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特表2023-529368B7H3標的タンパク質及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】B7H3標的タンパク質及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230703BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230703BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230703BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230703BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230703BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230703BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230703BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230703BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230703BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N5/10
C07K14/725
C12N15/12
C07K19/00
C07K17/00
A61P35/00
A61K45/00
A61K38/17
A61K38/20
A61K39/395 T
A61K49/00
A61K51/10 200
A61K47/68
A61K51/10 100
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574532
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 US2021035591
(87)【国際公開番号】W WO2021247794
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/033,989
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フェリシス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エス.ミラー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA21
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA12
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA41
4C084DA12
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085HH03
4C085HH07
4C085HH11
4C085KA04
4C085KA26
4C085KA27
4C085KA28
4C085KA29
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
多重特異性B7H3標的化合物及びその使用方法が提供される。多重特異性化合物は、B7H3標的ドメイン及び免疫細胞結合ドメインを含む二重特異性標的タンパク質;並びにB7H3標的ドメイン、免疫細胞結合ドメイン及び免疫細胞活性化ドメインを含む三重特異性標的タンパク質を含む。使用方法は、NK媒介細胞死を誘導する方法、インビボでNK拡大を誘導する方法、及びがんを治療する方法を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号6の少なくとも1つ、又はその機能的変異体を含む抗B7H3ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号1のCDR領域、配列番号2のCDR領域、配列番号3のCDR領域、又はその機能的変異体を含む抗B7H3ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号4、
配列番号5、
配列番号6、
配列番号1のCDR領域
配列番号2のCDR領域、
配列番号3のCDR領域、又は
その機能的変異体
を含む抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン;及び
前記標的ドメインに作動可能に連結された免疫細胞結合ドメイン
を含む多重特異性化合物。
【請求項4】
免疫細胞が、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項3に記載の多重特異性化合物。
【請求項5】
前記免疫細胞が、NK細胞であり;且つ
前記免疫細胞結合ドメインが、CD16に特異的に結合するリガンド又は抗体を含む、
請求項4に記載の多重特異性化合物。
【請求項6】
CD16に特異的に結合する前記抗体が、scFv、F(ab)、Fab、又は単一ドメイン抗体(sdAb)を含む、請求項5に記載の多重特異性化合物。
【請求項7】
前記免疫細胞結合ドメインが、配列番号19を含み;且つ
前記標的ドメインが、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3を含む、
請求項3~6のいずれか一項に記載の多重特異性化合物。
【請求項8】
前記標的ドメイン及び前記免疫細胞エンゲージャードメインが、配列番号14によって連結される、請求項7に記載の多重特異性化合物。
【請求項9】
配列番号20のアミノ酸19~294又は配列番号21のアミノ酸19~284を含む、請求項7に記載の多重特異性化合物。
【請求項10】
免疫細胞活性化ドメインをさらに含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の多重特異性化合物。
【請求項11】
前記免疫細胞が、NK細胞を含み;且つ
前記免疫細胞活性化ドメインが、サイトカイン又はその機能部分を含む、
請求項10に記載の多重特異性化合物。
【請求項12】
前記サイトカインが、IL-15又はその機能的変異体である、請求項11に記載の多重特異性化合物。
【請求項13】
配列番号19;
配列番号19に作動可能に連結された配列番号11;及び
配列番号19及び配列番号11に作動可能に連結された標的ドメインであって、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3を含む標的ドメイン
を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の多重特異性化合物。
【請求項14】
配列番号19及び配列番号11が、配列番号14によって連結され;且つ
配列番号11が、前記標的ドメインに連結され、且つ1又は2が、配列番号15によって連結される、
請求項13に記載の多重特異性化合物。
【請求項15】
配列番号22又は配列番号23に記載される通りである、請求項14に記載の多重特異性化合物。
【請求項16】
IL-15の前記機能的変異体が、配列番号11と比較して、N72D又はN72Aアミノ酸置換を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の多重特異性化合物。
【請求項17】
請求項3~16のいずれか一項に記載の多重特異性化合物をコードする、単離された核酸配列。
【請求項18】
配列番号26~33のいずれか1つ、又は配列番号26~33のいずれか1つと90%の同一性を有する配列である、請求項17に記載の単離された核酸配列。
【請求項19】
請求項17に記載の核酸配列のいずれか1つによってコードされるタンパク質。
【請求項20】
配列番号1、配列番号2、配列番号9、配列番号10、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25のアミノ酸配列、又はそれと90%又はそれ以上の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のタンパク質。
【請求項21】
請求項17又は請求項18に記載の単離された核酸を含む宿主細胞。
【請求項22】
T細胞、NK細胞、又はマクロファージである、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項3~16のいずれか一項に記載の多重特異性化合物;及び
薬学的に許容できる担体
を含む医薬組成物。
【請求項24】
細胞のナチュラルキラー(NK)媒介殺傷を誘導するため、有効量で、多重特異性化合物であって、
請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン;及び
前記標的ドメインに作動可能に連結されたNK結合ドメイン
を含む多重特異性化合物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記多重特異性化合物が、前記NK結合ドメインに作動可能に連結された、IL-15又はその機能部分を含む免疫細胞活性化ドメインをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記多重特異性化合物が、配列番号20~25のいずれか1つに記載される通りである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
インビボでナチュラルキラー(NK)細胞の拡大を刺激するための方法であって、
請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン;及び
前記抗B7H3ポリペプチドに作動可能に連結されたNK結合ドメイン
を含む多重特異性化合物を有効量で対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記多重特異性化合物が、前記NK結合ドメインに作動可能に連結された、IL-15又はその機能部分を含む免疫細胞活性化ドメインをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記多重特異性化合物が、配列番号20~25のいずれか1つに記載される通りである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
がんを有する、又は有するリスクがある対象を治療する方法であって、
請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン;及び
前記抗B7H3ポリペプチドに作動可能に連結されたNK結合ドメイン
を含む多重特異性化合物を有効量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項31】
前記多重特異性化合物が、前記NK結合ドメインに作動可能に連結された、IL-15又はその機能部分を含む免疫細胞活性化ドメインをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記多重特異性化合物が、配列番号20~25のいずれか1つに記載される通りである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
がん細胞が、B7H3を発現する、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記がんが、前立腺がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、メラノーマ、腎がん、腎がん、口腔がん、咽頭がん、膵臓がん、子宮がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頚部がん、子宮頸がん、卵巣がん、又は造血がんを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記多重特異性化合物が、化学療法、腫瘍の外科的切除、又は放射線療法の前に、それと同時に、又はその後に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記化学療法が、アルトレタミン、アムサクリン、L-アスパラギナーゼ、コラスパーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、サイトホスファン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルオロウラシル、フルダラビン、ホテムスチン、ガンシクロビル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファマイド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、マイトマイシンC、ニムスチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、プロカルバジン、ラルチトレキセド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、又はビノレルビンを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体化合物。
【請求項38】
請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン;及び
前記標的ドメインに連結された免疫療法ドメイン
を含む標的化免疫療法化合物。
【請求項39】
請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン;及び
前記標的ドメインに連結された治療ドメイン
を含む標的化療法化合物。
【請求項40】
前記治療ドメインが、薬剤、治療用放射性同位元素、毒素、サイトカイン、又はケモカインを含む、請求項37に記載の標的化療法化合物。
【請求項41】
請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン;及び
前記標的ドメインに連結されたイメージングドメイン
を含む標的化イメージング化合物。
【請求項42】
前記イメージングドメインが、比色分析標識、蛍光標識、放射性標識、磁気標識、又は酵素標識を含む、請求項41に記載の標的化イメージング化合物。
【請求項43】
基質に固定化された、請求項1又は請求項2に記載の抗B7H3ポリペプチドを含む捕捉アッセイデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月3日に出願された米国仮特許出願第63/033,989号明細書(その全体が参照により援用される)の35U.S.C.§119(e)の下で、優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表
本願は、米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office)に、2021年6月2日に作成された、40キロバイトのサイズを有する「0110-000661WO01_ST25.txt」と称されるASCIIテキストファイルとして、EFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含む。配列表に含まれる情報は、参照により本明細書中に援用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本開示は、配列番号4、配列番号5、若しくは配列番号6の少なくとも1つ、又はその機能的変異体を含む抗B7H3タンパク質について記載する。
【0004】
別の態様では、本開示は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号1のCDR領域、配列番号2のCDR領域、配列番号3のCDR領域、又はその機能的変異体を含む抗B7H3タンパク質について記載する。
【0005】
別の態様では、本開示は、多重特異性化合物について記載する。一般に、多重特異性化合物は、標的ドメイン及び標的ドメインに作動可能に連結された免疫細胞結合ドメインを含む。標的ドメインは、抗B7H3タンパク質を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞である。免疫細胞がNK細胞である実施形態では、免疫細胞結合ドメインは、CD16に特異的に結合するリガンド又は抗体を含み得る。免疫細胞結合ドメインがCD16に特異的に結合する抗体を含む実施形態では、抗体は、scFv、F(ab)、Fab、又は単一ドメイン抗体(sdAb)であり得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、免疫細胞結合ドメインは、配列番号19を含み得る。いくつかの実施形態では、標的ドメインは、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3を含み得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞結合ドメインは、配列番号19を含み得て、且つ標的ドメインは、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3を含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、免疫細胞結合ドメイン及び標的ドメインは、配列番号12~18のいずれか1つのアミノ酸配列を有するリンカーによって連結される。これらの実施形態の一部では、免疫細胞結合ドメイン及び標的ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列を有するリンカーによって連結される。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗B7H3多重特異性化合物は、配列番号20のアミノ酸19~294又は配列番号21のアミノ酸19~284を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗B7H3多重特異性化合物は、免疫細胞活性化ドメインをさらに含む三重特異性化合物であり得る。免疫細胞がNK細胞である実施形態では、免疫細胞活性化ドメインは、サイトカイン又はその機能部分を含む。これらの実施形態の一部では、サイトカインは、IL-15又はその機能的変異体である。
