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特表2023-529428菌類からのヒアルロン酸の抽出方法、植物由来のヒアルロン酸およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】菌類からのヒアルロン酸の抽出方法、植物由来のヒアルロン酸およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/26 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
C12P19/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575442
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2021055031
(87)【国際公開番号】W WO2021250566
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】102020000013618
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102020000013633
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521532983
【氏名又は名称】ヴィヴァティス・ファルマ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VIVATIS PHARMA GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】チェラーナ,ジョルジョ ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ボス,ペーター
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF11
4B064CA05
4B064CA11
4B064CB01
4B064CC01
4B064DA01
(57)【要約】
10kDa~600kDaの重量平均分子量を有するヒアルロン酸またはその塩(HA)を製造するための、菌類などの植物出発材料からの抽出方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸またはその塩の製造方法であって、以下のステップ:
(i)ディカリア亜界、好ましくは担子菌門に属する少なくとも1つの天然菌類を含むか、またはそれらからなる植物由来の材料を同定するステップ;
(ii)必要に応じて、植物由来の出発材料の破砕または粉末化を行って、前記破砕または粉末化された植物由来の出発材料を得るステップ;
(プレ-iii)ステップ(i)またはステップ(ii)から得られた植物出発材料の酵素加水分解を、水性加水分解溶媒、好ましくは水中で、10℃~90℃の温度で行い、ここで、酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を、一定量の加水分解溶媒に分散した植物出発材料に添加して、ステップ(プレ-iii)の混合物を得るステップ;
(iii)ステップ(プレ-iii)の前記混合物を水性抽出溶媒、好ましくは水で、91℃~110℃からなる温度または沸騰温度で抽出して、水性抽出物を得るステップ;
(iv)ステップ(iii)から得られた水性抽出物に溶媒、好ましくはアルコールを添加して、液体生成物を得るステップ;
(vii)ステップ(vii.a)、および必要に応じて、ステップ(vii.b)を行うことによって、ステップ(iv)から得られた液体生成物の処理を行うステップ:
(vii.a)好ましくは、15℃~25℃からなる室温で、室温より低い圧力で加熱することによって、ステップ(iv)で得られた前記液体生成物から沈殿溶媒を除去するステップ;
(vii.b)水を添加することによって希釈するステップ;
(viii)乾燥すること、好ましくは濃縮および乾燥して、10kDa~600kDaからなる重量平均分子量を有するヒアルロン酸またはその塩を含むか、またはそれらからなる生成物PR2を得るステップ;
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの菌類が、トレメラ・フシフォルミス(Berk. 1856)種に属する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(プレ-iii)において、前記酵素が、ペクチナーゼ、セルラーゼ、プロテイナーゼおよびそれらの混合物を含むか、またはそれらからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
抽出ステップ(iii)が、以下のステップ:
(iii.a)0.5時間~12時からなる群から選択される期間、91℃~110℃からなる温度または沸騰温度で、第1の体積の抽出溶媒により、前記ステップ(プレ-iii)の混合物に含まれる前記植物由来の材料の第1の抽出を行って、第1の水性抽出物および固体残渣を得るステップ;次に
(iii.b)0.5時間~8時からなる群から選択される期間、90℃~110℃からなる温度または沸騰温度で、第2の体積の抽出溶媒により、ステップ(iii.a)の混合物で得られた前記固体残渣の第2の抽出を行って、第2の水性抽出物を得るステップ;および第1の抽出物と第2の抽出物を合わせて、第2の水性抽出物を得るステップ;ならびに、必要に応じて、
(iii.c)前記第1の水性抽出物と第2の水性抽出物を濃縮して、濃縮水性抽出物を得るステップ;
を含むか、またはそれらからなる、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記酵素加水分解のステップ(プレ-iii)において、植物出発材料の重量の25~100倍、好ましくは35~75倍(重量/重量)からなる一定量の水性溶媒、好ましくは水を、植物出発材料に添加し、前記酵素を、0.001%~1%、好ましくは0.005%~0.01%からなる体積%で添加し、得られる混合物を、0.5時間~12時間、好ましくは1時間~8時間からなる期間、10℃~90℃、好ましくは20℃~65℃からなる温度に加熱して、抽出ステップ(iii)または第1の抽出物ステップ(iii.a)に付されるステップ(プレ-iii)の混合物を得る、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の方法で得られた前記ヒアルロン酸またはその塩が、50kDa~350kDa、好ましくは100kDa~300kDaからなる重量平均分子量を有する、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
ステップ(iv)において、沈殿溶媒がエタノールである、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
乾燥ステップ(viii)が、凍結乾燥を含むか、またはそれからなる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物出発材料から得られ、純度が高く、汚染物質や副産物の含有量が少ない植物由来のヒアルロン酸またはその塩(ヒアルロン酸アニオン塩)(略して、一緒にまたは別々に、HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(略して、一緒にまたは別々に、CS)を含むか、またはそれらからなる群から選択される少なくとも1つのグリコサミノグリカンを含むか、またはそれらからなる混合物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、医薬品、医療機器、栄養補給食品(nutraceutical product)、特殊医療目的の食品(FSMP)、食品または栄養補助食品(dietary supplement)の製造における添加剤、賦形剤、または成分としての前述の混合物の使用に関する。
【0003】
さらに、本発明は、(i)植物由来のヒアルロン酸またはその塩(ヒアルロン酸アニオン塩)(略して、一緒にまたは別々に、HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(略して、CS)を含むか、またはそれらからなる混合物、および(ii)必要に応じて、技術的添加物および医薬品または食品グレードの賦形剤を含む組成物に関する。
【0004】
さらに、本発明は、薬剤として使用するための前記混合物を含む前記組成物に関する。
【0005】
さらに、本発明は、関節炎、変形性関節症、関節症、関節痛、四肢および関節の炎症、胃食道逆流から選択される、特定の障害または病状または疾患を有するヒトおよび動物の予防的または治癒的処置のための方法で使用するための前記混合物を含む前記組成物に関する。
【0006】
さらに、本発明は、前記混合物、および植物由来のヒアルロン酸またはその塩(ヒアルロン酸アニオン塩)(略して、一緒にまたは別々に、HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(略して、CS)を含むか、またはそれらからなる前記混合物を含む、前記組成物を製造する方法に関する。
【0007】
最後に、本発明は、純度が高く、汚染物質および/または副産物の含有量が少ない植物由来のヒアルロン酸またはその塩および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩を製造するための植物出発材料としての菌類の使用に関する。
【背景技術】
【0008】
ヒアルロン酸は、脊椎動物の結合組織、上皮組織、神経組織に豊富に分布するアニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)である。ヒアルロン酸には、重要な構造的、レオロジー的および生理学的機能がある。
【0009】
雄鶏のとさかと人間のへその緒では、ヒアルロン酸の濃度が非常に高く、それぞれ7,500 mg/lと4,100 mg/lである。このため、80年代初頭、エンドレ A. バラーズと彼の共同研究者は、雄鶏のとさかと人間のへその緒からヒアルロン酸を分離および精製する手順を開発した。以来、ヒアルロン酸は、雄鶏のとさかから工業的に生産されている。
【0010】
コンドロイチン硫酸は、N-アセチルガラクトサミンおよびグルクロン酸である糖の交互単位の鎖からなる硫酸GAGである。コンドロイチン硫酸鎖は何百もの糖単位からなり、それぞれがさまざまな位置と量で硫酸化され得る。コンドロイチン硫酸は圧縮強度が高いため、軟骨の重要な構成成分である。
【0011】
コンドロイチン硫酸は、以下の一般式(I)で示される反復単位(二糖)を有する:
【化1】
(I)
[式中、R2、R4およびR6の少なくとも1つは亜硫酸基(SO3-)である。]
コンドロイチン一硫酸塩は、R2、R4またはR6の1つのみが亜硫酸基である。したがって、可能性がある3つのモノ硫酸化コンドロイチンは、6-硫酸化コンドロイチン(R2=H;R4=H;R6=SO3-)、4-硫酸化コンドロイチン(R2=H;R4=SO3-;R6=H)、および2-コンドロイチン硫酸(R2=SO3-;R4=H;R6=H)である。
