(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】PIWIを高発現する癌におけるPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の診断と治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230703BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230703BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230703BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230703BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230703BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230703BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230703BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230703BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230703BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K45/06
A61K49/00
A61P35/00
C07K16/18
C12Q1/02
G01N33/574 A
G01N33/50 Z
G01N33/53 D
G01N33/15 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566191
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2021090591
(87)【国際公開番号】W WO2021219009
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】202010359757.5
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518222745
【氏名又は名称】上海科技大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI TECH UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.393 Middle Huaxia Road, Pudong New Area, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リン ハイファン
(72)【発明者】
【氏名】シ シュオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チェンチェン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB01
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR77
4B063QS33
4C084AA17
4C084AA20
4C084NA14
4C084ZB26
4C085HH20
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、胃がんなどのPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の治療における薬物、医薬組成物の使用を提供する。本発明の薬物、医薬組成物をPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌、特に胃がんの治療に適用した場合、癌、特に胃がんの治療に有効なだけでなく、特異性が高く、正常細胞及び生体機能に害を与えないことである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること、
(b)がん細胞の増殖を阻害すること、
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(d)がん細胞の移動を阻害すること、
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
中の一つ又は複数に使用されるPIWIとNMD複合体タンパク質の結合を阻害する薬物。
【請求項2】
前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、
及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、
及び/又は、前記薬物は、前記PIWIとNMD複合体タンパク質の結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物であり、好ましくは前記PIWI上の前記NMD複合体タンパク質に結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物であり、及び/又は好ましくは前記NMD複合体上の前記PIWIに結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬物。
【請求項3】
前記薬物は、前記PIWIとNMD複合体タンパク質の結合部位に設計された阻害剤であり、好ましくは、PIWI上の前記NMD複合体タンパク質に結合する結合部位に設計された阻害剤、例えばPIWIL1阻害剤、PIWIL2阻害剤、PIWIL3阻害剤及び/又はPIWIL4阻害剤であり、及び/又は、NMD複合体タンパク質上の前記PIWIに結合する結合部位に設計された阻害剤、例えばUPF1阻害剤、UPF2阻害剤、SMG1阻害剤、UPF3阻害剤、SMG5阻害剤、SMG6阻害剤及び/又はSMG7阻害剤であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1阻害剤であり、
及び/又は、前記薬物は小分子物質であり、例えば、小分子化合物などの小分子化学物質、又は小分子活性ペプチドなどの小分子生物学的物質であり;前記小分子化合物は、好ましくは、化合物の薬学的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在し、
及び/又は、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質であり、
及び/又は、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである、
ことを特徴とする請求項2に記載の薬物。
【請求項4】
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること、
(b)がん細胞の増殖を阻害すること、
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(d)がん細胞の移動を阻害すること、
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
中の一つ又は複数に使用されるPIWIを標的とする薬物及び/又はNMD複合体タンパク質を標的とする薬物。
【請求項5】
前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、
及び/又は、前記PIWIを標的とする薬物はPIWI阻害剤であり、例えばPIWIL1阻害剤、PIWIL2阻害剤、PIWIL3阻害剤及び/又はPIWIL4阻害剤であり、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質を標的とする薬物はNMD複合体タンパク質阻害剤であり、例えばUPF1阻害剤、UPF2阻害剤、SMG1阻害剤、UPF3阻害剤、SMG5阻害剤、SMG6阻害剤及び/又はSMG7阻害剤であり、例えばNMDI-14、NMDI1及び/又はVG1であり、
及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、
及び/又は、前記薬物は小分子物質であり、例えば、小分子化合物などの小分子化学物質、又は小分子活性ペプチドなどの小分子生物学的物質であり;前記小分子化合物は、好ましくは、化合物の薬学的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在し、
及び/又は、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質であり、
及び/又は、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである、
ことを特徴とする請求項4に記載の薬物。
【請求項6】
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること、
(b)がん細胞の増殖を阻害すること、
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(d)がん細胞の移動を阻害すること、
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
中の一つ又は複数に使用されるPIWIの発現量を低下させる薬物及び/又はNMD複合体タンパク質の発現量を低下させる薬物。
【請求項7】
前記PIWIの発現量を低下させる薬物は、PIWI遺伝子をサイレンシングし、ダウンレギュレーションし、及び/又はノックアウトする薬物であり、
及び/又は、NMD複合体タンパク質の発現量を低下させる薬物は、NMD複合体タンパク質の遺伝子をサイレンシングし、ダウンレギュレーションし、及び/又はノックアウトする薬物であり、
及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、
及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、
及び/又は、前記薬物は小分子物質であり、例えば、小分子化合物などの小分子化学物質、又は小分子活性ペプチドなどの小分子生物学的物質であり;小分子化合物は、好ましくは、化合物の薬学的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在し、
及び/又は、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質であり、
及び/又は、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである、
を特徴とする請求項6に記載の薬物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物を含む医薬組成物。
【請求項9】
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること、
(b)がん細胞の増殖を阻害すること、
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(d)がん細胞の移動を阻害すること、
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
中の一つ又は複数に使用され、
好ましくは、
前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくは、UPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんであることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、piRNA阻害剤などのpiRNAを標的とする薬物を含まず、及び/又は、前記医薬組成物は、PIWIとpiRNAの結合を阻害する薬物を含まず、
好ましくは、
前記PIWIとpiRNAの結合をブロックする薬物は、前記PIWIとpiRNAの結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物、好ましくは前記PIWI上のpiRNAとの結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物、及び/又は、好ましくは、前記piRNA上のPIWIとの結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物であり、
より好ましくは、
前記PIWIとpiRNAの結合をブロックする薬物は、前記PIWIとpiRNAの結合部位に設計された阻害剤、好ましくは、PIWI上の前記piRNAとの結合部位に設計された阻害剤、及び/又はpiRNA上の前記PIWIとの結合部位に設計された阻害剤である、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は、医薬補助剤をさらに含み、
及び/又は、前記医薬組成物は、他の薬物をさらに含み、前記他の薬物は、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療する薬物であり、
及び/又は、前記医薬組成物は、請求項1~7のいずれか一項に記載の一つ又は複数の薬物から構成される、
ことを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療する方法であって、
前記方法は、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物を使用することにより診断及び/又は治療することを含み、
好ましくは、
前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんであり、及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む、
ことを特徴とする。
【請求項13】
前記薬物及び/又は医薬組成物は、
(a)がん細胞の増殖を阻害すること、
(b)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(c)がん細胞の移動を阻害すること、
(d)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(e)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(f)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(g)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
