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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】水溶性シリコーン系離型剤
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20230703BHJP
   B22C 3/00 20060101ALI20230703BHJP
   B29C 33/62 20060101ALI20230703BHJP
   B29C 33/64 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B22D17/20 D
B22C3/00 C
B29C33/62
B29C33/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569542
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 US2021032239
(87)【国際公開番号】W WO2021231719
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/024,737
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522444380
【氏名又は名称】クェーカー・ケミカル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ロココ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーゲラ,チラグ
(72)【発明者】
【氏名】ホーイマン,ヨハネス・ヨセフス
【テーマコード(参考)】
4E092
4F202
【Fターム(参考)】
4E092AA56
4E092DA02
4E092EA10
4E092GA01
4F202AA33
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM41
4F202CM46
4F202CM64
(57)【要約】
離型剤は、水溶性シリコーンポリマーを含み、ダイカスト金型を潤滑するための方法は、金型の内表面に離型剤を適用すること、及び金型に溶融金属を注入することを含み、離型剤は、水溶性シリコーンポリマーを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンポリマー及び親水性置換基を有する水溶性ポリマーを含む離型剤。
【請求項2】
前記親水性置換基が、親水性ポリマーを含む、請求項1に記載の離型剤。
【請求項3】
前記親水性ポリマーが、ポリアルキレングリコールを含む、請求項2に記載の離型剤。
【請求項4】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールを含む、請求項3に記載の離型剤。
【請求項5】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリプロピレングリコールを含む、請求項3に記載の離型剤。
【請求項6】
前記シリコーンポリマーが、直鎖状である、請求項1に記載の離型剤。
【請求項7】
前記シリコーンポリマーが、分岐鎖状である、請求項1に記載の離型剤。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーが、約2500Da乃至約500,000Daの分子量を有する、請求項1に記載の離型剤。
【請求項9】
界面活性剤を含まない、請求項1に記載の離型剤。
【請求項10】
極性溶媒をさらに含む、請求項1に記載の離型剤。
【請求項11】
前記極性溶媒が、水である、請求項10に記載の離型剤。
【請求項12】
前記水及び前記水溶性ポリマーが、前記水対前記水溶性ポリマーの約40:1乃至約200:1の体積比で存在する、請求項11に記載の離型剤。
【請求項13】
ダイカスト部品が金型に付着することを防止する方法であって、
前記金型に溶融材料を注入する前に、水溶性シリコーンポリマーを含む離型剤を前記金型の内表面に適用すること、
を含む、方法。
【請求項14】
適用することが、スプレーすること又は塗布することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記離型剤を希釈することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記溶融材料を冷却させて固体部品を形成することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
水溶性シリコーンポリマーを含む離型剤を、金型の内表面に適用すること、及び
前記金型に溶融金属を注入こと、
を含む、部品を鋳造する方法。
【請求項18】
