(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】集電器のための接触部材
(51)【国際特許分類】
B60L 5/36 20060101AFI20230703BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20230703BHJP
B60L 5/38 20060101ALI20230703BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20230703BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230703BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20230703BHJP
【FI】
B60L5/36
B60M7/00 U
B60L5/38 A
B60L53/14
H02J7/00 P
B60L50/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573755
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021064526
(87)【国際公開番号】W WO2021245017
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521543163
【氏名又は名称】エロンロード、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】ELONROAD AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】ダン、ゼスラエウス
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB01
5G503CC02
5G503FA06
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105DD03
5H105DD12
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125FF11
(57)【要約】
電気道路車両(10)の集電器(200)のための接触部材(100)であって、且つ、前記集電器(200)のアーム(202)の第1端部(204)に取り付けられるように構成された接触部材(100)であって、支持構造(102)と、編組ストリップ(106、108)を備えた導電性ピックアップ(104)であって、前記支持構造(102)に取り付けられた導電性ピックアップ(104)と、を備える接触部材(100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気道路車両(10)の集電器(200)のための接触部材(100)であって、且つ、前記集電器(200)のアーム(202)の第1端部(204)に取り付けられるように構成された接触部材(100)であって、
支持構造(102)と、
編組ストリップ(106、108)を備えた導電性ピックアップ(104)であって、且つ、前記支持構造(102)に取り付けられた導電性ピックアップ(104)であって、電気道路軌道(20)と接点を確立して、前記電気道路軌道(20)から電力を導電的にピックアップするように構成された、導電性ピックアップ(104)と、
を備える接触部材(100)。
【請求項2】
前記編組ストリップ(106、108)は、前記導電性ピックアップ(104)が導電的に電力をピックアップするように構成された前記電気道路軌道(20)に対して、幅方向に延長部を有する、
請求項1に記載の接触部材(100)。
【請求項3】
前記導電性ピックアップ(104)は、複数の編組ストリップ(106、108)の積層体を備える、
請求項1または2に記載の接触部材(100)。
【請求項4】
前記積層体における編組ストリップ(106、108)の第1編組ストリップ(106)は、第1導電性材料から形成され、前記積層体における編組ストリップ(106、108)の第2編組ストリップ(108)は、第2導電性材料から形成される、
請求項3に記載の接触部材(100)。
【請求項5】
前記積層体の層は、前記導電性ピックアップ(104)が導電的に電力をピックアップするように構成された前記電気道路軌道(20)に対して平行な方向に、相対的に互いにオフセットして配置され、前記積層体の各層は、複数の編組ストリップ(106、108)のうち1つを備える、
請求項3または4に記載の接触部材(100)。
【請求項6】
