(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】1,2,4-トリオキサン化合物、並びにがんの防止及び処置における使用のためのそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/357 20060101AFI20230703BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20230703BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
A61K 36/282 20060101ALI20230703BHJP
A61K 36/45 20060101ALI20230703BHJP
A61K 36/82 20060101ALI20230703BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20230703BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20230703BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230703BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230703BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K31/357
A61K31/216
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K36/282
A61K36/45
A61K36/82
A61K45/00
A61K31/7068
A61K33/24
A61K31/282
A61K31/519
A61K31/337
A61P35/02
A61P15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574514
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021035524
(87)【国際公開番号】W WO2021247758
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522469741
【氏名又は名称】アルテミフロー・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】514015743
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ケンタッキー リサーチ ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF KENTUCKY RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】201 Gillis Building, Lexington, Kentucky 40506-0033, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ジェフリー・マウスト
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ギルモア
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ジーベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ジル・コールサー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ウィーランド
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・ヒル
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・マクダウェル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084AA23
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086CA01
4C086CB05
4C086EA17
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C088AB14
4C088AB29
4C088AB45
4C088BA08
4C088NA14
4C088ZA81
4C088ZB26
4C088ZB27
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA81
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、1,2,4-トリオキサン化合物を含む抗がん剤、並びに1,2,4-トリオキサン化合物及びクロロゲン酸を含む組合せを含む抗がん剤に関する。本発明は、こうした抗がん剤を含む医薬組成物、それを含むキット、並びにがんの処置及び防止において及びがん、特に卵巣がん又は肺がんを有する対象の生存を延長するために、前記抗がん剤、医薬組成物及びキットを使用する方法及び処置レジメンを更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する少なくとも1種の化合物、又は
a)少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する少なくとも1種の化合物、及び
b)少なくとも1つのクロロゲン酸
の組合せを含む抗がん剤。
【請求項2】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む前記化合物が、式(I)から(V)
【化1】
の化合物、並びに適用可能な場合、式(I)及び(II)の前記化合物の薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の抗がん剤
(式(I)中、
矢印は、図示される酸素原子と残基R
1との間の結合を示し、
nは、1を超える、好ましくは2から10、より好ましくは2、3又は4、更により好ましくは2又は3の整数であり、
R
1は、括弧内に図示される残基によってn回置換される残基であり、好ましくはC
1~C
18-アルキル、C
2~C
18-アルケニル又は-(CO)
n(R
3)であり、ここで、カルボイル基は、残基R
1に結合している酸素と一緒に、カルボン酸エステル部分を形成し、R
3は、C
1~C
18-アルカン-n-イル又はC
2~C
18-アルケン-n-イルであり、
前記C
1~C
18-アルキル、C
2~C
18-アルケニル、C
1~C
18-アルカン-n-イル、C
2~C
18-アルケン-n-イル基は、
・中断されないか、又は
-0-、-S-、-SO
2-、-SO-、-SO
2NR
4-、NR
4S0
2-、-NR
4-、-CO-、-O(CO)-、(CO)O-、-0(C0)0-、-NR
4(CO)NR
4-、NR
4(CO)-、-(CO)NR
4-、-NR
4(CO)0-、-0(CO)NR
4-
からなる群から選択される非連続的な官能基によって1回、2回若しくは2回を超えて中断され、
・中断されないか、又は追加として若しくは代替として、ヘテロシクロ-ジイル及びアリールジイルからなる群から選択される二価の残基によって1回、2回若しくは2回を超えて中断され、
・置換されないか、又は追加として若しくは代替として、
ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アジド、C
6~C
14-アリール、C
1~C
8-アルコキシ、C
1~C
8-アルキルチオ、-SO
3M、-COOM、PO
3M
2、-PO(N(R
5)
2)
2、PO(OR
5)
2、-S0
2N(R
4)
2、-N(R
4)
2、-C0
2N(R
5)
2、-COR
4、-OCOR
4、-NR
4(CO)R
5、-(CO)OR
4、-NR
4(C0)N(R
4)
2
からなる群から選択される置換基によって1回、2回若しくは2回を超えて置換され、
式(II)中、
R
2は、C
1~C
18-アルキル又はC
2~C
18-アルケニル又は-(CO)R
3であり、ここで、カルボイル基は、残基R
1に結合している酸素と一緒に、カルボン酸エステル部分を形成し、R
3は、C
1~C
18-アルキル又はC
2~C
18アルケニルであり、
前記C
1~C
18-アルキル及びC
2~C
18-アルケニル基は、
・中断されないか、又は
-0-、-S-、-SO
2-、-SO-、-SO
2NR
4-、NR
4S0
2-、-NR
4-、-CO-、-O(CO)-、(CO)O-、-0(C0)0-、-NR
4(CO)NR
4-、NR
4(CO)-、-(CO)NR
4-、-NR
4(C0)0-又は-0(CO)NR
4-
からなる群から選択される非連続的な官能基によって1回、2回若しくは2回を超えて中断され、
・中断されないか、又は追加として若しくは代替として、ヘテロシクロ-ジイル及びアリールジイルからなる群から選択される二価の残基によって1回、2回若しくは2回を超えて中断され、
・置換されないか、又は追加として若しくは代替として、
ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アジド、C
6~C
14-アリール、C
1~C
8-アルコキシ、C
1~C
8-アルキルチオ、-SO
3M、-COOM、PO
3M
2、-PO(N(R
5)
2)
2、PO(OR
5)
2、-S0
2N(R
4)
2、-N(R
4)
2、-C0
2N(R
5)
2、-COR
4、-OCOR
4、-NR
4(CO)R
5、-(CO)OR
4又は-NR
4(CO)N(R
4)
2
からなる群から選択される置換基によって1回、2回若しくは2回を超えて置換され、
上記の全ての式において、使用される場合、
R
4は、水素、C
1~C
8-アルキル、C
6~C
14-アリール、及びヘテロシクリルからなる群から独立して選択されるか、又はN(R
4)
2は、全体として、N含有複素環であり、
R
5は、C
1~C
8-アルキル、C
6~C
14-アリール、及びヘテロシクリルからなる群から独立して選択されるか、又はN(R
5)
2は、全体として、N含有複素環であり、
Mは、水素、若しくはq価金属イオンの1/q相当分であるか、又はアンモニウムイオン若しくはグアニジニウムイオン、若しくは第一級、第二級、第三級若しくは第四級の有機アンモニウムイオン、特に式[N(C
1~C
18-アルキル)
sH
t]
+のものであり、ここで、sは、1、2、3又は4であり、tは、(4-s)である)。
【請求項3】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む前記化合物が、式(IIa)のもの、アルテメテル、並びに式(IIb)のもの、アルテスナート及びアルテスナートの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1又は2に記載の抗がん剤。
【化2】
【請求項4】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む前記化合物が、アルテスナート及びアルテスナートの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つのクロロゲン酸が、3-O-カフェオイルキナ酸、4-O-カフェオイルキナ酸、5-O-カフェオイルキナ酸、3-O-フェルオイルキナ酸、4-O-フェルオイルキナ酸、5-O-フェルオイルキナ酸、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸及び4,5-ジカフェオイルキナ酸から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項6】
前記組合せ中に存在する少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する1種又は複数の前記化合物と1種又は複数の前記クロロゲン酸との間のモル比が、2から0.002の間、好ましくは0.8から0.005の間、より好ましくは0.5から0.01、更により好ましくは0.1から0.01の間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項7】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む前記化合物が、クソニンジンの抽出を介して得られる、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項8】
クソニンジンの抽出物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項9】
前記少なくとも1つのクロロゲン酸が、コーヒー又は茶の抽出を介して得られる、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項10】
好ましくは40℃から100℃での、水によるクソニンジン並びにコーヒー及び/又は茶の共抽出を介して得られる抽出物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項11】
好ましくは40℃から100℃での、水によるクソニンジン並びにコーヒー及び/又は茶の共抽出を介して得られる、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項12】
前記クソニンジン植物が、アポロン変種のものである、請求項7、8、10又は11のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項13】
前記組合せ中に存在する少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する1種又は複数の前記化合物と1種又は複数の前記クロロゲン酸との間のモル比が、2から0.002の間、好ましくは0.8から0.005の間、より好ましくは0.5から0.01、更により好ましくは0.1から0.01の間である、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項14】
スコポレチン、1,8-シネオール、アルテミシニン酸、アルテアンヌイン-B、ジヒドロアルテミシン酸、フィセチン、カスチシン、アルテメチン、クリソプレネチン、クリソプレノール-D、シルシリネオールを含む群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗がん剤。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の抗がん剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の追加の治療剤を更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗がん剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
前記追加の治療剤が、ゲムトリシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、ペメトレキセド若しくはパクリタキセル及び/又はNRF2阻害剤、例えば、ML385の群から選択される、請求項16に記載の抗がん剤を含む医薬組成物。
【請求項18】
(a)請求項1から15のいずれか一項に記載の抗がん剤又は医薬組成物の投与量、並びに
(b)白金ベースのダブレット化学療法(PT-DC)である追加の治療剤の投与量、並びに
(c)請求項1から15のいずれか一項に記載の抗がん剤又は医薬組成物及び前記追加の治療剤を使用するための指示書
を含むキット。
【請求項19】
キットであって、
(a)請求項1から17に記載の抗がん剤又は医薬組成物の投与量、並びに
(b)NRF2阻害剤の、更には前記キットのための投与量、
(c)本発明による抗がん剤又は医薬組成物及び前記NRF2阻害剤を使用するための指示書
を含む、キット。
【請求項20】
医薬、特に、がんの処置及び/若しくは防止のための、又はがんを有する対象の延長のための医薬としての使用のための、請求項1から14に記載の抗がん剤、又は請求項15から17に記載の医薬組成物、又は請求項18及び19に記載のキット。
【請求項21】
がんを有する対象におけるがんを防止若しくは処置する、又はがんを有する対象の生存を延長するための方法であって、治療有効量の、請求項1から14に記載の抗がん剤、又は請求項15から17に記載の医薬組成物、又は請求項18及び19に記載のキットを、がんを有する対象に投与することを含む、方法。
【請求項22】
対象におけるがんを処置する、又はがんを有する対象の生存を延長する方法であって、治療有効量の、請求項1から14に記載の抗がん剤、又は請求項15から17に記載の医薬組成物、又は請求項18及び19に記載のキット、及び少なくとも1種の追加の治療剤を、がんを有する対象に同時に又は逐次に投与することを含む、方法。
【請求項23】
1日当たりの抗がん剤又は医薬組成物の用量範囲が、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する化合物の総量に対して算出される、0.01から100mg/kg体重、好ましくは0.1から50mg/kg体重、更により好ましくは0.5から50mg/kg体重である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記がんが、黒色腫、多発性骨髄腫、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、脳脊髄腫瘍、生殖細胞腫瘍、神経内分泌腫瘍及びカルチノイド腫瘍から選択される、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
それを必要とする対象に、少なくとも
(a)請求項1から17に記載の抗がん剤又は医薬組成物
(b)(i)ゲムシタビン及びシスプラチン、好ましくは1250mg/m
2の用量のゲムシタビン及び75mg/m
2の用量のシスプラチン、(ii)ペメトレキセド及びシスプラチン、好ましくは500mg/m
2の用量のペメトレキセド及び75mg/m
2の用量のシスプラチン、又は(iii)パクリタキセル及びカルボプラチン、好ましくは200mg/m
2の用量のパクリタキセル及び6mg/ml/min用量の用量の標的曲線下面積(AUC6)のカルボプラチンの組合せである、白金ベースのダブレット化学療法(PT-DC)からなる群から選択される追加の治療剤
を投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記追加の治療剤が、パクリタキセル及びカルボプラチン、好ましくは200mg/m
2の用量のパクリタキセル及び6mg/ml/min用量の用量の標的曲線下面積(AUC6)のカルボプラチンの組合せである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
成分a)及びb)が、同時に投与される、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記がんが、卵巣がんである、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
それを必要とする対象に、少なくとも
(a)請求項1から17に記載の抗がん剤又は医薬組成物
(b)NRF2阻害剤、好ましくはML385 (N-[4-[2,3-ジヒドロ-1-(2-メチルベンゾイル)-1H-インドール-5-イル]-5-メチル-2-チアゾリル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-アセトアミド)からなる群から選択される追加の治療剤
を投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記がんが、非小細胞肺がんである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
がん細胞の成長を破壊又は阻害するための方法であって、請求項1から19に記載の抗がん剤、医薬組成物又はキットの有効量に、in vitro又はin vivoで前記がん細胞を曝露することを含む、方法。
【請求項32】
追加の治療剤が用いられる、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年6月2日に出願した米国仮出願第63/033502号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の分野
本発明は、1,2,4-トリオキサン化合物を含む抗がん剤、並びに1,2,4-トリオキサン化合物及びクロロゲン酸を含む組合せを含む抗がん剤に関する。本発明は、そのような抗がん剤を含む医薬組成物、それを含むキット、並びにがんの処置及び防止における、並びにがん、特に卵巣がん又は肺がんを有する対象の生存を延長するための、前記抗がん剤、医薬組成物及びキットを使用する方法及び処置レジメンを更に提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
がんは、治療法の探索における膨大な努力にも関わらず重大な健康上の脅威のままである。例えば、卵巣がんは、世界的に女性において重大な健康問題を引き起こし、米国における女性のがん死亡の第4の主因であり、全てのがん関連死亡率の5~6%を占める。初期患者の5年生存率は80~90%であるが、疾患の進行期に診断された患者についてはわずか40~50%である。残念ながら、ほとんどの卵巣がん患者は、診断時に進行した疾患を有する。卵巣がん死亡率は過去数十年の間に著しく変化していないが、患者の生存の長さは着実に改善しており、大部分が外科手術後のアジュバント療法のためのより新しく且つより有効な化学治療薬の臨床応用の結果である。例えば、パクリタキセル及びカルボプラチンは、原発性卵巣がんのアジュバント処置及び転移性疾患のために使用される最も重要な化学治療薬である。パクリタキセルは、細胞周期のG2/M期の細胞をブロックし、そのような細胞は正常な分裂装置を形成することができず、カルボプラチンは、DNA付加体の形成につながり、結果としてG2期細胞周期停止につながり、続いてアポトーシスを引き起こす。有効ではあるが、パクリタキセル及びカルボプラチンは、骨髄抑制、神経毒性及び腎毒性を含む副作用を誘発する。更に、初期療法の完了後、患者の70%が診断後最初の2年以内に再発を経験し、したがって、代替の又は改善された処置が差し迫って必要とされている。