前記離型剤を溶媒で希釈することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒が、水である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶融金属が、約150乃至約6500トンの圧力で注入される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記溶融金属を冷却して鋳造ピースを形成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記鋳造ピースを前記金型から取り出すことをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水溶性シリコーンポリマーが、ジメチコンコポリマーである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記ジメチコンコポリマーが、ポリエチレングリコールを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ジメチコンコポリマーが、ポリプロピレングリコールを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ジメチコンコポリマーが、分岐鎖状である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記ジメチコンコポリマーが、直鎖状である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ジメチコンコポリマーが、ジメチコンPEG-8アジペート、ジメチコンPEG-8ベンゾエート、ジメチコンPEG-7ホスフェート、ジメチコンPEG-10ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-20/23ベンゾエート、ジメチコンPEG/PPG-7/4ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-12/4ホスフェート、PEG-3ジメチコン、PEG-7ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-14ジメチコン、PEG-17ジメチコン、PEG/PPG-3/10ジメチコン、PEG/PPG-4/12ジメチコン、PEG/PPG-6/11ジメチコン、PEG/PPG-8/14ジメチコン、PEG/PPG-14/4ジメチコン、PEG/PPG-15/15ジメチコン、PEG/PPG-16/2ジメチコン、PEG/PPG-17/18ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-20/6ジメチコン、PEG/PPG-20/15ジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/23ジメチコン、PEG/PPG-20/29ジメチコン、PEG/PPG-22/23ジメチコン、PEG/PPG-22/24ジメチコン、PEG/PPG-23/6ジメチコン、PEG/PPG-25/25ジメチコン、及びPEG/PPG-27/27ジメチコン、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
水溶性ポリマー及び水を含む離型剤であって、前記水溶性ポリマーは、親水性置換基を有する直鎖状シリコーンポリマーを含み、及び約2500Da乃至約500,000Daの分子量を有する、離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Water-Soluble Silicone-Based Release Agent」と題する2020年5月14日に出願された米国特許仮出願第63/024,737号の利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、成型及び鋳造作業に用いるためのダイの潤滑全般に関し、より詳細には、高圧ダイカストに用いるための水溶性シリコーン系離型剤に関する。
【背景技術】
【0003】
高圧ダイカスト(「HPDC」)は、溶融金属が、高圧及び加熱下でダイカスト金型のキャビティ中に押し込まれる周知のプロセスである。溶融金属は、金型キャビティ中で固化し、金型キャビティの形状を有する鋳造部品を形成する。鋳造部品が形成された後、それは続いて、金型キャビティから取り出される。
【0004】
金型キャビティ中で固化する間に、溶融金属は、金型キャビティの表面に接着し得る。これは、鋳造部品又は金型部品に対して損傷をもたらす結果となり得る。これらの問題を回避する補助として、ダイカスト用離型剤が、金型キャビティからの鋳造部品の適切な取り出しを確保する補助とするために用いられてきた。
【0005】
HPDCの市場では、主として水中シリコーンエマルジョンが、ダイカスト用離型剤の主成分として用いられている。これらの材料は、プロセスの有害な作用を最小限に抑えて高品質の鋳造品を製造するのに最も効率的である。しかし、クロムめっき、塗装、粉末コーティング、及び接着剤などの二次プロセスのすべてが、塗装性(paintable)のシリコーン油の使用による悪影響を受ける。塗装性のシリコーン油は、鋳造部品の表面に残った場合、上述の二次プロセスのすべてにおいて問題を引き起こすことになる。さらに、従来の水中シリコーンエマルジョンは、疎水性シリコーンと、シリコーンを水中に乳化させるための界面活性剤又は乳化剤とを用いる。そのような低分子量の界面活性剤又は乳化剤を使用すると、鋳造プロセス中に離型剤が溶融金属中にトラップされて、鋳造作業での多孔性の増加に繋がる。鋳造部品の二次加工に対してよりやさしい離型剤が求められている。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態では、離型剤は、シリコーンポリマー及び親水性置換基を有する水溶性ポリマーを含む。親水性置換基は親水性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールを含み得る。いくつかの実施形態では、シリコーンポリマーは、直鎖状であるが、他の実施形態では、シリコーンポリマーは、分岐鎖状である。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーは、約2500Da~約500,000Daの分子量を有する。