中の一つ又は複数の機序によって診断及び/又は治療することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の診断及び/又は治療における、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、
前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、
及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記薬物及び/又は医薬組成物は、
(a)がん細胞の増殖を阻害すること、
(b)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(c)がん細胞の移動を阻害すること、
(d)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(e)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(f)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(g)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
中の一つ又は複数の機序によって診断及び/又は治療する使用。
【請求項15】
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の診断及び/又は治療する薬物の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、
前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、
及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記薬物及び/又は医薬組成物は、
(a)がん細胞の増殖を阻害すること、
(b)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(c)がん細胞の移動を阻害すること、
(d)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(e)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(f)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(g)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
中の一つ又は複数の機序によって診断及び/又は治療する使用。
【請求項16】
癌細胞の増殖阻害、癌細胞周期のランニング阻害、癌細胞の移動阻害、癌の腫瘍形成能の阻害、癌の生体内での転移能の阻害、癌のシグナル伝達経路調節、及び/又は癌細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路調節の方法であって、
前記方法は、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物を使用して阻害及び/又は調節することを含み、
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
ことを特徴とする使用。
【請求項17】
癌細胞の増殖阻害、癌細胞周期のランニング阻害、癌細胞の移動阻害、癌の腫瘍形成能の阻害、癌の生体内での転移能の阻害、癌のシグナル伝達経路調節、及び/又は癌細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路調節における、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む使用。
【請求項18】
癌細胞の増殖阻害、癌細胞周期のランニング阻害、癌細胞の移動阻害、癌の腫瘍形成能の阻害、癌の生体内での転移能の阻害、癌のシグナル伝達経路調節、及び/又は癌細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路調節の薬物の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む使用。
【請求項19】
請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物のスクリーニングにおける、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の使用であって、
好ましくは、
前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である使用。
【請求項20】
請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物及び/又は請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物のスクリーニングにおける、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する細胞株の使用であって、
好ましくは、
前記薬物は小分子物質であり、例えば、小分子化合物などの小分子化学物質、又は小分子活性ペプチドなどの小分子生物学的物質であり;前記小分子化合物は、好ましくは、化合物の薬学的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在し、
及び/又は、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質であり、
及び/又は、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスであり、
及び/又は、前記細胞株は胃がん細胞株であり、好ましくはSNU-1、SNU-16及び/又はAGSであり、
及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1を含む使用。
【請求項21】
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌のバイオマーカー及び/又は治療標的としてのPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の使用であって、
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1を含み、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんである使用。
【請求項22】
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の検出及び/又は診断に使用されるバイオマーカーであって、
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を含み、
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであるマーカー。
【請求項23】
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を検出及び/又は診断するキットであって、
PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を検出する抗体を含み、
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであるキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、出願日が2020/4/29である中国特許出願2020103597575の優先権を主張する。本願は、当該中国特許出願の全文を引用する。
[技術分野]
本発明は、PIWI、特にPIWIL1及び/又はNMD複合体タンパク質が、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌、特に胃がんにおける診断及び治療に関する。
【0002】
[背景技術]
胃がんは最も一般的な悪性腫瘍の一つであり、予後が比較的悪く、人々の健康に深刻な脅威をもたらす。国際がん研究機関(IARC)の統計によると、2012年の世界の胃がん新規発生数は約95万1千人、胃がんによる死亡数は約72万3千人で、それぞれは悪性腫瘍の発生率では5位、死亡率では3位にランクされている。2012年、中国における胃がんの新規発生数は約42万4千件、死亡数は約29万8千件で、悪性腫瘍の中では2番目に多い発生率となっている(1)。胃がんは手術と化学療法を中心とした集学的治療が中心で、胃全摘術や胃亜全摘術にD2リンパ節郭清を組み合わせた治療法が、胃がんの標準術式として徐々に受け入れられてきている。根治手術ができない進行胃がんの患者には、化学療法が生存期間を延長するための主な手段である(2)。ネオアジュバント化学療法後の全生存率は向上しているものの、総合効率は低く、患者の予後は不良である。そこで近年、胃がん、特に進行胃がんの治療に対する新しいアプローチとして遺伝子標的治療が注目されている。現在、米国FDAによって承認された胃がん標的治療薬はトラスツズマブ(Trastuzumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)という3つのモノクローナル抗体である。TrastuzumabはHER2(3、4)を標的とし、RamucirumabはVEGFR2(5-7)を標的とし、PembrolizumabはPD-1(8)を標的としている。これらの標的薬物は、他のがん種の標的治療において一定のブレークスルーを果たしたものの、胃がん、特に進行性胃がんに対しては有効ではなく、臨床使用にはまだ大きな限界がある。また、これらの薬物の標的遺伝子は、正常な細胞や生体内で広く発現し、重要な生理的機能を担っているため、これを標的とすると、必然的に正常な細胞や生体機能に害を与えることになる。したがって、胃がん治療において、正常な胃の細胞や組織では発現していない、あるいはほとんど発現していない、より特異的に胃がん細胞で発現している標的を発見し同定することが急務であり、この遺伝子を標的とすることにより、正常組織や細胞へのダメージを最小限に抑えながら胃がん細胞を効果的に殺傷することが可能となる。
【0003】
PIWI(P-element-induced wimpy testis)タンパク質は、Argonautスーパーファミリーのブランチで、ヒトではPIWIL1(piwi like RNA-mediated gene silencing 1)、PIWIL2、PIWIL3及びPIWIL4という四つのメンバーが含まれ、マウスではPIWIL1、PIWIL2及びPIWIL4が含まれ、ショウジョウバエではPIWIが含まれている。PIWIは1997年に林海帆教授によってショウジョウバエで初めて同定され、そのよく知られた変異体表現型‐P因子トランスポゾン誘発精巣不活化(P-element-induced wimpy testis)にちなんで命名された(9)。PIWIは生殖幹細胞の維持と自己複製に重要な役割を果たしている。PIWIタンパク質はPIWI相互作用RNA(PIWI-interacting RNAs、piRNA)と呼ばれる非コードsmallRNAと結合する(10-13)。PIWIの既知の古典的な調節方式は、PIWIがpiRNAと結合してエフェクター複合体、即ちpiRNA誘導サイレンシングを形成し、エピジェネティック制御、転写後制御など様々な分子制御に関与し、生殖細胞発生、配偶子形成、幹細胞自己複製、トランスポゾン阻害、ゲノム完全性などに必要である(14-19)。PIWIタンパク質は、海綿動物からヒトまで幅広い生物で発現しており、これらの生物では、PIWIタンパク質とpiRNAは生殖細胞系に優位に発現し、ヒトのPIWIタンパク質はすべて雄の生殖細胞系に優位に発現し、生殖細胞系以外の体組織にはほとんど発現していない。PIWIL1などのPIWIは、胃がん組織を含む様々な腫瘍組織で高発現していることが文献で報告された(20-23)。しかし、PIWIが動物のin vivo及びin vitroで腫瘍、特に胃腫瘍の形成と転移の両方を促進するように機能することは先行技術のどこにも開示されておらず、癌におけるPIWIの調節メカニズム、及びそれがpiRNA依存的又はpiRNA非依存的にその生物学的機能を発揮するかは不明であるため、癌標的治療におけるPIWIの適用モードを明確にすることは不可能である。
【0004】
[発明の概要]
本発明が解決しようとする技術的課題は、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌(例えば胃がん)を効果的に治療できる薬物が存在しないなどの従来技術の欠点を克服し、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌(例えば胃がん)の治療における薬物、医薬組成物の使用を提供することである。本発明に記載の薬物、医薬組成物を、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌(例えば胃がん)の治療に使用すると、癌、特に胃がんの治療に有効なだけでなく、特異性が高く、正常細胞や身体機能にも害を与えないことができる。
【0005】
先行技術では、PIWIL1などのPIWIが胃がん組織を含む様々な腫瘍組織で高発現していることが報告されているだけであるが、PIWIL1などのPIWIが高発現するがん、特に胃がんにおいて生体内で腫瘍形成及び転移を促進する機能を有することは当業者にとって明らかでない。先行技術で知られているPIWIの古典的な調節方式は、PIWIがpiRNAと結合してエフェクター複合体、即ちpiRNA誘導サイレンシングを形成することである。PIWI阻害の目的を達成するために、当業者は通常、PIWIとpiRNAの両方を標的とする阻害剤の製造を検討するが、piRNAはあまりにも多様で、その配列は比較的短く、smallRNAのカテゴリーに属するため、piRNAを標的とする阻害剤の設計が非常に困難である。本発明者は、幅広い実験により、PIWIの高発現する癌細胞、特に胃がん細胞ではpiRNAがほとんど存在しないこと、PIWIL1などのPIWIが、piRNAに依存せず、NMD複合体と相乗的な制御によりPIWIの高発現する癌細胞、特に胃がん細胞の増殖・移動を制御できることを発見し、従来の現場の見方や技術的な偏りから脱却した。したがって、PIWIを標的とする薬物及び/又はNMD複合体を標的とする薬物等を設計し、PIWIとNMD複合体タンパク質の結合を阻害する薬物を設計し、PIWIの発現を低減する薬物及び/又はNMD複合体タンパク質の発現を低減する薬物等を設計すれば、非常に難しいpiRNA等を標的とする阻害剤の設計を必要とせずにPIWIの高発現する癌、特に胃がんを有効に治療できる可能性がある。
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第一様態において、以下の一つ又は複数の用途に使用されるPIWI及びNMD複合体タンパク質の結合を阻害する薬物を提供する。
