(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】真核細胞タンパク質翻訳を制御するためのリボスイッチモジュールおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230630BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230630BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230630BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20230630BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230630BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230630BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20230630BHJP
C12Q 1/6811 20180101ALI20230630BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/07
C12N5/071
C12Q1/02
C12Q1/70
C12Q1/6811
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575906
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021037030
(87)【国際公開番号】W WO2021252909
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ ジェームズ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャオ エバン エム.
(72)【発明者】
【氏名】タン シャオ
(72)【発明者】
【氏名】ラン フェイ
(72)【発明者】
【氏名】マオ アンジェロ エス.
(72)【発明者】
【氏名】デ プーチ ギゼ エレナ
(72)【発明者】
【氏名】コーリー エマ ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
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4B063QX02
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、関心対象のタンパク質をコードする機能的にmRNA配列の翻訳を調節するためのリボスイッチとして使用され得る組換え内部リボソーム進入部位(IRES)を含む遺伝子構築物を提供する。他の局面では、本開示は、例えば、真核細胞内の本質的に任意の関心対象のタンパク質の発現を調節するためのプラットフォームを提供するために、それを利用する組換え細胞、方法、キットおよびシステムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えグループ1ジシストロウイルス科(Dicistroviridae)内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする第1のセグメントと;
(b)前記IRESが不活性化状態にある際にタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第1のセグメントの下流にありかつ前記第1のセグメントに機能的に連結された、タンパク質をコードする第2のセグメントと
を含む組換え核酸分子であって、
前記第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、
前記第2の部位が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む、
組換え核酸分子。
【請求項2】
(a)第1の部位では、第1の外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されており、第2の部位では、第2の外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えウイルス内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする第1のセグメントと;
(b)前記IRESが不活性化状態にある際にタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第1のセグメントの下流にありかつ前記第1のセグメントに機能的に連結された、タンパク質をコードする第2のセグメントと
を5'から3'に含む組換え核酸分子であって、
前記第2のヌクレオチド配列が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である、
組換え核酸分子。
【請求項3】
改変された前記IRESが、グループ1ジシストロウイルス科IRES、ヘパシウイルス(Hepacivirus)IRESまたはエンテロウイルス(Enterovirus)IRESである、請求項2記載の組換え核酸分子。
【請求項4】
改変された前記IRESが、哺乳動物病原性ウイルスまたは哺乳動物共生ウイルス由来のIRESである、請求項1~3のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項5】
改変された前記IRESが、ヒト病原性ウイルスまたはヒト共生ウイルス由来のIRESである、請求項4記載の組換え核酸分子。
【請求項6】
前記核酸分子がmRNAである、請求項1~5のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項7】
前記第2のヌクレオチド配列が、前記第1のヌクレオチド配列の実質的に全体の逆相補鎖である、請求項1~6のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項8】
前記グループ1ジシストロウイルス科IRESが、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRES、カシミール蜂ウイルス(KBV)IRES、急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRES、チャバネアオカメムシ(Plauta Stali)腸管ウイルス(PSIV)IRES;アブラムシ致死性麻痺ウイルス(ALPV)IRES;黒色女王蜂児ウイルス(BQCV)IRES;ショウジョウバエ(Drosophila)Cウイルス(DCV)IRES;ヒメトビP(Himetobi P)ウイルス(HiPV)IRES;ヒメヨコバイ(Homalodisca coagulata)ウイルス-1(HoCV-1)IRES;ムギクビレアブラムシ(Rhopalosiphum padi)ウイルス(RhPV)IRES;およびサシガメ属(Triatoma)ウイルス(TrV)IRESである、請求項1~7のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項9】
前記ヘパシウイルスIRESが、c型肝炎ウイルス(HCV)IRESである、請求項2~7のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項10】
前記エンテロウイルスIRESが、ポリオウイルス(PV)IRESまたはエンテロウイルス71(EV71)IRESである、請求項2~7のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項11】
前記第1および第2の部位が、部位1、部位2、部位3、部位4、部位5、部位6、部位7および部位8のいずれかからそれぞれ独立して選択される、請求項1~10のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項12】
前記第1および第2の部位が、部位1および部位2、部位1および部位4、部位1および部位5、部位1および部位6、部位1および部位7、部位1および部位8、部位2および部位6、部位2および部位7、部位4および部位6、部位5および部位6、部位5および部位7、部位6および部位7、部位8および部位2、部位8および部位6、または部位8および部位7をそれぞれ含む、請求項11記載の組換え核酸分子。
【請求項13】
前記第1および第2の部位が、部位1および部位2、部位1および部位8、部位2および部位7、部位6および部位7、または部位8および部位6をそれぞれ含む、請求項11~12のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項14】
前記第1および第2の部位が、部位6および部位7、または部位8および部位6をそれぞれ含む、請求項11~13のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項15】
前記第1のヌクレオチド配列が25~80nt長である、請求項1~14のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項16】
前記第1のヌクレオチド配列が40~50nt長である、請求項15記載の組換え核酸分子。
【請求項17】
前記第2のヌクレオチド配列が8~25nt長である、請求項15記載の組換え核酸分子。
【請求項18】
前記第2のヌクレオチド配列が6~15nt長である、請求項1~17のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項19】
前記第1のヌクレオチド配列が、前記第2のヌクレオチド配列の2.5倍~8倍の長さである、請求項1~18のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項20】
前記第1のヌクレオチド配列が、標的真核生物、標的原核生物または標的ウイルスに見られる配列の逆相補鎖である、請求項1~19のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項21】
前記標的原核生物または標的ウイルスが、ヒト病原体である、請求項20記載の組換え核酸分子。
【請求項22】
前記標的ウイルスが、ジカウイルスまたはコロナウイルスである、請求項21記載の組換え核酸分子。
【請求項23】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項22記載の組換え核酸分子。
【請求項24】
前記タンパク質が、検出可能なシグナルを生成する、請求項1~23のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項25】
前記第1および第2のヌクレオチド配列が、インビボまたはインビトロ条件下で真核細胞内で発現された場合にハイブリダイズし、前記IRESを不活性化状態にフォールディングさせることができ、前記真核細胞が植物細胞ではない、請求項1~24のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項26】
前記IRESが、請求項1記載の組換え核酸分子の前記第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子の存在下で活性化状態にフォールディングするように構成されている、請求項1~25のいずれか一項記載の組換え核酸分子。
【請求項27】
前記第1のヌクレオチド配列が、インビボ条件下で真核細胞内で発現された場合に前記第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、前記IRESを活性化状態にフォールディングさせることができ、前記真核細胞が植物細胞ではない、請求項26記載の組換え核酸分子。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項記載の組換え核酸分子をコードするかまたはそれを含む配列を含み、
請求項1~27のいずれか一項記載の組換え核酸分子をコードするかまたはそれを含む前記配列の5'および/または3'に、以下:
(a)IRESシュードノット配列;
(b)前記IRESが天然に存在するウイルス野生型配列に見られるIRESシュードノット配列;
(c)プロモーターおよび/または上流活性化因子結合配列;
(d)終止コドン;
(e)ステムループ;
(f)5'キャップ;
(g)レポーター遺伝子;ならびに
(h)ポリAテール
のうちの1つまたは複数をさらに含む、発現構築物。
【請求項29】
請求項1~27のいずれか一項記載の組換え核酸分子をコードするかまたはそれを含む前記配列の5'に、以下:
(a)IRESシュードノット配列;
(b)前記IRESが天然に存在するウイルス野生型配列に見られるIRESシュードノット配列;
(c)プロモーターおよび/または上流活性化因子結合配列;
(d)終止コドン;
(e)ステムループ;
(f)5'キャップ;ならびに
(g)レポーター遺伝子
のうちの1つまたは複数を含む、請求項28記載の発現構築物。
【請求項30】
(a)前記プロモーターが、SP6プロモーター、T3プロモーター、araBADプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、PtacプロモーターおよびpLプロモーターから選択され;ならびに/または
(b)前記上流活性化因子結合配列が、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の上流活性化因子結合DNA配列(UAF2)である
請求項28~29のいずれか一項記載の発現構築物。
【請求項31】
前記組換え核酸分子の転写が、以下:
(a)RNAポリメラーゼII;
(b)RNAポリメラーゼII以外のポリメラーゼ;
(c)T7ポリメラーゼ;および/または
(d)SP6ポリメラーゼ
に依存する、請求項1~30のいずれか一項記載の発現構築物または組換え核酸配列。
【請求項32】
(a)第1のタンパク質をコードする第1のセグメントと;
(b)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えグループ1ジシストロウイルス科内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする、前記第1のセグメントの下流の第2のセグメントと;
(c)前記IRESが不活性化状態にある際に第2のタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第2のセグメントの下流にありかつ前記第2のセグメントに機能的に連結された、第2のタンパク質をコードする第3のセグメントと
を含む組換えmRNA分子であって、
前記組換えmRNA分子の転写が、ポリメラーゼに依存し、
前記第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、
前記第2の部位が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む、
組換えmRNA分子。
【請求項33】
前記組換えmRNA分子の転写が、以下:
(a)RNAポリメラーゼII;
(b)RNAポリメラーゼII以外のポリメラーゼ;
(c)T7ポリメラーゼ;および/または
(d)SP6ポリメラーゼ
に依存する、請求項32記載の組換えmRNA分子。
【請求項34】
前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子、発現構築物または組換えmRNA分子をコードする、プラスミド。
【請求項35】
前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子、発現構築物または組換えmRNA分子をコードするDNAを含む真核細胞であって、
前記真核細胞が植物細胞ではなく、
前記DNAが、
(a)前記真核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか、または
(b)前記真核細胞内に存在するプラスミドもしくはウイルスベクター上に存在する、
真核細胞。
【請求項36】
前記細胞が、(a)動物細胞;(b)ヒト細胞;または(c)霊長類細胞である、請求項35記載の真核細胞。
【請求項37】
(a)前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子と;
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子と
を含む、遺伝子発現を制御するためのシステム。
【請求項38】
(a)請求項34記載のプラスミドと;
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子と
を含む、キット。
【請求項39】
(a)前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程;および
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子を前記真核細胞に導入する工程
を含む、タンパク質の発現を活性化および/または調節する方法であって、
前記第1のヌクレオチド配列が、インビボ条件下で前記第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、前記IRESを活性化状態にフォールディングさせ、
さらに、前記真核細胞が植物細胞ではない、
方法。
【請求項40】
前記組換え核酸分子を発現するように操作された前記真核細胞が、前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子を前記真核細胞に導入することによって提供される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
(a)前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程であって、前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、ウイルスに固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成される、工程;ならびに
(b)前記組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質の存在を検出および/または測定することによって、前記真核細胞が前記ウイルスに感染しているかどうかを決定する工程であって、前記真核細胞が植物細胞ではない、工程
を含む、真核細胞のウイルス感染を検出するための方法。
【請求項42】
前記ウイルスが、デングウイルスまたはジカウイルスである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
(a)前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程;および
(b)前記真核細胞を培養する工程
を含む、真核細胞の分化を制御するための方法であって、
前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、選択された細胞型に固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成され、
前記組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質が、前記選択された細胞型のアポトーシスを引き起こす毒素またはタンパク質を含み、
さらに、前記真核細胞が植物細胞ではない、
方法。
【請求項44】
前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子をコードする配列
を含むベクターであって、
前記改変IRESが、前記第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖であるセグメントを含むmRNAの存在に応答して、前記タンパク質の発現を活性化するように構成されている、
ベクター。
【請求項45】
前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子をコードするDNAを含む原核細胞であって、
前記DNAが、
(a)前記原核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか;または
(b)前記原核細胞内に存在するプラスミドもしくはウイルスベクター上に存在する、
原核細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2020年6月12日に出願された米国仮出願第63/038,536号の35 U.S.C.§119(e)に基づく恩典を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる配列表を含む。2021年6月10日に作成された該ASCIIコピーは、002806-190120WOPT_SL.txtという名称であり、サイズは42,737バイトである。
【0003】
共同研究契約のある当事者
特許請求される発明は、共同研究契約のある以下の当事者、すなわち、President and Fellows of Harvard CollegeおよびBASF Corporationのうちの1人もしくは複数の当事者によって、それに代わって、および/またはそれに関連してなされた。共同研究契約は、特許請求される発明の有効出願日以前に有効であり、特許請求される発明は、共同研究契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0004】
技術分野
本開示は、ウイルスIRESエレメントに由来する組換えグループ1内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントを使用して真核細胞内のタンパク質発現を調節するための構築物および方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
本開示の背景
遺伝子発現の調節は、成長および発達にとって、ならびに環境条件の変化に直面して恒常性を適切に維持するために重要である。そのため、細胞は、特定の遺伝子産物(例えば、タンパク質またはRNA)の産生を増加または減少させるために様々な機構を利用する。発現レベルは、例えば、発生経路を誘発するために、環境刺激に応答して、または新たな食物源に適応するために調節され得る。遺伝子発現は、例えば、転写開始の速度、またはRNAプロセシングの局面を増加または減少させることによって、転写レベルで調節され得る。また、タンパク質の翻訳後修飾(例えば、分解速度を増加または低下させることによって)も制御され得る。遺伝子発現を制御するための無数の異なる機構が自然界に存在し、これらの機構は、典型的には、複雑な調節ネットワークを形成するように結ばれている。異なる機構およびトリガーの使用は、必要に応じて、細胞が遺伝子の特定のサブセットを発現すること、または特定の遺伝子産物のレベルを調整することを可能にする。そうすることにより、エネルギーおよび資源を節約しながら、細胞が環境刺激にさらに迅速に応答することが可能になる。例えば、細菌および真核細胞は、必要な基質または最終産物の利用可能性に基づいて、合成経路または代謝経路で使用される酵素の発現を調整することが多い。同様に、多くの細胞型は、環境ストレスに応答して保護分子(例えば熱ショックタンパク質)の合成を誘導する。
【0006】
遺伝子発現のレベルを人工的に制御するためにいくつかの手法が開発されており、それらの多くは、天然に存在する調節システムをモデルにしている。一般に、遺伝子発現は、RNA転写のレベルで、または転写後に、例えば、mRNA分子のプロセシングもしくは分解を制御することによって、またはそれらの翻訳を制御することによって制御され得る。例えば、遺伝子発現は、小分子活性化剤もしくは阻害剤の投与によって(例えば、転写因子の活性を増加または低下させるために)、またはmRNAを不活性化もしくは分解するように設計された核酸の投与によって(例えば、リボザイム、アンチセンスDNA/RNA、およびRNA干渉技術を使用して)調節され得る。これらの手法は多くの用途で有用であることが証明されているが、それらの有用性は、ある特定の欠点によって制限される可能性がある。例えば、リボザイム、アンチセンスDNA/RNA、およびRNAiに基づく方法は、通常、配列特異的手法を必要とする(例えば、RNAiおよびアンチセンスDNA/RNAに使用される低分子干渉RNAは、各標的に対して特異的に設計されなければならない)。さらに、転写を調節するための小分子活性化剤および阻害剤の使用もまた、そのような方法では典型的には応答時間が遅いため、理想的ではない。
【0007】
これらの欠点に対処するための研究努力により、リボソーム結合部位(RBS)のトリガーベースのアンフォールディングに依存する、「トーホールドスイッチ(toehold switch)」と呼ばれる原核生物RNA感知モジュールが開発された。例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第10,208,312号(特許文献1)を参照されたい。トーホールドスイッチは、別個のトリガーRNA(「trRNA」)の非存在下でRBSを隠すことによって標的転写物の翻訳を選択的に抑制し、trRNAの存在下でRBSを明らかにし、関心対象のタンパク質をコードする機能的に連結された配列の翻訳を開始させる。原核生物トーホールドスイッチは、原核生物における翻訳を調節するための効率的な機構を提供することによって、他の先行技術の方法の欠点に部分的に対処する。しかし、このトーホールドスイッチ機構は、一般に、翻訳を開始および調節するためのさらに複雑な一連のエピジェネティックシグナルに依存する真核生物システムと互換性がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
本開示の例示的な態様の概要
本開示は、タンパク質翻訳を調節するための新たな遺伝子構築物および方法を提供することによって、当技術分野における様々な必要性に対処する。これらの構築物は、例えば、配列特異的な設計変更を必要とせずに、真核細胞内の関心対象の任意のタンパク質の翻訳を調節するためのプラットフォームとして使用され得る。さらに、本明細書において記載されるシステムは、外部刺激に応答した細胞内の遺伝子発現の人工的な制御を可能にする。
【0010】
特に、本開示は、例えば、真核細胞内の本質的に任意の関心対象のタンパク質の発現を調節するためのプラットフォームを提供する遺伝子構築物、組換え細胞、方法、キットおよびシステムを記載する。