【0004】
ヒト肝細胞癌(HCC)も世界的にがん関連死亡の主因のうちの1つであり、肝臓がん症例の80%超が途上国、例えば中国及びアフリカにおいて発生する。HCCは長い潜伏期を有し、したがって、腫瘍が高悪性度であり且つ急速に進行するとき、しばしば後期に診断される。これらの特徴は、その高い浸潤の可能性とあいまって、疾患と診断された患者の予後不良につながる。非外科的アプローチが必要であり、その理由は、大きい腫瘍又は多数の病変を有する患者は典型的に肝切除に適していないからである。残念ながら、単一の化学治療剤の活性は限定され、奏効率は非常に低い。積極的な組合せ化学治療レジメンは、奏効率の顕著な改善につながっていない。進行したHCCにおいて、がん細胞は、利用可能な化学治療剤のほとんどの細胞毒性効果に応答しない。同じことがいくつかのタイプの肺がん、特に非小細胞肺がん(NSCLC)にもあてはまる。kelch様ECH関連タンパク質1(KEAP1)/核因子赤血球2関連因子2(NRF2)経路の成分は、酸化ストレスに対する細胞応答を制御し、非小細胞肺がん(NSCLC)のおよそ30%において変異される。NSCLC細胞株において、野生型であるが不活性化変異体ではないKEAP1の過剰発現は、結果として軟寒天中でのコロニー形成を低下させ、細胞遊走を低下させ、且つ皮下異種移植片における腫瘍の成長を低下させる。加えて、過剰発現野生型KEAP1は、NRF2タンパク質の発現並びにヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)及びNAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1(NQO-1)を含むNRF2の転写標的の発現を低下させる。遺伝子組換えマウスモデルはまた、NRF2活性化又はKeap1の欠失がKrasGI2D駆動の肺腫瘍発生を促進することを実証した。この経路に変異を有さない個体と比較されたとき、KEAP1/NRF2経路に変異を有する患者は、無進行生存及び全生存が著しくより短く、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤からの利益がより少なく、化学療法に対して非感受性であり、且つ転移が増加する。不活性化KEAP1変異は、抗酸化剤応答遺伝子、例えばNQO1の活性化NRF2媒介転写を通じて腫瘍成長及び移動を促進し、KEAP1/NRF2の変異は、様々な薬剤に対する臨床処置耐性の潜在的なドライバーである。この経路の変異の頻度及び臨床的意義を考えると、KEAP1/NRF2変異がんに有効な処置戦略が必要とされている。
【0005】
様々な他のがんは、HCC、肺がん、例えば非小細胞肺がん(NSCLC)及び卵巣がんと同様の状態にあり、すなわち、処置又は防止においていくらかの進展があったが、より有効な処置が依然として必要とされている。したがって、単独で又は従来の薬剤と組み合わせて使用することができる新規な薬物が依然として引き続き必要とされている。
【0006】
植物化学物質は、がん療法における見込みを示す。最近、いくらかの著者が、抗マラリア薬アルテミシニン、その天然誘導体、例えばジヒドロアルテミシシン及び半合成誘導体、例えばアルテスナートが抗がんレジメンにおける使用のための別の目的を持つ可能性を有することを実証している([1] Tsuda, K.ら Mechanisms of the pH- and oxygen-dependent oxidation activities of artesunate. Biol Pharm Bull 41、555~563頁(2018); [2] Wang, B.、Hou, D.、Liu, Q.、Wu, T.、Guo, H.、Zhang, X.、Zou, Y.、Liu, Z.、Liu, J、Wei, J、Gong Y.及びShao, C. Artesunate sensitizes ovarian cancer cells to cisplatin by downregulating RAD51. Cancer Biology & Therapy 16、1548~1556頁(2015); [3] Chen, X.、Wong, Y.K.、Lim, T.K.、Lim, W.H.、Lin, Q.、Wang, J.及びHua, Z. Artesunate activates the intrinsic apoptosis of HCT116 cells through the suppression of fatty acid synthesis and the NF-κB pathway. Molecules 22、1272(2017); [4] Kumar, B.、Kalvala, A.、Chu, S.、Rosen, S.、Forman, S.J.、Marcucci, G.、Chen, C.C.及びPullarkat, V. Antileukemic activity and cellular effects of the antimalarial agent artesunate in acute myeloid leukemia. LeukRes 59、124~135頁(2017); [5] Liu, Y.、Gao, S.、Zhu, J.、Zheng, Y.、Zhang, H及びSun H. Dihydroartemisinin induces apoptosis and inhibits proliferation, migration, and invasion in epithelial ovarian cancer via inhibition of the hedgehog signaling pathway. Cancer Med 7、5704~5715頁(2018); [6] Greenshields, A.、Shepherd, T.及びHoskin, D. Contribution of reactive oxygen species to ovarian cancer cell growth arrest and killing by the anti-malarial drug artesunate. Molecular Carcinogenesis 56、75~93頁(2017)、[7] Zhang, Z.Y.; Yu, S.Q.; Miao, L.Y.; Huang, X.Y.; Zhang, X.P.; Zhu, Y.P.; Xia, X.H.; Li, D.Q. Artesunate combined with vinorelbine plus cisplatin in treatment of advanced non-small cell lung cancer: A randomized controlled trial. Zhong Xi Yi Jie He Xue Bao 2008、6、134~138頁、doi:10.3736/jcim20080206; [8] Srinivas, U.S.; Tan, B.W.Q.; Vellayappan, B.A.; Jeyasekharan, A.D. ROS and the DNA damage response in cancer. Redox Biol. 2019、25、101084、doi:10.1016/j.redox.2018.101084; [9] Moloney, J.N.; Cotter, T.G. ROS signalling in the biology of cancer. Semin. Cell Dev. Biol. 2018、80、50~64頁、doi:10.1016/j.semcdb.2017.05.023、[10] Deeken, J.F.; Wang, H.; Hartley, M.; Cheema, A.K.; Smaglo, B.; Hwang, J.J.; He, A.R.; Weiner, L.M.; Marshall, J.L.; Giaccone, G.ら A phase I study of intravenous artesunate in patients with advanced solid tumor malignancies. Cancer Chemother. Pharmacol. 2018、81、587~596頁、doi:10.1007/s00280-018-3533-8、[11] Crespo-Ortiz, M. P.及びWei, M. Q. (2012). Antitumor activity of artemisinin and its derivatives: from a well-known antimalarial agent to a potential anticancer drug. J Biomed Biotechnol、2012; [12] Efferth, T. (2017). From ancient herb to modern drug: Artemisia annua and artemisinin for cancer therapy. Semin Cancer Biol、46、65~83頁; Efferth, T.、Sauerbrey, A.、Olbrich, A.、Gebhart, E.、Rauch, P.、Weber, H. O.、Hengstler, J. G.、Halatsch, M. E.、Volm, M.、Tew, K. D.、Ross, D. D.及びFunk, J. O. (2003). Molecular modes of action of artesunate in tumor cell lines. Mol Pharmacol、64(2)、382~394頁; [13] Chen, H. H.、Zhou, H. J.、Wang, W. Q.及びWu, G. D. (2004). Antimalarial dihydroartemisinin also inhibits angiogenesis. Cancer Chemother Pharmacol、53(5)、423~432頁; [14] Gao, P.、Wang, L. L.、Liu, J.、Dong, F.、Song, W.、Liao, L.、Wang, B.、Zhang, W.、Zhou, X.、Xie, Q.、Sun, R.及びLiu, J. (2020). Dihydroartemisinin inhibits endothelial cell tube formation by suppression of the STAT3 signaling pathway. Life Sci、242; [15] Konstat-Korzenny, E.、Ascencio-Aragon, J. A.、Niezen-Lugo, S.及びVazquez-Lopez, R. (2018). Artemisinin and Its Synthetic Derivatives as a Possible Therapy for Cancer. Med Sci (Basel)、6(1); [16] Slezakova, S.及びRuda-Kucerova, J. (2017). Anticancer Activity of Artemisinin and its Derivatives. Anticancer Res、37(11)、5995~6003頁. https://doi.org/10.21873/anticanres.12046; [17] Tilaoui, M.、Mouse, H. A.、Jaafari, A.及びZyad, A. (2014). Differential effect of artemisinin against cancer cell lines. Nat Prod Bioprospect、4(3)、189~196頁; [18] Deeken, J. F.、Wang, H.、Hartley, M.、Cheema, A. K.、Smaglo, B.、Hwang, J. J.、He, A. R.、Weiner, L. M.、Marshall, J. L.、Giaccone, G.、Liu, S.、Luecht, J.、Spiegel, J. Y.及びPishvaian, M. J. (2018). A phase I study of intravenous artesunate in patients with advanced solid tumor malignancies. Cancer Chemother Pharmacol、81(3)、587~596頁; [19] Jiao, Y.、Ge, C. M.、Meng, Q. H.、Cao, J. P.、Tong, J.及びFan, S. J. (2007). Dihydroartemisinin is an inhibitor of ovarian cancer cell growth. Acta Pharmacol Sin、28(7)、1045~1056頁; [20] Sertel, S.、Eichhorn, T.、Simon, C. H.、Plinkert, P. K.、Johnson, S. W.及びEfferth, T. (2010). Pharmacogenomic identification of c-Myc/Max-regulated genes associated with cytotoxicity of artesunate towards human colon, ovarian and lung cancer cell lines. Molecules、15(4)、2886~2910頁; [21] von Hagens, C.、Walter-Sack, I.、Goeckenjan, M.、Storch-Hagenlocher, B.、Sertel, S.、Elsasser, M.、Remppis, B. A.、Munzinger, J.、Edler, L.、Efferth, T.、Schneeweiss, A.及びStrowitzki, T. (2019). Long-term add-on therapy (compassionate use) with oral artesunate in patients with metastatic breast cancer after participating in a phase I study (ARTIC M33/2). Phytomedicine、54、140~148頁; [22] Konig, M.、von Hagens, C.、Hoth, S.、Baumann, I.、Walter-Sack, I.、Edler, L.及びSertel, S. (2016). Investigation of ototoxicity of artesunate as add-on therapy in patients with metastatic or locally advanced breast cancer: new audiological results from a prospective, open, uncontrolled, monocentric phase I study. Cancer Chemother Pharmacol、77(2)、413~427頁; [23] Li, Q.、Ni, W.、Deng, Z.、Liu, M.、She, L.及びXie, Q. (2017). Targeting nasopharyngeal carcinoma by artesunate through inhibiting Akt/mTOR and inducing oxidative stress. Fundam Clin Pharmacol、31(3)、301~310頁; [24] Li, Y.、Shan, F.、Wu, J. M.、Wu, G. S.、Ding, J.、Xiao, D.、Yang, W. Y.、Atassi, G.、Leonce, S.、Caignard, D. H.及びRenard, P. (2001). Novel antitumor artemisinin derivatives targeting G1 phase of the cell cycle. Bioorg Med Chem Lett、11(1)、5~8頁; [25] Liu, L.、Zuo, L. F.、Zuo, J.及びWang, J. (2015). Artesunate induces apoptosis and inhibits growth of Ecal09 and Ec9706 human esophageal cancer cell lines in vitro and in vivo. Mol Med Rep、12(1)、1465~1472頁; [26] Luo, J.、Zhu, W.、Tang, Y.、Cao, H.、Zhou, Y.、Ji, R.、Zhou, X.、Lu, Z.、Yang, H.、Zhang, S.及びCao, J. (2014). Artemisinin derivative artesunate induces radiosensitivity in cervical cancer cells in vitro and in vivo. Radiat Oncol、9、84; [27] Morrissey, C.、Gallis, B.、Solazzi, J. W.、Kim, B. J.、Gulati, R.、Vakar-Lopez, F.、Goodlett, D. R.、Vessella, R. L.及びSasaki, T. (2010). Effect of artemisinin derivatives on apoptosis and cell cycle in prostate cancer cells. Anticancer Drugs、21(4)、423~432頁; [28] Roh, J. L.、Kim, E. H.、Jang, H.及びShin, D. (2017). Nrf2 inhibition reverses the resistance of cisplatin-resistant head and neck cancer cells to artesunate-induced ferroptosis. Redox Biol、11、254~262頁; [29] Sertel, S.、Eichhorn, T.、Sieber, S.、Sauer, A.、Weiss, J.、Plinkert, P. K.及びEfferth, T. (2010). Factors determining sensitivity or resistance of tumor cell lines towards artesunate. Chem Biol Interact、185(1)、42~52頁; [30] Zhang, J.、Sun, X.、Wang, L.、Wong, Y. K.、Lee, Y. M.、Zhou, C.、Wu, G.、Zhao, T.、Yang, L.、Lu, L.、Zhong, J.、Huang, D.及びWang, J. (2018). Artesunate-induced mitophagy alters cellular redox status. Redox Biol、19、263~273頁参照)。
【0007】
更なる文献は以下に見出すことができる:[31] McDowell, A., Jr.; Hill, K.S.; McCorkle, J.R.; Gorski, J.; Zhang, Y.; Salahudeen, A.; Ueland, F.; Kolesar, J.M.、「Preclinical Evaluation of Artesunate as an Antineoplastic Agent in Ovarian Cancer Treatment」、Diagnostics 2021、11、395及び[32] Hill, K.S.; McDowell, A.; McCorkle, R.; Schuler, E.; Ellingson, S.; Plattner, R.; Kolesar, J.M. 「KEAP1 is Required for Artesunate Anticancer Activity in Non-Small-Cell Lung Cancer」、Cancers 2021、13、1885。
【0008】
多くの機序、例えばアポトーシスの誘導、血管新生の阻害、低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)活性化の阻害及び直接DNA傷害が提案されたが、一般に想定される一次作用様式は、細胞質及びミトコンドリアの両方における活性酸素種(ROS)の産生並びにミトコンドリア依存性アポトーシスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Tsuda, K.ら Mechanisms of the pH- and oxygen-dependent oxidation activities of artesunate. Biol Pharm Bull 41、555~563頁(2018)
【非特許文献2】Wang, B.、Hou, D.、Liu, Q.、Wu, T.、Guo, H.、Zhang, X.、Zou, Y.、Liu, Z.、Liu, J、Wei, J、Gong Y.及びShao, C. Artesunate sensitizes ovarian cancer cells to cisplatin by downregulating RAD51. Cancer Biology & Therapy 16、1548~1556頁(2015)
【非特許文献3】Chen, X.、Wong, Y.K.、Lim, T.K.、Lim, W.H.、Lin, Q.、Wang, J.及びHua, Z. Artesunate activates the intrinsic apoptosis of HCT116 cells through the suppression of fatty acid synthesis and the NF-κB pathway. Molecules 22、1272(2017)
