(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】エチレンジアミン四酢酸又はその塩を含有するエリブリン又はその薬用可能な塩リポソーム
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20230703BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20230703BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230703BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230703BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230703BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K31/357
A61P35/00
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/34
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/26
A61K9/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573471
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2021096944
(87)【国際公開番号】W WO2021239134
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202010475697.3
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMA CEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲同▼ 新勇
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ ▲愛▼峰
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 淇博
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 丹
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 中▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】王 燕平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA29
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD22
4C076DD24
4C076DD26Z
4C076DD31
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD49
4C076DD51Z
4C076DD57Z
4C076DD63
4C076DD67
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF16
4C076FF31
4C076FF61
4C076FF68
4C076GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA44
4C086MA66
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZB26
(57)【要約】
エリブリン又はその薬用可能な塩を含有するリポソーム及び製造方法であって、リポソーム内水相はエリブリン又はその塩及びエチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩から選択される一つ又は複数を含有する。及び、前記リポソームの医薬組成物及びその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内水相は活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、及びエチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩から選ばれる一つ又は複数を含有する、リポソーム。
【請求項2】
リポソーム内水相はさらにアンモニウム塩を含有し、前記アミン塩は、好ましくは硫酸アンモニウム、エチル硫酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム塩、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、トリエチルアンモニウム蔗糖八硫酸、グルカン硫酸アンモニウム又はトリエチルグルカン硫酸アンモニウムであり、より好ましくは、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム又はエチレンジアミン四酢酸アンモニウムであり、最も好ましくは硫酸アンモニウムである、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
前記活性化合物はメタンスルホン酸エリブリンから選択される、請求項1又は2に記載のリポソーム。
【請求項4】
前記エチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩の濃度は1~300mMから選択され、好ましくは20~200mMである、請求項1~3のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記アンモニウム塩の濃度は10~400mMから選択され、好ましくは、20~300mMである、請求項3に記載のリポソーム。
【請求項6】
前記活性化合物の濃度は0.01~100mg/mLから選択され、好ましくは、0.05~5mg/mLである、請求項1~5のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項7】
前記リポソーム内水相は、実質的にクエン酸を含有しない、請求項1~6のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項8】
前記リポソームはリン脂質をさらに含有し、前記リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(PLPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、水素添加卵黄レシチン(HEPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SPPC)、パルミトイルオレイルホスファチジルコリン(POPC)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルグリセロホスホグリセロール(DPPG)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン(DOPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DPPA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DOPA)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DMPA)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DSPA)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルイノシトール(DOPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)及びジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)のうちの少なくとも一つから選択され、好ましくは、水素添加卵黄レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、リン酸コリン及び1,2-ジミリストトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンのうちの一つ又は複数であり、前記水素添加卵黄レシチンは、好ましくは、水素添加大豆ホスファチジルコリンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項9】
前記リン脂質の含有量は10~80%から選択され、好ましくは30~70%である、請求項8に記載のリポソーム。
【請求項10】
前記リポソームはさらにステロイドを含有し、好ましくはコレステロールである、請求項1~9のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項11】
前記ステロイドの含有量は1~60%から選択され、好ましくは10~40%である、請求項10に記載のリポソーム。
【請求項12】
前記リポソームはさらに親水性ポリマー修飾脂質物質を含有し、好ましくは、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルグリセロール又はポリエチレングリコール修飾コレステロールであり、より好ましくは、ポリエチレングリコール2000-ホスファチジルエタノールアミンである、請求項1~11のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項13】
