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特表2023-529412顕微鏡システムならびに顕微鏡システムのための対応するシステム、方法およびコンピュータプログラム
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  • 特表-顕微鏡システムならびに顕微鏡システムのための対応するシステム、方法およびコンピュータプログラム 図1a
  • 特表-顕微鏡システムならびに顕微鏡システムのための対応するシステム、方法およびコンピュータプログラム 図1b
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  • 特表-顕微鏡システムならびに顕微鏡システムのための対応するシステム、方法およびコンピュータプログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】顕微鏡システムならびに顕微鏡システムのための対応するシステム、方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20230703BHJP
   G02B 21/16 20060101ALI20230703BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230703BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230703BHJP
   H04N 23/70 20230101ALI20230703BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/16
G01N21/64 E
G01N21/64 F
H04N23/60 500
H04N23/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575353
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2021063530
(87)【国際公開番号】W WO2021249736
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】102020115194.2
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516114695
【氏名又は名称】ライカ インストゥルメンツ (シンガポール) プライヴェット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leica Instruments (Singapore) Pte. Ltd.
【住所又は居所原語表記】12 Teban Gardens Crescent, Singapore 608924, Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トゥシャール クリシュナン
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
5C122
【Fターム(参考)】
2G043BA16
2G043BA17
2G043CA09
2G043EA01
2G043EA14
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA06
2G043GA04
2G043GA06
2G043GA08
2G043GA21
2G043GB21
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
2G043LA03
2G043MA01
2G043NA01
2H052AA09
2H052AC28
2H052AF14
2H052AF25
5C122EA47
5C122FF01
5C122FH11
5C122HA13
5C122HA35
5C122HB01
(57)【要約】
本例は、顕微鏡システム(100;400)ならびに顕微鏡システムのための対応するシステム(110)、方法およびコンピュータプログラムに関する。このシステムは、1つまたは複数のプロセッサ(114)と1つまたは複数のストレージデバイス(116)とを含む。このシステムは、顕微鏡システムの顕微鏡(120)の蛍光撮像センサ(122)の画像データの品質の品質指標を決定するように構成されている。このシステムは、顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、品質指標の観点で適切な値の範囲を識別するように構成されている。このシステムは、品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡システム(100;400)の顕微鏡(120;410)のためのシステム(110;420)であって、
前記システム(110)は、1つまたは複数のプロセッサ(114)と1つまたは複数のストレージデバイス(116)とを含み、
前記システムは、
前記顕微鏡の蛍光撮像センサ(122)の画像データの品質の品質指標を決定し、
前記顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、前記品質指標の観点で適切な値の範囲を識別し、
前記品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、前記1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するように構成されている、
システム(110;420)。
【請求項2】
前記システムは、前記1つまたは複数のユーザー設定の変更を、前記品質指標の観点で適切な値の範囲に制限するように構成されている、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記品質指標の観点で適切な値の範囲外への1つまたは複数のユーザー設定の変更が試みられた場合に、出力デバイスを介して通知を提供するように構成されている、
請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、前記通知が提供されたときに、前記1つまたは複数のユーザー設定の変更を遅延させるように構成されている、
請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記品質指標は、画像データ内の蛍光放出の光強度に関連する、
請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記品質指標は、前記画像データ内の蛍光放出の最大光強度に関連し、または、
前記品質指標は、前記画像データ内の蛍光放出の平均光強度に関連する、
