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特表2023-529372薬剤を送達するための眼用インプラントシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】薬剤を送達するための眼用インプラントシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20230703BHJP
   A61F 9/007 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F9/007 170
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574547
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 US2021035678
(87)【国際公開番号】W WO2021247846
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】16/893,372
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522336096
【氏名又は名称】スパイグラス ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPYGLASS PHARMA,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【弁理士】
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】デネウィル、ジェームズ アール.
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、グレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ケーブル ザ セカンド、クレイグ アラン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC05
4C097MM10
4C097SA10
(57)【要約】
周術期、術中又は術後に組み立て及び分解できるように構成された眼用インプラント。薬剤送達器具は、眼内レンズとともに移植することができ、後で除去して新しい薬剤送達器具と交換できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用インプラント(20)であって、
IOLアセンブリ(22)及び薬剤送達器具(30)を備え、
前記IOLアセンブリ(22)は、レンズ(24)、タブ(26)及びハプティック(28)を備えており、前記IOLアセンブリ(22)は前面及び後面を有しており、前記IOLアセンブリ(22)は、前記前面が前記後面の前方に配置された状態で患者の眼球内に移植されるように構成されており、
前記タブ(26)は、前記レンズ(24)の周縁から径方向外向きに延在しており、前記タブ(26)は、前記薬剤送達器具(30)と係合するように構成されており、前記ハプティック(28)は、前記レンズ(24)の平面に沿って前記レンズ(24)から径方向外向きに延在しており、前記ハプティック(28)は、患者の眼球の水晶体嚢で前記IOLアセンブリ(22)を所定の位置に保持するように構成されており、
前記薬剤送達器具(30)は、前記タブを受容して前記薬剤送達器具(30)を前記IOLアセンブリ(22)に固定できる大きさ及び寸法を有する開口部(65)を有している固定部(64)を備えており、
前記開口部(65)は、前記薬剤送達器具の径方向内側部に配置され、前記薬剤送達器具が前記タブ上に固定された状態では、前記薬剤送達器具が前記レンズの径方向外側に配置されるとともに、前記タブの一部分の径方向外側に配置されており、
前記薬剤送達器具(30)は、内部に治療薬が埋め込み又は分散されているマトリックスを有する薬剤パッドをさらに備えている、
眼用インプラント(20)。
【請求項2】
前記薬剤送達器具(30)が、内側曲線部及び外側曲線部を有する円弧形状をなし、前記開口部が前記内側曲線部に位置している、
請求項1に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項3】
眼用インプラント(20)であって、
IOLアセンブリ(22)、薬剤送達器具(71)及び薬剤パッド(73)を備え、
前記IOLアセンブリ(22)は、レンズ(24)、タブ(26)及びハプティック(28)を備えており、前記IOLアセンブリは前面及び後面を有しており、前記IOLアセンブリ(22)は、前記前面が前記後面の前方に配置された状態で患者の眼球内に移植されるように構成されており、
前記タブ(26)は、前記IOL(24)から延在しており、前記タブ(26)は、前記薬剤送達器具(71)と係合するように構成されており、前記ハプティック(28)は、前記レンズの平面に沿って前記レンズから径方向外向きに延在しており、前記ハプティック(28)は、患者の眼球の水晶体嚢で前記IOLアセンブリを所定の位置に保持するように構成されており、
前記薬剤送達器具(71)は、前記タブ(26)を受容して前記薬剤送達器具(71)を前記IOLアセンブリに固定できる大きさ及び寸法を有する開口部(65)を有している固定部(64)を備えており、前記薬剤送達器具(30)は、前記薬剤パッド(73)を受容できる大きさ及び寸法を有しているコンパートメント(72)を有しており、前記コンパートメントが、前記薬剤送達器具の径方向内側面に開口している、
眼用インプラント(20)。
【請求項4】
前記薬剤送達器具(71)が、内側曲線部及び外側曲線部を有する円弧形状をなし、前記第1の穴が内側曲線部に位置している、
請求項3に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項5】
