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特表2023-529232電池用伝導性複合材料の製造方法、並びに伝導性複合材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】電池用伝導性複合材料の製造方法、並びに伝導性複合材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20230630BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230630BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/0562
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577163
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2021056522
(87)【国際公開番号】W WO2021254669
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】102020207388.0
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シューマッハー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ トライス
(72)【発明者】
【氏名】マイケ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ロータース
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ザムジンガー
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ショプフ
(72)【発明者】
【氏名】アルノ クワデ
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ08
5H029DJ09
5H029EJ03
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ04
(57)【要約】
本発明は、電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料の製造方法であって、以下の段階:
・ 以下
・ 少なくとも1つのイオン伝導性の第1の物質、殊に支持塩、および可塑性母材、殊にポリマーの形態での可塑性母材、および/または
・ 少なくとも1つの高分子電解質
を含む、可塑性のイオン伝導性電解質マトリックスを準備する段階、
・ イオン伝導性粒子の形態での第2のイオン伝導性物質を準備する段階、
・ 前記イオン伝導性粒子を前記電解質マトリックスに導入し、前記イオン伝導性粒子と前記電解質マトリックスとの混合物を製造する段階、
・ 前記混合物を均質化する段階
を含み、
前記混合物の均質化を、均質化装置を用いた、混練、押出および/または粉砕のリストから選択される少なくとも1つの方法を用いて行う、前記方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料の製造方法であって、以下の段階:
・ 以下
・ 少なくとも1つのイオン伝導性の第1の物質、殊に支持塩、および可塑性母材、殊にポリマーの形態での可塑性母材、および/または
・ 少なくとも1つの高分子電解質
を含む、可塑性のイオン伝導性電解質マトリックスを準備する段階(S1)、
・ イオン伝導性粒子の形態での第2のイオン伝導性物質を準備する段階(S2)、
・ 前記イオン伝導性粒子を前記電解質マトリックスに導入し、前記イオン伝導性粒子と前記電解質マトリックスとの混合物を製造する段階(S3)、
・ 前記混合物を均質化する段階(S4)
を含み、
前記混合物の均質化(S4)を、均質化装置を用いた、混練、押出および/または粉砕のリストから選択される少なくとも1つの方法を用いて行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記混合物を均質化装置内で能動的に加熱および/または冷却して、少なくとも所定の時間にわたって前記電解質マトリックスの少なくとも本質的に一定の温度と塑性状態とをもたらすことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン伝導性粒子を前記電解質マトリックス中に導入する前および/または導入する間に、前記電解質マトリックスが塑性状態にされ、均質化装置を用いて均質化、殊に混練されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物の均質化を、8時間未満、好ましくは5時間未満、特に好ましくは2時間未満、殊に1時間未満、好ましくは0.5時間未満の時間、実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
均質化の前に、前記電解質マトリックスを粒子の形態で準備し、前記混合物の粒子の少なくとも1つの分散混合プロセスを実施することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの振とう混合プロセスを、前記混合物の均質化よりも低い温度で実施することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記可塑性母材の粒子と、前記イオン伝導性粒子との第1の分散混合プロセスをまず実施して部分混合物を得た後に、前記少なくとも1つのイオン伝導性物質の粒子と、前記部分混合物の粒子との第2の分散混合プロセスを実施することを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン伝導性粒子がセラミック粒子、殊にガラスセラミック粒子の形態で準備されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記セラミック粒子が、以下のリスト:
・ P25
・ TiO2
・ Cr23
・ Al23
・ Ga23
・ Li2O、
