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特表2023-529384フィットネスのモニタリング装置及びトラッキング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】フィットネスのモニタリング装置及びトラッキング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20230703BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20230703BHJP
   A63B 71/08 20060101ALI20230703BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20230703BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/0245 P
A61B5/02 310F
A63B71/08 Z
A63B71/06 J
A63B69/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575219
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 GB2021051317
(87)【国際公開番号】W WO2021245384
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】2008477.8
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】522473210
【氏名又は名称】オーブ イノベーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ORB INNOVATIONS LTD
【住所又は居所原語表記】49 Philpot Street London E1 2JH (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】パターソン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クイン,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AA12
4C017AB10
4C017AC28
4C017BC11
(57)【要約】
フィットネストラッキング及び/又はモニタリングシステム用のマウスピースであって、使用時に、ユーザの口内に装着される形状及び構成の固定部材を含み、固定部材は、その間に生理学的センサを有する少なくとも2層のエラストマー材料で形成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィットネストラッキング及び/又はモニタリングシステム用のマウスピースであって、当該マウスピースは、使用時に、ユーザの口内に装着される形状及び構成の固定部材を備え、当該固定部材は、間に生理学的センサを有する少なくとも2層のエラストマー材料で形成されている、
マウスピース。
【請求項2】
前記センサが、ユーザの心拍数(及び/又は他の心肺信号)を示す信号を生成するように構成されている、
請求項1記載のマウスピース。
【請求項3】
前記センサは、使用時に、ユーザの口の中の領域に光を照射する光源と、ユーザの口の中の前記領域からの反射光を受光し、それを示す電気信号を生成するセンサとを含む、光電センサである、
請求項2記載のマウスピース。
【請求項4】
エラストマー材料からなる少なくとも2つの層のうちの少なくとも1つの層であって、ユーザの口の内面に最も近い層が実質的に透明である、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項5】
エラストマー材料からなる2つの層のうちの少なくとも1つの層であって、ユーザの口の内面から最も遠い層が実質的に不透明である、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項6】
エラストマー材料は、エラストマー重合体である、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項7】
前記エラストマー重合体がエチレンビニルアセテートである、
請求項6に記載のマウスピース。
【請求項8】
前記センサは、使用時に、ユーザの口蓋に隣接するように前記固定部材内に配置される、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項9】
前記センサは、基板に組み込まれ、
