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特表2023-529435PSD-95の環状ペプチド阻害剤およびそれらの用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】PSD-95の環状ペプチド阻害剤およびそれらの用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230703BHJP
   C07K 4/00 20060101ALI20230703BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230703BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230703BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230703BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230703BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K4/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/10
A61K38/16
A61K38/12
A61P9/10
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61K45/00
A61P17/02
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/28
A61P29/00
A61P25/04
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575477
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021065734
(87)【国際公開番号】W WO2021250226
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20179519.2
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508335820
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ コペンハーゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バルボア,ハビエル,ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ストロムガ-ド,クリスチアン
(72)【発明者】
【氏名】オステルガード,ソレン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA24
4C084CA53
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA211
4C084ZA212
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA401
4C084ZA402
4C084ZA542
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC75
4C087AA01
4C087BB65
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA08
4C087ZA16
4C087ZA21
4C087ZA36
4C087ZA40
4C087ZB21
4C087ZC75
4H045AA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA30
4H045BA53
4H045BA57
4H045BA70
4H045BA71
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、蛋白質/蛋白質相互作用の阻害剤として働くことができる、具体的には、PSD-95のPDZ2ドメインを阻害することによって、阻害剤として働くことができる新規環状ペプチド、ならびに興奮毒性関連疾患および神経因性疼痛の治療におけるそれらの用途に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TXLETXGXPXTIRVXQ(配列番号:1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、
ここで
が、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
が、T、S、DまたはEであり;
が、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
が、W、Nal、または非存在であり;
が、DまたはN-Me-Dであり;
が、G、AまたはPであり;
が、EまたはDであり;
が、KまたはN-Me-Kであり;
かつ
が、TまたはN-Me-Tである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項2】
請求項1のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが環状化部分に共有結合で連結される、ポリペプチド。
【請求項3】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該環化部分がアミノ酸配列pGX10を含み、ここでX10がC、QまたはEである、ポリペプチド。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列TXLETXGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:2)を含み、あるいは配列番号:2のアミノ酸配列から成り;
ここで
が、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
が、T、S、DまたはEであり;
が、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
が、W、Nal、または非存在であり;
が、DまたはN-Me-Dであり;
が、G、AまたはPであり;
が、EまたはDであり;
が、KまたはN-Me-Kであり;
が、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10が、C、QまたはEである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、ここで該ポリペプチドは、アミノ酸配列TXLETXGXPXTIRVXQ(配列番号:3)を含み、あるいは配列番号:3のアミノ酸配列から成り;
ここで
が、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
が、T、S、DまたはEであり;
が、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
が、DまたはN-Me-Dであり;
が、G、AまたはPであり;
が、EまたはDであり;
が、KまたはN-Me-Kであり;
かつ
が、TまたはN-Me-Tである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項6】
請求項1のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、ここで該ポリペプチドが、アミノ酸配列TXLETXGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:4)を含み、あるいは配列番号:4のアミノ酸配列から成り;
ここで
が、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
が、T、S、DまたはEであり;
が、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
が、DまたはN-Me-Dであり;
が、G、AまたはPであり;
が、EまたはDであり;
が、KまたはN-Me-Kであり;
が、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10が、C、QまたはEである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項7】
請求項1のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列TXLETTFXGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:5)を含み、あるいは配列番号:5のアミノ酸配列から成り;
ここで
が、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
が、W、Nal、または非存在であり;
が、DまたはN-Me-Dであり;
が、G、AまたはPであり;
が、EまたはDであり;
が、KまたはN-Me-Kであり;
が、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10が、C、QまたはEである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項8】
請求項1のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列TXLETTFGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:6)を含み、あるいは配列番号:6のアミノ酸配列から成り;
ここで
が、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
が、DまたはN-Me-Dであり;
が、G、AまたはPであり;
が、EまたはDであり;
が、KまたはN-Me-Kであり;
が、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10が、C、QまたはEである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項9】
請求項1のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列TXLETTFXGDGXPXTIRVXQ(配列番号:7)を含み、あるいは配列番号:7のアミノ酸配列から成り;
ここで
が、HまたはPyA-4であり;
が、WまたはNalであり;
が、EまたはDであり;
が、KまたはN-Me-Kであり;
かつ
が、TまたはN-Me-Tである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項10】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが環状である、ポリペプチド。
【請求項11】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが主鎖で環化している、ポリペプチド。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがHである、ポリペプチド。
【請求項13】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがH-3Meである、ポリペプチド。
【請求項14】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがPyA-4である、ポリペプチド。
【請求項15】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがTである、ポリペプチド。
【請求項16】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがSである、ポリペプチド。
【請求項17】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがDである、ポリペプチド。
【請求項18】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがEである、ポリペプチド。
【請求項19】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがFである、ポリペプチド。
【請求項20】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがF-2-Brである、ポリペプチド。
【請求項21】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがF-2-Clである、ポリペプチド。
【請求項22】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがF-3-Fである、ポリペプチド。
【請求項23】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがWである、ポリペプチド。
【請求項24】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがNalである、ポリペプチド。
【請求項25】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがDである、ポリペプチド。
【請求項26】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがN-Me-Dである、ポリペプチド。
【請求項27】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがGである、ポリペプチド。
【請求項28】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがAである、ポリペプチド。
【請求項29】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがPである、ポリペプチド。
【請求項30】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがEである、ポリペプチド。
【請求項31】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがDである、ポリペプチド。
【請求項32】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがKである、ポリペプチド。
【請求項33】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがN-Me-Kである、ポリペプチド。
【請求項34】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがTである、ポリペプチド。
【請求項35】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがN-Me-Tである、ポリペプチド。
【請求項36】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでX10がCである、ポリペプチド。
【請求項37】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでX10がQである、ポリペプチド。
【請求項38】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでX10がEである、ポリペプチド。
【請求項39】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがHであり、XがTであり、XがFであり、XがWであり、XがDであり、かつXがGである、ポリペプチド。
【請求項40】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがHであり、XがTであり、XがFであり、XがWであり、XがDであり、XがGであり、かつXがEである、ポリペプチド。
【請求項41】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがHであり、XがTであり、XがFであり、XがWであり、XがDであり、XがGであり、かつXがDである、ポリペプチド。
【請求項42】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがHであり、XがTであり、XがFであり、XがNalであり、XがDであり、XがGであり、かつXがEである、ポリペプチド。
【請求項43】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここでXがHであり、XがPyA-4であり、XがFであり、XがWであり、XがDであり、XがGであり、かつXがEである、ポリペプチド。
【請求項44】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが:
THLETTFWGDGE(配列番号:8);
THLETTFWGDGD(配列番号:9);
THLETTF(Nal)GDGE(配列番号:10);
および
T(PyA-4)LETTFWGDGE(配列番号:11)、
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項45】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列THLETTFWGDGE(配列番号:8)を含む、ポリペプチド。
【請求項46】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列THLETTFWGDGD(配列番号:9)を含む、ポリペプチド。
【請求項47】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列THLETTF(Nal)GDGE(配列番号:10)を含む、ポリペプチド。
【請求項48】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがアミノ酸配列T(PyA-4)LETTFWGDGE(配列番号:11)を含む、ポリペプチド。
【請求項49】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であって、ここで該ポリペプチドが、アミノ酸配列TXLETTFXGDGEPKTIRVTQpGX10(配列番号:13)を含む環状ポリペプチドまたは配列番号:13のアミノ酸配列から成る環状ポリペプチドであり、
ここで
がHまたはH-3Meであり;
がWまたは非存在であり;
10がC、QまたはEである、
ポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩。