・ Fe23
・ GeO2
・ ZrO2
・ Ta25
・ Nb25
・ La23
・ SiO2
・ Gd23
・ Y23
・ B23
・ 硫黄、
・ ハロゲン化物、
・ 窒素
からの物質の少なくとも1つを有するセラミックに基づいて選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック粒子が、リチウム系のガラスセラミック粒子の形態で準備されることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウム系ガラスセラミック粒子が、少なくとも1つの以下のイオン伝導体:
・ ガーネット型構造を有するイオン伝導体、好ましくはリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)、
・ NaSICon構造を有するイオン伝導体、好ましくはリン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)またはリン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)、またはそれらの混合酸化物、
・ ペロブスカイト構造を有するイオン伝導体、好ましくはチタン酸リチウムランタン(LLT)、
・ スピネル構造を有するイオン伝導体、および/または
・ LiSICon構造を有するイオン伝導体、好ましくはゲルマニウム酸リチウム亜鉛
を含み、且つポリエチレンオキシドを含む可塑性母材が準備されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下のリスト:
・ スルホニルイミドのリチウム塩、有利にはLiN(FSO22(LiFSI)、LiN(SO2CF32(LiTFSI)および/またはLiN(SO2252(LiBETI)、
・ LiAsF6
・ LiClO4
・ LiSbF6
・ LiPtCl6
・ LiAlCl4
・ LiGaCl4
・ LiSCN、
・ LiAlO4
・ LiCF3CF2SO3
・ Li(CF3)SO3(LiTf)、
・ LiC(SO2CF33
・ リン酸塩系リチウム塩、有利にはLiPF6、LiPF3(CF33(LiFAP)およびLiPF4(C24)(LiTFOB)、
・ ホウ酸塩系リチウム塩、有利にはLiBF4、LiB(C242(LiBOB)、LiBF2(C24)(LiDFOB)、LiB(C24)(C34)(LiMOB)、Li(C25BF3)(LiFAB)およびLi21212(LiDFB)、
・ スルホニルイミドのリチウム塩、有利にはLiN(FSO22(LiFSI)、LiN(SO2CF32(LiTFSI)および/またはLiN(SO2252(LiBETI)
から選択される少なくとも1つの支持塩を有する前記第1のイオン伝導性物質が準備されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記リチウム塩のアニオンが、PF6 -、BF4 -、SbF6 -、AsF6 -、C49SO3 -、ClO4 -、AlO2 -、AlCl4 -、(Cx2x+1SO3- [前記式中、0≦x<1]、および/または(Cx2x+1SO2)(Cy2y+1SO2)N- [前記式中、0≦x<1且つ0≦y<1]を含む群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リチウム塩が、LiClO4、LiBF4、リチウムビス(オキサレート)ボレート、リチウム-ジフルオロ(オキサレート)ボレート、LiSO3CF3、リチウム-2-ペンタフルオロエトキシ-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、LiN(FSO22および/またはLiN(SO2CF32、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウム-テトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウム-ジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)、LiSO3CF3(LiTf)、リチウム-2-ペンタフルオロエトキシ-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート(LiSO324OC25)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(FSO22、LiFSI)およびリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiN(SO2CF32、LiTFSI)を含む群から選択されることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン伝導性粒子および/または前記電解質マトリックスの粒子を予め乾燥させることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記電解質マトリックス中に1%~30%、殊に2%~20%、有利には3%~10%、殊に4%~9%の体積割合で導入された前記イオン伝導性粒子が、前記電解質マトリックス中で準備されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有利には請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法によって製造された、電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料であって、
・ 少なくとも1つの可塑性母材、少なくとも1つのイオン伝導性の第1の物質、殊に支持塩、および/または
・ 少なくとも1つの高分子電解質
を含む可塑性のイオン伝導性の電解質マトリックス、および
イオン伝導性粒子の形態での少なくとも1つのイオン伝導性の第2の物質
を含み、前記イオン伝導性粒子は前記電解質マトリックス中で、前記イオン伝導性粒子が互いに少なくとも100nm、有利には少なくとも150nm、殊に少なくとも175nm、有利には少なくとも200nmの最小間隔を有し、且つ/または前記イオン伝導性粒子の粒子充填度が前記電解質マトリックスの総体積に対して少なくとも1体積%、有利には少なくとも1.5体積%、殊に少なくとも2体積%を有するように均質化されている、前記複合材料。
