(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】シスチン症の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/16 20060101AFI20230630BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230630BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230630BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230630BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230630BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/131 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20230630BHJP
A61K 33/04 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20230630BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A61K31/16
A61P3/00
A61P13/12
A61P27/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/131
A61K31/375
A61K31/198
A61K33/04
A61K31/085
A61K31/05
A61K31/685
A61K31/355
A61K31/194
A61K33/42
A61K31/047
A61K31/235
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575180
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 US2021036210
(87)【国際公開番号】W WO2021252373
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517159253
【氏名又は名称】ナキュイティ ファーマシューティカルズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】NACUITY PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ウォール ジー. マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ケアンズ ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヘクター エマ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA331
4C084ZA811
4C084ZC211
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4C206AA02
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4C206MA04
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4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA77
4C206MA80
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZA81
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、一般に、シスチン症を治療するためにN-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)を使用するための組成物及び方法の分野に関する。本発明はまた、シスチン症の眼科的、眼球又は角膜の影響を治療するために、NAC、NACA又はジNACAを使用する一般的分野に関する。本発明はまた、眼科用又は眼球挿入物での投与により、シスチン症の眼科的、眼球又は角膜の影響を治療するために、NAC、NACA、ジNACA、システアミン(又はシステアミン塩、例えば、塩酸塩若しくは他の塩)或いは任意の他のシスチン枯渇剤を使用する一般的分野に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるシスチン症の治療のための方法であって、N-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)の少なくとも1つの治療有効量を前記ヒト患者に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項2】
NACA又はジNACAが、薬学的に許容される担体内に、又はそれと共に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NACA又はジNACAが、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、後強膜近傍、前強膜近傍、眼球後方、局所、局所眼球、眼科用若しくは眼球挿入物によって、舌下、又は直腸内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
NACA又はジNACAが、生体内分解性若しくは非生体内分解性の眼科用又は眼球挿入物で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
NACA又はジNACAが、生体内分解性の眼科用又は眼球挿入物で1日1回又は2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
NACA又はジNACAが、1日1回又は2回交換される非生分解性の眼科用又は眼球挿入物で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NACA又はジNACAが、約0.01~150mg/Kgの1日用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NACA又はジNACAが、1日2回又は3回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
NACA又はジNACAが、1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
NACA又はジNACAが、第2の活性薬剤と共に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
NACA又はジNACAが、システアミン(又は任意の塩の形態)、N-アセチルシステイン、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
投与のための用量が、1用量当たり100、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000マイクログラムである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
投与のための用量が、1用量当たり100、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
NACA又はジNACAが、ミニ錠剤、錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
NACA又はジNACAが、予防的に与えられてシスチン症を予防するため、又は治療するために投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
NACA又はジNACAが、シスチン症に罹患した人間の体内の任意の場所でシスチンレベルを低減させるために投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
シスチン症の治療のための方法であって、
シスチン症の治療を必要とするヒトを特定するステップと、
眼科的、眼球又は角膜シスチン症を治療するのに十分な治療有効量のシスチン枯渇剤を眼科用又は眼球挿入物で前記ヒトに投与するステップと
を含む、前記方法。
【請求項18】
シスチン症の治療のための方法であって、
シスチン症の治療を必要とするヒトを特定するステップと、
眼科的、眼球又は角膜シスチン症を治療するのに十分な治療有効量のNAC又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)を眼科用又は眼球挿入物で前記ヒトに投与するステップと
を含む、前記方法。
【請求項19】
NAC又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)が、生体内分解性又は非生体内分解性の眼科用又は眼球挿入物で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
NAC又はシステアミン(若しくはその塩)が、生体内分解性の眼科用又は眼球挿入物で1日1回又は2回投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
NAC又はシステアミン(若しくはその塩)が、1日1回又は2回交換される非生分解性の眼科用又は眼球挿入物で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
NAC又はシステアミン(若しくはその塩)が、約0.01~150mg/Kgの1日用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
NAC又はシステアミン(若しくはその塩)が1日2回又は3回投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
NAC又はシステアミン(若しくはその塩)が1日1回投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
ヒト対象におけるシスチン症の治療のための方法であって、
シスチン症の治療を必要とするヒト患者を特定するステップと、
N-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)の少なくとも1つの治療有効量を前記ヒト患者に投与するステップと
を含む、前記方法。
【請求項26】
NACA又はジNACAが、システアミン、N-アセチルシステイン、システイン塩酸塩、又は他のシスチン枯渇剤の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月8日に出願された米国仮出願第63/036,286号の優先権を主張するものであり、その内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本願は、以下に関連する:Wall GM. Prodrug for the treatment of disease and injury of oxidative stress.2021年1月23日出願のPCT出願、PCT/US21/14819。Wall GM. Methods of Making Deuterium-Enriched N-acetylcysteine Amide (D-NACA) and (2R, 2R’)-3,3’-Disulfanediyl BIS(2-Acetamidopropanamide) (DINACA) and Using D-NACA and DINACA to Treat Diseases Involving Oxidative Stress.発行日2020年6月18日のオーストラリア特許AU2018365900B2(オーストラリア)。Wall GM. N-acetylcysteine amide (NACA) and (2R, 2R’)-3,3’-disulfanediyl bis (2-acetamidopropanamide) (diNACA) for the prevention and treatment of radiation dermatitis and skin lightening, skin whitening and skin improvement.2020年7月16日公開の国際公開WO2020146666A1。
【0003】
連邦政府資金による研究の記述
なし。
【0004】
本発明は、一般に、シスチン症を治療するためにN-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)を使用するための組成物及び方法の分野に関する。本発明はまた、シスチン症の眼科的、眼球又は角膜の影響を治療するために、NAC、NACA又はジNACAを使用する一般的分野に関する。本発明はまた、眼科用又は眼球挿入物での投与により、シスチン症の眼科的、眼球又は角膜の影響を治療するために、NAC、NACA、ジNACA、システアミン(又はシステアミン塩、例えば、塩酸塩若しくは他の塩)或いは他のシスチン枯渇剤を使用する一般的分野に関する。
【背景技術】
【0005】
シスチン症は、希少な遺伝的代謝疾患である。疫学。シスチン症の有病率は100,000~200,000人に1人と推定されている(非特許文献1)。米国人口328,239,523人(非特許文献2、2019年7月1日現在)に基づき、これは米国で1641~3282人の患者の有病率に等しい。
【0006】
シスチン症は、高い罹患率及び死亡率を伴う希少な常染色体劣性リソソーム病である(非特許文献3)。シスチン症は、シスチントランスポーターであるシスチノシンをコードするCTNS遺伝子の変異によって引き起こされ、リソソームのシスチン蓄積をもたらす。シスチン症には、3つの臨床型が存在する:乳児期又は早期発症腎性シスチン症、若年期又は晩期発症腎性シスチン症、及び成人(眼球のみ)シスチン症(非特許文献4)。乳児期腎性シスチン症は、最も重度かつ最も一般的(症例の約95%)な病型であり、通常生後1年以内に発症する。
【0007】
腎性シスチン症。1903年、Abderhaldenがシスチン貯蔵症を初めて記載した(非特許文献5)。シスチン症の人では、シスチン(アミノ酸)が体内の細胞に蓄積され、細胞がそれを除去することができない。シスチンが蓄積すると、細胞内にシスチン結晶を形成し、これらは腎臓、目、肝臓、筋肉、膵臓及び脳を含む身体の臓器に長期的な損傷をもたらす可能性がある。腎性シスチン症は、シスチン症の最も重度かつ最も一般的な型であり、全症例の95%を占める。腎性シスチン症は、腎臓及び全身の他の臓器に重度の損傷を引き起こす。腎性シスチン症は、一般的に女児より男児が多く罹患し、ヨーロッパ系の金髪碧眼の小児で最も多く発症する。しかし、あらゆる人種及び民族的背景の人が罹患する可能性がある。腎性シスチン症の症状は、通常小児の生後1年以内に出現する。この損傷は回復させることができないが、遅延又は低減させることができる(非特許文献6)。
【0008】
経時的に、腎性シスチン症は腎臓に損傷を引き起こす。この損傷により、腎臓は、必須栄養素を吸収し、体内の老廃物を濾過することが次第にできなくなり、これはファンコニ症候群として公知の障害である。ファンコニ症候群を有する人では、通常吸収される栄養素が腎臓を通過し、尿中に排除される(非特許文献6)。
【0009】
シスチン症は、多くの場合ファンコニ症候群を経て発症し、シスチン症の診断に至る。シスチン症は、白血球シスチンレベル検査によって発見することができる(非特許文献6)。
【0010】
シスチン症による損傷は元に戻すことができないが、シスチン枯渇治療であるシステアミンで遅延又は防止することができる(非特許文献6)。システアミンによる治療の結果は広範に異なり、研究では、システアミンはシスチン症の転帰を改善するが、治癒をもたらさないことが示された。したがって、過去10年間で、シスチン症は致死的な小児障害からある程度治療可能な障害へと発展した(非特許文献7)。しかし、代替的な治療戦略を見出す必要性が存在する。
【0011】
