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特表2023-529292TRI置換デンプンの組成物及びそれを作製及び使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】TRI置換デンプンの組成物及びそれを作製及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 31/04 20060101AFI20230703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 31/718 20060101ALI20230703BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20230703BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230703BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20230703BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230703BHJP
【FI】
C08B31/04
A61P43/00 123
A61P3/02
A61P1/00
A61P3/00
A61P1/04
A61P1/12
A61P3/04
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P29/00
A61P37/02
A61K31/718
A23L33/12
A23L33/105
A23L29/206
A23L5/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570196
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2021033819
(87)【国際公開番号】W WO2021247263
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,144
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】512035620
【氏名又は名称】コーンプロダクツ ディベロップメント インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】オドリシオ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ステュアート、マリア
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B041
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD01
4B018MD09
4B018MD34
4B018MD49
4B018MD53
4B018MD57
4B018ME11
4B018MF02
4B018MF04
4B018MF10
4B035LC06
4B035LG07
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG33
4B035LG34
4B035LK19
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP59
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH02
4B041LK08
4B041LK22
4B041LK23
4B041LK24
4B041LK28
4B041LP01
4B041LP25
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA45
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA70
4C086ZA73
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC21
4C086ZC35
4C090AA02
4C090AA05
4C090BA15
4C090BB65
4C090BB72
4C090BB82
4C090BB94
4C090BD36
4C090CA38
4C090DA09
4C090DA11
4C090DA23
4C090DA27
(57)【要約】
本明細書では、変性デンプンを含有する組成物が開示され、デンプンは、異なる長さの複数の短鎖脂肪酸へのエステル結合を含有するように変性され、特に、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸への結合を含有する。そのようなデンプンエステルを作製及び使用するための方法は、栄養効果及び健康上の利益のためのデンプンエステルを含む組成物である。
【選択図】図7A図7B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンエステルであって、デンプンと、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される少なくとも3つの短鎖脂肪酸とを含み、
好ましくは、前記少なくとも3つの短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む、デンプンエステル。
【請求項2】
前記デンプンエステルが、約0.01~約0.6、又は約0.01~約0.4、又は約0.1~約0.6、又は約0.1~約0.5、又は約0.1~約0.4、又は約0.1~約0.3、又は約0.2~約0.3の置換度を有し、
好ましくは、前記置換度は約0.1~約0.6である、請求項1に記載のデンプンエステル。
【請求項3】
前記デンプンエステルが、1%未満、0.1%未満、又は0.01%未満のジメチルスルホキシドを含有し、又はジメチルスルホキシドを含有せず、
好ましくは、前記デンプンエステルは、0.01%未満のジメチルスルホキシドを含有する、請求項1又は2に記載のデンプンエステル。
【請求項4】
前記デンプンエステルが、結晶性粒状構造を含み、
好ましくは、前記デンプンエステルが、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含み、
好ましくは、前記デンプンは、トウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、豆類デンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、エンバクデンプン、米デンプン、ライ麦デンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、ワックス状トウモロコシデンプン、高アミローストウモロコシデンプン、ワックス状ジャガイモデンプン、ワックス状米デンプン、及びソルガムデンプン、並びにそれらの混合物から選択される、任意選択でデンプンは高アミローストウモロコシデンプンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のデンプンエステル。
【請求項5】
前記デンプンエステルが、インビトロモデル結腸アッセイにおいて、対照組成物によって提供される前記短鎖脂肪酸の第2の量よりも多い第1の量の短鎖脂肪酸を提供し、前記対照組成物は、一置換又は二置換デンプンエステルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデンプンエステル。
【請求項6】
前記デンプンエステルが、約0.5時間、1時間、3時間、6時間、12時間、18時間、20時間、24時間、又は48時間のインビトロモデル結腸アッセイでインキュベートされ、
好ましくは、前記デンプンエステルが、インビトロモデル結腸アッセイで約6時間又は24時間インキュベートされ、
好ましくは、前記一置換デンプンエステル又は二置換デンプンエステルが、前記デンプンエステルと同様の置換度を有する、請求項5に記載のデンプンエステル。
【請求項7】
前記デンプンエステルが、エステル化されていない対照デンプン分子と比較して、前記デンプンエステル1グラムをゼラチン化するのに、約0.1~約10.0J/g、又は約0.5~約10.0J/g、又は約0.5~約5.0J/g、又は約0.5~約4.0J/g、又は約1.0~約10.0J/g、又は約1.0~約5.0J/g、又は約1.0~約4.0J/g、又は約2.0~約4.0J/g、又は約3.0~約5.0J/gを必要とし、
好ましくは、前記デンプンエステルが、約0.5~約5.0J/gを必要とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のデンプンエステル。
【請求項8】
使用者の結腸内の前記短鎖脂肪酸の増加量を達成するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のデンプンエステルの使用。
【請求項9】
デンプンエステルの製造方法であって、方法は、
e)デンプンを1つ以上の短鎖脂肪酸と混合することと、
f)エステル化触媒を添加して混合物を提供することと、
g)前記混合物を混合することと、
h)任意選択で、前記混合物を加熱することと、を含み、
前記方法が、DMSOの非存在下で実施される、方法。
【請求項10】
前記1つ以上の脂肪酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択され、
好ましくは、前記1つ以上の短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、無水条件下で実行される、請求項9~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記デンプンエステルが、約0.05~約0.5、約0.1~約0.4、約0.1~約0.3、又は約0.2~約0.3の置換度を有し、
好ましくは、前記置換度が約0.1~約0.6であり、
好ましくは、前記デンプンエステルが結晶性粒状構造にある、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記エステル化触媒が、硫酸、過塩素酸、塩酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、強酸イオン交換樹脂、リン酸、及びそれらの混合物から選択され、好ましくは、前記エステル化触媒が、硫酸であり、
前記エステル化触媒は、約0.1~約1.0モル%、約0.1~約0.8モル%、約0.1~約0.6モル%、約0.1~約0.5モル%、約0.2~約1.0モル%、約0.2~約0.8モル%、又は約0.25~約0.5モル%で使用され、好ましくは、エステル化触媒は、約0.1~約0.5モル%で使用される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記デンプンエステルが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される少なくとも3つの短鎖脂肪酸を含み、