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること。
【0007】
(b)がん細胞の増殖を阻害すること。
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること。
(d)がん細胞の移動を阻害すること。
【0008】
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること。
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること。
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること。
【0009】
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること。
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
【0010】
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0011】
好ましくは、前記薬物は、前記PIWI及びNMD複合体タンパク質の結合部位を変異及び/又は阻害することにより、(PIWIとNMD複合体タンパク質の結合)をブロックする薬物である。より好ましくは、前記薬物は、前記PIWI上の前記NMD複合体タンパク質と結合する結合部位を変異及び/又は阻害することにより、(PIWIとNMD複合体タンパク質の結合)をブロックする薬物である。より好ましくは、前記薬物は、前記NMD複合体上の前記PIWIと結合する結合部位を変異及び/又は阻害することにより、(PIWIとNMD複合体タンパク質の結合)をブロックする薬物である。
【0012】
好ましくは、前記薬物は、前記PIWIとNMD複合体タンパク質との結合部位に設計された阻害剤である。より好ましくは、前記薬物は、PIWI上の前記NMD複合体タンパク質に結合する部位に設計されたPIWIL1阻害剤、PIWIL2阻害剤、PIWIL3阻害剤及び/又はPIWIL4阻害剤などの阻害剤である。より好ましくは、前記薬物は、NMD複合体タンパク質上の前記PIWIに結合する結合部位に設計されたUPF1阻害剤、UPF2阻害剤、SMG1阻害剤、UPF3阻害剤、SMG5阻害剤、SMG6阻害剤及び/又はSMG7阻害剤の阻害剤であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1阻害剤である。
【0013】
好ましくは、前記薬物は、低分子物質(低分子阻害剤であってもよく、一般に競合低分子阻害剤である)、例えば、低分子化合物のような低分子化学物質、又は低分子活性ペプチドのような低分子生物学的物質である。ここで、前記低分子化合物は、好ましくは化合物の薬学的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在する。
【0014】
好ましくは、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質である。
好ましくは、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである。
【0015】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第二様態において、以下の一つ又は複数の用途に使用されるPIWIを標的とする薬物及び/又はNMD複合体タンパク質を標的とする薬物を提供する。
【0016】
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること。
(b)がん細胞の増殖を阻害すること。
【0017】
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること。
(d)がん細胞の移動を阻害すること。
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること。
【0018】
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること。
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること。
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること。
【0019】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0020】
好ましくは、前記PIWIを標的とする薬物は、例えばPIWIL1阻害剤、PIWIL2阻害剤、PIWIL3阻害剤及び/又はPIWIL4阻害剤のようなPIWI阻害剤である。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質を標的とする薬物は、NMD複合体タンパク質阻害剤、例えば、UPF1阻害剤、UPF2阻害剤、SMG1阻害剤、UPF3阻害剤、SMG5阻害剤、SMG6阻害剤及び/又はSMG7阻害剤であり、例えばNMDI-14、NMDI1及び/又はVG1である。
【0021】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記薬物は、低分子物質(低分子阻害剤であってもよく、一般に競合低分子阻害剤である)、例えば、低分子化合物のような低分子化学物質、又は低分子活性ペプチドのような低分子生体物質であり、前記低分子化合物は、好ましくは化合物の医薬的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の医薬的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在する。
【0022】
好ましくは、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質である。
好ましくは、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである。
【0023】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第三様態において、以下の一つ又は複数の用途に使用されるPIWIの発現量を低下させる薬物及び/又はNMD複合体タンパク質の発現量を低下させる薬物を提供する。
【0024】
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること。
(b)がん細胞の増殖を阻害すること。
【0025】
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること。
(d)がん細胞の移動を阻害すること。
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること。
【0026】
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること。
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること。
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること。
【0027】
好ましくは、前記PIWIの発現量を低下させる薬物は、PIWIの遺伝子をサイレンシング、ダウンレギュレーション及び/又はノックアウトする薬物である。
好ましくは、NMD複合体タンパク質の発現量を低下させる薬物は、NMD複合体タンパク質の遺伝子をサイレンシング、ダウンレギュレーション及び/又はノックアウトする薬物である。
【0028】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0029】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記薬物は、低分子物質(低分子阻害剤であってもよく、一般に競合低分子阻害剤である)、例えば、低分子化合物のような低分子化学物質、又は低分子活性ペプチドのような低分子生体物質であり、前記低分子化合物は、好ましくは化合物の医薬的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の医薬的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在する。
【0030】
好ましくは、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質である。
好ましくは、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである。
【0031】
上記第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物において、piRNA阻害剤等のpiRNAを標的とする薬物を含まない薬物であってもよく;及び/又は、前記医薬組成物が、PIWIとpiRNAの結合を阻害する薬物を含まない薬物であってもよい。
【0032】
好ましくは、
PIWIとpiRNAの結合を阻害する前記薬物は、前記PIWIとpiRNAの結合部位を変異及び/又は阻害することによってブロックする薬物であり、好ましくは前記PIWI上の前記piRNAと結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによってブロックする薬物、及び/又は好ましくは前記piRNA上の前記PIWIと結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによってブロックする薬物である。
【0033】
より好ましくは、
PIWIとpiRNAの結合を阻害する前記薬物は、前記PIWIとpiRNAの結合部位に設計された阻害剤であり、好ましくは、PIWI上の前記piRNAに結合する結合部位に設計された阻害剤、及び/又はpiRNA上の前記PIWIに結合する結合部位に設計された阻害剤である。
【0034】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第四様態において、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物を含有する医薬組成物を提供する。
好ましくは、前記医薬組成物は、以下の一つ又は複数の用途に使用される。
【0035】
(a)PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること。
(b)がん細胞の増殖を阻害すること。
【0036】
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること。
(d)がん細胞の移動を阻害すること。
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること。
【0037】
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること。
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること。
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること。
【0038】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0039】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記医薬組成物は、piRNA阻害剤などのpiRNAを標的とする薬物を含まない。
【0040】
好ましくは、前記医薬組成物は、PIWIとpiRNAの結合を阻害する薬物を含まない。
ここで、PIWIとpiRNAの結合を阻害する前記薬物は、前記PIWIとpiRNAの結合部位を変異及び/又は阻害することによってブロックする薬物、好ましくは前記PIWI上の前記piRNAに結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによってブロックする薬物であり、及び/又は好ましくは前記piRNA上の前記PIWIと結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによってブロックする薬物である。
【0041】
ここで、PIWIとpiRNAの結合を阻害する前記薬物は、前記PIWIとpiRNAの結合部位に設計された阻害剤であり、好ましくは、PIWI上の前記piRNAに結合する結合部位に設計された阻害剤であり、及び/又はpiRNA上の前記PIWIに結合する結合部位に設計された阻害剤である。
【0042】
好ましくは、前記医薬組成物は、医薬補助剤をさらに含む。
好ましくは、前記医薬組成物は、他の薬物をさらに含み;前記他の薬物は、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療する薬物である。
【0043】
好ましくは、前記医薬組成物は、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物の一つ又は複数から構成される。
上記技術的課題を解決するために、本発明の第五様態において、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物によって診断及び/又は治療することを含むPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療する方法を提供する。
【0044】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
【0045】
好ましくは、前記薬物及び/又は医薬組成物は、以下の一つ又は複数の機序によって診断及び/又は治療を行う。
(a)がん細胞の増殖を阻害すること。
【0046】
(b)がん細胞周期のランニングを阻害すること。
(c)がん細胞の移動を阻害すること。
(d)がんの腫瘍形成能を阻害すること。
【0047】
(e)がんの体内での転移能を阻害すること。
(f)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること。
(g)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること。
【0048】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第六様態においてPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の診断及び/又は治療における、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物、及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0049】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