眼科的、眼球又は角膜シスチン症。腎性シスチン症に関連する眼球症状は、Burkiによって最初に報告された(非特許文献8)。角膜シスチン結晶蓄積は、シスチン症の3つの型すべての共通的な症状であり、重複して異なる重症度の連続体を形成する(非特許文献9)。角膜の変化は、シスチン症における最も一般的な症候性の眼球合併症である(非特許文献10)。乳児期腎性シスチン症では、16カ月齢までに角膜の全層にシスチン結晶が沈着する(非特許文献11)。インビボ共焦点顕微鏡及び前眼部光干渉断層撮影試験により、結晶は主に前部角膜実質内(the anterior corneal stroma)に集中することが示されている(非特許文献4)。結晶は、結膜、虹彩及び毛様体を含む他の前眼部構造にも蓄積する(非特許文献12、非特許文献10)。腎性シスチン症の治療に適応されるシステアミン経口療法の早期開始は、後眼部の眼球合併症の頻度を低減させることができるが、角膜のシスチン結晶には効果がないことを示している(非特許文献11)。角膜結晶は、入射光を回折させて散乱させ、この状態は古典的な羞明(又は光感受性)を生じ、羞明の重症度は間質(stroma)の結晶沈着の密度に関連する。高密度の角膜間質の変化は角膜上皮を不安定にし、点状角膜症、糸状角膜炎、及び再発性上皮びらんをもたらし、これらはすべて疼痛、角膜瘢痕、及び視力障害を引き起こす可能性がある(非特許文献10)。重篤な合併症には、重度の羞明(例えば、永久的にサングラスを着用する必要がある、照明のついた部屋、或いは照明のない部屋で目を開けるのを躊躇する)、帯状角膜症、角膜移植を必要とする再発性上皮びらん(非特許文献13、非特許文献9)及び網膜症(非特許文献10非特許文献11、非特許文献14)が含まれる。
【0012】
シスチン症の眼科的影響の病態生理。角膜におけるシスチン沈着は、シスチン症の最も早期の症状の1つであり、これも通常1歳前に発症するが、ほとんどの場合16カ月齢までに発症する(非特許文献11、非特許文献15)。インビボ共焦点顕微鏡及び前眼部光干渉断層撮影試験により、結晶は多くの場合前部角膜間質内に集中することが示されている(非特許文献4)。結晶は、結膜、虹彩及び毛様体を含む他の前眼部構造(非特許文献12、非特許文献3、非特許文献10)だけでなく、後部構造(非特許文献11、非特許文献14)にも蓄積する。ある症例報告では、18歳の少年が12歳以降、進行性で重度の羞明及び眼瞼痙攣を経験し、学校に出席する能力及び日常生活の機能に支障をきたしたため、角膜移植を必要とした(非特許文献13)。彼の眼球組織の分析では、角膜間質、結膜及び虹彩に予想された結晶の発見に加え、薄くなったボーマン膜の破損も明らかになった。これらの離散的な破損は、シスチン結晶の沈着と相まって、高齢の腎性シスチン症患者で重症度及び頻度が進行する再発性角膜びらん、疼痛及び羞明の一因となる可能性がある。シスチン結晶がボーマン膜の破損から押し出されると、その基底に角膜の求心性知覚神経が位置する、上を覆う上皮の慢性的な刺激を引き起こし、過度の眼痛の原因となる可能性がある。さらに、虹彩の結晶の著しい蓄積は、重度であり得る羞明の原因となる可能性があり、一日中サングラスを着用する必要性が生じ、照明のついた場所、或いは照明のない場所で目を開けることができなくなる。
【0013】
シスチン症の眼科的影響の臨床症状。結晶は、周辺部及び前中心部の間質全体に存在する場合がある。重度の場合、間質全体に結晶が存在し、角膜は霞んだすりガラス状の外観を呈する。その他の症状は、異物感、帯状角膜症、重度のドライアイ、フィラメント及び角膜縁血管新生を含み得る。長期的な合併症は、虹彩の肥厚及び徹照、並びに瘢痕化を生じ、正常な流体移動を妨げ、閉塞隅角緑内障及び眼球癆、結晶を伴う瞳孔膜の形成に至ることがある虹彩後癒着の発生を含み得る(非特許文献10)。未治療のシスチン沈着は時間と共に悪化し、しばしば羞明、眼不快感、霧視、並びに重症例では帯状角膜症及び再発性上皮びらんを引き起こし、角膜移植を必要とする(非特許文献13、非特許文献9)。
【0014】
208名の乳児期腎性シスチン症患者の研究により、最も一般的な眼球後部の症状は、網膜色素上皮斑を伴う色素性変化であり、乳児期に早くも見られたことが明らかになった。すべての乳児期腎性シスチン症患者は、眼球前部と後部の両方を含む重大な眼科的症状を有していた(非特許文献11)。網膜症(すなわち、視力の障害又は喪失をもたらす網膜の疾患)の罹患率は、患者コホート[10歳未満(N=20)、10~19歳(N=75)、20~29歳(N=47)、30歳以上(N=16)の網膜症関連症状を有する患者]で、システアミン経口療法を0~10年間受けた患者で60%であった。高齢患者では、中等度から重度の視野狭窄、並びに杆体及び錐体媒介網膜電図(ERG、electroretinogram)応答の中等度から重度の低減が観察された。その他の報告頻度の低い目の異常として、緑内障、色素性網膜症、網膜変性及び視神経の隆起が挙げられる(非特許文献4)。さらに、Broyerら(非特許文献16)は、小児シスチン症患者における眼機能に関する重大な問題の発生について記載している。1名の患者は13歳からほぼ失明し、少なくとも8名の患者はERG応答が低減したと考えられる。また、頭蓋内圧の上昇による乳頭浮腫のため、視神経が損傷する場合がある。
【0015】
網膜変性は、色覚、視野、及び電気診断検査によって測定される視覚機能の障害と関連する(非特許文献10)。最後に、国立(米国)神経疾患・失明研究所眼科分室で検査された小児シスチン症患者(5週齢~7.5歳)11名中11名で、末梢眼底の色素障害が見られた。これらの小児のうち2名の組織学的観察により、網膜色素上皮の広範な変性及び喪失が網膜症に関連していることが示された。古典的なシスチン結晶の角膜沈着に先行することがあるため、末梢眼底の異常は、特別な診断的価値をもつ可能性がある。この網膜症の存在は、疾患の成人型には非存在であることが見出されたため、小児シスチン症に特有と思われる(非特許文献14)。
【0016】
シスチン症の眼科的影響の標準治療。システアミンによる特異的なシスチン枯渇治療は、現在のところシスチン症の治療の主力であり、ほとんどの組織におけるリソソームシスチンの枯渇を可能にする。経口システアミンは治癒的ではないが、全体の予後を改善し、末期腎疾患への進行を遅延させることができる(非特許文献4)。しかし、経口システアミン療法は、無血管の角膜組織には到達しない(非特許文献4)。また、身体障害性の眼症状に対して角膜移植が行われているが、角膜形成術後に結晶が再蓄積する場合がある(非特許文献9)。
【0017】
現在、シスチン症患者における眼球シスチン結晶蓄積の治療に適応される唯一のFDA承認治療は、排除することができる混合ジスルフィドを形成することにより、細胞からシスチンを除去する塩酸システアミン塩酸塩点眼薬(CYSTARAN(登録商標)又はCYSTADROPS(登録商標))である。標準的な慣行は、眼科検査で角膜結晶が最初に証明された時点で局所療法を開始することである(Bishop et al., 2015)。しかし、システアミン点眼薬には大きな制限がある。システアミン点眼薬は、点眼時に有痛であり(刺痛感)、角膜上皮への浸透が悪く、シスチン結晶が大量に沈着する間質において薬物が低濃度になる(非特許文献17)。また、多くの局所点眼薬と同様に、システアミン点眼薬は眼球表面での滞留時間が短いことが公知であるため、繰り返しの(例えば、CYSTARAN(登録商標)では覚醒時間ごと、1日12回)治療の投与が必要であり、これがコンプライアンスの低下につながる可能性がある(非特許文献17)。レジメン(regimen)はほとんどの患者にとって達成が困難であり、それを遵守できない患者は、CYSTARAN(登録商標)点眼薬を少なくとも1日6回使用するよう勧められる。さらに、一部の患者は、適用時に点眼薬が刺痛感を引き起こすと訴える(非特許文献18)。システアミン水溶液は、システアミンが酸化してその不活性型となるため室温では不安定であり、効力を失い、その過程で不快な臭いを放つ(非特許文献18)。そのため、調剤するまでは-20℃で保存し、開封後は冷蔵保管し、貯蔵寿命は1週間と限られている(非特許文献9)。安全性及び有効性が実証されているにもかかわらず、システアミン点眼薬は、疼痛(刺痛感)を生じ、低い有効性を示し(覚醒時間ごとに投薬が必要)、不安定で臭いがあり、低温保管する必要があり(不便で目に不快である)、開封から1週間後に廃棄しなければならず、それにより患者及び介護者のコンプライアンス及び生活の質に悪影響を与える。さらに患者は、保存要件により、頻繁に投薬するために点眼薬を携帯することができない。CYSTARAN(登録商標)療法でも、1年で目のわずか9%、6年でわずか30%までの改善が観察され[非特許文献19、患者247名(平均年齢13.8歳)]、シスチン沈着は自然治癒せず、経時的に羞明、再発性角膜びらん、二次眼瞼痙攣及び視力喪失の症状を伴う。
【0018】
全身システアミン療法は、無血管の角膜組織には到達せず、角膜の効果のために点眼薬を使用する必要がある。これらの薬物製品の利用可能性にもかかわらず(非特許文献20)、これらはすべて同じ有効成分であるシステアミンを組み込んでおり、シスチン症の治療に使用できる非毒性の新規薬剤に対する必要性が存在する。
【0019】
シスチン症の治療のために米国で販売されている薬物は、以下を含む。
【0020】
CYSTAGON(登録商標)(1994年米国)システアミン二酒石酸塩50、150mgカプセル。小児及び成人における腎性シスチン症の管理に適応される。有害事象:最も一般的な事象(>5%)は、嘔吐35%、食欲不振31%、発熱22%、下痢16%、嗜眠11%、及び発疹7%であった。保存:20°~25℃(68°~77°F)。光及び湿気から保護する。
【0021】
PROCYSBI(登録商標)(2013年米国、Raptor社)システアミン二酒石酸塩の遅延放出25若しくは75mgカプセル、又は75若しくは300mg顆粒剤分包。投与量:治療目標白血球(WBC)中シスチン濃度を達成するように用量を調整する。成人及び1歳以上の小児患者における腎性シスチン症の治療に適応される。有害事象:エーラス・ダンロス様症候群、皮疹、消化器(GI)潰瘍及び出血、CNS症状、白血球減少及び/又はホスファターゼ値上昇、良性頭蓋内圧亢進症。保存:調剤前は2℃~8℃(36°F~46°F)で保存する。患者は20℃~25℃(68°F~77°F)で保存する。光と湿気から保護する。
【0022】
CYSTARAN(登録商標)(2012年米国);メルカプタミンHCl溶液。投与量=覚醒時間ごとに1滴/目。シスチン症患者における角膜シスチン結晶蓄積の治療に適応される。有害事象:最も一般的な有害反応(発現率およそ10%以上)は、光に対する過敏症、発赤、目の疼痛/刺激、頭痛及び視野欠損である。保存:調剤まで-25℃~-15℃(-13°F~5°F)。使用前におよそ24時間解凍する。解凍したボトルは2℃~25℃(36°F~77°F)で最大1週間保存する。再凍結はしない。1週間の使用後に廃棄する。
【0023】
CYSTADROPS(登録商標)(2020年米国、Recordati社)(システアミン点眼液)0.37%溶液;投与量=覚醒時間中に1滴/目を1日4回。シスチン症の成人及び小児における角膜シスチン結晶沈着の治療に適応される。有害事象:最も一般的な有害反応(≧10%)は、目の疼痛、霧視、目の刺激、眼球充血、点眼部位不快感、目の掻痒、流涙増加及び眼球沈着物である。保管:最初の開封前:開封前に、新しい未開封のCYSTADROPS(登録商標)を36°F~46°F(2℃~8℃)で冷蔵庫で保存する。光から保護するために、ボトルを外箱に入れたままにする。最初の開封後:開封後は、開封済みのCYSTADROPS(登録商標)を68°F~77°F(20℃~25℃)の室温で保存する。開封後は冷蔵しない。点眼器ボトルは、光から保護するために外箱の中でしっかりと閉めたままにする。最初の開封から7日後に廃棄する。(非特許文献21)。
【0024】
最後に、シスチン症を治療するための方法を開示する特定の特許は、以下を含む:Recordati、oral cysteamine oral 米国特許第10,813,888B2号明細書;Cysteamine prodrugs, pharmaceutical compositions thereof, and methods of use、米国特許第9,630,917B2号明細書;及びMethods for storing cysteamine formulations and related methods of treatment、米国特許第10,143,665B2号明細書。
【0025】
これらの進歩にもかかわらず、バイオアベイラビリティが高く、有効で安定であり、及び/又は経口投与を含む日常使用に安全な、シスチン症の治療のための新規薬剤に対する必要性が残っている。さらに、目におけるバイオアベイラビリティが高く、有効で安定であり、目を刺激せず、及び/又は日常使用に安全であり、コンプライアンスを高めるために日常的に使用しやすい、眼科的、眼球又は角膜シスチン症の治療のための新規薬剤に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第10,813,888B2号明細書
【特許文献2】米国特許第9,630,917B2号明細書
【特許文献3】米国特許第10,143,665B2号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Genetic and Rare Disease Information Center Website, rarediseases.info.nih.gov/diseases/6236/cystinosis
【非特許文献2】US Census Bureau Quick Facts Website, www.census.gov/quickfacts/fact/table/US
【非特許文献3】Ariceta G, Giordano V, Santos F. Effects of long-term cysteamine treatment in patients with cystinosis. Pediatr Nephrol. 2019;34(4):571-578. doi:10.1007/s00467-017-3856-4
【非特許文献4】Emma F, Nesterova G, Langman C, Labbe A, Cherqui S, Goodyer P, Janssen MC, Greco M, Topaloglu R, Elenberg E, Dohil R, Trauner D, Antignac C, Cochat P, Kaskel F, Servais A, Wuhl E, Niaudet P, Van't Hoff W, Gahl W, Levtchenko E. Nephropathic cystinosis: an international consensus document. Nephrol Dial Transplant. 2014;29(Suppl 4):iv87-94. doi: 10.1093/ndt/gfu090. PMID: 25165189; PMCID: PMC4158338
【非特許文献5】Abderhalden E. Familiare cystindiathese. Z. Physiol. Chem. 1903;38:557
【非特許文献6】www.procysbi.com/About-Nephropathic-Cystinosis
【非特許文献7】David D, Princiero Berlingerio S, Elmonem MA, Oliveira Arcolino F, Soliman N, van den Heuvel B, Gijsbers R, Levtchenko E. Molecular Basis of Cystinosis: Geographic Distribution, Functional Consequences of Mutations in the CTNS Gene, and Potential for Repair. Nephron. 2019;141(2):133-146. doi: 10.1159/000495270. Epub 2018 Dec 14. PMID: 30554218
【非特許文献8】Burki E. Uber die cystinkrankheit im kleinkindesalter unter besonderer berucksichtigung des augenbefundes. Ophthalmologica 1941;101:257
【非特許文献9】Huynh N, Gahl WA Bishop RJ. Cysteamine ophthalmic solution 0.44% for the treatment of corneal cystine crystals in cystinosis, Expert Review of Ophthalmology 2013;8(4):341-345. DOI: 10.1586/17469899.2013.814885
【非特許文献10】Bishop RJ, Hohenfellner K, Lian H. Ophthalmology cystinosis forum morning session. EMJ Nephrol 2017;5(S4):2-9
【非特許文献11】Tsilou ET, Rubin BI, Reed G, Caruso RC, Iwata F, Balog J, Gahl WA, Kaiser-Kupfer MI. Nephropathic cystinosis: posterior segment manifestations and effects of cysteamine therapy. Ophthalmology. 2006;113(6):1002-9. doi: 10.1016/j.ophtha.2005.12.026. Epub 2006 Apr 17. PMID: 16603246.