前記導電性ピックアップ(104)の前記編組ストリップ(106、108)におけるスレッドは、金属とグラフェンを含む複合材料を含む、
請求項1-5のいずれか一項に記載の接触部材(100)。
【請求項7】
前記導電性ピックアップ(104)の前記編組ストリップ(106、108)は、第1導電性材料から形成されるスレッドと第2導電性材料から形成されるスレッドを備える、
請求項1-6のいずれか一項に記載の接触部材(100)。
【請求項8】
前記第1導電性材料はステンレス鋼を含み、前記第2導電性材料は銅およびアルミニウムのうち1つ以上を含む、
請求項4または7に記載の接触部材(100)。
【請求項9】
前記第1編組ストリップ(106)は、前記複数の編組ストリップ(106、108)の最も外側に配置されている、
請求項4に従属する場合の請求項8に記載の接触部材(100)。
【請求項10】
前記支持構造(102)は、弾性部材(112)を備え、
前記導電性ピックアップ(104)は、前記弾性部材に取り付けられている、
請求項1-9のいずれか一項に記載の接触部材(100)。
【請求項11】
前記弾性部材(112)は、ばね鋼から形成される、
請求項10に記載の接触部材(100)。
【請求項12】
前記弾性部材(112)は、複数の舌状部を備え、
前記導電性ピックアップ(104)は、前記複数の舌状部の先端に取り付けられている、
請求項10または11に記載の接触部材(100)。
【請求項13】
前記導電性ピックアップ(104)の厚み(T1)は、2mmから70mmの範囲内である、
請求項1-12のいずれか一項に記載の接触部材(100)。
【請求項14】
前記積層体における各層の厚み(T2)は、1mmから10mmの範囲内である、
請求項3に記載の接触部材(100)。
【請求項15】
前記導電性ピックアップ(104)の高さ(H)は、10mmから70mmの範囲内である、
請求項1-14のいずれか一項に記載の接触部材(100)。
【請求項16】
編組ストリップ(100)を前記支持構造(102)に取り外し可能に取り付けるように構成された、取り外し可能な取り付け要素(122)、
をさらに備える請求項1-15のいずれか一項に記載の接触部材(100)。
【請求項17】
請求項1-16のいずれか一項に記載の接触部材(100)を備える集電器(200)。
【請求項18】
請求項17に記載の集電器(200)を備えた電気車両(10)であって、
前記集電器(200)は、前記電気車両(10)のシャシ(12)に取り付けられている、
電気車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車両への電力供給に関し、より具体的には、電気車両用集電器の接触部材、電気車両用集電器および集電器を備える電気車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料によって駆動される車両が徐々に廃止されていく中で、電気車両はますます一般的になっている。電気車両は、一般的に、走行および走行に伴う物流の環境への負荷を低減するという点で、メリットがある。しかし、人および物の両方の道路での輸送を、従来の化石燃料で走る車両から電気車両に移行することは、電気車両に電力を供給するためのインフラに大きな要求を課す。
【0003】
電気車両を充電可能な充電ステーションの数が増えてきている。しかし、充電ステーションでの電気車両の充電は比較的時間がかかり、例えば輸送車の場合、現実的な選択肢ではない場合がある。登場した充電ステーションの代替または補完は、車両が移動している間に電力を供給できる電気道路軌道である。これは、例えば、車両のバッテリのサイズを縮小できる、バッテリを再充電するために充電ステーションに停止する必要性を減らす、および、電気車両の航続距離を向上させるといったメリットを提供する。
【0004】
電気道路軌道から電気車両への導電性の電力伝送は、電気道路軌道との電気的接続を確立するために電気道路軌道と接触するように配置された車両の集電器を必要とする。しかし、集電器と電気道路軌道との間の相対的な動きと、両者の間の摩擦は、摩耗を伴う特定の問題を引き起こす。したがって、電気道路軌道から車両に電力を供給するデバイスの製造者は、電気道路軌道と電気車両との間のインターフェースの信頼性および耐久性を向上させるために絶えず努力している。
【発明の概要】
【0005】
上記を考慮して、本発明の目的は、接触部材、集電器および先行技術の解決策における問題のいくつかを低減する集電器を備えた車両を提供することである。
【0006】
より具体的には、本明細書の教示によれば、電気道路車両の集電器のための接触部材が提供される。前記接触部材は、前記集電器のアームの第1端部に取り付けられるように構成されている。前記接触部材は、支持構造と、編組ストリップを備えた導電性ピックアップであって、且つ、前記支持構造に取り付けられた導電性ピックアップであって、電気道路軌道から電力を導電的にピックアップするために、前記電気道路軌道と接点を確立するように構成された、導電性ピックアップを備える。
