(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】冷却システムを備えた反射光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20230630BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G02B5/08 A
H01L23/46 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577128
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2021065659
(87)【国際公開番号】W WO2021254879
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515002746
【氏名又は名称】イ・エス・ペ・システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソバジェオ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロペール,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】タイス,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フルカード,チボー
【テーマコード(参考)】
2H042
5F136
【Fターム(参考)】
2H042DA20
2H042DE07
5F136BA30
5F136CB08
5F136DA34
(57)【要約】
とりわけレーザタイプの光ビーム(19)をトランスポートし、変換し、または補正するための反射光学系(1)であって、光ビーム(19)を受け取るミラー(2)と、ミラー(2)に対してその後方に配置された熱伝導性流体(7)の中間チャンバ(6)によって形成された一次冷却回路と、熱伝導性流体(7)の中間チャンバ(6)に対して配置された熱ヒートシンク(3)によって形成された二次冷却回路とを備え、前記ヒートシンク(3)は、対流または伝導によって冷却されるコールドマスの形態か、または良好な熱伝導率を有する材料で作られたプレートの形態のいずれかであり、ヒートシンク(3)は、前記反射光学系のサイズおよび形状と等価のサイズおよび形状を有することを特徴とする、反射光学系(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
とりわけレーザタイプの光ビーム(19)をトランスポートし、変換し、または補正するための反射光学系(1)であって、光ビーム(19)を受け取るミラー(2)と、ミラー(2)に対してその後方に配置された熱伝導性流体(7)の中間チャンバ(6)によって形成された一次冷却回路と、熱伝導性流体(7)の中間チャンバ(6)に対して配置された熱ヒートシンク(3)によって形成された二次冷却回路とを備え、前記ヒートシンク(3)は、対流または伝導によって冷却されるコールドマスの形態か、または良好な熱伝導率を有する材料で作られたプレートの形態のいずれかであり、ヒートシンク(3)は、前記反射光学系のサイズおよび形状と等価のサイズおよび形状を有することを特徴とする、反射光学系(1)。
【請求項2】
ヒートシンク(3)を形成しているプレートがその厚みの中にチャネル(16)を有し、その中を伝熱流体(9)が循環するようになされることを特徴とする、請求項1に記載の反射光学系(1)。
【請求項3】
ミラー(2)が、その後ろ側にアクチュエータ(11)を装着した変形可能ミラーであり、個々のアクチュエータ(11)が熱伝導性流体(7)の中間チャンバ(6)、およびヒートシンクを孔を通って横切ることを特徴とする、請求項1または2に記載の反射光学系(1)。
【請求項4】
個々のアクチュエータ(11)が、ヒートシンク(3)の中に作られた孔(13)の中を並進で移動可能なヘッド(15)を備え、熱伝導性流体(7)が移動可能ヘッド(14)の周りの前記孔(13)の中を循環することを特徴とする、請求項3に記載の反射光学系(1)。
【請求項5】
孔(13)がシーリングリング(15)によって閉じられることを特徴とする、請求項4に記載の反射光学系(1)。
【請求項6】
熱ヒートシンク(3)の中に統合されたチャネル(16)がヒートシンク表面の上に延びている螺旋ループ(16)の形態であり、入口点(17)および出口点(18)を有することを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の反射光学系(1)。
【請求項7】
チャネル中への伝熱流体(9)の入口点(17)がヒートシンク(3)の中心の近くに配置されることを特徴とする、請求項6に記載の反射光学系(1)。
【請求項8】
チャネルからの伝熱流体(9)の出口点(18)がヒートシンク(3)の周囲の近傍に配置されることを特徴とする、請求項6または7に記載の反射光学系(1)。
【請求項9】
ミラー(2)、熱伝導性流体(7)の中間チャンバ(6)および熱ヒートシンク(3)が機械的に結合されて統合ブロックを形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の反射光学系(1)。
【請求項10】
前記光学系がサポート(4)によってヒートシンク(3)に固定されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の反射光学系(1)。
