(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230703BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230703BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230703BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230703BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230703BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230703BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230703BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230703BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230703BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230703BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230703BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
A61K 38/16 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/725
C07K16/46
A61K35/12
A61K48/00
A61P35/00
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575370
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 GB2021051435
(87)【国際公開番号】W WO2021250405
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507299817
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】プーレ, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】チュン, ウェン-キット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
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4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB26
4C087AA01
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4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)と、前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメインおよび細胞表面抗原に結合する第2の結合ドメインを含む二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む細胞に関する。本発明はまた、疾患の処置および/または予防において使用するためのCAR系、核酸、ベクター、医薬組成物、および医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)と、
(ii)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面抗原に結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドと
を含む細胞。
【請求項2】
前記細胞表面抗原が、細胞表面組織抗原である、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記腫瘍抗原が、細胞表面腫瘍抗原ではなく、好ましくは、前記腫瘍抗原が、膜貫通ドメイン;グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)-アンカーなどの脂質アンカーを含まない、先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項4】
前記腫瘍抗原が、シグナルペプチドを含まない、先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項5】
前記腫瘍抗原が、腫瘍において、対応する非がん性組織と比較して高いレベルで発現されるか、または前記抗原が、腫瘍特異的である、先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項6】
前記腫瘍抗原の前記第1または第2のエピトープが、腫瘍特異的変異を含む、先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項7】
前記変異が、置換、挿入、または欠失から選択される、請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
前記腫瘍抗原が、融合タンパク質であり、好適には、前記融合タンパク質が、少なくとも2つのドメインを含んでもよく、第1のドメインが腫瘍抗原の第1のエピトープを含み、第2のドメインが前記腫瘍抗原の第2のエピトープを含む、先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項9】
前記腫瘍抗原の前記第1または第2のエピトープが、腫瘍特異的翻訳後修飾を含む、先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項10】
前記腫瘍特異的翻訳後修飾が、リン酸化であり、好適には、前記腫瘍抗原エピトープのうちの1つが、リン酸化部位であり得る、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
a)前記CARの前記結合ドメインが、前記腫瘍に特異的である腫瘍抗原の第1のエピトープに結合し、かつ/または
b)前記二重特異性タンパク質の前記第1の結合ドメインが、前記腫瘍に特異的である腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する、
先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項12】
前記細胞が、免疫エフェクター細胞、例えば、アルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、またはマクロファージである、先行する請求項のいずれかに記載の細胞。
【請求項13】
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードする第1の核酸配列と、
(ii)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードする第2の核酸配列と
を含む核酸構築物。
【請求項14】
前記第1および第2の核酸配列が、共発現部位によって分離されている、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項15】
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードする第1の核酸配列と、
(ii)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードする第2の核酸配列と
を含む核酸配列のキット。
【請求項16】
請求項13または14に記載の核酸構築物を含むベクター。
【請求項17】
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードする核酸配列を含む、第1のベクターと、
(ii)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードする核酸配列を含む、第2のベクターと
を含む、ベクターのキット。
【請求項18】
請求項1から12のいずれかに記載の複数の細胞、請求項13もしくは14に記載の核酸構築物、請求項15で規定される第1の核酸配列および第2の核酸配列、請求項16に記載のベクター、または請求項17で規定される第1および第2のベクターを含む医薬組成物。
【請求項19】
疾患の処置および/または予防において使用するための、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記疾患が、がんである、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
請求項1から12のいずれかに記載の細胞を作製するための方法であって、請求項13もしくは14に記載の核酸構築物、請求項15で規定される第1の核酸配列および第2の核酸配列、請求項16に記載のベクター、または請求項17で規定される第1および第2のベクターを、前記細胞に導入するステップを含む、方法。
【請求項22】
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む受容体構成成分と、
ii)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質と
を含むCAR系。
【請求項23】
前記系が、
a)前記受容体構成成分を発現するアルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、もしくはマクロファージ、および/または
b)前記二重特異性タンパク質を発現するアルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、もしくはマクロファージ
を含み、ならびに/または
c)前記受容体構成成分および前記二重特異性タンパク質が、同じ細胞によって発現される、ならびに/または
d)前記二重特異性タンパク質が、前記系に投与される、
請求項22に記載の系。
【請求項24】
CAR発現細胞と組み合わせてがんの処置において使用するための、二重特異性タンパク質であって、
前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含み、
前記CARが、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含む、
二重特異性タンパク質。
【請求項25】
二重特異性タンパク質と組み合わせてがんの処置において使用するための、CAR発現細胞であって、
前記CARが、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含み、
前記二重特異性タンパク質が、
前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む、
CAR発現細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)および二重特異性タンパク質に関し、具体的には、CARおよび二重特異性タンパク質の組合せ、前記CARを含み前記二重特異性タンパク質を発現する細胞に関し、具体的には、CARが、典型的には細胞の細胞表面上に存在しない抗原を標的とすることを可能にするアプローチに関する。本発明は、本発明による細胞および/または二重特異性タンパク質を含む医薬組成物、ならびに疾患の処置および/または予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫系は、多数の異なる種類のがんの発生および成長において役割を果たす。いくつかの異なる免疫治療戦略が、これらのがんのための有望な治療法として開発されている。腫瘍細胞を認識し抗腫瘍エフェクター機能を促進するように免疫系を修飾するための免疫治療戦略には、免疫チェックポイント遮断、腫瘍浸潤リンパ球またはトランスジェニックT細胞受容体(TCR)もしくはCARを発現する遺伝子修飾されたT細胞を用いた養子細胞療法(ACT)が含まれる。
【0003】
CARまたはトランスジェニックTCRの細胞への導入は、CARまたはTCRをコードする核酸の末梢血細胞、例えば、末梢血T細胞へのex vivo導入によって、抗原に特異的な細胞を大量に生成することを可能にする。
【0004】
CARは、モノクローナル抗体の特異性を細胞、例えば、T細胞に移植する人工受容体であり、抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を、単独または他のシグナル伝達部分と組み合わせて、細胞内シグナル伝達鎖に連結させることによって構築することができる。CARは、腫瘍細胞表面上に提示される抗原を認識する。
【0005】
CAR T細胞は、患者に生着し、増殖し、疾患の部位へとホーミングする。CAR T細胞は、標準的な治療法に対して不応性であるものを含め、リンパ系悪性疾患に対する活性を示している。CAR T細胞の持続により、再発から保護される。まとめると、これらの特性により、CAR T細胞療法は、がんを処置するための有望なモダリティとなっている。
【0006】
これまででもっとも成功した結果は、CD19を標的とするCAR T細胞療法を使用した造血系悪性疾患において得られており、これは、Food and Drug Administration(FDA)から商業上の認可を受けている。CAR T細胞は、難治性のがんを処置するのに有効であることも示されている。
【0007】
しかしながら、細胞内抗原を標的とすることができないこと、例えば、CARの抗原結合ドメインは細胞内抗原にはアクセスすることができないことが、CAR T細胞の現在の1つの主要な限定である。多くの細胞内抗原は、正常細胞よりも腫瘍細胞に高度に選択的である変異、融合、または異常なリン酸化事象を生じるため、これによって、CARががんを特異的に標的とする能力は限定される。腫瘍細胞は、細胞内抗原(その多くは、腫瘍細胞に高度に選択的であるこれらの変異、融合、または異常なリン酸化事象を含む)を腫瘍微小環境に漏出することが知られている。
【0008】
細胞内抗原を認識する1つの手段は、MHCの状況においてペプチドを認識するトランスジェニックTCRを使用することによるものである。例えば、過剰発現されるタンパク質に由来するペプチド、または点変異を含むペプチド、融合ジャンクション、およびさらにはホスホ-エピトープを認識するTCRを、生成することができる。
【0009】
しかしながら、トランスジェニックTCRは、いくつかの限定を有する。第1には、トランスジェニックTCRは、異なるHLA型について生成しなければならない。臨床試験において記載され試験されているほぼすべてのトランスジェニックTCRは、HLA-A2拘束性である。集団に応じて、HLA-A2の保有率は、40%またはそれよりも低い。第2に、ペプチドの提示は、タンパク質のプロセシングおよびペプチドの提示という複雑なプロセスに完全に依存する。これは、必要な機序の崩壊の機会が相当にあることを意味する。すべてのペプチドが、これらの経路に依存するため、複数のエピトープを標的とすることは、この関連する問題を解決することにはならない。トランスジェニックTCRを使用して細胞内抗原を標的とすることのさらなる限定は、特異性を生成することが困難であり、前臨床データにより交差反応性に起因する毒性が予測されないことである。
【0010】
免疫療法のための細胞内抗原を標的とする改善された手段が、必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の態様の概要
本発明は、調節不全の腫瘍細胞が、少量の腫瘍抗原(例えば、細胞内腫瘍抗原)を漏出し、免疫療法アプローチを使用してその抗原を標的とすることができるという本発明者らの認識に少なくとも部分的に基づく。例えば、少量の腫瘍抗原は、調節不全のER/ゴルジ体および/または膜輸送に起因して、腫瘍細胞によって放出され得る。これらの腫瘍抗原は、腫瘍の周囲の微小環境へと放出され、低いレベルで存在する。これらの腫瘍抗原は、細胞表面上には存在しない(すなわち、細胞表面上に保持されない)ため、標準的なCARを用いてそれらを標的とすることは不可能であった。それらの発現レベルが低いこともまた、治療法のためにこれらの腫瘍抗原を有効に標的とすることに関して問題を提示し得る。
【0012】
本発明は、腫瘍微小環境内に低いレベルで存在するこれらの腫瘍抗原を標的とするための治療的戦略を提供する。この戦略は、1)CARを発現する操作された細胞と、2)二重特異性タンパク質との組合せの使用を含む。本発明の例示的な実施形態は、
図1~4に示されている。
【0013】
二重特異性タンパク質は、腫瘍微小環境内(例えば、腫瘍細胞の細胞表面上)の細胞表面抗原に結合する第1のドメインと、腫瘍抗原に結合する第2のドメインとを含む。操作されたCAR細胞は、二重特異性タンパク質によって認識されるものとは異なるエピトープにおいて腫瘍抗原に結合するCARを発現する。腫瘍抗原は、二重特異性タンパク質との相互作用を通じて、腫瘍細胞または近傍の細胞から放出されるにつれて細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上に蓄積される。次いで、CARは、二重特異性タンパク質に係留された腫瘍抗原に結合する。表面上で抗原を捕捉する標的細胞が、溶解される。
【0014】
この治療戦略を利用して、
・腫瘍によって発現される融合タンパク質(例えば、二重特異性タンパク質が、一方の融合パートナーを認識してそれに結合し、CARが、他方の融合パートナーを認識してそれに結合する)、
・腫瘍特異的変異を含むタンパク質(例えば、二重特異性タンパク質が、タンパク質のエピトープを認識してそれに結合し、CARが、腫瘍特異的変異であり得る変異を認識してそれに結合する(またはその逆も同様))、
・腫瘍における異常にリン酸化されたタンパク質(例えば、二重特異性タンパク質が、タンパク質のエピトープを認識してそれに結合し、CARが、異常なリン酸化を含むエピトープを認識してそれに結合する(またはその逆も同様))
を含むがこれらに限定されない腫瘍抗原を標的とすることができる。
【0015】
本発明による操作された細胞および二重特異性タンパク質は、これによって、治療薬として使用するための改善された操作された細胞を提供し得る。
一態様では、本発明は、
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARと、
(ii)腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面抗原に結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドと
を含む細胞を提供する。
【0016】
細胞は、操作された免疫エフェクター細胞であり得る。
二重特異性タンパク質は、分泌タンパク質であり得る。
【0017】
腫瘍抗原の第1のエピトープおよび腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する結合ドメインは、非競合的であり得る。好適には、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合するCARの結合ドメイン、および腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する二重特異性タンパク質の第1の結合ドメインは、同時に同じ抗原に結合することができる場合がある。
【0018】
細胞表面抗原は、細胞表面組織抗原であり得る。
【0019】
好適には、腫瘍抗原は、細胞表面腫瘍抗原ではなく、好ましくは、腫瘍抗原は、膜貫通ドメインも;グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)-アンカーなどの脂質アンカーも含まない。
【0020】
好適には、腫瘍抗原は、シグナルペプチドを含まない。
【0021】
腫瘍抗原は、腫瘍において、対応する非がん性組織と比較して高いレベルで発現され得るか、または抗原は、腫瘍特異的であり得る。
【0022】
腫瘍抗原の第1および/または第2のエピトープは、腫瘍特異的変異を含み得る。
