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特表2023-529235拡張現実機器のための一対の光学素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(54)【発明の名称】拡張現実機器のための一対の光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
G02C7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577188
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2021064972
(87)【国際公開番号】W WO2021254793
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】20305653.6
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・グレ
(72)【発明者】
【氏名】サミー・アムラウイ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ルセル
(57)【要約】
左眼と右眼に対する処方が円柱内で少なくとも0.25Dだけ異なる着用者に適合する一対の眼用レンズであって、両方の眼用レンズの後面は略同一の形状を有する、眼用レンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左眼と右眼に対する処方が円柱内で少なくとも0.25Dだけ異なる着用者に適合する一対の眼用レンズであって、
両方の眼用レンズの後面は、略同一の形状を有することを特徴とする一対の眼用レンズ。
【請求項2】
各眼用レンズの前記後面は、広範囲の処方において略同一の形状を有する、請求項1に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項3】
両方の眼用レンズは、所定の基準点において、0.1D以下の表面平均球面度数の絶対値差及び表面円柱度数の絶対値差を有する後面を有する、請求項1又は2に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項4】
両方の眼用レンズは、所定の基準区域にわたる任意の点において、0.1D以下、優先的には0.05D以下の表面平均球面度数の絶対値差及び表面円柱度数の絶対値差を有する後面を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項5】
両方の眼用レンズは平坦な後面を有し、任意の点における前記表面平均球面度数の絶対値及び前記表面円柱度数の絶対値は0.25D以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項6】
両方の眼用レンズは非平面の後面を有し、任意の点における前記表面平均球面度数は+0.25D以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項7】
両方の眼用レンズは凸状後面を有し、任意の点における前記表面平均球面度数は+0.25D以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項8】
両方の眼用レンズは、任意の点における前記表面平均球面度数が-0.25D以下である凹状後面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項9】
前記一対の眼用レンズは、前記着用者に視力矯正を提供するようヘッドマウントディスプレイ装置に取り付けられるよう適合される、請求項1~8のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項10】
特定の着用条件は、前記一対の眼用レンズが適合される前記ヘッドマウントディスプレイ装置の配置によって特定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項11】
各眼用レンズは、注視方向のドメイン又はレンズ領域にわたって、視力低下並びに/又は度数誤差及び/若しくは残留非点収差誤差に関する光学性能基準を満たす、請求項1~10のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項12】
前記眼用レンズのそれぞれは単焦点眼用レンズである、請求項1~11のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項13】
各単焦点眼用レンズは、主な注視から30度内の注視方向に対して、0.5D以下、優先的には0.25D以下の度数誤差の絶対値及び残留非点収差誤差としてのものである、請求項12に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項14】
前記眼用レンズのそれぞれは、特定の前面、例えば非球形前面、例えば非球面前面を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の一対の眼用レンズ。
【請求項15】
着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するためのコンピュータ手段によって実施される方法であって、
-前記着用者の処方を表す処方データを提供することと、
-所定の着用条件を表す着用条件データを提供することと、
-形状を表す後面データを提供することと、
-前記後面データに従う形状を有する後面と、前記所定の着用条件において前記提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対眼用レンズを特定することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するための装置であって、
-前記着用者の処方を表す処方データを受信し、
-所定の着用条件を表す着用条件データを受信し、
-形状を表す後面データを受信し、
-前記後面データに従う後面と、前記所定の着用条件において提供された前記処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対の眼用レンズを特定する、よう構成される処理回路を備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、左眼と右眼の処方が異なる着用者に適合する一対の眼用レンズに関する。
【0002】
更に、本開示は、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するためのコンピュータ手段によって実装される方法、及び処理回路を備える、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
拡張/仮想現実機器内に屈折力を有する一対の光学レンズを設けて、ユーザに光学補正を提供することは公知である。
【0004】
