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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】SZR骨格型分子ふるいの合成
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20230703BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 4/18 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20230703BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/74 Z
C07C1/24
C07C4/18
C07C11/04
C07C11/08
C07C11/06
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574516
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2021054238
(87)【国際公開番号】W WO2021245491
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/033,943
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ジョエル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン - ヤン
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA05
4G073BA45
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BB03
4G073BB44
4G073BB47
4G073BB48
4G073BD06
4G073BD21
4G073CZ50
4G073FB11
4G073FB28
4G073FC19
4G073FD08
4G073FD23
4G073GA03
4G073GA08
4G073GA14
4G073GB02
4G073UA03
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA07B
4G169BC16B
4G169BC72B
4G169BD02B
4G169BD05B
4G169CB02
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EC06Y
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZB08
4H006AA02
4H006AC25
4H006AC26
4H006AC29
4H006BA09
4H006BA25
4H006BA30
4H006BA33
4H006BA71
4H006BA81
4H006BA85
4H006DA15
4H006DA25
4H039CA29
4H039CK10
(57)【要約】
構造誘導剤として1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオンを使用し、ケイ素及びアルミニウムの複合供給源としてアルミナ被覆シリカを使用して、SZR骨格型の分子ふるいを合成する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SZR骨格型の分子ふるいを合成する方法であって、
(1)
(a)アルミナ被覆シリカ
(b)アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の供給源
(c)1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造誘導剤
(d)水酸化物イオンの供給源
(e)水
を含む反応混合物を調製すること、及び
(2)前記反応混合物を、前記分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に曝すこと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記反応混合物が、モル比率表示で以下の組成
【表1A】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物が、モル比率表示で以下の組成:
【表1B】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属(M)がカリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶化条件が、100℃~200℃の温度、及び1~14日の時間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細孔内に1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオンを含む、SZR骨格型の分子ふるい及びその合成時の形態。
【請求項7】
10~80の範囲のSiO/Alのモル比率を有する、請求項6に記載の分子ふるい。
【請求項8】