【0012】
ほとんどのコンドロイチン硫酸は、動物の軟骨、主にウシとブタの組織(たとえば、気管、耳および鼻など)の抽出物から得られるが、サメ、魚および鳥の軟骨などの他のソースも使用することができる。
【0013】
哺乳動物、特にヒトにおけるヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸の医学的応用は数多くあり、その有効性に関して議論の余地はないが、動物の前駆物質からの抽出による製造のプロセスは、今日、倫理的、宗教的、道徳的な性質の懸念と恐怖に直面している。特に、これらの化合物または塩が栄養学的、生物医学的、または薬学的な用途を意図している場合、主な懸念および不安は、ヒアルロン酸またはその塩および/またはコンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸などのその塩の製造のために、動物由来または動物起源の製品を使用することから生じる。また、動物由来のコンドロイチン硫酸およびヒアルロン酸は高分子量であるが、一方、コンドロイチン硫酸およびヒアルロン酸は低分子量のものの方が経皮浸透性が高いので有利である。
【0014】
従来技術において、細菌発酵プロセスによって得られた非硫酸化コンドロイチンに硫酸基を挿入することによって得られる動物由来でないコンドロイチン硫酸が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、医薬品、医療機器、栄養補給食品、特殊医療用食品(FSMP)、栄養補助食品または食品の分野では、既存のものとは異なる方法で製造され、ビーガン、ベジタリアン、アレルギーを患っている対象を含むすべてのカテゴリーの消費者、および宗教的またはイデオロギー上の理由により、ヒアルロン酸またはその塩および/またはコンドロイチンまたはその塩を含む製品または薬剤へのアクセスが現在禁止されている人が使用することができる、ヒアルロン酸もしくはその塩および/またはコンドロイチンもしくはコンドロイチン硫酸などのその塩に対する市場運営者による強い必要性と需要がある。さらに、当技術分野で知られているものに対して経済的に有利であり、適用が容易なプロセスを用いて、非動物起源のコンドロイチン硫酸および/またはヒアルロン酸を生成する必要性が感じられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
長く集中的な研究開発活動の後、出願人は、既存の制限、欠点、および問題に適切に対応することができる製造技術および方法を開発した。
【0017】
したがって、本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に定義された特徴を有する、植物由来のヒアルロン酸またはその塩(ヒアルロン酸アニオン塩)(略して、一緒にまたは別々に、HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(略して、一緒にまたは別々に、CS)、およびその組み合わせを含むか、またはそれらからなる群から選択される、植物出発材料から得られた、少なくとも1つのグリコサミノグリカンを含むか、またはそれらからなる混合物である。
【0018】
さらに、本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に定義された特徴を有する、医薬品、医療機器、栄養補給食品、特殊医療目的の食品(FSMP)、食品または栄養補助食品の製造における、添加剤、賦形剤、または成分としての、上記混合物の使用である。
【0019】
本発明の別の目的は、添付の特許請求の範囲に定義された特徴を有する、(i)植物由来のヒアルロン酸またはその塩(ヒアルロン酸アニオン塩)(略して、一緒にまたは別々に、HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(略して、CS)を含むか、またはそれらからなる混合物、および(ii)必要に応じて、技術的添加物および医薬品または食品グレードの賦形剤を含む組成物である。
【0020】
本発明の別の目的は、添付の特許請求の範囲に定義された特徴を有する、混合物および少なくとも1つの技術添加物または賦形剤、または薬剤として使用するための組成物(第一の医薬用途)である。
【0021】
本発明の別の目的は、関節炎、変形性関節症、関節症、関節痛、四肢および関節の炎症、胃食道逆流から選択される、特定の障害または病状または疾患を有するヒトおよび動物の予防的または治癒的処置のための方法における使用のための前記混合物を含む混合物または組成物(第二の医薬用途)であって、前記使用は、添付の特許請求の範囲に定義された特徴を有する。
【0022】
さらに、本発明の別の目的は、添付の特許請求の範囲に定義された特徴を有する、植物由来のヒアルロン酸またはその塩(ヒアルロン酸アニオン塩)(略して、一緒にまたは別々に、HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(略して、CS)を含むか、またはそれらからなる前記混合物、または前記混合物を含む前記組成物の製造方法である。
【0023】
最後に、本発明の別の目的は、添付の特許請求の範囲に定義された特徴を有する、純度が高く、汚染物質および/または副産物の含有量が少ないヒアルロン酸またはその塩および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩を製造するための植物出発材料としての菌類の使用である。
【0024】
ここで、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】異なる実施形態(第1の実施形態、P1)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図2】異なる実施形態(第1の実施形態、P1)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図3】異なる実施形態(第1の実施形態、P1)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図4】異なる実施形態(第1の実施形態、P1)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図5】第2の実施形態(P2)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図6】第2の実施形態(P2)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図7】第3の実施形態(P3)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図8】第3の実施形態(P3)による、本発明の主題であるプロセスの流れ図を示す。
図9】HAを含むサンプルおよびCSを含むサンプル中の不飽和二糖を測定するための2つのHPLCスペクトルをそれぞれ示す。
図10】HAを含むサンプルおよびCSを含むサンプル中の不飽和二糖を測定するための2つのHPLCスペクトルをそれぞれ示す。
【0026】
本明細書の文脈において、「HA」という表現は、ヒアルロン酸もしくはその塩、またはヒアルロン酸塩、またはそれらの組み合わせを示すために使用されることに留意べきである。一方、「CS」という表現は、コンドロイチン、コンドロイチン塩、好ましくはコンドロイチン硫酸もしくはその塩、またはそれらの混合物を示すために使用される。
【0027】
この説明では、「植物出発材料」と「植物由来の出発物質」という用語は同義語であり、したがって交換可能に使用されることに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な記載
本発明の目的は、植物起源の出発材料から得られる少なくとも1つのグリコサミノグリカンを含むか、またはそれらからなる混合物(m)である。植物由来の前記材料は、1つまたは複数の天然菌類を含むか、またはそれらからなる群から選択される。
【0029】
前記グリコサミノグリカンは、
(a)ヒアルロン酸またはその塩、ヒアルロン酸アニオン(略して、HA);
(b)コンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(略して、CS);
(c) (a)と(b)の組み合わせ;
を含むか、またはそれらからなる群から選択される。
【0030】
植物出発材料は、菌類である。菌類は自然界で成長し、見出される菌類であり、たとえば、森の中で見つけて採集することができるが、温室で栽培することもできる。
【0031】
菌類は、ディカリア亜界に属し、好ましくは、担子菌門に属する。
【0032】
ディカリアは、子嚢菌門と担子菌門を含む菌類亜界である。担子菌(Basidiomycota R.T. Moore、1980)は、菌類界を形成する最大の門の1つである。
【0033】
1つの実施形態によれば、植物出発材料は、トレメラ・フシフォルミス種の菌類であるか、または前記植物出発材料は、トレメラ・フシフォルミス種の菌類を含むか、またはそれらからなる。
【0034】
トレメラ・フシフォルミス(Berk. 1856)(雪茸(snow fungus)、銀耳茸(silver ear fungus)とも呼ばれる)は、熱帯および亜熱帯地域を原産とする菌類であり、そこでは、枯れた広葉樹の丸太で育ち、特に日本と中国では、料理および伝統医学での非常に高い需要に対応するために栽培されている。トレメラ・フシフォルミスは、葉状体に似た白いゼラチン状の結実体(担子体) を生成する。
【0035】
この植物出発材料から出発して、本明細書で開発された抽出技術(第1の実施形態(P1)、第2の実施形態(P2)および第3の実施形態(P3))が、HAおよびCSの両方を完全に植物由来(および低分子量)で生成することを可能にすることを考慮すると、本発明におけるトレメラ・フシフォルミスの使用は、特に有利である。混合物(m)に含まれ、本発明の方法から得られるHAおよび/またはCSグリコサミノグリカンは、とりわけ、先行技術に従って動物の軟骨から得られるHAおよび/またはCSと比較した場合、それらの減少した分子量のおかげで、それらを特に効果的にする特有の特徴を有する。低分子量により、HAおよび/またはCSグリコサミノグリカンの経皮浸透特性が改善される。
【0036】
より正確には、本発明の方法(P1および/またはP2)により得られるヒアルロン酸またはその塩(ヒアルロン酸塩)は、10kDa~600kDaからなり、好ましくは100kDa~500kDaからなり、より好ましくは200kDa~400kDaまたは100kDa~300kDaからなる重量平均分子量、たとえば、約50kDa、150kDa、または250kDa、または300kDa、または350kDa、または450kDa、または550kDaの重量平均分子量を有する。好ましくは、前記ヒアルロン酸は、菌類から抽出された前記HAの総重量に対して、0.01%~5%からなり、好ましくは0.1%~3%からなり、より好ましくは0.5%~2%からなり、たとえば、1%または2%である重量パーセントのコンドロイチン(好ましくは非硫酸化コンドロイチン)を含む。