【0011】
第1の一般的な局面では、本開示は、関心対象のタンパク質をコードする機能的に連結されたmRNA配列の翻訳を低減または防止するように操作された組換えIRESモジュールを提供する。これらの組換えIRESモジュールは、特定のtrRNAの存在下で活性化型にフォールディングするようにさらに操作される。活性化されると、機能的に連結されたmRNA配列の翻訳が進行する。trRNAは、細胞に導入された人工配列(例えば、プラスミド、または化学的に媒介されたトランスフェクションによる)、または天然に存在するmRNA(例えばウイルスmRNA)に見られる配列であり得る。したがって、これらの組換えIRESモジュールは、治療用途または産業用途のために関心対象のタンパク質の翻訳を調節するために使用され得るほか、ウイルス感染などの外因性刺激を検出するためのセンサーとしても使用され得る。
【0012】
別の一般的な局面では、本開示は、(a)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、グループ1ジシストロウイルス科(Dicistroviridae)内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする第1のセグメントと、(b)IRESが不活性化状態にある際にタンパク質の翻訳が抑制されるように、第1のセグメントの下流にありかつ第1のセグメントに機能的に連結された、タンパク質をコードする第2のセグメントとを含む組換え核酸分子であって、第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、第2の部位が、第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む組換え核酸分子を提供する。いくつかの局面では、核酸分子はmRNAである。いくつかの局面では、第2のヌクレオチド配列は、第1のヌクレオチド配列の実質的に全体の逆相補鎖である。いくつかの局面では、グループ1ジシストロウイルス科IRESは、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRES、カシミール蜂ウイルス(Kashmir bee virus)(KBV)IRESまたは急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRESである。
【0013】
いくつかの局面では、グループ1ジシストロウイルス科IRESは、第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されており、第1および第2の部位は、部位1、部位2、部位3、部位4、部位5、部位6、部位7および部位8のいずれかからそれぞれ独立して選択される(部位1~8は、以下に定義され、
図2として提供される概略図に示されている)。いくつかの局面では、第1および第2の部位は、部位1および部位2、部位1および部位4、部位1および部位5、部位1および部位6、部位1および部位7、部位1および部位8、部位2および部位6、部位2および部位7、部位4および部位6、部位5および部位6、部位5および部位7、部位6および部位7、部位8および部位2、部位8および部位6、または部位8および部位7をそれぞれ含む。
【0014】
いくつかの局面では、第1のヌクレオチド配列は、25~80nt長である。他の局面では、第1のヌクレオチド配列は、部分範囲内の長さ(例えば、30~40nt、40~50nt、50~60ntの長さ、または25~80ntの範囲内の整数値の任意の対によって定義される部分範囲内の長さ)を有し得る。いくつかの局面では、第2のヌクレオチド配列は、8~25nt長である。他の局面では、第2のヌクレオチド配列は、部分範囲内の長さ(例えば、10~15nt、15~25ntの長さ、または8~25ntの範囲内の整数値の任意の対によって定義される部分範囲内の長さ)を有し得る。
【0015】
いくつかの局面では、第1および第2のヌクレオチド配列は、インビボまたはインビトロ条件下で真核細胞内で発現された場合にハイブリダイズし、グループ1ジシストロウイルス科IRESを不活性化状態にフォールディングさせることができる。
【0016】
なおさらなる局面では、グループ1ジシストロウイルス科IRESは、第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子の存在下で活性化状態にフォールディングするように構成される。第1のヌクレオチド配列は、インビボまたはインビトロ条件下で真核細胞内で発現された場合、第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、グループ1ジシストロウイルス科IRESを活性化状態にフォールディングさせることができ得る。
【0017】
別の一般的な局面では、本開示は、本明細書において記載される組換え核酸分子(例えば、任意の組換えIRES)のいずれかをコードするプラスミドおよび真核細胞を提供する。真核細胞に関して、そのような組換え核酸分子は、細胞のゲノムDNAまたはプラスミドDNAに組み込まれ得ることが企図される。いくつかの局面では、真核細胞は動物細胞(例えば、ヒト細胞または霊長類細胞)である。いくつかの局面では、真核細胞は植物細胞ではない。
【0018】
別の一般的な局面では、本開示は、真核細胞内の遺伝子発現を調節するために使用され得るシステムおよびキットを提供する。例えば、本開示は、(a)本明細書において記載される任意の局面による組換え核酸分子と、(b)組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子とを含む、遺伝子発現の制御のためのシステムを提供する。同様に、本開示は、(a)本明細書において記載される組換え核酸分子のいずれかをコードするプラスミドと、(b)組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子とを含むキットを提供する。
【0019】
別の一般的な局面では、本開示は、(a)第1のタンパク質をコードする第1のセグメントと、(b)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されているグループ1ジシストロウイルス科IRESをコードする、第1のセグメントの下流の第2のセグメントと、(c)IRESが不活性化状態にある際に第2のタンパク質の翻訳が抑制されるように、第2のセグメントの下流にありかつ第2のセグメントに機能的に連結された、第2のタンパク質をコードする第3のセグメントとを含む組換えmRNA分子であって、組換えmRNA分子の転写が、RNAポリメラーゼIIに依存し、第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、第2の部位が、第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む組換えmRNA分子を提供する。そのような構築物は、本明細書において記載される他の構築物と比較して、翻訳漏れの減少を示し得る。
【0020】
別の一般的な局面では、本開示は、本明細書において記載される組換え核酸分子(例えば組換えIRESエレメント)を様々な用途で使用する方法を提供する。例えば、タンパク質の発現を活性化および/または調節する方法は、(a)本明細書において記載される組換え核酸分子のいずれかを発現するように操作された真核細胞を提供する工程、(b)組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子を真核細胞に導入する工程を含み得、第1のヌクレオチド配列は、インビボ条件下で第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、グループ1ジシストロウイルス科IRESを活性化状態にフォールディングさせる。いくつかの局面では、組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞は、前記請求項のいずれかの組換え核酸分子を真核細胞に導入することによって提供される。本明細書において記載される方法のいずれかで使用される真核細胞は、例えば、動物細胞(例えば、ヒト細胞または霊長類細胞)であり得る。
【0021】
上記のように、本明細書において記載される組換えIRESエレメントは、外部刺激を検出するためのセンサーとして使用され得る。したがって、本開示は、(a)前記請求項のいずれかの組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程であって、組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、ウイルスに固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成される工程、ならびに(b)組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質の存在を検出および/または測定することによって、真核細胞がウイルスに感染しているかどうかを決定する工程を含む、真核細胞のウイルス感染を検出する方法を提供する。ウイルスは、例えば、デングウイルスまたはジカウイルスであり得る。
【0022】
なおさらなる局面では、本開示は、(a)本明細書において記載される組換え核酸分子のいずれかを発現するように操作された真核細胞を提供する工程、および(b)真核細胞を培養する工程を含む、真核細胞の分化を制御する方法であって、組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、選択された細胞型に固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成され、組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質が、選択された細胞型のアポトーシスを引き起こす毒素またはタンパク質を含む方法を提供する。
【0023】
本開示の発明の様々な例示的な局面は、以下の添付の説明に記載されている。本明細書において記載されたものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、ここで例示的な方法および材料を説明する。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形も含む。別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】非改変IRESを使用した従来のIRES媒介真核生物遺伝子発現を要約した図である。
【
図2】グループ1 CrPV IRESの概略図であり、このIRESの3つの主要なループ(またはドメイン)を強調している。グループ1 IRESエレメントの構造は、ジシストロウイルス科メンバー(例えば、CrPV、KBVおよびABPV)間で保存されている。
【
図3】グループ1 CrPV IRESの概略図であり、本明細書において記載される外因性核酸配列の挿入領域として使用され得る8つの部位(すなわち、「部位1」、「部位2」、...「部位8」)を強調している。
【
図4】本明細書において記載される例示的な組換えIRESを使用した真核生物遺伝子発現を要約した図である。
【
図5】本明細書において記載される組換えIRESエレメントのうちの1つをコードするmRNA構築物、および第2の上流遺伝子の概略図である。
【
図6】様々なIRESモジュールの活性レベルを示すグラフである。
図6の左から右に向かって順に、「+T7 pol+GFP(トリガー)」、「+T7pol-GFP(トリガー)」、「-T7pol+GFP(トリガー)」および「「-T7pol-GFP(トリガー)」となっている。
【
図7-1】
図7は、様々な部位に導入された外因性ヌクレオチド配列の対を有する組換えIRESリボスイッチ構築物のスクリーニングの結果を示すグラフである。
図7の左から右に向かって順に、「+T7 pol+GFP(トリガー)」、「+T7pol-GFP(トリガー)」、「-T7pol+GFP(トリガー)」および「「-T7pol-GFP(トリガー)」となっている。
【
図8】特定のフォールド領域およびシュードノット領域を破壊する対応する塩基対を有する外因性ヌクレオチド配列を選択する影響を示すグラフである。
図8の左から右に向かって順に、「+T7 pol+GFP(トリガー)」、「+T7pol-GFP(トリガー)」、「-T7pol+GFP(トリガー)」および「「-T7pol-GFP(トリガー)」となっている。
【
図9】プロモーターの切り替え、およびRNAポリメラーゼIの上流活性化配列の付加の影響を示すグラフである。
【
図10】本明細書において記載される例示的な組換えIRESリボスイッチが、それらのそれぞれのトリガーRNA(trRNA)に対して高度に特異的であることを示すグラフである。
図10の左から右に向かって順に、「GFPトリガー」、「Azuriteトリガー」および「ySUMOトリガー」となっている。
【
図11】本明細書において記載される例示的な組換えIRESリボスイッチの機能性に対する変異の影響を示すグラフである。
【
図12】組換えIRESリボスイッチが、いくつかのジシストロウイルス科メンバー(例えば、KBVおよびABPV)によって産生されたIRESモジュールの配列に基づき得ることを示すグラフである。
【
図13】ウイルス感染を検出するためのセンサーとしての真核細胞内での本開示による組換えIRESの使用を示す図である。
【
図14A】
図14A~
図14Gは、eToehold設計およびスクリーニングを示す。
図14A:eToeholdモジュールは、IRES活性が阻害され、リボソームの動員および翻訳を妨げるロックされた状態にある。トリガーRNAは、ストランド侵入と、活性化状態へのIRESの放出とを介してIRES活性を活性化し、リボソーム結合およびタンパク質産生を可能にする。
図14B:eToeholdの基本スクリーニング方法。レポータータンパク質、ポリメラーゼ(例えばT7)およびトリガーRNA配列(例えばGFP)の上流のIRESまたはeToehold候補をコードするプラスミドをHEK293T細胞に同時トランスフェクトした。さらに詳細な情報については、実施例3および
図17を参照されたい。
図14C:T7ポリメラーゼおよびGFPトリガー配列による同時トランスフェクションを用いたおよび用いないHEK293Tにおける様々なIRESモジュールの活性。
図14D:翻訳能力および挿入部位に重要な3つのループを含むジシストロウイルス科IRES構造。
図14E:等しくない長さの2つの相補的配列を、
図14Dに示す挿入部位に挿入することによるeToeholdモジュールのスクリーニング。数字は、最初に、トーホールドRNA配列(トリガーRNAに相補的な約40塩基対)の挿入部位を示し、2番目に、第1のものに相補的な比較的小さい断片(約10~18塩基対)を示す。
図14F:CrPV IRES構造。挿入がステムループまたはシュードノットと重複する領域(塩基対破壊、すなわち、BB部位)が注目される。明確にするために、CrPV IRESに必要なBB部位の配列の例を含める。
図14G:対応する塩基対(3つの塩基対)を、
図14Dに示す領域内に挿入することを選択することの影響。構築物の詳細については表1を参照されたい。バーはいずれも平均値を表す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。実験はいずれも、少なくとも2回繰り返した。
【
図15A】
図15A~
図15Eは、eToehold発現の最適化を実証する。
図15A:eToeholdゲーテッド(eToehold-gated)導入遺伝子(mKate)の発現に対するプロモーター-ポリメラーゼシステムの切り替え、およびRNAポリメラーゼI上流活性化配列の付加の影響。
図15B:設計されたtrRNAおよび一致しないRNAの存在下でのmKate発現によって評価した場合のeToehold活性。
図15Bの左から右に向かって順に、「GFPトリガー」、「Azuriteトリガー」および「ySUMOトリガー」となっている。
図15C:終止コドンおよびステムループを含む、RNAポリメラーゼIIによって推進されるeToeholdゲーテッドRNAの概略図。
図15D:mKate発現によって評価した、
図15Cに示す特徴を有するおよび有しない構築物のeToehold活性またはIRES活性。構築物の詳細については表1を参照されたい。
図15E:棒グラフはいずれも平均値を示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。実験はいずれも、少なくとも3回繰り返した。
【
図16A】
図16A~
図16Fは、eToeholdが、感染状態、細胞状態および細胞型に応答し得ることを実証する。
図16A:ジカウイルスによる感染を感知するように設計されたeToeholdモジュールを用いて、安定な細胞株を作製した。
図16B:モック、ジカまたはデング熱感染後に、ジカ感染時にナノルシフェラーゼを発現するように操作された細胞からの発光シグナル。CrPVゲーテッド(CrPV-gated)ナノルシフェラーゼを用いて操作した細胞を陽性対照として使用した。
図16C:熱ショックタンパク質mRNAを検出することによって熱への曝露を感知するように設計されたeToeholdモジュールを用いて作製された安定な細胞株。
図16D:GFPレポーターおよびeToeholdゲーテッドAzuriteを含む構築物を用いて、HeLa細胞にトランスフェクトした。
図16E:マウスチロシナーゼ(Tyr)の存在下でAzuriteタンパク質を翻訳するように設計された構築物をB16細胞、D1細胞またはHEK293T(図示せず)細胞にトランスフェクトした。
図16F:トランスフェクション後のB16細胞、D1細胞またはHEK293T細胞内のeToeholdゲーテッドAzuriteの発現。バーはいずれも平均値を示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復(
図16Fでは4回)のs.d.を表す。実験はいずれも、少なくとも3回繰り返した。
【
図17】eToeholdスクリーニングの概略図である。HEK293T細胞を60%コンフルエンシーで播種し、T7-ポリメラーゼ、潜在的なeToeholdゲーテッドmKateを推進するT7プロモーター、およびトリガー構築物(GFP)をコードするプラスミドの組合せを用いてトランスフェクトした。37℃で60時間インキュベートした後、細胞を剥離し、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【
図19】
図19A~
図19Bは、eToehold活性が挿入領域の熱力学に依存することを実証する。
図19A:構築物は、GFP感知のために設計されたCrPV eToehold 8-6に基づくものであった。
図19B:構築物は、GFP感知のために設計されたCrPV eToehold 6-7に基づくものであった。全データを平均値として示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。実験はいずれも、少なくとも3回繰り返した。
【
図20A】
図20A~
図20Bは、追加のRNA結合を有するまたは有しない、CrPV IRESを発現する細胞における細胞内サイトカイン染色を実証する。
図20A:初代ヒト線維芽細胞および筋骨格細胞内のIL6、CCL5およびCCL2の産生に対するCrPV IRES構築物を用いたトランスフェクションまたは形質導入の影響。構築物の詳細については表1を参照されたい。
図20B:eToeholdおよび直交非結合配列を発現する細胞と比較した、CrPV IRES構築物および「トリガー」を発現するように形質導入された細胞内のIL6、CCL5およびCCL2の発現。エラーバーはs.d.を示す。*は、二元配置ANOVAでp<0.05を示す。実験はいずれも少なくとも3回繰り返し、ドットは個々のデータ点を表す。
【
図22A】
図22A~
図22Cは、eToeholdモジュールの基底発現を減少させる実験を実証する。
図22A:sfGFPを推進する様々なプロモーターを有する構築物を
図17に基づいて試験した。
図22B:RNAポリメラーゼI因子を動員し、5'キャッピングを減少させるように設計されたRNA領域をCrPV eToehold 6-7の前に挿入した。
図22C:RNAポリメラーゼI応答性プロモーターを
図17に基づいて試験した。構築物の詳細については表1を参照されたい。全データを平均値として示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。同様の結果を示す3回の実験的反復内で、代表的なフローサイトメトリープロットを選択した。実験はいずれも、少なくとも2回繰り返した。
【
図23A】
図23A~
図23Eは、
図15A~
図15Eおよび
図16A~
図16Fの平均強度データのグラフである。
図23Bの左から右に向かって順に、「GFPトリガー」、「Azuriteトリガー」および「ySUMOトリガー」となっている。
図23Dの左から右に向かって順に、「37℃」および「42℃」となっている。
図23Eの左から右に向かって順に、「B16(高発現Tyr)」、「D1」および「HEK293T」となっている。
【
図24】ステムループの挿入によるT7プロモーターの基底発現の減少を実証するグラフである。
図17に基づいて試験したeToeholdモジュールの前の終止コドンおよびステムループの付加。構築物の詳細については表1を参照されたい。全データを平均値として示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。同様の結果を示す3回の実験的反復内で、代表的なフローサイトメトリープロットを選択した。実験はいずれも、少なくとも2回繰り返した。
【
図25】
図25A~
図25Bは、ミスマッチに対するeToehold感度、および様々なIRESに基づくeToeholdを実証する。
図25A:eToehold機能に対する挿入されたRNA配列のアニーリング領域内またはアニーリング領域外のミスマッチ変異の影響。構築物はいずれも、GFP感知のために設計されたCrPV eToehold 8-6に基づくものであった。
図25B:他のジシストロウイルス科IRES(すなわち、KBVおよびABPV)に基づいて構築されたeToeholdは機能性を保持する。構築物の詳細については表1を参照されたい。全データを平均値として示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。実験はいずれも、少なくとも3回繰り返した。
【
図26】比較的小さい断片挿入に対する補完がeToeholdを活性化しないことを示すグラフである。ySUMOに挿入された比較的小さいGFP断片の逆相補鎖を有するトリガーを含む様々なトリガーを使用して、
図17の設定を使用して、GFPトリガー用に設計されたEZ-L287を試験した(表1を参照)。全データを平均値として示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。実験を2回繰り返した。
【
図27】
図27A~
図27Bは、酵母内でeToeholdが機能することを実証する。炭素源をガラクトースに切り替えた際に、GFP(トリガーRNA)を発現する酵母株に、iRFPをゲーティングするeToeholdモジュールを組み込んだ。対数期成長の6時間後に、iRFPシグナル(
図27A)およびGFPシグナル(
図27B)を測定した。培地にビリベルジンを補充した。構築物の詳細については表1を参照されたい。全データを平均値として示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。同様の結果を示す3回の実験的反復内で、代表的なフローサイトメトリープロットを選択した。実験はいずれも、少なくとも2回繰り返した。
【
図28A】
図28A~
図28Bは、eToeholdが無細胞溶解物中で機能することを実証する。
図28A:様々な量のトリガーRNA(転写されたEZ-L366)とともに、コムギ胚芽抽出物:50nMのスイッチ-sfGFP RNA(対照としてEZ-L214またはEZ-L212から転写された)を加えた。
図28B:250nMのトリガーRNA(転写されたEZ-L366)とともに、またはそれを伴わず、ウサギ網状赤血球溶解物:150nMのスイッチ-sfGFP RNA(対照としてEZ-L214またはEZ-L212から転写された)を加えた。構築物の詳細については表1を参照されたい。全データを平均値として示す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。同様の結果を示す3回の実験的反復内で、代表的なフローサイトメトリープロットを選択した。実験はいずれも、少なくとも2回繰り返した。
【
図29】
図16Aおよび
図16Bと同じ実験設定によりeToeholdを用いたジカウイルス濃度感知を示すグラフである。
【
図30A】
図30A~
図30Dは、eToeholdを用いたさらなるウイルス感染感知を実証する。
図30A:ジカウイルス感染の感知のために設計された安定な細胞株は、T7プロモーター下でジカRNA応答性eToeholdゲーテッドAzurite翻訳を含む。
図30Aの左から右に向かって順に、「非感染」、「ジカウイルスに感染」および「デングウイルスに感染」となっている。
図30B:(
図30A)に示す野生型Vero E6細胞、およびジカ感知eToeholdゲーテッドAzuriteを発現する安定な細胞株を、デングウイルスまたはジカウイルスに感染させた。他の箇所に示される試料ゲート。
図30C:SARS-CoV-2感染の感知のために設計された安定な細胞株は、SARS-CoV-2 RNA応答性eToeholdゲーテッドナノルシフェラーゼ翻訳を含む。
図30D:GFPと、SARS-CoV-2の2つの領域とを発現する構築物を用いて、SARS-CoV-2の様々な領域を感知したeToeholdを含む安定な細胞株にトランスフェクトした。次いで、フリマジンを加えた後に発光測定を行った。
図30Dの左から右に向かって順に、「GFPをトランスフェクト」、「SARS-CoV-2スパイクをトランスフェクト」および「SARS-CoV-2 3'をトランスフェクト」となっている。構築物の詳細については表1を参照されたい。バーはいずれも平均値を示す。ドットは、個々のデータ点を表す。エラーバーは、同じ条件に曝露した3回の実験的反復のs.d.を表す。同様の結果を示す3回の実験的反復内で、代表的なフローサイトメトリープロットを選択した。実験はいずれも、少なくとも2回繰り返した。
【
図31A】
図31A~
図31Bは、ウイルス感知用途に使用されるゲートを示す。
図31A:ウイルスに感染した試料の染色結果。