請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記品質指標は、値の範囲にわたって定義され、前記値の範囲は、第1のサブ範囲と、前記第1のサブ範囲外の少なくとも1つの第2のサブ範囲と、を含み、前記品質指標の観点で適切な値の範囲は、前記品質指標の値が前記第1のサブ範囲内にある場合、制限される、
請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記品質指標の値が前記少なくとも1つの第2のサブ範囲内にある場合、値の範囲全体は、前記1つまたは複数のユーザー設定に対してアクセス可能である、
請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記品質指標は、時間窓にわたって画像データの複数のサンプルについて決定され、前記品質指標の観点で適切な値の範囲は、前記時間窓内の前記複数のサンプル内で、前記第1のサブ範囲内にある品質指標を生じさせるサンプルの数が閾値よりも高い場合、制限される、
請求項7または8記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のサブ範囲は、値の範囲内の2つの第2のサブ範囲の間に位置する、
請求項7から9までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
2つ以上の品質指標は、蛍光放出を示す2つ以上の重複しない周波数帯域について別個に決定され、前記値の範囲は、2つ以上の品質指標の観点で適切なものである、
請求項1から10までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
前記1つまたは複数のユーザー設定は、顕微鏡の倍率、顕微鏡の作動距離および顕微鏡の照明システムの明るさのうちの1つまたは複数に関連する、
請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記品質指標の観点で適切な値の範囲は、画像データに対して実行される画像処理に関して、かつ/または、出力デバイス上での画像データの視覚化に関して適切である、
請求項1から12までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
顕微鏡システム(100;400)の顕微鏡(120;410)のための方法であって、前記方法は、
前記顕微鏡の蛍光撮像センサ(122)の画像データの品質の品質指標を決定するステップ(210)と、
前記顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、前記品質指標の観点で適切な値の範囲を識別するステップ(220)と、
前記品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するステップ(230)と、
を含む方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに、請求項14記載の方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムならびに顕微鏡システムのための対応するシステム、方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の顕微鏡システム、特に外科用顕微鏡システムは、顕微鏡の動作中にユーザー(すなわち外科医)を支援するさまざまな機能性を提供する。いくつかの外科用顕微鏡によって提供される機能性の1つに、「蛍光撮像」の機能性が挙げられ、この機能性においては、光が手術部位に向かって第1の波長帯域(蛍光励起波長帯域とも称される)で放出される。蛍光色素が手術部位で使用される場合、放出された光は色素を励起し、光は第2の波長帯域(蛍光放出波長帯域とも称される)で放出される。この光は、カメラセンサによって記録され、外科用顕微鏡のディスプレイ上に、例えば外科用顕微鏡の接眼レンズのディスプレイ上に表示される。反射率撮像と比較して、蛍光色素によって放出される光は照度が低いため、蛍光放出波長帯域の光の記録をデジタル処理する能力が制限される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
蛍光撮像のための改善された概念の要望が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この要望は、独立請求項の主題によって解決される。
【0005】
本開示の実施形態は、蛍光撮像に関して、蛍光撮像センサの画像データの品質に影響を与える顕微鏡のズームレベル、手術部位からの外科用顕微鏡の作動距離および手術部位の照明などのさまざまな機能またはパラメーターが存在するという発見に基づいている。いくつかの外科用顕微鏡では、蛍光撮像中、これらのパラメーターや機能に対する変更は、蛍光画像データを処理するための十分なヘッドルームが残っていることを確認するために制限されており、これにより、蛍光画像データの品質がそれぞれの機能またはパラメーターを支援するのに十分な場合でさえも、それぞれの機能またはパラメーターの可用性が制限される場合がある。したがって、本開示のさまざまな実施形態では、どのユーザー設定が安全に変更できるかを決定するために蛍光撮像センサの画像データの品質が分析され、この分析に基づいてこれらのユーザー設定の変更が制御される。
【0006】
本開示の実施形態は、顕微鏡システムの顕微鏡のためのシステムを提供する。本システムは、1つまたは複数のプロセッサと1つまたは複数のストレージデバイスとを含む。本システムは、顕微鏡の蛍光撮像センサの画像データの品質の品質指標を決定するように構成されている。本システムは、顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、品質指標の観点で適切な値の範囲を識別するように構成されている。本システムは、品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するように構成されている。品質指標の観点で適切な値の範囲を決定し、この値の範囲に基づいてユーザー設定の変更を制御することにより、この値の範囲は、顕微鏡の蛍光撮像動作中に許容される静的な値の範囲を使用するシステムと比較して拡張することができる。
【0007】
例えば、システムは、1つまたは複数のユーザー設定の変更を、品質指標の観点で適切な値の範囲に制限するように構成されてよい。換言すれば、ユーザーは、1つまたは複数のユーザー設定が、顕微鏡の蛍光撮像動作での使用に適していない値に変更されることを防止する場合がある。
【0008】
付加的または代替的に、システムは、品質指標の観点で適切な値の範囲外への1つまたは複数のユーザー設定の変更が試みられた場合に、出力デバイスを介して通知を提供するように構成されている。この通知に基づいて、ユーザーは、1つまたは複数のユーザー設定の変更が推奨されていないこと、または(1つまたは複数のユーザー設定の変更が制限されている場合)むしろ防止されていることを認識することができる。
