(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】カーボンナノコーン機能化針先及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/18 20170101AFI20230630BHJP
B82B 3/00 20060101ALI20230630BHJP
H01J 37/073 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C01B32/18
B82B3/00
H01J37/073
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577165
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2021072144
(87)【国際公開番号】W WO2022151349
(87)【国際公開日】2022-07-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512298672
【氏名又は名称】国家納米科学中心
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CENTER FOR NANOSCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.11 Zhongguancun Beiyitiao,Haidian District Beijing 100190,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 健▲勲▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 宇亮
(72)【発明者】
【氏名】葛 逸▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲盧▼ 明明
(72)【発明者】
【氏名】王 嘉豪
【テーマコード(参考)】
4G146
5C101
【Fターム(参考)】
4G146AA07
4G146AB08
4G146AD29
4G146BA04
4G146CB19
4G146CB21
4G146CB34
5C101BB01
5C101DD06
5C101DD13
5C101DD14
5C101DD15
(57)【要約】
本願は、カーボンナノコーン機能化針先を提供し、針先ベースの先端はカーボンナノコーンで装飾され、前記カーボンナノコーンは層状グラファイト構造からなる錐状のカーボンナノ材料であり、前記針先ベースの材料は、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、チタンから選ばれた1つ又は複数の金属であり、前記カーボンナノコーンのテール端と前記針先ベースは共有結合の界面接続を形成し、前記カーボンナノコーンの尖端の配向は針先全体の中心軸の配向と一致している。本願は、カーボンナノコーン機能化針先の製造方法を更に提供する。本願に係るカーボンナノコーンの尖端の配向は針先全体の中心軸の配向と重なり、電子放出中のカーボンナノコーン針先のアクティブな放出サイトの制御性が確保され、製造されたカーボンナノコーン機能化針先は、潔浄で完全なグラファイト層状構造のカーボンナノコーン尖端を備えており、当該針先構造の特徴により、尖端表面の汚染物質による電子放出ノイズ、制御不能な放出電流による針先構造の破損ひいては故障が回避される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針先ベースの先端はカーボンナノコーンで装飾され、
前記カーボンナノコーンは層状グラファイト構造からなる錐状のカーボンナノ材料であり、前記針先ベースの材料は、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、チタンから選ばれた1つ又は複数の金属であり、前記カーボンナノコーンのテール端と前記針先ベースは共有結合の界面接続を形成し、前記カーボンナノコーンの尖端の配向は針先の中心軸の配向と一致していることを特徴とするカーボンナノコーン機能化針先。
【請求項2】
前記カーボンナノコーンの尖端の表面は潔浄であり、且つ、グラファイト層の構造は完全であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノコーン機能化針先。
【請求項3】
針先ベースの先端にカーボンナノコーンを組み立てるステップS101と、
針本体を別の金属体に接触させ、前記針本体と前記金属体との間に瞬時電流を印加して、前記カーボンナノコーンの外側グラファイト層を汚染物質とともに除去するステップS102とを含むことを特徴とするカーボンナノコーン機能化針先の製造方法。
【請求項4】
ステップS102では、前記針本体及び前記別の金属体はいずれも、マイクロナノ操作アームに固定され、顕微鏡観察下で前記操作アームによりそれらの移動を制御することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップS102では、