図31B:染色およびその後のフローサイトメトリーによって測定した場合の感染のMOIに対する感染レベル依存性。同様の結果を示す2つの実験的反復内で、代表的なフローサイトメトリープロットを選択した。実験はいずれも、少なくとも2回繰り返した。
【
図32A】
図32A~
図32Bは、ジカウイルス感知のための例示的なゲートを示す。ジカ感知eToeholdゲーテッドAzurite(
図23Aに示す)を発現する安定な細胞株を、デングウイルスおよびジカウイルスによる感染に供した。
図24Bに示すゲートに基づいてフローサイトメトリーデータを示す。ジカウイルスに感染した野生型Vero E6細胞は、増大したAzurite蛍光を示さない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
配列特異的な設計変更を必要とせずに、真核細胞内の関心対象の任意のタンパク質の翻訳を調節するためのプラットフォームとして使用され得る新たな構築物が当技術分野において必要とされている。従来の選択肢(例えば、リボザイム、アンチセンスDNA/RNA、およびRNAiに基づく方法)は、通常、配列特異的手法を必要とし、潜在的にそれらの有用性が制限される。原核生物トーホールドスイッチなどのさらに最近の開発は、従来の選択肢の欠点のいくつかに対処している。しかし、それらの有用性は、原核生物と真核生物とによって使用される翻訳機構の差のために、一般に原核生物に限定される。例えば、真核生物の翻訳開始は、内因性RNAポリメラーゼII動員5'修飾キャッピング、mRNA安定化のためのポリ-アデノシン(ポリA)テール、およびタンパク質翻訳調節のためのコザック配列に依存する。コザック配列はリボソーム結合を改善するが、理想的なRBS置換ではない。以前に開発されたコザックベースのトーホールドは、翻訳の最大2倍のtrRNA推進誘導を達成するにとどまっている。したがって、真核細胞と適合するトーホールドスイッチが提供する有用性は、この時点では限られている。
【0026】
近年、Cas9発現と、ガイドRNA(gRNA)のフォールディングとを利用して、さらに複雑なRNAベースのスイッチが開発されている。gRNAのアンフォールディングは、Cas9酵素の活性化と、対応する抑制または活性化とをもたらす。しかし、かさばる回路にもかかわらず、これらの機構もまた、(真核生物および原核生物の両方に)中程度の変化倍率を誘導するにとどまっている。同様に、リボザイム研究の分野における近年の進歩により、小分子誘導時に標的mRNAのポリAテールを切断するリボザイムが開発された。しかし、リボザイムベースの機構は、現時点で、特定の配列に対して調整されるそれらの能力を制限する短い長さのtrRNAに限定されており、いずれにせよ、漏れおよび誘導調整には理想的でない「ONからOFF」センサーに専ら限定される。
【0027】
本開示は、高い「ON」対「OFF」変化倍率を有する、特定のtrRNAに応答して「OFFからON」に応答する最小成分RNAベースのセンサー(すなわち、本明細書において記載される組換えIRESエレメント)を提供することによって、真核生物遺伝子発現を調節する公知の機構のこれらおよび他の欠点に対処する。したがって、これらの構築物は、産業的または治療的使用のためのタンパク質を産生するために使用される発現システム、および他の新規用途では(例えば、ウイルスmRNAの存在などの環境刺激を検出することができるバイオセンサーでは)有利である。
【0028】
真核生物翻訳機構およびウイルス翻訳機構
真核生物では、タンパク質翻訳は、通常、mRNAの5'末端の修飾ヌクレオチド「キャップ」、ならびにリボソームを動員および配置する開始因子タンパク質(eIF)を必要とする厳密に調節された機構によって開始される。このシステムを迂回するために、多くの病原性ウイルスは、カノニカルな経路の最中に使用される5'キャップおよびeIFの代わりとして、リボソームを動員および操作するための特異的なRNA二次(または三次)構造の使用に依存する代替的なキャップ非依存性機構を使用する。このプロセスを推進するRNAエレメントは、IRESとして知られている。
【0029】
図1は、非改変ウイルスIRESを使用して任意のタンパク質(この場合mKate)を発現させることができるプロセスを示す。要約すると、従来のIRES媒介真核生物遺伝子発現は、ウイルスIRESと関心対象の遺伝子とをコードする下流DNAセグメントに機能的に連結されたプロモーター(例えばT7プロモーター)を必要とする。この例では、T7プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼ(mRNAを5'キャップしない)を動員して、IRESと、関心対象のタンパク質、すなわちmKateをコードするセグメントとを含むmRNAを転写する。ウイルスIRESは、通常、リボソーム(および潜在的に、翻訳に必要な他の成分)を動員し、mKateタンパク質の発現をもたらす。この例では、IRESは、この例ではtrRNAが存在しないため不活性である、本開示による組換えIRESではなく非改変ウイルスIRESである。
【0030】
ウイルスIRESは、それらのRNAエレメントの二次構造および三次構造、ならびに翻訳を開始するためのそれらの作用様式に基づいて、4つの異なるグループに編成されている。この分類系内では、グループ1 IRESは、一般に、グループ2~4のIRESよりもコンパクトで複雑である。さらに、グループ1 IRESは、非AUG開始コドン上で翻訳を開始することができ、いかなるeIFも必要とせず、開始因子Met-tRNAを使用しないため、注目に値する。グループ1 IRESは、結果として、小さいリボソームサブユニットおよび大きいリボソームサブユニットのみを必要とする効率的な翻訳開始を促進することができる。いくつかのジシストロウイルス科メンバー(例えば、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)、カシミール蜂ウイルス(KBV)および急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV))は、グループ1 IRESをコードすることが知られている。グループ1 IRESは、ジシストロウイルス科メンバーの中で、配列、二次構造および三次構造に関して高度に保存されている。CrPV IRESは、このグループで最もよく研究されているIRESであり、他のグループ1ジシストロウイルス科IRES(例えば、KBV IRESおよびABPV IRES)を代表する。
【0031】
図2は、CrPVグループ1 IRESの二次構造の概略図を示す。
図2に示すように、CrPVグループ1 IRESは、通常、ここではループ1~3と標示された3つの主要なループ(またはドメイン)を有するコンパクトな構造にフォールディングされ、ループ1~3は、シュードノット構造(それぞれPKI、PKIIおよびPKIIIと呼ばれる)、ならびに内部ループ、バルジおよびヘアピンモチーフをそれぞれ含む。このフォールディングされた構造は、IRES活性に不可欠である。例えば、トリプル-シュードノット構造は、内部開始中に開始因子met-tRNAを機能的に置換し、非AUGトリプレットでの翻訳開始を導くことが知られている。通常、ウイルスmRNA上にCrPVグループ1 IRESが存在すると、真核生物リボソームがmRNAに動員され、コードされたウイルスタンパク質の翻訳が開始される。
【0032】
組換えIRESリボスイッチ
いくつかの局面では、本開示は、少なくとも1つの組換えIRESリボスイッチを組み込むように改変されている核酸構築物(例えばmRNA)に関する。これらの組換えIRESリボスイッチの態様は、本明細書において「eToehold」またはhToehold」と呼ばれることがある。組換えIRESリボスイッチは、ウイルスIRESに天然に存在する配列に由来し得るか、またはウイルスIRESに天然に存在する配列を含む。組換えIRESは、外因性、例えば非内因性配列を含むように改変されたウイルスIRESであり得る。局面のいずれかのいくつかの態様では、組換えウイルスIRESは、外因性、例えば非内因性配列の2つの挿入を含むウイルスIRESを含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載される組換えウイルスIRESリボスイッチを作製するためのウイルスIRESへの挿入は、挿入部位でのウイルス配列の欠失を含み得る。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載される組換えウイルスIRESリボスイッチを作製するためのウイルスIRESへの挿入は、挿入部位でのウイルス配列の欠失を含まない。
【0033】
本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、ウイルスのゲノムもしくは配列において得られるかまたはウイルスのゲノムもしくは配列に天然に存在する任意のIRES配列に由来し得る。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、哺乳動物(例えばヒト)の病原性ウイルスのゲノムもしくは配列、もしくは哺乳動物(例えばヒト)の共生ウイルスのゲノムもしくは配列において得られるかまたは哺乳動物(例えばヒト)の病原性ウイルスのゲノムもしくは配列、もしくは哺乳動物(例えばヒト)の共生ウイルスのゲノムもしくは配列に天然に存在する任意のIRES配列に由来し得る。そのようなウイルスおよびそれらの配列は、当技術分野において公知である。局面のいずれかのいくつかの態様では、IRES配列は、グループ1 IRESであり得る。局面のいずれかのいくつかの態様では、IRES配列は、グループ1 IRES、グループ2 IRES、グループ3 IRESまたはグループ4 IRESであり得る。局面のいずれかのいくつかの態様では、IRESは、グループ1ジシストロウイルス科IRES、ヘパシウイルス(Hepacivirus)IRESもしくはエンテロウイルス(Enterovirus)IRESのIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、グループ1ジシストロウイルス科IRES、ヘパシウイルスIRESもしくはエンテロウイルスIRESのIRES配列である。例示的な野生型IRES配列および組換えIRESリボスイッチ配列が本明細書において提供され、本明細書において記載される方法および組成物に使用するためのさらなる野生型IRES配列は、当業者によって容易に得られるおよび/または同定される。例えば、IRES配列のデータベースは、iresite.orgのワールドワイドウェブで利用可能である。
【0034】
局面のいずれかのいくつかの態様では、ヘパシウイルスIRESは、C型肝炎ウイルス(HCV);B型肝炎ウイルス;F型肝炎ウイルス;I型肝炎ウイルス;J型肝炎ウイルス;K型肝炎ウイルス;L型肝炎ウイルス;M型肝炎ウイルス;N型肝炎ウイルス;ゲレザ・ヘパシウイルス(Guereza hepacivirus);GB型肝炎ウイルスBウイルス(hepatitis GB virus B virus);非霊長類ヘパシウイルスNZP1ウイルス;ノルウェイレートヘパシウイルス1ウイルス(Norway rate hepacivirus 1 virus);ノルウェイレートヘパシウイルス2ウイルス(Norway rate hepacivirus 2 virus);コウモリヘパシウイルス(bat hepacivirus);ウシヘパシウイルス;ウマヘパシウイルス;ヘパシウイルスPウイルス;げっ歯類ヘパシウイルス;およびウェンリングシャークウイルス(wenling shark virus)のIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、C型肝炎ウイルス(HCV);B型肝炎ウイルス;F型肝炎ウイルス;I型肝炎ウイルス;J型肝炎ウイルス;K型肝炎ウイルス;L型肝炎ウイルス;M型肝炎ウイルス;N型肝炎ウイルス;ゲレザ・ヘパシウイルス;GB型肝炎ウイルスBウイルス;非霊長類ヘパシウイルスNZP1ウイルス;ノルウェイレートヘパシウイルス1ウイルス;ノルウェイレートヘパシウイルス2ウイルス;コウモリヘパシウイルス;ウシヘパシウイルス;ウマヘパシウイルス;ヘパシウイルスPウイルス;げっ歯類ヘパシウイルス;およびウェンリングシャークウイルスのIRES配列である。局面のいずれかのいくつかの態様では、ヘパシウイルスIRESは、c型肝炎ウイルス(HCV)のIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、c型肝炎ウイルス(HCV)のIRES配列である。このようなウイルスの配列は当技術分野において公知であり、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/genomes/GenomesGroup.cgi?taxid=11102のワールドワイドウェブで利用可能である。
【0035】
局面のいずれかのいくつかの態様では、エンテロウイルスIRESは、ポリオウイルス(PV);エンテロウイルス71(EV71);エンテロウイルスAウイルス(例えば、コクサッキーウイルスA2;エンテロウイルスA;またはエンテロウイルスA114);エンテロウイルスBウイルス(例えば、コクサッキーウイルスB3またはエンテロウイルスB);エンテロウイルスC;ヒトコブラクダエンテロウイルス19CC;エンテロウイルスDウイルス(例えば、エンテロウイルスDまたはエンテロウイルスD68);エンテロウイルスE;エンテロウイルスFウイルス(例えば、エンテロウイルスFまたはコモリネズミエンテロウイルス(possum enterovirus)W1);エンテロウイルスHウイルス(例えば、エンテロウイルスHまたはサルエンテロウイルスSV4);エンテロウイルスJウイルス;エンテロウイルスSEV-gx;ライノウイルスAウイルス(例えば、ヒトライノウイルスA1またはライノウイルスA);ライノウイルスBウイルス(例えば、ヒトライノウイルスB2またはライノウイルスB14);ライノウイルスCウイルス(例えば、ヒトライノウイルスNAT001またはライノウイルスC);ピコルナウイルス科(picornaviridae)ウイルス(例えば、ピコルナウイルス科種げっ歯類/Ee/PicoV/NX2015);ブタエンテロウイルス(例えば、ブタエンテロウイルス9);エンテロウイルスAN12;エンテロウイルスヤギ/JL14;スーチュアンターキンエンテロウイルス(Sichuan takin enterovirus);もしくはヤクエンテロウイルス(Yak enterovirus)のIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、ポリオウイルス(PV);エンテロウイルス71(EV71);エンテロウイルスAウイルス(例えば、コクサッキーウイルスA2;エンテロウイルスA;またはエンテロウイルスA114);エンテロウイルスBウイルス(例えば、コクサッキーウイルスB3またはエンテロウイルスB);エンテロウイルスC;ヒトコブラクダエンテロウイルス19CC;エンテロウイルスDウイルス(例えば、エンテロウイルスDまたはエンテロウイルスD68);エンテロウイルスE;エンテロウイルスFウイルス(例えば、エンテロウイルスFまたはコモリネズミエンテロウイルスW1);エンテロウイルスHウイルス(例えば、エンテロウイルスHまたはサルエンテロウイルスSV4);エンテロウイルスJウイルス;エンテロウイルスSEV-gx;ライノウイルスAウイルス(例えば、ヒトライノウイルスA1またはライノウイルスA);ライノウイルスBウイルス(例えば、ヒトライノウイルスB2またはライノウイルスB14);ライノウイルスCウイルス(例えば、ヒトライノウイルスNAT001またはライノウイルスC);ピコルナウイルス科ウイルス(例えば、ピコルナウイルス科種げっ歯類/Ee/PicoV/NX2015);ブタエンテロウイルス(例えば、ブタエンテロウイルス9);エンテロウイルスAN12;エンテロウイルスヤギ/JL14;スーチュアンターキンエンテロウイルス;もしくはヤクエンテロウイルスのIRES配列である。局面のいずれかのいくつかの態様では、エンテロウイルスIRESは、ポリオウイルス(PV)もしくはエンテロウイルス71(EV71)のIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、ポリオウイルス(PV)もしくはエンテロウイルス71(EV71)のIRES配列である。このようなウイルスの配列は当技術分野において公知であり、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/genomes/GenomesGroup.cgi?taxid=12059のワールドワイドウェブで利用可能である。
【0036】
局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、ウイルスのジシストロウイルス科(例えば、CrPV、KBVまたはABPV)のメンバーによって使用されるグループI IRESエレメントに由来する。局面のいずれかのいくつかの態様では、グループIジシストロウイルス科IRESは、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRES、カシミール蜂ウイルス(KBV)IRES、急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRES、チャバネアオカメムシ(Plauta Stali)腸管ウイルス(PSIV)IRES;アブラムシ致死性麻痺ウイルス(aphid lethal paralysis virus)(ALPV)IRES;黒色女王蜂児ウイルス(BQCV)IRES;ショウジョウバエ(Drosophila)Cウイルス(DCV)IRES;ヒメトビP(Himetobi P)ウイルス(HiPV)IRES;ヒメヨコバイ(Homalodisca coagulata)ウイルス-1(HoCV-1)IRES;ムギクビレアブラムシ(Rhopalosiphum padi)ウイルス(RhPV)IRES;もしくはサシガメ属(Triatoma)ウイルス(TrV)のIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRES、カシミール蜂ウイルス(KBV)IRES、急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRES、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(PSIV)IRES;アブラムシ致死性麻痺ウイルス(ALPV)IRES;黒色女王蜂児ウイルス(BQCV)IRES;ショウジョウバエCウイルス(DCV)IRES;ヒメトビPウイルス(HiPV)IRES;ヒメヨコバイウイルス-1(HoCV-1)IRES;ムギクビレアブラムシウイルス(RhPV)IRES;もしくはサシガメ属ウイルス(TrV)のIRES配列である。
【0037】
上記で説明したように、これらのIRESエレメントの天然に存在する形態は、関連するmRNAにリボソームを動員し、mRNAの翻訳をもたらす(すなわち、構成的に活性である調節回路)。本発明の共同発明者らは、驚くべきことに、別個のトリガーRNA(trRNA)分子の濃度に基づいて「ON」または「OFF」に切り替えられ得る組換えIRESリボスイッチを産生するように、ジシストロウイルス科IRESエレメントを遺伝子改変することができることを見出した。この新たな機能性は、外因性ヌクレオチド配列を含む2つ以上のセグメントをウイルスIRESエレメントの元の配列に挿入することによって提供される。以下にさらに詳細に説明するように、これらのセグメントは、対応するtrRNAの非存在下でハイブリダイズし、組換えIRESを不活性状態にフォールディングさせるように設計される。trRNAが提供されると、2つのセグメント間のハイブリダイゼーションが破壊され、組換えIRESが、上記のように構成的に活性である天然に存在するウイルスIRESの立体配座と同様の立体配座にフォールディングすることが可能になる。その結果、組換えIRESは、対応するトリガーRNAの濃度に基づいて「ON」または「OFF」に切り替えられ得るリボスイッチとして機能し、関心対象のタンパク質をコードする機能的に連結された下流mRNA配列の翻訳を調節する。
【0038】
いくつかの局面では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、ウイルスIRES(例えば、ヘパシウイルスIRESまたはエンテロウイルスIRES)と少なくとも70%の配列同一性を共有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの局面では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、外因性ヌクレオチド配列を含む2つのセグメントを除く全ての位置で、ウイルスIRES(例えば、ヘパシウイルスIRESまたはエンテロウイルスIRES)と少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98、少なくとも99または少なくとも100%の配列同一性を示す。局面のいずれかのいくつかの態様では、本開示によるIRESリボスイッチは、配列内のXによって示される、この配列内の2つの部位に挿入された外因性ヌクレオチド配列の存在を除いて、SEQ ID NO:30~36のいずれか1つのヌクレオチド配列に対して少なくとも70、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98、少なくとも99または少なくとも100%の配列同一性を共有するヌクレオチド配列を含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、本開示によるIRESリボスイッチは、配列内のXによって示される、この配列内の2つの部位に挿入された外因性ヌクレオチド配列の存在を除いて、SEQ ID NO:30~36のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、本開示によるIRESリボスイッチは、配列内のXによって示される、この配列内の2つの部位に挿入された外因性ヌクレオチド配列の存在を除いて、SEQ ID NO:30~36のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、本開示によるIRESリボスイッチは、配列内のXによって示される、この配列内の2つの部位に挿入された外因性ヌクレオチド配列の存在を除いて、SEQ ID NO:30~36のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。2つの部位に挿入される外因性ヌクレオチド配列は、本明細書において他の箇所に記載される第1および第2のヌクレオチド配列であり得る。
【0039】
いくつかの局面では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、グループIジシストロウイルス科IRES(例えば、CrPV IRES、KBV IRESまたはABPV IRESと少なくとも70%の配列同一性を共有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの局面では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、外因性ヌクレオチド配列を含む2つのセグメントを除く全ての位置で、グループIジシストロウイルス科IRESと少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98、少なくとも99または少なくとも100%の配列同一性を示す。例えば、本開示によるIRESリボスイッチは、配列内の2つの部位に挿入された外因性ヌクレオチド配列の存在を除いて、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列に対して少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98、少なくとも99または少なくとも100%の配列同一性を共有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0040】
局面のいずれかのいくつかの態様では、組換えIRESは、コクサッキーウイルスB3(CVB3)以外のウイルスのIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、コクサッキーウイルスB3(CVB3)以外のウイルスのIRES配列である。局面のいずれかのいくつかの態様では、組換えIRESは、コクサッキーウイルスB3(CVB3)のIRES配列に由来しないか、または改変されたIRESは、コクサッキーウイルスB3(CVB3)のIRES配列ではない。局面のいずれかのいくつかの態様では、組換えIRESは、コクサッキーウイルスB3(CVB3)以外のエンテロウイルスのIRES配列に由来するか、または改変されたIRESは、コクサッキーウイルスB3(CVB3)以外のエンテロウイルスのIRES配列である。
【0041】
本組換えIRESリボスイッチ技術の構造および機能の以下の説明では、グループ1ジシストロウイルス科IRESおよびそれに由来する組換えIRESリボスイッチを示す図を参照する。これらの図は、例示的な態様の例示であり、本技術がこれらの態様に限定されることを意味しない。
【0042】
図3は、8つの潜在的挿入部位(部位1~8)を識別する数値標示によって注釈付けされたCrPVグループ1 IRESの概略図を示す。上記のように、この構造は、他のグループ1ジシストロウイルス科IRES(例えば、KBVグループ1 IRESおよびABPVグループ1 IRES)の構造を代表する。これらの部位は、本開示の様々な局面では、本明細書において参照されるものとする。例えば、本開示による組換えIRESは、
図3に示す二次構造と同一または実質的に同様であるが、部位1~8のうちの1つまたは複数に挿入された少なくとも1つの外因性RNAセグメントを含む二次構造を有するIRESを含み得る。例えば、組換えIRESは、外因性セグメントが部位1および2、もしくは部位8および6、または2つ以上の部位の任意の他の組合せに挿入された、CrPVウイルス、KBVウイルスまたはABPVウイルスに由来する配列を含み得る。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「部位1」、「部位2」...「部位8」は、CrPVグループ1 IRES(ジシストロウイルス科のメンバーにおけるグループ1 IRESを代表する)の概略図を示す
