(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】再生された電池におけるアノードの回収
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20230703BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H01M10/54
C22B7/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552648
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 US2021036313
(87)【国際公開番号】W WO2021252433
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522346431
【氏名又は名称】アセンド エレメンツ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジャンフェン
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001DB02
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB05
4K001DB06
4K001DB23
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】
消耗したLiイオン電池から得られる混合された再生の流れからアノード材料を再生する方法は、カソードの再生の流れから残った析出物量を受け取ることを含む。この析出物は、再生された電池におけるアノード材料に使用されるほとんど黒鉛のみである。この析出物は、リチウム電池の再生の流れからの充電材料を酸で浸出して得られる。この析出物に強酸を添加して残留カソード及びセパレータ材料を除去し、混合物を加熱する。強酸は、硫酸アルミニウムに変化させることで、セパレータから残留酸化アルミニウムを除去する。酸処理した析出物を洗浄することにより、酸化アルミニウムと硫酸から反応した硫酸アルミニウムなどの水溶性汚染物質を除去して、実質的に純粋な黒鉛を生成する。また、カソード再生段階から残った任意の残留材料が除去される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムliイオン電池の再生の流れからの充電材料の酸浸出から生じる析出物を洗浄することと、
残留カソード及びセパレータ材料を除去するために前記析出物に強酸を添加することと、
前記強酸と前記残留カソードと前記セパレータ材料との混合物を、得られるアノード材料の予想される純度に基づく温度まで加熱することと、
前記析出物を洗浄して水溶性汚染物質を除去して前記予想される純度の黒鉛を生成することと、
を含む、消耗したLiイオン電池の混合された再生の流れからアノード材料を再生する方法。
【請求項2】
前記析出物は、11%未満の不純物を有する、再生の流れから前記析出物を受け取ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記析出物は、7%未満のアルミナ及び5%未満の金属硫酸塩を有する、再生の流れから前記析出物を受け取ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
泡立て浮遊工程を経由して前記黒鉛よりも低い密度を有する前記アルミナに基づいて前記アルミナを分離することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記析出物は、再生における前に酸浸出された電池充電材料の再生の流れから残った充電材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記析出物は、NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)の再生の流れから供給された前に浸出された充電材料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電気自動車からの充電セルで用いられた前に使用された充電材料の廃棄物の流れから回収によって前記析出物を受け取ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記強酸は、前記再生の流れからの前記析出物の前記酸浸出に用いられる前記酸よりも低いpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記強酸は、少なくとも98%の濃度での硫酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リチウム電池の再生の流れから得られる天然黒鉛と合成黒鉛の組成比を特定することと、
生成された実質的に純粋なアノード材料において前記組成比を維持することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記天然黒鉛の形態を特定することと、