【請求項18】
前記イオン伝導性粒子が、ガラスセラミック粒子、殊にリチウム系ガラスセラミック粒子、有利にはリン酸リチウムアルミニウムチタン粒子および/またはリチウムランタンジルコニウム酸化物粒子を含むことを特徴とする、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
前記可塑性母材が、少なくとも1つのポリマー、殊にポリエチレンオキシドを含むことを特徴とする、請求項17または18に記載の複合材料。
【請求項20】
前記電解質マトリックス中に導入された前記イオン伝導性粒子が、前記電解質マトリックス内で1%~30%、有利には2%~20%、殊に5%~10%、有利には6%~9%の体積割合を有することを特徴とする、請求項17から19までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項21】
請求項17から20までのいずれか1項に記載の伝導性複合材料を含む電池、殊に全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料の製造方法であって、以下の段階:
・ 少なくとも1つのイオン伝導性の第1の物質、殊に支持塩、および可塑性母材、殊にポリマーの形態での可塑性母材、および/または少なくとも1つの高分子電解質を含む、可塑性のイオン伝導性電解質マトリックスを準備する段階、
・ イオン伝導性粒子の形態でのイオン伝導性の第2の物質を準備する段階、
・ 前記イオン伝導性粒子を前記電解質マトリックスに導入し、前記イオン伝導性粒子と前記電解質マトリックスとの混合物を製造する段階、および
・ 前記混合物を均質化する段階
を含む前記方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料に関する。
【0003】
本発明はさらに、伝導性複合材料を含む電池、殊に全固体電池に関する。
【0004】
本発明は一般に、任意のイオン伝導性の第1の物質に適用可能であるが、本発明はイオン伝導性の第1の物質としてのリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホイミド、LiTFSIに関して説明される。
【0005】
本発明は一般に、任意の可塑性母材に適用可能であるが、本発明は可塑性母材としてのポリエチレンオキシドに関して説明される。
【0006】
本発明は一般に、任意の電池に適用可能であるが、本発明はリチウムイオン電池もしくはリチウム電池の形態での電池に関して説明される。
【背景技術】
【0007】
電池、殊にリチウムイオン電池は、多くの機器、殊に携帯可能な機器、例えば携帯可能なコンピュータ、スマートホンなどにおいてエネルギーを供給するために使用されている。今では、リチウムイオン電池は電気自動車においても駆動のエネルギーを供給するために使用されている。公知の古典的なリチウムイオン電池は高いエネルギー密度を有するものの、公知のリチウムイオン電池で可能なエネルギー貯蔵は自動車の分野においては、内燃機関に比して低すぎ、走行距離および安全性に関して追いつくことができない。電池についての車両内での設置空間および重量に関する仕様によって、可能なエネルギー貯蔵容量が制限される。公知のリチウムイオン電池は既にその最大の理論エネルギー密度に近づいているので、貯蔵容量をさらに高めることは一方では非常に限られており、他方では、もしそうであったとしても、非常に高い労力がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、高いエネルギー密度を有し、且つ簡単且つ安価に製造もしくは実施される、電池用伝導性複合材料の製造方法、伝導性複合材利用、並びに伝導性複合材料を備えた電池を示すことである。
【0009】
本発明のさらなる課題は、電池用伝導性複合材料を製造するための代替的な方法、代替的な伝導性複合材料、並びに伝導性複合材料を備えた代替的な電池を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施態様において、本発明は、上述の課題を、電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料の製造方法であって、以下の段階:
・ 以下
・ 少なくとも1つのイオン伝導性の第1の物質、殊に支持塩、および可塑性母材、殊にポリマーの形態での可塑性母材、および/または
・ 少なくとも1つの高分子電解質
を含む、可塑性のイオン伝導性電解質マトリックスを準備する段階、
・ イオン伝導性粒子の形態でのイオン伝導性の第2の物質を準備する段階、
・ 前記イオン伝導性粒子を前記電解質マトリックスに導入し、前記イオン伝導性粒子と前記電解質マトリックスとの混合物を製造する段階、
・ 前記混合物を均質化する段階
を含み、
前記混合物の均質化を、均質化装置を用いた、混練、押出および/または粉砕(Walzen)のリストから選択される少なくとも1つの方法を用いて行う、
前記方法で解決する。
【0011】
さらなる実施態様において、本発明は、上述の課題を、好ましくは請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法によって製造された、電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料であって、
・ 少なくとも1つの可塑性母材、少なくとも1つのイオン伝導性の第1の物質、殊に支持塩、および/または
・ 少なくとも1つの高分子電解質
を含む可塑性のイオン伝導性の電解質マトリックス、および
イオン伝導性粒子の形態での少なくとも1つのイオン伝導性の第2の物質
を含む、可塑性のイオン伝導性の電解質マトリックスを含み、前記イオン伝導性粒子は前記電解質マトリックス中で、全てのイオン伝導性粒子の少なくとも90%、有利には全てのイオン伝導性粒子の少なくとも95%が互いに少なくとも100nm、有利には少なくとも150nm、殊に少なくとも175nm、有利には少なくとも200nmの最小間隔を有し、且つ/または前記イオン伝導性粒子の粒子充填度が前記電解質マトリックスの総体積に対して少なくとも1体積%、有利には少なくとも1.5体積%、殊に少なくとも2体積%を有するように均質化されている、前記複合材料によって解決する。
