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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】防腐食二酸化チタン顔料
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/36 20060101AFI20230703BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230703BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230703BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230703BHJP
【FI】
C09C1/36
C09D201/00
C09D5/02
C09D7/62
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575266
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 US2021046007
(87)【国際公開番号】W WO2022036260
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】63/065,834
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500002799
【氏名又は名称】トロノックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ス、 クアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラジュ、 ヴェンカタ ラマ ラオ
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA22
4J037CA12
4J037CA24
4J037CB09
4J037CB16
4J037CB22
4J037DD15
4J037EE03
4J037EE12
4J037EE43
4J037FF15
4J037FF24
4J038HA166
4J038KA05
4J038KA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA24
4J038PA18
(57)【要約】
水性コーティング組成物に使用するための防腐食顔料が本明細書において提供される。開示されている防腐食顔料は、複数の二酸化チタン粒子;二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;および二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含む。顔料は乾燥形態である。水性コーティング組成物、水性コーティング組成物に使用するための乾燥防腐食顔料を形成する方法、および水性コーティング組成物を形成する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性コーティング組成物のための防腐食顔料であって、
複数の二酸化チタン粒子;
前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;および
前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含み、
ここで、前記有機分散剤は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記低分子量有機分散剤が、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子であり;
前記有機ポリマー分散剤が、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子であり;
前記顔料が、乾燥形態である、
防腐食顔料。
【請求項2】
前記二酸化チタン粒子が、その表面上に堆積された少なくとも1つの無機コーティングを有し、前記無機コーティング(単数または複数)が、金属酸化物コーティング、金属水酸化物コーティング、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項3】
前記無機コーティング(単数または複数)が、シリカコーティング、アルミナコーティング、ジルコニウムコーティング、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の防腐食顔料。
【請求項4】
前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンが、アルキルヒドロキシルアミン、芳香族ヒドロキシルアミン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項5】
前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンが、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-ブチル-ジエタノールアミン、ジメチルグルカミン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の防腐食顔料。
【請求項6】
前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記ホスホン酸およびホスホン酸塩が、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項7】
前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記リン酸およびリン酸塩が、アルコールのリン酸エステルおよび混合エステル、アルコールエトキシレートのリン酸エステルおよび混合エステル、そのような化合物の塩、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項8】
前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する化合物の前記ホスホネート型のカルボン酸およびホスホネート型のカルボン酸塩が、ホスホネート型のトリカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項9】
前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する化合物の前記ホスホネート型のカルボン酸およびホスホネート型のカルボン酸塩が、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の防腐食顔料。
【請求項10】
前記ポリマー分子の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記ホスホン酸が、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む有機ホスホン酸のモノマー、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物である、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項11】
前記ポリマー分子の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記リン酸が、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むアルコールのリン酸エステルおよび混合エステル、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むアルコールエトキシレートのリン酸エステルおよび混合エステル、そのような化合物の塩、ならびにそれらの混合物のモノマーである、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項12】
前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールをさらに含む、請求項1に記載の防腐食顔料。
【請求項13】
前記多価アルコール(単数または複数)が、アルキル直鎖ポリオール、アルキル分枝鎖ポリオール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の防腐食顔料。
【請求項14】
前記多価アルコール(単数または複数)が、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、マンニトール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の防腐食顔料。
【請求項15】
水性混合物と;
前記水性混合物中に分散した防腐食顔料と
を含む水性コーティング組成物であって、