【0023】
変異は、置換、挿入、または欠失から選択され得る。
【0024】
腫瘍抗原は、融合タンパク質であってもよい。好適には、前記融合タンパク質は、少なくとも2つのドメインを含み得、融合タンパク質の第1のドメインは、腫瘍抗原の第1のエピトープを含み得、融合タンパク質の第2のドメインは、腫瘍抗原の第2のエピトープを含み得る。換言すると、CARの結合ドメインおよび二重特異性タンパク質の第1の結合ドメインは、融合タンパク質の異なるドメイン、または融合タンパク質を含む異なる融合パートナーに結合する。
【0025】
腫瘍抗原の第1または第2のエピトープは、腫瘍特異的翻訳後修飾を含み得る。
【0026】
腫瘍特異的翻訳後修飾は、リン酸化であり得、好適には、腫瘍抗原エピトープのうちの1つは、リン酸化部位であり得る。例えば、腫瘍抗原エピトープのうちの1つは、リン酸化部位(腫瘍に特異的である)であり得、第2の腫瘍抗原エピトープは、リン酸化部位ではないか、または腫瘍特異的ではないエピトープであり得る。
【0027】
CARの結合ドメインは、腫瘍に特異的である腫瘍抗原の第1のエピトープに結合し得る。
【0028】
二重特異性タンパク質の第1の結合ドメインは、腫瘍に特異的である腫瘍抗原の第2のエピトープに結合し得る。
【0029】
細胞は、免疫エフェクター細胞、例えば、アルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、またはマクロファージであり得る。
【0030】
別の態様では、本発明は、
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードする第1の核酸配列と、
(ii)腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードする第2の核酸配列と
を含む核酸構築物を提供する。
【0031】
第1および第2の核酸配列は、共発現部位によって分離されていてもよい。
さらなる態様では、本発明は、
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードする第1の核酸配列と、
(ii)腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードする第2の核酸配列と
を含む核酸配列のキットを提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸構築物を含むベクターを提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードする核酸配列を含む、第1のベクターと、
(ii)腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質をコードする核酸配列を含む、第2のベクターと
を含む、ベクターのキットを提供する。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従う複数の細胞、本発明に従う核酸構築物、本発明に従う第1の核酸配列および第2の核酸配列、本発明に従うベクター、または本発明に従う第1および第2のベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、疾患の処置および/または予防において使用するための、本発明の医薬組成物を提供する。
【0036】
疾患はがんであり得る。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従う細胞を作製するための方法であって、本発明に従う核酸構築物、本発明に従う第1の核酸配列および第2の核酸配列、本発明に従うベクター、または本発明に従う第1および第2のベクターを、細胞に導入するステップを含む、方法を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む受容体構成成分と、
ii)腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質と
を含むCAR系を提供する。
【0039】
この系は、操作された免疫エフェクター細胞を含み得る。例えば、細胞は、アルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、またはマクロファージであり得る。好適には、操作された免疫エフェクター細胞は、受容体構成成分を発現し得る。
【0040】
この系は、操作された免疫エフェクター細胞を含み得る。例えば、細胞は、アルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、またはマクロファージであり得る。好適には、操作された免疫エフェクター細胞は、二重特異性タンパク質を発現する。
【0041】
受容体構成成分および二重特異性タンパク質は、同じ細胞によって発現され得る。例えば、二重特異性タンパク質は、系によって、または系内の構成成分によって、産生され得る。
【0042】
二重特異性タンパク質は、系に投与され得る。例えば、二重特異性タンパク質は、系の外部で産生され得、続いて、系に導入されてもよい。
【0043】
さらなる態様では、本発明は、CAR発現細胞と組み合わせてがんの処置において使用するための、二重特異性タンパク質であって、
腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含み、
CARが、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含む、
二重特異性タンパク質を提供する。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、二重特異性タンパク質と組み合わせてがんの処置において使用するための、CAR発現細胞であって、
CARが、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含み、
二重特異性タンパク質が、
腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む、
CAR発現細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明の態様の概略図を示す。パネル(a)では、腫瘍細胞が、腫瘍抗原として知られるある特定の抗原を過剰発現している。腫瘍細胞は、例えば、調節不全のER/ゴルジ体および膜輸送を通じて、少量の細胞内タンパク質を放出する。したがって、少量の腫瘍抗原が、細胞外で腫瘍微小環境に存在する。しかしながら、これらの腫瘍抗原は、腫瘍細胞膜に結合しておらず、低いレベルで存在するため、典型的には細胞表面抗原のみを標的とする従来のCAR T細胞によって標的とすることができない。パネル(b)では、本発明の一般概念が、概略的に示されている。本発明によるCAR T細胞は、二重特異性タンパク質を分泌するように修飾されている。この二重特異性タンパク質は、問題の腫瘍によっても発現される表面組織抗原に対する特異性を有する結合ドメインと、CARによる前記抗原の認識とオーバーラップしない腫瘍抗原に対する特異性を有する結合ドメインとを含む。分泌された二重特異性タンパク質は、CARによる標的化を可能にする腫瘍細胞表面上の腫瘍抗原の係留およびその濃縮をもたらす。
【0046】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の概略図を示し、ここで、腫瘍は、少なくとも2つのドメイン、例えば、EML4-ALK、BCR/ABLを含む融合タンパク質、または任意の他の融合タンパク質、例えば、表2に列挙されるものを発現している。二重特異性タンパク質は、一方の融合パートナーに結合し、それを腫瘍細胞表面上に係留する/増幅させる。CARは、他方の融合パートナーを認識する。これにより、融合タンパク質のみが増幅され、CAR T細胞によって認識されるため、系の特異性が増加する。
【0047】
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の概略図を示し、ここで、腫瘍は、腫瘍特異的変異を有するタンパク質を発現している。二重特異性タンパク質は、問題のタンパク質の一般的なエピトープに結合し、それを腫瘍細胞表面上に係留する/増幅させることができ、一方で、CARは、特異的に変異を認識するか、または逆も同様である。これにより、変異したタンパク質のみが増幅され、CAR T細胞によって認識されるため、系の特異性が増加する。
【0048】
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の概略図を示し、ここで、腫瘍は、異常にリン酸化されているタンパク質を発現している。二重特異性タンパク質は、異常なリン酸化の部位とは異なるタンパク質のエピトープに結合することができ、CARは、ホスホ-エピトープを特異的に認識することができるか、または逆も同様である。これにより、異常にリン酸化されているタンパク質のみが増幅され、CAR T細胞によって認識されるため、系の特異性が増加する。
【0049】
【
図5】
図5は、CD33陽性の細胞内eGFP発現細胞のEXOAMP in vitro標的化を示す。EXOAMP GFP標的化CARは、二重陽性CD33/eGFP発現標的を溶解し、単一陽性CD33発現標的を残す。抗CD33 CAR(αCD33glx-HNG)、抗GFP CAR(αGFP_GBP6-HNG)、陰性対照CD19-CAR(αCD19FMC63)、および非形質導入(NT)のCARを発現し、GFP/CD33に対する二重特異性結合体(bispecific binder)(αGFP-HNG-αCD33タンデムscFv)およびGFP/CD19に対する無関係の二重特異性結合体(αGFP-HNG-αCD19)のいずれかを共発現する、エフェクターT細胞を、エフェクター対標的の比1:1で、CD33発現HL60細胞(パネルAを参照されたい)、細胞内eGFPタンパク質を発現するHL60細胞(3xMYC-XTEN_L-eGFP)(パネルBを参照されたい)、および細胞内キメラGFP/BCL-ABLタンパク質を発現するHL60細胞(p210.p210_BCR-ABL-3xMYC-XTEN_L-eGFP)(パネルCを参照されたい)と共培養した。
【0050】
【
図6-1】
図6は、皮下NOD scidガンマ(NSG)マウスにおける、CD19-CAR、およびGFP/CD19を標的とする二重特異性タンパク質を発現するEXOAMP GFP-CAR、ならびに非形質導入(NT)T細胞による、CD19発現NALM6細胞および細胞内GFP発現NALM6細胞のEXOAMP in vivo標的化を示す。EXOAMP GFP CARは、両側腹部処置(bilaterally flanked)NSGマウスにおいて、二重陽性CD19/eGFP発現NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍を標的としてそれを溶解し、一方で、単一陽性NALM6腫瘍を残す。パネルAは、in vivo NALM6皮下動物モデルにおける時系列、コホート、試料採取、および注射経路の詳細を示す。NSGマウスに、0.5×10^6個のNALM6およびNALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍を、交互に後腹部に注射し、5×10^6個のCAR T細胞を、3日後に腫瘍内に注射した。腫瘍細胞は、生体発光イメージングを通じたin vitroおよびin vivoでの腫瘍成長のマーカーとして、ホタルルシフェラーゼ/グリコシルホスファチジルイノシトール結合型HAタグ(Fluc_xRed.2A.HA-GPI)を発現するように形質導入されていた。パネルBは、3~21日目に得られた未加工の画像を示し、αCD19-CARにおける両方の腫瘍の腫瘍制御、およびEXOAMP GFP CARにおける特異的二重陽性NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍制御を示す。このデータは、腫瘍部位における平均ラジアンスでパネルCにさらにプロットされており、EXOAMP GFP-CARのみによる特異的な腫瘍制御が実証されている。それぞれ、左手側のグラフは、NALM6の特異的腫瘍平均ラジアンスを示し、右手側のグラフは、NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFPの特異的腫瘍平均ラジアンスを示す。線は、それぞれの被験体マウス/コホートの平均読み取り値を示す。
【0051】
【
図7-1】
図7は、皮下NOD scidガンマ(NSG)マウスにおける、αCD19-CAR、およびGFP/CD19を標的とする二重特異性タンパク質またはGFP/CD33を標的とする無関係のタンパク質のいずれかを発現するEXOAMP GFP-CAR、ならびに非形質導入(NT)T細胞による、CD19発現NALM6細胞および細胞内GFP発現NALM6細胞のEXOAMP in vivo標的化を示す。EXOAMP GFP CAR +GFPxCD19は、両側腹部処置NSGマウスにおいて、二重陽性CD19/eGFP発現NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍を標的としてそれを溶解し、一方で、単一陽性NALM6腫瘍を残す。一方で、GFP-CAR +GFP×CD33は、NT T細胞と同様に、両方の腫瘍の制御に失敗している。パネルAは、in vivo NALM6皮下動物モデルにおける時系列、コホート、試料採取、および注射経路の詳細を示す。NSGマウスに、0.5×10^6個のNALM6およびNALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍を、左後腹部および右肩部の交互の部位に注射し、5×10^6個のCAR T細胞を、3日後に腫瘍内に注射した。腫瘍細胞には、生体発光イメージングを通じたin vitroおよびin vivoでの腫瘍成長のマーカーとして、ホタルルシフェラーゼ/グリコシルホスファチジルイノシトール結合型HAタグ(Fluc_xRed.2A.HA-GPI)を発現するように形質導入されていた。パネルBは、3~21日目に得られた未加工の画像を示し、αCD19-CARにおける両方の腫瘍の腫瘍制御、およびEXOAMP GFP CARにおける特異的二重陽性NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍制御を示す。GFP-CAR _GFPxCD33は、NT T細胞と同様に、両方の腫瘍の制御に失敗している。このデータは、腫瘍部位における平均ラジアンスでパネルCにさらにプロットされており、EXOAMP GFP-CAR +GFPxCD19のみによる特異的な腫瘍制御が実証されている。左手側のグラフは、NALM6の特異的腫瘍平均ラジアンスを示し、右手側のグラフは、NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFPの特異的腫瘍平均ラジアンスを示す。線は、それぞれの被験体マウス/コホートの平均読み取り値を示す。コホート2(αCD19_FMC63- HNG)の最初のマウスは、21日目以前に体重減少に起因して処分されている。
【0052】
【
図8】
図8は、結腸がん細胞株、ならびに対照細胞である活性化PBMCおよび非活性化PBMCに由来するin vitro細胞上清に対するp53特異的ELISAによって測定した、細胞外p53タンパク質を示す。1×10
5個の細胞を、96Fウェルプレートにおいて200ulの培地に播種し、48時間インキュベートした後、細胞上清を、p53タンパク質に関して定量した。p53タンパク質は、試験した結腸がん細胞株の5/6で検出することができる。CL-40およびSW1463細胞株は、R248Q変異を有する変異体p53を発現する。HT-29は、R273H変異体p53を発現する。LS123は、R175H変異体p53を発現する。RKOおよびLS174Tは、野生型p53を発現する。読み取り値は、HT-29、LS123、およびLS174T細胞については7個の生物学的複製物、CL-40、SW1463、活性化および非活性化PBMCについては6個の生物学的複製物、RKO細胞については1個の複製物である。
【0053】
【
図9】
図9は、HT29(細胞表面EpCAMおよび細胞外p53変異体R273Hを発現する)またはLS123(細胞表面EpCAMおよび細胞外p53変異体R175Hを発現する)の標的結腸直腸がん細胞とともにインキュベートしたときのT細胞からのIL-2サイトカイン放出を示し、ここで、T細胞は、棒グラフの左から右に、非形質導入(NT)細胞、抗EpCAM CARを発現するもの(抗EpCAM_MT110)、抗CD19 CARを発現するもの(抗CD19_FM63 CAR)、汎指向性(pantropic)p53 CARを発現し、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体を分泌するもの(aP53_421 +BSB_MT110/7B9)、汎指向性p53 CARを発現し、EpCAMおよびCD19に対する二重特異性結合体を分泌するもの(aP53_421 +BSB_MT110/FMC63)である。
【0054】
【
図10】
図10は、HT29(細胞表面EpCAMおよび細胞外p53変異体R273Hを発現する)またはLS123(細胞表面EpCAMおよび細胞外p53変異体R175Hを発現する)の標的結腸直腸がん細胞とともにインキュベートしたときのT細胞からのIFNγサイトカイン放出を示し、ここで、T細胞は、棒グラフの左から右に、非形質導入(NT)細胞、抗EpCAM CARを発現するもの(抗EpCAM_MT110)、抗CD19 CARを発現するもの(抗CD19_FM63 CAR)、汎指向性(pantropic)p53 CARを発現し、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体を分泌するもの(aP53_421 +BSB_MT110/7B9)、汎指向性p53 CARを発現し、EpCAMおよびCD19に対する二重特異性結合体を分泌するもの(aP53_421 +BSB_MT110/FMC63)である。
【0055】
【
図11】
図11は、細胞表面EpCAMを発現し、変異体p53 R175Hを有するLS123細胞に対する、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体(+BSB_MT110/7B9)を分泌する汎指向性p53 CAR(aP53_421)発現T細胞のin vitroリアルタイム細胞傷害を示す。対照エフェクターには、非形質導入細胞(NT)および陽性対照CAR抗EpCAM(aEpCAM_MT110)が含まれる。A)4:1のE:T比(CAR:標的)の共培養物における120時間にわたる生存LS123標的細胞のリアルタイム分析。破線は、t=0に対して正規化した0.5正規化生存標的である。B)t=0に対して正規化した生存標的と比較した、LS123標的細胞の50%殺滅までの時間。n/a、該当なし。
【発明を実施するための形態】
【0056】
詳細な説明
キメラ抗原受容体(CAR)
古典的なキメラ抗原受容体(CAR)は、通常、細胞外抗原認識ドメイン(結合体)を細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)に接続する、キメラI型膜貫通タンパク質である。結合体は、典型的に、モノクローナル抗体(mAb)由来の一本鎖可変断片(scFv)であるが、抗体様の、またはリガンドに基づく、抗原結合部位を含む他の形式に基づいていてもよい。スペーサードメインは、通常、結合体を膜から単離し、それ自体を好適な配向に配置するのを可能にするために、使用される。使用される一般的なスペーサードメインは、IgG1のFcである。抗原に応じて、CD8α由来のストークまたはさらにはIgG1ヒンジ単独だけなど、さらに小型のスペーサーが十分であり得る。膜貫通ドメインは、タンパク質を細胞膜に固定し、スペーサーをエンドドメインに接続する。
【0057】