幾つかの拡張現実機器において、処方によって変化しない前記光学レンズの基準後面を有することが必要である。また、後面は、眼から正確な距離に位置していなければならない場合がある。従って、角膜中心又は眼回転中心に対するこの基準後面の頂点の位置を制御する必要がある。その上、基準後面の頂点と角膜中心との間の距離は、着用者の処方に関わらず固定されることが要求される可能性がある。
【0005】
公知の解決策を用いること、同様に、ユーザの処方に従って適合する光学レンズの後面を有することは、レンズ後面の位置に影響を与える。
【0006】
例えば、光学レンズが前面によって保持される場合、眼の角膜-光学レンズの後面の距離又は眼回転中心-光学レンズの後面の距離は、レンズ度数、前面曲率、及びレンズ厚さによって決まる。
【0007】
レンズが後面上に保持される場合、眼-レンズ間距離は、通常、負レンズに対してより大きく、正レンズに対してより近い。
【0008】
従って、着用者の屈折異常に応じて、ユーザの視野は変化する可能性がある。視野は、レンズ径及びレンズの近接度によって決まる。従って、拡張現実機器に適した光学レンズを提供することに対する懸念が存在する。
【0009】
別の懸念が負の度数のレンズにも生じる。標準的な負の度数のレンズは、低い曲率を有する凸状前面と、屈折の大部分を提供する凹状後面とを有する。このレンズが前面に保持される場合、負レンズ後面の縁部は、無視できない厚さを有する可能性があり、着用者の睫毛に干渉する可能性がある。これは、着用者の眼に極めて近い屈折レンズを提案することを妨げ、そのため、着用者の視野を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、良好な光学品質を有し、光学収差が少なく、同時に、着用者の屈折の広い範囲にわたって広い視野を提供する、着用者の屈折を矯正することができる一対の眼用レンズを提供することによって、上述の問題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本開示は、左眼と右眼に対する処方が円柱内で少なくとも0.25Dだけ異なる着用者に適合する一対の眼用レンズであって、両方の眼用レンズの後面が略同一の形状を有する一対の眼用レンズを提案する。
【0012】
有利には、一対の眼用レンズは、必要とされる眼-レンズ間距離を考慮しながら、拡張/仮想現実機器における一対の眼用レンズの固定を容易にするように配置される。眼-レンズ間距離は、眼用レンズの後面の頂点と角膜中心又は眼の回転中心との間の距離として定義されてもよい。
【0013】
別の利点は、略同一の後面及び低レベルの収差を有しながら、一対の眼用レンズの各レンズに対して異なる矯正を提供して、着用者の矯正を改善することにある。
【0014】
拡張現実機器の場合、眼用レンズは拡張現実機器に組み込まれる。拡張現実機器を取り巻く人々によるレンズの設計の認識は、眼用レンズの前面及び/又は後面が所望の屈折光学機能を提供するようにカスタマイズされるという事実によって変わらない。屈折光学機能は、注視方向の関数として、光学レンズの屈折力(平均屈折力、非点収差、等)に対応する。
【0015】
一対の眼用レンズを形成する両方のレンズに同様の後面を設けることにより、眼用レンズの後面の頂点と角膜中心又は眼回転中心との間の所定の距離を維持することが可能になる。角膜及び/又は固定点に対する眼用レンズ後面の位置決めにより、機器が眼に近づけられた場合に、睫毛、眉毛、又は頬との干渉のリスクが制限される。これにより、拡張現実機器を更に小型化することができる。
【0016】
更に、適切な眼用レンズ後面の寸法形状を特定することによって、処方の範囲に対して眼用レンズによって占有されるバウンディングボックスを最小化することができる。
【0017】
単独又は組み合わせとして想到可能な更なる実施形態によれば、
-各眼用レンズの後面は、広範囲の処方において略同一の形状を有し、
-両方の眼用レンズは、0.1D以下の所定の基準点における表面平均球面度数の絶対値差及び表面円柱度数の絶対値差を有する後面を有し、及び/又は、
-両方の眼用レンズは、所定の基準区域にわたる任意の点において、0.1D以下、優先的には0.05D以下の表面平均球面度数の絶対値差及び表面円柱度数の絶対値差を有する後面を有し、及び/又は、
-一対の眼用レンズの各眼用レンズは、平面、凸状、又は凹状の後面を有していてもよく、及び/又は、
-両方の眼用レンズは平坦な後面を有し、任意の点における表面平均球面度数の絶対値及び表面円柱度数の絶対値は0.25D以下であるか、又は、
-両方の眼用レンズは凸状後面を有し、任意の点における表面平均球面度数は+0.25D以上であるか、又は、
-両方の眼用レンズは、任意の点における表面平均球面度数が-0.25D以下である凹状後面を有し、及び/又は、
-前記一対の眼用レンズは、ヘッドマウントディスプレイ装置に取り付けられて着用者に視力矯正を提供するよう適合され、及び/又は、
-特定の着用条件は、一対の眼用レンズが適合されるヘッドマウントディスプレイ装置の配置によって特定され、及び/又は、
-各眼用レンズは、注視方向のドメイン又はレンズ領域にわたって、視力低下並びに/又は度数誤差及び/若しくは残留非点収差誤差に関する光学性能基準を満たし、及び/又は、
-眼用レンズのそれぞれは単焦点眼用レンズであり、及び/又は、
-各単焦点眼用レンズは、主な注視から30度内の注視方向に対して、0.5D以下、優先的には0.25D以下の度数誤差の絶対値及び残留非点収差誤差としてのものであり、及び/又は、
-眼用レンズのそれぞれは、特定の前面、例えば非球形前面、例えば非球面前面を有する。
【0018】
本開示は更に、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するためのコンピュータ手段によって実装される方法であって、
-前記着用者の処方を表す処方データを提供することと、
-所定の着用条件を表す着用条件データを提供することと、
-形状を表す後面データを提供することと、
-後面データに従う後面と、所定の着用条件において提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対眼用レンズを特定することと、を含む方法に関する。
【0019】
実施形態によれば、コンピュータ手段によって実装される方法は、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するために構成され、一対の眼用レンズは、左眼と右眼に対する処方が円柱内で少なくとも0.25Dだけ異なる着用者に適合し、両方の眼用レンズの後面は、略同一の形状を有する。
【0020】
有利には、一対の眼用レンズは、必要とされる眼-レンズ間距離を考慮しながら、拡張/仮想現実機器における一対の眼用レンズの固定を容易にするように特定される。
【0021】
別の利点は、低レベルの収差を有しながら、一対の眼用レンズの各レンズに対して異なる矯正を提供して、着用者の矯正を改善することにある。一対の眼用レンズに同様の後面を設けることにより、眼用レンズの後面の頂点と角膜中心又は眼回転中心との間の所定の距離を維持することが可能になる。角膜及び/又は固定点に対する眼用レンズ後面の位置決めにより、機器が眼に近づけられた場合に、睫毛、眉毛、又は頬との干渉のリスクが制限される。これにより、拡張現実機器を更に小型化することができる。
【0022】