【0037】
本発明の有利な態様によれば、このような範囲の重量平均分子量を有するHAは、分子の大きさが制限されているため、高い経皮浸透力を有する。
【0038】
本発明の方法(P1および/またはP3)により得られるコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(CS)は、1kDa~50kDaまたは5kDa超え~50kDa未満からなり、好ましくは3kDa~40kDaからなり、より好ましくは5kDaまたは5kDa超え~25kDaまたは5kDa超え~10kDaからなる重量平均分子量、たとえば、約4kDa、または6kDa、または8kDa、または10kDa、または12kDa、または14kDa、または16kDa、または18kDa、または22kDa、または24kDaの重量平均分子量を有する。
【0039】
本発明のさらなる有利な態様によれば、重量平均分子量が本明細書に記載の範囲に含まれるCSは、膝および股関節の変形性関節症による骨損傷の軽減にも有効であることが証明された。
【0040】
本発明の混合物(m)に含まれるCSは、1kDa (1,000.00 Da=1x103 Da)~50kDaからなる、好ましくは3kDa~40kDaからなり、より好ましくは5kDa~25kDaからなる重量平均分子量、たとえば、約4kDa、または6kDa、または8kDa、または10kDa、または12kDa、または14kDa、または16kDa、または18kDa、または22kDa、または24kDaの重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸を含む。
【0041】
好ましくは、前記CSは、0.70~0.99または0.70~1.50からなり、好ましくは0.75~0.98または0.75~1.20からなり、より好ましくは0.80~0.97、たとえば、0.85、0.87、0.90、0.92、0.94、または0.96の電荷密度を有する。
【0042】
より好ましくは、前記CS(P1および/またはP3プロセスから得られる)は、前記CSの総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量に対して;%は、たとえば、HPLCによって決定される)、50%~99.5%からなり、好ましくは50%~95%からなり、より好ましくは75%~88%からなり、さらに好ましくは78%~86%からなり、たとえば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%の6-硫酸化コンドロイチンの重量パーセントを有する。
【0043】
前記CSは、6-硫酸化コンドロイチンに加えて、非硫酸化コンドロイチン(非硫酸化コンドロイチン)を含むことが好ましい。
【0044】
好ましくは、非硫酸化コンドロイチンは、前記CSの総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量に対して;%は、たとえば、HPLCによって決定される)、0.1%~25%からなり、好ましくは0.5%~20%または5%~20%からなり、より好ましくは7%~15%からなり、さらに好ましくは8%~13%からなり、たとえば、約0.2%、0.3%、0.4%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5.5%、6%、8%、9%、10%、11%または12%の重量パーセントを有する。
【0045】
前記CSは、6-硫酸化コンドロイチンおよび非硫酸化コンドロイチンに加えて、2,6-二硫酸化コンドロイチンを含むのが好ましい。
【0046】
好ましくは、2,6-二硫酸化コンドロイチンは、前記CSの総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量に対して;%は、たとえば、HPLCによって決定される)、0.1%~10%からなり、好ましくは0.2%~8%からなり、より好ましくは0.3%~5%からなり、たとえば、約0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%または4.5%の重量パーセントを有する。
【0047】
前記CSは、6-硫酸化コンドロイチン、非硫酸化コンドロイチンおよび2,6-二硫酸化コンドロイチン塩に加えて、4-硫酸化コンドロイチンを含むのが好ましい(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖類の合計に対して;%は、たとえば、HPLCにより求められる)。
【0048】
好ましくは、4-硫酸化コンドロイチンは、前記CSの総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量に対して;%は、たとえば、HPLCによって決定される)、0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%からなり、より好ましくは0.1%~1.5%からなり、たとえば、約0.02%、0.03%、0.04%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1%の重量パーセントを有する。
【0049】
前記CSは、6-硫酸化コンドロイチン、非硫酸化コンドロイチン、2,6-二硫酸化コンドロイチンおよび4-硫酸化コンドロイチンに加えて、4,6-二硫酸化コンドロイチンを含むのが好ましい。
【0050】
好ましくは、4-硫酸化コンドロイチンは、前記CSの総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量に対して;%は、たとえば、HPLCによって決定される)、0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%からなり、より好ましくは0.1%~1.5%からなり、たとえば、約0.02%、0.03%、0.04%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1%の重量パーセントを有する。
【0051】
前記CSは、6-硫酸化コンドロイチン、非硫酸化コンドロイチンおよび2,6-二硫酸化コンドロイチン、4-硫酸化コンドロイチンおよび4,6-二硫酸化コンドロイチンに加えて、2,4-二硫酸化コンドロイチンを含むのが好ましい(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖類の合計に対して;%は、たとえば、HPLCにより求められる)。
【0052】
好ましくは、2,4-二硫酸化コンドロイチンは、前記CSの総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量に対して;%は、たとえば、HPLCにより決定される)、0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%からなり、より好ましくは0.1%~1.5%からなり、たとえば、約0.02%、0.03%、0.04%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1.0%の重量パーセントを有する。
【0053】
6-硫酸化コンドロイチン、非硫酸化コンドロイチン、2,6-二硫酸化コンドロイチン、4-硫酸化コンドロイチン、4,6-二硫酸化コンドロイチンおよび2,4-二硫酸化コンドロイチンに加えて、前記CSは、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩(好ましくは非硫酸化)を含むのが好ましい。好ましくは、前記HAは、前記CSの総重量に対して、0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%からなり、より好ましくは0.1%~1.5%からなり、たとえば、0.8%または1.0%の重量パーセントで存在する。
【0054】
1つの実施形態によれば、混合物(m)に含まれ、本発明の方法によって得られるCS(P1および/またはP3)は、以下を含む:
- 50%~99.5%、好ましくは50%~95±0.5%、より好ましくは75%~88%からなり、さらに好ましくは78%~86%からなる重量パーセントの6-硫酸化コンドロイチン;
0.1%~25%、好ましくは0.5%~20%、より好ましくは7%~15%からなり、より好ましくは8%および13%からなる重量パーセントの非硫酸化コンドロイチン;
0.1%~10%からなり、好ましくは0.2%~8%からなり、より好ましくは0.3%~5%からからなる重量パーセントの2,6-二硫酸化コンドロイチン;および、さらに、
0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%からなり、より好ましくは0.1%~1.5%からなる重量パーセントの4-硫酸化コンドロイチン;
0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%からなり、より好ましくは0.1%~1.5%からなる重量パーセントの4,6-二硫酸化コンドロイチン;および
0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%からなり、より好ましくは0.1%~1.5%からなる重量パーセントの2,4-二硫酸化コンドロイチン。
【0055】
例として、以下の表1によれば、混合物(m)に含まれ、本発明の方法によって得られるCSは、組成CS.1、CS.2、CS.3、CS.4、CS.5または組成CS.6を有する。(値は、前記CSの総重量に対する各成分の重量パーセンテージとして表される。n=1~6)。
【0056】
表1
【表1】
【0057】
本発明の目的は、(i)(a)10kDa~600kDa(好ましくは100kDa~500kDa、より好ましくは200kDa~400kDa、または100kDa~300kDaからなり、たとえば、約150kDa、または250kDa、または300kDa、または350kDa、または450kDa、または550kDa)を含む重量平均分子量を有するHA、および/または(b)1kDa~50kDaまたは5kDa超え~50kDa未満(3kDa~40kDaからなり、より好ましくは5または5kDa超え~25kDa、たとえば、約4kDa、または6kDa、または8kDa、または10kDaまたは12kDa、または14kDa、または16kDa、または18kDa、または22kDa、または24kDa)を含む重量平均分子量を有するCSを含むか、またはそれらからなる前記混合物(m)、および(ii)必要に応じて、技術的添加物および医薬品または食品グレードの賦形剤を含む組成物である。
【0058】
そのような組成物は、医薬組成物、医療機器組成物(EU)2017/745、栄養補助食品組成物、特別医療目的食品(FSMP)組成物、栄養補助食品組成物、または食品組成物、または新規食品組成物(EU) 2015/2283であり得る。
【0059】
そのような組成物は、関節炎、変形性関節症、関節症、関節痛、四肢および関節の炎症、胃食道逆流の予防および/または治癒処置における使用のための薬剤として、または組成物として使用することができる。
