300μm超または約10μm未満の厚さを有し得る。
【0057】
各読出電極5、6および各分極電極7、8は、スクリーン印刷層からも作製され、これは、圧電材料2のシートに当てられ得る。
【0058】
第一および第二の読出電極5および6の指部5a、6aは、長さおよび同じ幅を有するストライプである。
【0059】
一部の実施形態では、第一および第二の読出電極5および6の指部5a、6aは、略同一の幅および/または厚さを有し得る。しかしながら、本開示により、圧電材料上で電極の形状および位置を変更可能で、その場合、電極のレイアウトや電極の電位を変更し得る。
【0060】
一部の実施形態では、読出および分極電極5、6、7、8は、銀、金、銅、ニッケル、パラジウムなどの金属材料のスクリーン印刷層から形成され得る。特定の実施形態では、読出および分極電極5、6、7、8は、銀インクまたはペーストから形成され得る。一部の実施形態では、読出および分極電極5、6、7、8の一つ以上は、電極を電気的および熱的に絶縁し、酸化を防止するために、絶縁層またはセラミックガラス層などの保護材料によって部分的または完全に覆われ得る。
【0061】
一部の実施形態では、電極5、7は、絶縁基板などの基板上に直接スクリーン印刷され得る。基板は、保護材料を含み得る。後続の層は、絶縁基材および以前にスクリーン印刷された電極5、7上にスクリーン印刷され得る。すなわち、圧電材料のシート2および電極6、8は、絶縁基材および以前にスクリーン印刷された電極5、7上にスクリーン印刷され得る。
【0062】
ある実施形態では、第一および第二の読出電極5、6の指部5a、6aの幅は、該第一および第二の分極電極7、8の指部7a、8aの幅よりも大きい。
【0063】
より詳細には、第一および第二の読出電極5、6の指部5a、6aの幅wは、第一および第二の分極電極7、8の指部7a、8aの間の距離dの60%~85%の範囲内にある。
【0064】
電極5、6、7、8のこの構成は、感知装置1への負担が最も低く、読出電極5、6から最も高い信号回収を提供し得る。
【0065】
第一および第二の分極電極7、8の指部7a、8aは、せん断応力方向Sに沿って互いにオフセットされる。
【0066】
さらに、第一および第二の読出電極5、6の各対の整列した指部5a、6aは、せん断応力方向Sに沿って、第一および第二の分極電極7、8の隣接する指部7a、8aの間にある。
【0067】
本開示は、異なる電極形状を提供し、電極レイアウトおよび電極が設定される電位は、異なり得る。
【0068】
第一の実施形態では、第一の種類のせん断力感知装置1は、図2および図3に表される。せん断力感知装置1は、四つの電極、すなわち、圧電材料のシート2の第一の主面3上の単一の第一の読出電極5および単一の第一の分極電極7、ならびに圧電材料のシート2の第二の主面4上の単一の第二の読出電極6および単一の第二の分極電極8を含む。第一の読出電極5および第一の分極電極7は、同一平面上にあり、相互嵌合され得る。第二の読出電極6および第二の分極電極8は、同一平面上にあり、相互嵌合され、第一および第二の読出電極5および6は、読出方向Rに沿って整列した指部5aおよび6aを有する。第一および第二の分極電極7および8の指部7aおよび8aは、せん断応力方向Sに沿ってオフセットを有する。第一および第二の読出電極5および6の各対の整列した指部5aおよび6aは、せん断応力方向に沿って第一および第二の分極電極7および8の隣接する指部7aおよび8aの間にある。
【0069】
下部電極5および7、圧電材料2、および上部電極6および8を含む、せん断力感知装置1の三つの層はそれぞれ、最低から最上部まで順番にスクリーン印刷される。電極7および8を使用してセンサを分極すると、異なる領域は、圧電材料のバルク内部に画定される。センサを、二つの異なる領域である、活性領域2aおよび不活性領域2bに分けることができる。活性領域は、圧電材料2内に画定される領域であり、ここで、誘導電界は、ほぼ長手方向であり(例えば、電気ベクトルE中のE成分は、略ゼロである)、信号は回収される。不活性領域は、逆に、電界が所望の配向ではない(例えば、ほとんど長手方向ではない)、圧電材料2内の領域である。一般的に、誘導電界がほとんどまたは略長手方向である活性領域の幅は、分極電極7および8の間の距離に応じて変化し得る。一部の実施形態では、活性領域は、電気ベクトルE中のE成分が、0ではない、および/またはE||分と略等しい大きさを有する、領域を含み得る。一部の実施形態では、不活性領域は、未使用であり得、またはほとんど未使用であり得る。
