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特表2023-529220汎用コンピュータを用いたロボット制御システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】汎用コンピュータを用いたロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20230630BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20230630BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J3/00
G05B9/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576805
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2021099302
(87)【国際公開番号】W WO2021249457
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010523287.1
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】522482072
【氏名又は名称】杭州凱爾達▲かん▼接機器人科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU KAIERDA WELDING ROBOT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 778 Changming Road, Xiaoshan Economic and Technological Development Zone, Xiaoshan District Hangzhou, Zhejiang 310000 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】候 潤石
(72)【発明者】
【氏名】魏 秀権
(72)【発明者】
【氏名】王 勝華
【テーマコード(参考)】
3C707
5H209
【Fターム(参考)】
3C707JS02
3C707JS03
3C707JS07
3C707LV02
3C707LV24
3C707MS03
3C707MS14
3C707MS24
3C707MS25
5H209AA07
5H209BB07
5H209BB13
5H209CC01
5H209CC03
5H209DD18
5H209GG04
5H209GG18
5H209HH02
5H209HH04
5H209HH13
5H209JJ03
5H209JJ07
5H209JJ09
5H209SS05
5H209SS07
(57)【要約】
本発明に係る汎用コンピュータを用いたロボット制御システムは、ロボットコントローラ、データ伝送モジュール、サーボ駆動モジュール、セーフティユニット、ティーチングペンダントおよび電源モジュールを含む。サーボ駆動モジュールはデータ伝送モジュールを介してロボットコントローラに接続され、ロボットコントローラからの動作命令を受け付けてロボットの動作を駆動する。セーフティユニットは,データ伝送モジュールを介してロボットコントローラおよびサーボ駆動モジュールのそれぞれに接続され、入力異常信号または故障信号を受け付けた場合、サーボ駆動モジュールの出力をオフにし、入力異常信号または故障信号をロボットコントローラに送信する。ティーチングペンダントは、ロボットコントローラからの端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付けるとともに、第2制御インタラクティブ信号をロボットコントローラに送信することによりロボットコントローラの動作を制御する。電源モジュールは、ロボットコントローラおよびセーフティユニットのそれぞれに電気的に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎用コンピュータを用いたロボット制御システムであって、
ロボットコントローラと、
データ伝送モジュールと、
前記データ伝送モジュールを介して前記ロボットコントローラに接続され、前記ロボットコントローラからの動作命令を受け付けてロボットの動作を駆動する、サーボ駆動モジュールと、
前記データ伝送モジュールを介して前記ロボットコントローラおよび前記サーボ駆動モジュールのそれぞれに接続され、入力異常信号または故障信号を受け付けた場合、前記サーボ駆動モジュールの出力をオフにし、前記入力異常信号または前記故障信号を前記ロボットコントローラに送信する、セーフティユニットと、
前記ロボットコントローラからの端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付けるとともに、第2制御インタラクティブ信号を前記ロボットコントローラに送信することにより前記ロボットコントローラの動作を制御する、ティーチングペンダントと、
前記ロボットコントローラおよび前記セーフティユニットのそれぞれに電気的に接続されている、電源モジュールと、
を含み、
前記セーフティユニット、前記サーボ駆動モジュールおよび前記データ伝送モジュールにおけるバス伝送マスタは相互に接続されており、前記セーフティユニットと前記バス伝送マスタは互いにモニタリングし、前記セーフティユニットと前記サーボ駆動モジュールとの間には第1安全回路が設けられ、前記バス伝送マスタと前記サーボ駆動モジュールとの間には第2安全回路が設けられ、
前記セーフティユニットが、入力異常信号を受け付けし、前記バス伝送マスタの故障または自己故障を検出した場合、前記第1安全回路内において第1安全制御信号を生成することにより前記サーボ駆動モジュールの出力をオフでき、
前記バス伝送マスタが、前記セーフティユニットからの入力異常信号を受け付けし、自己故障または前記セーフティユニットの故障を検出した場合、前記第2安全回路内において第2安全制御信号を生成することにより前記サーボ駆動モジュールの出力をオフできる、
汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項2】
前記ロボットコントローラ内のリアルタイム操作モジュールは、バス伝送マスタに接続されており、リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、
バス伝送マスタは、第1安全回路を介して第1安全制御信号を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにするとともに、リアルタイム操作モジュールの故障信号をセーフティユニットに出力し、
セーフティユニットは、第2安全回路を介して第2安全制御信号を出力することにより、サーボ駆動モジュールの出力をオフにする、
請求項1に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項3】
前記ロボットコントローラは、非リアルタイム操作モジュールをさらに含み、非リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、リアルタイム操作モジュールは非リアルタイム操作モジュールの故障信号を取得してバス伝送マスタに出力し、バス伝送マスタは第1安全回路および第2安全回路を介してサーボ駆動モジュールの出力をオフにする、
請求項2に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項4】
前記ロボットコントローラは、リアルタイム操作モジュールおよび非リアルタイム操作モジュールが共有する格納ジュールをさらに含み、両者は共有の格納モジュールを介してそれぞれ相手のハートビート信号を取得することにより相手の状態をモニタリングする、
請求項3に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項5】
非リアルタイム操作モジュールはセーフティユニットに接続され、セーフティユニットが非リアルタイム操作モジュールの状態をモニタリングし、
リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、非リアルタイム操作モジュールがセーフティユニットに故障信号を出力し、セーフティユニットが第1安全制御信号を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにし、
非リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、セーフティユニットは故障信号をモニタリングし、第1安全制御信号を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにする、
請求項2または3に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項6】
セーフティユニットが入力異常信号を受け付けた場合、入力異常信号を非リアルタイム操作モジュールに送信し、非リアルタイム操作モジュールは、格納モジュールを介して入力異常信号をリアルタイム操作モジュールに送信し、リアルタイム操作モジュールによってバス伝送マスタが第2安全制御信号を出力してサーボ駆動モジュールの出力をオフにする、
請求項5に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項7】
前記電源モジュールは、
電力変換回路と、
前記電力変換回路の出力に接続され、前記ロボットコントローラに電力を供給する、コントローラ電源モジュールと、
前記電力変換回路に接続され、電力変換回路の入力電圧を検出し、メイン回路がパワーダウンされ、電力変換回路の入力電圧が設定閾値より低い場合、停電保護機能付き電源が停電トリガ信号を出力することによりロボットコントローラがパワーダウン貯蓄する、ネットワーク電圧検出モジュールと、
コントローラ電源モジュールに接続され、電力変換回路の正常動作時にエネルギーを貯蔵し、電力変換回路の入力電圧が設定閾値より低い場合、コントローラ電源モジュールが正常に動作できるようにエネルギーを出力することによりコントローラ電源モジュールがロボットコントローラに電力を供給してデータの保存を完了できるようにする、蓄電モジュールと、を含む、
請求項1に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項8】
前記蓄電モジュールは、電力変換回路の正負母線の間に接続されたコンデンサを含み、電力変換回路が正常に電力供給されている場合にはコンデンサを充電し、電力変換回路の入力電圧が設定閾値より低い場合、コンデンサはコントローラ電源モジュールが正常動作できるようにエネルギーを放電する、
請求項7に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項9】
前記電源モジュールは、コントローラ電源モジュールの出力端を跨って接続された出力コンデンサをさらに含み、出力コンデンサは、電力変換回路の正常動作の場合にはエネルギーを貯蔵し、電力変換回路の入力電圧が設定閾値よりも低い場合にはエネルギーを放電し、放電されたエネルギーは蓄電モジュールの出力エネルギーと重畳されてロボットコントローラに出力される、
請求項7に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項10】
電源タイミング管理ユニットをさらに含み、前記電源タイミング管理ユニットは、
パワーダウンした後、メイン回路が再度パワーアップされる際、電源モジュールの出力状態を判断する、電源判定モジュールと、
前記電源モジュールが停電保護出力にある場合、前記ロボットコントローラがシャットダウンされたか否かを判断する、コントローラ判定モジュールと、
ロボットコントローラがシャットダウンされた場合、操作モジュールを再起動するためのパワーアップトリガ信号をロボットコントローラに出力し、ロボットコントローラがシャットダウンされていない場合、ロボットコントローラ内のティーチングペンダントプログラムの状態またはロボットコントローラマザーボードのパワーダウン信号をリアルタイムにモニタリングする、タイミング制御モジュールと、
を含み、
ティーチングペンダントプログラムがパワーダウンしたことをモニタリングした場合、ロボットコントローラを所定時間ディレイさせてシャットダウンし、ディレイ終了時にロボットコントローラにパワーアップトリガ信号を出力して操作モジュールを再起動させ、
または、ロボットコントローラのマザーボードからパワーダウン信号を受け付けた場合、ロボットコントローラにパワーアップトリガ信号を出力し、操作モジュールを再起動させる、
請求項7に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項11】
電源モジュールが停電保護出力してあり、かつ、ロボットコントローラがまだシャットダウンされていない場合、タイミング制御モジュールは、ロボットコントローラ内のティーチングペンダントプログラムから出力されるハートビート信号を所定間隔をおいてモニタリングおよび確認し、ハートビート信号が予め設定した間隔内に受け付けされない場合、ティーチングペンダントプログラムがパワーダウンしたと判定される、
請求項10に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項12】
ロボットコントローラがシャットダウンされた場合、タイミング制御モジュールは、電源モジュールとロボットコントローラとの間の通路を切り離した後に再び閉じて、ロボットコントローラに立ち上がりエッジを有するパワーアップトリガ信号を供する、
請求項11に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項13】
電源タイミング管理ユニットは、メイン回路がパワーダウンした場合、停電保護出力状態となり、ロボットコントローラに停電トリガ信号を出力して、ロボットコントローラがパワーダウン貯蓄を行うようにする、
請求項10に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項14】
前記ティーチングペンダントは、
ロボットコントローラによって送信された端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付ける、受信モジュールと、
受け付けた端末ビデオ信号をティーチングペンダントに表示し、受け付けた第1制御インタラクティブ信号に応答して、第1制御インタラクティブ信号内の情報をティーチングペンダント上の対応する表示領域に表示する、ディスプレイモジュールと、
ティーチングペンダントのパネルから入力された信号または他の端末から入力された信号を取得し、第2制御インタラクティブ信号を生成する、入力信号取得モジュールと、
前記ロボットコントローラの動作を制御するために、前記ロボットコントローラに第2制御インタラクティブ信号を送信する、送信モジュールと、
を含む、
請求項10に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項15】
前記ティーチングペンダントは、さらに、
前記受信モジュールに電気的に接続され、前記受信モジュールから出力された前記端末ビデオ信号および前記第1制御インタラクティブ信号を符号化して前記表示モジュールに出力する、復号化モジュールと、
前記入力信号取得モジュールに電気的に接続され、前記第2制御インタラクティブ信号を符号化して前記送信モジュールに出力する、符号化モジュールと、
を含む、
請求項14に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項16】
前記データ送信モジュールは、
ロボットコントローラに接続されるバス伝送マスタであって、ロボットコントローラがバス伝送マスタを介して複数の駆動モジュールに接続されてロボットの動作状態を制御する、バス伝送マスタと、
バス伝送マスタを介してロボットコントローラに接続され、第1種信号を伝送する第1インタフェースモジュールと、
ロボットコントローラに接続され、第2種信号を送信する、第2インタフェースモジュールと、
を含み、
第1インタフェースモジュールは、第2インタフェースモジュールよりも伝送速度が速く、ロボットコントローラは、第2種信号よりも第1種信号に対して高い応答レベルを有する、
請求項1に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項17】
バス伝送通信ネットワークはEtherCATネットワークであり、バス伝送マスタはEtherCATマスタであり、第1インタフェースモジュールおよび複数の駆動モジュールはバス伝送マスタのEtherCATスレーブとして用いられる、