前記親水性ポリマー修飾脂質物質の含有量は0.1~50%から選択され、好ましくは0.5~20%であり、例えば、6%である、請求項12に記載のリポソーム。
【請求項14】
前記リポソームは、リン脂質、ステロイド及び親水性ポリマー修飾脂質物質を含有し、好ましくは、水素添加卵黄レシチン、コレステロール及びポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを含有し、好ましくは、水素添加大豆ホスファチジルコリン、コレステロール及びポリエチレングリコール2000-ホスファチジルエタノールアミンを含有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項15】
前記リン脂質とステロイドのモル比は、1:0.01~1:1から選択され、好ましくは1:1~3:1であり、例えば、3:2である、請求項10~14のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項16】
前記リン脂質と親水性ポリマー修飾脂質物質のモル比は、20:1~1:1から選択され、好ましくは15:1~2:1であり、例えば、9.45:1である、請求項13~15のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項17】
前記活性成分と脂質の質量比は1:5~1:50から選択され、好ましくは1:10~1:45であり、例えば、1:27である、請求項1~16のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項18】
リン脂質、コレステロール及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール縮合物を含有し、内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩及びアンモニウム塩を含有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項19】
エチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩から選ばれる一つ又は複数を含有する内水相のブランクリポソームを製造するステップ、ブランクリポソームの外水相中のエチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩を除去するステップ、及びエリブリン又はその薬用可能な塩をブランクリポソーム内水相に導入するステップを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソームを製造する方法。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソームを含有する又は請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソームから製造して得られる医薬組成物であって、
さらに、前記医薬組成物は好ましくは緩衝液をさらに含有し、前記緩衝液は、好ましくは、酢酸塩緩衝液又はヒスチジン緩衝液又はリン酸塩緩衝液又はコハク酸塩緩衝液又は4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸塩緩衝液のうちの少なくとも一つから選択され、より好ましくは、ヒスチジン緩衝液又はリン酸塩緩衝液又は4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸塩緩衝液のうちの少なくとも一つであり、例えばヒスチジン緩衝液である、医薬組成物。
【請求項21】
さらに糖又は電解質を含有し、好ましくは、塩化ナトリウム、トレハロース又はスクロースのうちの少なくとも一つを含有する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記糖の濃度は、好ましくは、2~20%であり、好ましくは、4~15%である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記緩衝液の濃度は1~300mMから選択され、好ましくは、5~200mMである、請求項20~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物のpHは5.0~8.0であり、好ましくは5.5~7.5である、請求項20~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥させて得られる凍結乾燥組成物であって、又は前記凍結乾燥組成物を液体媒体に再溶解させて得られる請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物を得、ここで、前記再溶解に用いられる液体媒体が生理食塩水、注射用水、グルコース注射液又はグルコース塩化ナトリウム注射液から選択される、凍結乾燥組成物。
【請求項26】
25℃で3ヶ月以降、少なくとも70%、少なくとも80%の前記活性成分が前記リポソームに封入されたままであり、好ましくは、少なくとも85%の前記活性成分が前記リポソームに封入されたままである、請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソーム又は請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項25に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項27】
前記組成物が哺乳動物に使用される毒性は、遊離非リポソームの形態と比べて少なくとも2倍低下し、好ましくは、少なくとも4倍低下する、請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソーム又は請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項25に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項28】
活性成分が哺乳動物の血液中の半放出期間は少なくとも5時間であり、好ましくは、少なくとも7時間であり、例えば、8時間である、請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソーム又は請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項25に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項29】
活性成分は、哺乳動物において12時間以上の薬物の持続放出を提供し、好ましくは、24時間以上の薬物の持続放出を提供し、より好ましくは、48時間以上の薬物の持続放出を提供し、最も好ましくは72時間以上の薬物の持続放出を提供する、請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソーム又は請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項25に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項30】
腫瘍の治療又は予防のための薬物の製造における、請求項1~18のいずれか一項に記載のリポソーム又は請求項20~24のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項25に記載の凍結乾燥組成物の使用であって、前記癌は、好ましくは、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、前立腺癌、腎癌、尿道癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、膵臓癌及びリンパ腫である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2020年5月29日である中国特許出願CN202010475697.3の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
(技術分野)
本開示は医薬の分野に属し、エチレンジアミン四酢酸又はその塩を含有するエリブリン又はその薬用可能な塩リポソームに関する。
【背景技術】
【0003】
エリブリン(Eribulin)は合成されたハリコンドリンB(halichondrin B)の類似物であり、新規作用機序を有する微小管タンパク質重合阻害剤であり、2010年に初めて米国FDAから転移性乳癌の治療に認可された。
【0004】
しかし、臨床的に静脈内投与後、遊離薬物は直接にアルカリ性の生理学的環境下にあり、分解が起こりやすく、それによって活性を失い、間接的に薬物の治療有効性を低下させる。また、製剤の毒性副作用は大きく、主に好中球減少や遅発性下痢が現れる。
【0005】
リポソームは薬物担体とし、薬物の治療有効性を高め、薬物の有害反応を軽減し、及び標的効果を提供する特徴を有する。しかし、リポソームの治療上の利点を真に実現することは容易ではなく、以下の要件を満たす必要がある。1)薬物は、効果的な封入効率と十分な薬物負荷容量でリポソーム内に封入されることができる。2)体外貯蔵期間中、薬物はリポソームから放出されない。3)リポソーム薬物は、血液循環の過程で、薬物に顕著な漏れを生じない。4)リポソームが腫瘍領域に集まると、薬物は効果的に放出され、薬物の治療効果を発揮する。
【0006】