【0050】
好ましくは、前記薬物及び/又は医薬組成物は、以下の一つ又は複数の機序によって診断及び/又は治療を行う。
(a)がん細胞の増殖を阻害すること。
【0051】
(b)がん細胞周期のランニングを阻害すること。
(c)がん細胞の移動を阻害すること。
(d)がんの腫瘍形成能を阻害すること。
【0052】
(e)がんの体内での転移能を阻害すること。
(f)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること。
(g)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること。
【0053】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第七様態において、胃がんの診断及び/又は治療の薬物の製造における、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物の使用を提供する。具体的には、胃がんの診断及び/又は治療の薬物の製造における、PIWIとNMD複合体タンパク質の結合を阻害する薬物(第一様態に記載)及び/又は前記薬物を含む医薬組成物(第四様態に記載)の使用であり;胃がんの診断及び/又は治療の薬物の製造における、PIWIを標的とする薬物及び/又はNMD複合体タンパク質を標的とする薬物(第二様態に記載)及び/又は前記薬物を含む医薬組成物(第四様態に記載)の使用である。胃がんの診断及び/又は治療の薬物の製造における、PIWIの発現量を低下させる薬物及び/又はNMD複合タンパクの発現量を低下させる薬物(第三様態に記載)、及び/又は前記薬物を含む医薬組成物(第四様態に記載)の使用である。
【0054】
好ましくは、前記胃がんは、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
【0055】
好ましくは、前記薬物及び/又は薬物組成物は、以下の一つ又は複数の機序によって診断及び/又は治療を行う。
(a)がん細胞の増殖を阻害すること。
【0056】
(b)がん細胞周期のランニングを阻害すること。
(c)がん細胞の移動を阻害すること。
(d)がんの腫瘍形成能を阻害すること。
【0057】
(e)がんの体内での転移能を阻害すること。
(f)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること。
(g)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること。
【0058】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第八様態において、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物によって阻害及び/又は調節を行うこと含むステップを特徴とする癌細胞増殖の阻害、癌細胞周期のランニングの阻害、癌細胞移動の阻害、癌の腫瘍形成能の阻害、癌の生体内での転移能の阻害、癌細胞周期のシグナル伝達経路の調節、及び/又は癌細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路の調節する方法を提供する。
【0059】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
【0060】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第九様態において、癌細胞増殖の阻害、癌細胞周期のランニングの阻害、癌細胞移動の阻害、癌の腫瘍形成能の阻害、癌の生体内での転移能の阻害、癌細胞周期のシグナル伝達経路の調節、及び/又は癌細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路の調節における、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0061】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
【0062】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第十様態において、癌細胞増殖の阻害、癌細胞周期のランニングの阻害、癌細胞移動の阻害、癌の腫瘍形成能の阻害、癌の生体内の転移能の阻害、癌細胞周期のシグナル伝達経路の調節、及び/又は癌細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路の調節する薬物の製造における、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0063】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
【0064】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第十一様態において、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物のスクリーニングにおける、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の使用を提供する。
【0065】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0066】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第十二様態において、本発明の第一様態、第二様態及び/又は第三様態に記載の薬物及び/又は本発明の第四様態に記載の医薬組成物のスクリーニングにおける、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する細胞株の使用を提供する。
【0067】
好ましくは、前記薬物は、低分子物質(低分子阻害剤であってもよく、一般に競合低分子阻害剤である)、例えば、低分子化合物のような低分子化学物質、又は低分子活性ペプチドのような低分子生体物質であり、前記低分子化合物は好ましくは、化合物の医薬的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の医薬的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形での形態で存在する。
【0068】
好ましくは、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質である。
好ましくは、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである。
【0069】
好ましくは、前記細胞株は胃がん細胞株であり、好ましくはSNU-1、SNU-16及び/又はAGSである。本出願人は、SNU-1、SNU-16等の細胞株がPIWIL1を高発現する細胞株であることを初めて発見した。
【0070】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0071】
上記技術的課題を解決するために、本発明の第十三様態において、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質がPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌のバイオマーカー及び/又は治療標的としての使用を提供する。
【0072】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0073】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
上記技術的課題を解決するために、本発明の第十四様態において、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を含むことを特徴とする、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の検出及び/又は診断のためのバイオマーカーを提供する。
【0074】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0075】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
上記技術的課題を解決するために、本発明の第十五様態において、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を検出する抗体を含むことを特徴とする、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の検出及び/又は診断する試薬キットを提供する。
【0076】
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含む。
好ましくは、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である。
【0077】
好ましくは、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんである。
本発明において、ナンセンス媒介mRNA崩壊(Nonsense-mediated mRNA decay、NMD)は、転写物の品質(transcript quality)及び存在量を調節する真核生物の必須プロセスであり、胚発生や癌の進行を含む様々なプロセスに関連している。NMDタンパク質複合体は、UPF1(Regulator of nonsense transcripts 1)、UPF2(Regulator of nonsense transcripts 2)及びUPF3(Regulator of nonsense transcripts 3)の3つのコアコンポーネントから構成される。SMG1(Serine/threonine-protein kinase SMG1)によるコアNMDコンポーネントUPF1のリン酸化は、NMDにとって重要である。
【0078】
本発明において、NMD複合体タンパク質を標的とする前記薬物は、NMD複合体タンパク質阻害剤であってもよく、例えば、NMDI-14(エチル2-(((6,7-ジメチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-キノキサリニル)アセチル)アミノ)-4,5-ジメチル-3-チオペネカルボキシレート,ナンセンス媒介mRNA崩壊の阻害剤14、Ethyl2-(((6,7-dimethyl-3-oxo-1,2,3,4-tetrahydro-2-quinoxalinyl)acetyl)amino)-4,5-dimethyl-3-thiophenecarboxylate,Nonsense-Mediated mRNA Decay Inhibitor 14)、NMDI14はSMG7タンパク質のポケットを標的にして、SMG7-UPF1相互作用を阻害する;例えば、NMDI1(UPF1のSMG5とのインターカレーションを阻害)及び/又は例えばVG1(UPF1のSMG5とのインターカレーションを阻害)(Victoria J. B. Gotham,etc.,Synthesis and activity of a novel inhibitor of nonsense-mediated mRNA decay,Organic&Biomolecular Chemistry,2016,14,1559-1563)である。
【0079】
本発明において、前記PIWIタンパク質ファミリーは、ヒトではPIWIL1(piwi like RNA-mediated gene silencing 1[Homo sapiens(human)]、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/9271,geneID:9271)、PIWIL2、PIWIL3及びPIWIL4という四つのメンバーがあり、マウスではPIWIL1、PIWIL2、PIWIL4のみがあり、ショウジョウバエではPIWIのみ(詳細はhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/?term=PIWI参照)がある。
【0080】
本発明において、前記「特定の物質(例えばタンパク質)を標的とする薬物」は、特定の物質(例えばタンパク質)と結合する薬物として理解される。前記「特定の物質(例えばPIWIタンパク質又はNMD複合体タンパク質)を標的とする阻害剤」は、特定の物質(例えばPIWIタンパク質又はNMD複合体タンパク質)に結合することによって阻害効果を有する製剤として理解される。
【0081】
本発明において、「包括、含む、含有」とは、後に挙げられた成分に加えて他の成分を含有することを意味してもよく、「......からなる」、即ち後に挙げた成分のみを含み、他の成分を含有しないことを意味してもよい。
【0082】
当分野の常識に基づくと、上記の好ましい各条件を任意に組み合わせて、本発明の好ましい実施例を得ることができる。
本発明で使用する試薬や原料は、すべて市販されているものである。
【0083】
本発明の積極的な進歩的効果は、本明細書に記載の薬物、医薬組成物をPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌、特に胃がんの治療に適用した場合、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌の治療に有効なだけでなく、特異性が高く、正常細胞及び生体機能に害を与えないことである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】六つの異なる胃がん細胞株と一つの正常胃上皮細胞株におけるPIWIL1のmRNA発現を示す。
【
図2】六つの異なる胃がん細胞株、一つの正常胃上皮細胞株及び陽性対照マウスの精巣におけるPIWIL1のタンパク質発現を示す。
【
図3】免疫蛍光測定の結果から、PIWIL1のタンパク質は主に胃がん細胞の細胞質に局在していることがわかる。
【
図4】胃がん患者の正常組織とがん組織のペア97組の臨床サンプルにおけるPIWIL1のmRNA発現を示す。
【
図5】胃がん組織マイクロアレイのペア104サンプルにおけるPIWIL1タンパク質の発現とPIWIL1のタンパク質発現部位を示す。
【
図6】PIWIL1の発現が腫瘍のグレードや転移と正の相関があり、腫瘍組織の分化度と負の相関があることを示す。
【
図7】CRISPR-Cas9技術を用いて、胃がん細胞SNU-1においてPIWIL1が成功にノックアウトされたことを示す。
【
図8】PIWIL1を正常の血清濃度又は低血清濃度の飢餓状態でノックアウトすると、胃がん細胞SNU-1の増殖が有意に阻害され、5%FBSの低血清濃度ではより顕著に阻害されることを示す。