【請求項50】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが、アミノ酸配列THLETTFWGDGEPKTIRVTQ(配列番号:419)を含む環状ポリペプチド、または配列番号:419のアミノ酸配列から成る環状ポリペプチドである、ポリペプチド。
【請求項51】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが、アミノ酸配列THLETTFGDGEPKTIRVTQ(配列番号:420)を含む環状ポリペプチド、または配列番号:420のアミノ酸配列から成る環状ポリペプチドである、ポリペプチド。
【請求項52】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが、アミノ酸配列TH(3-Me)LETTFWGDGEPKTIRVTQ(配列番号:421)を含む環状ポリペプチド、または配列番号:421のアミノ酸配列から成る環状ポリペプチドである、ポリペプチド。
【請求項53】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが、アミノ酸配列TH(3-Me)LETTFGDGEPKTIRVTQ(配列番号:422)を含む環状ポリペプチド、または配列番号:422のアミノ酸配列から成る環状ポリペプチドである、ポリペプチド。
【請求項54】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが少なくとも20アミノ酸残基を含むポリペプチドであって、少なくとも21アミノ酸残基など、少なくとも22アミノ酸残基など、少なくとも23アミノ酸残基など、少なくとも24アミノ酸残基など、少なくとも25アミノ酸残基など、少なくとも26アミノ酸残基など、少なくとも27アミノ酸残基など、少なくとも28アミノ酸残基など、少なくとも29アミノ酸残基など、少なくとも30アミノ酸残基など、少なくとも31アミノ酸残基など、少なくとも32アミノ酸残基など、少なくとも33アミノ酸残基など、少なくとも34アミノ酸残基など、少なくとも35アミノ酸残基など、少なくとも36アミノ酸残基など、少なくとも37アミノ酸残基などを含む、ポリペプチド。
【請求項55】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが50アミノ酸残基以下を含むポリペプチドであって、45アミノ酸残基以下など、40アミノ酸残基以下など、35アミノ酸残基以下など、30アミノ酸残基以下など、29アミノ酸残基以下など、28アミノ酸残基以下など、27アミノ酸残基以下など、26アミノ酸残基以下など、25アミノ酸残基以下など、24アミノ酸残基以下など、23アミノ酸残基以下など、22アミノ酸残基以下など、21アミノ酸残基以下など、20アミノ酸残基以下などを含む、ポリペプチド。
【請求項56】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが19~50の範囲のアミノ酸残基を含むポリペプチドであって、19~45の範囲のアミノ酸残基など、19~40の範囲のアミノ酸残基など、19~35の範囲のアミノ酸残基など、19~30の範囲のアミノ酸残基など、19~25の範囲のアミノ酸残基など、19~23の範囲のアミノ酸残基など、20~23の範囲のアミノ酸残基など、20~22の範囲のアミノ酸残基などを含む、ポリペプチド。
【請求項57】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがPSD-95に結合可能である、ポリペプチド。
【請求項58】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが、PSD-95のPDZ2ドメインに対するnNOSの結合を阻害することができる、ポリペプチド。
【請求項59】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが100μM未満のKでPSD-95-PDZ2に結合し、75μM未満など、50μM未満など、25μM未満など、20μM未満など、15μM未満など、10μM未満など、5μM未満など、4μM未満など、3μM未満など、2μM未満など、1μM未満などのKでPSD-95-PDZ2に結合する、ポリペプチド。
【請求項60】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここでPSD-95がPDZ2ドメインに対するnNOSの結合を阻害する該化合物のK値が100μM未満であり、75μM未満など、50μM未満など、10μM未満など、5μM未満など、2.5μM未満など、1μM未満などである、ポリペプチド。
【請求項61】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがある1部分にさらに共役(結合)している、ポリペプチド。
【請求項62】
請求項61のポリペプチドであって、ここで該1部分が:
PEG、単糖類、蛍光色素分子、発色団、放射性化合物、および細胞透過ペプチドから成る群から選択される、ポリペプチド。
【請求項63】
請求項61のポリペプチドであって、ここで該1部分が検出可能部分である、ポリペプチド。
【請求項64】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドが、グリコシル化、PEG化、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化および/またはアルキル化によって、さらに修飾されている、ポリペプチド。
【請求項65】
前記請求項のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここでアミノ酸残基の1つ以上が、メチル化など、アルキル化されている、ポリペプチド。
【請求項66】
請求項1、10、11、または54~65のいずれか1項に記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドは、配列番号:14~136および配列番号:139~433から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、あるいは配列番号:14~136および配列番号:139~433から成る群から選択されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド。
【請求項67】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(THLETTFWGDGEPKTIRVTQpG(Eα))(配列番号:423)である、ポリペプチド。
【請求項68】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(THLETTFGDGEPKTIRVTQpG(Eα))(配列番号:424)である、ポリペプチド。
【請求項69】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(TH(3-Me)LETTFWGDGEPKTIRVTQpG(Eα))(配列番号:425)である、ポリペプチド。
【請求項70】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(TH(3-Me)LETTFGDGEPKTIRVTQpG(Eα))(配列番号:426)である、ポリペプチド。
【請求項71】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(THLETTFWGDGEPKTIRVTQpG(Qα))(配列番号:14)である、ポリペプチド。
【請求項72】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(THLETTFGDGEPKTIRVTQpG(Qα))(配列番号:15)である、ポリペプチド。
【請求項73】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(TH(3-Me)LETTFWGDGEPKTIRVTQpG(Qα))(配列番号:16)である、ポリペプチド。
【請求項74】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドであって、ここで該ポリペプチドがシクロ-(TH(3-Me)LETTFGDGEPKTIRVTQpG(Qα))(配列番号:17)である、ポリペプチド。
【請求項75】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチドを含む組成物。
【請求項76】
請求項75の組成物であって、ここで該組成物が医薬組成物である、組成物。
【請求項77】
請求項1~74のいずれか1項に規定されるようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項78】
請求項77に規定されるようなポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項79】
請求項77のポリヌクレオチドまたは請求項78のベクターを含む宿主細胞。
【請求項80】
請求項79の宿主細胞であって、ここで該宿主細胞が細菌性細胞である、宿主細胞。
【請求項81】
請求項79の宿主細胞であって、ここで該宿主細胞が哺乳動物細胞である、宿主細胞。
【請求項82】
請求項79の宿主細胞であって、ここで該宿主細胞がヒト細胞である、宿主細胞。
【請求項83】
薬剤治療として用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞。
【請求項84】
対象において興奮毒性関連疾患の予防および/または治療に用いる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞。
【請求項85】
請求項84にしたがって用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞であって、ここで該興奮毒性関連疾患が虚血性脳卒中などの脳卒中である、ポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞。
【請求項86】
請求項85にしたがって用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞であって、ここで血栓溶解剤の投与との組み合わせなど、再灌流療法との組み合わせで該ポリペプチドが投与される、ポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞。
【請求項87】
請求項84にしたがって用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞であって、ここで該興奮毒性関連疾患が、脊髄損傷および外傷性脳損傷などの、CNSの虚血性または外傷である、ポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞。
【請求項88】
請求項84にしたがって用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞であって、ここで該興奮毒性関連疾患がてんかんである、ポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞。
【請求項89】
請求項84にしたがって用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞であって、ここで該興奮毒性関連疾患がCNSの神経変性疾患である、ポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞。
【請求項90】
請求項84にしたがって用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞であって、ここでCNSの神経変性疾患が、アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病から成る群から選択される、ポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞。
【請求項91】
対象において神経因性疼痛の予防および/または治療に用いられる、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞。
【請求項92】
興奮毒性関連疾患および/または神経因性疼痛を予防および/または治療する方法であって、該方法が、治療有効量の請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項93】
請求項92の方法であって、ここで請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞が、血栓溶解剤の投与との組み合わせなどの、再灌流療法との組み合わせで投与される、方法。
【請求項94】
請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞の用途であって、対象において興奮毒性関連疾患および/または神経因性疼痛の治療および/または予防のための治療薬剤の製造のための用途。
【請求項95】
少なくとも2種類の異なる単位剤形(A)および(B)を含むパーツのキットであって;
ここで
(A)が、請求項1~74のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項75の組成物、請求項77のポリヌクレオチド、請求項78のベクター、または請求項79の宿主細胞を含み;
かつ
(B)が血栓溶解剤を含む、
キット。
【請求項96】
請求項95のパーツのキットであって、興奮毒性関連疾患および/または疼痛を治療する、予防する、軽減する、および/または発生を遅延させる用途のキットであるが、ここで該対象に(A)および(B)を、同時に、逐次的に、または個別に投与する、キット。
【請求項97】
請求項1~74のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、該方法が:
(a)Fmoc/tBuによるペプチド固相合成(SPPS)を用いてペプチドを調製する工程、
および
(b)天然の化学ライゲーション(NCL)を介する該ペプチドの環化工程、
を含む、方法。
【請求項98】
請求項97の方法であって、ここで工程(b)が、C末端ヒドラジン基をアジドに酸化すること、および該アジドをN末端Cysのチオール基と反応させることを含み、その後にトランスチオエステル化によってアミド結合を形成させることを含む、方法。
【請求項99】
請求項97の方法であって、工程(b)後にさらに工程を含み、ここで蛍光色素分子が該ポリペプチドに共役(結合)される、方法。
【請求項100】
請求項1~74のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、該方法が:
(a)セルロース膜を提供する工程;
(b)工程(a)で提供されるセルロース膜に、PEGスペーサーを共役(結合)させて、Fmoc/Boc-Glyの混合物を付加する工程;
(c)工程(b)で調製される膜を無水酢酸でキャッピングする工程;
(d)工程(c)の産物に準直交性保護AAを付加する工程;
(e)Fmoc/tBuによるペプチド固相合成(SPPS)を用いて残りのポリペプチドを、工程(d)のAA上に調製する工程;
(f)工程(e)で生成したポリペプチドから準直交性保護基を除去し、該ポリペプチドを環化する工程;
(g)工程(f)で生成したポリペプチドから側鎖保護基を切断する工程;
および
(h)該セルロース膜から該ポリペプチドを切断する工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質/蛋白質相互作用の阻害剤として働くことができる、具体的には、PSD-95のPDZ1ドメインおよび/またはPDZ2ドメインを阻害することによって、阻害剤として働くことができる新規環状ペプチド、ならびに興奮毒性関連疾患および神経因性疼痛の治療におけるそれらの用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毎年、世界中で1300万人が脳卒中に罹患し、これは第2の主要な死因および障害の原因となっている。N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)、後シナプス肥厚蛋白質95(PSD-95)および神経性一酸化窒素合成酵素(nNOS)の三者間の三重複合体は、細胞死の興奮毒性機序において重要な役割を担っている(図1)。
【0003】
PSD-95は、DLG4(ディスクスラージホモログ4)遺伝子によってコードされるヒトの蛋白質である。PSD-95は、膜結合性グアニル酸キナーゼ(MAGUK)ファミリーの構成員であり、PSD-93と共に同一のNMDA受容体およびカリウムチャンネルクラスターに動員される。
【0004】
PSD-95は、ほぼ例外なくニューロン後シナプス肥厚に存在しシナプス蛋白質の固定に関連する。その直接および間接の結合パートナーとしては、ニューロギン、nNOS、NMDA受容体、AMPA受容体、およびカリウムチャンネルが挙げられる。
【0005】
PSD-95は、リンカー領域で連結される3つのPDZドメイン、1つのSH3ドメイン、および1つのグアニル酸キナーゼ様(GK)ドメインを含む。PSD-95のPDZ1およびPDZ2ドメインは、複数の蛋白質と相互作用し、そのような相互作用としてはイオンチャンネル型グルタミン酸受容体のNMDA受容体型および一酸化窒素(NO)産生酵素nNOSへの同時結合が挙げられる。
【0006】
NMDA受容体は、興奮毒性、すなわちグルタミン酸媒介性神経毒性の主要なメディエーターであり、このような興奮毒性は神経変性疾患および急性脳損傷に関係している。NMDA受容体の拮抗薬は、グルタミン酸媒介性イオン束を阻止することによって、効率的に興奮毒性を低下させるのであるが、それらは生理学的に重要な過程をも阻害する。すなわち、NMDA受容体拮抗薬は、忍容性が低い、および効力が欠如しているなどの理由で、臨床試験(例えば、脳卒中の臨床試験)において不成功であった。代わりに、PSD-95阻害剤を用いて細胞内nNOS/PSD-95/NMDA受容体複合体形成を阻害することにより、興奮毒性の特異的阻害を達成することができる。
【0007】
現在、複数の点で、一部のPDZドメインが内部の結合モチーフをも認識可能であることが示唆される(低探索PDZ結合モード)。一例を挙げれば、PSD-95のPDZ2ドメインと神経性一酸化窒素合成酵素(nNOS)との間で、そのような相互作用が起こる。分子レベルにおいて、この相互作用には、自由C末端を持たず、拡がったβヘアピンフォールドをとるnNOS内の30残基の並びが含まれる。
【0008】
虚血性脳卒中後の神経保護を誘導する目的で、nNOS阻害剤またはNMDA受容体阻害剤を設計する試みが数多く成されている。しかしながら、これに関しては、副作用、効力低下、選択性の欠如および低い血液脳関門浸透性によって未だに成功には至っていない。したがって、この分野においては、上記のような蛋白質/蛋白質相互作用を効率的に阻害する阻害剤の必要性が依然として存在しているのである。
【発明の概要】
【0009】