【非特許文献4】Kumar, B.、Kalvala, A.、Chu, S.、Rosen, S.、Forman, S.J.、Marcucci, G.、Chen, C.C.及びPullarkat, V. Antileukemic activity and cellular effects of the antimalarial agent artesunate in acute myeloid leukemia. LeukRes 59、124~135頁(2017)
【非特許文献5】Liu, Y.、Gao, S.、Zhu, J.、Zheng, Y.、Zhang, H及びSun H. Dihydroartemisinin induces apoptosis and inhibits proliferation, migration, and invasion in epithelial ovarian cancer via inhibition of the hedgehog signaling pathway. Cancer Med 7、5704~5715頁(2018)
【非特許文献6】Greenshields, A.、Shepherd, T.及びHoskin, D. Contribution of reactive oxygen species to ovarian cancer cell growth arrest and killing by the anti-malarial drug artesunate. Molecular Carcinogenesis 56、75~93頁(2017)
【非特許文献7】Zhang, Z.Y.; Yu, S.Q.; Miao, L.Y.; Huang, X.Y.; Zhang, X.P.; Zhu, Y.P.; Xia, X.H.; Li, D.Q. Artesunate combined with vinorelbine plus cisplatin in treatment of advanced non-small cell lung cancer: A randomized controlled trial. Zhong Xi Yi Jie He Xue Bao 2008、6、134~138頁、doi:10.3736/jcim20080206
【非特許文献8】Srinivas, U.S.; Tan, B.W.Q.; Vellayappan, B.A.; Jeyasekharan, A.D. ROS and the DNA damage response in cancer. Redox Biol. 2019、25、101084、doi:10.1016/j.redox.2018.101084
【非特許文献9】Moloney, J.N.; Cotter, T.G. ROS signalling in the biology of cancer. Semin. Cell Dev. Biol. 2018、80、50~64頁、doi:10.1016/j.semcdb.2017.05.023
【非特許文献10】Deeken, J.F.; Wang, H.; Hartley, M.; Cheema, A.K.; Smaglo, B.; Hwang, J.J.; He, A.R.; Weiner, L.M.; Marshall, J.L.; Giaccone, G.ら A phase I study of intravenous artesunate in patients with advanced solid tumor malignancies. Cancer Chemother. Pharmacol. 2018、81、587~596頁、doi:10.1007/s00280-018-3533-8
【非特許文献11】Crespo-Ortiz, M. P.及びWei, M. Q. (2012). Antitumor activity of artemisinin and its derivatives: from a well-known antimalarial agent to a potential anticancer drug. J Biomed Biotechnol、2012
【非特許文献12】Efferth, T. (2017). From ancient herb to modern drug: Artemisia annua and artemisinin for cancer therapy. Semin Cancer Biol、46、65~83頁
【非特許文献13】Efferth, T.、Sauerbrey, A.、Olbrich, A.、Gebhart, E.、Rauch, P.、Weber, H. O.、Hengstler, J. G.、Halatsch, M. E.、Volm, M.、Tew, K. D.、Ross, D. D.及びFunk, J. O. (2003). Molecular modes of action of artesunate in tumor cell lines. Mol Pharmacol、64(2)、382~394頁
【非特許文献14】Chen, H. H.、Zhou, H. J.、Wang, W. Q.及びWu, G. D. (2004). Antimalarial dihydroartemisinin also inhibits angiogenesis. Cancer Chemother Pharmacol、53(5)、423~432頁
【非特許文献15】Gao, P.、Wang, L. L.、Liu, J.、Dong, F.、Song, W.、Liao, L.、Wang, B.、Zhang, W.、Zhou, X.、Xie, Q.、Sun, R.及びLiu, J. (2020). Dihydroartemisinin inhibits endothelial cell tube formation by suppression of the STAT3 signaling pathway. Life Sci、242
【非特許文献16】Konstat-Korzenny, E.、Ascencio-Aragon, J. A.、Niezen-Lugo, S.及びVazquez-Lopez, R. (2018). Artemisinin and Its Synthetic Derivatives as a Possible Therapy for Cancer. Med Sci (Basel)、6(1)
【非特許文献17】Slezakova, S.及びRuda-Kucerova, J. (2017). Anticancer Activity of Artemisinin and its Derivatives. Anticancer Res、37(11)、5995~6003頁. https://doi.org/10.21873/anticanres.12046
【非特許文献18】Tilaoui, M.、Mouse, H. A.、Jaafari, A.及びZyad, A. (2014). Differential effect of artemisinin against cancer cell lines. Nat Prod Bioprospect、4(3)、189~196頁
【非特許文献19】Deeken, J. F.、Wang, H.、Hartley, M.、Cheema, A. K.、Smaglo, B.、Hwang, J. J.、He, A. R.、Weiner, L. M.、Marshall, J. L.、Giaccone, G.、Liu, S.、Luecht, J.、Spiegel, J. Y.及びPishvaian, M. J. (2018). A phase I study of intravenous artesunate in patients with advanced solid tumor malignancies. Cancer Chemother Pharmacol、81(3)、587~596頁
【非特許文献20】Jiao, Y.、Ge, C. M.、Meng, Q. H.、Cao, J. P.、Tong, J.及びFan, S. J. (2007). Dihydroartemisinin is an inhibitor of ovarian cancer cell growth. Acta Pharmacol Sin、28(7)、1045~1056頁
【非特許文献21】Sertel, S.、Eichhorn, T.、Simon, C. H.、Plinkert, P. K.、Johnson, S. W.及びEfferth, T. (2010). Pharmacogenomic identification of c-Myc/Max-regulated genes associated with cytotoxicity of artesunate towards human colon, ovarian and lung cancer cell lines. Molecules、15(4)、2886~2910頁
【非特許文献22】von Hagens, C.、Walter-Sack, I.、Goeckenjan, M.、Storch-Hagenlocher, B.、Sertel, S.、Elsasser, M.、Remppis, B. A.、Munzinger, J.、Edler, L.、Efferth, T.、Schneeweiss, A.及びStrowitzki, T. (2019). Long-term add-on therapy (compassionate use) with oral artesunate in patients with metastatic breast cancer after participating in a phase I study (ARTIC M33/2). Phytomedicine、54、140~148頁
【非特許文献23】Konig, M.、von Hagens, C.、Hoth, S.、Baumann, I.、Walter-Sack, I.、Edler, L.及びSertel, S. (2016). Investigation of ototoxicity of artesunate as add-on therapy in patients with metastatic or locally advanced breast cancer: new audiological results from a prospective, open, uncontrolled, monocentric phase I study. Cancer Chemother Pharmacol、77(2)、413~427頁
【非特許文献24】Li, Q.、Ni, W.、Deng, Z.、Liu, M.、She, L.及びXie, Q. (2017). Targeting nasopharyngeal carcinoma by artesunate through inhibiting Akt/mTOR and inducing oxidative stress. Fundam Clin Pharmacol、31(3)、301~310頁
【非特許文献25】Li, Y.、Shan, F.、Wu, J. M.、Wu, G. S.、Ding, J.、Xiao, D.、Yang, W. Y.、Atassi, G.、Leonce, S.、Caignard, D. H.及びRenard, P. (2001). Novel antitumor artemisinin derivatives targeting G1 phase of the cell cycle. Bioorg Med Chem Lett、11(1)、5~8頁
【非特許文献26】Liu, L.、Zuo, L. F.、Zuo, J.及びWang, J. (2015). Artesunate induces apoptosis and inhibits growth of Ecal09 and Ec9706 human esophageal cancer cell lines in vitro and in vivo. Mol Med Rep、12(1)、1465~1472頁
【非特許文献27】Luo, J.、Zhu, W.、Tang, Y.、Cao, H.、Zhou, Y.、Ji, R.、Zhou, X.、Lu, Z.、Yang, H.、Zhang, S.及びCao, J. (2014). Artemisinin derivative artesunate induces radiosensitivity in cervical cancer cells in vitro and in vivo. Radiat Oncol、9、84
【非特許文献28】Morrissey, C.、Gallis, B.、Solazzi, J. W.、Kim, B. J.、Gulati, R.、Vakar-Lopez, F.、Goodlett, D. R.、Vessella, R. L.及びSasaki, T. (2010). Effect of artemisinin derivatives on apoptosis and cell cycle in prostate cancer cells. Anticancer Drugs、21(4)、423~432頁
【非特許文献29】Roh, J. L.、Kim, E. H.、Jang, H.及びShin, D. (2017). Nrf2 inhibition reverses the resistance of cisplatin-resistant head and neck cancer cells to artesunate-induced ferroptosis. Redox Biol、11、254~262頁
【非特許文献30】Sertel, S.、Eichhorn, T.、Sieber, S.、Sauer, A.、Weiss, J.、Plinkert, P. K.及びEfferth, T. (2010). Factors determining sensitivity or resistance of tumor cell lines towards artesunate. Chem Biol Interact、185(1)、42~52頁
【非特許文献31】Zhang, J.、Sun, X.、Wang, L.、Wong, Y. K.、Lee, Y. M.、Zhou, C.、Wu, G., Zhao, T.、Yang, L.、Lu, L.、Zhong, J.、Huang, D.及びWang, J. (2018). Artesunate-induced mitophagy alters cellular redox status. Redox Biol、19、263~273頁
【非特許文献32】McDowell, A., Jr.; Hill, K.S.; McCorkle, J.R.; Gorski, J.; Zhang, Y.; Salahudeen, A.; Ueland, F.; Kolesar, J.M.、「Preclinical Evaluation of Artesunate as an Antineoplastic Agent in Ovarian Cancer Treatment」、Diagnostics 2021、11、395
【非特許文献33】Hill, K.S.; McDowell, A.; McCorkle, R.; Schuler, E.; Ellingson, S.; Plattner, R.; Kolesar, J.M. 「KEAP1 is Required for Artesunate Anticancer Activity in Non-Small-Cell Lung Cancer」、Cancers 2021、13、1885
【非特許文献34】Triemerら、Angewandte Chemie、International Edition 57、(2018)、5525~5528頁
【非特許文献35】X. Simmonetら、「Apollon, a new Artemisia annua variety with high artemisinin content」、Planta Medica、2011、77(12)
【非特許文献36】Reiter, C.、Frdhlich, T.、Gruber, F.、Hutterer, C.、Marschall, M.、Voigtlander, C、Friedrich, O.、Kappes, B.、Efferth, T.、Tsogoeva, S.B.、2015a、Highly potent artemisinin-derived di ers and trimers: Synthesis and evaluation of their antimalarial, anti leukemia and antiviral activities. Bioorg. Med. Chem. 23 (17)、5452~5458頁
【非特許文献37】Reiter, C.、Frdhlich, T.、Zeino, M.、Marschall, M.、Bahsi, H.、Leidenberger, M.、Friedrich, O.、Kappes, B.、Hampel, F.、Efferth, T.、Tsogoeva, S.B.、2015b、New efficient artemisinin derived agents against human leukemia cells, human cytomegalovirus and Plasmodium falciparum: 2nd generation 1,2,4-trioxane-ferrocene hybrids. Eur. J. Med. Chem. 97、164~172頁
【非特許文献38】Posner, G.H.、Ploypradith, P.、Parker, M.H.、O'Dowd, H.、Woo, S.H.、Northrop, J.、Krasavin, M.、Dolan, P.、Kensler, T.W.、Xie, S.、Shapiro, T.A.、1999、Antimalarial, antiproliferative, and antitumor activities of artemisinin-derived, chemically robust, trioxane dimers、J. Med. Chem. 42 (21)、4275~4280頁
【非特許文献39】Paik, I.H.、Xie, S.、Shapiro, T.A.、Eabonte, T.、Narducci Sarjeant, A.A.、Baege, A.C.、Posner, G.H.、2006、Second generation, orally active, antimalarial, artemisinin-derived trioxane dimers with high stability, efficacy, and anticancer activity、J. Med. Chem. 49 (9)、2731~2734頁
【非特許文献40】Ei, Y.、Zhu, Y.M.、Jiang, H.J.、Pan, J.P.、Wu, G.S.、Wu, J.M.、Shi, Y.L.、Yang, J.D.、Wu, B.A.、2000、Synthesis and antimalarial activity of artemisinin derivatives containing an amino group、J. Med. Chem. 43 (8)、1635~1640頁
【非特許文献41】Ren, Y.、Yu, J.、Kinghorn, A.D.、2016、Development of anticancer agents from plant-derived sesquiterpene lactones、Curr. Med. Chem. 23 (23)、2397~2420頁
【非特許文献42】O'Neill, P.M.、Searle, N.L.、Kan, K.W.、Storr, R.C.、Maggs, J.L.、Ward, S.A.、Raynes, K.、Park, B.K.、1999、Novel, potent, semisynthetic antimalarial carba analogues of the first-generation 1,2,4-trioxane artemether、J. Med. Chem. 42 (26)、5487~5493頁
【非特許文献43】Stahl及びWermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」(Wiley-VCH、Weinheim、Germany、2002)
【非特許文献44】Czechowskiら、Frontiers in Plant Science、2019、10巻、984条
【非特許文献45】Zarelliら、Phytochemical Analysis 2019、30、564~571頁
【非特許文献46】Bliss, C.I. The Toxicity of Poisons Applied Jointlyl. Ann Appl. Biol 1939、26、585~615頁、doi:10.1111/j.1744-7348.1939.tb06990.x
【非特許文献47】Yadav, B.; Wennerberg, K.; Aittokallio, T.; Tang, J. Searching for Drug Synergy in Complex Dose-Response Landscapes Using an Interaction Potency Model. Comput Struct. Biotechnol J. 2015、13、504~513頁、doi:10.1016/j.csbj.2015.09.001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、励みになる結果が得られたが、がんの処置及び防止、特に、依然として高い死亡率を有するがん、例えば卵巣がん、肝臓がん及び肺がんのための処置及び防止を改善するために作用機序を理解することが依然として更に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概要
本発明は、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する少なくとも1種の化合物又は
a)少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する少なくとも1種の化合物及び
b)少なくとも1種のクロロゲン酸
の組合せを含む抗がん剤に関する。
【0013】