WO2010113984は、脂質体内水相にエリブリン、アンモニウム塩及びクエン酸を含有するリポソーム組成物を開示し、リポソーム組成物中のエリブリン又はその塩の安定性及び封入率の問題を解決する。同時に、実施例は、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム又はコハク酸アンモニウムなどの他のアンモニウム塩系と比較して、クエン酸アンモニウム又は硫酸アンモニウムを含有するリポソームの封入率が良好であることを示している。しかし、長期放置により、リポソームは活性成分の漏出が生じ、封入率が低下し、サンプルの長期保存に不利である。
【0007】
また、CN105163720は、わずかに水溶性試薬を封入したリポソームを製造する方法を開示しており、わずかに水溶性試薬を非プロトン溶媒又はポリオールに完全に溶解させることによって前記わずかに水溶性試薬の溶液を製造し、レチノソーム膜を横切るプロトン又はイオン勾配によって活性成分を遠隔でロードすることを含み、前記活性成分にはカルフィルゾミブ、エリブリン等が含まれる。しかし、実施例は、実際にエリブリンリポソームを製造しておらず、かつ、エリブリンは水溶性に優れており、上記の方法では、高い封入率と安定性を有するエリブリンリポソームを得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2010113984
【特許文献2】CN105163720
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示(the disclosure)はリポソーム内水相中に活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、及びエチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩から選ばれる一つ又は複数を含有するリポソームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態において、エチレンジアミン四酢酸塩は、エチレンジアミン四酢酸と、アミン、金属イオン又はアンモニウムイオンから形成される塩である。エチレンジアミン四酢酸塩の例としては、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
一方、本開示のリン酸塩はリン酸と有機塩基又は無機塩基から形成され、例として、リン酸ナトリウム塩、リン酸カリウム塩、リン酸アンモニウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
一方、本開示のペンテト酸塩はペンテト酸と有機塩基又は無機塩基から形成され、例として、ペンテト酸ナトリウム塩、ペンテト酸カリウム塩、ペンテト酸アンモニウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相はさらにアンモニウム塩を含有し、前記アミン塩は、好ましくは、硫酸アンモニウム、エチル硫酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム塩、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、トリエチルアンモニウム蔗糖八硫酸、グルカン硫酸アンモニウム又はトリエチルグルカン硫酸アンモニウムであり、より好ましくは、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム又はエチレンジアミン四酢酸アンモニウムである。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、リン酸アンモニウムを含有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩及びアンモニウム塩を含有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、リン酸又はその塩及びアンモニウム塩を含有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、ペンテト酸又はその塩及びアンモニウム塩を含有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は少なくとも一つのpH調整剤をさらに含有し、pH調整剤は、アルギニン、ヒスチジン、グリシン等のアミノ酸、エチレンジアミン四酢酸、ペンテト酸、塩酸、リン酸又は硫酸等の酸、前記酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物(アルカリ)等から選択されてもよい。水酸化ナトリウム、塩酸、アンモニア水、リン酸、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。また、pH調整剤は、上記の二つ以上のアンモニウム塩を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相におけるエチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩の濃度は、1~300mMから選択され、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mM、200mM、205mM、210mM、215mM、220mM、225mM、230mM、235mM、240mM、245mM、250mM、255mM、260mM、265mM、270mM、275mM、280mM、285mM、290mM、295mM、300mM又は任意の2つの数値のうちの任意の値であってもよく、好ましくは、20~200mMである。
【0020】
別のいくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相における硫酸アンモニウムのようなアンモニウム塩の濃度は、10~400mMから選択され、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mM、200mM、205mM、210mM、215mM、220mM、225mM、230mM、235mM、240mM、245mM、250mM、255mM、260mM、265mM、270mM、275mM、280mM、285mM、290mM、295mM、300mM又は任意の2つの数値のうちの任意の値であってもよく、好ましくは、20~200mMである。
【0021】
本開示の活性化合物は、エリブリン又はその薬用可能な塩である。薬用可能な塩としては、無機酸塩、有機酸塩のいずれであってもよく、エリブリンと塩を形成すれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩が挙げられ、好ましくは、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩などであり、より好ましくは、メタンスルホン酸塩である。いくつかの実施形態において、前記活性化合物は、メタンスルホン酸エリブリンである。
【0022】
また、エリブリンの薬理学的に許容される塩としては、エリブリンとアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、亜鉛、ジエタノールアミンから形成する塩であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記活性化合物の濃度は、0.01~100mg/mLから選択され、0.01mg/mL、0.05mg/mL、0.10mg/mL、0.15mg/mL、0.20mg/mL、0.25mg/mL、0.30mg/mL、0.35mg/mL、0.40mg/mL、0.45mg/mL、0.50mg/mL、0.55mg/mL、0.60mg/mL、0.65mg/mL、0.70mg/mL、0.75mg/mL、0.80mg/mL、0.85mg/mL、0.90mg/mL、0.95mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、90mg/mL、95mg/mL、100mg/mL又は任意の2つの数値のうちの任意の値であってもよく、好ましくは、0.05~5mg/mLである。
【0024】
一方、本開示に記載のリポソーム内水相は、実質的にクエン酸を含有しない。実質的にクエン酸を含有しないとは、クエン酸を添加しないことを意味する。なお、例えばリポソーム封入率の安定性は、添加したクエン酸によるものではないことが確認できればよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩から選ばれる一つ又は複数及びアンモニウム塩を含有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンチル酸又はその塩から選ばれる一つ又は複数及び硫酸アンモニウムを含有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、エチレンジアミン四酢酸及びエチレンジアミン四酢酸アンモニウムを含有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、リン酸及びリン酸アンモニウムを含有する。
【0029】