【非特許文献12】Tsilou ET, Rubin BI, Reed GF, Iwata F, Gahl W, Kaiser-Kupfer MI. Age-related prevalence of anterior segment complications in patients with infantile nephropathic cystinosis. Cornea. 2002;21(2):173-6. doi: 10.1097/00003226-200203000-00009. PMID: 11862089
【非特許文献13】Kaiser-Kupfer MI, Chan CC, Rodrigues M, Datiles MB, Gahl WA. Nephropathic cystinosis: immunohistochemical and histopathologic studies of cornea, conjunctiva and iris. Curr Eye Res. 1987;6(4):617-22. doi: 10.3109/02713688709025222. PMID: 3581880
【非特許文献14】Wong VG, Lietman PS, Seegmiller JE. Alterations of pigment epithelium in cystinosis. Arch Ophthalmol. 1967;77(3):361-9. doi: 10.1001/archopht.1967.00980020363014. PMID: 5297572
【非特許文献15】Nesterova G and Gahl WA. Infantile nephropathic cystinosis: standards of care. Cystinosis Research Network. 2012. Accessed 2021-05-19 at: cystinosis.org/wp-content/uploads/2019/01/CRN_StandardsOfCare_FINAL-1.pdf
【非特許文献16】Broyer M, Tete MJ, Gubler MC. Late symptoms in infantile cystinosis. Pediatr Nephrol. 1987;1(3):519-24. doi: 10.1007/BF00849263. PMID: 3153326
【非特許文献17】Pescina S, Carra F, Padula C, Santi P, Nicoli S. Effect of pH and penetration enhancers on cysteamine stability and trans-corneal transport. Eur J Pharm Biopharm. 2016;107:171-9. doi: 10.1016/j.ejpb.2016.07.009. Epub 2016 Jul 6. PMID: 27395395
【非特許文献18】Pinxten AM, Hua MT, Simpson J, Hohenfellner K, Levtchenko E, Casteels I. Clinical Practice: A Proposed Standardized Ophthalmological Assessment for Patients with Cystinosis. Ophthalmol Ther. 2017;6(1):93-104. doi: 10.1007/s40123-017-0089-3. Epub 2017 May 5. PMID: 28477325; PMCID: PMC5449308
【非特許文献19】Summary Basis of Approval NDA200740 accessed 7/9/2020 at: www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/nda/2012/200740Orig1s000SumR.pdf
【非特許文献20】Elmonem, et al., Orphanet Journal of Rare Diseases (2016) 11:47, page 13 of 17)
【非特許文献21】CYSTADROPSR Prescribing Information, accessed 2021-05-18 at: www.accessdata.fda.gov/
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
一実施形態によれば、本発明は、動物又はヒトにおけるシスチン症の治療のための方法であって、シスチン症を治療する、又はその症状を低減するのに十分な治療有効量のN-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)を動物又はヒトに投与するステップを含む、方法を提供する。本発明はまた、動物又はヒトにおけるシスチン症の眼科的影響の治療のための方法であって、動物又はヒトに、治療有効量のNAC、NACA又はジNACAを投与し、シスチン症の眼科的、眼球又は角膜の影響を治療するステップを含む、方法を提供する。本発明はまた、動物又はヒトにおけるシスチン症の眼科的影響の治療のための方法であって、NAC、NACA、ジNACA又はシステアミン(若しくはシステアミン塩、例えば、塩酸塩若しくは他の塩)を含有する眼科用又は眼球挿入物での投与により、治療有効量のNAC、NACA、ジNACA若しくはシステアミン(又はシステアミン塩、例えば、塩酸塩若しくは他の塩)を動物又はヒトに投与するステップを含む、方法を提供する。NACA(NPI-001)及びジNACA(NPI-002)は、ヒトシスチン症細胞培養物における細胞毒性の欠如及びヒトシスチン症細胞培養物におけるシスチンの枯渇に関してシステアミンと比較された。
【0029】
驚くべきことに、ヒトシスチン症細胞培養物における細胞生存率の本発明の試験において、すべての濃度のNACA(NPI-001)は、72時間後のヒトシスチン症細胞の生存率の増加に関して、同じ濃度のシステアミンよりも統計的に優れていた(
図2)。また驚くべきことに、最低濃度の25μMのジNACA(NPI-002)は、48又は72時間後のヒトシスチン症細胞の生存率の増加に関して、同じ濃度のシステアミンよりも統計的に優れていた(
図1及び
図2)。
【0030】
驚くべきことに、ヒトシスチン症細胞培養物におけるシスチン枯渇活性の本発明の試験において、NACAは6、24、48及び72時間後にシステアミンよりも優れていた(
図3~6)。また驚くべきことに、ジNACAは6、24及び48時間後にシステアミンよりも優れていた(
図3~5)。また驚くべきことに、NACAは6、24及び48時間後にシステアミンより統計的に優れていた(
図3~5)。また驚くべきことに、ジNACAは6及び48時間後にシステアミンよりも統計的に優れていた(
図3及び5)。
【0031】
N-アセチルシステイン(NAC)は、アセトアミノフェンの過剰摂取によって生じる肝毒性に対する解毒剤として米国FDAに承認されているチオール含有抗酸化剤であり、過剰な及び/又は濃い粘液生成などを伴う呼吸器の状態に対する粘液溶解療法を含む臨床用途に50年以上使用されている(Kelly GS. Clinical applications of N-acetylcysteine. Altern Med Rev J Clin Ther. 1998;3(2):114-27)。また、経口NACは、おそらく酸化ストレスを低減するその抗酸化作用によってシスチン症を改善することが示されている(Guimaraes LRDF, Seguro AC, Shimizu MHM, Neri LAL, Sumita NM, Breganca ACD, Volpini RA, Sanches TRC, Fonseca FAMD, Filbo CAM, Vaisbach MH. N-acetyl-cysteine is associated to renal function improvement in patients with nephropathic cystinosis. Pediatric Nephrol 2013 published online DOI 10.1007/s00467-013-2705-3、Vaisbich MH, Pache de Faria Guimaraes L, Shimizu MH, Seguro AC. Oxidative stress in cystinosis patients. Nephron Extra. 2011 Jan;1(1):73-7. doi: 10.1159/000331445. Epub 2011 Sep 19. PMID: 22470381; PMCID: PMC3290844)。腎代替療法を行っていないシスチン症患者の3カ月の試験において、経口システアミンと経口NACは酸化ストレスを低減し、腎機能を有意に改善した(Guimaraes LRDF, Seguro AC, Shimizu MHM, Neri LAL, Sumita NM, Breganca ACD, Volpini RA, Sanches TRC, Fonseca FAMD, Filbo CAM, Vaisbach MH. N-acetyl-cysteine is associated to renal function improvement in patients with nephropathic cystinosis. Pediatric Nephrol 2013 published online DOI 10.1007/s00467-013-2705-3)。しかし、NACの使用には、低い膜浸透性、低い全身的(Ates B, Abraham L, Ercal N. Antioxidant and free radical scavenging properties of N-acetylcysteine amide (NACA) and comparison with N-acetylcysteine (NAC). Free Radic Res. 2008;42(4):372-7、Kahns AH, Bundgaard H. Prodrugs as drug delivery systems. 107. Synthesis and chemical and enzymatic hydrolysis kinetics of various mono- and diester prodrugs of N-acetylcysteine. Int J Pharm. 1990;62(2):193-205)バイオアベイラビリティを含む制限がある。N-アセチルシステインアミド(NACA;NPI-001)は、NACよりも親油性が高く、したがって細胞透過性が高く、特定の障害における有効性の改善をもたらすはずである(Sunitha K, Hemshekhar M, Thushara RM, Santhosh MS, Yariswamy M, Kemparaju K, Girish KS. N-Acetylcysteine amide: a derivative to fulfill the promises of N-Acetylcysteine. Free Radic Res. 2013 May;47(5):357-67. doi: 10.3109/10715762.2013.781595. Epub 2013 Apr 8. PMID: 23472882、Atlas D, Melamed E, Ofen D. Brain targeted low molecular weight hydrophobic antioxidant compounds [Internet]. US5874468 A 1999 accessed at: www.google.com/patents/US5874468)。NACAの主要代謝産物はNACである。NACはシスチン症に有効であることが示されているため、NACA(NACの親油性プロドラッグ)も有効であるはずである。
【0032】
NACAは、シスチン症の経口及び眼球治療に適応されるシステアミンのような第一級チオール基を含有する。第一級チオールNACAは、システアミンと同様に、シスチンと反応して混合ジスルフィドを形成するはずである。証拠として、組織中の総NACAの分析法の開発中に、組織中で自発的に形成されたNACA-混合ジスルフィドを還元する試薬が必要であったという事実が挙げられる(King B; Vance J; Wall GM; Shoup R. Quantitation of free and total N-acetylcysteine amide and its metabolite N-acetylcysteine in human plasma using derivatization and electrospray LC-MS/MS. J Chrom B 2019;1109:25-36)。
【0033】
ジNACAは、NACAとNACのプロドラッグである(PCT/US21/14819)。
【0034】
他の公知の抗シスチン症剤は、NACA及びジNACAと化学構造の類似性を有するが、それとは異なる(Buchan B, Kay G, Henegan A, Matthews KH, Cairns D. Gel formulations for treatment of the ophthalmic complications in cystinosis. Int. J. Pharmaceutics, 2010; 392(1-2);192-197. doi: 10.1016/j.ijpharm.2010.03.065. Epub 2010 Apr 9.PMID: 20382212、Buchan B, Kay G, Matthews KH, Cairns D. Suppository formulations as a potential treatment for nephropathic cystinosis. J Pharm Sci 2012;101(10):3729-38. doi: 10.1002/jps.23246. Epub 2012 Jul 6.PMID: 22778070、McCaughan B, Kay G, Knott R, Cairns D. A potential new prodrug for the treatment of cystinosis: design, synthesis and in-vitro evaluation. Bioorg Med Chem Letters 2008;18(5):1716-9. doi: 10.1016/j.bmcl.2008.01.039. Epub 2008 Jan 18、Omran Z, Maloney KA, Benylles A, Kay G, Knott R, Cairns D. Synthesis and in vitro evaluation of novel pro-drugs for the treatment of nephropathic cystinosis. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011a;19:3492-3496、Omran Z, Kay G, Slvo AD, Knott R, Cairns D. PEGylated derivatives of cystamine as enhanced treatments for nephropathic cystinosis. Bioorg Med Chem Letters 2011b;21:45-47、Omran Z, Kay G, Hector EE, Knott RM, Cairns D. Folate pro-drug of cystamine as an enhanced treatment for nephropathic cystinosis. Bioorg Med Chem Lett. 2011c;21(8):2502-4. doi: 10.1016/j.bmcl.2011.02.048. Epub 2011 Feb 23. PMID: 21397500)。
【0035】
過酸化脂質(酸化ストレス)のバイオマーカーであるチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)のレベルの上昇がシスチン症患者の血清中に見出されており(Vaisbich MH, Pache de Faria Guimaraes L, Shimizu MH, Seguro AC. Oxidative stress in cystinosis patients. Nephron Extra. 2011 Jan;1(1):73-7. doi: 10.1159/000331445. Epub 2011 Sep 19. PMID: 22470381; PMCID: PMC3290844、Guimaraes LRDF, Seguro AC, Shimizu MHM, Neri LAL, Sumita NM, Breganca ACD, Volpini RA, Sanches TRC, Fonseca FAMD, Filbo CAM, Vaisbach MH. N-acetyl-cysteine is associated to renal function improvement in patients with nephropathic cystinosis. Pediatric Nephrol 2013 published online DOI 10.1007/s00467-013-2705-3)、この観察は、酸化ストレスの増加がシスチン症の病因に関与していることを示唆する。NACAは、多くの疾患において酸化ストレスを低減するため(Sunitha K, Hemshekhar M, Thushara RM, Santhosh MS, Yariswamy M, Kemparaju K, Girish KS. N-Acetylcysteine amide: a derivative to fulfill the promises of N-Acetylcysteine. Free Radic Res. 2013 May;47(5):357-67. doi: 10.3109/10715762.2013.781595. Epub 2013 Apr 8. PMID: 23472882)、シスチン症においても酸化ストレスを低減するはずである。同様に、ジNACAは、組織における酸化ストレスを低減することが示されたため(PCT/US21/14819)、シスチン症における酸化ストレスも低減するはずである。NACA及びジNACAは、酸化ストレス条件から皮膚細胞培養物を保護するため(Neil J; Wall GM; Brown M. Antioxidant Effects of N-acetylcysteine Amide and NPI-002 on Human Skin or Equivalents. AAPS PharmSci360, Poster Abstract, October 26-November 5, 2020)、シスチン症における酸化ストレスも低減するはずである。
【0036】
他の研究は、NACAが網膜色素上皮(RPE、retinal pigmented epithelial)細胞培養物を酸化ストレス条件から保護することを示している(Schimel et al., 2011)。
【0037】