図3を参照して定義される。「部位1」は、ループ1の第1のステムに対して5'側にあるIRESの領域を指し、「部位2」は、ループ1の第2のステムとシュードノット(PK1)との間の領域を指す。「部位3」は、ループ1の第1のステムと第2のステムとの間に存在する内部ループを指す。「部位4」は、ループ2の第1のステムに対して5'側にある領域を指し、「部位5」は、ループ2の第1のヘアピンと直後のステムとの間の領域を指す。「部位6」は、ループ2の最後のステムとPK1との間の一本鎖領域を指す。「部位7」は、同様に、PK1とループ3の第1のステムとの間の一本鎖領域を指す。最後に、「部位8」は、シュードノット3(PK3)に対して3'側にある一本鎖領域を指す。
【0044】
局面のいずれかのいくつかの態様では、第1および第2の部位は、部位1および部位2、部位1および部位8、部位2および部位7、部位6および部位7、または部位8および部位6をそれぞれ含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、第1および第2の部位は、部位6および部位7、または部位8および部位6をそれぞれ含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、第1および第2の部位は、部位6および部位7をそれぞれ含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、第1および第2の部位は、部位8および部位6をそれぞれ含む。いくつかの局面では、部位1~8のうちの1つまたは複数に挿入された外因性ヌクレオチド配列は、別個のトリガーRNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第1のヌクレオチド配列を含み得る。この第1のヌクレオチド配列は、例えば、25~80nt長であり得る。そのような構築物は、第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む、部位1~8から選択される異なる部位に挿入された第2の外因性ヌクレオチド配列をさらに含み得る。この第2のヌクレオチド配列は、例えば、8~25nt長であり得る。いくつかの局面では、この構造は、第1の外因性ヌクレオチド配列と第2の外因性ヌクレオチド配列との間の相互作用に起因して、組換えIRESを不活性化状態にフォールディングさせ(例えば、これらの配列は、第1の外因性ヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なセグメントを含む第2の外因性ヌクレオチド配列に起因して、インビトロまたはインビボ条件下で少なくとも部分的にハイブリダイズし、IRESの下流にコードされる機能的に連結されたタンパク質配列の翻訳を開始するIRESの能力の減衰または完全喪失をもたらす。いくつかの局面では、これらの構築物は、第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖であるヌクレオチド配列を含む前述のトリガーRNA分子の存在によって活性化され得る。いくつかの局面では、トリガーRNA分子は、人工ヌクレオチド配列を含み得るが(例えば、産業環境で翻訳を活性化するために)、他の局面では、このトリガーRNAは、真核生物、原核生物またはウイルスによって産生される内因性mRNAを含み得る(例えば、所与の生物の存在を検出するためのセンサーとしてIRESを使用することを可能にする)。前述のヌクレオチド配列のいずれも、RNAのみからなり得ることが理解される。ただし、いくつかの局面では、これらの構築物(例えば、部位1~8のうちの1つまたは複数に挿入された外因性ヌクレオチド配列、および/またはトリガーRNA分子)は、1つまたは複数の位置に非RNA塩基または改変RNA塩基を含み得る。
【0045】
いくつかの局面では、第2の外因性ヌクレオチド配列は、第1の外因性ヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である。いくつかの局面では、第1の外因性ヌクレオチド配列は、別個のトリガーRNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第1のヌクレオチド配列を含む。第1のヌクレオチド配列は、例えば、25~80nt長または40~50nt長であり得る。第2のヌクレオチド配列は、例えば、8~25nt長または6~15nt長であり得る。局面のいずれかのいくつかの態様では、第1のヌクレオチド配列は、第2のヌクレオチド配列の2.5倍~8倍の長さである。いくつかの局面では、この構造は、第1の外因性ヌクレオチド配列と第2の外因性ヌクレオチド配列との間の相互作用に起因して、組換えIRESを不活性化状態にフォールディングさせ(例えば、これらの配列は、第1の外因性ヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なセグメントを含む第2の外因性ヌクレオチド配列に起因して、インビトロまたはインビボ条件下で少なくとも部分的にハイブリダイズし、IRESの下流にコードされる機能的に連結されたタンパク質配列の翻訳を開始するIRESの能力の減衰または完全喪失をもたらす。いくつかの局面では、これらの構築物は、第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖であるヌクレオチド配列を含む前述のトリガーRNA分子の存在によって活性化され得る。いくつかの局面では、トリガーRNA分子は、人工ヌクレオチド配列を含み得るが(例えば、産業環境で翻訳を活性化するために)、他の局面では、このトリガーRNAは、真核生物、原核生物またはウイルスによって産生される内因性mRNAを含み得る(例えば、所与の生物の存在を検出するためのセンサーとしてIRESを使用することを可能にする)。前述のヌクレオチド配列のいずれも、RNAのみからなり得ることが理解される。ただし、いくつかの局面では、これらの構築物(例えば、挿入された外因性ヌクレオチド配列および/またはトリガーRNA分子)は、1つまたは複数の位置に非RNA塩基または改変RNA塩基を含み得る。
【0046】
局面のいずれかのいくつかの態様では、第2のヌクレオチド配列は、IRESシュードノット配列をさらに含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、第2のヌクレオチド配列は、IRESシュードノット配列、例えば、本明細書において記載されるように改変されている野生型IRESを含む野生型IRESから得られた天然のIRESシュードノット配列をさらに含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、第2のヌクレオチド配列は、IRESシュードノット配列に挿入される。IRESシュードノット構造およびIRESシュードノット配列は、当技術分野において公知である。
【0047】
図4は、本明細書において記載される組換えIRES構築物の根底にある操作機構を示す。この例では、本開示による組換えIRESを含むmRNAが、関心対象のタンパク質をコードする下流セグメントに機能的に連結されていることが示されている。組換えIRESは、IRESを不活性にする2つの異なる挿入部位(すなわち、上記で定義された部位1~8から選択される)に外因性配列を含むため、関心対象のタンパク質の翻訳が最初に抑制される。上記で説明したように、これらの部位に挿入された外因性ヌクレオチド配列間のハイブリダイゼーションは、組換えIRESの二次構造を破壊する(すなわち、発現スイッチを「OFF」状態に維持する)。しかし、この図によって示されるように、trRNAが提供されると、組換えIRESは「ON」に切り替わり、翻訳を活性化する。trRNAは、2つの改変部位の第1のものに挿入されたヌクレオチド配列の逆相補鎖であるセグメントを含み、その結果、そのヌクレオチド配列とハイブリダイズする。そうすることで、trRNAは、2つの外因性ヌクレオチド配列間の最初のハイブリダイゼーションを破壊し、組換えIRESが活性化状態に再びフォールディングすることを可能にする。
【0048】
いくつかの局面では、本開示による組換えIRES構築物は、T7 RNAポリメラーゼによって産生されるmRNA転写物に組み込まれる(例えば、そのような構築物は、T7プロモーター配列の下流にあり得、T7プロモーター配列に機能的に連結され得る)。T7ポリメラーゼは、真核細胞(例えば、細胞のゲノムDNAから、またはプラスミドから発現される)によって産生され得るか、または真核細胞に導入され得る。本明細書において記載される他の局面では、組換えIRES構築物は、代替的なポリメラーゼ(例えば真核生物RNAポリメラーゼII)によって産生されるmRNA転写物に組み込まれ得る。
【0049】
上記のように、本明細書において記載される組換えIRES構築物は、ウイルスRNAポリメラーゼ(例えば、5'キャップを適用しないT7ポリメラーゼ)によって産生されるmRNA転写物に組み込まれ得るが、これは、これらの構築物が、リボソームを動員し、翻訳を開始することができるためである。ただし、場合によっては、ウイルスポリメラーゼを使用することが望ましくないことがある(例えば、宿主細胞がT7を産生せず、この酵素を供給するためにベクターによる同時トランスフェクションを必要とする可能性がある)。あるいは、少数の外因性成分を使用するリボスイッチシステムを設計するために、転写のために内因性RNAポリメラーゼIIを使用することが望ましい場合がある。
【0050】
図5は、本開示による組換えIRESを組み込んだ、RNAポリメラーゼIIによって産生されるmRNAの概略図である。この概略図によって示されるように、mRNAは、第1のタンパク質をコードするセグメントと、それに続く一連の終止コドンとを含む。本開示による組換えIRESは、このエレメントの下流に存在し、第2のタンパク質をコードするセグメントに機能的に連結される。mRNA転写物は、この場合、RNAポリメラーゼIIによる転写から生じる5'キャップおよびポリAテールを有することに留意されたい。第2のタンパク質の翻訳は、本明細書において記載される他の局面による構築物の場合のように、組換えIRESによって制御される。ただし、この構成は、ウイルス成分ではなく内因性哺乳動物mRNAプロモーターおよびポリメラーゼに依存するため、いくつかの例では好ましい場合がある。さらに、以下の例で説明するように、この構成は、関心対象の上流遺伝子を省略する例示的な局面と比較して、発現の漏れの減少を示すように思われる。
【0051】
したがって、態様のいずれかの一局面では、第1のタンパク質をコードする第1のセグメントと、第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えウイルス内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする、第1のセグメントの下流の第2のセグメントと、IRESが不活性化状態にある際に第2のタンパク質の翻訳が抑制されるように、第2のセグメントの下流にありかつ第2のセグメントに機能的に連結された、第2のタンパク質をコードする第3のセグメントとを含む組換えmRNA分子であって、組換えmRNA分子の転写が、ポリメラーゼに依存し、第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、第2の部位が、第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む組換えmRNA分子が本明細書において記載される。
【0052】
局面のいずれかの様々な態様では、本明細書において記載される組換えウイルスIRESリボスイッチの5'または3'のいずれかに位置する、タンパク質をコードする核酸配列は、例えば、検出可能なシグナルを生成するレポータータンパク質であるタンパク質をコードすることができる。レポータータンパク質は、宿主細胞に天然には存在しない、容易にアッセイされる酵素活性または検出可能なシグナルを有するポリペプチドである。例示的であるが非限定的なレポータータンパク質には、lacZ、カタラーゼ、xylE、GFP、RFP、YFP、ySUMO、CFP、EYFP、ECFP、mRFP1、mOrange、GFPmut3b、OFP、mBanana、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、mCherryおよびそれらの誘導体または変異体が含まれる。局面のいずれかのいくつかの態様では、レポータータンパク質は、比色アッセイ、発光アッセイまたは蛍光アッセイに使用するのに適している。
【0053】
本明細書において記載される組換えIRESリボスイッチは、例えば、特定のtrRNAを検出するためのセンサーモジュールとして使用され得る。組換えIRESリボスイッチは、trRNAが標的真核生物、標的原核生物または標的ウイルスに存在する配列であるように設計され得る。標的生物/ウイルス、または特定の転写状態にある標的生物/ウイルスの存在下では、組換えIRESリボスイッチは活性状態になり、改変IRES配列の3'でコードされたタンパク質(例えばレポータータンパク質)が発現され、標的の存在が示される。そのようなセンサーシステムは、本明細書において、例えば、いくつかの異なるウイルスによる感染が検出される実施例3において実証される。いくつかの態様では、標的原核生物または標的ウイルスは、病原体、例えば、哺乳動物病原体またはヒト病原体である。いくつかの態様では、標的ウイルスは、ジカウイルス、デングウイルスまたはコロナウイルス(例えばSARS-CoV-2)である。いくつかの態様では、標的原核生物または標的真核生物は、組換えIRESリボスイッチを含むおよび/または発現する生物であり得、trRNAは、非構成的に発現されるRNA、例えば、ある特定の発生段階もしくは分化段階でのみ発現されるRNA、またはある特定の刺激および/もしくはストレスに応答して発現されるRNAであり得る。
【0054】
リボスイッチモジュールを組み込むように操作された組換え細胞
いくつかの局面では、本開示は、本明細書において記載される組換えIRESの制御下でタンパク質を発現するように操作された、植物細胞以外の真核細胞を提供する。
【0055】
真核細胞は、動物細胞、真菌細胞または原生生物細胞であり得る。いくつかの局面では、真核細胞は、組換えIRESをコードするゲノムDNAを含み得る。他の場合、組換えIRESは、真核細胞内に存在するベクター(例えばプラスミド)によってコードされ得る。組換えIRESは、関心対象のタンパク質をコードする内因性もしくは外因性プロモーターおよび/または遺伝子に機能的に連結され得る。
【0056】
無細胞発現システムにおけるリボスイッチモジュールの使用
いくつかの局面では、本明細書において記載される組換えIRESモジュールは、無細胞発現システムにおいて使用され得る。例えば、キットまたはアッセイでは、組換えIRESモジュールを組み込んだ少なくとも1つのmRNAをコードするDNAを含む真核細胞から産生された無細胞溶解物が利用され得る。他の局面では、そのようなキットまたはアッセイは、少なくとも1つの組換えIRESモジュールを組み込んだ転写mRNAを含み得る。本明細書において記載されるリボスイッチ機構は、様々なインビトロ用途(例えば、ウイルスmRNAの存在を検出するためのセンサーとして)で関心対象のタンパク質の発現を引き起こすためのセンサーとして使用され得ることが理解される。
【0057】
組換えIRESリボスイッチモジュールを使用した真核生物または無細胞発現システムにおける翻訳の調節
本明細書において記載される組換えIRESリボスイッチモジュールは、例えば、真核細胞または無細胞発現システム内の関心対象のタンパク質の発現を調節するために使用され得る。
【0058】
いくつかの局面では、真核細胞は、本開示による上流IRESリボスイッチに機能的に連結された関心対象のタンパク質をコードするベクターを用いてトランスフェクトされ得る。IRESリボスイッチは、2つの部位に外因性ヌクレオチド配列が存在することを除いて、ウイルスIRESの配列と少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98、少なくとも99または少なくとも100%の配列同一性を共有する配列を含み得る。いくつかの態様では、IRESリボスイッチは、2つの部位(例えば、上記で定義したような部位1~8の任意の組合せ)に外因性ヌクレオチド配列が存在することを除いて、グループIジシストロウイルス科IRES(例えば、SEQ ID NO:1によって表されるCrPV IRES)の配列と少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98、少なくとも99または少なくとも100%の配列同一性を共有する配列を含み得る。外因性配列のこの対は、25~80nt長である第1のヌクレオチド配列と、8~25nt長である第2のヌクレオチド配列とを含み得、第2のヌクレオチド配列は、第1のヌクレオチド配列の一部の逆相補鎖であり、外因性配列の対をハイブリダイズさせる。このハイブリダイゼーションの結果として、IRESリボスイッチは不活性フォールドをとり、関心対象の下流タンパク質の翻訳を妨げる。翻訳は、第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖であるヌクレオチド配列を含むtrRNAを導入し、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列ではなくtrRNAとハイブリダイズさせ、その結果、IRESリボスイッチが活性フォールドをとることを可能にすることによって活性化され得る。いくつかの局面では、trRNAは、トランスフェクションによって導入され得るか、またはベクターによって発現され得る。
【0059】
いくつかの局面では、trRNAは、発現に使用される真核細胞によって発現されるmRNAには見られない固有の配列を有するように構成され得る。固有の配列の選択は、オフターゲット効果(例えば、真核細胞によって産生されるtrRNAと他の内因性mRNAとの間の意図しないハイブリダイゼーション)を低減または排除し得る。
【0060】
いくつかの局面では、trRNAは、真核細胞または外部刺激によって発現されるmRNAの一部(例えば、
図13によって示されるように、ウイルスによる細胞の感染後に産生されるウイルスmRNA)を含み得る。いくつかの局面では、trRNAの濃度を増加または低下させて、関心対象のタンパク質の発現を調節してもよい。
【0061】
IRESリボスイッチを含むmRNAは、選択された真核細胞内の発現に適したプロモーターに機能的に連結され得る。いくつかの局面では、T7プロモーターが使用され得る(例えば、選択された真核細胞が、T7ポリメラーゼを産生するように操作される場合)。あるいは、真核生物プロモーター(例えばRNAポリメラーゼIIプロモーター)が使用され得る。好適なプロモーターの選択は、本明細書において記載されるIRESリボスイッチの意図される用途に応じて変動する。例えば、いくつかの用途では誘導性プロモーターが望ましい場合があるが、他の用途では構成的プロモーターが望ましい場合がある。いくつかのプロモーターはまた、mRNAの発現に対してさらに厳密な制御を可能にし得る(例えば、T7プロモーターは、RNAポリメラーゼIIの低レベルの動員に起因して、真核細胞内で使用される場合、漏れやすい場合がある)。
【0062】
局面のいずれかのいくつかの態様では、IRESリボスイッチは、(a)IRESシュードノット配列;(b)IRESが天然に存在するウイルス野生型配列に見られるIRESシュードノット配列;(c)プロモーターおよび/または上流活性化因子結合配列;(d)終止コドン;(e)ステムループ(例えば、SEQ ID NO:10);(f)5'キャップ;(g)レポーター遺伝子;ならびに(h)ポリAテールのうちの1つまたは複数に機能的に連結され得、エレメントa~hのうちの1つまたは複数は、IRESリボスイッチの5'または3'に個別に位置する。局面のいずれかのいくつかの態様では、IRESリボスイッチは、(a)IRESシュードノット配列;(b)IRESが天然に存在するウイルス野生型配列に見られるIRESシュードノット配列;(c)プロモーターおよび/または上流活性化因子結合配列;(d)終止コドン;(e)ステムループ;(f)5'キャップ;ならびに(g)レポーター遺伝子のうちの1つまたは複数に機能的に連結され得、エレメントa~gのうちの1つまたは複数は、IRESリボスイッチの5'に個別に位置する。
【0063】
本明細書において記載される方法および組成物に使用するためのプロモーターは、RNAポリメラーゼII;RNAポリメラーゼII以外のポリメラーゼ;T7ポリメラーゼ;T3プロモーター、araBADプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、Ptacプロモーター、pLプロモーター、および/またはSP6ポリメラーゼであり得る。上流活性化因子結合配列は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の上流活性化因子結合DNA配列(UAF2)(例えばSEQ ID NO:11)であり得る。
【0064】
態様のいずれかの一局面では、ベクター、例えば、本明細書において記載される組換え核酸分子、発現構築物、組換えmRNA分子または組換えIRESリボスイッチを含むプラスミドまたはウイルスベクターが本明細書において記載される。態様のいずれかの一局面では、本明細書において記載される組換え核酸分子、発現構築物または組換えmRNA分子をコードするDNAを含む真核細胞(例えば、動物細胞、ヒト細胞または霊長類細胞)であって、真核細胞が植物細胞ではなく、DNAが、真核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか、または真核細胞内に存在するベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)上に存在する真核細胞が本明細書において記載される。態様のいずれかの一局面では、本明細書において記載される組換え核酸分子、発現構築物または組換えmRNA分子をコードするDNAを含む原核細胞であって、DNAが、原核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか、または原核細胞内に存在するベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)上に存在する原核細胞が本明細書において記載される。そのような細胞は、組換え核酸分子、発現構築物、組換えmRNA分子または組換えIRESリボスイッチの導入によって操作されると考えられ、前記請求項のいずれか一項記載の組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程、および組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子を真核細胞に導入する工程を含む、タンパク質の発現を活性化および/または調節する方法であって、第1のヌクレオチド配列が、インビボ条件下で第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、組換えIRESリボスイッチを活性化状態にフォールディングさせ、さらに、真核細胞が植物細胞ではない方法で使用され得る。
【0065】
本明細書において記載されるIRESリボスイッチはまた、無細胞発現に使用され得ることが理解される。例えば、キットは、関心対象のタンパク質をコードするセグメントに機能的に連結されたIRESリボスイッチを含むmRNA、およびインビトロタンパク質発現に必要な成分(例えば細胞溶解物)を含み得る。
【0066】
本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、様々な治療的および産業的用途で使用され得る。例えば、対象に遺伝子療法が施され得、核酸は、IRESリボスイッチの制御下で治療用タンパク質を発現する、対象の細胞に導入される。タンパク質の発現レベルは、患者へのtrRNAの投与によって調節され得る。IRESリボスイッチはまた、細胞分化を制御する手段として実験室または医療分野で使用され得る。例えば、幹細胞は、特定の細胞型によって産生されるmRNAによって引き起こされるIRESリボスイッチを組み込むように操作され得、リボスイッチは、アポトーシスを誘導する毒素またはタンパク質の発現を制御する。そのような機構は、意図せずに産生され得る望ましくない細胞型を排除することによって幹細胞株の純度を維持するために使用され得る。
【0067】
別の態様では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、細胞のウイルス感染を検出する方法で使用され得る。例えば、真核細胞は、本明細書において記載されるIRESリボスイッチを含む組換え核酸を発現するように操作され、組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列は、ウイルスに固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成され、組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質の存在を検出および/または測定することによって、真核細胞がウイルスに感染しているかどうかが決定され、真核細胞は植物細胞ではない。ウイルスは、例えば、デングウイルス、ジカウイルスまたはコロナウイルスであり得る。
【0068】
別の態様では、本明細書において記載されるIRESリボスイッチは、真核細胞の分化を制御またはモニタリングする方法で使用され得る。例えば、真核細胞は、本明細書において記載されるIRESリボスイッチを含む組換え核酸を発現するように操作され、細胞は培養され、組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列は、選択された細胞型に固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成され、組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質は、選択された細胞型のアポトーシスを引き起こす毒素またはタンパク質を含み、さらに、真核細胞は植物細胞ではない。
【0069】
態様のいずれかのいくつかの局面では、本明細書において記載されるプラスミドもしくはウイルスベクター、組換え核酸分子、発現構築物、組換えmRNA分子、組換えIRESリボスイッチおよび/またはtrRNAのうちの1つまたは複数を含むキットまたはシステムが本明細書において記載される。キットは、本明細書において記載される前述の要素のうちの少なくとも1つを含む材料または構成要素の集団である。キット内で構成される構成要素の正確な性質は、その意図された目的に依存する。局面のいずれかのいくつかの態様では、キットは、使用説明書を含む。「使用説明書」は、典型的に、キットの構成要素を使用して、例えば、生物またはRNAを検出する際に使用される技術を説明する具体的な表現を含む。さらに本発明によれば、「使用説明書」は、本明細書において記載される組換えIRESリボスイッチ、細胞または発現システムの調製を説明する具体的な表現、例えば、典型的には意図された目的のための再構成、希釈、混合またはインキュベーション説明書を含み得る。任意で、キットはまた、他の有用な構成要素、例えば、測定ツール、希釈剤、緩衝液、シリンジ、薬学的に許容される担体、または当業者によって容易に認識される他の有用な装備を含む。