請求項16に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項18】
ロボットコントローラは、マスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法を用いてサーボ駆動モジュールを制御し、前記マスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法は、
ロボットのジョブプログラム命令を読み出すステップと、
読み込んだ命令を解析して、各ロボットの番号情報、現在の動作情報および各ロボットのマスタ・スレーブ関係を特徴付ける現在のマスタ・スレーブ関係情報を取得するステップと、
解析により取得された各ロボットの番号情報、現在の動作情報および現在のマスタ・スレーブ情報に基づいて、動作パラメータプロファイルから各ロボットの対応する動作パラメータをマッチングするステップと、
マッチングされた動作パラメータおよび各ロボットの現在のマスタ・スレーブ情報に基づいてマスタ・スレーブ協調制御アルゴリズムを呼び出し、マスタ・スレーブ協調制御を行うステップと、
を含む、
請求項1に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【請求項19】
ロボットコントローラは、ロボットジョブプログラムに基づくゲイン制御方法を用いてサーボ駆動モジュールを制御し、前記ロボットジョブプログラムに基づくゲイン制御方法は、
ロボットジョブプログラムに含まれる各命令を順番に読み出すステップと、
読み込んだ命令が動作タイプ命令である場合、読み込んだ動作タイプ命令のそれぞれにおいて、ロボットの動作速度、軌跡タイプおよび軌跡タイプパラメータを解析するステップと、
前記解析により取得されたロボットの動作速度および軌跡タイプに基づいて、対応するゲインパラメータを取得するステップと、
解析された動作速度、軌跡タイプ、軌跡タイプパラメータおよび対応するゲインパラメータに基づいて、ロボットの動作命令を生成し、ロボットの各軸のサーボモータ駆動装置に出力するステップと、
を含む、
請求項1に記載の汎用コンピュータを用いたロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用コンピュータの技術分野に関し、特に、汎用コンピュータを用いたロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業オートメーションの進展に伴い、ほとんどの生産ラインが自動化され、異なる応用シーンに応じてさまざまな産業用ロボットが異なる生産ラインで使用されるようになり、多くの人手や資金が節約され、作業効率も大幅に改善された。ロボットの応用範囲が次第に拡大され、その知能化も絶えずに進化し、ロボット内部のデータ処理能力および外部入力への応答能力ともに向上されつつある。しかしながら、知能化の進化は、ロボット内部のデータ通信能力や通信コストを大きく圧迫している。
【0003】
さらに、産業用ロボットにとっていえば、安全が第1である。既存の産業用ロボット制御システムにおいて、セーフティロジックは主にロボット制御盤内の個別モジュール(すなわち、セーフティユニット)により実現され、たとえば、外部から非常停止信号が入力された場合やティーチングペンダントから非常停止信号が入力された場合、セーフティユニットは安全信号を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにして、ロボットの動作を非常停止させ、安全を確保している。このような既存のロジック制御において、セーフティロジックの制御はすべて個別モジュールであるセーフティユニットにより行われている。しかしながら、セーフティユニットや安全信号を伝送する安全回路が故障した場合、このような制御方法は完全に失敗し、ロボットは非常停止信号に応答して停止することができなくなる。そのため、安全レベルが低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既存のロボット制御システムのハードウェア依存度が高く、拡張性が低く、コストが高い問題を解決するためになされたものであり、汎用コンピュータを用いたロボット制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明に係る汎用コンピュータを用いたロボット制御システムは、
ロボットコントローラと、
データ伝送モジュールと、
前記データ伝送モジュールを介して前記ロボットコントローラに接続され、前記ロボットコントローラからの動作命令を受け付けてロボットの動作を駆動する、サーボ駆動モジュールと、
前記データ伝送モジュールを介して前記ロボットコントローラおよび前記サーボ駆動モジュールのそれぞれに接続され、入力異常信号または故障信号を受け付けた場合、前記サーボ駆動モジュールの出力をオフにし、前記入力異常信号または前記故障信号を前記ロボットコントローラに送信する、セーフティユニットと、
前記ロボットコントローラからの端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付けるとともに、第2制御インタラクティブ信号を前記ロボットコントローラに送信することにより前記ロボットコントローラの動作を制御する、ティーチングペンダントと、
前記ロボットコントローラおよび前記セーフティユニットのそれぞれに電気的に接続されている、電源モジュールと、
を含む。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、前記セーフティユニット、前記サーボ駆動モジュールおよび前記データ伝送モジュールにおけるバス伝送マスタは相互に接続されており、前記セーフティユニットと前記バス伝送マスタは互いにモニタリングし、前記セーフティユニットと前記サーボ駆動モジュールとの間には第1安全回路が設けられ、前記バス伝送マスタと前記サーボ駆動モジュールとの間には第2安全回路が設けられ、
前記セーフティユニットが、入力異常信号を受け付けし、前記バス伝送マスタの故障または自己故障を検出した場合、前記第1安全回路内において第1安全制御信号を生成することにより前記サーボ駆動モジュールの出力をオフでき、
前記バス伝送マスタが、前記セーフティユニットからの入力異常信号を受け付けし、自己故障または前記セーフティユニットの故障を検出した場合、前記第2安全回路内において第2安全制御信号を生成することにより前記サーボ駆動モジュールの出力をオフできる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、前記ロボットコントローラ内のリアルタイム操作モジュールは、バス伝送マスタに接続されており、リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、
バス伝送マスタは、第1安全回路を介して第1安全制御信号を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにするとともに、リアルタイム操作モジュールの故障信号をセーフティユニットに出力し、
セーフティユニットは、第2安全回路を介して第2安全制御信号を出力することにより、サーボ駆動モジュールの出力をオフにする。
【0008】
本発明の実施形態によれば、前記ロボットコントローラは、非リアルタイム操作モジュールをさらに含み、非リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、リアルタイム操作モジュールは非リアルタイム操作モジュールの故障信号を取得してバス伝送マスタに出力し、バス伝送マスタは第1安全回路および第2安全回路を介してサーボ駆動モジュールの出力をオフにする。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記ロボットコントローラは、リアルタイム操作モジュールおよび非リアルタイム操作モジュールが共有する格納ジュールをさらに含み、両者は共有の格納モジュールを介してそれぞれ相手のハートビート信号を取得することにより相手の状態をモニタリングする。
【0010】
本発明の実施形態によれば、非リアルタイム操作モジュールはセーフティユニットに接続され、セーフティユニットが非リアルタイム操作モジュールの状態をモニタリングし、
リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、非リアルタイム操作モジュールがセーフティユニットに故障信号を出力し、セーフティユニットが第1安全制御信号を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにし、
非リアルタイム操作モジュールに故障が発生した場合、セーフティユニットは故障信号をモニタリングし、第1安全制御信号を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにする。
【0011】
本発明の実施形態によれば、セーフティユニットが入力異常信号を受け付けた場合、入力異常信号を非リアルタイム操作モジュールに送信し、非リアルタイム操作モジュールは、格納モジュールを介して入力異常信号をリアルタイム操作モジュールに送信し、リアルタイム操作モジュールによってバス伝送マスタが第2安全制御信号を出力してサーボ駆動モジュールの出力をオフにする。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記電源モジュールは、
電力変換回路と、
前記電力変換回路の出力に接続され、前記ロボットコントローラに電力を供給する、コントローラ電源モジュールと、
前記電力変換回路に接続され、電力変換回路の入力電圧を検出し、メイン回路がパワーダウンされ、電力変換回路の入力電圧が設定閾値より低い場合、停電保護機能付き電源が停電トリガ信号を出力することによりロボットコントローラがパワーダウン貯蓄する、ネットワーク電圧検出モジュールと、
コントローラ電源モジュールに接続され、電力変換回路の正常動作時にエネルギーを貯蔵し、電力変換回路の入力電圧が設定閾値より低い場合、コントローラ電源モジュールが正常に動作できるようにエネルギーを出力することによりコントローラ電源モジュールがロボットコントローラに電力を供給してデータの保存を完了できるようにする、蓄電モジュールと、を含む。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記蓄電モジュールは、電力変換回路の正負母線の間に接続されたコンデンサを含み、電力変換回路が正常に電力供給されている場合にはコンデンサを充電し、電力変換回路の入力電圧が設定閾値より低い場合、コンデンサはコントローラ電源モジュールが正常動作できるようにエネルギーを放電する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記電源モジュールは、コントローラ電源モジュールの出力端を跨って接続された出力コンデンサをさらに含み、出力コンデンサは、電力変換回路の正常動作の場合にはエネルギーを貯蔵し、電力変換回路の入力電圧が設定閾値よりも低い場合にはエネルギーを放電し、放電されたエネルギーは蓄電モジュールの出力エネルギーと重畳されてロボットコントローラに出力される。
【0015】
本発明の実施形態によれば、電源タイミング管理ユニットをさらに含み、前記電源タイミング管理ユニットは、
パワーダウンした後、メイン回路が再度パワーアップされる際、電源モジュールの出力状態を判断する、電源判定モジュールと、
前記電源モジュールが停電保護出力にある場合、前記ロボットコントローラがシャットダウンされたか否かを判断する、コントローラ判定モジュールと、
ロボットコントローラがシャットダウンされた場合、操作モジュールを再起動するためのパワーアップトリガ信号をロボットコントローラに出力し、ロボットコントローラがシャットダウンされていない場合、ロボットコントローラ内のティーチングペンダントプログラムの状態またはロボットコントローラマザーボードのパワーダウン信号をリアルタイムにモニタリングする、タイミング制御モジュールと、
を含み、
ティーチングペンダントプログラムがパワーダウンしたことをモニタリングした場合、ロボットコントローラを所定時間ディレイさせてシャットダウンし、ディレイ終了時にロボットコントローラにパワーアップトリガ信号を出力して操作モジュールを再起動させ、
または、ロボットコントローラのマザーボードからパワーダウン信号を受け付けた場合、ロボットコントローラにパワーアップトリガ信号を出力し、操作モジュールを再起動させる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、電源モジュールが停電保護出力してあり、かつ、ロボットコントローラがまだシャットダウンされていない場合、タイミング制御モジュールは、ロボットコントローラ内のティーチングペンダントプログラムから出力されるハートビート信号を所定間隔をおいてモニタリングおよび確認し、ハートビート信号が予め設定した間隔内に受け付けされない場合、ティーチングペンダントプログラムがパワーダウンしたと判定される。
【0017】
本発明の実施形態によれば、ロボットコントローラがシャットダウンされた場合、タイミング制御モジュールは、電源モジュールとロボットコントローラとの間の通路を切り離した後に再び閉じて、ロボットコントローラに立ち上がりエッジを有するパワーアップトリガ信号を供する。
【0018】
本発明の実施形態によれば、電電源タイミング管理ユニットは、メイン回路がパワーダウンした場合、停電保護出力状態となり、ロボットコントローラに停電トリガ信号を出力して、ロボットコントローラがパワーダウン貯蓄を行うようにする。
【0019】
本発明の一実施形態に係るティーチングペンダントは、
ロボットコントローラによって送信された端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付ける、受信モジュールと、
受け付けた端末ビデオ信号をティーチングペンダントに表示し、受け付けた第1制御インタラクティブ信号に応答して、第1制御インタラクティブ信号内の情報をティーチングペンダント上の対応する表示領域に表示する、ディスプレイモジュールと、
ティーチングペンダントのパネルから入力された信号または他の端末から入力された信号を取得し、第2制御インタラクティブ信号を生成する、入力信号取得モジュールと、
前記ロボットコントローラの動作を制御するために、前記ロボットコントローラに第2制御インタラクティブ信号を送信する、送信モジュールと、
を含む。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記ティーチングペンダントは、さらに、
前記受信モジュールに電気的に接続され、前記受信モジュールから出力された前記端末ビデオ信号および前記第1制御インタラクティブ信号を符号化して前記表示モジュールに出力する、復号化モジュールと、
前記入力信号取得モジュールに電気的に接続され、前記第2制御インタラクティブ信号を符号化して前記送信モジュールに出力する、符号化モジュールと、
を含む。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記データ送信モジュールは、
ロボットコントローラに接続されるバス伝送マスタであって、ロボットコントローラがバス伝送マスタを介して複数の駆動モジュールに接続されてロボットの動作状態を制御する、バス伝送マスタと、
バス伝送マスタを介してロボットコントローラに接続され、第1種信号を伝送する第1インタフェースモジュールと、
ロボットコントローラに接続され、第2種信号を送信する、第2インタフェースモジュールと、
を含み、
第1インタフェースモジュールは、第2インタフェースモジュールよりも伝送速度が速く、ロボットコントローラは、第2種信号よりも第1種信号に対して高い応答レベルを有する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、バス伝送通信ネットワークはEtherCATネットワークであり、バス伝送マスタはEtherCATマスタであり、第1インタフェースモジュールおよび複数の駆動モジュールはバス伝送マスタのEtherCATスレーブとして用いられる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、ロボットコントローラは、マスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法を用いてサーボ駆動モジュールを制御し、前記マスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法は、