前記眼用インプラント(20)が前記患者の前記眼球内に配置されている状態で、前記コンパートメント(72)から前記薬剤パッド(73)を引き出すことができるように、前記薬剤パッド(73)に対する前記コンパートメント(72)の大きさが設定されている、
請求項3に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項6】
前記タブ(26)が前記レンズ(24)から径方向外向きに延在している距離が、前記ハプティック(28)が前記レンズから延在している距離より短く、
前記タブ(26)が、前記レンズの周縁の近傍の径方向内側位置から径方向外向きに延在している第1の径方向部分(60)を有しており、該第1の径方向部分(60)が前記IOLの前記周縁に沿った第1の円弧(61)にわたって延びており、前記タブ(26)が、前記第1の径方向部分からさらに径方向外向きに延在する第2の径方向部分(62)も有しており、前記第2の径方向部分(62)が、前記IOLレンズ(22L)の前記周縁に対応する第2の円弧(63)にわたって延びており、前記第2の円弧(63)が前記第1の径方向部分の前記第1の円弧(61)よりも大きい、
請求項1に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項7】
前記タブ(26)が前記レンズ(24)から径方向外向きに延在している距離が、前記ハプティック(28)が前記レンズから延在している距離より短く、
前記タブ(26)が、前記レンズの周縁の近傍の径方向内側位置から径方向外向きに延在している第1の径方向部分(60)を有しており、該第1の径方向部分(60)が前記IOLの前記周縁に沿った第1の円弧(61)にわたって延びており、前記タブ(26)が、前記第1の径方向部分からさらに径方向外向きに延在する第2の径方向部分(62)も有しており、前記第2の径方向部分(62)が、前記IOLレンズ(22L)の前記周縁に対応する第2の円弧(63)にわたって延びており、前記第2の円弧(63)が前記第1の径方向部分の前記第1の円弧(61)よりも大きい、
請求項3に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項8】
前記タブ(26)の前記第2の径方向部分(62)が、弾性的な圧縮により第1の形状をとることによって前記薬剤送達器具(30、71)の前記開口部(65)を通過して前記開口部から径方向外側に延び、弾性的な伸長によって、前記開口部(65)よりも大きい又は広い第2の形状に戻るように構成されている、
請求項6又は請求項7に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項9】
前記薬剤送達器具(30、71)の前記固定部(64)が、弾性的な伸張により第1の形状をとることによって前記タブ(26)の前記第2の径方向部分(62)上で伸び、弾性的な復帰によって、前記タブ(26)の前記第2の径方向部分(62)よりも狭い第2の形状に戻るように構成されている、
請求項6又は請求項7に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項10】
前記薬剤パッド(73)が、第1の円弧(75)に対する内縁(74)と、前記第1の円弧よりも小さい第2の円弧(77)に対する外縁(76)とを有しており、前記コンパートメント(72)が、前記第1の円弧に近似する、対応する開口又は穴を有しており、該開口又は穴が前記第2の円弧に近似する間隔まで狭くなることによって、前記薬剤パッド(73)に対する摩擦嵌合をもたらしている、
請求項3に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項11】
前記薬剤パッド(73)が、該薬剤パッド(73)の内縁(74)の近傍にピンホール(76)を有しており、前記ピンホール(76)が、該ピンホール(76)との係合に適した道具を収容できる大きさを有しており、前記道具を用いて前記薬剤パッド(73)を操作することによって、前記コンパートメントからの薬剤パッド(73)の抜き出しと、前記コンパートメント内への薬剤パッド(73)の挿入とを行うことができる、
請求項3に記載の眼用インプラント(20)。
【請求項12】
眼用インプラント(20)を移植する方法であって、
眼用インプラント(20)を提供することであって、
前記眼用インプラント(20)が、IOLアセンブリ(22)及び薬剤送達器具(30)を備えており、
前記IOLアセンブリ(22)は、レンズ(24)、タブ(26)及びハプティック(28)を備えており、前記IOLアセンブリ(22)は前面及び後面を有しており、前記IOLアセンブリ(22)は、前記前面が前記後面の前方に配置された状態で患者の眼球内に移植されるように構成されており、
前記タブ(26)は前記IOLから延在しており、前記タブ(26)は前記薬剤送達器具(30)と係合するように構成されており、前記ハプティック(28)は前記レンズ(24)の平面に沿って前記レンズ(24)から径方向外向きに延在しており、前記ハプティック(28)は、患者の眼球の水晶体嚢で前記IOLアセンブリ(22)を所定の位置に保持するように構成されており、
前記薬剤送達器具(30)は、前記タブを受容して前記薬剤送達器具(30)を前記IOLアセンブリ(22)に固定できる大きさ及び寸法を有する開口部(65)を有しており、
前記薬剤送達器具(30)は、内側曲線部及び外側曲線部を有する円弧形状をなし、前記開口部が前記内側曲線部に位置しており、
前記薬剤送達器具(30)は、治療薬が埋め込み又は分散されたマトリックスを有している薬剤パッド(73)をさらに備えていることと、
前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入することと、
前記薬剤送達器具(30)の開口部(65)を前記IOLアセンブリ(22)の前記タブに嵌合させることによって前記薬剤送達器具(30)を前記IOLに結合することと、
前記IOLアセンブリ(22)が前記患者の眼球の水晶体嚢によって所定の位置に保持されるように、結合された前記薬剤送達器具(30)及び前記IOLアセンブリ(22)を前記患者の眼球内に配置することと、からなる方法。