【
図9】PIWIL1をノックアウトすることで、胃がん細胞の細胞周期のG1/S期移行が阻害されることを示す。
【
図10】PIWIL1をノックアウトすることで、胃がん細胞の細胞移動が阻害されることを示す。
【
図11】PIWIL1をノックアウトすることで、ヌードマウスにおける胃がん細胞の皮下腫瘍形成が阻害されることを示す。
【
図12】PIWIL1をノックアウトすることで、ヌードマウスにおける胃がん細胞のがん転移が阻害されることを示す。
【
図13】野生型PIWIL1細胞とノックアウトPIWIL1細胞の複数セットのディープRNAシーケンシングとバイオインフォーマティックWGCNA解析により、PIWIL1によって制御される41のモジュラー遺伝子グループがあることを発見したことを示す。
【
図14】PIWIL1によって制御されるすべての遺伝子グループの中、ブルーモジュールとターコイズモジュールの遺伝子グループが、PIWIL1のこの特徴に最も関連し、PIWIL1によって最も有意に制御される二つの遺伝子グループであることを示す。これら二つの遺伝子グループのシグナル伝達経路を解析した結果、最も重要なクラスターが、細胞周期と細胞フォーカルアドヒージョンの細胞間接着に関連するシグナル伝達経路であることを示す。
【
図15】細胞周期に関連するいくつかの重要な癌促進遺伝子のmRNA発現がPIWIL1ノックアウトによって阻害されたこと、及び細胞移動に関連するいくつかの重要な腫瘍阻害遺伝子のmRNA発現がPIWIL1ノックアウトによって上昇したことを示す。
【
図16】PIWIタンパク質を高発現する胃がん細胞SNU-1では、piRNAの発現がほとんど検出されず、PIWIL1の濃縮したpiRNAも検出できないことを示す。
【
図17】piRNAとの結合能を欠いたPIWIL1変異体でも、野生型PIWIL1と同様にPIWIL1下流標的遺伝子を制御し、胃がんにおける発がん性生物機能を発揮できることを示す。
【
図18】PIWIL1共免疫沈降結合タンパク質プロファイルの実験結果は、PIWIL1がUPF1タンパク質と結合できることを示す。
【
図19】PIWIL1がナンセンスmRNA分解経路(NMD)複合体タンパク質UPF1、UPF2、SMG1及び活性化UPF1(リン酸化UPF1)を共免疫沈降させることを示す。
【
図20】免疫蛍光の結果は、NMD経路が働くオルガネラPボディにおいて、PIWIL1がUPF1と共局在化できることを示す。
【
図21】UPF1への結合を担うPIWIL1の特異的結合領域、及びこの結合領域の破壊がPIWIL1のUPF1への結合を著しく阻害すること、一方、piRNAの結合部位の破壊はPIWIL1のUPF1への結合に影響を与えないことを示す。
【
図22】UPF1への結合能力の喪失が、細胞移動に関連するいくつかの下流腫瘍阻害遺伝子でのPIWIL1の発現と調節に大きく影響し、胃がん細胞の細胞移動でのPIWIL1の調節に大きく影響することを示す。
【
図23】パターン図は生殖器系PIWIタンパク質とは異なり、piRNAとともにPIWI-piRNA複合体を形成して重要な生物機能を発揮していることを示す。胃がん細胞には、PIWIL1の古典的なパートナーであるpiRNAがほとんど存在せず、PIWIL1はNMD経路など他の経路を通じて胃がん細胞の増殖、移動、腫瘍形成、腫瘍の生体内での転移の制御を実現する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
[具体的な実施方式]
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれによって実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、特定の条件が示されていない実験方法は、従来の方法及び条件に従うか、又は取引説明書に従って選択される。
【0086】
実施例1 胃がん細胞及び胃がん組織におけるPIWIL1の高発現
1.1 胃がん細胞におけるPIWIL1のmRNA発現
六つの異なる胃がん細胞株(AGS、HGC-27、N87、SNU-5、SNU-16、SNU-1)及び一つの正常胃上皮細胞(GES-1)からRNAを抽出し、逆転写により対応するcDNAを得て、定量PCRによりPIWIL1及びβ-ActinのmRNA発現量を測定した。各サンプルについて、β-Actinの発現量を内部基準としてPIWIL1の相対発現量を算出した
【0087】
【数1】
正常胃上皮細胞GES-1におけるPIWIL1の相対発現量を基準値1として、GES-1におけるPIWIL1の相対発現量
【0088】
【数2】
とに対する各胃がん細胞におけるPIWIL1の相対発現量
【0089】
【数3】
の比を算出し、すなわち、GES-1におけるPIWIL1の発現量より多いか少ないかという発現倍数
【0090】
【数4】
を算出した。
図1の棒グラフは、これら七つの細胞株の相対的な倍数値により作成された。定量的PCRによる各サンプルのCt値は、独立した3つのサンプルの生物学的反複から取った平均値である。
図1は、PIWIL1の異なる胃がん細胞におけるmRNAの発現が、正常胃上皮細胞よりも高いことを示す。
【0091】
1.2 胃がん細胞におけるPIWIL1のタンパク質発現と局在性
六つの異なる胃がん細胞株(AGS、HGC-27、N87、SNU-5、SNU-16、SNU-1)及び一つの正常胃上皮細胞(GES-1)からタンパク質を抽出した。PIWIL1及びβ-Actinのタンパク質発現は、免疫ブロット法(Western Blot)で検出した。
図2は、PIWIL1の異なる胃がん細胞におけるタンパク質発現が、正常胃上皮細胞よりも高いことを示す。
【0092】
PIWIL1抗体を一次抗体として、PIWIL1のmRNAとタンパク質発現量が最も高い細胞株であるSNU-1について免疫蛍光実験を実施した。
図3の濃い蛍光シグナルがPIWIL1のタンパク質シグナルであり、薄い蛍光シグナルが細胞核DAPIのシグナルであり、
図3から、PIWIL1が主に胃がん細胞の細胞質に大量に発現していることがわかった。
【0093】
1.3 胃がん組織におけるPIWIL1のmRNA発現
腫瘍組織と正常組織の臨床サンプル97組を採取し、RNAを抽出し、逆転写により対応するcDNAを得た後、定量PCRによりPIWIL1及びβ-ActinのmRNA発現量を測定した。各サンプルについて、β-Actinの発現量を内部参照として各サンプルのPIWIL1の相対発現量
【0094】
【数5】
を算出し、各組のサンプルにおける腫瘍組織サンプルのPIWIL1相対発現量
【0095】
【数6】
と対応する正常組織サンプルのPIWIL1相対発現量
【0096】
【数7】
を比較したところ、各組のサンプルにおけるPIWIL1の発現量の差として求めた
【0097】
【数8】
図1の棒グラフは、各組のサンプルについてPIWIL1の発現差倍率に基づいて作成された。
図2のY座標>1の値は、各組の腫瘍組織のサンプルにおけるPIWILの発現が、対応する正常組織のサンプルにおけるPIWIL1の発現より2倍以上高いことを示す。各定量的PCRサンプルのCt値は、三回の技術的反複から取った平均値である。
図4は、ペアとなった97組の胃がんサンプルにおいて、63組のサンプルのPIWIL1の腫瘍におけるmRNA発現が正常組織の2倍高いことを示す。
【0098】
1.4 胃がん組織におけるPIWIL1のタンパク質発現と局在性
胃がん患者104人の組織マイクロアレイにおけるPIWIL1タンパク質の発現を免疫組織化学(IHC)染色で調べ、茶色のシグナルはPIWIL1の陽性シグナルである。マッチした正常組織と比較して、
図5の左図(A)はPIWIL1免疫組織化学法の代表的な図であり、当該図には、胃がん組織におけるPIWIL1タンパク質の発現がマッチした正常組織よりも有意に高く、PIWIL1シグナルのほとんどが細胞質内に存在することを示した。
図5右上のボックスプロット(B)は、胃がんのペア104組の腫瘍と正常組織におけるPIWIL1発現に基づくIHCスコアの組織マイクロアレイであり、染色強度(0~3の範囲)とPIWIL1陽性細胞の割合に基づいて組織マイクロアレイ上の各組織点を0~4でスコアリングした。IHCスコア=染色強度スコア×PIWIL1陽性細胞数パーセンテージのスコアである。PIWIL1免疫組織化学染色陽性スコアをスコア化することにより、胃がん組織では対応する正常組織に比べてPIWIL1スコアが有意に高いことが判明された。
図5右下(C)は、胃がん組織(T)のPIWIL1 IHCスコアが対応する正常組織(N)のスコアより高い、等しい又は低いサンプル数を統計することで、がん組織のPIWIL1発現スコアが正常組織より高いペアサンプル数(T>N)が、正常組織より低いサンプル数(T<N)よりはるかに高いことがわかった。
【0099】
1.5 胃がん組織におけるPIWIL1の発現は、胃がんの臨床病理学的進行と密接に関連する。
ペアとなった97組の臨床サンプルにおけるPIWIL1のmRNA発現を、胃がん組織の病理情報(腫瘍期、TNM転移、分化度)と相関させて分析し、
図5からPIWIL1の発現は胃がんの腫瘍期及び転移と正の相関があり、PIWIL1の発現が高いほど、患者の胃がんの病期が高くなり、転移が多くなり、腫瘍の悪性度が高くなることが示された。PIWIL1の発現は胃がんの分化度とも負の相関があり、PIWIL1の発現が高いほど、胃がんの分化度が低く、腫瘍の悪性度が高い。この結果は、PIWIL1の発現が胃がんの悪性度や腫瘍の進行と密接に関係していることを示唆している。
図6において、I、II、III、IVは腫瘍のステージ1~4を示す。N0:リンパ節転移がない。N:リンパ節転移があり、N1、N2及びN3を含む;M:遠位転移がある。p:低分化であり、M:中分化であり、H:高分化である。SEは標準エラー値を示す。
【0100】
以上より、本実施例では、PIWILlが胃がん患者の臨床組織や様々な胃がん細胞株において、正常組織や細胞株と比較して特異的に高発現していることが示された。本発明により、胃がん細胞株SNU-1がPIWIL1の発現量が非常に高い細胞株であることが初めて示された。PIWIL1の高い存在量発現の胃がん細胞株SNU-1は、PIWIL1を治療標的とする新規薬物のスクリーニングに有効なツールとなり得る。スクリーニングされる分子は、タンパク質、抗体、化学的低分子、漢方薬、植物や動物エキスである(これらに限定されない)。さらに、本実施例では、胃がん患者の病理病期が高いほどPIWILlの発現が高く、転移の程度が高いほどPIWILlの発現が高く、組織分化の程度が低いほどPIWILlの発現が高いことを反映して、PIWILlの発現が胃がん臨床経過の悪性度と密接に関連し、PIWIL1が胃がん診断ステージングのための分子マーカーとしを期待されることがわかった。
【0101】
[材料方法]
RNA抽出と定量PCR
1.1及び1.2のサンプルのRNA抽出法では、TRIzol(Invitrogen)を使用してトータルRNAを単離し、特定の方法はメーカーの指示に従う。RNAはABI大容量cDNA逆転写キットを用いてcDNAに逆転写した(ABI High Capacity cDNA Reverse Transcription kit)(Life Technologies、4368814)。定量的RT-PCR反応は、Bio-RadリアルタイムPCRシステム(iQTM SYBR Green SupermixとCFX96TMリアルタイムシステム)のプロトコルにしたがって行った。定量的PCRプライマー配列を表1に示された。
【0102】
細胞培養と臨床サンプル
SNU-5細胞株は、20%牛胎児血清を添加したIMDM培地(ThermoFisher Scientific、31980030)で培養した。SNU-1、SNU-16、N87及びHGC-27細胞株は、10%牛胎児血清を添加したRPMI 1640培地(ThermoFisher Scientific、61870036)で培養した。AGS細胞株は、10%牛胎児血清を添加したATCC製造F-12K培地(ATCC、30-2004)で培養した。GES-1細胞株は、10%牛胎児血清を添加したDMEM培地(ThermoFisher Scientific、11995065)で培養した。これらの細胞株はすべて37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0103】
97組の臨床サンプルは、中国科学院健康科学研究所(Institute of Health Sciences、 Chinese Academy of Sciences)の組織バンクから購入した。この研究は、現地の倫理委員会の承認を得て、その規定に従ったものである。
【0104】
タンパク質インプリンティング解析
トータルタンパク質は、溶解バッファ[20mM Tris-HCl pH7.4、150mM NaCl、1%(v/v)IGEPAL(登録商標)CA-630(Millipore SIGMA、Cat#I8896)、1mM EDTA、0.5 mM DTT、cOmpleteTM EDTA- free Protease Inhibitor Cocktail Tablets(MERCK、カタログ番号4693132001)とPhosStopタブレット(MERCK、カタログ番号4906837001)]で抽出した。タンパク質サンプルを4×Laemmliサンプルバッファ(Biorad、Cat#1610747)で(3:1に)希釈し、98℃、5分間加熱した。TGX Fast Castアクリルアミドキット(7.5%或いは10%(Bio-Rad、1610173TA))を用いて120Vでタンパク質を分離し、PVDF膜(Merck/Millipore、IPVH00010)に0.3Aで1.5時間電解転写した。膜は室温で5% DifcoTM Skim 脱脂乳(BD Biosciences、232100)で2時間密閉した後、0.1% Tween20添加のTBS (Bio-Rad、1706435)で希釈した(Santa Cruz Biotechnology、sc-29113)。PIWIL1 抗体(Abcam、ab181056)は1:1000希釈で使用した。
【0105】
免疫蛍光
