(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】高分解能ソルダリング
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20230703BHJP
B23K 1/005 20060101ALI20230703BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H05K3/34 505A
B23K1/005 A
B23K1/00 330E
H05K3/34 501D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572608
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 IB2021051530
(87)【国際公開番号】W WO2021245467
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501005438
【氏名又は名称】オルボテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コトラー ズヴィ
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル オファー
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AC02
5E319AC04
5E319AC11
5E319BB01
5E319CC46
5E319CD26
5E319GG20
(57)【要約】
アクセプタ基板上のターゲット位置に形成するための、特定のはんだ材料を含み、特定のバンプ体積を有するはんだバンプを定義することを含む回路製造方法に関する。指定のはんだ材料を含むドナーフィルムを有する透明なドナー基板は、ドナーフィルムがアクセプタ基板上のターゲット位置に近接するように配置される。レーザ放射のパルスのシーケンスは、ドナー基板の第1の表面を通過してドナーフィルムに到達するように方向付けられ、それにより、ドナーフィルムからアクセプタ基板上のターゲット位置に、ターゲット位置に堆積された液滴が指定のバンプ体積に累積的に達するように、はんだ材料の一定の数の溶融液滴の射出が誘発される。ターゲット位置は、堆積された液滴が溶融して再溶融してはんだバンプを形成するように加熱される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路製造方法であって、
特定のはんだ材料を含み、特定のバンプ体積を有するはんだバンプを、アクセプタ基板上のターゲット位置に形成されるように定義することと、
対向する第1の表面および第2の表面と、第2の表面上の特定のはんだ材料を含むドナーフィルムと、を有する透明なドナー基板を、ドナーフィルムがアクセプタ基板上のターゲット位置に近接するように配置することと、
レーザ放射のパルスのシーケンスを、ドナー基板の第1の表面を通過し、ドナーフィルムに衝突するように方向付けて、ドナーフィルムからアクセプタ基板上のターゲット位置に、はんだ材料のいくつかの溶融液滴の放出を誘導し、ターゲット位置に堆積した液滴が指定されたバンプ体積に累積的に到達するようにすることと、
堆積された液滴が溶融し、リフローしてはんだバンプを形成するように、ターゲット位置を加熱することと、
を含む、
回路製造方法。
【請求項2】
液滴は、レーザ放射のパルスの強度に依存するそれぞれの液滴体積を有し、パルスのシーケンスを方向付けることは、指定されたバンプ体積に応じて、レーザ放射のパルスの強度およびシーケンス内のパルスの数を設定することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液滴体積は、レーザ放射のパルスのスポットサイズおよび持続時間からなるパルスパラメータのセットにさらに依存し、パルスのシーケンスを方向付けることは、パルスパラメータのうちの1つ以上を変化させることによって液滴体積を調整することをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
はんだバンプを定義することは、同一のアクセプタ基板上の異なるそれぞれの第1および第2のターゲット位置に、異なるそれぞれの第1および第2のバンプ体積を有する第1および第2のはんだバンプを定義することを含み、パルスのシーケンスを方向付けることは、液滴がそれぞれの第1および第2のターゲット位置において異なる第1および第2のバンプ体積の各々に累積的に到達するように、ドナー基板上の異なる点を通過する異なるパルスの第1および第2のシーケンスに方向づけすることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1および第2のはんだバンプを定義することは、第1および第2のはんだバンプの異なるそれぞれの第1および第2の組成を指定することを含み、透明なドナー基板を配置することは、第1および第2の組成物を生成するように選択された複数の異なるはんだ材料を含むドナーフィルムを提供することを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
はんだバンプを定義することは、異なるそれぞれの第1および第2の組成を有する第1および第2のはんだバンプを定義することを含み、透明なドナー基板を位置決めすることは、第1および第2の組成を生成するように複数の異なるはんだ材料を含む1つまたは複数のドナーフィルムを提供することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
はんだバンプを定義することは、異なる第1および第2の材料を含むはんだバンプの組成を特定することを含み、透明なドナー基板を配置することは、第1および第2の材料をそれぞれ含む第1および第2のドナーフィルムを提供することを含み、パルスのシーケンスを方向付けることは、第1および第2のドナーフィルムにそれぞれ衝突するようにパルスの第1および第2のシーケンスを方向付け、ターゲット位置に堆積された液滴が累積的に特定の組成に到達する、ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
組成を特定することは、はんだバンプの組成における材料の勾配を特定することを含み、パルスの第1のシーケンスおよび第2のシーケンスを方向付けることは、特定された勾配に従って、ターゲット位置上の複数の層に第1の材料および第2の材料の液滴を堆積させることを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
パルスのシーケンスを方向付けることは、指定されたバンプ体積に到達するように、ターゲット位置上の複数の層に液滴を堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ターゲット位置を加熱することは、液滴の層を堆積させることと、液滴を溶融させるために層を加熱することを、指定されたバンプ体積に達するまで交互に複数回を行うことを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