前記天然黒鉛の前記特定された形態に基づいた形態を有する実質的に純粋な黒鉛を生成することと、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加熱の前記工程に続いて、前記生成された黒鉛の純度を高めるために二次浸出を行うことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記二次浸出は、希塩酸又は希硫酸のうちの1つを用いて行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
硫酸を、他の酸の酸性強度に基づいて別の酸の1つ以上と組み合わせることによって前記強酸を生成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
約80%の硫酸と20%の硝酸の混合物から前記強酸を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記強酸は、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、及びヨウ化水素酸からなる群から選択される酸を含む鉱酸又は鉱酸混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記強酸の前記混合物を少なくとも250℃の温度で6時間加熱し、少なくとも97.0%の純度を達成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記強酸の前記混合物を少なくとも350℃の温度で2時間加熱し、少なくとも99.3%の純度を達成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記強酸の前記混合物を少なくとも350℃の温度で24時間加熱し、少なくとも99.7%の純度を達成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
リチウムliイオン電池の再生の流れからの充電材料の酸浸出から生じる析出物を洗浄することと、
残留カソード及びセパレータ材料を除去するために前記析出物に80%の硫酸と20%の硝酸の組み合わせを添加してアノード材料を生成することと、
前記残留カソードと前記セパレータ材料を含む酸混合物を、少なくとも6時間、少なくとも50℃の温度まで加熱することと、
前記析出物を洗浄して水溶性汚染物質を除去して得られたアノード材料において少なくとも96%の純度を得ることと、
を含む、消耗したLiイオン電池の混合された再生の流れからアノード材料を再生する方法。
【請求項21】
前記強酸の前記酸混合物を少なくとも300℃の温度で24時間加熱し、少なくとも99.5%の純度を達成することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
リチウム電池の再生の流れからの充電材料の酸浸出から生じる析出物を洗浄することと、
残留カソード及びセパレータ材料を除去するために前記析出物に強酸混合物を添加することであって、前記強酸は、80%の硫酸と20%の硝酸から構成されることと、
前記強酸と前記残留カソードと前記セパレータ材料との混合物を、約300℃まで加熱することと、
前記析出物を洗浄して水溶性汚染物質を除去して、再生された電池のアノード材料として使用するのに適した実質的に純粋な黒鉛を生成することと、
を含む、消耗したLiイオン電池の混合された再生の流れからアノード材料を再生する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
車載用、家電用及び産業用途用として広く普及しているリチウムイオン(Liイオン)電池では、カソード材料の回収が重要な焦点となっている。しかしながら、再生された電池の廃棄物の流れは、一般に、カソード、アノード、セパレータ、及び筐体材料の混合された混合物をもたらす、完全な電池アセンブリを乱雑に掻き混ぜること(indiscriminate agitation)(破砕及び細断)を伴う。カソード材料の回収を目的とした再生手順では、かなりの量のアノード材料が使用されないことが多い及び/又は廃棄されることが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
概要
アノード材料の再生プロセスは、カソード材料の酸浸出から二次的な流れを回収する。アノード材料の再生は、カソード材料とアノード材料の両方を豊富に含む解体された電池の混合された再生の流れから、カソード材料の酸浸出による固体微粒子の残留物を収集する。米国特許第9,834,827号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような、使用済み又は消耗した電池の充電材料の再生は、新しい材料を収集する経済性のためにカソード材料に焦点を当てる傾向がある。しかしながら、黒鉛などのアノード材料も再生された材料として価値がある。
【0003】
本明細書での構成は、電気自動車(EV)の生産に向けた現代の傾向が二次(充電式)電池の相当な需要を生み出すという認識に部分的に基づいており、これに対応して、これらの電池は、使用期間が終了した時点で廃棄又は再生する必要がある。残念なことに、安価な黒鉛及び/又は炭素から主として構成されるアノード材料は、そのカソード材料と同様に大規模な再生は実現可能ではないとされてきた。従って、本明細書での構成は、相補的なカソードの再生プロセスと併せてアノード材料を受け取り、既に精錬された黒鉛を精製して再生されたアノード材料として使用することにより、アノードの再生の欠点を実質的に克服する。黒鉛は、電池グレードの黒鉛の生産に関わる処理及び精錬の多くを既に受けているため、使用済み材料からの再生は、新しい黒鉛を精錬するよりも効率的であり得る。