【0007】
前記編組ストリップは、前記導電性ピックアップが導電的に電力をピックアップするように構成された前記電気道路軌道に対して、幅方向に延長部を有してもよく、前記車両が前記電気道路軌道に沿って移動するときに、前記接触部材と前記電気道路軌道との間の導電性接触が維持されるように制御することを容易にする。したがって、前記電気道路軌道の延長線によって画定される経路からの前記車両の最終的なずれの一部は、前記編組ストリップの前記幅方向の延長部によって補償され得る。
【0008】
前記導電性ピックアップは、複数の編組ストリップの積層体を備えていてもよい。前記積層体は、前記積層体内に配置された1から14の編組ストリップを備えていてもよい。
【0009】
前記積層体における編組ストリップの第1編組ストリップは、第1導電性材料から形成されてもよく、前記積層体における編組ストリップの第2編組ストリップは、第2導電性材料から形成されてもよい。前記第1導電性材料は銅でもよく、前記第2導電性材料はステンレス鋼でもよい。前記積層体において、異なる導電性材料形成される編組ストリップを配置することは、接触部材の耐摩耗性を向上させつつ、接触部材の所望の導電性特性を維持するという点で有益である。したがって、編組ストリップは、さらに、交互に配置されていてもよい。第1編組ストリップと第2編組ストリップとの交互配置は、高い耐久性および向上された耐摩耗性を有しつつ、十分に低い電気抵抗、したがって高い導電性を提供する接触部材を提供することができる。
【0010】
前記積層体の層は、前記導電性ピックアップが電力を導電的にピックアップするように構成される前記電気道路軌道に対して平行な方向に、相対的に互いにオフセットして配置されてもよく、前記積層体の各層は、複数の編組ストリップのうち1つを備えていてもよい。前記積層体の前記層の前記オフセット配置は、各層が好ましくは編組ストリップを備え、前記層のそれぞれと前記電気道路軌道との間の接触を容易にする。したがって、摩耗が、前記積層体の前記層のそれぞれに分散され、一方で、前記接触部材と前記電気道路軌道との間の接触の表面積は増加する。
【0011】
前記導電性ピックアップの前記編組ストリップにおけるスレッドは、金属とグラフェンを含む複合材料を含んでもよく、前記金属/グラフェン複合材料は、高い導電性、高い耐摩耗性および低い重量を提供する。
【0012】
前記導電性ピックアップの前記編組ストリップは、第1導電性材料から形成されるスレッドおよび第2導電性材料から形成されるスレッドを備えていてもよい。異なる導電性材料のスレッドを編んで/絡めて編組ストリップを形成することは、前記編組ストリップの所望の特性を調整することを容易にする。
【0013】
前記第1導電性材料はステンレス鋼を含んでもよく、前記第2導電性材料は銅およびアルミニウムのうち1つ以上を含んでもよい。
【0014】
第1編組ストリップは、複数の編組ストリップの最も外側に配置されていてもよい。前記編組ストリップは、ステンレス鋼を含む導電性材料から形成され、高い耐摩耗性および耐久性を提供する。前記最も外側の編組ストリップ前記車両の進行方向に対して最初に配置されるストリップ、即ち、前記電気道路軌道上に存在し得る汚れ、小石等のあらゆるデブリに最小に遭遇する編組ストリップである。耐久性の高い第1編組ストリップが最も外側に配置された導電性ピックアップを提供することで、均一に摩耗し、全体的な耐久性が改善された接触部材を提供することが容易になる。
【0015】
前記支持構造は、弾性部材を備えてもよく、前記導電性ピックアップは、前記弾性部材に取り付けられていてもよい。前記弾性部材は、前記導電性ピックアップによって、前記電気道路軌道上に均一な接触圧力を確立することを容易にする。したがって、摩耗は前記導電性ピックアップにわたって均一に分散され得、接触面積が増加するにつれて、導電性が改善される。
【0016】
前記弾性部材は、ばねから形成されてもよい。前記ばね鋼は、鋼および/またはステンレス鋼を含んでもよい。
【0017】
前記弾性部材は、複数の舌状部を備えていてもよく、前記導電性ピックアップは、前記複数の舌状部の先端に取り付けられていてもよい。前記舌状部は、弾性的に互いに独立して移動することができ、したがって、前記導電性ピックアップを前記電気道路軌道の形状に適合させることができる。したがって、前記導電性ピックアップから前記電気道路軌道への力は、接点全体で均一になり、摩耗を低減させ分散させるとともに、大きな接点の表面積によって、良好な電気伝導を提供する。
【0018】