一態様では、NACA又はジNACAは、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に提供される。別の態様では、NACA又はジNACAは、眼内、網膜下、硝子体内、後強膜近傍、経口、静脈内、筋肉内、局所、舌下、局所眼球、眼球インプラント、眼球挿入物を介して、又は直腸内に投与される。別の態様では、NACA又はジNACAは、約0.5~150mg/Kgの1日用量で投与される。別の態様では、NACA又はジNACAは、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACA又はジNACAは、アスコルビン酸、システアミン(任意の塩の形態)、システイン塩酸塩、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、butylated hydroxyanisole)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、butylated hydroxytouene)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。1用量当たり0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10ミリグラムである。別の態様では、NACA又はジNACAは、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠(dual release)、混合放出錠(mixed release)、サシェ剤、散剤、眼科用若しくは眼球挿入物、点眼薬、眼球インプラント又は液剤を介して経口送達される。別の態様では、動物は、ヒトである。
【0038】
別の実施形態によると、本発明は、眼科用又は眼球挿入物で投与されるNAC又はシステアミン(任意の塩の形態)によるシスチン症の眼科的影響の治療のための方法を含む。別の態様では、NACA又はシステアミン(任意の塩の形態)は、約0.5~150mg/Kgの1日用量で投与される。別の態様では、NACA又はシステアミン(任意の塩の形態)は、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACA又はシステアミン(任意の塩の形態)は、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、NACA、ジNACA、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
ここで、本発明の特色及び利点のより完全な理解のために、本発明の詳細な説明を添付の図と共に参照する。
【
図1】25、50又は75μMのシステアミン、NACA(NPI-001)、ジNACA(NPI-002)それぞれへの曝露後対処理なしの、48時間のヒトシスチン症線維芽細胞の生存率を示す。
【
図2】25、50又は75μMのシステアミン、NACA(NPI-001)、ジNACA(NPI-002)それぞれへの曝露後対処理なしの、72時間のヒトシスチン症線維芽細胞の生存率を示す。
【
図3】50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後6時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。
【
図4】50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後24時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。
【
図5】50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後48時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。
【
図6】50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後72時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を、以下により詳細に論じるが、本発明は、多種多様な特定の状況において具体化することができる、適用できる本発明の多くの概念を提供することが理解されるべきである。本明細書で論じられる特定の実施形態は、本発明を作製し、使用するための特定の仕方を単に例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
N-アセチルシステイン(NAC、N-acetylcysteine)は、以下の化学構造を有する。
【0042】
【0043】
N-アセチル-L-システインアミド(NACA)は、(R)-2-(アセチルアミノ)-3-メルカプト-プロパンアミド、N-アセチル-L-システインアミド、又はアセチルシステインアミドとしても公知であり、以下の化学構造を有する。
【0044】
【0045】
N-アセチルシステインアミド(NACA)は、N-アセチル-L-システイン(NAC、N-acetyl-L-cysteine)のアミド形態であり、NACの担体又はプロドラッグとして作用する。
【0046】
(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)は、以下の化学構造を有する。
【0047】
【0048】
(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)は、N-アセチル-L-システインアミドのダイマー形態であり、NAC又はシステインの担体又はプロドラッグとして作用する。
【0049】
NAC、NACA及びジNACAは、グルタチオン(GSH、Gluthathione)のレベルを増加させる。GSHは、すべての哺乳動物組織に見出されるトリペプチドである、c-L-グルタミル-L-システイニル-グリシンである。GSHは、求電子試薬の解毒作用、反応性酸素種(ROS、reactive oxygen species)の捕捉、タンパク質のチオール状態の維持、並びにビタミンC及びEの還元形態の再生を含む、いくつかの重要な機能を有する。GSHは、哺乳動物細胞において主要な非タンパク質チオールである。したがって、GSHは、細胞内の酸化還元バランス及びタンパク質の必須チオール状態の維持に必須である。また、いくつかの抗酸化物質酵素、例えばグルタチオンペルオキシダーゼの機能にとって必要である。
【0050】
細胞内GSHレベルは、産生と喪失のバランスによって決定される。産生は、GSSGレダクターゼによるGSSGからのGSHのデノボ合成及び再生から生じる。一般に、GSSGレダクターゼ系には、すべての細胞内GSHを還元状態で維持するのに十分な能力があり、したがって、その経路を増強することによって得られるものはほとんどない。細胞内GSHの喪失の主な供給源は、細胞からの輸送である。細胞内GSHレベルは1~8mMの範囲であり、一方、細胞外レベルは、わずか数μMである。この大きい濃度勾配は、本質的に、細胞へのGSHの輸送が起きないようにし、GSHが細胞から輸送されると、GSHはγ-グルタミルトランスペプチダーゼによって急速に分解される。GSHトランスポーターの阻害は、理論的には細胞内GSHレベルを増大することができたが、トランスポーターはGSHに対して特異的でなく、それらの抑制は、他のアミノ酸及びペプチドの不均衡をもたらすおそれがあるので、潜在的に問題がある。したがって、細胞内GSHレベルは、主に合成の変化によってモジュレートされる。
【0051】
GSHは、L-グルタミン酸+L-システイン+ATP[→]γ-グルタミル-L-システイン+ADP+Pi及びγ-グルタミル-L-システイン+L-グリシン+ATP[→]GSH+ADP+Piの2つのATP要求酵素ステップによって、事実上すべての細胞のサイトゾルにおいて合成される。最初の反応は律速的であり、グルタミン酸システインリガーゼ(GCL、glutamate cysteine ligase、EC6.3.2.2)によって触媒される。GCLは、様々な遺伝子によってコードされる、73Kdの重い触媒サブユニット(GCLC)及び30Kdの修飾因子サブユニット(GCLM)から構成されている。GCCLは、GSHの非アロステリック競合的阻害(Ki=2.3mM)により、及びL-システインの利用能により制御される。グルタミン酸についてのGLCの見かけのKmは、1.8mMであり、細胞内グルタミン酸濃度は、それよりもほぼ10倍高く、したがって、グルタミン酸は制限的ではないが、システインについてのKmは、0.1~0.3mMであり、これはその細胞内濃度に近い。第2の反応は、GSHシンターゼ(GS、GSH synthase、EC6.3.2.3)によって触媒され、これは118Kdであり、2つの同一サブユニットから構成されている。GSは、正常状態の下でのGSH合成の制御において重要であるとは思われないが、外科的外傷に応答してGSHレベル及びGS活性が低下した一方、GCL活性は変化しなかったので、GSは、ストレスの多い条件下で、ある役割を担うことができる。さらに、GCLC単独の発現増大と比較して、GCLC及びGSの両方の発現の増大は、より高いレベルのGSHをもたらした。合成酵素を増大する効果を最大限にするために、システインレベルを増大することが必要である。培養されたニューロンにおいて、システイン取込みの90%は、ナトリウム依存性興奮性アミノ酸トランスポーター(EAAT、excitatory amino acid transporter)系によって生じる。5種のEAATが存在し、ニューロンによるシステイン取込みは、主に、より一般には興奮性アミノ酸担体-1(EAAC1、excitatory amino acid carrier-1)として公知のEAAT3によって生じる。正常環境下では、ほとんどのEAAC1は、小胞体(ER、endoplasmic reticulum)に存在し、活性化されると初めて原形質膜に移動する。この移動は、グルタミン酸トランスポーター関連タンパク質3-18(GTRAP3-18、glutamate transporter associated protein)によって負に制御され、GTRAP3-18の抑制は、ニューロンにおけるGSHレベルを増大した。したがって、システインの内部移行は、GSH合成にとって障壁をもたらすが、幸いなことに、活性化EAAC1の非存在下でも細胞に容易に入るN-アセチルシステイン(NAC)によって、その障壁を迂回することができる。全身投与されたNACは、CNSに接近し、GSHレベルを増大し、酸化ストレスが病変形成の重要な部分である神経変性障害において利益をもたらす。
【0052】
細胞質、ミトコンドリア及び核を含むすべての細胞区画は、酸化的損傷から保護されなければならない。本発明者らは、反応性酸素種を解毒する酵素の遺伝子導入を予め実施したが、その手法は、細胞質における2種の酵素及びミトコンドリアにおける2種の酵素の発現を必要とする。それとは対照的に、本発明は、GSHが細胞中のあらゆる場所に拡散できるので、サイトゾルにおける2種の酵素の発現のみで、すべての細胞区画の保護を提供する。
【0053】
NACは、アセトアミノフェン過剰摂取の治療のために、負荷用量として140mg/kgに続いて、負荷用量の4時間後に開始して、17回の用量について4時間ごとに70mg/kgで使用される。臨床研究では、NACは、400~1000mgで1日1回及び200~600mgで1日3回、経口投与された。しかし、ヒトにおける600mgの経口投薬後、NACは急速に吸収され、次に急速に排除される。NACの血漿内半減期は、2.5時間であると報告され、投与の10~12時間後には、NACは検出不可能である。吸収中に、NACは、グルタチオンの直接的な前駆体であるシステインに急速に代謝される。ジNACAは、NACA及びNACのプロドラッグであり、NACAはNACのプロドラッグである(PCT/US21/14819)。
【0054】
眼科用点眼薬(点眼薬)及び軟膏製剤。点眼薬は、典型的に1若しくは2以上の活性成分の水性又は水性及び油性溶液、エマルション又は懸濁液であり、多用途包装で保存する場合は保存剤を含有してもよい。眼製剤は滅菌で等張である。点眼薬に最適なpHは涙液のものと同等であり、約pH7.4である。有効成分の安定性及び調製物に対する組織の耐性により、緩衝剤の要件が決定される。pHがpH4~8を超える場合、製剤は不快感及び/又は刺激(例えば、灼熱感、刺痛感)を引き起こすことがあり、流涙の増加のために薬物のバイオアベイラビリティが低下することがある(Baranowski P, Karolewicz B, Gajda M, Pluta J. Ophthalmic drug dosage forms: characterisation and research methods. Scientific World Journal. 2014 Mar 18;2014:861904. doi: 10.1155/2014/861904. PMID: 24772038; PMCID: PMC3977496)。成分は、クエン酸塩、リン酸塩又はホウ酸塩などの緩衝剤、水銀塩、ポリクオタニウム、亜鉛塩及びベンザルコニウム塩などの保存剤、グリセリンなどの滑沢剤、チロキサポールなどの界面活性剤、並びにポリソルベート、粘性調整剤、例えば生体膜中で拡散せず、水中で三次元ネットワークを形成する高分子量の親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポロキサマー、ヒアルロン酸、カルボマー及び多糖類、例えばセルロース誘導体、ジェランガム及びキサンタンガム、担体、例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(ポロキサマー407)、多くの親水基(カルボキシル、ヒドロキシル、アミド及び硫酸)を有する高分子ヒドロコロイドなどの粘膜付着性親水性ポリマー、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びキトサン、並びにレクチン、粘膜付着性を示す架橋ポリアクリル酸、例えばカルボマー及びカルボポール、並びにシクロデキストリンを含んでもよい(Baranowski P, Karolewicz B, Gajda M, Pluta J. Ophthalmic drug dosage forms: characterisation and research methods. Scientific World Journal. 2014 Mar 18;2014:861904. doi: 10.1155/2014/861904. PMID: 24772038; PMCID: PMC3977496)。
【0055】
軟膏は通常、体温に近い融点又は軟化点の固体又は半固体の炭化水素基剤を含有する(Baranowski P, Karolewicz B, Gajda M, Pluta J. Ophthalmic drug dosage forms: characterisation and research methods. Scientific World Journal. 2014 Mar 18;2014:861904. doi: 10.1155/2014/861904. PMID: 24772038; PMCID: PMC3977496)。
【0056】
担体は、ホスファチジルコリン、ステアリルアミン及び様々な量のコレステロール又はレシチン、及びα-L-ジパルミトイルホスファチジルコリンで構築されたリポソーム、エトキシル化コレステロール(コレステロールのエーテル及びポリエチレングリコール)とエトキシル化脂肪アルコール(セチルアルコールのエーテル及びポリエチレングリコール)の混合物である、ラノリンの誘導体であるSolulanC24、並びにポリアミドアミン(PAMAM、polyamidoamine)を含んでもよい(Baranowski P, Karolewicz B, Gajda M, Pluta J. Ophthalmic drug dosage forms: characterisation and research methods. Scientific World Journal. 2014 Mar 18;2014:861904. doi: 10.1155/2014/861904. PMID: 24772038; PMCID: PMC3977496)。
【0057】
点眼薬の剤形は、点眼が容易であるが、点眼された体積のほとんどが角膜前領域から排除され、バイオアベイラビリティが投与された総用量の1~10%の範囲になるという固有の欠点に悩まされる。点眼薬で投与された薬物の低いバイオアベイラビリティ及び角膜前の急速な排除は、主に結膜吸収、重力による急速な排液、誘発性流涙、瞬目反射、低い角膜透過性及び正常な涙のターンオーバーに起因する。眼のバイオアベイラビリティが低いため、多くの眼薬は高濃度で適用される。このことは、眼球と全身の両方の副作用の原因となり、目及び全身の循環における高いピーク薬物濃度にしばしば関連している。常に持続的な治療薬物レベルを維持するために、頻繁な定期的な点眼薬の点眼が必要である。これは、薬剤の大量かつ予測不可能な用量につながる可能性がある(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。
【0058】
懸濁液型の医薬剤形は、水溶性薬物の飽和溶液によって生じる耐え難いほど高い毒性を避けるために、水に比較的不溶性の薬物を用いて製剤化される。しかし、懸濁液からの薬物放出速度は、流涙液の一定の流入及び流出に伴ってその組成が絶えず変化する、媒体中の薬物粒子の溶解速度に依存する。(a)短い滞留時間、(b)薬物のパルス投薬、(c)頻繁な点眼、(d)大きな排出係数の制限を克服するために、眼科用挿入物を含む他の送達方法が利用される場合がある(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。
【0059】
眼科用挿入物。眼科用挿入物は、嚢(cul-de-sac)又は結膜嚢(conjunctival sac)内に配置され、そのサイズ及び形状が特に眼科適用のために設計された、滅菌の、薄い、多層の、薬物を含浸させた固体又は半固体のデバイスである。これらは、ポリマーマトリックス中に分散液又は溶液として組み込まれた薬物を含有するポリマー支持体から構成される。眼科用挿入物の主な目的は、調製物と結膜組織の間の接触時間を長くし、眼球表面への持続放出を確保することである。従来の眼科用調製物、すなわち点眼薬と比較して、固形眼科用挿入物は、(a)接触時間及びバイオアベイラビリティの増加、(b)薬物放出の延長及びそれによる有効性の向上、(c)副作用の低減、並びに(d)投与回数の低減及びそれによる患者のコンプライアンスの向上などの利点を提供することができる。挿入物の異物感は課題を呈する。不快感は患者のコンプライアンスの低下を招き、刺激に伴う過度の流涙は薬剤物を希釈し、その濃度を低減させる原因になる。適切に設計された眼球挿入物は、その挿入及び着用によって生じる感覚を最小限に抑える。制御放出眼球挿入物に所望される基準は、以下を含む:(1)取り扱い及び挿入の容易さ、(2)着用中の排除の欠如、(3)放出動態の再現性(例えば、0次薬物送達)、(4)多様な薬物への適用性、(5)視覚及び酸素透過性への非干渉、(6)滅菌性、(7)安定性、並びに/又は(8)製造の容易さ(Classification of patented ocular inserts, Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。
【0060】