【0004】
消耗したLiイオン電池から得られる混合された再生の流れからアノード材料を再生する方法は、カソードの再生の流れから残った析出物量を膜フィルタープレスを介して受け取ることを含み、この析出物は、実質的に約6~7重量%のアルミナ及び4~5重量%の金属硫酸塩の不純物を有する。この析出物の残りは、再生された電池におけるアノード材料に使用されるほとんど黒鉛のみである。この析出物は、リチウム電池の再生の流れからの充電材料を酸で浸出して得られる。この析出物に98%のH2SO4などの強酸を添加して残留カソード及びセパレータ材料を除去し、混合物を約300℃に加熱する。カソード材料、通常ニッケル、マンガン及びコバルトが浸出すると、電池のカソード側とアノード側の間のセパレータ材料として利用されていた酸化アルミニウムが残ることが多い。強酸は、硫酸アルミニウムに変化させることで、セパレータから酸化アルミニウムを除去する。酸処理した析出物を洗浄することにより、酸化アルミニウムと硫酸から反応した硫酸アルミニウムなどの水溶性汚染物質を除去し、実質的に純粋な黒鉛を生成する。また、カソード再生段階から残った任意のNMC(Ni、Mg、Co)が除去される。
【0005】
カソード材料に比べ原材料(黒鉛)の価値が低いため、アノード材料は、従来の再生ではあまり注目されていなかった。また、従来のアノード処理は、非常に高い温度でフッ化水素(HF)を用いるため、安全面でも大きな負担がかかっていた。本明細書で提案する手法は、より安全な材料をはるかに低い温度で用いることにより、費用対効果の高いアノードの再生が可能になる。更に、再生のための原料のアノード材料は、上記で開示された‘827特許に開示されたカソード再生手法に由来し得る。
【0006】
更なる特徴としては、黒鉛のタイプの定性的な分離及び分類が挙げられる。電池製造業者は、天然黒鉛と合成黒鉛の規定された比を用い、更に、天然黒鉛が「フレーク」構造をとることから、異なる粒子サイズを区別している。リチウム電池の再生の流れで得られる天然黒鉛と合成黒鉛の組成比は、再生された電池が生じた既知の供給源の組成を試験又は特定することにより特定される。得られた純粋な黒鉛は、生成した実質的に純粋な黒鉛における合成黒鉛と天然黒鉛の組成比が典型的には約60/40%、或いは55/45%と維持されるように選別される又は表示される。得られる採取され精製された黒鉛は、以下に列挙するいくつかの要因に応じて、約98.5%の純度である。
【0007】
電池の再生の流れからの黒鉛の回収に実質的に向けられたアノード再生手法は、従って、第一世代の電池に使用された黒鉛の前の処理と純度から利点をもたらす。消耗した電池からのアノード材料は、一般に、第一世代の電池で使用する前に不純物処理を受けている。このアノード材料における任意の不純物は、アノード材料の黒鉛粒子の表面に限定される。
【0008】
EV(電気自動車)からの再生の流れを特定することは、既知の販売者(自動車製造業者)及びそれぞれの製造業者で用いられているLiイオン電池の化学組成に従って更に整理される。特定の製造業者からの電池により供給された再生の流れを維持することで、流入するアノード材料の組成を知ることができる。均質な流れを維持することで、この知られた組成を、得られる純粋な黒鉛に反映させることができる。言い換えれば、同じ製造業者から流入してきた電池は、フレーク黒鉛の特定のサイズの組成で60/40%に分割されており、流入する流れが既知の販売者に限定されている場合、純粋な黒鉛の同様の組成に再生されることになる。
【0009】
図面の簡単な説明
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、異なる図を通して同様の参照文字が同じ部分を指す添付図面に示されるように、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に開示されるアノード材料再生プロセスのフロー図である。
【
図2A】
図1のフロー図からの再生された充電材料のSEM(走査型電子顕微鏡)グラフである。
【
図2B】
図1のフロー図からの再生された充電材料のSEM(走査型電子顕微鏡)グラフである。
【
図3】
図1の充電材料を用いた充電特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
電気化学的エネルギー貯蔵は、典型的には電池の形態で実施され、電気自動車及びハイブリッド車の出現でますます需要が高まっている。以下に説明する構成は、Ni:Mn:Coとして示される特定のNMCモル比を有する活性充電材料を回収するために、廃棄された電池の老化又は消耗した充電材料を再生するのに有益である。カソード材料のより一般なタイプは、60%:20%:20%(622)、80%:10%:10%(811)、50%:30%:20%(532)、及び33.3%:33.3%:33.3%(111)である。カソード充電材料前駆体は、米国特許第9,834,827号、米国特許第10,522,884号、米国特許第10,741,890号及び米国特許出願公開第16/164,952号を含む米国特許及び米国特許出願公開に規定されるNi、Mn及びCoの硫酸塩形態から誘導される。