【0070】
この種類の計画を使用して信号を分極すると、「非活性」領域によって分割された、互いに隣り合う「センサアレイ」を得る。信号がセンサにより一旦分極されると、その管理により、正確な情報が「センサアレイ」から抽出される。
【0071】
分極相の間、分極電極7および8は給電され、圧電材料にほぼ水平の電界が生じる。一般的に、本開示の圧電材料を分極するために必要な電圧は、以前に公知の製造方法よりも、数オーダー小さいものであり得る。これは、スクリーン印刷によって形成される、圧電材料の比較的小さな厚さに起因し得る。一部の実施形態では、分極相の間に分極電極7および8に印加される電圧は、せん断応力方向Sに分極電極7および8の間の距離で、約2~約3kV/mmであり得る。一部の実施形態では、分極相の間に分極電極7および8に印加される電圧は、約1kV/mm以下、約1~約2kV/mm、または約3kV/mm以上であり得る。圧電材料を分極するために分極電極7および8に印加される電圧は、例えば、分極および読出電極5、6、7、8の大きさ、形状、および位置、ならびに圧電材料の種類または厚さなどに応じて変化し得る。
【0072】
分極相の間、読出電極5および6は、浮遊電位または固定かつ等電位のいずれかに保持され、近くの電界の歪みを回避する。
【0073】
読出段階の間、分極電極7および8は使用されないが、原位置のままである一方、読出電極5および6は、圧電材料2の変形によって生成される信号を回収する。
【0074】
圧電材料を原位置で分極する能力は、センサの製造工程の前または間に圧電材料が分極される製造方法とは対照的である。原位置での分極により、本開示の圧電材料は、センサが製造され、アプリケーション内に設置された後、分極可能になる。圧電材料の原位置での分極は、一般的に、分極されるために低電圧を必要とする、スクリーン印刷された圧電材料の比較的小さな厚さに部分的に起因して、可能である。結果として、アプリケーションが提供する電源は、センサを原位置で、すなわち、センサがアプリケーションに設置される間に、分極するのに十分であればよい。したがって、本開示の圧電センサは、他の製造方法とは対照的に、圧電材料が分極され得る時期に柔軟性をもたせている。
【0075】
特定の実装において、本開示の圧電材料は、センサ自体の製造工程中に分極され得る。例えば、圧電材料は、分極電極7および8が、圧電材料のシート2上にスクリーン印刷された直後に、分極され得る。
【0076】
一部の実施形態であって、センサの製造工程中に圧電材料が分極される製造方法とは異なる実施形態では、本開示の圧電材料は、すでに最初に分極された後、アプリケーションに設置される間に再分極され得る。第二の実施形態では、第二の種類のセンサ1は、図4~6に表される。せん断力感知装置1は、複数の(例えば、六つの)電極を含む。特定の実装には、二つの第一の読出電極5、5’および単一の第一の分極電極7が、圧電材料のシート2の第一の主面3上に、二つの第二の読出電極6、6’および単一の第二の分極電極8が、圧電材料のシート2の第二の主面4上に含まれる。二つの第一の読出電極5、5’および一方の第一の分極電極7は、同一平面上にあり、相互嵌合される。二つの第二の読出電極6、6’および単一の第二の分極電極8は、同一平面上であり、相互嵌合される。二つの第一の読出電極および対応する二つの第二の読出電極5、6および5’、6’の各々は、読出方向Rに沿って整列した指部5a、6aおよび5’a、6’aの指部を有する。第一および第二の分極電極7および8の指部7aおよび8aは、せん断応力方向Sに沿ってオフセットを有する。二つの第一および第二の読出電極5、5’および6、 6’の各対の整列した指部5a、6aおよび5’a、6’aは、せん断応力方向Sに沿って、第一および第二の分極電極7および8の隣接する指部7aと8aとの間にある。
【0077】