【0012】
さらなる実施態様において、本発明は、上述の課題を、請求項17から20までのいずれか1項に記載の伝導性複合材料を含む電池、殊に全固体電池によって解決する。
【0013】
固体電池とも称される全固体電池は、殊に本明細書において、有利には請求項において、電極も電解質も固体材料からなる蓄電池として理解されるべきである。
【0014】
リチウムイオン電池は、殊に本明細書において、有利には請求項において、電気化学的セルの3つ全ての相においてリチウム化合物に基づく蓄電池として理解されるべきである。
【0015】
ポストリチウムイオン電池とも称されるリチウム電池は、殊に本明細書において、有利には請求項において、リチウムまたは後続の材料が負極における活物質として使用される一次電池と理解されるべきである。
【0016】
「高分子電解質」との用語は、殊に本明細書において、有利には請求項において、各々の繰り返し単位にイオン解離性基を有するポリマーと理解されるべきである。高分子電解質は、多価酸と多価塩基とに区分できる。無機または有機の多価酸から、解離の際にプロトンを脱離して多価アニオンが生じ、多価塩基から多価カチオンが生じる。「高分子電解質」との用語は、置換基として荷電した金属錯体を含有するポリマーも含む。
【0017】
それによって達成される利点の1つは、それによって伝導性複合材料のイオン伝導率が本質的に高められることができ、そのことはさらに、電池の最大の可能な出力能力を高めることを可能にすることである。さらなる利点は、前記製造方法は簡単且つ安価に実施されることである。従来技術から公知の方法とは異なり、本発明の実施態様による方法では、溶剤の使用を省くことができる。このことから、溶剤残留物が材料中に残らないという利点が生じる。
【0018】
有利なさらなる構成によれば、前記混合物を均質化装置内で能動的に加熱および/または冷却して、少なくとも所定の時間にわたって電解質マトリックスの少なくとも本質的に一定の温度と塑性状態とをもたらす。能動的な加熱もしくは能動的な冷却の利点は、均質化の際に前記混合物の本質的に一定の温度を保持することができ、そのことが上記の方法を用いた前記混合物の均質化を改善することである。
【0019】
さらに有利なさらなる構成によれば、イオン伝導性粒子を電解質マトリックス中に導入する前および/または導入する間に、電解質マトリックスが塑性状態にされ、均質化装置を用いて均質化、殊に混練される。この利点は、イオン伝導性粒子の電解質マトリックス中への速やか且つ一様な分布が達成されることである。
【0020】
さらに有利なさらなる構成によれば、均質化の前に電解質マトリックスを粒子の形態で準備し、混合物の粒子の少なくとも1つの分散混合プロセスが実施される。それによって達成される利点の1つは、それによって混合物の均質化のさらなる改善が達成され得ることである。
【0021】
さらに有利なさらなる構成によれば、少なくとも1つの分散混合プロセスは、混合物の均質化よりも低い温度で実施される。この利点は、一方ではエネルギーが節約され、他方では粒子の一様な混合が提供され、そのことにより伝導性複合材料の伝導率が本質的に改善されることである。
【0022】
さらに有利なさらなる構成によれば、混合物の均質化は、8時間未満、好ましくは5時間未満、特に好ましくは2時間未満、殊に1時間未満、好ましくは0.5時間未満の時間、実施される。これにより、可能な限り高い均質化が、高い資源効率と共に達成される。
【0023】
さらに有利なさらなる構成によれば、可塑性母材の粒子と、イオン伝導性粒子との第1の分散混合プロセスが実施されて部分混合物が得られ、少なくとも1つのイオン伝導性物質の粒子と、前記部分混合物の粒子との第2の分散混合プロセスが実施される。この際の利点もまた、2つの分散混合プロセスを用いて特に簡単に、特に均質な(全体の)混合物が提供され、ひいては伝導性複合材料の高い伝導率が提供されることである。
【0024】
さらに有利なさらなる構成によれば、イオン伝導性粒子はセラミック粒子、殊にガラスセラミック粒子の形態で準備される。セラミック粒子、殊にガラスセラミック粒子の形態でのイオン伝導性粒子の利点は、セラミック粒子は純粋なポリマー系電解質マトリックスよりも低い熱膨張係数を有することである。これに関する違いは桁違いであり得る。これは、イオン伝導性(ガラス)セラミック粒子がポリマー電解質中に組み込まれてハイブリッド電解質を構成する場合、温度変化に際して、ポリマー電解質に基づく電池要素の形状の変化が明らかに少ないことをもたらす。しかし同時に柔軟性は確保されたままであり、そのことは、焼結によって製造される従来公知の純粋な(ガラス)セラミック固体電解質には該当しない。さらに、それによって機械的に安定な薄膜も可能になり、それは有害なリチウムデンドライトの形成および貫入に対して安定である。さらなる利点は、これは広い範囲にわたって電気化学的に安定であり、さらに、好ましい温度範囲において、例えば室温で高い伝導率を有することである。
【0025】
さらに有利なさらなる構成によれば、前記セラミック粒子は、以下のリスト:
・ P25
・ TiO2
・ Cr23
・ Al23
・ Ga23
・ Li2O、
・ Fe23
・ GeO2
・ ZrO2
・ Ta25
・ Nb25
・ La23
・ SiO2
・ Gd23
・ Y23
・ B23
・ 硫黄、
・ ハロゲン化物、または
・ 窒素
からの物質の少なくとも1つを有するセラミックに基づいて選択される。
【0026】
この利点は、それによって費用、使用、および外部条件に関する柔軟性が高められることである。さらなる利点は、これらの物質を有するセラミック粒子は水または空気湿分の影響に対して耐性があり、且つ大部分が安価であることである。
【0027】
さらに有利なさらなる構成によれば、前記セラミック粒子はリチウム系ガラスセラミック粒子の形態で準備される。リチウム系ガラスセラミック粒子の利点は、これが室温で高い伝導率を有し、且つ同時に電気化学的に安定であることであり、リチウムイオンの輸率が1であるのに対して従来のポリマー電解質では、これは通常0.5を明らかに下回り、つまり、測定された伝導率は前述の場合ではリチウムイオン輸送によって100%となり、後述の場合では50%未満にしかならない。