好ましくは、前記少なくとも3つの短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のデンプンエステル。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか一項に記載の方法によって得られるデンプンエステル。
【請求項16】
請求項1~7及び請求項15のいずれか一項に記載のデンプンエステルを含む組成物であって、好ましくは、前記組成物が、栄養製剤又は医薬製剤を含む、組成物。
【請求項17】
対象において、腸の健康をサポートする栄養補助食品を提供するための方法であって、前記方法は、請求項1~7及び請求項15のいずれか一項に記載の前記デンプンエステルの有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項18】
対象における自己免疫又は代謝障害を治療するための方法であって、前記方法は、請求項1~7及び請求項15のいずれか一項に記載のデンプンエステルの有効量を前記対象に投与することを含み、
好ましくは、前記障害は、肥満、糖尿病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、下痢、アテローム性動脈硬化症、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年6月3日に出願された米国仮特許出願第63/034,144号に関連し、かつ優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本明細書に記載されるのは、異なる長さの複数の短鎖脂肪酸(SCFA)とエステル結合を形成するように変性されたデンプン材料を含むデンプン含有組成物である。本発明は、栄養用途に有用な三変性デンプン組成物に関する。本発明は更に、組成物を作製及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
短鎖脂肪酸(SCFA)、特に酢酸、プロピオン酸、及び酪酸は、食物繊維及び消化耐性デンプンの腸微生物発酵から生じる主要な末端生成物である(Bajka et al.、Nutrition Research、2010、30(6);427-34)。血漿及び結腸中のSCFAの欠損は、代謝障害及び自己免疫障害に関連している。例えば、抗生物質によるSCFA合成の阻害は、下痢(Binder H.J.、AnnuRevPhysiol.,2010;72:297-313)を生じさせ得る。最適なレベルの結腸SCFAを維持することは、肥満、2型糖尿病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、下痢、アテローム性動脈硬化症、クローン病、及び潰瘍性大腸炎などのそのような障害及び関連疾患を予防及び対抗させることができる。
【0004】
アセチル化又はブチリル化のいずれかであるように変性された消化耐性炭水化物(食物繊維)は、NODマウスにおける自己免疫疾患からの保護をもたらすことが示されている(2018年2月15日に公開されたWO2018/027274を参照)。更に、アセチル化デンプン分子は、ラットの腸内の酢酸プールを増加させることが示されている(A.R.Bird.et al.、Food Hydrocollocies、20(2006):1135-40)。しかしながら、これらの合成反応は、典型的には、アセチル又はブチリル部分を付着させるために、ジメチルスルホキシド又はDMSOの使用を必要とする。ヒト消費のために調製物中に存在するDMSO又は他の溶媒の量を制限することが一般的に望ましいため、DMSO又は他の溶媒の非存在下で作製され、例えば、食事又は栄養用途のために、そのような変性された分子を提供する必要性が存在する。いくつかの用途では、そのような調製物は、完全に、特にDMSOを含まないことが好ましい。
【0005】
SCFAの単一種又はタイプを共有結合させるデンプンに作製された変性に加えて、デンプン分子上に複数の単一種又はSCFAのタイプをエステル化する際にも作用している。例えば、1996年12月24日に発行された米国特許第5,587,412号を参照されたい。トウモロコシデンプンは、酢酸及びプロピオン酸又は酪酸でエステル化された。しかしながら、これらの分子は、良好な寸法安定性及び物理的特性を有する粒子を提供するために、少なくとも約1.8の大きな置換度を必要とした。
【0006】
ユーザの結腸に優れたレベルのSCFAを提供する改善された健康組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、栄養製剤に有用な変性デンプン組成物に関する。特に、本開示は、デンプンエステルを含む組成物に関し、すなわち、異なる長さの複数の短鎖脂肪酸に結合されるように置換又は変性されたデンプンである。デンプンエステルは、SCFAの少なくとも3つの異なる種を含有することができる。いくつかの実施形態では、そのようなデンプンエステルは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸で三置換されたデンプンから生じる。本開示はまた、組成物を作製及び使用する方法に関する。
【0008】
本明細書に開示されるのは、異なる長さの複数のSCFAを組み込むための変性を受けたデンプンである。いくつかの態様では、デンプンエステルは、少なくとも3つの異なるSCFAを含む。そのようなデンプンエステルは、1つ以上のSCFAを送達するためのビヒクルを提供し得る。
【0009】
特定の例示的な態様では、本発明は、デンプンエステルを含む組成物を含み、デンプンエステルは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を用いたデンプンの変性の生成物である。特定の態様では、そのような三置換デンプンエステル組成物は、結腸微生物による異なるSCFAの産生をもたらし得る。
【0010】
特定の態様では、本発明は、デンプンを短鎖脂肪酸と混合し、エステル化触媒を加え、組成物を混合することにより、多置換デンプンエステルを作製する方法を含む。特定の態様では、方法は、DMSOの非存在下で実施される。
【0011】
特定の態様では、本発明は、デンプンエステルを含む栄養製剤又は医薬製剤を含む。特定の態様では、本発明は、消化管に関連する多くの障害を治療するためのデンプンエステルの使用を含む。
【0012】
特定の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物を使用して、ユーザの結腸内の増加した短鎖脂肪酸濃度を達成する方法を含む。特定の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物又は製剤の治療有効量の対象への投与によって対象における自己免疫又は代謝障害を治療するための方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は、様々な実施形態に適用される新規の特徴を示し、説明及び指摘するが、本開示の趣旨から逸脱することなく、組成物及び方法の形態及び詳細における様々な省略、置換、及び変更を行うことができることが理解されよう。本明細書の図は本質的に例示的であり、限定することを意図するものではない。認識されるように、本明細書に記載される特定の実施形態は、いくつかの特徴が他の特徴とは別個に使用又は実施され得るため、本明細書に記載の特徴及び利益のすべてを提供しない形態で具体化され得る。
図1】ベース材料として使用される天然トウモロコシデンプンのゲル浸透クロマトグラフを示す。
図2】実験試料1のゲル浸透クロマトグラフであり、無水酢酸で処理され、0.2の置換度を有するデンプンによって作製されたデンプンエステルを示す。
図3】実験試料2のゲル浸透クロマトグラフを示し、酢酸で処理され、0.2の置換度を有するデンプンによって作製されたデンプンエステルである。
図4】実験試料3のゲル浸透クロマトグラフを示し、酢酸で処理され、0.2の置換度を有するデンプンによって作製されたデンプンエステルである。
図5A】酢酸、プロピオン酸、及び酪酸で置換されている三置換デンプンのHNMR分析を示す図5Bと比較した、一置換デンプンエステルの乾燥ブレンド:デンプン酢酸、プロピオン酸とデンプン酪酸との混合物のHNMR分析を示す。
図5B】酢酸、プロピオン酸、及び酪酸で置換されている三置換デンプンのHNMR分析を示す図5Bと比較した、一置換デンプンエステルの乾燥ブレンド:デンプン酢酸、プロピオン酸とデンプン酪酸との混合物のHNMR分析を示す。
図6】未変性のベーストウモロコシデンプン(HYLON(登録商標)VII)及び酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含有する三置換HYLON(登録商標)VIIトウモロコシデンプンの顕微鏡写真を示す。これらの画像は、DMSOで処理する前後の両方でデンプン顆粒を示す。
図7A】インビトロモデル結腸研究のデンプンエステルのインキュベーション6時間後の酢酸レベルの測定値を示す。デンプン酢酸(HAMSA6、酢酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII)の効果は、三置換デンプン(HAMSABP6、酢酸、プロピオン酸、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII)と一置換デンプンエステルの乾燥ブレンド:酢酸デンプン、プロピオン酸デンプン、酪酸デンプン(乾燥ブレンド、酢酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、及びプロピオン酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIの混合物)の両方の効果と比較される。試料は、10mM(低)、20mM(中)、又は40mM(高)のストック濃度を使用して作製した。
図7B】インビトロモデル結腸研究20時間のインキュベーションで測定された酢酸レベルを示す。
図8A】インビトロモデル結腸研究でデンプンエステルのインキュベーション後の6時間での酪酸レベルの測定値を示す。デンプン酪酸(HAMSB6、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII)の効果は、三置換デンプン(HAMSABP6、酢酸、プロピオン酸、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII)及び一置換デンプンエステルの乾燥ブレンド、酢酸デンプン、プロピオン酸デンプン、及び酪酸デンプン(乾燥ブレンド、酢酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、及びプロピオン酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIの混合物である)の両方の効果と比較される。試料は、10mM(低)、20mM(中)、又は40mM(高)のストック濃度を使用して作製した。