いくつかの実施形態では、離型剤は、界面活性剤を含まない。いくつかの実施形態では、離型剤はさらに、水を例とする極性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、離型剤は、マイクロエマルジョンである。いくつかの実施形態では、水及び水溶性ポリマーは、水対水溶性ポリマーの約40:1~約200:1の体積比で存在する。いくつかの実施形態では、離型剤は、水溶性ポリマー及び水を含み、この場合、水溶性ポリマーは、直鎖状シリコーンポリマーを含み、親水性置換基及び約2500Da~約500,000Daの分子量を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、ダイカスト部品が金型に付着することを防止する方法は、溶融材料を金型に注入する前に、水溶性シリコーンポリマーを含む離型剤を金型の内表面に適用することを含む。いくつかの実施形態では、適用することは、スプレーすること又は塗布することを含む。ダイカスト部品が金型に付着することを防止する方法は、さらに、離型剤を希釈することを含み得る。他の実施形態では、ダイカスト部品が金型に付着することを防止する方法は、離型剤を、無希釈で、すなわち実質的に溶媒を添加することなく、適用することを含む。ダイカスト部品が金型に付着することを防止する方法は、さらに、溶融材料を冷却させて固体部品を形成することを含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、部品を鋳造する方法は、水溶性シリコーンポリマーを含む離型剤を金型の内表面に適用すること、及び金型に溶融金属を注入することを含む。水溶性シリコーンポリマーは、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールなどのジメチコンコポリマーである。いくつかの実施形態では、ジメチコンコポリマーは、分岐鎖状であるが、他の実施形態では、ジメチコンコポリマーは、直鎖状である。溶融金属は、約150~約6500トンの圧力で注入され得る。いくつかの実施形態では、方法はさらに、離型剤を水などの溶媒で希釈することを含み得る。方法はなおさらに、溶融金属を冷却して鋳造ピースを形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法はさらに、鋳造ピースを金型から取り出すことを含む。方法のいくつかの実施形態では、ジメチコンコポリマーは、ジメチコンPEG-8アジペート、ジメチコンPEG-8ベンゾエート、ジメチコンPEG-7ホスフェート、ジメチコンPEG-10ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-20/23ベンゾエート、ジメチコンPEG/PPG-7/4ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-12/4ホスフェート、PEG-3ジメチコン、PEG-7ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-14ジメチコン、PEG-17ジメチコン、PEG/PPG-3/10ジメチコン、PEG/PPG-4/12ジメチコン、PEG/PPG-6/11ジメチコン、PEG/PPG-8/14ジメチコン、PEG/PPG-14/4ジメチコン、PEG/PPG-15/15ジメチコン、PEG/PPG-16/2ジメチコン、PEG/PPG-17/18ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-20/6ジメチコン、PEG/PPG-20/15ジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/23ジメチコン、PEG/PPG-20/29ジメチコン、PEG/PPG-22/23ジメチコン、PEG/PPG-22/24ジメチコン、PEG/PPG-23/6ジメチコン、PEG/PPG-25/25ジメチコン、及びPEG/PPG-27/27ジメチコン、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ダイカスト作業に有用な、特に高圧ダイカスト作業に有用な離型剤を提供する。いくつかの実施形態では、離型剤は、水溶性シリコーンを含む。いくつかの実施形態では、離型剤は、溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、離型剤は、界面活性剤を含まない。
【0010】
水溶性シリコーンを含む本発明の離型剤は、従来の離型剤よりも鋳造後の鋳造部品表面からの洗浄が容易であり、したがって、二次加工(例:クロムめっき、塗装、粉末コーティング、接着剤コーティングなど)にとってより良好である。従来の離型剤は、シリコーン油を水と共に製剤するために界面活性剤又は他の乳化剤を必要とし、得られるエマルジョンの安定性に対する懸念を呈する。さらに、界面活性剤を使用すると、鋳造プロセス中に離型剤が溶融材料中にトラップされて、鋳造作業での多孔性の増加に繋がり得る。水溶性シリコーンを含む本発明の離型剤は、水溶性であり、したがって、水と共に製剤するために界面活性剤を必要としないという追加の利点を提供する。本発明の離型剤に水溶性シリコーンポリマーを使用することはまた、未使用の材料が水に容易に溶解して繰り返し適用することが可能であることから、離型剤の再利用性も高める。
【0011】
いくつかの実施形態では、離型剤は、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、及び/又は鉛の鋳造における溶融合金温度に耐えるのに充分な熱安定性を有する。