前記針本体のカーボンナノコーン尖端が前記別の金属体と接触して電気経路を形成するように制御することであって、前記瞬時電流の大きさは0.01~10mAであることを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップS102では、
前記針本体の側面が別の金属体と接触して電気経路を形成するように制御することであって、前記金属体と前記針本体との接触位置は、針先の頂端からの距離が0.01~1μmであり、前記瞬時電流の大きさは1~100mAであることを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
針先ベースの先端にカーボンナノコーンを組み立てるステップS201と、
前記針先を目標温度に加熱し、活性物質を導入して、前記針先の表面の汚染物質と選択的に反応させて、前記カーボンナノコーン機能化針先を浄化するステップであって、前記活性物質は弱酸化剤であるステップS202とを含むカーボンナノコーン機能化針先の製造方法。
【請求項8】
前記弱酸化剤は二酸化炭素又は水であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップS202では、針本体及び別の金属体はいずれも、マイクロナノ操作アームに固定され、顕微鏡観察下で前記操作アームによりそれらの移動を制御することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップS202では、
前記針本体の側面を前記別の金属体に接触させ、前記針本体と前記金属体との間に連続電流を印加し、針先尖端を局所的に高温にして、活性物質と反応させることを更に含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップS202では、
前記針先を針先挟持装置に取り付け、管式真空炉に入れ、二酸化炭素又は水蒸気を導入して目標温度まで昇温して、前記針先の表面の汚染物質を除去することを更に含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
針先ベースの先端にカーボンナノコーンを組み立てることは、
マイクロナノ操作アームを用いて前記針先ベースの先端が前記カーボンナノコーンの内部に入り込むように制御し、前記針先ベースの先端に前記カーボンナノコーンを付着させ、前記針先ベースを別の金属体に接触させ、前記金属体と前記針先ベースとの間に電圧を印加し、前記針先ベースに電流を流して、前記針先ベースの先端部位を加熱して、付着された前記カーボンナノコーンと結合させることを含むことを特徴とする請求項3又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、金属材料機能化の技術分野に関し、特に、カーボンナノコーン機能化針先及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出源は、真空電子機器のコア部品であり、X線源、マイクロ波源、質量分析計の電離チャンバ、電界放出ディスプレイなどの分野で広く使用されている。そのうち、高輝度でビーム電流の大きな電子源は、電子顕微鏡や電子ビーム露光装置などの光源として利用できる。
【0003】
近年、材料科学とナノテクノロジーの活発な発展により、新型電子放出源の研究が大幅に促進されている(非特許文献1-3参照)。カーボンナノチューブは、その特殊な構造と特性から電界放出型電子源への利用が広く期待されている。De Jongeらの研究に代表される初期の研究結果は、カーボンナノチューブ針先が低い析出電圧で、高輝度で単色性が優れた電子ビームを得ることができることを示した(非特許文献4,5参照)。ただし、カーボンナノチューブ針先の製造方法は、制御性が低く、カーボンナノチューブの尖端(有効な電子放出サイト)の構造と配向を確保できないと共に、カーボンナノチューブと金属W針先本体の間の物理的な接着結合は確実でない。これらの問題により、カーボンナノチューブ針先を実用的な電子銃として使用することができなくなった。2016年、日本国立研究開発法人物質・材料研究機構のZhangらは、LaB6単結晶ナノワイヤを製造して、その電界放出特性を特徴化し、優れた電子ビーム単色性と放出安定性を示した(非特許文献2参照)。しかし、カーボンナノチューブと同様に、一次元ナノワイヤは、金属針先本体に組み立てる製造中に、ナノワイヤ尖端の配向と、ナノワイヤと針先本体との間の界面構造の機械的及び電気的特性を確保することは困難である。2018年、シンガポール国立大学のKhursheedのグループは、化学蒸着法を使用してNi針先の表面にグラフェンを成長させ、その機能性針先の極めて低い表面仕事関数と高い電子ビーム輝度を実証した(非特許文献6参照)。ただし、Ni針先の尖端表面(非単一結晶面)に成長したグラフェンは多数の構造欠陥の存在を避けることができないため、当該機能化針先の電子放出ビームは安定性が低く、ノイズが高くなる(約30%)。まとめると、ナノ材料は、電子銃の開発に豊富な材料を提供したが、ナノ材料の機能化電子銃の応用を実現するためには、針先の製造方法の正確な制御を実現し、界面構造の性能、針先尖端の配向、及び尖端結晶構造の完全性と清浄性を確保する必要がある。