PSD-95のPDZドメインを特異的な標的とすることによって蛋白質/蛋白質相互作用の阻害剤を提供するという上記の課題を達成する目的において、本開示は、PSD-95のPDZ1および/またはPDZ2ドメインに対して非標準的結合の可能な新しいタイプの環状ペプチドであって、虚血性脳卒中および神経因性疼痛の治療を目的としてnNOSとの蛋白質/蛋白質相互作用を阻害する環状ペプチドについて説明し、また該ペプチドの製造法と用途についても説明する。
【0010】
一局面において、本発明は、TXLETXGXPXTIRVXQ(配列番号:1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩に関し;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、T、S、DまたはEであり;
は、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
は、W、Nal、または非存在であり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
および
は、TまたはN-Me-Tである。
【0011】
一実施態様においては、該ポリペプチドは環状ポリペプチドである。
【0012】
一局面においては、本発明は、薬剤治療の用途において本明細書中に定義されるようなポリペプチド(環状ポリペプチドなど)に関する。
【0013】
一局面においては、本発明は、対象における興奮毒性関連疾患の予防および/または治療の用途において本明細書に定義されるようなポリペプチド(環状ポリペプチドなど)に関する。
【0014】
一局面においては、本発明は、対象における神経因性疼痛の予防および/または治療の用途において本明細書に定義されるようなポリペプチド(環状ポリペプチドなど)に関する。
【0015】
一局面においては、本発明は、本明細書に定義されるようなポリペプチドを製造する方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(a)Fmoc/tBuによるペプチド固相合成(SPPS)を用いてペプチドを調製する工程、
および
(b)天然の化学ライゲーション(NCL)を介する該ペプチドの環化工程。
【0016】
このプロジェクトは、マリア・スクウォドフスカ=キュリー研究支援基金番号675341の下で、欧州連合ホライズン2020研究およびイノベーション計画から研究資金援助を受けたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】PSD-95-PDZ1に結合しているNMDA受容体を介した後シナプスへのCa+2異常流入を示す虚血性脳卒中経過中の興奮毒性についての模式表現である。nNOSが内部ヘアピンモチーフを介してPSD-95-PDZ2に結合することにより、興奮毒性の原因となるNOの過剰産生が起こる。
図2】25℃における環状nNOSβヘアピンペプチドおよび直鎖状nNOSペプチドとPSD-95-PDZ2とのITCの生ヒートシグネチャー(上部パネル)および結合等温線(下部パネル)。データ取得を三回行い、結合定数の値(K)値をKに変換した。値は、Kd値の平均±標準誤差で表す。
図3】組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2および環状nNOS TAMRAプローブに対して、FP競争実験で測定した異なる環状nNOSβヘアピン足場のK値。異なる閉環構造を右側に示す。データ取得を三回行い、K値の平均±標準誤差で表した。
図4】TAMRA標識PSD-95-PDZ2でスクリーニングしたSPOTアレイのnNOSβヘアピンモチーフの網羅的突然変異スキャンヒートマップ。蛍光値は、環状nNOSβヘアピンペプチドのWT値に対して正規化した。残基は側鎖の特性にしたがって分類し、上部のnNOSβヘアピンのスキーム内に天然残基を示す。WT残基は、網掛けで塗りつぶしたセルとして表している。
図5】A)正規化FP阻害定数とSPOTペプチドアレイの正規化蛍光値との間のアラニンスキャン相関。B)正規化FP阻害定数とSPOTペプチドアレイの正規化蛍光値との間の突然変異分析相関。
図6】A)組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2および環状nNOS TAMRAプローブに対してFP競争実験で測定した、環状nNOSβヘアピンペプチドのAlaスキャンのK値。データ取得を三回行い、K値の平均±標準誤差で表した。B)環状nNOSβヘアピン/PSD-95-PDZ2ドメインのモデルであり、関与するH結合および残基が強調表示されている。C)E108とPSD-95-PDZ2のT192およびS173との間のH結合相互作用。D)環状nNOSβヘアピンペプチドのT109およびT119とPSD-95-PDZ2のH225との間のH結合側鎖相互作用。(E)PSD-95-PDZ2ドメインの疎水性ポケット内部へのF111側鎖の突出。結合しない(N.B.)。
図7】(A)組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2および環状nNOS TAMRAプローブに対してFP競争実験で測定した、環状nNOSβヘアピンペプチドのN-MeスキャンのK値。データ取得を三回行い、K値の平均±標準誤差で表した。(B)モデル構造における主鎖H結合および関与する残基の強調表示。
図8】(A)環状nNOSβフィンガーおよびGluN2Bの配列。関与する位置は上部に示している。(B)組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2のAla変異体に対してFP飽和実験で測定した、環状nNOS TAMRAプローブの変化倍数(PSD-95-PDZ2 WTのK=1.0±0.1μM)。(C)組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2のAla変異体に対して、FP飽和実験で測定したC末端GluN2B TAMRAプローブの変化倍数(PSD-95-PDZ2 WTのK=4.0±0.1μM)。モデル構造において関与する残基は強調表示している。
図9】ホモジナイズした神経組織(成獣マウス)から分離した蛋白質の膜画分における濃縮度を比較するボルケーノプロット。環状nNOSβヘアピンペプチドで標識したダイナビーズ(商標)M-270によって濃縮した蛋白質をプロットの左側に示し、他方、GluN2BのC末端ペプチドで標識したダイナビーズ(商標)M-270によって濃縮した蛋白質については、プロットの右側に示している。
図10】ホモジナイズした神経組織(成獣マウス)から分離した蛋白質の細胞質画分における濃縮度を比較するボルケーノプロット。環状nNOSβヘアピンペプチドで標識したダイナビーズ(商標)M-270によって濃縮した蛋白質をプロットの左側に示し、他方、GluN2BのC末端ペプチドで標識したダイナビーズ(商標)M-270によって濃縮した蛋白質については、プロットの右側に示している。
図11】以下についてのITCの生ヒートシグネチャー(上部パネル)および結合等温線(下部パネル):(A)野生型環状nNOSβヘアピンペプチド;(B)突然変異T112WおよびT116Eを有する環状nNOSβフィンガー模倣ペプチド;(C)突然変異ΔT112およびT116Eを有する環状nNOSβフィンガー模倣ペプチド;(D)突然変異H106H(3-Me)、T112WおよびT116Eを有する環状nNOSβフィンガー模倣ペプチド;(E)突然変異H106H(3-Me)、ΔT112およびT116Eを有する環状nNOSβフィンガー模倣ペプチド。各滴定曲線の上部には、ペプチド構造をリボンダイアグラムで示しており、置換側鎖についてはスティックダイアグラムで示している。
図12】プラスミン安定性アッセイで判定した環状nNOSβヘアピンペプチド類似体の半減期。データは平均値として表されているn=3。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、「特許請求の範囲」において規定されるものである。
【0019】
定義
本明細書においては、蛋白質新生「アミノ酸(AA)」の名称はIUPACの推奨にしたがい、その1文字コードまたは3文字コードのいずれかを用いて表している(例えば、http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/AminoAcid/を参照のこと)。大文字略号はl-アミノ酸を示し、他方、小文字略号はd-アミノ酸を示す。他で特段に明記しない限り、アミノ酸は、α-アミノ酸、すなわち、α-炭素原子に結合したアミン基およびカルボン酸基を有するα-アミノ酸である。
【0020】
用語「細胞透過性ペプチド(CPP)」は、哺乳動物細胞の細胞膜を通過する能力、およびそれに連結される積み荷分子(ペプチド、蛋白質またはオリゴヌクレオチドなど)の細胞内送達を促進する能力によって特徴付けられるペプチドを指す。
【0021】
用語「検出可能部分」は、分析手段で検出可能な部分を指す。検出可能部分は、蛍光色素分子、放射線造影剤、MRI造影剤および放射性同位体から成る群から選択されるのであってもよい。
【0022】
本明細書中の用語「有効量」は、所望の結果を達成する、または望ましくない病態に効果を示すのに充分な量を指す。例えば、「治療有効量」は、所望の治療結果を達成する、または望ましくない症状に対して効果を示すのに充分な量であるが、有害な副作用を引き起こすには一般的に不充分な量を指す。
【0023】
用語「K」は解離定数を指し、ある分子の他の分子に対する親和性の尺度である。Kが低ければ低いほど、ペプチドのその結合部位への親和性はより高くなる。
【0024】
用語「非蛋白質新生アミノ酸」は、本明細書中では非標準的非コード、非標準、非同系、非天然(unnaturalまたはnon-natural)のアミノ酸ともよばれ、遺伝子暗号によってコードされないアミノ酸である。非蛋白質新生アミノ酸を非網羅的であるが、リストとして示せば:
α-アミノ-n-酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン、tert-ロイシン、α-アミノ-n-ヘプタン酸、ピペコリン酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、オルニチン、アロトレオニン、ホモシステイン、ホモセリン、β-アラニン、β-アミノ-n-酪酸、β-アミノイソ酪酸、γ-アミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、イソバリン、サルコシン、N-エチルグリシン、N-プロピルグリシン、N-イソプロピルグリシン、N-メチルアラニン、N-エチルアラニン、N-メチルβアラニン、N-エチルβ-アラニン、イソセリンおよびα-ヒドロキシ-γ-アミノ酪酸が挙げられる。
【0025】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」または「蛋白質」は、アミノ酸残基のポリマー、好ましくは、天然であるか合成によって作成されるかを問わず、専らペプチド結合で連結しているアミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書中の用語「ポリペプチド」は、蛋白質、ペプチドおよびポリペプチドを含み、ここで該蛋白質、ペプチドまたはポリペプチドは、翻訳後修飾されていても、されていなくてもよい。ペプチドは通常、その長さが蛋白質よりも短く、一本鎖である。
【0026】
用語「PDZ」は、後シナプス肥厚蛋白質95(PSD-95)、ショウジョウバエの相同体ディスクスラージ腫瘍抑制因子(DlgA)、閉鎖帯-1蛋白質(zo-1)を指す。
【0027】
用語「PSD-95」は、蛋白質PSD-95(後シナプス肥厚蛋白質95)を指すが、これはSAP-90(シナプス関連蛋白質90)としても知られ、DLG4(ディスクスラージホモログ4)遺伝子(おそらくはヒトのPSD-95であろう)によってコードされるヒトの蛋白質である(Uniprot:P78352)。
【0028】
「それを必要とする対象」は、本発明の恩恵を受け得る個体を指す。一実施態様においては、前記「それを必要とする対象」は、興奮毒性関連疾患および/または神経因性疼痛に罹患している個体である。治療を受けるべき該対象は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。しかし、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジおよびブタなどの動物の治療も、本発明の範囲内にある。
【0029】
本明細書中の用語「治療」および「治療する」は、病態、疾患または障害と闘う目的の、患者の管理とケアを指す。この用語は、患者が罹患している特定の病態に対するあらゆる治療を含むことを意図し、該ペプチドまたは組成物の投与など、等しく、治癒的療法、予防的(prophylacticまたはpreventative)療法ならびに緩和療法または一時療法を指し、ここでその目的は:
症状または合併症を軽減または緩和すること;病態の進行を遅らせること、部分的に臨床症状、疾患または障害を止めること;病態、疾患または障害を治癒させる、または取り除くこと;病態または症状の改善または緩和、および検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず寛解(部分的であるか完全であるかにかかわらず);および/または病態、疾患または障害を予防すること、または病態、疾患または障害に罹患するリスクを低減することであるが、ここで「予防すること」または「予防的」とは、病態、疾患または障害の発生を阻止する目的の患者の管理とケアを指し、症状または合併症の発症リスクを予防または低減するために該活性化合物の投与を含むものと理解されたい。本明細書中の用語「緩和」およびその表現の変形は、本発明の組成物を投与しないときと比較して、生理的な状態または症状の度合いおよび/または望ましくない症状が減少する、および/または進行の経過が遅延される、または延長されることを意味する。
【0030】
用語「治療する」および「治療」の定義を構成する基準に基づいて判定した場合に、治療している病態に変化が現れるのであれば、「治療効果(treatment effect)」または「治療効果(therapeutic effect)」が現れることになる。少なくとも5%の改善、好ましくは10%の改善、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%(少なくとも75%など)、および最も好ましくは少なくとも100%の改善があれば、治療している病態に変化が現れることになる。その変化は、個体において治療している病態の重症度が改善することに基づくもの、または生物活性物質、または本発明の医薬組成物と組み合わせた生物活性物質による治療を受けた個体、および受けていない個体の集団における、病態改善の頻度の差に基づくものであり得る。
【0031】
ポリペプチド
一局面においては、本発明は、TXLETXGXPXTIRVXQ(配列番号:1)のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩に関し;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、T、S、DまたはEであり;
は、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
は、W、Nal、または非存在であり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
かつ
は、TまたはN-Me-Tである。
【0032】
一実施態様においては、配列番号:1のポリペプチドは、環状化部分に共有結合で連結される。一実施態様においては、該環化部分は、pGX10のアミノ酸配列を含むが、ここでX10は、C、QまたはEである。すなわち、一実施態様においては、該ポリペプチドは、アミノ酸配列TXLETXGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:2)または薬学的に許容可能なその塩を含む、または配列番号:2のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成るが;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、T、S、DまたはEであり;
は、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
は、W、Nal、または非存在であり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
は、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10は、C、QまたはEである。
【0033】
一実施態様においては、Xは非存在である。すなわち、一実施態様においては、ポリペプチドは、TXLETXGXPXTIRVXQ(配列番号:3)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む、または配列番号:3のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成るが;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、T、S、DまたはEであり;
は、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
かつ
は、TまたはN-Me-Tである。
【0034】
一実施態様においては、ポリペプチドは、TXLETXGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:4)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む、または配列番号:4のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成るが;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、T、S、DまたはEであり;
は、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
は、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10は、C、QまたはEである。
【0035】
一実施態様においては、XはTであり、XはFである。すなわち、一実施態様においては、ポリペプチドは、TXLETTFXGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:5)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む、または配列番号:5のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成るが;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、W、Nal、または非存在であり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
は、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10は、C、QまたはEである。
【0036】