該組合せは、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分、例えばアルテミシニン、及びそれの天然又は合成の誘導体を単独で有する化合物と比較して、in vitroにおいてがん細胞に対していっそう強力な活性を呈する。それらは、非常に良好な安全性プロファイルを更に有し、したがって、重度の副作用なく広範な臨床的使用のための機会を提供する。
【0014】
本発明は、こうした抗がん剤を含む医薬組成物、並びにがんを防止若しくは処置するために、又はがんの再発を遅延若しくは防止することを含めて、がんを有する対象の生存を延長するために、前記抗がん剤及び医薬組成物を使用する方法を更に提供する。この発明の更なる目的は、本明細書において下記に記載されている。
【0015】
別の態様において、本発明は、本発明による抗がん剤又は医薬組成物、並びに少なくとも1種の追加の治療剤を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】細胞が段階希釈濃度のアルテスナートで72時間処置された3種の市販の卵巣がん細胞株(Caov-3、OVCAR-3、及びUWB1.289)にわたるアルテスナート感受性を示す図である。CellTiter-Glo 2.0生存率アッセイ(Promega社)を使用して、ビヒクル処置対照細胞に対する処置細胞の増殖からパーセント生存率を計算した。3回の独立した実験からの平均±SDをグラフで示し、可変勾配非線形回帰線を使用してIC50を計算した。
【
図2】DNA損傷アッセイを平均核pH2AX強度として示す図である。陽性対照としての25μMシスプラチン処置と共に、5~100μMの範囲のアルテスナート濃度で48時間処置されたCaov-3細胞においてpH2AX染色の平均核強度を定量化した。平均シグナル±SDをグラフ化し、片側t検定を実施した(*p=0.0486、**p=0.0034)。
【
図3】ヨウ化プロピジウム染色を使用した細胞周期解析を示す図である。0.1%DMSO(対照)又は10μMアルテスナートでの24時間処置後のG1のCaov-3及びUWB1細胞の百分率が3回の独立した実験からの平均±SDとしてグラフ化されている。対応のない片側t検定は、アルテスナートで24時間処置されたUWB1細胞(*p<0.05)においてG1の細胞の統計的に有意な増加を明らかにした。
【
図4】ヨウ化プロピジウム染色を使用した細胞周期解析を示す図である。0.1%DMSO(対照)又は10μMアルテスナートでの48時間処置後のG1のCaov-3及びUWB1細胞の百分率が3回の独立した実験からの平均±SDとしてグラフ化されている。対応のない片側t検定は、アルテスナートで48時間処置されたUWB1細胞(*p<0.05)及び48時間処置されたCaov-3細胞(**p<0.01)においてG1の細胞の統計的に有意な増加を明らかにした。
【
図5】ヨウ化プロピジウム染色を使用した細胞周期解析を示す図である。アルテスナートでの24時間処置後(
図5)又は48時間処置後(
図6)のS期の細胞の百分率の同時解析は、48時間後のS期の細胞の有意な減少を明らかにする(*p<0.05;***p<0.001)。
【
図6】ヨウ化プロピジウム染色を使用した細胞周期解析を示す図である。アルテスナートでの24時間処置後(
図5)又は48時間処置後(
図6)のS期の細胞の百分率の同時解析は、48時間後のS期の細胞の有意な減少を明らかにする(*p<0.05;***p<0.001)。
【
図7】アルテスナート、カルボプラチン、及びパクリタキセルの抗がん剤薬物投与シーケンスアッセイを示す図である。1日目(D1A)又は2日目(D2A)にアルテスナート、2日目にカルボプラチン及びパクリタキセル(D2C/T)、2日目にカルボプラチン、パクリタキセル、及びアルテスナート(D2C/T/A)、又は1日目にアルテスナート、続いて2日目にカルボプラチン及びパクリタキセル(D1A;D2C/T)で細胞を処置した。アルテスナート、カルボプラチン、及びパクリタキセルの24時間処置濃度はそれぞれ40μM、16μM、及び32μMであった。カルボプラチン/パクリタキセル及び/又はアルテスナートでの処置後のCellTiter-Glo 2.0生存率アッセイを利用して、示されるように、Caov-3細胞における平均±SDとしてグラフで示されたDMSO(対照)処置細胞と比較したパーセント生存率を計算した。統計的有意差が一元配置ANOVAにより評価された(ns-有意差なし、及び*p<0.05)。両方の細胞株において、カルボプラチン/パクリタキセルとの併用処置としてアルテスナートを添加した結果、生細胞が有意に減少した。
【
図8】アルテスナート、カルボプラチン、及びパクリタキセルの抗がん剤薬物投与シーケンスアッセイを示す図である。1日目(D1A)又は2日目(D2A)にアルテスナート、2日目にカルボプラチン及びパクリタキセル(D2C/T)、2日目にカルボプラチン、パクリタキセル、及びアルテスナート(D2C/T/A)、又は1日目にアルテスナート、続いて2日目にカルボプラチン及びパクリタキセル(D1A;D2C/T)で細胞を処置した。アルテスナート、カルボプラチン、及びパクリタキセルの24時間処置濃度はそれぞれ40μM、16μM、及び32μMであった。カルボプラチン/パクリタキセル及び/又はアルテスナートでの処置後のCellTiter-Glo 2.0生存率アッセイを利用して、示されるように、UWB1細胞における平均±SDとしてグラフで示されたDMSO(対照)処置細胞と比較したパーセント生存率を計算した。統計的有意差が一元配置ANOVAにより評価された(ns-有意差なし、及び*p<0.05)。両方の細胞株において、カルボプラチン/パクリタキセルとの併用処置としてアルテスナートを添加した結果、生細胞が有意に減少した。
【
図9】非小細胞肺がん(NSCLC)細胞株のパネルにわたるアルテスナート感受性を示す図である。細胞が段階希釈濃度のアルテスナートで96時間処置された。各細胞株が対照としての0.1% DMSO(ジメチルスルホキシド)で処置された細胞に規格化された。各細胞株が平均±SD、n=6としてグラフ化されている。
【
図10】非小細胞肺がん(NSCLC)細胞株のパネルにわたるアルテスナート感受性を示す図である。各細胞株におけるアルテスナート(Art)の平均IC50がグラフ化された±SDである。p値が両側t検定を使用して計算された(A549と比較して*p=0.0290又は**p=0.0007)。
【
図11】核pH2AX染色により定量化されたNSCLC細胞株におけるアルテスナートによるDNA損傷の用量依存的誘導を示す図である。細胞あたりの0.1%DMSOに規格化された核蛍光強度シグナルの平均倍率変化±SDとしてグラフ化された。p値は、対応する0.1%DMSO対照と比較して各細胞株の一元配置ANOVA及びダネットの多重比較検定により計算する(*p<0.05、***p<0.001)。
【
図12】アルテスナート処置がA549及びH1299 NSCLC細胞株において時間依存的にkelch様ECH関連タンパク質1(KEAP1)/核因子赤血球2関連因子2(NRF2)経路タンパク質発現の変化を誘導することを示す図である。細胞が10μMアルテスナートで0、6、又は24時間処置され、KEAP1及びNQO-1(NAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1)タンパク質のレベルがウエスタンブロットにより評価された。両方の細胞株において、KEAP1タンパク質レベルがアルテスナートでの処置後に低下する。
【
図13】KEAP1、NQO-1及びβ-アクチンのウエスタンブロット解析並びにトランスフェクションの48時間後のsiKEAP1処置細胞におけるKEAP1タンパク質の減少を示す図である。
【
図14】非標的化(siNT-実線)又はKEAP1(siKEAP1-破線)siRNAのトランスフェクション後のアルテスナート用量-反応曲線を示す図である。データが0.1%DMSOに規格化された。データは平均±SD、n=4としてプロットされている。
【
図15】非標的化(siNT)siRNA(塗りつぶし)又はsiKEAP1(白抜き)がトランスフェクトされた各細胞株におけるアルテスナートの平均IC50±SDを示す図である。p値が両側t検定を使用して計算された。
【
図16】siNT又はsiKEAP1のトランスフェクション後のA549における核pH2AX染色の定量化を示す図である。0.1%DMSO(対照)、示された濃度のアルテスナート、又は25μMシスプラチンでの24時間処置後に核pH2AX染色によりDNA損傷が評価された。siNTがトランスフェクトされ、DMSO対照で処置された細胞に核pH2AX染色が規格化された。核pH2AX染色は平均倍率変化±SDとしてプロットされている。p値は、規格化後に各アルテスナート濃度を対応対照と比較する二元配置ANOVAを使用して計算する(*p<0.05;***p<0.001)。
【
図17】siNT又はsiKEAP1のトランスフェクション後のH1299における核pH2AX染色の定量化を示す図である。0.1%DMSO(対照)、示された濃度のアルテスナート、又は25μMシスプラチンでの24時間処置後に核pH2AX染色によりDNA損傷が評価された。siNTがトランスフェクトされ、DMSO対照で処置された細胞に核pH2AX染色が規格化された。核pH2AX染色は平均倍率変化±SDとしてプロットされている。p値は、規格化後に各アルテスナート濃度を対応対照と比較する二元配置ANOVAを使用して計算する(*p<0.05;***p<0.001)。
【
図18】NRF2の薬理学的阻害がA549細胞をアルテスナートに感作させ、それによってアルテスナートが0.1%DMSO(実線)又は5μM ML385(破線)を含む培地に加えられ、アルテスナート用量反応データがDMSO又は5μM ML385のみに規格化されたことを示す図である。アルテスナート用量反応データが平均±SD、n=6としてグラフ化されている。
【
図19】0.1%DMSO(塗りつぶし)又は5μM ML385(白抜き)を含む各細胞株におけるアルテスナートの平均IC50±SDのグラフである。p値が両側t検定を使用して計算された。
【
図20】0.03%DMSO又は5μM ML385で24時間前処置され、続いて示された濃度のアルテスナートが更に24時間添加されたA549細胞における核pH2AX染色の定量化を示す図である。0.03%で前処置されたビヒクル対照細胞に規格化された核蛍光強度シグナルの平均倍率変化±SDとしてグラフ化された。p値は、規格化後に各アルテスナート濃度を対応対照と比較する一元配置ANOVA及びダネットの多重比較検定を使用して計算する(**p<0.01;***p<0.001)。
【
図21】0.03%DMSO又は5μM ML385で24時間前処置され、続いて示された濃度のアルテスナートが更に24時間添加されたH1299細胞における核pH2AX染色の定量化を示す図である。0.03%で前処置されたビヒクル対照細胞に規格化された核蛍光強度シグナルの平均倍率変化±SDとしてグラフ化された。p値は、規格化後に各アルテスナート濃度を対応対照と比較する一元配置ANOVA及びダネットの多重比較検定を使用して計算する(**p<0.01;***p<0.001)。
【
図22】A549細胞において6×6用量-反応マトリックスを使用することにより計算されたときの相乗作用スコアリングのBliss非依存モデルのグラフ表示である。赤色は試験された薬物組合せ間の相乗作用を示し、一方、緑色は拮抗作用を示す。
【
図23】H1299細胞において6×6用量-反応マトリックスを使用することにより計算されたときの相乗作用スコアリングのBliss非依存モデルのグラフ表示である。赤色は試験された薬物組合せ間の相乗作用を示し、一方、緑色は拮抗作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
この明細書を解釈する目的のため、以下の定義が当てはまり、適切な場合常に、単数形で使用される用語は、複数形も含む。
【0018】
本明細書において使用される用語は、別段に文脈が明らかに示していない限り以下の意味を有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、体の他の部分に侵入又は伝播する潜在性を有する異常細胞成長を伴う疾患群を意味し、黒色腫;多発性骨髄腫;癌腫、例えば、例えば乳房、結腸及び前立腺の腺癌腫、基底細胞癌腫、扁平細胞癌腫、移行細胞癌腫;肉腫、例えば、骨肉腫、平滑筋肉腫、カポジ肉腫、悪性線維性組織球腫、脂質肉腫、及び隆起性皮膚線維肉腫;白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病及びヘアリー細胞白血病;リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫;脳脊髄腫瘍、生殖細胞腫瘍、神経内分泌腫瘍及びカルチノイド腫瘍が挙げられる。
【0020】
前述のがん型は、文献にも参照されている以下のがん型を含む:結腸直腸がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん及び甲状腺がん。
【0021】
本発明による組成物によって処置される好ましいがんとしては、肺がん、特に非小細胞肺がん(NSCLC)、卵巣がん及び肝臓がんが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物を指す。ある特定の態様において、動物は、哺乳動物である。対象は、例えば、霊長類(例えばヒト)、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、家禽、ウサギ、ラット、マウス、魚類、鳥類等も指す。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。「患者」は、本明細書で使用される場合、ヒト対象を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「阻害」又は「阻害すること」という用語は、所与の状態、症状、若しくは障害、若しくは疾患、特にがんの低減若しくは抑制、又は生物学的な活性若しくはプロセスのベースライン活性における著しい減少を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「生存を延長すること」という用語は、がんを有する対象の寿命を、本発明による抗がん剤、医薬組成物又はキットを受けない同じがんを有する対象と対比して、少なくとも1日延ばすことを意味する。
【0025】
延長された生存は、対象の寿命を少なくとも:1週、2週、3週、4週若しくはそれ以上、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月若しくはそれ以上、又は1年、2年、3年、4年、5年若しくはそれ以上増加させることを含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、がんを「処置すること」又はがんの「処置」という用語は、一実施形態では、がんを寛解させること、即ち、がん、その臨床症状の少なくとも1つの発症を減速又は抑止又は低減することを指す。別の実施形態では、「処置すること」又は「処置」は、患者によって識別可能でないことがあるものを含めて、少なくとも1つの物理的パラメータを軽減又は寛解させることを指す。なお別の実施形態では、「処置すること」又は「処置」は、物理的に、例えば、識別可能な症状の安定化、生理学的に、例えば、物理的パラメータの安定化、又は両方のいずれかでがんをモジュレートすることを指す。なお別の実施形態では、「処置すること」又は「処置」は、がんの発病、発症、進行又は再発を防止又は遅延させることを指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「投与される」、「投与」、「同時投与される」及び「同時投与」という用語は、本明細書において企図される化合物の組合せを、及び任意選択により、本明細書に記載されている通りにがんを処置することもできる少なくとも1つの追加の化合物と一緒に、対象に投与することを指す。
【0028】
一実施形態では、化合物は、任意の特定の順序で、単一の治療的手法の一部として別々に投与される。好ましい実施形態では、本発明による組合せの化合物は、共製剤(joint formulation)において、例えば、本発明による医薬組成物として同時投与される。
【0029】
本明細書で使用される場合、本発明の文脈において、殊に請求項の文脈において使用される「a」、「an」、「the」という用語及び同様の用語は、別段に本明細書において表示されていない又は文脈と明白に矛盾していない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0030】
本明細書に記載されている全ての方法は、別段に本明細書において表示されていない限り又は別段に文脈と明らかに矛盾していない限り、任意の適当な順序で行うことができる。本明細書において提供されている任意及び全ての例、又は例証的な言語、例えば「例えば」の使用は、単に本発明をより良好に例示すると意図され、別段に請求されている本発明の範疇に制限を設けることはない。
【0031】
「任意選択により置換されている」又は「置換されている」は、参照される分子又は部分における任意の位置で、1個又は複数の水素原子が、置換基の任意の1つ又は任意の組合せによって置換され得ることを意味し、それらの数、配置及び選択は、熟練化学者が合理的に安定であると予想するような置換のみを包含すると理解される。
【0032】
本発明の各種実施形態が、本明細書に記載されている。各実施形態において特定されている特色は、他の特定されている特色と組み合わされることで、更なる実施形態を提供するができることが認識されよう。
【0033】
本発明による組合せは、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む少なくとも1種の化合物を含み、こうした化合物は、任意選択により、しかし好ましくは置換されている少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン環を含むものである。
【0034】
一実施形態では、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む化合物は、式(I)から(V)
【化1】
の化合物、及び適用可能な場合、式(I)及び(II)の前記化合物の薬学的に許容される塩から選択される。
【0035】
式(I)中、
矢印は、残基R1への図示されている酸素原子間の結合を示し、
nは、1を超える、好ましくは2から10、より好ましくは2、3又は4、更により好ましくは2又は3の整数であり、
R1は、括弧内に図示されている残基によってn回置換されている残基であり、好ましくはC1~C18-アルキル又はC2~C18-アルケニル又は-(CO)n(R3)であり、ここで、カルボイル(carboyl)基は、残基R1に結合されている酸素と一緒に、カルボン酸エステル部分を形成し、R3は、C1~C18アルカン-n-イル又はC2~C18アルケン-n-イルであり、
前記C1~C18-アルキル、C2~C18-アルケニル、C1~C18-アルカン-n-イル、C2~C18-アルケン-n-イル基は、
・中断されていないか、又は
-0-、-S-、-SO2-、-SO-、-SO2NR4-、NR4S02-、-NR4-、-CO-、-O(CO)-、(CO)O-、-0(C0)0-、-NR4(CO)NR4-、NR4(CO)-、-(CO)NR4-、-NR4(C0)0-、-0(C0)NR4-
からなる群から選択される非連続的な官能基によって1回、2回若しくは2回を超えて中断されており、
・中断されていないか、又は追加として若しくは代替として、ヘテロシクロ-ジイル及びアリールジイルからなる群から選択される二価の残基によって1回、2回若しくは2回を超えて中断されており、
・置換されていないか、又は追加として若しくは代替として、
ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アジド、C6~C14-アリール、C1~C8-アルコキシ、C1~C8-アルキルチオ、-SO3M、-COOM、PO3M2、-PO(N(R5)2)2、P0(0R5)2、-S02N(R4)2、-N(R4)2、-C02N(R5)2、-COR4、-OCOR4、-NR4(CO)R5、-(CO)OR4、-NR4(CO)N(R4)2
からなる群から選択される置換基によって1回、2回又は2回を超えて置換されている。
【0036】
式(II)中、
R2は、C1~C18-アルキル又はC2~C18-アルケニル又は-(CO)R3であり、ここで、カルボイル基は、残基R1に結合している酸素と一緒に、カルボン酸エステル部分を形成し、R3は、C1~C18-アルキル又はC2~C18アルケニルであり、これによって、
前記C1~C18-アルキル及びC2~C18-アルケニル基は、
・中断されていないか、又は
-0-、-S-、-SO2-、-SO-、-SO2NR4-、NR4S02-、-NR4-、-CO-、-O(CO)-、(CO)O-、-0(C0)0-、-NR4(CO)NR4-、NR4(CO)-、-(CO)NR4-、-NR4(C0)0-又は-0(CO)NR4-
からなる群から選択される非連続的な官能基によって1回、2回若しくは2回を超えて中断されており、
・中断されていないか、又は追加として若しくは代替として、ヘテロシクロ-ジイル及びアリールジイルからなる群から選択される二価の残基によって、1回、2回若しくは2回を超えて中断されており、
・置換されていないか、又は追加として若しくは代替として、
ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アジド、C6~C14-アリール、C1~C8-アルコキシ、C1~C8-アルキルチオ、-SO3M、-COOM、PO3M2、-PO(N(R5)2)2、PO(OR5)2、-S02N(R4)2、-N(R4)2、-C02N(R5)2、-COR4、-OCOR4、-NR4(CO)R5、-(CO)OR4又は-NR4(CO)N(R4)2
からなる群から選択される置換基によって1回、2回若しくは2回を超えて置換されており、
上記の全ての式において、使用される場合、
R4は、水素、C1~C8-アルキル、C6~C14-アリール及びヘテロシクリルからなる群から独立して選択されるか、又はN(R4)2は全体として、N含有複素環であり、
R5は、C1~C8-アルキル、C6~C14-アリール及びヘテロシクリルからなる群から独立して選択されるか、又はN(R5)2は全体として、N含有複素環であり、