本開示は更に、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するための装置であって、
-着用者の処方を表す処方データを受信し、
-所定の着用条件を表す着用条件データを受信し、
-その形状を表す後面データを受信し、
-後面データに従う後面と、所定の着用条件において提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対眼用レンズを特定するよう構成される処理回路を備える装置に関する。
【0023】
実施形態によれば、装置は、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するために構成され、一対の眼用レンズは、左眼と右眼に対する処方が円柱内で少なくとも0.25Dだけ異なる着用者に適合し、両方の眼用レンズの後面は、略同一の形状を有する。
【0024】
有利には、一対の眼用レンズは、拡張/仮想現実機器における一対の眼用レンズの固定を容易にするように製造される。
【0025】
有利には、一対の眼用レンズは、左眼の前に配設されるよう構成されるレンズと、右眼の前に配設されるよう構成されるレンズとからなる。
【0026】
更なる実施形態によれば、本開示は、着用者に適合する一対の眼用レンズに関し、各眼用レンズは、所定の着用条件において互いに異なる屈折光学機能を有し、両方の眼用レンズの後面は、略同一の形状を有する。
【0027】
有利には、一対の眼用レンズは、少なくとも1つの屈折光学機能が一対の眼用レンズの左右のレンズに対して異なり、両方の眼用レンズの後面が略同一の形状を有するように製造される。眼用レンズの前面は、最適化プロセスにより光学性能目標に従って計算され、表面生成器によって機械加工される。
【0028】
単独又は組み合わせとして想到可能な更なる実施形態によれば、
-各眼用レンズは、同じ屈折率を有し、及び/又は、
-両方の眼用レンズの屈折光学機能は、所定の基準点において0.25D以上の屈折力の差、及び/又は0.25D以上の非点収差度数の差を有し、及び/又は、
-両方の眼用レンズは、0.1D以下の所定の基準点における表面平均球面度数及び表面円柱度数の絶対値差を有する後面を有し、及び/又は、
-両方の眼用レンズは、0.1D以下の所定の基準区域にわたる平均球面度数の絶対値差を有する後面を有し、及び/又は、
-両方の眼用レンズは平坦な後面を有し、任意の点における表面平均球面度数及び表面円柱度数の絶対値は0.25D以下であるか、又は、
-両方の眼用レンズは凸状後面を有し、任意の点における表面平均球面度数は+0.25D以上であるか、又は、
-両方の眼用レンズは、任意の点における表面平均球面度数が-0.25D以下である凹状後面を有し、及び/又は、
-前記一対の眼用レンズは、ヘッドマウントディスプレイ装置に取り付けられて着用者に視力矯正を提供するよう適合され、及び/又は、
-特定の着用条件は、一対の眼用レンズが適合されるヘッドマウントディスプレイ装置の配置によって特定され、及び/又は、
-各眼用レンズは、注視方向のドメイン又はレンズ領域にわたって、視力低下並びに/又は度数誤差及び/若しくは残留非点収差誤差に関する光学性能基準を満たし、及び/又は、
-眼用レンズのそれぞれは単焦点眼用レンズであり、及び/又は、
-各単焦点眼用レンズは、主な注視から30度内の注視方向に対して、0.5D以下、優先的には0.25D以下の度数誤差及び残留非点収差誤差としてのものであり、及び/又は、
-眼用レンズのそれぞれは、特定の前面、例えば非球形前面、例えば非球面前面を有する。
【0029】
本開示はまた、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するためのコンピュータ手段によって実装される方法であって、
-前記着用者の処方を表す処方データを提供することと、
-所定の着用条件を表す着用条件データを提供することと、
-形状を表す後面データを提供することと、
-後面データに従う後面と、所定の着用条件において提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対眼用レンズを特定することと、を含む方法に関する。
【0030】
本開示はまた、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するための装置であって、
-着用者の処方を表す処方データを受信し、
-所定の着用条件を表す着用条件データを受信し、
-その形状を表す後面データを受信し、
-後面データに従う後面と、所定の着用条件において提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対眼用レンズを特定するよう構成される処理回路を備える装置に関する。
【0031】
本発明は、更に、プロセッサにとってアクセスでき、且つ、プロセッサによって実行される場合に、プロセッサに本発明による方法のステップを実行させる1つ以上の格納された命令のシーケンスを備えるコンピュータプログラム製品に関する。
【0032】
本発明は、また、それらに記録されるプログラムを有するコンピュータ読取可能ストレージ媒体にも関し、ここで、プログラムはコンピュータに本発明の方法を実行させる。
【0033】
以下の検討により明らかなように、特に明記のない限り、本明細書を通じて、「コンピューティング」、又は「計算」などの用語を用いる検討は、コンピューティングシステムのレジスタ及び/又はメモリ内部の電子的などの物理的数量として表されるデータを、コンピューティングシステムのメモリ、レジスタ、又は他のそのような情報ストレージ、転送、或いは表示デバイス内部の物理的数量として同様に表される他のデータに操作及び/又は変換するコンピュータ又はコンピューティングシステム、又は同様の電子コンピューティングデバイスの動作及び/又は処理を指すことは正しく理解される。
【0034】
本発明の実施形態は本明細書中の操作を行うための装置を含んでいてもよい。この装置は、所望の目的のために特別に構築されてもよく、又は、コンピュータ内に格納されるコンピュータプログラムによって選択的に起動されるか又は再設定される汎用コンピュータ又はデジタル信号プロセッサ(「DSP」)を含んでもよい。かかるコンピュータプログラムは、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的プログラム可能読出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能及びプログラム可能読出し専用メモリ(EEPROM)、磁気又は光カードを含む任意の種類のディスク、又は電子的命令を格納するために適しており且つコンピュータシステムバスに結合することが可能なその他の種類の媒体などであるが、これらに限定されないコンピュータ可読記憶媒体内に格納されてもよい。
【0035】
本明細書中に提示される処理は、本質的に、いずれか特定のコンピュータ又は他の装置に関係しない。様々な汎用システムが本明細書中の教示に従うプログラムと共に使用される場合があり、又は、所望の方法を行うためにより特化した装置を構築することが便利であることが判明する場合がある。様々なこれらのシステムに対する所望の構造は以下の説明から出現することになる。加えて、本発明の実施形態は任意の特定のプログラミング言語を参照して説明しない。さまざまなプログラミング言語が本明細書中で説明するような本発明の教示を実施するために用いられてもよいことは、正しく理解されるであろう。