2×105個の細胞を24ウェルプレートのカバースリップ(Fisher、12-545-83)に接種した。24時間後、細胞をPBSで三回洗浄し、4%ホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン粉末、95%、158127-2.5 KG、Sigma)で15分間、室温で固定した。固定された細胞を氷冷したPBST(1% Tween 20添加PBS)で三回洗浄(各洗浄5分間)し、PBST中の3% BSAで室温で2時間閉じた後、PBSTで一回洗浄し、抗PIWIL1(Abcam、カタログ番号 ab181056、1:100希釈)、抗hDcp1a(56-Y)抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-100706、1:500希釈)及び抗UPF1(Cell Signaling TECHNOLOGY、3%BSAで4℃で一晩、Cat #120401:200希釈)をインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSTで5回、それぞれ5分間洗浄した。細胞を、3%BSAを含むPBSTに溶解された二次抗体:FITCに結合されたAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories、Cat#115-095-003、1:100希釈)又はFITCに結合されたAffiniPureヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories、Cat#111-095-003、1:100希釈)又はAlexa Fluor 594がカップリングされたAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories、115-585-003、Cat#1:400希釈)又はロバ抗ウサギIgG(H+L)高度交差吸着二次抗体Alexa Fluor 680(ThermoFisher Scientific、Cat#A10043、1:500希釈)を室温で2時間インキュベートした後、PBSTで5分間の洗浄を一回行った。次にDAPI(Life Technologies、D1306、1:5000希釈)をPBSTバッファに加え、室温で10分間インキュベートし、その後PBSTで5分間ずつ三回洗浄した。カバースリップを一回剥がし、FluorPreserveTM(Merck/Millipore、カタログ番号345787-25MLCN)を1滴加え、スライドにマウントして軽く押し、マニキュアでシールして4℃で一晩保管してから共焦点免疫蛍光顕微鏡検査に供した(Zeiss、LSM710)。
【0106】
免疫組織化学
ヒト胃がん組織マイクロアレイ(Cat#HStm-Can090PT-01)はShanghai SuperChip社から購入した。免疫組織化学用のマウス腫瘍は、異種移植マウスから採取し、厚さ10μmの連続切片に切り出し、スライドに固定した。脱ろう、再水和、抗原修復、内因性ペルオキシダーゼのブロッキング後、切片又は組織マイクロアレイをPBSで5分ずつ三回洗浄し、0.3% Triton X-100及び5%正常ヤギ血清を添加した0.01mol/L PBSで1時間ブロッキングを行った。その後、抗PIWIL1抗体(Atlas抗体、HPA018798、1:1000希釈)、又は抗PCNA抗体(Servicebio、GB11010-1、1:1000希釈)又は抗Ki67抗体(Servicebio、GB13030-2、1:300希釈)を4℃で一晩添加した。0.01mol/L PBSで簡単に洗浄した後、切片をホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ヤギ免疫グロブリンG(1:500)を含む0.01mol/L PBSに2時間暴露し、その後、トリス-塩酸(pH7.6)中の0.003% H2O2と0.03% 3,-ジアミノベンジジンを追加した。各サンプルの免疫組織化学は、少なくとも三回独立な時間で実施し、すべての切片をヘマトキシリンで再染色した。
【0107】
実施例2 PIWIL1は生体内で胃がん細胞の増殖、移動、腫瘍形成及び転移を促進
2.1 CRISPR-Cas9テクノロジーによる胃がん細胞SNU-1でのPIWIL1のノックアウトの成功
PIWIL1遺伝子配列を標的とする一対のsgRNAをpGL3-U6-sgRNA-PGK-プリノマイシンベクターにクローニングした。pGL3-U6-sgRNA-PGK-プリノマイシン及びpST1374-N-NLS-flag-linker-Cas9-D10Aは黄行許教授から贈られた(Adgeneプラスミド#51133;http://n2t.net/addgene:51133;RRID:Addgene:51133)。黄行許教授のNature Methodsの文章の方法(24)に基づいて、構築したPIWIL1-sgRNAプラスミドとCas9プラスミドをSNU-1細胞に共導入し、トランスフェクション後48時間に、プリノマイシン(Puromycin)とブラストサイジンS(Blasticidin S)によるダブルキルによって細胞モノクローン選択を実施した。選択したモノクローナルクローンからゲノムを抽出し、PIWIL1ノックアウト同定のためにゲノムPCRを行い、PCR産物を配列決定して野生型PIWIL1遺伝子配列を比較し、クローン化したPIWIL1遺伝子配列に欠失があるか又は挿入変異によりPIWIL1タンパク質をコードするアミノ酸がシフトし、早期停止コドンが発生してPIWIL1タンパク質の翻訳が停止していないかを調べた。PIWIL1抗体認識のためのイムノブロッティング実験とPIWIL1変異クローンのシークエンスにより、胃がん細胞SNU-1においてPIWIL1のノックアウトに成功したことを明らかにした(
図7)。sgRNAとPIWIL1ノックアウトゲノムPCRプライマーを表2に示す。
【0108】
2.2 PIWIL1ノックアウトによる胃がん細胞増殖の阻害
MTS細胞増殖モニタリング実験は、PIWIL1野生型(WT)、PIWIL1ノックアウトコントロール(KO-Con)、PIWIL1ノックアウト細胞クローン#20及びPIWIL1ノックアウト細胞クローン#37をそれぞれ、正常血清濃度10%及び飢餓血清濃度5%の二つの条件下で実施した。PIWIL1非ノックアウト細胞とノックアウト細胞の細胞増殖の差異を比較した。
図8は、PIWIL1ノックアウトが胃がん細胞の増殖を有意に阻害し、特に血清飢餓条件下ではこの差が顕著になることを示す。
【0109】
2.3 PIWIL1ノックアウトによる胃がん細胞の周期ランニング阻害
PI染色による細胞周期アッセイ実験は、PIWIL1野生型(WT)、PIWIL1ノックアウトコントロール(KO-Con)、PIWIL1ノックアウト細胞クローン#20及びPIWIL1ノックアウト細胞クローン#37をそれぞれフローサイトメトリーで測定して実施した。
図9は、PIWIL1ノックアウトが胃がん細胞SNU-1の細胞周期G1/S期移行を有意に阻害することを示す。
【0110】
2.4 PIWIL1ノックアウトによる胃がん細胞の移動阻害
トランスウェル細胞移動アッセイにより、PIWIL1野生型(WT)、PIWIL1ノックアウトコントロール(KO-Con)、PIWIL1ノックアウトセルクローン#20及びPIWIL1ノックアウトセルクローン#37の細胞をそれぞれ写真観察しながら緑色蛍光色素で移動する細胞数を計数した。
図10は、PIWIL1ノックアウトが胃がん細胞SNU-1の細胞移動を有意に阻害することを示す。
【0111】
2.5 PIWIL1ノックアウトによる胃がん細胞の生体内の腫瘍形成能阻害
PIWIL1野生型(WT)、PIWIL1ノックアウトコントロール(KO-Con)、PIWIL1ノックアウトセルクローン#20及びPIWIL1ノックアウトセルクローン#37の細胞を各群5匹ずつヌードマウスに皮下投与し、体重と腫瘍の成長を週一回観察した。
図11は、PIWIL1ノックアウト胃がん細胞は、野生型PIWIL1胃がん細胞に比べて、マウスの皮下で腫瘍になる能力が非常に低いことを示す。
【0112】
2.6 PIWIL1ノックアウトによる胃がん細胞の生体内の転移阻害
PIWIL1野生型(WT)、PIWIL1ノックアウトコントロール(KO-Con)、PIWIL1ノックアウトセルクローン#20及びPIWIL1ノックアウトセルクローン#37の細胞に、ルシフェラーゼ(luciferase)とGFP緑色蛍光を共に持つウイルスを感染させ、フローサイトメトリーソーティングによりルシフェラーゼとGFPの二重陽性細胞を取得した。これら4群の陽性標識細胞群をヌードマウスの胃に尾静脈注射した。各群5匹である。週間隔で写真を撮影し、マウスの腫瘍転移の大きさを表すルシフェラーゼの蛍光強度をモニターした。
図12は、PIWIL1ノックアウト胃がん細胞は、野生型PIWIL1胃がん細胞に比べて、マウス体内での転移能が非常に低いことを示す。
【0113】
以上、本実施例により、胃がん細胞におけるPIWILlのノックアウトが、細胞増殖、周期ランニング、細胞移動を有意に阻害し、胃がんの腫瘍原性能及びマウスでの生体内の転移能を強く阻害することが実証された。
【0114】
[材料方法]
細胞増殖アッセイ
CellTiter 96_AQueous MTS(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-yr)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2Hテトラゾリウム(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yr)-5-(3-carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H tetrazolium)、内塩)試薬粉末(Promega、G1111)を用い、メーカーの指示に従って細胞増殖率を測定した。EnSpire_multimodeプレートリーダー(PerkinElmer Life Sciences)を用いて、490nmの吸光度を読み取った。
トランスウェル移動アッセイ
クロスウェルアッセイは、Corning FluoroBlokTM 細胞培養インサート(Falcon、351152)を用いて、メーカーのプロトコルに従って実施した。各ウェルに1×105個の細胞を接種し、3時間後に細胞を染色し、写真を撮った。
【0115】
生体内腫瘍形成能アッセイ
5週齢の雄ヌードマウスを標準的な条件下で飼育した。SNU-1胃がん細胞を採取し、PBSで洗浄した後、無血清RPMI1640培地に懸濁させた。この細胞5×106個をヌードマウスの右腹部皮下に注射した。腫瘍の成長を7日ごとに測定し、腫瘍の体積を推定した(体積=長さ×幅×高さ×0.5236)。腫瘍はエーテル麻酔をかけたマウスから採取した。すべての手順は『実験動物の飼育と使用の手引き』(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(NIH Publication No. 80-23、1996年改訂版)に準じ、上海科技大学動物管理と使用委員会の承認を得ている。
【0116】
生体内転移能アッセイ
SNU-1胃がん細胞株を、独立したGFPオープンリーディングフレームを含むルシフェラーゼluciferaseを発現するレンチウイルスで標識した。ルシフェラーゼの発現は、蛍光剤(Xenogen、Alameda、CA)と生体内イメージングシステム(Xenogen)を用いて測定した。ルシフェラーゼを発現するPIWIL1-WT又はPIWIL1-KOのSNU-1細胞を尾静脈から注射した(100μlPBS中での1×106)後、マウスの全身状態及び体重をモニターした。転移は隔週でモニターした。撮影の10分前に蛍光剤の水溶液(150 mg/kg腹腔内)を注射し、その後マウスをForane(Abbott社)で麻酔をかけた。マウスをCCDカメラシステム(Xenogen)上の不透明なチャンバーに入れ、動物内のルシフェラーゼ発現細胞から放出される光子を、イゴール(Igor)(Wavemetrics、シアトル、ワシントン)オーバーレイ用ソフトウェアプログラムLiving Image(Xenogen)を用いて1分間検出した。すべての手順は『実験動物の飼育と使用の手引き』(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(NIH Publication No. 80-23、1996年改訂版)に準じ、上海科技大学動物管理と使用委員会の承認を得ている。
【0117】
実施例3 PIWIL1が多くの腫瘍関連シグナル伝達経路、特に細胞周期シグナル伝達経路とフォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節
3.1 PIWIL1野生型(WT)、PIWIL1ノックアウトコントロール(KO-Con)、PIWIL1ノックアウトセルクローン#20、PIWIL1ノックアウトセルクローン#37の細胞からRNAを抽出
WT/KO20#、KO-Con/KO-37#、WT/37#、KO-Con/KO-20#、WT/KO20#で選別し、5群をRNAディープシーケンシングに供した。5群の細胞のRNAディープシーケンシングのデータをバイオインフォーマティックにWGCNA解析した結果、PIWIL1によって制御される遺伝子群のモジュールが41個あることが
図13に示された。PIWIL1発現モジュールエイジゲンを持つ遺伝子又は持たない遺伝子と形質との相関を分析し、
図13のヒートマップ中の赤はモジュールと形質との正の相関、青は負の相関を表し、各セルには対応する相関値及び有意P値を記載し、これに基づいて
図14のヒートマップでブルーモジュール(blue module)とターコイズモジュール(turquoise module)はPIWIL1によって有意に調節されており、ブルーモジュール遺伝子はPIWIL1によって有意に正に調節され、ターコイズモジュール遺伝子はPIWIL1によって有意に負に調節された。両モジュール遺伝子群のkME≧0.9コア遺伝子(hub gene)のKEGGシグナル経路解析の結果、ブルーモジュールのコア遺伝子は細胞周期とDNA複製経路に高度に濃縮され、ターコイズモジュールのコア遺伝子はフォーカルアドヒージョン接着と細胞接着のシグナル経路に高度に濃縮されていることが判明した。
【0118】
3.2これまで多くの文献がブルーモジュールの八つの癌遺伝子と、ターコイズモジュールの10の癌遺伝子のmRNA発現を定量PCRで定量した。
図15は、PIWIL1のノックアウトにより、細胞周期に関連する八つの遺伝子のmRNA発現が阻害され、細胞接着に関連する10の癌遺伝子のmRNA発現が促進されていることを示す。
【0119】
本実施例は、トランスクリプトーム研究によって、PIWILlが胃がんにおけるその生物学的表現型に関連する細胞周期及びフォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を制御し、胃がんの進行に関連する多くのがん遺伝子の発現を促進し、多くのがん遺伝子の発現を阻害することを実証している。
【0120】
[材料方法]
リボソーム除去全トランスクリプトームRNAディープシーケンスとWGCNA分析
各細胞サンプルから100ngのトータルRNAを採取し、リボソーム全トランスクリプトームのディープシーケンスによりライブラリーを構築した。ライブラリー構築に使用したキットは、NEB社のNEBNext(登録商標) Ultra II Directional RNA Library Prep Kit for Illumina(登録商標)で、ライブラリー構築方法はキットの説明書に忠実に従った。ライブラリーは品質管理のためにシークエンス会社に送られた。ライブラリーはIllumina社のHiSeqX装置で150bpダブルエンドで配列決定した。その後、シークエンスデータから通り道や低品質のデータを取り除き、解析用のクリーンデータを得た。クリーンデータをHisat2(25)ソフトウェアを用いてヒトゲノム (GRCh38、NCBI)と比較し、比較対象の遺伝子数をHtseq(26)で計算し、遺伝子発現量をRPKMに変換して求めた。WGCNA発現パターン解析は、17乗の標準的な方法ですべてのサンプルに実施した。WGCNA(27)を用いて、公開データセットで独立してネットワークを構築し、各データセットについて中心遺伝子の独立リスト(kME>0.9)を生成した。バッチ間補正にはRUVseqアルゴリズムが使用された。