【0009】
いくつかの例では、システムは、通知が提供されたときに、1つまたは複数のユーザー設定の変更を遅延させるように構成されている。このようにして、ユーザー(例えば外科医)は、変更されたユーザー設定が適用される前に考えを変えることができる。
【0010】
さまざまな実施形態では、品質指標は、画像データ内の蛍光放出の光強度に関連する。例えば、品質指標は、画像データ内の蛍光放出の最大光強度に関連し、または画像データ内の蛍光放出の平均光強度に関連し得る。多くの場合、十分な光強度は、画像データを首尾よく処理するために不可欠である。
【0011】
品質指標は、値の範囲にわたって定義されてよい。値の範囲は、第1のサブ範囲と、第1のサブ範囲外の少なくとも1つの第2のサブ範囲と、を含むことができる。品質指標の観点で適切な値の範囲は、品質指標の値が第1のサブ範囲内にある場合、制限されてよい。換言すれば、品質指標が第1のサブ範囲内にある場合、品質指標を改善する可能性が高い変更のみが利用可能とされる場合がある。一方、品質指標の値が少なくとも1つの第2のサブ範囲内にある場合、例えば品質指標が十分に良好である場合、値の範囲全体が1つまたは複数のユーザー設定に対してアクセス可能であってよい。
【0012】
さまざまな実施形態では、品質指標は、時間窓にわたって画像データの複数のサンプルについて決定される。品質指標の観点で適切な値の範囲は、時間窓内の複数のサンプル内で、第1のサブ範囲内にある品質指標を生じさせるサンプルの数が閾値よりも高い場合、制限されてよい。換言すれば、十分に良好な品質を示す多くの十分な数のサンプルが存在する場合、画像データの低品質を示す単一のサンプルは無視してよい。
【0013】
例えば、第1のサブ範囲は、値の範囲内の2つの第2のサブ範囲の間に位置してよい。例えば、第2のサブ範囲の一方では、画像データの品質が処理のためには過度に低い場合があり、そのため、ユーザー設定の任意の変更が有効化される可能性があり、第2のサブ範囲の他方では、画像データの品質がユーザー設定の1つに対する任意の変更も許容可能になるくらいに高い場合がある。画像データの品質がまだ処理するのに十分である2つの極値のちょうど中間にある場合は、値の範囲が制限される場合がある。
【0014】
いくつかの実施形態では、2つ以上の品質指標が、蛍光放出を示す2つ以上の重複しない周波数帯域について別個に決定される。値の範囲は、2つ以上の品質指標の観点で適切なものであってよい。これらの品質指標は、2つの周波数帯域、したがって、2つの蛍光色素について別個に決定されるが、変更は両方に影響を与える可能性があるため、使用すべき値の範囲は、蛍光撮像が両方の周波数帯域において完全に支援されるように選択されてよい。
【0015】
1つまたは複数のユーザー設定は、顕微鏡の倍率、顕微鏡の作動距離および顕微鏡の照明システムの明るさのうちの1つまたは複数に関連し得る。これらは、一般に蛍光撮像センサの画像データの品質に影響を与えるユーザー設定である。これらの設定については、値の範囲が現在の設定から一方向に制限される場合がある。例えば、顕微鏡の倍率に適した値の範囲は、顕微鏡の現在の倍率まで拡張することができる。顕微鏡の作動距離に適した値の範囲は、顕微鏡の現在の作動距離係数まで拡張することができる。顕微鏡の照明システムの明るさに適した値の範囲は、照明システムの現在の明るさから拡張することができる。換言すれば、値の範囲は、画像データの品質を改善する可能性が高い値に制限されてよい。
【0016】
前述したように、品質指標の観点で適切な値の範囲は、画像データに対して実行される画像処理に関して、かつ/または出力デバイス上での画像データの視覚化に関して適切であってよい。画像データの後処理および視覚化には、適切な結果を得るための最小限の品質が要求される場合がある。したがって、システムは、画像データに対して画像処理を実行し、かつ/または画像データの視覚化を提供し、処理された画像データに基づいて、または視覚化に基づいて表示信号を提供するように構成されてよい。
【0017】
本開示の実施形態は、システムおよび顕微鏡を有する顕微鏡システムをさらに提供する。例えば、顕微鏡システムは、外科用顕微鏡システムであってよい。したがって、顕微鏡は、外科用顕微鏡であってもよい。
【0018】
本開示の実施形態は、顕微鏡システムの顕微鏡のための対応する方法をさらに提供する。本方法は、顕微鏡の蛍光撮像センサの画像データの品質の品質指標を決定するステップを含む。本方法は、顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、品質指標の観点で適切な値の範囲を識別するステップを含む。本方法は、品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するステップを含む。
【0019】
本開示の実施形態は、コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに本方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムをさらに提供する。
【0020】
以下では、例示的にのみ、添付の図面を参照しながら装置および/または方法のいくつかの例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a】顕微鏡システムの顕微鏡のためのシステムを示す概略図である。
図1b】本システムおよび顕微鏡を含む外科用顕微鏡システムの実施形態を示す概略図である。
図2】顕微鏡システムの顕微鏡のための方法の一実施形態のフローチャートである。
図3】適切な値の範囲の決定のフローチャートである。
図4】顕微鏡およびコンピュータシステムを含むシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの例が示されている添付の図面を参照しながらさまざまな例がより完全に説明される。これらの図面では、線、層および/または領域の厚さが、明確化のために誇張されている場合もある。
【0023】
図1aおよび図1bは、顕微鏡システム100の顕微鏡120のためのシステム110ならびに該システム110および顕微鏡120を含んだ外科用顕微鏡システム100の実施形態の概略図を示す。このシステム110は、1つまたは複数のプロセッサ114と、1つまたは複数のストレージデバイス116と、を含む。任意選択的に、システムは、インターフェース112をさらに含む。1つまたは複数のプロセッサ114は、任意選択的なインターフェース112および1つまたは複数のストレージデバイス116に結合される。一般に、システムの機能性は、1つまたは複数のプロセッサ114によって、例えば任意選択的なインターフェース112および/または1つまたは複数のストレージデバイス116に関連して提供される。
【0024】