15~50の範囲のSiO/Alのモル比率を有する、請求項6に記載の分子ふるい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月3日出願の米国仮出願第63/033,943号に対する優先権とその利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、SZR骨格型分子ふるいの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
分子ふるいは、独特なX線回折(XRD)パターンによって示される明確な細孔構造を有する独特な結晶構造を有し、固有の化学組成を有する、商業的に重要な部類の材料である。結晶構造は特定の種類の分子ふるいに特徴的な空隙及び細孔を明らかにする。
【0004】
結晶質微多孔性材料は、国際ゼオライト協会の構造委員会によって、ゼオライト命名法に関するIUPAC委員会の規則に従って分類される。構造が確立されている骨格型ゼオライト及び他の結晶質微多孔性結晶材料は、この分類に従って3文字のコードが割り振られており、“Atlas of Zeolite Framework Types”(Sixth Revised Edition, Elsevier, 2007)に掲載されている。
【0005】
構造が確立されている1つの既知の結晶質材料は、SZR骨格型で指定される材料であり、これには、最も注目すべきものとしてSUZ-4が含まれる。SUZ-4の三次元細孔系は、真っ直ぐな10員環(MR)細孔、及び2つの交差8MRジグザグ形細孔からなる。結晶質SUZ-4、及び構造誘導剤としてテトラエチルアンモニウムカチオンを使用するその従来の調製は米国特許第5,118,483号によって教示されている。ゼオライトSUZ-4は針様形態を有する(例えば、S. L. Lawton et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1993, 894-896及びK. G. Strohmaier et al., Z.Krystallogr. 2006, 221, 689-698を参照されたい)。針様形態を有するゼオライトは、それに関連する健康上の懸念があるため望ましくない。
【0006】
米国特許第10,399,066号は、針状及び針集合体形態をそれぞれ有するアルミノケイ酸塩SZR骨格型ゼオライトJMZ-5及びJMZ-6、ならびにそれらの調製方法を開示している。
【0007】
本開示によれば、構造誘導剤として1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオンを使用し、ケイ素及びアルミニウムの供給源としてアルミナ被覆シリカを使用して、SZR骨格型分子ふるい、特に、改良された形態を有するものが調製され得ることが見出された。
【発明の概要】
【0008】
要約
一態様では、SZR骨格型の分子ふるいを合成する方法であって、(1)(a)アルミナ被覆シリカ、(b)アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の供給源、(c)1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造誘導剤、(d)水酸化物イオンの供給源、及び(e)水、を含む反応混合物を調製すること、ならびに(2)反応混合物を、分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に曝すことを含む、当該方法が提供される。
【0009】
別の態様では、細孔内に1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオンを含む、SZR骨格型の分子ふるい及びその合成時の形態が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な記述
図1】例1の合成時SZR骨格型分子ふるい生成物の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0011】
図2A】例1の合成時SZR骨格型分子ふるい生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を様々な倍率で示す。
図2B】例1の合成時SZR骨格型分子ふるい生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を様々な倍率で示す。
【0012】
図3】米国特許第10,399,066号に従って調製されたゼオライトSUZ-4の粉末XRDパターンを示す。
【0013】
図4A】米国特許第10,399,066号に従って調製されたゼオライトSUZ-4のSEM画像を様々な倍率で示す。
図4B】米国特許第10,399,066号に従って調製されたゼオライトSUZ-4のSEM画像を様々な倍率で示す。
【0014】
図5】例4のアンモニウム形態SZR骨格型分子ふるいの粉末XRDパターンを示す。
【0015】
図6】例5のアンモニウム形態SUZ-4ゼオライトの粉末XRDパターンを示す。
【0016】
図7】Pd/SZR触媒によるn-デカンの水素化変換の変換率または収率と温度との関係性を示すグラフである。
【0017】
図8】C10単分岐異性体生成物の分布とPd/SZR触媒によるn-デカンの水素化変換の変換率との関係性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な記述
定義
「分子ふるい」という用語は、「微多孔性結晶材料」または「ゼオライト」という用語と同義的に使用される。