水溶性シリコーン
本発明の離型剤は、水溶性シリコーンを含み得る。材料が水溶性であるように1又は複数の親水性置換基で修飾されたいずれのシリコーンポリマーも、本発明の範囲に含まれる。本発明において、「水溶性」シリコーン化合物とは、シリコーン化合物が、少なくとも0.01g/水100g、少なくとも0.05g/水100g、少なくとも0.1g/水100g、又は少なくとも0.2g/水100gの25℃での水への溶解度を有することを意味する。水溶性シリコーンの例としては、ジメチコンコポリオール、アモジメチコンコポリオール、及び四級化シリコーンが挙げられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、親水性置換基は、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールである。
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンは、シリコーン及びエチレン/プロピレンオキシドの直鎖状コポリマーである。他の実施形態では、水溶性シリコーンは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの分岐鎖を有する分岐鎖状シリコーンポリマーである。
【0013】
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンは、式Iに示される直鎖状ジメチコンコポリオールである。
式I:(SiR )-O-(SiR -O-)-(SiRPE-O-)-(SiR
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンは、式IIに示される直鎖状ジメチコンコポリオールである。
【0014】
式II:PE-(SiR 2)-O-(SiR -O-)-(SiR )-PE
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンは、式IIIに示される分岐鎖状ジメチコンコポリオールである。
【0015】
式III:
【0016】
【化1】
【0017】
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンは、式IVに示される分岐鎖状ジメチコンコポリオールである。
式IV:
【0018】
【化2】
【0019】
式I~式IVにおいて、残基R1及びR2は、互いに独立して、水素、メチル残基、C2~C30直鎖状若しくは環状、飽和若しくは不飽和、置換若しくは無置換の炭化水素残基、及び/又はアリール残基を示す。R1及びR2で表される残基の限定されない例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、イソヘキシル、ラウリル、ステアリル、ベヘニルなどのアルキル残基;ビニル、ハロビニル、アルキルビニル、アリル、ハロアリル、アルキルアリルなどのアルケニル残基;シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル残基;フェニル残基及びベンジル残基などのアリール残基が挙げられる。上記の例のいずれも、所望に応じて1又は複数のO、S、及びNで置換されていてよい。
【0020】
式I~式IVにおいて、PEは、ポリオキシアルキレン残基、好ましくはポリエチレンエーテル又はポリプロピレンエーテルを示す。
式I~式IVにおいて、x、y、及びzの数値は、互いに独立して変動する整数であり、xは、約18~約180であり、yは、約18~約180であり、zは、約5~約20である。
【0021】
一般に、「PEG」又は「PPG」で始まるINCI名で称されるシリコーンが、本発明の離型剤での使用に適している。適切な水溶性ジメチコンコポリオールの例としては、限定されるものではないが、ジメチコンPEG-8アジペート、ジメチコンPEG-8ベンゾエート、ジメチコンPEG-7ホスフェート、ジメチコンPEG-10ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-20/23ベンゾエート、ジメチコンPEG/PPG-7/4ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-12/4ホスフェート、PEG-3ジメチコン、PEG-7ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-14ジメチコン、PEG-17ジメチコン、PEG/PPG-3/10ジメチコン、PEG/PPG-4/12ジメチコン、PEG/PPG-6/11ジメチコン、PEG/PPG-8/14ジメチコン、PEG/PPG-14/4ジメチコン、PEG/PPG-15/15ジメチコン、PEG/PPG-16/2ジメチコン、PEG/PPG-17/18ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-20/6ジメチコン、PEG/PPG-20/15ジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/23ジメチコン、PEG/PPG-20/29ジメチコン、PEG/PPG-22/23ジメチコン、PEG/PPG-22/24ジメチコン、PEG/PPG-23/6ジメチコン、PEG/PPG-25/25ジメチコン、及びPEG/PPG-27/27ジメチコンが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンポリマーは、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、及び/又は鉛の鋳造における溶融合金温度を例とする溶融合金温度に耐えるのに充分な熱安定性を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンは、アミン官能化シリコーン(「アモジメチコン」)コポリオールである。アモジメチコンコポリオールの例は、PEG-7アモジメチコンである。