【請求項11】
ヒートシンク(3)を形成している熱伝導性材料が、金属、好ましくは銅でできていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の反射光学系(1)。
【請求項12】
熱伝導性流体(7)の中間チャンバ(6)が、場合により膨張タンク(8)と接続していることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の反射光学系(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、とりわけレーザタイプの光ビームシステムに使用される反射光学系、ならびにそれらの冷却手段の技術分野である。
【0002】
よく知られているように、レーザビームをトランスポートし、それらのプロファイルを変換し、それらを集束させ、または前記ビームの波面を修正し、あるいは補正するためには反射光構造を使用する必要がある。
【0003】
出力、放射モードまたは使用される増幅媒体のタイプの両方の点で、多くの異なるタイプのレーザが存在している。
【0004】
レーザが高平均出力レーザであるとき、使用される反射光学系はエネルギーの強い蓄積に遭遇し、そのために加熱することになる。このような加熱は光学系の変形をもたらし、ひいてはレーザビームにおける光学収差の原因になり、さらには光学系自体の劣化をもたらすため、これは問題である。したがってユーザには耐えがたいコストが生じる頻度で光学系を交換しなければならない。
【0005】
したがって周囲の空気を使用した対流による自然冷却ではもはや十分ではない瞬間から反射光学系を冷却しなければならず、これは、反射光学系が高平均出力レーザ(典型的には5kWから20kW)で使用される場合がそうである。これは、10kW以上の平均出力を送達する、反覆率が高いペタワットレーザ、または例えば平均出力が1kWから30kWの超小型電子技術産業で使用される連続もしくは疑似モードレーザなどの科学研究室で使用されるレーザなどのように、当該レーザが真空中であるとき、ますます深刻である。また、天文学、とりわけ赤外線レンジ、および観察シーン(地球、明るい星)からの熱入力によって光品質が劣化し得る大口径望遠鏡のための宇宙観察にも用途が同じく存在している。
【背景技術】
【0006】
レーザに使用される反射光学系を冷却するためのいくつかの冷却システムが知られており、使用されている。
【0007】
例えば2018年にOptics Express Vol.26、No.8で公開された、Kyohoon Ahnらによる論文「CVD SiC deformable mirror with monolithic cooling channels」は、水が循環するチャネルから構成されたミラーのための冷却システムを説明しており、チャネルはミラー自体の厚みの中に形成されており、また、ミラーは圧電アクチュエータによって動作している。したがってこのシステムにはミラー自体に対する介在が必要であり、これは常に達成が困難である。
【0008】
米国特許第4657358号は、ミラーに対して直角のチャネルによって冷却される変形可能ミラーを説明しており、個々のチャネルは個々のアクチュエータのシャフトの中に含まれており、個々のアクチュエータのヘッドの周りに小さい円形のチャンバを形成している。したがってこれは、冷却効果を制限する局所化された冷却点によって形成されたシステムである。
【0009】
米国特許第4844603号は冷却された可撓性ミラーを説明しており、この冷却された可撓性ミラーは、前記ミラーとそのサポートの間に冷却チャンバを有しており、冷却チャンバには冷却液が充填されている。
【0010】
2006年6月のthe Journal of the Optical Society of Koreaで公開された、Jun Ho Leeによる論文「A cooled deformable bimorph mirror for a high power laser」は、対流および伝導冷却システムを説明しており、対流は、反射表面の下方に含まれている傾斜したエンボシングによって提供され、また、その中を液体冷媒として水が循環し、伝導は、エンボシングの中に含まれている金属コーティング層によって提供されている。
【0011】
2015年1月のProceedings of SPIE,the International Society of Optical Engineeringで公開された、Libor Mrnaらによる論文「Deformable mirror for high power laser applications」は、アクチュエータによって変形可能な、ミラーの後部表面に沿って、前記表面の六角形の構造を通って循環する加圧された冷却液によって冷却されるミラーを説明している。
【0012】
1998年にQuantum Electronicsで公開された、B.S.Vinevichらによる論文「Cooled and uncooled single-channel deformable mirrors for industrial laser systems」は、冷却液が中を循環しているミラーに含まれた、斜めにされたエンボシングシステムを説明している。
【0013】