図8B】インビトロモデル結腸研究で20時間のインキュベーションで測定された酪酸レベルを示す。
図9A】インビトロモデル結腸研究でデンプンエステルのインキュベーション後の6時間のプロピオン酸レベルの測定値を示す。デンプンプロピオン酸(HAMSP6、プロピオン酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII)の効果は、三置換デンプン(HAMSABP6、酢酸、プロピオン酸、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII)と一置換デンプンエステルの乾燥ブレンド(酢酸デンプン、プロピオン酸デンプン、酪酸デンプン)(乾燥ブレンドABP、乾燥ブレンドは、酢酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、及びプロピオン酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIの混合物である)の両方の効果と比較される。試料を、10mM(低)、20mM(中)、又は40mM(高)のストック濃度から使用した。
図9B】インビトロ結腸研究で20時間のインキュベーションで測定されたプロピオン酸レベルを示す。
図10A】6時間のインキュベーションで測定された、異なるプロセスで調製されたデンプン酢酸組成物でインキュベーション後、インビトロモデル結腸研究における酢酸レベルの測定値を示す。無水方法を使用して調製された酢酸デンプンの効果は、水性方法を使用して調製されたデンプン酢酸の効果と比較される。試料を、10mM(低)、20mM(中)、又は40mM(高)のストック濃度から使用した。
図10B】インビトロ結腸研究で無水調製又は水性調製された酢酸デンプンとの20時間のインキュベーションで測定された酢酸レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本技術はまた、本技術の個々の態様の例示として意図される、本明細書に記載される態様に関して限定されるものではない。当業者には明らかであるように、本技術の多くの修正及び変更は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本技術の範囲内の機能的に等価な方法は、本明細書で列挙されるものに加えて、前述の記載から当業者に明らかとなろう。かかる修正及び変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本技術は、当然のことながら、変化し得る、方法、複合体、試薬、化合物、又は組成物に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別途記載のない限り、又は別様に文脈と明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書で使用される用語は、態様の説明のみを目的とするものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。それゆえ、本明細書は、添付の特許請求の範囲、その定義、及びそれらの任意の等価物のみによって示される本技術の広さ、範囲、及び趣旨のみの例示として見なされることが意図される。
【0015】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許出願、交付済み特許、及び他の文書(例えば、ジャーナル、記事、及び/又は教科書)は、それぞれの個々の刊行物、特許出願、発行特許、又は他の文書が、その全体を参照することで本明細書に組み込まれることが具体的、かつ個別に示されているかのように、参照することで本明細書に組み込まれる。参照することで組み込まれた本文に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する範囲内で除外される。本開示の定義と引用された参考文献との間に矛盾が生じる場合は、本開示が統制する。
【0016】
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書で具体的に開示されていない任意の要素(1つ又は複数)、限定(1つ又は複数)のない状況で好適に実践され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む、挙げられる(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、拡大的に読み取られ、限定するものではない。追加的に、本明細書で用いられる用語及び表現は、説明の用語として使用されており、限定するものではなく、かかる用語及び表現の使用において示され及び記載される特徴又はその部分の任意の等価物を排除する意図はないが、特許請求される技術の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。加えて、「から本質的になる」という語句は、具体的に列挙されたそれらの要素、並びに特許請求の範囲の技術の基本的及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素を含むと理解されよう。「からなる」という語句は、指定されていない任意の要素を除外する。
【0017】
当業者に理解されるように、任意の及び全ての目的のため、特に記載された説明を提供するという観点から、本明細書に開示される全ての範囲はまた、任意の及び全ての可能な部分範囲及びそれらの部分範囲の組み合わせも包含する。全体を通して使用される場合、範囲は、その範囲内の各値及び全ての値を説明するための略語として使用される。範囲内の任意の値は範囲の終端として選択されてもよい。例えば「最大」、「少なくとも、」、「より大きい」、及び「より小さい」などの全ての言い回しは、列挙された数を含み、上述のように部分範囲へとその後分解され得る範囲を指す。
【0018】
本明細書における数字を修飾する「約」の使用は、列挙された数±10%を含むことを意味する。請求項における値の法的に許容される記述は、概ねその値を意味する。特許請求の範囲、又は明細書における約の使用は、対象にする等価物の全範囲を制限することを意図するものではない。
【0019】
「短鎖脂肪酸」又は「SCFA」という用語は、互換的に使用され得、6個未満の炭素原子を含有するか、又は6個未満の炭素を含有する分子骨格を有する脂肪酸を指し得る。異なるSCFAは、異なる数の炭素又は異なる長さを有するものとして説明することができる。例えば、酢酸は、2つの炭素を含有する分子骨格を有し、プロピオン酸は、3つの炭素を含有する分子骨格を有し、酪酸は、4つの炭素を含有する分子骨格を有する。これら3つのSCFAの各々は、その化学的又は分子構造において異なる数の炭素を含有し、したがって、これら3つのSCFAは、互いに異なる長さを有すると見なされ得る。
【0020】
「デンプンエステル」という用語は、エステル基を含む天然デンプン又は任意の起源の変性デンプン誘導体、又はそれらの組み合わせを含む任意のデンプンを指し得る。いくつかの実施形態では、そのようなデンプンエステルは、1つ以上のタイプのSCFAを含有するように変性されたデンプンを含む。本発明のデンプンエステルのエステル基は、6個以下の炭素原子の炭素鎖を有する脂肪酸を含むか、又はそれらからなる。例えば、エステル基は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、及びそれらの混合物を含み得る。
【0021】
「三置換デンプンエステル」又は「三変性デンプンエステル」という用語は、互換的に使用され得、異なる長さの少なくとも3つのSCFAを含有するデンプンエステルを指し得る。例えば、三置換デンプンエステルは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸分子へのエステル結合を有するデンプン分子を含有し得る。デンプン材料内の個々のデンプン分子は、ゼロ、1つ、2つ、又は3つのSCFA置換基へのエステル結合を含有し得るが、凝集デンプン材料は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸分子へのエステル結合を含有する。任意のデンプン分子内の個々のグルコース単位は各々、ゼロ、1つ、2つ、又は3つのSCFA置換基へのエステル結合を含有し得る。個々のグルコース単位が複数のSCFA置換基を含有する場合、それらの置換基は同じ又は異なるSCFAであり得る。
【0022】
「一置換デンプンエステル」という用語は、SCFAの単一種又はタイプを含有するように変性されたデンプンエステルを指し得、「二置換デンプンエステル」は、異なる長さの2つのSCFAに変性されたデンプンエステルを指し得る。
【0023】
ポリマーの「置換度」(DS)は、塩基又はモノマー単位当たりに結合した置換基の平均数を指し得る。デンプン分子は、結合したグルコース糖の鎖を含み得る。エステル化デンプン又はデンプンエステルでは、DSは、デンプンの各グルコース骨格分子のSCFAで置換されたヒドロキシル基の平均数を示し得る。
【0024】
「結晶性粒状構造」又は「結晶構造」という用語は、互換的に使用され得、高度に秩序化された構造を有するデンプン又はデンプン顆粒の外観を指し得る。そのような構造は、例えば、デンプンに記載されているような光学顕微鏡検査及び走査型電子顕微鏡法によって、顕微鏡検査によって識別され得る。DavidJ.Thomas and WilliamA.Atwell(EaganPress1999)によるFoodIndustryのpp.13-15における実施用ガイド。
【0025】
デンプン分子の「糊化温度」という用語は、デンプン分子内の分子順序が破壊される温度を指し得、結晶構造の損失、複屈折の損失、及び粘度を含む特性の不可逆的な変化をもたらす。
【0026】
「治療」、「治療すること」などの用語は、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防することに関して予防的であり得、及び/又は疾患及び/又は疾患に起因する悪影響を部分的又は完全に硬化させることに関して治療的であり得る。本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、対象における疾患の任意の治療を網羅し、(a)疾患が疾患に事前に配置され得る対象において発生することを防止すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること、(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患を退行させること、(d)疾患に関連する症状を軽減することと、を含む。
【0027】