Mは、水素、又はq価金属イオンの1/q相当分であるか、或いはアンモニウムイオン若しくはグアニジニウムイオン、又は第一級、第二級、第三級若しくは第四級の有機アンモニウムイオン、特に式[N(C1~C18-アルキル)sHt]+のものであり、ここで、sは、1、2、3又は4であり、tは(4-s)である。
【0037】
本明細書で使用される場合、及び別段具体的に明記されていない限り、C1~C18-アルキル、C1~C18-アルケン-n-イル、C1~C8-アルキル、C1~C8-アルコキシ及びC1~C8-アルキルチオは、直鎖の、又は、C3~C18若しくはC3~C8については、部分的に又は全体として、その上環式の分岐又は非分岐のアルキル、アルコキシ及びアルキルチオ置換基を含み、そのような置換基中に所与の数の炭素原子を有する。
【0038】
本明細書で使用される場合、及び別段具体的に明記されていない限り、C2~C18-アルケニルは、直鎖の、或いはC5~C18については、部分的に又は全体として、その上環式の分岐又は非分岐のアルケニルを含み、そのような置換基中に所与の数の炭素原子を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、及び別段具体的に明記されていない限り、C6~C14-アリール、C6~C14-アリールオキシ、及びC6~C14-アリールチオは、そのような芳香族系内に、即ち置換基の炭素原子なしで6個から14個の炭素原子を有する炭素環式芳香族置換基、好ましくはフェニル(C6)、ナフチル(C10)、フェナントレニル及びアントラセニル(各C14)を示し、これによって、前記炭素環式芳香族置換基は、非置換であるか、又は1つの環当たり最大5個の同一若しくは異なる置換基によって置換されている。例えば及び優先して、置換基は、フルオロ、クロロ、C1~C18-アルキル、C1~C18-アルコキシ、C6~C14-アリールからなる群から選択される。
【0040】
より好ましい実施形態では、炭素環式の芳香族置換基は、非置換である。
【0041】
C1~C18-アルキルの具体例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル及びイソオクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシルである。
【0042】
C1~C8アルコキシ-置換基の具体例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ及びシクロヘキシルオキシである。
【0043】
C1~C8アルキルチオ-置換基の具体例は、メチルチオ及びエチルチオである。
【0044】
C6~C14-アリールの具体例は、フェニル、0-、m-及びp-トリルである。
【0045】
C6~C14-アリール-置換基の更なる具体例は、フェノキシである。
【0046】
C6~C14-アリール-置換基の更なる具体例は、フェニルチオである。
【0047】
式(II)の好ましい化合物は、式(IIa)のもの、アルテメテル、及び式(IIb)のもの、アルテスナート、及びアルテスナートの薬学的に許容される塩である。
【0048】
【0049】
式(III)の化合物は、ジヒドロアルテミシンである。
【0050】
式(IV)の化合物は、アルテミシニンである。
【0051】
式(V)の化合物は、アルテミシテンである。
【0052】
本発明の一実施形態では、本発明による抗がん剤は、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む1種超の化合物、並びに上記の式(I)から(V)のもの、及び適用可能な場合、こうした化合物の薬学的に許容される塩から選択される好ましくは1種超の化合物を含有する。
【0053】
好ましい一実施形態において本発明による組合せは、式(IIa)、(IIb)、(III)、(IV)及び(V)から選択される少なくとも2種、例えば2種、3種、4種又は全ての化合物を含む。
【0054】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む天然発生する化合物及びこうした化合物の組合せは、植物クソニンジン(Artemisia annua)若しくはその部分をそのままで使用することによって、この発明の目的のために用いることができるか、又はクソニンジンから公知の抽出方法、及び所望される場合、例えばTriemerら、Angewandte Chemie、International Edition 57、(2018)、5525~5528頁において公表されている通りの標準的な後処理方法を介して得ることができる。
【0055】
クソニンジンが抽出される場合、これは、乾燥させても又は新鮮に収穫されても、全体の植物又はその部分、例えば、葉又は茎を使用して生じ得る。抽出のための適当な溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、超臨界二酸化炭素、ハイドロフルオロカーボンHFC-134a、イオン性液体、水、メタノール、エタノール、1-ブタノール、アセトン、シクロヘキサノン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、又はその混合物が挙げられる。
【0056】
例えば、本発明の少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む単一化合物が該組合せにおいて使用されることが所望される場合、クソニンジンの抽出物は、個々の化合物を得るためのそれ自体知られている方式で、例えば、多相性溶媒混合物間で分配すること、再結晶化及び/若しくは例えばシリカゲル上のクロマトグラフィー分離によって、又は例えば、逆相カラム上の中圧液体クロマトグラフィーによって、又は分別晶出によって分離することができる。
【0057】
一実施形態では、クソニンジン植物は、アポロン(Apollon)変種であり、スイス、ContheyのMediplant社から市販で利用可能であるX. Simmonetら、「Apollon, a new Artemisia annua variety with high artemisinin content」、Planta Medica、2011、77(12)を参照されたい。
【0058】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む個々の化合物は、標準的方法に従って、例えば、クロマトグラフィー法、分布方法、(再)結晶化等を使用して、後処理及び/又は精製することができる。
【0059】
少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む合成又は半合成化合物は、例えば、当業者に知られている調製方法によって調製され、この一部は、例えば、Reiter, C.、Frdhlich, T.、Gruber, F.、Hutterer, C.、Marschall, M.、Voigtlander, C、Friedrich, O.、Kappes, B.、Efferth, T.、Tsogoeva, S.B.、2015a、Highly potent artemisinin-derived di ers and trimers: Synthesis and evaluation of their antimalarial, anti leukemia and antiviral activities。Bioorg. Med. Chem. 23 (17)、5452~5458頁; Reiter, C.、Frdhlich, T.、Zeino, M.、Marschall, M.、Bahsi, H.、Leidenberger, M.、Friedrich, O.、Kappes, B.、Hampel, F.、Efferth, T.、Tsogoeva, S.B.、2015b、New efficient artemisinin derived agents against human leukemia cells, human cytomegalovirus and Plasmodium falciparum: 2nd generation 1,2,4-trioxane-ferrocene hybrids. Eur. J. Med. Chem. 97、164~172頁; Posner, G.H.、Ploypradith, P.、Parker, M.H.、O'Dowd, H.、Woo, S.H.、Northrop, J.、Krasavin, M.、Dolan, P.、Kensler, T.W.、Xie, S.、Shapiro, T.A.、1999、Antimalarial, antiproliferative, and antitumor activities of artemisinin-derived, chemically robust, trioxane dimers、J. Med. Chem. 42 (21)、4275~4280頁; Paik, I.H.、Xie, S.、Shapiro, T.A.、Eabonte, T.、Narducci Sarjeant, A.A.、Baege, A.C.、Posner, G.H.、2006、Second generation, orally active, antimalarial, artemisinin-derived trioxane dimers with high stability, efficacy, and anticancer activity、J. Med. Chem. 49 (9)、2731~2734頁; Ei, Y.、Zhu, Y.M.、Jiang, H.J.、Pan, J.P.、Wu, G.S.、Wu, J.M.、Shi, Y.L.、Yang, J.D.、Wu, B.A.、2000、Synthesis and antimalarial activity of artemisinin derivatives containing an amino group、J. Med. Chem. 43 (8)、1635~1640頁; Ren, Y.、Yu, J.、Kinghorn, A.D.、2016、Development of anticancer agents from plant-derived sesquiterpene lactones、Curr. Med. Chem. 23 (23)、2397~2420頁; O'Neill, P.M.、Searle, N.L.、Kan, K.W.、Storr, R.C.、Maggs, J.L.、Ward, S.A.、Raynes, K.、Park, B.K.、1999、Novel, potent, semisynthetic antimalarial carba analogues of the first-generation 1,2,4-trioxane artemether、J. Med. Chem. 42 (26)、5487~5493頁に公表されており、これらは本明細書によって参照により組み込まれる。
【0060】
本発明による抗がん剤は、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する少なくとも1種の化合物及び少なくとも1つのクロロゲン酸の組合せを含むことができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「クロロゲン酸(chlorogenic acid)」又は「クロロゲン酸(chlorogenic acids)」という用語は、キナ酸の1個又は2個のヒドロキシル基がコーヒー酸、フェルラ酸又はp-クマル酸でエステル化されている化合物を示す。
【0062】
クロロゲン酸の好ましい例としては、3-O-カフェオイルキナ酸(式VIa)、4-O-カフェオイルキナ酸(式VIb)、5-O-カフェオイルキナ酸(式VIc)、3-O-フェルオイルキナ酸(式VId)、4-O-フェルオイルキナ酸(式VIe)、5-O-フェルオイルキナ酸(式VIf)、3,4-ジカフェオイルキナ酸(式VIIa)、3,5-ジカフェオイルキナ酸(式VIIb)及び4,5-ジカフェオイルキナ酸(式VIIc)が挙げられ、これによって、3-O-カフェオイルキナ酸(式VIa)、4-O-カフェオイルキナ酸(式VIb)、5-O-カフェオイルキナ酸(式VIc)、3,4-ジカフェオイルキナ酸(式VIIa)、3,5-ジカフェオイルキナ酸(式VIIb)及び4,5-ジカフェオイルキナ酸(式VIIc)が更により好ましい。
【0063】
【0064】
一実施形態では、本発明による組合せ中に存在する少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する1種又は複数の化合物と1種又は複数のクロロゲン酸との間のモル比は、例えば、2から0.002の間、好ましくは0.8から0.005の間、より好ましくは0.5から0.01、更により好ましくは0.1から0.01の間である。
【0065】
クロロゲン酸は、それらの単離形態で、又は全体の植物の成分、植物部分又は前述の抽出物として使用することができる。クソニンジンに関して言えば、クロロゲン酸は、個々の化合物を得るためのそれ自体知られている方式で、例えば、多相性溶媒混合物間で分配すること、再結晶化及び/若しくは例えばシリカゲル上のクロマトグラフィー分離によって、又は例えば、逆相カラム上の中圧液体クロマトグラフィーによって、又は分別晶出によって分離することができる。
【0066】
個々のクロロゲン酸は、標準的方法に従って、例えば、クロマトグラフィー法、分布方法、(再)結晶化等を使用して、後処理及び/又は精製することができる。
【0067】
クロロゲン酸のそれの高含有量により、コーヒー、特に焙煎コーヒーは、クロロゲン酸の貴重な供給源として使用することができる。
【0068】
一実施形態では、本発明による組合せは、コーヒー、特に焙煎コーヒーを、クソニンジン、特にクソニンジンの乾燥葉と共に、例えば水により、好ましくは40℃から100℃、より好ましくは50℃から100℃の温度で共抽出すること(co-extracting)によって得ることができる。焙煎コーヒーのクソニンジンに対する質量比は、例えば1から50、好ましくは5から50である。コーヒーとしては、変種ロブスタ(ロブスタコーヒーノキ(coffea canephora))及びアラビカ(コーヒーノキ(coffea arabica))のものが挙げられる。
【0069】
適当な抽出物は、その上、クソニンジンを含む茶、例えば、紅茶、緑茶、並びに甘草及びシナモンを含む茶を包含する。更に、本発明の組合せの化合物は、それらの塩を含めて、それらの水和物の形態で得ることもできるか、又はそれらの結晶化及び/若しくは抽出のために使用される他の溶媒を含む。本発明の組合せの化合物は、本質的に又は設計によって、水を含めて薬学的に許容される溶媒で溶媒和物を形成することができ;そのため、本発明は、溶媒和及び非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。「溶媒和物」という用語は、その薬学的に許容される塩を含めた本発明の化合物と1個又は複数の溶媒分子との分子複合体を指す。こうした溶媒分子は、医薬技術分野において共通して使用されるものであり、これらは、受容側、例えば、水、エタノール等に無害であることが知られている。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0070】
本発明の抗がん剤又は医薬組成物に含まれる少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する化合物は、その塩、水和物、及び溶媒和物を含めて、本質的に又は設計によって、多形体を形成することができる。全てのこうした多形体は、この発明によって包含される。
【0071】
本明細書で使用される場合、「塩(salt)」又は「塩(salts)」という用語は、本発明の化合物の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。「塩」としては、特に「薬学的に許容される塩」が挙げられる。「薬学的に許容される塩」という用語は、この発明の抗がん剤又は医薬組成物に含まれる少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、典型的に、生物学的に又はその他で望ましくなくない塩を指す。一部の場合において、本発明の抗がん剤又は医薬組成物に含まれる少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する化合物は、アルテスナートに関するようなアミノ基及び/若しくはカルボイル基又はそれと同様の基の存在によって酸塩及び/又は塩基塩を形成することができる。
【0072】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸で形成することができ、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物塩/臭化水素酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、樟脳スルホン酸塩、塩化物塩/塩酸塩、クロルテオフィロン酸塩、クエン酸塩、エタン二スルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒプル酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素、ポリガラクツロ酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩であり得る。
【0073】
塩が誘導され得る無機塩基としては、例えば、アンモニウム塩、及び周期表の列IからXIIの金属カチオンが挙げられる。ある特定の実施形態では、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛及び銅から誘導され;特に適当な塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩が挙げられる。
【0074】
塩が誘導され得る有機塩基は、例えば、第一級、第二級及び第三級アミン、天然置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン、塩基イオン交換樹脂等含む。ある特定の有機アミンとしては、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リジン、メグルミン、ピペラジン及びトロメタミンが挙げられる。
【0075】
本発明の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、こうした塩は、これらの化合物の遊離酸形態と適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg又はK水酸化物、カーボネート、ビカーボネート等)の化学量論量とを反応させることによって、又はこれらの化合物の遊離塩基形態と適切な酸の化学量論量とを反応させることによって調製することができる。こうした反応は、典型的に、水中で若しくは有機溶媒中で、又は該2つの混合物中で実施される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性媒体の使用が、実践可能な場合に望ましい。
【0076】
追加の適当な塩のリストは、例えば、Stahl及びWermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」(Wiley-VCH、Weinheim、Germany、2002)において見出すことができる。
【0077】
本明細書において示される任意の式は、非天然型同位体分布を有する最大3個の原子を有する本発明の組合せの化合物の非標識形態並びに同位体標識形態、例えば、重水素又は13C又は15Nが富化された部位を表すことが意図される。
【0078】
本発明の抗がん剤又は医薬組成物の部分を形成する少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する化合物は、水素結合のための供与体及び/又は受容体として作用することができる基を含有することができ、適当な共結晶形成剤で共結晶を形成することができ得る。これらの共結晶は、本発明の化合物から、公知の共結晶形成手順によって調製することができる。こうした手順は、粉砕すること、加熱すること、共昇華すること、共溶融すること、又は本発明の溶液化合物と共結晶形成剤とを結晶化条件下で接触させること、及びそれによって形成された共結晶を単離することを含む。適当な共結晶形成剤としては、WO2004/078163に記載されているものが挙げられる。それゆえに、本発明は、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を含む化合物を含む共結晶を更に提供する。
【0079】
本発明は、先行する実施形態のいずれかの抗がん剤を含む医薬組成物を更に含む。
【0080】
本発明は、がんを有する対象におけるがんを防止又は処置する方法であって、がんを有する対象に、本発明による抗がん剤又は医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0081】
本発明は、がんを有する対象の生存を延長するための方法であって、がんを有する対象に、本発明による抗がん剤又は医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0082】
更なる実施形態では、本発明は、対象におけるがんを処置する方法であって、がんを有する対象に本発明による抗がん剤又は医薬組成物の治療有効量及び少なくとも1種の追加の治療剤を同時に投与することを含む方法を提供する。本発明の抗がん剤又は医薬組成物及び追加の治療剤は、部分的に重複する又は完全に重複する投与期間で、一緒に又は別々に投与することができる。追加の治療剤は、この目的のために知られている全ての薬剤から選択することができ、例えば抗新生物薬が挙げられ、この発明の組合せ又は医薬組成物と組み合わせられることで、単一の医薬剤形を作り出すことができる。代替として、これらの追加の薬剤は、複数の剤形の一部として、例えば、キットを使用して、患者に別々に投与することができる。
【0083】