【0028】
さらに有利なさらなる構成によれば、リチウム系ガラスセラミック粒子は、少なくとも1つの以下のイオン伝導体:
・ ガーネット型構造を有するイオン伝導体、好ましくはリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)、
・ NaSICon構造を有するイオン伝導体、好ましくはリン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)またはリン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)、またはそれらの混合酸化物、
・ ペロブスカイト構造を有するイオン伝導体、好ましくはチタン酸リチウムランタン(LLT)、
・ スピネル構造を有するイオン伝導体、および/または
・ LiSICon構造を有するイオン伝導体、好ましくはゲルマニウム酸リチウム亜鉛
を含み、且つ、ポリエチレンオキシドを含む可塑性母材が準備される。それによって達成される利点の1つは、それによって、室温で高い伝導率を有し且つ同時に電気化学的に安定である単純な伝導性複合材料が提供されることである。さらに、高められた機械的柔軟性が提供され、そのことは一方ではセル要素/電池要素の(例えばロール・ツー・ロール法を介した)製造の際に有利である。他方では、これによって、通常の稼働における電池の充放電の際にカソードおよびアノードにおける活物質の体積変化を必然的に伴うような形状変化、ひいてはセル内の応力も、機械的に大いに補償され得る。これは、稼働に際して高められた信頼性をみちびく。従って、このように提供された伝導性複合材料、殊にハイブリッド電解質は、一方では高められた伝導率と電気化学的安定性とを有し、且つ他方ではポリマー系の対応物の良好な機械的柔軟性を有する。
【0029】
さらに有利なさらなる構成によれば、以下のリスト:
・ スルホニルイミドのリチウム塩、有利にはLiN(FSO22(LiFSI)、LiN(SO2CF32(LiTFSI)および/またはLiN(SO2252(LiBETI)、
・ LiAsF6
・ LiClO4
・ LiSbF6
・ LiPtCl6
・ LiAlCl4
・ LiGaCl4
・ LiSCN、
・ LiAlO4
・ LiCF3CF2SO3
・ Li(CF3)SO3(LiTf)、
・ LiC(SO2CF33
・ リン酸塩系リチウム塩、有利にはLiPF6、LiPF3(CF33(LiFAP)およびLiPF4(C24)(LiTFOB)、
・ ホウ酸塩系リチウム塩、有利にはLiBF4、LiB(C242(LiBOB)、LiBF2(C24)(LiDFOB)、LiB(C24)(C34)(LiMOB)、Li(C25BF3)(LiFAB)およびLi21212(LiDFB)、
・ スルホニルイミドのリチウム塩、有利にはLiN(FSO22(LiFSI)、LiN(SO2CF32(LiTFSI)および/またはLiN(SO2252(LiBETI)
から選択される少なくとも1つの支持塩を有する第1のイオン伝導性物質が準備される。
【0030】
この利点は、それによって費用、使用、および外部条件に関する柔軟性が高められることである。
【0031】
さらに有利なさらなる構成によれば、前記リチウム塩のアニオンは、PF6 -、BF4 -、SbF6 -、AsF6 -、C49SO3 -、ClO4 -、AlO2 -、AlCl4 -、(Cx2x+1SO3- [前記式中、0≦x<1]、および/または(Cx2x+1SO2)(Cy2y+1SO2)N- [前記式中、0≦x<1且つ0≦y<1]を含む群から選択される。ここで、複数のアニオンを選択もしくは組み合わせることもできる。この利点は、費用、使用、外部条件に関する柔軟性が高められることである。
【0032】
さらに有利なさらなる構成によれば、前記リチウム塩は、LiClO4、LiBF4、リチウムビス(オキサレート)ボレート、リチウム-ジフルオロ(オキサレート)ボレート、LiSO3CF3、リチウム-2-ペンタフルオロエトキシ-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、LiN(FSO22および/またはLiN(SO2CF32、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウム-テトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウム-ジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)、LiSO3CF3(LiTf)、リチウム-2-ペンタフルオロエトキシ-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート(LiSO324OC25)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(FSO22、LiFSI)および/またはリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiN(SO2CF32、LiTFSI)を含む群から選択される。ここで、複数の物質を組み合わせる、もしくは一緒に選択することもできる。この利点は、それによって費用、使用、外部条件に関する柔軟性が高められることである。
【0033】
さらに有利なさらなる構成によれば、イオン伝導性粒子および電解質マトリックスの粒子は予め乾燥される。それによって達成される利点の1つは、それによって、粒子表面に残留する水が除去され、そのことが分散混合プロセスの際の付着を防ぎ、ひいては効果的な混合が可能になることである。さらなる利点は、それによって、電池内で水素元素が形成する確率が減少するので、例えば、電池の望ましくない膨張による、ガス状水素による電池の破損が大いに減らされることである。これによって、電池の信頼性が高められる。
【0034】
さらに有利なさらなる構成によれば、イオン伝導性粒子は電解質マトリックス中に1%~30%、殊に2%~20%、有利には3%~10%、殊に4%~9%の体積割合で導入される。この利点は、伝導性複合材料中でイオン伝導性粒子を効果的に使用して、その高い伝導率を提供することである。さらなる利点は、伝導性複合材料の柔軟な取り扱い、並びにその良好な製造加工性である。