本システムは、顕微鏡の蛍光撮像センサ122の画像データの品質の品質指標を決定するように構成されている。本システムは、顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、品質指標の観点で適切な値の範囲を識別するように構成されている。本システムは、品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するように構成されている。
【0025】
図1bは、システム110を含む顕微鏡システム100、特に外科用顕微鏡システム100のブロック図を示す。この顕微鏡システム100は、蛍光撮像センサ122を有する顕微鏡120をさらに含む。図1bに示されている顕微鏡システムは、外科医によって手術部位で使用されてよい外科用顕微鏡システムである。この図1bに示されている外科用顕微鏡システムは、(回転)スタンドを有する基台ユニット105(システム110を含む)、補助ディスプレイまたは接眼鏡などの1つまたは複数のディスプレイ130、顕微鏡120を適所に保持し、基台ユニット105および顕微鏡120に結合された(ロボット式または手動式)アーム140、ならびに顕微鏡120に取り付けられたステアリングハンドル150などの複数の任意選択的なコンポーネントを含む。本出願の文脈において、実際の顕微鏡(光学部品を含む)の一部ではないが、ディスプレイや照光システムなど顕微鏡に関連して使用されるシステムの部分をカバーするために、「(外科用)顕微鏡システム」との用語が使用される。
【0026】
本開示の実施形態は、図1bに関連して説明された顕微鏡システム100などの顕微鏡システム100の顕微鏡120に適したシステム、方法およびコンピュータプログラムに関している。上記で説明したように、顕微鏡120と顕微鏡システム100との間では区別がなされており、この顕微鏡システムとは、顕微鏡120と該顕微鏡120と組み合わせて使用されるさまざまなコンポーネント、例えば照明システムや補助ディスプレイなどを含んでいる。顕微鏡システムでは、実際の顕微鏡は、顕微鏡システムの光学部品を構成するため、多くの場合「光学担体」とも称される。一般に、顕微鏡は、肉眼(単独)によって検査されるには小さすぎる対象物の検査に適した光学機器である。例えば、顕微鏡は、対象物の光学倍率を提供することができる。最新の顕微鏡では、光学倍率は、多くの場合、カメラまたは撮像センサのために提供される。顕微鏡120は、サンプル上の視野を拡大するために使用される1つまたは複数の光学的拡大コンポーネントをさらに含むことができる。
【0027】
顕微鏡にはさまざまなタイプがある。顕微鏡システムが医学的または生物学的分野で使用される場合、顕微鏡を通して視認される対象物は、例えばシャーレ内に配置されるかまたは患者の身体の一部内に存在する有機組織のサンプルであってよい。例えば、顕微鏡システム100は、例えばシャーレ内の有機組織のサンプルを検査するために使用され得る顕微鏡など実験室で使用するための顕微鏡システムであってもよい。代替的に、顕微鏡120は、例えば手術手順の間に使用される顕微鏡など外科用顕微鏡システム100の一部であってもよい。そのようなシステムは、例えば、図1bに示されている。複数の実施形態が顕微鏡システムに関連して説明されているが、それらもより一般的な手法で任意の光学デバイスに適用されてよい。例えば、顕微鏡システムは、例えば金属や複合材料などの材料の材料試験や完全性試験を実行するためのシステムであってもよい。
【0028】
システムは、顕微鏡の蛍光撮像センサ122の画像データに基づいて、画像データの品質の品質指標を決定する。その結果、システムは、顕微鏡の蛍光撮像センサの画像データ、またはそこからの画像データを取得するように構成されてよい。一般に、蛍光撮像センサは、蛍光放出を示す1つまたは複数の蛍光放出波長帯の光(のみを)感知するように構成された撮像センサであってもよい。顕微鏡システム、例えば外科用顕微鏡システムにおいては、多くの場合、1つまたは複数のフィルタが、対応する照明システムと組み合わせて、蛍光撮像センサおよび反射率撮像センサを実装するために使用されている。例えば、蛍光撮像センサは、異なるタイプの蛍光色素であるフルオレセイン、PPIX(プロトポルフィリンIX)およびICG(インドシアニングリーン)のための例えば約560nm、630nm、800nmの蛍光放出を示す1つまたは複数の蛍光放出波長帯域外の光を阻止するための1つまたは複数のフィルタを含むことができる。「通常の」反射率画像センサは、蛍光放出を示す1つまたは複数の蛍光放出波長帯域の光を阻止するフィルタを含むかもしれないし、対応するフィルタを含まないかもしれない。同時に、蛍光撮像が実行される場合、例えば、照明システムによって放出される光から1つまたは複数の蛍光放出波長帯域の光を阻止するためにさらなる1つまたは複数のフィルタを使用することによって、1つまたは複数の蛍光放出波長帯域の光を放射しない照明システムが使用されてよい。照明システムは、1つまたは複数の蛍光色素の1つまたは複数の励起波長帯域の光を放出するためにさらに使用されてもよい。
【0029】
一般に、蛍光撮像センサ122は、APS(Active Pixel Sensor)-またはCCD(Charge-Coupled-Device)ベースの撮像センサを含み得る。例えば、APSベースの撮像センサでは、光検出器および画素の能動増幅器を使用して光が各画素で記録される。APSベースの撮像センサには、多くの場合、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)またはS-CMOS(Scientific CMOS)技術に基づいている。CCDベースの撮像センサでは、入射光子が半導体-酸化膜界面で電子電荷に変換され、その後、これらの電子電荷は、撮像実行のために、撮像センサモジュールの制御回路によって撮像センサモジュール内の容量性ビン間を移動する。例えば、画像データは、2次元カメラ画像データを含み得る。
【0030】
本システムは、画像データの品質の品質指標を決定するように構成される。一般に、画像データの品質は、画像データ内の蛍光放出の視認性に関連する。例えば、品質指標は、画像データ内の蛍光放出の光強度、例えば蛍光放出の絶対的な光強度、または画像データ内で視認可能な他の光放出に対する光強度、例えば手術室で使用される周辺照明システムからの迷光の反射率に関連し得る。付加的または代替的に、光強度は、ルーメンという特有の表現で絶対的な光強度、または画像データを記録するために選択される感度の振幅という特有の表現で相対的な光強度を指す場合がある。いくつかにおいては、品質指標は、画像データ内の蛍光放出の最大の(絶対的または相対的な)光強度に関連し、例えば予め定められたタイマー間隔内で例えば観察された画像データの少なくとも1つの画素の最大観察光強度に関連する。代替的に、品質指標は、画像データ内の蛍光放出の平均光強度に関連し、例えば予め定められた時間間隔にわたって、例えば蛍光放出を示す複数の画素の平均光強度に関連し得る。品質指標は、例えば(0%~100%の間など)値の範囲にわたって、上記(光強度)メトリクスに関する画像データの品質を示すことができる。その結果、品質指標は、画像データが手元のタスク(手元のタスクは、画像データに対して実行される画像処理または画像データの視覚化である)に対してどの程度適切であるかを示すことができる。