前記防腐食顔料は、
複数の二酸化チタン粒子;
前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;および
前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含み、
ここで、前記有機分散剤は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記低分子量有機分散剤が、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子であり;
前記有機ポリマー分散剤が、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である、
水性コーティング組成物。
【請求項16】
前記防腐食顔料が、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールをさらに含む、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項17】
水性コーティング組成物に使用するための乾燥防腐食顔料を形成する方法であって、
複数の二酸化チタン粒子を準備すること;
少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミンを準備すること;
少なくとも1つの有機分散剤を準備すること;
前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンを、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること;および
前記有機分散剤を、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること;ならびに
前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンおよび前記有機分散剤をその上に有する前記二酸化チタン粒子を乾燥させて、前記乾燥防腐食顔料を形成すること
を含み、
ここで、前記有機分散剤は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記低分子量有機分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子であり;
前記有機ポリマー分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である、
方法。
【請求項18】
前記二酸化チタン粒子が、未処理の二酸化チタン粒子である、請求項17に記載の方法であって、
前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンおよび前記有機分散剤を、前記未処理の二酸化チタン粒子の表面上に堆積させる前に、前記二酸化チタン粒子を所望の粒径に粉砕し、前記粉砕した二酸化チタン粒子をフィルターにかけ、洗浄して、湿った顔料フィルターケーキを形成すること
をさらに含み;
ここで、前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンおよび前記有機分散剤が、前記分散剤パッケージを前記湿った顔料フィルターケーキと混合することによって、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積される、
方法。
【請求項19】
前記湿った顔料フィルターケーキを乾燥させて、乾燥した顔料フィルターケーキを形成すること;
前記乾燥した顔料フィルターケーキを破砕して、破砕した顔料フィルターケーキを形成すること;および
前記破砕したフィルターケーキを蒸気微粒子化して、前記防腐食顔料を形成すること
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水性混合物を準備すること;
乾燥形態である防腐食顔料を準備すること;および
前記防腐食顔料を前記水性混合物中に分散させること、
を含む、水性コーティング組成物を形成する方法であって、
前記防腐食顔料は、
複数の二酸化チタン粒子;
前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;および
前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤
を含み、
ここで、前記有機分散剤は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記低分子量有機分散剤が、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子であり;
前記有機ポリマー分散剤が、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本出願は、先に出願された、2020年8月14日出願の米国仮出願第63/065,834号(参照によりその全体が本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタン(TiO2)は、多くの種類の製品(水性インク、ラテックス塗料、紙、およびプラスチックを含む)に使用するための、効果的な無機顔料である。例えば、二酸化チタンは、非常に効果的な白色不透明化剤である。二酸化チタンは、硫酸法または塩化物法のいずれかによって形成することができ、典型的には粉末形態で製造される。
【0003】
二酸化チタンを製造するための硫酸法においては、チタンスラグ鉱石を硫酸に溶解して、硫酸チタンを形成する。次いで、硫酸チタンを加水分解して、水和二酸化チタンを形成する。水和二酸化チタンをか焼炉内で加熱して、二酸化チタン結晶を顔料の大きさまで成長させる。
【0004】
二酸化チタンを製造するための塩化物法においては、乾燥二酸化チタン鉱石を、コークスおよび塩素と一緒にクロリネーター内に供給して、気体のハロゲン化チタン(四塩化チタンなど)を生成させる。生成したハロゲン化チタンを、特別に設計された反応装置内で、高温で精製および酸化して、所望の粒径を有する二酸化チタン粒子を生成させる。典型的には、塩化アルミニウムまたは他の何らかの共酸化剤を前記酸化反応装置内のハロゲン化チタンに加えて、ルチル形成および粒径制御を促進する。次いで、二酸化チタンおよび気体の反応生成物を冷却し、二酸化チタン粒子を回収する。
【0005】
硫酸法によって生成させた場合であっても、塩化物法によって生成させた場合であっても、生成した二酸化チタン粒子は、典型的には、1つまたは複数の無機材料でコーティングし、特定の用途に適合するように、顔料の特性および特徴を改変または増強させる。例えば、顔料粒子は、顔料の不透明度、光安定性および耐久性を改善する機能を果たす化合物でコーティングされることが多い。二酸化チタン顔料をコーティングするために使用される無機材料としては、例えば、アルミナ、シリカおよびジルコニアがあげられる。
【0006】
二酸化チタン顔料が塗料、紙、プラスチックおよび他の製品に寄与する主要な特性は、隠蔽力(不透明度とも呼ばれる)である。二酸化チタン顔料の隠蔽力は、顔料が有する、ベースプロダクト(例えば、ラテックス塗料配合物)中の光を散乱させる能力に基づくものである。この顔料が有する、顔料が加えられるベースプロダクト中の光を散乱させる能力(言い換えると、顔料の光散乱効率)は、種々の因子(顔料の粒径、顔料粒子と周囲環境の屈折率の違い(例えば、顔料粒子とベースプロダクトの屈折率の違いが大きいと、散乱効率が大きくなる)、および顔料粒子同士の近接性が含まれる)に依存する。
【0007】
あまり知られていないが、修飾された二酸化チタン顔料は、金属下地用のコーティング中で、腐食(corrosion)防止剤としても機能し得る。実際に、修飾された二酸化チタン顔料がもたらし得る隠蔽力のために、防腐食二酸化チタン顔料は、しばしば、より伝統的な防腐食顔料の代わりに使用される。
【0008】
伝統的に、金属下地は、鉛系顔料およびクロム系顔料などの防腐食顔料によってコーティングが施されてきた。鉛系顔料およびクロム系顔料は、腐食の防止に非常に有効であり得る。しかしながら、そのような顔料は毒性のある重金属に基づいているという事実が問題となり得る。
【0009】
このため、例えば、リン酸金属塩(例えば、リン酸亜鉛)、モリブデン酸塩およびケイ酸カルシウムに基づく、より低毒性の防腐食顔料が開発されてきた。残念なことに、これらの種類の顔料は製造コストが高くなり得、かつ、典型的には大きな粒径(例えば、1ミクロンより大きい)を有し得る。例えば、隠蔽力および不透明度を欠くために、このような顔料は、ハイグロスラテックス塗料配合物に使用するためには不適切であることが多い。さらに、これまでに開発された防腐食二酸化チタン顔料の多くは、溶剤系でのみ有効である。塗料およびその他のコーティングは、溶剤系から水性系に移るのが趨勢となっている。しかしながら、水性系で使用するための防腐食顔料を形成することは、必要とされる成分の多くが水の影響を受けやすく、したがって腐食防止に適していないため、困難であり得る。
【0010】