ロボットのジョブプログラム命令を読み出すステップと、
読み込んだ命令を解析して、各ロボットの番号情報、現在の動作情報および各ロボットのマスタ・スレーブ関係を特徴付ける現在のマスタ・スレーブ関係情報を取得するステップと、
解析により取得された各ロボットの番号情報、現在の動作情報および現在のマスタ・スレーブ情報に基づいて、動作パラメータプロファイルから各ロボットの対応する動作パラメータをマッチングするステップと、
マッチングされた動作パラメータおよび各ロボットの現在のマスタ・スレーブ情報に基づいてマスタ・スレーブ協調制御アルゴリズムを呼び出し、マスタ・スレーブ協調制御を行うステップと、
を含む。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ロボットコントローラは、ロボットジョブプログラムに基づくゲイン制御方法を用いてサーボ駆動モジュールを制御し、前記ロボットジョブプログラムに基づくゲイン制御方法は、
ロボットジョブプログラムに含まれる各命令を順番に読み出すステップと、
読み込んだ命令が動作タイプ命令である場合、読み込んだ動作タイプ命令のそれぞれにおいて、ロボットの動作速度、軌跡タイプおよび軌跡タイプパラメータを解析するステップと、
前記解析により取得されたロボットの動作速度および軌跡タイプに基づいて、対応するゲインパラメータを取得するステップと、
解析された動作速度、軌跡タイプ、軌跡タイプパラメータおよび対応するゲインパラメータに基づいて、ロボットの動作命令を生成し、ロボットの各軸のサーボモータ駆動装置に出力するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明に係る汎用コンピュータを用いたロボット制御システムにおいて、電源モジュールは、メイン回路のパワーダウン後もロボットコントローラに電力を継続的に供給することにより、ロボットコントローラ内の操作モジュールによってデータ保存が完了できるようにし、パワーダウン時のデータ保護を実現している。セーフティユニットは、複数の安全回路を制御し、サーボ駆動モジュールが入力異常や故障に的確に応答して、非常停止できる。さらに、セーフティユニットとバス伝送マスタとが互いにモニタリングしているため、セーフティユニットまたはバス伝送マスタのどちらかが故障した場合、サーボ駆動モジュールはその故障に応答でき、複数モジュールの安全インターロック制御を実現し、安全制御レベルを大幅に向上できる。データ伝送モジュールでは、バス伝送マスタをベースとして拡張された第1インタフェースモジュールと標準の第2インタフェースモジュールとの組み合わせにより、応答性の高いデータの高速伝送を実現するだけでなく、伝送モジュールのコストを大幅に削減できる。ティーチングペンダントでは、ロボットコントローラ上でティーチングペンダントプログラムが動作し、ロボットコントローラからの端末ビデオ信号をティーチングペンダントが受け付けして、ロボットの動作状況をリアルタイムに表示する。この方法では、ティーチングペンダント端に独立のCPUを組み込む必要がないため、ティーチングペンダントのコストを大幅に削減できるだけでなく、ティーチングペンダントプログラムの実行がロボットコントローラに搭載された高性能IPCによって行われるため、非常にパワフルで演算速度も速く、ロボットの動作をより正確に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る汎用コンピュータを用いたロボット制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】データ伝送モジュールとロボットコントローラとの間の構成を示すブロック図である。
図3】セーフティユニットの安全制御を説明するためのブロック図である。
図4】電源モジュール、電源タイミング管理ユニットおよびロボットコントローラの回路の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係るロボットセーフティロジック制御システムにおける電源タイミング管理ユニットの停電保護状態において、メイン回路電源再投入時のタイミング制御方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の他の一実施形態に係るロボットセーフティロジック制御システムにおける電源タイミング管理ユニットの停電保護状態において、メイン回路電源再投入時のタイミング制御方法を示すフローチャートである。
図7】非停電保護状態においてメイン回路の電源を再投入する場合のタイミング図である。
図8】停電保護状態でロボットコントローラの電源がOFFになったときに、メイン回路の電源が再投入されるタイミング図である。
図9】停電保護状態でロボットコントローラの電源が切れていない場合に、メイン回路の電源が再投入された場合のタイミング図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る電源モジュールの概略構成図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る電源モジュールの概略構成図である。
図12図1においてティーチングペンダントがロボットコントローラと通信した際に、ロボットコントローラが送信した信号をティーチングペンダントが受信した後のフローを示す図である。
図13図1においてティーチングペンダントがロボットコントローラと通信しているときに、ティーチングペンダントがロボットコントローラに送る信号のフロー図である。
図14】本発明の実施形態に係るティーチングペンダントの概略ブロック図である。
図15】マスタ・スレーブ協調によるロボット制御方法のフローを示す図である。
図16】既存の溶接分野内の複数のロボットの協調制御における分布の模式図である。
図17】ロボット動作プログラムに基づくゲイン制御方法のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の上述および他の目的、特徴および効果をより明瞭かつ理解しやすくするため、以下では、図面を参照しながら、好ましい実施形態により詳細に説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る汎用コンピュータを用いたロボット制御システムは、ロボットコントローラ1、データ伝送モジュール2、サーボ駆動モジュール3、セーフティユニット4、電源モジュール5およびティーチングペンダント7を有する。サーボ駆動モジュール3は、データ伝送モジュール2を介してロボットコントローラ1に接続され、ロボットコントローラ1からの動作命令を受信し、ロボットを駆動する。セーフティユニット4は、データ伝送モジュール2を介してロボットコントローラ1およびサーボ駆動モジュール3のそれぞれに接続され、入力異常信号または故障信号を受信した場合、サーボ駆動モジュール3の出力をオフにし、さらに、入力異常信号または故障信号をロボットコントローラ1へ伝送する。ティーチングペンダント5は、ロボットコントローラ1から送信された端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受信するとともに、第2制御インタラクティブ信号をロボットコントローラ1へ送信することによりロボットコントローラ1の動作を制御する。電源モジュール6は、ロボットコントローラ1およびセーフティユニット4とそれぞれ電気的に接続されている。
【0029】
図2および図3に示すように、本実施形態において、データ伝送モジュール2は、バス伝送マスタ21、第1インタフェースモジュール22および第2インタフェースモジュール23を備える。バス伝送マスタ21は、ロボットコントローラ1に接続されている。ロボットコントローラ1は、バス伝送マスタ21を介してサーボ駆動モジュール3に接続され、ロボットの動作状態を制御する。第1インタフェースモジュール22は、バス伝送マスタ21を介してロボットコントローラ1に接続され、第1種信号B1を送信する。第2インタフェースモジュール23は、ロボットコントローラ1に接続され、第2種信号B2を送信する。第1インタフェースモジュール22の伝送速度は、第2インタフェースモジュール23の伝送速度より高く、ロボットコントローラ1の第1タイプ信号B1に対する応答レベルは、第2種信号B2に対する応答レベルより高い。
【0030】
本実施形態において、第1種信号B1は、セーフティユニット4から入力される安全信号、センサユニットから入力されるセンシング信号、スイッチング信号または同期信号など高速の応答が必要とされる信号が含まれる。第2種信号B2は、高速伝送を必要としない通常の制御信号や通信信号であり、たとえば、ティーチングペンダントから入力される命令信号などである。
【0031】
本実施形態において、バス伝送マスタ21は、EtherCATバス伝送マスタであり、ロボットコントローラ1およびサーボ駆動モジュール3は、EtherCATバスを介してデータを伝送する。EtherCAT(Ethernet Control Automation Technology)は、Ethernetをベースとしたオープンアーキテクチャのフィールドバス伝送マスタである。第1インタフェースモジュール22は、EtherCATバスをベースにして拡張されたインタフェースモジュールであり、EtherCATバスの高速伝送特性を利用して、第1種信号B1の高速伝送および高速応答(レスポンス)を実現している。第2インタフェースモジュール23は、標準的なUSBインタフェースである。ただし、本発明はこれらについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、EtherNETなど他のバス伝送マスタを使用してもよい。また、第2インタフェースモジュールは、RS232インタフェースやRS485インタフェースなど標準的なシリアルインタフェースであってもよい。さらに、他の実施形態によれば、第2インタフェースモジュールは、USBインタフェースおよびシリアルインタフェースの両方をともに備えてもよい。
【0032】
バスベースの第1インタフェースモジュール22のデータ応答速度は、第2インタフェースモジュール23のデータ伝送速度よりも遥かに高速で、両者の差は10倍以上になることもある。具体的には、本実施形態において、EtherCATバスベースの第1インタフェースモジュール22のデータ応答時間は1ms以内であり、第2インタフェースモジュール23としての標準的なUSBインタフェースのデータ応答時間は50ms以内である。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0033】
本実施形態において、ロボットコントローラ1は産業用コンピュータであり、たとえばTwinCATのようなEtherCATソフトウェアがインストールされている。ロボットコントローラ1は、EtherCATバスマスタとして動作する。第1インタフェースモジュール22およびサーボ駆動モジュール3は、いずれもバス伝送マスタ21のバススレーブとして機能する。具体的には、第1インタフェースモジュール22およびサーボ駆動モジュール3は、それぞれがAX58100シリーズのコントローラを介してEtherCATバスマスタになる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、バス伝送マスタは、ロボットコントローラから独立でき、パーソナルコンピュータのような汎用コンピュータシステムであってもよい。
【0034】
本実施形態において、データ伝送モジュール2には、高速伝送能力を有する第1インタフェースモジュール22と、通常の低速伝送特性を有する第2インタフェースモジュール23とが内蔵されている。第1インタフェースモジュール22は、高速応答が要求される第1種信号B1のデータ伝送に用いられ、第2インタフェースモジュール23は、データ伝送の時効性についての要求が高くない第2種信号のデータ伝送に用いられる。ロボット制御システムにおいて、高速応答が要求される第1種信号B1はさほど多くなく、第2種信号B2が多い。したがって、データ伝送モジュール2は、少数の第1インタフェースモジュール22を拡張すればよく、第2種信号B2の多くは、依然として従来の標準的な第2インタフェースモジュール23を使用できる。このようにすることで、本実施形態に係るロボット制御システムは、第1種信号B1の高速伝送の要件を満たしながら、コストを大幅に削減できる。また、第1インタフェースモジュール22は、ロボットコントローラ1とサーボ駆動モジュール3との間の既存のバス伝送マスタ21をベースに、ソフトウェアの形式により拡張されたものである。従来技術の伝送速度向上のためのハードウェアの使用と比較して、ソフトウェアによる設計は、コストを大幅に削減できるだけでなく、より柔軟性がある。さらに、第1インタフェースモジュール22とロボットコントローラ1との間のデータ伝送プロトコルと、ロボットコントローラ1とサーボ駆動モジュール3との間のデータ伝送プロトコルと、を同じく設定することにより、プログラムの設計が大幅に簡素化され、コストをさらに削減できる。
【0035】
ロボット制御システムは、ロボットコントローラ1のほか、ティーチングペンダント6、セーフティユニット4、センサユニットなどの複数のデータ処理ユニットを有する。各データ処理ユニットは、いずれも第1インタフェースモジュール22および/または第2インタフェースモジュール23を介して、ロボットコントローラ1と通信する。図1に示すように、本実施形態において、ティーチングペンダント6は、セーフティユニット4に接続され、セーフティユニット4を介してロボットコントローラ1に安全信号を送信する。このため、ティーチングペンダント6とロボットコントローラ1との間の信号伝送には、第2インタフェースモジュール23のみが必要である。セーフティユニット4は、第1インタフェースモジュール22を介して、安全信号などの第1種信号B1をロボットコントローラ1に出力するとともに、第2インタフェースモジュール23を介して、ロボットコントローラ1から出力される制御信号を受信する。
【0036】
セーフティユニット4は、マイコンを用いたデータ処理ユニットであり、既存のデータ伝送方式において、セーフティユニット4とロボットコントローラ1との間の全ての信号は、いずれもUSBインタフェースやシリアルインタフェースなどの第2インタフェースモジュールを介して伝送される。データ伝送は、セーフティユニット内のマイコンのリソースを大量に消費する。本実施形態において、セーフティユニット4は、第1インタフェースモジュール22内のスレーブコントローラに基づいて第1種信号B1を送信するため、セーフティユニット内のマイコンのリソースを大幅に節約でき、より多くのリソースを第2インタフェースモジュール23におけるデータ送信に使用できる。センサユニットの場合、センシング信号がロボットの動作状態にリアルタイムに関係し、高い応答速度が必要であるため、センサユニットとロボットコントローラとの間のデータ伝送には、第1インタフェースモジュール22が使用される。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0037】
本実施形態において、ロボットコントローラとサーボ駆動モジュールとは、バス伝送マスタを介して通信することによりロボットの動作状態を制御する。バス伝送マスタをベースに、ロボットコントローラにおいて第1インタフェースモジュールを拡張する。ロボットコントローラは、バスを介して高速の応答が要求される第1種信号を第1インタフェースモジュールから入出力することで、高速伝送を実現する。これとともに、ロボットコントローラには、応答要求が高くない第2種信号を伝送するためのハードウェアベースの通常のUSBインタフェースやシリアルインタフェースが設けられ、低速伝送を実現する。本発明に係るロボットデータ伝送システムには、高速伝送インタフェースおよび低速伝送インタフェースが組み合わせられ、データを伝送する際、信号の応答要求に応じて高速伝送または低速伝送を選択できる。既存のロボット制御システムが単一のデータ伝送インタフェースを有することに比べて、第1インタフェースモジュールと第2インタフェースモジュールの組み合わせは、データ伝送の問題を解決できるだけでなく、第1インタフェースモジュールをデータ伝送の一部に使用することによりコストを大幅に削減できる。さらに、第1インタフェースモジュール22は、ロボットコントローラ1上のバス伝送マスタをベースとし、ソフトウェアにより拡張されているため、既存のロボット制御システムのハードウェアを変更する必要がなく、設計が容易で、コストを大幅に削減できる。
【0038】