一方、本開示のリポソームはリン脂質をさらに含み、前記リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(PLPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、水素添加卵黄レシチン(HEPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SPPC)、パルミトイルオレイルホスファチジルコリン(POPC)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルグリセロホスホグリセロール(DPPG)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン(DOPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DPPA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DOPA)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DMPA)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸(DSPA)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルイノシトール(DOPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)及びジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)のうちの少なくとも一つから選択されるが、これらに限定されない。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記リン脂質は、水素添加卵黄レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、リン酸コリン及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホクのうちの一つ又は複数から選択され、前記水素添加卵黄レシチンは、好ましくは、水素添加大豆ホスファチジルコリンである。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム中のリン脂質含有量(リポソーム膜成分全体に対するモル分率)は10~80%から選択され、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、好ましくは、30~70%である。
【0032】
一方、いくつかの実施形態において、前記リポソームはステロイドをさらに含み、コレステロール(CHOL)を含むが、これに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム中のステロイド含有量(リポソーム膜成分全体に対するモル分率)は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%又は任意の2つの数値のうちの任意の値から選択され、好ましくは、10~40%である。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記リポソームはリン脂質とコレステロールなどのステロイドを含有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは10~80%のリン脂質と1~60%のコレステロールなどのステロイドを含有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは、リン脂質、コレステロール及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール縮合物を含み、その内水相は、活性化合物であるエリブリン又はその薬用可能な塩、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩から選ばれる一つ又は複数及びアンモニウム塩を含有する。
【0037】
リポソーム膜材料に一つ又は一つ以上の親水性ポリマー脂質誘導体を添加することにより、リポソーム-カプセル化活性化合物のサイクル数を改善し、リポソーム組成物からの活性化合物の早期漏出を回避又は低減することができる。リポソームにPEGを付着させることはポリエチレングリコール化と呼ばれる。本開示の例示的な実施形態において、リポソームは、ポリエチレングリコール化リポソームである。前記親水性ポリマー修飾脂質物質としては、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルグリセロール(PEG-DSPG)、ポリエチレングリコール修飾コレステロール(PEG-CHOL)が含まれるが、これらに限定されない。PEGの分子量は200~10000ダルトンであり、好ましくは、1000~5000ダルトンであり、より好ましくは、2000~5000ダルトンである。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは親水性ポリマー修飾脂質物質をさらに含み、前記親水性ポリマー修飾脂質物質は、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルグリセロール(PEG-DSPG)、ポリエチレングリコール修飾コレステロール(PEG-CHOL)の一つ又は複数から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを含有する。いくつかの実施形態において、前記ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンにおけるポリエチレングリコールの分子量は200~10000ダルトンである。いくつかの実施形態において、前記ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンにおけるポリエチレングリコールの分子量は1000~5000ダルトンである。いくつかの実施形態において、前記ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンにおけるポリエチレングリコールの分子量は2000~5000ダルトンである。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンは、ポリエチレングリコール2000-ホスファチジルエタノールアミン(mPEG2000-DSPE)から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルグリセロールを含有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは、ポリエチレングリコール修飾コレステロールを含有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは、水素添加卵黄レシチン、コレステロール及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール縮合物を含有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは、水素添加大豆ホスファチジルコリン、コレステロール、及びポリエチレングリコール2000-ホスファチジルエタノールアミンを含有する。
【0045】
一方、いくつかの実施形態において、前記親水性ポリマー修飾脂質物質含有量(リポソーム膜成分全体に対するモル分率)は、0.1~50%から選択され、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、好ましくは、0.5~20%である。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記リポソームは、10~80%の水素添加卵黄レシチン、1~60%のコレステロール及び0~50%のジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール縮合物を含有する。
【0047】
一方、前記リポソーム中のリン脂質とステロイドとのモル比は、1:0.01~1:1から選択され、1:0.01、1:0.02、1:0.03、1:0.04、1:0.05、1:0.06、1:0.07、1:0.08、1:0.09、1:0.1、9:1、9:2、9:4、9:5、9:7、9:8、8:1、8:3、8:7、7:1、7:2、7:3、7:4、7:5、7:6、6:1、5:1、5:2、5:3、4:1、3:1、3:2、2:1、4:3、1:1又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、1:1~3:1であり、例えば3:2である。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム中のリン脂質と親水性ポリマー修飾脂質物質とのモル比は、20:1~1:1であり、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、10:1、10:1、10:1、9:1、9:2、9:4、9:5、9:7、9:8、8:1、8:3、8:7、7:1、7:2、7:3、7:4、7:5、7:6、6:1、5:1、5:2、5:3、4:1、3:1、3:2、2:1、4:3、1:1又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、好ましくは、15:1~2:1であり、例えば9.45:1である。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記活性成分と脂質との質量比(薬物脂質比)は、1:5~1:45から選択され、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:36、1:37、1:38、1:39、1:40、1:41、1:42、1:43、1:44、1:45、1:46、1:47、1:48、1:49、1:50又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、好ましくは、1:10~1:45であり、例えば1:27である。