よって、水性コーティングにおいて効果的な防腐食二酸化チタン顔料の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様において、水性コーティング組成物のための防腐食顔料が提供される。前記防腐食顔料は、複数の二酸化チタン粒子;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;および前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含む。前記有機分散剤は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される。前記低分子量有機分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子である。前記有機ポリマー分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である。前記顔料は、乾燥形態である。
【0012】
第2の態様において、水性コーティング組成物が提供される。前記水性コーティング組成物は、水性混合物;および前記水性混合物中に分散した防腐食顔料を含む。前記防腐食顔料は、上記第1の態様の防腐食顔料である。
【0013】
第3の態様において、水性コーティング組成物に使用するための乾燥防腐食顔料を形成する方法が提供される。前記方法によって形成される乾燥防腐食顔料は、上記第1の態様の防腐食顔料である。
【0014】
第4の態様において、水性コーティング組成物を形成する方法が提供される。前記方法によって形成される前記水性コーティング組成物は、上記第2の態様の水性コーティング組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本開示は、この詳細な説明、ならびに本明細書に含まれている実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。多数の具体的な詳細が、本開示の種々の態様の十分な理解を可能にするために記載されている。しかしながら、特許請求されている対象はこれらの具体的な詳細点なしで実施され得ることが、当業者によって理解されるであろう。他の例において、説明されている関係のある重要な特徴を不明瞭にすることを避けるために、方法、手順およびコンポーネントは詳細には説明されていない。この詳細な説明は、特許請求の範囲を限定するものと理解すべきものではない。本明細書において開示されている対象は、本開示の恩恵を受けた当事者にとって明らかであろうように、多くの改変、変更、組合せ、および同等物が可能である。
【0016】
本明細書に範囲が開示されている場合はいつでも、範囲は、その範囲内に列挙されている任意の2つの数字間に及ぶ範囲のあらゆる数を、独立的かつ個別的に含む。さらに、任意の範囲の下限および上限の数は、記載されているその範囲内に含まれるものと理解すべきである。
【0017】
別段の指示がないかぎり、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されている、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数値は、全ての例において、用語「約」によって修飾されているものと理解すべきである。
【0018】
一態様において、水性コーティング組成物に使用するための防腐食顔料が本明細書において提供される。別の態様において、水性コーティング組成物が提供される。さらに別の態様において、水性コーティング組成物に使用するための乾燥防腐食顔料を形成する方法が提供される。さらに別の態様において、水性金属下地コーティング組成物を形成する方法が提供される。
【0019】
本明細書において開示されている水性コーティング組成物に使用するための防腐食顔料は、複数の二酸化チタン粒子;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;および前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含む。前記有機分散剤は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される。前記低分子量有機分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子である。前記有機ポリマー分散剤は、ホスホン酸、リン酸、そのような化合物の塩、ホスホネート型のカルボン酸、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である。前記顔料は、乾燥形態である。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「水性コーティング組成物のための防腐食顔料」は、水性コーティング組成物に加えられた場合に、腐食性環境に曝露されることによって引き起こされる金属下地の腐食を前記コーティング組成物が適用された場合には減少させる顔料を意味する。「水性コーティング組成物」は、金属下地に適用される任意の水性コーティング組成物(それらに限定されないが、金属下地の腐食を減少させるという単一の目的で金属下地に適用される水性コーティング組成物、第2のコーティング組成物を適用する前にプレコートまたはベースコートとして金属下地に適用される水性コーティング組成物、および金属下地を塗装するために金属下地に適用される水性コーティング組成物(水性ラテックス塗料など)が含まれる)を意味する。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「金属下地」は、金属、合金またはそれらの組合せ(それらに限定されないが、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、および鋼を含む)から形成された任意の物品またはその表面を意味する。例えば、金属下地は、産業用装置または屋外用家具の一部であり得る。金属下地が曝され得る腐食性環境としては、例えば、高湿および/または高温などの苛酷な条件を有する環境、ならびに水、酸、塩、および/または腐食性の産業的汚染物質に曝される環境があげられる。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、語句「二酸化チタン粒子の表面上に堆積された」は、別段の記載がない限り、二酸化チタン粒子の表面上に直接的または間接的に堆積された、を意味する。
【0023】
例えば前記二酸化チタン粒子は、ルチル結晶構造、またはアナターゼ結晶構造とルチル結晶構造の組合せを有し得る。例えば、前記二酸化チタン粒子は、ルチル結晶構造を有し得る。前記二酸化チタン粒子は、前記塩化物法または前記硫酸法によって形成され得る。例えば、前記二酸化チタン粒子は、塩化物法によって形成され得る。例えば、前記二酸化チタン粒子は、硫酸法によって形成され得る。例えば、前記防腐食顔料は、乾燥粉末形態または乾燥顆粒形態であり得る。
【0024】
例えば、前記二酸化チタン粒子は、その表面上に堆積された少なくとも1つの無機コーティングを有し得る。例えば、前記無機コーティング(単数または複数)は、金属酸化物コーティング、金属水酸化物コーティング、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、前記無機コーティング(単数または複数)は、シリカコーティング、アルミナコーティング、リン酸アルミニウムコーティング、ジルコニアコーティング、チタニアコーティング、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、前記無機コーティング(単数または複数)は、シリカコーティング、アルミナコーティング、ジルコニアコーティング、およびそれらの組合せの群から選択され得る。
【0025】
前記無機コーティング(単数または複数)は、前記防腐食顔料が添加される特定の水性コーティング組成物に対して二酸化チタン粒子がより適合性になるように、1つまたは複数の特性および/または特徴を前記二酸化チタン粒子に付与するために使用され得る。例えば、前記無機コーティング(単数または複数)は、前記顔料粒子の湿潤性および分散性、ならびに前記顔料の不透明度、光安定性および耐久性の改善を助けるために使用され得る。
【0026】
例えば、前記無機コーティング(単数または複数)は、前記二酸化チタン粒子と前記無機コーティング(単数または複数)の合計重量を基準として、約0.5重量%~約15重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。例えば、前記無機コーティング(単数または複数)は、前記二酸化チタン粒子と前記無機コーティング(単数または複数)の合計重量を基準として、約1重量%~約10重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積され得る。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「不揮発性ヒドロキシルアミン」は、250℃以上の沸点を有するヒドロキシルアミンを意味する。ヒドロキシルアミンの「不揮発性」によって、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された場合に、ヒドロキシルアミンを安定に保つことが可能になる。
