(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】新型コロナウイルス感染症の経口ワクチン及びその調製と応用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/215 20060101AFI20230703BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20230703BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20230703BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230703BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230703BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230703BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K39/215
C07K14/165 ZNA
C12N15/50
C12N15/63 Z
C12N1/19
A61P31/14
A61P37/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575467
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2021088592
(87)【国際公開番号】W WO2021249031
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010529961.7
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505245449
【氏名又は名称】天津大学
【氏名又は名称原語表記】Tian Jin University
【住所又は居所原語表記】92, Weijin Road, Nankai District Tianjin 300072 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】黄 金海
(72)【発明者】
【氏名】張 麗琳
(72)【発明者】
【氏名】郭 艶余
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA72X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA71
4C085BB11
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4C085DD62
4C085EE01
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】 新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口組換え酵母及びその調製と応用を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口組換え酵母及びその調製と応用を開示し、Sタンパク質の16番目から1035番目までのアミノ酸を含み、好ましくはRBDドメイン及びFP融合ペプチドを含む。in vitroで構築されたSタンパク質切断体の完全転写ユニットGPD-S(RBD-FP)-TUを相同組換えにより酵母ゲノムに組み込み、Aga1-Aga2表面提示系を利用してSタンパク質を酵母細胞表面に提示し、Sタンパク質表面提示型の組換え酵母菌株ST1814G-S(RBD-FP)を得、得られた菌株を用いて経口組換え酵母を調製する。本発明の経口組換え酵母は、コストが低く、生産と使用において安全で、操作が簡単で、安全で効果的で、免疫保護作用を有し、COVID-19新型コロナウイルス感染の防止・制御のための選択肢を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sタンパク質の16番目から1035番目までのアミノ酸を含む新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口組換え酵母ST1814G-S(RBD-FP)。
【請求項2】
300番目から1000番目までのアミノ酸であることが好ましく、配列の特徴は、SEQ ID No.1で、330番目から521番目までのRBDドメイン及び816番目から833番目までのFP融合ペプチドを含む新型コロナウイルスのSタンパク質の切断体。
【請求項3】
請求項2に記載のタンパク質の切断体を発現する遺伝子であって、スパイクプロテインSの991番目から1563番目までの塩基であるRBDドメイン及び2449番目から2499番目までの塩基であるFPドメインを含み、塩基配列はSEQID No.2であることを特徴とする、タンパク質の切断体を発現する遺伝子。
【請求項4】
請求項1に記載の組換え酵母のプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUを構築し、配列の特徴は、SEQ ID No.3であり、請求項3に記載の遺伝子断片及びPOT-GPD-TUベクターからなる、組換え酵母のプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TU。
【請求項5】
新型コロナウイルスのSタンパク質組換え酵母の調製方法であって、in vitroで構築されたSタンパク質切断体の完全転写ユニットGPD-S(RBD-FP)-TUを相同組換えにより酵母ゲノムに組み込み、Aga1-Aga2表面提示系を利用してSタンパク質を酵母細胞表面に提示し、Sタンパク質表面提示型の組換え酵母菌株ST1814G-S(RBD-FP)を得、得られた菌株を用いて経口組換え酵母を調製することを特徴とする、新型コロナウイルスのSタンパク質組換え酵母の調製方法。
【請求項6】
具体的には、次のステップ:
(1) SARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子のPCR増幅:SARS-CoV-2ウイルス遺伝子配列NC_045512.2を参照し、S遺伝子を合成し、配列の特徴はSEQ No.2であり、pcDNA3.1-CoV-Sプラスミドをテンプレートとして、プライマーを設計して酵母ベクター接続用のSタンパク質をコードする遺伝子S(RBD-FP)を増幅するステップ、
(2) Aga2遺伝子とSARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子S(RBD-FP)とのタンデム:BamHIシングル酵素ダイジェストを通じてPOT-GPD-TUベクターを線形化し、S遺伝子断片をシームレスクローニングにより表面ディスプレイ発現ベクターGPD-POT-TUに接続し、組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUが得られ、配列の特徴はSEQNo.3で、組換えプラスミドをE.coli DH5aに形質転換し、S遺伝子検出プライマーでPCR及びシーケンシング検証を行い、陽性クローンを得るステップ、及び、
(3) Sタンパク質酵母組換え菌株の構築:組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TU、ホモロジーアームURRs、スクリーニングタグLeuコード配列を消化し、スプライシングし、S遺伝子配列を含む完全な組換え遺伝子を得、サッカロミセス・セレビシエゲノムに形質転換し、栄養要求性プレートでのスクリーニング後に組換え菌株を得、検出プライマーで遺伝子レベル検出を行い、Western blot、免疫蛍光法でタンパク質発現レベル検証を行うステップ