【請求項13】
前記薬剤送達器具(30)を前記IOLに結合する工程が、前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入する工程の前に行われる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤送達器具(30)を前記IOLに結合する工程が、前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入する工程の後に行われる、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入した後に、前記患者の眼球から前記IOLアセンブリ(22)を除去することなく、前記患者の眼球から前記薬剤送達器具(30)を除去することと、前記患者の眼球内に新しい薬剤送達器具(30)を挿入することと、前記新しい薬剤送達器具(30)の前記開口部(65)を前記IOLアセンブリ(22)の前記タブに嵌合させることによって前記新しい薬剤送達器具(30)を前記IOLに結合することと、をさらに含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入することが、前記患者の眼球の角膜の縁部の近傍において前記患者の眼球に第1の切開部を形成することによって達成され、
前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入した後であって、前記第1の切開部が治癒した後に、前記患者の眼球に新しい切開部を形成することと、前記患者の眼球から前記IOLアセンブリ(22)を除去することなく、前記薬剤送達器具(30)を前記新しい切開部を介して前記患者の眼球から除去することと、前記新しい切開部を介して前記患者の眼球内に新しい薬剤送達器具(30)を挿入することと、前記新しい薬剤送達器具(30)の開口部(65)を前記IOLアセンブリ(22)の前記タブに嵌合させることによって前記新しい薬剤送達器具(30)を前記IOLに結合することと、をさらに含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入することが、前記患者の眼球の角膜の縁部の近傍において前記患者の眼球に第1の切開部を形成することによって達成され、
前記IOL及び前記薬剤送達器具(30)を前記患者の眼球内に挿入した後であって、前記薬剤送達器具(30)の薬剤が枯渇した後に、前記患者の眼球に新しい切開部を形成することと、前記患者の眼球から前記IOLアセンブリ(22)を除去することなく、前記薬剤送達器具(30)を前記新しい切開部を介して前記患者の眼球から除去することと、前記新しい切開部を介して前記患者の眼球内に新しい薬剤送達器具(30)を挿入することと、前記新しい薬剤送達器具(30)の開口部(65)を前記IOLアセンブリ(22)の前記タブに嵌合させることによって前記新しい薬剤送達器具(30)を前記IOLに結合することと、をさらに含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項18】
眼用インプラント(20)を移植する方法であって、
眼用インプラント(20)を提供することであって、
前記眼用インプラント(20)が、IOLアセンブリ(22)、薬剤送達器具(71)及び薬剤パッド(73)を備えており、
前記IOLアセンブリ(22)は、レンズ(24)、タブ(26)及びハプティック(28)を備えており、前記IOLアセンブリは前面及び後面を有しており、
前記タブ(26)は、前記レンズ(24)から延在しており、前記タブ(26)は、前記薬剤送達器具(71)と係合するように構成されており、前記ハプティック(28)は、前記レンズ(24)の平面に沿って前記レンズ(24)から径方向外向きに延在しており、前記ハプティック(28)は、患者の眼球の水晶体嚢で前記IOLアセンブリ(22)を所定の位置に保持するように構成されており、
前記薬剤送達器具(71)が、前記タブを受容して前記薬剤送達器具(71)を前記IOLアセンブリ(22)に固定できる大きさ及び寸法を有する開口部(65)を有している固定部(64)を備えており、前記薬剤送達器具(71)が、前記薬剤パッド(73)を受容できる大きさ及び寸法を有するコンパートメント(72)を有しており、
前記薬剤送達器具(71)が、内側曲線部及び外側曲線部を有する円弧形状をなし、前記開口部(65)が前記内側曲線部に位置していることと、
前記IOL、前記薬剤送達器具(71)及び前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球内に挿入することと、
前記薬剤送達器具(71)の前記固定部(64)の前記開口部(65)を前記IOLアセンブリ(22)の前記タブに嵌合させることによって前記薬剤送達器具(71)を前記IOLに結合することと、
前記薬剤パッド(73)を前記コンパートメント(72)に挿入することと、
前記IOLアセンブリ(22)が前記患者の眼球の水晶体嚢によって所定の位置に保持されるように、結合された前記薬剤パッド(73)、前記薬剤送達器具(71)及び前記IOLアセンブリ(22)を前記患者の眼球内に配置することと、からなる方法。
【請求項19】
前記薬剤送達器具(71)を前記IOLに結合することが、前記IOL及び前記薬剤送達器具(71)を前記患者の眼球内に挿入する前に行われる、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤送達器具(71)を前記IOLに結合することが、前記IOL及び前記薬剤送達器具(71)を前記患者の眼球内に挿入した後に行われる、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤パッド(73)を前記薬剤送達器具(71)の前記コンパートメント(72)内に挿入することが、前記IOL及び前記薬剤送達器具(71)を前記患者の眼球内に挿入する前に行われる、