【0028】
上述のように、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミンを含む。例えば、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.1重量%~約0.8重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミンを含み得る。例えば、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.1重量%~約0.6重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミンを含み得る。
【0029】
例えば、前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンは、アルキルヒドロキシルアミン(alkyl amine hydroxyls)、芳香族ヒドロキシルアミン(aromatic amine hydroxyls)、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンは、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-ブチル-ジエタノールアミン、ジメチルグルカミン、およびそれらの組合せからなる群から選択される。前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンとして、またはその一部として使用するために適切なジメチルグルカミンの例は、Genamin(登録商標)Gluco 50という商標で、Clariant Corporationが販売している。
【0030】
上述のように、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含む。例えば、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.04重量%~約0.8重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含み得る。例えば、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.04重量%~約0.6重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤を含み得る。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「低分子量有機分散剤」は、1000以下の分子量を有する有機分散剤を意味する。化合物の「分子量」は、化合物の数平均分子量を意味する。1つまたは複数の官能基を含む前記低分子量有機分散剤分子は、ポリマー分子、非ポリマー分子およびそれらの組合せであり得る。例えば、1つまたは複数の官能基を含む前記低分子量有機分散剤分子は、ポリマー分子である。例えば、1つまたは複数の官能基を含む前記低分子量有機分散剤分子は、非ポリマー分子である。
【0032】
例えば、前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記ホスホン酸およびホスホン酸塩は、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。例えば、前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記リン酸およびリン酸塩は、アルコールのリン酸エステルおよび混合エステル、アルコールエトキシレートのリン酸エステルおよび混合エステル、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。例えば、前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記ホスホネート型のカルボン酸およびホスホネート型のカルボン酸塩は、ホスホネート型のトリカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。例えば、前記低分子量有機分散剤の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記ホスホネート型のカルボン酸およびホスホネート型のカルボン酸塩は、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「ポリマー」は、重合によって形成され反復するサブユニット(モノマーとも呼ばれる)を有する化合物または化合物の混合物を意味する。別段の記載がない限り、用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含み(include)、かつ包含する(encompass)。用語「コポリマー」は、重合によって形成され、連結してポリマー鎖を形成する2つ以上の異なる種類のサブユニット(モノマーとも呼ばれる)を有する化合物または化合物の混合物を意味する。
【0034】
例えば、前記ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む前記ポリマー分子はポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸コポリマーの塩、マレイン酸コポリマー、マレイン酸コポリマーの塩、ならびにそれらの組合せの群から選択され得る。例えば、適切なホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む適切なポリマー分子はスルホン化スチレン/無水マレイン酸コポリマーである。
【0035】
例えば、前記ポリマー分子の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記ホスホン酸は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む有機ホスホン酸のモノマー、そのような化合物の塩およびそれらの混合物であり得る。例えば、前記ポリマー分子の前記官能基が由来する前記化合物の群の前記リン酸は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むアルコールのリン酸エステルおよび混合エステル、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むアルコールエトキシレートのリン酸エステルおよび混合エステル、そのような化合物の塩、およびそれらの混合物のモノマーであり得る。
【0036】
例えば、一実施形態において、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールをさらに含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、多価アルコールコンポーネントは、2つ以上のヒドロキシ(―OH)基を含む有機化合物を意味する。
【0037】
例えば、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約0.8重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールをさらに含み得る。例えば、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約0.6重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールをさらに含み得る。例えば、前記防腐食顔料は、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.1重量%~約0.6重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールをさらに含み得る。
【0038】
例えば、前記多価アルコール(単数または複数)は、アルキル直鎖ポリオール、アルキル分枝鎖ポリオール、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、前記多価アルコール(単数または複数)は、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリスリトール、マンニトール、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、前記多価アルコール(単数または複数)は、グリセロールであり得る。
【0039】
例えば、下記の実施例によって示されるように、水性コーティング組成物に加えられた場合、本明細書において開示されている防腐食顔料は、腐食性環境に曝露されることによって引き起こされる金属下地の腐食を前記コーティング組成物が適用された場合に効果的に減少させ得る。前記防腐食顔料はまた、水性コーティング組成物に隠蔽力を付与し、このことはラテックス塗料配合物に関して特に有用である。