なお更なる実施形態では、本発明は、対象におけるがんを処置する方法であって、がんを有する対象に本発明による抗がん剤、特に組合せ又は本発明による医薬組成物の治療有効量及び少なくとも1種の追加の治療剤を逐次に投与することを含む方法を提供する。本発明の抗がん剤又は医薬組成物及び追加の治療剤は、部分的に重複する又は重複しない投与期間で投与することができる。追加の治療剤は、この目的のために知られている全ての薬剤から選択することができ、例えば、ゲムシタビンシスプラチン、カルボプラチン及びパクリタキセル等の抗新生物薬が挙げられる。少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分、特にアルテスナートを含む化合物及びその薬学的に許容される塩、並びに従って、本発明による抗がん剤又は医薬組成物が、がんのための、特に卵巣がん及び肺がんのための公知の標準的処置の効率を著しく改善することは、実験パートにおいて更に概説されている通り、本発明の重要な所見である。
【0084】
そのため、更なる実施形態では、本発明は、がんを有する対象を処置する、又はその生存を延長する方法であって、がんを有する対象に本発明による抗がん剤又は医薬組成物の治療有効量及び少なくとも1種の追加の治療剤を同時に投与することを含む方法を提供する。本発明の抗がん剤又は医薬組成物及び追加の治療剤は、部分的に重複する又は完全に重複する投与期間で、一緒に又は別々に投与することができる。追加の治療剤は、この目的のために知られている全ての薬剤から選択することができ、例えば、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン及びパクリタキセル等の抗新生物薬が挙げられる。
【0085】
別の実施形態では、本発明は、がんを有する対象を処置するための、又はその生存を延長する方法であって、がんを有する対象に本発明による抗がん剤又は医薬組成物の治療有効量及び少なくとも1種の追加の治療剤を逐次に投与することを含む方法を提供する。本発明の抗がん剤又は医薬組成物及び追加の治療剤は、部分的に重複する又は重複しない投与期間で、投与することができる。
【0086】
追加の治療剤は、この目的のために知られている全ての薬剤から選択することができ、例えば、ゲムシタビンシスプラチン、カルボプラチン及びパクリタキセル等の抗新生物薬が挙げられる。特定の実施形態では、本発明は、がんを有する対象を処置するための、又はその生存を延長する方法であって、それを必要とする対象に、少なくとも
(a)本発明による抗がん剤又は医薬組成物、及び
(b)(i)ゲムシタビン及びシスプラチン、例えば、1250mg/m2の用量のゲムシタビン及び75mg/m2の用量のシスプラチン、(ii)ペメトレキセド及びシスプラチン、例えば、500mg/m2の用量のペメトレキセド及び75mg/m2の用量のシスプラチン、又は(iii)パクリタキセル及びカルボプラチン、例えば、200mg/m2の用量のパクリタキセル及び6mg/ml/min用量の用量の標的曲線下面積(AUC6)のカルボプラチンの組合せである、白金ベースのダブレット化学療法(PT-DC)からなる群から選択される追加の治療剤
を投与することを含む方法を更に含む。
【0087】
好ましい実施形態では、追加の抗がん剤は、パクリタキセル及びカルボプラチン、例えば、200mg/m2の用量のパクリタキセル及び6mg/ml/min用量の用量の標的曲線下面積(AUC6)のカルボプラチンの組合せである。
【0088】
PT-DCは、典型的に、化学療法の最大6つのサイクルについて3週のサイクルで投与される。化学療法処置は、疾患進行、許容できない毒性、又は4~6つのサイクルの完了のいずれか早い方まで続く。
【0089】
がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である場合、白金-ダブレット化学療法レジメンは、典型的に、NSCLC組織診断に依存性である。混合された組織診断を有する対象は、優勢な組織診断に従って分類される。
【0090】
扁平組織診断(Squamous histology)対象は、シスプラチン(75mg/m2)とともにゲムシタビン(1250mg/m2);又はカルボプラチン(AUC5)とともにゲムシタビン(1000mg/m2)を受けることができる。ゲムシタビンは、各サイクルの1日目及び8日目に投与される。
【0091】
非扁平組織診断対象は、各サイクルの1日目に投与される、シスプラチン(75mg/m2)とともにペメトレキセド(500mg/m2);又は各サイクルの1日目に投与される、カルボプラチン(AUC6)とともにペメトレキセド(500mg/m2)を受けることができる。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明による抗がん剤又は医薬組成物は、同じ日にPT-DCと同時投与される。
【0093】
そのため、本発明は、がん、特に卵巣がん又は肺がんを有する対象の処置における使用のためのキットであって、
(a)本発明による抗がん剤又は医薬組成物の投与量、好ましくは上記で開示されている通りの投与量、並びに
(b)白金ベースのダブレット化学療法(PT-DC)である追加の治療剤の投与量、並びに
(c)本発明による抗がん剤又は医薬組成物及び他の治療剤を使用するための指示書
を含むキットを更に包含する。
【0094】
抗がん剤、医薬組成物、特にアルテスナート及びその薬学的に許容される塩が、NRF2阻害剤、例えばML385(N-[4-[2,3-ジヒドロ-1-(2-メチルベンゾイル)-1H-インドール-5-イル]-5-メチル-2-チアゾリル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-アセトアミド)と一緒に適用される場合、KEAP1又はNFE2L2 (NRF2をコード化する遺伝子)の変異で、NSCLCの処置において、更に相乗的に有効であることは、下記の実施例によって証拠付けられている通り、本発明の更なる所見である。
【0095】
特定の実施形態では、本発明は、そのため、がんを有する対象、特にNSCLCの対象、好ましくはKEAP1又はNFE2L2の変異を有する対象を処置するための、又はその生存を延長する方法であって、それを必要とする対象に、少なくとも
(a)本発明による抗がん剤又は医薬組成物、及び
(b)NRF2阻害剤、例えばML385からなる群から選択される追加の治療剤
を投与することを含む方法を更に含む。
【0096】
本発明は、がん、特に非小細胞肺がんを有する対象を処置することにおける使用のための、増強された医薬組成物又はキットを更に包含し、キットは、
(a)本発明による抗がん剤又は医薬組成物の投与量、好ましくは上記で開示されている通りの投与量、並びに
(b)NRF2阻害剤の、更にはキットのための投与量
(c)本発明による抗がん剤又は医薬組成物及びNRF2阻害剤を使用するための指示書
を含む。
【0097】
この発明の追加の態様は、がんを処置若しくは防止するための又はがんを有する対象の生存を延長するための、上文に記載されている通りの抗がん剤若しくは医薬組成物又はキット;及び該組成物が、がんを処置若しくは防止するために又はがんを有する対象の生存を延長するために使用することができることを記載する標識を含む包装材料を含む、製造物品を包含する。
【0098】
この発明は、医薬としての使用について本明細書に記載されている通りの、特に、がんを処置若しくは防止するための又はがんを有する対象の生存の延長のための、抗がん剤及び医薬組成物並びにキットを更に包含する。
【0099】
この発明のなお別の態様は、追加の治療剤の有無のいずれかにおいて、本明細書に記載されている抗がん剤又は薬学的組成物の有効量にがん細胞を曝露することを含む、がん細胞の成長を破壊又は阻害する方法に関する。この方法は、in vitro又はin vivoで実践することができる。
【0100】
本発明の範疇は、追加の治療剤との組合せにおける又は組み合わせずのいずれかで、がん細胞の成長、がん細胞の細胞分裂又はがんの転移を防止又は阻害するための、抗がん剤又は医薬組成物の使用を更に含む。
【0101】
1日当たり適用可能な本発明の抗がん剤又は医薬組成物の用量範囲は、本明細書において記載及び定義されている抗がん又は医薬組成物の少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する化合物の総量に対して算出される、例えば0.1から100mg/kg体重、好ましくは0.1から50mg/kg体重、更により好ましくは0.5から50mg/kg体重である。
【0102】
同じことが、上文に定義されている通りのキットに当てはまる。
【0103】
各投与単位は、本発明の抗がん剤又は医薬組成物を5%から95wt-%含有することができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、本発明による抗がん剤を20%から80wt-%含有する。
【0104】
別の実施形態では、本発明による医薬組成物は、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する化合物を20%から80wt-%含有する。
【0105】
実際の医薬有効量又は治療投与量は、当然、当業者によって知られている因子、例えば、患者の年齢及び体重、投与の経路、及び疾患の重症度に依存する。任意の場合において、該組合せは、医薬有効量が患者の個々の状態に基づいて送達されるのを可能にする投与量及び方式で投与される。
【0106】
この発明の医薬組成物が、本発明の抗がん剤及び1種又は複数の追加の治療剤を含む場合、抗がん剤及び追加の薬剤の両方は、単独治療レジメンにおいて通常投与される投与量の約10%から100%の間、より好ましくは約10から80%の間の投与量レベルで存在するべきである。
【0107】
下記の式(VIII)から(XVIII)の化合物は、クソニンジン抽出物に存在すると報告されており、とりわけCzechowskiら、Frontiers in Plant Science、2019、10巻、984条; Zarelliら、Phytochemical Analysis 2019、30、564~571頁を参照されたい。
【0108】
そのため、本発明による抗がん剤、医薬組成物及びキットは、式(VIII)から(XVIII)のものからなる群から選択される少なくとも1種の化合物、例えば1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種又は全ての化合物を更に含むことができる。
【化4】
【0109】
式(VIII)の化合物は、スコポレチンである。
【0110】
式(IX)の化合物は、1,8-シネオールである。
【0111】
式(X)の化合物は、アルテミシニン酸である。
【0112】
式(XI)の化合物は、アルテアンヌイン-Bである。
【0113】
式(XII)の化合物は、ジヒドロアルテミシン酸(dihydroartemisinic acid)である。
【0114】
式(XIII)の化合物は、フィセチンである。
【0115】
式(XIV)の化合物は、カスチシンである。
【0116】
式(XIV)の化合物は、アルテメチンである。
【0117】
式(XVI)の化合物は、クリソプレネチンである。
【0118】
式(XVII)の化合物は、クリソプレノール-Dである。
【0119】
式(XVIII)の化合物は、シルシリネオールである。
【0120】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、吸入等を含めて、公知の方法によって投与することができる。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、丸剤、ロゼンジ、トローチ、カプセル剤、溶液若しくは抽出物、例えば、茶若しくは他の型の注入飲料、特にクソニンジンの抽出物、又は懸濁液として、経口的に投与される。
【0121】
他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、注射又は注入によって投与される。注入は、典型的に、静脈内に、しばしば約15分から4時間の間の時間期間にわたって行われる。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、鼻腔内に又は吸入によって投与され、吸入方法は、特に有用である。本発明の医薬組成物は、経口生物学的利用能を呈するので、経口投与が時々好ましい。
【0122】
化合物の「有効量」は、がんを処置又は防止するのに又はがんを有する対象の生存を延長するのに必要な又は十分な量である。
【0123】
有効量は、対象のサイズ及び体重、疾病の型及び重症度、又は本発明の特別な化合物等の因子に依存して変動することができる。例えば、本発明による組合せ又は医薬組成物の選択は、「有効量」を構成するものに影響し得る。当業者は、本明細書に含有される因子を研究し、過度の実験法をせずに本発明の組合せ又は医薬組成物の有効量に関して決定することができる。
【0124】
投与のレジメンは、有効量を構成するものに影響し得る。本発明の組合せ又は医薬組成物は、がんの発病の前又は後のいずれかで、対象に投与することができる。更に、いくつかの分割された投与量、並びにずらされた投与量は、毎日若しくは逐次に投与することができるか、又は用量は、連続的に注入することができる、若しくはボーラス注射であってよい。更に、本発明の組合せ又は医薬組成物の投与量は、治療的又は予防的な状況の緊急事態によって示される通りに、比例して増加又は減少することができる。
【0125】
本発明の組合せは、本明細書に記載されている通りの状態、障害若しくは疾患の処置において、又はがんの処置における使用のための医薬組成物の製造のために、使用することができる。本発明は、これらの疾患の処置における、又はこれらの疾患の処置のために本発明のこうした組合せを含む医薬組成物の調製のための、本発明の組合せの使用の方法を提供する。
【0126】
「医薬組成物」という言語は、哺乳動物、例えば、ヒトへの投与に適当な調製を含む。本発明の組合せが、哺乳動物、例えば、ヒトへの医薬品として投与される場合、それらは、それ自体で、又は薬学的に許容される担体若しくは任意選択により2つ以上の薬学的に許容される担体との組合せにおいて活性成分として本発明の組合せ若しくはその任意の亜属の例えば0.1%から99.5%(より好ましくは、0.5%から90%)を含有する医薬組成物として与えられ得る。
【0127】
「薬学的に許容される担体」という成句は、当技術分野で認識されており、本発明の組合せの化合物を哺乳動物に投与するのに適当な、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを含む。担体としては、1つの臓器又は身体の一部から、別の臓器又は身体の一部へ対象薬剤を保有又は輸送することに関与する、液体若しくは固体充填剤、希釈液、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料が挙げられる。各担体は、製剤の他の成分と適合性のあるとともに患者に有害でないという意味において「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料の一部の例としては、糖、例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチ及びバレイショデンプン;セルロース及びそれの誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末化トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオ脂及び坐剤ワックス;油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;並びに医薬製剤中に用いられる他の非毒性の適合性ある物質が挙げられる。典型的に、薬学的に許容される担体は滅菌される、及び/又は実質的にパイロジェンフリーである。
【0128】
湿潤剤、乳化剤及び滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び香剤、保存料及び抗酸化剤も、該組成物中に存在することができる。
【0129】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、α-トコフェロール等;及び金属キレート化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等が挙げられる。
【0130】
本発明の製剤は、経口、経鼻、吸入、局所的、経皮、頬側、舌下、直腸、腟内及び/又は非経口投与に適当なものを含む。該製剤は、好都合には、単位剤形で存在することができ、薬学の技術分野においてよく知られている任意の方法によって調製することができる。単一剤形を生成するための担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生成する組合せ又は医薬組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、活性成分の約1パーセントから約99パーセント、好ましくは約5パーセントから約80パーセントを範囲とする。
【0131】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、担体及び任意選択により1種又は複数の副成分と会合させるステップを含む。一般に、該製剤は、本発明の組合せ又は薬学的組成物を、液体担体若しくは微粉化固体担体又は両方と均一に及び密接に会合させること、並びに次いで、必要ならば、生成物を形状化することによって調製される。
【0132】
経口投与に適当な本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(香味付けベース、例えば、通常スクロース及びアカシア又はトラガカントを使用する)、散剤、顆粒剤、又は水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンとして、又はエリキシル若しくはシロップとして、又は芳香錠(不活性塩基、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを使用する)として、及び/又は洗口液等としての形態であってよく、各々は、活性成分として本発明の化合物の所定量を含有する。本発明の化合物は、ボーラス、舐剤又はペーストとしても投与することができる。
【0133】
経口投与のための本発明の固体剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤等において、該組合せ又は医薬組成物は、1種又は複数の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム若しくは第二リン酸カルシウム、及び/又は充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸;バインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシア;保水剤、例えば、グリセロール;崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、及び炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えば、パラフィン;吸収加速剤、例えば、第四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール;吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土;滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びその混合物;並びに着色剤のいずれかと混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合において、該医薬組成物は、緩衝剤を含むこともできる。同様の型の固体組成物も、ラクトース又は乳糖等の賦形剤、並びに高分子量ポリエチレングリコール等を使用する軟及び硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることができる。
【0134】
錠剤は、任意選択により1種又は複数の副成分とともに、圧縮又は成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、バインダー(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を適当な機械の中で成形することによって作製することができる。
【0135】
錠剤、及び本発明の医薬組成物の他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤は、任意選択により、刻み目をいれるか、又はコーティング及びシェル、例えば、腸溶コーティング及び医薬製剤技術においてよく知られている他のコーティングで調製することができる。それらは、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリクス、リポソーム及び/又は微小球を提供するために変動する割合で、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、そこに活性成分の緩徐又は制御放出を提供するように製剤化することもできる。それらは、例えば、細菌保持フィルターを介する濾過によって、又は滅菌水中に若しくは使用の直前に一部の他の滅菌注射可能媒体中に溶解させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。これらの組成物は、任意選択により、乳白剤を含有することもでき、活性成分のみを、又は優先的には、胃腸管のある特定の部分において、任意選択により、遅延方式にて放出する組成物であり得る。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー性物質及びワックスが挙げられる。活性成分は、適切な場合、上に記載されている賦形剤の1つ又は複数を有する、マイクロカプセル化形態であってもよい。
【0136】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、茶、コーヒー、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野において共通して使用される不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、カストール油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにその混合物を含有することができる。
【0137】
不活性希釈剤以外に、該経口用組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香剤及び保存剤も含むことができる。