【0035】
伝導性複合材料の有利なさらなる構成によれば、前記イオン伝導性粒子はガラスセラミック粒子、殊にリチウム系ガラスセラミック粒子、有利にはリン酸リチウムアルミニウムチタン粒子および/またはリチウムランタンジルコニウム酸化物粒子を含む。それによって達成される利点の1つは、それによって、室温で高い伝導率を有し且つ同時に電気化学的に安定である単純な伝導性複合材料が提供されることである。
【0036】
伝導性複合材料のさらに有利なさらなる構成によれば、前記可塑性母材は少なくとも1つのポリマー、殊にポリエチレンオキシドを含む。少なくとも1つのポリマーとして、例えばポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、三官能性ウレタンで架橋されたポリエチレンオキシド、ポリ(ビス(メトキシ-エトキシ-エトキシド))ホスファゼン(MEEP)、二官能性ウレタンで架橋されたトリオール型ポリエチレンオキシド、ポリ((オリゴ)オキシエチレン)メタクリレート-co-アルカリ金属メタクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリロニトリル(PMAN)、ポリシロキサン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリフッ化ビニリデンまたはポリ塩化ビニリデン並びにそれらのコポリマーおよび誘導体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化エチレン-プロピレン)、アクリレート系ポリマー、それらの縮合または架橋された組み合わせ、および/またはそれらの物理的混合物を、個々に、または組み合わせて使用できる。この利点は、それによって費用、使用、および外部条件に関する柔軟性が高められることである。
【0037】
本発明のさらに重要な特徴および利点は、従属請求項から、図面から、および図面を用いてそれに付属する図面の説明からもたらされる。
【0038】
前述の、および以下で説明される特徴は、それぞれ示された組み合わせのみならず、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせ、または単独でも適用可能であることは自明である。
【0039】
本発明の好ましい態様および実施態様を図面に示し、以下の説明においてより詳細に説明し、ここで、同じ符号は同じまたは類似の、または機能的に同じ構成部分または要素に関する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、加熱(図1a)および冷却(図1b)の間の、公知の伝導性材料および本発明の実施態様による伝導性材料の伝導率についてのグラフを示す。
図2図2は、加熱(図2a)および冷却(図2b)の間の、公知の伝導性材料および本発明の実施態様による伝導性材料の伝導率についてのグラフを示す。
図3図3は、本発明の実施態様による、タンブルプロセス、もしくは混練プロセスの使用後の伝導率の比の、2つの異なるイオン伝導性粒子の粒子充填度依存性のグラフを示す。
図4図4は、本発明の実施態様による、タンブルプロセスもしくは混練プロセスの使用後のLLZOの形態でのイオン伝導性粒子について測定された伝導率の粒子充填度依存性のグラフを示す。
図5図5は、本発明の実施態様による、タンブルプロセスもしくは混練プロセスの使用後のLATPの形態でのイオン伝導性粒子について測定された伝導率の粒子充填度依存性のグラフを示す。
図6図6は、本発明の実施態様による方法の段階を示す。
【実施例
【0041】
それぞれの伝導率を測定するために、まず、粉末形態で存在するLLZOおよびLATP材料から焼結されたディスクを製造し、PEO-LiTFSi膜とそれぞれのディスクとの間の接触抵抗を測定した。その後、イオン伝導率を、種々の体積割合のイオン伝導性粒子LATPおよびLLZOに関して測定した。次いで、そのように得られたハイブリッド電解質を、非伝導性のSiO2系ポリマー材料と、その伝導率に関して比較した。
【0042】
実験
原材料:
詳細には、Li7La3Zr212-LLZO粉末およびLi1.3Al0.3Ti1.7312-LATP粉末は公知の工業的な方法で製造された。ここで、前記粉末はアモルファス相も高伝導性の結晶相もコア内に有する。この場合、アモルファス相はリチウムイオンに基づく伝導性を促進することができる。さらに、これはそれぞれのポリマーとの適合性を改善できる。アモルファス相はさらに、純粋な結晶物質に比して、物質の密度を改善する。
【0043】
以下の実験については、密度4.9g/cm3を有するLLZO粒子と、密度2.9g/cm3を有するLATP粒子とを使用した。殊にLLZO粒子は非常に吸湿性なので、実験は乾燥室内、または例えばアルゴン充填した容器、グローブボックスなどの不活性ガスを有するところのいずれかで実施された。有利なことに、支持塩およびポリマーも吸湿性である。
【0044】
参照として、同じポリマーマトリックスではあるが、AEROSIL(登録商標) R 812 S(製造元Evonik)として入手した疎水性の熱分解法SiO2製の非伝導性粒子の形態での充填材料で置き換えもしくは混合したものを利用した。BET法を用いて測定された表面積は195m2/g~245m2/gであった。SiO2ナノ粒子は水の割合0.5%および炭素の割合3.0%~4.0%を有した。
【0045】
組成式H(C24O)nOHを有する可塑性母材としてのポリエチレンオキシド、略してPEOは、分子量600,000g/molを有し、且つPOLYOX WSR 205として製造元Dowから入手した。リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiN(SO2CF32 LiTFSIは、製造元Solvionikから入手し、ポリマー電解質もしくは第1のイオン伝導性物質として使用した。
【0046】
処理中の周囲条件:
全ての分散混合プロセスは乾式混合プロセスとして、乾燥室内、温度約20℃且つ露点-45℃~-55℃で実施された。全ての成分を混合する前に、これらを真空チャンバ内、40℃で数時間乾燥させて、まだ存在する可能性のある残留水を粒子表面から確実に除去した。