請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤パッド(73)を前記薬剤送達器具(71)の前記コンパートメント(72)内に挿入することが、前記IOL及び前記薬剤送達器具(71)を前記患者の眼球内に挿入した後に行われる、
請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記IOL、前記薬剤送達器具(71)及び前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球内に挿入した後に、前記患者の眼球から前記IOLアセンブリ(22)及び前記薬剤送達器具(71)を除去することなく、前記患者の眼球から前記薬剤パッド(73)を除去することと、前記患者の眼球内に新しい薬剤パッド(73)を挿入することと、前記薬剤送達器具(71)の前記コンパートメント(72)に前記新しい薬剤パッド(73)を挿入することと、をさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記IOL、前記薬剤送達器具(71)及び前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球内に挿入することが、前記患者の眼球の角膜の縁部の近傍において前記患者の眼球に第1の切開部を形成することによって達成され、
前記IOL、前記薬剤送達器具(71)及び前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球内に挿入した後であって、前記第1の切開部が治癒した後に、前記患者の眼球に新しい切開部を形成することと、前記患者の眼球から前記IOLアセンブリ(22)及び前記薬剤送達器具(71)を除去することなく、前記新しい切開部を介して前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球から除去することと、前記新しい切開部を介して前記患者の眼球内に新しい薬剤パッド(73)を挿入することと、前記薬剤送達器具(71)の前記コンパートメント(72)に前記新しい薬剤パッド(73)を挿入することと、をさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記IOL、前記薬剤送達器具(71)及び前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球内に挿入することが、前記患者の眼球の角膜の縁部の近傍において前記患者の眼球に第1の切開部を形成することによって達成され、
前記IOL、前記薬剤送達器具(71)及び前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球内に挿入した後であって、前記薬剤パッド(73)が枯渇した後に、前記患者の眼球に新しい切開部を形成することと、前記患者の眼球から前記IOLアセンブリ及び前記薬剤送達器具(71)を除去することなく、前記新しい切開部を介して前記薬剤パッド(73)を前記患者の眼球から除去することと、前記新しい切開部を介して前記患者の眼球内に新しい薬剤パッド(73)を挿入することと、前記薬剤送達器具(71)の前記コンパートメント(72)に前記新しい薬剤パッド(73)を挿入することと、をさらに含む、
請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載する発明は、眼内レンズ等の眼用インプラントの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
IOL(眼内レンズ)は、患者の眼の水晶体を除去した後に、水晶体の代わりに移植できる眼用の人工レンズである。例えば、白内障に罹患した水晶体が除去された場合、IOLを移植することによって、患者の視界が明瞭になり、ある程度のピント調整を行えるようになる。また、眼内レンズは、極度の近視又は遠視を矯正するために、水晶体(有水晶体眼内レンズ又はPIOL)を除去せずに患者に移植することも可能である。IOLの移植と同時にいくつかの治療薬を眼に投与して、IOLの様々な副作用を緩和することや、白内障をもたらす症状と同時に発生する可能性のある眼の他の症状の治療を行うことは有益である。感染や炎症等の副作用や、緑内障等の症状は、IOLに固定された追加の器具等に治療薬を組み込むことによって治療できる。IOLだけでなく、レンズを含まない眼内インプラントを移植して、他の様々な症状に対処することもできる。Kahookらの特許文献1(「Ophthalmic Device For Drug Delivery」)(2020年1月23日)(その開示全体が本明細書に組み込まれる)には、薬剤送達器具と組み合わされたIOLアセンブリを備えたIOLシステム等の、様々な眼用インプラントシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0022840号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、IOLを含む眼内インプラントとともに治療薬を容易に配置できる眼用インプラントシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に説明する器具及び方法によって、IOLを含む眼内インプラントとともに治療薬を容易に配置できる。これは、例えば眼内レンズアセンブリ又は他の眼内インプラントである第1の器具もしくは一次器具と、薬剤送達器具を含む二次器具とを備えた眼用インプラントシステムによって達成される。薬剤送達器具は、眼内レンズアセンブリ又は他の眼内インプラントに取り付けるように構成されている。眼内レンズアセンブリ又は他の眼内インプラントへの薬剤送達器具の取り付けは、離脱可能又は離脱不能な手段によって達成され、IOLアセンブリの製造時に行ってもよいし、移植の直前又は直後の周術期に行ってもよいし、IOLアセンブリが移植される処置と同じ処置において手術中に行ってもよい。薬剤送達器具は、第2の薬剤送達構成要素を第1の薬剤送達器具に配置できるように構成してもよい。配置は、IOLアセンブリの製造時に行ってもよいし、移植の直前又は直後の周術期に行ってもよいし、IOLアセンブリが移植される処置と同じ処置において手術中に行ってもよい。第1及び/又は第2の薬剤送達器具は枯渇する可能性があり、枯渇した場合は、IOLアセンブリが最初に挿入される手術から長期間を経て行われる手術等において、除去及び交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】薬剤を送達するための眼用インプラントシステムの使用環境を示す図。