はんだバンプを定義することは、はんだバンプの形状を指定することを含み、パルスのシーケンスを方向付けることは、特定の形状に適合するパターンで溶融液滴を堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ターゲット位置を加熱することは、堆積された液滴を溶融させ、リフローさせるのに充分なエネルギーでターゲット位置を照射するようにレーザを方向付けることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
レーザ誘起順方向転写(LIFT)のプロセスを使用して、アクセプタ基板上のターゲット位置に導電性パッドを印刷し、パルスのシーケンスを方向付けることは、はんだ材料の溶融液滴を印刷された導電性パッド上に堆積させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
導電性パッドを印刷することは、導電性パッド内に溶融液滴を堆積させるための凹部を形成することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
回路製造のためのシステムであって、
指定されたはんだ材料を含み、指定されたバンプ体積を有して、アクセプタ基板上のターゲット位置に形成される、はんだバンプの定義を受け取るように構成されたコントローラと、
印刷ステーションであって、
透明なドナー基板であって、対向する第1の表面および第2の表面を有するとともに、第2の表面に配置された特定のはんだ材料を含むドナーフィルムを有し、ドナーフィルムがアクセプタ基板上のターゲット位置に近接するように配置される、透明なドナー基板と、
レーザ放射のパルスのシーケンスを、ドナー基板の第1の表面を通過し、ドナーフィルムに衝突するように方向付け、はんだ材料の溶融液滴をドナーフィルムからアクセプタ基板上のターゲット位置に向けて射出させるように構成されたレーザと、
を含む、印刷ステーションと、
堆積された液滴が溶融し、リフローしてはんだバンプを形成するように、ターゲット位置を加熱するように構成されている、リフローステーションと、
を含み、
コントローラは、ターゲット位置に堆積された液滴が累積的に指定されたバンプ体積に到達するように、ターゲット位置に向かって液滴を射出するように印刷ステーションを駆動するように構成される、
回路製造のためのシステム。
【請求項16】
液滴は、レーザ放射のパルスの強度と、レーザ放射のパルスのスポットサイズおよび持続時間からなるパルスパラメータのセットとに依存するそれぞれの液滴体積を有し、コントローラは、指定されたバンプ体積に応じて、レーザ放射のパルスの強度およびシーケンス内のパルスの数を設定するように構成され、コントローラは、パルスパラメータのうちの1つ以上を変化させることによって、液滴体積を調整するように構成される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
コントローラは、同一のアクセプタ基板上の異なるそれぞれの第1および第2のターゲット位置において、異なるそれぞれの第1および第2のバンプ体積を有する第1および第2のはんだバンプの定義を受け取るように構成され、
コントローラは、レーザを駆動して異なる方向に向け、パルスの第1および第2のシーケンスは、液滴がそれぞれの第1および第2のターゲット位置において異なる第1および第2のバンプ体積の各々に累積的に到達するように、ドナー基板上の異なる点を通過するように構成され、
第1および第2のはんだバンプの定義は、第1および第2のはんだバンプの異なるそれぞれの第1および第2の組成を特定し、複数の異なるはんだ材料を含む1つ以上のドナーフィルムが、ドナー基板の第2の表面上に配置され、はんだ材料は、第1および第2の組成物を生成するように選択される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
コントローラは、異なるそれぞれの第1および第2の組成を有する第1および第2のはんだバンプの定義を受け取るように構成され、複数の異なるはんだ材料を含む1つ以上のドナーフィルムが、ドナー基板の第2の表面上に配置され、はんだ材料は、第1および第2の組成物を生成するように選択される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
定義は、異なる第1および第2の材料を含むはんだバンプの組成を特定し、
透明なドナー基板は、それぞれ第1および第2の材料を含む第1および第2のドナーフィルムを含み、
コントローラは、印刷ステーションを駆動して、パルスの第1および第2のシーケンスをそれぞれ第1および第2のドナーフィルムに衝突させるように誘導し、それにより、ターゲット位置に堆積された液滴が累積的に指定された組成に到達するように構成され、
定義は、はんだバンプの組成における材料の勾配を特定し、コントローラは、印刷ステーションを駆動して、第1および第2の材料の液滴を、指定された勾配に従ってターゲット位置上に複数の層で堆積させるように構成される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
コントローラは、印刷ステーションを駆動して、指定されたバンプ体積に到達するようにターゲット位置上に複数の層で液滴を堆積させるように構成される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
コントローラは、印刷ステーションおよびリフローステーションを駆動して、液滴の層を堆積させることと、液滴を溶融させるために層を加熱することを、指定されたバンプ体積に達するまで交互に複数回を行うように構成される、
請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
定義は、はんだバンプの形状を規定し、コントローラは、指定された形状に適合するパターンで溶融液滴を堆積させるようにパルスのシーケンスを方向付けるように印刷ステーションを駆動するように構成される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記印刷ステーションは、レーザ誘起順方向転写(LIFT)のプロセスを使用して前記アクセプタ基板上の前記ターゲット位置に導電性パッドを印刷し、印刷された導電性パッド上に前記はんだ材料の溶融液滴を堆積させるように構成される、
請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
印刷ステーションは、溶融液滴を堆積させるための凹部を有する導電性パッドを印刷するように構成される、
請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
回路製造方法であって、
回路基板上の1つ以上のターゲット位置にはんだ材料を堆積させることと、