【0047】
サンドイッチ状複合電解質の製造および評価:
さらに、LLZO粒子およびLATP粒子からプレスしてペレットにし、引き続き焼結して、均質で密なディスクを製造した。前記ディスクを、SIC#3600研磨紙を用いて磨いた。引き続き、それぞれのディスクの両側にPEO-LiTFSI膜および銅箔電極を配置して、サンドイッチ状複合電解質を製造した。その際、均質な電場を得るために、ポリマー膜の直径および銅箔電極の直径を前記ディスクの直径に合わせた。引き続き、前記サンドイッチ状複合電解質を、液圧プレス内で数分間、少なくとも150kPa且つ少なくとも50℃でプレスして、PEO-LiTFSI電解質マトリックスと焼結されたディスクおよび銅箔電極との良好な濡れもしくは付着をもたらした。次いで、この全体の系の厚さを測定して、PEO-LiTFSI電解質マトリックス、焼結されたディスク、および銅箔電極間での可能性のある開放気孔率の減少を特定した。次いで、2つの銅箔電極の厚さを差し引いて、前記サンドイッチ状複合電解質の厚さを特定した。
【0048】
タンブラー内での混合による複合電解質の製造およびその評価のための準備:
粉末混合物を均質化するために、全ての物質を分散混合プロセスを用いて、振とうミキサーを毎分10~100回転の回転速度で用いて予め混合した。ここで、WAB社のTubula T2Z型のタンブルミキサーもしくは振とうミキサーを使用した。第1の段階において、PEOと、それぞれの酸化物充填材料、つまりSiO2粒子、LATP粒子またはLLZO粒子を数分間混合した。次いで、第2の段階において、支持塩を添加し、さらに数分間混合して、成分の均質な分布を達成した。
【0049】
イオン伝導率を分析するために、それぞれの粉末をプレスして直径16mmを有するペレットにした。このために、MAASEN MP 250型のラボ用プレスを使用した。プレス力を少なくとも100kNに設定することにより、少なくとも500MPaの圧力が達成された。
【0050】
混練機内での複合電解質の製造およびその評価のための準備:
酸化物粒子を溶融ポリマー中で分散させるために、予めタンブルミキサーを用いて混合された粉末混合物を混練機内で均質化した(ThermoFisher社の混練機HAAKE PolyLab Rheomix 610を使用)。ここで、混練チャンバは50℃より上に加熱された。酸化物粒子を混練チャンバに導入する間に、回転速度を1桁の数のrpmに低下し、混練機の作業容積が最大50%満たされるまで保持した。引き続き、回転速度を50rpmより上に、毎分数rpm上昇させて高めた。全混練時間は数分であった。
【0051】
引き続き、溶融されたハイブリッド電解質材料を取り出し、カレンダー装置を用いてカレンダー加工した(Saueressig社のラボ用カレンダーを使用)。カレンダーロールは100℃より上に加熱され、その周速度は毎分0.25m未満に設定された。ここで、対向する2つのロールの間の隙間は、約500マイクロメートルの厚さを有する自立型のハイブリッド電解質層を可能にするように留意された。次いで、打ち抜き装置を用いて、直径16mmを有するハイブリッド電解質ディスクを打ち抜いた。
【0052】
PEO-LITFSI電解質マトリックスと種々のガラスセラミック粒子充填剤とを含むハイブリッド電解質のイオン伝導率を測定するために、直径16mmを有するハイブリッド電解質ディスクを、CR2032型の標準の電池ハウジングマウントに装填した。伝導率測定の間、ハウジング内で一定の圧力を保持するために特殊鋼のスペーサー並びに相応の皿ばねを利用した。次にさらに、電解質マトリックスのPEOの結晶化を回避するため、つまり再現性のある結果を得るために、電池ハウジングを、ハイブリッド電解質ディスクと共に炉内で70℃より上に加熱した(BINDER社の炉を使用)。
【0053】
評価の際の測定パラメータ:
測定値を記録するために、ZAHNERおよびZEHNIUM社の装置を用いて電圧振幅10mV且つ周波数0.1~4×107Hzで、定電位の電気化学的インピーダンス分光法を使用した。推移を調べるために、rhd instruments社のソフトウェアRelaxIS 3を使用した。
【0054】
粒径分布を調べるために、Panalytical社の装置X’Pert Pro MPD回折計を用いてX線回折測定を実施し、同社のソフトウェアHighScorePlusを用いて結果を精緻化した。前記ディスクから断片を作製し、ZEISS社のNEO 40型の走査型電子顕微鏡を用いて、電圧15kV~20kVで相応の写真を撮影した。引き続き、粒径分布を3P INSTRUMENTS社のCilas 1064を用いて調べた。
【0055】
(ガラス)セラミックのイオン伝導体粒子を適用しない参照:
PEO-LiTFSI電解質マトリックスの集合または「凝結」が生じることを回避するために、既に上述したとおり、比較として少量の非伝導性SiO2ナノ粒子を添加し、伝導性粒子LLZOおよびLATPと比較するための参照として利用した。
【0056】
実験結果
図1は、加熱(図1a)および冷却(図1b)の間の、公知の伝導性材料および本発明の実施態様による伝導性材料の伝導率についてのグラフを示す。
【0057】
詳細には、図1は部分図1aもしくは1bにおいて、温度(それぞれ上の横軸)もしくは温度の逆数(それぞれ下の横軸)に対してプロットされた絶対伝導率をS/cmで示す。ここで、
・ 符号104は、膜の形態での公知のイオン伝導性複合材料についての参照(以下で参照膜として示される)として、充填材料としての2.2体積%のSiO2を、銅電極と一緒に備えたPEO-LiTFSI電解質マトリックスについての伝導率の推移を示し、
・ 符号103は、銅電極を備えたPEO-LATP-PEO複合材料についての伝導率の理論上の推移を示し、
・ 符号102は、銅電極を備えたPEO-LATP-PEO複合材料について測定された伝導率の推移を示し、且つ、
・ 符号101は、金電極を備えた焼結されたLATPディスクについて測定された伝導率の推移を示す。
【0058】