前記基板は、さらに、制御モジュール、電源ユニット、およびメモリモジュールを含む、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項10】
前記基板は、前記センサによって生成された信号を示すデータをリモート受信機に無線送信するように構成された無線通信モジュール及びアンテナ、をさらに内蔵する、
請求項9に記載のマウスピース。
【請求項11】
前記センサが、第1の細長いフレキシブルコネクタの一端に組み込まれている、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項12】
前記第1の細長いフレキシブルコネクタの他端に第2の細長いフレキシブルコネクタが設けられるか又は一体的に形成され、
前記第2の細長いフレキシブルコネクタには、その一端に制御モジュール、電源ユニット、メモリモジュール、無線通信モジュール及び無線通信アンテナの少なくとも一つ以上が組み込まれる、
請求項11に記載のマウスピース。
【請求項13】
前記第1及び第2の細長いフレキシブルコネクタは、合わさって実質的にT字型のコネクタを形成する、
請求項11又は請求項12に記載のマウスピース。
【請求項14】
複数の生理学的センサが、エラストマー材料からなる前記第1及び第2の層の間のフレキシブルコネクタに設けられる、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項15】
前記複数のセンサは、心拍数モニタ及び加速度計を備える又は含む、
請求項14に記載のマウスピース。
【請求項16】
前記心拍数モニタは、光電センサを備える、
請求項15に記載のマウスピース。
【請求項17】
前記固定部材がエラストマー材料からなる少なくとも2つの層で形成されており、前記センサが前記少なくとも2つの層の間に配置される、
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項18】
使用時に、固定部材とユーザの歯及び歯肉にフィットするように構成された取り外し可能なマウスガード又はガムシールド装置、をさらに備える、
請求項17に記載のマウスピース。
【請求項19】
前記固定部材がエラストマー材料からなる少なくとも3つの層で形成されており、前記センサは、使用時にユーザの口の内面に最も近い第1層と第2層の間に位置し、第3層は前記第2層の上に形成される、
前記請求項1乃至8のいずれかに記載のマウスピース。
【請求項20】
前記センサは光電センサをからなり、
前記第1層及び第3層が実質的に透明であり、
前記第2層が実質的に不透明である、
請求項19に記載のマウスピース。
【請求項21】
前記光電センサは、フレキシブルコネクタに設けられ、使用時に、ユーザの口蓋に隣接して配置されるように、前記固定部材内に配置されている、
請求項20に記載のマウスピース。
【請求項22】
先行する請求項のいずれかに記載のマウスピースと、
未使用時に、前記マウスピースを収納するための収納ケースと、を備えるマウスピースアセンブリであって、
前記マウスピースは、無線充電システムの受信要素を備え、
前記収納ケースは、無線充電システムの送信要素を備え、
前記マウスピースが前記収納ケース内に位置するとき、前記送信要素が前記受信要素の隣に配置される、
マウスピースアセンブリ。
【請求項23】
前記受信素子は、前記少なくとも2つのエラストマー材料からなる層の間に位置するフレキシブルプリント回路基板上にプリントまたは他の方法で設けられた導電性コイルからなり、
前記送信素子は、複数の重なり合う導電性コイルからなる、
請求項22に記載のマウスピースアセンブリ。
【請求項24】
請求項1から21のいずれかに記載の少なくとも1つのマウスピースと、
前記少なくとも1つのマウスピースのセンサから生理データを受信するための受信機と、
前記生理データを分析し、前記ユーザ又は各ユーザのフィットネス及び/又はパフォーマンスを示す出力を提供するための分析プラットフォームと、を備える、
フィットネストラッキング及び/又はモニタリングシステム。
【請求項25】
フィットネストラッキング及び/又はモニタリングシステム用のマウスピースを製造する方法であって、
ユーザの歯及び歯肉の正型又はこれに合った型を形成すること、
前記型の上にエラストマー材料からなる第1の層を形成すること、
前記エラストマー材料からなる第1の層に生理学的センサ回路を固定すること、
前記生理学的センサ回路の上にエラストマー材料からなる第2の層を形成すること、を含む、
マウスピースの製造方法。
【請求項26】
前記第1の層は実質的に透明であり、
前記第2の層は実質的に不透明であり、
前記センサ回路は、光源と、光電センサと、使用時に、前記センサによって生成された信号を示すデータをリモート受信機に無線送信するための無線通信モジュールと、を備える、
請求項25に記載のマウスピースの製造方法。
【請求項27】
前記第1の層及び第2の層は実質的に透明であり、