一実施態様においては、XはTであり、XはFであり、かつXは非存在である。すなわち、一実施態様においては、ポリペプチドは、TXLETTFGXPXTIRVXQpGX10(配列番号:6)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む、または配列番号:6のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成るが;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
は、TまたはN-Me-Tであり;
かつ
10は、C、QまたはEである。
【0037】
一実施態様においては、XはTであり、XはFであり、XはDであり、かつXはGである。すなわち、一実施態様においては、ポリペプチドは、TXLETTFXGDGXPXTIRVXQ(配列番号:7)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む、または配列番号:7のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成るが;
ここで
は、HまたはPyA-4であり;
は、WまたはNalであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
かつ
は、TまたはN-Me-Tである。
【0038】
一実施態様においては、XはHである。一実施態様においては、XはH-3Meである。一実施態様においては、XはPyA-4である。
【0039】
一実施態様においては、XはTである。一実施態様においては、XはSである。一実施態様においては、XはDである。一実施態様においては、XはEである。
【0040】
一実施態様においては、XはFである。一実施態様においては、XはF-2-Brである。一実施態様においては、XはF-2-Clである。一実施態様においては、XはF-3-Fである。
【0041】
一実施態様においては、XはWである。一実施態様においては、XはNalである。
【0042】
一実施態様においては、XはDである。一実施態様においては、XはN-Me-Dである。
【0043】
一実施態様においては、XはGである。一実施態様においては、XはAである。一実施態様においては、XはPである。
【0044】
一実施態様においては、XはEである。一実施態様においては、XはDである。
【0045】
一実施態様においては、XはKである。一実施態様においては、XはN-Me-Kである。
【0046】
一実施態様においては、XはTである。一実施態様においては、XはN-Me-Tである。
【0047】
一実施態様においては、X10はCである。一実施態様においては、X10はQである。一実施態様においては、X10はEである。
【0048】
一実施態様においては、XはHであり、XはTであり、XはFであり、XはWであり、XはDであり、かつXはGである。一実施態様においては、XはHであり、XはTであり、XはFであり、XはWであり、XはDであり、XはGであり、かつXはEである。一実施態様においては、XはHであり、XはTであり、XはFであり、XはWであり、XはDであり、XはGであり、かつXはDである。一実施態様においては、XはHであり、XはTであり、XはFであり、XはNalであり、XはDであり、XはGであり、かつXはEである。一実施態様においては、XはHであり、XはPyA-4であり、XはFであり、XはWであり、XはDであり、XはGであり、かつXはEである。
【0049】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、以下から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む:THLETTFWGDGE(配列番号:8)、THLETTFWGDGD(配列番号:9)、THLETTF(Nal)GDGE(配列番号:10)、およびT(PyA-4)LETTFWGDGE(配列番号:11)。
【0050】
一実施態様においては、該ポリペプチドは環状ポリペプチドである。一実施態様においては、該ポリペプチドは、TXLETTFXGDGEPKTIRVTQpGX10(配列番号:13)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む、または、配列番号:13のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成る環状ポリペプチドであるが、
ここで
はHまたはH-3Meであり;
はWまたは非存在であり;
X10は、C、QまたはEである。
【0051】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、アミノ酸配列THLETTFWGDGEPKTIRVTQ(配列番号:419)を含む、またはアミノ酸配列THLETTFWGDGEPKTIRVTQ(配列番号:419)から成る環状ポリペプチドである。
【0052】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、アミノ酸配列THLETTFGDGEPKTIRVTQ(配列番号:420)を含む、またはアミノ酸配列THLETTFGDGEPKTIRVTQ(配列番号:420)から成る環状ポリペプチドである。
【0053】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、アミノ酸配列TH(3-Me)LETTFWGDGEPKTIRVTQ(配列番号:421)を含む、またはアミノ酸配列TH(3-Me)LETTFWGDGEPKTIRVTQ(配列番号:421)から成る環状ポリペプチドである。
【0054】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、アミノ酸配列TH(3-Me)LETTFGDGEPKTIRVTQ(配列番号:422)を含む、またはアミノ酸配列TH(3-Me)LETTFGDGEPKTIRVTQ(配列番号:422)から成る環状ポリペプチドである。
【0055】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(THLETTFWGDGEPKTIRVTQpGE)(配列番号:423)である。一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(THLETTFGDGEPKTIRVTQpGE)(配列番号:424)である。一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(TH(3-Me)LETTFWGDGEPKTIRVTQpGE)(配列番号:425)である。一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(TH(3-Me)LETTFGDGEPKTIRVTQpGE)(配列番号:426)である。
【0056】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(THLETTFWGDGEPKTIRVTQpGQ)(配列番号:14)である。一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(THLETTFGDGEPKTIRVTQpGQ)(配列番号:15)である。一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(TH(3-Me)LETTFWGDGEPKTIRVTQpGQ)(配列番号:16)である。一実施態様においては、該ポリペプチドは、シクロ-(TH(3-Me)LETTFGDGEPKTIRVTQpGQ)(配列番号:17)である。
【0057】
一実施態様においては、該ポリペプチドは少なくとも20アミノ酸残基を含むものであり、少なくとも21アミノ酸残基など、少なくとも22アミノ酸残基など、少なくとも23アミノ酸残基など、少なくとも24アミノ酸残基など、少なくとも25アミノ酸残基など、少なくとも26アミノ酸残基など、少なくとも27アミノ酸残基など、少なくとも28アミノ酸残基など、少なくとも29アミノ酸残基など、少なくとも30アミノ酸残基など、少なくとも31アミノ酸残基など、少なくとも32アミノ酸残基など、少なくとも33アミノ酸残基など、少なくとも34アミノ酸残基など、少なくとも35アミノ酸残基など、少なくとも36アミノ酸残基など、少なくとも37アミノ酸残基などを含む。
【0058】
一実施態様においては、該ポリペプチドは50アミノ酸残基以下を含むものであり、45アミノ酸残基以下など、40アミノ酸残基以下など、35アミノ酸残基以下など、30アミノ酸残基以下など、29アミノ酸残基以下など、28アミノ酸残基以下など、27アミノ酸残基以下など、26アミノ酸残基以下など、25アミノ酸残基以下など、24アミノ酸残基以下など、23アミノ酸残基以下など、22アミノ酸残基以下など、21アミノ酸残基以下など、20アミノ酸残基以下などを含む。
【0059】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、19~50の範囲のアミノ酸残基を含むものであり、19~45の範囲のアミノ酸残基など、19~40の範囲のアミノ酸残基など、19~35の範囲のアミノ酸残基など、19~30の範囲のアミノ酸残基など、19~25の範囲のアミノ酸残基など、19~23の範囲のアミノ酸残基など、20~23の範囲のアミノ酸残基など、20~22の範囲のアミノ酸残基などを含む。
【0060】
環状ポリペプチド
好ましい一実施態様においては、該ポリペプチドは、環化によって環状ポリペプチドを形成する。例えば、ポリペプチドは、側鎖と側鎖、尾部と側鎖、側鎖と頭部、および頭部と尾部で環化してもよい。通常の環化方略としては、2つのシステイン(側鎖と側鎖)間のジスルフィド架橋、チオエーテル架橋、例えばN末端およびシステインへのブロモ酢酸付加(頭部と側鎖)によるチオエーテル架橋、および塩基性残基(Lys)と酸性残基(AspまたはGlu)との間のカップリング反応または天然の化学ライゲーション(NCL)のいずれかを用いるラクタム化が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。これらの方略のほとんどは、FmocおよびtBu/Bocに対する準直交性保護基を用いるが、そのような保護基としては、Lysについてのトリチル(Trt)またはアリルオキシカルボニル(Alloc)、Cysについての4-モノメトキシトリチル(Mmt)、AspまたはGluについてのアリル(All)または2-フェニルイソプロピル(2-PhiPr)エステル類などが挙げられ、これらはそれぞれ、アミノ基、チオール、およびカルボン酸塩を選択的に脱保護する目的である。
【0061】
本明細書中の用語「頭部と尾部で環化したペプチド」は、用語「主鎖環化ペプチド」の同義語として用いられる。一実施態様においては、該環状ペプチドは主鎖環化ペプチドである。一実施態様においては、該環状ペプチドは、そのN末端とC末端の部分間にアミン結合を形成させる、すなわち頭部と尾部の間の環化により形成される。
【0062】
いくつかの実施態様においては、環状ポリペプチドの調製にリンクアミド樹脂を用いる(実施例1および4を参照のこと)。すなわち、樹脂からポリペプチドを切断する場合には、X10位のアミノ酸残基Eをアミノ酸残基Qに変換する。
【0063】
一局面においては、本発明は、LETXGX(配列番号:436)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む環状ポリペプチドに関するが;
ここで
は、T、S、DまたはEであり;
は、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
は、W、Nal、または非存在であり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
かつ
は、EまたはDである。
【0064】
一実施態様においては、該環状ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドを含む、または該ポリペプチドから成る。一実施態様においては、該環状ポリペプチドは、19~50の範囲のアミノ酸残基を含み、20~22の範囲のアミノ酸残基などを含む。
【0065】
一実施態様においては、該環状ペプチドは、TXLETXGXPXTIRVXQ(配列番号:1)のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩を含む、または配列番号:1のアミノ酸配列または薬学的に許容可能なその塩から成るが;
ここで
は、H、H-3MeまたはPyA-4であり;
は、T、S、DまたはEであり;
は、F、F-2-Br、F-2-ClまたはF-3-Fであり;
は、W、Nal、または非存在であり;
は、DまたはN-Me-Dであり;
は、G、AまたはPであり;
は、EまたはDであり;
は、KまたはN-Me-Kであり;
かつ
は、TまたはN-Me-Tである。
【0066】
一実施態様においては、該環状ポリペプチドは、以下から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む:
THLETTFWGDGE(配列番号:8)、THLETTFWGDGD(配列番号:9)、THLETTF(Nal)GDGE(配列番号:10)、およびT(PyA-4)LETTFWGDGE(配列番号:11)。
【0067】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、本明細書において規定されるような配列番号:14~136から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施態様においては、該ポリペプチドは、配列番号:14~136から成る群から選択されるアミノ酸配列から成る。一実施態様においては、該ポリペプチドは、本明細書において規定されるような配列番号:139~433から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施態様においては、該ポリペプチドは、配列番号:139~433から成る群から選択されるアミノ酸配列から成る。表現「配列番号:139~433から成る群」は、139~433の配列番号を有する各配列全てを含む。同様に、「配列番号:1~5から成る群」という表現は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5を含む。
【0068】
塩およびプロドラッグ
本明細書において規定されるようなポリペプチドは、該ポリペプチドの薬学的に許容可能な塩またはプロドラッグの形態であり得る。本発明の一実施態様においては、本明細書において規定されるようなポリペプチドは、該化合物の薬学的に許容可能な付加塩または水和物(K、Na、ならびに非塩、例えばHなどが挙げられるが、これらにのみに限定されるものではない)として製剤化することができる。
【0069】
PSD-95に対する親和性
一実施態様においては、該ポリペプチドはPSD-95に結合することができる。一実施態様においては、該ポリペプチドはPSD-95-PDZ2に結合するが、そのK値は、100μM未満であり、75μM未満など、50μM未満など、25μM未満など、20μM未満など、15μM未満など、10μM未満など、5μM未満など、4μM未満など、3μM未満など、2μM未満など、1μM未満などである。該K値は、実施例1に記載のような蛍光分極(FP)アッセイまたは等温滴定熱量測定(ITC)アッセイを用いて判定するのであってもよい。
【0070】
一実施態様においては、該ポリペプチドはnNOSのPSD-95のPDZ2ドメインに対する結合を阻害することができる。一実施態様においては、nNOSのPSD-95のPDZ2ドメインに対する結合を阻害する該化合物のK値は、100μM未満であり、75μM未満など、50μM未満など、10μM未満など、5μM未満など、2.5μM未満など、1μM未満などである。該K値は、蛍光分極(FP)競争アッセイを用いて判定するのであってもよい。該K値は、実施例1に記載のような蛍光分極(FP)アッセイまたは等温滴定熱量測定(ITC)アッセイを用いて判定するのであってもよい。
【0071】
膜透過性
PSD-95は細胞内に存在することから、PSD-95を標的とするいずれの薬剤も効率よく細胞膜を透過することが必須となる。本明細書に規定されるような化合物の細胞透過性および細胞質への送達を評価する目的で、細胞クロロアルカン透過アッセイ(CAPA)を用いるのであってもよい(Peraroら、2018)。このアッセイでは、クロロアルカン(CA)分子に共有結合するように設計した修飾ハロアルカン脱ハロゲン化酵素を利用する。細胞質送達を調べるためには、HaloTag、緑色蛍光蛋白質(GFP)およびミトコンドリア標的ペプチドを含む融合蛋白質を発現するHeLa細胞株を用いる。CAPAの一般的な方法はパルスチェイスアッセイである(DepreyとKritzer、2020)。HaloTag酵素を発現する細胞を、CAタグ付加ペプチドと共にインキュベートする。これらCAペプチドが細胞膜を透過して細胞質に到達すると、HaloTagに結合して反応する(パルス工程)。洗浄工程後に、CAタグを付加した色素と共に細胞をインキュベートするが、この色素は細胞膜に定量的に浸透して残りの未反応HaloTag部位に反応する(チェイス工程)。フローサイトメトリーを用いて、細胞の蛍光強度を測定するが、測定した蛍光は、透過細胞に到達したCAペプチドの量に逆比例するので、細胞質送達の評価に利用できる。取得したデータは通常CP50値で表すが、このCP50値は、50%の細胞に透過が認められた濃度である。化合物のCP50値は、実施例16に記載するような方法で測定するのであってもよい。実施例16は、記載の環状ペプチドの細胞取り込みが医学的利用にとって好適な細胞取り込みであることを示唆している。
【0072】
一実施態様においては、該化合物は、250μM以下のCP50値を有しており、200μM以下など、150μM以下など、100μM以下など、80μM以下など、70μM以下など、60μM以下など、50μM以下など、40μM以下など、30μM以下など、20μM以下など、15μM以下など、10μM以下など、5μM以下などを有している。好ましくは、該化合物は60μM以下のCP50値を有している。
【0073】
プラスミン安定性
虚血性脳卒中(「脳虚血(brain ischemia)」または「脳虚血(cerebral ischemia)」ともよばれる)は通常、脳へ血液を供給する動脈の閉塞に起因する。この閉塞によって脳への血流と酸素が減少するので、脳細胞が損傷または死に至る。様々な機械装置を用いて、あるいは「静脈内または動脈内へ送達した血栓溶解薬」を用いて、この血管閉塞を除去することが可能である。そのような血栓溶解薬には、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)が含まれるが、これによってプラスミノーゲンからプラスミンが生成する。組換えtPAの例としてはアルテプラーゼ、レテプラーゼおよびテネクテプラーゼが挙げられるが、また血栓を破壊する他の血栓溶解剤としては、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼおよびデスモテプラーゼを含む。
【0074】
一実施態様においては、本発明のポリペプチドは、AISの標準的治療であるtPAまたは組換えtPAによる処置を受ける対象に投与する。したがって、該ポリペプチドは、プラスミン(セリンプロテアーゼ)の生成を含むtPAの投与に適合性であることが必須である。