【0070】
操作性および実用性を維持するあらゆる便利かつ好適な方法で保管されているキットに組み立てられた材料または構成要素が開業医に提供され得る。例えば、構成要素は、溶解、脱水または凍結乾燥された形態であり得る。それらは、室温、冷蔵温度または冷凍温度で提供され得る。構成要素は、典型的には、好適な包装材内に収容される。本明細書において使用される場合、「包装材」という句は、本発明の組成物などのような、キットの内容物を収容するために使用される1つまたは複数の物理的構造を指す。包装材は、好ましくは無菌で汚染物質のない環境を提供するために、周知の方法によって構築される。包装はまた、好ましくは、光、湿度および酸素から保護する環境を提供し得る。本明細書において使用される場合、用語「包装体」は、個々のキット構成要素を保持することができる好適な固体マトリックスまたは材料、例えば、ガラス、プラスチック、紙、箔、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートまたはマイラなど)などを指す。したがって、例えば、包装体は、本明細書において記載される組成物の好適な量を収容するために使用されるガラスバイアルであり得る。包装材は、一般に、キットおよび/またはその構成要素の内容物および/または目的を示す外部ラベルを有する。
【0071】
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語および語句の意味を以下に提供する。特に明記されていない限り、または文脈から暗示されていない限り、以下の用語および語句は、以下に提供される意味を含む。定義は、特定の態様の説明を支援するために提供され、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。当技術分野における用語の使用と本明細書において提供されるその定義との間に明らかな不一致がある場合、本明細書内で提供される定義を優先するものとする。
【0072】
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語がここに集められている。
【0073】
用語「低下する(decrease)」、「減少した(reduced)」、「減少(reduction)」または「阻害する(inhibit)」はいずれも、統計的に有意な量の減少を意味するために本明細書において使用される。いくつかの態様では、「減少する(reduce)」、「減少(reduction)」または「低下する(decrease)」または「阻害する(inhibit)」は、典型的には、参照レベル(例えば、所与の治療または作用物質の非存在)と比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%またはそれ以上の減少を含み得る。本明細書において使用される場合、「減少(reduction)」または「阻害(inhibition)」は、参照レベルと比較して完全な阻害または減少を包含しない。「完全な阻害」は、参照レベルと比較して100%の阻害である。
【0074】
用語「増加した(increased)」、「増加する(increase)」、「増強する(enhance)」または「活性化する(activate)」はいずれも、統計的に有意な量の増加を意味するために本明細書において使用される。いくつかの態様では、用語「増加した(increased)」、「増加する(increase)」、「増強する(enhance)」または「活性化する(activate)」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、もしくは最大100%の増加、もしくは10~100%のいずれかの増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、もしくは2倍~10倍以上のいずれかの増加を意味し得る。
【0075】
本明細書において使用される場合、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、隣接する残基のα-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに接続された一連のアミノ酸残基を指すために本明細書において区別なく使用される。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、そのサイズまたは機能にかかわらず、改変アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)およびアミノ酸類似体を含む、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」は、比較的大きなポリペプチドに関して使用されることが多いのに対して、用語「ペプチド」は、小さなポリペプチドに関して使用されることが多いが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は重複する。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、遺伝子産物およびその断片を指す場合、本明細書において区別なく使用される。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片ならびに前述のものの他の等価物、変異体、断片およびアナログが含まれる。
【0076】
本明細書において使用される場合、用語「核酸」または「核酸配列」は、任意の分子、好ましくは、リボ核酸、デオキシリボ核酸またはそれらの類似体の単位を組み込んだポリマー分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は、変性した二本鎖DNAの1本の核酸鎖であり得る。あるいは、一本鎖核酸は、いかなる二本鎖DNAにも由来しない一本鎖核酸であり得る。一局面では、核酸はDNAであり得る。別の局面では、核酸はRNAであり得る。好適なDNAには、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAが含まれ得る。好適なRNAには、例えば、mRNAが含まれ得る。
【0077】
用語「発現」は、RNAおよびタンパク質の産生、ならびに適切な場合にはタンパク質の分泌、例えば、適用可能な場合には、限定されることなく、例えば、転写、転写物プロセシング、翻訳およびタンパク質フォールディング、改変およびプロセシングに関与する細胞プロセスを指す。発現とは、本発明の単数または複数の核酸断片に由来するセンス(mRNA)もしくはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積、ならびに/またはポリペプチドへのmRNAの翻訳を指し得る。
【0078】
いくつかの態様では、本明細書において記載される核酸配列および/またはタンパク質の発現は組織特異的である。いくつかの態様では、本明細書において記載される核酸配列および/またはタンパク質の発現は全体的である。いくつかの態様では、本明細書において記載される核酸配列および/またはタンパク質の発現は全身性である。
【0079】
「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。用語「遺伝子」は、適切な調節配列に機能的に連結された場合にインビトロまたはインビボでRNAに転写される(DNA)核酸配列を意味する。遺伝子は、コード領域の前後の領域、例えば、5'非翻訳(5'UTR)または「リーダー」配列および3'UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0080】
「機能的に連結された」とは、そのように記載された構成要素がそれらの通常の機能を行うように構成されているエレメントの配置を指す。したがって、コード配列に機能的に連結された制御エレメントは、コード配列の発現を行うことができる。制御エレメントは、それらがその発現を導くように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在する翻訳されていないが転写された配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列はコード配列に「機能的に連結された」と依然として考えられ得る。
【0081】
いくつかの態様では、本明細書において記載される方法は、少なくとも1つの標的のレベルを測定、検出または決定することに関する。本明細書において使用される場合、用語「検出」または「測定」は、例えば、プローブ、標識または標的分子からのシグナルを観察して、試料中の分析物の存在を示すことを指す。特定の標識部分を検出するための、当技術分野において公知の任意の方法を検出に使用することができる。例示的な検出方法には、限定されることなく、分光学的方法、蛍光的方法、光化学的方法、生化学的方法、免疫化学的方法、電気的方法、光学的方法または化学的方法が含まれる。局面のいずれかのいくつかの態様では、測定は定量的観察であり得る。
【0082】
局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるポリペプチド、核酸または細胞を操作することができる。本明細書において使用される場合、「操作された」は、人間の手によって操作されているという局面を指す。例えば、ポリペプチドの少なくとも1つの局面、例えば、その配列が、本来存在する局面とは異なるように人間の手によって操作されている場合、ポリペプチドは「操作された」と考えられる。一般的な慣行であり、当業者によって理解されるように、操作された細胞の子孫は、実際の操作が以前の実体に対して行われたとしても、典型的には依然として「操作された」と呼ばれる。
【0083】
用語「外因性」は、その天然の供給源以外の細胞または核酸配列に存在する物質を指す。本明細書において使用される場合の用語「外因性」は、核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)またはポリペプチドであって、その核酸またはポリペプチドが通常は見出されず、その核酸またはポリペプチドをそのような核酸分子、細胞または生物に導入することが望まれる核酸分子または生物系、例えば、細胞または生物に、人間の手を含むプロセスによって導入された核酸またはポリペプチドを指し得る。対照的に、用語「内因性」は、核酸分子または生物系または細胞に固有の物質を指す。
【0084】
いくつかの態様では、本明細書において記載される核酸は、ベクターに含まれる。本明細書において記載される局面のいくつかでは、本明細書において記載される核酸配列、またはその任意のモジュールは、ベクターに機能的に連結される。本明細書において使用される場合、用語「ベクター」は、宿主細胞への送達のために、または異なる宿主細胞間での導入のために設計された核酸構築物を指す。本明細書において使用される場合、ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性であり得る。用語「ベクター」は、適切な制御エレメントと関連する場合に複製することができ、遺伝子配列を細胞に導入することができる任意の遺伝要素を包含する。ベクターには、限定されることなく、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどが含まれ得る。
【0085】
局面のいずれかのいくつかの態様では、ベクターまたは核酸は組換えであり、例えば、少なくとも2つの異なる供給源に由来する配列を含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、ベクターまたは核酸は、少なくとも2つの異なる種に由来する配列を含む。局面のいずれかのいくつかの態様では、ベクター核酸は、少なくとも2つの異なる遺伝子に由来する配列を含む。配列は、当技術分野において周知の方法によって、例えば、制限酵素およびリガーゼの使用によって、組換え配列を提供するために、組換えであるように改変され得るか、または配列は、別の配列に組み込まれ得る。
【0086】
局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるベクターまたは核酸は、コドン最適化されており、例えば、核酸配列の天然配列または野生型配列は、改変または操作された核酸が天然/野生型配列と同じポリペプチド発現産物をコードするが、所望の発現システムでは改善された効率で転写および/または翻訳されるように代替コドンを含むように改変または操作されている。局面のいずれかのいくつかの態様では、発現システムは、天然/野生型配列の供給源以外の生物(またはそのような生物から得られた細胞)である。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるベクターおよび/または核酸配列は、哺乳動物または哺乳動物細胞、例えば、マウス、マウス細胞またはヒト細胞内の発現のためにコドン最適化されている。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるベクターおよび/または核酸配列は、ヒト細胞内の発現のためにコドン最適化されている。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるベクターおよび/または核酸配列は、酵母または酵母細胞内の発現のためにコドン最適化されている。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるベクターおよび/または核酸配列は、細菌細胞内の発現のためにコドン最適化されている。局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載されるベクターおよび/または核酸配列は、大腸菌(E.coli)細胞内の発現のためにコドン最適化されている。
【0087】
本明細書において使用される場合、用語「発現ベクター」は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNAまたはポリペプチドの発現を導くベクターを指す。発現される配列は、必ずしもではないが、細胞に対して異種であることが多い。発現ベクターは、追加の要素を含み得、例えば、発現ベクターは、2つの複製システムを有し、したがって、発現ベクターを2つの生物内で、例えば、発現のためのヒト細胞内ならびにクローニングおよび増幅のための原核生物宿主内で維持することを可能にし得る。
【0088】
本明細書において使用される場合、用語「ウイルスベクター」は、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、かつウイルスベクター粒子にパッケージされる能力を有する核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、必須ではないウイルス遺伝子の代わりに、本明細書において記載されるポリペプチドをコードする核酸を含むことができる。ベクターおよび/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで任意の核酸を細胞に導入するために利用され得る。当技術分野において、多数の形態のウイルスベクターが公知である。
【0089】
本明細書において記載されるベクターは、いくつかの態様では、他の好適な組成物および治療法と組み合わせることができることを理解されたい。いくつかの態様では、ベクターはエピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、対象の関心対象のヌクレオチドを高コピー数の染色体外DNAに維持する手段を提供し、それによって、染色体統合の潜在的な影響を排除する。
【0090】
本明細書において使用される場合、「接触させる」は、少なくとも1つの細胞に作用物質を送達または曝露するための任意の好適な手段を指す。例示的な送達方法には、限定されることなく、細胞培養培地への直接送達、灌流、注射、または当業者に周知の他の送達方法が含まれる。いくつかの態様では、接触は、物理的な人間の活動、例えば、注射;分配、混合および/もしくはデカンテーションの行為;ならびに/または送達装置もしくは機械の操作を含む。
【0091】
用語「統計的に有意」または「有意に」は、統計的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)以上の差を意味する。
【0092】
操作実施例を除き、または他に示されている場合を除き、本明細書において使用される構成要素の量、または反応条件を表すあらゆる数字は、用語「約」によっていずれの場合も修飾されると理解されるべきである。用語「約」は、割合に関連して使用される場合、±1%を意味し得る。
【0093】
本明細書において使用される場合、用語「含む(comprising)」は、提示された定義された要素に加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む(comprising)」の使用は、限定ではなく包含を示す。
【0094】
用語「からなる(consisting of)」は、本明細書において記載される組成物、方法およびそれらのそれぞれの構成要素を指し、態様のその説明に記載されていないいかなる要素も除外する。
【0095】
本明細書において使用される場合、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、所与の態様に必要な要素を指す。該用語は、本発明のその態様の基本的および新規または機能的な特性に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を可能にする。
【0096】
本明細書において使用される場合、用語「対応する」は、第1のポリペプチドもしくは核酸内の列挙された位置にあるアミノ酸もしくはヌクレオチド、または第2のポリペプチドもしくは核酸内の列挙されたアミノ酸もしくはヌクレオチドと同等であるアミノ酸もしくはヌクレオチドを指す。同等の列挙されたアミノ酸またはヌクレオチドは、当技術分野において公知の相同性プログラム、例えば、BLASTの程度を使用して候補配列をアラインメントすることによって決定することができる。
【0097】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上別途明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という語句は、文脈上別途明確に示されない限り、「および」を含むことを意図している。本明細書において記載されるものと同様または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書において非限定的な例を示すために使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」の同義語である。
【0098】
本明細書において開示される、本発明の代替的な要素または態様の群分けは、限定として解釈されるべきではない。各群構成要素は、個別に、または群の他の構成要素もしくは本明細書において見出される他の要素と任意に組み合わせて参照および特許請求され得る。便宜および/または特許性の理由から、ある群の1つまたは複数の構成要素が、ある群に包含されるか、またはある群から削除され得る。そのようないずれかの包含または削除が生じる場合、本明細書は、本明細書において、改変された群を含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュ群の記述された説明を満たすと見なされる。
【0099】
本明細書において別途定義されない限り、本出願に関連して使用される科学用語および技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。本発明は、本明細書において記載される特定の方法、プロトコルおよび試薬などに限定されず、それ自体が変化し得ることを理解されたい。本明細書において使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。免疫学および分子生物学の一般的な用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,20th Edition,published by Merck Sharp&Dohme Corp.,2018(ISBN 0911910190,978-0911910421);Robert S.Porter et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,published by Blackwell Science Ltd.,1999-2012(ISBN 9783527600908);およびRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,published by VCH Publishers,Inc.,1995(ISBN 1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann,published by Elsevier,2006;Janeway's Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(eds.),W.W.Norton&Company,2016(ISBN 0815345054,978-0815345053);Lewin's Genes XI,published by Jones&Bartlett Publishers,2014(ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN 1936113414);Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(2012)(ISBN 044460149X);Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(ed.)Elsevier,2013(ISBN 0124199542);Current Protocols in Molecular Biology(CPMB),Frederick M.Ausubel(ed.),John Wiley and Sons,2014(ISBN 047150338X,9780471503385),Current Protocols in Protein Science(CPPS),John E.Coligan(ed.),John Wiley and Sons,Inc.,2005;およびCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(eds.)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN 0471142735,9780471142737)に見出すことができ、これらの内容はいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0100】
局面のいずれかのいくつかの態様では、本明細書において記載される開示は、ヒトをクローニングするためのプロセス、ヒトの生殖系列の遺伝的同一性を改変するためのプロセス、産業的もしくは商業的目的のためのヒト胚の使用、または人間もしくは動物にいかなる実質的な医学的利益をもたらさずそれらを罹患させる可能性が高い動物、およびそのようなプロセスから生じる動物の遺伝的同一性を改変するためのプロセスに関するものではない。
【0101】
他の用語は、本発明の様々な局面の説明の中で本明細書において定義されている。
【0102】
本出願にわたって引用された参照文献、交付済み特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含むすべての特許および他の刊行物は、例えば、本明細書において記載される技術に関連して使用され得るそのような刊行物に記述される方法を説明および開示する目的のために、参照により本明細書に明白に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日よりも前のそれらの開示のために単に提供される。この点に関していかなるものも、本発明者らが、先行発明であるとの理由で、または他のいずれかの理由により、そのような開示に先行する権利がないことの承認と解釈されるべきではない。これらの文献の日付に関する言明または内容に関する説明はいずれも、本出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文献の日付または内容が正確であると決して認めるものではない。
【0103】
本開示の態様の説明は、網羅的であることも、本開示を厳密な開示された形式に限定することも意図するものではない。本開示の特定の態様および実施例は、説明目的のために本明細書において記載されているが、関連技術の当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の改変が可能である。例えば、方法の工程または機能は所与の順序で示されているが、代替的な態様は、異なる順序で機能を行ってもよいか、または機能が実質的に同時に行われてもよい。本明細書において提供される本開示の教示は、必要に応じて他の手順または方法に適用することができる。本明細書において記載される様々な態様を組み合わせて、さらなる態様を提供することができる。本開示の局面は、本開示のなおさらなる態様を提供するために、必要であれば、上記の参考文献および出願の組成物、機能および概念を使用するように変更することができる。さらに、生物学的機能の等価性の考慮に起因して、種類または量の点で生物学的作用または化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくらかの変更を加えることができる。これらおよび他の変更は、詳細な説明に照らして本開示に加えることができる。そのようなすべての改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるように意図される。
【0104】
いくつかの態様では、本技術は、以下の番号付けされた項のいずれかで定義され得る:
1.