前記センサ回路は、光源と、光電センサと、前記センサによって生成された信号を示すデータをリモート受信機に無線送信するための無線通信モジュールと、を備える、
請求項26に記載のマウスピースの製造方法。
【請求項28】
前記マウスピースを含む、ユーザの歯および歯肉の正型またはこれに合った型を形成すること、
前記型の上にマウスガード装置を形成すること、をさらに含む、
請求項27に記載のマウスピースの製造方法。
【請求項29】
前記第2の層の上にエラストマー材料からなる第3の実質的に透明な層を形成すること、をさらに含む、
請求項27または請求項28に記載のマウスピースの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスポーツやその他の活動で使用され、ユーザの心拍数(および/またはその他の心肺信号)などのフィットネスおよびその他の生理学的指標を監視するためのウェアラブルなフィットネスのトラッキング装置および/またはモニタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィットネスのトラッキング装置は広く知られているとおり、ユーザのフィットネス関連の指標を監視し、フィットネスおよび/またはパフォーマンスに関するフィードバックを提供するために使用されている。 実際、例えばアスリートのフィットネス、疲労、取り組みをトレーニング中や試合中に監視し、パフォーマンスに関する重要な洞察を提供したり、怪我のリスクを軽減したりすることが望まれている。
【0003】
例えば、心拍数モニタは、ヘルスモニタリング、スポーツトレーニング、フィットネスなどの用途で心拍数(および/または他の心肺信号)を測定するために使用されることが知られている。ユーザの心拍数(及び/又は他の心肺信号)を常時モニタリングできる従来の装置は、最近までかなり面倒なものであった。例えば、心拍数モニタは、心電図信号を用いることが多く、電極やストラップを胸部に装着する必要がある。
【0004】
心拍数のモニタリングには、光電センサを用いたパルスオキシメトリーによる方法がより手軽である。 光電センサは、指や耳たぶなどのユーザの組織を透過する光の吸収量を非侵襲的に測定し、動脈血の酸素飽和度や心拍数を測定する。得られる信号は光電式容積脈波(PPG)と呼ばれ、PPG信号を分析することで、特にPPGセンサが取り付けられた人の心拍数(および/または他の心肺信号)を測定できる。
【0005】
従来、パルスオキシメトリーでは、良好なPPG信号が得られるよう、ユーザはあまり動かないでいる必要があった。動いている人にPPGセンサを使用すると、センサの変位、PPG信号の動きによるアーチファクトまたはノイズにより、ユーザの推定心拍数(および/または他の心肺信号)が不正確となる可能性がある。
【0006】
米国特許第10,456,053号は、PPGセンサおよび慣性センサを含む手首装着型心拍数モニタを記載しており、慣性センサからの信号は、PPG信号からノイズを識別および除去するために使用される。初期心拍値は、結果として得られるPPGスペクトルに残る多数の心拍候補から選択され、ユーザの心拍を追跡するために使用される。 心拍数(及び/又は他の心肺信号)を追跡しながらPPGスペクトルを監視し、選択された初期心拍数値がエラーであるかどうかを判断する。PPGスペクトルは監視され、必要に応じて心拍値がリセットされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このタイプの手首装着型PPGセンサは、フィットネストラッキングウォッチなどの中でますます普及しつつある。しかしながら、腕時計又は他の手首装着型デバイスは、装着者又は他のプレーヤーに怪我をさせる可能性があるため、ラグビーなどのコンタクトスポーツを行う際には、しばしば実用的ではない(又は許可されない)。さらに、手首装着型フィットネストラッカーは、モニタリング信号からノイズを除去するソフトウェアを用いたとしても、少なくとも一部の用途では、非常に効果的なフィットネストラッキングを行うには必ずしも十分な精度が得られない場合がある。
【0008】
プロスポーツにおけるパフォーマンストラッキングは、現在、GPSトラッカーや胸部装着型心拍数モニタなどのウェアラブル端末、および/またはビデオ分析によって実現されている。しかしながら、そのようなウェアラブル端末は、動きを制限することが知られており、また、それらはすべて、身体がどのように反応しているかではなく、アスリートに何が起こっているかを測定するもので、このようなウェアラブル端末はすべて衣類内または皮膚(例えば、胸ストラップ)に配置されるので、使用中に動いてしまい、不正確なセンサ測定につながる。
【0009】