【0019】
本明細書で使用される「骨格型」という用語は、"Atlas of Zeolite Framework Types" by Ch. Baerlocher, L.B. McCusker and D.H. Olson (Elsevier, Sixth Revised Edition, 2007)に記載されている意味を有する。
【0020】
「合成時」という用語は、結晶化後であって構造誘導剤を除去する前の形態である分子ふるいを指す。
【0021】
「無水」という用語は、物理吸着水及び化学吸着水をどちらも実質的に有していない分子ふるいを指す。
【0022】
「SiO/Alモル比率」という用語は、「SAR」と略し得る。
【0023】
分子ふるいの合成
SZR骨格型の分子ふるいは、(1)(a)アルミナ被覆シリカ、(b)アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の供給源、(c)1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン(Q)を含む構造誘導剤、(d)水酸化物イオンの供給源、及び(e)水、を含む反応混合物を調製すること、ならびに(2)反応混合物を、分子ふるいの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に曝すことによって合成され得る。
【0024】
反応混合物は、モル比率表示で表1に示す範囲:
【表1】

に入る組成を有し得、表中、Mはアルカリまたはアルカリ土類金属であり、Qは1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオンを含む。
【0025】
アルミナ被覆シリカは、単一の種類のアルミナ被覆シリカであってもよいし、または異なるシリカ対アルミナモル比率を有する2つ以上のアルミナ被覆シリカ材料の混合物であってもよい。いくつかの態様では、ケイ素及びアルミニウムの唯一のまたは主たる供給源としてコロイド状アルミノケイ酸塩ゾル-ゲルが使用される。様々なSiO/Alモル比率(例えば、35、80、100、127)のアルミナ被覆シリカがNalco (Naperville, Illinois)から入手可能である。
【0026】
アルカリまたはアルカリ土類金属(M)は、典型的には水酸化物イオンの供給源と一緒に反応混合物中に導入される。そのような金属の例としては、ナトリウム及び/またはカリウムが挙げられ、また、リチウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、及びカルシウムも挙げられる。本明細書で使用される場合、「アルカリまたはアルカリ土類金属」という語句は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属が択一的に使用されることを意味するのではなく、1つ以上のアルカリ金属が単独で、または1つ以上のアルカリ土類金属と組み合わせて使用され得ること、及び1つ以上アルカリ土類金属が単独で、または1つ以上のアルカリ金属と組み合わせて使用され得ることを意味する。
【0027】
構造誘導剤は、以下の構造(1):
【化1】

で表される1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン(Q)を含む。
【0028】
Qの好適な供給源は、第四級アンモニウム化合物の水酸化物、塩化物、臭化物、及び/または他の塩である。
【0029】
反応混合物は、結晶質材料の種、例えば以前の合成からのSZR骨格型分子ふるいを、望ましくは反応混合物の重量を基準として、0.01~10000wppm(例えば、100~5000wppm)の量で含み得る。シーディングは、SZRに対する選択性を向上させる上で、及び/または結晶化過程を短縮する上で有益となり得る。
【0030】
反応混合物成分が複数の供給源によって供給されてもよいことに留意されたい。また、2つ以上の反応成分が1つの供給源によって提供されてもよい。反応混合物は、回分式か連続式かのどちらかで調製され得る。
【0031】
上記反応混合物からの所望の分子ふるいの結晶化は、静止、回転または撹拌条件のいずれかの下で、好適な反応容器、例えば、ポリプロピレン製瓶、またはテフロン(登録商標)被覆もしくはステンレス鋼製オートクレーブなどにおいて、100℃~200℃(例えば、150℃~180℃)の温度で、結晶化を起こさせるのに十分な時間、例えば、約1~14日にわたって行われ得る。結晶化は大抵、反応混合物が自己圧力に曝されるようにオートクレーブ内の圧力下で行われる。
【0032】
所望の分子ふるい結晶が形成された時点で、固体生成物は遠心分離または濾過などの標準的な機械分離技術によって反応混合物から分離され得る。結晶を水で洗浄し、次いで乾燥することで、合成時分子ふるい結晶が得られる。乾燥工程は、上昇させた温度(例えば、75℃~150℃)で数時間(例えば、4~24時間)にわたって実施され得る。乾燥工程は真空下または大気圧下で実施され得る。
【0033】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶質分子ふるい生成物は、合成の際に使用された構造誘導剤の少なくとも一部をその細孔の中に含有する。
【0034】