【0012】
カソード材料の元素は再生により有利である傾向があるが、黒鉛と炭素から主に構成されるアノード充電材料も回収により発生する。その後の処理により、このアノード充電材料も回収することができる。ニッケル、マンガン及びコバルトなどのカソード材料の浸出、並びに集電体金属及び封入材料などの付帯の構成要素の化学的及び物理的除去により、黒鉛/炭素が残留し、アルミナ及び硫酸塩材料が約15%残留する。強酸によるその後の処理と適度な加熱を行うことで、以下に更に述べるように、実質的に純粋な黒鉛を生成することができる。
【0013】
図1は、本明細書に開示されるアノード材料再生プロセスのフロー図である。
図1を参照すると、工程110において、黒鉛を含む析出物が、電池カソード材料の再生操作からの副産物又は廃棄物の流れとして受け取られる。上で概説されたように、従来の手法では、アノード材料(実質的に黒鉛)の回収は求められていなかったが、これに対し、本明細書での手法では、カソードの再生を補完するプロセスとして黒鉛を再生する。従って、受け取られた析出物は、再生において前に酸浸出された電池充電材料の再生の流れから残った充電材料である。黒鉛析出物を得るために、任意の適切な再生又は他のプロセスを用いることができるが、特定の構成では、この析出物は、NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)の再生の流れから供給された前に浸出された充電材料から得られ、典型的には電気自動車からの充電セルで用いられた前に使用された充電材料を表す。具体的な一手法としては、上記の米国特許による酸浸出が挙げられる。EVは、相当なサイズの電池を有し、自動車の寿命に並行して再生の流れを形成し続けるであろう。より具体的には、これらのNMC電池は、リチウムイオン電池(LIB)であり、数百万台の電気自動車(EV)及びプラグイン電気自動車に広く適用されている。
【0014】
アノード材料における黒鉛は、バルクの黒鉛のバッチ又は数量を規定する、形態、又は形状特性を有する。一般に、天然黒鉛は、表IIで以下に更に説明される、フレークの特性及び対応するサイジング(sizing)を有する。合成黒鉛は、より高価であり、一般に粉末又は粒子のテキスチャーを有する。天然フレーク黒鉛からアノード材料を生成するために、処理が必要である。歴史的に、この処理により、フレーク黒鉛濃縮物3トンごとから1トンのアノードグレードの黒鉛が得られた。現代の生産効率を向上させたとしても、黒鉛のアップグレード(upgrade)に伴う損失は、最終精製前に30~50%の範囲にある。電気自動車のリチウムイオン電池を再生し、電気自動車用途に特別に設計された形態及びブレンド(天然及び合成)を有する高純度の黒鉛を回収する構成が本明細書に描かれている。黒鉛は既に電池使用用にアップグレードされているため、回収効率は、98%程度である。
【0015】
従来の手法では、黒鉛を最終的なアノード材料の仕様にするために、アノード会社は、フッ化水素(HF)での処理又は不活性な高温ベーキングでの処理を使用して、黒鉛を、約94%の全黒鉛状炭素(Cg)から99.95%のCgにアップグレードしている。このような高価で環境に負荷をかける化学的及び熱的処理を使用することは、材料の芯の奥深くから不純物を除去するために必要である。しかしながら、BR黒鉛に見られる不純物は、黒鉛の表面にあるため、より安価でより環境に優しい方法を使用してより容易に除去する。
【0016】
黒鉛は電池に使用するために前もって処理されているため、すでに精錬されており、第一世代の天然黒鉛及び合成黒鉛が初期の展開(deployment)のために耐える必要がある処理を受ける必要があまりない。更に、電池の構造からおおよその組成が知られているため、望ましくない構成要素を種類と量によって特定することができる。一般に、再生の流れからの析出物は、11%未満の不純物を有する。より具体的には、析出物は、典型的には、7%未満のアルミナ及び5%未満の金属硫酸塩を有する。これらのパラメータは、電池の構造、及びアノードの再生に先行しアノードの再生を供給するカソードの再生から知られている。
【0017】
消耗したLiイオン電池の混合された再生の流れからアノード材料を再生する方法は、工程112において、リチウムliイオン電池(lithium li ion battery)の再生の流れからの充電材料の酸浸出から生じる析出物を洗浄することを含む。これにより、NMCの再生/浸出から残っているいかなる水溶性成分も除去される。代替の手法は、工程115で開示される、黒鉛よりも低い密度を有するアルミナに基づいて、泡立て浮遊(frothing flotation)工程を経由してアルミナを分離することを伴う。アルミニウムは、典型的な方法で集電体に用いられることが多く、従って、析出物の約7%であると予想され得る。
【0018】
工程116で描かれるように、残留カソード及びセパレータ材料を除去するために、硫酸114などの強酸が析出物に加えられる。これは、強酸と残留カソードとセパレータ材料との混合物を、得られるアノード材料の予想される純度に基づく温度まで加熱することを含む。カソード材料の前の酸浸出からの析出物が残っていることを考えると、従って、強酸は、再生の流れからの析出物の酸浸出に用いられる酸よりも強い(低いpHを有する)ことになる。硫酸は、特にカソードとアノードの両方の浸出に適しており、特定の例では、強酸は、少なくとも98%の濃度での硫酸である。一般に、温度と加熱時間を上げると純度が上がる。予想される純度を得るための特定な組み合わせを表Iに示す。