レーザビームの1つ以上のパルスを、堆積した液滴が溶融してリフローし、はんだバンプが形成されるのに、充分なエネルギーでターゲット位置の各々に集束させることと、
を含む回路製造方法。
【請求項26】
はんだ材料を堆積させることは、はんだ材料の溶融液滴を1つ以上のターゲット位置に向かって射出するステップを含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
パルスは、1ms以下のパルス持続時間を有する、
請求項25に記載の方法。
【請求項28】
パルスは、100μs未満のパルス持続時間を有する、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
パルスは、3mJ以下のパルスエネルギーを有する、
請求項25に記載の方法。
【請求項30】
1つ以上のパルスを集束させることは、レーザビームの単一のそれぞれのパルスをターゲット位置の各々に集束させることを含む、
請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電子デバイスの製造に関し、特に、ソルダリング(Soldering:ろう付け、はんだ付け)のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザダイレクトライト(LDW:laser direct-write)技術では、レーザビームは、制御された材料アブレーション(ablation)または堆積によって、空間的に分解された3次元構造を有するパターン化された表面を作成するために使用される。レーザ誘起順方向転写(LIFT:Laser-induced forward transfer)は、表面上に微小パターンを堆積させる際に適用することができるLDW技法である。
【0003】
LIFTでは、レーザ光子は、少量の材料をドナーフィルム(donor film)からアクセプタ基板(acceptor sbstrate)に向かってカタパルトする(catapult:放り投げる)駆動力を提供する。典型的には、レーザビームは、非吸収性キャリア基板上にコーティングされるドナーフィルムの内側と相互作用する。言い換えれば、入射レーザビームは、光子がフィルムの内面によって吸収される前に透明キャリア基板を通って伝搬する。あるエネルギー閾値を上回ると、材料は、ドナーフィルムからアクセプタ基板の表面に向かって放出される。ドナーフィルムおよびレーザビームパルスパラメータの適切な選択を前提として、レーザパルスは、ドナー材料の溶融液滴をフィルムから放出させ、次いで、アクセプタ基板上に着地および硬化させる。
【0004】
LIFTシステムは、(排他的ではないが)電子回路製造の目的で導電性金属液滴及びトレース(traces:微塵・痕跡)を印刷(プリント)するのに特に有用である。この種のLIFTシステムは、例えば、米国特許9,925,797(特許文献1)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。この特許は、対向する第1の表面および第2の表面を有する透明なドナー基板と、アクセプタ基板上のターゲット領域に近接して配置するように第2の表面上に形成されたドナーフィルムを提供するように構成されたドナー供給アセンブリを含む印刷装置について記載している。光学アセンブリは、レーザ放射の複数の出力ビームを、所定の空間パターンで同時に方向付けて、ドナー基板の第1の表面を通過させ、ドナーフィルムに衝突させて、それに従ってドナーフィルムからアクセプタ基板への材料の放出を誘導し、それによって、所定のパターンをアクセプタまたは基板のターゲット領域に書き込むように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下で説明する本発明の実施形態は、電気回路及びデバイスを製造するための改善された方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、回路製作のための方法が提供され、この方法は、アクセプタ基板上のターゲット位置に形成される、特定のはんだ(ソルダー:solder)材料を含み、特定のバンプ体積を有するはんだバンプ(solder bump)を定義するステップを含む。対向する第1の表面および第2の表面と、第2の表面上に特定のはんだ材料を含むドナーフィルムとを有する透明なドナー基板は、ドナーフィルムがアクセプタ基板上のターゲット位置に近接するように配置される。レーザ放射(レーザビーム)の一連のパルス(パルスのシーケンス)は、ドナー基板の第1の表面を通過し、ドナーフィルムに衝突して、ドナーフィルムからアクセプタ基板上のターゲット位置に、はんだ材料のいくつかの溶融液滴の放出を誘導し、ターゲット位置に堆積した液滴が指定されたバンプ体積に累積的に到達するように方向付けられる。ターゲット位置は、堆積された液滴が溶融し、リフローしてはんだバンプを形成するように加熱される。
【0008】
典型的には、液滴は、レーザ放射のパルスの強度に依存するそれぞれの液滴体積を有し、パルスのシーケンス(続き)を方向付ける(ダイレクトする:指令する)ことは、指定されたバンプ体積に応答して、レーザ放射のパルスの強度およびシーケンス内のパルスの数を設定することを含む。開示される実施形態では、液滴体積はさらに、レーザ放射のパルスのスポットサイズおよび持続時間から成るパルスパラメータのセットに依存し、パルスのシーケンスを方向付ける(ダイレクトする:指令する)ことはさらに、パルスパラメータのうちの1つ以上を変動させることによって、液滴体積を調整することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、はんだバンプを定義することは、同じアクセプタ基板上の異なるそれぞれの第1および第2のターゲット位置に、異なるそれぞれの第1および第2のバンプ体積を有する第1および第2のはんだバンプを定義することを含み、パルスのシーケンスを方向付ける(ダイレクトする)ことは、異なることを方向付ける(ダイレクトする)ことを含む。パルスの第1および第2のシーケンスは、液滴がそれぞれの第1および第2の標的位置において異なる第1および第2のバンプ体積の各々に累積的に到達するように、ドナー基板上の異なる点を通過する。一実施形態では、第1および第2のはんだバンプを定義することは、第1および第2のはんだバンプの異なるそれぞれの第1および第2の組成を指定することを含み、透明ドナー基板を位置決めすることは、第1および第2の組成を生成するように選択された複数の異なるはんだ材料を含む1つまたは複数のドナーフィルムを提供することを含む。加えて、または代替として、はんだバンプを定義することは、異なるそれぞれの第1および第2の組成を有する、第1および第2のはんだバンプを定義することを含み、透明ドナー基板を位置付けることは、第1および第2の組成を生成するように、複数の異なるはんだ材料を含む1つ以上のドナーフィルムを提供することを含む。
【0010】