合成時分子ふるいは、熱処理、オゾン処理、または他の処理に曝すことでその合成の際に使用された構造誘導剤の一部もしくはすべての除去に供され得る。構造誘導剤の除去は、合成時分子ふるいを空気中または不活性ガス中で構造誘導剤の一部またはすべてを除去するのに十分な温度で加熱する熱処理(すなわち、焼成)によって行われてもよい。準大気圧を熱処理のために用いてもよいが、利便性の理由から、大気圧が望ましい。熱処理は、少なくとも370℃の温度で少なくとも1分間、通常は20時間以内(例えば、1~12時間)にわたって実施され得る。熱処理は、最大925℃までの温度下で実施され得る。例えば、熱処理は空気中400℃~600℃の温度でおよそ1~8時間にわたって行われ得る。
【0035】
分子ふるい中の任意の骨格外金属カチオンは、当技術分野でよく知られている技術に則って(例えばイオン交換によって)、他のカチオンに置き換えられ得る。置き換えるカチオンには、金属イオン、水素イオン、水素前駆体イオン(例えばアンモニウムイオン)及びその組合せが含まれ得る。
【0036】
本発明のSZR骨格型分子ふるいは、他の材料、例えば、完成された触媒にさらなる硬さまたは触媒活性を付与する結合剤及び/またはマトリックス材料を組み合わせることによって、触媒組成物に調合され得る。そのような成分と混和した場合、SZR骨格型分子ふるい及びマトリックスの相対割合は実に様々であり得、SZR骨格型分子ふるいの含有量は複合物全体の1~90重量%(例えば2~80重量%)の範囲であり得る。
【0037】
分子ふるいの特徴記載
本明細書に記載されているとおりに調製されたSZR骨格型分子ふるいは、その合成時の無水形態において、モル比率表示で表2に示される範囲:
【表2】

に入る化学組成を有し得、表中、Qは1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオンを含み、Mはアルカリまたはアルカリ土類金属である。
【0038】

以下の例示的な例は非限定的なものであることを意図する。
【0039】
例1
SZR型ゼオライトの合成
3.8gの1NのKOHを、0.29gの水酸化1,2,3-トリメチルイミダゾリウム(2.16mmol OH/g)、2.86gの脱イオン水と合わせ、最後に4.00gのNalco アルミナ被覆シリカDVSZN007(SAR=35、固形分24.5%)と合わせた。最終反応混合物はモル比率表示で以下の組成を有していた:
1 SiO2: 0.0286 Al2O3: 0.24 KOH: 0.04 Q-OH: 34 H2O
【0040】
混合物をよく撹拌し、オートクレーブに入れて密閉し、170℃で6日間、43rpmで撹拌しながら加熱した。材料を濾過によって回収し、大量の水で洗浄し、最後に85℃の空気中で乾燥させた。
【0041】
得られた生成物を粉末XRD及びSEMによって分析した。粉末XRDパターンは図1の通り、材料が純粋なSZRゼオライトであることを示している。生成物のSEM画像を図2A及び図2Bに様々な倍率で示す。図2A及び図2Bは、高アスペクト比の針形態を有していない材料を示している。
【0042】
例2(比較例)
ゼオライトSUZ-4の合成
比較例として、米国特許第10,399,066号の例1に従って5.8gの脱イオン水を1.15gの45重量%のKOHと合わせ、次いで0.06gのアルミニウム箔を溶解させることによって、ゼオライトSUZ-4を合成した。溶解後、0.93gの35重量%の水酸化テトラエチルアンモニウムを添加し、続いて4.88gのLUDOX(登録商標)AS-30コロイド状シリカを添加した。混合物を十分に均質化し、オートクレーブに入れて密閉し、150℃、43rpmで4日間撹拌しながら加熱した。材料を濾過によって回収し、大量の水で洗浄し、最後に85℃の空気中で乾燥させた。
【0043】
得られた生成物を粉末XRD及びSEMによって分析した。粉末XRDパターンは図3の通り、材料が純粋なSUZ-4ゼオライトであることを示している。生成物のSEM画像を図4A及び図4Bに様々な倍率で示す。図4A及び図4Bは、高アスペクト比の針形態を有する材料を示している。
【0044】
例3
SZR型ゼオライトの焼成
例1からの合成時材料を、焼成皿に薄い層にして入れ、マッフル炉内で室温が120℃に至るまで1℃/分の速度で加熱し、120℃で2時間保つことによって空気中で焼成した。その後、温度を1℃/分の加熱速度で540℃まで上昇させ、540℃に5時間保った。温度は、1℃/分で595℃まで再び上昇させ、595℃に5時間保った。その後、材料は室温まで放冷した。
【0045】
例4
SZR型ゼオライトのアンモニウムイオン交換
例3からのカリウム形態の合成時材料を、硝酸アンモニウムの溶液の中で加熱すること(典型的には、1gのNHNO/1gのゼオライトを含む10mLのHOを85℃で少なくとも3時間)によってアンモニウム形態に変換した。その後、材料を濾過した。これを、2回繰り返して、合計3回の交換を行った。最後に、材料を脱イオン水で、水の伝導度が10μS/cm未満になるまで洗浄した。アンモニウム交換生成物の粉末XRDパターンを図5に示す。
【0046】
乾燥後の生成物を、吸着物質としてNを使用してBET法によって微小孔容積分析に供した。ゼオライトは0.13cm/gの微小孔容積を有していた。
【0047】
酸部位密度は、n-プロピルアミン昇温脱離(TPD)を用いて特性評価され、525μmol H/gであると分かった。
【0048】