(例えば、下部)電極5、5’および7、圧電材料2、および(例えば、上部)電極6、6’および8の三つの層は、それぞれ、最低から最上部まで順番にスクリーン印刷される。すでに上述したように、電極7および8を使用してセンサを分極すると、センサを活性領域2aおよび不活性領域2bに分けることができる。
【0078】
分極相の間、読出電極5、5’、6、6’は、浮遊電位または固定かつ等価電位のいずれかに保持され、近くの電界の歪みを回避する。
【0079】
読出段階の間、分極電極7および8は使用されないが、原位置のままである一方、読出電極5、5’、6、6’は、圧電材料2の変形によって生成される信号を回収する。
【0080】
二つの第一および二つの第二の読出電極5、6および5’、6’が、読出段階にあるため、読出電極の各組5、6および5’、6’は、符号が反対である二つの信号を回収する。
【0081】
したがって、図6に示すように、正確な情報を仮想の「センサアレイ」から抽出するために、これらの信号を結合しなければならない。
【0082】
電気読出回路では、信号Voutは、抵抗器Rを通して測定される。
【0083】
正確な信号の組み合わせを取得するために、圧電材料のシート2の対向する主面上に存在する組5、6および5’、6’の読出電極を、基準電位(接地電位)に接続することによって、電流Ip1およびp3を読出電極の組5、6から、電流Ip2およびIp4を読出電極の組5’、6’から回収する。
【0084】
2D有限要素シミュレーションから、好ましい実施形態でもある、電極の最も好都合な構成が、図2および図3に示した第一の種類のセンサであり、該センサは、読出電極が浮遊電位に保持される間に分極されることが導出される。このようにして、平行な面内(せん断)分極を有する圧電材料の容積は、読出電極の下の領域においても、増加および/または最大化される。すなわち、誘導電界がほとんどまたは略長手方向である、活性領域の幅は、増加または最大化され得る。
【0085】
本開示はまた、スマートブレーキパッドに関する。スマートブレーキパッドは、ブレーキパッド温度および/またはブレーキ中に作用する法線力およびせん断力を含む静的量および動的量などの一つ以上のパラメータを測定するために(例えば、適切なソフトウェアおよびハードウェアシステムアーキテクチャーおよびいくつかのアルゴリズムを用いて)構成された、センサ化されたブレーキパッドである。
【0086】
スマートブレーキパッド用のせん断力感知装置は、二つの平行な主面の各々に、一対のスクリーン印刷された相互嵌合電極を有する、スクリーン印刷された圧電材料のシートを含み得る。これらの主面は互いに平行であり、せん断力感知装置のせん断応力方向を識別する。一つの主面上の各電極は、せん断応力方向に対して直交する読出方向に沿って、他の主面上の対応する電極に整列する。すべての電極は、異なる相互接続を有するものの、初めは圧電材料のバルク分極、その後はせん断力信号のピックアップの両方に使用することが意図される。
【0087】
上述のようなせん断力感知装置1は、車両ブレーキパッド装置に組み込まれ得、「原位置で」分極され得る。
【0088】
ブレーキ装置は、支持プレート21、摩擦パッド20を含むブレーキまたはブレーキパッド100、および少なくともせん断力さらに好ましくは温度および/または法線力に関連する信号をリアルタイムで検出するためのセンサ1、11、13を備えた電気回路を含む。
【0089】
図7に示す実施形態では、ブレーキパッド100は、本開示に係る種類の少なくとも一つのせん断力センサ、少なくとも温度センサ11、および少なくとも法線力センサ13を備える。
【0090】
法線力センサは、圧電セラミックセンサを含み得るが、代替的に、容量性センサまたはピエゾ抵抗センサであり得る。
【0091】
温度センサは、PT1000、PT200、またはPT100などのサーミスタであり得る。
【0092】
電気回路22は、信号を該ブレーキパッド100から回収するための領域12に配列された電気端子を有する。支持プレート21は、好ましくは、金属で作製されるが、必ずしもその必要はなく、電気回路22を直接支持する。摩擦パッド20は、電気回路22が存在する支持プレート21の側面上に当てられ、電気回路22は、このため、支持プレート21と摩擦パッド20との間に組み込まれる。
【0093】