【0011】
いくつかの実施形態では、三重特異性化合物は、免疫細胞結合ドメインとして配列番号19のアミノ酸、免疫細胞活性化ドメインとして配列番号19のアミノ酸、及び標的ドメインとして配列番号1~3のいずれか1つのアミノ酸を含み得る。機能ドメインは、配列番号12~18で示される2つ以上のリンカーのいずれか1つ又は組み合わせによって連結されてもよい。これらの実施形態の一部では、免疫細胞結合ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列を有するリンカーによって、免疫細胞活性化ドメインに連結されてもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞活性化ドメイン及び標的ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を有するリンカーによって連結されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗B7H3三重特異性化合物は、配列番号22又は配列番号23のアミノ酸配列を含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、IL-15の機能的変異体は、配列番号11と比較して、N72D又はN72Aのアミノ酸置換を含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の抗B7H3多重特異性化合物のいずれかの実施形態をコードする単離された核酸配列について記載する。
【0015】
別の態様では、本開示は、上で概説される単離された核酸のいずれかの実施形態を含む宿主細胞について記載する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、T細胞、NK細胞、又はマクロファージである。
【0016】
別の態様では、本開示は、抗B7H3多重特異性化合物及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物について記載する。
【0017】
別の態様では、本開示は、一般に、細胞のナチュラルキラー(NK)媒介殺傷を誘導するため、有効量で抗B7H3多重特異性化合物を対象に投与することを含む方法について記載する。抗B7H3多重特異性化合物は、抗B7H3タンパク質を含む標的ドメイン、及び標的ドメインに作動可能に連結されたNK結合ドメインを含む。
【0018】
別の態様では、本開示は、インビボでナチュラルキラー(NK)細胞の拡大を刺激するための方法について記載する。一般に、本方法は、対象に抗B7H3多重特異性化合物を有効量で対象に投与することを含む。抗B7H3多重特異性化合物は、抗B7H3タンパク質を含む標的ドメイン、及び標的ドメインに作動可能に連結されたNK結合ドメインを含む。
【0019】
別の態様では、本開示は、がんを有する、又は有するリスクがある対象を治療する方法について記載する。一般に、本方法は、対象に抗B7H3多重特異性化合物を有効量で対象に投与することを含む。抗B7H3多重特異性化合物は、抗B7H3ポリペプチドを含む標的ドメイン、及び標的ドメインに作動可能に連結されたNK結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、がん細胞は、B7H3を発現する。
【0020】
別の態様では、本開示は、抗B7H3ポリペプチドを含むキメラ抗原受容体化合物について記載する。
【0021】
別の態様では、本開示は、標的ドメイン及び標的ドメインに連結された治療ドメインを含む標的化療法化合物について記載する。標的ドメインは、抗B7H3ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、標的化治療薬は、標的化免疫療法を提供する。いくつかの実施形態では、治療ドメインは、薬剤、治療用放射性同位元素、毒素、サイトカイン、又はケモカインを含む。
【0022】
別の態様では、本開示は、標的ドメイン及び標的ドメインに連結されたイメージングドメインを含む標的化イメージング化合物について記載する。標的ドメインは、抗B7H3ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、イメージングドメインは、比色分析標識、蛍光標識、放射性標識、磁気標識、又は酵素標識を含む。
【0023】
別の態様では、本開示は、基質に固定化された抗B7H3ポリペプチドを含む捕捉アッセイデバイスについて記載する。
【0024】
特許又は出願ファイルは、色付きで作成された少なくとも1つの図面を含む。色付き図面を伴うこの特許又は特許出願公開のコピーは、必要な料金の要求及び支払い時、同庁によって提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】抗B7H3タンパク質の例示的な実施形態を組み込む三重特異性キラーエンゲージャーの模式図を図示する。図1Aは、組換えヒトIL-15及び抗CD16単一ドメイン抗体(sdAb)アームも含む、三重特異性キラーエンゲージャー骨格に組み込まれた、例示的な抗B7H3タンパク質配列(例えば、sdAb)の模式図を図示し、全ては、短いリンカーを介して連結された。図1Bは、新規な抗B7H3タンパク質のアミノ酸配列を図示する。
図1B】抗B7H3タンパク質の例示的な実施形態を組み込む三重特異性キラーエンゲージャーの模式図を図示する。図1Aは、組換えヒトIL-15及び抗CD16単一ドメイン抗体(sdAb)アームも含む、三重特異性キラーエンゲージャー骨格に組み込まれた、例示的な抗B7H3タンパク質配列(例えば、sdAb)の模式図を図示し、全ては、短いリンカーを介して連結された。図1Bは、新規な抗B7H3タンパク質のアミノ酸配列を図示する。
図2A-2B】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生を図示する。図2Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)が末梢血単核球(PBMC)単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒(%CD107a+)を図示する棒グラフである。図2Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(PC3)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図2Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(DU145)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図2Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBM単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図2Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びPC3細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図2Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びDU145細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図2C-2D】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生を図示する。図2Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)が末梢血単核球(PBMC)単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒(%CD107a+)を図示する棒グラフである。図2Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(PC3)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図2Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(DU145)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図2Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBM単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図2Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びPC3細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図2Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びDU145細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図2E-2F】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生を図示する。図2Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)が末梢血単核球(PBMC)単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒(%CD107a+)を図示する棒グラフである。図2Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(PC3)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図2Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(DU145)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図2Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBM単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図2Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びPC3細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図2Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びDU145細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図3A-3B】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図3Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(LnCAP)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒(%CD107a+)を図示する棒グラフである。図3Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(C4-2)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図3Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びLnCAP細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図3Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図3C-3D】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図3Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(LnCAP)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒(%CD107a+)を図示する棒グラフである。図3Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び前立腺がん細胞(C4-2)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図3Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びLnCAP細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図3Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図4A-4B】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図4Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び肺がん細胞(A549)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図4Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図4Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びA549細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図4C-4D】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図4Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び肺がん細胞(A549)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図4Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図4Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びA549細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図4E-4F】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図4Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び肺がん細胞(A549)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図4Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図4Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図4Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びA549細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図5A-5B】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図5Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び肺がん細胞(NCI-H460s)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び卵巣がん細胞(OVCAR8)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び卵巣がん細胞(MA148)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びNCI-H460s細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図5Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びOVCAR8細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図5Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びMA148細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図5C-5D】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図5Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び肺がん細胞(NCI-H460s)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び卵巣がん細胞(OVCAR8)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び卵巣がん細胞(MA148)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びNCI-H460s細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図5Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びOVCAR8細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図5Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びMA148細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図5E-5F】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を図示する。図5Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び肺がん細胞(NCI-H460s)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び卵巣がん細胞(OVCAR8)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及び卵巣がん細胞(MA148)と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図5Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びNCI-H460s細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図5Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びOVCAR8細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図5Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びMA148細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図6A-6B】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒を図示する。図6Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。