【0138】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにその混合物を含有することができる。
【0139】
この発明の化合物の局所的又は経皮投与のための剤形としては、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入薬が挙げられる。活性化合物は、薬学的に許容される担体と、及び必要とされ得る任意の保存料、緩衝液又は噴霧剤と、滅菌条件下で混合することができる。
【0140】
非経口投与に適当なこの発明の医薬組成物は、本発明の1種又は複数の化合物を、1種又は複数の薬学的に許容される担体、例えば、滅菌等張性水性物又は非水性物、例えば、エタノール溶液、分散体、懸濁液又はエマルジョン、或いは抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、製剤を目的のレシピエントの血液と等張性にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘化剤を含有することができる、使用の直前に滅菌注射可能な溶液若しくは分散液に復元することができる滅菌粉末との組合せで含むことができる。
【0141】
本発明の調製物は、経口的に、肺、非経口的に、局所的に又は直腸的に与えられ得る。
【0142】
それらは、当然、各投与経路に適当な形態によって与えられる。例えば、それらは、錠剤又はカプセル剤の形態で、注射、吸入、目薬、軟膏、坐剤等によって投与され、注射、注入又は吸入による;ローション又は軟膏によって局所的な;及び坐剤による直腸の投与である。
【0143】
「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という成句は、本明細書で使用される場合、経腸的及び局所的投与以外の、通常注射による投与モードを意味し、限定せずに、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、髄腔内及び胸骨内の注射及び注入を含む。
【0144】
静脈内注入は、時々、本発明の化合物のための送達の好ましい方法である。注入は、単一の日用量又は複数用量を送達するために使用することができる。一部の実施形態では、本発明の抗がん剤又は医薬組成物は、注入によって、15分から4時間の間、典型的には0.5時間から3時間の間の間隔で投与される。こうした注入は、1日当たり1回、1日当たり2回、又は最大1日当たり3回使用することができる。
【0145】
「全身的投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」及び「末梢的に投与される」という成句は、本明細書で使用される場合、患者の系に入り、したがって、代謝及び他の同様のプロセスを受けるように、中枢神経系中に直接的ではない化合物、薬物又は他の材料の投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0146】
該抗がん剤又は医薬組成物は、経口的、肺、経鼻的を含めて、任意の適当な投与経路による、例えば、スプレー、直腸的、膣内、非経口的、大槽内及び局所的による、頬側及び舌下を含めて、散剤、軟膏又は点滴剤による治療のためにヒト及び他の動物に投与することができる。
【0147】
選択される投与の経路にかかわらず、適当な水和化形態で使用され得る本発明の抗がん剤若しくは医薬組成物、及び/又は本発明の医薬組成物若しくはキットは、当業者に知られている従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0148】
この発明の医薬組成物及びキットにおける活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性であることなく、特別な患者、組成物及び投与モードについて所望の治療的応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように変動することができる。
【0149】
選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特別な化合物の活性、投与の経路、投与の時間、用いられている特別な化合物の排泄の速度、処置の持続期間、用いられる特別な化合物との組合せで使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び前の病歴、並びに医療技術分野においてよく知られている同様の因子を含めて、様々な因子に依存する。
【0150】
当技術分野における通常の技術を有する医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物又はキットの有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師又は獣医は、医薬組成物において用いられる本発明の抗がん剤の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるものよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0151】
一般に、本発明の化合物の適当な日用量は、治療効果を生成するのに有効な最も低い用量である化合物の量である。こうした有効用量は、一般に、上に記載されている因子に依存する。
【0152】
所望であれば、活性化合物の有効な日用量は、1日当たり単一用量として、又は任意選択により単位剤形において、終日にわたって適切な間隔で別々に投与される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ若しくはそれ以上のサブ用量として、投与することができる。経口的に又は吸入によって送達される化合物は、共通して、1日当たり1つから4つの用量で投与される。注射によって送達される化合物は、典型的に、1日当たり1回、又は隔日毎に1回投与される。注入によって送達される化合物は、典型的に、1日当たり1つから3つの用量で投与される。複数用量が1日内で投与される場合、用量は、約4時間、約6時間、約8時間又は約12時間の間隔で投与することができる。
【0153】
本発明の抗がん剤が単独で投与されることは可能であるが、本明細書に記載されているもの等の医薬組成物としてそれを投与することが好ましい。したがって、本発明の抗がん剤を使用する方法は、抗がん剤を医薬組成物として投与することを含み、ここで、少なくとも1つの1,2,4-トリオキサン部分を有する少なくとも1種の化合物は、投与より前に薬学的に許容される担体と添加混合される。
【0154】
本発明は、免疫モジュレーターとの組合せにおける本発明の抗がん剤、医薬組成物又はキットの使用を更に包含する。
【0155】
本明細書に記載されている組合せ及び薬学的組成物は、免疫モジュレーター、例えば、共刺激性分子の活性化剤、若しくは免疫性-阻害性分子の阻害剤、又はワクチンとして作用する1種又は複数の治療剤との組合せで使用又は投与することができる。
【0156】
「との組合せで」によって、治療又は治療剤が同時に投与され及び/又は送達のために一緒に製剤化されなければならないことを含意するとは意図されないが、これらの送達方法は、本明細書に記載されている範疇内である。免疫モジュレーターは、本発明の1種又は複数の化合物、及び任意選択により1つ若しくは複数の追加の治療又は治療剤と同時に、その前に又はその後に投与することができる。組合せにおける治療剤は、任意の順序で投与することができる。一般に、各薬剤は、その薬剤のために決定される用量及び/又は時間スケジュールで投与される。この組合せにおいて利用される治療剤は、単一の組成物中で一緒に投与することができるか、又は異なる組成物において別々に投与することができることが、更に理解されよう。一般に、組合せにおいて利用される治療剤の各々は、それらが個々に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが予想される。
【0157】
本発明は、更に限定していると解釈されるべきでない以下の実施例によって更に例示される。本願の全体にわたって引用されている全ての参照の内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【実施例】
【0158】
A)卵巣がん細胞株
材料及び方法
1.1 細胞培養及びアルテスナート
市販のヒト卵巣がん細胞株UWB1.289(ATCC CRL-2945)、Caov-3(ATCC HTB-75)、及びOVCAR-3(ATCC HTB-161)をATCCから入手した。細胞株をATCCにより推奨されるように培養し、細胞株特異的な完全成長培地中で維持した。全ての細胞を5%CO2中37℃でインキュベートした。アルテスナートをMedChem Express社から購入し、200mMストック溶液としてDMSOに溶解し、-80℃で保管した。アルテスナートを各実験の時点で所望の濃度までDMSO、次いで、培地に段階希釈した。
【0159】
1.2 細胞生存率アッセイ
白色壁の96ウェルマイクロプレートに成長培地100μL中、3×103細胞/ウェルで播種し、37℃、5%CO2下、24時間インキュベートした。成長培地を除去し、段階希釈された薬物又は目的の薬物を含む新鮮な培地で置き換えた。各薬物濃度をデュプリケートで、対照用ビヒクル(0.1%DMSO)培地をトリプリケートのアッセイで試験した。0.0011~200μMの範囲のアルテスナートストック溶液の12種の希釈液を使用して細胞を処置し、それらを72時間インキュベートした。細胞生存率をCellTiter-Glo 2.0生存率アッセイ(Promega社)を使用して評価し、発光をVarioskan LUXマルチモードマイクロプレートリーダー(ThermoFisher Scientific社)を使用して測定した。それぞれの処置されたウェルの相対発光シグナルを対応するビヒクル対照に規格化することによりパーセント生存率を計算した。各アルテスナート濃度について計算されたパーセント生存率をグラフ化した後、4パラメータ対数ロジスティックモデルを使用して非線形回帰線をあてはめ、IC50を各細胞株についてGraphPad Prism 5.01を使用して計算した。
【0160】
1.3 DNA損傷アッセイ
Caov-3細胞を黒色壁のμClear 96ウェルプレートに100μLの完全成長培地中4000細胞/ウェルの密度で播種し、5%CO2下、37℃で24時間接着させた。培地を除去し、5μM、10μM、50μM、100μMアルテスナート、陰性対照としての0.1%DMSO、又は陽性対照としての25μMシスプラチンを含む完全培地で置き換えた。細胞を薬物と48時間インキュベートし、次いで、4%パラホルムアルデヒド中室温で15分間固定した。0.25%Triton X-100を使用して、細胞を15分間透過処理し、次いで、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)中で1時間ブロックした。HCS DNA Damage Kit(Invitrogen)を使用してリン酸化ヒストンH2AX(pH2AX)の免疫蛍光染色でDNA損傷を評価した。Cell-Insight CX7 High Content Analysis Platformをイメージングのために使用し、HCS Studioソフトウェアを使用して、核pH2AXシグナルを定量化した(いずれもThermoScientific)。pH2AXシグナルの統計解析をGraphPad Prism(バージョン5.01)で完了した。
【0161】
1.4 細胞周期のフローサイトメトリー分析
UWB1及びCaov-3細胞を上記で概説した標準的な細胞培養条件下、培養フラスコ内で増殖させた。染色液については、DNaseフリーRnase A(Sigma社)2mg及び200μLの1mg/mLヨウ化プロピジウムをPBS中0.1%(v/v)Triton X-100 10mLに加えた。処置日にストック200μMアルテスナート溶液を細胞株特異的な培地中に段階希釈することにより処置培地を作製した。細胞培養がコンフルエンスに達したら、本発明者らが処置フラスコから成長培地を除去し、アルテスナート処置培地を10μMの濃度で加えた。細胞を24又は48時間後に回収し、PBS中で洗浄し、PBS 0.5mLに再懸濁させた後、固定用70%EtOH 4.5mLが入った管に移した。細胞を-20℃で少なくとも一晩固定した。固定細胞をPBS中で洗浄し、1mLの染色液に再懸濁させた。PI染色した細胞をLSR II細胞分析装置でソートした。分析をModFit LT v3.3ソフトウェアを用いて実施した。細胞周期の各期(G1、S、又はG2)の細胞の百分率を比較する統計解析をGraphPad Prism(バージョン5.01)を使用して実施した。
【0162】
1.5 薬物投与シーケンスアッセイ
細胞生存率アッセイのために上に記述のプロトコールと同様に、細胞を標準的な96ウェルプレートに3000細胞/100μLの細胞密度で播種し、24時間インキュベートした。アルテスナート、カルボプラチン、及びパクリタキセルストック溶液をDMSO及び培地で希釈して、それぞれ40μM、16μM、及び32μMの最終濃度を達成した。各薬物を示されるように加えて24時間置き、次いで、処置培地を新鮮な培地で置き換えた。薬物投与シーケンスは、1日目(D1A)又は2日目(D2A)にアルテスナート、2日目にカルボプラチン及びパクリタキセル(D2C/T)、2日目にカルボプラチン、パクリタキセル、及びアルテスナート(D2C/T/A)、又は1日目にアルテスナート、続いて2日目にカルボプラチン及びパクリタキセル(D1A;D2C/T)であった。細胞を標準的な成長条件で合計で72時間インキュベートした。生存率測定値をCellTiter-Glo 2.0生存率アッセイ(Promega社)を使用して決定した。発光をVarioskan LUXマルチモードマイクロプレートリーダー(ThermoFisher Scientific社)を使用して測定した。統計解析をGraphPad Prism(v5.01)を使用して実施した。
【0163】
結果
1.6 抗新生物活性の決定
卵巣がんにおけるアルテスナートの抗新生物活性を評価するために、CellTiter-Glo 2.0アッセイを使用して3種の上皮性卵巣がん細胞株の生存率に対するアルテスナートの用量依存的効果を決定した:Caov-3(腺癌)、UWB1.289(BRCA1変異を有する高悪性度漿液性癌)、及びOVCAR-3(腺癌)。全ての3種の細胞株におけるアルテスナートのIC50は低~中マイクロモル範囲内であった;具体的には、IC50は、UWB1細胞において26.91μM(95%信頼区間6.287~115.2μM)、Caov-3細胞において15.17μM(10.49~21.93μM)、及びOVCAR-3細胞において4.67μM(3.280~6.638μM)であった。一元配置ANOVA解析は、これらの3種の細胞株間のIC50の有意差を示さなかった(p>0.05)。試験された全ての3種の卵巣がん細胞株について検出されたIC50は、以前に確立された知見(上で引用した[6]参照)と一致しており、治療的に達成可能なin vivo血漿濃度(およそ20μM)の範囲内である(上で引用した[14]参照)。
【0164】
【0165】
1.7 一次作用様式の評価
以前に公開されたそれらのIC50との密接な相関並びに最も高悪性度の漿液性卵巣がんに関係するそれらの既知の白金感受性のためにCaov-3細胞を選択した。Caov-3細胞においてDNA損傷を誘導するアルテスナートの能力を評価するために、5~100μMの範囲のアルテスナートの濃度及び陽性対照としての25μMシスプラチンでの48時間処置後、二本鎖切断のマーカーであるpH2AXの免疫蛍光染色を定量化した。
【0166】
【0167】
対照としての0.1%DMSOで処置された細胞は443.2±76.38の平均pH2AXシグナルを有していた一方、25μMシスプラチンで処置した結果、2517±230.4の平均シグナルであった。DNA損傷を有意に増加させた唯一のアルテスナート処置は、617.0±31.96の平均pH2AXシグナルを有する100μMアルテスナートであった。5、10、又は50μMで処置した結果、それぞれ382.8±39.58、370.2±9.283、及び393.8±58.79のpH2AX測定値であった。対応のない片側t検定p=0.0486(100μMアルテスナート)及びp=0.0034(25μMシスプラチン)により評価されたとき、ビヒクル対照処置細胞と比較して最高濃度のアルテスナート(100μM)及びシスプラチンのみが結果としてDNA損傷の有意な増加につながった。
【0168】
したがって、アルテスナートはDNA損傷を誘導することができたが、この効果は、Caov-3細胞において臨床的に関連する濃度でほとんど観察されなかった。
【0169】
調査されたアルテスナートの二次作用機序は細胞周期停止の誘導であった。10μMアルテスナート又は0.1%DMSO(ビヒクル対照)での24及び48時間の処置後のCaov-3及びUWB1細胞のヨウ化プロピジウム染色及びフローサイトメトリーによる細胞周期進行を評価した。10μMアルテスナート処置ありとなしのG1及びS期の細胞の百分率を3回の独立した実験から決定した。Caov-3細胞において、48時間アルテスナート処置は、結果としてビヒクル処置細胞における61.23%±1.789と比較してG1の細胞の百分率の増加につながった(78.98%±0.9546)。UWB1細胞は、対照細胞の60.35%±2.418と比較してアルテスナート処置後のG1に65.35%±0.0849細胞を有していた。
【0170】
【0171】
両方の細胞株が、Caov-3においてp=0.0032及びUWB1においてp=0.0499(対応のない片側t検定)によりG1の細胞の有意な増加を示した。更なるサブグループ解析において、アルテスナートでの処置後のG1期のCaov-3及びUWB1細胞の百分率の増加は、S期の細胞の有意な減少が伴った(それぞれp=0.0009及びp=0.0497)。Caov-3細胞において、48時間アルテスナート処置は、結果としてビヒクル処置細胞における24.42%±0.7354と比較してS期の細胞の百分率の減少につながった(12.14%±0.1556)。UWB1細胞は、対照細胞の26.25%±2.234と比較してアルテスナート処置後のS期に18.87%±2.779の細胞を有していた。
【0172】
【0173】
これらの実験は、試験された細胞株において、臨床的に関連する濃度のアルテスナートがG1停止を誘導することを実証する。
【0174】
1.8 アルテスナートのカルボプラチン及びパクリタキセルへの添加
卵巣がんにおける現在の一次処置レジメンは、白金/タキサンダブレット、例えばカルボプラチン及びパクリタキセルである。好都合な副作用プロファイル及び細胞生存率に対するその効果に鑑みて、パクリタキセル及びカルボプラチンの両方で処置された細胞へのアルテスナートの添加の効果を評価した。アルテスナートはG1期に細胞周期停止を誘導するため、アルテスナートを前処置(24時間前)として又はカルボプラチン及びパクリタキセルと同時に評価した。両方の細胞株において、1日目又は2日目のいずれかのアルテスナートのみでの処置は、結果として対照ビヒクル処置細胞と比較して細胞生存率の54.60~63.43%への低下につながった。
【0175】
【0176】
Caov-3細胞において、カルボプラチン/パクリタキセルでの処置は、結果として細胞生存率の29.60%±7.780への低下につながり、それは、アルテスナートを同時に加えたとき有意に低下した(11.55%±5.917、p<0.05 一元配置ANOVA)が、細胞をアルテスナートで前処置したとき有意に低下しなかった(33.16%±3.349、p>0.005)。
【0177】
同様に、UWB1において、細胞生存率は、カルボプラチン及びパクリタキセルで処置されたとき62.06%±9.389に低下し、それは、40μMアルテスナートの同時添加により39.65%±6.850に更に低下した(p<0.05、一元配置ANOVA)。
【0178】
これらの細胞において、アルテスナートでの前処置は、結果として56.41%±2.148の細胞生存率につながり、それは、カルボプラチン及びパクリタキセルで処置された細胞と比較されたとき統計的に有意ではなかった。
【0179】
主な知見は、アルテスナートのカルボプラチン及びパクリタキセルとの併用処置が標準的なレジメン有効性の有意な改善を示すことである。
【0180】
B)肺がん細胞株
材料及び方法
2.1.細胞株及び試薬
A549(ATCC:CCL-185)、H1299(ATCC:CRL-5803)、及びH1563(ATCC:CRL-5875)NSCLC細胞株をATCCから直接購入した。全ての細胞株を初めに増殖させ、低継代数アリコートを冷凍して戻して、確実に実験が同様の継代数を有する細胞株において実施されるようにした。細胞株を冷凍して戻したときを含め、細胞株をマイコプラズマについて規則的な間隔でスクリーニングした。全ての細胞を10%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich社、St. Louis MO、米国:F0926)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、Waltham MA、米国:15140-122)、及び2mM Glutamax(Gibco:35050-061)を含むRPMI 1640(Lonza社、Basel、スイス:12-167F)中で増殖させ、37℃加湿インキュベーター内、5%CO2下で維持した。精製アルテスナート(HY-N0193)をMedChem Express社(Monmouth Junction NJ、米国)から購入し、ML385(SML1833)をSigma-Aldrich社から購入した。
【0181】
2.2.薬物応答アッセイ