【0075】
本発明のポリペプチドの、インビトロにおけるプラスミン安定性については、実施例15で評価した。一実施態様において、実施例15に記載のプラスミン安定性アッセイの場合には、該化合物の半減期はプラスミン存在下で、少なくとも10分であり、少なくとも30分など、少なくとも1時間など、少なくとも2時間など、少なくとも3時間など、少なくとも4時間など、少なくとも5時間など、少なくとも6時間など、少なくとも7時間など、少なくとも8時間など、少なくとも9時間など、少なくとも10時間など、少なくとも15時間など、少なくとも20時間など、少なくとも30時間などである。
【0076】
ポリペプチド修飾
一実施態様においては、ポリペプチドは、グリコシル化、PEG化、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化および/またはアルキル化によってさらに修飾される。一実施態様においては、該ポリペプチド中のアミノ酸残基の1つ以上がアルキル化(メチル化など)される。例えば、XはN-Me-Dであってもよく、XはN-Me-Kであってもよく、および/またはXはN-Me-Tであってもよい。一実施態様においては、該ポリペプチドは、ある部分にさらに共役(結合)している。一実施態様においては、該部分は、PEG、単糖類、蛍光色素分子、発色団、放射性化合物、および細胞透過性ペプチドから成る群から選択される。一実施態様においては、該部分は検出可能部分である。一実施態様においては、配列番号:1のポリペプチドは環状化部分に共有結合で連結される。一実施態様においては、該環化部分は、pGX10のアミノ酸配列を含み、ここでX10は、C、QまたはEである。一実施態様においては、ポリペプチドは、以下の構造を有するクロロアルカンタグ(CA)に共役(結合)している:
【化1】
【0077】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞
本発明の一局面においては、本明細書に規定されるようなアミノ酸配列を含むペプチドをコードし、発現することのできる核酸構築物を提供する。「核酸構築物によって」とは、遺伝子操作した核酸であることを理解されたい。該核酸構築物は、非複製型の直鎖状核酸、環状発現ベクターまたは自己複製プラスミドであってもよい。一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるような環状ペプチドに対応する直鎖状配列をコードするポリヌクレオチドに関する。一局面においては、本発明は、該ポリヌクレオチドを含むベクターに関する。一局面においては、本発明は、該ポリヌクレオチドまたは該ベクターを含む宿主細胞に関する。一実施態様においては、該宿主細胞は細菌性細胞である。一実施態様においては、該宿主細胞は哺乳動物細胞である。一実施態様においては、該宿主細胞はヒト細胞である。
【0078】
ポリペプチドの調製法
本発明のポリペプチドは、当該技術分野における任意の公知の方法で調製されるのであってもよい。すなわち、該ポリペプチドは、溶液合成またはMerrifield型固相合成などの標準的なペプチド調製技術によって、調製されるのであってもよい。
【0079】
一実施態様においては、本発明のポリペプチドは、合成によって作成または生産される。ペプチドの合成による生産法は、当該技術分野において公知である。合成ポリペプチド生産に関する詳細な説明と実践的アドバイスについては、Grant G.A.編集の「合成ペプチド:ユーザー・ガイド(Synthetic Peptides:A User’s Guide)」((Advances in Molecular Biology)、Oxford University Press、2002)またはFrokjaerとHovgaard編集の「医薬製剤:ペプチドと蛋白質の開発(Pharmaceutical Formulation: Development of Peptides and Proteins)」(Taylor and Francis、1999)に記載がある。一実施態様においては、発明のポリペプチドまたはポリペプチドの配列は、合成によって、特に配列支援ペプチド合成(SAPS)法によって、溶液合成によって、Merrifield型固相合成などの固相ペプチド合成(SPPS)によって、組換え技術(該ポリペプチドをコードする第1の核酸配列を含む宿主細胞による生産であって、ここで該第1の核酸配列が、該宿主細胞において発現を指令することのできる第2の核酸に制御可能に結合されている、該宿主細胞による生産)または酵素合成によって、作成される。これらは当業者に周知である。
【0080】
直鎖状ポリペプチドを、逆相HPLCなどによって精製した後に、該直鎖ポリペプチドをさらに処理して環状ペプチドに変換する。ポリペプチド環化技術および環状ポリペプチドを取得する技術(例えば、固体支持体を用いる技術)は、当業者にとっては公知である。
【0081】
一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるようなポリペプチドを製造する方法に関するが、該方法は、該ポリペプチドを組換え技術によって発現させる、または合成によって生産する工程を含む。一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるような環状ポリペプチドを製造する方法に関するが、該方法は、対応する直鎖状ポリペプチドを組換え技術によって発現させ、または合成によって生産した後に、環化させる工程を含む。
【0082】
一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるようなポリペプチドを製造する方法に関するが、ここで該方法は以下の工程を含む:
(a)Fmoc/tBuによるペプチド固相合成(SPPS)を用いてペプチドを調製する工程、
および
(b)天然の化学ライゲーション(NCL)を介する該ペプチドの環化工程。
【0083】
一実施態様においては、SPPSおよびNCLは実施例1の概説のように実施する。一実施態様においては、工程(b)は、C末端ヒドラジン基をアジドに酸化し、および該アジドをN末端Cysのチオール基に反応させた後、トランスチオエステル化によって、アミド結合を形成させることを含む。
【0084】
一実施態様においては、該製造法は、工程(b)後の工程であって、ここで蛍光色素分子を該ポリペプチドに結合させる工程をさらに含む。
【0085】
一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるようなポリペプチドを製造する方法に関するが、該方法は以下の工程を含む:
(a)セルロース膜を提供する工程;
(b)工程(a)で提供されるセルロース膜に、PEGスペーサーを共役(結合)させて、Fmoc/Boc-Glyの混合物を付加する工程;
(c)工程(b)で調製される膜を無水酢酸でキャッピングする工程;
(d)工程(c)の産物に準直交性保護AAを付加する工程;
(e)Fmoc/tBuによるペプチド固相合成(SPPS)を用いて残りのポリペプチドを、工程(d)のAA上に調製する工程;
(f)工程(e)で生成したポリペプチドから準直交性保護基を除去し、該ポリペプチドを環化する工程;
(g)工程(f)で生成したポリペプチドから側鎖保護基を切断する工程;
および
(h)該セルロース膜から該ポリペプチドを切断する工程。
【0086】
一実施態様においては、該ポリペプチドは、実施例1に記載されるようなSPOTペプチドアレイ合成を行い、該セルロース膜から該ポリペプチドをさらに切断することによって調製される。
【0087】
一実施態様においては、本明細書に規定されるような環状ポリペプチドを、セルロース膜などの樹脂上に合成する。この場合、膜に載せる量を減少させ、それによって個々のペプチドスポットの濃度を低下させて、また標的蛋白質への非特異的結合のリスクを低下させる目的で、Fmoc/Boc-Glyの混合物を添加することによって合成を開始するのであってもよい。次いで、膜(スポット)に存在する官能基部分のみがFmoc-Gly混合物に反応するように、無水酢酸を用いて膜のキャッピングを行う。Fmoc基除去後に、ブロモフェノールブルー(BPP)によって、キャッピング能を定性的に制御してもよい。続いて、Fmoc基除去後に、準直交性保護基を有するAA(例えば、Cys、GluまたはAsp)を共役(結合)させる。ペプチドの残りのAAについては、標準的な通常のFmoc処理にしたがって共役させる。ペプチド合成の完了時に、官能基(例えば、カルボキシル基)を「自由」にするために、直交性保護基を除去するが、これは脱保護N末端を環化させるためである。該ペプチドが環化されれば、一時的側鎖保護基を除去するために、TFAおよびスカベンジャー混合物で膜を処理する。さらに、該生成したペプチドを樹脂から切断してもよい。
【0088】
医薬用途
一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるようなポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞の薬剤治療における用途に関する。一実施態様においては、本発明は、本明細書に規定されるような環状ポリペプチドの薬剤治療における用途に関する。
【0089】
一局面においては、本発明は、興奮毒性関連疾患および/または神経因性疼痛を予防および/または治療する方法に関するものであるが、ここで該方法は、本明細書に規定されるようなポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞を治療有効量で、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0090】
一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるようなポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞の、治療薬剤製造における用途に関するものであるが、ここで該治療薬剤は対象において興奮毒性関連疾患および/または神経因性疼痛を治療および/または予防するためのものである。
【0091】
一実施態様においては、本明細書に記載の「対象」は、ヒトなどの哺乳動物である。
【0092】
興奮毒性関連疾患
本発明のポリペプチドはPSD-95阻害剤であり、そのため興奮毒性を阻害することができる。すなわち、本発明の化合物は、様々な疾患、特に神経疾患、および特に、部分的には興奮毒性媒介性である疾患の治療に有用である。一局面においては、本発明は、対象における興奮毒性関連疾患の予防および/または治療に用いる、本明細書に規定されるようなポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞に関する。一実施態様においては、本発明は、対象における興奮毒性関連疾患の予防および/または治療に用いる、本明細書に規定されるような環状ポリペプチドに関する。
【0093】
N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)、後シナプス肥厚蛋白質-95(PSD-95)および神経性一酸化窒素合成酵素(nNOS)間の三重複合体は、細胞死の興奮毒性機序に重要な役割を果たす。本発明のポリペプチドはnNOSのPSD-95に対する結合を阻害可能であり、神経興奮を引き起こす過剰NOの生成を予防/阻止できるので、該ポリペプチドは、興奮毒性関連疾患の治療に有用なものであり得る。
【0094】
虚血、外傷、てんかんおよび慢性神経変性疾患など、多数の症状が、興奮毒性に関係付けられている(Gardoni、F.ら、2006年、European Journal of Pharmacology、545、2-10)。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は、虚血性脳卒中などの脳卒中である。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は、脊髄損傷および外傷性脳損傷などの、CNSの虚血または外傷である。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は、てんかんである。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は、CNSの神経変性疾患である。一実施態様においては、CNSの神経変性疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病から成る群から選択される。
【0095】
一局面においては、本発明は、興奮毒性関連疾患の予防、治療、軽減および/または発生遅延に用いる、本明細書に規定されるようなポリペプチドに関する。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は脳卒中である。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は虚血性脳卒中である。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は脳虚血である。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患は急性虚血性脳卒中である。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患はくも膜下出血である。
【0096】
一局面においては、本発明は、興奮毒性関連疾患の予防、治療、軽減および/または発生遅延のための治療薬剤の製造における、本明細書に規定されるようなポリペプチドの用途に関する。
【0097】
一局面においては、本発明は、興奮毒性関連疾患の予防、治療、軽減および/または発生遅延のための方法に関するものであるが、ここで該方法は、本明細書に規定されるようなポリペプチドを治療有効量で投与することを含む。
【0098】
一局面においては、本発明は、興奮毒性の損傷効果の軽減および/または損傷効果に対する保護における、本明細書に規定されるようなポリペプチドの用途に関する。一実施態様においては、該ポリペプチドを、脳卒中の損傷効果の軽減に用いる。一実施態様においては、該ポリペプチドを、急性虚血性脳卒中の損傷効果に対する治療に用いる。一実施態様においては、該ポリペプチドを、くも膜下出血の損傷効果に対する治療に用いる。
【0099】
一局面においては、本発明は、興奮毒性の損傷効果に対して対象の脳または脊髄を保護する、および/または損傷効果を軽減する方法に関するものであるが、該方法は、損傷効果に対して保護および/または軽減する目的で、有効量の、本明細書に規定されるようなポリペプチドを対象に投与する工程を含む。
【0100】
一局面においては、本発明は、興奮毒性によって媒介される病態を治療する、軽減する、またはその発生を遅延させる方法に関するものであるが、ここで該方法は、該病態に罹患している、または該病態のリスクを有するヒト対象に、本明細書に規定されるようなポリペプチドを投与することを含む。
【0101】
一局面においては、本発明は、対象において興奮毒性によって媒介される病態の少なくとも1種類の徴候または症状を治療する、または阻害する、または遅延させる方法に関するものであるが、ここで該方法は、該病態に罹患している、または該病態に関連するリスク因子を有している対象に、本明細書に規定されるようなポリペプチドを投与することを含む。一実施態様においては、該病態は、脳卒中またはCNSの外傷である。一実施態様においては、興奮毒性関連疾患はCNSに対する/における/の虚血または外傷である。
【0102】
一局面において、本発明は、脳卒中に罹患した対象における脳卒中の損傷効果を軽減する方法に関するものであるが、ここで該方法は、脳卒中の損傷効果を軽減する目的で、本明細書に規定されるようなポリペプチドを有効量で該対象に投与することを含む。
【0103】
本明細書中の「脳卒中」は、脳の1種類以上の栄養血管における閉塞または出血によって引き起こされる病態であって、それによって細胞死に至らしめる病態を指す一般的用語である。本明細書中の「虚血性脳卒中」は、脳の1種類以上の栄養血管における閉塞によって起こる脳卒中を指す。虚血性脳卒中の種類としては、例えば、塞栓性脳卒中、心原性脳塞栓症、血栓性脳卒中、大血管の血栓形成、ラクナ梗塞、遠位動脈塞栓に起因する脳卒中および潜因性脳卒中が挙げられる。「脳虚血(Cerebral ischemia)」は、酸素に富む血液を脳に送ることを制限する動脈の阻害であり、それによって、脳組織に損傷を与える病態である。脳虚血(Cerebral ischemia)は、 脳虚血(brain ischemia)または脳血管虚血とよばれることもある。
【0104】
本明細書中の「出血性脳卒中」は、脳の1種類以上の栄養血管における出血によって起こる脳卒中を指す。血性脳卒中の種類としては、例えば、硬膜下脳卒中、実質内脳卒中、硬膜外脳卒中およびくも膜下脳卒中が挙げられる。
【0105】
一実施態様においては、本発明の化合物によって治療可能な疾患は、CNSの虚血または外傷である。一局面においては、本発明は、対象の脳または脊髄に対する外傷または虚血の損傷効果を軽減する方法に関するものであるが、ここで該方法は、該軽減効果を得るために、本明細書に規定されるようなポリペプチドで該対象を治療することを含む。
【0106】
一局面においては、本発明は、血管内手術に起因する脳虚血を阻止する方法に関するものであるが、ここで該方法は、脳虚血の阻止に有効なレジメンにおいて、血管内手術を受ける対象に、本明細書に規定されるようなポリペプチドを投与することを含む。
【0107】
一局面においては、本発明は、動脈瘤の治療、診断用血管造影または頸動脈ステント処置のための血管内手術による虚血性損傷を阻止する方法に関するものであるが、ここで該方法は、動脈瘤または診断用血管造影の処置として血管内手術を受ける対象に、本明細書に規定されるようなポリペプチドの有効なレジメンを用いることを含む。
【0108】
一局面においては、本発明は、神経外科手術に起因する虚血性損傷の阻止に用いる、本明細書に規定されるようなポリペプチドに関する。一実施態様においては、該神経外科手術は、脳の診断用血管造影または動脈瘤を治療する血管内手術である。
【0109】
いくつかの実施態様においては、該ポリペプチドは、再灌流療法と組み合わせて投与する。一実施態様においては、該ポリペプチドの投与および再灌流を、同時に、逐次的に、または個別に、該対象に対して実施する。
【0110】
本明細書中の用語「再灌流療法」は、閉塞した動脈それ自体、またはその動脈の近傍のいずれかで、血流を回復する医学的処置を指す。再灌流療法は、医薬薬剤と機械的再灌流を含む。該医薬薬剤は、血栓溶解とよぶプロセスにおいて用いる血栓溶解剤または線維素溶解剤であってもよい。いくつかの実施態様においては、再灌流療法は、プラスミノーゲン活性化因子、例えば、tPAなどの血栓溶解剤を投与することによって、実施する。一実施態様においては、本明細書に規定されるようなポリペプチドを、プラスミノーゲン活性化因子、例えば、tPAと組み合わせて投与する。
【0111】
いくつかの実施態様においては、該再灌流療法は外科手術を含む機械的灌流である。実施される外科手術は、最小侵襲性の血管内処置であってもよい。
【0112】
機械的再灌流装置としては、動脈内カテーテル、バルーン、ステント、および各種の血栓回収デバイスが挙げられる。
【0113】