【0121】
定量的PCRプライマー配列を表1に示す。
実施例4 PIWIL1はpiRNAに非依存する方法で胃がんにおいてその機能と調節を発揮
4.1 PIWIL1を高発現する胃がん細胞におけるpiRNAの欠失
PIWIタンパク質ファミリーのメンバーは、piRNAと機能的な複合体として生物学的機能を発揮することが知られているため、PIWIL1がpiRNAに非依存する調節及び生物学的機能を有するかどうかを調べるために、PIWIL1を高発現する胃がん細胞株SNU-1でpiRNAの発現を調査した。PIWIL1を高発現する胃がん細胞においてPIWIL1に結合した真のpiRNAの有無は、野生型PIWIL1胃がん細胞とPIWIL1ノックアウト胃がん細胞のsmall RNAディープシーケンシングを通じて、PIWIL1抗体の共免疫沈降によるpiRNAの濃縮、過沃素酸ナトリウム酸化によるpiRNAの濃縮を組み合わせて、判定した。
図16は、全身性陽性対照マウスの精巣ではpiRNAがかなり発現しているのに対し、PIWIL1を高発現する胃がん細胞ではpiRNAの存在がほとんど検出されないことを示す。
【0122】
4.2 piRNA結合能を失ったPIWIL1タンパク質は、胃がんにおいて野生型PIWIL1タンパク質と同様にがんを促進する生物学的機能及び調節を継続
既存の文献研究に基づいて、ヒトPIWIL1の572位のリジン、584位のグルタミン、607位のグルタミンの三つのアミノ酸部位は、進化的に保存されたpiRNA結合部位と推定されている(28-29)。これらの三つのアミノ酸をアラニンに変異させ、piRNA結合能が欠損されたPIWIL1発現プラスミドを構築した。野生型PIWIL1発現プラスミドとpiRNA結合能欠損型PIWIL1発現プラスミドをそれぞれPIWIL1ノックアウト胃がん細胞SNU-1にトランスフェクトし、バックコンプリメント実験を行い、piRNA結合能欠損がPIWIL1の下流標的遺伝子、特に腫瘍の進行に関連する遺伝子の調節への影響を調べ、piRNA結合能欠損がPIWIL1のがん細胞の細胞周期への影響、及びがん細胞の細胞移動能力への影響を調べた。
図17は、PIWIL1がpiRNA結合能を失った場合でも、野生型PIWIL1と同様に、細胞周期に関わるがん遺伝子や細胞間接着に関わるがん遺伝子を調節できることを示す。さらに、
図17は、piRNA結合能を失ったPIWIL1でも、野生型PIWIL1と同様に、PIWIL1ノックアウトによる細胞周期停止や細胞移動阻害を回復できることを示す。
【0123】
以上より、本実施例は、PIWIL1が胃がんの細胞周期動作や細胞移動をpiRNA非依存的に調節できること、一方、PIWIL1が多くの重要な癌遺伝子や癌阻害遺伝子の発現、特に細胞周期や細胞移動の表現型に関連する遺伝子をpiRNA非依存的に調節できることを明らかにした。したがって、PIWIL1のこれらのpiRNA非依存的の生物学的機能及び遺伝子発現調節は、PIWIL1を胃がん標的治療の優れたターゲットにすることが期待され、特に腫瘍の成長及び転移が速い胃がん患者に対いて、PIWIL1を標的とするのにpiRNAの効果はもはや必要ないものと思われる。
【0124】
[材料方法]
Small RNA-Seqライブラリーの構築とシーケンシング
メーカーの説明書に従って、IlluminaのNEBNext Multiplex Small RNAライブラリキット(NEB、カタログ番号E7300S)を用いて、Small RNAライブラリーを作製した。細胞から抽出した1ugのトータルRNA、又は100ngのPIWIL1抗体で濃縮したRNAを用いて、Small RNAライブラリーの作製を行った。Illumina HiSeqXプラットフォームでライブラリーにダブルエンド150bpシーケンシングを行った。
【0125】
過ヨウ素酸ナトリウムNaIO4酸化とβ脱離のsmall RNA-seqライブラリーの構築とシーケンシング
20mM NaIO4(Sigma-Aldrich、Cat#311448)を含む総体積40μlの200mMリジン-HClバッファ(pH 8.5、Sigma-Aldrich、Cat#62929)で20ugのトータルRNAを処理し、37℃で30分間暗いチューブで振ってβ脱離を達成した。反応を2μlのエチレングリコールでクエンチした。RNAをカラム精製し(RNA Clean&Concentrator-5、Zymo、カタログ番号R1015)、8μlの分子生物学グレードのRNaseフリー水で溶出した。6ulの溶出RNAは、NEBNext Multiplex Small RNA ライブラリキット(NEB、カタログ番号E7300S)によってSmall RNAライブラリーを作製した。Illumina HiSeqXプラットフォームでライブラリーにダブルエンド150bpシーケンシングを行った。
【0126】
Small RNAシーケンシングデータ分析
Small RNA-seqは、TrimGalore(バージョン0.4.4_dev; http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/trim_galore/)を使用して処理され、デフォルトのアダプタートリミングモードを使用して、150bpの長さのシーケンスでアダプターを自動的に検出した。17bpから42bpのサイズカットオフを使用して、適切な長さのsmall RNAリードを保持した。コマンドは、“trim_galore --phred33 --gzip -q 20 --fastqc --output_dir trimmed_fqc_out --length 17 --max_length 42 --trim-n $read”である。続いて、トリミングされた読み取りは、対応するゲノム[ヒト(hg38)又はマウス(mm10)]にマッピングされ、bowtie1(バージョン1.2.1.1)(30)を使用して、コマンドは“bowtie -S -p 5 -v 0 -n 0 -l 18 -k 1 --no-unal --al $GMAPPED_FQ Homo_sapiens. GRCh38.dna.primary_assembly.fa $read > $GMAPPED_SAM”である。ゲノムマッピングされたリードは、miRNA、tRNA、rRNA、snRNA、snoRNA、piRNA、及び反復エレメントのライブラリに順次マッピングされた。miRNAライブラリーはmiRBaseから入手した(2018年3月11日)(31)。tRNAリファレンスFastaは、GtRNAdb(32)のtRNA配列とゲノム注釈tRNA配列を組み合わせて作成された。rRNAライブラリーはRNAcentral(2019年1月)(33)から作成された。snRNA及びsnoRNAcDNAライブラリーは、ゲノム注釈及びRNAcentral(2019年1月)から入手した。piRNAはde novo及び既知として分類され、前者はproTRAC(バージョン2.4.2)(34)によって識別され、後者はpiRNABankのpiRNAにマッピングすることによって識別される。proTRACのコマンドは、“perl proTRAC_2.4.2.pl -genome Homo_sapiens. GRCh38.dna.primary_assembly.header.simple.fa -map $map_file -repeatmasker hg38.repeatMasker.matched.gtf -geneset Homo_sapiens.GRCm38.95.chr.gtf -pimin 25 -pimax 31”である。$ mapfileは、sRNAmapper(バージョン1.0.4)(35)を使用したマップ出力である。反復配列のsmall RNAライブラリーは、UCSCゲノムブラウザのRepeatMaskerアノテーションから取得された。
【0127】
野生型PIWIL1及びpiRNA結合変異体PIWIL1クローンの構築
メーカーの指示に従って、SuperScript_III逆転写酵素(Invitrogen、18080044)によってトータルRNAをcDNA合成に使用した。このcDNAは、Phusion高忠実度DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、M0530L)によるPCRでの増幅のテンプレートとして使用され、PIWIL1はpcDNA3.1-3xFlagにクローン化された。
【0128】
piRNA結合変異体PIWIL1遺伝子は、メーカーの説明に従って、pcDNA3.1-3xFlag-PIWIL1 cDNAをテンプレートとして使用して、KOD-Plus-突然変異誘発キット(KOD-Plus-Mutagenesis kit)(TOYOBO、SMK-101)によってクローン化された。PCRプライマーリストを表2に示す。
【0129】
実施例5 PIWIL1は、UPF1を介したナンセンス変異依存mRNA分解経路(NMD経路)によって、胃がんにおけるpiRNAに非依存する方法での生物学的機能と調節を発揮
5.1 PIWIL1とUPF1を介したNMD複合体との相互作用
PIWIL1抗体の共免疫沈降結合質量分析により、ナンセンスmRNA分解経路のコアタンパク質であるUPF1タンパク質を同定した(36-37)(
図18)。
図19の共免疫沈降の実験結果は、PIWIL1とUPF1が互いに結合し、PIWIL1がNMD経路のコア複合体(UPF2、SMG1、及び活性化UPF1(リン酸化UPF1))と相互作用できることをさらに示す。
図20の蛍光抗体法実験の結果は、PIWIL1とUPF1がナンセンスmRNA分解経路で機能する細胞小器官であるPボディに共局在できることを示す。
【0130】
5.2 PIWIL1はpiRNA非依存でUPF1に結合し、UPF1に特異的に結合する領域を持つ
PIWIL1がUPF1に特異的に結合してNMD経路に参加する方法を見つけるには、UPF1に特異的に結合するPIWIL1の結合領域を見つける必要がある。タンパク質モデリングによるPIWIL1のUPF1への結合モード(38-40)の予測に基づいて、UPF1に結合するPIWIL1の能力を欠くドメイン変異体を構築した。
図21は、PIWIL1の251~383位のアミノ酸領域と625~758位のアミノ酸領域が、UPF1への結合に関与するPIWIL1の重要な領域であり、この領域をノックアウトすると、PIWIL1のUPF1への結合が大幅に破壊され、piRNAへの結合能力を失うだけであるPIWIL1変異体はUPF1への結合に影響を与えず、NMD経路と協力するPIWIL1のUPF1への結合がpiRNAに非依存することを示す。
【0131】
5.3 PIWIL1のUPF1への特異的結合は、胃がんにおけるPIWIL1の重要な生物学的機能と調節に重要
UPF1への結合能を失ったPIWIL1変異体と野生型PIWIL1変異体をそれぞれPIWIL1ノックアウト胃がん細胞SNU-1に移し、野生型PIWIL1は、PIWIL1ノックアウトによって引き起こされる下流の腫瘍抑制遺伝子発現のアップレギュレーション及び癌細胞の移動の阻害を十分に回復することができるが、UPF1へのPIWIL1結合能力の喪失は、PIWIL1ノックアウトによって引き起こされる下流の標的遺伝子発現の調節不全と細胞移動への影響を回復できない(
図22)。
【0132】
以上より、本実施例では、PIWIL1がpiRNA非依存でUPF1を介したナンセンスmRNA崩壊(nonsense mRNA decay NMD)経路を介して胃がん細胞の移動の調節、及び細胞移動能力に関連する癌抑制遺伝子の調節を実現できることを発見した。したがって、PIWIL1のpiRNAに非依存する調節、特にNMD複合体との協調的な調節は、胃がんを標的とした治療におけるPIWIL1の新しい治療法になると期待され、従来のPIWIL1piRNAに依存する治療法とは異なる。
【0133】
[材料方法]
共免疫沈降
共免疫沈降溶解バッファ[20mM Tris-HCl pH7.4、150mM NaCl、1%(v / v)IGEPAL(登録商標)CA-630(Millipore SIGMA、Cat#I8896)、1mM EDTA、0.5mM DTT、cOmpleteTM EDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤混合錠剤(EDTA-free Protease Inhibitor Cocktail Tablets)(MERCK、カタログ番号4693132001)及びPhosStopタブレット(MERCK、4906087001)]で細胞を溶解し、14000rpmで10分間回転させて破片を除去した。10μLの空のDynabeads(登録商標)プロテインG磁気ビーズ(ThermoFisher Scientific、カタログ番号10004D)をライセートに添加し、事前にクリアランスするために0.5時間インキュベートした。50μLの空のDynabeads(登録商標)プロテインG磁気ビーズをクエン酸リン酸緩衝液(pH 5.0)で洗浄し、5ugのマウスモノクローナル抗PIWIL1抗体(Millipore SIGMA、カタログ番号SAB4200365)又は5ugの正常のマウスIgGポリクローン抗体(MERCK、カタログ番号12-371)と一緒にインキュベートした。50μLの空のDynabeads(登録商標)プロテインAをクエン酸リン酸緩衝液(pH 5.0)で洗浄し、15ulのウサギ抗UPF1モノクローナル抗体(Cell Signaling TECHNOLOGY、カタログ番号12040)又は5ugのウサギポリクローナル抗-リン酸化Upf1(Ser1127)抗体(MERCK、カタログ番号07-1016)又は5ugのウサギポリクローナル抗UPF2抗体(Abcam、ab157108)又は5ugの正常ウサギIgGポリクローナル抗体(MERCK、カタログ番号12-370)とインキュベートした。これらのインキュベーションはすべて、回転させながら4℃で4時間行った。Dynabeads(登録商標)プロテインG/A磁気ビーズ-Ig複合体はIP洗浄バッファ[20mM Tris-HCl pH7.4、200mM NaCl、0.05%(v/v)IGEPAL(登録商標)CA-630、0.5 mM DTT、cOmpleteTM、EDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤及びPhosStopタブレット]で三回洗浄した。事前に洗浄したDynabeads(登録商標)プロテインG/A磁気ビーズ-Ig複合体を、事前に清澄化したライセートとともに4℃で一晩回転させながらインキュベートした。次に、IP洗浄バッファ及びIP高塩洗浄バッファ[20mM Tris-HCl pH7.4、500mM NaCl、0.05%(v/v)IGEPAL(登録商標)CA-630、0.5 mM DTT、cOmpleteTM EDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤混合錠剤及びPhosStopタブレット]で二回洗浄した。免疫沈降物を7.5%TGX Fast Castアクリルアミドゲルで電気泳動し、ウエスタンブロッティングに関連する抗体でプローブし、又はメーカーの指示に従ってクマシーブリリアントブルー染色液を使用してプローブした。