図3に示すように、本実施形態において、セーフティユニット4、サーボ駆動モジュール3およびデータ伝送モジュール2内のバス伝送マスタ21の三者は、相互に接続されている。セーフティユニット4とバス伝送マスタ21とは互いに監視し、セーフティユニット4とサーボ駆動モジュール3との間には第1安全回路10が設けられ、バス伝送マスタ21とサーボ駆動モジュール3との間には第2安全回路20が設けられている。セーフティユニット4が、入力異常信号を受け付けた場合やバス伝送マスタ21の故障または自己故障を検出した場合、第1安全回路10にはサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする第1安全制御信号K1が生成される。また、バス伝送マスタ21が、セーフティユニット4から出力された入力異常信号を受け付けた場合や自己故障またはセーフティユニット4の故障を検出した場合、第2安全回路20にはサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする第2安全制御信号K2が生成される。
【0039】
本実施形態に係るセーフティロジック制御システムに設けられた第1安全回路10および第2安全回路20は、サーボ駆動モジュール3に二重の安全制御を提供しただけでなく、いずれか一方の安全回路が故障した場合でも、サーボ駆動モジュール3が他方の安全回路を介して故障信号または異常信号を取得できるため、ロボットの安全動作を確保できる。さらに、セーフティユニット4とバス伝送マスタ21とは、互いの動作状態を監視している。そこで、セーフティユニット4に故障が発生した場合、バス伝送マスタ21は、該故障信号に基づいて、第2安全回路20を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにできる。同様に、バス伝送マスタ21に故障が発生した場合、該故障に応答して、セーフティユニット4は、第1安全回路20を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにできる。このように、セーフティユニット4とバス伝送マスタ21とは、連動したセーフティロジックを形成するため、セーフティロジック制御システムの安全レベルを大幅に向上できる。
【0040】
本実施形態において、サーボ駆動モジュール3は、バス伝送マスタ21に対応した伝送スレーブ31を備えている。伝送スレーブ31は、第2安全回路20を介してバス伝送マスタ21の状態を監視し、バス伝送マスタ21の故障を検出した場合、サーボ駆動モジュール3の出力をオフにする第2安全制御信号K2を出力する。バス伝送マスタ21が正常である場合、第2安全回路20の第2安全制御信号K2は、バス伝送マスタ21から伝送スレーブ31へ出力される。同様に、セーフティユニット4は、バス伝送マスタ21に対応した第1インタフェースモジュール22を備え、バス伝送マスタ21に故障が発生した場合、第1安全制御信号K1は、第1インタフェースモジュール22からサーボ駆動モジュール3へ出力される。
【0041】
本実施形態において、バス伝送通信ネットワークはEtherCATネットワークであり、バス伝送マスタ21はEtherCAT伝送マスタであり、サーボ駆動モジュール3には対応するEtherCATスレーブが設けられ、セーフティユニット4には第1インタフェースモジュール22が設けられている。EtherCAT伝送マスタは、EtherCATバスを介してセーフティユニット4およびサーボ駆動モジュール3のそれぞれに接続されている。セーフティユニット4は、第1インタフェースモジュール22を介して、セーフティユニット4とバス伝送マスタ21との間においてハートビート信号やその他の故障信号や異常信号を伝送している。サーボ駆動モジュール3は、EtherCATスレーブを介して、バス伝送マスタ21のハートビート信号をモニタリングする、または、バス伝送マスタ21から出力される第2安全制御信号を受信する。図3において、ハートビート信号の伝送路はLS(Live Signal)により示され、エラー信号の伝送路はES(Error Signal)により示されている。ここで、ハートビート信号とは、各モジュールやユニット内におけるアプリケーションのハートビート信号をいう。たとえば、ロボットコントローラの場合、ハートビート信号は、ティーチングペンダントプログラムのハートビート信号であってよい。また、セーフティユニットおよびバス伝送マスタの場合、内蔵されたアプリケーションにより両方のハートビート信号のモニタリングを実現する。
【0042】
図3に示すように、本実施形態において、ロボットコントローラ1は、リアルタイム操作モジュール11を含み、当該リアルタイム操作モジュール11は、バス伝送マスタ21に接続されている。リアルタイム操作モジュール11に故障が発生した場合、バス伝送マスタ21は、第2安全回路20を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにし、セーフティユニット4をトリガすることにより第1安全回路10を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
【0043】
本実施形態において、バス伝送マスタ21はリアルタイム操作モジュール11内に内蔵され、リアルタイム操作モジュール11内のCPUを用いてデータ処理を行う。このため、両者は共通のCPUを介して互いの状態をモニタリングできる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、バス伝送マスタは単独のCPUを用いて制御してもよい。この場合、バス伝送マスタとリアルタイム操作モジュールとの間の通信は、ハートビート信号の伝送路およびエラー信号を用いて行われる。
【0044】
本実施形態において、ロボットコントローラ1は、さらに、Windowsシステムのような非リアルタイム操作モジュール12を含む。非リアルタイム操作モジュール12に故障が発生した場合、リアルタイム操作モジュール11は非リアルタイム操作モジュール12の故障信号を取得してバス伝送マスタ21に出力する。バス伝送マスタ21は、第1安全回路10および第2安全回路20を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。さらに、非リアルタイム操作モジュール12は、セーフティユニット4と接続され、セーフティユニット4は、非リアルタイム操作モジュール12の状態をモニタリングする。そこで、セーフティユニット4がリアルタイム操作モジュール11または非リアルタイム操作モジュール12の故障をモニタリングした場合、第1安全回路10を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。これにより、ロボットコントローラ1内の2つの操作モジュールは、バス伝送マスタ21に基づいて故障信号を出力できるだけでなく、セーフティユニット4を介して故障信号を出力することも同期に行えるため、二重保護が実現される。
【0045】
同様に、セーフティユニット4が入力異常信号を受信した場合、入力異常信号を非リアルタイム操作モジュール12に伝送し、非リアルタイム操作モジュール12は、さらに、入力異常信号をリアルタイム操作モジュール11に伝送する。そこで、リアルタイム操作モジュールがバス伝送マスタ21をトリガすることにより第2安全制御文字K2を出力してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。また、これによっても、セーフティユニット4の二重保護を実現できる。この際、セーフティユニット4とバス伝送マスタ21との接続に故障が発生した場合、セーフティユニット4は、非リアルタイム操作モジュール12→リアルタイム操作モジュール11→バス伝送マスタ21→第2安全回路20→サーボ駆動モジュール3の順序で、サーボ駆動モジュールの出力をオフできる。
【0046】
本実施形態において、ロボットコントローラ1は、さらに、リアルタイム操作モジュール11および非リアルタイム操作モジュール12が共有する格納モジュール13を備えている。また、リアルタイム操作モジュール11および非リアルタイム操作モジュール12は、共有の格納モジュール13を介して相手のハートビート信号を取得することにより相手の状態をモニタリングするだけでなく、両者はさらに格納モジュール13を介して通信を行う。たとえば、非リアルタイム操作モジュール12がセキュリティユニット4からの入力異常信号を受信した場合、格納モジュール13を介して入力異常信号をリアルタイム操作モジュール11に伝送する。
【0047】
本実施形態において、セーフティユニット4は、RSバスを介して非リアルタイム操作モジュール12に接続され、非リアルタイム操作モジュール12のハートビート信号をモニタリングする。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、両者は他のバスを使用して通信してもよい。
【0048】
さらに、本実施形態において、メイン回路には、メイン回路のオン/オフを制御するACコンタクタ8が設けられている。セーフティユニット4は、ACコンタクタ8に接続され、セーフティユニット4とACコンタクタ8との間には第3安全回路30が設けられている。セーフティユニット4は、第1安全回路10を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにするとともに、第3安全回路30を介して第3安全制御信号K3をACコンタクタ8に出力し、メイン回路への入力をオフにすることでサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。第1安全回路10および第二安全回路20におけるサーボ駆動モジュール3の出力のオフは、入力された安全制御信号に基づき、ソフトウェア制御の方式で行われる。一方、第3安全回路30において、セーフティユニット4によるACコンタクタ8に対する制御は、入力側で行うことだけでなく、ハードウェアの方式により行う。これにより、サーボ駆動モジュール3に故障が発生することにより第1安全回路10および第2安全回路20から入力される安全制御信号に応答できなくても、セーフティユニット4は、ACコンタクタ8を制御することにより入力側において強制にオフできるため、安全レベルをさらに向上できる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、サーボ駆動モジュールが自己診断機能を有することで、第3の安全回路を設けなくてもよい。
【0049】
以下、図3を参照しながら、本実施形態に係るロボットセーフティロジック制御システムの動作について、詳細に説明する。
まず、セーフティユニット4が外部からの非常停止信号またはティーチングペンダントからの非常停止信号を受け付けた場合には、次の処理が行われる。
(1-1)セーフティユニット4は、第1安全回路10を介して第1安全制御信号K1をサーボ駆動モジュール3に出力することにより、サーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
(1-2)セーフティユニット4は、第3安全回路30を介して第3安全制御信号K3を出力することによりACコンタクタ8を遮断する。これに対応して、サーボ駆動モジュール3はメイン回路から切り離され、その出力もオフされる。
(1-3)セーフティユニット4は、第1インタフェースモジュール22を介して故障信号をバス伝送マスタ21に伝送し、さらにバス伝送マスタ21からリアルタイム制御モジュール41に伝送して処理した後、さらにバス伝送マスタ21および第2安全回路20を介して第2安全制御信号K2をサーボ駆動モジュール3へ出力する。
(1-4)セーフティユニット4は、RSバスを介して非常停止信号を非リアルタイム操作モジュール12に伝送し、非リアルタイム操作モジュール12は、さらに格納モジュール13を介して非常停止信号をリアルタイム操作モジュール11に伝送する。リアルタイム制御モジュール41は、受信した非常停止信号に基づいて、バス伝送マスタ21をトリガすることにより、第2安全回路20を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。また、セーフティユニット自体に故障が発生した場合、バス伝送マスタ3および非リアルタイム操作モジュールは、セーフティユニットのハートビート信号をモニタリングすることにより、第1安全回路を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
【0050】
続いて、バス伝送マスタ21がフリーズした場合には、次の処理が行われる。
(2-1)セーフティユニット4内の第1インタフェースモジュール22が設定時間内にバス伝送マスタ21からのハートビート信号を受信できなかった場合、第1インタフェースモジュール22は安全トリガ信号を出力する。セーフティユニット4は、安全トリガ信号に基づいて、第1安全回路10を介して第1安全制御信号K1をサーボ駆動モジュール3に出力することによりサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
(2-2)セーフティユニット4は、第3安全回路30を介して第3安全制御信号K3を出力することによりACコンタクタ8を遮断する。これに対応して、サーボ駆動モジュール3はメイン回路から切り離され、その出力もオフされる。
(2-3)サーボ駆動モジュール3内の伝送スレーブ31は、設定時間内にバス伝送マスタ21からのハートビート信号を受信できなかった場合、第2安全制御信号K2を出力することによりサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
(2-4)リアルタイム操作モジュール11は、バス伝送マスタ21内のソフトウェアによりバス伝送マスタ21の状態をリアルタイムにモニタリングする。そこで、バス伝送マスタ21がフリーズしたことを発見すると、格納モジュール13を介して安全トリガ信号を非リアルタイム操作モジュール12に送信し、非リアルタイム操作モジュール12は、RSバスを介して安全トリガ信号をセーフティユニット4に出力し、セーフティユニット4は、第1安全回路および第3安全回路30を介して、サーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
【0051】
続いて、リアルタイム操作モジュール11がフリーズした場合には、次の処理が行われる。
(3-1)本実施形態において、バス伝送マスタ21はリアルタイム操作モジュール11内に内蔵されているため、リアルタイム操作モジュール11がフリーズした場合、セーフティユニット4内の第1インタフェースモジュール22が設定時間内にバス伝送マスタ21からのハートビート信号を受信できなくなったら、第1インタフェースモジュール22は安全トリガ信号を出力する。セーフティユニット4は、安全トリガ信号に基づいて、第1安全回路10を介して第1安全制御信号K1をサーボ駆動モジュール3に出力することによりサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
(3-2)セーフティユニット4は、第3安全回路30を介して第3安全制御信号K3を出力することによりACコンタクタ8を遮断する。これに対応して、サーボ駆動モジュール3はメイン回路から切り離され、その出力もオフされる。
(3-3)リアルタイム操作モジュール11がフリーズしたことをバス伝送マスタ21の診断プログラムがモニタリングした場合、第2安全回路20を介して第2安全制御信号K2を出力することによりサーボ駆動モジュールの出力をオフにする。
(3-4)非リアルタイム操作モジュール12が格納モジュール13を介してリアルタイム操作モジュール11のハートビート信号を取得できず、RSバスを介して安全トリガ信号をセーフティユニット4に出力する。セーフティユニット4は、第1安全回路10および第3安全回路30を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフする。
【0052】
最後に、非リアルタイム操作モジュール12がフリーズした場合には、次の処理が行われる。
(4-1)セーフティユニット4は、RSバスを介して非リアルタイム操作モジュール12のハートビート信号を取得できず、第1安全回路10を介して第1安全制御信号K1をサーボ駆動モジュール3に出力することによりサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
(4-2)セーフティユニット4は、第3安全回路30を介して第3安全制御信号K3を出力することによりACコンタクタ8を遮断する。これに対応して、サーボ駆動モジュール3はメイン回路から切り離され、その出力もオフされる。
(4-3)リアルタイム操作モジュール11は、格納モジュール13を介して非リアルタイム操作モジュール12のハートビート信号を受信できなくなったら、バス伝送マスタ21および第2安全回路20を介して第2安全制御信号K2をサーボ駆動モジュール3に出力する。