【0004】
ナノ材料機能化針先の製造方法は、主に直接成長法とマイクロナノ組み立て法の2つの方法に分けられる。直接成長法とは、針先のベース上にナノ材料を直接合成・成長させる方法であるが、現状ではナノ材料の長さや径、配向などのパラメータを制御することはできない。マイクロナノ組み立て法は、顕微鏡下で高精度な三次元マニピュレーション装置を操作し、プローブの精密な動きを制御することで、特定のナノ材料と針先ベースの組み立てを実現するものであり、この方法は、制御性が高く、ナノ材料の構造と配向を制御するのに有利である。本発明者らは、マイクロナノ操作とその場電流加熱とを組み合わせた方法を使用することによって、テーパ状ナノカーボン材料機能化針先を製造した(特許文献1,2参照)。以前のナノ材料機能化針先と比較して、このテーパ状ナノカーボン材料機能化針先は、ナノ材料針先尖端の配向が針先ベースの軸方向と完全に一致することを確保でき、且つ、ナノ材料と針先ベースとの間の界面は優れた機械的強度と電気伝導性を有する。
【0005】
前述のように、電子銃の針先尖端は、その表面に汚染物質と構造上の欠陥がないようにしなければならない。汚染物質と構造上の欠陥はいずれも、電子ビームの放出が制御不能で、安定性が悪く、さらに電子銃が故障するなどの問題を引き起こす可能性がある。カーボンナノコーンの合成、保存、及びマイクロナノ組み立て中に、表面汚染物質(主に非晶質炭素、炭化水素化合物など)の存在を避けることはできない(
図1を参照)。従って、電子源への応用には、カーボンナノコーン針先の浄化が必要である。上記の公開された特許文献には、カーボンナノコーン尖端の浄化方法が記載されておらず、空気酸化法、湿式水素処理法などの通常の浄化処理方法により、カーボンナノコーンの表面の汚染物質を除去する同時に多数の構造上の欠陥が発生される(非特許文献7参照)。潔浄で尖端構造が完全なカーボンナノコーン針先を得ることができる方法は、これまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許ZL201610091160.0
【特許文献2】米国特許US10823758B2
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】De Jonge, N.; Lamy, Y.; Schoots, K.; Oosterkamp, T. H.: High brightness electron beam from a multi-walled carbon nanotube. Nature 2002, 420, 393-395.
【非特許文献2】Zhang, H.; Tang, J.; Yuan, J.; Yamauchi, Y.; Suzuki, T. T.; Shiya, N.; Nakajima, K.; Qin, L.-C.: An ultrabright and monochromatic electron point source made of a LaB6 nanowire. Nature Nanotechnology 2015.
【非特許文献3】Narasimha, K. T.; Ge, C.; Fabbri, J. D.; Clay, W.; Tkachenko, B. A.; Fokin, A. A.; Schreiner, P. R.; Dahl, J. E.; Carlson, R. M. K.; Shen, Z.; Melosh, N. A.: Ultralow effective work function surfaces using diamondoid monolayers. Nature Nanotechnology 2015.
【非特許文献4】De Jonge, N.: Carbon Nanotube Electron Sources for Electron Microscopes. Adv Imag Elect Phys 2009, 156, 203-233.
【非特許文献5】De Jonge, N.; Bonard, J. M.: Carbon nanotube electron sources and applications. Philos T R Soc A 2004, 362, 2239-2266.
【非特許文献6】Shao, X. Y.; Srinivasan, A.; Ang, W. K.; Khursheed, A.: A high-brightness large-diameter graphene coated point cathode field emission electron source. Nature Communications 2018, 9, 1288.