【0050】
一方、本開示のリポソームは、多層膜胞(MLV)、大単層膜胞(LUV)、小単層膜胞、オリゴ層状膜胞(OLV)、疎層膜胞(PLV)又は逆相蒸発膜胞(REV)から選択される。
【0051】
一方、リポソームへのエリブリン又はその薬用可能な塩の封入率を向上させるために、電解質を含む溶液(塩系溶液)をリポソームの外相に添加してイオン強度を高めることができ、これにより封入率を向上させることができる。リポソームの外相に含まれる電解質(塩類)は特に限定されないが、好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウムであり、より好ましくは、塩化ナトリウムである。また、生理食塩水を使用することもできる。また、リポソーム分散液等のリポソーム外相としては、糖、電解質、及び/又はアミノ酸を含有してもよく、糖又は電解質、及びアミノ酸を含有してもよい。例として、糖はスクロース又はトレハロース又はグルコースから選択され、電解質は生理食塩水又は塩化ナトリウム又は塩化カリウムから選択され、アミノ酸はヒスチジンから選択されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム外相は、塩化ナトリウム及びヒスチジンを含有する。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム外相は、塩化ナトリウム及びスクロースを含有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム外相は、塩化ナトリウム、スクロース及びヒスチジンを含有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、リポソーム外相中の前記糖の濃度は2~20%から選択され、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、好ましくは、4~15%である。
【0056】
いくつかの実施形態において、リポソーム外相中の前記アミノ酸の濃度は1~300mMから選択され、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mM、200mM、205mM、210mM、215mM、220mM、225mM、230mM、235mM、240mM、245mM、250mM、255mM、260mM、265mM、270mM、275mM、280mM、285mM、290mM、295mM、300mM又は任意の2つの数値のうちの任意の値であってもよく、好ましくは、5~200mMである。
【0057】
本開示はまた、エチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩から選ばれる一つ又は複数の内水相を含むブランクリポソームを製造するステップ、ブランクリポソームの外水相中のエチレンジアミン四酢酸、リン酸、ペンテト酸又はその塩を除去するステップ、及びエリブリン又はその薬用可能な塩をブランクリポソーム内水相に導入するステップを含む前記リポソームの製造方法を提供する。
【0058】
さらに、製造されたリポソーム内水相はさらにアンモニウム塩を含有し、前記アミン塩は、硫酸アンモニウム、エチル硫酸アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム塩、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、グルカン硫酸アンモニウム又はトリエチルグルカン硫酸アンモニウムのうちの少なくとも一つであってもよく、好ましくは、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム又はエチレンジアミン四酢酸アンモニウムのうちの少なくとも一つであり、より好ましくは、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム又は硫酸アンモニウムである。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記リポソームの製造方法は、エチレンジアミン四酢酸又はその塩及びアンモニウム塩の内水相を含むブランクリポソームを製造するステップ、ブランクリポソームの外水相中のエチレンジアミン四酢酸又はその塩及びアンモニウム塩を除去するステップ、及びエリブリン又はその薬用可能な塩をブランクリポソーム内水相に導入するステップを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記リポソームの製造方法は、リン酸又はその塩及びアンモニウム塩の内水相を含むブランクリポソームを製造するステップ、ブランクリポソームの外水相中のリン酸又はその塩及びアンモニウム塩を除去するステップ、及びエリブリン又はその薬用可能な塩をブランクリポソーム内水相に導入するステップを含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記リポソームの製造方法は、ペンテト酸又はその塩及びアンモニウム塩の内水相を含むブランクリポソームを製造するステップ、ブランクリポソームの外水相中のペンテト酸又はその塩及びアンモニウム塩を除去するステップ、及びエリブリン又はその薬用可能な塩をブランクリポソーム内水相に導入するステップを含む。
【0062】
一方、本願の目的を実現するために、本開示は、薄膜分散法、逆相蒸発法、直接水和法、界面活性剤除去法、エタノール注入法及び改良エタノール注入法を用いてブランクリポソームを製造する。
【0063】
いくつかの実施形態において、エチレンジアミン四酢酸の内水相を含むブランクリポソームを製造するステップは、1)リポソーム水相溶液を調製すること、2)エタノール注入法によりリポソームを調製すること、3)ステップ2)のリポソーム溶液を置換又は希釈するステップを含む。
【0064】
一方、プローブ超音波、高圧ホモジナイザー、マイクロジェット、押出機等の装置を用いて処理し、所望の粒径のブランクリポソームを得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、脂質混合物を秤量してエタノールに溶解させ、この脂質エタノール溶液を前述のリポソーム水相溶液に注入し、攪拌し、エタノールを蒸発させ、押出機で押し出してブランクリポソームを得る。
【0066】
アンモニウム塩を含有する溶液中のアンモニウム塩の濃度は、エリブリン等の封入量に応じて適宜調整することができ、濃度が高いほどよく、好ましくは、10mM以上であり、より好ましくは、50mM以上であり、さらに好ましくは、100mM以上である。好ましくは、アンモニウム塩を含有する溶液のpHは、3、4、5、6、7、8、9又は任意の2つの数値のうちの任意の値であり、封入率と安定性とのバランスの観点から、より好ましくは、4~9であり、さらに好ましくは、5~8である。
【0067】
アンモニウム塩を含有する溶液のpHを調整するために、pH調整剤を使用することができる。アンモニウム塩を含有する溶液中の各pH調整剤の濃度は特に限定されないが、好ましくは、1~300mMであり、より好ましくは、5~100mMである。
【0068】
pH調整剤は、アルギニン、ヒスチジン、グリシン等のアミノ酸、エチレンジアミン四酢酸、塩酸、リン酸又は硫酸等の酸、前記酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物(アルカリ)等から選択されてもよい。水酸化ナトリウム、塩酸、アンモニア水、リン酸、ペンテト酸、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。また、pH調整剤は、上記の二つ以上のアンモニウム塩を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、pH調整剤は、ヒスチジン、リン酸、ペンテト酸、塩酸、硫酸、エチレンジアミン四酢酸、アンモニア水(アンモニア)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択される。いくつかの実施形態において、pH調整剤は、アルカリから選択され、アンモニア水(アンモニア)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択される。
【0070】
一方、本開示で製造されたリポソーム内水相は、実質的にクエン酸を含有しない。実質的にクエン酸を含有しないとは、クエン酸を添加しないことを意味する。なお、例えばリポソーム封入率の安定性は、クエン酸の添加によるものではないことが確認できればよい。
【0071】
また、リポソームの製造プロセスにおける各種パラメータ(例えば、膜成分の量、温度等)は、リポソームの製造方法又は目的とするリポソームの組成、粒径等に応じて適宜調整して決定することができる。
【0072】
一方、本開示の置換又は希釈操作は、透析、遠心分離、ゲル濾過等の方法により行うことができる。また、リポソーム外相を置換又は希釈することにより、エリブリン又はその薬用可能な塩をリポソーム内水相に効果的に封入することができる。
【0073】
透析、遠心分離、ゲル濾過は、いずれも当技術分野における従来の操作であり、例えば透析は透析膜を使用して行うことができる。透析膜はポリエーテルスルホン材質の膜を選択することができる。
【0074】
必要に応じて、エリブリン等をpH勾配を利用してリポソーム内水相に導入することもできる。この場合、リポソーム分散液中のリポソーム内水相のpHは、好ましくは、3~9であり、3、4、5、6、7、8、9又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含み、より好ましくは、4~9であり、さらに好ましくは、5~8である。