前記導電性ピックアップの厚みは、2mmから70mmの範囲内であってもよい。
【0019】
前記積層体における各層の厚みは、1mmから10mmの範囲内であってもよい。
【0020】
前記導電性ピックアップの高さは、10mmから70mmの範囲内であってもよい。
【0021】
前記接触部材は、編組ストリップを前記支持構造に取り外し可能に取り付けるように構成された、取り外し可能な取り付け要素をさらに備えていてもよい。したがって、前記編組ストリップは、例えば摩耗したときに、容易に交換することができる。
【0022】
第2の態様では、第1の態様に係る接触部材を備える集電器が提供される。
【0023】
第3の態様では、第2の態様に係る集電器を備えた電気道路車両が提供され、前記集電器は、前記電気道路車両のシャシに取り付けられている。
【0024】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書において別途定義されていない限り、技術分野における通常の意味にしたがって解釈されるべきである。特に別途明記されていない限り、1つの(a/an)/前記(the)[要素(element)、デバイス(device)、部分(component)、手段(means)、ステップ(step)など]への全ての言及は、前記(said)要素、前記(said)デバイス、前記(said)部分、前記(said)手段、前記(said)ステップなどのうち少なくとも1つの例を言及するものとして、公然と解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明記されていない限り、開示された正確な順序で実行される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の上記および追加の観点、特徴ならびに利点が、添付図面を参照した、本発明の好ましい実施形態の以下の例示的且つ非限定的な、詳細な説明を通して、よりよく理解され、同じ参照番号は、同様の要素について使用されるであろう。
【
図1】
図1は、集電器を備える車両の側面図を開示する。
【
図3】
図3は、導電性ピックアップの斜視図を開示する。
【
図5】
図5は、電気道路軌道と接触するように配置された集電器の側面図を開示する。
【
図6】
図6は、電気道路軌道と接触するように配置された集電器の側面図を開示する。
【
図7】
図7は、電気道路軌道と接触するように配置された集電器の背面図を開示する。
【図面の詳細な説明】
【0026】
ここで、本発明の現在の好ましい実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明は以下でより十分に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。寧ろ、これらの実施形態は、徹底さ、及び完全性のために提供され、且つ本発明の範囲を当業者に十分に伝える。
【0027】
図1は、電気車両10を開示している。車両10は、自動車として示されているが、本明細書の教示は、トラック、バスその他の車両にも適用することができる。車両10は、電気道路軌道20が設けられた道路の上を走行し、電気道路軌道20は、車両10に導電的に電力を供給するように構成されている。
【0028】
車両10には、車両10のシャシ12に取り付けられる、本明細書の教示による集電器200が設けられている。しかしながら、集電器200は、車両10の他の箇所に取り付けられてもよい、即ちシャシ12に直接取り付けられていなくてもよい。
【0029】
車両10には、3つの集電器200が設けられていることが示されているが、任意の数の集電器200が車両10に取り付けられ得る。車両10が、電気道路軌道20の長手方向Rに沿って前進方向に走行する一方で、接触部材100が、電気道路軌道20に対して摺動し、車両10に電力を導電的に供給している。集電器200のそれぞれは、電気道路軌道20と接触するように構成された接触部材100を備える。
【0030】
図2は、正面から、即ち、電気道路軌道20に面して配置される集電器200の側、且つ車両10が移動する方向側から、集電器200を示す。集電器200は、集電器200のアーム202の第1端部204に取り付けられるように構成された接触部材100を備える。
図2に示される実施形態は、2つのアーム202を備え、その間に接触部材100が電気道路軌道20に対して幅方向Tに延在する。アーム202は、集電器200が取り付けられた車両10に対して回動可能であり、車両10が電気道路軌道20上を走行しているか否かに応じて、接触部材100を上下させることができる。
【0031】