さらに追加的または代替的に、はんだバンプを定義することは、異なる第1および第2の材料を含むはんだバンプの組成を特定することを含み、透明ドナー基板を位置決めすることは、それぞれ第1および第2の材料を含む第1および第2のドナーフィルムを提供することを含む。パルスのシーケンスを方向付ける(指令する)ことは、第1および第2のドナーフィルムにそれぞれ衝突するようにパルスの第1および第2のシーケンスを方向付ける(指令する)ことを含み、その結果、標的位置に堆積された液滴は、累積的に指定の組成に到達する。一実施形態では、組成を特定するステップは、はんだバンプの組成における材料の勾配を特定するステップを含み、パルスの第1および第2のシーケンスを方向付ける(指令する)ステップは、特定された勾配に従って、標的場所上に複数の層で第1および第2の材料の液滴を堆積させるステップを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、パルスのシーケンスを方向付ける(指令する)ことは、指定されたバンプ体積に到達するように、標的場所上の複数の層に液滴を堆積させることを含む。
【0012】
開示される実施形態では、標的位置を加熱することは、液滴の層を交互に堆積させることと、指定されたバンプ体積に達するまで液滴を複数回溶融させるために層を加熱することとを含む。
【0013】
加えて、または代替として、はんだバンプを定義することは、非円形形状等のはんだバンプの形状を特定することを含み、パルスのシーケンスを指向する(指令する)ことは、特定された形状に適合するパターンで溶融液滴を堆積させることを含む。
さらなる実施形態では、標的場所を加熱するステップは、堆積された液滴を溶融およびリフローさせるのに充分なエネルギーで標的場所を照射するようにレーザビームを指向するステップを含む。典型的には、レーザビームを方向付ける(指令する)ことは、1つ以上のレーザパルスを標的場所に集束させることを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、レーザ誘起順方向転写(LIFT)のプロセスを使用して、アクセプタ基板上の標的場所に伝導性パッドを印刷するステップを含み、パルスのシーケンスを指向する(指令する)ステップは、印刷された伝導性パッド上にはんだ材料の溶融液滴を堆積させるステップを含む。開示される実施形態では、伝導性パッドを印刷するステップは、その中に溶融液滴を堆積させるための凹部を伝導性パッド内に形成するステップを含む。
【0015】
本発明のある実施形態によると、アクセプタ基板上の標的場所に形成される、特定のはんだ材料を含み、特定のバンプ体積を有する、はんだバンプの定義を受け取るように構成される、コントローラを含む、回路製造のためのシステムも提供される。印刷ステーションは、透明なドナー基板を含み、透明なドナー基板は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、第2の表面に配置された特定のはんだ材料を含むドナーフィルムを有し、ドナーフィルムがアクセプタ基板上のターゲット位置に近接するように配置される。レーザは、レーザ放射の一連のパルス(パルスのシーケンス)を、ドナー基板の第1の表面を通過し、ドナーフィルムに衝突するように方向付けて(しむけて)、はんだ材料の溶融液滴をドナーフィルムからアクセプタ基板上のターゲット位置上に放出するように構成される。コントローラは、目標位置に堆積された液滴が累積的に指定されたバンプ体積に到達するように、目標位置に向かっていくつかの液滴を放出するように印刷ステーションを駆動するように構成される。リフローステーションは、堆積された液滴が溶融し、リフローしてはんだバンプを形成するように、ターゲット位置を加熱するように構成される。
【0016】
加えて、本発明のある実施形態によると、回路基板上の1つ以上の標的場所にはんだ材料を堆積させるステップと、堆積された液滴を溶融させ、はんだバンプを形成するようにリフローさせるのに充分なエネルギーを用いて、レーザビームの1つ以上のパルスを標的場所のそれぞれに集束させるステップとを含む、回路製作のための方法が提供される。
【0017】
開示される実施形態では、はんだ材料を堆積させるステップは、はんだ材料の溶融液滴を1つ以上の標的場所に向かって射出するステップを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、パルスは、1ms以下、場合によっては100μs未満のパルス持続時間を有する。
【0019】
加えて、または代替として、パルスは、2mJ以下のパルスエネルギーを有する。
加えて、または代替として、パルスは、3mJ以下のパルスエネルギーを有する。開示される実施形態では、1つ以上のパルスを集束させることは、レーザビームの単一のそれぞれのパルスを標的場所のそれぞれに集束させることを含む。
【0020】
本発明は、図面と共に、その実施形態の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、電子回路製造のためのシステムを概略的に示すブロック図である;
【
図2A】
図2Aは、本発明の一実施形態による、はんだの液滴がLIFTプロセスで堆積されたプリント回路基板の概略正面図である;
【
図2B】
図2Bは、本発明の一実施形態による、はんだのリフロー後の
図2Aのプリント回路基板の概略正面図である;
【
図3A】
図3Aは、本発明の一実施形態による、はんだバンプの堆積およびリフローのプロセスにおける連続段階を示す回路基板の概略断面図である;
【
図3B】
図3Bは、本発明の一実施形態による、はんだバンプの堆積およびリフローのプロセスにおける連続段階を示す回路基板の概略断面図である;
【
図3C】
図3Cは、本発明の一実施形態による、はんだバンプの堆積およびリフローのプロセスにおける連続段階を示す回路基板の概略断面図である;
【
図3D】
図3Dは、本発明の一実施形態による、はんだバンプの堆積およびリフローのプロセスにおける連続段階を示す回路基板の概略断面図である;
【
図4A】
図4Aは、本発明の一実施形態による、2つの異なるはんだ材料の液滴がLIFTプロセスで堆積された回路基板の概略断面図である;
【
図4B】
図4Bは、本発明の一実施形態による、はんだ材料のリフロー後の
図4Aの回路基板の概略正面図である;
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態による、LIFTプロセスによって形成されたコンタクトパッドの顕微鏡写真である;そして
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態による、
図5Aのコンタクトパッド上に形成されたはんだバンプの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<概要>
当技術分野で知られている電子回路製作の方法では、電気的なトレース(trace)およびコンタクトパッドが回路基板上に印刷され、はんだ層がフォトリソグラフィ法によってコンタクトパッド上に印刷される。次いで、回路部品が、はんだで覆われたパッド上に配置され、はんだを溶融させ、リフローさせるように回路が加熱され、したがって、部品と導電性パッドとの間に導電性結合を生成する。この従来の手法では、各コンタクトパッド上のパッド位置およびサイズならびにはんだ材料の体積は、フォトリソグラフィマスクおよびはんだ堆積プロセスによって決定される。