ここで、図1aは加熱プロセスの間の、図1bは冷却プロセスの間の、それぞれの伝導率の推移を記述する。電解質マトリックスのPEOは融点未満では結晶化する傾向があるので、図1aおよび1bのインピーダンススペクトルもしくは伝導率は別々に記載された。ポリマーの伝導率における相応の不確実性は、相応の広い推移104によって視覚化される。伝導率101、102、103のエラーバーはそれぞれの測定点において5%未満である。
【0059】
図2は、加熱(図2a)および冷却(図2b)の間の、公知の伝導性材料および本発明の実施態様による伝導性材料の伝導率についてのグラフを示す。
【0060】
詳細には、図2は部分図2aもしくは2bにおいて、温度(それぞれ上の横軸)もしくは温度の逆数(それぞれ下の横軸)に対してプロットされた、温度に依存する絶対伝導率をS/cmで示す。ここで、
・ 符号104は、膜の形態での公知のイオン伝導性複合材料についての参照(以下で参照膜として示される)として、充填材料としての2.2体積%のSiO2を、銅電極と一緒に備えたPEO-LiTFSI電解質マトリックスについての伝導率の推移を示し、
・ 符号103は、銅電極を備えたPEO-LLZO-PEO複合材料についての伝導率の理論上の推移を示し、
・ 符号102は、銅電極を備えたPEO-LLZO-PEO複合材料について測定された伝導率の推移を示し、且つ、
・ 符号101は、金電極を備えた焼結されたLLZOディスクについて測定された伝導率の推移を示す。
【0061】
ここで、図2aは加熱プロセスの間の、図2bは冷却プロセスの間の、それぞれの伝導率の温度に依存する推移を記述する。電解質マトリックスのPEOは融点未満では結晶化する傾向があるので、ここでもまた、図2aおよび2bのインピーダンススペクトルもしくは伝導率は別々に記載された。ポリマーの伝導率の伝導率における相応の不確実性は、相応の広い推移104によって視覚化される。伝導率101、102、103のエラーバーはそれぞれの測定点において5%未満である。
【0062】
図3は、本発明の実施態様による、タンブルプロセス、もしくはタンブルプロセスおよび引き続く混練プロセスの使用後の伝導率の比の、2つの異なるイオン伝導性粒子の粒子充填度依存性のグラフを示す。
【0063】
詳細には、図3は、伝導率の比の、それぞれ混練プロセスを用いて1回混合され、タンブル混合プロセスを用いて1回混合されたLATPおよびLLZOの、PEO-LiTFSi電解質マトリックス中への充填度依存性の比較を示す。タンブル混合プロセスに際し、充分な均質化および電極との相互接続を可能にするために、伝導率の測定は80℃で72時間後に実施された。
【0064】
曲線200と201とを比較すると、同じ混合プロセス(混練またはタンブル)を使用する場合、LLZO粒子の追加は、同じ充填度では、本質的に2体積%以降で、LATP粒子の添加よりも、伝導性複合材料中での顕著に高い伝導率をもたらすことがわかる。また、それぞれの混合プロセスの観点から伝導率の比を比較すると、ここで示される0~20体積%の範囲全体にわたって、混練はタンブル混合プロセスよりも本質的に高い伝導率を可能にする。
【0065】
図4は、本発明の実施態様による、タンブルプロセスもしくは混練プロセスの使用後の、LLZO粒子が添加された伝導性複合材料の測定された伝導率の粒子充填度依存性のグラフを示し、且つ図5は、本発明の実施態様による、タンブルプロセスもしくは混練プロセスの使用後の、LATP粒子が添加された伝導性複合材料の測定された伝導率の粒子充填度依存性のグラフを示す。
【0066】
詳細には図4は、混練プロセスおよびタンブル混合プロセスを用いて複合材料のPEO-LiTFSiマトリックス中に混合されたLLZO粒子を備えた伝導性複合材料について測定された絶対伝導率を示し、図5はLATP粒子について相応して測定された相応の絶対伝導率を示す。
【0067】
LATP粒子を使用する場合もLLZO粒子の場合も、達成される伝導率301は、混練混合プロセスを使用する場合、タンブル混合プロセスを使用する場合(符号300)よりも高い。図4におけるLLZO粒子の使用とは対照的に、タンブル混合プロセスを使用する場合でも伝導率300は最大5体積%まで最初は上昇するが、次いで上方ですでに低下し、それに対して混練プロセスを使用する場合、伝導率301は最大10体積%までさらに上昇し、その後初めて低下する。
【0068】
図6は、本発明の実施態様による方法の段階を示す。
【0069】
詳細には、図6は、電池、殊に全固体電池など用の伝導性複合材料の製造方法の段階を示す。
【0070】
ここで、前記方法は以下の段階を含む:
第1の段階S1において、少なくとも1つのイオン伝導性の第1の物質、殊に支持塩と、可塑性母材、殊にポリマーの形態での可塑性母材とを含む可塑性のイオン伝導性電解質マトリックスの準備を行う。代替的または追加的に、少なくとも1つの高分子電解質が電解質マトリックスを構成してもよい。
【0071】
さらなる段階S2において、イオン伝導性粒子の形態での第2のイオン伝導性の物質の準備を行う。
【0072】
さらなる段階S3において、前記イオン伝導性粒子を前記電解質マトリックス中に導入して、前記イオン伝導性粒子と前記電解質マトリックスとの混合物の製造を行う。
【0073】
さらなる段階S4において、前記混合物の均質化を行い、ここで、前記混合物の均質化は、均質化装置を用いた、混練、押出、および/または粉砕のリストから選択される少なくとも1つの方法を用いて行われる。
【0074】
要約すると、本発明の少なくとも1つの実施態様は、以下の利点の少なくとも1つを有する:
・ 電解質マトリックス内でのイオン伝導性粒子の良好な均質性。
【0075】
・ 高い伝導率、殊に非伝導性充填材料を用いた参照に比して2倍高い伝導率、
・ 殊に追加的な溶剤を用いない、簡単な製造。
【0076】
本発明を好ましい実施例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、多様な方式で変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
101 伝導率の推移
102 伝導率の推移
103 伝導率の推移
104 伝導率の推移
200 混練機/タンブラーの伝導率の比較-LATP
201 混練機/タンブラーの伝導率の比較-LLZO
300 伝導率-混練機
301 伝導率-タンブラー
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】