【0060】
本発明の目的は、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩(HA)(プロセスP1および/またはP2)および/またはコンドロイチン硫酸またはコンドロイチンまたはその塩(CS)(プロセスP1および/またはP3)を製造するための技術および方法であり、前記プロセスは、植物由来の出発材料からヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩および/またはコンドロイチン硫酸またはコンドロイチンを抽出する少なくとも1つのステップを含み、たとえば、植物由来の出発材料は、ディカリア亜界、好ましくは担子菌門、より好ましくはトレメラ・フシフォルミス種に属する少なくとも1つの天然菌類を含むか、またはそれらからなる。
【0061】
本発明のプロセス(第1の実施形態(P1)、第2の実施形態(P2)および第3の実施形態(P3))は、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸の調製については、たとえば、特許文献WO2012/152872A1およびEP2852437B1で報告されている細菌発酵などの細菌による発酵および/または消化のステップを含まない。
【0062】
このプロセスのさまざまな実施形態は、図1~8の流れ図に例示されている。
【0063】
第1の実施形態(P1)によれば、本発明のプロセスの主題は、以下のステップを含む:
(i)グリコサミノグリカンの植物出発材料として、たとえば、乾燥または乾燥された形態の1つまたは複数の天然菌類、好ましくはディカリア亜界、好ましくは担子菌門、より好ましくはトレメラ・フシフォルミス種に属する少なくとも1つの菌類を含むか、またはそれらからなる1つまたは複数の天然菌類を同定するステップ;
(ii)必要に応じて、植物出発材料の破砕または粉末化を行うステップ;
(iii)抽出溶媒、好ましくは水性溶媒、さらに好ましくは水(たとえば、蒸留水または再蒸留水)を使用して、ステップ(i)またはステップ(ii)から得られた植物出発材料から前記グリコサミノグリカン(HAまたはCS)を抽出して、前記グリコサミノグリカンの水性抽出物を得るステップ;
(iv)ステップ(iii)から得られた水性抽出物に溶媒、好ましくはエタノールを添加して、液体生成物を得るステップ;
(v)ステップ(iv)から得られた液体生成物の遠心分離および/またはろ過を行って、液相および固体残渣を得るステップ;
(vi)ステップ(v)の遠心分離および/またはろ過から得られた液相を次のステップ(vi.a)によって処理すること、および/またはステップ(v)の遠心分離および/またはろ過から得られた固体残渣を次のステップ(vi.b)、(vi.c)、(vi.d)および(vi.e)によって処理することを行うステップ:
(vi.a)ステップ(v)から得られた液相を乾燥、好ましくは濃縮および乾燥して、重量平均分子量が10kDa~600kDaのヒアルロン酸またはその塩を得るステップ;
および/または
(vi.b)ステップ(v)から得られた固体残渣を回収および精製して、1kDa~50kDaの重量平均分子量を有するコンドロイチンまたはその塩(CS)を得るステップ;
(vi.c)ステップ(vi.b)から得られたコンドロイチンまたはその塩(CS)を、好ましくは硫酸、三酸化イオウピリジン複合体、三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体およびその混合物を含む群から選択される硫酸源で処理して、酸性化生成物を得るステップ;
(vi.d)ステップ(vi.c)から得られた酸性化生成物を、塩基性作用剤を用いて中和して、中和生成物を得るステップ;
(vi.e)ステップ(vi.d)から得られた中和生成物を濃縮および乾燥して、1kDa~50kDaの重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸またはその塩を得るステップ。
【0064】
ステップ(iii)で抽出に付される植物出発材料は、ステップ(ii)において、無傷(すなわち、単一片、たとえば菌類全体)である場合もあれば、粉砕された(小片またはフレークに)または粉末化された(顆粒、粉末またはペレットに)植物材料である場合もある。
【0065】
図1および図2の流れ図は、第1の実施形態(P1)による本発明のプロセスの主題の実施形態を示し、ここで、ステップ(i)で同定された天然菌類、またはその複数が、ステップ(iii)またはステップ(iii.a)および(iii.b)で抽出されて、水性抽出物が得られる。
【0066】
図3および図4の流れ図は、第1の実施形態(P1)(当業者に知られている技術および装置に従って実施されるプロセス)による本発明のプロセスの主題の実施形態を示し、ここで、ステップ(i)で同定された天然菌類、またはその複数が、ステップ(ii)で粉砕または粉末化される。続いて、ステップ(ii)で破砕または粉末化された天然菌類またはその複数は、ステップ(iii)またはステップ(iii.a)および(iii.b)で抽出されて、水性抽出物が得られる。
【0067】
ステップ(ii)において植物出発材料を(当業者に公知の技術および装置により)粉砕又は粉末化する場合、前記植物出発材料の粒子サイズの平均分布は、好ましくは、500μm~2,500μmからなり、より好ましくは800μm~1,800μmからなり、さらに好ましくは900μm~1,200μmからなる。
【0068】
1つの実施形態によれば、ステップ(iii)(ステップ(i)または(ii)から)で供給される植物出発材料は、小片またはフレークに粉砕されるか、または顆粒またはペレットに粉末化された出発材料である。
【0069】
ステップ(iii)(ステップ(i)または(ii)から)で供給される植物出発材料は、好ましくは乾燥しているかまたは乾燥され、すなわち、植物出発材料の総重量に対して、約2%~20%からなり、好ましくは5%~15%からなり、より好ましくは8%~10%からなる水の重量を含む植物出発材料である。
【0070】
ステップ(iii)では、抽出溶媒は水性溶媒および水から選択される。
【0071】
水性溶媒(または水溶液)は、好ましくは、アルコール(たとえば、エタノール)が、抽出溶媒の総重量に対して、0.1%~50%からなり、より好ましくは0.5%~25%からなり、より好ましくは1%~15%からなる重量パーセント、たとえば、約1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、7.5%、10%、20%の重量パーセントで存在する水性アルコール混合物である。
【0072】
水は、蒸留水または再蒸留水であることが好ましい。
【0073】
ステップ(iii)では、植物出発材料は、たとえば、機械的撹拌手段、加熱手段、ろ過手段、ならびに温度および圧力制御手段を備えた容器または抽出装置に連続的にまたはバッチで装填される。
【0074】
ステップ(iii)では、次に、ヒアルロン酸またはその塩が水性抽出物内の液相中の溶液に入り、コンドロイチンが固体残渣に残るように、抽出容器または抽出装置内で抽出溶媒を用いて植物出発材料を抽出する。
【0075】
ステップ(iii)の抽出は、1:1~1:90からなり、好ましくは1:10~1:90からなり、より好ましくは1:20~1:75からなり、さらに好ましくは1:40~1:60からなり、たとえば、1:3、1:5、1:15、1:25、1:45、1:50または1:55である[植物出発材料の重量]:[抽出溶媒の体積] の比率を使用して行われる。ステップ(iii)の抽出は、1分~12時間、好ましくは10分~9時間、より好ましくは15分~4時間からなる期間内、たとえば、約30分、45分、60分、90分、120分、150分、または180分で行われる。
【0076】
ステップ(iii)は、好ましくは、大気圧(P=1気圧、20~25℃)にて、および10℃~90℃からなり、好ましくは20℃~60℃からなり、より好ましくは35℃~55℃からなり、たとえば、約25℃、30℃、40℃、44℃、48℃、または50℃の抽出溶媒の温度にて行われる。
【0077】
好ましくは、ステップ(iii)の抽出溶媒のpH値は、3~10、好ましくは3.5~9、より好ましくは4~8からなり、さらに好ましくは5~7からなり、たとえば、約4.5;5.5;6;6.5;7.5;8.5;または9.5のpH値である。
【0078】
ステップ(iii)の抽出では、タンパク質分解酵素を使用して、植物由来の材料の表面ペクチンを分解し、プロセスの収量を増加させることが好ましい。好ましくは、タンパク質分解酵素は、ブロメラインまたはブロメライン抽出物を含むか、またはそれらからなる。
【0079】
ブロメラインは、パイナップルの果実および/または茎の酵素抽出物であり、タンパク質分解酵素およびその他の物質を少量含む。
【0080】
抽出の収率を高めるために、ステップ(iii)は、次のように2つのステップで行われるのが望ましい:
(iii.a)第1の水性抽出物を得るための、10℃~90℃からなり、好ましくは20℃~60℃からなり、より好ましくは35℃~55℃からなる温度での、1分または30分~12時間、好ましくは10分~9時間、より好ましくは15分~4時間からなる期間の、第1の体積の抽出溶媒による植物出発材料からの第1の抽出;
(iii.b)第2の水性抽出物を得るための、80℃~120℃からなり、好ましくは90℃~110℃からなり、好ましくは95℃~105℃からなり、より好ましくは98℃~102℃の温度での、好ましくは加圧下または減圧下での、10分~6時間または30分~8時間、好ましくは20分~4時間、より好ましくは40分~2時間からなる、たとえば、約30分、60分、または90分の期間の、植物出発材料からの(またはステップ(iii.a)の第1の抽出の固体残渣からの)第2の体積の抽出溶媒による第2の抽出。好ましくは、第1の抽出(iii.a)では、抽出溶媒の第1の体積は、植物出発材料の重量の25~75倍、好ましくは35~65倍からなり、より好ましくは45~55倍からなり、たとえば、約30倍、または50倍で使用される。
【0081】
好ましくは、第2の抽出(iii.b)では、抽出溶媒の第2の体積は、植物出発材料の重量の10~150倍、好ましくは75~125倍からなり、より好ましくは85~115倍からなり、さらに好ましくは95~105倍たとえば、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100倍で使用される。
【0082】
HAおよび/またはCS(P1)製造プロセスの前記第1の実施形態によれば、次に、ステップ(iii.a)から得られた第1の水性抽出物とステップ(iii.b)から得られた第2の水性抽出物とを合わせ、ステップ(iv)による溶媒を、それに追加する。
【0083】
ステップ(iv)では、溶媒、好ましくはエタノールを、ステップ(iii)から得られた水性抽出物、またはステップ(iii.a)から得られた第1の水性抽出物およびステップ(iii.b)から得られた第2の水性抽出物に添加して、液体製品を得る。
【0084】