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の新型コロナウイルスのSタンパク質組換え酵母の調製方法。
【請求項7】
抗新型コロナウイルス薬の調製における新型コロナウイルスのSタンパク質の組換え酵母の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物遺伝子工学の技術分野に属し、新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口組換え酵母及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(Corona Virus Disease 2019、COVID-19)は、新型コロナウイルス (Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2、SARS-CoV-2)の感染による急性呼吸器感染症である。
【0003】
SARS-CoV-2は、プラス1本鎖RNAウイルスであり、ニドウイルス目(Nidovirales)コロナなウイルス科(Coronaviridae)オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)に分類され、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)、MERS(Middle East Respiratory Syndrome)と同じβコロナウイルスに属している。ゲノムは、29,903 bpであり、スパイクタンパク質(Spike glycoprotein、S)、エンベロープタンパク質(Envelop、E)、ヌクレオキャプシドタンパク質(nucleocapsid phosphoprotein N)、膜タンパク質(membrane glycoprotein、M)などを含む主要な構造タンパク質をコードしている。SARS-CoVとMERS-CoVでは、スパイクタンパク質Sが異なる受容体結合ドメイン(receptor-binding domains、RBDs)を通じて宿主細胞と結合する。MERS-CoVのSタンパク質は、宿主細胞の宿主細胞のジペプチジルペプチダーゼIV(dipeptidyl peptidase 4,DPP-4,also known as CD26)と結合し[1]、SARS-CoVがSARS-CoV-2と一致し、細胞表面のアンギオテンシン変換酵素2(Angiotensin converting enzyme 2, ACE2)はSタンパク質RBDの結合部位[2, 3]である。SARS-CoVとSARS-CoV-2のRBD領域、主にC末端318-507aa[4]に違いがあり、両者は完全に防御するわけではないことが研究により示されているため特異性の抗新型コロナウイルス剤を開発する必要がある。
【0004】
より成熟した異種タンパク質発現系には、酵母細胞、原核細胞発現系、及びバキュロウイルス昆虫細胞発現系が含まれる。後者の2つと比較して、酵母細胞は成熟な翻訳後修飾能、短い培養周期、安全性、利便性、生産コストが低いという利点を有する[5]。酵母表面ディスプレイ技術(Yeast surface display、YSD)を利用して外来タンパク質を酵母細胞表面に提示すると、経口抗ウイルス剤を調製できる。同時に、酵母の細胞壁多糖類は体の免疫システムに対し調節作用があり、ウイルスに抵抗し、免疫機能を高め、免疫器官の発達を促進することができるため、酵母の経口製剤の開発は良好な応用の見通しを持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的の1つは、特に経口製剤の開発に用いられ、新型コロナウイルススパイクタンパク質Sの表面提示組換え酵母及びその応用を提供することである。
【0006】
本発明の第2の目的は、経口組換え酵母の調製方法を提供することである。
【0007】
本発明の第3の目的は、経口組換え酵母の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、次のような技術的手段によって達成される。
【0009】
新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口組換え酵母ST1814G-S(RBD-FP)であって、Sタンパク質の16番目から1035番目までのアミノ酸を含む。
【0010】
新型コロナウイルスのSタンパク質の切断体であって、300番目から1000番目までのアミノ酸が好ましく、配列の特徴は、SEQ ID No.1で、330番目から521番目までのRBDドメイン及び816番目から833番目までのFP融合ペプチドを含む。
【0011】
前記タンパク質の切断体を発現する遺伝子は、スパイクプロテインSの991番目から1563番目までの塩基であるRBDドメイン及び2449番目から2499番目までの塩基であるFPドメインを含み、塩基配列はSEQID No.2である。
【0012】
前記組換え酵母のプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUを構築し、配列の特徴は、SEQ ID No.3であり、請求項3に記載の遺伝子断片及びPOT-GPD-TUベクターからなる。
【0013】
新型コロナウイルスのSタンパク質組換え酵母の調製方法であって、in vitroで構築されたSタンパク質切断体の完全転写ユニットGPD-S(RBD-FP)-TUを相同組換えにより酵母ゲノムに組み込み、Aga1-Aga2表面提示系を利用してSタンパク質を酵母細胞表面に提示し、Sタンパク質表面提示型の組換え酵母菌株ST1814G-S(RBD-FP)を得、得られた菌株を用いて経口組換え酵母を調製する。
【0014】
具体的には、次のステップを含み、
(1) SARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子のPCR増幅:SARS-CoV-2ウイルス遺伝子配列NC_045512.2を参照し、S遺伝子を合成し、配列の特徴はSEQ No.2であり、pcDNA3.1-CoV-Sプラスミドをテンプレートとして、プライマーを設計して酵母ベクター接続用のSタンパク質をコードする遺伝子S(RBD-FP)を増幅するステップ、
(2) Aga2遺伝子とSARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子S(RBD-FP)とのタンデム:BamHIシングル酵素ダイジェストを通じてPOT-GPD-TUベクターを線形化し、S遺伝子断片をシームレスクローニングにより表面ディスプレイ発現ベクターGPD-POT-TUに接続し、組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUが得られ、配列の特徴はSEQNo.3で、組換えプラスミドをE.coli DH5aに形質転換し、S遺伝子検出プライマーでPCR及びシーケンシング検証を行い、陽性クローンを得るステップ、及び
(3) Sタンパク質酵母組換え菌株の構築:組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TU、ホモロジーアームURRs、スクリーニングタグLeuコード配列を消化し、スプライシングし、S遺伝子配列を含む完全な組換え遺伝子を得、サッカロミセス・セレビシエゲノムに形質転換し、栄養要求性プレートでのスクリーニング後に組換え菌株を得、検出プライマーで遺伝子レベル検出を行い、Western blot、免疫蛍光法でタンパク質発現レベル検証を行うステップ。
【0015】