(a)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えグループ1ジシストロウイルス科内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする第1のセグメントと;
(b)前記IRESが不活性化状態にある際にタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第1のセグメントの下流にありかつ前記第1のセグメントに機能的に連結された、タンパク質をコードする第2のセグメントと
を含む組換え核酸分子であって、
前記第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、
前記第2の部位が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む、
組換え核酸分子。
2.
前記核酸分子がmRNAである、項1の組換え核酸分子。
3.
前記第2のヌクレオチド配列が、前記第1のヌクレオチド配列の実質的に全体の逆相補鎖である、項1の組換え核酸分子。
4.
前記グループ1ジシストロウイルス科IRESが、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRES、カシミール蜂ウイルス(KBV)IRES、急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRESまたはチャバネアオカメムシ腸管ウイルス(PSIV)IRESである、項1の組換え核酸分子。
5.
前記第1および第2の部位が、部位1、部位2、部位3、部位4、部位5、部位6、部位7および部位8のいずれかからそれぞれ独立して選択される、項1の組換え核酸分子。
6.
前記第1および第2の部位が、部位1および部位2、部位1および部位4、部位1および部位5、部位1および部位6、部位1および部位7、部位1および部位8、部位2および部位6、部位2および部位7、部位4および部位6、部位5および部位6、部位5および部位7、部位6および部位7、部位8および部位2、部位8および部位6、または部位8および部位7をそれぞれ含む、項4の組換え核酸分子。
7.
前記第1のヌクレオチド配列が25~80nt長である、項1の組換え核酸分子。
8.
前記第2のヌクレオチド配列が8~25nt長である、項1の組換え核酸分子。
9.
前記第1および第2のヌクレオチド配列が、インビボまたはインビトロ条件下で真核細胞内で発現された場合にハイブリダイズし、前記グループ1ジシストロウイルス科IRESを不活性化状態にフォールディングさせることができ、前記真核細胞が植物細胞ではない、項1の組換え核酸分子。
10.
前記グループ1ジシストロウイルス科IRESが、項1の組換え核酸分子の前記第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子の存在下で活性化状態にフォールディングするように構成されている、項1の組換え核酸分子。
11.
前記第1のヌクレオチド配列が、インビボ条件下で真核細胞内で発現された場合に前記第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、前記グループ1ジシストロウイルス科IRESを活性化状態にフォールディングさせることができ、前記真核細胞が植物細胞ではない、項10の組換え核酸分子。
12.
前記項のいずれか1つの組換え核酸分子をコードする、プラスミド。
13.
前記項のいずれか1つの組換え核酸分子をコードするDNAを含む真核細胞であって、真核細胞が植物細胞ではなく、
前記DNAが、
(a)前記真核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか;または
(b)前記真核細胞内に存在するプラスミドもしくはウイルスベクター上に存在する、
真核細胞。
14.
前記細胞が、(a)動物細胞;(b)ヒト細胞;または(c)霊長類細胞である、項13の真核細胞。
16.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子と;
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子と
を含む、遺伝子発現を制御するためのシステム。
17.
(a)項12のプラスミドと;
(b)前記組換え核酸分子の前記第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子と
を含む、キット。
18.
(a)第1のタンパク質をコードする第1のセグメントと;
(b)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えグループ1ジシストロウイルス科内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする、前記第1のセグメントの下流の第2のセグメントと、
(c)前記IRESが不活性化状態にある際に第2のタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第2のセグメントの下流にありかつ前記第2のセグメントに機能的に連結された、第2のタンパク質をコードする第3のセグメントと
を含む組換えmRNA分子であって、
前記組換えmRNA分子の転写が、ポリメラーゼに依存し、
前記第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、
前記第2の部位が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む、
組換えmRNA分子。
19.
前記組換えmRNA分子の転写が、以下:
(a)RNAポリメラーゼII;
(b)RNAポリメラーゼII以外のポリメラーゼ;
(c)T7ポリメラーゼ;および/または
(d)SP6ポリメラーゼ
に依存する、項18の組換えmRNA分子。
20.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程;および
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子を前記真核細胞に導入する工程
を含む、タンパク質の発現を活性化および/または調節する方法であって、
前記第1のヌクレオチド配列が、インビボ条件下で前記第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、前記グループ1ジシストロウイルス科IRESを活性化状態にフォールディングさせ、
さらに、前記真核細胞が植物細胞ではない、
方法。
21.
前記組換え核酸分子を発現するように操作された前記真核細胞が、前記項のいずれかの組換え核酸分子を前記真核細胞に導入することによって提供される、項20の方法。
23.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程であって、前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、ウイルスに固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成される、工程;ならびに
(b)前記組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質の存在を検出および/または測定することによって、前記真核細胞が前記ウイルスに感染しているかどうかを決定する工程であって、前記真核細胞が植物細胞ではない、工程
を含む、真核細胞のウイルス感染を検出する方法。
24.
前記ウイルスが、デングウイルスまたはジカウイルスである、項23の方法。
25.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程;および
(b)前記真核細胞を培養する工程
を含む、真核細胞の分化を制御する方法であって、
前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、選択された細胞型に固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成され、
前記組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質が、前記選択された細胞型のアポトーシスを引き起こす毒素またはタンパク質を含み、
さらに、前記真核細胞が植物細胞ではない、
方法。
27.
(a)組換え核酸分子を含むmRNAをコードするDNA
を含むベクターであって、
前記組換え核酸分子が、
(i)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えグループ1ジシストロウイルス科内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする第1のセグメントと;
(ii)前記IRESが不活性化状態にある際にタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第1のセグメントの下流にありかつ前記第1のセグメントに機能的に連結された、タンパク質をコードする第2のセグメントと
を含み、
前記第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、
前記第2の部位が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含み、
前記グループ1ジシストロウイルス科IRESが、前記第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖であるセグメントを含むmRNAの存在に応答して前記タンパク質の発現を活性化するように構成されている、
ベクター。
28.
前記項のいずれか1つの組換え核酸分子をコードするDNAを含む原核細胞であって、
前記DNAが、
(a)前記原核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか;または
(b)前記原核細胞内に存在するプラスミドもしくはウイルスベクター上に存在する、
原核細胞。
【0105】
いくつかの態様では、本技術は、以下の番号付けされた項のいずれかで定義され得る:
1.
(a)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えグループ1ジシストロウイルス科内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする第1のセグメントと;
(b)前記IRESが不活性化状態にある際にタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第1のセグメントの下流にありかつ前記第1のセグメントに機能的に連結された、タンパク質をコードする第2のセグメントと
を含む組換え核酸分子であって、
前記第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、
前記第2の部位が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む、
組換え核酸分子。
2.
(a)第1の部位では、第1の外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されており、第2の部位では、第2の外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えウイルス内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする第1のセグメントと;
(b)前記IRESが不活性化状態にある際にタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第1のセグメントの下流にありかつ前記第1のセグメントに機能的に連結された、タンパク質をコードする第2のセグメントと
を5'から3'に含む組換え核酸分子であって、
前記第2のヌクレオチド配列が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である、
組換え核酸分子。
3.
改変された前記IRESが、グループ1ジシストロウイルス科IRES、ヘパシウイルスIRESまたはエンテロウイルスIRESである、項2記載の組換え核酸分子。
4.
改変された前記IRESが、哺乳動物病原性ウイルスまたは哺乳動物共生ウイルス由来のIRESである、項1~3のいずれかの組換え核酸分子。
5.
改変された前記IRESが、ヒト病原性ウイルスまたはヒト共生ウイルス由来のIRESである、項4記載の組換え核酸分子。
6.
前記核酸分子がmRNAである、項1~5のいずれかの組換え核酸分子。
7.
前記第2のヌクレオチド配列が、前記第1のヌクレオチド配列の実質的に全体の逆相補鎖である、項1~6のいずれかの組換え核酸分子。
8.
前記グループ1ジシストロウイルス科IRESが、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRES、カシミール蜂ウイルス(KBV)IRES、急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRES、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(PSIV)IRES;アブラムシ致死性麻痺ウイルス(ALPV)IRES;黒色女王蜂児ウイルス(BQCV)IRES;ショウジョウバエCウイルス(DCV)IRES;ヒメトビPウイルス(HiPV)IRES;ヒメヨコバイウイルス-1(HoCV-1)IRES;ムギクビレアブラムシウイルス(RhPV)IRES;およびサシガメ属ウイルス(TrV)IRESである、項1~7のいずれかの組換え核酸分子。
9.
前記ヘパシウイルスIRESが、c型肝炎ウイルス(HCV)IRESである、項2~7のいずれかの組換え核酸分子。
10.
前記エンテロウイルスIRESが、ポリオウイルス(PV)IRESまたはエンテロウイルス71(EV71)IRESである、項2~7のいずれかの組換え核酸分子。
11.
前記第1および第2の部位が、部位1、部位2、部位3、部位4、部位5、部位6、部位7および部位8のいずれかからそれぞれ独立して選択される、項1~10のいずれかの組換え核酸分子。
12.
前記第1および第2の部位が、部位1および部位2、部位1および部位4、部位1および部位5、部位1および部位6、部位1および部位7、部位1および部位8、部位2および部位6、部位2および部位7、部位4および部位6、部位5および部位6、部位5および部位7、部位6および部位7、部位8および部位2、部位8および部位6、または部位8および部位7をそれぞれ含む、項11記載の組換え核酸分子。
13.
前記第1および第2の部位が、部位1および部位2、部位1および部位8、部位2および部位7、部位6および部位7、または部位8および部位6をそれぞれ含む、項11~12のいずれかの組換え核酸分子。
14.
前記第1および第2の部位が、部位6および部位7、または部位8および部位6をそれぞれ含む、項11~13のいずれかの組換え核酸分子。
15.
前記第1のヌクレオチド配列が25~80nt長である、項1~14のいずれかの組換え核酸分子。
16.
前記第1のヌクレオチド配列が40~50nt長である、項15記載の組換え核酸分子。
17.
前記第2のヌクレオチド配列が8~25nt長である、項15記載の組換え核酸分子。
18.
前記第2のヌクレオチド配列が6~15nt長である、項1~17のいずれかの組換え核酸分子。
19.
前記第1のヌクレオチド配列が、前記第2のヌクレオチド配列の2.5倍~8倍の長さである、項1~18のいずれかの組換え核酸分子。
20.
前記第1のヌクレオチド配列が、標的真核生物、標的原核生物または標的ウイルスに見られる配列の逆相補鎖である、項1~19のいずれかの組換え核酸分子。
21.
前記標的原核生物または標的ウイルスが、ヒト病原体である、項20記載の組換え核酸分子。
22.
前記標的ウイルスが、ジカウイルスまたはコロナウイルスである、項21記載の組換え核酸分子。
23.
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、項22記載の組換え核酸分子。
24.
前記タンパク質が、検出可能なシグナルを生成する、項1~23のいずれかの組換え核酸分子。
25.
前記第1および第2のヌクレオチド配列が、インビボまたはインビトロ条件下で真核細胞内で発現された場合にハイブリダイズし、前記IRESを不活性化状態にフォールディングさせることができ、前記真核細胞が植物細胞ではない、項1~24のいずれかの組換え核酸分子。
26.
前記IRESが、項1記載の組換え核酸分子の前記第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子の存在下で活性化状態にフォールディングするように構成されている、項1~25のいずれかの組換え核酸分子。
27.
前記第1のヌクレオチド配列が、インビボ条件下で真核細胞内で発現された場合に前記第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、前記IRESを活性化状態にフォールディングさせることができ、前記真核細胞が植物細胞ではない、項26記載の組換え核酸分子。
28.
項1~27のいずれかの組換え核酸分子をコードするかまたはそれを含む配列を含み、
項1~27のいずれかの組換え核酸分子をコードするかまたはそれを含む前記配列の5'および/または3'に、以下:
(a)IRESシュードノット配列;
(b)前記IRESが天然に存在するウイルス野生型配列に見られるIRESシュードノット配列;
(c)プロモーターおよび/または上流活性化因子結合配列;
(d)終止コドン;
(e)ステムループ;
(f)5'キャップ;
(g)レポーター遺伝子;ならびに
(h)ポリAテール
のうちの1つまたは複数をさらに含む、発現構築物。
29.
項1~27のいずれかの組換え核酸分子をコードするかまたはそれを含む前記配列の5'に、以下:
(a)IRESシュードノット配列;
(b)前記IRESが天然に存在するウイルス野生型配列に見られるIRESシュードノット配列;
(c)プロモーターおよび/または上流活性化因子結合配列;
(d)終止コドン;
(e)ステムループ;
(f)5'キャップ;ならびに
(g)レポーター遺伝子
のうちの1つまたは複数を含む、項28記載の発現構築物。
30.
(a)前記プロモーターが、SP6プロモーター、T3プロモーター、araBADプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、PtacプロモーターおよびpLプロモーターから選択され;ならびに/または
(b)前記上流活性化因子結合配列が、サッカロマイセス・セレビシエ由来の上流活性化因子結合DNA配列(UAF2)である
項28~29のいずれかの発現構築物。
31.
前記組換え核酸分子の転写が、以下:
(a)RNAポリメラーゼII;
(b)RNAポリメラーゼII以外のポリメラーゼ;
(c)T7ポリメラーゼ;および/または
(d)SP6ポリメラーゼ
に依存する、項1~30のいずれかの発現構築物または組換え核酸配列。
32.
(a)第1のタンパク質をコードする第1のセグメントと;
(b)第1の部位および第2の部位に外因性ヌクレオチド配列を組み込むように改変されている、組換えグループ1ジシストロウイルス科内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする、前記第1のセグメントの下流の第2のセグメントと;
(c)前記IRESが不活性化状態にある際に第2のタンパク質の翻訳が抑制されるように、前記第2のセグメントの下流にありかつ前記第2のセグメントに機能的に連結された、第2のタンパク質をコードする第3のセグメントと
を含む組換えmRNA分子であって、
前記組換えmRNA分子の転写が、ポリメラーゼに依存し、
前記第1の部位が、第1のヌクレオチド配列を含み、
前記第2の部位が、前記第1のヌクレオチド配列の少なくとも一部の逆相補鎖である第2のヌクレオチド配列を含む、
組換えmRNA分子。
33.
前記組換えmRNA分子の転写が、以下:
(a)RNAポリメラーゼII;
(b)RNAポリメラーゼII以外のポリメラーゼ;
(c)T7ポリメラーゼ;および/または
(d)SP6ポリメラーゼ
に依存する、項32記載の組換えmRNA分子。
34.
前記項のいずれかの組換え核酸分子、発現構築物または組換えmRNA分子をコードする、プラスミド。
35.
前記項のいずれかの組換え核酸分子、発現構築物または組換えmRNA分子をコードするDNAを含む真核細胞であって、
前記真核細胞が植物細胞ではなく、
前記DNAが、
(a)前記真核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか、または
(b)前記真核細胞内に存在するプラスミドもしくはウイルスベクター上に存在する、
真核細胞。
36.
前記細胞が、(a)動物細胞;(b)ヒト細胞;または(c)霊長類細胞である、項35記載の真核細胞。
37.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子と;
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子と
を含む、遺伝子発現を制御するためのシステム。
38.
(a)項34記載のプラスミドと;
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子と
を含む、キット。
39.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程;および
(b)前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖である第3のヌクレオチド配列を含むトリガーRNA分子を前記真核細胞に導入する工程
を含む、タンパク質の発現を活性化および/または調節する方法であって、
前記第1のヌクレオチド配列が、インビボ条件下で前記第3のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、前記IRESを活性化状態にフォールディングさせ、
さらに、前記真核細胞が植物細胞ではない、
方法。
40.
前記組換え核酸分子を発現するように操作された前記真核細胞が、前記項のいずれかの組換え核酸分子を前記真核細胞に導入することによって提供される、項39記載の方法。
41.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程であって、前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、ウイルスに固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成される、工程;ならびに
(b)前記組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質の存在を検出および/または測定することによって、前記真核細胞が前記ウイルスに感染しているかどうかを決定する工程であって、前記真核細胞が植物細胞ではない、工程
を含む、真核細胞のウイルス感染を検出するための方法。
42.
前記ウイルスが、デングウイルスまたはジカウイルスである、項41記載の方法。
43.
(a)前記項のいずれかの組換え核酸分子を発現するように操作された真核細胞を提供する工程;および
(b)前記真核細胞を培養する工程
を含む、真核細胞の分化を制御するための方法であって、
前記組換え核酸分子の第1のヌクレオチド配列が、選択された細胞型に固有のmRNA配列の少なくとも一部の逆相補鎖であるように構成され、
前記組換え核酸分子の第2のセグメントによってコードされるタンパク質が、前記選択された細胞型のアポトーシスを引き起こす毒素またはタンパク質を含み、
さらに、前記真核細胞が植物細胞ではない、
方法。
44.
前記項のいずれかの組換え核酸分子をコードする配列
を含むベクターであって、
前記改変IRESが、前記第1のヌクレオチド配列の逆相補鎖であるセグメントを含むmRNAの存在に応答して、前記タンパク質の発現を活性化するように構成されている、
ベクター。
45.