細胞を白色壁の96ウェルプレートに100μLの完全成長培地中2500細胞/ウェル(A549及びH1299)又は4000細胞/ウェル(H1563)で播種し、5%CO2下、37℃で24時間接着させる。24時間後、アルテスナートをDMSO中1:3で段階希釈して、12種の100% DMSO中薬物ストックを得た。続いて、各ストックを完全培地中1:1000で希釈し、したがってDMSOの最終濃度は0.1%である。細胞から成長培地を吸引除去し、希釈されたアルテスナートを含む培地で置き換え、各薬物濃度をデュプリケートのウェルで試験し;加えて、トリプリケートのウェルに0.1%DMSOのみを含む培地を入れ、未処置対照とする。細胞を薬物と96時間インキュベートした後、CellTiter-Glo 2.0(Promega社、Madison WI、米国:G9243)を使用して、細胞生存率を評価する。データを0.1%DMSO処置対照細胞に規格化された処置細胞のパーセント生存率として提示する。GraphPad Prism(バージョン5.01)を使用して、用量反応曲線(4パラメータ対数ロジスティックモデル)をデータにあてはめ、IC50値を計算する。ML385と組み合わせたアルテスナートを評価する研究のために、アルテスナート薬物ストックを5μM ML385を含む培地に希釈し、対応対照ウェルを5μM ML385で処置した。
【0182】
2.3.DNA損傷アッセイ
A549及びH1299細胞を黒色壁のμClear 96ウェルプレート(ThermoScientific、Waltham MA、米国:165305)に100μLの完全成長培地中3000細胞/ウェルの密度で播種し、5%CO2下、37℃で24時間接着させる。続いて、培地を除去し、5μM、10μM、50μM、100μMアルテスナート、陰性対照としての0.1%DMSO又は陽性対照としての25μMシスプラチン(Tocris Bioscience社、Minneapolis MN、米国:2251)を含む完全培地で置き換えた。細胞を薬物と48時間インキュベートし、次いで、4%パラホルムアルデヒド(Alfa Aesar社、Tewksbury MA、米国:J61899)中室温で15分間固定した。固定後、細胞を0.25%Triton X-100(Alfa Aesar社:A16046)を用いて15分間透過処理し、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)中で1時間ブロックした。HCS DNA Damage Kit(Invitrogen、Waltham MA、米国:H10292)を使用してリン酸化ヒストンH2AX(pH2AX)の免疫蛍光染色によりDNA損傷を評価した。CellInsight CX7 High Content Analysis Platform(ThermoScientific:CX7A1110)を使用して細胞をイメージングし、HCS Studioソフトウェア(ThermoScientific)を使用して核pH2AXシグナルの定量化を実施した。pH2AXシグナルの統計解析をGraphPad Prism(バージョン5.01)で実施した。アルテスナート及びML385の組合せ処置のDNA損傷に対する効果もHCS DNA Damage Kitを使用して評価した。翌日、細胞を上記のように播種し、それらをDMSO又は5μM ML385で24時間処置した。次の日、培地を吸引し、10μM、50μM、100μMアルテスナート、陰性対照としての0.1%DMSO又は25μMシスプラチンを新鮮な5μM ML385あり又はなしで含む新鮮な培地を細胞に加えた。24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、DNA損傷を上記のように評価した。
【0183】
2.4.ウエスタンブロッティング
A549及びH1299細胞を10μMアルテスナートで0、6、又は24時間処置した後、Halt Protease及びPhosphatase Inhibitor Cocktail(ThermoScientific:78441)並びにBenzonase Nuclease(Sigma社:E1014)を含むRIPA緩衝液(Pierce、Waltham MA、米国:89900)に溶解し、氷上で10分間インキュベートし、遠心分離により透明化した。タンパク質濃度をBCA Protein Assay(Pierce:23227)を使用して決定し、総タンパク質40μgをNuPAGE 4-12% Bis-Tris Gel(Life Technologies社、Waltham MA、米国:NP0321BOX)にロードして電気泳動した後、PVDF膜(Invitrogen:LC2005)に転写してブロッティングした。KEAP1(Cell Signaling社、Danvers MA、米国:8047S)及びNQO-1(Cell Signaling社:3187S)に対する抗体をCell Signaling社から購入し、一方、β-アクチンに対する抗体をR&D Systems社(MAB8929)から購入した。IRDye複合二次抗体をLI-COR社(925-32213及び925-68070)から購入し、ウエスタンブロットをLI-COR社製Odysseyイメージングシステムを使用してイメージングした。
【0184】
2.5.siRNAノックダウン
6ウェルプレートのうちの2つのウェルに2×105 A549又はH1299細胞/ウェルで播種し、一晩接着させた後、5nM siGENOME Controlプール非標的化No.2(Dharmacon社、Boulder CO、米国:D-001206-14-5)又はDharmacon社(M-012453-00-0005)から購入したsiGENOME SMARTpool siRNA標的化ヒトKEAP1(GGACAAACCGCCUUAAUUC;CAGCAGAACUGUACCUGUU;GGGCGUGGCUGUCCUCAAU;CGAAUGAUCACAGCAAUGA)をトランスフェクトした。24時間後、細胞を96ウェルプレートに2500細胞/ウェルで播種し、又は60mm組織培養プレートに播種して、ウエスタンブロットによりノックダウン効率を評価した。次いで、最初のトランスフェクションの48時間後、96ウェルプレートに播種された細胞を上に詳述のように処置して(薬物応答アッセイ)、KEAP1ノックダウンの薬物感受性に対する効果を評価し、一方、60mmプレートを上記のようにウエスタンブロッティングのためにRIPA緩衝液に回収して、ノックダウン効率を決定した。KEAP1のノックダウンがNSCLC細胞におけるアルテスナートのDNA損傷を誘導する能力を変化させたかどうかを判定するために、細胞に5nM非標的化対照又はsiRNA標的化ヒトKEAP1をトランスフェクトした。次の日、6000細胞/ウェルを黒色壁の透明底96ウェルプレート内の完全成長培地に播種し、DNA損傷アッセイを上記(2.3.DNA損傷アッセイ)のように実施した。
【0185】
2.6.相乗作用又はアルテスナート及びNRF2阻害剤
薬物相互作用を評価するために、薬物応答アッセイを上記の方法と同様に予備形成した;しかし、6×6マトリックス設計を使用して、対の薬物を単独で及び5種の段階希釈濃度の各薬物と組み合わせてアッセイした。96時間処置後、細胞生存率をCellTiter-Glo 2.0を使用して評価した。0.2%DMSOを含む培地中で増殖させた未処置対照細胞に各ウェルを規格化し、生細胞の百分率を決定した。R統計ソフトウェア、具体的にはsynergyfinderパッケージ(バージョン1.10.4))を使用して、Bliss非依存モデル及びZero Interaction Potency(ZIP)モデルを使用して相乗作用スコアを生成した(Bliss, C.I. The Toxicity of Poisons Applied Jointlyl. Ann Appl. Biol 1939、26、585~615頁、doi:10.1111/j.1744-7348.1939.tb06990.x、Yadav, B.; Wennerberg, K.; Aittokallio, T.; Tang, J. Searching for Drug Synergy in Complex Dose-Response Landscapes Using an Interaction Potency Model. Comput Struct. Biotechnol J. 2015、13、504~513頁、doi:10.1016/j.csbj.2015.09.001.参照)
【0186】
2.7.統計解析
アルテスナートIC50値の差が統計的に有意であったかどうかを評価するために、複数の独立した実験から計算されたIC50値を各実験の標準誤差と共にGraphPad Prism 5を使用してグラフ化した。両側t検定を使用して、2種の異なる細胞株間又は処置細胞と対照細胞の間の平均IC50が統計的に異なるかどうかを判定した。p値は図面の説明に報告しており、0.05未満のp値を有する結果は統計的有意差を示す。DNA損傷の差を各細胞株について一元配置ANOVA、続いてダネットの多重比較検定を使用して決定して、アルテスナート単独で又は5μM ML385と組み合わせて処置された細胞について各処置を0.1%DMSO対照と比較した。二元配置ANOVA及びボンフェローニ事後検定を利用して、siRNAをトランスフェクトした細胞における24時間アルテスナート処置後のDNA損傷を評価した。
【0187】
結果
2.8 アルテスナート感受性
まず、96時間の漸増濃度のアルテスナートでの処置後、CellTiter-Glo 2.0アッセイを使用して細胞生存率を評価することによりアルテスナートの3種のNSCLC細胞株(A549、H1299、及びH1563)に対する効果を調査した。細胞株は、アルテスナートのIC50値の10倍差に対して感受性又は耐性のいずれかとして分かれた。A549細胞は、3回の独立した実験からの23.63μM±8.886μMの平均IC50を有し、アルテスナートに対して感受性がより低く、一方、H1299及びH1563細胞は、それぞれ2.36μM±1.275μM及び3.43μM±1.190μMの平均IC50を有し、アルテスナートに対して感受性であった(
図9及び
図10参照)。
【0188】
2.9 活性酸素種の産生
マラリアに対するアルテスナートの一次作用機序は、アルテスナート内のエンドペルオキシド架橋とマラリア原虫のヘム鉄の間の反応を通じて活性酸素種(ROS)を産生させるものであることが既知である。がん細胞内で、ROSの産生は、二本鎖切断を通じてDNA損傷を引き起こし得、それは、リン酸化ヒストンH2AX(pH2AX)の免疫蛍光染色により評価することができる;したがって、用量依存的にA549(感受性がより低い)及びH1299(感受性)NSCLC細胞株におけるアルテスナートのDNA損傷を誘導する能力を評価した。25μMシスプラチンでの処置をDNA損傷の陽性対照として使用し、一方、0.1%DMSOを陰性/ビヒクル対照として使用した。各処置の平均核pH2AXシグナル強度を対応0.1%DMSO対照に規格化し、処置/0.1%DMSO(ジメチルスルホキシド)の比±SDとしてプロットした(
図11参照)。A549及びH1299細胞の両方において、シスプラチンは、各細胞株の一元配置ANOVA及びダネットの多重比較検定により決定されたとき対応0.1%DMSO処置対照細胞において観察されるものよりも更に(p<0.001)pH2AX染色を誘導した)。具体的には、25μMシスプラチンは、結果としてA549細胞においてpH2AX染色の11.17±2.79倍の増加及びH1299細胞において14.45±1.82倍の増加につながった。対照的に、A549細胞において、漸増濃度のアーテスアント(artesuante)は、0.1%DMSO処置対照と比較されたとき、最高濃度のアルテスナートにおいてさえもDNA損傷の有意な増加を引き起こさなかった(5μM:1.19±0.05、10μM:1.35±0.01、50μM:1.71±0.02、100μM:3.27±0.13)。或いは、アルテスナート感受性のH1299細胞において、有意なDNA損傷(p<0.05)がわずか10μMアルテスナートでの処置後に観察された。具体的には、5μMアルテスナートは、結果として0.1%DMSO対照処置細胞と比較してpH2AX染色の3.14±0.09倍の増加につながり、10μMアルテスナートは4.47±0.26倍の増加を生じ、50μMは8.25±1.08の増加を生じ、100μMアルテスナートは、pH2AX染色を17.97±0.79倍だけ増加させた。
【0189】
2.10 NSCLCにおけるKEAP1へのアルテスナート感受性の依存性
A549細胞はKEAP1にG333C変異を持ち、一方、H1299及びH1563細胞の両方がKEAP1及びNFE2L2(NRF2をコードする遺伝子)の野生型であり、それは、A549細胞のアルテスナートに対するより高い耐性を説明し得る。アルテスナートは細胞ROSを増加させることが既知であり、KEAP1/NRF2経路は、ROSに対する細胞応答の主要制御因子であるため、アーテスアントでのA549(耐性)又はH1299(感受性)細胞の処置がKEAP1又はNQO-1のいずれかのタンパク質発現を変化させたかどうかをまず評価した。NQO-1は、NRF2の十分確立された転写標的であり、プロキシとして使用して、ウエスタンブロットによりNRF2転写活性を評価する。細胞を10μmアルテスナートで0、6、又は24時間処置した後にライセートを回収し、KEAP1、NQO-1、及びβ-アクチンのウエスタンブロットを実施した。ウエスタンブロッティングのために使用されるKEAP1抗体は、野生型及びG333C変異体KEAP1のいずれにも存在するペプチドを使用して産生したので、試験された細胞株からの野生型及び変異型の両方を検出することができる。
図12に見られるように、A549細胞はH1299細胞と比較してKEAP1の基礎発現の減少及びNQO-1の基礎発現の増加を有していた。それは、A549細胞が不活性化変異をKEAP1に持つため予想される通りである。アルテスナートでの24時間の両方の細胞株の処置は、結果としてKEAP1の発現低下につながった。加えて、H1299細胞において、わずかだが検出可能なNQO-1タンパク質の増加が10μMアルテスナートでの24時間処置後に観察される。
【0190】
KEAP1発現がアルテスナートにより両方の細胞株において減少するため、KEAP1発現がアルテスナートに対する感受性を制御するかどうかを判定するため、本発明者らは、siRNAを使用して、KEAP1をH1299(感受性)及びA549(耐性)細胞の両方においてノックダウンした。この実験のために使用されるsiRNAは、A549細胞に見出される変異部位とオーバーラップしない4つの配列のプールであった;したがって、それらは、野生型及び変異体KEAP1 mRNAの両方をノックダウンし、したがってKEAP1タンパク質レベルを低下させると予測された。A549細胞における変異体KEAP1のノックダウンはNQO-1発現又はアルテスナートに対する応答に影響しなかった(
図13)。しかし、H1299細胞におけるKEAP1のノックダウンは、結果としてNQO-1発現の増加につながり、NRF2抗酸化剤転写経路の活性化を示した。加えて、H1299細胞におけるKEAP1のノックダウンは、アルテスナートの平均IC50をsiNTトランスフェクト細胞における0.98μMからsiKEAP1トランスフェクト細胞における2.30μMへ増加させた(
図14及び
図15)。次にアーテスアント誘導DNA損傷に対するKEAP1のノックダウンの効果を評価した。不活性化KEAP1変異を有する細胞(A549)において、KEAP1のノックダウンはアーテスアント誘導DNA損傷に対する効果を有さなかった。これらの細胞において、25μMシスプラチンでの処置のみが、結果としてsiNTトランスフェクト細胞における4.255±0.759及びsiKEAP1トランスフェクト細胞における3.791±0.957のpH2AX染色の倍率変化を有する対応対照細胞と比較してDNA損傷の有意な増加につながった(
図16参照)。H1299細胞において、KEAP1のノックダウンは、結果として細胞が50μM及び100μMアルテスナートで又は25μMシスプラチンで処置されるとき非標的化対照siRNA(siNT)で処置された細胞と比較してアルテスナート誘導DNA損傷の有意な減少につながった(
図17)。具体的には、50μMアルテスナートは、結果としてsiNTトランスフェクト細胞における2.203±0.170倍のDNA損傷の増加につながり、一方、対応する対照処置細胞と比較されたとき、1.440±0.186倍のDNA損傷の増加のみがsiKEAP1トランスフェクト細胞において観察された。100μMアルテスナート及び25μMシスプラチンでの処置はまた、結果としてそれぞれsiNTトランスフェクト細胞の2.238±0.251及び3.599±0.414と比較して1.502±0.168倍及び2.678±0.580倍の核pH2AX染色によるKEAP1ノックダウン細胞における有意により少ないDNA損傷につながった。したがって、KEAP1の発現低下又は機能喪失KEAP1変異によるNRF2経路の制御不全は、NSCLC細胞株におけるアルテスナートに対する耐性の増加を引き起こす。
【0191】
2.11 耐性NSCLC細胞(KEAP1変異体)をアルテスナートに感作させるNRF2阻害
NRF2経路の活性化はKEAP1損失の下流で起こるため、次にNRF2の薬理学的阻害が耐性A549細胞をアルテスナートに感作させ得るかどうかを調査した。ML385(N-[4-[2,3-ジヒドロ-1-(2-メチルベンゾイル)-1H-インドール-5-イル]-5-メチル-2-チアゾリル]-1,3-ベンゾジオキソール-5-アセトアミド)(NRF2を結合し、DNA結合を妨げることにより転写因子としてのその機能を阻害することが示された小分子)を使用して、NRF2阻害のアルテスナート感受性に対する効果をA549(感受性がより低い)及びH1299(感受性)細胞の両方において試験した。細胞をアーテスアント及びML385の組合せで処置する前に、本発明者らはまずML385のみのA549及びH1299細胞に対する効果を評価した。ML385は単一薬剤としていずれの細胞株においても最小限の効果を細胞生存率に対して有しており、試験された2種の細胞株間に観察されたIC50の有意差はなかった。次にA549及びH1299細胞を漸増濃度のアルテスナート単独で又は5μM ML385と組み合わせて処置した。細胞に対して直接有した5μM ML385の添加のあらゆる効果について調整するために、アルテスナートのみで処置された細胞のパーセント生存率をDMSO(ビヒクル)対照に規格化し、一方、アルテスナート+5μM ML385で処置された細胞を5μM ML385で処置された細胞に規格化した。5μM ML385の添加は、IC50をアルテスナート+0.1%DMSOで処置されたA549細胞における13.3μMからアルテスナート+5μM ML385で処置された細胞における5.60μMにシフトさせ、NRF2阻害がこれらの細胞をアルテスナートに感作させたことを示した、(
図18及び
図19参照)。H1299(アルテスナート感受性)細胞株において、IC50のわずかな左方向のシフト(2.35μMからML385との組合せの1.19μM)も存在した;しかし、この変化は統計的に有意ではなかった、(
図19参照)。次に5μM ML385のアルテスナート誘導DNA損傷をA549及びH1299細胞において増強する能力を評価した。このアッセイについて、細胞を5μM ML385又は0.03%DMSOで24時間前処置した。次の日、新鮮な培地を0.03%DMSO又は5μM ML385を単独で或いは10μM、50μM、若しくは100μMアルテスナート又は25μMシスプラチンと共に用いて調製し、細胞を更に24時間インキュベートした。核pH2AX染色を3回の独立した実験から定量化し、0.03%DMSOで前処置した対照細胞に規格化した(
図20及び
図21)。ML385のみDNA損傷をA549(耐性)又はH1299(感受性)細胞において増加させなかった。ML385及びアルテスナートでの共処置は、結果として5μM ML385のみで処置された細胞と比較されたとき、最高用量の100μMアルテスナートで処置されたA549(感受性がより低い)細胞のみにおいてDNA損傷の統計的に有意な増加につながった。具体的には100μMアルテスナート+5μM ML385は、結果として5μM ML385のみで処置された細胞における0.806±0.142と比較して1.390±0.327倍のDNA損傷につながった。H1299細胞において、アルテスナート及びML385での共処置は、結果として50μM及び100μMアルテスナートの両方でDNA損傷の有意な増加につながった(それぞれ3.431±0.685及び4.309±1.309)が、10μMアルテスナートで処置された細胞においてはそうではなかった(2.187±0.401)。
【0192】
2.12 アルテスナート及びNRF2阻害は相乗的である
アルテスナートのNRF2阻害剤(ML385)との組合せの有効性をより良く理解するために、次にこの薬物組合せが相乗的であるかどうかを試験した。相乗的な薬物相互作用は、使用される薬物のうちの一方又は両方がパートナー薬の有効性を向上させ、したがって、より低濃度の各薬物を使用して、患者の臨床的利益を達成することを可能にするときである。相乗作用を評価するために、本発明者らは、6×6チェッカーボード法をBliss及びZIPモデルの両方と合わせて利用して、薬物組合せを評価した。Bliss非依存モデルは、1933年に導入されて以来、薬物組合せを評価するための標準のうちの1つであり(Bliss, C.I. The Toxicity of Poisons Applied Jointlyl. Ann Appl. Biol 1939、26、585~615頁、doi:10.1111/j.1744-7348.1939.tb06990.x)、一方、ZIPモデルは、2015年にLoewe及びBlissモデルの制限のいくつかに対処するために開発された(Yadav, B.; Wennerberg, K.; Aittokallio, T.; Tang, J. Searching for Drug Synergy in Complex Dose-Response Landscapes Using an Interaction Potency Model. Comput Struct. Biotechnol J. 2015、13、504~513頁、doi:10.1016/j.csbj.2015.09.001)。
【0193】
これらのモデルの両方の出力は、負のスコアが拮抗作用を示し、一方、正のスコアが相乗作用を示す相乗作用スコアである。アルテスナート及びML385がA549(アルテスナート耐性)細胞において組み合わせられたとき、Blissスコアは9.38であり(
図22)、一方、ZIPスコアは8.744であった。H1299(アルテスナート感受性)において、Blissスコアは15.07であり(
図23)、ZIPスコアは16.593であった。これは、アルテスナート及びML385がKEAP1変異状態と無関係にNSCLC細胞株において相乗的であることを示す。加えて、相乗作用は、臨床的に達成可能な血漿濃度(0.1~0.5μM)濃度のアルテスナートにおいて観察される。
【配列表】
【国際調査報告】