抗新型コロナウイルス薬の調製における新型コロナウイルスのSタンパク質の組換え酵母の応用。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、新型コロナウイルスが宿主細胞のACE2受容体と結合する際に侵入開始の引き金が引かれるスパイクタンパク質Sに基づいて、受容体結合領域及びウイルスの病原性に関連するFPドメインを含むSタンパク質切断体の表面提示型経口組換え酵母製剤を製造した。経口経路を通じて体を守る免疫反応を刺激し、体の自然免疫系に対する酵母細胞壁多糖類の調節作用の助けを借りて、より効果的な免疫保護を発揮する。 新しいアデノウイルスワクチン、mRNAワクチンと比較して、経口組換え酵母製剤のコストが低く、大規模なスケールアップ生産を実現でき、安全で信頼性が高く、良好な応用・開発の見通しがあり、新型コロナウイルスの免疫と感染の防止・制御のための選択肢を提供する。
【0017】
本発明に記載の新型コロナウイルスのSタンパク質の経口組換え酵母製剤は、中国で初めて報告されたものであり、表面ディスプレイ菌株の構築及び製剤の調製には一定の革新性があり、COVID-19感染の防止・制御のために新しい構想と製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】新型コロナウイルスのSタンパク質をコードする遺伝子の構造の模式図である。
【
図2】S(RBD-FP)遺伝子PCR増幅結果を示す図である。
【
図3】GPD-S(RBD-FP)-TUプラスミドを大腸菌に形質転換した後の形質転換体の検出を示す図(レーン1~10は、異なる大腸菌形質転換体コロニーのPCR検出結果を表し、CK+はテンプレートとしてのS(RBD-FP)遺伝子PCR産物の増幅で、CK-はddH
2Oコントロールである。)である。
【
図4】GPD-S(RBD-FP)-TUの完全転写ユニットのスプライシング概略図である。
【
図5】酵母の形質転換後SD-leu培地でのGPD-S(RBD-FP)-TU生育状況である。
【
図6】ST1814G-S(RBD-FP)組換え酵母の遺伝子型検証を示す図(それぞれ大腸菌の2号及び3号形質転換体に対応して酵母形質転換を行った後、遺伝子型を検証した。レーン1-6は、6つの異なる酵母形質転換体、CK+はテンプレートとしてのプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUのPCR増幅、CK-はテンプレートとしてのddH
2Oテンプレートの陰性コントロールである。)である。
【
図7】ST1814G-S(RBD-FP)酵母菌株のWestern blot検証(Sタンパク質切断体がHis抗体によって検出された後、2つのバンドが現れた。分子量の大きいものはグリコシル化された修飾Sタンパク質切断体、分子量の小さいものはタンパク質消化後の産物であり、レーン3-1、3-4及び3-6は3株の異なる酵母形質転換体に対応する。)である。
【
図8】ST1814G-S(RBD-FP)組換え酵母中S(RBD-FP)タンパク質の免疫蛍光法による観察図(ST1814G空菌株をコントロールとした)である。
【
図9a】ST1814G-S(RBD-FP)組換え酵母の生育曲線及びタンパク質発現傾向との関係を示す図(菌体の生育曲線で、ST1814Gをコントロールとし、タンパク質を発現する株の生育傾向が対照群と同じである)である。
【
図9b】ST1814G-S(RBD-FP)組換え酵母の生育曲線及びタンパク質発現傾向との関係を示す図(不異なる培養時点でのタンパク質発現状況の分析であり、レーン1~5はそれぞれ培養1d~培養5dを表す)である。
【
図10】酵母組換え菌を経口投与した後のBALB/cマウスの血清中特異的IgA及びIgGの検出(A:ELISA法で検出した非経口群(Blank)、オリジナルブランク酵母(Host)の経口投与及び組換え酵母(FP)の経口投与後の血清中IgGの状況、B:ELISA法で非経口群(Blank)、オリジナルブランク酵母(Host)の経口投与及び組換え酵母(FP)の経口投与後のIgAの状況。)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を参照しつつ本発明をさらに説明し、その中の内容は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。実施例内に記載の試薬は、特記しない限りすべて市販の試薬である。
【実施例1】
【0020】
(GPD-S(RBD-FP)-TUベクターの構築)
(1)S(RBD-FP)遺伝子の増幅
Sタンパク質をコードする遺伝子は、S1サブユニットとS2サブユニットの2つの部分からなる。S1サブユニットには、宿主細胞ACE2受容体のPDドメイン(peptidase domain)に結合できるRBDドメインが含まれ、S2サブユニットにはウイルスが宿主細胞膜に接近して融合するのを助ける融合ペプチドFP(hydrophobic fusion peptide)配列が含まれ、類似の構造はSARS-CoVにも存在する
[8, 9]。S遺伝子配列構造(
図1)に基づいて、プライマー、CoV-S-F (SEQ ID NO.4:GACGATAAGGTACCAGGATCCATGAAGTGTACGTTGAAATCCT)及びCoV-S-R (SEQ ID NO.5:gaattccaccacactggatccTCTGCCTGTGATCAACCTAT)を設計並びに合成し、報告されているウイルスゲノム配列(Genbank番号MT407658.1)に従って、Sタンパク質の遺伝子断片人工合成し、pcDNA3.1-CoV-Sプラスミドを構築し、該プラスミドをテンプレートとし、RBDとFPドメインのSタンパク質をコードする遺伝子S(RBD-FP)を増幅した。PCR増幅システムとしては、
PCR産物のサイズは、2106bpである。
【0021】
PCRの結果を
図2に示し、一番右側のレーンは、S(RBD-FP)遺伝子の増幅結果である。
【0022】
(2)GPD-S(RBD-FP)-TUベクターの構築
S(RBD-FP)遺伝子を実験室で構築されたPOT-GPD-TUベクターに接続する[7]。POT-GPD-TUベクターをBamHI消化によって線性化した後、S(RBD-FP)遺伝子に接続し、S(RBD-FP)遺伝子のN末端をAga2に接続し、タンデムに融合発現し、遺伝子C末端にベクター上のHisタグがある。シームレスクローニングキット(C112-01,Vazyme)を利用してライゲーション産物を得、E.coli DH5αに形質転換した。大腸菌形質転換体をAmp耐性プレートでスクリーニングし、S遺伝子検出プライマー(S-F331:aatattacaaacttgtgccct(SEQ ID NO.6)及びS-R524:aacagttgctggtgcatgtag(SEQ ID NO.7))でPCR検証及びシーケンシングを行なった。
【0023】
結果を
図3に示す。PCR増幅産物のサイズは、579bpで、陽性の形質転換体はNo.1~8と9で、そのうちの2番と3番を選んでシーケンシングし、予想される結果と一致し、GPD-S(RBD-FP)-TUプラスミドの構築に成功したことを示す。
【実施例2】
【0024】
(新型コロナウイルス酵母組換え菌株ST1814G-S(RBD-FP)の構築及び検出)
(1)酵母形質転換断片の構築
ベクターGPD-S(RBD-FP)-TUをBsaIで消化し、同時にホモロジーアームプラスミド(URR1とURR2)、及び選択マーカープラスミド(LEU)をBsmB Iで消化した。Dai研究群の実験手順
[6]を参照して、URRsホモロジーアーム、LEU選択マーカー、GPD-S(RBD-FP)-TU転写ユニットを特異なプレフィックスとサフィックス配列に従ってスプライシングし、T4リガーゼ16℃一晩ライゲーションした後、スプライシング産物(
図4)を酵母の形質転換に使用した。
【0025】
(2)ST1814G-S(RBD-FP)組換えサッカロミセス・セレビシエ菌株の構築