(4-4)リアルタイム操作モジュール11は、格納モジュール13を介して非リアルタイム操作モジュール12のハートビート信号を受信できなくなったら、バス伝送マスタ21を介して安全トリガ信号をセーフティユニット4に出力する。セーフティユニット4は、第1安全回路10または第3安全回路30を介してサーボ駆動モジュール3の出力をオフにする。
【0053】
上述のとおり、本実施形態に係るロボット制御システムにおいて、セーフティユニット4、バス伝送マスタ21、リアルタイム操作モジュール11および非リアルタイム操作モジュール12は、互いにモニタリングすることにより安全インターロックを形成するため、システムの安全レベルを大幅に向上できる。また、ソフトウェアによる安全制御とハードウェアによる安全制御の組み合わせによって、さらに信頼性を向上できる。さらに、本実施形態に係るロボット制御システムは、既存のロボット制御システム内の各機能モジュールをベースにし、ハードウェア部品を追加する必要がないため、設計コストを大幅に削減できる。
【0054】
また、ロボット実行中において、メイン回路がパワーダウンすると、ロボットコントローラ1内のリアルタイム操作モジュール11および非リアルタイム操作モジュール12が異常停止するため、両操作モジュール内のデータ破損が発生しやすく、ロボットを再起動した後は現在の作業を継続して実行することができなくなる。この問題を解決するために、本実施形態においては、停電保護機能付きの電源モジュール5をロボットコントローラ1の電源として使用している。図4に示すように、電源モジュール5は、電力変換回路51、コントローラ電源モジュール52、ネットワーク電圧検出モジュール53および蓄電モジュール54を含む。電力変換回路51は、メイン回路に接続されている。コントローラ電源モジュール52は、電力変換回路51に接続され、ロボットコントローラ1へ電力を供給する。ネットワーク電圧検出モジュール53は、電力変換回路51に接続され、電力変換回路の入力電圧を検出する。メイン回路の電源がオフされ、電力変換回路51の入力電圧が設定閾値より低い場合、電源モジュール5は、停電トリガ信号をセーフティユニット4内の電源タイミング管理ユニット6に出力する。停電トリガ信号が非常停止信号としてセーフティユニット4に入力された後、セーフティユニット4は、図3に示されたセーフティロジックに従ってサーボ駆動モジュール1の出力をオフにし、ロボットを停止させる。
【0055】
蓄電モジュール54は、コントローラ電源モジュール52に接続され、メイン回路の通常の電力動作の間にエネルギーを貯蔵する。メイン回路がパワーダウンされると、蓄電モジュール54はエネルギーを出力してコントローラ電源モジュール52の正常動作を維持し、コントローラ電源モジュール52はロボットコントローラ1に電力を供給し続けることにより、リアルタイム操作モジュール11および非リアルタイム操作モジュール12はパワーダウントリガ信号に基づいてパワーダウン貯蔵を完了できる。本実施形態において、蓄電モジュール54は、メイン回路のパワーダウンされた後もセーフティユニット4が正常に動作できるように、セーフティユニット4にも電力を供給する。
【0056】
本実施形態において、蓄電モジュール54は、電力変換回路51の正負母線間に接続されたコンデンサC1を含み、電力変換回路51が正常に電力供給する際、その入力電圧は、正負母線を介してコンデンサC1を充電し、充電された後のコンデンサC1の電圧はU1である。電力変換回路51の入力電圧が設定閾値より低い場合、コンデンサC1はコントローラ電源モジュール52へエネルギーを放出する。コンデンサC1に蓄積されたエネルギーは、コンデンサC1に蓄積されたエネルギーがコントローラ電源モジュール52の正常な動作を維持できなくなり、コントローラ電源モジュール52の動作が停止するまで、コントローラ電源モジュール52の正常な動作を維持し続ける。コンデンサC1の容量は、停電トリガ信号Bがトリガされた後、ロボットコントローラ1がデータを保存し、正常なシャットダウンを行うための動作時間を決定する。好ましくは、本実施形態において、コンデンサC1の容量を設定することにより、ロボットコントローラ1に、ロボットコントローラの通常のシャットダウン時間ΔTよりも長い30秒間のデータ記憶時間を与える。ただし、本発明は、蓄電モジュールの構造について何ら限定もせず、他の実施形態によれば、蓄電モジュールは、インダクタなどの他のエネルギー貯蔵部品を用いて実現してもよい。
【0057】
図4に示すように、本実施形態において、電源モジュール5は、さらに、コントローラ電源モジュール52の出力端を跨って接続された出力コンデンサC2を含み、出力コンデンサC2は、電力変換回路51の通常動作時にエネルギーを蓄積する。電力変換回路51の入力電圧が設定閾値よりも低い場合、出力コンデンサC2は放電し、放出されたエネルギーはコンデンサC1によって出力されるエネルギーに重畳されてロボットコントローラ1へ出力される。パワーダウンした場合、コンデンサC1に出力コンデンサC2が重畳されることで、電力変換回路51に接続されるコンデンサC1の容量を小さく設置でき、コンデンサC1の小型化、さらには電力変換回路51の小型化を実現できる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0058】
電力変換回路51は入力側スイッチKinを介して商用電源に接続され、入力端から交流商用電源が入力される。コンデンサC1にかかる電圧U1は入力される交流電圧のピーク値と相関する(U1=Uin*1.414、Uinは入力される交流電圧の実効値である)。そこで、ネットワーク電圧検出モジュール53は、電力変換回路51の正負母線間に接続され、かつ、コンデンサC1の出力側に位置するように設けられ、コンデンサC1にかかる電圧U1を検出することにより入力電圧値を決定する。具体的には、電力変換回路51の入力端における交流電圧の実効値が180Vより低い場合、すなわちコンデンサC1にかかる電圧U1が180×1.414=254Vより低い場合、ネットワーク電圧検出モジュール53は停電トリガ信号Bをセーフティユニット4に出力し、セーフティユニット4はタイミング制御モジュール63を介して停電トリガ信号をロボットコントローラ1に出力する。ただい、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、ネットワーク電圧検出モジュールは、電力変換回路の入力電圧を直接検出するために、コンデンサの入力側に接続されてもよい。
【0059】
本実施形態において、分岐電源モジュール55およびコントローラ電源モジュール52の回路は、UC3845シリーズやNCP1203シリーズなどのディスクリートスイッチング電源PWM制御チップを用いて設計される。ネットワーク電圧検出モジュール53は、電圧コンパレータおよびサイリスタを含む。電圧コンパレータの一端には設定閾値電圧が入力され、他端はコンデンサC1の両端に接続されてコンデンサC1にかかる電圧U1を取得する。電圧コンパレータの出力はサイリスタに接続され、サイリスタのオン/オフを制御することにより出力信号をPWM制御チップに出力し、分岐電源モジュール55における任意の出力電源のオフを実現する。ただし、本発明は、分岐電源モジュール、コントローラ電源モジュールおよびネットワーク電圧検出モジュールの具体的な回路構成については何ら限定もせず、他の実施形態によれば、分岐電源モジュール内の4つの出力電源およびコントローラ電源モジュールの回路設計は、PI社のTOPシリーズ、LCSシリーズ、LNKシリーズなどの集積型スイッチング電源チップに基づいて行うこともでき、分岐電源モジュールと一体化できる。本実施形態において、ロボットコントローラ1は、産業用制御コンピュータ(Industrial Control Computer、IPCともいう)である。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0060】
本実施形態では、停電トリガ信号Bの出力方法について何ら限定もせず、他の実施形態によれば、図10-1、図10-2および図11に示すように、ネットワーク電圧検出モジュールは、他の方法により停電トリガ信号Bを出力してもよい。
【0061】
具体的には、図10-1に示すように、電源モジュールは、電力変換回路51の出力端に接続され、コントローラ電源モジュール52と並列に接続された分岐電源モジュール55をさらに含み、ネットワーク電圧検出モジュール53は分岐電源モジュール55に接続されている。分岐電源モジュール55は、サーボ駆動モジュール3に電力を供給するための第1出力電源、ティーチングペンダント6に電力を供給するための第2出力電源、セーフティユニット4に電力を供給するための第3出力電源およびデータ伝送モジュールに電力を供給するための第4出力電源との4つの出力電源を含む。ネットワーク電圧検出モジュール53は、電力変換回路51の入力電圧が設定閾値より低いことを検出した場合、分岐電源モジュール55内の4つの出力電源をすべてオフにし、4つの出力電源がオフになるとともに停電トリガ信号Bを生成する。これにより、出力電源のオフと停電トリガ信号Bの出力が一体化され、回路構成を大幅に簡素化できる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、図10-2に示すように、ネットワーク電圧検出モジュールは、停電トリガ信号Bをコントローラ電源モジュール52に直接出力してもよい。
【0062】
図10-1に示された実施形態において、分岐電源モジュール55は、コントローラ電源モジュール52を介して停電トリガ信号Bをロボットコントローラ1に出力しており、電源モジュール5とロボットコントローラ1との間の接続インタフェースを簡略化できる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、分岐電源モジュールまたはネットワーク電圧検出モジュールは、停電トリガ信号Bをロボットコントローラに直接出力してもよい。図10-1に示された実施形態において、分岐電源モジュール55は、4つの出力電源のすべてまたはいずれかがオフになったときにトリガされるリレースイッチを含み、リレースイッチは、ハイ/ローレベルの形で停電トリガ信号Bをコントローラ電源モジュールに出力する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、停電トリガ信号Bは、アナログ信号であってもよい。
【0063】
図10-1に示された実施形態において、第1出力電源の出力は24V/10A、第2出力電源の出力は12V/3A、第3出力電源の出力は12V/1A、第4出力電源の出力は12V/1Aであり、コントローラ電源モジュールの出力は24V/3Aである。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0064】
なお、本発明は、ネットワーク電圧検出モジュールの設置方法についてなんら限定もせず、他の実施形態によれば、図11に示すように、ネットワーク電圧検出モジュール53は、分岐電源モジュール55から独立してもよい。電力変換回路51と分岐電源モジュール55との間には制御スイッチ56が設けられ、ネットワーク電圧検出モジュール53は、停電トリガ信号Bを出力するとともに制御スイッチ56をオフする。電力変換回路51の入力電圧が正常な場合、制御スイッチ56は閉じられた状態であり、電力変換回路51は分岐電源モジュール55およびコントローラ電源モジュール52に電力を供給し、回路は正常動作となる。また、電力変換回路51の入力電圧によりコンデンサC1が充電される。一方で、メイン回路の入力側スイッチKinが急に開いたり入力電圧の不安定により入力電圧がネットワーク電圧検出モジュール53の設定閾値より低くなったりした場合、ネットワーク電圧検出モジュール53は制御スイッチ56に信号を出力して制御スイッチ56を開く状態にする。
【0065】
図11に示された実施形態において、ネットワーク電圧検出モジュール53は、制御スイッチ56を介して停電トリガ信号Bを出力する。具体的には、制御スイッチ56の出力はコントローラ電源モジュール52に接続され、ネットワーク検出モジュール53が制御スイッチ56をオフにするとともに、制御スイッチ56は停電トリガ信号Bをコントローラ電源モジュール52に出力する。制御スイッチ56は、リレースイッチである。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、ネットワーク電圧検出モジュールは、停電トリガ信号Bをコントローラ電源モジュールに直接出力してもよい。あるいは、分岐電源モジュールから停電トリガ信号Bを出力してもよい。具体的には、制御スイッチが電力変換回路と分岐電源モジュールとの間の通路を切り離し、分岐電源モジュール内の出力電源の出力はオフされる。あるいは、この際、分岐電源モジュールにリレーが接続されており、いずれかの出力電源がオフされると、リレーから停電トリガ信号Bをコントローラ電源モジュール52に出力する。
【0066】
停電保護機能付き電源モジュール5において、メイン回路のパワーダウン後も、電源モジュール5はロボットコントローラ1への電力供給を継続し、停電トリガ信号に基づいて、リアルタイム操作モジュール11および非リアルタイム操作モジュール12がパワーダウン貯蔵できるようにし、停電保護を実現する。停電保護状態では、電源モジュール5の継続出力により、ロボットコントローラ1の入力端の電圧はHighに保たれる。この状態でメイン回路に再度電源を投入(パワーアップ)しても、ロボットコントローラ1の入力端の電圧レベルは変化せず、ロボットコントローラ1はシャットダウンの状態を維持し、2つの操作モジュールも再起動できない。そのため、停電保護状態で一旦ロボットコントローラ1の電源が切れる(シャットダウン)と、再起動することはできなくなるといった故障問題が発生する。そこで、本実施形態においては、汎用コンピュータを用いたロボット制御システムに基づいて、上記問題を解決するためのパワーアップタイミング制御方法を提供する。
【0067】
図5に示すように、本実施形態に係るパワーアップタイミング制御方法は、パワーダウンした後にメイン回路が再度パワーアップされたとき、電源モジュールの出力状態を判断するステップS610と、電源モジュールが停電保護出力の状態にあるとき、ロボットコントローラがシャットダウンされているか否かを判断するステップS620と、シャットダウンされたと判断した場合、パワーアップトリガ信号をロボットコントローラに出力することにより、操作モジュールを再起動するステップS630と、シャットダウンされていないと判断された場合、ロボットコントローラにおけるティーチングペンダントプログラムの状態をリアルタイムにモニタリングするステップS641と、ティーチングペンダントプログラムが終了したことを検出する場合、予め設けられたディレイ時間の後に、ロボットコントローラをシャットダウンさせるステップS642と、ディレイ時間終了後に、パワーアップトリガ信号をロボットコントローラに出力し、操作モジュールを再起動させるステップS630と、を含む。以下、図7図9を参照しながら、本実施形態に係るパワーアップタイミング制御方法について、詳細に説明する。
【0068】
本実施形態に係るパワーアップタイミング制御方法は、ステップS610から始まる。パワーダウンした後、メイン回路を再度パワーアップする際、電源モジュール5の出力状態を判断する。停電保護機能付きロボット制御システムにおいて、電源モジュール5は、メイン回路のパワーダウン後に停電保護出力状態に切り替え、パワーダウン貯蓄のためにロボットコントローラ1への給電を継続する。ロボットコントローラ1がパワーダウン貯蓄を完了してシャットダウンし、電源モジュール5がロボットコントローラ1に電力を供給しなくなると、図7に示すように、ロボットコントローラ1の入力端VIPCはローレベルになり、△Tはロボットコントローラ1の通常のシャットダウンにかかる時間である。この際、メイン回路を再びパワーアップする(電源投入)と、メイン回路に接続された電源モジュール5は、メイン回路における商用電源を変換してからロボットコントローラ1に出力し、ロボットコントローラ1の入力端の電圧はローレベルからハイレベルに変わり、そのレベルのジャンプがきっかけとなって2つの操作モジュールが正常に再起動する。この際、パワーアップタイミング制御は機能せず、電源モジュールが停電保護出力状態におけるメイン回路のパワーアップになるため、メイン回路のパワーアップ後に電源モジュールの状態を確認する必要がある。図7図9において、VINはメイン回路の入力電圧、VCPSは電源モジュールの出力電圧、Bは停電トリガ信号、Aはパワーアップトリガ信号、VIPCはロボットコントローラ1の入力端の電圧を示す。
【0069】