【0031】
本システムは、顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、品質指標の観点で適切な値の範囲を識別するように構成されている。「品質指標の観点で適切な」との用語は、「適切な」と「品質指標の観点で」との2つの部分を有する。一般に、顕微鏡に関してユーザー設定は、それによって顕微鏡の自由な使用が許容される、すなわち、あらゆる機能性が使用可能である(あるいは、少なくとも画像データの品質に起因して使用不能ではない)場合に適切であってよい。またこれは、1つまたは複数のユーザー設定が画像データへの影響を有していること、すなわち、1つまたは複数のユーザー設定の変更に応じて画像データの品質が変化する可能性(例えば改善または悪化する可能性)があることも意味している。したがって、1つまたは複数のユーザー設定の値の範囲が「品質指標の観点で」適切であるということは、値の範囲が次のように選択されていること、すなわち、当該値の範囲が、品質指標の観点で顕微鏡の自由な動作が許容されていることを示している(あるいは、品質がいずれにせよ低すぎる場合、顕微鏡の自由な動作を有効化する値を手動で見つけるために全範囲が使用可能であってもよい)。
【0032】
一般に、値の範囲の適性は、顕微鏡の任意の機能性に関連し得る。しかしながら、特に、画像データの品質は、顕微鏡システムの2つの機能性(画像データの画像処理および画像データの視覚化)について特に関連している。したがって、品質指標の観点で適切な値の範囲は、画像データに対して実行される画像処理に関して、かつ/または出力デバイス上での画像データの視覚化に関して適切であってよい。どちらの機能性も密接に関連している。例えば、画像処理は、異なる蛍光色素によって引き起こされる蛍光放出に色効果を適用したり、異なる血管の間を視覚的に見分けるための色効果を適用したりするために、画像データに対して実行されてよい。この情報は、顕微鏡システムのディスプレイ130上の未処理の画像データの上に重ねてもよい。例えば、システムは、画像データに対して画像処理を実行し、例えば、画像データにおいて視認される蛍光放出に色付けし、処理された画像データに基づいて表示信号を(顕微鏡システムのディスプレイ130に)提供し、それによってディスプレイ上で蛍光放出を視覚化するように構成されてよい。例えば、システムは、顕微鏡の反射率撮像センサのさらなる画像データに基づいて表示信号を提供し、表示信号におけるさらなる画像データの上に(蛍光放出を強調する色を用いて)処理された画像データをオーバーレイするように構成されてよい。例えば、システムは、インターフェース回路112を介して画像データおよび/またはさらなる画像データを取得し、かつ/またはインターフェース回路112を介して表示信号を提供するように構成されてもよい。例えば、表示信号は、ビデオストリームまたはディスプレイ130のための制御命令を含むことができる。
【0033】
上述したように、品質指標は、値の範囲にわたって定義されてよい。値の範囲内の品質指標の位置に依存して、異なる処置が講じられてよい。例えば、値の範囲は、第1のサブ範囲と、第1のサブ範囲外の少なくとも1つの第2のサブ範囲と、を含むことができる。換言すれば、少なくとも1つの第2のサブ範囲は、第1のサブ範囲と重ならない場合もある。第1のサブ範囲は、第1のサブ範囲内の品質指標は十分に良好であるが、1つまたは複数のユーザー設定が自由に変更可能なほど良好ではないと考えてよいような関心のあるサブ範囲であってよい。したがって、品質指標の観点で適切な値の範囲は、品質指標の値が第1のサブ範囲内にある場合に(のみ)制限されてよい。品質指標が少なくとも1つの第2のサブ範囲内にある場合、画像データの品質は、(ユーザー設定の任意の変更が処理または視覚化に適切な画像データをもたらすほど)非常に良いか、(画像データが目下の処理または視覚化にとって適切でないほど)非常に悪いかのいずれかであってよい。したがって、第1のサブ範囲は、値の範囲内の2つの第2のサブ範囲の間に位置してもよい。その結果、品質指標の値が少なくとも1つの第2のサブ範囲内にある場合、品質指標の観点で適切な値の範囲は制限されない場合もある。換言すれば、品質指標の値が少なくとも1つの第2のサブ範囲内にある場合、1つまたは複数のユーザー設定について、値の全範囲がアクセス可能であってよい。
【0034】
蛍光撮像センサの画像データに影響を与える顕微鏡のさまざまな機能性およびユーザー設定が存在する。例えば、1つまたは複数のユーザー設定(したがって、それぞれの設定に関連する顕微鏡の機能性)は、顕微鏡の倍率(すなわち、ズーム設定)、顕微鏡の作動距離(すなわち、顕微鏡とサンプル/手術部位との間の距離)および顕微鏡の照明システムの明るさ(例えば、1つまたは複数の蛍光励起波長帯域の放出に関する照明システムの明るさ)のうちの1つまたは複数に関連し得る。これらの機能性/ユーザー設定のそれぞれについて、ユーザー設定の値の範囲の制限は、ユーザー設定を、手元のタスクに適した画像データをもたらす値に、かつ/または改善された品質指標を有する画像品質をもたらす値に制限し得るユーザー設定の範囲をもたらすことができる。例えば、顕微鏡の倍率に適した値の範囲は、(倍率の増加は画像データの品質を劣化させる可能性があるので)顕微鏡の現在の倍率まで拡張することができる。また、顕微鏡の作動距離に適した値の範囲は、(作動距離の拡大は画像データの品質を劣化させる可能性があるので)現在の顕微鏡の作動距離倍率まで拡張することができる。顕微鏡の(蛍光励起波長帯域に関する)照明システムの明るさに適した値の範囲は、照明システムの現在の明るさまで拡張することができる。
【0035】
一般に、品質指標は、定期的に、例えば、100ms毎または1秒毎に更新されてよい。したがって、品質指標の観点で適切な値の範囲は、品質指標が変化した場合に、例えば定期的に、または品質指標の変化に応じて(すなわちそれによってトリガーされて)更新されてよい。換言すれば、品質指標と品質指標の観点で適切な値の範囲との両方は、動的に更新されてもよい。
【0036】