【0040】
本明細書において開示されている水性コーティング組成物は、水性混合物、および前記水性混合物中に分散した防腐食顔料を含む。前記水性コーティング組成物を形成するために使用される前記防腐食顔料は、本明細書において開示されている防腐食顔料であり、上に記載されている。例えば、前記防腐食顔料は、前記水性混合物中に分散される前には乾燥形態である。
【0041】
例えば、前記水性混合物は、水、界面活性剤および分散剤を含み得る。例えば、前記水性混合物は、ラテックス樹脂水性混合物であり得る。
【0042】
上記のように、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「水性コーティング組成物」は、金属下地に適用される任意の水性コーティング組成物(それらに限定されないが、金属下地の腐食を減少させるという単一の目的で金属下地に適用される水性コーティング組成物、第2のコーティング組成物を適用する前にプレコートまたはベースコートとして金属下地に適用される水性コーティング組成物、および金属下地を塗装するために金属下地に適用される水性コーティング組成物(水性ラテックス塗料など)が含まれる)を意味する。例えば、前記水性コーティング組成物は、ラテックス塗料配合物であり得る。
【0043】
上記のように、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「金属下地」は、金属、合金またはそれらの組合せ(それらに限定されないが、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、および鋼を含む)から形成された任意の物品またはその表面を意味する。例えば、金属下地は、産業用装置または屋外用家具の一部であり得る。金属下地が曝され得る腐食性環境としては、例えば、高湿および/または高温などの苛酷な条件を有する環境、水、酸、塩、および/または腐食性の産業的汚染物質に曝される環境があげられる。
【0044】
本明細書において開示されている水性コーティング組成物において使用するための乾燥防腐食顔料を形成する前記方法は、複数の二酸化チタン粒子を準備すること;少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミンを準備すること;少なくとも1つの有機分散剤を準備すること;前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)を、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の量で、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること;前記有機分散剤(単数または複数)を、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の量で、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること;前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)および前記有機分散剤(単数または複数)をその上に有する前記二酸化チタン粒子を乾燥させて、乾燥防腐食顔料を形成すること、を含む。前記二酸化チタン粒子、不揮発性の有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)、および有機分散剤(単数または複数)は、上記の乾燥防腐食顔料に関連して上に記載されている前記二酸化チタン粒子、不揮発性の有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)、および有機分散剤(単数または複数)と同じであり、本明細書において開示されている。同様に、前記方法によって形成される前記防腐食顔料は、本明細書において開示されている前記防腐食顔料であり、上に記載されている。
【0045】
例えば、前記二酸化チタン粒子は未処理(raw)の二酸化チタン粒子であり得、前記方法は、前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンおよび前記有機分散剤を前記未処理の二酸化チタン粒子の表面上に堆積させる前に、前記二酸化チタン粒子を粉砕して所望の粒径にし、前記粉砕した二酸化チタン粒子をフィルターにかけ、洗浄して、湿った顔料フィルターケーキを形成することをさらに含むことができ、
ここで、前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミンおよび前記有機分散剤は、分散剤パッケージを前記湿った顔料フィルターケーキと混合することによって、前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積される。
【0046】
前記未処理の二酸化チタン粒子は、粉砕される前に、無機コーティング(例えば、シリカ、アルミナおよび/またはジルコニアコーティング)によってコーティングされ得る。
【0047】
例えば、前記方法は、
前記湿った顔料フィルターケーキを乾燥させて、乾燥した顔料フィルターケーキを形成すること;
前記乾燥した顔料フィルターケーキを破砕して、破砕した顔料フィルターケーキを形成すること;および
前記破砕したフィルターケーキを蒸気微粒子化して、前記防腐食顔料を形成すること、
をさらに含み得る。
【0048】
例えば、一実施形態において、本明細書において開示されている水性コーティング組成物において使用するための乾燥防腐食顔料を形成する前記方法は、少なくとも1つの多価アルコールを準備すること;および前記多価アルコール(単数または複数)を、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させることをさらに含む。この実施形態において、前記多価アルコール(単数または複数)、前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)、前記有機分散剤(単数または複数)および前記多価アルコール(単数または複数)をその上に堆積させて有する前記二酸化チタン粒子を乾燥させる。前記有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)は、上記の乾燥防腐食顔料に関連して上に記載されている前記有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)と同じであり、本明細書において開示されている。同様に前記方法によって形成される前記防腐食顔料は、本明細書において開示されている前記防腐食顔料であり、上に記載されている。
【0049】
本明細書において開示されている水性コーティング組成物を形成する前記方法は、水性混合物を準備すること;防腐食顔料を準備すること(前記防腐食顔料は、乾燥形態である);および前記防腐食顔料を前記水性混合物中に分散させること、を含む。
【0050】
例えば、前記方法において使用される前記水性混合物は、水、界面活性剤および分散剤を含み得る。例えば、前記方法において使用される前記水性混合物は、ラテックス樹脂水性混合物であり得る。
【0051】
前記方法において使用される前記防腐食顔料は、上記の防腐食顔料と同じであり、本明細書において開示されている。前記方法によって形成される前記水性コーティング組成物は、上記の水性コーティング組成物であり、本明細書において開示されている。
【0052】
例えば、一実施形態において、水性コーティング組成物のための防腐食顔料が提供される。この実施形態において、前記防腐食顔料は、複数の二酸化チタン粒子;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤;および前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールを含む。前記有機分散剤(単数または複数)は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される。前記低分子量有機分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子である。前記有機ポリマー分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である。前記顔料は、乾燥形態である。
【0053】