「有効量」及び「薬学的に有効な量」という用語は、所望の生物学的結果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。その結果は、疾患若しくは障害の兆候、症状、又は原因、又は生物系の任意の他の所望の変化の低減及び/又は緩和であり得る。任意の個々の場合における適切な有効量は、日常的な実験を使用して当業者によって決定され得る。「治療有効量」は、所与の状態及び投与レジメンに対して治療効果を提供する量を指す。特に、「治療有効量」は、疾患の症状を予防、軽減、又は改善するのに有効であるか、又はヒト又は非ヒト動物であり得る治療される対象の生存期間を延長する量を意味する。治療有効量の決定は、当業者の技術の範囲内である。
【0028】
「栄養製剤」という用語は、対象の栄養素要件を満たすか、又は対象の食事を補足する任意の組成物を意味する。そのような栄養製剤は、自己免疫及び炎症反応を低減し、免疫強度を増強し、体重減少若しくは食欲抑制を促進し、全体的な腸の健康を改善し、体重維持又は体重増加を改善し、糖尿病、高血圧、及び消化障害などの慢性疾患を管理するなどの多くの方法で、一般的な健康を促進し得る。促進することにより、必要に応じてビタミン、ミネラル、タンパク質、アミノ酸、又は他の物質の取り込みが、多くの集団において多くの方法で一般的な健康を促進し得る。
【0029】
「消化抵抗性」という用語は、消化管によって消化又は吸収されることなく消化管を通過する食品又は食品成分、又はその一部を指し得る。特定の天然及び変性デンプン及び繊維を含む特定の多糖類及び炭水化物は、胃、小腸、及び大腸に見られる消化酵素及び化学物質によって部分的又は完全に影響を受けない。消化耐性食品及び特に興味深い炭水化物には、小腸及び大腸などの胃腸管の異なる部分における消化に耐性のあるデンプンエステルが含まれる。本発明の技術のいくつかの実施形態は、短鎖脂肪酸(SCFA)とエステル結合を含有するように変性された消化耐性デンプンを含む組成物に関する。特に目的の消化耐性炭水化物には、小腸又は大腸などの胃腸管の異なる部分における消化に耐性のあるデンプンが含まれる。そのような変性デンプンは、対象の結腸にSCFAを送達することができる栄養製剤に有用である。
【0030】
理論に束縛されるものではないが、結腸における食物繊維の細菌発酵から放出されるSCFAは、多くの方法で対象における腸の健康を促進し得ると考えられる。例えば、これらの脂肪酸は、血流を増加させることによって内臓機能を維持するのに重要であると考えられており、下痢中の改善された電解質及び流体吸収、腸管病原体の成長を制限するための低結腸pHの維持、及び結腸筋活性の調節にも寄与する。これらの特性は、1つ以上のタイプのSCFAを含むデンプンを含有する組成物が、結腸に存在する細胞などの消化系の細胞に送達される場合に達成され得る。
【0031】
特定の実施形態では、消化耐性炭水化物は、例えば、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、アラビノキシラン、キシロンガン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ガラクタン、β-グルカン、ペクチド多糖類(ホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナン-I、及びラムノガラクツロナン-II)、耐性マルトデキストリン、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、マンナオリゴ糖、アラビノオリゴ糖及びキシロオリゴ糖を含む、多糖類及びオリゴ糖を含み得る。そのような消化耐性炭水化物は、結腸微生物細胞によって発酵されて短鎖脂肪酸を生成する食物繊維の供給源を提供し得る。
【0032】
特定の実施形態では、消化耐性炭水化物は、デンプンを含有し得、消化耐性デンプンを含み得る。本明細書で使用されるデンプン材料は、いくつかのデンプン又はそれらの混合物のいずれかであり得る。デンプンは、例えば、以下に記載されているように、化学的、酵素的、及び物理的処理を含むがこれらに限定されない任意のプロセスによって変性された天然デンプン又はデンプンであり得る。Starches:Practical Guide for the Food Industry by David J.Thomas and William A.Atwell(Eagan Press 1999)。
【0033】
いくつかの実施形態は、三置換デンプンエステル又は三置換デンプンエステルを含有する組成物に関し、これらは、異なる長さの少なくとも3つのSCFAに結合するように変性されたデンプン分子である。いくつかの実施形態では、デンプンエステルは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される3つ以上のSCFAを含み得る。いくつかの実施形態では、高いバイオアベイラビリティを有するSCFAが選択され得る。いくつかの実施形態では、変性デンプンエステルは、エステル結合を有するデンプン分子を酢酸、プロピオン酸、及び酪酸分子に提供し得る。いくつかの実施形態では、3つ以上のSCFAは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる。
【0034】
SCFAは、胃腸の健康にとって重要である。それらは、小腸又は大腸における消化耐性食品の微生物発酵によって自然に提供され得る。SCFAは、消化耐性食品のそのような細菌炭水化物発酵の末端生成物として生じ得る。本明細書に記載の治療効果を提供するのに十分な増加したレベルでSCFAを送達するために三置換デンプンエステルを提供することが望ましいであろう。
【0035】
いくつかの実施形態では、デンプンエステルは、様々なSCFAで置換された1つ以上のヒドロキシル基を有するグルコース分子を含み得る。未変性デンプン分子がゼロの置換度を有し得る場合。変性デンプン分子において、各グルコースサブユニットは、置換基で置換された1つ以上のヒドロキシル基を有し得る。そのような変性デンプンエステルでは、デンプンエステルは、約0.01~約0.6、又は約0.01~約0.4、又は約0.1~約0.6、又は約0.1~約0.5、又は約0.1~約0.4、又は約0.1~約0.3、又は約0.2~約0.3の置換度を有し得る。
【0036】
特定の実施形態は、消化耐性炭水化物を含む組成物を提供し、消化耐性炭水化物は、デンプンエステルを含む。特定の実施形態では、本発明は、デンプンエステルを含む組成物を含み、デンプンエステルは、デンプン分子の酢酸、プロピオン酸、及び酪酸とのエステル化の生成物である。特定の実施形態では、本発明は、デンプンエステルを含む組成物を含み、デンプンエステルは、酢酸、プロピオン酸基、及び酪酸基を含有するように変性されている。
【0037】
特定の実施形態では、本発明は、デンプンエステルを含む組成物を含み、デンプンエステルは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸とのデンプンのエステル化の生成物であり、組成物は、0.01%未満のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する。いくつかの実施形態では、デンプンエステル又は組成物は、1%未満、0.1%未満、又は0.01%未満のジメチルスルホキシドを含有するか、又はジメチルスルホキシドを含有しなくてもよい。
【0038】
デンプンは、粒状、結晶構造、又は非顆粒、非晶質構造、又はその両方を有し得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、変性デンプンは、限定されずに、架橋デンプン、熱抑制デンプン、安定化デンプン、アセチル化及び有機エステル化デンプン、ヒドロキシレチル化及びヒドロキシプロピル化デンプン、リン酸化及び非有機エステル化デンプン、カチオン性、アニオン性、非イオン性、及び双性イオン性デンプン、並びにデンプンのコハク酸塩及び置換コハク酸誘導体を含むことが意図される。例えば、デンプンは、酸化、薄化、及び/又は架橋され得る。デンプンはまた、カチオン性、アニオン性、両性、及び/又は非イオン性剤と反応させてもよい。
【0040】
デンプンとしては、トウモロコシ又はトウモロコシデンプン、エンドウデンプン、豆類デンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、エンバクデンプン、米デンプン、ライ麦デンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、ワックス状トウモロコシデンプン、高アミローストウモロコシデンプン、ワックス状ジャガイモデンプン、ワックス状米デンプン、ソルガムデンプン及びそれらの混合物から選択されるデンプンを含む、任意の植物源に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。デンプンは、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、小麦、エンバク、米、ライ麦、サゴ、タピオカ、小麦、ワックス状トウモロコシ、ワックス状ジャガイモ及びワックス状米などのワックス状デンプン、ソルガム及び高アミローストウモロコシ(高アミロースデンプンを有する、すなわち、少なくとも40重量%、より具体的には少なくとも65重量%のアミロース含有量を有するデンプン)、及びそれらの任意の誘導体又は組み合わせから選択され得る。そのような高アミローストウモロコシデンプンのアミロース含有量は、デンプンに対して少なくとも約70重量%であり得る。デンプン粉も使用することができる。特定の実施形態では、デンプンは、HYLON(登録商標)(登録商標)VIIのような天然のデンプン、トウモロコシデンプンであり得る。(Ingredion,Westchester,IL)。
【0041】
特定の実施形態では、消化耐性炭水化物は、小腸における消化及び吸収に抵抗するか、又は脱出する炭水化物を含み得る。いくつかの実施形態では、消化耐性炭水化物は、消化耐性オリゴ糖(例えば、3~10の重合度を有する炭水化物)、耐性デンプン及び非デンプン多糖類のうちの1つ以上を含み得る。特定の実施形態では、炭水化物は、VERSAFIBE(商標)、食物繊維(Ingredion,Westchester,IL)であり得る。特定の実施形態では、消化耐性炭水化物は、セルロース、ヘミセルロース(アラビノキシランを含む様々なヘテロポリサッカライドからなる)、β-グルカン及びペクチンなどの非デンプン多糖類を含み得る。
【0042】
デンプンを含有する組成物が、インビトロモデル結腸細胞アッセイに誘導して、モデル結腸細胞を誘導して、一定期間にわたって1つ以上のSCFAを作製又は提供することができる。三置換デンプンエステルを含有する組成物は、1つの短鎖脂肪酸のみを含有する非エステル化デンプン又は一置換デンプンエステルを含有する組成物と比較して、モデル結腸細胞を、異なる量の1つ以上のSCFAを生成するように誘導し得る。いくつかの実施形態では、一置換デンプンエステルは、デンプンエステルに含有されるSCFAのうちの1つを含有する。いくつかの実施形態では、一置換デンプンエステルは、デンプンエステルに含有されるSCFAのうちの1つを含有する。いくつかの実施形態では、一置換デンプンエステルは、三置換デンプンエステルと同様の置換度を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、モデル結腸細胞は、モデル結腸細胞によるSCFAの産生を誘導するために、約0.5時間、1時間、3時間、6時間、12時間、18時間、20時間、24時間、又は48時間、デンプンエステルに曝露又はインキュベートされる。