【0075】
また、リポソーム外相のpHをリポソーム内水相のpHより高く設定し、pH勾配を付与することができる。pH勾配は、好ましくは、1~5であり、より好ましくは、2~3である。
【0076】
さらに、リポソーム外相のpHをエリブリンのpKa付近にすることにより、リポソームへの封入率を高めることができる。好ましくは、7.5~12.5であり、より好ましくは、8.5~11.5であり、さらに好ましくは、9~10.5(メタンスルホン酸エリブリンのpKa=9.6)である。
【0077】
一方、本開示の前記リポソームの製造方法は、さらに、薬物担持後のリポソームの外部水相のpHを調整するステップを含む。調整された外相のpHは、特に限定されないが、リポソームを構成するリン脂質の化学的安定性の観点から、好ましくは、4~10であり、4、5、6、7、8、9、10又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含み、より好ましくは、5~9であり、さらに好ましくは、6~8の中性pHであり、例えばpH7.5である。
【0078】
一方、本開示のリポソームは、固体又は液体形態である。
【0079】
いくつかの実施形態において、リポソームが液体である場合、上記導入ステップによって得られたリポソーム組成物を直接に最終的なリポソームとすることができ、又は得られたリポソーム組成物のリポソーム外相を調整(置換等)することによって最終的なリポソームを得ることができる。
【0080】
別のいくつかの実施形態において、リポソームは固体である場合、上記導入ステップによって得られたリポソーム組成物を乾燥(凍結乾燥を含むがこれに限定されない)することによって最終的な固体リポソームとすることができる。リポソーム組成物を乾燥させる方法は、凍結乾燥及び噴霧乾燥等を含むが、これらに限定されない。
【0081】
本開示はまた、前記リポソームを含有する医薬組成物、又は前記リポソームから製造された医薬組成物を提供する。さらに、前記医薬組成物は緩衝液をさらに含有し、前記緩衝液は、好ましくは、酢酸塩緩衝液又はヒスチジン緩衝液又はリン酸塩緩衝液又はコハク酸塩緩衝液又は4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸塩緩衝液のうちの少なくとも一つから選択され、より好ましくは、ヒスチジン緩衝液又はリン酸塩緩衝液(例えば、PBS)又は4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸塩緩衝液(例えば、HEPES)のうちの少なくとも一つから選択され、例えばヒスチジン緩衝液である。
【0082】
「緩衝液」とは、その酸-アルカリ共役成分の作用によりpH変化に耐える緩衝液を意味する。pHを適切な範囲に制御する緩衝液の例としては、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリチルリジン及びその他の有機酸緩衝液が挙げられる。
【0083】
「ヒスチジン緩衝液」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝液である。ヒスチジン緩衝液の例としては、ヒスチジン-塩酸塩、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩などの緩衝液が挙げられ、好ましいヒスチジン緩衝液はヒスチジン-塩酸塩緩衝液である。ヒスチジン-塩酸塩緩衝液は、ヒスチジンと塩酸又はヒスチジンとヒスチジン塩酸塩とを配合して得られる。
【0084】
「コハク酸塩緩衝液」は、コハク酸イオンを含む緩衝液である。コハク酸塩緩衝液の例としては、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸ヒスチジン塩、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウム塩等が挙げられる。好ましいコハク酸塩緩衝液は、コハク酸-コハク酸ナトリウム緩衝液である。
【0085】
「リン酸塩緩衝液」は、リン酸イオンを含む緩衝液である。リン酸塩緩衝液の例としては、リン酸水素二ナトリウム酸-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム酸-リン酸二水素カリウム等が挙げられる。好ましいリン酸塩緩衝液は、リン酸水素二ナトリウム酸-リン酸二水素ナトリウム緩衝液である。
【0086】
「酢酸塩緩衝液」は、酢酸イオンを含む緩衝液である。酢酸塩緩衝液の例としては、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸ヒスチジン塩、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウム等が挙げられる。好ましい酢酸塩緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0087】
一方、本開示の医薬組成物は、糖又は電解質をさらに含有する。
【0088】
例として、糖はスクロース又はトレハロース又はグルコースから選択され、電解質は生理食塩水又は塩化ナトリウム又は塩化カリウムから選択され、アミノ酸はヒスチジンから選択されてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、塩化ナトリウム及びヒスチジンをさらに含有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、塩化ナトリウム及びスクロースをさらに含有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、塩化ナトリウム、スクロース及びヒスチジンをさらに含有する。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、生理食塩水及びスクロースを含有する。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、生理食塩水、スクロース及びヒスチジンを含有する。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記糖の濃度は2~20%から選択され、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%又は任意の2つの数値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、好ましくは、4~15%である。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記アミノ酸の濃度は1~300mMから選択され、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、185mM、190mM、195mM、200mM、205mM、210mM、215mM、220mM、225mM、230mM、235mM、240mM、245mM、250mM、255mM、260mM、265mM、270mM、275mM、280mM、285mM、290mM、295mM、300mM又は任意の2つの数値のうちの任意の値であってもよく、好ましくは、5~200mMである。
【0096】
また、医薬組成物のpHは、薬物の安定性に影響を与える。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物のpHは5.0~8.0から選択され、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0又は任意の2つの値のうちの任意の値を含むが、これらに限定されなく、好ましくは、5.5~7.5である。
【0097】
一方、本開示に記載の医薬組成物は抗酸化剤をさらに含有し、前記抗酸化剤は、α-トコフェロール、α-トコフェロール酸コハク酸エステル、α-酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、L-システインから選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗酸化剤の添加量は0~0.5%であり、0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%を含むが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態において、医薬組成物が液体製剤である場合、上記導入ステップによって得られたリポソーム組成物を直接に最終的なリポソーム組成物(医薬組成物)とすることができ、又は得られたリポソーム組成物のリポソーム外相を調整(置換等)することによって最終的なリポソーム組成物(医薬組成物)を得ることができる。
【0099】
別のいくつかの実施形態において、医薬組成物が固体製剤である場合、上記導入ステップによって得られたリポソーム組成物を乾燥させることによって最終的な固体リポソーム組成物(医薬組成物)とすることができる。リポソーム組成物を乾燥させる方法は、凍結乾燥及び噴霧乾燥等を含むことができるが、これらに限定されない。
【0100】
一方、医薬組成物は固体製剤であり、医薬組成物は適切な溶媒に溶解又は懸濁させることにより、液体製剤として使用することができる。溶媒は、リポソーム組成物の使用目的等に応じて適宜設定することができ、例えば、医薬組成物を注射剤とする場合、溶媒は滅菌蒸留水であることが好ましい。
【0101】
本開示はまた、前記医薬組成物を凍結乾燥させて得られ、又は前記凍結乾燥組成物を液体媒体に再溶解させて得る医薬組成物であって、ここで、前記再溶解に用いられる液体媒体が生理食塩水、注射用水、グルコース注射液又はグルコース塩化ナトリウム注射液から選択される凍結乾燥組成物を提供する。