【0036】
ここで本開示の実施形態について、ほんの一例として以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1a】先行技術による眼用レンズの断面図を示す。
図1b】先行技術による眼用レンズの断面図を示す。
図2a】本発明による眼用レンズの断面図を示す。
図2b】本発明による眼用レンズの断面図を示す。
図3a】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図3b】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図3c】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図3d】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図4a】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図4b】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図4c】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図4d】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図5a】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図5b】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図5c】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図5d】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図6a】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図6b】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図6c】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図6d】最適化前後の本開示による一対のレンズに属する眼用レンズの異なる実施形態の屈折力及び非点収差のマップを示す。
図7a】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図7b】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図7c】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図8a】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図8b】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図8c】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図9a】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図9b】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図9c】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図10a】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図10b】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図10c】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図11a】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図11b】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図11c】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図12a】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図12b】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
図12c】最適化前後の本開示による眼用レンズの異なる実施形態の屈折力、非点収差、及び垂直断面のマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面内の構成要素は、簡略化及び明確化のために示されており、必ずしも正確な縮尺で描かれてはいない。例えば、本発明の実施形態の理解を改善するのに役立つように、図中の一部の要素の寸法を他の要素に比べて誇張している場合がある。
【0039】
説明の残りの部分において、「上」、「下」、「前」、「後」のような用語、又は相対位置を示す他の単語が用いられる場合がある。これらの用語は、一対の眼用レンズを備える装置が着用される場合に理解されるべきである。
【0040】
図1a及び1bは、眼用レンズ100及び着用者の眼200の断面図を示している。眼用レンズ100は、前面102及び後面104を備えている。拡張現実機器の眼用レンズ100は、眼鏡の眼用レンズと同様の方法で製造され、ここで後面104は、着用者に屈折光学機能を提供するよう機械加工されている。前面102及び後面は、縁部110によって互いに連結されている。
【0041】
眼用レンズ100は、拡張現実機器(図示せず)内部に取り付けられ、固定手段106のために前記拡張現実機器内部に維持されてもよい。眼用レンズの前面102は、固定手段106を受け入れるよう構成される上端102a及び下端102bを呈する。
【0042】
図示の眼200は、眼回転中心202と、角膜中心204とを備える。
【0043】
図1aによれば、図示の眼用レンズ100は、着用者に負の屈折度数を提供する。眼用レンズ100は、実質的に僅かに凸状の前面102と、略凹状の後面104とを備えている。
【0044】
図1bによれば、図示の眼用レンズ100は、着用者に正の屈折度数を提供する。眼用レンズ100は、略凸状の前面102と、僅かに凹状の後面104とを備えている。
【0045】
着用者の眼200の眼回転中心202又は角膜中心204は、眼用レンズの適切な使用のために、眼の後面104から所定の眼-レンズ間距離108に位置する必要がある。
【0046】
しかし、眼-レンズ間距離は、眼用レンズの屈折度数、前面102の曲率、及び眼用レンズ100の厚さに依存する。眼-レンズ間距離108は、正の屈折度数よりも負の屈折度数を提供する眼用レンズ100の方が大きい。