図4に示すように、本実施形態において、電源モジュール5はコンデンサC1を用いてロボットコントローラ1の停電保護を行うため、コンデンサにかかる電圧を検出することにより、電源モジュール5の状態を判断できる。コンデンサC1にかかる電圧U1が設定閾値(当該閾値は、ロボットコントローラ1の動作を維持するための最低電圧である)よりも低い場合、電源モジュール5は停電保護状態にあると判断する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、タイミングを測定することで判断してもよい。具体的には、メイン回路が再びパワーアップされてから前回の停電までの時間間隔を算出し、この時間間隔がロボットコントローラ1の正常にシャットダウンするための時間ΔT(たとえば10秒)よりも短い場合、電源モジュールは停電保護出力中であると判断し、ロボットコントローラ1はまだシャットダウン終わっていない。あるいは、他の実施形態によれば、電源モジュールの出力を検出することによってその状態を直接判断してもよい。
【0070】
メイン回路が再びパワーアップされ、ステップS610において電源モジュール5が停電保護出力状態にあることを検出すると、ステップS620を実行し、ロボットコントローラのシャットダウンが完了したか否かを判定する。ロボットコントローラのシャットダウンが完了した場合、図6に示すように、電源タイミング管理ユニット6は、パワーアップトリガ信号Aをロボットコントローラ1に出力することにより、2つの操作モジュールを再起動させる(ステップS630)。本実施形態において、電源タイミング管理ユニットは、電源モジュール5とロボットコントローラ1との間の通路を切り離した後、再び閉じることにより、ロボットコントローラ1の入力端にパワーアップトリガ信号Aの立ち上がりエッジを与え、ロボットコントローラ1はこのパワーアップトリガ信号Aの立ち上がりエッジに基づいて2つの操作モジュールを再起動させる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、ロボットコントローラ1に強制イネーブル端を設け、電源タイミング管理ユニットは、パワーアップトリガ信号を強制イネーブル端に出力することにより、メイン回路が再びパワーアップされたことに応答して、ロボットコントローラ1が2つの操作モジュールを再起動するようにしてもよい。
【0071】
ロボットコントローラ1の状態の判断は、メイン回路が再びパワーアップされてから前回の停電までの時間間隔Δtが、ロボットコントローラ1の正常にシャットダウンするための時間ΔT(ΔT=T1+ΔT2)よりも短い場合(たとえば10秒、図9を参照)、ロボットコントローラ1はまだパワーダウン貯蓄状態にありシャットダウンされていないことは明らかである。時間間隔Δtが、ロボットコントローラ1の正常にシャットダウンするための時間ΔT以上である場合(図8を参照)、ロボットコントローラ1は正常にシャットダウンされたことになる。ただし、他の実施形態によれば、ロボットコントローラ1の状態を正確に確認するため、電源タイミング管理ユニットは、ハートビート信号のリクエストをロボットコントローラ1に送信し、ロボットコントローラ1がハートビート信号をレスポンスしない場合、ロボットコントローラ1がシャットダウンされたと確認してもよい。本発明は、これについて何ら限定もしない。
【0072】
ステップS620において、ロボットコントローラがまだパワーダウン貯蓄状態にあると判断された場合、ステップS641を実行し、ロボットコントローラにおけるティーチングペンダントプログラムの状態をリアルタイムにモニタリングする。具体的には、電源タイミング管理ユニット6は、ロボットコントローラ1におけるティーチングペンダントプログラムが出力するハートビート信号を確認するため、ハートビート信号のリクエストを一定時間毎にロボットコントローラ1に送信する。ハートビート信号が所定時間内に受け付けられない場合、ティーチングペンダントプログラムが終了したと判断する。たとえば、3S~5Sの所定時間を経過してもハートビート信号のレスポンスを受け付けられない場合、ティーチングペンダントプログラムが既に終了したと判断する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。時刻T1でティーチングペンダントプログラムが終了されたことを確認した後、ステップS642を実行し、図9のタイミングチャートに示すように、予め設定した時間ΔT2だけディレイすることによりロボットコントローラをシャットダウンさせる。ディレイ時間が終了し、ロボットコントローラのシャットダウンが完了したことを確認した後、パワーアップトリガ信号Aをロボットコントローラに出力し、操作モジュールを再起動させる(ステップS630)。
【0073】
本実施形態において、ロボットタイミング制御方法は、電源モジュールが停電保護出力にある場合、メイン回路の再度パワーアップされる際のロボットコントローラ内の操作モジュールの正常起動を実現し、ロボットコントローラ1の安全かつ安定した動作を確保することができる。本実施形態において、電源モジュールが停電保護出力にあり、ロボットコントローラがシャットダウンした場合、ロボットコントローラにおけるティーチングペンダントプログラムのハートビート信号をモニタリングし、さらにディレイ時間を設けることと合わせて、どのタイミングでロボットコントローラがパワーダウン貯蓄を完了し、シャットダウンすることを確認できる。この方法によれば、既存のロボット制御システム内のハードウェアを何ら変更する必要がなく、単にソフトウェアによりロボットコントローラのシャットダウン状態を検出するため、設計が非常に簡便である。
【0074】
ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、図6に示すように、メイン回路がパワーダウンしてから再度パワーアップされる場合、電源モジュールの出力状態を判断し、電源モジュール5が停電保護出力状態にあり、ロボットコントローラ1がシャットダウンしている場合、ロボットコントローラのマザーボードからの停電信号を検出する(ステップS641’)。そして、ロボットコントローラマザーボードから停電信号を受け付け(ステップS642’)、パワーアップトリガ信号をロボットコントローラに出力することにより、操作モジュールを再起動させる(ステップS630)。
【0075】
本実施形態において、図7図9には、メイン回路のシャットダウン後の回路タイミングチャートも示されている。パワーアップタイミング制御方法は、メイン回路がシャットダウンされる場合、電源モジュール5が停電保護出力状態になり、停電トリガ信号Bを出力することを含む。ロボットコントローラ1は、停電トリガ信号Bに応答して、パワーダウン貯蓄を行う。電源モジュール5の出力電圧VCPS(コンデンサにかかる電圧)は徐々に低下し始め、ロボットコントローラ1の入力電圧VIPCもそれにつれて徐々に低下する。
【0076】
上記パワーアップタイミング制御方法に対応して、電源タイミング管理ユニット6は、電源判定モジュール61、コントローラ判定モジュール62およびタイミング制御モジュール63を含む。電源判定モジュール61は、パワーダウン後にメイン回路が再びパワーアップされる場合、電源モジュール5の出力状態を判断する。電源モジュール5が停電保護出力状態にある場合、コントローラ判定モジュール62は、ロボットコントローラ1のシャットダウンが完了したか否かを判断。ロボットコントローラ1のシャットダウンが完了したと判断した場合、タイミング制御モジュール63は、パワーアップトリガ信号をロボットコントローラ1に出力することにより、2つの操作モジュールを再起動させる。一方、ロボットコントローラ1のシャットダウンが完了していない場合、タイミング制御モジュール63は、ロボットコントローラのティーチングペンダントプログラムの状態をリアルタイムにモニタリングし、ティーチングペンダントプログラムが時刻T1終了したことを検出すると、ディレイ時間ΔT2だけ遅らせてロボットコントローラ1をシャットダウンさせる(T1+ΔT2≒ΔT)。ディレイ時間が終了すると、タイミング制御モジュール63は、パワーアップトリガ信号をロボットコントローラ1に出力することにより、2つの操作モジュールを再起動させる。
【0077】
本実施形態に係る電源タイミング管理ユニット6の動作は、上述したパワーアップタイミング制御方法のステップS610~ステップS642において説明した動作と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0078】
本実施形態において、電源モジュール5とロボットコントローラ1との間には、制御スイッチ9が設けられ、タイミング制御モジュール63は、ロボット制御スイッチ9に信号を出力してからまた速やかにロボット制御スイッチ9を閉じることにより、ロボットコントローラ1の入力端において立ち上がりエッジを有しながら2つの操作モジュールによって認識可能なパワーアップトリガ信号Aを生成する。このパワーアップトリガ信号Aに智づいて、2つの操作モジュールは正常に起動される。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、ロボットコントローラ1において独立した強制イネーブル端を設け、電源タイミング管理ユニットはパワーアップトリガ信号を強制イネーブル端に出力することにより、2つの操作モジュールを起動させてもよい。
【0079】
本実施形態において、電源判定モジュール61は、コンデンサC1に接続されたコンパレータであり、コンデンサC1にかかる電圧U1を検出することにより、電源モジュール5の状態を判断している。そして、コンデンサC1にかかる電圧U1が設定閾値(当該閾値は、ロボットコントローラ1の動作を維持するための最低電圧である)よりも低い場合、電源モジュールは停電保護状態にあると判断する。コントローラ判定モジュール62はタイマであり、メイン回路が再びパワーアップされてから前回の停電までの時間間隔Δtが、ロボットコントローラ1の正常にシャットダウンするための時間ΔT(たとえば10秒)より短い場合、ロボットコントローラ1がまだパワーダウン貯蓄状態にありシャットダウンされていないと判断する。時間間隔Δtがロボットコントローラ1の正常にシャットダウンするための時間ΔT以上であれば、通常は、ロボットコントローラ1はシャットダウン状態にあると判断する。この場合、ロボットコントローラ1の状態を正確に確認するため、タイミング制御モジュール63は、ロボットコントローラ1におけるティーチングペンダントプログラムのハートビート信号を所定時間間隔をおいモニタリング・確認し、所定時間間隔内にハートビート信号を受け付けられない場合、2つの操作モジュールがオフされたと判断する。ただし、本発明は、これについて何ら限定もしない。
【0080】
本実施形態において、電源タイミング管理ユニット6をセーフティユニット4内に内蔵され、セーフティユニット内のCPUを用いてソフトウェアプログラムの方法でロボット状態の確認、タイミングの制御およびパワーアップトリガ信号の出力を実現する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、電源タイミング管理ユニットは、独立のCPUを用いてもよい。停電保護機能付き電源モジュール5および電源タイミング管理ユニット6により、異常停電時における安全なデータ保存とロボットコントローラ1の正常な再起動が可能となり、システムの安全性がさらに高められる。
【0081】
本実施形態において、図14に示すように、ティーチングペンダント7は、受け付けモジュール71、復号化モジュール72、表示モジュール73、入力信号取得モジュール74、符号化モジュール75および送信モジュール76を含む。受け付けモジュール71は、ロボットコントローラから送信されるロボットビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付ける。復号化モジュール72は、受け付けモジュール71に電気的に接続され、受け付けモジュール71から出力されるロボットビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を符号化処理した後、表示モジュール73に出力する。表示モジュール73は、復号化されたロボットビデオ信号をティーチングペンダントに表示させ、受け付けた第1制御インタラクティブ信号に応答して、第1制御インタラクティブ信号内の情報をティーチングペンダント上の対応する表示領域に表示させる。入力信号取得モジュール74は、ティーチングペンダントのパネルまたは他の端末から入力される信号を取得し、第2制御インタラクティブ信号を生成する。送信モジュール76は、第2制御インタラクティブ信号をロボットコントローラ1に送信し、ロボットコントローラ1の動作を制御する。
【0082】
ティーチングペンダント7とロボットコントローラ1との間におけるデータ伝送のステップは、以下の処理を含む。図14に示すように、受け付けモジュール71は、ロボットコントローラ1から送信される端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付け(ステップS710)、ここで、第1制御インタラクティブ信号は、ロボットの動作状態またはロボットコントローラの動作状態を含む。表示モジュール73は、受け付けた端末ビデオ信号をティーチングペンダントに表示させ、受け付けた第1制御インタラクティブ信号に応答して、第1制御インタラクティブ信号内の情報をティーチングペンダント上の対応する表示領域に表示させる(ステップS730)。また、入力信号取得モジュール74は、ティーチングペンダントのパネルから入力された信号を取得し、第二制御インタラクティブ信号に変換する(ステップS740)。送信モジュール76は、第2制御インタラクティブ信号をロボットコントローラに送信するし、ロボットコントローラの動作を制御する(ステップS760)。以下、図12および図13を参照しながら、本実施形態に係るティーチングペンダントにおける信号伝送方法について、詳細に説明する。
【0083】
本実施形態において、ティーチングペンダント7とロボットコントローラ1との間で双方向のデータ伝送が実現され、説明の便宜上、以下では信号処理の処理ステップに番号を付けて説明する。ここで、ステップS710~S730は、図12に示されるティーチングペンダント7がロボットコントローラ1から信号を受け付けた後の処理ステップに対応し、ステップS740~ステップS770は、図13に示されるティーチングペンダント7がロボットコントローラ1に信号を送信する処理ステップに対応する。実際の処理において、ティーチングペンダント7の送信と受け付けは同時に行われる。
【0084】
図12に示されるように、ステップS710において、ティーチングペンダント7は、ロボットコントローラ1から送信される端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付ける。端末ビデオ信号は、ロボットコントローラ1が収集したロボットの動作状態のリアルタイム映像であり、本実施形態において、ビデオ信号には音声も含まれる。第1制御インタラクティブ信号は、現在のロボットの動作状態および現在のロボットコントローラ1の動作状態を含む。現在のロボットの動作状態には、ロボットの位置パラメータや動作パラメータなどの情報が含まれ、現在のロボットコントローラ1の動作状態には、ティーチングペンダントプログラムの実行状況やロボットコントローラ1の動作パラメータなどの情報が含まれる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、第1制御インタラクティブ信号は、現在のロボットの動作状態または現在のロボットコントローラ1の動作状態のいずれか一方のみを含んでもよい。
【0085】
本実施形態において、ティーチングペンダント7とロボットコントローラ1との間において、端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号は、2種類のデータ伝送方法によってそれぞれ通信される。具体的には、第1種データ伝送信号としての第1制御インタラクション信号は、USB信号であり、第2種データ伝送信号としての端末ビデオ信号はHDMI信号である。HDMI信号は、高精細な映像の伝送を実現できるとともに、干渉にも強い。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、端末ビデオ信号は、VGA信号を用いて伝送してもよい。
【0086】