したがって、コンタクトスポーツ中及び/又は長期間にわたって装着するのに便利で安全であって、ユーザのフィットネス、パフォーマンス及び/又は健康を監視するのに使用できる正確な生理学的信号を提供する、正確でユーザ装着型のフィットネス及び/又はパフォーマンスのトラッキング装置を提供することが望まれており、本発明の態様は、これらの問題の少なくとも1以上を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、フィットネスのトラッキング及び/又はモニタリングシステム用のマウスピースが提供され、当該マウスピースは、使用時に、ユーザの口内に装着される形状及び構成の固定部材を備え、当該固定部材は、間に生理学的センサを有する少なくとも2層のエラストマー材料で形成されている。
【0011】
好ましい実施形態において、センサは、ユーザの心拍数(及び/又は他の心肺信号)を示す信号を生成するように構成されてもよい。センサは、有益には、使用時に、ユーザの口の中の領域に光を照射する光源と、ユーザの口の中の前記領域からの反射光を受光し、それを示す電気信号を生成するセンサとを含む光電センサから構成されてもよい。
【0012】
エラストマー材料からなる少なくとも2つの層のうちの少なくとも1つの層であって、ユーザの口の内面に最も近い層は、使用時、実質的に透明であってもよい。エラストマー材料からなる2つの層のうちの少なくとも1つの層であって、ユーザの口の内面から最も遠い層は、使用時、実質的に不透明であってもよい。したがって、センサが光電(PPG)センサである場合、内側の層は、ユーザの皮膚への光の通過及び血管(複数可)からの反射光のセンサへの戻りを許容し、外側の層は、ユーザの口に入る周囲の光がセンサの精度に干渉することを防止する。
【0013】
エラストマー材料は、有益には、エチレンビニルアセテート(EVA)といったエラストマー重合体である。
センサは、有益には、使用時に、ユーザの口蓋に隣接して配置されるように、前記固定部材内に配置される。本発明者らは、驚くべきことに、ユーザの口蓋から得ることができるPPG信号は、ユーザの口の他の領域から得ることができる信号よりも明瞭であり、より安定していることを発見した。
【0014】
センサは、有益には、基板に組み込まれてもよく、前記基板は、さらに、制御モジュール、電源ユニット及びメモリモジュールを組み込んでいる。 基板(例えば、プリント回路基板またはPCB)は、前記センサによって生成された信号を示すデータを遠隔受信機に無線送信するように構成された無線通信モジュール及びアンテナをさらに内蔵してもよい。このように、マウスピースが装着されている間、センサによって生成された生理学的データは、実質的にリアルタイムで収集することができる。
【0015】
例示的な実施形態では、センサは、第1の細長いフレキシブルコネクタの一端に組み込まれてもよい。 第2の細長いフレキシブルコネクタは、第1の細長いフレキシブルコネクタの他端(実質的にそれに対して直角)に設けられるか又は一体的に形成されてもよく、当該第2の細長いフレキシブルコネクタには、制御モジュール、電源ユニット、メモリモジュール、無線通信モジュール及び無線通信アンテナの少なくとも一つ以上がその一端において組み込んまれていてもよい。前記第1及び第2の細長いフレキシブルコネクタは、合わさって実質的にT字型のフレキシブルコネクタを形成してもよい。したがって、例示的な実施形態では、PPGセンサは、(使用時に、ユーザの口蓋に隣接して配置されるように)T字型フレキシブルコネクタの中央の「脚」の自由端に配置することができ、他のセンサおよび電子部品は、T字型フレキシブルコネクタの「腕」の自由端に配置することができる。 他のセンサは、衝撃を測定するための加速度計を含むことができる。
【0016】
固定部材は、いくつかの実施形態において、エラストマー材料からなる少なくとも3つの層で形成されてもよく、前記センサは、使用時にユーザの口の内面に最も近い第1層及び第2の層の間に配置され、第3の層が前記第2の層の上に形成されている。また、センサは、有益には、光電センサからなり、前記第1及び第3の層は、実質的に透明であり、前記第2の層は、実質的に不透明である。また、光電センサは、フレキシブルコネクタ上に設けられ、使用時に、ユーザの口蓋に隣接して配置されるように、固定部材内に配置されてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、実質的に上記のようなマウスピースと、不使用時に前記マウスピースを収容するための収納ケースとを備えるマウスピースアセンブリであって、マウスピースは、無線充電システムの受信要素を備え、前記収納ケースは、無線充電システムの送信要素を備え、前記マウスピースが収納ケース内に位置するときに、前記送信要素が前記受信要素の隣に配置されるマウスピースアセンブリが提供される。
【0018】