【0047】
着用者の視野112は、眼用レンズ又は拡張現実機器のアパーチャの大きさ、処方、及び眼-レンズ間距離によって決まる。次いで、着用者の屈折異常に応じて、視野112は、着用者ごとに異なる可能性がある。
【0048】
更に、図1aに示すように、負の屈折度数を有する眼用レンズ100は、略凹状の後面104を呈する。光学レンズ100が固定手段106によって前面102上に保持される場合、縁部110は、無視できない厚さを有する可能性があり、着用者の睫毛、眉毛、又は頬に干渉する可能性がある。
【0049】
屈折の大部分を提供する機械加工された後面104を有し、前面102に設けられる固定手段106によって保持される眼用レンズを備える拡張現実機器は、眼用レンズ100が着用者の眼200に極めて接近し、従って着用者の視野112を制限することを防止する。
【0050】
図2a及び2bは、先行技術の一対の眼用レンズに対する懸念を解決することを可能にする本発明による眼用レンズ300及び着用者の眼200の断面図を示している。
【0051】
本発明によれば、一対の眼用レンズ300は、着用者の左眼の前に配設されるよう構成される「左レンズ」と呼ばれてもよい第1のレンズと、着用者の右眼の前に配設されるよう構成される「右レンズ」と呼ばれてもよい第2のレンズとを備えている。左右のレンズは、着用者に適合し、左レンズは、左眼に対する処方に対して計算され、右レンズは、右眼に対する処方に対して計算される。
【0052】
一対の眼用レンズの各眼用レンズ300は、略同一の形状を有する後面304を有している。一対の眼用レンズを形成する両眼用レンズ300の間の処方の差は、筒内で少なくとも0.25Dだけである。
【0053】
一対の眼用レンズの各眼用レンズ300は、更に、着用者の処方を提供するよう特定される前面302を備えている。
【0054】
着用者の処方は、例えば個人の眼の前方に位置決めされるレンズによって、個人の視力欠陥を矯正するために、眼科医によって特定される屈折力の、乱視の、及び該当する場合、追加の、屈折力の光学特性の組として理解されるべきである。一般的に言えば、累進多焦点レンズのための処方は、屈折力の、及び遠視点における非点収差の値、及び付加値を備える。
【0055】
用語「略同一形状」とは、本明細書中において、一対の眼用レンズを形成する両眼用レンズ300の後面304の形状が、後面304の主要部分において同一であることを意味する。一対の眼用レンズ300が左右の眼200に提供されるため、幾つかの対称的な幾何学的特徴が存在する。
【0056】
着用者の左眼に面するレンズ及び着用者の右眼に面するレンズの後面は、それぞれ、経線の一方の側の鼻部分と、経線の他方の側の側頭部分とを画成する経線を備えている。
【0057】
用語「略同一形状」は、更に、着用者の左眼及び右眼に面するレンズの経線に関する対称性の観点から定義される。
【0058】
着用者の左眼に面するレンズの鼻部分は、着用者の右眼に面するレンズの鼻部分の少なくとも50%にわたって、好ましくは少なくとも80%にわたって、着用者の左眼に面するレンズの経線を中心として、着用者の右眼に面するレンズの鼻部分と対称である。
【0059】
着用者の左眼に面するレンズの側頭部分は、着用者の右眼に面するレンズの側頭部分の少なくとも50%にわたって、好ましくは少なくとも80%にわたって、着用者の左眼に面するレンズの経線を中心として、着用者の右眼に面するレンズの側頭部分と対称である。
【0060】
着用者の右眼に面するレンズの鼻部分は、着用者の左眼に面するレンズの鼻部分の少なくとも50%にわたって、好ましくは少なくとも80%にわたって、着用者の右眼に面するレンズの経線を中心として、着用者の左眼に面するレンズの鼻部分と対称である。
【0061】
着用者の右眼に面するレンズの側頭部分は、着用者の左眼に面するレンズの側頭部分の少なくとも50%にわたって、好ましくは少なくとも80%にわたって、着用者の右眼に面するレンズの経線を中心として、着用者の左眼に面するレンズの側頭部分と対称である。
【0062】
一対の眼用レンズ300の後面304の主要部分は、眼用レンズの後面の40%、好ましくは50%超、好ましくは60%超、更により好ましくは70%超に対応する。
【0063】
眼用レンズ300の前面302を機械加工することにより、後面104が同じ結果のために機械加工される公知の眼用レンズ100と同様の方法で、十分な光学品質(例えば、光学収差がほとんどない)により着用者の屈折を矯正することが可能になる。
【0064】
一対の眼用レンズを形成する両方のレンズに同様の後面を設けることにより、眼用レンズの後面の頂点と角膜中心又は眼回転中心との間の所定の距離を維持することが可能になる。角膜及び/又は固定点に対する眼用レンズ後面の位置決めにより、機器が眼に近づけられた場合に、睫毛、眉毛、又は頬との干渉のリスクが制限される。これにより、拡張現実機器を更に小型化することができる。
【0065】
後面304は、広範囲の処方において、屈折に依存しないよう定義される。広範囲とは、-5Dと5Dとの間に含まれる処方の範囲として定義されてもよい。
【0066】
特定の実施形態において、一対の眼用レンズ300の各レンズ300の後面304は、少なくとも-3D~+3Dの間の屈折度数の範囲に対して同じ略同一の後面304を有している。
【0067】
後面304が幾何学的に制約されるため、一対の眼用レンズの各レンズ300の前面302は、着用者のための矯正視力を保証するよう特定される一方で、ヘッドマウントディスプレイ内に保持されると、同一平面内で知覚可能である一対の眼用レンズ300の整列を可能にする。
【0068】
特定の実施形態において、一対の眼用レンズ300は、0.1D以下の所定の基準点における表面平均球面度数の絶対値差及び表面円柱度数の絶対値差を有する後面304を有している。
【0069】
公知のように、最小及び最大曲率半径R1及びR2は、表面上の任意の点において計算することができる。曲率半径R1、R2は正であっても負であってもよい。表面上の点に接する曲率半径R1又はR2を有する球の中心が、表面に対して眼の方向に位置する場合、R1又はR2は正である。表面上の点に接する曲率半径R1又はR2を有する球の中心が、表面に対して眼の反対方向に位置する場合、R1又はR2は負である。
【0070】
表面が局所的に球面である場合、局所極小曲率半径R1と局所極大曲率半径R2とは同じであることがわかる。表面が非球面である場合、局所極小曲率半径R1及び局所極大曲率半径R2は異なる。
【0071】
表面上の点の局所曲率半径R1及びR2から、SPH1及びSPH2と表記される局所表面球面度数は推定することができる。
【0072】
考慮する面が物体側の面(前面とも称する)である場合、式は以下の通りである。
【数1】
ここで、nはレンズの構成材料の屈折率であり、R1及びR2はメートルで表され、SPH1及びSPH2はジオプトリーで表される。
【0073】
考慮する面が眼球側の面(後面とも称する)である場合、式は以下の通りである。
【数2】
ここで、nはレンズの構成材料の屈折率であり、R1及びR2はメートルで表され、SPH1及びSPH2はジオプトリーで表される。
【0074】