図6C-6D】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒を図示する。図6Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。
図6E-6F】フローサイトメトリーによって測定された、NK細胞の脱顆粒を図示する。図6Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。図6Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、NK細胞の脱顆粒を図示する棒グラフである。
図7A-7B】フローサイトメトリーによって測定された、IFN-γの産生を図示する。図7Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図7C-7D】フローサイトメトリーによって測定された、IFN-γの産生を図示する。図7Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図7E-7F】フローサイトメトリーによって測定された、IFN-γの産生を図示する。図7Aは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Bは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Cは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC単独とともにインキュベートされたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Dは、三重特異性キラーエンゲージャー(0.3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Eは、三重特異性キラーエンゲージャー(3nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。図7Fは、三重特異性キラーエンゲージャー(30nM)がPBMC及びC4-2細胞と共培養されたときの、IFN-γの産生を図示する棒グラフである。
図8】卵巣がんスフェロイドに対する細胞溶解活性の、例示的な抗B7H3タンパク質を組み込む三重特異性キラーエンゲージャーによる増強を図示する画像を示す。
図9】卵巣がんスフェロイドに対する細胞溶解活性の、例示的な抗B7H3タンパク質を組み込む三重特異性キラーエンゲージャーによる増強の定量化を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、抗B7H3ポリペプチド、抗B7H3ポリペプチドを含む化合物及びデバイス、並びにそのような化合物及びデバイスを訴求する(suing)方法について記載する。抗B7H3ポリペプチドが使用されてもよい場合の例示的なプラットフォームとして、限定はされないが、キメラ抗原受容体療法(例えば、CAR-NK療法、CAR-T療法、CAR-マクロファージ療法など)、多重特異性免疫細胞エンゲージャー技術(例えば、二重特異性キラーエンゲージャー、三重特異性キラーエンゲージャー、二重特異性T細胞エンゲージャー、三重特異性T細胞エンゲージャーなど)、標的化免疫療法(例えば、標的化ADAM17ブロッカー(TAB)療法)、治療薬の送達(例えば、抗体-薬物コンジュゲート、治療用放射性同位元素の送達、毒素の送達、サイトカインの送達、ケモカインの送達)、イメージング技術(標識構築物及び/又は標識放射性同位元素の送達)、細胞及び/又はリガンド捕捉技術(例えば、ELISAなど)が挙げられる。
【0027】
表面抗原分類276(CD276)としても知られるB7ホモログ3(B7H3)は、CD276遺伝子によってコードされるヒトタンパク質である。B7H3タンパク質は、細胞外ドメインによって判定される、2つのアイソフォームで存在する、316アミノ酸長のI型膜貫通タンパク質である。マウスでは、細胞外ドメインは、免疫グロブリン可変(IgV)様及び免疫グロブリン定常(IgC)様ドメインの単一ペアからなる一方で、ヒトでは、それは、1つのペア(2Ig-B7H3)又はエクソン重複に起因する2つの同一ペア(4Ig-B7H3)からなる。B7H3 mRNAは、ほとんどの正常な組織内で発現される。それに対し、B7H3タンパク質は、マイクロRNAによるその転写後調節が理由で、正常な組織上に非常に限られた発現を有する。正常な組織において、B7H3は、T細胞の活性化及び増殖を抑制する、獲得免疫における主に阻害的な役割を有する。
【0028】
B7H3は、数種のヒトがん細胞の中で過剰発現される。悪性組織では、B7H3は、腫瘍抗原に特異的な免疫応答を阻害する免疫チェックポイント分子である。B7H3はまた、遊走促進、浸潤、血管新生、化学療法抵抗性、上皮間充織転換、及び腫瘍細胞代謝への影響などの非免疫学的な前腫瘍化機能を有する。B7H3は、限定はされないが、T細胞活性化及びIFN-γ産生を含む、免疫反応における共刺激分子として認識される。TCRシグナルを模倣する抗CD3抗体の存在下で、ヒトB7H3-Ig融合タンパク質は、CD4及びCD8T細胞双方の増殖を増加させ、インビトロで細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を増強する。B7H3はまた、結腸の腺がんに対する抗腫瘍効果を有する。B7H3はまた、膵がんにおいて発現され、治療有効性の増強に関連する。高い腫瘍B7H3レベルを有する膵がん患者は、低い腫瘍B7H3レベルを有する患者よりも有意に良好な術後予後を有する(Yang et al.,Int J Biol Sci 2020;16(11):1767-1773)。B7H3は、固形腫瘍上でのその選択的発現及びその前腫瘍化機能に起因し、エノビリツズマブ、オンバータマブ、MGD009、MGC018、DS-7300a、及びCAR-T細胞を含む、いくつかの抗がん剤の標的である。
【0029】
したがって、一態様では、抗B7H3ポリペプチドは、免疫療法化合物に組み込まれてもよい。免疫療法化合物は、免疫系を活性化又は抑制し、免疫応答を増幅又は低減する個別化治療を提供することができ、様々な形態のがんを治療するため、急速に開発が行われている。キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞、CAR-ナチュラルキラー(NK)細胞、PD-1及びPD-L1阻害剤などのがんに対する免疫療法は、対象の免疫系ががんと闘うことを補助することを目的とする。T細胞の活性化は、T細胞受容体(TCR)及びペプチドに結合される主要組織適合複合体(MHC)の特定の組み合わせと、T細胞の共刺激分子の、抗原提示細胞(APC)上のリガンドとの相互作用の双方に依存する。活性化APC上の表在性膜タンパク質であるB7ファミリーは、T細胞応答の調節に関与することが示されている。最近の試験では、がん微小環境内の阻害性B7分子の上方制御が腫瘍の免疫回避に高度に関連することが示されている。B7H3は、B7ファミリーの新規に同定されたメンバーとして、T細胞の活性化及びIFN-γの産生を促進し得る。
【0030】
一実施形態では、本開示は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6で示されるような、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗B7H3ポリペプチドについて記載する。これらCDRのそれぞれを含む例示的な抗B7H3ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列で示される。本明細書で用いられるとき、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、互換的に、共有結合的化学結合によって連結された、少なくとも2つのアミノ酸の任意の鎖を指す。したがって、本明細書で用いられるとき、「ポリペプチド」という用語は、タンパク質全体をコードする完全なアミノ酸配列又はその一部を指し得る。本明細書で用いられるとき、「抗B7H3ペプチド」、「抗B7H3タンパク質」、「B7H3結合ペプチド」及び「B7H3標的ペプチド」という用語は、一般に、B7H3に特異的に結合し得る任意のペプチド又はポリペプチド(タンパク質又は融合タンパク質を含む)を指す。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗B7H3ポリペプチドは、CDR領域を含む抗体又は抗体断片であり得る。本明細書で用いられるとき、「CDR領域」は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の3つの相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数を指す。CDRは、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6として別々に同定される。いくつかの態様では、ポリペプチドは、B7H3標的タンパク質の軽鎖及び重鎖をコードする。
【0032】
「タンパク質コード配列」又は特定のポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれるとき、インビトロ又はインビボで、(DNAの場合)転写される、また(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳される核酸配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシル)末端の翻訳停止コドンによって決定される。コード配列は、限定はされないが、原核生物又は真核生物mRNAからのcDNA、原核生物又は真核生物DNAからのゲノムDNA配列、そしてさらに合成DNA配列を含み得る。転写終結配列は、通常は、コード配列に対して3’側に位置することになる。
【0033】
「抗体」という用語は、目的の特定の抗原標的に免疫特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位を含む分子を指す。それ故、「抗体」という用語は、限定はされないが、全長抗体及び/又はその変異体、その断片、ペプチボディ及びその変異体、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、ヒト化抗体、並びに抗体又はその特定の断片若しくは一部の構造及び/又は機能を模倣する抗体模倣物、例えば、一本鎖抗体及びその断片などを含む。したがって、本明細書で用いられるとき、「抗体」という用語は、限定はされないが、Fab、Fab’及びF(ab’)、pFc’、Fd、単一ドメイン抗体(sdAb)、可変断片(Fv)、一本鎖可変断片(scFv)又はジスルフィド結合Fv(sdFv);二重特異性抗体又は二価二重特異性抗体;直鎖抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体(例えば、トリボディ)を含む、生体分子(抗原又は受容体など)又はその一部に結合する能力がある抗体断片を包含する。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)、又はサブクラスに属し得る。
【0034】
本明細書に記載の抗B7H3タンパク質は、B7H3に選択的に結合する任意のタンパク質であり得る。例示的な抗B7H3タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及びその機能的変異体を含む。本明細書で用いられるとき、タンパク質は、タンパク質のアミノ酸配列が、参照タンパク質と比較して特定量の同一性を有し、且つ参照タンパク質の活性を保持する場合、参照タンパク質に対する「機能的変異体」である。2つのタンパク質の構造的類似性は、2つのタンパク質(例えば、候補タンパク質と、例えば、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3のタンパク質)の残基を整列し、同一アミノ酸の数をそれら配列の長さに沿って最適化することによって決定することができ;一方又は両方の配列におけるギャップは、同一アミノ酸の数を最適化するための整列化を行う場合に許容されるが、にもかかわらず、各配列内のアミノ酸は、それらの適切な順序で維持しなければならない。候補タンパク質は、参照タンパク質(例えば、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3)と比較されているタンパク質である。候補タンパク質は、例えば、動物から単離され得る、又は組換え技術を用いて生成され得る、又は化学的若しくは酵素的に合成され得る。
【0035】
アミノ酸配列のペアワイズ比較分析は、例えば、GCGパッケージ(バージョン10.2,Madison WI)におけるベストフィットアルゴリズムを用いて実施され得る。或いは、タンパク質は、Tatiana et al.,(FEMS Microbiol Lett,174,247-250(1999))によって記載の通りであり、また国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)ウェブサイトで入手可能である、BLAST2探索アルゴリズムのBlastpプログラムを用いて比較されてもよい。マトリックス=BLOSUM62;オープンギャップペナルティ=11、伸長ギャップペナルティ=1、ギャップx_ドロップオフ=50、期待値=10、ワードサイズ=3、及びフィルターオンを含む、全てのBLAST2探索パラメータにおけるデフォルト値が使用されてもよい。
【0036】
2つのアミノ酸配列の比較において、構造的類似性は、パーセント「同一性」によって参照されてもよく、又はパーセント「類似性」によって参照されてもよい。「同一性」は、同一アミノ酸の存在を指す。「類似性」は、同一アミノ酸の存在だけでなく、保存的置換の存在を指す。抗B7H3タンパク質中のアミノ酸における保存的置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。例えば、特定のサイズ又は特性(電荷、疎水性及び親水性など)を有するアミノ酸の分類に属するアミノ酸が、特に、生物学的活性に直接的に関連しないタンパク質の領域内で、タンパク質の活性を変更することなく、別のアミノ酸と置換され得ることは、タンパク質生化学の技術分野で周知である。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを含む。正電荷(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン及びヒスチジンを含む。負電荷(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。保存的置換は、例えば、正電荷を維持するためのArgに対するLys及びその逆;負電荷を維持するためのAspに対するGlu及びその逆;遊離-OHを維持するためのThrに対するSer;並びに遊離-NHを維持するためのAsnに対するGlnを含む。同様に、タンパク質の機能的活性を除去しない1つ又は複数の隣接又は非隣接アミノ酸の欠失又は付加を含むタンパク質の生物活性類似体についても考慮される。
【0037】
一般に、CDRの外側の配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の部分は、変異により適合可能である一方で、抗B7H3の機能性を維持する、即ち、B7H3に特異的に結合する。したがって、抗B7H3タンパク質は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のCDRの1つ、2つ、又は3つ全て、即ち、配列番号4のアミノ酸(CDR1)、配列番号5のアミノ酸(CDR2)、及び配列番号6のアミノ酸(CDR3)を含み得る。
【0038】
本明細書に記載のような抗B7H3タンパク質は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3と、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列類似性を有するタンパク質を含み得る。
【0039】
本明細書に記載のような抗B7H3タンパク質は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3と、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。
【0040】