拡散ベースの挿入物。拡散挿入物は、特別に設計された半透過性又は微多孔性膜に囲まれた薬物の中央リザーバから構成され、この膜は、薬物が正確に決定された速度でリザーバを拡散することを可能にする。このようなシステムからの薬物放出は、薬物をリザーバから追い出すのに十分な内圧に達するまで、膜を透過する涙液によって制御される。薬物送達速度は、膜を介した拡散によって制御される。中央リザーバは、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、水、水と混合されたメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリ(ビニルピロリドン)又はポリオキシエチレンステアレートから構成されてもよい。膜は、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、セルロースエステル、架橋ポリ(エチルオキシド)、架橋ポリビニルピロリドン、及び架橋ポリビニルアルコールから構成されてもよい(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。ミニディスクのためのコポリマーは、α-ω-ビス(4-メタクリロキシ)-ブチルポリ(ジメチルシロキサン)及びポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)を含み得る(Baranowski P, Karolewicz B, Gajda M, Pluta J. Ophthalmic drug dosage forms: characterisation and research methods. Scientific World Journal. 2014 Mar 18;2014:861904. doi: 10.1155/2014/861904. PMID: 24772038; PMCID: PMC3977496)。
【0061】
浸透圧挿入物。浸透圧挿入物は、一般に、周辺部に囲まれた中央部から構成される。中央部は、単一のリザーバから構成されてもよいし、2つの異なるコンパートメントから構成されてもよい。第1の場合、挿入物は、ポリマーマトリックス中に分散されるさらなる浸透圧溶質を含む又は含まない薬物から構成され、したがって薬物は、離散した小さな堆積物としてポリマーに取り囲まれる。第2の場合、薬物及び浸透圧溶質は2つの別々のコンパートメントに配置され、薬物リザーバは弾性不透過性膜で、浸透圧溶質リザーバは半透過性膜で取り囲まれている。浸透圧挿入物の第2の周辺部は、すべての場合において、不溶性の半透過性ポリマーから作製されたカバーフィルムを含む。涙液は、半透過性ポリマー膜を通して周辺の堆積物中に拡散し、湿潤して溶解を誘発する。可溶化された堆積物は、ポリマーマトリックスに対して静水圧を発生させ、開口部の形状下でその破裂を引き起こす。薬物は、静水圧のみによって、目に接するデバイスの表面付近の堆積物からこれらの開口部を通して放出される。これは、0次薬物放出プロファイルによって特徴付けられる浸透圧部分に相当する。水透過性マトリックスとして、エチレン-ビニルエステル、コポリマー、可塑化ポリ塩化ビニル(PVC、plasticized polyvinyl chloride)、ポリエチレン及び架橋ポリビニルピロリドン(PVP、polyvinylpyrrolidone)を挙げることができる。半透過性膜として、酢酸セルロース誘導体、エチルビニルアセテート(EVA、ethyl vinyl acetate)、又はアクリル酸及びメタクリル酸のポリエステル(Eudragit(登録商標))を挙げることができる。浸透圧剤として、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムなどの無機成分、又は乳酸カルシウム、コハク酸マグネシウム、酒石酸、ソルビトール、マンニトール、グルコース若しくはスクロースなどの有機成分を挙げることができる(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。
【0062】
挿入物としてのソフトコンタクトレンズ。ソフトコンタクトレンズは、水、水溶液又は固体成分を保持することができる3次元ネットワーク又はマトリックスを形成する、共有結合的に架橋された親水性又は疎水性ポリマーから構成される。親水性コンタクトレンズは、薬物溶液に浸漬させることによって薬物を吸収することができるが、一部の他の不溶性眼科用挿入物と比較して正確な送達を行うことができない。ソフトコンタクトレンズからの薬物放出は、一般に開始時に非常に速く、時間と共に指数関数的に減少する。この放出速度は、製造時に薬物を均質に組み込むか、又は疎水性成分を添加することによって低下させることができる(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。
【0063】
可溶性挿入物。可溶性挿入物は、最も古いタイプの眼科用挿入物である。これらは、完全に可溶性であるため、適用部位から取り外す必要がなく、したがって介入を挿入のみに限定するという大きな利点を提供する。これらは、コラーゲンのような天然ポリマー、又は合成若しくは半合成ポリマーを含有してもよい。治療剤は、目に使用する前に、薬物を含有する溶液に挿入物を浸漬させ、乾燥させ、再水和することによって吸収される。装填される薬物の量は、結合剤の量、薬物溶液の濃度及び浸漬時間に依存する。可溶性合成ポリマーとして、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール又はエチレン酢酸ビニルコポリマーを挙げることができる。添加剤として、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどの可塑剤、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びフタル酸などの腸溶性コーティングポリマー、ポリビニルピロリドンなどの錯化剤、並びにポリアクリル酸などの生体付着剤を挙げることができる(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。
【0064】
生分解性眼科用挿入物。生分解性又は生体内分解性挿入物は、薬物に対して実質的に不透過性である疎水性コーティング中に含まれる又は含まれない薬物の材料の均質な分散液から構成される。これらは、いわゆる生分解性ポリマーから作製される。眼科用の良好な生分解性材料は、ポリ(オルトエステル)及びポリ(オルトカーボネート)である。このようなシステムから薬物が放出されるのは、デバイスが涙液と接触し、マトリックスの表面転換を誘発する結果である(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。生分解性挿入物は、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、hydroxypropyl methylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、hydroxyethyl cellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、アクリレート、例えばポリアクリル酸及びその架橋形態、カーボポール又はカルボマー、キトサン、デンプン、例えばドラム乾燥ワキシートウモロコシデンプン、並びにマンニトール、ステアリルフマル酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ乳酸、ポリ(イプシロン-カプロラクトン)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)などのポリマー、キトサン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム及びアルブミンを含有してもよい(Baranowski P, Karolewicz B, Gajda M, Pluta J. Ophthalmic drug dosage forms: characterisation and research methods. Scientific World Journal. 2014 Mar 18;2014:861904. doi: 10.1155/2014/861904. PMID: 24772038; PMCID: PMC3977496)。
【0065】
NACA(NPI-001)経口剤形。NACAの経口剤形として、錠剤、カプセル、顆粒、溶液、懸濁液及びエマルションを挙げることができる。1つのNACA剤形である250mgの錠剤は、米国特許第10590073号明細書に記載されている。同様の剤形は、ジNACA(NPI-002)のために製剤化されてもよい。
【0066】
NACA、NACに対するプロドラッグとしてのジNACA(NPI-002)。PCT/US21/14819に記載されているように、ジNACA(NPI-002)は、NACA及びNACに対するプロドラッグとして作用し得る。
【0067】
一実施形態によれば、本発明は、対象における酸化ストレスと関連する疾患又は状態の防止、緩和、又は治療のための方法であって、治療有効量のNACAを投与して、対象の組織に発現するグルタチオンの量を増大するステップを含む、方法を提供する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「活性酸素種」又は「反応性酸素種」とは、スーパーオキシドであるO2’’形態を有するアニオン、又は式O2-’’若しくはO-O単結合を含有する化合物を有するペルオキシドアニオン、例えば過酸化水素及び過酸化脂質を産生する、1つ又は2つの電子の移動と理解される。このようなスーパーオキシド及び過酸化物は、反応性が高く、タンパク質、核酸、及び脂質を含む細胞構成成分に対して損傷を引き起こす場合がある。
【0069】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、治療活性がある化合物又は潜在的に治療活性がある化合物、例えば抗酸化物質を指す。薬剤は、既に公知の又は未知の化合物であり得る。本明細書で使用される場合、薬剤は、典型的に非細胞ベースの化合物であるが、薬剤には、生物学的治療剤、例えば、ペプチド又は核酸治療薬、例えば、siRNA、shRNA、サイトカイン、抗体などが含まれ得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「緩和」又は「治療」という用語は、特定の疾患又は状態の少なくとも1つの徴候、症状、適応症、又は影響を軽減又は減少させることを意味すると理解される。例えば、シスチン症の緩和又は治療は、視覚の低下、全体視力の低下、視野の低下、角膜又は他の眼球組織におけるシスチン結晶の沈着の低下、羞明の低下、又は疾患状態若しくは進行の任意の他の臨床的に許容される指標を含むがこれらに限定されないシスチン症の1又は2以上の徴候又は症状を低減、遅延又は排除することであってもよい。緩和及び治療は、単独で又は他の治療剤及び介入と連動して、薬剤の1つより多くの用量の投与を必要とし得る。緩和又は治療は、疾患又は状態が治癒されることを必要としない。
【0071】
本明細書で使用される場合、「抗酸化剤」という用語は、他の分子の酸化を遅らせる又は防止するための分子を指す。酸化は、物質から酸化剤に電子を移動する化学反応である。このような反応は、スーパーオキシドアニオン又は過酸化物によって促進され得るか、又はそれらを産生し得る。酸化反応は、フリーラジカルを産生することができ、それによって、細胞に損傷を与える連鎖反応が開始される。抗酸化物質は、フリーラジカル中間体を除去することによってこれらの連鎖反応を終了させ、それら自体が酸化されることによって他の酸化反応を阻害する。結果として、抗酸化物質は、チオール、アスコルビン酸又はポリフェノールなどの還元剤であることが多い。抗酸化物質には、α-トコフェロール、アスコルビン酸、Mn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン、α-リポ酸、及びN-アセチルシステインが含まれるが、それらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される場合、「同時投与」という用語は、薬剤が対象において同時に存在し活性であるように、1又は2以上の薬剤を対象に投与することを指す。同時投与は、薬剤の混和物の調製又は薬剤の並行投与を必要としない。
【0073】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「有効用量」という用語は、意図される薬理学的、治療的又は予防的な結果をもたらす、薬剤の量を指す。薬理学的有効量は、疾患若しくは状態の1若しくは2以上の徴候若しくは症状、又は疾患若しくは状態の進行の緩和をもたらすか、或いは疾患又は状態の退行を引き起こす。例えば、治療有効量は、好ましくは、未治療対照対象と比較して、視覚低下、全体的な視力低下、視野喪失を、規定された期間、例えば、2週間、1カ月間、2カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間、2年間、5年間、又はそれよりも長期間にわたって、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれよりも多く低減する、治療剤の量を指す。有効用量を提供するために、2以上の用量が求められる場合がある。
【0074】
本明細書で使用される場合、「有効な」及び「有効性」という用語は、薬理学的有効性及び生理的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、患者において所望の生物学的効果をもたらす、治療の能力を指す。生理的安全性は、毒性レベル、又は治療の投与から生じる、細胞、臓器及び/若しくは生物レベルの他の有害な生理学的効果(副作用と呼ばれることが多い)を指す。他方では、「無効な」という用語は、治療が、少なくとも非階層化集団において有害な効果の非存在下であっても、治療上有用になるのに十分な薬理学的効果を提供しないことを示す。(例えば、治療が、1又は2以上の発現プロファイルによって特定することができるサブグループにおいて無効であり得る)。「あまり有効でない」とは、治療が、治療的に著しいより低レベルの薬理学的有効性及び/又は治療的により高いレベルの有害な生理学的効果、例えば、より高い肝臓毒性をもたらすことを意味する。
【0075】
したがって、薬物の投与と関連して、疾患又は状態「に対して有効」である薬物は、臨床的に適切な方式での投与が、少なくとも有意な分率の患者にとって有益な効果、例えば症状の改善、治癒、疾患の徴候若しくは症状の低減、延命、生活の質の改善、又は特定のタイプの疾患若しくは状態の治療に精通している医師によって有益であると一般に認識される他の効果をもたらすことを示す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「酸化ストレス関連眼球疾患」という語句は、以下を含むがこれらに限定されない:シスチン症、白内障、加齢黄斑変性を含む黄斑変性、緑内障、老視、糖尿病網膜症、レーベル視神経症、視神経炎及び網膜色素変性症。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ペルオキシダーゼ」又は「ペルオキシド代謝酵素」という用語は、以下の形態の反応を典型的に触媒する、大きなファミリーの酵素を指す。
【0078】
ROOR1+電子供与体(2e-)+2H+→ROH+R1OH
【0079】
これらの酵素の多くについて、最適な基質は過酸化水素であるが(各Rは、Hである)、有機ヒドロペルオキシド、例えば過酸化脂質を用いる方が活性になるものもある。ペルオキシダーゼは、それらの活性部位においてヘム補因子、又は酸化還元活性があるシステイン若しくはセレノシステイン残基を含有することができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という語句は、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに適した、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを指す。担体には、身体のある臓器又は部分から身体の別の臓器又は部分への対象薬剤の担持又は輸送に関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は被包材料が含まれる。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者にとって傷害性でないという意味で「許容され」なくてはならない。例えば、細胞の投与のための薬学的に許容される担体は、典型的に、注射による送達に許容される担体であり、洗浄剤などの薬剤も、送達されることになる細胞を損傷するおそれがある他の化合物も含まない。薬学的に許容される担体として働くことができる材料のいくつかの例として、糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末化トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバター及び坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝薬剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに眼内送達にとって好ましい、医薬製剤において用いられる他の非毒性の適合性のある物質、特にリン酸緩衝食塩水溶液が挙げられる。
【0081】
湿潤剤、乳化剤及び滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び賦香剤、保存剤及び抗酸化物質が、組成物中に存在することもできる。
【0082】
薬学的に許容される抗酸化物質の例として、水溶性抗酸化物質、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化物質、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0083】
本発明の製剤には、経口、鼻腔、局所、経皮、口腔内頬側、舌下、筋肉内、腹腔内、眼内、硝子体内、後強膜近傍、前強膜近傍、眼球後方、脈絡膜上、網膜下及び/又は他の非経口投与経路に適したものが含まれる。特定の投与経路は、とりわけ、標的にされる特定の細胞に応じて決まる。製剤は、好都合には、単位剤形で提示することができ、調剤分野で周知のいかなる方法によっても調製することができる。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量である。
【0084】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2以上を意味すると理解される。例えば複数は、少なくとも2、3、4、5、又はそれよりも多いことを指す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」又は「ペプチド」という用語は、共有結合(例えば、ペプチド結合)によって接合した、2又は3以上の、独立に選択された天然又は非天然アミノ酸と理解される。ペプチドは、ペプチド結合によって接合した、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、又はそれよりも多い天然又は非天然アミノ酸を含むことができる。本明細書に記載されるポリペプチドには、全長タンパク質(例えば、完全に処理されたタンパク質)並びにより短いアミノ酸配列(例えば、自然に存在するタンパク質の断片又は合成ポリペプチド断片)が含まれる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「防止」という用語は、特に疾患又は障害を発症しやすい対象において、疾患又は状態の少なくとも1つの徴候又は症状を制限する、その発症の速度若しくは程度を低減する、又はその発症を抑制することとして理解される。例えば、オプシン遺伝子などの遺伝子に変異を有する対象は、シスチン症を発症する可能性が高い。疾患の1又は2以上の症状の発症年齢は、時として特定の変異によって決定される場合がある。防止は、シスチン症の1若しくは2以上の徴候又は症状の発症の遅延を含むことができ、対象の生涯を通じた疾患の少なくとも1つの徴候又は症状の出現の防止である必要はない。防止は、薬剤又は治療薬の1つより多くの用量の投与を必要とする場合がある。
【0087】
本明細書で使用される場合、「小分子」という用語は、約1500Da、1000Da、750Da、又は500Da以下の分子量を有する化合物、典型的に有機化合物を指す。一実施形態では、小分子には、天然アミノ酸及び/又はヌクレオチドのみを含むポリペプチド又は核酸は含まれない。