2017年11月にOptics Expressで公開された、Zhengxiong Zhuらによる論文「Development of a unimorph deformable mirror with water cooling」は、冷却液が冷却空洞中のミラーの後ろ側を通って循環する冷却システムを説明している。ミラーの周囲の冷却ユニットは冷却液を20℃の一定の温度に維持している。
【0014】
しかしながらこれらの異なるシステムには欠点または不利な点がある。
【0015】
実際、周囲のミラーの後ろ側に空気または冷却液を使用してミラーを冷却することができるシステムは、高平均出力レーザの場合に有用な十分に有効な冷却を提供していない。これらの冷却システムはミラーの能動表面に温度勾配をもたらし、それはミラーの光品質に好ましくない。
【0016】
ミラーの後ろ側で循環する液体を使用した冷却システムの場合、これらのシステムは優れた熱効率を有しているが、冷却液をポンプ供給する際の脈動がレーザビーム中に動的光欠陥を出現させる原因になっている。
【0017】
最後に、ミラーの厚みの中か、またはミラーの後ろ側に対して配置された一組のチャネルを通して冷却液を循環させる冷却システムは、冷却チャネルの熱フットプリントによって生じるレーザビーム中の光学収差のため、ミラーの光品質の低下をもたらしている。さらに、これらのシステムは製造が複雑で、高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4657358号明細書
【特許文献2】米国特許第4844603号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】2018年にOptics Express Vol.26、No.8で公開された、Kyohoon Ahnらによる論文「CVD SiC deformable mirror with monolithic cooling channels」
【非特許文献2】2006年6月のthe Journal of the Optical Society of Koreaで公開された、Jun Ho Leeによる論文「A cooled deformable bimorph mirror for a high power laser」
【非特許文献3】2015年1月のProceedings of SPIE,the International Society of Optical Engineeringで公開された、Libor Mrnaらによる論文「Deformable mirror for high power laser applications」
【非特許文献4】1998年にQuantum Electronicsで公開された、B.S.Vinevichらによる論文「Cooled and uncooled single-channel deformable mirrors for industrial laser systems」
【非特許文献5】2017年11月にOptics Expressで公開された、Zhengxiong Zhuらによる論文「Development of a unimorph deformable mirror with water cooling」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、従来技術の欠点および限界がない、観察デバイス、望遠鏡、高平均出力レーザに使用される反射光学系のための、また、熱の影響に敏感な光デバイスのための冷却システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、とりわけレーザタイプの光ビームをトランスポートし、変換し、または補正するための反射光学系に関し、この反射光学系は、光ビームを受け取るミラーと、ミラーに対してその後方に配置された熱伝導性流体の中間チャンバによって形成された一次冷却回路と、熱伝導性流体の中間チャンバに対して配置された熱ヒートシンクによって形成された二次冷却回路とを備え、前記ヒートシンクは、対流または伝導によって冷却されるコールドマスの形態か、または良好な熱伝導率を有する材料でできたプレートの形態のいずれかであり、ヒートシンクは、前記反射光学系のサイズおよび形状と等価のサイズおよび形状を有することを特徴としている。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、ヒートシンクを形成しているプレートは、その厚みの中にチャネルを有し、その中を伝熱流体が循環するようになされている。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、ミラーは、その後ろ側にアクチュエータを装着した変形可能ミラーであり、個々のアクチュエータは熱伝導性流体の中間チャンバ、およびヒートシンクを孔を通って横切る。
【0024】
個々のアクチュエータは、ヒートシンクの中に作られた孔の中を並進で移動可能なヘッドを備えていることが有利であり、熱伝導性流体は移動可能ヘッドの周りの前記孔の中を循環する。
【0025】
この孔はシーリングリングによって閉じられることが同じく有利である。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、熱ヒートシンクの中に統合されたチャネルは螺旋ループの形態であり、入口点および出口点を有している。
【0027】
チャネル中への伝熱流体の入口点はヒートシンクの中心の近くに配置されていることが有利である。
【0028】