本開示配列の変異体は、対応する部分にわたり、元のタンパク質に対して少なくとも約70%の相同性を残すことになる、タンパク質骨格への置換、欠失、又は挿入を含む、タンパク質、又は全長タンパク質も含む。相同性からのさらにより大きな逸脱度は、同様のアミノ酸、即ち、保存的アミノ酸置換が、配列内の変化として無視できる場合、許容される。保存的置換の例は、同じ又は類似特性を有するアミノ酸を含む。例示的なアミノ酸の保存的置換は、アラニンからセリンへ;アルギニンからリジンへ;アスパラギンからグルタミン又はヒスチジンへ;アスパラギン酸からグルタミン酸へ;システインからセリンへ;グルタミンからアスパラギンへ;グルタミン酸からアスパラギン酸へ;グリシンからプロリンへ;ヒスチジンからアスパラギン又はグルタミンへ;イソロイシンからロイシン又はバリンへ;ロイシンからバリン又はイソロイシンへ;リジンからアルギニン、グルタミン、又はグルタミン酸へ;メチオニンからロイシン又はイソロイシンへ;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン又はメチオニンへ;セリンからトレオニンへ;トレオニンからセリンへ;トリプトファンからチロシンへ;チロシンからトリプトファン又はフェニルアラニンへ;バリンからイソロイシン、そしてロイシンへの変化を含む。
【0041】
いくつかの態様では、抗B7H3タンパク質は、さらなる配列、例えば、抗B7H3タンパク質のC末端又はN末端に付加されるアミノ酸などを含み得る。そのような修飾は、例えば、カラムでの捕捉による精製、抗体の使用を容易にし、又は微生物で組換え的に発現されるとき、回収を容易にし得る。そのようなタグは、例えば、ニッケルカラムでのタンパク質の精製を可能にするヒスチジンリッチタグ(例えば、配列番号8)及び/又は組換え的に発現されたタンパク質をそれが組換え的に発現される細胞の膜に輸送し得るリーダー配列(例えば、配列番号7)を含む。そのような遺伝子修飾技術及び好適なさらなる配列は、分子生物学技術において周知である。いくつかの実施形態では、C末端及び/又はN末端修飾は、例えば、医薬組成物に組み込まれる前に、抗B7H3タンパク質から切断されてもよい。他の実施形態では、C末端又はN末端修飾の保持は、所与の適用のため、即ち、基質への固定化を促進するため、所望され得る。
【0042】
別の態様では、本開示は、抗B7H3タンパク質を含む標的ドメインを含む多重特異性化合物について記載する。抗B7H3タンパク質は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3からの少なくとも1つのCDR、例えば、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6のアミノ酸配列などを含む。多重特異性化合物は、標的ドメインに作動可能に連結された免疫細胞結合ドメインをさらに含む。
【0043】
「多重特異性化合物」及び「多重特異性タンパク質」という用語は、「融合分子」又は「融合タンパク質」を指し、組換え方法、化学的方法、又は他の好適な方法によって共有結合的に連結された(例えば、融合された)、さらなるエフェクター分子の存在下又は不在下の、2つ以上の結合ドメインを含む、生物活性ポリペプチドを指す。例えば、結合ドメインは、別の結合ドメインに、ペプチドリンカー配列を介して連結され得る。或いは、ペプチドリンカーを用いて、融合分子の構築を補助することができる。
【0044】
本明細書で用いられるとき、「作動可能に連結された」という用語は、多重特異性化合物のドメイン間の直接的又は間接的な共有結合を指す。したがって、作動可能に連結された2つのドメインは、互いに直接的に共有結合的にカップリングされてもよい。逆に、2つの作動可能に連結されたドメインは、介在部分(例えば、フランキング配列又はリンカー)への相互の共有結合によって結合されてもよい。2つのドメインは、例えば、それらが、1つ又は複数の介在するフランキング配列の存在下又は不在下で、第3のドメインによって分離される場合、作動可能に連結されたと考えることができる。
【0045】
多重特異性化合物のドメインは、互いに1つ又は複数のリンカーを用いて構築された作動可能な結合状態であり得る。「リンカー」という用語は、本明細書で用いられるとき、ドメインに物理的に連結する任意の結合、小分子、ペプチド配列、又は他の媒体を指す。リンカーは、化合物又は抗体が活性を維持するための条件で、酸誘導切断、光誘導切断、ペプチダーゼ誘導切断、エステラーゼ誘導切断及びジスルフィド結合切断に対して感受性があり、又は実質的に抵抗性がある可能性がある。リンカーは、ジスルフィド基、ヒドラジン若しくはペプチド(切断可能)、又はチオエステル基(切断不能)を含む、当該技術分野で周知のそれらの化学的モチーフに対して分類される。リンカーはまた、当該技術分野で公知のような荷電リンカー、及びその親水性形態を含む。
【0046】
多重特異性抗B7H3化合物のドメインを連結するのに適したリンカーは、天然リンカー、経験的リンカー(empirical linker)、又は天然及び経験的リンカーの組み合わせを含み得る。天然リンカーは、タンパク質ドメイン間に天然に存在する、マルチドメインタンパク質に由来する。例えば、長さ、疎水性、アミノ酸残基、及び/又は二次構造などの天然リンカーの特性を利用し、機能ドメインを連結する天然リンカーを含むマルチドメイン化合物に望ましい特性を付与することができる。
【0047】
天然マルチドメインタンパク質中のリンカーの試験では、組換え融合タンパク質の構築のための、様々な配列及び立体構造を有する多数の経験的リンカーの生成が引き起こされている。経験的リンカーは、3つのタイプ:フレキシブルリンカー、リジッドリンカー、及び切断可能なリンカーに分類することができる。フレキシブルリンカーは、連結されたドメインで、ある程度の運動又は相互作用を生成し得る。フレキシブルリンカーは、典型的に、柔軟性をもたらし、且つ連結された機能ドメインの可動性を許容する、小さい、非極性(例えば、Gly)又は極性(例えば、Ser又はThr)のアミノ酸を含む。リジッドリンカーは、ドメイン間の固定された距離を巧みに保つことで、それらの独立した機能を維持することができ、タンパク質ドメインの効率的分離をもたらし、且つ/又は機能ドメイン間の干渉を十分に低減することができる。切断可能なリンカーでは、インビボで機能ドメインの放出を制御できる可能性がある。固有のインビボプロセスを利用することにより、切断可能なリンカーは、還元試薬又はプロテアーゼの存在などの特定条件下で切断され得る。このタイプのリンカーは、リンカー切断後、立体障害を低減し、生物活性を改善し、且つ/又は組換え融合タンパク質の各ドメインの独立した作用/代謝を達成することができる。
【0048】
例示的なリンカーは、配列番号12~18のアミノ酸配列で示される。
【0049】
1つの例示的な適用において、抗B7H3ポリペプチドは、少なくとも抗B7H3タンパク質及びNKエンゲージャードメインを含む、多重特異性NKエンゲージャー化合物に組み込むことができる。
【0050】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、免疫監視の能力がある自然免疫系の細胞傷害性リンパ球である。T細胞同様、NK細胞は、膜透過性及びアポトーシス誘導性の貯蔵されたグランザイム及びパーフォリン顆粒を送達する。T細胞と異なり、NK細胞は、抗原プライミングを必要とせず、MHC認識の不在下で活性化受容体と会合することによって標的を認識する。
【0051】
NK細胞は、IgG抗体のFc部分に結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に関与する活性化受容体であるCD16を発現する。NK細胞は、増加した抗原依存性細胞傷害性、リンホカイン活性化キラー活性を誘導し、且つ/又はインターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)及び/又は顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の応答を媒介し得る、IL-15によって調節される。IL-15はまた、NK細胞の増殖及び生存を駆動し、ひいてはNK細胞の拡大及び持続性を増強し得る。これらのIL-15活性化機能の全ては、がん防御の改善に寄与する。
【0052】
治療的に、NK細胞の養子移植は、例えば、リンパ枯渇化学療法やNK細胞の生存及びインビボ拡大を刺激するためのIL-2と組み合わされるとき、難治性急性骨髄性白血病(AML)を有する対象における寛解を誘導し得る。この療法は、抗原特異性の欠如、並びにNK細胞の増殖及び機能を抑制する調節性T(Treg)細胞のIL-2媒介性誘導によって制限され得る。NK細胞の抗原特異性、拡大、及び/又は持続性を駆動する試薬を作製する一方で、Treg阻害の陰性効果をバイパスすることにより、NK細胞ベースの免疫療法を増強することができる。
【0053】
したがって、一態様では、本開示は、B7H3腫瘍細胞のNK細胞媒介殺傷を駆動する能力がある2つのドメイン、及びNK細胞自己持続シグナル(self-sustaining signal)を生成する能力がある分子内NK活性化ドメインを含む、三重特異性分子の設計、構築、及び使用について記載する。三重特異性分子は、NK細胞増殖を駆動し、且つ/又は、例えば、B7H3がん細胞又はB7H3がん細胞由来細胞株に対する、NK細胞駆動性の細胞傷害性を増強し得る。
【0054】
本開示は、一態様では、一般に、B7H3を選択的に標的にする標的ドメイン、NK細胞エンゲージャードメイン(例えば、CD16、CD16+CD2、CD16+DNAM、NKp46、CD16+NKp46、NKG2D、NK2C)、及びNK活性化ドメイン(例えば、IL-15、IL-12、IL-18、IL-21、又は他のNK細胞増強サイトカイン、ケモカイン、及び/又は活性化分子)を含み、ここで各ドメインが他のドメインに作動可能に連結された、三重特異性キラーエンゲージャー分子について記載する。本明細書で用いられるとき、「選択的に標的にする」及び「選択的に結合する」という用語は、例えば、特定の標的に対してある程度の差次的親和性を有する、2つ以上の選択肢の間を識別する能力を指す。特に、三重特異性化合物との関連で、「作動可能に連結された」という用語は、介在部分(例えば、フランキング配列、複数のフランキング配列、及び/又は別の機能ドメイン)に対する相互の共有結合によって連結されるドメインを含む。したがって、2つのドメインは、例えば、それらが、1つ又は複数の介在性フランキング配列の存在下又は不在下で、第3の機能ドメインによって分離される場合、作動可能に連結されたと考えてもよい。
【0055】
標的ドメインは、例えば、腫瘍細胞、がん間質における標的、又は固定化されたB7H3細胞などのB7H3標的に選択的に結合する任意の部分を含み得る。したがって、標的ドメインは、例えば、抗B7H3抗体を含み得る。いくつかの実施形態では、抗B7H3抗体は、本明細書で詳述されるような抗B7H3ポリペプチドを含み得る。1つの例示的な実施形態では、抗B7H3ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数を含み得る。いくつかの実施形態では、抗B7H3タンパク質は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のCDRの2つ又は3つ全てを含み得る。いくつかの実施形態では、抗B7H3タンパク質は、配列番号1、配列番号2、又はその変異体(例えば、配列番号3)を含み得る。好適な代替的な変異体が、本明細書に記載される。
【0056】
NK結合ドメインは、NK細胞に結合し、且つ/若しくはそれを活性化する任意の部分、及び/又はNK細胞の阻害を遮断する任意の部分を含み得る。いくつかの実施形態では、NK結合ドメインは、NK細胞の表面の成分に選択的に結合する抗体を含み得る。他の実施形態では、NK結合ドメインは、NK細胞の表面の成分に選択的に結合するリガンド又は小分子を含み得る。したがって、簡潔のため、NK細胞の表面の成分に選択的に結合する抗体に関しては、記載された結合特性を示す任意の抗体断片を含む。同様に、NK細胞の表面の成分に選択的に結合するリガンドに関しては、記載された結合特性を示すリガンドの任意の断片を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、NK結合ドメインは、NK細胞の表面に少なくとも部分的に位置する受容体に選択的に結合し得る。特定の実施形態では、NK結合ドメインは、NK細胞に結合し、それによりNK細胞を標的ドメインが選択的に結合する標的との空間的近接状態にする機能を発揮し得る。しかし、特定の実施形態では、NK結合ドメインは、NK細胞を活性化する受容体に選択的に結合し、それ故、活性化機能も有し得る。上記の通り、CD16受容体の活性化は、抗体依存性細胞傷害を誘発し得る。したがって、特定の実施形態では、NK結合ドメインは、CD16受容体に選択的に結合するのに有効な抗CD16受容体抗体の少なくとも一部を含み得る。他の実施形態では、NKエンゲージャー細胞ドメインは、NK細胞を阻害する機構を妨害し得る。かかる実施形態では、NKエンゲージャードメインは、例えば、抗PD1/PDL1、抗NKG2A、抗TIGIT、抗キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、及び/又は任意の他の阻害を遮断するドメインを含み得る。
【0058】
NK結合ドメインを、所望される程度のNK選択性、ひいては所望される免疫結合特性を有するように設計することができる。例えば、CD16は、FcγRIIIa(CD16a)及びFcγRIIIb(CD16b)のFc受容体として同定されている。これらの受容体は、IgG抗体のFc部分に結合し、次いで、NK細胞における抗体依存性細胞傷害が活性化される。抗CD16抗体は、NK細胞に選択的に結合するが、好中球にも結合し得る。抗CD16a抗体は、NK細胞に選択的に結合するが、好中球に結合しない。抗CD16a抗体を含むNK結合ドメインを含む三重特異性キラーエンゲージャー化合物は、NK細胞に結合し得るが、好中球に結合し得ない。したがって、NK細胞に結合しても、好中球に結合しないことが望まれる場合の状況では、三重特異性キラーエンゲージャー化合物のNK結合ドメインを、抗CD16a抗体を含むように設計することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、NK細胞結合ドメインは、動物ナノボディに由来するヒト化CD16エンゲージャーの使用を含み得る。scFvがリンカーによって連結された重可変鎖成分及び軽可変鎖成分を有する一方で、ナノボディは、標的に特異的に結合する能力がある、単一の単量体可変鎖、即ち、可変重鎖又は可変軽鎖からなる。単一ドメイン抗体(sdAb)は、例えば、ラクダ科動物(例えば、リャマ又はラクダ)又は軟骨魚などの任意の好適な動物の抗体に由来してもよい。単一ドメイン抗体は、より大きい抗体断片と比較して、優位な物理的安定性、深溝に結合する能力、及び増加した産生収率を提供し得る。
【0060】
1つの例示的な実施形態では、sdAbベースのNKエンゲージャー分子は、EF91と称される、リャマナノボディ(GeneBank配列EF561291;Behar et al.,2008.Protein Eng Des Sel.21(1):1-10)に由来するヒト化CD16ナノボディを含み得る。該分子の機能性を確認したとき、CDRをヒト化ラクダ科動物スキャフォールドにクローン化し(Vincke et al.,2009.J Biol Chem.284(5):3273-3284)、CD16エンゲージャー(配列番号19)をヒト化した。三重特異性キラーエンゲージャー化合物のNK結合ドメインにおけるヒト化ラクダ科動物sdAbの使用により、薬物収率が増加し、安定性が増加し、且つ/又はNK細胞媒介性の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の有効性が増加し得る。
【0061】
NK結合ドメインは、NK結合ドメインが抗CD16 sdAb又は抗CD16 scFvを含む場合の様々な実施形態との関連で本明細書に記載される一方で、CD16に選択的に結合する任意の抗体又は他のリガンドを含み得る。さらに、NK結合ドメインは、例えば、細胞傷害性受容体2B4、低親和性Fc受容体CD16、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、CD2、NKG2A、TIGIT、NKG2C、LIR-1、及び/又はDNAM-1などの任意のNK細胞受容体に選択的に結合する抗体又はリガンドを含み得る。
【0062】
一態様では、免疫細胞は、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞である。別の態様では、免疫細胞は、NK細胞であり;且つ免疫細胞結合ドメインは、CD16に特異的に結合するリガンド又は抗体を含む。いくつかの態様では、CD16に特異的に結合する抗体は、scFv、F(ab)、Fab、又は単一ドメイン抗体を含む。
【0063】
上でより詳細に説明された通り、「抗体」は、一般に、免疫グロブリン又はその断片を指し、それ故、モノクローナル抗体、その断片(例えば、scFv、Fab、F(ab’)、Fv、sdAb、又は抗体の他の修飾形態であって、抗体又はその断片のヒト化形態を含むもの)を包含する。したがって、簡潔のため、B7H3に選択的に結合する抗体に関しては、記載された結合特性を示す、任意の抗体又は抗体断片を含む。同様に、CD16(又は任意の他のNK細胞受容体)に選択的に結合する抗体に関しては、記載された結合特性を示す、任意の抗体又は抗体断片を含む。いくつかの態様では、免疫細胞結合ドメインは、例えば、配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体断片などの、CD16に特異的に結合するリガンド又は抗体を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、NK結合ドメイン及び標的ドメインは、配列番号12~18で示されるリンカーのいずれか1つを用いて連結され得る。特定の実施形態では、二重特異性抗B7H3化合物は、配列番号20又は配列番号21のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗B7H3化合物は、リーダー配列の欠失、VDEリンカー及びHIDタグの欠失、又はリーダー配列及びVDEリンカー及びHISタグのあらゆる欠失を有する、配列番号20又は配列番号21のアミノ酸配列を含み得る。
【0065】
別の態様では、多重特異性抗B7H3化合物は、免疫細胞活性化ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、NK細胞で有り得て、免疫細胞活性化ドメインは、NK活性化サイトカイン又はその機能部分を含む。
【0066】