【0024】
いくつかの実施形態では、水溶性シリコーンは、四級化シリコーンである。
溶媒
本発明の離型剤は、溶媒を含み得る。いくつかの実施形態では、離型剤は、水を含む。いくつかの実施形態では、離型剤は、極性溶媒を含む。本発明の離型剤に用いられ得る極性溶媒としては、限定されるものではないが、水、酢酸、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、離型剤は、炭化水素溶媒を含む。炭化水素溶媒としては、限定されるものではないが、リグロイン、ケロシン、及び他の低粘度炭化水素が挙げられる。離型剤は、溶液、マイクロエマルジョン、エマルジョン、又は他の混合物の形態であってよい。
【0025】
離型剤は、濃縮物として提供されてもよく、この場合、水溶性シリコーンは、離型剤組成物に対して約50重量%~約99重量%、約60重量%~約99重量%、約70重量%~約99重量%、約75重量%~約95重量%、約80~約95重量%、約85重量%~約95重量%、約90重量%~約95重量%、約90重量%~約99重量%、又は約95重量%~約99重量%である。
【0026】
いくつかの実施形態では、濃縮物は、離型剤組成物が、離型剤組成物に対して約0.2~約100重量%の量で水溶性シリコーンを含むように希釈され得る。離型剤濃縮物は、水又は他の親水性溶媒で希釈されてよく、又はいくつかの実施形態では、炭化水素溶媒である。典型的には、離型剤濃縮物は、適用時などに、溶媒を用いて、例えば約1:100、約1:90、約1:80、約1:70、約1:60、約1:50、約1:40、約1:30、約1:20、約1:10、約1:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約75:1、約80:1、約90:1、又は約100:1部の溶媒対離型剤濃縮物の量で希釈されることになる。
【0027】
いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、約0.5cps~約1000cps、約0.9cps~約1000cps、約100cps~約1000cps、又は約300~900cpsの粘度を有する。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、約0.9~約900cps、約0.9~約700cps、約0.9~約500cps、約0.9~約300cps、約0.9~約100cps、約0.9~約50cps、約0.9~約25cps、約0.9~約10cps、又は約0.9~約5cpsの粘度を有する組成物に使用前に希釈することができる濃縮物である。
【0028】
他の成分
いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、水溶性シリコーンを含む。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、水溶性シリコーン及び溶媒を含む。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、水溶性シリコーン及び溶媒から本質的に成る。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、界面活性剤を含まない。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、乳化剤を含まない。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、界面活性剤及び乳化剤を含まない。
【0029】
本発明の離型剤組成物は、1又は複数の添加剤を含んでよいが、いずれの添加剤の含有も任意である。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、耐摩耗性添加剤、酸化防止剤、消泡添加剤、腐食防止剤、殺生物剤、及び極圧添加剤のうちの1又は複数を含む。いくつかの実施形態では、添加剤は合計で、離型剤組成物の約0.1~約3重量%である。いくつかの実施形態では、添加剤は、各々、離型剤組成物の約0.1~約3重量%で存在する。いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、添加剤を含まず、水溶性シリコーンポリマー及び溶媒から本質的に成る。
【0030】
方法
本発明は、金型又は鋳型から部品を取り出す方法を提供し、金型又は鋳型の内表面に本明細書で述べる離型剤を適用すること、及び金型又は鋳型に流体材料を注入することを含む。方法はさらに、金型又は鋳型中の流体材料に対して、圧力下のガスを適用することを含み得る。方法はさらに、流体材料を固化して固体形態にすること、及び金型又は鋳型から固体形態をとり出すことを含み得る。
【0031】
部品の成型に有用であるいかなる種類の金型又は鋳型が本発明の方法と共に用いられてもよい。特に、射出発泡成型金型、プラスチック成型金型、ダイカスト金型、及び高圧ダイカスト金型が、本発明の方法での使用に適している。本発明の方法は、高圧ダイカスト金型に特に良く適している。
【0032】