初期のCARの設計は、FcεR1のγ鎖またはCD3ζのいずれかの細胞内部分に由来するエンドドメインを有していた。結果として、これらの第1世代受容体は、免疫性シグナル1を伝達し、このシグナルは、T細胞による同起源の標的細胞の殺滅をトリガーするには十分であったが、T細胞を完全に活性化して増殖および生存させることはできなかった。この限定を克服するために、複合エンドドメインが構築されており、T細胞共刺激分子の細胞内部分を、CD3ζのものに融合させることにより、抗原認識後に活性化および共刺激のシグナルを同時に伝達することができる第2世代の受容体が得られる。最も一般的に使用されている共刺激ドメインは、CD28のものである。これは、最も強力な共刺激シグナル、すなわち、免疫性シグナル2を提供し、このシグナルが、T細胞増殖をトリガーする。生存シグナルを伝達する、関係性の深いOX40および41BBなど、TNF受容体ファミリーのエンドドメインを含むいくつかの受容体についても説明されている。現在では、活性化、増殖、および生存のシグナルを伝達することができるエンドドメインを有する、さらに強力な第3世代のCARについて説明されている。
【0058】
CARをコードする核酸を、例えば、レトロウイルスベクターを使用して、細胞、例えば、T細胞などの免疫エフェクター細胞に導入することができる。レンチウイルスベクターを利用してもよい。これにより、多数の抗原特異性細胞を、養子細胞移入のために生成することができる。CARが標的抗原に結合する場合、CARが発現されるT細胞への活性化シグナルの伝達が生じる。したがって、CARは、T細胞の特異性および細胞傷害を、標的抗原を発現する腫瘍細胞へと向ける。
【0059】
したがって、CARは、典型的には、(i)抗原結合ドメイン、(ii)スペーサー、(iii)膜貫通ドメイン、および(iii)シグナル伝達ドメインを含むかまたはそれと会合する細胞内ドメインを含む。
【0060】
好適には、本発明によるCARは、抗原結合ドメイン-スペーサー-膜貫通ドメイン-シグナル伝達ドメインの一般形式を含み得る。好適には、本発明によるCARは、抗原結合ドメイン-スペーサー-膜貫通ドメイン-シグナル伝達ドメインの一般形式を有し得る。
【0061】
好適には、本発明によるCARは、一般形式:抗原結合ドメイン-CD3を含み得る。好適には、本発明によるCARは、一般形式:抗原結合ドメイン-CD3を有し得る。
【0062】
結合ドメイン
結合ドメイン(または抗原結合ドメイン)は、抗原を認識し、それに結合する、CARまたは二重特異性タンパク質の部分である。
【0063】
抗体、抗体断片、抗体模倣体、およびT細胞受容体の抗原結合部位に基づくものを含む、多数の結合ドメインが当該技術分野で公知である。
【0064】
選択された標的に結合することができる抗体断片の例としては、Fv、ScFv、F(ab’)、およびF(ab’)2が挙げられる。
【0065】
例えば、結合ドメインは、モノクローナル抗体由来のscFvなどの一本鎖可変断片(scFv)、標的抗原の天然のリガンド、標的に対して十分な親和性を有するペプチド、単一ドメイン抗体、Darpin(設計型アンキリン反復タンパク質)などの人工単一結合体またはT細胞受容体に由来する一本鎖を含み得る。
【0066】
結合ドメインは、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗原結合部位を有するポリペプチドであり得る。結合ドメインは、3つのCDRを含み得、ドメイン抗体(dAb)のものと同等である抗原結合部位を有し得る。結合ドメインは、6つのCDRを含み得、古典的抗体分子のものと同等である抗原結合部位を有し得る。ポリペプチドの残りは、結合部位に好適なスキャフォールドを提供し、それが抗原に結合するのに適切な様式でそれを提示する、任意の配列であり得る。結合ドメインは、免疫グロブリン分子の一部、例えば、Fab、F(ab)’2、Fv、一本鎖Fv(ScFv)断片、ナノボディ(nanobody)、または一本鎖可変ドメイン(3つのCDRを有するVHもしくはVL鎖であり得る)であり得る。結合ドメインは、非ヒトのものであってもよく、キメラのものであってもよく、ヒト化されていてもよく、または完全にヒトのものであってもよい。
【0067】
結合ドメインは、免疫グロブリンに由来することも、それに基づくこともない、結合ドメインを含み得る。非抗体ポリペプチドの結合能力を利用するいくつかの「抗体模倣体」設計型反復タンパク質(DRP)が開発されている。そのような分子としては、アンキリンまたはロイシンリッチ反復タンパク質、例えば、DARPin(設計型アンキリン反復タンパク質)、アンチカリン、アビマー(avimer)、およびバーサボディ(versabody)が挙げられる。
【0068】
結合ドメインは、本明細書で規定される抗原に「特異的に結合」し得る。本明細書に使用されるとき、「特異的に結合する」とは、結合ドメインが、抗原に結合するが、他のタンパク質には結合しないか、または低い親和性で他のタンパク質に結合することを意味する。
【0069】
2つの分子の間、例えば、抗原結合ドメインと抗原との間の結合親和性は、例えば、解離定数(KD)の決定によって定量することができる。KDは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)方法(例えば、Biacore(商標))による、結合ドメインと抗原との間の複合体の形成および解離の動態の測定によって、決定することができる。複合体の結合および解離に対応する速度定数は、それぞれ、結合速度定数ka(またはkon)および解離速度定数kd.(またはkoff)と称される。KDは、式KD=kd/kaによってkaおよびkdと関連する。
【0070】
異なる分子相互作用と関連する結合親和性、例えば、異なる結合ドメインおよび抗原の結合親和性の比較は、個々の結合ドメインおよび抗原のKD値の比較によって比較することができる。
【0071】
結合ドメインは、抗体の抗原結合部位に基づかないドメインを含み得る。例えば、抗原結合ドメインは、腫瘍細胞表面受容体の可溶性リガンド(例えば、可溶性ペプチド、例えば、サイトカインもしくはケモカイン)であるタンパク質/ペプチドに基づくドメイン、または結合対の対応物が腫瘍細胞上に発現される膜結合型リガンドもしくは受容体の細胞外ドメインを含み得る。
【0072】
結合ドメインは、抗原の天然のリガンドに基づき得る。
【0073】
結合ドメインは、コンビナトリアルライブラリーに由来する親和性ペプチド、またはde novoで設計された親和性タンパク質/ペプチドを含み得る。
【0074】
選択された標的に結合することができる抗体断片としては、Fv、ScFv、F(ab’)、およびF(ab’)2が挙げられる。加えて、古典的な抗体の代替物、例えば、「アビボディ」、「アビマー」、「アンチカリン」、「ナノボディ」、および「DARPin」もまた、使用され得る。
【0075】
一態様では、腫瘍抗原の第1のエピトープおよび腫瘍抗原に対する第2のエピトープに結合する結合ドメインは、非競合的であり得る。好適には、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合するCARの結合ドメイン、および腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する二重特異性タンパク質の第1の結合ドメインは、同時に同じ抗原に結合することができる場合がある。
【0076】
好適な抗原に結合する様々な結合ドメインが、当該技術分野において公知である。例えば、以下の表1~4は、本発明において使用され得る結合ドメインを含む、例示的な市販の抗体を列挙する。
【0077】
表1.ホスホ抗原に結合する、例えば、ホスホ残基を含むエピトープに結合するか、またはホスホエピトープとは異なるエピトープに結合する結合ドメインを含む、市販入手可能な抗体。
【表1】
表2.腫瘍融合タンパク質に結合する、例えば、融合パートナーの一方のエピトープに結合する結合ドメインを含む、市販入手可能な抗体。
【表2】
【0078】
表3.点変異を有する抗原に結合する、例えば、点変異を含むエピトープに結合するか、または点変異とは異なるエピトープ(野生型エピトープと称される)に結合する結合ドメインを含む、市販入手可能な抗体。
【表3-1】
【表3-2】
【0079】
表4.腫瘍において過剰発現される抗原に結合する結合ドメインを含む、市販入手可能な抗体。
【表4】
【0080】
好適には、本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、表1~4に列挙される市販入手可能な抗体に由来する結合ドメインに基づき得る。好適には、本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、表1~4に列挙される市販入手可能な抗体のうちのいずれかの結合ドメインを含み得る。
【0081】
一態様では、本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、変異体p53に対する抗体に基づき得る(またはそれを含み得る)。好適には、抗体は、変異特異的抗体であり得る、すなわち、抗体は、変異体p53に結合する。本発明において使用され得る例示的な抗体は、国際公開第WO2018074978号およびHwang et al., 2018, Cell Reports 22, 299-312に記載されており、これらは、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。一態様では、本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、R175Hを含む変異体p53に対する抗体に基づき得る(またはそれを含み得る)。本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、R175Hを含む変異体p53に特異的である抗体に基づき得る(またはそれを含み得る)。
【0082】
一態様では、本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、抗体クローン7B9に基づき得る(またはそれを含み得る)。
【0083】
一態様では、本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、R248Qを含む変異体p53に対する抗体に基づき得る(またはそれを含み得る)。本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、R248Qを含む変異体p53に特異的である抗体に基づき得る(またはそれを含み得る)。例示的な抗体は、国際公開第WO2018074978号およびHwang et al.(上記)に記載されている。
【0084】
一態様では、本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、R273Hを含む変異体p53に対する抗体に基づき得る(またはそれを含み得る)。本発明の任意の態様において使用するための結合ドメインは、R273Hを含む変異体p53に特異的である抗体に基づき得る(またはそれを含み得る)。例示的な抗体は、国際公開第WO2018074978号およびHwang et al.(上記)に記載されている。
【0085】
スペーサードメイン
CARは、結合ドメインを膜貫通ドメインと接続し、結合ドメインをエンドドメインから空間的に分離するための、スペーサー配列を含み得る。
【0086】
二重特異性タンパク質は、2つの結合ドメインの間にスペーサー配列を含み得る。好適には、スペーサー配列は、二重特異性タンパク質の2つの結合ドメインを空間的に分離し得る。
【0087】
可撓性スペーサーは、結合を促進するために、結合ドメインを異なる方向に配向することを可能にする。
【0088】
スペーサー配列は、例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、またはヒトCD8ストーク、またはマウスCD8ストークを含み得る。スペーサーは、あるいは、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、またはCD8ストークと類似の長さおよび/またはドメイン間隔特性を有する、代替的なリンカー配列を含み得る。ヒトIgG1スペーサーは、Fc結合モチーフを除去するように改変されていてもよい。
【0089】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜をまたぐCARの配列である。
【0090】
好適には、CARは、単回貫通タンパク質であり得る。
【0091】
好適には、CARは、複数回貫通タンパク質であり得る。
【0092】
膜貫通ドメインは、膜において熱力学的に安定である任意のタンパク質構造であり得る。これは、典型的には、数個の疎水性残基から構成されるアルファヘリックスである。任意の膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインを使用して、本発明の膜貫通部分を提供することができる。
【0093】
タンパク質の膜貫通ドメインの存在および貫通箇所(span)は、当業者であれば、TMHMMアルゴリズム(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM-2.0/)などのバイオインフォマティクスツールを使用して予測することができる。さらに、タンパク質の膜貫通ドメインが、比較的単純な構造体、すなわち、膜をまたぐのに十分な長さの疎水性アルファヘリックスを形成することが予測されるポリペプチド配列であることを踏まえると、人工的に設計されたTMドメインもまた、使用することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7052906号B1に記載されるように)。
【0094】
膜貫通ドメインは、CD28に由来してもよく、それにより良好な受容体安定性が得られる。膜貫通ドメインは、TCR受容体複合体の構成成分に由来してもよい。膜貫通ドメインは、TCRアルファ鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、TCRアルファ鎖を含み得る。
【0095】
膜貫通ドメインは、TCRベータ鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、TCRベータ鎖を含み得る。
【0096】
膜貫通ドメインは、CD3鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、CD3鎖を含み得る。
【0097】
好適には、膜貫通ドメインは、CD3-イプシロン鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、CD3-イプシロン鎖を含み得る。
【0098】
好適には、膜貫通ドメインは、CD3-ガンマ鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、CD3-ガンマ鎖を含み得る。
【0099】
好適には、膜貫通ドメインは、CD3-デルタ鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、CD3-デルタ鎖を含み得る。
【0100】
好適には、膜貫通ドメインは、CD3-ゼータ鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、CD3-ゼータ鎖を含み得る。
【0101】
活性化エンドドメイン
エンドドメインは、CARのシグナル伝達部分である。これは、CARの細胞内ドメインの一部であり得るか、またはそれと会合し得る。抗原認識の後、受容体がクラスターを形成し、天然のCD45およびCD148がシナプスから除外され、シグナルが細胞に伝達される。最も一般的に使用されているエンドドメイン構成成分は、CD3ゼータのものであり、これは、3つのITAMを含有する。これは、抗原が結合した後に、活性化シグナルをT細胞に伝達する。CD3ゼータは、完全に適格な活性化シグナルを提供しない場合があり、追加の共刺激シグナル伝達が必要な場合がある。例えば、キメラCD28およびOX40を、CD3ゼータとともに使用して、増殖/生存シグナルを伝達してもよく、または3つすべてを一緒に使用してもよい。
【0102】
CARが活性化エンドドメインを含む場合、これは、CD3ゼータエンドドメインを単独で、CD3ゼータエンドドメインをCD28もしくはOX40のいずれかのエンドドメインとともに、またはCD28エンドドメインとOX40およびCD3ゼータのエンドドメインとを含んでもよい。
【0103】
ITAMモチーフを含む任意のエンドドメインが、活性化エンドドメインとして作用し得る。
【0104】
好適には、本発明によるCARは、スプリット受容体であり得、その結果、抗原認識ドメインは、シグナル伝達ドメインとは別個のタンパク質である。
【0105】
活性化エンドドメインは、TCR細胞内ドメインであり得る。
【0106】
好適には、活性化エンドドメインは、TCR受容体複合体の構成成分に由来する細胞内シグナル伝達ドメインに由来する刺激性ドメインを含み得る。
【0107】
活性化エンドドメインは、TCR受容体複合体の構成成分に由来してもよい。活性化エンドドメインは、CD3鎖に由来してもよい。好適には、活性化エンドドメインは、CD3鎖を含み得る。
【0108】
好適には、活性化エンドドメインは、CD3-イプシロン鎖に由来してもよい。好適には、活性化エンドドメインは、CD3-イプシロン鎖を含み得る。
【0109】
好適には、膜貫通ドメインは、CD3-ガンマ鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、CD3-ガンマ鎖を含み得る。
【0110】
好適には、活性化エンドドメインは、CD3-デルタ鎖に由来してもよい。好適には、活性化エンドドメインは、CD3-デルタ鎖を含み得る。
【0111】
好適には、活性化エンドドメインは、CD3-ゼータ鎖に由来してもよい。好適には、膜貫通ドメインは、CD3-ゼータ鎖を含み得る。
【0112】
二重特異性タンパク質
本明細書に使用されるとき、「二重特異性タンパク質」は、腫瘍抗原のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および細胞表面抗原に結合する第2の結合ドメインを含む、タンパク質を指す。
【0113】
一態様では、二重特異性タンパク質は、細胞外空間に位置する。二重特異性タンパク質は、細胞外タンパク質であり得る。例えば、二重特異性タンパク質は、腫瘍微小環境の細胞外空間に位置し得る。
【0114】
一態様では、二重特異性タンパク質は、分泌タンパク質である。
【0115】
本明細書に使用されるとき、「分泌タンパク質」という用語は、細胞外空間において見出される任意のタンパク質を指す。これには、例えば、古典的な分泌経路を通じて細胞から分泌されるタンパク質、および非古典的な(またはリーダーレスの従来のものではないまたは非従来の)分泌経路を通じて細胞から分泌されるタンパク質が含まれる。
【0116】
一態様では、二重特異性分泌タンパク質は、古典的な分泌経路を通じて細胞から分泌される。本発明における使用のための二重特異性タンパク質は、それがT細胞などの細胞に発現したときに、新生タンパク質が、小胞体、続いて細胞表面に向けられ、そこで発現するように、シグナルペプチドを含み得る。古典的なタンパク質分泌は、Signal PおよびTargetP方法、Nielsen,H., et al., (1997) Protein Eng., 10, 1-6; Emanuelsson,O., Nielsen,H., Brunak,S. and von Heijne,G. (2000) J. Mol. Biol., 300, 1005-1016)を使用して予測することができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
シグナルペプチドは、典型的に、16~30個のアミノ酸の長さであり、通常、新しく合成されるタンパク質のN末端に見出される。シグナルペプチドのコアは、単一のアルファヘリックスを形成する傾向を有する、ひと続きの疎水性アミノ酸(約5~約16個のアミノ酸の長さ)を含有してもよい。シグナルペプチドは、N末端で短いひと続きの正に荷電したアミノ酸で始まっていてもよく、これは、移行の際にポリペプチドの適正なトポロジーを強制するのに役立つ。シグナルペプチドの末端には、典型的に、シグナルペプチダーゼによって認識され、切断される、ひと続きのアミノ酸がある。シグナルペプチダーゼは、移行の間またはその完了後のいずれかに、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生成するように切断することができる。遊離シグナルペプチドは、次いで、特異的なプロテアーゼによって消化される。
【0118】
使用され得るシグナルペプチドの例は、
METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号6)
である。
【0119】
別の態様では、二重特異性分泌タンパク質は、非古典的な分泌経路を通じて細胞から分泌される。非古典的なタンパク質分泌は、SecretomeP 2.0 server、J. Dyrlov Bendtsen, et al., Protein Eng. Des. Sel., 17(4):349-356, 2004(参照により本明細書に組み込まれる)を使用して予測することができる。N末端シグナルペプチドなしで分泌され得るタンパク質の例としては、FGF-1、FGF-2、IL-1、およびガレクチンが挙げられる。一態様では、本発明において使用するための二重特異性分泌タンパク質は、N末端シグナルペプチドを含まない。
【0120】
一態様では、二重特異性分泌タンパク質は、細胞、例えば、免疫エフェクター細胞によって発現される。二重特異性分泌タンパク質は、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む受容体構成成分を発現する細胞によって、発現され得る。二重特異性分泌タンパク質は、本明細書に記載される腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARを発現する細胞によって、発現され得る。
【0121】
一態様では、二重特異性タンパク質は、細胞外空間に導入または投与される。二重特異性タンパク質は、腫瘍微小環境内の細胞外空間に導入または投与され得る。例えば、二重特異性タンパク質は、注射によって直接的に腫瘍微小環境に、または被験体への全身投与によって、導入されてもよい。
【0122】
二重特異性タンパク質は、可溶性タンパク質であり得る。好適には、二重特異性タンパク質は、腫瘍微小環境の細胞外空間における可溶性タンパク質であり得る。
【0123】
本明細書に使用されるとき、「可溶性」は、二重特異性タンパク質が、腫瘍微小環境の周囲を移動することができることを意味する。
【0124】
好適には、抗原に結合する前に、二重特異性タンパク質は、細胞表面に直接的にも間接的にも係留されなくてもよい。したがって、二重特異性タンパク質の両方の末端は、抗原への結合に利用可能である。二重特異性タンパク質が、その標的抗原のうちの1つに結合すると、それは、細胞表面に間接的に係留されるようになる。例えば、
図1 b)を参照されたい。二重特異性タンパク質が、その標的抗原の両方に結合すると、それは、CARを含む細胞および腫瘍細胞の両方の細胞表面に間接的に係留されるようになる。例えば、
図1 b)を参照されたい。
【0125】
二重特異性タンパク質の結合ドメインは、任意の好適な手段によって、互いに接続され得る。例えば、結合ドメインは、互いに直接的に融合され得る。あるいは、二重特異性タンパク質は、結合ドメイン間のスペーサードメインまたはリンカーを含み得る。リンカーは、例えば、二重特異性タンパク質が腫瘍抗原および細胞表面抗原に結合することを可能にするための柔軟性を提供する。
【0126】
好適には、スペーサードメインまたはリンカーは、二重特異性タンパク質の2つの結合ドメインを空間的に分離し得る。リンカーは、ペプチドリンカーであってもよい。
【0127】
好適なリンカーペプチドは、当該技術分野において公知である。例えば、好適なリンカーペプチドの範囲は、Chen et al.,(Adv Drug Deliv Rev. 2013 October 15; 65(10): 1357-1369、参照により本明細書に組み込まれる、特に、表3を参照されたい)によって説明されている。
【0128】
好適なリンカーは、(SGGGG)n(配列番号7)であり、これは、配列番号7の1つまたは複数のコピーを含む。例えば、好適なリンカーペプチドは、配列番号8として示される。
SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)。
【0129】
別の例示的なリンカーは、XTENリンカー:SGSETPGTSESATPES(配列番号9)である。
【0130】
本発明による二重特異性結合体における使用のための二重特異性タンパク質および/またはドメインの例示的な配列としては、以下のものが挙げられる。
aGFP_kub4_VHH-L3-aCD33glx_LH-H6(配列番号10):
【化1】
【0131】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
シグナルペプチド
aGFP_kub4_VHH
L3セリン-グリシンリンカー
aCD33glx_LH scFv
ヘキサヒスチジンタグ
aGFP_kub4_VHH-L3-aCD19FMC63_HL-H6(配列番号11):
【化2】
【0132】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
シグナルペプチド
aGFP_kub4_VHH
L3セリン-グリシンリンカー
aCD19FMC63_HL
ヘキサヒスチジンタグ
【0133】
例示的な二重特異性タンパク質は、配列番号10もしくは11に示される配列、または配列番号10もしくは11のうちのいずれかに対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%)の同一性を有するそのバリアントを含み得るが、ただし、バリアントタンパク質が、二重特異性タンパク質として作用することができることを条件とする。好適には、二重特異性タンパク質は、上記に示される配列番号10もしくは11に由来する1つもしくは複数のドメイン、または配列番号10もしくは11内のドメインに対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%)の同一性を有するそのバリアントを含み得るが、ただし、バリアントタンパク質が、二重特異性タンパク質として作用することができることを条件とする。
【0134】
腫瘍抗原
発現
本明細書に使用されるとき、「腫瘍抗原」は、腫瘍細胞によって産生される抗原を指す。
【0135】
一態様では、腫瘍抗原は、対応する非がん性組織と比較して高いレベルで、腫瘍によって発現される。
【0136】
好適には、腫瘍抗原は、対応する非がん性組織よりも少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高いレベルで、発現され得る。好適には、腫瘍抗原は、腫瘍特異的であり得る。
【0137】
本明細書に使用されるとき、「腫瘍特異的」とは、抗原が、同じ系統の非がん性細胞において発現されないか、または低い量で発現されることを意味する。
【0138】
好適には、腫瘍抗原は、同じ系統の非がん性細胞において、腫瘍と比較して少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%低いレベルで、発現され得る。
【0139】
好適には、腫瘍抗原は、対応する非がん性組織において発現されなくてもよい。発現のレベルは、例えば、フローサイトメトリーによって、細胞表面組織抗原に関して陽性である細胞のパーセンテージとして計算され得る。腫瘍から得られた細胞の集団と、対応する非がん性組織に由来する細胞の集団または同じ系統の非がん性細胞の集団との間で、比較を行うことができる。
【0140】
一態様では、腫瘍抗原は、腫瘍特異的である少なくとも1つのエピトープを含む。前記腫瘍特異的エピトープは、CARまたは二重特異性タンパク質の抗原結合ドメインによって認識され得る。例えば、腫瘍特異的であるエピトープは、変異、融合ドメイン、または異常な翻訳後修飾、例えば、リン酸化を含み得る。
【0141】
一実施形態では、腫瘍抗原は、同じ系統の対応する非がん性組織と比較すると、過剰発現されている。
【0142】
好適には、「過剰発現される」腫瘍抗原は、腫瘍において、同じ系統の非がん性細胞と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%高いレベルで、発現され得る。
【0143】
好適には、腫瘍抗原は、PRAME、サバイビン、WT1、テロメラーゼ、MDM2、カリクレイン4、およびERGから選択され得る。
【0144】
好適には、腫瘍抗原は、PRAME、サバイビン、WT1、またはテロメラーゼのうちのいずれかであり得る。
【0145】
これらの腫瘍抗原の過剰発現を伴うがんは、以下の表5に示されている。
【表5】
【0146】
局在
ほとんどのがん標的は、腫瘍細胞の表面上に発現されないタンパク質である。細胞表面において見出されるタンパク質(例えば、膜貫通タンパク質またはGPI結合型タンパク質)は、標準的なCARを使用して標的化することができるが、細胞の内部において見出されるタンパク質は、標準的なCARによって標的化することができない。本発明は、典型的に細胞の内部において見出されるタンパク質の標的化を可能にし、それによって、CAR療法に適合し得る腫瘍抗原の数を増加させることができる。
【0147】
がんにおいて、腫瘍細胞は、例えば、調節不全のER/ゴルジ体および膜輸送を通じて少量の細胞内タンパク質を放出しており、それによって、少量の腫瘍抗原が腫瘍微小環境へと放出されている。本発明は、本発明によるCARと二重特異性タンパク質との組合せを使用して、これらの腫瘍抗原を細胞表面上に捕捉することによって、これらの腫瘍抗原をCAR療法の標的として使用するための方法を提供する。
【0148】
一態様では、腫瘍抗原は、細胞表面腫瘍抗原ではない。
【0149】
本明細書に使用されるとき、「細胞表面腫瘍抗原」は、細胞の表面上に発現される腫瘍抗原を指す。換言すると、細胞表面腫瘍抗原は、細胞外空間に曝露されている。
【0150】
好適には、腫瘍抗原は、膜貫通ドメインを含むことも、リン脂質二重層を部分的にまたぐことも、脂質アンカー、例えば、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを有することもない。
【0151】
一態様では、腫瘍抗原は、分泌タンパク質ではない。好適には、腫瘍抗原は、シグナルペプチドを含まない。
【0152】
一態様では、腫瘍抗原は、細胞外タンパク質ではない。
【0153】
一態様では、腫瘍抗原は、細胞内タンパク質である。本明細書に使用されるとき、「細胞内タンパク質」とは、タンパク質が細胞の内部で発現されることを意味する。
【0154】
一態様では、腫瘍抗原は、TCR抗原である。
【0155】
「TCR抗原」とは、TCRによって標的化することができる任意の抗原を意味する。例えば、腫瘍抗原は、WT1、MAGE、A3、P53、NY-ESO-1、CEA、MART1、GP100、プロテイナーゼ3、チロシナーゼ、サバイビン、hTERT、またはEphA2から選択され得る。
【0156】
一態様では、腫瘍抗原は、大部分が細胞内タンパク質であるタンパク質である。
【0157】
「大部分が細胞内タンパク質」とは、腫瘍抗原の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%が細胞内であること、または換言すると、細胞内で発現されることを意味する。
【0158】
一態様では、腫瘍抗原は、同じ系統に由来する対応する非がん性細胞において大部分が細胞内タンパク質であるタンパク質である。一態様では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞において大部分が細胞内タンパク質であるタンパク質である。
【0159】
タンパク質の細胞内での局在を決定するための様々な方法が存在しており、当該技術分野において周知であり、これには、例えば、電子顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、免疫蛍光、および蛍光タグ付き抗体を用いたフローサイトメトリーが含まれる。
【0160】
変異
全ゲノム分析により、固形腫瘍が、典型的に、変異した20~100個のタンパク質コーディング遺伝子を含むことが示されている(Stratton MR, Campbell PJ, Futreal PA Nature. 2009 Apr 9; 458(7239):719-24)。これらの画分は、腫瘍の開始または進行を担う「ドライバー」であると考えられ、一方で残部は、選択的増殖優位性を提供しない「パッセンジャー」である。しかしながら、いずれの種類の変異も、腫瘍細胞を標的とする機会を提供する。
【0161】
一態様では、腫瘍抗原は、変異を含む。
【0162】
本発明を使用して標的とすることができる変異の例は、Cosmicデータベース:https://cancer.sanger.ac.uk/cosmic/において見出すことができる(J. Tate et al., COSMIC: the Catalogue of Somatic Mutations in Cancer: Nucleic Acids Research, Volume 47, issue D1, 8 January 2019, Pages D941-D947、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0163】
変異は、腫瘍特異的変異であり得る。
【0164】
好適には、腫瘍抗原の第1または第2のエピトープは、腫瘍特異的変異を含み得る。
【0165】
好適には、変異は、任意の種類の変異であってもよく、例えば、変異は、置換、挿入、または欠失から選択され得る。
【0166】
一実施形態では、変異は、点変異であり得る。
【0167】
例えば、点変異は、以下の遺伝子のうちのいずれかにおいて見出され得る:TP53、KRAS、BRAF、PTEN、BRCA1、BRCA2、ATM、CDKN2A、またはPIK3CA。
【0168】
好適には、点変異は、以下の遺伝子のうちのいずれかにおいて見出され得る:TP53、KRAS、BRAF、またはPTEN。好適には、点変異は、TP53において見出され得、例えば、R175Hであり得る。
【0169】
腫瘍抗原における例示的な変異および関連するがんは、以下の表6に示されている。
【表6】
【0170】
融合タンパク質
融合タンパク質は、複雑な変異、例えば、染色体転位、タンデム重複、またはレトロ転位により、2つの異なる遺伝子に由来するコーディング配列の部分を含む新規なコーディング配列が作成されたときに生じる。融合タンパク質は、一般に、がん性腫瘍細胞において見出される。そのような融合タンパク質は、腫瘍性タンパク質として機能し得る。例えば、bcr-abl融合タンパク質は、周知の発がん融合タンパク質であり、慢性骨髄性白血病(CML)の主要な発がんドライバーであると考えられる。本発明を使用して標的とすることができる融合タンパク質の例は、Cosmicデータベース:https://cancer.sanger.ac.uk/cosmic/fusionにおいて見出すことができる(J. Tate et al.(上記)、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0171】
一態様では、腫瘍抗原は、融合タンパク質である。
【0172】
好適には、腫瘍抗原は、融合タンパク質であり得、EML4-ALK、CCD6-RET、NCOA4-RET、KIF5B-RET、KIF5B-ALK、TMPRSS2-ERG、EWSR1-FLI1、SYT-SSX、PAX3-FOXO1、TMPRSS2-ETV1、またはPAX7-FOXO1から選択され得る。
【0173】
好適には、腫瘍抗原は、融合タンパク質であり得、EML4-ALK、CCD6-RET、NCOA4-RET、KIF5B-RET、またはKIF5B-ALKから選択され得る。
【0174】
好適には、融合タンパク質は、少なくとも2つのドメインを含み得る。第1のドメインは、腫瘍抗原の第1のエピトープを含み得、第2のドメインは、腫瘍抗原の第2のエピトープを含み得る。例えば、それぞれの結合パートナーは、融合タンパク質の異なる融合パートナーを認識し得る。例示的な融合タンパク質および関連するがんは、以下の表7に示されている。
【表7】
【0175】
翻訳後修飾
多くの細胞プロセスは、セリン、スレオニン、およびチロシン残基における可逆的なタンパク質リン酸化反応によって調節されることが、知られている。このシグナル伝達カスケードの破壊は、がんを含む多数の疾患に関係付けられている。分子レベルでのリン酸化の重要性は、特に、がんの病因に関与するシグナル伝達経路内に関係付けられている。新しいホスホプロテオミクス技術により、治療的アプローチのための新しい標的を提示する、翻訳後修飾を含む新しいバイオマーカーが特定されている。
【0176】
例えば、MHC-クラス1関連ホスホペプチドは、白血病におけるメモリー様免疫の標的である。本発明を使用して標的とすることができるホスホペプチドの例は、Cobbald et al., Sci Transl Med. 2013 Sep 18; 5(203): 203ra125において見出すことができ、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
一態様では、腫瘍抗原は、翻訳後修飾を含む。
【0178】
翻訳後修飾は、腫瘍特異的であり得る。
【0179】
好適には、腫瘍抗原の第1または第2のエピトープは、翻訳後修飾を含み得る。
【0180】
好適には、翻訳後修飾は、任意の種類の翻訳後修飾であり得、例えば、それは、リン酸化であり得る。
【0181】
好適には、腫瘍抗原は、翻訳後修飾を含み得、それは、KRAS、BRAFT、AuroraA、ERG、PIK3R1、ALK、mTOR、RET、RB1、ABL1、ABL2、またはROS1から選択され得る。
【0182】
好適には、腫瘍抗原は、翻訳後修飾を含み得、それは、KRAS、BRAFT、AuroraA、ERG、またはPIK3R1から選択され得る。
【0183】
好適には、腫瘍抗原の第1または第2のエピトープは、翻訳後部位、例えば、リン酸化部位を含み得る。例示的なホスホ抗原、ホスホ残基、および関連するがんは、以下の表8に示されている。
【表8】
【0184】
例示的な配列
本発明による使用のための例示的な配列および/またはドメインとしては、以下のものが挙げられる:
RQR8-2A-aGFP_GBP6-HNG-CD28TM-41BBZ(配列番号1):
【化3】
【0185】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aGFP_GBP6
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
RQR8-2A-aCD19FMC63_LH-HNG-CD28TM-41BBZ(配列番号2):
【化4】
【0186】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aCD19FMC63_LH
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
RQR8-2A-aCD33glx_LH-HNG-CD28TM-41BBZ(配列番号3):
【化5】
【0187】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aCD33glx_LH
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
RQR8-2A-aGFP_GBP6-HNG-CD28TM-41BBZ-E2A-aGFP_kub4_VHH-L3-aCD33glx_LH-H6(配列番号4):
【化6】
【0188】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aGFP_GBP6
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
E2A
シグナルペプチド
aGFP_kub4
L3セリン-グリシンリンカー
aCD33glx_LH
ヘキサヒスチジンタグ
RQR8-2A-aGFP_GBP6-HNG-CD28TM-41BBZ-E2A-aGFP_kub4_VHH-L3-aCD19FMC63_HL-H6(配列番号5):
【化7】
【0189】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aGFP_GBP6
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
E2A
シグナルペプチド
aGFP_kub4
L3セリン-グリシンリンカー
aCD19FMC63_HL
ヘキサヒスチジンタグ
【0190】