【0023】
本発明の実施形態は、要求に応じて、実質的に任意の所望のサイズおよび形状のはんだバンプを生成することができ、実質的に任意の好適なはんだ材料または材料の組み合わせを含む、LIFT(レーザ誘起順方向転写)ベースのはんだ堆積方法を提供する。このLIFTベースの方法は、異なる体積、形状、およびサイズを有し、さらには異なるはんだ材料およびはんだ材料の組み合わせを含む複数のバンプを、すべて同じ基板上に同じプロセスステップで作製することができる。はんだバンプの体積および組成(さらに不均一な組成を含む)は、LIFTパラメータ、ドナーフィルム材料、および各標的場所に堆積される液滴の数を設定することによって、正確に制御することができる。さらに、従来のアプローチとは対照的に、本方法は、非均一基板上に、ならびに構成要素がすでに配置された基板上にはんだバンプを印刷することが可能である。したがって、開示される実施形態は、当技術分野で知られている技法よりもはるかに大きい回路製作の柔軟性および精度をもたらす。
【0024】
以下で説明する実施形態では、はんだバンプは、特定のはんだ材料およびバンプ体積、ならびにバンプがアクセプタ基板上に形成されるべき目標位置に関して定義(定義)される。その表面の1つに特定のはんだ材料を含むドナーフィルムを有する透明なドナー基板は、ドナーフィルムがアクセプタ基板上のターゲット位置に近接した状態で配置される。(便宜上、アクセプタ基板に近接するドナー基板の表面を本明細書では下面と呼び、ドナー基板の反対側の表面を上面と呼ぶ。)レーザは、レーザ放射(レーザビーム)の一連のパルスを、ドナー基板の上面を通過し、ドナーフィルムに衝突するように方向付けて(しむけて)、はんだ材料のいくつかの溶融液滴のドナーフィルムからのアクセプタ基板上のターゲット位置への放出を誘導する。
【0025】
レーザパルスパラメータおよびシーケンス内のパルスの数は、標的位置に堆積された液滴が累積的に指定されたバンプ体積に到達するように選択される。液滴体積を制御するために変化させることができるパルスパラメータは、パルス強度、すなわち、ドナーフィルムに入射する単位面積当たりの光パワー、ならびにスポットサイズおよびパルス持続時間を含む。これらのパラメータは、ドナーフィルム中のはんだ材料の種類および厚さに応じて調整して、0.1pl(ピコリットル)のオーダー、すなわち100μm3以下の一貫した液滴体積をもたらし、ターゲット位置に向かう正確な方向性を有する高速でのドナーフィルムからの液滴の吐出を確実にすることができる。このように、パルスパラメータや液滴数を適宜選択することにより、20μm程度の小径の正確なサイズのはんだバンプを印刷することができる。本発明の実施形態によるプロセスは、低、中、および高温はんだを含む、広範囲のはんだ材料を多種多様な基板上に印刷するために使用することができ、また、フラックスレスソルダリングを促進する。
【0026】
アクセプタ基板上に液滴の1つ以上の層を堆積させた後、堆積した液滴が溶融し、リフローしてはんだバンプを形成するように、ターゲット位置を加熱する。加熱は、有利には、高速リフローを促進し、基板への損傷を最小限に抑えるために、例えばレーザ照射によって局所的に行われる。この段階で使用されるレーザパルスは、はんだバンプ上に狭く集束されることができ、レーザパルスの持続時間は、約1ミリ秒を超えず、ほとんどの場合、100マイクロ秒未満、例えば、数十マイクロ秒(または、小さいはんだバンプではさらに短い)である必要がある。したがって、このレーザ駆動リフロー技術は、周囲空気中(空気雰囲気)で実行することができ、感熱基板に適している。これは、上述のLIFTベースのはんだ印刷技術と併せて使用するのに特によく適している;しかし、インクジェット型はんだ印刷およびフォトリソグラフィ技術などの他の方法によって堆積されたはんだ材料をリフローするのに適用してもよい。しかしながら、代替として、リフロー段階は、例えば、高温オーブン内でアクセプタ基板全体を加熱することによって行われてもよい。はんだバンプシェービングが形成された後、回路部品をバンプ上に置き、従来の方法によって所定の位置にソルダリングすることができる。
【0027】
<システムの説明>
図1は、本発明の一実施形態による、電子回路製造のためのシステム20の概略図である。システム20は、アクセプタ基板34上の標的位置に形成される、特定のはんだ材料を含み、特定のバンプ体積を有する、はんだバンプ60の定義を受け取る、印刷ステーション22を備える。印刷ステーションは、所望のはんだ材料のいくつかの液滴32を各ターゲット位置に堆積させ、液滴が累積的に指定されたバンプ体積に到達するようにする。リフローステーション24は、堆積された液滴32が溶融し、リフローしてはんだバンプ60を形成するように、ターゲット位置を加熱する。この加熱プロセスは、
図1に示すようにバンプ位置に局所的に集中させることができ、またははんだ材料および基板の特性および他の適用要件に応じて基板34全体にわたって全体的に行うことができる。
【0028】
典型的には、はんだバンプ60の形成後、配置ステーション26は、当該技術分野において既知であるように、例えばピックアンドプレース機械62を使用して、はんだバンプ上に構成要素(コンポーネンツ)64を配置する。次いで、最終リフローステーション28内の熱源66が、構成要素と基板34との間に恒久的結合(ボンド)68を形成するために、はんだバンプを加熱する。熱源66は、例えば、レーザを使用して局所加熱を適用してもよく、またはリフローオーブンもしくは当技術分野で公知の任意の他の好適な種類のヒータを備えてもよい。ボンド68は、典型的には、構成要素64と基板34上の導電性トレースとの間に電気的及び機械的接続の両方を形成する。代替的に又は追加的に、はんだバンプ60は、コンポーネント64の縁部の周りに機械的シールを形成するように、矩形、円形又は他の形状を有するフレームを形成するように配置されてもよい。この種の封止は、例えば、微小電気機械システム(MEMS)デバイスなどの高感度デバイスの気密パッケージングに使用することができる。
【0029】
印刷ステーション22に戻って参照すると、印刷ステーション内の光学アセンブリ30は、コントローラ51の制御下で、約1ns(ナノ秒)のパルス持続時間を有する光学放射の短いパルスをドナー箔(foil:ホイル)44に向けるレーザ38を備える。(本明細書および特許請求の範囲の文脈で使用される「光学放射線(オプティカルラディエーション)」という用語は、可視、紫外および赤外範囲のいずれかの電磁放射線を指す;「レーザ放射」とは、レーザによって放射される光学的放射を指す。)コントローラ51は、典型的には、汎用コンピュータまたは専用マイクロコントローラを備え、これは、システム20の他の要素に適するインターフェースであり、ソフトウェアで駆動され、本明細書で説明される機能を果たす。ドナーフィルム44は、典型的には、透明なドナー基板46の薄い可撓性シートを含み、これは、アクセプタ基板34に近接して、特定のはんだ材料を含むドナーフィルム48でコーティングされる。あるいは、ドナー基板は、硬質または半硬質材料を含んでもよい。アクセプタ基板34は、ガラス、セラミック、またはポリマー等の任意の好適な材料、ならびに他の誘電体、半導体、またはさらには伝導性材料を含んでもよい。