【非特許文献7】Huang, W.; Xu, J.X.; Lu, X.: Tapered carbon nanocone tips obtained by dynamic oxidation in air. RSC Adv. 2016, 6, 25541.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、従来技術に存在している技術的問題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、一態様では、本願は、カーボンナノコーン機能化針先を提供し、当該カーボンナノコーン機能化針先では、
針先ベースの先端はカーボンナノコーンで装飾され、
前記カーボンナノコーンは層状グラファイト構造からなる錐状のカーボンナノ材料であり、前記針先ベースの材料は、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、チタンから選ばれた1つ又は複数の金属であり、前記カーボンナノコーンのテール端と前記針先ベースは共有結合の界面接続を形成し、前記カーボンナノコーンの尖端の配向は針先の中心軸の配向と一致している。
【0010】
本願の一実施形態によれば、前記カーボンナノコーンの尖端の表面は潔浄であり、且つ、グラファイト層の構造は完全である。
【0011】
別の態様では、本願は、カーボンナノコーン機能化針先の製造方法を提供し、当該製造方法は、
針先ベースの先端にカーボンナノコーンを組み立てるステップS101と、
針本体を別の金属体に接触させ、前記針本体と前記金属体との間に瞬時電流を印加して、前記カーボンナノコーンの外側グラファイト層を汚染物質とともに除去するステップS102とを含む。
【0012】
本願の一実施形態によれば、ステップS101は、具体的には、マイクロナノ操作アームを用いて前記針先ベースの先端が前記カーボンナノコーンの内部に入り込むように制御し、前記針先ベースの先端に前記カーボンナノコーンを付着させ、前記針先ベースを別の金属体に接触させ、前記金属体と前記針先ベースとの間に電圧を印加し、前記針先ベースに電流を流して、前記針先ベースの先端部位を加熱して、付着された前記カーボンナノコーンと結合させることを含む。
【0013】
本願の一実施形態によれば、ステップS102では、前記針本体及び前記別の金属体はいずれも、マイクロナノ操作アームに固定され、顕微鏡観察下で前記操作アームによりそれらの移動を制御する。
【0014】
本願の一実施形態によれば、ステップS102では、前記針本体のカーボンナノコーン尖端が前記別の金属体と接触して電気経路を形成するように制御することであって、前記瞬時電流の大きさは0.01~10mAであることを更に含む。
【0015】
本願の一実施形態によれば、ステップS102では、前記針本体の側面が別の金属体と接触して電気経路を形成するように制御することであって、前記金属体と前記針本体との接触位置は、針先の頂端からの距離が0.01~1μmであり、前記瞬時電流の大きさは1~100mAであることを更に含む。
【0016】
更に別の態様では、本願は、別のカーボンナノコーン機能化針先の製造方法を提供し、当該製造方法は、
針先ベースの先端にカーボンナノコーンを組み立てるステップS201と、
前記針先を目標温度に加熱し、活性物質を導入して、前記針先の表面の汚染物質と選択的に反応させて、前記カーボンナノコーン機能化針先を浄化するステップであって、前記活性物質は弱酸化剤であるステップS202とを含む。
【0017】
本願の一実施形態によれば、前記弱酸化剤は二酸化炭素又は水である。
【0018】
本願の一実施形態によれば、ステップS201は、具体的には、マイクロナノ操作アームを用いて前記針先ベースの先端が前記カーボンナノコーンの内部に入り込むように制御し、前記針先ベースの先端に前記カーボンナノコーンを付着させ、前記針先ベースを別の金属体に接触させ、前記金属体と前記針先ベースとの間に電圧を印加し、前記針先ベースに電流を流して、前記針先ベースの先端部位を加熱して、付着された前記カーボンナノコーンと結合させることを含む。
【0019】
本願の一実施形態によれば、ステップS202では、針本体及び別の金属体はいずれも、マイクロナノ操作アームに固定され、顕微鏡観察下で前記操作アームによりそれらの移動を制御する。
【0020】
本願の一実施形態によれば、ステップS202では、前記針本体の側面を前記別の金属体に接触させ、前記針本体と前記金属体との間に連続電流を印加し、針先尖端を局所的に高温にして、活性物質と反応させることを更に含む。
【0021】
本願の一実施形態によれば、ステップS202では、前記針先を針先挟持装置に取り付け、管式真空炉に入れ、二酸化炭素又は水蒸気を導入して目標温度まで昇温して、前記針先の表面の汚染物質を除去することを更に含む。