【0102】
一方、本開示のリポソーム/医薬組成物/凍結乾燥組成物は、保存中にかなり安定である。例えば、本開示のリポソームの最初の装填からの所定期間後に、リポソームの外部に放出された担持/封入された活性成分と、リポソームの内部に保持されたままの活性成分との百分率によって測定される。いくつかの実施形態において、本開示のリポソーム/医薬組成物は少なくとも3ヶ月間25℃で安定化し、例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、少なくとも70%の前記活性成分が前記リポソーム内に封入されたままである。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、少なくとも75%の前記活性成分が前記リポソーム内に封入されたままである。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、少なくとも80%の前記活性成分が前記リポソーム内に封入されたままである。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、少なくとも85%の前記活性成分が前記リポソーム内に封入されたままである。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、少なくとも90%の前記活性成分が前記リポソーム内に封入されたままである。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、少なくとも95%又はそれ以上の前記活性成分が前記リポソーム内に封入されたままである。
【0103】
一方、例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、10%以下の封入/封かんされた活性成分が放出される。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、15%以下の封入/封かんされた活性成分が放出される。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、20%以下の封入/封かんされた活性成分が放出される。例えば、活性成分の最初の装填後25℃、3ヶ月間、30%以下の封入/封かんされた活性成分が放出される。
【0104】
いくつかの実施形態において、本開示のリポソーム/医薬組成物/凍結乾燥組成物は2~8℃で少なくとも3ヶ月間安定化し、例えば、実体の最初の装填後6ヶ月間、10%以下の封入された実体が放出される。いくつかの実施形態において、本開示のリポソーム/医薬組成物は4℃で少なくとも2年間安定化し、例えば、実体の最初の装填後2年間、20%以下の封入された実体が放出される。
【0105】
例えば、リポソーム抗腫瘍薬物をヒトなどの哺乳動物に投与する場合、リポソームが腫瘍に到達するまで、リポソームに封入された実体はリポソーム中に封入を維持することが有利である。生体内条件下では、例えばヒト血液などの哺乳動物において、本発明のリポソーム/医薬組成物/凍結乾燥組成物は、封入された活性成分の放出(漏出)に対して驚くべき安定性を示す。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記リポソーム/医薬組成物/凍結乾燥組成物中の活性成分は、哺乳動物において12時間以上の薬物の持続放出を提供し、好ましくは、24時間以上の薬物の持続放出を提供し、より好ましくは、48時間以上の薬物の持続放出を提供し、最も好ましくは、72時間以上の薬物の持続放出を提供する。
【0107】
本開示のリポソームは、封入/封かんされた活性成分の治療効果を向上させるだけでなく、活性成分の毒性を低下させる。一般に、本発明のリポソームにカプセル化/封かんされた活性成分の哺乳動物における活性、例えば、メタンスルホン酸エリブリンの抗腫瘍活性は、エリブリン注射液(Halaven)などの従来の非リポソーム製剤を同量で通過する場合と比較し、少なくとも同等、少なくとも2~20倍(2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20倍を含む)増加し、リポソームにカプセル化/封かんされた活性成分の毒性は、エリブリン注射(Halaven)などの従来の非リポソーム製剤を同量で通過する場合と比較し、少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも4倍減少する。
【0108】
本開示のリポソーム/医薬組成物は様々な方法で投与することができ、局所投与、胃腸外投与等を含むが、これらに限定されない。前記組成物は、眼科用剤形及び注射可能剤形を含んでもよく、医療診断用製品を含んでもよい。
【0109】
一方、本開示はまた、腫瘍の治療又は予防のための薬物の製造における、前記のリポソーム/医薬組成物/凍結乾燥組成物又は前記の方法によって得られたリポソーム/医薬組成物/凍結乾燥組成物の使用を提供し、ここで、前記癌は好ましくは、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、前立腺癌、腎癌、尿道癌、膀胱癌、肝臓癌、胃癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、膵臓癌及びリンパ腫である。
【0110】
用語:
【0111】
薬物脂質比とは、薬物とリン脂質の重量比を指す。
【0112】
ステロイド含有量などの脂質含有量とは、そのリポソーム二分子層中のリン脂質成分の総モル数の百分率を指す。
【0113】
リポソームとは、二重リン脂質又は何らかの類似の封入された内部水性媒体を有する両性脂質からなる脂質膜微小胞を指す。本開示のリポソームは、多層膜胞(MLV)、大単層膜胞(LUV)、小単層膜胞であってもよい。サイズは、通常、30mM~200mMである。また、本開示におけるリポソーム膜構造は特に限定されない。
【0114】
リポソーム膜とは、内部水性媒体と外部水性媒体を分離する二重リン脂質を指す。
【0115】
リポソーム内水相とは、リポソームの脂質二重層で囲まれた水性領域を指し、「内水相」及び「リポソーム内水相」の同じ意味で使用される。リポソームが液体中に分散される場合、「リポソーム外相」とは、リポソームの脂質二重層で囲まれない領域(即ち、内水相及び脂質二重層を除く領域)を指す。
【0116】
リポソーム組成物とは、リポソームを含有し、かつリポソーム内水相中にメタンスルホン酸エリブリンをさらに含有する組成物を指す。本開示において、リポソーム組成物は、固体及び液体を含む。
【0117】
ブランクリポソームとは、リポソーム内水相に、本開示のエリブリンのような装填されるべき活性成分が含まないことを指す。
【0118】
封入率とは、封入された物質(例えば、薬物)がリポソーム懸濁液中の薬物総量に占める百分量を指す。これはリポソームとナノ粒子の品質管理の重要な指標であり、薬物が担体にどの程度封入されているかを示している。
【0119】
封入率には封入百分率と封入容積の測定が含まれ、一般文献では主に封入百分率(Encapsulation percentage、EN%)が考察されている。式はEN%=(1-Cf/Ct)×100%である。式中のCfは遊離薬物の量であり、Ctはリポソーム懸濁液中の薬物の総量である。
【0120】
【0121】
封入率は、HPLC法など、従来の封入率の測定方法を用いて測定することができる。いくつかの実施形態において、HPLC条件:カラムODS-A、150×4.6mm、5μm;移動相 メタノール-酢酸-トリエチルアミン;流速 1.0mL/min;カラム温度 25℃;注入量 20μL。
【0122】
本開示における「ポリマー分子量」とは、数平均分子量を用い、サンプル中の全ての重合鎖分子量の統計平均値を指し、その定義が以下の通りであり、ここで、Miは一本鎖分子量を表し、Niは対応する分子量を有する鎖数を表す。Mnは、重合機構によって予測され、与えられた質量のサンプル中の分子数を測定することによって決定され、例えば末端基分析などの依存的な方法である。分子量分布をMnで特徴付けると、Mnの両側に同数の分子が分布している。
【0123】
本開示において、封入率などの数値は測定によって計算されたデータであり、ある程度の誤差は避けられない。一般的に、プラスマイナス10%は合理的な誤差の範囲内に属している。使用する文脈によってある程度の誤差変化があり、この誤差変化はプラスマイナス10%を超えず、プラスマイナス9%、プラスマイナス8%、プラスマイナス7%、プラスマイナス6%、プラスマイナス5%、プラスマイナス4%、プラスマイナス3%、プラスマイナス2%又はプラスマイナス1%であってもよく、好ましくは、プラスマイナス5%である。
【発明を実施するための形態】
【0124】
実施例1:
処方 使用量
HSPC 1215mg
CHOL 398.09mg
mPEG2000-DSPE 460.29mg
メタンスルホン酸エリブリン 45mg
【0125】
上記処方量の脂質混合物を秤量して無水エタノールに加え、60℃で溶解させた後、脂質エタノール溶液をリポソーム内水相溶液(300mM硫酸アンモニウム/60mMクエン酸)に注入し、15分~30分撹拌し、減圧下でエタノールを除去し、押出機で全粒を押出してブランクリポソームを得た。
【0126】
180mLの0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン緩衝液(pH=7.5)によるブランクリポソーム透析(タンジェンシャルフローろ過)に使用し、外水相中の硫酸アンモニウムの大部分が除去された後、水酸化ナトリウムを使用してリポソームの外水相のpHを10.5に調整した。
【0127】