ステップ(v)では、ステップ(iv)から得られた液体生成物、およびそのような生成物中に存在する植物出発材料(たとえば、上清または沈殿物として)を、遠心分離するか、および/または固体部分(固体残渣)を保持し、液相を通過させる、ろ過手段に通す(第1のろ過)。
【0085】
ステップ(vi)では、ステップ(v)に続いて、遠心分離および/またはろ過によって得られた液相は、ステップ(vi.a)を介して処理され、および/または固体残渣は、ステップ(vi.b)、(vi.c)、(vi.d)および(vi.e)を介して処理される。
【0086】
好ましいステップ(vi.a)では、ステップ(v)で得られた液相を乾燥し、必要に応じて濃縮および乾燥して、重量平均分子量10kDa~600kDaのヒアルロン酸またはその塩を得る。
【0087】
ステップ(vi.a)で乾燥される、好ましくは濃縮および乾燥される液相は、20~25℃に冷却したときに沈殿物がないことが好ましい。したがって、沈殿物が存在する場合、ステップ(v)から得られた液相は、ステップ(vi.a)の前にさらに遠心分離および/またはろ過される。
【0088】
遠心分離および/またはろ過された液相の濃縮は、60℃~90℃からなり、より好ましくは65℃~85℃からなり、さらに好ましくは70℃~80℃からなり、たとえば、70℃、75℃または80℃の温度で行われるのが好ましい。
【0089】
好ましくは、遠心分離および/またはろ過された液相の濃縮は、液相中の溶解した物質(HAなど)の量を、液相100ml当たり1g~35gからなり、好ましくは5g~25gからなり、より好ましくは8g~18 gからなる範囲まで増加させる。
【0090】
好ましくは、濃縮ステップ(vi.a)から得られた液相は、1.01~1.20からなり、好ましくは1.02~1.15からなり、より好ましくは1.05~1.08からなる相対密度比([遠心分離および/またはろ過された液相の密度]:[濃縮終了時の液相の密度]として定義される)を有する。
【0091】
好ましくは、液相の濃縮は、減圧下(1気圧未満、25℃にて)、より好ましくは、-1.5 mPa~-0.1 mPaからなり、より好ましくは-1.0 mPa~-0.5 mPaからなり、たとえば、-0.8 mPaの圧力下で行われる。
【0092】
好ましくは、ステップ(vi.a)から得られたHAは、90%~100%からなり、好ましくは95%~99.5%からなり、より好ましくは97%~99%からなる(たとえば、HPLCにより決定される%)の純度(HAの総重量に対する重量%)を有する。
【0093】
好ましいステップ(vi.b)、(vi.c)、(vi.d)および(vi.e)では、ステップ(v)の遠心分離および/またはろ過から得られた固体残渣を処理して、1kDa~50kDaからなる重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸または塩を得る。
【0094】
好ましいステップ(vi.b)では、ステップ(v)の遠心分離および/またはろ過から得られた固体残渣を回収し、精製して、1kDa~50kDaからなる重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)を得る。
【0095】
ステップ(vi.b)に続く好ましいステップ(vi.c)(コンドロイチンの二量体上に硫酸基を挿入することができる反応ステップとして意図された、スルホン化(または硫酸化)ステップ)では、固体残渣を硫酸源(好ましくは、硫酸、三酸化硫黄ピリジン複合体、三酸化硫黄ジメチルホルムアミド複合体、およびそれらの混合物を含む群から選択されるか、またはそれらからなる群から選択される)で処理して、酸性化生成物を得る(ここで、前記スルホン化ステップは、当業者に知られている技術および装置に従って実施される)。
【0096】
ステップ(vi.c)で使用される硫酸源の量は、ステップ(vi.b)の固体残渣中のCSの二糖の総含有量に対して、51%~99%、または約95±0.5%(好ましくは78%~85%、または86%)からなる6-コンドロイチン硫酸の重量パーセントが得られる量である。
【0097】
好ましくは、ステップ(vi.c)では、ステップ(vi.b)で得られたコンドロイチンまたはその塩(CS)100g毎に対して、1ml~50ml、好ましくは2ml~40ml、より好ましくは4ml~30mlの三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体(SO3 DMF)、たとえば、ステップ(vi.b)で得られたコンドロイチンまたはその塩(CS)100g毎に対して、5ml、10ml、15ml、18ml、22mlまたは25mlの三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体が使用される。より好ましくは、三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体は、いくつかのステップにおいて、たとえば、2ml~8ml、次に8ml~12ml、最後にさらに8ml~12mlの三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体を添加することによって、ステップ(vi.b)で得られたコンドロイチンまたはその塩(CS)に添加される。
【0098】
ステップ(vi.c)の処理は、1分~4時間からなり、好ましくは10分~120分からなり、さらに好ましくは20分~60分からなる期間、20℃~80℃からなり、好ましくは30℃~70℃からなり、より好ましくは40℃~60℃からなる温度にて行われる。ステップ(vi.d)では、ステップ(vi.c)で得られた生成物は、塩基性剤で中和される。
【0099】
したがって、ステップ(vi.d)では、ステップ(vi.c)の酸性化生成物中にまだ遊離している硫酸源(すなわち、酸性化生成物中のコンドロイチン硫酸としてコンドロイチンに結合していない硫酸源)は、中和生成物を得るために塩基性剤で中和することによって除去される。
【0100】
本記載では、「中和された」または「中和」という表現は、6~8からなり、好ましくは6.4~7.6からなり、さらに好ましくは6.6~7.4からなるpH値、たとえば、7.0±0.2のpH値に達することを示すために使用される。
【0101】
ステップ(vi.d)で使用される塩基性剤は、好ましくは、無機塩基性剤である。
【0102】
塩基性剤は、好ましくは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびそれらの混合物を含むか、またはそれらからなる群から選択される。
【0103】
好ましくは、ステップ(vi.d)で使用可能な水酸化ナトリウムは、1M、2Mまたは4Mの濃度である。
【0104】
好ましい(vi.e)では、ステップ(vi.d)に続いて、ステップ(vi.d)で得られた中和物は、濃縮および乾燥されて、重量平均分子量1kDa~50kDaのコンドロイチン硫酸が得られる。
【0105】
ステップ(vi.e)の濃縮は、1.0~1.30からなり、好ましくは1.01~1.20からなり、より好ましくは1.05~1.15からなる相対密度([ステップ(vi.d)から得られる中和生成物の密度]:[ステップ(vi.e)から得られる濃縮生成物の密度]として定義される)比に到達することを提供する。
【0106】
好ましくは、ステップ(vi.e)の濃縮は、透析および/または真空濃縮によって実施される。
【0107】
より好ましくは、透析バッグを用いて透析を行い、存在し得る小さい不純物を除去する。
【0108】
濃縮ステップ(vi.e)は、ステップ(vi.e)で得られた濃縮生成物中の固体含有量が、10g~60g/100mlからなり、好ましくは20g~50g/100mlからなり、さらに好ましくは35g~45g/100mlからなり、たとえば、40g/100mlである時に終了するのが好ましい。
【0109】
ステップ(vi.e)の乾燥は、ステップ(vi.e)の濃縮に続いて、好ましくは真空オーブンによって行われる。
【0110】
本発明の目的は、ヒアルロン酸またはその塩、ヒアルロン酸アニオン塩(HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはその塩などのコンドロイチンまたはその塩(CS)を製造するための、植物出発材料、好ましくは菌類、より好ましくはディカリア亜界の菌類、さらに好ましくは担子菌門の菌類、さらになお好ましくはトレメラ・フシフォルミス種の菌類の使用である。
【0111】
混合物、前記混合物の使用、前記混合物を添加剤、賦形剤、または成分(または非有効成分)として含む組成物、薬剤としての組成物の使用、組成物の使用、特定の障害または疾患または病状の治療における前記組成物の使用、前記混合物または前記混合物を含む前記組成物の製造方法、添加剤、または賦形剤、または成分として使用するための前記組成物の使用、および前述の植物出発材料の実施形態は、不測の事態に応じて、当業者によって、記載された特性に関して置換または変更を受けることができる。これらの実施形態もまた、特許請求の範囲に規定された保護の範囲に含まれると見なされるべきである。
【0112】
さらに、任意の実施形態が、記載された他の実施形態から独立して実施され得ることが観察されるべきである。
【0113】
本発明の実施形態(FRn)を以下に概説する:
FR1.植物出発材料から得られたグリコサミノグリカンを含むか、またはそれからなる混合物(M)であって、前記グリコサミノグリカンは、
(a)重量平均分子量が10kDa~600kDaである、ヒアルロン酸またはその塩、ヒアルロン酸アニオン(HA);
(b)重量平均分子量が1kDa~50kDaである、コンドロイチン硫酸などのコンドロイチンまたはその塩(CS);
(c)(a)および(b)の組み合わせ;
を含むか、またはそれからなる群から選択される、混合物。
FR2.(a)ヒアルロン酸またはその塩(HA)が、100kDa~500kDaからなり、好ましくは200kDa~400kDaからなる重量平均分子量を有し;および/または
(b)コンドロイチンまたはその塩(CS)が、1kDa~50kDaからなり、好ましくは3kDa~40kDaからなり、より好ましくは5kDa~25kDaからなる重量平均分子量を有する、前記FRに記載の混合物(M)。
FR3.前記植物出発材料が菌類、好ましくはディカリア亜界の菌類、さらに好ましくは担子菌門の菌類である、前記FRのいずれか1つに記載の混合物(M)。
FR4.菌類が、トレメラ・フシフォルミス種の菌類である、前記FRに記載の混合物(M)。
FR5.医薬品、医療機器、栄養補給食品、特殊医療目的の食品(FSMP)、栄養補助食品または食品の製造における、添加剤、賦形剤、または成分としての、前記FRのいずれか1つに記載の混合物(M)。
FR6.(i)FR1~4のいずれか1つに記載の混合物、および(ii)技術的添加物または医薬品または食品グレードの賦形剤、を含む組成物。
FR7.薬剤として使用するための、前記FRに記載の組成物。
FR8.関節炎、変形性関節症、関節症、関節痛、四肢および関節の炎症、または胃食道逆流から選択される、特定の障害または病状または疾患を有するヒトまたは動物の予防および/または治癒処置における使用のための、および/または医薬品、医療機器のための製品、栄養補給食品、特殊医療目的の食品(FSMP)、食品または栄養補助食品の製造における添加剤、賦形剤、または成分としての使用のための、FR6に記載の組成物。