【発明の効果】
【0022】
本願の実施形態における上記の1つ又は複数の技術案は、少なくとも下記の技術効果を有する。本願の実施形態の製造方法方法により得られたカーボンナノコーン機能化針先は、安定した、大きなビームの制御可能な電子放出を提供し、電子放出源への適用を実現し、カーボンナノコーンと金属針先ベースとの間の共有結合界面接続を実現し、その優れた機械的強度と電気伝導性により、電子放出プロセス中におけるカーボンナノコーン針先の安定性が確保され、カーボンナノコーンの尖端の配向は針先全体の中心軸の配向と重なり、電子放出中のカーボンナノコーン針先のアクティブな放出サイトの制御性が確保され、且つ、本願の実施形態で製造されたカーボンナノコーン機能化針先は、潔浄で完全なグラファイト層状構造のカーボンナノコーン尖端を備えており、当該針先構造の特徴により、尖端表面の汚染物質による電子放出ノイズ、制御不能な放出電流による針先構造の破損ひいては故障が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本願の実施形態又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本発明のいくつかの実施形態であり、当業者にとって、創造的な労働を要しない前提で、更にこれら図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
【
図1(a)】
図1(a)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーンの全体の構造図である。
【
図1(b)】
図1(b)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーン尖端の高分解能透過型電子顕微鏡写真であり、カーボンナノコーンの層状グラファイト構造を示し、図中の矢印はカーボンナノコーン表面の汚染物質を示している。
【
図2(a)】
図2(a)は、走査型電子顕微鏡では、マイクロナノ操作アームに取り付けられた金属針先の側面図であり、矢印は3つのマイクロナノ操作アームを示している。
【
図2(b)】
図2(b)は、走査型電子顕微鏡では、マイクロナノ操作アームに取り付けられた金属針先の上面図である。
【
図3(a)】
図3(a)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーン機能化針先(#1)の尖端が別の金属体(#2)に接触する走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3(b)】
図3(b)は、瞬時電流処理後の潔浄なカーボンナノコーン尖端の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図4(a)】
図4(a)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーン機能化針先(#1)の側面が別の金属体(#2)に接触する走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4(b)】
図4(b)は、瞬時電流処理後の潔浄なカーボンナノコーン尖端の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図4(c)】
図4(c)は、製造されたカーボンナノコーン機能化針先の電界放出曲線図である。
【
図4(d)】
図4(d)は、カーボンナノコーン機能化針先(#1)とアノード(#3)との間に特定の電界を印加して電界放出試験を行う電子顕微鏡写真である。
【
図5(a)】
図5(a)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーン機能化針先の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5(b)】
図5(b)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーンの潔浄で完全なグラファイト層の構造図である。
【
図6(a)】
図6(a)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーン機能化針先の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図6(b)】
図6(b)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーンの潔浄で完全なグラファイト層の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願の実施形態の目的、技術案及び利点をより明確にするために、図面を参照しながら、本願の実施形態における技術案を明確かつ完全に説明する。勿論、説明する実施形態は、すべての実施形態ではなく、本願の実施形態の一部の実施形態に過ぎない。当業者が本願における実施形態に基づいて創造的な労働をしない前提で得たすべての他の実施形態は、本願の保護範囲に含まれる。