周知のように、非球面上の任意の点における平均球面度数SPHmeanは、次式により定義することができる。
mean=1/2×(SPH1+SPH2)。表面円柱CYLはまた、式CYL=|SPH1-SPH2|によって定義される。
【0075】
一対のレンズの任意の非球面の特徴を局所平均球面度数及び円柱度数により表すことができる。
【0076】
基準点は、レンズがマーキングを有している場合には、遠方視力点、近方視力点、フィッティングクロス、又はプリズム基準点であってもよく、又はレンズがマーキングを有していない場合には、光学中心又はプリズム基準点であってもよい。
【0077】
特定の実施形態において、一対の眼用レンズ300は、各レンズ後面304に対して、所定の基準区域上の任意の点において表面平均球面度数の絶対値差及び表面円柱度数の絶対値差を有し、例えば、眼用レンズ300の区域は、0.1D以下、優先的には0.05D以下の、一対の眼用レンズを受け入れるよう意図されるヘッドマウントディスプレイ装置、例えば拡張/仮想現実機器のフレームの形状によって画成されてもよい。
【0078】
基準区域は、基準点を中心とする、5mmより大きく10mmより小さい直径を有するディスクの内側に画成されてもよい。基準点は、プリズム基準点、フィッティングクロス、マイクロエングレービングがレンズ上にエッチングされている場合には近方視力点若しくは遠方視力点、又は非エッチング単焦点レンズの場合には光学中心であってもよい。
【0079】
特定の実施形態において、一対の両方の眼用レンズ300は、平坦な後面を有していてもよく、ここで任意の点における表面平均球面度数の絶対値及び表面円柱度数の絶対値は、0.25D以下である。
【0080】
実施形態によれば、一対の両方の眼用レンズ300は、任意の点における表面平均球面度数が+0.25D以上である非平面後面304を有していてもよい。
【0081】
特定の実施形態において、一対の両方の眼用レンズ300は、任意の点における表面平均球面度数が+0.25D以上である凸状後面304を有していてもよい。
【0082】
別の特定の実施形態において、一対の両方の眼用レンズ300は、任意の点における表面平均球面度数が-0.25D以下である凹状後面304を有していてもよい。
【0083】
この実施形態に関して、処方の範囲に対して、眼用レンズ300の後面304は同じままであると考えられる。これにより、少なくとも2つの異なる眼用レンズを備える眼用レンズのセットを得ることができる。セットによるレンズの任意の組み合わせは、1つの眼用レンズが左眼に用いられ、1つの眼用レンズが右眼に用いられることを考慮して、一対の眼用レンズ300を画成するために用いることができる。
【0084】
特定の実施形態において、一対の眼用レンズ300は、ヘッドマウントディスプレイ装置に取り付けられて着用者に視力矯正を提供するよう適合される。
【0085】
特定の実施形態において、特定の着用条件は、一対の眼用レンズが適合されるヘッドマウントディスプレイ装置の配置によって特定される。
【0086】
着用条件は、着用時前傾角、反り角、眼用レンズ300の後面304の頂点と角膜の中心204との間の眼-レンズ間距離308を含んでいてもよい。
【0087】
着用時前傾角は、眼用レンズ300の光軸と、主位置にある眼の視軸との間の垂直平面内の角度であり、通常、着用者が真っ直ぐ見ている場合に水平であるように取られる。
【0088】
反り角は、眼用レンズ300の光軸と、主位置にある眼の視軸との間の水平面内の角度であり、通常、水平であるように取られる。
【0089】
眼-レンズ間距離308は、眼用レンズ300の後面304の頂点310と、角膜の頂点との間の距離であり、通常は主位置にある眼の視軸に沿って測定され、通常、水平であるように取られる。これにより、眼-レンズ間距離308は、角膜の中心204である角膜の頂点、又は眼の回転中心202を考慮に入れてもよい。
【0090】
一対の眼用レンズ300は、各レンズの後面上に非ゼロ曲率を有していてもよく、これにより、収差を誘発することなく異なる矯正を行う2つの眼用レンズ300に対して同じ眼-レンズ間距離308を提供することが可能になる。
【0091】
後面304は、固定手段306を受け入れるよう構成される上端304a及び下端304bを有する。固定手段306は、眼用レンズをヘッドマウントディスプレイ装置に取り付けることを可能にする。
【0092】
ヘッドマウントディスプレイ装置は、拡張現実機器であってもよい。
【0093】
固定手段306は、眼用レンズ300をその後面304上に保持しており、その結果、頂点310における眼用レンズ後面304は、眼の回転中心202又は角膜中心204から正確な眼-レンズ間距離308にあるべきである。
【0094】
より一般的には、注視方向の範囲に対して、眼用レンズの後面304と眼の回転中心202又は角膜中心204との間の眼-レンズ間距離が特定の距離に対応して、着用者の眼200から正確な位置に後面304領域を画成することが望ましい可能性がある。
【0095】
後面304の位置決め及び一対の眼用レンズの各眼用レンズ300の寸法形状は、眼-レンズ間距離308によって制約される可能性がある。
【0096】
後面304は、眼用レンズ300の後面304の上端304a及び下端304bに位置する複数の固定点312を備え、各固定点312は、固定手段306を受け入れるよう構成されている。
【0097】
後面304は、機器のフレーム内への眼用レンズ300の固有の位置決め、及び/又は注視の範囲に対して眼200と眼用レンズ後面304との間の正確な距離を維持することを確実にするよう、少なくとも3つの固定点312を備えることが好ましい。
【0098】
レンズ後面304が組み付けられる場合、前面302を最適化して着用者の矯正視力を確保する必要がある。最適化処理は、最適化される面が後面ではなく前面である点を除き、通常のものと同様である。
【0099】
本発明による眼用レンズ300は、眼用レンズ300の後面304上の固定手段306の配置のおかげで、十分な光学品質(例えば、光学収差がほとんどない)により着用者の屈折を矯正し、同時に、着用者の屈折に関係なく大きな視野(図3に示す)を提供する。
【0100】
特定の実施形態において、一対の各眼用レンズ300は、注視方向のドメイン又はレンズ領域にわたって、視力低下並びに/又は屈折力誤差及び/若しくは残留非点収差誤差に関する幾つかの光学性能基準を満たしている。
【0101】
残留非点収差は、着用者に処方された非点収差とレンズによって生じる非点収差との間の差によって定義される。
【0102】
注視方向のドメインは、本明細書によって、頂点が眼の回転中心である円錐又は他の任意の形態によって表されてもよい複数の注視方向によって定義される。全ての注視方向は、眼用レンズ300の後面304と交差する。
【0103】
特定の実施形態において、眼用レンズ300のそれぞれは、単焦点眼用レンズである。
【0104】
より具体的な実施形態において、一対の眼用レンズの各単焦点眼用レンズは、主な注視から30度内の注視方向に対して、0.5D以下、優先的には0.25D以下の度数誤差の絶対値及び残留非点収差誤差を有する。
【0105】
主注視方向から30度の円錐を形成する注視方向のドメインにおいて低い度数誤差及び残留非点収差を有することにより、着用者の注視方向の主領域内で十分な光学品質、例えば、僅かな光学収差が可能になる。