例えば、別の実施形態において、水性コーティング組成物が提供される。この実施形態において、前記水性コーティング組成物は、水性混合物;および前記水性混合物中に分散した防腐食顔料を含む。前記防腐食顔料は、複数の二酸化チタン粒子;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤;および前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールを含む。前記有機分散剤(単数または複数)は、低分子量分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される。前記低分子量有機分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子である。前記有機ポリマー分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である。前記顔料は、乾燥形態である。
【0054】
さらに別の実施形態において、水性コーティング組成物に使用するための乾燥防腐食顔料を形成する方法が提供される。この実施形態において、前記水性コーティング組成物に使用するための乾燥防腐食顔料は、複数の二酸化チタン粒子を準備すること;少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミンを準備すること;少なくとも1つの有機分散剤を準備すること;少なくとも1つの多価アルコールを準備すること;前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)を、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること;前記有機分散剤(単数または複数)を、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること;前記多価アルコール(単数または複数)を、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の量で前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積させること;および前記前記不揮発性の有機ヒドロキシルアミン(単数または複数)、前記有機分散剤(単数または複数)および前記多価アルコール(単数または複数)をその上に堆積させて有する前記二酸化チタン粒子を乾燥させて、前記乾燥防腐食顔料を形成すること、を含む。前記有機分散剤(単数または複数)は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択され、前記低分子量有機分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子である。前記有機ポリマー分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である。前記方法によって形成される前記顔料は、乾燥形態である。
【0055】
さらに別の実施形態において、水性コーティング組成物を形成する方法が提供される。この実施形態において、水性コーティング組成物を形成する前記方法は、水性混合物を準備すること;防腐食顔料を準備すること(前記防腐食顔料は、乾燥形態である);および前記防腐食顔料を前記水溶液中に分散させること、を含む。前記防腐食顔料は、複数の二酸化チタン粒子;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.05重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの不揮発性の有機ヒドロキシルアミン;前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.02重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの有機分散剤;および前記二酸化チタン粒子の表面上に堆積された、前記顔料の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の範囲の少なくとも1つの多価アルコールを含む。前記有機分散剤は、低分子量有機分散剤、有機ポリマー分散剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される。前記低分子量有機分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含む分子である。前記有機ポリマー分散剤は、ホスホン酸、リン酸、ホスホネート型のカルボン酸、そのような化合物の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される化合物に由来する1つまたは複数の官能基を含むポリマー分子である。
【0056】
以下の例証的な実施例は、本開示と一貫性のある特定の実施形態を例証するが、本開示または添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。濃度およびパーセンテージは、別段の指示がない限り、重量によるものである。
【実施例
【0057】
例1-シリカおよびアルミナ処理した二酸化チタンフィルターケーキの調製
結晶格子内に1.0%のアルミナを含む、塩化物法によって形成された粒子性の二酸化チタン顔料粒子を、0.075%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤の存在下で、分散液のpHを9.5以上に調節するために十分な量の水酸化ナトリウムと共に水に分散させて、固形物含有率が35%の水性分散液を得た。得られたスラリーを、Microtrac X100粒度測定装置で決定した場合に、前記二酸化チタン粒子の94%の粒径が0.63ミクロン未満になるまで、サンディングミリング(ジルコンサンドと顔料の重量比は4:1を用いた)にかけた。
【0058】
得られたスラリー(固形物含有率30%に希釈したもの)を75℃まで加熱し、次いで3.0重量%のケイ酸ナトリウム(最終的な顔料に対するシリカの重量として計算した)で処理した。このケイ酸ナトリウムは、20分間にわたって加えた。温度を75℃に保った状態で、濃硫酸をゆっくりと加えることによって、スラリーのpHをpH5.5に、55分間にわたってゆっくりと低下させた。このスラリーを15分間温浸した後、1.6重量%のアルミン酸ナトリウム(最終的な顔料に対するアルミナの重量として計算した)を、スラリーに10分間にわたって加えた。このスラリーのpHは、濃硫酸を同時に(concomitant)加えることによって、8.25~9.25に維持した。このスラリーを、75℃で15分間にわたって温浸した。次に、このスラリーのpHを、濃硫酸で6.2に調節した。このスラリーを、熱いうちに濾過した。得られたろ過物を(60℃に事前加熱しておいた)水で洗浄した。表面上にシリカおよびアルミニウムコーティングを有する前記二酸化チタン粒子を含む、湿った二酸化チタンフィルターケーキを得た。
【0059】
例2-対照二酸化チタン顔料の調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。このフィルターケーキに脱イオン水を加えて、顔料スラリーを形成した。次に、このスラリーに10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液を加えて、スラリー中に十分に混合した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0060】
例3-本明細書において開示されている防腐食二酸化チタン顔料の調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0gのグリセロール、4.0gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、1.75gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48gのPat-Add 603(Patcham Ltd.からのポリマー分散剤)を用いて、化学混合物を調製した。
【0061】
前記化学混合物を、次いで、前記フィルターケーキと混合した。このフィルターケーキを流動化して、追加の水を用いずにスラリーを形成した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0062】
例4-本明細書において開示されている防腐食二酸化チタン顔料の調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0gのグリセロール、5.0gのトリエタノールアミン、1.75gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48gのPat-Add 603(Patcham Ltd.からのポリマー分散剤)を用いて、化学混合物を調製した。
【0063】
前記化学混合物を、次いで、前記フィルターケーキと混合した。このフィルターケーキを流動化して、追加の水を用いずにスラリーを形成した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0064】