図2】薬剤を送達するための眼用インプラントシステムの使用環境を示す図。
図3A】IOLアセンブリ及び薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図3B】IOLアセンブリ及び薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図3C】IOLアセンブリ及び薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図3D】IOLアセンブリ及び薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図4A】IOLアセンブリ、第1の薬剤送達器具及び第2の薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図4B】IOLアセンブリ、第1の薬剤送達器具及び第2の薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図4C】IOLアセンブリ、第1の薬剤送達器具及び第2の薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図4D】IOLアセンブリ、第1の薬剤送達器具及び第2の薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
図4E】IOLアセンブリ、第1の薬剤送達器具及び第2の薬剤送達器具を備えた眼用インプラントシステムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1及び図2に、患者の眼における眼用インプラントシステムの配置及び使用を示す。眼球1は、水晶体2(眼球に備わっているレンズ)及び水晶体嚢3を有しており、角膜5と、虹彩6と、角膜と虹彩との間の空間を満たす房水を有する前房4と、虹彩と水晶体嚢との間の後房7とを有している。後腔/硝子体8は、水晶体と網膜9の間の大きな空間である。眼球の水晶体2は、光軸10によって特徴付けられる。(眼用インプラント及び/又は眼内レンズシステムに関する以下の説明では、後方及び前方という用語は、角膜が前方に位置し、網膜が後方に位置している眼球の解剖学的構造に関連して使用される。)
図2は、眼内レンズアセンブリ12と、眼内レンズアセンブリ12と共に水晶体嚢に移植される薬剤送達器具30とを備えた、眼用インプラントシステム又は眼内レンズシステム11の配置を示す。図2に示されるように、薬剤送達器具は、眼内レンズアセンブリ12の前方に配置され、眼内レンズアセンブリ上に取り付けられる。薬剤送達器具は、虹彩の下及び水晶体嚢の上に配置してもよい。水晶体嚢は、水晶体又は人工レンズを収容している場合もあれば、レンズを収容していない場合もある。
【0008】
図3A図3Dに示すように、一次器具である眼用インプラントシステム20は、レンズ24、1つ又は複数のタブ26及び1つ又は複数のハプティック28を有するIOLアセンブリ22と、1つ又は複数の二次器具30とを備えている。眼用インプラント20は、前面20A及び後面20Pを有している。他の実施形態では、眼用インプラント20は、二次器具を所定位置に保持するための水晶体嚢張力リング又は水晶体嚢足場材等の他の器具を備えてもよい。
【0009】
二次器具30は、タブ26に装着(好ましくは、離脱可能に装着)されるように構成された薬剤送達器具である。タブ26は、IOLアセンブリ22の一部であり、IOL22のレンズ部24の周縁から径方向外向きに延びている。タブ26は、IOLレンズ24の平面又は平行な平面に沿って外向きに延びており、好適には、当該平面においてハプティック28が延在する距離よりも短い距離にわたって径方向外向きに延在している。好適には、ハプティック28も、IOLレンズの平面又は平行な平面に延在している。ハプティック28の外向きに延びる長さは、システムが移植されたときにハプティック28が水晶体嚢に当接できる長さに設定されている。これに対し、薬剤送達器具30の径方向外向きの長さは、移植されたIOLに装着された状態において、ハプティックよりも短いことが好ましく、これによって、水晶体嚢の赤道部に、薬剤送達器具が当接することが避けられる。図3Aに示されるタブ26は、IOLの周縁の第1の小円弧61に沿って延びる径方向内側位置(この例ではIOLの周縁)から径方向外側に延びる第1の径方向部分60を有している。また、タブ26は、第1の径方向部分からさらに径方向外側に延在する第2の径方向部分62も有している。第2の径方向部分62は、IOLレンズ22Lの周縁に対応し、第1の径方向部分の第1の小円弧61よりも大きい第2の円弧63に沿って延在している。
【0010】