【0106】
別の特定の実施形態において、眼用レンズは、二焦点、三焦点、又は累進多焦点レンズであってもよい。
【0107】
特定の実施形態において、眼用レンズ300のそれぞれは、特定の前面、例えば非球形前面、例えば非球面前面302を有する。
【0108】
眼用レンズ300の前面302は、後面104が同じ結果のために機械加工される公知の眼用レンズ100と同様の方法で、十分な光学品質により着用者の屈折を矯正することを可能にするよう機械加工される。
【0109】
前面302が、眼用レンズ300の光学機能及び屈折の大部分を提供するよう機械加工されるという事実から、眼用レンズ300の前面302は、異なる形態を呈することができ、従って、非球形又は非球面であってもよい。
【0110】
本開示は更に、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するためのコンピュータ手段によって実装される方法であって、
-着用者の処方を表す処方データを提供することと、
-所定の着用条件を表す着用条件データを提供することと、
-形状を表す後面データを提供することと、
-後面データに従う後面と、所定の着用条件において提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対の眼用レンズを特定することと、を含む方法に関する。
着用者に対する処方及び所定の着用条件を提供することにより、一対の眼用レンズ300の設計のための着用者に対する制約を考慮に入れることが可能になる。
【0111】
一対の眼用レンズ300の各眼用レンズ300の後面304も制約され、その結果、眼用レンズ300が拡張現実機器の固定手段306によって保持されると、眼用レンズ後面頂点310は、着用者の処方に関わらず、着用者の眼回転中心202又は角膜中心から特定の眼-レンズ間距離308に位置する。
【0112】
一対の眼用レンズの各眼用レンズ300の後面304が制約されると、対を形成する眼用レンズ300のそれぞれの前面302は、提供された処方及び着用条件に適合する視力矯正を着用者に提供するよう機械加工される。
【0113】
本発明は、更に、1つ以上の命令のシーケンスを格納し、本発明による方法のステップの少なくとも1つを実行するよう適合される処理回路を備える装置に関する。装置は、以下のステップを実行することによって、着用者に適合する一対の眼用レンズを特定するよう構成される。
-着用者の処方を表す処方データを受信するステップと、
-所定の着用条件を表す着用条件データを受信するステップと、
-その形状を表す後面データを受信するステップと、
-後面データに従う後面と、所定の着用条件において提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対の眼用レンズを特定するステップ。
【0114】
方法は、コンピュータ又はマイクロコントローラ等の処理回路を備える装置によって実装される。
【0115】
本発明は、更に、プロセッサにとってアクセス可能であり、且つ、プロセッサによって実行される場合に、プロセッサに以下の方法のステップを実行させる1つ以上の格納された命令のシーケンスを備えるコンピュータプログラム製品に関する。
-着用者の処方を表す処方データを提供するステップと、
-所定の着用条件を表す着用条件データを提供するステップと、
-形状を表す後面データを提供するステップと、
-後面データに従う後面と、所定の着用条件において提供された処方に適合する屈折光学機能を提供するように適合される前面とを有する一対眼用レンズを特定するステップ。
【0116】
本発明は、また、それらに記録されるプログラムを有するコンピュータ読取可能ストレージ媒体にも関し、ここで、プログラムはコンピュータに本発明の方法を実行させる。
【0117】
本発明による一対の眼用レンズ300の取得及び拡張現実機器内でのその位置決めについては、後で詳述する。
【0118】
各眼用レンズの前面302を知って各眼用レンズの後面304を最適化する代わりに、前面302は、光学性能が、例えば、着用者の処方に対応し、任意に着用条件を考慮する光学性能目標に一致するように、後面304を知って最適化される。最終的な一対の眼用レンズ300は、Best Formレンズ又はTscherningレンズ等のレンズターゲットから得ることができる。
【0119】
本開示による一対の眼用レンズは、第1の眼用レンズ及び第2の眼用レンズを備えることが更に考慮される。一対の眼用レンズが拡張/仮想現実機器に取り付けられる場合、第1の眼用レンズ、第2の眼用レンズそれぞれは、拡張/仮想現実機器が着用される場合に着用者の左眼、右眼それぞれに面するよう構成される。
【0120】
拡張/仮想現実機器のフレームに対する一対の眼用レンズの第1及び第2の眼用レンズの位置決めに続いて、第1及び第2の眼用レンズは、以下のような複数のパラメータを知って定義することができる。
-画成される第1、第2の眼用レンズそれぞれの後面、及び、第1の眼基準点及び第2の眼基準点それぞれにおいて、着用条件に依存してもよい第1、第2の眼用レンズそれぞれの位置決めと、
-第1及び第2の眼用レンズの屈折率と、
-最終的には加重を含む左眼及び右眼に対する着用者の処方と、
-一対の第1及び第2の眼用レンズの輪郭又は形状と、
-極小中心、並びに/又は、第1及び第2の眼用レンズの縁部厚さ、累進多焦点レンズのプリズム薄化等の制約)。
【0121】
これらの入力から、前面曲率が基準点で望まれる処方を提供するように、球面又はトーリック前面を計算することができる。一対の眼用レンズのそれぞれがマーキングを有する場合、基準点は、遠方視力点又は近方視力点であってもよい。それ以外の場合、基準点は光学中心であってもよい。
【0122】
これらの曲率の推定値は、Gullstrand式によって得られてもよい。
【0123】
第1のレンズ及び眼用レンズの前面は、目標とする光学性能と眼用レンズ対の光学性能との間の差が最小になるように、最適化プロセスを通じて独立して修正されてもよい。
【0124】
最適化は、メリット関数が、所定の角度を有する円錐によって画成されるドメイン注視方向にわたって1つ又は幾つかの光学基準(例えば、着用者の屈折力及び/又は非点収差)の差を表す反復プロセスを通して行うことができる。
【0125】
この最適化プロセスは、拡張/仮想現実機器に対する第1及び第2の眼用レンズ後面位置決めの取り付けパラメータを考慮に入れることができる。
【0126】
一対の眼用レンズの第1及び第2の眼用レンズの前面は、ゼルニケ多項式、B-スプライン、又はnurbsによってモデル化されてもよい。
【0127】
メリット関数は、ターゲット眼用レンズ及び眼用レンズ300の光学性能間の残差二乗和の差であってもよい。光学性能とは、着用者の屈折力、及び/又は非点収差、及び/又は視力の低下と理解される。
【0128】
メリット関数は、第1及び第2の眼用レンズの輪郭によって区切られる表面領域上で計算されることが好ましい。
【0129】
幾つかの実施形態において、第1及び第2の眼用レンズの前面、並びに/又は前面から後面に通過させる並進及び回転は、遠方視力点における第1及び第2のレンズの屈折力が着用者の左眼及び右眼に対する処方に対応するように、並びに処方及び第1及び第2の眼用レンズの後面の寸法形状に関する全ての制約が満たされるように調整される。