【0088】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、生物、特にヒトを指す。ある特定の実施形態では、生物は動物であり、ある特定の好ましい実施形態では、対象は哺乳動物であり、ある特定の実施形態では、対象は、家畜化哺乳動物又は非ヒト霊長類を含む霊長類である。対象の例として、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギ、及びヒツジが挙げられる。ヒト対象はまた、対象又は患者と呼ぶことができる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「に罹患している又は罹患の疑いがある」対象は、特定の疾患、状態、若しくは症候群が十分な数の危険因子を有するか、又は適任な個人が、対象が疾患、状態、若しくは症候群に罹患していると診断する若しくは疑うような十分な数若しくは組合せの疾患、状態、若しくは症候群の徴候若しくは症状を呈することを指す。シスチン症などの状態に罹患している、又は罹患の疑いがある対象を同定するための方法は、当業者の能力の範囲内である。特定の疾患、状態、又は症候群に罹患している、及び罹患の疑いがある対象は、必ずしも2つの異なる群ではない。
【0090】
本明細書で使用される場合、「スーパーオキシドジスムターゼ」という用語は、スーパーオキシドの、酸素及び過酸化水素への不均化をもたらす酵素と理解される。例として、SOD1、SOD2、及びSOD3が挙げられるが、それらに限定されない。Sod1及びSOD3は、哺乳動物に存在するCu-Zn含有スーパーオキシドジスムターゼ酵素の、2つのアイソフォームである。Cu-Zn-SOD又はSOD1は、細胞内空間に見出され、細胞外SOD(ECSOD又はSOD3)は、主に、ほとんどの組織の細胞外マトリックスに見出される。
【0091】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、細胞又は対象への単回又は複数回用量の投与時に、このような障害を有する患者の生存期間を延長し、障害の1又は2以上の徴候又は症状を低減し、このような治療の非存在下で予測されるものを上回って防止する又は遅延させるなどに有効な、薬剤の量を指す。
【0092】
薬剤又は他の治療介入は、従来の賦形剤、例えば、薬学的に許容される担体との混合物における医薬組成物として、又は治療的な治療として、単独で又は1若しくは2以上の追加の治療剤若しくは介入と組み合わせて、対象に投与することができる。
【0093】
医薬品は、好都合には、単位剤形で投与することができ、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., Easton, PA, 1985)に記載される通り、調剤分野において周知の方法のいずれかによって調製することができる。非経口投与のための製剤は、一般的な賦形剤、例えば滅菌水又は生理食塩水、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物起源の油、水素化ナフタレンなどを含有し得る。特に、生体適合性、生分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、ある特定の薬剤の放出を制御するのに有用な賦形剤であり得る。
【0094】
本発明は、シスチン症を治療するためのNACA及び/又はジNACAの使用を対象とする。一実施形態では、本発明は、ヒトにおけるシスチン症の治療のための方法であって、治療有効量のNACA及び/又はジNACAをヒトに投与するステップを含む、方法を含む。一部の実施形態では、NACA及び/又はジNACAは、薬学的に許容される担体内に又はそれと共に提供される。他の実施形態では、NACA及び/又はジNACAは、眼内、網膜下、硝子体内、後強膜近傍、前強膜近傍、眼球後方、脈絡膜上、経口、静脈内、筋肉内、局所、眼科的、眼球、舌下、又は直腸内に投与される。
【0095】
NAC、NACA、ジNACA及びそれらのそれぞれの内部標準のチオール部分は、ジスルフィドの形成により血漿中で速やかに酸化する。血漿中の総NAC及び総NACAレベルを決定するために、抽出中にトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP、tris(2-carboxyethyl)phosphine)を添加してジスルフィド結合を還元する(King B; Vance J; Wall GM; Shoup R. Quantitation of free and total N-acetylcysteine amide and its metabolite N-acetylcysteine in human plasma using derivatization and electrospray LC-MS/MS. J Chrom B 2019;1109:25-36)。炭酸水素アンモニウムを添加して試料pHを中性付近に制御するが、これは、そうでなければTCEPがアリコートされた試料を酸性化して誘導体化を妨げるためである。次に、遊離分析物を、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(CMPI、2-chloro-1-methylpyridinium iodide)を使用して安定なチオエーテルに誘導体化する。N-アセチル-L-システインを参照標準として使用する。アッセイは、存在する場合、エナンチオマーであるN-アセチル-D-システインを識別しない。25.0μLの試料体積を1.2mLの96ウェルプレートにアリコートし、そこに25.0μLの内部標準溶液(水中1000ng/mL NAC-D3及び1000ng/mL NACA-D3)、50.0μLの炭酸水素アンモニウム(100mM)、5.0μL CMPI(水中60mM)、並びに5.0μLのTCEP(水中60mM)を順に添加する。試料を30分間反応させる。タンパク質を沈殿させるために、すべての試料に500μLのアセトニトリルを添加する。プレートに蓋をし、混合物を振盪して遠心分離する。上清の50.0μLアリコートを、各ウェルから各ウェルに水-アセトニトリル(25-75)400μLを含有する清潔なプレートに移し、十分に混合してからLC-MSに注入する。
【0096】
LCMS分析のためのNAC及びNACAのチオエーテル誘導体
【0097】
【0098】
試料は、ESIイオン化を備えたThermo Scientific TSQ Vantage三連四重極質量分析計とインターフェースされたWaters Acquity液体クロマトグラフで分析した(King B; Vance J; Wall GM; Shoup R. Quantitation of free and total N-acetylcysteine amide and its metabolite N-acetylcysteine in human plasma using derivatization and electrospray LC-MS/MS. J Chrom B 2019;1109:25-36)。各抽出試料を、35℃で平衡化したWaters BEH HILICカラム(2.1x100mm;1.7μm)に注入する(5.0μL)。移動相Aはギ酸アンモニウムである(25mM、pH3.8)。移動相Bはアセトニトリルである。LC勾配(gradient)を以下の表に示す:
【0099】
【0100】
各化合物の保持時間、質量遷移及び前駆体電荷状態は以下の通りである。以下の質量は、CMPIチオエーテル誘導体のものである。
【0101】
【0102】
N-アセチル-L-システイン及びN-アセチルシステインアミドについて、校正標準応答からのピーク面積比を(1/濃度2)線形適合を使用して回帰する。ジNACAを同様に定量する。
【0103】
所与の療法において使用される活性化合物の実際の好ましい量は、例えば、利用されている特定の化合物、製剤化された特定の組成物、投与様式、並びに対象の特徴、例えば対象の種、性別、体重、全体的な健康状態及び年齢に従って変わることを理解されよう。所与の投与プロトコルに最適な投与速度は、前述の指針に関して実施された従来の投与量決定試験を使用して、当業者によって容易に確認され得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、本発明の実施形態は、薬学的に許容されるその誘導体を含むと定義される。「薬学的に許容される誘導体」とは、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物を(直接的又は間接的に)提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的塩、エステル、エステルの塩、又は他の誘導体を意味する。特に好都合な誘導体は、このような化合物が哺乳動物に投与される場合、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増大するか(例えば、経口投与された化合物がより容易に血中に吸収されるようにして、血清安定性を増大するか、又は化合物のクリアランス率を低減することによって)、又は親種と比べて、生物学的区画(例えば、脳又はリンパ系)への親化合物の送達を増強する、誘導体である。誘導体には、水溶解度又は腸膜を介する能動輸送を増強する基が、本明細書に記載される式の構造に付加されている誘導体が含まれる。
【0105】
本発明の実施形態は、選択的生物学的特性を増強するのに適した官能基を付加することによって修正され得る。このような修正は、当技術分野において公知であり、所与の生物学的区画(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を増大し、経口利用性を増大し、注射による投与を可能にするように溶解度を増大し、代謝を変え、排出速度を変える修正が含まれる。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、薬学的に許容される無機及び有機の酸及び塩基に由来する塩が含まれる。適切な酸の塩の例として、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられる。適切な塩基に由来する塩には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びN-(アルキル)4+塩が含まれる。本発明はまた、本明細書で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性若しくは油溶性、又は水分散性若しくは油分散性の生成物は、このような四級化によって得ることができる。
【0106】
本発明の実施形態は、例えば注射、眼内、硝子体内、眼球後方、後強膜近傍、前強膜近傍、網膜下、局所眼球、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内若しくは皮下によって、又は経口、口腔内頬側、経鼻、経粘膜、疾患状態の臓器にカテーテルにより直接的に、局所的に、又は眼科調製物で、体重1kg当たり約0.001~約100mgの範囲の投与量で、又は特定の薬物の要件に従って、より好ましくは体重1kg当たり0.5~10mgで、投与することができる。化合物が目に直接的に送達される場合、体重などの考慮は、用量に対して影響を与えにくいと理解される。
【0107】
投薬頻度は、投与された薬剤、対象における疾患又は状態の進行、及び当業者に公知の他の考慮に応じて決まる。例えば、目又はさらには目の中の区画に送達された組成物の薬物動態及び薬力学的考慮は異なり、例えば、網膜下空間のクリアランスは非常に低い。したがって、投薬は、1カ月に1回、3カ月ごとに1回、6カ月ごとに1回、1年に1回、5年ごとに1回、又はそれ未満のように低頻度であってよい。抗酸化物質の全身投与が、網膜下空間への発現構築物(expression constructs)の投与と共に実施されるべき場合、抗酸化物質の投薬頻度は、発現構築物よりも高く、例えば、1日1回又は2回以上、週1回又は2回以上になると予測される。
【0108】
投薬は、疾患の1又は2以上の徴候又は症状、例えば、視力、視野、夜間視力などのモニタリングと併せて決定され得る。単一剤形を生成するために担体材料と合わされ得る活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に応じて変わる。典型的な調製物は、約1%~約95%の活性化合物(w/w)を含有する。代替として、このような調製物は、約20%~約80%の活性化合物を含有する。先に列挙したものよりも低い又は高い用量が必要とされる場合がある。任意の特定の患者のための特定の投与量及び治療レジメンは、用いられた特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時期、排出速度、薬物の組合せ、疾患、状態又は症状の重症度及び過程、疾患、状態又は症状に対する患者の素質、並びに治療医の判断を含む、様々な因子に応じて決まる。
【0109】
医薬組成物は、注射可能な滅菌調製物の形態で、例えば、注射可能な滅菌水性又は油性懸濁液として存在し得る。この懸濁液は、当技術分野で公知の技術に従って、適切な分散化剤又は湿潤剤(例えば、TWEEN(登録商標)80など)及び懸濁化剤を使用して製剤化され得る。注射可能な滅菌調製物はまた、非毒性の非経口に許容される希釈剤又は溶媒中の、注射可能な滅菌溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中溶液として存在し得る。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒には、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁化媒体として用いられている。この目的では、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を用いることができる。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油又はヒマシ油、特にそれらがポリオキシエチレン化したもののように、注射剤の調製において有用である。これらの油性溶液又は懸濁液はまた、薬学的に許容される剤形、例えばエマルション剤及び又は懸濁液剤の製剤において一般に使用される、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、又はカルボキシメチルセルロース若しくは類似の分散化剤を含有し得る。他の一般に使用される界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)若しくはSPAN(登録商標)、及び/又は薬学的に許容される固体、液体若しくは他の剤形の製造において一般に使用される、他の類似の乳化剤若しくはバイオアベイラビリティ増強剤も、製剤化の目的で使用され得る。
【0110】
1又は2以上の実施形態では、NACA又はジNACAは、約0.5~150mg/Kgの1日用量で投与される。他の実施形態では、NACA又はジNACAは、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACA又はジNACAは、アスコルビン酸、システアミン(若しくは任意の塩の形態)、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化物質、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などから選択される第2の活性薬剤と共に投与される。
【0111】
一部の実施形態では、投与のためのNACA又はジNACAの用量は、1用量当たり100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、102、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。別の態様では、NACAは、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される。別の態様において、NACA又はジNACAは、シスチン症を防止するために予防的に投与される。
【0112】
別の実施形態では、本発明は、シスチン症の治療のための方法であって、シスチン症の治療を必要とするヒトを特定するステップと、シスチン症を治療するのに十分な治療有効量のNACA又はジNACAをヒトに投与するステップとから本質的になる、方法を含む。先に定義される他の実施形態と同様に、NACA又はジNACAは、約0.5~150mg/Kgの1日用量で投与されることが理解されよう。別の態様では、NACA又はジNACAは、1日2回又は3回投与される。別の態様では、NACAは、先に開示される通り、第2の活性薬剤と共に投与される。
【0113】
別の態様では、投与のためのNACA又はジNACAの用量は、1用量当たり100、150、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである。別の態様では、投与のための用量は、1用量当たり0.1~0.25、0.1~0.4、0.35~0.5、0.5~1、102、1~3、1~4、1~5、1~2.5、2.5~3.5、4~6、5~8、6~9、7~10グラムである。別の態様では、NACAは、ミニ錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される。別の態様では、NACA又はジNACAは、シスチン症を防止するために予防的に投与される。
【0114】
別の態様では、NAC又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)は、生体内分解性又は非生体内分解性の眼科用又は眼球挿入物に組み込まれる。眼科用挿入物は、瞼の下の目の表面に配置される。薬剤は経時的に目の表面に溶出し、重度であり得る羞明を引き起こす可能性がある、目のシスチン沈着の主要部位である角膜から目に吸収される。薬剤は、シスチンの化学構造を破壊し、その結果、シスチンが混合ダイマーとして組織から排除され、それによりシスチン症の眼科的影響を緩和する。
【0115】
本明細書で使用される場合、特定の疾患又は状態など「に対して感受性がある」又は「の傾向がある」又は「の素因がある」とは、遺伝、環境、健康、及び/又は他のリスク因子に基づいて、母集団よりも疾患又は状態を発症する可能性が高い個体を指す。疾患を発症する可能性の増大は、約10%、20%、50%、100%、150%、200%又はそれよりも高い増大であり得る。
【0116】
本明細書に記載のNACA及びジNACA製剤はまた、眼局所、硝子体内注射、後強膜近傍注射、前強膜近傍注射、脈絡膜上、及び眼周囲注射経路を介して目に送達されてもよい。本発明の一実施形態では、活性薬剤、又は難水溶性薬剤、又は生物学的製剤の量は、硝子体内投与用の溶液中の活性薬剤の体積に対して約0.001%~30%の重量である。他の実施形態では、活性薬剤の量は、体積に対して0.05%~20%の重量、一部の場合では体積に対して0.1%~18%の重量であってもよい。難水溶性、又はわずかに可溶性の任意の活性薬剤が本発明の組成物に含まれ得ることが企図される。他の場合では、高度に水溶性の活性薬剤又は不活性薬剤もまた、本発明の組成物に含まれ得る。
【0117】
例えば、送達され得る本発明は、活性薬剤の延長放出を可能にする厚い又は粘性のビヒクルである。例えば、NACA又はジNACAは、本発明の組成物及び方法において、500、1000、1,5000、又は2000より大きい分子量を有する任意のポリエチレングリコール(PEG)中に提供することができる。本発明の組成物及び方法で使用されるPEGはまた、PEG3000、PEG4000、PEG6000、PEG8000、PEG20000を含んでもよいか、又はより高分子PEGが本発明の組成物及び方法で利用されてもよい。