チャネルからの伝熱流体の出口点はヒートシンクの周囲の近傍に配置されていることが同じく有利である。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、ミラー、熱伝導性流体の中間チャンバおよび熱ヒートシンクは機械的に結合されて統合ブロックを形成している。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、光学系はサポートによってヒートシンクに固定されている。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、ヒートシンクを形成している熱伝導性材料は、金属、好ましくは銅でできている。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、熱伝導性流体の中間チャンバは、場合により膨張タンクと接続している。
【0033】
平均出力がより小さい場合、チャネルを含んだブロックを、自然対流によって、または例えばコールドプレートの背面に形成されたフィンによる強制対流によって冷却され、および/または例えば真空設備の場合に、真空チャンバへのコールドマスの熱接続による伝導によって冷却されるコールドマスによる冷媒流体に置き換えることが場合によっては適切である。
【0034】
本発明による冷却システムの第1の利点は、本発明による冷却システムは、固定されたミラーおよび変形可能ミラーに適合させることができることである。アクチュエータがこれらの変形可能ミラーと接触することになる通路のために、ヒートシンクを貫通する孔を提供するだけで十分である。
【0035】
本発明の別の利点は、冷却システムは、ミラーのあらゆる形状:平ら、放物線、長方形、円、等に適合し得ることにある。
【0036】
本発明のさらなる利点は、冷却システムは、断面が数平方センチメートルから2500cm2を超えるまで変化し得る、広範囲にわたるレーザビーム出力に適合し得ることにある。
【0037】
本発明のさらなる利点は、冷却回路がミラー自体と接触しないことである。したがって回路の圧力変動がミラーの幾何形状に影響を及ぼすことはなく、したがってミラーの光機能に影響を及ぼすことはない。
【0038】
本発明のさらなる利点は、ミラーの反射面とヒートシンクの間の熱抵抗が小さく、極めて効果的に冷却することができることである。
【0039】
本発明のさらなる利点は、平均的熱伝導特性を有する、良好な光特性を有する材料(ガラスおよびガラスまたはケイ素誘導体)でミラーを作ることができることである。
【0040】
本発明のさらなる利点は、冷却チャンバおよび膨張タンクの熱伝導性流体の圧力を調整することにより、重力の影響下におけるミラーの静的変形を補正することができることである。
【0041】
本発明のさらなる利点は、冷却システムは、ミラーの表面のほぼ全体にわたって熱交換を生じさせることができることにある。
【0042】
本発明のさらなる利点は、冷却システムは、冷却チャンバの熱伝導性流体によって形成される第1のステージ、およびヒートシンク中の冷却チャネルの中を循環する伝熱流体によって形成される第2のステージの2つのステージを有し、これらの2つのステージの組合せが有効で、均一な冷却効果を生み出すことにある。
【0043】
本発明のさらなる利点は、ヒートシンクが熱伝導性材料でできており、その温度が一様で、反射光学系の機能を妨害し得る熱変動を示さないことである。
【0044】
本発明のさらなる特徴、利点および詳細は、図面を参照してなされる以下の説明を読むことによってより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の冷却システムを具備した剛直な反射光学系を示す図である。
【
図2】本発明の冷却システムを具備した変形可能な反射光学系を示す図である。
【
図3】X-X’軸に沿った
図2のヒートシンクの断面図である。
【
図4】固定されたサポートの特定の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明についてより詳細に説明する。上で示したように、目的は、光学収差を最小化するために熱の影響下における変形を回避するために反射光学系を冷却することである。
【0047】
図1は、ミラー2を組み込んだ反射光学系1の断面を示したものであり、ミラー2は、このバージョンでは、例えばレーザタイプの入射ビーム19を別の光路へ反射する平面鏡2aである。
【0048】
ミラー2はサポート4によってヒートシンク3に固定されている。サポート4は、1つ以上のシーリング部品5と協同して、ミラー2とヒートシンク3の間に配置された中間チャンバ6を画定している。サポート4は、ヒートシンク3とミラー2の間、ならびに中間チャンバ6とミラー2の間の圧力変動または動きの伝達を防止する無定位サポートであることが好ましい。
【0049】
したがって10個のサポートの構成では、
図4に示されているように例えば7個の無定位サポート4および3個の固定サポート20を提供することができる。このチャンバ6には熱伝導性流体7が充填されている。中間チャンバ6は、熱伝導性流体7の圧力を前記チャンバの中で調整することができる膨張タンク8と連通している。
【0050】
ヒートシンク3はサポートブロックであり、この上にミラー2が載っている。ヒートシンク3は、冷却チャネル16が穿孔された内部構造を有しており、この冷却チャネル16の中を伝熱流体9が循環している。
【0051】