抗EpCAM_MT110-RQR8マーカー遺伝子を共発現する抗EpCAM CAR、抗EpCAM MT110 scFv_LHの配向、IgG1ヒンジスペーサー、CD28TMドメイン、ならびに41BBおよびCD3Z細胞内ドメイン。
RQR8-2A-aEpCAM_MT110_LH-HNG-CD28TM-41BBZ(配列番号14)
【化8】
【0191】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aEpCAM_MT100_LH
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
【0192】
aP53_421 +BSB_MT110/FMC63 - RQR8マーカー遺伝子を共発現する抗p53 CAR、抗p53 pAb421 scFv LHの配向、IgG1ヒンジスペーサー、CD28TMドメイン、ならびに41BBおよびCD3Z細胞内ドメイン、ならびにEpCAM(MT110_LH)およびCD19(FMC63_HL)を標的とするヘキサヒスチジンタグ付き二重特異性結合体。
RQR8-2A-aP53_421_LH-HNG-CD28TM-41BBZ-E2A-aEpCAM_MT110_LH-L-aCD19_FMC63_HL-H6[aP53_421 +BSB_MT110/FMC63とも称される]
(配列番号16)
【化9】
【0193】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aP53_421_LH
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
E2A
シグナルペプチド
aEpCAM_MT110_LH
Lセリン-グリシンリンカー
aCD19_FMC63_HL
ヘキサヒスチジンタグ
【0194】
本発明の一態様では、細胞表面抗原は、EpCAMである。本発明の一態様では、腫瘍抗原は、p53である。一態様では、結合ドメインは、p53の腫瘍特異的エピトープ、例えば、p53 R175Hの腫瘍特異的エピトープに結合する。
【0195】
本発明の一態様では、細胞表面抗原は、EpCAMであり、腫瘍抗原は、p53である。
好適には、キメラ抗原受容体(CAR)は、p53の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含み得、
(ii)二重特異性タンパク質は、
p53の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
EpCAMに結合する第2の結合ドメインを含み得る。好適には、腫瘍抗原の第1または第2のエピトープは、腫瘍特異的変異、例えば、p53変異体R175Hを含む。
【0196】
本発明による使用のための例示的な配列およびドメインとしては、以下のものが挙げられる。
aP53_421 +BSB_MT110/7B9 -RQR8マーカー遺伝子を共発現する抗p53 CAR、抗p53 pAb421 scFv LHの配向、IgG1ヒンジスペーサー、CD28TMドメイン、ならびに41BBおよびCD3Z細胞内ドメイン、ならびにEpCAM(MT110_LH)およびmutp53 R175H(7B9_HL)を標的とするヘキサヒスチジンタグ付き二重特異性結合体。
RQR8-2A-aP53_421_LH-HNG-CD28TM-41BBZ-E2A-aEpCAM_MT110_LH-L-aP53_R175Hmut_7B9_HL-H6[aP53_421 +BSB_MT110/7B9とも称される](配列番号15)
【化10】
【0197】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
RQR8マーカー遺伝子
2A
シグナルペプチド
aP53_421_LH
ヒンジリンカー(HNG)
CD28膜貫通
41BBエンドドメイン
CD3Zエンドドメイン
E2A
シグナルペプチド
aEpCAM_MT110_LH
Lセリン-グリシンリンカー
aP53_R175Hmut_7B9_HL
ヘキサヒスチジンタグ
【0198】
本発明における使用のための例示的なアミノ酸配列(例えば、CARおよび/または二重特異性タンパク質)は、配列番号1~5もしくは14~16に示される配列、または配列番号1~5もしくは14~16のうちのいずれかに対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%)の同一性を有するそのバリアントを含み得るが、ただし、バリアントタンパク質が、キメラ抗原受容体または二重特異性タンパク質として作用することができることを条件とする。好適には、本発明における使用のためのアミノ酸配列(例えば、CARおよび/または二重特異性タンパク質)は、上記に示される配列番号1~5もしくは14~16に由来する1つもしくは複数のドメイン、または配列番号1~5もしくは14~16内のドメインに対して少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%)の同一性を有するそのバリアントを含み得るが、ただし、バリアントタンパク質が、キメラ抗原受容体または二重特異性タンパク質として作用することができることを条件とする。
【0199】
細胞表面組織抗原
本明細書に使用されるとき、「細胞表面組織抗原」という用語は、細胞の表面上に発現される抗原を指す。換言すると、タンパク質の少なくとも一部が、細胞外空間に曝露されている。
【0200】
細胞表面組織抗原は、ドメインの少なくとも一部が細胞外空間または形質膜の細胞質外表面に曝露されている、形質膜タンパク質であり得る。
【0201】
細胞表面組織抗原は、内在性(integral)(または内因性(intrinsic))膜タンパク質であり得る。内在性膜タンパク質は、恒久的に膜に結合しており、リン脂質二重層に埋め込まれた1つまたは複数のドメインを有する。典型的には、内在性膜タンパク質は、タンパク質を膜に結合させる膜リン脂質の脂肪アシル基と相互作用する疎水性側鎖を有する残基を有する。内在性膜タンパク質の例としては、トランスポーター、チャネル、受容体、および細胞接着タンパク質が挙げられる。
【0202】
細胞表面組織抗原は、膜貫通タンパク質であり得る。膜貫通タンパク質は、脂質二重層をまたぐ。膜貫通タンパク質は、単回または複数回通過膜タンパク質であり得る。例えば、膜貫通タンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり得る。細胞表面タンパク質は、内在性単一向性タンパク質(integral monotropic protein)であり得る。内在性単一向性タンパク質は、脂質二重層の片側と会合し、脂質二重層をまたがない。
【0203】
細胞表面タンパク質は、周辺性(または外因性)膜タンパク質であり得る。周辺性膜タンパク質は、リン脂質二重層の疎水性コアと相互作用しない。周辺性膜タンパク質は、典型的には、内在性膜タンパク質との相互作用によって間接的に、または脂質極性頭部基との相互作用によって直接的に、膜に結合する。周辺性タンパク質は、形質膜の外(形質外)表面に局在し得る。細胞表面タンパク質は、周辺性形質外膜タンパク質であり得る。
【0204】
細胞表面組織抗原は、形質膜に結合され得、例えば、(例えば、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して)細胞膜内に埋め込まれた脂質に共有結合で結合され得る。
【0205】
細胞表面膜タンパク質は、GPI結合型タンパク質であり得る。
【0206】
タンパク質の細胞内での局在を決定するための様々な方法が存在し、当該技術分野において周知であり、これには、例えば、電子顕微鏡法、表面ビオチン化もしくは公知の膜タンパク質との共局在を使用した共焦点顕微鏡法、免疫蛍光、および蛍光タグ付き抗体を用いたフローサイトメトリーが含まれる。
【0207】
細胞表面組織抗原は、腫瘍微小環境において発現される。好適には、細胞表面組織抗原は、腫瘍細胞上に発現され得る。好適には、細胞表面組織抗原は、腫瘍微小環境における腫瘍細胞以外の細胞によって発現され得る。例えば、細胞表面組織抗原は、腫瘍微小環境におけるそれ自体は腫瘍細胞ではない細胞上に発現され得る。例えば、細胞表面組織抗原は、腫瘍微小環境における血管(例えば、腫瘍関連内皮細胞)、間質細胞、免疫細胞、腫瘍関連マクロファージ、線維芽細胞上に発現され得る。
【0208】
細胞表面組織抗原は、腫瘍細胞によって発現されてもよく、同じ系統の非がん性細胞によって発現されてもよい。
【0209】
細胞表面発現は、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、非特異的バックグラウンドシグナルを特異的抗体シグナルと差別化するのを補助する適切なアイソタイプ適合対照を使用してフローサイトメトリーによって、決定することができる。
【0210】
細胞表面抗原は、二重特異性タンパク質が、腫瘍微小環境に蓄積されるのを可能にする。細胞表面抗原は、固形がんの処置を標的とするのに有用な任意の抗原であり得る。
【0211】
細胞表面抗原は、上皮抗原であり得る。例えば、細胞表面抗原は、汎上皮抗原、汎膠細胞抗原、汎肺抗原、汎腸粘膜抗原、汎乳房上皮抗原、汎卵巣抗原であり得る。
【0212】
以下の表8は、本発明において使用され得る例示的な上皮抗原を列挙する。好適には、本発明の任意の態様による二重特異性タンパク質は、以下の表9に列挙される上皮抗原のうちのいずれかに結合する結合ドメインを含み得る。
【0213】
【0214】
一部の態様では、細胞表面組織抗原は、例えば、表面抗原分類(CD)タンパク質、細胞接着または細胞ジャンクションタンパク質、Gタンパク質共役型受容体、溶質輸送体ファミリーメンバー、およびテトラスパニンであり得る。細胞表面組織抗原は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり得る。
【0215】
細胞表面抗原は、表面抗原分類(CD)タンパク質であり得る。CD命名法は、細胞の免疫表現型決定のための標的を提供する細胞表面分子の特定および調査に使用されている。
【0216】
例えば、細胞表面抗原は、以下から選択され得る:
CD19、CD20、CD45、CD38、またはCD22(典型的には、B細胞によって発現される)、
CD33(典型的には、骨髄系統の細胞によって発現される)、
CD2またはCD5(典型的には、T細胞によって発現される)、
CD34またはCD117(典型的には、幹細胞によって発現される)、
CD69(典型的には、活性化細胞によって発現される)、ならびに
CD31(典型的には、内皮細胞、血小板、マクロファージ、顆粒球、およびリンパ球によって発現される)。
【0217】
一態様では、細胞表面抗原は、CD326(EpCAM)である。上皮細胞接着分子は、上皮においてCa2+非依存性同型細胞-細胞接着を媒介する膜貫通糖タンパク質である。EpCAMはまた、細胞シグナル伝達、遊走、増殖、および分化において役割を果たし、上皮および上皮由来の新生物において発現される。
【0218】
細胞表面組織抗原は、CD19であり得る。CD19は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通糖タンパク質であり、形質細胞への最終的な分化まで、B細胞発生のすべての段階において広く発現される。CD19はまた、新生物B細胞の表面上にも発現され、例えば、ほとんどの急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、およびB細胞リンパ腫において、正常から高いレベルで発現される。
【0219】
細胞表面組織抗原を認識してそれに結合する多数の結合ドメインが、利用可能である。例えば、Naddafi and Davami Int J Mol Cell Med. 2015 Summer; 4(3): 143-151は、リンパ腫療法に対する新しいアプローチにおいて使用されている抗CD19モノクローナル抗体を報告している。
【0220】
例えば、ブリナツモマブは、CD19に対する結合ドメインおよびCD3に対する結合ドメインを含む二重特異性T細胞エンゲージャー(scFv)であり、SAR3419は、抗体-薬物コンジュゲートであり、MOR-208は、Fc操作抗体であり、MEDI-551は、グリコール操作抗体である。
【0221】
細胞表面組織抗原は、CD33であり得る。CD33は、骨髄系統の細胞上に発現される膜貫通受容体である。それは、シアル酸に結合し、免疫グロブリンスーパーファミリー内のレクチンのSIGLECファミリーのメンバーである。CD33は、シアル酸残基を含む分子の結合によって刺激される。シアル酸残基の結合は、SHPホスファターゼなどのSrc相同性(SH2)ドメインを含むタンパク質のドッキング部位として機能するCD33のサイトゾル部分の免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)のリン酸化をもたらす。このCD33を通じたシグナル伝達カスケードは、ファゴサイトーシスを阻害する。CD33を認識し、それに結合する結合ドメインは、当該技術分野において公知である。例えば、バダスツキシマブタリリン(vadastuximab talirine)およびゲムツズマブオゾガマイシンは、急性骨髄性白血病の処置のためにCD33を標的とする抗体-薬物コンジュゲートである。
【0222】
一部の態様では、細胞表面組織抗原は、腫瘍に特異的であってもよい。本明細書に使用されるとき、「腫瘍に特異的」とは、抗原が、同じ系統の非がん性細胞において発現されないか、または低い量で発現されることを意味する。
【0223】
好適には、細胞表面組織抗原は、同じ系統の非がん性細胞において、腫瘍と比較して少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%低いレベルで、発現され得る。
【0224】
発現のレベルは、例えば、フローサイトメトリーによって、細胞表面組織抗原に関して陽性である細胞のパーセンテージとして計算され得る。腫瘍から得られた細胞の集団と、対応する非がん性組織に由来する細胞の集団または同じ系統の非がん性細胞の集団との間で、比較を行うことができる。
【0225】
核酸
本明細書に使用されるとき、「導入される」という用語は、外来DNAまたはRNAを細胞に挿入するための方法を指す。本明細書に使用されるとき、導入されるという用語は、形質導入およびトランスフェクションの両方の方法を含む。トランスフェクションは、非ウイルス方法によって核酸を細胞に導入するプロセスである。形質導入は、ウイルスベクターを介して外来DNAまたはRNAを細胞に導入するプロセスである。
【0226】
本明細書に使用されるとき、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、互いに同義であることが意図される。核酸配列は、任意の好適な種類のヌクレオチド配列、例えば、合成RNA/DNA配列、cDNA配列、または部分的ゲノムDNA配列であり得る。
【0227】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書に使用されるとき、一連の残基、典型的には、L-アミノ酸が、典型的には隣接するアミノ酸のα-アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって、互いに接続されていることを意味する通常の意味で使用される。この用語は、「タンパク質」と同義である。
【0228】
当業者であれば、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が、遺伝子コードの縮重の結果として、同じポリペプチドをコードし得ることを理解するであろう。加えて、当業者であれば、日常的な技法を使用して、本明細書に記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼすことなく、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するように、ヌクレオチド置換を行うことができることが、理解する。
【0229】
本発明は、本発明によるCARをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明は、本発明による二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。好適には、ポリヌクレオチドは、本発明によるCARおよび二重特異性タンパク質の両方をコードし得る。
【0230】
本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質をコードする核酸は、DNAまたはRNAを含み得る。これらは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。これらはまた、それらの中に合成または修飾ヌクレオチドを含んだポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なる種類の修飾が、当該技術分野で公知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3’および/または5’末端へのアクリジンまたはポリリジン鎖の付加が含まれる。本明細書に記載される使用の目的で、ポリヌクレオチドが、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾されてもよいことを理解されたい。そのような修飾は、目的のポリヌクレオチドのin vivo活性または生存期間を強化するために行われ得る。
【0231】
ポリヌクレオチドは、単離された形態であっても組換え形態であってもよい。これは、ベクターに組み込まれてもよく、ベクターが、宿主細胞に組み込まれてもよい。そのようなベクターおよび好適な宿主は、本発明のなおもさらなる態様を形成する。
【0232】
本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化されていてもよい。異なる細胞は、特定のコドンの使用が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対存在度におけるバイアスに対応する。配列内のコドンを、対応するtRNAの相対存在度と一致するように調整するように変更することによって、発現を増加させることが可能である。好適には、ポリヌクレオチドは、疾患のマウスモデルにおける発現のためにコドン最適化されていてもよい。好適には、ポリヌクレオチドは、ヒト被験体における発現のためにコドン最適化されていてもよい。
【0233】
HIVおよび他のレンチウイルスを含む多数のウイルスは、大量の珍しいコドンを使用しており、これらを広く使用されている哺乳動物コドンに対応するように変化させることによって、哺乳動物産生細胞におけるパッケージング構成成分の発現の増加を達成することができる。コドン使用表は、哺乳動物細胞、ならびに様々な他の生物に関して、当該技術分野において公知である。
【0234】
コドン最適化はまた、mRNA不安定性モチーフおよび隠れたスプライス部位の除去も含み得る。
【0235】
好適には、ポリヌクレオチドは、CARをコードする核酸配列および二重特異性タンパク質をコードする核酸配列の両方が、同じmRNA転写産物から発現されることを可能にする、核酸配列を含み得る。
【0236】
例えば、ポリヌクレオチドは、CARをコードする核酸配列と二重特異性タンパク質をコードする核酸配列との間に内部リボソーム進入部位(IRES)を含み得る。IRESは、mRNA配列の中央における翻訳開始を可能にするヌクレオチド配列である。
【0237】
内部自己切断性配列は、CARを含むポリペプチドおよび二重特異性タンパク質を含むポリペプチドが分離された状態となるのを可能にする任意の配列であり得る。
【0238】
切断部位は、ポリペプチドが生成されるときに、任意の外部切断活性を必要とすることなく、個々のペプチドに即座に切断されるように、自己切断型であり得る。
【0239】
「切断」という用語が、便宜上本明細書において使用されているが、切断部位は、ペプチドが古典的な切断以外の機構によって個々の実体に分離することをもたらし得る。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A自己切断型ペプチドについて、「切断」活性:宿主細胞のプロテイナーゼによるタンパク質分解、自己タンパク質分解または翻訳作用を説明する様々なモデルが提案されている(本明細書に参考として援用されるDonnellyら(2001年)、J. Gen. Virol. 82巻:1027~1041頁)。このような「切断」の正確な機構は、切断部位が、タンパク質をコードする核酸配列の間に配置されたときに、タンパク質を別個の実体として発現させる限りは、本発明の目的にとって重要ではない。