接触部材100は、車両10が軌道20に沿って移動するとき、電気道路軌道20と導電的に接触するように構成される。したがって、接触部材100は、電気道路軌道20との相互作用によって引き起こされる摩擦および摩耗を受ける。接触部材100は、好ましくは、電気道路軌道20、特に電気道路軌道20の接触ライン(図示せず)と接触部材100との間の大きな接触面積を達成して、電力伝送のための低抵抗での導電を容易にすることが好ましい。大きな接触面積を実現するためには、接触部材100をある程度の力で電気道路軌道20に向かって押し付ける必要があり、必然的に増大した摩擦と増大した摩耗を引き起こすため、これら2つの要因はある程度互いに相反する。
【0032】
本明細書に開示される接触部材100は、支持構造102を備える。支持構造102は、支持構造102に取り付けられた導電性ピックアップ104を支持するように構成され、一方で、導電性ピックアップ104は、電気道路軌道20と接触し、そこから電力を引き出すように配置された接触部材100の一部となるように構成される。したがって、導電性ピックアップ104は、車両10、具体的には車両10の電気システムに、例えば導電ワイヤなどの1つまたは複数の導電要素を介して接続される。集電器200から車両10のバッテリへの電力の伝送および提供は、当業者によって実現される多くの方法によって達成されることができ、本明細書の教示にとって特に重要ではない。したがって、本開示ではさらなる詳述はしない。
【0033】
導電性ピックアップ104は、編組ストリップ106、108を備える。編組ストリップ106、108は、十分に高い耐摩耗性の提供を容易にしながら、必要な柔軟性を有するピックアップ104の提供を可能にする。編組ストリップ106、108、および/または導電性ピックアップ104は、さらに、編組ストリップ106、108が摩耗したときに交換できるように、支持構造102に取り外し可能に取り付けられてもよい。好ましくは、編組ストリップ106、108の端部は、車両10、具体的には車両10の電気システムに、例えば1つまたは複数の導電ワイヤなどのような1つまたは複数の導電性要素110を介して、直接的または間接的に接続される。
【0034】
編組ストリップ106、108はさらに、
図2に可視化されているように、電気道路軌道20の長手方向Rに対する横方向Tに、実質的に延在するように構成されていてもよい。これは、導電性ピックアップ104が電気道路軌道20との接触を維持しながら、電気道路軌道20に沿って移動するときに、車両10が幅方向に操縦するためのいくらかの余地を提供する。さらに、車両10が電気道路軌道20に沿って移動する際に、電気道路軌道20の延長線の長手方向Rからある程度ずれることは自然であるため、導電性ピックアップ104の幅方向Tの延長部は、摩耗が分散されるピックアップ104上のより大きな表面の提供を容易にし、したがって、向上した耐久性を提供する。
【0035】
導電性ピックアップ104の編組ストリップ106、108は、第1導電性材料から形成された第1の複数のスレッド116と、第2導電性材料から形成された第2の複数のスレッド118と、をさらに含んでもよい。第1導電性材料の第1の複数のスレッド116および第2導電性材料の第2の複数のスレッド118は、2つのタイプのスレッド116、118が絡み合うように編まれてもよい。第1導電性材料は銅および/もしくはアルミニウム、ならびに/または、銅および/もしくはアルミニウムを含むそれぞれの合金であり、第2導電性材料はステンレス鋼である。銅およびアルミニウムは高い導電性を提供する一方、耐摩耗性は低く、ステンレス鋼はその逆である。編組方式(braided fashion)において2つのタイプのスレッド116、118を組み合わせたものは、所望の導電性だけでなく、所望の耐久性を提供する。
【0036】
一実施形態では、導電性ピックアップ104の編組ストリップ106、108のスレッド120は、金属とグラフェンを含む複合材料を含む。金属は、例えば銅(または銅合金)、アルミニウム(またはアルミニウム合金)および/またはステンレス鋼であってもよい。グラフェン金属複合材料は、調整され、且つ改善された導電性と、増大された耐摩耗性を提供する。
【0037】
各編組ストリップ106、108は、好ましくは、編組ストリップ106、108のスレッド116、118、120が電気道路軌道20の長手方向Rに対する幅方向Tに実質的に延在するように配置される。
【0038】
図3を参照すると、複数の編組ストリップ106、108の積層体を含む導電性ピックアップ104が示されている。積層体は、1から14の編組ストリップ106、108を含んでもよく、各編組ストリップ106、108は、積層体において層を形成する。
【0039】
図3に示される積層体は、第1導電性材料から形成される第1編組ストリップ106と、第2導電性材料から形成される第2編組ストリップ108を備えてもよい。第1導電性材料はステンレス鋼であってもよく、第2導電性材料は銅および/またはアルミニウム(または銅および/またはアルミニウムを含む合金)であってもよい。