処方量のメタンスルホン酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液(pH7.5)で溶解させ、攪拌溶解させ、5mg/mLのメタンスルホン酸エリブリン溶液を得た。
【0128】
上記ブランクリポソーム(外水相のpH10.5)とメタンスルホン酸エリブリン溶液を混合し、60℃でインキュベートすることにより、メタンスルホン酸エリブリンをリポソームに導入し、リポソーム外水相pHを7.5に調整し、濃縮し、定容した。
【0129】
封入率の測定:
活性成分を封入したリポソームを13000rpmで10~30分間遠心分離し、HPLCを用いて上清液中の活性成分濃度を測定し、封入率公式により相応の数値を計算した。メタンスルホン酸エリブリンの封入率は95.70%であった。
【0130】
実施例2:
処方 使用量
HSPC 1215mg
CHOL 398.09mg
mPEG2000-DSPE 460.29mg
メタンスルホン酸エリブリン 45mg
【0131】
上記処方量の脂質混合物を秤量して無水エタノールに加え、60℃で溶解させた後、脂質エタノール溶液をリポソーム内水相溶液(300mM硫酸アンモニウム/60mMエチレンジアミン四酢酸)に注入し、15分~30分撹拌し、減圧下でエタノールを除去し、押出機で全粒を押出してブランクリポソームを得た。
【0132】
180mLの0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン緩衝液(pH=7.5)によるブランクリポソーム透析(タンジェンシャルフローろ過)に使用し、外水相中の硫酸アンモニウムの大部分が除去された後、水酸化ナトリウムを使用してリポソームの外水相のpHを10.5に調整した。
【0133】
処方量のメタンスルホン酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液(pH7.5)で溶解させ、攪拌溶解させ、5mg/mLのメタンスルホン酸エリブリン溶液を得た。
【0134】
上記ブランクリポソーム(外水相のpH10.5)とメタンスルホン酸エリブリン溶液を混合し、60℃でインキュベートすることにより、メタンスルホン酸エリブリンをリポソームに導入し、リポソーム外水相pHを7.5に調整し、濃縮し、定容した。
【0135】
封入率の測定:
メタンスルホン酸エリブリンの封入率は96.85%であった。
【0136】
実施例3:
処方 使用量
HSPC 1215mg
CHOL 398.09mg
mPEG2000-DSPE 460.29mg
メタンスルホン酸エリブリン 45mg
【0137】
上記処方量の脂質混合物を秤量して無水エタノールに加え、60℃で溶解させた後、脂質エタノール溶液をリポソーム内水相溶液(300mM硫酸アンモニウム/60mMリン酸)に注入し、15分~30分撹拌し、減圧下でエタノールを除去し、押出機で全粒を押出してブランクリポソームを得た。
【0138】
180mLの0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン緩衝液(pH=7.5)によるブランクリポソーム透析(タンジェンシャルフローろ過)に使用し、外水相中の硫酸アンモニウムの大部分が除去された後、水酸化ナトリウムを使用してリポソームの外水相のpHを10.5に調整した。
【0139】
処方量のメタンスルホン酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液(pH7.5)で溶解させ、攪拌溶解させ、5mg/mLのメタンスルホン酸エリブリン溶液を得た。
【0140】
上記ブランクリポソーム(外水相のpH10.5)とメタンスルホン酸エリブリン溶液を混合し、60℃でインキュベートすることにより、メタンスルホン酸エリブリンをリポソームに導入し、リポソーム外水相pHを7.5に調整し、濃縮し、定容した。
【0141】
封入率の測定:
メタンスルホン酸エリブリンの封入率は99.46%であった。
【0142】
実施例4:
処方 使用量
HSPC 1215mg
CHOL 398.09mg
mPEG2000-DSPE 460.29mg
メタンスルホン酸エリブリン 45mg
【0143】
上記処方量の脂質混合物を秤量して無水エタノールに加え、60℃で溶解させた後、脂質エタノール溶液をリポソーム内水相溶液(300mM硫酸アンモニウム/60mM酒石酸)に注入し、15分~30分撹拌し、減圧下でエタノールを除去し、押出機で全粒を押出してブランクリポソームを得た。
【0144】
180mLの0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン緩衝液(pH=7.5)によるブランクリポソーム透析(タンジェンシャルフローろ過)に使用し、外水相中の硫酸アンモニウムの大部分が除去された後、水酸化ナトリウムを使用してリポソームの外水相のpHを10.5に調整した。
【0145】
処方量のメタンスルホン酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液(pH7.5)で溶解させ、攪拌溶解させ、5mg/mLのメタンスルホン酸エリブリン溶液を得た。
【0146】
上記ブランクリポソーム(外水相のpH10.5)とメタンスルホン酸エリブリン溶液を混合し、60℃でインキュベートすることにより、メタンスルホン酸エリブリンをリポソームに導入し、リポソーム外水相pHを7.5に調整し、濃縮し、定容した。
【0147】
封入率の測定:
メタンスルホン酸エリブリンの封入率は94.92%であった。
【0148】
実施例5:
処方 使用量
HSPC 1215mg
CHOL 398.09mg
mPEG2000-DSPE 460.29mg
メタンスルホン酸エリブリン 45mg
【0149】
上記処方量の脂質混合物を秤量して無水エタノールに加え、60℃で溶解させた後、脂質エタノール溶液をリポソーム内水相溶液(300mM硫酸アンモニウム/60mMアコニット酸)に注入し、15分~30分撹拌し、減圧下でエタノールを除去し、押出機で全粒を押出してブランクリポソームを得た。
【0150】
180mLの0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン緩衝液(pH=7.5)によるブランクリポソーム透析(タンジェンシャルフローろ過)に使用し、外水相中の硫酸アンモニウムの大部分が除去された後、水酸化ナトリウムを使用してリポソームの外水相のpHを10.5に調整した。
【0151】
処方量のメタンスルホン酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液(pH7.5)で溶解させ、攪拌溶解させ、5mg/mLのメタンスルホン酸エリブリン溶液を得た。
【0152】
上記ブランクリポソーム(外水相のpH10.5)とメタンスルホン酸エリブリン溶液を混合し、60℃でインキュベートすることにより、メタンスルホン酸エリブリンをリポソームに導入し、リポソーム外水相pHを7.5に調整し、濃縮し、定容した。
【0153】
封入率の測定:
メタンスルホン酸エリブリンの封入率は98.02%であった。
【0154】
試験例1:
前記実施例1~5で得られたサンプルをそれぞれ2~8℃又は25℃の条件下に置いてその封入率の安定性を調べ、関連するデータは以下の表に示す。
【0155】
【0156】
試験例2:
前記実施例1~5で得られたサンプルをそれぞれ2~8℃又は25℃の条件下に置いてその含有量を調べ、関連するデータは以下の表2に示す。
【0157】
【0158】
結論:
表2から、異なる成分のリポソームの含有量の安定性はすべて良好であることがわかった。体外保存期間中、リポソームから薬物が放出されるかどうかの方が重要である。表1からわかるように、リン酸又はエチレンジアミン四酢酸を含有する内水相の封入率の安定性は、クエン酸又は酒石酸又はアコニット酸を含有する内水相のリポソームに比べて優れており、特に加速条件(25℃)でこのタイプのリポソームを含有する組成物は長期保存に適し、保存条件が温和であると予想されている。
【0159】
実施例6:
実施例1の方法を参照し、以下の表3に示す医薬組成物(リポソーム)A、B、C及びDを製造した。メスBalb/cヌードマウス(北京維通利華実験動物技術有限公司)の右側背部に腫瘍細胞(ヒト咽頭鱗癌細胞FaDu)を皮下接種した。
【0160】
試薬:
医薬組成物(リポソーム)A、B、C及びD、メタンスルホン酸エリブリン注射液(自家製)
【0161】
投与方法:
週1回、0.15mg/mL×10mL静脈内投与した。
【0162】
投与後、所定時間(0.5h、2h、6h、24h、48h)後に血液を採取する又は腫瘍組織を摘出した。血液サンプルは、採取後1時間以内に遠心分離し(遠心条件:2~8℃で約11000rpmで5分間遠心分離)、採取後最初は氷上に置くことができ、長期保存の場合は-80℃の冷蔵庫に置いた。腫瘍組織摘出後、PBSで洗浄後、吸水紙で拭き取った後、組織重量を測定して記録した。組織を試験管に入れ、氷水で冷却した後、分析のために-80℃で保存した。
【0163】
LC/MSを用いて血漿中及び腫瘍組織中のメタンスルホン酸エリブリンの量を測定した。
【0164】
メタンスルホン酸エリブリンの血漿PKデータ及び腫瘍組織PKデータの結果をそれぞれ表4及び5に示す。
【0165】
【0166】
【0167】
比率:
AUCリポソーム/AUCメタンスルホン酸エリブリン注射液
【0168】
【0169】
比率:
AUCリポソーム/AUCメタンスルホン酸エリブリン注射液
【0170】
結論:
メタンスルホン酸エリブリンと比べ、薬物組成物A、B、Cは血漿と腫瘍組織におけるAUCが増加し、放出の半周期が有意に改善された。一方、腫瘍組織においては、クエン酸を内水相とするリポソームと比べ、医薬組成物A、BのCmaxがより優れており、AUCリポソーム/AUCメタンスルホン酸エリブリン注射液がより高かった。
【国際調査報告】