【0044】
いくつかの実施形態では、デンプンエステルを使用して、ユーザの結腸内で増加した量の1つ以上のSCFAを達成し得る。更に他の実施形態は、本明細書に記載のデンプンエステルを含む製剤を説明する。
【0045】
一般に、デンプンエステルは、デンプンエステルの溶媒中の触媒の存在下で、デンプン及び1つ以上のSCFAを反応させることによって作製することができる。いくつかの実施形態では、エステル化触媒は、2つ以上の触媒を含み得る。いくつかの実施形態は、デンプンエステルを生成又は作製する方法に関し、この方法は、a)デンプンを1つ以上の短鎖脂肪酸と混合すること、b)混合物を提供するために、エステル化触媒を添加することと、c)混合物を混合することと、d)任意選択で混合物を加熱することと、を含み、方法がDMSOの非存在下で実施される。
【0046】
いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の短鎖脂肪酸を組み込むことができ、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の異なるSCFAを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を組み込むことができる。
【0047】
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、溶媒として広く入手可能であるが、その医学的使用はFDAによって制限される。DMSOへの有害反応は一般的であるが、通常は少数であり、薬剤溶液中のDMSOの濃度に関連している。更に、個体によって摂取される組成物の場合、DMSOなどの溶媒の使用は、いくつかの消費者によって不利である。溶液中のDMSOを検出する方法は、一般に、当業者に既知である。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の組成物は、0.01%未満のDMSOを含有する。いくつかの実施形態では、組成物は、1%未満、0.1%未満、又は0.01%未満のジメチルスルホキシドを含有するか、それで作製され、又はジメチルスルホキシドを含有しない。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、粒状、結晶構造、又は非顆粒、非晶質構造、又はその両方を有するデンプンエステルを提供することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、本方法は、約0.01~約0.6、又は約0.01~約0.4、又は約0.1~約0.6、又は約0.1~約0.5、又は約0.1~約0.4、又は約0.1~約0.3、又は約0.2~約0.3の置換度を有するデンプンエステルを提供し得る。
【0050】
エステル化剤は、任意の有機無水物を指し得る。有機無水物は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、ヘキサン酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ヘキセニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、及びそれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。
【0051】
エステル化プロセスは、触媒の使用を含み得る。触媒は、エステル化反応を触媒することができる任意の材料を含み得る。触媒は、有機又は無機、酸性、又は塩基性であり得る。酸性触媒には、硫酸、過塩素酸、塩酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、強酸イオン交換樹脂、リン酸、及びそれらの混合物が含まれ得るが、これらに限定されない。塩基性触媒は、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ピリジン、及びそれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。一実施形態では、硫酸が使用される。触媒の量は、エステル化反応を触媒するのに十分であるべきである。
【0052】
いくつかの実施形態では、方法は、硫酸、過塩素酸、塩酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、強酸イオン交換樹脂、リン酸、及びそれらの混合物などのエステル化触媒を使用できる。いくつかの実施形態では、方法は、約0.1~約1.0モル%、約0.1~約0.8モル%、約0.1~約0.6モル%、約0.1~約0.5モル%、約0.2~約1.0モル%、約0.2~約0.8モル%、又は約0.25~約0.5モル%のエステル化触媒を使用し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、方法は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される1つ以上のSCFAを必要とし得る。いくつかの実施形態では、3つ以上のSCFAは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される。いくつかの実施形態では、3つ以上のSCFAは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む。いくつかの実施形態では、3つ以上のSCFAは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる。
【0054】
更に他の実施形態は、本明細書に記載の1つ以上の方法によって得られ得るか、又はそれによって得られるデンプンエステルを記載する。いくつかの実施形態では、製剤は、例えば、栄養製剤、医薬製剤、及び治療用途又は医療用途のための製剤を含み得る。
【0055】
本明細書に記載の方法によって提供されるデンプンエステルは、対象の結腸へのSCFAの送達を提供することができる。SCFAは、当業者に知られている任意の数の手段による治療を必要とする個体に提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、SCFAは、本明細書に記載されるように、経口投与、局所投与、又は全身投与のための医薬製剤で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、医薬製剤は、大腸、より具体的には、個体の結腸へのSCFAの送達に適合される。いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載のデンプンエステルを含有する組成物を含み得る。
【0056】
あるいは、デンプンエステルは、個体にSCFAを提供するために個体の食事に添加され、それによって、胃腸管の所望の領域における食物剤の消化時に消化管の細胞と接触するためにSCFAが提供される。いくつかの実施形態では、食事剤は、本明細書に記載されるように、結腸におけるSCFAの放出を提供する。あるいは、SCFAは、個体の食事に対する補助剤として個体に提供され得、それによって、胃腸管の所望の領域における栄養補助食品の消化時に消化管の細胞と接触するためにSCFAが提供される。いくつかの実施形態では、栄養補助食品は、本明細書に記載されるように、結腸におけるSCFAの放出を提供する。
【0057】
特定の実施形態では、組成物は、同じDSを有するが、酢酸などの単一のSFCAのみを含有するようにエステル化された、同じ濃度のデンプンエステルによって誘導される酢酸の量と比較した場合、インビトロモデル結腸アッセイで6時間のインキュベーション後に、より多くの酢酸を誘導する。特定の実施形態では、組成物は、インビトロモデル結腸アッセイで6時間のインキュベーション後に、同様のDSを有するが、プロピオン酸などの単一のSFCAでのみエステル化されたデンプンエステルの同じ濃度と比較した場合、大量のプロピオン酸を誘導する。特定の実施形態では、組成物は、インビトロモデル結腸アッセイで6時間のインキュベーション後に、同様のDSを有するが、酪酸などの単一のSFCAでのみエステル化されたデンプンエステルの同じ濃度と比較した場合、大量のプロピオン酸を誘導する。特定の実施形態では、組成物は、インビトロモデル結腸アッセイで20時間のインキュベーション後に、同様のDSを有するが、酢酸、酪酸、又はプロピオン酸などの単一のSFCAでのみエステル化されたデンプンエステルの同じ濃度と比較した場合、大量のプロピオン酸を誘導する。
【0058】
特定の実施形態では、目的は、デンプンエステルを含む組成物の使用であり、ユーザの結腸内の1つ以上の短鎖脂肪酸の濃度の増加を達成する。対象の結腸へのSCFAのそのような増加は、治療として機能し得る。特定の実施形態では、使用は、開示された三置換デンプンを含む医薬又は栄養製剤を配合すること及びそのような製剤を摂取することを包含し得る。いくつかの実施形態では、使用は、開示された三置換デンプンの丸剤又は粉末形態などの対象摂取濃縮物を包含する。
【0059】
いくつかの実施形態では、デンプンエステルは、特定の表面積品質を有し得る。デンプンエステルの1グラムの非エステル化バージョンをゼラチン化するために必要なエネルギーの量と比較して、デンプンエステルを含有する組成物の1グラムをゼラチン化するために異なる量のエネルギーを必要とし得る。一置換デンプンエステルと比較して、三置換デンプンエステルを含有する組成物の1グラムをゼラチン化するために異なる量のエネルギーを必要とし得る。例えば、デンプンエステルを含有する組成物の1グラムをゼラチン化するためには、エステル化されていない対照デンプン分子と比較して、約0.1~約10.0J/g、又は約0.5~約10.0J/g、又は約0.5~約5.0J/g、又は約0.5~約4.0J/g、又は約1.0~約10.0J/g、又は約1.0~約5.0J/g、又は約1.0~約4.0J/g、又は約2.0~約4.0J/g、又は約3.0~約5.0J/gを必要として組成物の1グラムをゼラチン化してもよい。
【0060】
特定の実施形態では、製剤は、本明細書に記載のデンプンエステルを含有し得る。
【0061】