【0030】
光学アセンブリ30は、ビーム偏向器40と、レーザ38からの放射の1つまたは複数の出力ビームを、コントローラ51によって決定された空間パターンに従って、ドナー基板46の上面を通過し、したがって下面上のドナーフィルム48に衝突するように方向付ける集束光学系42とを備える。例示的な実施形態では、ビーム偏向器40は、上述の米国特許9,925,797の
図2Aまたは2Bに示され、後述する(本特許のカラム7~8に記載されている)音響光学変調器を含む。レーザは、典型的には、ドナーフィルム48からアクセプタ基板34上の指定されたターゲット位置へのはんだ材料の溶融液滴50の放出を誘発するように、適切な波長、持続時間およびエネルギーのパルス列を出力するように制御される。液滴50は、ドナー基板46に垂直な方向に高速でドナーフィルム48から放出されるので、ドナーフィルム44は、アクセプタ基板と接触するのではなく、アクセプタ基板34から小さい距離、例えば、ドナーフィルム48とアクセプタ基板34との間に最大約0.5mmの間隔で配置することができる。液滴50の高速吐出(典型的には10m/秒以上)のため、液滴の飛行時間は、液滴が凝固するのにかかる時間よりも短く、印刷ステーション22は、真空下ではなく周囲大気条件下で動作することができる。
【0031】
ドナーフィルム48は、低温はんだ、中温はんだ、及び高温はんだを含む、実質的に任意の適切なタイプのはんだ材料又ははんだ材料の組み合わせを含んでもよい。低温および中温はんだは、例えば、錫-鉛および錫-銀-銅(SAC)合金を含む。高出力電子デバイスの製造に最も一般的に使用される高温はんだは、銀(典型的には45~90%)と銅、亜鉛、スズおよびカドミウムなどの他の金属との合金を含み、典型的には700~950°Cの範囲の温度で溶融する。フィルム48の厚さおよび組成、ならびに光学アセンブリ30のパルスパラメータは、はんだ材料の選択に応じて調整され、はんだ材料の溶融液滴50のアクセプタ基板34上の標的位置(ターゲット・ロケーション)への安定した噴射をもたらす。
【0032】
いくつかの実施形態では、混合組成物の液滴32を堆積させるために、多層構造ドナーフィルム48を使用することができる。例えば、ドナーフィルム44は、異なる材料のバルク混合物を含有する溶融液滴50を生成するために、異なるそれぞれのはんだ組成物を含む複数の層状ドナーフィルムを含んでもよい。この種の多組成LIFTスキームは、例えば、米国特許10,629,442に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
代替的に又は追加的に、ドナーフィルム44は、ドナー箔上の異なる位置に異なる材料を含むドナーフィルム48を含んでもよい。光学アセンブリ30は、所与の標的位置に堆積される異なる材料の液滴32が累積的に指定の体積および組成に到達するように、異なるドナー位置にそれぞれ衝突するようにレーザパルスのシーケンスを指向する(ダイレクトする)。この種の混合組成物スキームは、
図4A/Bを参照して以下にさらに記載される。
【0034】
コントローラ51は、所望の体積の適切な数の液滴32を、はんだバンプをアクセプタ基板34上に形成される各標的場所上に堆積させるために、レーザ38のパルスパラメータならびに光学アセンブリ30の走査および集束パラメータを調整する。先に説明したように、コントローラ51は、レーザパルスパラメータおよびはんだ材料の溶融液滴の数を設定して、各ターゲット位置に堆積された液滴が、その位置で指定されたバンプ体積に累積的に到達するようにする。液滴体積は、レーザパルスパラメータを調節することによって変動させることができるため、所与のバンプ体積は、より小さい数のより大きい体積の液滴、またはより大きい数のより小さい体積の液滴を堆積させることによって作成することができる。ドナーフィルム44の厚さは、上記液滴径にもよる。実際の滴量は固有の公差がある。large-numbers(大きな数による)統計に依存しておくことが有利かもしれない。特に、微小なバンプに対応する場合は、大きな液滴を小さな数とするより、小さな液滴を大きい数とすることが好ましいかもしれない。
【0035】
印刷ステーション22はまた、例えば、アクセプタ基板34が取り付けられるX-Yステージ36を備え得る位置決めアセンブリを備える。ステージ36は、印刷ステーション22において光学アセンブリ30およびドナーフィルム44に対してアクセプタ基板34をシフトさせて、アクセプタ基板の表面にわたって異なるターゲット位置に液滴32を堆積させる。追加的または代替的に、位置決めアセンブリは、適切な場合、アクセプタ基板の表面上で光学アセンブリ30ならびにドナーフィルム44をシフトさせる運動構成要素(図示せず)を含むことができる。
【0036】
リフローステーション24は光学アセンブリ52を備え、これは、液滴32を局所的に溶融させ、それにより液滴をはんだバンプ60に合体させるように放射ビームを方向付ける。この種の局所加熱は、敏感なアクセプタ基板34への損傷を回避する上で特に有利である。描かれた例における光学アセンブリ52は、レーザ54と、ビーム偏向器56および集束光学系58とを備え、これらは、堆積された液滴を溶融させ、はんだバンプ60にリフローさせるのに充分なエネルギーでターゲット位置を照射するようにレーザ放射を方向付ける。リフローステーション24はまた、位置決めアセンブリを備え、位置決めアセンブリは、印刷ステーション22と同じステージ36、または異なるステージもしくは他の運動(移動、駆動)デバイスに基づき得る。
【0037】
コントローラ51は、基板34への損傷を回避しながら、各はんだバンプ60を溶融およびリフローするのに充分なエネルギーを印加するために、レーザ54のパルスパラメータならびに光学アセンブリ52の走査および集束パラメータを調整する。パルス持続時間およびエネルギーは、バンプの上部のはんだ材料を蒸発させることなく、各バンプの底部のはんだ材料が完全に溶融するように選択される。必要とされる実際の電力およびパルス持続時間は、はんだ材料の溶融温度および熱伝導率に依存する。短いレーザパルスは、はんだ材料が溶融される時間を最小限にし、したがって酸化を最小限にし、基板34への損傷を回避するため、概して、この目的のために有利である。したがって、リフローステーション24は、周囲大気条件で動作することができる。短い高出力レーザパルスは、フラックスレス(フラックスを使用しない)リフローを可能にし、高温はんだ材料の使用を支援する上で特に有利である。各はんだバンプの位置に焦点を合わせたこの種の単一のレーザパルスは、典型的には小さいはんだバンプの完全なリフローを達成するのに充分であるが、特により大きいはんだバンプについては、複数のパルスを代わりに使用してもよい。結果として生じる高速局所リフロープロセスはまた、はんだバンプとコンタクトパッドとの間の金属間(インターメタリック:intermetallic)化合物の形成を低減し、したがって、当技術分野で知られている熱リフローの方法と比較してより強力なはんだ結合を生成するのが有益である。