前記項のいずれかの組換え核酸分子をコードするDNAを含む原核細胞であって、
前記DNAが、
(a)前記原核細胞のゲノムDNAに組み込まれるか;または
(b)前記原核細胞内に存在するプラスミドもしくはウイルスベクター上に存在する、
原核細胞。
【0106】
前述の態様のいずれかの特定の要素は、他の態様の要素と組み合わせるか、または他の態様の要素に置き換えることができる。さらに、本開示のある特定の態様に関連する利点がこれらの態様の文脈において説明されてきたが、他の態様もそのような利点を示し得、また、必ずしもすべての態様が本開示の範囲内に入るためにそのような利点を示す必要はない。
【0107】
本明細書において記載される技術は、以下の実施例によってさらに説明されており、以下の実施例はさらに限定的であると決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0108】
以下の非限定的な例は、本開示をさらに説明するために提供される。
【0109】
実施例1:組換えIRESリボスイッチのスクリーニング
ウイルスデータベースからのIRESモジュールの選択、およびヒト胎児由来腎臓293(HEK293)細胞に基づくトランスフェクションアッセイでのそれらの試験から、組換えIRESリボスイッチを設計するプロセスを始めた。これらの構築物を同時トランスフェクトしたところ、T7ポリメラーゼは5'キャップmRNAまでではなく、
図6に示すように、IRESモジュールによるmKate発現の劇的な増強をもたらした。C型肝炎ウイルス(HCVd20)のIRESをこのアッセイの対照として使用したが、選択したIRESモジュールの残部と比較したその広範囲な構造的差異、および小型RNAに対する活性の報告された信頼性のために追求しなかった。この初期スクリーニングに基づいて、既存の構造情報の豊富さに起因するCrPV IRESに焦点を当てて、さらなる試験のためにコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRESモジュール、カシミール蜂ウイルス(KBV)IRESモジュールおよび急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRESモジュールを選択した。
【0110】
これらのIRESモジュールの構造の破壊がそれらの翻訳開始能力を低下させることができるかどうかを試験するために、外因性ヌクレオチド配列を組み込んだCrPV IRESモジュール、KBV IRESモジュールおよびABVP IRESモジュールの変異体を操作した。IRESモジュールの機能的構成/構造を歪めるために(例えば、これら2つのセグメントのハイブリダイゼーションに起因して)、IRESモジュールの2つの部位へのDNAの2つの逆相補鎖セグメントの挿入を使用することができるという理論を立てた。一方のセグメントの逆相補鎖であり、第1のセグメントと第2のセグメントとの間の重複よりも長い重複部分を含むトリガーRNA配列(trRNA)によって放出されるように、DNAの2つの逆相補鎖セグメントをさらに設計した。具体的には、挿入されたDNAの長い方のセグメント(40~50塩基対)が、標的トリガーの一部の逆相補鎖であり、短い方のセグメント(10~15塩基対)が、第1のセグメントの一部の逆相補鎖であった。挿入がIRESモジュール活性を個々に破壊しない8つの部位(すなわち、
図3に示す部位1~8)を選択し、IRESモジュール活性のあらゆるレベルにとってその完全な機能性が重要であるループ3は回避した。
【0111】
IRES活性決定のための同じアッセイを使用して、一連の15のフォールドの組合せを試験した(
図7)。フォーマット(長いセグメント部位番号-短いセグメント部位番号)を使用して、各フォールドの組合せを命名した。この初期試験では、GFP mRNAをトリガーRNAとして使用した。フォールド1-2、1-8および2-7は、この初期スクリーニングで再現性のある変化倍率をもたらしたが、さらなる試験では、他の標的トリガーに対する同じフォールドの移行性の欠如が示された。トリガーRNAを同時にトランスフェクトした場合、いずれもmKate陽性細胞のパーセンテージについて1.7倍の増加を示したフォールド6-7および8-6の操作を継続することを決定した。
【0112】
実施例2:組換えIRESリボスイッチの最適化
現在開示されている組換えIRESリボスイッチの実際の用途は、トリガー誘導後の下流タンパク質翻訳の大きな変化倍率を必要とすることが多い。したがって、初期スクリーニングからの2つのヒット(すなわち、フォールド6-7および8-6)の漏れの低減が求められた。以前の試験では、IRESシュードノットがリボソーム動員に重要であることが示唆されている。このように、同じ位置(フォールド6-7の挿入部位7の後、およびフォールド8-6の挿入部位6の後)でのシュードノットの破壊に伴うIRESモジュールの歪みが、IRESモジュールの漏れを低減するかどうかを決定するための試験を行った。挿入2がアニールする場所に続く挿入1における塩基対が、シュードノットに対応する塩基対の逆相補鎖であるように、新たな組換えIRESリボスイッチを設計した。トリガーの非存在下では、このアニーリングは、正しいシュードノットフォールディング、すなわち、シュードノット破壊部位(PB部位)の形成を防ぐ。PB部位を有する組換えIRESリボスイッチを設計すると、
図8によって示されるように、フォールド8-6では、IRESモジュールが存在しない場合に観察されるレベルまで「OFF」(トリガーなし)状態が減少し、「ON」(トリガーあり)から「OFF」(トリガーなし)への変化倍率が1.7倍から2.5倍に増加した。アニーリング部分の融解温度をさらに最適化させると、このパラメーターに対するIRESリボスイッチ挙動の依存性が示されたが、「ON」から「OFF」への変化倍率の改善は示されなかった。
【0113】
これらの知見に基づいて、残りの漏れは、内因性RNAポリメラーゼIIによるT7プロモーター配列の非特異的結合によって引き起こされ、IRES媒介翻訳開始の5'キャッピングおよびバイパスをもたらすという理論を立てた。好適なポリメラーゼ-プロモーター置換対を見出すために、高いRNA発現レベルを有する異なるプロモーターの下にsfGFPを置き、HEK293T細胞にトランスフェクトした(対応するポリメラーゼなし)。P
SP6では、P
T7およびその類似体よりも著しく漏れが少ないことが分かった。RNAポリメラーゼII結合を減少させることが示されているRNAポリメラーゼIについて、上流活性化配列を試験した。本発明者らの知見では、サッカロマイセス・セレビシエ由来の上流活性化因子結合DNA配列が、漏れを減少させることが実証された(UAF2と命名)。これらの2つの方法/技術/手法を組み合わせることによって、漏れを実質的に最小限に抑え、
図9によって示されるように、15.9倍という「ON」から「OFF」のトリガー-mRNAに基づく誘導に達した。組換えIRESリボスイッチの前に終止コドンおよびステムループを付加することによって、同様の誘導倍率に達することができた。リボスイッチの下流のコザック配列を隠す組換えIRESリボスイッチを使用して、「ON」から「OFF」への変化倍率をさらに増加させることができたが、この方法は、広範囲なスクリーニングを必要とする(9個のコザックトーホールドのうち1個のみが変化倍率を改善した)。
【0114】
本開示の組換えIRESリボスイッチをさらに特性評価するために、これらのリボスイッチが、いくつかの供給源からのトリガーmRNAを感知する能力を試験した。特に、本発明者らは、GFP、Azuriteおよび酵母SUMO mRNAを検出するためのフォールドを設計した。フォールドの各々を3種類のmRNAの各々に曝露することにより、組換えIRESリボスイッチが直交性であり、ほとんどの標的mRNAのために設計され得ることが実証される(
図10)。挿入1および2の内側(Mut Anneal)、または挿入2ではなく挿入1(Mut Outside)内で挿入を変異させることによって、本発明者らのフォールドの感度をさらに試験した。組換えIRESリボスイッチは、単一の変異による活性化レベルの3倍の減少によって示される、挿入2内の変異に対して極めて感受性であるが、挿入2外の変異に対しては感受性ではないことが見出された(
図11)。そのため、この試験により、特異性を維持しながら、様々なmRNAに対して組換えIRESリボスイッチを設計することができることが確認された。
【0115】
その後、本発明者らは、さらに容易な組換えIRESリボスイッチ設計のために可能なPB部位を拡大することを目指した。本発明者らは、IRESモジュール間の配列の差および構造的類似性を考慮して、様々なIRESモジュールを使用してフォールドを作製することによってこれを達成しようとした。KBV IRESモジュールおよびABPV IRESモジュールの両方を使用して組換えIRESリボスイッチを作製する際に、CrPV IRESモジュールに対するトリガー誘導性翻訳の同様の変化倍率が観察された(
図12)。これらの代替的なIRES eToeholdは、可能なPB部位の範囲を効果的に拡大する。
【0116】
実施例3:真核生物翻訳制御のためのモジュール型RNA応答性エレメント
バイオテクノロジーでは、堅牢で容易にプログラムされるRNA応答性モジュールは、様々な用途にとって非常に望ましい。真核生物では、導入遺伝子に対する翻訳制御を有する単純なRNA応答性エレメントは、実現されていないままである1~3。特異的なRNA配列に応答して導入遺伝子に対する翻訳制御をもたらす内部リボソーム進入部位(IRES)配列に基づくモジュール型リボレギュレーターとしての真核生物トーホールドスイッチ(eToehold)が本明細書において記載される。RNAアニーリングの最適化によって設計されたeToeholdは、ある範囲の真核細胞内で導入遺伝子の最大16倍の誘導を伴うトリガーRNAの存在を感知し、それに応答することが本明細書において実証される。eToeholdは、外因性または内因性RNA転写物の存在に基づいて、哺乳動物細胞内で感染状態、細胞状態および細胞型を識別することができることも実証される。
【0117】
特定の細胞内RNAを感知し、それに応答するための合成生物学技術は、それらが特定の細胞、組織および生物を識別し、標的とするための手段を提供し、高度な遺伝子回路のための基礎的要素として役立ち得るため、治療用途および診断用途に望ましい。特異的なRNA転写物を検出するために、トーホールドスイッチと呼ばれるRNAベースの原核生物モジュールが開発された1、4。トーホールドスイッチは、トリガーRNA(trRNA)の非存在下で、ステムループ構造内でレポーター遺伝子の上流のリボソーム結合部位(RBS)を捕捉することによって、インシス(in-cis)レポーター遺伝子の翻訳を選択的に抑制する。RBSは、trRNAがトーホールドスイッチに結合し、ステムループ構造を開き、ひいてはレポーター遺伝子の翻訳を開始する際に放出される。ただし、真核生物翻訳ははるかに複雑であり、典型的には、RNAポリメラーゼII、mRNA安定化のためのポリ-アデノシン(ポリA)テール、およびタンパク質翻訳調節のためのコザックコンセンサス配列によって動員される5'修飾キャッピングを含むいくつかの因子によって調節される。コザック配列はリボソーム結合を改善するが、翻訳にとって原核生物RBSほど重要ではない。以前に開発されたコザックベースのトーホールドスイッチは、真核生物翻訳の最大2倍のtrRNA推進誘導を達成するにとどまっている5。5'キャップは、翻訳調節機構を支配しており、翻訳レベルで機能する真核生物RNA感知リボスイッチにとって大きな課題である。
【0118】
Cas9発現と、ガイドRNA(gRNA)の操作されたフォールディングとを利用して、機能に必須の配列を隠すことにより、さらに複雑なRNAベースのスイッチが開発されている2、3。trRNAによるgRNAのアンフォールディングは、Cas9酵素の活性化と、対応する下流調節とをもたらす。しかし、これらの機構は、(真核生物および原核生物の両方に)中程度の変化倍率を誘導するにとどまっている。別の技術は、小分子誘導時にポリAテールを切断するリボザイムの使用を伴う6、7。この手法は、さらに大きなヌクレオチド配列については未だ拡大されておらず、RNAの分解をもたらす。これにより、配列によって引き起こされる反応が不可逆的になり、RNAレベルの時間的変化を感知することができなくなる。近年の試験では、短いヌクレオチドオリゴマーに応答するためにリボザイムが利用されているが8、9、これらのリボザイムに基づくセンサーは、内因性転写物を含むさらに長いtrRNAの検出と未だ適合していない。
【0119】
IRESは、その構造がmRNA 5'キャッピングおよびポリアデニル化とは無関係にタンパク質翻訳を開始するように進化した内因性かつウイルス性の真核生物mRNAエレメントである。特定のtrRNAの存在によってインシスレポーター遺伝子の調節された翻訳を可能にするeToeholdと呼ばれるRNAベースの真核生物モジュールの開発が本明細書において記載される。eToeholdは、特定のtrRNAとのセンス-アンチセンス相互作用が活性化を引き起こすまで不活性であるように設計された改変IRESを組み込んでいる(
図14A)。このシステムを使用して、導入遺伝子の最大16倍のtrRNA誘導性翻訳が達成される。eToeholdは、ヒト細胞および酵母細胞、ならびに哺乳動物無細胞溶解物中で機能性を有することが実証されている。eToeholdを発現する安定な細胞株を使用して、天然のウイルス感染(ジカウイルスによる)と、ウイルス転写物(SARS-CoV-2構築物)とを感知することができることがさらに実証される。また、eToeholdが、内因性RNAレベルに基づいてタンパク質翻訳を選択的に活性化することによって、様々な細胞状態および細胞型を識別する能力を有することも実証されている。
【0120】
真核細胞内で機能するRNA感知リボスイッチを操作するために、構造誘導翻訳活性
10~14を有するウイルスIRESモジュールを改変した(
図14B)。IRESは、小分子を感知するように適合されているが
15、IRESに基づくシステムは、trRNAに応答するようには、以前には設計されていない。IRESモジュールを最初に選択し、ヒト胎児由来腎臓293(HEK293)細胞に基づくトランスフェクションアッセイで試験した(
図17)。5'キャッピングを回避するために、T7ポリメラーゼを細胞に同時トランスフェクトし、これらの転写物は5'キャッピングを受けないことから、IRES配列を生成するために使用した。IRESモジュールの存在は、インシスmKateの発現の約9倍の増強をもたらした(
図14C、
図18A~
図18H)。その十分に特性評価された構造と、広範囲の真核生物システムにおける報告された機能性とに起因して、CrPV IRESに焦点を当てて、eToeholdをさらに開発するための基礎として、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)IRESモジュール、カシミール蜂ウイルス(KBV)IRESモジュールおよび急性ミツバチ麻痺ウイルス(ABPV)IRESモジュールを追求することを決定した
10~12。
【0121】
IRES活性を確認し、次に、短い相補的RNAセグメントをIRES配列に挿入すると、新たなループが形成されることによってその二次構造が破壊され、それによって、翻訳開始能力が低下し、trRNAのセンス-アンチセンス作用によってこれらの導入されたループが破壊されると、IRES機能性が救済されると仮定した。この仮説を、DNAの逆相補鎖断片(2つの断片)をIRES鋳型内の部位に挿入することによって試験し、得られた転写物中のこれらの配列間の塩基対形成が、IRESの機能的構成を歪めるという理論を立てた。trRNAの存在時にIRES機能の回復を可能にするために、これらの導入された相補的DNAセグメントを、選択されたtrRNA配列に結合するように設計した。目標は、trRNAと新たな挿入との間の塩基対形成がIRES破壊ループを破壊するのに十分であることであったことから、等しくない長さになるように挿入を設計した。長い方の断片(40~50塩基対)をtrRNAの一部の逆相補鎖であるように選択し、短い方の断片(6~15塩基対)を最初の断片の一部の逆相補鎖であるように選択した。二次構造全体に対する改変がない場合、挿入がCrPV IRES活性を消さないであろう8つの部位
11、16を選択した(
図14D)。
【0122】
8つの可能な部位に挿入された相補的配列を有する様々なCrPV IRES配列をスクリーニングした。GFP mRNAを選択してtrRNAとして作用させ、GFP mRNAが、新たに形成されたループを分解することができるように、IRESを設計した。IRES活性をモニタリングするために、改変IRES配列の下流のインシスmKate遺伝子を使用し、これらの構築物およびGFPプラスミドを用いて、細胞に同時トランスフェクトした(
図14E)。各部位組合せは、長い断片部位番号-短い断片部位番号(例えば、1-2)の形式で命名される。いくつかの部位組合せ(1-2、1-8、2-7、6-7および8-6)が予測通りに挙動し、GFPを共発現させると、さらに高いmKateシグナルを生成することが見出された。これらの結果に基づいて、GFP蛍光を介して確認された、トリガーRNAの存在下でmKate陽性細胞のパーセンテージの1.7倍の増加を再現性よく示した部位組合せ6-7および8-6に焦点を当てることを決定した。
【0123】
改変IRESは、新たに導入された挿入にもかかわらず、顕著な翻訳能力を保持しているように見えたことが観察された。IRESシュードノットは、リボソーム動員にとって重要であり得る
10、17。上記の戦略のようにIRESモジュールを同時に歪ませ、同じ挿入配列を使用してIRESシュードノットを破壊すると、モジュールの基底発現が減少すると仮定された。この仮説を検証するために、シュードノットに存在する配列を含むように比較的短い挿入を選択することによって新たなeToeholdを設計した。トリガーの非存在下では、挿入間のアニーリングは、正しいシュードノットフォールディングを損なうという理論を立てた。これが起こる挿入部位を、塩基対破壊部位(BB部位;
図14F)と命名した。BB部位を有するeToeholdを設計すると、オフ(トリガーなし)状態がバックグラウンドレベルに減少し、部位組合せ8-6では、オンからオフへの変化倍率が1.7から2.5に増加した(
図14G、
図21A~
図21C)。eToeholdスイッチングの熱力学的要件をさらに特性評価するために、8-6部位の短い挿入の長さを変更し、ひいてはアニーリング温度を変更した。いくつかのeToeholdはアニーリング温度と出力との間の相関を示したが、他のeToeholdは示さなかった(
図19A~
図19B)。比較的長いeToehold配列は、RNAi応答を潜在的に誘導するのに十分な長さであり得ることから、「トリガー」RNA配列に結合するように設計されたIRES構築物のRNAレベルを評価し、非結合直交配列と比較した。評価した3つの細胞型のうち2つではIRES構築物RNAレベルの有意差は観察されなかったが、初代ヒト線維芽細胞では、「トリガー」RNAの存在下で約2倍の減少が見られた(表2)。「トリガー」および直交RNAを形質導入された細胞間で炎症に関連するサイトカインの産生に有意差は見られなかったが、トランスフェクション単独では、サイトカイン産生レベルが有意に増加した(
図20A~
図20B)
18。
【0124】
T7プロモーター(P
T7)は、一般に、T7ポリメラーゼに高度に特異的であると考えられているが、哺乳動物RNAポリメラーゼIIは、P
T7に結合し、顕著なレベルの転写を開始することが示されている
19。trRNAの非存在下でのeToeholdからの予想外の翻訳の一部は、内因性RNAポリメラーゼIIの動員と、翻訳を独立して誘導し、機能的IRESの必要性を無効にする5'キャップを有する転写物のその後の生成とに起因し得ると仮定された。さらに、P
T7による哺乳動物RNAポリメラーゼIIの動員は、P
T7と天然の哺乳動物転写開始部位との間の一次配列の偶然の類似性に起因し得る。したがって、IRES制御レポーターのオフ状態翻訳が減少するかどうかを試験するために、P
T7に直交する転写システムについて、外因性プロモーター配列をスクリーニングした。SP6のプロモーター(P
SP6)は、P
T7およびその類似体よりも有意に低い基底発現をもたらすことが見出された(
図22A)。次に、RNAポリメラーゼII結合を減少させることが示されている
20~22、RNAポリメラーゼIの上流動員を試験して、これが基底発現をさらに減少させることができるかどうかを試験した。基底発現を首尾よく減少させた、サッカロマイセス・セレビシエ由来の上流活性化因子結合DNA配列(UAF2と命名、
図22B)を同定した。これらの構成要素を組み合わせることによって、基底発現が実質的に最小限に抑えられ、15.9倍という、オンからオフへのトリガー-mRNAに基づく誘導が達成された(
図15Aおよび
図23A~
図23E)。T7ポリメラーゼおよびプロモーターの使用を維持しながら、IRESモジュールの前に終止コドンおよびステムループ
23を付加することによって、誘導時の同様の変化倍率を達成することができた(
図24)。
【0125】
trRNA誘導時に導入遺伝子発現の堅牢な変化倍率を達成するための手法を開発し、次に、所望のtrRNA配列に対するこのシステムの特異性を試験した。GFP、Azuriteおよび酵母SUMO mRNAを検出するようにeToeholdを設計し、これらの設計が、それらのtrRNA配列を特異的に感知することが見出された(
図15B)。2つの挿入配列にミスマッチを導入することによって、それらの同族trRNAに対するeToeholdの感度をさらに試験した。eToeholdは、アニーリング領域内のミスマッチに感受性であることが分かった(
図25A)。さらに、他のIRESに対するeToehold設計の一般化可能性を試験した。KBV IRESモジュールおよびABPV IRESモジュールの両方を使用してeToeholdを合成し、CrPV IRESモジュールベースのeToeholdと比較して、トリガー誘導性翻訳における同様の変化倍率が観察された(
図25B)。さらに、短いeToehold挿入に結合することができるが、さらに長い挿入には結合することができないRNA配列は、eToeholdを活性化するのに十分ではないことが見出された(
図26)。まとめると、これらの知見は、高レベルの特異性を有する様々なmRNAに対してeToeholdを容易に設計することができ、センス-アンチセンス活性化がIRES媒介翻訳に対して広く一般化可能であることを示している。
【0126】
次に、eToeholdシステムを内因性真核生物ポリメラーゼによる発現に適合させることを試みた。これにより、非キャップ転写物を産生するための外因性ポリメラーゼへの依存がなくなり、それによって、構築物のサイズが小さくなり、本発明者らのeToeholdシステムと現在の細胞工学および遺伝子治療手法との適合性が増大する。RNAポリメラーゼI応答性プロモーター
24、25は非キャップ転写物を産生することが示されているが、RNAポリメラーゼIに依存するとオン/オフ比が有意に減少し、基底発現が増加することが見出された(
図22C)。したがって、カノニカル5'キャッピングの存在下で翻訳活性を低下させる方法を探索することを決定した。構成的プロモーターによって制御される遺伝子の後に終止コドンおよびステムループ