例5-本明細書において開示されている防腐食二酸化チタン顔料の調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0gのグリセロール、6.0gのトリイソプロパノールアミン、1.75gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48gのPat-Add 603(Patcham Ltd.からのポリマー分散剤)を用いて、化学混合物を調製した。
【0065】
前記化学混合物を、次いで、前記フィルターケーキと混合した。このフィルターケーキを流動化して、追加の水を用いずにスラリーを形成した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0066】
例6-二酸化チタンスラリーの調製
6a.例2の対照二酸化チタン顔料のためのスラリー調製:
例2の対照二酸化チタン顔料を、親水性のアクリル酸ベースのコポリマー分散剤およびヒドロキシルアミンベースの共分散剤と共に、脱イオン水で濡らした。この濡れた顔料を、次いで、Cowlesブレードで、高速で10分間粉砕した。このスラリーの固形物含有率を、76.5%に調整した。
【0067】
6b.例3~5の防腐食二酸化チタン顔料のスラリー調製
例3~5の各防腐食二酸化チタン顔料について、およそ300gの顔料を92.2gの脱イオン水に加え、プロペラブレードで撹拌した。得られた各スラリーの固形物含有率は、76.5%であった。
【0068】
例7-例6の二酸化チタン顔料スラリーの試験
例6において調製された各二酸化チタン顔料スラリーを用いて、金属に直接塗布できる(DTM(direct-to-metal))防腐食グロスラテックスコーティングを調製した。各コーティングの処方を下記表1に示す。
【0069】
「Avanse 200」は、Dow ChemicalからのDTMラテックス樹脂である。
【0070】
「Tamol 165A」は、Dow Chemicalからの疎水性分散剤である。
【0071】
Surfynol「CT-111」は、Evonikからの多目的界面活性剤である。
【0072】
「BYK-24」は、BYK Chemieからの消泡剤である。
【0073】
「Texanol」は、Eastmanからの合着剤である。
【0074】
「Acrysol RM-2020NPR」および「Acrysol RM-8W」は、Dow Chemicalからのレオロジー改質剤である。
【0075】
「Proxel GXL」は、LonzaからのBITベースの殺生物剤である。
【0076】
記載されているアンモニア溶液はpH調整剤であり、記載されている亜硝酸ナトリウムはフラッシュラスト防止剤である。
表1.水系DTMグロスラテックスコーティング配合物
【表1】
【0077】
得られたコーティングを、腐食試験用の4インチ×6インチのスチールQ-PANELに塗布した。スチールパネルはアセトンで2回脱脂した。この脱脂したスチールパネル上にコーティングフィルムを成形するために、6ミルのギャップを有する3インチのバード式ドローダウンバーを使用した。コーティングしたパネルを周囲条件下で1週間乾燥させた後、露出しているむき出しの金属をダクトテープでカバーし、次いでナイフを用いて、前記のコーティングフィルムを貫いてX字型の十字を切り取った。次いで、このコーティングしたパネルを600時間連続の塩水噴霧試験(ASTM B117法)にかけた。
【0078】
主要な国内のコーティング会社から市販されているDTMグロスラテックスコーティングを、参照として使用するために、同様の方法で試験した。
【0079】
このスチールパネルを錆について観察したところ、例3、4および5、3~5の防腐食顔料(本明細書において開示されている防腐食顔料)で形成されたDTMコーティングは、例2の対照顔料および市販のDTMグロスラテックスコーティングよりも、耐腐食性が非常に優れていることが明らかであった。
【0080】
例8-二酸化チタン顔料スラリーの試験
例2の対照二酸化チタン顔料および例3の防腐食二酸化チタン顔料を、金属に直接塗布できる(DTM(direct-to-metal))防腐食セミグロスラテックスコーティングを調製するために使用した。各コーティングの処方を下記表3に示す。
【0081】
「Tamol 165A」は、Dow Chemicalからの疎水性分散剤である。
【0082】
「Surfynol CT-111」は、Evonikからの多目的界面活性剤である。
【0083】
「Tego810」は、Evonikからの消泡剤である。
【0084】
「Minex7」は、Uniminからの増量剤である。
【0085】
「Avanse 200」は、Dow ChemicalからのDTMラテックス樹脂である。
【0086】
「BYK-24」は、BYK Chemieからの消泡剤である。
【0087】
「Texanol」は、Eastmanからの合着剤である。
【0088】
「Acrysol RM-2020NPR」および「Acrysol RM-8W」は、Dow Chemicalからのレオロジー改質剤である。
【0089】
「Proxel GXL」は、LonzaからのBITベースの殺生物剤である。
【0090】
記載されているアンモニア溶液はpH調整剤であり、記載されている亜硝酸ナトリウムはフラッシュラスト防止剤である。
表2.水系DTMセミグロスラテックス塗料配合物。
【表2】
【0091】
得られたコーティングを、腐食試験用の4インチ×6インチのスチールQ-PANELに塗布した。スチールパネルはアセトンで2回脱脂した。この脱脂したスチールパネル上にコーティングフィルムを成形するために、6ミルのギャップを有する3インチのバード式ドローダウンバーを使用した。コーティングしたパネルを周囲条件下で1週間乾燥させた後、露出しているむき出しの金属をダクトテープでカバーし、次いでナイフを用いて、前記のコーティングフィルムを貫いてX字型の十字を切り取った。次いで、このコーティングしたパネルを600時間連続の塩水噴霧試験(ASTM B117法)にかけた。
【0092】
主要な国内のコーティング会社から市販されている2つのDTMセミグロスラテックス塗料を、参照として使用するために、同様の方法で試験した。
【0093】
このスチールパネルを錆について観察したところ、例3の防腐食顔料(本明細書において開示されている防腐食顔料)で形成されたDTMコーティングは、例2の対照顔料および市販のDTMグロスラテックスコーティング参照よりも、耐腐食性が非常に優れていることが明らかであった。
【0094】
例9-二酸化チタン対照顔料スラリーの調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。このフィルターケーキに脱イオン水を加えて、二酸化チタンスラリーを形成した。
【0095】
およそ3.5gのトリメチロールプロパンおよび4.0gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを15gの水に溶解して、化学溶液を形成した。この化学混合物を、次いで、二酸化チタンスラリーの中に混合した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0096】
例10-二酸化チタン対照顔料スラリーの調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。このフィルターケーキに脱イオン水を加えて、二酸化チタンスラリーを形成した。
【0097】
10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液および1.75gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液を用いて、化学混合物を調製した。
【0098】
この化学混合物を、次いで、二酸化チタンスラリーの中に混合した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0099】
例11-本明細書において開示されている防腐食二酸化チタン顔料の調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0gのグリセロール、1.0gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、1.75gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48gのPat-Add 603(Patcham Ltd.からのポリマー分散剤)を用いて、化学混合物を調製した。
【0100】
前記化学混合物を、次いで、前記フィルターケーキと混合した。このフィルターケーキを流動化して、追加の水を用いずにスラリーを形成した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0101】
例12-本明細書において開示されている防腐食二酸化チタン顔料の調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0gのグリセロール、8.0gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、1.75gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48gのPat-Add 603(Patcham Ltd.からのポリマー分散剤)を用いて、化学混合物を調製した。