図3Bに示される対応する薬剤送達器具は、開口部65を有する固定部64を備えている。開口部65は、例えばスロット、穴又はコンパートメントであり、径方向内面66から径方向外側に器具内を延び、径方向外面67(内面66の反対側)まで貫通している。開口部65はタブに対応してタブを受容するように構成されており、第2の径方向部分62が弾性的に圧縮されて第1の形状をとることによって開口部65内を通過する。開口部から外側に延びたタブの第2の径方向部分62は、開口部よりも大きい又は広い第2の形状に弾性的に戻る。その結果、タブは、開口部との組み合わせによって、薬剤送達器具をIOLアセンブリに固定するように機能する。(逆に、薬剤送達器具(30)の固定部(64)を、タブ(26)の第2の径方向部分(62)上で伸びる第1の形状に弾性的に伸張するとともに、タブ(26)の第2の径方向部分(62)よりも狭い第2の形状に弾性的に戻るように構成してもよい。)固定部は、追加の締結要素や、一般的に使用される把持具及び/又は操作フック以外の道具を使用することなく、タブに対する薬剤送達器具の離脱可能な取り付け及び取り外しを可能にするように、図示のように構成してもよいし、薬剤送達器具から後方に延びる係止リングとして構成してもよいし、タブに対する留め具、締結具又は保持具として別の形状に構成してもよい。図3Cに、IOLアセンブリに薬剤送達器具が固定されたシステムを示す。図3Dは、2つのタブのそれぞれに第1の薬剤送達器具が配置された状態のシステムを示している。
【0011】
薬剤送達器具は治療薬を備えている。治療薬は、薬剤送達器具の全体を構成していてもよいし、固定部64の前方の薬剤送達器具の前部68(パッド等)を構成していてもよいし、薬剤送達器具全体又は薬剤送達器具の前部(パッド等)を構成する薬剤溶出マトリックス内に埋め込まれていてもよい。
【0012】
眼内インプラントシステムは、角膜の縁部の小さい切開部を介して患者の眼に導入され、患者の水晶体嚢に導入される。薬剤送達器具を最初に配置する際には、薬剤送達器具及びIOLアセンブリを眼球内に配置する前に、薬剤送達器具をIOLアセンブリに固定し、組み立てられたシステムを折り畳んで切開部を通過させた後に、水晶体嚢の中で解放してもよい。また、薬剤送達器具を最初に配置する際には、IOLを眼球内に挿入した後に薬剤送達器具をIOLアセンブリに固定してもよい。この場合は、まずIOLを切開部から挿入して水晶体嚢内で解放する。次いで、切開部を介して薬剤送達器具を挿入し、固定部をタブ上に滑り込ませることによって薬剤送達器具をタブ及びIOLアセンブリに固定するように薬剤送達器具を操作する。元から移植されていた第1の薬剤送達器具が、溶出又は生体腐食のいずれかによって枯渇した際には、後続の外科手術を行うことによって、医師が角膜の境界部に別の切開部を形成して元の第1の薬剤送達器具を除去し、把持具を使用して新しい第1の薬剤送達器具を挿入してタブ及びIOLアセンブリに固定する。元の第1の薬剤送達器具の除去及び新しい第1の薬剤送達器具との交換は、例えば、元の第1の薬剤送達器具が消耗又は枯渇したタイミングで行ってもよいし、元の第1の薬剤送達器具を、別の治療薬を備えた新しい第1の薬剤送達器具に交換することが適切であるタイミングで行ってもよい。また、第1の薬剤送達器具を移植するために形成された切開部が治癒した後であって、新しい切開部を形成する必要があるタイミングで行ってもよい。外科手術においては、必要に応じて、医師は把持具を挿入して、第1の薬剤送達器具をタブ及びIOLアセンブリから取り外して眼球の外に出す。次いで、新しい薬剤送達器具を挿入し、把持具を使用して新しい薬剤送達器具をタブの上に滑り込ませてIOLアセンブリに固定するように操作する。
【0013】
図4A図4Eに示される実施形態では、眼用インプラント20は、レンズ24、タブ26及びハプティック28を備えたIOLアセンブリと、二次器具30とを備えている。眼用インプラント20は、前面20A及び後面20Pを有している。他の実施形態では、眼用インプラント20は、二次器具を所定位置に保持するための水晶体嚢張力リング又は水晶体嚢足場材等の他の器具を備えてもよい。
【0014】
二次器具30は、図3A図3Dに示すように、タブ26に装着(好ましくは、離脱可能に装着)されるように構成された薬剤送達器具である。タブ26は、IOLアセンブリ22の一部であり、IOL22のレンズ部24の周縁から径方向外向きに延びている。タブは、IOLレンズ24の平面又は平行な平面に沿って外向きに延びており、好適には、当該平面においてハプティック28が延在する距離よりも短い距離にわたって前方にも延在している。好適には、ハプティック28も、IOLレンズ24の平面又は平行な平面に延在している。ハプティックの外向きに延びる長さは、システムが移植されたときにハプティックが水晶体嚢に当接できる長さに設定されている。これに対し、薬剤送達器具の径方向外向きの長さは、移植されたIOLに装着された状態において、ハプティックよりも短く、これによって、水晶体嚢の赤道部に薬剤送達器具が当接することが避けられる。図4Aに示されるタブ26は、IOLの周縁の第1の小円弧61に沿って延びる径方向内側位置(この例ではIOLの周縁)から径方向外側に延びる第1の径方向部分60を有している。また、タブ26は、第1の径方向部分からさらに径方向外側に延在する第2の径方向部分62も有している。第2の径方向部分62は、IOLの周縁に対応し、第1の径方向部分の第1の小円弧61よりも大きい第2の円弧63に沿って延在している。
【0015】
図4Bに示される対応する薬剤送達器具は、開口部65を有する固定部64を備えている。開口部65は、例えばスロット、穴又はコンパートメントであり、径方向内面66から径方向外側に器具内を延び、好適には、径方向外面67まで貫通している。開口部はタブに対応してタブを受容するように構成されており、第2の径方向部分62が圧縮されて第1の形状をとることによって開口部内を通過する。開口部から外側に延びたタブの第2の径方向部分62は、開口部よりも大きい又は広い第2の形状に弾性的に戻る。その結果、タブは、開口部との組み合わせによって、薬剤送達器具をIOLアセンブリに固定するように機能する。(逆に、薬剤送達器具(71)の固定部(64)を、タブ(26)の第2の径方向部分(62)上で伸びる第1の形状に弾性的に伸張するとともに、タブ(26)の第2の径方向部分(62)よりも狭い第2の形状に弾性的に戻るように構成してもよい。)固定部は、追加の締結要素や、一般的に使用される把持具及び/又は操作フック以外の道具を使用することなく、タブに対する薬剤送達器具の離脱可能な取り付け及び取り外しを可能にするように、図示のように構成してもよいし、薬剤送達器具から後方に延びる係止リングとして構成してもよいし、タブに対する留め具、締結具又は保持具として別の形状に構成してもよい。図4Dに、IOLアセンブリに薬剤送達器具が固定されたシステムを示す。図4Eは、2つのタブのそれぞれに第1の薬剤送達器具が配置された状態のシステムを示している。