前記受信素子は、前記少なくとも2層のエラストマー材料間に位置するフレキシブルプリント基板にプリントされるなどして設けられた導電性コイルからなり、前記送信素子は、複数の重なり合う導電性コイルからなるものであってもよい。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、実質的に上記のような少なくとも1つのマウスピースと、前記少なくとも1つのマウスピースのセンサから生理学的データを受信するための受信機と、前記生理学的データを分析し、ユーザ又は各ユーザのフィットネス及び/又はパフォーマンスを示す出力を提供するための分析プラットフォームとを備えるフィットネストラッキング及び/又はモニタリングシステムが提供される。
【0020】
本発明の第4の態様によれば、フィットネストラッキング及び/又はモニタリングシステム用のマウスピースを製造する方法が提供され、この方法は、ユーザの歯及び歯肉の正型又はこれに合った型を形成することと、前記型の上にエラストマー材料からなる第1の層を形成することと、前記エラストマー材料の第1の層に生理学的センサ回路を固定することと、前記生理学的センサ回路の上にエラストマー材料からなる第2の層を形成することと、を含んでいる。
【0021】
前述と同様に、第1の層は実質的に透明であってもよく、前記第2の層は実質的に不透明であってもよく、前記センサ回路は、光源、光電センサ、及び使用時に、前記センサによって生成された信号を示すデータをリモート受信機に無線送信するための無線通信モジュールを備えてもよい。
【0022】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
次に、本発明の実施形態を、例としてのみ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1】本発明の例示的な実施形態に係るフィットネストラッキングシステムの模式図である。
図2】本発明の例示的な実施形態に係るマウスピースのためのPCBの主要な構成要素を示す概略図である。
図3】本発明の例示的な実施形態に係るマウスピースの模式的な断面図である。
図4】本発明の例示的な実施形態に係るフィットネストラッキング/モニタリングシステムによって得られるPPGセンサデータの説明図である。
図5】本発明の例示的な実施形態に係るマウスピースのためのPCBの平面図である。
図6】本発明の例示的な実施形態に係るフィットネストラッキング/モニタリングシステムのマウスピースおよび収納ケースの概略透視図である。
図7】本発明の例示的な実施形態に係るマウスピースにおける組み込みファームウェアの機能を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面の図1を参照すると、本発明の例示的な実施形態に係るパフォーマンスモニタリングシステムは、エッジデバイス12に通信可能に接続された(または接続可能な)1または複数のヘルストラッキング装置10を備える。エッジデバイス12は、クラウド処理/ストレージ装置14に通信可能に接続され、ヘルストラッキングデバイス(複数可)によって収集された生理学的データを処理及び分析し、例えば関連アプリを介してアクセスされるリモートウェブベース分析プラットフォーム上のダッシュボード16にパフォーマンストラッキングデータを出力する。使用しないときには、1つ以上のヘルストラッキング装置を保管すると共に、(オプションで)充電する収納ケース18が提供されてもよい。
【0026】
各ヘルストラッキング装置10は、スポーツマウスガード、ガムシールド、いびきまたは睡眠時無呼吸症候群を緩和または治療するために用いられるような歯列矯正器具、固定器具などのマウスピースに埋め込まれた、1または複数のセンサを組み込んだプリント回路基板(PCB)から構成されている。このようなマウスピースは、汎用品であってもよいし、ユーザの口に合うように作られたものであってもよい。PCB上のセンサは、マウスピースが装着されている間に得られた生理学的信号を生成し、この信号(又はその代表的なデータ)をエッジデバイス12に無線送信する。エッジデバイス12の主な目的は、使用中のマウスピースからデータを受信し、そのデータをローカルに保存し、及び/又はクラウド14にアップロードすることである。 従って、マウスピース10と分析プラットフォームとの間の「ゲートウェイ」として機能する。ユーザのマウスピースのデータは、クラウド(又はローカル)コンピューティングプラットフォーム14によって処理及び分析され、ウェブベースのダッシュボード16によって、ユーザはパーソナルコンピュータ、タブレット、電話または任意のウェブブラウザ上で、実質的にリアルタイムで自分のデータと分析結果を見ることができる。
【0027】