1)菌株の活性化:ST1814Gのシングルコロニーを採取し、3 mLのYPD液体培地に接種し、30℃、220rpmで一晩培養した。一晩培養した菌液を1:50の比率で5mLの新鮮なYPD培地に移し、初期ODが0.1~0.2になるようにし、30℃、220rpmでOD600が0.5~0.8になるまで培養した。2500rpmで5分間遠心分離し、5mLの菌液の菌体を収集し、1mLの滅菌水で細胞を洗浄し、上清を捨てた。
【0026】
2)酵母の形質転換:遠心分離した菌体ペレットに0.1M酢酸リチウムを100μL加えて細胞を再懸濁し、12000rpmで20秒間遠心分離し、上清を捨てた。0.1M酢酸リチウムを50μL加えて細胞を再懸濁し、12000rpmで20秒間遠心分離し、菌体を収集する。その後、遠心管に240μLの50%PEG4000、36μLの1M酢酸リチウム、100μgのサケ精子DNA、2μgの断片されたDNAを加え、完全に混合するまで激しく振った。30℃ 200rpmで30分間、42℃で25分間、6000rpmで15秒間遠心分離して菌体を収集し、形質転換液を除去し、1mLのYPD液体培地を加え、30℃で2時間インキュベートし、2500 rpmで15分間遠心分離して菌体を収集し、50μLの脱イオン水で細胞を再懸濁し、できるだけ穏やかに混合し、菌体をSD-leu固体培地の表面に広げ、30℃のインキュベーターで典型的なコロニーが形成されるまで 2~3日間培養した。シングルコロニーを採取し、SD-leuプレートにストリークして精製し、同時に3mL YPD液液体培地に接種し、30℃、220rpmで一晩培養して、遺伝子型検証に使用した。
【0027】
3)ST1814G-S(RBD-FP)菌株の遺伝子型検証
SD-leu培地で生育した酵母を選択し、そのゲノムをPCR用に抽出して、S(RBD-FP)遺伝子がゲノムにうまく組み込まれているかどうかを検証した。酵母ゲノムの抽出方法は、文献を参照して行った
[10]。100μLの培養後の菌液を取り、6000rpmで1 分間遠心分離して上清を捨て、100μL溶解液(200mM LiOAc,1% SDS)で細胞を再懸濁し、70℃で5分間インキュベートし、300μLの無水エタノールを加えて均一に混ぜ、15000gで3分間遠心分離して細胞破片を集めた。70%エタノールで洗浄した後、50~100μLのddH
2Oを加えてペレットを再懸濁した。15000gで15秒間遠心分離した後、上清をゲノムテンプレートとして吸引してPCR増幅を行った。PCR増幅システムは、次の通りであり、
【0028】
ゲノムDNAをテンプレートとしてPCR増幅を行い、同時にプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUを陽性コントロール、ddH2Oを陰性コントロールとした。
【0029】
実験結果を
図5に示す。プラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUの2番と3番の大腸菌形質転換体は、消化され、ライゲーションされた後酵母細胞を形質転換し、どちらもSD-leu選択培地で生育できるが、3番のプラスミドのみが遺伝子型の正しい組換え酵母菌株ST1814G-S(RBD-FP)を得ることができる。正しい組換え酵母番号は、No.1、No.4及びNo.6である(
図6)。
【0030】
4)ST1814G-S(RBD-FP)菌株の表現型検証
GPD-S(RBD-FP)-TUベクターインサート断片S(RBD-FP)のC末端にはHisタグがあるため、Western blotの抗His抗体を利用して標的遺伝子S(RBD-FP)の発現状況を検出し、レーザー共焦点顕微鏡でタンパク質ディスプレイ状況を観察した。
【0031】
Western Blot法:
48時間YPD培養液2mLを収集し、6000rpmで1分間遠心分離して菌体を収集し、酸洗浄済みガラスビーズ、60μL PEBバッファーを加えて菌体を再懸濁し、ガラスビーズ法で壁を5回壊し、15μL 5×SDSローディングバッファーを加え、沸騰水浴中で5分間加温し、4℃下、12000rpmで10分間遠心分離し、慎重に上清を吸引し、8μLの上清を12% SDS-PAGE電気泳動に使用する。
【0032】
SDS-PAGE電気泳動後、タンパク質分離ゲルを湿式転写法により同サイズのPVDF膜に転写し、膜転写条件は300mA、100分間とし、膜転写終了後、室温下で、5%スキムミルクでPVDF膜1時間ブロックした。膜を5%のBSAで1:2000に希釈したマウス抗Hisモノクローナル抗体(HT501, Transgene)に完全に浸し、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体を回収し、TBSTバッファーでPVDF膜を3回、毎回10分間すすぎ、5%のBSAで1:5000に希釈したヤギ抗マウスHRP標識二次抗体(LK2003,Sungene Biotech) を室温で1時間インキュベートし、TBSTバッファーでPVDF膜を3回すすぎ、暗所で化学発光発色基質(34075, ThermoFisher)をPVDF膜の前面に滴下し、Bio-rad化学発光イメージャーに露出させて、タンパク質の発現を観察した。
【0033】
免疫蛍光法:
48時間誘導されたST1814G-S(RBD-FP)菌液500μLを収集し、4000rpmで5分間遠心分離して菌体を収集した。48時間誘導した後のST1814Gを陰性コントロールとして取り、500μLのPBSTで菌体を3回洗浄し、4000rpmで5分間遠心分離し、上清を捨てた。それぞれ200μLのPBSTで1:2000に希釈した6*His-Tag抗体で菌体を再懸濁し、4℃で1時間回転結合させた。一次抗体を回収し、500μLのPBSTで菌体を3回洗浄し、上述と同じように遠心分離して上清を捨て、200μLのPBSTで1:5000に希釈した FITC標識ヤギ抗マウス二次抗体を加え、37℃ の暗所で30分間インキュベートし、二次抗体を回収し、500μLのPBSTで菌体を3回洗浄し、上述と同じように遠心分離して上清を捨て、50μLのPBSで菌体を再懸濁し、10μLの菌液を取り、きれいなガラススライドに滴下し、カバースリップで覆い、周囲にマニキュアを塗ってカバースリップを固定し、レーザー共焦点顕微鏡で観察した。
【0034】
結果を
図7に示す。組換え酵母菌株No.1、No.4及びNo.6は、いずれもSタンパク質を発現することができる。Sタンパク質の理論上の分子量は、78KDaであるが、実際の観測結果は135KDa及び23 KDa 2つのバンドである。Sタンパク質は複数のグリコシル化部位を持ち、分子量の増加はグリコシル化によるものである。分子量が小さいのは、おそらくプロテアーゼによる切断によるものと考えられる。免疫蛍光の結果を
図8に示し、対照群ST1814Gでは蛍光がない(
図8の上半分)。実験群ST1814G-S(RBD-FP)では明らかな緑色蛍光がある(
図8の下半分)。Sタンパク質が正常に発現され、組換えサッカロミセス・セレビシエ細胞の表面に局在化されたことを示している。
【0035】
5)ST1814G-S(RBD-FP)菌株の生育及び蛋白発現のリズム
ST1814G-S(RBD-FP)菌株の4番形質転換体のシングルコロニーを採取し、20mLのYPD液体培地に接種し、24時間間隔で2mLのサンプルを採取して、OD600測定ヲ行い、最初の時点での菌体量の最低値を基準として、菌体量を同じになるように調整し、異なる時点でのタンパク質サンプルを調整してWestern blot検を行った。
【0036】
結果を
図9に示す。
図9aの生育曲線の分析から、S(RBD-FP)タンパク質の切断体の発現は菌体の生育に影響を与えず、菌体の生育傾向が対照群と同じで、培養時間の延長とともに菌体量を徐々に増加した。同時に蛋白の発現量も培養時間の延長とともに増加し、発現量は培養5日目で最も高かった(
図9b)。
【実施例3】
【0037】
(新型コロナウイルスのSタンパク質組換え酵母の調製)