【0016】
図4Bの薬剤送達器具71は、(好適には)径方向内面に開口又は穴を有するコンパートメント72も備えている。コンパートメント72は、図4Cに示す第3の器具73と嵌合するように構成されている。第3の器具は、治療薬を有する第2の薬剤送達器具であり、治療薬は、第2の薬剤送達器具の全体を構成していてもよい。又は、第2の薬剤送達器具は、治療薬が埋め込まれた薬剤溶出マトリックスを備えていてもよく、薬剤溶出マトリックスは、第2の薬剤送達器具の全体を構成していてもよい。
【0017】
図4Cに、図4Bに示す第1の薬剤送達器具との使用に適した第2の薬剤送達器具73を示す。図示されるように、第2の薬剤送達器具は、第1の薬剤送達器具のコンパートメント72に対してコンパートメント内で摩擦嵌合するように構成された薬剤パッドとして構成してもよく、又は、眼内での使用に適した他の離脱可能な装着手段(例えば、一方の構成要素に設けられた小さい戻り止めと、他方に設けられた戻り止め用凹部等)として構成してもよい。図4A図4Eに示される例では、第2の薬剤送達器具は、第1の円弧75に対する内縁74と、第1の円弧よりも小さい第2の円弧77に対する外縁76とを有している。また、コンパートメント72は第1の円弧に近似する、対応する開口又は穴を有しており、開口又は穴は第2の円弧に近似する間隔まで狭くなっている。これによって、コンパートメントに対する第2の薬剤送達器具の挿入を容易にしながらも、第2の薬剤送達器具の摩擦嵌合を達成できる。第2の薬剤送達器具は、内縁部の近傍にピンホール78を有している。ピンホール78は、ピンホールとの係合に適した道具(例えば眼用フック)を受容できる大きさを有している。この道具を用いて第2の薬剤送達器具を操作することによって、コンパートメントに対する第2の薬剤送達器具の出し入れが行われる。上記構成を有する第2の薬剤送達器具は、IOLの移植前にコンパートメント内に挿入してもよいし、周術期の時間枠(すなわち、IOLが挿入される同じ外科手術の経過中)においてIOL挿入の直後に挿入してもよい。また、第2の薬剤送達器具は、IOL及び第1の薬剤送達器具が移植された後に眼球内に挿入して、コンパートメントに挿入してもよい。また、IOLを挿入した外科手術から長期間を経た後に、第2の薬剤送達器具に最初に埋め込まれていた治療薬の大部分が溶出した場合には、第2の外科手術において第2の薬剤送達器具を除去し、新しい第2の薬剤送達器具と交換してもよい。図4Dに、IOLアセンブリ、第1の薬剤送達器具及び第2の薬剤送達器具を含む、組み立てられた眼用インプラントを示す。図4Eは、2つのタブのそれぞれに第1及び第2の薬剤送達器具が配置された状態のシステムを示している。
【0018】
図4A図4Eの眼内インプラントシステムは、角膜の縁部の小さい切開部を介して患者の眼球に導入され、患者の水晶体嚢に導入される。薬剤送達器具を最初に配置する際には、薬剤送達器具及びIOLアセンブリを眼球内に配置する前に、薬剤送達器具をIOLアセンブリに固定し、組み立てられたシステムを折り畳んで切開部を通過させた後に、水晶体嚢の中で解放してもよい。同様に、第2の薬剤送達器具(薬剤パッド)は、第1及び第2の薬剤送達器具を眼球内に挿入する前又は後に、第1の薬剤送達器具内に固定してもよい。また、薬剤送達器具を最初に配置する際には、第1の薬剤送達器具を眼球内に挿入した後に第2の薬剤送達器具を第1の薬剤送達器具に固定してもよい。この場合は、まず第1の薬剤送達器具を切開部から挿入して水晶体嚢内で解放する。次いで、切開部を介して薬剤送達器具を挿入し、第2の薬剤送達器具を操作して第1の薬剤送達器具のコンパートメント72内に挿入する。第2の薬剤送達器具が、溶出又は生体腐食のいずれかによって枯渇した際には、後続の外科手術を行うことによって、医師が角膜の境界部に別の切開部を形成して第2の薬剤送達器具を除去し、把持具を使用して新しい第2の薬剤送達器具をコンパートメント72内に挿入及び固定する。必要に応じて、医師は把持具を挿入して、元の第2の薬剤送達器具を第1の薬剤送達器具のコンパートメントから取り外して眼球の外に出す。新しい第2の薬剤送達器具を挿入して、把持具を使用して新しい第2の薬剤送達器具をコンパートメント内に滑り込ませて第1の薬剤送達器具に固定するように操作する。
【0019】
第2の薬剤送達器具の生体内での除去及び配置(又は交換)は、レンズ、第1の薬剤送達器具又はレンズもしくは第1の薬剤送達器具上の第2の薬剤送達器具に対して、後方又は前方に力を加えることなく実行でき、また、回転力を加えることなく実行できる。移植されたレンズ及び第1の薬剤送達器具のアセンブリから第2の薬剤送達器具を取り外す際には、医師は、角膜の第1及び第2の薬剤送達器具とは反対側における角膜と強膜との間の切開部を介して単一の道具(シンスキーフック又は把持具)を挿入して、道具を第2の薬剤送達器具に固定し、第2の薬剤送達器具に径方向内向きの引っ張り力を加えてコンパートメントから慎重に引き出し、解放された第2の薬剤送達器具を引き続けて切開部を介して眼球の外に出す。医師は、同じ切開部又は第2の切開部を介して第2の道具を眼球内に挿入して、レンズ及び/又は第1の薬剤送達器具を所定の位置に保持することによって、水晶体嚢の付着部分に対するレンズ及び/又は第1の薬剤送達器具の移動、伸張又は圧縮を避けることができる。
【0020】
移植されたレンズ及び第1の薬剤送達器具のアセンブリの空のコンパートメントに第2の薬剤送達器具を配置する際には、医師は、切開部を介して第2の薬剤送達器具を挿入し、角膜の第1の薬剤送達器具及び空のコンパートメントとは反対側における角膜と強膜との間の切開部を介して単一の道具(シンスキーフック又は把持具)を挿入して、第2の薬剤送達器具を空のコンパートメント内に押し、第2の薬剤送達器具に径方向外向きの力を加えて、コンパートメント内に慎重に押し込む。医師は、同じ切開部又は第2の切開部を介して第2の道具を眼球内に挿入して、レンズ及び/又は第1の薬剤送達器具を所定の位置に保持することによって、水晶体嚢の付着部分に対するレンズ及び/又は第1の薬剤送達器具の移動、伸張又は圧縮を避けることができる。