特定の実施形態は、対象において、腸の健康の支持に栄養補助食品を提供するための方法を提供し得、方法は、対象に有効量の組成物を投与することを含む。特定の実施形態では、デンプンエステルを含む組成物は、栄養製剤である。栄養製剤は、栄養的に完全であり得、好適な種類及び量の遊離アミノ酸、脂質、炭水化物、ビタミン、及びミネラルを含む。特定の実施形態において、栄養製剤は、液体、粉末、ゲル、ペースト、固体、錠剤、カプセル、濃縮物、懸濁液、又は即時使用可能な形態の経腸製剤、経口製剤、幼児用製剤、小児対象用製剤、子供用製剤、及び/又は成人用製剤の形態であり得る。特定の実施形態では、栄養製剤は、液体(即時使用可能又は濃縮)又は粉末であり得る。特定の実施形態では、新規デンプンエステルからなる有益な製剤としては、サプリメント、栄養飲料、栄養バー、及び容易に分散された粉末が挙げられる。栄養製剤が液体である場合、栄養製剤の貯蔵寿命は少なくとも18ヶ月である。栄養製剤が粉末である場合、栄養製剤の貯蔵寿命は少なくとも24ヶ月である。
【0062】
特定の実施形態では、デンプンエステルは、標準的な乳児用調合乳、加水分解されたタンパク質の乳児用調整乳、ラクトースを含まない乳児用調合乳、大豆タンパク質の乳児用調整乳、加水分解された大豆タンパク質の乳児用調整乳の1つ以上、又はSCFAを結腸に送達する利点を必要とする任意の栄養製剤に添加され得る。
【0063】
特定の実施形態では、デンプンエステルは、0.5~50%の栄養製剤を構成する。特定の実施形態では、デンプンエステルは、栄養製剤の0.5~30%を構成する。特定の実施形態では、デンプンエステルは、0.5~20%の栄養製剤を構成する。特定の実施形態では、デンプンエステルは、栄養製剤の0.5~10%を構成する。特定の実施形態では、デンプンエステルは、栄養製剤の0.5~5%を構成する。
【0064】
本発明の方法は、任意の疾患の予防及び/又は治療に有用であり、これにより、身体の1つ以上の領域における自己免疫炎症応答の増加がもたらされる。したがって、本発明の方法は、機能不全/無効な制御性T細胞機能、拡大された自己反応性Tエフェクター細胞、及び/又はB細胞機能不全に関連する疾患を治療するのに有用である。本発明に従って予防及び/又は治療することができる疾患には、例えば、1型糖尿病、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患、ケリアック病、自己免疫性肝炎、心筋炎、狼瘡腎炎、原発性胆汁性肝硬変、及び多発性硬化症からなる群から選択される自己免疫疾患を含む、自己免疫疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
特定の実施形態では、物体は、対象における自己免疫又は代謝障害を治療するための方法を含み、この方法は、対象に、デンプンエステルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む。特定の実施形態では、障害は、肥満、糖尿病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、下痢、アテローム性動脈硬化症、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される。
【0066】
本技術は、例示を目的とする以下の態様で更に説明され、特許請求の範囲及びそれらの等価物の全範囲を限定することを意図するものではない。
【0067】
本開示によって企図される主題は、以下の付番した実施形態に記載される。
1.デンプンエステルであって、デンプンと、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される少なくとも3つの短鎖脂肪酸とを含み、
好ましくは、少なくとも3つの短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む、デンプンエステル。
2.デンプンエステルが、約0.01~約0.6、又は約0.01~約0.4、又は約0.1~約0.6、又は約0.1~約0.5、又は約0.1~約0.4、又は約0.1~約0.3、又は約0.2~約0.3の置換度を有し、
好ましくは、置換度は約0.1~約0.6である、実施形態1に記載のデンプンエステル。
3.デンプンエステルが、1%未満、0.1%未満、又は0.01%未満のジメチルスルホキシドを含有し、又はジメチルスルホキシドを含有せず、
好ましくは、デンプンエステルは、0.01%未満のジメチルスルホキシドを含有する、実施形態1又は2に記載のデンプンエステル。
4.デンプンエステルが、結晶性粒状構造を含み、
好ましくは、デンプンエステルが、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含み、
好ましくは、デンプンは、トウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、豆類デンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、エンバクデンプン、米デンプン、ライ麦デンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、ワックス状トウモロコシデンプン、高アミローストウモロコシデンプン、ワックス状ジャガイモデンプン、ワックス状米デンプン、及びソルガムデンプン、並びにそれらの混合物から選択される、任意選択でデンプンは高アミローストウモロコシデンプンを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のデンプンエステル。
5.デンプンエステルが、インビトロモデル結腸アッセイにおいて、対照組成物によって提供される短鎖脂肪酸の第2の量よりも多い第1の量の短鎖脂肪酸を提供し、対照組成物は、一置換又は二置換デンプンエステルを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のデンプンエステル。
6.デンプンエステルが、約0.5時間、1時間、3時間、6時間、12時間、18時間、20時間、24時間、又は48時間のインビトロモデル結腸アッセイでインキュベートされ、
好ましくは、デンプンエステルが、インビトロモデル結腸アッセイで約6時間又は24時間インキュベートし、
好ましくは、一置換デンプンエステル又は二置換デンプンエステルが、デンプンエステルと同様の置換度を有する、実施形態5に記載のデンプンエステル。
7.デンプンエステルは、エステル化されていない対照デンプン分子と比較して、デンプンエステル1グラムをゼラチン化するのに、約0.1~約10.0J/g、又は約0.5~約10.0J/g、又は約0.5~約5.0J/g、又は約0.5~約4.0J/g、又は約1.0~約10.0J/g、又は約1.0~約5.0J/g、又は約1.0~約4.0J/g、又は約2.0~約4.0J/g、又は約3.0~約5.0J/gを必要とし、
好ましくは、デンプンエステルが、約0.5~約5.0J/gを必要とする、実施形態1~6のいずれか1つに記載のデンプンエステル。
8.使用者の結腸内の短鎖脂肪酸の増加量を達成するための、実施形態1~7のいずれか1つに記載のデンプンエステルの使用。
9.デンプンエステルの製造方法であって、方法は、
a)デンプンを1つ以上の短鎖脂肪酸と混合することと、
b)エステル化触媒を添加して混合物を提供することと、
c)混合物を混合することと、
d)任意選択で、混合物を加熱することと、を含み、
方法が、DMSOの非存在下で実施される、方法。
10.1つ以上の脂肪酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択され、
好ましくは、1つ以上の短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む、実施形態9に記載の方法。
11.方法が、無水条件下で実行される、実施形態9~10のいずれか1つに記載の方法。
12.デンプンエステルが、約0.05~約0.5、約0.1~約0.4、約0.1~約0.3、又は約0.2~約0.3の置換度を有し、
好ましくは、置換度が約0.1~約0.6であり、
好ましくは、デンプンエステルが結晶性粒状構造にある、実施形態9~11のいずれか1つに記載の方法。
13.
エステル化触媒が、硫酸、過塩素酸、塩酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、強酸イオン交換樹脂、リン酸、及びそれらの混合物から選択され、好ましくは、エステル化触媒が、硫酸であり、
エステル化触媒は、約0.1~約1.0モル%、約0.1~約0.8モル%、約0.1~約0.6モル%、約0.1~約0.5モル%、約0.2~約1.0モル%、約0.2~約0.8モル%、又は約0.25~約0.5モル%で使用され、好ましくは、エステル化触媒は、約0.1~約0.5モル%で使用される、実施形態9~12のいずれか1つに記載の方法。
14.デンプンエステルが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸から選択される少なくとも3つの短鎖脂肪酸を含み、
好ましくは、少なくとも3つの短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む、実施形態9~13のいずれか1つに記載の方法。
15.実施形態9~14のいずれか1つに記載の方法によって得られるデンプンエステル。
16.実施形態1~7及び実施形態15のいずれか1つに記載のデンプンエステルを含む組成物であって、好ましくは、組成物が、栄養製剤又は医薬製剤を含む、組成物。
17.対象において、腸の健康の支持に栄養補助食品を提供するための方法であって、実施形態1~7及び実施形態15のいずれか1つに記載のデンプンエステルの有効量を対象に投与することを含む、方法。
18.対象における自己免疫又は代謝障害を治療するための方法であって、実施形態1~7及び実施形態15のいずれか1つに記載のデンプンエステルの有効量を対象に投与することを含み、
【0068】
好ましくは、障害は、肥満、糖尿病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、下痢、アテローム性動脈硬化症、クローン病、及び潰瘍性大腸炎から選択される、方法。
【0069】
実施例
この技術は、例示を目的とする以下の実施例によって更に説明され、特許請求の範囲又はそれらの等価物の全範囲を限定することを意図するものではない。
【0070】
実施例1:無水条件下での酢酸デンプンの調製。
磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコで、61mLの氷酢酸を添加した。フラスコの底部を、撹拌プレートの上部に水を充填した皿に浸した。次に、50gの無水トウモロコシデンプン(HYLON(登録商標)VII、トウモロコシデンプン、Ingredion Inc.)を、光撹拌下で添加し、10~15分間混合した。
【0071】
10mlの氷酢酸を量の硫酸(0.1~0.5mol%)でゆっくりと混合することによって、触媒を調製した。次いで、その混合物を氷酢酸及びデンプンを含有する丸底フラスコにゆっくりと添加して、0.1~0.5モル%の最終硫酸濃度を達成した。温度が安定したら、フラスコを油浴に移し、85℃に加熱した。混合物を80℃で2~8時間反応させた。次いで、生成物を500mLの水にゆっくりと移し、撹拌プレートで混合した。追加の400mLの水を使用して、残留生成物を収集及び定量的に移送した。