ST1814G-S(RBD-FP)のNo.4菌株を種としてシングルコロニーを採取し、20mLのYPD液体培地に接種し、30℃で一晩培養した後、一晩培養した種液を採取し、1:100で希釈して、新鮮な1LのYPD液体培地に接種し、3~4日培養後、遠心分離により菌体を回収し、PBSで1回洗浄し、真空吸引・冷凍乾燥を経た後組換え菌株の乾燥粉末を得た。
【実施例4】
【0038】
(新型コロナウイルスのSタンパク質酵母組換え菌株の応用)
SPFグレードのBALB/cマウスを3群に分け、各群に6匹ずつ、1日目、6日目、11日目及び23日目にそれぞれST1814G-S(RBD-FP)のNo.4酵母菌株を投与し、107cfu/マウスは、ST1814Gブランク酵母菌株をコントロールとした。4回目の免疫後、眼血を採取してIgG及びIgA抗体レベルを検出した。
【0039】
応用試験は、原核発現SARS-COV2 Sタンパク質RBDドメインを設計し、タンパク質の精製、抗体調製、RBDタンパク質の精製、ヤギ抗マウスIgG、IgA-HRP酵素コンジュゲートを得、間接的にELISAでIgG及びIgAレベルを検出した。
【0040】
結果を
図10に示す。ST1814G-S(RBD-FP)のNo.4組換え酵母組を投与した的血清中のSタンパク質特異的IgG(
図10A)及びIgA(
図10B)のレベルが有意に上昇し、組換えサッカロミセス・セレビシエ菌株は体の体液性免疫と粘膜免疫を十分に刺激することができ、新型免疫保護製剤として、新型コロナウイルスの防控提供選擇。新型コロナウイルス感染の防止・制御のための選択肢を提供できることを示している。
【0041】
以上、本発明の内容について上記実施例を参照しつつ説明したが、本発明の実施形態は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって限定される。限定された範囲内で行われた様々な変更又は潤色は、均等物による置換に属し、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物遺伝子工学の技術分野に属し、新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口SARS-CoV-2ワクチン及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(Corona Virus Disease 2019、COVID-19)は、新型コロナウイルス (Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2、SARS-CoV-2)の感染による急性呼吸器感染症である。
【0003】
SARS-CoV-2は、プラス1本鎖RNAウイルスであり、ニドウイルス目(Nidovirales)コロナなウイルス科(Coronaviridae)オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)に分類され、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)、MERS(Middle East Respiratory Syndrome)と同じβコロナウイルスに属している。ゲノムは、29,903 bpであり、スパイクタンパク質(Spike glycoprotein、S)、エンベロープタンパク質(Envelop、E)、ヌクレオキャプシドタンパク質(nucleocapsid phosphoprotein N)、膜タンパク質(membrane glycoprotein、M)などを含む主要な構造タンパク質をコードしている。SARS-CoVとMERS-CoVでは、スパイクタンパク質Sが異なる受容体結合ドメイン(receptor-binding domains、RBDs)を通じて宿主細胞と結合する。MERS-CoVのSタンパク質は、宿主細胞の宿主細胞のジペプチジルペプチダーゼIV(dipeptidyl peptidase 4,DPP-4,also known as CD26)と結合し[1]、SARS-CoVがSARS-CoV-2と一致し、細胞表面のアンギオテンシン変換酵素2(Angiotensin converting enzyme 2, ACE2)はSタンパク質RBDの結合部位[2, 3]である。SARS-CoVとSARS-CoV-2のRBD領域、主にC末端318-507aa[4]に違いがあり、両者は完全に防御するわけではないことが研究により示されているため特異性の抗新型コロナウイルス剤を開発する必要がある。
【0004】
より成熟した異種タンパク質発現系には、酵母細胞、原核細胞発現系、及びバキュロウイルス昆虫細胞発現系が含まれる。後者の2つと比較して、酵母細胞は成熟な翻訳後修飾能、短い培養周期、安全性、利便性、生産コストが低いという利点を有する[5]。酵母表面ディスプレイ技術(Yeast surface display、YSD)を利用して外来タンパク質を酵母細胞表面に提示すると、経口抗ウイルス剤を調製できる。同時に、酵母の細胞壁多糖類は体の免疫システムに対し調節作用があり、ウイルスに抵抗し、免疫機能を高め、免疫器官の発達を促進することができるため、酵母の経口製剤の開発は良好な応用の見通しを持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的の1つは、特に経口製剤の開発に用いられ、新型コロナウイルススパイクタンパク質Sの表面提示SARS-CoV-2ワクチン及びその応用を提供することである。
【0006】
本発明の第2の目的は、経口SARS-CoV-2ワクチンの調製方法を提供することである。
【0007】
本発明の第3の目的は、経口SARS-CoV-2ワクチンの用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、次のような技術的手段によって達成される。
【0009】
新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口SARS-CoV-2ワクチンST1814G-S(RBD-FP)であって、Sタンパク質の16番目から1035番目までのアミノ酸を含む。
【0010】
新型コロナウイルスのSタンパク質の切断体であって、300番目から1000番目までのアミノ酸が好ましく、配列の特徴は、SEQ ID No.1で、330番目から521番目までのRBDドメイン及び816番目から833番目までのFP融合ペプチドを含む。
【0011】
前記タンパク質の切断体を発現する遺伝子は、スパイクプロテインSの991番目から1563番目までの塩基であるRBDドメイン及び2449番目から2499番目までの塩基であるFPドメインを含み、塩基配列はSEQID No.2である。
【0012】
前記SARS-CoV-2ワクチンのプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUを構築し、配列の特徴は、SEQ ID No.3であり、請求項3に記載の遺伝子断片及びPOT-GPD-TUベクターからなる。
【0013】
新型コロナウイルスのSタンパク質SARS-CoV-2ワクチンの調製方法であって、in vitroで構築されたSタンパク質切断体の完全転写ユニットGPD-S(RBD-FP)-TUを相同組換えにより酵母ゲノムに組み込み、Aga1-Aga2表面提示系を利用してSタンパク質を酵母細胞表面に提示し、Sタンパク質表面提示型のSARS-CoV-2ワクチン菌株ST1814G-S(RBD-FP)を得、得られた菌株を用いて経口SARS-CoV-2ワクチンを調製する。
【0014】
具体的には、次のステップを含み、
(1) SARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子のPCR増幅:SARS-CoV-2ウイルス遺伝子配列NC_045512.2を参照し、S遺伝子を合成し、配列の特徴はSEQ No.2であり、pcDNA3.1-CoV-Sプラスミドをテンプレートとして、プライマーを設計して酵母ベクター接続用のSタンパク質をコードする遺伝子S(RBD-FP)を増幅するステップ、