FR9.ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩(HA)、および/またはコンドロイチン硫酸またはコンドロイチン(CS)の製造方法であって、植物由来の出発材料から、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩、および/またはコンドロイチン硫酸またはコンドロイチンを抽出するための少なくとも1つのステップを含む、方法。
FR10.前記FRに記載の方法であって、以下のステップ:
(i)グリコサミノグリカンの植物出発材料として、1つまたは複数の天然菌類を同定するステップ;
(ii)必要に応じて、植物出発材料を破砕するか、または粉末化するステップ;
(iii)抽出溶媒、好ましくは水性溶媒、さらに好ましくは水によって、ステップ(i)またはステップ(ii)から得られた植物出発材料から前記グリコサミノグリカンを抽出して、前記グリコサミノグリカンの水性抽出物を得るステップ;
(iv)ステップ(iii)から得られた水性抽出物に溶媒、好ましくはエタノールを添加して、液体生成物を得るステップ;
(v)ステップ(iv)から得られた液体生成物の遠心分離および/またはろ過を行って、液相および固体残渣を得るステップ;
(vi)ステップ(v)の遠心分離および/またはろ過から得られた液相を次のステップ(vi.a)によって処理すること、および/またはステップ(v)の遠心分離および/またはろ過から得られた固体残渣を次のステップ(vi.b)、(vi.c)、(vi.d)および(vi.e)によって処理するステップ:
(vi.a)ステップ(v)から得られた液相を乾燥、好ましくは濃縮および乾燥して、重量平均分子量が10kDa~600kDaのヒアルロン酸またはその塩を得るステップ;
および/または
(vi.b)ステップ(v)から得られた固体残渣を回収および精製して、1kDa~50kDaの重量平均分子量を有するコンドロイチンまたはその塩(CS)を得るステップ;
(vi.c)ステップ(vi.b)から得られたコンドロイチンまたはその塩(CS)を、好ましくは硫酸、三酸化イオウピリジン複合体、三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体およびその混合物を含む群から選択される硫酸源で処理して、酸性化生成物を得るステップ;
(vi.d)ステップ(vi.c)から得られた酸性化生成物を、塩基性作用剤を用いて中和して、中和生成物を得るステップ;
(vi.e)ステップ(vi.d)から得られた中和生成物を濃縮し、乾燥して、1kDa~50kDaの重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸を得るステップ;
を含む方法。
FR11.ヒアルロン酸またはその塩、ヒアルロン酸アニオン塩(HA)、および/またはコンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸などのその塩(CS)を製造するための、植物出発材料、好ましくは菌類、より好ましくはディカリア亜界の菌類、さらに好ましくは担子菌門の菌類、さらになお好ましくはトレメラ・フシフォルミス種の菌類の使用。
【0114】
本発明の方法の第2の実施形態(略して、P2)は、以下のステップ:
(i)ヒアルロン酸の植物出発材料として、たとえば、乾燥または乾燥された形態の1つまたは複数の天然菌類、好ましくはディカリア亜界、好ましくは担子菌門、より好ましくはトレメラ・フシフォルミス種に属する少なくとも1つの菌類を含むか、またはそれらからなる1つまたは複数の天然菌類を同定するステップ;
(ii)必要に応じて、植物出発材料の破砕または粉末化(500μm~1,800μmからなり、好ましくは700μm~1,000μmからなり、たとえば約20メッシュ=841μmである平均粒子サイズ分布)を行うステップ;
(プレ-iii)ステップ(i)またはステップ(ii)から得られた植物出発材料の酵素加水分解を、水性加水分解溶媒、好ましくは水中で、10℃~90℃の温度で行い、ここで、酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を、一定量の加水分解溶媒に分散した植物出発材料に添加して、ステップ(プレ-iii)の混合物を得るステップ;
(iii)ステップ(プレ-iii)の前記混合物を水性抽出溶媒、好ましくは水で、91℃~110℃からなり、好ましくは95℃~110℃、より好ましくは98℃~105℃からなる温度(たとえば、約100℃または抽出溶媒の沸騰温度)で抽出して、水性抽出物を得るステップ;
(iv)ステップ(iii)から得られた水性抽出物に沈殿溶媒(溶媒を添加することによる沈殿)、好ましくはアルコール溶媒、より好ましくはエタノールを添加して、ステップ(iv)の液体生成物を得るステップ;好ましくは、95%エタノールをステップ(iii)から得られた前記水性抽出物に、2~4、好ましくは3からなる体積/体積比でゆっくりと添加することにより、エタノールで沈殿させ、8時間から16時間、たとえば、約12時間からなる時間内、撹拌下で維持するステップ;
(vii)ステップ(vii.a)および必要に応じて、ステップ(vii.b)を適用することにより、ステップ(iv)の前記液体生成物を処理するステップ:
(vii.a)前記沈殿溶媒、好ましくはエタノールを除去して(たとえば、周囲圧力よりも低い圧力値での蒸留または加熱による)、ステップ(vii.a)の液体生成物を得るステップ;
(vii.b)ステップ(vii.a)の前記液体生成物に水を添加して(たとえば、固体生成物を溶解するために)、ステップ(vii.b)の液体生成物を得るステップ;
(viii)ステップ(vii.b)の前記液体生成物を乾燥すること、好ましくは濃縮および/または乾燥して(たとえば、濃縮および/または乾燥および/または凍結乾燥、好ましくは凍結乾燥により、水および可能な残留沈殿溶媒(たとえばエタノール)を除去して)、10kDa~600kDa、好ましくは50kDa~350kDa、より好ましくは100kDa~300kDaからなる重量平均分子量および前記生成物PR1の総重量に対して85%~約100%、好ましくは95%~99.5%からなり、より好ましくは97%~99%からなる純度(%は、たとえばHPLCにより決定される)を有するヒアルロン酸またはその塩を含むか、またはそれらからなる生成物PR1を得るステップ;
を含むか、またはそれらからなる、ヒアルロン酸またはその塩(HA)の製造方法に関する。
【0115】
本発明の方法の第3の実施形態(略して、P3)は、以下のステップ:
(i)ヒアルロン酸の植物出発材料として、たとえば、乾燥または乾燥された形態の1つまたは複数の天然菌類、好ましくはディカリア亜界、好ましくは担子菌門、より好ましくはトレメラ・フシフォルミス種に属する少なくとも1つの菌類を含むか、またはそれらからなる1つまたは複数の天然菌類を同定するステップ;
(ii)必要に応じて、植物出発材料の破砕または粉末化(500μm~1,800μmからなり、好ましくは700μm~1,000μmからなり、たとえば約20メッシュ=841μmである平均粒子サイズ分布)を行うステップ;
(プレ-iii)ステップ(i)またはステップ(ii)から得られた植物出発材料の酵素加水分解を、水性加水分解溶媒、好ましくは水中で、10℃~90℃の温度で行い、ここで、酵素、好ましくはタンパク質分解酵素を、一定量の加水分解溶媒に分散した植物出発材料に添加して、ステップ(プレ-iii)の混合物を得るステップ;
(iii)ステップ(プレ-iii)の前記混合物を水性抽出溶媒、好ましくは水で、91℃~110℃からなり、好ましくは95℃~110℃、より好ましくは98℃~105℃からなる温度(たとえば、約100℃または抽出溶媒の沸騰温度)で抽出して、水性抽出物を得るステップ;
(vi.c)前記抽出物を硫酸源で処理して、ステップ(vi.c)の液体生成物を得るステップ;ここで、前記硫酸源は、好ましくは、硫酸、三酸化イオウピリジン複合体、三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体およびその混合物を含むか、またはそれらからなる群から選択され;より好ましくは三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体(SO3-DMS)である;
(vi.d)塩基を添加することによって、ステップ(vi.c)の前記液体生成物を中和して、中和生成物を得るステップ;ここで、前記塩基は、好ましくは無機塩基、より好ましくはNaOHまたはKOHまたはCa(OH)2またはMg(OH)であり、中性pHまで中和する;
(vi.e)ステップ(vi.d)から得られた前記中和生成物を濃縮し、乾燥して、
1kDa~45kDaまたは50kDa(または5kDa超え~50kDa未満)からなり、好ましくは3kDa~40kDaからなり、より好ましくは5kDaまたは5kDa超え~25kDaまたは5kDaまたは5kDa超え~10kDa、たとえば、約5kDa、または6kDa、または7kDa、または8kDa、または9kDa、または10kDaである重量平均分子量を有するコンドロイチン硫酸またはその塩(略して、CS)を含むか、またはからなる生成物PR2を得るステップ;
を含むか、またはそれらからなる、コンドロイチン硫酸、好ましくは6-硫酸化コンドロイチンの製造方法に関する。
【0116】
本発明の方法の第3の実施形態(P3)から得られる「コンドロイチン硫酸またはその塩(略して、CS)」という表現は、非硫酸化コンドロイチンと、さまざまな可能な位置でモノ、ジおよび/またはトリ硫酸化されたコンドロイチンとの組み合わせを示すために使用され、主として6-硫酸化コンドロイチンが好ましい。
【0117】
あるいは、本発明の方法の前記第3の実施形態(P3)から得られる「コンドロイチン硫酸またはその塩(略して、CS)」という表現は、非硫酸化コンドロイチンと、さまざまな可能な位置でモノ、ジおよび/またはトリ硫酸化されたコンドロイチンの群を示すために使用され、主として6-硫酸化コンドロイチンが好ましい。
【0118】
好ましくは、本発明の方法の前記第3の実施形態(P3)から得られる前記コンドロイチン硫酸またはその塩(CS)は、記載された範囲の重量平均分子量(好ましくは5kDaまたは5kDa超え~10kDa、たとえば、約6kDa、または7kDa、または8kDa、または9kDa)を有し、前記コンドロイチン硫酸(CS)の総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総重量に対して)、51%~約95±0.5%、好ましくは75%~90%、より好ましくは78%~86%からなる重量パーセントで6-硫酸化コンドロイチンを含み、ステップ(vi.e)から得られた生成物PR2の総重量に対して、80%~99.99%(たとえば、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%または94.9%)、好ましくは85%~98%(たとえば、86%、87%、88%、89%または89.5%)からなり、より好ましくは90%および94.9%、たとえば、91%、92%、93%、94%、または94.5%からなる純度を有する(%は、たとえばHPLCにより決定される)。