【0038】
例えば、厚さが20~30μmのスズ系はんだの液滴32のパイル(1セット)から作製される小さなはんだバンプの場合、約10Wの光出力および50~100μsの持続時間を有するレーザパルスが、典型的には、基板への実質的な熱拡散を回避しながら、完全なリフローを達成するのに充分である。最適なレーザ波長、パルスパワー、持続時間、および焦点サイズは、それぞれの場合において、はんだ材料の吸収スペクトル、体積、および熱特性に適合するように選択することができる。小さいから中程度のサイズのはんだバンプの場合、パルスエネルギーは約2mJ以下である必要がある。最適なレーザパラメータは、経験的に、および/または熱および流体力学シミュレーションに基づいて、例えば、当技術分野で知られている有限要素解析ツールを使用して決定することができる。
【0039】
以下の例では、リフローステーション24内のレーザ54は、1064nmで動作する高出力CW Nd:YAGレーザであってもよい。あるいは、レーザ54は、ダイオード励起ファイバレーザ、例えば976nm~1075nmの範囲のイッテルビウム連続波ファイバレーザ、および数ワットの出力(例えばIPGから入手可能)であってもよい。代替として、レーザ54は、高出力ダイオードレーザモジュール、例えば、BTWによって製造されるダイオードレーザモジュールであってもよい。他のタイプのレーザは、本説明を読めば当業者には明らかであろう。
【0040】
例示的な実装形態では、印刷ステーション22は、スズ系はんだを使用してバンプを印刷(プリント)する。約40pL(ピコリットル:約50μmのバンプ直径に対応する)の体積を有するバンプをリフローするために、レーザ54は、約0.45~1.6mJのパルスエネルギーおよび50~150μsの持続時間を有するパルスを出力するように設定される。光学アセンブリ52は、はんだバンプ上で約35~50μmのスポットサイズにビームを集束させる。他方、例えば約15piの体積(約25μmの直径に対応する)を有するより小さいバンプの場合、リフローステーション24内のレーザ54は、約0.2~0.45mJのパルスエネルギーおよび10~30μsの持続時間を有するパルスを出力するように設定され、はんだバンプ上で約15~25μmのスポットサイズに集束される。
【0041】
別の例では、約85pL(約100μmのバンプ直径に対応する)の体積を有するバンプをリフローするために、レーザ54は、約1~3mJのパルスエネルギーおよび50~150μsの持続時間を有するパルスを出力するように設定される。光学アセンブリ52は、はんだバンプ上で約50~100μmのスポットサイズにビームを集束させる。
【0042】
レーザ駆動リフローパラメータの代替的な選択は、本説明を読んだ後に当業者には明らかであろう。
【0043】
一実施形態では、印刷ステーション22およびリフローステーション24は、LIFTプロセスおよびリフロープロセスの両方のためにレーザ放射を提供する光学アセンブリとともに、単一の操作ユニットに組み合わされる。レーザ源が、LIFTおよびリフローに必要とされるパルスエネルギーおよび持続時間の異なる範囲を提供することができる限り、同じレーザ源を両方の目的に使用することができる。あるいは、結合ステーションは、共有位置決めアセンブリおよび場合によっては共有光学系を有する2つ以上の異なるレーザ源を含んでもよい。
【0044】
<はんだバンプの形成>
ここで、
図2A/Bを参照する。
図2A/Bは、本発明の実施形態による、プリント回路基板70上にはんだバンプを形成するプロセスを概略的に図示する。
図2Aは、例えば印刷ステーション22(
図1)において、はんだの液滴32がLIFTプロセスによって堆積された基板70の正面図であり、
図2Bは、はんだのリフロー後の基板70の概略正面図である。この実施形態は、同じアクセプタ基板上の異なるターゲット位置(すなわち、本例における基板70である)にはんだ材料の異なるそれぞれのバンプ体積、形状、および/または組成を有するはんだバンプを定義し、製造する際に本明細書で説明する技法を使用することを示す。
【0045】
図2Aに示されるように、基板70上にはんだバンプを堆積させる前に、電子トレース73および異なるサイズおよび形状の種々の接触パッド72、75、77が基板上に形成される。これらのパッドおよびトレースは、当技術分野で公知のように、フォトリソグラフィプロセスを使用して基板70上に印刷されてもよく、または代替として、例えば、LIFTプロセスを使用して、基板70上に直接書き込まれてもよい。コンタクトパッドのLIFT印刷は、
図5A/Bを参照して以下でさらに説明されるように、コンタクトパッドへのはんだ材料の接着を強化するのに有利であり得る。コントローラ51は、異なるはんだパッド上に生成されるべき異なるはんだバンプ体積を特定するようにプログラムされる。コントローラは、光学アセンブリ30を駆動して、堆積された液滴32が様々なパッド上の指定されたバンプ体積に累積的に到達するように、ドナー基板上の異なる点を通過するようにレーザパルスの異なるシーケンスを向ける。したがって、例えば、単一の液滴32または少数の液滴のみがパッド72の各々の上に堆積され、液滴のより大きい集合体74がパッド75の上に堆積される。パッド72の場合のように非常に微細な接触が必要とされる場合、専用の接触パッドなしでトレース73上のターゲット位置に直接液滴を堆積させることも可能であり、したがってトレースに構成要素を直接ソルダリングする。前述のように、ドナーフィルム48の適切な選択および構成によって、印刷ステーション22は、はんだ材料の異なるそれぞれの組成物を異なる接触パッド上に印刷するように制御され得る。例えば、印刷ステーション22は、基板70上の回路の動作においてより高い動作電流を運ぶように設計されたパッド75上により高い温度のはんだを印刷しながら、繊細な接点に適切な低温のはんだをパッド72上に印刷することができる。光学アセンブリ30は、適切な組成のはんだ材料を接触パッドまたは位置の各々の上に堆積させるために、ドナー基板46上の適切な点を通過するようにレーザパルスを向ける。
【0046】
コントローラ51は、さらに、接触パッド77によって定義される細長い形状などの非円形形状を含む、はんだバンプの異なる形状を指定するようにプログラムすることができる。コントローラ51は、次いで、光学アセンブリ30を駆動して、ドナー基板を通過するようにレーザパルスのシーケンスを方向付け、液滴32が、指定された形状に適合するパターンで各接触パッド上に堆積されるようにする。したがって、液滴の細長い集合体76が接触パッド77上に堆積される。はんだ接点は、例えば、環状および角度付き形状を含む、実質的に任意の所望の形状で、このように印刷されることができる。
【0047】