さらに、本実施形態において、端末ビデオ信号および第1制御インタラクション信号は、差動伝送方法で伝送される。差動伝送方法は、干渉に強く、安定した伝送が可能で、さらに、長距離伝送も実現できる。差動伝送方法によりデータ伝送を行う場合、伝送プロトコルに適合するように、ロボットコントローラ1において、端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を符号化してからティーチングペンダント7に出力する。したがって、ロボットコントローラ7から端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を受け付けた後(ステップS710)、ステップS720が実行され、復号化モジュール72は端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号を復号化する。
【0087】
復号化した後、ステップS730が実行され、端末ビデオ信号および第1制御インタラクティブ信号をティーチングペンダント7に表示させる。復号化された端末ビデオ信号の場合、ディスプレイに直接表示させる。復号された第1制御インタラクション信号の場合、第1制御インタラクション信号に含まれる具体的情報に応じて、所定の表示方法を用いて、対応する領域に表示させる。具体的には、第1制御インタラクティブ信号にロボットの移動速度など具体的な数値情報が含まれている場合、このような情報を映像に重畳して文字方式によりディスプレイに表示できる。一方、第1制御インタラクティブ信号にロボットの特定位置(たとえば、ホームポジション)や特別な動作(たとえば、限界動作位置)のようなロボットの状態に関する情報が含まれている場合、これらの情報を映像に重畳してパターン方式によりディスプレイ上で点滅させることができる。また、ティーチングペンダント7のパネルに指示ランプを設けることにより、状態表示を行ってもよい。
【0088】
第1制御インタラクティブ信号の伝送および表示により、ロボットコントローラ1の動作状態を、ロボットコントローラ1からティーチングペンダントへフィードバックが実現され、操作者はティーチングペンダント7を介してロボットまたはロボットコントローラ1の動作状態を直接チェックでき、非常に便利で、容易にロボットをリアルタイム制御できる。
【0089】
本実施形態において、ロボットコントローラ1とティーチングペンダント7との間の信号伝送は、双方向伝送である。ティーチングペンダント7は信号の送信側として機能し、その信号伝送は、ステップS740を含み、ティーチングペンダント7のパネルから入力された信号を取得して第2制御インタラクティブ信号に変換する。その後、第2制御インタラクティブ信号をロボットコントローラ1へ送信する(ステップS760)。操作者は、ティーチングペンダント7のパネルを介して信号を入力することにより、ロボットコントローラ1の動作を制御できる。ティーチングペンダント7のパネルへの信号入力方法は、ティーチングペンダント7のパネルにあるボタンによる入力方法やディスプレイにあるタッチボタンによる入力方法を含む。本実施形態において、第2制御インタラクティブ信号もUSB信号であり、差動伝送方法でロボットコントローラ1へ送信される。したがって、本実施形態において、ティーチングペンダント7における信号伝送方法は、さらに、ステップS750を含み、生成された第2制御インタラクティブ信号を符号化する。その後、ステップS760が実行される。同様に、ロボットコントローラ1も、ティーチングペンダント7から入力された信号を受け付けるとともに対応の復号化を行う。
【0090】
本実施形態において、ティーチングペンダント7とロボットコントローラ1との間のデータ伝送方法は、ステップS770をさらに含み、他の端末から入力された信号を受け付けし、第2制御インタラクティブ信号としてロボットコントローラ1に出力する。たとえば、ティーチングペンダント7はUSBインタフェースを有し、他の端末はUSBインタフェースを介してティーチングペンダント7に接続され、USB信号をティーチングペンダント7に入力する。ティーチングペンダント7は、このUSB信号を第2制御インタラクティブ信号として、ステップS750、S760を介してロボットコントローラ1へ出力することにより、第三者による遠隔制御を実現する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、他の端末からティーチングペンダント7への入力が非USB信号である場合、入力信号取得モジュールは、入力信号をUSBタイプの第2制御インタラクティブ信号に変換する必要がある。
【0091】
本実施例において、ロボットコントローラ1およびティーチングペンダント7はHDMI信号を用いて端末ビデオ信号を伝送することで、ティーチングペンダント7には独立のCPUを不要とし、ティーチングペンダント7のコストを大幅に削減できる。また、差動データ伝送方法によれば、両者の長距離通信が実現される。さらに、第1制御インタラクティブ信号の伝送により、ティーチングペンダント7においてロボットおよびロボットコントローラ1の動作状態をリアルタイムに確認でき、ティーチングペンダント7の機能をさらに拡張できる。
【0092】
ロボット制御システムでは、通常は、複数のロボットによる協調制御が行われる。既存のマルチロボット制御システムにおいて、1つのタスクを実行する際、各ロボットのマスタ・スレーブ関係(マスタ・スレーブ関係)は変更できない。このようなマスタ・スレーブ関係の変更できない制御方法は、各ロボットの機能は大幅に制限する。そこで、図15に示すように、ロボットコントローラ1は、マスタ・スレーブ協調型のロボット制御方法によりサーボ駆動モジュール3を制御する。マスタ・スレーブ協調型のロボット制御方法は、ロボットのジョブプログラムの命令を読み込むこと(ステップP1)と、読み込んだ命令を解析することにより、各ロボットの番号情報、現在の動作情報および各ロボットのマスタ・スレーブ関係を特徴付けるために設定された現在のマスタ・スレーブ情報を取得すること(ステップP4)と、解析された各ロボットの番号情報、現在の動作情報および現在のマスタ・スレーブ情報に基づいて、動作パラメータプロファイルから各ロボットに対応する動作パラメータをマッチングさせること(ステップP5)と、各ロボットに対応してマッチングした動作パラメータおよび各ロボットの現在のマスタ・スレーブ情報に基づいて、マスタ・スレーブ協調制御アルゴリズムを呼び出し、マスタ・スレーブ協調制御を行うこと(ステップP6)と、を含む。
【0093】
本実施形態に係るマスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法のステップP4において解析された各ロボットの現在のマスタ・スレーブ情報は、ステップP1において読み込んだロボットジョブプログラムから取得される。これにより、ユーザがロボットジョブプログラムを通じて、各ロボットのマスタ・スレーブ関係を設定できるだけでなく、さらに、ロボットのジョブプログラムは、その命令の実行順番の方式により各時点におけるロボットの動作を限定し、ジョブプログラムの命令により取得されるマスタ・スレーブ情報に基づく制御方法によって、ロボットのマスタ・スレーブ関係をタスクのタイミングに追従させながら変更できるため、各ロボットのタスクの異なるフェーズにおけるマスタ・スレーブ関係を柔軟に変更できる。
【0094】
本実施形態に係るマスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法は、ステップP1から始まり、ジョブプログラムの命令を読み込む。具体的には、命令が読み込まれた後、ステップP2が実行され、各命令を命令リストに変換して格納し、命令リストには各命令のタイプおよびパラメータが格納される。
【0095】
マスタ・スレーブ協調型制御において、スレーブの動作軌跡はマスタの動作軌跡に追従して変化する。したがって、各ロボットの動作状態はそのマスタ・スレーブ関係と密接に関連しており、両者の組み合わせによって当該ロボットの最終的な動作軌跡が決定される。本実施形態においては、各ロボットの現在のマスタ・スレーブ情報がロボットの動作命令に統合されているため、動作状態ごとに各ロボットのマスタ・スレーブ関係の変更可能性実現しただけでなく、ユーザによる操作上、ユーザが各命令を通じてロボットの現在のマスタ・スレーブ関係を判断できるため、非常に使い勝手がよい。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、タスクの必要性に応じてあるロボットのマスタ・スレーブ関係を段階的に変更してもよい。この場合、マスタ・スレーブ情報は各動作命令に統合される必要が無くなり、独立の命令によって定めてもよい。具体的には、本実施形態において、動作命令には、各ロボットの番号、現在のマスタ・スレーブ情報および現在の動作情報などのパラメータが含まれている。
【0096】
命令を命令リストに変換した後、ステップP3が実行され、命令リストにおける各命令のタイプに基づいて各ロボットの現在の動作命令を取得し、それらを組み立てて1組の命令セットを生成する。
【0097】
続いて、ステップP4が実行され、当該組の命令セットを解析して、各ロボットのロボット番号、現在のマスタ・スレーブ情報および現在の動作情報を取得する。命令セットを組み立てることは、各状態においてステップP4が1回だけ解析されればよく、プログラムの実行量を大幅に削減できる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、読み出し、変換および命令タイプの決定が完了された後、各命令を独立して解析し、各動作命令に対応する情報を取得してもよい。
【0098】
続いて、ステップP5が実行され、各ロボットの番号情報、現在のマスタ・スレーブ情報および現在の動作情報に基づいて、動作パラメータプロファイルにおける対応する動作パラメータの照合が行われる。本実施形態において、動作パラメータプロファイルには、全てのロボットの2つずつの組み合わせ関係を定める位置姿勢行列パラメータのみ含まれている。続いて、ステップP6が実行され、各ロボットのマスタ・スレーブ関係および動作パラメータに基づいてマスタ・スレーブ協調制御アルゴリズムを呼び出して動作命令を生成し、複数のサーボ駆動モジュール3に出力することにより、複数のロボットのマスタ・スレーブ協調制御を実現する。マスタ・スレーブ協調制御アルゴリズムは、既存の制御アルゴリズムを利用して制御でき、本実施形態はこれについて何ら限定もしない。
【0099】
図16は、既存の溶接技術分野において、複数のロボットの協調制御システムにおける複数のロボットの配分を示す図であり、以下のプログラムは、図16に示される複数のロボットを協調制御するためのジョブプログラムの一例を示すものである。以下、図15図16およびこれらに対応するジョブプログラムを参照しながら、本実施形態に係るマスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法におけるマスタ・スレーブ関係の変化について、詳細に説明する。本実施形態において、溶接技術分野における複数のロボットのマスタ・スレーブ制御システムを一例としているが、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、このようなマスタ・スレーブ協調型制御方法は、他の技術分野における複数のロボットのマスタ・スレーブ制御システムにも適用できる。
【0100】
以下は、ジョブプログラムの一例である。
1 NOP //開始行
2 MOV //マスタ・スレーブ関係なしのR1ロボット動作命令
3 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのR2ロボット動作命令
4 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS1ポジショナー動作命令
5 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS2ポジショナー動作命令
6 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS3ポジショナー動作命令
7 MOV //マスタ・スレーブ関係なしのR1ロボット動作命令
8 +SMOV //R2ロボットスレーブ動作命令
9 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS1ポジショナー動作命令
10 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS2ポジショナー動作命令
11 +MMOV //S3ポジショナーマスタ動作命令
12 SMOV //R1ロボットスレーブ動作命令
13 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのR2ロボット動作命令
14 +MMOV //S1ポジショナーマスタ動作命令
15 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS2ポジショナー動作命令
16 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS3ポジショナー動作命令
17 SMOV //R1ロボットスレーブ動作命令
18 +SMOV //R2ロボットスレーブ動作命令
19 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS1ポジショナー動作命令
20 +MMOV //S2ポジショナーマスタ動作命令
21 +MOV //マスタ・スレーブ関係なしのS3ポジショナー動作命令
22 END //終了行
【0101】
図16に示されるように、本実施形態において、複数ロボットの制御システムには、3台のポジショナー(S1、S2、S3)と2台のロボット(R1、R2)を含む5台のロボットが含まれている。ステップP1では各命令を読み込み、ステップP2では各命令を命令リストに変換する。たとえば、命令1は動作開始命令、命令2~21はロボットの動作命令である。ステップP3では、同じ時刻における5つのロボット動作命令を組み合わせて命令セットを生成し、たとえば命令7から命令11の命令セットは、MOV+SMOV+MOV+MOV+MMOVである。
【0102】
本実施形態において、例示のジョブプログラムにおいて示されるように、マスタ・スレーブ情報には、文字「S」で示されるスレーブ状態、文字「M」で示されるマスタ状態、文字指定がないマスタ・スレーブなしの状態が含まれている。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、他の識別子をもちいて、マスタ状態、スレーブ状態、マスタ・スレーブ関係なしの状態を特徴付けてもよい。
【0103】
ステップP4では解析することにより、R1ロボットのマスタ・スレーブなしの状態、R2ロボットのスレーブ状態、S1ポジショナーのマスタ・スレーブなしの状態、S2ポジショナーのマスタ・スレーブなしの状態、S3ポジショナーのマスタ状態を取得する。この場合、S3ポジショナーとR2ロボットとはマスタ・スレーブ制御を実現し、たとえば、R2ロボットが溶接トーチによりS3ポジショナーに載置されたワークを溶接する。
【0104】
続いて、命令読出しモジュール1は、次の組の命令セット、すなわち命令12から16を読み出してSMOV+MOV+MOV+MOVの命令セットを取得し、これを解析することにより、R1ロボットのスレーブ状態、R2ロボットのマスタ・スレーブなしの状態、S1ポジショナーのマスタ状態、S2ポジショナーのマスタ・スレーブなしの状態およびS3ポジショナーのマスタ・スレーブなしの状態を取得できる。この命令セットでは、R1ロボットがS1ポジショナーに追従して動作し、両者の間にはマスタ・スレーブ関係を有し、R2ロボットとS3ポジショナーとは前の組の命令セットにおけるマスタ・スレーブ関係からマスタ・スレーブ関係のない関係に変わり、各ロボットで異なる時刻でのマスタ・スレーブ関係の変更を実現している。
【0105】
続いて、次の組の命令セットを読み出し、すなわち命令17~21が読み込まれ、SMOV+SMOV+MOV+MMOV+MOVの命令セットが取得される。R1ロボットおよびR2ロボットともにスレーブとして、マスタであるS2ポジショナーに追従して動作するため、再びマスタ・スレーブ関係が変更されている。また、R1ロボットおよびR2ロボットのMOV前のマスタ・スレーブ情報を「M」とすることにより、R1ロボットおよびR2ロボットをマスタにすることもできる。
【0106】