図面の図2に示すように、本発明の例示的な実施形態に係るマウスピースに埋め込まれたPCBは、Bluetooth Low Energy(BLE)、または他の無線通信、モジュール24、及びBLE(または他の無線通信技術)アンテナ26を有するマイクロコントローラ(MCU)212から構成されてもよい。PCB20はまた、電源ユニット(PSU)28、外付けフラッシュメモリモジュール30、Led 32、慣性計測ユニット(IMU)34、高衝撃加速度計(HIA)36、およびパルスオキシメータ(PPG)センサ38を有する。PSU28は、MCUモジュール212、IMU34、HIA36、PPGセンサ38、LED32、及び外付けフラッシュメモリモジュール30に電気的に接続され、エネルギーを供給する。
【0028】
IMU34は、3軸磁力計、3軸加速度計、および3軸ジャイロスコープから構成されてもよく、これらは、一緒に使用されて、力、回転、および方向に関してプレーヤーの頭部への衝撃を示すデータを生成するために使用することができる。HIA36は、IMUよりもはるかに大きな衝撃を検出するために使用することができる。パルスオキシメータおよび心拍センサ38は、ユーザの微小血管床の組織における血液量の変化を表すPPGを得るために使用される。 PPGセンサ38は、(LED32からの)光源をユーザの口の中の領域、例えば口蓋に照射し、反射してセンサに戻ってくる緑色光、赤色光、および赤外光の振幅を、それぞれ537nm、660nm、88nmの範囲で測定することによってPPGを得るように動作する。これにより、以下の表に示すように、先行技術の装置によっては通常、スポーツ中にリアルタイムで得ることができないパラメータを収集することができる。
【0029】
【表1】
【0030】
表1 本発明の実施形態から得られる可能性のあるパラメータ/洞察のリスト
【0031】
図面の図3及び図4を参照すると、マウスピースは、複数の薄い層からなる材料で構成される。 外側の保護層40は、実質的に透明である(すなわち、光が透過可能である)。 中間層42は、黒色または非常に暗い色であり、光が透過するのを実質的に阻止する。(使用者の歯及び歯肉に最も近い)内側の層44は、実質的に透明である(すなわち、光が透過可能である)。 情報及び/又はロゴを伝えるラベル41は、外側の層40と中間の黒色の層42との間に「挟まれる」ことがある。LED32及びPPGセンサ38を含むPCB20は、黒色の層42と内側の透明な層44との間に「挟まれる」。したがって、ユーザの口に入るいかなる周囲の光46も、黒色の層42によって遮断され、したがって、PPGセンサ38に対する干渉を防ぐことができる。LED32からの光(10nmから3000nmの間)は、内側の層44を通してユーザの皮膚48に照射され、その下の口組織50を通して(1または複数の)血管52に照射され、反射光はPPGセンサ38に戻り、反射した緑色光54、赤色光56および赤外線58の光の振幅を測定でき、こうして得られたデータの一例は、図面の図4に図示された通りである。
【0032】
PSU28は、例えば、38mAhのリチウムポリマー電池からなり、例えば、共振するコイルを用いた無線充電装置によって充電することができ、エネルギーの伝達はコイル間の磁気誘導によって行われる。
【0033】
従来のマウスガードは、歯と歯茎の型を取り、その上にエチレンビニルアセテート(EVA)樹脂を加熱・真空成型したものを何層にも重ね合わせることで形成されている。その後、EVAの層は、滑らかな表面に仕上げるために、(各層の形成の間に)トリミングされ、研磨される。本発明の実施形態に係るマウスガードまたはマウスピースは、以下のように製造することができる。第1のステップにおいて、ユーザの歯および歯肉の押込み金型が、任意の既知の方法で製造される。 次に、EVAの第1の透明な層44を加熱して金型上に真空形成し、既知の方法でトリミングおよび研磨を行う。次に、PCB20を第1の層44に貼り付け、PPGセンサ38を「歯」の下で口蓋領域に位置決めする。この例示的な実施形態では、PPG信号はユーザの口蓋から取得されるところ、驚くべきことに、十分に明確で安定した結果をもたらすことが本発明者らによって発見された。 しかしながら、PCB20は、理論的には、ユーザの口の別の部分からPPG信号を得ることができるようにマウスピースに配置することができる。次に、EVAの黒色の層42が、第1の層44とPCB20の上に加熱および真空形成され、それからトリミングおよび研磨される。必要に応じて、黒色の層42にラベル/ロゴを貼り付けてもよい。最後に、EVAの第3の透明な層40を、黒色の層42およびラベル/ロゴ(存在する場合)の上に加熱および真空形成し、それから前の工程と同様にトリミングおよび研磨するとデバイスが完成する。
【0034】
代替する例示的な製造方法においては、第2及び第3の層40、42は、まず黒色のEVA層42をその融点まで加熱し、次に、任意のラベル/ロゴをそこに重ね、最後に第3の層40をゆっくりと積層させることによって形成することができる。
【0035】