一実施態様においては、該ポリペプチドを、血栓溶解剤と組み合わせて投与し、該化合物および血栓溶解剤は、同時に、逐次的に、または個別に該対象に投与する。
【0114】
一局面においては、本発明は、中枢神経系に対する虚血の損傷効果に対する治療を実施する方法に関し、ここで該方法は以下の工程を含む:
(a)虚血のリスクを有する対象に、本明細書に規定されるようなポリペプチドを投与する工程;
および
(b)該対象において再灌流療法を実施する工程、
ここで該ポリペプチドおよび再灌流療法は、該対象の中枢神経系に対する虚血の損傷効果について、治療を行うものである。
【0115】
一局面においては、本発明は、虚血または虚血リスクを有する対象において、中枢神経系に対する虚血の損傷効果の治療に用いる、本明細書に規定されるようなポリペプチドに関するものであるが、ここで該対象において再灌流療法が実施され、該ポリペプチドおよび再灌流療法は、該対象の中枢神経系に対する虚血の損傷効果について治療を行う。
【0116】
一実施態様においては、該方法は、血栓溶解剤を同時に、逐次的に、または個別に該対象に投与することをさらに含む。
【0117】
一局面においては、本発明は、少なくとも2種類の異なる単位剤形(A)および(B)を含むパーツのキットに関するものであるが;
ここで
(A)は、本明細書に規定されるようなポリペプチドを含み;
および
(B)は、血栓溶解剤を含む。
【0118】
一局面においては、本明細書に規定されるようなパーツのキットは、中枢神経系に対する虚血の損傷効果の治療に用いられるが、ここで(A)および(B)は、同時に、逐次的に、または個別に該対象に投与される。
【0119】
一局面においては、本発明は、くも膜下出血の損傷効果に対する治療に用いる、本明細書に規定されるようなポリペプチドに関する。本明細書中の用語「くも膜下出血」は、くも膜下腔における出血状態を指す。
【0120】
一局面においては、本発明は、対象においてくも膜下出血を治療する方法に関するものであるが、ここで該方法は、くも膜下出血に罹患した対象に、本明細書に規定されるようなポリペプチドを投与することを含み、ここで該対象において神経認知障害の発症が阻止される。
【0121】
一局面においては、本発明は、対象においてくも膜下出血の神経障害または神経認知障害の発症を阻止する方法に関するものであるが、ここで該方法は、くも膜下出血に罹患した対象に、本明細書に規定されるようなポリペプチドを投与することを含み、ここで該対象において神経障害または神経認知障害の発症が阻止される。
【0122】
神経因性疼痛
本発明のポリペプチドによって治療可能な他の神経性疾患であって、興奮毒性との関連が知られてはいない神経性疾患としては、不安および疼痛が挙げられる。一局面においては、本発明は、対象における神経因性疼痛の予防および/または治療に用いる、本明細書に規定されるようなポリペプチド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞に関する。一実施態様においては、本発明は、対象における神経因性疼痛の予防および/または治療に用いる、本明細書に規定されるような環状ポリペプチドに関する。
【0123】
神経因性疼痛は、複数種類の慢性疼痛を含み、体細胞組織よりも神経の機能不全に起因する疼痛のカテゴリーである。中枢神経系または末梢神経系の機能不全に由来する疼痛である神経因性疼痛は、末梢神経または中枢神経系の領域への損傷の結果のこともあり、疾患に由来することもあり、あるいは特発性のこともある。神経因性疼痛の症状としては、灼熱感、チクチクする感覚、ビリビリする感覚、痺れてピリピリする感覚、知覚障害、感覚異常、筋肉の凝り、四肢の痺れ、身体的歪みの感覚、異痛症(刺激によって惹起する疼痛であるが通常無害)、痛覚過敏症(痛みに対する異常過敏)、痛覚過敏(疼痛刺激が止んだ後も長引く過剰疼痛反応)、幻肢痛、および自発性疼痛が挙げられる。
【0124】
PSD-95は、神経因性疼痛の中心機構に関与することが示されている(Tao、F.ら、2003、Neuroscience、731-739; Florio、S. K.ら、2009、British Journal of Pharmacology、158、494-506)。本発明のポリペプチドはPSD-95を阻害するので、このポリペプチドは神経因性疼痛の治療に有用であり得る。
【0125】
投与
本発明に基づけば、本明細書に規定されるようなペプチドまたはペプチドを含む組成物は、薬学的に有効用量または治療有効量で、治療を必要とする個体に投与される。その必要用量は、用いた特定薬剤組成物、投与経路および治療中の特定対象に応じて異なり、障害の重症度および種類ならびに対象の体重と一般的状態に応じて異なる。ペプチド化合物の各投与の最適量および投与間隔は、治療中の病態の性質および程度、投与の形態、経路および部位、ならびに治療中の特定患者を考慮して決定され、そのような最適値が従来技術によって決定され得ることは、当業者であれば理解するであろう。治療の最適な進め方、すなわち、1日当たりに化合物を何回投与するのか、何日間投与するのかについては、治療判定の通常の進め方に基づいて確認可能であることもまた、当業者であれば理解するであろう。
【0126】
医薬組成物
本発明のポリペプチドをそのままのペプチドで投与することも可能であるが、医薬製剤の形態でそれらを提供することが好ましい。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩、およびそれらについての薬学的に許容され得る担体を含む医薬製剤をさらに提供する。すなわち、一局面においては、本発明は、本明細書に規定されるようなポリペプチドを含む医薬組成物などの組成物に関する。該医薬製剤は、従来技術、例えば、Remingtonの「製剤の科学と実際2005(The Science and Practice of Pharmacy 2005)」、Lippincott、Williams & Wilkinsに記載されるような技術で調製されるのであってもよい。
【0127】
実施例
実施例1:材料と方法
固相ペプチド合成(SPPS)
9-フルオロメチル(Fmoc)/tert-ブチル(tBu)方略を用いてペプチドを合成した。
【0128】
Fmoc-GlyまたはFmoc-Val-Wangを予め付加した樹脂(100~200メッシュ)を用いて直鎖状ペプチドを合成した。試薬は、N,N-ジメチル-ホルムアミド(DMF)溶液で調製した。環状ペプチド合成については、環化の準直交性構成要素(Fmoc-Glu(PP)-OH、Fmoc-Glu-PP、Fmoc-Asp(PP)-OHおよびFmoc-Cys(Mmt)-OH)をrinkアミド-ChemMatrix(登録商標)樹脂に予め付加した。すなわち、1.5当量の選択構成要素の溶液、4当量のN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、および4当量のOxyma Pure(Novabiochem(登録商標))を連続振盪しながら室温で3時間保存した。その後、過剰の試薬を除去し、20当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)および20当量の無水酢酸の溶液を用いて、樹脂のキャッピングを行った。樹脂を保存のために真空条件下で乾燥した。4当量のFmoc-AA-OH、4当量のDIC、および4当量のOxyma Purを用いて、室温で1時間、SPPSを実施した。20%ピペリジンを含むDMFで10分間、Fmoc基の脱保護を行った。樹脂上の直鎖状ペプチド合成が完了した時点で、樹脂を真空条件下で3時間乾燥させた。準直交性保護基を確実に除去するため、直交性保護基を含むペプチドを合成した樹脂を、95%ジクロロメタン(DCM)、3%トリイソプロピルシラン(TIPS)および2%トリフルオロ酢酸(TFA)で20分間4回処理した。その後、5mLのDCMで樹脂を5回洗浄してから、5%DIPEAを含むDCMで中和した。次いで、DMFで樹脂を5回洗浄し、4当量の(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyAOP、Iris Biotech)および4当量のDIPEAを含むDMF溶液を用いて、樹脂に結合しているペプチドの環化を3時間または一晩行った。次いで、樹脂を3時間乾燥させた。
【0129】
準直交性Fmoc-Lys(Alloc)-OHを用いて、CAタグを付加したペプチドを調製した。良好に環化が成された後に、0.2当量のPd(PPhおよび20当量のPhSiHを含むDCMを用いて、準直交性保護基の処理を15分間2回実施した。Alloc保護基を完全に除去した後に、脱保護Lys残基の側鎖アミンをクロロアルカンタグ(CA)で官能基化した。CA:PyBOP:DIPEAの混合物を含むDMF(3:3:10)を用いた処理を16時間行い、環化プチドのLysの窒素基に、CAタグを結合した。
【0130】
95%TFA、2.5%HOおよび2.5%TIPSを含む開裂カクテルを用いて、直鎖状ペプチドおよび環状ペプチドを樹脂から切断する処理を3時間実施した。TFAの除去およびペプチドの沈殿は、冷エーテルを用いて行った。次いで、ペプチドを酸性化MQ HO(0.1%TFA)に溶解し、Waters prep 150LCシステムおよび逆相カラム(Zorbax 300 SB-C18、21.2mm x 250mm)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により精製した(5%~35%Bの直線勾配、30分間)。二成分溶媒系[A:HO/TFA 99.9/0.1およびB:アセトニトリル(MeCN)/TFA 99.9/0.1]を用いた。最終産物を凍結乾燥した。精製後に、質量分析法によりペプチドをもう一度分析したが、これにはQDa質量検出器モジュールを備えたWaters Acquity UPLCシステムを用いた([A: HO/TFA 99.9/0.1およびB: MeCN/TFA 99.9/0.1]、5~60%Bの直線勾配、6分間)。
【0131】
天然の化学的ライゲーション(NCL)による環化
4当量の9-カルバジン酸フルオレニルメチル、4当量のDIC、および4当量のOxyma Pureを予め2-Cl-トリチル樹脂に一晩付加処理することにより、NCLのヒドラジドペプチドを合成した。次いで、ペプチド配列の残りを合成し、上記のSPPSの節に記載の方法を用いて精製した。次に、精製した最終的な直鎖状ペプチドヒドラジドを、塩入り氷浴上で、6M塩化グアニジン(GnHCl)0.2Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む緩衝液(pH3.0)に溶解した。次いで、ペプチドヒドラジドを酸化するために、10当量の亜硝酸ナトリウムをペプチド溶液に添加した。溶液を30分間反応させた。その後、室温で、0.1MのNaOH溶液を用いて溶液のpHを6.8に調整し、最後に、ペプチドチオエステルを形成させるために、100当量の4-メルカプトフェニル酢酸(MPAA)を混合物に添加した。溶液を室温で2時間反応し、ペプチド環化を完了させた。2時間後、溶液を酸性化HOで希釈し、Waters prep 150LCシステムおよび逆相カラム(Zorbax 300 SB-C18、21.2mm x 250mm)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で、二成分溶媒系[A: HO/TFA 99.9/0.1およびB: MeCN/TFA 99.9/0.1](10%~40%Bの直線勾配、30分間)により、精製を行った。最終産物を凍結乾燥した。精製後に、質量分析法によりペプチドを分析したが、これにはQDa質量検出器モジュールを備えたWaters Acquity UPLCシステムを用いた([A: HO/TFA 99.9/0.1および B: MeCN/TFA 99.9/0.1]、5~60%Bの直線勾配、6分間)。
【0132】
蛋白質発現
(7xHis)-PSD-95-PDZ2野生型および(7xHis)-PSD-95-PDZ2-V178C配列をコードするpRSETプラスミドは、以前に報告された方法38で取得した。PSD-95-PDZ2変異体(K165A、K168A、F172A、F172I、S173A、N180A、T192A、K193A、H225A、E226A、V229A、K233A)をコードするDNA構築物は、Phusion(登録商標)部位特異的突然変異誘発キットおよび表1に挙げたプライマーを用いて野生型PSD-95-PDZ2のpRSETプラスミド上で作成した。以前に報告された方法38により、PSD-95-PDZ2変異体を形質変換し、37℃で0.5mMのイソプロピル-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて大腸菌B21 pLys細胞で発現させた。37℃での発現2時間後に、細胞を回収しB-PER細菌蛋白質抽出試薬を用いて溶解を行った。洗浄緩衝液(50nM NaPi、20mMイミダゾール)で平衡化したHisタグカラムを用いて蛋白質を精製し、その溶出は、溶出緩衝液(50mM NaPi、50mM NaCl、250mMイミダゾール)を用いて行った。その後、サイズ排除精製により、蛋白質をさらに精製したが、この精製には、HiLoad 16/600 Superdex 75pgの事前充填カラムを搭載したAkta Explorer 100 Airを用い、50mM NaPi、50mM NaClを含む緩衝液を1mL/分の流速で流した。蛋白質濃度の測定はNanoDrop1000で行い、蛋白質の質量決定は、Poroshellカラム300SB-C18 2.1 x 75mmを備えたAgilent 6410トリプル四重極LC-MSによる分析によって行い、二成分溶媒系 [A: HO/MeCN/TFA、94.9/5/0.1およびB: HO/MeCN/TFA、5/94.9/0.1](5%~60%Bの直線勾配)を用いて0.75mL/分の流速で流した。蛋白質の質量に関する評価は、Agilent Mass Hunterソフトウェアを用いるデコンボリューション処理で行った。最終的な蛋白質純度の評価には、BEH C8カラム、1.7μm 2.1 x 50 mmを備えたWaters ACQUITY UPLCを用いた。蛋白質の分析には、以下の勾配を用いた:5%~60%B、4分間;および60~100%B、4~4.5分間。
【0133】
【表1】
変異については、太字下線で強調表示した。
【0134】
蛋白質およびペプチドのチオール標識
緩衝液としてPBS緩衝液を選択し、Gibco(登録商標)PBS錠剤をMQ HOに溶解して調製した。pHは、0.1MのHClを用いてpH6.7に調整した。緩衝液は、Nガス流下で30分間脱気した。蛋白質またはペプチドを、1mLの脱気緩衝液に溶解して、連続的撹拌し、隔壁板で覆いをして、かつNガスを定常的に流しながら15mLのファルコンに入れた。一方、15当量のテトラメチルローダミン-5-(および-6)C2マレイミド(TAMRAマレイミド)色素を200μLのDMSOに溶解し隔壁板を通して注射筒で混合物に加えた。光を避け、連続的撹拌を行いながら2時間、反応させた。
【0135】
標識蛋白質の脱塩精製は、Sephadex G-25のPD-10(MWCO 3000Da)脱塩カラムを用いて行った。Agilent 6550 LC-MS Q-TOFを用いて、蛋白質の質を評価した。次いで、Mass Hunterソフトウェアを用いたデコンボリューション処理により、蛋白質の総質量を決定した。
【0136】
二成分溶媒系[A: HO/TFA 99.9/0.1およびB: MeCN/TFA 99.9/0.1]の5%~45%Bの直線勾配を用いた逆相カラム(Zorbax 300 SB-C18、21.2mm x 250mm)で40分間処理して、標識環状ペプチドの精製を行った。最終産物の分析は、QDA質量検出器モジュールを備えるWaters Acquity UPLCシステムで行った([A: HO/TFA 99.9/0.1およびB: MeCN/TFA 99.9/0.1]、5~60%Bの直線勾配、6分間)。
【0137】
SPOTペプチドアレイの合成
Intavis MultiPepスポッター (Intavis Bioanalytical instruments)を用いて、環状nNOSβヘアピンアレイを作成した。このアッセイに用いた膜は、SynthoPlan APEG CE(PEG-スペーサーを有し、標準的なアミノ修飾を施した酸安定セルロース膜;10 x 15cm;負荷は400nmol/cm)である。0.3MのFmoc-AA-OHの溶液および0.3MのOxyma Pureの溶液は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)で調製した。活性化因子溶液は、0.3MのDICおよび0.3Mの2,4,6-トリメチルピリジン(Collidine)を含むNMPから成るものであった。キャッピング溶液は、1M無水酢酸溶液および0.05Mの4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を含むNMPから成るものであった。脱保護溶液は、20%ピペリジンを含むNMPから成るものであった。AA共役結合反応は、1時間の反応を4回行った。Fmoc基の脱保護は、15分間の反応を2回行った。共役反応間または脱保護間の膜洗浄には、NMPおよびエタノールを用いた。膜ヘの総負荷量を減らすために、まず、Fmoc-PEG(9)-OH(Iris Biotech)の共役反応を行い、その後Fmoc-Gly-OH(25%)およびBoc-Gly-OH(75%)の混合物で共役反応を行うことによって、セルロース膜上のペプチド伸長を開始した。その後、キャッピング溶液で樹脂のキャッピングを行い充分に洗浄してから、官能性アミノ基を有するSPOTSを検出するための品質管理として、ブロモフェノールブルー(BPB)に浸漬した。次いで、準直交性基Fmoc-Glu-PPの共役反応を行ってから、ペプチド完成まで残りの合成を実施した。セルロース結合直鎖状ペプチドは、最終的に、準直交性基を除去するため、95%DCM、3%TIPSおよび2%TFAの溶液で20分間の処理を3回行った。その後、DCMで膜を5回洗浄し、5%DIPEAを含むDCMで中和した。次いで、膜をさらに5回DCMで洗浄しNMPで5回洗浄してから、0.3MのPyAOPおよび0.3MのDIPEAを含むDMFで3時間または一晩環化反応を行った。最後に、DCMで膜を乾燥させ、標準脱保護カクテル(95%TFA、2.5%HOおよび2.5%TIPS)または試薬K[82.5%TFA、5%フェノール、5%HO、5%チオアニソールおよび2.5%の1,2-エタンジチオール(EDT)]で3時間反応させることにより、側鎖保護基の切断を行った。
【0138】
SPOT膜のスクリーニング
膜を、PBS(pH7.2)+0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間、インキュベートした。インキュベーション経過後に、膜を乾燥させてから、Amershan Typhoonスキャナーを400V、Cy3の波長(532nm)で用いてスキャンを行った。Image Quantソフトウェアを用いて、スクリーニングのTIFファイルおよびブランク値のファイルを作成した。その後、PBS(pH7.2)+0.5%BSAを用いて、50nMのTAMRA標識PSD-95-PDZ2ドメインの溶液を調製し、それを膜に添加した。遮光しながらPolymax1040揺動テーブル上で、1時間、膜のインキュベーションを行った。インキュベーション経過後に、膜をPBS+0.5%BSAで3回洗浄することにより過剰の標識蛋白質を除去した。最後に、Amershan Typhoonスキャナーを、400V、Cy3の波長(532nm)で用いて、膜の蛍光値を測定した。Image Quantソフトウェアを用いて、スクリーニングのTIF画像およびTAMRA標識PSD-95-PDZ2を有するペプチドの蛍光値についてのファイルを作成した。次いで、TAMRA標識PSD-95-PDZ2に対してスクリーニングしたペプチドの蛍光値から、ブランクを減算した。