液滴32の堆積後、基板70は加熱され、液滴を溶融およびリフローさせ、したがって、
図2Bに示されるように、はんだバンプ82、84、86に合体する。この段階での液滴の傾向は、表面エネルギーを最小限に抑える球形に合体することである。この傾向を最小限に抑えるために、特に非円形形状のはんだバンプを作成する際に、リフローステーション24は、上述のように、はんだバンプを局所的に溶融させるために短い強力なレーザパルスを印加することができる。リフローステーション24におけるレーザパルスパラメータ及び照射パターンは、所望の形状特性を達成するために調整することができる。
【0048】
図3A、3B、3C、および3Dは、本発明の別の実施形態による、基板70上のはんだバンプ94の堆積およびリフローのプロセスにおける連続段階を示す、回路基板の概略断面図である。この実施形態は、特に大きなはんだバンプにおいて生じ得るリフローの問題に対処する。堆積のプロセスが単一ステージで実行される場合、はんだバンプの底部で液滴32を溶融するために高エネルギーのレーザパルスが必要とされ得る。高いパルスエネルギーは、はんだバンプを取り囲む基板への損傷のリスクを増加させる。他方、レーザパルスエネルギーが充分でない場合、バンプの底部の液滴は完全に溶融しないことがあり、接触完全性が悪くなり、電気抵抗が増加する。
【0049】
この問題に対処するために、液滴32は、指定されたバンプ体積に到達するように、標的場所上に複数の層で堆積される。基板70は、印刷ステーション22とリフローステーション24との間を複数回往復して、液滴の層を交互に堆積させ、次いで、指定されたバンプ体積に達するまで液滴を溶融させるように層を加熱する。代替として、液滴のLIFT印刷および溶融は、光学アセンブリがLIFT印刷およびリフローの両方に必要とされる能力を有する、単一ステーション内で行われてもよい。いずれの場合も、液滴の各連続層を溶融するために印加されなければならないエネルギーは、比較的小さく、したがって、損傷のリスクが低減される。
【0050】
したがって、図示の例では、液滴32の初期層は、
図3A(またはより正確には、基板上のコンタクトパッド上にある)に示すように、基板70上に堆積される。この層は加熱され、したがって溶融して、
図3Bに示すように、リフロー層92を形成する。液滴32のさらなる層が、
図3Cに示されるように、リフローされた層92の上に堆積され、次いで、
図3Dに示されるように、再びリフローするように加熱される。このプロセスは、はんだバンプ94を生成するのに必要なサイクル数だけ繰り返される。
【0051】
ここで、
図4A/Bを参照すると、
図4A/Bは、本発明の実施形態による、混合組成物のはんだバンプ100を基板70上に作成するためのプロセスを概略的に図示する。
図4Aは、印刷ステーション22においてLIFTプロセスによって堆積される2つの異なるそれぞれのはんだ材料の液滴96および98を示す断面図である。
図4Bは、リフローステーション24におけるはんだ材料のリフロー後のはんだバンプ100の正面図である。
【0052】
コントローラ51は、はんだバンプが2つ(またはそれ以上)の異なる材料を一定の比率で含むことを示すはんだバンプ100の仕様を受け取る。例えば、機械的強度および/または導電性を高めるために、はんだバンプは、錫はんだと混合された銅の粒子、またはSACはんだと混合されたパラジウムを含み得る。場合によっては、材料の特定の勾配で、はんだバンプ内に異なる材料を不均一に分布させることも有利であり得る。例えば、液滴96内の材料等の材料の1つは、はんだバンプの底部でより高い濃度を有してもよく、濃度は、液滴98内の材料と比較して、はんだバンプの上部に向かって減少する。バンプの底部におけるより高いパラジウム濃度を有するパラジウムおよび銅のこの種の勾配組成は、例えば米国特許9,607,936で説明されるように、はんだ接合の強度を改善すると考えられる。
【0053】
図4Aに示す例では、ドナーフィルム44は2つのドナーフィルム48を含み、これらは2つの異なるドナー材料、例えば上述した異なる種類の材料を含む。光学アセンブリ30は、基板70上に液滴96を堆積させるためにドナーフィルムの一方に向けて、液滴98を堆積させるために他方のドナーフィルムに向けてレーザパルスを方向付ける。ドナーフィルムの各々に向けられるパルスの数は、液滴96および98が適切な比率で堆積され、指定された組成および総はんだバンプ体積に累積的に到達するように選択される。勾配組成物を生成するために、2つのドナーフィルムに向けられるパルスの比率、したがって液滴96対液滴98の比率は、
図4Aに示されるように、液滴の底部から頂部まで層ごとに変化する。リフローステーション24における液滴96および98の集合体の急速加熱は、
図4Bに概略的に示されるように、指定された勾配が維持されるように、最小限の混合で液滴をはんだバンプ100に合体させるであろう。
【0054】
はんだバンプのこの多(複数)材料堆積は、他の用途においても有用であり得る。例えば、はんだバンプの底部層は、はんだ濡れを改善するか、または代替的には、はんだ濡れを制限する材料の液滴を印刷することによって作製することができる。別の例として、底部層は、基板とはんだ材料との間の熱膨張係数の整合を改善するように選択されてもよい。この特性は、基板の特性に合致するように、異なる熱膨張係数を有する2つの材料を混合することによって微調整することができる。
【0055】
図5Aは、本発明の一実施形態による、LIFTプロセスによって基板112上に形成されたコンタクトパッド110の顕微鏡写真である。言い換えれば、コンタクトパッドは、従来のフォトリソグラフィ印刷によってコンタクトパッドを作成するのではなく、例えば、好適な銅ドナーフィルム48を使用して、LIFTによって基板112上に直接書き込まれる。コンタクトパッド110のLIFT印刷は、パッドへのはんだバンプの接着を改善するために、コンタクトパッドの形状及びテクスチャを制御するのに有用である。したがって、図に示すように、コンタクトパッド110は、パッドの中心に凹部114を有する粗面を有する。
【0056】
図5Bは、本発明の一実施形態による、コンタクトパッド110上に形成されたはんだバンプ116を示す顕微鏡写真である。はんだバンプ116は、凹部114におけるはんだ材料の液滴の堆積と、それに続くリフローステーション24における液滴の溶融とによって、上述のように印刷ステーション22によって形成される。接触パッドの粗さは、パッドへのはんだ材料の接着のための増加した表面積を与え、凹部とともに、良好な電気的および機械的接触を確実にするのに役立つ。
【0057】
当然のことながら、上述の実施形態は例として挙げたものであり、本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されない。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせの両方、ならびに前述の説明を読めば当業者に思い浮かぶであろう、先行技術に開示されていないその変形および修正を含む。
【国際調査報告】