離型剤は、本明細書で開示される水溶性シリコーンを含み得る。特に、離型剤は、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールを含む(すなわち、それらで置換された)分岐鎖状又は直鎖状ジメチコンコポリオールを含み得る。例えば、離型剤は、ジメチコンPEG-8アジペート、ジメチコンPEG-8ベンゾエート、ジメチコンPEG-7ホスフェート、ジメチコンPEG-10ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-20/23ベンゾエート、ジメチコンPEG/PPG-7/4ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-12/4ホスフェート、PEG-3ジメチコン、PEG-7ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-14ジメチコン、PEG-17ジメチコン、PEG/PPG-3/10ジメチコン、PEG/PPG-4/12ジメチコン、PEG/PPG-6/11ジメチコン、PEG/PPG-8/14ジメチコン、PEG/PPG-14/4ジメチコン、PEG/PPG-15/15ジメチコン、PEG/PPG-16/2ジメチコン、PEG/PPG-17/18ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-20/6ジメチコン、PEG/PPG-20/15ジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/23ジメチコン、PEG/PPG-20/29ジメチコン、PEG/PPG-22/23ジメチコン、PEG/PPG-22/24ジメチコン、PEG/PPG-23/6ジメチコン、PEG/PPG-25/25ジメチコン、及びPEG/PPG-27/27ジメチコン、並びにこれらの組み合わせを含み得る。
【0033】
離型剤は、エレクトロスプレーによる適用、パルスによる適用、ブラシによる適用、ローラーによる適用、注ぎ入れ、又はスプレーを含む従来のいかなる方法によって金型又は鋳型に適用されてもよい。好ましくは、離型剤は、スプレーによって金型又は鋳型に適用され得る。いくつかの実施形態では、離型剤は、高圧で、例えば約60~約80psi、約60~約100psi、約60~約150psi、約60psi~約200psi、約100psi~約750psi、約200~約600psi、約300~500psi、又は約400~約600psiで適用される。いくつかの実施形態では、離型剤は、低圧で、例えば約10psiで適用される。
【0034】
いくつかの実施形態では、離型剤組成物は、耐はんだペースト(antisolder paste)又はスタートアップ潤滑剤(start-up lubricant)と組み合わされる。いくつかの実施形態では、離型剤は、プランジャ潤滑剤として用いられ得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、離型剤は、離型剤を希釈して濃縮物から最終組成物とするために、溶媒と一緒にスプレーされる。溶媒は、極性溶媒であってよく、好ましくは水である。いくつかの実施形態では、離型剤は、適用時に、溶媒(例:水)を用いて、約10:1~約400:1体積部の溶媒対離型剤で、約10:1~約200:1体積部で、約25:1~約150:1体積部の溶媒対離型剤で、又は約50:1~約100:1体積部の溶媒対離型剤の範囲内で希釈される。
【0036】
流体材料は、典型的には、溶融金属又は金属合金であり、例えば、限定されないが、流体材料は、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉛、又は真鍮であってよい。
いくつかの実施形態では、流体材料は、高圧下で注入される。そのような高圧は、約150トン~約6500トンの範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、流体材料をダイに押し込むために、高圧下のガスが流体材料に適用される。いくつかの実施形態では、流体材料(例:金属)に注入するために、ガスが流体材料に適用される。そのようなガスは、例えば窒素であってよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、鋳型又は金型は、固体形態又は部品を露出するために開かれる。固体形態又は部品は、鋳型又は金型から取り出され得る。
当業者であれば、上記で示し記載した例示的実施形態に対して、その本発明の広い発想から逸脱することなく変更が成され得ることは理解される。したがって、本発明が、示し記載した例示的実施形態に限定されるものではなく、請求項で定められる本発明の趣旨及び範囲内での改変を包含することを意図するものであることは理解される。例えば、例示的実施形態の特定の特徴は、請求される本発明の一部であっても又は一部でなくてもよく、開示される実施形態の様々な特徴が組み合わされてもよい。本明細書で特に示されない限りにおいて、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」の用語は、1つの要素に限定されず、「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。
【0038】
さらに、本発明の方法が、本明細書で示される工程の特定の順番に依存しない限りにおいて、工程の特定の順番は、請求項に対する限定として見なされるべきではない。本発明の方法に関するいずれの請求項も、記載された順番でそれらの工程を実施することに限定されるべきではなく、当業者であれば、工程は変動し得るが、それでも本発明の趣旨及び範囲内に含まれたままであることは容易に理解することができる。
【国際調査報告】