【0040】
あるいは、各ストリップ106、108は、前述の
図2と併せて説明したように、異なる材料および/または複合材料の編組スレッドから製造されてもよい。
【0041】
図3に示されるように、導電性ピックアップ104の厚みT1は2mmから70mmの範囲内であってよい。例えば、鉱業または他の大型車両10のための用途のような導電性ピックアップ104が大きな摩耗を受ける用途では、導電性ピックアップ104が交換を必要とする前に耐え得る摩耗の量を増加させるため、より大きな厚みT1、即ち50mmと70mmとの間の厚みを有することが有益であり得る。対照的に、通常の車の場合、厚みT1は2mmと10mmとの間であれば、十分な耐久性を提供する一方で、車両10の下の利用可能なスペースを消費しすぎない。
【0042】
積層体の各層、即ち編組ストリップ106、108は、1mmから10mmの範囲内の厚みT2を有していてもよい。導電性ピックアップ104の厚みT1は、好ましくは、それぞれの編組ストリップ106、108のそれぞれの厚みT2の合計に実質的に等しい。
【0043】
さらに、導電性ピックアップ104の高さHは、10mmから70mmの範囲内であってもよい。同様に、厚みT1に関しては、高さHの増加は、より多くの摩耗に耐え得る導電性ピックアップ104を提供するが、車両10の下により多くのスペースを要するという対価が伴う。したがって、トラックまたはバスのような、より多くの摩耗が予想される車両の用途においては、50mmから70mmの間の高さを有する導電性ピックアップ104が設けられてもよく、自動車のような通常の個人輸送車両には、10mmから30mmの間の高さを有する導電性ピックアップ104が設けられてもよい。
【0044】
導電性ピックアップ104の長さLは、20cmから100cmの範囲内であってもよい。
【0045】
図3における導電性ピックアップ104は2つの層を有し、各層はそれぞれの編組ストリップ106、108を備えており、導電性ピックアップ104には各層が編組ストリップを備える3つまたはそれ以上の層が設けられていてもよい。
【0046】
図4は、導電性ピックアップ104が取り付けられた支持構造102を備える接触部材100を示す。接触部材100は、前側、即ち、電気道路軌道20に面することを意図された側、且つ、車両10の進行方向から、示されている。導電性ピックアップ104は、編組ストリップ106、108、または編組ストリップ106、108の積層体を備える。図示された支持構造102は、弾性部材112をさらに備え、弾性部材112は、導電性ピックアップ104と電気道路軌道20との間のより均一な力の付与を弾性的に提供することを容易にする。弾性部材112は、例えばばね鋼のシート材料から製造されてもよい。ばね鋼は、通常の鋼またはステンレス鋼から形成されてもよい。
【0047】
図4に示される実施形態では、弾性部材112には、導電性ピックアップ104が取り付けられている舌状部114が設けられている。舌状部114に取り付けられた導電性ピックアップ104を有することで、導電性ピックアップ104の弾性特性および電気道路軌道20の輪郭に追従するその能力を改善することができる。各舌状部114は、隣接する舌状部114から分離され、またしたがって舌状部114は、多少は互いに独立して動くことができ、電気道路軌道20の輪郭に適合する導電性ピックアップ104の改善された能力を促進する。導電性ピックアップ104は、好ましくは、舌状部114の先端114aに取り付けられる。したがって、導電性ピックアップ104と電気道路軌道20との間でより大きな接触表面積が達成され、より大きな表面積にわたって力および摩擦が分散され、電気伝導を改善する。
【0048】
図4に示される実施形態にさらに示されるように、編組ストリップ106、108は、取り外し可能な取り付け要素122によって支持構造102に取り付けられてもよい。取り外し可能な取り付け要素122は、例えば、ネジおよび/またはナットのような留め具、または編組ストリップ106、108を支持構造102に取り付けるために適した別のタイプの留め具であってもよい。
【0049】
図5は、電気道路軌道20と接触する集電器200の側面図を示している。集電器200、または少なくとも集電器200のアーム202は、
図5に曲線矢印で示されるように、接触部材100を電気道路軌道20と接触させる、且つ接触から外すために、車両10に対して回動可能に移動可能であってもよい。
【0050】