NK活性化ドメインは、「免疫細胞活性化ドメイン」、例えば、NK細胞を活性化し、NK細胞の維持を促進し、又はその他としてNK細胞活性を促進するアミノ酸配列を含み得る。例えば、NK細胞は、限定はされないが、NK細胞の恒常性、増殖、生存、活性化、及び/又は発生に関与する、IL-15を含む種々のサイトカインに応答性がある。IL-15及びIL-2は、IL-2/IL-15Rβ(CD122)及び共通ガンマ鎖(CD132)を含む、いくつかのシグナル伝達成分を共有する。IL-2と異なり、IL-15は、Tregを刺激せず、NK細胞活性化を可能にする一方で、免疫応答のTreg阻害をバイパスする。NK細胞の恒常性及び増殖を促進する以外に、IL-15は、移植後の状況下で生じ得る、NK細胞の機能的欠陥を救出し得る。IL-15はまた、CD8T細胞の機能を刺激し、その免疫療法の能力をさらに増強し得る。さらに、前臨床試験に基づき、IL-15の毒性特性は、低用量のIL-2より好ましいことがある。
【0067】
したがって、NK活性化ドメインは、NK細胞を活性化及び/又は維持し得る、1つ又は複数のサイトカインであり得て、又はそれらに由来し得る。本明細書で用いられるとき、「~に由来する」という用語は、活性を活性化及び/又は維持するNK細胞を提供するのに十分であるサイトカイン(例えば、IL-15)のアミノ酸断片を指す。2つ以上のNK活性化ドメインを含む実施形態では、NK活性化ドメインは、シリーズで又は任意の他の組み合わせで提供されてもよい。加えて、サイトカインベースの各NK活性化ドメインは、三重特異性キラーエンゲージャー化合物中に含まれる他のNK活性化ドメインの性質と独立して、サイトカインの全アミノ酸配列を含み得る、又はアミノ酸断片であってもよい。NK活性化ドメインのベースであり得る例示的なサイトカインは、例えば、IL-15、IL-18、IL-12、及びIL-21を含む。したがって、三重特異性キラーエンゲージャー化合物は、NK活性化ドメインがIL-15に由来する場合の例示的なモデルの実施形態と関連して本明細書中で詳述される一方で、任意の好適なサイトカインである、又はそれに由来するNK活性化ドメインを用いて設計されてもよい。
【0068】
この説明を簡潔にするため、NK活性化ドメインに関しては、それのベースであるサイトカインを同定することにより、サイトカインの全アミノ酸配列、サイトカインの任意の好適なアミノ酸断片、及び/又は1つ若しくは複数のアミノ酸置換を含むサイトカインの修飾バージョンのいずれも含む。したがって、「IL-15」NK活性化ドメインに関しては、IL-15の全アミノ酸配列を含むNK活性化ドメイン、IL-15の断片(例えば、配列番号11)を含むNK活性化ドメイン、その機能的変異体、又は野生型IL-15アミノ酸配列と比較してアミノ酸置換を含むNK活性化ドメインを含む。例えば、NK活性化ドメインは、配列番号11の72位でNからD又はNからAのアミノ酸置換を含む、IL-15の断片を含み得る。配列番号11の72位に関しては、単に、NK活性化ドメインとして使用されてもよいIL-15の特定断片と無関係の、アミノ酸置換の位置を指す。したがって、NK活性化ドメインは、配列番号11で示される断片以外のIL-15の断片を含み得て、その断片は、配列番号11の72位に対応する代替的なIL-15断片の位置に、NからD又はNからAのアミノ酸置換を有し得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、三重特異性抗B7H3化合物は、配列番号12~18に示されるリンカーの1つ若しくは複数又は配列番号12~18に示されるリンカーの組み合わせによって連結されるドメインを含む。具体的な例示的実施形態では、NK結合ドメインは、配列番号14のリンカーを用いてNK活性化ドメインに連結される一方で、NK活性化ドメインは、配列番号15のリンカーを用いて標的ドメインに連結される(例えば、配列番号22~25)。
【0070】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の化合物の1つである、抗B7H3化合物の任意の実施形態をコードする単離された核酸配列について記載する。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、配列番号26~33のいずれか1つの核酸配列である。任意の抗B7H3ポリペプチド、又は抗B7H3ポリペプチドを含む多重特異性抗B7H3化合物のアミノ酸配列を仮定すると、当業者は、従来からの通常の方法を用いて、そのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全範囲を決定することができる。
【0071】
本明細書で用いられるとき、「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを指す。核酸は、限定はされないが、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、iRNA、miRNA、tRNA、ncRNA、rRNA、並びにアプタマー、プラスミド、抗センスDNA鎖、shRNA、リボザイム、核酸コンジュゲート、及びオリゴヌクレオチドなどの組換え的に作製され、また化学的に合成された分子を含む。核酸は、一本鎖、二本鎖、線状、又は共有結合による環状閉鎖分子であってもよい。核酸は、単離され得る。「単離された核酸」という用語は、核酸が、(i)インビトロで、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して増幅され、(ii)クローニングによって組換え的に生成され、(iii)例えば、ゲル電気泳動による切断及び分離によって精製され、(iv)例えば、化学合成によって合成され、又は(vi)サンプルから抽出されたことを意味する。核酸は、細胞に導入され、即ち、トランスフェクトされてもよい。RNAを用いて、細胞をトランスフェクトするとき、RNAは、修飾、キャッピング、又はポリアデニル化を安定化することによって修飾されてもよい。
【0072】
本明細書で用いられるとき、「増幅DNA」又は「PCR産物」は、定義されたサイズのDNAの増幅された断片を指す。PCR産物を検出するため、様々な技術が利用可能であり、当該技術分野で周知である。PCR産物の検出方法として、限定はされないが、アガロース若しくはポリアクリルアミドゲルを使用し、エチジウムブロマイド染色(DNAインターカラント)を添加するゲル電気泳動、標識プローブ(放射性若しくは非放射性標識、サザンブロッティング)、標識デオキシリボヌクレオチド(放射性若しくは非放射性標識の直接組み込みのため)又は増幅されたPCR産物の直接可視化のための銀染色;アガロース若しくはポリアクリルアミドゲル若しくは高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)に依存する、制限エンドヌクレアーゼ消化;特異的標識プローブ(放射性若しくは非放射性標識)に対する増幅DNAのハイブリダイゼーションを使用するドットブロット;紫外線検出を用いる高圧液体クロマトグラフィー;電位で開始する化学反応/光子検出とカップリングされた電気化学発光;及び目的のDNA断片を有するヌクレオチドの正確な順序を決定するための放射性若しくは蛍光標識デオキシリボヌクレオチドを用いる直接配列決定、オリゴライゲーションアッセイ(OLA)、PCR、qPCR、DNA配列決定、蛍光、ゲル電気泳動、磁気ビーズ、対立遺伝子特異的プライマー伸長(ASPE)及び/又は直接ハイブリダイゼーション、が挙げられる。
【0073】
一般に、核酸は、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Fourth Edition),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Woodbury,NY 2,028 pages(2012)によって記載された技術;又は米国特許第7,957,913号明細書;米国特許第7,776,616号明細書;米国特許第5,234,809号明細書;米国特許出願公開第2010/0285578号明細書;及び米国特許出願公開第2002/0190663号明細書に記載のような技術などの種々の技術によって、抽出、単離、増幅、又は分析され得る。核酸分析の例として、限定はされないが、配列決定及びDNA-タンパク質相互作用が挙げられる。配列決定は、当該技術分野で公知の任意の方法を通じてもよい。DNA配列決定技術は、標識ターミネーター又はプライマー及びスラブ内又はキャピラリー内のゲル分離を用いる古典的なジデオキシ配列決定反応(サンガー法)、並びに、可逆的に終結される標識ヌクレオチドを用いる合成による配列決定、パイロシークエンシング、454シークエンシング、イルミナ/ソレクサ配列決定、標識オリゴヌクレオチドプローブのライブラリーとの対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、標識クローンのライブラリーとの対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションとその後のライゲーションを用いる合成による配列決定、重合ステップ中の標識ヌクレオチドの組み込みのリアルタイムモニタリング、ポロニーシークエンシング、及びSOLiDシークエンシングなどの次世代配列決定法を含む。分離された分子は、ポリメラーゼ又はリガーゼを用いる逐次又は単一伸長反応によって、並びにプローブのライブラリーとの単一又は逐次ディファレンシャルハイブリダイゼーションによって配列決定されてもよい。
【0074】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の核酸配列のいずれかによってコードされるタンパク質について記載する。いくつかの実施形態では、該タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号9、配列番号10、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25のアミノ酸配列、又はそれらと90%若しくはそれ以上のアミノ酸同一性を有する任意のタンパク質を含むアミノ酸配列を有し得る。
【0075】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の単離された核酸配列及び/又はタンパク質のいずれかを含む宿主細胞について記載する。
【0076】
本発明の核酸構築物を、改変対象の宿主細胞に導入することで、細胞内でのキメラタンパク質の発現を可能にし、それにより遺伝子改変細胞を作製することができる。種々の方法が、当該技術分野で公知であり、核酸の細胞への導入に適し、それはウイルス及び非ウイルス媒介技術を含む。典型的な非ウイルス媒介技術の例として、限定はされないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム媒介導入、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、熱ショック、マグネトフェクション、リポソーム媒介導入、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル媒介導入(ナノ粒子)、カチオン性ポリマー媒介導入(DEAE-デキストラン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール(PEG)など)又は細胞融合が挙げられる。他のトランスフェクション方法は、リポフェクタミン(Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)、HILYMAX(Dojindo Molecular Technologies,Inc.,Rockville,MD)、FUGENE(Promega Corp.,Madison,WI)、JETPEI(Polyplus Transfection、Illkirch,France)、EFFECTENE(Qiagen,Hilden,Germany)及びDreamFect(OZ Biosciences,Inc USA,San Diego,CA)などの専用のトランスフェクション試薬を含む。
【0077】
本明細書に記載の核酸構築物を、改変対象の宿主細胞に導入することで、該核酸によってコードされるタンパク質の細胞内での発現を可能にできる。種々の宿主細胞が、当該技術分野で公知であり、タンパク質発現に適する。トランスフェクション及びタンパク質発現に使用される典型的な細胞の例として、限定はされないが、細菌細胞、真核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞、例えば、大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ショウジョウバエ(Drosophila)S2、スポドプテラ(Spodoptera)SJ9、CHO、COS(例えば、COS-7)、3T3-F442A、HeLa、HUVEC、HUAEC、NIH3T3、Jurkat、293、293H、又は293Fなどが挙げられる。
【0078】
いくつかの態様では、宿主細胞は、T細胞、NK細胞、又はマクロファージである。
【0079】
さらなる態様では、本開示は、本明細書に記載の多重特異性抗B7H3化合物のいずれか1つ及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物について記載する。
【0080】
本明細書に記載のような三重特異性キラーエンゲージャー化合物などの多重特異性抗B7H3化合物は、薬学的に許容できる担体とともに製剤化されてもよい。本明細書で用いられるとき、「担体」は、任意の溶媒、分散媒、媒体、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤、及び/又は抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。医薬活性物質におけるそのような媒体及び/又は薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性成分に適合しない限りにおいて、治療組成物におけるその使用は検討がなされる。追加的な活性成分は、組成物に組み込むことができる。本明細書で用いられるとき、「薬学的に許容できる」は、生物学的に又はそれ以外の理由で不適当ではない材料を指し、即ち、材料は、三重特異性キラーエンゲージャー化合物とともに、望ましくない生物学的効果を全く引き起こさない、又はそれが含有される医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用しないという条件で、個体に投与されてもよい。
【0081】
したがって、三重特異性キラーエンゲージャー化合物などの多重特異性化合物は、医薬組成物に製剤化されてもよい。医薬組成物は、好ましい投与経路に適応した種々の形態で製剤化されてもよい。したがって、組成物は、例えば、経口、非経口(例えば、皮内、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内など)、又は局所(例えば、鼻腔内、肺内、乳房内、腟内、子宮内、皮内、経皮、直腸など)を含む既知の経路を介して投与され得る。医薬組成物は、粘膜表面に、(例えば、噴霧剤又はエアロゾルにより)例えば、鼻又は呼吸粘膜への投与により、投与され得る。組成物はまた、徐放又は遅延放出を介して投与され得る。
【0082】
したがって、三重特異性キラーエンゲージャー化合物などの多重特異性化合物は、限定はされないが、溶液、懸濁液、エマルジョン、噴霧剤、エアロゾル、又は混合物の任意の形態を含む、任意の好適な形態で提供されてもよい。組成物は、任意の薬学的に許容できる賦形剤、担体、又は媒体を有する製剤で送達されてもよい。例えば、製剤は、例えば、クリーム、軟膏剤、エアロゾル製剤、非エアロゾルスプレー、ゲル、ローションなどの従来の局所剤形で送達されてもよい。製剤は、例えば、アジュバント、皮膚透過増強剤、着色剤、芳香剤、香味剤、保湿剤、増粘剤などを含む1つ又は複数の添加剤をさらに含んでもよい。
【0083】
製剤は、便宜上、単位剤形で提示されてもよく、薬学技術分野で周知の方法によって調製されてもよい。薬学的に許容できる担体を有する組成物を調製する方法は、多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物を、1つ又は複数の付属成分を構成する担体と会合状態にするステップを含む。一般に、製剤は、均一且つ/又は緊密に、活性分子を、液体担体、微粉化された固体担体、又は両方と会合状態にする、そして次に、必要があれば、生成物を所望される製剤に形づくることによって、調製されてもよい。
【0084】
多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物の投与量は、限定はされないが、使用されている特定の三重特異性キラーエンゲージャー化合物、対象の体重、体調、及び/若しくは年齢、並びに/又は投与経路を含む、様々な要素に応じて変化し得る。したがって、所与の単位剤形に含まれる三重特異性キラーエンゲージャー化合物の絶対重量は、大きく変動する可能性があり、対象の種、年齢、体重及び体調、並びに/又は投与方法などの要素に依存する。したがって、一般に、全ての考えられる適用にとって有効な多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物の量を構成する量を記載することは現実的でない。しかし、当業者は、そのような要素を十分に考慮して、適量を容易に決定することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、約100ng/kg~約50mg/kgの用量を対象に提供するのに十分な多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物を投与することを含み得るが、いくつかの実施形態では、本方法は、多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物を、この範囲外の用量で投与することによって実施されてもよい。これらの実施形態の一部では、本方法は、約10μg/kg~約5mg/kgの用量、例えば、約100μg/kg~約1mg/kgの用量を対象に提供するのに十分な多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物を投与することを含む。
【0086】
或いは、該用量は、治療過程の開始直前に得られる実体重を用いて計算されてもよい。このようにして計算される用量の場合、体表面積(m)は、治療過程の開始前、デュボワ法:m=(体重kg0.425×身長cm0.725)×0.007184を用いて計算される。
【0087】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、約0.01mg/m~約10mg/mの用量を提供するのに十分な多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物を投与することを含み得る。