【0119】
より好ましくは、本発明の方法の前記第3の実施形態(P3)から得られる前記コンドロイチン硫酸またはその塩(CS)は、記載された範囲の重量平均分子量(好ましくは5kDaまたは5kDa超え~10kDa、たとえば、約6kDa、または7kDa、または8kDa、または9kDa)を有し、前記コンドロイチン硫酸(CS)の総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総重量に対して)、51%~約95±0.5%、好ましくは75%~90%、より好ましくは78%~86%からなる重量パーセントで6-硫酸化コンドロイチン、ならびに前記コンドロイチン硫酸(CS)の総重量に対して(またはコンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総重量に対して)、0.01%~約5%、(好ましくは0.05%~3%、より好ましくは0.1%~1.5%)からなる重量パーセントで4-硫酸化コンドロイチンを含み、ステップ(vi.e)から得られた生成物PR2の総重量に対して、80%~99.99%(たとえば、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%または94.9%)、好ましくは85%~98%(たとえば、86%、87%、88%または89%)からなり、より好ましくは90%~95%、たとえば、91%、92%、93%、94%または94.5%からなる純度を有する(%は、たとえばHPLCにより決定される)。
【0120】
HAおよび/またはCSの重量平均分子量は、一般的で当業者に知られている方法および機器に従って、たとえば、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって計算することができる;好ましくは、HAおよび/またはCSの重量平均分子量は、統合された特殊なゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)ソフトウェアを備えたHPSECによって決定することができる。
【0121】
本発明の方法の第2および第3の実施形態(P2およびP3)に存在する酵素加水分解のステップ(プレ-iii)において、酵素(たとえば、ペクチナーゼおよび/またはセルラーゼおよび/またはプロテイナーゼ)を、一定量の加水分解溶媒(たとえば、植物出発材料の重量の25~100倍、好ましくは35~75倍、より好ましくは45~55倍(たとえば、50倍)からなる水性溶媒または水)中の本発明に記載の植物出発材料に添加し、10℃~90℃、好ましくは20℃~65℃、より好ましくは45℃~55℃(たとえば、約50℃)からなる温度で、0.5時間~12時間、好ましくは1時間~8時間、より好ましくは2時間~6時間(たとえば、約4時間)からなる期間加熱して、抽出ステップ(iii)または第1の抽出ステップ(iii.a)(以下に記載)に付されるステップ(プレ-iii)の前記混合物を得る。
【0122】
さらに、有利なことには、前記酵素加水分解ステップ(プレ-iii)は、2~9、好ましくは3~5または5~8、より好ましくは3~4(たとえば、3.5)または6~7からなる酵素加水分解溶液のpH値で行われる;および/または前記酵素加水分解ステップ(プレ-iii)において、一定量の酵素(重量/重量または重量/体積で1%~20%、または2%~10%、または3%~6%の酵素の水溶液)は、抽出される植物出発材料の量(体積/重量)に対して、あるいは、加水分解溶媒中の抽出される植物出発材料の溶液の体積(体積/体積)に対して、0.001%~1%、好ましくは0.005%~0.1%、より好ましくは0.008%~0.05%(たとえば、0.01)からなる体積パーセントで使用される。
【0123】
好ましい例によれば、酵素加水分解ステップ(プレ-iii)は、以下の条件下(およそ)で行われる:体積0.01%;温度50℃;実際のpH3.5;持続時間4時間。
【0124】
第2および/または第3の実施形態(P2および/またはP3)のステップ(プレ-iii)で使用される前記酵素は、ペクチナーゼおよび/またはセルラーゼおよび/またはプロテイナーゼであり得る。
【0125】
本発明の方法で使用可能な酵素の例は、以下の通りである:
- 市販品 Pectinex (登録商標) Ultra Tropical、組成:酵素: ペクチンリアーゼまたはペクチナーゼ、防腐剤:ソルビン酸カリウム、安定剤:スクロース、グリセロール、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム;化合物活性:ペクチンリアーゼまたはペクチナーゼ(PECTU)=5,000 PECTU/g;おおよその密度 1.18 (g/ml);ペクチンリアーゼは、その非還元末端に4-デソキシ-6-O-メチル-アルファ-D-ガラクト-4-エヌロシル基を有するオリゴ糖を与える(1,4)-α-D-ガラクツロン酸メチルエステルの脱離切断を触媒する酵素である;その他の活性:セルラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、β-グルカナーゼ (エンド-1,3(4)-)。
- 市販品 Pectinex(登録商標) Ultra SP-L、組成 % w/w:45% グリセロール (CAS番号56-81-5)、45% 水(CAS番号7732-18-5)、5% ポリガラクツロナーゼ (CAS番号9032-75-1);酵素濃度として定義(乾燥重量ベース))、5% 塩化カリウム(CAS番号7447-40-7);化合物活性:ポリガラクツロナーゼ(PGNU)=3300 PGNU/g;おおよその密度1.17(g/ml);ポリガラクツロナーゼは、ペクテートおよびその他のガラクツロナン中の(1,4)-α-D-ガラクトシデュロン(galactosiduronic)結合を加水分解する酵素である。
- 市販品 Viscozyme (登録商標)、組成 % w/w:56.8% 水 (CAS番号7732-18-5)、9% β-グルカナーゼ(エンド-1,3(4)-)(CAS番号62213-14-3;酵素濃度として定義)(乾燥重量ベース))、24% スクロース(CAS番号57-50-1)、10% 塩化ナトリウム;(CAS番号7647-14-5)、0.20% ソルビン酸カリウム;(CAS番号24634-61-5) );化合物活性:β-グルカナーゼ(エンド-1,3(4)-)(FGB)=100 FBG/g;密度約 1.21(g/ml);エンド-ベータ-グルカナーゼは、ベータ-D-グルカンの(1,3)-または(1,4)-結合を加水分解する酵素である;その他の活性:キシラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ。
【0126】
本発明の方法の第2および第3の実施形態(P2および/またはP3)では、抽出ステップ(iii)は、好ましくは、第1水性抽出物を得るための、0.5時間~12時間、好ましくは1時間~9時間、より好ましくは1時間~4時間(たとえば、約2時間または3時間)からなる期間の、91℃~110℃(たとえば、約100℃)からなる温度または抽出溶媒の沸騰温度での、第1体積の抽出溶媒による抽出を含むか、または、それからなる第1の抽出ステップ(iii.a);続いて、第2水性抽出物を得るための、0.5時間~8時間、好ましくは0.5時間~4時間、より好ましくは1時間~3時間(たとえば、1.5時間または2時間または2.5時間)からなる期間の、90℃~110℃(たとえば、約100℃)からなる温度または抽出溶媒の沸騰温度での、第2体積の抽出溶媒による抽出を含むか、または、それからなる第2の抽出ステップ(iii.b);を含むか、またはそれらからなり;前記第1抽出物および前記第2抽出物を合わせて、最終水性抽出物を得;および必要に応じて、濃縮水性抽出物を得るために前記最終水性抽出物を濃縮するステップ(iii.c)が続く。
【0127】
本発明の方法の第2および第3の実施形態(P2およびP3)では、好ましくは第1の抽出(iii.a)において、抽出溶媒の第1体積は、植物出発材料の重量の25~100倍、好ましくは35および65倍からなり、より好ましくは45~55倍、たとえば、50倍で使用される。たとえば、植物出発材料の重量の25~100倍の量からなる第1の抽出体積を酵素加水分解溶媒の体積に加えると、植物材料の重量の50~200倍からなる溶媒の総体積に達する(たとえば、約100倍)。
【0128】
本発明の方法の第2および第3の実施形態(P2およびP3)では、好ましくは第2の抽出(iii.b)において、抽出溶媒の第2体積は、植物出発材料の重量の25~75倍、好ましくは35および65倍からなり、より好ましくは45~55倍(たとえば、約50倍)で使用される。
【0129】
本発明の方法の第2および第3の実施形態(P2およびP3)では、第1の抽出ステップ(iii.a)の後、ステップ(iii.a)のろ過が行われる:ろ液は、ステップ(iii.a)から得られた第1の水性抽出物に対応し、残渣は、第2の抽出ステップ(iii.b)に付される。第2の抽出ステップ(iii.b)の後、ろ過ステップ(iii.b)が行われ、ろ液は、ステップ(iii.b)から得られる第2の水性抽出物に対応する。たとえば、ステップ(iii.a)および(iii.b)のろ過(または抽出ステップ(iii)のろ過)は、140~270メッシュ、好ましくは200メッシュのフィルターを用いて行われる。必要に応じて、前記第2および第3の実施形態(P2およびP3)において、約0.8から1.5、好ましくは1.00~1.20(たとえば、約1.05~1.08)からなる相対密度まで、たとえば、60℃~90℃、好ましくは70℃~80℃からなる温度、より好ましくは約75℃で、ステップ(iii.a)から得られた第1の水性抽出物とステップ(iii.b)から得られた第2の水性抽出物を合わせ、減圧濃縮ステップ(iii.c)に付す。
【0130】
本発明の方法の第3の実施形態(P3)では、好ましくは、ステップ(vi.c)(スルホン化ステップ)において、ステップ(vi.b)で得られたコンドロイチンまたはその塩(CS)100g当たり、1ml~50ml、好ましくは2ml~40ml、より好ましくは4ml~30mlの三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体(SO3 DMF)、たとえば、ステップ(vi.b)で得られたコンドロイチンまたはその塩(CS)100g当たり、約5ml、10ml、15ml、18ml、22mlまたは25mlの三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体が使用されている。より好ましくは、三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体は、いくつかのステップにおいて、たとえば、2ml~8ml、次に8ml~12ml、最後にさらに8ml~12mlの三酸化イオウジメチルホルムアミド複合体を添加することによって、ステップ(vi.b)で得られたコンドロイチンまたはその塩に添される。ステップ(vi.c)の処理は、1分~4時間からなり、好ましくは10分~120分からなり、さらに好ましくは20分~60分(たとえば、約30分)からなる期間、20℃~80℃からなり、好ましくは30℃~70℃からなり、より好ましくは40℃~60℃(たとえば、約50℃)からなる温度にて行われる。好ましい実施形態によれば、前記スルホン化ステップ(vi.c)は、20分~60分(たとえば、約30分)からなる期間、40℃~60℃(たとえば、約50℃)からなる温度にて、ステップ(iii)または(iii.b)または(iii.c)に由来する水性抽出物約100ml(固体含量10~15g/100ml、比重1.05~1.08)に、SO3-DMF (5ml、15ml、25ml)を添加することによって行われる。