【0240】
自己切断性ペプチドは、アフトウイルスまたはカルジオウイルスに由来する2A自己切断性ペプチドであり得る。
【0241】
本発明は、本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質をコードする核酸配列を含む核酸構築物を提供する。
【0242】
ベクター
本発明はまた、本明細書に記載されるCARおよび/または二重特異性タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターも提供する。
【0243】
本発明はまた、本明細書に記載されるCARおよび/または二重特異性タンパク質をコードする核酸構築物を含むベクターも提供する。
【0244】
好適には、ベクターは、本発明のCARをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0245】
好適には、ベクターは、本発明の二重特異性タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0246】
一態様では、本発明の1つまたは複数の核酸配列、例えば、本発明のCARをコードする核酸および二重特異性タンパク質をコードする核酸を含むベクターのキットが提供される。
【0247】
「ベクター」という用語は、本明細書に使用されるとき、発現ベクター、すなわち、本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質の発現を可能にする構築物を含む。
【0248】
好適には、発現ベクターは、本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質の発現を可能にする。
【0249】
一部の実施形態では、ベクターは、クローニングベクターである。
【0250】
好適なベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター、トランスポゾン、ポリペプチドと複合体を形成したかまたは固相粒子に固定化された核酸が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0251】
ウイルス送達系としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0252】
レトロウイルスは、溶解性ウイルスのものとは異なる生活環を有するRNAウイルスである。この点に関して、レトロウイルスは、DNA中間体を通じて複製する感染性実体である。レトロウイルスが細胞に感染すると、そのゲノムは、逆転写酵素によってDNA形態へと変換される。DNAコピーが、新しいRNAゲノム、および感染性ウイルス粒子のアセンブリに必要なウイルスによりコードされるタンパク質の産生のための鋳型として機能する。
【0253】
多数のレトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、フジナミ肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エーベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫ウイルス-29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)、ならびにレンチウイルスを含むすべての他のレトロウイルス科が存在する。
【0254】
レトロウイルスの詳細な一覧は、Coffin et al., (“Retroviruses” 1997 Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds: JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus pp 758-763)において見出すことができ、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0255】
レンチウイルスもまた、レトロウイルスファミリーに属するが、それらは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができ(Lewis et al., (1992) EMBO J. 3053-3058)、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0256】
ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを、細胞、例えば、本明細書で規定される宿主細胞に移入することが可能であり得る。ベクターは、理想的には、VHおよび/またはVLドメインが宿主細胞において好適に発現されるように、宿主細胞において持続的な高レベルの発現が可能であるべきである。
【0257】
ベクターは、レトロウイルスベクターであり得る。ベクターは、MP71ベクター骨格に基づき得るか、またはそれから誘導され得る。ベクターは、全長または短縮バージョンのウッドチャック肝炎応答エレメント(WPRE)が欠如していてもよい。
【0258】
ヒト細胞の効率的な感染のために、ウイルス粒子は、両指向性エンベロープまたはテナガザル白血病ウイルスエンベロープでパッケージングされていてもよい。
【0259】
細胞
本発明は、本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質を含む操作された細胞をさらに提供する。一態様では、操作された細胞は、本発明によるCARをコードするポリヌクレオチドまたはベクターを含み得る。一態様では、操作された細胞は、本発明による二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを含み得る。
【0260】
操作された細胞は、本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質を発現および産生させるために使用することができる、任意の細胞であり得る。
【0261】
好適には、細胞は、免疫エフェクター細胞であり得る。
【0262】
「免疫エフェクター細胞」は、本明細書に使用されるとき、刺激に応答し、変更を実施する細胞である、すなわち、細胞は、刺激に対する応答を実行する。免疫エフェクター細胞としては、アルファ/ベータT細胞、ガンマ/デルタT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびマクロファージを挙げることができる。
【0263】
好適には、細胞は、アルファ/ベータT細胞であり得る。
【0264】
好適には、細胞は、ガンマ/デルタT細胞であり得る。
【0265】
好適には、細胞は、T細胞、例えば、細胞溶解性T細胞、例えば、CD8+ T細胞であり得る。
【0266】
好適には、細胞は、NK細胞、例えば、細胞溶解性NK細胞であり得る。
【0267】
好適には、細胞は、マクロファージであり得る。
【0268】
一態様では、細胞は、被験体から得られた血液から単離され得る。好適には、細胞は、被験体から得られた末梢血単核細胞(PBMC)から単離され得る。
【0269】
一態様では、細胞は、幹細胞であり得る。
【0270】
別の態様では、細胞は、前駆細胞であり得る。
【0271】
本明細書に使用されるとき、「幹細胞」という用語は、同じ種類のさらなる幹細胞を無限に生じることができ、またそこから分化によって他の特化した細胞が生じ得る、未分化細胞を意味する。幹細胞は、複能性である。幹細胞は、例えば、胚性幹細胞または成体幹細胞であり得る。
【0272】
本明細書に使用されるとき、「前駆細胞」という用語は、分化して1つまたは複数の種類の細胞を形成することができるが、in vitroで限られた自己複製を有する、細胞を意味する。
【0273】
好適には、細胞は、T細胞に分化することが可能であり得る。
【0274】
好適には、細胞は、NK細胞に分化することが可能であり得る。
【0275】
好適には、細胞は、マクロファージに分化することが可能であり得る。
【0276】
好適には、細胞は、胚性幹細胞(ESC)であり得る。好適には、細胞は、造血幹細胞または造血前駆細胞である。好適には、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。好適には、細胞は、臍帯血から得ることができる。好適には、細胞は、成体末梢血から得ることができる。
【0277】
一部の態様では、造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)は、臍帯血から得ることができる。臍帯血は、当該技術分野において公知の技法によって採取することができる(例えば、米国特許第7,147,626号および同第7,131,958号、これらは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0278】
一態様では、HSPCは、多能性幹細胞供給源、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)および胚性幹細胞(ESC)から得ることができる。
【0279】
本明細書に使用されるとき、「造血幹細胞および前駆細胞」または「HSPC」という用語は、抗原性マーカーCD34を発現する(CD34+)細胞、およびそのような細胞の集団を指す。特定の実施形態では、「HSPC」という用語は、抗原性マーカーCD34の存在(CD34+)および系統(lin)マーカーの不在によって特定される細胞を指す。CD34+および/またはLin(-)細胞を含む細胞集団としては、造血幹細胞および造血前駆細胞が挙げられる。
【0280】
HSPCは、大腿骨、寛骨、肋骨、胸骨、および他の骨を含む、成体の骨髄から得ることができるか、または単離することができる。HSPCを含む骨髄吸引物は、ニードルおよびシリンジを使用して、股関節部から直接的に得ることができるか、または単離することができる。他のHSPC供給源としては、臍帯血、胎盤血、動員末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、胎児血液、胎児肝臓、または胎児脾臓が挙げられる。特定の実施形態では、治療適用での使用に十分な量のHSPCを採取することは、被験体における幹細胞および前駆細胞を動員することが必要であり得る。
【0281】
本明細書に使用されるとき、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語は、多能性状態に再プログラミングされている非多能性細胞を指す。被験体の細胞が、多能性状態に再プログラミングされると、細胞は、次いで、所望される細胞型、例えば、造血幹細胞または前駆細胞(それぞれ、HSCおよびHPC)にプログラムされ得る。
【0282】
本明細書に使用されるとき、「再プログラミング」という用語は、細胞の能力を、あまり分化されていない状態へと増大させる方法を指す。
【0283】
本明細書に使用されるとき、「プログラミング」という用語は、細胞の能力を減少させるか、または細胞をより分化した状態へと分化させる方法を指す。
【0284】
好適には、細胞は、被験体に適合するか、または被験体にとって自家である。細胞は、患者自身の末梢血(第1団)、またはドナー末梢血由来の造血幹細胞移植片の環境において(第2団)、または無関係のドナーに由来する末梢血(第3団)のいずれかから、ex vivoで作製することができる。
【0285】
好適には、細胞は、被験体にとって自家であり得る。
【0286】
一部の態様では、細胞は、誘導前駆細胞または胚性前駆細胞の免疫細胞へのex vivo分化に由来し得る。これらの事例では、細胞は、ウイルスベクターの形質導入、DNAまたはRNAのトランスフェクションを含む、任意の手段のうちの1つによって、本発明のCARをコードするDNAまたはRNAを導入することによって、生成される。
【0287】
組成物
本発明は、本発明による細胞、例えば、操作された免疫エフェクター細胞を含む組成物も提供する。好適には、組成物は、本発明による細胞の集団を含み得る。好適には、組成物は、本発明による二重特異性タンパク質を含み得る。
【0288】
好適には、本発明は、本発明によるCARを含む操作された細胞を含む組成物を提供する。好適には、組成物は、本発明によるCARを含む操作された細胞の集団を含み得る。好適には、本発明は、本発明による二重特異性タンパク質を発現する操作された細胞を含む組成物を提供する。好適には、組成物は、本発明による二重特異性タンパク質を発現する操作された細胞の集団を含み得る。
【0289】
一部の実施形態では、組成物は、医薬組成物である。そのような医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはアジュバントを含み得る。薬学的担体、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準的な薬学上の実施に関連して選択され得る。医薬組成物は、担体、賦形剤、または希釈剤として(またはそれに加えて)、任意の好適な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤、および他の担体剤を含み得る。
【0290】
医薬組成物は、典型的に、製造および保管の条件下において、無菌かつ安定でなくてはならない。非経口投与のための製剤としては、本明細書において考察される、懸濁物、溶液、油性もしくは水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、および植え込み可能な持続放出もしくは生体分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒を使用して調製され得る。本発明による使用のための医薬組成物は、利用される投薬量および濃度で被験体にとって非毒性である、薬学的に許容される分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、等張剤、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、担体、賦形剤、塩、または安定化剤を含み得る。好ましくは、そのような組成物は、例えば、非経口(例えば、皮下、皮内、もしくは静脈内注射)または髄腔内投与のための、所与の方法および/または投与部位と適合性のある疾患の処置において使用するための薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含み得る。
【0291】
ここで、医薬組成物は、本発明による細胞を含み、組成物は、現在の適正製造基準(cGMP)を使用して製造され得る。
【0292】
好適には、本発明による細胞を含む医薬組成物は、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、およびジメチルアセトアミド(これらの混合物または組合せが含まれる)などであるがこれらに限定されない有機溶媒を含み得る。
【0293】
好適には、本発明による細胞を含む医薬組成物は、内毒素を含まない。
【0294】
処置/使用の方法
本発明は、疾患を処置および/または予防するための方法であって、本発明の細胞または本発明による方法によって得ることができる(例えば、得られる)細胞を、被験体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0295】
本発明は、疾患を処置および/または予防するための方法であって、本発明の医薬組成物または本発明による方法によって得ることができる(例えば、得られる)医薬組成物を、被験体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0296】
本発明はまた、疾患の処置および/または予防において使用するための本発明の細胞または本発明による方法によって得ることができる(例えば、得られる)細胞を提供する。
【0297】
本発明はまた、疾患の処置および/または予防において使用するための、本発明の医薬組成物を提供する。
【0298】
本発明はまた、疾患の処置および/または予防のための医薬品の製造における、本発明による細胞の使用に関する。
【0299】
好ましくは、本処置方法は、本発明の医薬組成物の被験体への投与に関する。
【0300】
用語「処置する/処置/処置すること」は、細胞または医薬組成物を疾患と関連する少なくとも1つの症状を緩和、低減、もしくは改善するため、および/または疾患の進行を遅延、低減、もしくは遮断するために、既存の疾患または状態を有する被験体に投与することを指す。
【0301】
本明細書に使用される「予防/予防すること」(または予防法)への言及は、疾患の症状の発生を遅延または予防することを指す。予防は、絶対的であってもよく(疾患が生じないように)、または一部の個体または限られた時間のみにおいて有効であってもよい。
【0302】
本発明の好ましい実施形態において、本明細書に記載される方法のうちのいずれかの被験体は、哺乳動物、好ましくは、ネコ、イヌ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットである。好ましくは、被験体は、ヒトである。
【0303】
本発明の医薬組成物の投与は、活性成分を生体利用可能にする様々な経路のうちのいずれかを使用して、達成することができる。例えば、本発明による細胞または医薬組成物は、静脈内、髄腔内、経口および非経口経路、鼻内、腹腔内、皮下、経皮、または筋肉内に投与され得る。
【0304】
好適には、本発明による細胞または本発明による医薬組成物は、静脈内投与され得る。
【0305】
好適には、本発明による細胞または本発明による医薬組成物は、髄腔内投与され得る。
【0306】
典型的には、医師が、個々の被験体にもっとも好適である実際の投薬量を決定することになり、それは、特定の患者の年齢、体重、および応答に応じて変動するであろう。投薬量は、疾患症状を低減および/または予防するのに十分であるようなものである。
【0307】
当業者であれば、例えば、送達経路(例えば、経口か、静脈内か、皮下かなど)が、用量に影響を及ぼし得ること、および/または要求される用量が、送達経路に影響を及ぼし得ることを理解するであろう。例えば、特定の部位または位置内における特に高い濃度の薬剤が目的とされる場合、集中送達が、所望され得る、かつ/または有用であり得る。所与の治療レジメンに関して経路および/または投薬スケジュールを最適化する場合に考慮すべき他の因子としては、例えば、処置されている疾患(例えば、種類またはステージなど)、被験体の臨床状態(例えば、年齢、全般的な健康状態など)、組合せ治療の存在または不在、ならびに医療従事者に公知の他の因子を挙げることができる。
【0308】
投薬量は、疾患の症状を安定させるか、または改善するのに十分であるようなものである。
【0309】
本発明はまた、疾患を処置および/または予防するための方法であって、操作された細胞、例えば、本発明によるCARを発現するように操作されている細胞を含む医薬組成物を、被験体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0310】
好適には、本発明はまた、疾患を処置および/または予防するための方法であって、本発明による細胞または本発明による方法によって得ることができる(例えば、得られる)細胞を、被験体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0311】
一態様では、本方法は、以下の
(i)被験体から細胞を含む試料を単離するステップと、
(ii)a)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードするポリヌクレオチド、ならびにb)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および細胞表面抗原に結合する第2の結合ドメインを含む二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、(i)から得られた前記単離された細胞に導入するステップと、
(iii)(ii)から得られた細胞を被験体に投与するステップと
を含み得る。
【0312】
別の態様では、本方法は、
前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および細胞表面抗原に結合する第2の結合ドメインを含む二重特異性タンパク質を、被験体に投与するステップ