【0088】
別の態様では、本開示は、多重特異性化合物であって、細胞のNK媒介殺傷を誘導するため、有効量で、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質の1つを含む標的ドメイン;及び抗B7H3タンパク質に作動可能に連結されたNK結合ドメインを含む多重特異性化合物を対象に投与することを含む方法について記載する。
【0089】
別の態様では、本開示は、インビボでNK細胞の拡大を刺激するための方法であって、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質の1つを含む標的ドメイン;及び抗B7H3タンパク質に作動可能に連結されたNK結合ドメインを含む多重特異性化合物を有効量で対象に投与することを含む、方法について記載する。
【0090】
別の態様では、本開示は、対象における標的細胞を殺傷する方法について記載する。一般に、本方法は、標的細胞のNK媒介殺傷を誘導するため、有効量で、抗B7H3多重特異性化合物を対象に投与することを含む。「治療する(Treat)」又はその変形は、病態に関連する症状又は徴候に対して、ある程度まで、低減し、進行を制限し、寛解させ、又は回復させることを指す。本明細書で用いられるとき、「寛解させる」は、特定の病態を特徴とする症状又は臨床徴候の範囲、重症度、頻度、及び/又は可能性におけるあらゆる減少を指し;「症状」は、疾患又は対象の病態の任意の主観的証拠を指し;また「徴候」又は「臨床徴候」は、対象以外の者によって認めることができる、特定の病態に関連する客観的な身体所見を指す。
【0091】
「治療」は、治療的又は予防的であってもよい。「治療的」及びその変形は、病態に関連する1つ又は複数の既存の症状又は臨床徴候を寛解する治療を指す。「予防的」及びその変形は、病態の症状又は臨床徴候の発現及び/又は出現をある程度まで制限する治療を指す。一般に、「治療的」処置は、対象において病態が現れた後に開始される一方で、「予防的」処置は、対象において病態が現れる前に開始される。したがって、特定の実施形態では、本方法は、病態を発現するリスクがある対象の予防的処置を含み得る。「リスクがある」は、記載されたリスクを実際に有することも又は有しないこともある対象を指す。したがって、例えば、特定の病態を発現する「リスクがある」対象は、特定の病態を有する又は発現するリスクが増加した、1つ又は複数の兆候を欠いている個体と比較して、1つ又は複数の兆候を有する対象であり、対象が病態を有するか又は発現する任意の症状又は臨床徴候を現すか否かと無関係である。病態の例示的な兆候は、例えば、遺伝的素因、祖先、年齢、性別、地理的位置、ライフスタイル、又は病歴を含み得る。治療はまた、症状が回復した後、例えば、その再発を予防するか又は遅延させるため、継続されてもよい。
【0092】
いくつかの場合、治療は、抗B7H3多重特異性化合物がインビボで内因性NK細胞を刺激し得るように、抗B7H3多重特異性化合物を対象に投与することを含み得る。抗B7H3多重特異性化合物をインビボの一部として使用することにより、NK細胞は、抗原特異的になり、抗原特異的であり得る、同時共刺激、生存の増強、及び拡大を伴い得る。他の場合、抗B7H3多重特異性化合物は、NK細胞の養子移植療法に対するアジュバントとして、インビトロで使用することができる。「~の投与」及び/又は「投与する」という用語は、医薬組成物を治療有効量で治療を必要とする対象に提供することを意味するように理解されるべきである。投与経路は、経腸、局所、又は非経口であり得る。そのようなものとして、投与経路は、限定はされないが、皮内、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、経皮、経気管、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、胸骨内、経口、舌下頬側、直腸、膣、鼻眼投与とともに、注入、吸入、及び噴霧を含む。「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、本明細書で用いられるとき、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味する。
【0093】
したがって、抗B7H3多重特異性化合物は、対象が病態の症状又は臨床徴候を最初に示す前、間、又は後に投与されてもよい。対象が病態に関連する症状又は臨床徴候を最初に示す前に開始される治療は、抗B7H3多重特異性化合物が投与されない対象と比較して、対象が病態の臨床的証拠を経験する可能性の低下、病態の症状及び/若しくは臨床徴候の重症度低下、並びに/又は病態の完全な回復を生じ得る。対象が病態に関連する症状又は臨床徴候を最初に示した後に開始される治療は、該組成物が投与されない対象と比較して、病態の症状及び/若しくは臨床徴候の重症度低下、並びに/又は病態の完全な回復を生じ得る。
【0094】
抗B7H3多重特異性化合物は、適切な標的細胞集団に選択的に結合する標的ドメインを有する、上記の抗B7H3多重特異性化合物の任意の実施形態であり得る。いくつかの場合、標的細胞が腫瘍細胞を含み得ることで、本方法は、腫瘍細胞に関連するがんを治療することを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、腫瘍の少なくとも1つの症状又は臨床徴候を寛解させることを含み得る。
【0095】
標的細胞が腫瘍細胞を含む実施形態では、本方法は、腫瘍を外科的に切除すること、及び/又は化学(例えば、化学療法)及び/又は放射線療法を通じて腫瘍のサイズを低減することをさらに含み得る。治療可能な例示的な腫瘍は、前立腺がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、メラノーマ、腎がん(kidney cancer)、腎がん(renal cancer)、口腔がん、咽頭がん、膵臓がん、子宮がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頚部がん、子宮頸がん、卵巣がん及び/又は造血がんに関連する腫瘍を含む。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態では、対象の治療は、がんを有する、又は有するリスクがある対象を含む。一般に、本方法は、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質の1つを含む標的ドメイン及び抗B7H3タンパク質に作動可能に連結されたNK結合ドメインを含む多重特異性化合物を有効量で対象に投与することを含む。本明細書で用いられるとき、「がん」という用語は、1つの部位(原発性部位)で開始する、異常な制御されない細胞増殖であって、他の部位(二次部位、転移)に浸潤及び伝播し、良性腫瘍からがん(悪性腫瘍)に分化する能力を有する場合を特徴とする疾患のグループを指す。実質的にあらゆる臓器が罹患する可能性があり、これは100を超えるタイプのがんがヒトに罹患し得ることを意味する。がんは、遺伝的素因、ウイルス感染、電離放射線への曝露、環境汚染物質への曝露、タバコ及び/若しくはアルコール使用、肥満、質の悪い食事、身体活動性の欠如、又はこれらの任意の組み合わせを含む、多くの原因に起因し得る。本明細書で用いられるとき、「新生物」又は「腫瘍」(及びその文法的変形)は、組織の新しい異常な成長を意味し、良性又は癌性であり得る。関連の態様では、新生物は、限定はされないが、様々ながんを含む、腫瘍性疾患又は障害を意味している。例えば、そのようながんは、前立腺がん、膵がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、肝がん、腎がん、肺がん、精巣がん、乳がん、卵巣がん、脳がん、及び頭頚部がん、メラノーマ、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫などを含み得る。
【0097】
国立癌研究所(national cancer institute)によって類型化された例示的ながんは、急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、小児;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質がん;副腎皮質がん、小児;エイズ関連リンパ腫;エイズ関連悪性腫瘍;肛門がん;星状細胞腫、小児小脳;星状細胞腫、小児大脳;胆管がん、肝外;膀胱がん;膀胱がん、小児;骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;脳腫瘍、上衣腫、小児;脳腫瘍、髄芽腫、小児;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;脳腫瘍、視覚経路及び視床下部神経膠腫、小児;脳腫瘍、小児(その他);乳がん;乳がん及び妊娠;乳がん、小児;乳がん、男性;気管支腺腫/カルチノイド、小児:カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、胃腸;がん、副腎皮質;がん、島細胞;未知原発性がん;中枢神経系リンパ腫、原発性;小脳星状細胞腫、小児;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;子宮頸がん;小児がん;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱鞘の明細胞肉腫;結腸がん;結腸直腸がん、小児;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜がん;上衣腫、小児;上皮がん、卵巣;食道がん;食道がん、小児;腫瘍のユーイングファミリー;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管がん;眼がん、眼内黒色腫;眼がん、網膜芽細胞腫;胆嚢がん;胃(胃)がん;胃(胃)がん、小児;胃腸カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛性腫瘍;神経膠腫.小児脳幹;神経膠腫.小児視覚経路及び視床下部;ヘアリー細胞白血病;頭頚部がん;肝細胞(肝臓)がん、成人(原発性);肝細胞(肝臓)がん、小児(原発性);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭がん;視床下部及び視覚経路神経膠腫、小児;眼内黒色腫;島細胞がん(内分泌膵臓);カポジ肉腫;腎がん;喉頭がん;喉頭がん、小児;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、ヘアリー細胞;唇及び口腔がん;肝がん、成人(原発性);肝がん、小児(原発性);肺がん、非小細胞;肺がん、小細胞;リンパ芽球性白血病、成人急性;リンパ芽球性白血病、小児急性;リンパ球性白血病、慢性;リンパ腫、エイズ関連;リンパ腫、中枢神経系(原発性);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン;小児;リンパ腫、ホジキン、妊娠中;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、非ホジキン、妊娠中;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンストレーム;男性乳がん;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、小児;悪性胸腺腫;髄芽腫、小児;メラノーマ;メラノーマ、眼内;メルケル細胞がん;中皮腫、悪性;潜在性原発性の転移性扁平上皮頸部がん;多発性内分泌腫瘍症候群、小児;多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉症;骨髄形成異常症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多重;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔・副鼻腔がん;鼻咽頭がん;鼻咽頭がん、小児;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児;非ホジキンリンパ腫、妊娠中;非小細胞肺がん;口腔がん、小児;口腔・口唇がん;中咽頭がん;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣がん、小児;卵巣上皮がん;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵がん;膵がん、小児、膵がん、島細胞;副鼻腔・鼻腔がん;副甲状腺がん;陰茎がん;褐色細胞腫;松果体及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽細胞腫;妊娠中の乳がん;妊娠中のホジキンリンパ腫;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性肝がん、成人;原発性肝がん、小児;前立腺がん;直腸がん;腎臓細胞(腎臓)がん;腎細胞がん、小児;腎盂及び尿管、移行細胞がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺がん;唾液腺がん、小児;肉腫、腫瘍のユーイングファミリー;肉腫、カポジ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、軟部組織、成人;肉腫、軟部組織、小児;セザリー症候群;皮膚がん;皮膚がん、小児;皮膚がん(メラノーマ);皮膚がん、メルケル細胞;小細胞肺がん;小腸がん;軟部組織肉腫、成人;軟部組織肉腫、小児;潜在性原発性の扁平上皮頸部がん、転移性;胃(胃)がん;胃(胃)がん、小児;テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚;睾丸がん;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状腺がん;甲状腺がん、小児;腎盂及び尿管の移行細胞がん;絨毛性腫瘍、妊娠中;原発不明部位のがん、小児;小児の希少がん;尿管及び腎盂、移行細胞がん;尿道がん;子宮肉腫;膣がん;視覚経路及び視床下部の神経膠腫、小児;外陰部がん;ワルデンストレームマクログロブリン血症;並びにウィルムス腫瘍を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、がんは、前立腺がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、膀胱がん、メラノーマ、腎がん(kidney cancer)、腎がん(renal cancer)、口腔がん、咽頭がん、膵臓がん、子宮がん、甲状腺がん、皮膚がん、頭頚部がん、子宮頸がん、卵巣がん、及び/又は造血がんを含み、又はそれらに関与し得る。
【0099】
一態様では、多重特異性化合物は、化学療法、腫瘍の外科的切除、又は放射線療法の前に、それと同時に、又はその後に投与される。
【0100】
いくつかの実施形態では、多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物は、例えば、1週あたり単回用量から複数回用量にかけて投与されてもよいが、いくつかの実施形態では、本方法は、この範囲外の頻度で三重特異性キラーエンゲージャー化合物を投与することによって実施され得る。特定の実施形態では、多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物は、1月あたり約1回から1週あたり約5回にかけて投与されてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つ又は複数の追加的な治療薬を投与することをさらに含む。1つ又は複数の追加的な治療薬は、多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物の投与の前、後、及び/又はそれと同時に投与されてもよい。多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物及び追加的な治療薬は、共投与されてもよい。本明細書で用いられるとき、「共投与される」は、組み合わせの2つ以上の成分が、組み合わせの治療的又は予防的効果が単独で投与されるいずれかの成分の治療的又は予防的効果を上回り得るように投与されることを指す。2つの成分は、同時に又は逐次的に共投与されてもよい。同時に共投与される成分は、1つ又は複数の医薬組成物で提供されてもよい。2つ以上の成分の逐次的共投与は、各成分が同時に治療部位に存在し得るように成分が投与される場合を含む。或いは、2つの成分の逐次的共投与は、少なくとも1つの成分が治療部位から排除されているが、該成分を投与する少なくとも1つの細胞効果(例えば、サイトカイン産生、特定の細胞集団の活性化など)が、1つ又は複数の追加的成分が治療部位に投与されるまで治療部位で持続する場合を含み得る。したがって、共投与される組み合わせは、特定の環境下で、互いを有する化学的混合物中に決して存在しない成分を含み得る。他の実施形態では、多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物及び追加的な治療薬は、混合物又はカクテルの一部として投与されてもよい。いくつかの態様では、多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物の投与は、他の1つ又は複数の治療薬単独の投与と比較されるとき、より低い用量での他の治療的様式の有効性を許容し、それにより、より高い用量の他の1つ又は複数の治療薬が投与されるときに認められる毒性の可能性、重症度、及び/又は範囲を低減し得る。
【0102】