【0025】
図1(a)は、本願の実施形態に係るカーボンナノコーンの全体の構造図であり、
図1(b)は本願の実施形態に係るカーボンナノコーン尖端の高分解能透過型電子顕微鏡写真である。
図1(a)、
図1(b)に示すように、本願は、カーボンナノコーン機能化針先を提供し、ここで、針先ベースの先端はカーボンナノコーンで装飾され、
カーボンナノコーンは、層状グラファイト構造からなる錐状のカーボンナノ材料であり、針先ベースの材料は、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、チタンから選ばれた1つ又は複数の金属であり、カーボンナノコーンのテール端と針先ベースは共有結合の界面接続を形成し、前記カーボンナノコーンの尖端の配向は針先の中心軸の配向と一致している。カーボンナノコーンの尖端の表面は潔浄であり、且つ、グラファイト層の構造は完全であり、汚染物質や破損はない。
【0026】
別の態様では、本願は、カーボンナノコーン機能化針先の製造方法及び浄化方法を提供する。
【0027】
カーボンナノコーンと金属針先ベースとの組み立ては、公開された特許ZL201610091160.0記載された方法を採用している。電子顕微鏡下で、マイクロナノ操作アームを用いて金属針先ベースの先端がカーボンナノコーンの内部に入り込むように制御し、針先ベースの先端にカーボンナノコーンを付着させ、その後、針先ベースを別の金属体に接触させ、金属体と針先ベースとの間に電圧を印加し、針先ベースに電流を流して、針の先端部位を加熱して、付着されたカーボンナノコーンと結合させる。ここで、金属体と針先ベースとの接触位置は、針先の頂端からの距離が0.2~100μmであり、針本体を流れる電流は0.01~5Aである。
【0028】
本願に係る浄化方法は、瞬時電流アブレーション法又は選択的化学反応法により、カーボンナノコーン表面の非晶質炭素及び炭化水素化合物などの汚染物質を除去する方法である。
【0029】
瞬時電流アブレーション法によりカーボンナノコーン機能化針先を製造することは、
マイクロナノ操作法とその場電流加熱法を併用して、針先ベースの先端にカーボンナノコーンを組み立てるステップS101と、
針本体を別の金属体に接触させ、針本体と金属体との間に瞬時電流を印加して、カーボンナノコーンの外側グラファイト層を汚染物質とともに除去するステップS102とを含む。
【0030】
更に、ステップS102では、針本体及び別の金属体はいずれも、マイクロナノ操作アームに固定され、
図2(a)、
図2(b)に示すように、顕微鏡観察下で操作アームによりそれらの移動を制御する。
【0031】
また、ステップS102では、針本体のカーボンナノコーン尖端が別の金属体と接触して電気経路を形成するように制御することであって、瞬時電流の大きさは0.01~10mAであることを更に含む。
【0032】
なお、ステップS102では、針本体の側面が別の金属体と接触して電気経路を形成するように制御することであって、金属体と針本体との接触位置は、針先の頂端からの距離が0.01~1μmであり、瞬時電流の大きさは1~100mAであることを更に含む。
【0033】
1つの好適な実施形態では、瞬時電流によりカーボンナノコーンの外側グラファイト層を除去するための可能なメカニズムは、下記の通りである。カーボンナノコーンが多層グラファイト構造を有し、グラファイトの層間抵抗率(10-3Ω・m)が層内抵抗率(10-6Ω・m)の1000倍であるため、瞬時電流は、外側グラファイト層を優先的に通過して層内の炭素-炭素結合の切断を引き起こし、瞬間電流によるジュール熱を結合して、外側グラファイト層を表面の汚染物質とともに分解して真空中に揮発させ、最終的に潔浄な内側グラファイト層構造が得られる。更に、この実施形態では、ステップS102を複数回繰り返して、一定数の外側グラファイト層を制御可能に除去して、より鋭利な尖端を有する潔浄なカーボンナノコーン機能化針先を得る。
【0034】
選択的化学反応法でカーボンナノコーン機能化針先を製造することは、
マイクロナノ操作法とその場電流加熱法を併用して、針先ベースの先端にカーボンナノコーンを組み立てるステップS201と、
針先を目標温度に加熱し、活性物質を導入して、針先の表面の汚染物質と選択的に反応させて、カーボンナノコーン機能化針先を浄化するステップであって、活性物質は二酸化炭素又は水などの弱酸化剤であるステップS202とを含む。
【0035】
更に、ステップS202では、針本体及び別の金属体はいずれも、マイクロナノ操作アームに固定され、