を含み得、
前記被験体が、腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードする核酸配列を含む、操作された細胞を含む。
【0313】
別の態様では、本方法は、以下の
(i)被験体から細胞を含む試料を単離するステップと、
(ii)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードするポリヌクレオチドを、(i)から得られた前記単離された細胞に導入するステップと、
(iii)(ii)から得られた細胞を被験体に投与するステップと
(iv)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および細胞表面抗原に結合する第2の結合ドメインを含む二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、操作されたCAR細胞を含む被験体に投与するステップと
を含み得る。
【0314】
好適には、(ii)から得られた細胞は、被験体への投与の前に、in vitroで増殖され得る。
【0315】
疾患
疾患は、例えば、がんであり得る。
【0316】
好適には、本発明の方法および使用によって処置および/または予防される疾患は、がんであり得る。
【0317】
好適には、本発明の方法および使用によって処置および/または予防される疾患は、造血系悪性疾患であり得る。
【0318】
本明細書に使用されるとき、「造血系悪性疾患」は、血液およびリンパ系に罹患するがんを指し、これには、白血病、リンパ腫、骨髄腫、および関連する血液障害が含まれる。
【0319】
好適には、本発明の方法および使用によって処置および/または予防される疾患は、悪性固形腫瘍であり得る。固形腫瘍には、肉腫、癌腫、およびリンパ腫が含まれる。
【0320】
処置および/または予防される疾患は、上述の表1~4に列挙されているものから選択され得る。
【0321】
処置および/または予防される疾患は、ホスホ抗原と関連し得る。
【0322】
例えば、ホスホ抗原は、KRAS(例えば、ホスホ残基がS181である)、BRAF(例えば、ホスホ残基が、T599および/またはS602である)、Aurora A(例えば、ホスホ残基が、T288および/またはT287である)、ならびにERG(例えば、ホスホ残基が、S96および/またはS215である)から選択され得る。
【0323】
処置および/または予防される疾患は、融合タンパク質と関連し得る。
【0324】
例えば、融合タンパク質は、AML4-ALK、CCD6-RET、およびNCOA4-RETから選択され得る。
【0325】
処置および/または予防される疾患は、点変異と関連し得る。
【0326】
例えば、点変異は、TP53におけるもの(例えば、点変異は、R175H、G245S、R248Q、R248W、R249S、R273H、R273C、R282W、および/もしくはY220Cから選択される)、KRASにおけるもの(点変異は、G12C、G12R、G12S、G12A、G12D、G12V、G13D、G13C、G13V、Q61H、Q61R、および/もしくはA146Tから選択される)、またはBRAFにおけるもの(点変異は、V600E、G469A、G469V、K601E、D594N、D594G、および/もしくはN581Sから選択される)であり得る。
【0327】
処置および/または予防される疾患は、PRAME、サバイビン、WT1、およびテロメラーゼから選択される腫瘍抗原と関連し得る。
【0328】
方法
本発明はまた、細胞を産生させるための方法であって、in vitroまたはex vivoで、細胞に、本明細書で規定されるCARをコードするポリヌクレオチドを導入するステップを含む、方法を提供する。
【0329】
本発明はまた、細胞を産生させるための方法であって、in vitroまたはex vivoで、細胞に、本明細書で規定される二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入するステップを含む、方法を提供する。好適には、CARおよび二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、同じ細胞に導入され得る。1つのポリヌクレオチドが、CARおよび二重特異性タンパク質の両方をコードし得る。
【0330】
好適には、本方法は、in vitroまたはex vivoで、細胞に、本明細書で規定されるCARをコードする核酸構築物を導入するステップを含み得る。好適には、本方法は、in vitroまたはex vivoで、細胞に、本明細書で規定される二重特異性タンパク質をコードする核酸構築物を導入するステップを含み得る。好適には、CARおよび二重特異性タンパク質をコードする核酸構築物は、同じ細胞に導入され得る。1つの核酸構築物が、CARおよび二重特異性タンパク質の両方をコードし得る。
【0331】
好適には、本方法は、in vitroまたはex vivoで、細胞に、本明細書で規定されるCARをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを導入するステップを含み得る。好適には、本方法は、in vitroまたはex vivoで、細胞に、本明細書で規定される二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを導入するステップを含み得る。好適には、CARおよび二重特異性タンパク質をコードするベクターは、同じ細胞に導入され得る。1つのベクターが、CARおよび二重特異性タンパク質の両方をコードし得る。
【0332】
好適には、本方法は、本発明のCAR分子および/または二重特異性タンパク質の発現を許容する条件下において、細胞をインキュベートするステップをさらに含み得る。必要に応じて、本方法は、操作された細胞を精製するステップをさらに含み得る。
【0333】
好適には、細胞は、免疫エフェクター細胞であり得る。
【0334】
好適には、細胞は、細胞溶解性細胞であり得る。
【0335】
好適には、細胞は、T細胞であり得る。
【0336】
好適には、細胞は、NK細胞であり得る。
【0337】
一態様では、細胞は、幹細胞であり得る。
【0338】
好適には、本発明による方法において、本明細書で規定されるCARおよび/または二重特異性タンパク質をコードする核酸は、幹細胞に導入され得、幹細胞は、次いで、T細胞に分化する。好適には、本発明による方法において、本明細書で規定されるCARをコードする核酸は、幹細胞に導入され得、幹細胞は、次いで、NK細胞に分化する。
【0339】
好適には、幹細胞は、T細胞に分化する能力を有し得る。
【0340】
好適には、幹細胞は、NK細胞に分化する能力を有し得る。
【0341】
好適には、細胞は、胚性幹細胞(ESC)であり得る。好適には、細胞は、臍帯血から得ることができる。好適には、細胞は、成体末梢血から得ることができる。好適には、細胞は、造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)である。好適には、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0342】
別の態様では、細胞は、前駆細胞である。好適には、前駆細胞は、T細胞に分化する能力を有する。好適には、前駆細胞は、NK細胞に分化する能力を有する。
【0343】
別の態様では、本発明は、本発明によるCARを含む操作された細胞を産生させるための方法を提供する。別の態様では、本発明は、本発明による二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む操作された細胞を産生させるための方法を提供する。
【0344】
好適には、本方法は、in vitroまたはex vivoで、細胞に、本発明によるCARおよび/または二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入するステップを含み得る。
【0345】
好適には、CARおよび二重特異性タンパク質は、同じポリヌクレオチドによって提供され得る。
【0346】
好適には、CARおよび二重特異性タンパク質は、別個のポリヌクレオチドとして提供され得る。
【0347】
好適には、別個のポリペプチドは、別個に、逐次的に、または同時に、細胞に導入され得る。ポリペプチドが、別個または逐次的に導入される場合、好適には、CARをコードするポリヌクレオチドが、最初に導入され得る。ポリペプチドが、別個または逐次的に導入される場合、好適には、二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、最初に導入され得る。
【0348】
好適には、本方法は、本発明のCAR分子および/または二重特異性タンパク質の発現をもたらす条件下において、細胞をインキュベートするステップをさらに含み得る。必要に応じて、本方法は、操作された細胞を精製するステップをさらに含み得る。
【0349】
一態様では、本発明は、操作された細胞を産生させるための方法であって、in vitroまたはex vivoで、細胞に、CARをコードするポリヌクレオチドを導入するステップと、細胞をT細胞に分化させるステップを含む、方法を提供する。好適には、本方法は、本発明のCAR分子の発現をもたらす条件下において、細胞をインキュベートするステップをさらに含み得る。必要に応じて、本方法は、本発明によるCARを含む操作された細胞を精製するステップをさらに含み得る。
【0350】
好適には、一態様において、細胞は、CARをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドが細胞に導入される前に、T細胞に分化し得る。
【0351】
操作された細胞の精製は、当該技術分野において公知の任意の方法によって達成され得る。好適には、操作された細胞は、蛍光活性化細胞分取(FACS)または免疫磁気単離(すなわち、磁気ナノ粒子もしくはビーズに結合した抗体を使用する)を使用し、細胞集団の陽性および/または陰性選択を使用して、精製され得る。
【0352】
好適には、操作された細胞の精製は、本明細書で規定されるCARの発現を使用して行われ得る。
【0353】
本発明はまた、タンパク質を腫瘍微小環境内に放出する腫瘍細胞を溶解させるための方法であって、細胞に、
1)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメインを含むCARをコードするポリヌクレオチドと、
2)前記腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメインを含む二重特異性タンパク質をコードするポリヌクレオチドと
を導入するステップを含む、方法を提供する。
【0354】
使用
本発明はまた、疾患の処置において使用するための、本発明による医薬組成物もしくは細胞(例えば、操作された細胞などの細胞の集団)、または本発明による方法によって得ることができる(例えば、得られる)医薬組成物もしくは細胞を提供する。医薬組成物または細胞(例えば、操作された細胞)は、上記で規定されるいずれかであり得る。
【0355】
本発明はまた、疾患の処置のための医薬品の製造における、上記で規定される本発明による細胞もしくは細胞集団、または本発明による方法によって得ることができる(例えば、得られる)細胞もしくは細胞集団の使用に関する。
【0356】
本発明はまた、疾患の処置において使用するための、本発明による二重特異性タンパク質、または本発明による方法によって得ることができる(例えば、得られる)二重特異性タンパク質を提供する。二重特異性タンパク質は、上記で規定されるいずれかであり得る。
【0357】
CAR系
本発明は、
(i)腫瘍抗原の第1のエピトープに結合する結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む受容体構成成分と、
ii)腫瘍抗原の第2のエピトープに結合する第1の結合ドメイン、および
細胞表面組織抗原のエピトープに結合する第2の結合ドメイン
を含む二重特異性タンパク質と
を含むCAR系を提供する。
【0358】
系は、受容体構成成分を含むかまたは発現する免疫エフェクター細胞を含み得る。例えば、系は、受容体構成成分を含むかまたは発現するアルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、またはマクロファージを含み得る。
【0359】
系は、二重特異性タンパク質を発現する、免疫エフェクター細胞を含み得る。例えば、系は、二重特異性タンパク質を発現するアルファ-ベータT細胞、NK細胞、ガンマ-デルタT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞、またはマクロファージを含み得る。
【0360】
好適には、受容体構成成分および二重特異性タンパク質は、同じ細胞、例えば、免疫エフェクター細胞によって発現され得る。
【0361】
一部の態様では、系は、腫瘍微小環境を含む。好適には、二重特異性タンパク質は、前記系に投与され得る。換言すると、二重特異性タンパク質は、腫瘍微小環境に導入される。例えば、二重特異性タンパク質は、腫瘍微小環境において産生されないが、腫瘍内注射によって、腫瘍微小環境に導入される。
【0362】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法および材料によって限定されず、本明細書に記載されるものに類似であるかまたはそれと同等である任意の方法および材料を、本開示の実施形態の実施または試験において使用することができる。数値範囲は、その範囲を定める数を含む。別途示されない限り、それぞれ、任意の核酸配列は、左から右に、5’から3’の配向で記述され、アミノ酸配列は、左から右に、アミノからカルボキシの配向で記述される。
【0363】
値の範囲が提供される場合、文脈により別途明確に示されない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限の間の中間にあるそれぞれの値もまた、具体的に開示されると理解される。任意の言及された値または言及された範囲の中間にある値と、任意の他の言及された値またはその言及された範囲の中間にある値との間のより小さな範囲はそれぞれ、本開示に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、その範囲に含まれるかまたはそこから除外されてもよく、限界のいずれかがより小さな範囲に含まれる場合、いずれも含まれない場合、または両方が含まれる場合、そのそれぞれの範囲もまた、本開示に包含され、その言及された範囲において任意の限界が具体的に除外される場合がある。言及された範囲が、限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界のうちのいずれかまたは両方を除外した範囲もまた、本開示に含まれる。
【0364】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により別途明確に示されない限り、複数形の参照物を含むことに留意しなければならない。
【0365】
「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「から構成される(comprised of)」という用語は、本明細書に使用されるとき、「含む(including)」、「含む(includes)」、または「含む(containing)」、「含む(contains)」、と同義であり、包括的または拡張可能であり、追加の言及されていないメンバー、要素、または方法ステップを除外するものではない。「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「から構成される(comprised of)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語も含む。
【0366】
本明細書に記載される本発明の実施形態が、組み合わされてもよいことに、留意されたい。
【0367】
本明細書において考察される刊行物は、本出願の出願日よりも以前のそれらの開示のために提供されているにすぎない。そのような刊行物が本明細書に添付される特許請求の範囲に対する先行技術を構成することを認めるものとして解釈されるものは、本明細書には存在しない。
【0368】
本発明を、これより、実施例を用いてさらに説明するが、これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのを補助するように機能することを意図し、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0369】
(実施例1)
CD33陽性の細胞内eGFP発現細胞のEXOAMP in vitro標的化。
概念の証明として、本発明者らは、eGFPを腫瘍抗原として便宜上使用している。CD19またはCD33は、組織特異的抗原として使用した。CD19/eGFPまたはCD33/eGFPを認識する二重特異性タンパク質を、生成した。eGFPを独立して認識するCARを、生成した。
【0370】
この実施例において、結果は、EXOAMP GFP標的化CARが、二重陽性CD33/eGFP発現標的を溶解し、単一陽性CD33発現標的を残すことを示す。
【0371】
HL-60細胞株は、急性前骨髄球性白血病(PML)を有する患者から得られた末梢血に由来するヒト白血病細胞株であり、CD19陰性かつBCR-ABL陰性である。
抗CD33 CAR(αCD33glx-HNG)、
抗GFP CAR(αGFP_GBP6-HNG)、
CD19-CAR(αCD19FMC63)(これは、陰性対照である)、または
非形質導入(NT)を含み、
GFP/CD33に対する二重特異性結合体(αGFP-HNG-αCD33タンデムscFv)[
図5a)、b)、およびc)の左手側を参照されたい]、またはGFP/CD19に対する無関係の二重特異性結合体(αGFP-HNG-αCD19)[
図5a)、b)、およびc)の右手側を参照されたい]のいずれかを共発現する、
エフェクターT細胞を産生させた。
【0372】
エフェクターT細胞を、
CD33発現HL60細胞(
図5a)を参照されたい)、
細胞内eGFPタンパク質(3xMYC-XTEN_L-eGFP)を発現するHL60細胞(
図5b)を参照されたい)、
および細胞内キメラGFP/BCR-ABLタンパク質(p210.p210_BCR-ABL-3xMYC-XTEN_L-eGFP)を発現するHL60細胞(
図5c)を参照されたい)と1:1のエフェクター対標的の比で、共培養した。
【0373】
図5のデータは、
図5a)、b)、およびc)における三角形の比較によって示されるように、EXOAMP GFP標的化CARが、二重陽性CD33/eGFP発現標的を溶解させ、単一陽性CD33発現標的を残すことを示す。
【0374】
この実施例において使用される例示的な配列は、以下である:p210_BCR-ABL-3xMYC-XTEN_L-eGFP(配列番号13)
【化11】
【0375】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
p210_BCR-ABL
3xMYC
XTEN_Lリンカー
eGFP
【0376】
(実施例2)
皮下NOD scidガンマ(NSG)マウスにおける、αCD19-CARおよび、GFP/CD19を標的とする二重特異性タンパク質を発現するEXOAMP GFP-CAR、ならびに非形質導入(NT)のT細胞による、CD19発現NALM6細胞および細胞内GFP発現NALM6細胞のEXOAMP in vivo標的化
【0377】
この実施例において、結果は、EXOAMP GFP CARが、両側腹部処置NSGマウスにおいて、二重陽性CD19/eGFP発現NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍を標的としてそれを溶解し、一方で、単一陽性NALM6腫瘍を残すことを示す。
【0378】
図6a)は、in vivo NALM6皮下動物モデルにおける時系列、コホート、試料採取、および注射経路の詳細を示す。NALM6は、B細胞前駆体白血病細胞株である。これは、急性リンパ芽球性白血病のモデルであり、CD19陽性およびCD33陰性である。
【0379】