顕微鏡の動作中、例えば手術中に、例えばユーザーが照明システムを遮ったり、液体が手術部位の視界を遮ったりすることで短期間だけ画像品質が低下する状況が存在する場合もある。このような場合、画像品質の劣化は一時的なもので恒久的ではないので、値の範囲を制限することが適切ではない場合もある。システムは、画像品質におけるそのような一時的な変化を平滑化する「ローパスフィルタリング」プロセスを使用することができる。例えば、品質指標は、時間窓(すなわち、予め定められた時間間隔、例えば5秒または10秒)にわたる画像データの複数のサンプルについて(例えばこれらに基づいて、かつ/またはこれらを使用して)決定されてもよい。例えば、複数のサンプルは、例えば、画像データの全てのフレームを使用して、毎秒複数のフレームを使用して、毎秒1つのフレームを使用してなど定期的に撮影される画像データの複数のフレームに関連し得る。品質指標の観点で適切な値の範囲は、時間窓内で、品質指標の十分なインスタンスが値の範囲の変更を必要とすることを示す場合には変更されてよい。換言すれば、品質指標の観点で適切な値の範囲は、時間窓内の複数のサンプル内で、第1のサブ範囲内にある品質指標をもたらすサンプルの数が閾値より大きい場合は制限されてもよい。品質の観点で適切な値の範囲は、時間窓内の複数のサンプル内で、少なくとも1つの第2のサブ範囲内にある品質指標をもたらすサンプルの数が閾値より大きい場合は値の全範囲であってよい。図3は、値の範囲に対する制限がどのように、そしていつ設定または無効化されるかを示す例示的なフローチャートを示す。
【0037】
品質指標の観点で適切な値の範囲が一度決定されると、この値の範囲は、顕微鏡の動作を適合化させるために使用されてよい。例えば、ユーザー設定の変更は、顕微鏡のユーザーによって開始され、試みられ、またはトリガーされてよい。換言すれば、システムは、品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定のユーザー開始変化を制御するように構成されてよい。システムは、品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するように構成されてよい。換言すれば、1つまたは複数のユーザー設定の変更は、適切である値の範囲に基づいて、システムにより制御されてもよい。一般に、そのようなユーザー設定の変更を制御するための2つのアプローチが存在する。第1のアプローチでは、1つまたは複数のユーザー設定は、適切な値の範囲に制限されてよい。換言すれば、システムは、1つまたは複数のユーザー設定の変更を、品質指標の観点で適切な値の範囲に制限するように、例えば、品質指標の観点で適切な値の範囲外にある値をユーザーが選択することを防止するように構成されてもよい。代替的に(または付加的に)、顕微鏡のユーザーは、1つまたは複数のユーザー設定を、適切な値の範囲外にある値に変更しようとした場合は警告されてよい。換言すれば、システムは、品質指標の観点で適切な値の範囲外の1つまたは複数のユーザー設定の変更が試みられた場合に、出力デバイスを介して通知を提供するように構成されてよい。通知の後、この変更は、実行されてもよいし、この変更が、システムによって制限されるものとして拒否されてもよく、かつ/または遅延が、ユーザー設定の変更をユーザーが再考することができるユーザー設定の変更前に導入されてもよい。換言すれば、システムは、通知が提供されたときに、1つまたは複数のユーザー設定の変更を遅延させるように構成されてもよい。例えば、システムは、1つまたは複数のユーザー設定の変更を適用するために、遅延後に1つまたは複数のユーザー設定の変更を繰り返すこと、遅延後に変更を確認すること、または遅延を待ち続けることを、ユーザーに要求するように構成されてもよい。
【0038】
いくつかの事例では、2つ以上の異なる蛍光色素が、例えば、手術中に異なる系列または血管を区別するために、同じサンプル上で使用されている。その結果、画像品質は、2つ以上の蛍光色素に関して、およびそれぞれのまたはより多くの蛍光色素の蛍光放出を示す対応する2つ以上の周波数帯域に関して考えられてよい。換言すれば、2つ以上の品質指標は、蛍光放出を示す重複しない2つ以上の周波数帯域について、すなわち、画像データにおけるそれぞれの周波数帯域を示す画像データの部位について別個に決定されてもよい。値の範囲は、2つ以上の品質指標の観点で適切なものであってよい。換言すれば、値の範囲は、2つ以上の蛍光色素および/または2つ以上の重複しない周波数帯域(の全て)に関して、品質指標の観点で適切なものであるように識別されてよい。
【0039】
インターフェース112は、モジュール内、モジュール間、または異なるエンティティのモジュール間で特定されたコードに従ったデジタル(ビット)値であってよい情報を受信および/または送信するための1つまたは複数の入力側および/または出力側に対応することができる。例えば、インターフェース112は、情報を受信および/または送信するように構成されたインターフェース回路を含むことができる。実施形態では、1つまたは複数のプロセッサ114が、1つまたは複数の処理ユニット、1つまたは複数の処理デバイス、プロセッサなどの処理のための任意の手段、コンピュータ、または相応に適合化されたソフトウェアを用いて動作するプログラマブルハードウェアコンポーネントを使用して実装されてよい。換言すれば、1つまたは複数のプロセッサ114の説明された機能は、同様に、ソフトウェアで実装されてよく、このソフトウェアは、次いで、1つまたは複数のプログラマブルハードウェアコンポーネント上で実行される。そのようなハードウェアコンポーネントは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラなどを含むことができる。少なくともいくつかの実施形態では、1つまたは複数のストレージデバイス116は、磁気的または光学的記憶媒体など、例えばハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、フロッピーディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラム可能読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)、またはネットワークストレージなどのコンピュータ可読記憶媒体のグループの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0040】
システムおよび顕微鏡システムのさらなる詳細および態様は、提案された概念または上記もしくは下記で説明される1つまたは複数の例に関連して言及されている(例えば、図2図4)。システムまたは顕微鏡システムは、提案された概念の1つまたは複数の態様、または上記もしくは下記で説明される1つまたは複数の例に対応する1つまたは複数の付加的な任意選択的な特徴を含むことができる。
【0041】
図2は、顕微鏡システムの顕微鏡120のための(対応する)方法200の一実施形態のフローチャートを示す。本方法は、顕微鏡の蛍光撮像センサ122の画像データの品質の品質指標を決定するステップ210を含む。本方法は、顕微鏡の1つまたは複数のユーザー設定について、品質指標の観点で適切な値の範囲を識別するステップ220を含む。本方法は、品質指標の観点で適切な値の範囲に基づいて、1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御するステップ230を含む。例えば、本方法は、顕微鏡システム100によって、例えば、顕微鏡システムのシステム110によって実行されてよい。
【0042】