【0118】
本発明のNACA及び/又はジNACA製剤は、従来の製剤に比べて多くの利点を提供するが、これはPEGが難溶性化合物を良好に可溶化し、局所眼球送達のための有効な眼科的に許容される硝子体内、後強膜近傍(PJ)、前強膜近傍(AJ)及び/又は眼周囲製剤の調製を可能にするためである。薬物のバイオアベイラビリティは、製剤に使用されるPEGの分子量、又は分子量の混合を制御することによってモジュレートすることができる。さらに、調製物は27又は30ゲージ針を使用して注入することができる。活性薬剤の毒性も、その放出を延長することによって低減されるか、又は適切にモジュレートされ得る。本発明の別の利点は、生物学的製剤の安定性が、本明細書に記載のPEGベースの固体剤形で改善されることである。
【0119】
本発明の製剤は、薬物の送達をモジュレートし、持続時間を延長するために、脂質をさらに含んでもよい。脂質のいくつかの例には、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、プロピレングリコールエステル、脂肪酸のPEFエステル及びそれらの混合物が含まれる。好ましい脂質として、モノラウリン酸グリセリル;ジラウリン酸グリセリル;モノミリスチン酸グリセリル;ジミリスチン酸グリセリル;モノパルミチン酸グリセリル;ジパルミチン酸グリセリル;モノステアリン酸グリセリル;ジステアリン酸グリセリル;モノオレイン酸グリセリル;ジオレイン酸グリセリル;モノリノール酸グリセリル;ジリノール酸グリセリル;モノアラキジン酸グリセリル;ジアラキジン酸グリセリル;モノベヘン酸グリセリル;ジベヘン酸グリセリル;モノステアリン酸ジエチレングリコール;モノステアリン酸プロピレングリコール;モノステアリン酸グリセリル;モノリノール酸グリセリル;モノオレイン酸グリセリル;モノパルミチン酸グリセリル;及びこれらの混合物が挙げられる。脂質の好ましい例は、パルミトステアリン酸グリセリルである。脂質の濃度は、一般に31重量パーセント(wt%)未満であるが、しばしば14wt%未満であり、一部の場合では8wt%未満である。
【0120】
任意の特定のヒト又は動物に対する活性薬剤の特定の用量レベルは、使用される活性化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、投与時間、投与経路、及び治療中の病理学的状態の重症度を含む様々な要因に依存する。
【0121】
本発明はまた、眼科用又は眼球挿入物での投与により、シスチン症の眼科的、眼球又は角膜の影響を治療するために、NAC、NACA、ジNACA、システアミン(又はシステアミン塩、例えば、塩酸塩若しくは他の塩)或いは他のシスチン枯渇剤を使用する一般的分野に関する。(Buchan B, Kay G, Henegan A, Matthews KH, Cairns D. Gel formulations for treatment of the ophthalmic complications in cystinosis. Int. J. Pharmaceutics, 2010; 392(1-2);192-197. doi: 10.1016/j.ijpharm.2010.03.065. Epub 2010 Apr 9.PMID: 20382212、McCaughan B, Kay G, Knott R, Cairns D. A potential new prodrug for the treatment of cystinosis: design, synthesis and in-vitro evaluation. Bioorg Med Chem Letters 2008;18(5):1716-9. doi: 10.1016/j.bmcl.2008.01.039. Epub 2008 Jan 18、Omran Z, Maloney KA, Benylles A, Kay G, Knott R, Cairns D. Synthesis and in vitro evaluation of novel pro-drugs for the treatment of nephropathic cystinosis. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011a;19:3492-3496、Omran Z, Kay G, Slvo AD, Knott R, Cairns D. PEGylated derivatives of cystamine as enhanced treatments for nephropathic cystinosis. Bioorg Med Chem Letters 2011b;21:45-47)及び(Omran Z, Kay G, Hector EE, Knott RM, Cairns D. Folate pro-drug of cystamine as an enhanced treatment for nephropathic cystinosis. Bioorg Med Chem Lett. 2011c;21(8):2502-4. doi: 10.1016/j.bmcl.2011.02.048. Epub 2011 Feb 23. PMID: 21397500)によって報告されたものを含み得るが、これらに限定されない他のシスチン枯渇剤が、眼科用又は眼球挿入物で使用されてもよい。
【実施例1】
【0122】
シスチン症線維芽細胞培養物におけるNACA及びジNACAの細胞毒性。
【0123】
適切な濃度のNACA及びジNACAを選択し、培地中でヒトシスチン症線維芽細胞と共にインキュベートした。シスチン症線維芽細胞(GM00008、Coriell Cell Repositories社、NJ、米国)を、各25、50又は75μMのシステアミン、NACA又はジNACAのいずれかの存在下で0~72時間インキュベートされた96ウェルプレート中で培養した。その後、培地を除去し、培地中で再構成された0.5mg/ml MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)中で細胞をインキュベートした。比色アッセイでは、細胞生存率の代理として細胞代謝活性を測定するために、黄色のテトラゾリウム塩(MTT)の紫色のホルマザン塩への還元を使用した。処理した細胞をMTT中で37℃で4時間インキュベートすると、その後細胞内の紫色のホルマザン塩の結晶が顕微鏡で視認された。その後、MTT溶液を除去し、DMSOを各ウェルに添加して細胞を溶解し、塩の結晶を溶解した。37℃で1時間インキュベートした後、マルチウェルプレートリーダー(Biotek FL6000)で570nmの吸光度を測定し、細胞生存パーセンテージを算出した。3つすべての濃度のシステアミン、NACA(NPI-001)、及びジNACA(NPI-002)に曝露すると、細胞生存率が上昇し、すなわち細胞毒性が生じなかった(
図1及び2)。驚くべきことに、すべての濃度のNACA(NPI-001)は、72時間後のヒトシスチン症細胞の生存率の上昇に関して、同じ濃度のシステアミンよりも統計的に優れていた(
図2)。また驚くべきことに、最低濃度の25μMのジNACA(NPI-002)は、48又は72時間後のヒトシスチン症細胞の生存率の上昇に関して、同じ濃度のシステアミンより統計的に優れていた(
図1及び
図2)。
【実施例2】
【0124】
NACA及びジNACAのシスチン枯渇活性のスクリーニング
【0125】
シスチン含有量を決定するために、特殊なインビトロのヒトシスチン症細胞ベースモデルを使用した(Omran Z, Kay G, Hector EE, Knott RM, Cairns D. Folate pro-drug of cystamine as an enhanced treatment for nephropathic cystinosis. Bioorg Med Chem Lett. 2011c;21(8):2502-4. doi: 10.1016/j.bmcl.2011.02.048. Epub 2011 Feb 23. PMID: 21397500)。シスチン症線維芽細胞(GM00008、Coriell Cell Repositories社、NJ、米国)を25cm3ベントフラスコに播種し、およそ80%のコンフルエンスに到達させ、その後試験品;15%FBS、200U/mlペニシリン、200μg/mlストレプトマイシン及び2mMグルタミンを補充した4cm3のイーグル最小必須培地中のシステアミン、NACA(NPI-001)及びジNACA(NPI-002)のいずれか50μMを添加した。これを37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした。細胞を採取して液体窒素で凍結し、タンパク質の量当たりのシステイン濃度を決定するまで-80℃で保存した。
【0126】
細胞を-80℃での保存から回収し、リン酸緩衝液(pH7.6)中で調製された100μlの1mM N-エチルマレイミドに懸濁した後、超音波処理を10秒間行い、これを20秒間の冷却間隔をおいて氷上で3回繰り返した。この溶液を、800G、4℃で10分間遠心分離した(Biofuge primo R Heraeus centrifuge)。この細胞上清(40μl)に、7:3の0.1M NaOH/DMSO中4μlの4M NaBH4を添加した。室温で5分間インキュベートした後、800μlの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.7)を添加した。5μlの体積の希釈した溶液を、96ウェルプレート中のPapain-SSCH3の0.6mg/ml溶液100μlに添加し、室温で1時間インキュベートした。96ウェルプレートの各ウェルに、酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)中100μlの体積の4.9mM L-ベンゾイルアルギニンp-ニトロアニリド(L-BAPNA、L-benzoylarginine p-nitroanilide)溶液を添加し、穏やかに混合し、室温でさらに1時間インキュベートした。410nmの吸光度を測定し、既知のシステイン標準物質との比較によりシステインレベルを算出した。
【0127】
すべての試料中のタンパク質濃度を、Bradford法に従って測定した。
【0128】
簡潔には、96ウェルプレートの各ウェルの細胞上清5μlにBradford試薬200μlを添加し、室温で5分間インキュベートし、595nmの吸光度を測定した。タンパク質濃度は、標準物質として一定範囲の濃度のウシ血清アルブミンを使用して算出した。システインレベルは、タンパク質1mg当たりのシステインμMに正規化した後に決定した。
【0129】
図3は、50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後6時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。驚くべきことに、NACA(NPI-001)とジNACA(NPI-002)の両方は、6時間後にシステアミンよりも統計的に優れていた。
【0130】
図4は、50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後24時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。驚くべきことに、NACA(NPI-001)は、24時間後のヒトシスチン症細胞の生存率の増加において統計的に優れており、ジNACAはシステアミンよりも優れていた。
【0131】
図5は、50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後48時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。驚くべきことに、NACA(NPI-001)とジNACA(NPI-002)の両方が、48時間後にシステアミンよりも統計的に優れていた。
【0132】
図6は、50μMシステアミン、NACA(NPI-001)又はジNACA(NPI-002)への曝露後72時間の、ヒトシスチン症線維芽細胞培養物における対照のパーセントとしての相対シスチン濃度を示す。驚くべきことに、NACA(NPI-001)は、72時間後にシステアミンよりも優れており、ジNACA(NPI-002)は、対照と比較して20%のシスチンの枯渇を示した。
【実施例3】
【0133】
1%NPI-001、1%ジNACA、1%NAC又はビヒクルの眼の忍容性
【0134】
AGENTを含有する眼科用挿入物への局所眼球曝露をシミュレートするために、1%NPI-001、1%ジNACA、1%NAC又はビヒクルのいずれかを含有するプロトタイプ眼科用製剤を調製し、試験して眼球の忍容性を評価した。1群3匹のウサギに、1日4回6日間、及び7日目に1回両目に局所投与することにより、プロトタイプビヒクル中の1%NPI-001、1%ジNAC、1%NACを投与した。4つの投与群すべてにおいて低頻度で軽度の目脂が観察され、1%NAC及びビヒクル投与群では、低頻度で軽度の充血が観察された。投与群のいずれでも、結膜水腫の徴候は認められなかった。ビヒクル治療は、目脂又は充血によって示される軽度の眼球刺激の同等以上の頻度を示したことから、試験剤投与群で認められた眼球刺激は、試験剤そのものが原因である可能性は低く、ビヒクルに起因する可能性が高い(表1~3)。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
NACAは、1%NACA又は1%ジNACAのいずれかを投与したウサギの目の房水中で検出可能であった。
【実施例4】
【0139】
NACA(NPI-001)、ジNACA(NPI-002)、NAC又はシステアミン眼科用挿入物。
【0140】
生分解性挿入物又は非生分解性挿入物のいずれかである眼科用挿入物を調製する。
【0141】
非生体内分解性挿入物は、腎臓形又はウエハ形で、寸法がコンタクトレンズの半分と同等であり、Agent、すなわちNACA(NPI-001)、ジNACA(NPI-002)、NAC又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)のいずれかが装填されたコンタクトレンズポリマーマトリックスから構成される。挿入物は、単一の実体、すなわち、固体の非浸食性マトリックスとして生成される。非生体内分解性マトリックスは、非ハイドロゲルコンタクトレンズ材料と化学的性質が同様であり、Agentは、固体に成型される前の液体製剤に含有される。
【0142】
生体内分解性挿入物は、腎臓形又はウエハ形で、寸法がコンタクトレンズの半分と同等であり、Agent、すなわちNACA(NPI-001)、ジNACA(NPI-002)、NAC又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)が装填された生体内分解性若しくは生分解性樹脂又はポリマーマトリックスから構成される。
【0143】
非臨床及び臨床試験に進めるための生体内分解性又は非生体内分解性挿入物の選択は、インビトロ放出、安定性及び製造可能性などの薬学的特性に基づく。
【0144】
生体内分解性又は非生体内分解性挿入物は、眼瞼の下の上強膜に非侵襲的に適用され、目への局所投与により経時的に薬物を溶出する。マトリックスは眼球の強膜表面に合うように湾曲した形状に成型され、円滑な表面及び端部、並びに着用中に瞼の下の位置を維持するために瞼と相互作用するさらなる設計特徴を備える。Agentは経時的に溶出し、眼球表面に持続的に送達され、最終的にシスチン結晶の主要部位である角膜を含む眼球表面に浸透する。挿入物は、患者に、頻繁な点眼薬の適用に比べてより簡便で持続的な薬物の送達をもたらす(Rathore KS and Nema RK. Review on ocular inserts. Int J PharmTech Res. 2009;1(2):164-169)。
【実施例5】
【0145】
NACA(NPI-001)、ジNACA(NPI-002)、NAC又はシステアミンの眼科用挿入物からのインビトロ放出。
【0146】
AGENT:NACA、ジNACA、NAC及び/又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)。Agentを挿入物に装填する。挿入物をpH7の緩衝液(リン酸塩)に入れ、かき混ぜることによって撹拌し、経時的に、例えば15分、0.5、1、2、3、4、8、12、24、48、72時間にわたって試料を採取する。緩衝液を、採取した試料と同じ体積で補充する。試料を、(King B; Vance J; Wall GM; Shoup R. Quantitation of free and total N-acetylcysteine amide and its metabolite N-acetylcysteine in human plasma using derivatization and electrospray LC-MS/MS. J Chrom B 2019;1109:25-36)によって開発された方法に基づき、NACA、ジNACA、NAC、及び/若しくはシステアミンについて、又は類似の方法を使用してシステアミンについて分析する。インビトロ放出速度を決定する。放出速度は、製剤成分の変更によって調整することができる。薬物製品の暫定的な許容基準を策定する(表4)。
【0147】
【実施例6】
【0148】
眼科用挿入物の安定性。
【0149】
AGENT:NACA、ジNACA、NAC、システアミン(若しくは任意の塩の形態)又は任意のシスチン枯渇剤。AGENTを含有する挿入物を、医薬品規制調和国際会議(ICH、International Committee on Harmonization)に準拠した条件、例えば25±2℃/60±5%RHで2年間、及び40±2℃/75±5%RHで6カ月間保存し、時間=0、3、6、9、12、18及び24カ月で試験する。経時的に仕様を満たさない場合、挿入物は、水分の損失を防ぐために封止された密閉袋に保存し、再試験する。
【実施例7】
【0150】
NACA(NPI-001)、ジNACA(NPI-002)、NAC又はシステアミンのインビボ忍容性及び眼科用挿入物からの放出。
【0151】
AGENT:NACA、ジNACA、NAC、システアミン(若しくは任意の塩の形態)又は任意のシスチン枯渇剤。Agentは、ヒトの眼科用挿入物と組成が同一であるが、ウサギの角膜表面に合うように適合されたウサギ用挿入物に組み込まれる。鎮静下で、ウサギ用特注挿入物(ウサギの目のために調製された特注サイズ)を、ウサギの目の表面、瞬膜の下に配置する。挿入物が目から出ないように、瞼の外側の角に小さな縫合糸を2本入れて部分的瞼板縫合術を行い、目が部分的に開き、正常に瞬きできるようにする。外瞼の縫合部位に少量のバシトラシン眼軟膏を投与する。挿入後、動物を少なくとも1日2回、疼痛、感染、又は刺激の徴候について観察する。ウサギは、手技による最小限の瞼の腫脹及び眼脂を考慮して、充血、結膜水腫、目脂、角膜混濁、房水細胞/フレア及び光反射について査定する。最も冒された動物を、24時間の除外/安楽死の時点に選択する。プロトタイプ実験に基づき、ウサギのリングは、24又は48時間の着用後に、ウサギのリングの物理的存在に対する応答に関連する可能性がある、すべての動物における軽度の結膜のうっ血を除き、かなり良好な忍容性を示すはずである。有効なHPLC/MS/MSによるAGENTの定量(King B; Vance J; Wall GM; Shoup R. Quantitation of free and total N-acetylcysteine amide and its metabolite N-acetylcysteine in human plasma using derivatization and electrospray LC-MS/MS. J Chrom B 2019;1109:25-36)を、24又は48時間の着用後に、涙、房水(AH)、角膜、硝子体液、及び網膜を含む組織について実施する。AH及び角膜へのAGENTの送達を査定する。AGENTの存在を、LCMSを使用してすべての眼球組織で査定する(例えば、(King B; Vance J; Wall GM; Shoup R. Quantitation of free and total N-acetylcysteine amide and its metabolite N-acetylcysteine in human plasma using derivatization and electrospray LC-MS/MS. J Chrom B 2019;1109:25-36))。対照動物の眼球組織ではAGENTは検出されない。ウサギの瞼下に配置すると、AGENTは、AH及び角膜だけでなく、他の眼球組織に高濃度で送達される可能性がある。