いくつかの実施形態では、ブレーキパッドは、センサ(圧電セラミック、圧電、容量式、圧電抵抗、ひずみゲージ、またはその他の力または変形センサ)を備えて、それは、主に四つの異なる部分である、バックプレート(金属サポート)、バックプレート上のセンシング層(電子回路、相互接続メディア、統合力および温度センサ)、ダンピング層(またはオプション層としての下層UL)、および摩擦材料層(摩擦材料FM)で構成される。
【0094】
スマートブレーキ装置は、オンボードアプリケーション用の無線システムに好適であるように、動作数および電子機器の電力予算を制限するために、限定数のセンサを含み得る。
【0095】
ブレーキパッドは、使用中、ブレーキされる要素、構成が容易で、かつ容易に使用できるブレーキ要素と接触する結果として、該ブレーキ要素に作用するブレーキ力に比例する電気信号を伝達することができる。
【0096】
せん断センサは、好ましくは、作動温度が200℃を超える、少なくとも0.2mmの圧電セラミック材料のシート厚さを有し得る。
【0097】
様々な実施形態において、せん断力センサにより、摩耗、残留抵抗、および/またはブレーキトルクの測定が可能である。
【0098】
センサ1、11、13が設置される電気回路22は、電気的に絶縁される。電気回路22は、センサ1、11、13を支持プレート21上の離散位置に配置するために、適切に形成された分岐を有する。電気回路22は、スクリーン印刷回路であり得る。図示したように、電気回路22を被覆し、摩擦パッド20と支持プレート21との間に介在する、ダンピング層23を含むことができる。
【0099】
ブレーキパッド100は、記載のように、制動対象となる要素との接触により、ブレーキ要素に作用する少なくともせん断力に比例する電気信号を送信するために、作業状態が可能な適切なセンサ1、11,13を備える。せん断力は、ブレーキパッド100上の制動トルクおよび/または残留制動トルクおよび/または摩耗を推定するために、処理可能である。
【0100】
ブレーキ装置は、車両のブレーキキャリパーに当てられる。特に、少なくともブレーキ装置は、各ブレーキキャリパーに対して含まれ、従って、例えば、少なくとも合計四つのブレーキ装置が車両に搭載される。
【0101】
特定のせん断力感知装置、システム、および製造方法が、特定の例示的な実施形態の文脈で開示されたものの、本開示の範囲が、具体的に開示された実施形態にとどまらず、他の代替の実施形態および/または実施形態の使用、ならびにその特定の修正および均等物までも網羅することは、当業者によって理解されるであろう。任意の構造体への使用については、本発明の範囲内で明示されている。開示された実施形態のさまざまな特徴および態様は、組立品の様々なモードを形成するために、互いに組み合わせるか、または置換することができる。本開示の範囲は、本明細書に記載される特定の開示された実施形態によって限定されるべきではない。
【0102】
別々の実装の文脈において本開示で説明される特定の特徴は、単一の実装で組み合わせて実施され得る。逆に、単一の実装の文脈で記載されるさまざまな特徴はまた、複数の実装で別々に、または任意の好適な部分組み合わせで、実施され得る。さらに、特定の組み合わせで作用するような特徴を上記に説明し得るが、特許請求のある組み合わせからの一つ以上の特徴は、いくつかの場合において、該組み合わせから削除可能で、該組み合わせは、任意の部分組み合わせまたは任意の部分組み合わせの変形として特許請求され得る。
【0103】
「上部(top)」、「底部(bottom)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」、「長手方向(longitudinal)」、「横方向(lateral)」、「端部(end)」など、本明細書で使用される配向の用語は、図示した実施形態の文脈で使用される。しかしながら、本開示は、図示された配向に限定されるべきではない。実際に、他の配向は可能であり、本開示の範囲内である。直径または半径など、本明細書で使用される円形形状に関連する用語が、完全な円形構造を必要としないことは理解されるべきであるが、むしろ、横断面から測定可能なる断面領域を有する任意の好適な構造に適用されるべきである。「円形(circular)」、「円筒形(cylindrical)」、「半円形(semi-circular)」、または「半円筒形(semi-cylindrical)」または任意の関連また類似の用語などの形状に一般的に関連する用語は、円または円筒またはその他の構造の数学的定義に厳密に適合する必要はないが、合理的に類似した近似物である構造体を包含することができる。