【0019】
【0020】
他の酸が用いられることができる。例えば、強酸は、硫酸を、組み合わされた酸の酸性強度に基づいて別の酸の1つ以上と組み合わせることによって形成され得る。特定の編成は、約80%の硫酸と20%の硝酸の混合物から強酸を形成することを含む。しかしながら、上述したように精製されたアノード材料を作製するために、任意の適切な鉱酸又は鉱酸混合物を、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、及び/又はヨウ化水素酸を用いることができる。
【0021】
硫酸の再生成は、工程118に示されるように、連続した再生バッチに対して反復形式で硫酸を回収するために実行され得る。
【0022】
更なる任意の工程は、加熱の工程に続いて、工程120で示されるように、生成された黒鉛の純度を高めるために二次浸出を行うことを含む。二次浸出は、希塩酸又は希硫酸のうちの1つを用いて行うことができる。
【0023】
表Iの情報又は代替の温度及び時間のパラメータに基づいて、工程122に示すように、予想される純度の黒鉛を生成するように、水溶性汚染物質を除去するために析出物の更なる洗浄が行われる。これにより、水溶性アルミニウム化合物が除去される。
【0024】
工程126に示されるように、新しい再生された電池のための材料を集中させるために、ここで精製された析出物のサイジングが実行される。一般に、これは、析出物に使用されるリチウム電池の再生の流れから得られる天然黒鉛と合成黒鉛の組成比を特定すること、及び生成された実質的に純粋なアノード材料においてその組成比を維持することを含む。言い換えれば、流入する再生の流れから知られているように、析出物の形態を維持することである。黒鉛の形態については、表IIに更なる詳細を示した。
【0025】
【0026】
合成黒鉛は、その純度、性能、及び一貫性から、リチウムイオン電池の好ましい材料である。アノード材料として、合成黒鉛は、良好なサイクル安定性、より迅速な充電、より高い品質の一貫性、及び迅速な生産拡大性を可能にする。また、合成黒鉛は、実質的に費用面でも有利であることがチャートから確認できる。従って、電池製造業者は、電池の組成について、多くの場合、受け入れ側の自動車製造業者に主導されて、配合を規定している。この組成を特定し(電池における黒鉛の形態に基づく)、再生を通して維持することで、特定の組成を指定する製造業者に再販することができる。
【0027】
高品質な合成黒鉛は、ニードルコークスから合成される。ニードルコークスの世界市場は、非常に断片的であり、いくつかの大手製造業者が独占しているが、ニードルコークスが精錬の副産物である原油の技術的要求のために制約を受けている。鉄鋼業界及びリチウムイオン電池業界でニードルコークスへの需要が高まっていることに加え、環境規制の強化により、価格面で強い逆風が吹いているようである。
【0028】
天然黒鉛は、世界中の鉱山から供給されるが、純度及びフレークの大きさは千差万別である。天然黒鉛を、電池用途で要求される、サイズが選択され、超高純度の、球状化した材料に変換するには、長期的な一貫性及び安定性を確保するために出発材料を厳しく選定する必要がある。黒鉛は、地球上に広く存在する鉱物であるが、全ての鉱山で、所望の生成物仕様を経済的に生み出すための出発点として必要な、一貫した大きなフレーク材料が得られるわけではない。従って、通常、天然黒鉛の特定された形態に基づいた形態を有する実質的に純粋な黒鉛を生成することが好ましい。結果として得られる生成物は、工程128で描かれるように、実質的に純粋な黒鉛である。
【0029】
図2A~2Bは、
図1のフロー図からの再生された充電材料のSEM(走査型電子顕微鏡)グラフである。
図2A及び
図2Bを参照すると、精製プロセスの影響もSEMによって例示されている。
図2Aは、使用済みリチウムイオン電池の元の黒鉛のSEM画像を示し、
図2Bは、
図1のプロセスに基づいて精製された黒鉛を示す。
図2Aに示されるように、黒鉛には深刻な凝集現象及び多くの残留物が観察される。しかしながら、精製プロセス後、
図2Bでは、凝集現象及び残留物が減少し、更には消失しており、
図2Bは、黒鉛におけるより良好に精錬された単一粒子の品質を示している。これは、再生プロセスによって不純物が効果的に除去されたことを示している。黒鉛粒子の形態に大きな変化がないことから、黒鉛の形態が精製プロセスで破壊されていないことがわかる。加えて、再生された黒鉛の表面は、元の黒鉛と比較して滑らかで透明であり、不純物が大幅に減少していることを示している。
【0030】
図3は、
図1の充電材料を用いた充電特性のグラフである。
図3は、回収された黒鉛アノードの速度性能を示す。再生された黒鉛の放電容量は、0.1Cで377.3mAh/gであり、これは、市販の黒鉛にまさに相当する。
【0031】
本明細書で規定されたシステム及び方法は、その実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、その中で形態及び詳細における種々の変更がなされ得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】