【0134】
質量分析
共免疫沈降した産物を7.5%TGX Fast Castアクリルアミドキット(Bio-Rad、1610173TA)を使用して電気泳動した後、クマシーブリリアントブルー染色を行った。次に、タンパク質バンドを別々に切り出した。切除されたゲルバンドを、前述のように最初にゲルで消化させた(41)。得られたペプチドを脱塩した後、ナノLC/MS/MS分析を行った。MSデータは、ナノ-EASY LCとEasysprayカラム(75μm×50 cm、PepMap RSLC C18カラム、2μm、100Å、ThermoFisher Scientific)を備えたOrbitrap FusionMSを使用して取得した。LC勾配は5~35%B(CH3CN中での0.1%ギ酸)、流速300NL/min、60分で、カラム温度は50℃に設定した。MSデータはデータ相関モードで取得された。簡単に説明すると、60Kの解像度でサーベイスキャンを実行した後、Orbitrapで15Kの解像度で10回のHCD MS/MSスキャンを実行した。
【0135】
UPF1への結合能力を欠くPIWIL1突然変異体の構築
メーカーの指示に従って、PIWIL1ドメイン突然変異体は、Phanta Max超忠実度DNAポリメラーゼキット(Vazyme、P505-d1)及びMut Express MultiS迅速突然変異誘発キットV2(Vazyme、C215-01)によって、クローン化された。プライマー(2-250)/(2-624)-F’及びプライマー(2-250)-R’を使用してフラグメント(2-250)を取得し、プライマー(384-861)/(384-624)- F’及びプライマー(384-861)/(759-861)-R’を使用してフラグメント(384-861)を取得し、プライマー(2-250)/(2-624)-F’及びプライマー(2-624)/(384 -624)-R’を使用してフラグメント(2-624)を取得し、プライマー(759-861)-F’及びプライマー(384-861)/(759-861)-R’を使用してフラグメント(759-861)を取得し、プライマー(384-861)/(384-624)-F’及びプライマー(2-624)/(384-624)-R’を使用してフラグメント(384-624)を取得した。フラグ-PIWIL1-ΔN突然変異体cDNA(251-383の欠失)は、フラグメント(2-250)とフラグメント(384-861)をライゲーションすることによって構築された。フラグ-PIWIL1-ΔC突然変異体cDNA(625-758の欠失)は、フラグメント(2-624)とフラグメント(759-861)をライゲーションすることによって構築された。フラグ-PIWIL1-ΔNΔC突然変異体cDNA(251-383及び625-758を削除)は、フラグメント(2-250)をフラグメント(384-624)及びフラグメント(759-861)にライゲーションすることによって構築された。PCRプライマーを表2に示す。定量的PCR法及び細胞移動アッセイ法は上記のとおりである。
【0136】
【0137】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PIWI
及びNMD複合体タンパク質
を発現する癌の診断及び/又は治療に使用するための、PIWIを標的とする、あるいはPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の発現を低減させる薬物。
【請求項2】
前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであり、
及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、
及び/又は、前記薬物は、前記PIWIとNMD複合体タンパク質
との結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物であり、好ましくは前記PIWI上の前記NMD複合体タンパク質に結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物であり、及び/又は好ましくは前記NMD複合体上の前記PIWIに結合する結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の
使用のための薬物。
【請求項3】
前記薬物は、前記PIWI
及び前記NMD複合体タンパク質の結合部位に設計された阻害剤であり、好ましくは、PIWI上の前記NMD複合体タンパク質に結合する結合部位に設計された阻害剤、例えばPIWIL1阻害剤、PIWIL2阻害剤、PIWIL3阻害剤及び/又はPIWIL4阻害剤であり、及び/又は、NMD複合体タンパク質上の前記PIWIに結合する結合部位に設計された阻害剤、例えばUPF1阻害剤、UPF2阻害剤、SMG1阻害剤、UPF3阻害剤、SMG5阻害剤、SMG6阻害剤及び/又はSMG7阻害剤であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1阻害剤であり、
及び/又は、前記薬物は小分子物質であり、例えば、小分子化合物などの小分子化学物質、又は小分子活性ペプチドなどの小分子生物学的物質であり
、前記小分子化合物は、好ましくは、化合物の薬学的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在し、
前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質であり、
及び/又は、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスである、
ことを特徴とする請求項2に記載の
使用のための薬物。
【請求項4】
前記薬物は、
(a)NMD複合体タンパク質を発現し、PIWIタンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療すること、
(b)がん細胞の増殖を阻害すること、
(c)がん細胞周期の進行を阻害すること、
(d)がん細胞の移動を阻害すること、
(e)がん細胞の腫瘍形成能を阻害すること、
(f)がん細胞の生体内での転移能を阻害すること、
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
の中の一つ又は複数に使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための薬物。
【請求項5】
前記薬物は、PIWI及びNMD複合体タンパク質の結合を阻害する、あるいはPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の発現を低減させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための薬物。
【請求項6】
前記癌は、NMDを発現し、PIWI複合体タンパク質を高発現する癌であり、好ましくは、前記癌は、PIWI及びNMD複合体タンパク質を高発現する癌である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための薬物。
【請求項7】
PIWI及びNMD複合体タンパク質を発現する癌の診断及び/又は治療に使用するための、請求項1~
6のいずれか一項に記載の薬物を含む医薬組成物。
【請求項8】
(a)
NMD複合体タンパク質を発現し、PIW
Iを高発現する癌を診断及び/又は治療すること、
(b)がん細胞の増殖を阻害すること、
(c)がん細胞周期のランニングを阻害すること、
(d)がん細胞の移動を阻害すること、
(e)がんの腫瘍形成能を阻害すること、
(f)がんの生体内での転移能を阻害すること、
(g)がん細胞周期シグナル伝達経路を調節すること、
(h)がん細胞フォーカルアドヒージョンの接着シグナル伝達経路を調節すること、
の中の一つ又は複数に使用され、
好ましくは、
前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7を含み、好ましくは、UPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば、早期胃がん又は進行胃がんであることを特徴とする
、請求項
7に記載の
使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物は、piRNA阻害剤などのpiRNAを標的とする薬物を含まず、及び/又は、前記医薬組成物は、PIWIとpiRNA
との結合を阻害する薬物を含まず、
好ましくは、
前記PIWIとpiRNA
との結合をブロックする薬物は
、PIWIとpiRNA
との結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物
であり、好ましくは前記PIWI上の
前記piRNAとの結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物
であり、及び/又は、好ましくは、前記piRNA上の
前記PIWIとの結合部位を変異及び/又は阻害することによりブロックする薬物であり、
より好ましくは、
前記PIWIとpiRNAの結合をブロックする薬物は
、PIWIとpiRNA
との結合部位に設計された阻害剤
であり、好ましくは、PIWI上の前記piRNAとの結合部位に設計された阻害剤
であり、及び/又はpiRNA上の前記PIWIとの結合部位に設計された阻害剤である、
ことを特徴とする
、請求項
7又は
8に記載の
使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、医薬補助剤をさらに含み、
及び/又は、前記医薬組成物は、他の薬物をさらに含み、前記他の薬物は、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を高発現する癌を診断及び/又は治療する
ための薬物であり、
及び/又は、前記医薬組成物は、請求項1~
6のいずれか一項に記載の一つ又は複数の薬物から構成される、
ことを特徴とする
、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の
使用のための医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の
使用のための薬物及び/又は請求項
7~
10のいずれか一項に記載の
使用のための医薬組成物のスクリーニングにおける、PIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の使用であって、
好ましくは、
前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1である使用。
【請求項12】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の
使用のための薬物及び/又は請求項
7~
10のいずれか一項に記載の
使用のための医薬組成物のスクリーニング
のための、PIWI及
びNMD複合体タンパク質
を発現する細胞株の使用であって、
好ましくは、
前記薬物は小分子物質であり、例えば、小分子化合物などの小分子化学物質、又は小分子活性ペプチドなどの小分子生物学的物質であり
、前記小分子化合物は、好ましくは、化合物の薬学的に許容される塩、化合物の溶媒和物、化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物、又は化合物の結晶形の形態で存在し、
及び/又は、前記薬物は高分子物質であり、例えば、多糖類、抗体のようなタンパク質、核酸のような高分子生体物質、又は高分子化合物のような高分子化学物質であり、
及び/又は、前記薬物は、漢方薬エキス及び/又は動植物エキスであり、
及び/又は、前記細胞株は胃がん細胞株であり、好ましくはSNU-1、SNU-16及び/又はAGSであり、
及び/又は、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、
及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7
であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1を含
み、
より好ましくは、前記細胞株は、NMDを発現し、PIWI複合体タンパク質を高発現する細胞株であり、
好ましくは、前記細胞株は、PIWI及びNMD複合体タンパク質を高発現する細胞株である、使用。
【請求項13】
PIWI及
びNMD複合体タンパク質
を発現する癌のバイオマーカー及び/又は治療標的としてのPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質の使用であって、
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1
であり、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであ
り、
より好ましくは、前記癌は、NMDを発現し、PIWI複合体タンパク質を高発現する癌であり、
さらにより好ましくは、前記癌は、PIWI及びNMD複合体タンパク質を高発現する癌である
、使用。
【請求項14】
PIWI及
びNMD複合体タンパク質
を発現する癌の検出及び/又は診断に使用
するためのバイオマーカーであって、
前記バイオマーカーはPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を含み、
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであ
り、
より好ましくは、前記癌は、NMDを発現し、PIWI複合体タンパク質を高発現する癌であり、
さらにより好ましくは、前記癌は、PIWI及びNMD複合体タンパク質を高発現する癌である
、マーカー。
【請求項15】
PIWI及
びNMD複合体タンパク質
を発現する癌を検出及び/又は診断する
ためのキットであって、
前記キットはPIWI及び/又はNMD複合体タンパク質を検出する抗体を含み、
好ましくは、前記PIWIは、PIWIL1、PIWIL2、PIWIL3及び/又はPIWIL4を含み、及び/又は、前記NMD複合体タンパク質は、UPF1、UPF2、SMG1、UPF3、SMG5、SMG6及び/又はSMG7であり、好ましくはUPF1、UPF2及び/又はSMG1であり、及び/又は、前記癌は胃がんであり、例えば早期胃がん又は進行胃がんであ
り、
より好ましくは、前記癌は、NMDを発現し、PIWI複合体タンパク質を高発現する癌であり、
さらにより好ましくは、前記癌は、PIWI及びNMD複合体タンパク質を高発現する癌である
、キット。
【国際調査報告】