【0102】
前記化学混合物を、次いで、前記フィルターケーキと混合した。このフィルターケーキを流動化して、追加の水を用いずにスラリーを形成した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0103】
例13-本明細書において開示されている防腐食二酸化チタン顔料の調製
例1からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0gのグリセロール、8.0gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、3.75gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48gのPat-Add 603(Patcham Ltd.からのポリマー分散剤)を用いて、化学混合物を調製した。
【0104】
前記化学混合物を、次いで、前記フィルターケーキと混合した。このフィルターケーキを流動化して、追加の水を用いずにスラリーを形成した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0105】
例14-ジルコニアおよびアルミナ処理した二酸化チタンフィルターケーキの調製
結晶格子内に0.8%のアルミナを含む、塩化物法によって形成された粒子性の二酸化チタン顔料粒子を水に分散させて、スラリーを形成した。得られたスラリーを、Microtrac X100粒度測定装置で決定した場合に前記二酸化チタン粒子の92%の粒径が0.63ミクロン未満になるまでサンディングミリング(ジルコンサンドと顔料の重量比は4:1を用いた)にかけた。
【0106】
得られたスラリー(固形物含有率30%に希釈したもの)を65℃まで加熱し、次いで0.3重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(最終的な顔料に対する五酸化リンの重量として計算した)で処理した。このヘキサメタリン酸ナトリウムは、20分間にわたって加えた。次に、0.3重量%のオキシ塩化ジルコニウム(最終的な顔料に対するジルコニアの重量として計算した)を、スラリーに10分間にわたって加えた。次に、2.0重量%のアルミン酸ナトリウム(最終的な顔料に対するアルミナの重量として計算した)を、スラリーに10分間にわたって加えた。このスラリーのpHは11.0未満のレベルに維持した。このスラリーを、65℃で15分間にわたって温浸した。このスラリーのpHを、塩酸で6.3に調節した。このスラリーを、熱いうちに濾過した。得られたろ過物を(60℃に事前加熱しておいた)水で洗浄した。表面上にジルコニアおよびアルミナコーティングを有する前記二酸化チタン粒子を含む、湿った二酸化チタンフィルターケーキを得た。
【0107】
例15-対照二酸化チタン顔料の調製
例14からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。このフィルターケーキに脱イオン水を加えて、顔料スラリーを形成した。次に、このスラリーに10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液を加えて、スラリー中に十分に混合した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0108】
例16-本明細書において開示されている防腐食二酸化チタン顔料の調製
例14からの湿った二酸化チタンフィルターケーキを、1000gの乾いた顔料に相当する重量になるようにステンレススチールポットの中に計り取った。1.0gの炭酸カリウム、10.61gの33%トリメチロールプロパン水溶液、2.0gのグリセロール、4.0gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、3.5gの40% 2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸四ナトリウム塩水溶液、および1.48gのPat-Add 603(Patcham Ltd.からのポリマー分散剤)を用いて、化学混合物を調製した。
【0109】
前記化学混合物を、次いで、前記フィルターケーキと混合した。このフィルターケーキを流動化して、追加の水を用いずにスラリーを形成した。処理した二酸化チタンスラリーを、次いで、スプレードライして、乾燥した顔料を得た。この乾燥した顔料を、次いで、スチームインジェクター圧力を160psiに設定し、またマイクロナイザーリング圧力を118psiに設定して、2.5:1の蒸気対顔料重量比を利用して蒸気微粒子化した。
【0110】
例17-二酸化チタン顔料スラリーの試験
例2、9、10および15の対照二酸化チタン顔料、および例11~13および16の防腐食二酸化チタン顔料を、金属に直接塗布できる(DTM(direct-to-metal))防腐食セミグロスラテックスコーティングを調製するために使用した。各コーティングの処方を下記表3に示す。
【0111】
「Tamol 165A」は、Dow Chemicalからの疎水性分散剤である。
【0112】
「Surfynol CT-111」は、Evonikからの多目的界面活性剤である。
【0113】
「Tego810」は、Evonikからの消泡剤である。
【0114】
「Minex7」は、Uniminからの増量剤である。
【0115】
「Avanse 200」は、Dow ChemicalからのDTMラテックス樹脂である。
【0116】
「BYK-24」は、BYK Chemieからの消泡剤である。
【0117】
「Texanol」は、Eastmanからの合着剤である。
【0118】
「Acrysol RM-2020NPR」および「Acrysol RM-8W」は、Dow Chemicalからのレオロジー改質剤である。
【0119】
「Proxel GXL」は、LonzaからのBITベースの殺生物剤である。
【0120】
記載されているアンモニア溶液はpH調整剤であり、記載されている亜硝酸ナトリウムはフラッシュラスト防止剤である。
表3.乾燥TiO顔料からの水系DTMグロスラテックス塗料配合物
【表3】
【0121】
得られたコーティングを、腐食試験用の4インチ×6インチのスチールQ-PANELに塗布した。スチールパネルはアセトンで2回脱脂した。この脱脂したスチールパネル上にコーティングフィルムを成形するために、6ミルのギャップを有する3インチのバード式ドローダウンバーを使用した。コーティングしたパネルを周囲条件下で1週間乾燥させた後、露出しているむき出しの金属をダクトテープでカバーし、次いでナイフを用いて、前記のコーティングフィルムを貫いてX字型の十字を切り取った。次いで、このコーティングしたパネルを600時間連続の塩水噴霧試験(ASTM B117法)にかけた。
【0122】
このスチールパネルを錆について観察したところ、本明細書において開示されている防腐食顔料(例11、12、13および16)で形成されたDTMコーティングは、試験した対照顔料(例2、9、10および15)よりも、耐腐食性が非常に優れていることが明らかであった。
【0123】
したがって、前記顔料、組成物および方法は、言及された目的および利点、ならびにその中に内在する目的および利点の達成によく適合している。本開示の顔料、組成物および方法は、改変が可能であり、本明細書における教示の恩恵を受けた当業者にとって明らかな、異なっているが同等のやり方で実施され得るため、上に開示されている特定の実施形態は、単に例証的なものである。したがって、上に開示されている特定の例証的な実施例は、変更または改変が可能であり、そのようなバリエーションの全ては、本顔料、組成物および方法の範囲および趣旨の範囲内であるとみなされることは明白である。前記顔料、組成物および方法は、種々の成分またはステップを「含む(comprising)」、「含む(containing)」、「有する(having)」または「含む(including)」という表現で記述されているが、前記顔料、組成物および方法は、また、いくつかの例において、前記種々の成分およびステップ「から実質的になる(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」であり得る。上限と下限を有する数値範囲が開示されている場合は、いつでも、その範囲内の任意の数値、およびその範囲内に含まれる任意の範囲が具体的に開示されている。特に、本明細書において開示されている(「約(about)a~約(about)b」または、同様に、「およそ(approximately)aからb」または、同様に、「およそ(approximately)a~b」の形態の)値のあらゆる範囲は、値のより広い範囲内に包含されるあらゆる数値および範囲を記述しているものと理解すべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権者による明示的かつ明確な別段の定めがない限り、それらの平明な通常の意味を有する。
【国際調査報告】