「化学療法剤」という用語は、本明細書で用いられるとき、がんを治療するのに使用される任意の治療薬を指す。化学療法剤の例として、限定はされないが、アクチノマイシン、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パニツママブ(panitumamab)、Erbitux(商標)(セツキシマブ)、マツズマブ、IMC-IIF8、TheraCIM hR3、デノスマブ、アバスチン(商標)(ベバシズマブ)、Humira(商標)(アダリムマブ)、ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)、レミケード(商標)(インフリキシマブ)、リツキシマブ、Synagis(商標)(パリビズマブ)、Mylotarg(商標)(ゲムツズマブoxogamicin)、Raptiva(商標)(エファリズマブ)、Tysabri(商標)(ナタリズマブ)、Zenapax(商標)(ダクリキシマブ(dacliximab))、NeutroSpec(商標)(テクネチウム(99mTc)ファノレソマブ)、トシリズマブ、ProstaScint(商標)(インジウム-Ill標識カプロマブペンデチド)、Bexxar(商標)(トシツモマブ)、Zevalin(商標)(イットリウム90にコンジュゲートされたイブリツモマブチウキセタン(IDEC-Y2B8))、Xolair(商標)(オマリズマブ)、MabThera(商標)(リツキシマブ)、ReoPro(商標)(アブシキシマブ)、MabCampath(商標)(アレムツズマブ)、Simulect(商標)(バシリキシマブ)、LeukoScan(商標)(スレソマブ)、CEA-Scan(商標)(アルシツモマブ)、Verluma(商標)(ノフェツモマブ)、Panorex(商標)(エドレコロマブ)、アレムツズマブ、CDP870、ナタリズマブGilotrif(商標)(アファチニブ)、Lynparza(商標)(オラパリブ)、パージェタ(商標)(ペルツズマブ)、Otdivo(商標)(ニボルマブ)、Bosulif(商標)(ボスチニブ)、Cabometyx(商標)(カボザンチニブ)、Ogivri(商標)(トラスツズマブ-dkst)、スーテント(商標)(リンゴ酸スニチニブ)、Adcetris(商標)(ブレンツキシマブベドチン)、アレセンサ(商標)(アレクチニブ)、Calquence(商標)(アカラブルチニブ)、イエスカルタ(商標)(シロロイセル)、Verzenio(商標)(アベマシクリブ)、キイトルーダ(商標)(ペンブロリズマブ)、Aliqopa(商標)(コパンリシブ)、Nerlynx(商標)(ネラチニブ)、イミフィンジ(商標)(デュルバルマブ)、Darzalex(商標)(ダラツムマブ)、テセントリク(商標)(アテゾリズマブ)、及びTarceva(商標)(エルロチニブ)が挙げられる。免疫療法剤の例として、限定はされないが、インターロイキン(Il-2、Il-7、Il-12)、サイトカイン(インターフェロン、G-CSF、イミキモド)、ケモカイン(CCL3、CCl26、CXCL7)、免疫調節イミド薬(サリドマイド及びその類似体)が挙げられる。
【0103】
いくつかの態様では、化学療法は、アルトレタミン、アムサクリン、L-アスパラギナーゼ、コラスパーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、サイトホスファン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルオロウラシル、フルダラビン、ホテムスチン、ガンシクロビル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファマイド(ifosfamaide)、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、マイトマイシンC、ニムスチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、プロカルバジン、ラルチトレキセド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンからなる群から選択される。
【0104】
いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載のような十分な多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物を投与することを含み得て、少なくとも1つの追加的な治療薬を投与することは、治療的相乗作用を示す。本発明の方法のいくつかの態様では、本明細書に記載のような多重特異性化合物又は三重特異性キラーエンゲージャー化合物と追加的な治療薬の双方を投与した後に認められる治療に対する応答についての測定は、多重特異性化合物若しくは三重特異性キラーエンゲージャー化合物又は追加的な治療薬単独のいずれかを投与した後に認められる治療に対する応答の同じ測定よりも改善される。
【0105】
「対象」という用語は、本明細書で用いられるとき、本方法が実施される任意の個体又は対象を指す。多くの実施形態では、対象は、ヒトであるが、対象は、任意の非ヒト動物であってもよい。好適な非ヒト動物として、限定はされないが、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、又はモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、家畜(雌ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ニワトリなどを含む)、又は霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、又はゴリラを含む)などの脊椎動物が挙げられる。
【0106】
この態様のいくつかの実施形態では、抗B7H3多重特異性化合物は、NK結合ドメインに作動可能に連結された、IL-15又はその機能部分を含む免疫細胞活性化ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、多重特異性抗B7H3化合物は、配列番号20~25のいずれか1つに記載のようなアミノ酸配列を有し得る。
【0107】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質の1つを含むキメラ抗原受容体化合物について記載する。キメラ抗原受容体(CAR、キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体、又は人工T細胞受容体としても知られる)は、T細胞に特定のタンパク質を標的にする新たな能力を付与するように改変されている受容体タンパク質である。受容体は、抗原結合及びT細胞活性化機能の双方を組み合わせて単一の受容体にすることから、キメラである。
【0108】
CAR-T細胞療法では、がん治療のため、CARを有するように改変されたT細胞が使用される。CAR-T免疫療法の前提は、T細胞を修飾し、がん細胞を認識することで、がん細胞をより有効に標的にし、破壊することである。T細胞は、ドナー(自家又は同種)から収集され、遺伝的に改変され、次に、得られるCAR-T細胞は、対象に注入され、対象の腫瘍を攻撃する。CAR-T細胞は、対象自身の血液(自家)中のT細胞に由来するか又はドナー(同種)のT細胞に由来するかのいずれかであり得る。これらのT細胞は、一旦個人から単離されると、T細胞を、腫瘍の表面上に存在する抗原を標的にするようにプログラムする、特定のCARを発現するように遺伝子改変される。安全性のため、CAR-T細胞は、健常細胞上で発現されない腫瘍上に発現される抗原に特異的であるように改変される。CAR-T細胞が対象に注入された後、それらは、がん細胞に対する「生きた薬物」として作用する。CAR-T細胞が細胞上のそれらの標的化抗原に接触するとき、CAR-T細胞は、抗原に結合し、活性化状態になり、増殖し、細胞傷害性になる。CAR-T細胞は、それらが他の生細胞に対して有毒である程度(細胞傷害性)を増加させる、広範な刺激細胞増殖を含むいくつかの機構を通じて、また他の細胞に影響し得る因子(例えば、サイトカイン、インターロイキン、及び/又は成長因子)の分泌増加を誘導することによって、細胞を破壊する。
【0109】
別の態様では、本開示は、標的ドメイン及び標的ドメインに連結された治療ドメインを含む標的化療法化合物について記載する。標的ドメインは、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質の任意の実施形態を含む。いくつかの実施形態では、標的化療法化合物は、免疫療法を提供することができ、それ故、標的化免疫療法化合物であり得る。いくつかの実施形態では、治療ドメインは、薬物、治療用放射性同位元素、毒素、サイトカイン、又はケモカインを含み得る。
【0110】
本明細書で用いられるとき、「薬物」という用語は、生体に投与されるとき、生物学的効果をもたらす任意の化学物質を指す。医薬品は、疾患を治療、治癒、予防、若しくは診断する、又は健康を促進するために使用される化学物質である。薬物は、薬用植物からの抽出を通じて、又は有機合成によって得ることができる。医薬品は、慢性障害に対して、限られた持続時間にわたり、又は定期的に使用されてもよい。
【0111】
「放射性同位元素」又は「放射性核種」は、それを不安定にする、過剰な核エネルギーを有する原子である。この過剰なエネルギーは、3つの方法:ガンマ線としての核からの放射;それを転換電子として放出するための、その電子の1個への移動;又は核から新しい粒子(アルファ粒子又はベータ粒子)を生成及び放出するための使用、の1つにおいて使用することができる。それらプロセスの間、放射性核種は、放射性崩壊を受けると言われている。これらの放出は、それらが別の原子から電子を遊離させるのに十分に強力であることから、電離放射と考えられる。放射性崩壊は、安定な核種を生成し得るか、又は時としてさらなる崩壊を受け得る新しい不安定な放射性核種を生成することになる。
【0112】
本明細書で用いられるとき、「毒素」という用語は、細胞にとって有害な物質を指す。毒素は、身体組織との接触時、又はそれによる吸収時、疾患又は細胞死を引き起こし得る、小分子、ペプチド、又はタンパク質であり得る。毒素は、それらの毒性が大きく変化する。毒素は、主に、生物の成長、発生、又は生殖に直接的に関与しない代わりに、防御の問題において生物を援助することが多い有機化合物である、二次代謝物質である。いくつかの適用では、毒素は、望ましくない1つ又は複数の細胞(例えば、腫瘍細胞)への毒素の効果を標的にすることによって、治療的に使用されてもよい。
【0113】
サイトカインは、細胞シグナル伝達に関与する低分子タンパク質(約5~20kDa)の広範なカテゴリーである。サイトカインは、ペプチドであり、細胞の脂質二重層を横断し、細胞質に侵入することができないが、にもかかわらず、免疫調節剤として、自己分泌、パラ分泌、及び内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子を含むが、一般に、ホルモン又は成長因子を含まない(しかし、用語法における重複が一部認められる)。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、肥満細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及び様々な間質細胞などの免疫細胞を含む、広範な細胞によって産生される。サイトカインは、体液性及び細胞ベースの免疫応答の間の平衡を調節し、特定の細胞集団の成熟、成長、及び応答性を調節する。
【0114】
さらなる態様では、本開示は、標的ドメイン及び標的ドメインに連結されたイメージングドメインを含む標的化イメージング化合物について記載する。標的ドメインは、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質の1つの任意の実施形態を含む。イメージングドメインは、検出可能なシグナルを生成し得る任意の部分を含み得る。例示的なイメージング部分として、限定はされないが、比色分析標識、蛍光標識、放射性標識、磁気標識、又は酵素標識が挙げられる。
【0115】
さらに別の態様では、本開示は、基質に固定化された、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質の1つの任意の実施形態を含む捕捉アッセイデバイスについて記載する。例えば、本明細書に記載の抗B7H3タンパク質は、例えば、ELISAベースのアッセイなどの細胞及び/又はリガンド捕捉技術に組み込むことができる。抗B7H3タンパク質を固定化するための基質は、例えば、細胞培養プレート又はディッシュ、スライドグラス、又は固定化された抗B7H3タンパク質を必要とするアッセイを実施するために使用可能である任意の他の支持体を含み得る。
【0116】
前述の説明及び以下の特許請求の範囲において、「及び/又は」という用語は、列記された要素の1つ若しくは全て、又は列記された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味し;「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、及びそれらの変形は、制約がないとして解釈されるべきであり、即ち、追加的な要素又はステップは、任意選択的であり、存在しても存在しなくてもよく;特に指定されない限り、「a」、「an」、「the」及び「少なくとも1つ」は、互換可能に用いられ、1つ又は2つ以上を意味し;またエンドポイントによる数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0117】
前述の説明において、特定の実施形態は、明確化のため、別々に記載されてもよい。特定の実施形態の特徴が別の実施形態の特徴に適合しないことが特に明示されない限り、特定の実施形態は、1つ又は複数の実施形態と関連した、本明細書に記載の適合する特徴の組み合わせを含み得る。
【0118】
別々のステップを含む、本明細書で開示されるいずれかの方法の場合、ステップは、任意の可能な順序で実施されてもよい。また、適宜、2つ以上のステップの任意の組み合わせが、同時に実行されてもよい。
【0119】
検討された適用について考慮された、B7H3結合タンパク質を含む三重特異性化合物について検討する実施例が、以下に提示される。以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに例示するために提示されるが、本発明の範囲を限定することは意図されない。それらは使用されてもよい場合に典型的であるが、当業者に公知の他の手順、方法、又は技術が代わりに使用されてもよい。
【実施例
【0120】
実施例1
cam1615B7H3三重特異性キラーエンゲージャー化合物の構築
ラクダ科動物(リャマ)抗CD16からのCDR領域(Behar et al.,Protein Eng Des Sel.2008;21(1):1-10.doi:10.1093/protein/gzm064.PubMed PMID:18073223)を、ユニバーサルなヒト化重鎖スキャフォールドにスプライシングした(Vincke et al.,J Biol Chem.2009;284(5):3273-84.doi:10.1074/jbc.M806889200.PubMed PMID:19010777)。この新しいヒト化ラクダ科動物配列を用いて、sdAb B7H3三重特異性キラーエンゲージャーを作製した。Hi-fi DNAクローニング技術を用いて、cam16、(SGGGG)リンカー(配列番号27)、野生型rhIL-15、whitlowリンカー、及び記述された(図1Bの「CD276-new-2」、配列番号2)抗B7H3 sdAbをコードするハイブリッドコード領域を合成した。Biomedical Genomics Center,University of Minnesota,St.Paul,MNは、構築物の遺伝子配列及びインフレームでの精度を検証した。遺伝子産物を増幅し、ベクターをExpi-293細胞にトランスフェクトした。4~7日後、上清を単離し、Akta Pureプラットフォーム内のHIS-カラムを用いて濃縮した。タンパク質純度を、Simply Blue Safe染色(Invitrogen,Carlsbad,CA)で染色したドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で決定した。
【0121】
がん細胞株
MA-148(Geller et al.,2013.Cytotherapy 15(10):1297-1306)は、高グレードのヒト上皮漿液性卵巣がん細胞株である。インビボ実験の場合、トランスフェクション試薬(リポフェクタミン試薬、Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、株にルシフェラーゼレポーター構築物をトランスフェクトし、10μg/mLのブラストサイジンで選択圧を加えた。卵巣がん細胞OVCAR-8(RRID:CVCL_1629)を、Biological Testing Branch,Developmental Therapeutic Program,NCI,NIHによって支援されたDTP、DCTD Tumor Repositoryから入手した。C4-2(前立腺;RRID:CVCL_4782)、DU145(前立腺;RRID:CVCL_0105)、LNCaP(前立腺;RRID:CVCL_0395)、PC-3(前立腺;RRID:CVCL_0035)、A549(肺;RRID:CVCL_0023)、及びNCI-H460(肺;RRID:CVCL_0459)を含む他の細胞株は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)から入手した。全ての株は、10~20%ウシ胎仔血清(FBS)及び2ミリモル/LのL-グルタミンを添加したRPMI1640 RPMIで維持した。株を、常に37℃で、5%COを含有する加湿雰囲気でインキュベートした。接着細胞が90%を超えるコンフルエントであった場合、それらを解離用のトリプシン-EDTAを使用して継代した。細胞数の場合、標準血球計数器を使用した。トリパンブルー排除による測定として、生存度が>95%である細胞のみを実験に使用した。
【0122】
細胞産物
末梢血単核球(PBMC)は、研究におけるヒト対象の使用に関する委員会(Committee on the Use of Human Subjects in Research)によるガイドラインに応じて、またヘルシンキ宣言(Declaration of Helsinki)に従い、同意を受け、また機関審査委員会(IRB)で承認された後に、正常なボランティア又は対象から入手した。細胞をペレット化し、赤血球を溶解し、10%DMSO/90%FBS中で凍結保存し、液体窒素下で貯蔵した。
【0123】
細胞傷害性及びNK細胞活性化の評価