図5にさらに示されるように、積層体の層、即ち編組ストリップ106、108は、電気道路軌道20に平行な方向、即ち長手方向Rに、相対的に互いにオフセットして配置され得る。編組ストリップ106、108の先端が同じ水平レベルに配置されるような、即ち、車両10の集電器200が電気道路軌道20から電力を引き出すときに、編組ストリップ106、108のそれぞれが電気道路軌道20と接触して配置されるようなことが好ましい。
【0051】
オフセットされた編組ストリップ106、108は、集電器200の長手方向V、即ち集電器200の回動軸に対して半径方向に、オフセットして配置され得る。接触部材100は、電気道路軌道20から電力を引き出す際に、電気道路軌道20に対して斜めに配置されるように構成されているため、方向Vにおけるオフセットは、集電器200が電気道路軌道20から電力を引き出す際に、集電器200が電気道路軌道20に対して斜めに配置されるときに、編組ストリップ106、108のそれぞれが、電気道路軌道20と接触するようになる。
【0052】
図5は、2つの層、即ち2つの編組ストリップ108を有するピックアップ104を備える接触部材100を示している。しかしながら、
図6に示されるように、ピックアップ104には3つまたはそれ以上の層、即ち3つまたはそれ以上の編組ストリップ106、108が設けられていてもよく、これらは、
図5に関連して説明されたように、オフセットして配置されていてもよい。
【0053】
さらに、本明細書で開示される全ての実施形態に適用されるが、複数の編組ストリップ106、108の積層体における最も外側に配置された層は、ステンレス鋼を含む第1導電性材料を含む第1編組ストリップ106であってもよい。本開示の文脈では、最も外側の編組ストリップ106は、支持構造102から最も遠くに配置される編組ストリップ、および/または電気車両10の移動方向から見て最初に配置される編組ストリップとして考慮されるべきである。
図5および
図6において、車両10の移動方向は、好ましくは車両10の前進方向でもある図中の左側である。結果的に、最も外側に配置された編組ストリップ106は、電気道路軌道20上に位置し得るあらゆる汚れまたはデブリと最初に遭遇する編組ストリップ106となる。導電性ピックアップ104において最も外側に配置された、ステンレス鋼を含む材料から形成される第1編組ストリップを有することは、そのようなコンディションに耐える導電性ピックアップ104の能力を向上させる。ステンレス鋼は、より柔らかい材料である銅またはアルミニウムよりも、高い耐久性を提供する。
【0054】
さらに、積層体における複数の編組ストリップ106、108は、
図5および
図6に示されるように、交互に配置され得る少なくとも1つの第1編組ストリップ106および少なくとも1つの第2編組ストリップ108を備えてもよい。したがって、導電性ピックアップ104は、1つおきの編組ストリップがステンレス鋼を含む第1編組ストリップ106であり、1つおきの編組ストリップが銅またはアルミニウムを含む第2編組ストリップである、複数の編組ストリップ106、108を備える。上記は好ましい配置であるが、他の配置も考慮される。例えば、最も外側の編組ストリップは、ステンレス鋼を含む第1導電性材料を含む第1編組ストリップ106である。そして、3つまたは4つおきの編組ストリップを編組ストリップ106とし、積層体における残りの編組ストリップを、銅および/またはアルミニウムを含む第2導電性材料を含む第2編組ストリップ108としてもよい。
【0055】
図7は、弾性部材112が設けられている接触部材100を備える集電器200の正面図を示す。示されるように、弾性部材112は、接触部材100が、具体的には導電性ピックアップ104が、電気道路軌道20との接触によって曲がることを可能にする。弾性部材112によって提供される弾性は、導電性ピックアップ104と電気道路軌道20との間の信頼できる大きな接触を確立することを容易にする。
【0056】
図7に示される弾性部材112には舌状部114が無いが、
図4に示されるように、複数の舌状部114を備えてもよく、それによって、導電性ピックアップ104は、好ましくは複数の舌状部114の先端114aに取り付けられる。
【0057】
編組ストリップ106、108は、好ましくは、導電性ピックアップ104が電力を導電的にピックアップするように構成された電気道路軌道20に対して幅方向Tに延長部を有し、編組ストリップ106、108の延長部は、好ましくは、電気道路軌道20の幅より大きい。
【0058】
当業者は、本発明が上記の好ましい実施形態に決して限定されないことを理解する。それどころか、添付の特許請求の範囲内で多くの修正および変更が可能である。加えて、開示された実施形態の変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、且つ、もたらされ得る。
【国際調査報告】