PCB20は、例えばポリイミドフレキシブルPCB材料からなるフレキシブルコネクタによって接続された3つの別々のセクションに「分割」されるように構成されてもよい。図面の図5に示すように、PCB20は、実質的に「T字型」のフレキシブルPCB60の周りに設けられ、LED32、外付けフラッシュメモリ30及びPSU28は、フレキシブルPCBの一の「アーム」の端部のマイクロチップ上に設けられ、HIA、IMU及びMCUモジュールは、フレキシブルPCBの他の「アーム」の端部のマイクロチップ上に設けられ、PPGセンサはフレキシブルPCB60の中央の「脚部」の端部に設けられる。
【0036】
PSU28の充電は、2組の導電性コイルを用いたワイヤレス充電によって行われてもよい。導電性コイルの一方は、マウスピース10内のPCB20に組み込まれてリチウムポリマー電池に電気的に接続され、他方は、(例えば)収納ケース内に設けられて(例えばUSB(または他の)充電ケーブル(不図示)によって)電源に電気的に接続される。 図面の図6を参照すると、(例えばプラスチック製の)収納ケース70にマウスピース10が収納される。第1のコイル72がマウスピース10内に設けられ、当該コイルは、例えば、銅線を用いてPCB20上にプリントされてもよい。ぴったり合うように特注されたマウスピースの固有の形状および構成を考慮して、収納ケース70は、それぞれのマウスピース10が収納ケース70の凹部内にしっかりと収まるように、ユーザの歯および歯肉の陰型を形成する凹部を有していてもよい。凹部は、必要に応じて抗菌性材料でコーティングされてもよい。もっとも、収納ケース70の外観構成は、例えば直方体の箱状など、おおよそ一般的なものである。したがって、無線充電装置の送信素子は、様々なマウスピースの形状に合うように構成される必要がある。この問題に対処するために、ワイヤレス充電配置の送信素子は、例えば銅線を用い、薄い(わずかに柔軟な)PCB76上にプリントされた複数の重なり合うコイル74(マウスピースの位置決めにおけるずれを許容するためである)から構成されている。ケースは、複数の個々の収納ケースまたはマウスピースを同時に収納および/または充電するために「ドッキング」するように構成されてもよい。
【0037】
マウスピース10又は各マウスピース10のMCU21は、組み込まれたファームウェアを実行することにより、センサ(PPG、IMU、HIA)からサンプリングしたデータを実装されているフラッシュメモリモジュール30に保存し、そのデータをエッジデバイス12に送信するように構成されている。各マウスピース(例えばスポーツ用マウスガード)は少なくとも、使用中にデータをサンプリングして記録する「ゲーム」(又はデータ収集)モード/状態と、何も実行せずに省電力状態に最適化された「待機」モード/状態とを有する。図面の図7では、ファームウェア構成のフローチャートが一例として示されている。必要な動作モードの決定は、ユーザがボタン('オン/オフ'ボタン)を押すことによって行われてもよい。あるいは、モード間の変更は、非活動期間の後のマウスピースの移動(又は充電ステーションからの取り外し)に応じて(「ゲーム」モードへの切り替え)、又は所定時間の非活動及び/又は充電のためのマウスピースの「ドッキング」(「待機」モードへの切り替え)に応じて行われてもよい。
【0038】
代替し得る例示的な実施形態では、PCB20は、歯のホワイトニング、歯の矯正又は保護に一般的に使用されるような固定器具に又は固定器具上に取り付けられてもよい。このようなマウスピースは、非常に薄い形状であるため、ユーザの呼吸や発話が著しく損なわれるようなことはなく、接触スポーツであろうとなかろうと、あらゆる活動時に装着し得る。この場合、PCBは上述と同様の方法により、EVAプラスチックなどの材料からなる2つの層の間に挟まれる。どちらの層も透明にしてもよいが、理論的には、外側の層は所望により、より暗い材料で形成してもよい。このように、固定器具により、より合理化されたマウスガードを提供する一方で、上述のようなセンサの機能を提供することができる。この場合、固定器具とユーザの歯にフィットするように被せられるマウスガードは、ユーザがコンタクトスポーツに参加する際、固定器具の上に装着できる。
【0039】
前述の説明から、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に修正および変形を加えることができることは、当業者には明らかである。上記の詳細な説明においては、スポーツマウスガードが特に参照および説明されている。しかしながら、本発明は、様々な目的のために使用される歯科用または歯列矯正用固定器具を含む他のタイプの口に装着するデバイスにPPG測定機能を提供するように適合させることができ、本発明は、この点で必ずしも限定されることが意図されたものではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】