図2(a)、
図2(b)に示すように、顕微鏡観察下で操作アームによりそれらの移動を制御する。
【0036】
また、ステップS202では、針本体の側面を別の金属体接触に接触させ、針本体と金属体との間に連続電流を印加し、針先尖端を局所的に高温にして、活性物質と反応させることを更に含む。好ましくは、金属体と針本体との接触位置は、針先の頂端からの距離が0.2~100μmであり、針本体を流れる電流は0.01~5Aである。環境走査型電子顕微鏡のガス回路制御バルブを使用して走査型電子顕微鏡の試料室に二酸化炭素又は水蒸気を導入する。電子顕微鏡の試料室内の活性ガスの圧力範囲は10~2000Paである。
【0037】
なお、ステップS202では、針先を針先挟持装置に取り付け、管式真空炉に入れ、二酸化炭素又は水蒸気を導入して目標温度まで昇温して、針先の表面の汚染物質を除去することを更に含む。好ましくは、二酸化炭素又は水蒸気の流速は100~1000sccm、昇温速度は1~10℃/min、目標温度は450℃~750℃、保温時間は30~600minである。
【0038】
具体的には、カーボンナノコーンの表面における非晶質炭素及び炭化水素化合物の汚染物質は、カーボンナノコーンのグラファイト構造よりも化学反応活性が高く、様々な酸化剤と優先的に反応してガスの生成物に変換することで表面を浄化するという目的を達成する。表面の汚染物質を除去する同時にカーボンナノコーンのグラファイト構造に欠陥を導入することを回避するために、本願で提案されている技術案では、二酸化炭素や水蒸気などの穏やかな酸化剤が使用される。二酸化炭素は非晶質炭素及び炭化水素化合物の汚染物質と反応して一酸化炭素を生成し、水蒸気は非晶質炭素及び炭化水素化合物の汚染物質と反応して一酸化炭素及び水素を生成し、最終的に完全なグラファイト構造を持つ潔浄なカーボンナノコーン針先が得られる。
【0039】
以下、具体的な実施形態を用いて本願の技術案を説明する。実施形態に具体的な技術又は条件が示されていない場合、当該分野の文献に記載されている技術又は条件、或いは製品仕様書に従って行う。製造業者が明記されていない試薬又は機器は、正規のルート業者から購入できる通常の製品である。
【0040】
以下の具体的な実施形態では、マイクロナノ操作アームは、Kleindiek Nanotechnik社の製品を採用し、走査型電子顕微鏡は、Thermo Fisher社のQuanta 200型走査型電子顕微鏡を使用し、透過型電子顕微鏡はThermo Fisher社のF20型透過型電子顕微鏡を使用した。
【0041】
実施形態1
この実施形態では、2本のタングステン針が2つのマイクロナノ操作アームに固定され、マイクロナノ操作アーム及びカーボンナノコーンのサンプルの両方が走査型電子顕微鏡内に配置されている。まず、1本のタングステン針(#2)を#1の金属タングステン針先ベースの頂端から50μmの位置でその側壁に近づけ、#1と#2の間に60Vの電圧を印加してアークが発生し、アークにより#2のタングステン針の頂端が円球状に溶融した。
【0042】
#1の針の尖端を、選択されたカーボンナノコーンの頂部内に入れ、カーボンナノコーンと接触して針先の頂端に付着させた。その後、#2のタングステン針の頂端の円球を上記タングステン針先(#1)の側面に接触させ、接触位置は針先#1の最頂端からの距離が2μmである。2本のタングステン針先に電圧を印加して2Aの電流を発生させる。通電継続時間は0.1msであり、金属タングステン針先(#1)の頂端が溶融し、溶融した金属タングステンが自動的にカーボンナノコーンの内部空間に入り込み、充填され、
図3(a)に示すような#1の機能化針先が得られた。
【0043】
#1のカーボンナノコーン機能化針先を移動して、その尖端を#2のタングステン針の頂端の円球と接触させ、1mAの瞬時電流を印加し、電流持続時間は0.5μsである。通電終了後、針先表面への電子ビーム照射を避けつつカーボンナノコーン針先を速やかに退出した。取り出されたカーボンナノコーン針先について、透過型電子顕微鏡下でその形態を観察したところ、
図3(b)に示すような破損したグラファイト層のない潔浄な針先尖端が得られた。
【0044】
実施形態2
この実施形態では、2本のタングステン針が2つのマイクロナノ操作アームに固定され、マイクロナノ操作アーム及びカーボンナノコーンのサンプルの両方が走査型電子顕微鏡内に配置されている。まず、1本のタングステン針(#2)を#1の金属タングステン針先ベースの頂端から50μmの位置でその側壁に近づけ、#1と#2の間に60Vの電圧を印加して、アークが発生し、アークにより#2のタングステン針の頂端が円球状に溶融した。
【0045】