(2) Aga2遺伝子とSARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子S(RBD-FP)とのタンデム:BamHIシングル酵素ダイジェストを通じてPOT-GPD-TUベクターを線形化し、S遺伝子断片をシームレスクローニングにより表面ディスプレイ発現ベクターGPD-POT-TUに接続し、組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUが得られ、配列の特徴はSEQNo.3で、組換えプラスミドをE.coli DH5aに形質転換し、S遺伝子検出プライマーでPCR及びシーケンシング検証を行い、陽性クローンを得るステップ、及び
(3) Sタンパク質酵母組換え菌株の構築:組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TU、ホモロジーアームURRs、スクリーニングタグLeuコード配列を消化し、スプライシングし、S遺伝子配列を含む完全な組換え遺伝子を得、サッカロミセス・セレビシエゲノムに形質転換し、栄養要求性プレートでのスクリーニング後に組換え菌株を得、検出プライマーで遺伝子レベル検出を行い、Western blot、免疫蛍光法でタンパク質発現レベル検証を行うステップ。
【0015】
抗新型コロナウイルス薬の調製における新型コロナウイルスのSタンパク質のSARS-CoV-2ワクチンの応用。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、新型コロナウイルスが宿主細胞のACE2受容体と結合する際に侵入開始の引き金が引かれるスパイクタンパク質Sに基づいて、受容体結合領域及びウイルスの病原性に関連するFPドメインを含むSタンパク質切断体の表面提示型経口SARS-CoV-2ワクチン製剤を製造した。経口経路を通じて体を守る免疫反応を刺激し、体の自然免疫系に対する酵母細胞壁多糖類の調節作用の助けを借りて、より効果的な免疫保護を発揮する。 新しいアデノウイルスワクチン、mRNAワクチンと比較して、経口SARS-CoV-2ワクチン製剤のコストが低く、大規模なスケールアップ生産を実現でき、安全で信頼性が高く、良好な応用・開発の見通しがあり、新型コロナウイルスの免疫と感染の防止・制御のための選択肢を提供する。
【0017】
本発明に記載の新型コロナウイルスのSタンパク質の経口SARS-CoV-2ワクチン製剤は、中国で初めて報告されたものであり、表面ディスプレイ菌株の構築及び製剤の調製には一定の革新性があり、COVID-19感染の防止・制御のために新しい構想と製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】新型コロナウイルスのSタンパク質をコードする遺伝子の構造の模式図である。
【
図2】S(RBD-FP)遺伝子PCR増幅結果を示す図である。
【
図3】GPD-S(RBD-FP)-TUプラスミドを大腸菌に形質転換した後の形質転換体の検出を示す図(レーン1~10は、異なる大腸菌形質転換体コロニーのPCR検出結果を表し、CK+はテンプレートとしてのS(RBD-FP)遺伝子PCR産物の増幅で、CK-はddH
2Oコントロールである。)である。
【
図4】GPD-S(RBD-FP)-TUの完全転写ユニットのスプライシング概略図である。
【
図5】酵母の形質転換後SD-leu培地でのGPD-S(RBD-FP)-TU生育状況である。
【
図6】ST1814G-S(RBD-FP)
SARS-CoV-2ワクチンの遺伝子型検証を示す図(それぞれ大腸菌の2号及び3号形質転換体に対応して酵母形質転換を行った後、遺伝子型を検証した。レーン1-6は、6つの異なる酵母形質転換体、CK+はテンプレートとしてのプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUのPCR増幅、CK-はテンプレートとしてのddH
2Oテンプレートの陰性コントロールである。)である。
【
図7】ST1814G-S(RBD-FP)酵母菌株のWestern blot検証(Sタンパク質切断体がHis抗体によって検出された後、2つのバンドが現れた。分子量の大きいものはグリコシル化された修飾Sタンパク質切断体、分子量の小さいものはタンパク質消化後の産物であり、レーン3-1、3-4及び3-6は3株の異なる酵母形質転換体に対応する。)である。
【
図8】ST1814G-S(RBD-FP)
SARS-CoV-2ワクチン中S(RBD-FP)タンパク質の免疫蛍光法による観察図(ST1814G空菌株をコントロールとした)である。
【
図9a】ST1814G-S(RBD-FP)
SARS-CoV-2ワクチンの生育曲線及びタンパク質発現傾向との関係を示す図(菌体の生育曲線で、ST1814Gをコントロールとし、タンパク質を発現する株の生育傾向が対照群と同じである)である。
【
図9b】ST1814G-S(RBD-FP)
SARS-CoV-2ワクチンの生育曲線及びタンパク質発現傾向との関係を示す図(不異なる培養時点でのタンパク質発現状況の分析であり、レーン1~5はそれぞれ培養1d~培養5dを表す)である。
【
図10】酵母組換え菌を経口投与した後のBALB/cマウスの血清中特異的IgA及びIgGの検出(A:ELISA法で検出した非経口群(Blank)、オリジナルブランク酵母(Host)の経口投与及び
SARS-CoV-2ワクチン(FP)の経口投与後の血清中IgGの状況、B:ELISA法で非経口群(Blank)、オリジナルブランク酵母(Host)の経口投与及び
SARS-CoV-2ワクチン(FP)の経口投与後のIgAの状況。)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を参照しつつ本発明をさらに説明し、その中の内容は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。実施例内に記載の試薬は、特記しない限りすべて市販の試薬である。
【実施例1】
【0020】
(GPD-S(RBD-FP)-TUベクターの構築)
(1)S(RBD-FP)遺伝子の増幅
Sタンパク質をコードする遺伝子は、S1サブユニットとS2サブユニットの2つの部分からなる。S1サブユニットには、宿主細胞ACE2受容体のPDドメイン(peptidase domain)に結合できるRBDドメインが含まれ、S2サブユニットにはウイルスが宿主細胞膜に接近して融合するのを助ける融合ペプチドFP(hydrophobic fusion peptide)配列が含まれ、類似の構造はSARS-CoVにも存在する
[8, 9]。S遺伝子配列構造(
図1)に基づいて、プライマー、CoV-S-F (SEQ ID NO.4:GACGATAAGGTACCAGGATCCATGAAGTGTACGTTGAAATCCT)及びCoV-S-R (SEQ ID NO.5:gaattccaccacactggatccTCTGCCTGTGATCAACCTAT)を設計並びに合成し、報告されているウイルスゲノム配列(Genbank番号MT407658.1)に従って、Sタンパク質の遺伝子断片人工合成し、pcDNA3.1-CoV-Sプラスミドを構築し、該プラスミドをテンプレートとし、RBDとFPドメインのSタンパク質をコードする遺伝子S(RBD-FP)を増幅した。PCR増幅システムとしては、
PCR産物のサイズは、2106bpである。
【0021】
PCRの結果を
図2に示し、一番右側のレーンは、S(RBD-FP)遺伝子の増幅結果である。
【0022】
(2)GPD-S(RBD-FP)-TUベクターの構築