ロボットコントローラ1によるマスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法によれば、各ロボットのマスタ・スレーブ関係を、ジョブプログラムの指示の実行に応じて変更できる。また、ジョブプログラムのタイミングによってマスタ・スレーブ関係が変化するため、複数のロボットのジョブ命令を1つのジョブプログラムに統合できる。具体的には、既存の複数ロボットの制御システムにおいて、S2ポジショナーをマスタとし、R1ロボットおよびR2ロボットがスレーブとしてマスタに追従しながら動作する場合、それぞれの動作を制御するために、S2ポジショナー-R1ロボットのジョブプログラム(Jobプログラム)とS2ポジショナー-R2ロボットのジョブプログラム(Jobプログラム)という二つの別々のジョブプログラムが必要であった。マスタ・スレーブの組多ければ多いほど、ジョブプログラムの数も増え、プログラムの複雑さだけでなく、その実行のためにシステムが使用するリソースも増加する。これに対し、本実施例では、Jobプログラムの一例において示されたように、R1ロボット、R2ロボットおよびS2ポジショナーの制御命令を1つのJobプログラムに統合できるため、プログラム量を大幅に簡略化し、操作性を高め、プログラム実行のリソースをも大幅に節約できる。
【0107】
マスタ・スレーブ協調型ロボット制御方法において解析により取得される各ロボットのマスタ・スレーブ関係を特徴づける現在のマスタ・スレーブ情報は、読み込まれたロボットジョブプログラムに基づいて取得される。これは、ユーザがロボットジョブプログラムを通じて、各ロボットのマスタ・スレーブ関係を設置できるようになるだけでなく、さらに、ロボットのジョブプログラムがその命令の実行順番の方式により各時点におけるロボットの動作を限定し、ジョブプログラムの命令により取得されるマスタ・スレーブ情報に基づく制御方法によって、ロボットのマスタ・スレーブ情報をタスクのタイミングに追従させながら変更できるため、各ロボットのタスクの異なるフェーズにおけるマスタ・スレーブ関係を柔軟に変更できる。
【0108】
さらに、本実施形態において、各ロボットの現在のマスタ・スレーブ情報は、ジョブプログラムの対応する各動作タイプの命令に統合されている。マスタ・スレーブ協調制御において、スレーブの動作軌跡はマスタの動作軌跡に追従する。このように、各ロボットの動作状態はマスタ・スレーブ関係と密接に関係し、両者の組み合わせによって、ロボットが最終的な動作軌跡が決定される。本実施形態において、各ロボットの現在のマスタ・スレーブ情報をそのロボットの動作命令に統合することにより、各ロボットのマスタ・スレーブ関係を動作状態ごとに変更できるだけでなく、ユーザによる操作上、ユーザが各命令を通じてロボットの現在のマスタ・スレーブ関係を判断できるため、非常に使い勝手がよい。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、タスクの必要性に応じてあるロボットのマスタ・スレーブ関係を段階的に変更してもよい。この場合、マスタ・スレーブ情報は各動作命令に統合される必要が無くなり、独立の命令によって定めてもよい。
【0109】
さらに、ロボットコントローラ1は、ロボットジョブプログラムに基づくゲイン制御方法によりサーボ駆動モジュール3を制御し、サーボ駆動モジュール3内には、ロボットの各軸を制御するための複数のサーボモータ駆動装置を有してもよい。
【0110】
ロボットジョブプログラムに基づくゲイン制御方法は、ロボットジョブプログラムの各命令を順番に読み出すこと(ステップS110)と、読み込んだ命令が動作タイプ命令である場合、読み込んだ動作タイプ命令ごとに、ロボットの動作速度、軌跡タイプおよび軌跡タイプパラメータを解析すること(ステップS120)と、解析により取得されたロボットの動作速度と軌跡タイプに基づいて、対応するゲインパラメータを取得すること(ステップS130)と、解析された動作速度、軌跡タイプ、軌跡タイプパラメータおよび対応するゲインパラメータに基づいて、ロボット動作命令を生成し、ロボットの各軸のサーボモータ駆動装置に出力すること(ステップS140)と、を含む。
【0111】
本実施形態に係るサーボモータのゲインパラメータ制御方法では、ステップS120において読み込んだ各動作タイプ命令における動作速度および軌跡タイプに基づいて、ステップS130においてゲインパラメータを取得する。これにより、1つのタスクサイクル(Jobプログラム)において、ロボットコントローラの軌跡タイプや動作速度に応じてゲインパラメータを調整できるため、1つのタスクサイクルにおける異なる軌跡タイプに対応したゲイン要件を満たすことができる。本実施形態において、ゲインパラメータは、速度ループゲインおよび位置ループゲインを含む。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、ゲインパラメータは、速度ループゲインまたは位置ループゲインのいずれかだけでもよい。
【0112】
次のプログラムは、産業用溶接ロボットのジョブプログラムの一例である。以下、図17および以下に示されるジョブプログラムを参照しながら、本実施形態に係るサーボモータゲインパラメータ制御方法について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、本実施形態に係るサーボモータゲインパラメータ制御方法は、ハンドリング作業用の産業用ロボットなど、他の種類のロボットにも適用できる。
【0113】
[1] NOP //開始行
[2] MOVJ VJ=80 //関節動作命令、関節速度80%
[3] MOVL V=500 //直動命令、速度 5m/min
[4] MOVL V=100 //直動命令、速度 1m/min
[5] ARCON ASF #(1) //アーク放電命令、(1)号アーク放電ファイル
[6] MOVL V=50 ARC#(1) //直線溶接動作命令、速度0.5m/min、溶接ファイル(1)
[7] MOVL V=60 ARC#(2) //直線溶接動作命令、速度0.6m/min、溶接ファイル(2)
[8] MOVL V=70 ARC#(1) //直線溶接動作命令、速度0.7m/min、溶接ファイル(1))
[9] MOVL V=80 ARC#(3) //直線溶接動作命令、速度0.8m/min、溶接ファイル(3)
[10] ARCOFF AEF#(1) //消弧命令、消弧ファイル(1)
[11] MOVL V=200 //直線動作命令、速度2m/min
[12] MOVJ VJ=80 //関節動作命令、関節速度80%
[13] END //終了行
【0114】
本実施形態に係るサーボモータゲインパラメータ制御方法は、ステップS110から始まり、ロボットジョブプログラムに含まれる各命令を順番に読み込んでいく。具体的には、命令を読み出す際、命令を命令リストに変換して共有メモリに格納することも含む。命令リストには、各行の命令のタイプおよび関連するパラメータが含まれ、命令のタイプは、動作タイプ命令や非動作タイプ命令(たとえば、開始命令、終了命令等)である。上記のプログラム例では、動作命令には「MOV」のような動作識別子が含まれている。命令を読み出すと、その命令行に対応する命令リストに動作識別子が格納される。そのため、読み出した命令が動作命令か否かを判断するために、当該動作識別子を使用する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0115】
読み取った命令が動作タイプ命令である場合、ステップS120が実行され、読み取った各動作タイプ命令におけるロボットの動作速度、軌跡タイプ、軌跡タイプパラメータを解析する。軌跡タイプには、ジャンプ軌跡とジョブ軌跡があり、溶接ロボットの場合、ジョブ軌跡は溶接軌跡である。上記のプログラム例では、命令[2]~[4]の軌跡タイプはジャンプ軌跡、[6]~[9]の軌跡はジョブ軌跡である。具体的には、本実施形態において、ジョブ軌跡には「ARC」という識別子が含まれている。したがって、解析する際には、この識別子に基づいて、読み出された命令の軌跡タイプを判断できる。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、他の識別子を用いて識別してもよい。
【0116】
ジャンプ軌跡において、軌跡タイプパラメータによってジャンプ後の位置が決まる。溶接軌跡において、溶接トーチの角度や溶接ワイヤのワーク表面からの高さなど、ワークによって異なる溶接パラメータを使用する。本実施形態において、軌跡タイプパラメータをロボットコントローラの格納ファイルに予め設定しておき、各動作タイプ命令を解析する際、命令に含まれる軌跡タイプまたは軌跡タイプパラメータ格納ファイルの名前に基づいて、対応する軌跡タイプパラメータを取得する。本実施形態において、読み込んだ動作タイプ命令を解析して、その命令の下におけるロボットの軌跡を特徴付ける際に、動作タイプ命令に含まれる軌跡タイプパラメータ格納ファイル名に基づいて、対応する軌跡タイプパラメータを解析する。具体的には、上記のジョブプログラムの例では、[6]行目の「ARC(1)」という命令は、「溶接ファイル(1)」を呼び出して溶接することを意味し、「溶接ファイル(1)」は、軌跡タイプパラメータ格納ファイルの名前である。
【0117】
命令が解析され、ジャンプ軌跡であることが特徴付けられると、ジャンプ軌跡に対応する軌跡タイプパラメータ格納ファイルを共有メモリから取得する。たとえば、[2]行目の命令において、ロボットはジャンプ軌跡の関節動作状態にあるため、解析ユニットは関節運動の軌跡タイプパラメータ格納ファイルを共有メモリから直接取得し、軌跡タイプパラメータには関節動作の角度や方向などのパラメータが含まれている。そして、ジャンプ軌跡が直線動作である場合、軌跡タイプパラメータには直線動作の向きなどのパラメータが含まれている。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0118】
ステップS120において、読み出し命令によりロボットの動作速度および軌跡タイプを取得した後、ステップS130が実行され、ロボットの動作速度および軌跡タイプに基づいて対応するゲインパラメータを取得する。本実施形態において、ロボットコントローラの共有メモリには、動作速度、軌跡タイプ、ゲインパラメータに関するゲインテーブルが予め格納され、動作制御計画ユニットがゲインテーブルをソートすることで、対応するゲインパラメータを取得する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、現在の動作速度に対するゲインパラメータは、所定のアルゴリズムにより、ロボットの現在の命令の動作速度に基づいて取得してもよい。各命令の動作速度および軌跡タイプから取得されるゲインパラメータにより、ロボットコントローラは、安定性の要求を満たすために命令[2]~[4]行の高速ジャンプ軌跡のゲインを低くし、精度の要求を満たすために命令[6]~[9]行の低速軌跡のゲインを高くすることができる。さらに、命令[6]~[9]の各行ごとにゲインを異ならせてもよい。
【0119】
最後に、ステップS140が実行あれ、解析された動作速度、軌跡タイプ、軌跡タイプパラメータおよび対応するゲインパラメータに基づいてロボット動作命令を生成し、ロボットの各軸のサーボモータ駆動装置へ出力する。好ましくは、生成されたロボットの動作命令は、EtherCATバスインタフェースを介してロボットの各軸のサーボモータ駆動装置に出力される。動作コントロールバスインタフェースとしてのEtherCATは、通信サイクルが短くて高速であり、各軸モータの速度ループゲインおよび位置ループゲインのパラメータを制御サイクルごとにリアルタイムに調整してロボットの各軸モータのサーボモータ駆動装置に送信し、リアルタイムに閉ループゲイン制御を実現できる。
【0120】
上述したサーボモータゲインパラメータ制御方法に対応して、ロボットコントローラ1におけるサーボモータゲインパラメータ制御モジュールは、命令読み出しユニット、解析ユニット、動作制御計画ユニットおよび動作命令生成ユニットを含む。命令読み出しユニットは、ロボットの動作プログラムに含まれる各命令を順番に読み出す。読み込んだ命令が動作タイプ命令である場合、解析ユニットは読み込んだ動作タイプ命令ごとにロボットの動作速度、軌跡タイプおよび軌跡タイプパラメータを解析する。動作制御計画ユニットは、解析により取得されたロボットの動作速度および軌跡タイプに基づいて、対応するゲインパラメータを取得する。動作命令生成ユニットは、解析された動作速度、軌跡タイプ、軌跡タイプパラメータおよび対応するゲインパラメータに基づいてロボット動作命令を生成し、ロボットの各軸のサーボモータ駆動装置に出力する。
【0121】
本実施形態において、解析ユニットの解析によって動作速度および軌跡タイプが取得された後、動作制御計画ユニットは、所定のゲインテーブルをソートし、対応するゲインパラメータを取得する。ただし、本発明はこれについて何ら限定もせず、他の実施形態によれば、動作制御計画ユニットは、高速動作の安定制御および低速動作の精密制御を実現するために、予め設定されたアルゴリズムによりロボットの現在の命令動作速度に基づいて、現在の動作速度における対応するゲインパラメータを取得してもよい。
【0122】
本実施形態において、軌跡タイプパラメータはロボットコントローラの格納ファイルに予め設けられ、解析ユニットにより読み込んだ各動作タイプ命令を解析する際は、その命令に含まれる軌跡タイプまたは軌跡タイプパラメータの格納ファイルの名前に基づいて、対応する軌跡タイプパラメータを取得する。
【0123】
本実施形態において、動作命令生成ユニットはデータ伝送モジュールを介してロボットの各軸のサーボモータ駆動装置に接続され、ロボットの動作命令を生成してEtherCATバス伝送マスタ21を介してロボットの各軸のサーボモータ駆動装置に出力している。具体的には、各サーボモータ駆動装置は、専用のEtherCATスレーブ制御チップ(たとえば、AX58100シリーズのチップ)により、EtherCATバス伝送マスタ21に対するスレーブとなっている。ただし、本発明はこれについて何ら限定もしない。
【0124】
本実施形態に係るサーボモータゲインパラメータ制御システムは、本実施形態におけるステップS110~ステップS140のサーボモータゲインパラメータの制御方法を実行することによりサーボモータ駆動装置を制御するため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0125】
本実施形態において、サーボモータゲインパラメータ制御方法では、各動作タイプ命令における動作速度および動作軌跡を解析して対応するゲインパラメータを取得し、ゲインパラメータは、ロボットの動作速度や動作軌跡に応じてリアルタイムに調整され、高速ジャンプ軌跡では高速動作の安定性を確保するために低いゲインパラメータを用い、低速動作軌跡では動作精度を満たすために高いゲインパラメータを用いる。さらに、各動作タイプ命令のゲインパラメータの調整により、ロボットの動作速度や軌跡タイプを非常に簡単かつ正確に取得でき、ゲイン制御の難易度およびコストを大幅に低減できる。
【0126】
以上のとおり、本発明に係る汎用コンピュータを用いたロボット制御システムにおいて、電源モジュールは、メイン回路のパワーダウン後もロボットコントローラに電力を継続的に供給することにより、ロボットコントローラ内の操作モジュールによってデータ保存が完了できるようにし、パワーダウン時のデータ保護を実現している。セーフティユニットは、複数の安全回路を制御し、サーボ駆動モジュールが入力異常や故障に的確に応答して、非常停止できる。さらに、セーフティユニットとバス伝送マスタとが互いにモニタリングしているため、セーフティユニットまたはバス伝送マスタのどちらかが故障した場合、サーボ駆動モジュールはその故障に応答でき、複数モジュールの安全インターロック制御を実現し、安全制御レベルを大幅に向上できる。データ伝送モジュールでは、バス伝送マスタをベースとして拡張された第1インタフェースモジュールと標準の第2インタフェースモジュールとの組み合わせにより、応答性の高いデータの高速伝送を実現するだけでなく、伝送モジュールのコストを大幅に削減できる。ティーチングペンダントでは、ロボットコントローラ上でティーチングペンダントプログラムが動作し、ロボットコントローラからの端末ビデオ信号をティーチングペンダントが受け付けして、ロボットの動作状況をリアルタイムに表示する。この方法では、ティーチングペンダント端に独立のCPUを組み込む必要がないため、ティーチングペンダントのコストを大幅に削減できるだけでなく、ティーチングペンダントプログラムの実行がロボットコントローラに搭載された高性能IPCによって行われるため、非常にパワフルで演算速度も速く、ロボットの動作をより正確に制御できる。
【0127】
以上、好ましい実施形態によって本発明を説明したが、これらは本発明を限定するものではなく、いわゆる当業者であれば、本発明の技術的思想および特許請求の範囲から逸脱せず、一部の変更および改良を行うことができるが、本発明の保護範囲に含まれる。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図17
【補正方法】変更
【補正の内容】
図17
【国際調査報告】