融合結合型プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)元素分析によって決定したところ、生成物は、33.6のSiO/Alモル比率、及び0.23のK/Alモル比率を有しており、すべてのカリウムをアンモニウム交換によって除去できたわけではなかったことを示していた。この交換不可能部位の量は従来の知見と一致している。例えば、D.B.Lukyanov et al.(J.Phys.Chemistry B 1999,103,197-202)を参照されたい。
【0049】
例5(比較例)
ゼオライトSUZ-4の焼成
例2からの合成時材料を、例3に記載されているのと同じ方法で焼成した。
【0050】
例6(比較例)
ゼオライトSUZ-4のアンモニウムイオン交換
例5からのカリウム形態の合成時SUZ-4材料を、例4に記載の方法を用いてアンモニウム形態に変換した。図6は、アンモニウムイオン交換された材料の粉末XRDパターンを示す。
【0051】
例7
パラジウム交換
0.5重量%のPdへのパラジウム交換のために、例4で調製された0.8gのアンモニウム形態材料を7.44gの脱イオン水及び3.48gの0.156NのNHOH溶液と合わせ、続いて、0.36gの硝酸テトラアンミンパラジウム(II)を21gの脱イオン水と3gの0.148NのNHOH溶液に合わせることで調製された0.80gのパラジウム溶液と組み合わせた。その後、pHを確認し、必要に応じて、pHの値が10に達するまで濃水酸化アンモニウムを滴加することによって調整した。室温で3日間静置した後、pHを再び確認し、必要に応じて10に再調整し、もう1日間静置した。材料を濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、85℃の空気中で一晩、乾燥させた。Pd形態材料を、乾燥空気中、1℃/分の傾斜で120℃まで加熱し、120℃でまたは180分間保ち、次いで1℃/分の傾斜で482℃まで加熱し、482℃で180分間保つことによって焼成した。最後に、材料を5kpsiでペレット化し、20~40メッシュのふるいにかけた。
【0052】
例8
SZR型ゼオライトのメタノールから炭化水素への変換
メタノールから炭化水素への触媒試験のために、例4からのアンモニウム形態の材料を5kpsiでペレット化し、粉砕し、20~40メッシュのふるいにかけた。600℃で熱重量分析(TGA)によって判定された(アランダムで4:1 v/vに希釈された)脱水触媒0.20gを、分割式管状炉内の下降流型ステンレス鋼製管型反応器の中央に置いた。触媒反応は大気圧で行った。窒素を400℃で流しながら触媒を原位置で予熱した。純粋なメタノールの流加物を反応器内に、窒素をキャリアガスとして30mL/分で流しながら1.3h-1WHSVに対して0.324mL/hの速度で導入した。反応器出口から出てくる生成物流からの反応生成物は、水素炎イオン化検出器を備えた作動中のAgilentガスクロマトグラフに自動注入され、原位置で分析された。結果を表3に示す。
【表3】
【0053】
例9
SZR骨格型ゼオライトの拘束指数決定
例4のアンモニウム形態のSZR骨格型分子ふるいを4~5kpsiでペレット化し、粉砕し、20~40メッシュの網でふるった。その後、600℃でのTGAによって判定された脱水触媒0.47gを、分子ふるい層の両面にアランダムを配した状態で3/8インチのステンレス鋼製管に充填した。Lindburg炉を使用して反応管を加熱した。大気圧で10mL/分のヘリウムを反応管内に導入した。反応器を約371℃に加熱し、ヘリウムキャリアガスを10mL/分として反応器内に、50/50(w/w)のn-ヘキサン及び3-メチルペンタンの流加物を8μL/分の速度で導入した。流加物送達はISCOポンプで行った。ガスクロマトグラフ(GC)への直接サンプリングを、流加物導入の15分後に開始した。
【0054】
拘束指数値は、当技術分野で知られている方法を用いてGCデータから算出され、15~225分の流通時間で2.87~3.39(30%未満の変換率)であることが分かったが、これは10員環分子ふるいに特徴的である。
【0055】
例10(比較例)
SUZ-4ゼオライトの拘束指数決定
例6のSUZ-4ゼオライトの拘束指数値(2-メチルペンタンを除く)を、例9に記載されているのと同じ方法で測定し、15~225分の流通時間で1.72~2.65(30%未満の変換率)であることが分かったが、これは10員環分子ふるいに特徴的である。
【0056】
例11
n-デカンの水素化変換
触媒試験のために、例7から0.5gのPd/SZR触媒(脱水和されていることが600℃でのTGAによって判定された試料の重量)を、流加物の予熱のために触媒の上流にアランダムが装填された状態で、長さ23インチ×外径1/4インチのステンレス鋼製反応管の中央に装填した(1200psigの全圧、1気圧及び25℃で測定して12.5mL/分の下降流水素速度、及び1mL/時の下降流液体流加物速度)。最初に触媒を315℃で1時間、水素流中で還元した。反応は230℃から310℃までで行った。生成物を、作動中のキャピラリーGCでおよそ60分に1回分析した。GCからの原データは自動データ収集/処理システムによって収集され、原データから炭化水素変換率が算出された。変換率は、反応して他の生成物(iso-C10を含む)を生成したn-デカンのmol%での量として定義される。iso-C10の収率は、n-デカン以外の生成物のモルパーセントとして表される。(C10よりも小さい)クラッキング生成物の収率は、クラッキング生成物に変換されたn-デカンのモルパーセントとして表される。結果を図7及び図8に示す。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】