【0130】
図3a~9bは、本開示による眼用レンズの異なる実施形態を開示している。本開示のこれらの異なる実施形態に対して、一対のレンズの材料はMr8である。一対の眼用レンズは、以下の着用パラメータに従って拡張/仮想現実機器に取り付けられる。
--6°の着用時前傾角と、
-0°の反り角と、
-12mmの眼の角膜-眼用レンズの後面間距離。
【0131】
図3a~6dに対応する実施形態において、眼用レンズの後面は平面である。図3a~3dは、眼用レンズが+4Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、レンズが着用者の左眼の前に配設されるよう構成されている、第1の実施形態を示している。それぞれ、図4a~4dは、眼用レンズが、+5Dの球面度数、-2Dの円柱度数、及び0度の円柱軸を有する単焦点レンズであり、レンズが着用者の右眼の前に配設されるよう構成されている、第2の実施形態を示している。図3a及び4aは、眼用レンズの前面が球面又はトーリック面のどちらか一方である場合の最適化前の屈折力のマップを示している。図3b及び4bは、前面の最適化後の屈折力のマップを示している。図3c及び4cは、最適化前の非点収差のマップを示し、図3d及び4dは、最適化後の非点収差のマップを示している。一旦最適化されると、屈折力及び非点収差の最小値と最大値との間の差はそれほど重要ではなく、従って、前記レンズの使用は着用者にとってより快適であることに留意されたい。
【0132】
図5a~5dは、眼用レンズが-4Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、レンズが着用者の左眼の前に配設されるよう構成されている、第3の実施形態を示している。それぞれ、図6a~6dは、眼用レンズが、-3Dの球面度数、-2Dの円柱度数、及び0度の円柱軸を有する単焦点レンズであり、レンズが着用者の右眼の前に配設されるよう構成されている、第4の実施形態を示している。図5a及び6aは、眼用レンズの前面が球面又はトーリック面のどちらか一方である場合の最適化前の屈折力のマップを示している。図5b及び6bは、前面の最適化後の屈折力のマップを示している。図5c及び6cは、眼用レンズの前面の最適化前の非点収差のマップを示し、図5d及び6dは、最適化後の非点収差のマップを示している。一旦最適化されると、屈折力及び非点収差の最小値と最大値との間の差はそれほど重要ではなく、従って、前記レンズの使用は着用者にとってより快適であることに留意されたい。
【0133】
眼用レンズの後面が平面、凸状、又は凹状のいずれかである以下に列挙する実施形態に関して、左右どちらか一方の眼用レンズの後面は、広範囲の処方において同じ略同一の後面を有する。
【0134】
図7a~7cは、眼用レンズが+5Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、後面が平面である第5の実施形態を示している。それぞれ、図8a~8cは、眼用レンズが-7Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、後面が平面である第6の実施形態を示している。図7a及び8aは、眼用レンズの前面の最適化後の屈折力のマップを示している。図7b及び8aは、最適化後の非点収差のマップを示している。図7c及び8cは、実施形態による眼用レンズの垂直断面を示している。
【0135】
第5及び第6の実施形態は、良好な光学性能が、-7D~+5Dの広い範囲の球面度数に対して達成することができることを開示しており、ここで着用者の左眼及び右眼の前に配設されるよう構成される光学レンズは、略同一の平坦な後面を有する。
【0136】
図9a~9cは、眼用レンズが+5Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、後面が-4.54Dの表面球面度数を有する凹状球面である第7の実施形態を示している。それぞれ、図10a~10cは、眼用レンズが-7Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、後面が-4.54Dの表面球面度数を有する凹状球面である第8の実施形態を示している。図9a及び10aは、眼用レンズの前面の最適化後の屈折力のマップを示している。図9b及び10bは、最適化後の非点収差のマップを示している。図9c及び10cは、実施形態による眼用レンズの垂直断面を示している。
【0137】
第7及び第8の実施形態は、良好な光学性能が、-7D~+5Dの広い範囲の球面度数に対して達成することができることを開示しており、ここで着用者の左眼及び右眼の前に配設されるよう構成される光学レンズは、略同一の凹状後面を有する。
【0138】
図11a~11cは、眼用レンズ眼が+5Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、後面が+4.54Dの表面球面度数を有する凸状球面である第9の実施形態を示している。それぞれ、図12a~12cは、眼用レンズが-7Dの球面度数を有する単焦点レンズであり、後面が+4.54Dの表面球面度数を有する凸状球面である第10の実施形態を示している。図11a及び12aは、眼用レンズの前面の最適化後の屈折力のマップを示している。図11b及び12bは、最適化後の非点収差のマップを示している。図11c及び12cは、実施形態による眼用レンズの垂直断面を示している。
【0139】
第9及び第10の実施形態は、良好な光学性能が、-7D~+5Dの広い範囲の球面度数に対して達成することができることを開示しており、ここで着用者の左眼及び右眼の前に配設されるよう構成される光学レンズは、略同一の凸状後面を有する。
【0140】
一般的な発明の概念を限定することなく、実施形態の助けを借りて本開示を上記で説明した。
【0141】
多くの更なる修正及び変形は、前述の例示的な実施形態に言及する際に当業者にとって明らかになるであろう。これは、ほんの一例として与えられ、且つ添付の特許請求の範囲によってのみ特定される本開示の範囲を制限する意図はない。
【0142】
特許請求の範囲において、単語「含む」は他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数を除外しない。互いに異なる従属請求項で異なる特徴が引用されていたとしても、これらの特徴の組み合わせが有利に使用できないことを意味しない。請求項におけるいかなる参照符号も本開示の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0143】
100 眼用レンズ、光学レンズ
102 前面
104 後面
106 固定手段
108 眼-レンズ間距離
110 縁部
112 視野
200 眼
202 眼回転中心
204 角膜中心
300 眼用レンズ
302 非球面前面
302 前面
304 後面
306 固定手段
308 眼-レンズ間距離
310 頂点
312 固定点
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
【国際調査報告】