S(RBD-FP)遺伝子を実験室で構築されたPOT-GPD-TUベクターに接続する[7]。POT-GPD-TUベクターをBamHI消化によって線性化した後、S(RBD-FP)遺伝子に接続し、S(RBD-FP)遺伝子のN末端をAga2に接続し、タンデムに融合発現し、遺伝子C末端にベクター上のHisタグがある。シームレスクローニングキット(C112-01,Vazyme)を利用してライゲーション産物を得、E.coli DH5αに形質転換した。大腸菌形質転換体をAmp耐性プレートでスクリーニングし、S遺伝子検出プライマー(S-F331:aatattacaaacttgtgccct(SEQ ID NO.6)及びS-R524:aacagttgctggtgcatgtag(SEQ ID NO.7))でPCR検証及びシーケンシングを行なった。
【0023】
結果を
図3に示す。PCR増幅産物のサイズは、579bpで、陽性の形質転換体はNo.1~8と9で、そのうちの2番と3番を選んでシーケンシングし、予想される結果と一致し、GPD-S(RBD-FP)-TUプラスミドの構築に成功したことを示す。
【実施例2】
【0024】
(新型コロナウイルス酵母組換え菌株ST1814G-S(RBD-FP)の構築及び検出)
(1)酵母形質転換断片の構築
ベクターGPD-S(RBD-FP)-TUをBsaIで消化し、同時にホモロジーアームプラスミド(URR1とURR2)、及び選択マーカープラスミド(LEU)をBsmB Iで消化した。Dai研究群の実験手順
[6]を参照して、URRsホモロジーアーム、LEU選択マーカー、GPD-S(RBD-FP)-TU転写ユニットを特異なプレフィックスとサフィックス配列に従ってスプライシングし、T4リガーゼ16℃一晩ライゲーションした後、スプライシング産物(
図4)を酵母の形質転換に使用した。
【0025】
(2)ST1814G-S(RBD-FP)組換えサッカロミセス・セレビシエ菌株の構築
1)菌株の活性化:ST1814Gのシングルコロニーを採取し、3 mLのYPD液体培地に接種し、30℃、220rpmで一晩培養した。一晩培養した菌液を1:50の比率で5mLの新鮮なYPD培地に移し、初期ODが0.1~0.2になるようにし、30℃、220rpmでOD600が0.5~0.8になるまで培養した。2500rpmで5分間遠心分離し、5mLの菌液の菌体を収集し、1mLの滅菌水で細胞を洗浄し、上清を捨てた。
【0026】
2)酵母の形質転換:遠心分離した菌体ペレットに0.1M酢酸リチウムを100μL加えて細胞を再懸濁し、12000rpmで20秒間遠心分離し、上清を捨てた。0.1M酢酸リチウムを50μL加えて細胞を再懸濁し、12000rpmで20秒間遠心分離し、菌体を収集する。その後、遠心管に240μLの50%PEG4000、36μLの1M酢酸リチウム、100μgのサケ精子DNA、2μgの断片されたDNAを加え、完全に混合するまで激しく振った。30℃ 200rpmで30分間、42℃で25分間、6000rpmで15秒間遠心分離して菌体を収集し、形質転換液を除去し、1mLのYPD液体培地を加え、30℃で2時間インキュベートし、2500 rpmで15分間遠心分離して菌体を収集し、50μLの脱イオン水で細胞を再懸濁し、できるだけ穏やかに混合し、菌体をSD-leu固体培地の表面に広げ、30℃のインキュベーターで典型的なコロニーが形成されるまで 2~3日間培養した。シングルコロニーを採取し、SD-leuプレートにストリークして精製し、同時に3mL YPD液液体培地に接種し、30℃、220rpmで一晩培養して、遺伝子型検証に使用した。
【0027】
3)ST1814G-S(RBD-FP)菌株の遺伝子型検証
SD-leu培地で生育した酵母を選択し、そのゲノムをPCR用に抽出して、S(RBD-FP)遺伝子がゲノムにうまく組み込まれているかどうかを検証した。酵母ゲノムの抽出方法は、文献を参照して行った
[10]。100μLの培養後の菌液を取り、6000rpmで1 分間遠心分離して上清を捨て、100μL溶解液(200mM LiOAc,1% SDS)で細胞を再懸濁し、70℃で5分間インキュベートし、300μLの無水エタノールを加えて均一に混ぜ、15000gで3分間遠心分離して細胞破片を集めた。70%エタノールで洗浄した後、50~100μLのddH
2Oを加えてペレットを再懸濁した。15000gで15秒間遠心分離した後、上清をゲノムテンプレートとして吸引してPCR増幅を行った。PCR増幅システムは、次の通りであり、
【0028】
ゲノムDNAをテンプレートとしてPCR増幅を行い、同時にプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUを陽性コントロール、ddH2Oを陰性コントロールとした。
【0029】
実験結果を
図5に示す。プラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUの2番と3番の大腸菌形質転換体は、消化され、ライゲーションされた後酵母細胞を形質転換し、どちらもSD-leu選択培地で生育できるが、3番のプラスミドのみが遺伝子型の正しい
SARS-CoV-2ワクチン菌株ST1814G-S(RBD-FP)を得ることができる。正しい
SARS-CoV-2ワクチン番号は、No.1、No.4及びNo.6である(
図6)。
【0030】
4)ST1814G-S(RBD-FP)菌株の表現型検証
GPD-S(RBD-FP)-TUベクターインサート断片S(RBD-FP)のC末端にはHisタグがあるため、Western blotの抗His抗体を利用して標的遺伝子S(RBD-FP)の発現状況を検出し、レーザー共焦点顕微鏡でタンパク質ディスプレイ状況を観察した。
【0031】
Western Blot法:
48時間YPD培養液2mLを収集し、6000rpmで1分間遠心分離して菌体を収集し、酸洗浄済みガラスビーズ、60μL PEBバッファーを加えて菌体を再懸濁し、ガラスビーズ法で壁を5回壊し、15μL 5×SDSローディングバッファーを加え、沸騰水浴中で5分間加温し、4℃下、12000rpmで10分間遠心分離し、慎重に上清を吸引し、8μLの上清を12% SDS-PAGE電気泳動に使用する。
【0032】
SDS-PAGE電気泳動後、タンパク質分離ゲルを湿式転写法により同サイズのPVDF膜に転写し、膜転写条件は300mA、100分間とし、膜転写終了後、室温下で、5%スキムミルクでPVDF膜1時間ブロックした。膜を5%のBSAで1:2000に希釈したマウス抗Hisモノクローナル抗体(HT501, Transgene)に完全に浸し、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体を回収し、TBSTバッファーでPVDF膜を3回、毎回10分間すすぎ、5%のBSAで1:5000に希釈したヤギ抗マウスHRP標識二次抗体(LK2003,Sungene Biotech) を室温で1時間インキュベートし、TBSTバッファーでPVDF膜を3回すすぎ、暗所で化学発光発色基質(34075, ThermoFisher)をPVDF膜の前面に滴下し、Bio-rad化学発光イメージャーに露出させて、タンパク質の発現を観察した。
【0033】
免疫蛍光法:
48時間誘導されたST1814G-S(RBD-FP)菌液500μLを収集し、4000rpmで5分間遠心分離して菌体を収集した。48時間誘導した後のST1814Gを陰性コントロールとして取り、500μLのPBSTで菌体を3回洗浄し、4000rpmで5分間遠心分離し、上清を捨てた。それぞれ200μLのPBSTで1:2000に希釈した6*His-Tag抗体で菌体を再懸濁し、4℃で1時間回転結合させた。一次抗体を回収し、500μLのPBSTで菌体を3回洗浄し、上述と同じように遠心分離して上清を捨て、200μLのPBSTで1:5000に希釈した FITC標識ヤギ抗マウス二次抗体を加え、37℃ の暗所で30分間インキュベートし、二次抗体を回収し、500μLのPBSTで菌体を3回洗浄し、上述と同じように遠心分離して上清を捨て、50μLのPBSで菌体を再懸濁し、10μLの菌液を取り、きれいなガラススライドに滴下し、カバースリップで覆い、周囲にマニキュアを塗ってカバースリップを固定し、レーザー共焦点顕微鏡で観察した。