【0104】
「し得る(can)」、「できよう(could)」、「可能性がある(might)」、または「場合がある(may)」等の条件付き言い回しは、別途具体的に記載されない限り、または使用される文脈の範囲内で別途解釈されない限り、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、またはステップを含むまたは含まないということを伝達するように、一般的に意図する。従って、このような条件付き言い回しは、特徴、要素、および/またはステップが、一つ以上の実施形態に対し、いかなる形でも必要であることを暗示することを、一般的に意図しない。
【0105】
語句「X、Y、およびZのうちの少なくとも一つ(at least one of X, Y, and Z)」などの連言的言い回しは、別途具体的に記載されない限り、ある項目や用語などが、Xか、Yか、Zのいずれかであり得ることを伝えるのに一般的に用いられる文脈により別途解釈されるものである。従って、このような連言的言い回しは、特定の実施形態が、Xのうちの少なくとも一つと、Yのうちの少なくとも一つと、Zのうちの少なくとも一つの包含を要することを暗示することを、一般的に意図するものではない。
【0106】
本明細書で使用する「およそ(approximately)」、「約(about)」および「略(substantially)」という用語は、所望の機能をさらに実施または所望の結果をさらに達成する、記述された量に近い量を表す。例えば、一部の実施形態では、文脈が指定するように、「およそ(approximately)」、「約(about)」および「略(substantially)」という用語は、記述された量の10%以内の量を指し得る。本明細書で使用する「一般的に(generally)」という用語は、特定の値、量、または特性を主に含むまたはその傾向を有する値、量、または特性を表す。一例として、特定の実施形態では、文脈が指定し得るように、「略平行(generally parallel)」という用語は、厳密な平行から20°以下離れた状態を指し得る。
【0107】
いくつかの実施形態は、添付図面に関連して記載された。図は縮尺通りであるが、このような縮尺は、図示以外の寸法および比率を想定し、開示された本発明の範囲内とするため、限定して解釈されるべきではない。距離、角度などは単に例示であり、図示した装置の実際の寸法およびレイアウトとの正確な関係を必ずしも保持しない。構成要素を追加、削除、および/または再配列することができる。さらに、さまざまな実施形態に関連して、任意の特定の特徴、態様、方法、特質、特性、品質、属性、要素、またはこれに類するものの本明細書の開示は、本明細書に記載される他の全ての実施形態で使用することができる。さらに、本明細書に記載される任意の方法が、列挙したステップを実施するのに好適な任意の装置を使用して、実施され得ることは、認識されるであろう。
【0108】
せん断力感知装置、システムおよび製造方法のさまざまな例示的な実施形態が開示されている。装置、システム、および方法が、これらの実施形態の文脈において開示されたものの、本開示は、特に開示された実施形態にとどまらず、他の代替実施形態および/または実施形態の他の用途ならびにそれらの特定の修正例および均等物までも網羅する。本開示は、開示された実施形態の様々な特徴および態様を、互いに組み合わせることができ、または置換することができることを明示的に想定する。従って、本開示の範囲は、上述の特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないが、以下の特許請求の範囲、ならびにそれらの等価物の完全な範囲を公正に読み取ることによってのみ決定されるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】