【0021】
コンパートメントに対する第2の薬剤送達器具の除去及び配置の両方において、医師は、残っている前嚢又は後嚢の付着部分に対して、システムの構成要素の移動、伸張又は圧縮を発生させることなく、除去及び配置を行うことができる。
【0022】
レンズの後面ならびに第1の薬剤送達器具の後面及び前面は、水晶体嚢切開によってすでに弱くなっている水晶体嚢に付着しているが、上記方法は、付着したレンズ又は第1の薬剤送達器具の押圧、引張又は回転を回避できるという利点を備えている。このため、水晶体嚢がさらに破壊されることや、水晶体嚢を毛様体の筋肉に付着させている繊細な小帯(水晶体の懸垂靭帯)が損傷することや、良好なPCO縁部が破壊されて水晶体上皮細胞が縁部を越えて移動して、後嚢混濁を発生させること(二次白内障)等のリスクがない。
【0023】
同様に、第1の薬剤送達器具の生体内での除去及び配置(又は交換)は、レンズ又は第1の薬剤送達器具に後方又は前方に力を加えることなく実行でき、また、回転力を加えることなく実行できる。残存前嚢(嚢切開(穴)の形成後に残存している水晶体嚢の前部の一部の環状部)の、レンズ又は第1の薬剤送達器具の前面に対する付着の状態に応じて、医師は、レンズに対する後嚢の付着に影響を与えることなく、カニューレを介して粘弾性ゲルを注入して残存前嚢を緩める必要がある場合もある。第1の薬剤送達器具が残存前嚢に付着していない状態(癒着が起こらなかったため、又は医師が残存前嚢を緩めたため)で、医師は、角膜の第1の薬剤送達器具とは反対側における角膜と強膜との間の切開部を介して道具(把持具、鉗子等)を挿入し、第1の薬剤送達器具を径方向外向きに押してタブから外す。解放された第1の薬剤送達器具に対して道具を固定して、第1の薬剤送達器具に径方向内向きの引っ張り力を加えて水晶体嚢の中心に向かって慎重に引き、解放された第1の薬剤送達器具を引き続けて切開部を介して眼球の外に出す。タブからの第1の薬剤送達器具の取り外しを容易にし、必要とされる径方向の力を小さくするために、まず切開部を介して切削具を眼球に挿入し、部分的又は全体的に固定部64の側部要素又は前部68を切断して、第1の薬剤送達器具とタブとの間の固定を緩めてもよい。
【0024】
移植されたレンズの空いているタブに対して第1の薬剤送達器具を配置する際には、医師は、切開部を介して第1の薬剤送達器具を挿入し、角膜の空いているタブとは反対側で角膜と強膜との間の切開部を介して単一の道具(把持具、鉗子等)を挿入し、第1の薬剤送達器具を空いているタブの径方向外向きに押す。次に、第1の薬剤送達器具を径方向内向きに後方に引っ張り、空いているタブ上に滑り込ませ、第1の薬剤送達器具に径方向内向きの力を加えて、第1の薬剤送達器具に空いているタブを慎重に引き込む。医師は、同じ切開部又は第2の切開部を介して第2の道具を眼球内に挿入して、レンズを所定の位置に保持することによって、水晶体嚢の付着部分に対するレンズの移動、伸張又は圧縮を避けることができる。
【0025】
径方向の力を加えるだけで取り外し及び交換ができるという効果を有しているため、第1の薬剤送達器具の径方向内側面に開口しているコンパートメントが第2の薬剤送達器具を保持するという第1の薬剤送達器具の効果は、第1の薬剤送達器具の径方向内側面に開口を有する固定部の有無を問わず得ることができる。したがって、第1の薬剤送達器具は、レンズに取り付けるための任意の手段を備えていてもよい(さらには、レンズに恒久的に取り付けられてもよいし、レンズと一体的に形成されてもよい)。また、第1の薬剤送達器具のコンパートメントは、レンズの前方に配置され(移植後)、第2の薬剤送達器具を受容するように構成され、第1の薬剤送達器具の径方向内側面に開口を有していてもよい。
【0026】
上記の各実施形態において、図3A図3Dの薬剤送達器具又は図4A図4Eの第2の薬剤送達器具(薬剤パッド)は、様々な状態を治療するために様々な治療薬を送達するように構成できる。緑内障を治療するために、ブリモニジン、ラタノプロスト、チモロール、ピロカルピン、ブリンゾラミドならびにβ遮断薬、アルファアゴニスト、ROCK阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、アドレナリン受容体、コリン受容体活性化剤及びプロスタグランジン類似体等の一般的な分類に属する他の薬剤を薬剤送達器具に組み込むことができる。湿性黄斑変性症の治療には、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ステロイド及びアプタマー等を薬剤送達器具に組み込むことができる。乾性黄斑変性症の治療には、補体因子、抗酸化剤及び抗炎症剤等を薬剤送達器具に組み込むことができる。ブドウ膜炎の治療には、メトトレキサート、抗体、デキサメタゾン、トリアムシノロン及び他のステロイド剤を薬剤送達器具に組み込むことができる。後嚢混濁の治療には、抗増殖剤、抗有糸分裂剤、抗炎症剤及び水晶体上皮細胞の移動を阻害する他の薬剤を薬剤送達器具に組み込むことができる。白内障手術後の術後管理のためには、フルオロキノロン等の抗生物質、ケトロラク等の非ステロイド剤及びプレドニゾロン等のステロイドを薬剤送達器具に組み込むことができる。
【0027】
器具及び方法の好ましい実施形態について、開発された環境を参照して説明したが、上記説明は、本発明の原理の単なる例示である。様々な実施形態の要素は、他の種類の要素と組み合わせることによってそれらの要素の利点を得ることができ、様々な有益な特徴は、実施形態において単独又は互いに組み合わせて採用できる。本発明の精神及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び構成を考案することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
【国際調査報告】