【0072】
生成物を脱水するために、混合物をフィルタを含むBuchner漏斗を通して注いだ。生成物デンプンケーキを、400mLの水を使用して、又は5~6のpHが達成されるまで3回洗浄した。ケーキを粉砕し、フード内で一晩乾燥させた。
【0073】
実施例2:無水条件下での一置換デンプンの調製。
0.81:1の酢酸:デンプンのモル比を達成するために、所望の量の無水デンプンを測定した。オーバーヘッド撹拌モーター及びテフロンパドルを備えた400mLのグリフィンビーカーに移す。次に、メスシリンダー及びエッペンドルフピペットを使用して、適切な量の酢酸及び硫酸触媒を、25mLの添加漏斗(24/40の接合部及び微調整用のストップコック)に添加した。次いで、デンプンを軽く撹拌しながら、酢酸及び硫酸混合物を、10分(約1mL/分)でグリフィンビーカーにゆっくり滴下した。温度を滴下ステップ中に監視して、安定した温度が維持されたことを確実にした。次に、デンプン及び酸混合物を、4~5マーブルで32オンスのNalgeneタンブラージャグに移した(回転しながら追加の機械的/剪断を作り出した)。タンブラージャグをPOタンブラーに入れ、反応温度に設定し、所望の時間反応させた。反応の終了時に、生成物を撹拌プレート上で1000部の水混合にゆっくりと移した。完全な製品移送を確実にするために、追加の800部の水を使用した。Buchner漏斗及びフラスコを使用して、デンプンを脱水した。次いで、デンプンケーキを、800部の水を使用して、フィルタで三(3)回洗浄した。ケーキのpHを試験し、中性(例えば、pH5~6)ではない場合、中性pHが達成されるまで洗浄を続けた。生成物ケーキを粉砕し、フード内で一晩乾燥させた。
【0074】
実施例3:水性条件下での単置換デンプン又は多置換デンプンの調製。
無水デンプンを170部の水を含有する容器にゆっくりと添加し、デンプン中の水分含有量を調整した。添加を撹拌しながら行った。pHを、3%NaOH溶液で8.0~8.5に調整した。次に、3~4滴の30%過酸化水素を添加した。次いで、スラリーを、75~80°Fに維持された水浴中でクランプした5ネック/5L反応フラスコにポンプで送った。酸無水物試薬(単一のSCFA又は添加されることが意図された複数のSCFAのための複数の酸無水物であり得る)をスラリーに添加した。例えば、酢酸がデンプンに結合される場合は無水酢酸を添加するが、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸が、撹拌下で、3%NaOH溶液でpH8.0~8.5を維持しながら1.2mL/分の速度で、デンプンに結合される場合、無水酢酸、無水プロピオン酸、及び無水酪酸が使用される。試薬を完全に添加した後、反応pHを更に1時間維持した。次いで、Buchner漏斗及びフラスコを使用してデンプンを脱水した。次いで、ケーキを170部の水で再スラリー化し、3NHCL溶液でpH5.5に調整した。材料をBuchner漏斗及びフラスコを使用して濾過した。デンプンケーキを、3×100部の水で洗浄した(フィルタ上で)。デンプンケーキを粉砕し、フード内で一晩乾燥させた。
【0075】
実施例4:三置換デンプンの物理的特性の特性評価。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、HNMRクロマトグラフィー及び置換度(DS)滴定を実施して、水性又は無水の方法によって作製された三置換デンプンの構造を特徴付けた。
【0076】
GPCは、以下のパラメータを有する屈折率検出器を備えたAllianceGPCV2000機器で行った。カラムセット=表現型ゲル10μm、100Å、103Å、105Å、注入量=102μLの1回の注射、試料あたり2回の複製、移動相=DMSO+0.03MのNaNO、ラン時間=50分;流量=1mL/分;カラム温度=80℃;検出器温度=80℃;試料オートローダー温度=80℃:標準=Pullulan(180Da~642kDa)、試料濃度=10mLの移動相中の20mg、試料及び標準調製物=試料を室温で移動相でヘッドスペースバイアル中に一晩(15時間)回転し、沸騰水で1時間加熱し、周囲温度まで冷却させた。次いで、試料を2μmのGMFシリンジフィルタで4mLのLCバイアルに濾過した。
【0077】
天然HYLON(登録商標)VIIのGPC、トウモロコシデンプンは、3つの異なる集団を示し、15分の保持時間及び5.6MDaの分子量で最も高い分子量集団を有する(図1を参照)。水性プロセス(実験試料1を使用して実施例3で引用されたプロトコルを使用して調製した)で調製したHYLON(登録商標)VIIデンプン酢酸もまた、名目上同じ保持時間及び分子量値で3つの異なる集団を示した(図2を参照)。天然のHYLON(登録商標)VIIがデンプン酢酸よりも高い分子量密度の集団を有していた最大分子量集団のピークパーセント(それぞれ14%及び6%)で差が観察された。同等の置換度を有する無水プロセスによって調製されるが、試料を調製するために使用される硫酸触媒の量が異なる2つのHYLON(登録商標)VII酢酸のプロトタイプがあった。より多量の触媒を用いて調製された試料(実験試料2、0.5mol%のH2SO4触媒を使用した変性を用いて実施例1からのプロトコルを使用して調製した。80℃、2時間)は、より低い分子量集団への明確なシフトを有する2つの異なる集団(より長い保持時間へのシフトによって決定される)を示した(図3を参照)。最大記録された平均分子量は114,000Daであった。より低い量の触媒及びより長い反応時間を用いて調製された試料(0.25mol%の触媒を使用した変性、80℃で4時間のインキュベーションを含む実施例1からのプロトコルを使用して調製された、実験試料3)は、4つの別個の分子量集団を示した(図4参照)。保持時間は、天然デンプンと比較して、より長い時間にわずかにシフトされる。しかしながら、より高い触媒濃度を有する試料と比較して、最大の記録された平均分子量は730、000Daであり、これは、より少量の触媒が、処理されたデンプンの分子量プロファイルの最小限の劣化で驚くほど好ましいエステル化を示す。
【0078】
核磁気共鳴(NMR)分光法は、Bruker500MHz機器で行った。図5A~5Bに示されるHNMRスペクトログラムは、一置換デンプンエステルの乾燥ブレンドのNMR処理から得られた結果(図5A、乾燥ブレンドは、酢酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VII、プロピオン酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIの混合物であり、混合されたデンプン酢酸、プロピオン酸デンプンと酪酸デンプンとの組み合わせを提供)を、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸部分を含有する単一の三変性デンプン(図5B)と比較する。
【0079】
ここで、置換度を滴定法で決定した。1グラムのデンプンを600mLの低形態ビーカーに移し、200mLの脱イオン水を添加した。溶液を、最初の3分間連続撹拌しながら、沸騰水浴中で30分間調理した。次に、溶液を少なくとも60℃に冷却し、3~4滴のフェノールフタレインを添加した。混合物を0.1NNaOHで滴定して、ピンク色のエンドポイントを達成した。次いで、75mLの0.1NNaOHを添加し、溶液をパラフィルムで覆い、インキュベーターに移し、60℃で24時間インキュベートし、次に、エンドポイントが達成されるまで、溶液を0.1NのHClで滴定した。このデータを記録した。1~2mLの0.1NHClを過剰に添加した。溶液をパラフィルムで覆い、60℃でインキュベーターに戻して1時間インキュベートした。次いで、溶液を0.1NNaOHで逆滴定してピンク色のエンドポイントを達成した。このデータを記録した。計算は、以下の手順に従って行った。
【0080】
【数1】
エステル(正味)%=総エステル含有量-ブランクエステル含有量。
【0081】
総エステル化度及び正味エステル化度は、DSを決定するために使用された。
【0082】
実施例5:SCFAでエステル化されたデンプンに対するDMSOの効果。
三置換HYLON(登録商標)VII、トウモロコシデンプン(水性プロセスによって調製)及び天然HYLON(登録商標)VIIデンプン(三置換デンプンを作製するために使用されるデンプン塩基)を、2019年6月6日に公開された米国特許公開第2019/0167615号に記載されているプロトコルに従ってDMSOで処理した。天然HYLON(登録商標)VII及び三置換HYLON(登録商標)VIIのマイクログラフを、デンプンをDMSOで処理した前後に採取した。各生成物の1%分散液を脱イオン水中で調製した。次に、20μLの分散液をマイクロガラスカバースリップで顕微鏡スライドに適用した。偏光子フィルタを備えた光学顕微鏡を使用して、試料を評価した。粒状形態で存在するデンプンは、Thomas及びAtwell,pp.14~15(1999)によって記載されているように、偏光で見たときに見たときに複屈折及びマルターズ交差回折パターンを示すことが知られている。同様に、その非粒状形態のデンプンは、その天然の粒状構造が破壊又は除去された任意のデンプン又はデンプン誘導体を指す。
【0083】
顕微鏡写真は、米国特許公開第2019/0167615号に記載されている条件を使用して、DMSO中のデンプンを加熱することを示している(図6を参照されたい)。マルトスクロス効果の損失も観察された(図示せず)。これらの結果は、これらのデンプン顆粒における結晶化度及び完全性の喪失を示す。
【0084】
デンプン生成物の物理的構造に対するDMSO処理のインビトロ効果は、DMSO処理がデンプンの機能性能を低下又は課題とすることを示唆している。DMSO及び未変性トウモロコシデンプンの存在下でアセチル化された高アミローストウモロコシデンプンアセチル化の組み合わせを供給したラット(LAHAMS+MS)を、DMSO及び未変性トウモロコシデンプンの非存在下でアセチル化された高アミローストウモロコシデンプンを供給したラット(IAHAMS+MS)と比較した。LAHAMS+MS群は、DMSO処理デンプンを与えられたラット(IAHAMS+MS)よりも低い体重(それぞれ180グラム対201グラム)及びより低い湿潤重量(それぞれ2.80グラム対3.72グラム)のCaecal内容物の両方を有した(Birdetal.,食品ヒドロコロイド、2006、20:1135-40を参照)。理論に束縛されるものではないが、これらの結果は、デンプン生成物からの結晶化度のDMSO誘導損失によるものであり得る。
【0085】
実施例6:粒状完全性の示差走査熱量測定(DSC)試験。
天然デンプン塩基の粒状完全性に対する無水プロセスの効果を特徴付けるために、本発明の水性プロセスを使用して調製された天然HYLON(登録商標)VII、HYLON(登録商標)VII酢酸、及び本発明の無水プロセスを使用して調製されたHYLON(登録商標)VII酢酸に対して、示差走査熱量測定を行った。結果は、表1に報告される。開始温度は、ゼラチン化が始まる温度である。デンプンゼラチン化のエンタルピーは、1グラムのデンプンを糊化するか、又は加熱するのに必要なエネルギーの量として説明することができる。最高温度は、ゼラチン化プロセス中の最高温度読み取り値である。