【0139】
蛍光分極(FP)
384穴プレートの形態でFPアッセイを実施した。Safire2プレートリーダーを用いて蛍光分極を測定した。各アッセイについて、機器のZ因子を最適化した。各G因子は、初期のミリ分極値20に較正した。環状nNOSβヘアピンTAMRAプローブについての波長は:ex:530nmおよびem:580nmであった。各測定は、pH7.2、25℃で、50mMのNaPI、50mMのNaClおよび1%BSAを含む溶液を用いて行った。50nMの環状nNOSβヘアピンTAMRAのプローブを滴定して選択蛋白質の1:1希釈曲線を作成することにより、蛍光分極飽和アッセイを実施した。この曲線を3回作成した。次いで、Prismソフトウェア8.0(GraphPad)を用いて、分極を1部位結合モデルにフィッティングさせた;これによって、Kを測定することができる。予め調製した蛋白質/プローブ複合体を既定濃度(50μM/50nM)で、0.1~252μMの範囲で異なる濃度の非標識ペプチドと混合することにより、蛍光分極の競争実験を実施した。ミリ分極(mP)値をペプチド濃度の関数としてプロットし、Prismソフトウェア8.0(GraphPad)を用いてS字状用量応答曲線にフィッティングさせた。K値を、Nikolovska-Coleska Z.ら40-41にしたがって算出した。
【0140】
等温滴定熱量測定法(ITC)
細孔径0.22μMのコーニング(登録商標)ボトルトップ真空フィルターシステムで濾過した50nMのNaPi、50nMのNaClを含む緩衝液(pH7.2)を用いてペプチドを溶解し、ITCアッセイを実施した。蛋白質を、この緩衝液に対して透析したが、その際に、MWCO 3000DaのAmicon(登録商標)Ultra-15遠心フィルターユニットを用いた。ITC200で、このアッセイを実施した。その機器の電力差分(DP)を10に設定し、注射筒回転速度は600RPMに設定した。アッセイの準備は、セルの内部に蛋白質を入れ、注射筒にペプチド(滴定剤)をセットする工程から成るものであった。25℃にて熱量測定を行った。各分析を3回繰り返した。さらに、注入余熱を除去する目的で、ペプチドを緩衝液に送る操作を複数回に分けて行った。各回の分析は、Origin7.0ソフトウェア(OriginLab)を用いて行った。
【0141】
結晶学的スクリーニング
環状nNOSβヘアピンペプチド(WT)および2か所に置換を有する変異体(T112W T116E)と共に、PSD-95-PDZ2蛋白質を4℃で共インキュベートした。PSD-95-PDZ2の濃度は常に15mg/mLに設定し、異なる比率の環状ペプチド(1.5、5または10当量)をスクリーニングした。スクリーニングは、3:1の1μLコニカル平底を有する96穴COC蛋白質結晶化マイクロプレートを用いるシッティングドロップ法で実施した。スクリーニングで形成された結晶は、液体窒素による瞬間凍結の前に、ポリエチレングリコール400 PEG400)に浸漬した。回折データの取得は、Swiss Light Source、ビームラインSLS PX X06Sで行い、Aimless(CCP4スイート)で処理した42。分子置換および構造精密化には、PHASERを用いた(Phenixソフトウェア)43。nNOS-PDZ/シントロフィン-1-PDZ の結晶構造(PDB:1QAV)44を用い、Chimeraソフトウェア(USCF Chimera) 45で探索モデルを作成した。PDB OneDep検証サーバーで、結晶構造を検証した。
【0142】
円偏光二色性(CD)
1mm光路長の石英セルを用いたJasco J-1500円偏光二色性分光法測定装置により、全CDスペクトルを収集した。蛋白質試料は、50mM NaPi、50mM NaClを含む緩衝液(pH7.2)中で、約20μMの濃度とした。データを楕円率ミリ度で取得してから、平均残基楕円率に変換した。
【0143】
非天然アミノ酸(UAA)のインシリコ選択
PSD-95-PDZ2の結合ポケットに環状nNOSβヘアピンを格納するため、nNOS/シントロフィン-1複合体(PDB:1QAV)44をPSD-95-PDZ1-2の構造(PDB:3GLS)に重ね合わせた46。シントロフィンの2つのPDZドメインを、PDS-95-PDZ-2の2つのPDZドメインに交換した。nNOSペプチドを、Maestro2018-4の3Dビルダーツールで環化し、環化に関与する残基を最小化した。OPLS3e力場を用いたTIP3P水モデルにより、300Kでの1μs分子動力学シミュレーションを実施した;これには、Desmond5.6を用いた。まず、200nsの軌道については、平衡状態を得るために利用してから切り捨てた。GROMACS2018-3のgromosクラスタリングを用いて、RMSDカットオフを0.08nmとし、残りの800nsのフレームをクラスター化した。UAAスキャンのために、3つの最大クラスターの代表的な構造を選択した。
【0144】
Maestroの残基スキャニングプロトコルを用いて、精緻化距離カットオフを4.5Åとし、主鎖最小化による側鎖予測で、選択構造のUAAスキャンを実施した。MolPort(2019-03-01)において利用可能な全てのFmoc保護アミノ酸を含むライブラリーを用いて、Cαの立体化学を特定した。プロトン化状態を評価するため、残基を付加する前に、pH7.4+/-2.0のLigPrepを用いた。ライブラリーの最終サイズには異なる542アミノ酸が含まれていた。3種類の代表的構造のうち少なくとも2種類において、ΔΔG親和性の値<-5kJmol-1-1およびΔΔG安定性<0kJmol-1-1であるUAAスキャンのヒットは、目視検査に基づいて選択した。
【0145】
ダイナビーズ(商標)M-270アミンのペプチド標識
チオエーテル結合により、ペプチドをダイナビーズ(商標)M-270アミンに結合させた。1.5mLの安全ロック付きチューブ中で、DMF(2x1mL)を用いてダイナビーズ(商標)(プルダウン実験当たりの懸濁液10μL)を洗浄した。その後、0.1M無水ブロモ酢酸および5%DIPEAを含むDMF中で、ダイナビーズ(商標)を室温で1時間インキュベートした。ダイナビーズ(商標)をDMF(2x1mL)で洗浄し、DMF中の可溶化ペプチドと共に(1mLのDMF中で、200μLのダイナビーズ(商標)懸濁液当たり120μgのペプチド)室温で3時間インキュベートした。その上清を除去しビーズをDMF(2x1mL)で洗浄してから、0.1Mのβメルカプトエタノールおよび5%DIPEAを含むDMF(1mL)中で室温1時間のインキュベーションを行った。その後、上清を除去しビーズをDMF(2回、1mL)およびPBS緩衝液(pH7.4)(3回、1mL)で洗浄した。標識ペプチドダイナビーズ(商標)をPBS緩衝液に入れ(10μLの出発懸濁液につき10μLのPBS緩衝液)、4℃で保存した。
【0146】
マウス全脳の溶解
成獣マウスの脳(平均質量:0.4g)を均一化緩衝液に入れ、15mL組織破砕機を用いて、氷上でホモジナイズした[10mM NaCl、320mMスクロースならびにComplete(商標)EDTA不含プロテアーゼ阻害剤およびPhosSTOP(商標)ホスファターゼ阻害剤を含むHEPES(pH7.3);脳当たり1mL]。ホモジネートを、4℃、1000g(MULTIFUGE 3L-R)で10分間遠心分離し、その上清を新しいチューブに移した。上清を、4℃、18500gで45分間遠心分離した。上清S-Fracを回収した(注記:「S-Frac」は、細胞質蛋白質を含む)。濃度測定を行い、2mg/mLの濃度に希釈して、1mLずつ分注したものを-80℃で保存した。沈殿物については、除去した上清1mL当たり、1mLの50%均一化緩衝液および50%界面活性剤緩衝液[100mM NaCl、50mM Tris-Cl(pH8)、2%(w/v)デソキシコール酸ナトリウム]に再懸濁してから、4℃で1時間インキュベートした。4℃、20817gで45分間の遠心分離(エッペンドルフ遠心チューブ5427R)により、不溶性蛋白質を除去した。上清M-Frac(注記:「M-Frac」は、膜結合蛋白質および膜貫通蛋白質ならびに膜結合蛋白質複合体を含む)を回収し、その濃度を測定した;2mg/mLの濃度に希釈してから、1mLずつ分注したものを-80℃で保存した。
【0147】
親和性精製
20μgのペプチド標識ダイナビーズ(商標)を500μLのPBS緩衝液に添加した。上清を除去し、2mg/mLの脳溶解物(S-FracまたはM-Frac)1mLと共に、4~10℃で2時間インキュベートした。上清を除去し、洗浄緩衝液I[50mM Tris-HCl(pH7.4)、150mM NaClおよび1%(v/v)Triton X-100を含むHO;2回、1mL]および洗浄緩衝液II[50mM Tris-HCl(pH7.4)、150mM NaClおよび0.1%v/v)Triton X-100を含むHO;2回、1mL]で洗浄した。次いで、20μLの2x Laemmli緩衝液に再懸濁してチューブに入れ、95℃で10分間インキュベートした。
【0148】
MSによるプルダウン実験の分析
プルダウン/2x Laemmli緩衝液混合物をInvitrogen NuPAGE(登録商標)4~12%Bis-Trisゲル(1.0mm x 12ウェル)に載せた。その後、Invitrogen(商標)MOPS緩衝液およびInvitrogen(商標)Novexミニセルを用いて、試料がゲル内に入るまで(おおよそ5分)、80VでSDSゲルの泳動を行った。次いで、ゲルをHO(50mL)で5分間洗浄し、次に、Imperial(商標)蛋白質染色(50mL)と共に一晩インキュベートした。このゲルをHOで洗浄した(3回、50mLで各30分間)。バンドの抽出を行い、それぞれ別々に96穴プレートに移した。最初に2回の洗浄を行ったが、この洗浄は0.1M重炭酸アンモニウムを含むHO/MeCN(50:50、100μL/ウェル)でそれぞれ10分間インキュベートすることによって実施した。その後、まず0.1M重炭酸アンモニウムを含むHO(50μL/ウェル)でゲルをインキュベートした。5分後に、MeCN(50μL/ウェル)を添加して、さらに15分間インキュベートした。Imperial(商標)染色が消えるまで、この洗浄処理を繰り返した。次いで、ゲルを10mMのDTTと共にインキュベートして、0.1M重炭酸アンモニウム(100μL/ウェル)を含むHOに溶解した。これを、56℃のEchoterm(商標)加熱プレート上で45分間インキュベートした。その後、この溶液を、0.25M重炭酸アンモニウムを含むHOに溶解した55mMヨードアセトアミド(100μL/ウェル)で迅速に置換して、遮光下で30分間インキュベートした。その後、0.25M重炭酸アンモニウムを含むHO/MeCN(50:50、100μL/ウェル)で各5分間、ゲルを洗浄した。次に、12.5ngの修飾トリプシン(ブタ)および0.25M重炭酸アンモニウムを含むHOを添加した(75μL/ウェル;12.5ng/μL)。次いで、まずプレートを氷上で15分間インキュベートし、次に、37℃で一晩インキュベートした。消化を行うために、5%のギ酸を含むHO(75μL/ウェル)を添加し、Bransonic(商標)超音波浴中で5分間インキュベートした。その上清を0.5mLの安全ロック付きチューブに移した。その後、5%のギ酸を含むHO/MeCN(40:60、75μL/ウェル)でゲルを2回抽出した。画分を組み合わせてから凍結乾燥した。この試料を、0.1%TFAと4%MeCNの混合液に再可溶化し、Orbitrap Fusion(商標)Lumos(商標)質量分析計、前段カラムPepMap(商標)100(100μm x 2cm、nanoViper、C18,5μm、100Å)およびカラムPepMap(商標)RSLC C18(2μm、100Å、75μm x 50cm、37℃)を備えたUltiMate(商標)3000UHPLCシステムで分析した。この分離法は、二成分緩衝液系[A:TFA/MeCN/HO、0.5/2/97.5およびB:ギ酸/MeCN/HO、0.1/20/79.9]を用いて0.3mL/分の流速で実施した。2段階直線勾配(4~25%MeCN/HO; 0.1%ギ酸、40分間、および25~50%MeCN/HO; 0.1%ギ酸、10分間)で分析カラムからペプチドを溶出した。
【0149】
実施例2:環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドの開発
まず、環状nNOSβヘアピンペプチドであるシクロ-(C105THLETTFTGDGTPKTIRVTQ124pG)(配列番号:428)を、上記のように天然の化学ライゲーション(NCL)を用いて合成した。次いで、このペプチドを、そのシステインの遊離チオール基を介してTAMRAマレイミドで標識した。次に、組換え技術によって発現させた3種類のPSD-95-PDZ1、2および3ドメインに対して、環化蛍光色素分子結合ペプチドを上記のようなFP飽和アッセイで試験した。その結果、環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドは、PSD-95-PDZ1および2に結合し、そのKはそれぞれ3.4 ± 0.3μMおよび1.0±0.1μMであったが、PSD-95-PDZ3に対しては弱い結合親和性(K=52.0±10.5μM)を示すのみであることが、明らかになった。
【0150】
すなわち、TAMRAで標識した環状ペプチドシクロ-(CTHLETTFTGDGTPKTIRVTQpG)(配列番号:428)は、PSD-95-PDZ1および2に結合するが、ここで、配列THLETTFTGDGTPKTIRVTQ(配列番号:429)は、天然nNOSの105~124位に対応している。
【0151】
実施例3:環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドは、直鎖状ペプチドと比較して、PSD-95-PDZ2に対して優れた親和性を有している
nNOSβヘアピン模倣ペプチドの環化が、PDZ2に対する結合親和性の保持に必要であるか否かを調べるために、自由C末端を有する直鎖型nNOSペプチドを合成した。環状および直鎖状nNOSペプチド類似体(図2)の両方に関して、上記のような方法でITC実験を行った。その結果、環状nNOSβヘアピンペプチドは、2.2±0.3μMの親和性でPSD-95-PDZ2に結合し、これはFPによる測定と同一範囲内にあることが示された。対照的に直鎖ペプチドは、いずれの試験濃度(最大で100μM)においても結合を示さなかった。
【0152】
実施例4:nNOSβヘアピン模倣ペプチドの環化に関する様々な方略
nNOSβヘアピン模倣ペプチドの環化に関する4種類の方略について試験を行ったが、これらは、チオエーテル架橋型類似体などの側鎖、ラクタムGlu側鎖、ラクタムAsp側鎖、およびGlu主鎖環化ペプチドを用いることを含むものであった。nNOSβヘアピン模倣ペプチドの環状nNOSβヘアピン変異体を樹脂上で合成し、上記のようなFP競争アッセイを用いて評価した。興味深いことに、試験した環化方略のうち3種類では、PSD-95-PDZ2ドメインに対する結合親和性が僅かに減少する結果となった;表E1および図3を参照のこと。
【0153】
【表2】
【0154】
チオエーテル架橋型類似体などの側鎖、ラクタムGlu側鎖およびAsp側鎖を用いる方略では、いずれもNCLペプチドと比較してペプチド結合親和性が2倍~3倍低下した。Glu主鎖環化ペプチドについては、NCLペプチドと同一範囲の結合親和性(K=1.5±0.2μM)を示した。
【0155】
実施例5:SPOTアレイにおけるβヘアピン領域の網羅的突然変異スキャン
SPOTペプチドアレイを用いて、NOSβヘアピン領域(105THLETTFTGDGTPKTIRVTQ124、配列番号:429)の各AAの重要度を検索した。
【0156】
実施例4に記載の、得られた結果に基づいて、野生型(WT)足場についてラクタムGlu主鎖を選択した。用いた樹脂はRinkアミドCM樹脂であった;すなわち、環化に用いたGlu残基は、樹脂から切断後にGlnに変換した。最初のAAは、作業の単純化のために配列(Eα)に残したままにした。
【0157】
WT足場について、残りの19個のL-AAを各AAに交換することによって、網羅的突然変異スキャンを実施した。技術的な観点から重複測定として、各アレイには個々のペプチドを3コピー含めた。さらに、その設計には3種類の対照を含めた:すなわち、環状nNOSβヘアピンWT対照(陽性対照)、直鎖状nNOSペプチド(環化対照)、およびF111V置換を有する環状nNOSβヘアピン(上記のFP競争アッセイで試験した陰性対照)である。アレイスクリーニングについては、PSD-95-PDZ2の残基V178に突然変異(PSD-95-PDZ2-V178C)を導入した後、TAMRAマレイミドで標識した。次いで、TAMRA標識PSD-95-PDZ2-V178Cドメインで合成ペプチドアレイをスクリーニングし、個々のペプチドについて得られた蛍光強度をWTペプチドの値に対して正規化した。最終データを、網羅的突然変異スキャンのペプチド変異体に関する正規化蛍光強度ヒートマップで表す(図4)。
【0158】
SPOTについて得られた蛍光強度に基づいて、最も有望な57種類の環状nNOSβヘアピンペプチド類似体について合成を再び行い、また特徴付けも行った(下の表2)。
【0159】
FPによる個々のペプチドのKi値を、WTペプチドのKiデータに対して正規化した(図5A~B)。次いで、このデータを正規化SPOT蛍光値に相関させた。FP結合およびSPOT蛍光値は、アラニンスキャンに関して良好に相関した(ピアソンの相関係数の2乗値である決定係数Rは75%)。しかし、試験した全ての異なる置換(異なる位置の異なる修飾に対応する57ペプチド)を含めた場合には、ピアソンRは52%に低下した。観察されたこのような低下は、支持体上で環化が起こった時の環化収量の差によって説明することもできる。例えば、導入したAA側鎖の性質(大きさ、正に荷電した/負に荷電した、等々)、挿入したAAの保護基の大きさおよび/またはヘアピン構造内の突然変異位置(例えば、ループ領域内)は、環化収量に影響を与え得る。SPOTアレイの結果は粗ペプチドのスクリーニングおよび蛍光強度に基づくものであるため、予見できない不純物/切断物が、偽陽性または偽陰性(WTよりも環化収量が高い/低い変異)を与える可能性もある。したがって、SPOTの結合データを精製ペプチドのK値と比較する場合には、ある程度の矛盾が予想される。
【0160】
【表3】
FP阻害定数およびSPOT蛍光のカウントを、それぞれのWT値に対して正規化した。
【0161】
結論としては、107LETTF111(配列番号:434)、G113、P117およびT119をホットスポット残基として同定し、またT112W、G115A/PおよびT116E/Dを環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドの最も有望な置換として同定した。
【0162】
実施例6:環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドに関するホットスポット残基のアラニンスキャニングおよび突然変異試験