抗体依存性細胞傷害(ADCC)を、CD107a(リソソーム膜タンパク質LAMP-1)を介しての脱顆粒及び細胞内IFN-γ産生を評価することによって、フローサイトメトリーアッセイにおいて測定した。解凍時、正常なドナー及び対象に由来するPBMC又は腹水細胞を、10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地(RPMI-10)中で一晩(37℃、5%CO)静置した。翌朝、それらを、RPMI-10で2回洗浄後、腫瘍標的細胞又は培地で懸濁した。次に、細胞を、37℃で10分間にわたり、三重特異性キラーエンゲージャー化合物又は対照とともにインキュベートした。次に、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)とコンジュゲートした抗ヒトCD107aモノクローナル抗体(BD Biosciences,San Jose,CA)を添加し、1時間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、GOLGISTOP(1:1,500,BD Biosciences,San Jose,CA)及びGOLGIPLUG(1:1,000,BD Biosciences,San Jose,CA)を、3時間かけて添加した(37℃、5%CO)。リン酸緩衝食塩水で洗浄後、PE/Cy7コンジュゲート抗CD56 mAb、APC/Cy7コンジュゲート抗CD16 mAb、及びPE-CF594コンジュゲート抗CD3 mAb(BioLegend,Inc.,San Diego,CA)で細胞を染色した。細胞を、4℃で15分間インキュベートし、洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定した。次に、細胞を、細胞内パーム緩衝液(BioLegend,Inc.,San Diego,CA)を用いて透過処理し、aBV650コンジュゲート抗ヒトIFN-γ抗体(BioLegend,Inc.,San Diego,CA)を介した検出を通じて、IFN-ガンマ(IFN-γ)の産生を評価した。サンプルを、洗浄し、LSRIIフローサイトメーターLSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences,San Jose,CA)において評価した。
【0124】
リアルタイム腫瘍殺傷アッセイ
腫瘍殺傷を、INCUCYTEプラットフォーム(Essen Biosciences,Inc.,Ann Arbor,MI)を用いてリアルタイムで評価した。磁気ビーズ濃縮した40,000個のCD3CD56NKエフェクター細胞を、GFPを安定発現するOVCAR8スフェロイドとともに、96ウェルULA平板の透明底ポリスチレンの組織培養処理マイクロプレート(Corning,Flintshire,UK)に蒔き、20,000個の細胞が、共培養前の3日間でスフェロイドを確立することを可能にした。次に、記載の処理物を30nMの濃度で添加し、プレートを、37℃/5%COで細胞インキュベーター内部に収容されたINCUCYTE S3プラットフォーム(Essen Biosciences,Inc.,Ann Arbor,MI)内に配置した。3回の技術的反復からの画像を、4倍対物レンズを用いて120時間にわたり毎時取得し、次にINCUCYTE基本ソフトウェア(Essen Biosciences,Inc.,Ann Arbor,MI)を用いて分析した。グラフ読み出しは、開始(0時間)時点で腫瘍単独に正規化された、統合されたスフェロイドのGFP蛍光強度を表す。
【0125】
統計分析
PRISMソフトウェア(GraphPad Software,Inc.,La Jolla,CA)を用いて、全ての統計検定を作成した。全てのインビトロ試験において、反復測定を伴う一元配置分散分析を用いて、cam1615B7H3群と比較した有意性を計算した。バーは、平均±平均値の標準誤差を表す。統計学的有意性は、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、及び****P<0.0001として表す。
【0126】
実施例2
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)及びNK細胞拡大の双方が可能な第2世代の三重特異性キラーエンゲージャー化合物を、以前に報告された三重特異性キラーエンゲージャー化合物プラットフォームを修飾することによって構築した(Vallera et al.,Clin Cancer Res.2016;22(14):3440-50.doi:10.1158/1078-0432.CCR-15-2710.PubMed PMID:26847056;PMCID:PMC4947440;米国特許出願公開第2018/0282386A1号明細書)。例示的な構築物では、野生型ヒトIL-15の2つの修飾された隣接領域との架橋剤を、2つの抗体断片:N末端VHHヒト化ラクダ科動物抗CD16断片及びC末端抗B7H3 VHHの間、又は単一ドメイン抗体に挿入し、抗B7H3三重特異性キラーエンゲージャーを作成し、その略図を図1に示す。
【0127】
例示的な抗B7H3タンパク質-sdAbが、三重特異性キラーエンゲージャーの活性を標的にする能力を評価するため、抗B7H3三重特異性NKエンゲージャー分子を用いて、B7H3を含有する標的:前立腺がん細胞株、肺がん細胞株、及び卵巣がん細胞株に対するNK細胞活性を誘導した。一般に、三重特異性NKエンゲージャー分子は、標的化細胞集団に対して、NK細胞を動員し、活性化する。NK活性化は、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞の脱顆粒(CD107aNK細胞を検出する)及び炎症性サイトカイン産生(例えば、IFN-γ)を測定するフローサイトメトリーアッセイを用いて測定され得る。
【0128】
例示的な抗B7H3タンパク質配列を、三重特異性キラーエンゲージャー骨格に組み込み、抗B7H3 scFv配列を組み込む三重特異性キラーエンゲージャーと比較した。NK細胞の脱顆粒(パーセントCD107aNK細胞として測定される)及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生(IFN-γNK細胞のパーセントとして測定される)を、様々ながん細胞株において、様々な濃度の三重特異性キラーエンゲージャーの存在下で、実施例1に記載のようなフローサイトメトリーによって評価した。つまり、三重特異性キラーエンゲージャー化合物を、5時間インキュベートした後、NK細胞脱顆粒及び炎症性サイトカイン産生(IFN-γ)を、フローサイトメトリーによって測定した。提示された結果は、N=3の独立実験の平均を示す。
【0129】
三重特異性キラーエンゲージャー分子に組み込まれた例示的な抗B7H3タンパク質は、30nMの濃度の末梢血単核球(PBMC)と共培養した時、PC3及びDU145細胞(図2B、2C、2E及び2Fを参照)、並びにLnCAP及びC4-2細胞(図3A、3B、3C及び3Dを参照)で示される通り、単独でインキュベートしたPBMC(図2A及び2Dを参照)と比較して、前立腺がん細胞に対してNK細胞脱顆粒及びIFN-γ産生を増強した。
【0130】
図2及び図3は、例示的な抗B7H3 sdAbタンパク質を含有する三重特異性NKエンゲージャー分子が、B7H3を発現する標的細胞集団に対してNK細胞の活性を誘導することを示すデータを提供する。抗B7H3三重特異性NKエンゲージャーは、複数の前立腺がん細胞株に対してNK細胞の脱顆粒及びNK細胞の炎症性サイトカイン産生を誘導した。NK活性化の両測定において、sdAbを含有する三重特異性NKエンゲージャー(黒色バー)は、抗B7H3 scFvを含有する抗B7H3三重特異性NKエンゲージャー分子(灰色バー)より大きい応答を誘導した。
【0131】
三重特異性キラーエンゲージャー分子に組み込まれた例示的な抗B7H3タンパク質はまた、30nMの濃度のPBMCと共培養した時、A549及びNCI-H460細胞(図4C、4F、5A及び5Dを参照)、及び卵巣がん細胞で示される通り、OVCAR8及びMA148(図5B、5C、5E及び5Fを参照)細胞で示される通り、単独でインキュベートしたPBMC(図4A及び4Dを参照)又はC4-2細胞と共培養したPBMC(図4B及び4Eを参照)と比較して、肺がん細胞に対してNK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生を増強した。
【0132】
図4及び図5は、例示的な抗B7H3 sdAbタンパク質を含有する三重特異性NKエンゲージャー分子が、さらなるB7H3を発現する標的細胞集団:前立腺がん細胞株C4-2、肺がん細胞株A549及びNCI-H460、並びに卵巣がん細胞株OVCAR8及びMA148に対してNK細胞の活性を誘導することを示すデータを提供する。再び、sdAbを含有する三重特異性NKエンゲージャー(黒色バー)は、抗B7H3 scFvを含有する抗B7H3三重特異性NKエンゲージャー分子(灰色バー)より大きい応答を誘導した。
【0133】
三重特異性キラーエンゲージャー分子に組み込まれた例示的な抗B7H3タンパク質は、試験した用量の3通り:0.3;3及び30nM(図6D、6E及び6Fを参照)で、用量(図6A、6B及び6Cを参照)と独立に、PBMC単独でインキュベートした時の効果の不在と比較して、前立腺に対してNK細胞の脱顆粒を増強することが実証された。
【0134】
IFN-γの産生を評価した時、同様の効果が認められ;三重特異性キラーエンゲージャー分子に組み込まれた例示的な抗B7H3タンパク質は、試験した3通りの用量:0.3;3及び30nM(図7D、7E及び7Fを参照)で、用量(図7A、7B及び7Cを参照)と独立に、PBMC単独でインキュベートした時の効果の不在と比較して、前立腺に対してIFN-γの産生を増強した。
【0135】
図6及び図7は、三重特異性NKエンゲージャー活性が標的依存性であることを示すデータを提供する。バックグラウンドNK活性は、B7H3を発現する標的細胞の不在下で低い。NK細胞の脱顆粒及びIFN-γの産生は、B7H3を発現する標的細胞をPBMC NK細胞及び抗B7H3を含有する三重特異性エンゲージャー分子と共培養する際に誘導される。再び、sdAbを含有する三重特異性NKエンゲージャー(黒色バー)は、抗B7H3 scFvを含有する抗B7H3三重特異性NKエンゲージャー分子(灰色バー)より大きい応答を誘導した。
【0136】
次に、例示的な抗B7H3タンパク質を組み込む三重特異性キラーエンゲージャーが卵巣がんスフェロイドに対する細胞溶解活性を増強する能力を、実施例1に記載の通り、インビトロで評価した。つまり、スフェロイドアッセイにおいて、例示的な抗B7H3タンパク質を三重特異性キラーエンゲージャー骨格に組み込み、その活性をNK細胞単独の活性と比較した。20,000個のGFP発現OVCAR8細胞を、96ウェルULAプレートのウェルに蒔き、3日間形成させておいた。次に、40,000個の濃縮NK細胞を、単独で、又は30nMの三重特異性キラーエンゲージャーとともに添加した。GFP強度の測定を示す画像を、120時間にわたり毎時取得した。細胞死が緑色蛍光で一時的増加を誘導することは注目されるべきである。3つの生物学的複製のそれぞれについて、3回の技術的反復を実施した。図8に示す通り、また図9にさらに定量化した通り、例示的な抗B7H3タンパク質を組み込む三重特異性キラーエンゲージャーは、NK細胞単独の活性と比較して、卵巣がんスフェロイドに対して細胞溶解活性を増強した。
【0137】
図8及び図9は、先進のイメージングベースの細胞溶解性アッセイを用いて、抗B7H3-sdAbを含有する三重特異性NKエンゲージャーが卵巣がん細胞を殺傷する能力を示すデータを提供する。このアッセイでは、20,000個のOVCAR8卵巣がん細胞に、(緑色蛍光を提供するため)GFPカセットを安定に形質導入し、次に超低接着(ULA)96ウェルプレートに蒔き、3日の期間にわたり、スフェロイドを形成させておいた。3日後、無し(腫瘍単独)、生存を維持するための少量のサイトカインを伴う40,000個のNK細胞(腫瘍+NK)、又は40,000個のNK細胞及び抗B7H3 sdAbを含有する30nMの三重特異性NKエンゲージャーを添加する。スフェロイドの緑色蛍光強度の減少として測定される、スフェロイド殺傷が、5日(120時間)の期間にわたり認められる。NK細胞は、抗B7H3 sdAbを含有する三重特異性NKエンゲージャー分子で処理されるとき、スフェロイドを、三重特異性が不在であるときよりもはるかに良好に殺傷し、この三重特異性が三次元的な腫瘍形成の殺傷を誘導し得ることが示される。
【0138】
本明細書中で引用される全ての特許、特許出願、及び出版物、並びに電子的に入手可能な材料(例として、例えば、GenBank及びRefSeqへのヌクレオチド配列の提出や、例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDBへのアミノ酸配列の提出、並びにGenBank及びRefSeqにおける注釈付きのコード領域からの翻訳を含む)の完全な開示は、それら全体が参照により援用される。本願の開示と参照により本明細書中に援用される任意の文書の開示との間に何らかの矛盾が存在する場合、本願の開示が支配するものとする。前述の詳細な説明及び実施例は、あくまで理解を明確にするため、所与されている。不必要な限定については、それから理解されるべきでない。本発明は、表示され、記載される正確な詳細に限定されることはなく、当業者にとって明白な変化については、特許請求の範囲によって定義される発明の範囲内に含まれる。
【0139】
特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって共通に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0140】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などを表す全ての数は、全ての場合に「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、それに対して別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により取得が求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、また請求項の範囲に対する均等物の原則を限定するような試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、また通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0141】
本発明の広い範囲を示している数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例で示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、全ての数値は、それらの各試験測定で見出される標準偏差から必然的に得られる範囲を本質的に含む。
【0142】
全ての見出しは、読者の利便性を意図し、見出しに続く本文の意味を限定するために(そのように具体化されない限り)用いられるべきでない。
【0143】
本発明は、上の実施例を参照して説明されているが、修飾及びバリエーションが本発明の精神及び範囲内に包含されることは理解されるであろう。したがって、本発明は、あくまで以下の特許請求の範囲によって限定される。
【0144】
配列表フリーテキスト
配列番号1
【化1】
配列番号2
【化2】
配列番号3
【化3】
配列番号4
SYWMY
配列番号5
INRDGSATWY ADSVKGRFT
配列番号6
DPDNYSSDEM VPY
配列番号7
MKWVTFISLL FLFSSAYS
配列番号8
VDEHHHHHHH HHH
配列番号9
【化4】
配列番号10
【化5】
配列番号11
【化6】
配列番号12
PSGQAGAAAS ESLFVSNHAY
配列番号13
EASGGPE
配列番号14
SGGGGSGGGG SGGGGSGGGG
配列番号15
GSTSGSGKPG SGEGSTKG
配列番号16
EPKSSDKTHT SPPSPEL
配列番号17
RATPSHNSHQ VPSAGGPTAN SGTSG
配列番号18
SSGGGGSGGG GGGSSRSSL
配列番号19
【化7】
CDR1:アミノ酸31~35
CDR2:アミノ酸51~69
CDR3:アミノ酸97~111
配列番号20
【化8】
アミノ酸1~18:リーダー
アミノ酸19~140:ヒト化camCD16
アミノ酸141~162:リンカー
アミノ酸163~284:抗B7H3クローン1
アミノ酸285~297:VDEリンカー、10XHisタグ
配列番号21
【化9】
アミノ酸1~18:リーダー
アミノ酸19~140:ヒト化camCD16
アミノ酸141~162:リンカー
アミノ酸163~284:抗B7H3クローン2
アミノ酸285~297:VDEリンカー、10XHisタグ
配列番号22
【化10】
アミノ酸1~122:ヒト化camCD16
アミノ酸123~142:リンカー
アミノ酸143~258:IL-15断片
アミノ酸259~276:リンカー
アミノ酸277~498:camB7H3クローン1
配列番号23
【化11】
アミノ酸1~122:ヒト化camCD16
アミノ酸123~142:リンカー
アミノ酸143~258:IL-15断片
アミノ酸259~276:リンカー
アミノ酸277~398:camB7H3クローン2
配列番号24
【化12】
アミノ酸1~18:リーダー
アミノ酸19~140:ヒト化camCD16
アミノ酸141~162:リンカー
アミノ酸163~276:IL-15断片
アミノ酸277~294:リンカー
アミノ酸295~416:camB7H3クローン1
アミノ酸417~429:VDEリンカー及び10Xhisタグ
配列番号25
【化13】
アミノ酸1~18:リーダー
アミノ酸19~140:ヒト化camCD16
アミノ酸141~162:リンカー
アミノ酸163~276:IL-15断片
アミノ酸277~294:リンカー
アミノ酸295~416:camB7H3クローン2
アミノ酸417~429:VDEリンカー及び10Xhisタグ
配列番号26
【化14】
配列番号27
【化15】
配列番号28
【化16】
配列番号29
【化17】
配列番号30
【化18】
ヌクレオチド1~9:コザック配列
ヌクレオチド10~900:配列番号20をコードする
配列番号31
【化19】
ヌクレオチド1~9:コザック配列
ヌクレオチド10~900:配列番号21をコードする
配列番号32
【化20】
ヌクレオチド1~9:コザック配列
ヌクレオチド10~1296:配列番号24をコードする
配列番号33
【化21】
ヌクレオチド1~9:コザック配列
ヌクレオチド10~1296:配列番号25をコードする
図1A
図1B
図2A-2B】
図2C-2D】
図2E-2F】
図3A-3B】
図3C-3D】
図4A-4B】
図4C-4D】
図4E-4F】
図5A-5B】
図5C-5D】
図5E-5F】
図6A-6B】
図6C-6D】
図6E-6F】
図7A-7B】
図7C-7D】
図7E-7F】
図8
図9
【配列表】
2023529368000001.app
【国際調査報告】