【0086】
全ての変性された試料の糊化開始及び最大温度は、天然のHYLON(登録商標)VIIよりも低い。理論に束縛されるものではないが、これは、短鎖脂肪酸の導入から引き起こされる水素結合の弱化、したがって、糊化温度を低下させるために起こり得る。データは、変性型と比較した天然HYLON(登録商標)VIIのエンタルピー間の差を示す。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例7:インビトロモデル結腸モデル内の短鎖脂肪酸放出の特徴評価。
結腸への個々のSCFAの送達に対する三置換デンプンの有益な効果を評価するために、結腸微生物又は細胞を単回又は三置換デンプンエステルと共にインキュベートしたときに、異なる時点で生成された個々のSCFAの量を測定するために、インビトロモデル結腸研究を実施した。デンプンエステルは、実施例3に記載の水性方法を使用して作製した。
【0089】
20~65歳の成人のヒト糞便試料(n=6)のプールを、モデル結腸微生物発酵のための接種材料として使用した。糞便接種物は、0.1%の凍結したプールされた糞便物質をモデル結腸腸様培地と混合することによって生成された。モデル結腸発酵に使用される腸様培地は、以前に公開された結腸様培地(Macfarlane et al.、MicrobialEcology、1998、35:180-187)から適合し、及び実験用デンプン、4.0g/Lのムチン(豚胃III型)、3.0g/Lのカゼイン、5.0g/Lのペプトン水、0.5g/Lのトリプトン、0.4g/Lでの胆汁塩番号3、4.5g/Lの酵母抽出物、0.005g/LのFeSO・7HO、4.5g/LのNaCl、4.5g/LのKCl、0.5g/LのKHPO、1.25g/LのMgSO・7H、0.15g/LのCaCl・6HO、1.5g/LのNaHCO、0.8g/Lのシステイン、0.05g/Lのヘムイン、1.0g/LのTween80が蒸留水に含まれる。
【0090】
三置換デンプンなどのデンプン製品を、10mM(低)、20mM(中)、又は40mM(高)のストック濃度から適用し、100μlのデンプン溶液を、糞便試料を含有する腸培地900μlに添加した。アッセイは、二連で行った。インキュベーションを20時間行い、デンプン繊維を6時間の発酵後に再懸濁した。試料を6時間及び20時間で採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を使用して溶液有機酸濃度に置いて、アッセイ中に存在する異なるSCFAのレベル又は量を測定した。6時間の時点は、消化器システム内の短い通過時間を表す(例えば、下痢に罹患している患者の場合)。20時間の時間は、消化器システム内のより長い通過時間を表す。結果を図7図10に示す。
【0091】
図7~10、各列は、様々な実験条件下で生成された個々のSCFAの平均レベル又は平均レベルを示す。図7~9、各列は、デンプン含有量に対して調整された、実験試料を生成したSCFAの量を示す黒いバーを伴う。図7~9は、モデル結腸アッセイにおける一置換デンプンエステル、三置換デンプンエステル、及びアセチル化デンプン、ブチル化デンプン及びプロオピオン化デンプンの混合物の効果を、表2に列挙した様々なデンプンエステルと比較する。HAMSAは、アセチル化された高アミローストウモロコシデンプンである。HAMSBは、ブチル化された高アミローストウモロコシデンプンである。HAMSPは、プロピオン化された高アミローストウモロコシデンプンである。HAMSABPは、アセチル化、ブチル化、及びプロピオン化された高アミローストウモロコシデンプンである。
【0092】
【表2】
【0093】
図7は、微生物が低濃度、中濃度、及び高濃度のアセチル化デンプン、三置換デンプン、又は一置換デンプンエステルの混合物の存在下でインキュベートされたときに、モデル結腸微生物で生成した酢酸の量に対する様々な治療の効果を示す。図7Aに示すように、6時間のインキュベーション後、アセチル化デンプンの存在下で培養された結腸微生物(酢酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIから作製されたHAMSA6)は、デンプンエステルに結合した酢酸の量(添付のバーを参照)よりわずかに大きい酢酸レベル(カラムを参照)を生成した。比較すると、三置換デンプン(酢酸、プロピオン酸、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIから作製されたHAMSABP6)の存在は、三置換デンプンエステルに結合した酢酸の量(添付のバー)よりも大きい酢酸レベル(カラム)を誘導した。一置換デンプンエステル(乾燥ブレンド6)の乾燥ブレンドは、アセチル化デンプン(HAMSA6)中に存在するものと同様又はそれよりも少ない酢酸のレベルをもたらした。
【0094】
図7Bに示すように、20時間のインキュベーション後、3つの化合物全てが、処理化合物中に存在する酢酸の量を超えた酢酸の量を誘発した。しかしながら、三置換デンプンエステル(HAMSABP20)は、他の化合物(HAMSA20及び乾燥ブレンド20)よりも多量の酢酸を誘発する。まとめると、図7A~7Bは、三置換デンプンエステルでの処理は、三置換デンプンエステル自体によって提供される酢酸の量よりも多くの酢酸のレベルを誘導したことを示す。測定された酢酸の一部は、モデル結腸アッセイに添加されるデンプンエステルの分解生成物として生成され得るが、これらの結果は、アッセイにおいて、酢酸レベルの少なくとも一部が、微生物によって生成されたアッセイの結果であることを示唆している。理論に束縛されるものではないが、酢酸の量の増加は、モデル結腸微生物における酢酸生成を誘導する三置換デンプンエステルによるものであり得る。
【0095】
表3は、様々な時点でのモデル結腸アッセイにおける酢酸の分布を示し、酢酸は、デンプンエステルに結合したままであり得るか、又は糞便接種物が、酢酸、三置換デンプン、又は一置換デンプンエステルのブレンド(酢酸デンプン、プロピオン酸デンプン、及び酪酸デンプン)でのみ変性されたデンプンに曝露された後、デンプンエステルから腸様培地に放出され得る。結合した酢酸を計算するために、HNMR分析を最初に使用して、デンプン塩基及び酢酸の個々の質量%を決定した。次に、GC-FIIDを使用して、放出された酢酸を定量化した。差は、放出量から結合量を差し引くことによって計算された。
【0096】
【表3】
【0097】
図8A~8Bは、微生物が低濃度、中濃度、及び高濃度のブチル化デンプン、三置換デンプン、又は一置換デンプンエステルの混合物の存在下でインキュベートされるときに、結腸微生物によって生成される酪酸の量に対する様々な治療の効果を示す。図8Aに示すように、6時間のインキュベーション後、ブチル化デンプン(酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIから作製されたHAMBA6)又は一置換デンプンエステル(乾燥ブレンド6)の混合物中でインキュベートされた結腸微生物は、デンプンエステルに結合した酪酸のレベルを超える中程度の量の酪酸を生成した(添付のバーを参照)。添加されたデンプンエステルの最高濃度で、モデル結腸微生物は、酪酸の正味の喪失を示した。比較すると、低、中、及び高レベルの三置換デンプン(酢酸、プロピオン酸、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIから作製されたHAMSABP6)の存在は、三置換デンプンエステルに結合した酪酸のレベル(添付のバー)よりもはるかに大きい酪酸レベル(カラム)を誘導した。図8に示すように、20時間のインキュベーション後、
表4は、様々な時点でのモデル結腸アッセイにおける酢酸の分布を示し、酪酸は、デンプンエステルに結合したままであり得るか、又は糞便接種物が、酪酸、三置換デンプン、又は一置換デンプンエステルのブレンド(酢酸デンプン、プロピオン酸デンプン、及び酪酸デンプン)でのみ変性されたデンプンに曝露された後、デンプンエステルから腸様培地に放出することができる。結合した酪酸を計算するために、HNMR分析を最初に使用して、デンプン塩基及び酪酸の個々の質量%を決定した。次に、GC-FIIDを使用して、放出された酪酸を定量化した。差は、放出量から結合量を差し引くことによって計算された。
【0098】
【表4】
放出値は、対照(未変性のHylonVII)及び実験的な変性された試料(単置換及び三置換HylonVII)によって生成された酪酸間の差に基づいて計算される。負の値は、対照試料がより多くの酪酸を生成したことを示す。
【0099】
図9A~9Bは、微生物が低濃度、中濃度、及び高濃度のプロピオン化デンプン、三置換デンプン、又は一置換デンプンエステルの混合物の存在下でインキュベートされたときの、モデル結腸微生物で生成したプロピオン酸の量に対する様々な治療の効果を示す。図9Aに示すように、6時間のインキュベーション後、プロピオン化デンプン(プロピオン酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIから作製されたHAMBP6)又は一置換デンプンエステル(乾燥ブレンド6)の混合物中でインキュベートされた結腸微生物は、プロピオン酸塩レベルの限界増加を示す乾燥ブレンドの最低レベルを除いて、デンプンエステルに結合したプロピオン酸塩のレベルを超えるプロピオン酸塩の正味の減少を示した(添付のバーを参照)。比較すると、低、中、及び高レベルの三置換デンプン(酢酸、プロピオン酸、酪酸でエステル化されたHYLON(登録商標)VIIから作製されたHAMSABP6)の存在は、三置換デンプンエステルに結合したプロピオン酸のレベル(添付のバー)よりもはるかに大きいプロピオン酸塩レベル(カラム)を誘導した。図9Bに示すように、三置換デンプンの効果は、20時間のインキュベーション後の他の比較器の効果と比較して、顕著ではなかった。
【0100】
測定されたプロピオン酸のいくつかは、モデル結腸アッセイに添加されたデンプンエステルの分解生成物として生成され得、これらの結果は、プロピオン酸レベルの少なくとも一部が、アッセイにおける微生物によるプロピオン酸生成の結果であることを示唆している。理論に束縛されるものではないが、これらの結果は、三置換デンプンエステルがモデル結腸微生物においてプロピオン酸生成を誘導することによるものであり得る。
【0101】
インビトロモデル結腸アッセイでSCFA放出に対するデンプンエステル化手順の効果を調べるために、水性方法又は無水プロセスのいずれかによって調製された酢酸置換デンプン分子を、インビトロモデル結腸アッセイに適用した。結果を図10に示す。6時間で、無水プロセスから生成されたデンプン酢酸は、水性プロセスから生成されたデンプン酢酸よりも高い量で酢酸をもたらした。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
【国際調査報告】