【0034】
結果を
図7に示す。
SARS-CoV-2ワクチン菌株No.1、No.4及びNo.6は、いずれもSタンパク質を発現することができる。Sタンパク質の理論上の分子量は、78KDaであるが、実際の観測結果は135KDa及び23 KDa 2つのバンドである。Sタンパク質は複数のグリコシル化部位を持ち、分子量の増加はグリコシル化によるものである。分子量が小さいのは、おそらくプロテアーゼによる切断によるものと考えられる。免疫蛍光の結果を
図8に示し、対照群ST1814Gでは蛍光がない(
図8の上半分)。実験群ST1814G-S(RBD-FP)では明らかな緑色蛍光がある(
図8の下半分)。Sタンパク質が正常に発現され、組換えサッカロミセス・セレビシエ細胞の表面に局在化されたことを示している。
【0035】
5)ST1814G-S(RBD-FP)菌株の生育及び蛋白発現のリズム
ST1814G-S(RBD-FP)菌株の4番形質転換体のシングルコロニーを採取し、20mLのYPD液体培地に接種し、24時間間隔で2mLのサンプルを採取して、OD600測定ヲ行い、最初の時点での菌体量の最低値を基準として、菌体量を同じになるように調整し、異なる時点でのタンパク質サンプルを調整してWestern blot検を行った。
【0036】
結果を
図9に示す。
図9aの生育曲線の分析から、S(RBD-FP)タンパク質の切断体の発現は菌体の生育に影響を与えず、菌体の生育傾向が対照群と同じで、培養時間の延長とともに菌体量を徐々に増加した。同時に蛋白の発現量も培養時間の延長とともに増加し、発現量は培養5日目で最も高かった(
図9b)。
【実施例3】
【0037】
(新型コロナウイルスのSタンパク質SARS-CoV-2ワクチンの調製)
ST1814G-S(RBD-FP)のNo.4菌株を種としてシングルコロニーを採取し、20mLのYPD液体培地に接種し、30℃で一晩培養した後、一晩培養した種液を採取し、1:100で希釈して、新鮮な1LのYPD液体培地に接種し、3~4日培養後、遠心分離により菌体を回収し、PBSで1回洗浄し、真空吸引・冷凍乾燥を経た後組換え菌株の乾燥粉末を得た。
【実施例4】
【0038】
(新型コロナウイルスのSタンパク質酵母組換え菌株の応用)
SPFグレードのBALB/cマウスを3群に分け、各群に6匹ずつ、1日目、6日目、11日目及び23日目にそれぞれST1814G-S(RBD-FP)のNo.4酵母菌株を投与し、107cfu/マウスは、ST1814Gブランク酵母菌株をコントロールとした。4回目の免疫後、眼血を採取してIgG及びIgA抗体レベルを検出した。
【0039】
応用試験は、原核発現SARS-COV2 Sタンパク質RBDドメインを設計し、タンパク質の精製、抗体調製、RBDタンパク質の精製、ヤギ抗マウスIgG、IgA-HRP酵素コンジュゲートを得、間接的にELISAでIgG及びIgAレベルを検出した。
【0040】
結果を
図10に示す。ST1814G-S(RBD-FP)のNo.4
SARS-CoV-2ワクチン組を投与した的血清中のSタンパク質特異的IgG(
図10A)及びIgA(
図10B)のレベルが有意に上昇し、組換えサッカロミセス・セレビシエ菌株は体の体液性免疫と粘膜免疫を十分に刺激することができ、新型免疫保護製剤として、新型コロナウイルスの防控提供選擇。新型コロナウイルス感染の防止・制御のための選択肢を提供できることを示している。
【0041】
以上、本発明の内容について上記実施例を参照しつつ説明したが、本発明の実施形態は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって限定される。限定された範囲内で行われた様々な変更又は潤色は、均等物による置換に属し、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
、Sタンパク質の16番目から1035番目までのアミノ酸を含む新型コロナウイルス感染症のSタンパク質を発現する経口
SARS-CoV-2ワクチンST1814G-S(RBD-FP)。
【請求項2】
300番目から1000番目までのアミノ酸であることが好ましく、配列の特徴は、SEQ ID No.1で、330番目から521番目までのRBDドメイン及び816番目から833番目までのFP融合ペプチドを含む新型コロナウイルスのSタンパク質の切断体。
【請求項3】
請求項2に記載のタンパク質の切断体を発現する遺伝子であって、スパイクプロテインSの991番目から1563番目までの塩基であるRBDドメイン及び2449番目から2499番目までの塩基であるFPドメインを含み、塩基配列はSEQID No.2であることを特徴とする、タンパク質の切断体を発現する遺伝子。
【請求項4】
請求項1に記載の
SARS-CoV-2ワクチンのプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUを構築し、配列の特徴は、SEQ ID No.3であり、請求項3に記載の遺伝子断片及びPOT-GPD-TUベクターからなる、
SARS-CoV-2ワクチンのプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TU。
【請求項5】
新型コロナウイルスのSタンパク質
SARS-CoV-2ワクチンの調製方法であって、in vitroで構築されたSタンパク質切断体の完全転写ユニットGPD-S(RBD-FP)-TUを相同組換えにより酵母ゲノムに組み込み、Aga1-Aga2表面提示系を利用してSタンパク質を酵母細胞表面に提示し、Sタンパク質表面提示型の
SARS-CoV-2ワクチン菌株ST1814G-S(RBD-FP)を得、得られた菌株を用いて経口ワクチンを調製することを特徴とする、新型コロナウイルスのSタンパク質
SARS-CoV-2ワクチンの調製方法。
【請求項6】
具体的には、次のステップ:
(1) SARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子のPCR増幅:SARS-CoV-2ウイルス遺伝子配列NC_045512.2を参照し、S遺伝子を合成し、配列の特徴はSEQ No.2であり、pcDNA3.1-CoV-Sプラスミドをテンプレートとして、プライマーを設計して酵母ベクター接続用のSタンパク質をコードする遺伝子S(RBD-FP)を増幅するステップ、
(2) Aga2遺伝子とSARS-CoV-2スパイクタンパク質Sをコードする遺伝子S(RBD-FP)とのタンデム:BamHIシングル酵素ダイジェストを通じてPOT-GPD-TUベクターを線形化し、S遺伝子断片をシームレスクローニングにより表面ディスプレイ発現ベクターGPD-POT-TUに接続し、組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TUが得られ、配列の特徴はSEQNo.3で、組換えプラスミドをE.coli DH5aに形質転換し、S遺伝子検出プライマーでPCR及びシーケンシング検証を行い、陽性クローンを得るステップ、及び、
(3) Sタンパク質酵母組換え菌株の構築:組換えプラスミドGPD-S(RBD-FP)-TU、ホモロジーアームURRs、スクリーニングタグLeuコード配列を消化し、スプライシングし、S遺伝子配列を含む完全な組換え遺伝子を得、サッカロミセス・セレビシエゲノムに形質転換し、栄養要求性プレートでのスクリーニング後に組換え菌株を得、検出プライマーで遺伝子レベル検出を行い、Western blot、免疫蛍光法でタンパク質発現レベル検証を行うステップ
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の新型コロナウイルスのSタンパク質
SARS-CoV-2ワクチンの調製方法。
【請求項7】
抗新型コロナウイルス薬の調製における新型コロナウイルスのSタンパク質の
SARS-CoV-2ワクチンの応用。
【国際調査報告】