NSGマウスに、対照腫瘍(0.5×10^6個のNALM6[NALM6.Fluc_x5Red.2A.HA-GPI])および細胞内eGFP発現腫瘍(NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP[NALM6.FLuc_x5Red.2A.HA-GPI/3xMYC-XTEN_L-eGFP]を、交互で後側腹部に注射した[すなわち、異なる腫瘍細胞を、それぞれの側腹部に注射し、
図6b)に示されるように、マウスのそれぞれの側腹部に異なる腫瘍の発生をもたらした]。
【0380】
腫瘍細胞は、生体発光イメージングを通じてin vitroおよびin vivoでの腫瘍成長のマーカーとして使用するための、ホタルルシフェラーゼ/グリコシルホスファチジルイノシトール結合型HAタグ(Fluc_xRed.2A.HA-GPI)に形質導入されていた。
【0381】
腫瘍細胞の注射3日後に、5×10^6個のCAR T細胞を、腫瘍内に注射した。
【0382】
CAR T細胞は、αCD19対照CARであるαCD19_FMC63-HNG、またはEXOAMP特異的CARであるαGFP-HNG + GFPxCD19のいずれかであった。
【0383】
3~21日目に得られた未加工の画像が、
図6b)に示されており、αCD19-CARを使用した両方の腫瘍の腫瘍制御、およびEXOAMP GFP CARを使用した特異的二重陽性NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍制御を示す。
【0384】
例えば、
図6b)において、左手側のNT PBMCパネルの写真は、両側腹部における3~21日目の継続的な腫瘍発達を示す。図の中央におけるαCD19-CAR_FMC63-HNGパネルの写真は、両方の種類の腫瘍細胞が注射されている側腹部に腫瘍が存在しないかまたは小さな腫瘍が存在するため、2つの異なる腫瘍型の制御を示す。図の右手側のEXOAMP(GFP-CAR NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP)パネルの写真は、このCARが、二重陽性NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍のみの成長を制御したことを示す。0.5×10^6個のNALM6腫瘍細胞を注射した側腹部は、αGFP-HNG+GFPxCD19 CARで処置したときに成長し続けることを確認することができる。
【0385】
このデータは、腫瘍部位における平均ラジアンスで
図6c)にさらにプロットされており、これにより、EXOAMP GFP-CARのみによる特異的な腫瘍制御が実証される。
【0386】
実線は、NALM6(図の左手側のグラフを参照されたい)およびNALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP(図の右手側のグラフを参照されたい)の特異的腫瘍平均ラジアンスを示す。線は、それぞれの被験体マウス/コホートの平均読み取り値を示す。
この例において使用される例示的な配列は、以下である:
細胞内3xMYC-XTEN_L-eGFP(配列番号12)
【化12】
【0387】
上記の配列内のドメインは、次の順序である:
3xMYC
XTEN_Lリンカー
eGFP
【0388】
(実施例3)
皮下NOD scidガンマ(NSG)マウスにおける、αCD19-CAR、およびGFP/CD19を標的とする二重特異性タンパク質またはGFP/CD33を標的とする無関係のタンパク質のいずれかを発現するEXOAMP GFP-CAR、ならびに非形質導入(NT)のT細胞による、CD19発現NALM6細胞および細胞内GFP発現NALM6細胞のEXOAMP in vivo標的化
【0389】
この実施例において、結果は、EXOAMP GFP CAR +GFPxCD19が、両側腹部処置NSGマウスにおいて、二重陽性CD19/eGFP発現NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍を標的としてそれを溶解し、一方で、単一陽性NALM6腫瘍を残すこと、ならびにGFP-CAR +GFPxCD33が、NT T細胞と同様に両方の腫瘍の制御に失敗することを示す。
【0390】
図7a)は、in vivo NALM6皮下動物モデルにおける時系列、コホート、試料採取、および注射経路の詳細を示す。
【0391】
NSGマウスに、対照腫瘍(0.5×10^6個のNALM6[NALM6.Fluc_x5Red.2A.HA-GPI])および細胞内eGFP発現腫瘍(NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP[NALM6.FLuc_x5Red.2A.HA-GPI/3xMYC-XTEN_L-eGFP]を、左後側腹部および右肩の交互の部位で注射した[すなわち、異なる腫瘍細胞を、それぞれの部位に注射し、
図7b)に示されるように、それぞれの部位において異なる腫瘍の発生をもたらした]。
【0392】
腫瘍細胞は、生体発光イメージングを通じたin vitroおよびin vivoでの腫瘍成長のマーカーとして使用するために、ホタルルシフェラーゼ/グリコシルホスファチジルイノシトール結合型HAタグ(Fluc_xRed.2A.HA-GPI)を発現するように形質導入されていた。
【0393】
3~21日目に得られた未加工の画像が、
図7bに示されており、αCD19-CARによる両方の腫瘍の制御(図において第2のパネルの写真を参照されたく、これは、両方の注射部位における腫瘍が、時間とともに制御されていることを示す)、およびEXOAMP GFP CARにおける特異的二重陽性NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍制御(図における第4のパネルの写真を参照されたく、これは、NALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP腫瘍のみが制御されていることを示す。NALM6.FLuc_x5Red.2A.HA-GPI腫瘍は、αGFP-HNG+GFPxCD19で処置した場合に成長し続ける)を示す。GFP-CAR _GFPxCD33は、いずれの腫瘍の制御も失敗する(図における第3のパネルの写真を参照されたく、これは、腫瘍が両方の注射部位において成長することを示す。CARは、腫瘍がCD33陰性であるため、それを標的とすることができない)。NT T細胞は、いずれの腫瘍も制御することができない(図における第1のパネルの写真を参照されたく、これは、腫瘍が両方の注射部位において成長することを示す)。
【0394】
このデータは、腫瘍部位における平均ラジアンスで
図7c)にさらにプロットされており、EXOAMP GFP-CAR +GFPxCD19のみによる特異的な腫瘍制御が実証されている。
【0395】
実線は、NALM6(図の左手側を参照されたい)およびNALM6.3xMYC-XTEN_L-eGFP(図の右手側を参照されたい)の特異的腫瘍平均ラジアンスを示す。線は、それぞれの被験体マウス/コホートの平均読み取り値を示す。コホート2(αCD19_FMC63- HNG)の最初のマウスは、21日目以前に体重減少に起因して処分されている。
【0396】
上述の本明細書に言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく、記載された本発明の方法および系の様々な修飾形態および変更形態が、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態と関連して記載されているが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるはずである。実際に、分子生物学、細胞免疫学、または関連する分野の当業者には明白である本発明を実施するための記載された様式の様々な修飾形態は、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
【0397】
(実施例4)
細胞上清からのin vitroでの細胞外p53の検出のためのサンドイッチELISA
細胞上清においてin vitroで細胞外p53を検出するために、結腸直腸がん細胞株であるRKO、HT-29、LS123、LS174T、SW1463、およびCL-40を、コンフルエントフラスコから採取し、培地中で2回洗浄し、平底96ウェルプレートに、1×105個の細胞/ウェルで200μl/ウェルで播種した。プレートを、37℃、/5% CO2で48時間維持し、その後、100μlの上清を採取し、使用するまで-20℃で凍結させた。
【0398】
ELISAについては、2μg/mlの汎p53抗体DO-1クローンを、Nunc MaxiSorp(商標)平底において、0.2M炭酸/重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.6中で、100μl/ウェルで一晩コーティングした。翌日、プレートを洗浄し、穏やかに振盪させながら、ELISA Assay Diluent(ADA、BioLegend,Inc)で1時間ブロッキングした。次いで、プレートを洗浄し、100μlの細胞上清とともに、穏やかに振盪させながら2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ポリクローナルウサギ抗p53抗体(Life Technologies)を、100μl/ウェルで、ADA中1:2000の希釈でウェルにおいて、穏やかに振盪させながら1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ADA中1:2000の希釈で二次抗体である西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートロバ抗ウサギIgG(Biolegend,Inc)を、穏やかに振盪させながら30分間インキュベートした。プレートを、PBS 0.05% Tween(登録商標)-20中で5回、30秒間浸漬させながら洗浄した。プレートを、100μl/ウェルのTMB基質(BioLegend,Inc)とともに暗所でインキュベートし、1M硫酸溶液を使用して停止させた。吸光度を、450および570nMで測定した。
【0399】
対照細胞、PBMCを、0.5ug/mlのCD3/CD28抗体および100IU/mlのIL-2を使用して活性化させたか、または活性化せずのいずれかとし、平底96ウェルプレートにおいて、1×105個の細胞/ウェルで200μl/ウェルで播種した。
【0400】
精製したp53タンパク質を、標準として使用し、8000pg/mlから、1:2で連続希釈した。
図8は、細胞外p53タンパク質が、試験した6つの結腸がん細胞株のうちの5つの上清において検出され得ることを示す。
【0401】
(実施例5)
細胞表面EpCAMおよびp53変異体R175Hを発現する結腸直腸がん細胞のEXOAMP特異的標的化
標的結腸直腸がん細胞HT-29(細胞表面EpCAMおよびp53におけるR273H変異を発現する)またはS123(細胞表面EpCAMおよびp53におけるR175H変異を発現する)との培養後に、CAR T細胞または非形質導入細胞からのIL-2およびIFNγサイトカイン放出を測定した。
【0402】
それぞれの抗体クローンの可変ドメインの配列を、公的に入手可能な配列から取得し、可撓性リンカー(Gly4Ser)4または(Gly4Ser)3によって分離されたVL/VHまたはVL/VHのいずれかの配向で、Igカッパ鎖シグナルペプチドを含む一本鎖可変断片(scFv)として、ヒトコドン最適化gblock(Integrated DNA Technologies,Inc)として注文した。gblockを、Phusion(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs)を使用して製造業者のプロトコールに従ってPCR増幅させ、ヒトIgG1ヒンジ、CD28膜貫通、および細胞内41BBおよびCD3Zドメインとインフレームで、Thosea asigna 2Aペプチド配列によって分離させて、ソートスーサイド(sort-suicide)遺伝子RQR8の下流において、スキャフォールド結合領域を含む修飾されたSFGレトロウイルスベクターにサブクローニングした。
【0403】
抗EpCAM結合体MT110および様々な抗p53/抗CD19結合体の可変ドメイン配列を、公的に入手可能な配列から取得し、N末端IL-2シグナルペプチドおよび介在する可撓性15aaリンカー(Gly4Ser)3を有するヒトコドン最適化gblock(Integrated DNA Technologies,Inc)として注文した。C末端セリン-グリシンリンカーGly4Serおよびヘキサヒスチジンタグを、修飾されたプライマーを使用して付加し、PCR断片として増幅させ、ウマ2Aペプチドによって分離させて、CARの下流において、修飾されたSFGベクターにサブクローニングした。
【0404】
CARエフェクターおよび標的細胞からの標的特異的IL-2およびIFNγの放出を測定するために、結腸直腸がん標的細胞を、96ウェルの平底プレートに、200μl当たり1×105個の細胞の濃度で、18~24時間または結合するまで、播種した。続いて、100μlの培地を除去し、100μl中5×104個のCAR T細胞または対照細胞を、それぞれのウェルに添加し、IL-2測定については2日間、またはIFNγ測定については7日間、インキュベートした。100μlの培地を除去し、サイトカイン濃度を、IL-2またはIFNγ特異的ELISAを使用してアッセイした。
【0405】
結果:
図9は、LS123細胞(細胞表面EpCAMを発現し、p53におけるR175H変異を有する)に対する、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体(+BSB_MT110/7B9)を分泌する汎指向性p53 CAR(aP53_421)発現T細胞からのIL-2サイトカイン放出を示す。
【0406】
抗CD19_FMC63 CAR、またはEpCAM/CD19を標的とする二重特異性結合体と組み合わせた抗p53 CAR(aP53_421+BSB_MT110/FMC63)を含むT細胞を、陰性対照として使用した。これらの細胞は、HT-29およびLS123標的に対して、非形質導入細胞と同程度の、低いかまたはバックグラウンドレベルのIL-2を生成した。
【0407】
抗EpCAM標的化CAR(抗EpCAM_MT110)を含むT細胞を、陽性対照として使用した。これらの細胞は、それぞれ、結腸直腸標的細胞HT-29およびLS123に対して、4428pg/mlおよび4249pg/mlのIL-2を分泌した。
【0408】
p53を標的とするExoAmp CARを含み、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体(aP53_421 +BSB_MT110/7B9)を分泌するT細胞は、R175H変異体p53細胞株LS123に対して、約189pg/mlでIL-2を分泌した。
図9は、これらのT細胞が、p53変異体R175Hを発現しない細胞株HT-29に対して、非常に低いかまたはバックグラウンドレベルのIL-2を分泌したことを示す。
【0409】
試験したすべてのCARについて、標的の不在下(エフェクター単独)では、IL-2のレベルは検出できなかった。
【0410】
図10は、LS123細胞(細胞表面EpCAMを発現し、p53におけるR175H変異を有する)に対する、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体(+BSB_MT110/7B9)を分泌する汎指向性p53 CAR(aP53_421)発現T細胞からのIFNγサイトカイン放出を示す。
【0411】
抗CD19_FMC63 CAR、またはEpCAM/CD19を標的とする二重特異性結合体と組み合わせた抗p53 CAR(aP53_421+BSB_MT110/FMC63)を含むT細胞を、陰性対照として使用した。これらの細胞は、HT-29およびLS123標的に対して、非形質導入細胞と同程度の、低いかまたはバックグラウンドレベルのIFNγを生成した。
【0412】
抗EpCAM標的化CAR(抗EpCAM_MT110)を含むT細胞を、陽性対照として使用した。これらの細胞は、それぞれ、結腸直腸標的細胞HT-29およびLS123に対して、23735pg/mlおよび22553pg/mlのIFNγを分泌した。
【0413】
p53を標的とするExoAmp CARを含み、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体(aP53_421 +BSB_MT110/7B9)を分泌するT細胞は、R175H変異体p53細胞株LS123に対して、約7625pg/mlでIFNγを分泌した。
図10は、これらのT細胞が、p53変異体R175Hを発現しない細胞株HT-29に対して、非常に低いかまたはバックグラウンドレベルのIFNγを分泌したことを示す。
【0414】
試験したすべてのCARについて、標的の不在下(エフェクター単独)では、IFN-γのレベルは検出できなかったか、非常に低い/バックグラウンドレベルであった。
【0415】
この実施例において使用した例示的な配列は、以下である:
抗EpCAM_MT110-RQR8マーカー遺伝子を共発現する抗EpCAM CAR、抗EpCAM MT110 scFv_LHの配向、IgG1ヒンジスペーサー、CD28TMドメイン、ならびに41BBおよびCD3Z細胞内ドメイン(配列番号14)。
抗CD19_FMC63-RQR8マーカー遺伝子を共発現する抗CD19 CAR、抗CD19 FMC63 scFv LHの配向、IgG1ヒンジスペーサー、CD28TMドメイン、ならびに41BBおよびCD3Z細胞内ドメイン。(配列番号2)
aP53_421 +BSB_MT110/7B9-RQR8マーカー遺伝子を共発現する抗p53 CAR、抗p53 pAb421 scFv LHの配向、IgG1ヒンジスペーサー、CD28TMドメイン、ならびに41BBおよびCD3Z細胞内ドメイン、ならびにEpCAM(MT110_LH)およびmutp53 R175H(7B9_HL)を標的とするヘキサヒスチジンタグ付き二重特異性結合体(配列番号15)。
aP53_421 +BSB_MT110/FMC63-RQR8マーカー遺伝子を共発現する抗p53 CAR、抗p53 pAb421 scFv LHの配向、IgG1ヒンジスペーサー、CD28TMドメイン、ならびに41BBおよびCD3Z細胞内ドメイン、ならびにEpCAM(MT110_LH)およびCD19(FMC63_HL)を標的とするヘキサヒスチジンタグ付き二重特異性結合体(配列番号16)。
【0416】
(実施例6)
EXOAMP in vitro細胞傷害アッセイ
in vitroリアルタイム細胞傷害殺滅アッセイを行った。mKate2陽性結腸直腸がん標的細胞であるLS123を、96ウェルの平底プレートに、200μl当たり2×104個の細胞の濃度で、50:50の培地/条件培地(成長LS123細胞由来)で、18~24時間または結合するまで、播種した。続いて、50μlの培地を除去し、50μl中8×104個のCAR T細胞または対照細胞を、4:1のE:T(CAR:標的)比で、それぞれのウェルに添加し、120時間インキュベートし、IncuCyte S3 Live-Cell Analysis System(Essen Biotech)でアッセイした。1ウェルごとに、毎時間、2つの画像を、10倍の倍率で取得した。データを、IncuCyte(登録商標)Zoomソフトウェアを使用して分析して、画像ごとにmKate2陽性核を検出し、その数をカウントした。
【0417】
結果
図11は、細胞表面EpCAMを発現し、変異体p53 R175Hを有するLS123細胞に対する、EpCAMおよび変異体p53 R175Hに対する二重特異性結合体(+BSB_MT110/7B9)を分泌する汎指向性p53 CAR(aP53_421)発現T細胞のin vitroリアルタイム細胞傷害を示す。対照エフェクターには、非形質導入細胞(NT)および陽性対照CAR抗EpCAM(aEpCAM_MT110)が含まれる。
【0418】
図11は、ExoAmp特異的CAR aP53_421 +BSB_MT110-7B9が、標的LS123細胞を特異的に溶解することができたことを示す。ExoAmp特異的CAR aP53_421 +BSB_MT110-7B9の標的細胞の50%を殺滅させるのにかかった時間(KT50)は、KT50が27.63時間であった陽性対照aEpCAM_MT110と比較して、60.18時間であった。
【配列表】
【国際調査報告】