#1の針の尖端を、選択されたカーボンナノコーンの頂部内に入れ、カーボンナノコーンと接触して針先の頂端に付着させた。その後、#2のタングステン針の頂端の円球を上記タングステン針先(#1)の側面に接触させ、接触位置は針先#1の最頂端からの距離が3μmである。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を発生させる。通電継続時間は0.1msであり、金属タングステン針先(#1)の頂端が溶融し、溶融した金属タングステンが自動的にカーボンナノコーンの内部空間に入り込み、充填され、
図4(a)に示すような#1の機能化針先が得られた。
【0046】
#1のカーボンナノコーン機能化針先を移動して、そのカーボンナノコーンの側面を#2のタングステン針の頂端の円球と接触させ、20mAの瞬時電流を印加し、電流持続時間は0.5μsである。通電終了後、針先表面への電子ビーム照射を避けつつ#1のカーボンナノコーン針先を速やかに退出した。取り出されたカーボンナノコーン針先について、透過型電子顕微鏡下でその形態を観察したところ、
図4(b)に示すような破損したグラファイト層のない潔浄な針先尖端が得られた。
【0047】
図4(d)に示すように、その場透過型電子顕微鏡のサンプルロッドにおける駆動装置を使用し、#1のカーボンナノコーン機能化針先を移動して#3のAu電極の表面からの距離が約500nmになるように近づける。Au電極(アノード)とカーボンナノコーン機能化針先(カソード)の間に連続的に変化する電圧(40~200V)を印加し、対応する電流を記録すると、
図4(c)に示すような電界放出曲線が得られる。このことから、本発明によって製造されたカーボンナノコーン機能化針先は100μAの大きなビーム放出を提供できることが分かる。
【0048】
実施形態3
この実施形態では、2本のタングステン針が2つのマイクロナノ操作アームに固定され、マイクロナノ操作アーム及びカーボンナノコーンのサンプルの両方が走査型電子顕微鏡内に配置されている。まず、1本のタングステン針(#2)を#1の金属タングステン針先ベースの頂端から50μmの位置でその側壁に近づけ、#1と#2の間に60Vの電圧を印加してアークが発生し、アークにより#2のタングステン針の頂端が円球状に溶融した。
【0049】
#1の針の尖端を、選択されたカーボンナノコーンの頂部内に入れ、カーボンナノコーンと接触して針先の頂端に付着させた。その後、#2のタングステン針の頂端の円球を上記タングステン針先(#1)の側面に接触させ、接触位置は針先#1の最頂端からの距離が3μmである。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を発生させる。通電継続時間は0.1msであり、金属タングステン針先(#1)の頂端が溶融し、溶融した金属タングステンが自動的にカーボンナノコーンの内部空間に入り込み、充填され、
図5(a)に示すようなカーボンナノコーン機能化針先が得られた。
【0050】
電子顕微鏡のモードを環境走査型電子顕微鏡モードに切り替え、二酸化炭素雰囲気を導入し、電子顕微鏡の気圧調整弁により試料室内の二酸化炭素の圧力を1000Paに制御した。#2のタングステン針の円球と#1のカーボンナノコーン針先の側面との接触位置はそのまま保持され、2本の針本体に0.6Aの電流を印加し、通電継続時間は10minである。加熱終了後、電子ビームによる照射を避けつつカーボンナノコーン機能化針先を速やかに退出した。電子顕微鏡のモードを高真空モードに戻した後、窒素を導入し、カーボンナノコーン針先を取り出した。透過型電子顕微鏡でカーボンナノコーン針先の高解像度の形態を観察したところ、
図5(b)に示すように、カーボンナノコーンは、潔浄で完全なグラファイト層構造を持っていることがわかる。
【0051】
実施形態4
この実施形態では、カーボンナノコーン機能化針先(
図6(a)に示すように)の製造方法は実施形態3と同じである。
【0052】
カーボンナノコーン機能化針先を、針先部位を上向きにしてセラミック材料製の針先挟持装置に固定し、管式真空炉の加熱領域に配置した。管式真空炉の目標温度は500℃に設定され、昇温速度は1℃/min、保温時間は60minである。加熱開始前に、管式真空炉内に二酸化炭素を導入し、二酸化炭素の流速を500sccmに調整した。加熱終了後、室温まで自然冷却し、窒素を導入してカーボンナノコーン針先を取り出し、透射電子顕微鏡下でその構造特性を観察したところ、
図6(b)に示す通りである。
【0053】
以上の実施形態は、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を制限するものではない。実施形態を参照して詳細に本願を説明したが、当業者は、本願の技術案に対する様々な組み合わせ、変更、又は同等の置換が、本願の技術案の精神及び範囲から逸脱するものではなく、本願の請求の範囲内に含まれるべきであることを理解すべきである。
【国際調査報告】