23を付加することによって、転写のためのRNAポリメラーゼIIへの依存、および5'キャッピングの存在にもかかわらず、下流mRNAの基底発現を減少させることが可能であった(
図15C、
図15D)。さらに、ステムループと所望の遺伝子のコード配列との間にIRESまたはeToeholdモジュールを挿入し、バイシストロニックな構築物を作製することによって、翻訳に対するtrRNA媒介性制御を保持することが可能であった。哺乳動物、具体的にはヒトの翻訳システムを利用するように進化したIRESモジュールにおけるこのシステムの適用性を試験するために、C型肝炎ウイルス(HCV)
26、ポリオウイルス(PV)
27およびエンテロウイルス71(EV71)のIRES配列から適合されたeToeholdモジュールを設計した
28、29。これらの新たなeToeholdはまた、特定のtrRNAを感知する能力を実証した。CrPV構築物と比較して、ヒトToehold(hToehold)と呼ばれるこれらの新たなeToeholdは、桁違いを超えてさらに多くの出力タンパク質を産生した。ただし、モノシストロニックな5'キャップmRNAは、これらの新たなeToeholdよりも高いタンパク質出力をもたらし、モノシストロニックな構築物がジシストロニックな構築物よりも高いレベルのmRNAおよびタンパク質出力をもたらすという知見と一致していた
30。
【0127】
次に、様々な真核生物システムにおけるeToeholdスイッチの機能性を試験することを試みた。eToeholdを、単一細胞真核生物を対象として試験するために、ガラクトース誘導時にGFPを発現する酵母株(サッカロマイセス・セレビシエ)、およびGFP mRNAの存在下でiRFP670を産生するように設計されたeToeholdを作製した。IRES媒介発現は低かったが、eToeholdはガラクトース制御GFP発現によって誘導可能であったのに対して、対照構築物(非改変KBVおよびCrPV、
図27A~
図27B)は誘導可能でなかったことが分かった。次に、eToeholdを、真核細胞抽出物(コムギ胚芽およびウサギ網状赤血球溶解物)を対象として試験して、無細胞システムにおけるそれらの機能性を評価した。様々な標的RNAおよびそれらの対応するeToeholdを転写し、eToehold媒介翻訳が特異的トリガーの存在に依存することを確認した(
図28A~
図28B)。さらに、この誘導は用量依存的であることが観察され、eToeholdが相対的な細胞内RNAレベルの読み出しを提供し得ることが示された。
【0128】
eToeholdが、哺乳動物細胞内で外因的に導入された転写物を検出する能力を実証したことから、それらがウイルス感染のための生細胞バイオセンサーとして機能し得ると仮定された。読み出しとしてナノルシフェラーゼまたはAzurite蛍光タンパク質のいずれかを産生した、それぞれジカ配列およびSARS-CoV-2配列に特異的なeToeholdを含むレンチウイルス構築物を生成した。これらの構築物を、いくつかのウイルス性疾患のために一般的に使用される宿主細胞であるVero E6細胞株に形質導入した。感染は、ジカ特異的eToeholdを発現するように操作された細胞では発光シグナルの最大9.2倍の増加をもたらし(
図16A、
図16B)、さらに、既存の生細胞バイオセンサー手法よりも高い感度でジカウイルス感染に対する用量依存的応答性を示すことが見出された
31(
図29)。これらのeToeholdの特異性を試験するために、形質導入された細胞も、関連するフラビウイルス属(Flavivirus)ウイルス、デングウイルス
32に感染させたところ、eToehold応答がジカ感染に特異的であることが分かった。Azurite蛍光タンパク質をコードするeToeholdを使用しても同様の結果が観察された(
図30A、
図30B、
図31A~
図31B、および
図32A~
図32B)。eToeholdがSARS-CoV-2の生細胞センサーとして機能する能力を試験するために、SARS-CoV-2転写物を感知するように設計されたeToeholdを用いて安定な細胞株を操作した。SARS-CoV-2の断片を発現する構築物を用いてトランスフェクションすると、これらのeToeholdによって操作された細胞は、SARS-CoV-2 trRNAと他の非標的RNAとを区別することができることが見出された(
図30Cおよび
図30D)。
【0129】
最後に、特定の細胞状態と細胞型とを識別し、それらを標的とする用途を可能にする、内因性転写物を感知するためのeToeholdシステムの可能性を探索した。細胞状態を決定するeToeholdの能力を評価するために、HeLa細胞内で、高温への曝露時にアップレギュレートされる、熱ショックタンパク質hsp70およびhsp40の転写物に応答してAzuriteタンパク質レポーターを産生するようにeToeholdを設計した。eToehold構築物は、ルーチンの37℃培養と比較して、42℃で24時間増殖させた後、Azurite産生を最大4.8倍増加させることが分かった(
図16C、
図16D)。次に、様々な細胞型を識別するeToeholdの能力を評価するために、メラニン形成細胞に豊富に存在するマウスチロシナーゼ(Tyr)mRNAを感知するようにeToeholdを設計した。再びAzuriteをレポーターとして使用すると、B16-F10マウスメラノーマ細胞にトランスフェクトされたTyr感知eToeholdを使用して、2つの対照細胞株と比較して(HEK293T細胞およびD1骨髄間質細胞、
図16E、
図16F)、シグナルの3.6倍の増大が観察された。これらの結果は、eToeholdが細胞内の内因性転写物のレベルに基づいて遺伝子およびRNAの発現を調節することができることを示しており、特定の細胞型に対する標的療法のためのそれらの適用性を実証している。
【0130】
特異的なRNAトリガー配列の存在下で所望のタンパク質の翻訳を可能にする改変IRESエレメントに基づく、新規RNAベースの真核生物センスおよび応答モジュールであるeToeholdが本明細書において記載される。センス-アンチセンス相互作用を使用して、翻訳制御のためにIRESモジュールの二次構造を変化させるこの手法は、トリガー配列の長さ、したがって特異性を拡大することによって既存のRNAベースのセンサーシステムを上回り、さらに、様々な量のトリガーに対する用量応答性を可能にする。バイオテクノロジーでは、真菌システムおよび哺乳動物システムを含む真核生物の複数のドメインにおけるeToeholdの証明された機能性は、広範囲な有用性の可能性を示す。
【0131】
eToeholdはRNAベースであるが、DNAトランスフェクションおよび形質導入手法は、これらの戦略がバイオテクノロジー環境で広く使用されていることから、それらを細胞内で産生することに依存していた。そうすることで、基礎mRNA翻訳を減少させるエレメントを組み込むことが、RNA感知リボスイッチを設計するために重要であることが見出された。内因性5'キャッピングは翻訳に強力な影響を及ぼし、外因性ポリメラーゼシステム(T7またはSP6)を使用してeToeholdをインビボで転写すると、5'キャッピングが回避され、オン状態とオフ状態との間の実質的な差が可能になることが分かった。5'キャッピングはmRNA安定性および核外輸送を改善するのに有益であることから、5'キャッピングの存在下で基礎翻訳レベルを低下させる手段も調査した。5'キャップとeToeholdモジュールとの間にステムループおよび終止コドンを組み込むと、5'キャッピングは保持されたが、依然として基底翻訳レベルは制限された。事前に転写されたeToehold構築物が細胞に直接トランスフェクトされるRNAのみの戦略は、eToehold分子の化学および構成に対するさらに大きな制御を可能にし、内因性転写プロセスに関連する設計上の考慮事項を排除することができる。
【0132】
eToeholdは、トランスフェクションまたは感染によって外因的に導入されたもの、および細胞状態または細胞型を示すものなどの内因性転写物を含む様々な細胞内RNAを検出することができる。本明細書においてeToeholdによって実証されているように、細胞型特異的RNA転写物または細胞状態特異的RNA転写物の存在に応答して所望のタンパク質の翻訳を開始する能力は、バイオテクノロジー療法を改善する大きな可能性を有する。多くの分子は治療的な見込みを保持するが、それらの臨床的有用性は、重度のオフターゲット毒性によって妨げられることが多い。mRNAシグネチャに応答してタンパク質、またはタンパク質ベースの前駆体を翻訳するeToeholdモジュールの能力は、所望の治療の活性化を特定の標的細胞に制限することによって、この課題に対処するための極めて有用なツールになり得る。論理ゲートを実装するeToehold設計は、複数のtrRNAから細胞状態を計算することを可能にし、このシステムの特異性および有用性をさらに高めることが本明細書において企図される。
【0133】
材料および方法
DNA構築物の構築。 プロモーター-遺伝子-ポリAテール配列をpCAG-T7pol(Addgene#59926)またはpXR1にクローニングした。それぞれ5'末端および3'末端で、EcoRIおよびNotIによってpCAG-T7polベースのプラスミドを切断して、T7ポリメラーゼの置換のための遺伝子を挿入した。NotIおよびNcoIによってpXR1を切断して、IRESモジュールを置換した。PacIおよびBglIIによってpXR1を切断して、プロモーター配列を置換した。NcoIおよびXhoIによってpXR1を切断してレポーター遺伝子を置換した。pLenti CMV Puro DEST(Addgene#17452)からレンチウイルスベクターをクローニングした。BspDIおよびPshAIによってpLenti CMV Puro DESTを切断して、プロモーター(特にPSFFV)を変化させた。PshAIおよびXmaIによってpLenti CMV Puro DESTを切断して、レポーター遺伝子を変化させた。XmaIおよびSalIによってpLenti CMV Puro DESTを切断して、eToehold制御遺伝子構築物を付加した。下流遺伝子がIRESエレメント内の非カノニカル開始コドンとインフレームになるように、全eToehold構築物を作製した33。酵母プラスミドを前述のように構築した34。
【0134】
Qiagen MiniprepまたはQiagen Gel Extraction精製キットを使用して、プラスミドまたは断片を抽出および精製した。全挿入物を、Integrated DNA Technologies製のgBlock遺伝子断片として発注するか、またはGibson等温アセンブリのための相同性アームを含むようにPCRによって実験用プラスミドもしくはヒトゲノムDNAから増幅した(New England Biosciencesから購入した2×反応混合物を使用)。実験前にGENEWIZ製のサンガーシーケンシングを使用して、全ベクターを配列決定した。組換え事象を防止するために、タンデムリピートを回避した。
【0135】
HEK293T細胞のトランスフェクション、および構築物の試験。 NanoDrop OneC(商標)Microvolume UV-Vis Spectrophotometerを使用して、プラスミド濃度を決定した。eToehold構築物試験のために、Lipofectamine 3000(商標)Transfection Reagentおよび標準プロトコルを使用して、70%コンフルエントHEK293T細胞の96ウェルプレートでトランスフェクションを行った。各ウェルについて、30ngのT7/SP6ポリメラーゼ発現構築物、70ngのeToehold-mKate構築物、および50ngのトリガーRNA発現構築物をトランスフェクトした。T7/SP6ポリメラーゼを必要としない試料については、75ngのeToehold構築物、および75ngのトリガーRNA発現構築物を加えた。37℃で60時間インキュベートした後、TripLE Express(商標)を使用して細胞を剥離し、Cytoflex LX(商標)フローサイトメーターでのフローサイトメトリーのためにPBS中2%FBSに再懸濁した。
【0136】
酵母形質転換および実験。 以前に記載されたように、酵母形質転換を行った34。EZ-L1をPmeIによって切断し、CEN.PK2-1Cに形質転換して株EZy1を生成した。次いで、EZy1をEZ-L183、EZ-L184、EZ-L185、EZ-L186およびEZ-L187を用いて形質転換して、株EZy13、EZy14、EZy15、EZy16およびEZy17をそれぞれ生成した。液体酵母培養物を24ウェルプレート内30℃で増殖させ、2%グルコースおよび50ng/mLビリベルジン(iRFPイメージングのために、VWR International,LLC製)を補充したSCドロップアウト培地中、200rpmで振盪した。Biotek Synergy H1(商標)Plate Readerを利用して蛍光測定およびOD600測定を行った。GFP蛍光測定については、それぞれ485nmおよび535nmの励起波長および発光波長を使用し、iRFP蛍光測定については、それぞれ640nmおよび675nmの励起波長および発光波長を使用した。以前に記載されたように、増殖および蛍光正規化を行った34。
【0137】
無細胞溶解物試験。 所望のRNA(EZ-L212、EZ-L214、EZ-L366)に先行するT7プロモーターを有する構築物と、製造業者の指示に従ってNew England Biolabs製のHiScribe(商標)T7 High Yield RNA Synthesis Kit(DNaseI処理を含む)とを使用して、RNAを生成した。Zymo Research RNA Clean and Concentrator Kitを使用して精製した後、製造業者の指示に従って、Promega製のコムギ胚芽抽出物、またはThermoFisher Scientific製の網状赤血球溶解物IVT KitにRNAを加えた。Biotek Synergy H1(商標)Plate Readerを使用して、蛍光の変化を6時間にわたって測定した。
【0138】
レンチウイルスの生成および形質導入。 以前に記載されたように35、psPAX2およびpMD2.Gをヘルパープラスミドとして使用し、pLenti CMV Puro DEST(w118-1)に基づいて導入ベクターをクローニングして、レンチウイルスを生成した。psPAX2は、Didier Tronoからの寄贈であった(Addgeneプラスミド#12260;n2t.net/addgene:12260;RRID:Addgene_12260のワールドワイドウェブで利用可能)。pMD2.GはAddgeneプラスミド#12259である;n2t.net/addgene:12259;RRID:Addgene_12259のワールドワイドウェブで利用可能。pLenti CMV Puro DEST(w118-1)はAddgeneプラスミド#17452である;n2t.net/addgene:17452;RRID:Addgene_17452のワールドワイドウェブで利用可能。Gibsonアセンブリを介して、pLenti CMV Puro DEST(w118-1)からEZ-L521、EZ-L534およびEZ-L536をクローニングした。レンチウイルスによるVero E6細胞の形質導入後、Sony SH800(商標)細胞選別機を使用して、GFP蛍光について、形質導入された細胞を選別した。
【0139】
ジカウイルス感染試験。 Vero E6細胞(DMEM 10%FBS中で維持)、デングウイルス血清型2(DENV2株New Guinea C、アクセッションAAA42941)、およびジカウイルス単離物(ZV、Pernambuco分離物243、アクセッションMF352141)を使用した。細胞株を播種し、一晩かけて90%コンフルエントな単層まで増殖させ、ZV(DMEM 2%FBS中、EZ-L536またはEZ-L521を使用して作製した安定な細胞株についてはMOI=0.02、EZ-L534を使用して作製した安定な細胞株についてはMOI=2)またはDENV2(MOI=2、DMEM 2%FBS中)に感染させ32、BD Sciences製のCytofix(商標)を使用して48hpiに固定し、続いてDPBS 2%FBS中で2回洗浄した。細胞の複製物を固定し、抗NS1抗体7724.323(1:1000に希釈、抗デング熱NS1 mAb 323);7944.644(1:2000に希釈;抗ジカNS1 mAb 644)によって染色した36、37。細胞の他の複製物を、CytoFlex LX(商標)フローサイトメーターを用いて流すか、または製造業者の指示に従ってPromega製のNano-Glo(商標)を使用してナノルシフェラーゼアッセイに利用し、Biotek Synergy H1(商標)Plate Readerを使用して測定した。
【0140】
熱ショック感知eToehold試験。 EZ-L512(ABPV陽性対照)、EZ-L548(hsp70を感知するeToehold)またはEZ-L554(hsp40を感知するeToehold)を用いて、HeLa細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの36時間後、試料の一部を24時間かけて42℃にした。TripLE(商標)Expressを使用して細胞を剥離し、Cytoflex LX(商標)フローサイトメーターでのフローサイトメトリーのためにPBS中2%FBSに再懸濁した。
【0141】
マウスTyr eToehold試験。 B16-F10メラノーマ細胞およびD1骨髄間質細胞、ならびにHEK293T細胞(ATCC)をDMEM 10%FBS中でサブコンフルエンシーで維持した。製造業者の指示(Mirus Bio)に従って、Mirus TransIT-2020(商標)トランスフェクション試薬を使用して、eToeholdまたは対照配列をコードするプラスミドを用いて細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を剥離し、生存率のために染色し(Fisher Scientific)、HTSを含むLSRFortessa(商標)(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーを使用して分析した。試料の分析に、FACSDiva(商標)ソフトウェア(BD Biosciences)を使用した。分析には生存細胞のみを含めた。
【0142】
細胞内サイトカイン染色。 それぞれDMEM 10%FBS、Primary Skeletal Muscle Growth Kit in Mesenchymal Stem Cell Basal Media(ATCC)およびFibroblast Growth Media 2(Promocell)中で、HEK293T、ヒト骨格筋細胞(ATCC)およびヒト皮膚線維芽細胞(ATCC)を培養した。eToeholdを導入するためにEZ-L793を用いて、およびEZ-L1061またはEZ-L1062のいずれかを用いて、細胞にトランスフェクトまたは形質導入した。トランスフェクションの24時間後、または形質導入後の抗生物質選択後に、細胞を固定し、Cytofix/Cytoperm(商標)(BD Biosciences)を用いて透過処理し、PE/Dazzle 594抗ヒトIL-6(501121)、PE抗ヒトCCL5(515503)、またはPE抗ヒトCCL2(505903)のいずれかを用いて染色し、HTSを含むLSRFortessa(商標)(BD Biosciences)を用いて分析した。試料の分析に、FACSDiva(商標)ソフトウェア(BD Biosciences)を使用した。
【0143】
qPCR。 細胞をペレット化し、製造業者の指示に従ってRNEasy(商標)Plus Miniキット(Qiagen)を使用して凍結させた後、RNAを単離し、-80℃で保存するか、または直ちに使用した。RNAをNanoDrop(商標)分光光度計によって定量し、CFX96(商標)RT-PCR装置(Bio-Rad)でLuna Universal One-Step RT-qPCRキット(New England BioLabs)を使用して逆転写および増幅を行った。PrimePCRプライマー(Bio-Rad;ヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、GAPDHではqHsaCED0038674)またはカスタムプライマー
のいずれかを使用した。ナノルシフェラーゼ鋳型RNAの標準曲線からプライマー効率を計算することによって、カスタムプライマーを検証した。Ct値と対照試料(直交トリガー)および参照遺伝子(GAPDH)とを比較するデルタ-デルタCt法によって、相対的な遺伝子発現を計算した。
【0144】
統計。 p値を計算するための標準t検定を使用して統計的有意性を決定した。式:
によってTスコアを計算した。自由度2および片側t検定計算機を使用してP値を計算した。qPCRについては、PRISMで二元配置ANOVA、続いてSidak多重比較検定を使用して、参照遺伝子GAPDHに対して正規化された相対発現であるデルタ-Ct値を統計処理した。
【0145】
【0146】
【0147】
(表2)直交配列と比較した、IRES転写物に相補的な45bp配列を含む細胞内のIRES RNAレベルの相対的変化倍率
【0148】
SEQ ID NO:12では、残基153~160および218~259はGFP RNA挿入である。SEQ ID NO:13では、残基152~186および197~207はGFP RNA挿入である。SEQ ID NO:14では、残基153~162および220~259はAzurite RNA挿入である。SEQ ID NO:15では、残基153~160および218~262はySUMO RNA挿入である。SEQ ID NO:16では、残基159~171および257~302はGFP RNA挿入である。SEQ ID NO:17では、残基15~168および254~297はySUMO RNA挿入である。SEQ ID NO:18では、残基153~158および216~254はジカRNA挿入である。SEQ ID NO:19では、残基153~162および220~266はSARS-COV-2スパイクRNA挿入である。SEQ ID NO:20では、残基159~168および254~301はSARS-COV-2スパイクRNA挿入である。SEQ ID NO:21では、残基153~164および250~289はhsp70 RNA挿入である。SEQ ID NO:22では、残基153~161および219~259はhsp40 RNA挿入である。SEQ ID NO:23では、残基159~166および252~292はマウスチロシナーゼRNA挿入である。SEQ ID NO:24では、残基153~159および217~256はマウスチロシナーゼRNA挿入である。SEQ ID NO:25では、残基83~117および317~328はiRFP RNA挿入である。SEQ ID NO:26では、残基117~151および204~218はiRFP RNA挿入である。SEQ ID NO:27では、残基78~108および142~156はマウスメタロプロテアーゼ9 RNA挿入である。SEQ ID NO:28では、残基1~40および674
【0149】
SEQ ID NO:30~36には、例示的な改変IRES配列が示されており、ここで、「X」残基は、第1および第2のヌクレオチド配列の挿入のための部位を示す。
【配列表】
【国際調査報告】