上記で示されているように、図1aおよび/または図1bのシステム110、顕微鏡システム100および顕微鏡120に関連して説明された特徴は、同様に図2の方法に適用されてもよい。
【0043】
本方法のさらなる詳細および態様は、提案された概念または上記もしくは下記で説明される1つまたは複数の例に関連して言及されている(例えば、図1a、図1b、図3、または図4)。本方法は、提案された概念の1つまたは複数の態様、または上記もしくは下記で説明される1つまたは複数の例に対応する1つまたは複数の付加的な任意選択的な特徴を含むことができる。
【0044】
本開示のさまざまな例は、蛍光画像品質を維持するための自動化された顕微鏡設定制御に関するものである。したがって、さまざまな実施例は、自動化された設定に関するものであり得る。
【0045】
蛍光色素であるインドシアニングリーン(ICG)の使用を伴う血管神経外科の事例では、蛍光信号の品質は、注入されたICGの投与量に加えて、異なる顕微鏡設定(光源強度、倍率、作動距離)にも依存する。さまざまな例によれば、信号が低い/許容不可能な品質になるかもしれない設定の使用を外科医に思いとどまらせるために、顕微鏡の設定範囲(すなわち、ユーザー設定の値の範囲)に対する制限が実施される。いくつかのシステムでは、この制限は、設定時に固定されて膠着し、蛍光画像品質のためにICGの投与量に依然として依存する限られた数の設定組み合わせしか許容されなくなる場合がある。これは、顕微鏡の実用的な適用性を妨げ、さもなければ許容可能な信号を提供し得る特定の設定組み合わせの使用を排除する可能性がある。
【0046】
本開示のさまざまな例は、蛍光信号品質、すなわち蛍光撮像センサの画像データの品質に基づいて、顕微鏡の設定制御を自動化することができる。顕微鏡の設定範囲、すなわち、1つまたは複数のユーザー設定の値の範囲は、信号品質が低い場合は制限されてよい。これは、動的な手法で、現在の蛍光信号、すなわち画像データに基づいて実施されてよく、シナリオの変化に自動的に調整されてもよい。制限を事前に設定する必要がない場合もある。このアプローチは、ICGの投与量に依存することなく、設定の組み合わせに関して外科医により大きな自由度を許容させることができる。
【0047】
視野内の蛍光が均質またはほぼ均質であると仮定すると、蛍光(FL)パラメーター(例えば最大蛍光強度など)は、蛍光信号強度の良好な指標として、すなわち品質指標として役割を果たすことができる。このFLパラメーターは、定義された閾値(以下ではThreshLowと表記する)未満の場合、無視できる程度の些細な蛍光信号を示すことができる。FLパラメーターが別に定義された閾値(ThreshHigh)を超える場合、良好な蛍光信号を、すなわち信号品質が良好であることを示すことができる。FLパラメーターがThreshLow未満またはThreshHighを超える場合、FLパラメーターは、少なくとも1つの第2のサブ範囲の1つであってよい。FLパラメーターがThreshLowとThreshHighとの間においては、FLパラメーターは、第1のサブ範囲内であってよい。FLパラメーターが一貫してThreshLowとThreshHighとの間にある場合、それは信号が良好な品質ではない場合があることを意味する。そのような状況では、蛍光信号を悪化させるようなユーザーによる設定変更のシナリオを防止するために、信号品質が悪化する方向での顕微鏡の設定を制限することができる(例えば、現在の値より低い倍率、短い作動距離および/または高い照明強度のみを許容させることによって)。換言すれば、このことは、FLパラメーターがThreshLowとThreshHighとの間にある場合、ユーザーが現在の値よりも高倍率、または長い作動距離、または低い照明強度に行くことができなくてもよいことを意味する。これにより、制限を動的かつ柔軟にすることができる。FLパラメーターは、各フレーム後に計算されてよく、設定範囲制限は、現在の信号品質に依存して有効化または無効化される。
【0048】
図3は、適切な値の範囲の決定のフローチャートを示す。適切な値の範囲の決定において、FLパラメーター(FLParam、例えば最大蛍光強度値)が決定され(ステップ310)、%FramesLimit(FLParamがThreshLowとThreshHighとの間にある過去のNumFrames(FLパラメーターの平均を計算するフレームの回転窓)中のフレームの割合)が更新され(ステップ320)、AvgFLParam(過去のNumFramesフレームにわたるFLParamの平均)が計算/更新される(ステップ330)。AvgFLParamとThreshLowとを比較してよい(ステップ340)。AvgFLParamがThreshLowより小さく、%FramesLimitが基準/標準(例えば、制限を有効化するために必要な%FrameLimitの最小値)より大きい場合(ステップ342)、制限は無効化され(ステップ344)、%FrameLimitが最も基準よりの場合、先行の制限状態が維持されてよい(ステップ346)。AvgFLParamがThreshLowよりも小さくない場合、AvgFLParamとThreshHighとを比較してよい(ステップ350)。AvgFLParamがThreshHighより大きく、%FrameLimitが基準より大きければ(ステップ352)、制限は無効化されてよく(ステップ354)、%FrameLimitが最も基準よりの場合(ステップ352)、先行の制限状態が維持されてよい(ステップ356)。AvgFLParamがThreshHighより大きくない場合(ステップ350)、すなわち、AvgFLParamがThreshLowとThreshHighとの間にある場合、%FrameLimitとCriteriaとを比較してよい(ステップ360)。%FrameLimitが基準より大きければ、制限は有効化されてよく(ステップ362)、そうでなければ、先行の制限状態が維持されてよい(ステップ364)。
【0049】
以下では、例示を挙げる。ユーザーは、2.5mg/mL溶液の1mLのICG投与量を注入することができる。次いで、ユーザーは、蛍光撮像を視覚化するためのモードをスイッチオンすることができる。作動距離は300mmであり、倍率は8倍であり、さらに照度は100%である。ICGの取り込みは緩慢に起こるので、信号はさらなる可視化を開始することができる。信号が弱いので、設定は制限されてよい。すなわち、ユーザーは300mmまたは8倍の倍率を超えたり、照度を100%未満に低減したりすることを有効化できない場合がある。この時点で、ユーザーは倍率を4倍まで低減することができる。この時点の信号品質は良好であり、制限は無効化されてよい。ユーザーは、この時点で作動距離を250mmまで低減し、必要な場合には倍率を10倍まで上げることができる。この時点で信号が弱い場合は、制限をかけることができるが、さもなければかけない。このアプローチは、現在の状況に応じて動的に決定すべき制限を許容することができ、蛍光信号の品質を損なうことなく、外科医に手術のさらなる自由度を与えることができる。
【0050】