実施例5の網羅的突然変異スキャンの結果を検証する目的、および非標準結合機序についての見通しをさらに得る目的で、アラニンスキャンを実施し、またそのスキャンから最も妥当な残基におけるさらなる選択的置換を判定した。上記のような方法で、ペプチドを合成してFPアッセイを行った。
【0163】
実施したAlaスキャン(下の表3を参照のこと)についてのFP(競争)結果を、網羅的位置スキャンの結果に沿って図6に示す。E108、T109、F111およびT119は、PSD-95-PDZ2に結合する際の最も重要な側鎖相互作用であることが示される。E108は、PSD-95-PDZ2のβBおよびβCの、T192またはS173などのAAに結合している(図6C)。T109は、内部結合モチーフ(-T-x-F-)の一部であり、H結合によってnNOSβヘアピンの逆平行β鎖に位置するT119の側鎖と分子間相互作用する(図6D)。これは、右方向の配向を取るT109がその側鎖によって、PSD-95-PDZ2 αBのH225との相互作用を可能にし、T119Aが親和性を僅かに減少させる(K=17.00±1.67μM)のであるが、他方T109Aは環状nNOSβヘアピンペプチド/PSD-95-PDZ2結合を消失させることの理由を説明する。
【0164】
【表4】
FP阻害定数およびSPOT蛍光のカウントは、それぞれのWT値に対して正規化した。
【0165】
さらに、Ser、AsnまたはThr立体異性体Allo-Thrなどの複数の置換を導入することにより、分子内T109-T119相互作用を調べた。T109位におけるSer置換およびAsn置換は、環状ペプチドの親和性をそれぞれ7倍および19倍低下させたが、一方で、T119におけるSer置換は親和性を25倍低下させた。興味深いことに、T109位におけるAllo-Thr置換は、相互作用を消失させることが可能であった(下の表4)。最後に、F111の側鎖は、PSD-95-PDZ2の複数の残基(カルボン酸ループ内のF172ならびにαB内のV229およびL232)によって形成される疎水性ポケットの内部に面している(図6E)。
【0166】
【表5】
【0167】
残基E108、T109、T111およびT119が、環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドの結合に最も重要であると結論付けられる。
【0168】
実施例7:環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドのN-Meスキャン
環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドのN-Me類似体を、上記のようなFP競争アッセイで試験した(図7Aおよび下の表5)。T105のN-メチル化によって結合親和性が5倍減少したが(K=4.8±0.1μM)、H106~E108のN-Me変異体は相互作用を消失させた。これは、ペプチドのヘアピン折り目を安定化させる鎖間H結合が理由であると考えられる(図7B)。
【0169】
【表6】
【0170】
N-Me-T109もまた、内部結合モチーフ(-T-x-F-)の相互作用を消失させた。N-Me-F111もまた相互作用を消失させた;その理由は、相互作用に関与する主鎖H結合であって、PSD-95-PDZ2のβBのG171とのH結合が喪失したからである。一方、N-Me-G113の結合親和性(K=6.2±0.1μM)に対する影響は、さほど大きなものではなかった;理由としては、その柔軟性を低下させるGly残基のメチル基の立体障害に起因して、H結合が形成されていた可能性が考えられる。T119のN-メチル化では結合親和性が減少した(K=4.9±0.1μM)が、T119は主鎖H結合には関与しないので、導入した立体障害に起因する可能性が考えられる(図7B)。対照的に、N-Me-V122はH106との鎖間H結合を壊すものであるが、それはそれほど強いものではなかった(K=6.2±0.1μM)。興味深いことに、環状nNOSβヘアピンペプチドの逆平行β鎖のいくつかの残基については、N-メチル化によって結合親和性が増加した;
N-Me-K118(K=0.5±0.1μM)およびN-Me-T123(K=0.6±0.1μM)は結合親和性を2倍改善した。
【0171】
実施例8:PSD-95-PDZ2のアラニンスキャニング突然変異
この試験においては、非標準βヘアピンペプチドの結合様式を、イオンチャンネル型グルタミン酸型NMDARサブユニットGluN2B(KLSSIESDV-COOH、配列番号:435)の標準的なC末端尾部と比較した。そのため、一連のPSD-95-PDZ2 Ala変異体を発現させた。変異は、以下の部位に導入した:K165A、K168A、F172A、S173A、N180A、T192A、K193A、H225A、E226A、V229AおよびK233A。
【0172】
2種類の結合様式を比較するために、FP飽和アッセイにおいて、TAMRA標識C末端GluN2BペプチドおよびTAMR標識環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドをプローブとして用いた。各突然変異について変化倍数を得るため、それぞれのPSD-95-PDZ2 Ala変異体について取得した結合親和性(K値)をPSD-95-PDZ2 WT値に対して正規化した(図8)。
【0173】
興味深いことに、環状ペプチドは、標準的なGluN2B標準ペプチドとは完全に異なる結合プロファイルを示した。例えば、H225A突然変異は、環状nNOSβヘアピンのPSD-95-PDZ2に対する相互作用を完全に消失させた。対照的に、標準的GluN2Bペプチドのみが、同一の突然変異で親和性について5倍の低下を示した。
【0174】
突然変異V229Aもまた、GluN2Bの標準ペプチド(親和性の2倍低下)と比較して、環状nNOSβヘアピンペプチドの結合に対して有害効果を示した(親和性の6倍低下)。
【0175】
K165突然変異は、環状nNOSβヘアピンペプチド(親和性の4倍低下)ならびにGluN2Bの標準ペプチド(5倍)の結合親和性を低下させた。
【0176】
実施例9:環状nNOSβヘアピンペプチドのGluN2BのC末端領域に対するプルダウン選択性の比較
GluN2BのC末端領域(KLSSIESDV-COOH、配列番号:435)に対する環状nNOSβヘアピンペプチドの選択性を比較する目的で、親和性に基づくプルダウンアッセイを実施例1に記載の方法で実施した。ダイナビーズ(商標)M-270アミンビーズに、両方の化合物を固定化し、マウス(ハツカネズミ)脳溶解物と共にインキュベートした。勾配遠心分離によって、溶解物を膜および細胞質の2画分に分離した。トリプシン消化後に、タンデム質量分析(LC-MS/MS)に連結した液体クロマトグラフィーで、濃縮蛋白質を定性的および定量的に分析した。
【0177】
ボルケーノプロット(図9および10)によってその結果を視覚化した;標準的な結合GluN2Bペプチドよりも環状nNOSβヘアピンペプチドによって、X軸の負の領域の蛋白質が有意に濃縮された。膜画分では(図9)、GluN2Bによって、それ自身PDZドメインを有していない複数の蛋白質が濃縮された。環状nNOSβヘアピンペプチドでもGluN2Bでも、PDZを含む蛋白質が有意に濃縮されることはない。
【0178】
N末端パルミトイル化のためにPSD-95が低濃度で存在すると考えられる細胞質画分では(図10)、直鎖状ペプチドは、複数PDZドメイン蛋白質膜結合グアニル酸キナーゼの逆位MAGUK(Magi1およびMagi2)を顕著に濃縮する。興味深いことには、環状nNOSβヘアピンペプチドは、PSD-95を大幅に濃縮したが(ディスクラージホモログ4、Dlg4)、これはPSD-95に対して非常に選択的な相互作用による可能性がある;一方で、直鎖状GluN2Bペプチドは、非選択的に相互作用する。
【0179】
実施例10:nNOSβヘアピンモチーフのリン酸化
蛍光分極競争実験を用いてリン酸化の効果を評価した。
【0180】
材料と方法
標準的Fmoc SPPS方法論を利用し、Fmoc-Thr(PO(OBzl)OH)-OHを構成要素として用いて、Thr残基のリン酸化を行った;Thr残基はいずれも個々にリン酸化した。SPPS後に、組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2および環状nNOS TAMRAプローブに対して、蛍光分極競争実験でペプチドの測定を実施例1に記載の方法で行った。データ取得を三回行い、K値の平均±標準誤差で表した。
【0181】
結果
環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドを、野生型nNOSの残基位置105、109、110、112、116、119および123に対応する位置でリン酸化した。残基109、110および119に加えられた変異は破壊的効果をもたらしたが、残基116に加えられた変異は相乗的結合効果を与えることが、明らかになった。まとめを下の表6に示す。
【0182】
【表7】
【0183】
これらの知見は、T116D/E置換も同程度に結合親和性を増加させたという上記の観察および修飾に整合するものであり、これは、環状ペプチドのこの位置における負電荷の選択性を示唆している。
【0184】
実施例11:nNOSβヘアピンモチーフ中のHis残基のN-メチル化
蛍光分極競争実験を用いてHisに対するN-メチル化効果を評価した。
【0185】
材料と方法
標準的なFmoc SPPS方法論を用いるペプチド合成の前に、Hisの2種類の可能なイミダゾール窒素を予めメチル化した。出発構成要素は、Fmoc-His(τ-Me)-OH[His(1-Me)]またはFmoc-His(π-Me)-OH[His(3-Me)]であった。SPPS後に、組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2および環状nNOS TAMRAプローブに対して、蛍光分極競争実験でペプチドの測定を実施例1に記載の方法で行った。データ取得を三回行い、K値の平均±標準誤差で表した。
【0186】
結果
Hisのイミダゾール窒素に対するメチル化の影響を評価した。これを下の表7に示す。
【0187】
N1(Nπ)のメチル化により、環状の鋳型と比較して親和性(K=2.9±0.1μM)が僅かに減少するが、N3(Nτ)のメチル化では、親和性が有意に増加する(K=0.40±0.05μM)ことが、この結果から明らかになった。
【0188】
【表8】
【0189】
HisのN3位にある水素は極性を有しており、H106に対してL107とV122との間に形成される疎水性表面に面するような位置にあるという仮説が考え得る。この位置のメチル化は、疎水性表面に安定化効果を提供しペプチド立体構造が安定化されるので、親和性が増強する。
【0190】
実施例12:nNOSβヘアピン模倣ペプチドのd-AAスキャン
蛍光分極競争実験を用いてd-アミノ酸置換の効果を評価した。
【0191】
材料と方法
l-アミノ酸(Glyについては除外)をd-類似体で置換して、18種類の類似体を得た。これらは、市販のFmoc-d-AA-OH構成要素と標準的なFmoc SPPS方法論を用いて合成した。SPPS後に、組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2および環状nNOS TAMRAプローブに対して、蛍光分極競争実験でペプチドの測定を実施例1に記載の方法で行った。データ取得を三回行い、K値の平均±標準誤差で表した。
【0192】
結果
結果のまとめを下の表8に示す。
【0193】
【表9】
【0194】
この結果は、環状ペプチドの実質的にいずれの位置においてもd-AAを導入することが、結合親和性にとって有害であることを示すものであった。D114d置換では、結合親和性に僅かの増加(K=0.59±0.04μM)が認められる事実は、D114の近くに複数のLys残基が存在し、これらLys残基の1つに結合するにはd-Aspが位置的により良好であるということで説明されるかもしれない。
【0195】
実施例13:PSD-95-PDZ2の高親和性環状ペプチド阻害剤の開発
実施例10~12に示す良好な単一点突然変異に基づいて、複数の変異を相加的効果および/または相乗効果について分析した。
【0196】
材料と方法
標準的SPPS方法論を用いて、ペプチドを上記の方法で合成した。SPPS後に、組換え技術によって発現させたPSD-95-PDZ2および環状nNOS TAMRAプローブに対して、蛍光分極競争実験でペプチドの測定を実施例1に記載の方法で行った。データ取得を三回行い、K値の平均±標準誤差で表した。まとめを表9に示す。有望な環状ペプチド候補について、実施例1に記載の方法にしたがい、等温滴定熱量測定法(ITC)を用いてさらに分析を行った。
【0197】
結果
蛍光分極競争実験に基づいて、複数の点突然変異を含む2種類の非常に強力な環状ペプチドが同定された;一方は、T112W、T116Eの置換(K=0.11±0.02μM)であり、他方は、ΔT112、T116E(K=0.16±0.02μM)の置換であった。次いで、これら2つを等温滴定熱量測定法(ITC)でさらに評価した。
【0198】
野生型環状nNOS模倣ペプチド(図2A)と比較しながら、ITC測定(下の表10)の結果を蛍光分極アッセイの結果と並べてみると、Kd値が、T112W、T116E(図11B)については138.8±0.2nM、およびΔT112、T116E(図11C)については118.8±13.1nMであることが分かった。このことは、野生型ペプチドと比較して、結合親和性がそれぞれ16倍および18倍改善していることを示すものである。
【0199】
【表10】
【0200】
これら2種類のペプチド候補のうちのいずれかのHis(3-Me)にさらなる置換を導入すると、相加効果を示し結合親和性のさらなる改善が得られた(表10);このことは、3種類の置換、H106H(3-Me)、T112WおよびT116E、を有する環状ペプチドは、顕著に改善した親和性(Kが29.4±7.3nM)を示し(図11D)、その元となる足場よりも75倍強力であった。同様に、2つの変異および欠失を含む同一の足場(H106H(3-Me)、ΔT112、T116E)のKは46.5±12.5nMであり(図11E)、野生型ペプチドと比較して親和性が47倍増加していた。
【0201】
【表11】
【0202】
実施例14:環状nNOSβヘアピン模倣ペプチドの非蛋白質新生SPOTアレイスクリーニング
環状βヘアピンペプチド配列に取り込まれることでもたらされる潜在的相乗効果について、非蛋白質新生アミノ酸をスキャンした。そのような効果は、結合親和性の増強、安定性改善などを含み得る。
【0203】
材料と方法
この試験では、野生型環状nNOSペプチドの残基105~116に対応するアミノ酸を含むペプチドを足場として選択した。2つの変異を含む同一セグメント(T112WおよびT116E)も、既に最適化されている足場ペプチドに導入した。残基105~116を変異の基本的なものとして選択した;その理由は、これらが親和性の増加に影響与える可能性が最も高いからである。実施例1において既に記載した方法で、スポットアレイにペプチドを合成した。その後、アレイをTAMRA標識PSD-95-PDZ2と共にインキュベートした。
【0204】
結果
蛍光データについては、下の表11および表12で詳細に説明する。まとめると、Phe-2-F、Phe-2-Cl、Phe-3-FおよびPhe-2-Brなどのハロゲン化類似体によるF111の置換は、結合親和性の増加をもたらすようであり、これは蛍光出力がより大きいことで証明される。残基106については、PyA-4またはPhe-3-CHNHなどの正の芳香族残基によって、結合親和性が増加した。残基106のHのメチル化もまた、上記の実施例11に示されるような相加効果を与えた。この傾向は、野生型足場および最適化した環状ペプチド足場の両方に認められた。
【0205】
野生型足場に関しては、Pro、Argまたはモノメチル化Argおよびジメチル化Argによる残基115の置換もまた、結合親和性を増加させる傾向があるように見える。
【0206】
【表12】
【0207】
【表13】
【0208】
実施例15:リガンドのインビトロにおけるプラスミン安定性
プラスミン(10μg/mL)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にて、100μMのリガンドを37℃で0~360分間インキュベートすることにより、配列番号:12、68、99および163のペプチドのインビトロのプラスミン安定性を判定した。インキュベーション経過中の選択時点で、80μLの50%アセトニトリル(ACN)で処理することにより、80μLのアッセイマトリックスからリガンドを抽出した。残存するリガンドの量を決定するために、この試料を濾過してUPLCで分析した。LC-MS分析を実施し、リガンドの完全性の確認と開裂部位の同定を行った。その結果を表13および図12に示す。
【0209】
【表14】
【0210】
この実施例では、環状nNOSβヘアピンペプチドのインビトロにおけるプラスミン安定性を判定する方法について説明する。結論としては、易分解性残基R121およびK118を置換することにより、プラスミン安定性を有意に改善することができる。さらに、PSD-95(T112W)に対する化合物親和性を有意に改善する置換は安定性を損なうものではない。
【0211】
実施例16:リガンドの膜透過性および細胞取り込みのCAPAによる判定
専ら細胞質に存在するHaloGFPを安定発現するHeLa細胞において、シクロ-(THLETTFTGDGTP(K-CA)TIRVTQpG(Qα))(配列番号:427)の膜透過性を判定した。細胞を、実験の前日に40000細胞/ウェルの密度で播種した。増殖培地を吸引し、100μLのOpti-MEMに交換した後に、Opti-MEMで段階的希釈して調製したリガンドを25μL、細胞(一定DMSO濃度)に添加し、そのプレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。ウェルの内容物を吸引し、細胞を新鮮なOpti-MEMで15分間、洗浄した。洗浄液を吸引後、細胞をTAMRA-CA(5μM)と共に15分間、インキュベートした。チェイス溶液を吸引後、細胞をOpti MEMで30分間洗浄した。洗浄液の除去後に、細胞をトリプシン処理してPBS(2%FBS)に再懸濁した;実験台据え置き型フローサイトメーターを用いて分析を行った。得られた蛍光強度データを、リガンド不含かつTAMRA-CA不含の対照ウェルを用いて正規化し、用量応答曲線としてプロットした。
【0212】
この実施例では、CAタグを付加した環状nNOSβヘアピンペプチドの膜透過性および細胞取り込みを判定する方法について説明する。膜透過性および細胞取り込み量(CP50)の値は、リガンドの細胞透過に逆比例する赤色蛍光の半値幅を表す。シクロ-(THLETTFTGDGTP(K-CA)TIRVTQpG(Qα))(配列番号:427)のCP50値は、31.1±2.1μMであった。結論として、提示の環状ペプチドは医学的利用に関して好適な細胞取り込みを示した。
【0213】
【表15】
参考文献

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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A-B】
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023529435000001.app
【国際調査報告】