【実施例8】
【0152】
NACA、ジNACA又はNACの非臨床試験
【0153】
AGENT:NACA、ジNACA、NAC、システアミン(若しくは任意の塩の形態)又は任意のシスチン枯渇剤。
【0154】
試験名:3カ月の中間期間及び1カ月の回復期間を含む、ウサギにおける6カ月の局所眼球反復投薬試験。
【0155】
目的:3カ月の中間期間及び1カ月の回復期間を含む6カ月間にわたる、高用量での、ウサギにおけるAGENT(0.05%リン酸緩衝液中0、1、5及び10%AGENTを含有する製剤)点眼薬の毎日(QID)の局所投与の安全性を評価すること。さらなる目的は、トキシコキネティクスの評価である。
【0156】
規制のコンプライアンス:このGLP試験は、試験施設のSOPに準拠して実施され、すべての動物は、眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVO宣言(ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research)に従って処置される。試験は、FDAの医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準(Good Laboratory Practice for Nonclinical Laboratory Studies)、連邦規則集第21巻58条及び任意の適用可能な改正、又は同等の国際標準に従って実施される。
【0157】
試験施設:GLPのCRO。試験系。種:ダッチベルテッドウサギ。動物数:80匹;90匹をスクリーニング。性別及び年齢:成体雄及び雌で、治療群に均等に分けられた。
【0158】
研究設計。正常な獣医学的、眼科検査及び臨床病理学値のスクリーニングを受けたウサギを研究に募集する(表5)。ベースラインスクリーニング及びその後のすべての手順のために、麻酔を達成し、適切な医薬で瞳孔を拡張する。ウサギを体重及び性別によって順位付けし、ブロックランダム化手順によってランダム化する。
【0159】
試験品の送達:試験品は、1日4回両目に点眼薬として適用する(表5)。
【0160】
臨床観察:投薬1週間前から開始して試験終了までに及ぶケージサイド観察により、一般的な健康状態を1日2回査定する。
【0161】
摂食量:摂食量を毎週モニタリングする。
【0162】
体重:体重は、眼科検査の間隔で収集する(表6)。
【0163】
眼圧測定。眼圧(IOP、Intraocular pressure)は、イヌ(d)較正設定に設定したTonoVet眼圧計を使用してOUで測定する。各眼科検査時点(表6)においてそれぞれの目から3つの測定値を取得し、平均IOPを定義する。
【0164】
眼科検査:指定された時点(表6)において、両目(OU)で細隙灯生体顕微鏡検査及び網膜検影法を行い、所見を修正Hackett-McDonald点数化システムを使用して評定し、複合臨床スコアを決定する。ベースライン、3及び6カ月で、対照及び高用量群でERGを評価する。
【0165】
【0166】
臨床病理学:血液学、臨床化学、凝固及び尿検査パラメータの分析用試料を、指定された時点で評価する(表5)。
【0167】
トキシコキネティクス:血清調製のため、指定された時点(表6)で血液試料(2mL)を収集する。血清アリコートを予め標識したクライオチューブに移して保存し、-70℃未満で治験依頼者指定の研究所に発送し、検証済みの分析手順によって血清試験物質濃度を決定し、NPI-001及びNACの標準トキシコキネティクスパラメータを算出する。実試料再分析(ISR、incurred sample reanalysis)を実施する。
【0168】
【0169】
目の収集。指定された時点(表6)で、ウサギを麻酔下で適切な医薬で安楽死させ、直ちに目を眼球除去する。右目(OD)については、余分な眼窩組織を切り落とし、デビッドソン固定液に室温で48時間入れた後、移して70%エタノールで保存し、その後パラフィン包埋、切片(3つの段階的切片)、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)による染色、及び認定獣医病理学者による分析のためにGLP研究所に発送する。左目(OS)からは、適切な方法を使用して房水、硝子体液、水晶体及び網膜/脈絡膜を収集する。試料を保存し、AGENTの生物分析的分析のために凍結状態で発送する(LLOQが提供される)。
【0170】
剖検:予定された時点(表3)で安楽死させた又は自然死した動物で完全剖検を実施する。皮膚を腹部正中線切開から折り返し、皮下腫瘤を同定し、死前の所見と相関させる。腹腔、胸腔及び頭蓋腔を異常について検査し、表7に示すように臓器を摘出し、検査して組織を収集する。
【0171】
病理組織学的検査:眼球除去終了後、剖検を実施する。病理組織学的検査は、眼球組織及び肉眼的病変のみについて査定される。他の組織はすべて保存するが、病理組織学的検査は必要な場合にのみ行う。組織学的検査用の組織を採取し、10%中性緩衝ホルマリン(NBF、neutral buffered formalin)で固定し、ヘマトキシリン・エオジン(H&E、hematoxylin and eosin)及び免疫組織化学(IHC、immunohistochemistry)処理、並びに認定獣医病理学者による分析のために指定組織学研究所に発送する。各検体から3つの段階的切片を採取し、各染色用に取り付ける。
【0172】
【0173】
試験品収集及び分析:1つのバイアル/群(未開封)も保管し、投薬0及び84日目の濃度及び均質性分析のために送付する。
【0174】
試験報告書:方法、in-life検査所見及び検体収集について詳述した報告書を、in-life試験終了後に監査済み報告書案として治験依頼者に提出し、その後外注研究所の報告書及び治験依頼者の意見を含む最終報告書を提出する。3カ月の監査済み報告書案は、治験依頼者により治験依頼者のINDに修正される。SENDデータセットを作成し、3カ月の中間報告書及び6カ月の最終報告書と共に提出し、これらは最終的に治験依頼者により治験依頼者のINDに修正される。
【実施例9】
【0175】
AGENT挿入物による3カ月の第2/3相臨床試験(AGENT:NACA、ジNACA、NAC又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)
【0176】
眼科用挿入物の臨床評価は、以下の臨床試験の概要通りの例示的な第2/3相に従ってもよい(AGENT:NACA、ジNACA、NAC、システアミン(若しくは任意の塩形態)又は任意のシスチン枯渇剤。)。
【0177】
【0178】
試験計画
【0179】
【実施例10】
【0180】
眼科用挿入物のさらなる臨床評価は、以下の眼科用挿入物の概要通り、AGENTの例示的な12カ月の第3相臨床試験C-XX-XXに従ってもよい(AGENT:NACA、ジNACA、NAC、システアミン(若しくは任意の塩形態)又は任意のシスチン枯渇剤。
【0181】
【0182】
本明細書において論じられるいかなる実施形態も、本発明のいかなる方法、キット、試薬、又は組成物に関して実施することができ、逆の場合も同じであることが企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0183】
本明細書に記載される特定の実施形態は、例示によって示され、本発明を限定するものではないことを理解されよう。本発明の主要な特色は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において用いることができる。当業者は、ごく日常的な実験方法を使用して、本明細書に記載される特定の手順に対する数々の等価物を認識又は確認することができよう。このような等価物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、特許請求の範囲によって網羅される。
【0184】
本明細書において言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する分野の当業者の技術レベルを示す。すべての刊行物及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されることが具体的かつ個々に示されるのと同程度に、参照により本明細書に援用される。
【0185】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む(comprising)」という用語と併用される場合、「1(one)」を意味することができるが、「1又は2以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」及び「1又は1よりも多い(one or more than one)」の意味とも合致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替のみを指すと明示されていない限り、又は代替のみ及び「及び/又は」を指す定義を本開示が裏付けているが、代替が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。本願を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられるデバイス、方法について固有の誤差変動、又は研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0186】
本明細書及び特許請求の範囲(複数可)において使用される場合、「含む(comprising)」(及び含む(comprising)の任意の形態、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有する(having)」(及び有する(having)の任意の形態、例えば「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(及び含む(including)の任意の形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」)又は「含有する(containing)」(及び含有する(containing)の任意の形態、例えば「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)という語は、包括的又は非限定的であり、列挙されていない追加の要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で提供される組成物及び方法のいずれかの実施形態において、「含む(comprising)」とは、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」で置き換えることができる。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、特定された整数(複数可)又はステップ、並びに特許請求される本発明の特徴又は機能に実質的に影響を及ぼさないものを必要とする。本明細書で使用される場合、「からなる(consisting)」という用語は、列挙された整数(例えば、1つの特色、1つの要素、1つの特徴、1つの特性、1つの方法/プロセスステップ又は1つの限定)又は整数の群(例えば、特色(複数可)、要素(複数可)、特徴(複数可)、特性(複数可)、方法/プロセスステップ又は限定(複数可))のみの存在を示すために用いられる。本発明の組成物のそれぞれは、本明細書の上記で概説したように、NACA若しくはジNACAを含んでもよく、NACA若しくはジNACAから本質的になってもよく、又はNACA若しくはジNACAからなってもよい。
【0187】
「又はそれらの組合せ」という用語は、本明細書で使用される場合、用語の前に列挙された項目のすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」とは、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCのうちの少なくとも1つを含むことを意図され、特定の文脈において順番が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことも意図される。この例に続いて、1又は2以上の項目又は用語の反復を含有する組合せ、例えばBB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどが明確に含まれる。当業者は、文脈から別段明らかでない限り、典型的に、いかなる組合せにおいても項目又は用語の数には制限がないことを理解されよう。
【0188】
本明細書で使用される場合、限定されるものではないが、「約」、「実質的」又は「実質的に」などの近似の語は、条件が、そのように修飾された場合には必ずしも絶対的又は完全ではないと理解されるが、当業者にとって、その条件が存在するものとして指定することが正当とするのに十分近いと考えることができる条件を指す。記載が変動し得る程度は、どれ程大きな変化が起こり得るか、及び修飾された特色が、修飾されていない特色の求められる特徴及び能力を依然として有するとして、当業者に依然として認識させることができるかに応じて変わる。一般に、ただし先行する議論次第で、「約」などの近似の語によって修飾されている本明細書の数値は、記述された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変動し得る。
【0189】
加えて、本明細書の節の見出しは、37CFR1.77の下での提案との整合性を保つか、又はそうでなければ構成上の手がかりをもたらすために提供される。これらの見出しは、本開示から生じ得るいずれの請求項に記載される本発明(複数可)も、限定することも特徴付けることもない。特に例として、見出しが「技術分野」を指していても、このような請求項は、この見出しの下におけるいわゆる技術分野を記載するための言語によって限定されるべきではない。さらに、「背景技術」の節における技術の記載は、その技術が、本開示のいかなる発明(複数可)に対しても、先行する技術であることの承認として解釈されるべきではない。「発明の概要」も、提示された請求項に記載される本発明(複数可)を特徴付けるものとみなされるべきではない。さらに、本開示における単数形の「発明」へのいかなる言及も、本開示に新規性が1点しかないことを主張するために使用されるべきではない。本開示から提示される複数の請求項の限定に従って、複数の発明を記載することができ、それに応じてこのような請求項は、請求項によって保護される本発明(複数可)及びその等価物を定義する。すべての場合において、このような特許請求の範囲は、本開示に照らしてそれら自体の利点に関して考慮されるが、本明細書に記載される見出しによって制約を受けるべきではない。
【0190】
本明細書で開示され、特許請求される組成物及び/又は方法のすべては、本開示に照らして過度の実験方法を行うことなく作製し、実行することができる。本発明の組成物及び方法を、好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物及び/又は方法並びにステップ又は方法のステップの順番に変更を加えることができることが、当業者には明らかになろう。当業者に明らかなすべてのこのような類似の置換及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定義される通りの本発明の精神、範囲及び概念内にあるとみなされる。
【0191】
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【手続補正書】
【提出日】2023-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるシスチン症の治療のための
医薬であって、N-アセチルシステインアミド(NACA)又は(2R,2R’)-3,3’-ジスルファンジイルビス(2-アセトアミドプロパンアミド)(ジNACA)の少なくとも1つの治療有効量を
含む医薬。
【請求項2】
NACA又はジNACAが、経口、静脈内、筋肉内、経腸、眼内、網膜下、硝子体内、後強膜近傍、前強膜近傍、眼球後方、局所、局所眼球、眼科用若しくは眼球挿入物によって、舌下、又は直腸内に投与される、請求項1に記載の
医薬。
【請求項3】
医薬が、
生体内分解性若しくは非生体内分解性の眼科用
若しくは眼球挿入物中にあるか;
1日1回若しくは2回投与される生体内分解性の眼科用若しくは眼球挿入物中にあるか;
1日1回若しくは2回交換される非生分解性の眼科用若しくは眼球挿入物中にあるか;
約0.01~150mg/Kgの1日用量中にあるか;又は
第2の活性薬剤を含む、
少なくとも1つである、請求項1に記載の
医薬。
【請求項4】
NACA又はジNACAが、システアミン(又は任意の塩の形態)、N-アセチルシステイン、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸又はリン酸の少なくとも1つから選択される第2の活性薬剤と共に投与される、請求項
3に記載の
医薬。
【請求項5】
投与のための用量が、1用量当たり100、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000マイクログラムである、請求項1に記載の
医薬。
【請求項6】
投与のための用量が、1用量当たり100、150、300、333、400、500、600、700、750、800、900、1,000、2,500、5,000、7,500、又は10,000mgである、請求項1に記載の
医薬。
【請求項7】
NACA又はジNACAが、ミニ錠剤、錠剤、カプセル剤、錠剤、発泡錠、二重放出錠、混合放出錠、サシェ剤、散剤、又は液剤を介して経口送達される、請求項1に記載の
医薬。
【請求項8】
医薬が、予防的に与えられてシスチン症を予防するため、又は治療するために投与される、請求項1に記載の
医薬。
【請求項9】
NACA又はジNACAが、シスチン症に罹患した人間の体内の任意の場所でシスチンレベルを低減させるために投与される、請求項1に記載の
医薬。
【請求項10】
ジNACAが、眼科的、眼球又は角膜シスチン症を治療するのに十分
に眼科用又は眼球挿入物中にある、請求項1に記載の医薬。
【請求項11】
シスチン症の治療のための医薬であって
、
眼科的、眼球又は角膜シスチン症を治療するのに十分
なNAC又はシステアミン(若しくは任意の塩の形態)を眼科用又は眼球挿入物
に含む、シスチン症の治療のための医薬。
【請求項12】
医薬が、
生体内分解性
若しくは非生体内分解性の眼科用
若しくは眼球挿入物中にあるか;
1日1回若しくは2回投与される生体内分解性の眼科用若しくは眼球挿入物中にあるか;
1日1回若しくは2回交換される非生分解性の眼科用若しくは眼球挿入物中にあるか;
約0.01~150mg/Kgの1日用量中にあるか;又は
第2の活性薬剤を含む、
請求項
11に記載の
医薬。
【国際調査報告】