提案されたアプローチは動的であり、リアルタイムで使用されてよい。制限も動的であり、状況に基づいて異なっていてよい。さまざまな例は、外科医に、より広い範囲の作動距離および/または倍率で作業する自由度を提供しながら信号品質を損なうことなくユーザーによってアクセスされるより多くの設定組み合わせ(いくつかの極端な要因を含む)を可能にすることができる。設定の制限は、現在のシナリオに基づいて自動的に調整されてもよく、事前に設定する必要がない場合もある。例えば、本アプローチは、ICG、またはより一般的な用語では蛍光色素の投与量に依存しなくてよい。本アプローチは、同じモデルの顕微鏡の間においてランプの光束の変化を考慮することができる。本アプローチは、色素の蛍光品質に対する光退色や他の経時的劣化作用を考慮することができる。さまざまな例では、ターゲット領域は、何らかの異常に高いFL信号画素を伴わずに色素を示すことができる。定義された閾値は、注意深く計算され得る。
【0051】
いくつかの実施形態は、図1から図3のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムを含んでいる顕微鏡に関する。択一的に、顕微鏡は、図1から図3のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムの一部であってもよい、または図1から図3のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムに接続されていてもよい。図4は本明細書に記載された方法を実施するように構成されたシステム400の概略図を示している。システム400は、顕微鏡410とコンピュータシステム420とを含んでいる。顕微鏡410は、撮像するように構成されており、かつコンピュータシステム420に接続されている。コンピュータシステム420は、本明細書に記載された方法の少なくとも一部を実施するように構成されている。コンピュータシステム420は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム420と顕微鏡410は別個の存在物であってもよいが、1つの共通のハウジング内に一体化されていてもよい。コンピュータシステム420は、顕微鏡410の中央処理システムの一部であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム420は、顕微鏡410のセンサ、アクター、カメラまたは照明ユニット等の、顕微鏡410の従属部品の一部であってもよい。
【0052】
コンピュータシステム420は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等のさまざまな場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム420は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム420は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、プロセッサは、例えば、顕微鏡または顕微鏡部品(例えばカメラ)のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路等のあらゆる種類の計算回路を意図していてもよいが、これらに限定されない。コンピュータシステム420に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム420は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム420はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザーがコンピュータシステム420に情報を入力すること、およびコンピュータシステム420から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0053】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0054】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0056】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0057】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0058】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0059】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0060】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0061】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0062】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0063】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【0065】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0066】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【符号の説明】
【0067】
100 顕微鏡システム
105 基台ユニット
110 システム
112 インターフェース
114 1つまたは複数のプロセッサ
116 1つまたは複数のストレージデバイス
120 顕微鏡
122 蛍光撮像センサ
130 ディスプレイ
140 アーム
150 ステアリングハンドル
200 方法
210 品質指標を決定する
220 値の範囲を識別する
230 1つまたは複数のユーザー設定の変更を制御する
310 蛍光パラメーター、FLParamが決定される
320 フレーム制限、%FramesLimitが更新される
330 AvgFLParamが計算される
340 AvgFLParamとThreshLowとが比較される
342 %FramesLimitとCriteriaとが比較される
344 制限が無効化される
346 制限状態が維持される
350 AvgFLParamとThreshHighとが比較される
352 %FramesLimitとCriteriaとが比較される
354 制限が無効化される
356 制限状態が維持される
360 %FramesLimitとCriteriaとが比較される
362 制限が無効化される
364 制限状態が維持される
400 システム
410 顕微鏡
420 コンピュータシステム
図1a
図1b
図2
図3
図4
【国際調査報告】