図1は、ヒートシンク3はミラーの表面と等しい接触表面を有していることを示している。このヒートシンクは、大きいか、小さいかのいずれかである異なる表面を有することができることは言うまでもない。
【0052】
平均出力がより小さい場合、チャネル16を備えたブロックを、自然対流によって、または例えばコールドプレートの背面のフィンによる強制対流によって冷却され、および/または例えば真空設備の場合に、真空チャンバへのコールドマスの熱接続を通した伝導によって冷却されるコールドマスによる伝熱流体に置き換えることが場合によっては適切である。前記コールドマスは良好な熱伝導率および良好な比熱を有していることが有利である。良好な熱伝導率または良好な比熱は、銅によって提供される熱伝導率または比熱などの値を意味している。
【0053】
冷却されるコールドマスは、例えば銅でできた金属マスの形態であってもよい。
【0054】
反射光学系1およびヒートシンク3は、図には示されていないレーザアセンブリの中に統合されたサポート10の上に載っている。
【0055】
図2は、本発明による冷却システムと結合された変形可能ミラー2bによって形成された反射光学系1を示したものである。
【0056】
アクチュエータ11はサポート10によって支持されている。これらのアクチュエータはヒートシンク3および中間チャンバ6を横切り、移動ヘッド14によってミラー2bの後ろ側と接触している。アクチュエータの構造はよく知られており、それをより詳細に説明する必要はない。
【0057】
ヒートシンク3は、特定の量のすきまでアクチュエータ11を通すことができる孔13を備えている。個々の孔13は、熱伝導性流体7が中間チャンバ6の中に維持されていることを保証するためにシーリングリング15で閉じられている。
【0058】
固定された反射光学系の場合と同様、
図2は、熱伝導性液体7が充填された中間チャンバ6が背面で開くミラー2を示している。ミラー2は、サポート4によってヒートシンク3の上に載っている。
【0059】
1つ以上のシーリング部品5が中間チャンバ6と境界をなしている。この場合も、ヒートシンク3は伝熱流体9を循環させるためのチャネルを含む。
【0060】
図1および
図2に関連して説明したアセンブリによれば、中間チャンバ6によって、ミラー2aまたは2bの後ろ側全体にわたって熱を分布させることができ、あらゆる温度勾配を回避することが可能であることが理解される。温度が高くなると、ミラー2aまたは2bによって伝達される熱によって液体7がチャンバ6および膨張タンク8の中を循環する。一方、チャンバ6により、液体7の水力学的慣性によってミラー2aまたは2bの変形を小さくすることができる。
【0061】
中間チャンバ6および膨張タンク8アセンブリにより、ミラー2の変形を補償し、制御することができる。中間チャンバ6に対する関係で膨張タンク8の高さを修正することにより、ミラー2の変形に対する中間チャンバ6の抵抗が変化する。ミラー2aまたは2bによって受け取られた熱は、ホットスポットがないことによって一様に分布される。
【0062】
したがってミラー2aまたは2bによって受け取られた熱の除去は、伝熱流体9がその中を循環しているヒートシンク3によって保証される。
【0063】
レーザビーム19が高平均出力ビームであるとき、ミラー2は高エネルギーチャージを受け取り、その温度が高くなる。この熱チャージは、第1のステージに従って熱流を拡散させ、均一に分布させて冷却を可能にするために、熱伝導性流体7に伝えられ、次にヒートシンク3に伝えられる。
【0064】
この第1の拡散ステージに第2のステージが後続し、今度は、ヒートシンク3中に形成されたチャネル16の中を循環している伝熱流体9によってヒートシンク3が冷却される。
【0065】
これは2ステージ冷却システムである。このシステムによれば、このシステムが中に統合される反射光学系を有効に、および、均一に冷却することができる。
【0066】
図3は、チャネル16の高さのヒートシンク3の厚みにおけるX-X’軸に沿ったヒートシンク3の断面を示したものである。チャネル16は、互いに接近している特定の数のループの範囲を定めている経路を示していることが分かる。したがってミラー2aまたは2bをその表面全体にわたって均一に冷却することができる。
【0067】
チャネル16はヒートシンク3のほとんどすべての表面に沿って延びており、流体の入口点17はヒートシンク3の中心エリアに巧みに配置され、また、流体の出口点18は周囲に配置されている。当然、これは好ましい構成であるが、ミラーの形状および寸法に応じて、また、ミラーが受け取るエネルギーに応じて、任意の他の構成を使用することも可能である。
【0068】
アクチュエータのための貫通孔13は、異なるループ同士の間に、ヒートシンクの表面全体にわたって分布している。
【0069】
ミラー2は研磨することができる。また、ミラー2は、レーザビームを反射させるための処理でコーティングしても、あるいはコーティングしなくてもよい。反射処理は、金属または誘電体タイプあるいはそれらの両方の組合せの光学系に適用される、99%以上の反射率を達成することができるコーティングであってもよい。
【0070】
別法としては、ミラーは、熱伝導性材料、例えば銅またはケイ素などの研磨が容易な金属で作られる。最適光品質を得るためにシリカベースの基板を使用することも可能であるが、冷却容量が低下することになる。
【0071】
熱伝導性流体7は、例えばガリンスタンであってもよく、また、冷媒流体9は水であってもよい。
【国際調査報告】