【0131】
本発明の方法の第3の実施形態(P3)では、好ましくは、ステップ(vi.d)で使用される塩基性剤は、好ましくは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびそれらの混合物、好ましくは水酸化ナトリウム(たとえば、1M、2Mまたは4Mの濃度で)を含むか、またはそれらからなる群から選択される無機塩基性剤である。
【0132】
本発明の方法の第3の実施形態(P3)では、好ましくは、前記ステップ(vi.e)は、たとえば、1.3~1.5、好ましくは約1.1からなる相対密度が達成されるまでの、透析による、18時間~36時間、好ましくは24時間からなる期間の1,000Da透析バッグによる、膜ろ過、続いての乾燥、好ましくは真空オーブン内での乾燥を含む。
【0133】
本発明の1つの態様によれば、本発明の方法の第1および第3の実施形態(P1およびP3)では、本発明のコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)は、5kDa超え~50kDa未満、好ましくは5kDa超え~25kDaからなる重量平均分子量を有し、
- 50%~95±0.5%、好ましくは75%~90%からなる重量パーセントの6-硫酸化コンドロイチン;
- 5%~20%、好ましくは7%~15%からなる重量パーセントの非硫酸化コンドロイチン;
- 0.1%~10%、好ましくは0.2%~8%からなる重量パーセントの2,6-二硫酸コンドロイチン;および
- 0.01%~5%、好ましくは0.05%~3%からなる重量パーセントの4-硫酸化コンドロイチン;を含み、すべてのパーセンテージは、コンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量またはコンドロイチン硫酸の総重量に対して表される。
【0134】
本発明の好ましい態様では、本発明のコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)(方法P1および/またはP3)は、5kDa超え~10kDaからなる重量平均分子量を有し、前記コンドロイチン硫酸またはその塩は、
- 78%~86%からなる重量パーセントの6-硫酸化コンドロイチン;
- 8%~13%からなる重量パーセントの非硫酸化コンドロイチン;
- 0.3%~5%からなる重量パーセントの2,6-二硫酸コンドロイチン;および
- 0.1%~1.5%からなる重量パーセントの4-硫酸化コンドロイチン;を含み、すべてのパーセンテージは、コンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量またはコンドロイチン硫酸の総重量に対して表される。
【0135】
本発明のさらなる態様では、本発明のコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)(方法P1および/またはP3)は、5kDa超え~50kDa未満、好ましくは5kDa超え~25kDa未満からなる重量平均分子量を有し、前記コンドロイチン硫酸またはその塩は、
- 50%~95±0.5%、好ましくは75%~90%からなる重量パーセントの6-硫酸化コンドロイチン;および
- 0.01%~5%、好ましくは0.05%~3%からなる重量パーセントの4-硫酸化コンドロイチン;を含み、すべてのパーセンテージは、コンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量またはコンドロイチン硫酸の総重量に対して表される。
【0136】
本発明のさらにより好ましい態様では、本発明のコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)(方法P1および/またはP3)は、5kDa超え~10kDaからなる重量平均分子量を有し、前記コンドロイチン硫酸またはその塩は、
- 78%~86%からなる重量パーセントの6-硫酸化コンドロイチン;および
- 0.1%~1.5%からなる重量パーセントの4-硫酸化コンドロイチン;を含み、すべてのパーセンテージは、コンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量またはコンドロイチン硫酸の総重量に対して表される。
【0137】
本発明のさらに好ましい態様では、本発明のコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)(方法P1および/またはP3)は、5kDa超え~50kDa未満、好ましくは5kDa超え~25kDa未満からなる重量平均分子量を有し、
- 50%~95±0.5%、好ましくは75%~90%からなる重量パーセントの6-硫酸化コンドロイチン;
- 5%~20%、好ましくは7%~15%からなる重量パーセントの非硫酸化コンドロイチン;
- 0.1%~10%、好ましくは0.2%~8%からなる重量パーセントの2,6-二硫酸コンドロイチン;
- 0.01%~5%、好ましくは0.05%~3%からなる重量パーセントの4-硫酸化コンドロイチン;
- 0.01%~5%、好ましくは0.05%~3%からなる重量パーセントの4,6-二硫酸コンドロイチン;および
- 2,4-二硫酸コンドロイチンからなる重量パーセントの0.01%~5%からなり、好ましくは0.05%~3%;を含み、すべてのパーセンテージは、コンドロイチン硫酸に含まれる二糖の総量またはコンドロイチン硫酸の総重量に対して表される。
【0138】
1つの実施形態によれば、本発明のコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)(方法P1および/またはP3)は、5kDa超え~10kDaからなる重量平均分子量を有し、前記コンドロイチン硫酸またはその塩は、
- 78%~86%からなる重量パーセントの6-硫酸化コンドロイチン;
- 8%~13%からなる重量パーセントの非硫酸化コンドロイチン;
- 0.3%~5%からなる重量パーセントの2,6-二硫酸コンドロイチン;ならびに、さらに、
- それぞれ、0.1%~1.5%からなる重量パーセントの4-硫酸化コンドロイチン、4,6-二硫酸コンドロイチンおよび2,4-二硫酸コンドロイチン;を含む。
【0139】
実験パート
I. 第2の実施形態によるヒアルロン酸の製造方法(P2)
(i)トレメラ・フシフォルミス種に属する乾燥菌類を製造する;
(ii)前記乾燥菌類(約20メッシュ)を研磨することにより破砕または粉末化して、破砕/粉末化された乾燥菌類を得る;
(プレ-iii)破砕/粉末化された乾燥菌類、および酵素ペクチナーゼ(Pectinex(登録商標) Ultra Tropical、0.0体積1%)に、蒸留水(50体積/重量)を添加し、約50℃にて約3時間加熱することによって、酵素としてペクチナーゼを用いる酵素加水分解を行って、加水分解混合物を得る;
(iii.a)前記加水分解混合物に蒸留水(50体積/重量)を加え、約100℃(沸騰)で約2.5時間加熱することによって第1の抽出を行い、200メッシュの篩でろ過し、ろ液と固体残渣を集める;
(iii.b)蒸留水(50体積/重量)を加え、約100℃で約2時間加熱(沸騰)し、200メッシュの篩にかけて、ろ液を集めることによって、前記第1の抽出(iii.a)で得られた前記固体残渣において、第2の抽出を行い;前記第1の抽出(iii.a)から得られたろ液を前記第2の抽出(iii.b)から得られたろ液と合わせて、水性抽出物を得る;
(iii.c)前記水性抽出物を約75℃で濃縮して、約1.05の相対密度を有する濃縮水性抽出物を得る;次に
(iv)撹拌しながら、前記濃縮水性抽出物、95%エタノール(体積/体積=3) をゆっくりと加え、12時間放置し;エタノールを除去し、抽出物を保存する;
(vii)前記抽出物に蒸留水を加え、凍結乾燥して、100kDa~300kDaからなる平均分子量および前記生成物PR1の総重量に対して95%~99%からなる重量パーセントの純度を有する、ヒアルロン酸またはその塩(HA)を含むか、またはそれらからなるPR1生成物を得る。
【0140】
II. 第3の実施形態によるコンドロイチン硫酸の製造方法(P3)
(i)トレメラ・フシフォルミス種に属する乾燥菌類を製造する;
(ii)前記乾燥菌類(約20メッシュ)を研磨することにより破砕または粉末化して、破砕/粉末化された乾燥菌類を得る;
(プレ-iii)破砕/粉末化された乾燥菌類、および酵素ペクチナーゼ(Pectinex(登録商標) Ultra Tropical、0.01体積%)に、蒸留水(50体積/重量)を添加し、約50℃にて約2時間加熱することによって、酵素としてペクチナーゼを用いる酵素加水分解を行って、加水分解混合物を得る(pH 5-7);
(iii.a)加水分解混合物に蒸留水(50体積/重量)を加え、100℃(沸騰)で約2.5時間加熱することによって第1の抽出を行い、次に、200メッシュの篩でろ過し(必要に応じて、ろ過する前に遠心分離する)、ろ液と固体残渣を集める;
(iii.b)蒸留水(50体積/重量)を加え、約100℃で約1.5時間加熱(沸騰)し、次に、200メッシュの篩でろ過し、ろ液を集めることによって、前記第1の抽出で得られた前記固体残渣の第2の抽出を行い;前記第1の抽出(iii.a)から得られたろ液を前記第2の抽出(iii.b)から得られたろ液と合わせて、水性抽出物を得る;
(iii.c)前記水性抽出物を約75℃で濃縮して、約1.05-1.08の相対密度を有する濃縮水性抽出物を得る;次に
(vi.c)約75℃にて約30分間、濃縮水性抽出物100ml当たり、SO3 DMF 5ml、15ml、55mlを添加することによって、スルホン化(または硫酸化)反応を行う;
(vi.d)NaOHで約pH値7まで中和する;
(vi.e)得られた溶液を、溶液の相対密度が約1.1に達するまで、透析バッグ(1,000Da)に少なくとも24時間入れる。真空オーブンで乾燥させて、5kDa超~10kDa(たとえば、約8kDa)からなる平均分子量を有するコンドロイチン硫酸またはその塩(CS)を含むか、またはそれらからなる生成物PR2を得る;ここで、前記CSは、表1に報告された化合物CS.1と同様の組成および前記生成物PR2の総重量に対して、89%~94.5%からなる重量パーセントの純度を有する。
図1
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【国際調査報告】